(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156616
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】トイレットロール
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20241029BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A47K10/16 A
D21H27/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062533
(22)【出願日】2024-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2023071043
(32)【優先日】2023-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 美沙
(72)【発明者】
【氏名】飯野 里保
【テーマコード(参考)】
2D135
4L055
【Fターム(参考)】
2D135AA03
2D135AA07
2D135AA10
2D135AB02
2D135AB13
2D135AC08
2D135AD15
2D135BA07
2D135CA01
2D135CA03
2D135CA07
2D135DA02
2D135DA03
2D135DA05
2D135DA06
2D135DA13
2D135DA15
2D135DA16
2D135DA28
4L055AH17
4L055AJ07
4L055EA08
4L055EA32
4L055FA16
4L055GA29
(57)【要約】
【課題】一時性湿潤紙力剤を含有するため温水洗浄便座での使用に適しており、破れにくく、滑らかさ、エンボスの美粧性及びボリューム感に優れ、かつ、ロールが適度な巻長と巻径を有しており、ロールの柔らかさも良好であるトイレットロールを提供する。
【解決手段】2プライのトイレットペーパーを、ロール状に巻き取ったトイレットロールであって、ロールの巻柔らかさが0.5mm以上4.8mm以下、巻直径が120mm以上150mm以下であり、トイレットペーパーは一時性湿潤紙力剤を含有し、1プライの坪量が16g/m
2以上26g/m
2以下、剥離強度の平均が0.09N/76mm以上0.32N/76mm以下であり、ロール表面側とロール裏面側のTS750の比率が0.8以上1.7以下であり、エンボスは、ロール表面側のプライに付与されており、ライン状の第一エンボスを含む、トイレットロールを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンボスが付与されたシートを水及び/又はグルーで接着処理して2プライに積層したトイレットペーパーを、ロール状に巻き取ったトイレットロールであって、
ロールの巻柔らかさが0.5mm以上4.8mm以下、巻直径が120mm以上150mm以下であり、
前記トイレットペーパーは一時性湿潤紙力剤を含有し、1プライの坪量が16g/m2以上26g/m2以下、剥離強度の平均が0.09N/76mm以上0.32N/76mm以下であり、
ティシューソフトネス測定装置TSAにより、試料台に設置した前記トイレットペーパーのサンプルに対し、ブレード付きロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込んだ後に回転数2.0(/sec)で回転させ、前記試料台の振動を振動センサで測定したとき、前記TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度(TS750)において、ロール表面側のTS750(a)が16dBV2rms以上50dBV2rms以下、ロール裏面側のTS750(b)が15dBV2rms以上85dBV2rms以下、比率(TS750(b)/TS750(a))が0.8以上1.7以下であり、
前記エンボスは、少なくともロール表面側のプライに付与されており、かつ、ライン状の第一エンボスを含むことを特徴とする、トイレットロール。
【請求項2】
前記第一エンボスの、前記トイレットペーパーにおける面積率が35%以上93%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のトイレットロール
【請求項3】
前記ロール表面側のプライにおける、前記第一エンボスの深さが0.07mm以上0.45mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のトイレットロール。
【請求項4】
前記エンボスは、更にドット状の第二エンボスを含み、
前記ロール表面側のプライにおける、前記第二エンボスの深さが0.05mm以上0.24mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のトイレットロール。
【請求項5】
ロールの巻長が33m以上57m以下であることを特徴とする、請求項1に記載のトイレットロール。
【請求項6】
ロールのロール密度が0.10g/cm3以上0.20g/cm3以下であることを特徴とする、請求項1に記載のトイレットロール。
【請求項7】
前記トイレットペーパーのJIS P 4501に規定される、ほぐれやすさ試験の結果が25秒以上100秒以下であることを特徴とする、請求項1に記載のトイレットロール。
【請求項8】
前記一時性湿潤紙力剤の含有率が0.005%以上0.2%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のトイレットロール。
【請求項9】
前記エンボスが、積層前に前記ロール表面側のプライ及びロール裏面側のプライにそれぞれ付与されるダブルエンボスであり、
前記ロール裏面側のプライにおける、前記エンボスの1cm2当たりの個数は25個以上95個以下であることを特徴とする、請求項1に記載のトイレットロール。
【請求項10】
前記エンボスが、積層前に前記ロール表面側のプライ及び前記ロール裏面側のプライにそれぞれ付与されるダブルエンボスであり、
前記ロール裏面側のプライにおける、前記エンボスの深さは0.03mm以上0.35mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のトイレットロール。
【請求項11】
ロールの巻密度が0.48m/cm2以上1.0m/cm2以下であることを特徴とする、請求項1に記載のトイレットロール。
【請求項12】
前記トイレットペーパーの剥離強度の最大値が0.20N/76mm以上0.60N/76mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のトイレットロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボスが付与された2プライのトイレットペーパーを巻き取ったトイレットロールに関する。
【背景技術】
【0002】
市販品のトイレットロールは長尺化が進んでいるが、高級品はそれに加えて品質が求められる。
【0003】
高級品では特に、良好な触感及び美粧性と、温水洗浄便座での使用時における破れにくさが求められる。また、ロールの柔らかさを保ちつつ、巻直径を大きくすることで、より高級感が感じられるトイレットロールとなる。
【0004】
温水洗浄便座での使用時に破れにくいトイレットペーパーとするには、抄紙工程において一時性湿潤紙力剤を配合することで、温水洗浄便座での使用時にもトイレットペーパー(シート)が破れにくくなる。
【0005】
温水洗浄便座での使用に適したトイレットペーパーの先行技術文献として、例えば、特許文献1には、2プライのトイレットペーパーであって、18g/m2以上23g/m2以下の1プライ当たりの坪量と、5.0以上6.5以下の比容積と、4プライでの90gf/25mm以上130gf/25mm以下の縦方向の湿潤引張り強度と、を有し、1ロールの巻長が30m以上であり、JIS P 8113に規定される縦方向の乾燥引張り強度をDMDT、横方向の乾燥引張り強度をDCDTで表したとき、2プライにおけるDMDT/DCDT=2.0以上3.5以下であることを特徴とするトイレットペーパーが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、一方の面が凸部となり、対応する反対面が凹部となる凹凸を複数有する1プライのトイレットペーパーをロール状に巻き取ったトイレットロールであって、巻長が105~210m、巻直径が100~140mm、ロール幅114mm当たりのコアを含まないロール質量が225~485g、ロール幅114mm当たりのコアの質量が3.2~6.0g、コアの外径が25~48mm、ロールの巻密度が0.17~0.35g/cm3であるトイレットロールが開示されている。また、凹凸がエンボスである旨も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-126771号公報
【特許文献2】特開2018-000728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、トイレットペーパーにおいて、エンボスの美粧性を高めるには、エンボスをしっかり設ける(エンボス深さを大きくする)必要があるが、エンボスを深くすると、シングルエンボスの場合、触感の表裏差が大きくなってしまう。
【0009】
一方、ダブルエンボスは、嵩が出やすくなるが、特許文献2の
図2のようなパターンでは、嵩高になりすぎてしまう場合がある。また、ドット状のエンボスのためエンボス部の周辺の角部が尖りやすく、ダブルエンボスであっても、触感の表裏差が大きくなってしまう場合がある。
【0010】
もちろん、エンボスを薄くすると触感の表裏差は小さくなるが、代わりにエンボスの美粧性が劣ってしまう。その状態でエンボスの美粧性を高めるために、グルーを用いてプライを接着させると、今度はグルーの影響で紙が固くなってしまう。また、一時性湿潤紙力剤を含有したシートは固く感じられ、通常のトイレットペーパーより触感がさらに劣る。
【0011】
以上のことから、温水洗浄便座での使用に適したトイレットペーパー及びトイレットロールでは、破れにくさ、滑らかさ、エンボスの美粧性及びボリューム感、並びにロールの適度な巻長と巻径、及びロールの柔らかさを全て満たすことが困難であった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、トイレットペーパーが一時性湿潤紙力剤を含有するため温水洗浄便座での使用に適しており、破れにくく、滑らかさ、エンボスの美粧性及びボリューム感に優れ、かつ、ロールが適度な巻長と巻径を有しており、ロールの柔らかさも良好であるトイレットロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者は鋭意検討を行い、エンボスが付与されたシートを水及び/又はグルーで接着処理して2プライに積層したトイレットペーパーを、ロール状に巻き取ったトイレットロールにおいて、ロールの巻柔らかさ及び巻長をそれぞれ所定の数値範囲内とし、トイレットペーパーに一時性湿潤紙力剤を含有させ、エンボスを少なくともロール表面側のプライに付与し、かつ、ライン状の第一エンボスを含むものとし、更に、トイレットペーパーのロール表面側とロール裏面側のそれぞれのプライのTS750及びそれらの比率、トイレットペーパーの坪量、並びに剥離強度の平均をそれぞれ所定の数値範囲内とすることで、温水洗浄便座での使用に適しており、破れにくく、滑らかさ、エンボスの美粧性及びボリューム感に優れ、かつ、ロールが適度な巻長と巻径を有しており、ロールの柔らかさも良好であるトイレットロールとすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0014】
(1)本発明の第1の態様は、エンボスが付与されたシートを水及び/又はグルーで接着処理して2プライに積層したトイレットペーパーを、ロール状に巻き取ったトイレットロールであって、ロールの巻柔らかさが0.5mm以上4.8mm以下、巻直径が120mm以上150mm以下であり、前記トイレットペーパーは一時性湿潤紙力剤を含有し、1プライの坪量が16g/m2以上26g/m2以下、剥離強度の平均が0.09N/76mm以上0.32N/76mm以下であり、ティシューソフトネス測定装置TSAにより、試料台に設置した前記トイレットペーパーのサンプルに対し、ブレード付きロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込んだ後に回転数2.0(/sec)で回転させ、前記試料台の振動を振動センサで測定したとき、前記TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度(TS750)において、ロール表面側のTS750(a)が16dBV2rms以上50dBV2rms以下、ロール裏面側のTS750(b)が15dBV2rms以上85dBV2rms以下、比率(TS750(b)/TS750(a))が0.8以上1.7以下であり、前記エンボスは、少なくともロール表面側のプライに付与されており、かつ、ライン状の第一エンボスを含むことを特徴とする、トイレットロールである。
【0015】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のトイレットロールであって、前記第一エンボスの、前記トイレットペーパーにおける面積率が35%以上93%以下であることを特徴とするものである。
【0016】
(3)本発明の第3の態様は、(1)に記載のトイレットロールであって、前記ロール表面側のプライにおける、前記第一エンボスの深さが0.07mm以上0.45mm以下であることを特徴とするものである。
【0017】
(4)本発明の第4の態様は、(1)に記載のトイレットロールであって、前記エンボスは、更にドット状の第二エンボスを含み、前記ロール表面側のプライにおける、前記第二エンボスの深さが0.05mm以上0.24mm以下であることを特徴とするものである。
【0018】
(5)本発明の第5の態様は、(1)に記載のトイレットロールであって、ロールの巻長が33m以上57m以下であることを特徴とするものである。
【0019】
(6)本発明の第6の態様は、(1)に記載のトイレットロールであって、ロールのロール密度が0.10g/cm3以上0.20g/cm3以下であることを特徴とするものである。
【0020】
(7)本発明の第7の態様は、(1)に記載のトイレットロールであって、前記トイレットペーパーのJIS P 4501に規定される、ほぐれやすさ試験の結果が25秒以上100秒以下であることを特徴とするものである。
【0021】
(8)本発明の第8の態様は、(1)に記載のトイレットロールであって、前記一時性湿潤紙力剤の含有率が0.005%以上0.2%以下であることを特徴とするものである。
【0022】
(9)本発明の第9の態様は、(1)に記載のトイレットロールであって、前記エンボスが、積層前に前記ロール表面側のプライ及びロール裏面側のプライにそれぞれ付与されるダブルエンボスであり、前記ロール裏面側のプライにおける、前記エンボスの1cm2当たりの個数は25個以上95個以下であることを特徴とするものである。
【0023】
(10)本発明の第10の態様は、(1)に記載のトイレットロールであって、前記エンボスが、積層前に前記ロール表面側のプライ及びロール裏面側のプライにそれぞれ付与されるダブルエンボスであり、前記ロール裏面側のプライにおける、前記エンボスの深さは0.03mm以上0.35mm以下であることを特徴とするものである。
【0024】
(11)本発明の第11の態様は、(1)に記載のトイレットロールであって、ロールの巻密度が0.48m/cm2以上1.0m/cm2以下であることを特徴とするものである。
【0025】
(12)本発明の第12の態様は、(1)に記載のトイレットロールであって、前記トイレットペーパーの剥離強度の最大値が0.20N/76mm以上0.60N/76mm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、トイレットペーパーが一時性湿潤紙力剤を含有するため温水洗浄便座での使用に適しており、破れにくく、滑らかさ、エンボスの美粧性及びボリューム感に優れ、かつ、ロールが適度な巻長と巻径を有しており、ロールの柔らかさも良好であるトイレットロールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトイレットロールの外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るトイレットペーパーに付与されるエンボスの一例を示す図である。
【
図3】マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを濃淡で示す図である。
【
図4】マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルをグラフで示す図である。
【
図5】トイレットペーパーに付与されるエンボスの深さの求め方を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0029】
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0030】
<トイレットロール>
図1は、本発明の一実施形態に係るトイレットロール1の外観を示す斜視図である。本発明の一実施形態に係るトイレットロール1は、エンボス10が付与されたシートを水及び/又はグルー(以下、プライボンドグルーとも称する)で接着処理して2プライに積層したトイレットペーパー1xを、ロール状に巻き取ったトイレットロール1である。なお、トイレットペーパー1x(以下、単にシートとも称する)は、流れ方向における略等間隔において、幅方向にミシン目を施されていることが好ましい(図示しない)。
また、
図1に示すように、トイレットペーパー1xの表面のうち、ロール外側に指向した表面をロール表面1a(トイレットペーパー1xの表面)と称し、ロール中心部に指向した表面をロール裏面1b(トイレットペーパー1xの裏面)、巻き取られたトイレットペーパー1xの最外端部をトイレットペーパー1xの最外巻の端縁1eと称する。
【0031】
(巻長及び巻直径)
トイレットロール1の巻長は33m以上57m以下であることが好ましい。巻長が33m未満であると、巻長が短すぎるため、結果として後述する巻直径DRが小さくなりすぎる。巻長が57mを超えると、後述する巻直径DRが大きくなりすぎる。なお、トイレットロール1の巻長は35m以上52m以下であることがより好ましく、38m以上46m以下であることが更に好ましい。
また、トイレットロール1の巻直径DRは120mm以上150mm以下である。巻直径DRが120mm未満であると、巻直径DRが小さすぎるため、結果として巻長が短くなりすぎる。巻直径DRが150mmを超えると、巻直径DRが大きくなりすぎる。なお、トイレットロール1の巻直径DRは123mm以上145mm以下であることが好ましく、125mm以上137mm以下であることがより好ましい。
【0032】
巻長は、トイレットロール1のミシン目とミシン目の間のトイレットペーパー1xについて、10枚分の長さを実測する。その後、トイレットロール1におけるトイレットペーパー1xの枚数を実測し、巻長は10枚分の長さとトイレットペーパー1xの枚数から比例計算で求める。例えば、10枚分の長さが1.80m、トイレットペーパー1xの枚数が200枚の場合、1.80m×(200/10)=36mとなる。なお、トイレットロール1にミシン目がない場合は、実測して巻長を測定することができる。
また、ロールの巻直径DRは、ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定する。巻長及びロールの巻直径DRの測定は、4個のトイレットロール1を測定し、測定結果を平均する。
【0033】
(巻柔らかさ)
また、トイレットロール1の巻柔らかさは0.5mm以上4.8mm以下である。巻柔らかさが0.5mm未満であると、ロール製品としての柔らかさに劣り、高級感が感じにくくなる。巻柔らかさが4.8mmを超えると、ロール製品としては柔らかすぎて使いにくくなる。なお、トイレットロール1の巻柔らかさは0.9mm以上3.5mm以下であることが好ましく、1.3mm以上2.8mm以下であることがより好ましい。
【0034】
トイレットロール1の巻柔らかさは、圧縮試験機(カトーテック株式会社製のハンディー圧縮試験機KES-G5)を用いて、次のように測定する。なお、トイレットロール1の軸心と平行な方向を高さ方向、トイレットロール1の円周の接線と垂直な方向を半径方向とする。
まず、トイレットロール1のコアに、アクリルパイプを挿入する。アクリルパイプの肉厚は2mmとする。アクリルパイプの長さは、トイレットロール1のロール幅より10mm長くする(トイレットロール1のロール幅が114mmの場合、アクリルパイプの長さは124mmとする。)。アクリルパイプの外径は、トイレットロール1のコアの内径よりわずかに小さく、かつ、アクリルパイプを挿入した後にトイレットロール1の軸心が垂直になるように置いたとき、トイレットロール1が自重で動かないサイズとする。コアにアクリルパイプを挿入しにくく、アクリルパイプの外径をわずかに小さくする場合は、耐水ペーパー等で肉厚をわずかに削ってもよい。アクリルパイプの質量は、長さが125mm、外径が38mmの場合、31g程度である。アクリルパイプをトイレットロール1のコアに挿入することで、巻長の長いトイレットロール1において、巻密度も高いものとなった場合に、コアの硬さによらずにトイレットロール1の巻柔らかさを評価することができる。
【0035】
次に、トイレットロール1を軸心が水平になるよう硬い台上に横に置く。そして、トイレットロール1の高さ方向の中心部に上記KES-G5の圧縮子(面積2.0cm2)を、速度10mm/分の条件で半径方向に上から押し込む。圧縮子がロールを押す圧力が0.5gf/cm2のときの押し込み深さをT0、圧力が100gf/cm2のときの押し込み深さをTmとして、(Tm-T0)を巻柔らかさとする。上記圧縮子をトイレットロール1に押し込む際の位置は、高さ方向の両端部を除き、高さ方向の中心部とする。測定は、4つのトイレットロール1について各1回測定し、値を平均する。
【0036】
(シート長及びシート幅)
さらに、ミシン目とミシン目の間の長さ(トイレットペーパー1xのシート長)は、80mm以上250mm以下が好ましく、88mm以上160mm以下がより好ましく、95mm以上120mm以下が更に好ましい。さらに、トイレットペーパー1xのシート幅は、100mm以上123mm以下が好ましく、105mm以上118mm以下がより好ましく、108mm以上116mm以下が更に好ましい。シート長及びシート幅がそれぞれ上記の数値範囲内であることにより、本願のようなトイレットロール1を使用する際、使用する面積が適正になり、温水洗浄便座での使用に適したものとなる。
【0037】
(ロール質量)
そして、トイレットロール1のロール質量は150g以上270g以下であることが好ましくい。ロール質量が150g未満であると、結果として巻直径DRが小さすぎたり、巻長が短くなりすぎたりする。ロール質量が270gを超えると、結果として巻直径DRが大きくなりすぎる。
なお、トイレットロール1のロール質量は160g以上240g以下であることがより好ましく、170g以上210g以下であることが更に好ましい。上記数値範囲のロール質量は、トイレットロール1における紙管(コア)を含まないロール幅114mm当たりの1ロールの質量とし、ロール幅が114mmでない場合は、比例計算により114mm当たりの質量に換算する。
【0038】
(紙管外径)
なお、本発明のトイレットロール1の芯(コア)の外径である、紙管外径DIは、25mm以上48mm以下であることが好ましい。紙管外径DIが25mm未満であると、ロール製品として使いにくくなる。紙管外径DIが48mmを超えると、結果として巻直径DRが大きくなりすぎる。
なお、紙管外径DIは35mm以上46mm以下であることがより好ましく、37mm以上43mm以下であることが更に好ましい。紙管外径DIは、ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定する。測定は、4個のトイレットロール1の紙管を測定し、測定結果を平均する。
【0039】
(ロール密度)
また、トイレットロール1のロール密度は0.10g/cm3以上0.20g/cm3以下であることが好ましい。ロール密度が0.10g/cm3未満であると、トイレットロール1が柔らかすぎて使いにくくなる。ロール密度が0.20g/cm3を超えると、トイレットロール1が柔らかさに劣り、高級感が感じにくくなる。
なお、トイレットロール1のロール密度は0.11g/cm3以上0.18g/cm3以下であることがより好ましく、0.12g/cm3以上0.15g/cm3以下であることが更に好ましい。
【0040】
ロール密度は、(ロール質量)÷(ロールの体積)で表される。ロール質量は、ロール幅114mm当たりのトイレットロール1の質量である。ロール体積は[{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積}-(紙管外径DI部分の断面積)]×ロール幅(114mm当たりに換算する)で表される。例えば、ロール幅114mm当たりのロール質量(紙管を除く)が162g、巻直径DRが127mm、紙管外径DIが39mmの場合、ロール密度=0.124g/cm3となる。なお、トイレットロール1に紙管が無い場合は、中心孔の直径を紙管外径DIとする。
【0041】
(巻密度)
さらに、トイレットロール1の巻密度は、0.48m/cm2以上1.0m/cm2以下であることが好ましい。巻密度が0.48m/cm2未満であると、トイレットロール1が柔らかすぎて使いにくくなる。巻密度が1.0m/cm2を超えると、ロール製品としての柔らかさに劣り、高級感が感じにくくなる。
なお、トイレットロール1の巻密度は0.50m/cm2以上0.90m/cm2以下であることが好ましく、0.60m/cm2以上0.80m/cm2以下であることがより好ましい。
【0042】
巻密度は、(巻長×プライ数)÷(ロールの断面積)で表される。ロールの断面積は、{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積-(紙管10の紙管外径DI部分の断面積)}で表される。例えば、巻長39m、2プライ、巻直径DR127mm、紙管外径DI39mmの場合、巻密度=(39m×2)÷{3.14×(127mm÷2÷10)2-3.14×(39mm÷2÷10)2}=0.68m/cm2となる。
【0043】
<トイレットペーパー>
本発明の一実施形態に係るトイレットペーパー1xに用いる原紙は、木材パルプ100質量%からなるものであってもよく、古紙パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプ、液体飲料用紙パック古紙等を含んでよい。しかし、品質の観点から木材パルプ以外のパルプや古紙等の含有率は50質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、最も好ましくは0質量%である。
目標とする品質を得るためには、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)の含有率が5質量%以上55質量%以下であることが好ましく、15質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上35質量%以下であることが更に好ましい。また、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)の含有率が45質量%以上95質量%以下であることが好ましく、55質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、65質量%以上80質量%以下であることが更に好ましい。
【0044】
また、本発明の一実施形態に係るトイレットペーパー1xは温水洗浄便座での使用に適したものとするため、一時性湿潤紙力剤を含有する。このとき、一時性湿潤紙力剤の含有率は0.005%以上0.2%以下であることが好ましい。含有率が0.005%未満であると、温水洗浄便座での使用時にトイレットペーパー1xが破れやすくなる。含有率が0.2%を超えると、トイレットペーパー1xが柔らかさに劣る。
なお、一時性湿潤紙力剤の含有率は0.01%以上0.1%以下であることがより好ましく、0.02%以上0.07%以下であることが更に好ましい。この場合の一時性湿潤紙力剤の含有率は、一時性湿潤紙力剤(固形分(有効成分)換算)のパルプ繊維(絶乾)に対しての質量百分率を指す。
また、一時性湿潤紙力剤以外に、紙料への添加剤として、最終製品の要求品質に応じ、柔軟剤、嵩高剤、染料、分散剤、乾燥紙力増強剤、濾水向上剤、ピッチコントロール剤、吸水性向上剤等を用いることができる。
【0045】
(坪量)
本発明の一実施形態に係るトイレットペーパー1xの1プライの坪量は、16g/m2以上26g/m2以下である。トイレットペーパー1xの坪量が16g/m2未満であると、トイレットペーパー1xがボリューム感に劣る。トイレットペーパー1xの坪量が26g/m2を超えると、トイレットペーパー1xが柔らかさに劣る。
なお、トイレットペーパー1xの1プライの坪量は、17g/m2以上24g/m2以下であることが好ましく、18g/m2以上22g/m2以下であることがより好ましい。トイレットペーパー1xの坪量は、JIS P 8124に準拠して測定する。
【0046】
(紙厚)
本発明の一実施形態に係るトイレットペーパー1xの10プライの紙厚は1.0mm以上1.8mm以下であることが好ましい。紙厚が1.0mm未満であると、トイレットペーパー1xがボリューム感に劣る。紙厚が1.8mmを超えると、トイレットペーパー1xが柔らかさに劣る。なお、トイレットペーパー1xの10プライの紙厚は1.1mm以上1.6mm以下であることがより好ましく、1.2mm以上1.5mm以下であることが更に好ましい。
紙厚はシックネスゲージ(株式会社尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定する。測定条件は、測定荷重3.7kPa、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取る。そして、2プライのトイレットペーパー1xを5組重ねて、10枚分として測定を行ったものを10プライの紙厚として算出する。また、測定を10回繰り返して(同じ場所を10回測定せず、異なる場所を10か所測定する)、測定結果を平均したものを最終的な紙厚とする。
【0047】
(比容積)
また、本発明の一実施形態に係るトイレットペーパー1xの比容積は5.0cm3/g以上9.5cm3/g以下であることが好ましい。比容積が5.0cm3/g未満であると、トイレットペーパー1xがボリューム感に劣る。比容積が9.5cm3/gを超えると、トイレットペーパー1xが柔らかさに劣る。
なお、トイレットペーパー1xの比容積は5.5cm3/g以上8.5cm3/g以下であることがより好ましく、6.0cm3/g以上7.5cm3/g以下であることが更に好ましい。比容積は、トイレットペーパー1xの紙厚を坪量で割り、単位gあたりの容積cm3で表す。
【0048】
(DMDT及びDCDT)
本発明の一実施形態に係るトイレットペーパー1xの、JIS P 8113に基づく乾燥時におけるMD方向の引張強度DMDT(Dry Machine Direction Tensile Strength)は3.0N/25mm以上5.5N/25mm以下であることが好ましい。また、乾燥時におけるCD方向の引張強度DCDT(Dry Cross Direction Tensile Strength)は1.0N/25mm以上2.0N/25mm以下であることが好ましい。DMDTが3.0N/25mm未満であるか、又はDCDTが1.0N/25mm未満であると、トイレットペーパー1xが温水洗浄便座での使用時に破れやすくなる。DMDTが5.5N/25mmを超えるか、又はDCDTが2.0N/25mmを超えると、トイレットペーパー1xが柔らかさに劣る。
【0049】
なお、DMDTは3.5N/25mm以上5.1N/25mm以下であることがより好ましく、3.7N/25mm以上4.8N/25mm以下であることが更に好ましい。また、DCDTは1.1N/25mm以上1.8N/25mm以下であることがより好ましく、1.2N/25mm以上1.6N/25mm以下であることが更に好ましい。
この場合のMD方向とは、トイレットペーパー1xの製造時における製造方向(Machine Direction、流れ方向とも称する)である。また、CD方向はMD方向に直交する方向(Cross Direction、幅方向とも称する)である。トイレットペーパー1xのDMDT及びDCDTは、JIS P 8113に準拠して、2プライのままで測定する。
【0050】
(ほぐれやすさ)
また、本発明の一実施形態に係るトイレットペーパー1xのJIS P 4501に規定される、ほぐれやすさ試験の結果が25秒以上100秒以下であることが好ましい。試験結果が25秒未満であると、トイレットペーパー1xが温水洗浄便座での使用時に破れやすくなる。試験結果が100秒を超えると、トイレットペーパー1xが柔らかさに劣る。
なお、トイレットペーパー1xのJIS P 4501に規定される、ほぐれやすさ試験の結果は30秒以上80秒以下であることがより好ましく、35秒以上60秒以下であることが更に好ましい。ほぐれやすさ試験はJIS P 4501に準拠して行うが、トイレットペーパー1xは2プライに積層されている状態から、剥離して1プライの状態とする。1プライにしたトイレットペーパー1xのロール表面1a側、ロール裏面1b側をそれぞれ3回(合計6回)測定し、6回の測定値を平均する。また、サンプルのサイズは幅方向114mm×流れ方向114mmとするが、ロール幅が114mm未満の場合は、サンプルの面積が同一になるよう、流れ方向を大きく(長く)することができる。また、試験片はミシン目を含まないように採取するが、ミシン目の間隔が狭く(小さく)、ミシン目を含まないと採取できない場合は、ミシン目を含んでもよい。
【0051】
(剥離強度)
さらに、本発明の一実施形態に係るトイレットペーパー1xの剥離強度の平均は0.09N/76mm以上0.32N/76mm以下である。剥離強度の平均が0.09N/76mm未満であると、エンボスパターンが薄い(弱い)ためトイレットペーパー1xが平滑すぎて、かえって滑らかさに劣る。剥離強度の平均が0.32N/76mmを超えると、エンボスパターンが濃い(強い)ため、トイレットペーパー1xが滑らかさに劣る。
なお、トイレットペーパー1xの剥離強度の平均は0.12N/76mm以上0.25N/76mm以下であることが好ましく、0.15N/76mm以上0.22N/76mm以下であることがより好ましい。
【0052】
また、本発明の一実施形態に係るトイレットペーパー1xの剥離強度の最大値は0.20N/76mm以上0.60N/76mm以下であることが好ましい。剥離強度の最大値が0.20N/76mm未満であると、エンボスパターンが薄い(弱い)ためトイレットペーパー1xが平滑すぎて、かえって滑らかさに劣る。剥離強度の平均が0.60N/76mmを超えると、エンボスパターンが濃い(強い)ため、トイレットペーパー1xが滑らかさに劣る。
なお、トイレットペーパー1xの剥離強度の最大値は0.27N/76mm以上0.50N/76mm以下であることがより好ましく、0.33N/76mm以上0.45N/76mm以下であることが更に好ましい。
【0053】
なお、この場合の剥離強度とはトイレットペーパー1xのプライ同士の剥離強度を指し、測定はJIS P 8113の引張試験方法に準じて、引張試験機(STB-1225S、株式会社エー・アンド・デイ製)を使用し、JIS P 8111に規定された標準条件下で行う。
まず、トイレットペーパー1xのサンプルから幅方向76mm、流れ方向100mmの試験片を採取する。次に、流れ方向にプライを20mm剥離する。剥離したプライの片側を上側のつかみ具(幅80mm)に流れ方向で10mm挟んで固定する。また、もう一方のプライも下側のつかみ具(幅80mm)に流れ方向で10mm挟んで固定する。なお、つかみ具のピッチ(間隔)は10mmとする。次に、引張速度100mm/minの条件で引張り(剥離し)、強度データを採取する。
【0054】
そして、上記の強度データは0.01秒おきに取得し、測定開始後の距離40mmから80mmまで(測定長40mm)のデータを取得した後、それらのデータを平均したものを剥離強度の平均(N/76mm)とする。また、測定開始後から80mmまでのデータのうち数値が最大のものを剥離強度の最大値(N/76mm)とする。なお、測定開始後の距離40mmから80mmまでにミシン目を含んでしまう場合は、測定開始後の距離を40mmから例えば70mm(測定長30mm)のように、ミシン目を含まない範囲で短くすることができる。
【0055】
(エンボス)
本発明の一実施形態に係るトイレットペーパー1xにはエンボス10が付与されるが、エンボス10は少なくともロール表面1a側のプライに付与されている。ロール裏面1b側のプライにはエンボス10は付与されていなくともかまわないが、ロール表面1a側のプライ及びロール裏面1b側のプライのいずれにも付与されていることが好ましい。また、エンボス10の付与形式はシングルエンボス又はダブルエンボスのいずれでもかまわないが、中でも積層前にロール表面1a側のプライ及びロール裏面1b側のプライにそれぞれ付与される、ダブルエンボスであることが好ましい。このようにすることで、巻直径DRや巻柔らかさ、後述するTSA(TS750)を所定の範囲になるよう調整しやすくなる。
また、エンボス10は
図2に示すようなライン状の第一エンボス11を含む。第一エンボス11の形状は、
図2に示すような花柄であることが好ましいが、後述する面積率が所定の数値範囲内であり、かつ、美粧性を感じさせるものであれば、ライン状であること以外の柄やパターンは特に限定されない。
【0056】
上記のエンボス10において、ロール表面1a側のプライにおける第一エンボス11の深さは0.07mm以上0.45mm以下であることが好ましい。第一エンボス11の深さが0.07mm未満であると、エンボスとしての美粧性に劣り、かつ、トイレットペーパー1xが平滑すぎて、かえって滑らかさに劣る。第一エンボス11の深さが0.45mmを超えると、トイレットペーパー1xが滑らかさに劣る。
なお、ロール表面1a側のプライにおける第一エンボス11の深さは0.15mm以上0.40mm以下であることがより好ましく、0.23mm以上0.37mm以下であることが更に好ましい。
【0057】
また、エンボス10において、第一エンボス11のトイレットペーパー1xにおける面積率が35%以上93%以下であることが好ましい。面積率が35%未満であると、エンボスとしての美粧性に劣り、かつ、トイレットペーパー1xが平滑すぎて、かえって滑らかさに劣る。面積率が93%を超えると、エンボスとしての美粧性に劣り、かつ、トイレットペーパー1xが平滑すぎて、かえって滑らかさに劣る。また、トイレットロール1がロール製品としての柔らかさに劣る上、トイレットペーパー1xのロール表面1aとロール裏面1bの滑らかさの差が大きくなり、結果として総合的な滑らかさにも劣る。
なお、第一エンボス11のトイレットペーパー1xにおける面積率が45%以上85%以下であることがより好ましく、55%以上75%以下であることが更に好ましい。
【0058】
上記の第一エンボス11に加えて、
図2に示すエンボス10は、更にドット状の第二エンボス12を含むことが好ましい。第二エンボス12が付与されることにより、トイレットペーパー1xの触感の滑らかさが良好になる。第二エンボス12は第一エンボス11の付与されていない箇所(第一エンボス11の周囲)に付与されることが好ましいが、第一エンボス11の周囲に第二エンボス12が付与されない領域があってもかまわない。なお、第一エンボス11のライン状の定義としては、エンボスパターンの長さが3mm以上のものを指す。すなわち、第一エンボス11はエンボスパターンの長さが3mm以上のものを含む。一方で、第二エンボス12はエンボスパターンの長さが3mm未満のものを含む。
また、第二エンボス12において、ロール表面1a側のプライにおける第二エンボス12の深さは0.05mm以上0.24mm以下であることが好ましい。第二エンボス12の深さが0.05mm未満であると、エンボスとしての美粧性に劣り、かつ、トイレットペーパー1xが平滑すぎて、かえって滑らかさに劣る。第二エンボス12の深さが0.24mmを超えると、トイレットペーパー1xが滑らかさに劣る。
なお、ロール表面1a側のプライにおける第二エンボス12の深さは0.10mm以上0.21mm以下であることがより好ましく、0.13mm以上0.18mm以下であることが更に好ましい。
【0059】
さらに、ロール表面1a側のプライにおける、第一エンボス11の深さと第二エンボス12の深さの差は0.02mm以上0.26mm以下であることが好ましい。深さの差が0.02mm未満であると、エンボスとしての美粧性に劣る。深さの差が0.26mmを超えると、トイレットペーパー1xが滑らかさに劣る。
なお、ロール表面1a側のプライにおける、第一エンボス11の深さと第二エンボス12の深さの差は0.05mm以上0.23mm以下であることがより好ましく、0.10mm以上0.20mm以下であることが更に好ましい。
【0060】
そして、エンボス10がダブルエンボスであるとき、ロール裏面1b側のプライにおける、エンボス10の1cm2当たりの個数は25個以上95個以下であることが好ましい。エンボス10の1cm2当たりの個数が25個未満であるか、又は95個を超えると、トイレットペーパー1xの滑らかさが劣ったり、平滑すぎたりして、かえって滑らかさに劣る。なお、ロール裏面1b側のプライにおける、エンボス10の1cm2当たりの個数は40個以上80個以下であることがより好ましく、50個以上70個以下であることが更に好ましい。
同様に、エンボス10がダブルエンボスであるとき、ロール裏面1b側のプライにおける、エンボス10の深さは0.03mm以上0.35mm以下であることが好ましい。エンボス10の深さが0.03mm未満であるか、又は0.35mmを超えると、トイレットペーパー1xの滑らかさが劣ったり、平滑すぎたりして、かえって滑らかさに劣る。なお、ロール裏面1b側のプライにおける、エンボス10の深さは0.07mm以上0.28mm以下であることがより好ましく、0.10mm以上0.20mm以下であることが更に好ましい。
【0061】
エンボス10、第一エンボス11及び第二エンボス12の深さは、マイクロスコープを用いてエンボスの高低差を測定して求める。マイクロスコープとしては、株式会社KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。また、測定条件は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmの条件で測定する。なお、測定倍率と視野面積は、エンボス10の大きさによって、適宜変更してもよい。
【0062】
図3は、マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを示し、トイレットペーパー1x表面の高さが濃淡で表されている。
図3の濃淡が周辺と異なる線状の部位が、個々のエンボス10を示している。エンボスの深さは、上記のマイクロスコープを用いて上述のエンボス10の高低差を測定して求める。なお、測定はトイレットペーパー1xのロール表面1a側で行う。また、測定時に、トイレットロール1からトイレットペーパー1xを5周分取り除き、6周目のトイレットペーパー1xを用いて、プライ数を変更せずに、そのシートの状態で測定する。また、ミシン目がある場合は、いずれも避けて測定する。
【0063】
まず、
図3のように線分ABを引き、
図4の高さプロファイルを得る。なお、線分ABは、エンボスを横切るように引けばよい。また、線分ABは、トイレットペーパー1xのロール幅方向(CD方向)になるように引くが、エンボスとエンボスの間隔が例えば2mm以下と狭く、下記の凸部の高さが低くなってしまう場合は、線分を斜め方向に引いたり、ロール巻方向に引いたりしてもよい。
高さプロファイルは、実際のトイレットペーパー1xの試料表面の凹凸を表す(測定)断面曲線S1であるが、ノイズ(トイレットペーパー1xの表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでおり、凹凸の高低差の算出に当たっては、このようなノイズピークを除去する必要がある。
【0064】
そこで、
図4の(測定)断面曲線S1を、重み平均ラジオボタンのフィルターのサイズを±12とし、スムージングした
図5の断面曲線S2を得る。なお、重み平均ラジオボタンのフィルターを用いたスムージングは、上記の解析ソフトを使用すれば、自動で得られる。そして、
図5に示すグラフにおいて、エンボスの凹部(極小値)D1と、D1に隣接するエンボスの凹部(極小値)D2を見つける。次に、D1とD2の間にある凸部(最大値又は極大値)をH1とする。同様に、D3、D4、H2、H3を見つける。
次に、H1とH2の縦軸の平均値からD2の値を引き、エンボス深さとする。同様に、H2とH3の縦軸の平均値からD3の値を引き、エンボス深さとする。この段階で、2点のデータが得られる。
【0065】
その後、トイレットペーパー1xのロール巻方向にトイレットロール1を90度ずつ3回に分けて回転させた各位置において上記同様の測定を行い(ロール巻方向における測定位置は計4か所となる)、合計8か所(2×4)の平均値をエンボスの深さとして最終的に採用する。
上記の測定を、ロール表面1a側の第一エンボス11及び第二エンボス12と、ロール裏面1b側のエンボス10のそれぞれに対して行う。
【0066】
また、第一エンボス11の面積率の求め方としては、まずトイレットペーパー1xのロール表面1aにおける10cm×10cmの領域を、1cm×1cmの領域に分ける(すなわち、合計100個の領域になる)。
そして、各1cm×1cmの領域のうち、第一エンボス11が存在しない領域の数をカウントし、1cm×1cmの領域100個から第一エンボス11が存在しない領域の数を引いた数をそのまま第一エンボス11の面積率(%)として算出する。
【0067】
(TSAによる測定値)
本発明の一実施形態に係るトイレットロール1において、ティシューソフトネス測定装置TSAにより、試料台に設置したトイレットペーパー1xのサンプルに対し、ブレード付きロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込んだ後に回転数2.0(/sec)で回転させ、試料台の振動を振動センサで測定したとき、TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度(TS750)において、ロール表面1a側のTS750(a)が16dBV2rms以上50dBV2rms以下である。TS750(a)が16dBV2rms未満であると、トイレットペーパー1xが平滑すぎて、かえって滑らかさに劣る。TS750(a)が50dBV2rmsを超えると、トイレットペーパー1xが滑らかさに劣る。
なお、TS750(a)は20dBV2rms以上45dBV2rms以下であることが好ましく、25dBV2rms以上38dBV2rms以下であることがより好ましい。
【0068】
また、同じTS750において、ロール裏面1b側のTS750(b)が15dBV2rms以上85dBV2rms以下である。TS750(b)が15dBV2rms未満であると、トイレットペーパー1xが平滑すぎて、かえって滑らかさに劣る。TS750(b)が85dBV2rmsを超えると、トイレットペーパー1xが滑らかさに劣る。
なお、TS750(b)は20dBV2rms以上65dBV2rms以下であることが好ましく、30dBV2rms以上45dBV2rms以下であることがより好ましい。
【0069】
さらに、同じTS750において、TS750(b)に対するTS750(a)の比率(TS750(b)/TS750(a))が0.8以上1.7以下である。比率が0.8未満であるか、又は1.7を超えると、いずれもトイレットペーパー1xのロール表面1aとロール裏面1bの滑らかさの差が大きくなり、結果として総合的な滑らかさに劣る。
なお、TS750(b)に対するTS750(a)の比率(TS750(b)/TS750(a))は0.9以上1.5以下であることが好ましく、1.0以上1.1以下であることがより好ましい。
【0070】
上記のTS750の値は、ティシューソフトネス測定装置TSA(emtec社製;Tissue Softness Analyzer)により2プライのトイレットペーパー1xの、トイレットロール1のロール表面1a又はロール裏面1bに該当する部分を測定(2プライのまま測定する)した各数値である。TS750の値が低いほど、滑らかさに優れるが、TS750の値が低すぎると平滑すぎて、かえって滑らかさに劣る場合がある。
【0071】
なお、ティシューソフトネス測定装置TSAを使用したTS750の値の測定方法や、用いられる測定装置については、例えば、特開2013-236904号公報により詳細に記載されている。ティシューソフトネス測定装置TSAを使用した各種測定方法については、上記の特許文献を参照されたい。
【0072】
<水及び/又はプライボンドグルー>
トイレットペーパー1x及びトイレットロール1の製造に使用するプライボンドグルーは、公知のものを使用することができる。その中で、プライボンドグルーの組成は、セルロース系(カルボキシメチルセルロース等)が好ましい。また、プライボンドグルーの有効成分(不揮発分)は、0.1%以上5%以下であることが好ましく、0.5%以上4%以下であることがより好ましく、1%以上3%以下であることが更に好ましい。プライボンドグルーの組成及び有効成分を上記のようにすることで、温水洗浄便座での使用に適しており、破れにくく、滑らかさ、エンボスの美粧性及びボリューム感に優れたトイレットペーパー1xとすることができ、かつ、ロールが適度な巻長と巻径を有しており、ロールの柔らかさも良好なトイレットロール1とすることができる。
または、プライボンドグルーの代わりに水を使用してもよい。水を使用することで、トイレットペーパー1xの触感を良好にすることができる。なお、水を用いると、プライ間の接着が弱くなる場合があるが、本発明のトイレットロール1のように、ライン状の第一エンボス11を用い、エンボス面積率を一定の範囲にすることで、プライ間の接着が良好になる。
なお、プライボンドグルーと水を混合させて、使用してもよい。
【0073】
<トイレットロールの製造方法>
トイレットペーパー1x及びトイレットロール1の製造工程に関しては、例えば以下のように、(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理並びに水及び/又はグルーによるプライ接着、(3)ロール巻取り加工、の順で製造することができる。
なお、(1)抄紙工程においては、TAD等の嵩高抄紙機を使用せず、一般的なドライクレープ抄紙機を用いて抄紙することが好ましい。
【0074】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、トイレットペーパーが一時性湿潤紙力剤を含有するため温水洗浄便座での使用に適しており、破れにくく、滑らかさ、エンボスの美粧性及びボリューム感に優れ、かつ、ロールが適度な巻長と巻径を有しており、ロールの柔らかさも良好であるトイレットロールを提供することができる。
【実施例0075】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0076】
表1~3に示す各条件において、実施例1~29及び比較例1~10の2プライのトイレットペーパー及びトイレットロールを作製し、以下の評価を行った。
各評価はJIS P8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持後に行った。また、下記の評価以外の各パラメーターは、上述した基準又は測定方法に従って行った。
【0077】
(温水洗浄便座使用時の破れにくさ)
モニター30人がトイレットペーパーを温水洗浄便座で使用したときの破れにくさを評価した。温水洗浄便座で使用しても破れにくいと評価したモニターの人数によって、4段階で評価した。
4:温水洗浄便座で使用しても破れにくいと評価したモニターが、28名以上
3:温水洗浄便座で使用しても破れにくいと評価したモニターが、25以上27名以下
2:温水洗浄便座で使用しても破れにくいと評価したモニターが、21以上24名以下
1:温水洗浄便座で使用しても破れにくいと評価したモニターが、20名以下
【0078】
(巻長)
トイレットロールの巻長の数値を評価した。各実施例及び各比較例のトイレットロールの巻長の数値によって、4段階で評価した。
4:トイレットロールの巻長が38m以上46m以下
3:トイレットロールの巻長が35m以上38m未満又は46mを超えて52m以下
2:トイレットロールの巻長が33m以上35m未満又は52mを超えて57m以下
1:トイレットロールの巻長が33m未満又は57mを超える
【0079】
(巻直径)
トイレットロールの巻直径の数値を評価した。各実施例及び各比較例のトイレットロールの巻直径の数値によって、4段階で評価した。
4:トイレットロールの巻直径が125mm以上137mm以下
3:トイレットロールの巻直径が123mm以上125mm未満又は137mmを超えて145mm以下
2:トイレットロールの巻直径が120mm以上123mm未満又は145mmを超えて150mm以下
1:トイレットロールの巻直径が120mm未満又は150mmを超える
【0080】
(触感(滑らかさ))
モニター30人がトイレットペーパーの触感(滑らかさ)について評価した。トイレットペーパーの滑らかさが良好であると評価したモニターの人数によって、4段階で評価した。
4:トイレットペーパーの滑らかさが良好であると評価したモニターが、28名以上
3:トイレットペーパーの滑らかさが良好であると評価したモニターが、25以上27名以下
2:トイレットペーパーの滑らかさが良好であると評価したモニターが、21以上24名以下
1:トイレットペーパーの滑らかさが良好であると評価したモニターが、20名以下
【0081】
(触感(滑らかさの表裏差))
モニター30人がトイレットペーパーの触感(滑らかさの表裏差)について評価した。表裏で滑らかさの差が小さく良好であると評価したモニターの人数によって、4段階で評価した。
4:表裏で滑らかさの差が小さく良好であると評価したモニターが、28名以上
3:表裏で滑らかさの差が小さく良好であると評価したモニターが、25以上27名以下
2:表裏で滑らかさの差が小さく良好であると評価したモニターが、21以上24名以下
1:表裏で滑らかさの差が小さく良好であると評価したモニターが、20名以下
【0082】
(ロールの柔らかさ)
モニター30人がトイレットロールの柔らかさについて評価した。ロールの柔らかさが良好であると評価したモニターの人数によって、4段階で評価した。
4:ロールの柔らかさが良好であると評価したモニターが、28名以上
3:ロールの柔らかさが良好であると評価したモニターが、25以上27名以下
2:ロールの柔らかさが良好であると評価したモニターが、21以上24名以下
1:ロールの柔らかさが良好であると評価したモニターが、20名以下
【0083】
(ボリューム感)
モニター30人がトイレットペーパーのボリューム感について評価した。ボリューム感に優れると評価したモニターの人数によって、4段階で評価した。
4:ボリューム感に優れると評価したモニターが、28名以上
3:ボリューム感に優れると評価したモニターが、25以上27名以下
2:ボリューム感に優れると評価したモニターが、21以上24名以下
1:ボリューム感に優れると評価したモニターが、20名以下
【0084】
(トイレットペーパーの柔らかさ)
モニター30人がトイレットペーパーの柔らかさについて評価した。トイレットペーパーが柔らかいと評価したモニターの人数によって、4段階で評価した。
4:トイレットペーパーが柔らかいと評価したモニターが、28名以上
3:トイレットペーパーが柔らかいと評価したモニターが、25以上27名以下
2:トイレットペーパーが柔らかいと評価したモニターが、21以上24名以下
1:トイレットペーパーが柔らかいと評価したモニターが、20名以下
【0085】
(エンボス美粧性)
モニター30人がトイレットペーパーのエンボスの美粧性について評価した。美粧性に優れると評価したモニターの人数によって、4段階で評価した。
4:美粧性に優れると評価したモニターが、28名以上
3:美粧性に優れると評価したモニターが、25以上27名以下
2:美粧性に優れると評価したモニターが、21以上24名以下
1:美粧性に優れると評価したモニターが、20名以下
【0086】
表1~3に、各実施例及び各比較例の条件及び評価結果を示す。
【表1】
【0087】
【0088】
【0089】
以上より、本実施例によれば一時性湿潤紙力剤を含有するため温水洗浄便座での使用に適しており、破れにくく、滑らかさ、エンボスの美粧性及びボリューム感に優れ、かつ、ロールが適度な巻長と巻径を有しており、ロールの柔らかさも良好であるトイレットロールが得られることが少なくとも確認された。