(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156619
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】洗浄用組成物の泡立て方法、ラッキングエアゾール組成物及びペット洗浄方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20241029BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20241029BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q19/10
A61Q5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024063916
(22)【出願日】2024-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2023070556
(32)【優先日】2023-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】593117730
【氏名又は名称】英昌化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博昭
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC582
4C083BB04
4C083BB11
4C083BB49
4C083CC22
4C083CC38
4C083DD08
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】液状の洗浄用組成物を容易に泡立て可能であるとともに、前記洗浄用組成物に二酸化炭素を添加することができる泡立て方法を提供すること。
【解決手段】皮膚または頭髪を洗浄するために外装容器から取り出した液状の洗浄用組成物に対して、液化石油ガス及び二酸化炭素を含む噴射剤を含有したクラッキングエアゾール組成物を噴射し、フォーム状に吐出された前記クラッキングエアゾール組成物と前記洗浄用組成物とを混ぜ合わせることにより前記洗浄用組成物を泡立たせる、洗浄用組成物の泡立て方法とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚または毛髪を洗浄するために外装容器から取り出した液状の洗浄用組成物に対して、液化石油ガス及び二酸化炭素を含む噴射剤を含有したクラッキングエアゾール組成物を噴射し、
フォーム状に吐出された前記クラッキングエアゾール組成物と前記洗浄用組成物とを混ぜ合わせることにより前記洗浄用組成物を泡立たせる、洗浄用組成物の泡立て方法。
【請求項2】
前記洗浄用組成物及び前記クラッキングエアゾール組成物を手の上で揉み込んで泡立たせる、請求項1に記載の洗浄用組成物の泡立て方法。
【請求項3】
請求項1記載の洗浄用組成物の泡立て方法に用いられるクラッキングエアゾール組成物であって、
水と、低級アルコールと、非イオン界面活性剤と、増粘剤と、油剤とを含有する原液と、前記噴射剤とを含み、
前記原液:前記噴射剤の質量配合比が1:0.5~1:3であるクラッキングエアゾール組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の泡立て方法により泡立てた洗浄用組成物を用いてペットを洗浄するペット洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄用組成物の泡立て方法及びこの泡立て方法に用いられるクラッキングエアゾール組成物並びにペット洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、シャンプーやボディソープなどの液状の洗浄用組成物は、泡立てて使うことにより洗浄効果が高まるとともに、皮膚や毛髪を傷めにくくなる。また、洗い心地向上のため、きめの細かい泡を形成することが好ましい。しかし、使用時に手のひらで洗浄用組成物をしっかり泡立てるには時間と手間がかかってしまう。
【0003】
従来、液状の洗浄用組成物を泡立てる方法として、種々の方法が提案されている。特許文献1には、モータにより回転するスクリューを有した泡生成装置を用いる洗浄用の泡の生成方法が記載されている。しかし、この方法では、泡生成装置の導入コストや維持管理の手間がかかったり、泡生成装置を設置するスペースが必要となったりする問題があった。
【0004】
特許文献2には、噴射剤として炭酸ガスを含有したエアゾール型毛髪洗浄剤が記載されている。この発明では、洗浄剤がエアゾールによってはじめから泡状に吐出される。さらに、炭酸ガスを含有した噴射剤を用いる利点として、クリーミーで弾力のある泡となることや、吐出した泡中に封じ込められた炭酸ガスによる美容効果が期待できることが記載されている。炭酸ガスを含有したエアゾール型毛髪洗浄剤は、いわゆる炭酸シャンプーとして市販されており、近年では犬などのペット用のものも販売されている。
【0005】
しかし、美容効果が期待できる濃度の二酸化炭素を含有したエアゾール型毛髪洗浄剤は、液状の洗浄用組成物と比較して製品の種類が少なく店頭で気軽に入手することが難しい。また、製品の種類が少ないことから自分の好みの香りや使用感、パッケージなどの選択肢が少なかった。さらに、一般的な液状の洗浄用組成物より高価であったり、1本あたりの使える回数が少なかったりする問題もあった。また、製品ごとに二酸化炭素濃度が一定であり、好みに合わせて使用時に二酸化炭素濃度を調節することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-121896号公報
【特許文献2】特開2021-187777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記した従来の問題点を解決し、液状の洗浄用組成物を容易に泡立て可能であるとともに、前記洗浄用組成物に対し、好みの量の二酸化炭素を添加することができる泡立て方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、皮膚または毛髪を洗浄するために外装容器から取り出した液状の洗浄用組成物に対して、液化石油ガス及び二酸化炭素を含む噴射剤を含有したクラッキングエアゾール組成物を噴射し、フォーム状に吐出された前記クラッキングエアゾール組成物と前記洗浄用組成物とを混ぜ合わせることにより前記洗浄用組成物を泡立たせる、洗浄用組成物の泡立て方法とする。
【0009】
また、前記洗浄用組成物及び前記クラッキングエアゾール組成物を手の上で揉み込んで泡立たせる方法とすることが好ましい。
【0010】
また、前記洗浄用組成物の泡立て方法に用いられるクラッキングエアゾール組成物は、水と、低級アルコールと、非イオン界面活性剤と、増粘剤と、油剤とを含有する原液と、前記噴射剤とを含み、前記原液:前記噴射剤の質量配合比が1:0.5~1:3であるクラッキングエアゾール組成物とする。
【0011】
また、前記泡立て方法により泡立てた洗浄用組成物を用いてペットを洗浄するペット洗浄方法とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、液状の洗浄用組成物を容易に泡立て可能であるとともに、前記洗浄用組成物に対し、好みの量の二酸化炭素を添加することができる泡立て方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1の方法によって生成された泡の写真である。
【
図2】実施例2の方法によって生成された泡の写真である。
【
図3】実施例3の方法によって生成された泡の写真である。
【
図4】実施例4の方法によって生成された泡の写真である。
【
図5】比較例1の方法によって生成された泡の写真である。
【
図6】比較例2の方法によって生成された泡の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に発明を実施するための形態を示す。
【0015】
(洗浄用組成物)
本実施形態で用いる洗浄用組成物は、シャンプーやボディソープなどの、皮膚または毛髪を洗浄する液状の組成物である。なお、本明細書において「毛髪」は、ヒトの毛髪のほかイヌやネコなどの動物の毛を含む。例えば前記洗浄用組成物は樹脂製の外装容器に充填されており、使用の都度、1回分の使用量に相当する分量が取り出されて使用される。
【0016】
(クラッキングエアゾール組成物)
本発明では、前記洗浄用組成物の泡立てに際しクラッキングエアゾール組成物を用いる。実施形態のクラッキングエアゾール組成物は、エアゾール容器に充填され、噴射物中において徐々に発泡が生じ、その発泡によって形成された泡沫に剪断力を作用させたときにパチパチと音を立てて破泡するものである。実施形態のクラッキングエアゾール組成物の構成については後段で説明する。
【0017】
(泡立て方法)
本発明の実施形態における洗浄用組成物の泡立て方法について説明する。
【0018】
実施形態では、クラッキングエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器を使用前によく振る。なお、エアゾール容器の振盪が不要なクラッキングエアゾール組成物を用いる場合は、噴射前に振らなくてよい。
【0019】
次に、1回分の使用量に相当する量の前記洗浄用組成物を外装容器から取り出す。実施形態では、使用者が手のひらに適量の洗浄用組成物を載せる。前記洗浄用組成物は任意の容器などに載せてもよい。
【0020】
取り出した洗浄用組成物に、前記クラッキングエアゾール組成物を噴射する。実施形態の前記クラッキングエアゾール組成物は、噴射によってムース状に吐出される。吐出された前記クラッキングエアゾール組成物に含有される噴射剤が大気圧下で気化することにより泡沫が生成され、シュワシュワという音を立てて発泡が継続する。
【0021】
前記クラッキングエアゾール組成物の噴射量は、使用する前記洗浄用組成物の量や使用者の好みに合わせて調整することができる。また、前記クラッキングエアゾール組成物は二酸化炭素を含有しているため、前記クラッキングエアゾール組成物の噴射量を増減させることにより、前記洗浄用組成物に添加する二酸化炭素の量を調節することができる。
【0022】
次に、手のひらに前記洗浄用組成物及び前記クラッキングエアゾール組成物を載せた状態で、両手の手のひら同士を合わせる。実施形態で用いられる前記クラッキングエアゾール組成物は、そのクラッキング性により、手などによって剪断力が加えられるとパチパチと音を立てて破泡する。
【0023】
さらに両手で揉み込むように混ぜ合わせることにより、発泡が続いて前記洗浄用組成物の泡立ちが促進される。また、発泡しながら両者が混ぜ合わされることにより、液状の前記洗浄用組成物に炭酸ガスを容易に溶解させることができる。
【0024】
このように、従来、機械的にまたは手作業により洗浄用組成物に空気を巻き込んで泡立てていたところ、本発明では吐出されたクラッキングエアゾール組成物の発泡により洗浄用組成物の泡立て工程が補助される。よって、本発明では、液状の洗浄用組成物を容易に泡立てることができる。洗浄用組成物を泡立てる手間が軽減されることに加えて、例えば美容サロンにおける演出効果を得ることも可能である。また、洗浄用組成物の使用量を減らす効果を得ることもできる。洗浄用組成物の使用量を減らすことにより、持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「つくる責任 つかう責任」等の達成に貢献できる。
【0025】
さらに、本発明では、任意の液状洗浄用組成物に二酸化炭素を添加することができるので、例えば、効能や使用感、香りなどの要素を好んで愛用しているが二酸化炭素を含有していない液状洗浄用組成物に対して、二酸化炭素による美容効果を付与させることができる。
【0026】
また、前記クラッキングエアゾール組成物の有するクラッキング性により、泡立て過程及び洗浄過程において泡がパチパチと弾ける刺激を得ることができる。
【0027】
実施形態の泡立て方法により泡立てられた洗浄用組成物は、ヒトの毛髪の洗浄のほか、イヌやネコなどのペットの洗浄にも用いることができる。例えばイヌを洗浄する場合、任意の犬用シャンプーを前記した泡立て方法により泡立ててイヌを洗い、水またはぬるま湯ですすぐ。
【0028】
なお、ペットを洗浄する場合は、泡立て工程においてペット用シャンプーと前記クラッキングエアゾール組成物とを両手で揉み込むように混ぜ合わせて十分に泡立てることが好ましい。これにより泡立て段階で前記クラッキングエアゾール組成物の破泡が終わるため、洗浄時にペットに発泡刺激が加わらない。
【0029】
実施形態の泡立て方法によると、前述したように洗浄用組成物を容易に泡立てることができる。よく泡立った洗浄用組成物を用いて洗うと、洗浄成分がペットの密集した毛の間に入りやすく、洗浄効果を高めて汚れや臭いなどを効果的に除去することができる。また、任意のペット用シャンプーに二酸化炭素を添加できるため、安価にペット用炭酸シャンプーを得ることが可能となる。
【0030】
ここで、実施形態の泡立て方法に用いられるクラッキングエアゾール組成物について説明する。なお、本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
【0031】
実施形態のクラッキングエアゾール組成物は、水と、低級アルコールと、非イオン界面活性剤と、増粘剤と、油剤とを含有する原液と、液化石油ガス及び二酸化炭素を含む噴射剤とを含有している。
【0032】
(低級アルコール)
低級アルコールは、破泡音を発生させるための溶剤として配合される。低級アルコールの、前記原液中における含有量は、10~30質量%の範囲が好ましく、特に、12~25質量%の範囲が好ましい。低級アルコールの含有量が10質量%未満では噴射後の形状がシャーベット状になりクラッキング性に劣る。低級アルコールの含有量が30質量%を超えるとアルコール刺激が発生したり破泡音が得られにくくなったりする。
【0033】
低級アルコールとしては、エチルアルコール、変性エチルアルコール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0034】
(界面活性剤)
界面活性剤は、非イオン界面活性剤を用いることが好ましい。起泡力の弱い非イオン界面活性剤を用いることにより、噴出後にすぐフォームを形成してしまうことを抑制し、良好なクラッキング性を確保することができる。
【0035】
さらに、界面活性剤として、HLB10以下の低HLB非イオン界面活性剤と、HLB11以上の高HLB非イオン界面活性剤とを混合して用いることが好ましい。また、低HLB非イオン界面活性剤と高HLB非イオン界面活性剤とのHLBの差は、8~18であることが好ましい。両者のHLBの差がこの範囲であることにより、乳化安定性が得られ、クラッキングの安定性や持続性が良好となる。
【0036】
低HLB非イオン界面活性剤のHLB値は、2~7であることが好ましく、3~6であることがさらに好ましい。なお、前記原液に配合される低HLB非イオン界面活性剤は、1種または2種以上であってもよい。低HLB非イオン界面活性剤の前記原液中における含有量は、0.1~3.0質量%とすることが好ましく、0.2~1.5質量%とすることがさらに好ましい。
【0037】
高HLB非イオン界面活性剤のHLB値は、15以上であることが好ましく、16~18であることがさらに好ましい。なお、前記原液に配合される高HLB非イオン界面活性剤は、1種または2種以上であってもよい。高HLB非イオン界面活性剤の前記原液中における含有量は、0.1~2.0質量%とすることが好ましく、0.2~1.0質量%とすることがさらに好ましい。
【0038】
非イオン界面活性剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドエステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテルなどが挙げられる。
【0039】
(増粘剤)
増粘剤は、泡沫の被膜を強化する役割を果たす。これにより、噴射されたクラッキングエアゾール組成物とシャンプーなどの洗浄用組成物とを混ぜ合わせた際に、ガスが逃げにくくなり、へたりにくい豊かな泡を立てやすくなる。また、増粘剤の含有量を増やすことにより破泡音を大きくすることができる。増粘剤の前記原液中における含有量は、0.1~1.0質量%とすることが好ましい。0.1質量%未満ではガスを閉じ込める効果が少なくなり、1.0質量%を超えるとベタツキ感等が発生するおそれがある。
【0040】
増粘剤としては、キサンタンガム、マンナン、ペクタン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシポリマー、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0041】
(油剤)
油剤は、主にクラッキング性を向上させるために配合される。油剤の前記原液中における含有量は、0.3~10.0質量%の範囲が好ましく、2.0~7.0質量%の範囲がさらに好ましい。
【0042】
油剤としては、脂肪酸エステル、炭化水素類、高級アルコール等が挙げられる。脂肪酸エステルの例としては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、イソオクタン酸セチル等が挙げられる。炭化水素類の例としては、パラフィン、スクワレン、スクワラン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、イソヘキサン等が挙げられる。高級アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、ミリスチルアルコール、セリルアルコール等が挙げられる。また、その他の油剤の例として、あまに油、大豆油、きり油、なたね油、オリーブ油、ひまし油、つばき油、木ろう、カカオ脂、魚油、肝油、牛脂、豚脂、バター脂、カルナバロウ、ホホバ油、ラノリン等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0043】
(その他の機能成分)
前記原液には、必要に応じてその他の機能成分が含有されていてもよい。機能成分としては、保湿剤、消臭剤、防腐剤、防腐助剤、乳化助剤、酸化防止剤、植物エキス等が挙げられる。乳化助剤としては、シリカ、タルク等が挙げられる。また、残部を水とし、この水としては、例えば、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水などが挙げられる。
【0044】
前記原液には香料や精油が含有されていてもよいが、前記原液を無香料とすればシャンプーなどの洗浄用組成物の香りを変化させないため好ましい。特に、クラッキングエアゾール組成物をペット用シャンプーの泡立てに用いる場合、ペットはヒトよりも嗅覚が優れていることから、前記原液に香料や精油が含まれていないほうが好ましい。
【0045】
(液化石油ガス)
本発明に用いられる噴射剤は、液化石油ガスと、二酸化炭素とを含む。液化石油ガス(以下「LPG」と略記する場合がある。)は、プロパンやブタンやこれらの混合物であるLPGのほか、LPGとジメチルエーテル(以下「DME」と略記する場合がある。)の混合物を用いてもよい。特に、安定性の観点からLPGが好ましい。
【0046】
前記原液:LPGの質量配合比は、1:0.5~1:3(質量比)であることが好ましい。噴射剤がこの比率よりも少ない(原液の0.5倍未満である)と、噴射力が小さくて十分な噴射が難しく、かつ、クラッキング性が劣り、一方、噴射剤がこの比率よりも多い(原液の3倍よりも多い)と、原液と噴射剤が分離してしまうおそれがある。
【0047】
(二酸化炭素)
二酸化炭素は、一部が前記原液中に溶解し、一部がLPGとともに噴射剤として気体の状態で存在している。二酸化炭素の前記クラッキングエアゾール組成物中における含有量は、0.1~2.0質量%の範囲が好ましく、0.5~1.2質量%の範囲がさらに好ましい。また、噴射された前記クラッキングエアゾール組成物中における濃度が、噴射直後において1000~20000ppmであることが好ましい。実施形態のクラッキングエアゾール組成物では、噴射直後の二酸化炭素の濃度が5000ppmである。噴射直後の前記クラッキングエアゾール組成物中に1000ppm以上の二酸化炭素が含有されていることにより、二酸化炭素による美容効果が期待できる。
【実施例0048】
以下、本発明の実施例について、比較例とともに説明する。
【0049】
(クラッキングエアゾール組成物)
表1に記載した材料を混合し、クラッキングエアゾール組成物の原液を調製した。次に、得られた原液と、噴射剤であるLPG及び二酸化炭素とを混合し、エアゾール容器内に充填してクラッキングエアゾール製品を作製した。なお、エアゾール容器内におけるクラッキングエアゾール組成物の内容量は110gとした。
【0050】
【0051】
(洗浄用組成物)
実施例及び比較例では、以下の洗浄用組成物を用いた。
(1)洗浄用組成物A:高級アルコール系シャンプー
(2)洗浄用組成物B:アミノ酸系シャンプー
なお、高級アルコール系シャンプーは一般的に泡立ちが良い傾向があり、アミノ酸系シャンプーは比較的泡立ちにくい傾向がある。
【0052】
(泡立て方法)
表2に示される条件により、実施例及び比較例において洗浄用組成物A及びBの泡立て試験を行った。
【0053】
【0054】
(実施例1~2)
実施例1~2では、8gの洗浄用組成物Aを一方の手のひらに載せ、これに対し上記クラッキングエアゾール組成物を噴射して添加した。なお、クラッキングエアゾール組成物の添加量は、実施例1が5gであり、実施例2は2gである。添加直後に両手を合わせ、揉み込むように両者を混ぜ合わせた。洗浄用組成物Aにクラッキングエアゾール組成物を添加してから泡立て動作を完了するまでの時間は、実施例1、実施例2とも10秒間であった。
【0055】
(実施例3~4)
実施例3~4では、8gの洗浄用組成物Bを一方の手のひらに載せ、これに対し上記クラッキングエアゾール組成物を噴射して添加した。なお、クラッキングエアゾール組成物の添加量は、実施例3が5gであり、実施例4は2gである。添加直後に両手を合わせ、揉み込むように両者を混ぜ合わせた。洗浄用組成物Bにクラッキングエアゾール組成物を添加してから泡立て動作を完了するまでの時間は、実施例3、実施例4とも10秒間であった。
【0056】
(比較例1)
比較例1では、8gの洗浄用組成物Aを一方の手のひらに載せ、これに対し水道水5gを加えた。添加直後に他方の手の指先を一方の手のひらの上で略円状に動かし、30秒間の泡立て動作を行った。なお、比較例では、実施例のように両手を合わせて揉み込む動作ではほとんど泡立てることができないため、実施例とは異なる一般的な泡立て動作を行った。
【0057】
(比較例2)
比較例2では、8gの洗浄用組成物Bを一方の手のひらに載せ、これに対し水道水5gを加えた。添加直後に他方の手の指先を一方の手のひらの上で略円状に動かし、30秒間の泡立て動作を行った。
【0058】
(泡立ち評価)
各実施例及び各比較例において生成された泡の写真を
図1~6に示す。各図において泡の手前に置かれているラベルテープは、いずれも幅12mm・長さ約55mmのものである。また、それぞれの泡立ちについて、生成された泡の大きさをもとに、◎:極めて良好、〇:良好、△:普通と評価した。
【0059】
表2より明らかなように、本発明のクラッキングエアゾール組成物を用いた実施例1~4の泡立て方法では、比較例1~2の泡立て方法に比べていずれも良好な泡を生成することができた。
【0060】
また、実施例1~4では、クラッキングエアゾール製品を噴射して洗浄用組成物に添加した時点で起泡しており、泡立てにかかる時間が比較例より大幅に短縮されている。さらに、添加後両手を合わせて揉み込む動作を行うことで、短時間でより大きく泡立たせることができた。
【0061】
また、クラッキングエアゾール組成物の添加量を少なくした実施例2、4においても、短時間で良好な泡立ちを得ることができた。
【0062】
また、モニターに、アミノ酸系のイヌ用シャンプーを本発明の泡立て方法により泡立ててイヌの洗浄を実施させたところ、シャンプー後に毛並みのボリューム感が得られたという感想であった。イヌ用シャンプーに炭酸ガスを含有させたことによる収れん作用や血行促進効果によって、毛並みのボリューム感が出たものと思われる。
【0063】
このほか、モニターの感想として、イヌのフケの発生が抑制されたというものもあった。炭酸ガスによって美容成分がより浸透し、古い角質が取り除かれたり皮膚の乾燥が抑制されたりしたものと思われる。
【0064】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。