(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156622
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】半導体ベースの光子計数検出器の基礎
(51)【国際特許分類】
A61B 6/42 20240101AFI20241029BHJP
G01T 1/24 20060101ALI20241029BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20241029BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61B6/42 530R
G01T1/24
A61N5/10 Q
A61B6/03 573
A61B6/03 577
【審査請求】未請求
【請求項の数】31
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024068573
(22)【出願日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】63/497,914
(32)【優先日】2023-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505172824
【氏名又は名称】アキュレイ インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】1240 Deming Way, Madison, WI 53717 U.S.A
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プレカス,ゲオルギオス
(72)【発明者】
【氏名】チャッポ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ユイ,ジーツォン
(72)【発明者】
【氏名】ギャニオン,ダニエル
【テーマコード(参考)】
2G188
4C082
4C093
【Fターム(参考)】
2G188AA02
2G188BB02
2G188BB15
2G188CC29
4C082AC02
4C082AE03
4C082AG24
4C082AJ08
4C082AJ14
4C082AP01
4C093AA22
4C093AA25
4C093CA31
4C093EB13
4C093EB17
4C093FC26
4C093FF28
4C093FF37
(57)【要約】
【課題】半導体ベースの光子計数検出器を提供する。
【解決手段】本明細書には治療装置が開示される。治療装置は、患者支持体の周りに少なくとも部分的に配置された回転可能なガントリーシステムと、回転可能なガントリーシステムに結合された第1の放射線源とを含む。第1の放射線源は、周期的放射間の時間間隔の間休止した後に撮像X線放射線を放射するように構成される。装置は、第1の放射線源からX線放射線を受け取り、受け取った放射線から断層撮影データを生成するように構成された放射線検出器をさらに含む。放射線検出器は、分極および電荷トラップの少なくとも一方によって引き起こされる過渡効果を受ける。時間間隔は、過渡効果が実質的に消散するのに十分な長さである。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者支持体の周りに少なくとも部分的に配置された回転可能なガントリーシステムと、
前記回転可能なガントリーシステムに結合された第1の放射線源であって、周期的放射間の時間間隔の間休止した後に撮像X線放射線を放射するように構成された、第1の放射線源と、
前記第1の放射線源からX線放射線を受け取り、前記受け取った放射線から断層撮影データを生成するように構成された放射線検出器であって、
前記放射線検出器が、分極および電荷トラップの少なくとも一方によって引き起こされる過渡効果を受け、
前記時間間隔が、前記過渡効果が実質的に消散するのに十分な長さである、
放射線検出器と
を備える、治療装置。
【請求項2】
前記回転可能なガントリーシステムに結合された第2の放射線源であって、撮像用放射線または治療用放射線の少なくとも一方のために構成され、前記第1の放射線源よりも高いエネルギーレベルを有する、第2の放射線源をさらに備える、請求項1に記載の治療装置。
【請求項3】
前記第1の放射線源と関連付けられた前記放射線検出器が半導体材料を含む、請求項1に記載の治療装置。
【請求項4】
前記放射線検出器がエネルギー分解光子計数検出器を含む、請求項3に記載の治療装置。
【請求項5】
前記放射線検出器が、前記受け取った放射線中に検出されたX線光子のエネルギーを弁別して断層撮影データを生成するように構成された、請求項4に記載の治療装置。
【請求項6】
前記放射線検出器が半導体材料を含み、
前記放射線検出器がX線放射線を受け取っているときに前記半導体材料にバイアス電圧が供給され、
前記バイアス電圧が、周期的放射間の前記時間間隔中に修正される、
請求項1に記載の治療装置。
【請求項7】
前記印加バイアスの修正が、電圧の低減、無効化、および反転のうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の治療装置。
【請求項8】
前記バイアス電圧の前記修正が、前記周期的なX線放射間の前記間隔に実質的に適用されるが、前記X線がまだオンである間に開始することができ、前記X線が再開される間継続することができる、請求項6に記載の治療装置。
【請求項9】
前記バイアス電圧の前記修正が前記過渡効果の消散を容易にする、請求項6に記載の治療装置。
【請求項10】
前記半導体材料が、シリコン、カドミウム、テルル、および亜鉛のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の治療装置。
【請求項11】
前記放射線検出器が、テルル化カドミウム亜鉛(CdZnTe)検出器、シリコンドリフト検出器(SDD)、シリコンPINダイオード検出器、およびテルル化カドミウム(CdTe)ピクセル検出器のうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の治療装置。
【請求項12】
前記断層撮影データが、画像を含み、撮像フレームレートで収集され、
前記撮像フレームレートが1000フレーム/秒以下である、
請求項1に記載の治療装置。
【請求項13】
前記撮像フレームレートが700フレーム/秒以下である、請求項12に記載の治療装置。
【請求項14】
前記第1の放射線源が、最大150keVのキロ電子ボルトピーク光子エネルギー(keV)を含み、前記第2の放射線源が、1MeV以上のメガ電子ボルトピーク光子エネルギー(MeV)を含む、請求項2に記載の治療装置。
【請求項15】
前記第2の放射線源が6MeVのピークエネルギーを含む、請求項2に記載の治療装置。
【請求項16】
前記放射線検出器が、螺旋走査中に前記放射線を受け取る、請求項1に記載の治療装置。
【請求項17】
前記放射線検出器が、軸方向走査中に前記放射線を受け取る、請求項1に記載の治療装置。
【請求項18】
周期的な放射間の時間間隔の間休止した後に撮像X線放射線を放射するように構成された第1の放射線源と、
前記第1の放射線源からX線放射線を受け取り、前記受け取った放射線から断層撮影データを生成するように構成された放射線検出器であって、
前記放射線検出器が、分極および電荷トラップの少なくとも一方によって引き起こされる過渡効果を受け、
前記時間間隔が、前記過渡効果が実質的に消散するのに十分な長さであり、
前記放射線検出器が半導体材料を含み、
前記放射線検出器がX線放射線を受け取っているときに前記半導体材料にバイアス電圧が供給され、
前記バイアス電圧が、前記過渡効果の消散を容易にするために周期的放射間の前記時間間隔中に修正される、
放射線検出器と
を備える、治療装置。
【請求項19】
撮像用放射線または治療用放射線の少なくとも一方のために構成された第2の放射線源であって、前記第1の放射線源よりも高いエネルギーレベルを有する、第2の放射線源をさらに備える、請求項18に記載の治療装置。
【請求項20】
前記放射線検出器がエネルギー分解光子計数検出器を含む、請求項18に記載の治療装置。
【請求項21】
前記放射線検出器が、前記受け取った放射線中に検出されたX線光子のエネルギーを分析して前記断層撮影データを生成するように構成された、請求項20に記載の治療装置。
【請求項22】
前記断層撮影データが、画像を含み、撮像フレームレートで収集され、
前記撮像フレームレートが1000フレーム/秒以下である、
請求項18に記載の治療装置。
【請求項23】
前記撮像フレームレートが700フレーム/秒以下である、請求項22に記載の治療装置。
【請求項24】
放射線検出器により、第1の放射線源から撮像X線放射線を受け取ることであって、前記第1の放射線源が、周期的放射間の時間間隔の間休止した後に前記撮像X線放射線を放射するように構成され、
前記放射線検出器が、分極および電荷トラップの少なくとも一方によって引き起こされる過渡効果を受け、
前記時間間隔が、前記過渡効果が実質的に消散するのに十分な長さであり、
前記放射線検出器が半導体材料を含む、ことと、
前記放射線検出器が前記第1の放射線源からX線放射線を受け取っているときに前記半導体材料にバイアス電圧を提供することと、
前記過渡効果の消散を容易にするために周期的放射間の前記時間間隔中に前記バイアス電圧を修正することと
を含む、治療方法。
【請求項25】
第2の放射線源により、患者に治療用放射線を提供することであって、前記第2の放射線源が前記第1の放射線源よりも高いエネルギーレベルを有する、ことをさらに含む、請求項24に記載の治療方法。
【請求項26】
前記第1の放射線源が、最大150keVのキロ電子ボルトピーク光子エネルギー(keV)を含み、前記第2の放射線源が、1MeV以上のメガ電子ボルトピーク光子エネルギー(MeV)を含む、請求項25に記載の治療方法。
【請求項27】
前記放射線検出器がエネルギー分解光子計数検出器を含む、請求項24に記載の治療方法。
【請求項28】
前記断層撮影データを生成するために、前記受け取った放射線中に検出されたX線光子のエネルギーを分析することをさらに含む、請求項27に記載の治療方法。
【請求項29】
前記放射線検出器が、テルル化カドミウム亜鉛(CdZnTe)検出器、シリコンドリフト検出器(SDD)、シリコンPINダイオード検出器、およびテルル化カドミウム(CdTe)ピクセル検出器のうちの少なくとも1つを含む、請求項24に記載の治療方法。
【請求項30】
前記断層撮影データが、画像を含み、撮像フレームレートで収集され、
前記撮像フレームレートが1000フレーム/秒以下である、
請求項24に記載の治療方法。
【請求項31】
前記撮像フレームレートが700フレーム/秒以下である、請求項30に記載の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2023年4月24日に出願された、「Fundamentals of Semi-Conductor-Based Photon Counting Detectors」と題する米国仮出願第63/497,914号(代理人整理番号第38935.04116号)の優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本開示は、放射線療法中の撮像を改善するためのX線照射の間欠またはパルス照射および間欠またはパルスバイアス電圧に関する。これは、エネルギー分解光子計数検出を使用するコンピュータ断層撮影法(CT)におけるパルスX線照射の適用を含む。
【背景技術】
【0003】
「放射線手術」という用語は、多数の画分において1画分当たりより低い線量の送達を用いるよりも少ない治療セッションまたは画分において病変を壊死させるのに十分な線量で放射線が標的領域に照射される処置を指す。放射線手術は、通常、放射線療法とは区別されるように、1画分当たり比較的高い放射線量(例えば、500~2000センチグレイ)および小分割(例えば、1から5画分または治療日)を特徴とする。放射線療法は、通常、1画分当たり低い線量(例えば、100~200センチグレイ)および多分割(例えば、30から45画分)を特徴とする。便宜上、「放射線治療」および「放射線/療法」という用語は、本明細書では、特に明記しない限り、放射線手術および/または放射線療法を意味するために互換的に使用する。
【0004】
各放射線療法システムには、放射線送達処置をセットアップし、いくつかの例では誘導し、治療中の標的の動きを追跡するために使用される治療中画像を提供するための撮像システムが関連付けられている。MV撮像システムは、患者のセットアップおよび治療中画像を撮像するために、治療用線源の反対側に検出器を配置することができ、一方、他のアプローチは、患者のセットアップおよび治療中画像のために別個の独立した(1つもしくは複数の)画像放射線源および/または(1つもしくは複数の)検出器を利用する。治療中の標的または標的体積の追跡は、治療中画像を事前のまたは治療前の画像情報と比較することによって達成される。治療前画像情報は、例えば、CTデータ、コーンビームCT(CBCT)データ、磁気共鳴画像法(MRI)データ、陽電子放射断層撮影(PET)データまたは3D回転血管造影(3DRA)データ、およびこれらの撮像モダリティから得られる任意の情報(例えば、これに限定されないが、デジタル再構成X線写真(DRR))を含んでもよい。
【0005】
放射線療法には通常、次の2つの一般的な目標がある。(i)高度に共形の線量分布を標的体積に送達すること(CT撮像を利用して放射線の送達/線量を標的の形状に一致させることによって、正常組織が可能な限り温存される)、および(ii)すべての治療画分にわたって高精度で治療ビームを送達すること。第3の目標は、これら2つの一般的な目標を1画分当たり可能な限り短い時間で達成することである。より共形の線量分布を送達するには、例えば、非共平面ビームを送達する能力が必要となり得る。治療ビームを正確に送達するには、標的体積画分内の位置を追跡する能力が必要となり得る。送達速度を高める能力には、室内の他の物体もしくは患者に当たることなく、かつ/または規制機関の速度制限に違反することなく、放射線源を正確、精密、かつ迅速に移動させる能力が必要である。
【0006】
CBCTは、放射線治療システムと組み合わせて使用するための治療中撮像モダリティとして、場合によってはkV撮像モダリティとして、他の場合にはMV(ポータル)撮像モダリティとして提案されている。CBCT撮像は、標的体積の2D投影から3D体積画像を直接構成し、CBCTは、標的体積の周りの一回のガントリー回転(より具体的には、少なくとも180度にファンビーム角を加えた回転)から3D画像体積を形成する能力を提供する。CBCTはまた、より等方性の空間分解能も提供する。
【0007】
CBCTを使用した線量計算および治療計画は、CBCT画像が高品質および定量的精度のものであることを必要とする。しかしながら、横方向の面内の患者切断が発生すると、アーチファクトおよび定量的バイアスが導入され、CBCT画像は線量計算および治療計画での使用に適さなくなる。患者位置決めおよび走査視野(FOV)選択によって患者切断を減らすことができるが、自動的な患者位置決めおよびFOV選択は困難であり得る。例えば、患者のサイズよりも小さいFOVの選択および/またはFOV内の中心から外れた患者位置決めは、横方向の切断をもたらし得る。さらに、必要以上に大きいFOVを選択すると、より大きい検出器オフセット、患者データの検出に使用されないより大きい検出器面積、および同じ患者線量に対してあまり有用でない患者データが必要になる。
【0008】
フラットパネル検出
【0009】
従来のCBCTシステムは、主にシンチレーションによってX線を検出するフラットパネル検出器(FPD)を使用する。CT用途におけるFPDの共通性および一般的な有用性にもかかわらず、FPDにはいくつかの制限がある。例えば、FPDのダイナミックレンジ(通常は16ビット)は、通常、いくつかの医学関連の特徴(例えば、病変、特に低コントラストの病変)を撮像するには不十分である。FPDはまた、量子効率が低く(通常は約0.5mm厚の結晶)、読み出しが遅い(通常は約100フレーム/秒)。したがって、例えば、画像およびエネルギー分解能を改善するためにFPD以外の撮像技術を使用する代替のシステムおよび方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本明細書には治療装置が開示される。治療装置は、患者支持体の周りに少なくとも部分的に配置された回転可能なガントリーシステムと、回転可能なガントリーシステムに結合された第1の放射線源とを含む。第1の放射線源は、周期的放射間の時間間隔の間休止した後に撮像X線放射線を放射するように構成される。装置は、第1の放射線源からX線放射線を受け取り、受けた放射線から断層撮影データを生成するように構成された放射線検出器をさらに含む。放射線検出器は、分極および電荷トラップの少なくとも一方によって引き起こされる過渡効果を受ける。時間間隔は、過渡効果が実質的に消散するのに十分な長さである。
【0011】
治療装置は、回転可能なガントリーシステムに結合された第2の放射線源をさらに含んでもよい。第2の放射線源は、撮像用放射線または治療用放射線の少なくとも一方のために構成されてもよく、第2の放射線源は、第1の放射線源よりも高いエネルギーレベルを有する。第1の線源と関連付けられた放射線検出器は、半導体材料を含んでもよい。放射線検出器は、エネルギー分解光子計数検出器を含んでもよい。放射線検出器は、受け取った放射線中の検出したX線光子のエネルギーを弁別して断層撮影データを生成するように構成されてもよい。
【0012】
放射線検出器は、半導体材料を含んでもよい。放射線検出器がX線放射線を受け取っているときに半導体材料にバイアス電圧が供給され得る。バイアス電圧は、周期的放射間の時間間隔中に修正されてもよい。印加バイアスの修正は、電圧の低減、無効化、および反転のうちの少なくとも1つを含み得る。バイアス電圧の修正は、周期的なX線放射間の間隔におおむね適用され得るが、X線がまだオンである間に開始することができ、X線が再開される間継続することができる。バイアス電圧の修正は、過渡効果の消散を容易にし得る。
【0013】
半導体材料は、シリコン、カドミウム、テルル、および亜鉛のうちの少なくとも1つを含んでもよい。放射線検出器は、テルル化カドミウム亜鉛(CdZnTe)検出器、シリコンドリフト検出器(SDD)、シリコンPINダイオード検出器、およびテルル化カドミウム(CdTe)ピクセル検出器のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0014】
断層撮影データは、画像を含んでもよく、撮像フレームレートで収集され得る。撮像フレームレートは、1000フレーム/秒以下であってもよい。撮像フレームレートは、700フレーム/秒以下であってもよい。第1の放射線源は、最大150keVのキロ電子ボルトピーク光子エネルギー(keV)を含んでもよく、第2の放射線源は、1MeV以上のメガ電子ボルトピーク光子エネルギー(MeV)を含んでもよい。第2の放射線源は、6MeVのピークエネルギーを含んでもよい。放射線検出器は、螺旋走査中に放射線を受け取ってもよい。放射線検出器は、軸方向走査中に放射線を受け取ってもよい。
【0015】
また本明細書には、周期的放射間の時間間隔の間休止した後に撮像X線放射線を放射するように構成された第1の放射線源と第1の放射線源からX線放射線を受け取り、受け取った放射線から断層撮影データを生成するように構成された放射線検出器とを含む治療装置も開示される。放射線検出器は、分極および電荷トラップの少なくとも一方によって引き起こされる過渡効果を受ける。時間間隔は、過渡効果が実質的に消散するのに十分な長さである。放射線検出器は、半導体材料を含む。放射線検出器がX線放射線を受け取っているときに半導体材料にバイアス電圧が供給される。バイアス電圧は、過渡効果の消散を容易にするために周期的放射間の時間間隔中に修正される。
【0016】
治療装置は、第2の放射線源を含んでもよい。第2の放射線源は、撮像用放射線または治療用放射線の少なくとも一方のために構成されてもよい。第2の放射線源は、第1の放射線源よりも高いエネルギーレベルを有してもよい。
【0017】
放射線検出器は、エネルギー分解光子計数検出器を含んでもよい。放射線検出器は、受け取った放射線中の検出したX線光子のエネルギーを分析して断層撮影データを生成するように構成されてもよい。断層撮影データは、画像を含んでもよく、撮像フレームレートで収集され得る。撮像フレームレートは、1000フレーム/秒以下であってもよい。撮像フレームレートは、700フレーム/秒以下であってもよい。
【0018】
また、本明細書には治療方法が開示される。方法は、放射線検出器により、第1の放射線源から撮像X線放射線を受け取ることであって、第1の放射線源が、周期的放射間の時間間隔の間休止した後に撮像X線放射線を放射するように構成される、ことを含む。放射線検出器は、分極および電荷トラップの少なくとも一方によって引き起こされる過渡効果を受ける。時間間隔は、過渡効果が実質的に消散するのに十分な長さである。放射線検出器は、半導体材料を含む。方法は、放射線検出器が第1の放射線源からX線放射線を受け取っているときに半導体材料にバイアス電圧を提供することをさらに含む。方法はまた、過渡効果の消散を容易にするために周期的放射間の時間間隔中にバイアス電圧を修正することも含む。
【0019】
方法は、第2の放射線源により、患者に治療用放射線を提供することであって、第2の放射線源が第1の放射線源よりも高いエネルギーレベルを有する、ことをさらに含んでもよい。第1の放射線源は、最大150keVのキロ電子ボルトピーク光子エネルギー(keV)を含んでもよく、第2の放射線源は、1MeV以上のメガ電子ボルトピーク光子エネルギー(MeV)を含んでもよい。放射線検出器は、エネルギー分解光子計数検出器を含んでもよい。
【0020】
方法は、断層撮影データを生成するために、受け取った放射線中の検出したX線光子のエネルギーを分析することをさらに含んでもよい。放射線検出器は、テルル化カドミウム亜鉛(CdZnTe)検出器、シリコンドリフト検出器(SDD)、シリコンPINダイオード検出器、およびテルル化カドミウム(CdTe)ピクセル検出器のうちの少なくとも1つを含んでもよい。断層撮影データは、画像を含んでもよく、撮像フレームレートで収集され得る。撮像フレームレートは、1000フレーム/秒以下であってもよい。撮像フレームレートは、700フレーム/秒以下であってもよい。
【0021】
1つの実施形態に関して説明および/または例示されている特徴は、1つもしくは複数の他の実施形態において同じ方法もしくは同様の方法で、かつ/または他の実施形態の特徴と組み合わせて、もしくはそれらの特徴の代わりに使用されてもよい。
【0022】
本発明の説明は、特許請求の範囲で使用される語または特許請求の範囲もしくは発明の範囲を、いかなる点でも限定するものではない。特許請求の範囲で使用される語は、それらの完全な通常の意味のすべてを有する。
【0023】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面には、本発明の実施形態が図示されており、これらは、上記の本発明の一般的な説明および以下の詳細な説明と共に、本発明の実施形態を例示する役割を果たす。図の例示の要素境界(例えば、ボックス、ボックスのグループ、または他の形状)は、境界の一実施形態を表すことが理解されよう。いくつかの実施形態では、1つの要素が複数の要素として設計されてもよいし、複数の要素が1つの要素として設計されてもよい。いくつかの実施形態では、別の要素の内部構成要素として示されている要素は、外部構成要素として実装されてもよく、その逆も同様である。さらに、要素は縮尺通りに描かれていない場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】本開示の文脈における例示的な光子計数検出器スペクトルCT(PCD-CT)検出器セットアップ1を示す図である。
【
図1B】セットアップ1における高X線8フラックスの影響下での電子e
-/正孔h
+分布を示す図である。
【
図1C】経時的に高X線フラックスに曝露された後の
図1Bの構成から生じる電荷9の蓄積を示す図である。
【
図1D】異なるフラックス(mA)に対するカソード6における「正規化された光子カウント」の形の検出された光子のエネルギースペクトルに対する分極効果を示す図である。
【
図1E】半導体PCDにおける結晶欠陥による電荷トラップの概略図である。
【
図1F】連続モードX線とパルスモードX線とに曝露された同じ検出器の比較を示す図である。
【
図2A】PCD-CTにおけるパルスおよび間欠バイアス法200の適用を示す図である。
【
図2B】電圧バイアスパルス印加で動作する検出器素子(約20mm×20mmの単結晶)のフィールド画像である。
【
図2C】2Bで使用されたのと同じフラックスおよび同じ時間に対する連続バイアスで動作する2Bと同じ検出器素子のフィールド画像である。
【
図2D】本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態による例示的なマルチモーダル放射線療法装置の斜視図である。
【
図3】本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態による例示的なマルチモーダル放射線療法デバイスの図である。
【
図4】本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態による例示的な放射線治療環境を示す図である。
【
図5A】PCD-CTを使用して関心対象の患者または物体から画像データを得る例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図5B】PCD-CTを使用して関心対象の患者または物体から画像データを得る別の例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図6】本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態による、オンライン適応IGRTのために複数の放射線モダリティからの走査データを組み合わせる例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図7】本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態による放射線療法デバイスを使用するIGRTの例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図8】本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態による例示的な画像ベースの送達前ステップ/オプションを示すブロック図である。
【
図9】本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態による、撮像および/または後続の画像ベースの送達前ステップ中に利用され得る例示的なデータソースを示すブロック図である。
【
図10】本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態による放射線療法デバイスを使用した患者のセットアップまたはアライメントを含む例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図11】本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態による放射線療法デバイスを使用した適応IGRTを含む例示的な方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下は、本開示を通して使用され得る例示的な用語の定義を含む。すべての用語の単数形と複数形の両方が各意味に含まれる。
【0026】
本明細書で使用される「構成要素」は、ハードウェアの一部分、ソフトウェアの一部分、またはそれらの組み合わせとして定義することができる。ハードウェアの一部分は、少なくともプロセッサおよびメモリの一部分を含むことができ、メモリは実行すべき命令を含む。構成要素は、デバイスと関連付けられてもよい。
【0027】
本明細書で使用される「回路」と同義の「論理」は、(1つもしくは複数の)機能または(1つもしくは複数の)動作を行うハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、および/または各々の組み合わせを含むが、これらに限定されない。例えば、所望の用途または必要性に基づいて、論理は、ソフトウェア制御のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)などのディスクリート論理、または他のプログラム論理デバイスおよび/もしくはコントローラを含んでもよい。論理はまた、完全にソフトウェアとして具現化されてもよい。
【0028】
本明細書で使用される「プロセッサ」は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、中央処理装置(CPU)、およびデジタル信号プロセッサ(DSP)などの実質的に任意の数のプロセッサシステムまたはスタンドアロンプロセッサのうちの1つまたは複数を任意の組み合わせで含むが、これらに限定されない。プロセッサは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラマブル読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、クロック、デコーダ、メモリコントローラ、または割り込みコントローラなどといった、プロセッサの動作をサポートする様々な他の回路と関連付けられてもよい。これらのサポート回路は、プロセッサまたはプロセッサと関連付けられた電子パッケージの内部にあっても外部にあってもよい。サポート回路は、プロセッサと動作可能に通信する。サポート回路は、ブロック図または他の図面において必ずしもプロセッサと別個に示されてはいない。
【0029】
本明細書で使用される「信号」は、アナログまたはデジタル信号、1つまたは複数のコンピュータ命令、ビットまたはビットストリームなどを含む1つまたは複数の電気信号を含むが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書で使用される「ソフトウェア」は、コンピュータ、プロセッサ、論理、および/または他の電子デバイスに機能、動作を行わせ、かつ/または所望の方法で挙動させる1つまたは複数のコンピュータ可読命令および/または実行可能命令を含むが、これらに限定されない。命令は、動的にリンクされたソースまたはライブラリからの別個のアプリケーションまたはコードを含むルーチン、アルゴリズム、モジュール、またはプログラムなどの様々な形態で具現化されてもよい。
【0031】
上記の例示的な定義が提供されているが、本明細書と一致する最も広い合理的な解釈が上記その他の用語に使用されることが出願人の意図である。
【0032】
以下でより詳細に説明するように、開示の技術は、関連付けられるデバイスおよび方法を用いたマルチモーダル撮像/放射線療法用途におけるパルスX線照射に関する。デバイスおよび方法は、パルス放射を使用して、最新のCTシステムなどの連続露光の画像走査に比べてエネルギー分解能を向上させる。これらは、検出器における過渡効果を減少させるために、パラメータの中でも特に、X線パルスの周期および検出器に印加されるバイアスを調整することを含む。
【0033】
半導体ベースのX線検出の概要
【0034】
半導体ベースの検出は、FPDおよびシンチレーションベースのX線検出の代替法を提供する。半導体検出器は、エネルギー閾値処理を使用して個々のX線光子のエネルギー情報を収集することができる光子計数検出器(PCD)技術を採用する。他の利点については、以下でより詳細に説明する。
【0035】
特に、PCDは、光子計数検出器スペクトル(エネルギー弁別)CT(PCD-CT)と呼ばれる有望な治療用画像モダリティで使用することができる。PCD-CTは、エネルギー統合診断CTと比較して、強化され改善された診断情報を有する断層撮影画像を生成する可能性がある。PCD-CTは、部分的には、各光子を個別に、各光子と関連付けられるエネルギーと共に測定することによって、これを達成し得る。専用の電子回路および/またはソフトウェアが、この情報を分析して、X線光子検出からより詳細な画像を生成する。
【0036】
PCD-CTは、画像を作成するためのピクセルとして放射線検出器素子の(1つまたは複数の)アレイを使用することができる。
図1Aは、1つのそのような例示的なPCD-CT検出器セットアップ1を示している。セットアップ1は、大きな患者領域にわたって画像を作成するために同様の検出器のアレイに組み込まれ得る1つのPCD検出器を表す。セットアップ1は、半導体材料2と、カソード4と、アノードブロック6を一緒に形成するピクセルアノード6a~6fのアレイとを含む。入射X線8の検出により、入射する放射線8中の光子の数およびエネルギーを示す信号3を生成することができる。信号3は、各アノード6a~6f、およびより大きな検出器アレイの各アノードで空間分解され得る。これにより、空間分解X線画像を提供することができる。
【0037】
より具体的には、PCDセットアップ1によるX線検出は以下のように進行する。個々のX線光子108は、半導体2と相互作用5をし、それによって半導体材料2内に電子e
-と正孔h
+の対を生成する。カソード4と収集アノード6a~6fとの間に印加されるバイアス電圧7が、半導体材料2内に電界を発生させる。バイアス7によって発生した電界は、電子e
-をアノード6a~6fに向かってドリフトさせる。電界はまた、正孔h
+をカソード4に向かってドリフトさせる。電子e
-がX線相互作用5の位置からアノード6まで移動するのに必要な時間、「ドリフト時間」は、経路に沿った電界強度と、半導体材料2の構造/品質とに関連し、材料2内の任意の電子プロセスにも関連する。画像は、アノード6a~6fで収集された電子e
-に基づいた信号3から形成することができる。信号3は、元のX線光子8のエネルギーに関連する。
図1Aに示すように、信号3は、時間の経過に伴う半導体材料2とのX線相互作用の累積表現を含むことができる。原理的には、アノードピクセル6a~6fの各々がそれ自体の信号3を生成することができる。これらの信号からのデータを空間分解し、集約して断層撮影画像を作成することができる。
【0038】
医用撮像に半導体ベースの検出を使用する問題
【0039】
残念ながら、
図1Aに表される検出事象5の解釈は、X線検出中に発生するプロセスによって複雑になる可能性がある。そのようなプロセスとしては、例えば、半導体材料2の分極やその欠陥に生じる電荷トラップ効果が挙げられる。これらの問題および問題の緩和については、以下でより詳細に説明する。
【0040】
分極
【0041】
検出中の半導体材料2の分極は、PCD-CT性能に悪影響を及ぼす可能性がある。高X線フラックスが、ドリフト中に電子e-が受ける電界を変化させるのに十分な相互作用5を介して相当数の捕捉または蓄積された電子e-および/または正孔h+を生成するときに分極が発生し得る。分極は十分に制御されないため、ドリフトに対するその影響により、カウントデータ3のエネルギー分解能が困難または不可能になる可能性がある。これらの影響は累積的であり、X線撮像セッションの経過に伴って悪化する。これらはまた、X線フラックスの増加と共に悪化する。これらは、信号3の時間的ドリフトおよび一般的な信号不安定性を引き起こす可能性がある。
【0042】
図1B、
図1C、および
図1Dは、高X線フラックス下での分極を示している。
図1Bは、高X線8フラックスの影響によって引き起こされる電子e
-/正孔h
+分布を示している。X線8が検出器の半導体材料2と相互作用する際に電子e
-と正孔h
+の両方が作り出される。
図1Aとの関連で上述したように、印加電圧7の影響下で電子e
-はアノード6に向かってドリフトし、正孔h
+はカソード4に向かってドリフトする。
【0043】
図1Cは、高X線フラックスにしばらく曝露された後にこの構成から生じる電荷9の蓄積を示している。半導体材料2内でアノード6の近くに電子e
-が(すなわち、電荷蓄積9)、カソード4の近くに正孔h
+が蓄積するにつれて、主に低速で移動する正孔によるこの分極電荷分布によりそれ自体の電界が作り出される。その電界は、印加バイアス7によって作り出された電界に対抗し得る。より詳細には、分極によって作り出された電界は、材料2中の電子e
-および正孔h
+のドリフトに影響を及ぼし得る。
【0044】
図1Cに示す条件下では、電子e
-のドリフト時間が比較的うまく制御されていない。これにより、カウント信号3(
図1A)の定量化が困難となる。また、E
x-rayが十分に特徴付けられていないため、エネルギー論も曖昧になる。以下でより詳細に説明するように、これは信号3に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、X線光子カウントを表す検出された「パルス高さ」を低減する可能性がある。PCDの場合のように複数のエネルギー閾値が使用される場合、パルスのエネルギーを予想よりも低いエネルギーにシフトし、かつ/または誤ったエネルギー弁別を報告する可能性がある。これは、計数された光子の過小評価と、検出された光子に関する正確なエネルギー情報の損失の両方につながる可能性がある。
【0045】
分極は、分析(すなわち、信号3の収集および解釈に専用のソフトウェアまたはハードウェア)が個々のX線光子カウントを失うかまたは誤って解釈する原因となり得る。このデータ損失または誤った解釈は、材料分解についての誤ったエネルギー情報をもたらす可能性がある。不完全な電荷収集はまた、誤ったエネルギー位置合わせおよびスペクトルの歪みをもたらす可能性がある。分析が検出されたデータをエネルギー分解信号3のエネルギービンに割り当てる場合、分極がビニング閾値に対してエネルギーを誤って増加または減少させると、事象が誤って計数されるか、または誤って特徴付けられる可能性がある。これにより、材料分解目的に誤ったエネルギー情報が提供される可能性がある。分極はまた、断層撮影画像におけるアーチファクトをより直接的にもたらす可能性もある。
【0046】
図1Dは、「正規化された光子カウント」の形の検出された光子のエネルギースペクトルに対する分極効果を示しており、これは、捕捉された電荷が蓄積され、結果として信号ドリフトをもたらす場合の、異なるフラックス(低から高)を使用した経時的なスペクトルシフトの代表的なケースとすることができる。
図1Dは、空気中の異なるX線フラックスを有する物体のエネルギー分解光子カウントデータを示している。
図1Dのキー(5mA、10mA、15mA、および20mAのデータを識別する)は、信号レベルを区別している。mA(フラックス)が増加するにつれて、総フラックス曲線(エネルギーヒストグラム)も増加する。同時に、全体的な「平均」エネルギーもより低いエネルギーに向かってシフトする。例えば、「5mA」曲線のピークAは、約65keVで発生する。同じピークAが「15mA」曲線では40~45keV付近で発生する。「20mA」曲線の下方エネルギーシフトは、ピークAを識別することができるほど極端である。これは、より高いX線フラックス(mA)を有するプロットがスペクトル歪みをどのように受けるかを示している。
【0047】
電荷トラップ
【0048】
分極とは別個に、または分極と関連して発生し得るPCD-CTの別の歪みが、「電荷トラップ」である。これは、検出器の半導体材料2内の結晶欠陥(例えば、転位)が一定のバイアス7の印加下でイオン化し、電荷キャリア(例えば、電子e
-)を動けなくし、それらが電極に到達するのを妨げるときに起こる。上述の分極の場合と同様に、電荷トラップは、検出器システム内のドリフトおよび収集を印加バイアス7に基づく予想から逸脱させる可能性がある。また、特定の位置における電荷トラップ(すなわち、転位または他の拡張欠陥)は、これらの位置のイオン化を誘発し、したがって、前述のように分極領域として作用し得る局所的な電界を作り出す可能性がある。これはまた、(例えば、
図1Dに示すスペクトルシフトに類似した)スペクトル歪みをもたらす誤ったエネルギー位置合わせおよび光子カウントの過小評価を引き起こす可能性もある。これは、画像特徴および材料特性の誤った解釈を招く可能性がある。
【0049】
より具体的には、結晶欠陥の電荷トラップおよびイオン化は、電子e
-および正孔h
+が検出器1の電極、すなわちカソード4およびアノード6によって注入された後に発生する。これは、一定のバイアス7の印加によっても、X線8が半導体材料2に入射したときにX線事象5によって電子e
-が解放された後にも発生する。電子e
-または正孔h
+の捕捉による結晶欠陥のイオン化は、バイアス7が検出器1に常に印加されている間、暗状態(すなわち、X線8なし)の下で発生し得る。これは、例えば、アイドル状態の間に起こる。X線事象8の後、X線によって生成された電子e
-は、バイアス7の影響下で材料2を通ってドリフトする。これが起こると、電子e
-は、半導体材料2の結晶構造中のこれらのイオン化された電気的に活性な欠陥によって動けなくなる可能性がある。これにより、収集アノード6に向かう電子e
-の移動が減速および/または減少し、得られる信号3(
図1A)が制限される。
【0050】
図1Eに、この現象を模式的に示す。
図1Eは、3つの異なる持続時間t=0、3s、および5sにわたって、X線8および一定のバイアス7(電界)の印加下での検出器(例えば、CdTe検出器)の半導体部分2内の電気的に活性な結晶転位のネットワークにおける電荷の漸進的な蓄積を示している。図に示すように、一定のバイアスの印加と併せたX線露光が長くなるほど、電荷トラップは多くなる。
【0051】
結晶転位は、単結晶構造からの局所的な逸脱に起因する結晶欠陥の一種である。これらは、電子e
-および正孔h
+を含む電荷キャリアを動けなくする可能性がある。
図1Eを参照すると、t=0sでは、X線フラックス(例えば、
図1Aのカソード4に向かうX線8のフラックス)が開始されたばかりである。この時点でのフラックスの持続時間は比較的短いため、転位に電荷はまだ蓄積されていない。しかし、実質的なX線露光後のt=3sでは、電荷(電子e
-または正孔h
+)が転位線上に蓄積している。t=5sでは、さらなるX線露光により、転位線上にさらに多くの電荷が蓄積する。上述したように、これは、電圧7を印加することによって作り出された電界と干渉する電界を作り出す可能性がある。捕捉された電荷の分布は、ランダムであることが多い材料2内の転位のパターンを反映するか、またはそれに従い得るため、電荷は材料全体にわたってランダムに分布する。これは、
図1Aの文脈で説明したように、結果として生じる電界に対して不確実で潜在的に予測不可能な影響をもたらし、ドリフトにつながる可能性がある。
【0052】
パルスX線
【0053】
パルスX線は、X線管が短い時間の増分でエネルギー情報の小さなパケットとしてパルスシーケンスで光子を放出する画像取得の方法である。CT走査は通常、パルスX線が実施されるには速すぎるため、パルスX線は通常、CT設定では適用されない。最新のCTは、非常に高い回転速度(通常は200~300RPM、最大1回転当たり2000ビュー以上)で動作する。対照的に、放射線療法デバイス(例えば、Radixactシステム)は、はるかに低い速度、例えば数RPMから数十RPMで動作する傾向がある。これらのより低い速度により、治療用X線を発生する高エネルギー直線加速器を適切に制御することにより、放射線を適切な位置に精密に、十分に、多すぎずに送達することが可能になる。
【0054】
図1Fは、PCD-CTにおいて画像を構成するために使用され得る種類の検出強度(カウント)データに対するパルスX線照射および連続X線照射の効果を示している。この例では、X線は毎秒30パルスの速度で試料に送達される。
図1Fに示すデータは、エネルギー分解することができる光子「カウント」単位で示されている。この図は、検出システムの選択したピクセルからの平均出力カウントを記載している。
図1Fのデータは、分極および/または電荷トラップの効果を示すために経時的に分解されている。
【0055】
図1Fは、連続照射について光子カウントにおける経時的な正味の減少傾向を明確に示している。これは、連続的に印加されたX線のカウントの平均振幅をなぞる案内線160aによって最も良く分かる。連続X線の線160aは、t=0での約5535カウントからt=8sの5525まで減少する。結果は、X線露光の時間と共に分極および電荷トラップがどのように増加し、信号の低下および測定カウントの減少をもたらすかを示している。パルスX線源から得られたデータは、光子カウントの時間の経過に伴う実質的な減少傾向を示していない。その場合、案内線160bによって示すように、カウントは、8秒間の測定全体にわたって約5545カウントで比較的安定したままである。これは、パルス間のタイミングおよびパルスの持続時間が適切に選択されることを条件として、X線源のパルス照射がこれらの効果の一部をどれほど緩和する可能性があるかを示している。
【0056】
解決策および利点の概要
【0057】
本明細書に開示する解決策は、所定のレートでのX線パルス照射、および逐次バイアスパルス印加(バイアスリフレッシュとしても知られる)を利用する。これにより、パルス間の間隔が、転位162a~162cのような欠陥が脱イオン化する(それらの捕捉電荷を放出する)のに十分な長さであることが保証される。これが起こると、半導体材料2内の局所的に歪んだ電界を復元し、安定化して、印加バイアス7によって作り出された元の電界に近づけることができる。これはまた、視野角ごとの短い増分でエネルギー情報を送達し、よってパルスのパイルアップを防止する。この解決策はまた、分極の開始を可能にするには短すぎる時間間隔にわたってエネルギー情報のパケットを送達するようにX線パルス照射を調整する。
【0058】
パルスおよび間欠バイアス法の詳細
【0059】
図2Aは、PCD-CTにおけるパルスおよび間欠バイアス法200の適用を示している。より具体的には、この図は、経時的に分解された、検出器状態202、発生したX線パルス204、および検出器に課されたバイアス206を示している。
図1Aと比較すると、検出器状態202「読み出しオン」は、信号3からデータを取得するように検出器1を設定することに対応する。検出器状態202「読み出しオフ」は、検出器1が信号3からデータを取得していないことに対応する。発生したX線パルス信号204はX線8に対応する。検出器バイアス206はバイアス7に対応する。
図2Aのプロットのx軸は「時間」である。この軸の目盛りは可変であり、プロット上の見かけの寸法は単なる例示であることを理解されたい。例えば、PCD-CTシステムの撮像フレームレートが100FPSである場合、
図2Aに示す1つのX線パルス204の持続時間が10msになるように時間に目盛りが付けられる。特定の用途に応じて、画像フレームレートの広い範囲を使用できることが理解されよう。画像フレームレートは、検出器によって収集された情報を保存すると同時に、過渡効果が実質的に消散するのに十分な時間を可能にするように選択することができる。
【0060】
さらに、
図2Aは、様々な構成要素のオン状態とオフ状態との間の瞬間的な移行を示している。実際には、そのような移行に影響を与える(例えば、X線発生をオフにしたり、構成要素に対する電圧バイアスを変更したりすること)ために一定の時間が必要であることが理解されよう。したがって、それらの状態間の「時間重複」を、実質的に同じ所望の効果を維持しながら許容することができる。
【0061】
表1は、特に、PCD-CTにおける検出の品質およびエネルギー分解能を改善するために、方法200で調整することができる変数の非網羅的なリストを示している。なお、表1の変数は、必ずしも独立したものではない。
【表1】
【0062】
図2Aに示すように、各X線パルス204は時間T1にわたって継続する。言い換えれば、T1は、X線源がオンであり、物体に入射するX線を提供する時間である。
図2Aに示す例示的な構成では、「読み出しオン」検出器状態202(T5)は、同じ持続時間、すなわちT1にわたって継続する。これにより、X線が入射している間に検出器が読み出すことが保証される。
【0063】
T2は、X線源が「暗」である状態、すなわちX線送達を発生していないときのX線パルス間の時間である。T3は、バイアス7が検出器に印加される持続時間である。T4は、バイアス7が検出器に印加されない(すなわち、半導体材料2内に電界を作り出さず、電荷キャリアのドリフトまたはさらなるトラップを誘発しないようにオフにされる)持続時間である。T5は、検出器が「読み出しオン」である時間であり、これは、信号3(
図1A)のデータを取得することを意味する。T6は、検出器が「読み出しオフ」である時間であり、これは、データを取得していないことを意味する。T7は、説明および図示を目的とした例示的な(非限定的な)走査の持続時間である。
T8は、X線パルス204信号の周期である。信号の周期としてT8を参照することが好都合な場合もあるが、T8は独立変数ではない。T8は、T1およびT2に依存する。
【0064】
例えば、T1は、1つのパルスにおけるX線が検出器の半導体材料2に実質的な分極を誘発するのを防ぐのに十分なほど短く選択され得る。T1の持続時間は、帯電または分極の継続を引き起こすことなく最大量のパルス放射を提供するように最適化され得る。T2は、発生し得る分極および/または電荷トラップが連続するX線パルス間で消散するのに十分な時間を有するように、十分に長い持続時間ものであるように選択され得る。
T2の値は、より長いX線露光(T1)を補うためにより長くなるように選択されてもよく、逆もまた同様である。
【0065】
別の例では、T3およびT4は、
図2Aに示すように、半導体材料2へのバイアス7の印加をX線パルスが送達されている時間に制限するように選択され得る。上述したように、X線8が検出器に入射していないときにバイアス7をオフにすることが有利であり得る。これにより、分極と電荷トラップの両方を消散させることができる。
図2Aの例に示すように、T3はT1よりも大きく、X線パルスよりも長くバイアスを印加してもよい。これは、X線照射を印加する前に半導体材料2へのバイアス7の印加と関連付けられる過渡事象を消散させることを含む、いくつかの理由で行うことができる。
【0066】
T5およびT6は、上述したように、X線源の電源オンまたはオフ中に発生する過渡事象の検出を防止するために選択され得る。あるいは、T5およびT6は、収集される信号を最大化または最小化するように選択されてもよい。T7は、走査にわたる電荷蓄積を防止するように選択され得る。例えば、より長いX線露光時間(T1)は、電荷が検出器に蓄積しないように、パルス間の時間(T2)をより長くすることで短い走査(T4)に制限されてもよい。T7は、複数のX線パルスを包含する仮想的な画像走査の持続時間である。
【0067】
方法200の一部として、タイミング変数T1~T8以外の変数が、本明細書に開示される理由のいずれかのために調整および/または最適化されてもよい。例えば、入射X線8の強度IとエネルギーEの両方が、例えば、帯電および/または分極効果を減少させるために、T1~T8の代わりに、またはT1~T8と連携して調整されてもよい。検出器内の半導体材料2に印加されるバイアスB(
図1Aの要素7)の電圧レベルも同様の理由で調整され得る。
【0068】
T1~T8、I、E、およびBの組み合わせ/構成は、本明細書に明示的に記載されているか否かにかかわらず、本開示の範囲内であることを理解されたい。さらに、T1~T8、I、E、およびBの具体的な選択は、所望の結果、特定の用途、およびX線検出器システムの特定の構成に依存する。T1~T8、I、E、およびBの精密な値は、用途ならびに検出器の具体的な構造(例えば、欠陥濃度)、動作、および化学的同一性に応じて変化し得る。
【0069】
図2Bおよび
図2Cは、検出器の性能を改善するこれらの原理の適用を示している。より具体的には、
図2Bは、適切に選択されたT1~T4と共にX線パルス照射を使用した電荷トラップの緩和を示している。
図2Bは、バイアスがオンの、パルスX線照射モードの検出器を示している。
図2Cは、バイアスがオフの、2Bと同じフラックスおよび同じ時間で動作する同じ検出器を示している。
図2Cは、電荷が捕捉された転位線Dを示している。線Dの捕捉された電荷は、画像を作成するための情報の収集に影響を及ぼす。
【0070】
装置および動作
【0071】
図2Dおよび
図3を参照すると、PCD-CTで使用することができるマルチモーダル装置10が示されている。マルチモーダル装置10は、様々な用途に使用することができる(
図3に示すような)放射線療法デバイスと関連付けられ、かつ/または放射線療法デバイスに統合することができることが理解されよう。マルチモーダル装置10は、例えば、適切な検出器(例えば、FPD)を用いてPCD-CT以外の用途に使用することができる。
【0072】
用途には、例えば、IGRT送達システムとしてのIGRTが含まれるが、これに限定されない。マルチモーダル装置10は、支持ユニットまたはハウジング14によって支持されるか、または別の方法で収容された、ガントリー12と呼ばれる回転可能なガントリーシステムを含む。本明細書のガントリーは、1つまたは複数の放射線源および/または関連付けられた検出器が標的の周りを回転するときにそれらを支持することができる1つまたは複数のガントリー(例えば、リングやCアーム)を備えるガントリーシステムを指す。例えば、一実施形態では、第1の放射線源およびそれに関連付けられた検出器が、ガントリーシステムの第1のガントリーに取り付けられていてもよく、第2の放射線源およびそれに関連付けられた検出器が、ガントリーシステムの第2のガントリーに取り付けられていてもよい。別の実施形態では、2つ以上の放射線源および(1つまたは複数の)関連付けられた検出器が、ガントリーシステムの同じガントリーに取り付けられていてもよく、例えば、ガントリーシステムが1つのガントリーのみで構成される場合を含む。ガントリー、放射線源、および放射線検出器の様々な組み合わせが、同じ装置内の同じ体積を撮像および/または処理するために、様々なガントリーシステム構成に組み合わされ得る。例えば、kV放射線源およびMV放射線源を、ガントリーシステムの同じガントリーまたは異なるガントリーに取り付け、IGRTシステムの一部として撮像および/または治療に選択的に使用することができる。異なるガントリーに取り付けられている場合、放射線源は独立して回転することができるが、やはり同じ(またはほぼ同じ)体積を同時に撮像することができる。回転可能なリングガントリー12は、10rpm以上回転可能であってもよい。
【0073】
回転可能なガントリー12は、撮像および/または治療のために患者をその中に移動させ、位置決めすることができるガントリーボア16を画定する。一実施形態によれば、回転可能なガントリー12は、高品質の撮像データが(1つまたは複数の)検出器によって受信されるのに十分な帯域幅を提供しながら、放射線源および(1つまたは複数の)関連付けられた放射線検出器の連続回転を提供するスリップリングガントリーとして構成される。スリップリングガントリーは、デバイスと関連付けられる電力および信号を伝送するケーブルを巻き取ったり緩めたりするための、交互の方向へのガントリー回転を無くすことができる。そのような構成は、IGRTシステムに組み込まれた場合であっても、CBCTを含む連続ヘリカルコンピュータ断層撮影法を可能にする。
【0074】
患者支持体18は、回転可能なガントリー12に隣接して配置され、回転可能なガントリー12内への長手方向移動、又は回転可能なガントリー12内における、長手方向移動のために、通常は水平位置で患者を支持するように構成されている。患者支持体18は、患者を、例えば、ガントリー12の回転面に垂直な方向に(ガントリー12の回転軸に沿ってまたは平行に)移動させることができる。患者支持体18は、患者および患者支持体18の移動を制御するための患者支持体コントローラに動作可能に結合することができる。患者支持体コントローラは、命令された撮像および/または治療計画に従って患者の長手方向軸の周りを回転するために、回転可能なガントリー12および回転可能なガントリーに取り付けられた放射線源と同期させることができる。患者支持体はまた、最適な治療を得るよう患者位置を調整するために、ボア16内に入ると上下左右の制限された範囲で移動させることもできる。軸x、軸y、および軸zが示されており、ガントリー12の正面から見ると、x軸は水平で右を指し、y軸はガントリー平面を指し、z軸は垂直で上を指す。x軸、y軸、およびz軸は、右手の法則に従う。
【0075】
図3に示すように、マルチモーダル装置10は、回転可能なガントリー12に結合されるか、または回転可能なガントリー12によって別の方法で支持される低エネルギー放射線源(例えば、kV)30を含む。この実施形態では、低エネルギー放射線源30は、撮像用放射線源であり、高品質画像を生成するための(全体的に32として示される)放射線ビームを放射する。この実施形態では、撮像用放射線源は、キロボルテージ(kV)源(例えば、約20kVから約150kVの範囲のエネルギーレベルを有する臨床用X線源)として構成されたX線源30である。一実施形態では、低エネルギー放射線源は、最大150keVのキロ電子ボルトピーク光子エネルギー(keV)を含む。上述したように、この低エネルギー放射線源30は、パルスモードでX線放射線を送達することができるように構成される。特に、低エネルギー放射線源30は、そのパルスのパラメータ(例えば、T1~T8、
図2A)が構成可能であり得るように構成される。原則として、線源30は、任意の適切なパラメータ構成を可能にする必要がある。特定の変形例では、線源30のパラメータは、「オンザフライ」で、遠隔から、かつ/または自動的に調整可能であってもよい。
【0076】
撮像用放射線源は、撮像に適した任意の種類の線源とすることができる。例えば、撮像用放射線源は、例えば、X線発生源(CT用を含む)であってもよいし、または十分なエネルギーおよびフラックスを有する光子を生成する他の任意の方法(例えば、ガンマ線源(例えば、コバルト57、122keVでのエネルギーピーク)、蛍光X線源(例えば、Pb k線を通る蛍光線源、約70keVと約82keVとにおける2つのピーク)など)であってもよい。本明細書におけるX線、X線撮像、X線撮像用線源などへの言及は、特定の実施形態のための例示である。他の撮像用線源を、様々な他の実施形態において交換可能に使用することができる。X線検出器34(例えば、PCD)は、回転可能なガントリー12に結合するか、または回転可能なガントリー12によって別の方法で支持することができる。X線検出器34は、X線源30から放射線を受け取るように配置され、X線源30と共に回転することができる。
【0077】
X線検出器34は、開示の技術の範囲から逸脱することなく、いくつかの構成をとることができることが理解されよう。例えば、X線検出器34は、シリコンベースのPCDなどのPCDで構成することができる。適切な検出器には、エネルギー分解光子計数検出器も含まれる。適切な検出器の種類には、シリコンベースの検出器、テルル化カドミウム亜鉛(CdZnTe)ベースの検出器、またはテルル化カドミウム(CdTe)ベースの検出器が含まれる。X線検出器34は、任意の適切な半導体材料または適切な半導体材料の任意の組み合わせを含む半導体材料2を含んでもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、X線検出器34は、PCD以外の検出器を含んでもよい。例えば、検出器34は、フラットパネル検出器(例えば、複数列フラットパネル検出器)を含んでもよい。本開示の範囲から逸脱する検出器34には、当技術分野で公知のさらに他の種類の検出器および技術が含まれ得る。
【0079】
図2Dおよび
図3は、リングガントリー12に取り付けられた放射線源30を備えたマルチモーダル装置10を示しているが、他の実施形態は、例えば、Cアームガントリーやロボットアームベースのシステムを含む他の種類の回転可能な撮像装置を含んでもよい。ガントリーベースのシステムでは、ガントリーが、アイソセンタを通る軸の周りで撮像用放射線源30を回転させる。ガントリーベースのシステムはCアームガントリーを含み、撮像用放射線源30は、アイソセンタを通る軸の上にカンチレバー状に取り付けられ、軸の周りを回転する。ガントリーベースのシステムは、患者の身体がリング/トロイドのボアを通って延在し、撮像用放射線源30がリングの周囲に取り付けられ、アイソセンタを通る軸の周りを回転する、リングガントリー、例えば、全体としてトロイド形状を有する回転可能なガントリー12をさらに含む。いくつかの実施形態では、ガントリー12は連続的に回転する。他の実施形態では、ガントリー12は、回転および反転を繰り返すケーブルベースのシステムを利用する。
【0080】
コリメータまたはビームフォーマアセンブリ(全体として36で示す)が、X線源30によって放射される放射線ビーム32の形状を選択的に制御および調整してX線検出器34の作動領域の一部分または一領域を選択的に曝露するために、X線源30に対して位置決めされている。ビームフォーマはまた、放射線ビーム32がX線検出器34上にどのように配置されるかを制御することもできる。一実施形態では、ビームフォーマ36は、(例えば、より薄いか、またはより厚いスリットを作るために)1運動度/運動次元を有することもできる。別の実施形態では、ビームフォーマ36は、(例えば、様々なサイズの長方形を作成するために)2運動度/運動次元を有することができる。他の実施形態では、ビームフォーマ36は、例えば、平行四辺形を含む様々な他の動的に制御される形状を可能としてもよい。これらの形状はすべて、走査中に動的に調整され得る。いくつかの実施形態では、ビームフォーマの遮断部分を回転および/または並進させることができる。
【0081】
ビームフォーマ36は、X線源30によって放射された放射線ビーム32の形状を、これらに限定されないが、1つの検出器列幅と同程度に低いビーム厚さ(幅)を有するか、または複数の検出器列を含む、ファンビームまたはコーンビームを含む、いくつかの幾何学的形状で動的に調整するように制御することができ、複数の検出器列は、検出器の作動領域の一部分のみであり得る。様々な実施形態において、ビームの厚さは、数センチメートルのより大きな検出器作動領域を曝露し得る。例えば、約5センチメートルから約6センチメートルの作動領域を有する検出器の(検出器平面内で長手方向に測定して)約3センチメートルから約4センチメートルが、撮像用放射線32に選択的に曝露され得る。この実施形態では、読み出しごとに約3センチメートルから約4センチメートルの投影画像データが取り込まれてもよく、片側または両側に約1センチメートルから約2センチメートルの曝露されない検出器領域があり、これは、後述するように、散乱データを取り込むために使用され得る。
【0082】
他の実施形態では、作動中の検出器の一部分のより多いかまたはより少ない部分が、撮像用放射線に選択的に曝露されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ビーム厚さは、より小さい検出器を用いること含めて、約2センチメートル、1センチメートル、1センチメートル未満、または同様のサイズの範囲まで低減させてもよい。他の実施形態では、ビーム厚さは、より大きな検出器を用いることを含めて、約4センチメートル、約5センチメートル、5センチメートル超、または同様のサイズの範囲まで増加させてもよい。様々な実施形態において、曝露対作動検出器領域の比は、約30%から約90%または約50%から約75%であってもよい。他の実施形態では、曝露対作動検出器領域の比は、約60%から約70%であってもよい。しかしながら、他の実施形態では、様々な他の曝露領域および作動領域のサイズまたは曝露対作動検出器領域の比が適し得る。ビームおよび検出器は、検出器の陰になる領域(作動領域であるが直接放射線に曝露されない)が、ペナンブラ領域を越えて散乱データを捕捉するのに十分であるように構成することができる。
【0083】
様々な実施形態は、測定データが一次(曝露される)領域および陰になる領域に十分であるが、速度および線量制御に対しても最適化されるように、検出器の選択的曝露を制御する特徴(例えば、ビームサイズ、ビーム/開口中心、コリメーション、ピッチ、検出器読み出し範囲、検出器読み出し中心など)の最適化を含んでもよい。ビームフォーマ36の形状/位置および検出器34の読み出し範囲は、以下でより詳細に説明するように、例えば、狭い軸方向視野と広い軸方向視野(aFOV)走査との組み合わせを含む、実行されている特定の撮像タスクおよび散乱推定プロセスに基づいて、X線源30からの放射線ビーム32がX線検出器34をできるだけ多くまたはできるだけ少なく覆うように制御することができる。装置10は、単回転コーンビームと、広いビーム角かまたは狭いビーム角両方の画像を螺旋その他で取得する能力を有する。
【0084】
ビームフォーマ36は、X線源30によって放射される放射線ビーム32の形状を調整することを可能にする様々な方法で構成され得る。例えば、ビームフォーマ36は、X線源30からの放射線ビームがコリメートされて通過し得る開口のサイズを画定し、選択的に調整する一組の顎部または他の適切な部材を含むように構成することができる。
1つの例示的な構成によれば、ビームフォーマ36は、上顎部および下顎部を含むことができ、上顎部および下顎部は、X線源30からの放射線ビームが通過する開口のサイズを調整すると共に、撮像を最適化し、患者線量を最小化するために撮像される患者の部分のみを照射するように患者に対するビーム32の位置を調整するために、異なる方向(例えば、平行な方向)に移動可能である。
【0085】
一実施形態によれば、X線源30からの放射線ビーム32の形状は、画像取得中に変更することができる。別の言い方をすれば、一例示的実施態様によれば、ビームフォーマ36のリーフ位置および/または開口幅は、走査前または走査中に調整することができる。例えば、一実施形態によれば、ビームフォーマ36は、放射線ビーム32が十分な一次/陰領域を有する形状を有し、撮像中に関心対象の物体(例えば、前立腺)のみを含めるよう調整されるように、X線源30の回転中に選択的に制御し、動的に調整することができる。X線源30によって放射されている放射線ビーム32の形状は、以下でより詳細に説明するように、撮像および/または治療用フィードバックに基づくものであり得る所望の画像取得に応じて、走査中または走査後に変更することができる。
【0086】
図3に示すように、マルチモーダル装置10は、回転可能なガントリー12に結合されるか、または回転可能なガントリー12によって別の方法で支持される高エネルギー放射線源(例えば、MV)20を含む放射線療法デバイスと統合されてもよい。一実施形態によれば、高エネルギー放射線源20は、関心領域における患者内の腫瘍の治療に使用される高エネルギー放射線源などの治療用放射線源として構成される。他の実施形態では、高エネルギー放射線源20はまた、撮像用放射線源としても構成されるか、または少なくとも撮像用放射線源として利用される。治療用放射線源は、高エネルギーX線ビーム(例えば、MV X線ビーム)、および/または高エネルギー粒子ビーム(例えば、電子ビーム、陽子ビーム、もしくは炭素などのより重いイオンのビーム)、または別の適切な形態の高エネルギー放射線とすることができることが理解されよう。一実施形態では、高エネルギー放射線源20は、1MeV以上のメガ電子ボルトピーク光子エネルギー(MeV)を含む。一実施形態では、高エネルギーX線ビームは、約0.8MeVより大きい平均エネルギーを有する。別の実施形態では、高エネルギーX線ビームは、約0.2MeVより大きい平均エネルギーを有する。別の実施形態では、高エネルギーX線ビームは、約150keVより大きい平均エネルギーを有する。一般に、高エネルギー放射線源20は、低エネルギー放射線源30よりも高いエネルギーレベル(ピークおよび/または平均など)を有する。
【0087】
一実施形態では、高エネルギー放射線源20は、治療用放射線(例えば、MV)を生成するLINACであり、撮像システムは、比較的低強度で低エネルギーの撮像用放射線(例えば、kV)を生成する独立した低エネルギー放射線源30を備える。他の実施形態では、治療用放射線源20は、一般に約1MeVより大きいエネルギーを有することができる、例えばCo-60などの放射性同位体とすることもできる。高エネルギー放射線源20は、治療計画に従って患者支持体18上に支持された患者内の関心領域(ROI)に向かって1つまたは複数の放射線ビーム(全体として22で示す)を放射することができる。
【0088】
様々な実施形態において、高エネルギー放射線源20は、治療用放射線源および撮像用放射線源として利用される。以下で詳細に説明するように、放射線源20、30は、より高品質でより良好に利用される画像を提供するように互いに併用されてもよい。本明細書における治療用放射線源20への言及は、高エネルギー放射線源20と、撮像のためにのみ使用され得る低エネルギー放射線源30とを区別するためのものである。しかしながら、治療用放射線源20への言及は、治療用放射線源20(高エネルギー放射線源)を治療および/または撮像に利用することができる実施形態を含む。他の実施形態では、少なくとも1つの追加の放射線源を回転可能なガントリー12に結合し、放射線源20、30のピーク光子エネルギーとは異なるピーク光子エネルギーで投影データを取得するように動作させることができる。
【0089】
検出器24は、回転可能なガントリー12に結合するか、または別の方法で支持し、治療用放射線源20からの放射線22を受け取るように配置することができる。検出器24は、減衰されていない放射線の量を検出するか、または別の方法で測定することができ、したがって、(最初に生成されたものとの比較によって)患者または関連付けられた患者ROIによって実際に減衰されたものを推測することができる。検出器24は、治療用放射線源20が患者の周りを回転して患者に向けて放射線を放射する際に、異なる角度から減衰データを検出し、または別の方法で収集することができる。
【0090】
治療用放射線源20は、ビームフォーマまたはコリメータを含むか、またはビームフォーマまたはコリメータと別の方法で関連付けることができることがさらに理解されよう。治療用放射線源20と関連付けられたビームフォーマは、撮像用線源30と関連付けられたビームフォーマ36と同様に、いくつかの方法で構成することができる。例えば、ビームフォーマは、マルチリーフコリメータ(MLC)として構成することができ、MLCは、最小開放または閉鎖位置と最大開放位置との間の1つまたは複数の位置に移動するように動作可能な複数のインターレースされたリーフを含むことができる。放射線源によって放射されている放射線ビームの所望の形状を達成するために、リーフを所望の位置に移動させることができることが理解されよう。一実施形態では、MLCは、ミリメートル未満の標的精度が可能である。
【0091】
治療用放射線源20は、撮像用線源30と同じ平面または異なる平面(オフセット)に取り付けられ、構成され、かつ/または移動され得る。いくつかの実施形態では、放射線源20、30の同時作動によって引き起こされる散乱が、放射面をオフセットすることによって低減され得る。
【0092】
他の実施形態では、作動をインターリーブすることによって散乱を回避することができる。例えば、同時マルチモーダル撮像では、個々のパルスが同時ではなくとも、取得を同時とすることができる。別の実施形態では、例えば、kV検出器上のMV散乱の問題に対処するために、陰ベースの散乱補正の使用を使用することができる。
【0093】
放射線療法デバイスと統合されると、マルチモーダル装置10は、放射線送達手術(処置)をセットアップし(例えば、アライメントおよび/もしくは位置合わせを行い)、計画し、かつ/または案内するために使用される画像を提供することができる。典型的なセットアップは、現在の(治療中の)画像を治療前の画像情報と比較することによって達成される。治療前の画像情報は、例えば、CTデータ、コーンビームCTデータ、MRIデータ、PETデータもしくは3D回転血管造影(3DRA)データ、および/またはこれらもしくは他の撮像モダリティから得られる任意の情報を含んでもよい。いくつかの実施形態では、マルチモーダル装置10は、治療中の患者、標的、またはROIの動きを追跡することができる。
【0094】
再構成プロセッサ40は、検出器24および/または検出器34に動作可能に結合することができる。一実施形態では、再構成プロセッサ40は、放射線源20、30から検出器24、34によって受け取られた放射線に基づいて患者画像を生成するように構成される。再構成プロセッサ40は、以下でより詳細に説明する方法を実行するために使用されるように構成することができることが理解されよう。装置10はまた、情報を記憶するのに適したメモリ44を含むことができ、この情報は、処理および再構成アルゴリズムおよびソフトウェア、撮像パラメータ、事前の、または他の以前に取得された画像(例えば、計画画像)からの画像データ、治療計画などを含むが、これらに限定されない。
【0095】
マルチモーダル装置10は、オペレータ/ユーザインターフェース48を含むことができ、装置10のオペレータは、装置10と対話するか、または別の方法で制御して、走査または撮像パラメータなどに関する入力を提供することができる。オペレータインターフェース48は、キーボード、マウス、音声作動式コントローラなどの任意の適切な入力デバイスを含むことができる。装置10はまた、装置10のオペレータに出力を提供するためのディスプレイ52その他の人間可読要素を含むこともできる。例えば、ディスプレイ52は、オペレータが、再構成された患者画像、および装置10の動作に関連する撮像パラメータや走査パラメータなどの他の情報を観察することを可能にすることができる。
【0096】
図3に示すように、マルチモーダル装置10は、装置10の1つまたは複数の構成要素に動作可能に結合されたコントローラ(全体として60で示す)を含む。コントローラ60は、X線源30および/または治療用放射線源20に電力およびタイミング信号を供給することや、回転可能なガントリー12の回転速度および位置を制御するガントリーモータコントローラを含めて、装置10の全体的な機能および動作を制御する。コントローラ60は、患者支持体コントローラ、ガントリーコントローラ、治療用放射線源20および/またはX線源30に結合されたコントローラ、ビームフォーマコントローラ、検出器24および/またはX線検出器34に結合されたコントローラなどのうちの1つまたは複数を包含することができることが理解されよう。一実施形態では、コントローラ60は、他の構成要素、デバイス、および/またはコントローラを制御することができるシステムコントローラである。
【0097】
様々な実施形態において、再構成プロセッサ40、オペレータインターフェース48、ディスプレイ52、コントローラ60および/または他の構成要素は、1つまたは複数の構成要素またはデバイスに組み合わされてもよい。
【0098】
装置10は、様々な構成要素、論理、およびソフトウェアを含んでもよい。一実施形態では、コントローラ60は、プロセッサと、メモリと、ソフトウェアとを備える。限定ではなく例として、マルチモーダル装置および/または放射線療法システムは、特定の用途のための撮像および/またはIGRTに関連する1つまたは複数のルーチンまたはステップを実装することができる様々な他のデバイスおよび構成要素(例えば、特に、ガントリー、放射線源、コリメータ、検出器、コントローラ、電源、患者支持体)を含むことができ、ルーチンは、それぞれのデバイス設定、構成、および/または位置(例えば、経路/軌道)を含む、撮像、画像ベースの送達前ステップ、および/または治療送達を含むことができ、これらはメモリに記憶され得る。さらに、(1つまたは複数の)コントローラは、メモリに記憶された1つまたは複数のルーチンまたはプロセスに従って、1つまたは複数のデバイスおよび/または構成要素を直接的または間接的に制御することができる。直接制御の一例は、撮像または治療と関連付けられる様々な放射線源またはコリメータのパラメータ(電力、速度、位置、タイミング、変調など)の設定である。間接制御の一例は、患者支持体コントローラまたは他の周辺デバイスへの位置、経路、速度などの伝達である。装置と関連付けられ得る様々なコントローラの階層を、適切なコマンドおよび/または情報を所望のデバイスおよび構成要素に伝達するために任意の適切な方法で配置することができる。
【0099】
さらに、システムおよび方法が他のコンピュータシステム構成で実施されてもよいことを当業者は理解するであろう。本発明の例示の態様は、特定のタスクが、通信ネットワークを介してリンクされたローカルまたはリモートの処理デバイスによって行われる分散コンピューティング環境で実施されてもよい。例えば、一実施形態では、再構成プロセッサ40は、別個のシステムと関連付けられてもよい。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、ローカルとリモート両方のメモリ記憶デバイスに配置されてもよい。例えば、リモートデータベース、ローカルデータベース、クラウドコンピューティングプラットフォーム、クラウドデータベース、またはそれらの組み合わせを装置10と共に利用することができる。
【0100】
マルチモーダル装置10は、コンピュータを含む本発明の様々な態様を実装するための例示的な環境を利用することができ、コンピュータは、コントローラ60(例えば、プロセッサ、およびメモリ44であってもよいメモリを含む)と、システムバスとを含む。システムバスは、メモリを含むがこれに限定されないシステム構成要素をプロセッサに結合することができ、他のシステム、コントローラ、構成要素、デバイス、およびプロセッサと通信することができる。メモリは、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードドライブ、フラッシュドライブ、および任意の他の形態のコンピュータ可読媒体を含むことができる。メモリは、例えば治療計画を含み得る、ルーチンおよびパラメータを含む様々なソフトウェアおよびデータを記憶することができる。
【0101】
治療用放射線源20および/またはX線源30は、治療用放射線源20およびX線源30の相対動作を制御するように構成されたコントローラ60に動作可能に結合することができる。例えば、X線源30を、治療用放射線源20と同時に制御し、動作させることができる。加えて、または代替として、X線源30を、実施されている特定の治療および/または撮像計画に応じて、治療用放射線源20と順次に制御し、動作させることもできる。例えば、様々な実施形態において、放射線源20、30は、放射線源20、30からの測定された投影データが同時に(または本質的に/ほぼ(準)同時、例えば互いに約50ms以内)または順次に(例えば、秒、分などで区切られる)取得されるように動作させることができる。
【0102】
放射線源20、30および(1つまたは複数の)検出器24、34は、いくつかの方法で撮像および/または治療走査中に患者の周りに回転を提供するように構成することができることが理解されよう。一実施形態では、線源20、30の動きおよび露光を患者支持体18の長手方向の動きと同期させることにより、処置中の患者画像の連続的な螺旋取得または走査を提供することができる。放射線源20、30および(1つまたは複数の)検出器24、34の連続的な回転(例えば、一定の患者の運動速度でのガントリーの連続的かつ一定の回転)に加えて、開示の技術の範囲から逸脱することなく他の変形例を採用することができることが理解されよう。例えば、回転可能なガントリー12および患者支持体は、支持体が回転可能なガントリー12に対して(一定または可変の速度で)移動するように制御されるとき、ガントリー12が患者支持体上に支持された患者の周りを(上述のように、連続的にではなく)「前後に」(例えば、時計回りの回転と反時計回りの回転とに交互に)回転するように制御することができる。別の実施形態では、連続的なステップアンドシュート円形走査方式により、所望の体積が捕捉されるまで、長手方向への患者支持体18の移動(ステップ)が回転可能なガントリー12による走査回転(シュート)と交互に行われる。マルチモーダル装置10は、体積ベースの撮像取得および平面ベースの撮像取得が可能である。例えば、様々な実施形態において、マルチモーダル装置10は、体積画像および/または平面画像を取得し、関連付けられる処理を実行するために使用され得る。
【0103】
図4は、例示的な放射線治療環境300を示している。放射線治療環境300は、基準撮像システム102とIGRTシステム104とを含む。IGRTシステム104は、例えば、上述のマルチモーダル装置10ならびにその様々な構成要素およびデバイスを備えてもよい。
【0104】
一実施形態では、基準撮像システム102は、例えば、CTシステムやMRIシステムなどの高精度体積撮像システムを含むことができる。多くの臨床環境におけるコストおよびワークフローの考慮事項を考慮すると、基準撮像システム102は、診療所または病院環境で様々な異なる目的のために使用される汎用ツールであることが多く、特にIGRTシステム104または環境300専用ではない。むしろ、基準撮像システム102は、それ自体の別個の部屋またはボールトに配置されてもよく、IGRTシステム104とは別個に、より汎用化されて購入、設置、および/または維持される。したがって、
図4の実施形態では、基準撮像システム102は、IGRTシステム104とは区別して示されている。他の実施形態では、基準撮像システム102は、IGRTシステム104の一体構成要素とみなされてもよい。例えば、マルチモーダル装置10は、基準撮像システム102およびIGRTシステム104として機能する能力を有する。
【0105】
この実施形態では、IGRTシステム104は、患者支持体または治療台TC上に位置決めされた患者Pの標的体積に高エネルギーX線治療放射線を選択的に照射する高エネルギー放射線治療(MV)源108を備える。MV源108は、システムコントローラ114の制御下で、一実施形態では、より具体的には治療放射線制御サブシステム128の制御下で治療放射線を照射する。システムコントローラ114は、処理回路120と、検出器コントローラ122と、台位置コントローラ124と、kV放射線コントローラ126とをさらに備え、各々が、本明細書でさらに説明する機能のうちの1つまたは複数を達成するようにプログラムおよび構成される。1つまたは複数の撮像(kV)放射線源110は、kV放射線コントローラ126の制御下で比較的低エネルギーのX線撮像用放射線を選択的に放射し、撮像用放射線は1つまたは複数の検出器112によって捕捉される。検出器112のうちの1つまたは複数が、標的体積を伝搬したMV源108からの高エネルギーX線治療放射線を捕捉することができる。
【0106】
各kV放射線源110およびMV放射線源108は、動的に移動可能であるため、IGRTシステム104および/または治療室の(x,y,z)座標系に対して精密に測定可能であり、かつ/または精密に決定可能な幾何学的形状を有する。
【0107】
台位置決め装置130を、台位置コントローラ124によって台TCを位置決めするために作動させることができる。いくつかの実施形態では、非X線ベースの位置検知システム134が、光学ベースの方法や超音波ベースの方法などのイオン化放射線を伴わない1つまたは複数の方法を使用して、患者に戦略的に固定された(1つもしくは複数の)外部マーカの位置および/もしくは動きを検知し、かつ/または患者の皮膚表面自体の位置および/または動きを検知する。IGRTシステム104は、オペレータワークステーション116および治療計画システム118をさらに含む。
【0108】
一般的な臨床診療では、治療計画は、基準撮像システム102によって生成された事前取得治療計画画像または事前の画像データ106に基づいて行われる。事前取得治療計画画像106は、患者が受けることになる1つまたは複数の放射線治療画分に実質的に先立って(例えば、1日から2日前に)取得された高分解能三次元CT画像であることが多い。
図4に示されるように、事前取得治療計画画像106の(i,j,k)座標系は、IGRTシステム104の治療室について図示された(x,y,z)治療室座標系とは対照的であり、治療計画画像106座標系と治療室座標系との間には一般に、既存のまたは固有のアライメントまたは位置合わせは存在しない。治療計画プロセス中、医師は通常、治療計画画像内に座標系(例えば、治療計画画像106のi、j、k)を確立し、本明細書ではこれを計画画像座標系または計画画像基準系と呼ぶ場合もある。放射線治療計画は、各治療画分中にMV源108によって照射されるべき高エネルギー治療放射線ビームの様々な向き、サイズ、持続時間などを決定する計画画像座標系で作成される。標的への治療用放射線の正確な送達は、(存在する場合)送達および追跡システム全体が治療室座標系に合わせて較正されるため、計画画像座標系を治療室座標系にアライメントさせる必要がある。このアライメントは正確である必要はないことが理解されようし、台調整またはビーム送達調整を使用して2つの座標系間のアライメントにおけるオフセットを考慮することができることがさらに理解されよう。
【0109】
実施形態では、治療計画画像106を、例えば、従来のCBCT構成からの最大FOVが十分であると決定するために使用することができ、他の実施形態では、治療計画画像106を、本明細書に記載の拡張FOVが必要であると決定するために使用することができる。したがって、治療計画画像106は、FOVを決定するために使用され、それに応じて、もしあれば、治療中に使用されるべき患者支持体の検出器オフセットおよび/または横方向並進を決定するために使用することができる。したがって、検出器の使用を改善し、走査時間を短縮しながら、横方向の切断を防止するようにFOVのサイズおよび検出器オフセットの量を最適化することができる。
【0110】
一実施形態では、各治療画分の直前に、本明細書で以下にさらに説明する実施形態のうちの1つまたは複数によるものを含む、kV撮像用放射線源110を介した画像誘導下で、画像ベースの送達前ステップが行われ得る。例えば、計画画像座標系(例えば、限定するものではないが、CT画像または計画画像上で治療計画を作成している間に医師によって定義される)が、以下で初期治療アライメントまたは初期治療位置と呼ぶ、治療室座標系との初期アライメントに位置決めされるように、患者を物理的に位置決めし、またはアライメントさせることができる。このアライメントは、一般に、患者セットアップまたは患者アライメントと呼ばれる。標的体積の位置に応じて、標的体積は、その位置および向きが変化し、かつ/または患者の動きおよび/もしくは呼吸などの生理学的サイクルによる体積変形を受ける可能性がある。本明細書で使用する場合、治療中のライメント変動または治療中の位置変動という用語は、標的体積の現在の状態が初期治療アライメントと異なる位置、向き、および/または体積形状の変動を指すために使用される。治療計画座標系と治療室座標系との間の既知の関係により、治療中のアライメント変動という用語を、標的体積の現在の状態が治療計画座標系の状態と異なる位置、向き、または体積形状の変動を指すために使用することもできる。より一般的には、初期治療アライメントまたは初期治療位置という用語は、本明細書では、治療画分の開始時の患者セットアップ時の患者の身体部分の(位置、向きおよび体積形状を含む)特定の物理的姿勢または配置を指す。
【0111】
非X線ベースの位置検知システム134が提供されてもよい。この非X線ベースの位置検知システム134は、例えば、呼吸に応答して動く患者の胸部に何らかの方法で印された外部マーカを含んでもよく、これは標的位置を正確に決定することができる。呼吸を監視するための他の機構が使用されてもよい。例えば、準静的位置決め、心臓ゲーティングのためのEKGなどを含む他の非呼吸位置検知システム134が使用されてもよい。システム134は、外部マーカの動きを、例えば、単眼または立体X線投影から決定される標的の動きと相関させることができる。したがって、非X線ベースの位置検知システム134は、システムコントローラ114が外部マーカの動きを監視し、相関モデルを使用してリアルタイムで(例えば、~約60Hz)標的がどこに位置するかを精密に予測し、治療ビームを標的に向けることを可能にし得る。移動する標的の治療が進行するにつれて、追加のX線画像が取得され、相関モデルを検証および更新するために使用され得る。
【0112】
本明細書で使用する場合、医用画像の「位置合わせ」は、それらの医用画像に現れる対応する解剖学的特徴または他の(例えば基準となる)特徴の間の数学的関係の決定を指す。位置合わせは、医用画像の一方または両方に適用されると、対応する解剖学的特徴のオーバーレイを引き起こす1つまたは複数の空間変換の決定を含むことができるが、これらに限定されない。空間変換は、剛体変換および/または変形可能な変換を含むことができ、医用画像が異なる座標系または基準フレームからのものである場合、それらの座標系または基準系の差を考慮することができる。医用画像が同じ撮像システムを使用して取得されず、かつ、同時に取得されない場合、位置合わせプロセスは、異なる撮像システムの撮像モダリティ、撮像形状、および/または基準系の間の差を考慮する第1の変換の決定を、取得時間の間に生じた可能性がある身体部分の根本的な解剖学的差(例えば、位置決め差、全体的な動き、身体部分内の異なる構造間の相対的な動き、全体的な変形、身体部分内の局所的な変形など)を考慮する第2の変換の決定と共に含むことができるが、これらに限定されない。
【0113】
画像の位置合わせは、基準撮像システム102とIGRT送達システム104との間、および/または(1つもしくは複数の)低エネルギー源110および高エネルギー源108(およびそれらと関連付けられた検出器112)を含むマルチモーダルIGRT送達システム104の様々なモダリティから導出されたデータおよび/または画像の間で実施され得る。特に、装置10に戻って参照すると、位置合わせは、放射線源20、30および検出器24、34から導出されたデータおよび/または画像間で実施され得る。
【0114】
以下のフローチャートおよびブロック図は、上述のマルチモーダル放射線システムと関連付けられる例示的な構成および方法論を示している。例示的な方法は、論理、ソフトウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせとして実行され得る。さらに、手順および方法はある順序で提示されているが、ブロックは、連続および/または並行を含む異なる順序で行われてもよい。さらに、追加のステップまたはより少ないステップが使用されてもよい。
【0115】
図5Aは、本開示の原理を使用してPCD-CT画像を取得する例示的な方法500を示すフローチャートである。
図5Aおよび本開示における他のフローチャートはステップのシーケンスを示しているが、この提示は限定ではないことを理解されたい。必要に応じて、
図5Aを含む本明細書に開示されるフローチャートのいずれかに示されるステップは、本開示に従って異なる順序で行われてもよい。方法は、特定のステップが省略または追加される場合でも、本開示に従って実施され得る。
【0116】
ステップ502において、走査実施中のX線源30のパラメータを含む、撮像X線照射のパラメータが選択される。このステップで選択されるパラメータは、表1および
図2Aのパラメータのいずれか、特にT1~T8、I、E、およびBを含むことができる。パラメータの任意の適切な組み合わせを、本明細書に開示される理由のいずれかのために選択することができる。例えば、方法200および
図2Aの文脈で上述した理由でパラメータT1~T8、I、E、およびBの組み合わせを選択することができる。
【0117】
1つの特定の変形例では、T1~T4は、X線照射204のパルス印加が、PCD検出器34の半導体材料2に実質的な帯電および/または分極を引き起こすには不十分な持続時間(T1)であるように選択され得る。パラメータT1~T8、I、E、およびBはまた、X線照射の印加間の休止(T2)が、捕捉または蓄積された電荷がX線照射の次のパルス印加の前に消散するのに十分な長さであるように選択されてもよい。上述したように、パラメータT1~T8、I、E、およびBは、このステップで、PCD34およびX線送達セットアップ全体の性能を最適化するために選択され得る。最適化され得る変数には、データの量および質(X線光子カウント)、検出されたエネルギースペクトルにおけるエネルギーの分解能、ならびにデータ収集の速度が含まれるが、これらに限定されない。
【0118】
上述したように、選択される変数T1~T8、I、E、およびBの値は、特定の用途、X線セットアップ(以下でさらに説明する)、および使用される特定の検出器34に依存する。これらの値を決定する上で重要となり得る検出器34に固有のパラメータには、検出器の製造元/モデル、検出器の構造(結晶および転位構造を含む)、検出器34内の半導体材料2の化学組成、および検出器34の動作仕様(例えば、データ取得の速度、電圧公差などである)が含まれる。
【0119】
このステップでは、事前の画像データ(例えば、参照画像106からのデータ)がコントローラ60に提供され得る。事前の画像または他のデータは、走査のパラメータ選択を助けるために使用され得る。例えば、事前の走査が特定の測定に不十分な分解能を有する場合、これにより、分解能を改善するようにパラメータT1~T8、I、E、およびBの選択が誘導され得る。事前の画像データはまた、関心対象の患者または物体の位置が次の走査のために調整または移動されるべきかどうかを決定するためにも使用され得る。
【0120】
ステップ504において、ステップ502で決定された走査パラメータが設定される。通常、コントローラ60は、T1~T8、I、E、およびBを含む装置10全体のパラメータを設定する。したがって、このステップは、方法200の文脈で図示および説明したように、パルスX線を試料に間欠的なバイアス印加と共に照射することを含み得る。ステップ502において、関心対象の患者または物体の位置が調整されるべきであると判定された場合、その調整が行われる。
【0121】
ステップ506において、方法500は、少なくとも1回の走査を実行する。実施形態では、走査は、中心位置にある検出器、およびガントリーに対して第1の長手方向(例えば、
図2Dのy方向)に移動する患者支持体を有する走査構成で行われる螺旋走査とすることができる。このステップでは、複数の走査が行われてもよい。例えば、検出器34の位置を変更した後に走査が行われてもよい。また、関心対象の患者または物体の位置を変更した後に複数の走査が行われてもよい。
【0122】
ステップ508において、方法500は、走査データを分析する。このステップは、ステップ506で行われた複数の走査からのデータを使用して組み合わせデータセットを形成することを含み得る。このステップはまた、事前データを使用して組み合わせデータセットを形成することも含み得る。ステップ509において、方法500は、例えば画像を再構成するために組み合わせデータセットを処理する。
【0123】
図5Bは、PCD-CTについて上述したような複数の放射線モダリティからの走査データを組み合わせる例示的な方法550を示すフローチャートである。
【0124】
ステップ512において、走査実施中のX線源30のパラメータを含む、撮像X線照射のパラメータが選択される。このステップは、
図5Aの文脈で上述した方法500のステップ502の特徴のいずれかを含み得る。次いで、ステップ513で走査パラメータが設定され、これは方法500のステップ504の特徴のいずれかを含み得る。
【0125】
ステップ514において、方法550は、第1の走査を実行する。実施形態では、第1の走査は、第1の中心位置にある検出器、およびガントリーに対して第1の長手方向(例えば、
図2Dのy方向)に移動する患者支持体を有する走査構成で行われる螺旋走査である。走査は、第1の走査データ515を生成する。
【0126】
次に、ステップ520において、方法550は、第1の走査からの結果を分析する。方法550は、例えば、ステップ512で選択されたパラメータが変更される必要があるかどうかを判定してもよい。例えば、画像データが帯電および/または分極を受けているように見える場合、パラメータT1~T8、I、E、およびBは、これらの影響を低減するために方法200の文脈で上述したように変更されてもよい。このステップは、画像を改善するために、本明細書に開示する方法のいずれかでパラメータのいずれかを変更することを含み得る。また、検出器34の位置が変更されてもよい。例えば、検出器34は、中心ビームに対して第1の位置から第2のオフセット位置まで横方向にシフトさせることができる。
【0127】
ステップ525において、方法550は、第2の走査を実行する。第2の走査は、ステップ520においてパラメータに対して行われた任意の修正を除いて、第1の走査と同一とすることができる。走査は、第2の走査データ530を生成する。
【0128】
ステップ535において、方法550は、第1の走査データおよび第2の走査データを分析する。このステップでは、方法550は、画像を作成するための最終データとしてこれらのデータセットのうちの1つを選択し得る。あるいは、方法550は、両方のデータセットを使用して組み合わされた最終データセットを形成してもよい。どちらにしても、方法は画像を作成するための最終データを生成する。ステップ540において、方法500は、例えば画像を再構成するために最終データセットを処理する。
【0129】
図6は、オンライン適応IGRTのために複数の放射線モダリティからの走査データを組み合わせる例示的な方法600を示すフローチャートである。事前データ605は、既知の事前の画像、治療計画、物体、モデルなどからのものである。いくつかの実施形態では、走査構成(マルチモーダルシステムの各モダリティに対する走査設計を含む)が決定され、走査データ630、632を生成するために方法600の方法ステップ615および630に従って走査が実行され得る。低エネルギー走査データ630は、例えば、低エネルギーkV走査からのものであってもよい。高エネルギー走査データ632は、例えば、高エネルギーMV走査からのものであってもよい。ステップ640において、方法600は、低エネルギー走査データ630および高エネルギー走査データ632を利用するか、または組み合わせて、他の走査データ630、632を補足および/または制約する。次いで、ステップ650において、方法600は、補足および/または制約された他の走査データに基づいて治療計画を適応させる。
【0130】
いくつかの実施形態では、フルエンス電界変調撮像は、欠落したMVビュー情報を直交kV投影で補完することを含む。オンライン3D kV撮像を含むいくつかの実施形態では、MV治療投影が電子密度の定量的画像に対する制約として使用される。一実施形態では、オンライン定量的画像は、オンライン線量計算に使用される。別の実施形態では、計算された線量は、オフライン適応ワークフローで使用される。別の実施形態では、計算された線量は、品質保証ワークフローで使用される。
【0131】
いくつかの実施形態では、上記の方法を、好ましいワークフローに基づいて同時にまたはインターリーブ方式で実行することができる。例えば、マルチモーダル走査を行うことができ、得られた走査データを、上述の様々な特徴および利点のうちの2つ以上に利用することができる。
【0132】
上記の装置および方法が投影領域で使用される場合、各投影ビューに適用することができ、各投影ビューは平面画像である。様々な実施形態は、異なる走査形状、検出器の位置決め(オフセット検出器を含む)、および/またはビームフォーマ窓形状を利用することができる。
【0133】
上述したように、開示の技術の態様は、IGRTと併用するかまたはIGRTの一部として使用するための統合された低エネルギー(例えば、kV)源および高エネルギー(例えば、MV)源を含むマルチモーダル放射線源を利用する放射線療法デバイスおよび方法において利用することができる。一実施形態によれば、画像取得方法は、例えば、放射線療法の送達プラットフォーム上でkV CT撮像を提供するために、螺旋状線源軌道(例えば、ガントリーボアを通る患者支持体の長手方向移動を伴う中心軸を中心とした連続的な線源回転)または円形走査を、高速スリップリング回転と共に含むか、または別の方法で利用することができる。
【0134】
いくつかの実施形態では、体積画像を完成させるための複数のビーム回転と関連付けられる潜在的な走査時間の増加を、高kVフレームレート、高ガントリーレート、および/または疎データ再構成技術によって軽減または別の方法で相殺することができることが理解されよう。上記の選択的に制御可能なコリメータ/ビームフォーマを設けることにより、特定の用途および/または臨床的必要性に応じて、ユーザが画像取得時間対画質をトレードオフするか、または別の方法で変化させることができるシステムが可能になることがさらに理解されよう。また、放射線療法送達デバイスは、(例えば、動き追跡のための)画像取得時間が短い半回転または単回転コーンビームCT走査(潜在的な画質の低下を伴う)、ならびに取得時間はより長いが画質が高い、狭い/スリットファンビームによる円形または連続螺旋取得を提供するように制御することができることも理解されよう。1つまたは複数の最適化プロセスはまた、走査設計を決定する、ビーム位置決めを決定する、読み出し範囲を決定する、散乱を推定するなどのために、上記の実施形態のすべてに適用可能である。
【0135】
図7は、(例えば、マルチモーダル装置10を含む)放射線療法デバイスを使用するIGRTの例示的な方法700を示すフローチャートである。事前データ705は、患者の画像(例えば、事前の画像、これは上述したように、事前のCT画像を含む、以前に取得された計画画像であってもよい)、治療計画、ファントム情報、モデル、事前情報などを含むことができる。いくつかの実施形態では、事前データ705は、同じ放射線療法デバイスによって、ただしより早い時期に生成される。ステップ710において、放射線源(例えば、マルチモーダル装置10の線源30からのkV放射線および/または線源20からのMV放射線)を使用して患者の撮像が行われる。様々な実施形態において、撮像は、ファンまたはコーンビーム形状を有する螺旋走査または円形走査を含む。ステップ710は、上述の技術を使用して(1つもしくは複数の)高品質(HQ)画像または撮像/走査データ715を生成することができる。いくつかの実施形態では、画質/分解能と線量との間のバランスを最適化するために画質が調整され得る。言い換えれば、すべての画像が最高品質である必要はなく、または画質/分解能と画像取得時間との間のバランスを最適化もしくはトレードオフするように画質が調整されてもよい。撮像ステップ710はまた、(例えば、上述の方法に従って)撮像/走査データ715に基づいて患者画像を生成する画像処理720も含む。画像処理ステップ720は撮像ステップ710の一部として示されているが、いくつかの実施形態では、画像処理ステップ720は、画像処理が別個のデバイスによって実行される場合を含めて、別個のステップである。
【0136】
次に、ステップ730において、ステップ710からの撮像/走査データ715に少なくとも部分的に基づいて、後述する1つまたは複数の画像ベースの送達前ステップが行われる。以下でより詳細に説明するように、ステップ730は、治療的処置および(その後の)撮像計画と関連付けられる様々なパラメータを決定することを含むことができる。いくつかの実施形態では、画像ベースの送達前ステップ(730)は、治療送達(740)の前にさらなる撮像(710)を必要とし得る。ステップ730は、適応放射線療法ルーチンの一部として撮像データ715に基づいて治療計画を適応させることを含むことができる。いくつかの実施形態では、画像ベースの送達前ステップ730は、リアルタイムの治療計画を含んでもよい。実施形態はまた、上述のように、撮像用放射線源と治療用放射線源との同時、重複、および/または交互の活性化を含んでもよい。リアルタイムの治療計画は、これらの種類の撮像用および治療用放射線の活性化技術(同時、重複、および/または交互)のいずれかまたはすべてを含み得る。
【0137】
次に、ステップ740において、治療的処置送達が、高エネルギー放射線源(例えば、治療用放射線源20からのMV放射線)を使用して行われる。ステップ740は、治療計画に従って患者に治療線量745を送達する。いくつかの実施形態では、IGRT方法700は、様々な間隔(例えば、画分間)での追加の撮像のためにステップ710に戻り、その後必要に応じて画像ベースの送達前ステップ(730)および/または治療送達(740)が続くことを含んでもよい。このようにして、高品質の撮像データ715が、適応療法が可能な一装置10を使用してIGRT中に生成され、利用され得る。上述したように、ステップ710、ステップ730および/またはステップ740は、同時に実行されてもよく、重複して実行されてもよく、かつ/または交互に実行されてもよい。
【0138】
治療ビームを正確に送達するには、高品質の画像を用いて標的体積画分内の位置を識別および/または追跡する能力が必要である。送達速度を高める能力には、治療計画に従って放射線源を正確、精密、かつ迅速に移動させる能力が必要である。
【0139】
図8は、上記のステップ730と関連付けられ得る例示的な画像ベースの送達前ステップ/オプションを示すブロック
図800である。上述のマルチモーダル装置10(例えば、放射線療法デバイスの一部としての)は、本発明の範囲から逸脱することなく、画像ベースの送達前ステップ(730)に対してを含む、様々な方法で使用することができる低エネルギー画像および高エネルギー画像を生成することができることが理解されよう。例えば、放射線療法デバイスによって生成された画像715を、治療前に患者をセットアップし、またはアライメントさせる(810)ために使用することができる。患者アライメントは、現在の撮像データ715を、治療計画を含む事前の治療前走査および/または計画と関連付けられた撮像データと相関させ、または位置合わせすることを含むことができる。患者アライメントはまた、患者が物理的に送達システムの範囲内にあるかどうかを検証するために、放射線源に対する患者の物理的位置に関するフィードバックを含むこともできる。必要に応じて、患者をしかるべく調整することができる。いくつかの実施形態では、患者アライメント撮像は、十分なアライメント情報を提供しつつ、線量を最小限に抑えるために、意図的により低品質のものであり得る。
例示的な患者アラインメントプロセスを以下で説明する。
【0140】
マルチモーダル装置10によって生成された画像は、治療計画または再計画(820)にも使用することができる。様々な実施形態において、ステップ820は、治療計画を確認すること、治療計画を修正すること、新しい治療計画を生成すること、および/または治療計画のセットから治療計画(「当日の計画」と呼ばれることもある)を選択することを含むことができる。例えば、撮像データ715が、標的体積またはROIが、治療計画が策定されたときの標的体積またはROIと同じであることを示す場合には、治療計画を確認することができる。しかしながら、標的体積またはROIが同じでない場合、治療的処置の再計画が必要となり得る。再計画の場合、(ステップ710においてマルチモーダル装置10によって生成された)撮像データ715の品質が高いため、撮像データ715は治療計画または再計画(例えば、新しいまたは修正された治療計画を生成すること)に使用されてもよい。このようにして、別のデバイスによる治療前CT撮像は不要である。いくつかの実施形態では、確認および/または再計画は、様々な治療の前および/または後の進行中の手順であり得る。
【0141】
別の例示的なユースケースによれば、マルチモーダル装置10によって生成された画像を使用して、撮像線量を計算する(830)ことができ、これは患者に対する総線量の進行中の決定および/または後続の撮像計画に使用されてもよい。後続の撮像の品質はまた、例えば、品質と線量とのバランスをとるために、治療計画の一部として決定されてもよい。別の例示的なユースケースによれば、マルチモーダル装置10によって生成された画像を使用して治療線量を計算する(840)ことができ、これは患者に対する総線量の進行中の決定に使用されてもよく、かつ/または治療計画もしくは再計画の一部として含まれてもよい。
【0142】
他の例示的なユースケースによれば、マルチモーダル装置10によって生成された画像は、例えば、適応療法および/または治療計画生成の一部として、を含む、他の撮像(850)および/または他の治療(860)のパラメータまたは計画を計画または調整することに関連して使用することができる。別の例示的なユースケースによれば、マルチモーダル装置10によって生成された画像は、適応療法監視(870)に関連して使用することができ、適応治療監視は、治療送達を監視すること、および再計画を含む、必要に応じて適応させることを含むことができる。
【0143】
画像ベースの送達前ステップ(730)は相互排他的ではないことを理解されたい。例えば、様々な実施形態において、治療線量を計算すること(840)は、それ自体で1つのステップであってもよく、かつ/または適応療法監視(870)および/または治療計画(820)の一部であってもよい。様々な実施形態において、画像ベースの送達前ステップ(730)は、自動的に、かつ/または人間の関与により手動で行うことができる。
【0144】
図9は、撮像(710)および/または後続の画像ベースの送達前ステップ(730)の間に利用され得る例示的なデータソースを示すブロック
図900である。検出器データ910は、放射線検出器24、34によって受信されるデータを表す。投影データ920は、上記で作動領域と呼ばれた、コリメートビーム領域に入射する放射線によって生成されるデータである。ペナンブラデータ930は、ペナンブラ領域に入射する放射線によって生成されるデータである。散乱データ940は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年11月25日に出願された、「Multimodal Radiation Apparatus and Methods」と題する米国特許出願公開第2020/0170598号、2021年10月6日に発行された現在の米国特許第11,154,269号により詳細に記載されているように、ペナンブラ領域の外側の周辺領域に入射する放射線によって生成されたデータおよび/または決定された散乱である。別の実施形態では、散乱データ940を、2つの線源20、30が同時にまたはインターリーブ方式で動作するときの治療用放射線源20(例えば、MV)からの散乱の残留効果を決定するために使用することができる。
【0145】
このようにして、ペナンブラデータ930および/または散乱データ940は、撮像ステップ710によって生成された画像の品質を改善するために利用され得る。いくつかの実施形態では、ペナンブラデータ930および/または散乱データ940は、投影データ920と組み合わされ、かつ/または適用可能な撮像設定950、治療設定960(例えば、同時の撮像用および/または治療用放射線の場合)、ならびに検出器24、34におけるデータ収集時にマルチモーダル装置10と関連付けられる任意の他のデータ970を考慮して分析され得る。他の実施形態では、データは治療計画ステップ930に使用されてもよい。
【0146】
図10および
図11は、上述の方法の使用を含む、IGRT中のマルチモーダル装置10を使用したオンボード撮像と関連付けられる様々な順方向ドおよびフィードバックシーケンスの例を含む、撮像710、画像ベースの送達前ステップ730、および治療送達740のユースケースの例示的な実施形態を示している。
【0147】
図10は、(例えば、マルチモーダル装置10を含む)放射線療法デバイスを使用した患者セットアップまたはアライメントを含む例示的な方法1000を示すフローチャートである。事前データ1005は、患者の画像(例えば、事前の画像、これは上述したように、事前CT画像を含む、以前に取得された計画画像であってもよい)を含むことができる。いくつかの実施形態では、事前データ1005は、同じ放射線療法デバイスによって、ただしより早い時期に生成される。ステップ1010において、患者の初期または予備アライメントを行うことができる。次いで、ステップ1020において、例えば、上述のステップ710で説明したように、マルチモーダル装置10の低エネルギー放射線源および/または高エネルギー放射線源(例えば、線源30からのkV放射線および/または線源20からのMV放射線)を使用してオンボード撮像走査が行われる。様々な実施形態において、オンボード撮像は、ファンまたはコーンビーム形状を有する螺旋走査または円形走査を含む。ステップ1020は、上述の技術を使用してオンライン撮像/走査データ1030を生成する。撮像ステップ1020はまた、例えば、上述のブロック720で説明したように、(例えば、上述の方法に従って)撮像/走査データ1030に基づいて患者画像を生成する画像処理も含むことができる。
【0148】
次に、ステップ1040は、例えば、上述のブロック810で説明したように、オンライン走査データ1030に少なくとも部分的に基づいてアライメント補正が必要かどうかを判定する。アライメント補正または調整が必要な場合、方法1000は、オンライン走査データ1030に少なくとも部分的に基づいて、アライメント補正のためにステップ1050に進む。次いで、アライメント補正後、方法は、確認またはさらなる改良ループとしての追加の撮像のためにステップ1020に戻ることができる。ステップ1040からアライメント補正または調整が必要ではない場合、方法1000は、治療送達のためにステップ1060に進む。次いで、治療後、方法1000は、確認またはさらなる改良ループとしての追加の撮像のためにステップ1020に戻ることができる。
【0149】
図11は、(例えば、マルチモーダル装置10を含む)放射線療法デバイスを使用する適応IGRTを含む例示的な方法1100を示すフローチャートである。事前治療計画1105は、治療計画ならびに患者の画像(例えば、事前の画像、これは上述したように、事前のCT画像を含む、以前に取得された計画画像であってもよい)、ファントム情報、モデル、事前情報などを含むことができる。いくつかの実施形態では、事前データ1105は、同じ放射線療法デバイスによって、ただしより早い時期に生成される。ステップ1110において、例えば、事前治療計画および任意の追加情報に基づいて、初期または予備治療計画を採用することができる。次いで、ステップ1120において、例えば、上述のステップ710で説明したように、マルチモーダル装置10の低エネルギー放射線源および/または高エネルギー放射線源(例えば、線源30からのkV放射線および/または線源20からのMV放射線)を使用してオンボード撮像走査が行われる。様々な実施形態において、オンボード撮像は、ファンまたはコーンビーム形状を有する螺旋走査または円形走査を含む。ステップ1120は、上述の技術を使用してオンライン撮像/走査データ1130を生成する。撮像ステップ1120はまた、例えば、上述のブロック720で説明したように、(例えば、上述の方法に従って)撮像/走査データ1130に基づいて患者画像を生成する画像処理も含むことができる。
【0150】
次に、ステップ1140は、例えば上記のブロック820で説明したように、オンライン走査データ1130に少なくとも部分的に基づいて治療計画を再計画または適応させる必要があるかどうかを判定する。治療計画を適応または再計画させる必要がない場合、方法1100は、治療送達のためにステップ1150に進む。治療計画を適応させるか、または再計画する必要がある場合、方法1100は、オンライン走査データ1130に少なくとも部分的に基づいて、治療計画を適応させるためにステップ1160に進む。次いで、治療計画を適応させた後、方法は治療送達のためにステップ1150に進むことができる。次いで、治療後、方法1100は、確認またはさらなる改良ループとしての追加の撮像のためにステップ1120に戻ることができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、方法1000、1100および他の方法は、好ましいワークフローに基づいて同時にまたはインターリーブ方式で実行することができる。例えば、オンボード撮像走査を1020と1120両方の走査として行い、利用して、同じデータを使用して同時に治療および連続したアライメントを確認することができる。他の実施形態では、画像ベースの送達前ステップ730のうちの2つ以上を、同じ撮像データ715および/または画像処理720が画像ベースの送達前ステップ730のうちの複数に利用される場合を含めて、好ましいワークフローに基づいて同時にまたはインターリーブ方式で実行することができる。
【0152】
開示の技術は、特定の態様、1つまたは複数の実施形態に関して図示され説明されているが、本明細書および添付の図面を読んで理解すれば、当業者には均等な変更例および修正例が想起されることは明らかである。特に、上述の要素(構成要素、アセンブリ、デバイス、部材、組成物など)によって行われる様々な機能に関して、そのような要素を説明するために使用される(「手段」への言及を含む)用語は、特に明記されない限り、開示の技術の本明細書に示される例示的な態様、1つまたは複数の実施形態においてその機能を行う開示の構造と構造的に均等ではなくても、記載の要素の指定された機能を行う任意の要素に対応する(すなわち、機能的に等価である)ことが意図されている。さらに、開示の技術の特定の特徴は、いくつかの例示の態様または実施形態のうちの1つまたは複数のみに関して上述されている場合があるが、そのような特徴は、任意の所与のまたは特定の用途にとって所望され、有利であり得るように、他の実施形態の1つまたは複数の他の特徴と組み合わされてもよい。
【0153】
本明細書で説明した実施形態は、上述したシステムおよび方法に関連しているが、これらの実施形態は例示的であることが意図されており、これらの実施形態の適用性を本明細書に記載した説明のみに限定することを意図されたものではない。本発明はその実施形態の説明によって例示されており、実施形態はある程度詳細に説明されているが、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に制限することも、いかなる方法で限定することも、本出願人の意図ではない。当業者にはさらなる利点および修正が容易に明らかになるであろう。したがって、本発明はそのより広い態様において、図示および説明された特定の詳細、代表的な装置および方法、ならびに実例に限定されない。よって、出願人の一般的な発明概念の趣旨または範囲から逸脱することなく、そのような詳細からの逸脱がなされ得る。
【外国語明細書】