(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156624
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】接合構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/72 20060101AFI20241029BHJP
B29C 65/70 20060101ALI20241029BHJP
B29C 70/24 20060101ALI20241029BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20241029BHJP
B29C 65/60 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B29C65/72
B29C65/70
B29C70/24
B29C45/14
B29C65/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068938
(22)【出願日】2024-04-22
(62)【分割の表示】P 2023555507の分割
【原出願日】2023-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000208857
【氏名又は名称】第一電通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】江口 剛志
(72)【発明者】
【氏名】西藪 和明
【テーマコード(参考)】
4F205
4F206
4F211
【Fターム(参考)】
4F205AD05
4F205AD16
4F205AG03
4F205HA12
4F205HA14
4F205HA24
4F205HA34
4F205HA37
4F205HB01
4F205HF05
4F205HK16
4F205HT25
4F206AD05
4F206AD16
4F206AG03
4F206AR13
4F206JA07
4F206JB12
4F206JF05
4F211AA32
4F211AD16
4F211AD19
4F211TA06
4F211TA08
4F211TA15
4F211TC21
4F211TN74
4F211TN82
4F211TN85
(57)【要約】 (修正有)
【課題】強度の向上を実現可能な接合構造体を提供する。
【解決手段】接合構造体の製造方法は、セット工程において、キャビティ内に第1、2プリプレグ11f、11sを設ける。第1、2プリプレグ11f、11sは、第1炭素繊維の延びる第1方向と第2炭素繊維の延びる第2方向とが交差し、第1方向及び第2方向と直交する第3方向に特定範囲SAで重なる。型締め工程では、セット工程後、第1型と第2型とを型締めする。穴開け工程では、特定範囲SAに対してニードルを先端部から第3方向に進入させ、ニードル27で接続穴51aを形成する。射出工程では、キャビティ内に射出材料を射出して構造体51を成形する。接合工程では、構造体51と、相手材61とをリベット71によって接合して接合構造体81とする。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱可塑性樹脂からなる第1母材内に1方向のみに延びる複数本の第1炭素繊維を有し、前記第1炭素繊維の延びる第1方向に長いロッド状の第1プリプレグと、第2熱可塑性樹脂からなる第2母材内に1方向のみに延びる複数本の第2炭素繊維を有し、前記第2炭素繊維の延びる第2方向に長いロッド状の第2プリプレグと、第1型と、前記第1型とともにキャビティを形成する第2型と、尖った先端部を有するニードルと、第3熱可塑性樹脂を含み、前記キャビティ内に射出される射出材料とを準備する準備工程と、
前記キャビティ内に前記第1プリプレグを設けるとともに、前記第1方向と前記第2方向とが交差する特定範囲において、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向で重なるように、前記キャビティ内に前記第1プリプレグを設けるセット工程と、
前記セット工程後、前記第1型と前記第2型とを型締めする型締め工程と、
前記型締め工程中又は前記型締め工程後、前記特定範囲に対して前記ニードルを前記先端部から前記第3方向に進入させ、前記ニードルで接続穴を形成する穴開け工程と、
前記穴開け工程中又は前記穴開け工程後、前記キャビティ内に前記射出材料を射出して構造体を成形する射出工程と、
前記構造体と、相手材とをリベットによって接合して接合構造体とする接合工程とを備え、
前記第3熱可塑性樹脂は、前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂よりも融点が高く、
前記射出工程では、前記接続穴に前記ニードルを残しつつ前記射出材料を射出することを特徴とする接合構造体の製造方法。
【請求項2】
前記相手材は前記接続穴と整合する挿入穴を有し、
前記リベットは、第5熱可塑性樹脂からなる第5母材内に1方向に延びる複数本の第5炭素繊維を有する請求項1記載の接合構造体の製造方法。
【請求項3】
前記ニードルを前記リベットとする請求項2記載の接合構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接合構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の接合構造体が開示されている。この接合構造体は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる母材内に炭素繊維を有する2枚のCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)製の構造体がリベットによって接合されている。
【0003】
CFRP製の構造体は、金属製の構造体と比較し、軽量でありながら高強度である他、疲労特性や腐食性に優れている。特に、CFRP製の複数の構造体がリベットによって接合された接合構造体は、接着剤を用いる必要がないことから、接合時間の短縮、低コストの他、高い耐久性等の長所を発揮する。このため、接合構造体は、自動車等の分野において、部品等への適用が広く期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の接合構造体は、2枚の構造体をリベットによって打ち抜くことによって得られることから、各構造体中の炭素繊維がリベットによって切断され易く、構造体の接合面に沿った方向の引張強度が損なわれる。
【0006】
特に、第1構造体中の炭素繊維が第1方向に延び、第2構造体中の炭素繊維が第1方向と直交等、交差する第2方向に延び、これら第1構造体と第2構造体とを上記のように接合した接合構造体では、第1構造体中の炭素繊維がリベットが貫設する接合穴によって第1方向で切断され易いとともに、第2構造体中の炭素繊維も同じ接合穴によって第2方向で切断され易い。このため、接合構造体は、引張強度が第1方向及び第2方向で低下してしまう。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、強度の向上を実現可能な接合構造体を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の接合構造体の製造方法は、第1熱可塑性樹脂からなる第1母材内に1方向のみに延びる複数本の第1炭素繊維を有し、前記第1炭素繊維の延びる第1方向に長いロッド状の第1プリプレグと、第2熱可塑性樹脂からなる第2母材内に1方向のみに延びる複数本の第2炭素繊維を有し、前記第2炭素繊維の延びる第2方向に長いロッド状の第2プリプレグと、第1型と、前記第1型とともにキャビティを形成する第2型と、尖った先端部を有するニードルと、第3熱可塑性樹脂を含み、前記キャビティ内に射出される射出材料とを準備する準備工程と、
前記キャビティ内に前記第1プリプレグを設けるとともに、前記第1方向と前記第2方向とが交差する特定範囲において、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向で重なるように、前記キャビティ内に前記第1プリプレグを設けるセット工程と、
前記セット工程後、前記第1型と前記第2型とを型締めする型締め工程と、
前記型締め工程中又は前記型締め工程後、前記特定範囲に対して前記ニードルを前記先端部から前記第3方向に進入させ、前記ニードルで接続穴を形成する穴開け工程と、
前記穴開け工程中又は前記穴開け工程後、前記キャビティ内に前記射出材料を射出して構造体を成形する射出工程と、
前記構造体と、相手材とをリベットによって接合して接合構造体とする接合工程とを備え、
前記第3熱可塑性樹脂は、前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂よりも融点が高く、
前記射出工程では、前記接続穴に前記ニードルを残しつつ前記射出材料を射出することを特徴とする。
【0009】
穴開け工程を常温で行うことが好ましい。
【0010】
穴開け工程では、特定範囲の第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂が軟化するように加熱することが好ましい。
【0011】
型締め工程中、キャビティ内で第1プリプレグ及び第2プリプレグを一体にするように加圧する加圧工程を備えていることが好ましい。
【0012】
加圧工程では、特定範囲の第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂が軟化するように加熱することが好ましい。
【0013】
ニードルは、第4熱可塑性樹脂からなる第4母材内に1方向に延びる複数本の第4炭素繊維を有し、第4炭素繊維の延びる第3方向に長いことが好ましい。
【0014】
セット工程では、第1方向と第2方向とを直交させることが好ましい。
【0015】
ニードルは、第1型及び/又は第2型に移動可能に設けられていることが好ましい。
【0016】
第1教示の構造体の成形方法は、第1熱可塑性樹脂からなる第1母材内に1方向のみに延びる複数本の第1炭素繊維を有する第1プリプレグと、第2熱可塑性樹脂からなる第2母材内に1方向のみに延びる複数本の第2炭素繊維を有する第2プリプレグと、第1型と、前記第1型とともにキャビティを形成する第2型と、尖った先端部を有するニードルとを準備する準備工程と、
前記キャビティ内に前記第1プリプレグを設けるとともに、前記第1炭素繊維の延びる第1方向と前記第2炭素繊維の延びる第2方向とが交差し、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に特定範囲で重なるように、前記キャビティ内に前記第2プリプレグを設けるセット工程と、
前記セット工程後、前記第1型と前記第2型とを型締めする型締め工程と、
前記型締め工程中又は前記型締め工程後、前記キャビティ内で前記第1プリプレグ及び前記第2プリプレグを一体にするように加圧する加圧工程と、
前記加圧工程中又は前記加圧工程後、前記特定範囲に対して前記ニードルを前記先端部から前記第3方向に進入させ、前記ニードルで接続穴を形成する穴開け工程とを備えている。
【0017】
第1教示の成形方法では、セット工程において、第1炭素繊維の延びる第1方向と第2炭素繊維の延びる第2方向とを交差させ、型締め工程において、第1プリプレグ及び第2プリプレグを一体とするため、トラス等の構造体を成形できる。
【0018】
特に、穴開け工程において、第1プリプレグと第2プリプレグとが重なる特定範囲に対し、ニードルを尖った先端部から第3方向に進入させることから、第1プリプレグ中の第1炭素繊維はニードルの先端部によって第1母材内で徐々にニードルの径外方向に押しやられ、第2プリプレグ中の第2炭素繊維もニードルの先端部によって第2母材内で徐々にニードルの径外方向に押しやられる。このため、第1プリプレグの炭素繊維及び第2プリプレグの炭素繊維がともに切断され難い。こうして、得られる構造体には、周囲の炭素繊維の切断が抑制された接続穴が形成される。
【0019】
また、第1教示の成形方法では、第1プリプレグと第2プリプレグとをキャビティ内で拘束しつつ穴開け工程を行っていることから、インサートPCM(Pre-Preg Compression Molding)工法となり、構造体は変形し難く、高い寸法精度を有している。
【0020】
第2教示の構造体の成形方法は、第1熱可塑性樹脂からなる第1母材内に1方向のみに延びる複数本の第1炭素繊維を有する第1プリプレグと、第1型と、前記第1型とともにキャビティを形成する第2型と、尖った先端部を有するニードルと、第3熱可塑性樹脂を含み、前記キャビティ内に射出される射出材料とを準備する準備工程と、
前記キャビティ内に前記第1プリプレグを設けるセット工程と、
前記セット工程後、前記第1型と前記第2型とを型締めする型締め工程と、
前記型締め工程中又は前記型締め工程後、前記第1プリプレグの特定範囲に対して前記ニードルを前記先端部から前記第1方向と直交する第3方向に進入させ、前記ニードルで接続穴を形成する穴開け工程と、
前記穴開け工程中又は前記穴開け工程後、前記キャビティ内に前記射出材料を射出する射出工程とを備え、
前記第3熱可塑性樹脂は、前記第1熱可塑性樹脂よりも融点が高く、
前記射出工程では、前記接続穴に前記ニードルを残しつつ前記射出材料を射出する。
【0021】
第2教示の成形方法では、穴開け工程において、第1プリプレグの特定範囲に対し、ニードルを尖った先端部から第3方向に進入させることから、第1プリプレグ中の第1炭素繊維はニードルの先端部によって第1母材内で徐々にニードルの径外方向に押しやられる。このため、第1プリプレグの炭素繊維が切断され難い。
【0022】
穴開け工程中又は穴開け工程後に射出工程を行うことから、インサート射出成形工法となり、構造体は、第1プリプレグ及び射出材料が一体に成形され、より実用性が高まる。特に、キャビティ内に射出材料を射出することから、射出材料が接続穴も成形し、接続穴を好ましい形状に整えることができる。穴開け工程中に射出工程を行えば、射出材料の温度によって第1プリプレグの第1熱可塑性樹脂が軟化するように加熱でき、穴開け工程時に特定範囲の第1熱可塑性樹脂が軟化するようにする必要性を低減又は無くすことができる。また、穴開け工程中に射出工程を行えば、構造体の成形サイクルタイムを短縮でき、製造コストの低廉化を実現することができる。
【0023】
こうして、得られる構造体には、周囲の炭素繊維の切断が抑制されているとともに、好ましい形状の接続穴が形成される。
【0024】
第1、2教示の成形方法で得られる構造体は、熱可塑性樹脂及び炭素繊維からなるため、CFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastics、熱可塑性CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)ともいう。)であり、金属製の構造体と比較し、軽量でありながら高強度である他、疲労特性や腐食性に優れる。
【0025】
第3教示の接合構造体は、上記成形方法で得られた構造体と、前記構造体と積層され、前記接合穴と整合する挿入穴を有する相手材とを備え、
前記接続穴及び前記挿入穴には、第5熱可塑性樹脂からなる第5母材内に1方向に延びる複数本の第5炭素繊維を有し、前記構造体と前記相手材とを接合するリベットが設けられている。
【0026】
第3教示の接合構造体は、第1、2教示で得られる構造体と相手材とをリベットで接合していることから、構造体の接合面に沿った方向の引張強度が損なわれ難い。また、この接合構造体は、接着剤を用いる必要がないことから、接合時間の短縮、低コストの他、高い耐久性等の長所を発揮する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の接合構造体によれば、強度の向上を実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】参考例に係り、準備工程時の第1金型、第2金型及びニードルを示す模式断面図である。
【
図3】参考例に係り、セット工程時の第1金型、第2金型、ニードル、第1プリプレグ及び第2プリプレグを示す模式断面図である。
【
図4】参考例に係り、型締め工程及び加圧工程時の第1金型、第2金型、ニードル、第1プリプレグ及び第2プリプレグを示す模式断面図である。
【
図5】参考例に係り、型締め工程及び加圧工程時の初期における第1プリプレグ及び第2プリプレグの模式拡大断面図である。
【
図6】参考例に係り、型締め工程及び加圧工程時の終期における第1プリプレグ及び第2プリプレグの模式拡大断面図である。
【
図7】参考例に係り、穴開け工程時の第1金型、第2金型、ニードル、第1プリプレグ及び第2プリプレグを示す模式断面図である。
【
図8】参考例に係り、穴開け工程時における第1プリプレグ、第2プリプレグ及びニードルの模式拡大断面図である。
【
図9】参考例の成形方法で得られた構造体の要部拡大断面図である。
【
図10】参考例の成形方法で得られた構造体を拡大して示し、一部断面の平面図である。
【
図11】参考例の成形方法で得られた構造体を拡大して示し、一部断面の裏面図である。
【
図12】参考例の成形方法で得られた構造体の平面図である。
【
図13】参考例の成形方法で得られた構造体と、相手材との断面図である。
【
図15】実施例1に係り、準備工程時の第1金型、第2金型及びニードルを示す模式断面図である。
【
図16】実施例1に係り、セット工程及び型締め工程時の第1金型、第2金型、ニードル及び第1プリプレグを示す模式断面図である。
【
図17】実施例1に係り、射出工程及び穴開け工程時の第1金型、第2金型、ニードル、第1プリプレグ及び射出材料を示す模式断面図である。
【
図18】実施例1の成形方法で得られた2つの構造体と、相手材との断面図である。
【
図19】実施例1の接合構造体の要部断面図である。
【
図20】実施例2に係り、準備工程時の第1金型、第2金型及びニードルを示す模式断面図である。
【
図21】実施例2に係り、セット工程時の第1金型、第2金型、ニードル、第1プリプレグ及び第2プリプレグを示す模式断面図である。
【
図22】実施例2に係り、型締め工程及び加圧工程時の第1金型、第2金型、ニードル、第1プリプレグ及び第2プリプレグを示す模式断面図である。
【
図23】実施例2に係り、射出工程及び穴開け工程時の第1金型、第2金型、ニードル、第1プリプレグ、第2プリプレグ及び射出材料を示す模式断面図である。
【
図24】実施例2の成形方法で得られた構造体と、相手材との断面図である。
【
図25】実施例2の接合構造体の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
第1~3教示において、第1プリプレグの第1母材を構成する第1熱可塑性樹脂、第2プリプレグの第2母材を構成する第2熱可塑性樹脂、射出材料を構成する第3熱可塑性樹脂、ニードルを構成し得る第4熱可塑性樹脂、リベットの第5母材を構成する第5熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAC)、ポリウレタン(PUR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリルスチレンコポリマー(AS樹脂)、アクリル(PMMA)樹脂、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等を採用することができる。第1~5熱可塑性樹脂は同種であってもよく、異種であってもよい。
【0030】
第1~3教示において、第1、2、4、5炭素繊維はフィラメントである。第1、2、4、5炭素繊維はPAN(Polyacrylonitrile)系であってもよく、ピッチ系であってもよい。また、第1、2、4、5炭素繊維は同径であってもよく、異径であってもよい。また、第1プリプレグが有する第1炭素繊維の本数や密度と、第2プリプレグが有する第2炭素繊維の本数や密度と、ニードルが有し得る第4炭素繊維の本数や密度と、リベットが有する第5炭素繊維の本数や密度とは、同じであってもよく、異なってもよい。
【0031】
第1、2教示において、第1、2プリプレグは、炭素繊維に熱可塑性樹脂を完全に含侵させたものの他、不完全に含侵させたいわゆるセミプレグであってもよい。第1、2プリプレグは角柱状、円柱状等のロッドであってもよく、シートであってもよい。第1、2プリグレグと同様の第3プリプレグ、第4プリプレグ等を用いることも可能である。また、第1、2教示の成形方向において、構造体の形状は限定されない。
【0032】
第1教示において、加圧工程は、型締め工程中に行ってもよく、型締め工程後に行ってもよい。型締め工程中に加圧工程を行えば、構造体の成形サイクルタイムを短縮でき、製造コストの低廉化を実現することができる。型締め工程後に加圧工程を行えば、加圧力を調整し易い。
【0033】
第1教示において、穴開け工程は、加圧工程中に行ってもよく、加圧工程後に行ってもよい。加圧工程中に穴開け工程を行えば、構造体の成形サイクルタイムを短縮でき、製造コストの低廉化を実現することができる。
【0034】
第1教示において、準備工程では、第3熱可塑性樹脂を含み、キャビティ内に射出される射出材料を準備し得る。そして、成形方法は、穴開け工程前、穴開け工程中又は穴開け工程後、キャビティ内に射出材料を射出する射出工程を備えていることが好ましい。この場合、インサート射出成形工法となり、構造体は、第1プリプレグと第2プリプレグとが一体になっただけではなく、射出材料によっても成形され、より実用性が高まる。特に、キャビティ内に射出材料を射出することから、射出材料が接続穴も成形し、接続穴を好ましい形状に整えることができる。穴開け工程中に射出工程を行えば、射出材料の温度によって第1プリプレグの第1熱可塑性樹脂及び第2プリプレグの第2熱可塑性樹脂が軟化するように加熱でき、穴開け工程時に特定範囲の第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂が軟化するようにする必要性を低減又は無くすことができる。また、穴開け工程中に射出工程を行えば、構造体の成形サイクルタイムを短縮でき、製造コストの低廉化を実現することができる。
【0035】
第1教示において、第3熱可塑性樹脂は、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂よりも融点が高いことが好ましい。この場合、射出材料の温度によって第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂を確実に軟化又は溶融し、構造体の一体性が増すとともに、接続穴を含む構造体の寸法精度が高くなる。
【0036】
第1教示において、加圧工程では、特定範囲の第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂が軟化するように加熱することが好ましい。この場合、第1プリプレグの第1母材と第2プリプレグの第2母材とがより一体になり易い。加熱温度は、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂の少なくとも一方の熱変形温度以上が好ましい。第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂の少なくとも一方の融点以下でも構わない。
【0037】
第1教示において、穴開け工程では、特定範囲の第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂が軟化するように加熱することが好ましい。穴開け工程前や穴開け工程中に射出工程を行わない場合、第1、2炭素繊維がニードルの先端部によって第1、2母材内で移動し易く、より切断され難くなる。加熱温度は、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂の少なくとも一方の熱変形温度以上が好ましい。第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂の少なくとも一方の融点以下でも構わない。
【0038】
第2教示において、第3熱可塑性樹脂は、第1熱可塑性樹脂よりも融点が高いことが好ましい。この場合、射出材料の温度によって第1熱可塑性樹脂が軟化又は溶融し、構造体の一体性が増すとともに、接続穴を含む構造体の寸法精度が高くなる。
【0039】
第2教示において、準備工程では、第2熱可塑性樹脂からなる第2母材内に1方向のみに延びる複数本の第2炭素繊維を有する第2プリプレグを準備し得る。また、セット工程では、特定範囲において、第1炭素繊維の延びる第1方向と第2炭素繊維の延びる第2方向とが交差し、第3方向で重なるように、キャビティ内に第2プリプレグを設けることが好ましい。そして、穴開け工程では、特定範囲に対してニードルを先端部から第3方向に進入させ、ニードルで接続穴を形成することが好ましい。この場合、第1プリプレグと第2プリプレグとを一体に含む構造体に接続穴を形成することができる。
【0040】
第2教示において、第3熱可塑性樹脂は、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂よりも融点が高いことが好ましい。この場合、射出材料の温度によって第1、2熱可塑性樹脂が軟化又は溶融し、構造体の一体性が増すとともに、接続穴を含む構造体の寸法精度が高くなる。
【0041】
第2教示において、型締め工程中、キャビティ内で第1プリプレグ及び第2プリプレグを一体にするように加圧することが好ましい。この場合、構造体の一体性が増すとともに、接続穴を含む構造体の寸法精度が高くなる。
【0042】
第1、2教示において、ニードルは、第4熱可塑性樹脂からなる第4母材内に1方向に延びる複数本の第4炭素繊維を有することが好ましい。この場合、ニードルをそのままCFRTP製のリベットとして用いることができる。
【0043】
第1、2教示において、セット工程では、第1方向と第2方向とを直交させることが好ましい。この場合、炭素繊維を編み込む必要なく、高い強度の構造体が得られる。
【0044】
第1、2教示において、第1プリプレグ及び第2プリプレグはロッド状をなし、特定範囲は第1プリプレグ及び第2プリプレグが交差する部分であり得る。この場合、トラスや格子状の構造体を成形すれば、接合穴もその交差する部分に形成されることとなることから、接合構造体を自動車、航空機、宇宙船、船舶、列車、建築物等に広く適用可能である。
【0045】
第3教示の接合構造体は、リベットもCFRTPであることから、第3方向に高い剥離強度を発揮する。CFRTP製のリベットとしては、特許第6840410号や特許第6901063号に開示された軸体又は中間体を採用し、これらの文献に開示された締結方法及び締結装置を採用することができる。
【0046】
第3教示において、相手材は接合穴と整合する挿入穴を有すれば、金属であってもよいし、CFRTPであってもよいし、熱硬化性CFRPであってもよい。
【0047】
以下、参考例と、本発明を具体化した実施例1、2とを図面を参照しつつ説明する。
【0048】
(参考例)
参考例は、射出工程を行わない第1教示と、第3教示とを具体化した。まず、準備工程において、
図1(A)に示す複数本のプリプレグ11を準備した。これらのプリプレグ11は、四角柱形状でロッド状をなしており、母材11a内に長さ方向のみに延びる複数本の炭素繊維11bを有している。母材11aは熱可塑性樹脂である。これらのプリプレグ11が第1、2プリプレグ11f、11sに相当し、母材11aが第1、2熱可塑性樹脂からなる第1、2母材11aに相当し、炭素繊維11bが第1、2炭素繊維11bに相当する。
【0049】
また、
図2に示すように、成形装置21を準備した。成形装置21は、第1型23と、第2型25と、複数本のニードル27とを備えている。第1型23と第2型25とは相対移動して型締めできるようになっている。
【0050】
第1型23には型割り面21aから第1成形面23aが凹設されている。第1成形面23aは、
図12及び
図13に示すように、3本の第1プリプレグ11fを紙面の左右方向に延在させて嵌合するようになっている。参考例では、
図12及び
図13の紙面の左右方向が第1方向である。
【0051】
図2に示すように、第2型25には型割り面21bから第2成形面25aが凹設されている。第1型23の第1成形面23aと、第2型25の第2成形面25aとがキャビティCを形成する。第2成形面25aは、3本の第1部251aと、3本の第2部252aと、無数の第3部253aとからなる。
【0052】
第1部251aは、第1成形面23aと対面しており、
図12及び
図13に示すように、3本の第1プリプレグ11fを紙面の左右方向に嵌合するようになっている。第1成形面23aの型割り面21aからの深さと、第1部251aの型割り面21bからの深さとの合計は、第1プリプレグ11fの厚さと等しくなっている。
【0053】
図2に示すように、第2部252aは第1部251aと連続して凹設されている。第2部252aは3本の第2プリプレグ11sを
図12の紙面の上下方向、
図13の紙面の厚さ方向に延在させて嵌合するようになっている。参考例では、
図12の紙面の上下方向、
図2及び
図13の紙面の厚さ方向が第2方向である。このため、第1プリプレグ11fと第2プリプレグ11sとは、直交し、9つの特定範囲SAで重なるようになっている。
【0054】
図2に示すように、第1成形面23aの底面から第2部252aの底面までの長さは、第1プリプレグ11fの厚さと第2プリプレグ11sの厚さとの合計よりも小さい。このため、型割り面21aと型割り面21bとを合わせることにより、第1型23と第2型25とを型締めすれば、第1プリプレグ11fと第2プリプレグ11sとは特定範囲SAで加圧されて一体になるが、第1プリプレグ11f及び第2プリプレグ11sは各特定範囲SAで材料が余る。このため、第3部253aが第1部251aと第2部252aとの間に形成され、その材料が各第3部253aで成形されるようになっている。
【0055】
第1型23には、各特定範囲SAに向かって垂直に延びるニードル孔23bが貫設されている。また、第2型25にも、ニードル孔23bと一致するように各特定範囲SAに向かって垂直に延びるニードル孔25bが貫設されている。各ニードル孔23b、25bには金属製のニードル27が移動可能に設けられている。ニードル27は、円錐状に尖った先端部27aと、先端部27aと同軸に円柱状に延びる円柱部27bとからなる。ニードル孔23b内のニードル27は、先端部27aからキャビティC内に突出し、円柱部27bをキャビティC内に位置させるまで突出可能である。
【0056】
また、第1型23には各ニードル孔23b周りに加熱穴23cが形成されている。また、第2型25にも各ニードル孔25b周りに加熱穴25cが形成されている。各ニードル孔23b周りの加熱穴23c及び各ニードル孔25b周りの加熱穴25cは接続されており、所定の温度の油等の熱媒体が循環されるようになっている。
【0057】
セット工程では、
図3に示すように、キャビティC内に第1プリプレグ11fを設けるとともに、第2プリプレグ11sを設ける。具体的には、第1型23の第1成形面23aに第1プリプレグ11fを嵌合し、第2型23の第2部252aに第2プリプレグ11sを嵌合する。第1プリプレグ11fと第2プリプレグ11sとは、各特定範囲SAにおいて、第1方向及び第2方向と直交する第3方向で重なるようになっている。
図3の紙面の上下方向が第3方向である。
【0058】
型締め工程及び加圧工程では、加熱穴23c、25cに高温の熱媒体を循環させつつ、
図4に示すように、第1型23と第2型25とを型締めするとともに、キャビティC内で第1プリプレグ11f及び第2プリプレグ11sを一体にするように加圧する。この際、
図5に示すように、第1プリプレグ11fと第2プリプレグ11sとは特定範囲SAでまず接触する。さらに、第1型23と第2型25との型締めが終了すると、
図6に示すように、第1プリプレグ11fと第2プリプレグ11sとは、特定範囲SAで加圧されて材料が余る。余った材料は第2型25の各第3部253aで成形される。
【0059】
これらの間、特定範囲SAにおける第1、2プリプレグ11f、11sの第1、2熱可塑性樹脂は熱媒体の温度によって軟化している。加熱温度は第1、2プリプレグ11f、11sの熱可塑性樹脂によって適宜設定される。このため、第1、2炭素繊維11bが比較的柔軟に変形し、第1、2炭素繊維11bが損傷されることがない。こうして、インサートPCM工法により、第1、2炭素繊維11bの損傷を抑制しつつ、第1プリプレグ11fの第1母材11aと第2プリプレグ11sの第2母材11aとが好適に一体になる。
【0060】
そして、穴開け工程として、加熱穴23c、25cに高温の熱媒体を循環させたまま、
図7及び
図8に示すように、特定範囲SAに対してニードル27を先端部27aから第3方向に進入させる。これにより、第1プリプレグ11f中の第1炭素繊維11bはニードル27の先端部27aによって第1母材11a内で徐々にニードル27の径外方向に押しやられる。また、第2プリプレグ11s中の第2炭素繊維11bもニードル27の先端部27aによって第2母材11a内で徐々にニードル27の径外方向に押しやられる。
【0061】
この間、特定範囲SAにおける第1、2プリプレグ11f、11sの第1、2熱可塑性樹脂は熱媒体の温度によって軟化している。このため、第1、2炭素繊維11bがニードル27の先端部27aによって第1、2母材11a内で移動し易く、より切断され難い。こうして、得られる構造体51には、周囲の第1、2炭素繊維11bの切断が抑制された接続穴51aが形成される。
【0062】
各接続穴51aにニードル27を残しつつ、加熱穴23c、25cへの高温の熱媒体の循環を停止して加熱穴23c、25cに低温の熱媒体を循環させるか、加熱穴23c、25cへの高温の熱媒体の循環を停止して時間の経過を待ち、特定範囲SAの第1、2熱可塑性樹脂を常温とする。そして、第1型23と第2型25とを型開きし、構造体51が得られる。この構造体51には、
図9~11に示す接続穴51aが形成されている。
【0063】
また、この製造方法では、第1プリプレグ11fと第2プリプレグ11sとをキャビティC内に拘束して一体にしつつ穴開け工程を行っていることから、構造体51は変形し難く、高い寸法精度を有している。また、型締め工程中に加圧工程を行っていることから、構造体51の成形サイクルタイムを短縮でき、製造コストの低廉化を実現することができる。
【0064】
この構造体51はCFRTPであるため、金属製の構造体と比較し、軽量でありながら高強度である他、疲労特性や腐食性に優れる。特に、この構造体51は、第1プリプレグ11fが第1熱可塑性樹脂からなる第1母材11a内に第1方向に延びる複数本の第1炭素繊維11bを有し、第2プリプレグ11sが第1熱可塑性樹脂からなる第2母材11a内に第2方向に延びる複数本の第2炭素繊維11bを有することから、第1方向及び第2方向に高い引張強度を発揮できる。また、この構造体51は、第1方向と第2方向とが直交しているため、第1.2炭素繊維11bを編み込む必要なく、高い強度となっている。さらに、第1プリプレグ11f及び第2プリプレグ11sが同種の熱可塑性樹脂を採用していることから、型締め工程や穴開け工程で母材11aを軟化させ易く、構造体51の一体性を実現し易い。
【0065】
そして、接合工程において、
図14に示すように、参考例で得た構造体51と相手材61とをCFRTP製のリベット71によって接合し、接合構造体81とする。この際、特許第6840410号や特許第6901063号に開示された締結方法及び締結装置を採用する。
【0066】
リベット71は、第1頭部71aと、第2頭部71bと、第1頭部71aと第2頭部71bと一体をなす軸部71cとからなる。第1頭部71a、第2頭部71b及び軸部71cは第5熱可塑性樹脂からなる第5母材71dと第3方向に延びる第5炭素繊維71eとからなる。相手材61としては金属板を採用したが、CFRTPであってもよいし、熱硬化性CFRPであってもよい。
【0067】
こうして得られた接合構造体81は、リベット71もCFRTPであり、特に、第1頭部71a、第2頭部71b及び軸部71c内の第5炭素繊維71eが切断されていないことから、第3方向にも高い剥離強度を発揮する。
【0068】
参考例のニードル27を金属製ではなく、CFRTP製として構造体51に残留させ、ニードル27をリベット71に変形することによって構造体51と相手材61とを接合することによって接合構造体81とすることも可能である。
【0069】
上記参考例では、加圧工程及び穴開け工程で第1、2熱可塑性樹脂を加熱して軟化させたが、第1、2熱可塑性樹脂の種類によっては加圧工程及び穴開け工程を常温で行うことも可能である。
【0070】
また、上記参考例では、加圧工程後に穴開け工程を行ったが、加圧工程と同時に穴開け工程を行ってもよい。この場合には、構造体51の成形サイクルタイムを短縮でき、製造コストの低廉化を実現することができる。
【0071】
なお、成形装置21として、加熱穴23cや加熱穴25cにヒータ線を設けてもよい。また、第1型23及び第2型25に加熱穴23cや加熱穴25cを設けず、ニードル27だけを加熱してニードル孔23b、25bに挿通してもよい。
【0072】
(実施例1)
実施例1は、第2プリプレグを準備しない第2教示と、第3教示とを具体化したものである。まず、準備工程において、参考例と同様、
図1(A)に示す複数本のプリプレグ11を準備した。
【0073】
また、
図15に示すように、成形装置33を準備した。成形装置33は、第1型35と、第2型37と、複数本のニードル27とを備えている。第1型35と第2型37とは相対移動して型締めできるようになっている。
【0074】
第1型35には型割り面21aから第1成形面35aが凹設されている。第1成形面35aは、参考例と同様、3本の第1プリプレグ11fを紙面の左右方向に延在させて嵌合するようになっている。
【0075】
第2型37には型割り面21bから第2成形面37aが凹設されている。第1型35の第1成形面35aと、第2型37の第2成形面37aとがキャビティCを形成する。第2成形面37aは、3本の第1部371aと、第2部372aとからなる。
【0076】
第1部371aは、第1成形面35aと対面しており、3本のプリプレグ11紙面の左右方向に嵌合するようになっている。第1成形面35aの型割り面21aからの深さと、第1部371aの型割り面21bからの深さとの合計は、プリプレグ11の厚さと等しくなっている。第2部372aは、第1成形面35aの底面に各プリプレグ11の底面を当接した場合、各プリプレグ11の上面、右面、左面、前面及び後面に対して離隔している。
【0077】
第1、2型35、37には、ニードル孔35b、37bが形成されている。ニードル孔35b、37bの構成は参考例のニードル孔23b、25bと同様である。第1、2型35、37には、参考例の第1、2型23、25のような加熱穴23c、25cは形成されていない。成形装置33の他の構成は参考例の成形装置21と同様である。
【0078】
また、射出材料39を準備した。射出材料39は、第3熱可塑性樹脂を含んで溶融状態とされ、図示しないゲートからキャビティC内に射出されるようになっている。射出材料39の第3熱可塑性樹脂はプリプレグ11の熱可塑性樹脂よりも融点が高い。
【0079】
セット工程では、
図16に示すように、キャビティC内にプリプレグ11を設ける。また、型締め工程では、第1型35と第2型37とを型締めする。
【0080】
そして、射出工程及び穴開け工程として、
図17に示すように、キャビティC内に射出材料39を射出する。同時に、特定範囲SAに対してニードル27を先端部27aから第3方向に進入させ、ニードル27の円柱部27bがキャビティC内の射出材料39も貫通しつつニードル孔37bに到達するようにする。このため、プリプレグ11中の炭素繊維11bはニードル27の先端部27aによって母材11a内で徐々にニードル27の径外方向に押しやられる。このため、プリプレグ11の炭素繊維11bが切断され難い。
【0081】
この際、穴開け工程中に射出工程を行っているため、射出材料39の温度により、特定範囲SAの熱可塑性樹脂は軟化し、炭素繊維11bがニードル27の先端部27aによって母材11a内で移動し易く、より切断され難い。この間、特定範囲SAの熱可塑性樹脂が軟化するようにする必要性を無くすことができる。また、プリプレグ11にニードル27によって形成される接続穴53aが仮に好ましくない形状になったとしても、射出工程において、接続穴53aにニードル27を残しつつ射出材料39を射出することから、インサート射出成形工法となり、接続穴53aを射出材料39によって好ましい形状に整えることができる。また、穴開け工程中に射出工程を行えば、構造体53の成形サイクルタイムを短縮でき、製造コストの低廉化を実現することができる。
【0082】
熱可塑性樹脂及び射出材料39を常温として第1型35と第2型37とを型開きし、構造体53が得られる。得られた構造体53は、プリプレグ11と、プリプレグ11の底面を除く5面に設けられた射出材料39とからなる。各構造体53には、周囲の炭素繊維11bの切断が抑制されているとともに、好ましい形状の接続穴53aが形成されている。
【0083】
図18に示すように、3本の構造体53を紙面の厚さ方向に並べるとともに、3本の構造体53を左右方向に並べ、かつ、参考例と同様、相手材61を準備した。紙面の厚さ方向に並ぶ構造体53のプリプレグ11が第1プリプレグ11fに相当し、紙面の左右方向に並ぶ構造体53のプリプレグ11が第2プリプレグ11sに相当する。
【0084】
そして、
図19に示すように、参考例と同様、各構造体53と相手材61とをCFRTP製のリベット71によって接合した。こうして、接合構造体83を得た。
【0085】
実施例1の構造体53も参考例と同様の作用効果を奏することができる。また、実施例1の接合構造体83も参考例と同様の作用効果を奏することができる。
【0086】
実施例1のニードル27も金属製ではなく、CFRTP製として構造体53に残留させ、ニードル27をリベット71に変形することによって構造体53と相手材61とを接合することによって接合構造体83とすることも可能である。
【0087】
実施例1では、穴開け工程中に射出工程を行ったが、穴開け工程後に射出工程を行ってもよい。穴開け工程後に射出工程を行う場合、ニードル27がキャビティCに残り、射出材料39にも接続穴を成形するようにする。
【0088】
(実施例2)
実施例2は、射出工程を行う第1教示と、第3教示とを具体化したものである。換言すれば、実施例2は、第2プリプレグを準備する第2教示と、第3教示とを具体化したものである。まず、準備工程において、参考例及び実施例1と同様、
図1(A)に示す複数本のプリプレグ11を準備した。
【0089】
また、
図20に示すように、成形装置41を準備した。成形装置41は、第1型43と、第2型45と、複数本のニードル27とを備えている。第1型43と第2型45とは相対移動して型締めできるようになっている。
【0090】
第1型43には型割り面21aから第1成形面43aが凹設されている。第1成形面43aは、参考例と同様、3本の第1プリプレグ11fを紙面の左右方向に延在させて嵌合するようになっている。
【0091】
第2型45には型割り面21bから第2成形面45aが凹設されている。第1型43の第1成形面43aと、第2型45の第2成形面45aとがキャビティCを形成する。第2成形面45aは、3本の第1部451aと、3本の第2部452aと、第3部453aとからなる。
【0092】
第1部451aは、第1成形面43aと対面しており、3本の第1プリプレグ11fを紙面の左右方向に嵌合するようになっている。第1成形面43aの型割り面21aからの深さと、第1部451aの型割り面21bからの深さとの合計は、第1プリプレグ11fの厚さと等しくなっている。
【0093】
第2部452aは第1部451aと連続して凹設されている。第2部452aは3本の第2プリプレグ11sを
図20の紙面の厚さ方向に延在させて嵌合するようになっている。このため、第1プリプレグ11fと第2プリプレグ11sとは、直交し、9つの特定範囲SAで重なるようになっている。
【0094】
第3部453aは、第1成形面43aの底面に第1プリプレグ11fの底面を当接し、第2部452aに第2プリプレグ11sを嵌合した場合、第1プリプレグ11f及び第2プリプレグ11sの上面、右面、左面、前面及び後面に対して離隔している。
【0095】
第1成形面43aの底面から第2部452aの底面までの長さは、第1プリプレグ11fの厚さと第2プリプレグ11sの厚さとの合計よりも小さい。このため、型割り面21aと型割り面21bとを合わせることにより、第1型43と第2型45とを型締めすれば、第1プリプレグ11fと第2プリプレグ11sとは特定範囲SAで加圧されて一体になるが、第1プリプレグ11f及び第2プリプレグ11sは各特定範囲SAで材料が余る。このため、その材料は第3部453aに膨出する。
【0096】
第1、2型43、45には、ニードル孔43b、45bが形成されている。ニードル孔43b、45bの構成は参考例及び実施例1のニードル孔23b、25b、35b、37bと同様である。第1、2型43、45には、参考例の第1、2型23、25のような加熱穴23c、25cは形成されていない。成形装置41の他の構成は参考例の成形装置21と同様である。
【0097】
また、射出材料39を準備した。射出材料39は、第3熱可塑性樹脂を含んで溶融状態とされ、図示しないゲートからキャビティC内に射出されるようになっている。射出材料39の第3熱可塑性樹脂は第1、2プリプレグ11f、11sの第1、2熱可塑性樹脂よりも融点が高い。
【0098】
セット工程では、
図21に示すように、実施り1と同様、キャビティC内に第1、2プリプレグ11f、11sを設ける。また、型締め工程及び加圧工程では、
図22に示すように、第1型43と第2型45とを型締めするとともに、キャビティC内で第1プリプレグ11f及び第2プリプレグ11sを一体にするように加圧する。
【0099】
そして、射出工程及び穴開け工程として、
図23に示すように、キャビティC内に射出材料39を射出する。同時に、特定範囲SAに対してニードル27を先端部27aから第3方向に進入させ、ニードル27の円柱部27bがキャビティC内の射出材料39も貫通しつつニードル孔37bに到達するようにする。このため、第1、2プリプレグ11f、11s中の第1、2炭素繊維11bはニードル27の先端部27aによって第1、2母材11a内で徐々にニードル27の径外方向に押しやられる。このため、第1、2プリプレグ11f、11sの第1、2炭素繊維11bが切断され難い。
【0100】
この際、穴開け工程中に射出工程を行っているため、射出材料39の温度により、特定範囲SAの第1、2熱可塑性樹脂は軟化し、第1、2炭素繊維11bがニードル27の先端部27aによって第1、2母材11a内で移動し易く、より切断され難い。この間、特定範囲SAの第1、2熱可塑性樹脂が軟化するようにする必要性を無くすことができる。また、第1、2プリプレグ11f、11sにニードル27によって形成される接続穴55aが仮に好ましくない形状になったとしても、射出工程において、接続穴55aにニードル27を残しつつ射出材料39を射出することから、インサート射出成形工法となり、接続穴55aを射出材料39によって好ましい形状に整えることができる。また、穴開け工程中に射出工程を行えば、構造体53の成形サイクルタイムを短縮でき、製造コストの低廉化を実現することができる。
【0101】
第1、2熱可塑性樹脂及び射出材料39を常温として第1型43と第2型45とを型開きし、構造体55が得られる。得られた構造体55は、第1、2プリプレグ11f、11sと、第1、2プリプレグ11f、11sの底面を除く5面に設けられた射出材料39とからなる。各構造体55には、周囲の第1、2炭素繊維11bの切断が抑制されているとともに、好ましい形状の接続穴55aが形成されている。
【0102】
図24に示すように、3本の構造体55を紙面の厚さ方向に並べ、かつ、参考例及び実施例1と同様、相手材61を準備した。そして、
図25に示すように、参考例及び実施例1と同様、構造体55と相手材61とをCFRTP製のリベット71によって接合した。こうして、接合構造体85を得た。
【0103】
実施例2の構造体55も参考例及び実施例1と同様の作用効果を奏することができる。また、実施例2の接合構造体85も参考例及び実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0104】
実施例2のニードル27も金属製ではなく、CFRTP製として構造体55に残留させ、ニードル27をリベット71に変形することによって構造体55と相手材61とを接合することによって接合構造体85とすることも可能である。
【0105】
また、上記実施例2でも、穴開け工程中に射出工程を行ったが、穴開け工程前又は穴開け工程後に射出工程を行ってもよい。穴開け工程前又は穴開け工程後に射出工程を行う場合、ニードル27がキャビティCに残り、射出材料39にも接続穴を成形するようにする。
【0106】
発明者らは、プリプレグ11の熱可塑性樹脂及び射出材料をPP(ポリプロピレン)として実施例1の複数の構造体53を成形し、各構造体53によって格子状の接合構造体83を製造した。この接合構造体83は、バッテリケースの蓋部材として、軽量でありながら高強度である他、疲労特性や腐食性に優れた。
【0107】
以上において、本発明を参考例及び実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記参考例及び実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0108】
例えば、参考例及び実施例1、2では、
図1(A)に示す四角柱形状のロッド状のプリプレグ11を採用したが、
図1(B)に示す円柱形状のロッド状のプリプレグ13を採用してもよい。このプリプレグ13も、母材13a内に長さ方向のみに延びる複数本の炭素繊維13bを有している。また、
図1(C)に示すシート状のプリプレグ15を採用してもよい。このプリプレグ15も、母材15a内に長さ方向のみに延びる複数本の炭素繊維15bを有している。
【0109】
また、実施例1、2では、プリプレグ11又は第1、2プリプレグ11f、11sの底面を除く5面に射出材料39を設けたが、プリプレグ11又は第1、2プリプレグ11f、11sの全面に射出材料を設けたり、特定の部分だけに射出材料を設けてもよい。
【0110】
また、本発明によれば、軽量、高強度、高耐熱性かつ高耐摩耗性の部品等を製造するため、プリプレグの熱可塑性樹脂をローメルトのPAEKとし、射出材料をPEEKとし、スーパーエンジニアリングプラスチックを用いた構造体や接合構造体を得ることができる。
【0111】
なお、上記第1、2プリプレグ11、13、15は、長さ方向のみに延びる炭素繊維11b、13b、15bを有するが、長さ方向に延びつつ、旋回する炭素繊維を有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、自動車、航空機、宇宙船、船舶、列車、建築物等の分野における部品等に利用可能である。
【符号の説明】
【0113】
11a、13a、15a…母材(第1母材、第2母材)
11b、13b、15b、71e…炭素繊維(第1炭素繊維、第2炭素繊維、71e…第4炭素繊維)
11、13、15…プリプレグ(11f…第1プリプレグ、11s…第2プリプレグ)
23、35、43…第1型
C…キャビティ
25、37、45…第2型
27a…先端部
27…ニードル
SA…特定範囲
51a、53a、55a…接続穴
51、53、55…構造体
39…射出材料
61a…挿入穴
61…相手材
71…リベット
81、83、85…接合構造体