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特開2024-156625エポキシ樹脂組成物粒子、タブレット、および柱状タブレットの製造方法
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  • 特開-エポキシ樹脂組成物粒子、タブレット、および柱状タブレットの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156625
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物粒子、タブレット、および柱状タブレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20241029BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20241029BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20241029BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20241029BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20241029BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20241029BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C08L63/00 C
B29C45/14
B29C70/42
C08J3/20 B CFC
C08K7/02
C08G59/20
C08G59/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024069183
(22)【出願日】2024-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2023071045
(32)【優先日】2023-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】望月 俊佑
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 寿久
(72)【発明者】
【氏名】小林 慎一郎
【テーマコード(参考)】
4F070
4F205
4F206
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4F070AA46
4F070AC27
4F070AC28
4F070AC46
4F070AC66
4F070AC86
4F070AD02
4F070AE01
4F070AE08
4F070FB07
4F070FC09
4F205AA39
4F205AB25
4F205AC01
4F205AD19
4F205AH37
4F205HA12
4F205HA33
4F205HA36
4F205HB01
4F205HB11
4F205HF05
4F205HK04
4F205HK05
4F206AA39
4F206AB25
4F206AC01
4F206AD19
4F206AH17
4F206AH33
4F206JA02
4F206JB12
4F206JB17
4F206JF01
4F206JF02
4F206JL02
4J002CD051
4J002CD061
4J002CL062
4J002CP183
4J002DA016
4J002DA030
4J002DA066
4J002DE146
4J002DE186
4J002DJ006
4J002DL000
4J002DL006
4J002EX070
4J002FA042
4J002FA046
4J002FA076
4J002FA080
4J002FD012
4J002FD016
4J002FD160
4J002FD200
4J002GJ01
4J002GQ00
4J036AD08
4J036AF08
4J036AK17
4J036DC41
4J036DD07
4J036FA05
4J036FB07
4J036JA06
4J036JA07
4J036KA06
(57)【要約】
【課題】曲げ弾性率に優れた成形体を成形できるエポキシ樹脂組成物粒子を提供する。
【解決手段】本発明のエポキシ樹脂組成物粒子は、磁石固定、電子制御ユニット封止、コイル封止、またはステータコア封止のいずれかに用いられるエポキシ樹脂組成物粒子であって、エポキシ樹脂と、繊維状または針状フィラーと、を含むものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石固定、電子制御ユニット封止、コイル封止、またはステータコア封止のいずれかに用いられるエポキシ樹脂組成物粒子であって、
エポキシ樹脂と、
繊維状または針状フィラーと、
を含む、エポキシ樹脂組成物粒子。
【請求項2】
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
下記の手順Aで測定される、前記繊維状または針状フィラーの数平均繊維長が、5μm以上500μm以下である、エポキシ樹脂組成物粒子。
(手順A)
当該エポキシ樹脂組成物粒子をアセトン溶解させて樹脂成分を除去した後、ガラスプレートに不溶分を分散させて、光学顕微鏡を用いて前記不溶分中のフィラーを撮影し、画像解析装置を用いて繊維長を測定する。繊維長が長いものから順に測定し、100個の前記フィラーの平均値を、上記数平均繊維長とする。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
下記の手順Aで測定される、前記繊維状または針状フィラーの数平均繊維長をLとし、下記の手順Bで測定される、前記繊維状または針状フィラーの数平均繊維径をDとしたとき、
L/Dが、3以上100以下である、エポキシ樹脂組成物粒子。
(手順A)
当該エポキシ樹脂組成物粒子をアセトン溶解させて樹脂成分を除去した後、ガラスプレートに不溶分を分散させて、光学顕微鏡を用いて前記不溶分中のフィラーを撮影し、画像解析装置を用いて繊維長を測定する。繊維長が長いものから、100個の前記フィラーの繊維長の平均値を、上記数平均繊維長とする。
(手順B)
走査型電子顕微鏡を用い、当該エポキシ樹脂組成物粒子の横断面から繊維状フィラーの横断面を100本計測し、各繊維断面の最小径の平均を数平均繊維径として求める。
【請求項4】
請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
前記繊維状または針状フィラーが、ワラストナイト繊維、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維、繊維状酸化アルミ、アラミド繊維、炭化ケイ素ウィスカ、窒化珪素ウィスカ、およびチタン酸カリウムウィスカからなる群から選択される一または二以上を含む、エポキシ樹脂組成物粒子。
【請求項5】
請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
下記の手順Cに従って測定されるスパイラルフローが、30cm以上である、エポキシ樹脂組成物粒子。
(手順C)
低圧トランスファー成形機を用いて、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で当該エポキシ樹脂組成物粒子を注入し、流動長(cm)を測定する。
【請求項6】
請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
前記繊維状または針状フィラーの含有量が、当該エポキシ樹脂組成物粒子100質量%中、5質量%以上80質量%以下である、エポキシ樹脂組成物粒子。
【請求項7】
請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
前記エポキシ樹脂が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、および/またはビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む、エポキシ樹脂組成物粒子。
【請求項8】
請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
イミダゾール系触媒、およびリン系触媒からなる群から選ばれる一または二以上の硬化触媒を含む、エポキシ樹脂組成物粒子。
【請求項9】
請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
前記エポキシ樹脂組成物粒子を加熱した押出機に供給して溶融させながら混練してエポキシ樹脂成形材料を得る工程と、押出機先端の開口部から、溶融した前記エポキシ樹脂成形材料を連続的に押出しつつ前記エポキシ樹脂成形材料を切断してタブレットを得る工程とを経てタブレットに成形されるのに用いられる、エポキシ樹脂組成物粒子。
【請求項10】
請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
シリンダーおよび前記シリンダーに挿入されたスクリューからなる射出ユニットと、当該射出ユニットに接続され、キャビティを有する金型と、を備える射出成形装置を用いた射出成形において、前記シリンダーに投入されて使用される射出成形用のエポキシ樹脂組成物粒子。
【請求項11】
請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
軟化点が110℃未満のエポキシ樹脂または硬化剤を含む、エポキシ樹脂組成物粒子。
【請求項12】
請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物粒子を用いて形成されるタブレットであって、
5cm以上1500cm以下の体積を有するタブレット。
【請求項13】
請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物粒子を準備する工程と、
前記エポキシ樹脂組成物粒子を加熱した押出機に供給して溶融させながら混練してエポキシ樹脂成形材料を得る工程と、
押出機先端の開口部から、溶融した前記エポキシ樹脂成形材料を連続的に押出しつつ前記エポキシ樹脂成形材料を切断して柱状タブレットを得る工程と、を含み、
前記柱状タブレットの断面積が、3cm以上100cm以下である、
柱状タブレットの製造方法。
【請求項14】
請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物粒子を用いた構造体。
【請求項15】
請求項14に記載の構造体であって
前記構造体は、磁石固定構造体、電子制御ユニット封止構造体、コイル封止構造体、およびステータコア封止構造体の中から選ばれる1または2以上である、構造体。
【請求項16】
請求項14に記載の構造体の製造方法であって、
シリンダーおよび前記シリンダーに挿入されたスクリューからなる射出ユニットと、当該射出ユニットに接続され、キャビティを有する金型と、を備える射出成形装置を用い、
前記シリンダー内で、前記エポキシ樹脂組成物粒子を溶融し、溶融樹脂組成物とする工程と、
前記スクリュー先端から溶融樹脂組成物を射出して前記キャビティ内に充填する工程と、
を含む、構造体の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の構造体の製造方法であって、
前記充填する前記工程において、前記スクリュー先端の温度Tは60~100℃である、構造体の製造方法。
【請求項18】
請求項16に記載の構造体の製造方法であって、
前記充填する前記工程において、前記キャビティ内の温度は150~180℃である、構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物粒子、タブレット、および柱状タブレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでタブレット状エポキシ樹脂組成物の成形方法について様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、半導体素子を封止するために、石英ガラス粉末、タルク、シリカ粉末、アルミナ粉末、炭酸カルシウム等の無機質充填剤を配合したタブレット状エポキシ樹脂組成物をトランスファー成形する方法が記載されている(特許文献1の請求項1、段落0005、0030等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-208805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載のタブレット状エポキシ樹脂組成物において、曲げ弾性率の点で改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者はさらに検討したところ、エポキシ樹脂と繊維状または針状フィラーとを含むエポキシ樹脂組成物粒子により、成形体の曲げ弾性率などの機械的特性を向上できるため、磁石固定、電子制御ユニット封止、コイル封止、またはステータコア封止のいずれかに好適な成形材料を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の一態様によれば、以下のエポキシ樹脂組成物粒子、タブレット、および柱状タブレットの製造方法が提供される。
【0007】
[1] 磁石固定、電子制御ユニット封止、コイル封止、またはステータコア封止のいずれかに用いられるエポキシ樹脂組成物粒子であって、
エポキシ樹脂と、
繊維状または針状フィラーと、
を含む、エポキシ樹脂組成物粒子。
[2] [1]に記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
下記の手順Aで測定される、前記繊維状または針状フィラーの数平均繊維長が、5μm以上500μm以下である、エポキシ樹脂組成物粒子。
(手順A)
当該エポキシ樹脂組成物粒子をアセトン溶解させて樹脂成分を除去した後、ガラスプレートに不溶分を分散させて、光学顕微鏡を用いて前記不溶分中のフィラーを撮影し、画像解析装置を用いて繊維長を測定する。繊維長が長いものから順に測定し、100個の前記フィラーの平均値を、上記数平均繊維長とする。
[3] [1]または[2]に記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
下記の手順Aで測定される、前記繊維状または針状フィラーの数平均繊維長をLとし、下記の手順Bで測定される、前記繊維状または針状フィラーの数平均繊維径をDとしたとき、
L/Dが、3以上100以下である、エポキシ樹脂組成物粒子。
(手順A)
当該エポキシ樹脂組成物粒子をアセトン溶解させて樹脂成分を除去した後、ガラスプレートに不溶分を分散させて、光学顕微鏡を用いて前記不溶分中のフィラーを撮影し、画像解析装置を用いて繊維長を測定する。繊維長が長いものから、100個の前記フィラーの繊維長の平均値を、上記数平均繊維長とする。
(手順B)
走査型電子顕微鏡を用い、当該エポキシ樹脂組成物粒子の横断面から繊維状フィラーの横断面を100本計測し、各繊維断面の最小径の平均を数平均繊維径として求める。
[4] [1]乃至[3]いずれか一つに記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
前記繊維状または針状フィラーが、ワラストナイト繊維、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維、繊維状酸化アルミ、アラミド繊維、炭化ケイ素ウィスカ、窒化珪素ウィスカ、およびチタン酸カリウムウィスカからなる群から選択される一または二以上を含む、エポキシ樹脂組成物粒子。
[5] [1]乃至[4]いずれか一つに記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
下記の手順Cに従って測定されるスパイラルフローが、30cm以上である、エポキシ樹脂組成物粒子。
(手順C)
低圧トランスファー成形機を用いて、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で当該エポキシ樹脂組成物粒子を注入し、流動長(cm)を測定する。
[6] [1]乃至[5]いずれか一つに記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
前記繊維状または針状フィラーの含有量が、当該エポキシ樹脂組成物粒子100質量%中、5質量%以上80質量%以下である、エポキシ樹脂組成物粒子。
[7] [1]乃至[6]いずれか一つに記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
前記エポキシ樹脂が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、および/またはビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む、エポキシ樹脂組成物粒子。
[8] [1]乃至[7]いずれか一つに記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
イミダゾール系触媒、およびリン系触媒からなる群から選ばれる一または二以上の硬化触媒を含む、エポキシ樹脂組成物粒子。
[9] [1]乃至[8]いずれか一つに記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
前記エポキシ樹脂組成物粒子を加熱した押出機に供給して溶融させながら混練してエポキシ樹脂成形材料を得る工程と、押出機先端の開口部から、溶融した前記エポキシ樹脂成形材料を連続的に押出しつつ前記エポキシ樹脂成形材料を切断してタブレットを得る工程とを経てタブレットに成形されるのに用いられる、エポキシ樹脂組成物粒子。
[10] [1]乃至[9]いずれか一つに記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
シリンダーおよび前記シリンダーに挿入されたスクリューからなる射出ユニットと、当該射出ユニットに接続され、キャビティを有する金型と、を備える射出成形装置を用いた射出成形において、前記シリンダーに投入されて使用される射出成形用のエポキシ樹脂組成物粒子。
[11] [1]乃至[10]いずれか一つに記載のエポキシ樹脂組成物粒子であって、
軟化点が110℃未満のエポキシ樹脂または硬化剤を含む、エポキシ樹脂組成物粒子。
[12] [1]乃至[11]いずれか一つに記載のエポキシ樹脂組成物粒子を用いて形成されるタブレットであって、
5cm以上1500cm以下の体積を有するタブレット。
[13] [1]乃至[11]いずれか一つに記載のエポキシ樹脂組成物粒子を準備する工程と、
前記エポキシ樹脂組成物粒子を加熱した押出機に供給して溶融させながら混練してエポキシ樹脂成形材料を得る工程と、
押出機先端の開口部から、溶融した前記エポキシ樹脂成形材料を連続的に押出しつつ前記エポキシ樹脂成形材料を切断して柱状タブレットを得る工程と、を含み、
前記柱状タブレットの断面積が、3cm以上100cm以下である、
柱状タブレットの製造方法。
[14] [1]乃至[11]いずれか一つに記載のエポキシ樹脂組成物粒子を用いた構造体。
[15] [14]に記載の構造体であって
前記構造体は、磁石固定構造体、電子制御ユニット封止構造体、コイル封止構造体、およびステータコア封止構造体の中から選ばれる1または2以上である、構造体。
[16] [14]または[15]に記載の構造体の製造方法であって、
シリンダーおよび前記シリンダーに挿入されたスクリューからなる射出ユニットと、当該射出ユニットに接続され、キャビティを有する金型と、を備える射出成形装置を用い、
前記シリンダー内で、前記エポキシ樹脂組成物粒子を溶融し、溶融樹脂組成物とする工程と、
前記スクリュー先端から溶融樹脂組成物を射出して前記キャビティ内に充填する工程と、
を含む、構造体の製造方法。
[17] [16]に記載の構造体の製造方法であって、
前記充填する前記工程において、前記スクリュー先端の温度Tは60~100℃である、構造体の製造方法。
[18] [16]または[17]に記載の構造体の製造方法であって、
前記充填する前記工程において、前記キャビティ内の温度は150~180℃である、構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、曲げ弾性率に優れた成形体を成形できるエポキシ樹脂組成物粒子、それを用いたタブレットおよび柱状タブレットの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の一例における押出機の縦断面図である。
図2】本実施形態に係る射出成形装置の一例を示す断面模式図である。
図3】引張圧縮試験機の概要を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0011】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物粒子の概要を説明する。
【0012】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物粒子は、エポキシ樹脂と、繊維状または針状フィラーと、を含む、粒子状のエポキシ樹脂組成物である。
【0013】
このようなエポキシ樹脂組成物粒子は、磁石固定、電子制御ユニット(ECU)封止、コイル封止、またはステータコア封止のいずれかに用いられるものである。具体的には、エポキシ樹脂組成物粒子からタブレット状の成形材料を製造し、得られたタブレット状の成形材料を、公知の成形方法により、磁石固定、電子制御ユニット(ECU)封止、コイル封止、またはステータコア封止に利用できる。
本実施形態のエポキシ樹脂組成物粒子により、得られる成形体の曲げ弾性率などの機械的特性を向上できる。すなわち、繊維状または針状フィラーが互いに絡まることにより、成形体の靭性を向上しやすくなるため、磁石固定、電子制御ユニット(ECU)封止、コイル封止、またはステータコア封止により適した弾性が得られやすくなる。
【0014】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物粒子は、タブレット状、好ましくは柱状タブレット状のエポキシ樹脂成形材料の製造に好適に使用できる。エポキシ樹脂組成物粒子により、タブレット状のエポキシ樹脂成形材料を安定的に製造可能である。
【0015】
タブレット状のエポキシ樹脂成形材料を製造する方法は、例えば、押出成形法として、エポキシ樹脂組成物粒子を加熱した押出機に供給して溶融させながら混練してエポキシ樹脂成形材料を得る工程と、押出機先端の開口部から、溶融したエポキシ樹脂成形材料を連続的に押出しつつエポキシ樹脂成形材料を切断してタブレットを得る工程と、を含んでもよい。
【0016】
上記タブレット状のエポキシ樹脂成形材料を製造する方法は、具体例として、図1に示す押出機を用いることができる。図1は、押出機の構成の一例の縦断面図を示したものである。
押出機は、エポキシ樹脂組成物粒子1を投入するホッパー2と、シリンダ43を介してエポキシ樹脂組成物粒子1を加熱するためのヒータ41と、スクリュー42と、押出機の先端に取り付けられ、所定のタブレット断面と同形状の開口を有しかつ温度制御されたダイス5とを有する。なお、押出機にはダイス5の温度を制御するための温度調節器51が接続されてもよい。
押出機は、シリンダ43および投入側のシリンダ43a内に、エポキシ樹脂組成物粒子1を押し出し、加熱によりエポキシ樹脂組成物粒子1が溶融してなるエポキシ樹脂成形材料を押し出しながら、スクリュー42により混練する。そして、押出機は、溶融混練されたエポキシ樹脂成形材料をダイス5の開口部から連続的に押出す。押し出されたエポキシ樹脂成形材料は、押出材6となる。押出材6を、カッター(図示せず)等により、所定のタブレット長に切断して、タブレット状のエポキシ樹脂成形材料(タブレット)が得られる。
【0017】
エポキシ樹脂組成物粒子1の粒子は、粉末および/または顆粒を含む。例えば、比較的粗大な粒子(顆粒)を粉砕処理および/または分級処理することにより、比較的微細な粒子(粉末)が得られる。
エポキシ樹脂組成物粒子1の粒子形状は、とくに限定される訳ではなく、球形、多角形、不定形状等でもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本実施形態において、押出機先端に取り付けたダイス5の開口形状は、タブレット状のエポキシ樹脂成形材料(タブレット)の断面形状と同一の開口形状である。また、開口形状が円形である場合、開口形状の寸法は、たとえば、直径20mm以上200mm以下であり、好ましくは、40mm以上120mm以下である。開口形状は、その寸法を含めて、目的のタブレット形状に合わせて適宜選択される。
また、押出機から押し出された押出材6は、カッターで、所望の長さに切断される。この長さは、例えば、10mm以上300mm以下であり、好ましくは、20mm以上200mm以下である。
【0019】
タブレット(タブレット状のエポキシ樹脂成形材料)の体積は、例えば、5cm以上1500cm以下、好ましくは10cm以上1000cm以下である。
柱状タブレットの断面積は、例えば、3cm以上100cm以下、好ましくは10cm以上95cm以下である。
【0020】
本実施形態エポキシ樹脂組成物粒子の使用により、タブレット状のエポキシ樹脂成形材料を連続的に得られるようになるため、タブレット高さの高いタブレット状のエポキシ樹脂成形材料物を効率良く製造することが可能である。
【0021】
タブレット状のエポキシ樹脂成形材料を用いて、トランスファー成形、射出成形などの公知の成形方法を用いることにより、下記に例示するような磁石固定構造体、電子制御ユニット封止構造体、コイル封止構造体、およびステータコア封止構造体からなる群から選ばれるいずれかの固定構造体または封止構造体を製造できる。
【0022】
なかでも、本実施形態のエポキシ樹脂組成物粒子は、射出成形に用いられることが好適である。具体的には、シリンダーおよび前記シリンダーに挿入されたスクリューからなる射出ユニットと、当該射出ユニットに接続され、キャビティを有する金型と、を備える射出成形装置を用いた射出成形において、前記シリンダーにエポキシ樹脂組成物粒子を投入して使用される射出成形用とすることが好ましい。
例えば、本実施形態のエポキシ樹脂組成物粒子を用いて磁石固定構造体を製造する場合、エポキシ樹脂組成物粒子を用いて射出成形機に投入してシリンダーにて溶融させ、溶融樹脂を金型内の穴部と永久磁石との間に直接充填してもよい。
【0023】
以下、図2を用いて、本実施形態のエポキシ樹脂組成物粒子を用いた構造体を射出成形により製造する方法について説明する。
【0024】
図2には、射出成形装置1は、シリンダー21およびシリンダー21に挿入されたスクリュー22からなる射出ユニット20と、キャビティ12を有する金型10と、を備える射出成形装置1が示されている。
射出成形装置1は、ゲート、ランナー、ゲートなどの成形空間(キャビティ12)を備える金型10と、射出成形をする射出成形機20とを備える。射出成形機20は、例えば、シリンダー21と、シリンダー21内で回転可能なスクリュー22と、シリンダー21内にエポキシ樹脂組成物粒子を投入可能なホッパー23と、シリンダー21を介してエポキシ樹脂組成物粒子を溶融加熱するヒーター24と、シリンダー21内で溶融混練したエポキシ樹脂組成物粒子を金型10に送り出すノズル25とを備える。
また、図2には、先端に逆流弁26を備えるスクリュー22が示されているが、スクリュー22はこれに限られない。スクリュー22は、逆流弁26を備えないものとしてもよい。
【0025】
構造体の製造方法は、シリンダー21内で、エポキシ樹脂組成物粒子を溶融し、溶融樹脂組成物とする工程と、スクリュー22先端から溶融樹脂組成物を射出してキャビティ12内に充填する工程と、を含む。
すなわち、まず、加熱している射出成形機20にエポキシ樹脂組成物粒子を投入する。これにより、エポキシ樹脂組成物粒子は、シリンダー21内で、ヒーター24によって加熱され溶融されながら、スクリュー22によって混練される。シリンダー21内のスクリュー22先端の温度は、エポキシ樹脂組成物粒子を良好に加熱溶融する等の点から、好ましくは60~100℃である。
次に、スクリュー22によって溶融した溶融樹脂組成物は、ノズル25の方向に圧縮混練されながら送られるとともにスクリュー22は後方(ノズル25とは逆方向)へ下がる。この際、スクリュー22を後方から押す背圧をかけ、ノズル25に集まった溶融樹脂組成物に圧力をかけることができる。そして、スクリュー22先端のノズル25に集まった溶融樹脂組成物を設定された位置まで計量される。
そして、計量された溶融樹脂組成物を、後方に下がったスクリュー22を前進させることによって、スクリュー22による圧力によりノズル25を介して金型10のキャビティ12内に射出される。溶融樹脂組成物が充填される際のキャビティ12内の温度は、溶融樹脂組成物を適切に充填する等の点から、好ましくは150~180℃である。
次いで、キャビティ12内で溶融樹脂組成物を硬化し、次いで、金型10を開きキャビティ12内から構造体を取り出す。
【0026】
例えば、本実施形態のエポキシ樹脂組成物粒子を用いて磁石固定構造体を製造する場合、エポキシ樹脂組成物粒子を用いて射出成形機に投入してシリンダー21にて溶融させ、溶融樹脂を金型10内の穴部と永久磁石との間に直接充填してもよい。
【0027】
上記固定構造体または封止構造体に関して、例えば、磁石が固定されるローターコアとして、国際公開第2012/029278号等、車載用の電子制御ユニットとして、例えば、国際公開第2016/139985号等が、ステータコアとして、特開2020-094092号公報等、参考になる。
【0028】
上記磁石固定構造体にエポキシ樹脂成形材料を用いた場合を説明する。
ローターコアは、複数の穴部と、複数の穴部の個々に挿入された永久磁石と、を備える。この穴部と永久磁石との間にエポキシ樹脂成形材料を充填することにより、永久磁石をローターコアに固定できる。
【0029】
車電子制御ユニット封止構造体にエポキシ樹脂成形材料を用いた場合を説明する。
車載用電子制御ユニットは、電子部品等を搭載した基板を備える。車載用電子制御ユニット中、電子部品とともに基板の少なくとも一部をエポキシ樹脂成形材料により封止できる。
【0030】
コイル封止構造体にエポキシ樹脂成形材料を用いた場合を説明する。
コイルは、銅線などの巻線を備え、モーターやトランスなどに使用される。このコイルを絶縁性のためにエポキシ樹脂成形材料でモールド(封止)する。
【0031】
ステータコア封止構造体にエポキシ樹脂成形材料を用いた場合を説明する。
ステータコアは、複数のティース部と、複数のティース部の個々に巻回されたコイル(巻線)と、を備える。
このティース部に巻回されたコイルをエポキシ樹脂成形材料により封止することにより、コイルとステータコアとを絶縁できる。また、ステータコアに形成されたティース部に収容部を有する場合、ティース部に巻回されたコイルを収容部に収容し、これらの間にエポキシ樹脂成形材料を充填することにより、コイルとステータコアとを絶縁できる。
また、製造の一例として、ステータコアの表面にエポキシ樹脂成形材料を用いて絶縁層を形成する。その後、ティース部にコイルを挿入して、このコイルをエポキシ樹脂成形材料を用いて封止する方法を用いることができる。
上記のコイルやステータコアに使用できる巻線は、丸線で構成されてもよく、平角線で構成されてもよい。
【0032】
固定構造体または封止構造体を製造する工程は、例えば、タブレット状のエポキシ樹脂成形材料を用いて、120℃以上200℃以下の温度、3MPa以上15MPa以下の圧力、好ましくは、140℃~180℃の温度、5~12MPaの圧力で実施されてもよい。
【0033】
エポキシ樹脂組成物粒子のスパイラルフローの下限は、例えば、30cm以上、好ましくは50cm以上である。
一方、エポキシ樹脂組成物粒子のスパイラルフローの上限は、例えば、250cm以下、好ましく200cm以下である。
スパイラルフローは以下の手順に従って測定できる。
低圧トランスファー成形機を用いて、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件でエポキシ樹脂組成物粒子を注入し、流動長(cm)を測定する。
【0034】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物粒子を用いてタブレットを製造する方法は、上述の押出成形法に限定されず、圧縮成形方法、トランスファー成形法、射出成形法などを使用してもよい。
【0035】
以下、本実施形態のエポキシ樹脂組成物粒子の各成分を詳述する。
【0036】
[エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂組成物粒子は、エポキシ樹脂を含む。
エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミンのような芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ-アジペイド等の脂環式エポキシ等の脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用してもよい。
この中でも、エポキシ樹脂は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、および/またはビスフェノールA型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0037】
また、エポキシ樹脂としては、軟化点が80℃未満であることが好ましい。
なお、軟化点はボールリング法にて測定される。
【0038】
エポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂組成物粒子全体に対して好ましくは5質量%以上40質量%以下、より好ましくは10質量%以上20質量%以下である。
【0039】
[硬化剤]
エポキシ樹脂組成物粒子は、エポキシ樹脂を硬化させる硬化剤を含んでもよい。
硬化剤としては、たとえばフェノール樹脂系硬化剤が好ましく用いられる。フェノール樹脂系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。このようなフェノール樹脂系硬化剤により、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスが良好となる。
【0040】
さらに、併用できる硬化剤としては、例えば重付加型の硬化剤、縮合型の硬化剤等を挙げることができる。
【0041】
重付加型の硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m-フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドラジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、フェノールポリマーなどのポリフェノール化合物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。
【0042】
縮合型の硬化剤としては、例えば、レゾール樹脂、メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などが挙げられる。
【0043】
また、硬化剤としては、軟化点110℃未満、より好ましくは105℃未満であることがより好ましい。
なお、軟化点はボールリング法にて測定される。
【0044】
なお、硬化剤としてのフェノール樹脂と、エポキシ樹脂とは、エポキシ樹脂組成物粒子中のエポキシ基数(EP)と、全フェノール樹脂のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が、0.8以上、1.3以下となるように配合することが好ましい。当量比が上記範囲内であると、得られるエポキシ樹脂組成物粒子を成形する際、十分な硬化特性を得ることができる。ただし、エポキシ樹脂と反応し得るフェノール樹脂以外の樹脂を併用する場合は、適宜当量比を調整すればよい。
【0045】
[無機フィラー]
(繊維状または針状フィラー)
エポキシ樹脂組成物粒子は、無機フィラーとして、繊維状または針状フィラーを含む。
【0046】
繊維状または針状フィラーの数平均繊維長の下限は、例えば、5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上である。これにより、材料の強度を向上できる。
一方、繊維状または針状フィラーの数平均繊維長の上限は、例えば、500μm以下、好ましくは450μm以下、より好ましくは400μm以下である。これにより、材料の成形性を向上できる。
【0047】
繊維状または針状フィラーの数平均繊維長をLとし、繊維状または針状フィラーの数平均繊維径をDとしたとき、アスペクト比をL/Dと定義する。
繊維状または針状フィラーのL/Dの下限は、例えば、3以上、好ましくは10以上、より好ましくは15以上である。これにより、曲げ弾性率をより向上できる。また、靱性を向上できる。
一方、繊維状または針状フィラーのL/Dの上限は、例えば、100以下、好ましくは70以下、より好ましくは50以下である。これにより、材料の成形性を向上できる。
【0048】
(数平均繊維長の測定手順A)
エポキシ樹脂組成物粒子をアセトン溶解させて樹脂成分を除去した後、ガラスプレートに不溶分を分散させて、光学顕微鏡を用いて不溶分中のフィラーを撮影し、画像解析装置を用いて繊維長を測定する。繊維長が長いものから、100個の前記フィラーの繊維長の平均値を、上記数平均繊維長とする。
【0049】
(数平均繊維径の測定手順B)
走査型電子顕微鏡を用い、エポキシ樹脂組成物粒子の横断面から繊維状フィラーの横断面を100本計測し、各繊維断面の最小径の平均を数平均繊維径として求める。
【0050】
繊維状または針状フィラーは、例えば、ワラストナイト繊維、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維、繊維状酸化アルミ、アラミド繊維、炭化ケイ素ウィスカ、窒化珪素ウィスカ、およびチタン酸カリウムウィスカからなる群から選択される一または二以上を含んでもよい。この中でも、ワラストナイト繊維およびガラス繊維の少なくとも一方を含むことが好ましく、ワラストナイト繊維を含むことがより好ましい。
【0051】
繊維状または針状フィラーの含有量の下限は、当該エポキシ樹脂組成物粒子100質量%中、例えば、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。これにより、曲げ弾性率をより向上できる。また、靱性を向上できる。
一方、繊維状または針状フィラーの含有量の上限は、当該エポキシ樹脂組成物粒子100質量%中、特に限定されないが、80質量%以下、好ましくは75質量%以下でもよい。
【0052】
また、全ての無機フィラー中における繊維状または針状フィラーの含有量の下限は、例えば、30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは72質量%以上である。これにより、曲げ弾性率をより向上できる。また、靱性を向上できる。
一方、全ての無機フィラー中における繊維状または針状フィラーの含有量の上限は、とくに限定されないが、100質量%以下としてもよい。
【0053】
(繊維状または針状フィラー以外の他の無機フィラー)
エポキシ樹脂組成物粒子は、繊維状または針状フィラー以外の他の無機フィラーを含んでもよい。
他の無機フィラーは、球状、多角状、不定形状等の形状を有するものであれば特に限定されない。具体的には、他の無機フィラーとして、アスペクト比が2以下ものが好ましく、球状のものがより好ましい。
【0054】
他の無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、カオリン、タルク、クレイ、マイカ、ロックウール、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミ、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリカは、溶融破砕シリカ及び溶融球状シリカ等の溶融シリカ、結晶シリカ等が用いられる。
【0055】
無機フィラーの平均粒径D50は、好ましくは0.01μm以上、75μm以下であり、より好ましくは0.05μm以上、50μm以下である。無機フィラーの平均粒径を上記範囲内にすることにより、金型内の充填性が向上する。また、無機フィラーの平均粒径の上限値を75μm以下とすることにより、さらに充填性が向上する。平均粒径D50は、レーザー回折型測定装置RODOS SR型(SYMPATEC HEROS&RODOS)での体積換算平均粒径とした。
【0056】
無機フィラーの含有量は、エポキシ樹脂組成物粒子全体に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは65質量%以上であり、特に好ましくは75質量%以上である。
一方、無機フィラーの含有量は、エポキシ樹脂組成物粒子全体に対して、好ましくは93質量%以下であり、より好ましくは91質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0057】
また、無機フィラーと、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物や、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤とを併用する場合には、これらの無機系難燃剤と上記無機フィラーの合計量は、上記無機フィラーの含有量の範囲内とすることが望ましい。
【0058】
[硬化触媒]
エポキシ樹脂組成物粒子は、必要なら硬化触媒を含んでもよい。
硬化触媒としては、イミダゾール系触媒、およびリン系触媒からなる群から選ばれる一または二以上を使用することが好ましい。
【0059】
イミダゾール系触媒としては、例えば、イミダゾール類を用いることが好ましい。イミダゾール類は、たとえばイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシジメチルイミダゾール、および2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4-メチルイミダゾリル(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル(1’)]-エチル-s-トリアジンのイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物から選択される一種または二種以上を含むことができる。
【0060】
硬化触媒がイミダゾール系触媒を含む場合、イミダゾール系触媒の含有量の下限は、エポキシ樹脂組成物粒子全体に対して0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがとくに好ましい。
また、イミダゾール系触媒の含有量の上限は、エポキシ樹脂組成物粒子全体に対して2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがとくに好ましい。
【0061】
リン系触媒として、例えば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物等が挙げられる。
【0062】
エポキシ樹脂組成物粒子で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0063】
エポキシ樹脂組成物粒子で用いることができるテトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(4)で表される化合物等が挙げられる。
【0064】
【化1】
(上記一般式(4)において、Pはリン原子を表す。R、R、RおよびRは芳香族基またはアルキル基を表す。Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表す。AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。x、yは1~3の数、zは0~3の数であり、かつx=yである。)
【0065】
一般式(4)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られるがこれに限定されるものではない。まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(4)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(4)で表される化合物において、リン原子に結合するR、R、RおよびRがフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。上記フェノール類としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコールなどの単環式フェノール類、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、アントラキノールなどの縮合多環式フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類、フェニルフェノール、ビフェノールなどの多環式フェノール類などが例示される。
【0066】
硬化触媒として用いられるホスホベタイン化合物としては、例えば、下記一般式(5)で表される化合物等が挙げられる。
【0067】
【化2】
(上記一般式(5)において、Rは炭素数1~3のアルキル基、Rはヒドロキシル基を表す。fは0~5の数であり、gは0~3の数である。)
【0068】
一般式(5)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかしこれに限定されるものではない。
【0069】
硬化触媒として用いられるホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば、下記一般式(6)で表される化合物等が挙げられる。
【0070】
【化3】
(上記一般式(6)において、Pはリン原子を表す。R10、R11およびR12は炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R13、R14およびR15は水素原子または炭素数1~12の炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく、R14とR15が結合して環状構造となっていてもよい。)
【0071】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換またはアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基等の置換基としては1~6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0072】
また、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp-ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0073】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
【0074】
一般式(6)で表される化合物において、リン原子に結合するR10、R11およびR12がフェニル基であり、かつR13、R14およびR15が水素原子である化合物、すなわち1,4-ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物がエポキシ樹脂組成物粒子の硬化物の熱時弾性率を低下させる点で好ましい。
【0075】
硬化触媒として使用されるホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(7)で表される化合物等が挙げられる。
【0076】
【化4】
(上記一般式(7)において、Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。R16、R17、R18およびR19は、それぞれ、芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。式中R20は、基YおよびYと結合する有機基である。式中R21は、基YおよびYと結合する有機基である。YおよびYは、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。YおよびYはプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。R20、およびR21は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y、Y、YおよびYは互いに同一であっても異なっていてもよい。Zは芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。)
【0077】
一般式(7)において、R16、R17、R18およびR19としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n-ブチル基、n-オクチル基およびシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等のアルキル基、アルコキシ基、水酸基などの置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0078】
また、一般式(7)において、R20は、YおよびYと結合する有機基である。同様に、R21は、基YおよびYと結合する有機基である。YおよびYはプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にYおよびYはプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基R20およびR21は互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y、Y、Y、およびYは互いに同一であっても異なっていてもよい。このような一般式(7)中の-Y-R20-Y-、および-Y-R21-Y-で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、分子内にカルボキシル基、または水酸基を少なくとも2個有する有機酸が好ましく、さらには芳香環を構成する隣接する炭素にカルボキシル基または水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物が好ましく、芳香環を構成する隣接する炭素に水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物がより好ましく、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,2’-ビフェノール、1,1’-ビ-2-ナフトール、サリチル酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2-ヒドロキシベンジルアルコール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,2-プロパンジオールおよびグリセリン等が挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
【0079】
また、一般式(7)中のZは、芳香環または複素環を有する有機基または脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基およびオクチル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基およびビフェニル基等の芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基等のグリシジルオキシ基、メルカプト基、アミノ基を有するアルキル基およびビニル基等の反応性置換基等が挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基およびビフェニル基が熱安定性の面から、より好ましい。
【0080】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法としては、メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン等のシラン化合物、2,3-ジヒドロキシナフタレン等のプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド-メタノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。しかし、これに限定されるものではない。
【0081】
硬化触媒の含有量は、エポキシ樹脂組成物粒子全体に対して0.05質量%以上であることが好ましく、0.08質量%以上であることがより好ましく、0.10質量%以上であることがとくに好ましい。硬化触媒の含有量を上記下限値以上とすることにより、トランスファーモールド時におけるエポキシ樹脂組成物粒子の硬化性を効果的に向上させることができる。一方で、硬化触媒の含有量は、エポキシ樹脂組成物粒子全体に対して2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがとくに好ましい。硬化触媒の含有量を上記上限値以下とすることにより、封止時における流動性を向上させ、充填性の向上に寄与することができる。
【0082】
[ワックス]
エポキシ樹脂組成物粒子は、離型剤として、必要ならワックスを含んでもよい。
ワックスとしては、カルナバワックス等の天然ワックス、エステルワックス、モンタン酸エステルワックス、酸化ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類が挙げられる。
【0083】
ワックスの配合量は、エポキシ樹脂組成物粒子全体に対して、例えば、0.05質量%以上、2.0質量%以下である。ワックスの配合量の下限値は、エポキシ樹脂組成物粒子全体に対して、好ましくは、0.1質量%以上であり、より好ましくは、0.2質量%以上である。ワックスの配合量の上限値は、エポキシ樹脂組成物粒子全体に対して、好ましくは、1.5質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下である。上記範囲でワックスを配合することにより、得られるエポキシ樹脂組成物粒子は、トランスファーモールド時において優れた流動性と、充填性とを有する。
【0084】
[カップリング剤]
エポキシ樹脂組成物粒子は、必要ならシランカップリング剤等のカップリング剤を含んでもよい。
カップリング剤例えばエポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン等が挙げられる。
【0085】
エポキシシランとしては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、アミノシランとしては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-6-(アミノヘキシル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ベンゼンジメタナン等が挙げられる。また、ウレイドシランとしては、例えば、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。アミノシランの1級アミノ部位をケトン又はアルデヒドを反応させて保護した潜在性アミノシランカップリング剤として用いてもよい。また、アミノシランとしては、2級アミノ基を有してもよい。また、メルカプトシランとしては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランのほか、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドのような熱分解することによってメルカプトシランカップリング剤と同様の機能を発現するシランカップリング剤など、が挙げられる。またこれらのシランカップリング剤は予め加水分解反応させたものを配合してもよい。これらのシランカップリング剤は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0086】
連続成形性という観点では、メルカプトシランが好ましく、流動性の観点では、アミノシランが好ましく、密着性という観点ではエポキシシランが好ましい。
【0087】
エポキシ樹脂組成物粒子に用いることができるシランカップリング剤等のカップリング剤の含有量の下限値としては、エポキシ樹脂組成物粒子全体に対して、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。シランカップリング剤等のカップリング剤の含有量の下限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂と無機フィラーとの界面強度が低下することがなく、良好な耐振動性を得ることができる。また、シランカップリング剤等のカップリング剤の含有量の上限値としては、エポキシ樹脂組成物粒子全体に対して、1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.6質量%以下である。シランカップリング剤等のカップリング剤の含有量の上限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂と無機フィラーとの界面強度が低下することがなく、良好な耐振動性を得ることができる。また、シランカップリング剤等のカップリング剤の含有量が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂組成物粒子の硬化物の吸水性が増大することが防止される。
【0088】
[その他の添加剤]
本実施形態のエポキシ樹脂組成物粒子は、上記成分に加え、必要に応じてさらに、着色剤、難燃剤、低応力剤等の他の添加剤を含み得る。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0090】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0091】
(実施例1~6、比較例1)
<エポキシ樹脂組成物粒子の調製>
以下の表1に示す配合量に従って各成分を配合した材料混合物を加熱ロールで混練し、シート状に冷却したものを粉砕することにより、エポキシ樹脂組成物粒子(顆粒状の成形材料)を得た。
なお、加熱ロールの混練条件は、回転速度は20rpm、温度は120℃で、混練時間は5~10分間とした。
【0092】
表1中の各成分の詳細は下記のとおりである。
・繊維状または針状フィラー1:ガラス繊維(日東紡績社製、CS3E479)
・繊維状または針状フィラー2:ワラストナイト繊維(NYCO社製、NYAD325)
・球状無機フィラー1:ガラスビーズ(ユニチカ社製、ユニビーズ UB-13L)
・球状無機フィラー2:溶融シリカ(フミテック社製、FMT-15C)
・着色剤:カーボンブラック(三菱ケミカル社製、#750B)
・低応力剤:エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング社製、FZ-3730)
・エポキシ樹脂:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、N-673)軟化点78℃
・硬化剤1:フェノール系硬化剤(ノボラック型フェノール樹脂、住友ベークライト社製、PR-51470)軟化点104℃
・硬化剤2:フェノール系硬化剤(ノボラック型フェノール樹脂、住友ベークライト社製、PR-HF-3)軟化点80℃
・硬化触媒:イミダゾール系触媒(2-フェニル-4,5-ジヒドロキシイミダゾール、四国化成工業社製、2PHZ-PW)
・離型剤:エステルワックス(クラリアントケミカルジャパン社製、リコワックスOP)
・カップリング剤:アミノシランカップリング剤(信越化学工業社製、KBE-903)
【0093】
<数平均繊維長>
エポキシ樹脂組成物粒子をアセトン溶解させて樹脂成分を除去した後、ガラスプレートに不溶分を分散させて、光学顕微鏡を用いて不溶分中のフィラーを撮影し、画像解析装置を用いて繊維長を測定した。繊維長が長いものから、100個のフィラーの繊維長の平均値を、上記数平均繊維長(μm)とした。
【0094】
【表1】
【0095】
得られたエポキシ樹脂組成物粒子について、以下の項目を評価した。
【0096】
<スパイラルフロー>
低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、KTS-15)を用いて、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で、得られたエポキシ樹脂組成物粒子を注入し、流動長を測定した。
【0097】
<曲げ試験:曲げ弾性率>
上記で得られたエポキシ樹脂組成物粒子を打錠成形してタブレットを得た。得られたタブレットを、トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒の条件で注入成形し、幅10mm×厚さ4mm×長さ80mmの硬化物として試験片を得た。
得られた試験片の、室温における曲げ弾性率(GPa)を、JIS K 6911に準じて測定した。
【0098】
<K1c>
トランスファー成形装置を使用して、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒の成形条件に基づいて、当該エポキシ樹脂組成物粒子から成形体を成形した。
ASTM D5045-14に規格されているKIc法に準拠し、得られた成形体を、長さ50mm、幅B5mm、厚みW10mmの大きさとし、長さ方向中央部に厚み方向の深さ3.5mmのノッチを形成し、175℃で4時間硬化し、硬化物を得た。更に硬化物のノッチ先端部分に厚み方向の深さ0.1mmの傷を剃刀で施し、合計クラック長a=3.6mmを有する試験片を作製した。
その後、図3に概要を示すように、引張圧縮試験機(オリエンテック社製STB-1225S型テンシロン)を用いて、得られた試験片10について、測定温度25℃、速度10mm/分、支点間距離S=40mmで3点曲げ試験をおこない、下記式に基づき破壊靭性値(K1c(MPa・m1/2))を算出した。下記式中、Pは最大荷重(N)である。なお、図3の引張圧縮試験機は、直径10mmの載荷ピン12、2つのR加工の丸支点14を備える。
KI=((P×S)/(B×W3/2))×f(a/W)
ただし、f(a/W)=(3(a/W)1/2[1.99-(a/W)(1-a/W){2.15-3.9(a/W)+2.7(a/W)])/(2{1+2(a/W)}{1-(a/W)}3/2
上記により算出された比較例1の破壊靭性値を1.0と規格化したとき、各実施例1~6の破壊靭性値の相対値を表1に示す。
【0099】
以上の結果により、実施例1~6のエポキシ樹脂組成物粒子は、比較例1と比べて、曲げ弾性率が高い結果を示した。また、実施例1~6のエポキシ樹脂組成物粒子は、破壊靭性にも優れることが分かった。このような実施例1~6のエポキシ樹脂組成物粒子は、磁石固定、電子制御ユニット封止、コイル封止、またはステータコア封止に好適に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 エポキシ樹脂組成物粒子
2 ホッパー
41 ヒータ
42 スクリュー
43 シリンダ
43a 投入側シリンダ
5 ダイス
51 温度調節器
6 押出材
10 試験片
12 載荷ピン
14 丸支点
100 射出成形装置
15 金型
16 キャビティ
20 射出成形機
21 シリンダー
22 スクリュー
23 ホッパー
24 ヒーター
25 ノズル
26 逆流弁
30 車載用電子制御ユニット
32 配線基板
34 封止樹脂
36 電子部品
38 接続端子
40 スルーホール
図1
図2
図3