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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015663
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】シート処理装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/00 20060101AFI20240130BHJP
   B65H 31/26 20060101ALI20240130BHJP
   B65H 31/34 20060101ALI20240130BHJP
   B65H 31/24 20060101ALI20240130BHJP
   B65H 29/22 20060101ALI20240130BHJP
   B65H 37/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B65H31/00 Z
B65H31/26
B65H31/34
B65H31/24
B65H29/22 Z
B65H37/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117883
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】神田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】青木 翔
(72)【発明者】
【氏名】久保 守
【テーマコード(参考)】
3F049
3F054
3F108
【Fターム(参考)】
3F049AA08
3F049DA12
3F049LA01
3F049LB01
3F049LB08
3F054AA01
3F054AA06
3F054AC01
3F054BA04
3F054BB07
3F054BB14
3F054BF09
3F054BH04
3F054BJ04
3F054DA01
3F108GA01
3F108HA02
3F108HA32
(57)【要約】
【課題】シートのジャム処理の容易化を図る。
【解決手段】後端落とし部材250Aは、処理前ローラ211A、212Aよりも第1搬送方向の下流側に回動中心としての回動軸2501を有する。そして、回動軸2501を中心として処理前ローラ211A、212Aよりも上方の上方位置から、処理前ローラ211A、212Aよりも下方の下方位置までの間を回動可能である。後端落とし部材250Aは、上方位置から下方位置に回動することで、処理前ローラ211A、212Aにより搬送されたシートを処理トレイ220に落とす。先端規制部2407は、後端落とし部材250Aが下方位置にある状態で、処理前ローラ211A、212Aでシートを挟持するニップ領域のうち最も第1搬送方向下流側のニップ位置よりも第1搬送方向の上流側で、ニップ位置に向かって搬送されるシートSの先端を規制する。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを第1搬送方向に搬送する一対の搬送回転体と、
前記一対の搬送回転体によって前記第1搬送方向に搬送されたシートを一時的に載置する載置部と、
前記一対の搬送回転体よりも前記第1搬送方向の下流側に回動中心を有し、前記回動中心から前記第1搬送方向の上流側に延設され、前記回動中心を中心として前記一対の搬送回転体よりも上方の上方位置から前記一対の搬送回転体よりも下方の下方位置までの間を回動可能であって、前記上方位置から前記下方位置に回動することで、前記一対の搬送回転体により搬送されたシートに対して上方から当接して該シートを前記載置部に落とすシート落とし部と、
前記一対の搬送回転体により搬送された前記載置部上のシートを前記第1搬送方向とは逆方向の第2搬送方向に搬送する逆搬送部と、
前記逆搬送部によって前記第2搬送方向に搬送されたシートの前記第2搬送方向の下流端縁が突き当てられる突き当て部と、
前記逆搬送部によって前記第2搬送方向に搬送され、前記第2搬送方向の下流端縁が前記突き当て部に突き当てられたシートに所定の処理を施す処理部と、
前記載置部よりも前記第1搬送方向の下流側に配置され、前記処理部により前記所定の処理が施されたシートを積載する積載部と、
前記処理部により前記所定の処理が施されたシートを前記積載部に排出する排出部と、
前記シート落とし部が前記下方位置にある状態で、前記一対の搬送回転体でシートを挟持するニップ領域のうち最も前記第1搬送方向下流側のニップ位置よりも前記第1搬送方向の上流側で、前記ニップ位置に向かって搬送されるシートの先端の前記第1搬送方向への移動を規制する先端規制部と、
を備えたことを特徴とするシート処理装置。
【請求項2】
前記先端規制部は、前記シート落とし部が前記下方位置にある状態で、前記ニップ位置よりも前記第1搬送方向の上流側で、前記ニップ位置に向かって搬送されるシートの先端を規制する規制位置に、前記シート落とし部が前記上方位置にある状態で前記規制位置から退避する退避位置に、それぞれ位置するように前記シート落とし部の回動と共に動作することを特徴とする請求項1に記載のシート処理装置。
【請求項3】
前記逆搬送部は、回転部材と、前記回転部材を支持する支持部と、前記支持部を揺動可能に支持する揺動支点とを有し、前記回転部材が前記載置部上のシートの上面に当接して該シートを前記第2搬送方向に搬送可能な戻し位置と、前記回転部材が前記戻し位置よりも上方に退避した上方退避位置とに、前記揺動支点を中心に揺動可能であり、
前記揺動支点は、前記ニップ位置よりも前記第1搬送方向の上流で、且つ、前記ニップ位置よりも鉛直方向上方に配置されており、
前記先端規制部は、前記支持部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート処理装置。
【請求項4】
前記逆搬送部は、前記シート落とし部が前記下方位置にある状態で前記戻し位置に、前記シート落とし部が前記上方位置にある状態で前記上方退避位置に、それぞれ位置するように前記シート落とし部の回動に連動して揺動することを特徴とする請求項3に記載のシート処理装置。
【請求項5】
前記先端規制部は、第1先端規制部であり、
前記シート落とし部は、前記下方位置にある状態で前記第1先端規制部と共に、前記ニップ位置よりも前記第1搬送方向の上流側で、前記ニップ位置に向かって搬送されるシートの先端の前記第1搬送方向への移動を規制する第2先端規制部を有することを特徴とする請求項3に記載のシート処理装置。
【請求項6】
前記ニップ位置よりも前記第1搬送方向の上流側で、前記ニップ位置に向かってシートが搬送される搬送パスであって、シートの上面をガイドする上側ガイドと、シートの下面をガイドする下側ガイドとを有する搬送パスを備え、
前記シート落とし部は、前記上方位置から前記下方位置に回動した際に前記上側ガイドと係合することで前記下方位置に位置決めされる位置決め部を有し、
前記位置決め部は、前記第2先端規制部の上端部に設けられていることを特徴とする請求項5に記載のシート処理装置。
【請求項7】
前記先端規制部は、前記シート落とし部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート処理装置。
【請求項8】
前記ニップ位置よりも前記第1搬送方向の上流側で、前記ニップ位置に向かってシートが搬送される搬送パスであって、シートの上面をガイドする上側ガイドと、シートの下面をガイドする下側ガイドとを有する搬送パスを備え、
前記シート落とし部は、前記上方位置から前記下方位置に回動した際に前記上側ガイドと係合することで前記下方位置に位置決めされる位置決め部を有し、
前記位置決め部は、前記先端規制部の上端部に設けられていることを特徴とする請求項7に記載のシート処理装置。
【請求項9】
前記搬送回転体は、第1搬送ローラであり、
前記第1搬送ローラよりも前記第1搬送方向の上流側で、シートを前記第1搬送ローラに向かって搬送する一対の第2搬送ローラと、
前記第1搬送ローラと前記第2搬送ローラのうちの少なくとも前記第2搬送ローラを手動で駆動可能な手動操作部と、を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに対してステープルなどの所定の処理を施すシート処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート処理装置では、搬送パスから搬送されたシートを処理トレイに載置し、処理トレイ上のシートに対してステープルなどの処理を行う。このようなシート処理装置として、処理トレイの上方にシートを下方に案内するガイドが回動可能に設けられた構成が提案されている(特許文献1)。
【0003】
このガイドは、回動することで、処理トレイの上方に配置された一対の搬送ローラにより搬送されたシートに対して上方から当接して、該シートを処理トレイに落とす機能を有する。特許文献1に記載の構成の場合、ガイドは、回動中心が一対の搬送ローラによるシートの搬送方向の下流側に配置され、一対の搬送ローラにより搬送されたシートを下方に落とす際には、ガイドの先端が一対の搬送ローラよりも下流側で上方位置から下方位置に向かって回動中心を中心に回動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-113199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、特許文献1に記載の構成の場合、ガイド(シート落とし部)が下方位置にある状態では、一対の搬送ローラよりも下流側においてシートの搬送経路がガイドにより塞がれた状態となる。このため、何らかの理由によりガイドが下方位置から上方位置に戻れなくなってしまうと、次に搬送されてきたシートがこのガイドに当たって、一対の搬送ローラよりも下流側でジャムしてしまう。このようにガイドが下方位置にあり、且つ、一対の搬送ローラよりも下流側でジャムしたシートを取り除くことは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシート処理装置は、シートを第1搬送方向に搬送する一対の搬送回転体と、前記一対の搬送回転体によって前記第1搬送方向に搬送されたシートを一時的に載置する載置部と、前記一対の搬送回転体よりも前記第1搬送方向の下流側に回動中心を有し、前記回動中心から前記第1搬送方向の上流側に延設され、前記回動中心を中心として前記一対の搬送回転体よりも上方の上方位置から前記一対の搬送回転体よりも下方の下方位置までの間を回動可能であって、前記上方位置から前記下方位置に回動することで、前記一対の搬送回転体により搬送されたシートに対して上方から当接して該シートを前記載置部に落とすシート落とし部と、前記一対の搬送回転体により搬送された前記載置部上のシートを前記第1搬送方向とは逆方向の第2搬送方向に搬送する逆搬送部と、前記逆搬送部によって前記第2搬送方向に搬送されたシートの前記第2搬送方向の下流端縁が突き当てられる突き当て部と、前記逆搬送部によって前記第2搬送方向に搬送され、前記第2搬送方向の下流端縁が前記突き当て部に突き当てられたシートに所定の処理を施す処理部と、前記載置部よりも前記第1搬送方向の下流側に配置され、前記処理部により前記所定の処理が施されたシートを積載する積載部と、前記処理部により前記所定の処理が施されたシートを前記積載部に排出する排出部と、前記シート落とし部が前記下方位置にある状態で、前記一対の搬送回転体でシートを挟持するニップ領域のうち最も前記第1搬送方向下流側のニップ位置よりも前記第1搬送方向の上流側で、前記ニップ位置に向かって搬送されるシートの先端の前記第1搬送方向への移動を規制する先端規制部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シートのジャム処理の容易化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る画像形成システムの概略構成断面図。
図2】実施形態に係るシート処理装置の概略構成断面図。
図3】実施形態に係るシート処理装置を上側のカバーを外した状態で示す概略構成斜視図。
図4】実施形態に係る、(a)処理トレイ上の整合板を幅方向から見た図、(b)整合板をシート搬送方向下流側から見た図、(c)整合板の斜視図。
図5】実施形態に係るシート処理装置のホームポジションにおける、(a)処理トレイ周辺の斜視図、(b)シート処理装置の概略構成断面図。
図6】実施形態に係るシート処理装置のホームポジションにおける、(a)排出ローラの状態を、(b)掻き込みパドルの状態を、(c)後端落とし部材の状態を、それぞれ幅方向から見た図。
図7】実施形態に係る後端落とし部材と掻き込みパドルとの係合関係を示す斜視図。
図8】第1の実施形態に係るシート処理装置のシート排出時における、(a)処理トレイ周辺の斜視図、(b)シート処理装置の概略構成断面図。
図9】実施形態に係るシート処理装置のシート排出時における、(a)排出ローラの状態を、(b)掻き込みパドルの状態を、(c)後端落とし部材の状態を、それぞれ幅方向から見た図。
図10】実施形態に係るシート処理装置のシート掻き込み時における、(a)処理トレイ周辺の斜視図、(b)シート処理装置の概略構成断面図。
図11】実施形態に係るシート処理装置のシート掻き込み時における、(a)排出ローラの状態を、(b)掻き込みパドルの状態を、(c)後端落とし部材の状態を、それぞれ幅方向から見た図。
図12】実施形態に係るシート処理装置の各部がホームポジションにある状態を、装置の一部を省略して示す斜視図。
図13】実施形態に係るシート処理装置の各部がホームポジションにある状態を、装置の一部を省略して示す断面図。
図14】実施形態に係るシート処理装置のシート掻き込み時における状態を、装置の一部を省略して示す斜視図。
図15】実施形態に係るシート処理装置のシート掻き込み時における状態を、装置の一部を省略して示す断面図。
図16】実施形態に係るシート処理装置において、掻き込みパドルにより後続のシートの先端を規制している様子を示す概略構成断面図。
図17】実施形態に係る、(a)後端落とし部材を第1搬送方向の上流側から見た図、(b)後端落とし部材を下方から見た斜視図、(c)後端落とし部材を上方から見た斜視図。
図18】実施形態に係る画像形成システムにおいて、シート処理装置を画像形成装置本体の排出部から離間させた状態を示す概略構成断面図。
図19】実施形態に係るシート処理装置を第1搬送方向の上流側から見た、(a)模式図、(b)斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態について、図1ないし図19(b)を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成システムの概略構成について、図1を用いて説明する。
【0010】
[画像形成システム]
図1は、本実施形態の画像形成システムの概略構成を示す断面図である。画像形成システム1000Aは、画像形成装置100、パンチユニット150、シート処理装置200Aを有する。画像形成装置100は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複数の機能を有する複合機などであり、用紙やプラスチックシートなどのシートに画像を形成するものである。本実施形態では、電子写真方式のプリンタとしており、トナー像が形成されたシートが、第1排出部101又は第2排出部102から排出される。なお、画像形成装置100は、インクジェット方式の画像形成装置であっても良い。
【0011】
本実施形態の画像形成装置では、詳しい図示は省略するが、画像形成部103においてシートにトナー像を形成する。簡単に説明すると、感光ドラムの表面を帯電し、その表面を露光することで、感光ドラム上に静電潜像を形成する。そして、この静電潜像を現像装置により現像剤で現像してトナー像とする。感光ドラムに形成されたトナー像は、シートに転写され、更に、定着装置で加熱、加圧されることでシートに定着される。トナー像が定着されたシートは、搬送パス104を通り、第1排出部101又は第2排出部102に送られる。
【0012】
また、本実施形態の画像形成装置100は、画像形成部103、搬送パス104、第1排出部101及び第2排出部102を備えた画像形成装置本体110と、画像形成装置本体110の上方に配置された画像読取部120を備える。画像読取部120は、原稿上の画像を読み取り、読み取った画像信号を画像形成装置本体110に送る。画像形成装置本体110は、画像形成部103が配置された第1筐体部111と、搬送パス104の一部、第1排出部101及び第2排出部102が配置された第2筐体部112とを有し、第2筐体部112は第1筐体部111の上方に設けられている。画像読取部120は、第2筐体部112の上方に設けられている。また、第2筐体部には不図示のオペレーションパネルが設けられており、画像形成装置100、パンチユニット150やシート処理装置200に対するユーザからの指示(印刷条件やモード設定等)を入力できるようになっている。
【0013】
本実施形態では、このように構成することでは、第1筐体部111、第2筐体部112及び画像読取部120により囲まれた胴内空間130を有する。そして、第1排出部101又は第2排出部102から胴内空間130にシートを排出する構成としている。また、この胴内空間130には、パンチユニット150やシート処理装置200Aなどを着脱可能としている。本実施形態では、パンチユニット150及びシート処理装置200Aを装着して画像形成システム1000Aを構成しているが、何れか一方、或いは、他のシート処理を行う装置を装着するようにしても良い。
【0014】
パンチユニット150は、第1排出部101に接続され、第1排出部101から排出されたシートを受け入れて、該シートに対してパンチ処理を行うことが可能である。シート処理装置200Aは、パンチユニット150のシート排出部に接続され、パンチユニット150から排出されたシートを受け入れる。そして、詳しくは後述するが、該シートに対してステープルなどの所定の処理を施すことが可能である。なお、パンチユニット150でパンチ処理を行わずにシート処理装置200Aにシートを受け渡すことが可能であり、シート処理装置200Aにおいても所定の処理を施さずにシートを排出することが可能である。なお、第2排出部102から排出されたシートは、パンチユニット150及びシート処理装置200Aの上方のシート載置面160に排出される。
【0015】
胴内空間130には、図1の左右方向に沿ってレール131が配置されており、レール131に沿って矢印α1、α2方向にパンチユニット150及びシート処理装置200を着脱可能となっている。なお、パンチユニット150を省略してシート処理装置200Aを直接、第1排出部101に接続することもできる。また、このようにパンチユニット150及びシート処理装置200Aを着脱可能とすることで、シートのジャム処理を可能としている。
【0016】
例えば、シートが第1排出部101でジャムした場合には、パンチユニット150及びシート処理装置200Aを矢印α1方向に引き出して第1排出部101を露出させる。また、パンチユニット150でシートのジャムが発生した場合には、シート処理装置200Aのみを矢印α1方向に引き出してパンチユニット150を露出させる。パンチユニット150やシート処理装置200Aを画像形成装置100に装着する際には、それぞれ矢印α2方向に押し込む。このように本実施形態では、シート処理装置200Aを画像形成装置100の胴内空間130に配置するため、シート処理装置200Aを小型化することが要求される。
【0017】
[シート処理装置]
本実施形態のシート処理装置200Aの構成について、図2ないし図11(c)を用いて説明する。まず、シート処理装置200Aの全体構成について、図2及び図3を用いて説明する。
【0018】
[シート処理装置の全体構成]
シート処理装置200Aは、搬送パス210A、一対の搬送回転体としての処理前ローラ211A、212A、載置部としての処理トレイ220、一対の排出回転体(排出部)としての上側排出ローラ(ニップ部材)230A、下側排出ローラ230B、逆搬送部としての掻き込みパドル240A、シート落とし部としての後端落とし部材250A、シフト部としての整合部270A、戻し部材280、突き当て部としての後端規制部材290、積載部としての積載トレイ300、シート押さえパドル320Aなどを有する。画像形成装置100又はパンチユニット150から受け取ったシートは、搬送パス210Aに搬送される。
【0019】
搬送パス210Aから搬送されたシートは、シートを処理するモードに応じて、積載トレイ300に直接排出されるか、処理トレイ220に載置される。なお、積載トレイ300への直接排出とは、処理トレイ220上でステープル処理を実行可能な位置まで逆搬送することなくシートを積載トレイ300に排出することである。言い換えれば、シート処理装置200Aは、ステープルユニット400によってステープル処理が施されたシートを積載トレイ300に排出するモードと、ステープルユニット400によるステープル処理を行わずにシートを積載トレイ300に排出するモードを有する。本実施形態では、処理トレイ220に載置しないで、整合部270Aによりシートの整合を可能としている。また、処理トレイ220でもシートの整合が可能であり、処理トレイ220に載置されたシートに対してステープルユニット400によりステープルを可能としている。また、処理トレイ220に載置されたシート又はシート束は、一対の排出回転体としての上側排出ローラ230A及び下側排出ローラ230Bなどにより積載トレイ300に排出可能となっている。以下、各部の構成について詳しく説明する。
【0020】
[搬送パス]
搬送パス210Aは、シートを第1搬送方向(所定方向)に搬送する経路であり、搬送されるシートの上面をガイドする上側ガイド2101と、シートの下面をガイドする下側ガイド2102とを有する。搬送パス210Aには、一対の搬送回転体としての処理前ローラ211A、212A、上流ローラ(入口ローラ)213a、213bが配置されている。これらは、それぞれシートの搬送方向(第1搬送方向、図2の矢印β方向(左右方向))に交差するシートの幅方向(図3の矢印γ方向)に離間するように一対配置されている。
【0021】
処理前ローラ211A、212Aは、シートを搬送する搬送部材及び一対の搬送回転体であり、シートを挟持して少なくとも一方が回転する。上流ローラ213a、213bは、シートを挟持して少なくとも一方が回転する。上流ローラ213a、213bは、シート処理装置200Aの入口に配置されており、シート処理装置200Aの上流側から搬送されたシートを受け取って、搬送パス210Aに搬送する。そして、搬送パス210Aを通過したシートは、処理前ローラ211A、212Aに到達する。
【0022】
処理前ローラ211A、212Aは、シートを挟持搬送可能な処理前ニップ部211aを形成する。そして、処理前ニップ部211aでシートを挟持して第1搬送方向に搬送し、搬送パス210Aからシートを排出する。後述するように、処理前ローラ211A、212Aは、互いに当接又は離間、或いは、ニップ圧を変更可能である。
【0023】
[処理トレイ]
載置部としての処理トレイ220は、搬送パス210Aのシート搬送方向(第1搬送方向)の下流側で、且つ、搬送パス210の鉛直方向下方に配置されている。また、処理トレイ220は、第1搬送方向の上流側が下流側よりも低くなるように水平面に対して傾斜している。処理トレイ220は、処理前ローラ211A、212Aによって第1搬送方向の下流側に搬送されたシートを一時的に載置する。また、処理トレイ220は、複数のシートを重ねて積載可能であり、処理トレイ220上で整合部270Aによりシートの幅方向の整合や幅方向への移動(シートのシフト)が行われる。また、処理トレイ220の第1搬送方向の上流端には、処理トレイ220に載置されたシートの第1搬送方向の上流端縁(第1搬送方向とは逆方向の第2搬送方向の下流端縁、シートの後端)が突き当てられる突き当て部としての後端規制部材290が配置されている。なお、処理トレイ220の一部(例えば、第1搬送方向の下流側端部)は搬送パス210Aよりも鉛直方向上方に突出していてもよい。
【0024】
また、処理トレイ220の第1搬送方向の上流側には、処理部としてのステープルユニット400が配置されている。ステープルユニット400は、処理トレイ220で幅方向の整合、後端の規制が行われたシート束に対して、所定の処理としてのステープル処理(綴じ処理)を行う。ステープルユニット400は、シート束に対するステープル位置を変更可能であり、ステープル位置に応じて移動する。なお、所定の処理は、ステープル以外に、パンチなどの他の処理であっても良い。処理トレイ220に載置されたシート又はシート束は、後述するように、上側排出ローラ230A、下側排出ローラ230Bにより積載トレイ300に排出される。
【0025】
[掻き込みパドル]
逆搬送部としての掻き込みパドル240Aは、処理トレイ220上のシートを第1搬送方向とは逆方向の第2搬送方向に搬送する。掻き込みパドル240Aは、回転部材としてのパドル部2401と、パドル部2401を支持する支持部としてのパドルアーム2402と、パドルアーム2402を揺動可能に支持する揺動支点2403とを有する。即ち、パドルアーム2402は、揺動支点2403を中心に上下方向に揺動可能であり、そのパドルアーム2402の先端には、パドル部2401が回転可能に設けられている。
【0026】
このような掻き込みパドル240Aは、パドル部2401が処理トレイ220上のシートの上面に当接して該シートを第2搬送方向に搬送可能な戻し位置と、パドル部2401が戻し位置よりも上方に退避した上方退避位置とに、揺動支点2403を中心に揺動可能である。揺動支点2403は、処理前ローラ211A、212Aでシートを挟持するニップ位置である処理前ニップ部211aよりも第1搬送方向の上流で、且つ、処理前ニップ部211aよりも鉛直方向上方に配置されている。そして、パドルアーム2402は、揺動支点2403から第1搬送方向下流側に延設され、その先端部にパドル部2401が設けられている。また、掻き込みパドル240Aは、図3に示すように、後述する上側排出ローラ230Aの幅方向の両側に一対配置されている。
【0027】
[後端落とし部材]
シート落とし部としての後端落とし部材250Aは、一対の掻き込みパドル240Aの両側に一対設けられている。即ち、一対の後端落とし部材250Aは、幅方向に関して掻き込みパドル240Aの両側に配置され、後述するように掻き込みパドル240Aと連動して上下方向に移動することで、シートの第1搬送方向の上流側の上面に当接して、シートの上流端部(後端部)を処理トレイ220に向けて落とすように動作する。なお、後端落とし部材250Aは、掻き込みパドル240Aとは別駆動で動作するようにしても良い。
【0028】
このような後端落とし部材250Aは、一対の搬送ローラとしての処理前ローラ211A、212Aよりも第1搬送方向の下流側に回動中心としての回動軸2501を有する。そして、回動軸2501から第1搬送方向の上流側に延設され、回動軸2501を中心として処理前ローラ211A、212Aよりも上方の上方位置から、処理前ローラ211A、212Aよりも下方の下方位置までの間を回動可能である。後端落とし部材250Aは、上方位置から下方位置に回動することで、処理前ローラ211A、212Aにより搬送されたシートに対して上方から当接して該シートを下方の処理トレイ220に落とす。
【0029】
[戻し部材]
戻し部材280は、上述のように掻き込みパドル240Aにより後端規制部材290に向けて搬送されたシートを更に後端規制部材290に向けて搬送し、シートの後端を後端規制部材290に当接させて、シートの後端位置を規制するものである。このような戻し部材280は、ローレットベルト281により構成され、ローレットベルト281を回転駆動することで、掻き込みパドル240Aにより第1搬送方向の上流側に搬送されたシートを更に掻き込んで、後端を後端規制部材290に当接させる。戻し部材280は、シートに当接可能な当接位置と、当接位置から上方に退避した退避位置に移動可能であり、シートを後端規制部材290に向けて搬送する場合には当接位置に、処理トレイ220上のシートを積載トレイ300に向けて搬送する際には退避位置に、それぞれ移動する。
【0030】
[排出ローラ]
上側排出ローラ230A及び下側排出ローラ230Bは、一対の排出回転体対及び排出部を構成し、処理前ローラ211A、212Aによって第1搬送方向の下流側に搬送されたシートを、処理トレイ220よりも第1搬送方向の下流側に搬送して排出する。具体的には、上側排出ローラ230A及び下側排出ローラ230Bは、ステープルユニット400によりステープル処理が施されたシートを積載トレイ300に排出する。上側排出ローラ230Aは、下側排出ローラ230Bとの間でシートを挟持する挟持位置(接触位置)と、挟持位置から上方に退避した退避位置とに移動可能であり、挟持位置で下側排出ローラ230Bとの間でシートを挟持する。即ち、上側排出ローラ230Aは、挟持位置で下側排出ローラ230Bとの間でシートをニップするニップ部材として機能する。上側排出ローラ230A及び下側排出ローラ230Bは、それぞれシートの幅方向に離間して2つ配置されている。本実施形態では、一対の掻き込みパドル240Aの幅方向の内側に配置されている。
【0031】
上側排出ローラ230A及び下側排出ローラ230Bは、挟持位置でシート又はシート束を挟持して、例えば、下側排出ローラ230Bが回転することで、挟持したシート又はシート束を搬送する。なお、上側排出ローラ230Aは、下側排出ローラ230Bの回転に従動して回転する従動ローラであるが、駆動するようにしても良い。即ち、本実施形態では、上側排出ローラ230Aを従動回転体、下側排出ローラ230Bを駆動回転としている。また、上側排出ローラ230Aは、挟持位置で下側排出ローラ230Bとの間でシートを挟持可能なニップ部材として機能するが、このニップ部材は、ローラに代えてベルトなどの他の回転体であっても良いし、レバー部材のように回転せずにシートと当接する当接部材であっても良い。また、下側排出ローラ230Bは、ローラ以外にベルトなどの回転体であっても良い。
【0032】
上側排出ローラ230Aは、回動軸2301を中心に挟持位置から退避位置までの間で回動可能となっている。言い換えれば、上側排出ローラ230Aは、挟持位置から退避位置までの間で昇降可能である。上側排出ローラ230Aは、支持部としての排出アーム2302の先端に設けられている。回動軸2301は、上述の揺動支点2403と同軸上に設けられ、処理前ローラ211A、212Aでシートを挟持する処理前ニップ部211aよりも第1搬送方向の上流で、且つ、処理前ニップ部211aよりも鉛直方向上方に配置されている。そして、排出アーム2302は、回動軸2301から第1搬送方向下流側に延設され、その先端部に上側排出ローラ230Aが設けられている。回動軸2301は、揺動支点2403と同軸上に配置されていなくても良いが、本実施形態では、上側排出ローラ230Aと掻き込みパドル240Aの回動軸を同軸上としている。
【0033】
回動軸2301は、挟持位置において上側排出ローラ230Aが下側排出ローラ230Bとの間でシートをニップする排出ニップ部よりも第1搬送方向の上流側に配置されている。また、上側排出ローラ230Aは、退避位置において、処理前ローラ211A、212Aとでシートをニップする処理前ニップ部211aよりも鉛直方向上方に位置し、回動軸2301は、退避位置における上側排出ローラ230Aの中心よりも鉛直方向上方に位置する。
【0034】
上側排出ローラ230Aは、回動軸2301及び処理前ニップ部211aとの位置関係を上述のように規定しているため、退避位置にある状態では、処理前ニップ部211aを通過したシートが積載トレイ300に向かうことを許容する。一方、上側排出ローラ230Aは、回動軸2301を中心に図2の反時計方向に回動することで、退避位置から挟持位置に向けて下方に移動する。そして、上側排出ローラ230Aが挟持位置に移動することで、シートを上側排出ローラ230Aと下側排出ローラ230Bとの間で挟持可能となる。
【0035】
[整合部]
シフト部としての整合部270Aについて、図2、3に加えて、図4(a)~図4(c)を参照して説明する。整合部270Aは、処理前ローラ211A、212Aによって第1搬送方向の下流側に搬送されたシートの第1搬送方向に沿う端縁に当接した状態で第1搬送方向と交差するシフト方向(幅方向)に移動することでシートをシフト方向に移動させる。このような整合部270Aは、シフト方向に関して互いに対向するように配置された一対の整合板271Aを有する。
【0036】
一対の整合板271Aは、搬送パス210Aの第1搬送方向の下流端部よりも更に下流側に配置され、幅方向に移動してシートの幅方向端縁に当接することでシートの幅方向の整合を行う。本実施形態では、処理トレイ220に載置されるシートの幅方向両側にそれぞれ配置され、それぞれ幅方向に移動可能である。また、一対の整合板271Aは、上側排出ローラ230A及び下側排出ローラ230Bに対して第1搬送方向の上流側から下流側に亙って延設されている。なお、一対の整合板271Aの構成は同じである。一対の整合板271Aは、駆動部としてのフロント側(F側)整合板移動モータ及びリア側(R側)整合板移動モータの駆動によりシフト方向に移動する。
【0037】
整合板271Aは、第1搬送方向の下流側における上下方向の幅が広くなるように形成されている。即ち、整合板271Aは、第1搬送方向の下流側の第1板部2701と、第1板部2701と第1搬送方向の上流側に連続するように形成された第2板部2702とを有する。第1板部2701は、搬送されたシートの先端側が上側または下側にカールしていても該シートと当接可能なように、第2板部2702よりも上下方向に広い面積を有する。一方、第2板部2702は、後端落とし部材250Aが下方位置に位置してもこの後端落とし部材250Aと干渉しないように、上下方向の高さを第1板部2701よりも低くなるように形成している。また、第2板部2702の上端縁は、第1搬送方向の上流側に向かう程低くなるように傾斜している。
【0038】
また、第1板部2701は、上側排出ローラ230A及び下側排出ローラ230Bに対して第1搬送方向の上流側から下流側に跨るように形成されている。これにより、後述する第1シフト排出処理によりシートを排出した場合であっても、該シートに対して少なくとも第1板部2701が当接可能としている。また、第2板部2702は、処理トレイ220上に位置し、第1搬送方向に関して第1板部2701と連続して形成されている。これにより、後述する第2シフト排出処理により処理トレイ220上に載置されたシートに対して少なくとも第2板部2702が当接可能としている。
【0039】
また、第1板部2701には、図4(a)~図4(c)に示すように、カール押さえ部2703及び支持部2704を有する。カール押さえ部2703は、上側排出ローラ230A及び下側排出ローラ230Bでシートを挟持するニップ位置である排出ニップ部230a(後述する図8(b)参照)よりも第1搬送方向の下流側で、且つ、排出ニップ部230aの鉛直方向上方に設けられ、上方にカールしたシートの先端を押さえる。本実施形態では、カール押さえ部2703は、第1板部2701の上端部から幅方向内側(シートと当接する側、図4(b)の右側)に突出した突出部であり、カールしたシートの幅方向端縁が当接することで該シートの先端が押さえられる。また、カール押さえ部2703の下方には、凹凸部2705が設けられており、カールの状態によってはシートの幅方向端縁がこの凹凸部2705に引っ掛かることで、カールしたシートの先端を押さえることを可能としている。
【0040】
支持部2704は、上側排出ローラ230A及び下側排出ローラ230Bでシートを挟持するニップ位置である排出ニップ部230aよりも第1搬送方向の下流側で、且つ、排出ニップ部230aの鉛直方向下方に設けられ、シートを下方から支持する。本実施形態では、支持部2704は、第1板部2701の下端部から幅方向内側(シートと当接する側、図4(b)の右側)に突出した突出部である。また、図4(a)、図4(c)に示すように、支持部2704の第1搬送方向の下流端部には、下流に向かう程、下側に傾斜した傾斜部2704aが形成されている。これにより、支持部2704により支持されたシートを円滑に積載トレイ300に案内可能としている。また、排出ニップ部230aよりも第1搬送方向下流側のシートが支持部2704に支持されることで、支持しない場合に比べて一対の整合板271Aがシート側縁に当接する面積を増やすことができる。
【0041】
[積載トレイ]
積載部としての積載トレイ300は、上述のように、上側排出ローラ230A及び下側排出ローラ230Bにより排出されたシートが積載される。積載トレイ300は、処理トレイ220の第1搬送方向の下流側で、且つ、鉛直方向下方に昇降可能に設けられている。また、積載トレイ300は、第1搬送方向の上流側が下流側よりも低くなるように水平面に対して傾斜している。このような積載トレイ300は、例えば、上下方向に配置されたレールに沿って上下方向に移動可能に支持されており、昇降手段としての積載トレイ昇降モータの駆動により昇降する。
【0042】
積載トレイ300の第1搬送方向の上流端には、積載トレイ300に積載されたシート又はシート束の所定方向上流端(後端)を規制する積載側規制手段としての立ち面310aと、立ち面310aに当接したシートの後端を押さえる後端押さえ310bが設けられている。後端押さえ310bは、上方に向かう程、第1搬送方向の下流側に傾斜しており、シートの後端が上側にカールしていても、この後端押さえ310bにより押さえることが可能となっている。また、下側排出ローラ230Bの回転軸と同軸上に、シート押さえパドル320Aが設けられている。
【0043】
積載トレイ300は、積載トレイ昇降モータにより第1積載位置から、第1積載位置よりも下方の第2積載位置までの間で昇降可能である。第2積載位置は、シートを積載トレイ300に排出する際に下降していた積載トレイ300の動作が上昇に切り替わる位置である。シート排出時には、積載トレイ300昇降すると共に、シート押さえパドル320Aが回転し、積載トレイ300上のシート又はシート束がシート押さえパドル320Aにより押さえられる。
【0044】
[各部の駆動構成]
次に、上側排出ローラ230A、掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aの駆動構成について、図5(a)ないし図11(c)を用いて説明する。本実施形態では、上側排出ローラ230A、掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aが互いに連動するように構成されている。これらの駆動構成600は、図5(a)に示すように、駆動源としての処理上モータ610、駆動伝達機構611、回転軸612、カム機構613を有する。処理上モータ610は、正逆回転可能であり、処理上モータ610の駆動は、駆動伝達機構611を介して回転軸612に伝達される。本実施形態では、駆動伝達機構611をギア列で構成しているが、ベルトにより駆動を伝達する構成など、他の駆動伝達構成であっても良い。
【0045】
回転軸612は、上側排出ローラ230A、掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aの上方に幅方向に亙って配置されている。そして、回転軸612の回転によりカム機構613が動作するようにしている。カム機構613は、回転軸612と共に回転する第1カム部材620及び第2カム部材630を有する。第1カム部材620は、一対の上側排出ローラ230Aの間に配置されており、上側排出ローラ230Aを動作させる。第2カム部材630は、一対の掻き込みパドル240Aのそれぞれに隣接して1つずつ設けられており、掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aを動作させる。
【0046】
第1カム部材620は、図6(a)に示すように、内側に、上側排出ローラ230Aの排出アーム2302に設けられた突起部2303が侵入可能な溝部621が形成されている。溝部621は、外側の周面、即ち、第1カム部材620の内周面を内カム面622としている。内カム面622は、回転方向の位相によって回転軸612の回転中心からの距離が異なるカム面である。また、第1カム部材620は、外周面を外カム面623としている。外カム面623も、回転方向の位相によって回転軸612の回転中心からの距離が異なるカム面である。
【0047】
上側排出ローラ230Aの排出アーム2302には、上述の突起部2303に加えて、第1カム部材620の外カム面623に当接可能な当接部2304を有する。第1カム部材620は、回転軸612と共に回転することで、内カム面622と突起部2303との当接位置(位相)を変えたり、これらを離間させ、外カム面623と当接部2304との当接位置(位相)を変えたり、これらを離間させることで、後述するように、上側排出ローラ230Aを、回動軸2301を中心に挟持位置から退避位置までの間で回動させる。
【0048】
第2カム部材630は、図6(b)に示すように、内側に、掻き込みパドル240Aのパドルアーム2402に設けられた第1突起部2404が侵入可能な溝部631が形成されている。溝部631は、外側の周面、即ち、第2カム部材630の内周面を内カム面632としている。内カム面632は、回転方向の位相によって回転軸612の回転中心からの距離が異なるカム面である。第2カム部材630は、回転軸612と共に回転することで、内カム面632と第1突起部2404との当接位置(位相)を変えることで、後述するように、掻き込みパドル240Aを、揺動支点2403を中心に戻し位置から上方退避位置までの間で回動させる。
【0049】
また、掻き込みパドル240Aのパドルアーム2402と共に揺動支点2403を中心に揺動し、パドル部2401の回転軸2401aの端部を支持する支持部2406には、図6(c)及び図7に示すように、後端落とし部材250Aに形成された係合凹部2502に侵入可能な第2突起部2405が設けられている。係合凹部2502は、第2突起部2405と当接又は離間することで、掻き込みパドル240Aが回動した際にこれと連動して、後端落とし部材250Aを、回動軸2501を中心に上方位置から下方位置までの間で回動させる。以下、上側排出ローラ230A、掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aの駆動について具体的に説明する。
【0050】
[ホームポジション]
まず、図5(a)ないし図6(c)は、上側排出ローラ230A、掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aのホームポジション(HP)位置を示している。ホームポジションでは、図5(a)、(b)に示すように、上側排出ローラ230Aは退避位置に、掻き込みパドル240Aは上方退避位置に、後端落とし部材250Aは上方位置にそれぞれ位置する。
【0051】
この状態では、図6(a)に示すように、上側排出ローラ230Aの突起部2303が第1カム部材620の内カム面622の回転軸612の中心からの距離が近い位置に当接することで、上側排出ローラ230Aが第1カム部材620に支持されている。
【0052】
また、図6(b)に示すように、掻き込みパドル240Aの第1突起部2404が第2カム部材630の内カム面632の回転軸612の中心からの距離が近い位置に当接することで、掻き込みパドル240Aが第2カム部材630に支持されている。
【0053】
更に、図6(c)に示すように、後端落とし部材250Aの係合凹部2502が掻き込みパドル240Aの第2突起部2405に当接することで、後端落とし部材250Aが第2突起部2405を介して掻き込みパドル240Aに支持されている。
【0054】
[上側排出ローラの下降]
次に、上側排出ローラ230Aをホームポジション(退避位置)から挟持位置に移動させる動作について、図8(a)ないし図9(c)を用いて説明する。ホームポジションから上側排出ローラ230Aを下降させるべく、処理上モータ610を駆動して回転軸612を第1方向(図9(a)、(b)の反時計方向)回転させると、第1カム部材620も同方向に回転して、突起部2303が内カム面622に沿って移動する。内カム面622は、ホームポジションから反時計方向に回転すると回転軸612の中心からの距離が離れるように形成されている。このため、この動作により上側排出ローラ230Aが下降する。
【0055】
次いで、上側排出ローラ230Aが挟持位置に移動して下側排出ローラ230Bに接触すると、図9(a)に示すように、第1カム部材620の内カム面622と突起部2303とが離間し、外カム面623が当接部2304と当接する。このように外カム面623を当接部2304に当接させることで、上側排出ローラ230Aを下側排出ローラ230Bに向けて加圧して、これらのローラ同士の間に所定のニップ圧を付与するようにしている。
【0056】
この際、第2カム部材630も回転軸612と共に回転するが、図9(b)に示すように、内カム面632が第1突起部2404と当接する位置の回転軸612の中心からの距離はホームポジションにおける距離とほぼ同じである。このため、第2カム部材630が回転しても掻き込みパドル240Aはホームポジションに維持される。掻き込みパドル240Aがホームポジションに維持されるため、図9(c)に示すように、後端落とし部材250Aもホームポジションに維持される。即ち、この状態では、図8(b)に示すように、上側排出ローラ230Aは挟持位置に移動するが、掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aはホームポジションに維持される。
【0057】
上側排出ローラ230Aを上昇させる場合、処理上モータ610を駆動して回転軸612を第1方向とは反対の第2方向に(図9(a)、(b)の反時計方向)回転させる。すると、第1カム部材620が回転軸612と共に同方向に回転して、突起部2303が内カム面622に沿って移動し、上側排出ローラ230Aが上昇する。そして、図6(a)に示したホームポジションに戻る。
【0058】
ここで、掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aは、図9(b)、(c)の状態から図6(b)、(c)の状態に戻る際に、第1突起部2404が第2カム部材630の内カム面632に沿って移動するが、この際に内カム面632が第1突起部2404と当接する位置の回転軸612の中心からの距離が変わらないように、内カム面632が形成されている。このため、掻き込みパドル240Aは、ホームポジションに維持されたままとなる。掻き込みパドル240Aがホームポジションに維持されているため、後端落とし部材250Aも、ホームポジションに維持されたままとなる。
【0059】
[掻き込みパドル及び後端落とし部材の下降]
次に、掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aをホームポジション(上方退避位置、上方位置)から戻し位置、下方位置に移動させる動作について、図10(a)ないし図11(c)を用いて説明する。ホームポジションから掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aを下降させるべく、処理上モータ610を駆動して回転軸612を第1方向とは反対の第2方向(図11(a)、(b)の時計方向)回転させると、第1カム部材620も同方向に回転して、突起部2303が内カム面622に沿って移動する。内カム面622は、ホームポジションから時計方向に回転しても回転軸612の中心からの距離がほぼ変わらないように形成されている。このため、図11(a)に示すように、上側排出ローラ230Aはホームポジションに維持される。
【0060】
一方、第2カム部材630も回転軸612と共に同方向に回転して、第1突起部2404が内カム面632に沿って移動する。内カム面632は、ホームポジションから時計方向に回転すると回転軸612の中心からの距離が離れるように形成されている。このため、この動作により掻き込みパドル240Aが下降し、戻し位置に移動する。
【0061】
この際、後端落とし部材250Aも掻き込みパドル240Aと共に下降する。本実施形態では、後端落とし部材250Aは、上方位置から下方位置に回動した際に、搬送パス210Aの上側ガイド2101と係合することで下方位置に位置決めされる位置決め部2503を有する。位置決め部2503は、後端落とし部材250Aの先端(第1搬送方向の上流端)に上方に突出するように設けられた突出部2504の上端部に設けられている。突出部2504は、後端落とし部材250Aが下方位置にある状態で、処理前ニップ部211aよりも第1搬送方向の上流側で、処理前ニップ部211aに向かって搬送されるシートの先端を規制する役目も有する。
【0062】
位置決め部2503は、この突出部2504の上端に上側ガイド2101と係合可能に設けられた係合部であり、上側ガイド2101の上面に当接することで、後端落とし部材250Aがそれ以上、下降することを規制している。係合凹部2502は、この状態で第2突起部2405と離間するように形成されている。このため、後端落とし部材250Aは、掻き込みパドル240Aとの係合状態が解除された状態であり、位置決め部2503により下方位置に位置決めされた状態である。
【0063】
これにより、後端落とし部材250Aは、掻き込みパドル240Aが戻し位置に到達しても、位置決め部2503と上側ガイド2101との係合によりそれ以上下降せず、下方位置に位置決めされる。このような状態では、図10(b)に示すように、掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aが戻し位置及び下方位置に移動し、上側排出ローラ230Aがホームポジションに位置する。
【0064】
なお、図11(c)に示した上述の突出部2504及び位置決め部2053は、図1ないし図10(b)では図示を省略している。このような突出部2504及び位置決め部2053は、省略しても良く、この場合、別の位置決め機構を設けて後端落とし部材250Aの下方位置への位置決めを行っても良い。例えば、下方位置で係合凹部2502と第2突起部2405とが係合することで位置決めを行うようにしても良い。
【0065】
掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aを上昇させる場合、処理上モータ610を駆動して回転軸612を第1方向に(図11(a)、(b)の反時計方向)回転させる。すると、第2カム部材630が回転軸612と共に同方向に回転して、第1突起部2404が内カム面632に沿って移動し、掻き込みパドル240Aが上昇する。この際、第2突起部2405が係合凹部2052と再び係合し、この係合により後端落とし部材250Aも上昇する。そして、掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aが、図5(a)ないし図6(c)に示したホームポジションに戻る。
【0066】
ここで、上側排出ローラ230Aは、図11(a)の状態から図6(a)の状態に戻る際に、突起部2303が第1カム部材620の内カム面622に沿って移動するが、この際に内カム面622が突起部2303と当接する位置の回転軸612の中心からの距離が変わらないように、内カム面622が形成されている。このため、上側排出ローラ230Aは、ホームポジションに維持されたままとなる。
【0067】
このような本実施形態では、回転軸612をホームポジションから図6(a)ないし図6(c)の反時計方向に回転すると、上側排出ローラ230Aが下降し、掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aはホームポジションに維持される。一方、回転軸612をホームポジションから図6(a)ないし図6(c)の時計方向に回転すると、上側排出ローラ230Aがホームポジションに維持され、掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aが下降する。
【0068】
また、上側排出ローラ230Aが図9(a)に示す挟持位置にある状態で、回転軸612を図9(a)ないし図9(c)の時計方向に回転すると、上側排出ローラ230Aが上昇し、掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aはホームポジションに維持される。一方、掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aが戻し位置及び下方位置にある状態で、回転軸612を図11(a)ないし図11(c)の反時計方向に回転すると、上側排出ローラ230Aがホームポジションに維持され、掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aが上昇する。
【0069】
[シートの先端規制]
後端落とし部材250Aは、上述のように上方位置から下方位置に移動することで、処理前ローラ211A、212Aにより搬送されたシートを処理トレイ220に落とす。ここで、後端落とし部材250Aは、後端落とし部材250Aを動作させる機構の故障などの理由で下方位置から上方位置に戻れなくなる虞がある。後端落とし部材250Aが上方位置に戻れなくなってしまうと、次に搬送されてきたシートがこの後端落とし部材250Aに当たって、処理前ローラ211A、212Aよりも第1搬送方向の下流側でジャムしてしまう。このように後端落とし部材250Aが下方位置にあり、且つ、処理前ローラ211A、212Aよりも第1搬送方向の下流側でジャムしたシートを取り除くことは困難である。
【0070】
具体的には、後端落とし部材250Aが下方位置にある場合、処理トレイ220の上方空間が狭くなり、指などを入れにくい。また、処理トレイ220の上方は、後端落とし部材250Aを動作させる機構などが配置されているため、処理前ローラ211A、212Aと後端落とし部材250Aとの間の空間に上方からアクセスできるようにすることは困難である。更に、処理前ローラ211A、212Aの第1搬送方向の下流側でシートがジャムしているため、処理前ローラ211A、212Aを手動で回転させてシートを処理前ローラ211A、212Aの上流側に戻そうとしても、シートの後端がこの処理前ローラ211A、212Aの上流側の上流ローラ213a、213bを抜けていた場合には、このシートをシート処理装置200Aの入口まで戻すことは難しい。
【0071】
そこで、本実施形態では、後端落とし部材250Aが下方位置にある状態で、処理前ローラ211A、212Aでシートを挟持するニップ領域のうち最も第1搬送方向下流側のニップ位置よりも第1搬送方向の上流側で、ニップ位置に向かって搬送されるシートの先端を規制するようにしている。即ち、処理前ローラ211A、212Aでシートを挟持する処理前ニップ部211aは、ローラが弾性変形することでシートの搬送方向に関して或る程度の幅があるニップ領域を有する。シートの先端を規制する位置は、このニップ領域のうち、少なくとも第1搬送方向の最下流端よりも第1搬送方向の上流側としている。
【0072】
具体的には、後端落とし部材250Aと連動して下降する掻き込みパドル240Aのパドルアーム2402を、戻し位置において処理前ニップ部211aの第1搬送方向の上流側に位置させて、このパドルアーム2402によりシートの先端を規制するようにしている。即ち、本実施形態では、パドルアーム2402には、ニップ位置よりも上流側でシートの先端の第1搬送方向への移動を規制する先端規制部2407が設けられている。先端規制部2407は、掻き込みパドル240Aが上方退避位置に位置する場合における、パドルアーム2402の下側の側面である。以下、図2などを参照しつつ図12ないし図16を用いて具体的に説明する。図12ないし図15は、搬送パス210A及び処理トレイ220周辺の構成を抜き出して示す斜視図及び断面図である。図16は、パドルアーム2402によりシートの先端を規制している様子を示している。
【0073】
上述の図2に示したように、掻き込みパドル240Aは、パドル部2401が処理トレイ220上のシートの上面に当接して該シートを第2搬送方向に搬送可能な戻し位置と、パドル部2401が戻し位置よりも上方に退避した上方退避位置とに、揺動支点2403を中心に揺動可能である。また、揺動支点2403は、ニップ位置よりも第1搬送方向の上流で、且つ、ニップ位置よりも鉛直方向上方に配置されている。このため、掻き込みパドル240Aが戻し位置に位置した場合には、図15に示すように、パドルアーム2402の先端規制部2407がニップ位置よりも第1搬送方向の上流側に位置する。
【0074】
ここで、掻き込みパドル240Aは、処理前ローラ211Aの回転軸線方向(シートの幅方向)に関して、処理前ローラ211A、212Aから外れた位置に位置する。このため、掻き込みパドル240Aの軌道が処理前ニップ部211aを通る軌道であっても、掻き込みパドル240Aと処理前ローラ211A、212Aとが干渉することはない。したがって、掻き込みパドル240Aが戻し位置に位置した場合に、パドルアーム2402の先端規制部2407が処理前ニップ部211aの第1搬送方向の上流側に進入可能である。
【0075】
上述したように、掻き込みパドル240Aは、後端落とし部材250Aの回動と共に動作して、上方退避位置と戻し位置に移動する。即ち、上述の駆動構成600により、掻き込みパドル240Aは、後端落とし部材250Aの回動に連動して揺動する。そして、後端落とし部材250Aが下方位置にある状態で、掻き込みパドル240Aは戻し位置に位置する。戻し位置は、ニップ位置よりも第1搬送方向の上流側で、ニップ位置に向かって搬送されるシートの先端を、パドルアーム2402の先端規制部2407により規制する規制位置でもある。一方、後端落とし部材250Aが上方位置にある状態で、掻き込みパドル240Aは上方退避位置に位置する。上方退避位置は、規制位置から退避する退避位置である。
【0076】
図12及び図13では、上側排出ローラ230A、掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aがホームポジションにある状態を示している。即ち、上側排出ローラ230Aは退避位置に、掻き込みパドル240Aは上方退避位置に、後端落とし部材250Aは上方位置にそれぞれ位置する。この状態では、掻き込みパドル240Aのパドルアーム2402は、処理前ニップ部211aよりも第1搬送方向の上流側のシートの搬送経路に侵入しておらず、搬送パス210Aから搬送されたシートは処理前ニップ部211aに到達可能となっている。
【0077】
図14及び図15では、掻き込みパドル240A及び後端落とし部材250Aが、それぞれ戻し位置及び下方位置にある状態を示している。即ち、処理前ローラ211A、212Aから搬送されたシートの後端を後端落とし部材250Aにより処理トレイ220上に落とし、処理トレイ220上のシートを掻き込みパドル240Aにより第2搬送方向に搬送するシート掻き込み時の状態を示している。
【0078】
この状態では、上側排出ローラ230Aは退避位置に位置したままであり、掻き込みパドル240Aは上方退避位置から戻し位置に、後端落とし部材250Aは上方位置から下方位置にそれぞれ移動している。また、掻き込みパドル240Aのパドルアーム2402は、処理前ニップ部211aよりも第1搬送方向の上流側のシートの搬送経路に侵入しており、搬送パス210Aから搬送されたシートは処理前ニップ部211aに到達する前に、パドルアーム2402の先端規制部2407に突き当たる。
【0079】
図16に示すように、後端落とし部材250Aが下方位置に位置したまま、何らかの理由で上方位置に戻れない状態で、後続のシートSが搬送パス210A内で処理前ニップ部211aに向けて搬送されたとする。この場合、掻き込みパドル240Aは、後端落とし部材250Aと連動するように構成されているため、後端落とし部材250Aが下方位置に位置している状態では戻し位置に位置する。上述のように、戻し位置では、パドルアーム2402は、処理前ニップ部211aよりも第1搬送方向の上流側のシートの搬送経路に侵入しているため、後続のシートSの先端は、パドルアーム2402の先端規制部2407により規制される。そして、後続のシートSは、処理前ニップ部211aよりも上流側でジャムすることになる。
【0080】
上述したように、処理前ローラ211A、212Aよりも第1搬送方向の下流側でジャムしたシートを取り除くことは困難である。このため、上述のように処理前ニップ部211aよりも上流側で後続のシートSをジャムさせることで、このシートSの除去(ジャム処理)を容易に行える。このシートSのジャム処理については後述する。
【0081】
[シートの先端規制の別例]
上述の説明では、掻き込みパドル240Aのパドルアーム2402によりシートの先端を規制しているが、本実施形態では、上述したように、後端落とし部材250Aには、突出部2504が設けられており、この突出部2504も、シートの先端を規制する機能を有する。この点について、図11(c)及び図17(a)~(c)を用いて説明する。
【0082】
まず、本実施形態では、処理前ローラ211A、212Aの幅方向の両側に、シートにコシを付与するために、不図示のコシ付け部材が配置されている。このコシ付け部材は、幅方向に関して後端落とし部材250Aと重なる位置にある。このため、後端落とし部材250Aは、回動時にコシ付け部材と干渉しないように、先端部に凹部2505が設けられている。
【0083】
また、後端落とし部材250Aは、処理トレイ220上のシートをガイドする役目も有する。即ち、シートは、後端落とし部材250Aにより処理トレイ220上に落とされた後、掻き込みパドル240Aにより後端規制部材290に向けて第2搬送方向に搬送されるが、この際、シートの上面を後端落とし部材250Aの下面によりガイドすることで、シートをローレットベルト281や後端規制部材290に向けて円滑に移動させるようにしている。この際、シートの端部が後端落とし部材250Aの先端部に形成された凹部2505に侵入する虞がある。
【0084】
本実施状態では、凹部2505にシートの端部が侵入してもこのシートが凹部2505に引っ掛かりにくくすべく、凹部2505の各面を傾斜面2505a、2505b、2505cとしている。即ち、凹部2505は、第1搬送方向の下流側の第1面と、第1搬送方向に交差する幅方向に関して互いに対向する第2面及び第3面とを有する。第1面は、上方に向かう程、第1搬送方向の上流側に傾斜した傾斜面2505aである。第2面及び第3面は、上方に向かう程、互いに近づく方向に傾斜した傾斜面2505b、2505cである。
【0085】
凹部2505の内面を、このような傾斜面2505a、2505b、2505cとすることにより、凹部2505にシートの端部が下方から侵入した状態でシートが移動した場合に、何れかの傾斜面によって侵入した部分が下方に案内され易くなる。この結果、シートが凹部2505内で引っ掛かることを抑制できる。
【0086】
突出部2504は、凹部2505の上方に突出するように、且つ、凹部2505の幅方向両側の傾斜面2505b、2505cの上端部から上方に延設するように設けられている。即ち、突出部2504は、幅方向両側の側壁部2504a、2504bと、側壁部2504a、2504bの上端部を接続する接続部2504cとから形成される。そして、接続部2504cに、後端落とし部材250Aを下方位置に位置決めする位置決め部2503が設けられている。即ち、位置決め部2503は、突出部2504の上端部に設けられている。上述したように、位置決め部2503は、後端落とし部材250Aが上方位置から下方位置に回動した際に、搬送パス210Aの上側ガイド2101と係合することで、後端落とし部材250Aを下方位置に位置決めするものである。
【0087】
突出部2504は、後端落とし部材250Aと一体に設けられており、後端落とし部材250Aの回動と共に動作する。そして、後端落とし部材250Aが下方位置にある状態で、突出部2504の側壁部2504a、2504bが処理前ニップ部211aよりも第1搬送方向の上流側のシートの搬送経路に侵入する。これにより、搬送パス210A内を処理前ニップ部211aに向けて搬送されたシートの先端が突出部2504の側壁部2504a、2504bにより規制される。即ち、後端落とし部材250Aの突出部2504は、ニップ位置よりも第1搬送方向の上流側で、ニップ位置に向かって搬送されるシートの先端を規制する先端規制部に相当し、パドルアーム2402の先端規制部2407を第1先端規制部とした場合、突出部2504は、第2先端規制部に相当する。
【0088】
このように、本実施形態では、掻き込みパドル240Aのパドルアーム2402と、後端落とし部材250Aの突出部2504の両方で、ニップ位置よりも上流側でシートの先端を規制することを可能としている。但し、何れか一方は省略しても良い。例えば、後端落とし部材250Aの突出部2504を省略し、パドルアーム2402のみでシートの先端を規制するようにしても良い。また、例えば、掻き込みパドルの形状を変えるなどして、掻き込みパドルが戻し位置にある場合にパドルアームが処理前ニップ部211aの上流側に進入しないようにし、後端落とし部材250Aの突出部2504のみでシートの先端を規制するようにしても良い。
【0089】
[ジャム処理]
次に、パドルアーム2402や突出部2504により処理前ニップ部211aよりも上流側でジャムしたシートのジャム処理について図18ないし図19(b)を用いて説明する。本実施形態では、上述のように処理前ニップ部211aの上流側の搬送パス210A内でシートをジャムさせるため、この搬送パス210Aでジャム処理する。具体的には、図18に示すように、シート処理装置200Aを画像形成装置本体110の第1排出部101から離間させるように移動させる。本実施形態では、パンチユニット150を有するため、シート処理装置200Aをパンチユニット150から離間するように、矢印α1方向に移動させる。これにより、操作者は、シート処理装置200Aとパンチユニット150の間に手を入れて搬送パス210A内でジャムしたシートのジャム処理が可能となる。
【0090】
図19(a)、(b)に示すように、シート処理装置200Aのパンチユニット150と接続される側の面、即ち、第1搬送方向の上流側の面には、搬送パス210Aの入口210Aaが形成されている。また、シート処理装置200Aの第1搬送方向の上流側の面には、入口210Aaに隣接して、ステープルユニット400が設置される空間400aの開口部400bが形成されている。そして、空間400aには、手動操作部としてのジャム解除ダイヤル215が設けられている。このため、図18に示したように、シート処理装置200Aをパンチユニット150から離間させた状態で、入口210Aa及び開口部400bが露出し、入口210Aaからシートの除去、ステープルユニット400の針の交換、ジャム解除ダイヤル215の操作が可能となる。
【0091】
ジャム解除ダイヤル215は、第1搬送ローラとしての処理前ローラ211A、212Aの何れか一方の処理前ローラと、第2搬送ローラとしての上流ローラ213a、213bの何れか一方の上流ローラとを手動で駆動可能に構成されている。即ち、ジャム解除ダイヤル215を回転させることで、処理前ローラと上流ローラとが連動して回転する。なお、本実施形態では、上述のようにシートを処理前ニップ部211aよりも上流側でジャムさせるため、ジャム解除ダイヤル215で回転させるローラは、処理前ローラと上流ローラのうちの少なくとも上流ローラであれば良い。
【0092】
このように本実施形態では、処理前ニップ部211aよりも上流側でジャムしたシートのジャム処理を行う場合には、まず、シート処理装置200Aをパンチユニット150から離間させて入口210Aa及び開口部400bを露出させる。そして、ジャム解除ダイヤル215を回転させることで、処理前ローラ及び上流ローラを回転させて、ジャムしたシートを手動で入口210Aaまで搬送する。そして、入口210Aaまで搬送されたシートを除去する。
【0093】
なお、上述の説明では、パドルアーム2402及び突出部2504により処理前ニップ部211aよりも上流側でシートの先端を規制するようにしているが、シートを規制する位置は、ニップ領域のうち最も第1搬送方向下流側のニップ位置よりも第1搬送方向の上流側であれば良い。即ち、シートの先端が処理前ニップ部211a内に位置していても良い。この場合でも、ジャム解除ダイヤル215を回転させることで、上流ローラと共に処理前ローラも回転するので、シートを入口210Aaまで搬送可能である。
【0094】
このように本実施形態では、後端落とし部材250Aが下方位置から上方位置に戻れなくなった場合でも、シートを処理前ローラ211A、212Aのニップ領域のうち最も第1搬送方向下流側のニップ位置よりも第1搬送方向の上流側で規制している。このため、後端落とし部材250Aが下方位置にある場合に、シートのジャム処理を行いにくい位置である処理前ローラ211A、212Aの第1搬送方向の下流側において、シートがジャムすることを防止できる。
【0095】
また、ニップ領域のうち最も第1搬送方向下流側のニップ位置よりも第1搬送方向の上流側でジャムしたシートは、ジャム解除ダイヤル215を操作して搬送パス210Aの入口210Aaまで搬送することで、容易に除去することができる。したがって、本実施形態の構成によれば、シートのジャム処理の容易化を図れる。
【0096】
[他の実施形態]
上述の実施形態では、シート処理装置200Aを画像形成装置100の胴内空間130内に配置する構成としたが、本発明のシート処理装置の構成は、例えば、画像形成装置の側面に装着される構成であっても良い。また、シート処理装置は、画像形成装置が備える制御部により制御される構成であっても良い。
【0097】
また、本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
シートを第1搬送方向に搬送する一対の搬送回転体と、
前記一対の搬送回転体によって前記第1搬送方向に搬送されたシートを一時的に載置する載置部と、
前記一対の搬送回転体よりも前記第1搬送方向の下流側に回動中心を有し、前記回動中心から前記第1搬送方向の上流側に延設され、前記回動中心を中心として前記一対の搬送回転体よりも上方の上方位置から前記一対の搬送回転体よりも下方の下方位置までの間を回動可能であって、前記上方位置から前記下方位置に回動することで、前記一対の搬送回転体により搬送されたシートに対して上方から当接して該シートを前記載置部に落とすシート落とし部と、
前記一対の搬送回転体により搬送された前記載置部上のシートを前記第1搬送方向とは逆方向の第2搬送方向に搬送する逆搬送部と、
前記逆搬送部によって前記第2搬送方向に搬送されたシートの前記第2搬送方向の下流端縁が突き当てられる突き当て部と、
前記逆搬送部によって前記第2搬送方向に搬送され、前記第2搬送方向の下流端縁が前記突き当て部に突き当てられたシートに所定の処理を施す処理部と、
前記載置部よりも前記第1搬送方向の下流側に配置され、前記処理部により前記所定の処理が施されたシートを積載する積載部と、
前記処理部により前記所定の処理が施されたシートを前記積載部に排出する排出部と、
前記シート落とし部が前記下方位置にある状態で、前記一対の搬送回転体でシートを挟持するニップ領域のうち最も前記第1搬送方向下流側のニップ位置よりも前記第1搬送方向の上流側で、前記ニップ位置に向かって搬送されるシートの先端の前記第1搬送方向への移動を規制する先端規制部と、
を備えたことを特徴とするシート処理装置。
(構成2)
前記先端規制部は、前記シート落とし部が前記下方位置にある状態で、前記ニップ位置よりも前記第1搬送方向の上流側で、前記ニップ位置に向かって搬送されるシートの先端を規制する規制位置に、前記シート落とし部が前記上方位置にある状態で前記規制位置から退避する退避位置に、それぞれ位置するように前記シート落とし部の回動と共に動作することを特徴とする構成1に記載のシート処理装置。
(構成3)
前記逆搬送部は、回転部材と、前記回転部材を支持する支持部と、前記支持部を揺動可能に支持する揺動支点とを有し、前記回転部材が前記載置部上のシートの上面に当接して該シートを前記第2搬送方向に搬送可能な戻し位置と、前記回転部材が前記戻し位置よりも上方に退避した上方退避位置とに、前記揺動支点を中心に揺動可能であり、
前記揺動支点は、前記ニップ位置よりも前記第1搬送方向の上流で、且つ、前記ニップ位置よりも鉛直方向上方に配置されており、
前記先端規制部は、前記支持部に設けられていることを特徴とする構成1又は2に記載のシート処理装置。
(構成4)
前記逆搬送部は、前記シート落とし部が前記下方位置にある状態で前記戻し位置に、前記シート落とし部が前記上方位置にある状態で前記上方退避位置に、それぞれ位置するように前記シート落とし部の回動に連動して揺動することを特徴とする構成3に記載のシート処理装置。
(構成5)
前記先端規制部は、第1先端規制部であり、
前記シート落とし部は、前記下方位置にある状態で前記第1先端規制部と共に、前記ニップ位置よりも前記第1搬送方向の上流側で、前記ニップ位置に向かって搬送されるシートの先端の前記第1搬送方向への移動を規制する第2先端規制部を有することを特徴とする構成3又は4に記載のシート処理装置。
(構成6)
前記ニップ位置よりも前記第1搬送方向の上流側で、前記ニップ位置に向かってシートが搬送される搬送パスであって、シートの上面をガイドする上側ガイドと、シートの下面をガイドする下側ガイドとを有する搬送パスを備え、
前記シート落とし部は、前記上方位置から前記下方位置に回動した際に前記上側ガイドと係合することで前記下方位置に位置決めされる位置決め部を有し、
前記位置決め部は、前記第2先端規制部の上端部に設けられていることを特徴とする構成5に記載のシート処理装置。
(構成7)
前記先端規制部は、前記シート落とし部に設けられていることを特徴とする構成1又は2に記載のシート処理装置。
(構成8)
前記ニップ位置よりも前記第1搬送方向の上流側で、前記ニップ位置に向かってシートが搬送される搬送パスであって、シートの上面をガイドする上側ガイドと、シートの下面をガイドする下側ガイドとを有する搬送パスを備え、
前記シート落とし部は、前記上方位置から前記下方位置に回動した際に前記上側ガイドと係合することで前記下方位置に位置決めされる位置決め部を有し、
前記位置決め部は、前記先端規制部の上端部に設けられていることを特徴とする構成7に記載のシート処理装置。
(構成9)
前記搬送回転体は、第1搬送ローラであり、
前記第1搬送ローラよりも前記第1搬送方向の上流側で、シートを前記第1搬送ローラに向かって搬送する一対の第2搬送ローラと、
前記第1搬送ローラと前記第2搬送ローラのうちの少なくとも前記第2搬送ローラを手動で駆動可能な手動操作部と、を備えたことを特徴とする構成1ないし8の何れか1つに記載のシート処理装置。
【符号の説明】
【0098】
200A・・・シート処理装置
210A・・・搬送パス
210Aa・・・入口
2101・・・上側ガイド
2102・・・下側ガイド
211A、212A・・・処理前ローラ
211a・・・処理前ニップ部
213a、213b・・・上流ローラ
215・・・ジャム解除ダイヤル
220・・・処理トレイ
230A・・・上側排出ローラ
230B・・・下側排出ローラ
240A・・・掻き込みパドル
2401・・・パドル部
2402・・・パドルアーム
2407・・・先端規制部
2403・・・揺動支点
250A・・・後端落とし部材
2503・・・位置決め部
2504・・・突出部
270A・・・整合部
271A・・・整合板
280・・・戻し部材
290・・・後端規制部材
300・・・積載トレイ
400・・・ステープルユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19