(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156630
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】フェノールフォーム用の発泡安定剤
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20241029BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20241029BHJP
C08L 61/06 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CEY
C08J9/04 CEZ
C08L33/06
C08L61/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024069653
(22)【出願日】2024-04-23
(31)【優先権主張番号】23169356
(32)【優先日】2023-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ズーハン
(72)【発明者】
【氏名】ザラ オットー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル フェレンツ
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA48
4F074AA59
4F074AA60
4F074AD15
4F074BA39
4F074CA25
4F074CC04Y
4F074CC04Z
4F074CC06Y
4F074CC06Z
4F074CC22X
4F074DA07
4F074DA32
4J002BG042
4J002BG052
4J002BG072
4J002CC031
4J002EA016
4J002EA026
4J002EB026
4J002EB066
4J002FD326
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フェノールフォームに従来使用されてきた発泡安定剤ポリエーテル変性シロキサンの欠点である、分解物の形成によるエミッションへの悪影響のない新規発泡安定剤を含むフェノールフォーム製造用の組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも1つのフェノール樹脂と、少なくとも1つの発泡剤と、少なくとも1つの触媒とを含む、フェノールフォーム製造用の組成物であって、該組成物が、発泡安定剤として少なくとも1つのアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーを含むことを特徴とする、組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフェノール樹脂と、少なくとも1つの発泡剤と、少なくとも1つの触媒とを含む、フェノールフォーム製造用の組成物において、前記組成物が、発泡安定剤として少なくとも1つのアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーを含むことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーが、H
2C=CR
1-COOR
2型の少なくとも1つのコモノマーおよびH
2C=CR
1-COOR
3型の少なくとも1つのコモノマーを含み、ここで、
R
1=それぞれ互いに独立して、-Hまたは-CH
3であり、互いに異なる置換基R
1を有する異なるコモノマーがコポリマー内に存在することが可能であり、
R
2=それぞれ互いに独立して、1~25個の炭素原子を有する飽和または不飽和の、直鎖状、環状または分岐状の、脂肪族または芳香族炭化水素の群からの同一のまたは異なる基、有利には、メチル、エチル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル、イソデシル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル、イソボルニルまたはアリルであり
R
3=それぞれ互いに独立して、式(1)
【化1】
による一般平均組成の同一のまたは異なるポリエーテル基であり、
ここで、
x=1~500、有利には1~250、特に3~80であり、
R
4=それぞれ互いに独立して、同一のまたは異なる基-CH
2-O-、-CH
2-CH
2-O-、-CH
2-CH
2-CH
2-O-、-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-O-、または-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-O-であり、R
4は、省略されてもよく、
R
5=それぞれ互いに独立して、1~18個の炭素原子を有する同一のもしくは異なるアルキル基であって、任意にエーテル官能基を有するもの、または6~18個の炭素原子を有する同一のもしくは異なるアリール基であって、任意にエーテル官能基を有するもの、またはH、好ましくはH、メチル、エチルまたはベンジルであり、基R
3内に、異なる置換基R
5が任意の順序または配列で存在することが可能であり、
R
6=それぞれ互いに独立して、1~18個の炭素原子を有する同一のもしくは異なるアルキル基であって、任意にエーテル官能基を有するもの、または6~18個の炭素原子を有する同一のもしくは異なるアリール基であって、任意にエーテル官能基を有するもの、またはH、好ましくはH、メチル、エチルまたはベンジルであり、基R
3内に、異なる置換基R
6が任意の順序または配列で存在することが可能であり、
モノマー繰返し単位について、好ましくは、2つの基R
5およびR
6=Hであるか、または2つの基R
5およびR
6のうち一方がHであり、他方がメチルであり、
R
7=それぞれ互いに独立して、以下:R
8
、C(O)R
8、-CH
2-CH(OH)-CH
2OH、および-CH
2-C(CH
2OH)
2-CH
2-CH
3からなる群から選択される同一のまたは異なる基であり、メチル、ブチル、HまたはC(O)Meが好ましく、互いに異なる置換基R
7を有する異なるコモノマーがコポリマー内に存在することが可能であり、
R
8=それぞれ互いに独立して、1~16個の炭素原子を有する同一のまたは異なるアルキル基、6~16個の炭素原子を有する同一のまたは異なるアリール基、またはHである
ことを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの発泡剤が、以下:
- 3、4または5個の炭素原子を有する炭化水素、好ましくはシクロ-、イソ-および/またはn-ペンタン
ならびに
- 3、4または5個の炭素原子を有するハロゲン化炭化水素、好ましくは塩化イソプロピル、ハイドロフルオロオレフィンおよび/またはハイドロハロオレフィン、好ましくは1234ze、1234yf、1224yd、1233zd(E)および/または1336mzz
からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーが、DIN 55672-1:2016-03によるゲル浸透クロマトグラフィー(溶離液:THF;標準物質:PMMA)によって決定された500~100,000g/mol、特に好ましくは1,000~40,000g/mol、特に1,000~25,000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーが、使用される全フェノール樹脂100重量部に対して0.1~15重量部、有利には0.5~10重量部、特に好ましくは0.5~8重量部の総量で含まれていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのSi含有発泡安定剤が、含まれる全発泡安定剤の総量に対して有利には50重量%未満、さらに好ましくは25重量%未満、なおもさらに好ましくは10重量%未満の総量で含まれていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
それぞれアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーではない少なくとも1つのケイ素不含界面活性剤および/またはケイ素不含発泡安定剤が、使用される全フェノール樹脂100重量部に対して0.1~15重量部、有利には1~10重量部の総量でさらに含まれていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つのアルコキシル化、好ましくはエトキシル化植物油、特にヒマシ油が、使用される全フェノール樹脂100重量部に対して0.1~15重量部、有利には1~10重量部の総量でさらに含まれていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの触媒が、有機酸および無機酸からなる群から選択され、有利には、少なくとも1つの触媒は、硫酸、リン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、クメンスルホン酸およびフェノールスルホン酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの触媒が、使用される全フェノール樹脂100重量部に対して1~30重量部、有利には1~25重量部、特に好ましくは3~20重量部の総量で含まれていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つのアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーが、開始剤としてのTBPEH(tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート)および/またはAPO(tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート)を用いて製造されたことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
残留モノマー含量が、含まれる全アクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーに対して1重量%未満であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の組成物を含む反応混合物を用いて行うことを特徴とする、フェノールフォームの製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法により製造された、フェノールフォーム。
【請求項15】
前記フェノールフォームが、ASTM D1622-2020による5~500kg/m3、好ましくは10~200kg/m3、特に好ましくは12~100kg/m3の密度を有することを特徴とする、請求項14記載のフェノールフォーム。
【請求項16】
断熱のための、請求項14または15記載のフェノールフォームの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノールフォームの分野に関する。本発明は特に、フェノールフォームを製造するための組成物、フェノールフォームの製造方法、本発明により製造されたフェノールフォームおよびその使用に関する。本発明の範囲において、フェノールフォームとは特に、発泡剤および発泡安定剤の添加下にフェノール樹脂を触媒としての酸と反応させることにより得られるフォームを意味すると理解される。フェノールフォームは当業者に公知であり、例えば、欧州特許出願公開第3830174号明細書、欧州特許第602004006376号明細書独語翻訳文、欧州特許出願公開第2898005号明細書、欧州特許出願公開第1922357号明細書、国際公開第2022043561号、欧州特許出願公開第4073155号明細書、豪国特許出願公開第2021238847号明細書または国際公開第2006114777号に記載されている。フェノールフォームは、別称としてフェノール樹脂フォームとも呼ばれる。これは、本発明にも該当する。
【0002】
フェノールフォームの製造においては、一般にセル安定化添加剤あるいはフォーム安定化添加剤を使用することができ、これらの添加剤は、微細なセルで均一かつ乱れの少ないフォーム構造を得ることを目的としており、したがってフォームの使用特性、特に例えば断熱性能に大きな好影響を与える。この目的のためには通常、発泡安定剤を使用することができ、例えば欧州特許出願公開第3830174号明細書に記載されているように、エトキシル化植物油、例えばヒマシ油をベースとする発泡安定剤を使用することができる。例えば国際公開第2022043561号に記載されているようなポリエーテル変性シロキサン(PES)の使用は、使用特性をさらに改善するのに特に有効であることが証明されている。特に、エトキシル化植物油とポリエーテル変性シロキサンとの組み合わせは、優れた使用特性をもたらす。したがって、この組み合わせは、フェノールフォームの製造において一般的に好ましいタイプの発泡安定剤である。
【0003】
触媒として酸の存在下で発泡安定剤としてポリエーテル変性シロキサンを使用すると、ポリエーテル変性シロキサンの分解、ならびにそれに続く環状シロキサン、特にオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)およびドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)の形成が生じることがあり、これらはフェノールフォームの特性、特にエミッションに悪影響を及ぼす。
【0004】
このような背景から、本発明の課題は、従来のポリエーテル変性シロキサンを用いて製造されたフェノールフォームと同様の使用特性、特に断熱特性を有するが、環状シロキサンの形成に関連するエミッションに関してD4、D5および/またはD6がまったくまたはわずかにしか形成されないフェノールフォームを提供することであった。
【0005】
この課題は、本発明の対象によって解決される。本発明の対象は、少なくとも1つのフェノール樹脂と、少なくとも1つの発泡剤と、少なくとも1つの触媒とを含む、フェノールフォーム製造用の組成物であって、該組成物が、発泡安定剤として少なくとも1つのアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーを含む、組成物である。
【0006】
本発明による対象は、様々な利点を有する。例えば、本発明による対象により、公知の要求を満たすフェノールフォームの提供が可能になる。特に、該フェノールフォームは、非常に良好な断熱特性を有し、優れた長期挙動および高い表面品質を示す。有利なことに、これは、材料の他の特性を損なうことなく、そして、環状シロキサン、特にD4、D5および/またはD6がまったくまたはわずかにしか形成されることなく可能となる。さらに、特に微細なセルで、均一で、乱れの少ないフォーム構造が可能となる。本発明により、基本的に、シロキサンを用いない発泡安定化が可能となり、すなわち、本発明により、例えば公知のポリエーテル変性シロキサンなどのシロキサン系添加剤を完全に省くことが可能となる。さらに、本発明により、先行技術から知られているアルコキシル化植物油との併用も可能となる。
【0007】
少なくとも1つのアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーが、H
2C=CR
1-COOR
2型の少なくとも1つのコモノマーおよびH
2C=CR
1-COOR
3型の少なくとも1つのコモノマーを含み、ここで、
R
1=それぞれ互いに独立して、-Hまたは-CH
3であり、互いに異なる置換基R
1を有する異なるコモノマーがコポリマー内に存在することが可能であり、
R
2=それぞれ互いに独立して、1~25個の炭素原子を有する飽和または不飽和の、直鎖状、環状または分岐状の、脂肪族または芳香族炭化水素の群からの同一のまたは異なる基、有利には、メチル、エチル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル、イソデシル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル、イソボルニルまたはアリルであり
R
3=それぞれ互いに独立して、式(1)
【化1】
による一般平均組成の同一のまたは異なるポリエーテル基であり、
ここで、
x=1~500、有利には1~250、特に3~80であり、
R
4=それぞれ互いに独立して、同一のまたは異なる基-CH
2-O-、-CH
2-CH
2-O-、-CH
2-CH
2-CH
2-O-、-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-O-、または-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-O-であり、R
4は、省略されてもよく、
R
5=それぞれ互いに独立して、1~18個の炭素原子を有する同一のもしくは異なるアルキル基であって、任意にエーテル官能基を有するもの、または6~18個の炭素原子を有する同一のもしくは異なるアリール基であって、任意にエーテル官能基を有するもの、またはH、好ましくはH、メチル、エチルまたはベンジルであり、基R
3内に、異なる置換基R
5が任意の順序または配列で存在することが可能であり、
R
6=それぞれ互いに独立して、1~18個の炭素原子を有する同一のもしくは異なるアルキル基であって、任意にエーテル官能基を有するもの、または6~18個の炭素原子を有する同一のもしくは異なるアリール基であって、任意にエーテル官能基を有するもの、またはH、好ましくはH、メチル、エチルまたはベンジルであり、基R
3内に、異なる置換基R
6が任意の順序または配列で存在することが可能であり、
モノマー繰返し単位について、好ましくは、2つの基R
5およびR
6=Hであるか、または2つの基R
5およびR
6のうち一方がHであり、他方がメチルであり、
R
7=それぞれ互いに独立して、以下:R
8
、C(O)R
8、-CH
2-CH(OH)-CH
2OH、および-CH
2-C(CH
2OH)
2-CH
2-CH
3からなる群から選択される同一のまたは異なる基であり、メチル、ブチル、HまたはC(O)Meが好ましく、互いに異なる置換基R
7を有する異なるコモノマーがコポリマー内に存在することが可能であり、
R
8=それぞれ互いに独立して、1~16個の炭素原子を有する同一のまたは異なるアルキル基、6~16個の炭素原子を有する同一のまたは異なるアリール基、またはHである
ことを本発明による組成物が特徴とする場合、本発明の特に好ましい実施形態が存在する。
【0008】
本発明の趣意において使用可能なアクリレートおよび/またはメタクリレートモノマーの特に好ましい例は、これらに限定されるものではないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3,4-ジヒドロキシブチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,5-ジメチル-1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオール(メタ)アクリレート;グリコールジメタクリレート、例えば、1,4-ブタンジオールメタクリレート、2-ブトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエトキシメチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート;エーテルアルコールのメタクリレート、例えば、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ビニルオキシエトキシエチルメタクリレート、メトキシエトキシエチルメタクリレート、1-ブトキシプロピルメタクリレート、1-メチル(2-ビニルオキシ)エチルメタクリレート、シクロヘキシルオキシメチルメタクリレート、メトキシメトキシエチルメタクリレート、ベンジルオキシメチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、2-ブトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエトキシメチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、アリルオキシメチルメタクリレート、1-エトキシブチルメタクリレート、メトキシメチルメタクリレート、1-エトキシエチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレートおよび/または好ましくは1~20個、特に2~8個のエトキシ基もしくはプロポキシ基を有するエトキシル化もしくはプロポキシル化(メタ)アクリレートである。
【0009】
本明細書における(メタ)アクリレートという表記は、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレートなどのメタクリレート、および例えばメチルアクリレート、エチルアクリレートなどのアクリレート、ならびに両者の混合物を意味する。
【0010】
さらに、使用可能なアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーの製造方法は、先行技術から当業者に知られている。これらは、例えば、欧州特許出願公開第1070730号明細書または米国特許第9349500号明細書に記載されている。
【0011】
少なくとも1つの発泡剤が、以下:
- 3、4または5個の炭素原子を有する炭化水素、好ましくはシクロ-、イソ-および/またはn-ペンタン
ならびに
- 3、4または5個の炭素原子を有するハロゲン化炭化水素、好ましくは塩化イソプロピル、ハイドロフルオロオレフィンおよび/またはハイドロハロオレフィン、好ましくは1234ze、1234yf、1224yd、1233zd(E)および/または1336mzz
からなる群から選択されることを本発明による組成物が特徴とする場合、本発明のさらなる特に好ましい実施形態が存在する。
【0012】
少なくとも1つのアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーが、DIN 55672-1:2016-03によるゲル浸透クロマトグラフィー(溶離液:THF;標準物質:PMMA)によって決定された500~100,000g/mol、特に好ましくは1,000~40,000g/mol、特に1,000~25,000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有する場合、またも本発明のさらなる特に好ましい実施形態が存在する。
【0013】
本発明のさらなる特に好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーは、使用される全フェノール樹脂100重量部に対して0.1~15重量部、有利には0.5~10重量部、特に好ましくは0.5~8重量部の総量で本発明による組成物中に含まれている。
【0014】
有利には、本発明による組成物は、少なくとも1つのSi含有発泡安定剤を、含まれる全発泡安定剤の総量に対して好ましくは50重量%未満、さらに好ましくは25重量%未満、なおもさらに好ましくは10重量%未満の総量でさらに含むことができる。
【0015】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、Si含有発泡安定剤を含まない。
【0016】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、本発明による組成物には、それぞれアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーではない少なくとも1つのケイ素不含界面活性剤および/またはケイ素不含発泡安定剤が、使用される全フェノール樹脂100重量部に対して0.1~15重量部、有利には1~10重量部の総量でさらに含まれている。
【0017】
本発明による組成物が、少なくとも1つのアルコキシル化、好ましくはエトキシル化植物油、特にヒマシ油を、使用される全フェノール樹脂100重量部に対して0.1~15重量部、有利には1~10重量部の総量でさらに含む場合、これは、本発明のさらなる好ましい実施形態に相当する。
【0018】
開始剤として、原則として、重合条件下でラジカルに分解する化合物、例えば過酸化物、ヒドロペルオキシド、過酸化水素、過硫酸塩、アゾ化合物およびいわゆるレドックス開始剤を、本発明により使用可能なアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーの製造に使用することができる。場合によっては、異なる開始剤の混合物、例えば過酸化水素とペルオキソ二硫酸ナトリウムまたはカリウムとの混合物を使用することも有利となり得る。可能な有機過酸化物は、例えば、アセチルアセトンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert-アミルペルピバレート、tert-ブチルペルピバレート、tert-ブチルペルネオヘキサノエート、tert-ブチルペルイソブチレート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルイソナノエート、tert-ブチルペルマレエート、tert-ブチルペルベンゾエート、ジ-(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、ジアセチルペルオキシジカーボネート、アリルペルエステル、クミルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペル-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、アセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシド、ジラウリルペルオキシドおよび/またはtert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートである。他の可能な開始剤は、アゾ化合物、例えば2,2’-アゾビス-イソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)および/または2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)である。
【0019】
驚くべきことに、本発明により使用可能なアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーが、有利には開始剤としてのtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(TBPEH)またはtert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(APO)またはTBPEHとAPOとの組み合わせを用いて製造される場合に、本発明により求められる特性に関してさらにより良好な結果が達成できることを、本発明の範囲において見出すことができた。したがって、少なくとも1つのアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーが、開始剤としてのTBPEH(tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート)および/またはAPO(tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート)を用いて製造される場合、これは、本発明の特に好ましい実施形態に相当する。
【0020】
さらに、少なくとも1つのアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーが、含まれる全アクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーに対して1重量%未満の残留モノマー含量を有する場合、これは、本発明の特に好ましい実施形態に相当する。残留モノマー含量は、従来の方法を用いて決定することができ、特に固体含量を用いて、またはGCもしくはHPLCを用いて決定することができる。対応する組成物により、本発明による特に有利なフォームが可能となる。
【0021】
本発明により使用可能な少なくとも1つのアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーに加えて、原則として従来技術で公知のすべての発泡安定化成分を追加で使用することができる。
【0022】
本発明による組成物は、少なくとも1つの触媒を含む。本発明の特に好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの触媒は、有機酸および無機酸からなる群から選択され、有利には、少なくとも1つの触媒は、硫酸、リン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、クメンスルホン酸およびフェノールスルホン酸からなる群から選択される。
【0023】
少なくとも1つの触媒が、使用される全フェノール樹脂100重量部に対して1~30重量部、有利には1~25重量部、特に好ましくは3~20重量部の総量で本発明による組成物に含まれている場合、これは、本発明のさらなる特に好ましい実施形態に相当する。
【0024】
有利には、本発明により使用可能な少なくとも1つのアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーは、塊状でも溶媒中でも使用することができる。ここで、フェノールフォームの製造に使用可能なすべての適切な物質を使用することができる。
【0025】
本発明の趣意における特に好ましいフェノールフォーム配合物は、5~900kg/m
3の密度を提供し、有利には、本発明の好ましい実施形態に相当する表1に示す組成を有する:
【表1】
【0026】
本発明のさらなる対象は、上記の、特に請求項1から12までのいずれか1項に定義される本発明による組成物を含む反応混合物を用いて行われるフェノールフォームの製造方法である。
【0027】
本発明による方法のさらなる好ましい実施形態および構成については、本発明による組成物に関連して先に既に示した説明も参照されたい。
【0028】
本発明のさらなる対象は、前述の本発明による方法により、有利には特に請求項1から12までのいずれか1項に定義される本発明による組成物を用いて製造されたフェノールフォームである。
【0029】
フェノールフォームが、ASTM D1622-2020による5~500kg/m3、好ましくは10~200kg/m3、特に好ましくは12~100kg/m3の密度を有する場合に、特に好ましいフェノールフォームが存在する。これは、本発明の特に好ましい実施形態に相当する。
【0030】
本発明のさらなる対象は、断熱のための本発明によるフェノールフォームの使用である。
【0031】
本発明による特に好ましい組成物につき、以下により詳細に説明する。
【0032】
本発明による特に好ましい組成物は、以下の成分を含む:
- 少なくとも1つのフェノール樹脂、
- 少なくとも1つの発泡剤、
- 少なくとも1つの触媒、
- 発泡安定剤としての少なくとも1つのアクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマー、
- 任意にさらなる添加剤など。
【0033】
フェノールフォーム(これは、別称としてフェノール樹脂フォームとも呼ばれ;これらの用語は、本発明の範囲において同義である)の製造自体は公知である。フェノールフォームを製造するために、1つ以上のフェノール樹脂、有利には1つ以上のいわゆるレゾール樹脂が使用される。それに応じて使用できるフェノール樹脂、有利にはレゾール樹脂自体は公知である。特に、これらは公知の様式で製造することができ、有利には塩基性条件下で、例えば、触媒量のアルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムもしくは水酸化カルシウム、または脂肪族アミン、例えば、トリメチルアミンもしくはトリエチルアミンを、好ましくは過剰のアルデヒドと一緒に使用することにより、フェノールまたはフェノール系化合物、例えば、クレゾール、キシレノール、p-アルキルフェノール、p-フェニルフェノール、レゾルシンなどおよびアルデヒド、例えば、ホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒドなどを縮合させることにより製造することができる。これは、フェノール樹脂、有利にはレゾール樹脂の通常の製造経路であるが、本発明は、上に挙げた化学物質に限定されるものではない。
【0034】
ここで、フェノール基とアルデヒド基とのモル比は特に制限されない。好ましくは、その比は1:1~1:3の範囲であり、特に好ましくは1:1.5~1:2.5の範囲である。これに限定されないが、有利には、フェノール樹脂は、0.1重量%~0.5重量%の遊離アルデヒド含量を有する。これは、塩酸ヒドロキシルアミンを用いたISO 11402:2004に準拠した電位差滴定によって決定することができる。
【0035】
フォーム製造時に使用可能である好ましく使用できるフェノール樹脂は、25℃、常圧で液体であり、有利には、水濃度が約1~25重量%、好ましくは5~20重量%であり、例えば欧州特許第0170357号明細書に記載されているように、反応性置換基としてメチロール基を有する。所望の場合には、フェノール樹脂の粘度を、特に含水率によって調整することができる。含水率が高いと、通常は粘度が低くなるため、樹脂の取り扱いやフォーム製造時の混合が容易になる。
【0036】
好ましく使用できるフェノール樹脂の25℃、常圧での粘度は、有利には1000~28000mPa・sの範囲であり、当業者に公知の通常の方法、例えばブルックフィールド粘度計を用いて測定することができる。フェノール樹脂の製造および組成に関する基本的な情報は、先行技術から得ることができ、特に、例えば、欧州特許出願公開第3830174号明細書、欧州特許出願公開第2898005号明細書、国際公開第2022043561号または欧州特許出願公開第4073155号明細書に記載されている。
【0037】
発泡剤およびフェノールフォームの製造におけるその使用は、当業者に公知である。1つ以上の発泡剤の使用は、基本的に系のタイプおよび得られるフェノールフォームの用途に依存する。使用される発泡剤の量に応じて、高密度または低密度のフォームを製造することができる。例えば、ASTM D1622-20に準拠して、有利には5kg/m3~900kg/m3、好ましくは5~500kg/m3、特に好ましくは10~200kg/m3、特に12~100kg/m3の密度を有するフォームを製造することができる。
【0038】
発泡剤として、有利には、適切な沸点を有する対応する1つ以上の化合物、例えば、3、4または5個の炭素原子を有する炭化水素、好ましくはシクロ-、イソ-またはn-ペンタン、ハロゲン化炭化水素、例えば塩素化炭化水素、例えば、ジクロロエタン、1,2-ジクロロエテン、n-プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド、1,1-ジクロロエテン、トリクロロエテンもしくはクロロエテン、またはハイドロフルオロカーボン(HFC)、例えば、HFC245fa、HFC134aもしくはHFC365mfc、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)またはハイドロハロオレフィン、好ましくは、1234ze、1234yf、1224yd、1233zd(E)もしくは1336mzzおよびそれらの混合物を使用することができる。
【0039】
フェノールフォームの製造に使用できる触媒は、先行技術から当業者に公知であり、例えば、欧州特許出願公開第0170357号明細書または欧州特許第602004006376号明細書独語翻訳文に記載されている。ここで、有利には、先行技術から公知の通常の有機酸および無機酸を使用することができる。1つ以上の酸を使用することができる。特に好ましく使用可能であるのは、硫酸、リン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、クメンスルホン酸および/またはフェノールスルホン酸である。特に、これらの化合物の複数の混合物を触媒として使用することができる。完全な反応に使用される触媒の好ましい量は、特に、フェノール樹脂の含水率および/または触媒が水溶液として存在する場合にはその含水率によっても影響される。例えば、含水率が高いほど高い酸濃度が必要となり得る。
【0040】
フェノールフォームは、公知の様式で、すなわち、特に、フェノール樹脂と発泡剤と発泡安定剤と触媒とを含む混合物の反応によって形成することができる。フェノール樹脂と発泡剤と発泡安定剤との混合物に触媒を添加すると、メチロール基とフェノールとの間で発熱反応が起こり、メチレン架橋が形成され架橋する。その際、縮合によって水が脱離する。ここで、使用される酸の種類および量、発泡剤の特性、ならびに発泡安定剤の構造は、反応の発熱性および発泡形成に影響を及ぼす。
【0041】
発泡安定剤およびフェノールフォームの製造におけるその使用は、上述したように当業者に一般に知られている。本発明によれば、アクリレートおよび/またはメタクリレートコポリマーをベースとする少なくとも1つの発泡安定剤が使用される。フォームの製造を支援するために、追加の発泡安定剤を使用することもできる。これらの化合物は、先行技術から十分に知られている。例えば、エトキシル化ヒマシ油の使用は、欧州特許出願公開第3830174号明細書に記載されている。
【0042】
任意の添加剤として、フェノールフォームの製造に一般的に使用される先行技術により公知の1つ以上の物質、例えば、減粘剤、可塑剤、硬化剤、難燃剤、セル微細化添加剤、充填剤、着色剤、顔料および/または香料を使用することができる。適切な任意の添加剤は、例えば欧州特許出願公開第3830174号明細書、米国特許第4444912号明細書および欧州特許出願公開第1922357号明細書に記載されている。
【0043】
任意の固体充填剤として、例えば、金属水酸化物、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、金属炭酸塩、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムもしくは炭酸亜鉛、金属酸化物、例えば、酸化アルミニウムもしくは酸化亜鉛、または金属粉末、例えば亜鉛を使用することができる。フェノール樹脂の粘度を低下させるために、例えばモノエチレングリコールまたはポリエステルポリオールを任意に使用することができる。硬化剤として、例えば尿素やジシアンジアミドなどのアミノ基を有する化合物を任意に使用することができる。有利には尿素が使用される。これらは、発泡時だけでなく、既にフェノール樹脂の製造時にも任意に使用することができる。
【0044】
本発明によるフェノールフォームの製造方法は、公知のあらゆる方法を用いて実施することができる。これらは当業者に公知であり、例えば欧州特許出願公開第3830174号明細書に記載されている。
【0045】
本明細書から特に明らかでない限り、本発明の好ましいまたは特に好ましいすべての実施形態を、本発明の他の好ましいまたは特に好ましい1つ以上の実施形態と組み合わせることができる。
【0046】
本発明による対象につき、以下に例示的に説明するが、本発明の適用範囲は、本明細書全体および特許請求の範囲から明らかであり、本発明は、これらの例示的な実施形態に限定されるものではない。範囲、一般式または化合物クラスが示されている場合、これらは、明示的に言及されている対応する範囲または化合物群だけでなく、個々の値(範囲)または化合物の抽出によって得ることができるすべての部分範囲および部分化合物群をも包含するものとする。本明細書の範囲において文書が引用されている場合、その内容は、特にその文書が引用された文脈における主題に関して、完全に本発明の開示内容の一部を構成するものとする。特に断りのない限り、パーセンテージは、重量%単位のデータである。平均値が示されている場合、特に断りのない限り、これらは数値平均である。測定により決定されたパラメータが記載されている場合、特に断りのない限り、測定は温度23℃、常圧で行われた。
【0047】
実施例:
実施例1:コポリマーA~Jの合成
コポリマーA:
還流冷却器およびN2導管、サーベルスターラー(200rpm)およびPt100デジタル内部温度計を備えた500mL四ツ口フラスコに、30.01gの酢酸n-ブチルを装入し、オイルバスを145℃に加熱した。9.2gのTBPEH(tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート)と、56.18gのイソブチルメタクリレート(i-BMA)と、67.29gのMPEG500メタクリレート(MPEG500MA)と、2.21gの2-メルカプトエタノールとの混合物を、蠕動ポンプを用いて4時間かけて添加した。この混合物を、この温度でさらに30分間撹拌した。これを80℃に冷却し、10gの酢酸n-ブチルに溶解させた0.13gのTBPEHを後反応のために添加し80℃で2時間かけて後撹拌した。さらに5gの酢酸n-ブチルを添加し、これを加熱せずに30分間さらに撹拌した。
【0048】
DIN 55672-1:2016-03によるGPC(溶離液:THF;標準物質:PMMA):Mw=5630g/mol;Mn=2560g/mol;PDI(多分散度)=2.2。
【0049】
コポリマーB:
還流冷却器およびN2導管、サーベルスターラー(200rpm)およびPt100デジタル内部温度計を備えた500mL四ツ口フラスコに、30.09gの酢酸n-ブチルを装入し、オイルバスを145℃に加熱した。9.18gのTBPEH(tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート)と、76.75gのイソブチルメタクリレート(i-BMA)と、46.58gのMPEG500メタクリレート(MPEG500MA)と、2.21gの2-メルカプトエタノールとの混合物を、蠕動ポンプを用いて4時間かけて添加した。この混合物を、この温度でさらに30分間撹拌した。これを80℃に冷却し、10gの酢酸n-ブチルに溶解させた0.13gのTBPEHを後反応のために添加し80℃で2時間かけて後撹拌した。さらに5gの酢酸n-ブチルを添加し、これを加熱せずに30分間さらに撹拌した。
【0050】
DIN 55672-1:2016-03によるGPC(溶離液:THF;標準物質:PS):Mw=7373g/mol;Mn=3156g/mol;PDI=2.3。
【0051】
コポリマーC:
還流冷却器およびN2導管、サーベルスターラー(200rpm)およびPt100デジタル内部温度計を備えた500mL四ツ口フラスコに、30.15gの酢酸n-ブチルを装入し、オイルバスを145℃に加熱した。9.02gのTBPEH(tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート)と、53.77gのイソブチルメタクリレート(i-BMA)と、70.92gのMPEG500メタクリレート(MPEG500MA)と、1.15gの2-メルカプトエタノールとの混合物を、蠕動ポンプを用いて4時間かけて添加した。この混合物を、この温度でさらに30分間撹拌した。これを80℃に冷却し、10gの酢酸n-ブチルに溶解させた0.12gのTBPEHを後反応のために添加し80℃で2時間かけて後撹拌した。さらに5gの酢酸n-ブチルを添加し、これを加熱せずに30分間さらに撹拌した。
【0052】
DIN 55672-1:2016-03によるGPC(溶離液:THF;標準物質:PS):Mw=11290g/mol;Mn=3536g/mol;PDI=3.2。
【0053】
コポリマーD:
還流冷却器およびN2導管、サーベルスターラー(200rpm)およびPt100デジタル内部温度計を備えた500mL四ツ口フラスコに、30.01gの酢酸n-ブチルを装入し、オイルバスを145℃に加熱した。9.2gのTBPEHと、54.69gのイソデシルメタクリレート(IDMA)と、68.77gのMPEG500MAと2.21gの2-メルカプトエタノールとの混合物を、蠕動ポンプを用いて4時間かけて添加した。この混合物を、この温度でさらに30分間撹拌した。これを80℃に冷却し、10gの酢酸n-ブチルに溶解させた0.13gのTBPEHを後反応のために添加し80℃で2時間かけて後撹拌した。さらに5gの酢酸n-ブチルを添加し、これを加熱せずに30分間さらに撹拌した。
【0054】
DIN 55672-1:2016-03によるGPC(溶離液:THF;標準物質:PMMA):Mw=5250g/mol;Mn=2410g/mol;PDI=2.2。
【0055】
コポリマーE:
還流冷却器およびN2導管、サーベルスターラー(200rpm)およびPt100デジタル内部温度計を備えた500mL四ツ口フラスコに、30.08gの酢酸n-ブチルを装入し、オイルバスを145℃に加熱した。9.23gのTBPEH(tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート)と、76.93gのイソブチルメタクリレート(i-BMA)と、46.54gのMPEG500メタクリレート(MPEG500MA)と、2.25gの2-メルカプトエタノールとの混合物を、蠕動ポンプを用いて4時間かけて添加した。この混合物を、この温度でさらに30分間撹拌した。これを80℃に冷却し、10gの酢酸n-ブチルに溶解させた0.14gのTBPEHを後反応のために添加し80℃で2時間かけて後撹拌した。さらに5gの酢酸n-ブチルを添加し、これを加熱せずに30分間さらに撹拌した。
【0056】
DIN 55672-1:2016-03によるGPC(溶離液:THF;標準物質:PS):Mw=6202g/mol;Mn=2427g/mol;PDI=2.6。
【0057】
コポリマーF:
還流冷却器およびN2導管、サーベルスターラー(200rpm)およびPt100デジタル内部温度計を備えた500mL四ツ口フラスコに、29.85gの酢酸n-ブチルを装入し、オイルバスを145℃に加熱した。9.12gのTBPEH(tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート)と、52.38gのイソブチルメタクリレート(i-BMA)と、68.67gのMPEG500メタクリレート(MPEG500MA)と、4.45gの2-メルカプトエタノールとの混合物を、蠕動ポンプを用いて4時間かけて添加した。この混合物を、この温度でさらに30分間撹拌した。これを80℃に冷却し、10gの酢酸n-ブチルに溶解させた0.13gのTBPEHを後反応のために添加し80℃で2時間かけて後撹拌した。さらに5gの酢酸n-ブチルを添加し、これを加熱せずに30分間さらに撹拌した。
【0058】
DIN 55672-1:2016-03によるGPC(溶離液:THF;標準物質:PS):Mw=5103g/mol;Mn=2127g/mol;PDI=2.4。
【0059】
コポリマーG:
還流冷却器およびN2導管、サーベルスターラー(200rpm)およびPt100デジタル内部温度計を備えた500mL四ツ口フラスコに、30.01gの酢酸n-ブチルを装入し、オイルバスを145℃に加熱した。20.75gのBP-50-FT(ジベンゾイルペルオキシド)と、50.92gのi-BMAと、60.99gのMPEG500MAと、2.21gの2-メルカプトエタノールとの混合物を、蠕動ポンプを用いて4時間かけて添加した。この混合物を、この温度でさらに30分間撹拌した。これを80℃に冷却し、10gの酢酸n-ブチルに溶解させた0.13gのBP-50-FTを後反応のために添加し80℃で2時間かけて後撹拌した。さらに5gの酢酸n-ブチルを添加し、これを加熱せずに30分間さらに撹拌した。
【0060】
DIN 55672-1:2016-03によるGPC(溶離液:THF;標準物質:PMMA):Mw=6350g/mol;Mn=4080g/mol;PDI=1.6。
【0061】
コポリマーH:
還流冷却器およびN2導管、サーベルスターラー(100rpm)およびPt100デジタル内部温度計を備えた1000mL四ツ口フラスコに、265.05gの石油ベンジン(bp 100~120℃)と265.05gのトルエンとの混合物を装入し、オイルバスを135℃に加熱した。4.43gのBP-50-FT(ジベンゾイルペルオキシド)と、90.59gのC17.4MA(ステアリルメタクリレート)と、55.02gのMPEG350MA(MPEG350メタクリレート)と、19.06gのi-BMAとの混合物を、蠕動ポンプを用いて5時間かけて添加した。添加終了後、0.40gのBP-50-FTを後反応のために添加し、2時間さらに撹拌した。これを室温まで冷却し、このバッチを撹拌せずにフラスコ内で一晩放置した。オイルバスを再び130℃に加熱し、さらに0.40gのBP-50-FTを添加し3時間撹拌した。
【0062】
このバッチをロータリーエバポレーターで濃縮し、溶媒混合物を完全に除去した。150gの無溶媒ポリマーを150gの酢酸n-ブチルに溶解させた。
【0063】
DIN 55672-1:2016-03によるGPC(溶離液:THF;標準物質:PMMA):Mw=14900g/mol;Mn=8610g/mol;PDI=1.7。
【0064】
コポリマーI:
還流冷却器およびN2導管、滴下漏斗、KPG撹拌機(200rpm)およびPt100デジタル内部温度計を備えた500mL四ツ口フラスコに、29.9gの酢酸n-ブチルを装入し、オイルバスを145℃に加熱した。9.8gのAPO(tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート)と、56.0gのi-BMAと、67.1gのMPEG500MAと、2.2gの2-メルカプトエタノールとの混合物を、4時間かけて滴加した。その際、最初は4秒間に1滴の滴下速度で1.5時間かけて滴加し、次に2秒間に1滴の滴下速度でさらに2.5時間かけて滴加し、この混合物を、この温度でさらに30分間撹拌した。これを80℃に冷却し、10gの酢酸n-ブチルに溶解させた0.14gのAPOを後反応のために添加した。さらに15gの酢酸i-ブチルを添加し、これを加熱せずに30分間さらに撹拌した。
【0065】
DIN 55672-1:2016-03によるGPC(溶離液:THF;標準物質:PMMA):Mw=8474g/mol;Mn=2426g/mol;PDI=3.5。
【0066】
コポリマーJ:
還流冷却器およびN2導管、滴下漏斗、KPG撹拌機(200rpm)およびPt100デジタル内部温度計を備えた550mL四ツ口フラスコに、29.9gの酢酸n-ブチルを装入し、オイルバスを145℃に加熱した。9.8gのAPO(tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート)と、56.0gのi-BMAと、67.1gのMPEG500MAと、2.2gの2-メルカプトエタノールとの混合物を、2秒間に1滴の滴下速度で4時間かけて連続的に滴加し、この混合物を、この温度でさらに30分間撹拌した。これを80℃に冷却し、10gの酢酸n-ブチルに溶解させた0.14gのAPOを後反応のために添加した。さらに15gの酢酸i-ブチルを添加し、これを加熱せずに30分間さらに撹拌した。
【0067】
DIN 55672-1:2016-03によるGPC(溶離液:THF;標準物質:PMMA):Mw=6181g/mol;Mn=2276g/mol;PDI=2.7。
【0068】
実施例2:フェノールフォームの製造
応用技術的な比較のために、表2の配合物を選択した。
【0069】
【0070】
比較発泡を、ハンドミキシング法で行った。このために、フェノール樹脂(バッチ量180±5g)および発泡安定剤をビーカーにはかり入れ、プレートスターラー(直径6cm)を用いて20℃、500rpmで30秒間混合した。次に発泡剤を加え、1500rpmで30秒間混合し、18℃まで冷却した。次に酸を加え、この混合物を2000rpmで45秒間撹拌し、ポリエチレンフィルムで被覆され、60℃に調温された寸法25cm×25cm×7cmのアルミニウム型に移した。1時間後、フォームを脱型し、60℃に加熱したオーブンで18時間硬化させた。
【0071】
細孔構造を、主観的に1~10のスケールで評価し、10は、(理想的な)乱れのない非常に微細なフォームを表し、1は、極度に乱れた粗いフォームを表す。熱伝導率(λ値、単位:mW/m・K)を、規格EN12667:2001の規定にしたがって、平均温度10℃でHesto Lambda Control装置、HLC X206型を用いて厚さ2.5cmのパネルについて測定した。熱伝導率の経時変化を測定するため、試験体を70℃で7日間貯蔵した後、再度測定を行った。密度を、ASTM D1622-2020に準拠して測定した。
【0072】
本発明による発泡安定剤を、ポリエーテル変性シロキサンを単一成分として、またアルコキシル化ヒマシ油と組み合わせて使用した場合について同様に試験した。比較例では、フェノールフォームに適したポリエーテル変性シロキサンとしてEvonik Operations GmbH社製TEGOSTAB(登録商標)B 84905を使用し、エトキシル化ヒマシ油としてEvonik Operations GmbH社製TAGAT(登録商標)CH 40を使用した。
【0073】
結果を表3および表4に示す。
【0074】
【0075】
これらの結果から、コポリマーA~F、IおよびJは、ポリエーテル変性シロキサンと同レベルかそれよりもわずかに高いフォーム品質を達成できることがわかる。コポリマーGおよびHは、ポリエーテル変性シロキサンに比べてわずかに劣るフォーム品質を示した。しかし、これらは依然として従来のアルコキシル化植物油のレベルであり、したがってポリエーテル変性シロキサンを使用せずに使用可能なフォームを製造することも可能である。使用に関連する他のすべてのフォーム特性は、本発明によるコポリマーによってまったくまたはわずかにしか影響を受けない。
【0076】
【0077】
これらの結果から、エトキシル化ヒマシ油を併用したすべてのコポリマーで、エトキシル化ヒマシ油を併用したポリエーテル変性シロキサンと同レベルかそれよりもわずかに高いフォーム品質を達成できることがわかる。使用に関連する他のすべてのフォーム特性は、本発明によるコポリマーによってまったくまたはわずかにしか影響を受けない。