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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156638
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】入力装置及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
G06F3/041 600
G06F3/041 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024069964
(22)【出願日】2024-04-23
(31)【優先権主張番号】P 2023070738
(32)【優先日】2023-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 拓也
(57)【要約】
【課題】タッチ位置及び押圧を略同時に高感度で検出すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る入力装置は、タッチセンサ及び制御部を備え、前記タッチセンサは、圧電フィルムと、前記圧電フィルムに対向して、互いに電気的に絶縁された複数の電極部分を有する分割電極から構成されている第1検出導体と、前記第1検出導体に対向して、前記圧電フィルムを挟んで前記第1検出導体と反対側に配置されている第2検出導体と、を有し、前記制御部は、前記第2検出導体を基準電位として前記第1検出導体から検出された信号を、商用電源周波数帯域の第1信号と、前記商用電源周波数帯域以外の周波数帯域の第2信号と、に分離し、前記第1信号を用いてタッチ位置を検出し、前記第2信号を用いて押圧を検出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチセンサ及び制御部を備える入力装置であって、
前記タッチセンサは、
圧電フィルムと、
前記圧電フィルムに対向して、互いに電気的に絶縁された複数の電極部分を有する分割電極から構成されている第1検出導体と、
前記第1検出導体に対向して、前記圧電フィルムを挟んで前記第1検出導体と反対側に配置されている第2検出導体と、
を有し、
前記制御部は、
前記第2検出導体を基準電位として前記第1検出導体から検出された信号を、商用電源周波数帯域の第1信号と、前記商用電源周波数帯域以外の周波数帯域の第2信号と、に分離し、
前記第1信号を用いてタッチ位置を検出し、前記第2信号を用いて押圧を検出する、
入力装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1信号の包絡線信号を算出し、前記包絡線信号の値が閾値を超えている場合に、前記包絡線信号に対応する分割電極の位置を前記タッチ位置として検出する、
請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2信号の値と押圧とを対応付けている情報に基づいて、分割電極毎の押圧を検出する、
請求項1に記載の入力装置。
【請求項4】
前記第1検出導体は、前記第2検出導体よりも、前記タッチセンサの指がタッチされる面の近くに配置されている、
請求項1に記載の入力装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記商用電源周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタを用いて、前記信号から前記第1信号と前記第2信号とを分離する、
請求項1に記載の入力装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記商用電源周波数帯域以外の周波数帯域を通過させるバンドストップフィルタを用いて、前記信号から前記第1信号と前記第2信号とを分離する、
請求項1に記載の入力装置。
【請求項7】
前記圧電フィルムはフッ素系樹脂から構成されている、
請求項1に記載の入力装置。
【請求項8】
前記タッチセンサの全光線透過率は80%以上である、
請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項9】
請求項8に記載の入力装置と、
前記タッチセンサの指がタッチされる面と反対側の面に重ね合わせて画像を表示する表示パネルと、
前記表示パネルを駆動する駆動部と、
を備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操作面に触れる(タッチする)ことで操作入力を検出する種々のタッチ式入力装置が提案されている。このようなタッチ式入力装置として、位置検出と圧力検出とを行う3次元(3D)タッチセンサ(位置(2D)と圧力(1D)とを検出するタッチセンサ)が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、圧電センサと位置検出センサとを積層して形成されたタッチパネルが開示されている。これらの圧電センサ及び位置検出センサは、それぞれ、押圧検出回路及びタッチ位置検出回路に接続される。ここで、位置検出センサとして静電容量方式の位置検出センサを用いれば、静電容量の変化によってタッチ位置を検出できるので、操作面に軽く接触しただけで、タッチ位置を検出することができる。しかしながら、特許文献1に開示されているように、圧力(押圧)変化と静電容量の変化とを感知するために別個の電子機器を使用するシステムでは、タッチパネルが、より大きく、高価になるという問題があった。
【0004】
このような問題に対処する1つの解決策として、共通の電子機器を使用して圧力変化と静電容量の変化とを感知することが考えられる。
【0005】
例えば、特許文献2には、第1検出導体と第2検出導体とで圧電フィルムを挟む積層体を形成し、第1検出導体及び第2検出導体を介して出力される検出信号を用いて、押圧検出及びタッチ位置検出(静電容量方式)の両方を行う薄厚のタッチ式入力装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2015/046289号
【特許文献2】国際公開第2014/192786号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示されているタッチ式入力装置は、押圧検出とタッチ位置検出とを切り替えながら行う必要があり、タッチ位置検出時に押圧により生じた圧電フィルムの分極が緩和され、押圧の検出感度が低下する虞がある。また、特許文献2に開示されているタッチ式入力装置では、押圧検出とタッチ位置検出とは同時に実行されず、押圧検出とタッチ位置検出との切り替え間隔として、10ミリ秒(100Hz)が例示されている。ここで、指が1回接触することによる押圧を検出するには、通常、接触が100ミリ秒以上継続する。したがって、100ミリ秒以上の期間において断続的にしか検出できない特許文献2に開示されているタッチ式入力装置では、押圧の検出精度が低下する虞がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みて、タッチ位置及び押圧を略同時に高感度で検出することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る入力装置は、タッチセンサ及び制御部を備え、前記タッチセンサは、圧電フィルムと、前記圧電フィルムに対向して、互いに電気的に絶縁された複数の電極部分を有する分割電極から構成されている第1検出導体と、前記第1検出導体に対向して、前記圧電フィルムを挟んで前記第1検出導体と反対側に配置されている第2検出導体と、を有し、前記制御部は、前記第2検出導体を基準電位として前記第1検出導体から検出された信号を、商用電源周波数帯域の第1信号と、前記商用電源周波数帯域以外の周波数帯域の第2信号と、に分離し、前記第1信号を用いてタッチ位置を検出し、前記第2信号を用いて押圧を検出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、タッチ位置及び押圧を略同時に高感度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る例示的な表示装置の外観斜視図
図2】本実施形態に係る例示的な表示装置の側面断面図
図3】本実施形態に係る例示的な表示装置の構成を説明するための説明図
図4】本実施形態に係る例示的な表示装置の信号処理部の処理の一例を説明するための説明図
図5】本実施形態、及びその変形例に係る例示的な表示装置の信号処理部が圧電信号を取り出すために用いるフィルタのフィルタ周波数特性の一例を示す図
図6】本実施形態の変形例に係る例示的な表示装置の信号処理部の処理の一例を説明するための説明図
図7】本実施形態、及びその変形例に係る例示的な表示装置の商用電源周波数帯域成分の信号を取り出すために用いるフィルタのフィルタ周波数特性の一例を示す図
図8A】指でタッチしている電極から検出された信号に対する信号処理部による信号処理後のデジタル信号の例を示す図
図8B】指でタッチしている電極から検出された信号に対する信号処理部による信号処理後のデジタル信号の例を示す図
図8C】指でタッチしている電極から検出された信号に対する信号処理部による信号処理後のデジタル信号の例を示す図
図9A】指でタッチしている電極に隣接する指でタッチしていない電極から検出された信号に対する信号処理部による信号処理後のデジタル信号の例を示す図
図9B】指でタッチしている電極に隣接する指でタッチしていない電極から検出された信号に対する信号処理部による信号処理後のデジタル信号の例を示す図
図9C】指でタッチしている電極に隣接する指でタッチしていない電極から検出された信号に対する信号処理部による信号処理後のデジタル信号の例を示す図
図10A図8B及び図9Bのそれぞれのsignal-Bの横軸を時間で表示した図
図10B図10Aにおける1.00秒から1.25秒までの区間を高速フーリエ変換(FFT)したシグナルを表示した図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明に至った経緯)
圧電センサを用いた押圧検出中に、圧電センサの検出電極に指を近接させると、検出電極からの信号において、商用電源周波数に依存したノイズ成分(一般にハムノイズ(hum又はhumming noise)として知られる)が観測される。
【0013】
ここで、商用電源周波数は、商用電源として供給されている交流の電源周波数を意味する。商用電源周波数は、国や地域によって異なり得るものであり、例えば、日本国内の商用電源周波数は、50Hz又は60Hzである。商用電源周波数に依存したノイズ成分(ハムノイズ)は、商用電源周波数ノイズ、商用電源周波数依存ノイズ等と称されてもよい。
【0014】
一般にはこのノイズ成分は、押圧検出に使用されないため、バンドカットフィルタ等により除去される。しかしながら、本発明者は、鋭意検討した結果、このノイズ成分を分離することで、指によるタッチの有無検出に利用できることを見出した。そこで、以下では、商用電源周波数ノイズを利用してタッチ位置及び押圧を検出するための実施形態について説明する。
【0015】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態について、詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0016】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本発明を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。なお、各種の図面に示す要素は、必ずしも縮尺通りに描かれているわけでない。
【0017】
(実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る表示装置の外観斜視図である。かかる表示装置の例には、タッチ検出機能を有するモバイルPC(Personal Computer)、タブレット端末、スマートフォン、デジタルカメラ等の様々な装置が含まれる。
【0018】
図1に示すように、表示装置1は、略直方体形状の筐体10を備える。筐体10の表面側(Z方向の正側)は開口している。なお、本明細書及び図面において、筐体10の幅方向(横方向)をX方向とし、長さ方向(縦方向)をY方向とし、厚み方向をZ方向として説明する(X軸、Y軸及びZ軸は互いに直交する)。本実施形態では、筐体10のX方向の長さが、筐体10のY方向の長さよりも短い場合を示している。しかしながら、X方向の長さとY方向の長さとが同一であってもよいし、X方向の長さがY方向の長さより長くてもよい。
【0019】
図2は、XZ面に平行なA-A’面で切断した場合の、本実施形態に係る表示装置の側面断面図である。
【0020】
図2に示すように、筐体10内には、タッチセンサ20、表示パネル30及び各種回路40が配置されている。これらは、筐体10の開口面(表示面)側(Z軸正方向側)から順に、Z方向に沿って、タッチセンサ20、表示パネル30、各種回路40の順で配置されている。タッチセンサ20と回路40の全部又は一部(例えば制御部又は制御回路)とは、タッチ式入力装置を構成する。
【0021】
図2に示すように、タッチセンサ20は、保護膜(保護層)201と、基材202と、第1検出導体203と、圧電フィルム204と、第2検出導体205と、を備える。本実施形態において、タッチ位置検出及び押圧検出をより感度良く行うため、より大きな商用電源周波数ノイズが検出されるように、第1検出導体203は、筐体10の開口面側に(すなわち指がタッチする面のより近くに)配置されており、第2検出導体205は、第1検出導体203よりもZ軸負方向側に配置されている。
【0022】
保護膜201は、ガラスから構成されることが好ましく、絶縁性を有し、その厚さは1mm程度(本実施形態では1.1mm)であることが好ましい。保護膜201は、開口面の最外層に存在し、基材202における筐体10の開口面側の面の略全面に配置されている。保護膜201は、表示装置1及びタッチ式入力装置の操作面となる。なお、保護膜201は、エポキシ樹脂などの透明な有機材料から構成されてもよいし、ガラスなどの無機材料から構成されてもよいし、それらを混合したものでもよい。
【0023】
基材202は、保護膜201における基材202の開口面と反対側の面の略全面に配置されている。基材202は、矩形平板状の絶縁性材料であって、透明性を有する材料から構成される。本実施形態において、基材202は、特に限定されないがポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー(COP)などが好適に用いられる。
【0024】
第1検出導体203は、基材202における保護膜201に当接する面と反対側の面に配置されている。第1検出導体203は、図3を参照して説明するように、複数の電極から構成されている。第1検出導体203を構成する複数の電極は、X方向及びY方向にそれぞれ沿って、間隔を空けてマトリクス状に配列されている。第1検出導体203は、測定回路(後述する増幅部401、マルチプレクサ402、アナログ-デジタル(AD:Analog to Digital)変換部403及び信号処理部404から構成される)に接続されている。
【0025】
第1検出導体203は、PETフィルムを基材とし、酸化インジュウムスズ(ITO)を主成分とする電極を用いている。なお、ITO以外に、酸化亜鉛(ZnO)、銀ナノワイヤ、カーボンナノチューブ、グラフェン等の無機系の電極、ポリチオフェン、ポリアニリン等を主成分とする有機系の電極を用いてもよい。これらの材料を用いることで、透明性の高い導体パターンを形成することができる。
【0026】
また、第1検出導体203は、ガラス等の保護膜201の上に導体パターンを形成することで実現されてもよい。その場合、基材は不要となる。
【0027】
圧電フィルム204は、基材202と略同サイズの矩形平板状であり、第1検出導体203における筐体10の開口面側と反対側の面に配置されている。
【0028】
圧電フィルム204は、フッ素系樹脂から構成されるフィルムである。本実施形態では、圧電フィルム204は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)から構成されており、その圧電定数d33は20pC/Nである。なお、圧電フィルム204は、キラル高分子から構成されるフィルムであってもよい。キラル高分子として、ポリ乳酸(PLA)、特にL型ポリ乳酸(PLLA)が用いられてもよい。
【0029】
圧電フィルム204は、その平板面が押圧されることにより、電荷を発生させる。この際に発生する電荷量は、押圧量により平板面が当該平板面に直交する方向(Z方向)に変位する変位量に依存する。
【0030】
第2検出導体205は、基材202及び圧電フィルム204と略同サイズの矩形平板状であり、圧電フィルム204における筐体10の開口面側と反対側の面の略全面に配置されている。
【0031】
第2検出導体205は、1枚のITO電極から構成されている。
【0032】
第2検出導体205は、測定回路基板のグランド電位、又は、グランド電位から一定のオフセット電圧を持つ固定電位に接続して、基準電位とすることが望ましい。このように第2検出導体205を基準電位とすることで、第1検出導体203と第2検出導体205とを介して出力される検出信号を、押圧検出及びタッチ位置検出に用いる。
【0033】
なお、基材202と第1検出導体203とは、上下入れ替えられてもよい。別言すれば、Z方向において、正側に第1検出導体203が配置され、負側に基材202が配置されてもよい)。
【0034】
保護膜201と基材202と第1検出導体203と圧電フィルム204と第2検出導体205とを積層して形成されているタッチセンサ20(表示パネル30よりZ軸正方向側に位置する)は、80%以上という全光線透過率を有することができる。
【0035】
このように、タッチセンサ20は、圧電フィルム204から筐体10の開口面側に配置されている第1検出導体203と、圧電フィルム204から筐体10の開口面とは反対側に配置されている第2検出導体205と、で圧電フィルム204を挟む構造を有する。
【0036】
表示装置1の操作者の指により操作面が押圧されると、圧電フィルム204の平板面が湾曲して、上述したように、押圧に応じた電荷が発生する。この発生した電荷に起因する電位差が第1検出導体203と第2検出導体205との間に生じる。第1検出導体203を構成する電極からの信号には、この電位差による圧電信号が含まれている。したがって、電極からの信号から圧電信号を抽出することにより、抽出された圧電信号を押圧検出用の検出信号として取得することができる。ここで、圧電フィルム204に加えられる押圧力による信号(変化)は、一般に10Hz未満(低周波)である。
【0037】
一方で、表示装置1の操作者の指が操作面にタッチした場合、タッチ位置に対応する、第1検出導体203を構成する電極からの信号には、電極への指の近接に伴う商用電源周波数ノイズが含まれている。したがって、商用電源周波数を判別することにより、そのノイズ(信号)の発生源の電極の位置を、タッチ位置として検出することができる。
【0038】
表示パネル30は、液晶表示素子(図示せず)を有するフラットパネルディスプレイから構成される。表示パネル30は、液晶パネル、表面偏光板、裏面偏光板及びバックライト(いずれも図示せず)を備える。表面偏光板と裏面偏光板とは、液晶パネルを挟むように配置されている。バックライトは、裏面偏光板を挟んで、液晶パネルと反対側に配置されている。表示パネル30は、タッチ式入力装置に重ね合わせて画像を表示する。なお、表示パネル30は、上記の構成に限定されず、有機EL(Electro-Luminescence)素子を有するフラットパネルディスプレイから構成される等、任意の表示パネルであってよい。
【0039】
各種回路40は、図3を参照して説明するように、増幅部401(増幅回路)、マルチプレクサ402、AD変換部403(AD変換器、AD変換回路)、信号処理部404(信号処理回路)及びコントローラ405を含み、液晶表示素子を制御するための、表示パネル30を駆動する駆動部(駆動回路;図示せず)をさらに含む。各種回路40は、表示パネル30の裏面側に配置されている。例えば、筐体10内における表示パネル30の裏面側の空間には、実装基板(図示せず)が配置されており、当該実装基板上に各種回路40が実装されている。各種回路40の全部又は一部(例えば、信号処理部404、コントローラ405)は、制御部又は制御回路と称されてもよい。
【0040】
図3は、本実施形態に係る表示装置の構成を説明するための説明図である。
【0041】
上述したように、第1検出導体203は、複数の電極から構成され、複数の電極は、分割配置されている。なお、本実施形態において、複数の電極の数は、電極E(1)、電極E(2)、・・・、電極E(n)のn個であるものとする。
【0042】
複数の電極E(1)~E(n)は、Z方向から見て、X方向及びY方向に沿って、マトリクス状に配列されている。電極E(1)~E(n)の各々は、例えば、上述したように、PETフィルムを基材とし、ITOから構成される30mm×30mmの大きさの矩形電極である。しかしながら、電極の大きさ、位置及び形状は、これらに限定されない。例えば、電極の形状は、六角形であってもよい。また、例えば、指でタッチされる平面タッチパネルの場合、第1検出導体203は、互いに電気的に絶縁された複数の電極部分を有する分割電極から構成され、パネル全体を覆い尽くすように配置されれば、1つ以上の電極に指が(間接的に)タッチする(近接する)ので、その位置を特定することが可能である。
【0043】
複数の電極E(1)~E(n)の各々は、アナログ信号を増幅部401に出力(送信)する。
【0044】
増幅部401は、電極E(1)~E(n)の各々から入力(受信)されたアナログ信号を、測定可能な振幅範囲(本実施形態では0~3.3V)まで増幅してマルチプレクサ402に出力する。増幅部401の数は、電極の数に等しい。
【0045】
マルチプレクサ402は、電極からマルチプレクサ402を介して入力されたアナログ信号を多重化する。マルチプレクサ402は、コントローラ405から入力された選択信号に従って、一定の間隔(周期)で(すなわち周期的に繰り返しながら)、電極E(1)からの増幅アナログ信号AS(1)、電極E(2)からの増幅アナログ信号AS(2)、・・・、電極E(n)からの増幅アナログ信号AS(n)を順番にAD変換部403に出力する。
【0046】
AD変換部403は、マルチプレクサ402から入力された(増幅)アナログ信号AS(1)~AS(n)をそれぞれデジタル信号DS(1)~DS(n)に変換し、デジタル信号DS(1)~DS(n)を順番に信号処理部404に出力する。ここで、AD変換部403から信号処理部404へのデジタル信号の出力は、デジタル信号DS(1)からデジタル信号DS(n)までの出力を1周期として、出力が一定周期(例えば、5ミリ秒)で連続して周期的に繰り返される。なお、AD変換時のサンプリング周波数は、少なくとも商用電源周波数の2倍以上である。
【0047】
信号処理部404は、コントローラ405から入力された選択信号に従って、一定の間隔(周期)で(すなわち周期的に繰り返しながら)、AD変換部403から入力されたデジタル信号に対して以下の処理(周波数分離処理、包絡線検波処理、タッチ判定処理、ローパスフィルタ(LPF)処理及び圧力測定処理)を実行する。以下、適宜図4を参照して、信号処理部404の処理について説明する。なお、以下で説明する信号処理部404(又はコントローラ405)によって実行される処理は、ハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアにより実現されてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせにより実現されてもよい。
【0048】
[周波数分離処理]
周波数分離処理の前に、まず、信号処理部404は、AD変換部403から入力されたデジタル信号に対してオフセット調整を行う。信号処理部404は、オフセット調整後のデジタル信号Aを、第1信号B(商用電源周波数成分Bとも呼ぶ)と第2信号E(商用電源周波数成分以外の周波数成分Eとも呼ぶ)とに分離する(図4に示す周波数分離処理)。具体的には、AD変換部403から入力されたデジタル信号Aには、指がタッチしたことによる商用電源周波数ノイズと、圧電フィルム204に力が加わったことによる圧電信号と、が、重畳されているため、信号処理部404は、商用電源周波数成分Bと、圧電信号を含む商用電源周波数成分以外の周波数成分Eと、を分離する。
【0049】
周波数分離処理において、一例では、信号処理部404は、商用電源周波数帯域通過フィルタ(バンドパスフィルタ;例えば、図7に示すフィルタ周波数特性を有するフィルタ)を用いて、AD変換部403から入力された(オフセット調整後の)デジタル信号Aを、当該フィルタを通過した商用電源周波数成分Bと、当該フィルタを通過しない、商用電源周波数成分以外の周波数成分Eと、に分離してもよい。上述したように、圧電フィルム204に加えられる押圧力(タッチ)による信号(変化)は、一般に10Hz未満であるので、商用電源周波数成分以外の周波数成分Eに含まれる。
【0050】
周波数分離処理において、別の一例では、信号処理部404は、ノッチフィルタ(バンドカットフィルタ又はバンドストップフィルタ;図示せず)を用いて、AD変換部403から入力された(オフセット調整後の)デジタル信号Aを、当該フィルタを通過しない商用電源周波数成分Bと、当該フィルタを通過した、商用電源周波数成分以外の周波数成分Eと、に分離してもよい。この例では、信号処理部404は、検出されたデジタル信号Aから商用電源周波数成分以外の周波数成分Eを差引くことにより、商用電源周波数成分Bを得ることができる。
【0051】
[包絡線検波処理]
信号処理部404は、上記のようにして得られた商用電源周波数成分の信号Bに対して、図4に示す波形の包絡線検波処理を行って、包絡線信号Cを算出する。なお、包絡線信号Cを得るために、ヒルベルト変換等の公知の技術が利用されてよい。
【0052】
[タッチ判定処理]
タッチされた電極からの包絡線信号Cの値は、タッチされていない電極の包絡線信号と比べて大きくなるため、信号処理部404は、予め設定された閾値に基づいて、タッチの有無を電極毎に判定することができる(図4に示すタッチ判定処理)。例えば、信号処理部404は、電極毎に、包絡線信号Cの値が所定の閾値を越えている期間をタッチしているとして判定し、タッチしている(として判定した)期間のみハイレベルとなる信号(タッチしていることを示す信号)をコントローラ405に出力する。
【0053】
信号処理部404では、包絡線検波を用いたタッチ判定処理を示したが、得られた信号をフーリエ変換することで同様のタッチ判定処理を行うことが出来る。商用電源周波数成分の信号Bを一定の期間(フレーム)で連続して切り出し、前記フレームをフーリエ変換すると周波数に対する圧電信号強度のスペクトルが得られる。前記スペクトルでは、タッチされた電極の商用電源周波数における強度が、タッチされていない電極に比べて大きくなるため、各電極に対するタッチの有無を判定することが出来る。例えば、ある電極の商用電源周波数の強度が所定の閾値を越えている場合に、その電極は測定時点においてタッチされていると判定することが出来る。
【0054】
[LPF処理]
上述したように、商用電源周波数成分以外の周波数成分Eは、圧電信号を含んでいる。信号処理部404は、圧電信号だけを取り出すためのLPF(例えば、図5に示すフィルタ周波数特性を有するフィルタ)を用いることにより図4に示すLPF処理を行って圧電信号Fを得る。
【0055】
[圧力測定処理]
信号処理部404は、得られた圧電信号Fに基づいて、電極毎の圧力を測定し、測定した圧力(押圧)を示す圧力信号をコントローラ405に出力する。具体的には、信号処理部404は、表示装置1の記憶部(図示せず)に予め記憶されている、圧電信号の大きさ(後述する図8C及び図9Cの縦軸に示す値)と押圧とを対応付けている情報(例えばテーブルや計算式)を参照することで、電極毎の圧力を測定することができる。
【0056】
コントローラ405は、それぞれの電極からの増幅アナログ信号を順番にAD変換部403に出力させるための選択信号を、マルチプレクサ402に出力する。コントローラ405は、AD変換部403から入力されたそれぞれのデジタル信号に対して上述した信号処理を実行させるための選択信号を、信号処理部404に出力する。
【0057】
コントローラ405は、信号処理部404から入力された信号に基づいて、タッチ位置及び押圧をリアルタイムに検出する。具体的には、コントローラ405は、信号処理部404から入力されたタッチ判定処理結果を示す信号に対応する電極と、記憶部に予め記憶されている電極の位置情報(例えば位置座標)と、に基づいて、タッチ位置を特定(すなわち検出)することができる。また、コントローラ405は、信号処理部404から入力された圧力測定処理結果を示す圧力信号に基づいて、電極毎の押圧を特定(すなわち検出)することができる。
【0058】
上記実施形態によれば、押圧検出の期間を制限する必要がないので、タッチ位置及び押圧を略同時に検出することが可能である。また、第1検出導体203から検出された信号を、タッチ位置検出用の第1信号と押圧検出用の第2信号とに分離することで、タッチ位置及び押圧を高感度で検出することができる。また、第1検出導体203を開口部側に配置することで、第1信号からタッチ位置を高感度かつ高精度で検出することができる。また、通常のセンサの信号処理に必要とされるバンドカットフィルタ等を用いて(すなわち追加の回路を必要とせず)タッチ位置を検出するので、シンプルな構成の入力装置及び表示装置を提供することができる。
【0059】
<変形例>
上記実施形態では、商用電源周波数以外の信号を得るためにノッチフィルタを使用したが、信号処理部404全体として同じ効果を得るために、商用電源周波数を含めた帯域を除去するLPFを適用する方法も考えられる。以下、図6を参照して、信号処理部404によるこの方法について説明する。この方法では、周波数分離処理は行われない。
【0060】
[バンドパスフィルタ処理]
バンドパスフィルタ処理(及び以下で説明するLPF処理)の前に、まず、信号処理部404は、AD変換部403から入力されたデジタル信号に対してオフセット調整を行う。信号処理部404は、商用電源周波数帯域通過フィルタ(バンドパスフィルタ;例えば、図7に示すフィルタ周波数特性を有するフィルタ)を用いて、AD変換部403から入力された(オフセット調整後の)デジタル信号Aから、当該フィルタを通過した商用電源周波数成分Bを抽出する。
【0061】
[包絡線検波処理]
本方法における包絡線検波処理は、図4を参照して説明した包絡線検波処理と同一又は同様であるので、説明を省略する。
【0062】
[タッチ判定処理]
本方法におけるタッチ判定処理は、図4を参照して説明したタッチ判定処理と同一又は同様であるので、説明を省略する。
【0063】
[LPF処理]
AD変換部403から入力された(オフセット調整後の)デジタル信号Aは、商用電源周波数ノイズ(商用電源周波数成分)だけでなく、圧電信号を含んでいる。そこで、信号処理部404は、商用電源周波数を除去し、かつ圧電信号だけを取り出すためのLPF(例えば、図5に示すフィルタ周波数特性を有するフィルタ)を用いることにより図6に示すLPF処理を行って圧電信号Fを得る。
【0064】
[圧力測定処理]
本方法における圧力測定処理は、図4を参照して説明した圧力測定処理と同一又は同様であるので、説明を省略する。
【0065】
本変形例において、このように複数のフィルタブロックを合成することで、上記実施形態と同一又は同様の効果を得ることができる。
【0066】
<他の変形例>
上記実施形態及び変形例では、ノッチフィルタ等の周波数フィルタをデジタル信号変換後のデジタルフィルタとして信号処理を実現したが、デジタルフィルタの代わりにアナログフィルタを用いても同じ機能を実現することが可能である。
【0067】
上記実施形態及び変形例では、コントローラ405が、信号処理部404によるタッチ判定処理結果に基づいてタッチ位置を判定するとして説明したが、信号処理部404が、タッチ判定処理結果と、記憶部に予め記憶されている電極の位置情報と、に基づいて、タッチ位置を判定してもよい。
【0068】
上記実施形態及び変形例では、信号処理部404が、得られた圧電信号に基づいて、電極毎の圧力を測定し、測定した圧力(押圧)を示す圧力信号をコントローラ405に出力するとして説明したが、コントローラ405が、電極毎の圧力を測定してもよい。この場合、例えば、信号処理部404が、得られた圧電信号の大きさを示す情報をコントローラ405に出力し、コントローラ405は、記憶部に予め記憶されている、圧電信号の大きさと押圧とを予め対応付けている情報を参照することで、信号処理部404から入力された圧電信号の大きさを示す情報に基づいて、電極毎の圧力を測定することができる。
【0069】
<押圧検出及びタッチ位置検出評価>
本発明者は、本実施形態におけるタッチ式入力装置を作製し、押圧検出及びタッチ位置検出の評価を行った。本タッチ式入力装置においては、第1検出導体203を、互いに絶縁するように配置された12枚の矩形電極(電極E(1)~電極E(12))から構成し、タッチセンサ20の全光線透過率は80%以上であった。電極E(1)~電極E(12)それぞれからのアナログ信号AS(1)~アナログ信号AS(12)を1周期とし、サンプリング周波数200Hzでマルチプレクサ402から出力された信号が、AD変換部403によってアナログ信号AS(1)~AS(12)からそれぞれデジタル信号DS(1)~DS(12)に変換され、AD変換後のデジタル信号DS(1)~DS(12)が信号処理部404へ入力された。
【0070】
図8A図8Cは、指でタッチしている電極から検出された信号に対する信号処理部404による信号処理後のデジタル信号の例を示す図である。
【0071】
図8Aは、指がタッチしている矩形電極を介して得られた信号処理部404によるオフセット調整後のデジタル信号A(「signal-A」)を示す図である。図8Aに示すグラフにおいて、横軸は、5ミリ秒周期でサンプリングしたときのサンプリング回数nを表し、縦軸は、電圧信号強度を表す(強度1は0.8ミリボルトに相当する)。図8Aは、商用電源周波数(50Hz)に依存した信号(ハムノイズ)と圧電信号とが重畳していることを示している。
【0072】
図8Bは、上記デジタル信号Aから、商用電源周波数(50Hz)のノッチフィルタ(バンドカットフィルタ)を通過した商用電源周波数成分以外の周波数成分E(図8Cに示す)を差引いて商用電源周波数成分B(「signal-B」)を求め、商用電源周波数成分Bに対して包絡線検波処理を行って、包絡線信号C(「signal-C」)を得た信号処理例を示す図である。指がタッチしている矩形電極の包絡線信号Cの値は、指がタッチしていない矩形電極の包絡線信号と比べて大きくなるため(後述する図9B参照)、信号処理部404は、包絡線信号Cの値を閾値判定することで、タッチの有無を矩形電極毎に判定することができる。本評価にあたって、信号処理部404は、包絡線信号Cの値が閾値100(「Threshold」)を越えている期間をタッチしているとして判定し、タッチしている期間のみハイレベルを出力する信号D(「signal-D」)を出力した。
【0073】
一方、商用電源周波数成分以外の信号Eは圧電信号を含んでおり、信号処理部404は、圧電信号だけを取り出すためのLPFを用いてLPF処理を行って圧電信号Fを得て、圧電信号Fに基づいて電極毎の圧力を測定した。
【0074】
図8Cは、ノッチフィルタを通過した商用電源周波数以外の周波数成分E(「signal-E」)と、当該周波数成分Eを移動平均処理した信号F(「signal-F」)と、を示している。当該周波数成分Eには、商用電源周波数は含まれないものの、高周波ノイズが重畳しているが、信号Fには高周波ノイズが含まれない。信号処理部404は、指で押したときには正の値を示し、指を離したときには負の値を示し、圧力(押圧)に比例した大きさの信号Fを出力した。
【0075】
図9A図9Cは、指でタッチしている電極に隣接する指でタッチしていない電極から検出された信号に対する信号処理部404による信号処理後のデジタル信号の例を示す図である。
【0076】
図9Aは、指でタッチした矩形電極に隣接し、指でタッチしていない矩形電極からのアナログ信号を200Hzの周波数でサンプリングした、信号処理部404によるオフセット調整後のデジタル信号A(「signal-A」)を示す図である。図9Aにおいて、商用電源周波数の信号はほとんど検出されなかった。
【0077】
図9Bは、上記デジタル信号Aから、商用電源周波数(50Hz)のノッチフィルタ(バンドカットフィルタ)を通過した商用電源周波数成分以外の周波数成分E(図9Cに示す)を差引いて商用電源周波数成分B(「signal-B」)を求め、商用電源周波数成分Bに対して包絡線検波処理を行って、包絡線信号C(「signal-C」)を得た信号処理例を示す図である。図9Bにおいて、包絡線信号Cの値が閾値100(「Threshold」)を越える期間はないので、信号処理部404は、この測定の期間中、指がタッチしていないと判定している。
【0078】
図9Cは、ノッチフィルタを通過した商用電源周波数以外の周波数成分E(「signal-E」)と、当該周波数成分Eを移動平均処理した信号F(「signal-F」)と、を示している。図9Cにおいて、図8Cに示す波形と相似しているが、振幅の小さい波形として検出されている。
【0079】
このようにして、信号処理部404が、指がタッチしている矩形電極及び指がタッチしていない矩形電極の情報を周期的に取得してコントローラ405に出力することにより、コントローラ405は、記憶部に予め記憶されている矩形電極の位置情報を参照することでタッチ位置を特定(すなわち検出)することができる。これと同時に、信号処理部404が、信号Fに基づいて電極毎に圧力測定を行って測定結果をコントローラ405に出力することにより、コントローラ405は、測定結果である圧力(押圧)も特定(すなわち検出)することができる。
【0080】
コントローラ405は、信号処理部404から入力されたこれら2つの情報に基づいて、タッチ位置及び押圧をリアルタイムに検出することが可能である。
【0081】
図10Aは、図8B及び図9Bのそれぞれのsignal-Bの横軸を時間(単位:秒)で表示した図であり、タッチされた電極の前記シグナルをsignal-8BT、タッチされていない電極の前記シグナルをsignal-9BTと呼ぶ。
【0082】
図10Bは、図10Aにおける1.00秒から1.25秒までの区間を高速フーリエ変換(FFT)したシグナルを表示した図であり、横軸は周波数(単位:Hz)に相当する。Signal-8BTをFFTしたシグナルをsignal-8F、signal-9BTをFFTしたシグナルをsignal-9Fと表記する。フーリエ変換するためのサンプリング幅はとくに限定されない。前記サンプリング幅が短いほど検出速度は速くなるが、検出点数が少なくなるので検出精度が低くなる傾向がある。
【0083】
タッチされた電極からのsignal-8Fでは、商用電源周波数帯(50Hz)に押圧に由来する強い信号が観測される。一方、タッチされていない電極からのsignal-9Fでは前記商用電源周波数帯に前記信号が観測されない。したがって、強度の閾値を適切に設定して(図10Bでは300に設定)判定すれば、電極に対するタッチの有無を判定することでできることがわかる。
【0084】
<実施形態の効果>
本発明の一実施形態に係る表示装置1に含まれる入力装置は、タッチセンサ20と、信号処理部404、コントローラ405と、を備えている。タッチセンサ20は、圧電フィルム204と、圧電フィルム204に対向して、指がタッチされる側に配置されている互いに電気的に絶縁された複数の電極部分を有する分割電極から構成されている第1検出導体203と、第1検出導体203に対向して、圧電フィルム204を挟んで第1検出導体203と反対側に配置されている第2検出導体205と、を有する。信号処理部404、コントローラ405は、第2検出導体205を基準電位として第1検出導体203から検出された信号を、商用電源周波数帯域の第1信号(ハムノイズ)と、商用電源周波数帯域以外の周波数帯域の第2信号と、に分離する。信号処理部404、コントローラ405は、第1信号を用いてタッチセンサ20に対するタッチ位置を検出し、第2信号を用いてタッチセンサ20に対する押圧を検出する。
【0085】
上記の構成により、押圧検出の期間を制限する必要がないので、タッチ位置及び押圧を略同時に検出することが可能になり、第1検出導体203から検出された信号を、第1信号と第2信号とに分離することで、タッチ位置及び押圧を高感度で検出することができる。また、第1検出導体203を開口部側に配置することで、第1信号からタッチ位置を高感度かつ高精度で検出することができる。
【0086】
また、通常のセンサの信号処理に必要とされるバンドカットフィルタ等を用いて(すなわち追加の回路を必要とせず)タッチ位置を検出するので、シンプルな構成の入力装置を提供することができる。
【0087】
<実施形態のまとめ>
本発明の一態様に係る入力装置は、タッチセンサ及び制御部を備え、前記タッチセンサは、圧電フィルムと、前記圧電フィルムに対向して、互いに電気的に絶縁された複数の電極部分を有する分割電極から構成されている第1検出導体と、前記第1検出導体に対向して、前記圧電フィルムを挟んで前記第1検出導体と反対側に配置されている第2検出導体と、を有し、前記制御部は、前記第2検出導体を基準電位として前記第1検出導体から検出された信号を、商用電源周波数帯域の第1信号と、前記商用電源周波数帯域以外の周波数帯域の第2信号と、に分離し、前記第1信号を用いてタッチ位置を検出し、前記第2信号を用いて押圧を検出する。
【0088】
一例において、前記制御部は、前記第1信号の包絡線信号を算出し、前記包絡線信号の値が閾値を超えている場合に、前記包絡線信号に対応する分割電極の位置を前記タッチ位置として検出する。
【0089】
一例において、前記制御部は、前記第2信号の値と押圧とを対応付けている情報に基づいて、分割電極毎の押圧を検出する。
【0090】
一例において、前記第1検出導体は、前記第2検出導体よりも、前記タッチセンサの指がタッチされる面の近くに配置されている。
【0091】
一例において、前記制御部は、前記商用電源周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタを用いて、前記信号から前記第1信号と前記第2信号とを分離する。
【0092】
一例において、前記制御部は、前記商用電源周波数帯域以外の周波数帯域を通過させるバンドストップフィルタを用いて、前記信号から前記第1信号と前記第2信号とを分離する。
【0093】
一例において、前記圧電フィルムはフッ素系樹脂から構成されている。
【0094】
一例において、前記タッチセンサの全光線透過率は80%以上である。
【0095】
本発明の一態様に係る表示装置は、前記入力装置と、前記タッチセンサの指がタッチされる面と反対側の面に重ね合わせて画像を表示する表示パネルと、前記表示パネルを駆動する駆動部と、を備える。
【0096】
本発明の一態様によれば、タッチ位置及び押圧を略同時に高感度で検出することができる。
【0097】
以上、図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかである。そのような変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態における各構成要素は任意に組み合わされてよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の一態様は、タッチ式入力装置として好適である。
【符号の説明】
【0099】
1 表示装置
10 筐体
20 タッチセンサ
201 保護膜
202 基材
203 第1検出導体
204 圧電フィルム
205 第2検出導体
30 表示パネル
40 回路
401 増幅部
402 マルチプレクサ
403 AD変換部
404 信号処理部
405 コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B