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特開2024-156654新規操作T細胞受容体およびそれを使用した免疫療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156654
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】新規操作T細胞受容体およびそれを使用した免疫療法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20241029BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241029BHJP
   C07K 1/14 20060101ALI20241029BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20241029BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20241029BHJP
   A61K 35/54 20150101ALI20241029BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N5/10
C07K1/14
C12P21/08
C12N5/0783
C07K19/00
C12N15/12
A61P35/00
A61P1/00
A61P1/16
A61P15/00
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K31/7088
A61P37/04
A61K35/17
A61K35/54
C07K16/18
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024101016
(22)【出願日】2024-06-24
(62)【分割の表示】P 2020524434の分割
【原出願日】2018-11-05
(31)【優先権主張番号】102017125888.4
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】62/582,202
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506258073
【氏名又は名称】イマティクス バイオテクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ウンフェルドルベン,フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】バンク,ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,マ-ティン
(72)【発明者】
【氏名】フット,マイケ
(72)【発明者】
【氏名】マウラ-,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】アルテン,レオニ-
(72)【発明者】
【氏名】ワグナ-,クラウディア
(57)【要約】      (修正有)
【課題】がん細胞に高度に特異的な分子を特異的に標的化する、新たな抗がん剤を提供する。
【解決手段】抗原COL6A3を発現する腫瘍に対して選択的かつ特異的な、新規操作T細胞受容体(TCR)ベースの分子を提供する。本発明のTCR、およびそれに由来するCOL6A3抗原結合断片は、COL6A3を発現するがん性疾患の診断、治療、および予防に有用である。さらに、本発明の抗原認識コンストラクトをコードする核酸、これらの核酸を含んでなるベクター、抗原認識コンストラクトを発現する組換え細胞、および本発明の化合物を含んでなる医薬組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号5(CDRa1)、6(CDRa2)、および7(CDRa3)に記載のアミノ酸配列を含んでなる、3つの相補性決定領域(CDR)を含んでなる第1のドメインと、配列番号13(CDRb1)、14(CDRb2)、および15(CDRb3)に記載のアミノ酸配列を含んでなる、3つの相補性決定領域(CDR)を含んでなる第2のドメインとを含んでなる、抗原認識コンストラクトであって、前記相補性決定領域の少なくとも1つが、
a)配列番号26(CDRa1変異体1)および配列番号37~49(CDRb1-mut1~CDRb1-mut13)、および
b)配列番号26および配列番号37~49の少なくとも1つを含んでなる変異配列からなる群から選択されるアミノ酸配列
の群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも1つで置換され、前記少なくとも1つのアミノ酸配列が、1つ、2つ、または3つのアミノ酸置換を含有する、抗原認識コンストラクト。
【請求項2】
前記抗原認識コンストラクトが安定であり、特にMHCに関する文脈で、特に配列番号1に記載のアミノ酸配列を含んでなるCOL6A3抗原ペプチドに、特異的および/または選択的に結合できる、請求項1に記載の抗原認コンストラクト。
【請求項3】
前記抗原認識コンストラクトが、抗体、または二重特異性分子または断片などのその誘導体であり、またはT細胞受容体(TCR)、または二重特異性分子または断片などのその誘導体である、請求項1または2に記載の抗原認識コンストラクト。
【請求項4】
前記第1のドメインがTCRαまたはγ鎖の一部であり、および/または前記第2のドメインがTCRβまたはδ鎖の一部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクトをコ-ドする核酸、または前記核酸を含んでなる核酸ベクタ-。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、または請求項5に記載の核酸またはベクタ-を含んでなる組換え宿主細胞であって、好ましくは、a)Tリンパ球などのリンパ球、または例えば、CD4+またはCD8+T細胞などのTリンパ球始原細胞、またはb)チャイニ-ズハムスタ-卵巣(CHO)細胞などの非リンパ球である、組換え宿主細胞。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、または請求項5に記載の核酸もしくはベクタ-、または請求項6に記載の宿主細胞、および薬学的に許容可能な担体、希釈剤、安定剤および/または賦形剤を含んでなる、医薬組成物。
【請求項8】
a.適切な宿主細胞を提供するステップと、
b.請求項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクトをコ-ドするコ-ド配列を含んでなる、遺伝子コンストラクトを提供するステップと、
c.前記遺伝子コンストラクトを前記適切な宿主細胞に導入するステップと、
d.前記適切な宿主細胞によって前記遺伝子コンストラクトを発現させるステップと
を含んでなる、請求項1~4のいずれか1項に記載のCOL6A3特異的抗原認識コンストラクトを生成する方法。
【請求項9】
前記抗原認識コンストラクトを前記適切な宿主細胞から単離し精製するステップと、任意選択的に、前記抗原認識コンストラクトをT細胞中で再構成するステップとをさらに含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
医療で使用するための、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、請求項5に記載の核酸またはベクタ-、請求項6に記載の宿主細胞、または請求項7に記載の医薬品組成物。
【請求項11】
がんなどの増殖性疾患の診断、予防、および/または治療で使用するための、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、請求項5に記載の核酸またはベクタ-、請求項6に記載の宿主細胞、または請求項7に記載の医薬品組成物。
【請求項12】
前記がんが、例えば、結腸直腸がん、結腸がん、肝臓がん、卵巣がん、および胃がんなど、COL6A3が過剰発現され、変異し、および/またはCOL6A3由来の腫瘍関連抗原が提示されるがんから選択される、請求項11に記載の使用のための、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、請求項5に記載の核酸またはベクタ-、請求項6に記載の宿主細胞、または請求項7に記載の医薬品組成物。
【請求項13】
前記変異配列が、前記第1の配列中の1つ、2つまたは3つのアミノ酸を前記第2の配列中の対応する1つ、2つまたは3つのアミノ酸で置換することによって提供されるような、第1および第2のアミノ酸配列の組み合わせである、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト。
【請求項14】
前記変異配列が、前記第13の配列中の1つ、2つまたは3つの連続的アミノ酸を前記第2の配列中の対応する1つ、2つまたは3つの連続的アミノ酸で置換することによって提供されるような、第1および第2のアミノ酸配列の組み合わせである、請求項13に記載の抗原認識コンストラクト。
【請求項15】
(b)の変異配列が、少なくとも1つの(a)のアミノ酸配列と比較して、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を含有する、請求項1~4および13~14のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト。
【請求項16】
前記相補性決定領域の前記少なくとも1つが、配列番号40で置換され、配列番号40が、1つ、2つ、または3つのアミノ酸置換を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト。
【請求項17】
前記相補性決定領域の前記少なくとも1つが、配列番号40で置換される、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト。
【請求項18】
表2の75-1~75-25および表5のC-1~C-18からなる群から選択される変異型を含んでなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COL6A3抗原に対する抗原認識コンストラクトに関する。本発明は、特に、抗原COL6A3を発現する腫瘍に対して選択的かつ特異的な、新規操作T細胞受容体(TCR)ベ-スの分子を提供する。本発明のTCR、およびそれに由来するCOL6A3抗原結合断片は、COL6A3を発現するがん性疾患の診断、治療、および予防に有用である。さらに、本発明の抗原認識コンストラクトをコ-ドする核酸、これらの核酸を含んでなるベクタ-、抗原認識コンストラクトを発現する組換え細胞、および本発明の化合物を含んでなる医薬組成物が提供される。
【背景技術】
【0002】
コラ-ゲンは様々な組織の完全性を維持する上で役割を果たす、タンパク質のス-パ-ファミリ-である。コラ-ゲンは細胞外マトリックスタンパク質であり、それらの共通の構造要素として三重らせんドメインを有する。コラ-ゲンVIは、ミクロフィブリルの主要な構造成分である。コラ-ゲンVIの基本的な構造単位は、αl(VI)、α2(VI)、およびα3(VI)コラ-ゲン鎖のヘテロ三量体である。αl(VI)およびα2(VI)鎖は、それぞれCOL6A1およびCOL6A2遺伝子によってコ-ドされる。COL6A3遺伝子によってコ-ドされるタンパク質は、VI型コラ-ゲンのα3サブユニット(α3(VI)コラ-ゲン鎖)である(Bertini et al.,2002 Eur.J.Paediatr.Neurol 6:193-8)。COL6A3の遺伝子発現は、乳がんの進行に関連し、大腸がんでは上昇する(Smith MJ,et al.”Analysis of differential gene expression in colorectal cancer and stroma using fluorescence-activated cell sorting purification”British journal of cancer.2009;100:1452-1464;Tilman G et al”Human periostin gene expression in normal tissues,tumors and melanoma:evidences for periostin production by both stromal and melanoma cells”Mol Cancer.2007;6:80)ことが以前示されており、結腸直腸がんの予後マ-カ-であることが示されている(Qiao J et al.”Stroma derived COL6A3 is a potential prognosis marker of colorectal carcinoma revealed by quantitative proteomics”Oncotarget.2015 Oct 6;6(30):29929-29946)。COL6A3遺伝子はヒトゲノムの2q37に位置し、44個のエクソンを含む。COL6A3タンパク質は、3177個のアミノ酸を有し、12個のフォンヴィレブランド因子A型(vWA)ドメイン、1個のフィブロネクチン3型ドメイン、および1個のBPTI/クニッツファミリ-のセリンプロテア-ゼ阻害剤(KU)ドメインを含む。
【0003】
T細胞ベ-スの免疫療法の標的は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の分子によって提示される、腫瘍関連または腫瘍特異的タンパク質に由来する、ペプチドエピト-プに相当する。これらの腫瘍関連抗原(TAA)は、酵素、受容体、転写因子などの全てのタンパク質クラスに由来するペプチドであり得て、それらは各腫瘍細胞内で発現され、同一起源の非改変細胞内と比較して、通常、上方制御される。
【0004】
細胞性免疫応答の特定の要素は、腫瘍細胞を選択的に認識し破壊できる。腫瘍浸潤性細胞集団からの、または末梢血からの腫瘍抗原特異的T細胞の単離は、がんに対する自然免疫防御において、このような細胞が重要な役割を果たすことを示唆する。特に、細胞質ゾル内に位置するタンパク質または欠陥リボソ-ム産物(DRiP)に由来する、通常は8~10アミノ酸残基の主要組織適合性複合体(MHC)保有ペプチドのクラスI分子を認識するCD8陽性T細胞が、この応答において重要な役割を果たす。ヒトのMHC分子はまた、ヒト白血球抗原(HLA)とも称される。
【0005】
TCRは、シグナル伝達媒介に関与するCD3複合体のインバリアントタンパク質に関連する、免疫グロブリンス-パ-ファミリ-のヘテロ二量体細胞表面タンパク質である。TCRはαβおよびγδヘテロ二量体として存在し、それらは構造的に類似しているが、かなり異なる解剖学的位置とおそらくは機能とを有する。天然のヘテロ二量体αβTCRの細胞外部分は2つのポリペプチド鎖からなり、そのそれぞれは膜近位定常ドメインおよび膜遠位可変ドメインを有する。定常ドメインおよび可変ドメインのそれぞれは、鎖内ジスルフィド結合を含む。可変ドメインは、抗体の相補性決定領域(CDR)に類似した、高度に多型性のル-プを含有する。TCR遺伝子治療の使用は、いくつかの現在のハ-ドルを克服する。それは、患者自身のT細胞に所望の特異性を与えて、十分な数のT細胞を短期間で生成できるようにし、それらの枯渇を回避する。TCRは、中央記憶T細胞または幹細胞の特徴を有するT細胞に形質導入され、それは移入時におけるより良好な持続性および機能を確実にしてもよい。TCR操作T細胞は、化学療法または照射によってリンパ球減少症になったがん患者に注入され、効率的な生着ができるようにするが、免疫抑制は阻害する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
がん治療のための分子標的薬の開発が進歩しているものの、当該技術分野において、がん細胞に高度に特異的な分子を特異的に標的化する、新たな抗がん剤を開発する必要性がなおもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、開示されるようなCOL6Aエピト-プに特異的に結合する、新規操作COL6A3 TCR、それぞれの組換えTCRコンストラクト、核酸、ベクタ-、および宿主細胞と;がんの治療においてこのような分子を使用する方法とを提供することによって、この必要性に対処する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1の態様では、本発明の目的は、配列番号5(CDRa1)、6(CDRa2)、および7(CDRa3)に記載の3つの相補性決定領域(CDR)を含んでなる第1のドメインと、配列番号13(CDRb1)、14(CDRb2)、および15(CDRb3)に記載の3つの相補性決定領域(CDR)を含んでなる第2のドメインとを含んでなる抗原認識コンストラクトによって解決され、前記相補性決定領域の少なくとも1つは、a)配列番号26(CDRa1-mut1)、および配列番号37~49(CDRb1-mut1~CDRb1-mut13)、好ましくは配列番号40、およびb)保存的アミノ酸交換を含んでなる、配列番号26、および配列番号37~49、好ましくは配列番号40の変異配列の群から選択される、少なくとも1つの配列で置換される。
【0009】
別の態様では、抗原認識コンストラクトのCDRa1は、配列番号5に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の同一性を有してもよい。
【0010】
別の態様では、抗原認識コンストラクトのCDRa2は、配列番号6に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の同一性を有してもよい。
【0011】
別の態様では、抗原認識コンストラクトの、CDRa3は、配列番号7に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の同一性を有してもよい。
【0012】
別の態様では、抗原認識コンストラクトの、CDRb1は、配列番号13に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の同一性を有してもよい。
【0013】
別の態様では、抗原認識コンストラクトの、CDRb2は、配列番号14に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の同一性を有してもよい。
【0014】
別の態様では、抗原認識コンストラクトの、CDRb3は、配列番号15に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の同一性を有してもよい。
【0015】
本発明の文脈において、本発明者らは、親R4P3F9の安定性、認識、および選択性が改善されたαおよびβ鎖中に変異CDR1配列を含んでなる、COL6A3 TCR R4P3F9の改善された操作バ-ジョンを同定した。これらの成熟TCR変異型は、第1段階が変異型の安定性を選択し、第2段階が変異型の親和性を選択する、二段法で選択される(実施例を参照されたい)。本発明のTCRが変異CDR1領域を含んでなる一方で、結合親和性/特異性および/または選択性を高めるために、CDR2およびまたはCDR3もまた変異され得て、このような変異CDRは、理想的には既存のコンストラクトに含まれ得る。
【0016】
親和性成熟は変異型を同定し、これは、特異性を保持しまたは改善さえもする一方で、HLA-A02/COL6A3ペプチドに対して大幅により強い結合活性を有した。親TCR C-1(野生型CDRを含んでなるR4P3F9 TCR、表5を参照されたい)と比較して、本発明の全ての変異型は、IFN-γ放出を改善し、より低いペプチド負荷濃度において、既により高いレベルに達した。
【0017】
可変ドメイン内で、CDR1およびCDR2は、ポリペプチド鎖の可変(V)領域に見いだされ、CDR3は、Vの一部と、多様性(D)および連結(J)領域の全てとを含む。CDR3は、最も可変性が高く、抗原を特異的かつ選択的に認識することに関与する、主要CDRであると想定される。驚くことに、一部のTCR CDR1は、ペプチドともまた接触するようであり、したがって選択的認識にも関与する。本件では、特定の理論に縛られることなく、変異CDR1bは、COL6A3ペプチドの8位と相互作用するようである。
【0018】
天然α-βヘテロ二量体TCRは、α鎖およびβ鎖を有する。各α鎖は可変領域、連結領域、および定常領域を含んでなり、β鎖は通常、可変領域と連結領域の間の短い多様性領域もまた含有するが、この多様性領域はしばしば連結領域の一部と見なされる。各可変領域はフレ-ムワ-ク配列に埋め込まれた3つのCDR(相補性決定領域)を含んでなり、そのうちの1つはCDR3と命名される超可変領域である。それらのフレ-ムワ-クによって、CDR1およびCDR2配列によって、ならびに部分的に定義されたCDR3配列によって区別される、数種類のα鎖可変(Vα)領域および数種類のβ鎖可変(Vβ)領域がある。Vα型は固有のTRAV番号によって、Vβ型は固有のTRBV番号によって、IMGT命名法で示される。
【0019】
好ましくは、本発明の抗原認識コンストラクトは、本明細書で開示される本発明の操作TCR可変領域の一個体の各CDR1~CDR3を含んでなる。好ましいのは、少なくとも1つの、好ましくは2つの、成熟CDR1配列を含んでなる、本発明の抗原認識コンストラクト(例えば、αβおよびγδTCR)である。
【0020】
本明細書で開示されるCDR変異型、特にCDR1変異型は、特に明記されない場合は、ペプチド鎖内の異なる、場合により選択的な部位における、1つまたは複数の残基の置換によって修飾され得る。このような置換は、保存的性質であり、疎水性アミノ酸が別の疎水性アミノ酸によって置換されるなど、構造および特徴の類似したアミノ酸によってアミノ酸が置換される。さらにより保存的な置換は、ロイシンのイソロイシンによる置換などの、同一または類似サイズおよび化学的性質のアミノ酸の置換である。天然起源相同タンパク質ファミリ-の配列多様性の研究では、特定のアミノ酸置換は、他よりも耐容されることが多く、これらは、元のアミノ酸とその置換物との間のサイズ、電荷、極性、および疎水性の類似性との相関を示すことが多く、これが「保存的置換」の定義の基礎である。好ましい保存的置換は、本明細書では、以下の5つのグル-プの1つの中の交換として定義される:グル-プ1-小型脂肪族、非極性またはわずかに極性の残基(Ala、Ser、Thr、Pro、Gly);グル-プ2-極性の負に帯電した残基およびそれらのアミド(Asp、Asn、Glu、Gln);グル-プ3-極性の正に帯電した残基(His、Arg、Lys);グル-プ4-大型脂肪族非極性残基(Met、Leu、Ile、Val、Cys);およびグル-プ5-大型芳香族残基(Phe、Tyr、Trp)。
【0021】
より保存的でない置換は、アラニンのイソロイシン残基による置換などの、類似した特徴を有するがサイズがいくらか異なる別のアミノ酸による置換を伴うかもしれない。
【0022】
「特異性」または「抗原特異性」または所与の抗原「に特異的な」という用語は、本明細書の用法では、抗原がHLA、好ましくはHLA A2によって提示される場合、抗原認識コンストラクトが、前記抗原に、好ましくはCOL6A3抗原に、より好ましくは高い結合活性で、特異的に結合し得ることを意味する。例えば、抗原認識コンストラクトとしてのTCRは、以下に提供されるCOL6A3エピト-プおよび抗原などの低濃度のCOL6A3抗原でパルスされたHLA A2標的細胞との共培養に際して、COL6A3に応答してTCRを発現するT細胞が、少なくとも約200pg/ml以上(例えば、250pg/ml以上、300pg/ml以上、400pg/ml以上、500pg/ml以上、600pg/ml以上、700pg/ml以上、1000pgml以上、2,000pg/ml以上、2,500pg/m以上、5,000pg/ml以上)のインタ-フェロンγ(IFN-γ)を分泌する場合に、COL6A3抗原に対する「抗原性特異性」を有すると見なされてもよい(例えば、約10-11mol/l、10-10mol/l、10-9mol/l、10-8mol/l、10-7mol/l、10-6mol/l、10-5mol/l)。代案としては、またはそれに加えて、TCRを発現する細胞が、低濃度のCOL6A3抗原でパルス処理された標的細胞との同時培養時に、IFNγの非形質導入バックグラウンドレベルの少なくとも2倍量のIFNγを分泌する場合、TCRはCOL6A3に対して「抗原特異性」を有すると見なされてもよい。上記のこのような「特異性」は、例えば、ELISAを用いて分析され得る。
【0023】
本発明の1つの代替または追加的な実施形態では、抗原認識コンストラクトは安定であり、COL6A3抗原に特異的および/または選択的に結合でき;好ましくはCOL6A3抗原は、配列番号1に示されるアミノ酸配列またはそれらの変異型を有するタンパク質エピト-プまたはペプチドである。変異型は、3つ以下、好ましくは2つ、最も好ましくは1つ以下のアミノ酸位置のアミノ酸の欠失、付加、挿入または置換である。
【0024】
「選択性」または「選択的に認識/結合する」という用語は、好ましくは1つの特異的エピト-プのみを選択的に認識しまたはそれに結合し、好ましくは別のエピト-プに対する交差反応性を示さないかまたは実質的に示さない、TCRまたは抗体などの抗原認識コンストラクトの特性を指すものと理解される。好ましくは「選択性」または「選択的に認識/結合する」は、好ましくは1つの特異的エピト-プのみを選択的に認識しまたはそれに結合し、好ましくは別のエピト-プに対する交差反応性を示さないかまたは実質的に示さない、抗原認識コンストラクト(例えばTCR)を意味し、前記エピト-プは1つのタンパク質に固有であり、その結果、抗原認識コンストラクトは、その他のエピト-プおよびその他のタンパク質に対して交差反応性を示さないかまたは実質的に示さない。
【0025】
本発明によるコンストラクトを認識する抗原は、好ましくは抗体、またはその誘導体もしくは断片、二重特異性分子、またはT細胞受容体(TCR)、またはその誘導体もしくは断片から選択される。本発明の抗体またはTCRの誘導体または断片は、好ましくは、親分子の抗原結合/認識能力、特に上で説明したようなその特異性および/または選択性を維持しなければならない。
【0026】
本発明の一実施形態では、本発明の操作TCRは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI依存性様式でCOL6A3抗原を認識できる。「MHCクラスI依存性様式」は、本明細書の用法では、TCRが、MHCクラスI分子の文脈内で、COL6A3ペプチド抗原への結合時に免疫応答を誘発することを意味する。MHCクラスI分子は、例えば、HLA-A分子などの当該技術分野で公知の任意のMHCクラスI分子であり得る。本発明の好ましい実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A2分子である。
【0027】
本発明は、コンストラクトを認識する一本鎖抗原と、コンストラクトを認識する二本鎖との双方、並びにその他の変異型分子を提供する。本発明は、特に抗原認識コンストラクトとしての操作TCR、またはその断片もしくは誘導体を提供する。操作TCRは、好ましくはヒト起源であり、ヒトTCR遺伝子座から生成され、したがってヒトTCR配列を含んでなるものとして理解される。さらに、本発明のTCRは、COL6A3ペプチド抗原を特異的かつ選択的に認識できる、親和性成熟TCRとして特徴付けられる。
【0028】
本発明の別の実施形態は、それに加えてまたは代案として、免疫応答を誘導する、上述の抗原認識コンストラクトを提供し、好ましくは免疫応答は、インタ-フェロン(IFN)γレベルの増加によって特徴付けられる。
【0029】
本発明のTCRは、一本鎖αまたはβ、またはγおよびδ、分子として、または代案としては、α鎖およびβ鎖双方、またはγ鎖およびδ鎖双方から構成される、二本鎖コンストラクトとして提供されてもよい。
【0030】
最も好ましくは、いくらかの追加的な実施形態では、本開示は、本明細書で開示される操作TCR鎖の任意の1つ、2つまたは全てのCDR1~CDR3領域を含んでなる、抗原認識コンストラクトに言及する(表1を参照されたい)。3つ、2つ、および好ましくは1つのみの修飾アミノ酸残基を有する、天然または操作CDR配列を含んでなる抗原認識コンストラクトが好ましくあってもよい。修飾アミノ酸残基は、アミノ酸の挿入、欠失または置換から選択されてもよい。最も好ましくは、3つ、2つ、好ましくは1つの修飾アミノ酸残基は、それぞれのCDR配列の最初または最後のアミノ酸残基である。修飾が置換である場合、いくつかの実施形態では、置換は保存的アミノ酸置換であることが好ましい。
【0031】
本発明のTCRは、例えば、ヒト、ラット、サル、ウサギ、ロバ、またはマウスなどの任意の哺乳類などの任意の適切な生物種に由来する、定常領域をさらに含んでなってもよい。本発明の一実施形態では、本発明のTCRは、ヒト定常領域をさらに含んでなる。いくつかの好ましい実施形態では、本発明のTCRの定常領域は、例えば、TCR発現および安定性を増加させてもよい、好ましくはマウス配列である異種配列の導入によって、わずかに修飾されてもよい。また、V領域の好ましくないアミノ酸の置換および/またはTCR Cドメイン間のジスルフィド架橋の導入、および不対システインの除去など、現状技術(例えば、独国特許第102016123893.7号明細書)から知られている、さらなる安定化変異が導入されてもよい。
【0032】
本明細書の用法では、「マウス」または「ヒト」という用語は、抗原認識コンストラクト、またはTCR、または本明細書に記載のTCRの任意の構成要素(例えば、相補性決定領域(CDR)、可変領域、定常領域、α鎖、および/またはβ鎖)に言及する場合、それぞれ、マウスまたはヒト非再構成型TCR遺伝子座に由来するTCR(またはその構成要素)を意味する。
【0033】
本発明の一実施形態では、キメラTCRが提供され、TCR鎖は複数の生物種からの配列を含んでなる。好ましくは、本発明のTCRは、α鎖のヒト可変領域と、例えばマウスTCRα鎖のマウス定常領域とを含んでなる、α鎖を含んでなってもよい。
【0034】
一実施形態では、本発明のTCRは、上記の実施形態に従ったヒト可変領域と、ヒト定常領域とを含んでなる、ヒトTCRである。
【0035】
本発明のTCRは、一本鎖TCR(scTCR)として提供されてもよい。scTCRは、第1のTCR鎖(例えば、α鎖)の可変領域のポリペプチドと、全(完全長)第2のTCR鎖(例えば、β鎖)のポリペプチドとを含んでなり得て、または逆もまた然りである。さらに、scTCRは、任意選択的に、2つ以上のポリペプチドを一緒に連結する、1つまたは複数のリンカ-を含んでなり得る。リンカ-は、例えば、本明細書に記載されるように、2つの一本鎖を一緒に結合するペプチドであり得る。また、IL-2、IL-7またはIL-15などのヒトサイトカインに融合された本発明のscTCRも提供される。
【0036】
本発明による抗原認識コンストラクトはまた、少なくとも2つのscTCR分子を含んでなる多量体複合体の形態で提供され得て、前記scTCR分子は、それぞれ、少なくとも1つのビオチン部分に融合され、前記scTCRは、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用によって相互連結され、前記多量体複合体が形成できるようにする。多量体TCRを作製するための同様のアプロ-チもまた可能であり、本開示に含まれる。本発明のscTCRを2つを超えて含んでなる、より高次の多量体複合体もまた提供される。
【0037】
本発明の目的で、TCRは、少なくとも1つのTCRαまたはγおよび/またはTCRβまたはδ可変ドメインを有する部分である。一般に、それらはTCRα可変ドメインとTCRβ可変ドメインとの双方を含んでなる。それらは、αβヘテロ二量体であってもよく、または一本鎖形態であってもよい。養子療法における使用のために、αβヘテロ二量体TCRは、例えば、細胞質ドメインと膜貫通ドメインとの双方を有する完全長鎖として形質移入されてもよい。所望ならば、導入されたジスルフィド結合は、それぞれの定常ドメインの残基間に存在してもよい。
【0038】
好ましい実施形態では、抗原認識コンストラクトは、ヒトTCR、またはその断片もしくは誘導体である。ヒトTCRまたはその断片もしくは誘導体は、対応するヒトTCR配列の50%超を含んでなるTCRである。好ましくは、TCR配列のごく一部のみが人工起源であり、またはその他の生物種に由来する。しかし、例えば、ヒト起源に由来して定常ドメインにマウス配列を有するものなどのキメラTCRが有利であることが知られている。したがって、それらの定常ドメインの細胞外部分にマウス配列を含有する、本発明によるTCRが特に好ましい。
【0039】
したがって、本発明の抗原認識コンストラクトが、ヒト白血球抗原(HLA)依存様式、好ましくはHLA-A02依存様式で、そのペプチド抗原を認識できることもまた好ましい。「HLA依存様式」という用語は、本発明の文脈では、抗原ペプチドが前記HLAによって提示される場合にのみ、抗原認識コンストラクトが抗原に結合することを意味する。
【0040】
本発明による抗原認識コンストラクトは、一実施形態では好ましくは免疫応答を誘導し、好ましくは免疫応答は、インタ-フェロン(IFN)γレベルの増加によって特徴付けられる。
【0041】
「ポリペプチド」という用語は、本明細書の用法では、オリゴペプチドを含み、1つまたは複数のペプチド結合によって連結されたアミノ酸の一本鎖を指す。本発明のポリペプチドに関して、機能的部分は、機能的部分が、好ましくは本明細書の表1で開示されるようなCOL6A3抗原に特異的に結合するという条件で、それがその一部であるTCR(またはその機能的変異型)の連続アミノ酸を含んでなる、任意の部分であり得る。「機能的部分」という用語は、TCR(またはその機能的変異型)に関して使用される場合、本発明のTCR(またはその機能的変異型)の任意の部分または断片を指し、その部分または断片は、それがその一部である(親TCRまたはその親機能的変異型)TCR(またはその機能的変異型)の生物学的活性を維持する。機能的部分は、例えば、TCR(またはその機能的変異型)の部分を包含する親TCR(またはその機能的変異型)と同様の程度に、同一程度に、またはより高い程度に、COL6A3抗原に(HLA-A2依存様式で)特異的に結合する能力を保持し、またはがんを検出し、治療し、または予防する。
【0042】
機能的部分は、部分のアミノまたはカルボキシ末端に、または双方の末端に、追加的なアミノ酸を含んでなり得て、追加的なアミノ酸は、親TCRまたはその機能的変異型のアミノ酸配列中に見いだされない。望ましくは、追加的なアミノ酸は、例えば、COL6A3抗原に特異的に結合する;および/またはがん検出し、がんを治療または予防するなどの能力を有する、機能的部分の生物学的機能に干渉しない。より望ましくは、追加的なアミノ酸は、親TCRまたはその機能的変異型の生物学的活性と比較して、生物学的活性を増強する。
【0043】
既に上述したように、本発明のTCRの結合機能性は、抗体のフレ-ムワ-クにおいて提供されてもよい。その様々な文法的形態における「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子を指すために、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原結合部位またはパラト-プを含有する分子を指すために、本明細書で使用される。このような分子は、免疫グロブリン分子の「抗原結合断片」とも称される。本発明は、本明細書に記載の抗原に特異的に結合する、抗体またはその抗原結合部分をさらに提供する。抗体は、当該技術分野で公知の任意のタイプの免疫グロブリンであり得る。例えば、抗体は、例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMなどの任意のアイソタイプであり得る。抗体は、モノクロ-ナルまたはポリクロ-ナルであり得る。抗体は、例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスタ-、ヒトなどの哺乳類から単離されおよび/または精製された抗体などの天然抗体であり得る。代案としては、抗体は、例えば、ヒト化抗体またはキメラ抗体などの遺伝子改変抗体であり得る。抗体は、単量体または重合体形態であり得る。
【0044】
本発明はまた、本明細書に記載の任意の抗体の抗原結合部分を提供する。抗原結合部分は、Fab、F(ab’)2、dsFv、scFv、二特異性抗体、および三特異性抗体などの少なくとも1つの抗原結合部位を有する任意の部分であり得る。合成ペプチドを介して軽抗体鎖のVドメインに連結される抗体重鎖の可変(V)ドメインを含んでなる切断型Fab断片からなる、一本鎖可変領域断片(scFv)抗体断片が、ル-チン組換えDNA技術技術を用いて生成され得る。同様に、ジスルフィド安定化可変領域断片(dsFv)は、組換えDNA技術によって調製され得るが、本発明の抗体断片は、これらの例示的なタイプの抗体断片に限定されない。また、抗体、またはその抗原結合部分は、例えば、放射性同位体、フルオロフォア(例えば、イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例えば、アルカリホスファタ-ゼ、西洋ワサビペルオキシダ-ゼ)、および元素粒子(例えば、金粒子)などの検出可能な標識を含んでなるように修飾され得る。
【0045】
抗体を作製する適切な方法は、当該技術分野で公知である。例えば、標準的なハイブリド-マ法は、例えば、Kohler and Milstein,Eur.J.Immunol,5,51 1-519(1976),Harlow and Lane(eds.),Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Press(1988)、およびC.A.Janeway et al.(eds.),Immunobiology,8 Ed.,Garland Publishing,New York,NY(2011))に記載される。あるいは、EBV-ハイブリド-マ法(Haskard and Archer,J.Immunol.Methods,74(2),361-67(1984)、およびRoder et al,Methods Enzymol,121,140-67(1986))、バクテリオファ-ジベクタ-発現系(例えば、Huse et al.,Science,246,1275-81(1989))を参照されたい)などのその他の方法が、当該技術分野で公知である。さらに、非ヒト動物において抗体を製造する方法は、例えば、米国特許第5,545,806号明細書、米国特許第5,569,825号明細書、および米国特許第5,714,352号明細書、および米国特許出願公開第2002/0197266号明細書に記載される。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態はまた、TCRまたはその機能的断片およびポリペプチドにも関し、それらは可溶性TCRである。本明細書の用法では、「可溶性T細胞受容体」という用語は、少なくともポリペプチド結合によって連結されたTCRα鎖およびβ鎖の可変ドメインを含んでなる、天然TCRの単鎖またはヘテロ二量体切断変異型を指す(配列番号22、24、25、および27)。TCRの可溶性変異型は、通常、少なくとも天然タンパク質の膜貫通ドメインおよび細胞質ゾルドメインを欠いており;時に、好ましくはこのような可溶性コンストラクトは、いかなる定常ドメイン配列も含まない。本発明の可溶性T細胞受容体コンストラクトは、好ましい実施形態では、適切なリンカ-配列によって連結された、本明細書で提供されるα鎖およびβ鎖可変ドメイン配列からなるコンストラクトを含んでなる。可溶性TCRα鎖およびβ鎖の可変ドメイン配列(アミノ酸または核酸)は、天然TCR中の対応する配列と同一であってもよく、または対応する天然TCR配列と比較して、可溶性TCRα鎖およびβ鎖可変ドメイン配列の変異型を含んでなってもよい。「可溶性T細胞受容体」という用語は、本明細書の用法では、変異型または非変異型の可溶性TCRα鎖およびβ鎖可変ドメイン配列を有する、可溶性TCRを包含する。変異は、可溶性TCRα鎖およびβ鎖可変ドメイン配列のフレ-ムワ-クおよび/またはCDR領域にあってもよく、アミノ酸の欠失、挿入、置換変異、ならびにアミノ酸配列を変化させない核酸配列変化を含み得るが、これに限定されるものではない。本発明の可溶性TCRは、いずれにしても、それらの親TCR分子の結合機能を保持し、または優先的に改善する。
【0047】
上記の問題は、本発明の抗原認識コンストラクトをコ-ドする核酸、または上記タンパク質もしくはポリペプチドコンストラクトのいずれかによってさらに解決される。核酸は、好ましくは、(a)本発明による抗原認識コンストラクトをコ-ドする鎖を有し;(b)(a)の鎖に相補的な鎖を有し;または(c)ストリンジェントな条件下で(a)または(b)に記載の分子にハイブリダイズする鎖を有する。ストリンジェントな条件は、特にSambrook et al,”Molecular Cloning”から当業者に知られている。それに加えて、核酸は、タンパク質に対応する核酸配列を発現するために、特に哺乳類/ヒト細胞における発現に必要なさらなる配列を任意選択的に有する。使用される核酸は、細胞内のポリペプチドに対応する核酸配列の発現を可能にするのに適したベクタ-に含まれ得る。しかし、核酸は、それら自体がそれらの細胞表面に対応タンパク質を産生するように、樹状細胞などの古典的抗原提示細胞に限定されなくてもよい抗原提示細胞を形質転換するためにも使用され得る。
【0048】
「核酸」は、本明細書の用法では、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、および「核酸分子」を含み、一般にDNAまたはRNAのポリマ-を意味し、それは、合成されたまたは天然原料から得られた(例えば、単離および/または精製された)一本鎖または二本鎖であり得て、天然、非天然または改変ヌクオチドを含有し得て、未修飾オリゴヌクレオチドのヌクレオチド間に見いだされるリン酸ジエステルの代わりに、ホスホロアミデ-ト結合またはホスホロチオエ-ト結合などの天然、非天然または改変ヌクレオチド間結合を含有し得る。
【0049】
好ましくは、本発明の核酸は組換え体である。本明細書の用法では、「組換え体」という用語は、(i)生きている細胞内で自己複製し得る核酸分子に、天然または合成核酸セグメントを連結することによって、生きている細胞の外部に構築される分子、または(ii)上記(i)に記載されるものの複製から生じる分子を指す。本明細書の目的のために、自己複製は、生体外複製または生体内複製であり得る。核酸は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、もしくはタンパク質、またはそれらの機能的部分もしくは機能的変異型のいずれかをコ-ドする、任意のヌクレオチド配列を含んでなり得る。
【0050】
さらに、本発明は、上記の本発明による核酸を含んでなるベクタ-を提供する。望ましくは、ベクタ-は、発現ベクタ-または組換え発現ベクタ-である。「組換え発現ベクタ-」という用語は、本発明の文脈では、適切な宿主細胞におけるmRNA、タンパク質またはポリペプチドの発現を可能にする、核酸コンストラクトを指す。本発明の組換え発現ベクタ-は、任意の適切な組換え発現ベクタ-であり得て、任意の適切な宿主を形質転換または形質移入するために使用され得る。適切なベクタ-としては、例えば、プラスミドおよびウイルスなどの増殖および拡張のために、または発現のために、またはその双方のために、設計されたものが挙げられる。動物発現ベクタ-の例としては、pEUK-Cl、pMAM、およびpMAMneoが挙げられる。好ましくは、組換え発現ベクタ-は、例えば、レトロウイルスベクタ-などのウイルスベクタ-である。組換え発現ベクタ-は、その中にベクタ-が導入され、その中で本発明の核酸の発現が実施されてもよい宿主細胞のタイプ(例えば、細菌、真菌、植物、または動物)に特異的な、転写および翻訳開始および終止コドンなどの制御配列を含んでなる。さらに、本発明のベクタ-は、形質転換または形質移入された宿主の選択を可能にする、1つまたは複数のマ-カ-遺伝子を含んでもよい。組換え発現ベクタ-は、天然または規範的プロモ-タ-を含んでなり得て、それは本発明のコンストラクトをコ-ドするヌクレオチド配列に、または本発明のコンストラクトをコ-ドするヌクレオチド配列と相補的なまたはそれとハイブリダイズするヌクレオチド配列に、作動可能に連結される。プロモ-タ-の選択肢としては、例えば、強いプロモ-タ-、弱いプロモ-タ-、誘導性プロモ-タ-、組織特異的プロモ-タ-、および発達特異的プロモ-タ-が挙げられる。プロモ-タ-は、非ウイルスプロモ-タ-またはウイルスプロモ-タ-であり得る。本発明の組換え発現ベクタ-は、一過性発現、安定発現のどちらか、またはその双方のために設計され得る。また、組換え発現ベクタ-は、構成的発現または誘導的発現のために作製され得る。
【0051】
本発明はまた、本発明による抗原認識コンストラクトを含んでなる宿主細胞にも関する。具体的には、本発明の宿主細胞は、本明細書中で上に記載されるような核酸またはベクタ-を含んでなる。宿主細胞は、例えば、植物、動物、真菌、または藻類などの真核細胞であり得て、または例えば、細菌または原虫など原核細胞であり得る。宿主細胞は、培養細胞または初代細胞、すなわち、例えばヒトなどの生物から直接単離された細胞であり得る。宿主細胞は、接着細胞または懸濁細胞、すなわち、懸濁状態で増殖する細胞であり得る。組換えTCR、ポリペプチド、またはタンパク質を生成するために、宿主細胞は、例えば、チャイニ-ズハムスタ-卵巣(CHO)細胞など、好ましくは哺乳類細胞である。最も好ましくは、宿主細胞はヒト細胞である。宿主細胞は任意の細胞型であり得て、任意の組織型に由来し得て、任意の発達段階であり得るものの、宿主細胞は、好ましくは、末梢血白血球(PBL)または末梢血単核細胞(PBMC)である。より好ましくは、宿主細胞はT細胞である。T細胞は、例えば、初代T細胞などの培養T細胞などの任意のT細胞;または例えば、ジャ-カット、SupT1などの培養T細胞株由来のT細胞;または哺乳類から得られたT細胞、好ましくは、ヒト患者由来のT細胞またはT細胞前駆体であり得る。哺乳類から得られた場合、T細胞は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺、またはその他の組織または体液をはじめとするが、これに限定されるものではない、多数の起源から得られ得る。T細胞はまた、富化または精製され得る。好ましくは、T細胞はヒトT細胞である。より好ましくは、T細胞はヒトから単離されたT細胞である。T細胞は、CD4陽性および/またはCD8陽性、CD4陽性のヘルパ-T細胞、例えば、Th1およびTh2細胞、CD8陽性T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤性細胞(TIL)、記憶T細胞、未感作T細胞などをはじめとするが、これに限定されるものではない、任意のT細胞型であり得て、任意の発達段階のものであり得る。好ましくは、T細胞は、CD8陽性T細胞またはCD4陽性T細胞である。
【0052】
好ましくは、本発明の宿主細胞は、リンパ球、好ましくはCD4陽性またはCD8陽性T細胞などのTリンパ球である。宿主細胞は、さらに好ましくは、COL6A3発現腫瘍細胞に特異的な腫瘍反応性T細胞である。
【0053】
本発明のさらなる一態様は、医療で使用するための本明細書で開示された抗原認識コンストラクト、核酸、ベクタ-、医薬組成物および/または宿主細胞に関する。医療における使用は、好ましい一実施形態では、悪性または良性腫瘍疾患などの腫瘍疾患の診断、予防および/または治療における使用を含む。腫瘍疾患は、例えば、前記腫瘍疾患のがんまたは腫瘍細胞における、COL6A3の発現によって特徴付けられる腫瘍疾患である。
【0054】
抗原認識コンストラクトおよびそれに由来するその他の物質の前述の医療用途に関して、治療および/または診断されるがんは、急性リンパ球性がん、急性骨髄性白血病、肺胞横紋筋肉腫、骨がん、脳がん、乳がん、肛門がん、肛門管または直腸がん、眼のがん、肝内胆管がん、関節がん、頸部がん、胆嚢または胸膜がん、鼻がん、鼻腔がん、中耳がん、口腔がん、膣がん、外陰部がん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性がん、結腸がん、食道がん、子宮頸がん、消化管カルチノイド腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、肝臓がん、肺がん、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、鼻咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、口腔咽頭がん、卵巣がん、陰茎がん、膵臓がん、腹膜がん、大網腸間膜がん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、皮膚がん、小腸がん、軟部組織がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮がん、尿管がん、および膀胱がんなどの任意のがんであり得る。好ましいがんは、子宮頸部、口腔咽頭、肛門、肛門管、肛門直腸、膣、外陰部、または陰茎のがんである。特に好ましいがんは、胃腸がんおよび胃がんなどのCOL6A3陽性がんである。
【0055】
本発明のコンストラクト、タンパク質、TCR、抗体、ポリペプチド、および核酸は、特に免疫療法、好ましくは養子T細胞療法における使用のためのものである。本発明の化合物の投与は、例えば、前記患者への本発明のT細胞の注入を伴い得る。好ましくは、このようなT細胞は、患者の自己T細胞であり、本発明の核酸または抗原認識コンストラクトで生体外形質導入されたものである。
【0056】
国際公開第2016/011210号パンフレットは、NK細胞およびT細胞をはじめとする養子療法のための操作された細胞、細胞を含有する組成物、およびそれらを対象に投与する方法を開示する。細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)および共刺激受容体などの抗原に特異的に結合する、遺伝子操作された抗原受容体を含有し得る。
【0057】
本発明の目的はまた、
a.適切な宿主細胞を提供するステップと、
b.請求項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクトをコ-ドするコ-ド配列を含んでなる、遺伝子コンストラクトを提供するステップと、
c.前記遺伝子コンストラクトを前記適切な宿主細胞に導入するステップと、
d.前記適切な宿主細胞によって前記遺伝子コンストラクトを発現させるステップとを含んでなる、細胞株を発現するCOL6A3特異的抗原認識コンストラクトを製造する方法によっても解決される。
【0058】
方法はさらに、前記適切な宿主細胞上で、前記抗原認識コンストラクトを細胞表面提示させるステップをさらに含んでなってもよい。
【0059】
その他の好ましい実施形態では、遺伝子コンストラクトは、前記コ-ド配列に作動可能に連結されたプロモ-タ-配列を含んでなる、発現コンストラクトである。
【0060】
好ましくは、前記抗原認識コンストラクトは、哺乳類起源、好ましくはヒト起源である。本発明の方法で使用するための好ましい適切な宿主細胞は、ヒト細胞などの哺乳類細胞、特にヒTリンパ球である。本発明で使用するためのT細胞は、本明細書中で上に詳述される。
【0061】
前記抗原認識コンストラクトが修飾TCRであり、前記修飾が標識または治療活性物質などの機能ドメインの付加である実施形態もまた、本発明に包含される。さらに、内在性膜貫通領域の代わりに代案の膜アンカ-ドメインなどの代案のドメインを有する、TCRが包含される。
【0062】
望ましくは、遺伝子コンストラクトを前記適切な宿主細胞に導入するための形質移入システムは、レトロウイルスベクタ-システムである。このようなシステムは、当業者に周知である。
【0063】
一実施形態における、細胞からの抗原認識コンストラクトの単離および精製の追加的方法段階、任意選択的に、T細胞中の翻訳された抗原認識コンストラクト断片の再構成もまた、本発明に含まれる。
【0064】
本発明の代案の態様では、T細胞は、本明細書中で上に記載されるように、腫瘍細胞に特異的であり高い結合活性を有するT細胞受容体(TCR)を製造する方法によって提供され、入手され、または入手可能である。このようなT細胞は、本発明の方法で使用される宿主細胞、例えば、ヒトまたは非ヒトT細胞、好ましくはヒトTCRに依存する。
【0065】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質(その機能的変異型を含む)、核酸、組換え発現ベクタ-、宿主細胞(その集団を含む)、および抗体(その抗原結合部分を含む)は、単離および/または精製され得る。「単離された」という用語は、本明細書の用法では、その天然環境から取り出されていることを意味する。そして「精製された」という用語は、本明細書の用法では、純度が上昇していることを意味し、「純度」は相対的用語であり、必ずしも絶対的な純度として解釈されるべきではない。例えば、純度は、少なくとも約50%であり得て、60%、70%o、80%、90%、95%を超え得て、または100%であり得る。
【0066】
本明細書で以後、集合的に「本発明のTCR材料」と称される、本発明の抗原認識コンストラクト、TCR、ポリペプチド、タンパク質(それらの機能的変異型を含む)、核酸、組換え発現ベクタ-、宿主細胞(それらの集団を含む)、および抗体(その抗原結合部分を含む)は、医薬組成物などの組成物に調合され得る。この点において、本発明は、本明細書に記載の抗原認識コンストラクト、TCR、ポリペプチド、タンパク質、機能的部分、機能的変異型、核酸、発現ベクタ-、宿主細胞(それらの集団を含む)、および抗体(それらの抗原結合部分を含む)のいずれかと、薬学的に許容可能な担体、賦形剤および/または安定剤とを含んでなる、医薬組成物を提供する。本発明のTCR材料のいずれかを含有する本発明の医薬組成物は、例えば、1つのポリペプチドと1つの核酸などの2つ以上の本発明のTCR材料、または2つ以上の異なるTCR(それらの機能的部分および機能的変異型を含む)を含んでなり得る。代案としては、医薬組成物は、例えば、アスパラギナ-ゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサ-ト、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどの化学療法剤のような別の薬学的に活性な薬剤または薬物と組み合わされた、発明のTCR材料を含んでなり得る。好ましくは、担体は、薬学的に許容可能な担体である。医薬組成物に関して、担体は、検討中の特定の本発明のTCR材料のために従来使用されているもののいずれかであり得る。このような薬学的に許容可能な担体は当業者に周知であり、一般に容易に入手可能である。薬学的に許容可能な担体は、使用条件下で有害な副作用または毒性がないものであることが好ましい。
【0067】
したがって、本明細書に記載される本発明の任意の生成物および本発明のTCR材料、具体的には任意のタンパク質、核酸または宿主細胞を含んでなる医薬組成物もまた提供される。好ましい実施形態では、医薬組成物は、免疫療法、好ましくは養子細胞療法のためのものである。
【0068】
好ましくは、本発明のTCR材料は、例えば、静脈内注射などの注射によって投与される。本発明のTCR材料が本発明のTCR(またはその機能的変異型)を発現する宿主細胞である場合、注射用細胞のための薬学的に許容可能な担体は、例えば、生理食塩水(水中の約0.90%w/vのNaCl、水中の約300m Osm/LのNaCl、または水1リットルあたり約9.0gのNaCl)、NORMOSOL R電解質溶液(Abbott,Chicago,IL)、PLASMA-LYTE A(Baxter,Deerfield,IL)、水中の約5%デキストロ-ス、または乳酸リンゲル液などの任意の等張性担体を含んでもよい。一実施形態では、薬学的に許容可能な担体には、ヒト血清アルブミンが添加されている。
【0069】
本発明の目的のために、投与される本発明のTCR材料の量または用量(例えば、本発明のTCR材料が1つまたは複数の細胞である場合は細胞数)は、妥当な時間枠にわたり対象または動物において、例えば、治療的または予防的応答などの影響を及ぼすのに十分であってもよい。例えば、本発明のTCR材料の用量は、投与時から例えば12~24時間以上などの約2時間以上の期間において、がん抗原に結合し、またはがんを検出、治療もしくは予防するのに十分であるべきである。特定の実施形態では、期間はさらに長くなり得る。用量は、特定の本発明のTCR材料の有効性、および動物(例えば、ヒト)の病状、ならびに治療される動物(例えば、ヒト)の体重によって決定されるであろう。
【0070】
本発明の医薬組成物、TCR(それらの機能的変異型を含む)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクタ-、宿主細胞、または細胞集団は、がんまたはCOL6A3陽性前がんを治療または予防する方法で使用され得ることが検討される。本発明のTCR(およびその機能的変異型)は、COL6A3抗原と特異的に結合すると考えられ、その結果、TCR(または関連する発明のポリペプチドまたはタンパク質およびその機能的変異型)は、細胞によって発現されると、本発明のCOL6A3抗原を発現する標的細胞に対する免疫応答を媒介できる。この点において、本発明は、哺乳類において病状を治療または予防するのに有効な量で、本明細書に記載の医薬組成物、特にTCR(およびそれらの機能的変異型)である抗原認識コンストラクト、ポリペプチド、またはタンパク質;本明細書に記載のTCR(およびそれらの機能的変異型)とポリペプチドとタンパク質とのいずれかをコ-ドするヌクレオチド配列を含んでなる、任意の核酸または組換え発現ベクタ-;または本明細書に記載の本発明のコンストラクト(およびそれらの機能的変異型)またはポリペプチドまたはタンパク質のいずれかをコ-ドする組換えベクタ-を含んでなる、任意の宿主細胞または細胞集団のいずれかを哺乳類に投与するステップを含んでなる、哺乳類における病状、特にがんを治療または予防する方法を提供し、病状は、がん、好ましくはCOL6A3陽性がんである。
【0071】
本発明で有用な薬学的に許容可能な担体または希釈剤の例としては、SPGA、炭水化物(例えば、ソルビト-ル、マンニト-ル、デンプン、スクロ-ス、グルコ-ス、デキストラン)、アルブミンまたはカゼインなどのタンパク質、ウシ血清または脱脂乳などのタンパク質含有作用物質などの安定剤、および緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液)が挙げられる。
【0072】
「治療する」および「予防する」という用語、ならびにそれから派生した用語は、本明細書の用法では、必ずしも100%または完全な治療または予防を暗示しない。むしろ、当業者が潜在的利益または治療効果を有すると認識する、様々な程度の治療または予防がある。この点において、本発明の方法は、哺乳類における病状の任意の量の任意のレベルの治療または予防を提供し得る。さらに、本発明の方法によって提供される治療または予防は、例えば、治療または予防されるがんなどの1つまたは複数の病状、または病状の症状の治療または予防を含み得る。例えば、治療または予防としては、腫瘍退縮の促進が挙げられる。また、本明細書の目的のために、「予防」は、病状または症状またはその病状の発生を遅延させることを包含し得る。
【0073】
本発明はまた、少なくとも1つの化学療法剤および/または放射線療法を組み合わせて、本明細書のTCR、核酸、または宿主細胞を投与するステップを含んでなる、がんを治療する方法にも関する。
【0074】
a)細胞を前記対象から単離するステップと;
b)細胞を本発明の抗原認識コンストラクトをコ-ドする少なくとも1つのベクタ-で形質転換して、形質転換細胞を生成するステップと;
c)形質転換細胞を増殖させて、複数の形質転換細胞を生成するステップと;
d)複数の形質転換細胞を前記対象に投与するステップと
を含んでなる、それを必要とする対象においてがんを治療する方法もまた提供される。
【0075】
a)細胞を健常ドナ-から単離するステップと;
b)細胞を本発明の抗原認識コンストラクトをコ-ドするベクタ-で形質転換して、形質転換細胞を生成するステップと;
c)形質転換細胞を増殖させて、複数の形質転換細胞を生成するステップと;
d)複数の形質転換細胞を前記対象に投与するステップと
を含んでなる、それを必要とする対象においてがんを治療する方法もまた提供される。
【0076】
a)生物学的サンプルを本明細書の抗原認識コンストラクトに接触させるステップと;
b)抗原認識コンストラクトの生物学的サンプルへの結合を検出するステップと
を含んでなる、生物学的サンプルにおいてがんを検出する方法もまた提供される。
【0077】
いくつかの実施形態では、がんを検出する方法は、生体外、生体内または原位置で実施される。
【0078】
哺乳類において、病状の存在を検出する方法もまた提供される。方法は、(i)哺乳類由来の1つまたは複数の細胞を含んでなるサンプルを本発明のTCR(およびそれらの機能的変異型)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクタ-、宿主細胞、細胞集団、抗体、またはその抗原結合部分、または本明細書に記載される医薬組成物のいずれかに接触させ、それによって複合体を形成するステップと、(ii)複合体を検出するステップとを含んでなり、複合体の検出は、哺乳類における病状の存在の指標となり、病状は、COL6A3陽性悪性腫瘍などのがんである。
【0079】
哺乳類における病状を検出する本発明の方法に関して、細胞サンプルは、全細胞、その溶解産物、または例えば、核もしくは細胞質画分、全タンパク質画分、または核酸画分などのホ-ルセル溶解産物の画分を含んでなる、サンプルであり得る。
【0080】
本発明の検出する目的のために、接触は哺乳類に関して生体外または生体内で行われ得る。好ましくは、接触は生体外である。
【0081】
また、複合体の検出は、当該技術分野で公知の多数の様式を通じて行われ得る。例えば、本明細書に記載される、本発明の抗原認識コンストラクト(およびそれらの機能的変異型)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクタ-、宿主細胞、細胞集団、または抗体またはTCR、またはその抗原結合部分は、例えば、放射性同位体、フルオロフォア(例えば、イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例えば、アルカリホスファタ-ゼ、西洋ワサビペルオキシダ-ゼ)、および元素粒子(例えば、金粒子)などの検出可能な標識で標識され得る。
【0082】
宿主細胞または細胞集団が投与される本発明の方法の目的のために、細胞は哺乳類にとって同種異系または自己由来の細胞であり得る。好ましくは、細胞は哺乳類にとって自己由来である。
【0083】
本発明のTCR材料の前述の医療用途に関して、治療および/または診断されるがんは、急性リンパ球性がん、急性骨髄性白血病、肺胞横紋筋肉腫、骨がん、脳がん、乳がん、肛門がん、肛門管または直腸がん、眼のがん、肝内胆管がん、関節がん、頸部がん、胆嚢または胸膜がん、鼻がん、鼻腔がん、中耳がん、口腔がん、膣がん、外陰部がん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性がん、結腸がん、食道がん、子宮頸がん、消化管カルチノイド腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、肝臓がん、肺がん、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、鼻咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、口腔咽頭がん、卵巣がん、陰茎がん、膵臓がん、腹膜がん、大網腸間膜がん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、皮膚がん、小腸がん、軟部組織がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮がん、尿管がん、および膀胱がんのいずれかなどの任意のがんであり得る。好ましいがんは、子宮頸部、口腔咽頭、肛門、肛門管、肛門直腸、膣、外陰部、または陰茎のがんである。特に好ましいがんは、胃腸がんまたは胃がんなどのCOL6A3陽性がんである。
【0084】
一般に、本発明は、本発明によって開示されるような抗原認識コンストラクト、核酸、ベクタ-、医薬組成物および/または宿主細胞を投与するステップを含んでなる、腫瘍または腫瘍疾患に罹患している対象を治療する方法を提供する。好ましくは、対象は、このような治療を必要とする対象である。好ましい実施形態では対象は、COL6A3陽性の腫瘍または腫瘍疾患に罹患している哺乳類対象、好ましくはヒト患者である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
添付の図面および配列を参照しながら、本発明を以下の実施例においてさらに説明するが、それでもなおそれらに限定されるものではない。本発明の目的で、本明細書で引用される全ての参考文献は、その内容全体が参照により援用される。図面および配列において:
図1】酵母表面ディスプレイを介した、TCRの安定化Vα/Vβ単鎖TCR(scTv)への変換を示す。形質転換されたサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)EBY100の表面に提示されたScTv分子は、FITC標識抗Vbeta1抗体およびPE標識HLA-A02/COL6A3-002四量体で染色された。未改変scTvR4P3F9(左パネル、配列番号22)は、ランダム変異scTvライブラリの選択から得られた、scTv足場(右パネル)を安定化する単一点変異を有するscTvクロ-ンと比較される。
図2】酵母表面ディスプレイを介したscTv親和性成熟を示す。親和性成熟CDR1βありおよびなしの安定化scTv分子は、COL6A3-002(配列番号1)を含有するHLA-A02四量体で染色され、COL6A3-002と高い配列類似性を有する9つのペプチド(配列番号28~36)を含有するHLA-A02四量体の混合物で対比染色された。非成熟β鎖CDR1配列RSGDLS(配列番号13)を有する安定化scTv(配列番号27)は、親和性成熟β鎖CDR1配列AMDHPY(配列番号40)およびARWHRN(配列番号39)を有するscTvクロ-ンと比較される。
図3-1】抗CD3 Fab-scTv R4P3F9S融合変異型75-1~75-25のサイズ排除クロマトグラフィ-溶出プロファイルを示す。
図3-2】同上
図4-1】バイオレイヤ-干渉法によって測定された、抗CD3 Fab-scTv R4P3F9S融合変異型75-1~75-25のHLA-A02/COL6A3-002結合動態を示す。HLA-A02/COL6A3-002の分析濃度が示される。
図4-2】同上
図5-1】バイオレイヤ-干渉法(BLI)を通じて測定された、抗CD3 Fab-scTv R4P3F9S融合変異型75-1~75-25の結合解析を示す。示された類似ペプチドとの複合体中の1μMのHLA-A02が分析された。
図5-2】同上
図6】異なる抗CD3 Fab-scTv R4P3F9S融合変異型のHLA-A02/COL6A3-002とHLA-A02/COL6A1-001(配列番号30)との結合動態の比較を示す。Fab-scTv分子の分析濃度が示される。
図7】ヒトCD8T細胞を発現する成熟R4P3F9 TCR変異型のPE標識HLA-A02/COL6A3-002四量体での染色を示す。対照の目的で、TCRなし(モック)またはNYESO1-001に特異的な1G4 TCRが発現され、PE標識HLA-A02/NYESO1-001四量体で染色され、使用された。
図8】COL6A3-002に応答してヒトCD8T細胞を発現する、成熟R4P3F9 TCR変異型のIFN-γ放出を示す。対照の目的で、TCRなし(モック)またはNYESO1-001に特異的な1G4 TCRが発現された。IFN-γ放出は、電気穿孔されたCD8T細胞と、COL6A3-002の連続希釈液が負荷されたT2細胞との共培養後に、ELISAによって判定された。
図9-1】COL6A3-002および異なる類似ペプチドに応答してヒトCD8T細胞を発現する、成熟R4P3F9 TCR変異型のIFN-γ放出を示す。対照の目的で、TCRなし(モック)またはNYESO1-001に特異的な1G4 TCRが発現された。IFN-γ放出は、電気穿孔されたCD8T細胞と、10μMのCOL6A3-002または同様のペプチドが負荷されたT2細胞との共培養後に、ELISAによって判定された。
図9-2】同上
図9-3】同上
図9-4】同上
図10】ヒトCD8T細胞を発現する成熟R4P3F9 TCR変異型のPE標識ペプチドHLA-A02四量体での染色を示す。対照の目的で、TCRなし(モック)またはNYESO1-001に特異的な1G4 TCRが発現され、PE標識HLA-A02/NYESO1-001四量体で染色され、使用された。
図11】COL6A3-002またはCOL6A1-001に応答してヒトCD8T細胞を発現する、成熟R4P3F9 TCR変異型のIFN-γ放出を示す。対照の目的で、TCRなし(モック)またはNYESO1-001に特異的な1G4 TCRが発現された。IFN-γ放出は、電気穿孔されたCD8T細胞と、COL6A3-002またはCOL6A1-001の連続希釈液が負荷されたT2細胞との共培養後に、ELISAによって判定された。
図12】異なる腫瘍細胞株、SF539、SW982、およびHs840との共培養時における、R4P3F9 TCR変異型を発現する初代ヒトCD8T細胞のIFN-γ放出を示す。T細胞は、異なるレベルで標的ペプチドを提示する。MCF-7細胞は、標的ペプチドを提示しない。対照として、外因性TCRを含まないエフェクタ-細胞が、目的のTCRの細胞と共に分析された。IFN-γ放出は、ELISAによって判定された。スケ-ル外のデ-タ点をマ-クする。
【0086】
表1: 本発明のペプチド配列(位置はIMGT番号付けによる:
(Francois Ehrenmann, Patrice Duroux, Chantal Ginestoux; タンパク質提示: ヒト (Homo sapiens) TRAV; IMGT Repertoire. IMGT登録商標, the international ImMunoGenetics information system登録商標 http://www.imgt.org.; 作成日: 16/03/2011. バ-ジョン: 03/06/2016; Francois Ehrenmann, Patrice Duroux, Chantal Ginestoux; タンパク質提示: ヒト (Homo sapiens) TRBV; IMGT Repertoire. IMGT登録商標, the international ImMunoGenetics information system登録商標 http://www.imgt.org.; 作成日: 16/03/2011. バ-ジョン: 03/06/2016)。)
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【実施例0087】
がん抗原に対する天然細胞受容体(TCR)は、ウイルス抗原を標的化するTCRと比較した場合に、親和性がより低いことが多く、これは腫瘍の免疫逃避の1つの可能な説明であってもよい(Aleksic et al.2012)。したがって、養子細胞療法における抗原認識コンストラクトとしての使用、または可溶性アプロ-チの認識モジュ-ルとしての使用、すなわち二重特異性分子を使用するために設計された、より親和性の高いTCR変異型を有することが望ましい(Hickman et al.2016)。したがって、本発明は、約60μMの親和性で腫瘍関連ペプチドCOL6A3-002(配列番号1)を標的化する、天然に存在するT細胞受容体R4P3F9(配列番号2および10)の修飾および最適化に関する(独国特許第102016115246号明細書)。
【0088】
実施例1:安定したscTvの生成
本発明では、酵母表面ディスプレイを介した成熟のために、可変α(配列番号4)およびβ(配列番号12)ドメインと、それぞれの定常ドメイン(配列番号9および17)および適切なグリシン-セリンリンカ-配列の付属肢との組み合わせによって、以前に調査されたTCR R4P3F9(配列番号2および10)を単鎖TCRコンストラクト(scTv、配列番号22)に変換した。pCT302に基づくリ-ダ-配列とAga2p酵母接合タンパク質(配列番号20)とを含有する酵母ディスプレイベクタ-と共に、対応する配列のDNAを合成し、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)EBY100(MATa AGA1::GAL1-AGA1::URA3 ura3-52 trp1 leu2-delta200 his3-delta200 pep4::HIS3 prbd1.6R can1 GAL)(ATCC(登録商標)MYA-4941(商標))に形質転換した(Boder et al.2000)。酵母における相同組換え後に得られた融合タンパク質(配列番号19)は、目的のタンパク質の提示に関与する、Aga2pタンパク質のN末端のリ-ダ-ペプチド(Boder et al.1997)と、発現制御のためのリンカ-配列(配列番号21および23)と、目的のタンパク質、すなわちscTvR4P3F9(配列番号22)またはその変異型を含む短いペプチドタグとを含有する独国特許第102016121899号明細書に記載されるように形質転換を実施し、ライブラリ-あたり最大10の酵母クロ-ンを得た。ライブラリは、scTv R4P3F9の全遺伝子配列に広がるランダム変異PCRアプロ-チを通じて生成した。
【0089】
HLA-A02の文脈でCOL6A3-002に選択的に結合するscTvを最も良く発現する酵母クロ-ンの選択過程は、本質的にSmithet al 2015に記載されるように実施した。酵母表面に提示されるscTv R4P3F9変異型の高い発現と正しい立体構造を確認するために、HLA-A02/COL6A3-002四量体と共に、抗Vβ1(Beckman Coulter、クロ-ンBL37.2)抗体を使用した(図1)。酵母表面ディスプレイによるscTv変換によって、細胞表面でのscTvの適切な提示のための元のCDR配列、すなわちどちらもβ鎖上に位置するbQ43K(配列番号24)およびbL72S(配列番号25)と共に、フレ-ムワ-ク領域内の2つの重要な安定化変異を明らかにした。さらに、安定成熟中に、α鎖のCDR1の位置29(配列番号5)がグリシンからアルギニンに変換され(CDRa1変異体1、配列番号26)、それは四量体結合の改善をもたらした。
【0090】
実施例2:安定化scTvの親和性成熟
HLA-A02/COL6A3-002への結合親和性がより高いscTv分子を生成するために、安定化変異aG29R、bQ43K、およびbL72Sを発現する、以前に同定された安定化scTv R4P3F9Sスキャフォ-ルド(配列番号27)を使用して、CDRb1(配列番号13)を変性させた。CDRb1残基は、本質的に以前記載されたように(Smith et al.,2015)、縮重DNAオリゴプライマ-を使用することによってランダム化した。得られたDNAライブラリ-は、実施例1に記載されるように形質転換した。scTv結合選択性を保持するために、COL6A3-002ペプチドとの高い配列類似性を示す正常組織由来のペプチド(配列番号28~36)を含んでなるHLA-A02四量体に対して、ネガティブ選択を採用した。
【0091】
親和性が強化された選択的scTv R4P3F9S変異型を選択するために、HLA-A02/COL6A3-002四量体の漸減濃度を各選別ラウンドのために使用した。3回の選択ラウンドの後、単一のscTvクロ-ンを単離して配列決定し、様々な親和性成熟CDRb1配列(配列番号37~49)をもたらした。成熟CDRb1配列を有するscTvでは、COL6A3-002結合の強い改善が示され得た一方で、9つの類似ペプチドの結合が観察されなかったことから、COL6A3-002結合の選択性は保持された(図2)。
【0092】
実施例3:二重特異性抗体-scTv融合タンパク質の生成
HLA-A02/COL6A3-002に対する安定化および親和性成熟scTvは、CD3に対する抗体部分と融合して発現され得て、それらの天然特異性とは無関係に、腫瘍特異的再標的化およびT細胞活性化を可能にする。本発明者らは、scTv R4P3F9S変異型(配列番号50、64、65、および66)および抗CD3Fab(UCHT1)軽鎖(配列番号52)に融合した、抗CD3Fab(UCHT1)重鎖(配列番号51)を含んでなる、二重特異性抗体-TCR融合タンパク質を作製した。得られたFab-scTv融合タンパク質は、およそ75kDaの分子量を有する。scTv R4P3F9Sα鎖(配列番号5および26)およびβ鎖(配列番号13および37~49)の異なるCDR1配列に基づいて、製造業者によって推奨されるように、異なるFab-scTv融合変異型(75-1~75-25、表2)を一過性に形質移入されたExpiCHO細胞において発現させた。タンパク質は、プロテインLおよびサイズ排除クロマトグラフィ-によって精製した。全ての融合変異型は、80μgから1mgに至る収量(表2)で、サイズ排除クロマトグラフィ-によって分析された予想サイズの均一に形成されたヘテロ二量体(図3)で生成し得た。
【0093】
【表2】
【0094】
実施例4:COL6A3-002および類似ペプチドに結合するFab-scTv融合タンパク質
COL6A3-002または異なる類似ペプチドを有するHLA-A02モノマ-に対する抗CD3-scTv R4P3F9S融合タンパク質の結合親和性をバイオレイヤ-干渉法によって測定した。製造業者によって推奨される設定を使用して、Octet RED384システムで測定を行った。簡潔に述べると、HLA-A02/COL6A3-002の連続希釈液を分析する前に、精製されたFab-scTv分子をバイオセンサ-(FAB2G)に負荷した。野生型CDRa1および野生型CDRb1を含んでなる変異型75-1および75-24と比較して、成熟CDRa1および/またはCDRb1配列を有するFab-scTv変異型では、最大40倍の結合親和性の増加が観察された(表3、図4)。HLA-A02/COL6A3-002への結合の選択性を評価するために、それぞれがHLA-A02と複合体形成した1μM類似ペプチド(配列番号28~36)への結合について、FAB2Gバイオセンサ-上に負荷された精製Fab-scTv分子をスクリ-ニングした。成熟CDRa1(配列番号26)を含有するFab-scTv変異型のほとんどによって結合されたHLA-A02/COL6A1-001(配列番号30)を除き、Fab-scTv変異型は、高い結合選択性を主張する類似ペプチドへの結合(図5)を示さなかった。一部のFab-scTv変異型では、ビオチン化ペプチド-HLA複合体をバイオセンサ-(SA)上に負荷し、Fab-scTv変異型の希釈系列を分析することによって、HLA-A02/COL6A3-002とHLA-A02/COL6A1-001の結合の間の治療濃度域を調査した。成熟CDRa1(配列番号26)および野生型CDRb1(配列番号13)配列を含んでなる変異型75-10が、HLA-A02/COL6A1-001よりもHLA-A02/COL6A3-002に対する結合親和性が8倍増加したことを示した一方で、成熟CDRb1(配列番号39)を含んでなるFab-scTv変異型75-13について、治療濃度域の改善を主張する、結合親和性の最大57倍の増加が検出された(表4、図6)。
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
実施例5:細胞発現のための親和性成熟TCRの使用
腫瘍特異的ペプチドHLAを認識するTCRを発現するためのT細胞の修飾は、T細胞をがん細胞にリダイレクトする有望な代替法である。成熟CDR1配列の使用によって、HLA-A02/COL6A3-002に対する細胞結合TCRを改善できることから、同定されたCDRa1およびCDRb1変異体配列を親TCRR4P3F9(配列番号2および10)上にグラフトした。得られた変異体TCR変異型(C-1からC-18、表5)は、PCR増幅DNAコンストラクトの生体外転写によって生成されたそれぞれのmRNAの電気穿孔後に、ヒトCD8T細胞中で発現させた。対照の目的で、NYESO1-001ペプチド(配列番号61)に対する1G4 TCR(配列番号53および57)を発現させた。RNA電気穿孔されたCD8T細胞を一晩インキュベ-トした後に、PE標識HLA-A02/COL6A3-002四量体またはHLA-A02/NYESO1-001四量体で染色することによって、導入されたTCR変異型の発現を分析した。親TCRR4P3F9変異型C-1は、HLA-A02/COL6A3-002四量体で最小限の染色のみを示したが、成熟CDRa1および/またはCDRb1を有するR4P3F9 TCR変異型C-2~C-18は、四量体染色の増加を示した(図7)。COL6A3-002の希釈系列(配列番号1)または10μMのCOL6A3-002および類似ペプチド(配列番号28~36)のいずれかが負荷された、T2細胞との共培養(20,000細胞/ウェル)に際して放出されたIFN-γのレベルを判定することによって、異なる成熟R4P3F9TCR変異型を発現するCD8T細胞(20,000細胞/ウェル)の機能的活性化を調査した。親R4P3F9 TCR変異型C-1と比較して、成熟TCR変異型C-2~C-18はIFN-γ放出の増加を示し、より低いペプチド濃度で、既に最大濃度に達した(図8)。予測されたように、TCRを発現しないT細胞またはNYESO1-001に特異的な1G4対照TCRでは、IFN-γ放出は観察されなかった。成熟R4P3F9 TCR変異型のCOL6A3-002認識の選択性を分析するために、異なる類似ペプチド(配列番号28~36)が負荷されたT2細胞に応答したIFN-γ放出を分析し、成熟R4P3F9 TCR変異型に対する異なる選択性プロファイルを明らかにした。最も興味深いことに、同一成熟CDRb1(配列番号40)を含んでなるTCR変異型C-5(配列番号62および2)およびC-14(配列番号62および63)は、COL6A1-001またはその他の類似ペプチド(図9)に対するいかなる交差反応性も示さず、親和性成熟R4P3F9TCR変異型C-5およびC14を細胞TCRベ-スの腫瘍標的化の最も有望な候補にする。
【0098】
【表5】
【0099】
実施例6:細胞TCR変異型のCOL6A3-002およびCOL6A1-001認識のウィンドウ
R4P3F9変異型の細胞発現および分析は、上述したように実施した。先の実験(図7)に従って、R4P3F9 TCR変異型C-2~C-18を発現するT細胞のPE標識HLA-A02/COL6A3-002四量体での染色は、親TCR C-1と比較して増加した。さらに、TCR変異型C-12およびC-17は、HLA-A02/COL6A1-001への結合を示した(図10)。成熟R4P3F9変異型の発現によって、COL6A3-002(配列番号1)の希釈系列が負荷されたT2細胞に応答した、CD8T細胞の機能的活性化が改善し、親TCRC-1と比較して5~90倍低いEC50値に達した(図11、表6)。最も低いEC50値は、変異型C-14で認められた。この場合も、同一成熟CDRb1(配列番号40)を含んでなるTCR変異型C-5(配列番号62および2)およびC-14(配列番号62および63)は、COL6A1-001に対して交差反応性を示さなかった一方で、その他の変異型は、EC50ウィンドウ(COL6A3-002対COL6A1-001)で5倍の強力な認識を示した。
【0100】
【表6】
【0101】
実施例7:腫瘍細胞株に対する成熟R4P3F9変異型C-5およびC-14の有効性
R4P3F9変異型の細胞発現および分析は、上述したように実施した。
【0102】
成熟R4P3F9変異型C-5(配列番号62および2)およびC-14(配列番号62および63)の発現は、親TCR C-1(図12)と比較して、COL6A3-002(配列番号1)提示腫瘍細胞株に応答した、CD8T細胞の機能的活性化を改善した。この試験中に使用された腫瘍細胞株は、異なる量の標的ペプチドを提示する。SF539細胞は1細胞当たり約4000コピ-のHLA-A02/COL6A3-002を保有し、SW982細胞は1細胞当たり約460コピ-を保有する。親TCR C-1が、標的陽性細胞株との共培養時に強力なT細胞活性化を媒介しなかった一方で、TCR変異型C-14は、TCR変異型C-5よりもさらに強力な機能的活性化の改善を示した。これらのデ-タは、TCR C-1からC-5への、そしてC-14へのEC50改善と一致する(表6)。標的陰性腫瘍細胞株MCF-7は、これらのTCRのいずれによっても認識されななかった。
【0103】
参考文献:
Aleksic et al. 2012: Different affinity windows for virus and cancer-specific T-cell receptors-implications for therapeutic strategies, Eur J Immunol. 2012 Dec;42(12):3174-9;
Hickman et al. 2016: Antigen Selection for Enhanced Affinity T-Cell Receptor-Based Cancer Therapies, J Biomol Screen. 2016 Sep;21(8):769-85;
Boder and Wittrup 2000: Yeast surface display for directed evolution of protein expression, affinity, and stability, Methods Enzymol. 2000;328:430-44;
Boder and Wittrup 1997: Yeast surface display for screening combinatorial polypeptide libraries, Nat Biotechnol. 1997 Jun;15(6):553-7;
Smith et al. 2015: T Cell Receptor Engineering and Analysis Using the Yeast Display Platform, Methods Mol Biol. 2015;1319:95-141;
DE102016121899.5
DE102016115246
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図10
図11
図12
【配列表】
2024156654000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-07-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書または図面に記載された発明。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のドメインと第2のドメインを含む抗原認識コンストラクトであって、該第1および該第2のドメインはそれぞれ3つの相補性決定領域(CDR)を含むものであり、該第1のドメインは配列番号6(CDRa2)および7(CDRa3)に記載のアミノ酸配列を含み、および該第2のドメインは配列番号14(CDRb2)および15(CDRb3)に記載のアミノ酸配列を含み、
(a)該第1のドメインのCDRa1は配列番号26に示されるものであり、および該第2のドメインのCDRb1は配列番号40に示されるものであり、ここで、抗原認識コンストラクトが、配列番号63に含まれるTCRアルファ可変ドメインおよび配列番号62に含まれるTCRベータ可変ドメインを含む;または
(b)該第1のドメインのCDRa1は配列番号5に示されるものであり、および該第2のドメインのCDRb1は配列番号40に示されるものであり、ここで、抗原認識コンストラクトが、配列番号2に含まれるTCRアルファ可変ドメインおよび配列番号62に記載のTCRベータ可変ドメインを含む;
ここで、前記抗原認識コンストラクトは、COL6A3抗原ペプチドに特異的および/または選択的に結合するT細胞受容体(TCR)、または該TCRの誘導体または該TCRの断片であり、該誘導体または断片はCOL6A3抗原ペプチドに特異的および/または選択的に結合する親分子の抗原結合能力および/または抗原認識能力を保持し、ここでTCRの誘導体が二重特異性分子であり、かつ親分子の配列の50%超を含む、抗原認識コンストラクト。
【請求項2】
前記抗原認識コンストラクトが安定であり、MHC依存性の結合様式で、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含んでなるCOL6A3抗原ペプチドに、特異的および/または選択的に結合できる、請求項1に記載の抗原認識コンストラクト。
【請求項3】
(i)請求項1(a)に記載の抗原認識コンストラクトが、配列番号8のTCRアルファ定常ドメインおよび配列番号16のTCRベータ定常ドメインをさらに含む;
(ii)請求項1(b)に記載の抗原認識コンストラクトが、配列番号8のTCRアルファ定常ドメインおよび配列番号16のTCRベータ定常ドメインをさらに含む、
請求項1または2に記載の抗原認識コンストラクト。
【請求項4】
前記第1のドメインがTCRαまたはγ鎖の一部であり、および/または前記第2のドメインがTCRβまたはδ鎖の一部である、請求項1-3のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト。
【請求項5】
抗原認識コンストラクトは一本鎖抗原認識コンストラクトである、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、または、
抗原認識コンストラクトは一本鎖抗原認識コンストラクトであって、該一本鎖抗原認識コンストラクトが一本鎖TCRである、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト。
【請求項6】
抗原認識コンストラクトは可溶性TCRである、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクトをコードする核酸。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸を含む、核酸ベクター。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、請求項7に記載の核酸または請求項8に記載のベクターを含んでなる組換え宿主細胞、または、
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、請求項7に記載の核酸または請求項8に記載のベクターを含んでなる組換え宿主細胞であって、前記宿主細胞は、哺乳類細胞またはヒト細胞である、組換え宿主細胞。
【請求項10】
宿主細胞が、
a)リンパ球、Tリンパ球もしくはTリンパ球始原細胞、または、CD4+もしくはCD8+T細胞、または
b)非リンパ球
である、請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載のベクター、または請求項9もしくは10に記載の宿主細胞、および薬学的に許容可能な担体、希釈剤、安定剤および/または賦形剤を含んでなる、医薬組成物。
【請求項12】
a.適切な宿主細胞を提供するステップと、
b.請求項1~6のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクトをコードするコード配列を含んでなる、遺伝子コンストラクトを提供するステップと、
c.前記遺伝子コンストラクトを前記適切な宿主細胞に導入するステップと、
d.前記適切な宿主細胞によって前記遺伝子コンストラクトを発現させるステップとを含んでなる、請求項1~6のいずれか1項に記載のCOL6A3特異的抗原認識コンストラクトを生成する方法。
【請求項13】
前記抗原認識コンストラクトを前記適切な宿主細胞から単離し精製するステップをさらに含んでなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抗原認識コンストラクトをT細胞中で再構成するステップとをさらに含んでなる、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
医薬の製造のための、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載のベクター、請求項9もしくは10に記載の宿主細胞、または請求項11に記載の医薬組成物の使用。
【請求項16】
増殖性疾患の診断、予防、および/または治療のための医薬の製造のための、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、請求項7に記載の核酸または請求項8に記載のベクター、請求項9または10に記載の宿主細胞、または請求項11に記載の医薬組成物の使用。
【請求項17】
前記増殖性疾患はがんである、請求項16に記載の使用、または、
前記増殖性疾患はがんであり、該がんは、COL6A3が過剰発現され、変異し、および/またはCOL6A3由来の腫瘍関連抗原が提示されるがんから選択される、請求項16に記載の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本明細書は、開示されるようなCOL6Aエピト-プに特異的に結合する、新規操作COL6A3 TCR、それぞれの組換えTCRコンストラクト、核酸、ベクタ-、および宿主細胞と;がんの治療においてこのような分子を使用する方法とを提供することによって、この必要性に対処する。例えば、本開示は以下を提供する。
[項1]
配列番号5(CDRa1)、6(CDRa2)、および7(CDRa3)に記載のアミノ酸配列を含んでなる、3つの相補性決定領域(CDR)を含んでなる第1のドメインと、配列番号13(CDRb1)、14(CDRb2)、および15(CDRb3)に記載のアミノ酸配列を含んでなる、3つの相補性決定領域(CDR)を含んでなる第2のドメインとを含んでなる、抗原認識コンストラクトであって、前記相補性決定領域の少なくとも1つが、
a)配列番号26(CDRa1変異体1)および配列番号37~49(CDRb1-mut1~CDRb1-mut13)、および
b)配列番号26および配列番号37~49の少なくとも1つを含んでなる変異配列からなる群から選択されるアミノ酸配列
の群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも1つで置換され、前記少なくとも1つのアミノ酸配列が、1つ、2つ、または3つのアミノ酸置換を含有する、抗原認識コンストラクト、
[項2]
前記抗原認識コンストラクトが安定であり、特にMHCに関する文脈で、特に配列番号1に記載のアミノ酸配列を含んでなるCOL6A3抗原ペプチドに、特異的および/または選択的に結合できる、項1に記載の抗原認コンストラクト、
[項3]
前記抗原認識コンストラクトが、抗体、または二重特異性分子または断片などのその誘導体であり、またはT細胞受容体(TCR)、または二重特異性分子または断片などのその誘導体である、項1または2に記載の抗原認識コンストラクト、
[項4]
前記第1のドメインがTCRαまたはγ鎖の一部であり、および/または前記第2のドメインがTCRβまたはδ鎖の一部である、項1~3のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、
[項5]
項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクトをコ-ドする核酸、または前記核酸を含んでなる核酸ベクタ-、
[項6]
項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、または項5に記載の核酸またはベクタ-を含んでなる組換え宿主細胞であって、好ましくは、a)Tリンパ球などのリンパ球、または例えば、CD4+またはCD8+T細胞などのTリンパ球始原細胞、またはb)チャイニ-ズハムスタ-卵巣(CHO)細胞などの非リンパ球である、組換え宿主細胞、
[項7]
項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、または項5に記載の核酸もしくはベクタ-、または項6に記載の宿主細胞、および薬学的に許容可能な担体、希釈剤、安定剤および/または賦形剤を含んでなる、医薬組成物、
[項8]
a.適切な宿主細胞を提供するステップと、
b.項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクトをコ-ドするコ-ド配列を含んでなる、遺伝子コンストラクトを提供するステップと、
c.前記遺伝子コンストラクトを前記適切な宿主細胞に導入するステップと、
d.前記適切な宿主細胞によって前記遺伝子コンストラクトを発現させるステップと
を含んでなる、項1~4のいずれか1項に記載のCOL6A3特異的抗原認識コンストラクトを生成する方法、
[項9]
前記抗原認識コンストラクトを前記適切な宿主細胞から単離し精製するステップと、任意選択的に、前記抗原認識コンストラクトをT細胞中で再構成するステップとをさらに含んでなる、項8に記載の方法、
[項10]
医療で使用するための、項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、項5に記載の核酸またはベクタ-、項6に記載の宿主細胞、または項7に記載の医薬品組成物、
[項11]
がんなどの増殖性疾患の診断、予防、および/または治療で使用するための、項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、項5に記載の核酸またはベクタ-、項6に記載の宿主細胞、または項7に記載の医薬品組成物、
[項12]
前記がんが、例えば、結腸直腸がん、結腸がん、肝臓がん、卵巣がん、および胃がんなど、COL6A3が過剰発現され、変異し、および/またはCOL6A3由来の腫瘍関連抗原が提示されるがんから選択される、項11に記載の使用のための、項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、項5に記載の核酸またはベクタ-、項6に記載の宿主細胞、または項7に記載の医薬品組成物、
[項13]
前記変異配列が、前記第1の配列中の1つ、2つまたは3つのアミノ酸を前記第2の配列中の対応する1つ、2つまたは3つのアミノ酸で置換することによって提供されるような、第1および第2のアミノ酸配列の組み合わせである、項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、
[項14]
前記変異配列が、前記第13の配列中の1つ、2つまたは3つの連続的アミノ酸を前記第2の配列中の対応する1つ、2つまたは3つの連続的アミノ酸で置換することによって提供されるような、第1および第2のアミノ酸配列の組み合わせである、項13に記載の抗原認識コンストラクト、
[項15]
(b)の変異配列が、少なくとも1つの(a)のアミノ酸配列と比較して、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を含有する、項1~4および13~14のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、
[項16]
前記相補性決定領域の前記少なくとも1つが、配列番号40で置換され、配列番号40が、1つ、2つ、または3つのアミノ酸置換を含有する、項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、
[項17]
前記相補性決定領域の前記少なくとも1つが、配列番号40で置換される、項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト、
[項18]
表2の75-1~75-25および表5のC-1~C-18からなる群から選択される変異型を含んでなる、項1~4のいずれか一項に記載の抗原認識コンストラクト。
【外国語明細書】