(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156656
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】キメラ増殖因子受容体
(51)【国際特許分類】
C12N 5/16 20060101AFI20241029BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241029BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241029BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20241029BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241029BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241029BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241029BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241029BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20241029BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20241029BHJP
C07K 14/71 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
C12N5/16 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
A61K35/17
A61K31/7088
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
C12N5/16
C12N5/0783
C07K19/00
C07K14/71
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024102884
(22)【出願日】2024-06-26
(62)【分割の表示】P 2020570748の分割
【原出願日】2019-06-21
(31)【優先権主張番号】1810181.6
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】520272983
【氏名又は名称】インスティル バイオ (ユーケイ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】プライス ニコラ ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ブリッジマン ジョン スティーブン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トロンボポエチン融合受容体などのキメラ増殖因子受容体を発現するように操作されているT細胞および他のリンパ球を提供する。また、養子細胞療法におけるこれらの細胞の使用を提供する。
【解決手段】増殖スイッチとして機能し得るトロンボポエチン(Tpo)受容体をベースとしたキメラ組換え増殖因子受容体(CrGFR)を含むT細胞およびNK細胞を含むリンパ球を操作により作製することにより、受容体へのCrGFRリガンドの結合後に、操作されたリンパ球の増殖を誘導する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)細胞外(EC)ドメイン;
(ii)トロンボポエチン膜貫通(TM)ドメイン;および
(iii)第1の細胞内(IC)ドメイン;および任意に、
(iv)第2の細胞内ドメイン
を含むキメラ組換え増殖因子受容体(CrGFR)を含むT細胞またはNK細胞。
【請求項2】
リガンドのCrGFRへの結合がT細胞またはNK細胞の増殖を誘導する、請求項1に記載のT細胞またはNK細胞。
【請求項3】
リガンドがヒトトロンボポエチン、トロンボポエチン受容体アゴニスト、または腫瘍関連抗原である、請求項2に記載のT細胞またはNK細胞。
【請求項4】
トロンボポエチン受容体アゴニストがTMドメインに結合する、請求項3に記載のT細胞またはNK細胞。
【請求項5】
トロンボポエチン受容体アゴニストがエルトロンボパグおよびロミプロスチムから選択される、請求項3または請求項4に記載のT細胞またはNK細胞。
【請求項6】
ECドメインがヒトc-mpl(トロンボポエチン)ECドメインを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のT細胞またはNK細胞。
【請求項7】
ECドメインが、i)切断型ECドメイン、ii)切断型c-mpl ECドメイン、iii)腫瘍関連抗原に結合するドメイン、iv)腫瘍関連抗原に結合する抗体もしくは抗体フラグメント;およびv)選択マーカーのうちの1つまたは複数を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のT細胞またはNK細胞。
【請求項8】
第1のICドメインがヒト成長ホルモン受容体、ヒトプロラクチン受容体、ヒトトロンボポエチン受容体(c-mpl)、G-CSF受容体、GM-CSF受容体、LMP、IL2、CD28またはCD137から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載のT細胞またはNK細胞。
【請求項9】
第1のICドメインがヒトトロンボポエチン受容体(c-mpl)由来のICドメイン、またはヒトトロンボポエチン受容体(c-mpl)由来の切断型ICドメインを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のT細胞またはNK細胞。
【請求項10】
第2のICドメインが、ヒト成長ホルモン受容体、ヒトプロラクチン受容体、ヒトトロンボポエチン受容体(c-mpl)、G-CSF受容体もしくはGM-CSF受容体、共刺激受容体、サイトカイン受容体または共シグナル伝達受容体由来である、請求項1~9のいずれか1項に記載のT細胞またはNK細胞。
【請求項11】
第2のICドメインがヒトトロンボポエチン受容体(c-mpl)、またはヒトトロンボポエチン受容体(c-mpl)由来の切断型ICドメイン、好ましくはTpoRΔ60、CD40、IL2rβ、IL2Rγ、ITAM1またはLMP1から選択される、請求項8または請求項9に記載のT細胞またはNK細胞。
【請求項12】
CrGFRが配列番号1に示すTM配列、またはヒトトロンボポエチンまたはトロンボポエチン受容体アゴニストに結合する少なくとも80%の配列同一性を有するそれらのバリアントを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のT細胞またはNK細胞。
【請求項13】
配列番号3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14として示した配列、またはヒトトロンボポエチンもしくはトロンボポエチン受容体アゴニストに結合する少なくとも80%、85%、90%、95%、97%もしくは99%の配列同一性を有するそれらのバリアントを含むキメラ組換え増殖因子受容体(CrGFR)を含むT細胞またはNK細胞。
【請求項14】
トロンボポエチンまたはヒトトロンボポエチン受容体アゴニストによる結合が細胞増殖および/または生存を誘導する、請求項13に記載のT細胞またはNK細胞。
【請求項15】
エルトロンボパグに結合する、請求項1~14のいずれか1項に記載のT細胞またはNK細胞。
【請求項16】
T細胞が腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、制御性T細胞(Treg)または一次T細胞から選択される、請求項1~15のいずれか1項に記載のT細胞またはNK細胞。
【請求項17】
組換えT細胞受容体(TCR)および/またはキメラ抗原受容体(CAR)をさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載のT細胞またはNK細胞。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に定義されているキメラ組換え増殖因子受容体(CrGFR)。
【請求項19】
請求項18に記載のキメラ組換え増殖因子受容体(CrGFR)を含む細胞。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に定義されているCrGFRをコードする核酸配列。
【請求項21】
配列番号15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28として示した配列を含む、請求項20に記載の核酸配列。
【請求項22】
請求項20または21に記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項23】
請求項20もしくは21に記載の核酸、または請求項22に記載のベクターをT細胞またはNK細胞に導入するステップを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載のT細胞またはNK細胞を作製する方法。
【請求項24】
請求項22に記載のベクター、または請求項1~17に記載のT細胞もしくはNK細胞を、薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と共に含む医薬組成物。
【請求項25】
請求項1~17の細胞、または請求項24に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、in-vivoで細胞増殖させる方法。
【請求項26】
トロンボポエチン、またはトロンボポエチン受容体アゴニスト、例えばエルトロンボパグもしくはロミプロスチムを対象に投与することを含む、請求項25に記載のin-vivoで細胞を増殖させる方法。
【請求項27】
養子細胞療法において使用するための、請求項1~17のいずれか1項に記載のT細胞もしくはNK細胞、または請求項22に記載のベクター。
【請求項28】
がんを治療する方法において使用するための、請求項1~17のいずれか1項に記載のT細胞もしくはNK細胞、または請求項22に記載のベクター。
【請求項29】
請求項1~17のいずれか1項に記載のT細胞またはNK細胞を対象に投与するステップを含む、がんを治療する方法。
【請求項30】
がんを治療するための医薬の製造における、請求項22に記載のベクター、または請求項1~17のいずれか1項に記載のT細胞もしくはNK細胞の使用。
【請求項31】
請求項1~17のいずれか1項に記載のT細胞またはNK細胞のin-vitro増殖またはin-vivo増殖において使用するためのエルトロンボパグ。
【請求項32】
がんの治療においてトロンボポエチンまたはトロンボポエチン受容体アゴニストと組み合わせて使用するための、請求項1~17に記載のT細胞またはNK細胞を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
がん退縮の媒介に自己T細胞を使用する養子細胞療法(ACT)は、初期の臨床試験において非常に有望であることが明らかになっている。いくつかの一般的なアプローチ、例えば、天然に存在する腫瘍反応性の、またはex vivoで増殖された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の使用などが取られてきた。さらに、T細胞は、所定の腫瘍抗原に向けてそれらを再標的化するために遺伝的に改変され得る。これは、ペプチド(p)-主要組織適合遺伝子複合体(MHC)特異的T細胞受容体(TCR)の遺伝子導入、または腫瘍特異的単鎖抗体フラグメント(scFv)とT細胞シグナル伝達ドメイン(例えばCD3ζ)の間の合成融合によって実施することができるが、後者はキメラ抗原受容体(CAR)と呼ばれている。TILおよびTCRの導入は、メラノーマを標的とする場合に特に良好であることが分かっており(Rosenberg et al. 2011;Morgan 2006)、一方、CAR療法は特定のB細胞悪性腫瘍の治療において非常に有望であることが明らかになっている(Grupp et al. 2013)。
【0002】
ACTに関する現在の一般的な治療プロトコルは、ex vivo増殖細胞を再注入する前に患者の循環リンパ球の大部分を除去する、シクロホスファミドおよび/またはフルダラビンを使用した初期非骨髄破壊的プレコンディショニング治療を行うことが必要である。これによって新しい細胞が増殖するための余地を得ることができ、正常細胞が新たに注入された細胞と増殖および生存シグナルを競合する「サイトカインシンク(cytokine sink)」が一掃される。細胞と一緒に、患者は、新しい細胞の移植および増殖を促進する高用量のインターロイキン(IL)-2の注入を介してサイトカインサポートを受ける。
現在、T細胞ACTの技術を制限している要因が多数存在する。上記の現在のプレコンディショニング療法には入院が必要であり、患者を免疫無防備状態のままにする可能性がある。さらに、多くの患者は、この治療レジメンの過酷さに耐えることができるほど十分な健康な状態ではない。プレコンディショニングを経てもさらに、支持療法としてのIL-2の使用が、重度の毒性および集中治療処置の可能性と関わっている。実際、TIL療法それ自体は、TCRおよびCAR療法と異なり、いかなる重大なオンまたはオフターゲット毒性とは関係しておらず、大部分の毒性事象は付随するIL-2注入に関係している。
プレコンディショニングとIL-2支持療法を最小限にするか、低減することができる方法には、次のような点で大きな利点がある:(i)患者の入院を短縮する、(ii)ACTによって治療することができる可能性のある患者の割合を増やす、(iii)大がかりな入院に伴う臨床コストを削減することにより、多くの患者に対してACTの可能性をより開く。
したがって、プレコンディショニング治療および/またはIL-2支持療法の必要性を最小限にする新しいACT療法が求められている。
【0003】
本発明は、臨床的に検証された薬物であり得るCrGFRのリガンドを投与することによってオンまたはオフにすることができる組換えキメラ増殖因子受容体を発現する細胞を使用する。これにより、他の細胞に対する毒性は最小限にしてin-vivoで標的細胞を増殖させることが可能となる。
多くの報告書は、細胞のある特定の集団を増殖させる手段として、または抗体操作方策のための選択方法の開発のために増殖因子受容体操作のアイデアを使用している。例えば、多数の報告では、抗体-TpoRまたはEpoR融合が多くのバイオテクノロジー方策、例えば単鎖抗体選択などに使用され得ることが証明されており(Ueda et al. 2000、Kawahara et. Al. 2004)、また多くの報告では、増殖因子受容体融合が巨核球細胞株Ba/F3および/または造血幹細胞を良好に増殖させることができることを証明している(Jin et al. 2000;Richard et al. 2000;Nagashima et al. 2003;Kawahara et al 2011;Saka et al. 2013)。
【0004】
トロンボポエチン(Tpo)受容体(TpoR;CD110、c-mpl)は、通常、巨核球系統の細胞において発現される。その通常の状態において、TpoRはトロンボポエチンに応答してスイッチがオンになり、血小板の巨核球産生を引き起こす。TpoRの血小板発現をシンクとして使用してTpoの循環レベルを低下させることができる活性のネガティブフィードバックループ(negative feedback loop)もある。重要なことには、TpoRは、他のいずれの正常組織またはがん細胞でも発現されない(Columbyova 1995)。
【0005】
最近の報告で、T細胞を野生型TpoRで操作し、Tpoまたはエルトロンボパグ(Eltrombopag)の投与を介してT細胞の生存および増殖を制御することができることが証明された(Nishimura et al. 2018)。しかし、トロンボポエチン融合受容体などのキメラ増殖因子受容体を発現するように操作されているT細胞および他のリンパ球の報告はなく、またACTにおけるこれらの細胞の使用の報告はない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】増殖因子ドメインを含むキメラ組換え増殖因子受容体の概略図である。これらの受容体は、TpoR細胞外ドメインと原形質膜にまたがる膜貫通ドメインからなる。細胞内ドメインは、受容体の全体的な活性を増大し、図の凡例で詳述されているように増殖因子ドメイン、共シグナル伝達ドメイン、または共刺激ドメインの選択に由来し得る1つまたは複数の追加ドメインに融合されたTpoR細胞質ドメインからなる。Δ60=60アミノ酸のC末端が欠失したTpoR、IL2rβcyt=IL2受容体ベータ鎖の細胞質ドメイン、SLAM=SLAM/CD150、TIAF1=TGFβ1誘導性抗アポトーシス因子1、TLR1=Toll様受容体1、CD40=CD40/TNFRSF5、IL2rγ=IL-2受容体共通ガンマ鎖、ITAM1=CD3ζ由来の免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ、LMP1=エプスタインバーウイルス潜在膜タンパク質1。
【
図2】共刺激ドメインを含むキメラ組換え増殖因子受容体の概略図である。これらの受容体は、TpoR細胞外ドメインと原形質膜にまたがる膜貫通ドメインからなる。細胞内ドメインは、定義した共刺激受容体、例えば、限定するものではないがCD28またはCD137などから得られる共刺激ドメインからなる。
【
図3】レンチウイルス導入遺伝子の遺伝子構成の概略図である。TpoR導入遺伝子はコドン最適化され、pSF.LentiレンチウイルスベクターのXbaIおよびNheI制限消化対によってEF1αプロモーターの下流にクローニングされた。
【
図4】JurkatE6.1細胞における非形質導入の野生型(WT)およびバリアントのキメラ組換え増殖因子受容体のフロー分析を示す図である。Jurkat E6.1 T細胞に、示した導入遺伝子を有するレンチウイルス粒子を形質導入した。発現は、抗CD110-PE抗体を使用して感染の72時間後に評価した。
【
図5】Ba/F3細胞におけるキメラ組換え増殖因子受容体活性の分析を示す図である。サイトカイン依存性マウスB細胞株Ba/F3に示したCrGFRを形質導入し、IL-3またはエルトロンボパグのいずれかと10日間インキュベートした。CrGFRの発現は、CD110抗体を使用し、示した時点でフローサイトメトリーにより評価した。
【
図6】ドナー1由来の一次ヒトT細胞に対するエルトロンボパグおよびIL-2の分析を示す図である。ドナー1由来の一次ヒトT細胞にWT TpoRまたはバリアントCrGFRを形質導入し、IL2またはエルトロンボパグの存在下でインキュベートした。細胞を21日までの時点で取り出し、受容体を発現する細胞の割合を、PE結合型抗CD110抗体およびMACSQuantアナライザーを使用して評価した。
【
図7】ドナー2由来の一次ヒトT細胞に対するエルトロンボパグおよびIL-2の分析を示す図である。ドナー2由来の一次ヒトT細胞にWT TpoRまたはバリアントCrGFRを形質導入し、IL2またはエルトロンボパグの存在下でインキュベートした。細胞を21日までの時点で取り出し、受容体を発現する細胞の割合を、PE結合型抗CD110抗体およびMACSQuantアナライザーを使用して評価した。
【
図8】ドナー3由来の一次ヒトT細胞に対するエルトロンボパグおよびIL-2の分析を示す図である。ドナー3由来の一次ヒトT細胞にWT TpoRまたはバリアントCrGFRを形質導入し、IL2またはエルトロンボパグの存在下でインキュベートした。細胞を21日までの時点で取り出し、受容体を発現する細胞の割合を、PE結合型抗CD110抗体およびMACSQuantアナライザーを使用して評価した。
【
図9】次の分析ラウンドに最適なCrGFRの選択を示す図である。エルトロンボパグで21日間インキュベーションした後の3名のドナーの一次ヒトT細胞におけるCrGFRの発現を示すフローサイトメトリープロット。受容体のTpoR.CD40、TpoR.IL2rγ、TpoR.ITAM1、TpoR.Δ60、TpoR.LMP1-cytoおよびTpoR.TpoR-cyto.LMP1-cytoを、今後のwt TpoRとの比較のために選択した。
【
図10】ドナー4由来のCrGFR選別一次ヒトT細胞に対するエルトロンボパグおよびIL-2の分析を示す図である。ドナー4由来の一次ヒトT細胞にWT TpoRまたはバリアントCrGFRを形質導入し、IL2またはエルトロンボパグについて選択され、IL2またはエルトロンボパグの存在下でインキュベートされるMiltenyi MACS技術により発現を濃縮した。細胞を7日までの時点で取り出し、受容体を発現する細胞の数を、PE結合型抗CD110抗体、DRAQ7生存率用色素、およびMACSQuantアナライザーを使用して評価した。
【
図11】ドナー5由来のCrGFR選別一次ヒトT細胞に対するエルトロンボパグおよびIL-2の分析を示す図である。ドナー5由来の一次ヒトT細胞にWT TpoRまたはバリアントCrGFRを形質導入し、IL2またはエルトロンボパグについて選択され、IL2またはエルトロンボパグの存在下でインキュベートされるMiltenyi MACS技術により発現を濃縮した。細胞を7日までの時点で取り出し、受容体を発現する細胞の数を、PE結合型抗CD110抗体、DRAQ7生存率用色素、およびMACSQuantアナライザーを使用して評価した。
【
図12】ドナー6由来のCrGFR選別一次ヒトT細胞におけるエルトロンボパグおよびIL-2の分析を示す図である。ドナー6由来の一次ヒトT細胞にWT TpoRまたはバリアントCrGFRを形質導入し、IL2またはエルトロンボパグについて選択され、IL2またはエルトロンボパグの存在下でインキュベートされるMiltenyi MACS技術により発現を濃縮した。細胞を7日までの時点で取り出し、受容体を発現する細胞の数を、PE結合型抗CD110抗体、DRAQ7生存率用色素、およびMACSQuantアナライザーを使用して評価した。
【
図13】TIL042のキメラ組換え増殖因子受容体の分析を示す図である。TIL042由来の腫瘍浸潤リンパ球にWT TpoRまたは示したバリアントCrGFRを形質導入し、患者に適合した腫瘍株の存在下で、IL2、エルトロンボパグ、IL-2+エルトロンボパグを添加して、または増殖因子を添加しないでインキュベートした。細胞を4日目および7日目に分析およびカウントし、受容体を発現する細胞の数を、PE結合型抗CD110抗体、DRAQ7生存率用色素、およびMACSQuantアナライザーを使用して評価した。グラフは、TILの回復が、腫瘍調節因子および/または活性化誘導細胞死によって引き起こされる数の最初の減少後に起こる場合の4日目~7日目のカウントを示す。
【
図14】卵巣TILにおけるキメラ組換え増殖因子受容体の分析を示す図である。3つの卵巣TIL由来の腫瘍浸潤リンパ球にWT TpoRまたは示したバリアントCrGFRを形質導入し、患者に適合した腫瘍細胞の存在下で、エルトロンボパグと共に、または増殖因子なしでインキュベートした。細胞を4日目および7日目に分析およびカウントし、受容体を発現する細胞の数を、PE結合型抗CD110抗体、DRAQ7生存率用色素、およびMACSQuantアナライザーを使用して評価した。グラフは、TILの回復が、腫瘍調節因子および/または活性化誘導細胞死によって引き起こされる数の最初の減少後に起こる場合の4日目~7日目のカウントを示す。
【
図15】キメラ組換え増殖因子受容体によるpSTATの誘導を示す図である。一次ヒトT細胞を単離し、示したCrGFRを形質導入した。細胞を、Miltenyi MACS技術を使用してCrGFR発現について濃縮し、ポリクローナル刺激によって増殖させた。濃縮した細胞を、培地単独(RPMI)、IL2、IL12、Tpo、またはエルトロンボパグ(Elt)のいずれかで4時間刺激し、その後、メタノール固定およびホスホ-STAT5に向けての抗体による細胞内染色を行った。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、増殖スイッチとして機能し得るCrGFRを含むT細胞およびNK細胞を含むリンパ球を操作により作製することができることを明らかにした。これによって、CrGFRリガンドを患者に投与することによりリンパ球をin-vivoで増殖させることができるようになる。本発明者らは、例えば、トロンボポエチン(Tpo)受容体(TpoR;CD110、c-mpl)をベースとしたCrGFRが、受容体へのCrGFRリガンドの結合後に、操作されたリンパ球の増殖を誘導することを明らかにした。したがって、リガンドは、CrGFRを発現する細胞の増殖または活性化誘導性細胞死からの保護をもたらすが、患者における他の細胞における受容体の欠如または低発現に起因して、毒性は低いと予想される。TpoRまたは他の関連する増殖因子受容体をベースとしたCrGFRは、養子細胞療法において、in vitroおよびin vivoでリンパ球増殖を増大させる有益なツールとなり得る。
【0008】
したがって、第1の態様では、本発明は、
(i)細胞外(EC)ドメイン;
(ii)トロンボポエチン膜貫通(TM)ドメイン;および
(iii)第1の細胞内(IC)ドメイン、および任意に、
(iv)第2の細胞内ドメイン
を含むキメラ組換え増殖因子受容体(CrGFR)を含むT細胞またはNK細胞を含むリンパ球を提供する。
【0009】
CrGFRは、受容体リガンドがCrGFRに結合することにより、受容体の活性化および細胞への増殖シグナル伝達が生じ、増殖および/または生存が誘導されるように設計されている。
リガンドは、ヒトトロンボポエチン、またはトロンボポエチン受容体アゴニスト、例えば、エルトロンボパグ、ルストロンボパグ(Lusotrombopag)、アバトロンボパグ(Avatrombopag)またはロミプロスチム(Romiplastim)であり得る。
【0010】
ECドメインは、ヒトc-mpl ECドメイン(ヒトTpoに結合する)であり得るか、またはi)切断型ECドメイン、ii)切断型c-mpl ECドメイン、iii)選択マーカー、例えばCD34のうちの1つもしくは複数であり得る。
CrGFRのICドメインは、JAK結合ドメインを含み得る。ICドメインは、2つ以上の増殖因子受容体または他のシグナル伝達ドメインからなり、1つはヒト成長ホルモン受容体、ヒトプロラクチン受容体またはヒトトロンボポエチン受容体(c-mpl)のリストからのものであり得、追加の増殖因子または他のシグナル伝達ドメインはサイトカイン受容体シグナル伝達ドメイン(例えばIL2受容体)、共シグナル伝達ドメイン(例えばCD40)、ウイルス発がん性タンパク質(例えばLMP1)、共刺激ドメイン(例えばCD28、CD137、CD150など)または他のマイトジェンドメイン(例えば、Toll様受容体、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ、CD3シグナル伝達ドメインなど)のリストからのもの(ただし限定するものではない)であり得るとからなる。
【0011】
リンパ球は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、制御性T細胞(Treg)もしくは一次T細胞を含むT細胞、またはNK細胞、または樹状細胞であり得る。
CrGFRに加えて、リンパ球、T細胞またはNK細胞は、組換えT細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を含んでいてもよい。
【0012】
第2の態様では、本発明は、CrGFRをコードする核酸配列を提供する。
第3の態様では、本発明は、第2の態様に記載の核酸配列を含み、存在する場合、TCRおよび/またはCAR核酸配列を含むベクターを提供する。
第4の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に記載のリンパ球、またはT細胞もしくはNK細胞を作製する方法であって、CrGFRをコードする核酸、またはベクターをリンパ球に導入するステップを含む方法を提供する。
第5の態様では、本発明は、第3の態様に記載のベクター、または第1の態様に記載のリンパ球(T細胞もしくはNK細胞を含む)を、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と共に含む医薬組成物を提供する。
第6の態様では、本発明は、第1の態様のリンパ球、またはT細胞もしくはNK細胞、あるいは第5の態様の医薬組成物を対象に投与することを含む、in-vivo細胞増殖の方法を提供する。細胞は、トロンボポエチン、またはトロンボポエチンアゴニスト、例えばエルトロンボパグを対象に投与することによりin-vivoで増殖され得る。
第7の態様では、本発明は、養子細胞療法において使用するための、第1の態様に記載のT細胞もしくはNK細胞を含むリンパ球、または第3の態様に記載のベクターを提供する。
第8の態様では、本発明は、がんを治療する方法において使用するための、第1の態様に記載のT細胞もしくはNK細胞を含むリンパ球、または第3の態様に記載のベクターを提供する。
第9の態様では、本発明は、がんを治療するための医薬の製造における第1の態様に記載のリンパ球の使用、または第3の態様に記載のベクターの使用を提供する。
第10の態様では、本発明は、養子細胞療法において使用するためのエルトロンボパグまたはTpoを提供する。
第11の態様では、本発明は、T細胞またはNK細胞を含むリンパ球のin vivo増殖において使用するためのエルトロンボパグまたはTpoを提供する。
第12の態様では、本発明は、がんの治療において、トロンボポエチンまたはトロンボポエチン受容体アゴニスト、例えばエルトロンボパグと組み合わせて使用するための第1の態様のリンパ球を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
キメラ組換え増殖因子受容体(CrGFR)
本明細書では、(i)細胞外(EC)ドメイン;(ii)トロンボポエチン膜貫通(TM)ドメイン;および(iii)キメラ増殖因子受容体細胞内(IC)ドメイン含む、組換え増殖因子受容体(CrGFR)を提供する。シンプル形態では、CrGFRは、完全長ヒトTpo受容体(本明細書の
図1に示したもの)またはリガンド結合に応答してシグナル伝達および細胞増殖を維持するその誘導体もしくはバリアント(例えば、これはシグナル伝達能力を維持することが示された切断型トロンボポエチンシグナル伝達ドメインを含んでいてもよい)を含み得る。CrGFRは、異なる受容体に由来するECドメイン、TMドメインおよびICドメインを有するモジュラー形態であってもよい。しかし、CrGFRは、リガンド結合の際に増殖シグナルを細胞に伝達するその能力を維持する必要がある。CrGFRは、TMドメインにリガンドが結合した際に、活性化され、増殖シグナルを細胞に伝達し得る。シグナル伝達ドメインは、1つまたは複数の追加のシグナル伝達ドメインを含んでいてもよい。
【0014】
適切なCrGFRは、正常なヒト組織で発現が制限されているGFR、例えば、小さな細胞集団のみで発現されるか、または特定の細胞タイプに制限されるGFR、例えばc-kitに基づいて選択することができる。あるいは、増殖因子受容体の天然リガンド結合ドメインは、除去され、例えば、マーカーまたは他のECドメインで置き換えられ得る。
CrGFRは、増殖因子結合機能を有さないECドメイン(例えば、TpoR ECドメインの切断型)および/またはマーカー(例えばCD34)、ならびにTpoR由来のTMドメインおよびICドメインを含むことができる。このタイプの受容体を有する細胞の増殖は、その後、TMドメインへのエルトロンボパグの結合によって刺激され得る。
CrGFRは、治療活性を有する細胞の治療性集団、例えば腫瘍浸潤リンパ球(TIL)においてプロモーターの制御下で単独で発現され得る。
【0015】
あるいは、CrGFRは、例えば
図14で説明されているように、治療用導入遺伝子、例えばキメラ抗原受容体(CAR)および/またはT細胞受容体(TCR)と共に発現され得る。適切なTCRおよびCARは、文献、例えば、HLA-A
*02-NYESO-1特異的TCR(Rapoport et al. Nat Med 2015)または抗CD19scFv.CD3ζ融合体CAR(Kochenderfer et al. J Clin Oncol 2015)で周知であり、それぞれ、骨髄腫またはB細胞悪性腫瘍を治療するために良好に使用されている。本明細書に記載されているCrGFRは、任意の公知のCARまたはTCRと共に発現させることができ、したがって、in-vitroまたはin-vivoでの細胞の増殖/生存を可能にする制御可能な増殖スイッチ、および抗がん活性に関するTCRまたはCARの形態での従来の活性化メカニズムを有する細胞を提供する。したがって、本発明は、本明細書に記載されているCrGFRと、腫瘍関連抗原に特異的に結合するTCRおよび/またはCARとを含む、養子細胞療法において使用するための細胞を提供する。
【0016】
CrGFRは、ヒトTpo受容体のTMドメインおよび第1のICドメインと、野生型または切断型のTpo受容体ECドメイン(天然のリガンド結合機能なし)とを有し得る。
CrGFRの特定の実施形態は、
図1および
図2に示すものを含む。
いくつかの実施形態では、増殖因子受容体(CrGFR)は、TpoR受容体をベースとし、少なくともTM領域およびIC領域(TpoR TMドメインおよび514~635およびTpoR細胞質ドメインを示す配列番号1を参照)が保持されており、また追加の(第2の)ICドメインがTpoまたはTpoアゴニスト結合に応答してシグナル伝達を増強するように構築物に付加されているように構築されている。したがって、いくつかの実施形態では、CrGFRは、(i)TpoR細胞外(EC)ドメイン、または切断型TpoR ECドメイン;(ii)トロンボポエチン膜貫通(TM)ドメイン;(iii)ヒトトロンボポエチンICドメイン(またはその切断型バージョン、例えばデルタ60)を含む第1の細胞内(IC)ドメイン;および(iv)共刺激受容体、サイトカイン受容体、共シグナル伝達受容体またはヒトトロンボポエチン受容体(c-mpl)由来のICドメインから選択される、第2の細胞内ドメインを含む。例えば、第2のICドメインは、CD40、IL2R(IL2rβ、IL2Rγ)、ITAM1またはLMP1由来のICドメインであり得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、CrGFRは、i)ECドメインと;配列番号3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14に示したTMドメインおよびICドメイン、または少なくとも80%、85%、90%、95%97%もしくは99%の配列同一性を有するそれらのバリアントを含む。適切なECドメインは、本明細書に記載されているもの、例えば、切断型TpoR ECドメインを含む。これらの受容体は、ヒトトロンボポエチンまたはトロンボポエチン受容体アゴニストに結合する能力を保持する。
他の実施形態では、wt TpoのICドメインは、適切な受容体、例えば、LMP1、IL2R、CD28、CD137由来のICドメインで置き換えられる;そのような構築物の例は、
図1に「TpoR.LMP1」「TpoR.IL2rβ-cyt.TpoR-cyt」として示し、
図2に「TpoRec.TpoRtm CD28cyto」および「TpoRec.TpoRtm CD137cyto」として示している。
【0018】
ECドメイン
ECドメインは、TpoR(配列番号1)由来のECドメイン、または受容体へのリガンド結合に応答してシグナル伝達および細胞増殖を維持するその誘導体もしくはバリアントであり得る。
例えば、リガンド結合時に受容体活性化を引き起こし得るTMドメイン、例えばTpoR TMドメインが使用される場合、ECドメインはCrGFRシグナル伝達に必要ではない場合がある。ECドメインは、次に、切断型または変異型の天然ドメイン(例えば、リガンド結合機能なし)、例えば切断型TpoR ECドメインであってもよい。天然ECドメインは、選択および/またはin vivoモニタリングのためのマーカー、例えば切断型CD34に置き換えることができる。
【0019】
TMドメイン
Tpo受容体(TpoR)由来のTMドメイン(
図1に示す)を、受容体へのリガンド結合に応答してシグナル伝達および細胞増殖を維持するその誘導体またはバリアントを含めて、使用することができる。TpoRは正常なヒト組織で発現が制限されていることが知られており、またエルトロンボパグ、ルストロンボパグおよびアバトロンボパグに結合することも知られているので、これは有用である可能性があり、したがって、Tpo受容体由来のTMドメインを含むCrGFRは、公知の毒性プロファイルを有する臨床検証された化合物に対してin vitroまたはin vivoでこの細胞を暴露させることにより活性化させることができる。
【0020】
ICドメイン
Tpo受容体由来の増殖因子受容体細胞内(IC)ドメイン(配列番号1に示す)は、受容体へのリガンド結合に応答してシグナル伝達および細胞増殖を維持するその誘導体またはバリアント(例えば、配列番号2に示したような切断型TpoRシグナル伝達ドメイン)を含めて、使用することができる。これをTpo受容体由来のTMドメインと組み合わせて、リガンド結合に応答して良好なレベルの細胞増殖を達成することができる。
増殖因子受容体様の他のICドメインは、これらの受容体がTpo受容体と同じ細胞シグナル伝達経路を活性化することが知られていることから、本発明のCrGFRの構築における使用に適し得る。例えば、G-CSF、GM-CSF、プロラクチンまたはヒト成長ホルモン由来のICドメインを使用して、TpoR TMドメインと組み合わせた場合にCrGFRを構築することができる。次いで、受容体アゴニスト、例えばエルトロンボパグに応答して細胞増殖を誘導するこれらのICドメインを含むCrGFRの能力は、本明細書の実施例で説明されている方法を使用して決定することができる。TpoRのICドメインは、C末端で最大79アミノ酸まで切断され得る。これを上回る切断は、TpoR活性を完全にノックアウトすることが明らかにされている(Gurney et al. PNAS 1995)。
さらに、ICドメインはまた、(限定するものではないが)以下のうちの1つに由来する第2のドメインを含むことができる:サイトカイン受容体シグナル伝達ドメイン(例えばIL2受容体)、共シグナル伝達ドメイン(例えばCD40)、ウイルス発がん性タンパク質(例えばLMP1)、共刺激ドメイン(例えばCD28、CD137、CD150など)または他のマイトジェンドメイン(例えばToll様受容体、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ、CD3シグナル伝達ドメインなど)。
【0021】
サイトカイン受容体は、多くの細胞タイプで発現される受容体の広範囲の群であり、可溶性サイトカインに結合することによって細胞外環境の合図を感知することに関与している。この結合の事象は、JAK/STATシグナル伝達を介してシグナル伝達カスケードを誘発し、生存および増殖に関与する遺伝子のアップレギュレーションをもたらす。そのような受容体としては、IL-2受容体、IL-4受容体およびトロンボポエチン受容体が挙げられる(Liongue et al. 2016)。共刺激受容体は、細胞がT細胞受容体によって一次シグナルを受ける場合に、T細胞の活性を増強することに関与するタンパク質である。これは、シグナル1およびシグナル2の概念に基づいており、それによって、シグナル1はT細胞受容体とペプチド-MHCとの結合を介して送達され、シグナル2はT細胞の共刺激受容体と標的細胞(例えば樹状細胞)の共刺激リガンドとの結合を介して送達される。共刺激ドメインを介して送達されるシグナル2は、T細胞に重要な生存シグナルを提供する。一般的な共刺激受容体としては、CD28、CD137、およびCD150が挙げられる(Leitner et al. 2010)。用語の共シグナル伝達とは、共刺激受容体について説明したものと同様の支持シグナルを提供する細胞膜タンパク質のグループを定義するが、ある特定の状況下では、T細胞でそれらが発現されない可能性があるため、通常は共刺激性であるとは考えられない場合があり、そのような受容体には抗原提示細胞で通常発現されるCD40が含まれ、T細胞で発現されるCD40-リガンドの結合の際に生存率を増強する(He et al. 2012;Kumar et al. 2018)。
【0022】
この第2のICドメインは、第1のICドメイン(例えば、膜貫通Tpoドメインの隣に配置されるTpoR ICドメイン)のC末端に直接融合され得るか、またはリンカードメインを介して融合され得る。したがって、キメラ増殖因子受容体は、TpoR膜貫通ドメインおよびTpoR ICドメイン(第1のICドメイン)、およびTpoRに由来し得るか、または前の段落で説明したようなサイトカイン受容体シグナル伝達ドメイン、共シグナル伝達ドメイン、ウイルス発がん性タンパク質(例えばLMP1)もしくは共刺激ドメインであってもよい、第2のICドメインを含み得る。
さらに、共刺激ドメイン、共抑制ドメイン、または共シグナル伝達ドメインをTpoR膜貫通ドメインに直接融合させて、
図2ならびに配列番号13および14に示したような受容体を作製することができる。これらの受容体は、さらなる(第2の)ICドメイン、例えばTpoRドメインを含んでいてもよい。
【0023】
細胞
本発明で使用される細胞は、養子細胞療法において有用な任意のリンパ球であってよく、例えば、T細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、ガンマ/デルタT細胞または制御性T細胞などであり得る。細胞は、同種異系細胞であってもよく、または自己細胞であってもよい。
T細胞またはTリンパ球は、細胞性免疫において中心的な役割を有するリンパ球の一種である。それらは、細胞表面のT細胞受容体(TCR)の存在によって、他のリンパ球、例えばB細胞およびナチュラルキラー細胞(NK細胞)などと識別され得る。以下に要約しているように、様々なタイプのT細胞がある。
【0024】
細胞傷害性T細胞(TC細胞、またはCTL)は、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞を破壊し、また移植片拒絶反応にも関係している。CTLは、それらの表面でCD8分子を発現する。これらの細胞は、すべての有核細胞の表面に存在するMHCクラスIに関連した抗原に結合することによってそれらの標的を認識する。制御性T細胞により分泌されるIL-10、アデノシンおよび他の分子を介して、CD8+細胞はアネルギー状態に不活化され得るが、これにより自己免疫疾患、例えば実験的自己免疫性脳脊髄炎などが阻止される。
メモリーT細胞は、感染が解消した後も長期間持続する抗原特異的T細胞のサブセットである。それらは、同族の抗原への再曝露の際に多数のエフェクターT細胞を速やかに増殖することにより、過去の感染に対する「記憶」を免疫系に提供する。メモリーT細胞は、次の3つのサブタイプ:セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)および2つのタイプのエフェクターメモリーT細胞(TEM細胞およびTEMRA細胞)を含む。メモリー細胞は、CD4+またはCD8+のいずれかであり得る。メモリーT細胞は、典型的には、細胞表面タンパク質CD45ROを発現する。
以前はサプレッサーT細胞として知られていた制御性T細胞(Treg細胞)は、免疫寛容の維持にとって重要である。それらの主要な役割は、免疫反応の終了に向けてT細胞性免疫をシャットダウンすること、また胸腺でのネガティブ選択のプロセスを回避した自己反応性T細胞を抑制することである。
【0025】
CD4+ Treg細胞の2つの主要なクラスである、天然に存在するTreg細胞と適応性Treg細胞が開示されている。
天然に存在するTreg細胞(CD4+CD25+FoxP3+ Treg細胞としても知られている)は胸腺において発生し、TSLPで活性化された骨髄性(CD11c+)樹状細胞と形質細胞様(CD123+)樹状細胞の両方と発達中のT細胞との間の相互作用に関連していた。天然に存在するTreg細胞は、FoxP3と呼ばれる細胞内分子の存在によって、他のT細胞と識別され得る。
適応性Treg細胞(Tr1細胞またはTh3細胞としても知られている)は、正常な免疫応答中に発生し得る。
【0026】
ナチュラルキラー細胞(またはNK細胞)は、自然免疫系の一部を形成する細胞傷害性の細胞の一種である。NK細胞は、MHC非依存的方法でウイルス感染細胞からの自然シグナルに対して速やかな応答を提供する。
NK細胞(自然リンパ球の群に属する)は、大顆粒リンパ球(LGL)として定義され、Bリンパ球およびTリンパ球を産生する一般的なリンパ球前駆体から分化した第3の種類の細胞を構成する。
【0027】
核酸
本発明の一態様は、本明細書に記載されているCrGFR、ポリペプチド、またはタンパク質(それらの機能的部分および機能的バリアントを含む)のいずれかをコードする、本発明の核酸配列を提供する。
本明細書で使用される場合、用語の「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、および「核酸」とは、相互に同義であるものとする。
遺伝コードの縮重の結果、多数の異なるポリヌクレオチドおよび核酸が同じポリペプチドをコードし得ることは、当業者には理解されよう。さらに、日常的な技術を使用して、ポリペプチドを発現させようとする任意の特定の宿主生物のコドン使用を反映するように、本明細書に記載のポリヌクレオチドによってコードされているポリペプチド配列に影響を及ぼさないヌクレオチド置換を作製することが当業者はできることを理解されたい。
【0028】
本発明による核酸は、DNAまたはRNAを含み得る。それらは一本鎖であってもよく、または二本鎖であってもよい。それらはまた、合成ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドをそれらの中に含むポリヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチドに対する多くの異なるタイプの修飾が当技術分野において公知である。これらには、メチルホスホネート骨格およびホスホロチオエート骨格、分子の3’末端および/または5’末端でのアクリジン鎖またはポリリジン鎖の付加が含まれる。本発明の目的において、ポリヌクレオチドは当技術分野で利用可能な任意の方法によって修飾され得ることを理解されたい。そのような修飾は、目的のポリヌクレオチドのin vivo活性または寿命を増強するために実施することができる。
ヌクレオチド配列に関連する用語の「バリアント」、「相同体」または「誘導体」とは、配列からの、または配列への1つ(または複数)の核酸の任意の置換、変更、修飾、置き換え、欠失、または付加を含む。
【0029】
核酸配列は、配列番号2に示したようなTpo受容体の切断型をコードするかまたはそれを含む核酸配列を含む、配列番号3~14に示したタンパク質配列またはそれらのバリアントをコードし得る。
ヌクレオチド配列は、配列番号17~28に示したTpoRのヌクレオチド配列、またはそれらのバリアントを含み得る。
また本発明は、CrGFRをコードする核酸配列と、T細胞受容体(TCR)および/またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードするさらなる核酸配列とを含む核酸配列を提供する。
核酸配列は、2つ以上の核酸配列を共発現させることが可能な配列によって連結され得る。例えば、構築物は、内部プロモーター、内部リボソーム進入配列(IRES)、または切断部位をコードする配列を含むことができる。ポリペプチドが産生された場合に、いかなる外部切断活性も必要とすることなく直ちに個別のタンパク質に切断されるように、切断部位は自己切断され得る。
口蹄疫ウイルス(FMDV)および2a自己切断ペプチドを含む様々な自己切断部位が知られている。
共発現配列は、内部リボソーム進入配列(IRES)であってもよい。共発現配列は、内部プロモーターであってもよい。
【0030】
ベクター
一態様では、本発明は、本発明の核酸配列または核酸構築物を含むベクターを提供する。
そのようなベクターを使用して、核酸配列または核酸構築物を宿主細胞に導入することができ、その結果、これは本発明の第1の態様に記載の1つまたは複数のCrGFRを発現し、任意に1つまたは複数の他の目的のタンパク質(POI)、例えばTCRまたはCARを発現する。
ベクターは、例えば、プラスミドまたはウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクターもしくはレンチウイルスベクター、またはトランスポゾンベースのベクターもしくは合成mRNAであり得る。レトロウイルス、例えばレンチウイルス由来のベクターは、1つまたは複数の導入遺伝子の長期的で安定した組み込みと娘細胞におけるその増殖を可能にするので、長期的な遺伝子導入を達成する適切なツールである。
ベクターは、T細胞またはNK細胞を含むリンパ球をトランスフェクトするか、または形質導入することができる。
本発明はまた、本発明の核酸が挿入されているベクターを提供する。
CrGFRおよび任意にTCRまたはCARをコードしている天然または合成の核酸の発現は、典型的には、CrGFRおよびTCR/CARポリペプチドまたはその一部をコードする核酸を1つまたは複数のプロモーターに作動可能に連結し、構築物を発現ベクターに組み込むことにより達成される。ベクターは、真核細胞における複製および組み込みに適し得る。典型的なクローニングベクターは、所望の核酸配列の発現の調節に有用な転写および翻訳のターミネーター、開始配列、およびプロモーターを含む。
ウイルスベクター技術は当技術分野においては周知であり、例えば、Sambrook et al.(2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)、ならびに他のウイルス学および分子生物学のマニュアルに記載されているが、またWO 01/96584;WO 01/29058;および米国特許第6,326,193号も参照されたい。
【0031】
いくつかの実施形態では、核酸構築物は、本明細書の図面に示した通りである。いくつかの実施形態では、核酸は、単一プロモーターの制御下で、複数の導入遺伝子(例えばCrGFRならびにTCRおよび/またはCARなど)の発現を可能にするマルチシストロン性構築物である。いくつかの実施形態では、導入遺伝子(例えば、CrGFRならびにTCRおよび/またはCARなど)は、自己切断2Aペプチドによって分離される。本発明の核酸構築物において有用な2Aペプチドの例としては、F2A、P2A、T2AおよびE2Aが挙げられる。本発明の他の実施形態において、本発明の核酸構築物は、2つのプロモーター;CrGFRの発現を駆動する1つのプロモーターと、TCRまたはCARの発現を駆動する別のプロモーターとを含むマルチシストロン性構築物である。いくつかの実施形態では、本発明の二重プロモーター構築物は一方向性である。他の実施形態では、本発明の二重プロモーター構築物は双方向性である。
CrGFRポリペプチドまたはその一部の発現を評価するために、細胞に導入される発現ベクターは、選択可能なマーカー遺伝子もしくはレポーター遺伝子のいずれかまたはその両方を含み、ウイルスベクターを介してトランスフェクトされるか、または形質導入されることが求められる細胞の集団からの発現細胞の同定および選択を容易にすることもできる。CrGFRポリペプチドは、マーカー、例えばCD34などをECドメインの一部として組み込むことができる。
【0032】
医薬組成物
本発明はまた、本発明のベクターまたはCrGFR発現細胞を、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤、任意に1つまたは複数のさらなる薬学的に活性なポリペプチドおよび/または化合物を共に含む、医薬組成物に関する。そのような製剤は、例えば、静脈内注入に適した剤形であり得る。
【0033】
治療方法
本発明の方法において使用するためのCrGFRを発現する、T細胞およびNK細胞を含む細胞は、患者自身の末梢血(自己)からex vivoで作製され得るか、またはドナー末梢血もしくは無関係のドナー(同種異系)由来の末梢血からの造血幹細胞移植の設定においてex vivoで作製され得る。あるいは、T細胞またはNK細胞は、誘導性前駆細胞または胚性前駆細胞のT細胞またはNK細胞へのex vivo分化に由来していてもよい。これらの事例において、CrGFRならびに任意にCARおよび/またはTCRを発現するT細胞は、CrGFRならびに任意にCARおよび/またはTCRをコードするDNAまたはRNAを、ウイルスベクターによる形質導入、DNAまたはRNAによるトランスフェクションを含む多数の手段の1つによって導入することによって生成される。
本発明のCrGFRならびに任意にTCRおよび/またはCARを発現するT細胞またはNK細胞は、血液のがんまたは固形腫瘍の治療において使用することができる。
【0034】
疾患を治療する方法は、本発明のベクターまたはT細胞もしくはNK細胞を含む細胞の治療的使用に関する。この点において、ベクター、またはT細胞もしくはNK細胞は、疾患に関連する少なくとも1つの症状を緩和、軽減もしくは改善するため、および/または疾患の進行を減速、軽減もしくは阻止するために、既存の疾患または状態を有する対象に投与することができる。本発明の方法は、T細胞媒介性のがん細胞の死滅を引き起こすか、または促進することができる。
本発明によるベクター、またはT細胞もしくはNK細胞は、1つまたは複数の追加の治療薬と共に患者に投与することができる。1つまたは複数の追加の治療薬を患者に同時投与することができる。「同時投与する」とは、1つまたは複数の追加の治療薬と、本発明のベクター、またはT細胞もしくはNK細胞を、時間的に十分に接近して投与することによりベクター、またはT細胞もしくはNK細胞が1つまたは複数の追加の治療薬の効果を増強できるようにすること、またはその逆を意味する。この点に関して、ベクターまたは細胞を最初に投与することができ、次に1つまたは複数の追加の治療薬を投与することができるか、またはその逆で投与することができる。あるいは、ベクターまたは細胞と1つまたは複数の追加の治療薬とを同時に投与することができる。本発明のベクターまたは細胞と同時投与することができる適切な治療薬としては、CrGFRを活性化する任意の増殖因子受容体アゴニスト、例えば、エルトロンボパグ(rINN、コード名称SB-497115-GR)、ルストロンボパグおよびアバトロンボパグまたはロミプロスチムが挙げられる。
【0035】
エルトロンボパグは、その傷害性プロファイルが知られているので、本発明の方法において特に有用であり得る。前臨床試験においては、この化合物がトロンボポエチン受容体と選択的に相互作用し、JAK-STATシグナル伝達経路の活性化ならびに巨核球の増殖および分化の増加に結びつくことが明らかになった。動物実験では、投与によって血小板の数が増加し得ることが確認された。73名の健康なボランティアにおいて、高用量のエルトロンボパグは、循環血小板の数を顕著に増加させ、許容性に問題はなかった。例えば、Jenkins JM, Williams D, Deng Y, Uhl J, Kitchen V, Collins D, Erickson-Miller CL (Jun 2007). "Phase 1 clinical study of eltrombopag, an oral, nonpeptide thrombopoietin receptor agonist". Blood 109 (11): 4739-41を参照されたい。したがって、本発明の方法において、適切な用量のエルトロンボパグは、既に開示されている臨床研究および本明細書に記載のin-vitroアッセイに基づいて決定することができる。
【0036】
有用な可能性のある別の薬剤はIL-2であるが、現在、これが既存の細胞療法で使用されており、投与された細胞の活性を増大させていることによる。しかし、前述のように、IL-2治療は傷害性および許容性の問題と関係している。したがって、本発明の目的は、CrGFRに結合するアゴニストを使用して細胞増殖を刺激することで、投与する必要のあるIL-2の量を(例えば、低い毒性レベルまで)低減すること、またはIL-2投与の必要性を排除することである。
細胞が患者に投与される本発明の方法の目的において、細胞は、患者に対して同種異型または自己の細胞であり得る。
【0037】
本発明の様々なさらなる態様および実施形態は、本開示を考慮すれば当業者には明らかであろう。
本明細書に言及されているすべての文書は、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
本明細書で使用される場合の「および/または」とは、他方の有無にかかわらず、2つの明示された特徴または構成要素のそれぞれの特定の開示として理解されるものである。例えば、「Aおよび/またはB」は、あたかもそれぞれが個別に本明細書に記載されているかのように、(i)A、(ii)B、ならびに(iii)AおよびBのそれぞれの特定の開示として理解されるものとする。
文脈が別段の指示をしない限り、上記の特徴の説明および定義は、本発明の任意の特定の態様または実施形態に限定的でなく、記載されているすべての態様および実施形態に等しく適用される。
本発明のある特定の態様および実施形態を、ここで、例として、また上記の図面および下記の表を参照することにより説明する。
【実施例0038】
(実施例1)
CrGFRを発現するT細胞の産生および評価
材料および方法
プラスミド
pSF.Lenti.EF1αプラスミドは、Oxford Geneticsにより、pSF.Lenti.CMV.PGK.puro内の既存のCMVプロモーターを伸長因子(EF)1αプロモーターで置き換えてpSF.Lenti.EF1α.PGK.puroを生成することによって生成された。次いで、PGK.Puroセグメントを除去し、ピューロマイシン耐性遺伝子の下流にあるNheI部位でXbaI/NheI消化することによりTpoR構築物をクローニングした。パッケージングプラスミドpVSVg、pCgpVおよびpRSV.Rev(ViraSafeレンチウイルスパッケージングシステム-Pantropic)は、Cell Biolabs(VPK-206)から入手した。
【0039】
試薬
以下の試薬は、以下の製造業者から供給された:-
Abcam - DRAQ7(AB109202-1ml)
Miltenyi Biotec - 抗メラノーマ(MCSP)-PE(130-099-413);抗CD34-APC(130-090-954)、抗CD45-FITC(130-080-202)、抗CD71-APC(130-099-239)、抗CD110-PE
BD Biosciences - 抗CD34-PE (555822);
E-Biosciences - Fixable Viability色素eFlor 450(65-0863-18)、Fixable Viability色素eFlor 780(65-0865-18)。
【0040】
細胞株
Jurkat E6.1細胞株およびBa/F3細胞株は、10%のFCS(F9665-500ml:Sigma)、1%の1M HEPES(H0887-100ml)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P0781-100ml)を補充したRPMI(T細胞培地:TCM)で培養した。細胞株293Tは、10%FCSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P0781-100ml)(D10)を補充したDMEMで通常通り培養した。
【0041】
T細胞の単離
T細胞は、バフィーコートからのPBMCから単離した。簡単に説明すると、バフィーコートをNHSBTから入手し、PBMCはフィコールによる密度遠心分離によって単離した。アンタッチドT細胞は常磁性ビーズを使用して単離した(以下を参照)。T細胞は、10%FCS(F9665-500ml:Sigma)、1%の1M HEPES(H0887-100ml)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P0781-100ml)を補充したRPMI(T細胞培地:TCM)で培養した。
【0042】
レンチウイルスの産生
6×106個の293T細胞を、トランスフェクションの前日に、ポリ-d-リジンをコーティングしたT75フラスコ(Greiner)に入れた10mlのD10に播種した。トランスフェクション当日、0.025MのHEPES緩衝無血清DMEM(pH7.1)および0.025MのHEPES緩衝D10(pH7.9)を調製した。1.5mlのトランスフェクションミックスは、フラスコ1個につき10μgのレンチウイルストランスファープラスミド(pSF.Lenti)および各10μgのpVSVg、pCgpVおよびpRSV.RevならびにCaCl2を使用し、pH7.1培地で最終濃度を0.05Mに調整した。トランスフェクション複合体を30分間形成させた後、6mlのpH7.9培地を入れたフラスコに滴下添加した。24時間後に、培地を10mlの新しいD10と交換した。24時間後および48時間後に培地を回収して合わせ、Lenti-X濃縮機(Clontech-Takara:631232)を使用して濃縮した。濃縮したレンチウイルス粒子を元の上清容量の10倍に再懸濁し、使用するまで-80℃で保存した。
【0043】
T細胞形質導入
1×105個のT細胞を平底96ウェルプレートのウェルごとに加えた。プレートを遠心分離にかけ、上清を吸引した後、4μg/mlのポリブレン(臭化ヘキサジメトリン-Sigma:H9268-5G)および示した濃度のIL-2を補充したレンチウイルス上清50~100μlを添加した。場合によっては、次の活性化試薬を加えた:製造業者の推奨する濃度のDynabeads(商標)ヒトT-Activator CD3/CD28(Thermo Fisher:11131 D)、Dynabeads(商標)ヒトT-Activator CD3/CD28/CD137(Thermo Fisher 11162D)。
【0044】
常磁性ビーズによる選別
常磁性ビーズによる選別は、製造業者の指示に従って、抗PEマイクロビーズ(Miltenyi Biotec or StemCell Technologies)またはT細胞単離ビーズ(17951:StemCell Technologies)のいずれかを使用して実施した。
【0045】
急速増殖プロトコル(REP)
T細胞は、照射したバフィーコートフィーダーを使用して増殖させた。簡単に説明すると、10個の照射済みバフィーコートをNHSBTから入手し、PBMCをフィコールによる密度遠心分離によって単離し、合わせてから凍結保存した。解凍したバフィーコートフィーダーを、1:20~1:100の比率のT細胞と混合し、細胞の最終濃度はT25培養液フラスコに入れたTCM+200lU/mlのIL-2および1μg/mlのフィトヘマグルチニン中1×106個/mlとした。直立フラスコを、最初の5日間45°の角度で配置した後、フラスコを直立に戻し、培地を半量培地交換により交換した。培地交換は、14日間2~3日ごとに新しいIL-2を最終濃度200lU/mlになるよう実施し、その後、細胞を凍結保存するか、または直接アッセイにかけた。
【0046】
構築物の設計
既に、本発明者らは、TpoRが一次ヒトT細胞で活性を有し得ることを検証している。しかし、受容体を改変する試みは、必ずしも簡単ではなかった。例えば、TpoR EcドメインとGCSF ICドメインとの間の融合では、細胞表面での発現が失敗した。さらに、プロラクチン受容体融合体は、表面安定性が完全であるように思われなかった。さらに、本発明者らは、IL-2シグナル伝達には関与するがTpoRシグナル伝達には関与しないシグナル伝達分子のJAK3を活性化することで、操作した細胞においてIL-2様のシグナルを駆動する可能性が高いシグナル伝達成分を含めることにより、T細胞におけるTpoRベース受容体のシグナル伝達能力を改善することができると考えた。
したがって、本発明者らは、追加のドメインがTpoR ICドメインのC末端に直接融合された融合受容体を生成することを目的とした。本発明者らは、まず、TpoRとIL2rβシグナル伝達ドメインの間の融合体を生成した。TpoR細胞内ドメインを完全に除去することによりTpoRとIL2rβの間の融合体を生成する以前の試みでは、良好な発現が十分ではない受容体が得られた。したがって、本発明者らは、ハイブリッドTpoR-IL2rβシグナル伝達ドメインを作製することによって、Il2rβシグナル伝達領域をTpoRシグナル伝達ドメインのN末端またはC末端に融合させる代替手法をとった。次いで、CD3ζ由来のTIAF1、TLR1、CD150、IL2rγ、CD40、LMP1およびITAM1の細胞質ドメインがC末端でTpoRシグナル伝達ドメインに融合された受容体を生成した。これらの受容体の選択理由は以下の通りであった:TIAF1 - TIAF1がJAK3に結合するという証拠がある(Ji et al. 2000);TLR1/CD40 - TLRとCD40の間の相乗効果によってT細胞の増殖が誘導されることが明らかになっており(Ahonen et al. 2004)、さらに、CD40はJAK3に結合し、B細胞におけるシグナル伝達にJAK3を必要とすることが明らかになっている(Hanissian & Geha 1997);CD150 - CD150がT細胞をIL-2枯渇から保護し得るという証拠がある(Aversa et al. 1997);ITAM1 - 本発明者らは、マイトジェン応答を誘導するために、CD3ζ由来の単一ITAMをTpoRのC末端に融合させることに決定した;LMP1 - EBVウイルス由来のLMP1は、JAK3と相互作用することが明らかにされており(Gires et al. 1999)、さらに、本発明者らはまた、TpoR細胞質ドメイン融合体が非常に大きく、十分良好に発現がされない可能性があると考えたので、LMP1をTpoR膜貫通ドメインに直接融合した。本発明者らはまた、エルトロンボパグを投与した際に共刺激増殖シグナルが提供され得ると思われたので、CD28およびCD137の細胞質ドメインに融合されたTpoR細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインからなるCrGFRを生成した。これらの構築物の配列は以下に示している。
【0047】
構築物は、XbaI部位およびNheI部位を介してpSF.Lenti(Oxford Genetics)にクローニングした。すべてのフラグメントおよび構築物は、Genewizによって、コドン最適化および遺伝子合成され、クローニングされた。
【0048】
レンチウイルスの産生 - レンチウイルスの産生は、3種プラスミドパッケージングシステム(Cell Biolabs、サンディエゴ、米国)を使用し、10μgの各プラスミドと10μgの導入遺伝子含有pSF.レンチウイルスプラスミドを、50mMのCaCl2を含有する無血清RPMI中で一緒に混合することにより実施した。この混合物を、75cm2フラスコ中の293T細胞の50%コンフルエントな単層に滴下添加した。ウイルス上清をトランスフェクションの48時間後および72時間後に収集し、プールし、LentiPacレンチウイルス上清濃度(GeneCopoeia、ロックビル、メリーランド、米国)溶液を製造業者の指示に従って使用して濃縮した。レンチウイルス上清を10倍に濃縮し、4μg/mlのポリブレン(Sigma-Aldrich、ドーセット、英国)の存在下で、一次ヒトT細胞に直接感染させるために使用した。
【0049】
末梢血単核細胞を正常な健康なドナーから単離し、製造業者の指示に従ってT細胞活性化増殖ビーズ(Invitrogen)で24時間活性化した後、レンチウイルス上清を添加した。
増殖後、細胞を過剰洗浄して外因性IL2を除去し、96ウェルのU底プレートに播種した。細胞には、IL2(Proleukin)またはエルトロンボパグ(Stratech Scientific、サフォーク、英国)を補充した。それ以降の様々な時点で、細胞を1:400希釈のeFlor-450固定可能な生存率用色素(eBioscience、英国)で染色し、MACSQuant血球計数計を使用してウェルから直接カウントするか、またはDRAQ7生存率用色素およびフィコエリトリン結合型抗CD110抗体(Miltenyi Biotec、英国)で染色し、MACSQuant血球計数計を使用して分析した。次いで、細胞生存率および/または形質導入レベルを、MACSQuantifyソフトウェア(Miltenyi Biotec、英国)を使用して分析した。
【0050】
結果
本発明者らは、最初に、CrGFRの機能性および発現のプロファイルを、それぞれ、ヒトT細胞リンパ腫およびIL-3依存性マウスB細胞株であるJurkatE6.1細胞およびBa/F3細胞のwt受容体との比較で試験した。Ba/F3はヒト細胞でもT細胞でもないが、それらは受容体が適切に折り畳まれて発現できるかどうか、またそれらがシグナルを伝達できるかどうかを少なくとも示す。レンチウイルス粒子を作製し、JurkatE6.1細胞およびBa/F3細胞の直接感染に使用した。Jurkat細胞は、PE結合型抗CD110抗体を使用することにより、発現について48時間後に分析した。Ba/F3細胞をエルトロンボパグまたはマウスIL-3とインキュベートし、CrGFRの発現をフローサイトメトリーによるCD110発現の分析によって数日間にわたって評価した。
図4に示すように、すべての受容体がJurkatE6.1細胞において良好に検出できたが、3つの受容体(TpoR.SLAM、TpoR.TIAF1、およびTpoR.IL2rβ-cyt.TpoR-cyt)は、表面で特に十分に発現しないことを示唆する低発現プロファイルを有していた。Ba/F3細胞では、すべての受容体が発現し、エルトロンボパグを添加することにより集団内で濃縮することができたが、IL-3は予測したように濃縮できなかった(
図5)。しかし、2つのIL2rβ融合受容体については、集団内で濃縮することはできるが、Ba/F3での生存プロファイルは不十分であり生細胞が不足していることから、アッセイをこれらの受容体では切り上げる必要があった。
【0051】
次に、本発明者らはこれらの受容体を取り、一次ヒトT細胞でそれらを発現させ、これらの細胞をIL-2またはエルトロンボパグに曝露した。ドナー3名の一次ヒトT細胞集団をバフィーコートから単離し、CD3/CD28ダイナビーズの存在下、示したレンチウイルス構築物を形質導入した。増殖後、細胞をIL-2またはエルトロンボパグとインキュベートした。結果を
図6、7、8(ドナー3名)に示す。本発明者らは、一部のドナーの一部の受容体でT細胞の増殖/生存の増加を確認した。本発明者らは、21日後に、CD110+細胞の別個の集団で良好な割合の生存細胞を示す細胞割合を調査することにより、このデータセット全体を分析した。これによって、さらに分析するための本発明者らの受容体パネルが次のようにさらに絞り込まれた:TpoR.CD40、TpOR.IL2rγ、TpoR.ITAM1、TpOR.LMP1-cyt、およびTpoR.TpoR-cyt-LMP1-cyt。またTpoR.A60も良好であるように思われたが、これは後の世代の融合受容体に後で組み込むことが可能であるという考えから最初はこれを探求しなかった。
【0052】
次に、本発明者らは実験を繰り返し、選択の最初のラウンドで特定された受容体を使用し、常磁性ビーズ選択によるCD110+選択を使用してCrGFR+細胞を選別した(
図10、11および12)。本発明者らは、3名のドナーすべてにおいて多数のCrGFRが移植されたT細胞の生存の増強を観察した。特に、本発明者らは、第2のドナー(
図12)におけるWT-TpoR、TpOR.CD40、TpOR.IL2rγおよびTpoR.LMP1-cytoの細胞の増殖が、培地単独の場合を上回ることを確認した。
【0053】
次に、本発明者らは、これらの受容体が養子細胞療法のモデルにおいて生存/増殖を促進する能力を、腫瘍浸潤リンパ球を操作することにより評価した。患者TIL042(ブドウ膜黒メラノーマ)由来のTILをバリアントまたはwt CrGFRで操作し、患者に適合した腫瘍細胞(CTUM42.1)と混合した。4日目および7日目に、全細胞ならびにCD110+細胞をカウントした。本発明者らは、おそらくAICDまたは内因性抑制因子によって引き起こされる細胞数の初期の減少を確認した。しかし、4日目~7日目の間に、本発明者らは、エルトロンボパグまたはエルトロンボパグ+低用量IL-2で試験したすべての受容体でCD110+細胞の数の増加を観察した。特に、TpoR.CD40の効果については、IL2単独で非特異的濃縮はなく、試験した他の受容体においてこの効果が示されたため有望であった。
【0054】
本発明者らは、卵巣TILにおけるCrGFRの効果をさらに評価した。3つの卵巣TIL集団を、WT、またはTpoR.CD40、TpoR.IL2rγもしくはTpoR.LMP1-Cytバリアント受容体のいずれかを発現するように操作し、エルトロンボパグの存在下または非存在下で、患者に適合した腫瘍細胞と混合した。全細胞およびCD110+細胞を4日後および7日後にカウントした。本発明者らは、CrGFR+細胞の特異的増殖を、TpOR.LMP1.cytを除いたすべての受容体で、ドナー2およびドナー3において4日目~7日目に、腫瘍の存在下で観察した。ドナー1においては、CrGFR+細胞の非特異的増殖はなかったが、エルトロンボパグの添加によって細胞がAICD(活性化誘導細胞死)から保護されるように見えることを本発明者らは確認した。重要なことには、本発明者らは、3名のすべてのドナーにおいて、TpoR.IL2rγバリアントおよびTpoR.CD40バリアントの活性がWT受容体の活性よりも優れていることを確認した(
図13)。
【0055】
最後に、本発明者らは、CrGFR発現T細胞を培地、サイトカイン、または薬物で処理した際にホスホSTAT分析を行うことによって、新規CrGFRのシグナル伝達の可能性を検証した。この目的のため、4名のドナー由来のT細胞にwt TpoR、TpoR.CD40またはTpoR.IL2rγのいずれかを形質導入し、常磁性ビーズ選択プロトコルを使用してCrGFR発現を濃縮し、次いでポリクローナル刺激を使用して増殖させた。細胞を培地単独(RPMI)、IL-2、Tpoまたはエルトロンボパグ(Elt)で4時間処理した後、メタノール固定、透過処理、およびpSTAT特異的抗体を使用する分析を実施した。STAT分子は、細胞のサイトカイン活性化の際の細胞シグナル伝達の重要なドライバーであり、pSTAT5は特にIL-2活性にとって重要である。実際、本発明者らは、IL-2のインキュベーションでpSTAT5の誘導を確認したが、培地のインキュベーションでは誘導は確認されなかった。対照としてのIL-12は、この実験で観察されたように、STAT5の活性化を誘導することはできない。Tpoおよびエルトロンボパグは、特にSTAT5活性の誘導を示した。このことは、TpoR.IL2rγ CrGFRで極めて明確であり、エルトロンボパグで刺激された場合に的確なSTAT5活性化経路の明らかな活性化があることを証明している。
【0056】
結論
臨床的に利用可能な薬物に応答する増殖因子受容体は、遺伝子導入技術によってT細胞に導入され、T細胞において細胞増殖/生存のシグナルを送達する機能的能力を維持する。重要なことには、本発明者らは、例として、TpoRベースCrGFRを移植した一次ヒトT細胞が臨床的に利用可能な薬物エルトロンボパグに応答し、最適なT細胞増殖に通常必要とされるIL-2の非存在下で、増殖および生存することを明らかにしている。
【0057】
ここでは、本発明者らは、多くの共刺激分子もしくは共シグナル伝達分子または他の増殖因子受容体からのシグナル伝達ドメインに融合されたTpoRに基づいて、多くの機能性バリアントを試験した。本発明者らは、これらの受容体が、TpoRアゴニストであるエルトロンボパグの存在下で、一次ヒトT細胞および腫瘍浸潤リンパ球においてIL-2非依存性の増殖および生存を付与することを示した。特に、本発明者らは、TpoR.CD40融合体CrGFRが、非常に特異的なエルトロンボパグ媒介性のTILの生存/増殖を付与し、一次ヒトT細胞において最適な活性を示すことを見出した。
本発明の態様および実施形態はまた、以下の項目にも記載されている。
【0058】
1. (i)細胞外(EC)ドメイン;
(ii)トロンボポエチン膜貫通(TM)ドメイン;および
(iii)キメラ増殖因子受容体細胞内(IC)ドメイン
を含むキメラ組換え増殖因子受容体(CrGFR)を含むT細胞またはNK細胞。
2. リガンドのCrGFRへの結合がT細胞またはNK細胞の増殖を誘導する、項目1に記載のT細胞またはNK細胞。
3. リガンドがヒトトロンボポエチン、トロンボポエチン受容体アゴニスト、または腫瘍関連抗原である、項目2に記載のT細胞またはNK細胞。
4. トロンボポエチン受容体アゴニストがTMドメインに結合する、項目3に記載のT細胞またはNK細胞。
5. トロンボポエチン受容体アゴニストがエルトロンボパグおよびロミプロスチムから選択される、項目3または項目4に記載のT細胞またはNK細胞。
【0059】
6. ECドメインがヒトc-mpl ECドメインを含む、項目1~5に記載のT細胞またはNK細胞。
7. ECドメインが、i)切断型ECドメイン、ii)切断型c-mpl ECドメイン、iii)腫瘍関連抗原に結合するドメイン、iv)腫瘍関連抗原に結合する抗体もしくは抗体フラグメント;およびv)選択マーカーのうちの1つまたは複数を含む、項目1~6に記載のT細胞またはNK細胞。
8. ICドメインが任意の共刺激分子、共抑制分子または共シグナル伝達分子に由来する共刺激ドメイン、共抑制ドメインまたは共シグナル伝達ドメイン、例えば、限定するものではないが、CD2、CD27、CD28、CD29、CD134、CD137、CD150、PD1などを含む、項目1~7に記載のT細胞またはNK細胞。
9. 第1のICドメインがヒト成長ホルモン受容体、ヒトプロラクチン受容体、ヒトトロンボポエチン受容体(c-mpl)、G-CSF受容体またはGM-CSF受容体から選択される、項目1~8に記載のT細胞またはNK細胞。
10. 追加のICドメインがヒト成長ホルモン受容体、ヒトプロラクチン受容体、ヒトトロンボポエチン受容体(c-mpl)、G-CSF受容体もしくはGM-CSF受容体、または共刺激受容体または共シグナル受容体から選択される、項目1~9に記載のT細胞またはNK細胞。さらに、ICドメインはまた、(限定するものではないが)以下のいずれかに由来する第2のドメインを含む:サイトカイン受容体シグナル伝達ドメイン(例えばIL2受容体)、共シグナル伝達ドメイン(例えばCD40)、ウイルス発がん性タンパク質(例えばLMP1)、共刺激ドメイン(例えばCD28、CD137、CD150など)、または他のマイトジェンドメイン(例えばToll様受容体、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ、CD3シグナル伝達ドメインなど)。この第2のドメインは、TpoR ICドメインのC末端またはN末端に直接融合されているか、またはリンカードメインを介して融合されている。
【0060】
10. ヒトトロンボポエチン受容体TMドメイン、またはヒトトロンボポエチンもしくはトロンボポエチン受容体アゴニストに結合する少なくとも80%の配列同一性を有するそれらのバリアントを有する、項目1~9に記載のT細胞またはNK細胞。
11. CrGFRが、配列番号3として示した配列を含むか、またはタンパク質レベルで少なくとも80%の配列同一性を有するか、もしくはC末端で最大79アミノ酸まで切断されたTpoR ICドメインを含むか、もしくは合成アゴニスト薬、例えばエルトロンボパグに応答する能力を維持する代替ECドメインを含む、それらのバリアントを含む、請求項1~10に記載のT細胞またはNK細胞。
12. CrGFRが、配列番号4として示した配列を含むか、またはタンパク質レベルで少なくとも80%の配列同一性を有するか、もしくは最大79アミノ酸まで切断されたTpoR ICドメインを含むか、もしくは合成アゴニスト薬、例えばエルトロンボパグに応答する能力を維持する代替ECドメインを含む、それらのバリアントを含む、請求項1~11に記載のT細胞またはNK細胞。
13. CrGFRが、配列番号5として示した配列を含むか、またはタンパク質レベルで少なくとも80%の配列同一性を有するか、もしくはC末端で最大79アミノ酸まで切断されたTpoR ICドメインを含むか、もしくは合成アゴニスト薬、例えばエルトロンボパグに応答する能力を維持する代替ECドメインを含む、それらのバリアントを含む、請求項1~12に記載のT細胞またはNK細胞。
【0061】
14. CrGFRが、配列番号6として示した配列を含むか、またはタンパク質レベルで少なくとも80%の配列同一性を有するか、もしくはC末端で最大79アミノ酸まで切断されたTpoR ICドメインを含むか、もしくは合成アゴニスト薬、例えばエルトロンボパグに応答する能力を維持する代替ECドメインを含む、それらのバリアントを含む、請求項1~13に記載のT細胞またはNK細胞。
15. CrGFRが、配列番号7として示した配列を含むか、またはタンパク質レベルで少なくとも80%の配列同一性を有するか、もしくはC末端で最大79アミノ酸まで切断されたTpoR ICドメインを含むか、もしくは合成アゴニスト薬、例えばエルトロンボパグに応答する能力を維持する代替ECドメインを含む、それらのバリアントを含む、請求項1~14に記載のT細胞またはNK細胞。
16. CrGFRが、配列番号8として示した配列を含むか、またはタンパク質レベルで少なくとも80%の配列同一性を有するか、もしくはC末端で最大79アミノ酸まで切断されたTpoR ICドメインを含むか、もしくは合成アゴニスト薬、例えばエルトロンボパグに応答する能力を維持する代替ECドメインを含む、それらのバリアントを含む、請求項1~15に記載のT細胞またはNK細胞。
17. CrGFRが、配列番号9として示した配列を含むか、またはタンパク質レベルで少なくとも80%の配列同一性を有するか、もしくはC末端で最大79アミノ酸まで切断されたTpoR ICドメインを含むか、もしくは合成アゴニスト薬、例えばエルトロンボパグに応答する能力を維持する代替ECドメインを含む、それらのバリアントを含む、請求項1~16に記載のT細胞またはNK細胞。
【0062】
18. CrGFRが、配列番号10として示した配列を含むか、またはタンパク質レベルで少なくとも80%の配列同一性を有するか、もしくはC末端で最大79アミノ酸まで切断されたTpoR ICドメインを含むか、もしくは合成アゴニスト薬、例えばエルトロンボパグに応答する能力を維持する代替ECドメインを含む、それらのバリアントを含む、請求項1~17に記載のT細胞またはNK細胞。
19. CrGFRが、配列番号11として示した配列を含むか、またはタンパク質レベルで少なくとも80%の配列同一性を有するか、もしくはC末端で最大79アミノ酸まで切断されたTpoR ICドメインを含むか、もしくは合成アゴニスト薬、例えばエルトロンボパグに応答する能力を維持する代替ECドメインを含む、それらのバリアントを含む、請求項1~18に記載のT細胞またはNK細胞。
20. CrGFRが、配列番号12として示した配列を含むか、またはタンパク質レベルで少なくとも80%の配列同一性を有するか、もしくはC末端で最大79アミノ酸まで切断されたTpoR ICドメインを含むか、もしくは合成アゴニスト薬、例えばエルトロンボパグに応答する能力を維持する代替ECドメインを含む、それらのバリアントを含む、請求項1~19に記載のT細胞またはNK細胞。
21. CrGFRが、配列番号13として示した配列を含むか、またはタンパク質レベルで少なくとも80%の配列同一性を有するか、もしくは合成アゴニスト薬、例えばエルトロンボパグに応答する能力を維持する代替ECドメインを含む、それらのバリアントを含む、請求項1~20に記載のT細胞またはNK細胞。
【0063】
22. CrGFRが、配列番号14として示した配列を含むか、またはタンパク質レベルで少なくとも80%の配列同一性を有するか、もしくは合成アゴニスト薬、例えばエルトロンボパグに応答する能力を維持する代替ECドメインを含む、それらのバリアントを含む、請求項1~21に記載のT細胞またはNK細胞。
23. CrGFRが、配列番号3~14のいずれかに示した配列か、または少なくとも80%の配列同一性を有するが、i)ヒトトロンボポエチンもしくはヒトトロンボポエチン受容体アゴニストに結合する能力を保持し;ii)細胞の増殖または生存を誘導する、それらのバリアントを含む、請求項1~22に記載のT細胞またはNK細胞。
24. エルトロンボパグに結合する1~23のいずれかの項目に記載のT細胞またはNK細胞。
25. T細胞が腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、制御性T細胞(Treg)または一次T細胞から選択される、1~24のいずれかの項目に記載のT細胞またはNK細胞。
【0064】
26. 組換えT細胞受容体(TCR)および/またはキメラ抗原受容体(CAR)をさらに含む、1~25のいずかの項目に記載のT細胞またはNK細胞。
27. 1~26のいずれかの請求項に定義されているCrGFRをコードする核酸配列。
28. 配列番号17~28として示した配列、または翻訳されたタンパク質配列を変化させないそれらのバリアントを含む、項目27に記載の核酸配列。
29. 配列番号3~12に示した配列を含むが、配列番号2に示したICドメインを含む、項目27に記載の核酸配列。
30. 項目27~29に記載の核酸配列、または翻訳されたタンパク質配列を変化させないその任意のバリアントを含むベクター。
【0065】
31. 項目27~29に記載の核酸配列、または項目19~28に記載のベクターをT細胞またはNK細胞に導入するステップを含む、項目1~26のいずれかに記載のT細胞またはNK細胞を作製する方法。
32. 項目30に記載のベクター、または項目1~26に記載のT細胞もしくはNK細胞を、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と共に含む医薬組成物。
33. 項目1~26の細胞、または項目32の医薬組成物を対象に投与することを含むin-vivoで細胞増殖させる方法。
34. トロンボポエチン、またはトロンボポエチン受容体アゴニスト、例えばエルトロンボパグもしくはロミプロスチムを対象に投与することを含む、項目33に記載のin-vivoで細胞増殖させる方法。
35. 養子細胞療法において使用するための、項目1~26のいずれかに記載のT細胞もしくはNK細胞、または項目30に記載のベクター。
【0066】
36. がんを治療する方法において使用するための、項目1~26のいずれかに記載のT細胞もしくはNK細胞、または項目30に記載のベクター。
37. 項目1~26のいずれかに記載のT細胞またはNK細胞を対象に投与するステップを含む、がんを治療する方法。
38. がんを治療するための医薬の製造における、項目30に記載のベクター、または項目1~26のいずれかに記載のT細胞もしくはNK細胞の使用。
39. 養子細胞療法において使用するためのエルトロンボパグ。
40. 項目1~26のいずれかに記載のT細胞またはNK細胞のin-vitro増殖またはin-vivo増殖において使用するためのエルトロンボパグ。
41. がんの治療においてトロンボポエチンまたはトロンボポエチン受容体アゴニストと組み合わせて使用するための、項目1~26に記載のT細胞またはNK細胞を含む組成物。
【0067】
配列
以下のアミノ酸配列において、太字はTpoR由来の配列を示す。
【表1】
**は終止コドンを示す
膜貫通ドメインには下線を付けた(配列番号1~15中)
【0068】
配列番号1:野生型TpoR
635アミノ酸をN末端からC末端の方向に示した。そのうち、1~491(太字):TpoR細胞外ドメイン、492~513(太字、下線付き):TpoR TMドメイン、514~635(太字、斜体):TpoR細胞質ドメイン。
【0069】
【化1】
配列番号15:野生型TpoR
【化2】
配列番号2:TpoR.Δ60
580アミノ酸をN末端からC末端の方向に示した。そのうち、1~491(太字):TpoR細胞外ドメイン、492~513(太字、下線付き):TpoR TMドメイン、514~580(太字、斜体):C末端が切断されたTpoR細胞質ドメイン。
【化3】
配列番号16:TpoR.Δ60
【化4】
配列番号3:TpoR.TpoR-cyt.IL2rβ-cyt
626アミノ酸をN末端からC末端の方向に示した。そのうち、1~491(太字):TpoR細胞外ドメイン、492~513(太字、下線付き):TpoR TMドメイン、514~538(太字、斜体):C末端が切断されたTpoR細胞質ドメイン、539~626(書式なし):IL2rβ細胞質ドメイン。
【0070】
【化5】
配列番号17:TpoR.TpoR-cyt.IL2rβ-cyt
【化6】
配列番号4:TpoR.IL2rB-cyt.TpoR-cyt
808アミノ酸をN末端からC末端の方向に示した。そのうち、1~491(太字):TpoR細胞外ドメイン、492~513(太字、下線付き):TpoR TMドメイン、514~709(書式なし):IL2rB細胞質ドメイン、710~808(太字、斜体):N末端が切断されたTpoR細胞質ドメイン。
【0071】
【化7】
配列番号18:TpoR.IL2rB-cyt.TpoR-cyt
【化8】
配列番号5:TpoR.SLAM
710アミノ酸をN末端からC末端の方向に示した。そのうち、1~491(太字):TpoR細胞外ドメイン、492~513(太字、下線付き):TpoR TMドメイン、514~635(太字、斜体):TpoR細胞質ドメイン、636~710(書式なし):SLAM細胞質ドメイン。
【0072】
【化9】
配列番号19:TpoR.SLAM
【化10】
配列番号6:TpoR.IL2rγ
721アミノ酸をN末端からC末端の方向に示した。そのうち、1~491(太字):TpoR細胞外ドメイン、492~513(太字、下線付き):TpoR TMドメイン、514~635(太字、斜体):TpoR細胞質ドメイン、636~721(書式なし):IL2rγ細胞質ドメイン。
【化11】
配列番号20:TpoR.IL2rγ
【0073】
【化12】
配列番号7:TpoR-TLR1
817アミノ酸をN末端からC末端の方向に示した。そのうち、1~491(太字):TpoR細胞外ドメイン、492~513(太字、下線付き):TpoR TMドメイン、514~635(太字、斜体):TpoR細胞質ドメイン、636~817(書式なし):TLR1細胞質ドメイン。
【化13】
配列番号21:TpoR-TLR1
【化14】
配列番号8:TpoR-TIAF1
750アミノ酸をN末端からC末端の方向に示した。そのうち、1~491(太字):TpoR細胞外ドメイン、492~513(太字、下線付き):TpoR TMドメイン、514~635(太字、斜体):TpoR細胞質ドメイン、636~750(書式なし):TIAF1細胞質ドメイン。
【0074】
【化15】
配列番号22:TpoR-TIAF1
【化16】
配列番号9:TpoR-CD40
697アミノ酸をN末端からC末端の方向に示した。そのうち、1~491(太字):TpoR細胞外ドメイン、492~513(太字、下線付き):TpoR TMドメイン、514~635(太字、斜体):TpoR細胞質ドメイン、636~697(書式なし):CD40細胞質ドメイン。
【化17】
配列番号23:TpoR-CD40
【0075】
【化18】
配列番号10:TpoR-ITAM1
676アミノ酸をN末端からC末端の方向に示した。そのうち、1~491(太字):TpoR細胞外ドメイン、492~513(太字、下線付き):TpoR TMドメイン、514~635(太字、斜体):TpoR細胞質ドメイン、636~676(書式なし):ITAM1細胞質ドメイン。
【化19】
配列番号24:TpoR-ITAM1
【0076】
【化20】
配列番号11:TpoR.TpoR-cyt.LMP1-cyt
836アミノ酸をN末端からC末端の方向に示した。そのうち、1~491(太字):TpoR細胞外ドメイン、492~513(太字、下線付き):TpoR TMドメイン、514~635(太字、斜体):TpoR細胞質ドメイン、636~836(書式なし):LMP-1細胞質ドメイン。
【化21】
配列番号25:TpoR.TpoR-cyt.LMP1-cyt
【0077】
【化22】
配列番号12:TpoR.LMP1-cyt
714アミノ酸をN末端からC末端の方向に示した。そのうち、1~491(太字):TpoR細胞外ドメイン、492~513(太字、下線付き):TpoR TMドメイン、514~714(書式なし):LMP-1細胞質ドメイン。
【化23】
配列番号26:TpoR.LMP1-cyt
【0078】
【化24】
配列番号13:TpoRec.TpoRtm.CD137cyto
555アミノ酸をN末端からC末端の方向に示した。そのうち、1~491(太字):TpoR細胞外ドメイン、492~513(太字、下線付き):TpoR TMドメイン、514~555(書式なし):CD137細胞質ドメイン。
【化25】
配列番号27:TpoRec.TpoRtm.CD137cyto
【0079】
【化26】
配列番号14:TpoRec.TpoRtm.CD28cyto
554アミノ酸をN末端からC末端の方向に示した。そのうち、1~491(太字):TpoR細胞外ドメイン、492~513(太字、下線付き):TpoR TMドメイン、514~554(書式なし):CD28細胞質ドメイン。
【化27】
配列番号28:TpoRec.TpoRtm.CD28cyto
【化28】