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特開2024-156667ニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶複合体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156667
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶複合体
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20241029BHJP
   A24B 15/16 20200101ALI20241029BHJP
【FI】
C07D401/04 CSP
A24B15/16
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024107228
(22)【出願日】2024-07-03
(62)【分割の表示】P 2022112935の分割
【原出願日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】62/003,295
(32)【優先日】2014-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】594112886
【氏名又は名称】アール・ジエイ・レイノルズ・タバコ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギャリー・エム・ダル
(72)【発明者】
【氏名】アンドルー・カー
(72)【発明者】
【氏名】エマ・シャープ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タバコ製品を含む広範囲の製品に適用可能であり得る様々な形態のニコチンを提供する。
【解決手段】ムチン酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、及び2,3-ジヒドロキシ安息香酸とのニコチン塩、ならびにニコチン4-アセトアミド安息香酸塩、ニコチンゲンチジン酸塩(nicotine gentisate)、及びニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の結晶多形形態が提供される。本発明は、そのようなニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶、ならびにそれらの多形形態の調製及び特徴付けの方法をさらに提供する。加えて、ニコチン塩、共結晶、及び/または塩共結晶を含む、喫煙物品、無煙タバコ製品、ならびに電子喫煙物品を含むタバコ製品も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチン及びムチン酸の塩;ニコチン及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸の塩;ニコチン及び2,3-ジヒドロキシ安息香酸の塩;ニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の結晶多形形態であって、前記形態が、以下の2θ回折角、すなわち15.6、16.1、20.5、22.5、及び27.1のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態;ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩の結晶多形形態であって、前記形態が、以下の2θ回折角、すなわち16.839、17.854、20.134、及び23.265のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態、ならびにニコチンゲンチジン酸塩の結晶多形形態であって、前記形態が、以下の2θ回折角、すなわち13.000、19.017、20.194、及び21.000のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態からなる群から選択される、ニコチン塩または結晶多形形態。
【請求項2】
ニコチン及びムチン酸の塩を含み、前記形態が、以下の2θ回折角、すなわち14.289、15,449、19.66、及び20.412のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、請求項1に記載のニコチン塩または結晶多形形態。
【請求項3】
前記塩または結晶多形形態の少なくとも約50%が、結晶形態である、請求項1に記載のニコチン塩または結晶多形形態。
【請求項4】
ニコチン及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸の塩を含み、前記形態が、以下の2θ回折角、すなわち12.7、17.8、19.7、20.2、21.3、24.5、24.9、25.8、及び29.8のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる無水形態である、請求項1に記載のニコチン塩または結晶多形形態。
【請求項5】
ニコチン及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸の塩を含み、前記形態が、以下の2θ回折角、すなわち10.7、13.4、15.0、17.2、17.3、19.0、21.4、21.6、22.2、22.6、22.9、24.3、25.1、25.5、及び29.7のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる水和形態である、請求項1に記載のニコチン塩または結晶多形形態。
【請求項6】
ニコチン及び2,3-ジヒドロキシ安息香酸の塩を含み、前記形態が、以下の2θ回折角、すなわち12.4、12.5、15.2、18.3、19.7、20.3、20.9、24.9、25.2、26.5、及び30.4のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、請求項1に記載のニコチン塩または結晶多形形態。
【請求項7】
カートリッジ本体内に収容された吸入可能な物質媒体と、前記吸入可能な物質媒体の少なくとも一部分に熱を提供するように位置付けられた加熱部材と、を備える、電子喫煙物品であって、前記吸入可能な物質媒体が、請求項1に記載のニコチン塩または結晶多形形態のうちの1つ以上を含む、電子喫煙物品。
【請求項8】
前記吸入可能な物質媒体が、グリセリン、水、及び風味材料のうちの1つ以上をさらに含む、請求項7に記載の電子喫煙物品。
【請求項9】
ニコチン塩または結晶多形形態の量が、前記物品の一吹き当たり約0.01mg~約0.5mgの量のニコチンを提供するのに十分な量である、請求項7に記載の電子喫煙物品。
【請求項10】
ニコチン塩または結晶多形形態の量が、前記物品の一吹き当たり約0.05mg~約0.3mgの量のニコチンを提供するのに十分な量である、請求項7に記載の電子喫煙物品。
【請求項11】
ニコチン塩または結晶多形形態の量が、前記物品の一吹き当たり約0.1mg~約0.2mgの量のニコチンを提供するのに十分な量である、請求項7に記載の電子喫煙物品。
【請求項12】
請求項1に記載のニコチン塩または結晶多形形態のうちの1つ以上を含む、無煙タバコ製品。
【請求項13】
ルース湿性嗅ぎタバコ(例えば、スヌース(snus));ルース乾性嗅ぎタバコ;噛みタバコ;ペレット状タバコ片;押出または形成されたタバコストリップ、小片、棒、円筒、またはスティック;微細化砕粉末;粉末状小片及び成分の微細化または微粉砕凝集体;フレーク様小片;成型タバコ片;ガム;テープ様フィルムのロール;易水溶性または水分散性フィルムまたはストリップ;溶融性組成物;トローチ剤;ドロップ;ならびに外殻及び内部領域を有するカプセル様物質からなる群から選択される、請求項12に記載の無煙タバコ製品。
【請求項14】
請求項1に記載のニコチン塩または結晶多形形態のうちの1つ以上を含む、医薬製品。
【請求項15】
ピル、錠剤、トローチ剤、カプセル、カプレット、パウチ、ガム、吸入剤、溶液、及びクリームからなる群から選択される形態である、請求項14に記載の医薬製品。
【請求項16】
請求項1に記載のニコチン塩または結晶多形形態のうちの1つ以上、及び少なくとも約50重量%のイソマルトを含む、トローチ剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチンの様々な塩、共結晶、及び塩共結晶、ならびにそのような塩、共結晶、及び塩共結晶が組み込まれ得る組成物及び製品(例えば、タバコ製品)に関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻きタバコ、葉巻、及びパイプは、タバコを様々な形態で用いる人気のある喫煙物品である。そのような喫煙物品は、タバコを加熱するか、または燃焼させることによって使用され、エアロゾル(例えば、煙)が喫煙者によって吸入される。電子喫煙物品は、さらなる種類のタバコ製品であり、エアロゾル化可能な材料の送達のための貯蔵器及び加熱システムを備える。タバコは、いわゆる「無煙」形態で楽しまれることもある。特に人気の無煙タバコ製品は、いくつかの形態の加工タバコまたはタバコ含有配合物を使用者の口に挿入することによって用いられる。
【0003】
タバコの種類、タバコのブレンド、トップドレッシング及びケーシング材料、タバコロッドのための紙巻き材料のブレンドパッキング密度及び種類を含む様々な種類の紙巻きタバコ成分が、当該技術分野において記載されている。例えば、紙巻きタバコ成分の様々な代表的種類、ならびに様々な紙巻きタバコ設計、形式、構成、及び特徴は、Johnson,Development of Cigarette Components to Meet Industry Needs,52ndT.S.R.C.(September 1998)、米国特許第5,101,839号(Jakobら)、米国特許第5,159,944号(Arzonicoら)、米国特許第5,220,930号(Gentry)、及び米国特許第6,779,530号(Kraker)、米国特許出願公開第2005/0016556号(Ashcraftら)、同第2005/0066986号(Nestorら)、同第2005/0076929号(Fitzgeraldら)、同第2006/0272655号(Thomasら)、同第2007/0056600号(Coleman,IIIら)、及び同第2007/0246055号(Oglesby)に記載されており、各々が参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
例示的な無煙タバコ配合物、原料、及び加工方法は、米国特許第1,376,586号(Schwartz)、同第3,696,917号(Levi)、同第4,513,756号(Pittmanら)、同第4,528,993号(Sensabaugh,Jr.ら)、同第4,624,269号(Storyら)、同第4,991,599号(Tibbetts)、同第4,987,907号(Townsend)、同第5,092,352号(Sprinkle,IIIら)、同第5,387,416号(Whiteら)、同第6,668,839号(Williams)、同第6,834,654号(Williams)、同第6,953,040号(Atchleyら)、同第7,032,601号(Atchleyら)、及び同第7,694,686(Atchleyら)、米国特許公開第2004/0020503号(Williams)、同第2005/0115580号(Quinterら)、同第2006/0191548号(Stricklandら)、同第2007/0062549号(Holton,Jr.ら)、同第2007/0186941号(Holton,Jr.ら)、同第2007/0186942号(Stricklandら)、同第2008/0029110号(Dubeら)、同第2008/0029116号(Robinsonら)、同第2008/0173317号(Robinsonら)、同第2008/0196730号(Engstromら)、同第2008/0209586号(Neilsenら)、同第2008/0305216号(Crawfordら)、同第2009/0065013号(Essenら)、同第2009/0293889号(Kumarら)、同第2010/0291245(Gaoら)、及び同第2011/0139164号(Muaら)、PCT国際公開第04/095959号(Arnarpら)、及び同第2010/132444 A2号(Atchley)に記載されており、各々が参照により本明細書に組み込まれる。市販されている例示的な無煙タバコ製品としては、R.J.Reynolds Tobacco CompanyによりCAMEL Snus、CAMEL Orbs、CAMEL Strips、及びCAMEL Sticksと称されるもの;American Snuff Company,LLCによるGRIZZLY湿性タバコ、KODIAK湿性タバコ、LEVI GARRETTルースタバコ、及びTAYLOR′S PRIDEルースタバコ;Swisher International,Inc.によるKAYAK湿性嗅ぎタバコ及びCHATTANOOGA CHEW噛みタバコ;Pinkerton Tobacco Co.LPによるREDMAN噛みタバコ;U.S.Smokeless Tobacco CompanyによるCOPENHAGEN湿性タバコ、COPENHAGEN Pouches、SKOAL Bandits、SKOAL Pouches、RED SEALロングカット、及びREVELミントタバコパック;ならびにPhilip Morris USAによるMARLBORO Snus及びTabokaが挙げられる。
【0005】
多くの喫煙デバイスが、使用のためにタバコの燃焼を必要とする喫煙製品に対する改良案または代替案として、長年にわたり提案されている。これらのデバイスの多くは、紙巻きタバコ、葉巻、またはパイプ喫煙に関連する知覚を、タバコの燃焼に起因する相当量の不完全燃焼及び熱分解生成物を送達することなく、提供するように意図的に設計されている。この目的のために、電気エネルギーを利用して、揮発性材料を蒸発させるかまたは加熱する、あるいはタバコをかなりの程度燃焼させることなく、紙巻きタバコ、葉巻、またはパイプ喫煙の知覚を提供することを試みる、多数の喫煙製品、風味生成器、及び機械的吸入器が提案されてきた。例えば、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,726,320号(Robinsonら)、米国特許公開第2013/0255702号(Griffith Jr.ら)、米国特許公開第2014/0000638号(Sebastianら)、同第2014/0060554号(Collettら)、同第2014/0060555号(Changら)、同第2014/0096781号(Searsら)、同第2014/0096782号(Ampoliniら)、及び同第2015/0059780号(Davisら)に記載される背景技術に記載の様々な代替喫煙物品、エアロゾル送達デバイス、及び発熱源を参照されたい。
【0006】
これらの喫煙物品、無煙タバコ製品、及び電子喫煙物品のうちのある特定の種類は、タバコ抽出物を含み、このタバコ抽出物は、いくつかの製品において、その抽出物が主にニコチンで構成されるように精製され得る。しかしながら、高い割合のニコチンを含むタバコ抽出物(少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、及び少なくとも約99重量%のニコチンを含む抽出物を含む)は、典型的に油形態である。そのようなものとして、ニコチン抽出物は、取り扱うこと、及びある特定のタバコ製品に組み込むことが困難であり得る。
【0007】
タバコ製品に組み込み易い形態のそのようなニコチン系抽出物を提供することが望ましい。そのような抽出物を満喫できる形態のタバコ製品に組み込むこと、及びそのような形態のニコチン系抽出物を調製するプロセスならびにそのような形態のニコチン系抽出物を組み込む様々な種類の組成物及び製品を調製するためのプロセスを提供することがさらに望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,101,839号明細書
【特許文献2】米国特許第5,159,944号明細書
【特許文献3】米国特許第5,220,930号明細書
【特許文献4】米国特許第6,779,530号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0016556号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0066986号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0076929号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2006/0272655号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2007/0056600号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2007/0246055号明細書
【特許文献11】米国特許第1,376,586号明細書
【特許文献12】米国特許第3,696,917号明細書
【特許文献13】米国特許第4,513,756号明細書
【特許文献14】米国特許第4,528,993号明細書
【特許文献15】米国特許第4,624,269号明細書
【特許文献16】米国特許第4,991,599号明細書
【特許文献17】米国特許第4,987,907号明細書
【特許文献18】米国特許第5,092,352号明細書
【特許文献19】米国特許第5,387,416号明細書
【特許文献20】米国特許第6,668,839号明細書
【特許文献21】米国特許第6,834,654号明細書
【特許文献22】米国特許第6,953,040号明細書
【特許文献23】米国特許第7,032,601号明細書
【特許文献24】米国特許第7,694,686明細書
【特許文献25】米国特許公開第2004/0020503号明細書
【特許文献26】米国特許公開第2005/0115580号明細書
【特許文献27】米国特許公開第2006/0191548号明細書
【特許文献28】米国特許公開第2007/0062549号明細書
【特許文献29】米国特許公開第2007/0186941号明細書
【特許文献30】米国特許公開第2007/0186942号明細書
【特許文献31】米国特許公開第2008/0029110号明細書
【特許文献32】米国特許公開第2008/0029116号明細書
【特許文献33】米国特許公開第2008/0173317号明細書
【特許文献34】米国特許公開第2008/0196730号明細書
【特許文献35】米国特許公開第2008/0209586号明細書
【特許文献36】米国特許公開第2008/0305216号明細書
【特許文献37】米国特許公開第2009/0065013号明細書
【特許文献38】米国特許公開第2009/0293889号明細書
【特許文献39】米国特許公開第2010/0291245号明細書
【特許文献40】米国特許公開第2011/0139164号明細書
【特許文献41】国際公開第2004/095959号
【特許文献42】国際公開第2010/132444号
【特許文献43】特許第7,726,320号明細書
【特許文献44】米国特許公開第2013/0255702号明細書
【特許文献45】米国特許公開第2014/0000638号明細書
【特許文献46】米国特許公開第2014/0060554号明細書
【特許文献47】米国特許公開第2014/0060555号明細書
【特許文献48】米国特許公開第2014/0096781号明細書
【特許文献49】米国特許公開第2014/0096782号明細書
【特許文献50】米国特許公開第2015/0059780号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Johnson,Development of Cigarette Components to Meet Industry Needs,52ndT.S.R.C.(September 1998)
【発明の概要】
【0010】
本発明は、タバコ製品を含む広範囲の製品に適用可能であり得る様々な形態のニコチンを提供する。特に、本出願は、ニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶、ならびにそのようなニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶の調製を説明する。そのようなニコチン塩、共結晶、及び/または塩共結晶の、タバコ製品(例えば、喫煙物品、無煙タバコ製品、及び電子喫煙物品)ならびに医薬製品を含む様々な製品への組み込みも説明する。
【0011】
本発明の第1の態様において、ニコチン及びムチン酸の塩、ニコチン及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸の塩、ニコチン及び2,3-ジヒドロキシ安息香酸の塩、ニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の結晶多形形態であって、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち15.6、16.1、20.5、22.5、及び27.1のうちの1つ以上(全てを含む)においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態、ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩の結晶多形形態であって、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち16.839、17.854、20.134、及び23.265のうちの1つ以上(全てを含む)においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態、ならびにニコチンゲンチジン酸塩(nicotine gentisate)の結晶多形形態であって、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち13.000、19.017、20.194、及び21.000のうちの1つ以上(全てを含む)においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態からなる群から選択される、ニコチン塩または結晶多形形態が提供される。所与の割合の材料、例えば、材料の少なくとも約50%は、結晶形態であり得る。
【0012】
一実施形態において、以下の2θ回折角、すなわち14.289、15,449、19.66、及び20.412のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、ニコチン及びムチン酸から形成された塩が提供される。追加の実施形態において、ニコチン及び2,3-ジヒドロキシ安息香酸から形成された塩が提供され、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち12.4、12.5、15.2、18.3、19.7、20.3、20.9、24.9、25.2、26.5、及び30.4のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。
【0013】
別の実施形態において、ニコチン及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸から形成された塩が提供され、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち12.7、17.8、19.7、20.2、21.3、24.5、24.9、25.8、及び29.8のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる無水形態である。さらなる実施形態において、ニコチン及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸から形成された塩が提供され、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち10.7、13.4、15.0、17.2、17.3、19.0、21.4、21.6、22.2、22.6、22.9、24.3、25.1、25.5、及び29.7のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる水和形態である。ニコチン及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸から形成された塩の所与の試料は、完全に及び/もしくは実質的に1つの単一形態を含み得るか、または可変量の2つ以上の形態(上で参照される無水形態及び二水和形態を含むが、これらに限定されない)の混合物を含み得る。
【0014】
本出願に記載されるニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶は、一般に、喫煙物品、電子喫煙物品、無煙タバコ製品(例えば、トローチ剤及びガム)、医薬製品などを含むが、これらに限定されない一連の製品における使用に適用可能である。したがって、本発明の別の態様において、本明細書に記載される1つ以上のニコチン塩、共結晶、及び/または塩共結晶を組み込む製品が提供される。様々な実施形態において、本明細書に開示される塩、共結晶、及び/または塩共結晶複合体のうちの1つ以上を組み込む電子喫煙物品、無煙タバコ製品、及び/または医薬製品が提供される。
【0015】
例えば、一態様において、本開示は、カートリッジ本体内の吸入可能な物質媒体と、該吸入可能な物質媒体の少なくとも一部分に熱を提供するために位置付けられた加熱部材と、を備える電子喫煙物品を提供し、吸入可能な物質媒体が、本明細書に開示されるニコチン塩または結晶多形形態(例えば、ニコチン及びムチン酸の塩、ニコチン及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸の塩、ニコチン及び2,3-ジヒドロキシ安息香酸の塩、ニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の結晶多形形態からなる群から選択される1つ以上の塩または結晶多形形態)を含み、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち15.6、16.1、20.5、22.5、及び27.1のうちの1つ以上(全てを含む)においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態、ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩の結晶多形形態であって、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち16.839、17.854、20.134、及び23.265のうちの1つ以上(全てを含む)においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態、ならびにニコチンゲンチジン酸塩の結晶多形形態であって、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち13.000、19.017、20.194、及び21.000のうちの1つ以上(全てを含む)においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態からなる群から選択される、1つ以上の塩または結晶多形形態)を含む。
【0016】
吸入可能な物質媒体は、例えば、グリセリン、水、及び風味材料のうちの1つ以上をさらに含み得る。組み込まれるニコチン塩または多形形態の量は、いくつかの実施形態において、物品の一吹き当たり約0.01mg~約0.5mg、約0.05mg~約0.3mg、または約0.1mg~約0.2mgの量のニコチンを提供するのに十分な量であり得る。
【0017】
別の態様において、本開示は、本明細書に記載されるニコチン塩または結晶多形形態(例えば、ニコチン及びムチン酸の塩、ニコチン及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸の塩、ニコチン及び2,3-ジヒドロキシ安息香酸の塩、ニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の結晶多形形態からなる群から選択される1つ以上の塩または結晶多形形態であって、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち15.6、16.1、20.5、22.5、及び27.1のうちの1つ以上(全てを含む)においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態、ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩の結晶多形形態であって、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち16.839、17.854、20.134、及び23.265のうちの1つ以上(全てを含む)においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態、ならびにニコチンゲンチジン酸塩の結晶多形形態であって、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち13.000、19.017、20.194、及び21.000のうちの1つ以上(全てを含む)においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態からなる群から選択される、1つ以上の塩または結晶多形形態)を含む無煙タバコ製品を提供する。例示的な無煙タバコ製品としては、ルース湿性嗅ぎタバコ(例えば、スヌース);ルース乾性嗅ぎタバコ;噛みタバコ;ペレット状タバコ片;押出または形成されたタバコストリップ、小片、棒、円筒、またはスティック;微細化砕粉末;粉末状小片及び成分の微細化または微粉砕凝集体;フレーク様小片;成型タバコ片;ガム;テープ様フィルムのロール;易水溶性または水分散性フィルムまたはストリップ;溶融性組成物;トローチ剤;ドロップ;ならびに外殻及び内部領域を有するカプセル様物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
さらなる態様において、本開示は、本明細書に記載されるニコチン塩または結晶多形形態(例えば、ニコチン及びムチン酸の塩、ニコチン及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸の塩、ニコチン及び2,3-ジヒドロキシ安息香酸の塩、ニコチン及び1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の塩、ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩の結晶多形形態であって、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち16.839、17.854、20.134、及び23.265のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態、ならびにニコチンゲンチジン酸塩の結晶多形形態であって、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち13.000、19.017、20.194、及び21.000のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態からなる群から選択される、1つ以上の塩または結晶多形形態)を含む医薬製品を提供する。そのような製品は、例えば、ピル、錠剤、トローチ剤、カプセル、カプレット、パウチ、ガム、吸入剤、溶液、及びクリームからなる群から選択される形態であり得る。1つの例示的なトローチ剤配合物は、本明細書に開示されるニコチン塩または結晶多形形態のうちの1つ以上、及び少なくとも約50重量%のイソマルトを含む。
【0019】
追加として、なおもさらなる態様において、本開示は、ある特定のニコチン塩及び結晶多形形態を調製する方法を提供する。例えば、本開示は、ムチン酸及びニコチンを複合して固体を形成することと、その固体を単離することと、を含む、ニコチンムチン酸塩を調製する方法を提供する。本開示は、3,5-ジヒドロキシ安息香酸及びニコチンを複合して固体を形成することと、その固体を単離することと、を含む、ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩を調製する方法を提供する。いくつかの実施形態において、結果として得られる塩は、無水形態を含み得る。水和形態(例えば、二水和形態)は、ある特定の実施形態において、無水形態を本明細書に開示される湿度に曝露することによって調製され得る。本開示は、2,3-ジヒドロキシ安息香酸及びニコチンを複合して固体を形成することと、その固体を単離することと、を含む、ニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩を調製する方法を提供する。
【0020】
本開示はまた、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸及びニコチンを複合して固体を形成することと、その固体を単離することと、を含む、ニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の結晶多形形態を調製する方法を提供する。本開示は、等モル量の4-アセトアミド安息香酸及びニコチンを溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)中で複合して固体を形成することと、その固体を単離することと、を含む、ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩の結晶多形形態を調製する方法をさらに提供する。本開示はまた、等モル量のゲンチジン酸及びニコチンを溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)中で複合して固体を形成することと、その固体を単離することと、を含む、ニコチンゲンチジン酸塩の結晶多形形態を調製する方法を提供する。
【0021】
本発明は、以下の実施形態を含むが、これらに限定されない。
【0022】
実施形態1:ニコチン及びムチン酸の塩、ニコチン及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸の塩、ニコチン及び2,3-ジヒドロキシ安息香酸の塩、ニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の結晶多形形態であって、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち15.6、16.1、20.5、22.5、及び27.1のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態、ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩の結晶多形形態であって、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち16.839、17.854、20.134、及び23.265のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態、ならびにニコチンゲンチジン酸塩の結晶多形形態であって、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち13.000、19.017、20.194、及び21.000のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態からなる群から選択される、ニコチン塩または結晶多形形態。
【0023】
実施形態2:ニコチン及びムチン酸の塩を含み、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち14.289、15,449、19.66、及び20.412のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、先行または後続の実施形態のいずれかに記載のニコチン塩または結晶多形形態。
【0024】
実施形態3:該塩または結晶多形形態の少なくとも約50%が、結晶形態である、先行または後続の実施形態のいずれかに記載のニコチン塩または結晶多形形態。
【0025】
実施形態4:ニコチン及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸の塩を含み、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち12.7、17.8、19.7、20.2、21.3、24.5、24.9、25.8、及び29.8のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる無水形態である、先行または後続の実施形態のいずれかに記載のニコチン塩または結晶多形形態。
【0026】
実施形態5:ニコチン及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸の塩を含み、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち10.7、13.4、15.0、17.2、17.3、19.0、21.4、21.6、22.2、22.6、22.9、24.3、25.1、25.5、及び29.7のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる水和形態である、先行または後続の実施形態のいずれかに記載のニコチン塩または結晶多形形態。
【0027】
実施形態6:ニコチン及び2,3-ジヒドロキシ安息香酸の塩を含み、該形態が、以下の2θ回折角、すなわち12.4、12.5、15.2、18.3、19.7、20.3、20.9、24.9、25.2、26.5、及び30.4のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、先行または後続の実施形態のいずれかに記載のニコチン塩または結晶多形形態。
【0028】
実施形態7:カートリッジ本体内に収容された吸入可能な物質媒体と、該吸入可能な物質媒体の少なくとも一部分に熱を提供するように位置付けられた加熱部材と、を備える、電子喫煙物品であって、吸入可能な物質媒体が、先行または後続の実施形態のいずれかに記載のニコチン塩または結晶多形形態のうちの1つ以上を含む、電子喫煙物品。
【0029】
実施形態8:吸入可能な物質媒体が、グリセリン、水、及び風味材料のうちの1つ以上をさらに含む、先行または後続の実施形態のいずれかに記載の電子喫煙物品。
【0030】
実施形態9:ニコチン塩または結晶多形形態の量が、物品の一吹き当たり約0.01mg~約0.5mgの量のニコチンを提供するのに十分な量である、先行または後続の実施形態のいずれかに記載の電子喫煙物品。
【0031】
実施形態10:ニコチン塩または結晶多形形態の量が、物品の一吹き当たり約0.05mg~約0.3mgの量のニコチンを提供するのに十分な量である、先行または後続の実施形態のいずれかに記載の電子喫煙物品。
【0032】
実施形態11:ニコチン塩または結晶多形形態の量が、物品の一吹き当たり約0.1mg~約0.2mgの量のニコチンを提供するのに十分な量である、先行または後続の実施形態のいずれかに記載の電子喫煙物品。
【0033】
実施形態12:先行または後続の実施形態のいずれかに記載のニコチン塩または結晶多形形態のうちの1つ以上を含む、無煙タバコ製品。
【0034】
実施形態13:ルース湿性嗅ぎタバコ(例えば、スヌース);ルース乾性嗅ぎタバコ;噛みタバコ;ペレット状タバコ片;押出または形成されたタバコストリップ、小片、棒、円筒、またはスティック;微細化砕粉末;粉末状小片及び成分の微細化または微粉砕凝集体;フレーク様小片;成型タバコ片;ガム;テープ様フィルムのロール;易水溶性または水分散性フィルムまたはストリップ;溶融性組成物;トローチ剤;ドロップ;ならびに外殻及び内部領域を有するカプセル様物質からなる群から選択される、先行または後続の実施形態のいずれかに記載の無煙タバコ製品。
【0035】
実施形態14:先行または後続の実施形態のいずれかに記載のニコチン塩または結晶多形形態のうちの1つ以上を含む、医薬製品。
【0036】
実施形態15:ピル、錠剤、トローチ剤、カプセル、カプレット、パウチ、ガム、吸入剤、溶液、及びクリームからなる群から選択される形態である、先行または後続の実施形態のいずれかに記載の医薬製品。
【0037】
実施形態16:先行または後続の実施形態のいずれかに記載のニコチン塩または結晶多形形態のうちの1つ以上、及び少なくとも約50重量%のイソマルトを含む、トローチ剤。
【0038】
本開示のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下で手短に説明する添付の図面と併せて以下の発明を実施するための形態を読むことから明らかとなるであろう。本発明は、上述の実施形態のうちの2つ、3つ、4つ、またはそれよりも多く4つ、またはそれよりも多くの任意の組み合わせ、及び本開示に示す任意の2つ、3つ、4つ、またはそれよりも多くの特徴または要素の組み合わせを含み、これは、かかる特徴または要素が、本明細書の特定の実施形態の説明において明示的に組み合わされるか否かに関わらない。この開示は、開示される発明のいずれの分離可能な特徴または要素も、その種々の態様及び実施形態のいずれにおいても、文脈上そうではないことが明確に示されない限り、組み合わせ可能であることが意図されるものとして見られるべきであるように、総合的に読まれることが意図される。
【0039】
本発明の実施形態に関する理解を提供するために、添付の図面を参照するが、それらは必ずしも原寸大ではなく、そこでの参照符号は、本発明の例示的な実施形態の構成要素を指す。図面は単なる例示であり、本発明を制限するものとして見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】ニコチンムチン酸塩のX線粉末回折パターンである。
図2】ニコチンムチン酸塩のH NMRスペクトルである。
図3】結晶ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩のX線粉末回折パターンであり、実験パターン及び単結晶X線構造から計算されたパターンを示す。
図4A図4Aは、ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩の2つの独立した分子について得られた結晶構造の図である。
図4B図4Bは、ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩の2つの独立した分子について得られた結晶構造の図である。
図4C図4Cは、ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩の結晶充填の図である。
図5】結晶ニコチンゲンチジン酸塩のX線粉末回折パターンであり、実験パターン及び単結晶X線構造から計算されたパターンを示す。
図6A図6Aは、ニコチンゲンチジン酸塩について得られた結晶構造の図である。
図6B図6Bは、ニコチンゲンチジン酸塩の結晶充填の図である。
図7】ニコチン3-ヒドロキシ安息香酸塩のX線粉末回折パターンである。
図8】ニコチンリンゴ酸塩のX線粉末回折パターンである。
図9】無水ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩のX線粉末回折パターンであり、実験パターン及び単結晶X線構造から計算されたパターンを示す。
図10】無水ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩のH NMRスペクトルである。
図11】ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩二水和物のX線粉末回折パターンである。
図12】ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩二水和物のH NMRスペクトルである。
図13】無水ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩について得られた結晶構造の図である。
図14A図14Aは、無水ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩の非対称単位における水素結合を示すプロットである。
図14B図14Bは、無水ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩の結晶充填の図である。
図15】ニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩のX線粉末回折パターンである。
図16】ニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩のH NMRスペクトルである。
図17】ニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩のX線粉末回折パターンである。
図18】ニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩のH NMRスペクトルである。
図19】紙巻きタバコの形態を有する喫煙物品の分解斜視図であり、喫煙可能な材料、巻き材料成分、及び紙巻タバコのフィルター要素を示す。
図20】製品の幅を横断してとられた無煙タバコ製品の実施形態の断面図であり、本発明の無煙タバコ組成物で充填された外側パウチを示す。
図21】電子喫煙物品の断面図であり、電子エアロゾル送達デバイスを形成する際に有用な成分の様々な組み合わせを包含し得る。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明はこれから、以下でより完全に説明される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化され得、本明細書に記載される実施形態に限定されるものと見なされるべきではなく、むしろこれらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全となり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。本明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈がそうではないことを明確に示さない限り、複数形の指示対象を含む。「乾燥重量パーセント」または「乾燥重量ベース」に関する言及は、乾燥原料(すなわち、水を除く全ての原料)に基づく重量を指す。
【0042】
本発明は、ニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶、ならびにそれらの調製方法に関する。また、1つ以上のニコチン塩、共結晶、及び/または塩共結晶を含む製品(タバコ製品及び医薬製品を含む)にも関する。ある特定の実施形態において、1つ以上のそのような形態で提供されるニコチンは、有利に、純ニコチンを超える改良である物理形態で単離され得、それは吸湿性油性液体である。例えば、ある特定の実施形態において、本明細書に記載されるニコチン塩、共結晶、及び/または塩共結晶は、純ニコチン(例えば、固体または半固体形態)より扱い易い形態であり得、純ニコチンより高純度の形態で提供され得、ならびに/あるいは純ニコチンより優れた熱動的、物理的、及び/または化学的安定性(例えば、より高い抗酸化性、低減した水和物形成の危険性、及び/もしくはより長い貯蔵寿命)を呈し得る。いくつかの実施形態において、ニコチン塩、共結晶、及び/または塩共結晶は、純ニコチンと比較して、塩、共結晶、及び/または塩共結晶が組み込まれる製品中の関連賦形剤の存在下で増加した安定性を提供し得る。いくつかの実施形態において、ニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶は、著しい程度の水溶性を呈することができ、それらを広範囲の組成物及び製品内の組み込みに適用可能にする。
【0043】
ニコチン自体は、それが2つの鏡像異性体形態のうちの1つであるか、またはラセミ形態で提供され得るように単離及び/もしくは処理され得る。ニコチンは、天然に存在する左旋性の(L)-ニコチン形態である((-)-ニコチンまたはS-ニコチンとしても知られる)。本明細書に提供される塩、共結晶、及び塩共結晶において、ニコチンは、一般に(L)-ニコチンの形態であるが、本開示は、右旋性((D)-ニコチン)塩、共結晶、及び塩共結晶、または開示される塩、共結晶、及び塩共結晶中のラセミ形態のニコチンの調製及び適用を排除することは意図されない。したがって、ニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶は、鏡像異性体的に高純度形態(すなわち、(L)-もしくは(D)-形態)または本明細書に記載されるラセミ形態であり得る。
【0044】
「ニコチン塩」は、1つ以上のプロトンの、共形成剤ドナーからニコチンアクセプターへの移動を介した、イオン形態のニコチンとイオン形態の共形成剤(例えば、酸)との間の相互作用によって特徴付けられる、ニコチンの形態である。ニコチンの構造は、それが、共形成剤からプロトンを受容することができる2つの窒素原子を含むようなものであり、したがって、それが所与の試料中に非プロトン化、モノプロトン化、及び/またはジプロトン化形態で存在し得る。
【0045】
ある特定のニコチン塩が、現在知られている。例えば、ニコチン硫酸塩は、殺虫剤として販売されており、ニコチン重酒石酸塩二水和物(ニコチン水素酒石酸塩としても知られている)は、市販の水溶性ニコチン塩である。ニコチン酢酸の塩(粘性油を形成する)ならびに例えば、ニコチンクエン酸塩及びニコチンリンゴ酸塩を含む、様々な他の塩が研究された。例えば、米国特許第2,033,909号(Coxら)、及びPerfetti,Beitrage Tabakforschung Int.,12,43-54(1983)に記載される原料及び技法の種類を参照されたい。追加として、ある特定のニコチンの塩は、Pfaltz and Bauer,Inc.及びK&K Laboratories,Division of ICN Biochemicals,Inc.などの供給元から入手可能となっている。例示的な既知のニコチン塩としては、ニコチン塩、例えば、ニコチン酒石酸塩及びニコチン重酒石酸塩、ニコチン塩化物(例えば、ニコチン塩酸塩及びニコチン二塩酸塩)、ニコチン硫酸塩、ニコチン過塩素酸塩、ニコチンアスコルビン酸塩、ニコチンフマル酸塩、ニコチンクエン酸塩、ニコチンマレイン酸塩、ニコチン乳酸塩、ニコチンアスパラギン酸塩、ニコチンサリチル酸塩、ニコチントシル酸塩、ニコチンコハク酸塩、ニコチンピルビン酸塩、及びニコチン塩水和物(例えば、ニコチン塩化亜鉛一水和物)が挙げられる。レブリン酸とのニコチン塩は、米国特許出願公開第2011/0268809号及び国際出願公開第PCT/US2011/033928号(いずれもBrinkleyら)において論じされており、それらは参照により本明細書に組み込まれる。例えば、米国特許第4,830,028号(Lawsonら)、及び同第5,031,646号(Lippielloら)、及びLeonard,Ind.Eng.Chem.48:1331-1341(1956)も参照されたい。しかしながら、ある特定の以前に開示された有機酸のニコチン塩は、一般に結晶性ではなく、一連の化学量論を呈し得るため、それらをある特定の用途での使用に不適切にすることがある。
【0046】
「ニコチン共結晶」は、ニコチン及び少なくとも1つの他の成分(「共形成剤」)を、いずれも中性形態で含む、ニコチンの形態である。共結晶は、典型的に、結晶構造によって特徴付けられ、一般に反転自在の非共有結合相互作用によって一緒に保持される。共結晶は、典型的に、定義された化学量論比のニコチン及び少なくとも1つの他の成分で形成される。いくつかの実施形態において、共結晶は、水和物、溶媒和物、及び包接物を包含し得る。共結晶は、有機及び/または無機成分との組み合わせでニコチンを含み得る。共結晶は、一般に、共結晶中の成分間(すなわち、ニコチンと1つ以上の共形成剤)のプロトン移動の不在によって塩から区別され得る。米国食品医薬品局の業界向けガイダンス(2013年4月)に従って、共結晶は、同じ結晶格子中の2つ以上の分子で構成される結晶材料である固体として定義され、成分は中性状態であり、非イオン性相互作用を介して相互作用する。参照により本明細書に組み込まれる、米国保健福祉省、食品医薬品局の業界向けガイダンス、Regulatory Classification of Pharmaceutical Co-Crystals(2013年4月)を参照されたい。
【0047】
「ニコチン塩共結晶」は、塩及び共結晶特徴の両方を有するハイブリッド構造の一種である。典型的に、塩共結晶内のニコチン分子は、少なくとも2つの共形成剤(同じか、または異なり得る)と関連付けられ、1つの共形成剤が、イオン形態(例えば、酸)であり、プロトンをニコチン分子に移動させ、第2の共形成剤が、プロトンをニコチン分子に移動させない。
【0048】
本明細書に記載される塩、共結晶、及び塩共結晶は異なり得る。例えば、2つの成分(すなわち、ニコチン及び1つの共形成剤)が存在するある特定の実施形態において、ニコチン:共形成剤の化学量論は、ある特定の実施形態において、約5:1~約1:5のニコチン:共形成剤の範囲であり得る。複数の共形成剤を使用してニコチン塩、共結晶、または塩共結晶を形成する場合、ニコチン及び互いに対する共形成剤の比率はいずれも異なり得る。好ましい実施形態において、本開示に従って提供される塩、共結晶、及び塩共結晶の所与の試料は、実質的に1つの単一化学量論を呈する。
【0049】
本明細書に記載される塩、共結晶、及び塩共結晶は、いくつかの実施形態において、様々な多形形態及び疑多形形態で存在する。多形は、結晶材料が複数の形態または結晶構造で存在する能力である。多形は、例えば、異なる結晶充填構造(充填多形)の存在から、または同じ分子の異なる共形成剤(立体配座多形)の存在から生じ得る。疑多形は、材料の水和または溶媒和の結果であり、溶媒多形とも称される。
【0050】
本開示の塩、共結晶、及び塩共結晶は、いくつかの形態のニコチアナ種の植物から誘導されたニコチン(例えば、いくつかの形態のタバコ)を組み込むことができる。ニコチンは、例えば、高度に精製されたタバコ抽出物の形態であり得る。タバコからのニコチンの単離及び精製のための様々な方法が知られている(水によるタバコからの抽出、有機溶媒によるタバコからの抽出、タバコからの水蒸気蒸留、またはタバコの熱分解性分解、及びそれからのニコチンの蒸留)。例示的な抽出方法については、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第2,822,306号及び同第4,153,063号(Roseliusら)、ならびに米国特許出願公開第2008/0302377号(Kauryzbaevら)を参照されたい。
【0051】
ニコチアナ種からの植物(そこから、本明細書に記載される塩、共結晶、及び/または塩共結晶と複合され得るそのような抽出物及び他のタバコ材料が得られる)の選択は異なり得、特にタバコ(複数可)の種類が異なり得る。用いられ得るタバコとしては、鉄管乾燥またはバージニア(例えば、K326)、バーレー、日干し乾燥(例えば、インディアンカルヌール及びオリエンタルタバコ(Katerini、Prelip、Komotini、Xanthi、及びYambolタバコを含む))、メリーランド、暗色、暗色燃焼、暗色空気乾燥(例えば、Passanda、Cubano、Jatin、及びBezukiタバコ)、明色空気乾燥(例えば、ノースウィスコンシン及びガルパオタバコ)、インディアン空気乾燥、レッドロシアン及びルスティカタバコ、ならびに様々な他の希少または特殊タバコが挙げられる。様々な種類のタバコ、栽培、及び収穫に関する説明は、Tobacco Production、Chemistry and Technology,Davis et al.(Eds.)(1999)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。ニコチアナ種は、遺伝子修飾または交雑育種技法を使用して誘導され得る(例えば、タバコ植物は、遺伝子的に操作または交雑育種され、ある特定の成分、特徴、もしくは属性の生成を増減し得るか、または他の変更を行う)。本発明における使用に適したニコチアナ種の種類に関する追加の情報は、米国特許出願公開第2012/0192880号(Dubeら)において見出すことができ、参照により本明細書に組み込まれる。タバコ植物は、温室、生育箱、もしくは屋外の畑で生育され得るか、または水耕法で生育され得る。
【0052】
本発明に従って使用されるニコチアナ種の植物の部分(複数可)は、異なり得る。例えば、ほぼ全ての植物(例えば、全植物)を収穫し、そのようなものとして用いる。代替として、植物の様々な部分または小片を採取するか、または採取後のさらなる使用のために分離することができる。例えば、葉、茎、葉柄、根、薄層、花、種、ならびに様々な部分及びそれらの組み合わせが、さらなる使用または処理のために単離され得る。したがって、本発明の植物材料は、ニコチアナ種の植物全体または植物の任意の部分を含んでもよい。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2011/0174323号(Coleman,IIIら)及び同第2012/0192880号(Dubeら)に記載されるタバコ植物の部分を参照されたい。
【0053】
ニコチアナ種の植物は、参照により本明細書に組み込まれる、第2012/0192880号(Dubeら)に記載されるように、早熟または成熟形態のいずれかで用いることができ、生葉形態または乾燥形態のいずれかで使用され得る。タバコ材料は、様々な処理プロセス、例えば、冷蔵、冷凍、乾燥(例えば、凍結乾燥もしくは噴霧乾燥)、照射、黄色化、加熱、調理(例えば、ローストする、揚げる、もしくは茹でる)、発酵、漂白に供され得るか、または他の方法で後の使用のための貯蔵もしくは処理に供され得る。例示的な加工技法は、例えば、米国特許出願公開第2009/0025739号(Brinkleyら)及び同第2011/0174323号(Coleman,IIIら)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。ニコチアナ種の植物の少なくとも一部分は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2013/0269719号(Marshallら)及び同第2014/0020694号(Moldoveanu)において論じられるように、収穫前または収穫後に酵素及び/またはプロバイオティクスで処理され得る。
【0054】
ニコチアナ種の植物の、収穫された1つまたは複数の部分は、物理的に加工され得る。植物の1つまたは複数の部分は、個々の部分または小片に分離され得る(例えば、根は、葉柄から除去され得、茎は葉柄から除去され得、葉は葉柄及び/または茎から除去され得、花びらは、花の残りの部分から除去され得る)。植物の収穫された1つまたは複数の部分は、部分または小片にさらに細分化され得る(例えば充填材型小片、顆粒、粒子、または微粉末として特徴付けられ得る小片または部分に破断、切断、細砕、粉砕、製粉、または擦砕され得る)。植物の収穫された1つまたは複数の部分は、外部力または圧力に供され得る(例えば、押圧されるか、またはロール処理に供されることによって)。そのような加工条件を実行する場合、植物の収穫された1つもしくは複数の部分は、その天然の含水量(例えば、その収穫直後の含水量)、植物の採取された1つもしくは複数の部分への水分の添加によって達成される含水量、または植物の採取された1つもしくは複数の部分の乾燥から得られる含水量に近似する含水量を有し得る。そのようなものとして、植物の収穫された1つもしくは複数の部分は、タバコ製品の成分などとして使用され得るか、またはさらに加工され得る。
【0055】
ニコチン抽出物を提供するために、ニコチアナ種の植物またはその部分は、典型的に、加工条件のうちの1つ以上の種類に供される。典型的な分離プロセスは、1つ以上のプロセス工程(例えば、極性溶媒、有機溶媒、及び/もしくは超臨界流体を使用する溶媒抽出)、クロマトグラフィー、蒸留、濾過、再結晶化、及び/または溶媒-溶媒分割を含み得る。例示的な抽出及び分離溶媒または担体としては、水、アルコール(例えば、メタノールもしくはエタノール)、炭化水素(例えば、ヘプタン及びヘキサン)、水素化炭化水素(例えば、モノフルオロトリクロロメタン(Freon 11)、ジクロロトリフルオロエタン(Freon 123)など)、ジエチルエーテル、塩化メチレン、及び超臨界二酸化炭素が挙げられる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,967,771号(Faggら)、米国特許出願公開第2011/0174323号(Coleman,IIIら)、同第2011/0259353号(Coleman,IIIら)、同第2012/0192880号(Dubeら)、同第2012/0192882号(Dubeら)、及び同第2012/0211016号(Byrd,Jr.ら)における、単離されたタバコ成分及び単離のための技法に関する説明を参照されたい。
【0056】
本開示の塩、共結晶、及び塩共結晶に組み込まれるニコチンは、一般に、上で概説されるニコチアナ種の植物のいくつかの形態から誘導されるが、ニコチンの源はそれに限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、ニコチンは、合成的に提供されてもよい。いくつかの実施形態において、ニコチンは、別の源(例えば、別の種類の植物)から得られてもよい。
【0057】
ニコチンは、典型的に、未希釈(液体)形態で(例えば、上記のように)単離される。本発明に従って、ニコチンは、それが他の形態で提供されるように、ニコチンを塩、共結晶、または塩共結晶の成分として、例えば、油、固体、半固体などの形態で組み込むことによって改変される。いくつかの実施形態において、ある特定の塩、共結晶、及び塩共結晶は、望ましくは固体形態、例えば、固体結晶形態で提供される。有利に(必須ではないが)、ニコチンと複合されてそのようなニコチン塩、共結晶、または塩共結晶を形成する共形成剤(酸を含む)は、米国食品医薬品局に従って「GRAS」(一般に安全と認められる)である。さらに、(これも必須ではないが)それによって生成されるニコチン塩、共結晶、及び/または塩共結晶もGRASであることが有益である。
【0058】
一実施形態において、ニコチンムチン酸塩(ニコチンガラクタル酸塩とも呼ばれる)が提供される。ニコチンムチン酸塩は、ニコチン及びムチン酸から形成される((2S,3R,4S,5R)-2,3,4,5-テトラヒドロキシヘキサンジオン酸、ヘキサル酸、ガラクタル酸、メソ-ガラクタル酸、サッカロ乳酸、テトラヒドロキシアジビン酸、テトラヒドロキシヘキサン二酸としても知られる)。一態様において、約2:1のニコチン:酸~約1:2のニコチン:酸の化学量論を有するニコチンムチン酸塩が提供される。ある特定の実施形態において、約2:1のニコチン:酸~約1:1のニコチン:酸の化学量論を有する(すなわち、1ニコチン当たり1等量以下の酸を有する)ニコチンムチン酸塩が提供される。
【0059】
いくつかの実施形態において、本開示に従い調製されたニコチンムチン酸塩の抽出形態は既知でない場合があることに留意されたい。実施例1に記載されるように、一実施形態において、ニコチンムチン酸塩を調製し、H NMRによって分析したところ、固体が0.72等量の酸からなることを示した。限定されることを意図しないが、この決定は、例えば、半ムチン酸塩構造を、(水素結合によって)それと関連付けられた追加のムチン酸分子と共に有する、ニコチンムチン酸塩共結晶と一致し得る。しかしながら、本明細書において調製及び報告されるニコチンムチン酸塩が、実際に、半ムチン酸塩(すなわち、0.5等量の酸からなる)であることが可能である。
【0060】
ある特定の実施形態において、ニコチンムチン酸塩は、固体形態で提供され、結晶及び/または非晶質形態であり得る。結晶及び非晶質形態のニコチンムチン酸塩を含む試料の例示的なX線粉末回折(XRPD)パターンを、図1に提供する。ニコチンムチン酸塩は、以下の2θ回折角、すなわち14.289°、15,449°、19.66°、及び20.412°のうちの1つ以上においてピークを有するXRPDパターンを呈するものとして記載され得る。X線回折パターンにおける全ての関連ピークの表を含む、全特徴付けデータを、実施例1に提供する。この材料のH NMRスペクトルを、図2に提供する。
【0061】
有利に、ある特定の実施形態において、少なくとも特定の割合が、本明細書に記載される形態を含む、ニコチンムチン酸塩の試料が提供される。例えば、いくつかの実施形態において、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80%重量、少なくとも約85%重量、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、少なくとも約98重量%、または少なくとも約99重量%の本明細書に記載される形態を含む、ニコチンムチン酸塩が提供される。
【0062】
結晶形態と一致して、ニコチンムチン酸塩は、いくつかの実施形態において、比較的鋭い融点を呈し得る。例えば、ある特定の実施形態において、ニコチンムチン酸塩は、約120℃~約125℃(例えば、約123℃)で始まる別個の融点を呈し得る。非晶質形態と一致して、ニコチンムチン酸塩は、ある特定の実施形態において、別個の融点を欠失し得る。非晶質ニコチンムチン酸塩は、広い溶融範囲を呈し得る。ある特定の実施形態において、ニコチンムチン酸塩は、約133℃で始まる溶融範囲を呈し得る。非晶質及び結晶ニコチンムチン酸塩の混合物として存在する試料は、比較的鋭い融点及び広い溶融範囲の両方を呈し得る。結晶対非晶質ニコチンムチン酸塩の比は異なり得、例えば、約10:90~約90:10であってもよい。
【0063】
ある特定の実施形態において、ニコチンムチン酸塩の偏光顕微鏡(PLM)は、典型的に約10μm未満の不規則複屈折粒子を示す。しかしながら、これらの粒子が、調製の方法及び/または分析された試料中に存在する非晶質固体対結晶固体の比に依存し得る、異なるサイズ及び/または形状を呈し得ることに留意されたい。
【0064】
本開示の別の態様において、特定の結晶形態のニコチン4-アセトアミド安息香酸塩が単離及び特定された。アセトアミド安息香酸の塩は、以前に記載されている。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Lasslo et al.,J.Amer.Pharm.Assoc.(1912-1977)(1959),48,345-7、及びGialdi et al.,Farmaco,Edizione Scientifica(1959),14,15-24を参照されたい。本発明のある特定の態様に従い、新規の結晶形態が提供され、本明細書に記載されるある特定のパラメータに従って記載される。
【0065】
この新規結晶形態のニコチン4-アセトアミド安息香酸塩は、いくつかの実施形態において、図3に示されるように、X線粉末回折(XRPD)パターンによって特徴付けられ得る。バルク試料からの実験パターンと、単結晶X線構造から計算されたパターンとの間の一致は良好である。XRPDパターンは、本開示の実験の段落に記載されるように得られる。
【0066】
ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩のX線回折パターンにおける全ての関連ピークの表を含む、ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩についての全特徴付けデータを、実施例2に提供する。ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩は、以下の2θ回折角、すなわち16.839°、17.854°、20.134°、及び23.265°のうちの1つ以上においてピークを有するXRPDパターンを呈するものとして記載され得る。結晶形態と一致して、このニコチン4-アセトアミド安息香酸塩形態は、約130℃~約135℃(例えば、約134℃)で始まる別個の融点を呈する。
【0067】
有利に、ある特定の実施形態において、少なくとも特定の割合が、本明細書に記載される結晶多形形態を含む、ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩の試料が提供される。例えば、いくつかの実施形態において、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80%重量、少なくとも約85%重量、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、少なくとも約98重量%、または少なくとも約99重量%の本明細書に記載される多形形態を含む、ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩が提供される。
【0068】
単結晶X線回折(SCXRD)構造は、図4A及び4B(ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩の2つの独立した分子を示す)に示されるように、この結晶形態のニコチン4-アセトアミド安息香酸塩について得られた。SCXRD構造は、本開示の実験の段落に記載されるように得られた。非水素原子についての異方性原子変位の楕円度は、50%確率水準において示される。水素結合は、破線として示される。水素原子は、任意の小さな半径で示される。ある特定の実施形態において、少なくとも所与の割合の、本明細書に記載されるように提供される結晶ニコチン4アセトアミド安息香酸塩は、単結晶形態である。例えば、いくつかの実施形態において、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%の結晶4-アセトアミド安息香酸塩は、単結晶形態である。
【0069】
プロトンが移動したことはX線構造から明らかであり、その形態が塩であることを確認する。X線構造は、ニコチンがS鏡像異性体であることをさらに示す。ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩のSCXRD構造は、規則的間隔で結合したニコチン分子との、酸分子の水素結合されたヘッドトゥテール配置(1つの分子の酸カルボニルが、第2の分子中のNH官能基に水素結合する)をさらに示す。この形態のニコチン4-アセトアミド安息香酸塩は、単斜結晶系を有するものとして記載され得る。
【0070】
ある特定の実施形態において、開示されるニコチン4-アセトアミド安息香酸塩は、それを様々な製品への組み込みに好適にする物理特性を呈する。例えば、いくつかの実施形態において、開示される形態は著しく吸湿性ではなく、その観察される吸水の大部分は、80~90%相対湿度範囲内である。したがって、それが貯蔵される環境の相対湿度レベルが適切に制御されるならば、この形態の貯蔵が可能である。
【0071】
本開示の別の態様において、特定の結晶形態のニコチン2,5-ジヒドロキシ安息香酸塩(すなわち、ニコチンゲンチジン酸塩)が単離及び特定された。ニコチンゲンチジン酸塩の塩は、以前に記載されている。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Perfetti,Beitraege zur Tabakforschung International(1983),12(2),43-54、Dezelic et al.,Spectrochimica Acta,Part A:Molecular and Biomolecular Spectroscopy(1967),23(4),1149-53、Nikolin et al.,Arhiv za Higijenu Rada i Toksikologiju(1966),17(3),303-8、Dezelic et al.,Glasnik Hemicara Technol.Bosne Hercegovine et al.(1965),13-14,27-36、及びDezelic et al.,Glasnik Drustva Hem.Technol.NR Bosne Hercegovine(1961),10,55-62を参照されたい。本発明のある特定の態様に従い、新規の結晶形態のニコチンゲンチジン酸塩が提供され、本明細書に記載されるある特定のパラメータに従って記載される。
【0072】
この新規結晶形態のニコチンゲンチジン酸塩は、いくつかの実施形態において、図5に示されるように、X線粉末回折(XRPD)パターンによって特徴付けられ得る。バルク試料からの実験パターンと、単結晶X線構造から計算されたパターンとの間の合致は良好である。XRPDパターンは、本開示の実験の段落に記載されるように得られる。X線回折パターンにおける全ての関連ピークの表を含む、全特徴付けデータを、実施例3に提供する。ニコチンムチン酸塩は、以下の2θ回折角、すなわち13.000°、19.017°、20.194°、及び21.000°のうちの1つ以上においてピークを有するXRPDパターンを呈するものとして記載され得る。結晶形態と一致して、このニコチン2,5-ヒドロキシ安息香酸塩形態は、約145℃~約150℃(例えば、約149℃)で始まる別個の融点を呈する。
【0073】
有利に、ある特定の実施形態において、少なくとも特定の割合が、本明細書に記載される結晶多形形態を含む、ニコチンゲンチジン酸塩の試料が提供される。例えば、いくつかの実施形態において、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80%重量、少なくとも約85%重量、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、少なくとも約98重量%、または少なくとも約99重量%の本明細書に記載される多形形態を含む、ニコチンゲンチジン酸塩が提供される。
【0074】
単結晶X線回折(SCXRD)構造は、図6Aに示されるように、この結晶形態のニコチンゲンチジン酸塩について得られた。SCXRD構造は、本開示の実験の段落に記載されるように得られた。非水素原子についての異方性原子変位の楕円度は、50%確率水準において示される。水素結合は、破線として示される。水素原子は、任意の小さな半径で示される。ある特定の実施形態において、少なくとも所与の割合の、本明細書に記載されるように提供される結晶ニコチンゲンチジン酸塩は、単結晶形態である。例えば、いくつかの実施形態において、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%の結晶ゲンチジン酸塩は、単結晶形態である。得られたニコチンゲンチジン酸塩の結晶充填を、図6Bに提供する。
【0075】
プロトンが移動したことは、ニコチンゲンチジン酸塩のX線構造から明らかであり、その形態が塩であることを確認する。ニコチンゲンチジン酸塩のSCXRD構造は、規則的間隔で結合したニコチン分子との、酸分子の水素結合されたヘッドトゥテール配置(1つの分子が第2の分子に水素結合する)をさらに示す。この形態のニコチンゲンチジン酸塩は、単斜結晶系を有するものとして記載され得る。
【0076】
ある特定の実施形態において、開示されるニコチンゲンチジン酸塩は、それを様々な製品への組み込みに好適にする物理特性を呈する。実際に、開示される形態のニコチンゲンチジン酸塩は、例えば、本明細書に記載される熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量測定(DSC)研究によって証明されるように、市販の二酒石酸二水和物よりも低い吸湿性及び良好な熱安定性を呈する。
【0077】
さらなる態様において、ニコチン3-ヒドロキシ安息香酸塩及びニコチンリンゴ酸塩が提供される。これらの塩についてのXRPDパターンを、図7及び8においてそれぞれ提供する。これらの塩についての追加のデータを、実施例4及び5に提供する。
【0078】
本発明の別の態様において、ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩が提供される。ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩は、ニコチン及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸から形成される。一態様において、約1:1のニコチン:酸の化学量論を有するニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩が提供される。ある特定の実施形態において、ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩は、固体形態で提供され、結晶形態及び/または非晶質形態であってもよい。
【0079】
いくつかの実施形態において、ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩は、無水形態及び/または1つ以上の水和(例えば、二水和)形態で存在し得る。したがって、ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩は、異なる湿度レベルに曝露される場合、形態変化を受け得る。無水ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩の例示的な粉末回折(XRPD)パターンを、図9に提供する。バルク試料からの実験パターンと、単結晶X線構造から計算されたパターンとの間の合致は良好である。無水ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩は、以下の2θ回折角、すなわち12.7°、17.8°、19.7°、20.2°、21.3°、24.5°、24.9°、25.8°、及び29.8°のうちの1つ以上においてピークを有するXRPDパターンを呈するものとして記載され得る。X線回折パターンにおける全ての関連ピークの表を含む、全特徴付けデータを、実施例6に提供する。この材料の無水形態のH NMRスペクトルを、図10に提供する。
【0080】
ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩二水和物(湿度への無水形態の曝露によって調製される)のXRPDパターンを、図11に提供する。ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩二水和物は、以下の2θ回折角、すなわち10.7°、13.4°、15.0°、17.2°、17.3°、19.0°、21.4°、21.6°、22.2°、22.6°、22.9°、24.3°、25.1°、25.5°、及び29.7°のうちの1つ以上においてピークを有するXRPDパターンを呈するものとして記載され得る。X線回折パターンにおける全ての関連ピークの表を含む、全特徴付けデータを、実施例6に提供する。この材料の二水和物形態のH NMRスペクトルを、図12に提供する。VH-XRPD実験が、この二水和物形態の存在を確認したことに留意されたい(25℃/96%相対湿度での無水形態の貯蔵から生じる材料と同じXRPDディフラクトグラムを呈する)。いくつかの実施形態において、二水和物形態は、加熱時に上で言及された無水形態に再変換され得る。
【0081】
単結晶X線回折(SCXRD)構造は、図13に示されるように、結晶形態の無水ニコチン3,5-ヒドロキシ安息香酸塩について得られた。SCXRD構造は、本開示の実験の段落に記載されるように得られた。非水素原子についての異方性原子変位の楕円度は、50%確率水準において示される。水素結合は、破線として示される。水素原子は、任意の小さな半径で示される。ある特定の実施形態において、少なくとも所与の割合の、本明細書に記載されるように提供される結晶ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩は、単結晶形態である。例えば、いくつかの実施形態において、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、または少なくとも約90重量%の結晶3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩は、単結晶形態である。無水ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩の非対称単位における水素結合を示すプロットを、図14Aに提示し、得られた無水ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩の結晶充填を、図14Bに提供する。
【0082】
結晶形態と一致して、ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩は、いくつかの実施形態において、比較的鋭い融点を呈し得る。例えば、ある特定の実施形態において、ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩は、無水形態について、約138℃で始まる別個の融点を呈し得る。二水和物形態は、約137℃で溶融する(50~100℃の吸熱を伴う)と思われ、理論によって限定されることを意図しないが、二水和物は、50~100℃の温度範囲にわたって無水形態に変換され、次に変換された無水形態が約137℃で溶融されると考えられる。ある特定の実施形態において、ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩の偏光顕微鏡は、典型的に約10μm未満の不規則な粒子を明らかにする。しかしながら、これらの粒子が、調製の方法及び/または分析された試料中に存在する非晶質固体対結晶固体の比に依存し得る、異なるサイズ及び/または形状を呈し得ることに留意されたい。
【0083】
別の態様において、ニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩が提供される。ニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩は、ニコチン及び2,3-ジヒドロキシ安息香酸から形成される。一態様において、約1:1のニコチン:酸の化学量論を有するニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩が提供される。ある特定の実施形態において、ニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩は、固体形態で提供され、結晶形態及び/または非晶質形態であってもよい。
【0084】
ある特定の実施形態において、ニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩は、固体形態で提供され、結晶形態及び/または非晶質形態であってもよい。ニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩を含む試料の例示的なX線粉末回折(XRPD)パターンを、図15に提供する。ニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩は、以下の2θ回折角、すなわち12.4°、12.5°、15.2°、18.3°、19.7°、20.3°、20.9°、24.9°、25.2°、26.5°、及び30.4°のうちの1つ以上においてピークを有するXRPDパターンを呈するものとして記載され得る。X線回折パターンにおける全ての関連ピークの表を含む、全特徴付けデータを、実施例7に提供する。この材料のH NMRスペクトルを、図16に提供する。
【0085】
結晶形態と一致して、ニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩は、いくつかの実施形態において、比較的鋭い融点を呈し得る。例えば、ある特定の実施形態において、ニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩は、無水形態について、約157℃で始まる別個の融点を呈し得る。ある特定の実施形態において、ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩の偏光顕微鏡は、典型的に約10μm未満の不規則な粒子を明らかにする。しかしながら、これらの粒子が、調製の方法及び/または分析された試料中に存在する非晶質固体対結晶固体の比に依存し得る、異なるサイズ及び/または形状を呈し得ることに留意されたい。一般に、ニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩は、低い吸湿性を呈し、湿度に曝露された場合に形態の変化がなく、容易な取り扱いのために望ましい特性を呈した。
【0086】
別の態様において、特定の結晶形態のニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩(すなわち、ニコチンキシナホ酸塩)が単離及び特定された。ニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の塩は、以前に記載された。参照により本明細書に組み込まれる、Dezelic et al.,Glasnik Drustva Hemicara Technol.Bosne Hercegoveni et al.(1961),10:55-62を参照されたい。本発明のある特定の態様に従って、新規の結晶形態のニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩が提供され、本明細書に記載されるある特定のパラメータに従って記載される。
【0087】
この新規結晶形態のニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩は、いくつかの実施形態において、図17に示されるように、X線粉末回折(XRPD)パターンによって特徴付けられ得る。ニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩は、以下の2θ回折角、すなわち11.2°、14.4°、15.6°、16.1°,17.0°、19.2°、20.5°、22.2°、22.5°、25.4°、25.7°、及び27.1°のうちの1つ以上においてピークを有するXRPDパターンを呈するものとして記載され得る。X線回折パターンにおける全ての関連ピークの表を含む、全特徴付けデータを、実施例8に提供する。ニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩形態は、以下の2θ回折角、すなわち15.6°、16.1°、20.5°、22.5°、及び27.1°のうちの1つ以上においてピークを有するXRPDパターンを呈するものとして記載され得る。結晶形態と一致して、このニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩形態は、約110℃~約115℃(例えば、約111℃)で始まる別個の融点を呈する。
【0088】
有利に、ある特定の実施形態において、少なくとも特定の割合が、本明細書に記載される結晶多形形態を含む、ニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の試料が提供される。例えば、いくつかの実施形態において、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80%重量、少なくとも約85%重量、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、少なくとも約98重量%、または少なくとも約99重量%の本明細書に記載される多形形態を含む、ニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩が提供される。
【0089】
開示されるニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩のH NMRスペクトルを、図18に提供する。このニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩形態は、ある特定の望ましい物理特性を有する。例えば、本明細書に開示されるニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩は、低い吸湿性を呈し、湿度に曝露された場合に形態の変化がなく、容易な取り扱いのために望ましい特性を呈した。
【0090】
当業者は、本明細書において提供される全ての回折パターンデータが、絶対として見なされるべきでないこと、したがって、本発明のニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶が、図1、3、5、7、8、9、11、15、及び17と同一のXRPDパターンを有する粒子に限定されないことを理解するであろう。図1、3、5、7、8、9、11、15、及び17のものと実質的に同じXRPDパターンを有するいずれのニコチン塩、共結晶、または塩共結晶も、本発明の範囲内であると考えられる。X線粉末回折に関する当業者は、X線粉末回折パターンの実質的同一性を判断することができる。一般に、X線粉末ディフラクトグラムにおける回折角の測定誤差は、約2θ=0.5°以下(より好適には、約2θ=0.2°以下)であり、そのような測定誤差の程度は、図1、3、5、7、8、9、11、15、及び17のX線粉末回折パターン、または本明細書において提供されるピーク値を考慮する場合に酌量すべきである。換言すれば、図1、3、5、7、8、9、11、15、及び17におけるピーク、及び明細書全体で付与されるピーク値は、ある特定の実施形態において、+/-0.5°または+/-0.2°であるものとして見なされ得る。Fundamentals of Powder Diffraction and Structural Characterization,Pecharsky and Zavalij,Kluwer Academic Publishers,2003を参照されたい。
【0091】
他のニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶もまた、本開示によって包含される。薬学的に許容される対イオンの一覧については、参照により本明細書に組み込まれる、Handbook of Pharmaceutical Salts-Properties,Selection,and Use,P.Heinrich Stahl,Camille G.Wermuth(Eds.)VHCA(Verlag Helvetica Chemica Acta -Zurich),Wiley-VCH(New York)2002を参照されたい。例えば、塩、共結晶、または塩共結晶の形成をもたらし得る、ニコチンとの反応に有用なある特定の共形成剤としては、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、カプリン(デカン)酸、クエン酸、D-グルクロン酸、D-グルコン酸、DL-乳酸、L-乳酸、ガラクタル(ムチン)酸、ヒプリン(N-ベンゾイルグリシン)酸、塩酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、ラウリン酸、DL-リンゴ酸、L-リンゴ酸、DL-酒石酸、L-酒石酸、パルミチン酸、リン酸、セバシン(1,8-オクタンジカルボン)酸、ステアリン(オクタデカン)酸、コハク酸、硫酸、及びチオシアン酸(HS-CN)が挙げられるが、これらに限定されない。塩、共結晶、または塩共結晶の形成をもたらし得る、ニコチンとの反応のための他の例示的な共形成剤としては、(+)-カンフル酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ(キシナホ)酸、2,5-ジヒドロキシ安息香(ゲンチジン)酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カプリル(オクタン)酸、シクラミン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、D-グルコヘプトン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、イソブチル酸、ケトグルタル(2-オキソ-グルタル)酸、2-ケトブチル酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ニコチン酸、オレイン(Z-オクタデカン)酸、オロト酸、オキサル酸、パモ酸、ピバル酸、プロピオン酸、L-ピログルタミン酸、及びp-トルエンスルホン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
ある特定の他の種類の共形成剤は、一般に、薬理効果と関連付けられ、典型的に、塩、共結晶、及び塩共結晶の調製には好ましくない。そのような共形成剤とのニコチンの複合体は、好ましくない場合があるが、ある特定の特殊な実施形態において、それらは、ニコチンと反応して、塩、共結晶、及び/または塩共結晶を形成し得る。そのような共形成剤としては、(1S)-カンフル-10-スルホン酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノサリチル酸、N-アセチル-4-アミノサリチル酸、カプロン(ヘキサン)酸、ジクロロ酢酸、臭化水素酸、DL-マンデル酸、L-マンデル酸、硝酸、ギ酸、サリチル酸、桂皮(例えば、トランス桂皮)酸、及びウンデシレン酸が挙げられるが、これらに限定されない。ニコチンとの塩、共結晶、及び/または塩共結晶を形成し得る他の例示的な共形成剤としては、イソチオン酸、ラウリン(ドデカン)酸、2-ヒドロキシ安息香酸、トランス-2-ヘキサン酸、トリメシン酸、及び5-ニトロイソフタル酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
様々な他の共形成剤を使用して、塩、共結晶、または共結晶塩の形態のニコチンを提供することができる。例示的な共形成剤としては、L-プロリン、トロメタミン;尿素、キシリトール;カフェイン;グリシン/グリシン無水物;バニリン;メチル4-ヒドロキシ安息香酸(メチルパラベン);スクシンアミド;L-アラニン;マンニトール;L-フェニルアラニン;サッカリン;プロピルパラベン;N-メチルグルカミン;L-チロシン;ゲンチジン酸;ソルビン酸;安息香酸;L-メチオニン;マルトール;L-リシン、トロメタミン;ニコチンアミド;イソニコチンアミド;フェニルアラニン;ベンゾキノン;テレフタルアルデヒド;2,4-ジヒドロキシ安息香酸;及び4-ヒドロキシ安息香酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
追加の共形成剤としては、ピルビン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4-アミノ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、バニリン酸、エチルバニリン、イソニコチン酸、没食子酸、メントール(例えば、ラセミメントールまたは(-)-メントール)、パラセタモール、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、グルコース、セリン、リンゴ酸、アセトアミド、スルファセタミド、安息香酸、4-アミノ安息香酸、クレアチン、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、クロフィブリン酸、タウリン(タウリン酸)、イプロニアジド、L-ヒスタジン、L-アルギニン、L-アスパラギン、グルタミン、L-システイン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、モルホリン、トレオニン、及びN-メチルグルカミンが挙げられる。
【0095】
ニコチン塩、共結晶、または共結晶塩を提供することができる、ある特定の例示的な共形成剤は、砂糖系酸(すなわち、カルボキシル基を有する単糖類)である。砂糖酸の代表的な種類としては、アルドン酸(例えば、グリセリン酸、キシロン酸、グルコン酸、及びアスコルビン酸)、ウロソン酸(例えば、ノイラミン酸及びケトデオキシオクツロソン酸)、ウロン酸(例えば、グルクロン酸、ガラクツロン酸、及びイズロン酸)、ならびにアルダリン酸(例えば、酒石酸、メソ-ガラクタル酸/ムチン酸、及びD-グルカリン酸/サッカリン酸)が挙げられる。好ましい一実施形態において、本開示に従うニコチン塩、共結晶、または塩共結晶を提供するために使用される1つまたは複数の共形成剤は、アルダリン酸であり、特定の好ましい実施形態において、アルダリン酸は、ムチン酸(ガラクタル酸またはメソ-ガラクタル酸とも称される、(2S,3R,4S,5R)-2,3,4,5-テトラヒドロキシヘキサン二酸)である。
【0096】
ニコチン共結晶、塩、または共結晶塩を提供することができる他の例示的な共形成剤は、多官能性芳香族酸である。多官能性芳香族酸は、多くの場合、置換または非置換フェニル基を芳香族成分として含むが、代替として、別の芳香族部分、例えば、ピリジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チオフェン、ナフタレン、アントラセン、及びフェナントレンを含み得る。随意に置換された芳香族酸上の置換基は、任意の種類の置換基であってもよく、ハロ(例えば、Cl、F、Br、及びI);アルキル、ハロゲン化アルキル(例えば、CF、2-Br-エチル、CHF、CHCl、CHCF、またはCFCF);アルケニル、ヒドロキシル;アミノ;カルボン酸塩;カルボキシアミド;アルキルアミノ;アリールアミノ;アルコキシ;アリールオキシ;ニトロ;アジド;シアノ;チオ;スルホン酸;硫酸塩;リン酸;リン酸塩;ならびにリン酸塩基が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な多官能性芳香族酸は、例えば、
置換及び非置換芳香族ジカルボン酸(例えば、1,2-ベンゼンジカルボン酸(フタル酸)、1,3-ベンゼンジカルボン酸(イソフタル酸)、1,4-ベンゼンジカルボン酸(テレフタル酸)、2-ヨード-1,3-ベンゼンジカルボン酸、2-ヒドロキシ-1,4-ベンゼンジカルボン酸、2-ニトロ-1,4-ベンゼンジカルボン酸、3-フルオロ-1,2-ベンゼンジカルボン酸、3-アミノ-1,2-ベンゼンジカルボン酸、3-ニトロ-1,2-ベンゼンジカルボン酸、4-ブロモ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、4-ヒドロキシ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、4-アミノ-1,2-ベンゼンジカルボン酸、4-ニトロ-1,2-ベンゼンジカルボン酸、4-スルホ-1,2-ベンゼンジカルボン酸、4-アミノ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、5-ブロモ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、5-ヒドロキシ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、5-アミノ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、5-ニトロ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、5-エチニル-1,3-ベンゼンジカルボン酸、5-シアノ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、5-ニトロ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、2,5-ヒドロキシ-1,4-ベンゼンジカルボン酸、及び2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-ベンゼンジカルボン酸;
置換及び非置換ヒドロキシ安息香酸(例えば、2-ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2-メチル-4-ヒドロキシ安息香酸、3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ安息香酸、4-エトキシ-2-ヒドロキシ安息香酸、3-クロロ-5-ヒドロキシ安息香酸、5-クロロ-2-ヒドロキシ安息香酸、3-ブロモ-4-ヒドロキシ安息香酸、3-ブロモ-5-ヒドロキシ安息香酸、4-ブロモ-2-ヒドロキシ安息香酸、5-ブロモ-2-ヒドロキシ安息香酸、2-フルオロ-5-ヒドロキシ安息香酸、3-フルオロ-4-ヒドロキシ安息香酸、3-フルオロ-2-ヒドロキシ安息香酸、3-フルオロ-5-ヒドロキシ安息香酸、2-フルオロ-6-ヒドロキシ安息香酸、4-フルオロ-3-ヒドロキシ安息香酸、2-フルオロ-4-ヒドロキシ安息香酸、5-フルオロ-2-ヒドロキシ安息香酸、2-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸、2-アミノ-5-ヒドロキシ安息香酸、3-アミノ-2-ヒドロキシ安息香酸、3-アミノ-4-ヒドロキシ安息香酸、3-アミノ-5-ヒドロキシ安息香酸、4-アミノ-2-ヒドロキシ安息香酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸、5-アミノ-2-ヒドロキシ安息香酸(メサラミン)、5-アミノエチル-2-ヒドロキシ安息香酸、4-ホルミル-3-ヒドロキシ安息香酸、3-ホルミル-4-ヒドロキシ安息香酸、5-(アセチルアミノ)-2-ヒドロキシ安息香酸)、4-ニトロ-2-ヒドロキシ安息香酸、3,5-ジエチル-4-ヒドロキシ安息香酸、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ安息香酸、3,5-ジイソプロピル-2-ヒドロキシ安息香酸、3,4-ジメトキシ-4-ヒドロキシ安息香酸(シリンガ酸)、3,5-ジクロロ-2-ヒドロキシ安息香酸、3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシ安息香酸、3,6-ジクロロ-2-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジフルオロ-4-ヒドロキシ安息香酸、3,4-ジフルオロ-2-ヒドロキシ安息香酸、3,5-ジブロモ-2-ヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヨード-2-ヒドロキシ安息香酸、4-アミノ-5-クロロ-2-ヒドロキシ安息香酸、3,5-ジニトロ-2-ヒドロキシ安息香酸、2,4,6-トリブロモ-2-ヒドロキシ安息香酸、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-ヒドロキシ安息香酸、及び2,3,4,5-テトラフルオロ-6-ヒドロキシ安息香酸);
置換及び非置換ジヒドロキシ安息香酸(例えば、2,3-ジヒドロキシ安息香酸(ピロカテキン酸/乳汁酸)、2,4-ジヒドロキシ安息香酸(β-レソルシル酸)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(ゲンチジン酸/ヒドロキノンカルボン酸)、2,6-ジヒドロキシ安息香酸(γ-レソルシル酸)、3,4-ジヒドロキシ安息香酸(プロトカテキン酸)、3,5-ジヒドロキシ安息香酸(α-レソルシル酸)、4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸(バニリン酸)、6-メチル-2,4-ジヒドロキシ安息香酸(オルセレン酸)、4-ブロモ-3,5-ジヒドロキシ安息香酸、5-ブロモ-2,4-ジヒドロキシ安息香酸、5-ブロモ-3,4-ジヒドロキシ安息香酸、6-カルボキシメチル-2,3-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジブロモ-2,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジクロロ-2,6-ジヒドロキシ安息香酸、及び5-アミノ-3-クロロ-2,4-ジヒドロキシ安息香酸);ならびに
置換及び非置換トリヒドロキシ安息香酸(例えば、2,3,4-トリヒドロキシ安息香酸、2,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸(フロログルシノールカルボン酸)、及び3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸(没食子酸))。
置換及び非置換芳香族トリカルボン酸(例えば、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリト酸);ならびに
置換及び非置換芳香族テトラカルボン酸(例えば、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸(メロファン酸)及び1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリト酸)であり得る。
【0097】
ある特定の実施形態において有用な他の共形成剤は、香味酸であり、3-ヒドロキシ-2-オキソプロピオン酸;2-オキソ酪酸(2-ケト酪酸)、3-メチル-2-オキソブタン酸;3-メチル-2-オキソペンタン酸;4-メチル-2-オキソペンタン酸;及び2-オキソペンタン二酸が挙げられるが、これらに限定されない。2-オキソ-3-フェニルプロピオン酸、5-オキソオクタン酸、及び5-オキソデカン酸などの追加の共形成剤は、より高い分子量を有し得る。
【0098】
本明細書に記載されるある特定の共形成剤が、(R)もしくは(S)構成のいずれかであり得るか、またはそれらの混合物を含み得る、1つ以上のキラル中心を含有し得ることに留意されたい。結果として、様々なジアステレオマーニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶は、本開示に従って提供され得る。本発明は、そのようなジアステレオマーを、個別に含むか、または任意の比率で混和されるかのいずれかである。本明細書に記載されるある特定の共形成剤は、二重結合を超えるシス及びトランス異性体が挙げられるが、これに限定されない幾何異性体であってもよい。本発明は、そのような異性体で調製された全てのニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶を含み、これらは、純粋な異性体の形態で、または他の異性体との混和物で提供され得る。
【0099】
本明細書に記載されるニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶が生成され得る方法(複数可)は、異なり得る。いくつかの実施形態において、溶媒を使用せずに(または最小量の溶媒を使用して)ニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶を調製する。いわゆる「無溶媒」方法において、溶媒は一般に使用されないが、1つ以上の溶媒が、混合物に(典型的に少量で)随意に添加されてニコチン塩、共結晶、または塩共結晶の形成を促進し得ることに留意されたい。ある特定の実施形態において、成分(すなわち、ニコチン及び1つ以上の共形成剤)を、溶媒の不在下で複合してスラリーを形成する。ニコチン塩、共結晶、及び/または塩共結晶を含む固体は、一般的な方法(例えば、濾過)を介してそれから単離され得る。スラリーは、随意に加熱されてもよく、それによりニコチン及び1つ以上の共形成剤が溶融形態で相互作用して、塩、共結晶、または塩共結晶を生成する。ある特定の実施形態において、物理的方法を使用して、成分(すなわち、ニコチン及び1つ以上の共形成剤)を複合する。例えば、ニコチン及び共形成剤(複数可)は一緒に、機械的に(例えば、モルタル及び乳棒、ボールミル、または振動ミルを使用して)研磨され得る。
【0100】
ある特定の実施形態において、所与の溶媒(もしくは複数の溶媒)中のニコチン及び共形成剤の複合、及びその溶媒の蒸発は、所望のニコチン塩、共結晶、または塩共結晶をもたらし得る。典型的に、そのような方法において、ニコチン及び共形成剤は、化学量論的量でもたらされる(すなわち、過剰なニコチンまたは共形成剤が添加されない)。そのような方法において、反応が行われる溶媒(または複数の溶媒)が分子間相互作用に影響を及ぼし得るため、溶媒の選択は重要である。溶媒の蒸発を制御された速度で(例えば、ゆっくり)行い、特徴付けのための単一ニコチン塩、共結晶、または塩共結晶の結晶の調製を促進することができる。例えば、溶媒の蒸発は、数時間、数日、数週間、または数ヶ月にわたって行われ得る。
【0101】
いくつかの実施形態において、所与の溶媒(もしくは複数の溶媒)中のニコチン及び共形成剤の複合、及び非溶媒の添加は、所望のニコチン塩、共結晶、または塩共結晶をもたらし得る。ニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶の調製に使用され得る例示的な溶媒及び非溶媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-ブタノール、イソプロパノール)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、石油エーテル)、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、アルカン(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、シクロヘキサン)、ベンゼン、トルエン、1,4-ジオキサン、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶は、超臨界液中で調製され得る。
【0102】
他の実施形態において、所望のニコチン塩、共結晶、または塩共結晶は、ニコチン及び1つ以上の共形成剤の溶液の凍結乾燥及び後次の熟成によって調製され得る。例えば、溶液を調製、冷凍、及び凍結乾燥して溶媒を除去してもよい。次に熟成溶媒を添加し、結果として得られる固体は、一般的な方法(例えば、濾過)によって得ることができる。熟成溶媒としては、上記の溶媒の種類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
本明細書に記載されるニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶の生成の方法は、いくつかの実施形態において、過剰な共形成剤成分を用いる。そのような実施形態において、結果として得られる塩、共結晶、または塩共結晶を、過剰な共形成剤(すなわち、その共形成剤は、塩、共結晶、または塩共結晶の構造の一部ではない)をそれから除去することによって精製することが有利に可能であり得る。
【0104】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載されるニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶の調製に適用可能であり得る、塩、共結晶、または塩共結晶形成のための例示的な方法は、例えば、米国特許第8,513,236号(Schultheissら);同第8,470,832号(Georgeら);同第8,466,280号(Grunenbergら);同第8,415,507号(Schultheissら);同第8,350,085号(Childs);同第8,241,371号(Hannaら);同第8,212,079号(Childs);同第8,173,625号(Brittainら);同第8,163,790号(Childs);同第8,197,592号(Imamuraら);同第8,058,437号(Bauerら);同第7,935,817号(Blazeckaら);同第7,927,613号(Almarssonら);同第7,452,555号(Childs);同第7,008,742号(Molaire);米国特許出願公開第2013/0203806号(Chorltonら);同第2013/0072440号(Dokouら);同第2013/0040970号(Cosgroveら);同第2012/0258170号(Kruthiventiら);同第2012/0028998号(Sansoneら);同第2012/0028930号(Kalofonosら);同第2012/0022117号(Grussら);同第2011/0257340号(Childs);同第2011/0251426号(Hannaら);同第2011/0236478号(Dokouら);同第2011/0152266号(Grunenbergら);同第2010/0204204号(Zaworotkoら);同第2008/0280858号(Hannaら)、同第2007/0287194号(Childsら);同第2003/0224006号(Zaworotkoら);及び同第2002/0048610号(Cimaら)に開示されており、これらは全て参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。ある特定のニコチン塩の形成のための例示的な手段を提供する他の参考文献としては、M.Dezelic and B.Nikolin,″Nicotine Compounds with Aromatic Acids.Part II.,″Glasnik Drustva Hemicara Technol.N.R.Bosne I Hercegovine,Sarajevo,10(1961)55-62、及びM.Dezelic and D.Tomic,″Nicotine Compounds with Aromatic Acids,″Kem.Vjestnik 17(1943):39-57が挙げられ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
ニコチンムチン酸塩の調製について、一実施形態において、塩は、酸及びニコチンを溶媒の不在下で複合することによってもたらされる。いくつかの実施形態において、過剰のニコチンを反応混合物に添加し、(例えば、真空によって、ならびに/または例えばTHF、ヘプタン、及び/もしくはEtOAcを用いる洗浄/濾過によって)有利に過剰なニコチンを除去する。
【0106】
本明細書に記載される新規の多形形態のニコチン4-アセトアミド安息香酸塩の調製について、一実施形態において、塩は、酸及びニコチンを溶媒の不在下で複合することによってもたらされる。例えば、一実施形態において、4-アセトアミド安息香酸は、移動スラリーを生成するために必要な最小量のニコチンに懸濁され、それを撹拌/振動させてニコチン塩を形成する。別の実施形態において、溶媒(例えば、THF)を使用して、塩形成を促進する。例えば、4-アセトアミド安息香酸をTHFに溶解することができ、ニコチンをそれに添加することができ、結果として得られる混合物を撹拌/振動させて塩を生成することができる。溶媒を(例えば、蒸発によって)除去して、所望のニコチン4-アセトアミド安息香酸塩形態をもたらすことができる。いくつかの実施形態において、固体は、例えば、THF、ヘプタン、及び/またはEtOAcを用いて洗浄される。
【0107】
本明細書に記載される新規の多形形態のニコチンゲンチジン酸塩の調製について、一実施形態において、塩は、酸及びニコチンを溶媒の不在下で複合することによってもたらされる。例えば、一実施形態において、ゲンチジン酸は、移動スラリーを生成するために必要な最小量のニコチンに懸濁され、それを撹拌/振動させてニコチン塩を形成する。別の実施形態において、溶媒(例えば、THF)を使用して、塩形成を促進する。例えば、4-アセトアミド安息香酸をTHFに溶解することができ、ニコチンをそれに添加することができ、結果として得られる混合物を撹拌/振動させて塩を生成することができる。溶媒を(例えば、蒸発によって)除去して、所望のニコチン4-アセトアミド安息香酸塩をもたらすことができる。いくつかの実施形態において、固体は、例えば、THF、及び/またはヘプタンを用いて洗浄される。
【0108】
本明細書に記載されるニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩の調製について、一実施形態において、塩は、酸及びニコチンを溶媒(例えば、THFまたはアセトン)中で複合することによってもたらされる。例えば、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、続いてニコチンをTHFまたはアセトンに溶解することができ、結果として得られる混合物を撹拌/振動させて固体の塩を得ることができる。溶媒を(例えば、蒸発によって)除去し、随意に上記のように(例えば、ヘプタンを用いて)洗浄して、所望の3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩をもたらすことができる。ある特定の実施形態において、この方法は、無水形態をもたらし、これは、(例えば、無水形態を上昇した湿度レベル、例えば、25℃で96%の相対湿度に16時間曝露することによって)本明細書に記載される二水和形態などの水和形態に容易に変換され得る。可変量の湿度、温度、及び時間が、水和(例えば、二水和)形態をもたらし得ることが理解される。
【0109】
本明細書に記載されるニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩の調製について、一実施形態において、塩は、純ニコチン中(溶媒の不在下)で調製され得る。別の実施形態では、溶媒が用いられ得る。例えば、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、続いてニコチンをTHFに溶解することができ、結果として得られる混合物を撹拌/振動させて固体の塩を得ることができる。溶媒を(例えば、蒸発によって)除去し、随意に上記のように(例えば、ヘプタンを用いて)洗浄して、所望のニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩をもたらすことができる。
【0110】
本明細書に記載されるニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩形態の調製について、一実施形態において、塩は、純ニコチン中(溶媒の不在下)で調製され得る。別の実施形態では、溶媒が用いられ得る。例えば、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、続いてニコチンをTHFに溶解することができ、結果として得られる混合物を撹拌/振動させて固体の塩を得ることができる。溶媒を(例えば、蒸発によって)除去し、随意に上記のように(例えば、ヘプタンを用いて)洗浄して、所望の多形結晶形態のニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩をもたらすことができる。
【0111】
望ましくは、単結晶X線回折(SCXRD)を、いくつかの実施形態において使用して、固体の構成(すなわち、ニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶)を決定することができる。しかしながら、好適なX線品質結晶は、常に容易に生成され得るとは限らない。したがって、X線粉末回折(XRPD)、Raman分光法、FTIR分光法、振動分光法、偏光顕微鏡(PLM)、及び固体NMRが挙げられるが、これらに限定されない様々な他の固体分光技法を使用することができる。本明細書に記載されるニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶は、例えば、13C NMR及びH NMRなどの技法を(好適な溶媒中、例えば、DOまたはDMSO-d中で)使用して化学構造を評価し、重量測定蒸気吸着(GVS)を使用して吸湿性を評価し、熱重量測定分析(TGA)及び示差走査熱量測定(DSC)を使用して熱特性を評価し、及び/または好適な溶媒中でクロマトグラフィー(例えば、HPLC)を使用して純度を評価することができる。本明細書に記載される製品を、カールフィッシャー滴定を介してさらに分析して含水量を決定することができる。
【0112】
場合によっては、共結晶と塩とを区別することが困難であることに留意されたい。典型的に、塩を共結晶から区別することは、プロトン移動の証拠を必要とし、これは単結晶X線回折を用いても直接特定されない場合がある。換言すれば、塩を共結晶から区別することは、一般に、単なる非イオン性相互作用とは反対に、イオン性相互作用の証拠を必要とする。したがって、本明細書に記載される新規の組成物が塩として記載されているが、いくつかの実施形態において、所与の製品が塩、共結晶、もしくは塩共結晶形態で、またはいくつかの種類の中間形態で存在する(例えば、プロトンが塩基部位に移動していないが、ドナー共形成剤とアクセプターとの間の空間に存在し得る)かどうかは既知でないことに留意されたい。
【0113】
本明細書に記載されるニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶は、タバコ含有製品を含む様々な製品に組み込まれ得る。異なる種類の製品における使用のためのニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶の重要な特徴は、下で詳述されるように異なる。
【0114】
本明細書において提供されるニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶は、いくつかの実施形態において、喫煙物品の製造における組成物として使用され得る。例えば、本発明に従って調製される塩、共結晶、及び塩共結晶は、ケーシング材料と混合され、ケーシング原料として、またはトップドレッシングとしてタバコに適用され得る。なおもさらに、本開示の塩、共結晶、及び塩共結晶は、紙巻きタバコの製造プロセス中に、紙巻きタバコのフィルター(例えば、フィルタープラグ、プラグラップ、もしくはチッピングペーパー)に組み込まれ得るか、または紙巻きタバコの巻き紙に、好ましくは内面に組み込まれ得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2012/0192880号(Dubeら)に記載される、喫煙物品において使用されるタバコ単離体に関する説明及び参考文献を参照されたい。代表的なタバコブレンド、非タバコ成分、及びそれから製造された代表的な紙巻きタバコもまた、上記のDubeらの参考文献に記載されている。
【0115】
典型的に、喫煙物品に組み込まれるニコチン塩、共結晶、または塩共結晶の量は、それから生成された主流煙中に所望の量の遊離ニコチンを提供するのに十分な量である。例えば、いくつかの実施形態において、喫煙物品は、約0.1mg~約10mg、約0.5mg~約9mg、または約1mg~約8mgの量のニコチンを提供し得る。したがって、喫煙物品に組み込まれるニコチン塩、共結晶、または塩共結晶の量は、例えば、その物品が使用される場合にこれらの量のニコチンを生成するのに十分な量であり得る。
【0116】
図19を参照して、紙巻きタバコの形態の、本発明の配合物を含有し得る喫煙物品のある特定の代表的な成分を有する喫煙物品10が示される。紙巻きタバコ10は、外接する巻き材料16に含有された充填物の略円筒形の棒12または喫煙可能なフィラー材料のロール(例えば、約0.3g~約1.0gの喫煙可能なフィラー材料、例えばタバコ材料)を含む。棒12は、従来「タバコ棒」と称される。タバコ棒12の末端は、喫煙可能なフィラー材料を曝露するように開いている。紙巻きタバコ10は、巻き材料16に適用された1つの随意のバンド22(例えば、デンプン、エチルセルロース、またはアルギニン酸ナトリウムなどのフィルム形成剤を含む印刷されたコーティング)を有するものとして示され、そのバンドは、紙巻きタバコの長手方向軸に対して垂直方向に紙巻きタバコに外接する。バンド22は、巻き材料の内面(すなわち、喫煙可能なフィラー材料に面する)、またはあまり好ましくないが、巻き材料の外面に印刷され得る。
【0117】
タバコ棒12の末端は、点火端18であり、口端20にフィルター要素26が位置付けられる。フィルター要素26は、フィルター要素及びタバコ棒が末端間関係で軸方向に整列されるように、タバコ棒12の一端に隣接して位置付けられ、好ましくは互いに隣接する。フィルター要素26は、略円筒形状を有してもよく、その直径は、タバコ棒の直径と本質的に等しくてもよい。フィルター要素26の末端は、それを通る空気及び煙の通過を許す。
【0118】
通気または空気希釈された喫煙物品は、各々がチッピング材料及びプラグラップを通して延びる、一連の穿孔30などの随意の空気希釈手段を用いて提供され得る。任意の穿孔30は、レーザー穿孔技法などの当業者に既知の様々な技法によって作製され得る。代替として、いわゆるオフライン空気希釈技法を使用することができる(例えば、多孔質紙プラグラップ及び予穿孔されたチッピング紙の使用による)。本発明の塩は、喫煙物品の成分のうちのいずれかに、限定されないが、タバコ充填材の成分として、巻き紙の成分として(例えば、紙に含まれるか、または紙の内側もしくは外側にコーティングされる)、接着剤として、フィルター要素成分として、及び/または喫煙物品の任意の領域に位置するカプセル内に組み込まれ得る。
【0119】
ニコチン、共形成剤成分(もしくは複数の成分)、及びその任意の分解生成物がニコチン塩、共結晶、または塩共結晶から放出される温度は、喫煙物品の設定における関連考慮であり得る。ニコチンが、喫煙物品の燃焼温度で塩、共結晶、または塩共結晶から放出されること(すなわち、ニコチンが主流煙に移動し、使用者に送達されること)が典型的に重要である。いくつかの実施形態において、ある特定の望ましくない共形成剤及び/またはその分解生成物が、主流煙に移動しない(及び使用者に送達されない)ことも重要であり得る。関連温度は、喫煙物品内の塩、共結晶、または塩共結晶の特定の場所(複数可)に応じてわずかに異なり得る。例えば、ある特定の実施形態において、喫煙物品が燃焼する温度(及びしたがって塩が曝露される温度)は、少なくとも約100℃~少なくとも約200℃、または少なくとも約500℃であり、喫煙物品のある特定の領域では、約100℃~約500℃、喫煙物品の他の領域では約600℃~約900℃である。これらの考慮事項は、特定の用途に好適な塩、共結晶、または塩共結晶の選択に影響を及ぼし得る。
【0120】
他の実施形態において、本明細書に開示されるニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶は、無煙タバコ製品内に組み込まれ得る。本発明に従う代表的な無煙タバコ組成物は、様々な種類の形式及び構成を有し得、結果として、組成物の特徴、性質、挙動、密度、形状、形態、サイズ、及び重量が異なり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶は、ルース湿性嗅ぎタバコ(例えば、スヌース);ルース乾性嗅ぎタバコ;噛みタバコ;ペレット状タバコ片;押出または形成されたタバコストリップ、小片、棒、円筒、またはスティック;微細化砕粉末;粉末状小片及び成分の微細化または微粉砕凝集体;フレーク様小片;成型タバコ片;ガム;テープ様フィルムのロール;易水溶性または水分散性フィルムまたはストリップ;溶融性組成物;トローチ剤;ドロップ;ならびに外殻及び内部領域を有するカプセル様物質などの無煙タバコ製品に組み込まれ得る。代表的な組成物の形状は、略球状、円筒形(例えば、平坦化ディスクの一般形状~比較的長く、細いスティックの一般形状の範囲)、らせん状、偏円、正方形、矩形などであり得るか、または組成物は、ビーズ、顆粒粉末、結晶粉末、カプセル、フィルム、ストリップ、ゲルなどの形態を有し得る。組成物の形状は、種々のピル、錠剤、トローチ剤、カプセル、及びカプレット型の製品に類似し得る。様々な型の無煙タバコ製品は、米国特許公開第2013/0206150号(Dugginsら);同第2013/0074855号(Holton,Jr.);同第2012/0118310号(Cantrellら);同第2012/0138073号(Cantrellら);同第2012/0138074号(Cantrellら);及び同第2012/0152265号(Dubeら)において記載または参照され、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0121】
図20を参照して、本開示に従う1つ以上のニコチン塩、共結晶、または塩共結晶を含む代表的なスヌース型のタバコ製品が示される。具体的には、図20は、無煙タバコ組成物44を含有する透水性外側パウチ42を有する無煙タバコ製品40を示す。タバコ製品の成分のうちのいずれかは、本開示に従う1つ以上のニコチン塩、共結晶、または塩共結晶を含み得る(例えば、パウチ裏材の内側もしくは外側またはその中に含有される無煙タバコ組成物の一部分)。
【0122】
本明細書に記載される塩、共結晶、及び塩共結晶が組み込まれ得る他の例示的な無煙タバコ製品は、ガム、トローチ材、錠剤、マイクロタブ、または他の錠剤型製品の形態を有し得る。例えば、全て参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,967,773号(Shaw);同第5,110,605号(Acharya);同第5,733,574号(Dam);同第6,280,761号(Santus);同第6,676,959号(Anderssonら);同第6,248,760号(Wilhelmsen);及び同第7,374,779号;米国特許公開第2013/0074855号及び同第2013/0078307号(Holton,Jr.);同第2001/0016593号(Wilhelmsen);同第2004/0101543号(Liuら);同第2006/0120974号(Mcneight);同第2008/0020050号(Chauら);同第2009/0081291号(Ginら);及び同第2010/0004294号(Axelssonら);及び同第2013/0312774号(Holton,Jr.)に記載されるニコチン含有トローチ剤の種類、トローチ剤の配合物、トローチ剤の形式及び構成、トローチ剤の特徴、ならびにトローチ剤を配合または製造するための技法を参照されたい。
【0123】
本明細書に記載されるニコチン塩、共結晶、または塩共結晶のうちの1つ以上を含む無煙タバコ製品の1つの代表的な種類は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2013/0312774号、同第2013/0074856号、及び同第2013/0074855号(全てHolton,Jr.)に実質的に記載されるようなトローチ剤である。そのようなトローチ剤は、1つ以上のニコチン塩、共結晶、または塩共結晶に加えて、1つ以上の砂糖アルコール(例えば、イソマルト及びマルチトールシロップ)の大部分を、例えば、少なくとも約50重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、または少なくとも約90重量%の量で含み得る。そのようなトローチ剤製品中の特定の関心対象の他の原料としては、塩(例えば、NaCl)、甘味剤(例えば、スクラロース)、及び1つ以上の風味剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
無煙タバコ組成物に組み込まれるニコチン塩、共結晶、または塩共結晶の量は異なり得、部分的に、特定の種類の無煙タバコ組成物に依存し得る。明らかに、製品内に組み込まれる所与のニコチン塩、共結晶、または塩共結晶の量は、その製品の所望のニコチン含有量に依存し、共形成剤の質量、及び塩、共結晶、または塩共結晶の化学量論に基づいて計算され得る。例示的な量は、約0.1重量%の消費可能な材料~約10重量%の消費可能または吸入可能な材料を含む。例えば、トローチ剤について、ニコチン塩、共結晶、または塩共結晶の量は、少なくとも約0.5%、一般に少なくとも約1重量%、多くの場合、少なくとも約1.5重量%、多くの場合、少なくとも約2重量%、多くの場合、少なくとも約2.5重量%、及び頻繁に少なくとも約3重量%の製品、例えば、約0.5重量%~約10重量%、(約1重量%~約5重量%を含む)の製品である。ニコチン塩、共結晶、または塩共結晶の量は、トローチ剤中の所望のニコチン含有量に基づいて決定され得る。
【0125】
様々な他の物質は、本発明のニコチン塩、共結晶、または塩共結晶を含む無煙タバコ組成物に添加され得る。例えば、活性成分のフィラーまたは担体などの賦形剤(例えば、カルシウムポリカルボフィル、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、ラクトース、及びジャガイモデンプン、トウモロコシデンプンを含むデンプン)、増粘剤、フィルム形成剤及び結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アカシア、アルギニン酸ナトリウム、アラビアガム、レシチン、キサンタンガム、及びゼラチン)、抗接着剤(例えば、タルク)、滑剤(例えば、コロイドシリカ)、湿潤剤(例えば、グリセリン)、保存剤及び抗酸化剤(例えば、安息香酸ナトリウム及びパルミチン酸アスコルビル)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート80)、染料または顔料(例えば、二酸化チタンもしくはD&C黄色No.10)、及び潤滑剤または加工助剤(例えば、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸マグネシウム)を、ある特定の実施形態において、組成物に添加する。他の例示的な種類の原料としては、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなど)、天然甘味剤(例えば、フルクトース、スクロース、グルコース、マルトース、バニリン、エチルバニリングルコシド、マンノース、ガラクトース、ラクトースなど)、人工甘味剤(例えば、スクラロース、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK、ネオテームなど)、pH調整剤または緩衝剤(例えば、金属水酸化物、好ましくはアルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、ならびに他のアルカリ金属緩衝剤、例えば、炭酸金属、好ましくは炭酸カリウムもしくは炭酸ナトリウム、あるいは重炭酸金属、例えば重炭酸ナトリウムなど)、泡立ち材料、例えば、ある特定の酸/塩基の複合、口腔ケア添加剤(例えば、タイム油、ユーカリ油、及び亜鉛)、保存剤(例えば、ソルビン酸ナトリウムなど)、シロップ(例えば、ハチミツ、高フルクトースコーンシロップなど)、ならびにそれらの混合物が挙げられる。ある特定の実施形態において、無煙タバコ組成物は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2012/0037175号(Cantrellら)に記載される組成物などの、口腔内で溶解する(単に溶解することに対して)溶融可能な組成物を提供する脂質成分を含み得る。本明細書に開示される無煙タバコ製品内に含まれ得る例示的なカプセル化添加剤は、例えば、参照により既に本明細書に組み込まれている、国際公開第2010/132444号(Atchley)に記載されている。参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2012/0055494号(Huntら)、及び同第2012/0199145号(Byrdら)に記載される無煙タバコ成分も参照されたい。
【0126】
無煙タバコ製品を配合及び製造するために使用される様式及び方法は異なり得る。本明細書に記載されるニコチン塩、共結晶、または塩共結晶を含む原料は、押出、押圧、成型、噴霧などの技法によって複合され、所望の組成物に加工され得る。電子喫煙物品について上記の、ある特定の考慮事項は、無煙タバコ製品の設定において無関連であることに留意されたい。例えば、無煙タバコ製品において有用なニコチン塩、共結晶、または塩共結晶は、所与の温度でエアロゾル形態に移動する必要はない。無煙タバコ製品において、主な考慮事項は、それに含有されるニコチン塩、共結晶、または塩共結晶が、無煙タバコ製品が使用者の口に入れられたときに(すなわち、使用者の口内に無煙タバコ製品が滞留する間のいつか)ニコチンを提供し得ることである。したがって、ある種類のタバコ製品に有用なある特定のニコチン塩、共結晶、または塩共結晶は、その他に有用でない場合がある。
【0127】
ある特定の実施形態において、本開示に従って提供されるニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶は、電子喫煙物品に組み込まれる。本開示に従うニコチン塩、共結晶、または塩共結晶を組み込む電子喫煙物品200の例示的な実施形態を、図21に示す。そこで示されるように、制御本体202は、制御構成要素206、フローセンサー208、バッテリー210、及びLED212を含み得る筐体201から形成され得る。電子喫煙物品はまた、貯蔵器内に保管されたエアロゾル前駆体を灯心するか、または他の方法で加熱器234(例えば、輸送要素の少なくとも一部分の周りに巻かれ得る抵抗性加熱ワイヤ)に輸送するように適合された輸送要素236と流体連通する貯蔵器244を取り囲む筐体203から形成され得るカートリッジ204を備えてもよい。例示的な貯蔵器及び輸送要素は、米国特許公開第2014/0261487号(Chapmanら)に開示され、例示的な加熱器は、米国特許公開第2014/0157583号(Wardら)に開示され、これらの開示は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。開口部228は、その口端205においてカートリッジ筐体203内に存在し、カートリッジ204から形成されたエアロゾルの退出を可能にすることができる。そのような構成要素は、制御本体及び/またはカートリッジ内に存在し得る構成要素の代表であり、本開示によって包含される構成要素の範囲を制限することを意図しない。
【0128】
カートリッジ204は、制御本体の突出部224とカートリッジのレセプタクル240との間の圧入係合を通じて制御本体202と係合するように適合され得る。そのような係合は、制御本体202とカートリッジ204との間の安定した接続を促進し得るとともに、制御本体内のバッテリー210及び制御構成要素206と、カートリッジ内の加熱器234との間の電気接続を確立することができる。他の種類の接続(例えば、ネジ接続)も包含される。電子喫煙物品200は、吸気のために適合されてもよく、例えば、米国特許公開第2014/0261408号(DePianoら)(この開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるようなカプラーにおいて提供され得る。カートリッジ204は、IC、メモリ構成要素、センサなどを含み得る、1つ以上の電子構成要素250を含んでもよい。電子構成要素250は、入力を提供するように制御構成要素206と通信するように適合されてもよい。例えば、米国特許公開第2014/0096781号(Searsら)、及び同第2014/0096782号(Ampoliniら)を参照されたい(これらの開示は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる)。
【0129】
電子喫煙物品は、電子エアロゾル送達デバイスを形成する際に有用な構成要素の様々な組み合わせを包含し得る。例えば、以下、すなわち米国特許公開第2014/0000638号(Sebastianら)に開示される複数のエアロゾル化可能な材料の制御可能な送達のための貯蔵器及び加熱器システム;米国特許公開第2014/0060554号(Collettら)に開示されるマイクロヒーター;米国特許公開第2013/0255702号(Griffith,Jr.ら)に開示される炭素系カートリッジ及びその構成要素;米国特許公開第2014/0060555号(Changら)に開示されるような単回使用カートリッジ;米国特許公開第2014/0209105号(Searsら)に開示されるようなエアロゾル前駆体輸送要素;米国特許公開第2014/0261495号(Novak,IIIら)に開示されるようなアダプターなどの充電構成要素;米国特許公開第2015/0020825号(Gallowayら)に開示されるような振動構成要素;米国特許公開第2010/0028766号(Peckerarら)に開示されるようなバッテリーを参照する。
【0130】
代表的な種類のエアロゾル前駆体構成要素及び配合はまた、米国特許第7,217,320号(Robinsonら)、及び米国特許公開第2013/0008457号(Zhengら);同第2013/0213417号(Chongら);同第2014/0060554号(Collettら);同第2015/0020823号(Lipowiczら);及び同第2015/0020830号(Koller)、ならびに国際公開第2014/182736号(Bowenら)に記載され、特徴付けられている(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。用いることができる他のエアロゾル前駆体としては、R.J.Reynolds Vapor CompanyによるVUSE(登録商標)製品に組み込まれたエアロゾル前駆体、Lorillard TechnologiesによるBLU(商標)製品、Mistic EcigsによるMISTIC MENTHOL製品、及びCN Creative Ltd.によるVYPE製品が挙げられる。Johnson Creek Enterprises LLCから入手可能な電子紙巻きタバコのためのいわゆる「煙汁」も望ましい。
【0131】
ある特定の実施形態において、エアロゾル前駆体は、本明細書に開示されるニコチン塩、共結晶、または塩共結晶を含む。一実施形態において、エアロゾル前駆体組成物は、例えば、多価アルコール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、もしくはそれらの組み合わせ)、水、本明細書に記載されるニコチン塩、共結晶、または塩共結晶、及び風味材料(例えば、メントール)を含み得る。例示的な風味剤としては、バニリン、エチルバニリン、クリーム、紅茶、コーヒー、果物(例えば、リンゴ、サクランボ、イチゴ、モモ、ならびにライム及びレモンを含むシトラス風味)、メープル、メントール、ミント、ペパーミント、スペアミント、ウィンターグリーン、ナツメグ、クローブ、ラベンダー、カルダモン、ジンジャー、ハチミツ、アニス、セージ、シナモン、サンダルウッド、ジャスミン、カスカリラ、ココア、リコリス、ならびに紙巻きタバコ、葉巻、及びパイプタバコの風味に伝統的に使用される種類及び特徴の風味剤及び風味パッケージが挙げられる。高フルクトースコーンシロップなどのシロップも用いられ得る。風味剤としては、酸性または塩基性特徴を含み得る(例えば、レブリン酸、コハク酸、及びピルビン酸などの有機酸)。代表的な種類のエアロゾル前駆体組成物は、米国特許第4,793,365号(Sensabaugh,Jr.ら)、米国特許第5,101,839号(Jakobら)、米国特許公開第2013/0008457号(Zhengら)、及びChemical and Biological Studies on New Cigarette Prototypes that Heat Instead of Burn Tobacco,R.J.Reynolds Tobacco Company Monograph(1988)に記載されている。前述の文書の全ての開示は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0132】
1つ以上の酸成分は、例えば、エアロゾル前駆体及びそれから生成されるエアロゾルの感覚特徴を修正するために、エアロゾル前駆体内に含まれ得る。有機酸は、特に、ニコチンの風味、感覚、及び/または感覚受容特性に影響を及ぼすようにエアロゾル前駆体に組み込まれてもよい。そのような有機酸は、(総有機酸含有量に基づいて)ニコチンと等モル超~等モル未満の範囲の可変量のニコチンと共に、エアロゾル前駆体に含まれ得る。有機酸の範囲は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Perfetti,Beitrage Tabakforschung Int.,12、43-54(1983)に記載されるような実施形態に従って使用され得る。有用であり得る、ある特定の例示的な有機酸としては、酒石酸、アスコルビン酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、アスパラギン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、N-アセチル-4-アミノサリチル酸、p-トルエンスルホン酸、コハク酸、ピルビン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、α-メチル酪酸、2-ケト酪酸、イソ吉草酸、β-メチル吉草酸、カプロン酸、2-フロン酸、フェニル酢酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、オキサル酸、マロン酸、グリコール酸、レブリン酸、4-アミノ安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、バニリン酸、ムチン酸、シクラミン酸、ベンゼンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ケトグルタル酸、D-グルクロン酸、マレイン酸、グルタミン酸、L-ピログルタミン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、没食子酸、フタル酸、マンデル酸、ヒプリン酸、桂皮酸、アジピン酸、オロト酸、ソルビン酸、クロフィブリン酸、タウリン酸などの酸、及び2つ以上のそのような有機酸の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ニコチンの代わりにニコチン塩、共結晶、または塩共結晶を使用することによって、ある特定の実施形態において、エアロゾル前駆体内に有利に組み込まれる酸の量を低減及び/または排除することが可能であり得る。
【0133】
喫煙物品内で使用されるエアロゾル前駆体組成物の量は、その物品が、許容される感覚及び感覚受容特性、ならびに望ましい性能特性を呈するような量である。例えば、グリセリン及び/またはプロピレングリコールなどの、多くの点でタバコの煙の外観に類似する目に見える主流エアロゾルの生成をもたらすために十分なエアロゾル前駆体組成物成分が用いられることが非常に好ましい。典型的に、喫煙物品に組み込まれるエアロゾル生成材料の量は、約1.5g以下、約1g以下、または約0.5g以下の範囲である。エアロゾル前駆体組成物の量は、喫煙物品と共に使用されるカートリッジ当たりの所望される一吹きの数などの要因に依存し得る。エアロゾル生成組成物が、著しい程度の許容されない不味さ、薄膜のような口の感覚、またはタバコカットフィラーを燃焼させることによって主流煙を生成する伝統的な種類の紙巻きタバコのものとは著しく異なる全体感覚経験を導入しないことが望ましい。特定のエアロゾル生成材料及び貯蔵器材料の選択、使用されるそれらの成分の量、ならびに使用されるタバコ材料の種類は、喫煙物品によって生成される主流エアロゾルの全体化学組成物を制御するために改変され得る。
【0134】
典型的に、電子喫煙物品のエアロゾル前駆体に組み込まれるニコチンの量は、それから生成されたエアロゾル中に所望の量の遊離ニコチンをもたらすのに十分な量である。例えば、物品は、その物品の一吹き当たり約0.01mg~約0.5mg、約0.05mg~約1mg、約0.08mg~約0.5mg、約0.1mg~約0.3mg、または約0.15mg~約0.25mgの量のニコチンをもたらすことができる。したがって、エアロゾル前駆体に組み込まれるニコチン塩、共結晶、または塩共結晶の量は、例えば、物品が使用される場合にこれらの量のニコチンを生成するのに十分な量である。
【0135】
本明細書に記載されるニコチン塩、共結晶、または塩共結晶が、電子喫煙物品において使用されるとき、ニコチンが塩、共結晶、または塩共結晶からエアロゾル形態に放出される温度は重要な考慮事項である。ニコチンが、電子喫煙物品の操作温度で塩、共結晶、または塩共結晶から放出されること(すなわち、ニコチンがエアロゾル形態に移動すること)が典型的に重要である。限定することを意図しないが、電子喫煙物品の例示的な操作温度は、約100℃~約500℃(例えば、約120℃~約300℃)の範囲内である。したがって、そのような製品への組み込みのための適切なニコチン塩、共結晶、または塩共結晶の選択は、部分的に、ニコチンと共形成剤との間の結合の特徴、及び塩、共結晶、または塩共結晶の揮発性に依存し得る。例えば、ニコチンクエン酸塩は、十分に揮発性でないため、電子喫煙物品のための良好な塩ではない場合がある。
【0136】
さらに、いくつかの実施形態において、共形成剤成分(もしくは複数の成分)がニコチン塩、共結晶、または塩共結晶から放出される温度は、関連する考慮事項であり得る。ある特定の共形成剤(例えば、ある特定の酸)がエアロゾル中に存在する(及び使用者に送達される)ことが有利でない場合があるため、ニコチンだけでなく、ニコチン塩、共結晶、または塩共結晶がエアロゾル形態に移動する温度を考慮することが重要であり得る。他の実施形態において、所与のニコチン塩、共結晶、または塩共結晶の共形成剤(複数可)は、望ましくは、エアロゾルに含有され、望ましくは使用者に送達され得る。そのような場合において、そのような共形成剤(複数可)は、電子喫煙物品の使用温度において十分に揮発性であることを保証することが有利であり得る。追加として、ニコチン塩、共結晶、または塩共結晶を関連温度(すなわち、電子喫煙物品の典型的な操作温度)に加熱することを介して生成される任意の分解生成物もまた、特定の用途のための製品調製及び選択の間に評価及び考慮されるべきである。具体的には、ある特定の実施形態において、ニコチン塩、共結晶、または塩共結晶を関連温度に加熱することを介して生成される酸分解生成物が評価及び考慮されるべきである。
【0137】
したがって、ある特定の実施形態において、本明細書に記載されるニコチン塩、共結晶、または塩共結晶の調製に続いて、それらを分析して、ニコチン及び/または共形成剤及び/またはその分解生成物が、エアロゾル前駆体からエアロゾルに移動するかどうかを評価する。そのような分析は、例えば、エアロゾルから収集された凝集体の高性能液体クロマトグラフィー及び/またはガスクロマトグラフィーによって行われ得る。ニコチン及び/または共形成剤及び/またはその分解生成物の存在及び量の両方を評価して、所与の塩、共結晶、または塩共結晶が、電子喫煙物品内への組み込みの良好な候補であるかどうかを決定する。
【0138】
なおもさらなる実施形態において、本明細書に開示されるニコチン塩、共結晶、及び/または塩共結晶は、医薬製品内に組み込まれてもよい。例えば、ニコチン塩、共結晶、または塩共結晶は、ニコチン含有医薬製品中のニコチンの代わりとして、またはそれに加えて使用され得る。そのような製品は、1種類以上のニコチンアセチルコリン作動性受容体(nAChRs)の刺激に応答する様々な病態、疾患、及び障害の治療に使用され得る。これらの製品を使用して、nAChRsのアゴニストとしてのニコチンの使用または投与を通じて治療可能であることが報告された、それらの種類の病態、疾患、及び障害を治療することができる。そのようなものとして、これらの製品を使用して、様々なCNS病態、疾患、及び障害を治療することができ、組成物を禁煙助剤として(すなわち、NRTの成分として)使用することもできる。存在するニコチンの複合量(塩、共結晶、及び/または塩共結晶形態として存在するニコチン、及び随意に1つ以上の他の形態のニコチンを含む)は、好ましくは、対象または患者が罹患している病態、疾患、または障害のいくつかの症状を治療するか、またはそれらの発生を予防するのに有効な量である。治療され得る例示的な病態、疾患、または障害としては、アルツハイマー病及び注意欠陥障害などの認知障害、統合失調症、パーキンソン病、トゥーレット症候群、潰瘍性大腸炎、ドライアイ疾患、高血圧、うつ病、過活動膀胱、肥満、浮気の虫/疥癬、及び出血が挙げられる。そのような製品はまた、ストレスもしくは疼痛を低減するための治療として、及び/または禁煙助剤としての使用を見出すことができる。
【0139】
医薬製品の形状は、薬学的種類の製品の投与のために伝統的に用いられている様々なピル、錠剤、トローチ剤、カプセル、カプレット、パウチ、及びガム型の製品に類似し得る。代表的な組成物の一般的性質は、軟性もしくは硬性の感触、中度の軟性もしくは硬性であり得、そのようなものとして、組成物は、展性、可撓性、歯応えがある、弾性、脆性などであると考慮され得る。本明細書において提供されるニコチン塩、共結晶、または塩共結晶を含有する医薬製品は、経口製品に限定されず、クリーム(軟膏、オイントメント、及びペーストを含む)、液体(例えば、スプレーまたは浣腸剤)などの組成物もまた同様に本発明によって包含される。加えて、本明細書に開示されるニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶はまた、吸入剤(例えば、定量吸入剤、乾燥粉末吸入剤、及び噴霧剤)などの様々な送達用デバイス内に組み込まれ得る。本発明に従う医薬製品は、本明細書に記載されるニコチン塩、共結晶、及び/または塩共結晶に加えて、1つ以上の薬学的に許容される成分、例えば、賦形剤(例えば、塩、甘味剤、フィラー、風味材料、抗接着剤、流動促進剤、保存剤、及び抗酸化剤、界面活性剤、染料もしくは顔料、潤滑剤、及び/または加工助剤)を含有することができる。
【0140】
記載される用途は、新規のニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶の組み込みに焦点を当てている。しかしながら、いくつかの実施形態において、既知のニコチン塩を、本明細書に開示される組成物中で用いて、新規の組成物及び/またはそのような組成物を組み込む新規の製品を提供することができる。例えば、限定することを意図しないが、ニコチンL-リンゴ酸塩(CAS RN 253180-13-1)、ニコチン4-アセトアミド安息香酸の塩(CAS RN 110441-65-1)、ニコチン3-ヒドロキシ安息香酸(CAS RN 1644394-41-1、例えば、国際出願公開第2015/006652号に開示される)、ニコチン2,5-ジヒドロキシ安息香酸(CAS RN 6012-21-1)、ニコチン4-アミノサリチル酸の塩(1-ヒドロキシ-4-アミノ安息香酸の塩)(CAS RN 20334-41-2)、ニコチンサリチル酸の塩(2-ヒドロキシ安息香酸の塩)(CAS RN 29790-52-1)、ニコチンフタル酸の塩(1,2-ベンゼンジカルボン酸の塩)(CAS RN 88660-55-3)、ニコチンN-アセチル-4-アミノサリチル酸の塩(N-アセチル-2-ヒドロキシ-4-アミノ安息香酸の塩)(CAS RN 900789-26-6)、及び/またはニコチンジ-L-(+)-酒石酸二水和物(CAS RN 6019-06-3)などの既知の塩を、本明細書に開示される組成物及び製品中で使用することができる。
【0141】
記載される用途は、ニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶の形成、ならびにそのような形成されたニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶の、様々な製品への組み込みに焦点を当てているが、いくつかの実施形態において、そのようなニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶を原位置で形成することが可能であり得る。例えば、ニコチンは、本明細書において広く記載されるように、1つ以上の共形成剤、及び随意に他の成分(例えば、形成される製品中に典型的に含有されるそれらの種類の成分)と複合され得、ニコチン塩、共結晶、または塩共結晶が原位置で形成される。換言すれば、多くの場合、本明細書に開示される理由で有利であるが、ニコチン塩、共結晶、または塩共結晶の単離及び/または精製は、全ての実施形態において製品への導入前に必要とされない。
【0142】
例えば、一実施形態において、電子喫煙物品のエアロゾル前駆体は、ニコチン塩、共結晶、または塩共結晶を、所望のエアロゾル前駆体成分(例えば、担体及び風味材料)と混合することによって調製され得るか、またはニコチン、共形成剤(例えば、酸)、及び所望のエアロゾル前駆体成分を混合することによって調製され得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、国際出願公開第2014/182736号(Ploom,Inc.)における、ある特定の塩をエアロゾルデバイスに組み込む方法を参照されたい。
【0143】
本発明の態様は、本発明のある特定の態様を説明するために記載され、それを限定するものと見なされない、以下の実施例によってより完全に説明される。
【0144】
実験
一般的
X線粉末回折(XRPD)
X線粉末回折パターンを、Bruker AXS C2 GADDS回折計上でCu Kα照射(40kV、40mA)、自動XYZステージ、自動試料位置付けのためのレーザービデオ顕微鏡、及びHiStar2次元面検出器を使用して収集する。X線光学は、0.3mmのピンホールコリメータと連結された単一Gobel多層ミラーからなる。認証された標準NIST 1976コランダム(平板)を使用して週1回の性能チェックを行う。ビーム広がり、すなわち、試料上のX線ビームの有効サイズは約4mmである。θ-θ連続走査モードは、20cmの試料-検出器距離で用いられ、3.2°~29.7°の有効2θ範囲を付与する。典型的に、試料は、X線ビームに120秒間曝露される。データ収集に使用されるソフトウェアは、XP/2000 4.1.43の場合、GADDSであり、Diffrac Plus EVA v13.0.0.2またはv15.0.0.0を使用してデータを分析して提示する。
【0145】
周囲条件下で実行される試料は、研磨なしに、粉末の平板標本として調製される。約1~2mgの試料をガラススライド上で軽く押し、平らな表面を得る。非周囲条件下で実行される試料は、熱伝導化合物と共にシリコンウエハ上に載置される。試料を20℃/分で適温に加熱し、後次にデータ収集を開始する前に1分間等熱的に保持する。
【0146】
単結晶X線回折(SCXRD)
Oxford Diffraction Supernova Dual Source、Cu at Zero、Atlas Oxford Cryosystems Cobra冷却デバイスを備えるCCD回折計上でデータを収集する。CuKα照射を使用してデータを収集する。構造は、典型的にSHELXSまたはSHELXDプログラムのいずれかを使用して解明され、Bruker AXS SHELXTLスイート(V6.10)の一部としてSHELXLプログラムを用いて精緻化する。別途記載されない限り、炭素原子に結合した水素原子は、幾何学的に置かれ、騎乗等方性変位パラメータを用いて精緻化することを可能にする。ヘテロ原子に結合した水素原子は、差フーリエ合成に位置し、等方性変位パラメータを用いて自由に精緻化されることを可能にする。
【実施例0147】
実施例1.ムチン酸とのニコチンの塩
スクリーニング実験を最初に行い、ムチン酸の塩の形成のための無溶媒方法を評価する。必要とされる量のムチン酸(100μLのニコチンに対して)を、HPLCバイアル瓶に計量する。(S)-ニコチンを各バイアル瓶に分注し、バイアル瓶を室温で3日間振動させる。固体を試料採取し、XRPDによって特徴付ける。表1に示すように、XRPD分析結果は、バイアル瓶内で形成された固体が、ムチン酸の塩の形成を指示する、新たな結晶相形態を含むことを示す。
【表1】
【0148】
純ニコチンにおけるスラリー方法が大規模での繰り返しには困難であることがわかったため、次に様々なスクリーニング実験を行い、ニコチンのムチン酸塩の塩の調製のための代替手段を評価した。
【0149】
実験を行い、水からの低速蒸発を介したムチン酸塩の塩の調製を評価する。(S)-ニコチン(100μL)は、十分なムチン酸と共にHPLCバイアル瓶に分注して、2:1、1:1、及び1:2の比のニコチン:ムチン酸を有する塩を作製する。透明な溶液が得られるまで、または2000μLが添加された後に、水を100μL分量で添加する。2:1のニコチン:ムチン酸の混合物は、100μLの水を添加した後に透明な溶液を生成したが、固体は単離されなかった。1:1及び1:2のニコチン:ムチン酸の混合物は、水に難溶性であり、2000μLの水の添加後でも透明な溶液を生成しなかったため、これらの実験を放棄した。
【0150】
実験を行い、抗溶媒媒介性塩形成を介したムチン酸塩の塩の調製を評価する。1等量のムチン酸(100μLのニコチンに対して)をHPLCバイアル瓶に添加し、(S)-ニコチン(100μL)をバイアル瓶に分注する。透明な溶液が得られるまで、または5mLが添加された後に、エタノールを1mL分量で添加する。混合物は、5mLのエタノールの添加後でも透明な溶液を生成しなかったため、この実験を放棄した。
【0151】
実験を行い、テトラヒドロフラン(THF)中のムチン酸塩の塩の調製を評価する。THF中のムチン酸の飽和溶液を調製し、使用前に濾過する。この原液の分量(2mL)を3つの別個のHPLCバイアル瓶の各々に添加し、所与の量の(S)-ニコチンを、各バイアル瓶に分注する(25μL、50μL、または100μL)。バイアル瓶を室温で3日間振動させたところ、3つのバイアル瓶は全て透明な溶液を含有していた。溶液を24時間、4℃に冷却し、蒸発させる。固体は形成されない。
【0152】
エタノール/水及びイソプロピルアルコール/水系からムチン酸塩の塩を調製する追加の試みもまた、酸の難溶性に起因して失敗した。DMSO/抗溶媒系からムチン酸塩の塩を調製する試みもまた、固体のムチン酸塩の塩の生成に失敗した。
【0153】
したがって、ニコチンムチン酸塩を大規模に生成するために、ムチン酸(5.2g、25mmol)を(S)-ニコチン(10mL)に懸濁し、アルゴン下、室温で終夜撹拌する。結果として得られるガム状混合物に、さらに10mLのニコチンを添加し、混合物をさらに60時間撹拌する。混合物中に形成された固体を濾過によって単離し、冷たいTHF及びヘプタンで洗浄し、乾燥させた。固体を酢酸エチル中で50時間室温でさらにスラリー化し、濾過によって単離し、酢酸エチル及びヘプタンで洗浄し、乾燥させてピンク色の固体を得た(7.21g、収率94.2%)。
【0154】
XRPDを含む様々な技法によって固体を分析し、このパターンを図1に示す。ニコチンムチン酸塩のXPRDについての代表的なピーク一覧を表2に提供する。
【表2】
【0155】
試料は、図2に示される、H NMR(固体は0.72等量の酸からなることを示し、この形態の真の化学量論は未知である);PLM(不規則な複屈折粒子を示す、典型的に10μm未満);TGA(複数の未解決のステップにおいて25~260℃からの91%質量損失を示す);DSC(123℃での鋭い吸熱発生(73J/g)及び133℃での広い吸熱発生(27J/g)を示す);ならびにGVS(0~90% RHから60%の吸水を示すが、90% RHにおいて平衡に到達しなかったため、実際の吸水はより高い可能性がある)を含む方法によってさらに分析される。固体はむしろ吸湿性である。
【0156】
実施例2.4-アセトアミド安息香酸とのニコチンの塩
スクリーニング実験を最初に行い、4-アセトアミド安息香酸の塩の形成のための無溶媒方法を評価する。4-アセトアミド安息香酸(111mg)を、移動スラリー(400μL)を生成するために必要な最小量の(S)-ニコチンに懸濁する。スラリーを、室温で48時間振動させる。結果として得られる白色の粉末固体を、濾過によって単離し、試料採取してXRPDによって特徴付けを行ったところ、新たな結晶形態を示す。
【0157】
純ニコチンにおけるスラリー方法が大規模での繰り返しには困難であることがわかったため、次にスクリーニングを行い、ニコチンの4-アセトアミド安息香酸塩の塩の調製のための代替手段を評価する。
【0158】
実験を行い、4-アセトアミド安息香酸の塩の形成のための無溶媒方法を評価する。4-アセトアミド安息香酸を最小量のTHF(400μL)に溶解し、(S)-ニコチン(1等量)を添加する。溶液を被覆し、室温で終夜、次に4℃で24時間、及び-18℃で24時間放置する。各時点でごくわずかな固体が混合物中に存在した。カバーを取り除き、溶媒を蒸発させて結晶固体を得る。固体を試料採取し、XRPDによって結晶固体として特徴付けられ、その結果は、ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩の塩の単結晶構造に基づいて計算されたものと一致する(図3を参照されたい)。
【0159】
より大きな規模で、4-アセトアミド安息香酸(5.55g、31mmol)をTHF(280mL)に室温で溶解する。わずかに濁った溶液を0.45μmのPTFEフィルターに通し、次に(S)-ニコチン(5mL、31mmol)を1mL分量で添加する。結果として得られる透明な溶液を室温で10分間撹拌した後、その元の量の約3分の1に濃縮する。溶液を2mgの以前に調製したニコチン4-アセトアミド安息香酸塩と共に播種し、急速な結晶化を発生させた。混合物を室温で5分間振動させ、1時間放置する。固体を濾過によって単離し、酢酸エチル及びヘプタンで洗浄し、乾燥させて5.42gの白色固体(収率51%)を得る。
【0160】
XRPDによって固体を分析し、このパターンを図3に示す。図3は、室温で得られた実験XRPDデータを、100Kで単結晶X線データから計算されたXRPDパターンと比較する。ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩の(実験的)XPRDについての代表的なピーク一覧を表3に提供する。
【表3】
【0161】
H NMR(固体は1.04等量の酸からなることを示す);PLM(最長75μmの長さの不規則な複屈折ラスを示す);TGA(2つの未解決のステップにおいて25~360℃からの64%質量損失を示す);DSC(134℃での鋭い吸熱発生(151J/g)及び143℃での広い吸熱発生(43J/g)を示す);ならびにGVS(0~80% RHから5%、及び80~90% RHから20%の吸水を示す)を含む、様々な技法によって固体をさらに分析する。XRPD分析に続くGVSは、固体が未変化であることを示す。
【0162】
ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩の2つの独立した分子について得られた結晶構造を、図4A及び4Bに示す。得られたニコチン4-アセトアミド安息香酸塩の結晶充填を、図4Cに提供し、ニコチン分子を灰色で示し、酸分子を黒色で示す。
【0163】
単離形態の結晶学的パラメータを表4に提供する。構造溶液は、直接方法、Fに関する完全行列最小二乗精緻化によって、重み付けw-1=σ(F )+(0.0575P)+(1.5000P)、P=(F +2F )/3、異方性変位パラメータを用いて得られた。球面調和関数を使用する実験的吸収補正を、SCALE3 ABSPACKスケーリングアルゴリズムにおいて実装した。絶対構造パラメータ=0.04(16)(フラックパラメータとしても知られる、これは正しい絶対化学量論に対してほぼゼロ、及び変換された絶対構造に対してほぼ一致するべきである(標準不確実性)。Cf.Flack HD(1983),Acta Cryst.A39,876-881)。SCXRD構造は、ニコチンがS絶対化学量論を有するという確認を提供した。全てのデータについて、最終wR={Σ[w(F -F ]/Σ[w(F 1/2}=0.0976であり、6624屈折のF値に関して、従来のR=0.0356、F>4σ(F)であり、全てのデータ及び471パラメータについて、S=1.001である。最終Δ/σ(最大)0.000、Δ/σ(平均)、0.000。+0.193~-0.207eÅ-3の最終差マップ。
【表4】
【0164】
実施例3.ゲンチジン(2,5-ヒドロキシ安息香)酸とのニコチンの塩
スクリーニング実験を最初に行い、ゲンチジン酸の塩の形成のための無溶媒方法を評価する。ゲンチジン酸(95mg)を、移動スラリー(200μL)を生成するために必要な最小量の(S)-ニコチンに懸濁する。スラリーを、室温で48時間振動させる。結果として得られるピンク色の固体を、濾過によって単離し、試料採取してXRPDによって特徴付けを行ったところ、新たな結晶形態を示す。
【0165】
実験を行い、ゲンチジン酸の塩の形成のための無溶媒方法を評価する。ゲンチジン酸を最小量のTHF(200μL)に溶解し、(S)-ニコチン(1等量)を添加する。溶液を被覆し、室温で終夜放置、次に4℃で24時間、及び-18℃で24時間放置する。各時点で透明な溶液が混合物中に存在した。カバーを取り除き、溶媒を蒸発させたが、結果として単離された固体は得られなかった。
【0166】
より大きな規模で、ゲンチジン酸(4.75g、31mmol)をTHF(50mL)に室温で溶解する。(S)-ニコチン(5mL、31mmol)を1mL分量に添加し、結果として得られる透明な溶液を室温で10分間撹拌する。溶液を2mgの以前に調製されたニコチンゲンチジン酸塩と共に播種し、急速な結晶化を発生させて、混合物を室温で10分間撹拌する。固体を濾過によって単離し、THF及びヘプタンで洗浄し、乾燥させて7.20gの白色固体(収率74%)を得る。
【0167】
XRPDによって固体を分析し、このパターンを図5に示す。図5は、室温で得られた実験XRPDデータを、100Kで単結晶X線データから計算されたXRPDパターンと比較する。ニコチンゲンチジン酸塩の(実験的)XPRDについての代表的なピーク一覧を表5に提供する。
【表5】
【0168】
H NMR(固体は1.00等量の酸からなることを示す);PLM(最長100μmの長さの不規則な複屈折ラスを示す);TGA(25~280℃から95%質量損失を示す);DSC(149℃での鋭い吸熱発生(102J/g)を示す);ならびにGVS(0~90% RHから0.3%の吸水を示す)を含む、様々な技法によって固体をさらに分析する。XRPD分析に続くGVSは、固体が未変化であることを示す。ゲンチジン酸の塩を、熱安定性に関して市販のニコチン二酒石酸塩と十分に比較する。
【0169】
ニコチンゲンチジン酸塩の分子について得られた結晶構造を図6Aに示す。得られたニコチンゲンチジン酸塩の結晶充填を、図6Bに提供し、ニコチン分子を灰色で示し、酸分子を黒色で示す。
【0170】
単離形態の結晶学的パラメータを下の表6に提供する。構造溶液は、直接方法、Fに関する完全行列最小二乗精緻化によって、重み付けw-1σ2(F )+(0.0720P)+(0.0060P)、P=(F +2F )/3、異方性変位パラメータを用いて得られた。球面調和関数を使用する実験的吸収補正を、SCALE3 ABSPACKスケーリングアルゴリズムにおいて実装した。絶対構造パラメータ=0.4(3)。全てのデータについて、最終wR={Σ[w(F -F ]/Σ[w(F 1/2}=0.1342であり、2025屈折のF値に関して、従来のR=0.0472、F>4s(F)であり、全てのデータ及び221パラメータについて、S=1.004である。最終D/s(最大)0.000、D/s(平均)、0.000。+0.173~-0.219eÅ-3の最終差マップ。
【0171】
収集されたデータは、絶対構成の決定には好適でなかったため、ニコチン部分の化学量論を、投入材料により、及び実施例2において決定される構造(すなわち、ニコチンのS鏡像異性体を有する)により固定した。
【表6】
【0172】
実施例4.3-ヒドロキシ安息香酸とのニコチンの塩
スクリーニング実験を最初に行い、3-ヒドロキシ安息香酸の塩の形成のための無溶媒方法を評価する。3-ヒドロキシ安息香酸(85mg)を、移動スラリー(200μL)を生成するために必要な最小量の(S)-ニコチンに懸濁する。スラリーを、室温で48時間振動させる。結果として得られるガムを試料採取し、XRPDによって特徴付ける(試料が溶解したことを示す)。
【0173】
より大きな規模で、3-ヒドロキシ安息香酸(4.25g、31mmol)を、10分間撹拌することによって室温でTHF(50mL)に溶解する。(S)-ニコチン(5mL、31mmol)を一定に撹拌しながら1mL分量で添加し、結果として得られる透明な溶液を室温で10分間撹拌する。溶液を2mgの以前に調製されたニコチン3-ヒドロキシ安息香酸塩と共に播種し、急速な結晶化を発生させて、混合物を室温で1分間撹拌する。固体を濾過によって単離し、冷たいTHF及びヘプタンで洗浄し、乾燥させて4.81gの白色固体(収率52%)を得る。
【0174】
XRPDによって固体を分析し、このパターンを図7に示す。ニコチン3-ヒドロキシ安息香酸塩のXPRDについての代表的なピーク一覧を表7に提供する。
【表7】
【0175】
H NMR(固体は1.03等量の酸からなることを示す);PLM(不規則な鋭縁の粒子を示す);TGA(2つの未解決のステップにおいて25~360℃から89%質量損失を示す);DSC(123℃での鋭い吸熱発生(131J/g)を示す);ならびにGVS(0~80% RHから0.5%、及び80~90% RHから5%の吸水を示す)を含む、様々な技法によって固体をさらに分析する。XRPD分析に続くGVSは、固体が未変化であることを示す。
【0176】
実施例5.L-リンゴ酸とのニコチンの塩
スクリーニング実験を最初に行い、L-リンゴ酸の塩の形成のための無溶媒方法を評価する。必要とされる量のL-リンゴ酸(100μLのニコチンに対して)を、HPLCバイアル瓶に2:1、1:1、及び1:2の比のニコチン:酸で計量する。(S)-ニコチンを各バイアル瓶に分注し、バイアル瓶を室温で3日間振動させる。固体を試料採取し、XRPDによって特徴付ける。
【0177】
実験を行い、水からの低速蒸発を介してL-リンゴ酸の塩の調製を評価する。(S)-ニコチン(100μL)は、十分なムチン酸と共にHPLCバイアル瓶に分注して、2:1、1:1、及び1:2の比のニコチン:L-リンゴ酸を有する塩を作製する。透明な溶液が得られるまで、または2000μLが添加された後に、水を100μL分量で添加する。ニコチン及びL-リンゴ酸の全ての混合物は、200μLの水を添加した後、透明な溶液を生成したが、固体は単離されなかった。
【0178】
実験を行い、抗溶媒媒介性塩形成を介したL-リンゴ酸塩の塩の調製を評価する。1等量のL-リンゴ酸(100μLのニコチンに対して)をHPLCバイアル瓶に添加し、(S)-ニコチン(100μL)をバイアル瓶に分注する。透明な溶液が得られるまで、または5mLが添加された後に、エタノールを1mL分量で添加する。2000μLのエタノールの添加後、透明な溶液が得られた。次に、持続的な懸濁が認められるか、または10mLが添加されるまで、EtOAcを1mLの部分で添加した。3000μLの添加後、材料が油化していることが認められた。混合物を4℃で終夜置き、この後に粘性のガムであることが観察された。次に、混合物を-18℃で1週間置き、この後に粘性のガムであることが観察された。ガムを培養器内に置き、周囲温度~50℃で8時間間隔で1週間の期間にわたり熟成させ、その後に混合物は粘性溶液であるように見えた。
【0179】
実験を行い、凍結乾燥及び後次の熟成によってL-リンゴ酸塩の塩の調製を評価する。(S)-ニコチン(120μL)を水(12mL)中の1等量の酸と複合することによって原液を調製する。この溶液を室温で振動させて、透明な均質相を得る。関連原液(1mL)の部分を10個のバイアル瓶の各々に分注し、それらを冷凍して終夜凍結乾燥させて水を除去する。熟成溶媒の分量(100μLのアセトン、EtOH、IPA、トルエン、ジオキサン、IPAc、TBME、アセトン+5%の水、EtOH+5%の水、IPA+5%の水)を各バイアル瓶に添加し、それらのバイアル瓶を室温で4日間振動させる。IPAを含有するバイアル瓶は、XRPDによって決定されるように固体マリンゴ酸塩の塩をもたらした。IPAc及びTBMEを含有するバイアル瓶は、油/ガムを含むことが観察され、全ての他のバイアル瓶は、透明な溶液を含むことが観察された。
【0180】
ニコチンL-リンゴ酸塩を大規模に調製するために、リンゴ酸(2.84g、21mmol)を、10分間室温で撹拌することによってTHF(30mL)に溶解する。(S)-ニコチン(5.0mL、31mmol)を添加し、白色固体の即時沈殿を引き起こす。スラリーを2mgの以前に調製されたニコチンL-リンゴ酸塩と共に播種し、室温で終夜撹拌する。混合物中に形成された固体を濾過によって単離し、冷たいTHF及びヘプタンで洗浄し、乾燥させて白色固体(5.78g、収率92%)を得る。
【0181】
XRPDによって固体を分析し、このパターンを図8に示す。ニコチンL-リンゴ酸塩のXPRDについての代表的なピーク一覧を表8に提供する。
【表8】
【0182】
H NMR(固体は1.07等量の酸からなることを示す);PLM(典型的に25μm未満の不規則な複屈折粒子を示す);TGA(25~260℃から91%質量損失を示す);DSC(107℃での小さい吸熱発生(1J/g)、120℃での鋭い吸熱発生(120J/g)、及び168℃での広い吸熱発生(452J/g)を示す);ならびにGVS(0~90% RHから70%の吸水を示すが、90% RHで平衡に到達しなかったため、実際の吸水は、実際に高い可能性がある)を含む、様々な技法によって固体をさらに分析する。小さい吸熱発生は、第2の多形の存在の可能な証拠であり得る。XRPD分析に続くGVSは、固体が溶解したことを示す。
【0183】
実施例6.3,5-ジヒドロキシ安息香酸とのニコチンの塩
最初にスクリーニング実験を行い、純ニコチンからの結晶化による3,5-ジヒドロキシ安息香酸とのニコチン塩の形成を評価する。3,5-ジヒドロキシ安息香酸(25mg)を(S)-ニコチン(100μL)と複合し、混合物を室温で終夜撹拌する。3,5-ジヒドロキシ安息香酸はニコチンに溶解し、固体は観察されない。
【0184】
実験を行い、THFからの結晶化を介する3,5-ジヒドロキシ安息香酸の塩の調製を評価する。3,5-ジヒドロキシ安息香酸(約40mg)をバイアル瓶に分注し、THFを分量で添加し、各添加後に短時間渦動させる。透明な溶液が得られたため、10分量が添加されたときに添加を停止した。次に(S)-ニコチン(1モル等量)をバイアル瓶に添加し、そのバイアル瓶を室温で終夜振動させる。結果として得られる混合物は透明な溶液であり、固体は単離されない。
【0185】
実験を行い、水からの結晶化を介する3,5-ジヒドロキシ安息香酸の塩の調製を評価する。3,5-ジヒドロキシ安息香酸(約50mg)をバイアル瓶に分注し、水を分量で添加し、各添加後に80℃で10分間撹拌する。透明な溶液が得られたため、3分量が添加されたときに添加を停止した。次に(S)-ニコチン(1モル等量、52.6mg)をバイアル瓶に添加し、そのバイアル瓶を室温で終夜放置する。24時間後、混合物は依然として透明な溶液であり、5℃で置かれるが、液体の蒸発後も固体は観察されない。
【0186】
実験を行い、エタノールからの結晶化を介する3,5-ジヒドロキシ安息香酸の塩の調製を評価する。3,5-ジヒドロキシ安息香酸(約50mg)をバイアル瓶に分注し、エタノールを分量で添加し、各添加後に70℃で10分間撹拌する。透明な溶液が得られたため、3分量が添加されたときに添加を停止する。次に(S)-ニコチン(1モル等量、52.6mg)をバイアル瓶に添加し、そのバイアル瓶を室温で終夜放置する。24時間後、混合物は依然として透明な溶液であり、5℃で置かれるが、液体の蒸発後も固体は観察されない。
【0187】
実験を行い、アセトンからの結晶化を介する3,5-ジヒドロキシ安息香酸の塩の調製を評価する。3,5-ジヒドロキシ安息香酸(約50mg)をバイアル瓶に分注し、アセトンを分量で添加し、各添加後に50℃で10分間撹拌する。透明な溶液が得られたため、10分量が添加されたときに添加を停止する。次に(S)-ニコチン(1モル等量、52.6mg)をバイアル瓶に添加し、そのバイアル瓶を室温で終夜放置する。蒸発に続いて固体がバイアル瓶中に室温で形成されたが、固体がガムになったため、XPRDによって固体を特徴付ける試みは失敗した。アセトンからのこの調製を繰り返し、50mgの3,5-ジヒドロキシ安息香酸、10分量のアセトン、及び1等量のニコチンをバイアル瓶内で混合することによって結晶化を誘導するための方法としての熟成を探索する。結果として得られる混合物を、室温~50℃で8時間間隔で2週間の期間にわたって循環させる。固体を得て、XPRD(新たな形態を示す)及びH NMR(1:1の塩を示す)によって分析する。得られた結晶がSCXRD構造を収集するのを可能にするため、この材料をさらに分析する(材料が無水塩であることを示す)。結晶構造を図13に提供する。
【0188】
より大きな規模で、3,5-ジヒドロキシ安息香酸(5.66g)をTHF(56mL)に50℃で溶解する。(S)-ニコチン(5.9mL、1等量)を添加し、続いて以前に調製されたニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩(約1mg)を播種する。25℃に冷却し、約16時間撹拌した後、固体を濾過によって単離し、ヘプタン(2×2mL)で洗浄し、真空下、室温で約16時間乾燥させて7.55g(収率65%)の白色固体を得る。二水和物形態(ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩二水和物)を、無水ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩(100mg)を開いたガラスバイアル瓶に入れ、ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩を、96% RHの雰囲気に25℃で16時間曝露することによって調製する。この試料をバイアル瓶から除去し、XRPDによって特徴付けて、二水和形態が得られたことを確認する。
【0189】
異なる湿度レベルへの曝露時の無水3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩の塩の形態の変化は、この塩が1つ以上の水和形態中に存在する能力の指示である。GVS実験は、一水和形態及び二水和形態への変換を示すように思われるとともに、別の無水形態の存在を示唆する(無水形態の場合、0~90% RHから10%のGVS吸水)。VH-XRPD実験は、二水和物の存在を確認したが(25℃/96%RHでの形態1の保管から生じる材料と同じXRPDディフラクトグラムを呈する)、推定上の一水和物及び代替無水形態を観察することは可能でなかった。二水和物は、無水物形態の湿度への曝露によって後次に調製された(40℃及び75%の相対湿度で、及び25℃で96%の相対湿度での保管中に変換される)。この(変換された)形態の熱分析は、それが加熱時に既知の無水物に再変換し得ることを示す。相移行を表すと考えられる事象は、いずれの塩についてもDSCサーモグラムにおいて観察されず、唯一の事象は明らかな溶解である。具体的に、無水形態は、138℃で溶解発生を呈し、二水和物形態は、50~100℃の吸熱、及び137℃での溶解発生を呈した。
【0190】
無水形態をPLMによってさらに分析し(典型的に10μm未満の不規則な粒子を示す)、無水形態及び二水和物形態を、H NMRによって分析する(両方の形態について1:1の化学量論を示す)。単結晶X線回折研究を、無水ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩に関して行い、構造は、図13の楕円プロットに示されるように解明した(これは、小規模スクリーニング研究中に作製された形態であり、これは大規模生成中に得られるものとは異なる形態である)。無水ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩の非対称単位中の水素結合を示すプロットを図14Aに示し、この塩についての結晶充填を示すプロットを図14Bに提供する。
【0191】
両方の固体(無水形態及び二水和形態)をXRPDによって分析し、これらのパターンを図9及び11においてそれぞれ示す。無水ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩のXRPDについての代表的なピーク一覧を表9に提供し、ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩二水和物のXRPDについての代表的なピーク一覧を表10に提供する。
【表9】
【表10】
【0192】
無水形態及び二水和物形態のニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩を、H NMRを含む様々な技法によって、図10及び12においてそれぞれ示されるようにさらに分析する。これらのNMRスペクトルの両方において約9.6ppmでの広い共鳴がCOOH酸性プロトンから生じると考えられ、それが分析されたDMSO溶液中のその環境を反映し、これは必ずしも固体中と同じであるとは限らないことに留意されたい。固体において、プロトン移動が発生するため、プロトンはニコチンの窒素原子上にあると予想されるが、DMSO溶液中で、塩は解離種と平衡であると理解される。
【0193】
単離された形態の結晶学的パラメータを下の表11に提供する。構造溶液は、直接方法、Fに関する完全行列最小二乗精緻化によって、w-1=1/[σ(F )+(0.0659P)+0.2704P]、P=(F +2F )/3、異方性変位パラメータを用いて得られた。直接方法を使用する半実験的吸収補正を、SHELXTLにおいて実装した。絶対構造パラメータ=0.02(7)。全てのデータについて、最終wR=0.0992であり、6431屈折のF値に関して、従来のR=0.0383、F>4s(F)であり、全てのデータについて、S=1.050である。+0.186~-0.224eÅ-3の最終差マップ。
【表11】
【0194】
実施例7.2,3-ジヒドロキシ安息香酸とのニコチンの塩
最初にスクリーニング実験を行い、純ニコチンからの結晶化による2,3-ジヒドロキシ安息香酸とのニコチン塩の形成を評価する。2,3-ジヒドロキシ安息香酸(約25mg)を(S)-ニコチン(100μL)と複合し、混合物を室温で終夜振動させる。結果として得られる固体材料を試料採取し、XPRDによって特徴付ける(新たな形態を示す)。100mgスケールで研究を繰り返し、生成された固体を濾過によって単離し、ヘプタン(2×1mL)で洗浄し、XPRD及びH NMRによって特徴付ける(1:1の化学量論を示した)。
【0195】
実験を行い、THFからの結晶化を介する2,3-ジヒドロキシ安息香酸の塩の調製を評価する。2,3-ジヒドロキシ安息香酸(約40mg)をバイアル瓶に分注し、THFを分量で添加し、各添加後に短時間渦動させる。透明な溶液が得られたため、10分量が添加されたときに添加を停止する。次に(S)-ニコチン(1モル等量)をバイアル瓶に添加し、そのバイアル瓶を室温で終夜振動させる。結果として得られる混合物は透明な溶液であり、固体は観察されない。
【0196】
実験を行い、水からの結晶化を介する2,3-ジヒドロキシ安息香酸の塩の調製を評価する。2,3-ジヒドロキシ安息香酸(約50mg)をバイアル瓶に分注し、水を分量で添加し、各添加後に80℃で10分間撹拌する。透明な溶液が得られたため、20分量が添加されたときに添加を停止する。次に(S)-ニコチン(1モル等量、52.6mg)をバイアル瓶に添加し、そのバイアル瓶を室温で終夜放置した。24時間後、混合物は依然として透明な溶液であり、5℃で置かれるが、液体の蒸発後も固体は観察されない。
【0197】
実験を行い、エタノールからの結晶化を介する2,3-ジヒドロキシ安息香酸の塩の調製を評価する。2,3-ジヒドロキシ安息香酸(約50mg)をバイアル瓶に分注し、エタノールを分量で添加し、各添加後に70℃で10分間撹拌する。透明な溶液が得られたため、10分量が添加されたときに添加を停止する。次に(S)-ニコチン(1モル等量、52.6mg)をバイアル瓶に添加し、そのバイアル瓶を室温で終夜放置した。24時間後、混合物は依然として透明な溶液であり、5℃で置かれるが、液体の蒸発後も固体は観察されない。
【0198】
実験を行い、アセトンからの結晶化を介する2,3-ジヒドロキシ安息香酸の塩の調製を評価する。2,3-ジヒドロキシ安息香酸(約50mg)をバイアル瓶に分注し、アセトンを分量で添加し、各添加後に50℃で10分間撹拌する。透明な溶液が得られたため、10分量が添加されたときに添加を停止する。次に(S)-ニコチン(1モル等量、52.6mg)をバイアル瓶に添加し、そのバイアル瓶を室温で終夜放置する。固体は観察されず、溶媒を蒸発させたが、固体は蒸発後でも観察されない。
【0199】
ニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩を大規模で調製するために、2,3-ジヒドロキシ安息香酸(4.47g)を室温でTHF(8.9mL)に溶解する。小規模では成功しないが(上記のとおり)、(S)-ニコチン(4.7mL)を添加し、結晶固体の即時沈殿を引き起こす。スラリーをさらなるTHF(3mL)で希釈し、室温で1時間撹拌する。存在する固体を濾過によって単離し、ヘプタン(2×3mL)で洗浄し、真空下、室温で60時間乾燥させてオフホワイトの固体(7.90g、収率86%)を得る。限定することを意図しないが、THFからの小規模の塩結晶化の試みの失敗は(大規模でのTHFからの塩調製は成功した)、希釈作用に起因すると考えられる。小規模の結晶化の試みは、過剰なTHFを使用して行い、そのような条件下で固体は溶解されたままであり、この過剰なTHFの存在に起因して沈殿が観察されなかったと考えられる。しかしながら、大規模方法における2,3-ジヒドロキシ安息香酸に対してより少ないTHFを用いて、固体を形成した。
【0200】
XRPDによって固体を分析し、このパターンを図12に示す。ニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩のXPRDについての代表的なピーク一覧を表12に提供する。
【表12】
【0201】
ニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩を、H NMR(塩が1:1の化学量論を有することを示す);PLM(最大約150μmの不規則なプレートを示す);TGA(150℃からの2段階質量損失を示す);DSC(157℃での溶解発生を示す)、ならびにGVS(0~90% RHから0.12%の吸水を示す)を含む、様々な技法によってさらに分析する。
【0202】
実施例8.1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸とのニコチンの塩
最初にスクリーニング実験を行い、純ニコチンからの結晶化による2,3-ジヒドロキシ安息香酸とのニコチン塩の形成を評価する。1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(約25mg)を(S)-ニコチン(100μL)と複合し、混合物を室温で終夜撹拌する。結果として得られる固体材料をサンプリングし、XPRDによって特徴付ける(新たな形態を示す)。100mgスケールで研究を繰り返し、生成された固体を濾過によって単離し、ヘプタン(2×1mL)で洗浄し、XPRD及びH NMRによって特徴付ける(1:1の化学量論を示した)。
【0203】
実験を行い、THFからの結晶化を介する1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の塩の調製を評価する。1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(約40mg)をバイアル瓶に分注し、THFを分量で添加し、各添加後に短時間渦動させる。透明な溶液が得られたため、10分量が添加されたときに添加を停止する。次に(S)-ニコチン(1モル等量)をバイアル瓶に添加し、そのバイアル瓶を室温で終夜振動させる。結果として得られる混合物は透明な溶液であり、表初後に固体塩を得る(純ニコチンにおける調製によって得られるものと同じXPRDパターンをもたらす)。
【0204】
実験を行い、水からの結晶化を介する1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の塩の調製を評価する。1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(約50mg)をバイアル瓶に分注し、水を分量で添加し、各添加後に80℃で10分間撹拌する。水中の酸の溶液は決して得られなかった(20分量の水を添加した後)。(S)-ニコチン(1モル等量)を添加し、スラリーを80℃で終夜撹拌した。酸と比較したXRPDパターンの変化は観察されず、塩形態の形成を示さない。
【0205】
実験を行い、エタノールからの結晶化を介する1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の調製を評価する。1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(約50mg)をバイアル瓶に分注し、水を分量で添加し、各添加後に70℃で10分間撹拌する。透明な溶液が得られたため、10分量が添加されたときに添加を停止する。次に(S)-ニコチン(1モル等量、52.6mg)をバイアル瓶に添加し、そのバイアル瓶を室温で終夜放置する。バイアル瓶中で室温で形成されたが、固体がガムになったため、XPRDによって固体を特徴付ける試みは失敗した。エタノールからのこの調製を繰り返し、50mgの1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、10分量のエタノール、及び1等量のニコチンをバイアル瓶内で混合することによって、結晶化を誘導するための方法としての熟成を探索した。結果として得られる混合物を、室温~50℃で8時間間隔で2週間の期間にわたって循環させた。透明な溶液のみが得られた。
【0206】
実験を行い、アセトンからの結晶化を介する1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の調製を評価する。1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(約50mg)をバイアル瓶に分注し、アセトンを分量で添加し、各添加後に50℃で10分間撹拌する。透明な溶液が得られたため、10分量が添加されたときに添加を停止する。次に(S)-ニコチン(1モル等量、52.6mg)をバイアル瓶に添加し、そのバイアル瓶を室温で終夜放置する。固体は観察されず、溶媒を蒸発させたが、固体は蒸発後でも単離されなかった。
【0207】
ニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩を大規模で調製するために、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(5.02g)を室温でTHF(10.0mL)に溶解する。(S)-ニコチン(4.3mL)を添加し、続いて所望の塩形態(約1mg)を播種して、結晶固体の即時沈殿を引き起こす。スラリーを室温で30分間撹拌し、存在する固体を濾過によって単離し、ヘプタン(2×2mL)で洗浄し、真空下、室温で16時間乾燥させてオフホワイトの固体(6.49g、収率69%)を得る。
【0208】
XRPDによって固体を分析し、このパターンを図17に示す。ニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩のXPRDについての代表的なピーク一覧を表13に提供する。
【表13】
【0209】
ニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の固体を、H NMR(塩が1:1の化学量論を有することを示す);PLM(最大約100μmの不規則な粒子を示す);TGA(130℃から2段階質量損失を示す);DSC(111℃での溶解発生を示す)、ならびにGVS(0~90% RHから0.16%の吸水を示す)を含む、様々な技法によってさらに分析する。
【0210】
実施例9.熱分解研究
ニコチンムチン酸塩、ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩、ニコチンゲンチジン酸塩、ニコチン3-ヒドロキシ安息香酸塩、ニコチンL-リンゴ酸塩、ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩、ニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩、及びニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩を含む、ニコチンのいくつかの塩を、ヘリウム中650℃で熱分解して、加熱時に各塩から生成される熱分解生成物を評価する。全ての試料において、高収率のニコチンが生成され、ニコチンがこの評価された温度で塩から遊離することを示す。
【0211】
実験に使用される器具は、GC/MS器具と整列したフィラメント熱分解器装置であった。熱分解プロセス中に、典型的に放出される化合物(ニコチンに加えて)は、分析された酸、遊離二酸化炭素、及び水に対応する脱炭酸分子であった。大部分の塩について、ニコチンの分解は観察されない。
【0212】
実施例10.塩含有トローチ剤
ニコチンムチン酸塩、ニコチンサリチル酸塩、ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩、ニコチンゲンチジン酸塩、ニコチン3-ヒドロキシ安息香酸塩、ニコチンL-リンゴ酸塩、ニコチン3,5-ジヒドロキシ安息香酸塩、ニコチン2,3-ジヒドロキシ安息香酸塩、及びニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩を含む、ニコチンのいくつかの塩を、トローチ剤の形態の無煙タバコ製品に組み込む。トローチ剤は、一般に、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2013/0078307号(Holton,Jr.)に開示される成分を含み得る。例えば、代表的なトローチ剤は、イソマルト、マルチトールシロップ、風味材料(複数可)、水、及びニコチン化合物を含み得る(参考文献に開示されるニコチン化合物の代わりに使用される、本明細書に開示されるニコチン塩、共結晶、または塩共結晶のうちの1つ以上と共に)。各トローチ剤に含まれるニコチン塩、共結晶、または塩共結晶の量は、2mgのニコチンを提供するのに十分な量である(特定の共形成剤の重量に基づいて調整される)。感覚(例えば、味及び口の感覚)特徴及び/またはトローチ剤の安定性は、いくつかの実施形態において、ニコチン塩、共結晶、または塩共結晶の選択によって影響され得る。
【0213】
いくつかの実施形態において、1つ以上の成分が一般にニコチン含有トローチ剤に導入され、そこでニコチンの揮発が起こらないようにする(例えば、クエン酸を含むが、これに限定されない)。ニコチンをこの形態で提供することは、それ自体がニコチンの揮発を防止し得るため、本明細書に開示されるニコチン塩、共結晶、及び塩共結晶は、いくつかの実施形態において、そのような成分なしにトローチ剤に組み込まれ得る。
【0214】
本発明が属する技術分野の専門家であれば、上述の説明に提示された教示の恩恵を得て、本発明の多くの改変及び他の実施形態に想到するであろう。したがって、本発明が開示した特定の実施形態に限定されないこと、ならびに改変及び他の実施形態が添付の特許請求の範囲の適用範囲内に含まれるように意図されることを理解されたい。本明細書において特定の用語が用いられるが、それらは総括的かつ説明的な意味において使用されるにすぎず、制限を目的とするものではない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2024-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチン及びムチン酸の塩;ニコチン及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸の塩;ニコチン及び2,3-ジヒドロキシ安息香酸の塩;ニコチン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の結晶多形形態であって、前記形態が、以下の2θ回折角、すなわち15.6、16.1、20.5、22.5、及び27.1のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態;ニコチン4-アセトアミド安息香酸塩の結晶多形形態であって、前記形態が、以下の2θ回折角、すなわち16.839、17.854、20.134、及び23.265のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態、ならびにニコチンゲンチジン酸塩の結晶多形形態であって、前記形態が、以下の2θ回折角、すなわち13.000、19.017、20.194、及び21.000のうちの1つ以上においてピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、結晶多形形態からなる群から選択される、ニコチン塩または結晶多形形態。
【外国語明細書】