(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156672
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】透過エンハンサーを含む送達医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/12 20060101AFI20241029BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241029BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20241029BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20241029BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241029BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20241029BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241029BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241029BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241029BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241029BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20241029BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241029BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20241029BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61K38/12
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/40
A61K47/12
A61K9/70
A61P35/00
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/42
A61K47/34
A61P1/12
A61P1/16
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024108581
(22)【出願日】2024-07-05
(62)【分割の表示】P 2020538776の分割
【原出願日】2018-09-26
(31)【優先権主張番号】62/563,534
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】504322976
【氏名又は名称】アクエスティブ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ポール ワルガクキ
(72)【発明者】
【氏名】ラジェシュ クマル カインサン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー マーク ショベル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フィルムを使用する経皮的又は経粘膜的な薬物又は医薬の送達で、該薬物又は医薬が、有効且つ効率的な様式で、生体膜を透過するか又は別の方法で横断することができる医薬組成物を提供する。
【解決手段】ポリマーマトリクス、該ポリマーマトリクス中のペプチドを含む医薬活性成分、及び界面活性剤を含む透過エンハンサーを含む、医薬組成物とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリクス;
該ポリマーマトリクス中のオクトレオチドを含む医薬活性成分;及び
界面活性剤を含む透過エンハンサー
を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤が、カチオン性界面活性剤である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤が、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドを含む、請求項1記載の
医薬組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤が、グリシンベタインエステルを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤が、CTABを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤が、BACを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が、CPCを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤が、非イオン性又はアニオン性の界面活性剤と組み合わされる、請求項
1記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記界面活性剤が、キレート化剤と組み合わされる、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記界面活性剤が、シクロデキストリンと組み合わされる、請求項1記載の医薬組成物
。
【請求項11】
前記界面活性剤が、脂肪酸と組み合わされる、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記透過エンハンサーが、生分解性である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項13】
親水性サッカリドとの結合によって連結された疎水性アルキル基を有する、好適な無毒
の非イオン性アルキル配糖体を、以下:(a)凝集阻害剤;(b)電荷修飾剤;(c)pH調節剤;(d)分
解酵素阻害剤;(e)粘液溶解剤又は粘液除去剤;(f)線毛運動障害剤;(g)以下:(i)界面活性剤
;(ii)胆汁酸塩;(ii)リン脂質添加剤、混合ミセル、リポソーム、もしくは担体;(iii)アル
コール;(iv)エナミン;(v)NO供与化合物;(vi)長鎖両親媒性分子;(vii)低分子疎水性浸透エ
ンハンサー;(viii)ナトリウム又はサリチル酸誘導体;(ix)アセト酢酸のグリセロールエス
テル;(x)シクロデキストリン又はβ-シクロデキストリン誘導体;(xi)中鎖脂肪酸;(xii)キ
レート化剤;(xiii)アミノ酸又はその塩;(xiv)N-アセチルアミノ酸又はその塩;(xv)選択さ
れた膜成分に対して分解性の酵素;(ix)脂肪酸合成の阻害剤;(x)コレステロール合成の阻
害剤;及び(xi) (i)~(x)に記載の膜透過促進剤の任意の組合せから選択される膜透過促進
剤;(h)上皮ジャンクション生理機能の調整剤;(i)血管拡張剤;(j)選択的輸送促進剤;並び
に、(k)安定化送達ビヒクル、担体、粘膜付着性物質、支持体、又は複合体形成種であっ
て、それとともに、前記化合物が効果的に配合され、会合され、含有され、封入され、又
は結合されて、増強された粘膜送達のための該化合物の安定化をもたらす、前記安定化送
達ビヒクル、担体、粘膜付着性物質、支持体、又は複合体形成種から選択される粘膜送達
促進剤と組み合わせて有する、請求項1記載の医薬組成物であって、
該経粘膜的な送達促進剤を含む該化合物製剤が、対象の血漿中の該化合物の増大した生
物学的利用能を提供する、前記医薬組成物。
【請求項14】
前記オクトレオチドが、閉塞層及び活性層を有する医薬フィルムから送達される、請求
項1記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記オクトレオチド及び透過エンハンサーが、医薬組成物フィルムの活性層に埋め込ま
れている、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項16】
DDTMABの透過活性が、濃度依存的である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記透過エンハンサーが、5重量%DDTMABである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記透過エンハンサーが、1重量%DDTMABである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記透過エンハンサーが、0.5重量%DDTMABである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記透過エンハンサーが、0.1重量%DDTMABである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項21】
0.3%の臨界ミセル濃度を有する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記透過エンハンサーが、10重量%グリシンベタインエステルである、請求項1記載の
医薬組成物。
【請求項23】
前記透過エンハンサーが、5重量%グリシンベタインエステルである、請求項1記載の医
薬組成物。
【請求項24】
前記透過エンハンサーが、0.5重量%グリシンベタインエステルである、請求項1記載の
医薬組成物。
【請求項25】
前記透過エンハンサーが、0.1重量%グリシンベタインエステルである、請求項1記載の
医薬組成物。
【請求項26】
300分以下の治療ウィンドウを有する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項27】
200分以下の治療ウィンドウを有する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項28】
150分以下の治療ウィンドウを有する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項29】
100分以下の治療ウィンドウを有する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項30】
50分以下の治療ウィンドウを有する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項31】
50~400分の治療ウィンドウを有する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項32】
治療ウィンドウにおいて50~600ugのオクトレオチド透過を有する、請求項1記載の医薬
組成物。
【請求項33】
前記ポリマーマトリクスが、以下の群:プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニル
アルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、トラガ
ントガム、グアーガム、アカシアゴム、アラビアゴム、ポリアクリル酸、メチルメタクリ
レートコポリマー、カルボキシビニルコポリマー、デンプン、ゼラチン、エチレンオキシ
ド-プロピレンオキシドコポリマー、コラーゲン、アルブミン、ポリアミノ酸、ポリホス
ファゼン、多糖、キチン、キトサン、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも1つ
のポリマーを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項34】
安定化剤をさらに含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記ポリマーマトリクスが、樹状ポリマーを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記ポリマーマトリクスが、高分岐ポリマーを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項37】
請求項1記載の医薬組成物を製造する方法であって、
界面活性剤を含む透過エンハンサーを、オクトレオチドを含む医薬活性成分と混合する
こと、及び
該オクトレオチドを含む医薬活性成分を、医薬フィルム中に埋め込むこと
を含む、前記方法。
【請求項38】
ある量の医薬組成物を保持するハウジングであって、該医薬組成物が:
ポリマーマトリクス;
該ポリマーマトリクス中のオクトレオチドを含む医薬活性成分;及び
界面活性剤を含む透過エンハンサー
を含む、前記ハウジング;並びに
所定の量の該医薬組成物を分配する開口部
を備える装置。
【請求項39】
前記界面活性剤が、以下の構造:
【化1】
(式中:
Aは、窒素又はリンのいずれかであり;
Cは、切断可能な結合であり;
Bは、AをCと接続する基であり、かつアルキレン、アルケニレン、シクロアルキレン、
もしくはアラルキレン基、又は1個以上のヘテロ原子を任意に含有するそれらの誘導体で
あり;
R
1、R
2、及びR
3のそれぞれは、独立して、水素、1個以上のヘテロ原子を任意に有する
アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、及びアラルキル基からなる群から
選択され;
R
4は、1個以上のヘテロ原子を任意に有するアルキル、アルケニル、アルキニル、シク
ロアルキル、及びアラルキル基からなる群から選択され;
D-は、A
+に対するアニオン性の対イオンである)
を有する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項40】
R1、R2、及びR3のそれぞれが、独立して、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、C2-10ア
ルキニル、C3-10シクロアルキル、C4-10アラルキル基、又は1個以上のヘテロ原子を任意
に有するその誘導体である、請求項39記載の医薬組成物。
【請求項41】
Bが、C1-20アルキレン、C2-20アルケニレン、C2-20アルキニレン、C3-20シクロアルキ
レン、C4-20アラルキレン基、又は1個以上のヘテロ原子を任意に有するその誘導体である
、請求項39記載の医薬組成物。
【請求項42】
R4が、C1-30アルキル、C2-30アルケニル、C2-30アルキニル、C3-30シクロアルキル、C4
-30アラルキル基、又は1個以上のヘテロ原子を任意に有するその誘導体である、請求項39
記載の医薬組成物。
【請求項43】
Cが、酸/塩基加水分解、酵素反応、又はラジカル切断によって分解可能な基である、請
求項39記載の医薬組成物。
【請求項44】
Cが、カーボネート結合、アミド結合、エステル結合、アセタール結合、ヘミアセター
ル結合、オルトエステル結合、カルバミド、スルホネート、ホスホネート、チオエステル
、ウレア、イソシアネート結合、ヒドロゾン、ジスルフィド結合、又はそれらの任意の組
み合わせからなる群から選択される、請求項39記載の医薬組成物。
【請求項45】
Dが、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、スルホン酸イオン
、炭酸イオン、又は水酸化物イオンである、請求項39記載の医薬組成物。
【請求項46】
医学的状態を治療する方法であって:
ポリマーマトリクス;
該ポリマーマトリクス中のオクトレオチドを含む有効量の医薬活性成分;及び
界面活性剤を含む透過エンハンサー
を含む医薬組成物を投与すること
を含む、前記方法。
【請求項47】
医学的状態を治療することが、成長ホルモンの放出を阻害することを含む、請求項46記
載の方法。
【請求項48】
前記医学的状態が、成長ホルモン産生腫瘍及び下垂体腫瘍、カルチノイド症候群に伴う
下痢及びフラッシングエピソード、血管作用性小腸ペプチド分泌腫瘍に伴う下痢、又は肝
硬変における食道静脈瘤からの急性出血を含む、請求項46記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、2017年9月26日に出願された米国仮特許出願第62/563,534号の優先権を主張
し、その全体は、引用により組み込まれている。
【0002】
(技術分野)
本発明は、医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(技術分野)
本発明は、医薬組成物に関する。
【0004】
(背景)
薬物又は医薬などの活性成分は、計画的な様式で、患者へ送達される。フィルムを使用
する経皮的又は経粘膜的な薬物又は医薬の送達は、該薬物又は医薬が、有効且つ効率的な
様式で、生体膜を透過するか又は別の方法で横断することを必要とすることがある。
【発明の概要】
【0005】
(概要)
概して、医薬組成物は、ポリマーマトリクス、該ポリマーマトリクス中のペプチドを含
む医薬活性成分、及び界面活性剤を含む透過エンハンサーを含む。
【0006】
別の実施態様において、前記医薬活性成分は、オクトレオチドとすることができる。
【0007】
ある実施態様において、前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤であり、その構造は
、以下のものである
【化1】
(式中:
Aは、窒素又はリンのいずれかであり;
Cは、切断可能な結合であり;
Bは、AをCと接続する基であり、かつアルキレン、アルケニレン、シクロアルキレン、
又はアラルキレン基、及び1個以上のヘテロ原子を任意に含有するその誘導体とすること
ができ;
R
1、R
2、及びR
3のそれぞれは、独立して、水素、1個以上のヘテロ原子を任意に有する
アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、及びアラルキル基からなる群から
選択され;
R
4は、1個以上のヘテロ原子を任意に有するアルキル、アルケニル、アルキニル、シク
ロアルキル、及びアラルキル基からなる群から選択され;
D-は、A
+に対するアニオン性の対イオンである)。
【0008】
ある実施態様において、R1、R2、及びR3のそれぞれは、独立して、それぞれ独立して、
C1-10アルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、C3-10シクロアルキル、C4-10アラ
ルキル基、又は1個以上のヘテロ原子を任意に有するそれらの誘導体とすることができる
。
【0009】
ある実施態様において、Bは、C1-20アルキレン、C2-20アルケニレン、C2-20アルキニレ
ン、C3-20シクロアルキレン、C4-20アラルキレン基、又は1個以上のヘテロ原子を任意に
有するその誘導体とすることができる。
【0010】
ある実施態様において、R4は、C1-30アルキル、C2-30アルケニル、C2-30アルキニル、C
3-30シクロアルキル、C4-30アラルキル基、又は1個以上のヘテロ原子を任意に有するそれ
らの誘導体とすることができる。
【0011】
ある実施態様において、Cは、酸/塩基加水分解、酵素反応、又はラジカル切断によって
分解可能な基とすることができる。例えば、Cは、これらに限定されないが、カーボネー
ト結合、アミド結合、エステル結合、アセタール結合、ヘミアセタール結合、オルトエス
テル結合、カルバミド、スルホネート、ホスホネート、チオエステル、ウレア、イソシア
ネート結合、ヒドロゾン、ジスルフィド結合、及びそれらの組合せからなる群から選択す
ることができる。
【0012】
ある実施態様において、D-は、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イ
オン、スルホン酸イオンイオン、炭酸イオン、又は水酸化物イオンとすることができる。
【0013】
ある実施態様において、前記界面活性剤は、置換基として複数のアミノ基、例えば、2
個、3個、4個、又はそれを超えるアミノ基を含むことができる。
【0014】
ある実施態様において、界面活性剤は、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドを含
むことができる。
【0015】
前記カチオン性界面活性剤は、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDTMAB
又はCTAB)を含むことができる。
【0016】
前記カチオン性界面活性剤は、塩化ベンザルコニウム(BAC)を含むことができる。
【0017】
ある実施態様において、カチオン性界面活性剤などの透過エンハンサーは、非イオン性
又はアニオン性の界面活性剤と組み合わせることができる。
【0018】
別の実施態様において、カチオン性界面活性剤は、キレート化剤と組み合わせることが
できる。さらに別の実施態様において、前記界面活性剤は、シクロデキストリンと組み合
わせることができる。
【0019】
別の実施態様において、前記界面活性剤は、脂肪酸と組み合わせることができる。
【0020】
ある実施態様において、前記透過エンハンサーは、生分解性であってもよい。
【0021】
別の実施態様において、前記透過エンハンサーは、グリシンベタイン誘導体とすること
ができる。
【0022】
いくつかの例において、オクトレオチドが、医薬組成物フィルムから送達される。
【0023】
例えば、前記オクトレオチドは、閉塞層及び活性層を有する医薬フィルムから送達する
ことができる。前記オクトレオチド及び透過エンハンサーは、医薬組成物フィルムの活性
層に埋め込まれていてもよい。
【0024】
ある実施態様において、(ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド)DDTMABの透過活性
は、エクスビボ透過モデルに示されるように濃度依存的である。例えば、該透過エンハン
サーを、5重量%DDTMABとすることができる。該透過エンハンサーを、1重量%DDTMAB、0.
5重量%DDTMAB、又は0.1重量%DDTMABすることもできる。
【0025】
ある実施態様において、透過エンハンサーを、10重量%グリシンベタインエステル(C12
)とすることができる。該透過エンハンサーを、5重量%グリシンベタイン、0.5重量%グ
リシンベタイン、又は0.15重量%グリシンベタインエステルとすることもできる。
【0026】
ある実施態様において、前記ポリマーマトリクスは、ポリエチレンオキシドを含むこと
ができる。
【0027】
ある実施態様において、前記ポリマーマトリクスは、以下の群:ヒドロキシプロピルメ
チルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒ
ドロキシプロピルセルロース、並びにカルボキシメチルセルロース及びカルボキシメチル
セルロースナトリウムから選択されるセルロース系ポリマーを含むことができる。
【0028】
ある実施態様において、前記ポリマーマトリクスは、ヒドロキシプロピルメチルセルロ
ースを含むことができる。
【0029】
ある実施態様において、前記ポリマーマトリクスは、ポリエチレンオキシド及びヒドロ
キシプロピルメチルセルロースを含むことができる。
【0030】
ある実施態様において、前記ポリマーマトリクスは、ポリエチレンオキシド及びポリビ
ニルピロリドンを含むことができる。
【0031】
ある実施態様において、前記ポリマーマトリクスは、ポリエチレンオキシド及びポリサ
ッカリドを含むことができる。
【0032】
ある実施態様において、前記ポリマーマトリクスは、ポリエチレンオキシド、ヒドロキ
シプロピルメチルセルロース、及び多糖を含むことができる。
【0033】
ある実施態様において、前記ポリマーマトリクスは、ポリエチレンオキシド、ヒドロキ
シプロピルメチルセルロース、多糖、及びポリビニルピロリドンを含むことができる。
【0034】
ある実施態様において、前記ポリマーマトリクスは、以下の群:プルラン、ポリビニル
ピロリドン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、
キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム、アカシアゴム、アラビアゴム、ポリアク
リル酸、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルコポリマー、デンプン、ゼ
ラチン、エチレンオキシド-プロピレンオキシドコポリマー、コラーゲン、アルブミン、
ポリアミノ酸、ポリホスファゼン、多糖、キチン、キトサン、及びそれらの誘導体から選
択される少なくとも1つのポリマーを含むことができる。
【0035】
前記ポリマーマトリクスは、樹状ポリマーを含むことができる。前記ポリマーマトリク
スは、高分岐ポリマーを含むことができる。
【0036】
医薬組成物を製造する方法は、界面活性剤を含む透過エンハンサーを、オクトレオチド
を含む医薬活性成分と混合すること、及び該オクトレオチドを含む医薬活性成分を、医薬
フィルム中に埋め込むことを含むことができる。
【0037】
一般に、医薬組成物を、装置から分配することができる。該装置は、ある量の医薬組成
物を保持するハウジングであって、該医薬組成物が、ポリマーマトリクス、該ポリマーマ
トリクス中のオクトレオチドを含む医薬活性成分、及び界面活性剤を含む透過エンハンサ
ーを含む、前記ハウジング、並びに所定の量の該医薬組成物を分配する開口部を備えるこ
とができる。
【0038】
ある実施態様において、前記医薬組成物は、安定化剤を含むことができる。
【0039】
更に別の態様において、本医薬組成物は、親水性サッカリドとの結合により連結される
疎水性アルキル基を有する、好適な無毒の非イオン性アルキル配糖体を、以下:(a)凝集
阻害剤;(b)電荷修飾剤;(c)pH調節剤;(d)分解酵素阻害剤;(e)粘液溶解剤又は粘液除去剤;(
f)線毛運動障害剤(ciliostatic agent);(g)以下:(i)界面活性剤;(ii)胆汁酸塩;(ii)リン
脂質添加剤、混合ミセル、リポソーム、もしくは担体;(iii)アルコール;(iv)エナミン;(v
)一酸化窒素供与化合物;(vi)長鎖両親媒性分子;(vii)低分子疎水性浸透エンハンサー;(vi
ii)ナトリウム又はサリチル酸誘導体;(ix)アセト酢酸のグリセロールエステル;(x)シクロ
デキストリン又はβ-シクロデキストリン誘導体;(xi)中鎖脂肪酸;(xii)キレート化剤;(xi
ii)アミノ酸又はその塩;(xiv)N-アセチルアミノ酸又はその塩;(xv)選択された膜成分に対
して分解性の酵素;(ix)脂肪酸合成の阻害剤;(x)コレステロール合成の阻害剤;及び、(xi)
(i)~(x)に記載の膜浸透促進剤の任意の組合せから選択される膜透過促進剤;(h)上皮ジ
ャンクション生理機能の調整剤;(i)血管拡張剤;(j)選択輸送促進剤;並びに、(k)安定化送
達ビヒクル、担体、粘膜付着性物質、支持体、又は複合体形成種であって、それとともに
、本化合物が効果的に配合され、会合され、含有され、封入され、又は結合されて、増強
された粘膜送達のための化合物の安定化をもたらす、前記安定化送達ビヒクル、担体、粘
膜付着性物質、支持体、又は複合体-形成種から選択される粘膜送達促進剤と組み合わせ
て有し、ここで経粘膜的な送達促進剤を含む本化合物の製剤は、対象の血漿中の本化合物
の生物学的利用能の増大を提供する。
【0040】
ある実施態様において、医薬組成物は、ポリマーマトリクス;該ポリマーマトリクス中
の医薬活性成分;及び増加した血流を生じさせるか又は組織のフラッシングを可能にして
、該医薬活性成分の経粘膜的な取り込みを変化させる相互作用物質を含むことができる。
【0041】
ある実施態様において、医薬組成物は、ポリマーマトリクス;該ポリマーマトリクス中
の医薬活性成分;及び正又は負の溶解熱を有し、経粘膜的な取り込みを変化(増加又は減少
)させる補助剤として使用される相互作用物質を含むことができる。
【0042】
別の実施態様において、医薬組成物は、ポリマーマトリクス、該ポリマーマトリクス中
の医薬活性成分、及び相互作用物質を含み、該組成物は、縁が境界線を共にしている少な
くとも1つの面を有する多層フィルムに含有されている。
【0043】
一般に、医学的状態を治療する方法は、ポリマーマトリクス、該ポリマーマトリクス中
のオクトレオチドを含む有効量の医薬活性成分、及び界面活性剤を含む透過エンハンサー
を含む医薬組成物を投与することを含むことができる。オクトレオチドを使用して、下垂
体からの成長ホルモンの放出を阻害することができる。これは、成長ホルモン産生腫瘍(
例えば、先端巨大症及び巨人症)、甲状腺刺激ホルモンを分泌する下垂体腫瘍(例えば、チ
ロトロピノーマ(thyrotropinoma))、カルチノイド症候群に伴う下痢及びフラッシング(fl
ushing)エピソード、又は血管作用性小腸ペプチド分泌腫瘍(VIPoma)のヒトにおける下痢
の治療に使用することができる。これは、肝硬変における食道静脈瘤からの急性出血の管
理のための処置としても使用し得る。他の態様、実施態様、及び特徴は、以下の説明、図
面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
(図面の簡単な説明)
【
図1】
図1に関して、フランツ拡散セル100は、ドナー化合物101、ドナーチャンバー102、膜103、サンプリングポート104、レセプターチャンバー105、撹拌子106、及びヒーター/サーキュレーター107を備える。
【
図2】
図2に関して、医薬組成物は、ポリマーマトリクス200を含むフィルム100であり、該医薬活性成分300は、該ポリマーマトリクス中に分散される。該フィルムは、界面活性剤とすることができる透過エンハンサー400を含むことができる。
【
図3】
図3に関して、このグラフは、DDTMABを用いる透過に対するオクトレオチド濃度の効果を示す。
【
図4】
図4に関して、このグラフは、フィックの拡散第一法則に従うオクトレオチド透過を示す。
【
図5】
図5に関して、このグラフは、脂肪族トリメチルアンモニウムブロミド界面活性剤の構造と活性の関係を示す。
【
図6】
図6に関して、このグラフは、ブタの頬側組織を用いるオクトレオチド透過に対する極微針の効果を示す。
【
図7】
図7に関して、このグラフは、極微針適用後にオクトレオチド溶液を頬側空間及び舌下空間に適用した前臨床研究からの結果を示す。
【
図8】
図8に関して、この画像は、活性医薬成分としてオクトレオチドを含む医薬組成物二層フィルムを示す。
【
図9】
図9Aに関して、このグラフは、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドの濃度依存的透過活性を示す。
図9Bに関して、このグラフは、二層フィルムからのオクトレオチドのエクスビボ透過に対する透過エンハンサー(DDTMAB)の効果を示す。
【
図10】
図10に関して、このグラフは、舌下投与又は皮下投与後のオクトレオチド血漿濃度を示す。
【
図11】
図11Aに関して、このグラフは、グリシンベタインエステルの濃度依存的透過活性を示す。
図11Bに関して、このグラフは、グリシンベタインエステルの透過活性に対するアルキル鎖の効果を示す。
【
図12】
図12に関して、このグラフは、DDTMABとのグリシンベタインエステルC12の透過活性の比較を示す。
【
図13】
図13に関して、このグラフは、エクスビボ透過モデルにおけるオクトレオチド透過に対するセチルピリジウムクロリド(cetyl pyridium chloride)テトラヘキシルアンモニウムブロミドの効果を示す。
【
図14】
図14に関して、このグラフは、エクスビボ透過モデルにおけるオクトレオチド透過に対するテトラヘキシルアンモニウムブロミドの効果を示す。
【
図15】
図15に関して、このグラフは、塩化ベンザルコニウムを透過エンハンサーとするエクスビボ透過モデルにおけるオクトレオチド透過に対する塩化ベンザルコニウム濃度の効果を示す。
【
図16】
図16に関して、このグラフは、雄のミニブタへの舌下投与又は静脈内(IV)投与後のオクトレオチド血漿濃度(ng/ml)対時間のプロファイルを示す。
【
図17】
図17に関して、このグラフは、10mgオクトレオチド/25mg BACを用いたヒトでの試験のアーム#1を示す。
【
図18】
図18A~
図18Cに関して、これらのグラフは、それぞれ、胃液、腸液、及び組織抽出物中の、GBE-C12の分解試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(詳細な説明)
口腔粘膜などの粘膜表面は、高度に血管形成され、且つ透過性であり、消化器系を通過
することがなく、これにより初回通過代謝を避けるという理由で、増大した生物学的利用
能及び作用の迅速な開始を提供するという事実のために、粘膜表面は、体への薬物送達の
ための都合の良い経路である。特に、頬側組織及び舌下組織は、口腔粘膜の高度に透過性
の領域であり、全身循環への直接のアクセスを有するよう口腔粘膜からの薬物の拡散を可
能にするので、これらの組織は、薬物送達にとって有利な部位を提供する。これはまた、
利便性の増加をもたらし、従って患者のコンプライアンスを高める。ある種の薬物又は医
薬活性成分に関して、透過エンハンサーは、粘膜障壁を乗り越え、透過性を改善すること
を補助することができる。透過エンハンサーは、薬物吸収に有利なように障壁層の浸透性
を可逆的に調整する。透過エンハンサーは、上皮を通る分子の輸送を促進する。吸収プロ
ファイル及びそれらの速度は、非限定的に、フィルムサイズ、薬物負荷、エンハンサーの
種類/負荷、ポリマーマトリクス放出速度及び粘膜滞留時間などの、様々なパラメーター
により制御及び調整され得る。
【0046】
医薬組成物は、医薬活性成分を計画的であつらえられた様式で送達するように設計する
ことができる。しかし、医薬活性成分のインビボにおける、特に対象の口内における、溶
解度及び透過性は、かなり変動し得る。特定のクラスの透過エンハンサーは、医薬活性成
分のインビボにおける取込み及び生物学的利用能を向上することができる。特に、フィル
ムを介して口へ送達される場合、透過エンハンサーは、対象の粘膜を通り血流へ入る医薬
活性成分の透過性を向上することができる。透過エンハンサーは、医薬活性成分の吸収の
速度及び量を、組成物中の他の成分に応じて、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70
%、80%、90%、100%、150%、200%、又はそれを超えて向上させることができる。
【0047】
ある実施態様において、医薬組成物は、親水性サッカリドへの結合により連結された疎
水性アルキル基を有する、好適な無毒の非イオン性アルキル配糖体を、以下:(a)凝集阻
害剤;(b)電荷修飾剤;(c)pH調節剤;(d)分解酵素阻害剤;(e)粘液溶解剤又は粘膜除去剤;(f)
線毛運動障害剤;(g)以下:(i)界面活性剤;(ii)胆汁酸塩;(ii)リン脂質添加剤、混合ミセ
ル、リポソーム、もしくは担体;(iii)アルコール;(iv)エナミン;(v)NO供与化合物;(vi)長
鎖両親媒性分子;(vii)低分子疎水性浸透エンハンサー;(viii)ナトリウム又はサリチル酸
誘導体;(ix)アセト酢酸のグリセロールエステル;(x)シクロデキストリン又はβ-シクロデ
キストリン誘導体;(xi)中鎖脂肪酸;(xii)キレート化剤;(xiii)アミノ酸又はその塩;(xiv)
N-アセチルアミノ酸又はその塩;(xv)選択された膜成分に対して分解性の酵素;(ix)脂肪酸
合成の阻害剤;(x)コレステロール合成の阻害剤;及び、(xi) (i)~(x)に記載の膜浸透促進
剤の任意の組合せから選択される膜透過促進剤;(h)上皮ジャンクション生理機能の調整剤
;(i)血管拡張剤;(j)選択的輸送促進剤;並びに、(k)安定化送達ビヒクル、担体、粘膜付着
性物質、支持体、又は複合体形成種であって、それとともに、本化合物が効果的に配合さ
れ、会合され、含有され、封入され、又は結合されて、増強された経粘膜送達のための化
合物の安定化をもたらす、前記安定化送達ビヒクル、担体、粘膜付着性物質、支持体、又
は複合体-形成種から選択される粘膜送達促進剤と組合せて有し、ここで経粘膜的な送達
促進剤を含む本化合物の製剤は、対象の血漿中の本化合物の生物学的利用能の増大を提供
する。
【0048】
「アルキル」は、1~24個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖、非環状又は環状の、飽
和脂肪族炭化水素を意味する。代表的な飽和直鎖アルキルとしては、メチル、エチル、n-
プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどが挙げられ;飽和分岐鎖アルキルとし
ては、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチルなどが挙げ
られる。代表的な飽和環状アルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペ
ンチル、シクロヘキシルが挙げられ;不飽和環状アルキルとしては、シクロペンテニル及
びシクロヘキセニルなどが挙げられる。不飽和アルキル鎖を含む荷電脂質が、増加した膜
流動性を有する脂質核酸粒子を形成するのに特に有用であることが分かっている。例えば
、引用により本明細書に組み込まれる米国特許公開公報第2013/0338210号を参照されたい
。
【0049】
(透過エンハンサー)
浸透エンハンサーは、J. Nicolazzoらの文献、J. of Controlled Disease, 105 (2005)
1-15に説明されており、これは引用により本明細書中に組み込まれている。口腔粘膜が
、治療薬の全身循環への送達のための魅力的部位である理由は多い。頬側上皮から内頚静
脈への血液の直接ドレナージのために、肝臓及び腸における初回通過代謝を回避すること
ができる。初回通過効果は、経口投与された場合の、一部の化合物の生物学的利用能の不
良の主な理由となり得る。加えて、口腔を覆う粘膜は、容易にアクセス可能であり、この
ことは、剤形が、必要とされる部位へ適用され、且つ緊急の場合は容易に除去され得るこ
とを確実にする。しかし、皮膚のように、頬側粘膜は、生体異物の吸収に対する障壁とし
て作用し、このことは、この組織を超える化合物の透過を妨害することができる。結果的
に、安全且つ有効な浸透エンハンサーの確定は、口腔粘膜薬物送達の向上の探求における
大きな目標となっている。
【0050】
化学的浸透エンハンサーは、生体膜を通り共投与される薬物の透過速度を制御する物質
である。大規模な研究が、浸透エンハンサーが腸管及び経皮の透過性をどのように変化さ
せるかについてのより良い理解を得ることに焦点を当てているが、頬側浸透増強に係わる
機序に関しては、ほとんどわかっていない。
【0051】
頬側粘膜は、頬の内側の裏打ち、並びに歯茎と上下唇の間の領域の輪郭を描き、且つこ
れは、100cm2の平均表面積を有する。頬側粘膜の表面は、波打つ基底膜(厚さおよそ1~2A
mの細胞外物質の連続層)により、下側結合組織(固有層及び粘膜下層)から分離されている
重層扁平上皮からなる。この重層扁平上皮は、基底領域から細胞が脱落する表在領域へと
移るにつれ、サイズ、形状、及び含有物が変化する、細胞の分化している層からなる。そ
こにはおよそ40~50の細胞層が存在し、厚さ500~600Amの頬側粘膜が生じている。
【0052】
頬側粘膜の透過性は、皮膚のそれよりも大きいが、腸のそれよりも小さい。透過性の相
違は、各組織の間の構造的相違の結果である。頬側粘膜の細胞間隙中の組織化された脂質
ラメラの非存在は、皮膚の角質化された上皮と比べ、外来化合物のより大きい透過性を生
じ;他方で、増加した厚さ及び密着結合の欠如は、頬側粘膜が腸組織よりも透過性が低く
なることをもたらす。
【0053】
頬側粘膜の一次障壁特性は、頬側上皮の上側1/3~1/4に起因するとされている。研究者
らは、表面上皮を超える、角質化されていない口腔粘膜の透過性障壁が、膜被覆顆粒から
上皮細胞間隙へ押し出された内容物に帰せられることを知っている。
【0054】
口腔の角質化されていない領域の細胞間脂質は、表皮、口蓋、及び歯肉の脂質よりも、
より極性のある性質であり、且つこの脂質の化学的性質の差は、これらの組織間で認めら
れる透過性の差に寄与している。結果的に、これは、より効果的な障壁を作り出す角質化
された上皮の角質層での細胞間脂質充填の程度がより大きいことのみではなく、その障壁
内に存在する脂質の化学的性質でもあることは明らかである。
【0055】
口腔粘膜内の親水性領域及び親油性領域の存在は、研究者らに、頬側粘膜を通る2種の
薬物輸送経路-傍細胞(細胞間)及び経細胞(細胞を超える)-の存在を仮定させた。
【0056】
頬側粘膜を通る薬物送達は、上皮及び吸収に利用可能な領域の障壁の性質により限定さ
れるので、全身循環へ治療的に適切な量の薬物を送達するためには、様々な増強戦略が必
要である。化学的浸透エンハンサーの使用、プロドラッグ、及び物理的方法を含む様々な
方法を、頬側粘膜の障壁特性を克服するために利用することができる。
【0057】
化学的浸透エンハンサー、すなわち吸収プロモーターは、共投与される薬物の膜透過又
は吸収の速度を増大するために、医薬製剤に添加される物質である。これは、膜の損傷及
び/又は毒性の惹起を伴わずになすことができる。化学的浸透エンハンサーの、皮膚、鼻
粘膜、及び腸を超える化合物の送達に対する作用を調べる、多くの研究が存在する。近年
、頬側粘膜の透過性に対するこれらの物質の作用に、より多くの注意が払われている。頬
側粘膜を超える透過性は、受動拡散プロセスであると考えられるので、定常状態フラック
ス(Jss)は、フィックの拡散第一法則に従い、ドナーチャンバー濃度(CD)の増加とともに
増加するはずである。
【0058】
界面活性剤及び胆汁酸塩は、インビトロ及びインビボの両方において、様々な化合物の
頬側粘膜を超える透過性を増強することが示されている。これらの研究から得られたデー
タは、透過性の増強が、粘膜の細胞間脂質に対する界面活性剤の作用によるものであるこ
とを、強力に示唆している。界面活性剤は、典型的には、細胞間脂質及びタンパク質ドメ
インの撹乱によって機能する。界面活性剤は、カチオン性、非イオン性、又はアニオン性
であることができる。カチオン性界面活性剤の例としては、DDTMA、CTAB、及びBACが挙げ
られる。アニオン性界面活性剤の例としては、(グリコデオキシコール酸ナトリウム(GDC)
及び(デオキシコール酸ナトリウム(DOC)が挙げられる。非イオン性界面活性剤の例として
は、ポロキサマーF127、アゾン/ジメチルシクロデキストリン(DMCD)、ペセオール、ラブ
ラゾル、及びTDMが挙げられる。
【0059】
脂肪酸は、いくつかの薬物の皮膚を通した透過を強化することが示されており、これは
、DSC及びFTIRによって、細胞間脂質の流動性の増加に関連していることが示されている
。脂肪酸の例は、オレイン酸である。
【0060】
シクロデキストリンも、複合体の包接及び膜化合物の抽出によって透過を強化するのに
用いられてきた。シクロデキストリンの例としては、ジメチル-シクロデキストリン及び
β-シクロデキストリンが挙げられる。
【0061】
キレート化剤も、Ca2+カルシウムイオンに干渉することにより透過を強化するのに用い
られてきた。キレート化剤の例としては、EDTA及びEGTAが挙げられる。
【0062】
加えて、エタノールによる前処理が、腹側舌粘膜を超えるトリチウム水及びアルブミンの
透過性を増強し、且つブタの頬側粘膜を超えるカフェイン透過性を増強することが示され
ている。また、アゾン(登録商標)の口腔粘膜を通る化合物の透過性に対する増強作用のい
くつかの報告もある。更に、生体適合性且つ生分解性ポリマーであるキトサンが、腸及び
鼻の粘膜を含む、様々な組織を通る薬物送達を増強することが示されている。
【0063】
経口経粘膜的薬物送達(OTDD)は、全身作用を達成するための、医薬活性物質の口腔粘膜
を通る投与である。OTDDの透過経路及び予測モデルは、例えばM. Sattarの文献「経口経
粘膜的薬物送達-最新の状況及び今後の見通し(Oral transmucosal drug delivery- Curre
nt status and future prospects)」、Int’l. Journal of Pharmaceutics, 47(2014) 49
8-506に説明されており、この文献は引用により本明細書中に組み込まれている。OTDDは
、学術界及び産業界の科学者の注意を引き付け続けている。皮膚及び鼻の送達経路と比べ
口腔内の透過経路の限定された特徴決定にもかかわらず、最近のイオン化分子が頬側上皮
を透過する程度に関する研究者らの理解の進展、並びに口腔を研究するための新たな分析
技術の出現、並びに頬側及び舌下の透過を予測するインシリコモデルの進行中の開発は、
励みとなるものである。
【0064】
より広範なクラスの薬物を頬側粘膜を超えて送達するためには、この組織の障壁能を低下
させる可逆的方法が利用されるべきである。この必要条件は、頬側粘膜の透過性の制約を
安全に変更する浸透エンハンサーの研究を促している。頬側浸透は、胆汁酸塩、界面活性
剤、脂肪酸及びそれらの誘導体、キレート化剤、シクロデキストリン及びキトサンなどの
、様々なクラスの経粘膜的及び経皮的透過エンハンサーを使用することにより改善され得
ることが示されている。薬物透過増強のために使用される化学薬品は、胆汁酸塩を含むこ
とができる。
【0065】
胆汁酸塩の化合物の頬側透過に対する増強作用に関するインビトロ研究は、Sevda Sene
lの文献「頬側経路による薬物透過増強:可能性及び制限(Drug permeation enhancement
via buccal route: possibilities and limitations)」、Journal of Controlled Releas
e 72 (2001) 133-144において考察されており、この文献は引用により本明細書中に組み
込まれている。その記事はまた、ジヒドロキシ胆汁酸塩、グリコデオキシコール酸ナトリ
ウム(GDC)及びタウロデオキシコール酸ナトリウム(TDC)及びトリ-ヒドロキシ胆汁酸塩、
グリココール酸ナトリウム(GC)及びタウロコール酸ナトリウム(TC)の、濃度100mMでの、
頬側上皮の透過性の作用に関する最新の研究についても、組織学的作用に関連した透過性
の変化を含めて、考察している。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、硫酸モルヒ
ネが、各々、モデル化合物として使用された。
【0066】
キトサンもまた、動物モデル及びヒト志願者において、低分子極性分子及びペプチド/
タンパク質薬物の鼻粘膜を通る吸収を促進することが示されている。他の研究は、腸粘膜
及び培養されたCaco-2細胞を超える化合物の浸透に対する増強作用を示している。
【0067】
透過エンハンサーは、植物抽出物であることができる。植物抽出物は、植物材料の蒸留
により抽出された精油であるか又は精油を含む組成物であることができる。ある状況にお
いて、植物抽出物は、植物材料から抽出された化合物の合成アナログ(すなわち、有機合
成により生成された化合物)を含むことができる。植物抽出物は、フェニルプロパノイド
、例えば、フェニルアラニン、オイゲノール、酢酸オイゲノール、桂皮酸、桂皮酸エステ
ル、桂皮アルデヒド、ヒドロ桂皮酸、カビコール、もしくはサフロール、又はそれらの組
合せを含むことができる。植物抽出物は、クローブ植物、例えばクローブ植物の葉、茎、
又は花芽の精油抽出物であることができる。クローブ植物は、シジギウム・アロマティク
ム(Syzygium aromaticum)である。この植物抽出物は、60~95%のオイゲノール、例えば
、80~95%のオイゲノールを含むことができる。この抽出物はまた、5%~15%の酢酸オ
イゲノールも含むことができる。この抽出物はまた、カリオフィレンを含むことができる
。この抽出物はまた、最大2.1%までのα-フムレンも含むことができる。クローブ精油中
により低い濃度で含まれる他の揮発性化合物は、β-ピネン、リモネン、ファルネソール
、ベンズアルデヒド、2-ヘプタノン及びヘキサン酸エチルであることができる。
【0068】
別の透過エンハンサーを、薬物の吸収を改善するために添加してもよい。好適な透過エン
ハンサーは、天然又は合成の胆汁酸塩、例えばフシジン酸ナトリウム;グリココール酸又
はデオキシコール酸;脂肪酸及び誘導体、例えばラウリン酸ナトリウム、オレイン酸、オ
レイルアルコール、モノオレイン、及びパルミトイルカルニチンなど;キレート化剤、例
えば、EDTA二ナトリウム、EGTA二ナトリウム、クエン酸ナトリウム及びラウリル硫酸ナト
リウム、アゾン、コール酸ナトリウム、5-メトキシサリチル酸ナトリウム、ソルビタンラ
ウレート、グリセリルモノラウレート、オクトキシノニル-9、ラウレス-9、ポリソルベー
ト、ステロール、又はグリセリド、例えばカプリロカプロイルポリオキシルグリセリド、
例えばラブラゾルなどを含む。
【0069】
植物起源の一部の天然の生成物は、血管拡張作用を有することがわかっている。植物ベ
ースの産物が血管拡張を引き起こすことができるいくつかの機構又は様式が存在する。総
説については、引用により本明細書中に組み込まれている、McNeill J.R.及びJurgens, T
.M.の文献、Can. J. Physiol. Pharmacol. 84:803-821 (2006)を参照されたい。具体的に
、オイゲノールの血管弛緩作用が、いくつかの動物研究において報告されている。各々が
引用により本明細書中に組み込まれている、Lahlou, S.らの文献、J. Cardiovasc. Pharm
acol. 43:250-57 (2004)、Damiani, C.E.N.らの文献、Vascular Pharmacol. 40:59-66 (2
003)、Nishijima, H.らの文献、Japanese J. Pharmacol. 79:327-334 (1998)、及びHume
W.R.の文献、J. Dent Res. 62(9):1013-15 (1983)を参照されたい。カルシウムチャネル
遮断が、植物精油、又はその主成分オイゲノールにより誘導される血管弛緩の主因である
ことが示唆された。引用により本明細書中に組み込まれているInteraminense L.R.L.らの
文献、Fundamental & Clin. Pharmacol. 21: 497-506 (2007)を参照されたい。
【0070】
脂肪酸は、薬物調製品又は薬物ビヒクル中の不活性成分として使用することができる。
脂肪酸はまた、それらのある種の機能作用及びそれらの生体適合性の性質のために、製剤
成分として使用することもできる。遊離脂質及び複合脂質の一部の双方の脂肪酸は、主要
な代謝燃料(貯蔵及び輸送エネルギー)、全ての膜及び遺伝子調節因子の必須成分である。
総説については、引用により本明細書中に組み込まれているRustan A.C.及びDrevon, C.A
.の文献、「生命科学百科事典、脂肪酸:構造及び性質(Fatty Acids: Structures and Pro
perties, Encyclopedia of Life Sciences)」 (2005)を参照されたい。人体で代謝される
必須脂肪酸には、二つのファミリーが存在する:ω-3及びω-6多価不飽和脂肪酸(PUFA)で
ある。第一の二重結合がω炭素から三番目と四番目の炭素原子の間に認められる場合、こ
れらは、ω-3脂肪酸と称される。第一の二重結合が六番目と七番目の炭素原子の間に認め
られる場合、これらは、ω-6脂肪酸と称される。PUFAは更に、炭素原子の付加及び不飽和
化(水素の除去)により、体内において代謝される。ω-6脂肪酸であるリノール酸は、γ-
リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、アドレン酸、テトラコサテトラエン
酸、テトラコサペンタエン酸、及びドコサペンタエン酸に代謝される。ω-3脂肪酸である
α-リノレン酸は、オクタデカテトラエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエ
ン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸、
及びドコサヘキサエン酸(DHA)に代謝される。
【0071】
パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、及びエイコサペンタエン酸などの脂肪酸は、
Na+K+-APTaseポンプの活性化に関与する機序を介して、ブタの冠動脈平滑筋細胞の弛緩及
び過分極を誘導したこと、及びシス不飽和度が増大するにつれて、脂肪酸がより高い効力
を有したことが報告されている。その引用により本明細書中に組み込まれている、Pompos
iello, S.I.らの文献、Hypertension 31:615-20 (1998)を参照されたい。興味深いことに
、リノール酸の代謝産物であるアラキドン酸に対する肺血管反応は、投与量、動物種、ア
ラキドン酸投与の様式、及び肺循環の調子(tone)に応じて、血管収縮性又は血管拡張性の
いずれかとなり得る。例えば、アラキドン酸は、シクロオキシゲナーゼ-依存性及び-非依
存性の肺血管拡張を引き起こすことが、報告されている。各々が引用により本明細書中に
組み込まれている、Feddersen, C.O.らの文献、J. Appl. Physiol. 68(5):1799-808 (199
0);並びに、Spannhake, E.W.らの文献、J .Appl. Physiol. 44:397-495 (1978)及びWicks
, T.C.らの文献、Circ. Res. 38:167-71 (1976)を参照されたい。
【0072】
多くの研究が、EPA及びDHAの、口から摂取可能な形態として投与された後の、血管の反
応性に対する作用を報告している。いくつかの研究は、EPA-DHA又はEPA単独が、前腕微小
循環における、ノルエピネフリンの血管収縮作用を抑制し又はアセチルコリンへの血管拡
張反応を増強したことを認めた。各々が引用により本明細書中に組み込まれている、Chin
, J.P.F.らの文献、Hypertension 21:22-8 (1993)、及びTagawa, H.らの文献、J Cardiov
asc Pharmacol 33:633-40 (1999)を参照されたい。別の研究は、EPA及びDHAの両方が、全
身の動脈系コンプライアンスを増大させ、且つ脈圧及び総血管抵抗を低下させる傾向があ
ることを発見した。引用により本明細書中に組み込まれている、Nestel, P.らの文献、Am
J. Clin. Nutr. 76:326-30 (2002)を参照されたい。その一方で、研究は、EPAではなく
、DHAが、高脂血症の過体重男性の前腕微小循環において、血管拡張機序を増強し、且つ
収縮反応を減弱したことを発見した。引用により本明細書中に組み込まれている、Mori,
T.A.らの文献、Circulation 102:1264-69 (2000)を参照されたい。別の研究は、インビト
ロにおける分離されたヒト冠状動脈の律動収縮に対するDHAの血管拡張作用を発見した。
引用により本明細書中に組み込まれている、Wu, K.-T.らの文献、Chinese J. Physiol. 5
0(4):164-70 (2007)を参照されたい。
【0073】
アドレナリン受容体(又はアドレノレセプター)は、カテコールアミンの、特にノルエピ
ネフリン(ノルアドレナリン)及びエピネフリン(アドレナリン)の標的である、Gタンパク
質-共役受容体のクラスである。エピネフリン(アドレナリン)は、α-及びβ-アドレノレ
セプターの両方と反応し、各々、血管収縮及び血管拡張を引き起こす。α受容体は、エピ
ネフリンに対する感受性が低いが、末梢α1受容体のほうがβ-アドレノレセプターよりも
多いので、活性化された場合に、これらはβ-アドレノレセプターにより媒介される血管
拡張を無効にする。結果、高いレベルの循環エピネフリンは、血管収縮を引き起こす。比
較的低いレベルの循環エピネフリンでは、β-アドレノレセプター刺激が優位であり、血
管拡張、それに続く末梢血管抵抗の減少を生じる。α1-アドレノレセプターは、平滑筋収
縮、散瞳、皮膚、粘膜及び腹部内臓における血管収縮、並びに胃腸(GI)管及び膀胱の括約
筋収縮に関して知られている。α1-アドレナリン受容体は、Gqタンパク質-共役受容体ス
ーパーファミリーの一員である。活性化時に、ヘテロ三量体Gタンパク質、Gqは、ホスホ
リパーゼC(PLC)を活性化する。その作用機序は、カルシウムチャネルとの相互作用を伴い
、細胞内カルシウム含量を変化させる。総説については、引用により本明細書中に組み込
まれている、Smith R. S.らの文献、Journal of Neurophysiology 102(2): 1103-14 (200
9)を参照されたい。多くの細胞が、これらの受容体を有する。
【0074】
α1-アドレナリン受容体は、脂肪酸に関する主要受容体であることができる。例えば、
良性前立腺肥大(BPH)の治療に広く使用されるノコギリヤシ抽出液(SPE)は、α1-アドレナ
リン作動性、ムスカリン作動性、且つ1,4-ジヒドロピリジン(1,4-DHP)系カルシウムチャ
ネル拮抗性の受容体に結合することが報告されている。各々が引用により本明細書中に組
み込まれている、Abe M.らの文献、Biol. Pharm. Bull. 32(4) 646-650 (2009)、及びSuz
uki M.らの文献、Acta Pharmacologica Sinica 30:271-81 (2009)を参照されたい。SPEは
、ラウリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びリノール酸を含む、様々
な脂肪酸を含んでいる。ラウリン酸及びオレイン酸は、α1-アドレナリン作動性、ムスカ
リン作動性、且つ1,4-DHP系カルシウムチャネル拮抗性の受容体へ、非競合的に結合する
ことができる。
【0075】
ある実施態様において、透過エンハンサーを、アドレナリン受容体遮断薬とすることが
できる。このアドレナリン受容体遮断薬は、テルペン(例えば、イソプレンの単位に由来
する、植物精油中にみられる揮発性不飽和炭化水素)、又はC10~C22アルコール又は酸と
することができる。ある実施態様において、アドレナリン受容体遮断薬は、ファルネソー
ル、リノール酸、アラキドン酸、ドコサヘキサン酸、エイコサペンタン酸、及び/又はド
コサペンタン酸を含むことができる。この酸は、カルボン酸、リン酸、硫酸、ヒドロキサ
ム酸、又はそれらの誘導体であることができる。この誘導体は、エステル又はアミドであ
ることができる。例えば、アドレナリン受容体遮断薬は、脂肪酸又は脂肪族アルコールで
あることができる。
【0076】
C10~C20アルコール又は酸は、任意に、少なくとも1つの二重結合、少なくとも1つの三
重結合、又は少なくとも1つの二重結合及び1つの三重結合を含む直鎖C10~C22炭化水素鎖
を有するアルコール又は酸とすることができ;該炭化水素鎖は、任意にC1-4アルキル、C2-
4アルケニル、C2-4アルキニル、C1-4アルコキシ、ヒドロキシル、ハロ、アミノ、ニトロ
、シアノ、C3-5シクロアルキル、3-5員のヘテロシクロアルキル、単環のアリール、5-6員
のヘテロアリール、C1-4アルキルカルボニルオキシ、C1-4アルキルオキシカルボニル、C1
-4アルキルカルボニル、又はホルミルにより置換されており;且つ、更に任意に、-O-、-N
(Ra)-、-N(Ra)-C(O)-O-、-O-C(O)-N(Ra)-、-N(Ra)-C(O)-N(Rb)-、又は-O-C(O)-O-が間に
挟まっている。Ra及びRbの各々は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル
、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、ヒドロキシル、又はハロアルキルである。
【0077】
本明細書に記載の組成物は、荷電脂質又は荷電脂質の混合物を含むことができる。本明
細書で使用される、「荷電脂質」という用語は、1つ又は2つの脂肪酸アシル又は脂肪族ア
ルキル鎖及び四級アミノ頭部基を有する脂質を含むよう意図されている。四級アミンは、
永続的な正電荷を帯びている。頭部基は、生理的なpHでプロトン化され得る一級、二級、
又は三級アミンなどのイオン化可能な基を任意に含むことができる。四級アミンの存在は
、このイオン化可能な基のpKaを、四級アミンを欠く(例えば、四級アミンが、三級アミン
によって置き換えられた)構造的に類似の化合物における該基のpKaと比較して変化させる
ことができる。ある実施態様において、荷電脂質は、「アミノ脂質」と呼ばれる。一例と
して、前記組成物は、四級アミンを有する脂質、並びに四級アミンを有する脂質及び四級
アミンを有さないがプロトン化可能なアミン基を有する脂質を含むことができる。四級ア
ミンを含む脂質は、塩の形態とすることができ、三級アミンを含む対応する脂質から調製
することができる。この三級アミンは、例えば、適当なハロゲン化アルキルでのアルキル
化によって、四級アミンに変換することができる。別の荷電脂質としては、アルキル置換
基が異なる(例えば、N-エチル-N-メチルアミノ-、N-プロピル-N-エチルアミノ-、など)も
のを含む、代わりの脂肪酸基及び別の四級基を有するものを挙げることができる。R1及び
R2が双方とも長鎖アルキル又はアシル基である実施態様については、これらは、同じであ
っても、異なっていてもよい。一般に、飽和度の低いアシル鎖を有する脂質(例えば、荷
電脂質)は、特に、濾過滅菌の目的のために、複合体が、約0.3ミクロンを下回るサイズの
場合に、より容易にサイズ調整される。C10~C20の範囲の炭素鎖長を有する不飽和脂肪酸
を含有する荷電脂質が、典型的である。他のスキャフォールドも、荷電脂質のアミノ基(
例えば、荷電脂質のアミノ基)及び脂肪酸又は脂肪族アルキル部分を分離するのに使用さ
れ得る。
【0078】
不飽和度がより高い脂肪酸は、薬物の透過を増強するのに有効な候補である。不飽和脂
肪酸は、飽和脂肪酸よりも高い増強を示し、且つ増強は、二重結合の数とともに増大した
。A. Mittalらの文献、「皮膚浸透エンハンサーとしての脂肪酸の状態-総説(Status of F
atty Acids as Skin Penetration Enhancers - A Review)」、Current Drug Delivery, 2
009, 6, pp. 274-279。二重結合の位置もまた、脂肪酸の活性の増強に影響を及ぼす。二
重結合の位置の差に起因する脂肪酸の物理化学特性の差異は、皮膚浸透エンハンサーとし
ての、これらの化合物の効力を決定する可能性が最も高い。二重結合の位置が親水性末端
へシフトされるにつれ、皮膚分布は増加する。偶数位置に二重結合を有する脂肪酸は、奇
数位置に二重結合を有する脂肪酸よりも、角質層及び真皮の両方の構造の乱れ(perturbat
ion)に、より迅速に作用することも、報告されている。鎖内のシス-不飽和は、活性を増
加する傾向がある。同文献
【0079】
アドレナリン受容体相互作用物質は、テルペンであることができる。精油中のテルペン
の血圧降下活性が、報告されている。引用により本明細書中に組み込まれている、Meneze
s I.A.らの文献、Z. Naturforsch. 65c:652-66 (2010)を参照されたい。ある実施態様に
おいて、透過エンハンサーは、セスキテルペンであることができる。セスキテルペンは、
3つのイソプレン単位からなり、且つ実験式C15H24を有する、テルペンのクラスである。
モノテルペンのように、セスキテルペンは、非環式であることもあり、もしくは多くの独
自の組合せを含む、環を含むこともある。酸化又は転位のような生化学修飾は、関連する
セスキテルペノイドを生成する。
【0080】
アドレナリン受容体相互作用物質は、リノール酸などの、不飽和脂肪酸であることがで
きる。
【0081】
ある実施態様において、透過エンハンサーは、ファルネソールであることができる。フ
ァルネソールは、非環式セスキテルペンアルコールである、15-炭素有機化合物であり、
これはピロリン酸ファルネシルの天然の脱リン酸化された形態である。標準の条件下で、
これは、無色の液体である。これは、疎水性であり、従って水に不溶性であるが、油分と
は混和性である。ファルネソールは、シトロネラ、ネロリ、シクラメン、及びゲッカコウ
などの植物の油分から抽出することができる。これは、脊椎動物におけるメバロン酸から
のコレステロールの生合成の中間工程である。これは、繊細な花の香り又は弱い柑橘-ラ
イムの香りを有し、且つパフォーマー(performer)において使用される。ファルネソール
は、初代造血細胞に優先して、急性骨髄性白血病芽球及び白血球細胞株を選択的に死滅さ
せることが、報告されている。引用により本明細書中に組み込まれている、Rioja A.らの
文献、FEBS Lett 467 (2-3): 291-5 (2000)を参照されたい。ファルネシルアナログの血
管作動特性が、報告されている。引用により本明細書中に組み込まれている、Roullet, J
.-B.らの文献、J. Clin. Invest., 1996, 97:2384-2390を参照されたい。ファルネソール
及びN-アセチル-S-トランス,トランス-ファルネシル-L-システイン(AFC)、ファルネシル
化されたタンパク質のカルボキシル末端の合成模倣物の両方は、ラット大動脈輪において
血管収縮を阻害した。
【0082】
ある実施態様において、相互作用物質を、アポルフィンアルカロイドとすることができ
る。例えば、相互作用物質を、ジセントリンとすることができる。
【0083】
一般に、相互作用物質を、血管拡張剤又は治療用血管拡張剤とすることもできる。血管
拡張剤は、血管を開く又は拡げる薬物である。血管拡張剤は、通常、高血圧症、心不全、
及び狭心症を治療するのに用いられるが、例えば緑内障を含む他の状態を治療するのに用
いることもできる。抵抗血管に対して主に作用する一部の血管拡張剤(動脈拡張薬)は、高
血圧症、及び心不全、及び狭心症に使用される;しかしながら、反射性の心刺激が、一部
の動脈拡張薬を狭心症に不適とする。静脈拡張薬は、狭心症に非常に有効であり、時には
、心不全に使用されるが、高血圧症の一次療法としては使用されない。血管拡張薬は、動
脈及び静脈の双方を拡張させるという点で混合型(又はバランス型)血管拡張剤となること
ができ、従って、高血圧症、心不全、及び狭心症において広く応用できる。一部の血管拡
張剤は、それらの作用機序を理由として、場合によっては、それらの治療的有用性を強化
することができるか又はいくつかの追加の治療的利益を提供することができる別の重要な
作用も有する。例えば、一部のカルシウムチャネルブロッカーは、血管を拡張させるだけ
でなく、心臓の機械的機能及び電気的機能を低下させ、このことにより、それらの抗高血
圧作用を強化することができ、且つ不整脈をブロックすることなどの追加の治療的利益を
付与することができる。
【0084】
血管拡張薬は、それらの作用部位(動脈性対静脈)に基づいてか又は作用機序によって分
類することができる。主に、抵抗血管を拡張させる薬物(動脈拡張薬;例えば、ヒドララジ
ン)もあり、主に静脈の容量血管に影響を及ぼす薬物(静脈拡張薬;例えば、ニトログリセ
リン)もある。フェントラミンなどの、多くの血管拡張薬は、混合型の動脈及び静脈拡張
性を有する(混合型拡張薬;例えば、α-アドレナリン受容体アンタゴニスト、アンジオテ
ンシン変換酵素阻害剤)。
【0085】
しかしながら、主要な作用機序に基づいて血管拡張薬を分類することがより一般的であ
る。右の図は、血管拡張薬の重要な機序のクラスを表す。これらの薬物のクラス、及び血
管拡張を生じさせる他のクラスには:α-アドレナリン受容体アンタゴニスト(α-遮断薬);
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB);β2-アドレ
ナリン受容体アゴニスト(β2-アゴニスト);カルシウムチャネル遮断薬(CCB);中枢作用型
交感神経遮断薬;直接作用型血管拡張剤;エンドセリン受容体アンタゴニスト;神経節遮断
薬;ニトロ拡張薬;ホスホジエステラーゼ阻害剤;カリウムチャネル開口薬;レニン阻害剤が
含まれる。
【0086】
一般に、活性又は不活性な成分又は材料は、増加した血流又は組織のフラッシングを生
じさせ、APIの経粘膜的な取り込みの変化又は相違(増加又は減少)を可能にする物質もし
くは化合物、及び/又は正又は負の溶解熱を有し、経粘膜的な取り込みを変化(増加又は減
少)させる補助剤として使用される物質もしくは化合物とすることができる。
【0087】
本医薬組成物は、スプレー、ガム、ゲル、クリーム、錠剤、液剤、又はフィルムとする
ことができる。本組成物は、テクスチャ(textures)、例えば、表面の極微針又は微小突起
を含むことができる。最近、皮膚透過性の増大におけるミクロンスケール針の使用が、巨
大分子を含み、特に巨大分子に関して、経真皮送達をかなり増加することが示されている
。ほとんどの薬物送達研究は、インビトロにおいて広範な分子及びナノ粒子に対する皮膚
透過性を増加することが示されている、中実の(solid)極微針を重要視している。インビ
ボ研究は、オリゴヌクレオチドの送達、インスリンによる血糖値の低下、並びにタンパク
質ワクチン及びDNAワクチンからの免疫応答の誘導を明らかにしている。そのような研究
に関して、針アレイは、皮膚に孔をあけて拡散もしくはイオン導入法による輸送を増大す
るために、又は極微針表面コーティングから皮膚へ薬物を放出する薬物担体として使用さ
れている。中空の極微針もまた開発され、且つインスリンを糖尿病ラットへ微量注入する
ことが示されている。極微針の実際の適用に対処するためには、極微針破砕強度の皮膚挿
入力に対する比(すなわち、安全域)が、小さい先端半径及び大きい壁厚を持つ針について
最適であることが分かった。ヒト対象の皮膚に挿入された極微針は、無痛として報告され
た。まとめると、これらの結果は、極微針が、広範な可能性のある適用のために治療的化
合物を皮膚へ送達する有望な技術となることを示唆している。マイクロ電子産業の道具を
使用して、極微針が、広範なサイズ、形状及び材料で作製されている。極微針は、例えば
、最小の侵襲性の様式で封入された薬物を送達する、ポリマーの微視的な針であることが
できるが、他の好適な材料を使用することができる。
【0088】
本出願人は、極微針が、特に特許請求された組成物による、口腔粘膜を通る薬物の送達
を増強するために使用することができることを見出した。極微針は、口腔粘膜中にミクロ
ンサイズの孔を作製し、これは該粘膜を超える薬物の送達を増強することができる。中実
、中空、又は溶解性の極微針を、金属、ポリマー、ガラス及びセラミックを含むが、これ
らに限定されるものではない、好適な材料で作製することができる。微細加工プロセスは
、フォトリソグラフィー、シリコンエッチング、レーザー切断、金属電気めっき、金属電
解研摩及び成型を含むことができる。極微針は、組織を前処理するために使用され、且つ
フィルムの適用前に取り除かれる固形物であることができる。本出願に説明される薬物負
荷されたポリマーフィルムは、極微針それ自身のマトリクス材料として使用することがで
きる。これらのフィルムは、その表面上に作製された極微針又は微小突起を有することが
でき、これらはそれを通り薬物が透過することができる粘膜中のマイクロチャネルを形成
した後に溶解するであろう。
【0089】
用語「フィルム」は、長方形、正方形、又は他の所望の形状を含む、任意の形状の、フ
ィルム及びシートを含むことができる。フィルムは、任意の所望の厚さ及びサイズである
ことができる。好ましい実施態様において、フィルムは、使用者に投与、例えば、使用者
の口腔へ配置されることができるような、厚さ及びサイズを有することができる。フィル
ムは、約0.0025mm~約0.250mmの比較的薄い厚さを有することができるか、又はフィルム
は、約0.250mm~約1.0mmのやや厚めの厚さを有することができる。一部のフィルムに関し
て、厚さは、更に比較的大きくてもよく、すなわち約1.0mmよりも大きくてもよく、或い
は比較的薄くてもよく、すなわち約0.0025mm未満であってもよい。フィルムは、単層であ
ることができ、又はフィルムは、積層フィルムもしくは多重キャストフィルムを含む、多
層であることができる。
【0090】
口腔溶解性フィルムは、3つの主要クラス:即時溶解性、中等度溶解性及び緩徐溶解性
に分類することができる。即時溶解性フィルムは、口内で約1秒~約30秒、又は口内で約3
0秒~1分で溶解することができる。中等度溶解性フィルムは、口内で、約1~約30分で溶
解することができ、緩徐溶解性フィルムは、口内で30分超で溶解することができる。一般
的傾向として、即時溶解性フィルムは、低分子量親水性ポリマー(例えば、分子量約1,000
~9,000を有するポリマー、又は分子量最大200,000を有するポリマー)を含む(又はからな
る)ことができる。対照的に、緩徐溶解性フィルムは一般に、高分子量ポリマー(例えば分
子量数百万を有する)を含む。中等度溶解性フィルムは、即時溶解性フィルムと緩徐溶解
性フィルムの間に収まる傾向がある。
【0091】
中等度溶解性フィルムであるフィルムを使用することが好ましいこともある。中等度溶
解性フィルムは、かなり迅速に溶解することができるが、粘膜付着の良好なレベルも有す
る。中等度溶解性フィルムはまた、柔軟であり、迅速に湿潤可能であり、且つ典型的には
使用者にとって非刺激性である。このような中等度溶解性フィルムは、十分迅速な、最も
望ましくは約1分~約20分の、溶解速度を提供することができる一方で、使用者の口腔内
に一旦配置されたならば、フィルムが容易に取り外されないような、許容し得る粘膜付着
レベルを提供する。このことは、医薬活性成分の使用者への送達を確実にすることができ
る。
【0092】
前記医薬組成物フィルムは、適当な処方で、閉塞層及び活性層を有して生産することが
できる。ある例において、出願人は、閉塞層及び活性層を有するフィルムを生産した。閉
塞層は、例えば、適当な約セルロース系ポリマー、セルロース、増粘剤、ポリオール化合
物、液体ビヒクル(例えば、ペセオール)、味添加剤もしくは味マスキング剤、及び/又は
着色添加物を含むことができる。活性層は、例えば、活性医薬成分(この場合、オクトレ
オチド)、水溶性成分又は樹脂(例えば、Sentry Polyoxなど)、味添加剤もしくは味マスキ
ング剤、例えば、砂糖もしくは砂糖代用品など、及び透過エンハンサー(この場合、界面
活性剤)を含むことができる。
【0093】
(医薬活性成分)
医薬組成物は、1種以上の医薬活性成分を含むことができる。この医薬活性成分は、単
一の医薬成分又は医薬成分の組合せであることができる。医薬活性成分は、抗炎症性鎮痛
薬、ステロイド系抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、局所麻酔薬、殺菌剤、消毒薬、血管収縮剤
、止血薬、化学療法薬、抗生物質、角質溶解剤、焼灼薬、抗ウイルス薬、抗リウマチ薬、
高血圧治療薬、気管支拡張薬、抗コリン作用薬、抗不安薬、制吐化合物、ホルモン、ペプ
チド、タンパク質又はワクチンであることができる。本医薬活性成分は、化合物、薬物の
医薬として許容し得る塩、プロドラッグ、誘導体、薬物複合体又は薬物のアナログである
ことができる。用語「プロドラッグ」とは、体内で代謝され、生物学的活性薬物を生成す
ることができる、生物学的に不活性の化合物を指す。
【0094】
(オクトレオチド)
ある例において、前記医薬活性成分を、環状ペプチドなどのペプチドとすることができ
る。医薬活性成分は、天然のホルモンを模倣することができる。医薬活性成分を、天然の
ソマトスタチンを薬理学的に模倣するが、成長ホルモングルカゴン及びインスリンの、該
天然のホルモンよりも強力な阻害剤であるオクタペプチドであるオクトレオチドとするこ
とができる。オクトレオチドは、成長ホルモン産生腫瘍(先端巨大症及び巨人症)、甲状腺
刺激ホルモンを分泌する下垂体腫瘍(チロトロピノーマ)、カルチノイド症候群に伴う下痢
及びフラッシングエピソード、並びに血管作用性小腸ペプチド分泌腫瘍(VIPoma)のヒトに
おける下痢の治療のために使用される。オクトレオチドは、多くの場合、それが、門静脈
圧を低下させるということに基づき、肝硬変における食道静脈瘤からの急性出血の管理の
ための輸液として与えられるが、最新の証拠によって、この作用が、一過性のものであり
、かつ生存時間を向上させないことが示唆されている。オクトレオチドは、核医学イメー
ジングにおいて、インジウム-111で標識(オクトレオスキャン)して、神経内分泌及びソマ
トスタチン受容体を発現する他の腫瘍を非侵襲的にイメージングするのに用いられる。よ
り最近では、これは、炭素-11やガリウム-68で放射標識されて、陽電子放出断層撮影(PET
)でのイメージングを可能とし、これは、より高い解像度及び感度を提供する。オクトレ
オチドは、イットリウム-90又はルテチウム-177などの種々の放射性核種で標識すること
もでき、これにより、切除不能な神経内分泌腫瘍の治療のためのペプチド受容体放射性核
種療法(PRRT)を可能にする。オクトレオチドはまた、過剰な成長ホルモン(GH)の障害であ
る先端巨大症の治療に使用することもできる。オクトレオチドは、ソマトスタチン類縁体
であり、負のフィードバックに通常関与するプロセスを介して、下垂体からのGHの放出を
阻害する。
【0095】
(フランツ拡散セル)
フランツ拡散セルは、最も活性な透過エンハンサーを特定するために、製剤開発に用い
られるエクスビボ組織透過アッセイのために使用される装置である。フランツ拡散セル装
置は、例えば、動物又はヒトの皮膚の膜によって分離された2つのチャンバーからなる。
被験製品は、上側チャンバーを介して、膜に適用される。下側チャンバーは、設定された
時点での膜を透過する活性量を決定する分析のために、それから試料が一定間隔で採取さ
れる流体を含む。
【0096】
図1に関して、フランツ拡散セル100は、ドナー化合物101、ドナーチャンバー102、膜10
3、サンプリングポート104、レセプターチャンバー105、撹拌子106、及びヒーター/サー
キュレーター107を備える。
【0097】
図2に関して、医薬組成物は、ポリマーマトリクス200を含むフィルム100であり、前記
医薬活性成分300は、該ポリマーマトリクス中に分散される。該フィルムは、カチオン性
界面活性剤などの界面活性剤とすることができる透過エンハンサー400を含むことができ
る。界面活性剤は、非イオン性又はアニオン性の界面活性剤、又はカチオン性、非イオン
性、及び/又はアニオン性界面活性剤の組合せとすることもできる。
【実施例0098】
(実施例1-オクトレオチドエンハンサーの性能ランキング)
ある種の透過エンハンサーは、通常、医薬活性成分及び/又は該透過エンハンサーの析
出を引き起こす。透過エンハンサーに関して、出願人は、ある種のエンハンサーが、溶解
性の点で比較的向上したオクトレオチドとの適合性を示し、オクトレオチド及び該透過エ
ンハンサーの析出を引き起こすことがないことを見出だした。これらには、ある種のカチ
オン性界面活性剤(例えば、DDTMAB、CTAB、及びBAC)、より高い濃度のある種のアニオン
性界面活性剤(GDC、DOC)、ある種の非イオン性界面活性剤(例えば、ポロキサマーF127、
アゾン/DMCD、ラブラゾル、TDM)、ある種のキレート化剤(例えば、EDTA)、ある種のシク
ロデキストリン(例えば、ジメチル-シクロデキストリン)が含まれる。以下の表は、オク
トレオチドとの相対的な適合性及び相対的な透過ランキングを示す。
(表1)
【表1】
*激しい撹拌の後に10%w/wオクトレオチドは可溶
【0099】
表1に示されるように、カチオン性界面活性剤は、驚くべきことに、ランクスコアが3(
高透過)で強力なオクトレオチド適合性及び透過増強の双方を示した。従って、カチオン
性界面活性剤の1種又は組合せの使用は、オクトレオチド適合性と共に、対象へのオクト
レオチドの増強された透過をもたらし得る。代替として、カチオン性界面活性剤のいずれ
かを、同じくオクトレオチド適合性を示すランク2又はランク1のエンハンサー(例えば、G
DC、アゾン、EDTA、及びジメチルシクロデキストリン)のいずれかと組み合わることもで
きる。これにより、対象へのオクトレオチドの増強された送達を提供する医薬組成物を提
供し得る。
【0100】
(実施例2)
出願人はまた、以下の表2に示されるように、以下の透過エンハンサー及びエンハンサ
ーの濃度を試験し、エクスビボ透過モデルから得られる平均フラックスを比較した。
(表2)
【表2】
(説明)
【表3】
【0101】
上記から分かるように、グリシンベタインアルキルエステル及びドデシルトリメチルア
ンモニウムブロミドは、驚くべきことに、増強された平均フラックス提供した。GDC、デ
シルトリメチルアンモニウムブロミド、アゾン、及び塩化ベンザルコニウム(BAC)もまた
、増強された平均フラックスの結果を与えた。
これらのエンハンサーの例示的な構造を、以下に示す
【化2】
。
【0102】
(実施例3 DDTMAB透過活性)
図3に関して、出願人は、エンハンサーとして5重量%DDTMABを用いる透過に対するオク
トレオチド濃度の作用を試験した。このグラフは、時間の関数としてのフラックス(μg/c
m
2*分)を示す。正方形のデータポイントは、DDTMABエンハンサーを用いた3mgオクトレオ
チドを示す。菱形のデータポイントは、DDTMABエンハンサーを用いた1.5mgオクトレオチ
ドを示す。十字網掛けのデータポイントは、DDTMABエンハンサーを用いた0.6mgオクトレ
オチドを示す。三角形のデータポイントは、DDTMABエンハンサーを用いた0.3mgオクトレ
オチドを示す。
【0103】
グラフに示されるように、5%DDTMABは、50分超、60分超、70分超、80分超、90分超、
及び約100分を含む約50~100分で、0.1フラックス超、0.2フラックス超、0.3フラックス
超、0.4フラックス超、及び約0.5フラックスを含む、0.5フラックスまで近づいた。3mgオ
クトレオチドについては約175分で最大で約2~2.5のフラックス。1.5mgオクトレオチドに
ついては、最大で1.5のフラックスを、約175分で得た。より低い濃度は、0.25フラックス
に近づくのに約125分を必要とした。まとめると、これらのデータは、一定のDDTMAB濃度
では、透過は、オクトレオチド濃度に依存することを示す。
【0104】
図4に関して、オクトレオチド透過は、フィックの拡散第一法則に従う。ドナーコンパ
ートメント内の薬物濃度が一定であり、かつレシーバーコンパートメント内のそれがゼロ
であるとすれば、データポイントは、フラックスと薬物濃度との間で線形関係を示す。約
0.500ug/cm2*分のフラックスが、約5mg/mlのオクトレオチド濃度で達成された。2.0超、2
.1超、2.2超、2.3超、2.4超、及び約2.5ug/cm2*分を含む2.0~2.5ug/cm2*分以上のフラッ
クスに、15mg/ml超、16mg/ml超、17mg/ml超、18mg/ml超、19mg/ml超、及び約20mg/mlを含
む、15~20mg/mlの間のオクトレオチド濃度で到達した。
【0105】
(実施例4)
図5に関して、出願人は、脂肪族トリメチルアンモニウムブロミド界面活性剤(例えば、
n=5、7、9、11、15)の構造と活性の関係を試験した。このグラフは、時間の関数として
の平均フラックスを示す。データは、透過活性が、アルキル鎖長に依存し、最適な長さが
12付近であることを示す。グラフが示すように、ヘキシル、オクチル、及びデシル誘導体
は、1重量%で活性ではなかった。デシルトリメチルアンモニウムブロミド(CMC~1.7重量
%)は、5重量%で活性であった。1重量%では、C12及びC16鎖を含む化合物が、最も活性
であった。
【0106】
以下のデータもまた、四級アミン部位が、活性に重要であることを示す。
(表4)
【表4】
【0107】
(実施例5)
図6に関して、出願人は、新鮮なブタの頬側組織を用いるオクトレオチド透過に対する
極微針の影響を試験した。この試験において、出願人は、0.75mm極微針及び厚さが約1μm
の組織を用い、3mgオクトレオチドにさらす前に3回パンチした。グラフは、分単位で経時
的に透過したオクトレオチドの平均量を示す。三角形のデータポイントは、極微針及び0
%EDTAを用いたデータを示す。菱形のデータポイントは、極微針及び2%EDTAを示す。正
方形のデータポイントは、極微針を用いなかったものである。データは、2%EDTAを用い
て、1000分超、1100分超、1200分超、及び約1250分を含む約1000~1250分で、20ug超、25
ug超、及び約30ug、30ug未満、35ug未満、及び20ug未満を含む、20~30ugの透過が達成さ
れたことを示す。
【0108】
30ug超、35ug超、及び約40ug、40ug未満、35ug未満、及び30ug未満を含む30~40ugの間
の透過が、1250分超、1300分超、1350分超、1400分超、1450分超、及び約1500分を含む約
1250~1500分で達成された。
【0109】
出願人はまた、頬側組織に対する極微針の適用が、オクトレオチド分解を引き起こさな
いことを見出だした。以下の表に示されるように、頬側組織に対して、極微針の適用を行
い(10回)、オクトレオチド溶液(2ml、1mg/ml)と共に、37℃で4時間インキュベートした。
(表5)
【表5】
【0110】
(実施例6)
図7に関して、このグラフは、500μl PBS緩衝液及び5重量%ドデシルトリメチルアンモ
ニウムブロミド中の12mgオクトレオチドの試験溶液を用いる、2時間の曝露時間後の、ミ
ニブタにおけるPOC試験の結果を示す。溶液は、スパチュラを用いてムチンをこすり落と
し、その後、該領域を極微針(頬側には750um、舌下には500um)で処理した後に配置された
。メトセル(水中40%)を、接着剤として使用して、該溶液が入ったホルダーを組織上に取
りつけた。被験物質を、実験的設定の間に何らかの薬物の喪失があった場合に、容易にモ
ニタリングできるように、着色した。
【0111】
円形のデータポイントは、頬側空間を示す。正方形のデータポイントは、舌下空間を示
す。血液中のオクトレオチドの存在が、動物の全てについて観察された。
【0112】
以下は、
図7に反映された平均データ値のまとめである:このデータは、前臨床モデルに
おいて、DDTMABが、オクトレオチドの有効な透過エンハンサーであることを示す。これは
また、頬側と比べて、舌下粘膜を通した吸収がより効率的であることも示す。
【表6】
【0113】
(実施例8)
前記医薬組成物フィルムは、適当な処方で、閉塞層及び活性層を有して生産することが
できる。ある例において、該閉塞層は、適当な量のセルロース、例えば、メタロース90-S
H 4000、増粘剤、例えば、セルロースエーテル、例えば、メトセルE15、ポリオール化合
物、例えば、グリセリン、ペセオール、着色添加物、及び/又は味添加剤(FD&C)を含むこ
とができる。
図8に関して、この図は、例示的な医薬組成物フィルムの画像を示す。ある
実施態様において、該フィルムは、頬側空間及び/又は舌下空間において適当な量の医薬
成分を分配するのに適したアスペクト比を有する。例えば、該アスペクト比は、1:1.9超
、1:1.8超、1:1.7超、1:1.6超、1:1.5超、1:1.4超、1:1.3超、1:1.2超、1:1.1超、約1:1
、1:1.2未満、1:1.3未満、1:1.4未満、1:1.5未満、1:1.6未満、1:1.7未満、1:1.8未満、
及び1:1.9未満を含む約1:1~1:2である。ある例において、フィルムが、幅22mm、25.6mm
の長さで、3mmの幅の裏地層を有して製造された。
(閉塞層)
【表7】
(活性層)
【表8】
【0114】
(実施例9)
図9Aに関して、このグラフは、PBS(pH 7.4)中で3mgオクトレオチドを用いたDDTMABの濃
度依存的な活性を示す。三角形のデータポイントは、透過エンハンサーとして5%DDTMAB
を用いての透過量を示す。菱形のデータポイントは、透過エンハンサーとして1%DDTMAB
を用いての透過量を示す。
【0115】
5%DDTMABでは、6時間後に透過したオクトレオチドは、510ug超、520ug超、及び530ug
超±240ugを含む、500ug超であった。定常状態フラックスは、3.24±1.24ug/(cm2*分)で
あった。さらに、5%DDTMABでは、透過量は、100~150分の間で100~200ugの範囲であっ
た。
【0116】
図9Bに関して、このグラフは、二層フィルム中の3mgオクトレオチドについて経時的に
透過したオクトレオチドの平均量を示す。三角形のデータポイントは、DDTMABエンハンサ
ーを用いた二層フィルムを示す。菱形のデータポイントは、エンハンサーなしのデータを
示す。データは、DDTMABエンハンサーでは、経時的に透過したオクトレオチドの量が、15
0ug超、160ug超、及び100ug超±122ugを含む170ug超であったことを示す。定常状態フラ
ックスは、1.0±0.45ug/(cm
2*分)であった。対照的に、エンハンサーなしでは、透過量は
、かなり低く、20ug未満及び15ug未満を含む、25ug未満であった。このデータは、エンハ
ンサーを用いると、透過量が、かなり増加し始めたことを示し、これは、25ug超、50ug超
、75ug超、100ug超、150ug超、及び200ug超、約200ug、200ug未満、150ug未満、100ug未
満、75ug未満、50ug未満、及び25ug未満を含めて、25ug超かつ最大で150~200ugを含む。
治療ウィンドウは、100分超、110分超、120分超、130分超、150分超、200分超、250分超
、300分超、約350分、350分未満、300分未満、250分未満、200分未満、150分未満、及び1
30分未満、120分未満、及び110分未満を含めた、100~350分の範囲であり得る。
【0117】
(実施例10)
図10に関して、このグラフは、極微針を用いて及び用いずに舌下フィルムを用いたイン
ビボ試験からの結果を示す。オクトレオチド血漿濃度を、雄のミニブタへの舌下投与又は
皮下投与後のng/mlで示す。円形のデータポイントは、皮下投与での100μgオクトレオチ
ド溶液を示す。正方形のデータポイントは、医薬組成物フィルム中で投与された15mgオク
トレオチドを示す。三角形のデータポイントは、極微針投与での15mgオクトレオチドを示
す。データは、医薬組成物フィルムでは、オクトレオチド濃度(ng/ml)が、10ng/ml超、15
ng/ml超、20ng/ml超、25ng/ml超、30ng/ml超、35ng/ml超、40ng/ml超、45ng/ml超、50ng/
ml超、約55ng/ml、55ng/ml未満、50ng/ml未満、45ng/ml未満、40ng/ml未満、35ng/ml未満
、30ng/ml未満、25ng/ml未満、20ng/ml未満、15ng/ml未満、及び10ng/ml未満を含む、10
~55ng/mlの範囲に達したことを示す。これらの濃度は、5分超、10分超、15分超、20分超
、25分超、30分超、35分超、40分超、45分超、50分超、60分超、70分超、80分超、90分超
、及び100分超、200分未満、150分未満、100分未満、90分未満、80分未満、70分未満、60
分未満、50分未満、45分未満、40分未満、35分未満、30分未満を含む、約50~100分で達
成された。
【表9】
【0118】
上記のデータは、溶液及びフィルムからのオクトレオチドの著しい吸収が、インビボで
達成されたことを示す。この特定の試験においては、極微針(500um)前処理の効果は、み
られなかった。
【0119】
(実施例11)
本出願人は、生分解性を有するカチオン性界面活性剤が、非分解性のものよりも粘膜へ
の刺激性が低いであろうと結論した。これらの脂質は、酸/塩基加水分解又は酵素的な手
段によって分解させることができる。いくつかの脂質が、カチオン性基と長いアルキル鎖
との間に分解性のリンカーを配置することによって設計され調製された。本出願人は、分
解物は、それらが天然に存在するのであれば、より生体適合性であろうと推論した。例え
ば、グリシンベタインアルキルエステルからの分解生成物は、グリシンベタイン及び長鎖
アルコールであろう。グリシンベタインは、天然に存在する細胞内の有機オスモライトで
あり、生体適合性かつ無毒性であるはずである。悪影響を及ぼさずかつ天然に存在するこ
の脂肪アルコールは、酵素長鎖アルコールデヒドロゲネアーゼ(dehydrogenease)によって
、天然に存在する脂肪酸に変換されるであろう。
【化3】
グリシンベタイン(2-(ノデシルオキシ(Nodecyloxy))-N,N,N,-トリメチル-2-オキソエタ
ン-1-アミニウムカーボネートの構造
【0120】
出願人は、オクトレオチド送達の透過エンハンサーのエクスビボスクリーニングを行っ
た。組織厚さを300umとし、3mgのオクトレオチドを用い、時間を6時間までとして、エク
スビボブタ組織を用いた。
【0121】
図11Aに関して、グリシンベタインエステル-C12の濃度依存的透過活性の試験の結果が
示される。このグラフは、オクトレオチドの透過エンハンサーとしてグリシンベタインエ
ステル(GBE)を用いた、時間の関数としての平均フラックス(μg/cm
2*分)を示す。
【0122】
正方形のデータポイントは、GBE 5重量%を示す。三角形のデータポイントは、1重量%
のGBEを反映する。十字網掛けのデータポイントは、0.5重量%のグリシンベタインを反映
する。透過活性は、GBE C12の濃度に依存する。
【0123】
グラフが示すように、得られた平均フラックスは、GBE 5%については100分未満で、GB
E 1%については約200分で、及びGBE 0.5%については約270分で約1(μg/cm2*分)となっ
た。1~3.5(μg/cm2*分)の平均フラックスが、50分超、75分超、100分超、150分超、200
分超、250分超、300分超、350分超、及び約400分、400分未満、350分未満、300分未満、2
50分未満、200分未満、150分未満、100分未満、75分未満、及び50分未満を含む、50~400
分の間に達成された。
【0124】
図11Bに関して、アルキル鎖の効果を伴うグリシンベタインエステルについての透過活
性が示される。最大活性が、C16アルキル鎖を有するGBEと比較して、C12アルキル鎖を有
するGBEで観察された。アルキル鎖内の不飽和の存在が、活性に対して効果を有しないこ
とが分かった。GBE-ドセシル(GBE-docecyl)5重量%は、正方形のデータポイントに示され
、それは、250分超、260分超、270分超、280分未満、及び290分未満、及び300分未満を含
む、250~300分の間に3~3.5(μg/cm
2*分)のフラックスに達する。GBE-ヘキサデシル5重
量%は、250分超、260分超、270分超、280分未満、及び290分未満、及び300分未満を含む
250~300分の間に、3~3.5のフラックスに到達するものとして示された。GBE-オレイル5
重量%は、250分超、260分超、270分超、280分未満、及び290分未満、及び300分未満を含
む250~300分の間に、3~3.5のフラックスに達するものとして示された。
【0125】
(実施例12)
図12に関して、このグラフは、GBE C12とDDTMAB(1重量%)との透過活性の比較を示す。
双方とも、220分超、230分超、240分超、250分超、260分超、270分超、300分未満、290分
未満、280分未満、270分未満、及び260分未満を含む200~300分の間に、約4の平均フラッ
クス(μg/cm
2*分)に達する。このグラフに示されるように、生分解性透過エンハンサーは
、DDTMABと同程度の効率を有する。
【0126】
(実施例13)
図13に関して、このグラフは、透過エンハンサーとしてのセチルピリジニウムクロリド
(CPC)の結果を、時間(分)の関数としての平均フラックス(μg/cm
2*分)で示す。CPCは、カ
チオン性界面活性剤であり、四級窒素が、環構造の一部となっている。示されるように、
菱形のデータポイントは、5重量%でのCPCを示す。正方形のデータポイントは、1重量%
でのCPCを示す。三角形のデータポイントは、0.5重量%でのCPCを示す。十字網掛けのデ
ータポイントは、0.1重量%CPCを示す。
【0127】
(実施例14)
図14に関して、このグラフは、透過エンハンサーとしての、四級窒素に結合した複数の
長鎖アルキル基を有するカチオン性界面活性剤であるテトラヘキシルアンモニウムブロミ
ドについての結果を示す。菱形のデータポイントは、テトラヘキシルアンモニウムブロミ
ド5重量%を示す。テトラヘキシルアンモニウムブロミド5重量%は、50~300分の間に約0
.3~0.4のフラックスを達成した。正方形のデータポイントは、テトラヘキシルアンモニ
ウムブロミド1重量%を示す。テトラヘキシルアンモニウムブロミド1重量%は、250~300
分の間に約0.2フラックスを達成する。
【0128】
(実施例15)
図15に関して、このグラフは、透過エンハンサーとしての塩化ベンザルコニウム(BAC)
についての結果を示す。菱形のデータポイントは、5重量%BACを示す。正方形のデータポ
イントは、1重量%BACを示す。三角形のデータポイントは、0.1重量%BACを示す。線を引
いた十字網掛けのデータポイント(lined-cross-hatched data points)は、0.01%BACを示
す。十字網掛けのデータポイントは、0.05重量%BACを示す。結果は、透過活性が、濃度
依存的であることを示す。1.8μg/cm
2*分の平均フラックスが、5重量%BACを使用して達
成された。
【0129】
このデータが示すように、5重量%BACは、150超、160超、170超、180超、及び200超、2
20超、240超、250超、260超、260超、270超、280超、300未満、290未満、280未満、270未
満、260分未満を含む150~300分の間で、1.5~2の平均フラックスを達成した。
【0130】
1% BACは、50超、60超、70超、80超、90超、100未満、90未満、80未満、70未満、及び
60分未満を含む50~100分の間に、約1のフラックスを達成した。
【0131】
0.01%は、300超、310超、320超、330超、340超、350超、350未満、340未満、330未満
、320未満、及び310分未満を含む300~350分の間に、約1のフラックスを達成した。
【0132】
0.01% BACは、300超、310超、320超、330超、340超、350超、350未満、340未満、330
未満、320未満、及び310分未満を含む300~350分の間に、約0.25のフラックスを達成した
。
【0133】
0.05% BACは、300超、310超、320超、330超、340超、350超、350未満、340未満、330
未満、320未満、及び310分未満を含む300~350分の間に、約0.25のフラックスを達成した
。
【0134】
(実施例16)
図16に関して、このグラフは、雄のミニブタへの舌下投与又は静脈内(IV)投与後のオク
トレオチド血漿濃度(ng/ml)対時間のプロファイルを示す。
【表10】
【0135】
円形のデータポイントは、100μgサンドスタチン(iv)(n=1)を示す。正方形のデータポ
イント(8-1-1)は、11mgフィルム(舌下、透過エンハンサーとしてフィルムストリップ1つ
あたり平均32mgの塩化ベンザルコニウム、n=4)を示す。この二層フィルムは、舌下空間
における薬物の滞留時間を増加させるために、より遅く溶解する裏地層を有する。三角形
のデータポイント(3-1-1)は、11.5mg単一層フィルム(舌下、透過エンハンサーとしてフィ
ルムストリップ1つあたり平均35mgのドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、n=4)を
示す。3-1-1について、活性湿潤物は、コート隙間を5ミル(mil、0.127mm)として作られた
プラセボの薄いフィルム上にコートした。塗りつぶされた三角形のデータポイント(9-1-1
)は、16.1mg二層フィルム(舌下、透過エンハンサーとしてフィルムストリップ1つあたり
平均25mgのドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、n=4)を示す。22×12.8mmのフィ
ルムサイズを用いた。16.1mgフィルムは、50超、60超、70超、80超、90超、100超、110超
、120超、130超、140超、150未満、140未満、130未満、120未満、110未満、100未満、90
未満、80未満、70未満、60分未満を含む約50~150分で、約10~30mg/mlのオクトレオチド
濃度を達成した。
【0136】
11.5mgフィルムは、50超、60超、70超、80超、90超、100超、110超、120超、130超、14
0超、150未満、140未満、130未満、120未満、110未満、100未満、90未満、80未満、70未
満、60分未満を含む約50~150分で、約10~18のオクトレオチド濃度を達成した。
【0137】
11mgフィルムは、50超、60超、70超、80超、90超、100超、110超、120超、130超、140
超、150未満、160超、170超、180超、190超、200超、190未満、180未満、170未満、160未
満、150未満、140未満、130未満、120未満、110未満、100未満、90未満、80未満、70未満
、60分未満を含む50~200分で、約10~18のオクトレオチド濃度を達成した。
【0138】
塩化ベンザルコニウム及びドデシルトリメチルアンモニウムブロミドは双方とも、平均
オクトレオチド生物学的利用能が、約8~10%である非常に効率的な透過エンハンサーで
あることが分かった。
【0139】
(実施例17)
ある例において、本発明者らは、物理的透過エンハンサーとして高密度焦点式超音波(H
IFU)を用いた。HIFUは、強度、デューティサイクル、パルス繰り返し周波数、及び曝露時
間などの超音波パラメーターに応じて、機械的、空洞現象的、又は熱的な作用を、組織に
対して有し得る。この実験では、頬側組織に対して、HIFUを30秒間(180ワットの検出、デ
ューティサイクル5%、10HzのPRF)実施した。組織を通じたオクトレオチド透過を、既に
説明したエクスビボ透過モデル(粘膜下層の結合組織を含む完全な厚みの組織を用いたこ
とを除く)で2時間モニタリングした。ほぼ60μgのオクトレオチドが、組織を透過したこ
とが分かったが、HIFU適用がない場合には、オクトレオチド透過は観察されなたった。
【0140】
ヒトにおける0.5mgの参照リスト薬(RLD)にマッチさせるための標的は、15mgオクトレオ
チド/40mg BACである。ヒトでの試験を、2つのアーム:10mg/25mg BAC及び15mg/40mg BAC
で設計した。
図17に関して、このグラフは、ヒトでの試験(10mgオクトレオチド/25mg BAC
)のアーム#1を示す。最高の生物学的利用能を伴う最高のプロファイルが、3.1%生物学
的利用能で示され、最低が、0.3%生物学的利用能で示され、かつ平均/平均(average/mea
n)曲線が、1.3%生物学的利用能であることを示した。予想外に、結果は、向上した生物
学的利用能について1桁分の違いを示した。高い方二つのプロファイルは、透過の指標で
ある刺激の増加を示し、該エンハンサーがうまく働くことを実証している。低い方4つプ
ロファイルは、比較的重要でない刺激(発赤(reddening))のみを示す。オクトレオチドの
経粘膜的な送達が、血漿中でのその利用能の急速な発現によって証明された。
【0141】
(経粘膜的な吸収の統計のまとめ)
出願人は、初めて実証された経粘膜的な吸収によるペプチドの送達を実施している。関
連する血漿濃度は、4600.55pg/mLの平均Cmax及び2.33時間の平均Tmaxを示した。このこと
は、透過エンハンサー機構の検証であった。刺激のレベルは、最高PKプロファイルと相関
していた。以下の表に関して、統計のまとめ及び初に含意されるもの(initial implicati
ons)が示される。
【表11】
【0142】
比較すると、サンドスタチン(経口錠)0.1mg皮下注射は、Cmax=~4100pg/mL;AUC=1370
0pg/mL、及びBA>1%(最大プロファイル>3%)を報告した(データは、Chiasma Overview
、2018年9月から引用)。驚くべきことに、このデータは、出願人らの経粘膜的な吸収によ
る送達が、この経口錠と比べて同程度のCmax及び向上したAUCを示すことを示す。
【0143】
(分解試験)
図18A~18Cに関して、出願人は、生物学的媒体中でGBE-C
12に対して分解試験を行った
。試験された生物学的に適切な媒体は、血漿(ヒトBioIVT、K2-EDTA)、エステラーゼ溶液
、模擬胃液(ペプシン/低pH)、模擬腸液(パンクレアチン)、及び組織ホモジネート(1gの組
織+6mL PBS溶液→ホモジナイザー(FastPrep)→遠心分離→上清)であった。これらの条件
下で、GBE-C
12エステルは、37℃で加水分解されて、グリシンベタイン+ドデカノールを
生じると予想された。
図18A~18Cのグラフが示すように、本試験によって、新たな透過エ
ンハンサーGBE-C
12が、グリシンベタインの分析によって定量化されたように、高度に生
分解性であることが示された。エステル基に対して予想されるように、これは、酸性環境
では分解性ではなかった。この結果は、アセタールなどの酸感受性リンカーを、利用する
ことができることを示す。
【化4】
【0144】
(医薬活性成分)
ある実施態様において、2種以上の医薬活性成分が、フィルムに含まれていてもよい。
この医薬活性成分は、ACE阻害剤、狭心症治療薬、抗-不整脈薬、抗-喘息薬、抗-コレステ
ロール血症薬、鎮痛薬、麻酔薬、抗けいれん薬、抗欝薬、糖尿病治療薬、下痢止め調製品
、解毒薬、抗-ヒスタミン薬、高血圧治療薬、抗炎症薬、抗-脂質薬、抗躁薬、悪心治療薬
、卒中防止薬、抗-甲状腺調製品、抗-腫瘍薬、抗ウイルス薬、座瘡治療薬、アルカロイド
、アミノ酸調製品、鎮咳薬、抗-尿路結石薬、抗-ウイルス薬、同化作用調製品、全身性及
び非全身性感染症治療薬、抗-新生物形成薬、パーキンソン治療薬、抗-リウマチ薬、食欲
増進薬、血液修飾因子、骨代謝調節因子、心臓血管系作用薬、中枢神経刺激薬、コリンエ
ステラーゼ阻害剤、避妊薬、充血除去剤、栄養補助食品、ドパミン受容体アゴニスト、子
宮内膜症管理薬、酵素、勃起障害治療、不妊治療薬、胃腸薬、ホメオパシーレメディ、ホ
ルモン、高カルシウム血症及び低カルシウム血症管理薬、免疫調節物質、免疫抑制薬、片
頭痛調製品、酔い止め薬、筋弛緩薬、肥満症管理薬、骨粗鬆症用調製品、子宮収縮薬、副
交感神経遮断薬、副交感神経作用薬、プロスタグランジン、精神治療薬、呼吸器系薬剤、
鎮静薬、禁煙補助薬、交感神経遮断薬、振戦治療調製品、尿道系薬剤、血管拡張薬、緩下
薬、制酸薬、イオン交換樹脂、下熱薬、食欲抑制剤、去痰薬、抗-不安薬、抗-潰瘍薬、抗
炎症性物質、冠血管拡張剤、脳血管(cerebral)の拡張薬、末梢血管拡張薬、向精神薬、興
奮剤(stimulants)、高血圧治療薬、血管収縮剤、片頭痛治療薬、抗生物質、トランキライ
ザー、抗精神病薬、抗-腫瘍薬、抗凝固薬、抗血栓薬、催眠薬、制吐薬、抗-悪心薬、抗け
いれん薬、神経筋作用薬、血糖上昇剤及び降下剤、甲状腺及び抗-甲状腺調製品、利尿薬
、抗痙攣薬、子宮弛緩剤、抗-肥満薬、赤血球形成薬、抗-喘息薬、鎮咳剤、粘液溶解薬、
DNA及び遺伝子改変薬、及びそれらの組合せであることができる。
【0145】
(医薬フィルム)
オクトレオチドを送達する医薬組成物フィルム及び/又はその成分は、水溶性、水膨潤
性、又は水不溶性であることができる。用語「水溶性」とは、水を含むが、これに限定さ
れるものではない、水性溶媒中に少なくとも部分的に溶解可能である物質を指すことがで
きる。用語「水溶性」は、物質が水性溶媒中に100%溶解可能であることを、必ずしも意
味しなくてよい。用語「水不溶性」とは、水を含むが、これに限定されるものではない、
水性溶媒中に溶解しない物質を指す。溶媒は、水を含むか、或いは他の溶媒(好ましくは
極性溶媒)をそれらだけで又は水と組合せて含むことができる。
【0146】
本組成物は、ポリマーマトリクスを含むことができる。任意の所望のポリマーマトリク
スは、経口で溶解可能又は侵食可能であるならば、使用されてよい。望ましくは、この剤
形は、容易に除去されないのに十分な生体付着性を有し、且つ投与される場合にゲル様構
造を形成しなければならない。これらは、口腔において中等度に溶解することができ、且
つ特に医薬活性成分の送達に適しているが、即時放出型、遅延放出型、制御放出型及び持
続放出型の組成物の全てもまた、意図された様々な実施態様の中にある。
【0147】
所望の粘膜表面に送達される透過エンハンサー及び活性医薬成分(API)の配置(arrangem
ent)、順序(order)、又は配列(sequence)を、所望の薬物動態プロファイルを達成するた
めに異ならせることができる。例えば、フィルムによってか、スワブ、スプレー、ゲル、
すすぎによってか、又はフィルムの第1の層によって先ず透過エンハンサーを適用し、そ
の後、単一のフィルムによってか、スワブによってか、又はフィルムの第2の層によってA
PIを適用することができる。本配列は、例えば、フィルムによってか、スワブによってか
、又はフィルムの第1の層によって先ずAPIを適用し、その後、フィルムによってか、スワ
ブ、スプレー、ゲル、すすぎによってか、又はフィルムの第2の層によって透過エンハン
サーを適用することによって、逆にしたり、変更したりすることができる。別の実施態様
において、フィルムによって透過エンハンサーを適用し、且つ薬物を別のフィルムによっ
て適用してもよい。例えば、所望の薬物動態プロファイルに応じて、APIを含有するフィ
ルムの下に位置する透過エンハンサーフィルム、又は透過エンハンサーを含有するフィル
ムの下に位置するAPIを含有するフィルムである。
【0148】
例えば、透過エンハンサーを、前処置のみとしてか、又は少なくとも1種のAPIと組み合
わせて用いて、APIのさらなる吸収のために粘膜をプレコンディショニングすることがで
きる。この処置に、ニートの透過エンハンサーでの別の処置を続けて、前記少なくとも1
種のAPIの粘膜への適用に続けることができる。本前処置は、別個の処置(フィルム、ゲル
、溶液、スワブなど)としてか、又は1つ以上の層の多層フィルム構造体内の層として適用
することができる。同様に、本前処置は、透過エンハンサー又はAPIを含むか含まない第
二のドメインの放出の前に粘膜へ溶解及び放出するように設計された単一のフィルムの別
個のドメイン内に含まれてもよい。その後、本活性成分は、第2の処置から、単独で又は
追加の透過エンハンサーと組み合わせて送達され得る。互いに異なる比率又は他の処置の
総負荷と比較して異なる比率のいずれかで、追加の透過エンハンサー及び/又は少なくと
も1種のAPIもしくはプロドラッグを送達する第3の処置又はドメインが存在してもよい。
このことは、あつらえの薬物動態プロファイルを得ることを可能とする。このように、本
製品は、意図された薬物動態プロファイル及び/又は薬力学的効果を達成する所望の吸収
量及び/又は吸収速度に繋がる粘膜への適用順序、組成、濃度、又は総負荷を異ならせる
ことができる透過エンハンサー及びAPIを含む単一又は複数のドメインを有し得る。
【0149】
本フィルム形式は、明確な面が存在しないように、又はフィルムが、縁が共終端する(
共有された境界(border)又は境界(limit)を有するか又はそこで接触する)多層フィルムの
少なくとも1つの面を有するように向きを合わせることができる。
【0150】
(分岐ポリマー)
オクトレオチドを送達するよう構成された本医薬組成物フィルムは、さまざまな構造上
のアーキテクチャを持つ高度に分岐した巨大分子を含む樹状ポリマーを含むことができ、
これには、デンドリマー、樹状化されたポリマー(樹状グラフト化されたポリマー)、線状
樹状ハイブリッド、マルチアーム星型ポリマー、及び高分岐ポリマーが含まれる。
【0151】
高分岐ポリマーは、それらの構造において不完全性を有するが、高度に分岐したポリマ
ーである。しかし、これらは、単工程反応において合成することができ、これは他の樹状
構造に勝る利点であり、従って大量の利用に適している。それらの球状構造は別として、
これらのポリマーの特性は、豊富な官能基、分子内空洞、低い粘性及び高い溶解度である
。樹状ポリマーは、いくつかの薬物送達応用において使用される。(「薬物担体としての
デンドリマー:薬物投与の異なる経路での適用(Dendrimers as Drug Carriers: Applicat
ions in Different Routes of Drug Administration)」、J Pharm Sci, VOL. 97, 2008,
123-143)。
【0152】
樹状ポリマーは、薬物を封入することができる内部空洞を有する。高密度ポリマー鎖に
より引き起こされる立体障害は、薬物の結晶化を防止することができる。従って、ポリマ
ーマトリクス中で結晶化する傾向のある物理的に準安定な薬物を製剤化するのに、線状の
ポリマーよりも分岐ポリマーを用いることの利点が存在し得る。
【0153】
好適な樹状ポリマーの例としては、ポリ(エーテル)ベースのデンドロン、デンドリマー
、及び高分岐ポリマー、ポリ(エステル)ベースのデンドロン、デンドリマー及び高分岐ポ
リマー、ポリ(チオエーテル)ベースのデンドロン、デンドリマー及び高分岐ポリマー、ポ
リ(アミノ酸)ベースのデンドロン、デンドリマー及び高分岐ポリマー、ポリ(アリールア
ルキレンエーテル)ベースのデンドロン、デンドリマー及び高分岐ポリマー、ポリ(アルキ
レンイミン)ベースのデンドロン、デンドリマー及び高分岐ポリマー、ポリ(アミドアミン
)ベースのデンドロン、デンドリマー、及び高分岐ポリマーが挙げられる。
【0154】
高分岐ポリマーの別の例としては、ポリ(アミン)、ポリカーボネート、ポリ(エーテル
ケトン)、ポリウレタン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリ(エステルアミン)、
ポリ(スルホンアミン)、ポリ(ウレタン尿素)、及びポリエーテルポリオール、例えばポリ
グリセリンなどが挙げられる。
【0155】
医薬組成物フィルムは、少なくとも1種のポリマー、及び任意に他の成分を含む溶媒の
組合せにより、作製することができる。溶媒は、水、非限定的にエタノール、イソプロパ
ノール、アセトンを含む極性有機溶媒、又はそれらの任意の組合せであってよい。一部の
実施態様において、溶媒は、塩化メチレンなどの、非極性有機溶媒であってよい。フィル
ムは、選択された流延法又は析出法(deposition method)及び制御された乾燥プロセスを
利用することにより、調製され得る。例えば、フィルムは、粘弾性構造を形成するための
、湿ったフィルムマトリクスへの熱及び/又は放射線エネルギーの適用を含む、制御され
た乾燥プロセスを通じて調製されてよく、これによりフィルムの内容物の均一性が制御さ
れる。制御された乾燥プロセスは、フィルムの上側もしくはフィルムの下側、又は流延も
しくは析出(deposited)もしくは押出されたフィルムを支持する基板に接触するか、又は
乾燥プロセスの間に同時又は異なる時点で2つ以上の表面に接触する、空気のみ、熱のみ
を含むか、又は熱と空気を一緒に含むことができる(ここは、少しぎこちなく、推敲の必
要があるかもしれません)。このようなプロセスの一部は、米国特許第8,765,167号及び米
国特許第8,652,378号により詳細に説明されており、これらは引用により本明細書中に組
み込まれている。或いは、フィルムは、引用により本明細書中に組み込まれている米国特
許公報第2005/0037055A1号に記載されているように押し出されてよい。
【0156】
フィルムに含まれるポリマーは、水溶性、水膨潤性、水不溶性であるか、或いは水溶性
、水膨潤性、水不溶性ポリマーのいずれか1種以上の組合せであってよい。ポリマーは、
セルロース、セルロース誘導体又はガムを含んでよい。有用な水溶性ポリマーの具体例は
、ポリエチレンオキシド、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシ
エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシ
メチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコ
ール、キサンタンガム、トラガカントガム、グアーガム、アカシアゴム、アラビアゴム、
ポリアクリル酸、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルコポリマー、デン
プン、ゼラチン、及びそれらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない。有用
な水不溶性ポリマーの具体例は、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロー
ス、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及びそ
れらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない。より高用量に関して、より低
用量と比べ、高レベルの粘性を提供するポリマーを組み入れることが望ましいこともある
。
【0157】
本明細書で使用される語句「水溶性ポリマー」及びその変形は、少なくとも部分的に水
に溶解する、望ましくは完全に又は大部分は水に溶解する、或いは水を吸収する、ポリマ
ーを指す。水を吸収するポリマーは、水膨潤性ポリマーと称されることが多い。本発明に
有用な物質は、室温及び他の温度で、例えば室温を超える温度で、水溶性又は水膨潤性で
あってよい。更に、これらの材料は、大気圧より低い圧力で、水溶性又は水膨潤性であっ
てよい。一部の実施態様において、このような水溶性ポリマーから形成されたフィルムは
、体液との接触時に溶解させることができるのに十分に水溶性であってよい。
【0158】
フィルムへ組み入れるのに有用な他のポリマーは、生分解性ポリマー、コポリマー、ブ
ロックポリマー、及びそれらの組合せを含む。用語「生分解性」は、物理的にばらばらに
破壊される物質(すなわち生体侵食性物質)とは対照的に、化学的に分解する物質を含むこ
とが意図されることは理解される。フィルムに組み入れられたポリマーはまた、生分解性
又は生体侵食性の物質の組合せを含むこともできる。前記基準に合致する公知の有用なポ
リマー又はポリマークラスには:ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリジオ
キサン、ポリオキサレート、ポリ(α-エステル)、ポリ酸無水物、ポリアセテート、ポリ
カプロラクトン、ポリ(オルトエステル)、ポリアミノ酸、ポリアミノカーボネート、ポリ
ウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、並びに
それらの混合物及びコポリマーが含まれる。追加の有用なポリマーは、L-及びD-乳酸のス
テレオポリマー、ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン酸及びセバシン酸のコポリマー
、セバシン酸コポリマー、カプロラクトンのコポリマー、ポリ(乳酸)/ポリ(グリコール酸
)/ポリエチレングリコールコポリマー、ポリウレタン及び(ポリ(乳酸))のコポリマー、ポ
リウレタン及びポリ(乳酸)のコポリマー、α-アミノ酸のコポリマー、α-アミノ酸及びカ
プロン酸のコポリマー、α-ベンジルグルタミン酸エステル及びポリエチレングリコール
のコポリマー、コハク酸エステル及びポリ(グリコール)のコポリマー、ポリホスファゼン
、ポリヒドロキシ-アルカノエート、及びそれらの混合物を含む。ポリマーマトリクスは
、1、2、3、4種又はそれよりも多い成分を含むことができる。
【0159】
様々な異なるポリマーを使用してよいが、フィルムに粘膜付着性の特性、並びに所望の
溶解及び/又は崩壊速度を提供するポリマーを選択することは望ましい。特に、フィルム
の粘膜組織への接触を維持することが望ましい時間は、組成物に含有される医薬活性成分
の種類によって決まる。一部の医薬活性成分は、粘膜組織を通る送達にはわずか数分しか
必要としないことがあるのに対し、他の医薬活性成分は、最長で数時間、さらにはより長
い時間を必要とすることがある。従って一部の実施態様において、前述の1種以上の水溶
性ポリマーが、フィルムを形成するために使用されてよい。しかし他の実施態様において
、水溶性ポリマーと、先に提供されたような水膨潤性、水不溶性及び/又は生分解性のポ
リマーの組合せを使用することが望ましいことがある。水膨潤性、水不溶性及び/又は生
分解性である1種以上のポリマーを含めることは、水溶性ポリマーのみで形成されたフィ
ルムよりも、より遅い溶解速度又は崩壊速度を持つフィルムを提供することができる。従
って、このフィルムは、最大で数時間などの、比較的長い時間、粘膜組織に付着し、この
ことはある種の医薬活性成分の送達にとって望ましいものとなる。
【0160】
望ましくは、医薬フィルムの個別のフィルム剤形(dosage)は、小さいサイズを有するこ
とができ、これは、約0.0625~3インチ(1.5875mm×76.2mm)×約0.0625~3インチである。
フィルムサイズはまた、少なくとも1つの態様において、0.25インチ(6.35mm)超、0.5イン
チ(12.7mm)超、1インチ(25.4mm)超、2インチ(50.8mm)超、約3インチ(76.2mm)、及び3イン
チ超、3インチ未満、2インチ未満、1インチ未満、0.5インチ未満、0.0625インチ(1.5875m
m)未満であり、別の態様において、0.0625インチ超、0.5インチ超、1インチ超、2インチ
超、及び3インチ超、約3インチ、3インチ未満、2インチ未満、1インチ未満、0.5インチ未
満、0.0625インチ未満である。厚さ、長さ及び幅を含むアスペクト比は、ポリマーマトリ
クスの化学特性及び物理特性、活性医薬成分、投薬量、エンハンサー、及び関与する他の
添加剤、並びに望ましい分配ユニットの寸法を基に、当業者により最適化されることがで
きる。このフィルム剤形は、使用者の頬側口腔又は舌下領域内に配置された場合に、良好
な付着性を有さなければならない。更に、このフィルム剤形は、穏やかな速度で分散し且
つ溶解しなければならず、最も望ましくは、約1分以内に分散し、且つ約3分以内に溶解す
る。一部の実施態様において、このフィルム剤形は、約1~約30分、例えば約1~約20分、
又は1分超、5分超、7分超、10分超、12分超、15分超、20分超、30分超、約30分、及び30
分未満、20分未満、15分未満、12分未満、10分未満、7分未満、5分未満、及び1分未満の
速度で、分散及び溶解することが可能である。舌下での速度は、頬側での速度よりも短い
可能性がある。
【0161】
例えば、一部の実施態様において、これらのフィルムは、ポリエチレンオキシドを単独
で、又は第二ポリマー成分と組合せて含有することができる。第二ポリマーは、別の水溶
性ポリマー、水膨潤性ポリマー、水不溶性ポリマー、生分解性ポリマー又はそれらの任意
の組合せであってよい。好適な水溶性ポリマーは、先に提供されたもののいずれかを含む
が、これらに限定されるものではない。一部の実施態様において、水溶性ポリマーは、親
水性セルロース系ポリマー、例えばヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシ
プロピルメチルセルロースなどを含む。一部の実施態様において、1種以上の水膨潤性、
水不溶性及び/又は生分解性ポリマーもまた、ポリエチレンオキシド-ベースのフィルム中
に含まれてよい。先に提供される水膨潤性、水不溶性又は生分解性ポリマーのいずれかが
、利用されてよい。第二ポリマー成分は、ポリマー成分中約0%~約80重量%の量で、よ
り具体的には約30%~約70重量%、及び更により具体的には約40%~約60重量%の量で利
用されてよい。
【0162】
添加剤が、これらのフィルム中に含まれてよい。添加剤のクラスの例は、保存剤、抗微
生物薬、賦形剤、滑沢剤、緩衝剤、安定化剤、発泡剤、顔料、着色剤、充填剤、増量剤、
甘味剤、香味剤、香料、放出修飾剤、アジュバント、可塑剤、流動促進剤、離型剤、ポリ
オール、造粒剤、希釈剤、結合剤、緩衝剤、吸収剤、滑剤、接着剤、接着防止剤、酸味剤
、柔軟剤、樹脂、粘滑剤、溶媒、界面活性剤、乳化剤、エラストマー、粘着防止剤、帯電
防止剤及びそれらの混合物を含む。これらの添加剤は、医薬活性成分(複数可)と共に添加
されてよい。安定化剤は、ラジカルスカベンジャー、抗酸化剤、緩衝剤、抗微生物薬、抗
真菌性薬、キレート化剤、又は保存剤、例えば、メタ重亜硫酸ナトリウムとすることがで
きる。
【0163】
本明細書で使用される用語「安定化剤」は、活性医薬成分、別の賦形剤、又はそれらの
組合せの、凝集又は他の物理的分解、並びに化学的分解を防止することが可能である賦形
剤を意味する。
【0164】
安定化剤はまた、抗酸化剤、金属イオン封鎖剤、pH調節剤、乳化剤及び/又は界面活性
剤、並びに紫外線安定化剤として分類され得る。
【0165】
抗酸化剤(すなわち、酸化プロセスを減速、阻害、中断及び/又は停止する、医薬として
適合性のある化合物(複数可)又は組成物(複数可))は、特に以下の物質:トコフェロール
及びそれらのエステル、ゴマ油のセサモール、ベンゾイン樹脂の安息香酸コニフェリル、
ノルジヒドログアイアレチン酸樹脂及びノルジヒドログアヤレト酸(NDGA)、没食子酸塩(
とりわけ、没食子酸メチル、エチル、プロピル、アミル、ブチル、ラウリル)、ブチル化
ヒドロキシアニソール(BHA/BHT、ブチル-p-クレゾールとも);アスコルビン酸並びにその
塩及びエステル(例えば、パルミチン酸アスコルビル)、エリソルビン酸(イソアスコルビ
ン酸)並びにその塩及びエステル、モノチオグリセロール、ナトリウムホルムアルデヒド
スルホキシレート、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム
、メタ重亜硫酸カリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン
(BHT)、プロピオン酸を含む。代表的抗酸化剤は、トコフェロール、例えば、α-トコフェ
ロール及びそのエステル、ブチル化ヒドロキシトルエン及びブチル化ヒドロキシアニソー
ルである。用語「トコフェロール」はまた、トコフェロールのエステルも含む。公知のト
コフェロールは、α-トコフェロールである。用語「α-トコフェロール」は、α-トコフ
ェロールのエステル(例えば、酢酸α-トコフェロール)を含む。
【0166】
金属イオン封鎖剤(すなわち、活性成分又は別の賦形剤などの別の化合物と、ホスト-ゲ
スト錯体形成中に加わることができる任意の化合物;封鎖剤とも称される)は、塩化カルシ
ウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム、グルコノデルタ-ラクトン、グ
ルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン
酸ナトリウム、及びそれらの組合せを含む。金属イオン封鎖剤はまた、環状オリゴ糖、例
えばシクロデキストリン、シクロマンニン(α結合により1,4位置で連結された、5個以上
のα-D-マンノピラノース単位)、シクロガラクチン(β結合により1,4位置で連結された、
5個以上のβ-D-ガラクトピラノース単位)、シクロアルトリン(α結合により1,4位置で連
結された、5個以上のα-D-アルトロピラノース単位)、及びそれらの組合せも含む。
【0167】
pH調節剤は、酸(例えば、酒石酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、リン酸、アスコルビン
酸、酢酸、コハク酸、アジピン酸及びマレイン酸)、酸性アミノ酸(例えば、グルタミン酸
、アスパラギン酸など)、そのような酸性物質の無機塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金
属塩、アンモニウム塩など)、そのような酸性物質の有機塩基(例えば、塩基性アミノ酸、
例えばリジン、アルギニンなど及び同類のもの、メグルミン及び同類のもの)との塩、並
びにそれらの溶媒和物(例えば水和物)を含む。pH調節剤の他の例は、ケイ化微結晶性セル
ロース、アルミノメタケイ酸マグネシウム、リン酸のカルシウム塩(例えば、リン酸水素
カルシウムの無水物又は水和物、炭酸もしくは炭酸水素カルシウム、ナトリウムもしくは
カリウム、及び乳酸カルシウム又はそれらの混合物)、カルボキシメチルセルロースのナ
トリウム及び/又はカルシウム塩、架橋されたカルボキシメチルセルロース(例えば、クロ
スカルメロースナトリウム及び/又はカルシウム)、ポラクリリンカリウム、アルギン酸ナ
トリウム及び/又はカルシウム、ドクサートナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、カ
ルシウム、アルミニウム、もしくは亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、及びオレイン酸マ
グネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、及びそれらの組合せを含む。
【0168】
乳化剤及び/又は界面活性剤の例は、ポロキサマー又はプルロニック、ポリエチレング
リコール、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナ
トリウム、ポリエトキシル化及び水素化されたヒマシ油、アルキルポリオシド、疎水性主
鎖上にグラフト重合された水溶性タンパク質、レシチン、グリセリルモノステアラート、
グリセリルモノステアラート/ポリオキシエチレンステアラート、ケトステアリルアルコ
ール/ラウリル硫酸ナトリウム、カルボマー、リン脂質、(C10~C20)-アルキル及びアルキ
レンカルボキシラート、カルボン酸アルキルエーテル、脂肪族アルコール硫酸塩、脂肪族
アルコールエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩及びスルホン酸塩、脂肪酸アルキルア
ミドポリグリコールエーテル硫酸塩、アルカンスルホン酸塩及びヒドロキシアルカンスル
ホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、イセチオン酸のアシルエステル、α-スルホ脂肪酸
エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノールグリコールエーテルスル
ホン酸塩、スルホコハク酸塩、スルホコハク酸のモノエステル及びジエステル、脂肪族ア
ルコールエーテルリン酸塩、タンパク質/脂肪酸縮合生成物、アルキルモノグリセリド硫
酸塩及びスルホン酸塩、アルキルグリセリドエーテルスルホン酸塩、脂肪酸メチルタウリ
ド、脂肪酸サルコシネート、スルホリシノレート、及びアシルグルタミン酸塩、第四級ア
ンモニウム塩(例えば、ジ-(C10~C24)-アルキル-ジメチルアンモニウムクロリド又はブロ
ミド)、(C10~C24)-アルキル-ジメチルエチルアンモニウムクロリド又はブロミド、(C10
~C24)-アルキル-トリメチルアンモニウムクロリド又はブロミド(例えば、セチルトリメ
チルアンモニウムクロリド又はブロミド)、(C10~C24)-アルキル-ジメチルベンジルアン
モニウムクロリド又はブロミド(例えば、(C12~C18)-アルキル-ジメチルベンジルアンモ
ニウムクロリド)、N-(C10~C18)-アルキル-ピリジニウムクロリド又はブロミド(例えば、
N-(C12~C16)-アルキル-ピリジニウムクロリド又はブロミド)、N-(C10~C18)-アルキル-
イソキノリニウムクロリド、ブロミド又はモノアルキル硫酸塩、N-(C12~C18)-アルキル-
ポリオイルアミノホルミルメチルピリジニウムクロリド、N-(C12~C18)-アルキル-N-メチ
ルモルホリニウムクロリド、ブロミド又はモノアルキル硫酸塩、N-(C12~C18)-アルキル-
N-エチルモルホリニウムクロリド、ブロミド又はモノアルキル硫酸塩、(C16~C18)-アル
キル-ペンタオキセチルアンモニウムクロリド、ジイソブチルフェノキシエトキシエチル
ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、N,N-ジ-エチルアミノエチルステアリルアミド
及び-オレイルアミドの塩酸、酢酸、乳酸、クエン酸、リン酸との塩、N-アシルアミノエ
チル-N,N-ジエチル-N-メチルアンモニウムクロリド、ブロミド又はモノアルキル硫酸塩、
並びにN-アシルアミノエチル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウムクロリド、ブロミド
又はモノアルキル硫酸塩(前述のものにおいて、「アシル」は例えばステアリル又はオレ
イルを表す)、並びにそれらの組合せを含む。
【0169】
紫外線安定化剤の例は、UV吸収剤(例えば、ベンゾフェノン)、UV消光剤(すなわち、UV
エネルギーに分解作用を持たせしまうのではなく、該エネルギーを熱として消散させる任
意の化合物)、スカベンジャー(すなわち、UV放射線への曝露から生じるフリーラジカルを
除去する任意の化合物)、及びそれらの組合せを含む。
【0170】
別の実施態様において、安定化剤は、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸、ア
ルファトコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、
システインHC1、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、メチオニン、クエン酸ナト
リウム、アスコルビン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜
硫酸水素ナトリウム、没食子酸プロピル、グルタチオン、チオグリセロール、一重項酸素
消光剤、ヒドロキシルラジカルスカベンジャー、ヒドロペルオキシド除去剤、還元剤、金
属キレート化剤、洗浄剤、カオトロープ、及びそれらの組合せを含む。「一重項酸素消光
剤」は、アルキルイミダゾール(例えば、ヒスチジン、L-カモシン、ヒスタミン、イミダ
ゾール4-酢酸)、インドール(例えば、トリプトファン及びその誘導体、例えばN-アセチル
-5-メトキシトリプタミン、N-アセチルセロトニン、6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-
ベータ-カルボリン)、含硫アミノ酸(例えば、メチオニン、エチオニン、ジエンコル酸、
ランチオニン、N-ホルミルメチオニン、フェリニン、S-アリルシステイン、S-アミノエチ
ル-L-システイン)、フェノール系化合物(例えば、チロシン及びその誘導体)、芳香族酸(
例えば、アスコルビン酸塩、サリチル酸、及びそれらの誘導体)、アジド(例えば、アジ化
ナトリウム)、トコフェロール及び関連ビタミンE誘導体、並びにカロテン及び関連ビタミ
ンA誘導体を含むが、これらに限定されるものではない。「ヒドロキシルラジカルスカベ
ンジャー」は、アジド、ジメチルスルホキシド、ヒスチジン、マンニトール、ショ糖、グ
ルコース、サリチル酸塩、及びL-システインを含むが、これらに限定されるものではない
。「ヒドロペルオキシド除去剤」は、カタラーゼ、ピルビン酸塩、グルタチオン、及びグ
ルタチオンペルオキシダーゼを含むが、これらに限定されるものではない。「還元剤」は
、システイン及びメルカプトエチレンを含むが、これらに限定されるものではない。「金
属キレート化剤」は、EDTA、EGTA、o-フェナントロリン、及びクエン酸塩を含むが、これ
らに限定されるものではない。「洗浄剤」は、SDS及びラウロイルサルコシンナトリウム
を含むが、これらに限定されるものではない。「カオトロープ」は、塩酸塩グアニジウム
、イソチオシアネート、尿素、及びホルムアミドを含むが、これらに限定されるものでは
ない。
【0171】
有用な添加剤は、例えば、ゼラチン、植物(vegetable)タンパク質、例えばヒマワリタ
ンパク質、大豆タンパク質、綿実タンパク質、ピーナツタンパク質、グレープシードタン
パク質など、ホエータンパク質、ホエータンパク質単離体、血液タンパク質、卵タンパク
質、アクリル化タンパク質、水溶性多糖、例えばアルギネート、カラゲナン、グアーガム
、寒天、キサンタンガム、ゲランガム、アラビアゴム及び関連したガム(ガッティガム、
カラヤガム、トラガカントガム)、ペクチンなど、セルロースの水溶性誘導体:アルキル
セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルアルキルセルロース
、例えばメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース
、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロ
ピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロースなど、セルロースエステル及
びヒドロキシアルキルセルロースエステル、例えば酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒド
ロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);カルボキシアルキルセルロース、カルボキシア
ルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースエステル、例えばカルボキシ
メチルセルロース及びそれらのアルカリ金属塩;水溶性合成ポリマー、例えばポリアクリ
ル酸及びポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸及びポリメタクリル酸エステル、ポ
リビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、
ポリビニルピロリドン(PVP)、PVY/酢酸ビニルコポリマー、及びポリクロトン酸を含むこ
とができ;また、フタル酸ゼラチン、コハク酸ゼラチン、架橋ゼラチン、シェラック、デ
ンプンの水溶性化学誘導体、例えば第三級もしくは第四級アミノ基、例えば、望ましいな
らば四級化されたジエチルアミノエチル基などを有する陽イオン修飾されたアクリレート
及びメタクリレート;及び他の類似のポリマーも適している。
【0172】
追加成分は、全ての組成物成分の重量を基準として、最大で約80%の範囲、望ましくは
約0.005%~50%、より望ましくは1%~20%の範囲内であることができ、これは1%超、5
%超、10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、約80%、80%超、80
%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5
%未満、約3%、及び1%未満を含む。他の添加剤は、抗-粘着剤、流動化剤及び乳白剤、
例えばマグネシウム、アルミニウム、ケイ素、チタンの酸化物などを、望ましいならば全
フィルム成分の重量を基準として、濃度範囲約0.005%~約5重量%、及び望ましいならば
約0.02%~約2重量%で、含むことができ、これは0.02%超、0.2%超、0.5%超、1%超、
1.5%超、2%超、4%超、約5%、5%超、4%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.2%
未満、及び0.02%未満を含む。他の添加剤は、抗-粘着剤、流動化剤、及び乳白剤、例え
ば、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、チタンの酸化物などを、望ましくは、全フ
ィルム成分の重量を基準として、約0.01%~約5重量%、望ましくは、約0.02%~約1%の
濃度範囲で含むことができる。
【0173】
ある実施態様において、本組成物は、可塑剤を含むことができ、これは、ポリアルキレ
ンオキシド、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン
-プロピレングリコールなど、低分子量の有機可塑剤、例えばグリセロール、グリセロー
ルモノアセテート、ジアセテートもしくはトリアセテートなど、トリアセチン、ポリソル
ベート、セチルアルコール、プロピレングリコール、糖アルコールソルビトール、ジエチ
ルスルホコハク酸ナトリウム、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、植物抽出物、
脂肪酸エステル、脂肪酸、油状物及び同類のものを含むことができ、組成物の重量を基準
として、約0.1%~約40%の範囲の、望ましいならば約0.5%~約20%の範囲の濃度で添加
される。フィルム材料のテクスチュア特性を向上する化合物、例えば、動物性又は植物性
脂肪などを、望ましくはそれらの水素化形態で、更に添加してもよい。この組成物はまた
、製品のテクスチュア特性を向上する化合物を含むこともできる。他の成分としては、フ
ィルムの容易な形成及び全般的品質に寄与する結合剤が挙げられる。結合剤の非限定的例
は、デンプン、天然ゴム、α化デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、メチルセル
ロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ポリアクリルアミ
ド、ポリビニルオキサゾリドン、及びポリビニルアルコールを含む。
【0174】
更なる可能性のある添加剤は、活性成分との封入化合物を形成する物質などの、溶解度
増強剤を含む。このような物質は、非常に不溶性が高い且つ/又は不安定な活性物質の特
性を改善するのに有用であることができる。概して、これらの物質は、疎水性内部空洞及
び親水性外部を有するドーナツ型の分子である。不溶性且つ/又は不安定な医薬活性成分
は、疎水性空洞内に嵌合し、これにより封入複合体が生じ、これは水に溶ける。従って、
封入複合体の形成は、非常に不溶性の高い且つ/又は不安定な医薬活性成分の、水への溶
解を可能にする。このような物質の特に望ましい例は、シクロデキストリンであり、これ
はデンプンから誘導される環状炭水化物である。しかし他の類似の物質は、本発明の範囲
内に収まると考えられる。
【0175】
好適な着色剤は、食品、医薬品及び化粧品の着色料(FD&C)、医薬品及び化粧品の着色料
(D&C)、又は外用薬及び化粧品の着色料(Ext. D&C)を含む。これらの着色料は、色素、そ
れらの対応するレーキ、並びにある種の天然及び誘導された着色剤である。レーキは、水
酸化アルミニウム上に吸収された色素である。着色剤の他の例は、公知のアゾ染料、有機
もしくは無機の顔料、又は天然起源の着色剤を含む。無機顔料、例えば酸化物又は鉄もし
くはチタンが好ましく、これらの酸化物は、全成分の重量を基準として、約0.001~約10
%、好ましくは約0.5~約3%の範囲の濃度で添加される。
【0176】
香料は、天然及び合成の香味のある液体から選択されてよい。このような物質の例示的
なリストは、揮発油、合成香味油、香味のある芳香族、油分、液体、含油樹脂、又は植物
、葉、花、果実、茎、及びそれらの組合せから誘導された抽出物を含む。例の非限定的な
代表的リストは、ミント油、ココア、及び柑橘油、例えばレモン、オレンジ、ブドウ、ラ
イム及びグレープフルーツなど、並びにリンゴ、ナシ、モモ、ブドウ、イチゴ、ラズベリ
ー、サクランボ、プラム、パイナップル、アプリコットを含む果実のエッセンス、又は他
の果実香料を含む。他の有用な香味料は、アルデヒド及びエステル、例えばベンズアルデ
ヒド(サクランボ、アーモンド)、シトラール、すなわちアルファシトラール(レモン、ラ
イム)、ネラール、すなわち、ベータ-シトラール(レモン、ライム)、デカナール(オレン
ジ、レモン)、アルデヒドC-8(柑橘果実)、アルデヒドC-9(柑橘果実)、アルデヒドC-12(柑
橘果実)、トルイルアルデヒド(サクランボ、アーモンド)、2,6-ジメチルオクタノール(緑
色(green)果実)、及び2-ドデセナール(柑橘、マンダリン)、それらの組合せなどを含む。
【0177】
甘味料は、以下の非限定的リスト:グルコース(コーンシロップ)、デキストロース、転
化糖、フルクトース、及びそれらの組合せ;サッカリン及びその様々な塩、例えばナトリ
ウム塩;ジペプチドベースの甘味料、例えばアスパルテーム、ネオテーム、アドバンテー
ム;ジヒドロカルコン化合物、グリチルリチン;ステビア(Stevia Rebaudiana)(ステビオシ
ド);ショ糖の塩素誘導体、例えばスクラロース;糖アルコール、例えばソルビトール、マ
ンニトール、キシリトール、及び同類のものから選択されてよい。また、水素化されたデ
ンプン加水分解物及び合成甘味料3,6-ジヒドロ-6-メチル-1-1-1,2,3-オキサチアジン-4-
オン-2,2-二酸化物、特にカリウム塩(アセスルファム-K)、並びにそれらのナトリウム塩
及びカルシウム塩、並びに天然の強力な(intensive)甘味料、例えばLo Han Kuoなどがあ
る。他の甘味料もまた、使用されてよい。
【0178】
消泡剤及び/又は脱泡剤成分も、フィルムで使用されてよい。これらの成分は、フィル
ム-形成組成物からの、捕獲された空気などの、空気の除去を助ける。このような捕獲さ
れた空気は、不均一なフィルムにつながることがある。シメチコンは、一つの特に有用な
消泡剤及び/又は脱泡剤である。しかし本発明は、そのように限定されず、且つ他の消泡
剤及び/又は脱泡剤が好適に使用されてよい。シメチコン及び関連物質は、高密度化目的
で利用されてよい。より具体的には、このような物質は、空隙、空気、湿気、及び類似の
望ましくない成分の除去を促進することができ、これにより、より緻密なフィルムを、従
ってより均一なフィルムを提供する。この機能を実行する物質又は成分は、高密度化剤(d
ensification agent)又は密度上昇物質(densifying agent)と称される。先に説明された
ように、捕獲された空気又は望ましくない成分は、不均一なフィルムへつながり得る。
【0179】
先に言及した、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第7,425,292号及び第8,765,167号
に記載されたいずれか他の任意の成分もまた、本明細書記載のフィルムに含まれ得る。
【0180】
本フィルム組成物は更に、フィルム組成物のpHを制御するために、緩衝剤を含有するこ
とが望ましい。任意の所望のレベルの緩衝剤が、医薬活性成分が組成物から放出される際
に遭遇する所望のpHレベルを提供するために、フィルム組成物に組み込まれる。この緩衝
剤は、医薬活性成分のフィルムからの放出及び/又は体への吸収を制御するのに十分な量
で提供されることが好ましい。一部の実施態様において、緩衝剤は、クエン酸ナトリウム
、クエン酸、酒石酸水素塩及びそれらの組合せを含んでよい。
【0181】
本明細書記載の医薬フィルムは、任意の所望のプロセスにより形成されてよい。好適な
プロセスは、米国特許第8,652,378号、第7,425,292号及び第7,357,891号に説明されてお
り、これらの全内容は引用により本明細書中に組み込まれている。一実施態様において、
フィルム剤形組成物は、湿潤組成物を最初に調製することにより形成され、この湿潤組成
物は、ポリマー性担体マトリクス及び治療有効量の医薬活性成分を含む。この湿潤組成物
は、流延してフィルムとされ、その後十分に乾燥され、自立型のフィルム組成物を形成す
る。この湿潤組成物は、流延して個々の剤形にされるか、又はこれは流延してシートとさ
れ、次にこのシートが個々の剤形に切断される。
【0182】
本医薬組成物は、粘膜表面に付着することができる。本発明は、口、膣、臓器、又は他
の種類の粘膜表面などの、湿った表面を有し且つ体液の影響を受けやすい、体の組織、患
部、又は創傷の局所的治療に特に用いられる。本装置は、医薬を運搬し、且つ粘膜表面へ
の適用及び付着時に、保護層をもたらし、且つ治療部位、周囲の組織、及び他の体液に医
薬を送達する。水溶液又は唾液などの体液中の侵食の制御、並びに送達と同時又はその後
のフィルムの緩徐で自然な侵食を前提とすると、この装置は、治療部位での有効な薬物送
達に適した滞留時間を提供する。
【0183】
本組成物の装置の滞留時間は、製剤において使用される水侵食性ポリマーの侵食速度及
びそれらの各濃度によって決まる。侵食速度は、例えば、異なる溶解特性を持つ成分又は
化学的に異なるポリマー、例えばヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセ
ルロースを一緒に混合することにより;低分子量及び中分子量のヒドロキシエチルセルロ
ースの混合など、同じポリマーの異なる分子量の等級を用いることにより;様々な親油値
又は水溶解度特性の賦形剤又は可塑剤(本質的に不溶性の成分を含む)を使用することによ
り;水溶性の有機塩及び無機塩を使用することにより;部分架橋のために、ヒドロキシエチ
ルセルロースなどのポリマーと、グリオキサールなどの架橋剤を使用することにより;或
いは、一旦得られたならば、その結晶化度もしくは相転移を含むフィルムの物理状態を変
更することができる、処置後の照射又は硬化により、調節されてよい。これらの戦略は、
装置の侵食動態を変化させるために、単独で又は組合せて利用されてよい。適用時に、医
薬送達装置は、粘膜表面へ付着し、且つその場に保持される。水の吸収は、この装置を軟
化させ、これにより異物感を減らす。この装置が粘膜表面に置かれている間、薬物の送達
が起こる。滞留時間は、選択された医薬の送達の所望のタイミング及び担体の所望の寿命
に応じて、広範に調節され得る。しかし一般に、滞留時間は、約数秒から約数日の間で調
整される。好ましくは、ほとんどの医薬の滞留時間は、約5秒~約24時間で調節される。
より好ましくは、滞留時間は、約5秒~約30分で調節される。薬物送達の提供に加え、一
旦装置が粘膜表面に付着してしまえば、治療部位の保護も提供し、侵食可能な包帯として
作用する。親油性物質は、崩壊及び溶解を減少するために、侵食性を遅延するように、設
計することができる。
【0184】
アミラーゼなどの酵素に対し感受性があり、水中に非常に溶けやすい賦形剤、例えば、
水溶性有機塩及び無機塩などを添加することにより、本装置の侵食性の動態を調節するこ
とも、可能である。好適な賦形剤は、塩化物、炭酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、トリフ
ルオロ酢酸塩、安息香酸塩、リン酸塩、フッ化物、硫酸塩、又は酒石酸塩のナトリウム塩
及びカリウム塩を含んでよい。添加される量は、侵食動態が、どの程度変更されるか、並
びに装置中の他の成分の量及び性質に応じて、異なり得る。
【0185】
先に記載された水-ベースのエマルジョンで典型的に使用される乳化剤は、好ましくは
、リノール酸、パルミチン酸、ミリストレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、セトレイ
ン酸又はオレイン酸及び水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選択される場合に、現
場で得られるか、或いはソルビトール及び無水ソルビトールのラウリン酸エステル、パル
ミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、もしくはオレイン酸エステル、モノオレエー
ト、モノステアレート、モノパルミテート、モノラウレートを含むポリオキシエチレン誘
導体、脂肪族アルコール、アルキルフェノール、アリルエーテル、アルキルアリールエー
テル、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、及びソルビタンモノパ
ルミテートから選択されるかのいずれかである。
【0186】
使用される医薬活性成分の量は、所望の治療強度及びこれらの層の組成物によって決ま
るが、好ましくは、医薬成分は、組成物の約0.001%~約99%、より好ましくは約0.003~
約75%、及び最も好ましくは約0.005%~約50重量%を構成し、これは0.005%超、0.05%
超、0.5%超、1%超、5%超、10%超、15%超、20%超、30%超、約50%、50%超、50%
未満、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.5%未満、0.05
%未満、及び0.005%未満を含む。他の成分の量は、薬物又は他の成分に応じて変動して
よいが、典型的にはこれらの成分は、装置の総重量で、50%を超えず、好ましくは30%を
超えず、最も好ましくは15%を超えないよう構成する。
【0187】
フィルムの厚さは、各層の厚さ及び層の数によって、変動してよい。前述のように、層
の厚さ及び量の両方は、侵食動態を変化させるために調節されてよい。好ましくは、装置
が2層のみを有する場合、厚さは、0.005mm~2mm、好ましくは0.01~1mm、より好ましくは
0.1~0.5mmの範囲であり、これは、0.1mm超、0.2mm超、約0.5mm、0.5mm超、0.5mm未満、0
.2mm未満、及び0.1mm未満を含む。各層の厚さは、層化された装置の全体の厚さの10~90
%を変動してよく、好ましくは30~60%を変動し、これは、10%超、20%超、30%超、40
%超、50%超、70%超、90%超、約90%、90%未満、70%未満、50%未満、40%未満、30
%未満、20%未満、及び10%未満を含む。従って、各層の好ましい厚さは、0.01mm~0.9m
m、及び0.03~0.5mmを変動してよい。
【0188】
当業者が理解するように、全身送達、例えば経粘膜又は経皮送達が望ましい場合、治療
部位は、フィルムが、血液、リンパ液、又は他の体液中に所望のレベルの医薬を送達及び
/又は維持することが可能である任意の領域を含み得る。典型的には、このような治療部
位は、口、食道、耳、眼、肛門、鼻、及び膣の粘膜組織、並びに皮膚を含む。皮膚が治療
部位として利用される場合、通常、上腕又は大腿部などの、動作が装置の付着を妨害しな
い比較的大きい領域の皮膚が、好ましい。
【0189】
本医薬組成物はまた、創傷包帯として使用することもできる。洗浄除去することができ
る、物理的で、適合性であり、酸素及び水分透過性で、可撓性な障壁の提供により、フィ
ルムは、創傷を保護するのみではなく、治癒、無菌(asepty)、瘢痕形成(scarification)
を促進するため、疼痛を緩和するため、又は罹患者の状態を全体的に改善するために、医
薬を送達することもできる。以下に提供される実施例の一部は、皮膚又は創傷への適用に
、良く適している。当業者が理解するように、本製剤は、長期間にわたり、乾燥した皮膚
上の良好な付着を維持することを助けるであろう、特異的親水性/吸湿性の賦形剤を組み
入れることを必要とするであろう。この様式で利用する場合の別の本発明の利点は、フィ
ルムが、皮膚上で目立つことを望まない場合、色素又は着色物質の使用は、不要であるこ
とである。他方で、フィルムが目立つことが望ましい場合、色素又は着色物質を利用する
ことができる。
【0190】
本医薬組成物は、もともと湿潤組織である粘膜組織に付着することができる一方で、皮
膚又は創傷などの、他の表面上でも使用することができる。本医薬フィルムは、皮膚への
適用に先立ち、水、唾液、傷からの排液又は発汗など水性ベースの流体により湿っている
場合にも、皮膚へ付着することができる。このフィルムは、例えば、水洗い、シャワー、
入浴又は洗浄などにより、水との接触が原因でそれが侵食されるまで、皮膚に付着するこ
とができる。このフィルムはまた、組織へ著しい損傷を伴わずに、剥がして容易に取り除
くことができる。
【0191】
本明細書で引用した全ての参考文献は、それらの全体が本明細書に参照により組み込ま
れている。他の実施態様は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。