(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156676
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】能動冷却型の熱シールドシステム及びそれを含むビークル
(51)【国際特許分類】
B64G 1/58 20060101AFI20241029BHJP
F42B 15/34 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B64G1/58
F42B15/34
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024109235
(22)【出願日】2024-07-05
(62)【分割の表示】P 2022529310の分割
【原出願日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】62/942,886
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522165946
【氏名又は名称】ストーク スペース テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ラプサ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス フェルドマン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロケット及び極超音速以上で移動する他のビークル(例えば、宇宙再突入ビークル、航空機、ミサイル等)において、高速で生じる加熱からそれら自身を保護する手段を提供する。
【解決手段】能動冷却型の熱シールドシステムは、熱シールド、タンク、ポンプ、熱交換器、及びタービンを含む。熱シールドはビークルの風上側を規定する。タンクは冷却剤を貯蔵する。ポンプはタンクから冷却剤を受け取り、加圧冷却剤を出力する。熱交換器は熱シールドと一体に接続される。熱交換器は、ポンプから加圧冷却剤を受け取り、熱シールドから加圧冷却剤に熱を伝達して加熱流体を生成し、加熱流体を出力する。インレットは熱交換器から加熱流体の出力を受け取る。シャフトはポンプに結合され、タービンブレードを含む。シャフトは、熱交換器から受け取った加熱流体がタービンブレードに作用するときに回転し、ポンプにパワーを供給する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビークルの風上側を規定する熱シールドと、
前記ビークルに搭載され、冷却剤を貯蔵するように構成されるタンクと、
前記ビークルに搭載され、前記タンクから前記冷却剤を受け取ると共に加圧冷却剤を出力するように構成されるポンプと、
前記ビークルに搭載され、前記熱シールドと一体に接続された熱交換器であって、前記ポンプから前記加圧冷却剤を受け取り、前記熱シールドから前記加圧冷却剤に熱を伝達して加熱流体を生成し、前記加熱流体を出力するように構成される熱交換器と、
前記ビークルに搭載されたタービンと、を備え、
前記タービンが、
前記熱交換器から前記加熱流体の出力を受け取るように構成されるインレットと、
前記ポンプに結合され、その上に取り付けられたタービンブレードを含むシャフトであって、前記熱交換器から受け取った前記加熱流体が前記タービンブレードに作用するときに回転し、それにより前記ポンプにパワーを供給するように構成されるシャフトと、
前記加熱流体を出力するように構成されるアウトレットと、を含む能動冷却型の熱シールドシステム。
【請求項2】
前記ポンプの動作が開始されると、前記熱交換器から前記タービンに供給されるエネルギーの量が、単独で前記ポンプの動作を継続するのに十分であるように、少なくとも前記熱交換器、前記タービン、及び前記ポンプが構成される、請求項1に記載の熱シールドシステム。
【請求項3】
動作が開始されると、前記熱交換器によって前記冷却剤に伝達されるエネルギーの量が、動作を持続するのに少なくとも十分であるように、前記熱シールドシステムが構成される、請求項1に記載の熱シールドシステム。
【請求項4】
前記熱交換器によって前記冷却剤に伝達されるエネルギーの量が、前記熱シールドシステムの動作を持続するのに少なくとも十分であるように、前記熱シールド、前記タンク、前記ポンプ、前記熱交換器、及び前記タービンが構成される、請求項1に記載の熱シールドシステム。
【請求項5】
前記熱交換器によって前記冷却剤に伝達されるエネルギーの量が、前記ポンプを駆動するのに必要な量のパワーを前記タービンに供給するのに少なくとも十分であるように、前記熱シールド、前記タンク、前記ポンプ、前記熱交換器、及び前記タービンが構成される、請求項1に記載の熱シールドシステム。
【請求項6】
前記冷却剤が、活性冷却剤、液体冷却剤、及び極低温冷却剤の少なくとも1つである、請求項1に記載の熱シールドシステム。
【請求項7】
前記加熱流体が、ガス及び超臨界流体の少なくとも1つである、請求項1に記載の熱シールドシステム。
【請求項8】
前記加熱流体を前記熱交換器から前記タービンのインレットに移送するように構成される一次加熱流体導管と、
前記一次加熱流体導管の少なくとも一部から、補助システムによるパワー使用のために前記加熱流体中の過剰なエネルギーをバイパスするように構成されるバイパス導管と、を更に備える、請求項1に記載の熱シールドシステム。
【請求項9】
前記タンク内の前記冷却剤の圧力が、単独で前記タービン及び前記ポンプの回転を開始するのに十分なエネルギーを提供し、前記タービンに利用可能な圧力及びパワーの増大を生じさせる、請求項1に記載の熱シールドシステム。
【請求項10】
前記ビークルが惑星大気に再突入する間、前記熱交換器を通る前記冷却剤の流れが前記熱シールド上で許容可能な温度を維持するように前記熱交換器及び前記熱シールドが構成される、請求項1に記載の熱シールドシステム。
【請求項11】
能動冷却型の熱シールドシステムを備えるビークルであって、
前記能動冷却型の熱シールドシステムが、
ビークルの風上側を規定する熱シールドと、
前記ビークルに搭載され、冷却剤を貯蔵するように構成されるタンクと、
前記ビークルに搭載され、前記タンクから前記冷却剤を受け取ると共に加圧冷却剤を出力するように構成されるポンプと、
前記ビークルに搭載され、前記熱シールドと一体に接続された熱交換器であって、前記ポンプから前記加圧冷却剤を受け取り、前記熱シールドから前記加圧冷却剤に熱を伝達して加熱流体を生成し、前記加熱流体を出力するように構成される熱交換器と、
前記ビークルに搭載されたタービンと、を含み、
前記タービンが、
前記熱交換器から前記加熱流体の出力を受け取るように構成されるインレットと、
前記ポンプに結合され、その上に取り付けられたタービンブレードを含むシャフトであって、前記熱交換器から受け取った前記加熱流体が前記タービンブレードに作用するときに回転し、それにより前記ポンプにパワーを供給するように構成されるシャフトと、
前記加熱流体を出力するように構成されるアウトレットと、を含むビークル。
【請求項12】
前記ポンプの動作が開始されると、前記熱交換器から前記タービンに供給されるエネルギーの量が、単独で前記ポンプの動作を継続するのに十分であるように、少なくとも前記熱交換器、前記タービン、及び前記ポンプが構成される、請求項11に記載のビークル。
【請求項13】
前記熱シールドが、通常動作中に高マッハ数の流れ環境にさらされるように構成される、請求項11に記載のビークル。
【請求項14】
前記ビークルが多段式ロケットシステムの上段ロケットである、請求項11に記載のビークル。
【請求項15】
前記上段ロケットが、その後端に配置された推進エンジンを含み、
前記後端が前記熱シールドシステムの動作中の前記上段ロケットの風上側を規定する、請求項14に記載のビークル。
【請求項16】
前記熱シールドシステム及び前記推進エンジンが多目的部品を共有し、
前記多目的部品が前記熱シールド、前記タンク、前記ポンプ、前記熱交換器、及び前記タービンの少なくとも1つである、請求項15に記載のビークル。
【請求項17】
前記熱シールドシステムの前記ポンプが前記推進エンジンの燃料ポンプである、請求項16に記載のビークル。
【請求項18】
排出導管を更に備え、前記タービンから出力される前記加熱流体の少なくとも一部が前記排出導管を通って前記上段ロケットを出る、請求項14に記載のビークル。
【請求項19】
大気圏再突入時に多段式ロケットシステムの上段ロケットの風上側を能動的に冷却する方法であって、
前記上段ロケットに搭載されたポンプの駆動を開始して前記ポンプからの加圧冷却剤の出力を開始することと、
前記上段ロケットの風上側の少なくとも一部を規定する熱シールドと一体に接続された熱交換器を通して、前記ポンプによって出力された前記加圧冷却剤を流すことと、
加熱流体を生成するために前記熱シールドから前記加圧冷却剤に熱を伝達することと、
前記上段ロケットに搭載されたタービンであって、前記ポンプに結合されたシャフトと前記シャフトに取り付けられたタービンブレードとを含むタービンに前記加熱流体を入力することと、
前記タービンブレードを前記加熱流体にさらして前記シャフトを駆動し、それにより前記ポンプの駆動を継続することと、を備える方法。
【請求項20】
前記伝達すること及び前記入力することのステップが、前記ポンプの駆動を継続するのに単独で十分な量のエネルギーを前記タービンに供給する、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本出願は、2019年12月3日に出願された米国仮特許出願第62/942,886号に基づく優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体がここに組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般に、高レベルの加熱にさらされるビークル用の冷却システムに関する。より具体的には、本開示は、ロケット並びに宇宙再突入ビークル、航空機、及びミサイル等の極超音速以上で移動する他のビークルにおける使用のための能動冷却型の熱シールドシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
ロケットのためのエアークラフト等再使用可能性は、莫大な費用便益の可能性により、長い間ロケット研究の「至高の目標(holy grail)」であった。多段式ロケットシステムの上段ロケット(例えば、2段式ロケットシステムの第2段ロケット)を回収及び再使用する能力は、当該産業によって未だ解決されていない重要な技術格差のままである。多段式ロケットの上段の再使用は、過酷な再突入環境と、堅牢な再使用に必要な構造質量の増加に関連する性能ペナルティとにより、難易度が高い。上段ロケットは、典型的には最小の構造及び複雑さで構築され、これは、第2段への質量の追加が、ペイロード容量における1:1減少となるからである。従って、上段ロケットを再使用するには、大幅な追加的機能性だけでなく、質量負荷が最小限であることが要求される。
【0004】
ロケット及び極超音速以上で移動する他のビークル(例えば、宇宙再突入ビークル、航空機、ミサイル等)は、そのような高速で生じる加熱からそれら自身を保護する手段を必要とする。そのような加熱を軽減するための従来の解決策は、以下の1つ以上の使用を含む。(i)融除材料(ablative materials)、これは熱分解を受け、境界層を下流に移動して保護膜層を形成するガスを生じる。(ii)高温材料(例えば、セラミクス、炭素-炭素等)。(iii)複合材料、これはベース材料を断熱し、そこからの熱を放射する。(iv)蒸散冷却、これは半多孔質壁を通過するガスによって提供される薄い保護フィルムの使用を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存の熱管理解決策は、再使用可能なビークル等の特定の用途では都合よくは両立しない可能性があるコスト、運用、及び/又は質量への影響を有する。例えば、融除材料と壊れやすいセラミクスは、再使用性の高いシステムとは不適合である。熱シールドの蒸散冷却はコストがかかり、制御するのが困難である。必要なのは、非常に堅牢で、高度に制御可能で、長期的な再使用性によく適した冷却システムである。
【0006】
本発明の態様は、これらの及び他の問題に向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によると、能動冷却型の熱シールドシステムは、熱シールド、タンク、ポンプ、熱交換器、及びタービンを含む。熱シールドはビークルの風上側を規定する。タンクはビークルに搭載され、冷却剤を貯蔵するように構成される。ポンプはビークルに搭載され、タンクから冷却剤を受け取ると共に加圧冷却剤を出力するように構成される。熱交換器はビークルに搭載され、熱シールドと一体に接続される。熱交換器は、ポンプから加圧冷却剤を受け取り、熱シールドから加圧冷却剤に熱を伝達して加熱流体を生成し、加熱流体を出力するように構成される。タービンはビークルに搭載され、インレット、シャフト、及びアウトレットを含む。インレットは熱交換器から加熱流体の出力を受け取るように構成される。シャフトはポンプに結合され、その上に取り付けられたタービンブレードを含む。シャフトは、熱交換器から受け取った加熱流体がタービンブレードに作用するときに回転し、それによりポンプにパワーを供給するように構成される。アウトレットは加熱流体を出力するように構成される。
【0008】
本発明の別の側面によると、ビークルは能動冷却型の熱シールドシステムを含む。熱シールドシステムは、熱シールド、タンク、ポンプ、熱交換器、及びタービンを含む。熱シールドはビークルの風上側を規定する。タンクはビークルに搭載され、冷却剤を貯蔵するように構成される。ポンプはビークルに搭載され、タンクから冷却剤を受け取ると共に加圧冷却剤を出力するように構成される。熱交換器はビークルに搭載され、熱シールドと一体に接続される。熱交換器は、ポンプから加圧冷却剤を受け取り、熱シールドから加圧冷却剤に熱を伝達して加熱流体を生成し、加熱流体を出力するように構成される。タービンはビークルに搭載され、インレット、シャフト、及びアウトレットを含む。インレットは熱交換器から加熱流体の出力を受け取るように構成される。シャフトはポンプに結合され、その上に取り付けられたタービンブレードを含む。シャフトは、熱交換器から受け取った加熱流体がタービンブレードに作用するときに回転し、それによりポンプにパワーを供給するように構成される。アウトレットは加熱流体を出力するように構成される。
【0009】
本発明の別の側面によると、多段式ロケットシステムの再使用可能上段ロケットは、高マッハ数の流れ環境からの熱を液体冷却剤ポンプを駆動するためのエネルギーに変換する能動冷却型の熱シールドシステムを含む。
【0010】
本発明の別の側面によると、大気圏再突入時に多段式ロケットシステムの上段ロケットの風上側を能動的に冷却する方法は、上段ロケットに搭載されたポンプの駆動を開始してポンプからの加圧冷却剤の出力を開始するステップと、上段ロケットの風上側の少なくとも一部を規定する熱シールドと一体に接続された熱交換器を通して、ポンプによって出力された加圧冷却剤を流すステップと、加熱流体を生成するために熱シールドから加圧冷却剤に熱を伝達するステップと、上段ロケットに搭載されたタービンであって、ポンプに結合されたシャフトとシャフトに取り付けられたタービンブレードとを含むタービンに加熱流体を入力するステップと、タービンブレードを加熱流体にさらしてシャフトを駆動し、それによりポンプの駆動を継続するステップと、を含む。
【0011】
上述の特徴の1つ以上に加えて、又はその代替として、本発明の更なる態様は、以下の特徴の1つ以上を、個別に又は組み合わせにおいて含むことができる。
・ポンプの動作が開始されると、熱交換器からタービンに供給されるエネルギーの量が、単独でポンプの動作を継続するのに十分であるように、少なくとも熱交換器、タービン、及びポンプが構成される。
・動作が開始されると、熱交換器によって冷却剤に伝達されるエネルギーの量が、動作を持続するのに少なくとも十分であるように、熱シールドシステムが構成される。
・熱交換器によって冷却剤に伝達されるエネルギーの量が、熱シールドシステムの動作を持続するのに少なくとも十分であるように、熱シールド、タンク、ポンプ、熱交換器、及びタービンが構成される。
・熱交換器によって冷却剤に伝達されるエネルギーの量が、ポンプを駆動するのに必要な量のパワーをタービンに供給するのに少なくとも十分であるように、熱シールド、タンク、ポンプ、熱交換器、及びタービンが構成される。
・冷却剤が、活性冷却剤、液体冷却剤、及び極低温冷却剤の少なくとも1つである。
・加熱流体が、ガス及び超臨界流体の少なくとも1つである。
・熱シールドシステムが、加熱流体を熱交換器からタービンのインレットに移送するように構成される一次加熱流体導管と、一次加熱流体導管の少なくとも一部から、補助システムによるパワー使用のために加熱流体中の過剰なエネルギーをバイパスするように構成されるバイパス導管と、を更に含む。
・タンク内の冷却剤の圧力が、単独でタービン及びポンプの回転を開始するのに十分なエネルギーを提供し、タービンに利用可能な圧力及びパワーの増大を生じさせる。
・ビークルが惑星大気に再突入する間、熱交換器を通る冷却剤の流れが熱シールド上で許容可能な温度を維持するように熱交換器及び熱シールドが構成される。
・熱シールドが、通常動作中に高マッハ数の流れ環境にさらされるように構成される。
・ビークルが多段式ロケットシステムの上段ロケットである。
・上段ロケットが、その後端に配置された推進エンジンを含み、後端が熱シールドシステムの動作中の上段ロケットの風上側を規定する。
・熱シールドシステム及び推進エンジンが多目的部品を共有し、多目的部品が熱シールド、タンク、ポンプ、熱交換器、及びタービンの少なくとも1つである。
・熱シールドシステムのポンプが推進エンジンの燃料ポンプである。
・ビークルが排出導管を更に含み、タービンから出力される加熱流体の少なくとも一部が、排出導管を通って上段ロケットを出る。
方法の伝達するステップ及び入力するステップが、ポンプの駆動を継続するのに単独で十分な量のエネルギーをタービンに供給する。
【0012】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に提供される図面及び詳細な説明に照らして明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は本熱シールドシステムを含むビークルの斜視図である。
【0014】
【
図2】
図2は、熱シールドシステムの部品を示す、
図1のビークルの後端部分の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び2を参照すると、本開示は、能動冷却型の熱シールドシステム10及びそれを含むビークル12を記述する。熱シールドシステム10は、高マッハ数の流れ環境14からの熱をエネルギーに変換して、液体冷却剤ポンプ16を駆動する(
図2を参照)。
【0016】
図1を参照すると、ビークル12は、ロケット(例えば、多段式ロケット、単段式宇宙輸送機(single-stage-to-orbit)(SSTO)ロケット、上段ロケット、ブースターロケット等)、ミサイル、宇宙船、航空機、あるいは大気中、準軌道、軌道、地球外、及び/又は惑星間空間環境における少なくとも超音速(例えば、超音速、極超音速、再突入速度等)までの移動(例えば、飛行)用に設計された他のビークルである。
【0017】
図示の実施形態においては、ビークル12は、2段式ロケットシステム(図示せず)の第2段ロケットである。ビークル12(以下、「第2段ロケット12」)は、前端26とその反対側の後端28との間で中心線24に沿って延びる。第2段ロケット12は、前端26に向かうペイロード30と、後端28に向かうエンジン32と、を含む。後端28は、第2段ロケット12の風上側22を規定する。図示の実施形態においては、エンジン32は、2019年11月27日に出願された同一発明者による米国仮特許出願第62/941,383号に開示されるような増強型エアロスパイクノズルエンジンであり、米国仮特許出願第62/941,383号の優先権を主張する国際特許出願において、その内容は、参照によりその全体がここに組み込まれる。他の実施形態においては、エンジン32は、ベルノズルエンジン又は別のタイプのロケットエンジンであり、あるいはビークルはエンジンを全く含まなくてもよい。
【0018】
図2を参照すると、使用中、第2段ロケット12は、宇宙再突入ビークルのためにマッハ30に達し得るフリーストリームマッハ数18で環境14(例えば、大気、宇宙)を通って移動する。第2段ロケット12の上流にバウショック(bow shock)20が形成され、バウショック20のビークル側の温度は、数千ケルビンに達し得る。第2段ロケット12の風上側22は、そのような高温にさらされるので、再使用のためには冷却及び/又は他の熱保護が必要である。
【0019】
能動的冷却型の熱シールドシステム10は、熱シールド34、タンク36、ポンプ16、熱交換器38、及びタービン40を含む。
【0020】
熱シールド34は、第2段ロケット12の風上側22の外面を規定する。
【0021】
タンク36は、第2段ロケット12に搭載されており、冷却剤(例えば、活性冷却剤、液体冷却剤、極低温冷却剤等)を貯蔵している。
【0022】
ポンプ16は、第2段ロケット12に搭載されており、タンク36から冷却剤を受け取る。ポンプ16は、加圧冷却剤(例えば、数百psi以上の圧力を有する冷却剤)を出力する。即ち、冷却剤がポンプ16を通過した後の冷却剤の圧力は、冷却剤がタンク36に貯蔵されているときよりも大きい。冷却剤は、冷却剤導管42(例えば、ダクト、チューブ等)を介してタンク36からポンプ16に移送される。
【0023】
熱交換器38は、第2段ロケット12に搭載されており、熱シールド34と一体に接続されている。熱交換器38は、ポンプ16から加圧冷却剤を受け取り、熱シールド34から加圧冷却剤に熱を伝達して加熱流体(例えば、ガス、超臨界流体等)を生成し、加熱流体を出力する。加圧冷却剤は、加圧冷却剤導管44(例えば、ダクト、チューブ等)を介してポンプ16から熱交換器38に移送される。
【0024】
タービン40は、第2段ロケット12に搭載されており、インレット46、シャフト48、及びアウトレット50を含む。インレット46は、一次加熱流体導管52(例えば、ダクト、チューブ等)を介して熱交換器38から出力される加熱流体を受け取る。いくつかの実施形態においては、加熱流体には過剰なエネルギーがあり、このエネルギーは、バイパス導管54(例えば、ダクト、チューブ等)を介してタービン40の周りをバイパスされ、補助システム56(例えば、タンク、ガススラスタ、蒸散冷却システム、補助パワーユニット(APU)等)を加圧し又はそこにパワーを供給するために用いられることになる。タービン40のシャフト48は、ポンプ16に結合され(例えば、直接結合、カプラーを介した間接的結合等)、その上に取り付けられたタービンブレード(図示せず)を含む。熱交換器38から受け取った加熱流体がタービンブレード(図示せず)に作用すると、シャフト48が回転し、それによりポンプ16にパワーを供給する。タービン40のアウトレット50は加熱流体を出力する。いくつかの実施形態においては、第2段ロケット12は排出導管58を含み、加熱流体は排出導管58を通って第2段ロケット12を出る(例えば、推力を提供するために)。追加的又は代替的に、タービン40のアウトレット50から出力される加熱流体を用いて、補助システム(例えば、タンク、ガススラスタ、蒸散冷却システム、APU等)を加圧し又はそこにパワーを供給することができる。タービン40のアウトレット50から出力される加熱流体は、バイパス導管54を通って補助システム56に迂回される加熱流体の圧力及びエネルギーよりも低い圧力及びエネルギーを有することになる。いくつかの実施形態においては、熱シールドシステム10は、シャフト48を介したタービン40とポンプ16の結合を容易にするベアリング、ギア、及び/又はシール(図示せず)を更に含む。
【0025】
熱シールドシステム10の動作中、加圧冷却剤は、熱交換器38(例えば、熱シールド34内に形成されたチャネル又は他の導管)に入り、極超音速の再突入ビークルに特有のレート(即ち、熱流束)であって、例えば0.01~10BTU/in2・sの範囲内にあることがあるレートで熱60を捕捉する。熱交換器38は、第2段ロケット12の風上側22を冷却することと、タービン40を駆動し次いでポンプ16にパワーを供給するために用いられる冷却剤にエネルギーを加えることとの二重の目的を果たす。冷却剤が加熱流体として熱交換器38を出るまで、冷却剤の圧力は低下する一方、全エンタルピーは熱交換器38に沿って増大する。加熱流体の一次流れはタービン40に入り、そこでエネルギーが抽出される。タービン40を出る加熱流体は、第2段ロケット12から外部環境14に放出され、あるいは別の目的に用いられる(例えば、搭載システムによって再冷却され、閉ループサイクルで熱交換器38を通過して戻される)。
【0026】
いくつかの実施形態においては、タンク36内の冷却剤の圧力は、単独でタービン40及びポンプ16の回転を開始するのに十分なエネルギーを提供し、タービン40に利用可能な圧力及びパワーの増大を生じさせる。他の実施形態においては、タンク36内の冷却剤の圧力は、タービン40及びポンプ16の回転を開始するのに十分なエネルギーを提供しない。いくつかのそのような実施形態においては、熱シールドシステム10は、タービンシャフト48に接続されたモータ又はタービン40に向けられた高圧ガス等の外部スタータ源を更に含む。
【0027】
いくつかの実施形態においては、少なくとも1つの部品(例えば、タンク36、ポンプ16、タービン40等)は、エンジン32の既存の部品である。例えば、いくつかの実施形態においては、エンジン32は、エンジンの熱交換器を通して冷却剤を押し出す少なくともポンプ及びタービンを含む。そのような実施形態においては、エンジン32の燃料ポンプ及びタービンは、それぞれ、熱シールドシステム10のポンプ16及びタービン40として機能することによって二重の目的を果たし、エンジン32の熱交換器は、熱シールドシステム10の熱交換器38の少なくとも一部を形成する。
【0028】
いくつかの実施形態においては、熱シールドシステム10は、追加的又は代替的に、受動的に冷却される(例えば、高温材料等を用いて)少なくとも1つの部品を更に含む。
【0029】
熱シールドシステム10の動作が開始されると、冷却剤に加えられる熱エネルギーは、動作を持続するのに十分である。具体的には、冷却剤に追加されるエネルギーは、ポンプ16及びタービン40の非効率性、熱交換器38における圧力損失、並びに摩擦及び他の機構からの他の損失を含むシステム10の全ての損失を考慮した上で、ポンプ16を駆動するために必要なパワーをタービン40に供給するのに十分である。
【0030】
第2段ロケット12の風上側22に組み込まれた熱交換器38を通って流れる冷却剤は、第2段ロケット12が厳しい熱環境を通過する間(例えば、第2段ロケット12が大気中に再突入する間)、第2段ロケット12の熱シールド34及び他の壁で許容可能な温度を維持するのに十分である。従って、熱シールドシステム10は、第2段ロケット12がベースファーストの再突入軌道を実行することを可能にする。これにより、他の提案されたノーズファースト又はボディファースト(ベリーフロップ(belly flop)としても知られる)戦略に勝る以下のいくつかの重要な利点を提供する。(i)垂直着陸プロファイルを伴うノーズファースト再突入ビークル又はボディファースト(ベリーフロップとしても知られる)再突入ビークルに必要な大気中再配向操縦に挑戦する必要がなくなる。(ii)飛行のすべての段階で一次荷重経路を軸方向に維持し、より効率的な構造ソリューションを可能にする。(iii)上昇及び再突入時の一般的な垂直配向性が、スロッシュ及び関連するボイルオフを最小限に抑えることにより、極低温流体管理の課題を簡素化する。(iv)低い弾道係数を維持しつつ熱シールド表面積を最小限に抑え、再突入時にビークルによって管理される全体的な熱負荷を最小限に抑える。
【0031】
いくつかの実施形態が開示されてきたが、本発明の態様が更に多くの実施形態を含むことは当業者には明らかなはずである。従って、本発明の態様は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等なものを考慮する場合を除いて、制限されるべきではない。本開示の真の範囲から逸脱することなく変更及び修正がなされ得ることも当業者には明らかなはずである。例えば、場合によっては、一実施形態に関連して開示された1つ以上の特徴は、単独で又は1つ以上の他の実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて用いられ得る。