(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156706
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】遺伝子治療
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20241029BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024112812
(22)【出願日】2024-07-12
(62)【分割の表示】P 2022103103の分割
【原出願日】2016-10-27
(31)【優先権主張番号】1519086.1
(32)【優先日】2015-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519271182
【氏名又は名称】シンコナ アイピー ホールドコ リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グローンダール,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ファンネル,ティム
(72)【発明者】
【氏名】ハロウッド,クリス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】補体媒介性の眼の障害を治療または予防する上で有用なベクターを提供する。
【解決手段】I因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列を含む、AAVベクターが提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
I因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列を含む、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター。
【請求項2】
前記のI因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列が、以下(a)~(c)、すなわち
(a)配列番号1または9に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、
(b)配列番号2または8に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、および
(c)配列番号2または8のヌクレオチド配列
からなる群より選択される配列を含む、請求項1記載のAAVベクター。
【請求項3】
前記ウイルスベクターがウイルス粒子の形態である、請求項1または2記載のAAVベクター。
【請求項4】
前記AAVウイルス粒子が、AAV2ゲノムおよびAAV2キャプシドタンパク質を含む、請求項3記載のAAVベクター。
【請求項5】
前記のI因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列が、CAGプロモーター、好ましくは配列番号5のヌクレオチド配列を有するプロモーターに機能しうる形で連結されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のAAVベクターを用いてトランスフェクトした細胞。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載のAAVベクターまたは請求項6記載の細胞を、製薬上許容しうる担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項8】
補体媒介性の眼の障害の治療または予防における使用のための、請求項1~7のいずれか1項に記載のAAVベクター、細胞または医薬組成物。
【請求項9】
前記障害が加齢黄斑変性(AMD)または糖尿病性網膜症、好ましくはAMDである、請求項8記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
【請求項10】
前記AMDがドライ型AMDである、請求項9記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
【請求項11】
地図状萎縮の形成が予防されるかもしくは減少する、および/または地図状萎縮の量が減少する、請求項8~10のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
【請求項12】
地図状萎縮の進行を遅延させる、請求項8~10のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
【請求項13】
被験体の処置眼への投与後12ヶ月にわたり、同期間にわたる未処置の眼と比較して、地図状萎縮面積の増大に少なくとも10%の減少がみられる、請求項12記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
【請求項14】
前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物の投与により、被験体における、または被験体の眼における、例えば被験体の網膜色素上皮(RPE)におけるC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性のレベルが、場合によっては被験体、またはその眼もしくはRPEにおける正常レベルを超えるレベルまで増大する、請求項8~13のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
【請求項15】
前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物を眼内に投与する、請求項8~14のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
【請求項16】
前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物を、網膜下注入、直接網膜注入、脈絡膜上注入または硝子体内注入により被験体の眼に投与する、請求項8~15のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
【請求項17】
前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物を網膜下注入により被験体の眼に投与する、請求項8~16のいずれか1項に記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~7のいずれか1項に記載のAAVベクター、細胞または医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む、補体媒介性の眼の障害を治療または予防する方法。
【請求項19】
前記障害が加齢黄斑変性(AMD)または糖尿病性網膜症、好ましくはAMDである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記AMDがドライ型AMDである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
地図状萎縮の形成が予防されるかもしくは減少する、および/または地図状萎縮の量が減少する、請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
地図状萎縮の進行を遅延させる、請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
被験体の処置眼への投与後12ヶ月にわたり、同期間にわたる未処置の眼と比較して、地図状萎縮面積の増大に少なくとも10%の減少がみられる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物の投与により、被験体における、または被験体の眼における、例えば被験体の網膜色素上皮(RPE)におけるC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性のレベルが、場合によっては被験体、またはその眼もしくはRPEにおける正常レベルを超えるレベルまで増大する、請求項18~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物を眼内に投与する、請求項18~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物を、網膜下注入、直接網膜注入、脈絡膜上注入または硝子体内注入により被験体の眼に投与する、請求項18~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物を網膜下注入により被験体の眼に投与する、請求項18~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
H因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター。
【請求項29】
前記のH因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列が、以下(a)~(c)、すなわち
(a)配列番号3に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、
(b)配列番号4に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、および
(c)配列番号4のヌクレオチド配列
からなる群より選択される配列を含む、請求項28記載のAAVベクター。
【請求項30】
前記ウイルスベクターがウイルス粒子の形態である、請求項28または29記載のAAVベクター。
【請求項31】
前記AAVウイルス粒子が、AAV2ゲノムおよびAAV2キャプシドタンパク質を含む、請求項30記載のAAVベクター。
【請求項32】
前記のH因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列が、CAGプロモーター、好ましくは配列番号5のヌクレオチド配列を有するプロモーターに機能しうる形で連結されている、請求項28~31のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【請求項33】
請求項28~32のいずれか1項に記載のAAVベクターを用いてトランスフェクトした細胞。
【請求項34】
請求項28~32のいずれか1項に記載のAAVベクター、または請求項33記載の細胞を、製薬上許容しうる担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項35】
好ましくは前記障害が加齢黄斑変性(AMD)または糖尿病性網膜症、好ましくはAMD、好ましくはドライ型AMDである、補体媒介性の眼の障害の治療または予防における使用のための請求項28~34のいずれか1項に記載のAAVベクター、細胞または医薬組成物。
【請求項36】
前記AAVベクターが請求項9~17のいずれか1項に記載した使用のためのものである、請求項35記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼疾患の遺伝子治療に使用するための化合物に関する。より具体的には、本発明は、加齢黄斑変性(AMD)の治療または予防に使用するためのアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関するものであり、この際、該ベクターはI因子および/もしくはH因子またはそのフラグメントもしくは誘導体の眼への送達を可能にするものとする。
【背景技術】
【0002】
黄斑は眼の網膜にある小領域であり、約3~5ミリメートルの大きさで、視神経に隣接している。黄斑は網膜の最も鋭敏な領域であって、高い視力を可能にし、かつ高密度の錐体(色覚に関与する光受容体)を含有する窪んだ部分である中心窩を含む。
【0003】
加齢黄斑変性(AMD)は、先進国においては、50歳を超える人々の機能盲の最も一般的な原因である(Seddon, J M. Epidemiology of age-related macular degeneration. In:Ogden, T E, ら、eds. Ryan S J, ed-in-chief. Retina Vol II. 3rd ed. St. Louis, Mo.:Mosby;2001:1039-50)。AMDは、脈絡膜脈管系から発生して網膜下腔内まで伸展する血管新生と関連がある。さらに、AMDは、網膜、網膜色素上皮(RPE)、およびその下にある脈絡膜(網膜と強膜の間、RPEの下に位置する極めて血管の多い組織)の進行性の変性を特徴とする。
【0004】
酸化ストレス、考えられる自己免疫成分による炎症、遺伝的背景(例えば、突然変異)、ならびに喫煙およびダイエットなどの環境因子または行動因子を含む様々な因子が、AMDの発病の一因となりうる。
【0005】
AMDの臨床的進行は、黄斑の変化に応じた複数の病期を特徴とする。初期AMDの特徴はドルーゼンであるが、これは網膜の下への細胞外血液成分屑の蓄積であり、臨床検査および眼底写真では網膜内の黄色の斑点として出現する。ドルーゼンはそのサイズにより小(<63μm)、中(63~124μm)および大(>124μm)に分類される。またドルーゼンは、眼科検査におけるそれらの縁の外観に応じて硬性または軟性とみなされる。硬性ドルーゼンは明確に輪郭を示す縁を有するが、軟性ドルーゼンは不明確かつ流動的な縁を有する。加齢性眼疾患研究(AREDS)の眼底写真による重症度スケールは、この病気に使用される主な分類システムのうちの1つである。
【0006】
AMDは「ドライ型」と「ウェット型」(滲出性、または血管新生性)形態に分類される。ドライ型AMDはウェット型AMDより多くみられるが、該ドライ型形態はウェット型形態に進行する可能性があり、またこれら2形態は相当数の症例において同時に発生する。ドライ型AMDは、典型的には、RPE層の細胞、それを覆う光受容細胞、およびしばしば下部の脈絡膜毛細血管層の細胞の進行性アポトーシスを特徴とする。上を覆う光受容体の萎縮を伴うRPE細胞死の密集領域を、地図状萎縮と呼ぶ。この形態のAMDの患者は、中心視覚の緩慢でかつ進行性の悪化を経験する。
【0007】
ウェット型AMDは、突然かつ生活に支障を来すほどの視覚の低下に関与しうる、RPEおよび黄斑の下にある脈絡膜血管(脈絡毛細管板)から成長した異常血管からの出血および/または体液の漏出を特徴とする。患者が経験するこの視力低下の大半は、かかる脈絡膜血管新生(CNV)およびその二次的合併症によるものと推定されている。血管新生型AMDの亜型は網膜血管腫状増殖(RAP)と呼ばれている。ここで、血管腫状増殖は網膜に由来するものであり、網膜下腔内へと後方に伸長し、最終的に一部の症例では脈絡膜新生血管とつながる。
【0008】
補体系(CS)は、AMD患者の眼から得たドルーゼン中のCS成分の同定によると、初期AMDの発病に関与している。AMDでは、種々のアポリポタンパク質種(E、B、またはA-I)、幾つかのアミロイドペプチド(P、Aβ、またはSA-I)、TIMP-3、血清アルブミン、ならびに細胞機能に関連する特定のタンパク質(例えばATPシンターゼβサブユニット、スカベンジャー受容体B2、およびレチノールデヒドロゲナーゼ)を含む少なくとも129種のドルーゼン-沈着タンパク質が同定されている。AMD由来のドルーゼンは同様に、調節タンパク質(CFH、補体受容体1(CR1)、ビトロネクチン、およびクラスタリン)、CS活性化および分解の産物(C1q、C3、C3a、C3b、およびC5a)、ならびに分離形態および複合体形態のMAC成分(すなわち5、6、8(α、β、およびγ)、ならびに9)を含む末端CS経路のメンバーを含む補体タンパク質のほぼ全てを含有している。ドルーゼンの蓄積はCSを活性化し、炎症性メディエーターの局所産生を誘発して白血球を誘引する場合があり、該白血球はその後、AMDに見られる局所的炎症状態を増大させる。
【0009】
AMDに対する現在の治療選択肢としては、ベンゾポルフィリンを用いる光力学療法(Arch Ophthamol. 1999;117:1329-1345)および血管内皮増殖因子(VEGF)経路を標的とする多数の療法が挙げられる。かかるVEGF標的化療法の具体例としては、アプタマーであるペガプタニブ(N Engl J Med. 2004;351:2805-2816)ならびに抗体、例えばラニビズマブ(N Engl J Med. 2006 Oct 5;355(14):1432-44)およびベバシズマブ(BMJ. 2010 Jun 9;340:c2459.)が挙げられる。しかし、全ての患者が抗-VEGF抗体による治療に反応するわけではなく、また視覚が回復するわけでも、登録される失明に進行するわけでもない。
【0010】
地図状萎縮の治療のための療法が開発されており、現在は第III相臨床試験(Genentech/RocheによるMAHALO試験)中である。ランパリズマブは、地図状萎縮の進行の速度を抑えるために硝子体内注入により投与される、補体D因子に対するヒト化モノクローナル阻害抗体である。
図1に示すように、D因子はC3bフィードバック(「増幅」)サイクルの一部である。D因子は非常に低い血清濃度で存在し、かつ代替経路の必須要素である。にもかかわらず、その小さいサイズ(27 kDa)のせいで、D因子は腎臓により迅速に取り除かれ、かつ急速に再合成される。この療法は月1回の硝子体内注入を必要とする。
【0011】
AMDを治療するための新規アプローチが当分野で必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Seddon, J M. Epidemiology of age-related macular degeneration. In:Ogden, T E, ら、eds. Ryan S J, ed-in-chief. Retina Vol II. 3rd ed. St. Louis, Mo.:Mosby;2001:1039-50
【非特許文献2】Arch Ophthamol. 1999;117:1329-1345
【非特許文献3】N Engl J Med. 2004;351:2805-2816
【非特許文献4】N Engl J Med. 2006 Oct 5;355(14):1432-44
【非特許文献5】BMJ. 2010 Jun 9;340:c2459
【発明の概要】
【0013】
本発明者らはここで、例えば、AMDの治療に有用な補体系をモジュレートするためのアプローチを提供する。本発明者らは、分解サイクル(
図1)の標的化を通じて補体C3bフィードバックサイクルを負に調節することを目的として遺伝子治療により送達されるI因子を提供する。その結果として生じる代替経路のフィードバックループの再調整により、C3bおよびiC3bの分解が促進され、またその結果、補体媒介性障害、特に代替経路調節に根本的な欠陥がある障害の主要な疾患要因が取り除かれる。あるいは、H因子を代わりに使用してもよい。
【0014】
ある態様では、本発明は、I因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供する。別の態様では、本発明は、H因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供する。別の態様では、本発明は、抗-D因子抗体をコードするヌクレオチド配列を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供する。別の態様では、本発明は、抗-補体成分5(C5)抗体をコードするヌクレオチド配列を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供する。
【0015】
ある実施形態では、前記のI因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列は、以下(a)~(c)、すなわち
(a)配列番号1または9に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、
(b)配列番号2または8に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、および
(c)配列番号2または8のヌクレオチド配列
からなる群より選択される配列を含む。
【0016】
好ましくは、前記のI因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列は、I因子の天然活性を有するタンパク質(例えば配列番号1または9で表されるタンパク質)をコードする。例えば、前記のI因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列は、C3bおよびiC3bを処理して不活性分解産物にする能力を有するタンパク質をコードしうる。言い換えれば、前記のI因子またはそのフラグメントもしくは誘導体は、C3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性を保持していることが好ましい。
【0017】
好適な実施形態では、前記のI因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列は、C3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性を有するタンパク質をコードする。
【0018】
ある実施形態では、前記のH因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列は、以下(a)~(c)、すなわち
(a)配列番号3に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列
(b)配列番号4に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、および
(c)配列番号4のヌクレオチド配列
からなる群より選択される配列を含む。
【0019】
好ましくは、前記のH因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列は、H因子の天然活性を有するタンパク質(例えば配列番号3で表されるタンパク質)をコードする。例えば、前記のH因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列は、C3bのI因子媒介性切断の補因子として働く能力ならびにC3転換酵素およびC5転換酵素の解離の速度を増大させる能力を有するタンパク質をコードしていてもよい。
【0020】
別の態様では、本発明は、本発明のAAVベクターを用いてトランスフェクトした細胞を提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は、本発明のAAVベクターまたは本発明の細胞を製薬上許容しうる担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。好適な実施形態では、該医薬組成物は眼内投与用である。
【0022】
ある実施形態では、前記AAVベクターは、例えばIもしくはH因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列に機能しうる形で連結されている、ニワトリβアクチン(CBA)プロモーターを含む。ある実施形態では、前記AAVベクターは、例えばIもしくはH因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列に機能しうる形で連結されている、CAGプロモーターを含む。ある実施形態では、前記AAVベクターは、例えばIもしくはH因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列に機能しうる形で連結されている、配列番号5のヌクレオチド配列を有するプロモーターを含む。
【0023】
ある実施形態では、前記AAVベクターは、例えばIもしくはH因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列に機能しうる形で連結されている、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーエレメントを含む。
【0024】
ある実施形態では、前記AAVベクターは、例えばIもしくはH因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列に機能しうる形で連結されているウシ成長ホルモンポリAシグナル、好ましくは配列番号6のヌクレオチド配列を有するウシ成長ホルモンポリAシグナルを含む。
【0025】
ある実施形態では、前記AAVベクターは、例えばIもしくはH因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列に機能しうる形で連結されているウッドチャック肝炎転写後調節エレメント(WPRE)、好ましくは配列番号7のヌクレオチド配列を有するWPREを含む。
【0026】
好適な実施形態では、本発明のAAVベクターはウイルス粒子の形態である。
【0027】
好適な実施形態では、前記AAVウイルス粒子は、AAV2ゲノムおよびAAV2キャプシドタンパク質を含む。好ましくは、前記のIもしくはH因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列は、CAGプロモーター、好ましくは配列番号5のヌクレオチド配列を有するプロモーターに機能しうる形で連結されている。
【0028】
本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物は、眼障害を治療または予防するために使用してもよい。
【0029】
ある実施形態では、本発明は、補体媒介性の眼の障害の治療または予防における使用のための本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物を提供する。
【0030】
ある実施形態では、前記障害は、補体C3bフィードバックサイクルの過剰活性および/またはC3b分解サイクルの活性低下と関連がある(
図1を参照されたい)。ある実施形態では、前記障害は、加齢黄斑変性(AMD)または糖尿病性網膜症である。好適な実施形態では、前記障害はAMD、好ましくはドライ型AMDである。
【0031】
ある実施形態では、前記使用は、被験体、すなわち
(a)眼および/または血清において正常よりも低いI因子の活性または濃度を有する被験体、好ましくは血清中0~30もしくは0~20もしくは0~10μg/mLの濃度、またはそれに相当する活性を有する被験体、ならびに/あるいは
(b)加齢黄斑変性(AMD)関連SNP、好ましくはレアI因子バリアントに関してヘテロ接合性またはホモ接合性である被験体
において障害を治療または予防するためのものである。
【0032】
ある実施形態では、前記使用は、被験体、すなわち
(a)眼および/もしくは血清において正常レベルのI因子活性もしくは濃度、好ましくは血清中少なくとも30μg/mL、例えば30~40μg/mLを有する被験体、ならびに/または
(b)レアI因子バリアント対立遺伝子を保有していない被験体
において障害を治療または予防するためのものである。
【0033】
別の態様では、本発明は、加齢黄斑変性(AMD)の治療または予防に使用するための、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物を提供する。該AMDは、例えば、ドライ型AMDでありうる。好適な実施形態では、該AMDはドライ型AMDである。
【0034】
別の態様では、本発明は、糖尿病性網膜症の治療または予防に使用するための本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物を提供する。
【0035】
ある実施形態では、地図状萎縮の形成が予防されるかまたは減少する。別の実施形態では、地図状萎縮の量が減少する。
【0036】
ある実施形態では、地図状萎縮の進行が遅延する。好ましくは、被験体の処置眼への投与後12ヶ月にわたり、同期間にわたる未処置の眼と比較して、地図状萎縮面積の増大に少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%の減少がみられる。
【0037】
別の態様では、本発明は、例えば本明細書中に開示した眼障害などの眼障害に罹患している被験体において、視覚または視力の改善または回復に使用するための本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物を提供する。別の態様では、本発明は、視覚または視力の低下、例えば本明細書中に開示した眼障害などの眼障害に関連する視覚または視力の低下の軽減に使用するための、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物を提供する。
【0038】
別の態様では、本発明は、被験体において、例えば本明細書中に開示した眼障害などの眼障害に罹患している被験体において、読み速度の改善または回復に使用するための、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物を提供する。別の態様では、本発明は、被験体において読み速度の低下、例えば本明細書中に開示した眼障害などの眼障害に関連する読み速度の低下の軽減に使用するための、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物を提供する。
【0039】
別の態様では、本発明は、光受容体および/または網膜色素上皮(RPE)の損失、例えば本明細書中に開示した眼障害などの眼障害に関連する光受容体および/またはRPEの損失の減少または予防に使用するための、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物を提供する。
【0040】
好適な実施形態では、本発明に従って使用するためのAAVベクター、細胞または医薬組成物を眼内に投与する。本発明者らは、かかる療法の局所施与により、補体媒介性の眼の障害、例えばAMDを治療または予防する目的で補体因子の所要のレベルを実質的に達成するための手段が提供されることを認識している。
【0041】
ある実施形態では、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物を、網膜下注入、直接網膜注入、脈絡膜上注入または硝子体内注入により、被験体の眼に投与する。
【0042】
特に好適な実施形態では、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物を、網膜下注入により被験体の眼に投与する。
【0043】
ある実施形態では、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物の投与は、それにより被験体における、特に被験体の眼における、例えば被験体のRPEにおけるC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性のレベルを増大させる。別の実施形態では、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物の投与は、それにより被験体における、特に被験体の眼における、例えば被験体のRPEにおけるC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性のレベルを、眼における正常レベルを超えるレベルまで増大させる。
【0044】
別の態様では、本発明は、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む、補体媒介性の眼の障害を治療または予防する方法を提供する。
【0045】
ある実施形態では、前記障害は、補体C3bフィードバックサイクルの過剰活性および/またはC3b分解サイクルの活性低下と関連している。ある実施形態では、前記障害は加齢黄斑変性(AMD)または糖尿病性網膜症である。好適な実施形態では、前記障害はAMD、好ましくはドライ型AMDである。
【0046】
別の態様では、本発明は、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む、加齢黄斑変性(AMD)を治療または予防する方法を提供する。該AMDは、例えば、ドライ型AMDでありうる。好適な実施形態では、前記AMDはドライ型AMDである。
【0047】
別の態様では、本発明は、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む、糖尿病性網膜症を治療または予防する方法を提供する。
【0048】
前記被験体は、例えば、AMDと診断されているかまたはAMDに罹患するリスクを有していてもよい。
【0049】
好適な実施形態では、前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物を眼内に投与する。
【0050】
ある実施形態では、前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物を、網膜下注入、直接網膜注入、脈絡膜上注入または硝子体内注入により被験体の眼に投与する。
【0051】
特に好適な実施形態では、前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物を、網膜下注入により被験体の眼に投与する。
【0052】
別の態様では、本発明は、補体媒介性の眼の障害の治療または予防用の医薬を製造するための、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物の使用を提供する。
【0053】
ある実施形態では、前記障害は、補体C3bフィードバックサイクルの過剰活性および/またはC3b分解サイクルの活性低下と関連している。ある実施形態では、前記障害は加齢黄斑変性(AMD)または糖尿病性網膜症である。好適な実施形態では、前記障害はAMD、好ましくはドライ型AMDである。
【0054】
別の態様では、本発明は、加齢黄斑変性(AMD)の治療または予防用の医薬を製造するための、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物の使用を提供する。好適な実施形態では、前記AMDはドライ型AMDである。
【0055】
別の態様では、本発明は、糖尿病性網膜症の治療または予防用の医薬を製造するための本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物の使用を提供する。
ある実施形態では、本発明のAAVベクターは、hAATプロモーターを含まない。
ある実施形態では、本発明のAAVベクターは、ApoRエンハンサーを含まない。
別の実施形態では、本発明のAAVベクターは、2つのApoRエンハンサーを含まない。
【0056】
ある実施形態では、本発明のAAVベクターは、AAV2ゲノムおよびAAV8キャプシドタンパク質を含まない、すなわち、本発明のAAVベクターはAAV2/8ベクターではない。
【0057】
ある実施形態では、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物を全身投与しない。別の実施形態では、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物を静脈内投与しない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、脊椎動物の補体の代替経路のC3bフィードバック(増幅)および分解(ダウンレギュレーション)サイクルを示す図である(「I」=I因子、「H」=H因子、「B」=B因子、および「D」=D因子)。
【
図2】
図2は、CFIおよびCFIcoの制限消化物のアガロースゲルを示す図である。CFIの1752 bpのバンドを切り出し、pAAV-CBA-WPRE-bGHpA骨格にクローニングした。
【
図3】
図3は、CFI(
図3A)およびGFP(
図3B)のイムノブロッティングを示す図である。3A:CFIは70kDaのバンド(非還元)として出現し、またpAAV.CFIまたはpAAV.CFIcoによるARPE-19のトランスフェクション後に等しい比率で発現された。pAAVによるトランスフェクション後にはCFIは発現されなかった。10%正常ヒト血清(NHS)を、CFIイムノブロッティング用の陽性対照として使用した。3B:トランスフェクション効率を、pCMV.GFPによるARPE-19細胞のコトランスフェクションにより分析した。GFPは30kDaのバンドとして出現し、またこのイムノブロットにより、細胞が同様の効率でトランスフェクトされたことを確認した。
【
図4】
図4は、ウイルスで形質導入したHEK-293細胞株およびARPE-19細胞株の上清中のCFIのイムノブロッティングを示す図である。4A:上清を非還元条件下で負荷し、ヒトCFIに対するマウスモノクローナル抗体(OX21, Thermo Fisher Scientific)およびロバ抗-マウスIgG HRP結合抗体(Abcam)を用いてCFIを検出した。CFIおよびCFIcoは両細胞株において発現された。細胞株のAAV.GFPによる形質導入は陰性対照としての役割を果たし、一方0.5μgの血漿精製ヒトCFI(本明細書中では「CFIpl」と記載する)(Comptech)は陽性対照としての役割を果たした。4B:上清を還元条件下で負荷し、ヒトCFIに対するヤギ抗血清(Comptech)およびウサギ抗-ヤギIgG(全分子)-ペルオキシダーゼ抗体(Sigma)を用いてCFIを検出した。CFIは80kDa(プロ酵素)、50kDa(プロセシング後;重鎖)および35kDa(プロセシング後;軽鎖)で出現した。AAV.GFPは陰性対照としての役割を果たし、一方0.5μgの血漿精製ヒトCFI(Comptech)および10%正常ヒト血清(本明細書中では「NHS」と記載する)は陽性対照としての役割を果たした。CFIおよびCFIcoは両細胞株において発現された。
【
図5】
図5は、C3b切断アッセイの代表的な結果を示す図である。レーン1はCFHのみと共にインキュベートしたC3bを示している。レーン2は、CFHおよびCFIplと共にインキュベートしたC3bを示している。C3bはCFIplにより分解されてiC3bおよびC3dgとなる。レーン3は、CFH、およびAAV.CFIを用いて形質導入したHEK-293から得た上清と共にインキュベートしたC3bを示している。レーン4~5は、CFH、およびAAV.CFI(レーン4)またはAAV.CFIco(レーン5)を用いて形質導入したARPE-19細胞から免疫沈降させたCFI(「IP CFI」と示す)と共にインキュベートしたC3bを示している。レーン6~7は、CFH、およびAAV.CFI(レーン6)またはAAV.CFIco(レーン7)を用いて形質導入したHEK-293から免疫沈降させたCFIと共にインキュベートしたC3bを示している。
【
図6】
図6は、トランスウェルで培養したARPE-19細胞から分泌されたCFIのイムノブロッティングを示す図である。細胞は六角細胞に分化しなかったが、該細胞を細胞のコンフルエントな単層として培養し、1%血清培地の添加により細胞分裂を最低限に抑えた。6A:両コンパートメントから得た上清を非還元条件下で負荷し、CFIに対するマウスモノクローナルを使用してウェスタンブロット分析を実施した(Ap=頂端コンパートメントおよびBl=側底コンパートメント)。CFIが細胞のコンフルエントな単層から発現されていること、および分泌されたタンパク質が両コンパートメントにおいて検出されることが示されている。6B:核のHoechst染色を、細胞の単層の存在を確認するために実施した(染色は上清を採取した後に実施した)。
【
図7】
図7は、イムノブロッティングにより分析した、プールしたサンプルのCFIタンパク質発現を示す図である。CFIは全ての用量において、AAV.CFIとAAV.CFIcoの両方から検出可能なレベルで発現される。β-アクチンを負荷対照として負荷した。7A:40μgのタンパク質溶解物を還元条件下で負荷し、CFIをヒトCFIに対するポリクローナルヤギ抗血清を用いて検出した。CFIは80kDa(プロ酵素)、50kDa(プロセシング後;重鎖)および35kDa(プロセシング後;軽鎖)として検出される。これらのバンドは予想されたCFIのサイズと一致しており、プロセシング、すなわち重鎖および軽鎖の存在を裏付けている。7B:10
9gc/眼のAAV.CFIcoを注入した眼または非注入眼の溶解物サンプルに関して、同量のタンパク質溶解物を同様に負荷した。CFIを、CFIに対するマウスモノクローナル(左、非還元ゲル)およびCFIに対するヤギ抗血清(右、還元ゲル)を用いて検出した。非還元ゲル(左)では、CFIが注入動物において75kDaのバンドとして検出され、非注入眼においてはバンドは検出されない。還元ゲル(右)では、CFIは80kDa(プロ酵素)、50kDa(プロセシング後;重鎖)および35kDa(プロセシング後;軽鎖)として出現する。
【
図8】
図8は、qPCRによる遺伝子発現解析を示す図である。
【
図9】
図9は、偽(sham)(A~C)、AAV.CFI(D~F)およびAAV.CFIco(G~H)注入眼におけるhCFIの局在を示す図である。網膜切片をフィブロネクチン(A、DおよびG)ならびにhCFI(B、EおよびH)で二重標識した。核をDAPIで染色し、重ね合わせて示す(C、FおよびI)。Scl:強膜、RPE:網膜色素上皮、OS:光受容体の外節、IS:光受容体の内節、OPL:外網状層、GCL:神経節細胞層、NFL:神経線維層、倍率:20X、スケールバー:50μm。
【
図10】
図10は、偽(A~C)およびAAV.CFI(D~F)注入眼におけるhCFIの局在を示す図である:RPEの倍率はより高い。網膜切片をフィブロネクチン(AおよびD)ならびにhCFI(BおよびE)で二重標識した。核をDAPIで染色し、重ね合わせて示す(CおよびF)。Scl:強膜、Bru:ブルッフ膜、Cho:脈絡毛細管板、RPE:網膜色素上皮、IPM:光受容体間マトリックス。倍率:189X、スケールバー:10μm。小胞染色を矢印で示し、RPE微絨毛をRPEの下端に星印で示す。
【
図11】
図11は、偽(A~C)およびAAV.CFI(D~F)注入眼におけるhCFIの局在を示す図である:光受容体層の倍率はより高い。網膜切片をフィブロネクチン(AおよびD)ならびにhCFI(BおよびE)で二重標識した。核をDAPIで染色し、重ね合わせて示す(CおよびF)。IPM:光受容体間マトリックス、OS:外節、IS:内節、ONL:外顆粒層。倍率:189X、スケールバー:10μm。
【
図12】
図12は、偽(A~C)およびAAV.CFI(D~F)注入眼におけるhCFIの局在を示す図である:外網状層(OPL)の倍率はより高い。網膜切片をフィブロネクチン(AおよびD)ならびにhCFI(BおよびE)で二重標識した。核をDAPIで染色し、重ね合わせて示す(CおよびF)。ONL:外顆粒層、INL:内顆粒層。倍率:189X、スケールバー:10μm。水平細胞の染色を矢印で示す。
【
図13】
図13は、偽(A~C)およびAAV.CFI(D~F)注入眼におけるhCFIの局在を示す図である:神経節細胞層(GCL)の倍率はより高い。網膜切片をフィブロネクチン(AおよびD)ならびにhCFI(BおよびE)で二重標識した。核をDAPIで染色し、重ね合わせて示す(CおよびF)。IPL:内網状層、NFL:神経線維層。倍率:189X、スケールバー:10μm。
【
図14】
図14は、偽(A~C)、AAV.CFI(D~F)およびAAV.CFIco(G~H)注入眼におけるhCFIの局在を示す図である。網膜色素上皮全組織標本をフィブロネクチン(A、DおよびG)ならびにhCFI(B、EおよびH)で二重染色した。倍率:40X、スケールバー:30μm。
【発明を実施するための形態】
【0059】
補体系
補体系は体液性免疫系の不可欠な要素であり、組織の炎症、細胞のオプソニン化、および細胞溶解に関与している。補体系は微生物からの保護を提供し、かつ宿主組織からの外因性および内因性の血液成分残屑の排除を媒介する。
【0060】
補体系カスケードは4つの活性化経路からなる。該経路は全て、最終的にC3因子の中心的切断とその活性フラグメントC3aおよびC3bの生成に終わる。C3aは炎症細胞の動員および微小血管透過性の増大などの様々な走化性応答および炎症誘発性応答を誘発するアナフィラトキシンであるが、C3bはC3bに共有結合的に付着した異物表面のオプソニン化に関与している。活性化C3フラグメント(C3bおよびiC3b)によるオプソニン化は、3つの主要な機能:(i)食細胞(例えば、マクロファージまたはミクログリア)による血液成分残屑の除去および適応免疫系(BおよびT細胞)の刺激;(ii)表面結合C3転換酵素の形成を介した補体活性化の増幅;ならびに(iii)C5転換酵素の組み立て、を果たす。
【0061】
C5転換酵素の組み立てはC5切断に関与しており、結果として細胞膜に穿孔を生じさせることができる細胞溶解性膜侵襲複合体(MAC)が形成され、それにより細胞溶解および不必要な細胞の除去が促進される。これらの活性の全てを通じて、先天的補体カスケードは、宿主組織の統合性を保護する免疫系の下流機構の機能を支持および促進する。概して、補体系経路の活性化は、細胞溶解、損傷部位に炎症細胞を誘引するためのケモカインの放出、および浸潤白血球の遊走を促進するための毛細血管透過性の亢進を媒介する、MAC生成を含めた炎症誘発性応答をもたらす。生理的条件下では、補体活性化は可溶性および膜結合性の補体調節分子(CRM)の協調作用により効果的に制御される。可溶性補体制御因子、例えば、C1-インヒビター、アナフィラトキシン阻害物質、C4b結合タンパク質(C4BP)、補体H因子(CFH)、補体I因子(CFI)、クラスタリン、およびビトロネクチンは、前記カスケード反応の複数の部位でヒト組織における補体の作用を制限する。さらに、個々の細胞は、表面タンパク質、例えば、補体受容体1(CR1、CD35)、膜補因子タンパク質(CD46)、およびグリコシルホスファチジルイノシトール-アンカー型タンパク質、例えば崩壊促進因子(CD55)またはCD59分子により、同種補体の攻撃から保護される。注目すべきことに、補体攻撃から十分に保護されていない宿主の細胞および組織は、巻き添え細胞溶解を受ける可能性がある。
【0062】
本発明は、補体媒介性の眼の障害の治療または予防に関する。例えば、補体媒介性障害は、代謝経路調節における欠陥、ならびに特に補体C3bフィードバックサイクルの過剰活性および/またはC3b分解サイクルの活性低下を伴う障害でありうる。
【0063】
ある実施形態では、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物の投与より前に、被験体が低レベル(例えば正常よりも低いレベル)のI因子活性、例えば眼における低レベルのI因子活性および/または低血清レベルのI因子活性を有する。正常以下のレベルのI因子活性は、正常に機能するI因子の正常以下の発現、またはI因子の非機能的または下位機能的(sub-functional)変異体の少なくとも部分的な(例えばヘテロ接合)発現(正常または正常以下のレベル)に起因しうる。(かかる被験体は、AMD関連SNPの1つ以上のコピーを保有している場合があり、例えば該被験体は、さらに詳しく後述するレアI因子バリアントのうちの1つに関してホモ接合性またはヘテロ接合性である場合がある)。従って、該被験体は、眼および/または血清において低濃度(例えば正常よりも低い濃度)のI因子を有しうる。ヒト被験体の場合、正常レベルのI因子活性(C3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性)は、該被験体の血清中30~40μg/mLのI因子によりもたらされる該活性と同等である場合がある。従って、低いI因子活性を有する被験体においては、血清中のI因子活性は、30μg/mL未満でかつ0μg/mLよりは多いI因子、例えば0~20または0~10μg/mL(これらは低いI因子濃度を有する被験体を含みうるI因子血清中濃度の範囲である)に相当する場合がある。
【0064】
従って、本発明により治療すべき被験体は、補体媒介性の眼の障害、例えばAMD、より詳しくはドライ型AMD(例えば地図状萎縮を特徴とするもの)に罹患している場合があるか、またはかかる障害を発症するリスクを有する場合がある。例えば、該被験体は、補体媒介性障害に関連する1つ以上のSNPに関してホモ接合またはヘテロ接合になりやすい場合がある。
【0065】
ある実施形態では、前記被験体はAMDを発症するリスクを有する。例えば、前記被験体は、AMDに関連する1つ以上のSNP、例えば一般的には血清I因子レベルの低下をもたらす進行性AMDに関連するI因子の稀な変異(Kavanagh ら、Hum Mol Genet. 2015 Jul 1;24(13):3861-70)に関してホモ接合またはヘテロ接合になりやすい場合がある。特に前記被験体は、次のレアI因子バリアント:rs144082872(P50Aをコードしている);4:110687847 (P64Lをコードしている);rs141853578(G119Rをコードしている);4:110685721(V152Mをコードしている);4:110682846(G162Dをコードしている);4:110682801(N177Iをコードしている);rs146444258(A240Gをコードしている);rs182078921(G287Rをコードしている);rs41278047(K441Rをコードしている);rs121964913(R474をコードしている)のうちの1つ以上の1つまたは2つのコピーを保有していてもよい。
【0066】
本発明は、例えば前記被験体が補体媒介性障害に関連する1つ以上のSNPに関してホモ接合またはヘテロ接合になりやすいか否かを判定することにより(例えば、前記被験体が上記のAMDに関連するレアI因子バリアントのうちの1つ以上に関してホモ接合またはヘテロ接合になりやすいか否かを判定することにより)、前記被験体が補体媒介性障害(例えばAMD)を発症するリスクを有するか否かを判定することをさらに含んでいてもよい。
【0067】
あるいは、前記被験体は、正常レベルの内因性I因子の活性もしくは濃度を、例えば眼および/もしくは血清において有していてもよく、かつ/またはレア変異体I因子対立遺伝子を保有していなくてもよい。
【0068】
ある実施形態では、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物の投与は、それにより前記被験体の眼におけるC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性のレベルを増大させる。別の実施形態では、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物の投与は、それにより前記被験体の眼におけるC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性のレベルを、眼における正常レベルを超えるレベルまで増大させる。より詳しくは、C3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性のレベルを、眼のRPEにおいて増大させる。
【0069】
本発明のAAVベクターからのI因子またはそのフラグメントもしくは誘導体の発現後の前記被験体におけるC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性は、前記被験体におけるC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性の総レベルが正常レベルを超えるように、前記被験体の内因性I因子(すなわちAAVベクターからの発現により産生されたものではない前記被験体のI因子)由来のC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性、ならびに本発明のAAVベクターからの発現により生じたC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性を含みうることが理解されよう。
【0070】
ある実施形態では、前記被験体における、例えば眼におけるC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性のレベルは、正常レベルを少なくとも5%、10%、15%、20%または25%上回るレベルまで増大する。
【0071】
別の実施形態では、前記被験体における、例えば眼におけるC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性のレベルは、最大で正常レベルの2倍のレベル、または正常レベルを最大で80%、60%、40%もしくは20%上回るレベルまで増大する。
【0072】
例えば、前記被験体における、例えば眼におけるC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性のレベルは、正常レベルを5~100%、5~80%、5~60%、5~40%、5~20%、10~100%、10~80%、10~60%、10~40%、10~20%、15~100%、15~80%、15~60%、15~40%、15~20%、20~100%、20~80%、20~60%、20~40%、25-100%、25~80%、25~60%または25~40%上回るレベルまで増大しうる。
【0073】
ある実施形態では、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物の投与は、前記被験体の血漿/血清におけるC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性のレベルを検出できるほどには増大させない。別の実施形態では、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物の投与は、前記被験体の血漿/血清におけるC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性のレベルを、正常レベルより高いレベルまで、検出できるほどには増大させない。
【0074】
前節では、明らかに不適当な場合を除き、I因子ならびにC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性という表現を、H因子ならびにC3bのI因子媒介性切断に対する補因子として働く能力ならびにC3転換酵素およびC5転換酵素の解離の速度をそれぞれ増大させる能力と置き換えてもよい。ある実施形態では、本発明のAAVベクター、細胞または医薬組成物の投与より前に、前記被験体は低レベル(例えば正常よりも低いレベル)のH因子、例えば眼における低レベルのH因子および/または低血清レベルのH因子を有する。ヒト被験体の場合、正常レベルのH因子は該被験体の血清中約200~500μg/mLでありうる。従って、低レベルのH因子を有する被験体においては、血清中のレベルは200μg/mL未満でかつ0μg/mLよりも多く、例えば0~100μg/mLでありうる。あるいは、前記被験体は、正常レベルの内因性H因子を、例えば眼および/または血清中に有していてもよい。
【0075】
I因子
補体I因子(I因子、CFI)は、C3b/C4b不活性化因子としても知られる、ヒトではCFI遺伝子によりコードされるタンパク質である。
【0076】
I因子は、チモーゲン-様の状態(Roversiら;PNAS;2011;108(31):12839-12844)で、~35μg/mLの濃度で循環するセリンプロテアーゼである(Nilssonら;Mol Immunol 2011, 48(14):1611-1620)。このI因子タンパク質は、単一ジスルフィド結合により連結された2つのポリペプチド鎖からなる、高度にN-グリコシル化されたヘテロ二量体である。その重鎖(50 kDa)は、N末端領域;FI膜侵襲複合体(FIMAC)ドメイン;CD5様-ドメインまたはスカベンジャー受容体システイン-リッチ(SRCR)ドメイン;2つの低密度リポタンパク質受容体(LDLr)ドメイン;および種間で配列多様性が認められる部位である、未知機能のC末端領域(Roversiら;上記)を含む。その軽鎖(38 kDa)は、保存された触媒残基を有するセリンプロテアーゼ(SP)ドメインを含有している(Goldbergerら;J Biol Chem 1987, 262(21):10065-10071)。
【0077】
I因子は、C3bを切断してiC3b、C3dおよびC3d,gとし、また類似した様式で、C4bを切断してC4cおよびC4dとすることにより、C3bを不活性化する。その機能を適切に実行するためには、I因子は補因子タンパク質、例えば、C4b-結合タンパク質(C4BP)、補体H因子(CFH)、補体受容体1(CR1/CD35)および膜補因子タンパク質(MCP/CD46)の存在を必要とする(Degnら;Am J Hum Genet 2011, 88(6):689-705)。
【0078】
iC3bはB因子と会合することができず、従って補体カスケードの増幅または代替経路を通じた活性化を永続させることができない。それ故に、一旦C3bが切断されてiC3bになると、代替経路の開始も末端補体カスケードの活性化も起こらない。
【0079】
iC3bは、多形核白血球(主に好中球)、NK細胞、およびマクロファージなどの単核食細胞上の補体受容体3(CR3)(CD11b/CD18)に結合し、これを活性化することにより、炎症促進作用を提供することができる。
【0080】
I因子は、補因子であるCR1を必要とするプロテアーゼ活性を介して、iC3bを処理してC3d,gにすることができる。C3d,gはCR3に結合できない。補体受容体CR3と反応するiC3bは、補体活性化が炎症を引き起こすための主要な機構であるため、iC3bのC3d,gへの分解は補体誘導性の炎症を軽減するのに不可欠である(Lachmann (2009), Adv. Immunol., 104:115-149)。
【0081】
C3bのiC3bへの切断を促進しかつiC3bの分解を加速させるI因子の特有の能力は、ヒト血清におけるその比較的低い濃度と組み合わせると、治療効果のために送達する必要がある量への影響という点で、C3bを特に有利な標的とする。
【0082】
ある実施形態では、I因子ポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは誘導体は、C3bを切断して不活性な分解産物とすることができる。例えば、該I因子ポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは誘導体は、C3bを切断してiC3bとすることができる場合がある。
【0083】
ある実施形態では、I因子ポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは誘導体は、iC3bを処理して不活性な分解産物とすることができる。例えば、該I因子ポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは誘導体は、iC3bを処理してC3d,gとすることができる場合がある。
【0084】
好適な実施形態では、前記I因子ポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは誘導体は、C3bを切断してiC3bとし、かつiC3bを処理してC3d,gとすることができる。
【0085】
I因子のフラグメントまたは誘導体は、天然のI因子のC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性の、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%を保持していてもよい。I因子のフラグメントまたは誘導体、および天然のI因子のC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性は、当業者に公知の任意の適切な方法を利用して測定してもよい。例えば、I因子のタンパク質分解活性の測定は、Hsiungら(Biochem. J. (1982) 203, 293-298)に記載されている。FI活性についての溶血アッセイおよび膠着アッセイは共に、Lachmann PJおよびHobart MJ (1978) "Complement Technology" in Handbook of Experimental Immunology 3rd edition Ed DM Weir Blackwells Scientific Publications Chapter 5A p17に記載されている。タンパク質分解アッセイも含めたより詳細な説明は、Harrison RA(1996) in "Weir's Handbook of Experimental Immunology" 5th Edition Eds;Herzenberg Leonore A'Weir DM, Herzenberg Leonard A および Blackwell C Blackwells Scientific Publications Chapter 75 36-37により記載されている。前記膠着アッセイは非常に感度が高く、固定したC3bをiC3bに転換しかつコングルチニンとの反応性を獲得する最初の(二重)クリップ(clip)を共に検出するため;ならびに固定したiC3bから開始してコングルチニンとの反応性の低下を探すことによるC3dgへの最終クリップを検出するために、使用することができる。前記溶血アッセイはC3bのiC3bへの転換のために使用し、また前記タンパク質分解アッセイにより前記クリップを全て検出する。
【0086】
ある実施形態では、前記I因子はヒトI因子である。
【0087】
ヒトI因子タンパク質の1例は、UniProtKBアクセッション番号P05156を有するヒトI因子タンパク質である。この例示配列は583アミノ酸長(配列番号1として示す)であり、そのうちのアミノ酸1~18はシグナル配列を形成している。
【0088】
ある実施形態では、I因子のアミノ酸配列は、配列番号1として示される配列である。ある実施形態では、I因子のアミノ酸配列は、配列番号1の19~583位として示される配列である。
(配列番号1)
【0089】
ある実施形態では、I因子のアミノ酸配列は配列番号9として示される配列であり、該配列はNCBIアクセッション番号NP_000195と一致する。ある実施形態では、I因子のアミノ酸配列は、配列番号9の19~583位として示される配列である。
(配列番号9)
【0090】
I因子をコードするヌクレオチド配列の1例は、NCBIアクセッション番号NM_000204を有するヌクレオチド配列である。ある実施形態では、I因子をコードするヌクレオチド配列は、NCBIアクセッション番号NM_000204を有するヌクレオチド配列である。
【0091】
ある実施形態では、I因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号2として示すヌクレオチド配列である。
(配列番号2)
【0092】
本発明に使用するヌクレオチド配列は、コドンが最適化されていてもよい。コドン最適化については以前にWO 1999/041397およびWO 2001/079518に記載されている。異なる細胞は、それらの特定のコドンの使用頻度に違いがある。このコドンバイアスは、細胞型における特定のtRNAの相対的存在量の偏りと一致する。配列中のコドンを変更し、それらを対応tRNAの相対的存在量と一致するよう調整することで、発現を増大させることが可能である。同様に、対応tRNAが特定の細胞型においては稀であることが知られているコドンを意図的に選択することにより、発現を減少させることも可能である。従って、付加的な程度の翻訳調節を利用することができる。
【0093】
ある実施形態では、I因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号8として示すヌクレオチド配列である。
(配列番号8)
【0094】
前記のI因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列は、例えば、配列番号2または8に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでいてもよく、この際、該ヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質は、配列番号1または9で表されるタンパク質の機能活性を実質的に保持しているものとする。
【0095】
I因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチドは、例えば、配列番号2または8の55~1752位として示される配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでいてもよく、この際、該ヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質は、配列番号1または9で表されるタンパク質の機能活性を実質的に保持しているものとする。
【0096】
I因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列は、例えば、配列番号1または9に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードしていてもよく、この際、該アミノ酸配列は、配列番号1または9で表されるタンパク質の機能活性を実質的に保持しているものとする。
【0097】
I因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列は、例えば、配列番号1または9の19~583位として示される配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードしていてもよく、この際、該アミノ酸配列は、配列番号1または9で表されるタンパク質の機能活性を実質的に保持しているものとする。
【0098】
本発明の利点は、I因子は精製タンパク質の形態で調製することが特に難しいということである。従って、本発明者らは、例えば加齢黄斑変性(AMD)の治療を可能にするために、I因子をコードするヌクレオチド配列を含むAAVベクターの形態でI因子を投与することにより、補体系をモジュレートする方法を考案した。該AAVベクターを、関心のある部位、例えば眼に投与することにより、I因子ポリペプチドのin situ翻訳を可能にしてもよい。
【0099】
H因子
補体H因子(H因子、CFH)は補体制御タンパク質である。
【0100】
前記補体H因子は大きく(155 kDa)、ヒト血漿中に200~300μg/mLという典型的な濃度で存在する可溶性糖タンパク質である(Hakobyanら;2008;49(5):1983-90)。H因子の主要な機能は、補体系の代替経路を調節することである。
【0101】
H因子は、C3bのI因子媒介性切断に関する補因子活性を提供する。またH因子はC3bBb複合体(C3転換酵素)および(C3b)NBB複合体(C5転換酵素)の解離の速度を増大させて、それにより代替補体経路の活動を低下させる。
【0102】
H因子は、短いリンカー(3~8個のアミノ酸残基)により互いに連結されておりかつ1列に伸長された形で配置されている20の補体制御タンパク質(CCP)モジュール(ショートコンセンサスリピートまたはスシドメインとも称される)から構成されている。該CCPモジュールの各々は、4つのシステイン残基が1-3 2-4配置でジスルフィド結合した約60個のアミノ酸と、ほぼ変異のない(almost invariant)トリプトファン残基を中心に構築された疎水性コアからなる。該CCPモジュールは(このタンパク質のN末端から)1~20の番号が付けられている。CCP 1~4およびCCP 19~20はC3bに関与しており、一方でCCP 7およびCCP 19~20はGAGおよびシアル酸に結合する(Schmidtら;2008;Journal of Immunology 181 (4):2610-9)。
【0103】
H因子を利用する遺伝子治療は、マウスにおいて誘導されたAMD-様の病状を改善できることが示されている(Cashmanら (2015) J. Gene Med. 17:229-243)。マウスに、以下(i)および(ii):(i)ヒトAMDの多くの病理学的特徴を再現することが以前に示された、補体成分C3を発現するアデノウイルスベクター;および(ii)H因子を発現するアデノウイルスベクター、を網膜下に同時注入した。H因子の代わりにGFPを与えた対照動物と比較して、H因子を形質導入したマウスは、内皮細胞の増殖に91%の減少を示し、またRPE萎縮に69%の減弱を示した。網膜電図検査法により、H因子を与えたマウスにおいて改善された網膜機能が示され、またロドプシンおよびRPE65の免疫細胞化学は、かかる動物における受容器およびRPEのレスキューと一致していた。
【0104】
ある実施形態では、H因子ポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは誘導体は、C3bのI因子媒介性切断に対する補因子として働くことができる。ある実施形態では、H因子ポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは誘導体は、C3転換酵素およびC5転換酵素の解離の速度を増大させることができる。
【0105】
好適な実施形態では、H因子ポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは誘導体は、C3bのI因子媒介性切断に対する補因子として働き、かつC3転換酵素およびC5転換酵素の解離の速度を増大させることができる。
【0106】
ある実施形態では、前記H因子はヒトH因子である。
【0107】
ヒトH因子タンパク質の1例は、UniProtKBアクセッション番号P08603を有するヒトH因子タンパク質である。この例示配列は1231アミノ酸長(配列番号3として示す)であり、そのうちのアミノ酸1~18はシグナル配列を形成している。
【0108】
ある実施形態では、H因子のアミノ酸配列は、配列番号3として示される配列である。ある実施形態では、H因子のアミノ酸配列は、配列番号3の19~1231位として示される配列である。
(配列番号3)
【0109】
H因子をコードするヌクレオチド配列の1例は、NCBIアクセッション番号NM_000186を有するヌクレオチド配列である。ある実施形態では、H因子をコードするヌクレオチド配列は、NCBIアクセッション番号NM_000186を有するヌクレオチド配列である。
【0110】
ある実施形態では、H因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号4として示すヌクレオチド配列である。
(配列番号4)
【0111】
H因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列は、例えば、配列番号4に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでいてもよく、この際、該ヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質は、配列番号3で表されるタンパク質の機能活性を実質的に保持しているものとする。
【0112】
H因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列は、例えば、配列番号4の55~3696位として示される配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでいてもよく、この際、該ヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質は、配列番号3で表されるタンパク質の機能活性を実質的に保持しているものとする。
【0113】
本発明のH因子をコードするヌクレオチド配列は、例えば、配列番号3に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードしていてもよく、この際、該アミノ酸配列は、配列番号3で表されるタンパク質の機能活性を実質的に保持しているものとする。
【0114】
本発明のH因子をコードするヌクレオチド配列は、例えば、配列番号3の19~1231位として示される配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードしていてもよく、この際、該アミノ酸配列は、配列番号3で表されるタンパク質の機能活性を実質的に保持しているものとする。
【0115】
D因子
補体D因子(D因子、CFD)は、補体系の代替補体経路に関与している。補体D因子はB因子を切断してBb因子およびBa因子にする機能を果たす。
【0116】
D因子は、トリプシンファミリーのペプチダーゼのメンバーである。キモトリプシンファミリーのセリンプロテアーゼの全メンバーは非常に類似した構造を有する。D因子を含め、いずれの場合も、2つの逆平行β-バレルドメインが存在し、各バレルは全ての酵素において同一の類型を有する6つのβストランドを含有している。D因子とキモトリプシンファミリーの他のセリンプロテアーゼとの骨格構造における主な違いは、二次構造要素を連結している表面ループにある。
【0117】
代替補体活性化カスケードは、血漿中に豊富に存在するC3の自然加水分解により開始される。「チックオーバー(Tickover)」は、C3中のチオエステル結合の自然切断によるC3(H2O)の形成を通じて起こる。
【0118】
形状におけるこの変化により血漿タンパク質B因子の結合が可能となり、その結果D因子はB因子を切断してBaおよびBbにすることができるようになる。BbはC3(H2O)の一部として残り、C3(H2O)Bbを形成する。この複合体は液相C3転換酵素としても知られている。この転換酵素は、少量でしか産生されないが、複数のC3タンパク質を切断してC3aおよびC3bにすることができる。
【0119】
本発明のAAVベクターは、抗-D因子抗体をコードするヌクレオチド配列を含んでいていてもよい。
【0120】
前記抗-D因子抗体は、D因子に結合してD因子の機能活性を低減および予防する場合がある。例えば、前記抗-D因子抗体は、B因子へのD因子の結合および/またはB因子のD因子による切断を低減または予防する場合がある。
【0121】
適切な抗-D因子抗体は当分野で公知である。かかる抗体としては、ランパリズマブが挙げられるがこれに限定されない。
【0122】
補体成分5
補体成分5(C5)は補体の第5成分であり、炎症プロセスおよび殺細胞プロセスにおいて重要な役割を果たしている。C5はジスルフィド架橋により連結されたαおよびβポリペプチド鎖からなる。
【0123】
C5はプロテアーゼC5-転換酵素により切断されて補体成分5a(C5a)およびC5bフラグメントとなる。C5bは補体カスケードの後期事象において重要であるが、一方のC5aは炎症性の高いペプチドとして働く。C5の起源は通常は肝細胞であるが、その合成はマクロファージにおいても見られ、このことがC5aの局所的増加を引き起こしている可能性がある。C5aは走化性およびアナフィラトキシン性を有し、先天免疫に不可欠であるが、適応免疫にも関連している。C5aの産生の増大は、多数の炎症性疾患と関係がある。
【0124】
C5aは、内皮上の接着分子の発現の増大、平滑筋の収縮、および血管透過性の増大を引き起こすアナフィラトキシンである。C5a des-Arg (C末端のアルギニンが欠損している)はそれほど強力なアナフィラトキシンではない。C5aおよびC5a des-Argはいずれも、炎症誘発性分子であるヒスタミンおよびTNF-αを放出するマスト細胞脱顆粒を誘発することができる。C5aは、感染の部位での補体および食細胞の集積、またはリンパ節への動員を開始させる有効な化学誘引物質でもある。C5aは好中球および単球の血管壁への遊走および接着を増大させる上で重要な役割を果たす。白血球は、インテグリンアビディティー、リポキシゲナーゼ経路およびアラキドン酸代謝のアップレギュレーションにより活性化される。C5aは白血球上で活性化型と抑制性のIgG Fc受容体のバランスもまたモジュレートし、それにより自己免疫応答を増強する。
【0125】
本発明のAAVベクターは、抗-C5抗体をコードするヌクレオチド配列を含んでいてもよい。
【0126】
前記抗-C5抗体は、C5に結合し、C5のC5aおよびC5bへの切断を予防する場合がある。
【0127】
適切な抗-C5抗体は当分野で公知である。かかる抗体としては、エクリズマブが挙げられるが、これに限定されない。
【0128】
抗体
抗体とは、親抗体と同一の抗原標的に結合する能力を保持する抗体またはそのフラグメントの任意の部分を指す。
【0129】
前記抗体はキメラ抗体であってもよい。キメラ抗体は、ある種(例えば、マウス)から得た抗体可変ドメインを、別の種(例えばヒト)から得た抗体定常ドメインに移植することにより作製してもよい。
【0130】
前記抗体は全長の古典的抗体であってもよい。例えば前記抗体はIgG、IgMまたはIgA分子であってもよい。
【0131】
前記抗体は機能的抗体フラグメントであってもよい。具体的な抗体フラグメントとしては、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなるFabフラグメント、(ii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント、(iii)単一抗体のVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(iv)単一可変ドメインからなるdAbフラグメント、(v)単離されたCDR領域、(vi)2つの連結されたFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab')2フラグメント、(vii)VHドメインおよびVLドメインが、これら2つのドメインが会合して抗原結合部位を形成できるようにするペプチドリンカーにより連結されている一本鎖Fv分子(scFv)、(viii)二重特異性一本鎖Fvダイマー、ならびに(ix)遺伝子融合により構築された多価または多重特異性フラグメントである「二特異性抗体」または「三特異性抗体」が挙げられるが、これらに限定されない。前記抗体フラグメントは修飾されていてもよい。例えば、前記分子は、VHおよびVLドメインを連結するジスルフィド架橋の組み込みにより安定化されていてもよい。
【0132】
本明細書中に記載した抗体は、多重特異性抗体であってもよく、また特に「二特異性抗体」と称されることもある二重特異性抗体であってもよい。これらは、2つ(またはそれ以上)の異なる抗原に結合する抗体である。前記抗体はミニボディ(minibody)であってもよい。ミニボディは、CH3ドメインに連結されたscFvを含む最小化抗体-様タンパク質である。場合によっては、該scFvはFc領域に連結することが可能であり、またヒンジ領域の一部または全部を含んでいてもよい。
【0133】
前記抗体は、ドメイン抗体(単一ドメイン抗体またはナノボディとも称される)であってもよい。これは単一単量体の単一可変抗体ドメインを含有する抗体フラグメントである。単一ドメイン抗体の例としては、ラクダ科動物に本来見られるVHHフラグメント、および軟骨魚類に本来見られるVNARフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。単一ドメイン抗体は、一般的なIgG分子由来の二量体可変ドメインを分割して単量体にすることにより作製することもできる。
【0134】
前記抗体は合成抗体(抗体模倣物とも称される)であってもよい。抗体模倣物としては、アフィボディ(Affibodies)、DARPin、アンチカリン(Anticalins)、アビマー(Avimers)、バーサボディ(Versabodies)およびデュオカリン(Duocalins)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
加齢黄斑変性(AMD)
AMDの臨床的進行は、黄斑の変化に応じた病期に特徴付けられる。初期AMDの特徴はドルーゼンであるが、これは網膜の下への細胞外血液成分屑の蓄積であり、臨床検査および眼底写真では網膜内の黄色の斑点として出現する。ドルーゼンはそのサイズにより小(<63μm)、中(63~124μm)および大(>124μm)に分類される。またドルーゼンは、眼科検査におけるそれらの縁の外観に応じて硬性または軟性とみなされる。硬性ドルーゼンは明確に輪郭を示す縁を有するが、軟性ドルーゼンは不明確かつ流動的な縁を有する。加齢性眼疾患研究(AREDS)の眼底写真による重症度スケールは、この病気に使用される主な分類システムのうちの1つである。
【0136】
AMDは「ドライ型」と「ウェット型」(滲出性、または血管新生性)形態に分類される。ドライ型AMDはウェット型AMDより多くみられるが、該ドライ型形態はウェット型形態に進行する可能性があり、またこれら2形態は相当数の症例において同時に発生する。ドライ型AMDは、典型的には、RPE層の細胞、それを覆う光受容細胞、およびしばしば下部の脈絡膜毛細血管層の細胞の進行性アポトーシスを特徴とする。上を覆う光受容体の萎縮を伴うRPE細胞死の密集領域を、地図状萎縮(GA)と呼ぶ。この形態のAMDの患者は、中心視覚の緩慢でかつ進行性の悪化を経験する。
【0137】
ウェット型AMDは、突然かつ生活に支障を来すほどの視覚の低下に関与しうる、RPEおよび黄斑の下にある脈絡膜血管(脈絡毛細管板)から成長した異常血管からの出血および/または体液の漏出を特徴とする。患者が経験するこの視覚低下の大半は、かかる脈絡膜血管新生(CNV)およびその二次的合併症によるものと推定されている。
【0138】
本明細書中に記載したAMDの治療または予防により、先に記載したAMD表現型の出現を減少させるかまたは予防してもよい。好ましくは、AMDの治療により視覚機能の維持または改善が可能となる。
【0139】
ある実施形態では、AMDの治療または予防は、地図状萎縮の形成の予防または減少をもたらす。別の実施形態では、AMDの治療または予防は、地図状萎縮の進行の遅延をもたらす。例えば、AMDの治療または予防は、被験体の処置眼への投与後12ヶ月にわたり、同期間にわたる未処置の眼と比較して、GA領域の増大に少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%の減少をもたらす。別の実施形態では、AMDの治療または予防は、地図状萎縮の治療、例えば地図状萎縮の量の減少をもたらす。
【0140】
ある実施形態では、AMDの治療または予防は、ドルーゼンの形成の予防または減少をもたらす。別の実施形態では、AMDの治療または予防は、既存のドルーゼンの減少、例えば既存のドルーゼンのサイズおよび/または数の減少をもたらす。
【0141】
ある実施形態では、AMDの治療または予防は、補体沈着の予防または減少をもたらす。別の実施形態では、AMDの治療または予防は、既存の補体沈着の減少をもたらす。
【0142】
ある実施形態では、AMDの治療または予防は、視覚または視力の改善または回復をもたらす。別の実施形態では、AMDの治療または予防は、視覚または視力の低下を軽減する。
【0143】
ある実施形態では、AMDの治療または予防は、被験体において読み速度の改善または回復をもたらす。別の実施形態では、AMDの治療または予防は、被験体において読み速度の低下を軽減する。
【0144】
ある実施形態では、AMDの治療または予防は、光受容体および/または網膜色素上皮(RPE)の損失の減少または予防をもたらす。
【0145】
糖尿病性網膜症
糖尿病性網膜症は、糖尿病に伴う高血糖値により引き起こされる、網膜の血管の損傷を特徴とする症状である。治療せずにいると、糖尿病性網膜症は失明を引き起こす可能性がある。
【0146】
軽度の糖尿病性網膜症を患う被験体は良好な視覚を有しうるが、2タイプの糖尿病性網膜症、すなわち糖尿病性黄斑浮腫(DMO)および増殖性糖尿病性網膜症(PDR)は該被験体の視界を脅かす場合がある。
【0147】
糖尿病性黄斑浮腫は、眼の後部の損傷血管からの体液の漏出を特徴とする。漏出した体液は黄斑に蓄積し、これが腫脹および霧視の原因となる。これはやがて、中心視覚の不良と読む能力または運転能力の低下を引き起こす可能性がある。側方視野は通常は正常のままである。
【0148】
増殖性糖尿病性網膜症は、網膜の表面上に異常で脆弱な血管の成長をもたらす、網膜血管の閉塞を特徴とする。これは、眼内への出血、瘢痕化および網膜剥離による視覚の永久的喪失をもたらす場合がある。
【0149】
眼の構造
本明細書中に開示した医薬は、加齢黄斑変性(AMD)の治療または予防に関して、哺乳動物、好ましくはヒトの眼に送達してもよい。
【0150】
眼の疾患の治療の熟練者であれば、目の構造を詳細かつ完全に理解しているであろう。しかし、本発明に特に関連のある以下の構造について記載する。
【0151】
網膜
網膜は、後眼房の内側を覆い、かつ視神経を経由して脳へと伝わる視覚世界の映像を感知する多層の膜である。眼の内側から外側の順に、網膜は、神経感覚網膜および網膜色素上皮の層を、該網膜色素上皮の外側にある脈絡膜と共に含む。
【0152】
神経感覚網膜および光受容細胞
神経感覚網膜は、光を直接感知する光受容細胞を備えている。神経感覚網膜は、次の層:内境界膜(ILM);神経線維層;神経節細胞層;内網状層;内顆粒層;外網状層;外顆粒層(光受容体の核);外境界膜(ELM);ならびに光受容体(杆体および錐体の内節および外節)を含む。
【0153】
熟練者であれば、光受容細胞を詳細に理解しているであろう。簡単に述べると、光受容細胞は、光を生体信号に変換する、網膜に位置する特殊な神経である。光受容細胞は杆体細胞および錐体細胞を含み、それらは網膜に異なる形で分散している。
【0154】
杆体細胞は主に網膜の外側部分に分散している。それらは感受性が高く、低い光レベルで視覚を提供する。正常なヒト網膜には平均して約1億2500万個の錐体細胞が存在する。
【0155】
錐体細胞は網膜の至る所に見出されるが、特に中心窩(高解像度の中心視覚に関与している神経感覚網膜の窪み)に極めて集中している。錐体細胞は杆体細胞より感受性が低い。正常なヒト網膜には平均して約6~7百万個の錐体細胞が存在する。
【0156】
網膜色素上皮
網膜色素上皮(RPE)は、神経感覚網膜のすぐ外側に位置する細胞からなる色素沈着層である。該RPEは、光受容細胞への栄養分および他の物質の輸送、ならびに視覚を改善するための散乱光の吸収を含む、多数の機能を果たしている。
【0157】
脈絡膜
脈絡膜は、眼のRPEと外側の強膜との間に位置する血管膜である。該脈絡膜の脈管構造により、網膜への酸素および栄養分の供給が可能となる。
【0158】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター
ある態様では、本発明は、I因子またはそのフラグメントもしくは誘導体、および/あるいはH因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列を含むAAVベクターを提供する。
【0159】
好ましくは、前記AAVベクターはAAV粒子の形態である。
【0160】
ウイルスベクターおよびウイルスベクター粒子、例えばAAV由来のものを調製および改変する方法は、当分野で周知である。
【0161】
前記AAVベクターは、AAVゲノムまたはその断片もしくは誘導体を含んでいてもよい。
【0162】
AAVゲノムはポリヌクレオチド配列であり、該配列はAAV粒子の生成に必要とされる機能をコードしている。これらの機能としては、宿主細胞におけるAAVの複製およびパッケージングサイクルにおいて作動する機能、例えばAAV粒子へのAAVゲノムのキャプシド形成が挙げられる。天然に存在するAAVは複製欠損性であり、複製およびパッケージングサイクルの完了に関しては輸送中の(in trans)ヘルパー機能の供給に依存している。従って、本発明のAAVベクターのAAVゲノムは典型的には複製欠損性である。
【0163】
前記AAVゲノムは、ポジティブセンスまたはネガティブセンスのいずれかの一本鎖形態であっても、あるいは二本鎖形態であってもよい。二本鎖形態の使用により、標的細胞におけるDNA複製段階の回避が可能となり、そのため導入遺伝子の発現を促進することができる。
【0164】
前記AAVゲノムは、AAVの任意の天然由来の血清型、単離物(isolate)またはクレードから得たものであってもよい。従って、前記AAVゲノムは、天然に存在するAAVの全ゲノムであってもよい。当業者には公知であるように、天然に存在するAAVは、様々な生物学的システムに応じて分類することができる。
【0165】
一般に、AAVはそれらの血清型の点から言及される。血清型はAAVの変異体亜種に対応しており、該変異体亜種は、そのキャプシド表面抗原の発現プロファイルにより、他の変異体亜種と区別するために利用できる特有の反応性を有する。典型的には、特定のAAV血清型を有するウイルスは、任意の他のAAV血清型に特異的な中和抗体とは効率的に交差反応しない。
【0166】
AAV血清型にはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10およびAAV11が含まれ、また組換え血清型、例えば、霊長類の脳から近年同定されたRec2およびRec3も含まれる。これらのAAV血清型はいずれも本発明に使用することができる。従って、本発明のある実施形態では、前記AAVベクター粒子はAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rec2またはRec3 AAVベクター粒子である。
【0167】
ある実施形態では、前記AAVは、AAV1、AAV2、AAV5、AAV7、AAV8またはAAV8血清型であってもよい。
【0168】
ある実施形態では、前記AAVは、AAV2またはAAV8血清型であってもよい。
【0169】
前記キャプシドタンパク質は、WO 2008/124724(参照により本明細書中に組み込まれるものとする)に開示されているような変異体キャプシドタンパク質であってもよい。
【0170】
ある実施形態では、前記AAVベクターは、Y733F変異を有するAAV8キャプシドを含む。
【0171】
AAV血清型の概説は、Choiら (2005) Curr. Gene Ther. 5:299-310 およびWuら (2006) Molecular Therapy 14:316-27中に見出すことができる。本発明に使用するためのAAVゲノム、またはITR配列、repもしくはcap遺伝子を含むAAVゲノムの要素の配列は、AAV全ゲノム配列に関する次のアクセッション番号:アデノ随伴ウイルス1 NC_002077、AF063497;アデノ随伴ウイルス2 NC_001401;アデノ随伴ウイルス3 NC_001729;アデノ随伴ウイルス3B NC_001863;アデノ随伴ウイルス4 NC_001829;アデノ随伴ウイルス5 Y18065、AF085716;アデノ随伴ウイルス6 NC_001862;トリAAV ATCC VR-865 AY186198、AY629583、NC_004828;トリAAV株DA-1 NC_006263、AY629583;ウシAAV NC_005889、AY388617に由来するものであってもよい。
【0172】
AAVは、クレードまたはクローンの点から言及される場合もある。これは天然由来のAAVの系統発生関係を指しており、また典型的には、共通祖先まで遡及することが可能であり、かつその全ての子孫を含むAAVの系統発生群を指す。さらに、AAVは、特定の単離物、すなわち自然界に見出される特定のAAVの遺伝子単離物(genetic isolate)の点で言及される場合がある。遺伝子単離物という用語は、他の天然に存在するAAVとの限定的遺伝子混合を行ったAAVの集団を説明するものであり、それによって遺伝子レベルで認識できる程度に異なる集団が定義される。
【0173】
当業者であれば、本発明に使用するためのAAVの適当な血清型、クレード、クローンまたは単離物を、それらの共通の一般知識に基づいて選択することができる。例えば、AAV5キャプシドは、遺伝性の色覚異常の矯正の成功(Mancusoら (2009) Nature 461:784-7)により証明されているように、霊長類の錐体光受容体を効率的に形質導入することが示されている。
【0174】
前記AAV血清型は、AAVウイルスの感染(または親和性)の組織特異性を決定する。従って、本発明に従って患者に投与するAAVに使用するための好適なAAV血清型は、眼内の標的細胞に対して天然の親和性を有するものか、または眼内の標的細胞の高い感染効率を有するものである。ある実施形態では、本発明に使用するためのAAV血清型は、神経感覚網膜、網膜色素変性および/または脈絡膜の細胞に形質導入するものである。
【0175】
典型的には、AAVの天然由来の血清型、単離物またはクレードのAAVゲノムは、少なくとも1つの逆方向末端反復配列(ITR)を含む。ITR配列はシスに作用することにより機能的な複製起点を提供し、細胞のゲノムからのベクターの組み込みおよび切り取りを可能にする。好適な実施形態では、1つ以上のITR配列が、I因子および/もしくはH因子(またはそのフラグメントもしくは誘導体)をコードするヌクレオチド配列に隣接している。前記AAVゲノムは、典型的には、パッケージング遺伝子、例えばAAV粒子のパッケージング機能をコードするrepおよび/またはcap遺伝子も含む。該rep遺伝子は、タンパク質Rep78、Rep68、Rep52およびRep40またはその変異体のうちの1つ以上をコードしている。該cap遺伝子は、1つ以上のキャプシドタンパク質、例えばVP1、VP2およびVP3またはその変異体をコードしている。これらのタンパク質はAAV粒子のキャプシドを構成している。キャプシド変異体については以下で論じる。
【0176】
プロモーターは、前記パッケージング遺伝子の各々に機能しうる形で連結されている。かかるプロモーターの具体例としては、p5、p19およびp40プロモーター(Laughlinら (1979) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:5567-5571)が挙げられる。例えば、p5およびp19プロモーターは、通常は前記rep遺伝子を発現させるために使用するが、p40プロモーターは通常は前記cap遺伝子を発現させるために使用する。
【0177】
先に論じた通り、本発明のAAVベクターに使用するAAVゲノムは、それ故に天然に存在するAAVの全ゲノムであってもよい。例えば、全AAVゲノムを含むベクターを使用することにより、AAVベクターまたはベクター粒子をin vitroで調製してもよい。しかし、かかるベクターは原理上は患者に投与しうるものの、これは実際には滅多に実施されない。好ましくは、AAVゲノムを患者への投与のために誘導体化する。かかる誘導体化は当分野では標準的であり、本発明はAAVゲノムの任意の公知の誘導体、および当分野で公知の技術を適用することにより作製しうる誘導体の使用を包含する。AAVゲノムおよびAAVキャプシドの誘導体化は、CouraおよびNardi (2007) Virology Journal 4:99、ならびにChoiら、およびWu ら(上述)に概説されている。
【0178】
AAVゲノムの誘導体は、in vivoで本発明のAAVベクターからの導入遺伝子の発現を可能にする、AAVゲノムの任意の末端切断形態または修飾形態を含む。典型的には、最小限のウイルス配列を含むが上記機能は保持するようにAAVゲノムを大きく切断することが可能である。これは、ベクターと野生型ウイルスとの組換えのリスクを低減し、また標的細胞においてウイルス遺伝子タンパク質の存在による細胞性免疫応答の誘発を回避する安全上の理由から好ましい。
【0179】
典型的には、誘導体は、少なくとも1つの逆方向末端反復配列(ITR)、好ましくは2つ以上のITR、例えば2つのITRまたはそれ以上を含む。該ITRのうちの1つ以上は、異なる血清型を有するAAVゲノムに由来していてもよく、またはキメラITRもしくは変異体ITRであってもよい。好適な変異ITRは、trs(末端分解部位)の欠失を有するものである。この欠失により、コード配列と相補配列の両方を含有する一本鎖ゲノム、すなわち自己相補型AAVゲノムを作製するためのゲノムの連続複製が可能となる。これにより、標的細胞におけるDNA複製の回避が可能となり、またそのために加速された導入遺伝子の発現が可能となる。
【0180】
1つ以上のITRは、好ましくはI因子および/もしくはH因子(またはそのフラグメントもしくは誘導体)をコードするヌクレオチド配列に両端で隣接している。1つ以上のITRの包含は、例えば宿主細胞DNAポリメラーゼの作用による一本鎖ベクターDNAの二本鎖DNAへの変換後に、宿主細胞の核における本発明のベクターのコンカテマー形成を促進することが好ましい。かかるエピソームコンカテマーの形成により宿主細胞の生存期間中のベクター構築物が保護され、それによりin vivoでの導入遺伝子の持続発現が可能となる。
【0181】
好適な実施形態では、ITRエレメントは、前記誘導体において天然AAVゲノムから保持される唯一の配列である。従って、誘導体は、好ましくは天然ゲノムのrepおよび/またはcap遺伝子ならびに該天然ゲノムの任意の他の配列を含まない。これは、先に記載した理由のため、また宿主細胞ゲノムへのベクターの組み込みの可能性を低減するためにも好ましい。さらに、AAVゲノムのサイズを縮小することで、導入遺伝子に加えて、ベクター内に他の配列要素(例えば、調節エレメント)を組み込む際の柔軟性を高めることができる。
【0182】
従って、次の部分:1つの逆方向末端反復(ITR)配列、複製(rep)およびキャプシド(cap)遺伝子、は本発明の誘導体では除去されていてもよい。しかし、幾つかの実施形態では、誘導体は、1つ以上のrepおよび/もしくはcap遺伝子またはAAVゲノムの他のウイルス配列をさらに含んでいてもよい。天然に存在するAAVはヒト第19染色体上の特定の部位に高頻度で組み込み、また前記ベクターの組み込み能力の保持が治療環境において許容されうるような、無視できる頻度のランダムな組み込みを示す。
【0183】
誘導体がキャプシドタンパク質、すなわちVP1、VP2および/またはVP3を含む場合、該誘導体は、1つ以上の天然に存在するAAVのキメラ、シャッフル(shuffled)またはキャプシド改変誘導体であってもよい。特に、本発明は、同一ベクター内へのAAVの異なる血清型、クレード、クローン、または単離物由来のキャプシドタンパク質配列の提供(すなわちシュードタイプベクター)を包含する。
【0184】
キメラ、シャッフルまたはキャプシド改変誘導体は、典型的には、前記AAVベクターに1つ以上の所望の機能性を提供するように選択される。従って、これらの誘導体は、天然に存在するAAVゲノム、例えばAAV2のAAVゲノムを含むAAVベクターと比較して、遺伝子送達の効率の向上、免疫原性(体液性もしくは細胞性)の低減、親和性範囲の変更および/または特定の細胞型の標的化の改善を示す場合がある。遺伝子送達の効率の向上は、細胞表面での受容体または共受容体の結合の改善、内部移行の改善、細胞内および核内への輸送の改善、ウイルス粒子の脱殻の改善ならびに一本鎖ゲノムの二本鎖形態への変換の改善により達成してもよい。また、効率の向上は、前記ベクター用量が、これを必要としない組織への投与により希釈されないような、変更された親和性範囲または特定の細胞集団の標的化に関係している場合もある。
【0185】
キメラキャプシドタンパク質には、天然に存在するAAV血清型の2つ以上のキャプシドコード配列間の組換えにより作製されるものが含まれる。これは、例えば1つの血清型の非感染性キャプシド配列を異なる血清型のキャプシド配列とコトランスフェクトし、指向性選択(directed selection)を利用して所望の特性を有するキャプシド配列について選択するマーカーレスキュー法により実施してもよい。この異なる血清型のキャプシド配列は、新規キメラキャプシドタンパク質を作製するために、細胞内で相同組換えにより変更することができる。
【0186】
またキメラキャプシドタンパク質には、特定のキャプシドタンパク質ドメイン、表面ループまたは特定のアミノ酸残基を、2つ以上のキャプシドタンパク質間、例えば異なる血清型の2つ以上のキャプシドタンパク質間で移動させるためのキャプシドタンパク質配列の操作により作製されるものも含まれる。
【0187】
シャッフルまたはキメラキャプシドタンパク質は同様に、DNAシャッフリングにより、またはエラープローンPCRにより作製してもよい。ハイブリッドAAVキャプシド遺伝子は、関連するAAV遺伝子の配列、例えば複数の異なる血清型のキャプシドタンパク質をコードする配列をランダムに断片化し、その後続いて、配列相同性を有する領域では交差も生じうるセルフプライミングポリメラーゼ反応で該断片を再構成することにより、作製できる。この方法で幾つかの血清型のキャプシド遺伝子をシャッフルすることにより作製したハイブリッドAAV遺伝子のライブラリーは、所望の機能性を有するウイルスクローンを同定するためにスクリーニングすることができる。同様に、エラープローンPCRを利用してAAVキャプシド遺伝子をランダムに変異させることで、変異体の多様なライブラリーを作製してもよく、その後これを所望の特性について選択してもよい。
【0188】
前記キャプシド遺伝子の配列を同様に遺伝的に改変することにより、天然の野生型配列に関して特定の欠失、置換または挿入を導入してもよい。特に、キャプシド遺伝子は、キャプシドコード配列のオープンリーディングフレーム内への、またはキャプシドコード配列のN-および/もしくはC-末端での非関連タンパク質またはペプチドの配列の挿入により改変してもよい。
【0189】
前記非関連タンパク質またはペプチドは、有利には、特定の細胞型に対するリガンドとして作用し、それにより標的細胞への改善された結合を与えるか、または特定の細胞集団に対する前記ベクターの標的化の特異性を改善するものでありうる。1例としては、網膜色素上皮への取込みを阻害し、それによって周辺網膜組織の形質導入を増強するためのRGDペプチドの使用(Croninら (2008) ARVO Abstract:D1048)が挙げられる。また、前記非関連タンパク質は、産生過程の一環としてのウイルス粒子の精製を促進するもの、すなわちエピトープまたはアフィニティータグであってもよい。挿入の部位は、典型的には、ウイルス粒子の他の機能、例えばウイルス粒子の内部移行、輸送に干渉しないように選択される。当業者であれば、それらの共通の一般知識に基づいて挿入のための適切な部位を同定することができる。特定の部位は、Choiら(上記)に開示されている。
【0190】
本発明はさらに、天然AAVゲノムの配列とは異なる順序および配置のAAVゲノムの配列の提供を包含する。本発明は、1つ以上のAAV配列または遺伝子と、別のウイルス由来の配列または2つ以上のウイルスに由来する配列からなるキメラ遺伝子との置換もまた包含する。かかるキメラ遺伝子は、異なるウイルス種の2つ以上の関連ウイルスタンパク質に由来する配列からなるものであってもよい。
【0191】
本発明のAAVベクターは、AAVゲノムまたはその誘導体ならびにI因子および/もしくはH因子導入遺伝子またはその誘導体をコードする配列を含むヌクレオチド配列の形態をとっていてもよい。
【0192】
本発明のAAV粒子は、ある血清型のITRを有するAAVゲノムまたは誘導体が異なる血清型のキャプシド内にパッケージングされている、トランスキャプシド化形態を含む。本発明のAAV粒子は、2つ以上の異なる血清型に由来する非改変キャプシドタンパク質の混合物がウイルスのキャプシドを構成しているモザイク形態も含む。またAAV粒子は、キャプシド表面に吸着したリガンドを担持する化学改変形態も含む。例えば、かかるリガンドとしては、特定の細胞表面受容体を標的化するための抗体を挙げることができる。
【0193】
従って、例えば、本発明のAAV粒子としては、AAV2ゲノムとAAV2キャプシドタンパク質を有するもの(AAV2/2)、AAV2ゲノムとAAV5キャプシドタンパク質を有するもの(AAV2/5)、およびAAV2ゲノムとAAV8キャプシドタンパク質を有するもの(AAV2/8)、ならびに2つ以上の血清型のAAV2ゲノムとキャプシドタンパク質を有するものが挙げられる。
【0194】
前記AAVベクターは、本明細書中で言及したヌクレオチド配列の複数コピー(例えば、2、3等)を含んでいてもよい。
【0195】
プロモーターおよび調節配列
本発明のAAVベクターは、in vitroまたはin vivoでのI因子および/もしくはH因子導入遺伝子(またはそのフラグメントもしくは誘導体)の発現を可能にするエレメントもまた含みうる。これらは発現制御配列と称される場合がある。従って、該AAVベクターは、典型的には、導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列に機能しうる形で連結された(例えばプロモーター配列を含む)発現制御配列を含む。
【0196】
任意の適切なプロモーターを使用してもよく、その選択は当業者により容易に為される。該プロモーター配列は、構成的に活性(すなわち任意の宿主細胞バックグラウンドにおいて操作可能)であってもよいし、あるいは特定の宿主細胞環境においてのみ活性であってもよく、結果として特定の細胞型における導入遺伝子の標的化発現が可能となる(例えば組織特異的プロモーター)。該プロモーターは、別の因子、例えば宿主細胞に存在する因子の存在に応答して誘導発現を示す場合がある。いずれにしても、ベクターを治療のために投与する場合、該プロモーターは標的細胞バックグラウンドにおいて機能的であることが好ましい。
【0197】
幾つかの実施形態では、導入遺伝子が網膜細胞集団においてのみ発現されるようにするために、前記プロモーターが網膜細胞特異的発現を示すことが好ましい。従って、前記プロモーター由来の発現は、網膜細胞特異的であってもよく、例えば神経感覚網膜および網膜色素上皮の細胞だけに限定されていてもよい。
【0198】
網膜細胞特異的ではない好適なプロモーターは、ニワトリβアクチン(CBA)プロモーターを、場合によってはサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーエレメントと組み合わせて含む。本発明に使用するためのプロモーターの1例は、CAGプロモーター、例えばrAVE発現カセット(GeneDetect.com)に使用するプロモーターである。本発明に使用するためのさらなるプロモーター例は、次の配列:
(配列番号5)
を有する。
【0199】
ある実施形態では、前記AAVベクターは、配列番号5のヌクレオチド配列を有するプロモーターを含む。別の実施形態では、前記AAVベクターは、配列番号5に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を有するプロモーターを含み、この際、該ヌクレオチド配列は、配列番号5で表される該プロモーターの機能活性を実質的に保持しているものとする。
【0200】
網膜特異的遺伝子発現を誘導する、ヒト配列に基づくプロモーターの例としては、杆体および錐体に対するロドプシンキナーゼ(Alloccaら (2007) J. Virol. 81:11372-80)、錐体のみに対するPR2.1(Mancusoら (2009) Nature 461:784-7)および/または網膜色素上皮に対するRPE65(Bainbridgeら (2008) N. Engl. J. Med. 358:2231-9)もしくはVMD2(Esumiら (2004) J. Biol. Chem. 279:19064-73)が挙げられる。
【0201】
本発明のAAVベクターは同様に、転写前または転写後に作用しうる1つ以上の追加の調節配列を含んでいてもよい。該調節配列は、天然導入遺伝子の遺伝子座の一部であっても、または異種調節配列であってもよい。本発明のAAVベクターは、天然導入遺伝子転写産物に由来する5’-UTRまたは3’-UTRの一部を含んでいてもよい。
【0202】
調節配列は、導入遺伝子の発現を容易にする、すなわち転写産物の発現を増大させるように、mRNAの核外輸送を改善するように、またはその安定性を強化するように作用する、任意の配列である。かかる調節配列としては、例えばエンハンサーエレメント、転写後調節エレメントおよびポリアデニル化部位が挙げられる。好適なポリアデニル化部位は、以下に示すようなものでありうるウシ成長ホルモンポリAシグナルである:
(配列番号6)
【0203】
ある実施形態では、前記AAVベクターは、配列番号6のヌクレオチド配列を有するポリアデニル化部位を含む。別の実施形態では、前記AAVベクターは、配列番号6に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を有するポリアデニル化部位を含み、この際、該ヌクレオチド配列は、配列番号6で表される該ポリアデニル化部位の機能活性を実質的に保持しているものとする。
【0204】
本発明のAAVベクターとの関連においては、かかる調節配列はシス作用性である。しかし、本発明は、追加の遺伝的構築物上に位置するトランス作用性調節配列の使用もまた包含する。
【0205】
本発明のAAVベクターに使用するための好適な転写後調節エレメントは、ウッドチャック肝炎転写後調節エレメント(WPRE)またはその変異体である。WPREの配列の具体例を以下に示す:
(配列番号7)
【0206】
ある実施形態では、前記AAVベクターは、配列番号7のヌクレオチド配列を有する転写後調節エレメントを含む。別の実施形態では、前記AAVベクターは、配列番号7に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を有する転写後調節エレメントを含み、この際、該ヌクレオチド配列は、配列番号7で表される該転写後調節エレメントの機能活性を実質的に保持しているものとする。
【0207】
本発明は、WPRE不含AAVベクターと比較して導入遺伝子の発現を増大させる、WPREの任意の変異体配列の使用を包含する。好ましくは、変異体配列は、配列番号7に対してその配列全体にわたり少なくとも70%の同一性、より好ましくは配列番号7に対してその配列全体にわたり75%、80%、85%、90%、およびより好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の同一性を示す。
【0208】
本発明のAAVベクターに使用しうる別の調節配列は、足場付着領域(SAR)である。追加の調節配列は、当業者により容易に選択されうる。
【0209】
投与の方法
好適な実施形態では、前記AAVベクターを眼内に投与する。
【0210】
「眼内」という用語は眼の内部を指しており、従って眼内投与は被験体の眼の内部への投与に関連する。
【0211】
本発明のある実施形態では、前記AAVベクターを被験体の眼に、網膜下注入、直接網膜注入、脈絡膜上注入または硝子体内注入により投与する。ある実施形態では、該投与をロボットにより実施する。
【0212】
注入する医薬組成物の量は、例えば、約10~500μL、例えば約50~500、100~500、200~500、300~500、400~500、50~250、100~250、200~250または50~150μLとしてもよい。該量は、例えば、約10、50、100、150、200、250、300、350、400、450または500μLとしてもよい。好ましくは、注入する医薬組成物の量は100μLである。
【0213】
当業者であれば、網膜下注入、直接網膜注入、脈絡膜上注入または硝子体内注入それぞれに精通しており、上手く実施することができるであろう。
【0214】
好ましくは、前記AAVベクターを網膜下注入により投与する。
【0215】
ある実施形態では、前記AAVベクターまたは前記AAVベクターを含む医薬組成物を、被験体の生存期間中に1回だけ、または最高で2回投与する。
【0216】
網膜下注入
網膜下注入は、網膜下腔、すなわち神経感覚網膜の下への注入である。網膜下注入中に、注入物質は光受容細胞および網膜色素上皮(RPE)の層に方向付けられ、これらの層の間に空間を形成する。
【0217】
前記注入を小さな網膜切開により実施する場合、網膜剥離を引き起こすことがある。注入物質により生成した網膜の剥離隆起層は、「ブレブ(bleb)」と称される。
【0218】
網膜下注入により作製される孔は、注入した溶液が投与後に硝子体腔に有意に逆流しない程度に十分小さいものでなければならない。かかる逆流は、医薬の効果を標的ゾーンから逸らしてしまうため、該医薬を注入する場合に特に問題となるだろう。好ましくは、注入により神経感覚網膜に自己閉鎖性注入孔が作成される、すなわち、注入針を抜去すると、該孔を通してごく少量の注入物質が放出されるかまたは注入物質が実質的に放出されないように、該針によって作成された孔が再び閉じる。
【0219】
この過程を容易にするために、専門的な網膜下注入針が市販されている(例えばDORC 41G Teflon subretinal injection needle, Dutch Ophthalmic Research Center International BV, Zuidland, The Netherlands)。これらは網膜下注入を実施するために設計された針である。
【0220】
網膜への損傷が注入中に生じる場合を除き、また十分に細い針を使用する限りは、実質的に全ての注入物質が限局性網膜剥離の部位の剥離した神経感覚網膜とRPEの間に局在化し続ける(すなわち硝子体腔に逆流しない)。実際、典型的な短期間のブレブの存続は、通常は硝子体への注入物質の流出が殆どないことを示している。該ブレブは、注入物質が吸収されるにつれ、より長い期間をかけて消失しうる。
【0221】
眼、特に網膜の可視化は、例えば光干渉断層撮影を利用して、手術前に行ってもよい。
【0222】
注入する医薬組成物の量は、例えば、約10~500μL、例えば約50~500、100~500、200~500、300~500、400~500、50~250、100~250、200~250または50~150μLとしてもよい。該量は、例えば、約10、50、100、150、200、250、300、350、400、450または500μLとしてもよい。好ましくは、注入する医薬組成物の量は100μLである。より多い量は網膜を引っ張るリスクを上昇させる場合があるが、より少ない量は見えにくい場合がある。
【0223】
2段階網膜下注入
本発明のベクターは、限局性の網膜剥離を第1溶液の網膜下注入により作成する2段階法を利用することにより、精度および安全性を高めて送達してもよい。該第1溶液は該ベクターを含まない。次に2回目の網膜下注入を利用することで、該ベクターを含む医薬を、第1網膜下注入により作成したブレブの網膜下液中に送達する。医薬を送達する注入は網膜を剥離するために利用しているわけではないので、特定量の溶液をこの第2段階で注入してもよい。
【0224】
本発明のある実施形態では、前記ベクターの網膜下注入は、以下の段階(a)および(b): (a)溶液を、網膜を少なくとも部分的に剥離して網膜下ブレブを形成するのに有効な量で、網膜下注入により被験体に投与する段階、ただし、該溶液は前記ベクターを含まないものとする、および
(b)段階(a)により形成したブレブ内に、網膜下注入により医薬組成物を投与する段階、ただし、該医薬は前記ベクターを含むものとする、
を含む。
【0225】
網膜を少なくとも部分的に剥離するために段階(a)で注入する溶液の量は、例えば、約10~1000μL、例えば約50~1000、100~1000、250~1000、500~1000、10~500、50~500、100~500、250~500μLとしてもよい。該量は、例えば、約10、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900または1000μLとしてもよい。
【0226】
段階(b)で注入する医薬組成物の量は、例えば、約10~500μL、例えば約50~500、100~500、200~500、300~500、400~500、50~250、100~250、200~250または50~150μLとしてもよい。該量は、例えば、約10、50、100、150、200、250、300、350、400、450または500μLとしてもよい。好ましくは、段階(b)で注入する医薬組成物の量は100μLである。より多い量は網膜を引っ張るリスクを上昇させる場合があるが、より少ない量は見えにくい場合がある。
【0227】
前記医薬を含まない前記溶液(すなわち段階(a)の「溶液」)は、後述の通り、前記医薬を含まない溶液と同様に調製してもよい。前記医薬を含まない好適な溶液は、網膜下腔のpHおよび浸透圧に適合した緩衝塩類溶液(BSS)または同様の緩衝液である。
【0228】
手術中の網膜の可視化
一定の状況下、例えば網膜変性の末期には、網膜は薄く、透明であって、該網膜が載っている破壊されかつ高度に色素沈着した上皮を背景に見ることが困難であるため、網膜を確認することは困難である。青色の生体染色色素(例えばBrilliant Peel(登録商標)、Geuder;MembraneBlue-Dual(登録商標)、Dorc)の使用により、網膜剥離手順(すなわち本発明の2段階網膜下注入法の段階(a))のために作製した網膜の孔の確認を容易にしてもよく、その結果、前記医薬を、硝子体腔への逆流のリスク無しに同一孔を通して投与することができる。
【0229】
青色の生体染色色素の使用により、肥厚した内境界膜または網膜前膜が存在する網膜のあらゆる領域が同様に確認されるのは、これらの構造のいずれかを貫通する注入は網膜下腔への巧みなアクセスを妨げるからであろう。さらに、手術直後の期間のこれらの構造のいずれかの収縮は、網膜の注入孔の牽引を引き起こす可能性があり、これは硝子体腔への医薬の逆流につながる可能性がある。
【0230】
脈絡膜上注入
本発明のベクターは、マイクロカテーテルを用いるab externoアプローチを利用して脈絡膜上腔に送達してもよい(例えば、Pedenら (2011) PLoS One 6(2):e17140を参照されたい)。この方法では、輪部結膜の角膜周囲切開を実施することにより、裸の強膜を露出させた後、強膜切開により裸の脈絡膜を露出させる。マイクロカテーテル(例えば、場合によってはiLuminレーザー-ダイオードベースのマイクロイルミネーション装置(iScience Interventional)などの照明装置に接続されている、iScience InterventionalからのiTrack 250A)を脈絡膜上腔に挿入し、視神経乳頭に向かって後方に進める。所望の位置へのマイクロカテーテルチップの操作後、ベクターの注入により網膜および脈絡膜にブレブを形成する。
【0231】
従って、ある実施形態では、前記ベクターを、(i)脈絡膜上腔へのマイクロカテーテルの挿入;(ii)マイクロカテーテルを、そのチップが網膜の罹患領域に接近するまで前記腔内に進めること;および(iii)該マイクロカテーテルチップから前記ベクターを注入してブレブを作製すること、を含む方法により脈絡膜上に送達する。
【0232】
ある実施形態では、上記投与手順をロボットにより直接実施する。
【0233】
医薬組成物および注入溶液
本発明の医薬、例えばAAVベクターは、調剤して医薬組成物としてもよい。これらの組成物は、該医薬に加えて、製薬上許容しうる担体、希釈剤、賦形剤、緩衝剤、安定剤または当分野で周知の他の物質を含んでいてもよい。かかる物質は、毒性のないものとすべきであり、また活性成分の効果を妨げるべきではない。前記担体または他の物質の正確な性質は、投与の経路、例えば網膜下注入、直接網膜注入、脈絡膜上注入または硝子体内注入に応じて当業者が決定することができる。
【0234】
前記医薬組成物は、典型的には液体形態である。液体医薬組成物は、通常は液体担体、例えば、水、石油、動物油もしくは植物油、鉱油または合成油を含む。生理食塩水、塩化マグネシウム、デキストロースもしくは他の糖類溶液、またはグリコール類、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールが含まれていてもよい。場合によっては、界面活性剤、例えばプルロン酸(PF68)0.001%を使用してもよい。
【0235】
罹患部位での注入の場合、前記活性成分は、発熱物質を含まず、かつ適切なpH、等張性および安定性を有する水溶液の形態であってもよい。当業者であれば、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液または乳酸加リンゲル液などの等張溶媒を使用して適切な溶液を上手く調製することができる。防腐剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤および/または他の添加剤を必要に応じて含めてもよい。
【0236】
遅延放出の場合、前記医薬を、持続放出のために調剤した医薬組成物、例えば生体適合性ポリマーから形成したマイクロカプセルまたは当分野で公知の方法によるリポソーム担体システムに含めてもよい。
【0237】
治療の方法
本発明との関連において、予防への言及は、より一般的には予防的治療を連想させるが、治療に関する本明細書中での言及は全て、治癒的、姑息的および予防的治療を含むことが理解されよう。治療には疾患の重症度の進行を阻止することも含まれる場合がある。
【0238】
哺乳動物、特にヒトの治療が好ましい。とは言え、ヒトおよび動物の治療はいずれも本発明の範囲内にある。
【0239】
変異体、誘導体、類似体、相同体およびフラグメント
本明細書中に記載した特定のタンパク質およびヌクレオチドに加えて、本発明はその変異体、誘導体、類似体、相同体およびフラグメントの使用もまた包含する。
【0240】
本発明との関連においては、任意の所与の配列の変異体は、その特定の配列の残基(アミノ酸残基または核酸残基)が、問題のポリペプチドまたはポリヌクレオチドが実質的にその機能を保持するように修飾されている配列である。変異体配列は、天然に存在するタンパク質中に存在する少なくとも1つの残基の付加、欠失、置換、修飾、交換(replacement)および/または変異により取得することができる。
【0241】
本明細書中で使用する用語「誘導体」は、本発明のタンパク質またはポリペプチドに関しては、その配列からの、またはその配列への1つ(またはそれ以上)のアミノ酸残基の任意の置換、変異、修飾、交換、欠失および/または付加を含むが、結果として生じるタンパク質またはポリペプチドは、その内因性機能のうちの少なくとも1つを実質的に保有しているものとする。
【0242】
本明細書中で使用する用語「類似体」は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関しては、任意の模倣物、すなわち、模倣されるポリペプチドまたはポリヌクレオチドの内因性機能のうちの少なくとも1つを保有する化学化合物を含む。
【0243】
典型的には、アミノ酸置換は、例えば1、2もしくは3~10個または20個の置換としてもよいが、その修飾された配列は、所要の活性または能力を実質的に保持しているものとする。アミノ酸置換は、天然には存在しない類似体の使用を含んでいてもよい。
【0244】
本発明に使用するタンパク質は同様に、サイレント変化を生じて機能的に同等のタンパク質をもたらすアミノ酸残基の欠失、挿入または置換を有していてもよい。計画的なアミノ酸置換は、その内因性機能が保持される限りは、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性という点での類似性に基づいて実施することができる。例えば、負の電荷をもつアミノ酸にはアスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれ、正の電荷をもつアミノ酸にはリジンおよびアルギニンが含まれ、また同様の親水性値を有する非荷電極性頭部基をもつアミノ酸にはアスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニンおよびチロシンが含まれる。
【0245】
保存的置換は、例えば下記表に従って実施することができる。2列目の同一ブロック内のアミノ酸、および好ましくは3列目の同一行内のアミノ酸は、互いに置換することができる:
【0246】
本明細書中で使用する用語「相同体(ホモログ)」は、野生型アミノ酸配列および野生型ヌクレオチド配列と一定の相同性を有する物質を意味する。用語「相同性」は、「同一性」と同等とみなすことができる。
【0247】
相同配列は、対象配列と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%または90%同一、好ましくは少なくとも95%または97%または99%同一でありうるアミノ酸配列を含みうる。典型的には、前記相同体は対象アミノ酸配列と同じ活性部位等を含む。相同性を類似性(すなわち類似した化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)の点から考えることもできるが、本発明との関連においては、相同性を配列同一性の点から表現することが好ましい。
【0248】
相同配列は、対象配列と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%または90%同一、好ましくは少なくとも95%または97%または99%同一でありうるヌクレオチド配列を含みうる。相同性を類似性の点から考えることもできるが、本発明との関連においては、相同性を配列同一性の点から表現することが好ましい。
【0249】
好ましくは、本明細書中で詳述する配列番号のうちのいずれか1つに対してパーセント同一性を有する配列と言う時は、言及した配列番号の全長にわたって記載したパーセント同一性を有する配列を指す。
【0250】
相同性比較は、目視で、またはより一般的には、容易に入手可能な配列比較プログラムを用いて実行することができる。これらの市販のコンピュータープログラムは、2つ以上の配列間のパーセント相同性またはパーセント同一性を算出することができる。
【0251】
パーセント相同性は、連続した配列に対して算出してもよい、すなわち、ある配列を他の配列と整列させて、ある配列中の各アミノ酸を他の配列中の対応アミノ酸と一度に1残基ずつ直接比較する。これは「ギャップのない」アラインメントと呼ばれている。典型的には、かかるギャップのないアラインメントは、比較的少ない数の残基に対してのみ実施する。
【0252】
これは非常に単純で一貫した方法であるが、例えば、他の点では同一である配列対において、ヌクレオチド配列中の1つの挿入または欠失により次に続くコドンがアラインメントから排除される場合があり、従ってグローバルアラインメントを実施するとパーセント相同性の大幅な減少が生じる可能性があるということを考慮していない。その結果、大抵の配列比較方法は、全体の相同性スコアに過度にペナルティーを与えることなく考えうる挿入および欠失を考慮した最適なアラインメントを生成するように設計される。これは、配列アラインメントに「ギャップ」を挿入して局地的相同性を最大化しようと試みることにより達成される。
【0253】
しかし、これらのより複雑な方法は、同じ数の同一アミノ酸に関して、可能な限り少ないギャップ(2つの比較配列間のより高い関連性を反映する)を有する配列アラインメントが多くのギャップを有する配列アラインメントより高いスコアを達成するように、アラインメントに生じる各ギャップに「ギャップペナルティー」を割り当てる。典型的には、ギャップの存在に対して比較的高いコストを課し、該ギャップ中のその後の各残基に対してより小さいペナルティーを課す「アフィンギャップコスト」を使用する。これは最も一般的に使用されるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティーは、当然ながら、より少ないギャップを含む最適化されたアラインメントを生成する。殆どのアラインメントプログラムは、ギャップペナルティーを修正できる。しかし、配列比較のためにかかるソフトウェアを使用する場合は、デフォルト値を使用することが好ましい。例えばGCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する場合、アミノ酸配列のデフォルトギャップペナルティーは、ギャップについては-12であり、各伸長については-4である。
【0254】
最大パーセント相同性の算出は、それ故に、第1にギャップペナルティーを考慮した最適なアラインメントの生成を必要とする。かかるアラインメントを実行するための適切なコンピュータープログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin, U.S.A.;Devereuxら (1984) Nucleic Acids Res. 12:387)である。配列比較を実施できる他のソフトウェアの例としては、比較ツールのBLASTパッケージ(Ausubelら (1999) ibid - Ch. 18を参照されたい)、FASTA(Atschulら (1990) J. Mol. Biol. 403-410)およびGENEWORKS総合ソフトウェアパッケージが挙げられるが、これらに限定されない。BLASTおよびFASTAは共に、オフラインおよびオンライン検索に利用可能である(Ausubelら (1999) ibid, pages 7-58 to 7-60を参照されたい)。しかし、一部の適用については、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。BLAST 2 Sequencesと称される別のツールもまた、タンパク質およびヌクレオチド配列の比較に利用できる(FEMS Microbiol. Lett. (1999) 174:247-50;FEMS Microbiol. Lett. (1999) 177:187-8を参照されたい)。
【0255】
最終的なパーセント相同性は同一性の点から測定できるが、アラインメントプロセス自体は、典型的には、全か無かの対比較に基づくものではない。その代わりに、スコアを化学的類似性または進化距離に基づく各ペアワイズ比較に割り当てる、スケール変換(scaled)類似性スコア行列を通常は使用する。一般的に使用されるかかる行列の例は、BLOSUM62行列(BLAST総合ソフトウェアパッケージのプログラム用のデフォルト行列)である。GCG Wisconsinプログラムは、通常は、パブリックデフォルト値、またはカスタムシンボル比較表(custom symbol comparison table)が供給されていればこれを使用する(さらなる詳細についてはユーザーマニュアルを参照されたい)。一部の適用については、GCGパッケージにはパブリックデフォルト値を、または他のソフトウェアにはBLOSUM62などのデフォルト行列を使用することが好ましい。
【0256】
前記ソフトウェアにより最適なアラインメントが生成されれば、パーセント相同性、好ましくはパーセント配列同一性を算出することが可能である。前記ソフトウェアは、典型的には、配列比較の一環としてこれを行い、数値結果をもたらす。
【0257】
全長I因子またはH因子の「フラグメント」もまた変異体であり、該用語は典型的には、機能的に、または例えばアッセイにおいて重要なポリペプチドまたはポリヌクレオチドの選択領域を指す。従って、「フラグメント」は、全長ポリペプチドまたは全長ポリヌクレオチドの一部であるアミノ酸配列または核酸配列を指す。
【0258】
かかる変異体は、標準的な組換えDNA技術、例えば部位特異的突然変異誘発を利用して調製してもよい。挿入を行う場合は、挿入部位の両側の天然に存在する配列に対応する5'および3'隣接領域と共に挿入物をコードする合成DNAを作製してもよい。該隣接領域は、天然に存在する配列中の部位に対応する都合のよい制限部位を含有しており、そのため該配列を適当な酵素(複数可)で切断し、合成DNAを該切断部に連結することができる。該DNAをその後本発明に従って発現させることにより、コード化タンパク質を作製する。これらの方法は、DNA配列を操作するための当分野で公知の多くの標準的技術の単なる例示であって、他の公知技術も同様に利用可能である。
【0259】
本発明の種々の好適な特徴および実施形態を、本明細書中に非限定例として記載する。
【0260】
本発明の実践には、特に指示しない限り、化学、生化学、分子生物学、微生物学および免疫学の従来の技術を用いるが、これらは当業者の能力の範囲内である。かかる技術は文献で説明されている。例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F.およびManiatis, T. (1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel, F.M.ら (1995および定期増刊) Current Protocols in Molecular Biology, Ch. 9, 13および16, John WileyおよびSons;Roe, B., Crabtree, J. およびKahn, A. (1996) DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques, John WileyおよびSons;Polak, J.M.およびMcGee, J.O’D (1990) In Situ Hybridization:Principles and Practice, Oxford University Press;Gait, M.J. (1984) Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach, IRL Press;ならびにLilley, D.M.およびDahlberg, J.E. (1992) Methods in Enzymology:DNA Structures Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA, Academic Pressを参照されたい。これらの一般テキストは、各々が参照により本明細書中に組み込まれるものとする。
【実施例0261】
(実施例1)
ヒトCFI cDNAのクローニング、およびCBA-CFI-WPRE発現カセットの作成、pAAV-CBA-CFI-WPRE-bGHpAの構築およびAAV-CFIウイルスのパッケージング
最も一般的なヒトCFI配列変異体のcDNAを、Genbankからアクセッション番号NM_000204.4でダウンロードした。該cDNAは配列番号2の配列を有しており、Integrated DNA TechnologiesにgBlocks(登録商標) Gene Fragmentsとして注文した。第2のCFI構築物(そのCFI遺伝子のcDNA配列は、ヒト細胞における発現のためにコドンが最適化されている)も同様に注文した。このコドン最適化配列(「CFIco」)は配列番号8の配列を有しており、GeneWizに注文した(プラスミドpUC57中のCFIco)。
【0262】
これらのcDNA配列を、pAMと称されるpAAVシスプラスミドに挿入した。pAMは、元々はpBR322に由来する高コピー数プラスミドであるが、最適な発現カセットに隣接する安定化AAV-2左および右逆方向末端反復配列を含む。AAV-CFIおよびAAV-CFIcoベクターの場合、改変CBA/CAGプロモーター(CMVエンハンサーを有するニワトリβアクチン;本明細書中では「CBA」と記載する)を使用することによりCFIおよびCFIcoの発現を駆動し、修飾WPRE配列およびbGH polyAをこのcDNAの3’に供給した。これら2つのプラスミドをpAAV2.CBA-hCFI-WPRE-bGH(pAAV-CFI)、およびpAAV2.CBA-hCFIco-WPRE-bGH(pAAV-CFIco)と命名した。
【0263】
図2は、CFIおよびCFIcoの制限消化物のアガロースゲルを示している。CFIの1752 bpのバンドを切り出し、pAAV-CBA-WPRE-bGHpA骨格にクローニングした。
【0264】
pAAV.CFIとpAAV.CFIcoのCFI発現レベルの比較、ARPE-19細胞株のpAAV-CFIまたはpAAV.CFIcoおよびpCMV.GFPによるコトランスフェクション、ならびにCFIのイムノブロッティング ARPE-19(ATCC(登録商標) CRL-2302(商標))は、自動車事故で頭部外傷により死亡した19歳男性の正常眼から、Amy Aotaki-Keenにより1986年に得られた自然発生的網膜色素上皮(RPE)細胞株である。これらの細胞は安定した接着単層を形成し、該単層は低い血清中濃度で培地中のラミニンコートTranswell-COLフィルター上に蒔くと形態的極性化を呈する。ARPE-19細胞はAmerican Type Culture Collection (ATCC)から入手した。細胞を、10%熱不活性化ウシ胎仔血清(Gibco)、1% 200mM L-グルタミン(Sigma Aldrich)および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma Aldrich, 10,000単位のペニシリン、10mgのストレプトマイシン/mL)を追加したDMEM/F12(Thermo Fisher Scientific)で増殖させた。
【0265】
ARPE-19のコトランスフェクションは、Lipofectamine LTX (Life Technologies)を使用し、製造業者のプロトコルに従って実施した。0.5μgのpAAV-CFIまたはpAAV.CFIcoを0.5μgのpCMV.GFP(Plasmid Factory)とコトランスフェクトした。pAAV-CBA-WPRE-bGHpA(pAAV[導入遺伝子カセット不含])のコトランスフェクションは陰性対照としての役割を果たした。トランスフェクションの24時間後、細胞をPBS(リン酸緩衝生理食塩水、pH 7.2、Gibco(商標))で洗浄し、無血清増殖培地で72時間培養した。上清を採取し、遠心分離により清澄化してから-80℃で保存した。ARPE-19細胞をTrypLE Express(Gibco)で剥離し、ウェル当たりの細胞の数が等しいことを保証するために計数した。ペレットを-20℃で30分間凍結した。cOmplete(商標)EDTA-free Protease Inhibitor Cocktail(Roche)を追加した1xRIPA溶解バッファー(Merck Millipore)を該ペレットに添加し、細胞を超音波により破砕した。不溶性タンパク質を遠心分離により沈降させてから、上清(=溶解物)を-80℃で保存した。
【0266】
CFIのイムノブロッティングは、4x Laemmli緩衝液(250mM Tris-HCl(pH 6.8)、8%SDS、40%グリセロール、および0.02%ブロモフェノールブルー)中30μLの無希釈上清の負荷、ならびに10%プレキャストポリアクリルアミドゲル(Bio-Rad)上でのタンパク質の分離により実施した。タンパク質をセミドライ式転写によりPVDF膜(Bio-Rad)にブロットし、その後該膜をブロッキングバッファー(1xTBS pH 8 [Sigma]、0.05%Tween-20および5%脱脂粉乳末[Marvel])でブロックした。CFIを、ブロッキングバッファーで希釈したOX21(表1)および抗-マウスIgG HRP結合抗体(表1)を用いて検出した。タンパク質のバンドをClarity Western ECL Substrate (Bio-Rad)を使用して可視化し、Odyssey(登録商標) Fc Imaging Systemを用いて分析した。GFPのイムノブロッティングは、50μL/mLのβ-メルカプトエタノールを追加した4x Laemmli緩衝液中5μLの無希釈上清を負荷することにより実施した。イムノブロットは先に記載した通りに実施した。GFPはTurboGFPに対する抗体(表1)および抗-ウサギIgG HRP結合抗体(表1)を用いて検出した。
【0267】
【0268】
図3は、CFIのイムノブロッティング(
図3A)およびGFPのイムノブロッティング(
図3B)を示している。3A:CFIは70kDaのバンド(非還元)として出現し、ARPE-19のpAAV.CFIまたはpAAV.CFIcoによるトランスフェクション後に等しい比率で発現された。pAAVによるトランスフェクション後にはCFIは発現されなかった。10%正常ヒト血清(NHS)はCFIイムノブロッティング用の陽性対照として使用した。3B:トランスフェクション効率を、ARPE-19細胞のpCMV.GFPによるコトランスフェクションにより分析した。GFPは30kDaのバンドとして出現し、またこのイムノブロットにより、細胞が同様の効率でトランスフェクトされたことを確認した。
【0269】
AAV.CFIおよびAAV.CFIcoの調製
AAV2ウイルスは、HEK-293(ATCC(登録商標)CRL-1573(商標))細胞株またはHEK-293T(ATCC(登録商標)CRL-3216(商標))細胞株(共に接着性)の、pAAV.CFIまたはpAAV.CFIcoおよびアデノウイルスのヘルパー配列とパッケージング配列(Rep/Cap)を提供するpDG(Plasmid Factory)による二重トランスフェクションにより調製した。HEK-293細胞およびHEK-293T細胞を、10%熱不活性化ウシ胎仔血清(Gibco)、1% 200mM L-グルタミン(Sigma Aldrich)および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma Aldrich, 10,000単位のペニシリン、10mgのストレプトマイシン/mL)を追加したDMEM(Sigma)で増殖させた。細胞を72時間後に採取して溶解することによりウイルス粒子を精製した。AAV粒子はイオジキサノール勾配で精製し、40%画分から回収した。ウイルスはAmicon Ultra-15遠心式フィルターユニット(Merck Millipore)で濃縮し、等分して-80℃で保存した。ウイルスの純度はSDS PAGEにより評価し、その力価はqPCRにより測定した。
【0270】
AAV.CFI、AAV.CFIcoおよびAAV.GFPのin vitro発現解析、HEK-293およびARPE-19細胞株の形質導入、CFI発現を解析するための組織培養上清のイムノブロット
70%コンフルエントなHEK-293(「293」)細胞株およびARPE-19細胞株に、1%熱不活性化ウシ胎仔血清のみを追加した正常増殖培地中、1×104の感染多重度(MOI)でAAV.CFI、AAV.CFIcoおよびAAV.GFPを用いて形質導入した。7日後、上清を採取して遠心分離により清澄化した。上清は等分して-80℃で保存した。
【0271】
イムノブロッティングを先に記載した通りに実施し、30μLの上清を4x Laemmli緩衝液と混合してから10%プレキャストポリアクリルアミドゲルに負荷した。CFIは、ブロッキングバッファーで希釈したOX21(表1)および抗-マウスIgG HRP結合抗体(表1)(上清を非還元条件下で負荷した場合)、またはヒトCFIに対する抗血清(表1)および抗-ヤギIgG(全分子)-ペルオキシダーゼ抗体(表1)(上清を還元条件下で負荷した場合)を用いて検出した。
【0272】
図4は、ウイルスで形質導入したHEK-293細胞株およびARPE-19細胞株の上清中のCFIのイムノブロッティングを示している。4A:上清を非還元条件下で負荷し、ヒトCFIに対するマウスモノクローナル抗体(OX21, Thermo Fisher Scientific)およびロバ抗-マウスIgG HRP結合抗体(Abcam)を用いてCFIを検出した。CFIおよびCFIcoは両細胞株において発現された。細胞株のAAV.GFPによる形質導入は陰性対照としての役割を果たし、一方0.5μgの血漿精製ヒトCFI(本明細書中では「CFIpl」と記載する)(Comptech)は陽性対照としての役割を果たした。4B:上清を還元条件下で負荷し、ヒトCFIに対するヤギ抗血清(Comptech)およびウサギ抗-ヤギIgG(全分子)-ペルオキシダーゼ抗体(Sigma)を用いてCFIを検出した。CFIは80kDa(プロ酵素)、50kDa(プロセシング後;重鎖)および35kDa(プロセシング後;軽鎖)で出現した。AAV.GFPは陰性対照としての役割を果たし、一方0.5μgの血漿精製ヒトCFI(Comptech)および10%正常ヒト血清(本明細書中では「NHS」と記載する)は陽性対照としての役割を果たした。CFIおよびCFIcoは両細胞株において発現された。
【0273】
CFI発現の定性分析、機能活性を測定するためのC3b切断アッセイ
定性分析のために、CFIを、Pierce Co-Immunoprecipitation(Co-IP) Kit(Thermo Fisher Scientific)を使用し、製造業者のプロトコルに従って免疫沈降させた。30μgのヒトCFIに対するアフィニティー精製モノクローナル抗体(Ox21、Thermo Fisher Scientific)を、25μLのAminoLink Plus Coupling Resinと共に室温で2時間インキュベートした。HEK-293形質導入細胞またはARPE-19形質導入細胞の上清をこの調製した樹脂と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、樹脂を用意されたIP Lysis/Wash Bufferを使用して数回洗浄した。結合したCFIを、前記キットの溶出バッファー(0.1Mグリシン、pH 2.7)で溶出させた後、直ちに1M Tris, pH 9.5で中和した。CFIの免疫沈降は、280nmにおける吸光度を測定することにより、またSDS PAGE分析により、評価した。CFIはC3b切断アッセイに直接使用するか、または等分して-80℃で保存した。
【0274】
C3b切断アッセイでは、1 mgの血漿精製C3bを、0.5μgの血漿精製補体H因子(CFH)および血漿精製補体I因子(CFIpl)(全ての血漿精製タンパク質はComptechから入手した)、AAV.CFI形質導入細胞の細胞培養上清または免疫沈降CFI/CFIcoと共に、37℃で1時間インキュベートする。β-メルカプト-エタノールを含む4x Laemmli緩衝液を添加して反応を停止させる。サンプルを希釈し、10%プレキャストポリアクリルアミドSDS PAGEゲル(Bio-Rad)に負荷した。PVDF膜(Bio-Rad)への転写ならびにブロッキングバッファー(1×TBS pH 8 [Sigma]/0.05%Tween-20および5%脱脂粉乳末[Marvel])でのブロッキング後に、C3b切断を、ビオチン化クローン9(表1)およびExtravidin-HRP結合(表1)を用いて検出した。この抗体はC3gのエピトープと反応し、また還元SDS PAGEではC3のα鎖、C3bのα’鎖、iC3bのC3α’1-鎖およびC3dgを認識する。そのため、該抗体は、CFIによるC3bの分解を分析するために使用することができる。CFHはC3b分解に対する補因子としての役割を果たし、また本アッセイは低イオン強度で行うため、CFHはiC3bのC3dgへの第2切断に対する補因子としての役割も果たす。使用した緩衝液は、1M Tris, pH 9.5で中和したPierce Co-Immunoprecipitation(Co-IP) Kit (Thermo Fisher Scientific)の「溶出バッファー」であった。
【0275】
図5は、C3b切断アッセイの代表的な結果を示している。レーン1はCFHのみと共にインキュベートしたC3bを示している。レーン2は、CFHおよびCFIplと共にインキュベートしたC3bを示している。C3bはCFIplにより分解されてiC3bおよびC3dgとなる。レーン3は、CFH、およびAAV.CFIを用いて形質導入したHEK-293から得た上清と共にインキュベートしたC3bを示している。レーン4~5は、CFH、およびAAV.CFI(レーン4)またはAAV.CFIco(レーン5)を用いて形質導入したARPE-19細胞から免疫沈降させたCFI(「IP CFI」と示す)と共にインキュベートしたC3bを示している。レーン6~7は、CFH、およびAAV.CFI(レーン6)またはAAV.CFIco(レーン7)を用いて形質導入したHEK-293から免疫沈降させたCFIと共にインキュベートしたC3bを示している。形質導入細胞株から分泌されたCFIは機能的に活性であり、C3bのα鎖を切断してiC3bにする。CFIの免疫沈降は総CFI量の増加をもたらし、これはiC3bのα’1フラグメントバンドに加えてC3dgのバンドが出現することに反映されている。この第2切断は低イオン強度かつ低率でのみ生じるので、より多くのCFIが存在する必要がある。
【0276】
透過性トランスウェルフィルター上で増殖させた形質導入ARPE-19におけるCFI発現のin vitro解析
RPE細胞は、低い血清中濃度で培地中のラミニンコートTranswell-COLフィルター上に蒔くと形態的極性化を呈する、色素を有する非分裂細胞である。該Transwellフィルター(ポリエステル膜インサート、細孔直径0.4μm、膜直径12 mm)は、培養ウェルを2つのコンパートメント(RPE単層の網膜に面した側に対応する頂端(上)部とRPE単層の脈絡膜に面した側に対応する側底(下)部)に分ける働きをしている。低血清培地条件下に置くと、ARPE-19細胞は分化し、六角形で色素の少ない細胞になる。このトランスウェルモデルを利用することにより、休止細胞における発現を評価し、in vivoの状況を反映させることができる。
【0277】
トランスウェルを8μg/mLのラミニン(Sigma)でコーティングし、ARPE-19細胞をトランスウェル上の単層として10%FBS培地に播種した。48時間後に培地を1%FBS培地に変更し、細胞にMOI 105/細胞(AAV.CFI、AAV.CFIcoおよびAAV.GFP)で形質導入した。7日後に上清を両コンパートメントから採取し、遠心分離により清澄化した。上部と下部のコンパートメントの容量が異なる、すなわち上部コンパートメントには500μLの培地、下部コンパートメントには1500μLの培地があるため、上清を総容量に対して正規化して分析した:下部コンパートメントから得た30μLの上清を4x Laemmli緩衝液と混合し、かつ上部コンパートメントから得た10μLの上清を4x Laemmli緩衝液と混合した。サンプルを10%プレキャストポリアクリルアミドゲルに負荷した。CFIは、ブロッキングバッファーで希釈したOX21(表1)および抗-マウスIgG HRP結合抗体(表1)を用いて検出した。核染色のために、細胞をPBS(Gibco)で2回洗浄し、PBS中4%パラホルムアルデヒド(Sigma)で15分間固定し、さらにPBS中1%BSA(Thermo Fisher Scientific)-0.1%Triton X-100(Sigma)で45分間透過処理を行った。Hoechst(Thermo Fisher Scientific)を透過処理バッファー中1:5000で15分間インキュベートし、核染色について評価した。
【0278】
図6は、トランスウェルで培養したARPE-19細胞から分泌されたCFIのイムノブロッティングを示している。細胞は六角細胞に分化しなかったが、該細胞を細胞のコンフルエントな単層として培養し、1%血清培地の添加により細胞分裂を最低限に抑えた。6A:両コンパートメントから得た上清を非還元条件下で負荷し、CFIに対するマウスモノクローナルを使用してウェスタンブロット分析を実施した(Ap=頂端コンパートメントおよびBl=側底コンパートメント)。CFIが細胞のコンフルエントな単層から発現されていること、および分泌されたタンパク質が両コンパートメントにおいて検出されることが示されている。6B:核のHoechst染色を、細胞の単層の存在を確認するために実施した(染色は上清を採取した後に実施した)。
【0279】
AAV.CFIおよびAAV.CFIcoのin vivo発現解析、C57/Black 6マウスの網膜下注入、イムノブロッティング、qPCRおよび免疫組織化学によるCFI発現の解析
網膜下注入
8~10週齢の雌C57BL/6Jマウス(Charles River Laboratories)を全ての実験に使用した。本研究に使用した全ての動物は、UK Home Office Regulationsに従い、プロジェクトライセンス30/3363の下で人道的に取り扱った。マウスを12:12時間の明/暗サイクルで維持した。
【0280】
マウスを滅菌生理食塩水中のキシラジン(10 mg/kg)/ケタミン(80 mg/kg)混合物を用いて麻酔し;瞳孔を塩酸フェニレフリン(2.5%)およびトロピカミド(1%)を用いて散大させた。塩酸プロキシメタカイン(0.5%)点眼液を、追加の局所麻酔のために使用した。網膜下注入に先立って、滅菌した33Gの針(TSK Laboratory)およびカルボマーゲル(Viscotears, Novartis Pharmaceuticals Ltd)を使用して前房穿刺を実施し、小さな円形のガラス製カバースリップを使用することにより眼底の良好な可視化を達成した。前記注入は、10μL NanoFilシリンジおよび35Gの斜角を付けたNanoFilニードル(World Precision Instruments Ltd)を使用し、後部網膜を通して実施した。滅菌生理食塩水中のアチパメゾール(2mg/kg)を用いて麻酔から回復させた。
【0281】
マウスに2つの異なる用量(107ゲノムコピー[gc]/眼および108gc/眼)で2種のAAV構築物(AAV.CFIおよびAAV.CFIco)を注入した。3匹のマウスに第3の用量である109gc/眼のAAV.CFIcoを注入し;これらのマウスをイムノブロットの較正のために使用した。ウイルスをPBS(Gibco)中の0.001%PF68(Gibco)で希釈し、前記と同一の希釈剤を使用してシャム(sham)注入を実施した。1条件当たり12個の眼に網膜下注入を行った。
【0282】
CFIのイムノブロッティング用の組織サンプルの調製
マウスを注入の4週間後に頸椎脱臼により犠牲にした。眼を取り出し、次のように調製した。解剖顕微鏡を使用して角膜に切り込みを入れた。眼を角膜/虹彩(前部)、水晶体、および後部眼杯に分けた。全眼杯サンプルに関しては、後部眼杯を滅菌チューブに入れた。一部の眼に関しては、網膜およびRPE/脈絡膜/強膜を、このRPE/脈絡膜/強膜複合物から網膜を穏やかに剥がすことにより分離した。1条件当たり3匹のマウスのサンプルをプールしたが(
図7A)、2匹のマウスのサンプルをプールして非注入対側眼と比較した、10
9gc/眼のAAV.CFIcoを注入した眼(
図7B)は除外した。全サンプルを直ちにドライアイス上に置いてタンパク質分解を阻止し、-80℃で維持した。イムノブロッティングに関しては、サンプルをcOmplete(商標)EDTA-free Protease Inhibitor Cocktail(Roche)を追加した1xRIPA溶解バッファー(Merck Millipore)でホモジナイズし、細胞を乳鉢および乳棒により、ならびに超音波により、機械的に破壊した。不溶性タンパク質を遠心分離により沈降させてから、上清を等分して-80℃で保存した。タンパク質濃度をPierce BCA Protein Assay Kit (Thermo Fisher Scientific)を使用して決定し、40μgのタンパク質溶解物を4x Laemmli緩衝液(250mM Tris-HCl(pH 6.8)、8%SDS、40%グリセロール、および0.02%ブロモフェノールブルー)に入れた。タンパク質を10%プレキャストポリアクリルアミドゲル(Bio-Rad)で分離した。タンパク質をセミドライ式転写によりPVDF膜(Bio-Rad)にブロットし、その後該膜をブロッキングバッファー(1xTBS pH 8 [Sigma]、0.05%Tween-20および5%脱脂粉乳末[Marvel])でブロックした。CFIは、a)還元:ヒトCFIに対する抗血清(表1)および抗-ヤギIgG-HRP結合(表1)、またはb)非還元:ブロッキングバッファーで希釈したOX21(表1)およびロバ抗-マウスIgG HRP結合抗体(Abcam)を用いて検出した。β-アクチンの検出に関しては、前記膜を、Restore Western Blot Strip
ping Buffer (Thermo Fisher Scientific)を使用してストリッピングし、ブロッキングバッファーで希釈した抗-β-アクチン(表1)および抗-マウスIgG HRP結合抗体(表1)を使用して再検出した。あるいは、マウス抗-β-アクチン抗体を、CFIに対するヤギ抗血清と組み合わせて使用した。
【0283】
図7は、イムノブロッティングにより分析した、プールしたサンプルのCFIタンパク質発現を示している。CFIは全ての用量において、AAV.CFIとAAV.CFIcoの両方から検出可能なレベルで発現される。β-アクチンを負荷対照として負荷した。7A:40μgのタンパク質溶解物を還元条件下で負荷し、CFIを、ヒトCFIに対するポリクローナルヤギ抗血清を用いて検出した。CFIは80kDa(プロ酵素)、50kDa(プロセシング後;重鎖)および35kDa(プロセシング後;軽鎖)として検出される。これらのバンドは予想されたCFIのサイズと一致しており、プロセシング、すなわち重鎖および軽鎖の存在を裏付けている。7B:10
9gc/眼のAAV.CFIcoを注入した眼または非注入眼の溶解物サンプルに関して、同量のタンパク質溶解物を同様に負荷した。CFIを、CFIに対するマウスモノクローナル(左、非還元ゲル)およびCFIに対するヤギ抗血清(右、還元ゲル)を用いて検出した。非還元ゲル(左)では、CFIが注入動物において75kDaのバンドとして検出され、非注入眼においてはバンドは検出されない。還元ゲル(右)では、CFIは80kDa(プロ酵素)、50kDa(プロセシング後;重鎖)および35kDa(プロセシング後;軽鎖)として出現する。
【0284】
遺伝子発現解析用の組織サンプルの調製
マウスを先に記載したように犠牲にし、後部眼杯を無傷のまま維持するか、または網膜およびRPEを先に記載した通りに分離した。組織サンプルを直ちにRNALater (Thermo Fisher Scientific)を含有する滅菌チューブに入れた。さらなる処理までサンプルを4℃で維持した。RNAをRNeasy Mini kit (Qiagen)を使用して単離し、組織をバッファーRLT (キットの付属品)中で乳鉢および乳棒を使用してホモジナイズした。RNase-free DNase (Qiagen)による補完処置を加えることで、ゲノムDNAが存在しないことを保証した。100 ngのRNAを、Superscript III First Strand Synthesis kit (Thermo Fisher Scientific)を使用してcDNAに逆転写した。逆転写後、反応をQIAquick PCR Purification Kit (Qiagen)を使用してクリーンアップした。qPCRを、CFX Connect(商標) Real-Time PCR Detection System (Bio Rad)を使用し、1条件(偽、CFI 107gc/眼、CFI 108gc/眼、CFIco 107gc/眼およびCFIco 108gc/眼)当たり1個の眼のcDNAに対して実行した。1.25 ngのcDNAを、1ウェル当たりにqPCR反応用の鋳型としてSYBR green master mix (iTaq Universal SYBR Green Supermix, Bio Rad)と共に使用した。各条件を3回ずつ実施した;Ct値は付属のソフトウェアを使用して取得した。ハウスキーピング遺伝子としてマウスβ-アクチンを用いる比較ΔΔCt解析を利用することにより、偽対照に対するCFIの相対発現を決定した。
【0285】
図8は、qPCRによる遺伝子発現解析を示している。予想通り、偽注入マウスではヒトCFIまたはCFIcoの発現は認められなかった。解析したのは1条件につき1つの眼だけであったため、統計解析は実施できなかった。CFIは両AAV構築物から発現され、また発現は明らかにRPEで主に生じるが、10
8gc/眼の注入は網膜組織においてCFI mRNA発現の増加をもたらす。眼杯サンプルでは、総眼杯mRNAに対するCFI mRNAの量はRPE単独の場合より少ないと予想されるが、これは眼の多くの領域がCFIの発現を示さないからである;このことは、この結果に反映されている。
【0286】
免疫組織化学用の網膜切片の調製
マウスを頸椎脱臼により犠牲にした(注入の4週間後)。眼を取り出し、次の通りに調製した。鋸状縁のすぐ後ろに孔を作製し、眼球を0.12 M リン酸緩衝液、pH 7.2中の4%(w/v)パラホルムアルデヒド中に室温で1時間置いた。本発明者らは次に、前部および水晶体を除去し、切片または全組織標本のために眼を調製した。切片のために使用した眼杯は、0.12 Mリン酸緩衝液、pH 7.2中のショ糖の濃度を上昇させながら(10%を室温で1時間、および30%を+4℃で一晩)凍結保存し、OCT(Tissue-tek, Sakura Finetek USA inc, Ca, USA)に包埋し、型に入れて-80℃で凍結させた。切片をクリオスタットで10μmの厚さで切り、ガラススライド(Super-Frost, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)に載せた。該スライドを室温で2時間風乾してから-80℃で保存した。全組織標本のために使用した眼杯に関しては、網膜およびRPE/脈絡膜を、RPEから網膜を穏やかに剥がすことで分離し、PBS中+4℃で別々に保存した。
【0287】
免疫染色
切片は、PBSGT溶液(PBS中0.2%(w/v)ゼラチン、0.25%(v/v) Triton X-100)中室温で60分間のインキュベーションによりブロッキングおよび透過処理を行った。全組織標本は、PBS中の0.2%(w/v)ゼラチン、1.5%(v/v) Triton X-100中、室温で2時間のインキュベーションによりブロッキングおよび透過処理を行った。続いて、切片および全組織標本をPBSGT溶液で希釈した一次抗体(表1を参照されたい)と共に室温で一晩インキュベートした。PBST溶液(PBS中0.1%(v/v) Triton X-100)中で洗浄した後、切片および全組織標本を、1:5000の希釈度でAlexa Fluor594(Life Technologies, Thermo Fisher Scientific, Waltham, Massachusetts, USA)に結合した二次抗体と共にインキュベートし、PBSGT溶液中のDAPIを用いて室温で1.5時間染色した。このスライドをPBST溶液で洗浄し、続いて封入剤(Mowiol, Merck Millipore)を用いてカバーガラスを載せた(cover-slipped)。
【表2】
【0288】
図9は、偽、AAV.CFIおよびAAV.CFIco注入眼の網膜切片におけるフィブロネクチンおよびhCFIの局在を示している。フィブロネクチンは、異なる網膜層を識別するために共マーカー(co-marker)として使用している。AAV.CFIおよびAAV.CFIco注入眼の両方に関して、hCFIは幾つかのコンパートメントに局在する、すなわち、強膜(Scl)に若干、RPE、光受容体の外節(OS)および内節(IS)、外網状層(OPL)に強く、また神経節細胞層(GCL)および神経線維層(NFL)に推定上、局在する。GCL+NFLでは微弱なシグナルが偽注入眼に関して見られるが、これは前記抗体がこれらの層では完全には特異的でないことを示している。
【0289】
図10~13は、偽およびAAV.CFI注入眼の網膜切片に関する、hCFIが局在する種々の領域のより高い倍率を示している。AAV.CFIco注入眼の網膜切片に関して同じシグナルが観察されるが、それらは示さない。
【0290】
図10は、偽およびAAV.CFI注入眼の網膜切片に関する、RPE領域のより高い倍率を示している。hCFIはRPE層全体およびRPEの微絨毛に局在する。この染色は小胞状であり、このことはhCFIの分泌経路局在を示唆している。
【0291】
図11は、偽およびAAV.CFI注入眼の網膜切片に関する、光受容体領域のより高い倍率を示している。hCFIは光受容体の内節および外節に局在するが、該光受容体の核/小胞体領域には存在していなかった。
【0292】
図12は、偽およびAAV.CFI注入眼の網膜切片に関する、外網状層のより高い倍率を示している。hCFIは細胞体に局在しており、このことは、水平細胞の染色を示唆している。水平細胞マーカーの非存在下では、次の参考文献に、免疫組織化学では水平細胞における発現がどのようにして出現するかが示されている:Pocheら(2009), Development, 136:2141-51;Cuencaら (2010), Exp Eye Res., 91:273-85;Hoら (2012), PLoS One, 7:e29892。
【0293】
図13は、偽およびAAV.CFI注入眼の網膜切片に関する、神経節細胞層領域のより高い倍率を示している。AAV.CFI注入眼の網膜切片における、hCFI標識の神経線維層における強度は、偽注入眼の強度に対してより高いように見えるが、hCFIが神経線維層に局在しているかどうかを判定することは困難である。
【0294】
図14は、偽、AAV.CFIおよびAAV.CFIco注入眼のRPE全組織標本におけるフィブロネクチンおよびhCFIの局在を示している。AAV.CFIおよびAAV.CFIco注入眼のいずれに関しても、hCFIはRPE細胞に局在する。染色は分断されており、hCFIが処理される分泌経路の小胞に局在しているように見える。
【0295】
(実施例2)
AAV.CFIまたはAAV.CFIcoが光による網膜損傷を軽減するその能力のin vivo 機能アッセイ アルビノBALB/cマウスを、Animal Care Facilityにおいて、12時間明/12時間暗のサイクルのもと、餌および水を自由に摂取できる状態で飼育する。動物の目の高さでの環境光強度を85±18ルクスとする。全実験は、ARVO Statement for the Use of Animals in Ophthalmic and Vision Researchに従って実行し、また英国内務省の承認を受けている。
【0296】
地図状萎縮のモデル(Barbel Rohrer;Yao Guo;Kannan Kunchithapautham;Gary S. Gilkeson, Investigative OphthalmologyおよびVisual Science November 2007, Vol.48, 5282-5289)として、成体マウス(約1年齢)を光処置室に移動し、一晩暗順応させる。動物を、1ケージあたり2匹の動物とし、透明なアクリルガラス(Plexiglas;Rohm and Haas, Philadelphia, PA)ケージ内で、餌および水を自由に摂取できる状態で飼育する。該動物を、該ケージの約40 cm上に吊した2つの30-W電球型蛍光灯(T30T12-CW-RS;General Electric, Piscataway, NJ)により供給される1000ルクスの白色光に曝露することにより、光損傷を誘発する。光強度を照度計(Extech Instruments, Waltham, MA)を使用して測定することにより、全動物に等しい輝度が与えられることを保証する。この光量は、アルビノマウスにおいて2~3週間以内に杆体の数を1列まで減少させる。
【0297】
外網膜神経細胞の光による損失における補体I因子(CFI)の役割を調べるために、マウスに、網膜下経路を介してCFI-AAV.CFI(またはAAV.CFIco)、対照GFP-AAV.GFPまたは偽注入を施す。典型的には6~8匹のマウスのコホートを使用する。3~4週間のAAV曝露に続き、光による損傷を先に詳述した通りに開始する。2~3週間後、網膜電図検査(ERG)を実施する。動物をキシラジンおよびケタミン(それぞれ、20および80 mg/kg)を使用して麻酔し、瞳孔を1滴のフェニレフリンHCl(2.5%)および硫酸アトロピン(1%)を用いて散大させてから、遮光ファラデーケージ内の37℃に維持した加熱ブロックに入れる。Micron IV (Phoenix Labs)により提供されるERG装置を使用して光刺激を与える。光信号を、メカニカルシャッター、手動で操作した中性濃度、および500-nmバンドパスフィルターを用いて制御する。この刺激経路に与えられる10-msのフラッシュあたりの光強度は、3.0×105から3.0×1011光子/mm2まで0.3 log unitずつ変更することができる。暗順応網膜電図は、漸増する光強度のシングルフラッシュ刺激に応じ、3~5回の応答を平均して記録する。a波ピーク振幅はベースラインから最初の負側へ向かう電圧まで測定するが、b波ピーク振幅は該a波のトラフから正のb波のピークまでを測定する。ERGに続いて、マウスの眼を取得し、組織診のためにヘマトキシリンおよびエオシン染色を利用して処理し、網膜外顆粒層の厚さを定量化する。
【0298】
CFI-AAV.CFI/AAV.CFIco曝露を利用して代替補体経路の活性を低下させると、ERG機能が保持され、かつ外網膜神経細胞の損失が減少すると予想される。
【0299】
要約すると、アデノ随伴ウイルスは、代替補体経路の調節因子である補体I因子の持続発現を可能にするための有効な媒体である。AAVを介して送達されるCFIは、驚いたことに、活性なヒトRPE細胞とコンフルエントなヒトRPE細胞の両方において発現され、正確にプロセシングされ、かつ機能的に活性な形態で分泌されることが示された。これらのデータは、ヒトRPEが、CFIを機能的な形態で分泌するのに必要なプロタンパク質転換酵素を含有していることを示している。動物の翻訳実験では、CFI.AAVの網膜下送達は、マウスRPE細胞により産生された、機能的にプロセシングされた形態のhCFIの容易に検出可能な発現をもたらした。免疫染色もまた、マウス光受容体の欠損にもかかわらず、hCFIタンパク質の細胞内発現が該光受容体の内節および節領域に存在したことを示唆しており、このことは、RPEが分泌したhCFIが拡散し、脈絡膜-網脈という広範な領域において補体経路のその重要な調節性の役割を果たす可能性があることを示唆している。補体の調節不全を加齢黄斑変性と結び付けるデータを踏まえると、この新規治療アプローチは、この失明性の疾患の持続的な治療において中心的な役割を果たす可能性がある。
【0300】
上記明細書中で言及した全ての刊行物は、参照により本明細書中に組み込まれるものとする。記載した本発明のベクター、細胞、組成物、使用および方法の種々の改変および変更は、本発明の範囲および趣旨を逸脱することなく当業者には自明であろう。本発明を特定の好適な実施形態に関して記載してきたが、特許請求する本発明はかかる特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことは理解されよう。実際には、本発明を実施するために記載した様式の種々の修正は、生化学および生物工学または関連分野の当業者には明白であり、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるものとする。
【0301】
本開示は以下の配列情報を包含する。
SEQUENCE LISTING
<110> SYNCONA IP HOLDCO LIMITED
<120> Gene therapy
<130> PA24-404
<140> JP 2024-112812
<141> 2016-10-27
<150> GB 1519086.1
<151> 2015-10-28
<160> 9
<170> PatentIn version 3.5
<210> 1
<211> 583
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 1
Met Lys Leu Leu His Val Phe Leu Leu Phe Leu Cys Phe His Leu Arg
1 5 10 15
Phe Cys Lys Val Thr Tyr Thr Ser Gln Glu Asp Leu Val Glu Lys Lys
20 25 30
Cys Leu Ala Lys Lys Tyr Thr His Leu Ser Cys Asp Lys Val Phe Cys
35 40 45
Gln Pro Trp Gln Arg Cys Ile Glu Gly Thr Cys Val Cys Lys Leu Pro
50 55 60
Tyr Gln Cys Pro Lys Asn Gly Thr Ala Val Cys Ala Thr Asn Arg Arg
65 70 75 80
Ser Phe Pro Thr Tyr Cys Gln Gln Lys Ser Leu Glu Cys Leu His Pro
85 90 95
Gly Thr Lys Phe Leu Asn Asn Gly Thr Cys Thr Ala Glu Gly Lys Phe
100 105 110
Ser Val Ser Leu Lys His Gly Asn Thr Asp Ser Glu Gly Ile Val Glu
115 120 125
Val Lys Leu Val Asp Gln Asp Lys Thr Met Phe Ile Cys Lys Ser Ser
130 135 140
Trp Ser Met Arg Glu Ala Asn Val Ala Cys Leu Asp Leu Gly Phe Gln
145 150 155 160
Gln Gly Ala Asp Thr Gln Arg Arg Phe Lys Leu Ser Asp Leu Ser Ile
165 170 175
Asn Ser Thr Glu Cys Leu His Val His Cys Arg Gly Leu Glu Thr Ser
180 185 190
Leu Ala Glu Cys Thr Phe Thr Lys Arg Arg Thr Met Gly Tyr Gln Asp
195 200 205
Phe Ala Asp Val Val Cys Tyr Thr Gln Lys Ala Asp Ser Pro Met Asp
210 215 220
Asp Phe Phe Gln Cys Val Asn Gly Lys Tyr Ile Ser Gln Met Lys Ala
225 230 235 240
Cys Asp Gly Ile Asn Asp Cys Gly Asp Gln Ser Asp Glu Leu Cys Cys
245 250 255
Lys Ala Cys Gln Gly Lys Gly Phe His Cys Lys Ser Gly Val Cys Ile
260 265 270
Pro Ser Gln Tyr Gln Cys Asn Gly Glu Val Asp Cys Ile Thr Gly Glu
275 280 285
Asp Glu Val Gly Cys Ala Gly Phe Ala Ser Val Thr Gln Glu Glu Thr
290 295 300
Glu Ile Leu Thr Ala Asp Met Asp Ala Glu Arg Arg Arg Ile Lys Ser
305 310 315 320
Leu Leu Pro Lys Leu Ser Cys Gly Val Lys Asn Arg Met His Ile Arg
325 330 335
Arg Lys Arg Ile Val Gly Gly Lys Arg Ala Gln Leu Gly Asp Leu Pro
340 345 350
Trp Gln Val Ala Ile Lys Asp Ala Ser Gly Ile Thr Cys Gly Gly Ile
355 360 365
Tyr Ile Gly Gly Cys Trp Ile Leu Thr Ala Ala His Cys Leu Arg Ala
370 375 380
Ser Lys Thr His Arg Tyr Gln Ile Trp Thr Thr Val Val Asp Trp Ile
385 390 395 400
His Pro Asp Leu Lys Arg Ile Val Ile Glu Tyr Val Asp Arg Ile Ile
405 410 415
Phe His Glu Asn Tyr Asn Ala Gly Thr Tyr Gln Asn Asp Ile Ala Leu
420 425 430
Ile Glu Met Lys Lys Asp Gly Asn Lys Lys Asp Cys Glu Leu Pro Arg
435 440 445
Ser Ile Pro Ala Cys Val Pro Trp Ser Pro Tyr Leu Phe Gln Pro Asn
450 455 460
Asp Thr Cys Ile Val Ser Gly Trp Gly Arg Glu Lys Asp Asn Glu Arg
465 470 475 480
Val Phe Ser Leu Gln Trp Gly Glu Val Lys Leu Ile Ser Asn Cys Ser
485 490 495
Lys Phe Tyr Gly Asn Arg Phe Tyr Glu Lys Glu Met Glu Cys Ala Gly
500 505 510
Thr Tyr Asp Gly Ser Ile Asp Ala Cys Lys Gly Asp Ser Gly Gly Pro
515 520 525
Leu Val Cys Met Asp Ala Asn Asn Val Thr Tyr Val Trp Gly Val Val
530 535 540
Ser Trp Gly Glu Asn Cys Gly Lys Pro Glu Phe Pro Gly Val Tyr Thr
545 550 555 560
Lys Val Ala Asn Tyr Phe Asp Trp Ile Ser Tyr His Val Gly Arg Pro
565 570 575
Phe Ile Ser Gln Tyr Asn Val
580
<210> 2
<211> 1752
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 2
atgaagcttc ttcatgtttt cctgttattt ctgtgcttcc acttaaggtt ttgcaaggtc 60
acttatacat ctcaagagga tctggtggag aaaaagtgct tagcaaaaaa atatactcac 120
ctctcctgcg ataaagtctt ctgccagcca tggcagagat gcattgaggg cacctgtgtt 180
tgtaaactac cgtatcagtg cccaaagaat ggcactgcag tgtgtgcaac taacaggaga 240
agcttcccaa catactgtca acaaaagagt ttggaatgtc ttcatccagg gacaaagttt 300
ttaaataacg gaacatgcac agccgaagga aagtttagtg tttccttgaa gcatggaaat 360
acagattcag agggaatagt tgaagtaaaa cttgtggacc aagataagac aatgttcata 420
tgcaaaagca gctggagcat gagggaagcc aacgtggcct gccttgacct tgggtttcaa 480
caaggtgctg atactcaaag aaggtttaag ttgtctgatc tctctataaa ttccactgaa 540
tgtctacatg tgcattgccg aggattagag accagtttgg ctgaatgtac ttttactaag 600
agaagaacta tgggttacca ggatttcgct gatgtggttt gttatacaca gaaagcagat 660
tctccaatgg atgacttctt tcagtgtgtg aatgggaaat acatttctca gatgaaagcc 720
tgtgatggta tcaatgattg tggagaccaa agtgatgaac tgtgttgtaa agcatgccaa 780
ggcaaaggct tccattgcaa atcgggtgtt tgcattccaa gccagtatca atgcaatggt 840
gaggtggact gcattacagg ggaagatgaa gttggctgtg caggctttgc atctgtggct 900
caagaagaaa cagaaatttt gactgctgac atggatgcag aaagaagacg gataaaatca 960
ttattaccta aactatcttg tggagttaaa aacagaatgc acattcgaag gaaacgaatt 1020
gtgggaggaa agcgagcaca actgggagac ctcccatggc aggtggcaat taaggatgcc 1080
agtggaatca cctgtggggg aatttatatt ggtggctgtt ggattctgac tgctgcacat 1140
tgtctcagag ccagtaaaac tcatcgttac caaatatgga caacagtagt agactggata 1200
caccccgacc ttaaacgtat agtaattgaa tacgtggata gaattatttt ccatgaaaac 1260
tacaatgcag gcacttacca aaatgacatc gctttgattg aaatgaaaaa agacggaaac 1320
aaaaaagatt gtgagctgcc tcgttccatc cctgcctgtg tcccctggtc tccttaccta 1380
ttccaaccta atgatacatg catcgtttct ggctggggac gagaaaaaga taacgaaaga 1440
gtcttttcac ttcagtgggg tgaagttaaa ctaataagca actgctctaa gttttacgga 1500
aatcgtttct atgaaaaaga aatggaatgt gcaggtacat atgatggttc catcgatgcc 1560
tgtaaagggg actctggagg ccccttagtc tgtatggatg ccaacaatgt gacttatgtc 1620
tggggtgttg tgagttgggg ggaaaactgt ggaaaaccag agttcccagg tgtttacacc 1680
aaagtggcca attattttga ctggattagc taccatgtag gaaggccttt tatttctcag 1740
tacaatgtat aa 1752
<210> 3
<211> 1231
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 3
Met Arg Leu Leu Ala Lys Ile Ile Cys Leu Met Leu Trp Ala Ile Cys
1 5 10 15
Val Ala Glu Asp Cys Asn Glu Leu Pro Pro Arg Arg Asn Thr Glu Ile
20 25 30
Leu Thr Gly Ser Trp Ser Asp Gln Thr Tyr Pro Glu Gly Thr Gln Ala
35 40 45
Ile Tyr Lys Cys Arg Pro Gly Tyr Arg Ser Leu Gly Asn Val Ile Met
50 55 60
Val Cys Arg Lys Gly Glu Trp Val Ala Leu Asn Pro Leu Arg Lys Cys
65 70 75 80
Gln Lys Arg Pro Cys Gly His Pro Gly Asp Thr Pro Phe Gly Thr Phe
85 90 95
Thr Leu Thr Gly Gly Asn Val Phe Glu Tyr Gly Val Lys Ala Val Tyr
100 105 110
Thr Cys Asn Glu Gly Tyr Gln Leu Leu Gly Glu Ile Asn Tyr Arg Glu
115 120 125
Cys Asp Thr Asp Gly Trp Thr Asn Asp Ile Pro Ile Cys Glu Val Val
130 135 140
Lys Cys Leu Pro Val Thr Ala Pro Glu Asn Gly Lys Ile Val Ser Ser
145 150 155 160
Ala Met Glu Pro Asp Arg Glu Tyr His Phe Gly Gln Ala Val Arg Phe
165 170 175
Val Cys Asn Ser Gly Tyr Lys Ile Glu Gly Asp Glu Glu Met His Cys
180 185 190
Ser Asp Asp Gly Phe Trp Ser Lys Glu Lys Pro Lys Cys Val Glu Ile
195 200 205
Ser Cys Lys Ser Pro Asp Val Ile Asn Gly Ser Pro Ile Ser Gln Lys
210 215 220
Ile Ile Tyr Lys Glu Asn Glu Arg Phe Gln Tyr Lys Cys Asn Met Gly
225 230 235 240
Tyr Glu Tyr Ser Glu Arg Gly Asp Ala Val Cys Thr Glu Ser Gly Trp
245 250 255
Arg Pro Leu Pro Ser Cys Glu Glu Lys Ser Cys Asp Asn Pro Tyr Ile
260 265 270
Pro Asn Gly Asp Tyr Ser Pro Leu Arg Ile Lys His Arg Thr Gly Asp
275 280 285
Glu Ile Thr Tyr Gln Cys Arg Asn Gly Phe Tyr Pro Ala Thr Arg Gly
290 295 300
Asn Thr Ala Lys Cys Thr Ser Thr Gly Trp Ile Pro Ala Pro Arg Cys
305 310 315 320
Thr Leu Lys Pro Cys Asp Tyr Pro Asp Ile Lys His Gly Gly Leu Tyr
325 330 335
His Glu Asn Met Arg Arg Pro Tyr Phe Pro Val Ala Val Gly Lys Tyr
340 345 350
Tyr Ser Tyr Tyr Cys Asp Glu His Phe Glu Thr Pro Ser Gly Ser Tyr
355 360 365
Trp Asp His Ile His Cys Thr Gln Asp Gly Trp Ser Pro Ala Val Pro
370 375 380
Cys Leu Arg Lys Cys Tyr Phe Pro Tyr Leu Glu Asn Gly Tyr Asn Gln
385 390 395 400
Asn Tyr Gly Arg Lys Phe Val Gln Gly Lys Ser Ile Asp Val Ala Cys
405 410 415
His Pro Gly Tyr Ala Leu Pro Lys Ala Gln Thr Thr Val Thr Cys Met
420 425 430
Glu Asn Gly Trp Ser Pro Thr Pro Arg Cys Ile Arg Val Lys Thr Cys
435 440 445
Ser Lys Ser Ser Ile Asp Ile Glu Asn Gly Phe Ile Ser Glu Ser Gln
450 455 460
Tyr Thr Tyr Ala Leu Lys Glu Lys Ala Lys Tyr Gln Cys Lys Leu Gly
465 470 475 480
Tyr Val Thr Ala Asp Gly Glu Thr Ser Gly Ser Ile Thr Cys Gly Lys
485 490 495
Asp Gly Trp Ser Ala Gln Pro Thr Cys Ile Lys Ser Cys Asp Ile Pro
500 505 510
Val Phe Met Asn Ala Arg Thr Lys Asn Asp Phe Thr Trp Phe Lys Leu
515 520 525
Asn Asp Thr Leu Asp Tyr Glu Cys His Asp Gly Tyr Glu Ser Asn Thr
530 535 540
Gly Ser Thr Thr Gly Ser Ile Val Cys Gly Tyr Asn Gly Trp Ser Asp
545 550 555 560
Leu Pro Ile Cys Tyr Glu Arg Glu Cys Glu Leu Pro Lys Ile Asp Val
565 570 575
His Leu Val Pro Asp Arg Lys Lys Asp Gln Tyr Lys Val Gly Glu Val
580 585 590
Leu Lys Phe Ser Cys Lys Pro Gly Phe Thr Ile Val Gly Pro Asn Ser
595 600 605
Val Gln Cys Tyr His Phe Gly Leu Ser Pro Asp Leu Pro Ile Cys Lys
610 615 620
Glu Gln Val Gln Ser Cys Gly Pro Pro Pro Glu Leu Leu Asn Gly Asn
625 630 635 640
Val Lys Glu Lys Thr Lys Glu Glu Tyr Gly His Ser Glu Val Val Glu
645 650 655
Tyr Tyr Cys Asn Pro Arg Phe Leu Met Lys Gly Pro Asn Lys Ile Gln
660 665 670
Cys Val Asp Gly Glu Trp Thr Thr Leu Pro Val Cys Ile Val Glu Glu
675 680 685
Ser Thr Cys Gly Asp Ile Pro Glu Leu Glu His Gly Trp Ala Gln Leu
690 695 700
Ser Ser Pro Pro Tyr Tyr Tyr Gly Asp Ser Val Glu Phe Asn Cys Ser
705 710 715 720
Glu Ser Phe Thr Met Ile Gly His Arg Ser Ile Thr Cys Ile His Gly
725 730 735
Val Trp Thr Gln Leu Pro Gln Cys Val Ala Ile Asp Lys Leu Lys Lys
740 745 750
Cys Lys Ser Ser Asn Leu Ile Ile Leu Glu Glu His Leu Lys Asn Lys
755 760 765
Lys Glu Phe Asp His Asn Ser Asn Ile Arg Tyr Arg Cys Arg Gly Lys
770 775 780
Glu Gly Trp Ile His Thr Val Cys Ile Asn Gly Arg Trp Asp Pro Glu
785 790 795 800
Val Asn Cys Ser Met Ala Gln Ile Gln Leu Cys Pro Pro Pro Pro Gln
805 810 815
Ile Pro Asn Ser His Asn Met Thr Thr Thr Leu Asn Tyr Arg Asp Gly
820 825 830
Glu Lys Val Ser Val Leu Cys Gln Glu Asn Tyr Leu Ile Gln Glu Gly
835 840 845
Glu Glu Ile Thr Cys Lys Asp Gly Arg Trp Gln Ser Ile Pro Leu Cys
850 855 860
Val Glu Lys Ile Pro Cys Ser Gln Pro Pro Gln Ile Glu His Gly Thr
865 870 875 880
Ile Asn Ser Ser Arg Ser Ser Gln Glu Ser Tyr Ala His Gly Thr Lys
885 890 895
Leu Ser Tyr Thr Cys Glu Gly Gly Phe Arg Ile Ser Glu Glu Asn Glu
900 905 910
Thr Thr Cys Tyr Met Gly Lys Trp Ser Ser Pro Pro Gln Cys Glu Gly
915 920 925
Leu Pro Cys Lys Ser Pro Pro Glu Ile Ser His Gly Val Val Ala His
930 935 940
Met Ser Asp Ser Tyr Gln Tyr Gly Glu Glu Val Thr Tyr Lys Cys Phe
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Glu Gly Phe Gly Ile Asp Gly Pro Ala Ile Ala Lys Cys Leu Gly Glu
965 970 975
Lys Trp Ser His Pro Pro Ser Cys Ile Lys Thr Asp Cys Leu Ser Leu
980 985 990
Pro Ser Phe Glu Asn Ala Ile Pro Met Gly Glu Lys Lys Asp Val Tyr
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1010 1015 1020
Met Asp Gly Ala Ser Asn Val Thr Cys Ile Asn Ser Arg Trp Thr
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Gly Arg Pro Thr Cys Arg Asp Thr Ser Cys Val Asn Pro Pro Thr
1040 1045 1050
Val Gln Asn Ala Tyr Ile Val Ser Arg Gln Met Ser Lys Tyr Pro
1055 1060 1065
Ser Gly Glu Arg Val Arg Tyr Gln Cys Arg Ser Pro Tyr Glu Met
1070 1075 1080
Phe Gly Asp Glu Glu Val Met Cys Leu Asn Gly Asn Trp Thr Glu
1085 1090 1095
Pro Pro Gln Cys Lys Asp Ser Thr Gly Lys Cys Gly Pro Pro Pro
1100 1105 1110
Pro Ile Asp Asn Gly Asp Ile Thr Ser Phe Pro Leu Ser Val Tyr
1115 1120 1125
Ala Pro Ala Ser Ser Val Glu Tyr Gln Cys Gln Asn Leu Tyr Gln
1130 1135 1140
Leu Glu Gly Asn Lys Arg Ile Thr Cys Arg Asn Gly Gln Trp Ser
1145 1150 1155
Glu Pro Pro Lys Cys Leu His Pro Cys Val Ile Ser Arg Glu Ile
1160 1165 1170
Met Glu Asn Tyr Asn Ile Ala Leu Arg Trp Thr Ala Lys Gln Lys
1175 1180 1185
Leu Tyr Ser Arg Thr Gly Glu Ser Val Glu Phe Val Cys Lys Arg
1190 1195 1200
Gly Tyr Arg Leu Ser Ser Arg Ser His Thr Leu Arg Thr Thr Cys
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Trp Asp Gly Lys Leu Glu Tyr Pro Thr Cys Ala Lys Arg
1220 1225 1230
<210> 4
<211> 3696
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 4
atgagacttc tagcaaagat tatttgcctt atgttatggg ctatttgtgt agcagaagat 60
tgcaatgaac ttcctccaag aagaaataca gaaattctga caggttcctg gtctgaccaa 120
acatatccag aaggcaccca ggctatctat aaatgccgcc ctggatatag atctcttgga 180
aatgtaataa tggtatgcag gaagggagaa tgggttgctc ttaatccatt aaggaaatgt 240
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ggaaatgtgt ttgaatatgg tgtaaaagct gtgtatacat gtaatgaggg gtatcaattg 360
ctaggtgaga ttaattaccg tgaatgtgac acagatggat ggaccaatga tattcctata 420
tgtgaagttg tgaagtgttt accagtgaca gcaccagaga atggaaaaat tgtcagtagt 480
gcaatggaac cagatcggga ataccatttt ggacaagcag tacggtttgt atgtaactca 540
ggctacaaga ttgaaggaga tgaagaaatg cattgttcag acgatggttt ttggagtaaa 600
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atatctcaga agattattta taaggagaat gaacgatttc aatataaatg taacatgggt 720
tatgaataca gtgaaagagg agatgctgta tgcactgaat ctggatggcg tccgttgcct 780
tcatgtgaag aaaaatcatg tgataatcct tatattccaa atggtgacta ctcaccttta 840
aggattaaac acagaactgg agatgaaatc acgtaccagt gtagaaatgg tttttatcct 900
gcaacccggg gaaatacagc aaaatgcaca agtactggct ggatacctgc tccgagatgt 960
accttgaaac cttgtgatta tccagacatt aaacatggag gtctatatca tgagaatatg 1020
cgtagaccat actttccagt agctgtagga aaatattact cctattactg tgatgaacat 1080
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ccagcagtac catgcctcag aaaatgttat tttccttatt tggaaaatgg atataatcaa 1200
aatcatggaa gaaagtttgt acagggtaaa tctatagacg ttgcctgcca tcctggctac 1260
gctcttccaa aagcgcagac cacagttaca tgtatggaga atggctggtc tcctactccc 1320
agatgcatcc gtgtcaaaac atgttccaaa tcaagtatag atattgagaa tgggtttatt 1380
tctgaatctc agtatacata tgccttaaaa gaaaaagcga aatatcaatg caaactagga 1440
tatgtaacag cagatggtga aacatcagga tcaattacat gtgggaaaga tggatggtca 1500
gctcaaccca cgtgcattaa atcttgtgat atcccagtat ttatgaatgc cagaactaaa 1560
aatgacttca catggtttaa gctgaatgac acattggact atgaatgcca tgatggttat 1620
gaaagcaata ctggaagcac cactggttcc atagtgtgtg gttacaatgg ttggtctgat 1680
ttacccatat gttatgaaag agaatgcgaa cttcctaaaa tagatgtaca cttagttcct 1740
gatcgcaaga aagaccagta taaagttgga gaggtgttga aattctcctg caaaccagga 1800
tttacaatag ttggacctaa ttccgttcag tgctaccact ttggattgtc tcctgacctc 1860
ccaatatgta aagagcaagt acaatcatgt ggtccacctc ctgaactcct caatgggaat 1920
gttaaggaaa aaacgaaaga agaatatgga cacagtgaag tggtggaata ttattgcaat 1980
cctagatttc taatgaaggg acctaataaa attcaatgtg ttgatggaga gtggacaact 2040
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cttccccagt gtgtggcaat agataaactt aagaagtgca aatcatcaaa tttaattata 2280
cttgaggaac atttaaaaaa caagaaggaa ttcgatcata attctaacat aaggtacaga 2340
tgtagaggaa aagaaggatg gatacacaca gtctgcataa atggaagatg ggatccagaa 2400
gtgaactgct caatggcaca aatacaatta tgcccacctc cacctcagat tcccaattct 2460
cacaatatga caaccacact gaattatcgg gatggagaaa aagtatctgt tctttgccaa 2520
gaaaattatc taattcagga aggagaagaa attacatgca aagatggaag atggcagtca 2580
ataccactct gtgttgaaaa aattccatgt tcacaaccac ctcagataga acacggaacc 2640
attaattcat ccaggtcttc acaagaaagt tatgcacatg ggactaaatt gagttatact 2700
tgtgagggtg gtttcaggat atctgaagaa aatgaaacaa catgctacat gggaaaatgg 2760
agttctccac ctcagtgtga aggccttcct tgtaaatctc cacctgagat ttctcatggt 2820
gttgtagctc acatgtcaga cagttatcag tatggagaag aagttacgta caaatgtttt 2880
gaaggttttg gaattgatgg gcctgcaatt gcaaaatgct taggagaaaa atggtctcac 2940
cctccatcat gcataaaaac agattgtctc agtttaccta gctttgaaaa tgccataccc 3000
atgggagaga agaaggatgt gtataaggcg ggtgagcaag tgacttacac ttgtgcaaca 3060
tattacaaaa tggatggagc cagtaatgta acatgcatta atagcagatg gacaggaagg 3120
ccaacatgca gagacacctc ctgtgtgaat ccgcccacag tacaaaatgc ttatatagtg 3180
tcgagacaga tgagtaaata tccatctggt gagagagtac gttatcaatg taggagccct 3240
tatgaaatgt ttggggatga agaagtgatg tgtttaaatg gaaactggac ggaaccacct 3300
caatgcaaag attctacagg aaaatgtggg ccccctccac ctattgacaa tggggacatt 3360
acttcattcc cgttgtcagt atatgctcca gcttcatcag ttgagtacca atgccagaac 3420
ttgtatcaac ttgagggtaa caagcgaata acatgtagaa atggacaatg gtcagaacca 3480
ccaaaatgct tacatccgtg tgtaatatcc cgagaaatta tggaaaatta taacatagca 3540
ttaaggtgga cagccaaaca gaagctttat tcgagaacag gtgaatcagt tgaatttgtg 3600
tgtaaacggg gatatcgtct ttcatcacgt tctcacacat tgcgaacaac atgttgggat 3660
gggaaactgg agtatccaac ttgtgcaaaa agatag 3696
<210> 5
<211> 934
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> example promoter sequence
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attgacgtca ataatgacgt atgttcccat agtaacgcca atagggactt tccattgacg 60
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taccatggtc gaggtgagcc ccacgttctg cttcactctc cccatctccc ccccctcccc 300
acccccaatt ttgtatttat ttatttttta attattttgt gcagcgatgg gggcgggggg 360
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ttcggggggg acggggcagg gcggggttcg gcttctggcg tgtgaccggc ggctctagag 840
cctctgctaa ccatgttcat gccttcttct ttttcctaca gctcctgggc aacgtgctgg 900
ttattgtgct gtctcatcat tttggcaaag aatt 934
<210> 6
<211> 270
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> bovine growth hormone poly-A signal
<400> 6
tcgctgatca gcctcgactg tgccttctag ttgccagcca tctgttgttt gcccctcccc 60
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ggcttctgag gcggaaagaa ccagctgggg 270
<210> 7
<211> 588
<212> DNA
<213> Woodchuck hepatitis virus
<400> 7
atcaacctct ggattacaaa atttgtgaaa gattgactgg tattcttaac tatgttgctc 60
cttttacgct atgtggatac gctgctttaa tgcctttgta tcatgctatt gcttcccgta 120
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ggcccgttgt caggcaacgt ggcgtggtgt gcactgtgtt tgctgacgca acccccactg 240
gttggggcat tgccaccacc tgtcagctcc tttccgggac tttcgctttc cccctcccta 300
ttgccacggc ggaactcatc gccgcctgcc ttgcccgctg ctggacaggg gctcggctgt 360
tgggcactga caattccgtg gtgttgtcgg ggaaatcatc gtcctttcct tggctgctcg 420
cctgtgttgc cacctggatt ctgcgcggga cgtccttctg ctacgtccct tcggccctca 480
atccagcgga ccttccttcc cgcggcctgc tgccggctct gcggcctctt ccgcgtcttc 540
gccttcgccc tcagacgagt cggatctccc tttgggccgc ctccccgc 588
<210> 8
<211> 1752
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> nucleotide sequence encoding Factor I
<400> 8
atgaagctgc tgcatgtctt tctgctgttt ctgtgcttcc atctgcggtt ctgtaaagtg 60
acctatacta gccaggagga tctggtggag aagaagtgtc tggccaagaa gtacacacac 120
ctgagctgcg acaaggtgtt ctgtcagcct tggcagcggt gcatcgaggg cacctgcgtg 180
tgcaagctgc cttaccagtg cccaaagaac ggcaccgccg tgtgcgccac aaatcggaga 240
tcttttccaa catattgcca gcagaagagc ctggagtgtc tgcaccccgg caccaagttc 300
ctgaacaatg gcacctgcac agccgagggc aagttttctg tgagcctgaa gcacggcaac 360
acagatagcg agggcatcgt ggaggtgaag ctggtggacc aggataagac catgttcatc 420
tgtaagagct cctggtccat gagggaggca aacgtggcat gcctggatct gggattccag 480
cagggagcag acacacagag gcgctttaag ctgtccgacc tgtctatcaa tagcaccgag 540
tgcctgcacg tgcactgtag gggcctggag acatccctgg cagagtgcac cttcacaaag 600
cggagaacca tgggctacca ggactttgcc gacgtggtgt gctataccca gaaggccgat 660
agccccatgg acgatttctt tcagtgcgtg aacggcaagt atatctccca gatgaaggcc 720
tgcgacggca tcaatgactg tggcgatcag tctgacgagc tgtgctgtaa ggcctgtcag 780
ggcaagggct tccactgcaa gagcggcgtg tgcatccctt cccagtacca gtgcaacggc 840
gaggtggatt gtatcacagg agaggacgaa gtgggatgcg caggatttgc atctgtggca 900
caggaggaga cagagatcct gacagccgac atggatgccg agaggcgccg gatcaagtct 960
ctgctgccta agctgagctg tggcgtgaag aatcggatgc acatcagaag gaagcgcatc 1020
gtgggaggca agagggcaca gctgggcgat ctgccatggc aggtggccat caaggacgcc 1080
tctggcatca cctgcggcgg catctacatc ggaggatgtt ggatcctgac cgcagcacac 1140
tgcctgagag caagcaagac acacaggtat cagatctgga ccacagtggt ggattggatc 1200
cacccagacc tgaagagaat cgtgatcgag tacgtggata ggatcatctt tcacgagaac 1260
tacaatgccg gcacatatca gaacgacatc gccctgatcg agatgaagaa ggatggcaat 1320
aagaaggact gtgagctgcc cagatccatc cctgcatgcg tgccatggag cccctatctg 1380
ttccagccca acgatacctg catcgtgtcc ggatggggaa gggagaagga caatgagcgg 1440
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aataggtttt atgagaagga gatggagtgc gccggcacct acgatggcag catcgacgcc 1560
tgtaagggcg attccggagg accactggtg tgcatggacg caaacaatgt gacatacgtg 1620
tggggagtgg tgtcctgggg agagaactgc ggcaagccag agttccccgg cgtatatacc 1680
aaggtggcca attattttga ttggatttcc taccacgtcg gcaggccctt tatttcccag 1740
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<211> 583
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 9
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1 5 10 15
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Cys Leu Ala Lys Lys Tyr Thr His Leu Ser Cys Asp Lys Val Phe Cys
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50 55 60
Tyr Gln Cys Pro Lys Asn Gly Thr Ala Val Cys Ala Thr Asn Arg Arg
65 70 75 80
Ser Phe Pro Thr Tyr Cys Gln Gln Lys Ser Leu Glu Cys Leu His Pro
85 90 95
Gly Thr Lys Phe Leu Asn Asn Gly Thr Cys Thr Ala Glu Gly Lys Phe
100 105 110
Ser Val Ser Leu Lys His Gly Asn Thr Asp Ser Glu Gly Ile Val Glu
115 120 125
Val Lys Leu Val Asp Gln Asp Lys Thr Met Phe Ile Cys Lys Ser Ser
130 135 140
Trp Ser Met Arg Glu Ala Asn Val Ala Cys Leu Asp Leu Gly Phe Gln
145 150 155 160
Gln Gly Ala Asp Thr Gln Arg Arg Phe Lys Leu Ser Asp Leu Ser Ile
165 170 175
Asn Ser Thr Glu Cys Leu His Val His Cys Arg Gly Leu Glu Thr Ser
180 185 190
Leu Ala Glu Cys Thr Phe Thr Lys Arg Arg Thr Met Gly Tyr Gln Asp
195 200 205
Phe Ala Asp Val Val Cys Tyr Thr Gln Lys Ala Asp Ser Pro Met Asp
210 215 220
Asp Phe Phe Gln Cys Val Asn Gly Lys Tyr Ile Ser Gln Met Lys Ala
225 230 235 240
Cys Asp Gly Ile Asn Asp Cys Gly Asp Gln Ser Asp Glu Leu Cys Cys
245 250 255
Lys Ala Cys Gln Gly Lys Gly Phe His Cys Lys Ser Gly Val Cys Ile
260 265 270
Pro Ser Gln Tyr Gln Cys Asn Gly Glu Val Asp Cys Ile Thr Gly Glu
275 280 285
Asp Glu Val Gly Cys Ala Gly Phe Ala Ser Val Ala Gln Glu Glu Thr
290 295 300
Glu Ile Leu Thr Ala Asp Met Asp Ala Glu Arg Arg Arg Ile Lys Ser
305 310 315 320
Leu Leu Pro Lys Leu Ser Cys Gly Val Lys Asn Arg Met His Ile Arg
325 330 335
Arg Lys Arg Ile Val Gly Gly Lys Arg Ala Gln Leu Gly Asp Leu Pro
340 345 350
Trp Gln Val Ala Ile Lys Asp Ala Ser Gly Ile Thr Cys Gly Gly Ile
355 360 365
Tyr Ile Gly Gly Cys Trp Ile Leu Thr Ala Ala His Cys Leu Arg Ala
370 375 380
Ser Lys Thr His Arg Tyr Gln Ile Trp Thr Thr Val Val Asp Trp Ile
385 390 395 400
His Pro Asp Leu Lys Arg Ile Val Ile Glu Tyr Val Asp Arg Ile Ile
405 410 415
Phe His Glu Asn Tyr Asn Ala Gly Thr Tyr Gln Asn Asp Ile Ala Leu
420 425 430
Ile Glu Met Lys Lys Asp Gly Asn Lys Lys Asp Cys Glu Leu Pro Arg
435 440 445
Ser Ile Pro Ala Cys Val Pro Trp Ser Pro Tyr Leu Phe Gln Pro Asn
450 455 460
Asp Thr Cys Ile Val Ser Gly Trp Gly Arg Glu Lys Asp Asn Glu Arg
465 470 475 480
Val Phe Ser Leu Gln Trp Gly Glu Val Lys Leu Ile Ser Asn Cys Ser
485 490 495
Lys Phe Tyr Gly Asn Arg Phe Tyr Glu Lys Glu Met Glu Cys Ala Gly
500 505 510
Thr Tyr Asp Gly Ser Ile Asp Ala Cys Lys Gly Asp Ser Gly Gly Pro
515 520 525
Leu Val Cys Met Asp Ala Asn Asn Val Thr Tyr Val Trp Gly Val Val
530 535 540
Ser Trp Gly Glu Asn Cys Gly Lys Pro Glu Phe Pro Gly Val Tyr Thr
545 550 555 560
Lys Val Ala Asn Tyr Phe Asp Trp Ile Ser Tyr His Val Gly Arg Pro
565 570 575
Phe Ile Ser Gln Tyr Asn Val
580
上記明細書中で言及した全ての刊行物は、参照により本明細書中に組み込まれるものとする。記載した本発明のベクター、細胞、組成物、使用および方法の種々の改変および変更は、本発明の範囲および趣旨を逸脱することなく当業者には自明であろう。本発明を特定の好適な実施形態に関して記載してきたが、特許請求する本発明はかかる特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことは理解されよう。実際には、本発明を実施するために記載した様式の種々の修正は、生化学および生物工学または関連分野の当業者には明白であり、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるものとする。
本開示は以下の実施形態を包含する。
[1] I因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列を含む、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター。
[2] 前記のI因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列が、以下(a)~(c)、すなわち
(a)配列番号1または9に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、
(b)配列番号2または8に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、および
(c)配列番号2または8のヌクレオチド配列
からなる群より選択される配列を含む、実施形態1記載のAAVベクター。
[3] 前記ウイルスベクターがウイルス粒子の形態である、実施形態1または2記載のAAVベクター。
[4] 前記AAVウイルス粒子が、AAV2ゲノムおよびAAV2キャプシドタンパク質を含む、実施形態3記載のAAVベクター。
[5] 前記のI因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列が、CAGプロモーター、好ましくは配列番号5のヌクレオチド配列を有するプロモーターに機能しうる形で連結されている、実施形態1~4のいずれかに記載のAAVベクター。 [6] 実施形態1~5のいずれかに記載のAAVベクターを用いてトランスフェクトした細胞。
[7] 実施形態1~5のいずれかに記載のAAVベクターまたは実施形態6記載の細胞を、製薬上許容しうる担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて含む、医薬組成物。
[8] 補体媒介性の眼の障害の治療または予防における使用のための、実施形態1~7のいずれかに記載のAAVベクター、細胞または医薬組成物。
[9] 前記障害が加齢黄斑変性(AMD)または糖尿病性網膜症、好ましくはAMDである、実施形態8記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
[10] 前記AMDがドライ型AMDである、実施形態9記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
[11] 地図状萎縮の形成が予防されるかもしくは減少する、および/または地図状萎縮の量が減少する、実施形態8~10のいずれかに記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
[12] 地図状萎縮の進行を遅延させる、実施形態8~10のいずれかに記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
[13] 被験体の処置眼への投与後12ヶ月にわたり、同期間にわたる未処置の眼と比較して、地図状萎縮面積の増大に少なくとも10%の減少がみられる、実施形態12記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
[14] 前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物の投与により、被験体における、または被験体の眼における、例えば被験体の網膜色素上皮(RPE)におけるC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性のレベルが、場合によっては被験体、またはその眼もしくはRPEにおける正常レベルを超えるレベルまで増大する、実施形態8~13のいずれかに記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
[15] 前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物を眼内に投与する、実施形態8~14のいずれかに記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
[16] 前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物を、網膜下注入、直接網膜注入、脈絡膜上注入または硝子体内注入により被験体の眼に投与する、実施形態8~15のいずれかに記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
[17] 前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物を網膜下注入により被験体の眼に投与する、実施形態8~16のいずれかに記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。
[18] 実施形態1~7のいずれかに記載のAAVベクター、細胞または医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む、補体媒介性の眼の障害を治療または予防する方法。
[19] 前記障害が加齢黄斑変性(AMD)または糖尿病性網膜症、好ましくはAMDである、実施形態18記載の方法。
[20] 前記AMDがドライ型AMDである、実施形態19記載の方法。
[21] 地図状萎縮の形成が予防されるかもしくは減少する、および/または地図状萎縮の量が減少する、実施形態18~20のいずれかに記載の方法。
[22] 地図状萎縮の進行を遅延させる、実施形態18~20のいずれかに記載の方法。 [23] 被験体の処置眼への投与後12ヶ月にわたり、同期間にわたる未処置の眼と比較して、地図状萎縮面積の増大に少なくとも10%の減少がみられる、実施形態22記載の方法。
[24] 前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物の投与により、被験体における、または被験体の眼における、例えば被験体の網膜色素上皮(RPE)におけるC3b-不活性化活性およびiC3b-分解活性のレベルが、場合によっては被験体、またはその眼もしくはRPEにおける正常レベルを超えるレベルまで増大する、実施形態18~23のいずれかに記載の方法。
[25] 前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物を眼内に投与する、実施形態18~24のいずれかに記載の方法。
[26] 前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物を、網膜下注入、直接網膜注入、脈絡膜上注入または硝子体内注入により被験体の眼に投与する、実施形態18~25のいずれかに記載の方法。
[27] 前記のAAVベクター、細胞または医薬組成物を網膜下注入により被験体の眼に投与する、実施形態18~26のいずれかに記載の方法。
[28] H因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター。
[29] 前記のH因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列が、以下(a)~(c)、すなわち
(a)配列番号3に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、
(b)配列番号4に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、および
(c)配列番号4のヌクレオチド配列
からなる群より選択される配列を含む、実施形態28記載のAAVベクター。
[30] 前記ウイルスベクターがウイルス粒子の形態である、実施形態28または29記載のAAVベクター。
[31] 前記AAVウイルス粒子が、AAV2ゲノムおよびAAV2キャプシドタンパク質を含む、実施形態30記載のAAVベクター。
[32] 前記のH因子またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列が、CAGプロモーター、好ましくは配列番号5のヌクレオチド配列を有するプロモーターに機能しうる形で連結されている、実施形態28~31のいずれかに記載のAAVベクター。
[33] 実施形態28~32のいずれかに記載のAAVベクターを用いてトランスフェクトした細胞。
[34] 実施形態28~32のいずれかに記載のAAVベクター、または実施形態33記載の細胞を、製薬上許容しうる担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物。
[35] 好ましくは前記障害が加齢黄斑変性(AMD)または糖尿病性網膜症、好ましくはAMD、好ましくはドライ型AMDである、補体媒介性の眼の障害の治療または予防における使用のための実施形態28~34のいずれかに記載のAAVベクター、細胞または医薬組成物。
[36] 前記AAVベクターが実施形態9~17のいずれかに記載した使用のためのものである、実施形態35記載の使用のためのAAVベクター、細胞または医薬組成物。