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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156712
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】経口シン・フィルム
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20241029BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 47/58 20170101ALI20241029BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 31/166 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61K9/70
A61K47/32
A61K47/58
A61K31/485
A61K31/196
A61K31/166
A61K31/4045
A61P25/04
A61P29/00
A61P1/08
A61P25/20
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024113813
(22)【出願日】2024-07-17
(62)【分割の表示】P 2021532292の分割
【原出願日】2019-12-06
(31)【優先権主張番号】1819978.6
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】598097622
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ストラスクライド
【氏名又は名称原語表記】University of Strathclyde
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー バルフォア ミューレン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】経口シン・フィルム(Oral Thin Film)の形態の薬物送達システムを提供する。
【解決手段】経口可溶性フィルムは、第1の薬学的活性成分;イオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含むレジネート;並びに、マトリックス及び/又は結合剤、を含む少なくとも1つの層を含む。第1の薬学的活性成分(例えば、前記フィルム中に分散又は溶解している)、並びにイオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含むレジネートを提供することによって、第1の活性成分の即時放出、並びに第2の活性成分の制御された、持続した、及び/又は遅延した放出が可能になる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む少なくとも1つの層を含む経口可溶性フィルム:
第1の薬学的活性成分;
イオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含むレジネート;並びに、
マトリックス及び/又は結合剤。
【請求項2】
先行する請求項の何れかに記載のフィルム、ここで、前記第1の薬学的活性成分及び/
又は前記レジネートは、前記フィルムの少なくとも1つの層に組み込まれる。
【請求項3】
先行する請求項の何れかに記載のフィルム、ここで、前記第1の薬学的活性成分は、約0
.1~50重量%の量で、前記少なくとも1つの層中に提供される。
【請求項4】
先行する請求項の何れかに記載のフィルム、ここで、前記レジネートは、約1~50重量%
の量で、前記少なくとも1つの層中に提供される。
【請求項5】
先行する請求項の何れかに記載のフィルム、ここで、前記レジネート中の、前記第2の
薬学的活性成分と前記樹脂との重量比は、約2:1~1:5である。
【請求項6】
先行する請求項の何れかに記載のフィルム、ここで、前記少なくとも1つの層中に分散
された前記第1の薬学的活性成分は、第1の放出速度と関連している。
【請求項7】
請求項6に記載のフィルム、ここで、pH 6.8で測定した場合、前記第1の放出速度は、5
分後に、少なくとも30%、任意選択的に少なくとも50%になる。
【請求項8】
請求項6に記載のフィルム、ここで、pH 1.2で測定した場合、前記第1の放出速度は、5
分後に、少なくとも50%、任意選択的に少なくとも60%になる。
【請求項9】
先行する請求項の何れかに記載のフィルム、ここで、前記レジネートに含まれる前記第
2の薬学的活性成分は、第2の放出速度と関連している。
【請求項10】
請求項9に記載のフィルム、ここで、pH 6.8で測定した場合、前記第2の放出速度は、1
時間後に、約5~80%、任意選択的に約10~60%になる。
【請求項11】
請求項9に記載のフィルム、ここで、pH 1.2で測定した場合、前記第2の放出速度は、1
時間後に、約10~80%、任意選択的に約20~60%になる。
【請求項12】
先行する請求項の何れかに記載のフィルム、ここで、前記イオン交換樹脂は、関連する
粒子サイズ及び/又は関連するメッシュ・サイズを有するビーズの形態で提供される、前
記イオン交換樹脂又は混合イオン交換樹脂のメッシュ・サイズ及び/又は粒子サイズは、
活性成分又は薬物の所望の放出速度を提供するように選択される。
【請求項13】
請求項12に記載のフィルム、ここで、前記樹脂は、50~100メッシュ・サイズの範囲
のメッシュ・サイズを有する、及び/又は150~300 μmの範囲の粒子サイズを有する。
【請求項14】
請求項12に記載のフィルム、ここで、前記樹脂は、100~200メッシュ・サイズの範囲
のメッシュ・サイズを有する、及び/又は74~150 μmの範囲の粒子サイズを有する。
【請求項15】
請求項12に記載のフィルム、ここで、前記樹脂は、200~400メッシュ・サイズの範囲
のメッシュ・サイズを有する、及び/又は37~74 μmの範囲の粒子サイズを有する。
【請求項16】
先行する請求項の何れかに記載のフィルム、ここで、前記イオン交換樹脂(ion-change
resin)及び/又はレジネートは、消化器系の1つ以上の領域内での分解又は溶解に耐える
、及び、消化器系の1つ以上の他の領域内で分解又は溶解する、ように選択されたプロセ
シング物質内で、コーティング及び/又はカプセル化された粒子の形態で提供される。
【請求項17】
先行する請求項の何れかに記載のフィルム、ここで、前記少なくとも1つの層は、フリ
ーな(free)又は非搭載の(unloaded)イオン交換樹脂を更に含む。
【請求項18】
以下を含む少なくとも1つの層を含む経口可溶性フィルム:
第1のイオン交換樹脂及び第1の薬学的活性成分を含む第1のレジネート;
第2のイオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含む第2のレジネート;並びに、
マトリックス及び/又は結合剤。
【請求項19】
請求項1に記載のフィルム又は請求項18に記載のフィルム、ここで、前記第1の薬学
的活性成分及び前記第2の薬学的活性成分は、同じである。
【請求項20】
請求項1に記載のフィルム又は請求項18に記載のフィルム、ここで、前記第1の薬学
的活性成分及び前記第2の薬学的活性成分は、異なっている。
【請求項21】
1種以上の薬学的活性成分を対象に送達する方法であって、以下を含む少なくとも1つの
層を含む経口可溶性フィルムを経口投与することを含む方法:
第1の薬学的活性成分;
イオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含むレジネート;並びに、
マトリックス及び/又は結合剤。
【請求項22】
1種以上の薬学的活性成分を対象に送達する方法であって、以下を含む少なくとも1つの
層を含む経口可溶性フィルムを経口投与することを含む方法:
第1のイオン交換樹脂及び第1の薬学的活性成分を含む第1のレジネート;
第2のイオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含む第2のレジネート;並びに、
マトリックス及び/又は結合剤。
【請求項23】
疼痛、片頭痛、頭痛、炎症、代謝性骨疾患、低リン血症、吐き気、嘔吐、胃食道逆流症
、不安、呼吸困難、睡眠障害、勃起不全、及び/又は運動障害(例えば、パーキンソン病
)から選択される1種以上の症状又は疾患を治療する方法における、請求項1から20の
何れか一項に記載の経口可溶性フィルムの使用。
【請求項24】
経口可溶性フィルムを調製する方法であって、第1の薬学的活性成分;イオン交換樹脂
及び第2の薬学的活性成分を含むレジネート;並びに、結合剤、を含む製剤を支持体の上
にキャスティングすること、を含む方法。
【請求項25】
経口可溶性フィルムを調製する方法であって、第1のイオン交換樹脂及び第1の薬学的活
性成分を含む第1のレジネート;第2のイオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含む第2
のレジネート;並びに、結合剤、を含む製剤を支持体の上にキャスティングすること、を
含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
薬物送達システム、及び特に、経口シン・フィルムの形態の薬物送達システムに関する
【背景技術】
【0002】
多くの医学的な及び/又は病理学的な症状は、対象に化学的な及び/又は薬学的な物質
又は薬物を投与することを必要とする。薬物の送達を必要とする一般的な適用の例は、疼
痛の治療である。
【0003】
モルヒネを投与することは、重度の疼痛に対する「ゴールド・スタンダード」の治療で
ある、と一般的に認められている。国(英国)の保健機関及び世界保健機関(WHO)は、モル
ヒネを投与することを、成人の進行がんにおける重度の疼痛に対する第一選択の治療とし
て(Scottish Intercollegiate Guidelines Network, Control of pain in adults with c
ancer. SIGN Guideline No. 106., SIGN, Edinburgh, 2008)、及び医学的な疾患により中
等度から重度の疼痛が持続する小児に対する第一選択の治療として(World Health Organi
zation, WHO Guidelines on the Pharmacological Treatment of Persisting Pain in Ch
ildren with Medical llnesses, World Health Organization, Geneva, 2012)、推奨して
きている。
【0004】
中等度から重度の疼痛における鎮痛薬としてモルヒネを適用することと同様に、モルヒ
ネは、呼吸困難を症状(symptom)として経験している、一般的ながん患者の約半数への、
緩和ケアの一環として息切れを治療することにも一般的に使用されている(D.J. Dudgeon
, L. Kristjanson, J.A. Sloan, M. Lertzman, K. Clement, Dyspnea in cancer patient
s; prevalence and associated factors, J Pain Symptom Manag, 21 (2001) 95-102)。
また、慢性心不全の呼吸困難を治療することにおける、低用量オピオイド(例えば、モル
ヒネなど)を適用外使用することについても、緩和治療の一環として、国のガイドライン
の中で推奨されている(SIGN, Management of chronic heart failure. SIGN Guideline N
o. 95., SIGN, Edinburgh, 2007)。また、調節された放出の製剤として投与されたモルヒ
ネは、慢性心不全においても推奨されている(D.C. Currow, C. McDonald, S. Oaten, B.
Kenny, P. Allcroft, P. Frith, M. Briffa, M.J. Johnson, A.P. Abernethy, Once-dail
y opioids for chronic dyspnea: a dose increment and pharmacovigilance study, Jou
rnal of Pain and Symptom Management, 42 (2011) 388-399)。また、徐放性経口モルヒ
ネ製剤は、定常的な血中濃度を維持することができ、それ故に離脱症状(symptom)を回避
することができるので、高用量モルヒネを中止するに際して、有益であることも示されて
きている(A. Ahmed, H. Khurana, V. Gogia, S. Mishra, S. Bhatnagar, Use of sustain
ed release oral morphine as a bridge in withdrawal of morphine in patients on hi
gh doses of oral immediate release morphine for cancer pain, The American journa
l of hospice & palliative care, 27 (2010) 413-415)。多くの持続的な放出の経口モル
ヒネ製品を1日2回服用する、という利便性により、患者のコンプライアンスは促進される
一方、血中レベルも持続され、疼痛管理及び症状(symptom)のコントロールを改善するこ
とができる(C.M. Amabile, B.J. Bowman, Overview of oral modified-release opioid p
roducts for the management of chronic pain, The Annals of pharmacotherapy, 40 (2
006) 1327-1335)。
【0005】
しかしながら、利用可能な認可されたモルヒネの経口投薬剤型には、それらの限界があ
る。錠剤(Sevredol(登録商標)、Morphgesic(登録商標)、MST(登録商標) Continus(登録商
標))又はカプセル剤(Zomorph(登録商標)、MXL(登録商標))のような固形形態は、嚥下困難
を有する患者にとって問題となることがある。嚥下障害は緩和治療を受けている患者によ
くみられる問題であり、終末期ケアの重要な側面である。小児集団でも固形経口投薬剤型
の嚥下がより困難であることが多い;欧州医薬品庁は、錠剤/カプセル剤が、2歳未満の
小児に使用可能又は適用可能であるとは考えていない(Committee for medicinal produc
ts for human use (CHMP), Reflection paper: formulations of choice for the paedia
tric population, in, 2006)。2~6歳の小児は、発達及び錠剤サイズに依存して、様々
な受容性を示す(A. Zajicek, M.J. Fossler, J.S. Barrett, J.H. Worthington, R. Tern
ik, G. Charkoftaki, S. Lum, J. Breitkreutz, M. Baltezor, P. Macheras, M. Khan, S
. Agharkar, D.D. MacLaren, A report from the pediatric formulations task force:
perspectives on the state of child-friendly oral dosage forms, AAPS J, 15 (2013)
1072-1081)。経口液剤(Oramorph(登録商標))は、ある嚥下障害の患者には有用であるが
、体積を正しく測る必要がある。小児科では、年齢に適応した認可された薬物製剤が無い
と、大人用医薬品を小児において適応外使用することが広まっている。濃縮液体製剤の非
常に小さい体積を測定する必要があることによって、又は市販品を希釈する若しくは再構
成する必要があることによって、この集団において不正確に投薬されることがある。加え
て、多くの液体薬物製剤、例えばOramorph (登録商標)は、小児患者において望ましくな
い又は毒性作用を有し得るアルコール又は防腐剤のような賦形剤を含有する必要がある(V
. Fabiano, C. Mameli, G.V. Zuccotti, Paediatric pharmacology: remember the excip
ients, Pharmacol Res, 63 (2011) 362-365)。MST(登録商標) Continus(登録商標) (Napp
Pharmaceuticals Ltd.; Cambridge)は、モルヒネの放出を調節して投与するための、懸
濁として再構成する顆粒として入手できる。1日2回の調製で良いことは魅力的ではあるが
、この製剤は、投与する前に更なる操作を再び必要とする。製造業者の指示によれば、少
なくとも10~30mLの水中に、前記顆粒を分散させる、とある(Napp Pharmaceuticals Limi
ted, MST Continus suspensions 20, 30, 60, 100 and 200 mg - Summary of Product Ch
aracteristics (SPC), in: electronic Medicines Compendium (eMC), 2014)。より少な
い用量(例えば、小児科での、より少ない用量)については、より少ないアリコートが必
要とされることがあるが、これは小さい体積を正確に測定することに依存するだけでなく
、顆粒が沈降する又は懸濁が不均一になることから、用量が不正確になることがある。こ
れらの理由のために、モルヒネをより効果的に送達するための革新的な製剤化の戦略が、
引き続き必要とされている。
【0006】
モルヒネのような半減期の短い一部の薬物の、血中濃度-時間プロファイルを最適化す
る、及び/又は投薬頻度を減少させるために、製剤化をする者は、胃腸管内で、投薬剤型
からの薬物放出を遅延させる又は延長させる新規な技術の開発を模索してきた。いくつか
の例として、ゆっくりと溶解するマトリックス内に薬物を捕捉すること、錠剤にコーティ
ングを加えて、pH依存の溶解性を有するようにすること、及び薬物放出を制御するための
半透膜を使用する浸透圧制御システム、が挙げられる(M.J. Rathbone, J. Hadgraft, M.S
. Roberts, Recent advances and future directions in modified-release delivery sy
stems for oral administration, in: Modified-Release Drug Delivery Technology, T
aylor & Francis, 2002)。
【0007】
物質を患者に対して経口的に投与する既知の方法は、経口シン・フィルム(Oral Thin F
ilm (OTF))を使用することによる。用語「経口シン・フィルム(Oral Thin Film)」は当技
術分野で知られている用語であり、用語「シン(thin))」は、相対的な用語として理解さ
れず、当業者によって広く理解されている製品のタイプを指す、認識される句「経口シン
・フィルム」の一部として、認識される意味を有するものとして、単に理解される。同じ
タイプの製品を記述するための他の同義用語は、「経口溶解性フィルム(Oral Dissolvabl
e Films)」、「シン溶解性フィルム(Thin Dissolving Films)」、「経口散布性フィルム(
Orodispersible Films)」、「経口消耗性フィルム(Orally Consumable Films)」、「経口
薬物ストリップ(Oral Drug Strips)」又は「経口フィルム(Oral Films)」である。
【0008】
OTFは、対象の口腔内で迅速に溶解可能であり、主に水溶性フィルム形成ポリマーから
構成される。OTFは、最初に呼気清浄剤として開発され、活性医薬成分(active pharmaceu
tical ingredient (API))を経口送達することへと進歩してきた。およそ郵便切手の大き
さであるが、それらは、対象の口の中に置かれると、噛むこと又は水を飲むことを必要と
せずに、唾液中に迅速に溶解する。これらのフィルムは、最小限の食品又は医薬品グレー
ドの賦形剤を使用して製剤化される、及び安価に製造される。薬物送達のための代替の固
形プラットホームとして、防腐剤又は溶媒を必要とせずに、これらのフィルムを製剤化す
ることができる;即ち、(液体製剤を投与することことにより、有害かもしれない賦形剤
への曝露がもたらされることがある場合)小児での薬物送達のための魅力的な選択肢であ
る。
【0009】
典型的には、経口シン・フィルムで、5~30%の薬物搭載(drug loading)を達成できる、
及び前記フィルムの寸法を調節することにより、ターゲットの薬物含量を容易に制御する
ことができる(R.P. Dixit, S.P. Puthli, Oral strip technology: overview and future
potential, J Control Release, 139 (2009) 94-107)。一般的に、経口シン・フィルム
のターゲットの表面積は、実用的な用量の投与を可能にするために5~20 cm2である(A. A
rya, A. Chandra, V. Sharma, K. Pathak, Fast dissolving oral films: an innovative
drug delivery system and dosage form, Int J ChemTech Res, 2 (2010) 576-583)。ま
た、フィルムの厚さを容易に制御することもできる。種々の崩壊速度及び放出速度又は粘
膜接着特性を有する、数多くの種々のフィルム形成ポリマーが利用可能である。多くの味
覚マスキング技術、並びに甘味剤及び香味剤を含ませて、許容できる、味の良い薬物送達
システムを生成することができる。
【0010】
イオン交換樹脂(ion exchange resin "IER")は、正に又は負に荷電した部位(交換反応
において、反対の電荷を有するイオンを捕捉することができる)を含む、水に不溶性の高
分子化合物である。このプロセスを経て、イオン交換樹脂に、薬物分子を「搭載(loaded)
」して、レジネートとして知られる薬物-樹脂複合体を形成することができる(R.N. Shamm
a, E.B. Basalious, R.A. Shoukri, Development and optimization of a multiple-unit
controlled release formulation of a freely water soluble drug for once-daily ad
ministration, International journal of pharmaceutics, 405 (2011) 102-112)。イオ
ン交換樹脂は、様々な粒子サイズで入手可能であり、良好な力学的強度及び物理化学的安
定性を示す。
【0011】
PCT出願公開第WO 01/70194号(BESSら)は、薬学的活性薬剤、及び薬学的活性薬剤のため
の味覚マスキング剤として使用されるイオン交換樹脂、を含む経口消耗性フィルムを開示
している。
【0012】
PCT出願公開第WO 2013/171146号(LI)は、レジネート中にオピオイド・アゴニストを含
有する制御された放出の層を有する経口フィルムを開示し、前記フィルムは、鎮静剤を違
法に抽出することを回避するために、オピオイド・アンタゴニストを含有する別個の粘膜
接着層を有する。
【0013】
PCT出願公開第WO 2009/099830号(BUNICKら)は、2つ以上のセグメント化された部分を含
み、セグメント化された部分上に分配された活性成分を含む、食べられるフィルムを開示
している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、従来技術に関連する、前述の問題のうちの少なくとも1つを回避又は
軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様によれば、以下を含む少なくとも1つの層を含む経口可溶性フィルムが提供さ
れる:
第1の薬学的活性成分;
イオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含むレジネート;並びに
マトリックス及び/又は結合剤。
【0016】
前記第1の薬学的活性成分及び前記第2の薬学的活性成分は、同じであることがある、又
は異なることがある。
【0017】
前記第1の薬学的活性成分を、前記フィルム上に(例えば、その表面上に)、提供又は
適用(例えば、インプリント(imprinted)、コーティング(coated)、スプレッド(spread)
など)してもよい。前記第1の薬学的活性成分を、前記フィルム内に、提供又は組み込ま
せてもよい(例えば、吸収(absorbed)、分散(dispersed)、又は溶解(dissolved)させても
よい)。前記第1の薬学的活性成分を、前記フィルム内に均質に提供又は組み込ませても
よい(例えば、均質に吸収、分散、又は溶解させてもよい)。
【0018】
前記レジネートを、前記フィルム中に(例えば、前記少なくとも1つの層中に)、分散
させてもよい(例えば、不均一に分散させてもよい)。
【0019】
前記第1の薬学的活性成分を、前記フィルム中に(例えば、前記少なくとも1つの層中に
)、約0.1~50重量%(例えば、約1~20重量%、典型的には、約2~10重量%)の量で提供す
ることがある。
【0020】
前記レジネートを、前記フィルム中に(例えば、前記少なくとも1つの層中に)、約1~
50重量%(例えば、典型的には、約5~20重量%)の量で提供することがある。
【0021】
前記レジネート中の、第2の薬学的活性成分と樹脂の比率(重量比)は、約2:1~1:5、典
型的には、約1:1~1:2(例えば、約1:1.5)であることがある。
【0022】
前記フィルム(例えば、少なくとも1つの層)は、マトリックス及び/又は結合剤を含
むことがある。好ましくは、前記フィルムは、ポリマー・マトリクスを含むことがある。
前記マトリックスは、前記フィルムの残りの成分に対する(例えば、少なくとも、前記第
1の薬学的活性成分及び前記レジネートに対する)結合剤として作用することが可能なこ
とがある。
【0023】
有利であるように、前記マトリックスは、溶解可能なポリマー・マトリックスを含むこ
とがある。
【0024】
好ましくは、前記マトリックスは、対象の口腔内で、溶解、崩壊、及び/又は分解する
ことがある。
【0025】
典型的には、前記マトリクス・ポリマーは、セルロース系ポリマー及び/又はその誘導
体(例えば、1種以上の、合成又は天然ゴム、セルロース誘導体[セルロース、エチル・
セルロース、ヒドロキシエチル・セルロース、ヒドロキシプロピル・メチル・セルロース
、カルボキシメチル・セルロース、カルボキシメチル・セルロース・ナトリウム、カルボ
キシメチルセルロース・ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチル・セルロース、ヒドロキ
シプロピルセルロースなど]、多糖類[プルラン、カラギーナン、アルギン酸及び/又は
その塩、ペクチン、キサンタンガム及び/又はその誘導体、澱粉及び/又はその誘導体な
ど])を含むことがある。
【0026】
前記マトリクス・ポリマーは、合成ポリマー(例えば、アクリル酸(コ)ポリマー及び/
又はその誘導体、ポリアルキレン・グリコール、ポリビニル・ピロリドン、ポリビニル・
アルコール、カルボキシビニル・ポリマー、及び/又はそれらの誘導体など)を含むこと
がある。
【0027】
当業者は、前記マトリクスは、1種以上のポリマー、又はポリマーの組合せを含むこと
があり、これらは、製造するフィルムが所望の特性(例えば、強度及び/又は可撓性など
の所望の力学的特性、並びに対象の口腔内での所望の溶解速度など)を達成するように選
択されることがある、ということを理解するであろう。
【0028】
前記フィルム中(例えば、前記少なくとも1つの層中)に分散又は溶解された第1の薬学
的活性成分、並びにイオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含むレジネート、によっ
て、前記第1の活性成分の即時放出、並びに前記第2の活性成分の制御された、持続した、
及び/又は遅延した放出、が可能になる。これは、所定量の前記第1の活性成分の即時送
達、及び前記第2の活性成分のある期間にわたる持続した放出を、患者が必要とする場合
に、特に好都合であることがある。そのような製剤が、他の固形経口投薬剤型(例えば、
錠剤など)に関して嚥下困難を有する患者(例えば、小児又は高齢患者)にとって、理想
的に適していることがある。
【0029】
当業者は、用語「即時放出(immediate release)」は、前記フィルムが、例えば、前記
対象の口腔内で、溶解すると、前記第1の薬学的活性成分が遅滞なく送達されることを意
味する、と理解するであろう。従って、用語「即時(immediate)」は、絶対的な意味で理
解されるものではなく、例えば、前記対象の口腔内で、前記フィルムが溶解して、前記第
1の薬学的活性成分を放出するのに必要な時間を考慮するものである。
【0030】
典型的には、前記フィルム(例えば、前記少なくとも1つの層)は、1分未満、例えば45
秒未満、好ましくは30秒未満で、患者の口腔内で、溶解することがある。
【0031】
前記第1の薬学的活性成分及び前記第2の薬学的活性成分は同じであることがある。その
ような場合、前記経口可溶性フィルムは、以下を含む少なくとも1つの層を含むことがあ
る:
少なくとも1つの層に提供される、第1の量の薬学的活性成分;
イオン交換樹脂及び第2の量の薬学的活性成分を含むレジネート;並びに、
マトリックス及び/又は結合剤。
【0032】
前記フィルム中に(例えば、前記少なくとも1つの層中に)、提供される(例えば、分
散させた又は溶解させた)第1の量の薬学的活性成分、並びにイオン交換樹脂及び第2の量
の薬学的活性成分を含むレジネート、により、活性成分(例えば、第1の量の活性成分)
の即時放出、並びに活性成分(例えば、第2の量の活性成分)の制御された及び/又は遅
延した放出、が可能になる。これは、所定量の前記活性成分の即時送達、及び前記活性成
分のある期間にわたる持続した放出を、患者が必要とする場合に、特に好都合であること
がある。これは、例えば、疼痛の治療のために製剤化されたシン・フィルムにおいて、特
に有益であることがある。なぜなら、そのような製剤化によって、対象に、所定量の鎮痛
剤(例えば、モルヒネ)を即時送達して、疼痛を軽減することが可能になる、並びにまた
、鎮痛剤(例えば、モルヒネ)の遅延した及び/又は持続した放出を、前記対象にある期
間にわたって提供するレジネートの送達が可能になる、からである。そのような製剤が、
他の固形経口投薬剤型(例えば、錠剤など)に関して嚥下困難を有する患者(例えば、小
児又は高齢患者)にとって、理想的に適していることがある。
【0033】
前記フィルム中に(例えば、前記少なくとも1つの層中に)、複数(例えば、2種以上)
の薬学的活性成分を入れることがある。例えば、前記フィルム中に(例えば、前記少なく
とも1つの層中に)、複数(例えば、2種以上)の薬学的活性成分を分散させることがある
【0034】
複数(例えば、2種以上)のレジネートを提供してもよい。例えば、前記フィルム(例
えば、前記少なくとも1つの層)は、第1のイオン交換樹脂及び第1の薬学的活性成分を含
む第1のレジネート、並びに第2のイオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含む第2のレ
ジネート、を含むことがある、ここで、前記第1及び第2の薬学的活性成分は、異なってい
る。更なる薬学的活性成分(各々が、イオン交換樹脂及びそれぞれの薬学的活性成分を有
するレジネートを含む)を提供しても良い。
【0035】
用語レジネートを、本明細書においては、イオン交換樹脂に結合している、又はイオン
交換樹脂と複合体化している、薬学的活性成分の配合(combination)を意味する、ものと
理解する。
【0036】
イオン交換樹脂は、正又は負に荷電した部位(交換反応において、反対の電荷を有する
イオンを捕捉することができる)のどちらかを含む、水に不溶性の高分子化合物である。
イオン交換樹脂は、典型的には、陽イオン交換樹脂として、又は陰イオン交換樹脂として
分類される。陽イオン交換樹脂は、負に荷電した部分を有するイオン交換樹脂であり、例
えば、液中で、陽イオンの薬学的活性成分に結合することができる。次いで、その薬物が
高い電解質濃度で平衡に達すると、その後、結合した陽イオン及び相互作用した薬学的活
性成分は、例えば、in vivo で、放出されることがある。
【0037】
ある実施形態では、イオン交換樹脂は、スルホン酸修飾スチレン-ジビニルベンゼン共
重合体樹脂などの強酸陽イオン樹脂を含むことがある。イオン交換樹脂を、前記樹脂が食
品及び飲料の製造での安全な添加物と考えられるように、選択することがある。例えば、
前記樹脂は、連邦規則(the Code of Federal Regulation (CFR))、タイトル21、パート17
3(https://www.gpo.gov/fdsys/pkg/CFR-2010-title21-vol3/pdf/CFR-2010-title21-vol3-
sec173-25.pdf)に準拠している場合がある。前記樹脂を、以下からなる群のうちの1種以
上から選択することがある:
- スチレン及びジビニルベンゼンのスルホン化共重合体;
- ASTM試験法D388-38、クラスI、グループ2、‘‘Standard Specifications for Cla
ssification of Coal by Rank,’ (http://www.archives.gov/federal_register/code_of
_federal_regulations/ibr_locations.html)(これは、参照により取り込まれる)の要件
を満たすスルホン化アントラサイト石炭(Sulfonated anthracite coal);
- 側鎖にスルホン酸基を生じる修飾を伴う、亜硫酸塩修飾架橋化フェノール-ホルム
アルデヒド;
- メタクリル酸-ジビニルベンゼン共重合体;
- 架橋化ポリスチレン(最初にクロロメチル化し、次にトリメチルアミン、ジメチル
アミン、ジ-エチレントリアミン、又はジメチルエタノールアミンでアミノ化したもの);
- ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、又はテトラエチレンペンタミン
(エピクロロヒドリンで架橋化されている);
- トリエチレン、テトラミン、及びテトラエチレンペンタミンのいずれか又は両方で
活性化された架橋化フェノール-ホルムアルデヒド;
- ホルムアルデヒド、アセトン及びテトラエチレンペンタミンの反応樹脂;
- アクリル酸メチル及びジビニルベンゼンの完全加水分解共重合体;
- アクリル酸メチル、ジビニルベンゼン、及びアクリロニトリルの完全加水分解三元
共重合体;
- スチレン、ジビニルベンゼン及びアクリロニトリル又はアクリル酸メチルのスルホ
ン化三元共重合体;
- ジビニルベンゼンを2重量%以上を含む、アクリル酸メチル-ジビニルベンゼン共重
合体(ジメチルアミノプロピルアミンでアミノ分解 (aminolyzed)したもの);
- ジビニルベンゼンを3.5重量%以上含む、アクリル酸メチル-ジビニルベンゼン共重
合体(ジメチルアミノプロピルアミンでアミノ分解 (aminolyzed)したもの);
- アンモニアで架橋したエピクロロヒドリン;
- 合計2重量%以下のアクリロニトリル及びアクリル酸メチルを含む単量体の混合物に
由来する、スチレン、ジビニルベンゼン、アクリロニトリル及びアクリル酸メチルのスル
ホン化四元重合体;
- ジビニルベンゼンを3.5重量%以上、及びジエチレン・グリコール・ジビニル・エー
テルを0.6重量%以下で含むアクリル酸メチル-ジビニルベンゼン-ジエチレン・グリコール
・ジビニル・エーテルの三元重合体(ジメチルアミノプロピルアミンでアミノ分解 (amin
olyzed)したもの);
- スチレン-ジビニルベンゼン架橋化共重合体(最初にクロロメチル化し、次にジメ
チルアミンでアミノ化し、過酸化水素で酸化した結果、その樹脂は、ビニルN, N-ジメチ
ルベンジルアミン-N-オキシドを15重量%以下、及び窒素を6.5重量%以下で含有する);
- ジニルベンゼンを7重量%以上、及びジエチレン・グリコール・ジビニル・エーテル
を2.3重量%以下で含有する、アクリル酸メチル-ジビニルベンゼン-ジエチレン・グリコー
ル・ジビニル・エーテルの三元重合体(ジメチル-アミノプロピルアミンでアミノ分解し(
aminolyzed)、及び塩化メチルで四元化したもの);
- アンモニアで架橋化し、その後塩化メチルにより四元化し、全交換容量の重量につ
き、強塩基容量を18%以下で含むようになったエピクロロヒドリン;
- エピクロロヒドリン及びプロピレン・オキサイドを用いて架橋化及びアルキル化を
した後、スルホン化し、これにより、エピクロロヒドリン及びプロピレン・オキサイドの
使用量が、セルロースの出発量の重量につき、250%を超えない、再生セルロース。
【0038】
特定の用途のために使用する樹脂に関する特定の選択が、特定の活性成分又は薬物に必
要とされる放出速度、前記活性成分又は薬物が放出される環境(例えば、腸での放出、胃
での放出など)、及び前記活性成分又は薬物の化学的性質(例えば、電荷)、に依存するこ
とを、当業者は理解する。例えば、前記イオン交換樹脂及び前記活性成分は、相反して荷
電していることがある。前記イオン交換樹脂を、その電荷が、前記活性成分の電荷と逆に
なるように選択することがある。負に荷電した活性成分を使用しようとする場合、前記イ
オン交換樹脂は、正に荷電した樹脂であることがある。正に荷電した活性成分を使用しよ
うとする場合、前記イオン交換樹脂は、負に荷電した樹脂であることがある。中性に荷電
した又は中性の活性成分を使用することを意図する場合、前記イオン交換樹脂は、より弱
い電荷(例えば、双極子)を混合することにより、又は樹脂の反対イオンとの複合体形成
を経て、前記樹脂に結合する、又は前記樹脂と複合体を形成することがある。
【0039】
前記フィルム中に分散した前記第1の薬学的活性成分は、第1の放出速度と関連している
ことがある。
【0040】
前記第1の放出速度は、pH 6.8で測定した場合、5分後に、少なくとも30%、例えば、少
なくとも50%になることがある。
【0041】
前記第1の放出速度は、pH 6.8で測定した場合、10分後に、少なくとも40%、例えば、少
なくとも60%になることがある。
【0042】
前記第1の放出速度は、pH 1.2で測定した場合、5分後に、少なくとも50%、例えば、少
なくとも60%になることがある。
【0043】
前記第1の放出速度は、pH 1.2で測定した場合、10分後に、少なくとも60%、例えば、少
なくとも80%になることがある。
【0044】
前記レジネートに含まれる前記第2の薬学的活性成分は、第2の放出速度と関連している
ことがある。
【0045】
前記第2の放出速度は、pH 6.8で測定した場合、1時間後に、約5~80%、例えば、約10~
60%になることがある。
【0046】
前記第2の放出速度は、pH 6.8で測定した場合、2時間後に、約10~80%、例えば、約20
~70%になることがある。
【0047】
前記第2の放出速度は、pH 1.2で測定した場合、1時間後に、約10~80%、例えば、約20
~60%になることがある。
【0048】
前記第2の放出速度は、pH 1.2で測定した場合、2時間後に、約20~90%、例えば、約30
~80%になることがある。
【0049】
前記イオン交換樹脂は、典型的には、ビーズの形態で提供されることがある。
【0050】
前記ビーズは、関連する粒子サイズ、例えば、平均サイズ、又は関連するメッシュ・サ
イズを有することがある。
【0051】
前記イオン交換樹脂又はイオン交換樹脂の混合物のメッシュ・サイズ及び/又は粒子サ
イズを、前記活性成分又は薬物に関する所望の放出速度を提供するように選択することが
ある。
【0052】
理論に囚われることを望むものではないが、前記イオン交換樹脂のメッシュ・サイズ及
び/又は粒子サイズは、特定の条件下での所与の薬物の放出速度に影響を及ぼし得ること
が観察された。特に、比較的低いメッシュ・サイズ(即ち、比較的高い粒子サイズ)を有す
る樹脂を使用して調製された薬物レジネートは、比較的高いメッシュ・サイズ(即ち、比
較的低い粒子サイズ)を有する樹脂を使用して調製された薬物レジネートよりも、放出速
度が低くなることがある、ことが観察された。
【0053】
前記樹脂は、50~100メッシュ・サイズの範囲のメッシュ・サイズを有することがある
、及び/又は150~300 μmの範囲の粒子サイズを有することがある。このような樹脂を用
いて調製されたレジネートは、前記薬物又は活性成分の比較的低い放出速度と関連するこ
とがある。
【0054】
前記樹脂は、100~200メッシュ・サイズの範囲のメッシュ・サイズを有することがある
、及び/又は74~150 μmの範囲の粒子サイズを有することがある。このような樹脂を用
いて調製されたレジネートは、前記薬物又は活性成分の中程度の放出速度と関連すること
がある。
【0055】
前記樹脂は、200~400メッシュ・サイズの範囲のメッシュ・サイズを有することがある
、及び/又は37~74 μmの範囲の粒子サイズを有することがある。このような樹脂を用い
て調製されたレジネートは、前記薬物又は活性成分の比較的高い放出速度と関連すること
がある。
【0056】
前記第2の放出速度は、約50~100のメッシュ・サイズを有する樹脂について、pH 1.2で
測定した場合、1時間後に、約10~70%、例えば、約20~60%になることがある。
【0057】
前記第2の放出速度は、約200~400のメッシュ・サイズを有する樹脂について、pH 1.2
で測定した場合、2時間後に、約30~99%、例えば、約50~95%になることがある。
【0058】
前記イオン交換樹脂及び/又はレジネートは、粒子(例えば、ビーズ)の形態で提供さ
れてもよい。
【0059】
前記レジネート(例えば、ビーズ)をプロセシング(例えば、コーティング、カプセル化
など)することがある。前記レジネート粒子上にコーティングをすることによって、前記
レジネートからの前記第2の活性成分の初期放出が変わる(例えば、遅延する)ことがあ
る。これは、前記第2の活性成分を、対象の生体構造の特定の領域で放出する場合(例え
ば、消化器系の1つ以上の領域[例えば、胃]内での放出をバイパスし、消化器系の1つ以
上の他の領域[例えば、小腸]内で放出する場合)、特に有益であることがある。プロセ
シング物質(例えば、コーティング)を、消化器系の1つ以上の領域(例えば、胃)内での分
解又は溶解には耐え、そして消化器系の1つ以上の他の領域(例えば、小腸)において分解
又は溶解するように選択することがある。例えば、前記イオン交換樹脂を選択することだ
けでは、所望の放出速度及び/又は放出プロファイルが得られない場合に、前記レジネー
ト粒子上にコーティングすることがまた、前記レジネートからの前記第2の活性成分の放
出速度を微調整するために有用であることもある。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記経口可溶性フィルムは、任意選択的な添加剤(例えば、
1種以上の崩壊剤、界面活性剤[例えば、乳化剤]、可塑剤、充填剤、香味剤、甘味剤、
着色剤、抗酸化剤、微生物防腐剤など)を、更に含むことがある。
【0061】
前記フィルム(例えば、前記少なくとも1つの層)は、フリーな(free)又は非搭載の(un
loaded)イオン交換樹脂を、更に含むことがある。従って、本発明の実施形態では、以下
を含む少なくとも1つの層を含む、経口可溶性フィルムが提供される:
少なくとも1つの層中に分散した第1の薬学的活性成分;
第1のイオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含むレジネート;
第2のイオン交換樹脂;並びに、
マトリックス及び/又は結合剤。
【0062】
前記第1のイオン交換樹脂及び前記第2のイオン交換樹脂は、同じであることがある、又
は異なることがある。
【0063】
前記第2のイオン交換樹脂を、前記フィルム中に(例えば、少なくとも1つの層中に)分
散させることがある。前記第2のイオン交換樹脂は、薬学的活性成分と複合体化していな
くてもよく、及び非搭載(unloaded)又はフリー(free)として呼ばれることがある。
【0064】
有利であるように、前記フィルム中にフリーな(free)イオン交換樹脂を入れることによ
り、前記第1及び/又は第2の薬学的活性成分の放出プロファイルを変えることができる。
理論に囚われることを望むものではないが、フリーな(free)イオン交換樹脂は、前記フィ
ルム中に(例えば、少なくとも1つの層中に)分散した第1の薬学的活性成分と相互作用す
ることがある、及び/又は前記レジネートから放出されることがある第2の薬学的活性成
分と相互作用することがある、と考えられる。従って、前記第1及び/又は第2の薬学的活
性成分の放出プロファイル及び/又は速度を、前記レジネートのための第1の量の第1のイ
オン交換樹脂、及び非搭載の(unloaded)又はフリーな(free)樹脂としての第2の量の第2の
イオン交換樹脂、を選択することによって、調整することができる(前記第1の樹脂及び
前記第2の樹脂は、同じである又は異なっている)。有利であるように、前記フィルム中
に「フリーな(free)」イオン交換樹脂を加えることにより、「フリーな(free)」イオン交
換樹脂を有さない同じフィルムと比較して、ある期間にわたって、前記第1及び/又は第2
の活性成分に関して、より一定の放出プロファイルがもたらされることがある。
【0065】
前記第1の薬学的活性成分及び/又は前記第2の薬学的活性成分は、治療薬剤を含む、又
は治療薬剤である、ことがある。言い換えれば、用語「薬学的活性成分(pharmaceuticall
y active ingredient)」を、本明細書では、患者に対して治療効果を持つことができる(
即ち、疾患及び/又は医学的な症状を治療することができる)、活性成分を指すものとし
て、理解することがある。
【0066】
ある実施形態では、前記第1の薬学的活性成分及び/又は前記第2の薬学的活性成分は、
対象における疼痛を軽減することができる薬物又は物質(例えば、鎮痛剤)、を含む、又
はからなる、ことがある。
【0067】
前記第1及び/又は第2の薬学的活性成分(例えば、薬学的活性成分)は、オピオイド薬
物及び/又はその誘導体、を含む、又はからなる、ことがある。前記第1及び/又は第2の
薬学的活性成分(例えば、前記薬学的活性成分)は、任意の他の薬物クラス、を含む、又
はからなる、ことがある。前記第1及び/又は第2の薬学的活性成分(例えば、薬学的活性
成分)は、1種以上の、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アンフ
ェプラモン、アンフェタミン、アンフェタミニル(amphetaminil)、アニレリジン、アポコ
デイン(apocodeine)、アポモルフィン、アシマドリン、アキソマドール、ベンジルモルフ
ィン(benzylmorphine)、ベジトラミド(bezitramide)、ブレマゾシン、ブリフェンタニル(
brifentanil)、ブプレノルフィン、ブトルファノール、カルフェンタニル、クロニタゼン
、コデイン、シクラゾシン、シクロルファン(cyclorphan)、シプレノルフィン、シプロダ
イム(cyprodime)、デルトルフィン、デソモルヒネ(desomorpine)、デキストロメトルファ
ン、デキストロモラミド、デキストロプロポキシフェン、デゾシン、ジアモルフィン、ジ
アモルフォン(diamorphone)、ジアムプロミド、ジアセチルモルヒネ、ジヒドロコデイン
、ジヒドロコデイノン、ジヒドロエトルフィン(dihydroetoφhine)、ジヒドロモルフィン
、ジメノキサドール、ジメフェタモール(dimephetamol)、ジメフェプタノール、ジメチル
チアンブテン、ジオキシアフェチル・ブチレート(dioxyaphetyl butyrate)、ジフェノキ
シラート、ジピパノン、ジプレノルフィン、ドロナビノール、Met-エンケファリン、Leu-
エンケファリン、ダイノルフィンA、ダイノルフィンB、β-エンドルフィン、エプタゾシ
ン、エリドルフィン(eridorphin)、エトヘプタジン、14-エトキシメトポン、エチルケト
シクラゾシン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン、エトルフィ
ン、エキストロモラミド(extromoramide)、フェンカンファミン、フェネチリン、フェン
プロポレックス、フェンタニル、a-メチルフェンタニル、ベータ-フナルトレキサミン、P
‐ヒドロキシ‐3‐メチルフェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、
ヒドロモルフォドン(hydromorphodone)、ヒドロキシメチルモルフィナン(hydroxymethylm
orphinan)、ヒドロキシペチジン、イソメサドン、ケトベミドン、キオトルフィン、レボ-
a-アセチルメタドール、レボアセチルメタドール(levacetylmethadol)、レバロルファン
、レボメタドン、レボメサジル酢酸塩、レバロルファン、レボルファノール、レボフェン
アシルモルファン(levophenacylmorphan)、ロフェンタニル、ロフェキシジン、ロペラミ
ド、マルブフィン(malbuphine)、マジンドール、メラトニン、メフェノレックス、メペリ
ジン、メプロバメート、メプタジノール、メタゾシン、メサドン、メトポン、メチルジヒ
ドロモルヒネ、メチルジヒドロモルフィノン、メチルモルヒネ(methyhnorphine)、メチル
ナルトレキソン、メチルフェニデート(および立体異性体)、メチプリロン、メトポン、ミ
ルフェンタニル(mirfentanil)、モダフミル、モルフィセプチン、モルフィナン、モルヒ
ネ、ミロフィン、ナビロン、ナルブフィン、ナルブフィン、ナルメフェン、ナロルフィン
、ナロキソン、ナロキソン・ベンゾイルヒドラゾン、ナルトレキソン、ナルトリベン(nal
triben)、ナルトリンドール、ナルトリンドール・イソチオシアネート、ナルセイン、ナ
トブフィン(natbuphine)、ニコモルフィン、ノル-ビナルトルフィミン(nor- binaltorphi
mine)、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナロルフィン、ノルモルフィン、ノルピ
パノン、ノスカピン、オーメフェンタニル(ohmefentanyl)、o-メチルナルトレキソン、ア
ヘン、オニタゼン(onitazene)、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、パパベ
リン、パレゴリック、ペモリン、ペモリン、ペンタゾシン、ペチジン、フェンジメトラジ
ン、フェンジメトラゾン(phendimetrazone)、フェンメトラジン、フェナドキソン、フェ
ノモルファン(phenomorphan)、フェナゾシン、フェノペリジン、ホルコデイン(pholcodei
ne)、ピミノジン、ピプラドロール、ピリトラミド、プレノルフィン(prenorphine)、プロ
ファドール(profadol)、プロペリジン、プロフェプタジン(propheptazine)、プロメドー
ル(promedol)、プロペリジン、プロピラム、プロポキシフェン、プロピルヘキセドリン、
レミフェンタニル、スピラドリン、スフェンタニル(sufentanil)、スフェンタニル(sufen
tanyl)、タペンタドール、テバイン、トラマドール、トレフェンタニル、チリジン、ビミ
ノール若しくはそれらの塩、若しくはオピオイド類のフェナントレン、モルフィナン、ベ
ンゾモルファン、メサドン、フェニルピペリジン、プロピオナリド 4-アニリドピペリジ
ン、4-アリール・ピペリジン類、4-ヘテロアリールピペリジン類クラス、等、並びに/又
はそれらの塩及び誘導体、を含む、又はからなる、ことがある。
【0068】
一実施形態では、前記薬学的活性成分がモルヒネ、又はその塩若しくは誘導体であるこ
とがある。別の実施形態では、前記薬学的活性成分はアポモルフィンであることがある。
【0069】
前記第1及び/又は第2の薬学的活性成分は、低リン血症、低出生重量の乳児によくみら
れ、未熟児の骨減少症に関連する症状、のために、乳児における代謝性骨疾患を治療する
及び/又は予防することができる薬物又は物質、を含む、から本質的になる、又はからな
る、ことがある。前記第1及び/又は第2の薬学的活性成分は、カリウム塩(例えば、リン
酸二水素カリウム(potassium acid phosphate))、を含む、から本質的になる、又はから
なる、ことがある。
【0070】
前記第1及び/又は第2の薬学的活性成分は、胃及び/又は食道の病的症状(例えば、嘔
吐、吐き気、逆流など)を治療する及び/又は予防することができる薬物又は物質、を含
む、から本質的になる、又はからなる、ことがある。前記第1及び/又は第2の薬学的活性
成分は、メトクロプラミド及び/又はその誘導体(例えば、塩酸メトクロプラミド)、を
含む、から本質的になる、又はからなる、ことがある。
【0071】
前記第1及び/又は第2の薬学的活性成分は、勃起不全、又は運動に影響を及ぼし得る神
経システムの進行性疾患(例えば、パーキンソン病など)を治療する及び/又は予防する
ことができる薬物又は物質、を含む、から本質的になる、又はからなる、ことがある。
【0072】
前記第1及び/又は第2の薬学的活性成分は、カンナビス又はカンナビス誘導体(例えば
、カンナビジオール及び/又は他のカンナビノイド類など)、を含む、から本質的になる
、又はからなる、ことがある。
【0073】
前記第1及び/又は第2の薬学的活性成分は、メラトニン、を含む、から本質的になる、
又はからなる、ことがある。
【0074】
本明細書に記載される製剤は、例えば、丸剤の嚥下が問題となり得る場合、ヒト、特に
小児科及び/又は老人科の治療において、応用されることがある。別の分野は、動物にピ
ルを投与することが困難である場合がある、獣医学分野である。
【0075】
いくつかの実施形態では、前記製剤は、ある期間にわたり(例えば、少なくとも1時間
、又はそれ以上の時間[例えば、少なくとも2、3、4、5、6、8時間、又はそれ以上の時間
])、前記活性成分を持続放出するように、提供されることがある。
【0076】
本発明の第2の態様によれば、以下を含む少なくとも1つの層を含む経口可溶性フィルム
が提供される:
第1のイオン交換樹脂及び第1の薬学的活性成分を含む第1のレジネート;
第2のイオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含む第2のレジネート;並びに、
マトリックス及び/又は結合剤。
【0077】
前記第1のレジネート及び/又は前記第2のレジネートを、前記フィルム中に(例えば、
少なくとも1つの層中に)分散させることがある(例えば、不均一に分散させることがあ
る)。
【0078】
前記フィルム(例えば、少なくとも1つの層)は、マトリックス及び/又は結合剤を含
むことがある。好ましくは、前記フィルム(例えば、少なくとも1つの層)は、ポリマー
・マトリクスを含むことがある。前記マトリックスは、前記フィルムの(例えば、少なく
とも1つの層の)残りの成分に対する(例えば、少なくとも第1のレジネート及び第2のレ
ジネートに対する)結合剤として作用することが可能なことがある。
【0079】
前記第1の薬学的活性成分及び前記第2の薬学的活性成分は、同じであることがある、又
は異なることがある。
【0080】
前記第1の薬学的活性成分及び前記第2の薬学的活性成分は、同じであることがある。そ
のような場合、前記経口可溶性フィルムは、以下を含む少なくとも1つの層を含むことが
ある:
第1のイオン交換樹脂及び第1の量の薬学的活性成分を含む第1のレジネート;
第2のイオン交換樹脂及び第2の量の薬学的活性成分を含む第2のレジネート;並びに

マトリックス及び/又は結合剤。
【0081】
前記第1のイオン交換樹脂及び前記第2のイオン交換樹脂は、同じであることがある、又
は異なることがある。
【0082】
ある実施形態では、前記第1のイオン交換樹脂及び前記第2のイオン交換樹脂は、同じポ
リマー樹脂、を含む、から本質的になる、又はからなる、ことがある。
【0083】
前記第1及び/又は第2のレジネートは、前記フィルム中で(例えば、少なくとも1つの
層中で)、約1~50重量%、例えば、典型的には、約5~20重量%の量であることがある。
【0084】
前記第1のレジネートにおける、前記第1の薬学的活性成分と前記第1の樹脂との比率(重
量比)は、約2:1~1:5、典型的には、約1:1~1:2(例えば、約1:1.5)であることがある。
【0085】
前記第2のレジネートにおける、前記第2の薬学的活性成分と前記第2の樹脂との比率(重
量比)は、約2:1~1:5、典型的には、約1:1~1:2(例えば、約1:1.5)であることがある。
【0086】
前記第1のイオン交換樹脂及び/又は第1のレジネートを、粒子(例えば、ビーズ)の形
態で提供することがある。
【0087】
前記第2のイオン交換樹脂及び/又は第2のレジネートを、粒子(例えば、ビーズ)の形
態で提供することがある。
【0088】
前記第1のイオン交換樹脂及び/若しくは第1のレジネート、並びに/又は前記第2のイ
オン交換樹脂及び/若しくは第2のレジネートをプロセシング(例えば、コーティング、
カプセル化など)することがある。前記レジネート粒子上にコーティングをすることによ
って、そのそれぞれのレジネートからの活性成分の初期放出が変わる(例えば、遅延する
)ことがある。
【0089】
前記フィルム(例えば、前記少なくとも1つの層)は、1種以上のフリーな(free)又は非
搭載の(unloaded)イオン交換樹脂を更に含むことがある。
【0090】
前記フィルム(例えば、前記少なくとも1つの層)は、フリーな(free)又は非搭載の(un
loaded)第1のイオン交換樹脂を含むことがある。
【0091】
前記フィルム(例えば、前記少なくとも1つの層)は、フリーな(free)又は非搭載の(un
loaded)第2のイオン交換樹脂を含むことがある。
【0092】
前記フィルム(例えば、前記少なくとも1つの層)は、フリーな(free)又は非搭載の(un
loaded)第3のイオン交換樹脂を含むことがある(即ち、前記フィルムは、前記第1のイオ
ン交換樹脂及び前記第1のイオン交換樹脂とは異なる、ある量の、フリーな(free)又は非
搭載の(unloaded)第3のイオン交換樹脂を含むことがある)。
【0093】
前記第1のイオン交換樹脂及び前記第2のイオン交換樹脂は、異なるメッシュ・サイズ及
び/又は粒子サイズを有する粒子(例えば、ビーズ)、を含む、又はからなる、ことがあ
る。
【0094】
各イオン交換樹脂又はイオン交換樹脂の混合物のメッシュ・サイズ及び/又は粒子サイ
ズを、例えば、本発明の第1の態様に関して記載されるように、活性成分又は薬物の所望
の放出速度を提供するように、選択することがある。
【0095】
一実施形態では、前記第1のイオン交換樹脂は、第1のメッシュ・サイズ(例えば、50~
100、100~200、若しくは200~400メッシュ・サイズの範囲)を有する、及び/又は第1の
粒子サイズ(例えば、150~300 μm、74~150 μm、若しくは37~74 μmの範囲)を有す
る、粒子(例えば、ビーズ)、を含む、又はからなる、ことがある、並びに、前記第2の
イオン交換樹脂は、第2のメッシュ・サイズ(例えば、50~100、100~200、若しくは200
~400メッシュ・サイズの範囲)を有する、及び/又は第2の粒子サイズ(例えば、150~3
00 μm、74~150 μm、若しくは37~74 μmの範囲)を有する粒子(例えば、ビーズ)、
を含む、又はからなる、ことがある、ここで、前記第1のメッシュ・サイズ又は粒子サイ
ズ(particular size)、及び前記第2のメッシュ・サイズ又は粒子サイズ(particle size)
は、異なる。
【0096】
そのようにすることで、前記フィルムにより、第1の放出速度での前記第1の活性成分の
放出、及び第2の異なる放出速度での前記第2の活性成分の放出、が可能になる。これは、
患者が、所定の期間にわたる所定の量の前記第1の活性成分の送達、及び所定の異なる期
間にわたる前記第2の活性成分の持続した放出、を必要とする場合に、特に有利であるこ
とがある。これはまた、患者が、所定の期間にわたる所定の量の単一の活性成分の送達を
必要とする場合に有益であることがあるが、そのような放出プロファイルは、単一のイオ
ン交換樹脂の中に薬物を組み込むことによっては達成できない場合があり、一方、2種以
上の異なるサイズのビーズを有するイオン交換樹脂の中に薬物を組み込むことによって、
前記薬物の放出プロファイルを改善させた設計とすることが可能になる。
【0097】
前記第1のレジネートに含まれる薬学的活性成分は、第1の放出速度に関連することがあ
る。
【0098】
前記第2のレジネートに含まれる薬学的活性成分は、第2の放出速度に関連することがあ
る。
【0099】
前記第1の樹脂は、約50~100のメッシュ・サイズを有することがある。前記第1の放出
速度は、pH 1.2で測定した場合、1時間後に、約10~70%、例えば、約20~60%になること
がある。
【0100】
前記第2の樹脂は、約200~400のメッシュ・サイズを有することがある。前記第2の放出
速度は、pH 1.2で測定した場合、2時間後に、約30~99%、例えば、約50~95%になること
がある。
【0101】
本発明の任意の他の態様に関して記載された特徴を、本発明の第2の態様によるフィル
ムに関して、同等に適用することがある、そして、簡潔にするために、ここでは繰り返さ
ない。
【0102】
本発明の第3の態様によれば、1種以上の薬学的活性成分を対象に送達する方法が提供さ
れ、前記方法は、以下を含む少なくとも1つの層を含む経口可溶性フィルムを経口投与す
ることを含む:
第1の薬学的活性成分;
イオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含むレジネート;並びに、
マトリックス及び/又は結合剤。
【0103】
前記方法は、前記対象の口腔内で、前記フィルムを溶解することを含むことがある。
【0104】
前記方法を、ヒト(とりわけ、小児科及び/又は老人科)又は動物(例えば、イヌ類及び
ネコ類を含むコンパニオン動物類)に対して、実施することがある。
【0105】
前記方法は、前記第1の薬学的活性成分を非-遅延方式で放出するステップを含むことが
ある。用語「非-遅延」は、例えば、前記対象の口腔内で、前記フィルムが溶解する又は
崩壊すると、前記第1の薬学的活性成分が送達される(例えば、即時に送達される)こと
を意味する、ことを、当業者は理解するであろう。
【0106】
本発明の任意の他の態様に関して説明した特徴を、本発明の第3の態様による方法に関
して、同等に適用することがある、そして、簡潔にするために、ここでは繰り返さない。
【0107】
本発明の第4の態様によれば、1種以上の薬学的活性成分を対象に送達する方法が提供さ
れ、前記方法は、以下を含む少なくとも1つの層を含む経口可溶性フィルムを経口投与す
ることを含む:
第1のイオン交換樹脂及び第1の薬学的活性成分を含む第1のレジネート;
第2のイオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含む第2のレジネート;並びに、
マトリックス及び/又は結合剤。
【0108】
前記第1の薬学的活性成分及び前記第2の薬学的活性成分は、同じであることがある、又
は異なることがある。
【0109】
好ましい実施形態では、前記第1の薬学的活性成分及び前記第2の薬学的活性成分は、同
じであることがある。
【0110】
前記方法は、前記対象の口腔内で、前記フィルムを溶解する又は崩壊させることを含む
ことがある。
【0111】
前記方法は、第1の放出速度で第1の活性成分を放出すること、及び第2の異なる放出速
度で第2の活性成分を放出すること、を含むことがある。これは、患者が、所定の期間に
わたる所定の量の前記第1の活性成分の送達、及び所定の異なる期間にわたる前記第2の活
性成分の持続した放出、を必要とする場合に、特に有利であることがある。これはまた、
患者が、所定の期間にわたる所定の量の単一の活性成分の送達を必要とする場合に有益で
あることがあるが、そのような放出プロファイルは、単一のイオン交換樹脂の中に薬物を
組み込むことによっては達成できない場合があり、一方、2種以上の異なるサイズのビー
ズを有するイオン交換樹脂の中に薬物を組み込むことによって、前記薬物の放出プロファ
イルを改善させた設計とすることが可能になる。
【0112】
本発明の任意の他の態様に関して説明した特徴を、本発明の第4の態様による方法に関
して、同等に適用することがある、そして、簡潔にするために、ここでは繰り返さない。
【0113】
本発明の第5の態様によれば、治療方法における、本発明の第1の態様又は第2の態様に
よる経口可溶性フィルムの使用が提供される。
【0114】
前記使用は、疼痛、片頭痛、頭痛、炎症、代謝性骨疾患、低リン血症、吐き気、嘔吐、
胃食道逆流症、不安、呼吸困難、睡眠障害、運動障害(例えば、パーキンソン病)などか
ら選択される1種以上の疾患及び/又は症状を治療することを含むことがある。
【0115】
本発明の任意の他の態様に関して説明した特徴を、本発明の第5の態様による使用に関
して、同等に適用することがある、そして、簡潔にするために、ここでは繰り返さない。
【0116】
本発明の第6の態様によれば、経口可溶性フィルムを調製する方法が提供され、前記方
法は、第1の薬学的活性成分;イオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含むレジネート
;並びに、結合剤、を含む製剤を支持体の上にキャスティングすること、を含む。
【0117】
前記製剤は、液体媒体を、更に含むことがある。
【0118】
典型的には、前記液体媒体は、水性の溶媒(例えば、水)、を含む、から本質的になる
、からなる、又はである、ことがある。
【0119】
前記結合剤は、例えば、本発明の第1の態様に関して説明したように、ポリマー、を含
む、から本質的になる、からなる、又はである、ことがある。
【0120】
前記方法は、キャスティングの前に前記製剤を混合することを含むことがある。
【0121】
前記方法は、前記レジネートを調製する予備的な段階を含むことがある。
【0122】
前記レジネートを、液体媒体(例えば、水)中に、前記イオン交換樹脂及び前記第2の
薬学的活性成分を提供することによって、調製することがある。このステップは、以下を
含むことがある:
-前記液体媒体中で前記イオン交換樹脂及び前記第2の医薬活性物質を混合すること;
-前記レジネートをろ過すること;
-前記レジネートを濯ぐこと;並びに/又は、
-前記レジネートを乾燥させること。
【0123】
前記方法は、前記支持体から、前記フィルムを取ることを含むことがある。
【0124】
本発明の任意の他の態様に関して説明した特徴を、本発明の第6の態様による使用に関
して、同等に適用することがある、そして、簡潔にするために、ここでは繰り返さない。
【0125】
本発明の第7の態様によれば、経口可溶性フィルムを調製する方法が提供され、前記方
法は、第1のイオン交換樹脂及び第1の薬学的活性成分を含む第1のレジネート;第2のイオ
ン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含む第2のレジネート;並びに、結合剤、を含む製
剤を支持体の上にキャスティングすること、を含む。
【0126】
前記第1及び/又は第2のレジネートを、本発明の第6の態様に関して説明したように、
液体媒体(例えば、水)中に、前記イオン交換樹脂及びそれぞれの薬学的活性成分を提供
することによって、調製することがある。
【0127】
本発明の任意の他の態様に関して説明した特徴を、本発明の第7の態様による使用に関
して、同等に適用することがある、そして、簡潔にするために、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0128】
以下を示す図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する:
図1】pH 1.2及び6.8での、20 mg経口シン・フィルムの溶解プロファイル、並びに市販の比較製品(MST (登録商標) Continus (登録商標)懸濁剤及びMST (登録商標) Continus (登録商標) 錠剤(n=6))との比較;
図2】遅延したキャスティング(delayed casting)後、pH 6.8での薬物放出プロファイル;
図3】調節された放出の硫酸モルヒネの経口シン・フィルムを、ラットに経口投与した後の、硫酸モルヒネの血清中濃度(n = 3、平均値±SD);
図4】複合体化したジクロフェナクを含むシン・フィルムの、pH 6.8での、薬物放出プロファイル;
図5】複合体化していない、リン酸二水素カリウム(potassium acid phosphate)を含むシン・フィルムの、pH 6.8での、薬物放出プロファイル;
図6】10 mgの、複合体化していない、塩酸メトクロプラミドを含むシン・フィルムの薬物放出プロファイル;
図7】10 mgの、複合体化した、塩酸メトクロプラミドを含むシン・フィルムの薬物放出プロファイル;
図8】pH=6.8で、複合体化した硫酸モルヒネと複合体化していない塩酸メトクロプラミドを含むシン・フィルムの薬物放出プロファイル;
図9】50~100メッシュのメトクロプラミドのレジネートからの、pH 1.2及び6.8での,経時的な薬物放出プロファイル;
図10】50~100メッシュのオキシコドンのレジネートからの、pH 1.2及び6.8での,経時的な薬物放出プロファイル;
図11】pH 1.2での、メトクロプラミドのレジネート(resonates)の薬物放出に対するメッシュ・サイズの影響;
図12】pH1.2での、サーカディン(Circadin)(登録商標)錠剤と比較した、ダウエックス(Dowex) 50-100メッシュ、並びに、オイドラギット(Eudragit) RSPOを用いた場合及び用いない場合のアンバーライト(Amberlite) IRP 69樹脂、を有するメラトニンのレジネートからの薬物放出プロファイル;
図13】pH1.2及びpH 6.8での、Circadin(登録商標)錠剤と比較した、Amberlite IRP 69及びEudragit RSPOを有するメラトニンのレジネートを含むシン・フィルムの薬物放出プロファイル。
【実施例0129】
1) 薬学的活性成分としてモルヒネを放出する経口シン・フィルムの検討
材料と方法
薬物レジネートの調製
8%ジビニルベンゼン架橋を有する強酸性陽イオン交換樹脂(Dowex (登録商標) 50WX8、5
0-100メッシュ[BDH Laboratory Supplies、Poole、UK; Lot K18954850 429])を、100 ml
の4.0%(w/v)の硫酸モルヒネ(Macfarlan Smith、Edinburgh、UKの厚意による; Lot 13-003
96)の蒸留水溶液中に、硫酸モルヒネ対樹脂の比率(重量による)が1:1.5となるように分散
させ、室温で、24時間、遮光して、マグネチック・スターラーにより撹拌した(250 rpm)
。次いで、薬物-樹脂複合体を47 mm 0.2 μmナイロン膜(Phenex(TM)、Phenomenex Inc、C
heshire、UK)を通してろ過し、蒸留水で2回濯いだ。そのろ液を希釈し、高速液体クロマ
トグラフィー(後述の方法)によりアッセイして、交換樹脂上への薬物搭載(drug loading)
の程度を間接的に決定した。その薬物-レジネートを、50℃で、12時間乾燥させた。
【0130】
経口シン・フィルムの製剤化
イオン交換樹脂複合体の中に搭載した20mgの硫酸モルヒネ(上記のように調製した)を含
む経口シン・フィルム製剤を開発した。前記経口シン・フィルムを、以下のもので構成さ
れる溶液から調製した:
13.8% w/wの薬物レジネート;
フィルム形成ポリマーとして、17.4% w/wのプルラン(Cornelius, Hertfordshire, UK;
Lot 1E0712);
崩壊剤として、2.3% w/wのポリビニル・ポリピロリドン(Sigma-Aldrich、Dorset、UK;
Lot KI19107BI);
乳化剤として、1.6% w/w Sisterna SP70[Sisterna、Roosendaal、オランダ; Batch No.
548Z22];
柑橘香味剤として、1% w/wレモン 507940T(Firmenich、Meyrin、スイス; Batch No. 10
00710486);
甘味剤として、0.9% w/wスクラロース(Tate & Lyle、ロンドン、UK; Lot XM1D009501)

可塑剤として、0.2% w/wグリセロール(Melford Labs Ltd、Ipswich、UK; Batch No。19
256);及び、
蒸留水。
【0131】
全ての成分を分析天秤(A&D Instruments Ltd、Abingdon、Oxford、UK; Serial No. 142
14367)で秤量し、Ultra-Turraxホモジナイザー(Janke & Kunkel、Staufen、ドイツ; Seri
al No. 751808)を用いて、8000 rpmで混合した。そのポリマー液から、ポリマー・コート
をした紙の上に、フィルムを、マイクロメーター調節可能フィルム・アプリケーター(She
en; 1117/250mm)を使用して、1.4mmでキャスティングをし、キャビネット・ドライヤー(M
itchell Dryers Ltd、Carlisle、UK)中で、40℃で、30分間乾燥させた。回転刃を使用し
て、経口シン・フィルムをターゲットとする重量にカットした。
【0132】
以下の表1のように、5、10又は20mgの硫酸モルヒネを含む、フィルムを更に作製した

【表1】
【0133】
高速液体クロマトグラフィ(HPLC)の方法
Lee及びSabraによる研究に基づいて(G. Lee, K. Sabra, Stability of morphine sulph
ate in ANAPA Plus ambulatory infusion device and PEGA infusion sets, Eur J Hosp
Pharm-S P, 12 (2006) 76-80)、ACE C18カラム(直径4.6mm×長さ150 mm、直径5 μmの固
定相を充填)を用いて、同じ材料のガードカラムを取り付けて、逆相HPLC方法を開発し、
バリデーションした。1.5 mL/分の流速を設定し、UV吸光度について237 nmの波長を設定
した。1%(w/v)酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリル(90:10 v/v)からなるアイソク
ラティック移動相を、溶出するために使用した。20 μLのサンプルを前記カラムに注入し
た。HPLCグレードの水中に溶解した硫酸モルヒネ(Macfarlan Smith、Edinburgh、UK; Lot
13-00396)を使用して、スタンダードを調製し、全ての測定を3連で行った。
【0134】
キャラクタリゼーション
薬物-樹脂分散の均一性(homogeneity)と含量の均一性(uniformity)
イオン交換樹脂ビーズは、顕微鏡で見た場合に、又は十分に高解像度で走査若しくは写
真撮影した場合に、個々を同定する、及びカウントすることができる程度に、ポリマー・
フィルムの背景とは十分に異なる色である、ことが観察された。経口シン・フィルム・マ
トリクス全体にわたる、レジネート分布の均一性を評価するために、その薬物-樹脂複合
体を含む、1枚の経口シン・フィルム材料を、EPSON Stylus SX515Wスキャナーを用いて、
2400 dpiでスキャンした。5 mm平方のグリッドをその画像の上に重ね、そのセル(cells)
に番号を付けた。オンライン・ランダム・ナンバー・ジェネレーター(http://www.random
izer.org/)を用いて、一組20個の固有のランダム・セルを分析するために同定した。それ
ぞれの正方形サンプルについて、別個の薬物-樹脂ビーズを、ImageJ (Maryland、USA)画
像処理ソフトウエアを用いて、マニュアルでカウントした。部分的に、その正方形の縁の
上にあるビーズは、そのカウントに含めた。
【0135】
バッチ間の含量の均一性を評価するために、本発明者らは、徐放性モルヒネ錠について
の薬局方承認基準(Pharmacopoeial monograph)の要件を適用した。即ち、あるバッチから
ランダムに選択した、10個の投与単位でのモルヒネ含量は、記載内容の5%以内でなければ
ならない (British Pharmacopoeia Commission, British Phrmacopoeia Volume III, For
mulated Preparations: Specific Monographs, Prolonged-release Morphine Tablets, i
n: British Pharmacopoeia 2014, The Stationery Office on behalf of the Medicines
and Healthcare products Regulatory Agency (MHRA), London, England, 2014)。公定
書タイプII溶解装置(compendial Type II dissolution equipment)を用いて、各フィルム
を、37℃で、900 mlの0.1N 塩酸中に分散させ、パドル法を用いて50 rpmで、48時間撹拌
した。それぞれの溶液の一部を、0.22 μmのシリンジ・フィルターでろ過し、HPLCで硫酸
モルヒネの含量を分析した。
【0136】
微生物の生物学的負荷(Microbial bioburden)
生物学的負荷の分析を、ISO 11737-1に従ってプルラン・フィルム上で行った。トリプ
トン大豆寒天を、バクテリアのコロニー増殖に使用し、35±1 ℃で、3日間インキュベー
トした。サブロー(Sabouraud)デキストロース寒天を、酵母及び真菌をカウントするため
に使用し、これらを22±1℃で5日間にわたって培養した。
【0137】
経口シン・フィルムの引張強さ及び崩壊性
英国薬局方は、口腔内崩壊フィルムに対する一般的な承認基準を記載し、それは、投薬
単位は、「ダメージを受けずに、ハンドリングに対して抗するのに適した力学的強度」[2
1]であるべきである、と記載する。張力計(Instron、High Wycombe、UK)を使用して、プ
ルラン・フィルムが破れるのに必要な伸び及び負荷を研究した。一組の2つの'歯(jaws)'
の間に各フィルムを固定し、破る力(N)及び破断点での長さの増加(mm)の測定値を記録し
た。投薬剤型の崩壊を評価するために、Preisらが発表した新規な方法論[22]を適用した
。本方法は、錠剤崩壊を動的に評価するための既存の公定の装置を適合化させて利用した
。各経口シン・フィルム(n = 6)を、上縁で、小さいクリップを用いて、崩壊試験装置(Co
pley Scientific、Nottingham、UK; Serial No. 21169)のアームから吊り下げた。それよ
り下の縁に、第2のクリップを、追加の重量を加えて、そのクリップの全重量が3グラムに
なるように、取り付けた。37℃に保った蒸留水を、崩壊媒体として用いた。吊り下げアー
ムが最下点に達したときに、経口シン・フィルムの半分が浸るように、その水位を設定し
た。タイマーを始動させ、そのエンドポイントを、前記経口シン・フィルムが崩壊し、そ
の重しが落ちるポイントとして視覚的に記録した。
【0138】
熱安定性
調節された放出の硫酸モルヒネ経口シン・フィルムの熱安定性を評価するために、ある
バッチのフィルムをアルミニウム薄板パウチ中にヒート・シールし、40℃±2℃のインキ
ュベーター中で6ヶ月間保存した。間隔(0ヶ月、3ヶ月及び6ヶ月)で、サンプルを、重量分
析及び薬物含量分析のために採取した。各時点で、10枚のランダムに選択したフィルムを
個々に秤量し、900 mLの0.1 M HCl中に、37℃で、24時間分散させた(パドルによって、50
rpmで撹拌した)。その溶液を0.22 μmのシリンジ・フィルターを通してろ過し、HPLCに
よるアッセイのためにバイアルに入れた。ICHガイドラインに従って、5%を超える変化を
「有意」であるとみなした[23]。2-サンプルt検定を実施し、Minitab (登録商標)統計ソ
フト(Ver.16.2.4)を用いて、群を比較した。
【0139】
In vitro溶解性
溶解性試験を、英国薬局方に記載されているように、パドル方法を用いて、経口シン・
フィルム(それぞれのpHについてn = 6)について実施した。使用した溶解媒体は、英国薬
局方(British Pharmacopoeia Commission, British Pharmacopoeia 2014 Online. Append
ix XII B. ANNEX: Recommendations on Dissolution Testing, in, London , England: T
he Stationery Office on behalf of the Medicines and Healthcare products Regulato
ry Agency (MHRA), 2014)に記載されているように、塩酸媒体(pH 1.2)及びリン酸バッフ
ァー溶液(pH 6.8)とした。各溶解容器は、37℃に維持された900mLの媒体を含み、50rpmの
パドル速度とした。薬物濃度を、上記のようにHPLCによって決定した。サンプルを、0.22
μmフィルターを通して、0分、10分、20分、30分、1時間、1.5時間、2時間、次いで6時
間までの1時間毎に抽出した。MST (登録商標) Continus (登録商標) 20 mg懸濁剤(Napp P
harmaceuticals Ltd., Cambridge, UK; Batch No. 169935)を比較製品として使用し、同
じ方法で溶解を行った。同じ溶解方法を使用して、MST (登録商標) Continus (登録商標)
10mg錠剤(Napp Pharmaceuticals Ltd、Cambridge、UK; Batch No。176133)のサンプルか
らも、放出プロファイルを得た;サンプルを、210nmでのUV分光光度法によって測定した
【0140】
溶解プロファイルを、f2統計を用いて、統計的類似性について比較した。Microsoft Ex
celアド-イン・プログラム(DDSolver)を用いて、ブートストラップ法を用いて、f2類似
性因子を計算した(Y. Zhang, M. Huo, J. Zhou, A. Zou, W. Li, C. Yao, S. Xie, DDSo
lver: an add-in program for modeling and comparison of drug dissolution profiles
, Aaps j, 12 (2010) 263-271)。50を超えるf2値は、溶解プロファイル間の類似性を示
した。
【0141】
工業的にスケールアップするための遅延したキャスティング(delayed casting)
経口シン・フィルムの生産を、工業レベルまで容易にスケールアップすることができる
。しかしながら、新規な調節された放出の製剤に含まれる技術の組合せが前提であるので
、フィルムを製造する前に、薬物-レジネートを、粘性のあるストック溶液中に、持続的
に懸濁させた場合に、その活性のある薬学的成分の放出が起こりうるかどうか、について
の疑問が生じた。これを評価するために、63.7%(w/w)の蒸留水、19.1%(w/w)のプルラン、
10.2%(w/w)の薬物-レジネート(上記のように調製)、2.5%(w/w)のポリビニル・ポリピロリ
ドン、1.8%(w/w)のSisterna SP70、1.1%(w/w)のスクラロース、1.0%(w/w)のレモン507940
T香味剤、及び0.5%(w/w)のグリセロールを含有する、粘性のあるストック溶液をホモジナ
イズした。この溶液を静置し、0、24及び48時間後にその混合物から経口シン・フィルム
をキャスティングした。各キャスティングの前に、前記混合物を手で再ホモジナイズした
。各時点について、HPLC及び上記の方法を用いて、溶解性を、リン酸バッファー(B.P.)
中のpH 6.8で、評価した。
【0142】
ラットにおけるin vivo単回用量薬物動態試験
試験デザイン
Nakamuraらによる薬物動態学的研究(K. Nakamura, E. Nara, T. Fuse, Y. Akiyama, Ph
armacokinetic and pharmacodynamic evaluations of novel oral morphine sustained r
elease granules, Biol Pharm Bull, 30 (2007) 1456-1460)では、膨潤性の層状ポリマー
・システムに基づいた、1日1回の、塩酸モルヒネの調節された放出の製剤が評価された。
1日用量である160 mg/kgモルヒネを、制御された放出の顆粒としてラットに投与すると、
投与24時間後に、250 ng/mLを超える血漿濃度になった。その著者らはまた、その研究デ
ザインの中で、40 mg/kg用量のモルヒネ水溶液が、500 ng/mLの血漿濃度を達成するため
に、必要であることが観察されたことも記している。このデザインに基づき、本発明者ら
は、体重342~371 g(平均(SD)体重359.3(9.8) g)の健常なオスSprague Dawley (登録商
標)ラット12匹を対象に、単回用量薬物動態試験を実施した。それぞれのラットに、イソ
フルラン(IsoFlo(登録商標)、Abbott Laboratories Ltd、Berkshire、UK)麻酔下で、50mg
の硫酸モルヒネ(135~146 mg/kg bw)を含有する、持続的な放出の経口分散性シン・フィ
ルムを投与した。経口シン・フィルムをピンセットを用いて頬の内側に置き、約100μLの
水を投与することによって湿らせた。尾静脈から、時差をつけて血液サンプル(400 μL)
を採取し(麻酔下)、それぞれのラットは、全体で4つの時点に寄与し、24時間にわたって
、3サンプルを0.5、1、2、3、4、5、6、8、10、12、14、16、18、20、22、及び24時間で
得るようにした。血液サンプルを、きれいな1.5 mlのPPE Eppendorf (登録商標)チューブ
に採取し、直立した状態で、3~5℃で凝固させた。次いで、サンプルを、9503 gで、10分
間遠心分離して血清を分離し、これをきれいな2 mlのEppendorfs (登録商標)に移し、分
析するまで80℃で凍結した。終末の血液サンプルを採取した後、そのラットを二酸化炭素
を用いて安楽死させた。
【0143】
ラット血清からの硫酸モルヒネの抽出及びHPLC-UVアッセイ
全血中のヘロイン、トラマドール、及びそれらの代謝物を検出することに関し、Mahdy
らが発表した方法に基づき(T. Mahdy, T.H. El-Shihi, M.M. Emara, M. Giorgi, New HPL
C method to detect individual opioids (heroin and tramadol) and their metabolite
s in the blood of rats on combination treatment, J Chromatogr Sci, 50 (2012) 658
-665)、ラット血清から硫酸モルヒネを抽出し、続いて定量する方法を開発した。抽出を
、きれいな2 mlのEppendorf (登録商標)チューブの中で行った。20 μL の5 μg/mLの塩
酸ナロルフィン(内部スタンダード)溶液(メタノール溶液)を、モルヒネを含有する170 μ
Lのラット血清に添加し、30秒間ボルテックスした。85 μL の0.2 Mホウ酸バッファー(pH
9.0)を加え、30秒間ボルテックスした。1 mLの抽出溶媒(メチルtert-ブチル・エーテル(
MTBE))を加え、30秒間ボルテックスした。次いで、前記サンプルを、バイアルを回転させ
ること(40 rpm)により10分間振盪し、9503 gで10分間遠心分離した。有機層をきれいな2
mlのEppendorf (登録商標)チューブに移し、40℃の水浴中で窒素下で蒸発させた。MTBEで
更に2 × 1 mLの抽出を行った。遠心分離後、有機層を、毎回、同じEppendorf (登録商標
)チューブ中で合わせ、蒸発させて、単一の残渣を残した。前記残渣を150 μLの移動相(1
%(w/v)酢酸アンモニウム:アセトニトリル[90:10])に再構成し、100 μLをHPLCカラムに注
入した。
【0144】
ACE C18カラム(直径4.6 mm×長さ150 mm、直径5 μmの固定相を充填)(同じ材料のガー
ド・カラムが取り付けられている)を用いて、237 nmで、硫酸モルヒネ及びナロルフィン
を、HPLC-UV検出を行った。前記移動相は、アセトニトリル-酢酸アンモニウム1%(w/v)か
らなり、分析を2 mL/分の流速で、勾配モードで行った。表2は、勾配方法全体にわたる
前記移動相の構成を記載する。
【0145】
【表2】
【0146】
この方法の抽出によって達成された回収率を評価するために、ブランクの血清サンプル
に対して既知濃度の硫酸モルヒネ及び内部スタンダードを添加したものについて、10回繰
り返し、500~700 ng/mLの範囲内のモルヒネ濃度を得た。本発明者のHPLC-UV方法は、ICH
ガイドラインに従って検証された(データを簡単に提示)。
【0147】
結果
イオン交換樹脂への硫酸モルヒネの搭載
237 nmで硫酸モルヒネをアッセイするためのHPLC方法は、1~30 μg/mLの濃度範囲にわ
たり、良好な直線性を示し(n = 5; R2 = 0.9998)、これは、溶解性及び含量均一性アッセ
イのための試験濃度の約5~135%を表した。更に、2つの硫酸モルヒネ・サンプルを、2.57
及び12.85 μg/mLの濃度で、ポンソー4R(MST (登録商標) Continus (登録商標)懸濁剤中
に存在し、通常のUV分光光度法の測定を妨害する着色剤)と混ぜ合わせた場合、237 nmで
妨害ピークは観察されなかった。薬物-レジネートろ液を分析することにより、利用可能
な硫酸モルヒネの2.81%が、イオン交換樹脂と複合体を形成しなかったことが明らかにな
った。従って、得られた乾燥した薬物-樹脂複合体は、39.519%(w/w)の硫酸モルヒネ含量
を有していた。
【0148】
キャラクタリゼーション
含量均一性
10枚の経口シン・フィルムのランダムなサンプルは、個々のシン・フィルムがターゲッ
トとする20mgの硫酸モルヒネ含有量から5%を超えて逸脱しなかったので、薬局方承認基準
(Pharmacopoeial monograph)に準拠するものであった。平均(SD)硫酸モルヒネ含量は、20
.17(0.52)mg;範囲19.27~20.86 mg、であった。そのバッチはまた、個々の投薬単位が、
その平均質量から7.5%を超えて逸脱することはなかったので、質量均一性に関しても準拠
した。平均(SD)経口シン・フィルム質量は、110.12(2.18)mg;範囲107.6~114.1 mgであ
った。
【0149】
レジネートの分散の均一性(homogeneity)
0.5×0.5 cmの経口シン・フィルム・サンプル当たりのIERビーズの平均(SD)数は60.6(5
.65);範囲51~70、であった。
【0150】
微生物の生物学的負荷(Microbial bioburden)
経口シン・フィルムの微生物学的な品質を評価すると、真菌又は酵母の増殖、及び最小
限細菌増殖(minimal bacterial growth)(10~20 cfu)は無いことが明らかになった。英国
薬局方による許容基準は、総好気性微生物数(total aerobic microbial (TAMC))及び総真
菌数(total combined yeasts and moulds (TYMC))のカウントが、それぞれ2000及び200コ
ロニー形成単位/グラム未満であることを必要とする。
【0151】
経口シン・フィルムの引張強さ及び崩壊性
前記フィルムを破るのに必要な平均(SD)負荷(ニュートン)は、25.6(6.3);範囲15.5
~37.2であった。ミリメートル単位の、破断点における長さの平均(SD)増加は4.8(1.1);
範囲3.7~6.6であった。崩壊までの平均(SD)時間は、6.15(0.98)秒;範囲5.0~7.7であっ
た。
【0152】
熱安定性
このバッチは、40℃での6ヶ月の保存で、5%を超える質量又は硫酸モルヒネ含量の変化
が観察されなかったので、熱安定性についてのICH要件に適合した。更に、2-サンプルt-
検定では、時刻0と比較して、質量(3ヵ月後及び6ヵ月後、それぞれ、p-値0.308及び0.860
)又は薬物含量(3ヵ月後及び6ヵ月後、それぞれ、p-値0.168及び0.681)に統計的有意差は
認められなかった。
【0153】
溶解性
図1は、MST (登録商標) Continus (登録商標)懸濁剤とMST (登録商標) Continus (登
録商標)錠剤を比較したときの、それぞれpH 1.2及び6.8での、経口シン・フィルム製剤の
溶解曲線を示す。
【0154】
遅延したキャスティング(delayed casting)後の溶解性の結果
0、24及び48時間後にキャスティングしたフィルムの溶解性プロファイルを図2に示す
。放出プロファイルを比較する類似性試験の結果は、59.6(0 vs 24時間)、73.2(0 vs 48
時間)及び63.8(24 vs 48時間)のf2因子であった。従って、48時間までのストック液の保
管が、前記イオン交換樹脂からの薬物放出に有意な影響を及ぼすことはなかった。高い粘
性のストック媒体内でのイオンの利用可能性が、薬物放出の交換反応をサポートするほど
には、十分ではないように思われる。これは、イオン交換樹脂技術が、経口シン・フィル
ム製剤からの制御された放出を提供するのに適切であることを、再確認するものであり、
更に実証している。
【0155】
ラットにおけるin vivo単回用量薬物動態試験
方法バリデーション
500~700 ng/mL硫酸モルヒネ濃度範囲のスパイクした血清サンプルから抽出をすると(n
= 10)、97.5(4.6)%の平均(SD)回収率であった。HPLC-UV法は、両方の分析対象物につい
て、優れた直線性を示した。両方の分析対象物のピークは、ブランクのマトリクス中に現
れた不純物とは十分に分離されており、妨害は避けられた。検出限界及び定量限界は、そ
れぞれ、40 ng/mL及び150 ng/mLであった。スパイクしたラット血清サンプルにおける定
量限界(148.4 ng/mL)での抽出を繰り返すと(n = 5)、硫酸モルヒネの平均回収率は91.2(1
2.1)%に達した。
【0156】
単回用量の薬物動態の結果
ラットに、調節された放出性の硫酸モルヒネの経口シン・フィルムを単回の経口投与を
した後の、モルヒネの血清プロファイルを図3に示す。337.6 ng/mLの最高(標準偏差)血
清中濃度(Cmax)が、(Tmax)12時間に得られた。線形台形法を用いて計算したAUC0-24hは、
6.18 μg・h/mLであった。
【0157】
考察(Discussion)
20 mgの硫酸モルヒネを6時間にわたって送達することができる(in vitroで3~6時間以
内に80%を超える放出)持続性の経口シン・フィルムを、イオン交換樹脂の技術を用いて、
製剤化することに成功した。前記フィルムは、可撓性で、脆くなく、並びに甘く、柑橘の
香味及び芳香を有していた。本明細書に記載される製剤方法によって、前記経口シン・フ
ィルム全体にわたって、薬物-樹脂複合体が均一に分布するようになり(相対標準偏差9.3%
)、その結果、質量及び含量の均一性に関して、薬局方基準に準拠した投薬剤型を得るこ
とができた。経口シン・フィルムは、薬物送達のための代替の固形投薬プラットホームを
提供する、並びにその利用可能水分含量が低いために、防腐剤を必要とすることなく製剤
化することができる。これは、小児用の薬物送達(小児において、多くの抗菌の(antimic
robial)防腐剤[例、安息香酸エステル類]に、毒性の懸念があることが知られてきてい
る[J. Lass, K. Naelapaa, U. Shah, R. Kaar, H. Varendi, M.A. Turner, I. Lutsar,
Hospitalised neonates in Estonia commonly receive potentially harmful excipients
, BMC Pediatr, 12 (2012) 136])にとって、魅力的な選択肢となる。本発明者らの生物
学的負荷の結果も、経口シン・フィルムが微生物の増殖をサポートする作用が低いことを
再現する。シン・フィルムは、液体製剤よりも改善された安定性を有する錠剤などの他の
固体投薬形態に対して、目立たない(discreet)便利な代替物を提供する。液体の調製物
(投与前に小さな体積の測定又は再構成をしばしば必要とする)とは異なり、経口シン・
フィルムによって投与量は正確になり、投与のために水を更に必要とすることはない。経
口シン・フィルムは、唾液と接触すると直ちに溶解し、それ故、他の固体投薬形態を嚥下
することができない患者が喉を詰まらせるリスクは取り除かれる(R. Bala, P. Pawar, S.
Khanna, S. Arora, Orally dissolving strips: A new approach to oral drug deliver
y system, International journal of pharmaceutical investigation, 3 (2013) 67-76)
。最小限の食品又は医薬品グレードの賦形剤から構成されているので、それらを製造する
ことは、安価であり、容易にスケールアップすることができる。
【0158】
MST (登録商標) Continus (登録商標)懸濁剤と比較した場合、本発明者らの結果は、2
種の製剤間の、同等ではあるが、統計学的には同一ではない(f2<50)溶出プロファイルを
示した。経口懸濁剤の製品は、その放出メカニズムに対し、同じイオン交換樹脂法を利用
していたが、本発明者らは、本発明者らのシン・フィルム調製物によって、その市販の懸
濁剤と比較して、より遅い薬物放出プロファイルが達成されることを、見出した。これは
、交換速度に及ぼす表面積の影響によるものと思われる。なぜならば、その市販品は、同
じイオン交換樹脂の形態を含んではいるが、より大きなメッシュ・サイズ(即ち、より小
さな粒子サイズ)を有しており、その結果、前記樹脂内からより急速に拡散することにな
るからである(The Dow Chemical Company, The advantages of uniform particle sized
ion exchange resins, in: Dow Liquid Separations, The Dow Chemical Company, Ede
gem, Belgium, 2006)。MST (登録商標) Continus (登録商標)錠剤は、制御された放出の
ために、イオン交換技術とは対照的に、エチル・セルロース膨潤マトリックスを取り込ん
でいる。それらによって、in vitroで、有意に、よりゆっくりな放出プロファイルとなる
。MST (登録商標) Continus (登録商標)懸濁剤を、他の製剤と比較するデータは、公開ド
メインには存在しないが、Napp Pharmaceuticals Ltd.が収集した薬物動態のデータによ
ると、MST (登録商標) Continus (登録商標)懸濁剤は、即時放出の硫酸モルヒネ溶液と同
等の全身のバイオアベイラビリティを有する、及びMST (登録商標) Continus (登録商標)
錠剤と同等のin vivo血漿プロファイルがもたらされる、ことが示されている(Napp Pharm
aceuticals Limited, MST Continus suspensions 20, 30, 60, 100 and 200 mg - Summar
y of Product Characteristics (SPC), in: electronic Medicines Compendium (eMC),
2014)。本発明者らの結果は、本発明者らの経口シン・フィルム製剤の溶解プロファイル
は、MST(登録商標) Continus(登録商標)懸濁剤とMST(登録商標) Continus(登録商標)
剤との間にある、ことを示している。pH 6.8において、本発明者らの製剤の放出プロファ
イルは、錠剤調製物と統計的に類似していることが見出された(観察されたf2 = 57.775)
。従って、本発明者らの製剤の血漿プロファイルが、ヒトin vivo試験においても同等で
あると仮定することは合理的であろう。
【0159】
ラットにおけるin vivo試験の本発明者らの結果は、in vitro溶解性プロファイルを補
完し、経口シン・フィルムの投薬デザインで送達される、イオン交換樹脂技術によって達
成可能な硫酸モルヒネの制御された及び持続した放出を実証する。ラットへの約140 mg/k
gの単回経口投与後の血清中濃度は、最初の6時間にかけて着実に増加し、約300ng/mLでプ
ラトーに達し、12時間までに最大濃度となった。モルヒネの平均血清レベルは24時間後で
も上昇したままであった。
【0160】
本発明者らの結果は、経口シン・フィルムが、経口投与の持続した放出の薬物送達技術
に対する好適なプラットフォームであることを実証する。イオン交換樹脂は、予測可能な
及び再現可能な放出プロファイルを有する、薬物放出を制御するための簡単かつ効果的な
選択肢であることが証明され、これらを経口シン・フィルム内に容易に製剤化することが
できる。非常に様々な種類の陽イオン及び陰イオン交換樹脂が市販されていて、例えば、
幾つかは
薬局方承認基準(Pharmacopoeial monograph)を満たす(例えば、AmberliteTM IRP69[ポ
リスチレン・スルホン酸ナトリウム])(British Pharmacopoeia Commission, British
Pharmacopoeia 2015 Online. General Notices. Sodium Polystyrene Sulphonate., in,
London , England: The Stationery Office on behalf of the Medicines and Healthcar
e products Regulatory Agency (MHRA), 2014)。これらにより、様々なAPIに見合った一
連の放出速度オプションを有する製剤化が可能になる。更に、前記経口シン・フィルムは
、レジネート複合体に加えて、ある量のフリーな(free)薬物を用いて製剤化することも可
能であり、その活性成分を、急速に即時放出し、続いて連続的で、持続した放出をするこ
とが可能になる。
【0161】
2) 他の薬学的活性成分を放出する経口シン・フィルムの検討
ジクロフェナクを含有する制御された放出のフィルム
ジクロフェナクは鎮痛薬として、及び抗炎症薬として用いられている。
【0162】
8%ジビニルベンゼン架橋を有する強塩基陰イオン・イオン交換樹脂であるDowex (登録
商標) 1X8(50~100メッシュ)を、ジクロフェナク対樹脂の比率が重量で1:1.5となるよう
に、25mMジクロフェナク・ナトリウムの蒸留水溶液中に分散させ、マグネチック・スター
ラーによって24時間撹拌した。次いで、その薬物-樹脂複合体を、47 mmの0.2 μmのナイ
ロンのPhenexTM膜を通してろ過し、蒸留水で洗浄した。そのろ液を希釈し、276 nmで、UV
分光光度法によってアッセイして、薬物搭載(drug loading)の程度を間接的に決定した。
その薬物-レジネートを、50℃で乾燥させた。
【0163】
イオン交換樹脂複合体(Dowex (登録商標) 1X8、50~100メッシュ、上記のように調製)
内に搭載したジクロフェナク・ナトリウムを12.5 mg含む経口シン・フィルム製剤を製造
した。15.9%(w/w)の薬物-レジネート;17.9%(w/w)のプルラン(これは、フィルム形成ポリ
マーとして含まれる);崩壊剤として2.4%(w/w)のポリビニル・ポリピロリドン;可塑剤と
して0.2%(w/w)のグリセロール;甘味剤として1.0%(w/w)のスクラロース;前記経口シン・
フィルムに柑橘の香味及び芳香を与えるための1.0%(w/w)のレモン香味剤;乳化剤として1
.7%(w/w)のSisterna SP70;及び蒸留水、を含むように、粘性のあるストック混合物を調
製した。全ての成分を分析天秤で秤量し、Ultra-Turraxホモジナイザーを用いて8000 rpm
で合わせた。前記フィルムを、マイクロメーター調節可能フィルム・アプリケーター(Mic
rometer Adjustable Film Applicator)を使用して、ポリマー・コートをした紙の上に、1
.4 mmの厚さに、キャスティングし、キャビネット・ドライヤー内で、40℃で、20分間、
乾燥させた。回転刃及びテンプレートを用いて、経口シン・フィルムをカットした。
【0164】
50%の捕捉効率が、41%の薬物搭載(drug loading)で、達成され、その結果、21%(w/w)の
ジクロフェナク・ナトリウムを含むレジネートが得られた。pH 6.8での、経口シン・フィ
ルム配合(combination oral thin film)(n = 6)からの薬物放出を、図4に示す。
【0165】
前記薬物の放出は、硫酸モルヒネと比較して、類似の期間にかけて持続し、約5時間後
に、約40%の放出になることを、観察することができる。
【0166】
リン酸二水素カリウム(potassium acid phosphate)を含有する即時放出のフィルム
早産児の代謝性骨疾患を予防するには、リン酸を適切に摂取することが重要である。本
目的は、低出生体重児によくみられる、及び未熟児の骨減少症と関連する、低リン血症を
治療する及び予防する際において、リンの供給源として使用するために、経口シン・フィ
ルムの中に、リン酸二水素カリウム(potassium acid phosphate (KAP))を製剤化すること
、であった。
【0167】
KAPの経口シン・フィルムの3種の濃度(strength)を製造した。均質な溶液からフィルム
をキャスティングし、その組成物を以下の表4に記載した。
【0168】
【表3】
【0169】
公定の溶解装置(タイプII)を使用すると、生理学的なpH範囲(pH 1.2、4.6及び6.8)にわ
たって、リン酸二水素カリウム(potassium acid phosphate)の経口シン・フィルム・バッ
チの全ての濃度(strength)において、95%を超える薬物放出が、15分以内に起こった。従
って、その製剤は、「非常に迅速に溶解する」と考えられる(World Health Organization
, 2006)。
【0170】
経口シン・フィルム・バッチは、質量及び薬物含量に関して、均一性の薬局方基準に適
合することが見出された。
【0171】
pH 6.8での薬物放出プロファイルの結果を、図5に示す。
【0172】
前記放出プロファイルから、3種の薬物濃度全てについて、前記放出プロファイルは「
即時」であり、5分後に67~75%の薬物放出、及び10分後に87~95%の薬物放出があったこ
とが分かる。
【0173】
塩酸メトクロプラミドを含有する即時放出のフィルム
8.6%(w/w)の塩酸メトクロプラミド、水溶性フィルム形成ポリマーとして20.2%(w/w)の
ヒドロキシプロピル・メチルセルロースE5、甘味剤として2.3%(w/w)のスクラロース、前
記フィルムに穏やかなミントの香味及び芳香を与えるための2.0%(w/w)のスペアミント香
味剤、前記フィルムの崩壊特性を改善するための0.9%(w/w)のポリビニル・ポリピロリド
ン、可塑剤としての0.8%(w/w)のグリセロール及び0.7%(w/w)のポリ(エチレン・グリコー
ル)平均分子量1500、香味剤としての0.3%(w/w)のメントール、並びに蒸留水、から構成さ
れる、粘性のある溶液を調製した。その成分を分析天秤で秤量し、Ultra-Turraxホモジナ
イザーを用いて8000 rpmで合わせた。フィルムを、マイクロメーター調節可能フィルム・
アプリケーター(Micrometer Adjustable Film Applicator)を使用して、ポリマー・コー
トをした紙の上に、1.6 mmでキャスティングし、キャビネット・ドライヤー内で、40℃で
、25分間、乾燥させた。回転刃及び15mm切断テンプレートを用いて、経口シン・フィルム
を手でカットした。
【0174】
経口シン・フィルム・バッチは、前記フィルムが、記載されたターゲットとするメトク
ロプラミド含量及び平均質量の10%以内であったので、均一性に関する薬局方基準に準拠
した。平均(n = 10)薬物含量(SD)は、9.84(0.51) mg、範囲9.27~10.77 mgであり、平均
用量単位質量は、37.23(1.91) mg、範囲34.8~40.5 mgであった。
【0175】
3つの異なったpHでの薬物放出プロファイルの結果を図6に示す。
【0176】
図6から、試験した3つ全てのpHにおいて、その放出プロファイルを「即時」と見なす
ことができることが分かる。薬物放出は、より低いpH(pH = 1.2及びpH = 4.6)でより速く
、6分後に約80%が放出され、10分後に実質的に完全に放出されることが観察された。pH 6
.8での薬物放出は、いくらかより遅く、6分後に約53%が放出され、10分後に約70%が放出
された。
【0177】
塩酸メトクロプラミドを含有する制御された放出のフィルム
10gのDowex (登録商標) 50WX8(50~100メッシュ;149~297 μm)(8%ジビニルベンゼン
架橋を有する強酸陽イオン・イオン交換樹脂)を、100 mlの、5%(w/v)の塩酸メトクロプラ
ミド(BUFA;ロット番号13C12-B02)の蒸留水溶液中に分散させ、マグネチック・スターラー
によって24時間撹拌した(250 rpm)。次いで、その薬物-樹脂複合体を47 mmの0.2 μmのナ
イロン膜(PhenexTM、Phenomenex Inc., Cheshire, UK)を通してろ過し、蒸留水で洗浄し
た。そのろ液を希釈し、275 nmでのUV分光光度法によってアッセイして、薬物搭載(drug
loading)の程度を間接的に決定した。薬物-レジネートをキャビネット・ドライヤー内で
、60℃で乾燥させた。
【0178】
イオン交換樹脂複合体(Dowex (登録商標) 50WX8、50~100メッシュ、上記のように調製
)内に搭載した塩酸メトクロプラミド10mgを含む経口シン・フィルム製剤を開発した。14.
0%(w/w)の薬物-レジネート;フィルム形成ポリマーとして含めた18.3%(w/w)のプルラン;
崩壊剤としての2.4%(w/w)のポリビニル・ポリピロリドン;可塑剤としての0.1%(w/w)のグ
リセロール;甘味剤としての1.1%(w/w)のスクラロース;経口シン・フィルムに柑橘の香
味及び芳香を与えるための1.0%(w/w)のレモン507940T;乳化剤としての1.7%(w/w)のSiste
rna SP70;及び、蒸留水、を含む、粘性のあるストック混合物を調製した。全ての成分を
分析天秤で秤量し、Ultra-Turraxホモジナイザーを用いて8000 rpmで合わせた。前記フィ
ルムを、マイクロメーター調節可能フィルム・アプリケーター(Micrometer Adjustable F
ilm Applicator)を使用して、ポリマー・コートをした紙の上に、1.4mmの厚さにキャステ
ィングし、キャビネット・ドライヤー内で、40℃で、20分間、乾燥させた。回転刃を用い
て、経口シン・フィルムをターゲットとする重量にカットした。
【0179】
経口シン・フィルム・バッチは、前記フィルムが、記載されたターゲットとするメトク
ロプラミド含有量及び平均質量の10%以内であったので、均一性に関する薬局方基準に準
拠した。平均(n = 10)薬物含量(SD)は、10.4(0.3)mg、範囲9.9~10.8mgであり、平均用量
単位質量は、86.8(4.2)mg、範囲81.6~93.1mgであった
【0180】
種々のpHでの薬物放出プロファイルの結果を図7に示す。
【0181】
図7から、1.2及び6.8の両方の試験したpHにおいて、その放出プロファイルは、「持続
した」放出製剤の典型であるように見えることが分かる。薬物放出は、pH 6.8よりもpH 1
.2で幾分速く、2時間後の薬物放出はpH 6.8で約43%、pH 1.2で約58%、4時間後の薬物放出
はpH 6.8で約64%、pH 1.2で約81%であることが観察された。
【0182】
硫酸モルヒネ複合体及び複合体化していない塩酸メトクロプラミドを含むシン・フィル

Dowex 50WX8(50~100メッシュ)を、4%(w/v)硫酸モルヒネ水溶液中に、硫酸モルヒネ対
樹脂の比率(重量)が1:1.5となるように分散させ、24時間、遮光して、マグネチック・ス
ターラーにより撹拌した。得られた薬物-樹脂複合体をろ過し、脱イオン水で2回洗浄し、
乾燥させた。そのろ液(及び洗浄液)を希釈し、237 nmでのUV分光光度法によってアッセイ
して、薬物搭載(drug loading)の程度を間接的に決定した。
【0183】
11.1%(w/w)硫酸モルヒネを含有する薬物-レジネート、5.3%(w/w)塩酸メトクロプラミド
、21.9%(w/w)プルラン、0.3%(w/w)グリセロール、0.9%(w/w)スクラロース、1.2%(w/w)レ
モン香味剤、及び蒸留水を含む、ストック混合物から、経口分散性シン・フィルムを製造
した。前記混合物を手でホモジナイズし、マイクロメーター調節可能フィルム・アプリケ
ーター(Micrometer Adjustable Film Applicator)を使用して、ポリマー・コートをした
紙の上に、1.6ミリメートルの厚さで、キャスティングした。前記フィルムを、40℃で、2
5分間、乾燥させ、回転刃及び切断テンプレートを用いて、30 × 15 mmにカットした。
【0184】
経口シン・フィルムのランダムなサンプル(n = 10)は、105.4(2.14)mg、範囲103.1~10
8.3 mgであり、9.26(0.17)mg、範囲9.04~9.49mgの硫酸モルヒネ及び12.78(0.26)mg、範
囲12.50~13.13mgの塩酸メトクロプラミドを、それぞれ含んでいた。
【0185】
図8は、pH 6.8(n = 6)での、経口シン・フィルム配合(combination oral thin filmの
放出プロファイルを示す。塩酸メトクロプラミドは急速に即時放出され、10~20分以内に
80%を超える薬物が放出された。硫酸モルヒネは、6時間にかけて、持続放出されることが
観察され、最初の3~4時間以内に、80%が放出されることが観察された。
【0186】
従って、ある薬物の即時放出、及び前記フィルム中のレジネート中に提供される第2の
薬剤の持続放出、を組み合わせることに対する本発明のフィルムの有効性が実証された。
【0187】
塩酸オキシコドンを用いた制御された放出のフィルム
薬物レジネートの調製
8%ジビニルベンゼン架橋を有する強酸陽イオン・イオン交換樹脂(Dowex (登録商標) 50
WX8、50~100メッシュ[Sigma Aldrich、UK])を、100 mlの4.0%(w/v)塩酸オキシコドン(Ma
cfarlan Smith、Edinburgh、UKにより厚意で供与された)の蒸留水溶液中に、塩酸オキシ
コドン対樹脂の比率(重量による)が1:1.5となるように分散させ、室温で、24時間、遮光
して、マグネチック・スターラーにより撹拌した(250 rpm)。次いで、薬物-樹脂複合体を
47 mm 0.2 μmナイロン膜(PhenexTM、Phenomenex Inc、Cheshire、UK)を通してろ過し、
蒸留水で2回濯いだ。そのろ液を希釈し、230 nmで、UV分光光度法によりアッセイして、
前記交換樹脂上への薬物搭載(drug loading)の程度を間接的に決定した。その薬物-レジ
ネートを、50℃で、12時間乾燥させた。
【0188】
薬物放出を、英国薬局方(British Pharmacopoeia 2014 Online. Appendix XII B. ANN
EX: Recommendations on Dissolution Testing [Online]. London , England: The Stati
onery Office on behalf of the Medicines and Healthcare products Regulatory Agenc
y (MHRA). Available: http://www.pharmacopoeia.co.uk/bp2014/ixbin/bp.cgi?a=displa
y&r=S81px22r4gy&n=2&id=894 [Accessed 06/10/2014])に記載されているように、タイプ
II溶解装置を使用して、評価した。溶解を、2つの媒体:塩酸バッファー(pH 1.2)及び混
合リン酸バッファー(pH 6.8)、を用いて、37℃±2℃で評価した。230 nmの固定波長を用
いて、各時点で、UV測定を行った。各ジャーでは、パドルを、50 rpmに設定し、900 mLの
媒体を使用した。各pHバッファーについて6回繰り返した。
【0189】
結果
前記薬物-レジネートを分析したところ、得られた乾燥薬物-樹脂複合体は、41.6%(w/w)
の塩酸オキシコドン含有量であることが示された。
【0190】
図10は、50~100メッシュ樹脂についての、pH 1.2及び6.8での、オキシコドン・レジ
ネートの放出プロファイルを示す。
【0191】
前記イオン交換樹脂から、pH 1.2及び6.8で、それぞれ、0.33及び1.67時間で、40%が放
出され、0.83及び4時間で、60%の薬物が放出された。
【0192】
3) 薬物放出に対するメッシュ・サイズの効果の検討
方法
10 gのDowex (登録商標) 50WX8(50~100メッシュ;149~297 μm)(8%ジビニルベンゼン
架橋を有する強酸陽イオン・イオン交換樹脂)を、100 mlの5%(w/v)塩酸メトクロプラミド
の蒸留水溶液中に分散させ、24時間、マグネチック・スターラーにより撹拌した(250 rpm
)。次いで、その薬物-樹脂複合体をろ過し、蒸留水で洗浄した。そのろ液を希釈し、バリ
デーションされた方法を用いてUV分光光度法によりアッセイし、薬物搭載(drug loading)
の程度を間接的に決定した。その薬物-レジネートを、キャビネット・ドライヤー中で、6
0℃で、乾燥させた。
【0193】
比較のために、第2の薬物-レジネートを、より高いメッシュ・サイズを用いて調製した
。Dowex (登録商標) 50WX8(200~400メッシュ;37~74 μm)を、蒸留水中で調製したメト
クロプラミド溶液中に、メトクロプラミド対樹脂の比率が重量で1:3となるように、分散
させ、24時間、マグネチック・スターラーにより撹拌した(250 rpm)。
【0194】
薬物放出を、英国薬局方(British Pharmacopoeia 2014 Online. Appendix XII B. ANN
EX: Recommendations on Dissolution Testing [Online]. London , England: The Stati
onery Office on behalf of the Medicines and Healthcare products Regulatory Agenc
y (MHRA). Available: http://www.pharmacopoeia.co.uk/bp2014/ixbin/bp.cgi?a=displa
y&r=S81px22r4gy&n=2&id=894 [Accessed 06/10/2014])に記載されているように、タイプ
II溶解装置を使用して、評価した。溶解を、3つの媒体:塩酸バッファー(pH 1.2)、酢酸
バッファー(pH 4.6)及び混合リン酸バッファー(pH 6.8)、を用いて、37℃±2℃で評価し
た。275 nmの固定波長を用いて、各時点で、UV測定を行った。各ジャーでは、パドルを、
50 rpmに設定し、900 mLの媒体を使用した。各pHバッファーについて6回繰り返した。
【0195】
結果
50-100 メッシュ
そのろ液を分析したところ、回収されたメトクロプラミドは1.33%であった;それ故、
イオン交換樹脂による薬物搭載(drug loading)は98.67%であり、捕捉率は70%であった。
【0196】
図9は、50~100メッシュ樹脂についての、pH 1.2及び6.8での、メトクロプラミドのレ
ジネートの放出プロファイルを示す。
【0197】
得られた乾燥薬物-樹脂複合体は、33.15%(w/w)のメトクロプラミド含有量であった。前
記イオン交換樹脂から、pH 1.2及び6.8で、それぞれ、1.2及び1.7時間で、50%が放出され
、3.0及び4.7時間で、80%の薬物が放出された。
【0198】
200-400 メッシュ
Dowex (登録商標) 50WX8、200~400メッシュを使用したところ、98.72%という同様の薬
物搭載(drug loading)が達成された。得られた薬物レジネートは、24.8%(w/w)のメトクロ
プラミド含有量であった。メトクロプラミド放出の評価をpH 1.2で行った。
【0199】
50~100メッシュのレジネート及び200~400メッシュのレジネートについて、pH 1.2で
の放出速度を比較した結果を図11に示す。
【0200】
図11から分かるように、より高いメッシュ・サイズでは、持続的であるがより早い放
出が観察され、わずか1時間後に、80%が放出された。
【0201】
また、図11に示されるように、イオン交換樹脂のメッシュ・サイズの変化は、放出速
度に影響を与え、より高いメッシュ・サイズでは、メトクロプラミドは、制御されている
がより早く放出されるようになった。理論に囚われることを望むものではないが、これは
交換動態に対する表面領域効果の影響によるものと考えられる - メッシュ・サイズが大
きくなればなるほど(即ち、粒子サイズが小さくなればなるほど)、その樹脂内からの拡散
がより急速になる(The Dow Chemical Company; 2006; The advantages of uniform part
icle sized ion exchange resins [Online], Edegem, Belgium: The Dow Chemical Compa
ny. Available: http://tinyurl.com/q5u4ac3 [Accessed 13/11/2014])。このことは、
臨床的な要求に応じて、如何に放出動態を容易に操作できるかを示している。
【0202】
4) Eudragit RSPOポリマーを用いた場合及び用いない場合のメラトニン放出に及ぼ
す種々のイオン交換の効果の検討
1 gのDowex(登録商標) 50WX8(50~100メッシュ;149~297 μm[Sigma Aldrich, UK])(8
%ジビニルベンゼン架橋を有する強酸陽イオン・イオン交換樹脂)を、100 mlの0.18%(w/v)
メラトニン(Alfa Aesar, Lot: S16B032)の蒸留水溶液中に分散させ、24時間、マグネチッ
ク・スターラー機により撹拌した(250 rpm)。次いで、その薬物-樹脂複合体をろ過し、蒸
留水で洗浄した。そのろ液を希釈し、バリデーションされた方法を用いてUV分光光度法に
よりアッセイし、薬物搭載(drug loading)の程度を間接的に決定した。その薬物-レジネ
ートを、キャビネット・ドライヤー中で、60℃で、乾燥させた。
【0203】
第2の薬物-レジネートを、蒸留水中で調製したメラトニン溶液中に分散させた強酸陽イ
オン・ポリスチレン・スルホン酸ナトリウム・イオン交換樹脂Amberlite (登録商標) IRP
69(50~150 μm[Dow Chemical Company])を用いて調製した。前記Dowexレジネートと同じ
重量のイオン交換樹脂とメラトニン溶液の濃度とし、24時間、マグネチック・スターラー
により攪拌した(250 rpm)。
【0204】
単独で調製されるAmberlite(登録商標) IRP69薬物レジネートに加えて、メタクリレー
ト共重合体(オイドラギット(Eudragit)(登録商標) RSPO[Rohmファーマ・ポリマー])を、
そのレジネート液に添加して、メラトニン放出に対する、レジネートへのポリマーの添加
の影響を検討した。Amberliteレジネートを調製するための、前述と同じ方法を使用した
が、4gのオイドラギット(Eudragit)(登録商標) RSPOを同時に添加した。イオン交換樹脂
、オイドラギットRSPO及びメラトニン溶液を、24時間、マグネチック・スターラーにより
撹拌し(250 rpm)、前述のようにろ過を行った。
【0205】
イオン交換樹脂複合体(上記のように調製された、Eudragit(登録商標) RSPOを有するAm
berlite(登録商標) IRP69)内に搭載されたメラトニンを含む、経口シン・フィルム製剤を
開発した。Eudragit(登録商標) RSPOを含む22.4%(w/w)薬物-レジネート;フィルム形成ポ
リマーとして含まれた18.7%(w/w)プルラン;崩壊剤としての1.1%(w/w)のポリビニル・ポ
リピロリドン;可塑剤としての0.1%(w/w)のグリセロール;甘味剤としての0.5%(w/w)スク
ラロース;前記経口シン・フィルムに柑橘の香味及び芳香を与えるための0.5%(w/w)のレ
モン507940T;乳化剤として0.8%(w/w)Sisterna SP70;及び蒸留水、を含む、粘性のある
ストック混合物を調製した。全ての成分を分析天秤で秤量し、Ultra-Turraxホモジナイザ
ーを用いて、8000 rpmで合わせた。前記フィルムを、マイクロメーター調節可能フィルム
・アプリケーター(Micrometer Adjustable Film Applicator)を使用して、ポリマー・コ
ートをした紙の上に、1.4 mmの厚さにキャスティングし、キャビネット・ドライヤー内で
、40℃で、20分間、乾燥させた。回転刃を用いて、経口シン・フィルムをターゲットとす
る重量にカットした。
【0206】
薬物放出を、英国薬局方(British Pharmacopoeia 2014 Online. Appendix XII B. ANN
EX: Recommendations on Dissolution Testing [Online]. London , England: The Stati
onery Office on behalf of the Medicines and Healthcare products Regulatory Agenc
y (MHRA). Available: http://www.pharmacopoeia.co.uk/bp2014/ixbin/bp.cgi?a=displa
y&r=S81px22r4gy&n=2&id=894 [Accessed 06/10/2014])に記載されているように、タイプ
II溶解装置を使用して、評価した。溶解を、2つの媒体:塩酸バッファー(pH 1.2)、及び
混合リン酸バッファー(pH 6.8)、を用いて、37℃±2℃で評価した。275 nmの固定波長を
用いて、各時点で、UV測定を行った。各ジャーでは、パドルを、50 rpmに設定し、900 mL
の媒体を使用した。各pHバッファーについて6回繰り返した。Circadin(登録商標)2 mg錠
剤(Flynn Pharma Ltd., Stevenage, UK; Batch No. 60254A)を比較製品として使用し、同
じ方法によって溶解を行った。
【0207】
結果
Dowex 50XW8 50-100メッシュ
メラトニン・レジネートは、オレンジ色から黒灰色へと、有意に色変化をしたことが観
察され、メラトニンとDowex 50XW8イオン交換樹脂との間の酸化反応が示唆された。
【0208】
図12は、Circadin(登録商標)錠剤と比較した、Dowex 50XW8 50-100メッシュ樹脂、並
びに、Eudragit RSPOを用いた場合及び用いない場合のAmberlite IRP69樹脂、についての
、pH 1.2でのメラトニン・レジネートの放出プロファイルを示す。前記イオン交換樹脂か
ら、30分で、58.33%が放出され、120分で、89.8%が放出された。
【0209】
Amberlite IRP 69
Dowexメラトニン・レジネートと比較すると、メラトニン溶液をAmberlite(登録商標) I
RP 69に添加した場合、有意な色の変化はなかった。pH 1.2で、メラトニン放出の評価を
行い、図12に示す。
【0210】
図12から分かるように、メラトニンがはるかにより速く放出されることが観察され、
わずか10分後には、80%が放出され、これは、Amberlite(登録商標) IRP 69イオン交換樹
脂は、単独では制御された放出を生じさせることに適していないことを示唆している。こ
れは、ビーズ形態となるDowex 50W8Xに比べて、Amberlite(登録商標) IRP69はより高い表
面積を有する粉末として提供されるため、と予想された。これは、異なるメッシュ・サイ
ズ範囲のDowex樹脂を有するメトクロプラミドを用いて、本明細書において、前に、強調
したことである。
【0211】
Amberlite IRP 69及びEudragit RSPO
図12に示すように、Amberlite(登録商標) IRP 69をEudragit RSPOと組み合わせた場
合、30分で57.49%が放出されて、及び120分で81.4%が放出されて、その放出速度は、Dowe
x 50X8Wイオン交換樹脂で観察されたのと同様の速度に低下した。
【0212】
薬剤の制御された放出に使用されているEudragit RSPOのようなポリメタクリレートを
使用することは良く実証されているため、Amberlite IRP 69レジネートにEudragit RSPO
を追加すると放出速度が低下することは、予想された。
【0213】
Amberlite IRP 69及びEudragit RSPOの経口シン・フィルム
経口シン・フィルムからのメラトニン放出の評価を、pH 1.2及びpH 6.8で行い、Circad
in(登録商標)錠剤と比較した。図13は、pH 1.2及びpH 6.8でのCircadin(登録商標)錠剤
と比較した、Eudragit RSPOとメラトニン・レジネートを含むシン・フィルムの放出プロ
ファイルを示す。
【0214】
図13に示すように、pH 1.2で、経口シン・フィルムからのメラトニンの放出速度は、
Eudragit RSPO単独と組合せたAmberlite(登録商標) IRP69レジネートと比べて、30分以内
に24%に、及び120分以内に73%に、更に低下した。これは、30分で20.8%、及び120分で62.
3%の放出を示した、Circadin(登録商標)錠剤からのメラトニンの放出プロファイルにより
近かった。更に、pH 6.8では、経口シン・フィルムは、30分で18%、及び100分で67%の放
出を示した。更に、pH 6.8のCircadin錠剤は、30分で25%、120分で63.7%の放出を示した



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2024-08-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
なくとも1つの層を含む経口可溶性フィルムであって、前記少なくとも1つの層は以下を含む、フィルム
第1の薬学的活性成分;
イオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含むレジネート;並びに、
マトリックス及び/又は結合剤
ここで、前記第1の薬学的活性成分及び前記第2の薬学的活性成分は、異なっている
【請求項2】
請求項1に記載のフィルム、ここで、前記第1の薬学的活性成分及び/又は前記レジネートは、前記フィルムの少なくとも1つの層に組み込まれる。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフィルム、ここで、前記第1の薬学的活性成分は、0.1~50重量%の量で、前記少なくとも1つの層中に提供される。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のフィルム、ここで、前記レジネートは、1~50重量%の量で、前記少なくとも1つの層中に提供される。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載のフィルム、ここで、前記レジネート中の、前記第2の薬学的活性成分と前記樹脂との重量比は、2:1~1:5である。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載のフィルム、ここで、前記少なくとも1つの層中に分散された前記第1の薬学的活性成分は、第1の放出速度と関連している。
【請求項7】
請求項6に記載のフィルム、ここで、pH 6.8で測定した場合、前記第1の放出速度は、5分後に、少なくとも30%になる。
【請求項8】
請求項6に記載のフィルム、ここで、pH 1.2で測定した場合、前記第1の放出速度は、5分後に、少なくとも50%になる。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載のフィルム、ここで、前記レジネートに含まれる前記第2の薬学的活性成分は、第2の放出速度と関連している。
【請求項10】
請求項9に記載のフィルム、ここで、pH 6.8で測定した場合、前記第2の放出速度は、1時間後に、5~80%になる。
【請求項11】
請求項9に記載のフィルム、ここで、pH 1.2で測定した場合、前記第2の放出速度は、1時間後に、10~80%になる。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載のフィルム、ここで、前記イオン交換樹脂は、関連する粒子サイズ及び/又は関連するメッシュ・サイズを有するビーズの形態で提供される、前記イオン交換樹脂又は混合イオン交換樹脂のメッシュ・サイズ及び/又は粒子サイズは、活性成分又は薬物の所望の放出速度を提供するように選択される。
【請求項13】
請求項12に記載のフィルム、ここで、前記樹脂は、50~100メッシュ・サイズの範囲のメッシュ・サイズを有する、及び/又は150~300 μmの範囲の粒子サイズを有する。
【請求項14】
請求項12に記載のフィルム、ここで、前記樹脂は、100~200メッシュ・サイズの範囲のメッシュ・サイズを有する、及び/又は74~150 μmの範囲の粒子サイズを有する。
【請求項15】
請求項12に記載のフィルム、ここで、前記樹脂は、200~400メッシュ・サイズの範囲のメッシュ・サイズを有する、及び/又は37~74 μmの範囲の粒子サイズを有する。
【請求項16】
請求項1~15の何れか一項に記載のフィルム、ここで、前記イオン交換樹脂(ion-change resin)及び/又はレジネートは、消化器系の1つ以上の領域内での分解又は溶解に耐える、及び、消化器系の1つ以上の他の領域内で分解又は溶解する、ように選択されたプロセシング物質内で、コーティング及び/又はカプセル化された粒子の形態で提供される。
【請求項17】
請求項1~16の何れか一項に記載のフィルム、ここで、前記少なくとも1つの層は、フリーな(free)又は非搭載の(unloaded)イオン交換樹脂を更に含む。
【請求項18】
なくとも1つの層を含む経口可溶性フィルムであって、前記少なくとも1つの層は以下を含む、フィルム
第1のイオン交換樹脂及び第1の薬学的活性成分を含む第1のレジネート;
第2のイオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含む第2のレジネート;並びに、
マトリックス及び/又は結合剤、
ここで、前記第1の薬学的活性成分及び前記第2の薬学的活性成分は、異なっている、かつ、
ここで、前記フィルムは、第1の放出速度で前記第1の薬学的活性成分を放出し、第2の、異なる放出速度で前記第2の薬学的活性成分を放出するように構成されている
【請求項19】
請求項1に記載の経口可溶性フィルムを調製する方法であって、第1の薬学的活性成分;イオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含むレジネート;並びに、結合剤、を含む製剤を支持体の上にキャスティングすること、を含む方法、ここで、前記第1の薬学的活性成分及び前記第2の薬学的活性成分は、異なっている
【請求項20】
請求項18に記載の経口可溶性フィルムを調製する方法であって、第1のイオン交換樹脂及び第1の薬学的活性成分を含む第1のレジネート;第2のイオン交換樹脂及び第2の薬学的活性成分を含む第2のレジネート;並びに、結合剤、を含む製剤を支持体の上にキャスティングすること、を含む方法、ここで、前記第1の薬学的活性成分及び前記第2の薬学的活性成分は、異なっている、かつ、ここで、前記フィルムは、第1の放出速度で前記第1の薬学的活性成分を放出し、第2の、異なる放出速度で前記第2の薬学的活性成分を放出するように構成されている
【外国語明細書】