(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156715
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】アルファ-シヌクレインに対するバリアントRNAi
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20241029BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241029BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241029BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20241029BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241029BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20241029BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241029BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241029BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241029BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/63 Z
A61K48/00
A61K31/713
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P43/00 111
A61K35/76
C12N15/864 100Z
C12N15/113 Z
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024115452
(22)【出願日】2024-07-19
(62)【分割の表示】P 2021529252の分割
【原出願日】2019-08-02
(31)【優先権主張番号】62/714,616
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドフォード・エルマー
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダ・リチャーズ
(72)【発明者】
【氏名】マルティーヌ・ラッタ-マユー
(72)【発明者】
【氏名】マリア・カルメン・オビヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェロニク・トウパン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェロニク・ブランシャール
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アルファ-シヌクレイン(SNCA)の発現を標的化する、神経変性シヌクレイン病を処置するためのRNAi分子を提供する。
【解決手段】a)第1の鎖および第2の鎖は二本鎖を形成し;b)第1の鎖は、ガイド領域を含み、ガイド領域は、配列5'-ACUGCGCACAUUGGAACUGAG-3'(配列番号29)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸を含み;ならびにc)第2の鎖は、非ガイド領域を含む、第1の鎖および第2の鎖を含むRNAiが提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の鎖および第2の鎖を含むRNAiであって、
a)該第1の鎖および該第2の鎖は二本鎖を形成し;
b)該第1の鎖は、ガイド領域を含み、該ガイド領域は、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)に対して少なくとも約90%の同一性または配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸を含み;ならびに
c)該第2の鎖は、非ガイド領域を含む、前記RNAi。
【請求項2】
ガイド領域は、核酸配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)を含み、非ガイド領域は、配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)を含む、請求項1に記載のRNAi。
【請求項3】
第1の鎖は、配列番号24に対して約90%の同一性または配列番号53に対して約90%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項1に記載のRNAi。
【請求項4】
ガイド領域は、核酸配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)を含み、非ガイド領域は、配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)を含む、請求項1に記載のRNAi。
【請求項5】
第2の鎖は、配列番号37に対して約90%の同一性または配列番号37に対して約90%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項1に記載のRNAi。
【請求項6】
第1の鎖および第2の鎖は、ループ構造を形成することが可能なRNAリンカーによって連結されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のRNAi。
【請求項7】
RNAリンカーは、4から50ヌクレオチドを含む、請求項6に記載のRNAi。
【請求項8】
ループ構造は、4から20ヌクレオチドを含む、請求項6または7に記載のRNAi。
【請求項9】
RNAiは、5’から3’に向かって、第2の鎖、RNAリンカー、および第1の鎖を含む、請求項6~8のいずれか1項に記載のRNAi。
【請求項10】
RNAiは、5’から3’に向かって、第1の鎖、RNAリンカー、および第2の鎖を含む、請求項6~8のいずれか1項に記載のRNAi。
【請求項11】
RNAiは、配列番号61または配列番号63の核酸配列を含む、請求項10に記載のRNAi。
【請求項12】
RNAiは、配列番号61または配列番号63のヌクレオチド配列に対して約90%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項11に記載のRNAi。
【請求項13】
RNAiは、低分子抑制性RNA(siRNA)、microRNA(miRNA)、または低分子ヘアピンRNA(shRNA)である、請求項1~12のいずれか1項に記載のRNAi。
【請求項14】
RNAiは、神経変性シヌクレイン病に関連するポリペプチドをコードするRNAを標的化する、請求項1~13のいずれか1項に記載のRNAi。
【請求項15】
ポリペプチドは、アルファ-シヌクレイン(SNCA)である、請求項14に記載のRNAi。
【請求項16】
アルファシヌクレインは、ヒトアルファ-シヌクレインである、請求項15に記載のRNAi。
【請求項17】
神経変性シヌクレイン病は、パーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA)、またはレビー小体型認知症(DLB)である、請求項14~16のいずれか1項に記載のRNAi。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載のRNAiをコードする核酸を含む発現構築物。
【請求項19】
RNAiをコードする核酸は、miRNA足場を含む、請求項18に記載の発現構築物。
【請求項20】
RNAiをコードする核酸は、プロモーターに、機能するように連結されている、請求項18または19に記載の発現構築物。
【請求項21】
プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスチレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、延長因子1-アルファプロモーター(EF1-アルファ)プロモーター、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、レトロウイルス性のラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、および13-アクチンプロモーターから選択される、請求項20に記載の発現構築物。
【請求項22】
イントロンをさらに含む、請求項18~21のいずれか1項に記載の発現構築物。
【請求項23】
イントロンは、CBAイントロンまたはhEF1アルファイントロンである、請求項22に記載の発現構築物。
【請求項24】
イントロンは、キメライントロンである、請求項22に記載の発現構築物。
【請求項25】
発現ベクターは自己相補的なベクターであり、イントロンはデルタキメライントロンである、請求項22に記載の発現構築物。
【請求項26】
ポリアデニル化シグナルをさらに含む、請求項18~25のいずれか1項に記載の発現構築物。
【請求項27】
ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、またはHSV TKポリアデニル化シグナルである、請求項26に記載の発現構築物。
【請求項28】
請求項18~27のいずれか1項に記載の発現構築物を含むベクター。
【請求項29】
組換えアデノ関連ウイルス(rAAV)ベクターである、請求項28に記載のベクター。
【請求項30】
発現構築物は、1つまたはそれ以上のAAVの逆方向末端反復(ITR)配列を端に有する、請求項29に記載のrAAVベクター。
【請求項31】
発現構築物は、2つのAAVのITRを端に有する、請求項30に記載のrAAVベクター。
【請求項32】
AAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型のITRである、請求項30または31に記載のrAAVベクター。
【請求項33】
AAVのITRは、AAV2のITRである、請求項30~32のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【請求項34】
スタッファー核酸をさらに含む、請求項30~33のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【請求項35】
スタッファー核酸は、RNAiをコードする核酸の上流または下流に配置されている、請求項34に記載のrAAVベクター。
【請求項36】
自己相補的なrAAVベクターである、請求項30~35のいずれか1項に記載のrAAVベクター。
【請求項37】
RNAiをコードする第1の核酸配列および該RNAiの相補物をコードする第2の核酸配列を含み、該第1の核酸配列は、その長さのほとんどまたは全てにわたり、該第2の核酸配列と鎖内の塩基対を形成することができる、請求項36に記載のrAAVベクター。
【請求項38】
第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAVのITRによって連結されており、該突然変異したAAVのITRは、D領域の欠失を含み、末端分解配列の突然変異を含む、請求項37に記載のrAAVベクター。
【請求項39】
請求項29~38のいずれか1項に記載のrAAVベクターを含む細胞。
【請求項40】
請求項29~38のいずれか1項に記載のrAAVベクターを含む組換えAAV粒子。
【請求項41】
AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、AAV2-HBKO、AAVDJ8、AAVPHP.B、AAVPHP.eB、AAVBR1、AAVHSC15、AAVHSC17、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、またはマウスAAVキャプシドrAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む、請求項40に記載のrAAV粒子。
【請求項42】
ITRおよびrAAVウイルス粒子のキャプシドは、同じAAV血清型から誘導される
、請求項40または41に記載のrAAV粒子。
【請求項43】
ITRおよびrAAVウイルス粒子のキャプシドは、異なるAAV血清型から誘導される、請求項40または41に記載のrAAV粒子。
【請求項44】
ITRは、AAV2から誘導され、rAAV粒子のキャプシドは、AAV1から誘導される、請求項43に記載のrAAV粒子。
【請求項45】
請求項40~44のいずれか1項に記載のrAAV粒子を含む組成物。
【請求項46】
医薬的に許容される担体をさらに含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
請求項1~17のいずれか1項に記載のRNAiを含むキット。
【請求項48】
請求項40~44のいずれか1項に記載のAAV粒子を含むキット。
【請求項49】
請求項45または46に記載の組成物を含むキット。
【請求項50】
使用するための説明書をさらに含む、請求項47~49のいずれか1項に記載のキット。
【請求項51】
哺乳動物における神経変性シヌクレイン病を処置するための方法であって、該哺乳動物に、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖または配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖、および第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを投与することを含む前記方法。
【請求項52】
第2の核酸は、配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸または配列5’-E1パッセンジャー-3’(配列番号37)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
哺乳動物における神経変性シヌクレイン病を処置するための方法であって、該哺乳動物に、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第2の核酸を含む第2の鎖、または配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを投与することを含む前記方法。
【請求項54】
神経変性疾患を有する哺乳動物におけるアルファ-シヌクレインの発現を阻害するための方法であって、該哺乳動物に、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖または配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸を含む第1の鎖、および第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを投与することを含む前記方法。
【請求項55】
第2の核酸は、配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸または配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
神経変性疾患を有する哺乳動物におけるアルファ-シヌクレインの発現を阻害するための方法であって、該哺乳動物に、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第2の核酸を含む第2の鎖、または配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを投与することを含む前記方法。
【請求項57】
第1の鎖は、配列番号24の配列を有する核酸配列または配列番号8の配列を有する核酸を含む、請求項51~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
第2の鎖は、配列番号53の配列を有する核酸または配列番号37の配列を有する核酸を含む、請求項52、53、55、または56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
第1の鎖および第2の鎖は、ループ構造を形成することが可能なRNAリンカーによって連結されている、請求項51~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
RNAリンカーは、4から50ヌクレオチドを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
ループ構造は、4から20ヌクレオチドを含む、請求項59または60に記載の方法。
【請求項62】
RNAiは、5’から3’に向かって、第2の鎖、RNAリンカー、および第1の鎖を含む、請求項59~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
RNAiは、5’から3’に向かって、第1の鎖、RNAリンカー、および第2の鎖を含む、請求項59~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
RNAiは、配列番号61または配列番号63の核酸配列を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
RNAiは、配列番号61または配列番号63のヌクレオチド配列に対して約90%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
RNAiは、発現構築物にコードされている、請求項51~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
RNAiをコードする核酸は、miRNA足場を含む、請求項51~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
RNAiをコードする核酸は、プロモーターに、機能するように連結されている、請求項51~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
プロモーターは、哺乳動物の脳内でRNAiを発現することが可能である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスチレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギβ-グロビン(CAG)プロモーター、延長因子1-アルファプロモーター(EF1-アルファ)プロモーター、およびヒトβ-グルクロニダーゼプロモーターから選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
プロモーターは、CMVエンハンサーおよびニワトリβーアクチンプロモーターを含むハイブリッドニワトリβ-アクチンプロモーター(CBA)である、請求項68~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
発現構築物は、イントロンをさらに含む、請求項66~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
イントロンは、CBAイントロンである、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
イントロンは、キメライントロンである、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
発現構築物は自己相補的なベクターであり、イントロンはデルタキメライントロンである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
核酸は、ポリアデニル化シグナルをさらに含む、請求項66~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
発現構築物は、ベクターによってコードされる、請求項66~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
ベクターは、組換えアデノ関連ウイルス(rAAV)ベクターである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
発現構築物は、1つまたはそれ以上のAAVの逆方向末端反復(ITR)配列を端に有する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
発現構築物は、2つのAAVのITRを端に有する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
AAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型のITRである、請求項80または81に記載の方法。
【請求項83】
AAVのITRは、AAV2のITRである、請求項80~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
rAAVベクターは、5’から3’に向かって、AAV2のITR、プロモーター、イントロン、RNAiをコードする核酸、ポリアデニル化シグナル、およびAAV2のITRを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
プロモーターは、CBAプロモーターである、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
イントロンは、キメライントロン、デルタキメライントロンまたは短縮されたキメライントロンである、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
キメライントロンは、CBA+ウサギベータグロブリンイントロンである、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルである、請求項84~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
rAAVベクターは、5’から3’に向かって、AAV2のITR、CBAプロモーター、キメライントロン、RNAiをコードする核酸、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、およびAAV2のITRを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項90】
ベクターは、スタッファー核酸をさらに含む、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
スタッファー核酸は、ヒトA1AT遺伝子のイントロン1を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
ベクターは、自己相補的なベクターである、請求項79~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
ベクターは、RNAiをコードする第1の核酸配列および該RNAiの相補物をコードする第2の核酸配列を含み、該第1の核酸配列は、その長さのほとんどまたは全てにわたり、該第2の核酸配列と鎖内の塩基対を形成することができる、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAVのITRによって連結されており、該突然変異したAAVのITRは、D領域の欠失を含み、末端分解配列の突然変異を含む、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
ベクターは、rAAV粒子中にキャプシド化されている、請求項79~94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV2 V708K、AAV2-HBKO、AAVDJ8、AAVPHP.B、AAVPHP.eB、AAVBR1、AAVHSC15、AAVHSC17、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、またはrAAV2/HBoV1血清型
キャプシドを含む、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
ITRおよびrAAVウイルス粒子のキャプシドは、同じAAV血清型から誘導される、請求項95または96に記載の方法。
【請求項98】
ITRおよびrAAVウイルス粒子のキャプシドは、異なるAAV血清型から誘導される、請求項95または96に記載の方法。
【請求項99】
rAAVウイルス粒子は、AAV2キャプシドを含む、請求項95~98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
rAAVウイルス粒子はAAV1キャプシドを含み、ベクターはAAV2のITRを含む、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
請求項95~100のいずれか1項に記載のrAAV粒子は、組成物の形態である、請求項51~100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含む、請求項101に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる、2018年8月3日付けで出願された米国仮出願第62/714,616号の優先権の利益を主張する。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列リストの提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出物の内容は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる:配列リストのコンピューター読み取り可能な形態(CRF)(ファイル名:159792016540SEQLIST.TXT、記録された日付:2019年7月31日、サイズ:19KB)。
【0003】
本発明の開示は、バリアントRNAi分子に関する。一部の態様において、本発明の開示は、アルファ-シヌクレインに対するバリアントRNAiに関する。
【背景技術】
【0004】
長期神経保護療法は、パーキンソン病または多系統萎縮症(MSA)のような神経変性シヌクレイン病の処置として、相当な関心が高まっている。RNA干渉(RNAi)は、標的に対して相補的であるRNA(siRNA)を導入することによって、標的mRNAが低減される機序である。siRNA配列は、構成的な、ポリメラーゼIIベースの発現を可能にする一方で、また脳内のsiRNAまたはshRNAの導入に関連する神経毒性を排除する人工的miRNA足場(「shmiRNA」)中にも挿入される(1)。
【0005】
RNAiの臨床開発に対する障害は、オフターゲットサイレンシングの可能性であり、その場合、RNAiのシード領域(典型的には、ヌクレオチド1~7または1~8)が、3’非翻訳領域(UTR)中の非標的mRNAの配列と対合して、転写の不安定化を引き起こす。オフターゲットサイレンシングを低減する試みとしては、起こる可能性のあるオフターゲットが最小である標的mRNAに対して高い特異性を有する候補シード配列を同定するためのアルゴリズムの使用(非特許文献1)、およびRNAiのガイド領域中に内部バルジを設置すること(非特許文献2)が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Boudreau RLら、(2012年) Nucl. Acids Res. 41(1):e9頁
【非特許文献2】Terasawaら、(2011) Journal of nucleic acids 2011:131579頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複数のエビデンスによって、アルファ-シヌクレイン(SNCA)レベルの上昇は神経毒性をもたらす一方、低下は神経保護的であることが実証されている(2~9)。それゆえに、SNCAレベルを低下させる治療戦略は、潜在的に、神経変性疾患の進行を停止し、その症状を緩和することができることになる。RNAi機序を利用するこのような治療戦略に対するニーズが依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願は、SNCAに対するバリアントRNAi分子および神経変性疾患の処置および
予防においてそれを使用するための方法を提供することによって、このようなニーズを満たす。本出願は、SNCAに対するRNAi分子およびこれらのRNAi分子を調製するための構築物をスクリーニングまたは同定するための方法も提供する。
【0009】
一部の態様において、本発明は、第1の鎖および第2の鎖を含むRNAiであって、a)第1の鎖および第2の鎖は二本鎖を形成し;b)第1の鎖はガイド領域を含み、ガイド領域は、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)に対して少なくとも約90%の同一性または配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸を含み;かつc)第2の鎖は非ガイド領域を含む、RNAiを提供する。一部の実施形態において、ガイド領域は、核酸配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)を含み、非ガイド領域は、配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)を含む。一部の実施形態において、第1の鎖は、配列番号24に対して約90%の同一性または配列番号53に対して約90%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施形態において、ガイド領域は、核酸配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)を含み、非ガイド領域は、配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)を含む。一部の実施形態において、第2の鎖は、配列番号37に対して約90%の同一性または配列番号37に対して約90%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施形態において、第1の鎖および第2の鎖は、ループ構造を形成することが可能なRNAリンカーによって連結されている。一部の実施形態において、RNAリンカーは、4から50ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、ループ構造は、4から20ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、RNAiは、5’から3’に向かって、第2の鎖、RNAリンカー、および第1の鎖を含む。一部の実施形態において、RNAiは、5’から3’に向かって、第1の鎖、RNAリンカー、および第2の鎖を含む。一部の実施形態において、RNAiは、配列番号61または配列番号63の核酸配列を含む。一部の実施形態において、RNAiは、配列番号61または配列番号63のヌクレオチド配列に対して約90%同一であるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、RNAiは、低分子阻害性RNA(siRNA)、microRNA(miRNA)、または低分子ヘアピンRNA(shRNA)である。
【0010】
上記態様および実施形態の一部の実施形態において、RNAiは、神経変性シヌクレイン病に関連するポリペプチドをコードするRNAを標的化する。一部の実施形態において、ポリペプチドは、アルファ-シヌクレイン(SNCA)である。一部の実施形態において、アルファシヌクレインは、ヒトアルファ-シヌクレインである。一部の実施形態において、神経変性シヌクレイン病は、パーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA)、またはレビー小体型認知症(DLB)である。
【0011】
上記態様および実施形態の一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のRNAiをコードする核酸を含む発現構築物を提供する。一部の実施形態において、RNAiをコードする核酸は、miRNA足場を含む。一部の実施形態において、RNAiをコードする核酸は、プロモーターに、機能するように連結されている。一部の実施形態において、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスチレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、延長因子1-アルファプロモーター(E
F1-アルファ)プロモーター、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、レトロウイルス性のラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、および13-アクチンプロモーターから選択される。一部の実施形態において、発現構築物は、イントロンをさらに含む。一部の実施形態において、イントロンは、CBAイントロンまたはhEF1アルファイントロンである。一部の実施形態において、イントロンは、キメライントロンである。一部の実施形態において、発現ベクターは自己相補的なベクターであり、イントロンはデルタキメライントロンである。一部の実施形態において、発現構築物は、ポリアデニル化シグナルをさらに含む。一部の実施形態において、ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、またはHSV TKポリアデニル化シグナルである。
【0012】
一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の発現構築物のいずれかを含むベクターを提供する。一部の実施形態において、ベクターは、組換えアデノ関連ウイルス(rAAV)ベクターである。一部の実施形態において、発現構築物は、1つまたはそれ以上のAAVの逆方向末端反復(ITR)配列を端に有する。一部の実施形態において、発現構築物は、2つのAAVのITRを端に有する。一部の実施形態において、AAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型のITRである。一部の実施形態において、AAVのITRは、AAV2のITRである。一部の実施形態において、ベクターは、スタッファー核酸をさらに含む。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、RNAiをコードする核酸の上流または下流に配置されている。一部の実施形態において、ベクターは、自己相補的なrAAVベクターである。一部の実施形態において、ベクターは、RNAiをコードする第1の核酸配列および該RNAiの相補物をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、その長さのほとんどまたは全てにわたり、第2の核酸配列と鎖内の塩基対を形成することができる。一部の実施形態において、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAVのITRによって連結されており、突然変異したAAVのITRは、D領域の欠失を含み、末端分解配列(terminal resolution sequence)の突然変異を含む。
【0013】
一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるrAAVベクターのいずれかを含む細胞を提供する。
【0014】
一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるrAAVベクターのいずれかを含む組換えAAV粒子を提供する。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、AAV2-HBKO、AAVDJ8、AAVPHP.B、AAVPHP.eB、AAVBR1、AAVHSC15、AAVHSC17、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、またはマウスAAVキャプシドrAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む。一部の実施形態において、ITRおよびrAAVウイルス粒子のキャプシドは、同じAAV血清型から誘導される。一部の実施形態において、ITRおよびrAAVウイルス粒子のキャプシドは、異なるAAV血清型から誘導される。一部の実施形態において、ITRは、AAV2から誘導され、rAAV粒子のキャプシドは、AAV1から誘導される。
【0015】
一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のrAAV粒子のいずれかを含む
組成物を提供する。一部の実施形態において、組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含む。
【0016】
一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のRNAiのいずれかを含むキットを提供する。一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のAAV粒子のいずれかを含むキットを提供する。一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の組成物のいずれかを含むキットを提供する。一部の実施形態において、キットは、使用のための説明書をさらに含む。
【0017】
一部の態様において、本発明は、哺乳動物における神経変性シヌクレイン病を処置するための方法であって、哺乳動物に、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖または配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖、および第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、第2の核酸は、配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸または配列5’-E1パッセンジャー-3’(配列番号37)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸を含む。
【0018】
一部の態様において、本発明は、哺乳動物における神経変性シヌクレイン病を処置するための方法であって、哺乳動物に、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第2の核酸を含む第2の鎖、または配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを投与することを含む方法を提供する。
【0019】
一部の態様において、本発明は、神経変性疾患を有する哺乳動物におけるアルファ-シヌクレインの発現を阻害するための方法であって、哺乳動物に、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖または配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸を含む第1の鎖、および第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、第2の核酸は、配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸または配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸を含む。
【0020】
一部の態様において、本発明は、神経変性疾患を有する哺乳動物におけるアルファ-シヌクレインの発現を阻害するための方法であって、哺乳動物に、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第2の核酸を含む第2の鎖、または配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37
)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを投与することを含む方法を提供する。
【0021】
上記方法の一部の実施形態において、第1の鎖は、配列番号24の配列を有する核酸配列または配列番号8の配列を有する核酸を含む。一部の実施形態において、第2の鎖は、配列番号53の配列を有する核酸または配列番号37の配列を有する核酸を含む。一部の実施形態において、第1の鎖および第2の鎖は、ループ構造を形成することが可能なRNAリンカーによって連結されている。一部の実施形態において、RNAリンカーは、4から50ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、ループ構造は、4から20ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、RNAiは、5’から3’に向かって、第2の鎖、RNAリン
カー、および第1の鎖を含む。一部の実施形態において、RNAiは、5’から3’に向かって、第1の鎖、RNAリンカー、および第2の鎖を含む。一部の実施形態において、RNAiは、配列番号61または配列番号63の核酸配列を含む。一部の実施形態において、RNAiは、配列番号61または配列番号63のヌクレオチド配列に対して約90%同一であるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、RNAiは、低分子抑制性RNA(siRNA)、microRNA(miRNA)、または低分子ヘアピンRNA(shRNA)である。
【0022】
上記方法の一部の実施形態において、RNAiは、神経変性シヌクレイン病に関連するポリペプチドをコードするRNAを標的化する。一部の実施形態において、ポリペプチドは、アルファ-シヌクレイン(SNCA)である。一部の実施形態において、アルファシヌクレインは、ヒトアルファ-シヌクレインである。一部の実施形態において、神経変性シヌクレイン病は、パーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA)、またはレビー小体型認知症(DLB)である。
【0023】
上記方法の一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のRNAiをコードする核酸を含む発現構築物を提供する。一部の実施形態において、RNAiをコードする核酸は、miRNA足場を含む。一部の実施形態において、RNAiをコードする核酸は、プロモーターに、機能するように連結されている。一部の実施形態において、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスチレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、延長因子1-アルファプロモーター(EF1-アルファ)プロモーター、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、レトロウイルス性のラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、および13-アクチンプロモーターから選択される。一部の実施形態において、発現構築物は、イントロンをさらに含む。一部の実施形態において、イントロンは、CBAイントロンまたはhEF1アルファイントロンである。一部の実施形態において、イントロンは、キメライントロンである。一部の実施形態において、発現ベクターは自己相補的なベクターであり、イントロンはデルタキメライントロンである。一部の実施形態において、発現構築物は、ポリアデニル化シグナルをさらに含む。一部の実施形態において、ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、またはHSV TKポリアデニル化シグナルである。
【0024】
上記方法の一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の発現構築物のいずれかを含むベクターを提供する。一部の実施形態において、ベクターは、組換えアデノ関連ウイルス(rAAV)ベクターである。一部の実施形態において、発現構築物は、1つまたはそれ以上のAAVの逆方向末端反復(ITR)配列を端に有する。一部の実施形態において、発現構築物は、2つのAAVのITRを端に有する。一部の実施形態において、AAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型ITRである。一部の実施形態において、AAVのITRは、AAV2のITRである。一部の実施形態において、ベクターは、スタッファー核酸をさらに含む。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、RNAiをコードする核酸の上流または下流に配置されている。一部の実施形態において、ベクターは、自己相補的なrAAVベクターである。一部の実施形態において、ベクターは、RNAiをコードする第1の核酸配列および該RNAiの相補物をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、その長さのほとんどまたは全てにわたり、第2の核酸配列と鎖内の塩基対を形成することができる。一部の実施形態において、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAVのITRによって連結されており、突然変異したAAVのITRは、D領域の欠失を含み、末端分解配列の突然変異を含む。
【0025】
上記方法の一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるrAAVベクターのいずれかを含む組換えAAV粒子を提供する。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、AAV2-HBKO、AAVDJ8、AAVPHP.B、AAVPHP.eB、AAVBR1、AAVHSC15、AAVHSC17、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、またはマウスAAVキャプシドrAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む。一部の実施形態において、ITRおよびrAAVウイルス粒子のキャプシドは、同じAAV血清型から誘導される。一部の実施形態において、ITRおよびrAAVウイルス粒子のキャプシドは、異なるAAV血清型から誘導される。一部の実施形態において、ITRは、AAV2から誘導され、rAAV粒子のキャプシドは、AAV1から誘導される。一部の実施形態において、rAAV粒子は、組成物の形態である。一部の実施形態において、組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含む。
【0026】
本明細書において引用された、特許出願および公報を包含する全ての参考文献は、参照によってそれら全体が開示に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1Aは、D1 shmiRNA(配列番号61)の構造を示し、
図1Bは、E1 shmiRNA(配列番号63)の構造を示す。
【
図2】インビトロでのヒトSNCAのRNAi介在の低下を示すグラフである。shmiRNA形式で示したRNAi配列およびヒトSNCA cDNAをコードするプラスミドによるトランスフェクションの72時間後のHEK293T細胞の全細胞抽出物におけるSNCAの定量化。SNCAレベルをGAPDH負荷対照に対して正規化し、かつ対照(非標的化対照RNAi)に対して正規化し、パーセントノックダウンを計算した。
【
図3】インビトロでのマウスSNCAのRNAi介在の低下を示すグラフである。miRNA形式で示したRNAi配列およびマウスSNCA cDNAをコードするプラスミドによるトランスフェクションの72時間後のHEK293T細胞の全細胞抽出物におけるSNCAの定量化。SNCAレベルをGAPDH負荷対照に対して正規化し、かつ対照(非標的化対照RNAi)に対して正規化し、パーセントノックダウンを計算した。
【
図4】
図4A~Dは、インビトロでのマウスまたはヒトアルファ-シヌクレインタンパク質のRNAi介在の低下を示す図である。siRNA形式で示したRNAi配列およびヒトSNCA cDNA(
図4A)またはマウスSNCA cDNA(
図4B)をコードするプラスミドによるトランスフェクションの72時間後のHEK293T細胞の全細胞抽出物におけるSNCAの定量的分析の図。SNCAのタンパク質レベルをベータチューブリンに対して正規化し、かつ対照(非標的化対照RNAi)に対して正規化し、ヒトSNCA(
図4C)およびマウスSNCA(
図4D)に関するウエスタンブロッティング画像において示されるように、パーセントノックダウンを計算した。
【
図5】
図5A~Bは、トランスフェクトしたLUHMES細胞において示したRNAi配列の毒性を示すグラフである。LUHMES細胞にmiRNA形式で示したRNAi配列をトランスフェクトし、次いでロテノンで処理し、細胞毒性を誘導した。(
図5A)ロテノン処理の48時間後にCell Titer Blue(登録商標)アッセイによって細胞生存率を測定し、D1とE1 RNAi配列の両方による有意な神経保護(それぞれ、38%と40%)を実証したが、対照RNAi配列に関しては実証されなかった。平均神経保護の%は、対照からの変化の%で計算される。(
図5B)活性酸素種をロテノンに誘導された毒性の追加の読み出しとして測定した。
【
図6】SNCAノックダウンの神経保護との正の相関関係を示す図である。
図5からのパーセント神経保護(細胞生存率として)を、それぞれの実験におけるD1またはE1からのノックダウンのレベルに対してプロットした。両RNAi配列は、パーセントノックダウンの、ロテノン処理したLUHMES細胞における神経保護のレベルとの有意な正の相関(ピアソンの)を示した。
【
図7】インビボでmiRNA形式で示したRNAiによる標的mRNAノックダウンを示すグラフである。バーは、平均+/-SEMを示す。丸は、個々の動物を表す。多重比較による一元ANOVAによって有意性を評価した。
【
図8】AAV-D1ベクターの注射後のマウスの中脳にわたるSNCA mRNAの低減を示す図である。1e10 GCの対照またはD1ウイルスをマウスの片側に注射した。組織を収集し、1カ月後にインサイチュハイブリダイゼーションのために処理した。SNCAアンチセンスプローブは、対側半球に対して吻側から尾側の3つの異なる解剖学レベルで標的低下を明らかに示す。対照のRNAiウイルスは、未注射半球に対して、SNCA mRNAの減少を全く示さなかった。
【
図9】SNc免疫組織化学およびインサイチュハイブリダイゼーションによるマウスにおけるSNCAタンパク質およびmRNAの低減を示す図である。
【
図10】SNc免疫組織化学およびインサイチュハイブリダイゼーションとその後のAAV.rh10-E1ベクターの送達によるマウスにおけるSNCAタンパク質およびmRNAの低減を示す図である。
【
図11】各サンプル群に関する個々の生物学的反復におけるα-シヌクレインに対して正規化された発現を示すグラフである;EVは、「空のベクター」を表す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
一部の態様において、本発明の開示は、神経変性シヌクレイン病を処置するためのRNAiを提供する。一部の実施形態において、神経変性シヌクレイン病は、パーキンソン病または多系統萎縮症(MSA)である。一部の実施形態において、RNAiは、アルファ-シヌクレインを標的化する。一部の実施形態において、RNAiは、アルファ-シヌクレインの発現を低減する。一部の実施形態において、RNAiは、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)を含む第1の核酸を含む第1の鎖を含む。一部の実施形態において、RNAiは、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含む。一部の実施形態において、RNAiは、配列5’-UGGG
CACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)を含む第1の核酸を含む第1の鎖を含む。一部の実施形態において、RNAiは、配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含む。一部の態様において、本発明の開示は、本発明の開示のRNAiを含む発現構築物、ベクター(例えば、組換えAAVベクター)、細胞、ウイルス粒子(例えば、AAV粒子)、および医薬組成物を提供する。さらなる態様において、本発明の開示は、神経変性シヌクレイン病を処置する、SNCAの発現を阻害する、および哺乳動物の細胞におけるSNCAの蓄積を阻害するための方法であって、哺乳動物に、本発明の開示のRNAiを含む医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。よりさらなる態様において、本発明の開示は、神経変性シヌクレイン病を処置するか(例えば、神経変性シヌクレイン病の症状を緩和するか)、SNCAの発現を阻害するか、または神経変性シヌクレイン病を有する哺乳動物の細胞におけるSNCAの蓄積を阻害するための、本発明の開示のRNAiを含む医薬組成物の使用を提供する。一部の実施形態において、シヌクレイン病は、パーキンソン病、多系統萎縮症またはレビー小体型認知症である。
【0029】
I.一般的な技術
本明細書で記載または言及される技術および手順は、一般的によく認識され、当業者により従来の手法を使用して一般的に採用されており、このような手法は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrookら、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、2012);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、2003);Methods in Enzymologyのシリーズ(Academic Press,Inc.);PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson,B.D.HamesおよびG.R.Taylor編、1995);Antibodies,A Laboratory Manual(HarlowおよびLane編、1988);Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique and Specialized Applications(R.I.Freshney、第6版、J.Wiley and Sons、2010);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、Academic Press、1998);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、Plenum Press、1998);Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths、およびD.G.Newell編、J.Wiley and Sons、1993~8);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編、1996);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction、(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);Short Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、J.Wiley and Sons、2002);Immunobiology(C.A.Janewayら、2004);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:A Practical Approach(D.Catty.編、IRL Press、1988~19
89);Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.HarlowおよびD.Lane、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood
Academic Publishers、1995);およびCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVitaら編、J.B.Lippincott Company、2011)に記載の広く利用されている手法である。
【0030】
II.定義
「ベクター」は、本明細書で使用される場合、インビトロまたはインビボのいずれかで宿主細胞に送達しようとする核酸を含む組換えプラスミドまたはウイルスを指す。
【0031】
用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、本明細書で使用される場合、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかのあらゆる長さのヌクレオチドの多量体型を指す。したがって、この用語は、これらに限定されないが、一本鎖、二本鎖もしくは多重鎖のDNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、またはプリンおよびピリミジン塩基を含むポリマー、または他の天然の、化学的もしくは生化学的に修飾された、非天然の、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を包含する。ポリヌクレオチドの骨格は、糖およびリン酸基を含んでいてもよいし(典型的にRNAまたはDNAで見出されるように)、または修飾または置換された糖またはリン酸基を含んでいてもよい。代替として、ポリヌクレオチドの骨格は、ホスホロアミデートなどの合成サブユニットのポリマーを含んでいてもよく、したがってオリゴデオキシヌクレオシドホスホロアミデート(P-NH2)または混成のホスホロアミデート-リン酸ジエステルオリゴマーであってもよい。加えて、二本鎖ポリヌクレオチドは、相補鎖を合成して適切な条件下で鎖をアニーリングすること、または適切なプライマーでのDNAポリメラーゼを使用して相補鎖をデノボ合成することのいずれかによる、化学合成の一本鎖ポリヌクレオチド産物から得ることができる。
【0032】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、同義的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指し、最小の長さに限定されない。このようなアミノ酸残基のポリマーは、天然または非天然のアミノ酸残基を含有していてもよく、そのようなものとしては、これらに限定されないが、ペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸残基の二量体、三量体、および多量体が挙げられる。全長タンパク質およびそれらのフラグメントはどちらも、この定義に含まれる。この用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアル化、アセチル化、リン酸化なども包含する。さらに、本開示の目的に関して、「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持しさえすれば、ネイティブの配列に対する修飾、例えば欠失、付加、および置換(一般的に保存的な性質を有するもの)を包含するタンパク質も指す。これらの修飾は、例えば部位特異的変異誘発を介して計画的であってもよいし、または例えばPCR増幅によりタンパク質またはエラーを生じる宿主の突然変異を介して偶発的であってもよい。
【0033】
「組換えウイルスベクター」は、1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、ウイルス由来ではない核酸配列)を含む組換えポリヌクレオチドベクターを指す。組換えAAVベクターのケースにおいて、組換え核酸は、少なくとも1つの、および一部の実施形態において2つの、逆方向末端反復配列(ITR)を端に有する。
【0034】
「組換えAAVベクター(rAAVベクター)」は、少なくとも1つ、および実施形態
において2つのAAV逆方向末端反復配列(ITR)が隣接する1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、AAV由来ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。このようなrAAVベクターは、好適なヘルパーウイルスに感染した(または好適なヘルパー機能を発現している)宿主細胞、ならびにAAVのrepおよびcap遺伝子産物(すなわちAAVのRepおよびCapタンパク質)を発現している宿主細胞中に存在する場合、複製して感染性のウイルス粒子にパッケージ化することができる。rAAVベクターが、より大きいポリヌクレオチドに(例えば、染色体中、またはクローニングまたはトランスフェクションに使用されるプラスミドなどの別のベクター中に)取り込まれる場合、rAAVベクターは、AAVパッケージ化機能および好適なヘルパー機能の存在下で複製およびキャプシド化により「レスキュー」することができる「プロベクター」と称される場合もある。rAAVベクターは、これらに限定されないが、脂質と複合体化した、リポソーム内にカプセル封入された、およびウイルス粒子、特にAAV粒子中にキャプシド化された、プラスミド、直鎖状人工染色体などの多数の形態のいずれかの形態であってもよい。rAAVベクターは、「組換えアデノ関連ウイルス粒子(rAAV粒子)」を生成するために、AAVウイルスのキャプシドにパッケージ化することができる。
【0035】
「異種」は、比較されるかまたは導入されるかまたは取り込まれる物体の残部の遺伝子型と別個の遺伝子型を有する物体から誘導されたことを意味する。例えば、遺伝子工学技術によって異なる細胞型に導入されたポリヌクレオチドは、異種ポリヌクレオチドである(発現される場合、異種ポリペプチドをコードすることができる)。同様に、ウイルスベクターに取り入れられる細胞性の配列(例えば、遺伝子またはそれらの一部)は、そのベクターに関して異種ヌクレオチド配列である。
【0036】
用語「導入遺伝子」は、細胞に導入されて、RNAに転写させることができ、場合により適切な条件下で翻訳および/または発現させることができるポリヌクレオチドを指す。態様において、導入遺伝子は、それが導入される細胞に所望の特性を付与するか、またはそれ以外の方法で所望の治療または診断結果をもたらす。別の態様において、導入遺伝子は、miRNA、siRNA、またはshRNAなどのRNA干渉を媒介する分子に転写することができる。
【0037】
「ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター」は、ニワトリβ-アクチン遺伝子(例えば、GenBankのEntrez遺伝子番号396526で示されるニワトリ(Gallus gallus)ベータアクチン)から誘導されたポリヌクレオチド配列を指す。「ニワトリβ-アクチンプロモーター」は、本明細書で使用される場合、サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサーエレメントを含有するプロモーター、ニワトリβ-アクチン遺伝子のプロモーターならびに第1のエクソンおよびイントロン、ならびにウサギベータ-グロビン遺伝子のスプライスアクセプター、例えばMiyazaki,J.ら(1989)Gene 79(2):269~77に記載の配列を指す場合がある。用語「CAGプロモーター」は、本明細書で使用される場合、同義的に使用される場合がある。用語「CMV初期エンハンサー/ニワトリベータアクチン(CAG)プロモーター」は、本明細書で使用される場合、同義的に使用される場合がある。
【0038】
用語「ゲノム粒子(gp)」、「ゲノム等価体」、または「ゲノムコピー」は、ウイルス力価への言及で使用される場合、感染力または機能性に関係なく、組換えAAVのDNAゲノムを含有するビリオンの数を指す。特定のベクター調製物中のゲノム粒子の数は、本明細書の実施例、または例えばClarkら(1999)Hum.Gene Ther.、10:1031~1039;Veldwijkら(2002)Mol.Ther.、6:272~278に記載されるような手順によって測定することができる。
【0039】
用語「ベクターゲノム(vg)」は、本明細書で使用される場合、ベクター、例えばウ
イルスベクターの一連のポリヌクレオチド配列を含む1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドを指す場合がある。ベクターゲノムは、ウイルス粒子中にキャプシド化されていてもよい。特定のウイルスベクターに応じて、ベクターゲノムは、一本鎖DNA、二本鎖DNA、または一本鎖RNA、もしくは二本鎖RNAを含んでいてもよい。ベクターゲノムは、特定のウイルスベクターに関連する内因性配列、および/または組換え技術を介して特定のウイルスベクターに挿入されたあらゆる異種配列を包含していてもよい。例えば、組換えAAVベクターゲノムは、プロモーターの端にある少なくとも1つのITR配列、スタッファー、目的の配列(例えば、RNAi)、およびポリアデニル化配列を包含していてもよい。完全なベクターゲノムは、ベクターのポリヌクレオチド配列の完全なセットを包含していてもよい。一部の実施形態において、ウイルスベクターの核酸の力価は、vg/mLを単位として測定することができる。この力価を測定するのに好適な方法は、当業界において公知である(例えば、定量PCR)。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「阻害する」は、特定の標的の存在、または活性をブロックする、低減する、消去する、または別の方法でそれに拮抗する作用を指す。阻害は、部分的阻害または完全阻害を指す。例えば、遺伝子の発現を阻害することは、mRNAの存在量の低減(例えば、mRNA転写のサイレンシング)、mRNAの分解、mRNA翻訳の阻害などを含む遺伝子発現のブロック、低減、消去、またはいずれかの他の拮抗をもたらすいずれかの作用を指す。一部の実施形態において、SNCAの発現を阻害することは、SNCA mRNAの存在量の低減(例えば、SNCA mRNA転写のサイレンシング)、SNCA mRNAの分解、SNCA mRNA翻訳の阻害などを含むSNCAの発現のブロック、低減、消去、またはいずれかの他の拮抗を指す。別の例として、細胞におけるタンパク質の蓄積を阻害することは、mRNAの存在量の低減(例えば、mRNA転写のサイレンシング)、mRNAの分解、mRNA翻訳の阻害、タンパク質の分解などを含むタンパク質の発現のブロック、低減、消去、または他の拮抗をもたらすいずれかの作用を指す。一部の実施形態において、細胞におけるSNCAタンパク質の蓄積を阻害することは、SNCA mRNAの存在量の低減(例えば、SNCA mRNA転写のサイレンシング)、SNCA mRNAの分解、SNCA mRNA翻訳の阻害、SNCAタンパク質の分解などを含む、細胞におけるSNCAタンパク質の発現のブロック、低減、消去、または他の拮抗を指す。
【0041】
用語「感染単位(iu)」、「感染性粒子」、または「複製単位」は、ウイルス力価への言及で使用される場合、例えばMcLaughlinら(1988)J.Virol.、62:1963~1973に記載されるような、複製中心のアッセイとしても公知の感染中心のアッセイによって測定した場合、感染性および複製能を有する組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0042】
用語「形質導入単位(tu)」は、ウイルス力価への言及で使用される場合、本明細書の実施例、または例えばXiaoら(1997)Exp.Neurobiol.、144:113~124;またはFisherら(1996)J.Virol.、70:520~532(LFUアッセイ)に記載されるような機能アッセイで測定した場合、機能的な導入遺伝子産物の生産を引き起こす感染性の組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0043】
「逆方向末端反復」または「ITR」配列は、当業界でよく理解されている用語であり、逆方向でウイルスゲノムの末端で見出される相対的に短い配列を指す。
【0044】
「AAV逆方向末端反復(ITR)」配列は、当業界でよく理解されている用語であり、ネイティブの一本鎖AAVゲノムの両方の末端に存在するおよそ145ヌクレオチドの配列である。ITRの最も外側の125ヌクレオチドは、異なるAAVゲノム間および単一のAAVゲノムの2つの末端の間に不均質性をもたらす2つの択一的な方向のいずれか
に存在していてもよい。最も外側の125ヌクレオチドはまた、自己相補性を有する数種のより短い領域(A、A’、B、B’、C、C’およびD領域と指定される)も含有し、それによりITRのこの部分内で鎖内の塩基対形成を起こすことが可能になる。
【0045】
「末端分解配列」または「trs」は、ウイルスDNAの複製中にAAVのrepタンパク質によって切断されるAAVのITRのD領域における配列である。突然変異末端分解配列は、AAVのrepタンパク質による切断に対して耐性を有する。
【0046】
「AAVのヘルパー機能」は、AAVを宿主細胞により複製してパッケージ化することを可能にする機能を指す。AAVのヘルパー機能は、これらに限定されないが、AAV複製およびパッケージ化に役立つヘルパーウイルスまたはヘルパーウイルス遺伝子などの多数の形態のいずれかで提供することができる。他のAAVのヘルパー機能は、遺伝毒性物質などの分野において公知である。
【0047】
AAVのための「ヘルパーウイルス」は、AAV(これは、欠陥パルボウイルスである)を宿主細胞により複製してパッケージ化することを可能にするウイルスを指す。ヘルパーウイルスは、AAVの複製を可能にする「ヘルパー機能」を提供する。このようなヘルパーウイルスが多数同定されており、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、およびポックスウイルス、例えばワクシニアおよびバキュロウイルスなどが挙げられる。アデノウイルスは、多数の異なるサブグループを包含するが、サブグループCのアデノウイルス5型(Ad5)が最も一般的に使用される。ヒト、ヒト以外の哺乳類および鳥類由来の数多くのアデノウイルスが公知であり、ATCCなどの受託機関より入手可能である。ATCCなどの受託機関より同様に入手可能なヘルペス科のウイルスとしては、例えば、単純疱疹ウイルス(HSV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)が挙げられる。AAV複製に関するアデノウイルスのヘルパー機能の例としては、E1A機能、E1B機能、E2A機能、VA機能およびE4orf6機能が挙げられる。受託機関より入手可能なバキュロウイルスとしては、アウトグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)の核多角体病ウイルスが挙げられる。
【0048】
rAAVの調製は、感染性のAAV粒子と感染性のヘルパーウイルス粒子との比率が、少なくとも約102:1;少なくとも約104:1、少なくとも約106:1;または少なくとも約108:1であるかまたはそれより高い場合、ヘルパーウイルスを「実質的に含まない」と述べられる。一部の実施形態において、調製物も、それに相当する量のヘルパーウイルスタンパク質(すなわち、上記のヘルパーウイルス粒子の不純物が崩壊した形態で存在する場合、このようなレベルのヘルパーウイルスの結果として存在すると予想されるようなタンパク質)を含まない。ウイルスおよび/または細胞タンパク質の汚染は、SDSゲルにおけるクーマシー染色バンドの存在(例えば、AAVキャプシドタンパク質VPl、VP2およびVP3に対応するバンド以外のバンドの出現)として一般的に観察することができる。
【0049】
参照ポリペプチドまたは核酸配列に対する「パーセント(%)配列同一性」は、最大のパーセント配列同一性が達成されるように配列を並べ、必要に応じてギャップを導入した後の、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮しない、参照ポリペプチドまたは核酸配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドと同一な候補配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドのパーセンテージと定義される。アミノ酸または核酸配列同一性のパーセントを決定する目的のためのアライメントは、当業界における能力の範囲内の様々な方法で、例えば、公共的に利用可能なコンピューターソフトウェアプログラム、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1987)、増刊30、セクション7.7.18、表7.7.1に記載さ
れるもの、およびBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどを使用して達成することができる。好ましいアライメントプログラムは、ALIGN Plus(Scientific and Educational Software、Pennsylvania)である。当業者は、比較される配列の全長にわたり最大のアライメントを達成するのに必要なあらゆるアルゴリズムなど、アライメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。本明細書に記載の目的のために、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する所与のアミノ酸配列Aの%アミノ酸配列同一性(代替として、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する特定の%アミノ酸配列同一性を有するかまたは含む所与のアミノ酸配列Aと表すこともできる)は、以下のように計算される:100×分数X/Y(式中Xは、そのプログラムのAおよびBのアライメントにおいて、配列アライメントプログラムによって同一なマッチとスコア付けされたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性と等しくないと予想されることが理解される。本明細書に記載の目的のために、所与の核酸配列Dへの、それとの、またはそれに対する所与の核酸配列Cの%核酸配列同一性(代替として、所与の核酸配列Dへの、それとの、またはそれに対する特定の%核酸配列同一性を有するかまたは含む所与の核酸配列Cと表すこともできる)は、以下のように計算される:100×分数W/Z(式中Wは、そのプログラムのCおよびDのアライメントにおいて、配列アライメントプログラムによって同一なマッチとスコア付けされたヌクレオチドの数であり、Zは、D中のヌクレオチドの総数である)。核酸配列の長さCが核酸配列Dの長さに等しくない場合、CのDに対する%核酸配列同一性は、DのCに対する%核酸配列同一性と等しくないと予想されることが理解される。
【0050】
「単離された」分子(例えば、核酸またはタンパク質)または細胞は、それが、その天然の環境の要素から同定され分離および/または回収されていることを意味する。
【0051】
「有効量」は、臨床結果などの(例えば、症状の緩和、臨床評価項目の達成などの)有益な、または所望の結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回またはそれ以上の投与で投与することができる。病状の観点から、有効量は、疾患を緩和する、安定化する、またはその発症を遅延させるのに十分な量である。
【0052】
「個体」または「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、これらに限定されないが、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が挙げられる。ある特定の実施形態において、個体または対象は、ヒトである。
【0053】
「処置」は、本明細書で使用される場合、有益な、または所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本開示の目的に関して、有益な、または所望の臨床結果としては、これらに限定されないが、検出可能かまたは検出不可能かにかかわらず、症状の軽減、疾患の程度の低減、疾患の安定化された(例えば、悪化しない)状況、疾患の拡大(例えば、転移)の予防、疾患進行の遅延または減速、病状の緩和または一時的緩和、および寛解(部分的かまたは完全化かどうかにかかわらず)が挙げられる。「処置」はまた、処置を受けない場合に予測される生存と比較した生存の延長を意味する場合もある。
【0054】
用語「予防的処置」は、本明細書で使用される場合、個体が、障害を有するかまたは障害を有するリスクを有することがわかっているかまたはその疑いがあるが、障害の症状がないかまたは最小の症状を示す場合の処置を指す。予防的処置を受けている個体は、症状の発病の前に処置される。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「神経変性シヌクレイン病」は、中枢および抹消神経系の両方におけるニューロンおよびグリアの選択集団の細胞質中のアルファ-シヌクレインタンパク質の繊維性凝集によって特徴付けられる神経変性障害を指す。例としては、これらに限定されないが、パーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA-PおよびMSA-C)、レビー小体型認知症(DLB)、純粋自律神経失調症(PAF)、アルツハイマー病のレビー小体バリアント(LBVAD)、レビー小体嚥下障害(Lewy body dysphagia)、および偶発性レビー小体病が挙げられる。
【0056】
本明細書で使用される場合、「RNAi」は、細胞においてRNA干渉を誘導するいずれかのRNA分子を指す。RNAiの例としては、これらに限定されないが、低分子阻害性RNA(siRNA)、microRNA(miRNA)、または低分子ヘアピンRNA(shRNA)が挙げられる。
【0057】
「miRNA足場」は、(i)RNAiによるノックダウンのために目的の遺伝子を標的化する二本鎖配列および(ii)内因性miRNAのものに似ているステム-ループ構造を形成する追加の配列を含有するポリヌクレオチドを指す。RNAiに対する目的の遺伝子を標的化する配列(例えば、短い、約20ntの配列)は、miRNA様ステム-ループを創出する配列、およびポリヌクレオチドがmiRNA様二次構造中にアセンブルされる場合に目的の配列と塩基対を形成して二本鎖を形成する配列にライゲーションされる。本明細書に記載されるように、この二本鎖は不完全にハイブリダイズし、例えば、この二本鎖は1つまたはそれ以上の対合していないかまたは誤対合した塩基を含有する。Dicerによるこのポリヌクレオチドの切断の際に、目的の遺伝子を標的化する配列を含有するこの二本鎖はほどかれ、RISC複合体中に組み込まれる。miRNA足場は、miRNAそれ自体を指すか、またはmiRNAをコードするDNAポリヌクレオチドを指す。miRNA足場の例は、miR-155配列である(Lagos-Quintana、Mら(2002) Curr. Biol. 12:735~9頁)。配列をmiRNA足場中にクローニングするための市販のキットは、当業界において公知である(例えば、Life Technologies, Thermo Fisher Scientific;Waltham、MAからのInvitrogen(商標)BLOCK-iT(商標)Pol II miR RNAi発現ベクターキット)。
【0058】
本明細書で使用される場合、「バルジ」は、二本鎖核酸中のそれと反対側の核酸に非相補的である核酸の領域を指す。例えば、バルジは、二本鎖核酸中の反対側の核酸に対して非相補的である核酸配列であって、バルジが、二本鎖核酸中の反対側の核酸に対して相補的である核酸の領域に隣接するものを指す。一部の例において、バルジは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10を超える塩基長のいずれかである。一部の例において、バルジは誤対合の結果であるか(例えば、反対側の鎖は非相補的である塩基を含有する)またはバルジは非対合の結果である(例えば、反対側の鎖はバルジに隣接する核酸に対して相補的な核酸を含むが、反対側の鎖はバルジの反対側の核酸を含有しない)。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「センス」核酸は、導入遺伝子の全てまたは一部をコードする配列を含む核酸である。一部の例では、導入遺伝子に関するmRNAはセンス核酸である。
【0060】
本明細書で使用される場合、「アンチセンス」核酸は、「センス」核酸に対して相補的である核酸の配列である。例えば、アンチセンス核酸は、導入遺伝子をコードするmRNAに対して相補的である。
【0061】
本明細書で使用される場合、RNAiの「ガイド領域」は、典型的には、相補性に基づいて、標的mRNAに結合するRNAiの鎖である。相補的な領域は、ガイド領域の全て
または一部を包含する。典型的には、相補的な領域は、少なくともシード領域を含む。多くのケースにおいて、RNAiのアンチセンス領域は、ガイド領域である。
【0062】
本明細書で使用される場合、本明細書において同義的に使用される、RNAiの「パッセンジャー領域」、または「非ガイド領域」は、ガイド領域に対して相補的であるRNAiの領域である。多くのケースにおいて、RNAiのセンス領域は、パッセンジャー領域である。
【0063】
本明細書で使用される場合、RNAi(例えば、miRNA)の「シード領域」は、microRNAの長さが約1~8ヌクレオチドの領域である。一部の例において、その標的mRNAのシード領域および3’-UTRは、RNAi認識における重要な決定要素である。
【0064】
本明細書で使用される場合、「オフターゲット遺伝子サイレンシング」は、RNAiのシード領域と、意図されないmRNAの3’-UTR中の配列との対合を指し、翻訳の抑制およびそれらの転写物の不安定化を導く(例えば、意図されないmRNAの発現を低減する)。
【0065】
本明細書における値またはパラメーターに「関して」という言及は、その値またはパラメーターそれ自体を対象とした実施形態を包含する(説明する)。例えば、「Xに関して」と言及されている説明は、「X」の説明を包含する。
【0066】
単数形の冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、複数形の指示対象も包含する。
【0067】
本明細書に記載の開示の態様および実施形態は、態様および実施形態を「含む」、「からなる」、および/または「本質的にからなる」ことを包含することが理解される。
【0068】
III.RNAi
一部の態様において、本発明の開示は、改良されたRNAiを提供する。一部の実施形態において、RNAiは、低分子抑制性RNA(siRNA)、microRNA(miRNA)、または低分子ヘアピンRNA(shRNA)である。低分子阻害性または干渉RNA(siRNA)は、細胞中でRNAiを誘導するおよそ19~25(例えば、19~23)塩基対の長さの二本鎖RNA分子として、当業界において公知である。一部の実施形態において、siRNA配列も、人工miRNA足場(「shmiRNA」)中に挿入することができる。低分子ヘアピンRNA(shRNA)は、細胞中でRNAiを誘導する短いループ(例えば、約4~11ヌクレオチド)によって連結されている二本鎖RNAの長さおよそ19~25(例えば、19~23)塩基対を含むRNA分子として、当業界において公知である。
【0069】
microRNA(miRNA)は、細胞中でRNAiを誘導し、ループによって連結されている二本鎖RNAの短い(例えば、19~25塩基対の)配列を含み、かつ1つまたはそれ以上のバルジ(例えば、誤対合したかまたは非対合の塩基対)を含む二本鎖RNAの1つまたはそれ以上の追加の配列を含有するRNA分子として、当業界において公知である。本明細書で使用される場合、用語「miRNA」は、内因性miRNAおよび外因性または異種miRNAを包含する。一部の実施形態において、「miRNA」は、pri-miRNAまたはpre-miRNAを指す。miRNAプロセシング中に、pri-miRNA転写物が生じる。pri-miRNAは、Drosha-DGCR8によってプロセシングされ、5’フランキング領域、ガイド鎖、ループ領域、非ガイド鎖、および3’フランキング領域;または5’フランキング領域、非ガイド鎖、ループ領域、ガ
イド鎖、および3’フランキング領域を有するpre-miRNAが残るように1つまたはそれ以上の配列を切り出すことによってpre-miRNAを生じる。次いで、pre-miRNAは細胞質に輸送され、Dicerによってプロセシングされて、ガイド鎖および非ガイド(またはパッセンジャー)鎖を有するsiRNAを生じる。次いで、ガイド鎖をRISC複合体が使用して、例えば、ガイド鎖に対して相補的な標的RNA配列を認識することによって、遺伝子サイレンシングを触媒する。miRNAのさらなる説明は、例えば、WO2008/150897において見出すことができる。miRNAによる標的配列の認識は、主として、標的とmiRNAのシード配列、例えばガイド鎖のヌクレオチド1~8(5’から3’に向かって)との対合によって決定される(例えば、Boudreau,R.L.ら(2013)Nucleic Acids Res.41:e9を参照)。
【0070】
pri/pre-miRNA構造において、二重鎖中のガイド鎖:非ガイド鎖の境界は、部分的に、相補的な塩基対合(例えば、ワトソン-クリック旗の塩基対合)を介して形成される。しかしながら、一部の実施形態において、この相補的な塩基対合は、二重鎖全体に及ばない。一部の実施形態において、境界中のバルジは、1つまたはそれ以上のヌクレオチド位置に存在する。本明細書で使用される場合、用語「バルジ」は、二重鎖中でそれと反対側の核酸に対して非相補的である核酸の領域を指す。一部の実施形態において、バルジは、中央の非相補的領域の領域は結合しないが、相補的核酸の領域が互いに結合する場合に形成される。一部の実施形態において、バルジは、2つの相補的領域間に位置する核酸の2つの鎖が異なる長さを有する場合に形成される。後述するように、バルジは、1つまたはそれ以上のヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、miRNAは、miRNAのパッセンジャー鎖から2塩基(パッセンジャー鎖の開始点から数えて、塩基9~10)を欠失することによって生じる内部バルジを含む。
【0071】
別の態様において、本開示において記載されるRNAiは、アルファ-シヌクレイン(SNCA)に対して阻害性である。一部の実施形態において、SNCAは、マウスSNCAである。一部の実施形態において、SNCAは、ヒトSNCAである。一部の実施形態において、RNAiは、SNCAをコードするRNAを標的化する。一部の実施形態において、RNAiは、対象におけるSNCAの発現を阻害する。一部の実施形態において、RNAiは、対象におけるSNCAの蓄積を阻害する。一部の実施形態において、対象は、哺乳動物である。一部の実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。
【0072】
RNAiベースの治療の安全性は、意図されないmRNAに結合してそれらの発現を低減する低分子阻害性RNA(siRNA)の能力、すなわちオフターゲット遺伝子サイレンシングとして公知の作用によって妨害される。オフターゲティングは、主として、シード領域(低分子RNAのヌクレオチド2~8)が意図されないmRNAの3’-UTR中の配列と対合して、翻訳の抑制およびそれらの転写物の不安定化を導く場合に起こる。オフターゲティングが低減されたRNAiは、ガイドおよび非ガイド配列内の塩基を置換すること;例えばCpGモチーフを創出することによって、設計することができる。より有意に低いオフターゲットスコアをもたらす可能性がある置換は、SiSPOTRアルゴリズム、すなわちオフターゲティングの可能性および有力なサイレンシング能力が最小の候補配列を同定する特異性に焦点を当てたsiRNA設計アルゴリズムを使用して評価することができる(Boudreauら、Nucleic Acids Res.2013年1月;41(1)e9頁)。SiSPOTRスコアの低減により、親のRNAi分子と比較してより少数の可能性のあるヒトのオフターゲットを有する配列が予測される。本発明の開示の一部の実施形態において、RNAiは、オフターゲット遺伝子サイレンシングを低減するように改善される。一部の実施形態において、RNAiは、1つまたはそれ以上のCpGモチーフを含む。一部の実施形態において、RNAiは、シード領域中に1つまたはそれ以上のCpGモチーフを含む。
【0073】
一部の実施形態において、第1の鎖および第2の鎖は、ループ構造を形成することが可能なRNA(例えば、RNAリンカー)によって連結されている。一般的に当業界において公知であるように、RNAループ構造(例えば、ステム-ループまたはヘアピン)は、RNA分子が、互いに塩基対合しないRNAの配列によって隔てられた、互いに塩基対合するRNAの2つの配列を含む場合に形成される。例えば、配列AおよびCは、互いに塩基対合するように、相補的であるかまたは部分的に相補的であるが、配列B中の塩基は一緒に塩基対合しない場合、RNA分子A-B-Cでループ構造が形成される可能性がある。一部の実施形態において、ループ配列は、DNA形態の5’-GTTTTGGCCACTGACTGAC-3’(配列番号59)またはRNA形態の5’-GUUUUGGCCACUGACUGAC-3’(配列番号60)である。
【0074】
一部の実施形態において、ループ構造を形成することが可能なRNAは、4から50ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、ループ構造を形成することが可能なRNAは、13ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、ループを形成することが可能なRNA中のヌクレオチドの数は、4から50ヌクレオチドまたはその間の任意の整数である。一部の実施形態において、ループの0~50%は、ループの別の部分に対して相補的である。本明細書で使用される場合、用語「ループ構造」は、核酸の2つの相補鎖をつなぐ配列である。一部の実施形態において、ループ構造の1~3ヌクレオチドは核酸の相補鎖に隣接しており、ループ構造の遠位部分の1~3ヌクレオチドに対して相補的である。例えば、ループ構造の5’末端における3つのヌクレオチドは、ループ構造の3’末端における3つのヌクレオチドに対して相補的である。
【0075】
一部の実施形態において、本発明の開示のRNAiをコードする核酸は、異種miRNA足場を含む。一部の実施形態において、異種miRNA足場の使用は、miRNA発現を調節する;例えば、miRNA発現を増加させるかまたはmiRNA発現を減少させるために使用される。当業界において公知のいずれかのmiRNA足場を使用することができる。一部の実施形態において、miRNA足場は、miR-155足場から誘導される(例えば、Lagos-Quintana,M.ら(2002)Curr.Biol.12:735~9頁およびLife Technologies、Thermo Fisher Scientific;Waltham、MAからのInvitrogen(商標)BLOCK-iT(商標)Pol II miR RNAi発現ベクターキットを参照)。
【0076】
一部の実施形態において、RNAiは、表1から選択される。
【0077】
一部の実施形態において、第1の鎖は、いずれかのガイド配列に対して、約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかより高いパーセンテージの同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施形態において、第1の鎖は、いずれかのガイド配列に対して、約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかより高いパーセンテージの同一性を有する核酸配列を含むが、CpGモチーフを維持する。一部の実施形態において、第2の鎖は、対応するパッセンジャー配列に対して、約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかより高いパーセンテージの同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施形態において、第2の鎖は、対応するパッセンジャー配列に対して、約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかより高いパーセンテージの同一性を有する核酸配列を含むが、CpGモチーフを維持する。
【0078】
【0079】
IV.神経変性シヌクレイン病
神経変性シヌクレイン病は、ニューロン、神経線維またはグリア細胞におけるアルファ
-シヌクレイン(SNCA)タンパク質レベルの上昇によって特徴付けられる神経変性疾患である。主なタイプの神経変性シヌクレイン病として、レビー小体型認知症(DLB)、パーキンソン病、および多系統萎縮症(MSA)が挙げられる。
【0080】
神経変性シヌクレイン病の例としては、これらに限定されないが、パーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA-PおよびMSA-C)、レビー小体型認知症(DLB)、純粋自律神経失調症(PAF)、アルツハイマー病のレビー小体バリアント(LBVAD)、レビー小体嚥下障害、および偶発性レビー小体病が挙げられる。
【0081】
複数のエビデンスによって、アルファ-シヌクレインレベルの上昇は神経毒性をもたらす
一方、低下は神経保護的であることが実証されている(Dauer、2002;Drolet、2004;Alvarez-Fischer、2008;Klivenyi、2005;Mittal、2017;Javed、2015;Cole、2017;Ubhi、2010;Lim、2011)。本開示において、SNCAに対するRNAiが提供される。
【0082】
V.神経変性シヌクレイン病を処置するための方法
一部の態様において、本発明の開示は、哺乳動物における神経変性シヌクレイン病を処置するための方法および組成物であって、哺乳動物に、本発明の開示の医薬組成物(例えば、本発明の開示のウイルス粒子を含む医薬組成物)を投与することを含む方法および組成物を提供する。一部の態様において、本発明の開示は、神経変性シヌクレイン病を有する哺乳動物におけるSNCAの発現を阻害するための方法および組成物であって、哺乳動物に、本発明の開示の医薬組成物(例えば、本発明の開示のウイルス粒子を含む医薬組成物)を投与することを含む方法および組成物を提供する。一部の態様において、本発明の開示は、神経変性シヌクレイン病を有する哺乳動物の細胞におけるSNCAの蓄積を阻害するための方法および組成物であって、哺乳動物に、本発明の開示の医薬組成物(例えば、本発明の開示のウイルス粒子を含む医薬組成物)を投与することを含む方法および組成物を提供する。
【0083】
一部の態様において、本発明の開示は、神経変性シヌクレイン病の症状を緩和するための方法および組成物であって、哺乳動物の神経系に、本発明の開示のRNAiをコードするベクターを含む組換えウイルス粒子の有効量を投与することを含む方法および組成物を提供する。一部の実施形態において、神経変性シヌクレイン病の症状としては、これらに限定されないが、パーキンソン症候群、認知障害、睡眠障害、幻視、発語障害、便秘、錐体路または小脳徴候、嗅覚消失、自律神経障害、例えば、起立性低血圧、低発汗、勃起不全、尿貯留または失禁および瞳孔機能障害が挙げられる。
【0084】
一部の態様において、本発明の開示は、神経変性シヌクレイン病の進行を予防するかまたは遅延させる方法を提供する。シヌクレイン病様PDは、典型的には、振戦、動作緩慢、筋強剛、および姿勢動揺の存在によって臨床的に診断される。PDからの識別は、典型的には、起立性低血圧、錐体路徴候、認知の変化または幻覚などの追加の徴候をチェックすることによって実行される。さらに、一部のシヌクレイン病は、脳の画像化によって、例えば、MSAにおける脳橋、小脳、被殻などの脳領域における異常を探すことによって、診断することができる。一部のシヌクレイン病は、SNCA遺伝子に必ずしも限定されない一般的突然変異に対する遺伝子型分類によって、直接的に同定することができる。疾患進行の遅延または予防は、以下の症状のいずれかにおける改善によって定義される:運動機能(動作緩慢、ジスキネジア、ジストニア、姿勢動揺、前屈姿勢、振戦、ミオクローヌスなど)、認知、睡眠障害、幻視、発語、便秘、錐体路徴候、嗅覚消失、自律神経障害、例えば、起立性低血圧、低発汗、勃起不全、尿貯留または失禁および瞳孔機能障害。
【0085】
本発明の開示の一部の態様において、本方法および組成物は、神経変性シヌクレイン病を有するヒトを処置するために使用される。一部の態様において、本発明の開示は、神経変性シヌクレイン病を有する哺乳動物におけるSNCA mRNAを標的化するための、改善されたRNAiを提供する。一部の実施形態において、RNAiは、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含み、第1の鎖および第2の鎖は二本鎖を形成し、第2の鎖の配列番号53の残基19におけるA残基は、第1の鎖の残基と塩基対を形成しない。一部の実施形態において、miRNAは、miRNAのパッセンジャー鎖から2塩基(パッセンジャー鎖の開始点から数えて、塩基9~10)を欠失することによって生じる内部バルジを含む。一部の実施形態において、第1の鎖および第2の鎖は、ループ配列によって連結されている。一部の実施形態において、ループ配列は、5’-GUUUUGGCCACUGACUGAC-3’(配列番号60)である。
【0086】
一部の実施形態において、RNAiは、配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含み、第1の鎖および第2の鎖は二本鎖を形成し、第2の鎖の配列番号37のA残基19は、第1の鎖の残基と塩基対を形成しない。一部の実施形態において、miRNAは、miRNAのパッセンジャー鎖から2塩基(パッセンジャー鎖の開始点から数えて、塩基9~10)を欠失することによって生じる内部バルジを含む。一部の実施形態において、第1の鎖および第2の鎖は、ループ配列によって連結されている。一部の実施形態において、ループ配列は、5’-GUUUUGGCCACUGACUGAC-3’(配列番号60)である。
【0087】
一部の実施形態において、RNAiは、配列5’-UGCGCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号14)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-GGCUGAGAACCAAAGCGUA-3’(配列番号43)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含み、第1の鎖および第2の鎖は二本鎖を形成し、第2の鎖の配列番号43の残基19におけるA残基は、第1の鎖の残基と塩基対を形成しない。一部の実施形態において、miRNAは、miRNAのパッセンジャー鎖から2塩基(パッセンジャー鎖の開始点から数えて、塩基9~10)を欠失することによって生じる内部バルジを含む。一部の実施形態において、第1の鎖および第2の鎖は、ループ配列によって連結されている。一部の実施形態において、ループ配列は、5’-GUUUUGGCCACUGACUGAC-3’(配列番号60)である。
【0088】
一部の実施形態において、RNAiは、配列5’-UGGGCGCAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号7)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-UGCUCAGUCAAUGCGCCUA-3’(配列番号36)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含み、第1の鎖および第2の鎖は二本鎖を形成し、第2の鎖の配列番号36の残基19におけるA残基は、第1の鎖の残基と塩基対を形成しない。一部の実施形態において、miRNAは、miRNAのパッセンジャー鎖から2塩基(パッセンジャー鎖の開始点から数えて、塩基9~10)を欠失することによって生じる内部バルジを含む。一部の実施形態において、第1の鎖および第2の鎖は、ループ配列によって連結されている。一部の実施形態において、ループ配列は、5’-GUUUUGGCCACUGACUGAC-3’(配列番号60)である。
【0089】
一部の実施形態において、RNAiは、配列5’-uUCCAACAUUUGUCACUUGCU-3’(配列番号5)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-AG
CAAGUGAAAUGUUCGAA-3’(配列番号34)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含み、第1の鎖および第2の鎖は二本鎖を形成し、第2の鎖の配列番号34の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖の残基と塩基対を形成しない。一部の実施形態において、miRNAは、miRNAのパッセンジャー鎖から2塩基(パッセンジャー鎖の開始点から数えて、塩基9~10)を欠失することによって生じる内部バルジを含む。一部の実施形態において、第1の鎖および第2の鎖は、ループ配列によって連結されている。一部の実施形態において、ループ配列は、5’-GUUUUGGCCACUGACUGAC-3’(配列番号60)である。
【0090】
本発明の開示の一部の実施形態において、RNAiは、オフターゲット遺伝子サイレンシングを低減するように改善される。一部の実施形態において、RNAiは、1つまたはそれ以上のCpGモチーフを含む。一部の実施形態において、RNAiは、シード領域中に1つまたはそれ以上のCpGモチーフを含む。
【0091】
一部の実施形態において、本発明の開示は、哺乳動物における神経変性シヌクレイン病を処置するための方法であって、哺乳動物に、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを投与することであって、第1の鎖および第2の鎖が二本鎖を形成する、投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、miRNAは、miRNAのパッセンジャー鎖から2塩基(パッセンジャー鎖の開始点から数えて、塩基9~10)を欠失することによって生じる内部バルジを含む。一部の実施形態において、本発明の開示は、神経変性シヌクレイン病を有する哺乳動物におけるSNCAの発現を阻害するための方法であって、哺乳動物に、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを投与することであって、第1の鎖および第2の鎖が二本鎖を形成する、投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、本発明の開示は、神経変性シヌクレイン病を有する哺乳動物の細胞におけるSNCAの蓄積を阻害するための方法であって、哺乳動物に、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを投与することであって、第1の鎖および第2の鎖が二本鎖を形成する、投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、miRNAは、miRNAのパッセンジャー鎖から2塩基(パッセンジャー鎖の開始点から数えて、塩基9~10)を欠失することによって生じる内部バルジを含む。一部の実施形態において、第1の鎖は、配列番号24に対して、約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかより高いパーセンテージの同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施形態において、第2の鎖は、配列番号24に対して、約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかより高いパーセンテージの同一性を有する核酸配列を含むが、CpGモチーフを維持する。一部の実施形態において、第1の鎖および第2の鎖は、ループ配列によって連結されている。一部の実施形態において、ループ配列は、5’-GUUUUGGCCACUGACUGAC-3’(配列番号60)である。
【0092】
一部の実施形態において、本発明の開示は、哺乳動物の神経変性シヌクレイン病を処置するための方法であって、哺乳動物に、配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを投与することであって、第1の鎖および第2の鎖が二本鎖を形成す
る、投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、本発明の開示は、神経変性シヌクレイン病を有する哺乳動物におけるSNCAの発現を阻害するための方法であって、哺乳動物に、配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを投与することであって、第1の鎖および第2の鎖が二本鎖を形成する、投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、本発明の開示は、神経変性シヌクレイン病を有する哺乳動物の細胞におけるSNCAの蓄積を阻害するための方法であって、哺乳動物に、配列5’-5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’-3’(配列番号8)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを投与することであって、第1の鎖および第2の鎖が二本鎖を形成する、投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、miRNAは、miRNAのパッセンジャー鎖から2塩基(パッセンジャー鎖の開始点から数えて、塩基9~10)を欠失することによって生じる内部バルジを含む。一部の実施形態において、第1の鎖は、配列番号8に対して、約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかより高いパーセンテージの同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施形態において、第2の鎖は、配列番号37に対して、約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかより高いパーセンテージの同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施形態において、第1の鎖および第2の鎖は、ループ配列によって連結されている。一部の実施形態において、ループ配列は、5’-GUUUUGGCCACUGACUGAC-3’(配列番号60)である。
【0093】
一部の実施形態において、RNAiは、低分子抑制性RNA(siRNA)、microRNA(miRNA)、または低分子ヘアピンRNA(shRNA)である。低分子阻害性または干渉RNA(siRNA)は、細胞中でRNAiを誘導する、長さおよそ19~25(例えば、19~23)塩基対の二本鎖RNA分子として、当業界において公知である。低分子ヘアピンRNA(shRNA)は、細胞中でRNAiを誘導する短いループ(例えば、約4~11ヌクレオチド)によって連結された二本鎖RNAのおよそ19~25(例えば、19~23)塩基対を含むRNA分子として、当業界において公知である。
【0094】
一部の実施形態において、miRNAは、配列番号24に対して約90%同一であるガイド配列を含む。一部の実施形態において、miRNAは、配列番号24に対して約90%同一、91%同一、92%同一、93%同一、94%同一、95%同一、96%同一、97%同一、98%同一、99%同一、または100%のいずれかで同一であるガイド配列を含む。
【0095】
一部の実施形態において、miRNAは、配列番号24に対して約90%同一である非ガイド配列を含む。一部の実施形態において、miRNAは、配列番号53に対して約90%同一、91%同一、92%同一、93%同一、94%同一、95%同一、96%同一、97%同一、98%同一、99%同一、または100%のいずれかで同一である非ガイド配列を含む。本明細書に記載のいずれかのRNAi(例えば、rAAVベクターの一部)は、とりわけ、神経変性シヌクレイン病を処置する際に利用することができる。別の態様において、神経変性シヌクレイン病を処置する際に、表1に記載されるいずれかのRNAiを使用することができる。
【0096】
一部の実施形態において、miRNAは、配列番号8に対して約90%同一であるガイド配列を含む。一部の実施形態において、miRNAは、配列番号8に対して約90%同一、91%同一、92%同一、93%同一、94%同一、95%同一、96%同一、97%同一、98%同一、99%同一、または100%のいずれかで同一であるガイド配列を
含む。
【0097】
一部の実施形態において、miRNAは、配列番号37に対して約90%同一である非ガイド配列を含む。一部の実施形態において、miRNAは、配列番号37に対して約90%同一、91%同一、92%同一、93%同一、94%同一、95%同一、96%同一、97%同一、98%同一、99%同一、または100%のいずれかで同一である非ガイド配列を含む。本明細書に記載のいずれかのRNAi(例えば、rAAVベクターの一部)は、とりわけ、神経変性シヌクレイン病を処置する際に利用することができる。別の態様において、神経変性シヌクレイン病を処置する際に、表1に記載されるいずれかのRNAiを使用することができる。
【0098】
一部の実施形態において、第1の鎖および第2の鎖は、ループ構造を形成することが可能なRNAによって連結されている。一般的に当業界において公知であるように、RNAループ構造(例えば、ステム-ループまたはヘアピン)は、RNA分子が、一緒に塩基対合しないRNAの配列によって隔てられた、互いに塩基対合するRNAの2つの配列を含む場合に形成される。例えば、配列AおよびCは、互いに塩基対合するように相補的であるかまたは部分的に相補的であるが、配列B中の塩基は一緒に塩基対合しない場合、RNA分子A-B-Cでループ構造が形成される可能性がある。
【0099】
一部の実施形態において、ループ構造を形成することが可能なRNAは、4から50ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、ループ構造を形成することが可能なRNAは、13ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、ループ構造を形成することが可能なRNAは、配列番号60のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、ベクターゲノムは、配列番号60の配列に対して、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のいずれかで同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0100】
一部の実施形態において、組換えウイルス粒子の送達は、脳へのウイルス粒子の注射によってなされる。一部の実施形態において、組換えウイルス粒子の送達は、線条体へのウイルス粒子の注射によってなされる。線条体内投与は、高度に神経変性シヌクレイン病の影響を受けている脳、線条体(被殻および尾状核を包含する)の領域に、組換えウイルス粒子を送達することである。それに加えて、理論に縛られることは望まないが、線条体に注射された組換えウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)は、これらに限定されないが、投射野(例えば、皮質または黒質)などの脳の他の領域に(例えば、逆行性輸送を介して)分散させることもできると考えられる。一部の実施形態において、組換えウイルス粒子は、対流強化送達(例えば、線条体への対流強化送達)によって送達される。
【0101】
一部の態様において、本発明の開示は、哺乳動物における神経変性シヌクレイン病を処置するための方法であって、哺乳動物に、本発明の開示の医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。一部の態様において、本発明の開示は、神経変性シヌクレイン病を有する哺乳動物の細胞におけるSNCAの蓄積を阻害するための方法であって、哺乳動物に、本発明の開示の医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。一部の態様において、本発明の開示は、神経変性シヌクレイン病を有する哺乳動物におけるSNCAの発現を阻害するための方法であって、哺乳動物に、本発明の開示の医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、SNCAは、突然変異SNCA(例えば、A53T、E46K、A30P、G51D、H50Q、A53E、A29S、A18Tならびにその遺伝子座の二重複および三重複のうちの1つまたはそれ以上を含むヒトSNCA突然変異)である。一部の実施形態において、野生型SNCAの発現および/または蓄積も阻害される。本明細書に記載されるように、理論に縛られることは望まないが、神経変性シヌクレイン病を有する哺乳動物における突然変異SNCAの発現および/または
蓄積の阻害は、高度に有益であるが、副作用としての(例えば、本発明の開示のRNAiの)同じ哺乳動物における野生型SNCAの発現および/または蓄積の阻害は良好に許容される(例えば、意図されない副作用をわずかに生じるかまたは生じない)と考えられる。
【0102】
一部の実施形態において、細胞はベクター(例えば、本発明の開示のRNAiをコードする発現構築物を含むベクター)を含む。一部の実施形態において、ベクターは、rAAVベクターである。一部の実施形態において、ベクターは、組換えアデノウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクターまたは組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである。一部の実施形態において、細胞は、中枢神経系(CNS)の細胞である。一部の実施形態において、細胞は、HEK293細胞である。
【0103】
一部の実施形態において、本発明の開示のRNAiをコードするベクターを含む組換えウイルス粒子の有効量を投与することによって、投与部位またはその付近にニューロン(例えば、有棘細胞などの線条体ニューロン)が形質導入される。一部の実施形態において、ニューロンの約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%または100%のいずれかより多くが形質導入される。一部の実施形態において、ニューロンの約5%から約100%、約10%から約50%、約10%から約30%、約25%から約75%、約25%から約50%、または約30%から約50%が形質導入される。miRNAを発現する組換えウイルス粒子によって形質導入されたニューロンを同定する方法は、当業界において公知であり;例えば、免疫組織化学、RNA検出(例えば、qPCR、ノーザンブロッティング、RNA-seq、インサイチュハイブリダイゼーションなど)または強化緑色蛍光タンパク質などの共発現されたマーカーの使用を、発現を検出するのに使用することができる。
【0104】
本開示の一部の実施形態において、本方法は、哺乳動物の脳に、神経変性シヌクレイン病を有する哺乳動物、例えばヒトを処置するための本発明の開示のRNAiをコードするベクターを含む組換えウイルス粒子の有効量を投与することを含む。一部の実施形態において、組成物を脳の1つまたはそれ以上の位置に注射し、少なくともニューロンにおいて本発明の開示のRNAiの発現を可能にする。一部の実施形態において、組成物を脳の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10より多い位置のうちのいずれか1つに注射する。一部の実施形態において、組成物は、線条体に注射される。一部の実施形態において、組成物は、背側線条体に注射される。一部の実施形態において、組成物は、被殻に注射される。一部の実施形態において、組成物は、尾状核に注射される。一部の実施形態において、組成物は、被殻および尾状核に注射される。一部の実施形態において、投与経路は、脳室内、大槽内または髄腔内注射によるCSF送達を含む。一部の実施形態において、投与は、ウイルスベクターの静脈内送達も含む。
【0105】
一部の実施形態において、組換えウイルス粒子は、脳の一方の半球に投与される。一部の実施形態において、組換えウイルス粒子は、脳の両方の半球に投与される。
【0106】
一部の実施形態において、組換えウイルス粒子は、1つより多くの位置に、同時にまたは逐次的に投与される。一部の実施形態において、組換えウイルス粒子の複数回の注射は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、9時間、12時間または24時間以下の間隔があけられる。
【0107】
一部の実施形態において、本発明の開示は、突然変異SNCAの活性を抑制するために、本発明の開示のRNAiをコードする組換えウイルスベクターを含む医薬組成物の有効量を投与することによって、神経変性シヌクレイン病を有するヒトを処置するための方法
を提供する。一部の実施形態において、医薬組成物は、1つまたはそれ以上の医薬的に許容される賦形剤を含む。
【0108】
一部の実施形態において、本方法は、突然変異SNCAの活性を抑制するために、本発明の開示のRNAiをコードする組換えウイルスベクターを含む医薬組成物の有効量を投与することを含む。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルス力価は、少なくとも約5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、9×1012、10×1012、11×1012、15×1012、20×1012、25×1012、30×1012、または50×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルス力価は、約5×1012から16×1012、6×1012から7×1012、7×1012から8×1012、8×1012から9×1012、9×1012から10×1012、10×1012から11×1012、11×1012から15×1012、15×1012から20×1012、20×1012から25×1012、25×1012から30×1012、30×1012から50×1012、または50×1012から100×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルス力価は、約5×1012から10×1012、10×1012から25×1012、または25×1012から50×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルス力価は、少なくとも約5×109、6×109、7×109、8×109、9×109、10×109、11×109、15×109、20×109、25×109、30×109、または50×109形質導入単位/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルス力価は、約5×109から6×109、6×109から7×109、7×109から8×109、8×109から9×109、9×109から10×109、10×109から11×109、11×109から15×109、15×109から20×109、20×109から25×109、25×109から30×109、30×109から50×109または50×109から100×109形質導入単位/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルス力価は、約5×109から10×109、10×109から15×109、15×109から25×109、または25×109から50×109形質導入単位/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルス力価は、少なくとも約5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、9×1010、10×1010、11×1010、15×1010、20×1010、25×1010、30×1010、40×1010、または50×1010感染単位/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルス力価は、少なくとも約5×1010から6×1010、6×1010から7×1010、7×1010から8×1010、8×1010から9×1010、9×1010から10×1010、10×1010から11×1010、11×1010から15×1010、15×1010から20×1010、20×1010から25×1010、25×1010から30×1010、30×1010から40×1010、40×1010から50×1010、または50×1010から100×1010感染単位/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルス力価は、少なくとも約5×1010から10×1010、10×1010から15×1010、15×1010から25×1010、または25×1010から50×1010感染単位/mLのいずれかである。
【0109】
一部の実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の用量は、体重1kg当たり少なくとも約1×108~約1×1013ゲノムコピーのいずれかである。一部の実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の用量は、体重1kg当たり約1×108~約1×1013ゲノムコピーのいずれかである。
【0110】
一部の実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の総量は、少なくとも約1×109~約1×1014ゲノムコピーのいずれかである。一部の実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の総量は、約1×109~約1×1014ゲノムコピーのいずれかである。
【0111】
本発明の開示の一部の実施形態において、線条体に注射される組成物の体積は、およそ、1μl、2μl、3μl、4μl、5μl、6μl、7μl、8μl、9μl、10μl、15μl、20μl、25μl、50μl、75μl、100μl、200μl、300μl、400μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、もしくは1mLのいずれか1つ、またはその間のいずれかの量より多い。
【0112】
一部の実施形態において、組成物の第1の体積を脳の第1の領域に注射し、組成物の第2の体積を脳の第2の領域に注射する。例えば、一部の実施形態において、組成物の第1の体積を尾状核に注射し、組成物の第2の体積を被殻に注射する。一部の実施形態において、組成物の1X体積を尾状核に注射し、組成物の1.5X、2X、2.5X、3X、3.5X、または4X体積を被殻に注射し、ここで、Xは、およそ、1μl、2μl、3μl、4μl、5μl、6μl、7μl、8μl、9μl、10μl、15μl、20μl、25μl、50μl、75μl、100μl、200μl、300μl、400μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、もしくは1mLのいずれか1つ、またはその間のいずれかの量より多い体積である。
【0113】
本発明の開示の組成物(例えば、本発明の開示のRNAiをコードするベクターを含む組換えウイルス粒子)は、単独で、または神経変性シヌクレイン病を処置するための1つもしくはそれ以上の追加の治療剤と組み合わせてのいずれかで使用することができる。逐次的な投与間の間隔は、少なくとも数分、数時間、または数日(または、代替としてそれ未満)の単位であってもよい。
【0114】
本開示において記載されるいずれかのRNAi、発現構築物、ベクター、または細胞を上記いずれかの方法において使用することができる。一部の実施形態において、表1に開示されたいずれかのRNAi、表1のRNAiを含む発現構築物、ベクター、または細胞を上記いずれかの方法において使用することができる。
【0115】
V.RNAi発現構築物およびベクター
本発明の開示は、本明細書に記載のRNAiの発現のための発現構築物、ベクターおよびウイルス粒子を提供する。
【0116】
一部の実施形態において、本発明の開示のRNAiをコードする核酸は、異種miRNA足場を含む。一部の実施形態において、異種miRNA足場の使用は、miRNA発現を調節する;例えば、miRNA発現を増加させるかまたはmiRNA発現を低下させるために使用される。当業界において公知のいずれかのmiRNA足場を使用することができる。一部の実施形態において、miRNA足場は、miR-155足場から誘導される(例えば、Lagos-Quintana,M.ら(2002)Curr.Biol.12:735~9頁およびLife Technologies、Thermo Fisher Scientific;Waltham、MAからのInvitrogen(商標)BLOCK-iT(商標)Pol II miR RNAi発現ベクターキットを参照)。一部の実施形態において、本発明の開示のRNAiをコードする核酸は、miRNA足場を含む。一部の実施形態において、miRNA足場は、配列
【化1】
を含み、ここで、miRNAは、太字のgc残基の間に挿入される。
【0117】
一部の実施形態において、足場のmiRNAは、配列
【化2】
を含み、下線を付した通常のテキストは5’フランクを表し、イタリックのテキストはガイド配列を表し、太字のテキストはループを表し、下線を付したイタリックは非ガイド配列を表し、通常のテキストは3’フランクを表す。
【0118】
一部の実施形態において、RNAiは、神経変性シヌクレイン病に関連するポリペプチドをコードするRNAを標的化する。一部の実施形態において、ポリペプチドは、アルファ-シヌクレインである。理論に縛られることは望まないが、その機能獲得が神経変性シヌクレイン病に関連しているポリペプチドの発現および/または活性を低減または消去するために、RNAiを使用することができると考えられる。本発明の開示の治療用ポリペプチドまたは治療用核酸によって処置することができる本発明の開示の神経変性シヌクレイン病の非限定的な例としては(標的化または供給される例示的な遺伝子が各障害の括弧内に与えられる)、パーキンソン病(SNCA)、多系統萎縮症またはMSA(SNCA)、およびレビー小体型認知症(SNCA)が挙げられる。
【0119】
一部の実施形態において、導入遺伝子(例えば、本発明の開示のRNAi)は、プロモーターに、機能するように連結されている。例示的なプロモーターとしては、これらに限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーターおよびCK6プロモーター、トランスチレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAGプロモーター;Niwaら、Gene、1991、108(2):193~9)、ならびに延長因子1-アルファプロモーター(EF1-アルファ)プロモーター(Kimら、Gene、1990、91(2):217~23およびGuoら、Gene Ther.、1996、3(9):802~10)が挙げられる。一部の実施形態において、プロモーターは、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターに連結されたヒトβ-グルクロニダーゼプロモーターまたはサイトメガロウイルスエンハンサーを含む。プロモーターは、構成的、誘導性または抑制性プロモーターであってもよい。一部の実施形態において、本発明の開示は、CBAプロモーターに、機能するように連結した、本発明の開示の異種導入遺伝子をコードする核酸を含む組換えベクターを提供する。例示的なプロモーターおよび説明は、例えば、米国付与前公報第20140335054号に見い出すことができる。一部の実施形態において、プロモーターは、CBAプロモーター、最小のCBAプロモーター、CMVプロモーターまたはGUSBプロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターは、hEF1aプロモーターである。
【0120】
構成的プロモーターの例としては、これらに限定されないが、レトロウイルス性のラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(場合によりRSVエンハンサーを有する)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合によりCMVエンハンサーを有する)[例えば、Boshartら、Cell、41:521~530(1985)を参照]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、13-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEFlaプロモーター[Invitrogen]が挙げられる。
【0121】
誘導性プロモーターは、遺伝子発現の制御を可能にし、外因的に供給された化合物、温度などの環境要因、または具体的な生理学的条件の存在、例えば細胞の急性期、特定の分化状態によって制御される場合もあるし、または細胞の複製においてのみ制御される場合もある。誘導性プロモーターおよび誘導性の系は、これらに限定されないが、Invitrogen、ClontechおよびAriadなどの様々な商業的な供給源から入手可能である。他の多くの系が説明されており、当業者により容易に選択することができる。外因的に供給されたプロモーターによって制御される誘導性プロモーターの例としては、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオネイン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系(WO98/10088);エクジソン昆虫プロモーター(Noら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:3346~3351(1996))、テトラサイクリン抑制系(Gossenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:5547~5551(1992))、テトラサイクリン誘導性の系(Gossenら、Science、268:1766~1769(1995)が挙げられる。Harveyら、Curr.Opin.Chem.Biol.、2:512~518(1998))、RU486誘導性の系(Wangら、Nat.Biotech.、15:239~243(1997)ならびにWangら、Gene Ther.、4:432~441(1997))およびラパマイシン誘導性の系(Magariら,J.Clin.Invest.、100:2865~2872(1997))も参照されたい。この状況において有用な可能性があるよりさらに他のタイプの誘導性プロモーターは、具体的な生理学的状態、例えば温度、急性期、細胞の特定の分化状態によって制御されるか、または細胞の複製においてのみ制御されるものである。
【0122】
別の実施形態において、導入遺伝子にとってネイティブのプロモーター、またはそれらのフラグメントが使用されると予想される。導入遺伝子の発現がネイティブの発現を模擬することが望ましい場合、ネイティブのプロモーターが好ましい可能性がある。導入遺伝子の発現が、一時的もしくは発生的に、または組織特異的な方式で、または特異的な転写刺激に応答して制御されなければならない場合、ネイティブのプロモーターが使用される可能性がある。さらなる実施形態において、他のネイティブの発現コントロールエレメント、例えばエンハンサーエレメント、ポリアデニル化部位またはコザックコンセンサス配列も、ネイティブの発現を模擬するのに使用することができる。
【0123】
一部の実施形態において、制御配列は、組織特異的な遺伝子発現能をもたらす。一部のケースにおいて、組織特異的な制御配列は、組織特異的な方式で転写を誘導する組織特異的な転写因子に結合する。このような組織特異的な制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)は当業界において周知である。例示的な組織特異的な制御配列としては、これらに限定されないが、以下の組織特異的なプロモーター:ニューロンの、例えばニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Andersenら、Cell.Mol.Neurobiol.、13:503~15(1993))、ニューロフィラメント軽鎖遺伝子プロモーター(Piccioliら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:5611~5(1991))、およびニューロン特異的なvgf遺伝子プロモーター(Piccioliら、Neuron、15:373~84(1995)
)が挙げられる。一部の実施形態において、組織特異的なプロモーターは、ニューロン核(NeuN)、グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)、腺腫性結腸ポリポーシス(APC)、およびイオン化カルシウム結合アダプター分子1(Iba-1)から選択される遺伝子のプロモーターである。他の適切な組織特異的なプロモーターは、当業者に明らかであると予想される。一部の実施形態において、プロモーターは、ニワトリベータ-アクチンプロモーターである。
【0124】
一部の実施形態において、プロモーターは、CNSの細胞中で異種核酸を発現する。そのようなものとして、一部の実施形態において、本開示の治療用ポリペプチドまたは治療用核酸は、CNSの障害を処置するのに使用することができる。一部の実施形態において、プロモーターは、脳の細胞において異種核酸を発現する。脳の細胞は、これらに限定されないが、ニューロン(例えば感覚ニューロン、運動ニューロン、介在ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、中型有棘ニューロン、コリン作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、錐体ニューロンなど)、グリア細胞(例えば小グリア細胞、大グリア細胞、星状細胞、希突起膠細胞、上衣細胞、放射状グリアなど)、脳実質細胞、小グリア細胞、上衣細胞、および/またはプルキンエ細胞などの当業界において公知のあらゆる脳の細胞を指すことができる。一部の実施形態において、プロモーターは、ニューロンおよび/またはグリア細胞において異種核酸を発現する。一部の実施形態において、ニューロンは、尾状核の中型有棘ニューロン、被殻の中型有棘ニューロン、皮質第IV層のニューロンおよび/または皮質第V層のニューロンである。
【0125】
CNS細胞、脳の細胞、ニューロン、およびグリア細胞において転写物(例えば、異種導入遺伝子)を発現する様々なプロモーターは当業界において公知であり、本明細書で記載される。このようなプロモーターは、通常、選択された遺伝子または異種制御配列と連結された制御配列を含んでいてもよい。多くの場合、有用な異種制御配列としては、哺乳類またはウイルス遺伝子をコードする配列から誘導された配列が挙げられる。例としては、これらに限定されないが、SV40初期プロモーター、マウス乳がんウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)、単純疱疹ウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えばCMV前初期プロモーター領域(CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、合成プロモーター、ハイブリッドプロモーターなどが挙げられる。加えて、マウスメタロチオネイン遺伝子などの非ウイルス遺伝子から誘導された配列も使用することができる。このようなプロモーター配列は、例えば、Stratagene(San Diego、CA)から市販されている。CNS特異的なプロモーターおよび誘導性プロモーターを使用してもよい。CNS特異的なプロモーターの例としては、これらに限定されないが、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、およびニューロン特異的エノラーゼ(NSE)などのCNS特異的な遺伝子から単離したプロモーターが挙げられる。誘導性プロモーターの例としては、とりわけエクジソン、テトラサイクリン、メタロチオネイン、および低酸素に関するDNA応答エレメントが挙げられる。
【0126】
本発明の開示は、本明細書に記載したように、RNAiをコードする1つまたはそれ以上の核酸配列を導入するため、またはAAVウイルス粒子にパッケージ化するための組換えウイルスゲノムの使用を予期する。組換えウイルスゲノムは、RNAiの発現を確立するためのあらゆるエレメント、例えば、プロモーター、異種核酸、ITR、リボソーム結合エレメント、ターミネーター、エンハンサー、選択マーカー、イントロン、ポリAシグナル、および/または複製起点を包含し得る。一部の実施形態において、rAAVベクターは、エンハンサー、スプライスドナー/スプライスアクセプター対、マトリックスアタッチメント部位、またはポリアデニル化シグナルの1つまたはそれ以上を含む。
【0127】
一部の実施形態において、RNAiをコードするベクターを含むrAAV粒子の有効量
を投与することにより、投与部位(例えば、線条体および/または皮質)かもしくはその近くで、または投与部位からより遠位で細胞(例えば、CNS細胞、脳の細胞、ニューロン、および/またはグリア細胞)が形質導入される。一部の実施形態において、ニューロンの約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%または100%のいずれかより多くが形質導入される。一部の実施形態において、ニューロンの約5%~約100%、約10%~約50%、約10%~約30%、約25%~約75%、約25%~約50%、または約30%~約50%が形質導入される。miRNAを発現する組換えウイルス粒子によって形質導入されたニューロンを同定する方法は、当業界において公知であり;例えば、免疫組織化学、RNA検出(例えば、qPCR、ノーザンブロッティング、RNA-seq、インサイチュハイブリダイゼーションなど)または強化緑色蛍光タンパク質などの共発現されたマーカーの使用が、発現を検出するのに使用することができる。
【0128】
一部の態様において、本開示は、組換え自己相補性ゲノム(例えば、自己相補的なrAAVベクター)を含むウイルス粒子を提供する。自己相補性ベクターゲノムを有するAAVウイルス粒子および自己相補性AAVゲノムの使用方法は、米国特許第6,596,535号;7,125,717号;7,465,583号;7,785,888号;7,790,154号;7,846,729号;8,093,054号;および8,361,457号;ならびにWangZ.ら、(2003)Gene Ther 10:2105~2111に記載されており、これらのそれぞれは、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる。自己相補性ゲノムを含むrAAVは、その部分的に相補的な配列(例えば、異種核酸の相補的なコードおよび非コード鎖)によって二本鎖DNA分子を迅速に形成すると予想される。一部の実施形態において、ベクターは、異種核酸をコードする第1の核酸配列およびその核酸の相補物をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、その長さのほとんどまたは全てにわたり、第2の核酸配列と鎖内の塩基対を形成することができる。
【0129】
一部の実施形態において、RNAiをコードする第1の異種核酸配列およびRNAiの相補物をコードする第2の異種核酸配列は、突然変異ITR(例えば、右のITR)によって連結されている。一部の実施形態において、ITRは、ポリヌクレオチド配列5’-CACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGGGCGACCAAAGGTCGCCCACGCCCGGGCTTTGCCCGGGCG-3’(配列番号69)を含む。突然変異ITRは、末端分解配列を含むD領域の欠失を含む。結果として、AAVウイルスゲノムの複製時に、repタンパク質は、突然変異ITRのところでウイルスゲノムを切断しないと予想され、そのようなものとして、以下のもの:AAVのITR、制御配列を包含する第1の異種ポリヌクレオチド配列、突然変異したAAVのITR、第1の異種ポリヌクレオチドおよび第3のAAVのITRと逆方向の第2の異種ポリヌクレオチドを、5’から3’の順で含む組換えウイルスゲノムが、ウイルスのキャプシド中にパッケージ化されると予想される。
【0130】
VI.ウイルス粒子およびウイルス粒子を生産する方法
本発明の開示は、とりわけ、本発明の開示のRNAiをコードする核酸を含む組換えウイルス粒子、および哺乳動物における疾患または障害、例えば、神経変性シヌクレイン病を処置するために、それを使用する方法を提供する。
【0131】
ウイルス粒子
本発明の開示は、本明細書で開示されるRNAiを含むウイルス粒子を提供する。一部の実施形態において、本発明の開示は、本明細書で開示される本発明の開示のRNAiを送達するためのウイルス粒子を提供する。例えば、本発明の開示は、哺乳動物における疾患または障害を処置するために、RNAiを送達する組換えウイルス粒子;例えば、神経
変性シヌクレイン病を処置するために、RNAiを含むrAAV粒子を使用する方法を提供する。一部の実施形態において、組換えウイルス粒子は、組換えAAV粒子である。一部の実施形態において、ウイルス粒子は、1つまたは2つのITRを端に有する本発明の開示のRNAiの配列を含む核酸を含む組換えAAV粒子である。核酸は、AAV粒子中にキャプシド化されている。AAV粒子は、キャプシドタンパク質も含む。一部の実施形態において、核酸は、転写方向で構成要素に機能するように連結された目的のコード配列(例えば、本発明の開示のRNAiの核酸)、転写開始および終結配列を包含する制御配列を含み、それにより発現構築物が形成される。発現構築物は、5’および3’末端に少なくとも1つの機能的なAAVのITR配列を有する。「機能的なAAVのITR配列」は、AAVビリオンのレスキュー、複製およびパッケージ化を目的としたITR配列機能を意味する。全て参照によってそれらの全体が本明細書に組み入れられる、Davidsonら、PNAS、2000、97(7)3428~32;Passiniら、J.Virol.、2003、77(12):7034~40;およびPechanら、Gene
Ther.、2009、16:10~16を参照されたい。本開示の一部の態様を実施するために、組換えベクターは、少なくともキャプシド化に必須なAAVの配列の全て、およびrAAVによる感染のための物理的構造を含む。本開示のベクターで使用するためのAAVのITRは、野生型ヌクレオチド配列を有していなくてもよく(例えば、Kotin,Hum.Gene Ther.、1994、5:793~801で説明されている通り)、ヌクレオチドの挿入、欠失または置換によって変更されてもよく、またはAAVのITRは、数々のAAV血清型のいずれかからから誘導されてもよい。40種を超えるAAV血清型がこれまでに知られており、新しい血清型および既存の血清型のバリアントが同定され続けている。Gaoら、PNAS、2002、99(18):11854~6;Gaoら、PNAS、2003、100(10):6081~6;およびBossisら、J.Virol.、2003、77(12):6799~810を参照されたい。あらゆるAAV血清型の使用が、本開示の範囲内であるとみなされる。一部の実施形態において、rAAVベクターは、これらに限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAVキャプシド血清型などのAAV血清型から誘導されたベクターである。一部の実施形態において、AAVにおける核酸は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAVキャプシド血清型などのITRを含む。一部の実施形態において、AAVにおける核酸は、本明細書に記載されるRNAiをさらにコードする。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV1、AAV2HBKOキャプシド(例えば、WO2015168666に記載されるように)、AAV9キャプシド、PHP.Bキャプシド、PHP.eBキャプシド、またはOlig001キャプシドを含む。
【0132】
例えば、AAVにおける核酸は、本発明において予期されるいずれかのAAV血清型の少なくとも1つのITRを含み、第1の鎖および第2の鎖を含むRNAiをさらにコードすることができ、a)第1の鎖および第2の鎖は二本鎖を形成し;b)第1の鎖はガイド領域を含み、かつc)第2の鎖は非ガイド領域を含み、非ガイド領域は、ガイド鎖にバルジを創出するために、塩基9および10において2つのヌクレオチドの欠失を含む。一部の実施形態において、rAAVは、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含む。一部の実施形態において、rAAVは、配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)を含む第2の核酸
を含む第2の鎖を含む。一部の実施形態において、AAVにおける核酸は、以下のものをコードする5’から3’への核酸を含む:ITR(例えば、AAV2のITR)、プロモーター、本明細書で開示されるRNAiをコードする核酸、ポリアデニル化シグナル、およびAAVのITR(例えば、AAV2のITR)。一部の実施形態において、AAVにおける核酸は、以下のものをコードする5’から3’への核酸を含む:ITR(例えば、AAV2のITR)、プロモーター、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiをコードする核酸、ポリアデニル化シグナル、およびAAVのITR(例えば、AAV2のITR)。一部の実施形態において、AAVにおける核酸は、以下のものをコードする5’から3’への核酸を含む:ITR(例えば、AAV2のITR)、プロモーター、配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiをコードする核酸、ポリアデニル化シグナル、およびAAVのITR(例えば、AAV2のITR)。一部の実施形態において、AAVにおける核酸は、以下のものをコードする5’から3’への核酸を含む:ITR(例えば、AAV2のITR)、CBAプロモーター、本明細書で開示されるRNAiをコードする核酸、ポリアデニル化シグナル(例えば、ウシ成長ホルモンポリA)、およびAAVのITR(例えば、AAV2のITR)。一部の実施形態において、RNAiは、表1から選択される。一部の実施形態において、AAVにおける核酸は、以下のものをコードする5’から3’への核酸を含む:ITR(例えば、AAV2のITR)、CBAプロモーター、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiをコードする核酸、ポリアデニル化シグナル(例えば、ウシ成長ホルモンポリA)、およびAAVのITR(例えば、AAV2のITR)。一部の実施形態において、AAVにおける核酸は、以下のものをコードする5’から3’への核酸を含む:ITR(例えば、AAV2のITR)、CBAプロモーター、配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiをコードする核酸、ポリアデニル化シグナル(例えば、ウシ成長ホルモンポリA)、およびAAVのITR(例えば、AAV2のITR)。一部の実施形態において、第1および第2の鎖は、表1から選択される。
【0133】
一部の実施形態において、ベクターは、スタッファー核酸を包含していてもよい。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、緑色蛍光タンパク質をコードしていてもよい。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、プロモーターとRNAiをコードする核酸との間に配置されていてもよい。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、A1ATスタッファー核酸である。
【0134】
一部の実施形態において、AAVにおける核酸は、配列番号65の核酸を含む。一部の実施形態において、AAVにおける核酸は、配列番号65に対して、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である核酸を含む。さらなる実施形態において、rAAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AA6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh8R、AAVrh.10、AAV11、AAV12のキャプシドタンパク質、またはこれらのキャプシドタンパク質の突然変異体を含む。一部の実施形態において、突然変異キャプシドタンパク質は、AAVキャプシドを形成する能力を維持する。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV5チロシン突然変異キャプシドを含む(Zhong L.ら、(2008)Proc Natl Acad S
ci USA 105(22):7827~7832)。さらなる実施形態において、rAAV粒子は、クレードA~FからのAAV血清型のキャプシドタンパク質を含む(Gao、ら、J.Virol.2004、78(12):6381)。
【0135】
特定の標的細胞の形質導入を最適化するか、または特定の標的組織(例えば、罹患組織)内の特異的な細胞型を標的化するのに、異なるAAV血清型が使用される。rAAV粒子は、同じ血清型または混成の血清型のウイルスタンパク質およびウイルス核酸を含んでいてもよい。例えば、一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV1キャプシドタンパク質および少なくとも1つのAAV2のITRを含んでいてもよいし、またはrAAV粒子は、AAV2キャプシドタンパク質および少なくとも1つのAAV1のITRを含んでいてもよい。rAAV粒子生産のためのAAV血清型のあらゆる組合せが、本明細書に各組合せが明示的に述べられているものとして本明細書で提供される。一部の実施形態において、本発明は、AAV1キャプシドおよび少なくとも1つのAAV2のITRを端に有する本発明の開示のrAAVベクター(例えば、本発明の開示のRNAiをコードする核酸を含む発現構築物)を含むrAAV粒子を提供する。一部の実施形態において、本発明は、AAV2キャプシドを含むrAAV粒子を提供する。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV1、AAV2HBKOキャプシド(例えば、WO2015168666に記載されるように)、AAV9キャプシド、PHP.Bキャプシド、PHP.eBキャプシド、またはOlig001を含む。
【0136】
一部の態様において、本発明は、組換え自己相補性ゲノムを含むウイルス粒子を提供する。自己相補性ゲノムを有するAAVウイルス粒子および自己相補性AAVゲノムの使用方法は、米国特許第6,596,535号;7,125,717号;7,465,583号;7,785,888号;7,790,154号;7,846,729号;8,093,054号;および8,361,457号;ならびにWangZ.ら、(2003)Gene Ther 10:2105~2111頁に記載されており、これらのそれぞれは、参照によってそれら全体が開示に組み入れられる。自己相補性ゲノムを含むrAAVは、その部分的に相補的な配列(例えば、導入遺伝子の相補的なコードおよび非コード鎖)によって二本鎖DNA分子を迅速に形成することになる。一部の実施形態において、本発明は、AAVゲノムを含むAAVウイルス粒子であって、rAAVゲノムが第1の異種ポリヌクレオチド配列(例えば、本発明の開示のRNAi)および第2の異種ポリヌクレオチド配列(例えば、本発明の開示のRNAiのアンチセンス鎖)を含み、第1の異種ポリヌクレオチド配列が、その長さのほとんどまたは全てにわたり、第2のポリヌクレオチド配列と鎖内の塩基対を形成することができる、AAVウイルス粒子を提供する。一部の実施形態において、第1の異種ポリヌクレオチド配列および第2の異種ポリヌクレオチド配列は、鎖内の塩基対合を容易にする配列;例えば、ヘアピンDNA構造によって連結されている。ヘアピン構造は、例えば、miRNAまたはsiRNA分子において当業界において公知である。一部の実施形態において、第1の異種ポリヌクレオチド配列および第2の異種ポリヌクレオチド配列は、突然変異ITR(例えば、右のITR)によって連結されている。一部の実施形態において、ITRは、ポリヌクレオチド配列5’-ttggccactccctctctgcgcgctcgctcgctcactgaggccgcccgggcaaagcccgggcgtcgggcgacctttggtcgcccggcctcagtgagcgagcgagcgcgcagagagggagtggccaactccatcactaggggttcct-3’(配列番号70)を含む。突然変異ITRは、末端分解配列を含むD領域の欠失を含む。結果として、AAVウイルスゲノムの複製時に、repタンパク質は、突然変異ITRのところでウイルスゲノムを切断しないと予想され、そのようなものとして、以下のもの:AAVのITR、制御配列を包含する第1の異種ポリヌクレオチド配列、突然変異したAAVのITR、第1の異種ポリヌクレオチドおよび第3のAAVのITRと逆方向の第2の異種ポリヌクレオチドを、5’から3’の順で含む組換えウイルスゲノムが、ウイルスのキャプシド中にパッケージ化されると
予想される。一部の実施形態において、本発明は、機能的なAAV2のITR、本発明の開示のRNAiをコードする第1のポリヌクレオチド配列、D領域の欠失を含み、かつ機能的な末端分解配列を欠く突然変異AAV2のITR、第1のポリヌクレオチド配列の、本発明の開示のRNAiをコードする配列に対して相補的な配列を含む第2のポリヌクレオチド配列および機能的なAAV2のITRを含む組換えウイルスゲノムを含むAAVウイルス粒子を提供する。
【0137】
ウイルス粒子の生産
当業界において公知の方法を使用して、rAAV粒子を生産することができる。例えば、米国特許第6,566,118号;同第6,989,264号;および同第6,995,006号を参照。本発明を実施する際に、rAAV粒子を生産するための宿主細胞としては、哺乳動物の細胞、昆虫の細胞、植物の細胞、微生物および酵母が挙げられる。宿主細胞は、AAV repおよびcap遺伝子が宿主細胞中で安定して維持されるパッケージ細胞またはAAVベクターゲノムが安定して維持されるプロデューサー細胞でもある。例示的なパッケージングおよびプロデューサー細胞は、293、A549またはHeLa細胞から誘導される。AAVベクターは、当業界において公知の標準的技法を使用して精製および製剤化される。
【0138】
rAAVベクターを生産するための当業界において公知の方法としては、これらに限定されないが、トランスフェクション、安定な細胞株の生産、ならびにアデノウイルス-AAVハイブリッド、ヘルペスウイルス-AAVハイブリッド(Conway,JEら、(1997)J.Virology 71(11):8780~8789)およびバキュロウイルス-AAVハイブリッドなどの感染性のハイブリッドウイルスの生産系が挙げられる。rAAVウイルス粒子を生産するためのrAAV生産培養は全て、1)好適な宿主細胞、例えば、ヒトから誘導された細胞株、例えばHeLa、A549、または293細胞、または昆虫から誘導された細胞株、例えばバキュロウイルス生産系のケースではSF-9など;2)野生型または突然変異アデノウイルス(例えば温度感受性アデノウイルス)、ヘルペスウイルス、バキュロウイルス、またはヘルパー機能を提供するプラスミドコンストラクトによって提供される好適なヘルパーウイルス機能;3)AAVのrepおよびcap遺伝子および遺伝子産物;4)少なくとも1つのAAVのITR配列が隣接する核酸(例えば治療用核酸);ならびに5)rAAV生産を支持する好適な培地および培地成分を必要とする。一部の実施形態において、AAVのrepおよびcap遺伝子産物は、あらゆるAAV血清型由来でもよい。一般的に、ただし必須ではないが、rep遺伝子産物が複製されるように機能してrAAVゲノムをパッケージ化できる限りは、AAVのrep遺伝子産物は、rAAVベクターゲノムのITRと同じ血清型を有する。rAAVベクターを生産するために、当業界において公知の好適な培地を使用することができる。これらの培地としては、これらに限定されないが、Hyclone LaboratoriesおよびJRHによって生産された培地、例えば改変イーグル培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)など、米国特許第6,566,118号に記載されたもの、ならびに米国特許第6,723,551号に記載されているようなSf-900 II SFM培地などの特注の調合物が挙げられ、これらのそれぞれは、特に組換えAAVベクターの生産で使用するための特注の培地調合物に関して、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる。一部の実施形態において、AAVのヘルパー機能は、アデノウイルスまたはHSVによって提供される。一部の実施形態において、AAVのヘルパー機能は、バキュロウイルスによって提供され、宿主細胞は、昆虫細胞(例えば、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(Sf9)細胞)である。
【0139】
一部の実施形態において、rAAV粒子は、三重のトランスフェクション方法、例えば下記に示される例示的な三重のトランスフェクション方法によって生産することができる
。簡単に言えば、rep遺伝子およびキャプシド遺伝子を含有するプラスミドを、ヘルパーアデノウイルスプラスミドと共に、(例えば、リン酸カルシウム方法を使用して)細胞株(例えば、HEK-293細胞)にトランスフェクトしてもよいし、さらに、ウイルスを収集し、場合により精製してもよい。そのようなものとして、一部の実施形態において、rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸、AAVのrepおよびcapをコードする核酸、およびAAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸の宿主細胞への三重のトランスフェクションによって生産されたものであり、宿主細胞への核酸のトランスフェクションは、rAAV粒子を生産することが可能な宿主細胞を生成する。
【0140】
一部の実施形態において、rAAV粒子は、プロデューサー細胞株の方法、例えば下記に示される例示的なプロデューサー細胞株の方法によって生産することができる(Martinら、(2013)Human Gene Therapy Methods 24:253~269で参照されているものも参照されたい)。簡単に言えば、細胞株(例えば、HeLa細胞株)は、rep遺伝子、キャプシド遺伝子、およびプロモーター-異種核酸配列を含有するプラスミドで安定してトランスフェクトすることができる。細胞株をスクリーニングしてrAAV生産のためのリードクローンを選択してもよいし、次いでこれを生産バイオリアクターに拡大して、rAAV生産を開始させるためのヘルパーとしてアデノウイルス(例えば、野生型アデノウイルス)で感染させることもできる。その後ウイルスを回収してもよいし、アデノウイルスを不活性化させるか(例えば、熱によって)および/または除去してもよいし、rAAV粒子を精製してもよい。そのようなものとして、一部の実施形態において、rAAVベクターをコードする核酸、AAVのrepおよびcapをコードする核酸、ならびにAAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸の1つまたはそれ以上を含むプロデューサー細胞株によって、rAAV粒子を生産した。
【0141】
一部の態様において、本明細書で開示されるいずれかのrAAV粒子を生産するための方法であって、(a)rAAV粒子が生産される条件下で宿主細胞を培養することであって、宿主細胞が、(i)1つまたはそれ以上のAAVパッケージ遺伝子であって、前記AAVパッケージ遺伝子のそれぞれが、AAVの複製および/またはキャプシド化タンパク質をコードする、AAVパッケージ遺伝子;(ii)少なくとも1つのAAVのITRを端に有する本明細書に記載される本発明の開示のRNAiをコードする核酸を含むrAAVプロベクター、および(iii)AAVのヘルパー機能を含む、培養すること;ならびに(b)宿主細胞によって生産されたrAAV粒子を回収することを含む方法が提供される。一部の実施形態において、RNAiは、配列番号61(
図1A)または配列番号63(
図1B)のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、前記少なくとも1つのAAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAVキャプシド血清型ITRなどからなる群より選択される。一部の実施形態において、前記キャプシド化タンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6(例えば、野生型AAV6キャプシド、またはバリアントAAV6キャプシド、例えば、米国付与前公報第2012/0164106号に記載のShH10)、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9(例えば、野生型AAV9キャプシド、または米国付与前公報第2013/0323226号に記載の改変されたAAV9キャプシド)、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、チロシンキャプシド突然変異体、ヘパリン結合キャプシド突然変異体、AAV2R471Aキャプシド、AAVAAV2/2-7m8キャプシド、AAV DJキャプシド(例えば、AAV-DJ/8キャプシド、AAV-DJ/9キャプシド、または米国付与前公報第2012/0066783号に記載の他のいずれかのキャプシド)、AAV2
N587Aキャプシド、AAV2 E548Aキャプシド、AAV2 N708Aキャプシド、AAV V708Kキャプシド、ヤギAAVキャプシド、AAV1/AAV2キ
メラキャプシド、ウシAAVキャプシド、マウスAAVキャプシド、rAAV2/HBoV1キャプシド、または米国特許第8,283,151号または国際公報WO/2003/042397号に記載のAAVキャプシドからなる群より選択される。一部の実施形態において、AAVキャプシドは、WO2015168666に記載されるAAV2HBKOキャプシドである。一部の実施形態において、AAVキャプシドは、AAV9キャプシドである。一部の実施形態において、AAVキャプシドは、PHP.B、PHP.eBまたはOlig001キャプシドである。一部の実施形態において、突然変異キャプシドタンパク質は、AAVキャプシドを形成する能力を維持する。一部の実施形態において、キャプシド化タンパク質は、AAV5チロシン突然変異キャプシドタンパク質である。さらなる実施形態において、rAAV粒子は、クレードA~FからのAAV血清型のキャプシドタンパク質を含む。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV1キャプシドおよびAAV2のITRおよび本発明の開示のRNAiをコードする核酸を含む組換えゲノムを含む。さらなる実施形態において、rAAV粒子は、精製される。用語「精製される」は、本明細書で使用される場合、rAAV粒子が天然に存在するかまたはそれから最初に調製されるときに存在する可能性もある他の要素の少なくとも一部を欠いているrAAV粒子の調製物を包含する。したがって、例えば、単離されたrAAV粒子は、培養溶解産物または生産培養上清などの源となる混合物からそれを富化するための精製技術を使用して調製することができる。富化は、様々な方法で、例えば、溶液中に存在するDNアーゼ耐性粒子(DRP)もしくはゲノムコピー(gc)の比率、または感染力などによって測定してもよいし、または富化は、源となる混合物中に存在する第2の干渉する可能性がある物質、例えば生産培養物の汚染物質などの汚染物質、またはヘルパーウイルス、培地の要素などの製造過程の汚染物質に関して測定することができる。
【0142】
アデノウイルスベクター粒子を生産するための多数の方法が当業界において公知である。例えば、guttedアデノウイルスベクターでは、アデノウイルスベクターのゲノムおよびヘルパーアデノウイルスのゲノムが、パッケージ細胞株(例えば、293細胞株)中にトランスフェクトされる。一部の実施形態において、ヘルパーアデノウイルスゲノムは、そのパッケージングシグナルに隣接する組換え部位を含有し、かつ両ゲノムは、リコンビナーゼを発現するパッケージ細胞株中にトランスフェクトされ(例えば、Cre/loxPシステムを使用することができる)、その結果、目的のアデノウイルスベクターは、ヘルパーアデノウイルスよりも効率的にパッケージ化される(例えば、Alba, R. ら (2005) Gene Ther. 12 Suppl 1:S18~27頁を参照)。アデノウイルスベクターは、本明細書に記載のものなど、標準的な方法を使用して回収および精製することができる。
【0143】
レンチウイルスベクター粒子を生産するための多数の方法が当業界において公知である。例えば、第三世代のレンチウイルスベクターでは、gagおよびpol遺伝子を有する目的のレンチウイルスゲノムを含有するベクターは、rev遺伝子を含有するベクターと一緒にパッケージ細胞株(例えば、293細胞株)中に同時にトランスフェクトされる。目的のレンチウイルスゲノムは、Tatの非存在下で転写を促進するキメラLTRも含有する(Dull, T.ら(1998) J. Virol. 72:8463~71頁を参照)。レンチウイルスベクターは、本明細書に記載の方法(例えば、Segura MMら (2013) Expert Opin Biol Ther. 13(7):987~1011頁)を使用して回収および精製することができる。
【0144】
HSV粒子を生産するための多数の方法が当業界において公知である。HSVベクターは、本明細書に記載のものなど、標準的な方法を使用して回収および精製することができる。例えば、複製-欠陥HSVベクターでは、前初期(IE)遺伝子の全てを欠く目的のHSVゲノムは、ウイルス生産に必要な遺伝子、例えば、ICP4、ICP27、およびICP0を提供する相補性細胞株中にトランスフェクトされる(例えば、Samanie
go, L.A.ら(1998) J. Virol. 72:3307~20頁を参照)。HSVベクターは、記載される方法(例えば、Goins, WFら、(2014)
Herpes Simplex Virus Methods in Molecular Biology 1144:63~79頁)を使用して回収および精製することができる。
【0145】
本発明の開示のRNAiをコードする導入遺伝子を含む組換えウイルス粒子および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物も本明細書において提供される。医薬組成物は、本明細書に記載のあらゆる投与様式に好適である。本発明の開示のRNAiをコードする核酸を含む組換えウイルス粒子の医薬組成物を脳に導入することができる。例えば、本発明の開示のRNAiをコードする核酸を含む組換えウイルス粒子を線条体内に投与することができる。rAAV、アデノウイルス、レンチウイルス、およびHSV粒子を含む、本発明の開示の組換えウイルス粒子のいずれかを使用することができる。
【0146】
一部の実施形態において、本明細書に記載の本発明の開示のRNAiをコードする導入遺伝子を含む組換えウイルス粒子および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物は、ヒトへの投与に好適である。このような担体は当業界において周知である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第15版、1035~1038頁および1570~1580頁を参照)。一部の実施形態において、本明細書に記載のrAAVおよび医薬的に許容される担体を含む医薬組成物は、哺乳動物の脳への注射(例えば、線条体内への投与)に好適である。一部の実施形態において、本明細書に記載の組換えレンチウイルス粒子および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物は、哺乳動物の脳への注射(例えば、線条体内への投与)に好適である。一部の実施形態において、本明細書に記載の組換えアデノウイルス粒子および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物は、哺乳動物の脳への注射(例えば、線条体内への投与)に好適である。一部の実施形態において、本明細書に記載の組換えHSV粒子および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物は、哺乳動物の脳への注射(例えば、線条体内への投与)に好適である。
【0147】
このような医薬的に許容される担体は、滅菌された液体、例えば水および油、例えば石油、動物、植物または合成由来の油、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油などであってもよい。塩類溶液および水性デキストロース、ポリエチレングリコール(PEG)およびグリセロール溶液も、液体担体として、特に注射用溶液のために採用することができる。医薬組成物は、追加成分、例えば保存剤、緩衝液、等張化剤、抗酸化剤および安定剤、非イオン性の湿潤剤または清澄剤、増粘剤などをさらに含んでいてもよい。本明細書に記載の医薬組成物は、単回単位の剤形または複数回投与の剤形でパッケージ化することができる。組成物は、一般的に、滅菌された実質的に等張の溶液として製剤化される。
【0148】
VII.製造品およびキット
本明細書に記載の方法において使用するためのキットまたは製造品も提供される。態様において、キットは、好適なパッケージにおいて、本明細書に記載の組成物(例えば、本発明の開示のRNAiをコードする核酸を含むrAAV粒子などの、本発明の開示の組換えウイルス粒子)を含む。本明細書に記載の組成物(例えば、線条体内組成物)のための好適なパッケージは、当業界において公知であり、例えば、バイアル(例えば、密封バイアル)、容器、アンプル、ボトル、ジャー、フレキシブルなパッケージ(例えば、密封したマイラーまたはプラスチックバッグ)などが挙げられる。これらの製造品をさらに滅菌および/または密封することができる。
【0149】
本発明は、本明細書に記載の組成物を含むキットも提供し、本明細書に記載の使用など、組成物を使用する方法に関する説明書をさらに含んでもよい。本明細書に記載のキット
は、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および本明細書に記載のいずれかの方法を実行するための説明書を含む添付文書などの、商業的および使用者の観点から所望の他の材料をさらに含んでもよい。例えば、一部の実施形態において、キットは、本明細書に記載される霊長類に対して、哺乳動物の脳内に少なくとも1×109ゲノムコピーを送達するために(例えば、線条体内への投与)本発明の開示のRNAiをコードする導入遺伝子を含む組換えウイルス粒子、霊長類の脳内に注射するのに好適な医薬的に許容される担体、ならびに緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および霊長類の脳内への注射を実行(例えば、線条体内への投与)するための説明書を含む添付文書のうちの1つまたはそれ以上の組成物を含む。一部の実施形態において、キットは、本明細書に記載の組換えウイルス粒子を用いて、神経変性シヌクレイン病を処置するための説明書を含む。一部の実施形態において、キットは、本明細書に記載の方法のいずれか1つに従って、本明細書に記載の組換えウイルス粒子を使用するための説明書を含む。
【0150】
VIII.例示的な実施形態
1.第1の鎖および第2の鎖を含むRNAiであって、a)第1の鎖および第2の鎖は、二本鎖を形成し;b)第1の鎖は、ガイド領域を含み、ガイド領域は、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)に対して少なくとも約90%の同一性または配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸を含み;ならびにc)第2の鎖は、非ガイド領域を含む、RNAi。
【0151】
2.ガイド領域は、核酸配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)を含み、非ガイド領域は、配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)を含む、実施形態1のRNAi。
【0152】
3.第1の鎖は、配列番号24に対して約90%の同一性または配列番号53に対して約90%の同一性を有する核酸配列を含む、実施形態1のRNAi。
【0153】
4.ガイド領域は、核酸配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)を含み、非ガイド領域は、配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)を含む、実施形態1のRNAi。
【0154】
5.第2の鎖は、配列番号37に対して約90%の同一性または配列番号37に対して約90%の同一性を有する核酸配列を含む、実施形態1のRNAi。
【0155】
6.第1の鎖および第2の鎖は、ループ構造を形成することが可能なRNAリンカーによって連結されている、実施形態1~5のいずれか1つのRNAi。
【0156】
7.RNAリンカーは、4から50ヌクレオチドを含む、実施形態6のRNAi。
【0157】
8.ループ構造は、4から20ヌクレオチドを含む、実施形態6または7のRNAi。
【0158】
9.RNAiは、5’から3’に向かって、第2の鎖、RNAリンカー、および第1の鎖を含む、実施形態6~8のいずれか1つのRNAi。
【0159】
10.RNAiは、5’から3’に向かって、第1の鎖、RNAリンカー、および第2の鎖を含む、実施形態6~8のいずれか1つのRNAi。
【0160】
11.RNAiは、配列番号61または配列番号63の核酸配列を含む、実施形態10のRNAi。
【0161】
12.RNAiは、配列番号61または配列番号63のヌクレオチド配列に対して約90%同一であるヌクレオチド配列を含む、実施形態11のRNAi。
【0162】
13.RNAiは、低分子抑制性RNA(siRNA)、microRNA(miRNA)、または低分子ヘアピンRNA(shRNA)である、実施形態1~12のいずれか1つのRNAi。
【0163】
14.RNAiは、神経変性シヌクレイン病に関連するポリペプチドをコードするRNAを標的化する、実施形態1~13のいずれか1つのRNAi。
【0164】
15.ポリペプチドは、アルファ-シヌクレイン(SNCA)である、実施形態14のRNAi。
【0165】
16.アルファシヌクレインは、ヒトアルファ-シヌクレインである、実施形態15のRNAi。
【0166】
17.神経変性シヌクレイン病は、パーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA)、またはレビー小体型認知症(DLB)である、実施形態14~16のいずれか1つのRNAi。
【0167】
18.実施形態1~17のいずれか1つのRNAiをコードする核酸を含む発現構築物。
【0168】
19.RNAiをコードする核酸は、miRNA足場を含む、実施形態18の発現構築物。
【0169】
20.RNAiをコードする核酸は、プロモーターに、機能するように連結されている、実施形態18または19の発現構築物。
【0170】
21.プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、RSV
LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスチレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、延長因子1-アルファプロモーター(EF1-アルファ)プロモーター、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、レトロウイルス性のラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、および13-アクチンプロモーターから選択される、実施形態20の発現構築物。
【0171】
22.イントロンをさらに含む、実施形態18~21のいずれか1つの発現構築物。
【0172】
23.イントロンは、CBAイントロンまたはhEF1アルファイントロンである、実施形態22の発現構築物。
【0173】
24.イントロンは、キメライントロンである、実施形態22の発現構築物。
【0174】
25.発現ベクターは自己相補的なベクターであり、イントロンはデルタキメライントロンである、実施形態22の発現構築物。
【0175】
26.ポリアデニル化シグナルをさらに含む、実施形態18~25のいずれか1つの発現構築物。
【0176】
27.ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、またはHSV TKポリアデニル化シグナルである、実施形態26の発現構築物。
【0177】
28.実施形態18~27のいずれか1つの発現構築物を含むベクター。
【0178】
29.組換えアデノ関連ウイルス(rAAV)ベクターである、実施形態28のベクター。
【0179】
30.発現構築物は、1つまたはそれ以上のAAVの逆方向末端反復(ITR)配列を端に有する、実施形態29のrAAVベクター。
【0180】
31.発現構築物は、2つのAAVのITRを端に有する、実施形態30のrAAVベクター。
【0181】
32.AAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型のITRである、実施形態30または31のrAAVベクター。
【0182】
33.AAVのITRは、AAV2のITRである、実施形態30~32のいずれか1つのrAAVベクター。
【0183】
34.スタッファー核酸をさらに含む、実施形態30~33のいずれか1つのrAAVベクター。
【0184】
35.スタッファー核酸は、RNAiをコードする核酸の上流または下流に配置されている、実施形態34のrAAVベクター。
【0185】
36.自己相補的なrAAVベクターである、実施形態30~35のいずれか1つのrAAVベクター。
【0186】
37.RNAiをコードする第1の核酸配列および該RNAiの相補物をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、その長さのほとんどまたは全てにわたり、第2の核酸配列と鎖内の塩基対を形成することができる、実施形態36のrAAVベクター。
【0187】
38.第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAVのITRによって連結されており、突然変異したAAVのITRは、D領域の欠失を含み、末端分解配列の突然変異を含む、実施形態37のrAAVベクター。
【0188】
39.実施形態29~38いずれか1つのrAAVベクターを含む細胞。
【0189】
40.実施形態29~38のいずれか1つのrAAVベクターを含む組換えAAV粒子
。
【0190】
41.AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、AAV2-HBKO、AAVDJ8、AAVPHP.B、AAVPHP.eB、AAVBR1、AAVHSC15、AAVHSC17、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、またはマウスAAVキャプシドrAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む、実施形態40のrAAV粒子。
【0191】
42.ITRおよびrAAVウイルス粒子のキャプシドは、同じAAV血清型から誘導される、実施形態40または41のrAAV粒子。
【0192】
43.ITRおよびrAAVウイルス粒子のキャプシドは、異なるAAV血清型から誘導される、実施形態40または41のrAAV粒子。
【0193】
44.ITRは、AAV2から誘導され、rAAV粒子のキャプシドは、AAV1から誘導される、実施形態43のrAAV粒子。
【0194】
45.実施形態40~44のいずれか1つのrAAV粒子を含む組成物。
【0195】
46.医薬的に許容される担体をさらに含む、実施形態45の組成物。
【0196】
47.実施形態1~17のいずれか1つのRNAiを含むキット。
【0197】
48.実施形態40~44のいずれか1つのAAV粒子を含むキット。
【0198】
49.実施形態45または46の組成物を含むキット。
【0199】
50.使用するための説明書をさらに含む、実施形態47~49のいずれか1つのキット。
【0200】
51.哺乳動物における神経変性シヌクレイン病を処置するための方法であって、哺乳動物に、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖または配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖および第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを投与することを含む方法。
【0201】
52.第2の核酸は、配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸または配列5’-E1パッセンジャー-3’(配列番号37)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸を含む、実施形態51の方法。
【0202】
53.哺乳動物における神経変性シヌクレイン病を処置するための方法であって、哺乳動物に、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第2の核酸を含む第2の鎖、または配列5’-UGGGCA
CAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを投与することを含む方法。
【0203】
54.神経変性疾患を有する哺乳動物におけるアルファ-シヌクレインの発現を阻害するための方法であって、哺乳動物に、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖または配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸を含む第1の鎖、および第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを投与することを含む方法。
【0204】
55.第2の核酸は、配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸または配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸を含む、実施形態54の方法。
【0205】
56.神経変性疾患を有する哺乳動物におけるアルファ-シヌクレインの発現を阻害するための方法であって、哺乳動物に、配列5’-UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCC-3’(配列番号24)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-GGCUGAGAACCAAAGAGUA-3’(配列番号53)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第2の核酸を含む第2の鎖、または配列5’-UGGGCACAUUGGAACUGAGCA-3’(配列番号8)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-UGCUCAGUCAAUGUGCCUA-3’(配列番号37)に対して少なくとも約90%の同一性を有する第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを投与することを含む方法。
【0206】
57.第1の鎖は、配列番号24の配列を有する核酸配列または配列番号8の配列を有する核酸を含む、実施形態51~56のいずれか1つの方法。
【0207】
58.第2の鎖は、配列番号53の配列を有する核酸または配列番号37の配列を有する核酸を含む、実施形態52、53、55、または56のいずれか1つの方法。
【0208】
59.第1の鎖および第2の鎖は、ループ構造を形成することが可能なRNAリンカーによって連結されている、実施形態51~58のいずれか1つの方法。
【0209】
60.RNAリンカーは、4から50ヌクレオチドを含む、実施形態59の方法。
【0210】
61.ループ構造は、4から20ヌクレオチドを含む、実施形態59または60の方法。
【0211】
62.RNAiは、5’から3’に向かって、第2の鎖、RNAリンカー、および第1の鎖を含む、実施形態59~61のいずれか1つの方法。
【0212】
63.RNAiは、5’から3’に向かって、第1の鎖、RNAリンカー、および第2の鎖を含む、実施形態59~61のいずれか1つの方法。
【0213】
64.RNAiは、配列番号61または配列番号63の核酸配列を含む、実施形態63の方法。
【0214】
65.RNAiは、配列番号61または配列番号63のヌクレオチド配列に対して約90%同一であるヌクレオチド配列を含む、実施形態64の方法。
【0215】
66.RNAiは、発現構築物にコードされている、実施形態51~65のいずれか1つの方法。
【0216】
67.RNAiをコードする核酸は、miRNA足場を含む、実施形態51~66のいずれか1つの方法。
【0217】
68.RNAiをコードする核酸は、プロモーターに、機能するように連結されている、実施形態51~67のいずれか1つの方法。
【0218】
69.プロモーターは、哺乳動物の脳内でRNAiを発現することが可能である、実施形態68の方法。
【0219】
70.プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、RSV
LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスチレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギβ-グロビン(CAG)プロモーター、延長因子1-アルファプロモーター(EF1-アルファ)プロモーター、およびヒトβ-グルクロニダーゼプロモーターから選択される、実施形態69の方法。
【0220】
71.プロモーターは、CMVエンハンサーおよびニワトリβーアクチンプロモーターを含むハイブリッドニワトリβ-アクチンプロモーター(CBA)である、実施形態68~70のいずれか1つの方法。
【0221】
72.発現構築物は、イントロンをさらに含む、実施形態66~71のいずれか1つの方法。
【0222】
73.イントロンは、CBAイントロンである、実施形態72の方法。
【0223】
74.イントロンは、キメライントロンである、実施形態72の方法。
【0224】
75.発現構築物は自己相補的なベクターであり、イントロンはデルタキメライントロンである、実施形態74の方法。
【0225】
76.核酸は、ポリアデニル化シグナルをさらに含む、実施形態66~75のいずれか1つの方法。
【0226】
77.ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルである、実施形態76の方法。
【0227】
78.発現構築物は、ベクターによってコードされる、実施形態66~77のいずれか1つの方法。
【0228】
79.ベクターは、組換えアデノ関連ウイルス(rAAV)ベクターである、実施形態78の方法。
【0229】
80.発現構築物は、1つまたはそれ以上のAAVの逆方向末端反復(ITR)配列を端に有する、実施形態79の方法。
【0230】
81.発現構築物は、2つのAAVのITRを端に有する、実施形態80の方法。
【0231】
82.AAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型のITRである、実施形態80または81の方法。
【0232】
83.AAVのITRは、AAV2のITRである、実施形態80~82のいずれか1つの方法。
【0233】
84.rAAVベクターは、5’から3’に向かって、AAV2のITR、プロモーター、イントロン、RNAiをコードする核酸、ポリアデニル化シグナル、およびAAV2のITRを含む、実施形態83の方法。
【0234】
85.プロモーターは、CBAプロモーターである、実施形態84の方法。
【0235】
86.イントロンは、キメライントロン、デルタキメライントロンまたは短縮されたキメライントロンである、実施形態84の方法。
【0236】
87.キメライントロンは、CBA+ウサギベータグロブリンイントロンである、実施形態86の方法。
【0237】
88.ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルである、実施形態84~87のいずれか1つの方法。
【0238】
89.rAAVベクターは、5’から3’に向かって、AAV2のITR、CBAプロモーター、キメライントロン、RNAiをコードする核酸、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、およびAAV2のITRを含む、実施形態83の方法。
【0239】
90.ベクターは、スタッファー核酸をさらに含む、実施形態89の方法。
【0240】
91.スタッファー核酸は、ヒトA1AT遺伝子のイントロン1を含む、実施形態90の方法。
【0241】
92.ベクターは、自己相補的なベクターである、実施形態79~91のいずれか1つの方法。
【0242】
93.ベクターは、RNAiをコードする第1の核酸配列および該RNAiの相補物をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、その長さのほとんどまたは全てにわたり、第2の核酸配列と鎖内の塩基対を形成することができる、実施形態92の方法。
【0243】
94.第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAVのITRによって連結されており、突然変異したAAVのITRは、D領域の欠失を含み、末端分解配列の
突然変異を含む、実施形態93の方法。
【0244】
95.ベクターは、rAAV粒子中にキャプシド化されている、実施形態79~94のいずれか1つの方法。
【0245】
96.AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV2 V708K、AAV2-HBKO、AAVDJ8、AAVPHP.B、AAVPHP.eB、AAVBR1、AAVHSC15、AAVHSC17、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、またはrAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む、実施形態95の方法。
【0246】
97.ITRおよびrAAVウイルス粒子のキャプシドは、同じAAV血清型から誘導される、実施形態95または96の方法。
【0247】
98.ITRおよびrAAVウイルス粒子のキャプシドは、異なるAAV血清型から誘導される、実施形態95または96の方法。
【0248】
99.rAAVウイルス粒子は、AAV2キャプシドを含む、実施形態95~98のいずれか1つの方法。
【0249】
100.rAAVウイルス粒子はAAV1キャプシドを含み、ベクターはAAV2のITRを含む、実施形態99の方法。
【0250】
101.実施形態95~100のいずれか1つのrAAV粒子は、組成物の形態である、実施形態51~100のいずれか1つの方法。
【0251】
102.組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含む、実施形態101の方法。
【実施例0252】
本開示は、以下の実施例を参照することにより、よりよく理解される。しかしながら、これらは本開示の範囲を制限すると解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例および実施形態は単に例示の目的のためであり、それらの観点で様々な改変または変化が当業者に示唆されると予想され、本出願の本質および趣旨ならびに添付の特許請求の範囲のうちに包含されることが理解される。
【0253】
実施例1:shmiRNAはインビトロでヒトSNCA標的を低減する。
インビトロでのSNCA発現の低減を実証するために、サイトメガロウイルスエンハンサーおよびhEF1aプロモーター/イントロンの制御下で、候補RNAi配列をコードするプラスミドおよびヒトSNCA cDNA A(NM_000345.3)をコードするプラスミドで、続いて、TbghポリA配列を、HEK293T細胞にトランスフェクトした。SNCA cDNAおよびmiRNAプラスミドを同時にトランスフェクトした。
【0254】
方法
siRNAおよびプラスミド
ヒト/マカク/マウスのSNCAに対して最大の相同性を有するように、RNAi配列を内部で設計する一方で、このことと低いオフターゲティングの可能性との均衡を保った
。従来のsiRNAは、Sigmaによって合成された。ヒトトランスクリプトームのオフターゲットをsiSPOTRアルゴリズム(ワールドワイドウェブのhttps://sispotr.icts.uiowa.edu/sispotr/tools.html)を使用して予測した。
【0255】
SNCAを標的化するRNAi配列を発現するプラスミドをサイトメガロウイルスエンハンサーおよびhEF1aプロモーター/イントロンによって駆動されるマウスのmir155足場内に埋め込んだ。RNAi配列は、表1中に見い出すことができる。
【0256】
インビトロ細胞培養およびトランスフェクション
DMEM+10%のFBS+pen/strep中で、HEK293T細胞を約70~90%コンフルエンシーまで増殖させた。Lipfectamine 2000(miRNA形式のプラスミドとして)またはRNAiMAX(siRNA形式として)を細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの3日後に、リン酸緩衝生理食塩水で細胞を濯ぎ、還元Laemmli緩衝液中での細胞溶解によって全細胞抽出物を調製し、-20℃で保存する前に5分間沸騰させた。
【0257】
ウエスタンブロッティングおよびデンシトメトリー
細胞溶解物を4~12%のSDS-PAGE(Bio-Rad TGX(商標))にランした。タンパク質をニトロセルロース(Bio-Rad Transblot(登録商標))に移し、5%の脱脂乳中でブロックし、一次抗体と4℃で一晩インキュベートした。一次抗体を洗い流し、HRPタグ付き二次抗体と共にインキュベートし、Femto ECL基質(Bio-Rad)を使用してHRP活性を検出し、Bio-Rad GelDoc(商標)撮像装置上で画像化した。ImageJソフトウエア(NIH)を使用して、バンドを定量した。タンパク質のローディングについての対照をとるために、アルファ-シヌクレインタンパク質レベルをGAPDHまたはベータチューブリンに対して正規化した。使用した抗体:アルファ-シヌクレイン(BD 610787)、GAPDH(Sigma G8795)、Tubulin(BioLegend MMS-435P-100)。HRP-ヤギ抗マウスまたはウサギ(CST 7076)。
【0258】
結果
図2に示されるように、shmiRNAは、インビトロでヒトSNCAタンパク質レベルを低減した。19/27の配列に関して、タンパク質レベルの50%を超える低減を示す。
【0259】
実施例2:shmiRNAはインビトロでマウスSNCA標的を低減する。
この実験では、HEK293T細胞に、示したRNAi配列およびマウスSNCA cDNAをコードするプラスミドをトランスフェクトしたことを除いて、実施例1と類似する方法を使用した。
【0260】
結果
図3に示されるように、示したmiRNAは、インビトロでマウスSNCAタンパク質レベルを低減し、14/27の配列は、50%を超えるタンパク質レベルの低減を示した。
【0261】
実施例3:siRNAはインビトロでヒトおよびマウスSNCA標的を低減する。
siRNA形式を使用する追加の実験をA1、A2、B1、B2、C1、C2、D1、D2、E1およびE2について実行し、標的の低減に関する追加のデータを提供したが、これは、これらが、ラットのSNCA低減を必要とする将来的な神経変性の動物モデルを選択する際の柔軟性を可能にする、ラットのSNCAに対する完全な、または有意な、相
同性を有する追加の構成を有するように設計されたためである。
【0262】
方法
インビトロでの細胞培養およびトランスフェクション
DMEM+10%のFBS+pen/step中で、HEK293T細胞を約70~90%コンフルエンシーまで増殖させた。Lipfectamine 2000(miRNA形式のプラスミドとして)またはRNAiMAX(siRNA形式として)を細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの3日後に、リン酸緩衝生理食塩水で細胞を濯ぎ、還元Laemmli緩衝液中での細胞溶解によって全細胞抽出物を調製し、-20℃で保存する前に5分間沸騰させた。
【0263】
ウエスタンブロッティングおよびデンシトメトリー
細胞溶解物を4~12%のSDS-PAGE(Bio-Rad TGX(商標))にランした。タンパク質をニトロセルロース(Bio-Rad Transblot(登録商標))に移し、5%の脱脂乳中でブロックし、一次抗体と4Cで一晩インキュベートした。一次抗体を洗い流し、HRPタグ付き二次抗体と共にインキュベートし、Femto ECL基質(Bio-Rad)を使用してHRP活性を検出し、Bio-Rad GelDoc(商標)撮像装置上で画像化した。ImageJソフトウエア(NIH)を使用して、バンドを定量した。タンパク質のローディングについての対照をとるために、アルファ-シヌクレインタンパク質レベルをGAPDHまたはベータチューブリンに対して正規化した。使用した抗体:アルファ-シヌクレイン(BD 610787)、GAPDH(Sigma G8795)、Tubulin(BioLegend MMS-435P-100)。HRP-ヤギ抗マウスまたはウサギ(CST 7076)。
【0264】
結果
図4A~4Dに示されるように、示したsiRNAは、miRNA形式でのそれらの性能に基づいて期待されるように、インビトロでヒトおよびマウスのSNCAレベルを低減した。
【0265】
実施例4:示したRNAiの毒性および神経保護特性。
成熟ドーパミン様ニューロンに分化したLundヒト中脳(LUHMES)細胞(10)を使用して、候補shmiRNAの毒性および神経保護特性を評価した。
【0266】
方法
インビトロ細胞培養およびトランスフェクション
LUHMES細胞(ATCC CRL-2927)の細胞を、プラスミドDNAの電気穿孔を可能にするために一部修正を加えて、(10)に記載されるように増殖および分化させた。簡潔には、LUHMES細胞を、ポリ-L-オルニチンおよびフィブロネクチンでコーティングしたフラスコで、増殖培地(10)中で継代培養した。ドーパミン作動性細胞の分化は、追加の分化培地(10)によって開始した。2日後に細胞を分離し、所望のDNAと共に電気穿孔し(製造業者の説明書に従うLONZA 4D Nucleofector(商標)Xシステム)、96ウェルプレートの回収培地中に再度プレーティングして、電気穿孔毒性を最少化した。トランスフェクションの4時間後に、培地を分化培地に戻した。特定の実験のために、トランスフェクション後の指定日に、細胞を処置および回収した。
【0267】
インビトロ神経保護アッセイ
上記のように調製したLUHMES細胞を分化の6日目(トランスフェクションの4日目)に示した濃度のロテノンで処理した。ロテノンによる処置の48時間後に、製造業者の説明書(Promega)に従い、Cell Titer Blue(登録商標)アッ
セイを使用して細胞生存率を測定した。処置の24時間後に、DCFDAキット(Abcam)によって、活性酸素種(ROS)生成を測定した。値を未処置の対照トランスフェクト細胞に対して正規化した。
【0268】
統計分析
細胞生存率についての実験からのデータをコンパイルし、D1およびE1配列を使用して、ロテノンに誘導された毒性に対する神経保護の%に対して、SNCA mRNAノックダウンの%をランク付けした。Graphpad Prism(登録商標)(v6)を使用して計算した場合、パーセントSNCAノックダウンは、神経保護の度合と有意に相関した。
【0269】
結果
図5Aおよび5Bに示されるように、SNCAノックダウンはそれ自体は毒性ではなく、細胞死を有意に防ぎ(
図5A)、ロテノン依存性ROS生成を低下させる(
図5B)。対照、D1およびE1配列は、それ自体の細胞生存率を変更しなかった。対照のトランスフェクト細胞のロテノン処理によって約75%の細胞死がもたらされたが、SNCAノックダウンベクターによるトランスフェクションはこの毒性からの有意な保護をもたらした。
【0270】
図6に示されるように、細胞生存率についての実験からのデータをコンパイルし、ロテノンに誘導された毒性に対する神経保護のパーセントに対して、D1およびE1配列を使用するSNCA mRNAノックダウンの%をランク付けした。SNCAノックダウンの度合は、神経保護の度合と有意に正に相関し、D1およびE1配列を使用するSNCA mRNAの低減が有効な神経保護戦略であることを実証した。
【0271】
実施例5:D1およびE1ベクターによるインビボでの標的ノックダウン
SNCAのインビボでのノックダウンを決定するために、D1、E1または対照のRNAi配列をコードするAAVベクターを野生型マウスのSNc中に注射した。注射の1カ月後にSNc組織を回収した。RNAを単離し、SNCA mRNAのレベルをTaqman qPCRによって定量した。転写物の相対的レベルをGAPDHに対して正規化した。
【0272】
方法
ウイルスベクター
インビボ試験に関するrAAVウイルスを生産するために、修飾AAV2HBKOキャプシド(WO 2015168666 A2)を使用して、AAVウイルス生産のための1.6kbのCAGプロモーターを含有するAAV2のITRプラスミド中に、mir155カセットをクローニングした。全てのウイルスベクターを293細胞中でトリプルトランスフェクション法によって生産し、(11)に記載されるように精製した。力価をqPCRによって決定し、ゲノムコピー(GC)/mLとして、または全ベクターゲノム(vg)として表現した。
【0273】
動物
雄のC57BL/6Jマウス(10~12週齢)をCharles River Laboratories、Franceから購入した。食餌および水を自由に摂取でき、室温、湿度を制御され、かつ12:12時間の明/暗サイクル下の各ケージにおいて、動物を4頭からなる群において飼育した。
【0274】
定位注射
ケタミン(100mg/kg;Imalgene(登録商標);Merial、Fra
nce)およびキシラジン(10mg/Kg;Rompun(登録商標);Bayer、France)の混合物(体積10mL/Kg)の腹腔内注射により、マウスを深麻酔した。動物は、定位フレーム(Kopf Instruments、USA)に配置する前に、マウスの頭皮を剃り、Vetidine(Vetoquinol(登録商標)、France)で消毒し、局所麻酔ブピバカイン(5ml/kgの体積で2mg/kg;Aguettant、France)を頭蓋骨の皮膚に皮下注射し、Emla(Lidocaine、Astrazeneca)を耳に適用した。手術中、ビタミンA Dulcisによって眼を光から保護し、電気毛布で体温を37℃の一定に保った。
【0275】
注射座標上の頭蓋骨に小さな穴を開けた。可撓性プラスチックチューブを用いて25μLのシリンジに接続し、次いで、微小灌流ポンプに接続した33ゲージのカニューレ(OD 0.254mm;Phymep)を以下の座標の左黒質緻密部(SNpc)中の片側に挿入した:PaxinosおよびWatson(2008)のマウスのアトラスに従って、AP=前項からー2.92mm;ML=1.25mm;DV:硬膜からー4.5mm。無作為化の後、マウス(n=10/群)にAAVを注射した。0.2μL/分の流量で注入を実行し、1μLの最終体積を注射した。
【0276】
最終注射の後に、逆流を回避するために、カニューレをさらに5分間SNpc中で維持した。次いで、カニューレをマウスの脳からゆっくりと除去し、頭皮を縫合して閉じた。マウスは、毎日モニターされ、手術後に、カルプロフェン(5mg/kg sc;体積5ml/kg;Rimadyl(登録商標)、Zoetis)の皮下注射を受け、約200μLの滅菌食塩水を腹腔内注射して、脱水を防止した。次いで、動物が完全に覚醒するまで、MediHeat(登録商標)Warming Cabinet内に配置した。注射の1カ月後に、イソフルラン4%で動物を麻酔し、免疫組織化学および生化学分析のために脳を処理した。全ての実験は盲検で行った。
【0277】
統計分析
該当する場合、多重比較(ダネット検定)を用いる一元ANOVAを使用するPrismソフトウエア(バージョン6、Graphpad(登録商標))を使用して統計を実行した。
【0278】
結果
図7に示されるように、D1およびE1ベクターは、対照のRNAiに対して、それぞれSNCA mRNAの55%および66%のノックダウンを示し、SNCA標的化miRNAのAAV介在の送達を使用して、標的構造におけるインビボでの有意な標的mRNAノックダウンを実証した。
【0279】
図8に示されるように、SNCAアンチセンスプローブは、対側半球に対して吻側から尾側の3つの異なる解剖学レベルで標的低下を明らかに示す。対照のRNAiウイルスは、未注射半球に対して、SNCA mRNAの減少を全く示さず、作用の特異性を実証した。
図9に示されるように、VTAにおけるアルファ-シヌクレインタンパク質シグナルは、細胞体シヌクレイン発現を観察するために飽和される必要があり、その脳領域におけるSNCA低減の決定をいずれも排除した。
【0280】
実施例6:AAVーD1ベクターは、SNc免疫組織化学によってマウスSNCA mRNAを低減する。
実施例5に記載したように、対照またはD1 AAVベクターの1e9 GCをマウスの片側に注射した。1カ月後に、組織を回収し、免疫組織化学(IHC)のために冠状断片を処理し、黒質緻密部におけるアルファ-シヌクレインタンパク質レベルを評価した。
【0281】
追加の方法
免疫組織化学およびISH
脳を4℃で少なくとも2日間4%のホルムアルデヒド中で浸漬固定し、30%ショ糖溶液中で凍結保存し、次いで、凍結した。凍結した脳を黒質(sn)の前後軸全体に沿って連続冠状断片に切断した。断片をpbs-0.4%のアジ化ナトリウム中に配置し、4℃で保存した。
【0282】
無作為に選択した一連の20μmの厚さの浮動性断片を使用し、α-synに対するマウスのモノクローナル一次抗体(マウスモノクローナル、1:2000、クローン42、BD transductions laboratories)を用いて免疫標識を実行した。この抗体は、シナプス膜だけでなく、腹側被蓋野(VTA)およびSNのda神経細胞体内にも主に局在化するマウスのα-Synタンパク質の内因性レベルを検出することができる。
【0283】
断片を0.1mのpbs-0.15%のトリトン、ウシの皮膚由来の0.2%のゼラチン(Sigma、G9391)溶液中で3回濯ぎ、ブロッキング緩衝液(すなわち、0.1m PBS-ウシ血清由来の10%のアルブミン、Sigma、A8022)中で30分間前処理した。次いで、これらを室温の0.1m PBS中で一次抗体溶液と共に一晩インキュベートした。0.1m PBS-0.15%のトリトン、0.2%のゼラチン中で濯いだ後、蛍光色素がコンジュゲートした抗体(ヤギ抗マウス647、Abcam 150119)を二次抗体として使用した(0.1m PBS中1:400、暗所、室温で90分間インキュベーション)。断片を0.1m PBS-0.2%のゼラチン溶液中で2回、PBS 0.1m中で1回濯ぎ、固定した(flex slide、Dako)。prolong gold退色防止試薬(Invitrogen p36931)を用いて断片にカバーガラスをかけた。
【0284】
蛍光免疫標識の定性画像分析をスライドスキャナーシステム(蛍光性能を有するBX61顕微鏡を備えたOlympus DotSlideシステム)で実行した。
【0285】
結果
図9に示されるように、同じ動物の反対側のSNcまたは対照を注射された動物と比較して、細胞体中のSNCAタンパク質は、D1によって明らかに低減される。隣接する脳断片からのISH画像(下のパネル、実施例5により処理された)は、D1 RNAiベクターによるSNCA mRNAの対応する低減を示したが、対照ベクターは示さなかった。これらのデータは、miRNA標的化SNCAのAAV送達が所望の脳領域における耐久性mRNAノックダウンを示すことを実証する。
【0286】
実施例7:ベクターAAVrh.10におけるE1によるインビボでの標的ノックダウン
SNCAのインビボでのノックダウンを決定し、SNCAのノックダウンがAAV血清型に依存しないことを実証するために、E1または対照のRNAi配列をコードするAAV.rh10ベクターを野生型マウスのSNc中に注射した。以前に記載したように、対照またはAAV.rh10 E1ベクターの10e9 GCをマウスの片側に注射した。注射の1カ月後にSNc組織を回収した。SNCA mRNA発現をインサイチュハイブリダイゼーションで定量し、SNCAタンパク質を免疫組織化学によって検出した。
【0287】
方法
ウイルスベクター
インビボ試験に関するrAAVウイルスを生成するために、AAVのrh.10血清型のキャプシド(Gao, G. P.ら、2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 11854~11859頁)を使用して、AAVウイ
ルス産生のための1.6kb CAGプロモーターを含有するAAV2のITRプラスミド中に、mir155カセットをクローニングした。全てのウイルスベクターを293細胞中でトリプルトランスフェクション法によって生産し、(11)に記載されるように精製した。力価をqPCRによって決定し、ゲノムコピー(GC)/mLとして、または全ベクターゲノム(vg)として表現した。
【0288】
動物
雄のC57BL/6Jマウス(10~12週齢)をCharles River Laboratories、Franceから購入した。食餌および水を自由に摂取でき、室温、湿度を制御され、かつ12:12時間の明/暗サイクル下の各ケージにおいて、動物を4頭からなる群で飼育した。
【0289】
定位注射
ケタミン(100mg/kg;Imalgene(登録商標);Merial、France)およびキシラジン(10mg/Kg;Rompun(登録商標);Bayer、France)の混合物(体積10mL/Kg)の腹腔内注射により、マウスを深麻酔した。動物を定位フレーム(Kopf Instruments、USA)に配置する前に、マウスの頭皮を剃り、Vetidine(Vetoquinol(登録商標)、France)で消毒し、局所麻酔ブピバカイン(5ml/kgの体積で2mg/kg;Aguettant、France)を頭蓋骨の皮膚に皮下注射し、Emla(Lidocaine、Astrazeneca)を耳に適用した。手術中、ビタミンA Dulcisによって眼を光から保護し、電気毛布で体温を37℃の一定に保った。
【0290】
注射座標上の頭蓋骨に小さな穴を開けた。可撓性プラスチックチューブ(Tygon 0.254*0.762、ref.AAD04091)を用いて25μLのシリンジ(Exmire、ref.MS*GF25)に接続し、次いで、微小灌流ポンプ(CMA 4004)に接続した33ゲージのカニューレ(OD 0.254mm;Phymep)を以下の座標の左黒質緻密部(SNpc)中の片側に挿入した:PaxinosおよびWatson(2008)のマウスのアトラスに従って、AP=前項から-2.92mm;ML=1.25mm;DV:硬膜から-4.5mm。無作為化の後、マウス(n=10/群)にAAVを注射した。0.2μL/分の流量で注入を実行し、1μLの最終体積を注射した。最終注射の後に、逆流を回避するために、カニューレをさらに5分間SNpc中で維持した。次いで、カニューレをマウスの脳からゆっくりと除去し、頭皮を縫合して閉じた。マウスは、毎日モニターされ、手術後に、カルプロフェン(5mg/kg sc;体積5ml/kg;Rimadyl、Zoetis)の皮下注射を受け、約200μLの滅菌食塩水を腹腔内注射して、脱水を防止した。次いで、動物が完全に覚醒するまで、MediHeat(登録商標)Warming Cabinet(Peco services)内に配置した。注射の1カ月後に、イソフルラン4%で動物を麻酔し、免疫組織化学および生化学分析のために脳を処理した。全ての実験を盲検で行った。
【0291】
免疫組織化学およびISH
脳を4℃で少なくとも2日間4%のホルムアルデヒド中で浸漬固定し、30%ショ糖溶液中で凍結保存し、次いで、凍結した。凍結した脳を黒質(SN)の前後軸全体に沿って連続冠状断片に切断した。断片をPBS-4%のアジ化ナトリウム中に配置し、4℃で保存した。
【0292】
無作為に選択した一連の20μmの厚さの浮動性断片を使用し、α-synに対するマウスのモノクローナル一次抗体(マウスモノクローナル、1:2000、クローン42、BD Transductions laboratories)を用いて免疫標識を実行した。この抗体は、シナプス膜だけでなく、腹側被蓋野(VTA)およびSNのDA神
経細胞体内にも主に局在化するマウスのα-Synタンパク質の内因性レベルを検出することができる。
【0293】
α-synのIHCの酵素による顕色のために、一次抗体溶液中でのインキュベーション後に、断片をビオチン化マウスIgG(BA 9200 Vector Lot S0913、1/400希釈)と90分間、次いで、ペルオキシダーゼが連結したアビジン複合体(Vectastain(登録商標)ABCキット Elite、Vector PK 6100、1/200希釈)と30分間、室温でインキュベートした。断片をペルオキシダーゼ基質溶液(0.1MのPBS中0.003%の過酸化水素、0.05%の四塩酸ジアミノベンジジンを含有する)中で簡単にインキュベートし、最終的に、0.9%のNaCl溶液中で濯いだ。最終的に、断片をスライド上に固定し、室温で乾燥させ、脱水し、Eukittを使用してカバーガラスをかけた。
【0294】
α-synのISH研究では、スライド上に固定した20μmの厚みのクライオスタット断片に関する完全に自動化されたRNAscopeアッセイ(標的特異的シグナルを増幅させるが、非特異的ハイブリダイゼーションからのバックグラウンドノイズは増幅させないことによってRNAのISHのシグナル・ノイズ比を改善する)をRoche Ventana Medical Systems DISCOVERY XT(VS) automate.(RNAscope(登録商標)2.5 VSアンチセンスプローブ-
Hs-SNCA(カタログ番号313289)にランし、対照のセンスプローブ(カタログ番号511079)を43℃で2時間ハイブリダイズさせ、続いて、RNAscopeを増幅させ、VS検出試薬を使用してRed色素原を検出した。RNAscopeのプローブを本明細書に記載されるように設計する。染色したスライドを40Xの対物レンズを使用して、VS120 Olympusのシステムでスキャンした。
【0295】
統計分析
該当する場合、多重比較(ダネット検定)を用いる一元ANOVAを使用するPrismソフトウエア(バージョン6、Graphpad(登録商標))を使用して統計を実行した。
【0296】
結果
図10に示されるように、同じ動物の反対側のSNcまたは対照を注射された動物と比較して、細胞体中のSNCAタンパク質は、AAVrh中の構築物E1によって明らかに低減される。10キャプシド(上のパネル)。隣接する脳断片からのISH画像(下のパネル)は、AAVrh.10によるSNCA mRNAの対応する標的の低減を示すが、反対側の半球では示さなかった。対照のRNAiウイルスは、未注射半球に対して、SNCA mRNAの減少を全く示さず、作用の特異性を実証した。E1によるSNCAのノックダウン効率は、少なくともベクターの黒質内注射の後には、キャプシドの血清型に依存しないことが本明細書において実証される。
【0297】
実施例8:D1およびE1の可能性のあるオフターゲット
Lund Human Mesencephalic(LUHMES)細胞を培養して分化させ、次いで、最適化したマウスの内因性miR-155足場(ThermoFisher)でD1、E1、またはCTL3(対照)のmicroRNAを発現するプラスミドをトランスフェクトした。miRNeasy(登録商標)キット(Qiagen)を使用して、細胞から全RNAを単離し、TruSeq stranded Total RNA Library Prepキット(Illumina)を使用して、次世代シーケンシングライブラリーを調製し、続いて、Illumina HiSeq機器(Genewiz、Plainfield NJ)でシーケンシングした。
【0298】
Array Studio(Omicsoft、A Qiagen Company)を使用して、SanofiのGenomics群で、シーケンシング分析を実行した。精度の低いリードを除去し、残っているリードをヒトゲノムに対してマッピングし、続いて、一元ANOVAにより処置群の中で有意に差示的に発現された遺伝子(DEG)を決定した。0.05未満のp値を有するCTL3に対して、D1とE1の両方によって下方調節された遺伝子は、アルファ-シヌクレインをノックダウンした結果であると考えられ、0.05未満のp値を有する、少なくとも1.2分の一に下方調節された残っている遺伝子を可能性のあるオフターゲットとして分類した。アルファ-シヌクレインは、D1によって22%、およびE1によって30%ノックダウンされ、
図11において下に示した個々のデータ点を有する。D1およびE1に関する可能性のあるオフターゲットを表2および3に列挙する。D1リストのTNFRSF6Bは、NCKUデータベースのみの予測腫瘍抑制因子であり、E1リストの遺伝子はいずれも、NCKUまたはTSGeneデータベースのいずれかにおいて、腫瘍抑制因子であると予測されなかった。可能性のあるオフターゲットのD1およびE1リストの両方は、miRanda、siSPOTR、およびTargetRank(データは含まれない)アルゴリズムを使用して同定したD1およびE1のmicroRNAに関する予測標的と重複した。
【0299】
【0300】
【0301】
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【0302】
配列
全てのポリペプチド配列は、別段の指定がない限り、N末端からC末端に向かって表される。全ての核酸配列は、別段の指定がない限り、5’から3’に向かって表される。
【0303】
D1-ループ-パッセンジャー-RNA
UGCUCUUUGGUCUUCUCAGCCGUUUUGGCCACUGACUGACGGCUGAGAACCAAAGAGUA(配列番号61)
【0304】
D1-ループ-パッセンジャー-DNA
TGCTCTTTGGTCTTCTCAGCCGTTTTGGCCACTGACTGACGGCTGAGAACCAAAGAGTA(配列番号62)
【0305】
E1-ループ-パッセンジャー-RNA
UGGGCACAUUGGAACUGAGCAGUUUUGGCCACUGACUGACUGCUCAGUCAAUGUGCCUA(配列番号63)
【0306】
E1-ループ-パッセンジャー-DNA
TGGGCACATTGGAACTGAGCAGTTTTGGCCACTGACTGACTGCTCAGTCAATGTGCCTA(配列番号64)
【0307】
D1のベクターゲノム配列
TTGGCCACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGCCCGGGCAAAGCCCGGGCGTCGGGCGACCTTTGGTCGCCCGGCCTCAGTGAGCGAGCGAGCGCGCAGAGAGGGAGTGGCCAACTCCATCACTAGGGGTTCCTTACGTACAATTGGGATCCCGGACCGTCGACATTGATTATTGACTAGTTATTAATAGTAATCAATTACGGGGTCATTAGTTCATAGCCCATATATGGAGTTCCGCGTTACATAACTTACGGTAAATGGCCCGCCTGGCTGACCGCCCAACGACCCCCGCCCATTGACGTCAATAATGACGTATGTTCCCATAGTAACGCCAATAGGGACTTTCCATTGACGTCAATGGGTGGAGTATTTACGGTAAACTGCCCACTTGGCAGTACATCAAGTGTATCATATGCCAAGTACGCCCCCTATTGACGTCAATGACGGTAAATGGCCCGCCTGGCATTATGCCCAGTACATGACCTTATGGGACTTTCCTACTTGGCAGTACATCTACGTATTAGTCATCGCTATTACCATGGTCGAGGTGAGCCCCACGTTCTGCTTCACTCTCCCCATCTCCCCCCCCTCCCCACCCCCAATTTTGTATTTATTTATTTTTTAATTATTTTGTGCAGCGATGGGGGCGGGGGGGGGGGGGGGGCGCGCGCCAGGCGGGGCGGGGCGGGGCGAGGGGCGGGGCGGGGCGAGGCGGAGAGGTGCGGCGGCAGCCAATCAGAGCGGCGCGCTCCGAAAGTTTCCTTTTATGGCGAGGCGGCGGCGGCGGCGGCCCTATAAAAAGCGAAGCGCGCGGCGGGCGGGGAGTCGCTGCGACGCTGCCTTCGCCCCGTGCCCCGCTCCGCCGCCGCCTCGCGCCGCCCGCCCCGGCTCTGACTGACCGCGTTACTCCCACAGGTGAGCGGGCGGGACGGCCCTTCTCCTCCGGGCTGTAATTAGCGCTTGGTTTAATGACGGCTTGTTTCTTTTCTGTGGCTGCGTGAAAGCCTTGAGGGGCTCCGGGAGGGCCCTTTGTGCGGGGGGAGCGGCTCGGGGGGTGCGTGCGTGTGTGTGTGCGTGGGGAGCGCCGCGTGCGGCTCCGCGCTGCCCGGCGGCTGTGAGCGCTGCGGGCGCGGCGCGGGGCTTTGTGCGCTCCGCAGTGTGCGCGAGGGGAGCGCGGCCGGGGGCGGTGCCCCGCGGTGCGGGGGGGGCTGCGAGGGGAACAAAGGCTGCGTGCGGGGTGTGTGCGTGGGGGGGTGAGCAGGGGGTGTGGGCGCGTCGGTCGGGCTGCAACCCCCCCTGCACCCCCCTCCCCGAGTTGCTGAGCACGGCCCGGCTTCGGGTGCGGGGCTCCGTACGGGGCGTGGCGCGGGGCTCGCCGTGCCGGGCGGGGGGTGGCGGCAGGTGGGGGTGCCGGGCGGGGCGGGGCCGCCTCGGGCCGGGGAGGGCTCGGGGGAGGGGCGCGGCGGCCCCCGGAGCGCCGGCGGCTGTCGAGGCGCGGCGAGCCGCAGCCATTGCCTTTTATGGTAATCGTGCGAGAGGGCGCAGGGACTTCCTTTGTCCCAAATCTGTGCGGAGCCGAAATCTGGGAGGCGCCGCCGCACCCCCTCTAGCGGGCGCGGGGCGAAGCGGTGCGGCGCCGGCAGGAAGGAAATGGGCGGGGAGGGCCTTCGTGCGTCGCCGCGCCGCCGTCCCCTTCTCCCTCTCCAGCCTCGGGGCTGTCCGCGGGGGGACGGCTGCCTTCGGGGGGGACGGGGCAGGGCGGGGTTCGGCTTCTGGCGTGTGACCGGCGGCTCTAGAGCCTCTGCTAACCATGTTCATGCCTTCTTCTT
TTTCCTACAGCTCCTGGGCAACGTGCTGGTTATTGTGCTGTCTCATCATTTTGGCAAAGAATTCTTCGAAAGATCTGCTAGCCTAGACTGGAGGCTTGCTGAAGGCTGTATGCTGTGCTCTTTGGTCTTCTCAGCCGTTTTGGCCACTGACTGACGGCTGAGAACCAAAGAGTACAGGACACAAGGCCTGTTACTAGCACTCACATGGAACAAATGGCCCAGATCTGGCCGCACTCGAGATATCGAGCTCGCTGATCAGCCTCGACTGTGCCTTCTAGTTGCCAGCCATCTGTTGTTTGCCCCTCCCCCGTGCCTTCCTTGACCCTGGAAGGTGCCACTCCCACTGTCCTTTCCTAATAAAATGAGGAAATTGCATCGCATTGTCTGAGTAGGTGTCATTCTATTCTGGGGGGTGGGGTGGGGCAGGACAGCAAGGGGGAGGATTGGGAAGACAATAGCAGGCATGCTGGGGAGCTAGAGTCGACCGGACCGGTGGAAGTCCTCTTCCTCGGTGTCCTTGACTTCAAAGGGTCTCTCCCATTTGCCTGGAGAGAGGGGAAGGTGGGCATCACCAGGGGTGAGTGAAGGTTTGGAAGAGTGTAGCAGAATAAGAAACCATGAGTCCCCTCCCTGAGAAGCCCTGAGCCCCCTTGACGACACACATCCCTCGAGGCTCAGCTTCATCATCTGTAAAAGGTGCTGAAACTGACCATCCAAGCTGCCGAAAAAGATTGTGTGGGGATAATTCAAAACTAGAGGAAGATGCAGAATTTCTACATCGTGGCGATGTCAGGCTAAGAGATGCCATCGTGGCTGTGCATTTTTATTGGAATCATATGTTTATTTGAGGGTGTCTTGGATATTACAAATAAAATGTTGGAGCATCAGGCATATTTGGTACCTTCTGTCTAAGGCTCCCTGCCCCTTGTTAATTGGCAGCTCAGTTATTCATCCAGGGCAAACATTCTGCTTACTATTCCTGAGAGCTTTCCTCATCCTCTAGATTGGCAGGGGAAATGCAGATGCCTGAGCAGCCTCCCCTCTGCCATACCAACAGAGCTTCACCATCGAGGCATGCAGAGTGGACAGGGGCCTCAGGGACCCCTGATCCCAGCTTTCTCATTGGACAGAAGGAGGAGACTGGGGCTGGAGAGGGACCTGGGCCCCCACTAAGGCCACAGCAGAGCCAGGACTTTAGCTGTGCTGACTGCAGCCTGGCTTGCCTCCACTGCCCTCCTTTGCCTCAAGAGCAAGGGAGCCTCAGAGTGGAGGAAGCAGCCCCTGGCCTTGCCTCCCACCTCCCCTCCCCTATGCTGTTTTCCTGGGACAGTGGGAGCTGGCTTAGAATGCCCTGGGGCCCCCAGGACCCTGGCATTTTAACCCCTCAGGGGCAGGAAGGCAGCCTGAGATACAGAAGAGTCCATCACCTGCTGTATGCCACACACCATCCCCACAGTCGACATTTAAATTAGGAACCCCTAGTGATGGAGTTGGCCACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGCCCGGGCAAAGCCCGGGCGTCGGGCGACCTTTGGTCGCCCGGCCTCAGTGAGCGAGCGAGCGCGCAGAGAGGGAGTGGCCAA(配列番号65)。
【0308】
A1ATスタッファー核酸
ATTGTCTGAGTAGGTGTCATTCTATTCTGGGGGGTGGGGTGGGGCAGGACAGCAAGGGGGAGGATTGGGAAGACAATAGCAGGCATGCTGGGGAGCTAGAGTCGACCGGACCGGTGGAAGTCCTCTTCCTCGGTGTCCTTGACTTCAAAGGGTCTCTCCCATTTGCCTGGAGAGAGGGGAAGGTGGGCATCACCAGGGGTGAGTGAAGGTTTGGAAGAGTGTAGCAGAATAAGAAACCATGAGTCCCCTCCCTGAGAAGCCCTGAGCCCCCTTGACGACA
CACATCCCTCGAGGCTCAGCTTCATCATCTGTAAAAGGTGCTGAAACTGACCATCCAAGCTGCCGAAAAAGATTGTGTGGGGATAATTCAAAACTAGAGGAAGATGCAGAATTTCTACATCGTGGCGATGTCAGGCTAAGAGATGCCATCGTGGCTGTGCATTTTTATTGGAATCATATGTTTATTTGAGGGTGTCTTGGATATTACAAATAAAATGTTGGAGCATCAGGCATATTTGGTACCTTCTGTCTAAGGCTCCCTGCCCCTTGTTAATTGGCAGCTCAGTTATTCATCCAGGGCAAACATTCTGCTTACTATTCCTGAGAGCTTTCCTCATCCTCTAGATTGGCAGGGGAAATGCAGATGCCTGAGCAGCCTCCCCTCTGCCATACCAACAGAGCTTCACCATCGAGGCATGCAGAGTGGACAGGGGCCTCAGGGACCCCTGATCCCAGCTTTCTCATTGGACAGAAGGAGGAGACTGGGGCTGGAGAGGGACCTGGGCCCCCACTAAGGCCACAGCAGAGCCAGGACTTTAGCTGTGCTGACTGCAGCCTGGCTTGCCTCCACTGCCCTCCTTTGCCTCAAGAGCAAGGGAGCCTCAGAGTGGAGGAAGCAGCCCCTGGCCTTGCCTCCCACCTCCCCTCCCCTATGCTGTTTTCCTGGGACAGTGGGAGCTGGCTTAGAATGCCCTGGGGCCCCCAGGACCCTGGCATTTTAACCCCTCAGGGGCAGGAAGGCAGCCTGAGATACAGAAGAGTCCATCACCTGCTGTATGCCACACACCATCCCCACAGTCGACATTTAAATT(配列番号66)
ガイド領域は、核酸配列5'-ACUGCGCACAUUGGAACUGAG-3'(配列番号29)に対して約90%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項1に記載のRNAi。
第2の鎖は、配列5'-CUCAGUUCAUGUGCGCAGU-3'(配列番号58)に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のRNAi。
第2の鎖は、核酸配列5'-CUCAGUUCAUGUGCGCAGU-3'(配列番号58)に対して約90%の同一性を有する核酸を含む、請求項4に記載のRNAi。
RNAiは、低分子抑制性RNA(siRNA)、microRNA(miRNA)、または低分子ヘアピンRNA(shRNA)である、請求項1~9のいずれか1項に記載のRNAi。
神経変性シヌクレイン病は、パーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA)、またはレビー小体型認知症(DLB)である、請求項11~13のいずれか1項に記載のRNAi。
AAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型のITRである、請求項19または20に記載のベクター。