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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156719
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】LAG3に結合する治療用分子
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20241029BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241029BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20241029BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241029BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241029BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20241029BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241029BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241029BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N7/01
C12P21/08
C07K14/725
C12N15/62 Z
C12Q1/6851 Z
A61K39/395 N
A61P37/02
A61P25/00
A61P37/08
A61P37/06
A61P31/12
A61P37/04
A61P35/00
A61P35/02
A61P29/00
A61K45/00
G01N33/53 D
G01N33/531 A
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】54
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024116130
(22)【出願日】2024-07-19
(62)【分割の表示】P 2020543560の分割
【原出願日】2019-02-18
(31)【優先権主張番号】1802573.4
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518247933
【氏名又は名称】クレッシェンド、バイオロジックス、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CRESCENDO BIOLOGICS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】キャロリン、エドワーズ
(72)【発明者】
【氏名】アンジェリカ、セッテ
(72)【発明者】
【氏名】イザベル、オスフ
(72)【発明者】
【氏名】ユミン、テン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ、レッグ
(72)【発明者】
【氏名】ダビド、エスソロス、ムルガレン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】免疫チェックポイント阻害剤として作用することができ、癌等の疾患を治療するための免疫療法において、例えばPD-1およびLAG-3の二重遮断のための二重特異性形態で使用することができるLAG-3結合剤を提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列から選択されるCDR3配列、またはそれらと少なくとも70%、80%または90%の相同性を有する配列を含む、ヒトLAG-3に結合する単離されたヒト重鎖可変ドメイン(V)単一ドメイン抗体が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3または7から選択されるCDR3配列、またはそれらと少なくとも70%、80%または90%の相同性を有する配列を含む、ヒトLAG-3に結合する単離されたヒト重鎖可変ドメイン(V)単一ドメイン抗体。
【請求項2】
配列番号1に示されるCDR1またはそれと少なくとも70%、80%または90%の相同性を有する配列、配列番号2に示されるCDR2またはそれと少なくとも70%、80%または90%の相同性を有する配列、および配列番号3に示されるCDR3またはそれと少なくとも70%、80%または90%の相同性を有する配列を含む、請求項1に記載の単離されたV単一ドメイン抗体。
【請求項3】
配列番号5に示されるCDR1またはそれと少なくとも70%、80%または90%の相同性を有する配列、配列番号6に示されるCDR2またはそれと少なくとも70%、80%または90%の相同性を有する配列、および配列番号7に示されるCDR3またはそれと少なくとも70%、80%または90%の相同性を有する配列を含む、請求項2に記載の単離されたV単一ドメイン抗体。
【請求項4】
配列番号4または8から選択される配列、またはそれらと少なくとも70%、80%または90%の相同性を有する配列を含む、請求項1に記載の単一ドメイン抗体。
【請求項5】
前記単一ドメイン抗体が、毒素、酵素、放射性同位元素、半減期延長部分、標識、治療用分子または他の化学的部分にコンジュゲートされている、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された単一ドメイン抗体。
【請求項6】
前記半減期延長部分が、アルブミン結合部分、トランスフェリン結合部分、ポリエチレングリコール分子、組換えポリエチレングリコール分子、ヒト血清アルブミン、ヒト血清アルブミンの断片、およびヒト血清アルブミンに結合するアルブミン結合ペプチドまたは単一ドメイン抗体からなる群から選択される、請求項6に記載の単離された単一ドメイン抗体。
【請求項7】
ヒトV、DおよびJ領域を含む導入遺伝子を発現するトランスジェニックげっ歯類から得られる、または得ることができる、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された単一ドメイン抗体。
【請求項8】
前記げっ歯類が機能的な内因性軽鎖および重鎖を産生しない、請求項7に記載の単離された単一ドメイン抗体。
【請求項9】
ヒトLAG-3に結合する第1(V)単一ドメイン抗体、およびヒトLAG-3に結合する第2(V)単一ドメイン抗体を含む、単離された結合剤。
【請求項10】
前記ヒトLAG-3に結合する第1および/または第2(V)単一ドメイン抗体が、請求項1~8のいずれか一項に記載の単離された単一ドメイン抗体から選択される、請求項9に記載の単離された結合剤。
【請求項11】
前記単一ドメイン抗体とは異なる結合特異性を有する第2の機能的部分に連結された、請求項9に記載の単離された結合剤または請求項1~8のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体を含む、結合剤。
【請求項12】
前記第2の機能的部分がLAG-3に結合しない、請求項11に記載の単離された結合剤。
【請求項13】
前記第2の結合分子が抗体またはその断片である、請求項11または12に記載の単離された結合剤。
【請求項14】
前記断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、dAb、Fd、Fv、または一本鎖Fv断片、ヒト重鎖可変ドメイン(V)、または単離されたCDRである、請求項13に記載の単離された結合剤。
【請求項15】
前記第2の機能的部分が、配列番号4または配列番号8を有するV単一ドメイン抗体である、請求項14に記載の単離された結合剤。
【請求項16】
請求項1~8のいずれか一項に記載のV単一ドメイン抗体または請求項9~15のいずれか一項に記載の結合剤と、PD-1に結合する第2の機能的部分とを含む、多重特異性結合剤。
【請求項17】
前記PD-1に結合する第2の機能的部分が抗体またはその断片である、請求項16に記載の多重特異性結合剤。
【請求項18】
前記断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、dAb、Fd、Fv、または一本鎖Fv断片、Vヒト重鎖可変ドメイン、または単離されたCDRである、請求項17に記載の多重特異性結合剤。
【請求項19】
前記PD-1に結合する第2の機能的部分がV単一ドメイン抗体である、請求項16~18のいずれか一項に記載の多重特異性結合剤。
【請求項20】
前記PD-1に結合するV単一ドメイン抗体が、表5に列挙されたV単一ドメイン抗体から選択される、請求項19に記載の多重特異性結合剤。
【請求項21】
前記PD-1に結合するV単一ドメイン抗体が、V2.63、2.77または2.92から選択される、請求項20に記載の多重特異性結合剤。
【請求項22】
LAG-3に結合する2つのV単一ドメイン抗体を含む、請求項21に記載の多重特異性結合剤。
【請求項23】
前記LAG-3に結合する2つのV単一ドメイン抗体が配列番号8またはそれと少なくとも70%、80%または90%の相同性を有する配列を有する、請求項22に記載の多重特異性結合剤。
【請求項24】
毒素、酵素、放射性同位元素、半減期延長部分、治療用分子または他の化学的部分にコンジュゲートされている、請求項9~23のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項25】
前記半減期延長部分が、アルブミン結合部分、トランスフェリン結合部分、ポリエチレングリコール分子、組換えポリエチレングリコール分子、ヒト血清アルブミン、ヒト血清アルブミンの断片、およびヒト血清アルブミンに結合するアルブミン結合ペプチドまたは単一ドメイン抗体からなる群から選択される、請求項24に記載の結合剤。
【請求項26】
前記部分が(G4S)nリンカーと連結され、n=1~20である、請求項9~25のいずれか一項に記載の結合剤。
【請求項27】
多価結合剤における、請求項1~8のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体の使用。
【請求項28】
前記多価結合剤が多重特異性である、請求項27に記載の単一ドメイン抗体の使用。
【請求項29】
前記多重特異性結合剤がLAG-3およびPD-1に結合する、請求項28に記載の単一ドメイン抗体の使用。
【請求項30】
治療剤に連結された、請求項1~8のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体または請求項9~26のいずれか一項に記載の結合剤を含む、免疫複合体。
【請求項31】
請求項1~8のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体、請求項9~26のいずれか一項に記載の結合剤、または請求項30に記載の免疫複合体と、医薬担体とを含む、医薬組成物。
【請求項32】
請求項1~8のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体、請求項9~26のいずれか一項に記載の結合剤、または請求項30に記載の免疫複合体、または請求項31に記載の医薬組成物の治療上有効量を投与することを含む、癌、免疫疾患、神経疾患、炎症性疾患、アレルギー、移植拒絶、ウイルス感染症、免疫不全または他の免疫系関連疾患を治療する方法。
【請求項33】
癌、免疫疾患、神経疾患、炎症性疾患、アレルギー、移植拒絶、感染症、免疫不全症または他の免疫系関連疾患の治療のための医薬の製造における、請求項1~8のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体、請求項9~26のいずれか一項に記載の結合剤、または請求項30に記載の免疫複合体、または請求項31に記載の医薬組成物の使用。
【請求項34】
医薬として使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体、請求項9~26のいずれか一項に記載の結合剤、または請求項30に記載の免疫複合体、または請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項35】
癌、免疫疾患、神経疾患、炎症性疾患、アレルギー、移植拒絶、ウイルス感染症、免疫不全症、およびその他の免疫系関連疾患の治療における使用のための、請求項1~8のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体、請求項9~26のいずれか一項に記載の結合剤、または請求項30に記載の免疫複合体、または請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記癌が、骨肉腫、膵臓癌、皮膚癌、頭部または頸部の癌、皮膚または眼内の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、精巣癌、乳癌、脳腫瘍、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膣癌、外陰癌、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、腎臓癌、軟部組織の肉腫、尿道癌、膀胱癌、腎癌、肺癌、非小細胞肺癌、胸腺腫、尿路上皮癌、白血病、前立腺癌、中皮腫、副腎皮質癌、ホジキン病、非ホジキン病等のリンパ腫、胃癌、および多発性骨髄腫および他の白血病から選択される、請求項32に記載の方法、請求項33に記載の使用、または請求項31に記載の単一ドメイン抗体、結合剤もしくは医薬組成物。
【請求項37】
請求項1~8のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体、請求項9~23のいずれか一項に記載の結合剤、または請求項30に記載の免疫複合体、または請求項31に記載の医薬組成物を投与することを含む、免疫応答を調節する方法。
【請求項38】
請求項1~8のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体または請求項9~26のいずれか一項に記載の結合剤をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項39】
配列番号10または11から選択される、請求項38に記載の単離された核酸分子。
【請求項40】
請求項38または39に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項41】
請求項35または36に記載の核酸または請求項40に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項42】
前記宿主細胞が、細菌、酵母、ウイルス、植物または哺乳動物細胞である、請求項41に記載の宿主細胞。
【請求項43】
宿主細胞において結合分子をコードする核酸を発現させること、および前記宿主細胞から前記結合分子を単離することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体を製造する方法。
【請求項44】
請求項1~8のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体、請求項9~26のいずれか一項に記載の結合剤、または請求項30に記載の免疫複合体、または請求項31に記載の医薬組成物を含む、キット。
【請求項45】
試験サンプル中のヒトLAG-3の存在を検出するための方法であって、前記サンプルと、請求項1~8のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体および少なくとも1つの検出可能な標識とを接触させること、および前記単一ドメイン抗体のヒトLAG-3への結合を検出することを含む、方法。
【請求項46】
請求項1~8のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体を第2の治療剤と共に投与することを含む、併用療法。
【請求項47】
請求項16~26のいずれか一項に記載の結合剤を投与することを含む、免疫チェックポイントPD-1およびLAG-3を同時に阻害する方法。
【請求項48】
請求項1~8のいずれかの単一ドメイン抗体または請求項9~26のいずれかの結合剤を投与することを含む、LAG-3とガレクチン-3、レセクチンまたはα-シヌクレインとの相互作用を改変または遮断する方法。
【請求項49】
LAG-3と請求項1~8のいずれかの単一ドメイン抗体または請求項9~26のいずれかの結合剤とを接触させることを含む、LAG-3とガレクチン-3、レセクチンまたはα-シヌクレインとの相互作用を改変または遮断する方法。
【請求項50】
請求項1~8のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体または請求項9~26のいずれか一項に記載の結合剤を含む、CAR。
【請求項51】
請求項9~26のいずれか一項に記載の結合剤を提供することを含む、表面にPD-1およびLAG-3を提示する細胞を選択的に標的化するか、または表面にPD-1を提示する細胞と比較してそのような細胞の標的化を増大させる方法。
【請求項52】
前記方法が、in vitro、in vivoまたはex vivoである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
二重特異性療法を受けた対象または該対象からのサンプルにおけるCbl-bおよび/またはc-Cblのタンパク質またはRNA発現を測定することにより、LAG-3およびPD-1に結合する二重特異性薬剤による療法に反応する対象を識別する方法。
【請求項54】
前記療法が請求項9~26のいずれか一項に記載の結合剤によるものである、請求項53に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
抗体ベースの治療法は、腫瘍学、炎症性疾患、感染症等の分野におけるヒトの悪性腫瘍の増加に対する治療の重要な要素として浮上している。実際に、抗体は現在最も売れている薬の1つであり、最も売れている薬の上位10のうち5つは抗体である。
【0002】
リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3、LAG3、CD223)は、免疫グロブリンスーパーファミリーの膜貫通タンパク質である。これは4つの細胞外ドメインを有し、CD4と相同性を有する(Triebel 1990 J. Exp.Med. 171:1393-1405)。
【0003】
LAG-3は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、T調節細胞、B細胞、NK細胞および形質細胞様樹状細胞において発現する(Huard 1994 Eur. J. Immunol. 24:3216-21; Grosso 2007 J. Clin. Invest. 117:3383-92; Huang 2004 Immunity. 21:503-13; Kieslow 2005 Eur. J. Immunol. 35:2081-88; Triebel 1990 J. Exp.Med. 171:1393-140; Castelli 2014 Oncoimmunology. 3:11)。
【0004】
T細胞に対するLAG-3の役割は、T細胞の活性化を調節することである(Huard 1994 Eur. J. Immunol. 24:3216-21)。LAG-3はMHCクラスIIと結合し、CD4+T細胞のダウンレギュレーションを引き起こす(Huard 1996 Eur. J. Immunol. 26:1180-6)。T細胞が活性化すると、LAG-3の表面発現が増大する。LAG-3ダイマーとリガンドとの結合により、細胞内KIEELEドメイン(Workman 2002 J.Immunol 169:5392-5)を介したシグナル伝達が誘導され、T細胞活性のダウンレギュレーションが引き起こされる。したがって、LAG-3は抗原に対する応答を調節し、過剰刺激を防ぎ、免疫恒常性を維持する働きをする。
【0005】
LAG-3は、細胞内シグナル伝達ドメイン、膜貫通ドメイン、および1~4の番号が付けられた4つの細胞外ドメインで構成されている(Huard 1997 Proc. Natl. Acad. Sci. 94:5744-9)。ドメイン1-2はMHCクラスIIリガンドと会合し、ドメイン1の先端(エクストラループ(extra loop))が結合部位を形成することが示されている(Huard 1997 Proc. Natl. Acad. Sci. 94:5744-9)。LAG-3は、その抑制性シグナル伝達を誘導する代替的なリガンドであるガレクチン-3およびレセクチン(LSECtin)とも会合し得る(Kouo 2015 Cancer Immunol Res. 3(4):412-23; Xu 2014 Cancer Res 74(13):3418-28)。細胞上または細胞外マトリックス内のガレクチン-3との会合は、通常はCD8+T細胞等のMHCクラスIIと結合しないT細胞をダウンレギュレートし得る。したがって、このリガンドの遮断は、幅広いT細胞機能を増強するためのメカニズムとして役立つ可能性がある。
【0006】
LAG-3に結合する抗体には治療の可能性がある。マウスでは、抗LAG-3抗体は機能的に無反応なT細胞を逆転させ、腫瘍の進行を遅らせる(Grosso 2007 J. Clin. Invest. 117: 3383-92)。LAG-3は、ヒト腫瘍浸潤リンパ球において発現し、この局在化により、これらの細胞を刺激するための好ましい経路が遮断される(Matsuzaki 2010 PNAS 107(17):7875-80)。
【0007】
Programmed Death 1(PD-1)タンパク質はPDCD1遺伝子によってコードされ、55kDaのI型膜貫通タンパク質として発現する(Agata 1996 Int Immunol 8(5):765-72)。PD-1は免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーであり(Ishida 1992 EMBO 11(11):3887-95)、T細胞レギュレーターの拡張CD28/CTLA-4ファミリーの阻害性メンバーである。このファミリーの他のメンバーとしては、CD28、CTLA-4、ICOSおよびBTLAが挙げられる。PD-1は単量体として存在し、他のCD28ファミリーメンバーに特徴的な不対システイン残基を欠いている(Zhang 2004 Immunity 20:337-47)。その細胞質ドメインには、シグナル伝達中にリン酸化される免疫受容体チロシンベース抑制性モチーフ(ITIM)と免疫受容体チロシンベーススイッチモチーフ(ITSM)が含まれる(Riley 2009 Immunol Rev 229(1):114-25)。
【0008】
PD-1はB細胞、T細胞および単球において発現する(Agata 1996)。免疫学的自己寛容の維持におけるPD-1の役割は、自己免疫疾患を発症するPDCD1-/-マウスにおいて実証された(Nishimura 1999 Immunity 11:141-51, Nishimura 2001 Science 291(5502):319-22)。したがって、PD-1経路は抗原応答を調節し、自己免疫と寛容とのバランスをとる。
【0009】
LAG-3およびPD-1はどちらもT細胞の活性化を調節する。それらとリガンドとの結合により、T細胞活性化の阻害が引き起こされ、抗原特異的応答の調節がもたらされる。PD-1には、その調節機能を媒介する2つのリガンドが存在する。PD-L1(B7-H1)は、樹状細胞、マクロファージ、休止B細胞(resting B cell)、骨髄由来のマスト細胞およびT細胞、ならびに非造血細胞系統において発現する(Francisco 2010 Immunol Rev 236:219-42において概説されている)。PD-L2(B7-DC)は、主に樹状細胞およびマクロファージにおいて発現する(Tseng 2001 J Exp Med 193(7):839-45)。リガンドとPD-1との結合はPD-1を架橋し、免疫シナプス内のT細胞受容体(TCR)複合体にクラスター化する(Yokosuka 2012 J Exp Med 209(9):1201-17)。T細胞の細胞質内では、PD-1シグナル伝達ドメインであるITIMおよびITSMがリン酸化される。これにより、T細胞受容体(TCR)シグナル伝達のさまざまなコンポーネントを減衰させるSrcホモロジー2ドメインを含むチロシンホスファターゼ(SHP1/2)が誘導される。LAG-3ダイマーとリガンドとの結合により、細胞内KIEELEドメインを介したシグナル伝達が誘導される(Workman 2002 J.Immunol 169:5392-5)。シグナル伝達により、T細胞の活性化が抑制され、それによりサイトカイン応答、増殖および細胞溶解活性の低下が引き起こされる。これらの経路の遮断は、T細胞機能を回復できることを意味し、抗原または腫瘍特異的細胞応答の回復を可能にする。
【0010】
PD-1:PD-L1相互作用を遮断する抗体は、腫瘍学および癌以外の疾患の治療のために医療機関において使用されるが、応答率が低いため限定的である。このような遮断治療の恩恵を受ける患者の割合を増大させ、治療への抵抗に取り組み、安全性プロファイルを改善し、重複経路を克服する必要性がある。併用療法は、PD-1遮断に対する応答を改善するために使用される。抗LAG-3抗体は、現在、単剤として、およびPD-1経路遮断抗体と組み合わせて、臨床試験で評価されている。併用療法が有益である可能性がある1つの理由は、単剤チェックポイント遮断が他のチェックポイントの代償性アップレギュレーションにつながることにある(Huang 2017, Oncoimmunol 6(1) e1249561)。
【0011】
LAG-3特異的抗体は当技術分野で知られており、癌治療のための臨床試験中である(例えば、NCT02061761、NCT02460224)。しかしながら、強力な遮断と改善された応答率が必要とされる。LAG-3に結合してLAG-3シグナル伝達を遮断し、免疫療法剤等の他の薬剤と組み合わせて有益な治療効果を達成できる薬剤を提供する必要性もある。特に、PD-1およびLAG-3の両方に結合し、使い果たされた腫瘍特異的細胞のこれらの受容体と結合する二重特異性抗体は、そのような細胞の機能を増強し、腫瘍の退行を引き起こす可能性がある。PD-1およびLAG-3の両方に結合する二重特異性抗体は、後者を使用することによりいずれかの標的を発現する細胞上の各標的が普遍的に遮断されるため、併用療法よりも利点がある。一方、二重特異性抗体は両方の標的を発現する細胞を標的とし、最も使い果たされた表現型(PD-1とLAG-3の両方を発現)を有するT細胞をより的確に標的化できる。
【0012】
本発明は、代替的かつ改善された治療法の必要性を解決することを目的とし、免疫チェックポイント阻害剤として作用することができ、癌等の疾患を治療するための免疫療法において、例えばPD-1およびLAG-3の二重遮断のための二重特異性形態で使用することができるLAG-3結合剤を提供する。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、LAG-3に結合するタンパク質、特に可変重鎖(V)sdAb等の抗LAG-3単一ドメイン抗体(sdAb)を含むかまたはそれらからなるタンパク質、ならびに疾患の治療、予防および検出におけるそれらの使用に関する。
【0014】
一つの態様では、本発明は、少なくとも1つのV単一ドメイン抗体等の、ヒトLAG-3に結合する少なくとも1つの単一ドメイン抗体(sdAb)を含む単離された結合分子に関する。一つの態様では、本発明は、LAG-3結合について二価であり、ヒトLAG-3に結合する2つのsdAb、特に2つのV単一ドメイン抗体を含むかまたはそれからなる単離された結合分子に関する。
【0015】
上記の結合分子は、本明細書で説明されるように、いくつかの望ましい特性を有する。
【0016】
本発明の結合分子は、ヒトLAG-3に結合し、LAG-3とそのリガンドとの相互作用を調節する。結合分子は、好ましくは高い親和性でLAG-3に結合し、下記のようにLAG-3とそのリガンドとの機能的相互作用を遮断する。いくつかの実施形態では、本発明の結合分子は、T細胞活性化を刺激または増強し得る。いくつかの実施形態では、結合分子は、免疫応答を刺激または増強するため、および/または癌または他の疾患に罹患している対象を治療するために有用であり得る。
【0017】
本発明の抗LAG-3 V sdAbは、多くの有益な特性を示す。特に、本発明のsdAbは、多価結合分子、例えば、多重特異的分子、すなわちLAG-3に結合し、1つ以上の他の抗原結合部位を有する分子における機能的構成要素(functional building block)として使用することができる。また、2つの抗LAG-3 V sdAbを融合タンパク質中で組み合わせて、本明細書に記載されるような増強された効果を得ることができる。
【0018】
したがって、本発明はまた、少なくとも1つの抗LAG-3 V単一ドメイン抗体、好ましくは2つの抗LAG-3 V単一ドメイン抗体を含む多価および/または多重特異性結合剤に関する。
【0019】
一つの態様では、本発明は、同じ細胞に存在するLAG-3およびPD-1に結合する、例えば、同時に結合し、少なくとも1つの抗LAG-3 V単一ドメイン抗体、好ましくは2つの抗LAG-3 V単一ドメイン抗体を含む多重特異性結合分子に関する。別の態様において、本発明は、LAG-3およびPD-1に同時に結合し、2つの抗LAG-3 V単一ドメイン抗体を含む多重特異性結合分子に関する。一つの実施形態では、LAG-3およびPD-1に同時に結合する多重特異性結合分子は、2つの抗LAG-3 V単一ドメイン抗体、およびPD-1に結合するV単一ドメイン、ならびに任意で半減期延長部分を含むかまたはそれからなる。
【0020】
本明細書に示されるように、本発明の二重特異的性薬剤を使用することにより、腫瘍特異的細胞に対する分子が選択的に標的化され、したがってシグナル伝達および増殖に対して選択的に効果が発揮されるため、特定の利益がもたらされる。例えば、PD-1およびLAG-3の両方に結合する二重特異性薬剤は、PD-1およびLAG-3のモノクローナル抗体が別々に投与される併用療法と比較して有益な特性を有する。これは、二重特異性抗体が、両方の標的、すなわちPD-1およびLAG-3をその表面に発現する細胞を標的とするためである。したがって、二重特異性分子を使用することにより、最も枯渇した表現型(PD-1およびLAG-3の両方を発現)のT細胞をより的確に標的化することができる。一方、併用療法によれば、いずれかの標的を発現する細胞上の各標的の普遍的な遮断がもたらされる。PD-1の遮断によりLAG-3の発現が増大することも知られている。したがって、二重特異性薬剤による治療は、PD-1遮断に応答しない、またはPD-1遮断に応答しなくなった患者の治療に特に有用である可能性がある。本明細書に記載される二重特異性薬剤は、最も機能不全の腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)に対して選択的である。それらによれば、内因性または後天性のPD-1耐性を逆転させる用途を見出すことができる。PD-1遮断の減少により、末梢T細胞が節約され、免疫学的に機能するPD-1陽性細胞の過剰活性化が回避され、その結果、安全性プロファイルが改善される。したがって、二重特異性薬剤によれば、特異的に二重陽性の細胞、すなわち、それらの表面にLAG-3およびPD-1の両方を提示する細胞に対する改善された標的化および活性が提供もたらされる。さらに、本明細書に示されるように、分子はまた、より大きな二重特異性抗体形態よりも改善された特性を有する。理論に拘束されることを望むものではなく、この効果は、より小さなサイズ、より優れた柔軟性をもたらし、かつ、より完全で強力なクラスタリング(細胞表面でのLAG-3およびPD-1のリクルート)を提供する、本明細書に記載される分子の特定の構成に起因する可能性がある。したがって、最も小さい抗原結合実体であるVに基づく分子の形態は、さらなる利点をもたらす。
【0021】
本発明の好ましい結合剤は、LAG-3を標的とする少なくとも1つのV単一ドメイン抗体およびPD-1を標的とする少なくとも1つのV単一ドメイン抗体を含む。大きな二重特異性モノクローナル抗体と比較して、Fcを介したクリアランスが治療効果を制限する可能性があるため、Fcドメインを欠くことにより、この形態には利点がある。
【0022】
したがって、本発明は、配列番号3または7から選択されるCDR3配列、またはそれらと少なくとも70%、80%または90%の相同性/同一性を有する配列を含む、ヒトLAG-3に結合する単離されたヒト重鎖可変ドメイン(V)単一ドメイン抗体に関する。
【0023】
一つの実施形態では、配列番号1に示されるCDR1またはそれと少なくとも70%、80%または90%の相同性/同一性を有する配列、配列番号2に示されるCDR2またはそれと少なくとも70%、80%または90%の相同性/同一性を有する配列、および配列番号3に示されるCDR3またはそれと少なくとも70%、80%または90%の相同性/同一性を有する配列を含む、請求項1に記載のV単一ドメイン抗体。
【0024】
一つの実施形態では、V単一ドメイン抗体は、配列番号5に示されるCDR1またはそれと少なくとも70%、80%または90%の相同性/同一性を有する配列、配列番号6に示されるCDR2またはそれと少なくとも70%、80%または90%の相同性を有する配列、および配列番号7に示されるCDR3またはそれと少なくとも70%、80%または90%の相同性/同一性を有する配列を含む。
【0025】
一つの実施形態では、V単一ドメイン抗体は、配列番号4または8から選択される配列、またはそれらと少なくとも70%、80%または90%の相同性/同一性を有する配列を含む。
【0026】
別の態様では、本発明は、例えば本明細書に記載されるように、LAG-3とガレクチン3、レセクチンおよび/またはα-シヌクレインとの相互作用を改変または遮断するための、抗LAG-3単一ドメイン抗体または抗LAG-3単一ドメイン抗体を含む結合剤の使用に関する。本発明のsdAbまたは結合剤を投与することにより、LAG-3とガレクチン3、レセクチンおよび/またはシヌクレインとの相互作用を改変または遮断する方法もまた本発明の範囲内である。
【0027】
別の態様では、本発明は、例えば本明細書に記載されるように、抗LAG-3単一ドメイン抗体または抗LAG-3単一ドメイン抗体を含む結合剤の投与を含む神経学的状態の治療に関する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本開示は、以下の非限定的な図によりさらに説明される。
図1】V sdAbを含む二重特異性結合剤は、同時に標的に結合できる。LAG3-FcはOctet(登録商標)バイオセンサーへのアミンカップリングを介して固定化された。二重特異性結合剤(すなわち、LAG-3およびPD-1への結合)1.1-6GS-1.1-6GS-2.63を100nMで添加し、次いでPD-1-Fcを添加した。プロファイルは、LAG-3への二重特異性(濃い灰色)の結合と、それに続くPD-1の付加的結合を示す。LAG-3特異的(二価1.1-6GS-1.1)はLAG-3への結合を示すが、予想された通り、PD-1の添加はそれ以上の結合を示さない(中間灰色の曲線)。
図2】CD4+T細胞は抗CD3および抗CD28で刺激された。細胞は、ビオチンおよびストレプトアビジンAlexaFluor488で標識されたHISタグ付きV+抗HISタグで染色された。Intellicyte(登録商標)サイトメーターを使用して細胞を分析した。二重特異性(すなわち、LAG-3およびPD-1への結合)結合剤1.1-6GS-1.1-9GS-2.63は、個々の構成要素よりも高いメジアンの蛍光で結合する。ネガティブ対照は、標的に結合しないVである。
図3】3a)組み合わせによるIL-2の増強。ヒトPBMCを10ng/mlブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)で2日間刺激した。細胞を1ng/mlのSEBおよび25nMのVまたは完全モノクローナル抗体(ペムブロリズマブおよびレラトリマブ類似体)で再刺激した。抗体の組み合わせが使用された場合、等濃度、例えば25nMのLAG-3 V/抗体と共に25nM PD-1抗体(mAb)が使用された。3日後、HTRFキット(Cisbio)を使用してIL-2測定のために培養上清を採取した。3b)二重特異性分子によるIL-2の増強。ヒトPBMCを10ng/mlブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)で2日間刺激した。細胞を10ng/mlのSEB、およびVまたは完全モノクローナル抗体(ニボルマブおよびレラトリマブ類似体)の滴定で再刺激した。抗体の組み合わせが使用された場合、等濃度、例えば50nMのPD-1抗体(mAb)と共に50nMのLAG3抗体(mAb)が使用された。2日後、HTRFキット(Cisbio)を使用してIL-2測定のために培養上清を採取した。ネガティブ対照は、標的に結合しないVである。3c)二重特異性分子は、その構成成分Vよりも多くのIL-2を誘導する。PBMCを10ng/mlのSEBで刺激し、50nMまたは50+50nMのVの存在下で3日間0.1ng/mlのSEBで再刺激した。3d)二重特異性分子との関連で、一価LAG-3よりも二価LAG-3単一ドメイン抗体コンストラクトの方がより強力にIL-2を増強する。ヒトPBMCを50ng/mlブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)で一晩刺激した。細胞を40ng/mlのSEBおよびV二重特異性(すなわち、LAG-3およびPD-1への結合)の滴定で2日間再刺激した。3e)いくつかの1:1の形態よりも非対称形態において、より強力にIL-2が増強される。ヒトPBMCを20ng/mlのブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)で一晩刺激した。細胞を5ng/mlのSEBおよび10nMのVで3日間再刺激した。3f)二重特異性分子により炎症性サイトカインが誘導される。ヒトPBMCを10ng/mlのSEBで一晩刺激した。細胞を1ng/mlのSEBおよび50nMのVで3~6日間再刺激した。上清はHTRFキットを使用して試験された。
図4】CMV特異的CD8+T細胞の増殖は、二重特異性1.1-6GS-1.1-9GS-2.63によって増強される。8名のドナーからのPBMCに100μMCMVペプチドで1時間パルスした(pulsed)。Vを100nMで細胞に添加し、5日間培養した。7つの異なるHLA四量体に関し陽性であったCD8+T細胞の割合を、HLA分類に応じて分析した。無関係なVを超える倍数増加を計算した。各点を、1つのドナーと1つの四量体として表す。一元配置分散分析(one way ANOVA)およびDunns多重比較検定を使用して統計的有意性が計算された。p=0.0002。
図5】対照Vと比較した場合、10mg/kgの抗マウス血清アルブミン(MSA)Vと共に二重特異性(すなわち、LAG-3およびPD-1への結合)結合剤1.1-6GS-1.1-6GS-2.77が、RKO結腸癌細胞の腫瘍増殖率を低下させる。この時点での平均腫瘍体積(n=6動物/群)。Tukeyの事後検定を伴う二元配置分散分析(two-way ANOVA)を使用して統計的有意性が決定された(**p<0.01、****p<0.0001)。ネガティブ対照は、標的に結合しないVである。
図6】患者のT細胞の増殖は二重特異性によって増強され、PD-1抗体はほとんど増加しない。患者のCD4+またはCD8+T細胞を腫瘍細胞株と共にインキュベートし、Ki67陽性細胞の割合をフローサイトメトリーで測定した。
【発明の詳細な説明】
【0029】
ここで、本開示をさらに説明する。以下の節では、本開示の異なる態様がより詳細に定義されている。そのように定義された各態様は、それとは反対のことが明確に示されない限り、他の任意の一つの態様または複数の態様と組み合わせることができる。特に、好ましいまたは有利であると示された任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示された他の任意の一つの特徴または複数の特徴と組み合わせることができる。
【0030】
一般に、本明細書に記載される細胞および組織の培養、病理学、腫瘍学、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、タンパク質および核酸化学、ならびにハイブリダイゼーションに関して使用される学術用語および技術は、当技術分野において周知であり、また一般的に知られている。本開示の方法および技術は、一般的に、当技術分野において周知の従来の方法に従って、特に指示がない限り、本明細書全体で引用および議論される様々な一般的でより具体的な参考文献に記載されているように実施される。例えば、Green and Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2012); Therapeutic Monoclonal Antibodies: From Bench to Clinic, Zhiqiang An (Editor), Wiley, (2009);およびAntibody Engineering, 2nd Ed., Vols. 1 and 2, Ontermann and Duebel, eds., Springer-Verlag, Heidelberg (2010)を参照されたい。
【0031】
酵素反応および精製技術は、当技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように、製造業者の仕様に従って実施される。本明細書に記載される分析化学、有機合成化学、ならびに医薬品および製薬化学に関して使用される学術用語、およびそれらの実験手順および技術は、当技術分野において周知であり、また一般的に使用されている。標準的な技術は、化学合成、化学分析、医薬品の調製、製剤および送達、ならびに患者の治療に使用される。
【0032】
本発明者らは、ヒトLAG-3抗原に特異的に結合することができ、いくつかの有益な特性を有する結合剤を作製した。これらの結合剤は、ヒトLAG-3に結合する少なくとも1つのV単一ドメイン抗体を含むかまたはそれからなる。本発明者らは、ヒトV、DおよびJ領域を有する導入遺伝子を発現し、機能的な内因性重鎖およびκ軽鎖およびλ軽鎖を産生することができないトランスジェニックマウスにおいて、ヒト重鎖のみの抗体を生成した。軽鎖がない状況下、重鎖のみの抗体がマウスで生成され、体細胞超変異および親和性成熟の通常のプロセスを経る。
【0033】
したがって、本発明によれば、ヒトLAG-3に結合し、LAG-3とそのリガンドとの相互作用を遮断する、V単一ドメイン抗体等の少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含む単離された結合分子、そのような結合分子を含む医薬組成物、ならびに単離された核酸、単離された組換え発現ベクター、ならびにそのような結合タンパク質を作製するための単離された宿主細胞が提供される。例えば、単一ドメイン抗体は、ドメインがヒト可変重鎖(V)ドメインである単一ドメイン抗体である。
【0034】
一つの実施形態では、結合分子は、2つ以上のV単一ドメイン抗体を含み、少なくとも1つのV単一ドメイン抗体は、ヒトLAG-3に結合する。一つの実施形態では、結合分子は、それぞれがヒトLAG-3に結合するV単一ドメイン抗体を含み、LAG-3に結合するさらなる実体を含まない。一つの実施形態では、結合分子は、それぞれがヒトLAG-3に結合する2つのV単一ドメイン抗体を含み、半減期延長部分をさらに含む。一つの実施形態では、結合分子は、それぞれがヒトLAG-3に結合する1つまたは2つ以上のV単一ドメイン抗体、および別の標的、例えばPD-1に結合するV単一ドメイン抗体を含む。
【0035】
本発明の結合分子および単一ドメイン抗体を使用してヒトLAG-3を検出する方法、疾患を治療する方法、および結合分子を産生する方法も提供される。
【0036】
一つの態様では、本発明は、1つ以上のV単一ドメイン抗体を含む、例えば2つのV単一ドメイン抗体を含むV単一ドメイン抗体または結合分子に関し、1つおよび/またはそれ以上のV単一ドメイン抗体は、以下の特性の1つ以上またはすべてを示し、その組み合わせを含む:
a)ヒトLAG-3に結合する;
b)サルLAG-3に結合する;
c)マウスLAG-3に結合しない;
d)LAG-3のN末端ドメイン内に結合する;
e)LAG-3の主要組織適合性(MHC)クラスIIへの結合を遮断し、レポーター細胞株においてT細胞シグナル伝達を回復する;
f)LAG-3のヒトガレクチン-3(GenbankアクセッションBAA22164)への結合を遮断する;
g)LAG-3のヒトレセクチン(GenbankアクセッションNP_940894)への結合を遮断する;
h)LAG-3のヒトα-シヌクレイン(GenbankアクセッションP37840)への結合を遮断する;および/または
j)スーパー抗原およびPD-1遮断で刺激されたT細胞におけるインターロイキン-2(IL-2)産生を刺激する、実施例10を参照されたい。
【0037】
上記の特性を測定するための適切なアッセイは実施例に記載されており、代替法は当業者に知られているであろう。
【0038】
例えば、本発明によれば、MHCクラスIIを発現する細胞は、LAG-3を発現するレポーターT細胞との相互作用が阻害され、NFAT駆動型ルシフェラーゼ活性の増大をもたらす。本発明者らは、一価のLAG-3 V単一ドメイン抗体が高濃度(例えば、>約333nM)でのみ相互作用を阻害することを示した。二価のLAG-3 V単一ドメイン抗体および二重特異性V単一ドメイン抗体(LAG-3とPD-1の両方を標的化する)は、ナノモル範囲、例えば約1.2~約8.3nMのEC50値でルシフェラーゼ活性の用量依存的な増加を阻害することを示した。
【0039】
例えば、ヒトガレクチン-3への結合はELISAアッセイを使用して測定することができ、本発明のsdAbはナノモル範囲のIC50値を有する。
【0040】
例えば、レセクチンへの結合はELISAアッセイを使用して測定することができ、本発明のsdAbはナノモル範囲のIC50値を有する。
【0041】
例えば、α-シヌクレインへの結合はELISAを使用して測定することができ、本発明のsdAbはナノモル範囲のIC50値を有する。例えば、V 1.1は、約44.9nMのIC50でLAG-3とα-シヌクレインとの間の相互作用を阻害する。
【0042】
スーパー抗原刺激されたPBMCにおけるインターロイキン-2(IL-2)産生の刺激は、実施例に示されるようにHTRFにおいて分泌されたIL-2を測定することにより評価できる。二重特異性V単一ドメイン抗体は、PD-1の遮断単独よりもIL-2が2~3倍増加することを示す。
【0043】
一つの態様では、本発明は、ヒトLAG-3に結合し、LAG-3とヒトガレクチン-3、レセクチンおよび/またはα-シヌクレインとの結合を遮断する単一ドメイン抗体、例えばV単一ドメイン抗体に関する。いくつかの実施形態では、V単一ドメイン抗体は、本明細書に記載される配列を有する。
【0044】
上記の結合分子および単一ドメイン抗体の特性は、本明細書に記載される治療および診断方法、ならびに使用において利用され得る。そのような方法および使用は、本発明の範囲内である。大きなモノクローナル抗体と比較して、Fcを介したクリアランスが治療効果を制限する可能性があるため、Fcドメインを欠くことにより、単一ドメイン形態には利点がある。同様に、サイズが小さいため、標的、すなわちLAG-3に簡単にアクセスできる。これは、免疫シナプスでの発現のため、この標的にとって特に有益である。
【0045】
特に、以下に説明するように、本明細書に記載のヒトLAG-3に結合する単一ドメイン抗体は、多価および/または多重特異的形態で使用することができる。したがって、本発明者らは、多機能分子を構築するための構成要素を提供する。
【0046】
本明細書に記載される分子は、野生型ヒトLAG-3(アクセッション番号NM_002286)に特異的に結合する。野生型ヒトLAG-3のアミノ酸配列を以下に示す(配列番号9)。
MWEAQFLGLLFLQPLWVAPVKPLQPGAEVPVVWAQEGAPAQLPCSPTIPLQDLSLLRRAGVTWQHQPDSGPPAAAPGHPLAPGPHPAAPSSWGPRPRRYTVLSVGPGGLRSGRLPLQPRVQLDERGRQRGDFSLWLRPARRADAGEYRAAVHLRDRALSCRLRLRLGQASMTASPPGSLRASDWVILNCSFSRPDRPASVHWFRNRGQGRVPVRESPHHHLAESFLFLPQVSPMDSGPWGCILTYRDGFNVSIMYNLTVLGLEPPTPLTVYAGAGSRVGLPCRLPAGVGTRSFLTAKWTPPGGGPDLLVTGDNGDFTLRLEDVSQAQAGTYTCHIHLQEQQLNATVTLAIITVTPKSFGSPGSLGKLLCEVTPVSGQERFVWSSLDTPSQRSFSGPWLEAQEAQLLSQPWQCQLYQGERLLGAAVYFTELSSPGAQRSGRAPGALPAGHLLLFLILGVLSLLLLVTGAFGFHLWRRQWRPRRFSALEQGIHPPQAQSKIEELEQEPEPEPEPEPEPEPEPEPEQL
【0047】
「LAG-3、LAG3、リンパ球活性化遺伝子3」および「CD223」という用語は、本明細書では互換的に使用され、ヒトLAG-3の変異体、アイソフォーム、種ホモログを含む。
【0048】
特に明記しない限り、本明細書で使用されるLAG-3という用語は、ヒトLAG-3を指す。したがって、LAG-3に結合すると記載されている単一ドメイン抗体は、ヒトLAG-3に結合する。
【0049】
「LAG-3結合分子/タンパク質/ポリペプチド/剤」、「LAG-3抗原結合分子タンパク質/ポリペプチド/剤」、「抗LAG-3単一ドメイン抗体」、「抗LAG-3単一免疫グロブリン可変ドメイン」、「抗LAG-3重鎖のみ抗体」、「抗LAG-3 V単一ドメイン抗体」、「抗LAG-3 V」または「抗LAG-3抗体」という用語はすべて、上記のようにヒトLAG-3抗原に特異的に結合することができる分子を指す。結合反応は、例えば、無関係な特異性の抗体を使用するネガティブ対照試験を参照して、標準的な方法によって示され得る。「結合剤」および「結合分子」という用語は、本明細書では互換的に使用される。結合分子および結合剤という用語はすべて、上記のようにヒトLAG-3抗原に特異的に結合することができる生物学的実体、例えば融合タンパク質等のタンパク質を指す。
【0050】
目的の抗原、例えばヒトLAG-3に「結合する」または「結合することができる」、本明細書に記載される単一ドメイン抗体または単一ドメイン抗体を含む結合分子は、抗原を発現する細胞または組織において抗体が治療剤として有用であるように十分な親和性で抗原に結合するものである。
【0051】
本明細書に記載される単一ドメイン抗体または単一ドメイン抗体を含む結合分子は、マウスLAG-3と交差反応しない。
【0052】
一つの実施形態では、本明細書に記載される単一ドメイン抗体は、ヒトLAG-3と結合し、またカニクイザルLAG-3とも結合する。
【0053】
LAG-3に結合する、本明細書に記載される単一ドメイン抗体および結合剤は、本明細書において「遮断単一ドメイン抗体または抗体」または「中和単一ドメイン抗体または抗体」とも記載され、LAG-3に結合することによりLAG-3の少なくとも一つの生物活性が阻害される単一ドメイン抗体または結合剤を指す。例えば、LAG-3の前記生物活性は、以下の1つ以上から選択される:
a)MHCクラスIIとの相互作用;
b)ガレクチン-3との相互作用;
c)レセクチンとの相互作用;
d)LAG-3を発現する細胞内でのリガンド媒介シグナル伝達;
e)T細胞受容体シグナル伝達経路への影響;
f)LAG-3のオリゴマー化、または免疫シナプスにおける他の細胞表面受容体との相互作用;
g)細胞表面から切断された可溶性LAG-3の結合;および/または
h)T調節細胞の調節。
【0054】
本明細書で使用される特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープとの「特異的結合」または「特異的に結合する」または「に対して特異的」という用語は、例えば、標的に関して少なくとも約10-4M、あるいは少なくとも約10-5M、あるいは少なくとも約10-6M、あるいは少なくとも約10-7M、あるいは少なくとも約10-8M、あるいは少なくとも約10-9M、あるいは少なくとも約10-10M、あるいは少なくとも約10-11M、あるいは少なくとも約10-12M、またはそれ以上のKDを有する分子によって示され得る。一つの実施形態では、「特異的結合」という用語は、分子が他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに実質的に結合することなく、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する結合を指す。
【0055】
一つの実施形態では、本明細書に記載される一価単一ドメイン抗体は、10-9から少なくとも10-5までのKDを有する。別の実施形態では、本明細書に記載される二価単一ドメイン抗体は、10-9~10-12M以上のKDを有する。
【0056】
「抗体」という用語は、4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖で構成される免疫グロブリン(Ig)分子またはその抗原結合部分、またはIg分子の本質的なエピトープ結合特性を保持したそれらの任意の機能的断片、突然変異体、変異体、誘導体を広く指す。このような突然変異体、変異体または誘導体の抗体形態は、当技術分野で知られている。
【0057】
完全長抗体において、各重鎖は、重鎖可変領域またはドメイン(本明細書ではHCVRと略される)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、C1、C2およびC3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域またはドメイン(本明細書ではLCVRと略される)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCで構成される。
【0058】
重鎖および軽鎖の可変領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が散在している相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化できる。各重鎖および軽鎖可変領域は、3つのCDRと4つのFRとで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0059】
免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスであり得る。
【0060】
「CDR」という用語は、抗体可変配列内の相補性決定領域を指す。重鎖および軽鎖の可変領域のそれぞれに3つのCDRがあり、これらは各可変領域についてCDR1、CDR2およびCDR3と呼ばれている。「CDRセット」という用語は、抗原に結合することができる単一の可変領域で生じる3つのCDRのグループを指す。これらのCDRの正確な境界は、当技術分野で知られているさまざまなシステムに従ってさまざまに定義することができる。
【0061】
Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列の変動性に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat et al., (1971) Ann. NY Acad. Sci. 190:382-391およびKabat, et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)。Chothiaは代わりに構造ループの場所に言及する(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901 -917 (1987))。可変ドメインの残基(軽鎖の約1~107残基および重鎖の1~113残基)に言及する場合、Kabatナンバリングシステムが一般的に使用される。
【0062】
本明細書では、特に断りのない限り、Kabatのシステムを使用する。「Kabatナンバリング」、「Kabatの定義」および「Kabatラベリング」という用語は、本明細書では互換的に使用される。当技術分野で認識されているこれらの用語は、抗体または抗原結合部分の重鎖および軽鎖可変領域の他のアミノ酸残基よりも可変(すなわち、超可変)であるアミノ酸残基に番号を付けるシステムを指す。
【0063】
キメラ抗体は、ある種に由来する抗体、好ましくはげっ歯類抗体の相補性決定領域(CDR)を含む可変ドメインを含み、抗体分子の定常ドメインがヒト抗体の定常ドメインに由来する組換えタンパク質である。獣医学的適用のために、キメラ抗体の定常ドメインは、猫または犬等の他の種の定常ドメインに由来し得る。
【0064】
ヒト化抗体は、ある種の抗体;例えば、げっ歯類抗体のCDRが該げっ歯類抗体の重鎖および軽鎖可変鎖からヒト重鎖および軽鎖可変ドメイン(例えば、フレームワーク領域配列)に移された組換えタンパク質である。抗体分子の定常ドメインは、ヒト抗体の定常ドメインに由来する。特定の実施形態では、親(げっ歯類)抗体からの限られた数のフレームワーク領域アミノ酸残基を、ヒト抗体フレームワーク領域配列に置換することができる。
【0065】
「抗原結合部位」という用語は、抗原に特異的に結合する領域を含む抗体または抗体断片の部分を指す。抗原結合部位は、1つ以上の抗体可変ドメインによって提供され得る。好ましくは、抗原結合部位は、抗体または抗体断片の会合したVおよびV内に含まれる。
【0066】
抗体断片は、抗体、例えばF(ab’)、Fab、Fv、sFv等の一部である。完全長抗体の機能的断片は、完全長抗体の標的特異性を保持する。したがって、Fab(断片抗体)、scFv(一本鎖可変鎖断片)および単一ドメイン抗体(dAb)等の組換え機能性抗体断片は、mAbに基づく治療法の代替としての治療法を開発するために使用されてきた。
【0067】
scFv断片(~25kDa)は、2つの可変ドメイン、VとVで構成される。当然、VおよびVドメインは、疎水性相互作用を介して非共有結合的に会合し、解離する傾向がある。しかしながら、ドメインと親水性の柔軟なリンカーとを架橋して一本鎖Fv(scFv)を作製することによって、安定した断片を設計できる。
【0068】
最小の抗原結合断片は単一の可変断片、すなわちVまたはVドメインである。軽鎖/重鎖パートナーそれぞれとの結合は、標的の結合には必要ない。そのような断片は単一ドメイン抗体と呼ばれる。したがって、単一ドメイン抗体(~12~15kDa)はVまたはVドメインのいずれかを有し、抗体の他の部分を含まない。VおよびVドメインはそれぞれ抗原に結合することができる。サイズが1つの単一ドメイン(VまたはVドメインに対応)に縮小された抗体の抗原結合実体は、一般的に「単一ドメイン抗体」または「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と呼ばれる。天然に軽鎖を欠いているラクダ科の重鎖のみの抗体に由来する単一ドメイン抗体、ならびにヒト重鎖ドメインを有する単一ドメイン抗体が記載されている(Muyldermans J Biotechnol. 2001 Jun;74(4):277-302, Holliger Nat Biotechnol. 2005 Sep;23(9):1126-36)。
【0069】
抗原結合単一Vドメインは、例えば、免疫されたマウスの脾臓からのゲノムDNAから増幅されたマウスV遺伝子のライブラリーからも同定され、大腸菌で発現された(Ward et al., 1989, Nature 341: 544-546)。Ward et al.では、分離された単一のVドメインは「dAbs」、「ドメイン抗体」と命名された。「dAb」という用語は一般的に、抗原に特異的に結合する単一の免疫グロブリン可変ドメイン(V、VHHまたはV)ポリペプチドを指す。治療に使用するには、患者に投与したときに免疫応答を誘発する可能性が低いというのが主な理由で、ラクダ科動物由来のVHHよりもヒト単一ドメイン抗体が好ましい。
【0070】
「単一ドメイン抗体(sdAb)、可変単一ドメインまたは免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISV)」という用語はすべて当技術分野で周知であり、標的抗原と結合する抗体の単一可変断片を表す。これらの用語は、本明細書では互換的に使用される。「単一重鎖ドメイン抗体、単一可変重鎖ドメイン、免疫グロブリン単一重鎖可変ドメイン(ISV)、ヒトV単一ドメイン、V単一ドメイン抗体」は、軽鎖または他の抗体断片がない場合の抗原との結合特異性を保持する抗体の単離された単一重鎖可変断片を表す。したがって、単一ドメイン抗体は、完全な抗体分子の他の部分を含まない。単一の可変重鎖ドメイン抗体は、軽鎖がなくても抗原に結合することができる。ヒト重鎖単一可変ドメイン抗体(Vドメイン抗体)が好ましい。
【0071】
一つの態様では、本発明者らは、ヒトLAG-3に結合する単離された単一可変重鎖ドメイン抗体を提供する。
【0072】
以下に説明するように、特定の実施形態は、LAG-3抗原に結合する単離された単一可変重鎖ドメイン抗体/免疫グロブリン単一可変重鎖ドメインに関する。したがって、単一可変重鎖ドメイン抗体は、軽鎖の非存在下でLAG-3に結合することができる。ヒト単一可変重鎖ドメイン抗体(「V単一ドメイン抗体」)が特に好ましい。このような結合分子は、本明細書ではHumabody(登録商標)とも呼ばれる。Humabody(登録商標)はCrescendo Biologics Ltd.の登録商標である。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明者らは、少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含むかまたはそれからなる単離された結合剤/分子を提供し、前記ドメインはヒト可変重鎖ドメインであり;それらはVドメインまたは他の抗体断片を欠いており、標的抗原に結合する。
【0074】
「単離された」単一ドメイン抗体という用語は、異なる抗原特異性を有する他の単一ドメイン抗体、抗体または抗体断片を実質的に含まない単一ドメイン抗体を指す。さらに、単離された単一ドメイン抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。本発明のsdAbおよびそのようなsdAbを含む結合分子は、好ましくは、ヒトV、DおよびJ領域を有する導入遺伝子を発現し、重鎖のみ抗体を産生する重鎖のみ抗体単離トランスジェニックマウスに由来する/それから単離される。これについては、実施例において詳しく説明する。
【0075】
各単一Vドメイン抗体は、3つのCDRと4つのFRとで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配置されている:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。したがって、一つの実施形態では、ドメインは、以下の式FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を有するヒト可変重鎖(V)ドメインである。
【0076】
C末端またはN末端のVフレームワーク配列への改変は、それらの特性を改善するために、本発明の単一ドメイン抗体に行われてもよい。例えば、Vドメインは、C末端またはN末端の伸長または欠失を含み得る。C末端伸長は、残基VTVSSで終結するVドメインのC末端に付加され得る。
【0077】
一つの実施形態では、本明細書に記載される単一ドメイン抗体は、1~50残基、例えば1~10、1~20、1~30、1~40、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の追加のアミノ酸のC末端伸長を含む。一つの実施形態では、本明細書に記載される単一ドメイン抗体は、ヒトC1ドメインの追加のアミノ酸を含み、したがって、C末端がC1ドメインに伸長する。一つの実施形態では、前記伸長は、少なくとも1つのアラニン残基、例えば、単一のアラニン残基、二つのアラニン残基または三つのアラニン残基を含む。
【0078】
別の実施形態では、C末端またはN末端の追加の残基は、本明細書に記載の単一ドメイン抗体と、ペプチドリンカー、または分子の検出を助けるタグ等の別の部分とをコンジュゲートさせるために使用されるリンカーから選択される。そのようなタグは、当技術分野で周知であり、例えば、リンカーHisタグ、例えば、ヘキサHisまたはmycタグが挙げられる。
【0079】
本明細書で使用する場合、「相同性」または「同一性」という用語は、一般的に、配列を整列させた後、いくつかの実施形態では、必要に応じて、相同性の割合を最大にするためにギャップを導入し、配列同一性の一部として保存的置換を考慮することなく、比較した参照ポリペプチドの残基と同一である配列中のアミノ酸残基の割合を指す。したがって、2つのアミノ酸配列間の相同性の割合は、2つの配列間の同一性の割合に等しい。N末端またはC末端の拡張、タグ、または挿入は、同一性または相同性を低下させるものと解釈してはならない。Blast等のアラインメントの方法およびコンピュータープログラムはよく知られている。2つのアミノ酸配列間の相同性または同一性の割合は、よく知られた数学的アルゴリズムを使用して決定できる。本明細書で相同性が使用される場合、それは同一性と置き換えることができる。
【0080】
本明細書に記載される様々な態様のいくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される単一ドメイン抗体の可変ドメインは、Vドメイン、VHHドメイン、ヒト化VHHドメイン、ラクダ化Vドメイン、配列改変VまたはVHHドメインである。好ましい実施形態では、本明細書に記載される単一ドメイン抗体の可変ドメインは、ヒト可変ドメイン(V)である。用語「V」、例えば、本明細書で使用されるVドメイン抗体は、単一ヒト可変重鎖ドメイン抗体を表す。
【0081】
本明細書で使用する場合、ヒトVドメインには、完全ヒトVドメインまたは実質的に完全ヒトVドメインが含まれる。本明細書で使用する場合、ヒトVドメインという用語は、特に、例えばWO2016/062990および実施例に記載されているように、所望の抗原による免疫に応答して、完全ヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子座を発現するトランスジェニックマウスによって作製された重鎖のみ抗体から単離されたVドメインも含む。一つの実施形態では、ヒトVドメインは、ヒトVドメインのアミノ酸またはそのようなVドメインをコードする核酸配列に由来するかまたはそれに基づくVドメインも含み得る。したがって、この用語には、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来するかまたはそれによってコードされる可変重鎖領域が含まれる。実質的ヒトVドメイン、またはヒトVドメインに由来するかまたはそれに基づくVドメインは、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、ランダム突然変異誘発または部位特異的突然変異誘発によってin vitroで導入された、またはin vivoでの体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。したがって、「ヒトVドメイン」という用語は、例えば、配列障害を修正するために1つ以上のアミノ酸残基が改変されている実質的ヒトVドメインも含む。例えば、実質的ヒトVドメインは、完全なヒト配列と比較して、最大20個、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸改変を含み得る。
【0082】
しかしながら、本明細書で使用される「ヒトVドメイン」または「実質的ヒトVドメイン」という用語は、マウス等の別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトのフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図しない。好ましくは、本明細書で使用される「ヒトVドメイン」という用語は、ラクダ化Vドメイン、すなわち、例えば、Vドメインの所定の位置を選択して、該所定の位置に1つ以上の点突然変異を導入する従来の突然変異誘発法によってin vitroで1つ以上の所定の残基をラクダ科のVHHドメインに見られる特定の残基に改変されたヒトVドメインを含むことを意図しない。
【0083】
例示的な配列特性
一つの実施形態では、ヒトLAG-3に結合する単一Vドメイン抗体は、以下の表1に示すCDR3配列、またはそれと少なくとも60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の配列相同性または同一性を有する配列を含む。したがって、一つの態様では、本発明者らは、配列番号3または7から選択されるCDR3配列またはそれらの配列の一つと少なくとも60%、70%、80%、90%、95%以上の配列相同性または同一性を有する配列を含み、ヒトLAG-3に結合することができる単離された単一Vドメイン抗体を説明する。一つの実施形態では、前記配列相同性は、少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。一つの実施形態では、前記配列相同性は、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%である。
【0084】
一つの実施形態では、ヒトLAG-3に結合する単一のVドメイン抗体は、配列番号1または5のアミノ酸配列、またはそれらと少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%96%、97%、98%または99%の相同性または同一性を有する配列を含むかまたはそれからなるCDR1を含む。一つの実施形態では、ヒトLAG-3に結合する単一Vドメイン抗体は、配列番号2または6のアミノ酸配列、またはそれらと少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%96%、97%、98%または99%の相同性または同一性を有する配列を含むかまたはそれからなるCDR2をさらに含む。
【0085】
一つの実施形態では、V単一ドメイン抗体は、配列番号1またはそれと少なくとも60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の配列相同性を有する配列を含むCDR1、配列番号2またはそれと少なくとも60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の配列相同性または同一性を有する配列を含むCDR2、および配列番号3またはそれと少なくとも60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の配列相同性を有する配列を含むCDR3を含む。一つの実施形態では、V単一ドメイン抗体は、配列番号5またはそれと少なくとも60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の配列相同性を有する配列を含むCDR1、配列番号6またはそれと少なくとも60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の配列相同性または同一性を有する配列を含むCDR2、および配列番号7またはそれと少なくとも60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の配列相同性を有する配列を含むCDR3を含む。
【0086】
一つの実施形態では、V単一ドメイン抗体は、配列番号4または配列番号8、またはそれらと少なくとも60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の配列相同性、例えば、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%96%、97%、98%または99%の相同性または同一性を有する配列を含むかまたはそれからなる。
【0087】
【表1】
【0088】
いくつかの実施形態では、本発明者らは、ヒトLAG-3に結合する上記の単一Vドメイン抗体のいずれかの変異体であるV単一ドメイン抗体を提供する。
【0089】
本発明において使用される変異体V単一ドメイン抗体は、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入または他の改変を有し、本明細書に記載される機能的特性を保持する。例えば、LAG-3に結合する変異V単一ドメイン抗体に関して、機能的特性は、LAG-3への結合または上記に列挙された他の特性の1つであり得る。
【0090】
変異V単一ドメイン抗体は、配列を改変することができる。改変としては、天然配列V単一ドメイン抗体またはポリペプチドと比較してアミノ酸配列の変化をもたらす単一ドメイン抗体またはポリペプチドをコードする1つ以上のコドンの1つ以上の置換、欠失または挿入が挙げられる。アミノ酸置換は、ロイシンのセリンへの置換、すなわち保存的アミノ酸置換等の、1つのアミノ酸を類似の構造的および/または化学的特性を有する別のアミノ酸に置換した結果であり得る。挿入、置換または欠失は、任意に1~20個、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、または1~10個の範囲のアミノ酸であり得る。一つの実施形態において、変異体は、1、2、3、4または5個の置換を有する。許容される変異は、配列内のアミノ酸の挿入、欠失または置換を体系的に行い、得られた変異体を、完全長または成熟した天然配列によって示される活性について試験することによって決定できる。
【0091】
一つの実施形態では、改変は保存的配列改変である。本明細書で使用する場合、「保存的配列改変」という用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に有意な影響を与えたり変更したりしないアミノ酸の改変を指すものとする。このような保存的改変としては、アミノ酸の置換、付加および欠失が挙げられる。改変は、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発等の当技術分野で公知の標準的な技術によって単一ドメインに導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)を有するアミノ酸、β-分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。したがって、本明細書に記載される単一ドメイン抗体のCDR領域内の1つ以上のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置換することができ、改変された抗体を、本明細書に記載される機能アッセイを使用して、保持された機能(すなわち、上記(c)~(l)に記載された機能)について試験することができる。
【0092】
したがって、これらのアミノ酸変化は、典型的には、生物活性、機能、または抗原に対する親和性または特異性等のポリペプチドの他の所望の特性を変化させることなく行うことができる。一般的に、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換は、生物学的活性を実質的に変化させない。さらに、構造または機能が類似しているアミノ酸の置換は、ポリペプチドの生物学的活性を阻害する可能性が低い。本明細書に記載されるポリペプチドおよびペプチドを含むアミノ酸残基の略語、およびこれらのアミノ酸残基の保存的置換を以下の表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
いくつかの実施形態では、本発明者らは、表1に示されるものから選択されたLAG-3に結合し、かつ1つ以上の配列改変を含み、かつ改変されていない単一ドメイン抗体と比較して、結合親和性、特異性、熱安定性、発現レベル、エフェクター機能、グリコシル化、免疫原性の低下、または溶解性等の特性の1つ以上が改善された単一ドメイン抗体の変異体であるV単一ドメイン抗体を提供する。
【0095】
当業者は、in vitroおよびin vivoの発現ライブラリーを含む、本明細書に記載される抗原結合分子を同定、取得および最適化するための異なる方法があることを知っているであろう。これについては、実施例においてさらに説明する。ディスプレイ(例えば、リボソームおよび/またはファージディスプレイ)および/または突然変異誘発(例えば、エラーを起こしやすい(error-prone)突然変異誘発)等の当技術分野で既知の最適化技術を使用することができる。したがって、本発明者は、本明細書に記載される単一ドメイン抗体の配列最適化バリアントも提供する。
【0096】
一つの実施形態では、単一ドメイン抗体の免疫原性を低下させるように改変を行うことができる。例えば、1つのアプローチは、1つ以上のフレームワーク残基を対応するヒト生殖系列配列に戻すことである。より具体的には、体細胞突然変異を受けた単一ドメイン抗体は、単一ドメイン抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含み得る。そのような残基は、単一ドメイン抗体のフレームワーク配列と、単一ドメイン抗体が由来する生殖系列配列とを比較することによって特定することができる。フレームワーク領域の配列の1つ以上のアミノ酸残基をそれらの生殖系列配置に戻すために、体細胞突然変異は、例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発によって生殖系列配列に「復帰突然変異」させることができる。
【0097】
別のタイプのフレームワーク改変は、フレームワーク領域内、または1つ以上のCDR領域内で1つ以上の残基を変異させてT細胞エピトープを除去し、それによって抗体の潜在的な免疫原性を低下させることを含む。
【0098】
さらに別の実施形態では、分子のグリコシル化が改変される。グリコシル化を変更して、例えば、抗原に対する分子の親和性を高めることができる。そのような炭水化物改変は、例えば、分子配列内の1つ以上のグリコシル化部位を変更することによって達成することができる。例えば、1つ以上のアミノ酸置換を行って、1つ以上の可変領域フレームワークのグリコシル化部位を除去し、それによりその部位でのグリコシル化を除去することができる。このような非グリコシル化は、抗原に対する分子の親和性を高める可能性がある。
【0099】
一つの実施形態では、V単一ドメイン抗体は、配列番号1または1~5個のアミノ酸置換を有する配列番号1に示されるCDR1、配列番号2または1~5個のアミノ酸置換を有する配列番号2に示されるCDR2、および配列番号3または1~5個のアミノ酸置換を有する配列番号3に示されるCDR3を有する。一つの実施形態では、V単一ドメイン抗体は、配列番号5または1~5個のアミノ酸置換を有する配列番号1に示されるCDR1、配列番号5または1~5個のアミノ酸置換を有する配列番号2に示されるCDR2、および配列番号7または1~5個のアミノ酸置換を有する配列番号3に示されるCDR3を有する。
【0100】
一つの実施形態では、バリアントV単一ドメイン抗体は、配列番号4または8のいずれか1つから選択されるが、1つ以上のアミノ酸置換、例えば1~20個、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換を含む。一つの実施形態では、変異体は、1、2、3、4または5個の置換を有する。
【0101】
一つの実施形態では、V単一ドメイン抗体は、配列番号4(V1.1)を含むが、以下の位置の1つ以上においてアミノ酸置換を伴う:
S23、P119、N57、S58、N54、D30、Y32、S58、G55、G56、N57、G59、Y95、S106、S108および/またはA107。一つの実施形態では、これらの16個の位置における2つ以上の置換が組み合わされ、例えば、変異体は、位置が上記で列挙されたものから選択される2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16個の置換を含み得る。一つの実施形態では、変異体は、S23における置換および上記のものからの1つ以上の置換を含む。
【0102】
一つの実施形態では、以下のアミノ酸置換の1つ以上は、S23A、P119Q、N57S、S58T、N54I、D30N、Y32F、S58T、G55S、G56D、N57I、N57S、S58T、G59A、Y95H、S106V、S108Aおよび/またはA107Tから選択される。一つの実施形態では、変異体は、S23Aにおける置換および上記のものからの1つ以上の置換を含む。
【0103】
一つの実施形態では、置換はS23A(変異体1)である。一つの実施形態では、置換は、S23A、P119Q、N57SおよびS58T(変異体2、V1.2)である。一つの実施形態では、置換は、S23A、N57SおよびS58T(変異体3)である。一つの実施形態では、置換は、S23AおよびN54I(変異体4)である。一つの実施形態では、置換は、S23A、D30N、Y32FおよびS58T(変異体5)である。一つの実施形態では、置換は、S23A、Y32F、G55S、G56D、N57I、S58TおよびG59Aである(変異体6)。一つの実施形態では、置換は、S23A、Y32F、S58T、S106VおよびS108Aである(変異体7)。一つの実施形態では、置換は、S23A、D30NおよびA107Tである(変異体8)。一つの実施形態では、置換は、S23A、Y95H、G56D、N57SおよびS58Tである(変異体9)。
【0104】
上記の変異体はすべて、LAG-3への結合について試験され、ナノモル範囲のKDを示した。
【0105】
【表3】
【0106】
上記のナンバリングは、本明細書に示されるタンパク質内の残基の位置に基づいている。
【0107】
本明細書に記載されるV単一ドメイン抗体は、優れた安定性を示す。それらは高濃度で熱ストレスに耐性があることが示されている。さらに、本明細書に記載されるV単一ドメイン抗体はまた、ヒトLAG-3に対する特異性、ヒトT細胞への結合、LAG-3リガンド結合の遮断およびT細胞活性の刺激を示す(実施例を参照されたい)。
【0108】
本明細書に記載されるLAG-3に結合するV単一ドメイン抗体は、好ましくは、本明細書にさらに記載され、実施例に示されるようなKD値を有する。例えば、生物層干渉法(生体分子相互作用分析、Octet(登録商標))により測定すると、KDは少なくとも約10-8Mであり得る。
【0109】
「KD」という用語は、「平衡解離定数」を指し、平衡での滴定測定で得られる値、または解離速度定数(Koff)を会合速度定数(Kon)で割ることによって得られる値を指す。「KA」は親和定数を指す。会合速度定数、解離速度定数、および平衡解離定数は、抗原に対する抗体の結合親和性を表すために使用される。会合および解離速度定数を決定する方法は、当技術分野でよく知られている。蛍光ベースの技術を使用することにより、高感度で、平衡状態にある生理的緩衝液中のサンプルを試験することができる。HTRF、フローサイトメトリー、蛍光マイクロボリュームアッセイ技術等の他の実験的アプローチおよび機器を使用することができる。いくつかの実施形態では、結合分子は、例えば、本質的に実施例8に記載されるように、融合ポリペプチドが生物層干渉法(Octet(登録商標))を使用して測定される場合、最大で約6.15μMまたはそれ未満、例えば、約50nM、約10nMまたは約5nMまたはそれ未満のKD値でLAG-3に結合し得る。
【0110】
結合分子は、例えば、実施例8に記載されるように、融合ポリペプチドがHTRF結合アッセイで測定される場合、最大で100nMまたはそれ未満、例えば、約10nM、約5nMまたは約2nMまたはそれ未満のEC50値でLAG-3に結合し得る。
【0111】
一つの実施形態では、LAG-3に結合する上記のV単一ドメイン抗体は、本明細書にさらに記載されるようにヒトV遺伝子を発現するトランスジェニックマウスから得られるか、またはトランスジェニックマウスから得られるLAG-3に結合するV単一ドメイン抗体の配列最適化変異体である。
【0112】
本開示はさらに、本明細書に記載されるLAG-3に結合する単一ドメイン抗体をコードする単離された核酸を提供する。核酸は、DNAおよび/またはRNAを含み得る。一つの態様では、本発明者らは、表1に示され、上記でさらに定義されるCDR、例えばCDR3、2つまたは3つのCDRのセット、またはV単一ドメイン抗体をコードする核酸を提供する。
【0113】
核酸配列
一つの態様では、本発明者らは、表4に示される配列番号10または11から選択される配列を含むかまたはそれからなる単離された核酸配列を提供する。表4の核酸配列は、表1に示されるV単一ドメイン抗体をコードする。
【0114】
一つの実施形態では、核酸配列は、表2から選択される配列の1つに対して少なくとも60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の配列相同性または同一性を有する。一つの実施形態では、前記配列相同性は、少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%である。一つの実施形態では、核酸配列、核酸配列は、配列番号10または11と比較して1~20個の置換を有する。
【0115】
【表4】
【0116】
本発明の核酸はDNAまたはRNAを含んでもよく、全体的または部分的に合成または組換えによって生成されてもよい。本明細書に記載されるヌクレオチド配列への言及は、文脈が他に必要としない限り、特定の配列を有するDNA分子を包含し、UがTに置換された特定の配列を有するRNA分子を包含する。上記に示される核酸の変異体、例えば、最大20個のコドン変化を有する変異体、特に本明細書において提供されるV変異体をコードするもの(表3を参照されたい)も本発明の範囲内である。
【0117】
さらに、本発明者らは、上記で定義された少なくとも1つの核酸を含む単離された核酸コンストラクトを提供する。コンストラクトは、プラスミド、ベクター、転写物または発現カセットの形態であり得る。
【0118】
本発明はまた、上記の核酸コンストラクトの1つ以上を含む単離された組換え宿主細胞に関する。宿主細胞は、細菌、ウイルス、植物、真菌、哺乳動物または他の適切な宿主細胞であり得る。一つの実施形態では、細胞は大腸菌細胞である。別の実施形態では、細胞は酵母細胞である。別の実施形態では、細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、または当業者に明らかであろう他の細胞である。一つの実施形態では、宿主細胞は哺乳動物宿主細胞であるが、ヒト宿主細胞ではない。
【0119】
一つの実施形態では、本明細書に記載される抗LAG-3単一ドメイン抗体を作製する方法が提供され、この方法は、単一ドメイン抗体をコードするポリヌクレオチドの発現に適した条件下で宿主細胞を培養すること、および単一ドメイン抗体を単離することを含む。
【0120】
ヒトLAG-3への結合について分子と競合する薬剤
別の態様では、本発明者らは、結合分子、例えば、本発明のLAG-3単一ドメイン抗体のいずれかと同様にヒトLAG-3上のエピトープに結合する抗体、抗体断片または抗体模倣物(antibody mimetic)を提供する(すなわち、ヒトLAG-3への結合について単一ドメイン抗体のいずれかと交差競合する能力を有する抗体。したがって、単一ドメイン抗体は参照抗体として使用できる)。いくつかの実施形態では、交差競合研究のための参照抗体は、本明細書に示される単一ドメイン抗体V1.1である(表1を参照されたい)。
【0121】
そのような交差競合抗体は、標準的な結合アッセイにおけるヒトLAG-3への結合について、単一ドメイン抗体1.1または1.2と交差競合するそれらの能力に基づいて同定することができる。例えば、BIAcore(登録商標)分析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーを使用して、本発明の単一ドメイン抗体との交差競合を実証することができる。
【0122】
一つの実施形態では、本発明者らは、ヒトLAG-3を結合することができる結合剤を提供し、ここで、上記の単一ドメイン抗体は、競合アッセイにおいて結合剤を置換する。いくつかの実施形態では、結合剤は、抗体、その機能的断片、例えば、単一ドメイン抗体、または抗体模倣タンパク質である。別の態様では、本発明者らは、ヒトLAG-3に結合することができる結合剤を提供し、結合剤は、競合アッセイにおいて上記の単一ドメイン抗体を置換する。別の態様では、本発明者らは、ヒトLAG-3に結合することができる結合剤を提供し、結合剤は、本明細書に記載される単一ドメイン抗体のように、重複エピトープを含む、本質的に同じエピトープに結合する。
【0123】
別の態様では、本発明者らは、多価分子、例えば二価分子、または上記の1つまたは2つのV単一ドメイン抗体を含む多重特異的分子において使用するための上記V単一ドメイン抗体を提供する。
【0124】
重鎖のみ抗体
別の態様では、本発明者らは、本明細書に記載され、表1に列挙されているVドメインを含む単離された重鎖のみ抗体、またはそれらと少なくとも60%、70%、80%、90%または95%の相同性または同一性を有する単離された重鎖のみ抗体を提供する。
【0125】
多価結合剤
本明細書に記載されるLAG-3に結合する単一ドメイン抗体は、以下でさらに説明するように、別の治療薬と組み合わせて投与することができる。
【0126】
さらに、本明細書に記載されるLAG-3に結合する単一ドメイン抗体は、多価結合剤/分子の一部を形成することができる。そのような薬剤は、LAG-3に結合する単一ドメイン抗体および1つ以上の標的抗原に結合する1つ以上のサブユニット/部分を含む。本明細書に記載される多価結合剤において、少なくとも2つの結合実体が共有結合または非共有結合で連結されている。例えば、以下に記載の実施形態では、多重特異性結合剤は好ましくは融合タンパク質であり、したがって、本開示は、本明細書に記載されるLAG-3に結合する単一ドメイン抗体を含む融合タンパク質を提供する。好ましくは、融合ポリペプチドは、2つ以上のサブユニット間の翻訳融合である。翻訳融合を生成する技術はよく知られており、リーディングフレーム内の1つのサブユニットのコード配列を、さらなるサブユニットのコード配列で遺伝子操作することを含む。2つのサブユニットは、例えば、ペプチドリンカーをコードする核酸配列によって連結される。例示的なペプチドリンカーは、以下により詳細に記載されている。好ましい実施形態では、結合剤は、2つまたは3つまたはそれ以上の単一ドメイン抗体、例えば、単一ドメイン抗体が別の単一ドメイン抗体と連結されている融合タンパク質を含むかまたはそれらからなる。当業者にとって明らかであるように、そのようなタンパク質は完全な抗体分子の他の部分を含まず、標的への結合は単一ドメイン抗体によって媒介される。
【0127】
したがって、別の態様では、本発明は、多価および/または多機能融合タンパク質の構築における使用のためのLAG-3に結合するV単一ドメイン抗体(例えば、表1に示される単一ドメイン抗体またはその変異体を参照されたい)を提供する。したがって、別の態様は、多機能融合タンパク質における、本明細書に記載されるLAG-3に結合するV単一ドメイン抗体(例えば、表1に示される配列またはその変異体を有する)の使用に関する。別の態様は、宿主細胞において第2の治療標的に結合するタンパク質をコードする第2の核酸に連結された、LAG-3に結合するV単一ドメイン抗体をコードする核酸(例えば、表4に示されるような)を含む核酸コンストラクトを発現すること、および、前記宿主細胞から前記多機能タンパク質を単離することを含む、多価結合剤を作製する方法にも関する。したがって、さらなる態様は、本明細書に記載される、例えば表1に示される、LAG-3に結合する単一ドメイン抗体を含む多価結合剤にも関する。
【0128】
本明細書に記載されるLAG-3結合構成要素により構成される分子は、例えばリンカー設計を通じて、最適な標的結合のために設計することができる。これにより、機能が向上したり、投薬量が低下したりする可能性がある。本明細書に記載される機能的利点に加えて、分子の組み合わせに対する上記の多機能性分子の利点としては、限定されないが、製造、前臨床試験および臨床投与を介したより単純な経路が挙げられる。
【0129】
多価結合剤は、同じまたは異なる標的上の同じまたは異なるエピトープに対する結合特異性を有する少なくとも2つの部分を含む結合剤である。「多重特異性」結合剤は、1つ以上の抗原上の複数のエピトープを認識する結合剤である、二重特異性結合剤は、同じまたは異なる抗原上の2つの異なるエピトープを認識する結合剤である。
【0130】
したがって、一つの態様は、LAG-3に結合する単一ドメイン抗体、例えば本明細書に記載されるアミノ酸を有するもの、および1つ以上のさらなる部分、例えば第2のsdAbを含む多価結合剤に関する。例えば、結合剤は、以下にさらに記載されるように、二重特異性結合剤であり得る。一つの実施形態では、第2の部分は、治療的に関心のある抗原に結合する。一つの実施形態では、第2の部分は、抗原に結合する結合分子、例えば、抗体または抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、一本鎖Fv断片(scFv)または単一ドメイン抗体、例えばVドメイン)または抗体模倣タンパク質から選択される結合分子である。別の実施形態では、本明細書に記載される単一ドメイン抗体は、C2およびC3ドメインの一方または両方、および任意にヒンジ領域を含む、抗体Fc領域またはその断片に連結することができる。一つの好ましい実施形態では、第2の部分は単一のVドメイン抗体である。
【0131】
結合剤は、多価、例えば二価、または多重パラトピック(multiparatopic)、例えば二重パラトピックであってよい。したがって、一つの実施形態では、結合分子は、LAG-3に結合する第1のV単一ドメイン抗体V(A)およびLAG-3または別の標的抗原に結合する第2のV単一ドメイン抗体V(B)を含むかまたはそれらからなり、したがって、下記の式を有する:V(A)-L-V(B)、ここでLはリンカー、例えばペプチドリンカーである。
【0132】
各VはCDRおよびFR領域を有する。したがって、一つの実施形態では、第1のV単一ドメイン抗体V(A)および第2のV単一ドメイン抗体V(B)を有する結合分子は、下記の式を有する:FR1(A)-CDR1(A)-FR2(A)-CDR2(A)-FR3(A)-CDR3(A)-FR4(A)-L-FR1(B)-CDR1(B)-FR2(B)-CDR2(B)-FR3(B)-CDR3(B)-FR4(B)。免疫グロブリン単一可変ドメインAおよびBの順序は特に限定されないため、本明細書に記載されるポリペプチド内で、免疫グロブリン単一可変ドメインAはN末端に配置され、免疫グロブリン単一可変ドメインBはC末端に配置され得、またはその逆であってもよい。Vドメイン抗体は、通常、第1のVのC末端と第2のVのN末端とを接続するリンカーを介して接続される。
【0133】
一つの実施形態では、結合分子は二重パラトピックである。一つの実施形態では、結合分子は二価である。一つの実施形態では、結合分子は多重特異性、例えば二重特異性、三重特異性または四重特異性である。
【0134】
二価結合分子
本発明者らは、驚くべきことに、両方が単一分子でLAG-3に結合する2つのV単一ドメイン抗体を組み合わせることが有益であり、LAG-3に結合する一価のV単一ドメイン抗体と比較して効果が増大することを見出した。実施例に示されるように、2つのV単一ドメイン抗体を組み合わせる2価分子は、増大したKDでLAG-3と結合し、一価のLAG-3結合V単一ドメイン抗体と比較してEC50およびIC50値が増大している。例えば、一価のLAG-3Vは細胞に弱く結合するのに対し、二価の分子の形態とするとこれが増強される(図2、実施例8を参照されたい)。
【0135】
したがって、一つの態様では、本発明は、ヒトLAG-3に結合する2つのV単一ドメイン抗体、例えば同じ配列または異なる配列の2つの分子を含むかまたはそれらからなる分子、融合タンパク質、コンストラクトまたは結合分子を提供する。各V単一ドメイン抗体は、LAG-3上の同じエピトープまたはLAG-3上の異なるエピトープ(二重パラトピック)に結合し得る。LAG-3結合について二価であるそのような分子は、V-L-Vの形態を有し、Lはペプチドリンカーであり、任意にV-L-V-L-Xであり、Xは別の結合部分、例えば別のV単一ドメイン抗体である。したがって、そのような分子は単一ドメイン抗体のみを含み、抗体の他の部分は存在しない。必要に応じて、上記分子は、半減期延長部分等のさらなるC末端部分、および/または最大25アミノ酸のタグまたはアミノ酸配列等の追加のアミノ酸配列を含み得る。本明細書でさらに説明されるように、Lはタンパク質リンカーである。別の態様において、表1に示されるものから選択されるヒトLAG-3に結合する2つのV単一ドメイン抗体またはそれらの変異体を含むかまたはそれらからなる二価コンストラクト、タンパク質または結合分子が提供される。一つの実施形態では、ヒトLAG-3に結合する2つのV単一ドメイン抗体は、同じ配列を有する。別の実施形態では、上記結合分子は、ヒトLAG-3に結合し、異なる配列を有する2つのV単一ドメイン抗体を含んでもよく、それぞれは、表1に示されるかまたは本明細書に記載される配列またはそれらの変異体から選択される。上記分子またはコンストラクトは融合タンパク質である。
【0136】
したがって、様々な実施形態では、結合分子は、第1のV単一ドメイン抗体V(A)および第2のV単一ドメイン抗体V(A)またはV(A’)を有し、したがって、下記の式を有する:V(A)-L-V(A)またはV(A)-L-V(A’)、ここで、Lはリンカー、例えばペプチドリンカーである。V(A)およびV(A’)は、いずれもヒトLAG-3に結合する。
【0137】
一つの実施形態では、結合分子は、V1.1と連結したV1.1を含む。一つの実施形態では、結合分子は、V1.2と連結したV1.2を含み、すなわち、上記分子は、V1.2-L-V1.2と記載することができる。一つの実施形態では、結合分子は、V1.2と連結したV1.1を含む。
【0138】
本明細書に記載される二価結合分子は、当技術分野で公知の方法を使用して、および実施例に記載されるように構築することができる。
【0139】
一つの実施形態では、そのような二価融合タンパク質は、以下の1つを含む:配列番号4-(G4S)n-配列番号4、配列番号8-(G4S)n-配列番号8、配列番号4-(G4S)n-配列番号8、配列番号8-(G4S)n-配列番号4。
【0140】
別の態様は、そのような融合タンパク質をコードする核酸分子に関する。
【0141】
一つの実施形態では、上記のLAG-3に結合する2つのV単一ドメイン抗体を含む二価結合剤は、以下の特性の1つ以上またはすべてを有する:高い純度および安定性、ヒトLAG-3との結合、T細胞との結合、およびT細胞の刺激。
【0142】
二価結合剤は、実施例8に示すように、LAG-3-Fcタンパク質に強力に結合することができる。
【0143】
二価結合剤は、例えば、実施例8に記載されるように、LAG-3結合がアッセイで測定される場合、LAG-3タンパク質またはT細胞に、最大50nMまたはそれ以下、例えば、約10nM、約1nMまたは約0.1nMまたはそれ以下のEC50値で結合し得る。
【0144】
二価結合剤は、T細胞機能を増強することができる。ヒト細胞がスーパー抗原(ブドウ球菌エンテロトキシンB)および抗PD-1抗体で刺激されると、二価結合剤はIL-2等の炎症性サイトカインの分泌を増加させ、活性化を示す(実施例10a)。NFATシグナル伝達経路を介してT細胞シグナル伝達を測定するレポーター細胞は、LAG-3が2価分子で遮断されると刺激され、少なくとも3nMのIC50値を生成する(実施例9b)。
【0145】
例えば、二価結合剤は、サイズ排除クロマトグラフィーで測定すると、40℃で加熱した後でも95%以上の純度を保持する。
【0146】
多重特異性結合剤
特定の態様では、LAG-3に結合し、LAG-3とそのリガンドの1つ以上との機能的相互作用を遮断し、本明細書に記載される1つ以上のV sdAbを含み、別の標的にも結合する多重特異性結合剤が提供される。多重特異性結合剤は、少なくとも2つの異なる標的に結合する、すなわち、少なくとも二重特異性である。
【0147】
二重特異性抗体形態は、当技術分野で一般に知られている。通常、Fan et al. (Journal of Hematology & Oncology (2015) 8:130)において説明されているように、二重特異性抗体は2つのカテゴリーに分けられる:免疫グロブリンG(IgG)様分子および非IgG様分子。IgG様bsAbsは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、および抗体依存性細胞貪食(ADCP)等のFc介在エフェクター機能を保持している。以下に説明するように、好ましい実施形態では、本発明の二重特異性分子はFcドメインを有さない。
【0148】
本明細書において提供される多重特異性結合剤は、本明細書に記載されるLAG-3に対する結合特異性を有し、かつ、例えば表1から選択される少なくとも1つのV単一ドメイン抗体、およびLAG-3ではない第2の抗原との第2の結合特異性を有する少なくとも1つの第2の結合分子を含む。結合実体は、ペプチドリンカー等のリンカーによって結合される。前記第2の結合分子は、抗体、抗体断片または抗体模倣物から選択され得る。一つの実施形態では、前記抗体断片は、F(ab’)、Fab、Fv、sFvまたはドメイン抗体から選択される。一つの好ましい実施形態では、抗体断片は、V単一ドメイン抗体である。したがって、好ましい実施形態は、LAG-3に対する結合特異性を有する1つのV単一ドメイン抗体が第2のV単一ドメイン抗体に連結されている結合分子に関する。
【0149】
したがって、一つの態様では、本発明者らは、下記の式を有する結合分子を提供する:V(A)-L-V(B)、ここで、V(A)は、LAG-3に結合するV単一ドメイン抗体であり、V(B)は、第2の標的に結合するV単一ドメイン抗体であり、Lはリンカー、例えばペプチドリンカーである。
【0150】
一つの実施形態では、結合剤は二重特異性であり、本明細書に記載されるLAG-3に対する結合特異性を有し、かつ、例えば表1に示されるV単一ドメイン抗体から選択される単一ドメイン抗体、および第2の結合特異性を有する第2の結合分子を含む。
【0151】
別の態様では、本発明者らは、特に上記の二価分子の項に記載されているように、第2の標的に結合するさらなる部分と結合した、本明細書に記載されるLAG-3に結合する2つ以上のV単一ドメイン抗体を含む上記の二重特異性結合剤を提供する。第3の部分は、V単一ドメイン抗体から選択することができる。これは下記の式を有する:V(A’)-L1-V(A’)-L2-V(B)、ここで、L1およびL2はリンカー、例えばペプチドリンカーである。L1およびL2は同じリンカーであっても異なるリンカーであってもよい。
【0152】
一つの実施形態では、第2の結合分子は、免疫調節剤、チェックポイントモジュレーター、T細胞活性化に関与する薬剤、腫瘍微小環境修飾因子(TME)または腫瘍特異的標的に結合する。
【0153】
例えば、免疫調節剤は、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、TIM-3、PD-1、CEACAM、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4またはTGFRβの1つ以上の阻害剤から選択される免疫チェックポイント分子の阻害剤であり得る。別の実施形態では、免疫調節剤は、IL-2、IL-12、OX40、OX40L、CD2、CD3、CD27、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD30、CD40、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3、B7-H4またはCD83リガンド、CD3、CD8、CD28、CD4またはICAM-1の1つ以上のアゴニストから選択される共刺激分子の活性化因子であり得る。
【0154】
例えば、本発明者らは、PD-1シグナル伝達を遮断するV単一ドメイン抗体に連結されたLAG-3に結合する2つのV単一ドメイン抗体を含む多重特異性結合剤を提供する。そのような形態は、一価の実体と比較して効力が増強される。
【0155】
PD-1およびLAG-3の両方の遮断は、特にPD-1およびLAG-3の両方がT細胞の活性化を調節することを考えると、癌治療のための有望な組み合わせ戦略である。したがって、一つの態様では、本発明者らは、下記の式を有する結合分子を提供する:V(A)-L-V(B)または好ましくはV(A)-L-V(A)-L-V(B)、ここで、V(A)はLAG-3に結合するV単一ドメイン抗体であり、V(B)はPD-1に結合するV単一ドメイン抗体であり、Lはリンカー、例えばペプチドリンカーである。
【0156】
免疫チェックポイントPD-1およびLAG-3を同時に標的とすることにより、本開示の結合剤は、強力な抗腫瘍および/または抗感染応答を生じ、抗腫瘍リンパ球細胞活性を増大させ、抗腫瘍免疫を増強し、それにより少なくとも相加的または相乗的な抗腫瘍結果をもたらす。
【0157】
実際、本発明者らは、LAG-3に結合するV単一ドメイン抗体と、PD-1に結合するV単一ドメイン抗体とを二重または多重特異性融合タンパク質において組み合わせることによって、一価の実体と比較して機能が増強されることを示している。さらに、他で説明されているように、併用療法から生じる普遍的な遮断とは対照的に、本発明の二重特異性分子は、LAG-3およびPD-1の両方を発現する細胞に結合する。本発明の二重特異性分子は、そのような二重陽性細胞に選択的に結合および活性化し、かつ、PD-1陽性細胞、すなわち、それらの表面上にPD-1のみを提示する細胞の遮断を減少させる。したがって、本発明者らは、LAG-3と結合するV単一ドメイン抗体、およびPD-1と結合するV単一ドメイン抗体を含む二重または多重特異性分子を提供する。したがって、好ましい態様では、本発明は、LAG-3に結合する少なくとも1つのV単一ドメイン抗体、およびPD-1に結合する少なくとも1つのV単一ドメイン抗体を含み、同じ細胞上のLAG-3およびPD-1と結合し、Fc領域等の他の抗体断片を含まない結合剤を提供する。
【0158】
これらの分子は、野生型ヒトPD-1(UniProtアクセッション番号Q15116、GenBankアクセッション番号U64863)に特異的に結合する。野生型ヒトPD-1のアミノ酸配列を以下に示す(配列番号12)。
【0159】
MQIPQAPWPVVWAVLQLGWRPGWFLDSPDRPWNPPTFSPALLVVTEGDNATFTCSFSNTSESFVLNWYRMSPSNQTDKLAAFPEDRSQPGQDCRFRVTQLPNGRDFHMSVVRARRNDSGTYLCGAISLAPKAQIKESLRAELRVTERRAEVPTAHPSPSPRPAGQFQTLVVGVVGGLLGSLVLLVWVLAVICSRAARGTIGARRTGQPLKEDPSAVPVFSVDYGELDFQWREKTPEPPVPCVPEQTEYATIVFPSGMGTSSPARRGSADGPRSAQPLRPEDGHCSWPL
【0160】
特に明記しない限り、本明細書で使用されるPD-1という用語は、ヒトPD-1を指す。「Programmed Death 1」、「Programmed Cell Death 1」、「タンパク質PD-1」、「PD-1」、「PD-1」、「PDCD1」、「hPD-1」および「hPD-1」という用語が互換的に使用され、ヒトPD-1の変異体、アイソフォーム、種ホモログが含まれる。
【0161】
「PD-1結合分子/タンパク質/ポリペプチド/薬剤」、「PD-1抗原結合分子タンパク質/ポリペプチド/薬剤」、「抗PD-1単一ドメイン抗体」、「抗PD-1単一免疫グロブリン可変ドメイン」、「抗PD-1重鎖のみ抗体」または「抗PD-1抗体」という用語はすべて、ヒトPD-1抗原に特異的に結合することができる分子を指す。結合反応は、例えば、無関係な特異性の抗体を使用するネガティブ対照試験を参照して、標準的な方法によって示され得る。「PD-1結合分子/薬剤」という用語は、PD-1結合タンパク質を含む。
【0162】
二重または多重特異性融合タンパク質において使用されるPD-1結合V単一ドメイン抗体は、下記の特性の1つ以上を有する::高い親和性でのヒトPD-1との結合、PD-1とPD-L1および/またはPD-L2との相互作用の調節、PD-1とPD-L1および/またはPD-L2との機能的相互作用の遮断、および/またはT細胞活性化の刺激または増強。
【0163】
したがって、別の態様では、本発明は、本明細書に記載されるヒトLAG-3に結合する単一ドメイン抗体を含み、ヒトPD-1に結合する単一ドメイン抗体を含み、本明細書に記載されるようにPD-1とPD-L1との相互作用および/またはPD-1とPD-L2との相互作用を遮断し、かつ/またはT細胞活性化を刺激または増強する結合分子を提供する。
【0164】
二重または多重特異性融合タンパク質において使用されるPD-1結合V単一ドメイン抗体は、以下の特性の1つ以上またはすべてを有する:
(a)ヒトPD-1に結合する;
(b)MLRアッセイでIL-2分泌を増大させる;
(c)ヒトPD-1およびカニクイザルPD-1に結合する;
(d)マウスPD-1に結合しない;
(e)PD-L1および/またはPD-L2とPD-1との結合を阻害;および/または
(f)in vivoで腫瘍細胞の増殖を阻害する。
【0165】
PD-1結合V単一ドメイン抗体は、高い親和性でヒトPD-1と特異的に結合し得、KDは、表面プラズモン共鳴(生体分子相互作用分析、BIAcore(登録商標)分析によって測定される10-8M、10-9M、10-10M、10-11Mまたは10-12M等の少なくとも約10-8M~10-12Mである。PD-1結合V単一ドメイン抗体は、機能アッセイで決定される10-8M~10-9Mの範囲のPD-1阻害のIC50値を有し得る。実施例に示されるように、PD-1陽性細胞に対する二重特異性コンストラクトの効力は、モノクローナル抗体よりも30倍以上低い。
【0166】
いくつかの実施形態では、V単一ドメイン抗体は、PD-1とPD-L1、PD-L2との結合を遮断し、かつ/またはT細胞活性化を刺激または増強し、表5から選択される。これらのVは、上記の特性a)~f)の1つ以上またはすべてを有することが示されている。
【0167】
PD-1に結合するV単一ドメイン抗体は、参照により本明細書に組み入れられるWO2018127710に開示されているものから選択することができる。
【0168】
【表5】






【0169】
これらは、配列番号128~242を有する核酸によってコードされる。
【0170】
一つの実施形態では、PD-1に結合するVは、上記に示されるV2.63、2.77または2.92(配列番号104)、またはそれらと少なくとも75%、例えば80%、85%、90%または95%の相同性または同一性を有する配列から選択される。一つの実施形態では、VはV2.63である。一つの実施形態では、VはV2.77である。一つの実施形態では、VはV2.92である。
【0171】
一つの態様では、本発明者らは、LAG-3に結合する第1のV単一ドメイン抗体およびPD-1に結合する第2のV単一ドメイン抗体を有する二重または多重特異的分子、すなわち第1の単一ドメイン抗体が下記の特性の1つ以上を有する式V(A)-L-V(B)の第2の単一ドメイン抗体と連結されている分子を提供する:
a)同じ細胞のLAG-3およびPD-1に結合する;
b)同じ細胞で発現したPD-1およびLAG-3を、表10に示すように、より大きな二重特異性抗体よりも大きな効力で物理的近接状態にする;
c)LAG-3またはPD-1V単独よりも大きな蛍光強度のメジアンで、刺激されたT細胞に結合する;
d)個々のユニットの組み合わせよりも高く、PD-1およびLAG-3に対するモノクローナル抗体の組み合わせよりも高いレベルで、スーパー抗原で刺激されたヒトPBMCのIL-2を刺激する;
e)臨床PD-1モノクローナル抗体よりも大きくマウスモデルにおける腫瘍増殖を阻害する;
f)PD-1V単独およびLAG-3遮断単独よりも大きく抗原特異的CD8+T細胞の増殖を誘導する;
g)PD-1モノクローナル抗体よりも大きく患者のCD4およびCD8 T細胞の増殖を誘導する;
h)組み合わせに応答しない細胞における抑制性シグナル伝達を著しく減少させる;
i)PD-1が存在する場合に実質的により高い親和性でLAG-3に結合する;
j)LAG-3が存在する場合に実質的により高い親和性でPD-1に結合する:
k)PD-1抗体よりもPD1+単一陽性細胞におけるPD-1遮断能は低いが、LAG-3+PD-1+細胞のターゲティングが強化される;および/または
l)ex vivo系でT細胞を回復することができる(例8を参照されたい)。
【0172】
別の態様では、本発明者らは、LAG-3に結合する1つ以上のV単一ドメイン抗体を含み、前記V単一ドメイン抗体が本明細書に記載されているようにPD-1に結合するV単一ドメイン抗体に連結されている二重または多重特異性結合剤を提供する。一つの実施形態では、PD-1に結合するV単一ドメイン抗体は、表5に列挙されるV単一ドメイン抗体の1つから選択される。一つの実施形態では、二重または多重特異性結合剤は、上記で列挙されたa)~f)の特性の1つ以上を有する。
【0173】
いくつかの実施形態では、PD-1結合V単一ドメイン抗体は、ヒトPD-1に結合する上記の単一Vドメイン抗体のいずれかの変異体である。変異体という用語は、本明細書の他の場所で定義されている。例えば、変異体はV2.1の変異体であり、1~20個、例えば1~10個または1~5個のアミノ酸置換を有する。別の実施形態では、変異体は、Vの変異体であり、それと少なくとも75%、例えば、80%、85%、90%または95%の配列相同性または同一性を有する。
【0174】
一つの実施形態では、二重特異性分子は、本明細書に記載されるようにLAG-3に結合する1つの単一ドメイン抗体を含む。別の実施形態では、二重特異性分子は、本明細書に記載されるように、LAG-3に結合する2つの単一ドメイン抗体を含む。
【0175】
別の態様では、本発明者らは、LAG-3に結合する2つの単一ドメイン抗体およびPD-1に結合する1つの単一ドメイン抗体を含む、PD-1およびLAG-3に結合する二重特異性結合剤も提供する。一つの実施形態では、LAG-3に結合する2つの単一ドメイン抗体は、上記の通りである。一つの実施形態では、PD-1に結合する単一ドメイン抗体は、上記の通りである。本発明者らは、驚くべきことに、LAG-3に結合する2つの単一ドメイン抗体を含むそのような結合剤において、LAG-3に結合する1つの単一ドメイン抗体を含む結合剤と比較して効力が増強されていることを実証した。これは、IL-2放出の刺激の増強を示す図3cにおいて見出すことができる。二重または多重特異性分子においてPD-1に結合する単一ドメイン抗体に連結されている、LAG-3に結合する2つの単一ドメイン抗体を有することにより、LAG-3に結合する1つの単一ドメイン抗体を有する結合剤と比較して、少なくとも相加効果が得られる。したがって、一つの実施形態では、分子は下記の式を有し:V(A)-L1-V(A)-L2-V(B)、必要に応じてさらなるC末端部分および/または配列を含む。したがって、LAG-3に結合する同じ配列の2つの単一ドメイン抗体およびPD-1に結合する1つの単一ドメイン抗体がある。例示的な分子は以下の通りである:V1.1-L-V1.1-L-V2.63;V1.1-L-V1.1-L-V2.63;V2.77-L-V1.1-L-V1.1;およびV1.2-L-V1.2-L-V2.92。一つの実施形態では、分子はV1.2-L-V1.2-L-V2.92である。Lは、本明細書でさらに定義されるリンカーである。
【0176】
一つの実施形態では、分子は、V1.1-6GS-V1.1-6GS-V2.63;V1.1-6GS-V1.1-9GS-V2.63;V2.77-9GS-V1.1-6GS-V1.1;およびV1.2-6GS-V1.2-6GS-V2.92から選択される。一つの実施形態では、分子は、V1.2-6GS-V1.2-6GS-V2.92(配列番号259)である。
【0177】
別の実施形態では、上記のようにLAG-3およびPD-1に同時に結合する二重特異性結合剤、すなわち融合タンパク質は、さらなる結合分子を含む。したがって、結合剤は、三重特異性または四重特異性であり得る。追加の特異性も想定される。上記の分子の任意の組み合わせは、多重特異性結合剤、例えば、LAG-3に結合する単一ドメイン抗体ならびに第2および第3の結合特異性を含む三重特異性結合剤で作製することができる。例えば、以下に詳細に説明するように、第3の結合特異性は、ヒト血清アルブミン(HSA)に対するものであり得る。したがって、結合剤は、下記の構成用よそを含み得る:本明細書に記載され、例えば、表1から選択される、LAG-3に結合する1つまたは2つのV単一ドメイン抗体、PD-1に結合するV単一ドメイン抗体、およびHSAに結合するV単一ドメイン抗体。実体(entity)は、本明細書において説明されるように、リンカーを介して連結される。実体の順序は自由であってよく、例えば、PD-1に結合するV単一ドメイン抗体は、C末端またはN末端に配置することができる。
【0178】
したがって、別の態様では、本発明者らは、第3の標的に結合するさらなる部分を含む、上記のような多重特異性結合剤を提供する。前記さらなる部分は、V単一ドメイン抗体であり得る。これは、例えば、下記の式の1つを有する:V(C)-L1-V(A)-L2-V(B)、V(A)-L1-V(B)-L2-V(C)、V(A’)-L1-V(A’)-L2-V(B)-L3-V(C)またはV(C)-L1-V(A’)-L2-V(A’)-L3-V(B)。例えば、V(A)およびV(A’)はどちらもLAG-3に結合するV単一ドメイン抗体であり、V(B)はPD-1に結合するV単一ドメイン抗体であり、V(C)はHSAに結合するV単一ドメイン抗体である。
【0179】
好ましい態様は、単一ドメイン抗体を含むかまたはそれからなる分子、すなわち他の抗体部分を有さない分子に関するが、本発明は、LAG-3に結合する2つの結合部分および別の標的、例えばPD-1に結合する1つの結合部分を有する分子にも及ぶ。重要なことに、本発明者らは、LAG-3に高い親和性で結合する二重特異性分子がLAG-3およびPD-1の両方を発現する細胞に結合し(favour)、PD-1単一陽性細胞への結合を減少させることを示した。
【0180】
さらに別の態様では、本発明者らは、本明細書に記載される結合剤を投与することにより、免疫PD-1およびLAG-3を同時に阻害する方法を提供する。
【0181】
半減期を延長する分子または他の部分とのコンジュゲート
一つの実施形態では、さらなる部分(例えば、第2または第3、第4等の部分)は、結合分子の半減期を延ばすのに役立ち得る。さらなる部分は、タンパク質、例えば、血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン(HSA)またはマウス血清アルブミン(MSA)に結合する抗体またはその一部を含み得る。さらなる部分は、血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン(HSA)またはマウス血清アルブミン(MSA)に結合するVドメインを含み得る。
【0182】
さらなる部分は、血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン(HSA)、またはHSA C34S等のその変異体を含み得る。半減期延長部分は、C末端、N末端、または結合分子内の他の場所、例えば連結されたV単一ドメイン抗体の「鎖」に位置し得る。
【0183】
一つの実施形態では、本明細書に記載される抗LAG-3単一ドメイン抗体または多価結合剤は、検出可能なまたは機能的な標識で標識される。標識は、限定されないが、蛍光色素分子、蛍光物質、放射性標識、酵素、化学発光物質、核磁気共鳴活性標識または光増感剤を含む、シグナルを生成するかまたは生成を誘導し得る任意の分子であり得る。したがって、結合は、蛍光または発光、放射能、酵素活性または吸光度を検出することによって検出および/または測定することができる。
【0184】
さらに別の実施形態では、本明細書に記載される抗LAG-3単一ドメイン抗体または多価結合剤は、薬物、酵素または毒素等の少なくとも1つの治療部分に結合される。一つの実施形態では、治療部分は毒素、例えば細胞毒性放射性核種、化学毒素またはタンパク質毒素である。
【0185】
別の態様では、本明細書に記載される抗LAG-3単一ドメイン抗体または多価結合剤は、例えば化学修飾、特にPEG化、またはリポソームへの組み込み、または血清アルブミンタンパク質の使用により、半減期を増加させるように修飾される。
【0186】
半減期は、本明細書に記載される対応するV単一ドメイン抗体の半減期よりも少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、例えば少なくとも10倍または20倍超長くなり得る。例えば、半減期の増加は、本明細書に記載される対応するV単一ドメイン抗体と比較して、1時間超長く、好ましくは2時間超長く、より好ましくは6時間超長く、例えば12時間より長く、さらには24、48または72時間超長くあり得る。
【0187】
リンカー
多価結合剤では、サブユニットは化学リンカーまたはペプチドリンカーを介して連結することができる。結合は、共有的または非共有的であり得る。好ましい共有結合は、ペプチド結合を介したものである。他に記載されているように、多価結合剤は、好ましくはタンパク質融合物の形態である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多価結合剤、2つ以上の結合分子は、例えば、ポリペプチドリンカー(L)等のリンカーによって接続される。適切なリンカーとしては、例えば、(GlySer)n等のGS残基を有するリンカーを含み、ここで、n=1~20、例えば1~12、例えば1~12、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12である。一つの実施形態では、n=5、6、8または12である。
【0188】
例示的なリンカーは、2GS、4GS、6GS、9GS、すなわち、それぞれ配列番号243、244、245、246、247、248、249または250である。
【0189】
他のリンカーは当業者に知られているであろう。
【0190】
単一ドメイン抗体を作製するための例示的な方法
本明細書に記載される単一ドメイン抗体は、実施例に記載されるように組換えLAG-3抗原で刺激されると重鎖のみの抗体を発現するトランスジェニックげっ歯類から得られるまたは得ることができる。トランスジェニックげっ歯類、例えばマウスは、好ましくは内因性抗体遺伝子を発現する能力が低下している。したがって、一つの実施形態では、げっ歯類は、内因性軽鎖および/または重鎖抗体遺伝子を発現する能力が低下している。したがって、げっ歯類は、内因性κおよびλ軽鎖、および/または重鎖抗体遺伝子の発現を遮断するための改変を含み得、その結果、例えば、以下でさらに説明されるように、機能的軽鎖および/または重鎖が生成されない。本発明のsdAbを生成するための例示的な方法を以下に記載する。
【0191】
ヒトLAG-3に結合することができるヒト重鎖のみ抗体を産生するための方法は、
a)再配列されていないヒト重鎖V遺伝子を含む核酸コンストラクトを発現し、機能的な内因性軽鎖または重鎖を産生することができないトランスジェニックげっ歯類をLAG-3抗原で免疫すること、
b)ヒト重鎖のみ抗体を単離すること
を含む。
【0192】
さらなる工程は、例えば、前記マウスからのVドメイン配列を含む配列のライブラリーを生成し、前記ライブラリーからVドメイン配列を含む配列を単離することにより、前記重鎖のみ抗体からVドメインを単離することを含み得る。
【0193】
ヒトLAG-3に結合することができる単一Vドメイン抗体を産生するための方法は、
a)再配列されていないヒト重鎖V遺伝子を含む核酸コンストラクトを発現し、機能的な内因性軽鎖または重鎖を産生することができないトランスジェニックげっ歯類をLAG-3抗原で免疫すること、
b)前記マウスからのVドメイン配列を含む配列のライブラリーを生成すること、 c)前記ライブラリーからVドメイン配列を含む配列を単離すること
を含む。
【0194】
さらなる工程は、例えば、実施例に示されるような機能アッセイを使用することによって、ヒトLAG-3に結合する単一のVドメイン抗体または重鎖のみ抗体を同定することを含み得る。
【0195】
本明細書に記載されるポリペプチド、核酸、宿主細胞、生成物(product)および組成物を、in vitro発現ライブラリーを用いて調製または生成する方法は、以下の工程を含み得る:
a)アミノ酸配列をコードする核酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーを提供する工程;および
b)LAG-3に結合することができる/LAG-3に親和性を有するアミノ酸配列について、前記セット、コレクションまたはライブラリーをスクリーニングする工程;および
c)LAG-3に結合することができる/LAG-3に親和性を有するアミノ酸配列を単離する工程。
【0196】
上記の方法において、スクリーニングを容易にする等のために、アミノ酸配列のセット、コレクションまたはライブラリーを、ファージ、ファージミド(phagemid)、リボソームまたは適切な微生物(酵母等)にディスプレイしてもよい。アミノ酸配列(のセット、コレクションまたはライブラリー)をディスプレイおよびスクリーニングするための適切な方法、技術および宿主生物は、当業者には明らかであろう(例えば、Phage Display of Peptides and Proteins: A Laboratory Manual, Academic Press; 1st edition (October 28, 1996) Brian K. Kay, Jill Winter, John McCaffertyを参照されたい)。
【0197】
ライブラリー、例えばファージライブラリーは、抗原特異的な重鎖のみ抗体を発現する細胞または組織を単離し、単離された細胞または組織に由来するmRNAからVドメインをコードする配列をクローニングし、ライブラリーを使用してコードされたタンパク質をディスプレイすることによって生成される。Vドメインは、細菌、酵母または他の発現系で発現させることができる。
【0198】
別の態様はまた、ヒトV生殖系列配列のアミノ酸生成物またはそれに由来するアミノ酸生成物を含むLAG-3に結合するVドメインを含む、単離されたV単一ドメイン抗体または単離された重鎖のみ抗体に関する。重鎖のみ抗体は完全にヒトの物であってもよく、マウス配列を含んでいてもよい。
【0199】
げっ歯類という用語は、マウスまたはラットに関する。
【0200】
一つの実施形態では、げっ歯類はマウスである。マウスは、非機能的内因性λ軽鎖遺伝子座を含み得る。したがって、マウスは機能的内因性λ軽鎖を産生しない。一つの実施形態では、λ軽鎖遺伝子座は、部分的または完全に欠失しているか、または挿入、逆位、組換えイベント、遺伝子編集または遺伝子サイレンシングによって機能しなくなっている。例えば、少なくとも定常領域遺伝子C1、C2およびC3は、上記のように挿入または他の改変により削除されるかまたは機能しないようにすることができる。一つの実施形態では、遺伝子座は、マウスが機能的なλ軽鎖を産生しないように機能的にサイレンシングされる。
【0201】
さらに、マウスは、非機能的内因性κ軽鎖遺伝子座を含み得る。したがって、マウスは機能的内因性κ軽鎖を産生しない。一つの実施形態では、κ軽鎖遺伝子座は、部分的または完全に欠失しているか、または挿入、逆位、組換えイベント、遺伝子編集または遺伝子サイレンシングによって機能しなくなっている。一つの実施形態では、遺伝子座は、マウスが機能的なκ軽鎖を産生しないように機能的にサイレンシングされる。
【0202】
機能的にサイレンシングされた内因性λおよびκL鎖遺伝子座を有するマウスは、例えば、WO2003/000737に開示されているように作製することができ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0203】
さらに、マウスは非機能的内因性重鎖遺伝子座を含み得る。したがって、マウスは機能的内因性重鎖を産生しない。一つの実施形態では、重鎖遺伝子座は、部分的または完全に欠失しているか、または挿入、逆位、組換えイベント、遺伝子編集または遺伝子サイレンシングによって機能しなくなっている。一つの実施形態では、遺伝子座は、マウスが機能的な重鎖を産生しないように機能的にサイレンシングされる。
【0204】
例えば、WO2004/076618(参照により全体が本明細書に組み入れられる)に記載されているように、8つのすべての内因性重鎖定常領域免疫グロブリン遺伝子(μ、δ、γ3、γ1、γ2a、γ2b、εおよびα)はマウスに存在しないか、またはそれらが機能しない程度に部分的に存在せず、または遺伝子δ、γ3、γ1、γ2a、γ2bおよびεは存在せず、かつ隣接遺伝子μおよびαが、それらが機能しない程度に部分的に存在せず、または遺伝子μ、δ、γ3、γ1、γ2a、γ2b、εおよびαが存在せず、かつαが、それが機能しない程度に部分的に存在せず、またはδ、γ3、γ1、γ2a、γ2b、εおよびαが存在せず、かつμが、それが機能しない程度に部分的に存在しない。部分的に欠失しているとは、機能的な内因性遺伝子産物が遺伝子座によってコードされない、すなわち、機能的な生成物が遺伝子座から発現しない程度まで、内因性遺伝子座遺伝子配列が、例えば挿入によって削除または破壊されていることを意味する。別の実施形態では、遺伝子座は機能的にサイレンシングされる。
【0205】
一つの実施形態では、マウスは、非機能的内因性重鎖遺伝子座、非機能的内因性λ軽鎖遺伝子座、および非機能的内因性κ軽鎖遺伝子座を含む。したがって、マウスは機能的内因性軽鎖または重鎖を産生しない。したがって、マウスはトリプルノックアウト(TKO)マウスである。
【0206】
トランスジェニックマウスは、異種、好ましくはヒトの重鎖遺伝子座を発現するためのベクター、例えば酵母人工染色体(YAC)を含み得る。YACは、酵母の非常に大きなDNA挿入物のクローニングに使用することができるベクターである。天然酵母染色体(自律複製配列(ARS)、セントロメア(CEN)および2つのテロメア(TEL))のように動作するために不可欠な3つのシス作用構造要素のすべてを含むだけでなく、大きなDNA挿入物を受容する能力により、染色体のような安定性および酵母細胞における伝達の忠実性に必要な最小サイズ(150kb)が達成され得る。YACの構築および使用は、当技術分野でよく知られている(例えば、Bruschi, C.V. and Gjuracic, K. Yeast Artificial Chromosomes, Encyclopedia of Life Sciences, 2002 Macmillan Publishers Ltd, Nature Publishing Group)。
【0207】
例えば、YACは、C1ドメイン、マウスエンハンサーおよび調節領域を欠くマウス免疫グロブリン定常領域遺伝子と組み合わせて、再配列されていないヒトV、DおよびJ遺伝子を多数含み得る。ヒトのV、DおよびJ遺伝子はヒトのV、DおよびJ遺伝子座であり、それらは完全にヒトのものである再配列されていない遺伝子である。
【0208】
当技術分野で知られている別の方法を、C1ドメイン、マウスエンハンサーおよび調節領域を欠くマウス免疫グロブリン定常領域遺伝子と組み合わせて、内因性マウスまたはラット免疫グロブリン遺伝子の欠失または不活化、ならびにヒトV、DおよびJ遺伝子の導入に使用することができる。
【0209】
トランスジェニックマウスは、実施例に示されている標準的な技術に従って作製することができる。トランスジェニックマウスを作製するための2つの最も特徴的な経路は、受精直後の卵母細胞への遺伝物質の前核マイクロインジェクション、または桑実胚または胚盤胞期胚への安定的にトランスフェクトされた胚性幹細胞の導入である。遺伝物質がどのように導入されるかに関係なく、処理された胚は偽妊娠した雌のレシピエントに移され、妊娠が継続し、トランスジェニックの候補子が生まれる。
【0210】
これらの広範な方法の主な違いは、ESクローンをトランスジェニック動物の作製に使用する前に、広範囲にわたってスクリーニングできることである。対照的に、前核マイクロインジェクションは、導入後に宿主ゲノムに組み込まれる遺伝物質に依存しており、一般的に言えば、導入遺伝子の正常な取り込みは、子が生まれるまで確認することができない。
【0211】
導入遺伝子の組み込みが成功するかどうかを補助および決定するための、当技術分野で知られている多くの方法がある。トランスジェニック動物は、コンストラクトのゲノムへのランダムな組み込み、部位特異的組み込み、または相同組換えを含む複数の手段によって生成することができる。薬剤耐性マーカー(ポジティブ選択)、リコンビナーゼ、組換え媒介カセット交換、ネガティブ選択技術、および組換えの効率を向上させるヌクレアーゼの使用を含む、導入遺伝子の組み込みとそれに続く改変の促進と選択の両方に使用できるさまざまなツールと技術がある。これらの方法のほとんどは、ES細胞の改変において一般的に使用される。しかしながら、これらの技術のいくつかは、前核インジェクションを介して媒介される遺伝子組換えを増強するため有用である場合がある。
【0212】
さらなる改良により、所望のバックグラウンド内でトランスジェニック系統をより効率的に生成することができる。上記のように、好ましい実施形態では、内因性マウス免疫グロブリン発現をサイレンシングして、導入された導入遺伝子を、創薬に利用できる重鎖のみのレパートリーの発現に単独で使用できるようにする。遺伝子操作されたマウス、例えば、すべての内因性免疫グロブリン遺伝子座(マウス重鎖、マウスκ鎖およびマウスλ鎖)がサイレンシングされたTKOマウスを、上記のように使用することができる。導入された導入遺伝子のこのTKOバックグラウンドへの導入は、従来の育種法またはIVF工程を組み込んでプロセスを効率的にスケーリングすることで実現できる。しかしながら、遺伝子組み換え手順の間にTKOバックグラウンドを含めることも可能である。例えば、マイクロインジェクションの場合、卵母細胞はTKOドナーに由来する。同様に、TKO胚からのES細胞は、遺伝子導入で使用するために派生させることができる。
【0213】
免疫グロブリン遺伝子座を発現するために導入遺伝子が導入されたトリプルノックアウトマウスは、本明細書においてTKO/Tgと呼ばれる。一つの実施形態では、マウスは、その全体が本明細書に組み入れられるWO2016/062990に記載されている通りである。
【0214】
例示的な医薬組成物
別の態様では、本発明の結合分子、例えば、本明細書に開示されるLAG-3に結合する単一ドメイン抗体、またはLAG-3およびPD-1の両方に結合する本明細書に記載される二重特異性分子を含む、LAG-3に結合する単一ドメイン抗体を含む本明細書に記載される結合分子、および任意に薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が手供される。本明細書に記載される単一ドメイン抗体、結合分子または医薬組成物は、限定されないが、経口、局所、非経口、舌下、直腸、膣内、眼内、鼻腔内、肺内、皮内、硝子体内、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、脳内、経皮、経粘膜を含む任意の簡便な経路、吸入、または特に耳、鼻、目または皮膚への局所的、または吸入により投与され得る。別の実施形態では、送達は、薬物をコードする核酸、例えば本発明の分子をコードする核酸の送達である。
【0215】
非経口投与としては、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、鼻腔内、直腸、膀胱内、皮内、局所または皮下投与が挙げられる。好ましくは、組成物は非経口的に投与される。
【0216】
薬学的に許容可能な担体またはビヒクルは粒子状であり得、その結果、組成物は、例えば、錠剤または粉末形態である。「担体」という用語は、本発明の薬物抗体コンジュゲートと共に投与される希釈剤、アジュバントまたは賦形剤を指す。そのような医薬担体は、水および油等の液体であり得、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等の石油、動物、植物または合成起源のものが挙げられる。担体は、生理食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイドシリカ、尿素等であり得る。さらに、補助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤および着色剤を使用することができる。一つの実施形態では、動物に投与される場合、本発明の単一ドメイン抗体または組成物および薬学的に許容可能な担体は無菌である。本発明の薬物抗体コンジュゲートが静脈内投与される場合、水は好ましい担体である。生理食塩水およびデキストロース水溶液およびグリセロール溶液も、特に注射可能な溶液のための液体担体として使用することができる。適切な医薬担体には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等の賦形剤も含まれる。本発明の組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含むこともできる。
【0217】
医薬組成物は、液体の形態、例えば、溶液、シロップ、溶液、乳濁液または懸濁液の形態であり得る。液体は、経口投与、または注射、注入(例えば、静脈内注入)または皮下による送達に有用であり得る。
【0218】
経口投与が意図される場合、組成物は固体または液体の形態であり得、半固体、半液体、懸濁液およびゲルの形態は、本明細書において固体または液体のいずれかと見なされる形態に含まれる。
【0219】
経口投与用の固体組成物として、組成物は、粉末、顆粒、圧縮錠剤、丸薬、カプセル、チューインガム、ウエハース等に製剤化することができる。そのような固体組成物は、典型的には1つ以上の不活性希釈剤を含む。さらに、下記の1つ以上が存在していてもよい:カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロースまたはゼラチン等のバインダー;デンプン、ラクトースまたはデキストリン等の賦形剤;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、コーンスターチ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素等の流動促進剤;ショ糖またはサッカリン等の甘味料;ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香料等の香料;および着色剤。組成物がカプセル(例えば、ゼラチンカプセル)の形態である場合、上記のタイプの材料に加えて、ポリエチレングリコール、シクロデキストリンまたは脂肪油等の液体担体を含むことができる。
【0220】
経口投与が意図される場合、組成物は、1つ以上の甘味料、保存料、染料/着色剤および風味増強剤を含むことができる。注射による投与のための組成物には、1つ以上の界面活性剤、防腐剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、緩衝剤、安定剤および等張剤も含むことができる。
【0221】
組成物は、1つ以上の投薬単位の形をとることができる。
【0222】
特定の実施形態では、治療を必要とする領域に局所的に、または静脈内注射もしくは注入によって組成物を投与することが望ましい場合がある。
【0223】
特定の疾患または症状の治療において有効/活性である、本明細書に記載される単一ドメイン抗体または結合分子の量は、疾患または症状の性質に依存し、標準的な臨床技術によって決定され得る。さらに、in vitroまたはin vivoアッセイを任意で使用して、最適な投与量範囲の特定に役立てることができる。組成物に使用される正確な用量は、投与経路および疾患の重症度にも依存し、開業医の判断によって各患者の状況に従って決定されるべきである。年齢、体重、性別、食事、投与時間、排泄率、宿主の状態、薬物の組み合わせ、反応感受性および疾患の重症度等の要因が考慮される。
【0224】
典型的には、量は、組成物の重量に対して本発明の単一ドメイン抗体が少なくとも約0.01%である。経口投与が意図される場合、この量は、組成物の約0.1重量%~約80重量%の範囲で変動し得る。好ましい経口組成物は、組成物の重量に対して本発明のsdAbを約4%~約50%を含み得る。
【0225】
組成物は、非経口投与単位が本発明の単一ドメイン抗体を約0.01重量%~約2重量%含むように調製することができる。
【0226】
注射による投与の場合、組成物は、典型的には動物の体重に対して約0.1mg/kg~約250mg/kg、好ましくは動物の体重に対して約0.1mg/kg~約20mg/kg、より好ましくは動物の体重に対して約1mg/kg~約10mg/kg含み得る。一つの実施形態では、組成物は、約1~30mg/kg、例えば、約5~25mg/kg、約10~20mg/kg、約1~5mg/kg、または約3mg/kgの用量で投与される。投薬スケジュールは、例えば、週に1回から2、3または4週間ごとに1回まで変動し得る。
【0227】
別の態様では、本発明者らは、本明細書に記載の単離される抗LAG-3V単一ドメイン抗体または本明細書に記載される多重特異性結合剤、特にPD-1およびLAG-3の両方に対する単一ドメイン抗体を有する本明細書に記載される結合剤を含むCARコンストラクトを提供する。
【0228】
CARは、典型的には、単一の融合分子中の1つ以上のシグナル伝達ドメインに会合する標的化/結合部分からなる合成受容体である。CARの結合部分は、典型的には、柔軟なリンカーによって結合されたモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の可変断片を含む一本鎖抗体(scFv)の抗原結合ドメインからなる。scFvは、それが由来する完全な抗体と同じ特異性と類似の親和性を保持し、目的の特定の標的に結合することができる。CARコンストラクトがT細胞の表面に発現し、その標的タンパク質に結合すると、T細胞の活性化が引き起こされる。T細胞の活性化は強力な攻撃手段(weapon)であり、したがってT細胞の非特異的な活性化は安全上の大きな懸念事項である。scFvは、典型的には標的化剤(targeting agent)として使用されるが、CAR-Tの治療効果に悪影響を及ぼす可能性のあるいくつかの特性を有する。scFvは、発現と安定性が低く、脱フォールディング(unfolding)および凝集が起こりやすいという特徴がある。結果として、しばしばCARの発現の達成を困難にするか、T細胞の標的化に非特異的であり、シグナル伝達の開始に非特異的である。scFvを有するCAR-Tは、異なるCAR-Tの重鎖と軽鎖との架橋により、膜上にクラスターを形成することもできる。これにより、不要な構成的シグナル伝達が発生する。
【0229】
さらに、CAR-Tにおいて使用されるscFvも、通常マウスmAbに由来するため、抗scFv応答が潜在的に架橋によってT細胞応答を開始するだけでなく、CAR-Tを循環から除去するため、潜在的な免疫原性の問題を有する。
【0230】
理論に拘束されることを意図するものではなく、scFvを使用して二重特異性、二価または二重パラトピックの抗原結合部分を有するCAR-Tを設計する場合、これらの問題が悪化する傾向がある。したがって、一つの態様では、本発明は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを有する単離されたCARに関し、前記抗原結合ドメインは、本明細書に記載される単離された抗LAG-3V単一ドメイン抗体、または本明細書に記載される多重特異性結合剤、特に本明細書に記載されるPD-1およびLAG3の両方に対する単一ドメイン抗体を有する結合剤である。本発明はまた、本発明によるCARをコードする単離された核酸に関する。本発明はまた、本発明の核酸を含むベクターに関する。別の態様では、本発明は、本発明の核酸またはベクターを含む宿主細胞に関する。本発明はまた、1つ以上の本発明のCARを含む単離された細胞または細胞集団に関する。そのような細胞は、本発明のCARを発現するように遺伝子改変されている。一つの実施形態では、上記細胞はT細胞(CAR-T)である。本発明はさらに、本発明のT細胞または医薬組成物を投与することを含む、癌を治療する方法に関する。
【0231】
例示的な治療用途
本発明はまた、本発明のLAG-3結合分子の治療用途に関する。一つの態様では、本発明者らは、本発明の結合分子、例えば、本明細書に記載のLAG-3に結合する少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含む結合分子の有効量を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物、例えばヒト患者におけるLAG-3媒介疾患を治療する方法を提供する。
【0232】
本明細書で使用される「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」または「治療(treatment)」は、疾患を阻害または軽減することを意味する。例えば、治療は、疾患に関連する症状の発症の先送り、および/または上記疾患と共に発症する、または発症すると予想されるそのような症状の重症度の軽減を含み得る。この用語には、既存の症状の改善、追加の症状の予防、およびそのような症状の根本的な原因の改善または予防が含まれる。したがって、これらの用語は、治療対象の哺乳動物、例えばヒト患者の少なくとも一部に有益な結果がもたらされていることを示す。多くの医療は、すべてではないが、治療を受けている患者の一部に有効である。
【0233】
「対象」または「患者」という用語は、治療、観察または実験の対象である動物を指す。ほんの一例として、対象としては、限定されないが、ヒト、または非ヒト霊長類、限定されないが、マウス、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジまたはネコ等の非ヒト哺乳動物を含む哺乳動物が挙げられる。
【0234】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、単独でまたは追加の治療薬と組み合わせて細胞、組織または対象に投与した場合に、投与状況下で所望の治療または予防効果を達成するのに有効な抗LAG-3抗体の量を意味する。
【0235】
本発明はまた、疾患の治療または予防における使用のための、本明細書に記載される単一ドメイン抗体、結合分子または医薬組成物に関する。
【0236】
別の態様では、本発明は、疾患の治療または予防における、本明細書に記載される単一ドメイン抗体、結合分子または医薬組成物の使用に関する。
【0237】
別の態様では、本開示は、本明細書に列挙される疾患の治療または予防のための医薬品の製造における、本明細書に記載される単一ドメイン抗体または結合分子の使用に関する。
【0238】
上記疾患は、癌、免疫疾患、神経疾患、炎症性疾患、アレルギー、移植拒絶、ウイルス感染症、免疫不全および他の免疫系関連疾患から選択され得る。
【0239】
一つの実施形態では、疾患は癌である。癌は、固形腫瘍または非固形腫瘍から選択され得る。例えば、癌は、骨肉腫、膵臓癌、皮膚癌、頭部または頸部の癌、皮膚または眼内の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、精巣癌、乳癌、脳腫瘍、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膣癌、外陰癌、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、腎臓癌、軟部組織の肉腫、尿道癌、膀胱癌、腎癌、肺癌、非小細胞肺癌、胸腺腫、前立腺癌、中皮腫、副腎皮質癌、ホジキン病、非ホジキン病等のリンパ腫、胃癌、ALL、CLL、AML、尿路上皮癌白血病および多発性骨髄腫等の白血病から選択され得る。
【0240】
一つの実施形態では、腫瘍は固形腫瘍である。それに応じて治療され得る固形腫瘍の例としては、乳癌、肺癌、大腸癌、膵臓癌、神経膠腫およびリンパ腫が挙げられる。そのような腫瘍のいくつかの例には、類表皮腫瘍、頭部および頸部の腫瘍等の扁平上皮腫瘍、大腸腫瘍、前立腺腫瘍、乳腫瘍、小細胞および非小細胞肺腫瘍を含む肺腫瘍、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍および肝臓腫瘍が挙げられる。他の例としては、カポジ肉腫、CNS、新生物、神経芽細胞腫、毛細血管芽細胞腫、髄膜腫および脳転移、黒色腫、胃腸および腎臓の癌および肉腫、横紋筋肉腫、神経膠芽腫、好ましくは多形性膠芽腫、および平滑筋肉腫が挙げられる。本発明のアンタゴニストが有効である血管新生皮膚癌の例としては、扁平上皮癌、基底細胞癌、およびヒト悪性ケラチノサイト等の悪性ケラチノサイトの増殖を抑制することによって治療することができる皮膚癌が挙げられる。
【0241】
一つの実施形態では、腫瘍は非固形腫瘍である。非固形腫瘍の例としては、白血病、多発性骨髄腫およびリンパ腫が挙げられる。
【0242】
一つの実施形態では、癌は、局所進行性の切除不能、転移性または再発性の癌である。
【0243】
癌には、本発明の抗体を使用してその増殖が阻害され得るものが含まれ、免疫療法に典型的に応答する癌が含まれる。治療に好ましい癌の非限定的な例としては、黒色腫(例えば、転移性悪性黒色腫)、腎癌(例えば、明細胞癌)、前立腺癌(例えば、ホルモン不応性前立腺癌)、乳癌、結腸癌および肺癌(例えば、非小細胞肺癌)が挙げられる。
【0244】
一つの実施形態では、癌は、別の治療、例えば化学療法の後に進行するものである。一つの実施形態では、患者は、抗PD-1療法または抗PD-L1療法で治療された癌患者である。一つの実施形態では、患者は、PD1不応性患者から選択される。
【0245】
二重陽性細胞への標的化の改善が期待されることは、安全性の改善を意味し得る。
【0246】
免疫疾患は、移植片対宿主病、関節炎、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫アディソン病、副腎の自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性尿道炎および睾丸炎、自己免疫性血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアック性スプルー皮膚炎、慢性疲労免疫機能不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、円板状ループス、性ルピナス症候群、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギランバレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA神経障害、若年性関節炎、扁平苔癬、ループス多発性硬化症、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、視神経脊髄炎(NMO)、1型または免疫介在性糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋炎、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝炎、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー症候群、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフパーソン症候群、全身性エリテマトーデス、エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、横断性脊髄炎、潰瘍性結腸炎、ブドウ膜炎、疱疹状皮膚炎血管炎等の血管炎、白斑およびウェゲナー肉芽腫症から選択され得る。
【0247】
本発明者らは、LAG-3に結合するsdAbが、LAG-3とα-シヌクレインとの相互作用を遮断できることを実証した。アルファ-シヌクレイン(またα-シヌクレイン)は、遺伝的および神経病理学的にパーキンソン病に関連するシナプス前ニューロンタンパク質である。α-シヌクレインはいくつかの方法でPDの病因に寄与する可能性があるが、一般的には、前原線維と呼ばれるその異常な可溶性オリゴマー構造は、シナプス機能を含むさまざまな細胞内標的への影響を通じて、細胞の恒常性の破壊と神経細胞死を媒介する毒性種であると考えられている。調節不全のときにこのタンパク質によって付与される毒性機能を標的とすることで、PDだけでなく、シヌクレイン病と呼ばれる他の神経変性状態でも新しい治療戦略がもたらされ得る(Stefanis, Cold Spring Harb Perspect Med. 2012 Feb; 2(2))。
【0248】
したがって、上記の態様の一つの実施形態では、疾患は神経疾患、例えばシヌクレイン病である。神経疾患は、アルツハイマー病、てんかん、パーキンソン病、認知症、多発性硬化症、末梢神経障害または帯状疱疹後神経痛から選択され得る。
【0249】
一つの実施形態では、疾患は、HIV、HCVまたは寄生虫感染症等の感染症から選択される。
【0250】
本明細書に記載される単一ドメイン抗体、結合分子または医薬組成物は、単一の活性成分として、または1つ以上の他の治療薬と組み合わせて投与することができる。治療薬は、疾患の治療に有用な化合物または分子である。治療剤の例としては、抗体、抗体断片、薬物、毒素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節剤、アポトーシス促進剤、抗血管新生剤、ホウ素化合物、光活性剤または光活性色素、および放射性同位元素が挙げられる。
【0251】
一つの実施形態では、本明細書に記載される単一ドメイン抗体、結合分子または医薬組成物は、既存の治療または治療薬、例えば抗癌治療と組み合わせて使用される。したがって、別の態様では、本発明はまた、本発明の単一ドメイン抗体または医薬組成物の投与と抗癌療法とを含む併用療法に関する。抗癌療法としては、治療剤または放射線による療法が挙げられ、遺伝子療法、ウイルス療法、RNA療法、骨髄移植、ナノ療法、標的化抗癌療法または腫瘍溶解薬が挙げられる。他の治療薬の例としては、他のチェックポイント阻害剤、抗腫瘍薬、免疫原薬、弱毒化癌細胞、腫瘍抗原、腫瘍由来抗原または核酸で刺激された樹状細胞等の抗原提示細胞、免疫刺激サイトカイン(例えば、IL-2、IFNa2、GM-CSF)、標的化された小分子および生体分子(シグナル伝達経路の構成要素、例えば、チロシンキナーゼのモジュレーターおよび受容体チロシンキナーゼの阻害剤、ならびにEGFRアンタゴニストを含む腫瘍特異的抗原に結合する薬剤等)、抗炎症剤、細胞毒性剤、放射線毒性剤、または免疫抑制剤、および免疫刺激性サイトカイン(例えば、GM-CSF)をコードする遺伝子でトランスフェクトされた細胞、化学療法が挙げられる。一つの実施形態では、単一ドメイン抗体は、手術と組み合わせて使用される。
【0252】
一つの実施形態では、本明細書に記載される単一ドメイン抗体、結合剤または医薬組成物は、免疫調節剤、チェックポイント調節剤、T細胞活性化に関与する薬剤、腫瘍微小環境修飾剤(TME)または腫瘍特異的標的とともに投与される。例えば、免疫調節剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、TIM-3、CEACAM、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4またはTGFRβの1つ以上の阻害剤から選択される免疫チェックポイント分子の阻害剤であり得る。別の実施形態では、免疫調節剤は、OX40、OX40L、CD2、CD27、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD30、CD40、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3またはCD83リガンド、CD3、CD8、CD28、CD4またはICAM-1の1つ以上のアゴニストから選択される共刺激分子の活性化因子であり得る。
【0253】
本発明の特定の実施形態では、組成物は、化学療法剤または放射線療法と同時に投与される。別の特定の実施形態では、化学療法剤または放射線療法は、本発明の組成物の投与の前または後に、好ましくは少なくとも1時間、5時間、12時間、1日、1週間、1ヶ月、より好ましくは本発明の組成物の投与の前または後に数ヶ月(例えば、最大3ヶ月)投与される。
【0254】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される単一ドメイン抗体または結合剤は、2つ以上の治療剤と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本発明の結合剤は、2つ以上の治療剤と共に投与され得る。
【0255】
本明細書に記載される単一ドメイン抗体、医薬組成物または結合分子は、他の治療または治療化合物または治療と同時または異なる時に、例えば、同時に、別々にまたは連続して投与することができる。
【0256】
さらに別の態様では、本発明者らは、本明細書に記載される単一ドメイン抗体、医薬組成物または結合分子を対象に投与して、該対象の免疫応答を調節することを含む、対象の免疫応答を調節する方法を提供する。一つの実施形態では、本明細書に記載される単一ドメイン抗体、医薬組成物または結合分子は、対象における免疫応答を増強、刺激または増大させる。
【0257】
さらなる態様では、本発明者らは、本明細書に記載される単一ドメイン抗体、医薬組成物または結合分子の治療有効量を対象に投与することを含む、該対象における腫瘍細胞の増殖を阻害する方法を提供する。
【0258】
さらなる態様では、本発明者らは、本発明の結合剤を提供する、例えばそのような結合剤を患者に投与することにより、表面上にPD-1およびLAG-3を提示する細胞を選択的に標的化する方法を提供する。さらなる態様において、本発明者らは、例えばそのような結合剤を患者に投与することによって、本発明の結合剤を提供する、例えばそのような結合剤を患者に投与することにより、それらの表面上のPD-1およびLAG-3の二重遮断する方法を提供する。一つの実施形態では、上記方法は、in vitroまたはex vivoの方法である。
【0259】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの治療薬および/または診断薬にコンジュゲートした、本明細書に記載される単一ドメイン抗体、医薬組成物または結合分子を含む免疫複合体に関する。
【0260】
また、本発明者らは、E3ユビキチンリガーゼCbl-bおよび/またはc-Cblが、二重特異性抗LAG+抗PD1結合分子による治療の予測バイオマーカーとして使用できることも確認した。予後バイオマーカーは、治療法に関係なく、患者の全体的な癌の転帰に関する情報を提供するが、予測バイオマーカーは、治療的介入の効果に関する情報を提供する。したがって、本発明はまた、二重特異性抗LAG+抗PD1結合分子を用いた癌治療における予測バイオマーカーとしてのCbl-bおよび/またはc-Cblの使用に関する。本発明はまた、例えば本明細書に記載されるようなV1.2-L-V1.2-L-V2.92等の二重特異性抗LAG+抗PD1結合分子を用いて、上記二重特異性治療がおこなわれる対象またはそのサンプルにおけるCbl-bおよび/またはc-CBlのタンパク質またはRNAの発現を測定することにより、治療に応答する対象を同定する方法に関する。Cbl-bおよび/またはc-Cblの発現の抑制または減少は、対象が治療に反応することを示す。これは、これらのマーカーと細胞の増殖との関連を示す実施例9のデータによってサポートされている。
【0261】
本発明者らはまた、癌を有する対象に対する治療の結果の予測を提供するための方法、または癌に罹患している対象に対する治療を選択するための方法を提供し、該方法は、
a)対象由来の生体サンプルと、例えば、本明細書に記載されているようなV1.2-L-V1.2-L-V2.92等の二重特異性抗LAG+抗PD1結合分子とを接触させること;
b)サンプル中のCbl-bおよび/またはc-Cblのタンパク質またはRNAの発現を測定すること;
c)サンプル中のCbl-bおよび/またはc-Cblのタンパク質またはRNAの発現レベルに基づいて、対象のリスクスコアを決定すること;および
d)対象のリスクスコアに基づいて、二重特異性結合分子による治療に対する反応の予後を提供すること
を含む。
【0262】
一つの態様では、本発明者らは、癌を有する対象の治療に対する応答のレベルを予測する工程を含む、癌を有する対象の治療方法を提供し、該方法は、
a)対象由来の生体サンプルと、例えば、本明細書に記載されているようなV1.2-L-V1.2-L-V2.92等の二重特異性抗LAG+抗PD1結合分子とを接触させること;
b)サンプル中のCbl-bおよび/またはc-Cblのタンパク質またはRNAの発現を測定すること;
c)サンプル中のCbl-bおよび/またはc-Cblのタンパク質またはRNAの発現レベルに基づいて、対象のリスクスコアを決定すること;
d)リスクスコアと閾値とを比較して、対象が二重特異性結合分子による治療に応答する可能性があるかどうかを予測すること;
e)治療を選択すること;および
f)治療を施すこと
を含む。
【0263】
一つの実施形態では、治療は、本明細書に記載される二重特異性分子によるものである。
【0264】
一つの実施形態では、サンプルは二重特異性結合剤とインキュベートされる。一つの実施形態では、サンプルは血液サンプルである。一つの実施形態では、T細胞は血液サンプルから単離され、薬剤と共にインキュベートされる。Cbl-bおよび/またはc-Cblの発現は、標準的な方法を使用して、例えばプライマーを含むタンパク質またはRNAに結合する薬剤を使用して測定することができる。Cbl-bおよび/またはc-Cblに結合する試薬を含み、タンパク質または核酸の発現を測定するために使用できる上記の方法で使用するためのキットも提供される。
【0265】
キットおよび診断検査
別の態様では、本発明は、本発明の単一ドメイン抗体を含む、疾患または免疫応答の治療または予防のため、および/または疾患の診断、予後またはモニタリングのためにLAG-3を検出するためのキットを提供する。このようなキットには、LAG-3タンパク質の検出に役立つ他の構成要素、パッケージ、説明書または材料が含まれていてもよい。キットは、本明細書に記載される標識された単一ドメイン抗体または結合剤、および該標識を検出するための1つ以上の化合物を含んでいてもよい。
【0266】
別の態様では、本発明は、凍結乾燥形態で包装された、または水性媒体に包装された、本発明の本明細書に記載される単一ドメイン抗体または結合剤を提供する。
【0267】
本発明はまた、図および実施例を参照して本明細書に記載される単一ドメイン抗体または結合分子に関する。
【0268】
別の態様では、本明細書に記載される単一ドメイン抗体または結合分子は、診断検査およびアッセイ等の非治療目的で使用される。試験サンプル、例えば血清または血漿におけるヒトLAG-3の存在を検出するための方法は、上記サンプルと本明細書に記載される単一ドメイン抗体および少なくとも1つの検出可能な標識とを接触させること、および上記単一ドメイン抗体とヒトLAG-3との結合を検出することを含む。
【0269】
一つの実施形態では、本発明は、癌を有する患者におけるLAG-3媒介適応免疫抵抗性を診断する方法に関する。この方法は、サンプルと、検出可能な部分で標識されてた、本明細書に開示される単一ドメイン抗体とを接触させること;および免疫細胞、例えばCD4+T細胞、CD8+T細胞、T調節細胞、B細胞、NK細胞および形質細胞様樹状細胞上のLAG-3の発現を検出する。サンプルは腫瘍組織であってもよい。
【0270】
診断目的の抗体の修飾は、当技術分野でよく知られている。例えば、抗体は、ビオチン等のリガンド基、または蛍光基、放射性同位元素もしくは酵素等の検出可能なマーカー基で修飾することができる。本発明の化合物は、従来の技術を使用して標識することができる。適切な検出可能な標識としては、限定されないが、発蛍光団(fluorophore)、発色団(chromophore)、放射性原子、電子密度の高い試薬、酵素、および特異的結合パートナーを有するリガンドが挙げられる。
【0271】
本明細書で別段の定義がない限り、本開示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解されている意味を有するものとする。前述の開示は、本発明を作製および使用する方法ならびにその最良の形態を含む、本発明の範囲内に包含される主題の一般的な説明を提供するが、以下の実施例は、当業者が本発明をさらに実施できるように、かつその完全な説明を提供するために提供される。しかしながら、当業者は、これらの実施例の詳細が本発明を限定するものとして読まれるべきではなく、その範囲は、本開示に添付される請求項およびその均等物から理解されるべきであることを理解する。本発明の様々なさらなる態様および実施形態は、本開示を考慮すれば当業者には明らかであろう。
【0272】
本明細書で言及されたすべての文書は、遺伝子アクセッション番号への言及および特許公開への言及を含めて、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0273】
「および/または」は、本明細書で使用される場合、他方を伴うまたは伴わない、2つの指定された特徴または構成要素のそれぞれについての特定の開示として解釈されるべきである。例えば、「Aおよび/またはB」は、あたかもそれぞれが本明細書で個別に述べられているかのように、(i)A、(ii)Bならびに(iii)AおよびBのそれぞれの特定の開示とみなされる。文脈で他に指示がない限り、上記の特徴の説明および定義は、本発明の特定の態様または実施形態に限定されず、記載されるすべての態様および実施形態に同様に適用される。
【0274】
本発明を、非限定的な実施例においてさらに説明する。
【実施例0275】
実施例1.Tg/TKOマウスの構築
内因性の重鎖および軽鎖抗体発現が抑制されたバックグラウンド内(トリプルノックアウト、またはTKO)で生殖系列構成でヒト重鎖抗体トランスジェニック遺伝子座を有するマウスを、従来記載されたようにした(WO2004/076618、WO2003/000737、Ren et al., Genomics, 84, 686, 2004; Zou et al., J. Immunol., 170, 1354, 2003およびWO2016/062990)。簡潔に言うと、トランスジェニックマウスを、C1ドメイン、マウスエンハンサーおよび調節領域を欠くマウス免疫グロブリン定常領域遺伝子と組み合わせた大量のヒトV、DおよびJ遺伝子を含む酵母人工染色体(YAC)を用いて、受精直後の卵母細胞の前核マイクロインジェクションに続いて作出した。酵母人工染色体(YAC)は、酵母の非常に大きなDNA挿入物のクローニングに使用することができるベクターである。天然酵母染色体(自律複製配列(ARS)、セントロメア(CEN)および2つのテロメア(TEL))のように動作するために不可欠な3つのシス作用構造要素すべてを含むだけでなく、大きなDNA挿入物を受け入れる能力により、染色体のような安定性と酵母細胞における伝達の忠実度に必要な最小サイズ(150kb)に達することができた。YACの構築と使用は、当技術分野でよく知られている(例えば、Bruschi, C.V. and Gjuracic, K. Yeast Artificial Chromosomes, Encyclopedia of Life Sciences, 2002, Macmillan Publishers Ltd., Nature Publishing Group / www.els.net)。
【0276】
使用したYACには、複数のヒト重鎖V遺伝子、複数のヒト重鎖DおよびJ遺伝子、マウスC1遺伝子およびマウス3’エンハンサー遺伝子を含んでいた。それはC1エクソンを欠いている。
【0277】
トランスジェニックファウンダーマウス(transgenic founder mouse)を、内因性免疫グロブリン発現を欠く動物と戻し交配して、下記の免疫化研究で使用されるTg/TKO系統を作製した。
【0278】
実施例2.免疫および特徴付けのための抗原
LAG-3
ヒトおよびサルのLAG-3細胞外ドメインを、トランスジェニックマウスの免疫化または結合研究のためのIgG融合タンパク質として作製した。ヒトLAG-3配列アクセッションNM_002286。アカゲザルLAG-3アクセッションXM_001108923。アカゲザルのアミノ酸配列は、LAG-3ドメイン1~3(NC_022282)のカニクイザルのアミノ酸配列と一致する。マウスLAG-3はR&D Biotechne(カタログ3328-L3)からのものであった。ヒトLAG-3ドメイン1~4および1~2は、標準的な分子生物学技術を使用してクローニングされた。Huard et al 1997 PNAS 94:5744-9に従ってドメインを識別した。HEK293細胞で発現を行い、LAG-3タンパク質を、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して精製した。ヒトLAG-3を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、誘導性発現ベクター内のヒトLAG-3配列を使用して生成した。プラスミドを、リポフェクションおよび抗生物質で選択された安定した細胞プールを使用してトランスフェクトした。LAG-3を発現する細胞を、マウス抗LAG-3抗体(クローン17B4、Abcam)の積極的な結合に基づいて分類した。
【0279】
PD-1
R&Dから購入した組換えヒトPD-1 Fcキメラ、カタログ番号1086-PDを使用して免疫付与した。表面上にヒトPD-1を発現するCHO細胞株を特徴付けに使用した。
【0280】
実施例3.免疫付与プロトコル
生後8~12週齢のTg/TKOマウスのそれぞれに、完全フロイントアジュバントに乳化された40μgの組換え精製ヒトLAG-3-Fcタンパク質を初回投与し、皮下に送達し、その後、この最初のプライミング後にさまざまな間隔で、フロイント不完全アジュバントに乳化された10μgの組換えタンパク質を3回追加免疫し、同様に皮下に送達した。20μgの最終用量の組換え精製ヒトLAG-3-Fcタンパク質抗原を、アジュバントの非存在下、リン酸緩衝生理食塩水中で腹腔内投与した。
【0281】
PD-1遮断物質を生成するための免疫付与では、生後8~12週のTg/TKOマウスのそれぞれに、50μgまたは10μgの組換え精製ヒトPD-1-Fcタンパク質の初回投与量を投与した。
【0282】
実施例4.免疫マウスからの抗LAG3ライブラリーの作製
上記の免疫化されたマウスからのライブラリーの作製は、以下に要約されるようなライブラリー作製の標準的なプロトコルに従った:
a)組織の採取および均質化、RNA抽出およびRT-PCR
免疫したマウス数匹から、脾臓、鼠径部および上腕のリンパ節をRNAlater(登録商標)に収集した。RNAを、製造元のプロトコルに従ってQiagenRNeasy(登録商標)キット(カタログ74104)を使用して、またはPure RNA Tissueキット(カタログ98040496)を使用してKingfisher自動システム(Thermo)を介して、脾臓全体から抽出した。製造元のプロトコルに従って、Superscript III RT-PCRハイファイキット(Invitrogen カタログ12574-035)を使用して、RNAサンプルからVシーケンスを引き出した。
【0283】
b)ファージミドベクターへのクローニング
これらの研究では、ファージミドベクターであるpUCG3を使用した。従来のPCRベースの方法を、増幅されたVシーケンスからVファージミドライブラリーを構築するために使用した。精製されたV RT-PCR産物を使用して、線形化されたpUCG3からPCR反応を準備し、pUCG3にクローン化されたVの不均一な集団を得た。
【0284】
PCR産物を1%(w/v)アガロースゲルで分析した。
【0285】
c)ファージミドライブラリーの作製
/ファージミドPCR産物を、Fermentas PCR精製キット(カタログ番号K0702)を使用して、製造元の指示に従って精製した。溶出したDNAを使用して、Bio-Rad GenePulser Xcellを使用したエレクトロポレーションにより、TG1 E.coli(Lucigen、カタログ番号60502-2)を形質転換した。エレクトロポレーションした細胞をプールし、2%(w/v)グルコースと100μg/mlアンピシリンとを補充した大判2×TY寒天バイオアッセイディッシュにプレーティングした。すべての寒天プレートを30℃で一晩インキュベートした。
【0286】
大判バイオアッセイディッシュにブロスを添加してコロニーを再懸濁することにより、ライブラリーを収集した。細菌コロニーをプールし、ファージ選択プロセスで使用した。
【0287】
実施例5.V の単離のための選択戦略
ライブラリーファージストックの調製およびファージディスプレイ選択を、公開された方法(Antibody Engineering, edited by Benny Lo, chapter 8, p161-176, 2004)に従って行った。ほとんどの場合、パンニングアプローチ(panning approach)と組み合わせたファージディスプレイを使用して、結合Vドメインを単離した。しかしながら、可溶性選択およびストレス(例えば、熱)下で行われる選択を含む、様々な異なる選択方法が当技術分野において十分に説明されている。
【0288】
実施例6.形態
LAG-3組換えタンパク質またはLAG-3発現CHO細胞に結合すると確認された各Vクローンについて、ファージミドから配列決定し、V生殖系列およびCDR3アミノ酸類似性に基づいてグループ化した。
【0289】
CHOヒトPD-1細胞への結合およびPD-L1結合PD-1の阻害についてのペリプラズム抽出物のスクリーニングを行った。ライブラリーの選択に続いて、ヒトPD-1を発現するCHO細胞に結合し、組換えヒトPD-1タンパク質と組換えヒトPD-L1タンパク質との間の相互作用を阻害した特定のVが、細菌のペリプラズム抽出物のシングルポイントスクリーニングによって同定された。FL2蛍光>1000でCHOヒトPD-1細胞に結合し、PD-L1へのPD-1結合を阻害するVのファミリーが同定された。
【0290】
LAG-3結合の二価のコンストラクトは、V間のグリシン-セリンリンカーを使用して、PCRアセンブリによって生成された。組み立てられたコンストラクトを、微生物細胞での発現のためにDNAベクターにクローニングした。異なるリンカーを有するそのような配列の例を以下に示す。実験で使用されたコンストラクトはそれぞれ、3つのアラニン、および6つのヒスチジンのHisタグを有するC末端配列をさらに含んでいた。
【0291】
配列番号251
VH1.1-6GS-VH1.1-6GS-VH2.63-His6
EVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCSASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSGIHWNGGNSGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARIPREDCSSASCYTDAIDFWGPGTMVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCSASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSGIHWNGGNSGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARIPREDCSSASCYTDAIDFWGPGTMVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSDSSMTWMRQAPGKGLEWVSYISSGGGVKFYTDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRADDTAVYYCAREAPLRLGESPHDAFDISGQGTMVTVSSAAAHHHHHH
【0292】
配列番号252
VH1.1-6GS-VH1.1-9GS-VH2.63-His6
EVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCSASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSGIHWNGGNSGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARIPREDCSSASCYTDAIDFWGPGTMVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCSASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSGIHWNGGNSGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARIPREDCSSASCYTDAIDFWGPGTMVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSDSSMTWMRQAPGKGLEWVSYISSGGGVKFYTDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRADDTAVYYCAREAPLRLGESPHDAFDISGQGTMVTVSSAAAHHHHHH
【0293】
配列番号253
VH1.1-6GS-VH1.1-His6
EVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCSASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSGIHWNGGNSGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARIPREDCSSASCYTDAIDFWGPGTMVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCSASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSGIHWNGGNSGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARIPREDCSSASCYTDAIDFWGPGTMVTVSSAAAHHHHHH
【0294】
配列番号254
VH1.1-4GS-VH1.1-His6
EVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCSASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSGIHWNGGNSGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARIPREDCSSASCYTDAIDFWGPGTMVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCSASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSGIHWNGGNSGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARIPREDCSSASCYTDAIDFWGPGTMVTVSSAAAHHHHHH
【0295】
配列番号255
VH1.1-8GS-VH1.1-His6
EVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCSASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSGIHWNGGNSGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARIPREDCSSASCYTDAIDFWGPGTMVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCSASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSGIHWNGGNSGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARIPREDCSSASCYTDAIDFWGPGTMVTVSSAAAHHHHHH
【0296】
配列番号256
VH1.1-12GS-VH1.1-His6
EVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCSASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSGIHWNGGNSGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARIPREDCSSASCYTDAIDFWGPGTMVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCSASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSGIHWNGGNSGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARIPREDCSSASCYTDAIDFWGPGTMVTVSSAAAHHHHHH
【0297】
配列番号257
VH2.77-9GS- VH 1.1-6GS- VH 1.1-His6
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSDSSMTWMRQAPGKGLEWVSYISSGGGVKFYTDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREAPLRLGESPHDAFDISGQGTMVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCSASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSGIHWNGGNSGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARIPREDCSSASCYTDAIDFWGPGTMVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCSASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSGIHWNGGNSGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARIPREDCSSASCYTDAIDFWGPGTMVTVSSAAAHHHHHH
【0298】
配列番号258
VH 1.2-6GS- VH 1.2-6GS- VH 2.92-His6
EVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCAASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSGIHWNGGSTGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARIPREDCSSASCYTDAIDFWGQGTMVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCAASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSGIHWNGGSTGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARIPREDCSSASCYTDAIDFWGQGTMVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSDESMTWMRQAPGKGLEWVSYISSGGGVKFYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREAPLRLGESPHDAFDISGQGTMVTVSSAAAHHHHHH
【0299】
配列番号259
VH 1.2-6GS- VH 1.2-6GS- VH 2.92
EVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCAASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSGIHWNGGSTGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARIPREDCSSASCYTDAIDFWGQGTMVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGVVRPGGSLRLSCAASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSGIHWNGGSTGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARIPREDCSSASCYTDAIDFWGQGTMVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSDESMTWMRQAPGKGLEWVSYISSGGGVKFYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREAPLRLGESPHDAFDISGQGTMVTVSS
【0300】
配列の一部を生殖細胞系に戻したり、結合反応速度を改善したり、異性化や脱アミド化等の生物物理学的な障害を除去したりするために、V1.1に変異を加えた。個々の変異またはランダム化は、標準的なオーバーラップエクステンションPCR手法を使用して達成された。V1.2(配列番号8)は、このような配列の例である。
【0301】
二重特異性コンストラクトを、PCRアセンブリにより作製した。表5は、リンカーを使用して、任意の向きで表1の配列と組み合わせることができるPD-1クローンのアミノ配列を示す。対応する核酸配列もまた本明細書で提供される。組み立てられたコンストラクトを、微生物細胞における発現のためにDNAベクターにクローニングした。
【0302】
実施例7.精製V の調製
Humabody(登録商標)Vを微生物細胞システムによって発現させた。タンパク質を、アフィニティー精製を使用して細胞上清から分離した。精製されたタンパク質の収量を分光光度計で推定し、純度をUPLC-SECを使用して評価した。安定性を、40℃で一晩インキュベートし、サイズ排除クロマトグラフィーで分析することにより評価した。簡潔に言うと、精製されたVを4~40℃のPBSバッファーに3~10mg/mlで保存し、Waters ACQUITY BEH125Å SECカラムにより分離して、PDA検出器(280nmで検出)を含むWaters H-Class Bio UPLCを使用して分析した。サンプルを10μlの容量で注入し、200mMのNaCl、100mMのリン酸ナトリウム、pH7.4+5%プロパン-1-オールを含む移動相で0.4ml/分の流速で行った。データを6分間収集し、開始時(T=0)に存在するモノマーと比較して、保存後に残っているモノマーのパーセンテージを計算した。
【0303】
10mg/mlのV1.1を40℃で14日間インキュベートしたところ、サイズ排除クロマトグラフィーは、非加熱ピーク面積と比較して、Vピークの純度が97.67%であることを示した。
【0304】
3mg/mlのV1.1-6GS-V1.1を40℃で一晩インキュベートしたところ、ピーク面積はT=0の100.1%であった。1.5mg/mlの1.1-6GS-1.1-9GS-2.63を40℃で一晩インキュベートしたところ、ピーク面積はT=0の100.34%であった。したがって、これらの形態は優れた安定性を示す。
【0305】
実施例8.コンストラクトの結合特性
精製されたVを、以下に対する結合能力について試験した:ヒトLAG-3(R&D Systems カタログ番号2319-L3)、アカゲザルLAG-3(実施例2を参照されたい)、マウスLAG-3(Sino Biological カタログ番号53069-M02H)、ヒトLAG-3ドメイン1-2(実施例2を参照されたい)、ヒトLAG-3を発現するCHO細胞、ヒトPD-1(R&D System カタログ番号1086-PD)および活性化T細胞。
【0306】
ヒトLAG-3を発現するCHO細胞への結合をスクリーニングするために、PBS、0.1%のウシ血清アルブミン、0.01%のアジ化ナトリウムを含むFMATアッセイバッファー(pH7.4)で試薬を調製した。Vを384ウェルアッセイプレート(Costar カタログ番号3655)に移し、1.5nMの抗His(Millipore カタログ番号05-949)/3nMのヤギ抗マウスAlexa Fluor-488(Jackson Immunolabs カタログ番号115-545-071)およびDRAQ5で前染色した2000 CHOヒトLAG-3細胞(Thermo Scientificカタログ番号62251)と共に2時間インキュベートした。488nmおよび640nmで励起した後、TTP MirrorballプレートリーダーのFL2(502nm~537nm)およびFL5(677~800nm)チャネルでプレートを読み取った。データは、FL5の境界とピーク強度でゲートされ、ゲートされたデータのFL2メジアンの平均蛍光強度をV結合の決定に使用した。V1.1は、CHO細胞で発現したLAG-3への結合を示し、平均EC50は1.8E-09M、n=2であった。
【0307】
ELISAにより特異性をスクリーニングするために、抗原を1~5ug/mlでコーティングし、マーベル粉乳でブロッキングした。Vを10μg/mlで添加し、1時間インキュベートした。洗浄後、HRP標識抗HIS抗体(Miltenyi カタログ番号130-092-785)を添加した。TMB基質および酸性溶液を使用して、比色シグナルを生成した。V1.1およびV1.1-6GS-V1.1は、バックグラウンドの10倍を超えるシグナルで、ヒトLAG-3、カニクイザルLAG-3およびヒトLAG3ドメイン1-2に結合した。それらは、マウスLAG-3、ヒトIgG1、マウスIgG2aまたは密接に関連した抗原、CD4(R&D Biotechne 514-CD)への結合を示さなかった。1.2-6GS-1.2-6GS-2.92は、リアルタイムバイオレイヤー干渉計ベースのバイオセンサーOctet(ForteBio)で試験した場合、CD4、CD28、CTLA4タンパク質への結合を示さなかった。
【0308】
結合速度を、リアルタイムのバイオレイヤー干渉計ベースのバイオセンサーOctet(ForteBio)で測定した。組換えヒトLAG-3-Fcは、pH5.0で10mMの酢酸ナトリウム中のアミン反応性バイオセンサーへの標準的なアミンカップリングによって固定化された。すべての結合研究は、HBS-ET Octet動態バッファー中で行われた。バイオセンサーは、異なる工程の間にOctet動態バッファーで洗浄された。各Humabody(登録商標)Vの7ポイントの2倍希釈シリーズを、1.6μMの最高濃度で作製した。各会合工程の接触時間は150秒で、解離工程は300~400秒であった。速度論的な会合(ka)および解離(kd)の速度定数は、ForteBio Analysisソフトウェアを使用してデータを処理し、1:1結合モデルにフィッティングすることによって決定された。選択した配列について計算された親和定数を以下の表6に示す。
【0309】
【表6】
【0310】
多価および二重特異性Vの結合速度も、リアルタイムのバイオレイヤー干渉計ベースのバイオセンサーOctet(ForteBio)で測定された。組換えヒトLAG-3-Fcまたはドメイン1-2-Fcは、プロテインGバイオセンサーによって固定化した。すべての結合研究は、HBS-ET Octet動態バッファー中で行われた。バイオセンサーは、異なる工程の間にOctet動態バッファーで洗浄された。各Humabody(登録商標)Vの7ポイントの2倍希釈シリーズを、25nM(完全長LAG-3、または400nMを切り捨て)の最高濃度で作製した。各会合工程の接触時間は150秒で、解離工程は400秒であった。カニクイザルのLAG-3の反応速度を測定するために、pH5の10mMの酢酸ナトリウムでARG2センサーを使用してタンパク質を固定化し、V濃度は1.6μMで始まり、会合時間は180秒であった。コンストラクトを比較するために、ForteBio Analysisソフトウェアを使用してデータを1:1結合モデルに処理およびフィッティングすることにより、速度論的な会合(ka)および解離(kd)速度定数を決定した。値を表7に示す。
【0311】
【表7】
【0312】
PD-1への結合を、HTRF(均一な時間分解蛍光)によって測定した。PBS、0.1%のBSAおよび0.4Mのフッ化カリウムを含むアッセイバッファー中で、段階的に希釈したHISタグ付きコンストラクトを調製した。サンプルまたはアッセイバッファー(非特異的結合)を、プレートで1~2nMのヒトLAG-3-Fc/PD-1-Fc、1nMの抗ヒト-Fcクリプテート PAb(Cisbio カタログ番号61HFCKLB)および15nMの抗His-D2(CisBio カタログ番号61HISDLA)と共に室温で最低3時間インキュベートした。620nmおよび665nmでの時間分解蛍光発光を、BMG PHERAstarプレートリーダーにより337nmで励起した後に測定した。HTRF比を計算し((665nm発光/620nm発光)10000)、データを(非特異的結合)について修正し、特異的結合シグナルを得た。EC50を滴定曲線から計算した(下の表8)。
【0313】
【表8】
【0314】
1.2-6GS-1.2-6GS-2.92のタンパク質への結合を、バイオレイヤー干渉計ベースのバイオセンサーOctet(ForteBio)を使用して測定した。LAG-3抗原を、アミンカップリングを介してARG2センサーに結合させ、希釈系列でサンプルを試験した。PD-1抗原を、プロテインGセンサーを使用して補足した。親和性測定値を表9に示す。
【0315】
【表9】
【0316】
両方の標的を同時に結合するコンストラクトの能力は、バイオレイヤー干渉計ベースのバイオセンサーOctet(ForteBio)を使用して実証された。組換えLAG3-Fc(10μg/ml)を、pH6の10mMの酢酸ナトリウム中で、アミン反応性バイオセンサーへの標準的なアミンカップリングによって固定化した。結合工程は、PBS中の0.1%のBSAおよび0.02%のTween20中で行った。最初の結合工程では100nMのHumabody(登録商標)を使用し、その後5μg/mlのヒトPD1-Fcを結合した。会合と解離の接触時間は200秒であった。図1は、LAG-3およびPD-1への1.1-6GS-1.1-6GS-2.63の結合を示す。
【0317】
細胞表面の標的への結合は、DiscoverX社が開発した細胞株を使用して実証された。ヒトLAG-3およびヒトPD-1を細胞の表面で発現させ、それらの細胞内ドメインと酵素断片とを融合させた。受容体の二量体化により酵素断片の補完が強制され、基質の添加により化学発光シグナルを生成した。EC50を、バックグラウンドを超える相対光単位の倍数増加から計算し、表10に示す。二重特異性分子は、より大きな差異座右の二重特異性抗体よりも高いシグナルおよび改善されたECを示し、これは二重結合(dual-angagement)の潜在能力を示すものである。
【0318】
【表10】
【0319】
Humabody(登録商標)コンストラクトのLAG-3およびPD-1抗原への結合を、Dynamic Biosensors switchSENSE技術とデュアルカラー検出を使用して決定した。抗原を、アミンカップリング法を使用してバイオセンサー表面に共有結合させ、各抗原を、赤色または緑色の蛍光タグが付いた異なるナノレバーに連結させた。二重特異性コンストラクトの結合を、個々の抗原のみ、または両方の抗原が同時に表面に存在する場合について測定した。各抗原との相互作用の動態を表11に示す。
【0320】
PD-1が存在する場合、1.2-6GS-1.2-6GS-2.92とLAG-3とを結合させることにより、親和性KDが68倍向上した。LAG-3が存在する場合、PD-1への結合はKDで107倍の改善があった。これらは、両方が存在する場合、二重特異性が標的への親和性を強化したことを示すものである。
【0321】
【表11】
【0322】
ヒト活性化T細胞への結合を、サイトメトリーで測定した。PBMCまたは磁気的に分離されたT細胞を白血球の錐体から分離し、細胞を、5μg/mlの抗CD3(OKT3)でコーティングされた96ウェルプレートで培養した。抗CD28(CD28.2)をRPMI培地およびウシ胎児血清に1μg/mlで添加した。72~96時間後、細胞を回収し、標準的なフローサイトメトリー法を使用して染色した。Humabody(登録商標)コンストラクトを3倍シリーズで滴定し、抗HISビオチン(Biotechne BAM050)とストレプトアビジンAlexa-Fluor 488(ThermoFisher)を使用して検出した。蛍光標識された抗CD4および抗CD8が、PBMC培養物およびライブ/デッドダイに含まれていた。染色された細胞を、IQueサイトメーター(Intellicyte)を使用して分析した。EC50はHumabodyのメジアン蛍光の滴定曲線から算出し、混合細胞を使用する場合にはCD4+またはCD8+細胞でゲーティングした。カニクイザル細胞の場合、磁気分離を使用してパンT細胞(pan T cell)を分離し、製造元の指示に従ってCD3/CD28ビーズ(Miltenyi)で刺激した。培養72時間後、細胞をフローサイトメトリーのためにヒト細胞と同様に染色した。EC50を、陽性であったCD4またはCD8の割合の滴定曲線から算出した。表12は、T細胞結合のEC50を示す。二重特異性は、ヒトT細胞への強力な結合とサルとの交差反応性を示す。一価のLAG-3 V1.1は細胞に弱く結合するのに対し、二価の形態はこれを強化する、図2を参照されたい。
【0323】
二重特異性結合剤は、PD-1またはLAG-3の構成要素のみの場合よりも高いメジアン蛍光を示します(図2)。これは、LAG3+、PD1+およびLAG3+PD1+細胞への結合を示唆するものであり得る。二重特異性結合剤は、単一陽性細胞よりも高い結合力で二重陽性細胞を標的とする。
【0324】
【表12】
【0325】
実施例9.リガンドの阻害
a)PD-1:PD-L1阻害
PD-1:PD-L1遮断の結果として、トランスフェクトされたJurkat細胞おいてHumabody(登録商標)が機能的応答を阻害する能力を、NFAT-ルシフェラーゼレポータージーンアッセイを使用して評価した。NFAT応答要素を有するプロモーターの制御下でヒトPD-1およびルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現するJurkatレポーター細胞株、およびテトラサイクリン誘導性プロモーターの制御下でT細胞受容体活性化因子およびヒトPD-L1を発現するCHO細胞株を、標準的な方法で作製した。
【0326】
CHOヒトPD-L1/TCRアクチベーター細胞を、96ウェルの白いプレートに10000細胞/ウェルで播種した。プレートを5%のCOインキュベーター内で、37℃で一晩インキュベートした。サンプルをアッセイ培地(RPMI+2%FBS)で段階希釈した。Jurkat PD-1レポーター細胞を、5e5細胞/mlでアッセイ培地に希釈した。培地をCHO細胞から除去し、50μlの希釈サンプルまたはアッセイ培地(バックグラウンド対照)をプレートに添加し、その後50μlの希釈したJurkatレポーター細胞を添加した。プレートをCOインキュベーター内で、37℃で6時間インキュベートし、インキュベーターから取り出し、室温で20分間平衡化した。NanoGlo基質(NanGloバッファー(Promega カタログ番号N1120)で1:50に希釈した基質100μl)を添加し、プレートを室温で20分間インキュベートした後、発光シグナル(RLU)を測定した。データは倍数/バックグラウンドシグナルとして表される。
【0327】
Humabody(登録商標)Vは、PD-1:PD-L1相互作用の遮断を示すアッセイにおいて、ルシフェラーゼシグナルの用量依存的な増強を示した。EC50を、倍数/バックグラウンドの非線形回帰曲線の当てはめから算出し、選択されたクローンとコンストラクトとのデータを表13に示す。
【0328】
PD-1陽性細胞に対する二重特異性コンストラクトの効力は、モノクローナル抗体よりも30倍以上低い。これは、非特異的T細胞が抗PD-1によって活性化され得るin vivoにおける利点となる。単一PD1+細胞では効力が低く、PD1+LAG3+細胞では効力が高いため、特定の「消耗した」T細胞を標的とする機能が可能になる。
【0329】
【表13】
【0330】
精製された一価Vが、CHOヒトPD-1細胞へのPD-L1結合を阻害する能力を、FMAT阻害アッセイを使用して試験した。
【0331】
すべての試薬および段階希釈されたVは、FMATアッセイバッファーで調製した。V、バッファー(合計結合対照)または過剰な競合相手(非特異的結合対照)を、100pMのヒトFcタグ付きヒトPDL-1、3nMの抗ヒトFc-Alexa Fluor-488および1ウェル当たり2000のCHOヒトPD-1 DRAQ5染色細胞を、384ウェルの黒色透明の底のアッセイプレートにおいてインキュベートした。プレートを室温で2時間インキュベートした後、488nmおよび640nmで励起した後、Mirrorballプレートリーダー(TTP)のFL2(502nm~537nm)およびFL5(677~800nm)チャネルで蛍光を測定した。非特異的結合対照ウェルから決定されたバックグラウンドシグナルを差し引いた後、データを合計結合対照の%(すなわち、%対照)として表した。IC50を表14に示すが、一価の抗PD-1 Vは極めて類似した配列および活性を有する。
【0332】
【表14】
【0333】
b)LAG-3:MHCII阻害
LAG-3:MHCII阻害の結果としてT細胞の機能的応答を阻害するVの能力を、NFAT-ルシフェラーゼレポータージーンアッセイ(Promega LAG-3アッセイ)を使用して評価した。NFAT応答要素を有するプロモーターの制御下でヒトLAG-3およびルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現するJurkatレポーター細胞株を、MHCクラスIIを発現するRaji B細胞株と共にインキュベートした。T細胞活性化因子であるブドウ球菌エンテロトキシンDを添加してT細胞を刺激し、LAG-3:MHCIIが17B4等の抗体によって遮断されると、ルシフェラーゼシグナルが増加する。
【0334】
製造元の指示に従って、サンプルを段階希釈し、試薬を添加した。発光信号(RLU)を6時間後に読み取った。データは倍数/バックグラウンドシグナルとして表現した。
【0335】
Humabody(登録商標)は、LAG-3:MHCII相互作用の遮断を示すアッセイにおいてNFATシグナリングを強化する。EC50は倍数/バックグラウンド非線形回帰曲線の当てはめから算出し、選択されたクローンとコンストラクトとのデータを表15に示す。
【0336】
【表15】
【0337】
c)代替リガンド阻害
ガレクチン-3(Peprotech カタログ番号450-38-100)、レセクチン(R&D systems カタログ番号2947-CL)またはα-シヌクレイン(R&D systems カタログ番号SP480-500)を1~2μg/mlでmaxisorp ELISAプレートにコーティングした。プレートを、PBS中の3%マーベルスキムミルクパウダーでブロッキングした。LAG-3-Fcを、コーティングされたプレートに加える前に、Vと共に1時間プレインキュベートした。LAG-3結合を、HRPにコンジュゲートした抗ヒトIgGを使用して検出した。洗浄工程を、PBS 0.05%Tweenで3回行った。TMBと0.5M硫酸溶液を使用して発色させた。LAG-3固有のHumabody(登録商標)Vにより、LAG-3:ガレクチン、LAG-3:レセクチンおよびLAG3:α-シヌクレインの相互作用が遮断された。EC50を、非線形回帰曲線に当てはめられた吸光度から算出し、データの例を表16に示す。PD-1に結合する無関係のVは、これらの相互作用を阻害しなかった。
【0338】
【表16】
【0339】
実施例10.免疫細胞機能の増強
a)スーパー抗原アッセイ
健康な人間のドナーからのPBMCを、密度勾配遠心分離を使用して白血球の錐体から分離した。PBMCを、10~100ng/mlのブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)を使用して2~3日間刺激した。抗体またはHumabody(登録商標)の存在下で、細胞をさまざまな濃度のSEBで再刺激した。上清に分泌されたIL-2を、HTRF(Cisbio Human IL-2キット カタログ番号64IL1PEB)を使用して測定した。二価のV1.1-6GS-1.1は、PD-1遮断と組み合わせることによりT細胞刺激を増強した(図3a)。二価のHumabodyのみでは、Humabody(登録商標)ネガティブ対照またはIgGネガティブ対照よりも最小限しか増強されなかった。Humabody(登録商標)1.1-6GS-1.1-9GS-2.63により、ベンチマークのPD-1およびLAG-3抗体を上回ってT細胞刺激が増強された(図3b)。1.2-6GS-1.2-6GS-2.92は、ベンチマーク(レラトリマブアナログおよびニボルマブアナログ)を超える同様の強化を示した。Humabody(登録商標)1.1-6GS-1.1-9GS-2.63は、その構成要素の組み合わせよりもT細胞刺激を増強した(図3c)。2つのLAG-3 Vを含む二重特異性形態は、1つのLAG-3 Vを含む形態よりもIL-2産生する刺激が高かった(図3dおよび3e)。このデータは、非対称形態が他のLAG-3:PD1結合形態よりも機能上の利点があることを示すものである。図3fは、培養6日後の炎症誘発性サイトカイン、IL-2、TNF-αおよびインターフェロン-γの誘導を示す。
【0340】
b)抗原特異的アッセイ
8名のヒトドナーからのPBMCを、CMVペプチド刺激システムで使用した。PBMCをCMVペプチドのプールで1時間パルスし、Humabody(登録商標)をインキュベーション前に添加した。細胞を、25ng/mlのIL-7および10U/mlのIL-2の存在下で培養した。5日目に細胞を洗浄し、フローサイトメトリーのために染色した。さまざまなHLAタイプのCMVテトラマーを使用して細胞を染色し、CD8+テトラマー+細胞のパーセンテージを計算した。パーセンテージの増加倍率を、無関係なVと比較して算出した。図4は、二重特異性1.1-6GS-1.1-9GS-2.63の処理により増殖が増加することを示している。一部の応答では、二重特異性は、二重パラトピックPD-1結合剤(PD-1に2つのVが結合している)および二価のLAG-3にはない効果を有している。
【0341】
実施例7.in vivoにおける有効性
24匹のhu-PBMC NCGマウスに、50%のマトリゲル中の5×10個のRKO結腸癌細胞の皮下移植の7日前に、尾静脈注射により3×10個のhPBMCを移植した。腫瘍が触知可能になった時点でデジタルキャリパーによる測定を開始し、週に2回腫瘍体積を測定した。腫瘍体積が約30~60mmに達した時点で、マウスを腫瘍体積に基づいて無作為化した。表17に従って、研究1日目からマウスに投薬した。表17に示すように、多くの薬剤を試験した。
【0342】
体重、臨床観察およびデジタルキャリパー測定値を、投与開始後、毎週2回記録した。二重特異性は腫瘍増殖の阻害を媒介し得る(図5)。MSAは、マウスの血清アルブミンに結合するVを示す。HEL4は、標的に結合しないネガティブ対照Vである。
【0343】
【表17】
【0344】
実施例8.患者のT細胞の増殖
1.2-6GS-1.2-6GS-2.92を、癌細胞およびT細胞の相互作用をモデル化した患者のex vivo細胞システムにおいてT細胞を回復する(rescue)ことができる。NSCLC患者からのPBMCを、抗CD3による弱いTCR刺激を提供する肺腺癌細胞株と共にインキュベートした。CD4+およびCD8+細胞では、Ki67+増殖細胞の割合が1.2-6GS-1.2-6GS-2.92の存在下で増加した。これは、増殖をわずかに増加させたPD-1抗体による治療よりも有意に高かった(図6)。これらの患者はPD-1抗体治療に応答しない可能性があるため、二重特異性によって提供されるT細胞増殖の刺激は有益である。二重特異性は、さらに4人の患者の細胞において併用治療よりも増殖を促進した(表18)。
【0345】
【表18】
【0346】
実施例9.抑制性シグナル伝達の抑制
NSCLC患者のCD4またはCD8 T細胞を、弱いTCR刺激を提供するヒト肺癌腺癌細胞株(A549)と共にインキュベートした。培養物をLAG-3二価、PD-1一価または抗体または等しい濃度のLAG-3二価およびPD-1一価Vの組み合わせで処理し、これらを二重特異性1.2-6GS-1.2-6GS-2.92と比較した。細胞を、フローサイトメトリーによって、ネガティブT細胞レギュレーターCBL-bおよびc-CBLの発現について分析した。E3ユビキチンリガーゼCbl-b(Uniprotアクセッション番号Q13191またはNCBIリファレンスNP_001308717.1)およびc-Cbl(C-CBL、CBL、Uniprot P22681としても知られている)を発現する細胞の割合または細胞の平均蛍光強度を計算した、表19。E3ユビキチンリガーゼは、PD-1/PD-L1シグナル伝達経路に関与していた(Karwacz et al, EMBO MOl Med 3, 581-592, 2011)。
【0347】
【表19】
【0348】
PD-1の遮断によりCD4+T細胞のCbl-bは減少するが、LAG-3二価は効果を示さなかった。PD-1およびLAG-3の遮断の組み合わせは、PD-1の遮断のみの場合と比較して追加的な効果を示さなかった。二重特異性は、NSCLC患者からのCD4+およびCD8+T細胞の両方においてCbl-bおよびc-cblの発現を有意に阻害した。したがって、増殖に関する図6に示すデータと一致して、二重特異性による標的の結合は併用治療とは異なり、T細胞阻害シグナル伝達のバイオマーカーの抑制を可能にする。c-CblおよびCbl-bタンパク質発現を減少させる唯一の治療法は二重特異性であり、二重特異性による二重標的への結合により、治療法の組み合わせと比較して代替的なシグナル伝達経路を可能にすることを示唆している。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図3f
図4
図5
図6
【配列表】
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【外国語明細書】