IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トプコンの特許一覧

<>
  • 特開-眼科装置 図1
  • 特開-眼科装置 図2
  • 特開-眼科装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015672
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/16 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
A61B3/16 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117898
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】丸山 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】大宮 健
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA20
4C316FA12
(57)【要約】
【課題】高圧気体を用いて眼圧を測定する眼科装置において、動作音や衝撃を低減する。
【解決手段】連続して高圧気体を生成する高圧ボンベ101と、高圧ボンベ101から供給された高圧気体を貯める蓄圧タンク104と、高圧ボンベ101と蓄圧タンク104の間に配置され、高圧ボンベ101から供給される高圧空気を特定の圧力に安定化した状態で蓄圧タンク104に供給する圧力レギュレータ103と、蓄圧タンク104につながり、被検眼200に高圧気体を噴射するノズル107と、蓄圧タンク104とノズル107の間に配置された電磁弁105を備える眼科装置。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して高圧気体を生成する高圧気体供給手段と、
前記高圧気体供給手段から供給された高圧気体を貯める蓄圧タンクと、
前記蓄圧タンクの内圧を特定の値にする圧力安定化手段と、
前記蓄圧タンクにつながり、被検眼に高圧気体を噴射するノズルと、
前記蓄圧タンクと前記ノズルの間に配置された第1の開閉弁と
を備える眼科装置。
【請求項2】
前記高圧気体供給手段が高圧気体を貯蔵した高圧ボンベである請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記高圧気体供給手段がポンプである請求項1に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記ポンプは、ダイヤフラムを用いて脈流を含む高圧空気流を生成する請求項3に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記第1の開閉弁を開とすることで前記被検眼に高圧気体の噴射が開始され、
その後に前記第1の開閉弁を閉とすることで前記被検眼への前記高圧気体の噴射が停止する請求項1に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記高圧気体供給手段と前記蓄圧タンクの間に第2の開閉弁が配置され、
前記第1の開閉弁を閉、前記第2の開閉弁を開とした状態で前記蓄圧タンクの内部を特定の高圧状態とし、その状態で前記第2の開閉弁を閉とし、その後に前記第1の開閉弁を開とすることで、前記ノズルから前記被検眼に高圧気体の噴射が行われる請求項1に記載の眼科装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼圧を測定する眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼球に空気を吹き付け、その際の眼球の変形を光学的に計測することで眼圧の測定を行う非接触型の眼科装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-237516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の眼圧を測定する眼科装置では、シリンダを用いて高圧気体を生成し、それを被検眼に吹き付けていた。この構造は、被検者にとって、動作音が気になる、動作時の衝撃が気になる、といった問題がある。
【0005】
このような背景において、本発明は、高圧気体を用いて眼圧を測定する眼科装置において、動作音や衝撃を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、連続して高圧気体を生成する高圧気体供給手段と、前記高圧気体供給手段から供給された高圧気体を貯める蓄圧タンクと、前記蓄圧タンクの内圧を特定の値にする圧力安定化手段と、前記蓄圧タンクにつながり、被検眼に高圧気体を噴射するノズルと、前記蓄圧タンクと前記ノズルの間に配置された第1の開閉弁とを備える眼科装置である。
【0007】
本発明において、前記高圧気体供給手段が高圧気体を貯蔵した高圧ボンベである態様、
前記高圧気体供給手段がポンプである態様が挙げられる。本発明において、前記ポンプは、ダイヤフラムを用いて脈流を含む高圧空気流を生成する態様が挙げられる。
【0008】
本発明において、前記第1の開閉弁を開とすることで前記被検眼に高圧気体の噴射が開始され、その後に前記第1の開閉弁を閉とすることで前記被検眼への前記高圧気体の噴射が停止する態様が挙げられる。
【0009】
本発明において、前記高圧気体供給手段と前記蓄圧タンクの間に第2の開閉弁が配置され、前記第1の開閉弁を閉、前記第2の開閉弁を開とした状態で前記蓄圧タンクの内部を特定の高圧状態とし、その状態で前記第2の開閉弁を閉とし、その後に前記第1の開閉弁を開とすることで、前記ノズルから前記被検眼に高圧気体の噴射が行われる態様が挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高圧気体を用いて眼圧を測定する眼科装置において、動作音や衝撃が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の眼科装置の概念図である。
図2】実施形態の眼科装置の概念図である。
図3】実施形態の眼科装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.第1の実施形態
(構成)
図1には、発明を利用した眼科装置100が示されている。眼科装置100は、被検眼200に高圧空気を吹き付け、空気圧によって変形する被検眼200の変形の程度を光学的に検出し、被検眼200の眼圧を計測する。この原理は、従来からある眼科装置と同じである。
【0013】
眼科装置100は、連続して高圧気体を生成する高圧気体供給手段である高圧ボンベ101を備えている。ここで、高圧とは、大気圧よりも高い圧力のことをいう。高圧ボンベ101には、圧縮空気が貯められている。
【0014】
高圧ボンベ101は、その内圧が後述する蓄圧タンク104の内圧の最大値よりも大きなものが選択されている。この例では、高圧ボンベ101に貯められた気体は、空気であるが、二酸化炭素ガスや窒素ガス等も利用可能である。
【0015】
一例であるが、現行の眼圧測定装置における被検眼への1回の噴射量は、約3.3mLであり、それを前提とすると、市販のミニCOカートリッジ(直径40mm、長さ134mm、容量98ml、内圧41.7MPa)を利用した場合、約12000回の噴射が可能であると試算される。
【0016】
高圧ボンベ101には、配管102を介して圧力安定化手段である圧力レギュレータ103が接続されている。高圧ボンベ101から供給される高圧空気は、圧力レギュレータ103を介して、蓄圧タンク(アキュムレータ)104に供給される。
【0017】
圧力レギュレータ103は、高圧ボンベ101の側が入力側で蓄圧タンク104の側が出力側となる。圧力レギュレータ103は、入力側の圧力>出力側の圧力の条件において、出力側の圧力(蓄圧タンク104の内圧)を一定に保つ機能を有する。圧力レギュレータ103は、市販のものを利用している。
【0018】
蓄圧タンク104は、圧力レギュレータ103によって調整された大気圧より高い圧力の空気を貯める。
【0019】
蓄圧タンク104の内容量は、ノズル107から被検眼200に吹き付けられる空気の量(容積)に対して、十分に余裕を持った容積に設定されている。この場合、電磁弁105を閉鎖するタイミングを調整することで、ノズル107から被検眼200に吹き付けられる空気の量が調整される。
【0020】
蓄圧タンク104は気密性を有し、電磁弁105を介して空気室106と接続されている。空気室106には、被検眼200に高圧空気を吹き付けるためのノズル107が接続されている。
【0021】
眼科装置100は、測定光学系108を有する。測定光学系108は、測定光の発光部と被検眼200からの反射光の受光部を備える。測定光学系108内の発光部において発光された測定光は、光透過部109,110を介して、被検眼200に照射され、その反射光は測定光学系108内の受光部で受光される。
【0022】
(眼圧の測定原理)
上記測定光を被検眼200に照射している状態で、ノズル107から被検眼200に高圧空気を吹き付ける。この際、高圧空気の圧力により被検眼200の眼球が変形する。具体的には、凸形状⇒平坦⇒凹形状と被検眼の表面が変形し、それに伴い被検眼200からの反射光の光量が変化する。
【0023】
標準模型眼を用いて、上記の反射光の光量の変化と眼圧の関係を予め取得しておき、この関係に実際の被検眼200からの反射光の光量の変化を当てはめることで、被検眼200の眼圧を算出する。これが、眼科装置100における眼圧の測定の基本的な原理である。これは、従来の眼圧の測定と同じである。
【0024】
(測定の手順)
まず、電磁弁105を閉鎖した状態で高圧ボンベ101から蓄圧タンク104に高圧空気を供給し、蓄圧タンク104内の圧力を予め定めた圧力としておく。この圧力は、圧力レギュレータ103を調整することで決められる。蓄圧タンク104の内圧は、ノズル107から被検眼に噴射される高圧空気の圧力と量を鑑みて決定される。
【0025】
蓄圧タンク104が規定の内圧となった様態で、ノズル107から被検眼200への高圧空気の噴射が可能となる。この状態において、電磁弁105を開とすると、蓄圧タンク104内の高圧空気が空気室106に移動し、ノズル107から被検眼200に高圧空気が吹き付けられる。
【0026】
ここで、適切なタイミングで電磁弁105を閉鎖することで、ノズル107から噴出する空気量が制御される。電磁弁105を閉鎖するタイミングを決める方法としては、開放から規定の時間が経過した段階で閉鎖する方法、被検眼200からの反射光の強度の変化に基づいて閉鎖する方法等がある。後者の方法の具体的な例としては、例えば、被検眼200の表面が平坦になった段階(反射光量が最大となる)を光学的に検出し、それに基づいて閉鎖する方法が揚げられる。
【0027】
ノズル107からの高圧空気の噴射継続時間は、400μs~2000μs程度(圧力との関係で幅がある)である。電磁弁105は、この開閉動作を実現できるものを選択する。
【0028】
(優位性)
眼科装置100は、連続して高圧気体を生成する高圧ボンベ101と、高圧ボンベ101から供給された高圧気体を貯める蓄圧タンク104と、高圧ボンベ101と蓄圧タンク104の間に配置され、蓄圧タンク104の内圧を予め定めた特定の圧力にする圧力安定化手段であり、高圧ボンベ101から供給される高圧空気を特定の圧力に安定化した状態で蓄圧タンク104に供給する圧力レギュレータ103と、蓄圧タンク104につながり、被検眼200に高圧気体を噴射するノズル107と、蓄圧タンク104とノズル107の間に配置された電磁弁105を備える。
【0029】
この構成では、被検眼200への高圧空気の噴射時に可動するのは電磁弁だけであるので、静音化および低衝撃化が実現できる。また、動作時の振動の発生が抑えられるので、ノズル107の軸が被検眼200から外れるアライメント誤差の発生が抑えられる。また、動作音や衝撃の発生があると、被検者の生理的反応(びっくりして動いてしまう)や不快感の発生が懸念されるが、動作音や衝撃が抑えられるので、これらの問題の発生が抑制される。
【0030】
また、ピストンを用いた場合に存在する戻り機構がないので、涙液飛沫をノズルから吸い込む問題が発生しない。これにより、感染症の抑制、ノズル内や空気室の汚染の抑制といった効果が得られる。また、電磁弁以外の機械動作機構がないので、高い信頼性が得られる。また、部品点数が少なく全体を小型化できる。このため、携帯型の眼科装置を実現できる。
【0031】
高圧ボンベ101は、使用回数を経るに従って、徐々に内圧が低下し、出力特性が変動する。この例では、圧力レギュレータ103によって蓄圧タンク104に加わる圧力を一定に保つことで、上記高圧ボンベ101の内圧低下に伴う出力圧の低下や変動がノズル107から噴出する高圧空気の挙動に影響することが抑制される。
【0032】
2.第2の実施形態
この例では、ノズル107から被検眼200に吹き付けられる空気の量(容積)に対応させて、蓄圧タンク104の内容量を設定する。また、蓄圧タンク104と圧力レギュレータ103の間に電磁弁111を追加する。
【0033】
この例の場合における動作手順の一例を以下に説明する。まず、電磁弁105を閉鎖、電磁弁111を開放した状態において、高圧ボンベ101から圧力レギュレータ103を介して、蓄圧タンク104に高圧空気を送り、蓄圧タンク104の内圧を予め定めた圧力とする。
【0034】
蓄圧タンク104の内圧が予め定めた圧力となったら、電磁弁111を閉鎖する。この後に電磁弁105を開放することで、蓄圧タンク104に貯められた高圧空気が空気室106に移動し、ノズル107から高圧空気が噴出する。
【0035】
この際、ノズル107から外部に噴出する空気の量および空気圧が特定の量となるように、蓄圧タンク104の容積と内圧の設定値を予め決めておく。
【0036】
3.第3の実施形態
高圧空気の供給源としてマイクロポンプ(マイクロブロア)112を利用する形態も可能である。マイクロポンプ112は、圧電素子によりダイヤフラムを駆動し、このダイヤフラムの動きにより気体を吐出する。ポンプとして他の形態のものを用いることもできる。ポンプと高圧ボンベを併用する形態も可能である。
【0037】
ところで、マイクロポンプには逆止弁を有するものと有さないものがある。マイクロポンプ112として逆止弁を有さないタイプのものを用いた場合、電磁弁111が必要となる。この場合において、電磁弁111の代わりにマイクロポンプ112と圧力レギュレータ103の間に図示しない電磁弁または逆止弁を配置してもよい。マイクロポンプ112が逆止弁を有する場合、マイクロポンプ112と蓄圧タンク104の間に電磁弁あるいは逆止弁を配置しない構成も可能である。
【0038】
マイクロポンプ112は、時間をかけて蓄圧タンク104の圧力を上げればよく、短時間にポンピングする必要はない。短時間にポンピングする必要がないので、マイクロポンプ112は、静音化でき、また衝撃の発生を抑えた動作が可能となる。また、マイクロポンプ112として小型のものを採用できる。また、蓄圧タンク104に一旦貯めた高圧空気をノズル107から被検眼200に噴出するので、マイクロポンプ112で脈流が発生しても、その影響が被検眼200に及ばない。
【0039】
4.第4の実施形態
図2は、蓄圧タンク104が内圧を一定に保つ機能を有する場合である。この場合、圧力レギュレータ103を不要とできる(勿論、併用も可能である)。この場合、蓄圧タンク104は内圧を検出する圧力センサ113、圧力センサ113が検出した蓄圧タンク104の内圧に基づき開閉する電磁弁114を備える。
【0040】
蓄圧タンク104に高圧気体供給手段(高圧ボンベ101またはマクロポンプ112)から高圧気体が供給されている状態において、蓄圧タンク113の内圧が予め定めた設定値を超えようとすると、それが圧力センサ113により検出され、電磁弁114が開となる。これにより、蓄圧タンク113の内圧が解放され、当該内圧が設定値を超えないように調整される。
【0041】
また、蓄圧タンク104に高圧気体供給手段から高圧気体が供給され、且つ、電磁弁114が開の状態において、蓄圧タンク104の内圧が予め定めた設置値を下回りそうになると、それが圧力センサ113により検出され、電磁弁114が閉となり、蓄圧タンク104の内圧が予め定めた設置値を下回らないように調整される。これらの調整が動的に行われることで、蓄圧タンク113の内圧が一定に保たれる。
【0042】
この構成において、高圧気体供給手段として逆止弁を有さないマイクロポンプ112を用いた場合、マイクロポンプ112と蓄圧タンク104の間に電磁弁111(または逆止弁)が必要となる。当該マイクロポンプが逆止弁を有する場合、電磁弁111は不要である。高圧気体供給手段として高圧ボンベ101を用いる場合は、電磁弁111が必要である。
【0043】
5.第5の実施形態
マイクロポンプを複数配置する構成も可能である。図3には、複数のマイクロポンプを直列配置した例が示されている。なお、マイクロポンプ以外の部分は図1と同じである。本実施形態は、図2の構成に適用することもできる。
【0044】
図3には、2個のマイクロポンプ121,122を直列に接続した例が示されている。複数のマイクロポンプを直列に接続することで、吐出する気体の圧力を高めることができる。直列にするマイクロポンプの数は、2個以上で可能であり、必要とする圧力に応じて決めればよい。
【0045】
また、図3に示すように、複数のマイクロポンプを並列に配置することもできる。図3には2つのマイクロポンプ131,132を並列に接続した例が示されている。複数のマイクロポンプを並列に接続することで、吐出する気体の流量を増加させることができる。
【0046】
また、図3に示すように、複数のマイクロポンプを直列に接続したものを複数用意し、それを更に並列に接続する構成も可能である。図3には、マイクロポンプ141,142を直列に接続したものと、マイクロポンプ151,152を直列に接続したものを並列に接続した例が示されている。この構成によれば、吐出する(送り出す)気体の圧力と流量を増加させることができる。
【符号の説明】
【0047】
100…眼圧測定用の眼科装置、101…高圧ボンベ、102…配管、103…圧力レギュレータ、104…蓄圧タンク(アキュムレータ)、105…電磁弁、106…空気室、107…ノズル、108…測定光学系、109…光透過部、110…光透過部、111…電磁弁、112…マイクロポンプ、113…圧力センサ、114…電磁弁、200…被検眼、121…マイクロポンプ、122…マイクロポンプ、131…マイクロポンプ、132…マイクロポンプ、141…マイクロポンプ、142…マイクロポンプ、151…マイクロポンプ、152…マイクロポンプ。

図1
図2
図3