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特開2024-156725多量体タンパク質の量および純度を決定するための方法およびクロマトグラフィーシステム
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  • 特開-多量体タンパク質の量および純度を決定するための方法およびクロマトグラフィーシステム 図1
  • 特開-多量体タンパク質の量および純度を決定するための方法およびクロマトグラフィーシステム 図2A
  • 特開-多量体タンパク質の量および純度を決定するための方法およびクロマトグラフィーシステム 図2B
  • 特開-多量体タンパク質の量および純度を決定するための方法およびクロマトグラフィーシステム 図3
  • 特開-多量体タンパク質の量および純度を決定するための方法およびクロマトグラフィーシステム 図4A
  • 特開-多量体タンパク質の量および純度を決定するための方法およびクロマトグラフィーシステム 図4B
  • 特開-多量体タンパク質の量および純度を決定するための方法およびクロマトグラフィーシステム 図5
  • 特開-多量体タンパク質の量および純度を決定するための方法およびクロマトグラフィーシステム 図6
  • 特開-多量体タンパク質の量および純度を決定するための方法およびクロマトグラフィーシステム 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156725
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】多量体タンパク質の量および純度を決定するための方法およびクロマトグラフィーシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20241029BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20241029BHJP
   B01J 20/281 20060101ALI20241029BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20241029BHJP
   G01N 30/46 20060101ALI20241029BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20241029BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20241029BHJP
   G01N 30/74 20060101ALI20241029BHJP
   G01N 30/64 20060101ALI20241029BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241029BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G01N30/88 J
G01N33/68
B01J20/281 R
G01N30/26 A
G01N30/26 M
G01N30/46 A
G01N30/86 J
G01N30/72 C
G01N30/74 E
G01N30/64 F
C07K16/46
C07K1/22
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024117397
(22)【出願日】2024-07-23
(62)【分割の表示】P 2021507759の分割
【原出願日】2019-08-16
(31)【優先権主張番号】62/719,323
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ペローネ、 マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス、 オードリー
(72)【発明者】
【氏名】タスティアン、 アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】バク、 ハンネ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】試料中の多量体タンパク質の量および/または純度を評価するためのクロマトグラフィーシステムおよび方法に関する。
【解決手段】クロマトグラフィーシステムは、切換弁を介して接続された2つの異なるアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質と、第1のタンパク質不純物と、第2のタンパク質不純物との混合物を含む試
料中の前記タンパク質の量および/または純度を定量化するための方法であって、
ここで前記タンパク質および前記第1の不純物は第1のアフィニティーマトリックスに結
合し、前記第2の不純物は、前記第1のアフィニティーマトリックスに実質的に結合せず第
2のアフィニティーマトリックスに結合し、前記方法は以下の工程を含む:
a. 前記第1のアフィニティーマトリックスと、前記第2のアフィニティーマトリックス
と、検出器とを含むクロマトグラフィーシステムに前記試料を適用する工程であって、前
記第1のアフィニティーマトリックスは、切換弁を介して前記第2のアフィニティーマトリ
ックスに連続的に接続される、工程;
b. 第1のセットの条件下で、前記第1のアフィニティーマトリックスから前記第2の不純
物を前記第2のアフィニティーマトリックス上へと溶出させる工程;
c. 前記第2のアフィニティーマトリックスをバイパスするように前記切換弁を切り換え
、第2のセットの条件下で、前記タンパク質を前記検出器を通して溶出させ、溶出された
タンパク質の量を決定する工程;
d. 第3のセットの条件下で、前記第1の不純物を前記検出器を通して溶出させ、溶出さ
れた第1の不純物の量を決定する工程;
e. 第3のセットの条件下で、前記第2のアフィニティーマトリックスから前記第2の不純
物を前記検出器を通して溶出させ、溶出された第2の不純物の量を決定する工程;および
f. 前記試料中の前記タンパク質の量および/または純度を定量化する工程。
【請求項2】
前記タンパク質は、前記第1のアフィニティーマトリックスに対して、前記第1の不純物
よりも低い親和性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タンパク質はヘテロ二量体タンパク質であり、前記第1のタンパク質不純物は第1の
ホモ二量体タンパク質であり、前記第2のタンパク質不純物は第2のホモ二量体タンパク質
であり、前記ヘテロ二量体タンパク質および前記第1のホモ二量体タンパク質は前記第1の
アフィニティーマトリックスに結合し、前記第2のホモ二量体タンパク質は、前記第1のア
フィニティーマトリックスに実質的に結合せず前記第2のアフィニティーマトリックスに
結合する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質が、第1の免疫グロブリンCH3ドメインおよび第2の免疫グロブリンCH3ド
メインを含み、前記第1および第2の免疫グロブリンCH3ドメインは前記第1のアフィニティ
ーマトリックスに対する親和性において異なり、前記試料は、前記タンパク質と、2つの
第1のCH3ドメインを含むタンパク質と、2つの第2のCH3ドメインを含むタンパク質とを含
む混合物を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のCH3ドメインは、H435RおよびY436Fアミノ酸置換を含む、請求項4に記載の方
法。
【請求項6】
前記タンパク質は抗体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記タンパク質は二重特異性抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のアフィニティーマトリックスがプロテインAを含み、前記第2のアフィニティ
ーマトリックスがプロテインGを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のセットの条件が第1のpHを含み、前記第2のセットの条件が第2のpHを含み、前
記第3のセットの条件が第3のpHを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のpHは前記第1のpHより低く、前記第3のpHは前記第2のpHより低い、請求項9に
記載の方法。
【請求項11】
前記第1のpHは約pH 5.0~約pH 7.4であり、前記第2のpHは約pH 4.3~約pH 5.6であり、
前記第3のpHは約pH 2.0~約pH 2.8である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のセットの条件、前記第2のセットの条件、および前記第3のセットの条件が、
移動相修飾剤を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記移動相修飾剤は、LiCl、NaCl、KCl、MgCl2、およびCaCl2緩衝剤から選択される塩
緩衝剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ヘテロ二量体タンパク質と、第1のホモ二量体タンパク質と、第2のホモ二量体タンパク
質との混合物を含む試料中の前記ヘテロ二量体タンパク質の量および/または純度を定量
化するための方法であって、
ここで、前記ヘテロ二量体タンパク質および前記第1のホモ二量体タンパク質はプロテ
インAマトリックスに結合し、前記第2のホモ二量体タンパク質は、プロテインAマトリッ
クスに実質的に結合せずプロテインGマトリックスに結合し、前記方法は以下の工程を含
む:
a. 前記プロテインAマトリックスと、前記プロテインGマトリックスと、検出器とを含
むクロマトグラフィーシステムに前記試料を適用する工程であって、前記プロテインAマ
トリックスは切換弁を介して前記プロテインGマトリックスに連続的に接続される、工程

b. 第1のセットの条件下で、前記プロテインAマトリックスから前記第2のホモ二量体タ
ンパク質を前記プロテインGマトリックス上へと溶出させる工程;
c. 前記プロテインGマトリックスをバイパスさせるように前記切換弁を切り換えて、第
2のセットの条件下で前記ヘテロ二量体タンパク質を前記検出器を通して溶出させ、溶出
されたタンパク質の量を決定する工程;
d. 第3のセットの条件下で、前記第1のホモ二量体タンパク質を前記検出器を通して溶
出させ、溶出された第1の不純物の量を決定する工程;
e. 第3のセットの条件下で、前記第2のアフィニティーマトリックスから前記第2のホモ
二量体タンパク質を前記検出器を通して溶出させ、溶出された第2の不純物の量を決定す
る工程;および
f. 前記試料中の前記タンパク質の量および/または純度を定量化する工程。
【請求項15】
前記ヘテロ二量体タンパク質はFcFc*を含み、前記第1のホモ二量体タンパク質はFcFcを
含み、前記第2のホモ二量体タンパク質はFc*Fc*を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1のアフィニティーマトリックスと、第2のアフィニティーマトリックスと、検出器と
を含むクロマトグラフィーシステムであって、前記第1のアフィニティーマトリックス、
前記第2のアフィニティーマトリックス、および前記検出器のそれぞれが切換弁を介して
接続されている、クロマトグラフィーシステム。
【請求項17】
(i) プロテインAクロマトグラフィーカラムと、 (ii) プロテインGクロマトグラフィー
カラムと、 (iii) UV検出器、電荷エアロゾル検出器、および/または質量分析計を備え
たHPLCカラムを含む検出器とを含むクロマトグラフィーシステムであって、前記プロテイ
ンAクロマトグラフィーカラム、前記プロテインGクロマトグラフィーカラム、および前記
検出器のそれぞれが切換弁を介して接続されている、クロマトグラフィーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の多量体タンパク質の量および/または純度を評価するためのクロマ
トグラフィーシステムおよび方法に関し、そのクロマトグラフィーシステムは、切換弁(
スイッチバルブ)を介して接続された2つの異なるアフィニティークロマトグラフィーマ
トリックスを含む。
【背景技術】
【0002】
二重特異性抗体は、同一または異なる抗原上の2つの異なる種類のエピトープに同時に
かつ選択的に結合することができる抗体である。単一分子による複数の標的の結合は、特
に腫瘍学および自己免疫疾患の分野で魅力的な治療概念である。最も広く使用されている
アプリケーションは、癌免疫療法であり、そこでは、二重特異性抗体が、細胞傷害性細胞
と、例えば破壊されるべき腫瘍細胞のような標的とに同時に結合するように遺伝子操作さ
れる。さらに、複数の分子を標的とすることは、並行する経路の調節を回避し、治療に対
する抵抗性を防ぐために有用となり得る。ほとんどの病態は全身にわたって複雑な多面的
作用を有するため、経路内の複数の標的を結合あるいは遮断することは疾患を停止させる
ことにとって有益となり得る。
【0003】
複数の二重特異性抗体フォーマットが提案されており、現在開発中にある。そのような
フォーマットの一つは、改善された薬物動態プロファイルおよび最小の免疫原性を有する
標準的な完全ヒトIgG抗体に基づくものであり(米国特許第8,586,713号およびWO2016/018
740参照)、図1に概略的に示されている。1つの共通の軽鎖と2つの異なる重鎖が組み合わ
されて、そのような二重特異性を形成する。重鎖の一つは、置換されたFc配列(以下「Fc
*」という)を含み、これはCH3ドメインにおけるH435R/Y436F(EU番号付けシステムによ
る;IMGTエクソン番号付けシステムによればH95R/Y96F)置換に起因して、プロテインAへ
のFc*の結合を大幅に減少させる。Fc*重鎖およびFc重鎖と共通の軽鎖との共発現の結果、
三つの生成物が創出され、そのうち、二つ(FcFcおよびFc*Fc*)は重鎖に関してホモ二量
体であり、一つ(FcFc*)は所望のヘテロ二量体二重特異性生成物である。高親和性であ
るFcFc重鎖ホモ二量体あるいは結合が弱いFc*Fc*ホモ二量体と比較した場合の、プロテイ
ンAのようなFc結合タンパク質に対する中間的な結合親和性のために、Fc*配列は市販のア
フィニティークロマトグラフィーカラム上でのFcFc*二重特異性生成物の選択的精製を可
能にする。
【0004】
別の抗体フォーマットは、WO2013/166604に記載されているいわゆる「ワンアーム(one
arm)」抗体であり、図2Aに概略的に示されている。このヘテロ二量体抗体は、例えば、
2つの異なる重鎖と1つだけの軽鎖とからなる。このような一例では、軽鎖に結合された重
鎖はFc*配列を含む一方、軽鎖を有さない重鎖は通常のFc配列を含む。したがって、最初
の反応混合物は三つの生成物、すなわち二つのホモ二量体(FcFcおよびFc*Fc*)と所望の
ヘテロ二量体FcFc*生成物とを含み、これらはアフィニティークロマトグラフィーを用い
て分離することができる。
【0005】
さらに別の可能な抗体フォーマットは、C末端単鎖可変領域断片(ScFv)を有する抗体
構築物であり、図2Bに概略的に示されている。これらの抗体は、単一特異性または二重特
異性であり得、単一の共通の軽鎖および2つの異なる重鎖を含む。一例では、重鎖の一つ
はFc*配列を有しScFvに連結され、他方の重鎖は、天然Fc配列を有しScFvを有さない。別
の例では、ScFv構築物を有する重鎖が天然Fc配列を有し、Fc*重鎖がScFvを有さない。ア
フィニティーカラムへの結合を阻止する追加的突然変異が、Fc*突然変異を有するのと同
鎖上の重鎖可変領域(VH)への突然変異である、さらなる例が、例えば米国特許第9,493,
563号に提供されており(VH3およびFcの突然変異がIMGT 3、5、7、20、22、26、27、79、
81、84、84.2、85.1、86、90として記述される)、その全体が参照により組み入れられる
。上記の例のように、FcFc*ヘテロ二量体ならびにFcFcおよびFc*Fc*ホモ二量体の3成分混
合物は、差次的結合アフィニティークロマトグラフィーを用いて分離することができる。
【0006】
二重特異性抗体の商業規模生産の分野において、抗体の産生および精製の様々な段階に
おけるヘテロ二量体の相対的および絶対的な量および純度を評価する必要性がある。この
ためには、ヘテロ二量体と2つのホモ二量体不純物との間の効果的な分離が望まれる。さ
らに、細胞培養プロセスおよび抗体の精製プロセスの際に品質管理測定のスピードおよび
効率が望まれる。本発明は、新規なクロマトグラフィーシステムおよび方法を提供するこ
とによって、このニーズおよび他のニーズに対処する。
【0007】
前述の議論は、単に当該技術分野が直面する問題の性質のよりよい理解を提供するため
に提示されたものであり、いかなる意味においても、先行技術についての自認として解さ
れるべきではなく、また、本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本
願に対する「先行技術」を構成するという自認として解されるべきではない。
【発明の概要】
【0008】
本発明の非限定的な種々の態様および実施形態を以下に記述する。
【0009】
本発明は、切換弁を含む新規なクロマトグラフィーシステム、および試料中のヘテロ二
量体画分の量および/または純度を定量的に評価する方法を記述する。
【0010】
1つの態様において、本発明は、タンパク質と、第1のタンパク質不純物と、第2のタン
パク質不純物との混合物を含む試料中のタンパク質の量および/または純度を定量化する
ための方法を提供し、ここで、上記タンパク質および第1の不純物は第1のアフィニティー
マトリックスに結合し、第2の不純物は、実質的に第1のアフィニティーマトリックスに結
合せず第2のアフィニティーマトリックスに結合、前記方法は以下の工程を含む:
【0011】
a. 第1のアフィニティーマトリックス、第2のアフィニティーマトリックス、および検
出器を含むクロマトグラフィーシステムに試料を適用する工程であって、ここで、第1の
アフィニティーマトリックスは、切換弁を介して第2のアフィニティーマトリックスに連
続的に接続されている、工程;
【0012】
b. 第1のセットの条件下で、第1のアフィニティーマトリックスから第2の不純物を第2
のアフィニティーマトリックス上へと溶出させる工程;
【0013】
c. 第2のアフィニティーマトリックスをバイパスするように切換弁を切り換え、第2の
セットの条件下で該タンパク質を検出器を通して溶出させ、溶出されたタンパク質の量を
決定する工程;
【0014】
d. 第3のセットの条件下で第1の不純物を検出器を通して溶出させ、溶出された第1の不
純物の量を決定する工程;
【0015】
e. 第3のセットの条件下で、第2の不純物を第2のアフィニティーマトリックスから検出
器を通して溶出させ、溶出された第2の不純物の量を決定する工程;および
【0016】
f. 試料中のタンパク質の量および/または純度を定量化する工程。
【0017】
一実施形態において、該タンパク質は、多量体タンパク質であり、例えば抗体である。
一実施形態において、該タンパク質は目的の抗体であり、第1および第2のタンパク質不純
物は、多量体タンパク質、例えば、目的の抗体に構造的に関連していても関連しなくても
よい抗体である。一実施形態では、該タンパク質は二重特異性抗体、すなわちヘテロ二量
体タンパク質であり、第1のタンパク質不純物は第1のホモ二量体タンパク質であり、第2
のタンパク質不純物は第2のホモ二量体タンパク質である。ある場合には、多量体タンパ
ク質の混合物は、例えば細胞培養物中のチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞のよう
な複数の真核細胞によって産生される。
【0018】
一実施形態では、該タンパク質は、第1のアフィニティーマトリックスに対して、第1の
不純物よりも低い親和性を有する。一実施形態では、該タンパク質はヘテロ二量体タンパ
ク質であり、第1のタンパク質不純物は第1のホモ二量体タンパク質であり、第2のタンパ
ク質不純物は第2のホモ二量体タンパク質であり、ヘテロ二量体タンパク質および第1のホ
モ二量体タンパク質は第1のアフィニティーマトリックスに結合し、第2のホモ二量体タン
パク質は、第1のアフィニティーマトリックスに実質的に結合せず第2のアフィニティーマ
トリックスに結合する。
【0019】
一実施形態において、該タンパク質は、第1の免疫グロブリンCH3ドメインおよび第2の
免疫グロブリンCH3ドメインを含み、ここで、前記第1および第2の免疫グロブリンCH3ドメ
インは、第1のアフィニティーマトリックスに対する親和性が異なり、試料は、前記タン
パク質と、第1のCH3ドメインを2つ含むタンパク質と、第2のCH3ドメインを2つ含むタンパ
ク質とを含む混合物を含む。
【0020】
一実施形態では、第2のCH3ドメインは、H435RおよびY436F(EU番号付けシステムによる
;IMGTエクソン番号付けシステムによればH95R/Y96F)アミノ酸置換を含む。別の実施形
態では、第2のCH3ドメインは、H435R(EU番号付けシステムによる;IMGTエクソン番号付
けシステムによればH95R)アミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、第2のCH3
ドメインは、H435R(EU番号付けシステムによる;IMGTエクソン番号付けシステムによれ
ばH95R)アミノ酸置換を含み、プロテインA、プロテインG、プロテインL、またはそれら
の誘導体のようなFc結合リガンドに対して検出可能な結合が弱いか、または全くない。
【0021】
一実施形態において、該タンパク質は抗体である。一実施形態において、該タンパク質
は二重特異性抗体である。
【0022】
一実施形態では、第1のアフィニティーマトリックスはプロテインAを含み、第2のアフ
ィニティーマトリックスはプロテインGを含む。
【0023】
一実施形態では、第1のセットの条件は第1のpHを含み、第2のセットの条件は第2のpHを
含み、第3のセットの条件は第3のpHを含む。一実施形態では、第2のpHは第1のpHより低く
、第3のpHは第2のpHより低い。一実施形態では、第1のpHは約pH 5.0~約pH 7.4であり、
第2のpHは約pH 4.3~約pH 5.6であり、第3のpHは約pH 2.0~約pH 2.8である。
【0024】
一実施形態では、第1のセットの条件、第2のセットの条件、および第3のセットの条件
は、移動相修飾剤を含む。一実施形態において、移動相修飾剤は、LiCl、NaCl、KCl、MgC
l2およびCaCl2緩衝剤から選択される塩緩衝剤である。
【0025】
別の態様において、ヘテロ二量体タンパク質と、第1のホモ二量体タンパク質と、第2の
ホモ二量体タンパク質との混合物を含む、試料中のヘテロ二量体タンパク質の量および/
または純度を定量化する方法が提供され、ここで、ヘテロ二量体タンパク質および第1の
ホモ二量体タンパク質は第1のアフィニティーマトリックスに結合し、第2のホモ二量体タ
ンパク質は、実質的に第1のアフィニティーマトリックスに結合せず第2のアフィニティー
マトリックスに結合し、前記方法は以下の工程を含む:
a. 第1のアフィニティーマトリックス、第2のアフィニティーマトリックス、および検
出器を含むクロマトグラフィーシステムに試料を適用する工程であって、第1のアフィニ
ティーマトリックスは切換弁を介して第2のアフィニティーマトリックスに連続的に接続
されている、工程;
b. 第1のセットの条件下で第1のアフィニティーマトリックスから第2のホモ二量体タン
パク質を第2のアフィニティーマトリックス上へと溶出させる工程;
c 第2のアフィニティーマトリックスをバイパスするように切換弁を切り換え、第2のセ
ットの条件下で、ヘテロ二量体タンパク質を検出器を通して溶出させ、溶出されたタンパ
ク質の量を決定する工程;
d. 第3のセットの条件下で、第1のホモ二量体タンパク質を検出器を通して溶出させ、
溶出された第1の不純物の量を決定する工程;
e. 第3のセットの条件下で、第2のアフィニティーマトリックスから第2のホモ二量体タ
ンパク質を検出器を通して溶出させ、溶出された第2の不純物の量を決定する工程;およ

f. 試料中のタンパク質の量および/または純度を定量化する工程。
【0026】
さらに別の態様において、ヘテロ二量体タンパク質と、第1のホモ二量体タンパク質と
、第2のホモ二量体タンパク質との混合物を含む、試料中のヘテロ二量体タンパク質の量
および/または純度を定量化する方法が提供され、ここで、ヘテロ二量体タンパク質およ
び第1のホモ二量体タンパク質はプロテインAマトリックスに結合し、第2のホモ二量体タ
ンパク質は、実質的にプロテインAマトリックスに結合せずプロテインGマトリックスに結
合し、前記方法は以下の工程を含む:
a. プロテインAマトリックス、プロテインGマトリックス、および検出器を含むクロマ
トグラフィーシステムに試料を適用する工程であって、プロテインAマトリックスは、切
換弁を介してプロテインGマトリックスに連続的に接続されている、工程;
b. 第1のセットの条件下で、プロテインAマトリックスから第2のホモ二量体タンパク質
をプロテインGマトリックス上へと溶出させる工程;
c プロテインGマトリックスをバイパスするように切換弁を切り換えて、第2のセットの
条件下で、ヘテロ二量体タンパク質を検出器を通して溶出させ、溶出したタンパク質の量
を決定する工程;
d. 第3のセットの条件下で、第1のホモ二量体タンパク質を検出器を通して溶出させ、
溶出された第1の不純物の量を決定する工程;
e. 第3のセットの条件下で、プロテインGアフィニティーマトリックスから第2のホモ二
量体タンパク質を検出器を通して溶出させ、溶出された第2の不純物の量を決定する工程
;および
f. 試料中のタンパク質の量および/または純度を定量化する工程。
【0027】
一実施形態において、ヘテロ二量体タンパク質はFcFc*を含み、第1のホモ二量体タンパ
ク質はFcFcを含み、第2のホモ二量体タンパク質はFc*Fc*を含む。
【0028】
別の態様では、第1のアフィニティーマトリックス、第2のアフィニティーマトリックス
、および検出器を含むクロマトグラフィーシステムが提供され、ここで、第1のアフィニ
ティーマトリックス、第2のアフィニティーマトリックスおよび検出器のそれぞれは、切
換弁を介して接続される。
【0029】
別の態様では、 (i) プロテインAクロマトグラフィーカラムと、 (ii) プロテインGク
ロマトグラフィーカラムと、 (iii) UV検出器、電荷エアロゾル検出器、および/または質
量分析計を備えたHPLCカラムを含む検出器とを含むクロマトグラフィーシステムが提供さ
れ、ここで、プロテインAクロマトグラフィーカラム、プロテインGクロマトグラフィーカ
ラムおよび検出器のそれぞれは切換弁を介して接続される。
【0030】
本発明のこれらおよび他の態様は、添付の特許請求の範囲を含め、本発明の下記詳細な
説明を読めば当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、1つの共通の軽鎖と2つの異なる重鎖(1つはFc*突然変異を含み、もう1つは天然 (Fc) 配列を有する)を有する標準的な完全ヒトIgG抗体に基づく、本発明の方法による分離に適した二重特異性抗体フォーマットの概略図である。1つの代表的な例が描かれており、Fc*突然変異は第1または第2の重鎖のいずれかに組み入れられ得ることに留意されたい。
【0032】
図2A図2Aおよび2Bは、本発明の実施形態による分離に適した二つのさらなる抗体フォーマットの概略図を示す:図2(A)は、二つの異なる重鎖と一つだけの軽鎖からなり、一つの重鎖がFab断片を含まない(例えば、重鎖定常ドメインのみを含む)、ヘテロ二量体「ワンアーム」抗体を示す。
図2B図2(B)は、C末端単鎖可変領域断片 (ScFv) を有する2つの例示的な抗体構築物を示す。Fc*突然変異は、第1または第2の重鎖(定常ドメイン)ポリペプチドのいずれかに組み入れられ得る。
【0033】
図3図3は、本開示の方法に従い本開示の一実施形態によるシステムを利用する、二重特異性抗体と単量体不純物との混合物の分離を示すタイタークロマトグラムを示す。
【0034】
図4A図4(A)および4(B)は、本開示の一実施形態による例示的クロマトグラフィーシステムの概略図を示す。図4(A)に示される1つの例示的なシステムでは、オートサンプラーが第1のアフィニティーマトリックス (カラム) に接続され、それが切換弁を介して第2のアフィニティーマトリックス (カラム) および検出器に接続される。図示の構成では、切換弁は、第1のカラムを第2のカラムに連続的に接続するように配置され、溶離液は、第1のカラムを通って第2のカラム上へと流れ、続いて、定量のための検出器を通って流れる。
図4B図4(B)に示される別の例示的なシステムでは、オートサンプラーが第1のアフィニティーマトリックス (カラム) に接続され、それが切換弁を介して第2のアフィニティーマトリックス (カラム) に接続される。検出器は、バイパス(カラムなし)構成にある切換弁を介して接続される。ここでは、切換弁は、第1のカラムを第2のカラムに接続しそれがさらに検出器に接続されるか、または、第2のカラムをバイパスして第1のカラムを検出器に直接接続する。
【0035】
図5図5は、本開示の一実施形態による二重特異性抗体価/純度セットアップを示す。この概略図は、溶媒脱気装置、溶媒マネージャー、試料マネージャー、カラム区画マネージャー、および検出器を示す。
【0036】
図6図6は、本開示の一実施形態による例示的なクロマトグラフィーシステムを示す。システムのこの例示的なカラム区画において、試料は、第1のアフィニティーマトリクスを含むいくつかの連続的に接続されたカラムを、続いて、第2のアフィニティーマトリクスを含むいくつかの連続的に接続されたカラムを通って移動する。切換弁が、第1のセットのカラムを第2のセットのカラムに接続する。
【0037】
図7図7は、本開示の一実施形態による例示的なクロマトグラフィーシステムの代替的な概略図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の詳細な実施形態をここで開示する。しかしながら、開示された実施形態は、様
々な形態で具現化され得る本発明の単なる例示であることが理解されるべきである。さら
に、本発明の様々な実施形態に関連して与えられる例の各々は、例示的であって、限定的
ではないことが意図されている。したがって、本明細書に開示される特定の構造的および
機能的詳細は、限定するものとして解釈されるべきではなく、単に、当業者が本発明を様
々に利用することのための教示をするための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0039】
別段の定義がされない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は
、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する
。本明細書に記載されたものと同様または同等の任意の方法および材料を、本発明の実施
または試験において使用することができるが、ここでは、特定の方法および材料について
説明する。
【0040】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」、「an
」、および「the」は、文脈に明確に反しない限り、複数の言及を含む。したがって、例
えば、「a method(方法)」への言及は、本明細書に記載されるおよび/または本開示を
読むことによって当業者には明らかになる種類の一つまたは複数の方法および/または工
程を含む。
【0041】
本発明による方法を用いた分離に適したタンパク質の非限定的な例としては、ヘテロ二
量体抗体、例えば二重特異性抗体、ワンアーム抗体、およびScFv抗体が挙げられるが、こ
れらに限定されない。二重特異性抗体は、一般に、2つの異なる重鎖を含み、各重鎖が、2
つの異なる分子(例えば、2つの異なる抗原、または抗原とT細胞受容体)上の、または同
じ分子上の(例えば、同じ抗原上の)異なるエピトープに特異的に結合する。二重特異性
抗体が2つの異なるエピトープ(第1エピトープおよび第2エピトープ)に選択的に結合す
ることができる場合、第1の重鎖の第1エピトープに対する親和性は、一般に、第1の重鎖
の第2エピトープに対する親和性よりも少なくとも一桁から二桁または三桁または四桁低
く、逆もまた然りである。二重特異性抗体によって認識されるエピトープは、同じまたは
異なる標的上に(例えば、同じまたは異なるタンパク質上に)あり得る。二重特異性抗体
は、例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖を組み合わせることによって作
製され得る。例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖可変配列をコードする
核酸配列を、異なる重鎖定常領域をコードする核酸配列に融合させることができ、そのよ
うな配列を、免疫グロブリン軽鎖を発現する細胞において発現させることができる。典型
的な二重特異性抗体は、それぞれ3つの重鎖CDR、それに続く(N末端からC末端へ)CH1ド
メイン、ヒンジ、CH2ドメインおよびCH3ドメインを有する、2つの重鎖と、抗原結合特異
性は付与しないが各重鎖と会合することができるか、または各重鎖と会合することができ
且つ重鎖抗原結合領域によって結合される1つ以上のエピトープに結合することができる
か、または各重鎖と会合することができ且つ一方もしくは両方のエピトープへの一方もし
くは両方の重鎖の結合を可能にする、免疫グロブリン軽鎖とを有する。
【0042】
「Fc含有タンパク質」という語句は、抗体、二重特異性抗体、イムノアドヘシン、なら
びに、少なくとも免疫グロブリンCH2およびCH3領域の機能的部分を含むその他の結合タン
パク質を含む。「機能的部分」とは、Fc受容体(例えばFcγR;またはFcRn、すなわち新
生児Fc受容体)に結合することができる、および/または補体の活性化に関与することが
できる、CH2およびCH3領域を表す。もしCH2およびCH3領域が、いずれのFc受容体にも結合
できなくさせ補体を活性化することもできなくさせる欠失、置換、および/または挿入ま
たは他の改変を含むならば、そのCH2およびCH3領域は機能的ではない。
【0043】
Fc含有タンパク質は、免疫グロブリンドメインにおいて改変を含むことができ、それは
、改変が結合タンパク質の一つ以上のエフェクター機能に影響を及ぼす場合(例えば、Fc
γR結合、FcRn結合(ひいては半減期)、および/またはCDC活性に影響を及ぼす改変)を
含む。このような改変としては、限定されるものではないが、免疫グロブリン定常領域の
EU番号付けによる以下の改変およびそれらの組合せが挙げられる:238, 239, 248, 249,
250, 252, 254, 255, 256, 258, 265, 267, 268, 269, 270, 272, 276, 278, 280, 283,
285, 286, 289, 290, 292, 293, 294, 295, 296, 297, 298, 301, 303, 305, 307, 308,
309, 311, 312, 315, 318, 320, 322, 324, 326, 327, 328, 329, 330, 331, 332, 333,
334, 335, 337, 338, 339, 340, 342, 344, 356, 358, 359, 360, 361, 362, 373, 375,
376, 378, 380, 382, 383, 384, 386, 388, 389, 398, 414, 416, 419, 428, 430, 433,
434, 435, 437, 438および439。
【0044】
例えば、限定するものではないが、結合タンパク質はFc含有タンパク質であり、増強さ
れた血清半減期を示し(上記改変(複数可)を含まない同一のFc含有タンパク質と比較し
て)、位置250(例えばEまたはQ);250および428(例えばLまたはF);252(例えばL/Y/F
/WまたはT)、254(例えばSまたはT)および256(例えばS/R/Q/E/DまたはT)における改
変;または、428および/または433(例えばL/R/SI/P/QまたはK)および/または434(例え
ばH/FまたはY)における改変;または、250および/または428における改変;または、307
または308(例えば308F、V308F)および434における改変を有する。別の例では、改変は
、428L(例えばM428L)および434S(例えばN434S)の改変;428L、2591(例えばV259I)
、および308 F(例えばV308F)の改変;433K(例えばH433K)および434(例えば434Y)の
改変;252、254、および256(例えば252Y、254T、および256E)の改変;250Qおよび428L
の改変(例えばT250QおよびM428L);307および/または308の改変(例えば308Fまたは308
P)を含み得る。
【0045】
用語「スター(star)置換」、「Fc*」、および「HC*」は、プロテインA、プロテインG、
プロテインLまたはそれらの誘導体のような、免疫グロブリンのFcドメインに結合するこ
とが知られている細菌タンパク質(例えば、参照により本明細書に組み込まれるChoe, W.
, et al. 2016, Materials 9, 994, doi: 10.3390/ma9120994に記載されているSpAおよび
SpA模倣体の親和性リガンドを参照)への結合を無くさせる突然変異を含む分子、免疫グ
ロブリン重鎖、Fcフラグメント、Fc含有分子等を含む。免疫グロブリンまたは他のFc含有
タンパク質は、例えば、プロテインAへの結合を大幅に減少させる、CH3ドメイン内の改変
配列を含むことができる(例えばWO2016/018740および米国特許第8,586,713号に記載され
ているように)。二量体の一方のポリペプチドが突然変異を含み他方のポリペプチドが突
然変異を含まないことを表すことの容易さのために、Fcドメイン中の突然変異は本明細書
全体を通して「スター置換」またはFc*と呼ばれ得る。したがって、Fc*Fc*は両方の単量
体がFc*を含むホモ二量体を示し、FcFc*またはFc*Fcは、Fc*置換に関してヘテロ二量体を
示す。用語FcFc*およびFc*Fcは本明細書中では交換可能に使用される。
【0046】
「移動相修飾剤」という語句は、タンパク質間の非特異的な(すなわち非親和性の)イ
オン相互作用その他の非共有結合的相互作用の影響を低減させる、またはそれらの相互作
用を途絶させる部分(moiety)を含む。「移動相修飾剤」には、例えば、塩、第I族およ
び第II族金属と酢酸イオン、重炭酸イオン、炭酸イオン、ハロゲン(例えば、塩化物イオ
ンまたはフッ化物イオン)、硝酸イオン、リン酸イオンまたは硫酸イオンとのイオン結合
物が含まれる。「移動相修飾剤」の非限定的な例示的リストは、ベリリウム、リチウム、
ナトリウム、およびカリウムの酢酸塩;炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウム;炭
酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、および炭酸セシウム;塩化リチウム、塩化
ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、および塩化マグネシウム;フッ化ナトリウム
およびフッ化カリウム;硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、および硝酸カルシウム;リン酸
ナトリウムおよびリン酸カリウム;ならびに硫酸カルシウムおよび硫酸マグネシウムを含
む。
【0047】
「移動相修飾剤」はまた、非共有結合力を弱め、または他の態様でそれに干渉し、生体
分子系内のエントロピーを増加させる、カオトロピック剤を含む。カオトロピック剤の非
限定的な例としては、ブタノール、塩化カルシウム、エタノール、塩化グアニジニウム、
過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、プロパノール、ドデ
シル硫酸ナトリウム、チオ尿素、および尿素が挙げられる。カオトロピック剤には、タン
パク質の溶解度に影響を及ぼす塩が含まれる。よりカオトロピックなアニオンとしては、
例えば、塩化物イオン、硝酸イオン、臭化物イオン、塩素酸イオン、ヨウ化物イオン、過
塩素酸イオン、およびチオシアン酸イオンが挙げられる。よりカオトロピックなカチオン
としては、例えば、リチウム、マグネシウム、カルシウム、およびグアニジニウムが挙げ
られる。
【0048】
「移動相修飾剤」には、イオン相互作用または他の非共有結合的相互作用に影響を及ぼ
し、pH勾配もしくはpHステップへの添加に際して、または「移動相修飾剤」中でのプロテ
インA支持体の平衡化およびpHステップもしくはpH勾配の適用に際して、ホモ二量体IgGお
よびヘテロ二量体IgG(例えば、野生型ヒトIgGと、それと同じIgGであるが本明細書に記
載されるようにそのCH3ドメインの1つ以上の改変を有するもの)の溶出間のpH単位距離の
拡大をもたらす部分が含まれる。「移動相修飾剤」の適切な濃度は、同じカラム、pHステ
ップまたはpH勾配を使用しながら、所与のpHステップまたはpH勾配において最大pH距離に
達するまで「移動相修飾剤」の濃度を増加させ、その濃度によって決定することができる
。「移動相修飾剤」はまた、非極性修飾剤も含み得、それには例えばプロピレングリコー
ル、エチレングリコール等が含まれる。
【0049】
アフィニティーマトリックスは、例えばプロテインA、プロテインG、プロテインL、プ
ロテインZ、またはこれらの組換え誘導体のような親和性タンパク質が付着する、固体支
持体非水性マトリックスである(上記Choe, W., et al., 2016)。そのような支持体とし
ては、アガロース、セファロース、ガラス、シリカ、ポリスチレン、ニトロセルロース、
木炭、砂、セルロース、およびあらゆる他の適切な材料が挙げられる。そのような材料は
当技術分野でよく知られている。任意の適切な方法を用いて、第2のタンパク質を固体支
持体に固定することができる。タンパク質を適切な固体支持体に固定する方法は、当該技
術分野においてよく知られている。例えば、Guide to Protein Purification, Methods i
n Enzymology, 182:357-371, 1990におけるOstroveを参照されたい。固定化されたプロテ
インAを伴うまたは伴わないそのような固体支持体は、例えばVector Laboratory(カリフ
ォルニア州バーリンゲーム)、Santa Cruz Biotechnology(カリフォルニア州サンタクル
ーズ)、BioRad(カリフォルニア州ハーキュリーズ)、Amersham Biosciences(スウェー
デン、ウプサラのGE Healthcareの一部)、Pall(ニューヨーク州ポートワシントン)、
およびEMD-Millipore(マサチューセッツ州ビレリカ)などを含め、多くの商業的供給源
から容易に入手可能である。孔ガラスマトリックスに固定化されたプロテインAは、PROSE
P(登録商標)-A(Millipore)として市販されている。固相はアガロース系マトリックス
であってもよい。アガロースマトリックスに固定化されたプロテインAは、例えば、MABSE
LECTTM(GE Amersham Biosciences)として市販されている。免疫グロブリン結合またはF
c結合タンパク質を含有するアフィニティーカラムは、SpAまたはSpA模倣体リガンドのい
ずれかを固体支持体に固定させることによって製造され得る。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「アフィニティークロマトグラフィー」は、クロマトグ
ラフィー分離を行うために、等電点、疎水性、またはサイズのような生体分子の一般的特
性よりむしろ生体分子間の特異的、可逆的相互作用を利用する、クロマトグラフィー方法
である。「プロテインAアフィニティークロマトグラフィー」または「プロテインAクロマ
トグラフィー」とは、免疫グロブリン分子のFc部分に対するプロテインAのIgG結合ドメイ
ンの親和性を利用する特異的アフィニティークロマトグラフィー法をいう。このFc部分は
、ヒトまたは動物の免疫グロブリン定常ドメインCH2およびCH3、またはこれらと実質的に
類似する免疫グロブリンドメインを含む。
【0051】
プロテインAは、Staphylococcus aureusのいくつかの株によって産生される細胞壁成分
であり単一のポリペプチド鎖からなる。プロテインA遺伝子産物は、該病原体の細胞壁に
タンデムに結合した5つの相同的反復からなる。5つのドメインは長さが約58アミノ酸であ
り、EDABCと表され、各々が免疫グロブリン結合活性を示す(Tashiro M & Montelione G
T (1995) Curr. Opin. Struct. Biol., 5(4): 471-481)。5つの相同的な免疫グロブリン
結合ドメインは3らせんの束へと折りたたまれる。各々のドメインが、多くの哺乳類種か
らのタンパク質に、特にIgGに結合することができる(Hober S et ah, (2007) J. Chroma
togr. B Analyt. Technol. Biorned. Life Sci., 848(1): 40-47)。プロテインAは、ほ
とんどの免疫グロブリンの重鎖とFc領域内において結合するが、ヒトVH3ファミリーの場
合はFab領域内にも結合する(Jansson B et al, (1998) FEMS Immunol. Med. Microbiol.
, 20(1): 69-78)。プロテインAはヒト、マウス、ウサギ及びモルモットを含む様々な種
由来のIgGに結合するが、ヒトIgG3には結合しない(上記Hober S et al., (2007))。ヒ
トIgG3がプロテインAに結合できないことは、ヒトIgG3のFc領域におけるH435RおよびY436
F置換(EU番号付け、Jendeberg et al., (1997) J. Immunol. Methods, 201(1): 25-34)
によって説明され得る。プロテインAはIgGのほかにIgMおよびIgAとも相互作用する。
【0052】
このように高い親和性で抗体に結合するプロテインAの能力は、生物製剤医薬における
その工業的規模での使用のための原動力である。生物製剤医薬中の抗体の製造のために用
いられるプロテインAは、通常、大腸菌において組換技術で生産され、天然のプロテインA
と本質的に同じように機能する(Liu H F et al., (2010) MAbs, 2(5):480-499)。最も
一般的には、組換えプロテインAは、抗体の精製のための固定相クロマトグラフィー樹脂
に結合される。至適結合はpH 8.2で起こるが、中性または生理的条件(pH 7.0~7.6)で
も結合は良好である。溶出は通常、酸性pHへのpHシフト(グリシン-HCl、pH 2.5~3.0)
によって達成される。これにより、タンパク質構造に恒久的な影響を与えることなくほと
んどのタンパク質-タンパク質相互作用および抗体-抗原結合相互作用を効果的に解離させ
る。それにもかかわらずいくつかの抗体およびタンパク質は低pHによって損傷され、場合
によっては、回収直後に1 M Tris-HCl、pH 8.0のようなアルカリ緩衝液を1/10体積で添加
することよって中和して、低pH条件中の持続時間を最小限化することが最良となり得る。
【0053】
市販されているプロテインAクロマトグラフィー用樹脂には様々なものがある。これら
の媒体間の主な違いは、支持マトリックスの種類、プロテインAリガンド修飾、孔サイズ
および粒子サイズである。これらのファクターの違いは、吸着材の圧縮性、化学的および
物理的なロバスト性、拡散抵抗性および結合容量の違いを生じさせる(上記Hober S et a
l., (2007))。プロテインAクロマトグラフィー用樹脂の例としては、GE Healthcare社の
MabSelect SuReTMプロテインA樹脂およびMabSelectTMプロテインA樹脂、BioRad社のEcono
PacプロテインAカラム、Applied Biosystems社から入手可能なrProA、ならびに、実施例
に見られるようにThermo Fisher社のPOROS(登録商標)Aが挙げられるが、これらに限定
されない。
【0054】
ここで使用されるプロテインAは、Staphylococcus aureusの細胞壁由来の天然タンパク
質、組換えまたは合成法によって産生されるプロテインA、およびFc領域に結合する能力
を保持する変異体を包含する。遺伝子操作されたプロテインAは、例えば、Zドメイン四量
体、Yドメイン四量体、またはDおよびEドメインを欠く遺伝子操作されたプロテインAであ
り得る。これらの遺伝子操作されたプロテインAの実例は、免疫グロブリンのVH3ドメイン
に結合することができない(あるいは結合するとしても非常に低いアフィニティーで結合
する)が、IgG1、IgG2およびIgG4のCH3ドメインには依然として結合することができる。
実際には、プロテインAクロマトグラフィーは、固体支持体に固定化されたプロテインAを
使用することを含む。Gagnon, Protein A Affinity Chromotography, Purification Tool
s for Monoclonal Antibodies, pp. 155-198, Validated Biosystems, 1996参照。
【0055】
プロテインGは、C群およびG群レンサ球菌から単離された細菌細胞壁タンパク質である
。種々のレンサ球菌から単離された天然プロテインGのDNA配列決定により、免疫グロブリ
ン結合ドメイン並びにアルブミンおよび細胞表面結合のための部位が同定された。菌株に
応じて、免疫グロブリン結合領域とアルブミン結合領域の両方が2~3個の独立にフォール
ディングするユニットからなる(Tashiro M & Montelione G T (1995) Curr. Opin. Stru
ct. Biol., 5(4): 471-481)。G148株由来のプロテインGは、それぞれABD1、ABD2、およ
びABD3ならびにC1、C2、およびC3と呼ばれる3つのアルブミン結合ドメインと免疫グロブ
リン結合ドメインからなる(Olsson A et al., (1987) Eur. J. Biochem., 168(2): 319-
324.)。C1、C2およびC3と呼ばれる各々の免疫グロブリン結合ドメインは、約55残基であ
り、約15残基のリンカーによって分離される。プロテインG免疫グロブリン結合ドメイン
の実験的に解明されたすべての3D構造は、いかなるジスルフィド架橋も強固に結合した補
欠分子族も伴わない非常にコンパクトな球状構造を示す(Sauer-Eriksson A E et al, (1
995) Structure, 3(3): 265-278; Derrick J P & Wigley D B (1992) Nature, 359(6397)
: 752- 754; Derrick J P & Wigley D B (1994) J Mol. Biol, 243(5): 906-918; Lian L
Y et ah, (1994) Nat. Struct. Biol., 1(6): 355-357)。この構造は、アルファへリッ
クスで連結された2つの逆平行ベータヘアピンから構成される4鎖ベータシートを含む。
【0056】
C群およびG群からのStreptococcus株は、プロテインAとは対照的に、IgG3を含めIgGの
全てのヒトサブクラスへの結合を示す。プロテインGはまた、マウス、ウサギおよびヒツ
ジを含む数種の動物IgGにも結合する(Bjorck I. & Kronvall G (1984) J. Immunol, 133
(2): 969-974; Akerstrom B et al, (1985) J. Immunol, 135(4): 2589-2592; Akerstrom
B & Bjorck L (1986) J. Biol. Chem , 261(22): 10240-10247, Fahnestock S R et al,
(1986) J. Bacteriol, 167(3): 870-880)。したがって、プロテインGは、プロテインA
と比較して、異なる種のサブクラスに対する、より広い結合スペクトラムを示す。さらに
、プロテインGはIgGのFab部分に高い親和性で結合する。レンサ球菌プロテインGの結合ド
メインの構造は、単独(NMRによる、上記Lian L Y et al., (1994))およびIgG1 Fabとの
複合体(X線結晶学による、上記Derrick J P & Wigley D B (1992) および上記Derrick J
P & Wigley D B (1994))の両方で決定されている。実験的に解明されたすべての3D構造
は、IgG重鎖のCH1ドメイン内での結合を示していた。
【0057】
ここで使用されるプロテインGは、天然に存在する、もしくは改変されたレンサ球菌プ
ロテインGであり得、または遺伝子操作されたプロテインGであってもよい。遺伝子操作さ
れたプロテインGは、B1ドメイン(別名GB1)を含んでもよく、コンジュゲート化または非
コンジュゲート化のものであり得る。別の実施形態では、第2のアフィニティーマトリッ
クスは、固体基材に固定されたプロテインLリガンドおよびその誘導体を含む。プロテイ
ンAと同様に、E. coliで生産された組換えプロテインGが、抗体を精製するために使用さ
れ得る。非特異的結合を減少させるためにアルブミン結合ドメインおよび細胞表面結合ド
メインが組換えプロテインGから除去されており、従って、粗製試料からIgGを分離するた
めに使用することができる。プロテインAと同様に、組換えプロテインGは、抗体の精製の
ために固定相クロマトグラフィー樹脂に結合される。最適な結合はpH 5で起こるが、結合
はpH 7.0~7.2でも良好である;プロテインAの場合と同様に、溶出も酸性pHへのpHシフト
(グリシン-HCl、pH 2.5~3.0)によって達成される。プロテインGクロマトグラフィー樹
脂の例としては、限定されるものではないが、GE Healthcare社のプロテインGセファロー
ス(商標)4ファストフロー樹脂およびHiTrap(商標)プロテインG HPカラムが挙げられ
る。
【0058】
プロテインAと同様に、E. coliで生産された組換えプロテインGは、抗体を精製するた
めにルーチンで使用されている。非特異的結合を減少させるためにアルブミン結合ドメイ
ンおよび細胞表面結合ドメインが組換えプロテインGから除去されており、従って、粗製
試料からIgGを分離するために使用することができる。プロテインAと同様に、組換えプロ
テインGは、抗体の精製のために固定相クロマトグラフィー樹脂に結合される。最適な結
合はpH 5で起こるが、結合はpH 7.0~7.2でも良好である;プロテインAの場合と同様に、
溶出も酸性pHへのpHシフト(グリシン-HCl、pH 2.5~3.0)によって達成される。プロテ
インGクロマトグラフィー樹脂の例としては、GE Healthcare社のProtein G Sepharose (
商標) 4 Fast Flow樹脂およびHiTrap (商標) プロテインG HPカラム、Applied Biosystem
s社から入手可能なrProG、ならびに、実施例に見られるように、Thermo Fisher社のPOROS
(登録商標)Gが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
プロテインL、M1タンパク質、およびプロテインHのような他のタンパク質も、本発明の
アフィニティークロマトグラフィーにおいて使用され得る。プロテインLは、もともと細
菌Peptostreptococcus magnusに由来する免疫グロブリン結合タンパク質であるが、現在
では組換えにより生産されている(Bjorck L (1988) J. Immunol., 140(4): 1 194-1197,
Kastern W et ah, (1992) J. Biol. Chem., 267(18): 12820-12825)。プロテインLは、
抗体の抗原結合部位に干渉することなくカッパ軽鎖相互作用を通じて結合するユニークな
能力を有する(Nil son B H et al., (1993) J. Immunol. Methods, 164(1): 33-40)。
このことは、プロテインLに、他の抗体結合タンパク質よりも広範囲の免疫グロブリンク
ラスおよびサブクラスに結合する能力を与える。プロテインLはすべてのクラスの免疫グ
ロブリン(IgG、IgM、IgA、IgEおよびIgD)に結合する。プロテインLはまた、単鎖可変領
域フラグメント(scFv)およびFabフラグメントにも結合する(上記Nil son B H et al.,
(1993);Bottomley S P et al., (1995) Bioseparation, 5(6): 359-367)。プロテイン
Lは、カッパI、IIIおよびIVサブクラスのヒト可変ドメインならびにマウスカッパIサブク
ラスに結合する(上記Nilson B H et al., (1992))。プロテインLクロマトグラフィー樹
脂の例としては、実施例で使用されているようにGenescript社のプロテインL樹脂が挙げ
られるが、これに限定されない。
【0060】
M1タンパク質およびプロテインHは、Streptococcus pyogenesの特定の株の表面に同時
に存在する表面タンパク質である。プロテインHはIgGのFc領域に親和性を有する(Akesso
n P et al., (1990) Mol. Immunol., 27(6): 523-531; Akesson P et al., (1994) Bioch
em. J., 300 (Pt 3): 877-886)。プロテインHはヒト、サル、ウサギのIgGのFc領域に結
合する(Akesson P et al., (1990), supra; Frick I M et al., (1995) EMBO J., 14(8)
: 1674-1679)。Mタンパク質はフィブリノーゲンに結合することも知られており(Kantor
F S (1965) J Exp Med, 121: 849-859)、以前の研究はAPI株由来のM1タンパク質がアル
ブミンおよびポリクローナルIgGに対しても親和性を有することを示した(Schmidt K H &
Wadstrom T (1990) Zentralbl. Bakteriol., 273(2): 216-228)。
【0061】
アフィニティークロマトグラフィーはまた、抗体、抗体の断片、または免疫グロブリン
のドメインおよび/または配列を含有するキメラ融合タンパク質を選択的に結合し精製す
ることのために用いることができる媒体を含む。抗体には、IgG型、IgA型、IgM型、IgY型
、IgD型、およびIgE型が含まれる。抗体にはまた、ラクダ科抗体、遺伝子操作されたラク
ダ科抗体、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、ナノボディー等のような単一鎖抗体も含まれる
。抗体断片には、VH、VL、CL、CH配列が含まれる。抗体配列を含む抗体断片および融合タ
ンパク質としては、例えば、F(ab’)3、F(ab’)2、Fab、Fc、Fv、dsFv、(scFv)2、scFv、
scAb、ミニボディー、ダイアボディー(diabody)、トリアボディー(triabody)
、テトラボディー(tetrabody)、Fc融合タンパク質、トラップ分子等が挙げられる(Ayy
ar et al., Methods 56 (2012): 116-129参照)。そのようなアフィニティークロマトグ
ラフィー媒体は、抗体、それらの断片、およびこれら断片を含有する融合タンパク質に選
択的に結合するリガンドを含み得る。そのようなリガンドとしては、標的分子に向けられ
た抗体結合タンパク質、細菌由来受容体、抗原、レクチンまたは抗抗体が挙げられる。精
製を必要とする抗体。例えば、アフィニティーリガンドとして、IgG-CH1、IgG-Fc、IgG-C
H3、IgG1、LC-カッパ、LC-ラムダ、IgG3/4、IgA、IgM等のいずれか一つ以上に対するラク
ダ科由来のアフィニティーリガンドを使用することができる(カリフォルニア州カールス
バッドLife Technologies社のCAPTURESELECTクロマトグラフィー樹脂として市販されてい
る)。
【0062】
アフィニティー試薬に対するヘテロ二量体の異なる親和性に基づいて、ホモ二量体から
のヘテロ二量体の回収を容易にする技術が記述されている。差次的親和性技術の最初の例
は、二つの異なる動物種由来の二つの異なる重鎖の使用が関わるものであり、そのうちの
一つがプロテインAに結合しない(Lindhofer H et al., (1995) J Immunol., 155(1): 21
9-225)。同じ著者らは、二つの異なるヒト免疫グロブリンイソタイプ(IGHG1およびIGHG
3)に由来する二つの異なる重鎖であって、そのうちの一つ(IGHG3)はプロテインAに結
合しないものの使用についても記述した(米国特許第6,551,592号、Lindhofer H et al.
参照)。後者の技術の変形がW010/151792(Davis S et al.)に記載されており、これは
、ヘテロ二量体の重鎖の一つにおいてプロテインAに対する親和性を大きく減少させるた
めに、Jendeberg et at(Jendeberg et al., (1997) J. Immunol. Methods, 201(1): 25-
34)によって記述された2つのアミノ酸置換H435R/Y436Fを使用することが関わるものであ
った。
【0063】
本明細書中で用いられるところの用語「検出器」は、クロマトグラフィーカラムから溶
出される混合物の成分を検出および/または評価するための手段を備えたクロマトグラフ
ィーカラムを含む。当該技術分野では、破壊的検出器および非破壊的検出器という2つの
一般的なタイプの検出器が知られている。破壊的検出器は、カラム流出物の連続的変換(
燃焼、蒸発、あるいは試薬との混合)を行い、その後、得られた物質(プラズマ、エアロ
ゾルまたは反応混合物)の何らかの物理的特性の測定を行う。非破壊的検出器はカラム溶
出液の何らかの特性(例えば紫外線吸収)を直接測定し、従ってさらなる分析回収を可能
にする。破壊的検出器の例としては、荷電エアロゾル検出器 (CAD) 、水素炎イオン化検
出器 (FID) 、エアロゾル式検出器 (NQA) 、炎光光度検出器 (FPD) 、原子発光検出器 (A
ED) 、窒素リン検出器 (NPD) 、蒸発光散乱検出器 (ELSD) 、質量分析計 (MS) 、電解伝
導度検出器 (ELCD) 、summon検出器 (SMSD) 、およびミラ検出器 (MD) が挙げられる。非
破壊的検出器の一例としては、固定長および可変長のUV検出器を含むUV検出器が挙げられ
、ダイオードアレイ検出器 (DAD) またはフォトダイオードアレイ (PDA) 検出器が含まれ
る。流出物のUV吸収は単一または複数の波長において連続的に測定され得る。非破壊的検
出器の他の例は、熱伝導度型検出器 (TCD) 、蛍光検出器 (FLR) 、電子捕獲検出器、光イ
オン化検出器 (PID) 、および屈折率検出器 (RIまたはRID)を含む。一例では、システム
のカラム区画から流れる溶出物質を検出し定量するためにDAD/UV検出器が利用され得る。
二重特異性FcFc*抗体、FcFcホモ二量体、およびFc*Fc*ヘテロ二量体はクロマトグラフィ
ーシステムから選択的に溶出し、280 nMでのUV検出によってシグナルが検出される。検出
器は、例えばタンパク質物質の安定性向上を可能にする冷却機能を有する温度制御フロー
セルのような、温度制御システムに接続するように適合され得る。
【0064】
本発明は、例えば市販のクロマトグラフィーシステム(例えば島津製作所、Agilent Te
chnologies、Waters Corporation等から入手可能なHPLCシステムなど)のようなクロマト
グラフィーシステムの一部として設定され得る。1つの非限定的な実施形態において、そ
のようなシステムは、特に溶媒および/または試薬保持ユニット、溶媒マネージャー/ポン
プ、試料マネージャー、カラム区画マネージャー、および検出器ユニットを含む。1つの
非限定的な実施形態が図5に示されている。
【0065】
保持ユニットは、クロマトグラフィーアプリケーションで使用される溶媒および緩衝液
を収容し、任意で溶媒脱気装置を含む。一実施形態では、溶媒および緩衝液は、溶媒マネ
ージャーへと流れる前に溶媒脱気装置を通過する。
【0066】
溶媒マネージャーは溶媒の送達を担当し、分離および分解能を改善するために、各具体
的実施形態による分析システムのニーズに対応するように構成可能なコンピュータープラ
ットフォームを含み得、例えば2元的または4元的勾配モジュールを含み得る。溶媒マネー
ジャーは、とりわけ、溶媒速度、緩衝液組成、およびHPLCシステムの圧力限界を制御し得
る。
【0067】
試料マネージャーは、任意で、温度を変化させること(例えば冷却および/または加熱
)、またはカラムにロードする前に試料の温度を一定に維持すること(例えば試料を一定
温度に冷却すること)ができる温度制御ユニットを含んでもよい。一実施形態では、試料
は、注入を待つ間、試料マネージャー区画に含有され4℃で維持される。試料はオートサ
ンプラーに送られ、そこでは待ち行列(queue)に示された試料に針が直接送られる。一
実施形態では、オートサンプラーは、注入された溶媒および/または試料のオーバーフロ
ーを処理するための圧力調整器をさらに含む。次いで、試料は、オートサンプラー針から
カラム区画へと移動する。
【0068】
画分中のタンパク質の量(amount)、あるいは量(quantity)は、検出器を通してタン
パク質を溶出させ、当技術分野で知られる計算方法を用いて決定することができる。シス
テムは、システム制御ユニットまたは他のコンピュータ支援装置をさらに含むことができ
る。
【0069】
純度および/または品質の管理分析は、試料中に存在する3つのタンパク質種の比を分析
し定量することによって行われる。混合物中のタンパク質の純度は、各タンパク質画分の
量を決定し、混合物中の全タンパク質の量の合計に対する目的タンパク質の量の比率を計
算することによって算出することができる。一例として、ヘテロ二量体タンパク質および
2種以上のタンパク質不純物を含む混合物中の該ヘテロ二量体タンパク質の純度は、各タ
ンパク質画分の量を決定し、該ヘテロ二量体タンパク質と該2種以上のタンパク質不純物
との量の合計に対する該ヘテロ二量体タンパク質の量の比率を計算することによって定量
化することができる。
【0070】
メトリックな二重特異性純度は、式1によって定義されるように、全抗体量と比較した
二重特異性抗体のパーセンテージを与える。一例として、FcFc、FcFc*およびFc*Fc*を含
む混合物中のFcFc*の純度は、以下のように定量化することができる:
【0071】
式1:二重特異性抗体の純度の定量化
【数1】
【0072】
ここで使用される切換弁、フロー切換弁、あるいはフロー制御弁は、クロマトグラフィ
ーカラムからの溶離液の流路を方向付け、変化させ、または遮断するための手段である。
切換弁は多方向型であり得、例えば2方向、3方向、4方向型等であり得、すなわち切換弁
は2つ、3つ、またはそれ以上の異なる受入器に流れを向けさせることができる。受入器は
任意の起源のものであり得、例えばクロマトグラフィーカラム、アフィニティークロマト
グラフィーカラム、検出器、または廃液処分容器であり得る。受入器の変更は、切換弁を
異なる位置の間で切り替えることによって達成される。
【0073】
一例として、クロマトグラフィーシステムにおいて、切換弁は、第1のアフィニティー
マトリックス、第2のアフィニティーマトリックス、および検出器を連続的または非連続
的な態様で接続し得る。例えば図5~7に示されるような、非限定的な実施形態では、切換
弁は、第1のアフィニティーマトリクスを第2のアフィニティーマトリクスに連続的に接続
し得る。この例示的なシステムでは、1つの切換弁位置によって、溶離液が第1のアフィニ
ティーマトリックスから第2のアフィニティーマトリックスへ、そして続いて検出器へと
流れることが可能になる。切換弁を別の位置に切り替えることにより、溶離液が第1のア
フィニティーマトリックスから第2のアフィニティーマトリックスをバイパスして直接検
出器へと流れることが可能になる。第2のアフィニティーマトリクスからの溶離液は、第1
のアフィニティーマトリクスと関わるにしても関わらないにしても検出器へと流れること
ができる。第2のアフィニティーマトリクスは、オートサンプラーに直接接続されてもさ
れなくてもよい。図4Bに示される別の非限定的な実施形態では、第1のアフィニティーマ
トリクスからの溶離液は、第2のアフィニティーマトリクスをバイパスして、検出器へと
直接流れることができる。
【0074】
1つの態様において、本発明は、切換弁を含む新規なクロマトグラフィーシステムを利
用することによって、ヘテロ二量体画分の量および/または純度を定量的に評価する方法
を記述する。
【0075】
1つの態様において、本発明は、タンパク質と、第1のタンパク質不純物と、第2のタン
パク質不純物との混合物を含む試料中の該タンパク質の量および/または純度を定量化す
る方法を記述し、ここで、該タンパク質および第1の不純物は第1のアフィニティーマトリ
ックスに結合し、第2の不純物は、実質的に第1のアフィニティーマトリックスに結合せず
第2のアフィニティーマトリックスに結合し、この方法は、以下の工程を含む:
【0076】
a. 第1のアフィニティーマトリックス、第2のアフィニティーマトリックス、および検
出器を含むクロマトグラフィーシステムに試料を適用する工程であって、ここで、第1の
アフィニティーマトリックスは、切換弁を介して第2のアフィニティーマトリックスに連
続的に接続される、工程;
【0077】
b. 第1のセットの条件下で、第2の不純物を第1のアフィニティーマトリックスから第2
のアフィニティーマトリックス上へと溶出させる工程;
【0078】
c. 切換弁を切り換えて第2のアフィニティーマトリックスをバイパスさせ、第2のセッ
トの条件下で上記タンパク質を検出器を通して溶出させ、溶出されたタンパク質の量を決
定する工程;
【0079】
d. 第3のセットの条件下で第1の不純物を検出器を通して溶出させ、溶出された第1の不
純物の量を決定する工程;
【0080】
e. 第3のセットの条件で、第2の不純物を第2のアフィニティーマトリックスから検出器
を通して溶出させ、溶出された第2の不純物の量を決定する工程;および
【0081】
f. 試料中の上記タンパク質の量および/または純度を定量化する工程。
【0082】
一実施形態において、該タンパク質は、多量体タンパク質、例えば抗体である。一実施
形態において、該タンパク質は目的の抗体であり、第1および第2のタンパク質不純物は多
量体タンパク質、例えば、目的の抗体に構造的に関連していてもしなくてもよい抗体であ
る。一実施形態では、該タンパク質は、二重特異性抗体、すなわちヘテロ二量体タンパク
質であり、第1のタンパク質不純物は第1のホモ二量体タンパク質であり、第2のタンパク
質不純物は第2のホモ二量体タンパク質である。ある場合には、多量体タンパク質の混合
物は、例えば細胞培養物中のチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞のような、複数の
真核細胞によって産生される。
【0083】
一実施形態では、該タンパク質は、第1のアフィニティーマトリックスに対して第1の不
純物よりも低い親和性を有する。一実施形態では、該タンパク質はヘテロ二量体タンパク
質であり、第1のタンパク質不純物は第1のホモ二量体タンパク質であり、第2のタンパク
質不純物は第2のホモ二量体タンパク質であり、ヘテロ二量体タンパク質および第1のホモ
二量体タンパク質は第1のアフィニティーマトリックスに結合し、第2のホモ二量体タンパ
ク質は、実質的に第1のアフィニティーマトリックスに結合せず、第2のアフィニティーマ
トリックスに結合する。
【0084】
一実施形態において、該タンパク質は、第1の免疫グロブリンCH3ドメインおよび第2の
免疫グロブリンCH3ドメインを含み、ここで、前記第1および第2の免疫グロブリンCH3ドメ
インは、第1のアフィニティーマトリックスに対する親和性において異なり、そして試料
は、前記タンパク質と、2つの第1のCH3ドメインを含むタンパク質と、2つの第2のCH3ドメ
インを含むタンパク質とを含む混合物を含む。
【0085】
一実施形態では、第2のCH3ドメインは、H435RおよびY436F(EU番号付けシステムによる
;IMGTエクソン番号付けシステムではH95R/Y96F)アミノ酸置換を含む。
【0086】
一実施形態では、第1のアフィニティーマトリックスは、固体基材に固定されたプロテ
インAリガンドおよびその誘導体を含む。場合によっては、基材はビーズまたは粒子であ
り、従ってアフィニティーマトリックスはプロテインAが固定された複数の粒子である。
プロテインAは、天然のまたは改変されたブドウ球菌プロテインAであり得、あるいは遺伝
子操作されたプロテインAであってもよい。遺伝子操作されたプロテインAは、例えば、Z
ドメイン四量体、Yドメイン四量体、または、DおよびEドメインを欠く遺伝子操作された
プロテインAであってもよい。これらの遺伝子操作されたプロテインAの実例は、免疫グロ
ブリンのVH3ドメインに結合することができない(あるいはできるとしても非常に低い親
和性で結合する)が、IgG1、IgG2およびIgG4のCH3ドメインには依然として結合すること
ができる。
【0087】
一実施形態では、第2のアフィニティーマトリックスは、固体基材に固定されたプロテ
インGリガンドおよびその誘導体を含む。場合によっては、基材はビーズまたは粒子であ
り、従ってアフィニティーマトリックスはプロテインGが固定された複数の粒子である。
プロテインGは、天然のまたは改変されたレンサ球菌プロテインGであり得、あるいは遺伝
子操作されたプロテインGであってもよい。遺伝子操作されたプロテインGは、B1ドメイン
(別名GB1)を含んでいてもよく、コンジュゲート型または非コンジュゲート型であって
もよい。別の実施形態では、第2のアフィニティーマトリックスは、固体基材に固定され
たプロテインLリガンドおよびその誘導体を含む。
【0088】
一実施形態において、溶出条件は、特定のpH範囲および移動相修飾剤(例えばカオトロ
ピック剤)を含むバッファーを含み得る。一実施形態では、第2の不純物(例えば第2のホ
モ二量体タンパク質)を溶出するための第1のセットの溶出条件は、第1のpHを含む。一実
施形態では、タンパク質(例えばヘテロ二量体タンパク質)を溶出するための第2のセッ
トの溶出条件は、第2のpHを含む。一実施形態では、第1の不純物(例えば第1のホモ二量
体タンパク質)を溶出するための第3のセットの溶出条件は、第3のpHを含む。一実施形態
では、第2のpHは、第1のpHよりも低いものであり得る。一実施形態では、第3のpHは、第2
のpHよりも低いものであり得る。一実施形態では、第2のpHが第1のpHよりも低く、かつ第
3のpHが第2のpHよりも低いものであり得る。別の実施形態では、第1のpHは、pH 5よりも
高く、あるいは約pH 5~約pH 8であり、あるいは約pH 5.2~約pH 7.4であり、あるいはpH
6.4であり得る。一実施形態では、第2のpHは、約pH 3.5~約pH 6であり、あるいは約3.8
~約5.6であり得る。一実施形態では、第3のpHは、pH 4未満であり得、あるいは約pH 1.5
~約pH 3.6、あるいは約pH 2.0~約pH 2.8、あるいは約pH 2.2であり得る。
【0089】
一実施形態では、第1、第2および第3のセットの溶出条件は、適切なバッファー、例え
ば、クエン酸塩、酢酸塩、4-モルホリンエタンスルホン酸塩 (MES) 、リン酸塩、コハク
酸塩など、ならびにそれらの組合せおよび混合物を含む。一実施形態では、第1、第2およ
び第3のセットの溶出条件はカオトロピック剤を含む。カオトロピック剤は、リチウム、
マグネシウム、カルシウム、およびグアニジニウムから選択されるカチオンと、塩化物イ
オン、硝酸イオン、臭化物イオン、塩素酸イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、お
よびチオシアン酸イオンから選択されるアニオンとを有する塩であり得る。一つの特定の
実施形態において、カオトロピック剤は、CaCl2であり、例えば、250~500 mM CaCl2であ
る。別の特定の実施形態において、カオトロピック剤は、MgCl2であり、例えば、250~50
0 mM MgCl2である。
【0090】
一実施形態において、ヘテロ二量体は二重特異性抗体である。ここで、第1のポリペプ
チドが、プロテインAに結合することができるCH3ドメインを含み(「Fc」)、第2のポリ
ペプチドが、プロテインAに結合することができないCH3ドメインを含む(「Fc*」)。場
合によっては、第2のポリペプチドは、H435R/Y436F(EU番号付けシステムによる;IMGTエ
クソン番号付けではH95R/Y96F)置換をそのCH3ドメインに含む(「Fc*」あるいは「スタ
ー置換」とも呼ばれる)。従って、いくつかの実施形態において、第1のホモ二量体は、
二つの非置換CH3ドメインを有する単一特異性抗体であり(すなわちFcFc);第2のホモ二
量体は、二つのH435R/Y436F置換CH3ドメインを有する単一特異性抗体であり(すなわちFc
*Fc*);ヘテロ二量体は、一つの非置換CH3ドメインと一つのH435R/Y436F置換CH3ドメイ
ンとを有する二重特異性抗体である(すなわちFc*Fc)。
【0091】
別の態様において、本発明は、ヘテロ二量体タンパク質と、第1のホモ二量体タンパク
質と、第2のホモ二量体タンパク質との混合物を含む試料中のヘテロ二量体タンパク質の
量および/または純度を定量化するための方法を記述し、ここで、ヘテロ二量体タンパク
質および第1のホモ二量体タンパク質はプロテインAマトリックスに結合し、第2のホモ二
量体タンパク質は、実質的にプロテインAマトリックスに結合せず、プロテインGマトリッ
クスに結合する。この方法は以下の工程を含む:
【0092】
a. プロテインAマトリックスと、プロテインGマトリックスと、検出器とを含むクロマ
トグラフィーシステムに試料を適用する工程であって、ここで、プロテインAマトリック
スは、切換弁を介してプロテインGマトリックスに連続的に接続される、工程;
【0093】
b. 第1のセットの条件下で、第2のホモ二量体タンパク質をプロテインAマトリックスか
らプロテインGマトリックス上へと溶出させる工程;
【0094】
c. 切換弁を切り換えてプロテインGマトリックスをバイパスさせ、第2のセットの条件
下でヘテロ二量体タンパク質を検出器を通して溶出させ、溶出されたタンパク質の量を決
定する工程;
【0095】
e. 第3のセットの条件下で第1のホモ二量体タンパク質を検出器を通して溶出させ、溶
出された第1の不純物の量を決定する工程;
【0096】
e. 第3のセットの条件下で、第2のホモ二量体タンパク質を第2のアフィニティーマトリ
ックスから検出器を通して溶出させ、溶出された第2の不純物の量を決定する工程;およ
【0097】
f. 試料中の該タンパク質の量および/または純度を定量化する工程。
【0098】
第2のアフィニティーマトリックスに対する第1のホモ二量体およびヘテロ二量体の差次
的結合は、なかんずく、アフィニティーマトリックス上を通過する溶液のpHおよび/また
はイオン強度を変化させることによって操作することができる。溶液へのカオトロピック
剤の添加は、第2のアフィニティーマトリックスから各二量体種が重複しない画分におい
て溶出することを増強させ、それによって各二量体種の純度を増加させる。一実施形態で
は、第1のホモ二量体、例えばFc*Fc*は、第1のpHを有する緩衝液中で第1のアフィニティ
ーマトリックスから第2のアフィニティーマトリックス上へと溶出される。一実施形態で
は、ヘテロ二量体、例えばFcFc*ヘテロ二量体は、第2のpH範囲を有する緩衝液中で、第1
のアフィニティーマトリックスから第2のアフィニティーマトリックスをバイパスして直
接検出器へと溶出される。一実施形態では、第2のホモ二量体、例えばFcFcは、第3のpH範
囲を有する緩衝液中で、第1のアフィニティーマトリックスから第2のアフィニティーマト
リックスをバイパスして直接検出器へと溶出される。一実施形態では、第1のホモ二量体
、例えばFc*Fc*は、第3のpHを有する緩衝液中で第2のアフィニティーマトリックスから検
出器上へと溶出される。ここで、第1のpH範囲は、第2のpH範囲よりも高いpHを含み、第2
のpH範囲は、第3のpH範囲よりも高いpHを含む。
【0099】
一実施形態において、第2の不純物(例えば第2のホモ二量体タンパク質)を溶出するた
めの第1のセットの溶出条件は、第1のpHを含む。一実施形態において、該タンパク質(例
えばヘテロ二量体タンパク質)を溶出するための第2のセットの溶出条件は、第2のpHを含
む。一実施形態において、第1の不純物(例えば第1のホモ二量体タンパク質)を溶出する
ための第3のセットの溶出条件は、第3のpHを含む。一実施形態では、第2のpHは第1のpHよ
りも低いものであり得る。一実施形態では、第3のpHは第2のpHよりも低いものであり得る
。一実施形態では、第2のpHが第1のpHよりも低く、かつ第3のpHが第2のpHよりも低くても
よい。別の実施形態では、第1のpHはpH 5よりも高く、あるいは約pH 5~約pH 8であり、
あるいは約pH 5.2~約pH 7.4であり得る。一実施形態では、第2のpHは、約pH 4~約pH 5
、または約4.2~約5.0であり得る。一実施形態において、第3のpHは、pH 4未満であり得
、あるいは約pH 2~約pH 3.6、または約pH 2.2~約pH 2.8であり得る。
【0100】
一態様において、試料中のFcFc*タンパク質の量および/または純度を決定するための方
法が開示され、ここで、前記FcFc*タンパク質は、第1の免疫グロブリンCH3ドメイン(Fc
)、その断片および/または誘導体と、第2の免疫グロブリンCH 3ドメイン(Fc*)、その
断片および/または誘導体とを含み、前記第1および第2の免疫グロブリンCH3ドメインは、
第1のタンパク質アフィニティーマトリックスに対する親和性において異なり、試料は、
前記FcFc*タンパク質と、2つの第1のCH3ドメインを含むタンパク質(FcFcタンパク質)と
、2つの第2のCH3ドメインを含むタンパク質(Fc*Fc*タンパク質)とを含む混合物を含み
、前記方法は、以下の工程を含む:
(a) 第1のセットの条件下で、前記試料を第1のタンパク質アフィニティーマトリックス
に適用する工程であって、ここで前記FcFc*タンパク質および前記FcFcタンパク質は前記
第1のタンパク質アフィニティーマトリックスに結合し、前記Fc*Fc*タンパク質は実質的
に前記第1のタンパク質アフィニティーマトリックスに結合しない、工程;
(b) 第1のセットの条件下での前記第1のタンパク質アフィニティーマトリックスを洗浄
する工程;
(c) Fc*Fc*タンパク質が第2のタンパク質アフィニティーマトリックスに結合する条件
下で、工程 (a) からのフロースルーおよび工程 (b) からの洗浄液を第2のタンパク質ア
フィニティーマトリックスに適用する工程;
(d) 工程 (c) におけるものと同じセットの条件下で前記第2のタンパク質アフィニティ
ーマトリックスを洗浄する工程;
(e) 前記第2のタンパク質アフィニティーマトリックスからFc*Fc*タンパク質を溶出さ
せ、溶出されたFc*Fc*タンパク質の量を決定する工程;
(f) 第2のセットの条件下で、前記第1のタンパク質アフィニティーマトリックスから残
余の結合したFc*Fc*タンパク質を溶出させ、溶出されたFc*Fc*タンパク質の量を決定する
工程;
(g) 第3のセットの条件下で、前記第1のタンパク質アフィニティーマトリックスに結合
したFcFc*タンパク質を溶出させ、溶出されたFcFc*タンパク質の量を決定する工程;
(h) 第4のセットの条件下で、前記第1のタンパク質アフィニティーマトリックスに結合
したFcFcタンパク質を溶出させ、溶出されたFcFcタンパク質の量を決定する工程;および
(i) 試料中のFcFc*タンパク質の量および/または純度を決定する工程、
ここで、工程 (d) および/または工程 (e) は、工程 (f) ~ (h) と同時に、または工
程 (f) ~ (h) の前に、または工程 (f) ~ (h) の後に行うことができる。
【0101】
一態様において、試料中の二重特異性抗体(例えばFcFc*抗体)の量および/または純度
を決定するための方法が開示され、ここで、前記FcFc*抗体は、第1の免疫グロブリン重鎖
(Fc)および第2の免疫グロブリン重鎖(Fc*)を含み、前記第1および第2の免疫グロブリ
ン重鎖は、プロテインAに対する親和性において異なっており、前記試料は、前記FcFc*抗
体と、2つの第1の重鎖を含む抗体(FcFc抗体)と、2つの第2の重鎖を含む抗体(Fc*Fc*抗
体)とを含む混合物を含み、前記方法は、以下の工程を含む:
(a) 第1のセットの条件下で、試料をプロテインAアフィニティーカラム(プロテインA
カラム)に適用する工程であって、ここで、該FcFc*抗体および該FcFc抗体は該プロテイ
ンAカラムに結合し、一方、該Fc*Fc*抗体は実質的に該プロテインAカラムに結合せず、該
プロテインAカラムは切換弁を介してプロテインGアフィニティーカラム(プロテインGカ
ラム)に接続されて該プロテインAカラムからのフロースルーが該プロテインGカラムに直
接適用され、プロテインGカラムはさらにHPLCカラムに接続されている、工程;
(b) 切換弁を、プロテインAカラムからのフロースルーがプロテインGカラムに直接適用
されるような位置にして、第1のセットの条件下でプロテインAカラムを洗浄する工程;
(c) 工程 (b) におけるものと同じ条件下でプロテインGカラムを洗浄する工程;
(d) Fc*Fc*抗体をプロテインGカラムから溶出させ、溶出されたFc*Fc*抗体の量を決定
する工程;
(e) 切換弁を、プロテインAカラムをプロテインGカラムから切り離して該プロテインA
カラムをHPLCカラムに接続する位置に置く工程;
(f) 第2のセットの条件下で、プロテインAカラムから残余の結合したFc*Fc*抗体を溶出
させ、溶出されたFc*Fc*抗体の量を決定する工程;
(g) 第3のセットの条件下で、前記プロテインAカラムに結合したFcFc*抗体を溶出させ
、溶出されたFcFc*抗体の量を決定する工程;
(h) 第4のセットの条件下で、前記プロテインAカラムに結合したFcFc抗体を溶出させ、
溶出されたFcFc抗体の量を決定する工程;および
(i) 試料中のFcFc*タンパク質の量および/または純度を決定する工程、
ここで、工程 (c) および/または工程 (d) は、工程 (e) ~ (h) と同時に、または工
程 (e) ~ (h) の前に、または工程 (e) ~ (h) の後に行うことができる。
【0102】
別の態様では、タンパク質を精製し、分析し、および/またはタンパク質の量および/ま
たは純度を評価するための、クロマトグラフィーシステムが提供される。一実施形態では
、クロマトグラフィーシステムは、第1のアフィニティーマトリックス、第2のアフィニテ
ィーマトリックス、および検出器を含み、ここで第1のアフィニティーマトリックス、第2
のアフィニティーマトリックス、および検出器のそれぞれは、切換弁を介して接続される
。一実施形態において、第1のアフィニティーマトリックスは、プロテインAクロマトグラ
フィーカラムであり得る。一実施形態では、第2のアフィニティーマトリックスは、プロ
テインGまたはプロテインLクロマトグラフィーカラムであり得る。
【0103】
一実施形態において、検出器は、UV検出器、荷電エアロゾル検出器、および/または質
量分析計を備えたHPLCカラムであってもよい。一実施形態では、第1のアフィニティーマ
トリクスおよび第2のアフィニティーマトリクスは、切換弁を介して連続的に接続される
。別の実施形態では、第1のアフィニティーマトリクス、第2のアフィニティーマトリクス
、および検出器はすべて、切換弁を介して連続的に接続される。一実施形態では、第1の
アフィニティーマトリクスおよび第2のアフィニティーマトリクスが切換弁を介して連続
的に接続されるが、検出器は、第1のアフィニティーマトリクスおよび第2のアフィニティ
ーマトリクスに非連続的に接続される。
【0104】
1つの実施形態において、(i) プロテインAクロマトグラフィーカラムと、(ii) プロテ
インGクロマトグラフィーカラムと、(iii) UV検出器、荷電エアロゾル検出器、および/ま
たは質量分析計を備えたHPLCカラムを含む検出器とを含むクロマトグラフィーシステムが
提供され、ここで、プロテインAクロマトグラフィーカラム、プロテインGクロマトグラフ
ィーカラム、および検出器のそれぞれは、切換弁を介して接続される。
【実施例0105】
以下の例は本説明の具体的な態様を示す。実施例は単に実施形態およびその種々の態様
の具体的な理解および実施を提供するものであるため、限定するものとして解釈されるべ
きではない。
【0106】
クロマトグラフィー実験は、本明細書に記述された方法を実施するのに必要な構成に適
合されたHPLCシステムを用いて実施した。InfinityLab Quick ChangeバルブはAgilent Te
chnologiesから入手可能である。適切なバルブの例としては、Agilent Quick Change Val
ve G4231A/C、G4232C/D、G4234A/C、G4236A/B、およびG4238A/Bが挙げられるが、これら
に限定されない。本発明を実施するのに適したバルブの非限定的な例は、ワールド・ワイ
ド・ウェブagilent.com/cs/library/usermanuals/public/G4232- 90009 ValveKit TN EN.
pdf、およびAcquity UPLC Systems with 2D Technology Capabilities Guide, Revision
A, Waters Corporation, 2012に提供されており、これらはそれぞれその全体が参照によ
り本明細書に組み込まれる。
【0107】
[実施例1]
【0108】
二つの混入ホモ二量体を含む混合物中の二重特異性抗体の純度および量を、以下のよう
にして決定した(タイタークロマトグラムは図1のように示される)。二つの重鎖ポリペ
プチド(IgG4 Fc含有およびIgG4-Fc*含有)と共通の軽鎖ポリペプチドとをCHO細胞におい
て共発現させた。得られたホモ二量体およびヘテロ二量体の混合物を含む細胞上清の試料
を高速遠心分離に付してタンパク質凝集体を除去し、参照により本明細書に組み込まれる
、2016年2月4日に公開されたPCT公報WO2016/018740に記載されている精製方法に従って、
上清をアフィニティークロマトグラフィーに付した。FcFc*ヘテロ二量体と、不純物産物
すなわちFcFcおよびFc*Fc*ホモ二量体とを含有する精製生成物の試料を、0.5 M NaClを含
有するpH 6.4移動相中の3×0.1 mL POROS(登録商標)A 20μmプロテインAカラム(rProA
、アプライドバイオシステムズ社から入手、# 2-1001-00)上にロードした。プロテインA
カラムは、図4Aに概略を示すように切換弁を介して、2×0.1 mL POROS(登録商標)G 20
μmプロテインGカラム(rProG、アプライドバイオシステムズ社から入手、# 2-1002-00)
および標準的なUV検出器に連続的に接続された(流速2.0 mL/分、280 nmにおけるUVピー
ク検出)。
【0109】
CHO DNAまたは宿主細胞タンパク質(HCP:host cell protein)のようなプロセス関連
混入物質を除去するために一連の洗浄を行った。0.5 M CaCl2を含有するpH 5.6移動相を
用いて混合物を溶出した。Fc*Fc*ホモ二量体は、Fc領域から両方のプロテインA結合部位
が欠失しているので、この産物関連不純物は、rProAを通り過ぎてrProG上へと流れると予
想された一方、二重特異性FcFc*およびFcFcホモ二量体はrProA上に保持されると予想され
た。
【0110】
その後、切換弁を切り換えてrProGをオフラインにし、rProAを検出器に直接接続した。
次に、0.5 M塩化カルシウムを含有するpH 3.8~5.6(分子特異的)移動相を用いて二重特
異性FcFc*抗体をrProAから検出器へと選択的に溶出させたが、そのあいだFcFc不純物は、
二重特異性FcFc*抗体に比べて結合がより強いため保持された。FcFc*の量が計算された。
次いで、0.5 M塩化カルシウムを含むpH 2.2移動相を用いてFcFc不純物をrProAから検出器
へと選択的に溶出し、 FcFcの量を計算した。
【0111】
その後、切換弁を切り換え戻してrProGをオンラインで連続的に接続し、rProAをrProG
に、そしてrProGを検出器に接続した。次いで、0.5 M塩化カルシウムを含むpH 2.2移動相
を用いてFc*Fc*不純物を検出器へと溶出させ、Fc*Fc*の量を計算した。
【0112】
FcFc*二重特異性抗体の量および純度は、FcFc、FcFc*およびFc*Fc*画分の合計に対する
FcFc*画分の比率を計算することによって決定した。
【0113】
方法の流速、洗浄長さ、二重特異性溶出長さ、および方法の溶出段階における%バッフ
ァーCは、研究され、3つの抗体種すべての回収率に影響を有する可能性があると考えられ
た連続的ファクターであった。下記表1に、この方法で検討されたパラメータ、その役割
、および値を示す。
【0114】
表1:二重特異性純度ロバスト性ファクター
【表1】
【0115】
下記表2は、3つの抗体試料:IgG*1、IgG4*AおよびIgG4*Bの純度および量を評価する本
発明の方法のための実行条件の様々なセットを示す。
【0116】
表2:二重特異性純度ロバスト性実行条件
【表2】
【0117】
本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、上述の主題事項に様々な変更を加える
ことができるので、上記の説明に含まれる、または添付の特許請求の範囲に定義されるす
べての主題事項は、本発明を説明し例示するものとして解釈されることが意図される。本
発明の多くの変更および変形が、上記の教示に照らして可能である。従って、本説明は、
添付の特許請求の範囲内にある全てのそのような代替物、修正物、および変形物を包含す
ることを意図している。
【0118】
本明細書に引用される全ての特許、出願、刊行物、試験方法、文献、および他の資料は
、本明細書中に物理的に存在しているかのように、その全体が参照により本明細書に組み
込まれる。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-08-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロ二量体抗体と、第1のホモ二量体抗体不純物と、第2のホモ二量体抗体不純物との混合物を含む試料中の前記ヘテロ二量体抗体の量および純度を定量化するための方法であって、
前記ヘテロ二量体抗体および前記第1のホモ二量体抗体不純物は第1のアフィニティーマトリックスに結合し、
前記第2のホモ二量体抗体不純物は、第2のアフィニティーマトリックスに結合するが、その第1のアフィニティーマトリックスへの結合は阻止され、
前記ヘテロ二量体抗体は前記第1のアフィニティーマトリックスに対して、前記第1のホモ二量体抗体不純物よりも低い親和性を有し、
前記方法は以下の工程:
a. 前記ヘテロ二量体抗体および前記第1のホモ二量体抗体不純物が前記第1のアフィニティーマトリックスに結合する条件下で、クロマトグラフィーシステム中の前記第1のアフィニティーマトリックスに前記試料を適用する工程であって、前記クロマトグラフィーシステムが、前記第1のアフィニティーマトリックス、前記第2のアフィニティーマトリックス、切換弁、および検出器を含み、前記第1のアフィニティーマトリックスが前記切換弁を介して前記第2のアフィニティーマトリックスに連続的に接続される工程;
b. 前記切換弁が、フロースルーが前記第2のアフィニティーマトリックスに直接適用されるような位置にあり、前記フロースルー中の前記第2のホモ二量体抗体不純物が前記第2のアフィニティーマトリックスに結合し、前記ヘテロ二量体抗体と前記第一のホモ二量体抗体不純物は第一のアフィニティーマトリックス上に保持される、第1の移動相を用いて前記第1のアフィニティーマトリックスを洗浄する工程;
c. 前記切換弁を切り替えて、前記第1のアフィニティーマトリックスを前記第2のアフィニティーマトリックスから切り離し、前記第1のアフィニティーマトリックスを前記検出器に直接接続し、次に、前記第1のホモ二量体抗体不純物が前記第1のアフィニティーマトリックスに保持されている間に、第2の移動相を用いて前記第1のアフィニティーマトリックスから前記ヘテロ二量体抗体を溶出させ、前記溶出されたヘテロ二量体抗体の量を決定する工程;
d. 第3の移動相を用いて、前記第1のアフィニティーマトリックスから前記保持された第1のホモ二量体抗体不純物を前記検出器を通して溶出し、前記溶出された第1のホモ二量体抗体不純物の量を決定する工程;
e. 前記切換弁を戻して、前記第1のアフィニティーマトリックスを前記第2のアフィニティーマトリックスに、前記第2のアフィニティーマトリックスを前記検出器に連続的に接続し、第3の移動相を使用して前記第2のアフィニティーマトリックスから前記第2のホモ二量体抗体不純物を前記検出器を通して溶出させ、前記溶出された第2のホモ二量体抗体不純物の量を決定する工程;
f. 工程(c)と同様に前記試料中の前記ヘテロ二量体抗体の量を、および前記試料中のヘテロ二量体抗体の純度を定量化する工程であって、前記ヘテロ二量体抗体の純度は、前記第1のホモ二量体抗体不純物、前記ヘテロ二量体抗体、および前記第2のホモ二量体抗体不純物の量の合計に対する前記ヘテロ二量体抗体の量の比によって決定される工程を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記ヘテロ二量体抗体が1つの非置換重鎖および1つの置換重鎖を含む二重特異性抗体であり、
前記第1のホモ二量体抗体不純物が2つの非置換重鎖を含む単一特異性抗体であり、
前記第2のホモ二量体抗体不純物が2つの置換重鎖を含む単一特異性抗体であり、
前記非置換重鎖が前記第1のアフィニティーマトリックスおよび前記第2のアフィニティーマトリックスの両方に結合し、
前記置換重鎖が前記第2のアフィニティーマトリックスに結合するが、その第1のアフィニティーマトリックスへの結合は阻止される方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記ヘテロ二量体抗体が1つの非置換CH3ドメインおよび1つの置換CH3ドメインを含む二重特異性抗体であり、
前記第1のホモ二量体抗体不純物が2つの非置換CH3ドメインを含む単一特異性抗体であり、
前記第2のホモ二量体抗体不純物が2つの置換CH3ドメインを含む単一特異性抗体であり、
前記非置換CH3ドメインが前記第1のアフィニティーマトリックスおよび前記第2のアフィニティーマトリックスの両方に結合し、
前記置換CH3ドメインが前記第2のアフィニティーマトリックスに結合するが、その第1のアフィニティーマトリックスへの結合は阻止される方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記置換CH3ドメインがH435RおよびY436Fアミノ酸置換を含む方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1のアフィニティーマトリックスがプロテインAを含み、
前記第2のアフィニティーマトリックスがプロテインGを含む、方法。
【請求項6】
ヘテロ二量体抗体と、第1のホモ二量体抗体不純物と、第2のホモ二量体抗体不純物との混合物を含む試料中の前記ヘテロ二量体抗体の量および純度を定量化するための方法であって、
前記ヘテロ二量体抗体および前記第1のホモ二量体抗体不純物は第1のアフィニティーマトリックスに結合し、
前記第2のホモ二量体抗体不純物は、第2のアフィニティーマトリックスに結合するが、その第1のアフィニティーマトリックスへの結合は阻止され、
前記ヘテロ二量体抗体は前記第1のアフィニティーマトリックスに対して、前記第1のホモ二量体抗体不純物よりも低い親和性を有し、
前記ヘテロ二量体抗体は、1つの非置換CH3ドメインと1つのH435R/Y436F置換CH3ドメインを含む二重特異性ヒトIgG1、IgG2またはIgG4抗体、すなわちFcFc*抗体であり、前記第1のホモ二量体抗体不純物は、2つの非置換CH3ドメインを含む単一特異性ヒトIgG1、IgG2またはIgG4抗体、すなわちFcFc抗体であり、
前記第2のホモ二量体抗体不純物は、2つのH435R/Y436F置換CH3ドメインを含む単一特異性ヒトIgG1、IgG2またはIgG4抗体、すなわちFc*Fc*抗体であり、ここでFcは非置換CH3ドメインを有する重鎖を示し、Fc*は置換CH3ドメインを有する重鎖を示し、
前記第1のアフィニティーマトリックスがプロテインA、すなわちプロテインAアフィニティーマトリックスを含み、
前記第2のアフィニティーマトリックスがプロテインG、すなわちプロテインGアフィニティーマトリックスを含み、
前記非置換CH3ドメインが前記プロテインAアフィニティーマトリックスおよび前記プロテインGアフィニティーマトリックスの両方に結合し、
前記H435R/Y436F置換CH3ドメインが前記プロテインGアフィニティーマトリックスに結合するが、その前記プロテインAアフィニティーマトリックスへの結合は阻止され、
前記方法は以下の工程:
a. 前記FcFc*抗体および前記FcFc抗体が前記プロテインAアフィニティーマトリックスに結合する条件下で、クロマトグラフィーシステム中の前記プロテインAアフィニティーマトリックスに前記試料を適用する工程であって、前記クロマトグラフィーシステムが、前記プロテインAアフィニティーマトリックス、前記プロテインGアフィニティーマトリックス、切換弁および検出器を含み、前記プロテインAアフィニティーマトリックスが前記プロテインGアフィニティーマトリックスに前記切換弁を介して連続的に接続される、工程;
b. 前記切換弁が、フロースルーが前記プロテインGアフィニティーマトリックスに直接適用されるような位置にあり、前記フロースルー中の前記Fc*Fc*抗体が前記プロテインGアフィニティーマトリックスに結合し、前記FcFc*抗体および前記FcFc抗体が前記プロテインAアフィニティーマトリックスに保持される、第1の移動相を用いて前記プロテインAアフィニティーマトリックスを洗浄する工程;
c. 前記切換弁を切り替えて、前記プロテインAアフィニティーマトリックスを前記プロテインGアフィニティーマトリックスから切り離し、前記プロテインAアフィニティーマトリックスを前記検出器に直接接続し、次に、前記FcFc抗体が前記プロテインAアフィニティーマトリックス上に保持されている間に、第2の移動相を用いて前記プロテインAアフィニティーマトリックスから前記FcFc*抗体を溶出させ、前記溶出されたFcFc*抗体の量を決定する工程;
d. 第3の移動相を用いて、前記プロテインAアフィニティーマトリックスから前記保持されたFcFc抗体を検出器を通して溶出させ、前記溶出されたFcFc抗体の量を決定する工程;
e. 前記切換弁を戻して、前記プロテインAアフィニティーマトリックスを前記プロテインGアフィニティーマトリックスに、前記プロテインGアフィニティーマトリックスを前記検出器に連続的に接続し、第3の移動相を使用して、前記プロテインGアフィニティーマトリックスから前記Fc*Fc*抗体を検出器を通して溶出し、前記溶出されたFc*Fc*抗体の量を決定する工程;
f. 工程(c)と同様に前記試料中の前記ヘテロ二量体抗体の量を、および前記試料中の前記ヘテロ二量体抗体の純度を定量化する工程であって、前記ヘテロ二量体抗体の純度は、前記FcFc抗体、前記FcFc*抗体および前記Fc*Fc*抗体の量の合計に対する前記FcFc*抗体の量の比によって決定される工程を含む、方法。
【請求項7】
請求項1または6に記載の方法であって、
前記ヘテロ二量体抗体がヒトIgG1またはIgG4抗体であり、
前記第1のホモ二量体抗体不純物がヒトIgG1またはIgG4抗体であり、
前記第2のホモ二量体抗体不純物がヒトIgG1またはIgG4抗体である方法。
【請求項8】
請求項1または6に記載の方法であって、
前記第1の移動相が約pH 5.6~約pH 7.4のカオトロピック剤を含み、
前記第2の移動相が約pH 4.3~約pH 5.0のカオトロピック剤を含み、
前記第3の移動相が約pH 2.0~約pH 2.8のカオトロピック剤を含む方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記カオトロピック剤がLiCl、NaCl、KCl、MgCl 2 、およびCaCl 2 緩衝液から選択される塩緩衝液である方法。
【請求項10】
ヘテロ二量体抗体と、第1のホモ二量体抗体不純物と、第2のホモ二量体抗体不純物との混合物を含む試料中のヘテロ二量体抗体の量および純度を定量化するための、第1のアフィニティーマトリックスと、第2のアフィニティーマトリックスと、検出器とを含むクロマトグラフィーシステムであって、
前記第1のアフィニティーマトリックスは、前記第2のアフィニティーマトリックスに切換弁を介して連続的に接続され、
前記ヘテロ二量体抗体および前記第1のホモ二量体抗体不純物は前記第1のアフィニティーマトリックスに結合し、
前記第2のホモ二量体抗体不純物は前記第2のアフィニティーマトリックスに結合するが、その前記第1のアフィニティーマトリックスへの結合は阻止され、
前記ヘテロ二量体抗体は前記第1のアフィニティーマトリックスに対して、前記第1のホモ二量体抗体不純物よりも低い親和性を有し、
前記第1のアフィニティーマトリックスはプロテインA、すなわちプロテインAアフィニティーマトリックスを含み、
前記第2のアフィニティーマトリックスはプロテインG、すなわちプロテインGアフィニティーマトリックスを含み、前記プロテインAアフィニティーマトリックス、前記プロテインGアフィニティーマトリックスおよび前記検出器の各々が前記切換弁を介して接続され、
前記切換弁は
前記プロテインAアフィニティーマトリックスの洗浄;
前記プロテインAアフィニティーマトリックスからの前記ヘテロ二量体抗体の溶出;
前記プロテインAアフィニティーマトリックスからの前記第1のホモ二量体抗体不純物の前記検出器を介した溶出;および
前記プロテインGアフィニティーマトリックスからの前記第2のホモ二量体抗体不純物の前記検出器を介した溶出
を可能にする位置にあるように構成される
クロマトグラフィーシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のクロマトグラフィーシステムであって、
前記ヘテロ二量体抗体が1つの非置換重鎖および1つの置換重鎖を含む二重特異性抗体であり、
前記第1のホモ二量体抗体不純物が2つの非置換重鎖を含む単一特異性抗体であり、
前記第2のホモ二量体抗体不純物が2つの置換重鎖を含む単一特異性抗体であり、
前記非置換重鎖が前記第1のアフィニティーマトリックスおよび前記第2のアフィニティーマトリックスの両方に結合し、
前記置換重鎖が前記第2のアフィニティーマトリックスに結合するが、その前記第1のアフィニティーマトリックスへの結合は阻止される
クロマトグラフィーシステム。
【請求項12】
請求項10に記載のクロマトグラフィーシステムであって、
前記ヘテロ二量体抗体が1つの非置換CH3ドメインおよび1つの置換CH3ドメインを含む二重特異性抗体であり、
前記第1のホモ二量体抗体不純物が2つの非置換CH3ドメインを含む単一特異性抗体であり、
前記第2のホモ二量体抗体不純物が2つの置換CH3ドメインを含む単一特異性抗体であり、
前記非置換CH3ドメインが前記第1のアフィニティーマトリックスおよび前記第2のアフィニティーマトリックスの両方に結合し、
前記置換CH3ドメインが前記第2のアフィニティーマトリックスに結合するが、その前記第1のアフィニティーマトリックスへの結合は阻止される
クロマトグラフィーシステム。
【請求項13】
ヘテロ二量体抗体と、第1のホモ二量体抗体不純物と、第2のホモ二量体抗体不純物との混合物を含む試料中のヘテロ二量体抗体の量および純度を定量化するための、第1のアフィニティーマトリックスと、第2のアフィニティーマトリックスと、検出器とを含むクロマトグラフィーシステムであって、
前記第1のアフィニティーマトリックスは、前記第2のアフィニティーマトリックスに切換弁を介して連続的に接続され、
前記ヘテロ二量体抗体は1つの非置換CH3ドメインおよび1つのH435R/Y436F置換CH3ドメインを含む二重特異性ヒトIgG1、IgG2またはIgG4抗体、すなわちFcFc*抗体であり、前記第1のホモ二量体抗体不純物は2つの非置換CH3ドメインを含む単一特異性ヒトIgG1、IgG2またはIgG4抗体、すなわちFcFc抗体であり、
前記第2のホモ二量体抗体不純物は2つのH435R/Y436F置換CH3ドメインを含む単一特異性ヒトIgG1、IgG2またはIgG4抗体、すなわちFc*Fc*抗体であり、
ここでFcは非置換CH3ドメインを有する重鎖を示し、Fc*はH435R/Y436F置換CH3ドメインを有する重鎖を示し、
前記第1のアフィニティーマトリックスはプロテインA、すなわちプロテインAアフィニティーマトリックスを含み、前記第2のアフィニティーマトリックスはプロテインG、すなわちプロテインGアフィニティーマトリックスを含み、前記非置換CH3ドメインが前記プロテインAアフィニティーマトリックスおよび前記プロテインGアフィニティーマトリックスの両方に結合し、前記H435R/Y436F置換CH3ドメインが前記プロテインGアフィニティーマトリックスに結合するが、その前記プロテインAアフィニティーマトリックスへの結合は阻止され、前記プロテインAアフィニティーマトリックス、前記プロテインGアフィニティーマトリックスおよび前記検出器の各々が前記切換弁を介して接続され、
前記切換弁は
前記プロテインAアフィニティーマトリックスの洗浄;
前記プロテインAアフィニティーマトリックスからの前記ヘテロ二量体抗体の溶出;
前記プロテインAアフィニティーマトリックスからの前記第1のホモ二量体抗体不純物の前記検出器を介した溶出;および
前記プロテインGアフィニティーマトリックスからの前記第2のホモ二量体抗体不純物の前記検出器を介した溶出
を可能にする位置にあるように構成されるクロマトグラフィーシステム。
【請求項14】
請求項10または13に記載のクロマトグラフィーシステムであって、前記ヘテロ二量体抗体がヒトIgG1またはIgG4抗体であり、前記第1のホモ二量体抗体不純物がヒトIgG1またはIgG4抗体であり、前記第2のホモ二量体抗体不純物がヒトIgG1またはIgG4抗体であるクロマトグラフィーシステム。
【請求項15】
請求項10または13に記載のクロマトグラフィーシステムであって、前記切換弁が
約pH 5.6~約pH 7.4のカオトロピック剤を含む第1の移動相を用いた前記プロテインAアフィニティーマトリックスの洗浄;
約pH 4.3~約pH 5.0のカオトロピック剤を含む第2の移動相を用いた前記プロテインAアフィニティーマトリックスからの前記ヘテロ二量体抗体の溶出;
約pH 2.0~約pH 2.8のカオトロピック剤を含む第3の移動相を用いたプロテインAアフィニティーマトリックスからの第1のホモ二量体抗体不純物の検出器を介した溶出;および
前記第3の移動相を用いた前記プロテインGアフィニティーマトリックスからの前記第2のホモ二量体抗体不純物の前記検出器を介した溶出。
を可能とする位置にあるように構成されるクロマトグラフィーシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のクロマトグラフィーシステムであって、前記カオトロピック剤がLiCl、NaCl、KCl、MgCl 2 、およびCaCl 2 緩衝液から選択される塩緩衝液であるシステム。
【請求項17】
請求項10または13に記載のクロマトグラフィーシステムであって、前記検出器がUV検出器、電荷エアロゾル検出器、および/または質量分析計を備えたHPLCカラムを含むクロマトグラフィーシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0118】
本明細書に引用される全ての特許、出願、刊行物、試験方法、文献、および他の資料は、本明細書中に物理的に存在しているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本開示は以下の実施形態を含む。
実施形態1
タンパク質と、第1のタンパク質不純物と、第2のタンパク質不純物との混合物を含む試料中の前記タンパク質の量および/または純度を定量化するための方法であって、
ここで前記タンパク質および前記第1の不純物は第1のアフィニティーマトリックスに結合し、前記第2の不純物は、前記第1のアフィニティーマトリックスに実質的に結合せず第2のアフィニティーマトリックスに結合し、前記方法は以下の工程を含む:
a. 前記第1のアフィニティーマトリックスと、前記第2のアフィニティーマトリックスと、検出器とを含むクロマトグラフィーシステムに前記試料を適用する工程であって、前記第1のアフィニティーマトリックスは、切換弁を介して前記第2のアフィニティーマトリックスに連続的に接続される、工程;
b. 第1のセットの条件下で、前記第1のアフィニティーマトリックスから前記第2の不純物を前記第2のアフィニティーマトリックス上へと溶出させる工程;
c. 前記第2のアフィニティーマトリックスをバイパスするように前記切換弁を切り換え、第2のセットの条件下で、前記タンパク質を前記検出器を通して溶出させ、溶出されたタンパク質の量を決定する工程;
d. 第3のセットの条件下で、前記第1の不純物を前記検出器を通して溶出させ、溶出された第1の不純物の量を決定する工程;
e. 第3のセットの条件下で、前記第2のアフィニティーマトリックスから前記第2の不純物を前記検出器を通して溶出させ、溶出された第2の不純物の量を決定する工程;および
f. 前記試料中の前記タンパク質の量および/または純度を定量化する工程。
実施形態2
前記タンパク質は、前記第1のアフィニティーマトリックスに対して、前記第1の不純物よりも低い親和性を有する、実施形態1に記載の方法。
実施形態3
前記タンパク質はヘテロ二量体タンパク質であり、前記第1のタンパク質不純物は第1のホモ二量体タンパク質であり、前記第2のタンパク質不純物は第2のホモ二量体タンパク質であり、前記ヘテロ二量体タンパク質および前記第1のホモ二量体タンパク質は前記第1のアフィニティーマトリックスに結合し、前記第2のホモ二量体タンパク質は、前記第1のアフィニティーマトリックスに実質的に結合せず前記第2のアフィニティーマトリックスに結合する、実施形態1または2に記載の方法。
実施形態4
前記タンパク質が、第1の免疫グロブリンCH3ドメインおよび第2の免疫グロブリンCH3ドメインを含み、前記第1および第2の免疫グロブリンCH3ドメインは前記第1のアフィニティーマトリックスに対する親和性において異なり、前記試料は、前記タンパク質と、2つの第1のCH3ドメインを含むタンパク質と、2つの第2のCH3ドメインを含むタンパク質とを含む混合物を含む、実施形態1または2に記載の方法。
実施形態5
前記第2のCH3ドメインは、H435RおよびY436Fアミノ酸置換を含む、実施形態4に記載の方法。
実施形態6
前記タンパク質は抗体である、実施形態1~5のいずれか一つに記載の方法。
実施形態7
前記タンパク質は二重特異性抗体である、実施形態6に記載の方法。
実施形態8
前記第1のアフィニティーマトリックスがプロテインAを含み、前記第2のアフィニティーマトリックスがプロテインGを含む、実施形態1~7のいずれか一つに記載の方法。
実施形態9
前記第1のセットの条件が第1のpHを含み、前記第2のセットの条件が第2のpHを含み、前記第3のセットの条件が第3のpHを含む、実施形態1~8のいずれか一つに記載の方法。
実施形態10
前記第2のpHは前記第1のpHより低く、前記第3のpHは前記第2のpHより低い、実施形態9に記載の方法。
実施形態11
前記第1のpHは約pH 5.0~約pH 7.4であり、前記第2のpHは約pH 4.3~約pH 5.6であり、前記第3のpHは約pH 2.0~約pH 2.8である、実施形態9または10に記載の方法。
実施形態12
前記第1のセットの条件、前記第2のセットの条件、および前記第3のセットの条件が、移動相修飾剤を含む、実施形態1~11のいずれか一つに記載の方法。
実施形態13
前記移動相修飾剤は、LiCl、NaCl、KCl、MgCl 2 、およびCaCl 2 緩衝剤から選択される塩緩衝剤である、実施形態12に記載の方法。
実施形態14
ヘテロ二量体タンパク質と、第1のホモ二量体タンパク質と、第2のホモ二量体タンパク質との混合物を含む試料中の前記ヘテロ二量体タンパク質の量および/または純度を定量化するための方法であって、
ここで、前記ヘテロ二量体タンパク質および前記第1のホモ二量体タンパク質はプロテインAマトリックスに結合し、前記第2のホモ二量体タンパク質は、プロテインAマトリックスに実質的に結合せずプロテインGマトリックスに結合し、前記方法は以下の工程を含む:
a. 前記プロテインAマトリックスと、前記プロテインGマトリックスと、検出器とを含むクロマトグラフィーシステムに前記試料を適用する工程であって、前記プロテインAマトリックスは切換弁を介して前記プロテインGマトリックスに連続的に接続される、工程;
b. 第1のセットの条件下で、前記プロテインAマトリックスから前記第2のホモ二量体タンパク質を前記プロテインGマトリックス上へと溶出させる工程;
c. 前記プロテインGマトリックスをバイパスさせるように前記切換弁を切り換えて、第2のセットの条件下で前記ヘテロ二量体タンパク質を前記検出器を通して溶出させ、溶出されたタンパク質の量を決定する工程;
d. 第3のセットの条件下で、前記第1のホモ二量体タンパク質を前記検出器を通して溶出させ、溶出された第1の不純物の量を決定する工程;
e. 第3のセットの条件下で、前記第2のアフィニティーマトリックスから前記第2のホモ二量体タンパク質を前記検出器を通して溶出させ、溶出された第2の不純物の量を決定する工程;および
f. 前記試料中の前記タンパク質の量および/または純度を定量化する工程。
実施形態15
前記ヘテロ二量体タンパク質はFcFc*を含み、前記第1のホモ二量体タンパク質はFcFcを含み、前記第2のホモ二量体タンパク質はFc*Fc*を含む、実施形態14に記載の方法。
実施形態16
第1のアフィニティーマトリックスと、第2のアフィニティーマトリックスと、検出器とを含むクロマトグラフィーシステムであって、前記第1のアフィニティーマトリックス、前記第2のアフィニティーマトリックス、および前記検出器のそれぞれが切換弁を介して接続されている、クロマトグラフィーシステム。
実施形態17
(i) プロテインAクロマトグラフィーカラムと、 (ii) プロテインGクロマトグラフィーカラムと、 (iii) UV検出器、電荷エアロゾル検出器、および/または質量分析計を備えたHPLCカラムを含む検出器とを含むクロマトグラフィーシステムであって、前記プロテインAクロマトグラフィーカラム、前記プロテインGクロマトグラフィーカラム、および前記検出器のそれぞれが切換弁を介して接続されている、クロマトグラフィーシステム。
【外国語明細書】