(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015674
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240130BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240130BHJP
H01M 6/10 20060101ALI20240130BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240130BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20240130BHJP
H01G 11/82 20130101ALI20240130BHJP
H01M 50/609 20210101ALI20240130BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20240130BHJP
H01M 10/0587 20100101ALN20240130BHJP
H01M 6/16 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/04 W
H01M10/058
H01M6/10 Z
H01G11/84
H01G11/78
H01G11/82
H01M50/609
H01M10/052
H01M10/0587
H01M6/16 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117901
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】磯部 佳秀
(72)【発明者】
【氏名】岡山 忍
【テーマコード(参考)】
5E078
5H023
5H024
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB02
5E078AB13
5E078BA18
5E078BA26
5E078BA27
5E078BA44
5E078BA47
5E078BA52
5E078BB23
5E078CA02
5E078CA06
5E078CA07
5E078CA09
5E078DA03
5E078DA06
5E078DA14
5E078EA07
5E078EA16
5E078FA02
5E078FA07
5E078FA12
5E078FA13
5E078FA15
5E078HA05
5E078HA12
5E078LA06
5H023AA03
5H023BB09
5H023BB10
5H024BB08
5H024BB13
5H024BB18
5H024CC12
5H024HH04
5H028AA06
5H028AA07
5H028AA10
5H028BB03
5H028BB11
5H028CC12
5H028HH10
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029BJ21
5H029CJ13
5H029CJ28
5H029DJ02
5H029HJ17
(57)【要約】
【課題】電池の生産性を向上させる。
【解決手段】ここで開示される電池の製造方法は、正極および負極を含む電極体と、電解液と、電極体および電解液を収容する電池ケースとを備えた電池の製造方法である。電池の製造方法は、電極体が収容された電池ケースに電解液を注液する注液工程と、電極体および電解液が収容された電池ケースに、X線を照射するX線照射工程と、X線照射工程において得られた画像に基づき、電極体内における電解液の含浸状態を確認する確認工程と
を含んでいる。X線照射工程において、X線発生装置の管電流は、100μA以上10000μA以下である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極を含む電極体と、電解液と、前記電極体および前記電解液を収容する電池ケースとを備えた電池の製造方法であって、
前記電極体が収容された前記電池ケースに前記電解液を注液する注液工程と、
前記電極体および前記電解液が収容された前記電池ケースに、X線を照射するX線照射工程と、
前記X線照射工程において得られた画像に基づき、前記電極体内における前記電解液の含浸状態を確認する確認工程と
を含み、
前記X線照射工程において、X線発生装置の管電流を、100μA以上10000μA以下とする、
電池の製造方法。
【請求項2】
前記確認工程では、前記X線照射工程において得られた前記画像を予め定められた方向に沿って複数に分割し、分割された前記画像を重ね合わせ、重ね合わせられた前記画像に基づき判断する、請求項1に記載された電池の製造方法。
【請求項3】
前記注液工程の前にX線照射する予備X線照射工程を有し、
前記確認工程では、前記X線照射工程により得られた結果から、前記予備X線照射工程により得られた結果を用いてバックグラウンド除去処理を行う、請求項1または2に記載された電池の製造方法。
【請求項4】
前記電池ケースは、一対の第1側壁を有し、
前記第1側壁は、他の側壁よりも大きな面積を有し、
一方の前記第1側壁側に前記X線発生装置が配置され、他方の前記第1側壁側にX線検出器が配置された状態で、前記X線照射工程を行う、請求項1または2に記載された電池の製造方法。
【請求項5】
前記電池ケース内には、前記電極体として複数の巻回電極体が配置されている、請求項1または2に記載された電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-225373号公報には、検査工程で電解液の含浸状態を可視化するための、電解液の注液方法が開示されている。同公報に開示されている注液方法は、電池容器を密封容器の内部に密封する工程と、密封容器の内部を高真空状態にする工程と、密封容器の内部に希ガスを供給する工程と、電解液を電池容器の内部へ注液し含浸させる工程とを含んでいる。希ガスとしては、鉄などの電池の主要な材料よりも原子番号が大きいクリプトンおよびキセノンが挙げられている。なお、同公報に開示されている注液方法は、電池の仕様変更や初ロットの作成時に注液装置の高真空状態の圧力等を設定する際に用いられる。
【0003】
上記の注液方法で電解液を注液された電池は、後の検査工程でX線CT装置によって電解液の含浸状態が確認される。X線CT装置は、X線発生装置と、回転ステージと、X線検出器とを含んでいる。電池は、X線CT内で回転ステージに配置され、回転されながら、X線が照射され、三次元イメージ画像が形成される。三次元イメージ画像には数値解析が実行され、任意多断面再構成像が形成される。これによって、電池の任意の断面を確認することができる。
【0004】
上記の注液方法では、注液前に密封容器の内部に希ガスが供給されている。このため、電極体の内部において電解液が含浸していない部分には、希ガスが残存している。希ガスのX線吸収量は電極体のX線吸収量よりも多い。このため、希ガスが残存する部分ではX線が多く吸収され、当該部分は、X線CT像において白く表示される。これによって、電池の内部に残存している気体の量がわかる。電池の内部に残存している気体の量を基に密封容器の高真空状態の圧力を設定することによって、気体の残存が少ない電池を得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電池性能の観点から、電極体に対して電解液が十分に含浸していることが好ましい。しかしながら、電池ケースに電解液を注液した後に電解液が電極体に含浸する時間を長く取りすぎると、電池の生産性は低下しうる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで開示される電池の製造方法は、正極および負極を含む電極体と、電解液と、電極体および電解液を収容する電池ケースとを備えた電池の製造方法である。電池の製造方法は、電極体が収容された電池ケースに電解液を注液する注液工程と、電極体および電解液が収容された電池ケースに、X線を照射するX線照射工程と、X線照射工程において得られた画像に基づき、電極体内における電解液の含浸状態を確認する確認工程とを含んでいる。X線照射工程において、X線発生装置の管電流は、100μA以上10000μA以下である。かかる製造方法によると、電解液を電極体に含浸させるための時間が適切に設定され、電池の生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、電池100を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1中のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図3】
図3は、封口板54に取り付けられた巻回電極体40を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、巻回電極体40を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、巻回電極体40の構成を示す模式図である。
【
図6】
図6は、巻回電極体40に対する電解液80の含浸状態を示す模式図である。
【
図7】
図7は、X線検査装置200と、検査される電池ケース50とを示す模式図である。
【
図8】
図8は、透過X線強度と電極体の厚みとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ここで開示される技術の一実施形態について図面を参照して説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略される。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」を意味するものとする。
【0010】
また、本明細書において参照する各図における符号Xは「奥行方向」を示し、符号Yは「幅方向」を示し、符号Zは「高さ方向」を示す。また、奥行方向XにおけるFは「前」を示し、Rrは「後」を示す。奥行方向Xにおいて、電池ケースがX線検査装置に配置された際に、X線発生装置に対向する方を「前」とし、X線検出器と対向する方を「後」とする。幅方向YにおけるLは「左」を示し、Rは「右」を示す。高さ方向ZにおけるUは「上」を示し、「D」は下を示す。これらの方向は説明の便宜上の定めたものであり、ここに開示される二次電池を使用する際の設置形態を限定することを意図したものではない。
【0011】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して一対の電極(正極と負極)の間で電荷担体が移動することによって繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般をいう。かかる二次電池は、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池の他に、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ等も包含する。以下では、リチウムイオン二次電池を対象とした場合の実施形態について説明する。
【0012】
ここで開示される電池の製造方法は、注液工程と、X線照射工程と、確認工程とを含んでいる。この実施形態では、電池の製造方法は、注液工程の前に、予備X線照射工程を含んでいる。以下、電池の製造方法について、電池の構成と併せて説明する。
【0013】
<電池100>
ここで開示される電池の製造方法により、電極体40と、電解液80と、電池ケース50とを備えた電池100が製造される。
図1は、電池100を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1中のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3は、封口板54に取り付けられた巻回電極体40を模式的に示す斜視図である。
図4は、巻回電極体40を模式的に示す斜視図である。
図2に示すように、電池100では、電極体40および電解液80は、電池ケース50に収容されている。
【0014】
電池を製造する際には、はじめに、正極および負極を含む電極体40が内部に収容された電池ケース50が用意されうる。電極体40および電池ケース50の構成は、特に限定されない。
【0015】
この実施形態では、電池ケース50は、扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有している。電池ケース50は、外装体52と、封口板54とを有している。外装体52は、平面略矩形の底壁52aと、底壁52aの長辺から高さ方向Zの上方に延びる一対の第1側壁52bと、底壁52aの短辺から高さ方向Zの上方に延びる一対の第2側壁52cとを有している(
図1参照)。第1側壁52bと、第2側壁52cの高さは、略同一である。第1側壁52bの面積は、他の側壁(この実施形態では、第2側壁52c)よりも大きい。この実施形態では、電池ケース50内に、電極体40として複数(この実施形態では、3個)の巻回電極体40(
図3参照)が配置されている。巻回電極体40は、電池100の奥行方向Xに沿って並べられた状態で、電池ケース50内に収容されている。
【0016】
図5は、巻回電極体40の構成を示す模式図である。
図5に示すように、巻回電極体40は、正極板10および負極板20がセパレータ30を介して積層され、巻回軸WLを中心として巻回された扁平な電極体である。なお、巻回電極体40および電池ケース50の詳細な構成については、後述する。
【0017】
巻回電極体40が内部に収容された電池ケース50が用意されると、次に、電解液80が注液される。この実施形態では、電解液80が注液される注液工程の前に、後述する確認工程において用いられるX線データを取得するための予備X線照射工程が設けられている。
【0018】
<予備X線照射工程>
予備X線照射工程では、電解液80を注液する前の、電極体40が収容された電池ケース50に、X線を照射する。予備X線照射工程と、後述するX線照射工程は、X線検査装置200(
図7参照)内で行われる。
【0019】
予備X線照射工程では、電解液80が注液される前の電池ケース50は、X線検査装置200内(
図7参照)において、後述するX線照射工程と同様の条件でX線が照射され、X線データが取得される。例えば、電池ケース50を配置する位置や、X線発生装置210(
図7参照)の出力、画像の取り込み時間等の検査条件は、電解液80の注液前後で同条件でありうる。X線検査装置200の詳細やX線照射の条件については、後述する。
【0020】
予備X線照射工程後、電池ケース50は、電解液80を注液するための図示しないチャンバに移され、電解液80が注液される。
【0021】
<注液工程>
注液工程では、電極体40が収容された電池ケース50に電解液80が注液される。電解液80には、従来公知の二次電池において使用されているものを特に制限なく使用することができる。電解液80としては、例えば、非水系溶媒に支持塩を溶解させた非水電解液が好ましく用いられうる。非水系溶媒の一例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。支持塩の一例として、LiPF6等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。電解液80には、必要に応じてガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の種々の添加剤が含まれていてもよい。
【0022】
図示しないチャンバ内において、電池ケース50内に電解液80が注液されうる。チャンバには、チャンバ内を減圧するための真空ポンプが接続されていてもよい。はじめに、電池ケース50は、チャンバに収容される。次に、チャンバ内は、所定の減圧状態に調整される。次に、図示しない注液ノズルが電池ケース50の注液孔55(
図2参照)に挿入された状態で、電解液80が注液される。
【0023】
電解液80が電池ケース50に注液されると、電解液80は、電極体40に含浸し始める。減圧環境下で電池ケース50内に電解液80が注液されることによって、電極体40に電解液80が含浸しやすくなる。その結果、電極体40に電解液80の含浸が完了するまでの時間が短縮されうる。なお、電池ケース50内に電解液80が注液される際の雰囲気は、特に限定されない。チャンバには、窒素等の不活性ガスや空気等が導入可能に構成されていてもよい。
【0024】
巻回電極体40では、巻回軸WL方向の両方の側面40a,40b(
図6参照)を除いた部位は、正極板10、負極板20およびセパレータ30が巻き重ねられている。このため、電解液80は、巻回電極体40に対して巻回軸WLの巻き方向に対し垂直方向からは含浸しにくい。一方、巻回電極体40の側面40a,40bには、巻回された帯状の正極板10および負極板20の長辺側の端部が位置している。このため、電解液80は、巻回電極体40に対して側面40a,40bから巻回軸WL方向の内側に向かって含浸しやすい。
【0025】
電解液80の注液後、電池ケース50は、予め定められた待機時間、静置される。待機時間は、例えば、電解液80の注液完了後、巻回電極体40の中央部にまで電解液80が含浸するまでの見込みの時間でありうる。待機時間は、事前試験等によって設定されうる。特に限定されないが、この実施形態では、待機時間は50時間に設定されている。
【0026】
図6は、巻回電極体40に対する電解液80の含浸状態を示す模式図である。
図6では、注液後、時間が経過するにつれて電解液80が巻回電極体40に含浸する様子が模式的に示されている。
図6(A)では、巻回電極体40に対して、電解液80が含浸途中の電池ケース50が示されている。
図6(B)では、電解液80が完全に含浸される前の電池ケース50が示されている。
図6(C)では、電解液80が完全に含浸した電池ケース50が示されている。
図6(A)および
図6(B)では、電解液80が含浸する方向は、矢印で示されている。
図6(A)~
図6(C)では、電池ケース50、巻回電極体40および電解液80以外の電池100の構成要素は省略されている。なお、
図6では、後述するX線照射工程においてX線データが取得される撮像領域Aは、二点鎖線で示されている。
【0027】
図6に示すように、時間が経つにつれて巻回電極体40に対して電解液80が含浸する。巻回電極体40において、電解液80が含浸している領域(以下、「含浸領域」とも称する。)と、電解液80が含浸していない領域(以下、「非含浸領域」とも称する。)の境界80bは、巻回電極体40の両側の側面40a,40bから内側に向かって移動する。巻回電極体40において、電解液80の非含浸領域には、電池ケース50内の雰囲気に応じたガスが残存している。電解液80が巻回電極体40に含浸するに従って、非含浸領域(ガスが含まれている領域)は減少する。また、電解液80が巻回電極体40に含浸するに従って、電解液80の液面80aは低くなる。
【0028】
待機時間の経過後、チャンバ内は大気開放され、電池ケース50が取り出される。電池ケース50の注液孔55(
図2参照)には、仮止めのためのゴム栓等が取り付けられてもよい。取り出された電池ケース50は、続いて、X線検査装置200(
図6参照)に移される。
【0029】
<X線照射工程>
X線照射工程では、電極体40および電解液80が収容された電池ケース50に、X線が照射される。
図7は、X線検査装置200と、検査される電池ケース50とを示す模式図である。この実施形態では、X線検査装置200は、予め定められた方向から被検査物に照射されたX線の透過を検出する透過X線装置である。
図7では、X線が照射される方向は、矢印で示されている。
図7に示すように、X線検査装置200は、X線発生装置210と、ステージ220と、X線検出器230とを備えている。X線発生装置210、ステージ220およびX線検出器230は、X線を遮蔽するための図示しない容器に収容されている。
【0030】
X線発生装置210は、X線を発生させる装置である。X線発生装置210としては、高電圧を印加させた電子を金属に衝突させることによってX線を発生させるX線管が用いられうる。X線源としては、管電圧100~300kVの管電圧に対応するものが用いられる。この際に用いられるX線源は、密閉管と開放管どちらでも構わない。特に限定されないが、この実施形態では、ベリリウムをターゲットとしたX線管が用いられている。
【0031】
X線検出器230は、X線発生装置210から発生され、電池ケース50を透過したX線を検出するための検出装置である。X線検出器230としては、例えば、フラットパネルディテクタ、イメージインテンシファイア等検出したX線データを画像データに変換可能な検出器が好ましく用いられうる。特に限定されないが、画像の取り込み時間(撮影時間)は、0.5秒~500秒程度に設定されることが好ましい。
【0032】
ステージ220は、X線発生装置210とX線検出器230の間に位置している。ステージ220には、検査される電池ケース50が載せられる。ステージ220は、電池ケース50を固定するための図示しない固定具を有していてもよい。固定具によって、電池ケース50は、略一定の位置で検査されうる。固定具は、例えば、X線が照射される方向と略垂直な方向から電池ケース50を保持するように構成されているなど、電池ケース50に対するX線の照射を妨げない位置に設けられていることが好ましい。ステージ220は、位置や角度が調整可能に構成されていてもよい。ステージ220の位置や角度が調整されることによって、電池ケース50の検査される領域が調整されうる。
【0033】
なお、X線発生装置210とX線検出器230の間には、X線検出器230に照射されるX線の強度に応じて、X線の強度を調整するための治具が設けられていてもよい。治具は、X線検出器230のうち、X線が照射される領域を覆うことができる平板状の遮蔽物でありうる。治具としては、例えば、ステンレス、銅、鉛等が用いられうる。治具は、X線発生装置210と電池ケース50の間に配置されてもよく、X線検出器230と電池ケース50の間に配置されてもよい。X線発生装置210とX線検出器230の間に治具が設けられていることによって、X線検出器230に入射するX線の乱反射が防がれるため、X線の強度が調整され、取得される画像データにおいてハレーションが起こりにくくなる。また、X線検出器230の劣化が抑えられる。
【0034】
電池ケース50は、底壁52a(
図1参照)を下にした状態でステージ220に配置される。この実施形態では、一方の第1側壁52b側にX線発生装置210が配置され、他方の第1側壁52b側にX線検出器230が配置された状態される。換言すると、一方の第1側壁52bがX線発生装置210と対向し、他方の第1側壁52bがX線検出器230と対向するように、電池ケース50は、ステージ220に配置される。このため、電池ケース50のうち、他の側壁(ここでは、第2側壁52c)よりも広い面積の第1側壁52bに対して略垂直にX線が照射されうる。電池ケース50の広い面(第1側壁52b)からX線を照射および検出することによって、広い面に沿った電解液80の含浸が確認される。これによって、電極体40に対する電解液80の含浸状況が確認されやすくなる。
【0035】
また、この実施形態では、電極体40として巻回電極体40が用いられている。X線の照射方向は、巻回軸WL方向と略垂直に設定されている。このため、X線の照射方向は、電解液80が含浸する方向とは、略垂直に設定されている。これによって、X線の照射方向は、巻回軸WL方向と略垂直に設定され、巻回電極体40の側面40a,40bから中央部に向かって含浸している電解液80の位置が確認されやすくなる。
【0036】
この実施形態では、電池ケース50の位置は、第1側壁52bの中央部を中心として、縦(Z方向)105mm、横(Y方向)150mmの長方形の領域が撮像される位置に設定され、X線が照射される。なお、電池ケース50の撮像領域は、特に限定されず、電池ケース50の寸法や収容されている電極体40の構成等に応じて適宜設定されるとよい。この実施形態では、撮像領域Aは、電池ケース50の高さよりも広く、幅よりも狭く設定されている(
図6参照)。
【0037】
X線発生装置210から発生するX線の強度は、管電流によって調整されうる。X線発生装置210から発生するX線の強度は、管電流が高いほど高くなり、管電流が低いほど低くなる。管電流が低い場合には、電池ケース50を透過するX線が少なくなり、検出される画像のコントラストが低下しうる。X線が透過しやすい領域と、X線が透過しにくい(吸収または反射される)領域とのコントラストを向上させる観点から、X線発生装置には、高い管電流を発生させることが好ましい。かかる観点から、X線発生装置の管電流は、100μA以上に設定されることが好ましく、1000μA以上に設定されることがより好ましく、2000μA以上に設定されることがさらに好ましく、3000μA以上に設定されていてもよい。一方、管電流が高すぎる場合には、X線検出器230で検出されるX線が多くなりすぎることによってハレーションが起こりうる。かかる観点から、X線発生装置の管電流は、10000μA以下に設定されることが好ましく、7000μA以下に設定されていることがより好ましく、4500μA以下に設定されることがさらに好ましく、4000μA以下に設定されていてもよい。これによって、検出される画像では、ハレーションによるコントラストの低下が低減されうる。
【0038】
図8は、透過X線強度と電極体の厚みとの関係を示すグラフである。
図8では、一定の強度で照射したX線が電極体を透過しX線検出器で検出される際の強度と、電極体の厚みとの関係が示されている。
図8に示されているように、巻回電極体の厚みにより、X線通過量は変わる。巻回電極体の厚みが厚いとX線通過量は少なくなり、巻回電極体の厚みが薄いとX線通過量は多くなる。また、巻回電極体の重量によってもX線透過量は変わる。巻回電極体の重量が重いほどX線通過量は少なくなり、巻回電極体の重量が軽いほどX線通過量は多くなる。そのため、電池毎に適正な管電流の値は異なる。
【0039】
X線のエネルギーは、管電圧が高いほど高くなり、管電圧が低いほど低くなる。X線発生装置210に印加される管電圧は、100kV以上に設定されることが好ましく、150kV以上に設定されてもよい。X線発生装置に印加される管電圧は、300kV以下に設定されることが好ましい。また巻回電極体の厚みにより、巻回電極体をX線が貫通するためのエネルギーが変わる。巻回電極体の厚みが厚いと、巻回電極体を貫通するための必要なエネルギー量が増え、巻回電極体の厚みが薄いと巻回電極体を貫通するための必要なエネルギー量が少なくなる。そのため、電池毎に適正な管電圧の値は異なる。
【0040】
X線発生装置210からは、波長は、1pm~10nm程度のX線が発生する。ここで、X線発生装置210から電池ケース50に照射されるX線の照射時間は、1秒~60秒程度に設定されうる。X線検出器230では、X線発生装置210から照射され、電池ケース50を透過したX線が検出される。X線検出器230で検出されるX線データは、一方向から取得されたX線データである。当該X線データに基づき取り込まれた画像によって、電池ケース50内の電極体40に対する電解液80の含浸が確認される。なお、X線発生に関する条件は、上述した条件に限定されない。
【0041】
<確認工程>
確認工程では、X線照射工程において得られた画像に基づき、電極体40内における電解液80の含浸状態が確認される。巻回電極体40において、含浸領域では、非含浸領域と比較してX線の減衰が大きくなる。このため、非含浸領域では、含浸領域と比較して、X線検出器230で検出されるX線強度が高くなる。画像のX線強度を確認することによって、電解液80の含浸状況が確認される。なお、電解液80の含浸状態の確認は、例えば、画像処理装置等によって行われうる。
【0042】
画像処理装置では、含浸領域と非含浸領域とを区別するためのX線強度の閾値が設定されうる。含浸領域と非含浸領域とを分けるためのX線強度の閾値は、構成が同じ電池ケースと電解液を用いて事前に試験を実施する等の方法によって設定されていてもよい。
【0043】
閾値を上回る領域がない場合には、電解液80の含浸が完了したとして、電池ケース50は、次の製造工程に移される。閾値を上回る領域が小さい場合にも、電解液80の含浸が完了間近であると判断され、電池ケース50は、次の製造工程に移されてもよい。次の製造工程に移される前に、注液孔55は封止部材56(
図2参照)で塞がれ、電池ケース50は封止される。なお、注液孔55を封止するタイミングは、特に限定されない。
【0044】
閾値を上回る領域が大きい場合には、電解液80の含浸にはまだ時間がかかるため、待機時間は延長される。電解液80の含浸が完了しているか否かを判断するための領域の広さ等は、事前の試験によって設定されていてもよい。
【0045】
ところで、X線照射工程で得られるX線データは、電池100を構成する電池ケース50や電極体40等によって影響を受けうる。電解液80の含浸状態を精度よく確認するためには、電解液80以外の、電池100を構成する部品の影響をできる限り抑えたい。この実施形態では、確認工程では、X線照射工程により得られた結果から、予備X線照射工程により得られた結果を用いてバックグラウンド除去処理が行われる。当該バックグラウンド除去処理が行われた結果に基づき、電解液80の含浸状態が判断される。
【0046】
上述したように、予備X線照射工程では、電解液80が注液される前の電池ケース50に対し、X線照射工程と同様の条件でX線が照射されたX線データが取得されている。このため、予備X線照射工程で取得されたX線データは、電解液80以外の成分が除去されたX線データでありうる。かかるX線データを用いてバックグラウンド除去処理を実行することによって、電解液80の含浸状況がより精度よく確認されうる。また、電池ケース50や巻回電極体40の構成部品には、厚み等の製品ばらつきがありうる。かかる製品ばらつきは、陰影等としてX線データに現れうる。電解液80の注液前後のX線データを用いることによって、製品ばらつきによる陰影等が低減されたX線データが取得され、電解液80の含浸状況がより精度よく確認されうる。かかる効果は、管電流等、X線の照射条件に関わらず実現されうる。
【0047】
この実施形態では、X線照射工程において得られた画像を巻回電極体40の巻回軸WLに沿って複数に分割される。分割された画像は、重ね合わせられる。当該重ね合わせられた画像に基づき、電解液80の含浸が完了しているか否かが判断される。
図9は、画像の分割を示す模式図である。
図9では、
図6(A)の状態の電池ケース50において取得される画像の分割パターンの一例が模式的に示されている。
図9では、分割された画像の境界は、一点鎖線で示されている。
図10は、X線強度を示すグラフである。
図10では、
図9に示される電解液80の含浸状態の電池ケース50について、
図9に示されるように画像を分割して得られたX線強度のグラフが示されている。
図10(A)~
図10(C)では、
図6(A)~
図6(C)の状態の電池ケース50のデータから得られたX線強度のグラフがそれぞれ対応付けて示されている。
【0048】
この実施形態では、
図9に示すように、X線照射工程において得られた画像は、複数に分割されている。画像は、巻回電極体40の巻回軸WL方向(Y方向)に沿って複数に分割されている。画像の分割は、画像処理プログラムにより実行されうる。なお、ここでは、撮像領域Aよりも狭い領域A1のデータが用いられている。領域A1の画像は、複数の画像A11に分割されている。分割された画像A11の幅は、特に限定されず、画素単位で調整されうる。複数の画像A11はそれぞれ、異なる高さにおいて取得されている。画像A11は、幅方向Yの位置に対応するX線強度のデータを含んでいる。複数の画像A11が重ね合わせられることによって、幅方向Yの位置ごとにX線強度が積算されたデータが取得される(
図10参照)。電解液80の含浸が完了しているか否かの判断は、例えば、バックグラウンド除去処理後の強度が設定された閾値よりも高いか否かによって判断されうる。
【0049】
データが積算されることによって、電解液80が含浸している領域と電解液80が含浸していない領域のコントラストが向上しうる。例えば、撮影時間が短い場合にも、コントラストが良好な画像が取得されうる。このため、X線照射工程での撮影時間が短縮され、電池100の生産性が向上しうる。なお、画像を分割する方向は、上述した形態に限定されず、電池100の構成、収容される電解液80の含浸方向等に応じて適宜設定されうる。
【0050】
確認工程において、電解液80の含浸が完了したと判断されると、公知の方法で初期充電処理およびエージング処理が施され、電池100が製造される。
【0051】
上述した実施形態では、電池の製造方法は、注液工程と、X線照射工程と、確認工程とを含んでいる。X線照射工程において、X線発生装置の管電流は、100μA以上10000μA以下である。このように、管電流が高い値に設定されていることによって、X線照射工程で取得された画像のコントラストが高くなり、電極体40に対する電解液80の含浸状態が確認されやすくなる。また、このようなコントラストの高い画像は、透過X線装置を用いた一方向からの撮影で取得可能でありうる。このため、短時間で電解液80の含浸を確認することができる。電解液80の含浸を確認するための時間が短くなることによって、電池100の生産効率が向上しうる。また、X線の照射により検査されるため、電解液80の含浸を非破壊で確認することができる。
【0052】
また、管電流が高い値に設定されていることによって、X線が透過しにくい構成を有する電池100にも好ましく採用されうる。例えば、この実施形態では、電極体40として、複数の巻回電極体40が電池ケース50の奥行方向Xに沿って並べられて配置されている。X線の照射方向に障壁(ここでは、巻回電極体40)が多い場合には、X線が減衰しやすくなり、検出されるX線の強度が低くなりやすい。しかしながら、この実施形態では、管電流が高い値に設定されているため、複数の巻回電極体40を透過するX線の強度が十分高い値に保たれやすくなる。これによって、電解液80の含浸が精度よく確認されやすい。
【0053】
上述した実施形態では、予備X線照射工程では注液前の電池ケース50のデータを取得し、X線照射工程では注液前の電池ケース50のデータを取得している。しかしながら、かかる形態に限定されない。例えば、試験用に用意した電池ケース50および電極体40にX線を照射することによって予備X線照射工程を実施してもよい。また、金属板等の試験片にX線を照射することによって予備X線照射工程を実施してもよい。試験片を用いて予備X線照射工程を実施する際には、試験片によるX線の減衰が、電池ケース50および電極体40と同程度になるように、試験片が選択されうる。このような場合にも、電解液80以外によるX線の減衰が抑えられ、電解液80の含浸状況がより精度よく確認されうる。
【0054】
以下、上述した製造方法によって製造される電池100を構成する電極体40および電池ケース50の構成の一例を説明する。ここで開示される技術を用いて製造される電池100は、当然ながら以下の形態に限定されない。
【0055】
<電池ケース50>
電池ケース50には、従来公知の材料を特に制限なく使用できる。電池ケース50は、例えば、金属製であるとよい。電池ケース50の材料の一例として、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等が挙げられる。特に限定されないが、電池ケース50は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製であることが好ましい。
【0056】
電池ケース50の封口板54は、平面視において略矩形の板状部材である。
図2に示すように、封口板54は、外装体52の開口52hを塞ぐ部材である。封口板54には、注液孔55と、ガス排出弁57とが設けられている。注液孔55は、電池ケース50の内部に電解液80を注液するために設けられた貫通孔である。ガス排出弁57は、電池ケース50内で大量のガスが発生した際に破断(開口)し、当該ガスを排出するように設計された薄肉部である。封口板54には、電極端子が取り付けられる端子挿通孔58,59が形成されている。端子挿通孔58,59はそれぞれ、封口板54の幅方向Yにおける端部に形成されている。
【0057】
<電極端子>
電池100の幅方向Yにおける封口板54の一方の端部には、正極端子60が取り付けられている。正極端子60は、電池ケース50の外側において、板状の正極外部導電部材62と接続されている。一方、電池100の幅方向Yにおける封口板54の他方の端部には、負極端子65が取り付けられている。負極端子65は、電池ケース50の外側において、板状の負極外部導電部材67と接続されている。これらの外部導電部材(正極外部導電部材62および負極外部導電部材67)は、外部接続部材(バスバー等)を介して、他の二次電池や外部機器と接続される。
【0058】
封口板54の内側面には、正極第1集電部71および負極第1集電部76が取り付けられている。正極第1集電部71および負極第1集電部76はそれぞれ、封口板54の内側面に沿って延びた板状の導電部材である。正極端子60の下端部60cは、正極第1集電部71に接続されている。負極端子65の下端部65cは、負極第1集電部76と接続されている。
【0059】
<絶縁部材>
封口板54には、電池ケース50(外装体52、封口板54)と電極端子(正極端子60、負極端子65)の導通を防止する種々の絶縁部材が設けられている。封口板54の端子挿通孔58,59には、電極端子と封口板54の導通を防止するガスケット90が装着されている。正極外部導電部材62(または負極外部導電部材67)と、封口板54の外側面との間には、外部絶縁部材92が配置されている。正極第1集電部71(または負極第1集電部76)と、封口板54の内側面との間には、内部絶縁部材94が配置されている。内部絶縁部材94は、封口板54の内側面に取り付けられた板状のベース部94aを備えている。内部絶縁部材94は、ベース部94aから巻回電極体40に向かって突出する突出部94bを備えている。突出部94bは、後述する電極体40の上下方向の移動を規制し、電極体40と封口板54が直接接触することを防止する。上述した絶縁部材の材料は、所定の絶縁性を有していれば特に限定されない。絶縁部材としては、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂等の合成樹脂材料が用いられうる。
【0060】
<電極体40>
電極体40は、
図5に示すように、正極板10と、負極板20と、セパレータ30とを含んだ巻回電極体40である。なお、電極体は、巻回電極体に限られない。電極体は、例えば、複数の略矩形状の正極板と負極板とがセパレータを介して交互に積層された、いわゆる積層電極体であってもよい。
【0061】
<正極板10>
正極板10は、長尺な帯状の部材である。正極板10は、箔状の金属部材である正極芯体12と、正極芯体12の表面に形成された正極活物質層14を備えている。電池性能の観点から、正極活物質層14は、正極芯体12の両面に形成されていることが好ましい。正極板10の一方の側縁部には、Y方向の外側(
図7中の左側)に向かって突出する正極タブ12tが設けられている。正極タブ12tは、正極板10の長手方向において所定の間隔を空けて複数設けられている。この正極タブ12tは、正極活物質層14や保護層16が形成されておらず、正極芯体12が露出した領域である。
【0062】
正極芯体12としては、所定の導電性を有した金属材料が好ましく用いられる。正極芯体12は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等から構成されていることがより好ましい。
【0063】
正極活物質層14は、正極活物質を含む層である。正極活物質は、後述する負極活物質との関係において電荷担体を可逆的に吸蔵・放出できる材料である。正極活物質は、特に限定されない。正極活物質としては、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物が好ましく用いられる。
【0064】
正極活物質層14は、正極活物質以外の添加剤を含んでいてもよい。正極活物質層14は、バインダを含みうる。バインダとしては、樹脂バインダが好ましく用いられうる。樹脂バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が好ましく用いられうる。正極活物質層14は、導電材を含むことが好ましい。導電材としては、アセチレンブラック(AB)等の炭素材料が好ましく用いられうる。
【0065】
正極板10の一方の側縁部には、必要に応じて保護層16が設けられていてもよい。保護層16は、正極活物質層14よりも電気伝導性が低くなるように構成された層である。保護層16は、正極芯体12上において、セパレータ30を介して負極活物質層24と対向する位置に設けられている。保護層16の構成は特に限定されないが、例えば、樹脂が塗布された層、無機粒子やバインダを含んだ層でありうる。
【0066】
<負極板20>
負極板20は、長尺な帯状の部材である。負極板20は、箔状の金属部材である負極芯体22と、負極芯体22の表面に形成された負極活物質層24とを備えている。電池性能の観点から、負極活物質層24は、負極芯体22の両面に形成されていることが好ましい。負極板20の一方の側縁部には、Y方向の外側(
図13中の右側)に向かって突出する負極タブ22tが設けられている。負極タブ22tは、上述した正極タブ12tとは反対側に向かって突出している。負極タブ22tは、負極板20の長手方向において所定の間隔を空けて複数設けられている。この負極タブ22tは、負極活物質層24が形成されておらず、負極芯体22が露出した領域である。
【0067】
負極芯体22としては、所定の導電性を有した金属材料が好ましく用いられる。負極芯体22は、例えば、銅や銅合金等から構成されていることがより好ましい。
【0068】
負極活物質層24は、負極活物質を含む層である。負極活物質には、正極活物質との関係において電荷担体を可逆的に吸蔵・放出できる材料である。負極活物質は、特に限定されない。負極活物質としては、例えば、炭素材料、シリコン系材料およびそれらの混合酸化物などが好ましく用いられる。炭素材料としては、例えば、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、非晶質炭素等が用いられうる。シリコン系材料としては、シリコン、シリコン酸化物(シリカ)等が挙げられる。
【0069】
負極活物質層24は、負極活物質以外の添加剤を含んでいてもよい。負極活物質層24は、添加剤としてのバインダを含みうる。バインダとしては、樹脂バインダが好ましく用いられる。樹脂バインダとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)等を含んでいてもよい。負極活物質層24は、導電材を含むことが好ましい。導電材としては、アセチレンブラック(AB)、カーボンナノチューブ等の炭素材料が好ましく用いられうる。
【0070】
正極活物質層14および負極活物質層24の幅(巻回軸WL方向の長さ)は、特に限定されない。負極活物質層24の幅は、正極活物質層14の幅よりもわずかに大きく形成されうる。電池性能の観点から、正極板10の正極活物質層14と負極板20の負極活物質層24の寸法は大きいことが好ましい。正極活物質層14の幅(巻回軸WL方向の長さ)は、電池性能の観点から、20cm以上であることが好ましく、25cm以上であることがより好ましい。また、正極活物質層14の幅は、巻回電極体40の中央部にまで電解液80を含浸させる観点から、50cm以下であることが好ましく、40cm以下であることがより好ましい。このような幅の広い電池100は、電解液80の含浸に時間がかかりうる。ここで開示される技術は、幅の広い電池100を製造する際にも好ましく適用されうる。
【0071】
<セパレータ30>
セパレータ30は、正極板10と負極板20との接触を防止すると共に、電荷担体を通過させる機能を有した長尺な帯状の部材である。セパレータ30の幅は、正極板10の正極活物質層14と負極板20の負極活物質層24を覆うことができる寸法に設定されうる。
【0072】
セパレータ30は、電荷担体が通過し得る微細な孔が複数形成された樹脂製の多孔質膜が好ましく用いられる。セパレータ30を構成する樹脂シートには、耐熱層や接着層が形成されていてもよい。耐熱層は、耐熱性に優れた層である。耐熱層は、セラミック粒子と、バインダとを含んでいることが好ましい。セラミック粒子としては、例えば、アルミナ等が用いられうる。接着層は、電極板(正極板10、負極板20)との接着性に優れた層である。接着層は、ポリフッ化ビニリデン等のバインダを含みうる。接着層は、セラミック粒子を含んでいてもよい。
【0073】
<巻回電極体40>
巻回電極体40は、上述した正極板10、負極板20およびセパレータ30から作製される。巻回電極体40は、例えば、以下の要領で作製されうる。まず、長尺な帯状の正極板10と長尺な帯状の負極板20を、長尺な帯状のセパレータ30を介在させつつ、積層させた積層体を形成する。次いで、この積層体を長手方向に沿って巻回し、筒状の巻回体を作製する。ここで、複数の正極タブ12tおよび複数の負極タブ22tがそれぞれ、予め定められた位置で重なるように、正極板10、負極板20およびセパレータ30の位置が合わせられた状態で巻回される。これによって、筒状の巻回体には、正極タブ群42および負極タブ群44が形成される。
【0074】
次いで、筒状の巻回体を、プレスする。これによって、扁平形状の巻回電極体40が作製される。ここでは、セパレータ30は、表面層を備えている。このため、セパレータ30は、正極板10および負極板20との接着性が良好である。これによって、正極板10と負極板20の間の距離が適切に保持された状態で巻回およびプレスされた巻回電極体40が作製されうる。
【0075】
プレス後の巻回電極体40の寸法は特に限定されないが、プレス後の巻回電極体40の高さは、Z方向において5cm以上であることが好ましく、8cm以上であることがより好ましい。プレス後の巻回電極体40の高さは、Z方向において15cm以下であることが好ましく、12cm以下であることがより好ましい。また、巻回電極体40の巻回軸WL方向の長さ(例えば、セパレータ30の幅)は、巻回電極体40の高さに対して1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましい。このような巻回軸WL方向に長い巻回電極体40を有する電池100は、電解液80が巻回電極体40の中央部まで含浸する時間が長くかかりうる。ここで開示される技術は、巻回軸WL方向に長い巻回電極体40を有する電池100を製造する際にも好ましく適用されうる。
【0076】
なお、巻回電極体40の巻回数および寸法は、目的とする電池100の性能や製造効率等を考慮して適宜調節されうる。特に限定されないが、正極板10および負極板20は、X方向においてそれぞれ20層以上に積層されるように巻回されることが好ましい。正極板10は、33層以上に積層されることがより好ましい。負極板20は、35層以上に積層されることがより好ましい。このような巻回数が多い電池100では、電解液80は、巻回電極体40の外側から内側に向かって含浸しにくく、巻回電極体40の巻回軸WL方向から含浸しやすい。ここで開示される技術は、巻回数が多い電池100を製造する際にも好ましく適用されうる。
【0077】
巻回電極体40が作製されると、
図4に示すように、正極タブ群42および負極タブ群44にはそれぞれ、第2正極集電部72および第2負極集電部77が接続される。
図3に示すように、正極第2集電部72の上端部は正極第1集電部71と電気的に接続され、負極第2集電部77の上端部は負極第1集電部76と電気的に接続される。正極第1集電部71および正極第2集電部72は、正極集電部70を構成する。負極第1集電部76および負極第2集電部77は、負極集電部75を構成する。
【0078】
この実施形態では、複数の巻回電極体40は、封口板54に取り付けられた状態で、外装体52に収容される。巻回電極体40の数は、特に限定されない。複数の巻回電極体40は、それぞれの巻回軸WLが略平行となるように封口板54に取り付けられている。巻回電極体40の巻回軸WLは、第1側壁52bに沿うように軸方向が設定される。この実施形態では、巻回軸WLと電池100の幅方向Yは、略一致するように、電池ケース50内に巻回電極体40が収容される。なお、複数の巻回電極体40は、絶縁性の樹脂シートから構成される図示しない電極体ホルダに覆われた状態で電池ケース50の内部に収容されてもよい。電極体ホルダは、例えば、ポリプロピレン(PP)等から構成されうる。電極体40が電極体ホルダに覆われた状態で電池ケース50の内部に収容されていることによって、電極体40と外装体52が直接接触し導通することが防止される。
【0079】
以上、ここで開示される技術について、種々説明した。特に言及されない限りにおいて、ここで挙げられた実施形態などは本発明を限定しない。また、ここで開示される技術は、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされうる。
【0080】
以上の通り、本明細書は以下の開示を含んでおり、以下の各項に記載の開示を含んでいる。
項1:正極および負極を含む電極体と、電解液と、前記電極体および前記電解液を収容する電池ケースとを備えた電池の製造方法であって、前記電極体が収容された前記電池ケースに前記電解液を注液する注液工程と、前記電極体および前記電解液が収容された前記電池ケースに、X線を照射するX線照射工程と、前記X線照射工程において得られた画像に基づき、前記電極体内における前記電解液の含浸状態を確認する確認工程とを含み、前記X線照射工程において、X線発生装置の管電流を、100μA以上10000μA以下とする、電池の製造方法。
項2:前記確認工程では、前記X線照射工程において得られた前記画像を予め定められた方向に沿って複数に分割し、分割された前記画像を重ね合わせ、重ね合わせられた前記画像に基づき判断する、項1に記載された電池の製造方法。
項3:前記注液工程の前にX線照射する予備X線照射工程を有し、前記確認工程では、前記X線照射工程により得られた結果から、前記予備X線照射工程により得られた結果を用いてバックグラウンド除去処理を行う、項1または2に記載された電池の製造方法。
項4:前記電池ケースは、一対の第1側壁を有し、前記第1側壁は、他の側壁よりも大きな面積を有し、一方の前記第1側壁側に前記X線発生装置が配置され、他方の前記第1側壁側にX線検出器が配置された状態で、前記X線照射工程を行う、項1~3のいずれか一項に記載された電池の製造方法。
項5:前記電池ケース内には、前記電極体として複数の巻回電極体が配置されている、項1~4のいずれか一項に記載された電池の製造方法。
【符号の説明】
【0081】
10 正極板
12 正極芯体
14 正極活物質層
20 負極板
22 負極芯体
24 負極活物質層
30 セパレータ
40 電極体(巻回電極体)
40a,40b 側面
50 電池ケース
52 外装体
52a 底壁
52b 第1側壁
52c 第2側壁
52h 開口
54 封口板
55 注液孔
56 封止部材
58,59 端子挿通孔
60 正極端子
65 負極端子
80 電解液
80a 液面
80b 境界
100 電池
200 X線検査装置
210 X線発生装置
220 ステージ
230 X線検出器