(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156740
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】接着ファスナ製品とその製造方法
(51)【国際特許分類】
A44B 13/00 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
A44B13/00
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024119282
(22)【出願日】2024-07-25
(62)【分割の表示】P 2021560699の分割
【原出願日】2020-04-06
(31)【優先権主張番号】1905187.9
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】521446716
【氏名又は名称】プリム・インティメイツ・グループ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Prym Intimates Group Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】カビセカラ,ヘーナティクンブレ カビセカラ ムディヤンセラゲ アンジャナ ピウシャン
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤスーリヤ,ジャヤスーリヤ アラッチゲ パーリタ ダヌシュカ
(72)【発明者】
【氏名】サジーワ,ハプアラッチゲ ドン ラスン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】衣類の製造中に、フックアンドアイテープなどの衣類のファスナ製品をコーティングまたはライニングする時間を短縮する。
【解決手段】第1の面112および裏面の第2の面114を有する基材部110と、基材部110の第1の面112および/または第2の面114上に配置された接着層部120であって、該接着層部120がその接着を阻害する非活性状態にある接着層部120と、基材部110の第1の面112に取り付けられたファスナのアレイと、を含み、該接着層部は、接着ファスナ製品100の衣類への接着を可能にする活性状態に活性化可能である衣類用の接着ファスナ製品100が記述される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類用の接着ファスナ製品であって、
第1の面および裏面の第2の面を有する基材部と、
前記基材部の第1の面および/または第2の面上に配置された接着層部であって、前記接着層部がその接着を阻害する非活性状態にある接着層部と、
前記基材部の前記第1の面に取り付けられたファスナのアレイと、を含み、
前記接着層部は、前記接着ファスナ製品の前記衣類への接着を可能にする活性状態に活性化可能である、
製品。
【請求項2】
前記非活性状態にある前記接着層部は、フィルムまたはウェブライニングの形態である、
請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記非活性状態にある前記接着層部は、乾燥した液体の形態である液体接着剤物質を含む、
請求項1または2に記載の製品。
【請求項4】
前記液体接着剤物質が未硬化である、または部分的に硬化されている、
請求項3に記載の製品。
【請求項5】
前記接着層部が、前記基材部の前記第1の面上に配置された別の第1の接着層部、および前記基材部の前記第2の面上に配置された別の第2の接着層部を含む、
請求項1~4のいずれか1つに記載の製品。
【請求項6】
前記接着層部が、前記基材部の周りに、前記基材部の前記第1の面および前記第2の面に連続的に配置される、
請求項1~4のいずれか1つに記載の製品。
【請求項7】
前記ファスナが、前記基材部の前記第1の面に配置された前記接着層部を介して前記基材部の前記第1の面に取り付けられる、
請求項1~6のいずれか1つに記載の製品。
【請求項8】
前記ファスナが、前記基材部の前記第1の面にステッチされる、
請求項1~7のいずれか1つに記載の製品。
【請求項9】
前記基材部が、布地材料で形成される、
請求項1~8のいずれか1つに記載の製品。
【請求項10】
衣類用の接着ファスナ製品を製造する方法であって、前記方法は、
接着ファスナ製品の連続的なバッチを形成するステップを含み、前記ステップは、
第1の面および裏面の第2の面を有する基材を形成するステップと、
前記基材の第1の面および/または第2の面上に接着層を配置するステップであって、前記接着層はその接着を阻害する非活性状態にあるステップと、
前記基材の前記第1の面にファスナを取り付けるステップと、を含み、
前記接着層は、前記接着ファスナ製品の前記衣類への接着を可能にする活性状態に活性化可能である、
方法。
【請求項11】
前記接着ファスナ製品の連続的なバッチを配分して、別々の接着ファスナ製品を形成するステップを更に含み、
衣類用の各接着ファスナ製品が、
第1の面および裏面の第2の面を有する前記基材の一部と、
前記基材部の前記第1の面および/または前記第2の面上に配置された前記接着層の一部と、
前記基材部の前記第1の面に取り付けられた前記ファスナのアレイと、
を含み、
各接着ファスナ製品について、前記接着層部は、前記接着ファスナ製品を前記衣類に接着することを可能にする前記活性状態に活性化可能である、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記非活性状態にある前記接着層は、フィルムまたはウェブライニングの形態である、
請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記接着層を配置する前記ステップは、乾燥した液体形態である液体接着剤物質を前記基材の前記第1の面および/または前記第2の面上に塗布するステップを含む、
請求項10~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記接着層を配置する前記ステップは、前記液体接着剤物質を部分的に硬化させるステップをさらに含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記接着層を配置する前記ステップは、前記基材の前記第1の面上に別の第1の接着層を配置するステップ、および前記基材の前記第2の面上に別の第2の接着層を配置するステップとを含む、
請求項10~14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
前記接着層を配置する前記ステップは、前記接着層を、前記基材の周りに、前記基材部の前記第1の面および前記第2の面に連続的に配置するステップを含む、
請求項10~14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記ファスナが、前記基材の前記第1の面に配置された前記接着層を介して前記基材の前記第1の面に取り付けられる、
請求項10~16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
前記ファスナを取り付けるステップが、前記基材の前記第1の面に前記ファスナをステッチするステップを含む、
請求項10~17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
前記接着層部を、前記各接着ファスナ製品の前記衣類それぞれへの接着を可能にする活性状態に活性化するステップをさらに含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記接着層部を前記活性状態にして完全に硬化させ、前記各接着ファスナ製品を前記各衣類に恒久的に接着させるステップをさらに含む、
請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、接着ファスナ製品およびその製造に関する。より詳細には、本開示は、衣類のための接着ファスナ製品の様々な実施形態、および衣類のためのそのような接着ファスナ製品の製造方法を説明する。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの衣類、特にブラジャ、下着、スポーツウェア、および同様に体にぴったりフィットする私的な衣類には、着る時に衣類を留めたり、また脱ぐ時に衣類を外したりするために使用される部品がある。そのようなファスナ部品または製品の1つのタイプは、私的な衣類に使用することができるフックアンドアイテープ(hook-and-eye tape)である。米国特許公開番号20130199005号には、フックアンドアイテープの一例が記載されている。従来、フックアンドアイテープは、フックアンドアイテープが使用される衣類とは別の部品として作られ、フックアンドアイテープは、衣類と縫合または接着されるように準備されている。そして、衣類を製造する際に、フックアンドアイテープを衣類に取り付けたり、接着したりする。上述の結合のために、衣類の製造中に、フックアンドアイテープのいくつかの表面が、適切な接着剤、例えば、接着剤物質でコーティングまたはライニングされる。フックアンドアイテープのコーティングまたはライニングは、衣類の製造中に時間のかかる作業である。
【0003】
したがって、少なくとも前述の問題や欠点に対処またはそれらを軽減するために、衣類のための改良された接着ファスナ製品、およびそのような接着ファスナ製品の製造方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示の第1の態様によれば、衣類用の接着ファスナ製品であって、第1の面および裏面の第2の面を有する基材部と、基材部の第1の面および/または第2の面上に配置された接着層部であって、該接着層部がその接着を阻害する非活性状態にある接着層部と、基材部の第1の面に取り付けられたファスナのアレイと、を含み、該接着層部は、接着ファスナ製品の衣類への接着を可能にする活性状態に活性化可能である。
【0005】
本開示の第2の態様によれば、衣類用の接着ファスナ製品の製造方法が提供される。本方法は、接着ファスナ製品の連続的なバッチを形成するステップを含み、そのステップは、第1の面および裏面の第2の面を有する基材を形成するステップと、基材の第1の面および/または第2の面上に接着層を配置し、該接着層はその接着を阻害する非活性状態にあるステップと、基材の第1の面にファスナを取り付けるステップであって、該接着層は、接着ファスナ製品の衣類への接着を可能にする活性状態に活性化可能であるステップとを含む。
【0006】
本開示の上記の態様の1つまたは複数の利点は、接着ファスナ製品が、取り扱いをサポートするために最初は非活性状態にある接着層部を有することである。次いで、接着層部を活性状態にして、接着ファスナ製品を衣類に恒久的に接着させることができる。このように、接着層部は、事前に塗布された接着フィルムまたはウェブライニングとして機能し、衣類の製造中にフックアンドアイテープなどの衣類のファスナ製品をコーティングまたはライニングする従来の時間のかかる操作の必要性を排除する。
【0007】
したがって、本開示による衣類用の接着ファスナ製品および接着ファスナ製品の製造方法が本明細書に開示される。本開示の様々な特徴、態様、および利点は、非限定的な例示のみである添付の図面とともに、本開示の実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、本開示の実施形態に係る、接着ファスナ製品の分解図を示す。
【
図1B】
図1Bは、本開示の実施形態に係る、雌型接着ファスナ製品の両面を示す。
【
図1C】
図1Cは、本開示の実施形態に係る、雄型接着ファスナ製品の両面を示す。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る、接着ファスナ製品の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3A】
図3Aは、本開示の実施形態に係る、雌型接着ファスナ製品の連続的な雌型バッチの上面図を示す。
【
図3B】
図3Bは、本開示の実施形態に係る、雌型接着ファスナ製品の連続的な雌型バッチの断面図を示す。
【
図3C】
図3Cは、本開示の実施形態に係る、雄型接着ファスナ製品の連続的な雄型バッチの断面図を示す。
【
図3D】
図3Dは、本開示の実施形態に係る、雄型接着ファスナ製品の連続的な雄型バッチの上面図を示す。
【
図4A】
図4Aは、本開示の実施形態に係る、別々の雌型接着ファスナ製品に配分される連続的な雌型バッチの上面図を示す。
【
図4B】
図4Bは、本開示の実施形態に係る、別々の雄型接着ファスナ製品に配分される連続的な雄型バッチの上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示では、特定の要素の描写や考察、特定の図での特定の要素番号の使用、または対応する説明資料でのその参照は、別の図またはそれに関連する説明資料で特定される同じ、同等の、または類似の要素または要素番号を包含するものとする。図または関連する文章中の「/」の使用は、他に指示がない限り、「および/または」を意味するものと理解される。本明細書では、「セット(組)」という用語は、既知の数学的定義に従って、数学的に少なくとも1つの集合濃度を示す空ではない有限の要素の組織体に対応するか、またはそのように定義される(例えば、本明細書で定義されるセットは、ユニット、シングレット、または単一要素セット、または複数要素セットに対応することができる)。本明細書における特定の数値または値の範囲の記載は、近似的な数値または値の範囲を含む、またはそれを記載したものであると理解される。
【0010】
簡潔かつ明確にするために、本開示の実施形態の説明は、図面に従った衣類のための接着ファスナ製品および接着ファスナ製品の製造方法に向けられている。本開示の態様は、本明細書で提供される実施形態と関連して説明されるが、それらは本開示をこれらの実施形態に限定することを意図していないことが理解されるであろう。逆に、本開示は、本明細書に記載された実施形態の代替物、修正物、および等価物を包含することを意図しており、これらは添付の請求項によって定義される本開示の範囲に含まれる。さらに、以下の詳細な説明では、本開示の完全な理解を提供するために、具体的な詳細が記載されている。しかし、本開示は、特定の詳細がなくても、および/または、特定の実施形態の態様の組み合わせから生じる複数の詳細を伴っていても実施することができることは、当技術分野で通常の技術を有する個人、すなわち当業者によって認識されるであろう。多くの例において、周知のシステム、方法、手順、および構成部品は、本開示の実施形態の態様を不必要に不明瞭にしないように、詳細に説明されていない。
【0011】
本開示の代表的または例示的な実施形態では、
図1Aに示されているように、衣類(図示せず)のための接着ファスナ製品100がある。衣類は、ブラジャ、下着、スポーツウェア、および同様に体にフィットする、またはフィットする形状を有する私的な衣類または下着であってもよいが、これらに限定されない。接着ファスナ製品100は、第1の面112および裏面の第2の面114を有する基材部110を含む。第1の面112および第2の面114は、それぞれ、基材部110の表側および裏側であってもよい。接着ファスナ製品100は、基材部110の第1の面112および/または第2の面114上に配置された接着層部120をさらに含む。接着ファスナ製品100は、基材部110の第1の面112に取り付けられたファスナ130のアレイをさらに含む。
【0012】
接着層部120の幅は、最適な接着を実現するために、基材部110の幅と同一であってもよい。いくつかの実施形態では、接着層部120は、基材部110の第1の面112および第2の面114の一方にのみ配置される。他のいくつかの実施形態では、接着層部120は、基材部110の第1の面112および第2の面114の両方に配置される。具体的には、接着層部120は、基材部110の第1の面112に配置された第1の接着層部122を含み、基材部110の第2の面114に配置された第2の接着層部124を含む。
図1Aに示すような一実施形態では、第1の接着層部122および第2の接着層部124は、分離している。別の実施形態では、第1の接着層部122および第2の接着層部124は、接着層部120がその第1の面112および第2の面114上で基材部110の周りに連続して配置されるように、連続的である。
【0013】
基材部110は、ファスナ130の取り付けのための堅固な構造基盤を提供する。基材部110は、1つまたは複数の布地材料の層から形成された布体を含んでもよい。布地材料の選択および布地材料の層の配置を含む、基材部110の構造は、接着ファスナ製品100および衣類の最終用途の要件に依存し得る。これらの要件は、布地材料の厚さおよび構造的強度/完全性などのパラメータを含み得る。基材部110は、代替的に、布体の代わりにフィルムおよび/または膜を含んでもよい。さらに代替的に、基材部110は、当業者に知られている他の適切な材料から形成されてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、接着層部120は、ファスナ130が第1の接着層部122を介して基材部110の第1の面112に取り付けられるように、基材部110の第1の面112上に配置された第1の接着層部122を含む。いくつかの実施形態では、ファスナ130は、従来の糸、織り糸、および縫製方法を使用するなどして、基材部110の第1の面112にステッチされる。
【0015】
基材部110に取り付けられたファスナ130のアレイは、任意の数の行と任意の数の列に配置されてもよい。特に、ファスナ130のアレイは、少なくとも1つのファスナ130を含む。ファスナ130は、雄型または雌型であってもよく、雄型ファスナ130と雌型ファスナ130は相互に係合可能である。雄型/雌型のファスナ130は、フックアンドアイ(hooks and eyes)、フックアンドループテープ、スナップフィットファスナ、アイレット、スナップボタンなど、既知の締結/結合機構から形成されてもよい。ファスナ130の選択は、接着ファスナ製品100および衣類の最終用途に依存してもよい。
【0016】
一対の接着ファスナ製品100が、具体的には、衣類にファスナ機能を付加するために、衣類に使用されてもよい。一対の接着ファスナ製品100は、(
図1Bに示すような)雌の対応物または雌型接着ファスナ製品100Aと、(
図1Cに示すような)雄の対応物または雄型接着ファスナ製品100Bとからなる。雌型接着ファスナ製品100Aは、雌型ファスナ130Aのアレイを含み、雄型接着ファスナ製品100Bは、雄型ファスナ130Bのアレイを含む。雌型接着ファスナ製品100Aと雄型接着ファスナ製品100Bは、雌型ファスナ130Aと雄型ファスナ130Bとを介して相互に係合可能である。衣類に使用されるとき、雌型接着ファスナ製品100Aおよび雄型接着ファスナ製品100Bは、衣類の対向する面に取り付けまたは固着されてもよく、衣類の対向する面を一緒に締結および結合(または逆に締結解除および結合解除)するために、それらは相互に係合可能である。
【0017】
多くの実施形態では、基材部110の第1の面112/第2の面114に配置された接着層部120は、その接着を阻害する非活性状態にある。具体的には、接着層部120の非活性状態は、接着層部120の他の表面への接着を抑制または制限して、ユーザまたは機械による接着剤付きファスナ製品100の取り扱いが容易になるようにする。いくつかの実施形態では、非活性状態の接着層部120は、フィルムまたはウェブライニングの形態である。非活性状態の接着層部120は、例えば乾燥粉末などの乾燥した液状の接着剤物質を含んでいてもよい。
【0018】
接着層部120は、非活性状態から、衣類への接着ファスナ製品100の接着を可能にする活性状態に活性化可能である。非活性状態では、接着層部120は乾燥しており、基材部110にしっかりと取り付けられているべきである。これにより、衣類の布地の層の間に接着ファスナ製品100を手作業または機械で挿入する製造作業が容易になり、汚染および/または損傷のリスクを低減することができる。また、接着問題を防止または軽減するために、接着層部120は、基材部110のそれぞれの面112/114に均一に塗布されるべきである。一実施形態では、活性化は、温度、圧力、および持続時間を含む様々な条件下で接着層部120を加熱することによって達成されてもよい。別の実施形態では、活性化は、接着層部120に別の物質を加えて、接着層部120を活性状態に活性化する化学反応を引き起こし、それによって、接着層部120を衣類または他の表面に接着できるようにすることによって達成されてもよい。さらに、様々な種類の接着剤は、必要な接着強度を得るために様々な環境条件を維持する必要がある。そのような条件には、保持時間、保持温度、保持圧力、湿度などが含まれる。
【0019】
非限定的な例として、液体接着剤物質を基材部110の第1の面112/第2の面114に塗布して、接着層部120を形成する。液体接着剤物質は、上述の塗布の間、非活性状態または乾燥した液体の形態である。液体接着剤物質は、フィルムまたはウェブライニングの形態で、接着剤の噴霧などの手段で塗布されてもよい。液体接着剤物質は、未硬化であってもよいし、加熱などにより部分的に硬化されていてもよい。液体接着剤物質を部分的に硬化させることで、接着層部120が、衣類に接着ファスナ製品100を整列させて軽く付着させるのに有用な、一部または限定的な付着を達成することが可能となり得る。整列後、接着層部120を活性状態にして完全に硬化させ、衣類への永久的な接着を達成することができる。
【0020】
本開示の様々な実施形態では、
図2を参照して、衣類用の接着ファスナ製品100を製造する方法200が提供される。方法200は、接着ファスナ製品100の連続的なバッチ300を形成する形成段階210を含む。
図3Aおよび
図3Bは、雌型接着ファスナ製品100Aの連続的な雌型バッチ300Aの上面図および断面図を示す。
図3Cおよび
図3Dは、雄型接着ファスナ製品100Bの連続的な雄型バッチ300Bの上面図および断面図を示す。
【0021】
形成段階210は、第1の面312と裏面の第2の面314とを有する基材310を形成するステップ212を含む。形成段階210は、基材310の第1の面312および/または第2の面314に接着層320を配置するステップ214をさらに含み、接着層320は、その接着を阻害する非活性状態にある。形成段階210は、基材310の第1の面312にファスナ330を取り付けるステップ216をさらに含む。具体的には、連続的な雌型バッチ300Aには、基材310の第1の面312に雌型ファスナ330Aが取り付けられる。同様に、連続的な雄型バッチ300Bについては、雄型ファスナ330Bが基材310の第1の面312に取り付けられる。接着層320は、衣類への接着ファスナ製品100の接着を可能にする活性状態に活性化可能である。
【0022】
接着層320の幅は、接着ファスナ製品100の最適な接着を実現するために、基材310の幅と同一であってもよい。いくつかの実施形態では、接着層部320は、基材310の第1の面312および第2の面314の一方にのみ配置される。他のいくつかの実施形態では、接着層部320は、基材310の第1の面312および第2の面314の両方に配置される。具体的には、接着層部320は、基材310の第1の面312上に配置された第1の接着層322を含み、基材310の第2の面314上に配置された第2の接着層324を含む。
図3Bおよび
図3Cに示すような一実施形態では、接着層320の上述の配置は、基材310の第1の面312および第2の面314上の基材310の周りに接着層320を連続的に配置するステップを含む。別の実施形態では、接着層320の上述の配置は、基材310の第1の面312上に別の第1接着層322を配置するステップを含み、基材310の第2の面314上に別の第2の接着層324を配置するステップを含む。
【0023】
基材310は、ファスナ330の取り付けのための堅固な構造基盤を提供する。基材310は、1つまたはそれ以上の布地材料の層から形成された布体を含んでもよい。布地材料の選択および布地材料の層の配置を含む基材310の構造は、接着ファスナ製品100および衣類の最終用途の要件に依存し得る。これらの要件は、布地材料の厚さおよび構造的強度/完全性などのパラメータを含み得る。基材310は、代替的に、布体の代わりにフィルムおよび/または膜を含んでもよい。さらに代替的に、基材310は、当業者に知られている他の適切な材料から形成されてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、接着層320は、ファスナ330が第1の接着層部322を介して基材310の第1の面312に取り付けられるように、基材310の第1の面312に配置された第1の接着層部322を含む。いくつかの実施形態では、ファスナ330の上述の取り付けは、従来の糸、織り糸、および縫製方法を使用するなどして、ファスナ330を基材310の第1の面312にステッチすることを含む。上述のステッチは、高精度のために、プログラム可能なパターンステッチマシンまたは刺繍機によって実行されてもよいことが理解されるであろう。
【0025】
基材310に取り付けられたファスナ330は、任意の数の行と任意の数の列に配置されてもよい。特に、ファスナ330は、少なくとも1つのファスナ330を含む。ファスナ330は、雄型または雌型であってもよく、雄型および雌型のファスナ330は、相互に係合可能である。例えば、連続的な雌型バッチ300Aは、雌型ファスナ330Aを含み、連続的な雄型バッチ300Bは、雄型ファスナ330Bを含む。
【0026】
多くの実施形態では、基材310の第1の面312/第2の面314に配置された接着層320は、連続的なバッチ300がユーザまたは機械によってより容易に取り扱われるように、他の表面への接着層320の接着を抑制または制限する非活性状態にある。いくつかの実施形態では、非活性状態の接着層320は、フィルムまたはウェブライニングの形態である。非活性状態の接着層320は、乾燥した液体の形態の液体接着剤物質、例えば乾燥した粉末を含んでいてもよい。
【0027】
上述の接着層320の配置は、乾燥した液体形態の液体糊物質を基材310の第1の面312/第2の面314に塗布するステップを含んでもよい。液体糊物質は、上述の塗布の間、非活性状態または乾燥した液体形態である。液体接着剤物質は、フィルムまたはウェブライニングの形態で、接着剤の噴霧などの手段で塗布されてもよい。一実施形態では、液体接着剤物質は未硬化である。別の実施形態では、接着層320の上述の配置は、加熱などにより液体接着剤物質を部分的に硬化させることをさらに含む。
【0028】
形成段階210のいくつかのステップは、配置変更されてもよい。いくつかの実施形態では、ステップ214および216において、接着層320、すなわち第1の接着層322は、まず基材310の第1の面312上に配置される。その後、ファスナ330は、第1の接着層322を介して、基材310の第1の面312に取り付けられる。いくつかの他の実施形態では、ファスナ330は、まず基材310の第1の面312に取り付けられてもよい。次いで、第1の接着層322は、基材310の第1の面312上、具体的には、ファスナ330によって覆われていない第1の面312の露出した領域の一部または全部の上に配置される。
【0029】
いくつかの実施形態では、接着ファスナ製品100の連続的なバッチ300は、衣類の製造業者などに、切断されていない状態で供給される。連続的なバッチ300は、連続複合テープと呼ばれることもある。他のいくつかの実施形態では、そしてより好ましくは、接着ファスナ製品100は、予め切断された形態で供給される。したがって、方法200は、接着ファスナ製品100の連続的なバッチ300を配分して、別々の接着ファスナ製品100を形成する任意の配分段階220を含んでもよい。
図4Aおよび
図4Bを参照すると、連続的なバッチ300は、切断線400に沿って別々の接着ファスナ製品100を切り出すことによって配分されてもよい。接着ファスナ製品100は、接着ファスナ製品100および衣類の最終用途に依存し得る適切な寸法に切り出されてもよい。接着ファスナ製品100は、任意の適切な切断機構または機械を使用して、切断線に沿って切り出されてもよい。
【0030】
各接着ファスナ製品100は、衣類の対向する面を締結して結合する(または逆に締結解除して結合解除する)など、衣類に使用することができる。各接着ファスナ製品100は、基材310の一部、すなわち、第1の面112および裏面の第2の面114を有する基材部110を含む。各接着ファスナ製品100は、接着層320の一部、すなわち、基材部110の第1の面112および/または第2の面114上に配置された接着層部120をさらに含む。各接着ファスナ製品100は、ファスナ330のアレイ、すなわち、基材部110の第1の面112に取り付けられたファスナ130のアレイをさらに含む。
【0031】
各接着ファスナ製品100について、接着層部120は、接着ファスナ製品100をそれぞれの衣類に接着することを可能にする活性状態に活性化可能である。方法200は、各接着ファスナ製品100をそれぞれの衣類に接着または固着するステップを含んでもよい。接着層部120は、接着ファスナ製品100を衣類に整列させて軽く接着させるのに有用な一部または限定的な接着性を有するように、部分的に硬化させてもよい。
【0032】
一実施形態では、接着層部120は、基材部110の第2の面114上に配置される。接着ファスナ製品100は、第2の面114によって衣類の布地層に接着され、それにより、第1の面112およびファスナ130が露出される。別の実施形態では、接着層部120は、基材部110の第1の面112上に配置される。接着ファスナ製品100は、衣類の布地層上の第1の面112によって衣類に接着され、したがって、布地層によって第1の面112が覆われる。さらに別の実施形態では、接着層部120は、基材部110の第1の面112および第2の面114の両方に配置される。接着ファスナ製品100は、第1の面112および第2の面114の両方がそれぞれの布地層に接着されるように、衣類の2つの布地層の間に接着ファスナ製品100を介在させるか、または挟むことによって、衣類に接着される。第1の面112は、同様にそれぞれの布地層によって覆われる。さらに、第1の面112を覆う布地層は、他の第1の面112に接着されたファスナ130が当該布地層の穴から露出するような穴を有している。これにより、有利なことに、衣類の留め外しのためにファスナ130を露出させつつ、衣類の布地層によって接着ファスナ製品100を隠す又は見えにくくすることができる。これにより、接着ファスナ製品100を使用した場合、衣類の外観がより美しくなる。
【0033】
方法200は、接着層部120を非活性状態から、それぞれの衣類へのそれぞれの接着ファスナ製品100の接着を可能にする活性状態に活性化するステップを有する活性化段階をさらに含んでもよい。一実施形態では、上述の活性化は、温度、圧力、および持続時間を含む様々な条件下で接着層部120を加熱するステップを含む。別の実施形態では、上述の活性化は、接着層部120に別の物質を加えるなど、接着層部120における化学反応を誘発するステップを含む。上述の活性化段階は、それぞれの接着ファスナ製品100をそれぞれの衣類に恒久的に接着させるために、活性状態にある接着層部120を、例えば加熱によって完全に硬化させるステップをさらに含む。
【0034】
本明細書の様々な実施形態に記載されているように、接着ファスナ製品100は、取り扱いをサポートするために最初は非活性状態にある接着層部120を有する。次いで、接着層部120は、接着ファスナ製品100を衣類に恒久的に接着するために、活性状態に活性化することができる。このようにして、接着層部120は、衣類の製造中にフックアンドアイテープなどの衣類のファスナ製品をコーティングまたはライニングする従来の時間のかかる操作の必要性をなくす、事前に塗布された接着フィルムまたはウェブライニングとして機能する。接着層部120は、接着ファスナ製品100の製造段階ではなく、衣類の製造工程の最終段階でのみ活性化され、硬化される。具体的には、接着層部120は、衣類がほぼ完全に形成され、接着ファスナ製品100が恒久的に接着または固着されるべき衣類上の適切な位置に配置された後にのみ活性化される。
【0035】
前述の詳細な説明では、接着ファスナ製品100および接着ファスナ製品100を製造する方法200に関連する本開示の実施形態が、提供される図を参照して説明される。本明細書における様々な実施形態の説明は、本開示の特定のまたは特定の表現のみを指定する又は限定することを意図したものではなく、単に本開示の非限定的な例を示すことを意図したものである。本開示は、先行技術に関連する言及された問題および課題の少なくとも1つに対処することに寄与する。本開示の一部の実施形態のみが本明細書に開示されているが、本開示の範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に様々な変更および/または修正を加えることができることは、本開示を鑑みて当業者には明らかである。したがって、本開示の範囲だけでなく、以下の請求項の範囲も、本明細書に記載された実施形態に限定されるものではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類用の接着ファスナ製品であって、
第1の面および裏面の第2の面を有する基材部と、
前記基材部の第1の面および/または第2の面上に取り付けられ、かつ配置された接着層部であって、前記接着層部がその接着を阻害する非活性状態にある接着層部と、
前記接着層部を通って前記基材部の前記第1の面に取り付けられたファスナのアレイと、を含み、
前記接着層部は、前記接着ファスナ製品の前記衣類への前記接着層部を介する接着を可能にする活性状態に活性化可能であり、
前記接着層部は前記非活性状態において、乾燥した液体の形態である液体接着剤物質を含む、
製品。
【請求項2】
前記非活性状態にある前記接着層部は、フィルムまたはウェブライニングの形態である、
請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記液体接着剤物質が未硬化である、または部分的に硬化されている、
請求項1または2に記載の製品。
【請求項4】
前記接着層部が、前記基材部の前記第1の面上に配置された別の第1の接着層部、および前記基材部の前記第2の面上に配置された別の第2の接着層部を含む、
請求項1~3のいずれか1つに記載の製品。
【請求項5】
前記接着層部が、前記基材部の周りに、前記基材部の前記第1の面および前記第2の面に連続的に配置される、
請求項1~3のいずれか1つに記載の製品。
【請求項6】
前記ファスナが、前記基材部の前記第1の面に配置された前記接着層部を介して前記基材部の前記第1の面に取り付けられる、
請求項1~5のいずれか1つに記載の製品。
【請求項7】
前記ファスナが、前記基材部の前記第1の面にステッチされる、
請求項1~6のいずれか1つに記載の製品。
【請求項8】
前記基材部が、布地材料で形成される、
請求項1~7のいずれか1つに記載の製品。
【請求項9】
衣類用の接着ファスナ製品を製造する方法であって、前記方法は、
接着ファスナ製品の連続的なバッチを形成するステップを含み、前記ステップは、
第1の面および裏面の第2の面を有する基材を形成するステップと、
前記基材の第1の面および/または第2の面上に接着層を配置するステップであって、その接着を阻害する非活性状態にある前記基材に前記接着層が取り付けられるようにするステップと、を含み、前記接着層を配置する前記ステップは、乾燥した液体形態である液体接着剤物質を前記基材の前記第1の面および/または前記第2の面上に塗布することを含み、
前記ステップはまた、
前記基材の前記第1の面にファスナを取り付けるステップを含み、
前記接着層は、前記接着ファスナ製品の前記衣類への接着を可能にする活性状態に活性化可能である、
方法。
【請求項10】
前記接着ファスナ製品の連続的なバッチを配分して、別々の接着ファスナ製品を形成するステップを更に含み、
衣類用の各接着ファスナ製品が、
第1の面および裏面の第2の面を有する前記基材の一部と、
前記基材部の前記第1の面および/または前記第2の面上に配置された前記接着層の一部と、
前記基材部の前記第1の面に取り付けられた前記ファスナのアレイと、
を含み、
各接着ファスナ製品について、前記接着層部は、前記接着ファスナ製品を前記衣類に接着することを可能にする前記活性状態に活性化可能である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記非活性状態にある前記接着層は、フィルムまたはウェブライニングの形態である、
請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記接着層を配置する前記ステップは、前記液体接着剤物質を部分的に硬化させるステップをさらに含む、
請求項9~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記接着層を配置する前記ステップは、前記基材の前記第1の面上に別の第1の接着層を配置するステップ、および前記基材の前記第2の面上に別の第2の接着層を配置するステップを含む、
請求項9~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記接着層を配置する前記ステップは、前記接着層を、前記基材の周りに、前記基材部の前記第1の面および前記第2の面に連続的に配置するステップを含む、
請求項9~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
前記ファスナが、前記基材の前記第1の面に配置された前記接着層を介して前記基材の前記第1の面に取り付けられる、
請求項9~14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
前記ファスナを取り付けるステップが、前記基材の前記第1の面に前記ファスナをステッチするステップを含む、
請求項9~15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記接着層部を、前記各接着ファスナ製品の前記衣類それぞれへの接着を可能にする活性状態に活性化するステップをさらに含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記接着層部を前記活性状態にして完全に硬化させ、前記各接着ファスナ製品を前記各衣類に恒久的に接着させるステップをさらに含む、
請求項17に記載の方法。
【外国語明細書】