(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156755
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】複雑な試料処理の為の自動ポイント・オブ・ケア装置及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20241029BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024120756
(22)【出願日】2024-07-26
(62)【分割の表示】P 2023047915の分割
【原出願日】2017-12-01
(31)【優先権主張番号】62/428,976
(32)【優先日】2016-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518026017
【氏名又は名称】ノベル マイクロデバイシズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】パイス,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】パイス,ロハン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の試料調製及び分析工程を通して生物学的試料を単純に、低電力で、自動化処理する為の方法及び装置の提供する
【解決手段】試薬分注ユニット(RDU)内の試薬袋(
図1A)は単一試薬袋内の水性試薬103及び非水性非混和性試薬102を含み、これらは、作動時に破壊される事によりマイクロ流体装置への試薬送達を可能にできるフランジブルシール層104で密封される。
図1Bは、マイクロ流体装置108上に組み立てられたRDUを示す。RDUは、充填された試薬袋と、試薬袋を搾り出す為、そしてマイクロ流体装置上に組み立てられたフランジブルシール層104を破裂させる為に使用される鋭利な物体105を作動させるプランジャ要素106とを含む。RDUは、フランジブルシール104がマイクロ流体装置上の流体試薬ウェル109の中への入口導管107の界面に存在する様に、マイクロ流体装置108に組み込まれる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬分注ユニットを備えるマイクロ流体装置であって、前記試薬分注ユニットは、
1つ以上の試薬及びフランジブルシール層を備える少なくとも1つの試薬袋と、
作動力が前記試薬分注ユニットに加えられた時に、前記フランジブルシール層を破裂させ、前記1つ以上の試薬を前記マイクロ流体装置に送達する様に構成された少なくとも1つのプランジャ及び少なくとも1つの鋭利な物体又は突起と、を備えるマイクロ流体装置。
【請求項2】
前記マイクロ流体装置が、更に、
少なくとも1つの入口導管と、
少なくとも1つの試薬ウェルと、
少なくとも1つの廃棄物ウェルとを備え、
前記入口導管、前記試薬ウェル、及び前記廃棄物ウェルは、フランジブルシールと前記入口導管との間に界面が存在する様に流体接続されて構成され、作動力が前記試薬分注ユニットに加えられ、前記試薬ウェルからオーバーフローする過剰試薬が前記廃棄物ウェルに集められると、1つ以上の試薬が前記入口導管を介して前記試薬ウェルに送達される請求項1に記載のマイクロ流体装置。
【請求項3】
少なくとも2つの試薬が、別個の袋にパッケージされる請求項2に記載のマイクロ流体装置。
【請求項4】
少なくとも2つの試薬が、単一の袋内に一緒にパッケージされる請求項2に記載のマイクロ流体装置。
【請求項5】
1つの試薬は水性試薬であり、1つの試薬は非水性非混和性試薬である請求項4に記載のマイクロ流体装置。
【請求項6】
前記水性試薬は、フランジブルシールと入口導管との間の界面に最も近い請求項5に記載のマイクロ流体装置。
【請求項7】
前記非水性非混和性試薬は、前記水性試薬よりも低密度であり、前記水性試薬の上に浮遊し、それによって前記水性試薬の上部に非混和性層を形成する請求項5に記載のマイクロ流体装置。
【請求項8】
前記水性試薬は、前記非水性非混和性試薬よりも低密度であり、前記非水性非混和性試薬の上に浮遊し、それによって、前記非水性非混和性試薬の上部に水性層を形成する請求項5に記載のマイクロ流体装置。
【請求項9】
作動力が試薬分注ユニットに加えられると前記水性試薬が、最初に入口導管から流出し、試薬ウェルに流入し、その後、前記非水性非混和性試薬を流入する請求項5に記載のマイクロ流体装置。
【請求項10】
前記プランジャを押下位置にロックする様に構成されたロック機構を備える事により試薬の前記試薬袋内への逆流を防止する請求項2に記載のマイクロ流体装置。
【請求項11】
前記ロック機構は、作動力の印加中に前記袋を押下し易くする方向への前記プランジャの動きを制限する様に構成されたロック孔内のかえし付きピンを備えた請求項10に記載のマイクロ流体装置。
【請求項12】
互いに接続され、一次チャネルを介して1つ以上の試薬分注ユニットに接続される2つ以上の試薬ウェルを備える請求項2に記載のマイクロ流体装置。
【請求項13】
作動シーケンスの終わりに、前記試薬ウェルが水性試薬で充填され、非水性流体で充填された前記一次チャネルを介して互いに接続される様に構成される請求項12に記載のマイクロ流体装置。
【請求項14】
作動シーケンスの終わりに、非混和性油相が前記流体ウェル内の水性試薬を覆って形成され、前記流体ウェル内の水性試薬が、油相によって互いに分離されるが、シーケンス中は流体接続されて流体回路を形成する様に構成された請求項12に記載のマイクロ流体装置。
【請求項15】
フランジブルシールによって前記流体ウェルへの入口導管から分離された複数の試薬袋と、作動後にプランジャを押下位置に係止ロックするロックピンを有する一体化されたプランジャ要素を備える事により、前記試薬袋内への試薬の逆流を防止する請求項12に記載のマイクロ流体装置。
【請求項16】
前記プランジャは、同じ瞬間に全ての前記試薬袋と接触して、単一の作動工程と平行して前記試薬袋から全ての前記試薬を押下して放出する様に構成された請求項15に記載のマイクロ流体装置。
【請求項17】
前記プランジャが、様々な深さを有する空間的に配向された突起を備え、好ましいシーケンスにおいて所望の試薬袋と接触して前記プランジャが押下されると前記マイクロ流体装置へ連続的に試薬送達し易くする様に構成された請求項15に記載のマイクロ流体装置。
【請求項18】
試料を前記マイクロ流体装置内に注入する事ができる試料入口ポートを更に備える請求項2に記載のマイクロ流体装置。
【請求項19】
前記試料入口ポートは、1以上のフィルタ膜を更に備えた請求項18に記載のマイクロ流体装置。
【請求項20】
上部アクチュエータ要素と底部アクチュエータ要素との間で回転する様に構成されたマイクロ流体カートリッジを更に含み、前記上部及び底部アクチュエータ要素は、空間的に配向された磁石を備え、マイクロ流体カートリッジを上部及び底部アクチュエータ要素の間で回転させる事を含む単一の作動ステップにおいて、前記空間的に配向された磁石は、異なる試薬ウェル間の磁気ビーズを捕獲し、再懸濁し、そして搬送する請求項2に記載のマイクロ流体装置。
【請求項21】
前記上部アクチュエータ要素は、分析シーケンス中に所定の時間で前記マイクロ流体カートリッジと接触し、前記試薬袋内の鋭利な物体又は突起を作動させて前記フランジブルシール層を破裂させ、側方流動片に増幅した物質を送達するように構成された突起を備え、前記底部アクチュエータ要素は、核酸の等温又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく増幅に安定な単一温度熱又は熱サイクルを提供する様に構成された空間的に配向されたヒータ素子を1つ以上含む請求項20に記載のマイクロ流体装置。
【請求項22】
前記空間的に配向されたヒータ素子は、熱サイクルを提供する様に構成され、前記マイクロ流体カートリッジは、一定の単一温度に夫々設定される複数のヒータ素子間で周期的に回転し、それにより、増幅ウェルは、所望のサイクル時間の間、所望のヒータ素子に接触するか、又は近接する請求項21に記載のマイクロ流体装置。
【請求項23】
試料収集容器及び試料処理ユニットを備える試料抽出装置であって、前記試料収集容器は、スワブヘッドを有するスワブと、スクリュートップ蓋に取り付けられたスワブシャフトとを備え、前記試料収集容器は、前記蓋と合うねじ山を備え、前記試料収集容器は、前記スワブが前記容器内に挿入されると、前記スワブは、前記スワブヘッドと接触し、前記スワブヘッドを洗浄する1つ以上の突起を有する洗浄インサートと接触し、前記蓋が閉じられる様に構成される試料抽出装置。
【請求項24】
前記洗浄インサートは、前記インサート内で引っ張られると前記スワブヘッドと接触する様に空間的に配向された複数の剛毛を備えた請求項23に記載の試料抽出装置。
【請求項25】
前記洗浄インサートは、機械的要素を備えた請求項23に記載の試料抽出装置。
【請求項26】
前記機械的要素は、隆起部又はOリングを備えた請求項25に記載の試料抽出装置。
【請求項27】
前記容器は、1以上のフィルタ膜を備えた請求項25に記載の試料抽出装置。
【請求項28】
前記容器は、取外し可能な試料処理ユニットに接続される迅速接続コネクタを備えた請求項25に記載の試料抽出装置。
【請求項29】
前記取り外し可能な試料処理ユニットが、バレル及びプランジャ及びプランジャチップを備えるシリンジである請求項28に記載の試料抽出装置。
【請求項30】
前記シリンジは、保存された試薬を含む1つ以上の溝付き凹部を備えた請求項29に記載の試料抽出装置。
【請求項31】
前記溝付き凹部は、前記プランジャチップが引き抜かれる時に前記保存された試薬が連続的に試料に導入される様に空間的に配向される請求項30に記載の試料抽出装置。
【請求項32】
試料処理ユニットであって、
試料収集容器と、
所定のタイミングシーケンスで前記容器内の試料への自動化された連続的な試薬送達の為に構成された蓋アクチュエータと、を備え、
前記蓋アクチュエータは、
保存された試薬を含む1つ以上の試薬袋を備える試薬パレットを備えた試薬分注ユニットと、
回転アクチュエータ要素が前記試薬パレットの近傍で回転する時に、所定のタイミングシーケンスで前記試料収集容器内に内容物を分配する様に前記試薬袋を作動させるよう構成された空間的に配向された機械要素を備える1つ以上の回転作動要素を備えた試料処理ユニット。
【請求項33】
前記回転作動要素は、回転運動を提供する為の機構を備えた請求項32に記載の試料処理ユニット。
【請求項34】
前記回転運動を提供する為の前記機構は、巻取スプリングである請求項33に記載の試料処理ユニット。
【請求項35】
前記回転作動要素は、ユーザの指によって手動で作動する様に構成された請求項32に記載の試料処理ユニット。
【請求項36】
前記回転作動要素は、前記試薬パレット上の前記試薬袋と干渉してそれらを作動させ、それらの内容物を所定のシーケンスで分配する、1つ以上の空間的に配向された機械要素を含む回転シャフトを備えた請求項32に記載の試料処理ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2016年12月1日に提出の米国仮特許出願第62/428,976号に対する優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は複雑な試料処理の為の自動ポイント・オブ・ケア装置及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポイント・オブ・ケア(POC)装置により、患者ケアの現場で便利かつ迅速な試験が可能となる。従って、マイクロ流体工学技術を統合するPOC装置のタイプである、サンプル・ツー・アンサ及びラボ・オン・チップ(LOC)システムは、益々人気が高まってきている。これらのLOCは、手動及び/又はオフサイトで以前に行われた抽出、増幅、検出、解釈、及び報告等の様々なラボ機能を、全て同一の装置上に統合する。サンプル・ツー・アンサ及びLOC試験は、患者のケアの現場で行われ、ラボ施設で行われるものではないので、これらのタイプの試験は、特に処理中の人的交流を含む工程において、汚染制御に関する問題を有していた。従って、人的交流を最小限にするサンプル・ツー・アンサLOC内の試料処理を自動化する必要性が存在する。これらのサンプル・ツー・アンサ及びLOCは、一般的に、サイズが数平方ミリメートルから数平方センチメートルまでであり、多くの場合、微小電気機械システム(MEMS)のタイプである。ここで、生物学的物質を検出し分析する事ができるMEMSは、一般的に、Bio-MEMSと呼ばれる。
【0004】
市場のほとんどのPOC診断装置は、臨床検査室改善修正(Clinical Laboratory Improvement Amendments)(CLIA)の下で、高度又は中程度の複雑度に分類される。これらの連邦ガイドラインは、一般的に、これらのガイドラインを免除する特定の条件を除いて、ヒトの臨床検査室試験装置に適用される。これらの条件の1つは、装置又は機器が、特定のリスク、エラー、及び複雑度の要件を満たす場合である。POC診断試験をCLIA免除と認定できる様にする為には、試料調製及び流体処理工程を最小限にする必要がある。これらの工程を最小限にする1つの方法は、解放可能なブリスタ又はバースト袋の様な密封された装置中に試薬を保存する事である。マイクロ流体チップへの試薬送達は、一般的に、シリンジポンプ又は蠕動ポンプ等のポンプ、及び、外部試薬を充填したボトル、シリンジ、又はリザーバの使用を含む。これらのシステムは、携帯する事が困難であるだけでなく、一体化されなければならない多数の部品及びマイクロ流体チップへの漏れの無い流体界面が必要である為、複雑である。流体取り扱いを、簡単に、小型化して、かつ低電力で自動化できる様にする方法は、市場の最新技術では未だうまく実行に移せていない。従って、これは、大規模な臨床施設で依然として実施されている多段階生物学的検定試験の大多数において、POCの実施を妨げる障害として見なされてきた。
【0005】
複数の処理工程を必要とする複雑な生物学的検定は、これらに限定されないが、ピペッティング、加熱、冷却、混合、洗浄、培養、ラベリング、結合及び溶出を含むが、これらは、サンプル・ツー・アンサ・シーケンスを実行する為の高価な検査室自動化装置に依存する。サンプル・ツー・アンサ・シーケンスを自動化する為の低コストで、低電力で、小型化された機器編成は未だ実現されておらず、従って、サンプル・ツー・アンサ・シーケンスを実行する為のポイント・オブ・ケアマイクロ流体装置は、マイクロ流体装置上で分析を実行する為の独立型卓上又は可搬式装置の形態をとる追加の機器編成に依存する。マイクロ流体カートリッジ上の試料処理工程を自動化する事ができる別個の機器編成を実施する事は、試験当たりのコスト、従って、カートリッジのコストを低く保つ為の方法として考えられてきた。ポイント・オブ・ケア用途の為に開発されたシステムは、試料処理シーケンスを自動化する為に、ソレノイドプランジャ、リニアアクチュエータ、マイクロコントローラ、及び電子回路を備えた可搬式卓上装置の形態をとる事ができる。この機器編成は、試料処理シーケンスをユーザ制御するものであるが、実行する為には制御された環境及びかなりの量の電力を必要とする。これらのポイント・オブ・ケアシステムは、機器を実行する為のインフラストラクチャが存在しない低資源環境、或いは、素人が、試験の為に高価な機器を購入する必要性がない、又は購入する事ができない、又は試験を伴う機器を操作する様に訓練されていない様な、家庭や、病院以外の環境では実現可能ではない。従って、マイクロ流体装置上に直接集積する事ができ、自動化されたサンプル・ツー・アンサ・シーケンスを実行する事ができる、低電力、独立型、安価、及び使い捨ての機器編成を可能にする為の開発方法は、サンプル・ツー・アンサから複雑な多段階核酸、タンパク質、及び免疫学的測定法を実行する事ができる単一使用試験装置を開発する為の障害であると見做されている。
【0006】
これらを実行する為の機器編成を必要としない使い捨て試験は、単純な単一工程分析及び多段階分析に限定される。単純な単一工程分析では、試料は唯一の液体であり、試薬は使用されない。これらの試験は、典型的には、尿検査ストリップ及び妊娠検査の様なディップスティック試験を含む。多段階分析は、使用者が、説明書に従ってそして試薬を使い捨て試験カートリッジの異なる領域に分注する事ができる試薬バイアル及び指示セットを含むキットの形態で販売される。これらの装置は、典型的には、試料調製工程を必要としない免疫学的測定法を実行する。これらの装置の幾つかの例は、チェンビオ・ダイアグノスティック・システム社(Chembio Diagnostic Systems Inc.)のDPP(登録商標)HIV 1/2 Assay、SURE CHECK(登録商標)HIV 1/2、HIV 1/2 STAT-PAK(登録商標)、及びHIV 1/2 STAT-PAK(登録商標)ディップスティック試験を含むが、これらに限定されない。これらの試験は、ユーザに依存して、一連の工程を手動で実行してシーケンスを完了する。ユーザにスキルが足りず、又は試験が指示通り実行されない場合、試験が不正確に行われる危険性があり、従って、試験が実行される方法によっては、結果が変化する事がある。更に、試薬が装置の内部に完全に含まれていない場合には、更に汚染の危険性がある。適切な検査室プロトコル、手袋及び機器(例えば、含有された生物安全設備等のドラフト及び検査室インフラ)を用いないで取り扱うと有害な幾つかの強い試薬は、封鎖された施設内で熟練技術者によって試験が行われない限り、これらのキット試験では実施する事ができない。
【0007】
試験が単純ではなく自動化されている場合には、専門外の者達では、試験の実行が不正確になる。試験の複雑度は2又は3工程を超えて増加するので、これらの手動キットベースの試験は実用性に欠ける。核酸増幅分析(例えば、ループ介在増幅カチオン等の等温分析)の進歩により、これらの試験だけが単一温度(通常、60~70℃の間)で保持されさえすればいいので、熱サイクルの加熱/冷却の為の機器編成の負荷が減少される。しかしながら、これらの試験は、熟練したオペレータ又は追加の自動化機器編成を必要とするサンプル・ツー・アンサ・シーケンスを完了する為に、ユーザが開始すべき複数の工程を依然として必要とする。
【0008】
試料調製は、生物学的試料の処理を含む多くの診断分析に必須である。生物学的試料は、一般的に、分析で使用するのに適したものとなるまでに複数の複雑な処理工程を経なければならない。これらの工程は、目的の分析物を生試料から分離、濃縮、及び/又は精製する為、並びに所望の分析を妨害する可能性のある試料中の物質を除去する為に必要なものである。試料処理工程には、多くの場合、正確なシーケンス及び検査室設定等の厳密に制御された環境で実施する必要がある温度、試薬容量及び培養時間についての正確な条件が含まれる。試料処理の為の従来の自動化システムは、非常に複雑で高価な機器編成及びそれらを操作する為の熟練した人員を必要とする。これらのシステムは、しばしば集中化された検査室内に置かれるので、未処理の試料を、処理の為に、異なる場所で、適切に保存し、検査室に転送しなければならない事もしばしばである。これらの要因には、高いコスト、結果の遅延、並びに輸送及び不適切な保管による試料の完全性の低下を含む幾つかの制限が伴う。
【0009】
2016年7月25日に出願された特許文献1は、線形又は回転運動を用いた磁気及び機械作動素子を含む試料処理装置及びその使用方法に関するものである。2016年7月25日に出願された特許文献2は、試料抽出装置及びその使用方法に関するものである。これらの出願の両方の全内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許出願PCT/US16/43911号
【特許文献2】国際特許出願PCT/US16/43855号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、複数の試料調製及び分析工程を通して生物学的試料を単純に、低電力で、自動化処理する為の方法及び装置を提供する。記載された方法及び装置により、装置の無い、非検査室環境における複雑な診断分析のポイント・オブ・ケアの実施が容易となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、試料抽出装置及びその使用方法の様々な実施形態が開示される。
【0013】
本発明によれば、サンプル・ツー・アンサ型マイクロ流体装置、マイクロ流体装置上の核酸増幅試験(NAAT)等の様な、自動分析を実施する為の分析自動化装置及び方法が開示される。本発明は、サンプル・ツー・アンサ型NAATを実行する為に予め定義された順序で分配される、液体及び乾燥した形態で保存された試薬を収容する、可搬式分析自動化装置及びマイクロ流体カートリッジを含む。
【0014】
本開示は又、試料を試料収集装置(例えば、スワブ等)から流体装置上の媒体又はバッファへの移行、並びに試料の流体装置上の媒体又はバッファへの一体化の際の試料溶出効率を最大にする為の試料処理装置及び関連する処理方法の様々な実施形態を含む。
【0015】
本明細書で開示される主題によって全体的に又は部分的に言及される、本明細書で開示される主題のある態様は、以下に最も詳しく記載される添付の実施例及び図面と関連して説明を進める事により、その他の態様は明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本開示の主題を一般的な用語で説明してきたが、ここでは、添付の図面を参照する。但し図面は必ずしも縮尺通りに描かれていない。
【
図1A】例示的な充填された試薬袋の断面図である。
【
図1B】作動前にRDUを示す、一体化された試薬分注ユニット(RDU)を有する例示的なマイクロ流体装置の断面図である。
【
図1C】作動後にRDUを示す、一体化された試薬分注ユニット(RDU)を有する例示的なマイクロ流体装置の断面図である。
【
図2A】作動前のプランジャ及びロック機構を含む、一体化RDUを有する例示的なマイクロ流体装置の断面図である。
【
図2B】作動後のプランジャ及びロック機構を含む、一体化RDUを有する例示的なマイクロ流体装置の断面図である。
【
図3A】核酸増幅試験(NAAT)を実施する為の例示的なサンプル・ツー・アンサマイクロ流体カートリッジの斜視図である。
【
図3B】上部アクチュエータ要素と底部アクチュエータ要素との間を回転するマイクロ流体カートリッジを含む、概略的なマイクロ流体装置の分解図である。
【
図4A】RDUを作動させた後の、アクチュエータ要素に対するマイクロ流体カートリッジの位置を示すマイクロ流体装置の概略上面図である。
【
図4B】磁気ビーズをベースとする試料調製段階前のマイクロ流体カートリッジ位置を示すマイクロ流体装置の概略上面図である。
【
図4C】ビーズが増幅ウェル中に輸送された、磁気ビーズをベースとする試料調製の終了時におけるマイクロ流体カートリッジ位置を示すマイクロ流体装置の上面図である。
【
図5C】回転位置制御による迅速な熱サイクルを容易にする為に、底部アクチュエータ要素上の3つの別個の加熱素子上の増幅ウェルを示し、異なる温度ゾーンT1、T2及びT3を有するマイクロ流体装置の概略上面図である。
【
図6】検出の為に側方流動片による増幅された生成物の吸い上げを容易にする為に、上部作動要素による鋭利な物体の作動前の瞬間におけるマイクロ流体カートリッジ位置を示すマイクロ流体装置の上面図である。
【
図7A】スワブに取り付けられた未処理試料を抽出し、処理する為の例示的な試料抽出装置の概略図であり、アセンブリ内の異なる部分を示す。
【
図7B】スワブに取り付けられた未処理試料を処理する為の組み立てられた試料抽出装置であり、スワブからの試料溶出を最大にする為にスワブヘッドの機械的洗浄及び圧搾を容易にする為に、洗浄インサート内で回転するスワブを示す。
【
図8】スワブに付着した未処理試料を回収する為の例示的な試料処理プロトコルを、マイクロ流体カートリッジに移す前にスワブから溶出を処理する段階的なシーケンスを示す図である。
【
図9B】回転アクチュエータ要素を有する例示的な試料処理ユニットの説明図であり、斜視図及び分解図を示す。
【
図10C】回転アクチュエータ要素が試料処理ユニット内の試薬パレットに対して回転する時の動作シーケンスの例を示す。
【
図11】回転シャフトベースの試料処理ユニットの分解概略図を示す。
【
図13】作動力の印加前及び後の移動試薬袋及び流通試薬袋を含む試薬カードを含む例示的なマイクロ流体装置の断面概略図である。
【
図14B】作動力の適用前(
図14A)及び作動力の適用後(
図14B)の油/非混和性相分注システムを示す例示的なマイクロ流体装置の断面図である。
【
図15】側方誘導ベース読み出しを有する核酸増幅試験(NAAT)用の例示的なサンプル・ツー・アンサ型マイクロ流体装置の上面図及び斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の主題は、ここで、添付の図面を参照して、以下により詳しく説明するが、これら図面には、開示された主題の一部を示すもので全ての実施形態は示されていない。同様の数字は、全体を通して同様の要素を指す。本開示の主題は、多くの異なる形態で実施されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用法的要件を満たす様に提供されるものである。実際、本明細書で開示される主題の多くの修正及び他の実施形態は、上述の説明及び関連する図面に提示された教示の利益を有する、現在開示されている主題が関連する当業者には想起されるであろう。従って、本開示の主題は、開示された特定の実施形態に限定されるべきではなく、修正及び他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれる様に意図される事が理解されるべきである。
【0018】
複雑な試料処理の為の自動化されたポイント・オブ・ケア装置及びその使用方法
本発明は、試料調製のための装置、分析、および方法、統合されたサンプル・トウ・アンサ型マイクロ流体装置における核酸増幅及び検出に関する。この分析は、単純な設計であり、最小限の実施時間及び装置要件でエンドユーザが実行できる。典型的な手動試料調製プロトコルは、複数のピペッティング/流体移動及びビーズ捕獲/再懸濁工程を含み、結合、洗浄及び溶出サイクルを実施して最終容量の溶離液中の最終生成物として精製されたDNAを得る。
【0019】
試薬袋、流体導管/チャネル内に保持される容積であるデッドボリュームは、カートリッジ上で実施される分析の再現性及び信頼性を大きく妨害する場合がある。特に、首尾よく行う為の高いピペッティング精度に依存する分析工程、例えば、システムの容積のわずかな変化でさえ試薬の濃度や分析の性能に大きく影響を及ぼす増幅工程及び、正確なpH制御が必要な工程では、正確な体積の試薬を所望の反応チャンバに送達する事ができる計量システムを有する事が必須である。液体試薬を計量する為に、固定容積容量を有する反応チャンバを含み、チャンバに送達される任意の余分な試薬がオーバーフローして廃棄する様に構成する事も可能であるが、このタイプのシステムは、マイクロ流体装置上の試薬分配精度を制御する為の計量チャンバを精密に成形する必要がある。加えて、計量チャンバを使用するシステムは、流体分配の信頼性に影響を与える可能性のあるシステム内の気泡の影響をより受けやすくなる可能性がある。その様な追加の脱泡機構として、マイクロ流体カートリッジ及び機器の複雑度を追加するポンプ及び弁を必要とする事がある。
【0020】
本開示は、マイクロ流体導管に保持され、試薬袋内に保存されたデッドボリュームに関連する問題を克服する試薬分注ユニット(RDU)について説明する。このシステムは、マイクロ流体カートリッジベースの分析を正確に実施する為に必要な全ての水性試薬を効率的に送達する事により、正確な容積の水性試薬を計量する為の精巧な計量システムの必要が排除される。
【0021】
試薬分注ユニットは、別個の袋内に、又は単一の袋内に一緒に包装された混和性及び非混和性の液体試薬と、袋上で押圧して袋上のフランジブルシール層を破裂させて、十分な作動力が加えられるとそれらの内容物を押し出す為の1以上のプランジャとを含む、1つ以上の試薬袋を備える。幾つかの実施形態では、RDUは、十分な作動力がそれに加えられると、RDU上のフランジブルシールを破裂させる事ができる鋭利な物体又は突起を含んでいてもよい。鋭利な物体又は突起を、袋内に、又はRDUのフランジブルシールに近接して設け、作動力が加えられると、鋭利な物体がフランジブルシールと接触してそれを破裂させる様にしてもよい。
【0022】
図1を参照すると、充填された試薬袋(1A)、作動前のRDU(1B)、及び作動後のRDU(1C)を示す、一体化された試薬分注ユニット(RDU)101を有する例示的なマイクロ流体装置の断面図が示されている。
【0023】
RDU内の試薬袋(
図1A)は、単一試薬袋内の水性試薬103及び非水性非混和性試薬102を含み、これらは、作動時に破壊される事によりマイクロ流体装置への試薬送達を可能にできるフランジブルシール層104で密封される。
図1Bは、マイクロ流体装置108上に組み立てられたRDUを示す。RDUは、充填された試薬袋と、試薬袋を搾り出す為、そしてマイクロ流体装置上に組み立てられたフランジブルシール層104を破裂させる為に使用される鋭利な物体105を作動させるプランジャ要素106とを含む。RDUは、フランジブルシール104がマイクロ流体装置上の流体試薬ウェル109の中への入口導管107の界面に存在する様に、マイクロ流体装置108に組み込まれる。マイクロ流体装置は、試薬ウェル109からオーバーフローする余分な非混和性試薬102の収集を助ける1つ以上の試薬ウェル109及び廃棄物ウェル110を含む。
【0024】
非混和性試薬は、装置が作動している時に、水性試薬が、フランジブルシールと流体ウェルの入口導管との間の界面に最も近づく様に選択される。幾つかの実施形態では、鉱油等の水性試薬よりも密度の低い非混和性流体をシステムで使用して、それらを、浮遊させ、水性試薬の上部に非混和性層を形成してもよい。他の実施形態では、水性試薬よりも密度の高い非混和性流体、例えばフッ素含有化合物、例えばフロリナート(3M)等のフルオロカーボンを使用して、より低密度の水性試薬が非混和性フロリナート流体の上部に浮遊する様にしてもよい。非混和性の非水性流体は、装置がその作動位置に置かれた場合に、水性試薬が、フランジブルシールと流体ウェルの入口導管との間の界面に最も近くなる様に選択される。
【0025】
図1Cは、マイクロ流体装置108上に組み立てられた作動されたRDUを示す。作動力が装置に加えられると、一体化されたプランジャは、試薬袋を圧搾してフランジブルシール104を破裂させ、入口流体導管107を通して試薬ウェル109と流体接続する。
図1Cを参照すると、入口流体導管107に最も近い水性流体103は、最初に入口導管から流れて流体ウェル内へと流れ、続いて、非水混和性流体102が流体導管及びRDU内のデッドボリューム空間を占有するであろう全ての水性試薬を効果的に押し出す様に機能する。余分な非混和性の非水性流体102は、試薬ウェルからオーバーフローし、廃棄物ウェル110で収集される。このシステムを使用して、非反応性の非混和性の非水性流体で空間を充填する事によってデッドボリュームの問題を排除しながら、マイクロ流体装置上に正確な量の水性試薬を効果的に送達する事ができる。非水混和性流体102は又、流体ウェル内の水性流体の上部にバリアを形成し、熱サイクル又は熱培養の様な加熱工程中の水性試薬の蒸発を防止する様に動作する。この様なタイプのシステムは、適切な動作の為に複雑なバルブ又はポンプを使用する必要は無いので、システムの複雑度が大幅に減少する。加えて、正確な容積を計量する為の反応チャンバの容積にはシステムが依存しないので、試薬の正確な体積を計量する為に典型的に必要とされる反応チャンバの精密な成形は、必要とされない。むしろ、非混和性の非水性流体と共に周知の精密ピペッティング処理を使用してRDUに予め充填される水性試薬は、水性試薬を完全に押し出し、水性試薬で満たされる全てのデッドスペースを占有する非水混和性流体が存在する為、作動時に所望の流体ウェルに完全に送達される。システムに分配される非混和性試薬の量は、重要ではなく、正確な送達を必要としない。従って、システムのこのタイプの主たる利点は、単一用量試薬パックからの水性試薬送達によるラン・ツー・ランの再現性を保証する為に機器上で精密な作動制御を必要としない事であり、その理由は、一旦全ての水性試薬が装置に充填されると、非混和性の非水性流体がオーバーフローし、水性試薬を押し出して全てのデッドスペースを占有する事で所望の流体ウェルに確実に送達させ、作動中に全ての水性試薬をRDUから押し出してマイクロ流体システムに確かに送達させる事ができるからである。
【0026】
幾つかの実施形態では、RDUは、試薬袋内への試薬の逆流を防止する為に、プランジャ要素をその押下位置にロックする様に機能するロック機構を含んでいてもよい。このロック機構は、ボールロックピン、リベット、バーブピン等のピン捕獲機構に限定されるものではない。
【0027】
図2A及び2Bを参照すると、夫々、作動前及び作動後のプランジャ及びロック機構201を含む、一体化されたRDUを備えた例示的なマイクロ流体装置の断面図が示される。プランジャ要素202は、試薬袋204に近接して組み立てられる。プランジャ要素は、ロック孔208内に捕捉されて作動力の印加時に袋を押圧しやすくする方向へのプランジャの動きを制限する様に配向されたかかり付きピン203で固定された状態で固定される。この例示的な実施形態では、捕捉されたかかり付きピン203は、マイクロ流体装置上に配置されたロック孔208に沿って下方向にのみ移動する事ができる。試薬袋は、
図2Bに示す様に、プランジャに十分な作動力が加えられた時に破壊されたフランジブルシール層205を含む。作動すると、フランジブルシール205は破壊され、試薬袋204の内容物は、マイクロ流体装置上の入口流体導管206を通して流体ウェル207に移される。かかり付きピン203は、試薬袋の中へ試薬が逆流する事を防止する為に、ロック孔208内に下降し、プランジャをその押下位置にロックする。
【0028】
本発明の一態様は、一次チャネルを介して互いに接続された2個以上の流体ウェルを含むマイクロ流体装置である。流体ウェルは、フランジブルシールによって流体ウェル内へと入口から分離される保存された液体試薬を含む1つ以上の試薬分注ユニット(RDU)に接続される。試薬袋を、水性流体、非水混和性流体、又はそれらの組合せで充填してもよい。作動すると、フランジブルシールは破壊され、試薬分注ユニットの内容物は流体ウェルに移される。RDU作動シーケンスの最後に、保存された試薬は、マイクロ流体装置上の流体ウェルに首尾よく移される。流体ウェルは、その夫々の水性試薬で充填され、非水性流体で満たされた一次チャネルを介して互いに接続される。
【0029】
ケア環境の為には、自給式システムは、複雑なユーザ駆動のピペッティング又は注入工程を必要としない為、有利である。1つの例示的な実施形態では、試薬は、試薬袋内の流体装置上に保存してもよい。袋試薬には、バッファ、塩、酸、塩基、標識、タグ、マーカー、水、アルコール、溶媒、ワックス、油、ガス、ゲル等が含まれるが、これらに限定されない。十分な圧力が袋に加えられると、袋は破裂し、それによって、袋の内容物を、意図された反応を十分に導く流体導管内に分注する。袋は流体導管の入口と整列されたフランジブルシールを有する様に設計され、袋が破裂すると、その内容物が流体導管に強制的に入り、流体ウェルを充填する。
【0030】
各流体ウェル容積は、混和性液体試薬を部分的に充填する事ができる様にのみ設計されているので、各流体ウェルの混和性の液体がオーバーフローして各流体ウェルの上部流体導管を介して互いに混ざり合う事がない。鉱油の様な非混和性液体を含有する試薬袋は、作動時に、一次流体導管に接続される。1)非混和性液体を含む試薬袋の内容物は放出され、流体ウェル内に充填された水性試薬上に非混和性油相を形成する。2)流体ウェル中の全ての混和性液体は、流体回路を形成する為にシーケンス処理に接続されるが、互いに混合する事を避ける為に油相によって互いに分離される。一次流体導管は、廃棄物ウェル内に出て余剰の油を収集する。
【0031】
油相によって分離されたバッファで流体ウェルを予備充填し、後の使用の為にカートリッジを密封して保存する事は可能であるが、酵素、オリゴ、dNTP及びバッファに限定されない幾つかの試薬は、室温又は長期間に亘って、それらの液体形態で安定ではなく、従って、使用前に凍結乾燥された形態且つ水和されて保存される必要がある。更に、試料をこの様な充填済みシステムに導入する事の課題が存在する。開示された発明は、マイクロ流体装置上の試料処理の為の試料導入、試薬送達及び分析自動化に関連する課題を解決する方法及び装置を提供する。
【0032】
次に、
図3Aを参照すると、核酸増幅試験(NAAT)を実施する為の例示的なサンプル・ツー・アンサマイクロ流体カートリッジ301の斜視図が示されている。
【0033】
サンプル・ツー・アンサ型マイクロ流体カートリッジは、一次流体チャネル305を介して互いに接続された1つ以上の試薬ウェル309を備える。マイクロ流体カートリッジに組み立てられるRDUは、フランジブルシールによってマイクロ流体カートリッジ上の流体ウェル309へ入口導管から分離された複数の試薬袋302と、作動後にプランジャをその押下位置にロックするロックピン304を備えた一体化されたプランジャ要素303とを備え、試薬袋内への試薬の逆流を防止する。この実施形態では、プランジャ要素303は、全ての試薬袋と同じ瞬間で接触する様に設計され、単一の作動工程から平行に、全ての個々の試薬を、試薬袋から押下して放出する。他の実施形態では、プランジャ要素は、プランジャが押下されるとマイクロ流体カートリッジへ連続的に試薬を送達し易くするため、好ましいシーケンス処理で所望の試薬袋と接触する様に、様々な深さを有する空間的に配向された突起を備えていてもよい。RDUを作動させると、試薬ウェルは水性試薬で満たされ、試薬ウェル間の流体回路は、非水混和性流体で満たされた一次流体チャネルを通して完成する。カートリッジは、一次流体チャネル305を通して試薬ウェル309からオーバーフローする余分な非混和性試薬を捕捉する廃棄物ウェル306を含む。NAATを実施する為に、試薬袋は、溶解バッファ、結合バッファ、磁気ビーズ、洗浄バッファ、水和バッファ、及び非混和性流体(例えば、鉱油、ワックス又はフルオロカーボンをベースとする化合物、例えば、フロリナート等)を含んでもよい。
【0034】
試薬及び試薬送達シーケンスは、マイクロ流体装置上で自動化されている分析のタイプによって異なる様に設計してもよい。カートリッジは又、試料又は分配されたバッファのいずれかによって使用中に水和され得る乾燥された試薬及び凍結乾燥された試薬を含んでもよい。カートリッジは、処理する為に試料をカートリッジに移送する試料入口ポートを含む。試料入口ポートは、試料をカートリッジ内に注入する事ができるルア311の様なクイック接続フィッティングを含んでいてもよい。他の実施形態は、試料をカートリッジ内にピペットで入れる事ができるアクセスポートを含んでいてもよい。
【0035】
幾つかの実施形態では、カートリッジは、入口ポートとカートリッジとの間の界面に1以上のフィルタ膜310を含み、試料からの不純物及び阻害物質は、カートリッジへの試料送達の前に濾過除去される。フィルタ膜材料及び孔の寸法は、実施される分析のタイプに応じて選択する事ができ、ニトロセルロース、ナイロン、PTFE、PES、ガラス繊維、PVDF、MCE、ポリカーボネート等に限定されるものではない。使用される検出方法のタイプに依存して、カートリッジは、DNAハイブリダイゼーションマイクロアレイ、タンパク質アレイ、側方流動片等の更なる下流分析ユニットを含んでもよい。
【0036】
幾つかの実施形態では、蛍光、電気化学的又は比色ベースの検出技術を利用して、増幅産物を検出してもよい。
図3に示される例示的なマイクロ流体カートリッジでは、光学読み出しを通してデジタル的に、又はエンドユーザによって視覚的に読み取る事ができる側方流動片308を使用する比色検出を採用している。側方流動片は、鋭利な物体307を含む袋と連結するフランジブルシール層によって増幅ウェルから分離され、これにより、作動時にフランジブルシールを破裂させて、増幅された生成物を側方流動片308に送達して検出する。幾つかの実施形態では、増幅ウェル自体は、フランジブル層を含み、作動時に変形され易くする事により、フランジブルシール層が破壊されて増幅された生成物が側方流動片上に圧搾される様にしてもよい。
【0037】
次に、
図3Bを参照すると、上部アクチュエータ要素318と底部アクチュエータ要素313との間を回転するマイクロ流体カートリッジ301を含む概略的なマイクロ流体装置の分解図が示されている。
【0038】
上部アクチュエータ要素及び底部アクチュエータ要素に、夫々、空間的に配向された磁石317及び312を設ける事により、マイクロ流体カートリッジをアクチュエータ要素間で回転させる事を含む単一の作動工程で、空間的に配向された磁石が、磁気ビーズを捕獲し、再懸濁し、そして異なる試薬ウェル間の磁気ビーズを輸送して、試料調製シーケンス(例えば、試料上の結合、洗浄、溶出シーケンス等)を、マイクロ流体カートリッジに移す。
図3Bに示される例示的な実施形態では、上部アクチュエータ要素は、分析シーケンスにおいて、予め定められた時間でマイクロ流体カートリッジと接触してその上の袋307内の鋭利な物体を作動させる様に設計された突起316を備え、フランジブルシール層を破裂させて増幅された生成物を側方流動片308に導入する。底部アクチュエータ要素は、核酸の等温又はPCRベースの増幅に各々必要な安定した単一温度熱又は熱サイクルを提供する助けとなる空間的に配向された加熱素子314を1つ以上含む。空間的に配向された加熱素子314は、システム上で実施されている分析によって、試料調製工程、又は下流の増幅後の工程の為に熱を提供するのを助ける事もできる。熱サイクルが行われる場合、マイクロ流体カートリッジは、増幅ウェルが所望のサイクル時間の間に所望の加熱素子に接触又は近接する様に、一定の単一温度に設定された3つのヒータ素子間で周期的に回転する。
【0039】
サンプル・ツー・アンサ型NAAT
本明細書では、例示的なサンプル・ツー・アンサ型NAATは、サーボモータ又はステッパモータ、巻取スプリング、ハンドクランク又はユーザの指による作動等の回転運動を提供する単一のアクチュエータを使用するマイクロ流体分析自動化プラットフォームについて説明する。巻取スプリング機構は、低資源環境における用途に特に有利な、電気/電池電力を使用しないで、分析を自動化する機能を提供する。しかしながら、サーボモータやステッパモータ等のモータは、安価であり、システムの動作を制御しやすい。システムは、分析及び分析操作シーケンスのタイプによって、異なる方法及び工程を組み込む様に構成してもよい。
【0040】
電荷スイッチ(Chargeswitch)(登録商標)技術、インビトロゲン(Invitrogen)は、核酸を精製する為の極めて単純かつ効果的な方法である。これは、磁性ビーズ若しくは非磁性ビーズ、膜又はプラスチックチューブ及びプレートの様な固相支持体に共有結合する事ができる独特のイオン化可能なコーティングを使用する。イオン化可能なコーティングの電荷は、周囲のバッファのpHを変化させる事によって切り替え可能である。低いpHでは、表面は正に帯電し、負に帯電した核酸が固相支持体に結合する事を可能にする一方で、タンパク質及び他の汚染物質は容易に洗い流す事ができる。より高いpHでは、表面の電荷は中和され、そして核酸は、時間を消費する沈殿工程を必要とする事なく、表面から溶出される。独特の利点は、電荷スイッチ技術が水性バッファを使用し、増幅の様な下流への適用を阻害する事ができるエタノール、カオトロピック塩又は有機溶媒の使用を必要としない事である。
【0041】
磁気ビーズは、核酸抽出及び精製の為の非常に効果的かつ単純な固相捕獲支持体である。磁気ビーズベースのDNA精製は、遠心分離に依存せず、容易に自動化する事ができ、実践時間を短縮する事ができる。これらは、迅速な精製が必要な時に選択される方法であり、半自動又は完全自動システムを考える場合、磁気DNA精製は、遠心分離依存性単離技術における明らかな改善である。これらのシステムは、多くの試料を迅速に精製する必要がある場合に使用される。イオン化可能な(切換可能な)コーティングで被覆された磁気ビーズを使用して、未処理の生物学的試料から核酸を迅速かつ効率的に精製する事ができる。本明細書では、単一の回転運動で、磁気ビーズを、油充填された一次流体導管を介して一連の試薬充填チャンバを通して捕獲、再懸濁、及び移送する事を可能にする独特の分析自動化プラットフォームが記載されている。このプラットフォームを使用して、2分のシーケンスで未処理の生物学的試料から核酸を抽出及び精製してもよい。
【0042】
マイクロ流体カートリッジは、結合バッファ、懸濁液中の磁気ビーズ、洗浄バッファ、水和バッファ及びオーバーレイとしての非水性鉱油、並びに輸送流体の様な水性試薬を含む試薬袋を含む。マイクロ流体カートリッジは又、夫々の試薬ウェル中に存在する乾燥された溶解バッファ試薬及び凍結乾燥増幅混合物を含む。試験が実行される準備ができた時、以下の工程が実行される。
1.未処理の生物学的試料をピペットで取り出し、試料入口ポートを通してカートリッジに滴下するか、又は注入する。
2.カートリッジは、アクチュエータ要素、モータ、電子機器及びディスプレイを具備する手持ち式機器に挿入する。
3.機器の蓋を閉じ、試験を開始する。
【0043】
システム動作
システムは、分析の種類、試料に必要な生物学的試料及び試料処理工程、並びに分析操作シーケンスに応じて、異なる方法及び工程を組み込む様に構成してもよい。例示として、泌尿生殖器スワブ又は口腔スワブの様なスワブ試料にNAATを実行する為の操作シーケンスを説明する。スワブは、採取されたスワブ試料から細胞を抽出する為にバッファ中で発現される。次いで、試料を、マイクロ流体カートリッジに移し、そこで、溶解/結合ウェル402中に存在する乾燥した溶解バッファ試薬を水和する。未処理の試料中の細胞を溶解する。次いで、機器の蓋を閉じる。この実施形態では、蓋を閉じる事により、プランジャ303を押下する作動力と、保存された試薬袋からの試薬とが、夫々のウェル内に分配される。操作が成功している時には、懸濁液及び結合バッファ中の磁気ビーズは、未処理の試料溶解物を含む溶解/結合ウェル中に分配され、洗浄バッファは、洗浄ウェル403中に分配され、水和バッファは、凍結乾燥増幅混合物を含む増幅ウェル404中に分配され、鉱油は、ウェル上に連続的なオーバーレイを形成して分配され、一次流体チャネル305を充填し、そして流体回路を完成する。カートリッジ上に存在する係止かえし付きピンは、プランジャ要素をマイクロ流体カートリッジ上にその押下位置に保持し、逆流を防止し、アクチュエータ要素間のマイクロ流体カートリッジの円滑な回転を妨げる事を防止する。
【0044】
図4Aを参照すると、RDUを作動させた後のマイクロ流体カートリッジ位置を示すマイクロ流体装置の上面図が示されている。試薬装填工程に続いて、マイクロ流体カートリッジは、
図4Bに示される様に、上部アクチュエータ要素及び底部アクチュエータ要素に近接して回転し始める。カートリッジが回転すると、上部アクチュエータ要素及び底部アクチュエータ要素上に存在する空間的に配向された磁石は、異なる試薬充填ウェルを通して磁気ビーズを捕獲し、再懸濁し、そして輸送する様に作用する。核酸は、ビーズを取り囲む溶液のpHを<pH6に変化させる結合バッファの存在下で磁気ビーズに結合する。磁気ビーズは、次に、上部アクチュエータ要素上の第1の永久磁石によって捕獲され、主チャネルを通って移動され、第1の洗浄ウェル内に輸送される。主チャネルは、磁場の影響下でビーズが自由に移動しないよう防止する障害物を含み、ビーズを所望のウェルに捕捉する。油相中の洗浄ウェルの上面に捕捉されたビーズは、底部アクチュエータ要素上の第2の永久磁石の影響を受け、これは、それらを油相から洗浄バッファ試薬の水相中に引き下げる。ビーズ上のこの牽引磁力は、第2のウェル中に存在する洗浄バッファ(pH7)中にそれらを効果的に再懸濁させる。マイクロ流体カートリッジが回転し続けると、ビーズ上のこの捕獲、輸送及び再懸濁のシーケンスが継続して起こり、試料中に存在するタンパク質及び阻害物質から核酸を効果的に精製する。溶出に対する結合からのシーケンス全体は、記載の分析自動化プラットフォームを使用して、2分で完了する事ができる。試料調製段階の最後に、ビーズは、水和された増幅混合物を含む増幅ウェル404中に輸送され、再懸濁される。増幅混合物のpHは-8.5であり、磁気ビーズ上の電荷を中和し、それによって、精製された核酸を全て増幅混合物中に直接溶出させる。
図4Cは、試料調製段階の最後におけるカートリッジ位置を示すマイクロ流体装置の概略上面図を示す。
【0045】
増幅段階中、カートリッジは、増幅ウェルがアクチュエータ要素上の空間的に配向された加熱素子314に近接している位置まで回転する。加熱素子は、核酸増幅に必要な熱エネルギーを提供する様に機能する。単一温度での培養を必要とする、等温増幅反応では、追加の加熱素子は利用されず、単一のヒータ素子は、増幅の為に熱エネルギーを送達する事ができる。必要な熱サイクルを含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む用途では、マイクロ流体カートリッジは、増幅ウェルが所望のサイクル時間の間に所望の加熱素子に接触又は近接する様に、一定の単一温度に設定された3つのヒータ素子間を周期的な方法で回転する。
【0046】
図5を参照すると、マイクロ流体装置(図示されていない上部アクチュエータ要素)の概略上面図は、
図5Aの温度Tl、
図5BのT2、及び
図5CのT3に設定されたヒータ素子の上に配置された増幅ウェル404に示される。これは、迅速な熱サイクルを有するサンプル・ツー・アンサ型NAATが、アクチュエータ要素上の3つの固定された熱ゾーンを使用して、又、分析自動化シーケンス全体を実行する為にも使用される単一のモータを使用して正確なタイミングシーケンスでマイクロ流体カートリッジをスイッチング/作動する事によって、どの様に達成されるかを示す。モータは、3つの加熱ゾーン間を前後に回転し、それによって、変性、伸長及びアニーリングサイクルに対応する温度に設定された3つの加熱ゾーン間で増幅チャンバを循環させる。これは、予め定義された数のサイクルが完了するまで継続する。幾つかの実施形態では、3つの加熱素子のうちの2つの加熱素子のみを用いて、迅速な二つの温度PCRを実施する事ができる。幾つかの実施形態では、一体化された抵抗素子を有するカスタムアルミニウムブロックを含む加熱素子を、ヒートシンクとして使用して、容易に反応を所望の温度まで急冷する事ができる。幾つかの実施形態では、加熱素子は、システム上で行われている分析によって、試料準備工程又はマイクロアレイ上でのDNAハイブリダイゼーション等の下流の増幅後の工程における熱の提供を助ける事もできる。
【0047】
増幅段階に続いて、増幅された生成物の検出は、一体化された側方流動片上で比色的に実施される。側方流動片は、増幅された生成物を含む増幅ウェルからフランジブルシール層によって分離され、フランジブルシール層は、鋭利な物体307を含む袋と結合され、これにより、作動時にフランジブルシールを破裂させて、増幅された生成物を側方流動片308に送達し、検出する事ができる。幾つかの実施形態では、増幅ウェル自体は、フランジブル層を含み、作動時に変形されやすくする事により、フランジブルシール層が破壊されて、増幅された生成物が側方流動片上に圧搾される様にしてもよい。
【0048】
図6を参照すると、側方流動の検出工程の位置に到達する時点のマイクロ流体装置の上面図が示されている。Aは、フランジブルシール層を破裂させる為に鋭利な物体307を含む袋を接触させて変形させる突起316を示す拡大画像である。上部アクチュエータ要素は、その上に、マイクロ流体カートリッジが突起と接触する様に回転すると、鋭利な物体307を収容する袋を圧搾して変形させる、空間的に配向された突起316を有する。この変形力によりフランジブルシール層が破裂し、それによって、側方流動片を通して増幅された生成物を吸い上げる。
【0049】
試料収集及び抽出装置
スワブは、生物学的試料収集装置として主に使用される。コパン・フロックスワブ(COPAN FLOQSwabs)(商標)の様なスワブは、試料全体が迅速かつ完全な溶出の為に表面の近くに留まる様に操作されるが、物理的力は、試料の移送媒体又はバッファへの溶出を最大にする為に使用する必要がある。典型的には、輸送媒体中のスワブを激しく回転する事による手動撹拌、又はボルテックスを検査室で使用して、スワブから溶液への試料の溶出を最大にする。スワブを手動で発現させ、次いで試料を含む溶液をピペットで取り出し、分析のタイプに応じて更に処理する。
【0050】
ポイント・オブ・ケア(POC)及び低資源環境では、ボルテックス試料は、液体媒体中の試料を溶出させる為に便利な方法ではなく、手動で振盪又は撹拌する為、オペレータによってばらつきが起きる可能性がある。更に、スワブは吸収性であるので、溶液中の有限量の試料は、スワブ上に残る為、ロスとなる。分析物が非常に低い濃度で存在する場合、スワブから溶液中に溶出される分析物の量が不十分な為に感度を低下させる可能性がある。
【0051】
従って、オペレータによるばらつきを最小限にする事ができ、使用が簡単であり、電力を消費せず、かつ作動する渦巻き器や遠心機のような検査室装置に依存しない、試料抽出用の改良された装置及び方法が必要とされている。
【0052】
以下に開示される本発明は、スワブ試料からの試料回収を最大限とする為に検査室プロトコルを置き換える為の、ポイント・オブ・ケアで使用できる機構、装置及び方法である。開示された発明は又、ユーザが単純なユーザの手で作動される工程を用いて試料抽出装置内の試料に複数の試薬を直接的に送達するができる様になる。開示された発明により、検査室ベースの試料処理プロトコルを大幅に簡略化し、検査室ベースの試料処理プロトコルを実行する為に必要な洗練された装置の必要性を排除できる。
【0053】
図7A及び7Bを参照すると、スワブに取り付けられた未処理試料を抽出し、処理する為の例示的な試料抽出装置の概略図が示されている。試料抽出装置は、幾つかの実施形態では、試料収集容器705と、試料収集コンテナから取り外し可能な試料処理ユニット707とを備える。この例示的な実施形態における装置は、スワブ試料処理用であり、スワブシャフト703及び試料収集容器705に取り付けられたネジトップ蓋702を有するスワブ704を含む。容器は、スワブの蓋702と係合するねじ山706を含む。スワブが容器705内に挿入されると、スワブは、スワブヘッド704と接触する1つ以上の突起713を有する洗浄インサート715、716と接触し、蓋が閉じられ、スワブがインサート内で回転/回動する時に、ヘッドを洗浄する。この洗浄作用は、スワブヘッドに取り付けられた試料を解放する様に機能し、それによって、容器内に含まれるバッファ又は媒体714中にそれを溶出させる。幾つかの実施形態では、洗浄インサートは、複数の小さな剛毛713を有していてもよく、これらの剛毛は、空間的に挿入される時にスワブヘッドと接触する様に空間的に配向される。他の実施形態では、洗浄インサートは、インサート内のスワブヘッドを擦り取り、圧搾する様に機能可能な隆起部、Oリング等の機械要素716を有していてもよい。ねじ山の数は、スワブヘッド704が洗浄インサート内に形成されるターン又はフル回転の数を規定するものであり、スワブから試料を最大限回収する様に最適化できる。
【0054】
同様に、スワブタイプに対して機械的要素の種類及び設計を最適化して、最大限の試料を回収できる様にする事ができる。幾つかの実施形態では、容器は、望ましくない不純物、試料からの阻害物質を除去する様に選択された1つ以上のフィルタ膜712を含んでいてもよい。この容器は、取り外し可能な試料処理ユニット707に接続するルアーコネクタの様な迅速接続コネクタ711を備える。幾つかの実施形態では、取外し可能な試料処理ユニット707は、バレル及びプランジャ708及びプランジャチップ709を含むシリンジであってもよい。シリンジは、乾燥した液体カプセル又はペレット化された形態の保存された試薬を含有する事ができる1つ以上の溝付き凹部710を含んでいてもよい。保存された試薬を含有する溝付き凹部は、プランジャ先端709が引き抜かれる時に連続的に試料中に導入される様に空間的に配向されてもよい。幾つかの実施形態では、シリンジプランジャは、吸引され、繰り返し押されて、強制的な流れを使って試料収集容器内に存在する生物学的材料を解放する様にしてもよい。
【0055】
保存された試薬は、溶解バッファ、中和バッファ、結合バッファ、洗浄バッファ、pH制御バッファ、の様な凍結乾燥又は乾燥バッファ、磁気ビーズの様な固相捕獲支持体、酵素、抗体、アプタマー、抱合バッファ、金ナノ粒子、ラテックス粒子、磁性粒子等の様な機能化粒子、化学発光、又は比色検出試薬等に限定されない。
【0056】
次に、
図8を参照すると、マイクロ流体カートリッジに移す前に、スワブに取り付けられた未処理試料を回収する為の例示的な試料処理プロトコルを段階的に実行するシーケンスが示されている。
【0057】
工程1-スワブ試料を容器に挿入し、蓋を回転させて閉じる。
工程2-プランジャを引っ込め、これにより、溶出した試料を、シリンジバレルの溝付き窪み内に存在する乾燥した形態に保存された試薬に、容器から導入する。
工程3-シリンジを容器上のクイック接続具から取り外し、スワブを備えた容器を廃棄する。
工程4-シリンジを、マイクロ流体カートリッジ上のクイック接続試料入口ポートに接続し、プランジャを押下して試料をマイクロ流体カートリッジ内に移送する。
【0058】
例示的な実施形態では、容器705は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、Amies媒体等の適切なスワブ輸送媒体で事前に充填される。スワブを容器に挿入し、蓋を「n」回回転させて閉鎖する(ここで、nは、容器上のねじ山706によって決定される回転数である)。スワブが容器内に挿入されると、スワブは、容器内に存在する洗浄インサート上の突起及び機械的要素と接触し、スワブは、洗浄インサート内で回転する時、スワブヘッドが機械的要素によって洗浄され、圧搾され、スワブヘッドに取り付けられた試料を解放して、容器内に含まれる溶液/媒体中にそれを溶出する。次いで、取り付けられたシリンジ試料処理ユニット上のプランジャを引き抜く事により、容器からの試料は、フィルタ膜を通して濾過され、不純物及び阻害物質を除去し、下のシリンジバレル内に収集される。シリンジプランジャが引き抜かれると、試料は、連続的にバレル内に存在する、乾燥、液状、又はゲル状の、1種類以上の保存された試薬に導入される。
【0059】
NAATを実施する為の例示的な実施形態では、保存された乾燥試薬は、試料が、その中におよび保存された、試料処理ユニットのシリンジバレル内に存在する溶解物中に再懸濁される液体の態様の磁気ビーズに導入されると、水和されて活性化される乾燥溶解バッファのペレットを含む。或いは、試料処理ユニット中の保存された試薬は、試薬を乾燥させた溶解バッファ及び試薬を乾燥させた中和バッファを含み、試料中の細胞が最初に溶解され、次いで溶解物が第2の中和試薬への導入によって中和される様に順次試料に導入される様にしてもよい。
【0060】
そして、中和された試料は、やはり処理された内容物をマイクロ流体カートリッジに移す前に試料処理ユニットに保存された磁気ビーズを含む第3の溝付き凹部に連続的に導入してもよい。或いは、マイクロ流体カートリッジは、その中に存在する試薬ウェル中に予め装填された磁気ビーズを含み、中和された試料溶解物は、それがマイクロ流体カートリッジに移される時に、試料精製の為に磁気ビーズに導入される様にしてもよい。
【0061】
記載された試料抽出装置は、所定のシーケンスで試料に送達する必要がある複数の試薬に関わる複数の工程を含む任意の生物学的分析に使用して、試薬、工程は、実施されている分析に基づいて選択及び設計してもよい。
【0062】
本明細書に記載される例示的な試料収集容器及び付属試料処理ユニットは、試料をスワブに付着させ、下流処理の為に溶液に溶出される必要があるスワブ試料を処理する為のものであるが、容器は、非限定的ではあるが、例えば唾液、血液、血漿、血清、尿、痰、CSF、組織、糞便、植物、食物、土壌、小生物等の生物学的試料を含む、スワブ上に収集されない異なる試料タイプに適用させる事ができる。容器内で使用される保存されたバッファ/媒体及びフィルタのタイプは又、下流の分析並びに試料タイプに適用させる事もできる。
【0063】
例示的な実施形態では、試料収集容器を使用して、尿試料を収集し、処理してもよい。試料収集容器は、容器に導入された尿が試料収集容器中に存在する尿試料上で起こる細胞溶解を引き起こす時に、水和され、活性化できる、乾燥された形態での溶解バッファ試薬を含んでいてもよい。試料処理ユニットは、溶解物が試料処理ユニットに吸引されると中和される様に、乾燥した中和試薬を内部に含んでいてもよい。フィルタ712は、精製された核酸のみを通過させる阻害物質及びタンパク質を保持する様に選択してもよい。
【0064】
例示的な実施形態では、試料pHを9-13間の範囲に変化させるアルカリ溶解バッファを使用してもよい。次いで、pH9-13の試料を、孔の寸法0.45μm~0.8μmのニトロセルロース又は混合セルロースエステル(MCE)膜等の膜フィルタ712を通して、濾過する。試料の選択された孔の寸法及び高アルカリ性pHの為、試料中に存在するタンパク質及び阻害物質は、フィルタ膜に保持されるか、又はフィルタ膜に結合し、及び精製された核酸のみが、次の段階まで試料処理ユニット中へ通過し、そこで精製された溶解物は、その中に存在する中和試薬によって中和される。
【0065】
試料処理ユニット
図9A及び9Bを参照すると、例示的な試料処理ユニットの斜視図及び分解図が夫々示されている。試料処理ユニットは、試料収集容器902と、所定の正確なタイミングシーケンスで容器902内の試料への自動化された連続的な試薬送達を容易にする蓋アクチュエータ903とを含む。
図9Bは、連続的に試薬送達システムとしての蓋アクチュエータ903の機能構成要素を示す例示的な試料処理ユニットの概略分解図である。この例示的な実施形態では、蓋アクチュエータは、以下のものを含む。試薬パレット905を含む固有の試薬分注ユニットと、乾燥、液体又はゲル化された形態で保存された試薬を含む、1つ以上の試薬袋904と、1個以上の回転作動要素907であって、空間的に配向された機械要素906は、これらに限定されないが、回転アクチュエータ要素907が試薬パレット905に近接して回転する時に、正確なタイミングシーケンスで試料収集容器902内に内容物を分配する様に試薬袋904を作動させる様に機能する、突起、弁、隆起等を含む。幾つかの実施形態では、試薬は、試薬分注導管908から試料収集容器902内へと案内される。幾つかの実施形態では、試薬は、力又は重力の下で、試料収集容器の中に分注される。幾つかの実施形態では、試料処理ユニットは、巻取スプリング、モータ等の回転運動を提供する為の機構を含む。幾つかの実施態様において、試薬分注ユニットは、ユーザの指によって手動で作動されてもよい。
【0066】
例示的な実施形態では、巻取スプリングが使用される。巻取スプリング機構はよく知られており、機械式タイマー装置として一般に用いられている。よく知られた機械式スプリングタイマーはキッチンエッグタイマーである。これらの機構は完全に非コイル状になるまで定常回転運動を生成する。巻取スプリング機構は、使用されるばねと歯車機構を適切に選択する事によって、一定量の時間で完全に非コイル状になる様に設計する事ができる。逐次試薬送達は、アクチュエータを作動させて、正確なタイミングシーケンスで試薬をシステムに送達する巻取スプリング機構によって動力を供給する事ができる。本発明においては、回転作動要素は、回転作動要素の回転経路に沿った所定のインスタンスの試薬パレット上の試薬充填袋と干渉する空間的に配向された機械要素を含み、これにより、試薬袋を変形及び圧搾し、それによって所定の精密タイミングシーケンスに試薬を送達する。
【0067】
この試料処理ユニットは、ピペット又は点滴器を使用する手動試薬送達プロトコルを採用する典型的なキットと比較して利点を有する。何故なら、これは、単純で分注予備試薬送達機構を含む単一ユニットにパッケージされた試料処理の為に必要な全ての試薬を有する自給式システムであるからである。特に、CLIAwaived試験(ユーザが誤った結果を生成する危険性がなく単純かつ容易な試験)のみを実行する事ができる検査室のない環境では、この自給式試料処理ユニットは、複雑な時間のかかるピペッティング工程を除去し、熟練したオペレータが実行する事を必要としない単純かつ普遍的なツイスト、スライド又は回転運動を使用して試薬送達を可能にする事によって、ユーザ生成エラーによる誤った結果のリスクを低減し、又、ハンドオン時間を更に減少させる様に単一のモータ又は自己動力巻取スプリングアクチュエータを用いて自動化する事ができる。
【0068】
図10A、10B及び10Cを参照すると、試薬パレット905に対して回転する回転アクチュエータ要素907としての動作シーケンスにおけるインスタンスが示されている。
図10Aは、試薬送達が行われる前の回転アクチュエータ要素の位置を示す。
図10Bでは、回転アクチュエータ要素は、その上に存在する機械要素906が、その経路において第1の試薬袋と干渉し、それによって、それを変形させ、そして試薬分注導管908を通して試料収集容器内にその内容物を押し出す位置まで移動している。
図10Cでは、回転アクチュエータ要素は、機械要素906が第2試薬袋と干渉する経路に沿った位置に移動し、それを変形させ、第2試薬袋の内容物を試料収集容器内に押し込む。
【0069】
図9に記載された例示的な実施形態は、作動工程を実行する為の回転運動を利用する。しかしながら、他の実施形態は、例えば1つ以上の線形摺動アクチュエータ要素を使用して、同じタスクを達成する為に直線運動を利用する事ができる。作動要素は、試料処理装置又はマイクロ流体カートリッジの異なる空間寸法を連続的に干渉する事ができる様に、異なる空間寸法で配向されてもよい。
【0070】
図11を参照すると、回転シャフトベースの試料処理ユニットの分解概略図が示されている。本発明のこの独特な実施形態は、分析自動化の為の付加的な寸法の制御を提供する回転軸アクチュエータ要素1103を使用する。回転シャフトアクチュエータ要素は、試薬パレット1104上の試薬袋1105と干渉してそれらを作動させ、それらの内容物を所定のシーケンスで分配する、1つ以上の空間的に配向された機械要素1102を備える。
【0071】
幾つかの実施形態では、検出ユニットを、試料処理ユニット内に統合して、容器から検出ユニットへ移動する事なく内蔵システム内で直接分析物を容易に検出できる様にしてもよい。この検出ユニットは、分析物の存在又は非存在に依存して容器内で変色を生じさせる比色試薬を使用する視覚的なものであってもよいし、ディップスティック又は側方流動装置を使用する免疫クロマトグラフィー検出装置であってもよい。幾つかの実施形態では、側方流動装置は、試料収集容器の表面上、又は試料処理ユニットの蓋内に集積されてもよい。
【0072】
各試薬は、個々の試薬袋にパッケージされ、マイクロ流体カートリッジ上に組み立てられてもよいが、この方法では、各試薬袋を個々に組み立ててカートリッジに密封する事を必要とする、より複雑な組立プロセスになってしまう。幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジ上に単一ユニットとして組み立てる事ができる複数の試薬袋を含む試薬カードを作成する事が好ましい。
図12を参照すると、個々の試薬袋1202及び流通試薬袋1203を示す例示的な試薬カード1201の斜視図が示されている。試薬カードは、組立中にカートリッジ上の嵌合溝と容易に嵌合し、整合する形状で設計されてもよい。試薬カードは、手動で又は複数の自動ピペッターを使用してカスタムフィクスチャー内に充填して、フランジブルホイルシーリングの前に所望の流体体積を各試薬袋内に分配する事ができる。幾つかの実施形態では、試薬カードは、袋に加えて成形された特徴を備えて、試薬袋カードをマイクロ流体カートリッジに配置し、整列させるのを助けることができる。作動力が、個々に、連続的な様式で、又はカード上の複数の試薬袋と平行して、試薬袋に加えられると、底のフランジブルホイルシールは破裂し、試薬は流体チャネルを通って流体カートリッジ中の適切な反応チャンバ中に流れる事ができる様になる。作動力は、作動中に1つ以上の試薬袋と連続して接触する空間的に配向された突起部を備えたプランジャを介して試薬カードに分配される様にしてもよい。
【0073】
幾つかの実施形態では、試薬袋内に存在する1つ以上の試薬を互いに混合又は組み合わせる事が必要となる事もある。過去では、外部エネルギーが加えられて、流体を攪拌する能動式ミキサ、又は特別に設計された幾何学的形状及びチャネル構成の使用により混合する流体の接触面積及び接触時間が増える受動式ミキサを使用して、マイクロ流体装置に混合してきた。幾つかの実施形態では、2種以上の試薬を混合する事が必要となる場合もある。例えば、少なくとも1つの試薬が固体形態であるか、又は低粘度若しくは高粘度の液体媒体中に固体粒子を含んでいる、又は高粘度の液体若しくはゲルである必要がある場合もある。マイクロ流体カートリッジでは、固体試薬は、それらを直接反応チャンバ中で乾燥させる事によって保存される事も多く、その場合、それらは、使用中に、例えば、再構成バッファ又は分析中の未処理若しくは処理された液体試料であり得る液体試薬等で再構成されてもよい。これらの乾燥した試薬は、既知の体積の再構成液を用いて所望の濃度にされる。場合によっては、試薬を乾燥又は凍結乾燥し、それらをマイクロ流体装置の反応チャンバ内に直接保存する事が望ましい。例えば、核酸増幅試験(NAAT)用の凍結乾燥マスターミックスにより、低温保存が必要なくなり、マイクロ流体カートリッジを室温で保存する事ができる様になる。他の場合には、乾燥工程が、試薬に悪影響を及ぼして、その効力を低下させるか、又は永久的に破壊する事もある。例えば、サーモフィッシャー・サイエンティフィック(Thermofisher Scientific(カリフォルニア州カールスバッド)(Carlsbad CA))により供給される核酸試料調製用の電荷スイッチ磁気ビーズは、一旦乾燥されると機能性を失い、常に溶液中に保持しなければならなくなる。磁気ビーズによっては、乾燥した時に不可逆的に凝集し、非機能性になる、プロメガ(Promega)製のマガゾーブ(Magazorb)(登録商標)DNA抽出キットからのセルロースコーティングされた磁気ビーズ等の機能性コーティングを含むものもある。従って、それらの機能性を維持する為にビーズを液体マトリックス中に保存する事が重要である。ビーズ上の機能性コーティングを保存する助けとなるカスタム化学を使用するカスタム乾燥プロセスを開発できるかもしれないが、カスタムプロセスを開発する事は高価である事が多く、機能性の損失がない事を保証する為の広範な試験が必要である。従って、液体マトリックス中に磁気ビーズ等の官能化された粒子を保存する事が好ましい。しかしながら、液体状の磁気ビーズのオンチップの保存は、それ自身多くの課題を有する。具体的には、磁性粒子は、非常に高い濃度で液体マトリックス中に保存され(しばしば5mg/ml~50mg/mlの範囲である)、その後、試料及びバッファで希釈される事により結合容量要件を満たす。製造業者は、試験当たり典型的には、10μl~40μlの範囲という、非常に少量の磁気ビーズ試薬を必要とするプロトコルを提供したが、製造プロセス制限(最小容量50μl)の為、有意なデッドボリュームの問題なく、ホイル密封試薬袋内で包装する事が困難である。反応チャンバに通じるチャネル又は流体導管中の更なるデッドボリュームにより、分配中の試薬が著しく失われる。例えば、断面750μm×750μmで、長さ1インチのチャネルでは、15μlのデッドボリュームを有する。この問題を複雑にしているのは、分注工程中に、潰れた試薬袋に試薬の20%程度が依然として存在する可能性があるという事である。
【0074】
デッドスペースに捕捉される事により、濃縮された必須試薬20%が失われる事は望ましくない。本開示における本発明は、マイクロ流体装置上で試薬を効果的に移動及び混合しやすくする為、流通ベースのアプローチを使用する。流通システムは、移動試薬として使用される大量に存在する液体又は気体のいずれかの流体媒体を利用して、この流通試薬袋中に存在する試薬を、このマイクロ流体装置上の反応チャンバ中に、効果的に移動/置換する。ここで、移動試薬は、鉱油(液体)若しくは空気(気体)等の非混和性流体、又は水性バッファ等の混和性液体でよい。非混和性液体及び気体が流通試薬袋に入ると、それらは、試薬袋の全ての内容物を、マイクロ流体装置の反応チャンバ内に効果的に置換させる。バッファ等の混和性流体がチャンバを通る流れの中に入ると、チャンバを通る流れ中に存在する試薬と混合されて、マイクロ流体装置の反応チャンバに入る内容物は、流通試薬袋中の移動試薬及び試薬の混合物となる。この方法は、試薬袋又はマイクロ流体装置におけるデッドボリュームの影響を、それらを移動試薬で充填する事によって相殺する。流体チップの反応チャンバ内で生じる反応には移動試薬の体積は必須ではない、又は重要ではないので、この方法は、その容積が分析の適切な機能にとって重要である流通試薬袋中に存在する試薬を効果的に移送するのを助ける。
【0075】
或いは、移送媒体は、流通試薬袋中に存在する事ができる凍結乾燥試薬ペレットを再水和する再構成バッファの形態であってもよい。幾つかの実施形態では、移送媒体は、分析されている液体試料であってもよい。移送媒体と流通試薬袋の内容物との相互作用の間に、2つの混合が起こる。この混合は、接触面積及び接触時間を増加させる事によって更に補助する事ができる。チャネル長を増大させる事、チャネル断面を減少させる事、流速を妨げる物理的障壁を追加する事、流体圧力を増加させる事、流体の流れに乱流を生じさせる事等の多くのアプローチは、混合を容易にする為に用いる事ができるアプローチではほとんどない。
【0076】
一実施形態では、この方法により、磁気ビーズ等の機能化粒子の損失を緩和するとともに、流通ベースの混合及び粒子/ビーズの均質化を補助して、溶液中に存在する分析物の官能化粒子/ビーズへの結合を促進する。
【0077】
図13Aを参照すると、移動試薬1306で充填された移動試薬袋1303と、液体媒体中の磁気ビーズ/粒子を含む流通試薬袋1302とを含む試薬カードを備えた例示的なマイクロ流体装置の断面概略図が示されている。移動試薬袋は、フランジブルシール1304でキャップされた、マイクロ流体装置上の移送流体導管1308を介して、流通試薬袋の入口に接続される。流通試薬袋は、破裂要素(ボール)1305を含み、出口流体導管1309を通してマイクロ流体装置上の反応チャンバに接続される。
図13Bに示される様に、作動力が加えられると、破裂要素は、その下に存在するフランジブルシールを破壊し、それによって、移動試薬の経路を開いて流通試薬袋に入り、その内容物を置換する。幾つかの実施形態では、破裂要素は、流通試薬袋の内部ではなく、マイクロ流体装置上に存在してもよい。
【0078】
実施例
製造業者は、40μlの電荷スイッチ(登録商標)磁気ビーズ及び300μlの提供された結合バッファを、600μlの細菌細胞溶解物に添加する為のプロトコルを提供した。本明細書に記載される自動化されたマイクロ流体装置上でこのプロトコルを実施する為に、600μlの細胞溶解物は、最初に、分注スポイト又はシリンジを使用して、マイクロ流体装置上の反応チャンバに分配される。流通試薬袋は、40μlの磁気ビーズを含む。システム内の総デッドボリューム(すなわち、粉砕された流通試薬袋、流体導管及び粉砕された移動試薬袋に残っている容積)を60μlと仮定すると、移動試薬袋は、デッドボリュームによる損失を相殺する為に360μlの結合バッファを含む。このデッドボリュームは、マイクロ流体装置の設計に固有であり、装置の幾何学的形状から容易に計算する事ができ、実験的方法を用いて確認する事ができる。作動力が加えられると、フランジブルシールは破裂されるので、結合バッファは、磁気ビーズを含む流通試薬袋に入る。流通試薬袋に入る時の結合バッファの乱流は、保存により沈降し得る磁気ビーズの再懸濁を開始する。結合バッファ中の再懸濁された磁気ビーズの生成物は、次に、出口流体導管1309を通して細胞溶解物を含む反応チャンバに入り、結合プロトコルを完了する。
【0079】
このシステムは、装置のコスト及び複雑度を増大させる計量ポンプの様な複雑なシステムの使用を回避する。
【0080】
油/非混和性相分注システム
幾つかの実施形態では、油で満たされた試薬袋を使用して、作動力の適用時に分配可能な油相を保存する事ができる。しかしながら、試薬袋は、製造及び充填が非常に困難であり、デッドエアゾーンなしでは密封する事が困難である。袋内のデッドエアに対する一般的な製造公差は、全袋容積の10%から20%程度でよい。特に、粘性油相試薬では、閉じ込められた空気は、油相中に気泡を発生する事があり、これは、非混和油相中又は混和性水溶性油相と非混和性油相との間での磁性粒子の移動に関する再現性の論点及び問題に繋がる。加えて、分配中の試薬袋からの油相の流れは乱流である場合もあり、油相が各反応ウェル及び一次チャネルを満たす時に、マイクロ流体装置内にエアポケットを形成する事もある。更に、本明細書の別の固有の実施形態では、層流を促進する為にチャネル及びウェル幾何学形状を最適化する事によって、並びに液体が漏れない様に捕捉された空気を選択的に放出する微孔性疎水性/疎油性PTFE膜等のインライン脱泡機構を実施する事によって、システム内に気泡が形成される事を防止する事が説明される。この固有の実施形態では、滑らかな層流が、油相の圧力ヘッドを利用する事によって生成される。これは、脱泡機構を使用する事によってシステムを複雑化する事なく、一次チャネル内に完全な気泡を含まない油相を作り出す為に、最適化されたチャネル及びウェルの幾何学的形状で補う事ができる。圧力ヘッドに基づくアプローチでは、分注中にフランジブルシールを破裂させる事によって流体の流れを生成できる様にする為の通気穴が必要である。更に、空気は、油相を変位させるにはあまりにも軽いので、油相容器内の空気の存在によって影響されない。
【0081】
図14を参照すると、油/非混和性相分注システム1401を示す例示的なマイクロ流体装置について、作動力を適用する前の様子が
図14Aに、作動力を適用した後を
図14Bに示している。マイクロ流体チップベースの油/非混和性相分注システム1401は、所望の体積の油/非混和性又は液体試薬1404を保持する油保存容器1402を含む。油/非混和性相保存容器は、空気抜き導管1403と、容器1402をマイクロ流体装置上の通気穴及び反応チャンバに夫々接続する様に機能する油/試薬導管1405とを含む。破裂ボール1408を収容する変形可能な蓋1407が、通気口及び油/試薬出口に存在する。通気口1409及び油/試薬出口1410は、フランジブルシール1406によって密封され、ワンタイムバルブとして機能する同じフランジブルシールによってマイクロ流体装置から分離される。
図14Bに示される様に作動力を適用すると、空気通気口及び油/試薬流出口における変形可能な蓋は破砕され、破裂球1408はフランジブルシールを貫通する。この破裂により、空気通気口及び油/試薬出口がマイクロ流体装置上の通気穴及びマイクロ流体装置上の反応チャンバに夫々接続される。
【0082】
図15を参照すると、核酸増幅試験(NAAT)用のサンプル・ツー・アンサ型マイクロ流体装置の例示的な実施形態が示されている。マイクロ流体装置は、マイクロ流体チップ上に組み立てられた検出用の試薬カード1201、油分注システム1401及び側方流動片1505を含む。マイクロ流体チップ自体は、一次チャネル1503によって互いに接続された複数の反応チャンバ1502を含む。入口チャネル1504は、試薬カード上の試薬袋1303を個々の反応チャンバに接続する。個々の試薬袋及び油分注システム1401上の変形可能な蓋要素1407の空間的な位置と整合する空間的トポグラフィーを有するプランジャを備えた機器の蓋上の作動要素を使用して、フランジブルシールを破裂させる作動力を提供する。
【0083】
動作の典型的なシーケンスでは、次の様になる。
1.試料は、カートリッジ内に注入されるか、又は試料入口を介して分配される。
2.カートリッジは機器内に挿入され、蓋は閉じられる。蓋を閉じる事により、試薬カード及び油分注システムのフランジブルシールを破裂させる為の作動力が与えられる。
3.ユーザは、磁気ビーズベースの試料処理及び増幅シーケンスを開始する為にボタンを押す事によって開始コマンドを入力する。
4.結果は、試験が完了した後に側方流動片上に表示される。
【0084】
一般的な定義
本明細書では特定の用語を使用するが、これらは一般的かつ記述的な意味でのみ使用されるものであり、限定する目的では使用されるものではない。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本明細書に記載された本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0085】
本明細書で使用される場合、「核酸」は、ヌクレオチドと呼ばれる共有結合されたサブユニットを含む高分子化合物を意味する。「ヌクレオチド」は、リン酸基に連結されたヌクレオシド(すなわち、糖、通常リボース又はデオキシリボースに連結されたプリン又はピリミジン塩基を含む化合物)を含む、より大きな核酸分子中の分子又は個々のユニットである。
【0086】
「ポリヌクレオチド」又は「オリゴヌクレオチド」又は「核酸分子」は、本明細書では、一本鎖又は二本鎖形態の、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン又はシチジン、「RNA分子」又は単に「RNA」)又はデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、又はデオキシシチジン、「DNA分子」又は単に「DNA」)又はその任意のホスホエステル類似体のリン酸エステルポリマー形態を意味する為に互換的に使用される。
【0087】
任意の長さのRNA、DNA、又はRNA/DNAハイブリッド配列を含むポリヌクレオチドが可能である。本発明で使用するポリヌクレオチドは、天然に存在する、合成、組換え、エキソビボで生成されたもの、又はそれらの組み合わせであり得、そして当該分野で公知のいずれかの精製方法を利用して精製する事ができる。従って、「DNA」という用語は、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNA、半合成DNA、相補的DNA(「cDNA」は、メッセンジャーRNAテンプレートから合成されたDNA)、及び組換えDNA(人工的に設計され、従ってその天然ヌクレオチド配列からの分子生物学的操作を受けたDNA)を含むが、これらに限定されない。
【0088】
「増幅する」、「増幅」、「核酸増幅」等は、核酸テンプレート(例えば、テンプレートDNA分子)の複数コピーの生成、又は核酸テンプレート(例えば、テンプレートDNA分子)に相補的である複数の核酸配列コピーの生成を指す。
【0089】
「上」、「下」、「上」、「下」、及び「上」という用語は、装置内の上部基板及び下部基板の相対位置等、記載された装置の構成要素の相対位置を参照して、説明全体を通して使用される。装置は、空間におけるそれらの向きに関係なく機能する事が理解されるであろう。
【0090】
長期の特許法の慣例に従うと、用語「a」、「an」、及び「the」は、特許請求の範囲を含む本出願で使用される場合、「1つ又は複数」を指す。従って、例えば、「被験者」への言及は、文脈が明確に反対でない限り(例えば、複数の被験者)等、複数の被験者を含む。
【0091】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、用語「備える」は、文脈がそうでない場合を除いて、非排他的な意味で使用される。同様に、用語「含む」及びその文法的な変形は、リスト中の項目の列挙が、列挙された項目に置換又は追加され得る他の同様の項目を除外するものではない様に、非限定的である事が意図される。
【0092】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的の為に、本明細書及び特許請求の範囲において使用される量、大きさ、寸法、割合、形状、処方、パラメータ、百分率、パラメータ、量、特性及び他の数値を表す全ての数字は、例えその値、量又は範囲で明示的には現れない場合であっても、全ての例において用語「約」で修飾されるものとして理解されるべきである。従って、反対に示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、厳密ではなく、厳密である必要はなく、所望の様に、およそ及び/又は、より大きい又はより小さいとなり得、許容差、変換係数、四捨五入、測定誤差等を反映し、かつ、本明細書で開示される主題によって得られるべき所望の特性により、当業者が知る他の要因を反映する事ができる。例えば、ある値を言及する場合の「約」という用語は、開示された方法を実施するか又は開示された組成物を使用するのに適切である場合は、幾つかの実施形態では指定した量の±100%、幾つかの実施形態では±50%、幾つかの実施形態では±20%、幾つかの実施形態では±10%、幾つかの実施形態では±5%、幾つかの実施形態では±1%、幾つかの実施形態では±0.5%、そして幾つかの実施形態では±0.1%の幅を含む事を意味する。
【0093】
更に、用語「約」は、1つ以上の数字又は数値範囲と関連して使用される場合、全ての数字を意味するものとして理解されるべきであり、範囲内の全ての数字を含み、そして記載される数値の上及び下の境界を延長する事によってその範囲を改変する。端点による数値範囲の列挙は、全ての数、例えばその範囲内に包含される小数を含む全ての整数(例えば、1~5の列挙は1、2、3、4及び5、並びにその小数、例えば1.5、2.25、3.75、4.1等を含む)及びその範囲内の全ての範囲を含むものである。
【0094】
本明細書に記載される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、本明細書に開示される主題が関連する当業者のレベルを示す。全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、個々の刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献が、参照により本明細書中に組み込まれる事が具体的かつ個別に示されているのと同程度に、本明細書中に参考として援用されるものである。多数の特許出願、特許、及び他の参考文献を本明細書中で参照するが、この様な参考文献は、これら文献のいずれかが当該技術分野における一般的な知識の一部を形成する事を認めるものではない事を理解されたい。
【0095】
理解を明瞭にする目的で、上述の主題は、例示及び実施例によっていくらか詳細に記載してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲内で、特定の変更及び修正を実施する事ができる事は理解されよう。
【符号の説明】
【0096】
101 試薬分注ユニット
102 非水性非混和性試薬
103 水性試薬
104 フランジブルシール層
105 鋭利な物体
106 プランジャ要素
108 マイクロ流体装置
【手続補正書】
【提出日】2024-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬分注ユニットを備えるマイクロ流体装置であって、
前記試薬分注ユニットは、
1つ以上の試薬及びフランジブルシール層を備える少なくとも1つの試薬袋と、
少なくとも1つのプランジャと、
前記フランジブルシール層を破裂させるように構成された少なくとも1つの鋭利な物体又は突起と、
少なくとも1つのアクチュエータ要素と、
前記少なくとも1つのアクチュエータ要素に近接して配置されて中心軸を中心に回転するように構成されているマイクロ流体カートリッジと、
を備えるマイクロ流体装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアクチュエータ要素は、単一のアクチュエータ要素である請求項1に記載のマイクロ流体装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのアクチュエータ要素は、複数の空間的に配向された磁石を備える請求項1に記載のマイクロ流体装置。
【請求項4】
前記マイクロ流体カートリッジが、少なくとも1つの試薬ウェルと複数の磁気ビーズとを備え、前記マイクロ流体カートリッジを回転させることを含む単一の作動ステップにおいて、前記複数の空間的に配向された磁石が、前記マイクロ流体カートリッジを介して、前記磁気ビーズを捕獲し、再懸濁し、搬送するように構成されている請求項2又は3に記載のマイクロ流体装置。
【請求項5】
前記試薬袋が、1つの試薬コンパートメントに一緒にパッケージされた少なくとも2つの試薬を含む前記1つの試薬コンパートメントを備える請求項1に記載のマイクロ流体装置。
【請求項6】
前記少なくとも2つの試薬が、水性試薬及び非水性非混和性試薬を含む請求項5に記載のマイクロ流体装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアクチュエータ要素は、試験シーケンスにおいて予め定められた時間に前記マイクロ流体カートリッジと接触し、前記試薬袋内の前記鋭利な物体又は突起を作動させて前記フランジブルシール層を破裂させるように構成された複数の機械要素を備える請求項1に記載のマイクロ流体装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアクチュエータ要素は、等温またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの核酸増幅のための一定の単一温度の熱または熱サイクルを提供するように構成された1つまたは複数の空間的に配向された加熱素子を更に備える請求項1に記載のマイクロ流体装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのアクチュエータ要素は、それぞれが一定の単一温度に設定された複数の空間的に配向されたヒータ素子を備え、増幅ウェルが、所望のサイクル時間の間に所望の加熱素子に接触又は近接する、請求項8に記載のマイクロ流体装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0095
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0095】
理解を明瞭にする目的で、上述の主題は、例示及び実施例によっていくらか詳細に記載してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲内で、特定の変更及び修正を実施する事ができる事は理解されよう。
〔付記1〕
試薬分注ユニットを備えるマイクロ流体装置であって、前記試薬分注ユニットは、
1つ以上の試薬及びフランジブルシール層を備える少なくとも1つの試薬袋と、
作動力が前記試薬分注ユニットに加えられた時に、前記フランジブルシール層を破裂させ、前記1つ以上の試薬を前記マイクロ流体装置に送達する様に構成された少なくとも1つのプランジャ及び少なくとも1つの鋭利な物体又は突起と、を備えるマイクロ流体装置。
〔付記2〕
前記マイクロ流体装置が、更に、
少なくとも1つの入口導管と、
少なくとも1つの試薬ウェルと、
少なくとも1つの廃棄物ウェルとを備え、
前記入口導管、前記試薬ウェル、及び前記廃棄物ウェルは、フランジブルシールと前記入口導管との間に界面が存在する様に流体接続されて構成され、作動力が前記試薬分注ユニットに加えられ、前記試薬ウェルからオーバーフローする過剰試薬が前記廃棄物ウェルに集められると、1つ以上の試薬が前記入口導管を介して前記試薬ウェルに送達される付記1に記載のマイクロ流体装置。
〔付記3〕
少なくとも2つの試薬が、別個の袋にパッケージされる付記2に記載のマイクロ流体装置。
〔付記4〕
少なくとも2つの試薬が、単一の袋内に一緒にパッケージされる付記2に記載のマイクロ流体装置。
〔付記5〕
1つの試薬は水性試薬であり、1つの試薬は非水性非混和性試薬である付記4に記載のマイクロ流体装置。
〔付記6〕
前記水性試薬は、フランジブルシールと入口導管との間の界面に最も近い付記5に記載のマイクロ流体装置。
〔付記7〕
前記非水性非混和性試薬は、前記水性試薬よりも低密度であり、前記水性試薬の上に浮遊し、それによって前記水性試薬の上部に非混和性層を形成する付記5に記載のマイクロ流体装置。
〔付記8〕
前記水性試薬は、前記非水性非混和性試薬よりも低密度であり、前記非水性非混和性試薬の上に浮遊し、それによって、前記非水性非混和性試薬の上部に水性層を形成する付記5に記載のマイクロ流体装置。
〔付記9〕
作動力が試薬分注ユニットに加えられると前記水性試薬が、最初に入口導管から流出し、試薬ウェルに流入し、その後、前記非水性非混和性試薬を流入する付記5に記載のマイクロ流体装置。
〔付記10〕
前記プランジャを押下位置にロックする様に構成されたロック機構を備える事により試薬の前記試薬袋内への逆流を防止する付記2に記載のマイクロ流体装置。
〔付記11〕
前記ロック機構は、作動力の印加中に前記袋を押下し易くする方向への前記プランジャの動きを制限する様に構成されたロック孔内のかえし付きピンを備えた付記10に記載のマイクロ流体装置。
〔付記12〕
互いに接続され、一次チャネルを介して1つ以上の試薬分注ユニットに接続される2つ以上の試薬ウェルを備える付記2に記載のマイクロ流体装置。
〔付記13〕
作動シーケンスの終わりに、前記試薬ウェルが水性試薬で充填され、非水性流体で充填された前記一次チャネルを介して互いに接続される様に構成される付記12に記載のマイクロ流体装置。
〔付記14〕
作動シーケンスの終わりに、非混和性油相が前記流体ウェル内の水性試薬を覆って形成され、前記流体ウェル内の水性試薬が、油相によって互いに分離されるが、シーケンス中は流体接続されて流体回路を形成する様に構成された付記12に記載のマイクロ流体装置。
〔付記15〕
フランジブルシールによって前記流体ウェルへの入口導管から分離された複数の試薬袋と、作動後にプランジャを押下位置に係止ロックするロックピンを有する一体化されたプランジャ要素を備える事により、前記試薬袋内への試薬の逆流を防止する付記12に記載のマイクロ流体装置。
〔付記16〕
前記プランジャは、同じ瞬間に全ての前記試薬袋と接触して、単一の作動工程と平行して前記試薬袋から全ての前記試薬を押下して放出する様に構成された付記15に記載のマイクロ流体装置。
〔付記17〕
前記プランジャが、様々な深さを有する空間的に配向された突起を備え、好ましいシーケンスにおいて所望の試薬袋と接触して前記プランジャが押下されると前記マイクロ流体装置へ連続的に試薬送達し易くする様に構成された付記15に記載のマイクロ流体装置。
〔付記18〕
試料を前記マイクロ流体装置内に注入する事ができる試料入口ポートを更に備える付記2に記載のマイクロ流体装置。
〔付記19〕
前記試料入口ポートは、1以上のフィルタ膜を更に備えた付記18に記載のマイクロ流体装置。
〔付記20〕
上部アクチュエータ要素と底部アクチュエータ要素との間で回転する様に構成されたマイクロ流体カートリッジを更に含み、前記上部及び底部アクチュエータ要素は、空間的に配向された磁石を備え、マイクロ流体カートリッジを上部及び底部アクチュエータ要素の間で回転させる事を含む単一の作動ステップにおいて、前記空間的に配向された磁石は、異なる試薬ウェル間の磁気ビーズを捕獲し、再懸濁し、そして搬送する付記2に記載のマイクロ流体装置。
〔付記21〕
前記上部アクチュエータ要素は、分析シーケンス中に所定の時間で前記マイクロ流体カートリッジと接触し、前記試薬袋内の鋭利な物体又は突起を作動させて前記フランジブルシール層を破裂させ、側方流動片に増幅した物質を送達するように構成された突起を備え、前記底部アクチュエータ要素は、核酸の等温又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく増幅に安定な単一温度熱又は熱サイクルを提供する様に構成された空間的に配向されたヒータ素子を1つ以上含む付記20に記載のマイクロ流体装置。
〔付記22〕
前記空間的に配向されたヒータ素子は、熱サイクルを提供する様に構成され、前記マイクロ流体カートリッジは、一定の単一温度に夫々設定される複数のヒータ素子間で周期的に回転し、それにより、増幅ウェルは、所望のサイクル時間の間、所望のヒータ素子に接触するか、又は近接する付記21に記載のマイクロ流体装置。
〔付記23〕
試料収集容器及び試料処理ユニットを備える試料抽出装置であって、前記試料収集容器は、スワブヘッドを有するスワブと、スクリュートップ蓋に取り付けられたスワブシャフトとを備え、前記試料収集容器は、前記蓋と合うねじ山を備え、前記試料収集容器は、前記スワブが前記容器内に挿入されると、前記スワブは、前記スワブヘッドと接触し、前記スワブヘッドを洗浄する1つ以上の突起を有する洗浄インサートと接触し、前記蓋が閉じられる様に構成される試料抽出装置。
〔付記24〕
前記洗浄インサートは、前記インサート内で引っ張られると前記スワブヘッドと接触する様に空間的に配向された複数の剛毛を備えた付記23に記載の試料抽出装置。
〔付記25〕
前記洗浄インサートは、機械的要素を備えた付記23に記載の試料抽出装置。
〔付記26〕
前記機械的要素は、隆起部又はOリングを備えた付記25に記載の試料抽出装置。
〔付記27〕
前記容器は、1以上のフィルタ膜を備えた付記25に記載の試料抽出装置。
〔付記28〕
前記容器は、取外し可能な試料処理ユニットに接続される迅速接続コネクタを備えた付記25に記載の試料抽出装置。
〔付記29〕
前記取り外し可能な試料処理ユニットが、バレル及びプランジャ及びプランジャチップを備えるシリンジである付記28に記載の試料抽出装置。
〔付記30〕
前記シリンジは、保存された試薬を含む1つ以上の溝付き凹部を備えた付記29に記載の試料抽出装置。
〔付記31〕
前記溝付き凹部は、前記プランジャチップが引き抜かれる時に前記保存された試薬が連続的に試料に導入される様に空間的に配向される付記30に記載の試料抽出装置。
〔付記32〕
試料処理ユニットであって、
試料収集容器と、
所定のタイミングシーケンスで前記容器内の試料への自動化された連続的な試薬送達の為に構成された蓋アクチュエータと、を備え、
前記蓋アクチュエータは、
保存された試薬を含む1つ以上の試薬袋を備える試薬パレットを備えた試薬分注ユニットと、
回転アクチュエータ要素が前記試薬パレットの近傍で回転する時に、所定のタイミングシーケンスで前記試料収集容器内に内容物を分配する様に前記試薬袋を作動させるよう構成された空間的に配向された機械要素を備える1つ以上の回転作動要素を備えた試料処理ユニット。
〔付記33〕
前記回転作動要素は、回転運動を提供する為の機構を備えた付記32に記載の試料処理ユニット。
〔付記34〕
前記回転運動を提供する為の前記機構は、巻取スプリングである付記33に記載の試料処理ユニット。
〔付記35〕
前記回転作動要素は、ユーザの指によって手動で作動する様に構成された付記32に記載の試料処理ユニット。
〔付記36〕
前記回転作動要素は、前記試薬パレット上の前記試薬袋と干渉してそれらを作動させ、それらの内容物を所定のシーケンスで分配する、1つ以上の空間的に配向された機械要素を含む回転シャフトを備えた付記32に記載の試料処理ユニット。
【外国語明細書】