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特開2024-156765シロキサンベースの高分子液体材料およびそれから作製された材料を調製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156765
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】シロキサンベースの高分子液体材料およびそれから作製された材料を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/42 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
C08G77/42
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024121097
(22)【出願日】2024-07-26
(62)【分割の表示】P 2020567599の分割
【原出願日】2019-06-04
(31)【優先権主張番号】18175851.7
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】510143468
【氏名又は名称】エーエムペーアー・アイトゲネーシッシェ・マテリアルプリューフングス‐ウント・フォルシュングスアンシュタルト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ケーベル、マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ストヤノビッチ、アナ
(72)【発明者】
【氏名】マルファイト、ヴィム
(72)【発明者】
【氏名】ヌール、アディリーン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コアシェル型構造の分子ビルディングブロックから形成された高分子液体材料を調製するための方法、およびそれから作製される材料を提供する。
【解決手段】コアシェル型構造の分子ビルディングブロックから形成された高分子液体材料は、各ビルディングブロックが多分岐ポリシロキサンコアと、前記コアに周辺において付加された官能性シロキサンシェルとから構成され、該材料が、架橋酸素部分(Si-O-Si)、加水分解性アルコキシ部分(Si-O-R)、有機官能性部分(R’-Si)および(R-Si-R)、並びに0.5質量%未満のヒドロキシ部分(Si-OH)を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、コアシェル型構造の分子ビルディングブロックから形成された高分子液体材料を調製するための方法、およびそれから作製される材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ時代の進歩に伴い、科学は、化学ビルディングブロックユニットの制御を改善することを可能にする新規の調製方法を目標にしており、したがって、原子をナノスケールに関連づけている。設計によるこうした新しい官能性材料の創作は、分子からナノ材料へ、そしてポリマーから材料科学への境界領域を橋渡しする。図1は、分子およびナノスケールのビルディングブロックのサイズの観点からの大まかな分類を示している。分子ビルディングブロック(MBB)は、典型的には数十から数千の原子で構成され、最大で数ナノメートルのサイズである。それらの化学的性質およびコンパクトさによって、それらはしばしば周囲条件下で液体である。これは、室温で固体であり数千から数百万の原子で構成されるナノ材料とは明らかに異なる特徴である。図に示されているように、これらの材料クラス間には明確な境界はなく、1nm付近で一部が重なり合っている。
【0003】
IUPACによると、ナノテクノロジーは、約1nmから100nmのサイズ範囲の寸法で、巨視的な材料とはまったく異なる構造、特性、相互作用を持つ新規の材料を扱う。化学反応によってナノ粒子などのナノスケールビルディングブロック(NBB)を創作するために分子前駆体が使用される、いわゆるボトムアップアプローチは、新しい官能性と最終的な材料特性を制御するための最大の柔軟性を提供する。この特定の技術分野では、NBBのアセンブリは通常、原子または小分子の前駆体から始まる。典型的な例は下記を含む:
-乳化重合によって有機モノマーから調製されたポリマーナノ粒子、
-化学還元によって溶液中の対応する塩前駆体から得られた貴金属ナノオブジェクト、
-対応する(半)金属塩またはアルコキシド、アセチルアセトネートなどの小分子有機金属前駆体から合成された(半)金属酸化物ナノ粒子または「コロイドゾル」。
【0004】
より最近では、研究者は、小分子とナノスケールまたはさらにマクロスケールの間の境界領域での構造形成ステップを正確に制御することにより、分子レベルでの新規官能性材料の制御されたボトムアップ合成を目標にしている。例えば、金属有機構造体(MOF)の場合、分子相互作用は、分子レベルの制御を有した巨視的に大きな結晶性化合物が得られるように、有機前駆体と金属/金属酸化物前駆体とを組み合わせるように特に選択および設計される。明らかに、分子設計アプローチは、前例のない多様な材料特性へのアクセスを与える。コロイド化学および高分子化学で追求されている同様の概念は、今日の材料科学の最前線にある。
【0005】
最先端技術では、MBBまたはNBBの両方への特定の化学的官能性の導入は、官能基を有する種をビルディングブロック全体に導入するか、コアブロックの表面に選択的にグラフトすることによって達成される。ナノテクノロジーでは、コアシェルという用語は、コアが第2の(多くの場合官能基を有する)化合物の層で覆われているナノオブジェクトを表す。分子科学および高分子科学では、コアシェルという用語は十分に確立されてはいないが、高い類似性を考慮して、ここでは「コアシェル」の用語をMBBおよび多分岐シロキサンポリマー科学に拡張している。
【0006】
コンパクト性の高い樹状MBBの古典的な代表例の中で、星型ポリマーは、所与の高分子化学で作られた樹状アームが、それらがグラフトされている核から発生しているポリマー材料のサブクラスである。特許文献1は、そのような星型ポリマーを記載しており、界面活性剤の特性を改善するために、周辺のポリマーアームがシラン化学によって結合されたアニオン性またはカチオン性基で官能化されているが、主成分は非シリコンベースである。さらに、特許文献2は、2アームおよび4アームのコア・スペーサー・エンド基の材料について詳しく説明している。そこに記載されている化合物は、ヒドロシリル化化学によって結合されており、異なる分子構造、すなわち、i)ビスフェノール-A有機コア、ジメチルシロキサンスペーサーおよび有機基(エポキシ、メチルスチレン、シクロペンタジエニル)末端、ii)テトラキス(ジメチルシリル)-シロキサンコア、ジシクロペンタジエンスペーサー(または末端)、続いて第2のテトラメチルジシロキサンスペーサーおよびエポキシまたは不飽和末端、を含む。特許文献3は、3回対称および6回対称の多芳香族有機コア、シロキサンスペーサーアーム、および反応性有機末端基に基づく同様のクラスの材料について記載している。特許文献4では、「非シリコン」有機成分を使用しない純粋なシロキサン星型ポリマー化合物が提案されている。現在の最先端技術では、シランおよびシロキサン含有星型ポリマーは、一般に、連続的な分子カップリング反応によって得られ、それらの反応のそれぞれが1つのビルディングブロックユニットによってシェルを拡張する。カップリングは、最も一般的にはヒドロシリル化化学によって達成され、オングストロームから1ナノメートルの範囲で明確に定義された組成とサイズを持つ低分子量から中分子量のポリマーを生成する。
【0007】
対照的に、有機/無機ハイブリッド材料およびNBBは、さまざまな調製技術によって取得できる。例えば、ゾルゲル技術は、溶液中で作用し、分子またはオリゴマーの前駆体のコロイド懸濁液から始まり、ナノ粒子ビルディングブロックの自発的な形成をもたらす。一方、ゾルは、溶媒、pHなどの制御を通じて、オリゴマーのポリヒドロキシ金属酸(例えば、シリカの場合はケイ酸オリゴマー)のオレーション(olation)および縮合反応からin-situで調製することができる。それらは、多孔質金属酸化物およびハイブリッド材料を創作するための古典的なNBBとして使用される。金属酸化物ゾルへのより広く適応された経路は、それぞれの親アルコールおよび反応物としての水中のTEOS、TMOS、AlまたはTiイソプロポキシドなどの金属アルコキシド由来である。最初のステップでは、アルコキシ基の加水分解によりM-OH種が生成され、次に縮合してアモルファス金属酸化物NBBまたはゾルが形成される。M-OHの縮合とM-O-M結合の加水分解との間の可逆的相互作用の性質を考えると、得られる材料の形態を制御することは困難であるが、pH、前駆体濃度、および溶媒系に強く影響される。加水分解法を使用したコロイドゾルの調製は、ゲル化の回避、高度な分岐の達成、および揮発性モノマー画分の量の削減の間の妥協点である。低分子量の分岐シロキサン化合物は、特許文献5に記載されているように、純系(無溶媒)での酸触媒加水分解によって得られる。
【0008】
制御されたコアシェルタイプの構造を有した化学的に修飾されたコロイドゾルの調製、例えば、第2の官能性シランで作成されたシェルを有したTEOSベースのNBBは、異なるシランの加水分解と縮合の反応速度(TEOS対官能性シラン)が大きく異なり得るという事実によって複雑であり、図2に模式的に示されるように堆積物の表面選択性が低下する。これは、2つの異なるシラン化合物の共加水分解について特に当てはまり、この場合、均一で統計的に混合された純粋な相ハイブリッド「AB」粒子ではなく、「シランA」粒子と「シランB」粒子の不均一混合物を形成することが明らかに優先される。
【0009】
NBB上の官能性シェルの堆積選択性を改善するには、反応速度を遅くすることが唯一の選択肢であることがしばしばある。特許文献6は、官能性シランの緩慢な投与と、加水分解/縮合速度が非常に遅いpH4(反応混合物を室温で24時間反応させる)とで、市販の「Ludox」シリカ粒子および類似のコロイドを、希薄水溶液中において官能性オルガノシランで作られたシェルによって官能化することを記載している。より迅速な代替案は、エマルションベースのラジカル重合化学である。特許文献7は、乳化重合によって得られたポリマーコア粒子が適切な縮合化学によってオルガノシラン化合物の層でコーティングされている複合ナノ粒子とその調製について記載している。特許文献8は、逆の場合、すなわち、アクリレート官能基を有するシランカップリング剤の使用によって仲介されるラジカル乳化重合によって作製されたポリアクリレートシェルによってコーティングされた、エマルションとして調製されたPDMS様コアについて記載している。特許文献9には、別の非常に類似したPDMSコア/有機ポリ-(アルケニル芳香族)シェルハイブリッドNBB材料が記載されている。
【0010】
シリコンベースのMBBの世界では、多分岐ポリアルコキシシロキサン(hyPAS)は、1つの同じ分子で官能性とサイズ制御との両方を提供する最も有望な候補の1つである。hyPASは、数オングストロームから1桁のナノメートルまでのサイズ範囲にわたる、500~50,000g/molの範囲の典型的な分子量を持つ小分子ビルディングブロックである。上記の「ゾルゲル」加水分解経路と比較して、hyPASは最も一般的には「非加水分解」法によって調製される。これは、小分子前駆体を結合してより大きな高分子MBBを形成するために使用される縮合反応が、反応物の化学量論的添加によって制御され得、したがって、任意の所与の時点で開始、停止、および再開されることを意味する。さらに、合成は「純粋(neat)」で実行され得る。つまり、水やアルコールなどの追加の溶媒が存在しない。hyPASは球形に近くコンパクトな性質を持っているため、直鎖状ポリマー類似体よりも、より低い溶融粘度、および、はるかに高い溶解度を示す。単一成分hyPASの古典的な調製「非加水分解」合成経路は次のとおりである:
1)アルカリ水酸化物とのアルコキシシランの反応により得られる水酸化物の縮合(シラノール経路)
2)アルコキシシランとの塩化物の縮合(塩化物経路)
3)エーテル脱離による単一のアルコキシシランのそれ自体での縮合
4)対応する酢酸エステルの脱離によるアセトキシ官能性アルコキシシランのそれ自体での縮合(アセトキシ経路)
5)酢酸エステル脱離による適切な触媒の存在下での無水酢酸との反応によるアルコキシシランの縮合(無水物経路)。
【0011】
方法1)は、定量的な量の強苛性アルカリ水酸化物と、対応する廃棄物の回収および処分とを必要とするため、あまり実用的ではない。
方法2)は、特許文献10に記載されており、ここでは、多分岐ポリシロキサンの調製が、ハロゲン化アルキルの脱離によるクロロシランおよびアルコキシシランのヘテロ縮合によって進行する。この反応は、Ti、V、Zr含有有機金属化合物によって触媒される。クロロシラン試薬は腐食性が高いため、工業商業化が制限される。
【0012】
方法3)は、非常に低い沸点と非常に高い可燃性とを有するジアルキルエーテルが形成されるため、工業環境で安全性に関連する大きな危険を伴う。さらに、このようなアルコキシドのホモ縮合は、クロロシラン、ヒドロキシシラン、またはアセトキシシランなどの化学量論的に制限された第2の化学種の消費によって自己停止しないため、反応の進行に関する正確な情報なく任意の時点で熱クエンチングによって停止する必要があり、そのため、生成物の制御がはるかに困難になる。
【0013】
方法4)は一般的にかなり高価なアセトキシシランを使用する。特許文献11は、三官能性シランを使用して架橋されたジメチルシロキサンプレポリマーから出発するアセトキシ誘導体化による軽度に分岐したオルガノシラン化合物の調製について記載している。この特許はさらに、わずかな縮合結合を作成する必要がある場合、すなわち、モノマーをオリゴマー/ポリマーのビルディングブロックと結合してより大きな高分子を作成する場合の古典的なアセトキシ経路の有用性について記載している。これは、例えば、シラノール末端プレポリマーを、高温での還流において酢酸の存在下でアルコキシ末端架橋剤とともに還流することによって、またはアセトキシ末端架橋剤(例えば、トリアセトキシシラン)とともに直接還流することによって実行され得る。
【0014】
方法5)は、最近Moellerらによって発明され(例えば、非特許文献1)、これは、スケーラビリティ、プロセスの安全性、および実行の容易さの点で、今日、hyPASを調製するための最も進歩的な手法である。それは、1)から4)を超えて劇的に改善された商業化の可能性と、本発明に最も近い最先端技術を提供するが、同時に、hyPASの官能化のような選択的な「コアシェル」の問題に対処できない。その結果、特許文献12は、無水物経路による単一成分hyPAS MBBの調製に制限されている。実施例において、著者らは、純粋なシリケートおよびチタネート ポリアルコキシメタレートのそれぞれのアルコキシドからのワンステップ調製について論じているが、その中心の請求項1では、他のもの、具体的にはジルコネートおよびハフネートについても言及されている。この同じ特許は、後の実施例において、有機官能性トリアルコキシシラン、具体的には、メチルトリエトキシシラン(MTES)およびヘプタデカフルオロ-(1,1,2,2)-テトラヒドロデシルトリエトキシシランから調製された単一成分の有機官能性hyPASの類似の調製についてさらに記載している。有機官能性トリアルコキシシランは、市販の化合物の豊富な選択肢および魅力的な価格により、化学官能基を導入するための理想的な前駆体である。特許文献13は、統計的に混合された多成分hyPASの調製-これは、特定の有機化学官能性を導入する最も明白な方法である-を除外していないが、概念について詳しく説明してもいない。
【0015】
Moellerの元の研究の拡張として、特許文献14は、Moellerの経路5)によって調製されたシリケートhyPASの化学官能化と、コーティング配合物における添加剤としてのそれらの応用を扱っている。官能性前駆体は、130℃の範囲の温度で「Moellerタイプ」hyPAS上のアクセス可能なアルコキシ基とヒドロキシル末端ポリマー(好ましい例はPEG、PPG、およびポリジメチルシロキサン(PDMS)などのポリアルキレンオキシド)とのアルコール縮合によって創作される。このようにして、PEG、PPG、PDMSなどで修飾されたコアシェル様MBBが創作されるが、組成とシェルのサブ構造を完全に制御できるボトムアップ方式でシェルを調製する完全な自由はない。本発明との主な違いは、予め形成された直鎖状ポリマー分子をhyPASコアに付着させるために形成される単一の化学結合によるシェルグラフト化の様式にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2008 063070号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0122186号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/19773号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2010/0305293号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1510520号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1978055号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第1118632号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第3059262号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2009/0215927号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第0728793号明細書
【特許文献11】国際公開第00/40640号
【特許文献12】国際公開第2004/058859号
【特許文献13】国際公開第2004/058859号
【特許文献14】国際公開第2014/187972号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Macromolecules 2006、39、1701~1708
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、改良されたhyPAS材料、その同じおよび様々な用途を製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様(請求項1)によれば、コアシェル型構造の分子ビルディングブロックから形成される高分子液体材料を調製するための方法が提供され各ビルディングブロックが多分岐ポリシロキサンコアと、前記コアに周辺において付加された官能性シロキサンシェルとから構成され、この方法は、以下の工程:
a)少なくとも1つのシリコンテトラアルコキシドSi(OR)(Rは、最大4個の炭素原子を有する非分岐または分岐アルキル基である);および任意選択で、以下:
-1つのR’’-有機官能性トリアルコキシシランR’’-Si(OR)、および任意選択で、R,R-有機官能性ジアルコキシシランR-Si(OR)-R;または
-異なるR’’-有機官能性トリアルコキシシラン、および任意選択で、少なくとも1つのR,R-有機官能性ジアルコキシシランの混合物;
の官能性混和物を、
モノマーまたはオリゴマーの形態で、触媒の存在下、所望のDPコアに従って選択された第1の化学量論量の無水酢酸とともに反応容器に充填する工程と;
b)工程a)で提供された反応混合物を、水を含まない不活性雰囲気中で撹拌しながら加熱して所望の反応温度に到達させ、反応および蒸留物の流れが停止するまで、得られた酢酸エステル反応生成物を蒸留除去し、それにより前記多分岐ポリシロキサンコアを形成する工程と;
c)
-1つのR’-有機官能性トリアルコキシシランR’-Si(OR)、および任意選択で、R,R-有機官能性ジアルコキシシランR-Si(OR)-R、または
-異なるR’-有機官能性トリアルコキシシラン、および任意選択で、少なくとも1つのR,R-有機官能性ジアルコキシシランの混合物を、所望のDPシェルに従い選択された第2の化学量論量の無水酢酸とともに、任意選択で触媒の存在下、工程b)で形成された高温反応混合物に対して、撹拌を継続しながら添加して、工程b)で形成されたコア上への前記官能性シロキサンシェルの選択的蓄積を開始し、これによりさらなる酢酸エステルが形成されて蒸留され、蒸留物の流れが再び停止するまで反応を継続する工程であって、
R’およびR’’は、それぞれがL-Zとして表すことができる、独立して選択された置換基であり、
-Lは、-C-、-C-CH-、-CH-CH-C-CH-および-[(CH)-(n=0、1、2、3、4)からなる群から選択されるリンカー基であり;
-Zは、以下:
【0020】
【化1】
【0021】
から選択される末端官能基であり、
は、-H、-CH、-C、-C、-C10および-Cからなる群から選択され;
またはZは、-[(CH)-CH(m=0、1、2、...、11)であり;および
トリプレット(R’、R、R)と(R’’、R、R)が同一ではないという条件で、R、R、RおよびRは、-CH、-C、-C、-C11、-CH=CH、-CH-CH-Clおよび-Cからなる群から独立して選択される置換基である、
工程と;
d)任意選択で、工程c)で記載された添加および反応プロトコルを少なくとも1回繰り返すことにより、シェルに追加の官能性層を構築する工程と;
e)任意選択で、反応容器内の圧力を徐々に下げ、最終圧力を5~250mbarの範囲に10~120分間保持することによる減圧蒸留により、反応混合物中の低分子反応生成物および/または残留出発物質を除去する工程と;
f)こうして得られた高分子液体材料を冷却および単離する工程と;を備え、
工程a)からe)が1つの同一反応容器内で実行される。
【0022】
以下でより明確になるように、コアは、主要な非有機官能性シロキサン成分に加えて、限定された含有量の有機官能性シロキサン部分を含んでもよい。シェルは、定義上、有機官能性シロキサン部分のみで構成されている。トリプレット(R’、R、R)と(R’’、R、R)とが同一でないという規定は、シェルの組成と任意選択の官能性を有するコア成分の組成とが同一でないことを意味する。
【0023】
上記の調製方法において、様々な工程で使用される反応物の量は、形成される高分子液体材料の所望の組成に応じて選択されるであろう。特に、反応物の量は、以下でさらに定義される含有量の限定事項を満たすように選択される。
【0024】
本文脈において、「官能性混和物」という用語は、工程a)で添加される少なくとも1つの有機官能性トリアルコキシシランおよび任意選択でのジアルコキシシランの量に対処するために使用される。このような混和物により、コアに特定の官能性特性を提供し得る。
【0025】
有利な実施形態は、従属請求項および以下の説明および実施例で定義されている。
一実施形態(請求項2)によれば、官能性混和物がゼロである。換言すると、コアは、実質的に非有機官能性シロキサン部分のみで構成されている。
【0026】
さらなる実施形態(請求項3)によれば、Rがメチルまたはエチルである。
別の実施形態(請求項4)によれば、工程b)からe)の反応温度が、70℃~170℃の範囲、好ましくは100℃~150℃の範囲、最も好ましくは120℃~140℃の範囲であり、工程b)からd)の間の圧力が、0.1bar~2barの範囲であり、好ましくは0.5bar~1.4barの範囲であり、最も好ましくは0.9bar~1.2barの範囲である。
【0027】
さらなる別の実施形態(請求項5)によれば、シリコンテトラアルコキシドSi(OR)が、テトラエトキシシラン(TEOS)またはテトラメトキシシラン(TMOS)、またはそれらのモノマーおよびオリゴマーの混合物である。
【0028】
さらなる実施形態(請求項6)によれば、酢酸エステル反応生成物が、低沸点反応生成物が溶液中の高沸点残留反応物から分離され、これにより後者が連続的に反応混合物にフィードバックされるように、複数の理論段数を含む蒸留塔を介して系から除去される。
【0029】
またさらなる実施形態(請求項7)によれば、触媒が、Ti(OR’’)、またはZn(II)アルカノレートZn(OR’’)の群から選択され、R’’=-CHCH、-CH(CH、-CHCHCH、-C(CH、-CHCHCHCHであるか、または、触媒が、Ti(O-Si(CHであり、触媒量が、コア成長工程で使用される全アルコキシシラン前駆体のモルベースで0.01~1.5%である。
【0030】
さらなる別の実施形態(請求項8)によれば、R’が下記:
i)R’=-C5、-CH=CHであり、
ii)R’=L-Zであり、Lが-CH-であり、およびZ=[(CH)-CH(p=0、1、2、4、6、8、10、12、14)であり、
iii)R’=L-Zであり、L=-CHCHCH-(n-プロピル)であり、Z=-Br、-Cl、-I、-SH、-OH、-NH、-NH-(BOC)、-NH-(FMOC)、-(2-オキシラニル)、-メトキシ-(2-オキシラニル)、-N、-SOR、-PO、-アクリレート、-メタクリレート、-エタクリレート、-プロパクリレート、-ブタクリレートであり、または
iv)R’=L-Zであり、L=CHであり、Z=ビニル、-アクリレート、-メタクリレート、-エタクリレート、-プロパクリレート、-ブタクリレートである、
の群から選択され、
およびRが、同一であるとともに、-CH、-C、および-CH=CHからなる群から選択され、R=-CHおよびR=-CH=CHである。
【0031】
さらなる態様(請求項9)によれば、官能性混和物なく実行される本発明の方法により調製された高分子液体材料が提供される。材料は、コアシェル型構造の分子ビルディングブロックから形成され、各ビルディングブロックが多分岐ポリシロキサンコアと、コアに周辺において付加された官能性シロキサンシェルとから構成され、
材料が、0.5質量パーセント未満のヒドロキシ部分(Si-OH)を含み、
コアが、1.3~2.7の範囲、特に1.5~2.5の範囲の重合度DPコアを有し、
シェルが、R’-置換シロキサン部分、および任意選択でR1-、R2-置換シロキサン部分から形成されるとともに、0.3~2.5の範囲、特に1.0~2.3の範囲の重合度DPシェルを有し、
材料中の全シリコン対遊離加水分解性アルコキシのモル比が、1:1.25~1:2.75であり、
材料が、10~100,000cPの範囲の粘度を有し、
コアが、非有機官能性シロキサン部分で構成され、非有機官能性シロキサン部分が、
-一般式
【0032】
【化2】
【0033】
の非有機官能性末端結合シロキサン部分(Q化学種)
および/または
-一般式
【0034】
【化3】
【0035】
の非有機官能性ジシロキサン部分(Q化学種)
および/または
-一般式
【0036】
【化4】
【0037】
の非有機官能性トリシロキサン部分(Q化学種)
および/または
-一般式
【0038】
【化5】
【0039】
の非有機官能性テトラロキサン部分(Q化学種)
を含み、
シェルが、以下:
-一般式
【0040】
【化6】
【0041】
の単有機官能性末端結合シロキサン部分(T化学種)
および/または
-一般式
【0042】
【化7】
【0043】
の単有機官能性ジシロキサン部分(T化学種)
および/または
-一般式
【0044】
【化8】
【0045】
の単有機官能性トリシロキサン(T化学種)部分、
および、任意選択で、
-一般式
【0046】
【化9】
【0047】
の末端結合二有機官能性シロキサン(D化学種)部分
および/または
-一般式
【0048】
【化10】
【0049】
の二有機官能性ジシロキサン(D化学種)部分、から構成され、
R、R’、RおよびRが、請求項1に定義された通りである。
一実施形態によれば、材料が、50~5,000cPの範囲の粘度を有する。
【0050】
有利には(請求項10)、T化学種対Q化学種の相対原子比が0.03:1~1:1、好ましくは0.03:1~0.75:1、最も好ましくは、0.05:1~0.5:1の範囲である。
【0051】
本発明の別の態様(請求項11)によれば、第1の態様による高分子液体材料を所定量の水または所定量の水溶媒混合物と反応させることにより得られた加水分解生成物が提供される。
【0052】
さらなる態様によれば、さらなる態様による高分子液体材料、または第2の態様による対応する加水分解生成物が、請求項12および13で規定されるように様々な用途のために使用される。
【0053】
驚くべきことに、無水酢酸反応(すなわち、イントロダクションで述べた方法5))を連続して使用して、同一の反応条件下で、少なくとも1つの有機官能性トリアルコキシシランを含む単一の有機官能性シラン化合物または混合物を投与することにより、既存のhyPASコアまたは核上に官能性シェルを選択的に構築し得ることが分かった。
【0054】
直接反応生成物は、
-本質的に明確に高分子であり、その構成コアシェルMBBの典型的なサイズは2nm未満であり;
-選択された反応条件に応じて、様々な含有量の未反応のモノマーおよび小オリゴマーを有する分子量の統計的分布を示し、低分子種は、任意選択で真空蒸留によって除去され再利用され得る。個々のビルディングブロックでは、典型的には30~500個のSi原子が含まれ;
-コアとシェルとの両方に、かなりの含有量の加水分解性で反応的に架橋するアルコキシ基を有し;
-10~100,000cPの範囲の粘度を有する、本質的に無溶媒の純MBBの液体混合物であり;
-MBBの分子構造の点で星型ポリマー様である。
【0055】
既知の最先端技術からの他の星型ポリマーとの明確な区別は、コアの多分岐の性質に関して行うことができ、これは、コアにおけるかなりの程度の架橋、およびさらに重要なことに、その可変サイズに関するシェルの性質(エンドキャッピングから可変長の主に直線状ポリマー鎖まで)を示す。実用的に関連する配合は、コア(DPコア=1.3~2.7)およびシェル(DPシェル=0.3~2.5)の両方のサブ構造の限られた重合範囲内にある。
【0056】
本発明では、「コアシェル」という用語がナノマテリアル科学から採用された。本発明により包含される反応生成物の明らかな高分子の特徴に基づいて、コアとシェルとの間の境界領域は、組成が急激に変化する鋭い境界ではなく、拡散シェルとして理解されなければならない。官能性シェル種の濃度が数結合長またはオングストロームにわたって変化するこの拡散シェル層構造は、縮合化学、つまり、予め形成されたhyPASコアへの官能性シランシェルのグラフト化の直接的な結果である。樹状のhyPASコアの外側アームは、より小さなシランモノマーおよびオリゴマーに対して高い透過性を示すため、シェルのグラフト化の程度がその周辺部で最も高いことは明らかであるが、鋭いカットオフはない。それにもかかわらず、「コアシェル」という用語は、立体的な理由と反応性アルコキシ基の利用可能性の低下の両方のために、コアの中心におけるグラフト化が非常に妨げられるため、依然として適用される。コアの中心における平均的な結合性(架橋酸素結合(シリコン中心あたりのSi-O-Si結合)の数)がコアの周囲よりも高いからである。したがって、「コアシェル」という用語は、本発明の文脈において、上記の議論に従う拡散シェルを備えたhyPASコアの意味で使用される。
【0057】
非結晶性酸化シリコン材料の重合度DPは、系内の金属原子Sitotの総数に対する架橋酸素BO(Si-O-Si結合の数)の比として定義され得る。
重合度について:
-DP=4、すべてのSi原子が他の4つの隣接原子に結合している。すなわち、これは、各中心Siの四面体位置に位置する4つの酸素原子を有する完全結晶(水晶)における場合であり、各Si原子がまったく同じ環境を認める。
-DP=3、平均して各Si原子は架橋酸素結合(Si-O-Si)を介して3つの他のSi原子に結合している。単一の成分がDP=3を有する場合、その構造は、粘土鉱物のようなシートに似た、無限に拡張された2次元シートである。
-DP=2、平均して各Si原子は2つの架橋酸素結合を介して結合している。単一の成分類似体は、例えば、非架橋PDMS(ポリジメチルシロキサン)タイプのシリコーン樹脂などの直鎖状ポリマーである。
【0058】
無水酢酸反応は、その試薬(アルコキシドおよび無水酢酸)に関して定量的である。したがって、その添加の結果として形成される新しい結合の数およびDPは、以下に示すように、化学量論的変換係数f(およびコアi)とシェルiiのg)ビルドアップ反応に正比例する。
【0059】
【化11】
【0060】
テトラアルコキシドモデル化合物からのコア形成(式i))、最大化学量論係数f=2は、無水酢酸対テトラアルコキシドの比2:1に対応し、これは、SiOへの完全な変換である実質的に不可能なDP=4になる。
【0061】
機構的には、式i)に示すように、無水酢酸反応は、酢酸エステルの第1のアリコートの脱離を伴うアセトキシ中間体を介して進行する。次に、アセトキシ中間体は、式i)に示すように、酢酸エステルの第2のアリコートの脱離化で、第2の分子上のアルコキシ基と分子間縮合を起こす。
【0062】
【化12】
【0063】
Moellerの元の研究ですでに説明されているように、有機官能性トリアルコキシシランは、式ii)に従う無水物化学を使用してhyPASに変換され得る。
【0064】
【化13】
【0065】
ただし、縮合反応に利用できるアルコキシ基の数が少ないため(4ではなく3)、DPコアは低くなる。機構的には、ジ-およびトリアルコキシシランはテトラアルコキシシランと同じように反応する。
【0066】
ほとんどのガラスおよびhyPASは、理論上の限界(すべてのアルコキシ基の完全な変換)を大幅に下回る平均DP値を特徴としている。調製中、理論上のDP値は、反応で使用される化学量論比によって与えられ、有効なDP値は、酢酸エステル反応生成物の定量分析を通じて直接決定され得る。独立して、材料のDPコアとDPシェルは定量的NMRデータから直接取得され得る。テトラアルコキシシランに由来する単一成分hyPASの単純なモデルの場合、DPは定量的な29Si NMRスペクトル(図3)から下記に従い計算され得る。
【0067】
【数1】
【0068】
ここで、AQnは、そのQ種に関連する定量的な29SiNMRピーク面積を示し、これは、Si-O-Si架橋によって次の最隣接するSi原子に連結させるn個の架橋酸素(BO)原子と、4-n個の非架橋酸素(NBO)原子、すなわちアルコキシ基Si-ORとによって調整されたSi原子である。
【0069】
純粋なテトラアルコキシシランモデル系の場合、定量的変換を想定すると、DPは単純な下記関係によって化学量論的f係数(式i)に直接関連づけられる。
【0070】
【数2】
【0071】
有機官能性のジ-およびトリアルコキシシランについて、29Siスペクトルフィンガープリント領域は徐々にダウンフィールドにシフトし、シェル堆積後のモデル化合物スペクトルに見られるように、異なる非有機官能性Qを有機官能性TおよびD化学構造から明確に分離できる(図4)。ここで、ATmは、m個のBOおよび(3-m)個のNBOを有する有機官能性トリアルコキシシランに属する各Si種の曲線下のピーク面積を表し、ADlは、l個のBOおよび(2-l)個のNBOを有する有機官能性ジアルコキシシランに由来するピーク面積を表す。
【0072】
しかしながら、コアシェル分子の縮合および重合の程度を決定することはより複雑である。シェル前駆体および追加の無水酢酸の添加前のコアの重合度(DPコア、最初)は、純粋な系の式に従い、定量的29Si NMR(図3)または化学量論から決定され得る。
【0073】
【数3】
【0074】
ここで、AQnは、シェル前駆体の添加前に採取されたサンプルのアリコートで収集された定量的な29SiNMRスペクトルから導出される。
本発明による既存のテトラアルコキシシランコア上に有機官能性トリアルコキシシランから成長したシェルを特徴とするMBB材料の場合、新しいモノマーおよび無水酢酸の添加(gは無水酢酸対有機官能性トリアルコキシシランのモル比として定義される)は、以下の反応をもたらす。
i)コア重合(Q-Q凝縮)の継続、
ii)T種のホモ縮合(T-T縮合)、および
iii)既存のコアシロキサン分岐への官能性シランのグラフト化(T-Q縮合)。
【0075】
ホモ縮合反応(T-T)は、シェル(DPシェル)の重合度を増加させるのみであるが、ヘテロ縮合(T-Q)は、以下に示す例示的なグラフト反応iii)に従って、DPコアおよびDPシェルの両方を増加させる。
【0076】
【化14】
【0077】
上記のグラフト反応の例では、R’有機官能性トリアルコキシシランがTからTに変換される一方、反応の左側のコア種(3つの波状シロキサン結合によって象徴される)がQからQに変換されることに留意されたい。これは、各グラフト反応が同時にDPコアとDPシェルとを増加させることを表している。明らかに、例えば、T種がQにグラフト化してそれぞれTとQを生成する、または、T種がQにグラフト化してTとQを生成するなど、可能なグラフト反応の他のあらゆる種類の組み合わせが存在する。
【0078】
実験結果は、T-Q縮合(グラフト化)が、本発明によって記載される限定において好ましい反応であることを示唆している。図5から分かるように、29Si-29Si INADEQUATE NMRスペクトルは、Q-QとQ-Tの相関に関連する明確なシグナルを示しているが、T-Tホモ縮合に関連するピークは検出限界を下回っている。これは、T-T縮合および/または有機官能性トリアルコキシシランビルディングブロックで作製される純粋な相重縮合種の形成ではなく、予めアセンブルされたコアへの三官能性シランのグラフト化が、支配的なT縮合メカニズムである証拠である。
【0079】
コアシェル高分子の最終重合度は、シェル前駆体との反応が完了した後の定量的29SiNMRスペクトルから、下記に従い決定され得る。
【0080】
【数4】
【0081】
ここで、AQnおよびATmは、シェル前駆体との反応が完了した後に収集された定量的な29Si NMRスペクトルから導出される(図4)。
前述の反応i)~iii)のため、DPコア、最終およびDPシェルは、f、g、およびnシェル/nコア比から直接計算され得ない。なぜなら、T-TおよびT-Q反応の相対的な重要性/選択性は事前に知られておらず、QおよびTモノマーとより高分子のhyPASコア種との相対的な反応性に依存するからである。それにもかかわらず、f、g、およびnシェル/nコアは、次式によってそれぞれの重合度に関連付けられる。
【0082】
【数5】
【0083】
ここで、ΔDPコア=DPコア、最終-DPコア、最初であり、三官能性モノマーおよび無水酢酸の添加後(図4)および添加前(図3)に収集された定量的29SiNMRスペクトルから決定される。
【0084】
本発明によるMBBは、テトラアルコキシシランベースのhyPASコアから構成される。コアアセンブリ中のf係数の選択は、DPコア、最初を決定し(DPコア、最終と同一であるクレームされた設計パラメータDPコアと混同しない)、その結果として、シェル成長前のコアのサイズ、分子量、および分岐の程度も決定する。シェルは、有機官能性トリアルコキシシランモノマーまたは、第2の(a)後続の時間的に分離された工程で(場合によっては追加のサブシェルで)成長した混合物から作成された単一のポリシロキサン層で構成される。任意選択で、シェルモノマー混合物は、少数の有機官能性ジアルコキシシランを含む。
【0085】
シェルの成長中に添加される無水酢酸の望ましい量(g係数)は、そのサイズ(ポリマー鎖の平均長)と形態を決定する。より高いg係数(g=0.75~1.25)は、直鎖状でわずかに分岐したオルガノジシロキサンシェルを生成する一方、より低いg係数(g=0.15~0.5)は、有機官能性モノマーと短いオリゴマーによるコアのエンドキャッピングに有利である。他方、低いg係数変換は、反応混合物中の比較的大量の未反応モノマー(T種)を常に伴い、これは実際の用途には望ましくない可能性があるが、必要に応じて蒸留によって除去され得る。
【0086】
本発明により包含されるMBBは、図6に示す具体的な例に示されているように、コアおよびシェルを構成する材料の量に関して、幅広い構造に及ぶ。シェル官能性に対するこの範囲の制御は、シェルおよびコアを構築するために使用される前駆体モノマーのモル量の比(nシェル/nコア)の観点で、最もよく説明され得る。一般に、nシェル/nコア比が0.2未満の場合、官能性デンドリマーと見なされ、その表面化学がコア組成によって支配される材料が生成される一方、nシェル/nコア比が0.5超の場合は、その表面化学がシェル組成によって支配される、本質的に明らかに星型ポリマー様の材料が生成される。0.2~0.5のnシェル/nコアの中間組成範囲では、その表面化学および反応性は、コアおよびシェルの化合物の両方によって決定される。任意の所与のnシェル/nコアについて、シェル種の結合モードは、29Si NMRスペクトルで観察される化学種集団に直接影響するシェル成長工程中に添加される無水酢酸の量(g係数)によって制御され得る。
【0087】
DP全体が2.0超の場合、本発明による粗MBB反応混合物中の未反応モノマー種(対応するテトラ-、トリ-、およびジアルコキシシランについてQ、T、Dとして定義される)の総量は10重量%未満であり、好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2重量%未満である。コアの後且つシェル成長工程の前に残留モノマーを蒸留除去することにより、未反応のモノマー種の量はさらに減らされ得る。本発明によるNBB加水分解生成物中の未反応のモノマー種の量は、1重量%未満である。
【0088】
有利な実施形態では、コアは、シリコンテトラアルコキシド、好ましくはTEOSまたはTMOS、またはダイナシラン(Dynasilan)40(エボニックインダストリーズ社)または同等物などのそれらの低分子市販オリゴマーに由来し、シェルは、それぞれ、単一成分のモノマー有機官能性トリアルコキシシランまたは多成分トリアルコキシシラン混合物に由来する。
【0089】
さらなる有利な実施形態では、コアは、シリコンテトラアルコキシド、好ましくはTEOSまたはTMOS、またはダイナシラン(Dynasilan)40(エボニックインダストリーズ社)または同等物などのそれらの低分子市販オリゴマーに由来し、単一成分のシェルは、モノマー有機官能性トリアルコキシシランおよびジアルコキシシランの混合物から構成される。有機官能性トリアルコキシシランをジアルコキシシランに置き換えることにより、加水分解性反応性架橋剤基Si-ORの含有量が正確に制御され得る。このようにして、より疎水性のポリジメチルシロキサン(PDMS、シリコーン)様の特性を持ち、水に対する感度が低下したMBBが取得され得、用途に特化したニーズに従い正確な特性が調整される。
【0090】
別の有利な実施形態では、シェルは、異なる有機官能性トリアルコキシシランおよび任意選択でジアルコキシシランの2以上の層から構成されるように調製される。コアおよびシェルアセンブリを一時的に分離することによってコアの上にシェルを選択的に成長させるのと同じように、有機官能性シロキサンの追加の層は、シェル成長手順を1回または複数回繰り返すことによって成長させ得る。特に好ましい実施形態では、第1のシェルは、メチル、ビニルなどの群から選択される有機官能基を有し、これらは、得られるMBB材料の疎水性および加水分解/縮合特性を制御する主な目的を果たし、最外殻層は、チオール、(BOCまたはFMOC保護)アミン、ビニル、アクリレート、ホスホン酸またはスルホン酸エステルなどの、反応性架橋、重合、および用途関連マトリックスとの境界領域適合性を支援するために選択された特定の官能基を有する。
【0091】
さらに有利な実施形態では、好ましくはカスタム適合された官能性を制御するために、コアは、例えば、金属イオンおよび遷移金属イオンまたは小分子薬物などのゲスト種の吸着/取り込みを増加させ得る選択された化学官能基を有する微量成分(モルベースで25%未満)も含むように調製される。これに特に適しているものは、テトラアルコキシシラン、好ましくはTEOS(テトラエトキシシラン)またはTMOS(テトラメトキシシラン)またはそのオリゴマー、および、特定のリガンド基(-NH、SH、-POH)または共有結合性の正または負に帯電した種(-SO3、-PO -2、COO、-NR )を有する有機官能性トリアルコキシシランからなる混合物で構成されるコアである。官能性を有するリガンド基は、好ましくは、主なテトラアルコキシド成分と保護された官能基モノマー前駆体(例えば、-NH-BOCまたは-NH-FMOC、-NH(ブチリデン)、-SOR、-PO末端トリアルコキシシラン)とのコア共アセンブリによって導入される。
【0092】
本発明により包含される新規クラスのMBBの主な利点の1つは、これらの材料が本質的にヒドロキシル種を含まない(Si-OH質量含有量0.5%未満)という事実であり、これは、従来のゾルゲルベースのハイブリッド材料よりも大幅に改善された安定性および保存性と、実質的により多くの構造制御とを提供することを意味する。実際の用途では、MBBは、非極性有機溶媒、ブレンドなどで「そのまま」使用することも、ポリマー溶融物などの疎水性マトリックスに直接組み込むこともできる。
【0093】
コアとシェルの材料の相対量は、かなりの範囲で変化し得る。有利な実施形態によれば、シェル対コアのモル比nシェル:nコアは、0.05~2.0、好ましくは0.1~1.0である。
【0094】
さらなる実施形態によれば、シェル内のT種の相対原子含有量は、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%である。
一態様によれば、MBB生成物は、水中で直接、または必要に応じて酸または塩基触媒の存在下で適切な水/溶媒系中で加水分解することにより、ナノスケールのビルディングブロックに変換される。本発明による加水分解生成物は、ナノスケールビルディングブロック(NBB)であるが、図7に概略的に示されるように、完全に制御可能なサブ構造およびカスタム適合可能な官能基を有する。最先端技術と比較して、そのような新規の加水分解生成物NBBは、改善された組成制御および実際の用途においてしばしばコスト制限成分であるシェル成分(トリ-およびジアルコキシシランを有する官能基)のより効率的な使用という利点を有する。
【0095】
さらに、MBBの有利な調製方法が概説される。hyPASコアは、コアビルドアップ反応i)に従って最初に調製され、それは、TEOSやTMOSなどのシリコンテトラアルコキシドを、触媒の存在下で、選択された準化学量論的な量のfの無水酢酸と混ぜ合わせ、その混合物を、120~140℃の範囲の典型的な反応温度に加熱する。機構的には、無水酢酸は最初に律速段階で遊離アルコキシ基と反応して、アセトキシ中間体(式i)と第1の分子の酢酸エステル反応副産物とを形成する。第2の工程(式i)では、アセトキシ中間体が、次に、モノマー、オリゴマー、または既存のhyPAS分子の第2のアルコキシ基と反応して、M-O-M(この場合はSi-O-Si)結合と第2の酢酸エステル副産物分子とを形成する。最初は、出発材料(テトラアルコキシドおよび無水酢酸)の濃度が高く、これは、反応速度が高く、酢酸エステルが反応混合物中で急速に蓄積していることを意味する。したがって、反応の開始に続いて、出発物質およびhyPAS一次反応生成物の両方よりも著しく低い沸点を有する酢酸エステル副生成物形成が沸騰し得る。反応が進行するにつれて、ますます多くのシロキサン結合が形成され、平均hyPASコアサイズ、分子量、したがってDPコアが最初に増加する。f係数が高くなると、NMR化学種もQが高くなる方向に進展する。無水酢酸は出発混合物において準化学量論的な量で使用されるため、ある時点で使い果たされ、反応は自己終了する。また、反応は出発物質に対して完全に化学量論的であるため、反応の進行、またはより技術的には重合度DPコア、最初はf係数に正比例し、DPシェルおよびΔDPコアの統計的に重み付けされた合計はg係数に正比例する。これは、コアおよびシェルの成長が時間的に分離され、互いに独立して制御され得ることを意味する。
【0096】
コアアセンブリが完了し、酢酸エステルの蒸留が停止すると、有機官能性トリアルコキシシラン化合物または混合物、および任意選択でさらに有機官能性ジアルコキシシランまたは混合物と、シェル重合に必要な選択された準化学量論的な量(g係数)の無水酢酸とを、同一の反応混合物に撹拌を続けながら温度で少なくとも1回の添加、また任意選択で複数回の続く制御された添加をすることによって、有機官能性シロキサンシェルでエンドキャップおよび/または過成長される。添加中または添加直後に、追加の酢酸エステル反応副生成物の蒸留が再開される。有機官能性トリアルコキシシランおよびジアルコキシシランは、無水酢酸反応に使用可能なアルコキシ基を3つおよび2つしか含まないため、有効なg係数が所与の特定のシェルまたはサブシェルの混合物に調整される必要があることに留意されたい。総シェルシランモノマーに対する準化学量論量的な無水酢酸の比はg係数として定義され、典型的には、DPシェルが0.3~2.5の範囲にとどまるように選択される。本発明によれば、シェル中のトリアルコキシシランベースのT種のモル分率は、少なくとも5%、10%、好ましくは少なくとも20%でなければならない。
【0097】
さらに有利な実施形態では、多成分シェル構造が、異なる有機官能性トリアルコキシシランおよび任意選択でジアルコキシシランモノマーを用いてシェル添加手順を複数回繰り返すことによって堆積される。各モノマーは、好ましくは、問題のサブシェルの所望の程度の縮合を創作するのに必要なその選択された等量の無水酢酸とともに添加される。
【0098】
Moellerらによって報告されたhyPASに関する最初に公開された研究(Macromolecules 2006,39,1701~1708)から知られているように、重合度/f係数は、単一成分のテトラアルコキシシラン化合物について、それぞれ約2.5/1.25の値に限定されている。その説明は、DP/fが増加するにつれて、純粋なhyPASコアが、より多くのM-O-M結合が形成されて成長し続けるという事実にある。ある時点で、ほとんどの低分子種が反応しなくなった状況に到達し、それ以降は、hyPASの樹状アームが追加の縮合反応によって結合するだろう。これは、そのような化合物の粘度がそれぞれ2.2/1.1を超えるDP/f値で劇的に増加する理由を説明し、かなりの範囲のアクセス可能な液体材料の粘度にもつながる。Moellerの方法を使用して調製された単一前駆体TEOS hyPASモデル化合物の場合、1.3超のf係数は、もはや溶解しない固体の三次元架橋生成物になる。本発明によるコアシェルMBBも、f係数およびg係数の合計(DP全体)に直接関連している一般的な限定事項でサイズが限定されている。Moellerによる元のモデルシステムと同じロジックに従って、追加の無水酢酸でhyPASコアに三官能性有機官能性トリアルコキシシランをグラフトすることによりMBBが成長する。有機官能性トリアルコキシシランモノマーがグラフトされ、g係数の増加とともに段階T0→T1→T2→T3に変換されると、純粋なhyPAS成分について同一状況が発生する。すなわち、ほとんどのモノマーおよび小分子種が反応し、形成される新しい結合が残留アルコキシ基を介して2つのアームを結合している可能性が統計的に高くなる。実験的研究では、所与のf係数のコアがさらにコアシェルMBBに変換されるとともにg係数が着実に増加すると、粘度において同じ急激な増加が観察され、最終的には、完全に三次元的に架橋されたゴムまたはゲル状の材料の形成に至る。
【0099】
粘度に関する反応生成物の特性評価は、例えば、ASTM E2975-15:「同心円筒回転粘度計の校正のための標準試験方法(Standard Test Method for Calibration of Concentric Cylinder
Rotational Viscometers)」による円筒回転粘度計などの標準化された粘度測定によって容易に分析される。シュタウディンガー(Staudinger)タイプのキャピラリー粘度計や最新の動的粘度測定法など、他の粘度試験方法も可能である。
【0100】
コアおよびシェルの両方についての分子前駆体およびDPに関しての反応生成物の特性評価は、コアおよびシェルの化学種が定量的溶液29SiNMR測定から容易に分析される単一成分コア/単一成分シェル材料で最も容易である。より複雑な組成の場合、一般に、29Si NMRは、有機官能基特有のスペクトルシフトがあれば、コアおよびシェルの有機官能性成分を明確に分離可能である。一般的な場合(請求項1に記載の任意選択の官能性混和物を含む)の化学的に特有の分析プロトコルは、請求項1に記載のようにコアを調製し、アリコートサンプルを抜取し、それを29Si-NMR分析に供することを含む。これにより、DPコア、最初の決定が可能になり、続いて、1または複数のシェル成長工程を実行し、29Si-NMRを使用して最終材料を再度分析し、DPコア、最終、およびDPシェルを与える。
【0101】
コア成長工程での官能性シラン構成成分の混和物がゼロ(請求項2)およびその従属材料請求項(請求項9)である特定化された場合では、相対量が、それぞれQタイプおよびT、DタイプのNMRスペクトルシグネチャから直接導出できるため、最終材料の単一の29Si NMRスペクトルが、それをDPコアおよびDPシェルに関して特性評価するのに十分である。
【0102】
本発明の中心的な態様の1つは、予め形成されたコアへのシェルモノマーのグラフト化である。TEOS-コア/MTES(メチル-トリエトキシシラン)-シェルモデル化合物の2D INADEQUATE 29Si-29Si NMR研究により、Q/T、Q/T間の強いクロスピークが明らかになり、これは、官能性T種がQに直接グラフトされていることの強力な証拠である。さらに重要なことに、2D NMRスペクトルにT-Tクロスピークがないことにより、高い選択性が強調される。驚くべきことに、シェルモノマーの投与速度は、シード成長タイプのコアシェルナノ粒子との類推によって予想されるように、生成物の分布を著しく変化させなかった。これは、酢酸エステル反応生成物の蒸留速度によって測定されたシェルアセンブリ反応の速度が、三官能性シランの添加速度とはまったく無関係であることが見出されたという観察によって裏付けられている。
【0103】
合理的な反応時間をもたらすのに十分に速い反応速度を可能にするために、触媒と組み合わせた高温の使用が、非加水分解性無水酢酸化学のために必要とされる。工程b)からe)の反応温度は、70℃~170℃の範囲、好ましくは100℃~150℃の範囲、最も好ましくは120℃~140℃の範囲である。工程b)からd)の間の圧力は、0.1バール(bar)~2バールの範囲であり、好ましくは0.5バール~1.4バールの範囲であり、最も好ましくは0.9バール~1.2バールである。
【0104】
反応温度によっては、一部のモノマーと無水酢酸試薬とが沸点に近くなる。使用される触媒の種類と濃度に応じて、典型的には30分から数時間かかる各反応工程(コアおよびシェル/サブシェルの形成)では、一部の試薬が酢酸エステル副生成物と一緒に蒸留される傾向がある。これにより、選択した試薬がそれらの沸点に応じて徐々に失われ、化学量論の使用から予想される形態よりも、有効なf/g係数およびDP値が低くなったり高くなったりする。これらの損失は、使用した無水酢酸のモル量(f、g係数)と有効に形成された結合(NMR分析、酢酸エステル反応生成物の定量化)との差として定量化され得る。
【0105】
有利な実施形態(請求項6)において、反応の過程でのモノマーおよび/または無水酢酸試薬の損失は、蒸留ブリッジに接続されたいくつかの理論段数(theoretical plate)を備えた分離ステージを含む蒸留アタッチメントを反応器に装備することによって打ち消される。したがって、未使用の高沸点揮発性試薬から低沸点酢酸エステル反応副生成物を定量的に分離することができ、前者はその後反応器に直接フィードバックされる。これにより、製造方法の精度(効果的なDP値が使用された選択した試薬の量と一致)と再現性(理論対有効f、g係数の偏差が開始モノマーと反応温度などに依存)の両方が大幅に向上する。
【0106】
Moellerが最初の特許出願で報告したように、無水酢酸の非加水分解法に使用される触媒は、テトラアルコキシチタネートTi(OR)または亜鉛ジエタノレートZn(OR)のファミリーから有利に選択され、ここで、R=-CHCH、-CH(CH、-CHCHCH、-C(CHまたは-CHCHCHCHである。より最近の研究では、テトラキス(トリメチルシロキシ)チタンTi(O-Si(CHが特に適切な触媒として特定されている。触媒濃度は、一般に、MBB調製に使用されるシリコンアルコキシドの総モル量に基づいて、0.02%mol~1.5%molの範囲にある。触媒は典型的には、コアのビルドアップ工程で添加され、シェル成長工程中の追加の触媒の投与は任意選択であるが、通常は不必要である。
【0107】
有利には(請求項7)、触媒は、Ti(OR’’)またはZn(II)アルカノレートZn(OR’’)の群から選択され、ここで、R’’=-CHCH、-CH(CH、-CHCHCH、-C(CH、-CHCHCHCHであるか、触媒はTi(O-Si(CHであり、触媒量は、コア成長工程で使用される全アルコキシシラン前駆体のモルベースで0.01~1.5%である。
【0108】
要約すると、本発明は、時間的に分離された反応によって、任意選択で有機官能性ジアルコキシシランも含む有機官能性トリアルコキシシランの、hyPAS「コア」への選択的シェル成長の課題を解決し、化学量論的なコア/シェル化合物比の限定されたウィンドウ内で組成、構造、および特性に関して極めて変動性を有する官能性分子ビルディングブロック(MBB)の新しいグループを生じさせる。さらに、本発明に包含されるMBBに由来する加水分解生成物は、非常に正確さを有するナノスケールのビルディングブロック(NBB)を調製し、それらのサブナノメートルの構造および組成について制御する新しい方法を提供する。コアシェルMBBの生成のための対応する方法は、非加水分解性無水酢酸法による選択されたシリコンテトラアルコキシドまたはそのオリゴマーに主に由来するコアの調製に続いて、同じ無水酢酸反応を使用した、少なくとも有機官能性トリアルコキシシランおよび任意選択で有機官能性ジアルコキシシランを含む混合物の選択された堆積が行われるという、2または多工程の反応を含む。時間的に分離されたシェル堆積は複数回繰り返され得、複雑な多層シェル構造のアセンブリを可能にする。
【0109】
本発明の上記および他の特徴および目的、並びにそれらを達成する方法は、より明らかになり、本発明自体は、添付の図面と併せて取られる本発明の様々な実施形態の前述の説明を参照することによってよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0110】
図1】構成原子の数および有効サイズに関する分子科学およびナノ科学の大まかな分類の図。
図2】機能性ナノスケールビルディングブロック(NBB)を調製するための古典的な加水分解ゾルゲル法の限界の図。NBBの生成物分布は、溶液中の確率的事象と、さまざまなアルコキシドおよびシラン前駆体の相対反応速度によって決定されるため、制御が不十分である。
図3】シェルの成長前に収集されたコアの定量的29SiNMRスペクトル:DPコア、最初=1.87の図。
図4】TEOSベースのコアとMTESベースのシェルとを備えたコアシェルサンプルの定量的29SiNMRスペクトル:DPコア、最終=2.40、ΔDPコア=2.40-1.87=0.53、DPシェル=1.86、nシェル/nコア=0.09、DP全体=2.35の図。
図5】TEOSベースのコアとMTESベースのシェルとを備えたコアシェルサンプルの29Si-29Si INADEQUATE NMRスペクトルとその投影(nシェル/nコア=0.38、DPコア、最終=2.33、DPシェル=2.08、定量的29Si NMRからのDP全体=2.26)。ピークは、さまざまなT種とQ種との間の共有結合Si-O-Si架橋の証拠であり、対角線上のピークは、同じ種の隣接するペア(例えば、Q-QまたはQ-Q)の証拠である。異なる隣接種は、対角線の周りで対称なピークのペアとして表示される(例えば、T-QおよびQ-Tのピークのペア)。
図6a】末端の化学的官能性を示すさまざまな分子ビルディングブロックのモデルスケッチ、および官能基の相対含有量(nシェル/nコア)およびその他の定義パラメータに関する分類の図。
図6b】末端の化学的官能性を示すさまざまな分子ビルディングブロックのモデルスケッチ、および官能基の相対含有量(nシェル/nコア)およびその他の定義パラメータに関する分類の図。
図6c】末端の化学的官能性を示すさまざまな分子ビルディングブロックのモデルスケッチ、および官能基の相対含有量(nシェル/nコア)およびその他の定義パラメータに関する分類の図。
図6d】末端の化学的官能性を示すさまざまな分子ビルディングブロックのモデルスケッチ、および官能基の相対含有量(nシェル/nコア)およびその他の定義パラメータに関する分類の図。
図7】用途における本発明によるMBBの潜在的な使用の概略図。縮合および/または自己アセンブリは、均一な組成およびカスタム適合可能な表面化学を有するNBBの形成をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0111】
実施例1:nコア:nシェル=1:0.43でのTEOS/MTESコアシェルMBBの合成
i)DPコア=1.8/f=0.9を目標としたhyPASコアの製造
52g/250mmolのテトラエトキシシラン(TEOS)と0.83mlのテトラキス(トリメチルシロキシ)チタン(TEOSに対して0.75mol%)とを、蒸留ブリッジ付きの250ml丸底フラスコ内に配置した。23.2g/225mmolの無水酢酸AcOを混合物に添加し、ガラス器具のセットアップを窒素で短時間パージし、シールし、窒素圧下(バルーン)に置き、140℃の熱油浴に浸した。500rpmで撹拌しながら反応混合物を温度にした。浸漬時から約10分後、反応の開始は、蒸留管を上って行き始めた反応副生成物の酢酸エチルの加速する還流速度によって証明された。約15分後、酢酸エチルの連続流が蒸留ブリッジを通して蒸留され、捕捉容器に集められた。反応はさらに約45分間継続し、その時点で反応は停止し、酢酸エチルの蒸留の停止に対応する。1時間の総反応時間後に収集容器を取り外し、空にし、41mlの総量の収集された反応副生成物混合物をもたらした。
【0112】
ii)DPシェル=3.6/g=1.8を目標としたhyPASコア上のMTESシェルの成長
シェル成長工程では、前の工程a)からの反応混合物を同一反応温度(油浴を140℃に設定)で攪拌したままにし、19.15g/107mmolのMTES(メチルトリエトキシシラン)および19.6g/192mmolの無水酢酸AcOからなる混合物をシリンジポンプで約100分間にわたって、攪拌を続けながらゆっくりと添加した。MTES/AcO混合物の投与開始から約10~15分後、酢酸エチルの蒸留の開始が再び観察された。添加が完了した後、反応混合物を温度でさらに20分間撹拌し続け、シェル成長工程の総反応時間は約2時間であった。反応の終わりにおいて、酢酸エチルのさらなる沸騰はなく、熱源を反応容器から取り外し、混合物を室温まで冷却させた。粗生成物の収量は、32.8gの粘稠な黄色がかった油であった。シェル成長工程はまた、捕捉容器から収集された34mlの蒸留物をもたらした。
【0113】
実施例2:nコア:nシェル=1:0.15でのTEOS/VTESコアシェルMBBの合成
i)DPコア=2.4/f=1.2を目標としたhyPASコアの製造
TEOS由来のhyPASコアを、実施例1のi)と同様に、同一の触媒量、温度、および攪拌速度で調製した。合成に使用されたTEOおよびAcOの量はそれぞれ52g/250mmolおよび30.6g/300mmolであり、理論上で1.2のf因子をもたらす。総反応時間は1時間30分であり、55mlの蒸留副生成物を生成した。
【0114】
ii)g=1.12でのhyPASコア上のVTESシェルの成長
TEOS hyPASコアの過成長を、実施例1のii)と同様に調製したが、主な違いは、シェル成長に使用された官能性トリアルコキシシランの種類および量であった。したがって、7.13g/37.5mmolのビニルトリエトキシシラン(VTES)および4.32g/42mmolのAcOを30分間にわたって投与した。粗生成物の収量は、32.8gのわずかに粘稠な黄色がかった油であった。シェル成長工程はまた、捕捉容器から収集された10mlの蒸留物をもたらした。
【0115】
実施例3~9:トリアルコキシシランシェル化学によるさまざまな2成分コアシェルMMBの合成
i)hyPASコアの製造
純粋なテトラアルコキシドhyPASおよび混合コアを、実施例1のi)と同様に、同一の触媒量、温度および撹拌速度で調製した。合成に使用されるテトラアルコキシドおよび任意選択の官能性トリアルコキシシラン第2前駆体成分の量、並びに選択された量のAcOは、各実験について上記の表に記載されており、ミリモル[mmol]で示されている。総反応時間は1時間30分であった。
【0116】
ii)有機官能性トリアルコキシシランシェルの成長
第2の工程では、さまざまな有機官能性トリアルコキシシランおよびそれらの混合物に基づくシェルを、実施例1のii)に記載の一般的なプロセスに従って成長させた。正確な反応パラメータを以下の表に示す。さらに、反応生成物を、29Si NMR分光法によって特性評価し、材料パラメータ(DPコア、最初、DPコア,最終、DPコア、DPシェル、DP全体、nシェル/nコア)を、前述の式を使用して算出した。
【0117】
ここに提示された一連の実施例は、本方法の幅広い適用性と、それを介してアクセス可能な幅広い材料化学の実験的証拠とみなされる。
実施例10~12: nコア:nシェル=1:(0.25~0.3)でのTEOSコア/(MTES/DMDES)シェルMBBの合成
TEOS由来のhyPASコア材料を、実施例1のi)と同様に、同一の触媒量および攪拌速度で、140℃の湯浴において調製した。合成に使用されたTEOSおよびAcOの量はそれぞれ52g/250mmolおよび25.5g/250mmolであり、理論上で1.0のf因子(DPコア、最初=2.0)に相当する。コア形成についての総反応時間は1時間30分であった。いずれの場合もコア形成工程から回収された縮合物の量は45mlであり、コア形成工程の再現性が良好であることを示している。
【0118】
コア形成に続き、湯浴の温度を120℃に下げて、より揮発性の高いDMDESモノマーの損失を部分的に抑制し、系を15分間平衡化した。次に、実験用シリンジポンプによって、メチルトリエトキシシラン(MTES)/ジメチルジエトキシシラン(DMDES)の混合物を40分間にわたって添加することにより、シェルの成長を誘発した。以下の表は、実施例11から13について、添加された試薬の化学量論によって定義された選択されたシェル組成パラメータ(灰色の網掛けのセル)を示している。このシリーズで使用される理論上のg係数は約1.1である。
【0119】
【表1】
【0120】
得られたままの材料は、透明でわずかに黄色の油性液体であった。次に、反応容器を50mbarに排気し、撹拌を続けながら混合物を150℃に加熱し、温度/真空で40分間保持することによって、未反応のモノマーおよび無水酢酸を蒸留除去することにより、反応混合物をさらに精製した。
【0121】
実施例13~18:(TEOS/MTES)および(TEOS/VTES)コアシェルNBB由来NBB加水分解生成物のゲル化試験
標準的な加水分解配合表を使用して、実施例1で示したものと同一条件下ではあるが変化させたnシェル:nコア比および調整されたf係数を用いて調製したTEOS/MTESおよびTEOS/VTESコアシェルを、それぞれ対応するNBB加水分解生成物に変換した。NBBゾル(加水分解生成物)の調製には、以下の調製スキームを使用した:
4.32g(6.4ml)のエタノールと3.84のTEOSコア/MTESシェルとを含むNBB粗混合物を量り取り、三角フラスコ内で攪拌しながら40℃に加熱した。5分間の待機期間の後、15マイクロリットルの10%HSO、0.27mlの蒸留水を混合物に加えた。短時間の均質化期間の後、ビーカーをパラフィルムでシールし、加熱源から取り出し、周囲条件下で60時間放置した。
【0122】
その後、そのようにして得られたNBBゾルを、以下の標準プロトコルを使用してゲル化させた。7mlのNBBゾルを、100mlビーカー内で、2%メチルエチルケトンで変性させた16.3mlの無水エタノールおよび0.78mlの蒸留水で希釈した。次に、0.28mlの5.5Mアンモニア溶液を希釈ゾルに加え、混合物を5分間撹拌した。その後、活性化されたゾルを50×50×20mmの正方形のプラスチック型に移し、室温でゲル化させ、ゲル化時間を記録した。
【0123】
【表2】
【0124】
上記の実施例から、特に以下に示す比較例と比較すると、ゲル化時間がかなり速いことがわかる。さらに、それは、MTESではnシェル/nコア比にあまり依存しないが、VTES官能性材料ではnシェル/nコアが増加すると急速に増加する。
【0125】
比較例19~24:アルコキシド混合物の古典的な加水分解によって得られた(TEOS/MTES)および(TEOS/VTES)ゾルのゲル化試験
古典的な加水分解を使用して、TEOS/MTESおよびTEOS/VTESの同一の化合物混合物から標準ゾルを調製し、それらのゲル化時間を測定して、本発明によるMBB→NBBアプローチと比較した。TEO対(MTES/VTES)のモル比は、0.15~0.47の範囲の官能性シラン対TEOSモル比ウィンドウの範囲内で、上記の実施例と同様の範囲で変化した。
【0126】
ゾルを、上記の加水分解されたNBBゾルと同じ方法で調製した:4.32g(6.4ml)のエタノールとそれぞれ3.84のTEOS/MTESまたはTEOS VTES混合物のシェルを量り取り、三角フラスコ内で攪拌しながら40℃に加熱した。5分間の待機期間の後、15マイクロリットルの10%HSO、0.27mlの蒸留水を混合物に加えた。短時間の均質化期間の後、ビーカーをパラフィルムでシールし、加熱源から取り出し、周囲条件下で60時間放置した。
【0127】
ここでも、上記の実施例18~23のものと同一のゲル化プロトコルを使用した。比較実験の概要を下表に示す。
【0128】
【表3】
【0129】
すべてのサンプルは、ゲル化するために5時間以上を要し、一晩放置した。驚くべきことに、翌朝、すべてのサンプルがゲル化していた。結論として、比較すると、古典的な加水分解によって得られたゾルは、MBB→NBBゾル由来の類似体よりもはるかにゆっくりとゲル化することが明らかになる。これは、本発明に記載の方法論を使用して得られたゾルの分子スケールのビルディングブロックに対するより高度な制御に起因する。
【0130】
実施例を含む概要表:
【0131】
【表4】
【0132】
【表5】
【0133】
【表6】
【0134】
(付記)
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
[項目1]
コアシェル型構造の分子ビルディングブロックから形成される高分子液体材料を調製するための方法であって、各ビルディングブロックが多分岐ポリシロキサンコアと、前記コアに周辺において付加された官能性シロキサンシェルとから構成され、前記方法は、以下の工程:
a)少なくとも1つのシリコンテトラアルコキシドSi(OR)(Rは、最大4個の炭素原子を有する非分岐または分岐アルキル基である);および任意選択で、以下:
-1つのR’’-有機官能性トリアルコキシシランR’’-Si(OR)、および任意選択で、R,R-有機官能性ジアルコキシシランR-Si(OR)-R;または
-異なるR’’-有機官能性トリアルコキシシラン、および任意選択で、少なくとも1つのR,R-有機官能性ジアルコキシシランの混合物;
の官能性混和物を、
モノマーまたはオリゴマーの形態で、触媒の存在下、所望のDPコアに従って選択された第1の化学量論量の無水酢酸とともに反応容器に充填する工程と;
b)工程a)で提供された反応混合物を、水を含まない不活性雰囲気中で撹拌しながら加熱して所望の反応温度に到達させ、前記反応および蒸留物の流れが停止するまで、得られた酢酸エステル反応生成物を蒸留除去し、それにより前記多分岐ポリシロキサンコアを形成する工程と;
c)
-1つのR’-有機官能性トリアルコキシシランR’-Si(OR)、および任意選択で、R,R-有機官能性ジアルコキシシランR-Si(OR)-R、または
-異なるR’-有機官能性トリアルコキシシラン、および任意選択で、少なくとも1つのR,R-有機官能性ジアルコキシシランの混合物を、所望のDPシェルに従い選択された第2の化学量論量の無水酢酸とともに、任意選択で触媒の存在下、工程b)で形成された高温反応混合物に対して、撹拌を継続しながら添加して、工程b)で形成された前記コア上への前記官能性シロキサンシェルの選択的蓄積を開始し、これによりさらなる酢酸エステルが形成されて蒸留され、蒸留物の流れが再び停止するまで前記反応を継続する工程であって、
R’およびR’’は、それぞれがL-Zとして表すことができる、独立して選択された置換基であり、
-Lは、-C-、-C-CH-、-CH-CH-C-CH-および-[(CH)-(n=0、1、2、3、4)からなる群から選択されるリンカー基であり;
-Zは、以下:
【化15】

から選択される末端官能基であり、
は、-H、-CH、-C、-C、-C10および-Cからなる群から選択され;
またはZは、-[(CH)-CH(m=0、1、2、...、11)であり;および
トリプレット(R’、R、R)と(R’’、R、R)が同一ではないという条件で、R、R、RおよびRは、-CH、-C、-C、-C11、-CH=CH、-CH-CH-Clおよび-Cからなる群から独立して選択される置換基である、
工程と;
d)任意選択で、工程c)で記載された添加および反応プロトコルを少なくとも1回繰り返すことにより、前記シェルに追加の官能性層を構築する工程と;
e)任意選択で、反応容器内の圧力を徐々に下げ、最終圧力を5~250mbarの範囲に10~120分間保持することによる減圧蒸留により、前記反応混合物中の低分子反応生成物および/または残留出発物質を除去する工程と;
f)こうして得られた高分子液体材料を冷却および単離する工程と;を備え、
工程a)からe)が1つの同一反応容器内で実行される、方法。
[項目2]
前記官能性混和物がゼロである、項目1に記載の方法。
[項目3]
Rがメチルまたはエチルである、項目1または2に記載の方法。
[項目4]
工程b)からe)の前記反応温度が、70℃~170℃の範囲、好ましくは100℃~150℃の範囲、最も好ましくは120℃~140℃の範囲であり、工程b)からd)の間の圧力が、0.1bar~2barの範囲であり、好ましくは0.5bar~1.4barの範囲であり、最も好ましくは0.9bar~1.2barの範囲である、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
[項目5]
前記シリコンテトラアルコキシドSi(OR)が、テトラエトキシシラン(TEOS)またはテトラメトキシシラン(TMOS)、またはそれらのモノマーおよびオリゴマーの混合物である、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
[項目6]
酢酸エステル反応生成物が、低沸点反応生成物が溶液中の高沸点残留反応物から分離され、これにより後者が連続的に前記反応混合物にフィードバックされるように、複数の理論段数を含む蒸留塔を介して系から除去される、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
[項目7]
前記触媒が、Ti(OR’’)、またはZn(II)アルカノレートZn(OR’’)の群から選択され、R’’=-CHCH、-CH(CH、-CHCHCH、-C(CH、-CHCHCHCHであるか、または、前記触媒が、Ti(O-Si(CHであり、前記触媒の量が、コア成長工程で使用される全アルコキシシラン前駆体のモルベースで0.01~1.5%である、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
[項目8]
R’が下記:
i)R’=-C5、-CH=CHであり、
ii)R’=L-Zであり、Lが-CH-であり、およびZ=[(CH)-CH(p=0、1、2、4、6、8、10、12、14)であり、
iii)R’=L-Zであり、L=-CHCHCH-(n-プロピル)であり、Z=-Br、-Cl、-I、-SH、-OH、-NH、-NH-(BOC)、-NH-(FMOC)、-(2-オキシラニル)、-メトキシ-(2-オキシラニル)、-N、-SOR、-PO、-アクリレート、-メタクリレート、-エタクリレート、-プロパクリレート、-ブタクリレートであり、または
iv)R’=L-Zであり、L=CHであり、Z=ビニル、-アクリレート、-メタクリレート、-エタクリレート、-プロパクリレート、-ブタクリレートである、
の群から選択され、
およびRが、同一であるとともに、-CH、-C、および-CH=CHからなる群から選択され、R=-CHおよびR=-CH=CHである、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
[項目9]
項目2に記載の方法により調製された高分子液体材料であって、前記材料が、コアシェル型構造の分子ビルディングブロックから形成され、各ビルディングブロックが多分岐ポリシロキサンコアと、前記コアに周辺において付加された官能性シロキサンシェルとから構成され、
前記材料が、0.5質量パーセント未満のヒドロキシ部分(Si-OH)を含み、
前記コアが、1.3~2.7の範囲、特に1.5~2.5の範囲の重合度DPコアを有し、
前記シェルが、R’-置換シロキサン部分、および任意選択でR1-、R2-置換シロキサン部分から形成されるとともに、0.3~2.5の範囲、特に1.0~2.3の範囲の重合度DPシェルを有し、
前記材料中の全シリコン対遊離加水分解性アルコキシのモル比が、1:1.25~1:2.75であり、
前記材料が、10~100,000cPの範囲の粘度を有し、
前記コアが、非有機官能性シロキサン部分で構成され、前記非有機官能性シロキサン部分が、
-一般式
【化16】

の非有機官能性末端結合シロキサン部分(Q化学種)
および/または
-一般式
【化17】

の非有機官能性ジシロキサン部分(Q化学種)
および/または
-一般式
【化18】

の非有機官能性トリシロキサン部分(Q化学種)
および/または
-一般式
【化19】

の非有機官能性テトラロキサン部分(Q化学種)
を含み、
前記シェルが、以下:
-一般式
【化20】

の単有機官能性末端結合シロキサン部分(T化学種)
および/または
-一般式
【化21】

の単有機官能性ジシロキサン部分(T化学種)
および/または
-一般式
【化22】

の単有機官能性トリシロキサン(T化学種)部分、
および、任意選択で、
-一般式
【化23】

の末端結合二有機官能性シロキサン(D化学種)部分
および/または
-一般式
【化24】

の二有機官能性ジシロキサン(D化学種)部分、から構成され、
R、R’、RおよびRが、項目1に定義された通りである、高分子液体材料。
[項目10]
T化学種対Q化学種の相対原子比が0.03:1~1:1、好ましくは0.03:1~0.75:1、最も好ましくは、0.05:1~0.5:1の範囲である、項目9に記載の高分子液体材料。
[項目11]
項目9または10に記載の高分子液体材料を所定量の水または所定量の水溶媒混合物と反応させることにより得られた加水分解生成物。
[項目12]
コーティングまたは接着剤配合物における、またはポリマーマトリックスへの充填剤の組み込みを媒介するためのカップリング剤としての、項目9~11のいずれか一項に記載の高分子液体材料または項目7に記載の対応する加水分解生成物の使用。
[項目13]
有機官能性ゲルおよび無機/有機ナノ複合材料、並びにそれに由来するエアロゲルおよびキセロゲルの調製のための、ゾルゲル化学技術の前駆体としての、項目9~11のいずれか一項に記載の高分子液体材料または項目7に記載の対応する加水分解生成物の使用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図7