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特開2024-156767エポキシ配合物用のモノアルキル化ジアミン:エポキシ系用の新規硬化剤
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  • 特開-エポキシ配合物用のモノアルキル化ジアミン:エポキシ系用の新規硬化剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156767
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】エポキシ配合物用のモノアルキル化ジアミン:エポキシ系用の新規硬化剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/50 20060101AFI20241029BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C08G59/50
C08G59/24
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024121128
(22)【出願日】2024-07-26
(62)【分割の表示】P 2020003054の分割
【原出願日】2020-01-10
(31)【優先権主張番号】62/791,204
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケブラー
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ガミニ アナンダ ヴェディジ
(72)【発明者】
【氏名】プリテッシュ ジー パテル
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミー シュネック
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン デ ナルド
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン カンツラー
(57)【要約】
【課題】従来技術の欠点を解消するエポキシ樹脂系およびエポキシ樹脂系の製造方法を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂系は、エポキシ樹脂と、モノアルキル化ジアミンとを含み、さらに第2のアミンを含有していてよい。エポキシ樹脂系の製造方法は、エポキシ樹脂をモノアルキル化ジアミンと合わせることを含む。
【効果】本発明のモノアルキル化ジアミンは、エポキシ樹脂組成物の所望の加工特性および硬化物特性を高め、その際、環式脂肪族アミン系硬化剤で通常見られる、硬化物の機械的性質への不利な影響を与えない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、式(I)
【化1】
[式中、Zは、シクロヘキシル、C~C10アルキル置換シクロヘキシル、フェニル、C~C10アルキル置換フェニル、メチレンビス(シクロヘキシル)およびC~C10アルキル置換メチレンビス(シクロヘキシル)からなる群から選択され、aおよびbは個別に、0または1であり、かつYは、C~C10アルキルである]のモノアルキル化ジアミンとを含む、エポキシ樹脂系。
【請求項2】
前記モノアルキル化ジアミンが、構造:
【化2】
[式中、R、R、R、R、R、およびRのそれぞれは、H、CH、またはC~Cアルキル基であり;nは、0または1であり;かつAは、Hであり、かつBは、C~C10アルキルであるか、またはBは、Hであり、かつAは、C~C10アルキルである]により表される、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項3】
前記モノアルキル化ジアミンが、
i)構造:
【化3】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化イソホロンジアミン;
ii)構造:
【化4】
[式中、Bは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化イソホロンジアミン;
iii)構造:
【化5】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化メチルシクロヘキシルジアミン;
iv)構造:
【化6】
[式中、Bは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化メチルシクロヘキシルジアミン;および
v)構造:
【化7】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化シクロヘキシルジアミン
からなる群から選択される、請求項2に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項4】
前記モノアルキル化ジアミンが、構造:
【化8】
[式中、RおよびRのそれぞれは、HまたはCHであり;かつAは、C~C10アルキルである]により表される、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項5】
前記モノアルキル化ジアミンが、
i)構造:
【化9】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン);および
ii)構造:
【化10】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化2,2’-ジメチル-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)
からなる群から選択される、請求項4に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項6】
前記モノアルキル化ジアミンが、構造:
【化11】
[式中、Xは、フェニル基またはシクロヘキシル基であり;かつAは、C~C10アルキルである]により表される、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項7】
前記モノアルキル化ジアミンが、
i)構造:
【化12】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化m-キシリレンジアミン;および
ii)構造:
【化13】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン
からなる群から選択される、請求項6に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂系が、硬化剤の全質量を基準として、少なくとも20質量%の前記モノアルキル化ジアミンを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂系がさらに、第一級アミンおよび第二級アミンからなる群から選択される、第2のアミンを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項10】
前記第2のアミン成分が、ポリエーテルアミン、ポリエーテルポリアミン、飽和脂肪族環ジアミン、線状脂肪族アミン、環式脂肪族アミン、多環式脂肪族アミンおよび芳香族アミンからなる群から選択される1種以上のアミン化合物を含む、請求項9に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂成分が、レソルシノール、ヒドロキノン、ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジフルオロフェニル)-メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-メタン、およびそれらの任意の組み合わせのグリシジルエーテルの群から選択される、少なくとも1種のグリシジルエーテルを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項12】
前記エポキシ樹脂成分が、次の構造:
【化14】
[式中、mは、0~25であり、かつRは、二価炭化水素基である]の少なくとも1種の二価フェノールを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項13】
前記エポキシ樹脂成分が、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド;リモネンジエポキシド;ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ピメレート;ジシクロペンタジエンジエポキシド;3,3-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,3-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキサンカルボキシレート;6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのものを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載のエポキシ樹脂系を製造する方法であって、エポキシ樹脂を、式(I)
【化15】
[式中、Zは、シクロヘキシル、C~Cアルキル置換シクロヘキシル、フェニル、C~Cアルキル置換フェニル、メチレンビス(シクロヘキシル)、およびC~Cアルキル置換メチレンビス(シクロヘキシル)からなる群から選択され、aおよびbは個別に、0または1であり、かつYは、C~C10アルキルである]のモノアルキル化ジアミン、および任意にその他の成分と合わせる、前記方法。
【請求項15】
構造用または電気用ラミネート、コーティング、キャスティング、構造部材、回路板、電気用ワニス、封入材、半導体、汎用成形粉、フィラメントワインディング管および継手、フィラメントワインディング圧力容器、低圧および高圧管および継手、低圧および高圧容器、貯蔵タンク、風力タービンブレード、自動車構造部品、航空宇宙構造部品、油およびガス浮力モジュール、リグ、ウェルプラグ、現場硬化管(CIPP)、構造用接着剤およびラミネート、複合ライナー、ポンプ用ライナー、耐食性コーティングまたは強化繊維基材をベースとする複合材料を製造するための、請求項1から13までのいずれかに記載のエポキシ樹脂系または請求項14に記載の方法により得られたエポキシ樹脂系の使用。
【請求項16】
エポキシ樹脂用のハードナーとしての、式(I)
【化16】
[式中、Zは、シクロヘキシル、C~Cアルキル置換シクロヘキシル、フェニル、C~Cアルキル置換フェニル、メチレンビス(シクロヘキシル)、およびC~Cアルキル置換メチレンビス(シクロヘキシル)からなる群から選択され、aおよびbは個別に、0または1であり、かつYは、C~C10アルキルである]のモノアルキル化ジアミンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂と、モノアルキル化ジアミンとを含むエポキシ樹脂系に関する。該エポキシ樹脂系はさらに、第2のアミンを含有していてよい。本発明は、エポキシ樹脂をモノアルキル化ジアミンと合わせることを含む、エポキシ樹脂系を製造する方法にも関する。本発明のモノアルキル化ジアミンは、エポキシ樹脂組成物の所望の加工特性および硬化物特性を高め、その際、環式脂肪族アミン系硬化剤で通常見られる、硬化物の機械的性質への不利な影響を与えない。
【背景技術】
【0002】
芳香脂肪族アミンおよび環式脂肪族アミンは、熱硬化構造用複合材料用途のためのエポキシ硬化剤として普通に使用される。硬化剤として使用される前記種類のアミンは、硬化物の最終性能を達成するのに必要不可欠である。前記種類のそれぞれの反応性アミンである、第一級または第二級アミンは、完全硬化を達成するために特定の温度で硬化される。その硬化温度は、最終使用温度を規定し、そのTにより示される。典型的には、エポキシ樹脂に高官能性硬化剤(ハードナー)を配合することは、短い可使時間、高い配合粘度および硬化後の脆弱部をまねく。これらの不利な作用は全て、該硬化剤の高官能性により引き起こされる。逐次重合において、その重合度X、および反応の臨界進行度(ゲル化点-p)が、該重合系の官能性に直接結び付いていること:X=2/(2-pfave)は周知であり、ここで、pは、反応の進行度であり、かつfaveは、平均官能性であり、かつp=2/faveである。したがって、高い平均官能性を有する系は、低い平均官能性を有するものよりも低い重合度で、高い分子量およびゲルに達することになる。米国特許第4293682号明細書には、硬化剤としての四官能性および五官能性アミンの使用が開示されている。
【0003】
低官能性の硬化剤が、より長いポットライフを提供する一方で、これらは、低い架橋密度を有する最終的な硬化網目構造ならびに劣悪な熱的および機械的性質をまねく。最終的な部品特性に必要とされる高官能性モノマーと、高められた可使時間のための低官能性モノマーとの間のこの逆相関は、エポキシ樹脂の配合において妥協を要する。官能性が低い一部の材料では、構造用途に使用するための丈夫なポリマー網目構造が構築されない。最終的な部品特性に悪影響を及ぼすことなく可使時間を高めるためにできることは何でも有利であろう。官能性の低い一部の材料では、構造用途に使用するための丈夫なポリマー網目構造が構築されない。
【0004】
エポキシ樹脂系は、複合材を含め、多様な構造部品の製造において使用される。エポキシ樹脂系から製造することが評価されている物品の例は、複合管、圧力容器、自動車部品および風車ブレードを含む。そのような部品の成形加工は、殊に複雑な製造プロセスが使用される場合に、効率的な製造のための多数の要件を含む。これらのプロセスは、レジンインフュージョン、レジントランスファー成形、フィラメントワインディングおよび大型キャスティングを含むが、しかしこれらに限定されるものではない。当該技術における必要性の1つは、該物品の比較的厚い部分における繊維を湿潤させるための、該エポキシ樹脂系の比較的長い可使時間である、それというのも、そのような部分において、そのファブリック層は、真空または圧力下で極めて密であり、かつ該樹脂は、該ファブリック層に容易に浸透することができないからである。該物品の加工中に温度が上昇する場合には、この条件下で該環式脂肪族アミンの粘度は増加し、繊維湿潤は困難になり、かつその成形加工された部品における機械的性質の損失の結果となる。
【0005】
付加的に、加工中の粘度の早期の増加は、成形加工された部品の硬化後により高い収縮をまねきうる。硬化されたエポキシ樹脂の収縮は、応力を生じさせて、加工中に粘度の増加のために複合材中で増大する。該応力は時には、該物品中の層間割れをまねき、その際に機械的性質の損失が結果として生じる。その配合物の比較的短いポットライフは、より長い部品の加工中の粘度を比較的速く、かつ加工中に該物品中に蓄積する応力の量を比較的大きく増加させる。
【0006】
より高い性能を達成する先進複合材のためには、多官能性樹脂および硬化剤がしばしば使用される。該多官能性材料は通常、極めて高い出発粘度を有する。その配合粘度を低下させるために、熱が普通に使用される。このアプローチは、その反応性を増加させ、したがって、取扱いの問題を引き起こすことがある。該複合部品は、より大きく、かつより厚くなっているので、該配合粘度は、強化材(例えばガラス、カーボン、ケブラー、天然繊維等)の最適な湿潤を有するように、より低くする必要がある。
【0007】
複合材加工のための系は、該樹脂系がその基材の繊維およびファブリックを満足して流れるには粘稠になりすぎる前に、強化用繊維プリフォームを樹脂で完全に湿潤できているように、十分に低い初期混合粘度およびその含浸温度での十分に低い粘度増加の速度を必要とする。低い初期粘度および長いポットライフの要件はより厳しくなっている、それというのも、該複合部品のサイズが増加しているからである。
【0008】
上記を鑑みて、その配合物のより長いポットライフ“可使時間”を有することで、その加工中に補給される材料を低下させ、かつ改善された繊維湿潤と合わせた場合、従来技術の樹脂組成物と比較して機械的性質を高めるエポキシ樹脂系を製造するために、改善された硬化剤の必要性が当該技術にはある。
【0009】
イソホロンジアミン(IPD)のジアルキル化は、文献(米国特許第7074963号明細書(US 7,074,963 B2))において公知である。IPDのモノアルキル化構造体は、該ジアルキル化IPD生成物のための中間体である。米国特許第6403752号明細書(US 6,403,752 B1)および同第7074963号明細書に報告されたジアルキル化IPDの最終組成は、モノアルキル化IPDの存在を全く有していない。本発明において、モノアルキル化IPDおよびその他のモノアルキル化環式脂肪族ジアミンは、エポキシ硬化剤として使用されて、IPDのポットライフを延長するが、このことはいずれの従来技術にも見出されない。加えて、本発明におけるモノアルキル化IPD生成物の異性体のタイプは、米国特許第7074963号明細書(US 7,074,963 B2)においてジアルキル化生成物を製造することが提案されたモノアルキル化IPDとは異なる。その非アルキル化(未変性)IPDは、より高いTgおよびより短いポットライフを示す。該ジアルキル化IPD生成物は、該エポキシ樹脂での完全硬化まで進行しない。モノアルキル化IPDおよびその他のモノアルキル化環式脂肪族ジアミンを用いる本発明のアプローチは、その高いTgを維持しながら、ポットライフの優れたバランスをもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4293682号明細書
【特許文献2】米国特許第7074963号明細書
【特許文献3】米国特許第6403752号明細書
【特許文献4】国際公開第2009/089145号
【特許文献5】米国特許第2890194号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Y. Tanaka, “Synthesis and Characteristics of Epoxides”, C. A. May, ed., Epoxy Resins Chemistry and Technology (Marcel Dekker, 1988)中
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、上記の従来技術の欠点を解消するエポキシ樹脂系および硬化剤ならびにその製造方法を提供することにあった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、特許請求の範囲に記載のエポキシ樹脂系および硬化剤ならびにその製造方法によって解決された。
【0014】
発明の概要
モノアルキル化芳香脂肪族および環式脂肪族ジアミンが、典型的な環式脂肪族アミン系硬化剤に比べて、硬化された複合材製品の機械的性質を全体的に改善する、加工中の(樹脂浴および繊維湿潤における)十分な可使時間を提供するエポキシ樹脂組成物のための、主硬化剤として使用できることが見出された。環式脂肪族アミンを用いる主な欠点は、それらが短いポットライフを有することである。該ポットライフを工業的に測定する別の方法は、配合粘度が2倍になる時間である。これは、該系の可使寿命の良好な尺度を与える。モノアルキル化環式脂肪族ジアミンを主硬化剤として用いることで、該環式脂肪族ジアミンの2倍のポットライフを達成することができ、かつ現行の環式脂肪族アミン硬化剤よりも有意に低い温度で完全硬化することができる。試験結果は、モノアルキル化環式脂肪族ジアミンを主硬化剤として用いることで、該硬化されたエポキシ組成物における良好な機械的、熱的および化学的な性能を維持し、かつその他の環式脂肪族アミンの機械的性質を超えることを示す。加えて、モノアルキル化環式脂肪族ジアミンを含有する配合物は、現行の環式脂肪族アミン硬化剤を用いて硬化されたエポキシ組成物と比較して、より低い粘度、より長いポットライフ、低温T展開および硬化中のより低い発熱を示す。モノアルキル化環式脂肪族ジアミンは、共硬化剤として第一級および第二級アミンとの組み合わせで使用して、所望の性質をさらに高めることもできる。モノアルキル化環式脂肪族ジアミンのより低い粘度は、繊維湿潤を補助する。複合材用途(フィラメントワインディング管および継手、ウィンドブレード、高圧容器、構造用ラミネート、自動車車体部品、航空宇宙産業等)におけるモノアルキル化環式脂肪族ジアミンを用いた予備的な結果は、かなり有望である。
【0015】
本発明の態様は、エポキシ樹脂と、式(I)
【化1】
[式中、Zは、シクロヘキシル、C~C10アルキル置換シクロヘキシル、フェニル、C~C10アルキル置換フェニル、メチレンビス(シクロヘキシル)、およびC~C10アルキル置換メチレンビス(シクロヘキシル)からなる群から選択され、aおよびbは個別に、0または1であり、かつAは、C~C10アルキルである]のモノアルキル化ジアミンとを含む、エポキシ樹脂系である。該モノアルキル化ジアミンは、モノアルキル化IPD、モノアルキル化PACM、モノアルキル化DMPACM、モノアルキル化MXDA、モノアルキル化シクロヘキシルジアミン、およびモノアルキル化メチルシクロヘキシルジアミンから選択される、モノアルキル化環式脂肪族ジアミンまたはモノアルキル化芳香脂肪族ジアミンを含む。
【0016】
図1は、イソホロンジアミン(IPD)を含むエポキシ樹脂組成物およびモノアルキル化イソホロンジアミン(AIPD)を含むエポキシ樹脂組成物についての40℃での粘度プロファイルを示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】非アルキル化IPDを含むエポキシ樹脂組成物およびモノアルキル化IPDを含むエポキシ樹脂組成物についての40℃での粘度プロファイルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
次の定義および省略形は、当業者が本発明の詳細な説明を理解するのを助けるために提供される。
IPD ― イソホロンジアミン
PACM ― 4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)
MXDA ― m-キシリレンジアミン
DMPACM ― 2,2’-ジメチル-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)
水素化TDA ― メチルシクロヘキシルジアミン
CHONE ― シクロヘキサノン
MEK ― メチルエチルケトン
ISO ― イソホロン。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明のエポキシ樹脂系は、エポキシ樹脂と、式(I)
【化2】
[式中、Zは、シクロヘキシル、C~C10アルキル置換シクロヘキシル、フェニル、C~C10アルキル置換フェニル、メチレンビス(シクロヘキシル)、およびC~C10アルキル置換メチレンビス(シクロヘキシル)からなる群から選択され、aおよびbは個別に、0または1であり、かつYは、C~C10アルキルである]のモノアルキル化ジアミンとを含む。
【0020】
該モノアルキル化ジアミンは好ましくは、対応するジアミンを、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンまたは脂肪族アルデヒド、例えばアセトアルデヒドと反応させ、引き続き水素化するか、または該ジアミンをハロゲン化アルキルと反応させることによって、得ることができる。したがって、Yは好ましくは、それぞれのケトン、アルデヒドおよびハロゲン化アルキルに由来する、シクロヘキシル基、第二級ブチル基、トリメチルシクロヘキシル基、またはイソプロピル基であってよい。
【0021】
本発明の好ましい一実施態様において、該モノアルキル化ジアミンは、構造:
【化3】
[式中、R、R、R、R、R、およびRのそれぞれは、H、CH、またはC~Cアルキル基であり、nは、0または1であり、かつAは、Hであり、かつBは、C~C10アルキルであるか、またはBは、Hであり、かつAは、C~C10アルキルである]により表される。該モノアルキル化ジアミンは好ましくは、該ジアミンを、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンまたは脂肪族アルデヒド、例えばアセトアルデヒドと反応させ、引き続き水素化するか、または該ジアミンをハロゲン化アルキルと反応させることによって、得ることができる。したがって、AまたはBは好ましくは、それぞれのケトン、アルデヒドおよびハロゲン化アルキルに由来する、シクロヘキシル基、第二級ブチル基、トリメチルシクロヘキシル基、またはイソプロピル基であってよい。
【0022】
構造(II)の好ましい実施態様において、該モノアルキル化ジアミンは、構造:
【化4】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化イソホロンジアミン;
構造:
【化5】
[式中、Bは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化イソホロンジアミン;
構造:
【化6】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化メチルシクロヘキシルジアミン;
構造:
【化7】
[式中、Bは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化メチルシクロヘキシルジアミン;および
構造:
【化8】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化シクロヘキシルジアミン
からなる群から選択される。
【0023】
本発明の好ましい別の実施態様において、該モノアルキル化ジアミンは、構造:
【化9】
[式中、RおよびRのそれぞれは、HまたはCHであり、かつAは、C~C10アルキルである]により表される。該モノアルキル化ジアミンは好ましくは、該ジアミンを、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンまたは脂肪族アルデヒド、例えばアセトアルデヒドと反応させ、引き続き水素化するか、または該ジアミンを、ハロゲン化アルキルと反応させることによって得ることができる。したがって、Aは好ましくは、それぞれのケトン、アルデヒドおよびハロゲン化アルキルに由来する、シクロヘキシル基、第二級ブチル基、トリメチルシクロヘキシル基、またはイソプロピル基である。
【0024】
構造(VIII)のさらに好ましい実施態様において、該モノアルキル化ジアミンは、構造:
【化10】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン);および
構造:
【化11】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化2,2’-ジメチル-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)
からなる群から選択される。
【0025】
本発明の好ましい別の実施態様において、該モノアルキル化ジアミンは、構造:
【化12】
[式中、Xは、フェニル基またはシクロヘキシル基であり、かつAは、C~C10アルキルである]により表される。該モノアルキル化ジアミンは好ましくは、該ジアミンを、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンまたは脂肪族アルデヒド、例えばアセトアルデヒドと反応させ、引き続き水素化するか、または該ジアミンをハロゲン化アルキルと反応させることによって得ることができる。したがって、Aは好ましくは、それぞれのケトン、アルデヒドおよびハロゲン化アルキルに由来する、シクロヘキシル基、第二級ブチル基、トリメチルシクロヘキシル基、またはイソプロピル基であってよい。
【0026】
構造(XI)の好ましい一実施態様において、該モノアルキル化ジアミンは、構造:
【化13】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化m-キシリレンジアミン;および
構造:
【化14】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン
からなる群から選択される。
【0027】
該エポキシ樹脂系は、1種以上のエポキシ樹脂を含んでいてよい。好ましくは、該エポキシ樹脂系は、1種のみのエポキシ樹脂を含む。同様に、該エポキシ樹脂系は、式(I)の1種以上の化合物を含んでいてよい。好ましくは、該エポキシ樹脂系は、式(I)の1種のみの化合物を含む。
【0028】
一実施態様において、該エポキシ樹脂系は、硬化剤の全質量を基準として、1質量%~99質量%の該モノアルキル化ジアミンを含む。好ましくは、該エポキシ樹脂系は、硬化剤の全質量を基準として、少なくとも20質量%、より好ましくは少なくとも40質量%、よりいっそう好ましくは少なくとも60質量%および特に好ましくは少なくとも80質量%の該モノアルキル化ジアミンを含む。
【0029】
好ましくは、該エポキシ樹脂系は、硬化剤の全質量を基準として、20~100質量%の該モノアルキル化ジアミン、0~50質量%のその非アルキル化ジアミンおよび0~30質量%のそのジアルキル化ジアミンを含む。
【0030】
本発明の別の態様は、エポキシ樹脂系を製造する方法であって、前記方法は、エポキシ樹脂を、式(I)
【化15】
[式中、Zは、シクロヘキシル、C~Cアルキル置換シクロヘキシル、フェニル、C~Cアルキル置換フェニル、メチレンビス(シクロヘキシル)、およびC~Cアルキル置換メチレンビス(シクロヘキシル)からなる群から選択され、aおよびbは個別に、0または1であり、かつYは、C~C10アルキルである]のモノアルキル化ジアミン、および任意にその他の成分と合わせることを含む。
【0031】
該エポキシ樹脂の、モノアルキル化ジアミンに対する質量比は、好ましくは1:0.05~1:0.95である。さらに好ましい実施態様において、該質量比は1:0.3~1:0.6である。
【0032】
該エポキシ樹脂系は好ましくはさらに、第2のアミンを含んでいてよい。第2のアミンは、第一級アミンおよび第二級アミンからなる群から選択される。第2のアミンは好ましくは、ポリエーテルアミン、ポリエーテルポリアミン、飽和脂肪族環ジアミン、線状脂肪族アミン、環式脂肪族アミン、多環式脂肪族アミン、および芳香族アミンからなる群から選択される、1種以上のアミン化合物を含む。
【0033】
好ましくは、該ポリエーテルアミンは、式:HNCH(CH)CH-[OCHCH(CH)]NHを有していてよく、かつxは、2~70である。好ましくは、第2のアミンは、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンおよびポリエーテルアミン:HNCH(CH)CH[OCHCH(CH)]2.5NHの混合物を含んでいてよい。
【0034】
好ましくは、変性アミン化合物、例えばマンニッヒ塩基、ポリアミド化合物、アミン-エポキシ付加物、およびそれらの組み合わせは、本明細書に記載されるようなモノアルキル化ジアミン化合物を用いる使用のための共硬化剤として使用することができる。
【0035】
好ましくは、該エポキシ樹脂は、脂肪族グリコール、環式脂肪族グリコール、トリオール、ポリオール、ポリグリコール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物のポリグリシジルエーテルを含んでいてよい。該エポキシ樹脂系はさらに、ポリオールのポリアクリレートエステルまたはポリメタクリレートエステルを含んでいてよい。
【0036】
図1を参照して、非アルキル化生成物(IPD)を含んでいるエポキシ樹脂組成物についての40℃での粘度プロファイルが、モノアルキル化生成物を含んでいるエポキシ樹脂組成物についての粘度プロファイルと比較される。該組成物の反応性の時間(分)は、アルキル化の化学的性質と共に有意に増加している。
【0037】
該エポキシ樹脂は、単一樹脂からなっていてよく、または相互に相溶性のエポキシ樹脂の混合物であってよい。該エポキシ樹脂は、二官能性エポキシ樹脂、例えば、ビスフェノール-Aおよびビスフェノール-F樹脂を含んでいてよいが、しかしこれらに限定されない。本明細書において利用されるような、多官能性エポキシ樹脂とは、1分子あたり2個以上の1,2-エポキシ基を有する化合物をいう。このタイプのエポキシド化合物は、当業者に周知であり、かつY. Tanaka, “Synthesis and Characteristics of Epoxides”, C. A. May, ed., Epoxy Resins Chemistry and Technology (Marcel Dekker, 1988)中に記載され、これは本明細書で参照することによりその完全な形で援用される。
【0038】
使用に適したエポキシ樹脂の1つの種類は、二価フェノールのグリシジルエーテルを含め、多価フェノールのグリシジルエーテルである。好ましいのは、次のもののグリシジルエーテルである:レソルシノール、ヒドロキノン、ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジフルオロフェニル)-メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン(ビスフェノール-Aとして商業的に公知)、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-メタン(ビスフェノール-Fとして商業的に公知であり、かつ様々な量の2-ヒドロキシフェニル異性体を含みうる)等、またはそれらの任意の組み合わせ。付加的に、式(XIV)の構造のアドバンス法二価フェノールも、本開示において好ましい:
【化16】
[式中、mは、0~25であり、かつRは、二価フェノールの二価炭化水素基、例えば上記で挙げた二価フェノールの二価炭化水素基である]。
【0039】
式(1)による材料は、二価フェノールおよびエピクロロヒドリンの混合物を重合することによるか、または該二価フェノールのジグリシジルエーテルと該二価フェノールとの混合物を進める(advancing)ことによって製造することができる。任意の特定の分子中で、mの値は整数であるのに対し、該材料は常に、必ずしも整数ではないmの平均値により特徴付けることができる混合物である。0および約7の間のmの平均値を有するポリマー材料が、本開示の一態様において使用することができる。その他の実施態様において、該エポキシ樹脂は、2,2′-メチレンジアニリン、4,4′-メチレンジアニリン、m-キシレンジアニリン、ヒダントイン、およびイソシアネートの1種以上からのポリグリシジルアミンであってよい。
【0040】
該エポキシ樹脂は好ましくは、環式脂肪族(脂環式)エポキシドであってよい。特に好ましい環式脂肪族エポキシドは、ジカルボン酸の環式脂肪族エステルのジエポキシド、特にビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド;リモネンジエポキシド;ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ピメレート;ジシクロペンタジエンジエポキシド;および適したその他の環式脂肪族エポキシドである。ジカルボン酸の環式脂肪族エステルの適したその他のジエポキシドは、例えば、国際公開第2009/089145号(WO 2009/089145 A1)に記載されており、これは本明細書によって参照することによりその完全な形で援用される。
【0041】
特に好ましいその他の環式脂肪族エポキシドは、3,3-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,3-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキサンカルボキシレート;6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;および3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレートである。適したその他の3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートは、例えば、米国特許第2890194号明細書に記載されており、これは本明細書によって参照することによりその完全な形で援用される。その他の実施態様において、該エポキシ樹脂は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラヒドロフランまたはそれらの組み合わせからのポリオールポリグリシジルエーテルを含んでいてよい。
【0042】
別の態様において、ノボラック樹脂のグリシジルエーテルである、エポキシノボラック樹脂を、本開示による多官能性エポキシ樹脂として使用することができる。さらに別の態様において、少なくとも1種の該多官能性エポキシ樹脂は、ビスフェノール-A(DGEBA)のジグリシジルエーテル、DGEBAのアドバンス法の変型またはより高い分子量の変型、ビスフェノール-Fのジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、またはそれらの任意の組み合わせである。DGEBAのより高い分子量の変型または誘導体は、過剰のDGEBAをビスフェノール-Aと反応させて、エポキシを末端基とする生成物を生じる、アドバンス法により製造される。そのような生成物のエポキシ当量(EEW)は、約450~3000以上の範囲である。これらの生成物は室温で固体であるので、それらはしばしば、固形エポキシ樹脂と呼ばれる。
【0043】
DGEBAまたはアドバンス法DGEBA樹脂は、それらの低コストおよび高い性能特性の組み合わせのために、構造用配合物にしばしば使用される。約174~約250、およびより普通に約185~約195の範囲のEEWを有する市販グレードのDGEBAは、容易に入手可能である。これらの低い分子量で、該エポキシ樹脂は、液体であり、かつしばしば液状エポキシ樹脂と呼ばれる。たいていのグレードの液状エポキシ樹脂は、わずかにポリマーであることが当業者により理解される、それというのも、純粋なDGEBAは174のEEWを有するからである。またアドバンス法により通常製造される、250~450のEEWを有する樹脂は、半固形エポキシ樹脂と呼ばれる、それというのも、それらは、室温で固体と液体の混合物であるからである。固体をベースとする約160~約750のEEWを有する多官能性樹脂は、本開示において有用である。別の態様において、該多官能性エポキシ樹脂は、約170~約250の範囲内のEEWを有する。
【0044】
その最終使用の用途に応じて、本開示の組成物の粘度を、該エポキシ樹脂を変性することにより低下させることは有益でありうる。少なくとも1種の多官能性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂はさらに、単官能性エポキシドを含んでいてよい。モノエポキシドの好ましい例は、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシドおよびフェノール、クレゾール類、tert-ブチルフェノール、その他のアルキルフェノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール、C~C14アルコールのグリシジルエーテル等、またはそれらの組み合わせを含むが、しかしこれらに限定されるものではない。該多官能性エポキシ樹脂は、溶液またはエマルション中に存在していてもよく、ここで、その希釈剤は、水、有機溶剤、またはそれらの混合物である。
【0045】
硬化剤
上記のように、該硬化剤は、式(I)のモノアルキル化ジアミンである。該硬化剤はさらに、第2のアミンを含んでいてよい。第2のアミンは、単一アミンまたはアミンの混合物からなっていてよい。第2のアミン中の該アミンは、第一級または第二級アミンである。
【0046】
一部の用途において、次のものは、第2のアミンとして適している:ポリエーテルジアミン、飽和脂肪族環ジアミン、線状脂肪族アミン、環式脂肪族ジアミン、多環式脂肪族アミン、芳香族アミン、およびそれらの組み合わせ。該エポキシ樹脂の、モノアルキル化ジアミンおよび第2のアミンに対する質量比は、好ましくは1:0.95:0.05である。別の実施態様において、該質量比は、好ましくは1:0.05:0.95である。ポリアミンは好ましくは、脂肪族ポリアミン、例えばジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン(N-アミン)、N,N′-1,2-エタンジイルビス-1,3-プロパンジアミン(N-アミン)、またはジプロピレントリアミン;アリール脂肪族ポリアミン、例えばm-キシリレンジアミン(mXDA)、またはp-キシリレンジアミン;環式脂肪族ポリアミン、例えば1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3-BAC)、イソホロンジアミン(IPDA)、4,4′-メチレンビスシクロヘキシルアミン(PACM)、1,2-ジアミノシクロヘキサン、または4,4′-メチレンビス-(2-メチル-シクロヘキシル-アミン);芳香族ポリアミン、例えばm-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、またはジアミノジフェニルスルホン(DDS);複素環式ポリアミン、例えばN-アミノエチルピペラジン(NAEP)、または3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン;アルコキシ基がオキシエチレン、オキシプロピレン、オキシ-1,2-ブチレン、オキシ-1,4-ブチレンであってよいポリアルコキシポリアミンまたはそれらのコポリマー、例えば4,7-ジオキサデカン-1,10-ジアミン、1-プロパンアミン,3,3′-(オキシビス(2,1-エタンジイルオキシ))ビス- (ジアミノプロピル化ジエチレングリコールANCAMINE(登録商標) 1922A)、ポリ(オキシ(メチル-1,2-エタンジイル)),α-(2-アミノメチルエチル)-ω-(2-アミノメチルエトキシ)(JEFFAMINE(登録商標) D 230、D-400)、トリエチレングリコールジアミンおよびオリゴマー(JEFFAMINE(登録商標) XTJ-504、JEFFAMINE(登録商標) XTJ-512)、ポリ(オキシ(メチル-1,2-エタンジイル)),α,α′-(オキシジ-2,1-エタンジイル)ビス(ω-(アミノメチルエトキシ))(JEFFAMINE(登録商標) XTJ-511)、ビス(3-アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン350、ビス(3-アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン750、ポリ(オキシ(メチル-1,2-エタンジイル)),α-ヒドロ-ω-(2-アミノメチルエトキシ)エーテルおよび2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(3:1)(JEFFAMINE(登録商標) T-403)、およびジアミノプロピルジプロピレングリコールの1種以上から選択することができる。JEFFAMINE(登録商標)は、Huntsman Petrochemical LLCの登録商標である。
【0047】
特に適したポリアミンは、イソホロンジアミン(IPD)、4,4′-メチレンビスシクロヘキシルアミン(PACM)、3,3′-ジメチルPACM(ANCAMINE(登録商標) 2049)、N-アミノエチルピペラジン(NAEP)、4,7-ジオキサデカン-1,10-ジアミン、1-プロパンアミン,3,3′-(オキシビス(2,1-エタンジイルオキシ))ビス- (ANCAMINE(登録商標) 1922A)、ポリ(オキシ(メチル-1,2-エタンジイル)),α-(2-アミノメチルエチル)-ω-(2-アミノメチルエトキシ)(JEFFAMINE(登録商標) D 230、D-400)、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、トリエチレングリコールジアミン(JEFFAMINE(登録商標) XTJ-504)、およびポリ(オキシ(メチル-1,2-エタンジイル)),α,α′-(オキシ(ジ-2,1-エタンジイル))ビス(ω-(アミノメチルエトキシ))(JEFFAMINE(登録商標) XTJ-511)またはそれらの混合物を含む。ANCAMINE(登録商標)は、Evonik Degussa GmbHの登録商標である。
【0048】
第2のアミンを形成するのに適した付加的なアミンは、構造(XV)
【化17】
[式中、Rは、CHCHCHNHであり;R、RおよびRは独立して、HまたはCHCHCHNHであり;かつXは、CHCHまたはCHCHCHである]の少なくとも1種以上の多官能性アミンを含むポリアミンである。一実施態様において、RおよびRは、同時にHではない。
【0049】
任意の添加剤
該複合材用のエポキシ系配合物は任意に、添加剤、例えば、(1種以上の)非反応性可塑剤、(1種以上の)充填剤、(1種以上の)加工助剤、安定剤、脱泡剤、(1種以上の)粘度調整剤、UV吸収剤、難燃剤、および/または耐衝撃性改良剤を含んでいてよいが、しかしこれらに限定されるものではない。
【0050】
任意の該ポリオールのアクリレートエステルまたはメタクリレートエステルは、該エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂各100部につきエステル0~約100部までの質量比でブレンドされる。別の実施態様において、該ポリオールのアクリレートエステルまたはメタクリレートエステルは、該エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂各100部につきエステル約5~約100部の質量比でブレンドされる。
【0051】
ナノ材料/充填剤が含まれていてよい。用語“ナノ材料”は、マルチウォールカーボンナノチューブまたはボロンニトリドナノチューブ、シングルウォールカーボン、カーボンまたはボロンニトリドナノ粒子、カーボンまたはボロンニトリドナノファイバー、カーボンまたはボロンニトリドナノロープ、カーボンまたはボロンニトリドナノリボン、ナノクレイ;細管を有するナノクレイ;層状無機粘土材料;タルク;カーボンブラック;セルロース繊維;シリカ;およびアルミナを含むが、しかしこれらに限定されない。
【0052】
本発明のエポキシ樹脂系は好ましくは、エポキシ樹脂系を製造する方法によって製造することができ、ここで、エポキシ樹脂を、式(I)
【化18】
[式中、Zは、シクロヘキシル、C~Cアルキル置換シクロヘキシル、フェニル、C~Cアルキル置換フェニル、メチレンビス(シクロヘキシル)、およびC~Cアルキル置換メチレンビス(シクロヘキシル)からなる群から選択され、aおよびbは個別に、0または1であり、かつYは、C~C10アルキルである]のモノアルキル化ジアミン、および任意にその他の成分と合わせる。
【0053】
本明細書に記載される硬化性エポキシ樹脂組成物および硬化物は、構造用および電気用のラミネート、コーティング、キャスティング、構造部材(特に航空宇宙産業用)として、およびエレクトロニクス産業用の回路板等として、その他の用途の中でも有用でありうる。本明細書に開示される硬化性エポキシ樹脂組成物は、電気用ワニス、封入材、半導体、汎用成形粉、フィラメントワインディング管および継手、フィラメントワインディング圧力容器、低圧および高圧管および継手、低圧および高圧容器、貯蔵タンク、風力タービンブレード、自動車構造部品、航空宇宙構造部品、油およびガス浮力モジュール、リグ、ウェルプラグ、現場硬化管(CIPP)、構造用接着剤およびラミネート、複合ライナー、ポンプ用ライナー、耐食性コーティング、および適したその他のエポキシ含有製品において使用されてもよい。
【0054】
該硬化性エポキシ樹脂組成物は、強化繊維基材をベースとする複合材料を形成するのに使用されてよい。該強化繊維基材は好ましくは、繊維ガラス材料の1つ以上の層であってよい。該強化用繊維基材の、該エポキシ樹脂系との接触は好ましくは、ハンドラミネーション、インフュージョンプロセス、フィラメントワインディング、プルトルージョン、レジントランスファー成形、繊維予備含浸プロセス、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される塗付プロセスを含んでいてよい。
【0055】
好ましい繊維基材は、有機または無機の繊維、天然繊維または合成繊維を含み、かつ織布またはノンクリンプファブリック、不織布、ウェブまたはマットの形態、ならびに繊維ストランド(ロービング)、またはステープルファイバーの形態で存在していてよく、これらは連続または不連続繊維、例えば繊維ガラス、炭素繊維、カーボンナノチューブ、ナノ複合繊維、ポリアラミド繊維、例えば商品名KEVLAR(登録商標)で販売されているもの、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、例えば商品名ZYLON(登録商標)で販売されているもの、超高分子量ポリエチレン繊維、例えば商品名SPECTRA(登録商標)で販売されているもの、高密度および低密度ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、セルロース繊維、天然繊維、生分解性繊維およびそれらの組み合わせから形成される。
【0056】
好ましくは、これらの繊維(織布または不織布)は、溶剤または無溶剤型の該エポキシ樹脂混合物で、標準の含浸方法によって、特にフィラメントワインディング(FW)、プルトルージョン、シートモールディングコンパウンド、バルクモールディングコンパウンド、オートクレーブ成形、レジンインフュージョン、真空補助レジントランスファー成形(VARTM)、レジントランスファー成形(RTM)、ウェット/ハンドレイアップ、真空バッグ成形、樹脂含浸、プリプレグ、繊維含浸、圧縮成形(CM)、はけ塗、吹付け、または浸漬、キャスティング、射出成形またはそれらの組み合わせによって、コーティングされてよい。
【0057】
本開示は、上記のようなアミン-エポキシ組成物を含む製造物品も含む。そのような物品は、接着剤、コーティング、プライマー、シーラント、養生剤、建設製品、フローリング製品、複合材製品、ラミネート、注封材、グラウト、充填剤、セメント質グラウト、またはセルフレベリングフローリングを含んでいてよいが、しかしこれらに限定されるものではない。付加的な成分または添加剤は、本開示の組成物と一緒に使用して、製造物品を製造することができる。さらに、そのようなコーティング、プライマー、シーラント、養生剤またはグラウトは、金属またはセメント質基材に塗付することができる。
【0058】
本発明は、式(I)
【化19】
[式中、Zは、シクロヘキシル、フェニルおよびメチレンビス(シクロヘキシル)からなる群から選択され、aおよびbは個別に、0または1であり、かつYは、C~C10アルキルである]のモノアルキル化ジアミン、または前記のようなそれらの好ましい実施態様の、エポキシ樹脂用のハードナーとしての使用にも関する。
【実施例0059】
例1~9は、本発明の硬化剤を合成する方法である。
【0060】
例1. sec-ブチル化イソホロンジアミン、モル比0.5/1.0(MEK:IPD)の合成
N-sec-ブチルイソホロンジアミンの合成は、ワンバッチプロセスである。イソホロンジアミン990.3g(5.815mol)および2-ブタノン209.7g(2.908mol)を、炭素上の5%硫化処理白金触媒7.43gを有する、2Lオートクレーブバッチ反応器に装入した。該反応器を密閉し、続いて窒素およびついで水素でパージして、全ての空気を該反応器から除去した。該反応器を水素で27.2atm(400psig)に加圧し、かつ該反応器を120~140℃に加熱した。水素取り込みの速度が遅くなった時に、その圧力は54.4atm(800psig)に増加していた。この水素化プロセスを、水素取り込みの速度が0.0007MPa/分(0.1psi/分)未満に下がるまで続けた。該反応器を周囲温度に冷却し、かつ放圧し、反応生成物をろ過して、該触媒を除去した。ロータリーエバポレーターを用いて30mmHg真空および100℃までの温度下で操作して、水を除去した。生じた反応生成物は、sec-ブチル化イソホロンジアミンであり、ガスクロマトグラフィーにより決定された組成は以下の表に示され、かつ以下の構造により表される。選択的に、同じ生成物が、炭素上の5%パラジウム触媒を用いて上記と同じ手順によって得られ、その際に変換率がわずかに相違した。
【0061】
例2. sec-ブチル化イソホロンジアミン、モル比1.0/1.0(MEK:IPD)の合成
N-sec-ブチルイソホロンジアミンの合成は、ワンバッチプロセスである。イソホロンジアミン843.0g(4.950mol)および2-ブタノン357.0g(4.950mol)を、炭素上の5%硫化処理白金触媒6.32gを有する、2Lオートクレーブバッチ反応器に装入した。該反応器を密閉し、続いて窒素およびついで水素でパージして、全ての空気を該反応器から除去した。該反応器を水素で27.2atm(400psig)に加圧し、かつ該反応器を120~140℃に加熱した。水素取り込みの速度が遅くなった時に、その圧力は54.4atm(800psig)に増加していた。この水素化プロセスを、水素取り込みの速度が0.0007MPa/分(0.1psi/分)未満に下がるまで続けた。該反応器を周囲温度に冷却し、かつ放圧し、反応生成物をろ過して、該触媒を除去した。ロータリーエバポレーターを用いて30mmHg真空および100℃までの温度下で操作して、水を除去した。生じた反応生成物は、sec-ブチル化イソホロンジアミンであり、ガスクロマトグラフィーにより決定された組成は以下の表に示され、かつ以下の構造により表される。選択的に、同じ生成物が、炭素上の5%パラジウム触媒を用いて上記と同じ手順によって得られ、その際に変換率がわずかに相違した。この場合について、該生成物のNMRスペクトルを実施し、かつ主要なモノアルキル化IPDと少量のモノアルキル化IPDとの比は、80:20であった一方で、全モノアルキル化IPDの選択率は約90%であった。
【化20】
生成物の組成:
【表1】
【0062】
例3. シクロヘキシル化イソホロンジアミン、モル比0.5/1.0(CHONE:IPD)の合成
N-シクロヘキシルイソホロンジアミンの合成は、ワンバッチプロセスである。イソホロンジアミン465.8g(2.74mol)およびシクロヘキサノン134.2g(1.37mol)を、炭素上の5%硫化処理白金触媒7.0gを有する、1Lオートクレーブバッチ反応器に装入した。該反応器を密閉し、続いて窒素およびついで水素でパージして、全ての空気を該反応器から除去した。該反応器を水素で27.2atm(400psig)に加圧し、かつ該反応器を120℃に加熱した。水素取り込みの速度が遅くなった時に、その圧力は54.4atm(800psig)に増加していた。この水素化プロセスを、水素取り込みの速度が0.0007MPa/分(0.1psi/分)未満に下がるまで続けた。該反応器を周囲温度に冷却し、かつ放圧し、反応生成物をろ過して、該触媒を除去した。ロータリーエバポレーターを用いて30mmHg真空および100℃までの温度下で操作して、水を除去した。生じた反応生成物は、シクロヘキシル化イソホロンジアミンであり、ガスクロマトグラフィーにより決定された組成は以下の表に示される。
【0063】
例4. シクロヘキシル化イソホロンジアミン、モル比1.0/1.0(CHONE:IPD)の合成
N-シクロヘキシルイソホロンジアミンの合成は、ワンバッチプロセスである。イソホロンジアミン348.9g(2.05mol)およびシクロヘキサノン201.1g(2.05mol)を、炭素上の5%パラジウム触媒5.2gを有する、1Lオートクレーブバッチ反応器に装入した。該反応器を密閉し、続いて窒素およびついで水素でパージして、全ての空気を該反応器から除去した。該反応器を水素で27.2atm(400psig)に加圧し、かつ該反応器を120℃に加熱した。水素取り込みの速度が遅くなった時に、その圧力は54.4atm(800psig)に増加していた。この水素化プロセスを、水素取り込みの速度が0.0007MPa/分(0.1psi/分)未満に下がるまで続けた。該反応器を周囲温度に冷却し、かつ放圧し、反応生成物をろ過して、該触媒を除去した。ロータリーエバポレーターを用いて30mmHg真空および100℃までの温度下で操作して、水を除去した。生じた反応生成物は、シクロヘキシル化イソホロンジアミンであり、ガスクロマトグラフィーにより決定された組成は以下の表に示される。
生成物の組成:
【表2】
【0064】
例5. トリメチルシクロヘキシル化イソホロンジアミン、モル比0.5/1.0(イソホロン:IPD)の合成
N-トリメチルシクロヘキシルイソホロンジアミンの合成は、ワンバッチプロセスである。イソホロンジアミン170.8g(1.00mol)およびイソホロン69.2g(0.50mol)をテトラヒドロフラン240gと合わせ、炭素上の5%パラジウム触媒7.2gを有する、1Lオートクレーブバッチ反応器に装入した。該反応器を密閉し、続いて窒素およびついで水素でパージして、全ての空気を該反応器から除去した。該反応器を水素で27.2atm(400psig)に加圧し、かつ該反応器を160℃に加熱した。水素取り込みの速度が遅くなった時に、その圧力は54.4atm(800psig)に増加していた。この水素化プロセスを、水素取り込みの速度が0.0007MPa/分(0.1psi/分)未満に下がるまで続けた。該反応器を周囲温度に冷却し、かつ放圧し、反応生成物をろ過して、該触媒を除去した。ロータリーエバポレーターを用いて30mmHg真空および100℃までの温度まで操作して、水およびテトラヒドロフランを除去した。生じた反応生成物は、トリメチルシクロヘキシル化イソホロンジアミンであり、ガスクロマトグラフィーにより決定された組成は以下の表に示される。
【0065】
例6. トリメチルシクロヘキシル化イソホロンジアミン、モル比1.0/1.0(イソホロン:IPD)の合成
N-トリメチルシクロヘキシルイソホロンジアミンの合成は、ワンバッチプロセスである。イソホロンジアミン132.5g(0.78mol)およびイソホロン107.5g(0.78mol)を、テトラヒドロフラン240gと合わせ、炭素上の5%パラジウム触媒3.6gを有する、1Lオートクレーブバッチ反応器に装入した。該反応器を密閉し、続いて窒素およびついで水素でパージして、全ての空気を該反応器から除去した。該反応器を水素で27.2atm(400psig)に加圧し、かつ該反応器を160℃に加熱した。水素取り込みの速度が遅くなった時に、その圧力は54.4atm(800psig)に増加していた。この水素化プロセスを、水素取り込みの速度が0.0007MPa/分(0.1psi/分)未満に下がるまで続けた。該反応器を周囲温度に冷却し、かつ放圧し、反応生成物をろ過して、該触媒を除去した。ロータリーエバポレーターを用いて30mmHg真空および100℃までの温度まで操作して、水およびテトラヒドロフランを除去した。生じた反応生成物は、トリメチルシクロヘキシル化イソホロンジアミンであり、ガスクロマトグラフィーにより決定された組成は以下の表に示される。
生成物の組成:
【表3】
【0066】
例7. sec-ブチル化3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、モル比1.0/1.0(MEK:DMPACM)の合成
N-sec-ブチル-3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンの合成は、ワンバッチプロセスである。3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン460.7g(1.93mol)および2-ブタノン139.3g(1.93mol)を、炭素上の5%硫化処理白金触媒3.46gを有する、1Lオートクレーブバッチ反応器に装入した。該反応器を密閉し、続いて窒素およびついで水素でパージして、全ての空気を該反応器から除去した。該反応器を水素で34.0atm(500psig)に加圧し、かつ該反応器を160℃に加熱した。水素取り込みの速度が遅くなった時に、その圧力は54.4atm(800psig)に増加していた。この水素化プロセスを、水素取り込みの速度が0.0007MPa/分(0.1psi/分)未満に下がるまで続けた。該反応器を周囲温度に冷却し、かつ放圧し、反応生成物をろ過して、該触媒を除去した。ロータリーエバポレーターを用いて40mmHg真空および100℃までの温度下で操作して、水を除去した。生じた反応生成物は、sec-ブチル化3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンであり、ガスクロマトグラフィーにより決定された組成は以下の表に示され、かつ以下の構造により表される。
【化21】
【0067】
生成物の組成:
【表4】
【0068】
例8. sec-ブチル化m-キシリレンジアミン、モル比1.0/1.0(MEK:MXDA)の合成
N-sec-ブチル-m-キシリレンジアミンの合成は、ワンバッチプロセスである。m-キシリレンジアミン392.3g(2.88mol)および2-ブタノン207.7g(2.88mol)を、炭素上の5%硫化処理白金触媒2.94gを有する、1Lオートクレーブバッチ反応器に装入した。該反応器を密閉し、続いて窒素およびついで水素でパージして、全ての空気を該反応器から除去した。該反応器を水素で34.0atm(500psig)に加圧し、かつ該反応器を120℃に加熱した。水素取り込みの速度が遅くなった時に、その圧力は54.4atm(800psig)に増加していた。この水素化プロセスを、水素取り込みの速度が0.0007MPa/分(0.1psi/分)未満に下がるまで続けた。該反応器を周囲温度に冷却し、かつ放圧し、反応生成物をろ過して、該触媒を除去した。ロータリーエバポレーターを用いて40mmHg真空および100℃までの温度下で操作して、水を除去した。生じた反応生成物は、sec-ブチル化m-キシリレンジアミンであり、ガスクロマトグラフィーにより決定された組成は以下の表に示され、かつ以下の構造により表される。
【化22】
【0069】
生成物の組成:
【表5】
【0070】
例9. sec-ブチル化4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、モル比1.0/1.0(MEK:PACM)の合成
N-sec-ブチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンの合成は、ワンバッチプロセスである。4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン446.6g(2.13mol)および2-ブタノン153.4g(2.13mol)を、炭素上の5%硫化処理白金触媒3.40gを有する、1Lオートクレーブバッチ反応器に装入した。該反応器を密閉し、続いて窒素およびついで水素でパージして、全ての空気を該反応器から除去した。該反応器を水素で27.2atm(400psig)に加圧し、かつ該反応器を140℃に加熱した。水素取り込みの速度が遅くなった時に、その圧力は54.4atm(800psig)に増加していた。この水素化プロセスを、水素取り込みの速度が0.0007MPa/分(0.1psi/分)未満に下がるまで続けた。該反応器を周囲温度に冷却し、かつ放圧し、反応生成物をろ過して、該触媒を除去した。ロータリーエバポレーターを用いて40mmHg真空および100℃までの温度下で操作して、水を除去した。生じた反応生成物は、sec-ブチル化4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンであり、ガスクロマトグラフィーにより決定された組成は以下の表に示され、かつ以下の構造により表される。
【化23】
【0071】
生成物の組成:
【表6】
【0072】
これらの例は、本発明の特定の態様を実証するために提供され、かつ添付の特許請求の範囲に記載の範囲を限定するものではない。
【0073】
例10. この例は、エポキシ樹脂を有するアルキル化IPD硬化剤の製造および試験を記載する。
【0074】
第1表
【表7】
【0075】
市販の環式脂肪族アミン、例えばIPD(配合物1)と、本発明のモノアルキル化およびジアルキル化生成物(配合物2~4)との比較は、第1表に報告されているとおりである。該アルキル化イソホロンジアミン(AIPD)生成物のニート粘度は、極めて低いままである。該硬化剤は、複合材用途の全エポキシ配合物粘度を低下させるのを補助する、低い粘度を有することが望ましい。IPD:MEK比(1:0.5)を有するアルキル化イソホロンジアミン(AIPD)生成物のゲル化時間は2倍になり、かつIPD:MEK比(1:1)は25℃でほぼ5倍増加した。これは、比較的大きくかつ比較的厚い複合部品を均一に加工するのに十分な時間および粘度である。
【0076】
該アルキル化イソホロンジアミン(AIPD)生成物の、エポキシ樹脂との反応性は、複合材用途に望ましい物理的、熱的および化学的性質を維持した。
【0077】
該硬化剤を、エポキシ樹脂(エポキシ当量(EEW)180)と、第1表に示された多様な化学量論比で混合するのに使用した。該液状エポキシ樹脂(LER)(EEW 180)は、EPON(登録商標) 826である。EPON(登録商標)は、Hexion Specialty Chemicals, Incの登録商標である。
【0078】
第1表に示された全ての配合物の粘度を、25℃および40℃で、ブルックフィールド粘度計RVを用いてスピンドル番号27で測定した。エポキシ樹脂組成物12gを、該粘度を測定するのに使用した。
【0079】
TECHNE(登録商標)ゲルタイマーを、第1表に示された全ての配合物のゲル化時間を測定するのに使用した。工業において時にはゲル化時間は、ポットライフと等価でもある。その金属棒の一方の端部は該TECHNE(登録商標)ゲルタイマーに接続されており、かつ他方の端部は直径1”のディスクを有する。該エポキシ樹脂および硬化剤を、別個に25℃で予熱した。混合物(エポキシ樹脂および硬化剤)の合計150gを3~5分間混合した。該直径1”のディスクを、ビーカー内容物の該混合物中へ浸漬し、かつゲルタイマーのスイッチを入れ、直ちに正確な読取り値を得た。
【0080】
配合物1~4の結果は、第1表に報告されているとおりである。配合物1は、本開示に従い、対照試料として使用され、かつ約319cPの初期混合粘度を提供する。配合物2および3は、それぞれ、約313cPおよび206cPの初期混合粘度を示す。より低い混合粘度は、そのファブリック層の間での改善された樹脂浸透のために、圧力下での厚い複合材部分における繊維湿潤を高める。配合物1は、140℃~155℃の範囲内のTgを提供し、かつ配合物2および3は、130℃~150℃の範囲内のTgを提供する。該アルキル化イソホロンジアミン(AIPD)は、非アルキル化IPDに対してTg範囲を維持した一方で、該ゲル化時間を対照配合物(IPD)の2~5倍改善する。
【0081】
第2表
【表8】
【0082】
2つの異なる比でCHONEおよびイソホロンを有する該アルキル化IPDの取扱い特性の結果は、第2表に報告されているとおりである(配合物5~8)。該アルキル化生成物のニート粘度は、極めて低いままである。該硬化剤は、複合材用途の全エポキシ配合物粘度を低下させるのを補助する、低い粘度を有することが望ましい。双方のアルキル化生成物の反応性は、有意に遅くなる。この特徴は、比較的大きくかつ比較的厚い複合部品を均一に加工するのに十分な時間および粘度を与える。
【0083】
例11
この例は、硬化したエポキシ樹脂配合物の試験を記載する。
【0084】
第3表
【表9】
【0085】
第3表に示されたエポキシ樹脂およびアミン硬化剤を、40℃で3~5分間、手で混合した。閉じ込められた空気を、その混合物を遠心機中に5分間置くことによるか、または該混合物が澄明になるまで、除去した。ついで1/8”アルミニウムモールド中へ該混合物を注いだ。該モールド中の該系を、60℃で1時間、さらに150℃で2時間、硬化させた。硬化した試料を取り除く前にモールドを室温に冷却した。ASTM法によるキャスト試料から試験片を製造して、機械的試験;引張試験(ASTM D638)、曲げ試験(ASTM D790)、および圧縮試験(ASTM D695)を実施した。付加的な1”×3”×1/8”試料を製造して、異なる試薬中での耐薬品性試験を実施した(第4表)。
【0086】
例12
この例は、化学的浸漬後の硬化したエポキシ樹脂配合物の試験を記載する。
【0087】
第4表
【表10】
【0088】
配合物1~3のニートキャストパネルを、例11に記載されたプロセスを用いて製造した。曲げ試験片(1/2”×3”×1/8”)を、ASTM D790に従って機械加工した。該試験片を、異なる試薬中へ40℃で30日間浸漬して、浸漬前後の曲げ弾性率保持を把握した。使用した試薬は次のものであった:脱イオン水、メタノール、10%水酸化アンモニウム、および10%硝酸。配合物2および3の曲げ弾性率は、大部分の該試薬において保持された。
【0089】
例13
この例は、異なる環式脂肪族アミンのアルキル化生成物の加工特性および熱的性質を記載する。
【0090】
第5表
【表11】
【0091】
市販のアミン、例えばIPD、MXDA、PACMおよびDMPACM(配合物1、9、11、13)と、これらのアミンの本発明のモノアルキル化生成物(配合物3、10、12、14)との比較は、第5表に報告されているとおりである。該アルキル化生成物のニート粘度は、極めて低いままである。該硬化剤は、複合材用途の全エポキシ配合物粘度を低下させるのを補助する、低い粘度を有することが望ましい。該アルキル化生成物(配合物3、10、12および14)のゲル化時間は、25℃でほぼ5倍増加した。これは、比較的大きくおよび比較的厚い複合部品を均一に加工するのに十分な時間および粘度である。
【0092】
本発明の好ましい実施態様は以下のとおりである:
1. エポキシ樹脂と、式(I)
【化24】
[式中、Zは、シクロヘキシル、C~C10アルキル置換シクロヘキシル、フェニル、C~C10アルキル置換フェニル、メチレンビス(シクロヘキシル)およびC~C10アルキル置換メチレンビス(シクロヘキシル)からなる群から選択され、aおよびbは個別に、0または1であり、かつYは、C~C10アルキルである]のモノアルキル化ジアミンとを含む、エポキシ樹脂系。
2. 前記モノアルキル化ジアミンが、構造:
【化25】
[式中、R、R、R、R、R、およびRのそれぞれは、H、CH、またはC~Cアルキル基であり;nは、0または1であり;かつAは、Hであり、かつBは、C~C10アルキルであるか、またはBは、Hであり、かつAは、C~C10アルキルである]により表される、前記1に記載のエポキシ樹脂系。
3. 前記モノアルキル化ジアミンが、
i)構造:
【化26】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化イソホロンジアミン;
ii)構造:
【化27】
[式中、Bは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化イソホロンジアミン;
iii)構造:
【化28】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化メチルシクロヘキシルジアミン;
iv)構造:
【化29】
[式中、Bは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化メチルシクロヘキシルジアミン;および
v)構造:
【化30】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化シクロヘキシルジアミン
からなる群から選択される、前記2に記載のエポキシ樹脂系。
4. 前記モノアルキル化ジアミンが、構造:
【化31】
[式中、RおよびRのそれぞれは、HまたはCHであり;かつAは、C~C10アルキルである]により表される、前記1に記載のエポキシ樹脂系。
5. 前記モノアルキル化ジアミンが、
i)構造:
【化32】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン);および
ii)構造:
【化33】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化2,2’-ジメチル-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)
からなる群から選択される、前記4に記載のエポキシ樹脂系。
6. 前記モノアルキル化ジアミンが、構造:
【化34】
[式中、Xは、フェニル基またはシクロヘキシル基であり;かつAは、C~C10アルキルである]により表される、前記1に記載のエポキシ樹脂系。
7. 前記モノアルキル化ジアミンが、
i)構造:
【化35】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化m-キシリレンジアミン;および
ii)構造:
【化36】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン
からなる群から選択される、前記6に記載のエポキシ樹脂系。
8. 前記エポキシ樹脂系が、硬化剤の全質量を基準として、少なくとも20質量%の前記モノアルキル化ジアミンを含む、前記1に記載のエポキシ樹脂系。
9. 前記エポキシ樹脂系がさらに、第一級アミンおよび第二級アミンからなる群から選択される、第2のアミンを含む、前記1に記載のエポキシ樹脂系。
10. 前記第2のアミン成分が、ポリエーテルアミン、ポリエーテルポリアミン、飽和脂肪族環ジアミン、線状脂肪族アミン、環式脂肪族アミン、多環式脂肪族アミンおよび芳香族アミンからなる群から選択される1種以上のアミン化合物を含む、前記9に記載のエポキシ樹脂系。
11. 前記エポキシ樹脂成分が、レソルシノール、ヒドロキノン、ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジフルオロフェニル)-メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-メタン、およびそれらの任意の組み合わせのグリシジルエーテルの群から選択される、少なくとも1種のグリシジルエーテルを含む、前記1に記載のエポキシ樹脂系。
12. 前記エポキシ樹脂成分が、次の構造:
【化37】
[式中、mは、0~25であり、かつRは、二価炭化水素基である]の少なくとも1種の二価フェノールを含む、前記1に記載のエポキシ樹脂系。
13. 前記エポキシ樹脂成分が、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド;リモネンジエポキシド;ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ピメレート;ジシクロペンタジエンジエポキシド;3,3-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,3-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキサンカルボキシレート;6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのものを含む、前記1に記載のエポキシ樹脂系。
14. 前記1から13までのいずれかに記載のエポキシ樹脂系を製造する方法であって、エポキシ樹脂を、式(I)
【化38】
[式中、Zは、シクロヘキシル、C~Cアルキル置換シクロヘキシル、フェニル、C~Cアルキル置換フェニル、メチレンビス(シクロヘキシル)、およびC~Cアルキル置換メチレンビス(シクロヘキシル)からなる群から選択され、aおよびbは個別に、0または1であり、かつYは、C~C10アルキルである]のモノアルキル化ジアミン、および任意にその他の成分と合わせる、前記方法。
15. 構造用または電気用ラミネート、コーティング、キャスティング、構造部材、回路板、電気用ワニス、封入材、半導体、汎用成形粉、フィラメントワインディング管および継手、フィラメントワインディング圧力容器、低圧および高圧管および継手、低圧および高圧容器、貯蔵タンク、風力タービンブレード、自動車構造部品、航空宇宙構造部品、油およびガス浮力モジュール、リグ、ウェルプラグ、現場硬化管(CIPP)、構造用接着剤およびラミネート、複合ライナー、ポンプ用ライナー、耐食性コーティングまたは強化繊維基材をベースとする複合材料を製造するための、前記1から14までのいずれかに記載のエポキシ樹脂系の使用。
16. エポキシ樹脂用のハードナーとしての、式(I)
【化39】
[式中、Zは、シクロヘキシル、C~Cアルキル置換シクロヘキシル、フェニル、C~Cアルキル置換フェニル、メチレンビス(シクロヘキシル)、およびC~Cアルキル置換メチレンビス(シクロヘキシル)からなる群から選択され、aおよびbは個別に、0または1であり、かつYは、C~C10アルキルである]のモノアルキル化ジアミンの使用。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、式(I)
【化1】
[式中、Zは、メチレンビス(シクロヘキシル)およびC~C10アルキル置換メチレンビス(シクロヘキシル)からなる群から選択され、aおよびbは個別に、0または1であり、かつYは、C~C10アルキルである]のモノアルキル化ジアミンとを含む、エポキシ樹脂系であって、
前記モノアルキル化ジアミンが、構造:
【化2】
[式中、R およびR のそれぞれは、HまたはCH であり;かつAは、C ~C 10 アルキルである]により表される、前記エポキシ樹脂系。
【請求項2】
前記モノアルキル化ジアミンが、
i)構造:
【化3】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン);および
ii)構造:
【化4】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化2,2’-ジメチル-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)
からなる群から選択される、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂系が、硬化剤の全質量を基準として、少なくとも20質量%の前記モノアルキル化ジアミンを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂系がさらに、第一級アミンおよび第二級アミンからなる群から選択される、第2のアミンを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項5】
前記第2のアミン成分が、ポリエーテルアミン、ポリエーテルポリアミン、飽和脂肪族環ジアミン、線状脂肪族アミン、環式脂肪族アミン、多環式脂肪族アミンおよび芳香族アミンからなる群から選択される1種以上のアミン化合物を含む、請求項に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂成分が、レソルシノール、ヒドロキノン、ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジフルオロフェニル)-メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-メタン、およびそれらの任意の組み合わせのグリシジルエーテルの群から選択される、少なくとも1種のグリシジルエーテルを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂成分が、次の構造:
【化5】
[式中、mは、0~25であり、かつRは、二価フェノールの二価炭化水素基である]の二価フェノールの少なくとも1種のグリシジルエーテルを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂成分が、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド;リモネンジエポキシド;ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ピメレート;ジシクロペンタジエンジエポキシド;3,3-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,3-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキサンカルボキシレート;6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのものを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項9】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のエポキシ樹脂系を製造する方法であって、エポキシ樹脂を、式(I)
【化6】
[式中、Zは、メチレンビス(シクロヘキシル)、およびC~Cアルキル置換メチレンビス(シクロヘキシル)からなる群から選択され、aおよびbは個別に、0または1であり、かつYは、C~C10アルキルである]のモノアルキル化ジアミン、および任意にその他の成分と合わせ、前記モノアルキル化ジアミンが、構造:
【化7】
[式中、R およびR のそれぞれは、HまたはCH であり;かつAは、C ~C 10 アルキルである]により表される、前記方法。
【請求項10】
構造用または電気用ラミネート、コーティング、キャスティング、構造部材、回路板、電気用ワニス、封入材、半導体、汎用成形粉、フィラメントワインディング管および継手、フィラメントワインディング圧力容器、低圧および高圧管および継手、低圧および高圧容器、貯蔵タンク、風力タービンブレード、自動車構造部品、航空宇宙構造部品、油およびガス浮力モジュール、リグ、ウェルプラグ、現場硬化管(CIPP)、構造用接着剤およびラミネート、複合ライナー、ポンプ用ライナー、耐食性コーティングまたは強化繊維基材をベースとする複合材料を製造するための、請求項1からまでのいずれかに記載のエポキシ樹脂系または請求項に記載の方法により得られたエポキシ樹脂系の使用。
【請求項11】
エポキシ樹脂用のハードナーとしての、式(I)
【化8】
[式中、Zは、メチレンビス(シクロヘキシル)、およびC~Cアルキル置換メチレンビス(シクロヘキシル)からなる群から選択され、aおよびbは個別に、0または1であり、かつYは、C~C10アルキルである]のモノアルキル化ジアミンの使用であって、前記モノアルキル化ジアミンが、構造:
【化9】
[式中、R およびR のそれぞれは、HまたはCH であり;かつAは、C ~C 10 アルキルである]により表される、前記使用
【手続補正書】
【提出日】2024-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、式(I)
【化1】
[式中、Zは、メチレンビス(シクロヘキシル)およびC~C10アルキル置換メチレンビス(シクロヘキシル)からなる群から選択され、aおよびbは個別に、0または1であり、かつYは、C~C10アルキルである]のモノアルキル化ジアミンとを含む、エポキシ樹脂系であって、
前記モノアルキル化ジアミンが、構造:
【化2】
[式中、RおよびRのそれぞれは、HまたはCHであり;かつAは、C~C10アルキルである]により表される、前記エポキシ樹脂系。
【請求項2】
前記モノアルキル化ジアミンが、
i)構造:
【化3】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン);および
ii)構造:
【化4】
[式中、Aは、C~C10アルキルである]により表されるモノアルキル化2,2’-ジメチル-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)
からなる群から選択される、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂系が、硬化剤の全質量を基準として、少なくとも20質量%の前記モノアルキル化ジアミンを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂系がさらに、第一級アミンおよび第二級アミンからなる群から選択される、第2のアミンを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項5】
前記第2のアミン成分が、ポリエーテルアミン、ポリエーテルポリアミン、飽和脂肪族環ジアミン、線状脂肪族アミン、環式脂肪族アミン、多環式脂肪族アミンおよび芳香族アミンからなる群から選択される1種以上のアミン化合物を含む、請求項4に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂成分が、レソルシノール、ヒドロキノン、ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジフルオロフェニル)-メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-メタン、およびそれらの任意の組み合わせのグリシジルエーテルの群から選択される、少なくとも1種のグリシジルエーテルを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂成分が、次の構造:
【化5】
[式中、mは、0~25であり、かつRは、二価フェノールの二価炭化水素基である]の二価フェノールの少なくとも1種のグリシジルエーテルを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂成分が、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド;リモネンジエポキシド;ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ピメレート;ジシクロペンタジエンジエポキシド;3,3-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,3-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキサンカルボキシレート;6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのものを含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂系。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載のエポキシ樹脂系を製造する方法であって、エポキシ樹脂を、式(I)
【化6】
[式中、Zは、メチレンビス(シクロヘキシル)、およびC~Cアルキル置換メチレンビス(シクロヘキシル)からなる群から選択され、aおよびbは個別に、0または1であり、かつYは、C~C10アルキルである]のモノアルキル化ジアミン、および任意にその他の成分と合わせ、前記モノアルキル化ジアミンが、構造:
【化7】
[式中、RおよびRのそれぞれは、HまたはCHであり;かつAは、C~C10アルキルである]により表される、前記方法。
【請求項10】
構造用または電気用ラミネート、コーティング、キャスティング、構造部材、回路板、電気用ワニス、封入材、半導体、汎用成形粉、フィラメントワインディング管および継手、フィラメントワインディング圧力容器、低圧および高圧管および継手、低圧および高圧容器、貯蔵タンク、風力タービンブレード、自動車構造部品、航空宇宙構造部品、油およびガス浮力モジュール、リグ、ウェルプラグ、現場硬化管(CIPP)、構造用接着剤およびラミネート、複合ライナー、ポンプ用ライナー、耐食性コーティングまたは強化繊維基材をベースとする複合材料を製造するための、請求項1から8までのいずれかに記載のエポキシ樹脂系の使用。
【請求項11】
エポキシ樹脂用のハードナーとしての、式(I)
【化8】
[式中、Zは、メチレンビス(シクロヘキシル)、およびC~Cアルキル置換メチレンビス(シクロヘキシル)からなる群から選択され、aおよびbは個別に、0または1であり、かつYは、C~C10アルキルである]のモノアルキル化ジアミンの使用であって、前記モノアルキル化ジアミンが、構造:
【化9】
[式中、RおよびRのそれぞれは、HまたはCHであり;かつAは、C~C10アルキルである]により表される、前記使用。