(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156786
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ポリオーマウイルス複製の阻害
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20241029BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20241029BHJP
C12N 7/00 20060101ALI20241029BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20241029BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241029BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C12N15/113 100Z
C12N5/071 ZNA
C12N7/00
A61P31/20
A61K31/7088
A61K48/00
C12N5/071
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024123185
(22)【出願日】2024-07-30
(62)【分割の表示】P 2020545683の分割
【原出願日】2019-03-01
(31)【優先権主張番号】18159797.2
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】516037671
【氏名又は名称】アカデミシュ・ジークンホイス・ライデン・ハー・オー・デー・エン・ライドス・ユニヴェルシタイル・メディシュ・セントルム
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ビアー、エーリヒ ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ファン ゾンネフェルト、アントン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】プリンス、ユリエン
(57)【要約】
【課題】ポリオーマウイルスT抗原プレmRNAのスプライシングを調節するためのアンチセンス分子および方法を提供する。
【解決手段】1つの態様において、本発明は、ポリオーマウイルスT抗原プレmRNAの連続した一続きの少なくとも12核酸塩基の逆相補鎖である配列を含む、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドに関し、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞において前記T抗原プレmRNAのスプライシングを調節できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオーマウイルスT抗原プレmRNAの連続した一続きの少なくとも12核酸塩基の逆相補鎖である配列を含む、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、該アンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞における前記T抗原プレmRNAのスプライシングを調節でき、該アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24;配列番号25;配列番号26または配列番号27の少なくとも12個連続した核酸塩基を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24;配列番号25;配列番号26または配列番号27の少なくとも12個連続した核酸塩基を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、該少なくとも12個のヌクレオチドは、それぞれのポリオーマウイルスのラージT抗原プレmRNAのスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列の逆相補鎖を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記mRNA-オリゴヌクレオチド二重鎖をRNaseHの作用に対して抵抗性にする改変を含む、請求項1または請求項2に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
改変されたポリマー骨格、好ましくは、2’-O-メチル(2’-O-Me)、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)、2’-S-拘束エチル(2’-S-constrained-ethyl;2’-cEt)、ロックト核酸(locked nucleic acid;LNA)、ペプチド核酸(PNA)またはモルホリノ(PMO)ヌクレオチドを有する少なくとも1つの核酸塩基を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24;配列番号25;配列番号26または配列番号27の少なくとも17個、好ましくは、少なくとも18個、19個、好ましくは、少なくとも20個連続した核酸塩基を含むか、または配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24;配列番号25;配列番号26または配列番号27の少なくとも17個、好ましくは、少なくとも18個、19個、好ましくは、少なくとも20個連続した核酸塩基を、1つのミスマッチを伴って含み、該ミスマッチは、該連続した一続きの最初または最後のヌクレオチドではない、請求項1~4のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
細胞におけるポリオーマウイルスの複製を阻害する方法であって、該方法は、前記ポリオーマウイルスに感染した細胞に、請求項1~5または12のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する工程を含む、方法。
【請求項7】
移植のために移植片を準備する方法であって、該方法は、ドナー細胞、好ましくは、ドナー腎細胞に、請求項1~5または12のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供することを特徴とする、方法。
【請求項8】
対象におけるポリオーマウイルス感染症を処置する方法であって、該方法は、請求項1~5のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、それを必要とする個体に投与する工程を含む、方法。
【請求項9】
前記個体が、免疫不全個体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記個体が、腎臓移植または腎細胞移植のレシピエントである、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
個体の腎細胞における相補的なRNA配列へのハイブリダイゼーションのためにアンチセンスオリゴヌクレオチドを前記個体に投与する方法であって、該方法は、該アンチセンスオリゴヌクレオチドが、請求項1~5または12のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする、方法。
【請求項12】
アンチセンスオリゴヌクレオチドと標的mRNAとの二重鎖をRNaseHの作用に対して抵抗性にする改変を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、該アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24;配列番号25;配列番号26または配列番号27の配列を、ミスマッチなしで、または1つもしくは2つのミスマッチを伴って含む、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
細胞におけるポリオーマウイルスの複製を阻害する方法であって、該方法は、ポリオーマウイルスラージT抗原プレmRNAの連続した一続きの少なくとも12核酸塩基の逆相補鎖である配列を含む12~30ヌクレオチド長のアンチセンスオリゴヌクレオチドを前記細胞に提供する工程を含み、該アンチセンスオリゴヌクレオチドは、前記ラージT抗原プレmRNAのスプライシングを調節できる、方法。
【請求項14】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、請求項1~5または12のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオーマウイルスRNAに特異的に結合する分子に関する。いくつかの実施形態において、分子は、ポリオーマウイルスのT抗原のコード領域を含むプレmRNAを認識するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。ポリオーマウイルスの例は、ヒトポリオーマウイルス、例えば、JCウイルス(JCV)、BKウイルス(BKV)またはメルケル細胞ウイルス(MCV)である。
【背景技術】
【0002】
ポリオーマウイルスは、エンベロープを持たない小型の二本鎖DNAウイルスであり、その天然の宿主は通常、哺乳動物および鳥類である。成人における感染は、ほとんどが無症候性であるが、免疫系が損なわれている場合は病的になり得る。ヒトポリオーマウイルスの非限定的な例は、BKウイルス、JCウイルスおよびメルケル細胞ウイルスである。
【0003】
JCVとBKVは両方とも、ヒト集団が幼児期に感染する日和見病原体である(Leploeg,M.D.et.al.,Clinical Infectious Diseases,2001)。成人の血清有病率は高い。両ウイルスは、宿主の腎細胞に潜伏したまま残ると考えられている(Wunderink,H.F.et.al.,American Journal of Transplantation,2017)。再活性化は、例えば免疫抑制個体において生じ得る(Wunderink,H.F.et.al.,American Journal of Transplantation,2017;Parajuli,S.et.al.,Clinical Transplantation,2018;Gard,L.et.al.,PLoS One,2017)。
【0004】
ポリオーマウイルスは、共通のゲノム構造を共有する。ポリオーマウイルスは、感染サイクルの初期と後期の両方で発現される遺伝子を有する。初期遺伝子と後期遺伝子の両方が、異なるスプライシングによって様々なタンパク質に翻訳され得るRNAを生成する。
図1に示されているように、後期RNAは、通常、3つのキャプシドタンパク質をコードするのに対して、初期遺伝子は、スモールT抗原およびラージT抗原をコードし、他の1つ以上の選択的スプライシングされるコード領域をコードすることが多い(Helle,F.et.al.,Viruses,2017)。
【0005】
WO2015/042466には、JCウイルスの複製および増殖を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドベースのアプローチが記載されている。そこに開示されているアンチセンスオリゴヌクレオチドは、オリゴデオキシリボヌクレオチド(ODN)、またはヌクレアーゼ抵抗性骨格を有する1つ以上のヌクレオチドと内部で隣接しているODNを有するキメラオリゴヌクレオチドであり得る。後者は、RNA:オリゴヌクレオチドハイブリッドをRNaseHの作用に対して感受性にする。それらのデオキシリボヌクレオチドは、少なくとも4つのデオキシリボヌクレオチドを内部に有し、2’-糖修飾ヌクレオチドを有するヌクレアーゼ抵抗性領域と隣接している。それらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、JCウイルスのmRNAに存在する特定の配列を対象にしている。
【0006】
いくつかの実施形態において、本発明は、ポリオーマウイルスT抗原プレmRNAのスプライシングを調節し得るアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、前記プレmRNAにおけるスプライスドナー部位および/またはスプライスアクセプター部位に相補的な配列を有し得る。そのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、エキソンに隣接する1つ以上のイントロン核酸塩基に相補的な配列を有し得る(
図2を参照のこと)。いくつかの実施形態において、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドとそのポリオーマウイルスT抗原プレmRNA標的との二重鎖をRNaseHの作用に対して抵抗性にする。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ポリオーマウイルスラージT抗原プレmRNAの連続した一続きの少なくとも12核酸塩基の逆相補鎖である配列を含む、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供し、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞における前記ラージT抗原プレmRNAのスプライシングを調節できる(
図1を参照のこと)。
【0008】
本発明のスプライス調節アンチセンスオリゴヌクレオチドには、通常、ポリオーマウイルスラージT抗原プレmRNAに相補的な連続した一続きの少なくとも17、好ましくは、少なくとも18、より好ましくは、少なくとも19、より好ましくは、少なくとも20核酸塩基が必要である。
【0009】
本発明は、ポリオーマウイルスラージT抗原プレmRNAの連続した一続きの少なくとも12核酸塩基の逆相補鎖である配列を含む、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドも提供し、その一続きは、前記プレmRNAにおけるスプライスドナー、スプライスアクセプター配列またはそれらの組み合わせを含む。そのスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列は、好ましくは、ポリオーマウイルスラージT抗原スプライスアクセプターまたはポリオーマウイルスラージT抗原スプライスドナー配列である。
【0010】
NC_001538から取得されたヌクレオチド4537-4596または4881-4940に少なくとも80%相補的であって、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含む、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドが、さらに提供される。
【0011】
NC_001699から取得された領域4397-4456または領域4741-4800におけるヌクレオチドと好ましくは少なくとも80%相補的であって、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含む、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドも提供される。
【0012】
NC_009238から取得された領域4299-4358または領域4686-4745におけるヌクレオチドと好ましくは少なくとも80%相補的であって、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含む、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドも提供される。
【0013】
NC_009539から取得された領域4477-4536または領域4876-4935におけるヌクレオチドと好ましくは少なくとも80%相補的であって、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含む、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドも提供される。
【0014】
NC_010277から取得された領域4693-4752または領域5124-5183におけるヌクレオチドと好ましくは少なくとも80%相補的であって、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含む、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドも提供される。
【0015】
NC_014406から取得された領域4264-4323または領域4654-4713におけるヌクレオチドと好ましくは少なくとも80%相補的であって、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含む、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドも提供される。
【0016】
NC_014407から取得された領域4272-4331または領域4677-4736におけるヌクレオチドと好ましくは少なくとも80%相補的であって、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含む、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドも提供される。
【0017】
NC_014361から取得された領域4352-4411または領域4765-4824におけるヌクレオチドと好ましくは少なくとも80%相補的であって、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含む、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドも提供される。
【0018】
NC_015150から取得された領域4408-4467または領域4760-4819におけるヌクレオチドと好ましくは少なくとも80%相補的であって、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含む、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドも提供される。
【0019】
NC_018102から取得された領域4303-4362または領域4658-4717におけるヌクレオチドと好ましくは少なくとも80%相補的であって、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含む、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドも提供される。
【0020】
NC_020106から取得された領域4159-4218または領域4504-4563におけるヌクレオチドと好ましくは少なくとも80%相補的であって、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含む、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドも提供される。
【0021】
NC_020890から取得された領域4392-4451または領域4791-4850におけるヌクレオチドと好ましくは少なくとも80%相補的であって、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含む、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドも提供される。
【0022】
NC_024118から取得された領域4471-4530または領域4859-4918におけるヌクレオチドと好ましくは少なくとも80%相補的であって、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含む、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドも提供される。
【0023】
本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24;配列番号25;配列番号26または配列番号27の少なくとも12個連続した核酸塩基を含み、その少なくとも12個のヌクレオチドは、好ましくは、標的プレmRNAのスプライスドナー部位、スプライスアクセプター部位またはそれらの組み合わせの逆相補鎖、すなわち、それぞれのポリオーマウイルスのラージT抗原プレmRNAのスプライスドナー/アクセプターの逆相補鎖を含む。好ましい実施形態において、本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24;配列番号25;配列番号26または配列番号27;好ましくは、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24または配列番号25;好ましくは、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24または配列番号25の少なくとも17、好ましくは、少なくとも18、好ましくは、少なくとも19、より好ましくは、少なくとも20個連続した核酸塩基を含み、それらのヌクレオチドは、好ましくは、標的プレmRNAのスプライスドナー部位、スプライスアクセプター部位またはそれらの組み合わせの逆相補鎖、すなわち、それぞれのポリオーマウイルスのラージT抗原プレmRNAのスプライスドナー/アクセプターの逆相補鎖を含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、記載の配列と1つのミスマッチを有することがあるが、ミスマッチは、連続した一続きの最初または最後に存在しない。例えば、1位または17位にミスマッチを有する連続した一続きの17ヌクレオチドを有するAONは、実際には、連続した一続きの16ヌクレオチドを有することになる。
【0024】
細胞におけるポリオーマウイルス複製を阻害する方法も提供され、その方法は、前記ポリオーマウイルスに感染した細胞に、そのポリオーマウイルスに特異的な本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する工程を含む。
【0025】
本発明はさらに、移植のために移植片を準備する方法を提供し、その方法は、ドナー細胞、好ましくは、ドナー腎細胞に、ポリオーマウイルスに特異的な本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供することを特徴とする。
【0026】
対象におけるポリオーマウイルス感染症を処置する方法も提供され、その方法は、ポリオーマウイルスに特異的な本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、それを必要とする個体に投与する工程を含む。
【0027】
個体の細胞における相補的なRNA配列へのハイブリダイゼーションのためにアンチセンスオリゴヌクレオチドを前記個体に投与する方法がさらに提供され、その方法は、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドが、第1および第2の領域を含むキメラアンチセンスオリゴヌクレオチドであることを特徴とし、前記第1の領域は、1つ以上のデオキシリボヌクレオチドを含み、前記第2の領域は、少なくとも1つの2’-O-(2-メトキシ-エチル)ヌクレオチドを含む(
図7を参照のこと)。
【0028】
細胞におけるポリオーマウイルスの複製を阻害する方法がさらに提供され、その方法は、ポリオーマウイルスラージT抗原プレmRNAの連続した一続きの少なくとも12核酸塩基の逆相補鎖である配列を含む12~30ヌクレオチド長のアンチセンスオリゴヌクレオチドを前記細胞に提供する工程を含み、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、前記ラージT抗原プレmRNAのスプライシングを調節できる。前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチド、好ましくは、本明細書中に記載されるまたは本明細書中で改変されるような、配列番号1~25のアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】(
図1-1)様々なBKウイルスゲノムサブタイプのBKウイルスゲノムおよび配列類似性の概略図。左:BKウイルスゲノムは、主要な5つのタンパク質、すなわち、スモールt抗原およびラージT抗原(初期遺伝子)、ならびにアグノプロテインならびに主なキャプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3(後期遺伝子)をコードする。このウイルスゲノムは、複製開始点と、ウイルスゲノムの複製とともに初期遺伝子および後期遺伝子の発現を駆動する転写因子に対するプロモーター領域との両方を含む、非コード領域(NCCR)も含む。注目すべきこととして、生成されるVP1、VP2またはVP3の比率を決定する選択的スプライシングとともに、初期および後期プレmRNAの選択的スプライシングによって、数多くのタンパク質アイソフォームが生じ、それらには、スモールt抗原、短縮型T抗原(2つのイントロン)およびラージT抗原(1つのイントロン)が含まれる。しかしながら、後期領域に対して生成される主要なスプライスバリアントが、主にVP1をコードする成熟mRNAであることに注意することが重要である。続き(
図1-2):初期領域のゲノム配列は、T抗原タンパク質、すなわち、スモールt(tAg)、短縮型T(truncTAg)およびラージT抗原(TAg)をコードする。tAgは、感染細胞をS期に駆動する際に決定的な役割を果たし、TAg媒介性のウイルスゲノム複製を可能にする。さらに、TAgは、NCCRに結合して、後期領域のプレmRNAの発現を駆動する。これにより、ウイルスDNAの被包に不可欠なVP1、VP2およびVP3が産生される。
【0030】
【
図2】TAgの全遺伝子配列(イントロン配列を含む)を、245個のユニークなBKポリオーマウイルス単離株(公的に利用可能なNCBIデータベースからダウンロードしたもの)に対して、clustalW(Rにおける「msa」パッケージ)を用いてアラインメントした。これらの記録から、全ゲノムが報告されている単離株だけを、TAgにおけるスプライス部位の保存について使用した。Dunlop株を参照ゲノムとして使用した。UPGMA法(Rにおける「phangorn」および「ggtree」パッケージ)を用いて、系統樹を構築した。サブタイプ間のヌクレオチド特異的保存を示すために、アクセプタースプライス部位およびドナースプライス部位に対してシーケンスロゴを構築した(Rにおける「msa」パッケージ)。
【0031】
【
図3】BKPyV TAgのスプライシングを調節するアンチセンスオリゴヌクレオチドの組成。BKPyV TAgのエキソン1-イントロンジャンクション(AON#1、#2および#3)およびイントロン-エキソン2ジャンクション(AON#4および#5)を対象にしているアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)の配列。
【0032】
【
図4】TAgスプライシング調節AONは、BKPyVに感染したヒト上皮細胞においてTAgおよびVP1 mRNAの発現レベルを低下させる。左:約100という感染効率でのBKPyVウイルスによる感染の7日後の、スクランブル(scrambled)AONで処置されたHK2細胞 対 スプライシング調節AON#1、#2、#3、#4および#5で処置されたHK2細胞におけるTAg RNAレベルの低下(n=5;p<0.05)。右:約100という感染効率でのBKPyVウイルスによる感染後の、スクランブルAONで処置されたHK2細胞 対 スプライシング調節AON#1、#2、#3、#4および#5で処置されたHK2細胞におけるVP1 RNAレベルの低下(n=5;p<0.05)。
【0033】
【
図5】TAgスプライシング調節AONは、BKPyVに感染したヒト上皮細胞においてVP1タンパク質の発現レベルを低下させる。約100という感染効率でのBKポリオーマウイルスによる感染の7日後に回収されたHK2細胞溶解産物のウエスタンブロット解析。スクランブル(Scrambled)AONで処置されたHK2細胞と比べて、AON#2、#3および#4は、VP1タンパク質の発現レベルを明らかに抑制する(n=4)。
【0034】
【
図6】TAgスプライシング調節AONは、BKウイルスの複製を減少させる。培養上清中のウイルスDNA濃度を、BKPyVゲノムにおけるVP1に対するPCR解析法によって測定した。AON#2、#3および#4で処置されたHK2細胞は、スクランブルAONで処置されたHK2細胞と比べて、培養上清中に低レベルのBKPyVゲノムを一貫して示す。
【0035】
【
図7】AONに対する化学修飾。本TAgスプライシング調節AONに適用されているいくつかの化学修飾(ホスホロチオエート骨格およびリボース部分における2’-OMe)を描写している。これらのAONの他の実施形態は、この位置において2’-MOEまたは2’-cEt修飾を使用し得る。これらの修飾は、主にAONの安定性を改善するように働く。
【0036】
【
図8】ヒト宿主を有すると知られている13のポリオーマウイルスに対する配列類似性。注目すべきことに、これらの株は、アルファ属、ベータ属およびデルタ属を包含し、その大部分は、最近同定された。この図の左側の系統樹情報に示されているように、BKPyVとJCPyVは、かなりの配列類似性を共有していることから、腎臓の近位尿細管上皮細胞にそれらが共局在することは、本明細書中に記載されるスプライシング調節AONを用いた標的化に向いていると示唆される。
【0037】
【
図9】他のポリオーマウイルスを標的化するために使用され得るAONのデザイン。上述のBKおよびJCウイルスのTAgスプライシング調節AONと並行して、AONがヒトポリオーマウイルス3(Karolinska InstituteまたはKI)、ヒトポリオーマウイルス4(Washington UniversityまたはWU)およびヒトポリオーマウイルス5(メルケル細胞ウイルスまたはMCV)も標的化し得るという可能性に基づいて、AONをデザインした。ヒトポリオーマウイルス3~5に対しては、エキソン1-イントロン部位における3つのAONとは対照的に、エキソン1-イントロンジャンクションを標的化する2つのAONおよびイントロン-エキソン2ジャンクションを標的化する2つを設計した。
【0038】
【
図10】BKウイルスゲノムおよびBKV標的化AONの概略図。パート1(
図10-1):BKウイルスゲノムは、主要な6つのタンパク質、すなわち、スモールt抗原およびラージT抗原(初期遺伝子)、ならびにアグノプロテインならびに主なキャプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3(後期遺伝子)をコードする。このウイルスゲノムは、非コード領域(NCCR)も含み、その配列は、複製開始点と、ウイルスゲノム複製を協調させつつ初期遺伝子および後期遺伝子の発現を駆動する転写因子のリクルートに関与するプロモーター領域との両方を含む。
図1に示されたように、生成されるVP1、VP2またはVP3の比率を決定する選択的スプライシングとともに、初期および後期プレmRNAの選択的スプライシングによって、スモールt抗原、短縮型T抗原(2つのイントロン)およびラージT抗原(1つのイントロン)をはじめとした数多くのタンパク質アイソフォームが生じる。後期領域に対して生成される主要なスプライスバリアントは、主にVP1の発現をもたらす。パート2(
図10-2):上のパネルに示されたBKVラージT抗原(TAg)のエキソン-イントロンジャンクションを標的化するために使用されるAON配列。パート3(
図10-3):BKV TAgのエキソン-イントロンジャンクションにおけるAONに対する結合部位を示している概略図。
【0039】
【
図11】ユニバーサルなBKV標的化AONのデザインに向けた、TAgスプライス部位保存のバイオインフォマティクス解析。パート1(
図11-1):BKVサブグループ間で明らかな違いを示すユニークなBKV単離株/株に対する全遺伝子TAg配列を含む系統樹。パート2(
図11-2):サブグループ間で高い配列保存を示す、隣接領域を伴うTAgスプライス部位(20ヌクレオチド)に対するシーケンスロゴ。BKV TAgのエキソン1-イントロンジャンクション(HYB_01、HYB_02、HYB_03、HYB_06、HYB_07、HYB_08、HYB_09、HYB_10およびHYB_11)およびイントロン-エキソン2ジャンクション(HYB_04、HYB_05、HYB_12およびHYB_13)を対象にしているアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)の配列が提供されている。
【0040】
【
図12】TAgスプライシング調節AONは、BKVに感染させたヒト腎臓上皮細胞においてTAg mRNAの発現レベルを低下させる。スクランブルAONで処置されたHK2細胞 対 BKV標的化AONで処置されたHK2細胞におけるTAg RNAレベルの低下(処置後、細胞を約100という感染効率でBKVに感染させた)(n=3生物学的反復)。注意:HYB_14は、TAgエキソン1のエキソン領域にもっぱら結合し、エキソン-イントロン境界を標的化しない。
【0041】
【
図13】TAgスプライシング調節AONは、BKVに感染させたヒト腎臓上皮細胞においてVP1 mRNAの発現レベルを低下させる。スクランブルAONで処置されたHK2細胞 対 BKV標的化AONで処置されたHK2細胞におけるVP1 RNAレベルの低下(処置後に、細胞を約100という感染効率でBKVに感染させた)(n=3生物学的反復)。注意:HYB_14は、TAgエキソン1のエキソン領域にもっぱら結合し、エキソン-イントロン境界を標的化しない。
【0042】
【
図14】TAgスプライシング調節AONは、BKVに感染させたヒト腎臓上皮細胞においてVP1タンパク質の発現レベルを低下させる。BKV標的化AONで処置されたHK2細胞から回収された細胞溶解産物の代表的なウエスタンブロット解析。ブロットは、約100という感染効率でのBKポリオーマウイルスによる感染の7日後に回収された溶解産物のVP1タンパク質レベルを示している(n=3生物学的反復)。
【0043】
【
図15】BKV標的化AONで処置した後、BKVに感染させたヒト腎臓上皮細胞におけるVP1タンパク質の発現レベルの定量。約100という感染効率でのBKポリオーマウイルスによる感染の7日後に回収されたHK2細胞溶解産物のウエスタンブロット解析の定量。スクランブル(Scrambled)AONで処置されたHK2細胞をコントロールとして使用した。すべての値は、log
2スケールを単位とする(n=3生物学的反復)。注意:HYB_14は、TAgエキソン1のエキソン領域にもっぱら結合し、エキソン-イントロン境界を標的化しない。
【0044】
【
図16】TAgスプライシング調節AONは、BKVのDNA複製を減少させる。感染の7日後の培養上清中のウイルス粒子濃度を、BKVゲノムにおけるVP1に対するPCR解析法によって測定した。BKV標的化AONで処置されたHK2細胞は、スクランブル(Scrambled)AONで処置されたHK2細胞と比べて、培養上清中に低レベルのBKV粒子を一貫して示す。データは、生物学的n=3を表す。
【0045】
【
図17】TAgスプライシング調節AONは、HK2再感染のレベルを低下させる。BKV標的化AONで前処置し、BKVに感染させたHK2細胞から7日後に培養上清を取り出した。その上清を用いて、未処置のHK2細胞に感染させ(2h)、その後、それらの細胞を7日間培養し、TAgおよびhoechst(核の場合)について免疫組織化学的に染色した。続いて、パーセント陽性細胞を測定し、スクランブル(Scrambled)AONで処置された細胞と比べて示した。データは、生物学的n=3の代表である。
【0046】
【
図18】HK2細胞のBKV感染の様々な態様におけるBKV標的化AONによる処置の蓄積効果を表しているヒートマップ。TAgおよびVP1 mRNA、VP1タンパク質、ウイルス粒子産生ならびに再感染に対して観察された効果の要約。スケールは、黒色が、ほとんど効果がないことから全く効果がないことを表し、白色が、大きな効果(スクランブル(Scrambled)と比べて2logの倍率変化,n=3)を表すことを示している。
【0047】
【
図19】TAgスプライシング調節リードAONは、BKVに感染させたヒト腎臓上皮細胞においてTAg mRNAの発現レベルを低下させる。スクランブル(Scrambled)AONで処置されたHK2細胞 対 BKV標的化リードAON(HYB_01、HYB_03またはHYB_11)で処置されたHK2細胞におけるTAg RNAレベルの低下(処置後に、細胞を約100という感染効率でBKVに感染させた)(n=3生物学的反復)。注意:SAN_73およびSAN_74は、以前に報告されたAON(16ヌクレオチド長)である。これらのデータは、生物学的n=3の代表である。
【0048】
【
図20】TAgスプライシング調節リードAONは、BKVに感染させたヒト腎臓上皮細胞においてVP1 mRNAの発現レベルを低下させる。スクランブルAONで処置されたHK2細胞 対 BKV標的化リードAON(HYB_01、HYB_03またはHYB_11)で処置されたHK2細胞におけるVP1 mRNAレベルの低下(処置後に、細胞を約100という感染効率でBKVに感染させた)。注意:SAN_73およびSAN_74は、以前に報告されたAON(16ヌクレオチド長)である。これらのデータは、生物学的n=3の代表である。
【0049】
【
図21】TAgスプライシング調節リードAONは、BKVに感染させたヒト腎臓上皮細胞においてVP1タンパク質の発現レベルを低下させる。BKV標的化リード化合物AONで処置され、約100という感染効率でBKポリオーマウイルスに感染させた7日後のHK2細胞から回収された細胞溶解産物におけるVP1タンパク質レベルの代表的なウエスタンブロットの可視化(n=3生物学的反復)。
【0050】
【
図22】TAgスプライシング調節リードAONは、BKVに感染させたヒト腎臓上皮細胞においてVP1タンパク質の発現レベルを低下させる。スクランブルAONで処置されたHK2細胞 対 BKV標的化リードAON(HYB_01、HYB_03またはHYB_11)で処置されたHK2細胞(処置後に、細胞を約100という感染効率でBKVに感染させた)におけるVP1タンパク質レベルの低下。注意:SAN_73およびSAN_74は、以前に報告されたAON(16ヌクレオチド長)である。これらのデータは、生物学的n=3の代表である。
【0051】
【
図23】TAgスプライシング調節リードAONは、BKVに感染させたヒト腎臓上皮細胞においてウイルス粒子産生を減少させる。スクランブルAONで処置されたHK2細胞 対 BKV標的化リードAON(HYB_01、HYB_03またはHYB_11)で処置されたHK2細胞におけるウイルス粒子レベルの低下(処置後に、細胞を約100という感染効率でBKVに感染させた)。注意:SAN_73およびSAN_74は、以前に報告されたAON(16ヌクレオチド長)である。これらのデータは、生物学的n=3の代表である。
【0052】
【
図24】TAgスプライシング調節リードAONは、HK2再感染のレベルを低下させる。BKV標的化リードAON(HYB_01、HYB_03またはHYB_11)で前処置し、BKVに感染させたHK2細胞から7日後に培養上清を取り出した。その上清を用いて、未処置のHK2細胞に感染させ(2h)、その後、それらの細胞を7日間培養し、TAgおよびHoechst(核用)について免疫組織化学的に染色した。続いて、パーセント陽性細胞を測定し、スクランブルAONで処置された細胞と比べて示した。データは、生物学的n=3の代表である。
【0053】
【
図25】HK2細胞のBKV感染の様々な態様におけるBKV標的化リード化合物AONによる処置の蓄積効果を表しているヒートマップ。リード化合物AON(HYB_01、HYB_03またはHYB_11)で前処置されたHK2細胞に対する、TAgおよびVP1 mRNA、VP1タンパク質、ウイルス粒子産生ならびに再感染に対して観察された効果の要約。スケールは、黒色が、ほとんど効果がないことから全く効果がないことを表し、白色が、大きな効果(スクランブルと比べて2logの倍率変化,n=3)を表すことを示している。
【0054】
【
図26】予めBKVに感染させたHK2においてTAg mRNA発現を低下させるTAgスプライシング調節AONの有効性。AONによる前処置とは対照的に、本発明者らは、まずHK2細胞をBKVに感染させ、続いてそれを用いて、AONがTAg mRNA発現レベルを低下させ得る有効性を評価した。左のパネル:後の時点におけるAONの添加は有効でないとみられるにもかかわらず、感染後にAONを単回投与することにより、TAg mRNAの発現レベルが有意に低下した。右のパネル:BKV標的化AONの複数回投与は、TAg mRNAの発現レベルをより強く低下させる。RNA発現レベルは、すべての処置時点について感染後t=7において測定されたことから、後の時点での処置の場合、早期の処置と比べて、曝露がより短時間になることに注意する。データは、生物学的n=1の代表である。
【0055】
【
図27】予めBKVに感染させたHK2においてVP1 mRNA発現を減少させるTAgスプライシング調節AONの有効性。AONによる前処置とは対照的に、本発明者らはまず、HK2細胞をBKVに感染させ、続いてそれを用いて、AONがVP1 mRNAの発現レベルを低下させ得る有効性を評価した。左のパネル:後の時点におけるAONの添加は有効でないとみられるにもかかわらず、感染後にAONを単回投与することにより、VP1 mRNAの発現レベルが有意に低下した。右のパネル:BKV標的化AONの複数回投与は、VP1 mRNAの発現レベルをより強く低下させる。RNA発現レベルは、すべての処置時点について感染後t=7において測定されたことから、後の時点での処置の場合、早期の処置と比べて、曝露がより短時間になることに注意する。データは、生物学的n=1の代表である。
【0056】
【
図28】TAgスプライシング調節リードAONは、BKVに感染させたヒト初代近位尿細管上皮細胞(hPTEC)においてTAg mRNAの発現レベルを低下させる。スクランブル(Scrambled)AONで処置されたhPTEC 対 BKV標的化リードAON(HYB_01、HYB_03またはHYB_11)またはHYB_14で処置されたhPTECにおけるTAg RNAレベルの低下(処置後に、細胞を約100という感染効率でBKVに感染させた)(n=3生物学的反復)。これらのデータは、生物学的n=3の代表である。
【0057】
【
図29】TAgスプライシング調節リードAONは、BKVに感染させたhPTECにおいてVP1 mRNAの発現レベルを低下させる。スクランブル(Scrambled)AONで処置されたhPTEC 対 BKV標的化リードAON(HYB_01、HYB_03またはHYB_11)またはHYB_14で処置されたhPTECにおけるVP1 RNAレベルの低下(処置後に、細胞を約100という感染効率でBKVに感染させた)(n=3生物学的反復)。これらのデータは、生物学的n=3の代表である。
【0058】
【
図30】TAgスプライシング調節リードAONは、BKVに感染させたhPTECにおいてVP1およびVP3タンパク質の発現レベルを低下させる。BKV標的化リード化合物AONで処置し、約100という感染効率でBKポリオーマウイルスに感染させた7日後のhPTECから回収された細胞溶解産物におけるVP1およびVP3タンパク質レベルの代表的なウエスタンブロットの可視化(VP1およびGAPDH:n=3生物学的反復,VP3:n=1)。
【0059】
【
図31】TAgスプライシング調節リードAONは、BKVに感染させたhPTECにおいてVP1タンパク質の発現レベルを低下させる。スクランブル(Scrambled)AONで処置されたhPTEC 対 BKV標的化リードAON(HYB_01、HYB_03またはHYB_11)またはHYB_14で処置されたhPTECにおけるVP1タンパク質レベルの低下(処置後に、細胞を約100という感染効率でBKVに感染させた)(n=3生物学的反復)。これらのデータは、生物学的n=3の代表である。
【0060】
【
図32】TAgスプライシング調節リードAONは、BKVに感染させたhPTECにおいてVP3タンパク質の発現レベルを低下させる。スクランブル(Scrambled)AONで処置されたhPTEC 対 BKV標的化リードAON(HYB_01、HYB_03またはHYB_11)またはHYB_14で処置されたhPTECにおけるVP3タンパク質レベルの低下(処置後に、細胞を約100という感染効率でBKVに感染させた)(n=3生物学的反復)。これらのデータは、生物学的n=1の代表である。
【0061】
【
図33】TAgスプライシング調節リードAONは、BKVに感染させたhPTECにおいてウイルス粒子産生を減少させる。スクランブル(Scrambled)AONで処置されたhPTEC 対 BKV標的化リードAON(HYB_01、HYB_03またはHYB_11)またはHYB_14で処置されたhPTECにおけるウイルス粒子レベルの低下(処置後に、細胞を約100という感染効率でBKVに感染させた)。これらのデータは、生物学的n=3の代表である。
【0062】
【
図34】hPTECのBKV感染の様々な態様におけるBKV標的化リード化合物AONによる処置の蓄積効果を表しているヒートマップ。リード化合物AON(HYB_01、HYB_03またはHYB_11)またはHYB_14で前処置されたhPTECに対する、TAgおよびVP1 mRNA、VP1タンパク質ならびにウイルス粒子産生に対して観察された効果の要約。スケールは、黒色が、ほとんど効果がないか全く効果がないことを表し、白色が、大きな効果(スクランブル(Scrambled)と比べて2logの倍率変化,n=3)を表すことを示している。
【0063】
【
図35】BKV標的化リードAONによって誘導されたスプライシング調節のRNA-seq解析。パネルの上の部分には、一次転写産物およびスプライシング事象を示しており、パネルの下の部分には、観察されたスプライシングパターンおよびzスコアを示しているが、これらは、本発明者らのBKV標的化AONが実際にスプライシングを調節することを示している。エキソン1-イントロン部位ならびにエキソン2の3’領域において事象が観察される。まとめると、スプライシングにおいて近位効果と遠位効果の両方に影響するとみられる単一のAONが存在することは、複雑なスプライシング事象を示唆する。
【0064】
【
図36】BKV標的化リード化合物AONによって誘導されるスプライシング調節の長配列リード解析。スクランブルAONまたは本発明者らのリード化合物AON(HYB_01、HYB_03またはHYB_11)で前処置されたHK2細胞からのRNA転写物の長配列リード解析。左:棒グラフが、固定されたアクセプター部位(イントロン-エキソン2)と組み合わせてラージTもしくはスモールtドナー部位を使用する転写物またはスプライシングされていない転写物のパーセンテージを表しており、BKV標的化AONによるスプライシング調節を示している。右:棒グラフが、固定されたドナー部位と組み合わせて短縮型T(truncatedT)または短縮型T
*(truncatedT
*)アクセプター部位を使用する転写物のパーセンテージを表しており、BKV標的化AONによるスプライシング調節を示している。
【0065】
【
図37】JCウイルスゲノムおよびJCV標的化AONの概略図。パート1(
図37-1):BKウイルスと同様に、JCウイルスゲノムは、スモールt抗原およびラージT抗原(初期遺伝子)、ならびにアグノプロテインならびに主なキャプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3(後期遺伝子)をコードする。このウイルスゲノムは、複製開始点、ならびに初期遺伝子および後期遺伝子の発現ならびにウイルスゲノム複製を駆動する転写因子結合用のプロモーター領域を有する非コード領域(NCCR)も含む。初期および後期領域のプレmRNAのBKVスプライシングに関しては幅広く知られているのとは対照的に、JCVスプライシングに関してはほとんど知られていない。パート2(
図37-2):上のパネルに示されたようなJCVラージT抗原(TAg)のエキソン-イントロンジャンクションを標的化するために使用されるAON配列。パート3(
図37-3):JCV TAgのエキソン-イントロンジャンクションにおけるAONに対する結合部位を表している概略図。
【0066】
【
図38】TAgスプライシング調節AONは、JCVに感染させたヒト人工多能性幹細胞由来アストロサイトにおいてTAg mRNAの発現レベルを低下させる。スクランブルAONで処置されたhiPSC由来アストロサイト 対 JCV標的化AONで処置されたhiPSC由来アストロサイトにおけるTAg mRNAレベルの低下(処置後、細胞をJCVに感染させた)(n=1)。
【0067】
【
図39】TAgスプライシング調節AONは、JCVに感染させたヒト人工多能性幹細胞由来アストロサイトにおいてVP1 mRNAの発現レベルを低下させる。スクランブルAONで処置されたhiPSC由来アストロサイト 対 JCV標的化AONで処置されたhiPSC由来アストロサイトにおけるVP1 mRNAレベルの低下(処置後、細胞をJCVに感染させた)(n=1)。
【0068】
【
図40】TAgスプライシング調節AONは、JCVに感染させた初代ヒトアストロサイトにおいてTAg mRNAの発現レベルを低下させる。スクランブルAONで処置された初代アストロサイト 対 JCV標的化AONで処置された初代アストロサイトにおけるTAg mRNAレベルの低下(処置後、細胞をJCVに感染させた)(n=2生物学的反復)。
【0069】
【
図41】TAgスプライシング調節AONは、JCVに感染させた初代ヒトアストロサイトにおいてVP1 mRNAの発現レベルを低下させる。スクランブルAONで処置された初代アストロサイト 対 JCV標的化AONで処置された初代アストロサイトにおけるVP1 mRNAレベルの低下(処置後、細胞をJCVに感染させた)(n=2生物学的反復)。
【0070】
【
図42】RNA-seq中に増幅されたRNAによるBKVゲノムのカバレッジ(coverage)。スクランブルコントロール、HYB_01、HYB_03、HYB_11、HYB_14またはSAN_73およびSAN_74で処置された細胞由来のBKVゲノムに対するペアードエンドリードのアラインメントによって、BKV RNA発現レベルの半定量的評価が可能になる。データは、生物学的n=3を示しており、初期および後期遺伝子の発現プロファイルに分かれた。
【0071】
【
図43】ロングリード高忠実度Phusionポリメラーゼによって生成されたTAg(プレ)mRNAの電気泳動解析。Phusionポリメラーゼを用いて、スクランブルコントロールAON(レーン1)またはBKV標的化AON(すなわち、HYB_01、HYB_03またはHYB_11;それぞれレーン2~4)で処置されたHK2細胞から回収されたRNAからロングリード高忠実度mRNAを生成し、キャピラリー電気泳動によって評価した。データは、生物学的n=3の代表である。
【0072】
【
図44】静脈内投与の24時間後のマウス腎臓におけるAON取り込みの蛍光顕微鏡法。C57BL/6Jマウスに40mg/kgのHYB_01(5’6-FAM標識なしの2’MOE)を静脈内投与した24時間後のマウス腎臓切片の色分けされた高拡大率の像。核をHoechstで染色したところ、腎臓(近位尿細管)のシカクマメレクチン(LTL)陽性細胞との共局在に基づくと、近位尿細管上皮細胞による取り込みは明白である。左のパネルは、100×拡大率を示している(10×対物レンズ、スケールバー=100μm)のに対して、右のパネルは、400×拡大率を示している(40×対物レンズ、スケールバー=20μm)。
【0073】
【
図45】BKV標的化AON取り込みに対するマウス組織の免疫組織化学染色。C57BL/6Jマウスに40mg/kgのHYB_01(5’6-FAM標識なしの2’MOE)を静脈内投与した24時間後に器官を切除し、AONの取り込みを免疫組織化学的に評価した。ヘマトキシリン-エオシン染色(H&E)の後、抗ホスホロチオエート抗体、およびHRP標識二次抗体を明らかにするペルオキシダーゼ基質としてのジアミノベンジジン(DAB)によってAON骨格を特異的に検出した。AON染色が陽性のシグナルを、ImageJにおけるカラーデコンボリューションおよび閾値化によって可視化したところ、肝臓ではシグナルが著しく低く、心臓組織にはシグナルは無かったが、高レベルのAON取り込みを有する陽性尿細管が示された。
【発明を実施するための形態】
【0074】
用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」とは、リボ核酸(RNA)もしくはデオキシリボ核酸(DNA)のオリゴマーもしくはポリマー、またはそれらの模倣物、キメラ、アナログおよびホモログのことを指す。この用語には、天然に存在する核酸塩基、糖および共有結合性のヌクレオシド間(骨格)結合から構成されるアンチセンスオリゴヌクレオチド、ならびに同じように機能する天然に存在しない部分を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。そのような改変または置換されたアンチセンスオリゴヌクレオチドは、望ましい特性(例えば、細胞に多く取り込まれること、標的核酸に対して親和性が高いこと、およびヌクレアーゼの存在下でも安定性が高いこと)を有するので、天然の形態よりも好ましいことが多い(
図7を参照のこと)。
【0075】
本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0076】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドにおけるヌクレオチド位置の1つ以上に異なる塩基が存在する改変されたアンチセンスオリゴヌクレオチドも含む。例えば、1番目のヌクレオチドがアデノシンである場合、この位置にチミジン、グアノシンまたはシチジンを含む改変されたアンチセンスオリゴヌクレオチドが作製され得る。これは、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドの位置のいずれにおいても行われ得る。そして、これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、T抗原RNAを阻害する能力を測定する本明細書中に記載される方法を用いて試験される。
【0077】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、感受性細胞が感染したときに生成されるポリオーマウイルスRNAにハイブリダイズし得る。したがって、本アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的RNAの(一部の)配列の逆相補鎖である配列を含む。本アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一本鎖、二本鎖、部分的に一本鎖または環状のオリゴマー化合物の形態で導入され得る。好ましい実施形態において、本アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0078】
本アンチセンスオリゴヌクレオチドは、他の1つ以上の化学構造に連結され得る。他の構造とは、ペプチドもしくはタンパク質、糖、脂質または他の化学構造であり得る。他の構造は、他の1種以上のヌクレオチドでもあり得る。他の1種以上のヌクレオチドは、アンチセンス部分とは異なる機能を果たし得る。例えば、別の核標的配列へのハイブリダイゼーション。他の構造は、いくつかの1つ以上の異なる機能のいずれかを果たし得る。そのような機能の非限定的な例は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの安定、バイオアベイラビリティの増大、細胞透過の増大、核送達の増大、特定の細胞への標的化などである。
【0079】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、いったん系に導入されると、標的核酸の改変をもたらすように1つ以上の酵素または構造タンパク質の作用を誘発し得る。「DNA様」である一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドが、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞性エンドヌクレアーゼであるRNaseHを誘発することは当該分野で公知である。ゆえに、RNaseHの活性化によって、RNA標的が切断される。これは、アンチセンスオリゴヌクレオチド媒介性の遺伝子発現阻害の効率を高める1つの方法である。実施形態において、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的RNA/アンチセンスオリゴヌクレオチドハイブリッドに対するRNaseHの作用をリクルートせず、また、リクルートするようにデザインされていない。RNaseIIIおよびリボヌクレアーゼLファミリーの酵素などの他のリボヌクレアーゼに対しても、同様の役割が仮定されている。本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび標的RNA/アンチセンスオリゴヌクレオチドハイブリッドにヌクレアーゼ抵抗性を付与する改変を有する。標的配列にハイブリダイズしない内部または外部「バルジ」を含むリボザイムは、本明細書中において「アンチセンスオリゴヌクレオチド」の定義から明確に排除される。
【0080】
本発明に係るアンチセンスオリゴヌクレオチドは、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基(すなわち、約12~30個(30個を含む)の連結ヌクレオシド)を含む。当業者は、本発明が、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドを具体的に例示することを認識するだろう。当業者は、これが、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドを具体的に例示することを認識するだろう。当業者は、これが、17、18、19、20、21、22、23、24、25または26核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドを具体的に例示することを認識するだろう。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、18、19、20、21または22核酸塩基長であることが多い。本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、17、18、19、20、21または22ヌクレオチド長である。
【0081】
1つの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、その配列が本明細書中に具体的に開示されるオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも12個連続した核酸塩基を含む。それらの例示的なアンチセンスオリゴヌクレオチド内から選択される一続きの少なくとも12個連続した核酸塩基を含む12~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドも同様に、好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドであると考えられる。
【0082】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的RNAの配列の逆相補鎖である核酸塩基の配列を含む。本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的RNAの少なくとも12個連続した核酸塩基の配列の逆相補鎖である配列を有する、一続きの少なくとも12核酸塩基を含む。その一続きは、相補性領域またはハイブリダイゼーション領域とも称される。当業者は、本発明が、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30核酸塩基長の相補性領域を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを具体的に例示することを認識するだろう。当業者は、本発明が、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30核酸塩基長の相補性領域を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを具体的に例示することを認識するだろう。当業者は、本発明が、17、18、19、20、21、22、23、24、25または26核酸塩基長の相補性領域を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを具体的に例示することを認識するだろう。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、18、19、20、21または22核酸塩基長の相補性領域を有することが多い。本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、17、18、19、20、21または22核酸塩基長の相補性領域を有する。
【0083】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、相補性領域の長さと同等の長さを有する。
【0084】
本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの標的配列は、ポリオーマウイルスT抗原プレmRNAの一部である。プレmRNAまたはmRNA前駆体は、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)の未熟な一本鎖である。ポリオーマウイルスT抗原プレmRNAは、細胞核において転写によってポリオーマウイルスのDNA鋳型から合成される。そのプレmRNAは、プレmRNAからmRNAへの成熟の間に切り出される1つ以上のイントロンを含む。スプライシングプロセスによって、転写物からイントロンが除去され、エキソン同士が結合する。イントロンは、通常、ドナー部位(イントロンの5’末端)およびアクセプター部位(イントロンの3’末端)に隣接している。スプライス部位は、スプライシングに必要であり、通常、ほぼ一定の配列GUをイントロンの5’末端に含み、ほぼ一定のAG配列を有するスプライスアクセプター部位をイントロンの3’末端に含む。GUおよびAG配列ならびに介在配列が、プレmRNAから切り出される。ポリオーマウイルスT抗原プレmRNAの特徴は、それが、選択的スプライシングを受けるかまたはスプライシングされずに、少なくとも2つ、しばしば3、4または5つの、異なってスプライシングされたmRNAが生成され得る点である(
図1を参照のこと)。ウイルス伝播は、ウイルスゲノムの入手可能性、ウイルスタンパク質の存在、細胞機構、および特に、様々なステージと構成要素との間の繊細な相互作用に依存する。ウイルスRNAのスプライシングプロセスは、ウイルス伝播プロセスの制御にとって重要な方法であり、細胞において形成されるある特定の生成物のレベルに影響し、おそらくはそのタイミングにも影響する。本発明では、驚くべきことに、本発明のオリゴヌクレオチドをラージT抗原mRNAのスプライシングのためのスプライスドナー部位またはスプライスアクセプター部位に向けることによって、T抗原mRNAの産生だけでなく、感染細胞によって産生されるキャプシドタンパク質のレベルおよびウイルスの産生に対しても顕著な効果が得られることが見出された。
【0085】
本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの標的配列は、ポリオーマウイルスT抗原プレmRNAのスプライスドナー部位、ポリオーマウイルスT抗原プレmRNAのスプライスアクセプター部位またはそれらの組み合わせを含む。その標的配列は、通常、ポリオーマウイルスT抗原プレmRNAのスプライスドナー部位またはポリオーマウイルスT抗原プレmRNAのスプライスアクセプター部位を含む一続きの12個連続した核酸塩基を含む。その連続した配列は、好ましくは、スプライスドナーまたはスプライスアクセプター配列に加えて、イントロン配列を含む。好ましい実施形態において、その連続した配列は、スプライスドナーまたはスプライスアクセプター配列に隣接した1つまたは2つのイントロン核酸塩基を含む。好ましい実施形態において、その連続した配列は、スプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に隣接した3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個のイントロン核酸塩基を含む。好ましい実施形態において、その連続した配列は、スプライスドナーまたはスプライスアクセプター配列に隣接した1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個のエキソン核酸塩基を含む。本アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、標的プレmRNAの核酸塩基の連続した配列の逆相補鎖である配列を含む。イントロン、スプライス部位およびエキソンの核酸塩基の数の合計は、アンチセンスオリゴヌクレオチドにおける核酸塩基の総数を超えない。
【0086】
上記標的配列は、好ましくは、特定のポリオーマウイルスのラージT抗原をコードするmRNAを生成するように切り出されるイントロンを定義するスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列を含む(
図8を参照のこと)。
【0087】
本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列は、特定のポリオーマウイルスのラージT抗原をコードするmRNAを生成するように切り出されるイントロンを定義するスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を含む(
図8を参照のこと)。
【0088】
好ましい実施形態において、第1のオリゴヌクレオチドの標的配列は、それぞれのウイルスに対する下記に示される3’スプライス部位の標的領域における配列である。好ましい実施形態において、別のオリゴヌクレオチドの標的配列は、それぞれのウイルスに対する下記に示される5’スプライス部位の標的領域の配列である。下記に示される領域における標的配列を対象にしているオリゴヌクレオチドは、示される配列におけるスプライスドナーまたはスプライスアクセプターの相補的配列を含む。2つ以上のAONが、本明細書中に記載される方法において使用される場合、それらのAONは、同じウイルスの標的配列を対象にしていることが好ましい。
【0089】
【0090】
1番目の縦列は、ウイルス名の略号を含んでいる。配列データベースにおける当該配列に対するアクセッションコードとともに、ウイルスのプロトタイプ配列が示されている。3番目および4番目の縦列には、スプライスドナー(縦列4)またはスプライスアクセプター(縦列3)を含む、プロトタイプウイルス配列における領域が示されている。本明細書中に記載されるAONは、これらのスプライスドナーまたはスプライスアクセプターに対する相補性領域を含み得る。
【0091】
本発明に係るアンチセンスオリゴヌクレオチドは、感染細胞においてT抗原プレmRNAのスプライシングを調節し得る。理論に拘束されるものではないが、本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、それが標的としているスプライス部位の使用を阻害すると考えられている。その結果生じるラージT抗原産生の減少は、キャプシドタンパク質の発現に影響し、それにより、ウイルスの産生に影響する(
図4~6を参照のこと)。理論に拘束されるものではないが、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドによって誘導されるT抗原特異的スプライシング産物のアンバランスは、ウイルスの伝播に対して、RNAi様アプローチによるT抗原mRNA特異的mRNAの減少よりも顕著な影響を及ぼすと考えられている。
【0092】
本発明の文脈において、「ハイブリダイゼーション」は、核酸の相補鎖の対形成を意味する。本発明において、対形成の好ましい機序には、相補的なヌクレオシド塩基またはヌクレオチド塩基(核酸塩基)の間における、ワトソン-クリック水素結合、フーグスティーン水素結合または逆フーグスティーン水素結合であり得る水素結合が関わる。例えば、アデニンとチミンが、水素結合の形成によって対形成する相補的な核酸塩基である。ハイブリダイゼーションは、様々な状況において生じ得る。相補鎖のハイブリダイゼーションは、通常、その配列の長さが長くなるにつれて良くなる。2本の鎖の特異的なハイブリダイゼーションは、連続した一続きの12個またはそれ以上の相補的な核酸塩基を用いて達成される。アンチセンスオリゴヌクレオチドの配列は、特異的にハイブリダイズ可能であるようにその標的配列に対して100%相補的であり得るが、必ずしもそうである必要はない。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、介在しているまたは隣接しているセグメントは、ハイブリダイゼーション事象に関わらないように、1つ以上のセグメントにわたってハイブリダイズすることがある。本発明の1つの実施形態において、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的プレmRNA内の標的領域に対して少なくとも70%または少なくとも75%または少なくとも80%または少なくとも85%の配列相補性を含む。他の実施形態において、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的プレmRNA内の標的領域に対して、少なくとも90%の配列相補性を含み、さらには少なくとも95%または少なくとも96%の配列相補性を含む。例えば、アンチセンス化合物の20核酸塩基のうちの18核酸塩基が標的領域に相補的であるがゆえに特異的にハイブリダイズし得るアンチセンス化合物は、90パーセントの相補性に相当し得る。18ヌクレオチドのアンチセンスオリゴヌクレオチドが、ポリオーマウイルスラージT抗原プレmRNAの連続した一続きの少なくとも12核酸塩基の逆相補鎖である配列を有するとき、残りの相補的な6核酸塩基は、その12核酸塩基とクラスター形成してもよいし、その12核酸塩基と連続していなくてもよい。標的プレmRNAのある領域に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドのパーセント相補性は、当該分野で公知のBLASTプログラム(ベーシックローカルアラインメントサーチツール)およびPowerBLASTプログラム(Altschulet al.,J.Mol.Biol.,1990,215,403-410;Zhang and Madden,Genome Res.,1997,7,649-656)を用いて常法により測定され得る。ヌクレオチドの数は、必ず整数であるので、実際のパーセンテージは、厳密に90%ではないまたは厳密に96%ではないことがある。連続した配列は、好ましくは、標的核酸配列に対してヌクレオチドミスマッチを有しないか、またはヌクレオチドミスマッチを1つだけ有する。
【0093】
12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、NC_001538から取得された領域4537-4596または領域4881-4940におけるヌクレオチドに好ましくは少なくとも80%相補的であり、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含み、好ましくは、NC_001538から取得されたヌクレオチド4537-4596または4881-4940に少なくとも90%相補的である。その12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基は、好ましくは、標的プレmRNAの、一続きの少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、30、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個連続したヌクレオチドに相補的である。好ましい実施形態において、そのオリゴヌクレオチドは、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長であり、好ましくは、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24;配列番号25;配列番号26または配列番号27に示されている配列;好ましくは、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24または配列番号25に示されている配列;好ましくは、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24または配列番号25に示されている配列を含む。
【0094】
12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、NC_001699から取得された領域4397-4456または領域4741-4800におけるヌクレオチドに好ましくは少なくとも80%相補的であり、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含み、好ましくは、NC_001699から取得されたヌクレオチド4397-4456または領域4741-4800に少なくとも90%相補的である。その12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基は、好ましくは、標的プレmRNAの、一続きの少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、30、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個連続したヌクレオチドに相補的である。
【0095】
12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、NC_009238から取得された領域4299-4358または領域4686-4745におけるヌクレオチドに好ましくは少なくとも80%相補的であり、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含み、好ましくは、NC_009238から取得されたヌクレオチド4299-4358または領域4686-4745に少なくとも90%相補的である。その12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基は、好ましくは、標的プレmRNAの、一続きの少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、30、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個連続したヌクレオチドに相補的である。
【0096】
12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、NC_009539から取得された領域4477-4536または領域4876-4935におけるヌクレオチドに好ましくは少なくとも80%相補的であり、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含み、好ましくは、NC_009539から取得されたヌクレオチド4477-4536または領域4876-4935に少なくとも90%相補的である。その12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基は、好ましくは、標的プレmRNAの、一続きの少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、30、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個連続したヌクレオチドに相補的である。
【0097】
12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、NC_010277から取得された領域4693-4752または領域5124-5183におけるヌクレオチドに好ましくは少なくとも80%相補的であり、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含み、好ましくは、NC_010277から取得されたヌクレオチド4693-4752または領域5124-5183に少なくとも90%相補的である。その12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基は、好ましくは、標的プレmRNAの、一続きの少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、30、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個連続したヌクレオチドに相補的である。
【0098】
12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、NC_014406から取得された領域4264-4323または領域4654-4713におけるヌクレオチドに好ましくは少なくとも80%相補的であり、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含み、好ましくは、NC_014406から取得されたヌクレオチド4264-4323または領域4654-4713に少なくとも90%相補的である。その12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基は、好ましくは、標的プレmRNAの、一続きの少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、30、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個連続したヌクレオチドに相補的である。
【0099】
12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、NC_014407から取得された領域4272-4331または領域4677-4736におけるヌクレオチドに好ましくは少なくとも80%相補的であり、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含み、好ましくは、NC_014407から取得されたヌクレオチド4272-4331または領域4677-4736に少なくとも90%相補的である。その12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基は、好ましくは、標的プレmRNAの、一続きの少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、30、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個連続したヌクレオチドに相補的である。
【0100】
12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、NC_014361から取得された領域4352-4411または領域4765-4824におけるヌクレオチドに好ましくは少なくとも80%相補的であり、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含み、好ましくは、NC_014361から取得されたヌクレオチド4352-4411または領域4765-4824に少なくとも90%相補的である。その12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基は、好ましくは、標的プレmRNAの、一続きの少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、30、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個連続したヌクレオチドに相補的である。
【0101】
12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、NC_015150から取得された領域4408-4467または領域4760-4819におけるヌクレオチドに好ましくは少なくとも80%相補的であり、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含み、好ましくは、NC_015150から取得されたヌクレオチド4408-4467または領域4760-4819に少なくとも90%相補的である。その12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基は、好ましくは、標的プレmRNAの、一続きの少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、30、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個連続したヌクレオチドに相補的である。
【0102】
12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、NC_018102から取得された領域4303-4362または領域4658-4717におけるヌクレオチドに好ましくは少なくとも80%相補的であり、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含み、好ましくは、NC_018102から取得されたヌクレオチド4303-4362または領域4658-4717に少なくとも90%相補的である。その12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基は、好ましくは、標的プレmRNAの、一続きの少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、30、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個連続したヌクレオチドに相補的である。
【0103】
12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、NC_020106から取得された領域4159-4218または領域4504-4563におけるヌクレオチドに好ましくは少なくとも80%相補的であり、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含み、好ましくは、NC_020106から取得されたヌクレオチド4159-4218または領域4504-4563に少なくとも90%相補的である。その12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基は、好ましくは、標的プレmRNAの、一続きの少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、30、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個連続したヌクレオチドに相補的である。
【0104】
12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、NC_020890から取得された領域4392-4451または領域4791-4850におけるヌクレオチドに好ましくは少なくとも80%相補的であり、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含み、好ましくは、NC_020890から取得されたヌクレオチド4392-4451または領域4791-4850に少なくとも90%相補的である。その12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基は、好ましくは、標的プレmRNAの、一続きの少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、30、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個連続したヌクレオチドに相補的である。
【0105】
12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、NC_024118から取得された領域4471-4530または領域4859-4918におけるヌクレオチドに好ましくは少なくとも80%相補的であり、それぞれの領域におけるスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列に対する相補性を少なくとも含み、好ましくは、NC_024118から取得されたヌクレオチド4471-4530または領域4859-4918に少なくとも90%相補的である。その12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基は、好ましくは、標的プレmRNAの、一続きの少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、30、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個連続したヌクレオチドに相補的である。
【0106】
本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24;配列番号25;配列番号26または配列番号27、好ましくは、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24または配列番号25;好ましくは、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24または配列番号25の少なくとも12個連続した核酸塩基を含み、その少なくとも12個のヌクレオチドは、好ましくは、標的プレmRNAのスプライスドナー部位、スプライスアクセプター部位またはそれらの組み合わせ、すなわち、それぞれのポリオーマウイルスのラージT抗原プレmRNAのスプライスドナー/アクセプターの逆相補鎖を含む。その逆相補鎖は、それぞれの配列番号に存在する。
【0107】
本発明はさらに、少なくとも12個連続した核酸塩基のヌクレオチド配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドに関する(
図3および
図10を参照のこと):5’ACCUCUGAGCUACUCCAGGU3’ 配列番号1;5’ACAAACCUCUGAGCUACUCC3’ 配列番号2;5’CAGCACAAACCUCUGAGCUA3’ 配列番号3;5’UCCAUAGGUUGGCACCUAGA3’ 配列番号4;5’UGUUCCAUAGGUUGGCACCU3’ 配列番号5;5’AAACCUCUGAGCUACUCCAG3’ 配列番号20;5’GCACAAACCUCUGAGCUACU3’ 配列番号21;5’AUCAGCACAAACCUCUGAGC3’ 配列番号22;5’AAAUCAGCACAAACCUCUGA3’ 配列番号23;5’GAAAAUCAGCACAAACCUCU3’ 配列番号24;5’AGGAAAAUCAGCACAAACCU3’ 配列番号25;5’CAUAGGUUGGCACCUAUAAA3’ 配列番号26または5’UUCCAUAGGUUGGCACCUAU3’ 配列番号27。
【0108】
本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24;配列番号25;配列番号26または配列番号27;好ましくは、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24または配列番号25;好ましくは、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24または配列番号25の少なくとも13、14、15、16、17、18、19または20個連続した核酸塩基を含み、それぞれその少なくとも13、14、15、16、17、18、19または20ヌクレオチドは、好ましくは、標的プレmRNAのスプライスドナー部位、スプライスアクセプター部位またはそれらの組み合わせの逆相補鎖を含む。本明細書中に示される核酸塩基は、必ずしも量ではなく種類が同じ塩基対形成活性を有する異なる核酸塩基によって置換され得る。そのような代替物の例は、ウラシルの代替物としてのチミジン塩基である。他の核酸塩基が、同じ種類の塩基対形成活性を有する代替物の代わりに用いられ得る。
【0109】
別の代替物は、任意の塩基と対形成する塩基である。塩基の例は、イノシンである。そのような塩基は、通常、標的RNAの中の適切な塩基と対形成する塩基と比べて、オリゴヌクレオチドに対して特異性を追加しない。オリゴヌクレオチドは、当業者に公知であるように、これをある程度受け入れ得る。同じ特異性が望まれる場合、さらなる選択的な塩基が、オリゴヌクレオチドに付加され得、例えば、イノシンまたは他の非選択的塩基の各々に代わる1つのさらなる選択的な塩基であるがこれに限定されない。
【0110】
本アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、上記ヌクレオチド配列の少なくとも12個連続した核酸塩基を含む(
図9を参照のこと):
【0111】
【0112】
1つの実施形態において、本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの骨格修飾を含む。1つの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート修飾を含む。ホスホロチオエート(PS)修飾は、オリゴのリン酸骨格における非架橋酸素の代わりに硫黄原子を用いる。この修飾によって、ヌクレオチド間結合がヌクレアーゼ分解に対して抵抗性になる。ホスホロチオエート結合は、エキソヌクレアーゼ分解を阻害するために、オリゴの5’または3’末端における最後の3~5ヌクレオチドの間に導入され得る(
図7を参照のこと)。同様に、オリゴ全体にわたってホスホロチオエート結合を含めることによっても、エンドヌクレアーゼによる攻撃の低減が助けられる(
図3を参照のこと)。
【0113】
別の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、モルホリノ(ホスホロジアミデートモルホリノ)修飾を含む。モルホリノは、標準的な核酸塩基を有するが、それらの塩基は、リン酸の代わりにホスホロジアミデート基によって互いに連結されているモルホリン環に結合されている。モルホリノは、それらの標的RNA分子の分解を引き起こさない。
【0114】
1つの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヌクレオシドのリボース部分の2’炭素上に少なくとも1つの糖修飾を含む。1つの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの2’糖修飾を含む。アンチセンス目的の糖修飾の概要は、Prakash(2011;Chem.Biodivers.Sept
8(9):1616-1641.Doi 10.1002/cbdv.201100081)に記載されている。
図7に示されているように、好ましい2’糖修飾は、2’-アルコキシまたは2’-アルコキシアルコキシ修飾、より好ましくは、2’-メトキシエトキシである。好ましい修飾は、2’-O-メチル(2’-O-Me)、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)、2’-S-拘束(constrained)エチル(2’-cEt)およびロックト核酸(locked nucleic acid;LNA)である。
【0115】
他の修飾としては、ペプチド核酸(PNA)が挙げられる。いくつかの実施形態では、所与のアンチセンスオリゴヌクレオチドにおけるすべての位置が、均一に修飾される。他の実施形態では、所与のアンチセンスオリゴヌクレオチドにおけるいくつかの位置が、均一に修飾されない。実際に、上述の修飾の2種以上が、単一のアンチセンスオリゴヌクレオチドに組み込まれ得るか、またはさらには、アンチセンスオリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシドに組み込まれ得る。本発明は、キメラアンチセンスオリゴヌクレオチドであるアンチセンスオリゴヌクレオチドも含む。キメラアンチセンスオリゴヌクレオチドは、2つ以上の化学的に異なる領域を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、その各領域は、少なくとも1つのヌクレオチドで構成されている。これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの領域を含み、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドに、ヌクレアーゼ分解に対する高い抵抗性、細胞取り込みの増大、および/または標的核酸に対する高い結合親和性を付与するように修飾されている。
【0116】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断できる酵素の基質として働き得る。そのような可能性は、ある領域をアンチセンスオリゴヌクレオチドの内部に含めることによって媒介されることが多い。そのようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは、「ギャップマー(gapmer)」とも称される。ギャップマーは、通常、RNaseH切断を誘導するのに十分に長いデオキシリボヌクレオチドモノマーのブロックを中央に含むキメラアンチセンスオリゴヌクレオチドである。効率的なRNase切断には、一続きの4つ以上のデオキシリボヌクレオチドが必要である。通常、そのような一続きは、9つ以上のデオキシリボヌクレオチドを有する。本発明では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断できる酵素の基質として働き得る領域を含まないことが好ましい。
【0117】
本アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、ホスホロチオエート修飾核酸塩基などの修飾ヌクレオチドおよび/または2’糖修飾を含み、それにより、ヌクレアーゼによる偶発的な分解に対する抵抗性が提供される。
図7に示されているように、好ましい2’糖修飾は、2’-アルコキシまたは2’-アルコキシアルコキシ修飾、より好ましくは、2’-メトキシエトキシである。好ましい2’糖修飾には、2’-O-メチル(2’-O-Me)、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)、2’-S-拘束エチル(2’-cEt)およびロックト核酸(LNA)が含まれる。骨格は、全体にわたってホスホロチオエートを含み得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドの他の配置も、本発明によって包含される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、ヌクレアーゼによる標的RNAの偶発的な分解に対する抵抗性を提供する修飾ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート修飾核酸塩基および/または2’糖修飾)を含む。そのようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本発明の範囲内である。したがって、本明細書中に開示されるオリゴヌクレオチドは、好ましくは、標的RNAに抵抗性のヌクレアーゼを提供する領域を有する。本アンチセンスオリゴヌクレオチドと標的RNAとによって形成される二重鎖は、RNaseHの作用に対して感受性でない。
【0118】
好ましい実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、改変されたポリマー骨格を有する1つ以上の核酸塩基を含む。改変されたポリマー骨格は、好ましくは、改変された骨格であり、本明細書中の他の箇所に記載されている。好ましい実施形態において、改変されたポリマー骨格は、2’-O-メチル(2’-O-Me)、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)、2’-S-拘束エチル(2’-cEt)、ロックト核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)またはモルホリノ(PMO)ヌクレオチドを含む。好ましい実施形態において、改変されたポリマー骨格におけるヌクレオチドのすべてが、修飾された糖部分を好ましくは2’炭素に含む。好ましい実施形態において、2つのヌクレオチドを連結しているリン酸基は、ホスホロチオエート基に改変される。好ましくは、改変されたポリマー骨格におけるホスホジエステル結合のすべてが、ホスホロチオエート結合である。
【0119】
ヒトポリオーマウイルスは、アルファ属、ベータ属およびデルタ属と称されるいくつかの属に分けることができる(Helle,F.et.al.,Viruses,2017)。好ましい実施形態において、ポリオーマウイルスは、アルファウイルスまたはベータウイルス、好ましくは、ベータウイルスである。いくつかのヒトポリオーマウイルスを本明細書中の下記の表に列挙する。好ましい実施形態において、ポリオーマウイルスは、BKポリオーマウイルス(または本願ではBKPyVもしくはBKVとも称される、BKウイルス)、JCポリオーマウイルス(または本願ではJCVとも称される、JCウイルス)またはメルケル細胞ポリオーマウイルス(MCポリオーマウイルス、MCウイルス、または本願ではMCVとも称される)である。特に好ましい実施形態において、ポリオーマウイルスは、BKウイルスまたはJCウイルス、好ましくは、BKウイルスである。
【0120】
【0121】
本発明は、細胞におけるポリオーマウイルスの複製を阻害する方法も提供し、その方法は、前記ポリオーマウイルスに感染した細胞に、本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する工程を含む。そのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、その感染のポリオーマウイルスを標的化するオリゴヌクレオチドである(
図3を参照のこと)。その細胞は、好ましくは、ポリオーマウイルスの複製に感受性の細胞である。その細胞が、ヒトなどの動物の中の細胞であるとき、その動物は、許容宿主、すなわち、ウイルスが宿主の防御を迂回することおよびそのウイルスの複製を可能にする宿主であることが好ましい。BKウイルスおよびJCウイルスなどのポリオーマウイルスの場合、複製は、最初に、その動物の尿中のウイルスを検出することによって、検出されることが多い(尿毒症)。その後、その感染が持続すると、ウイルスは、動物の血清中でも検出され得る(ウイルス血症)。ほとんどのヒトが、小児期の間にBKウイルスおよびJCウイルスに遭遇して、軽度の疾病を引き起こす。しかしながら、免疫無防備状態の宿主において再活性化されるかまたは獲得される場合、BKウイルスおよびJCウイルスは、いくつかのヒト臨床疾患状態に関わる。BKは、尿管狭窄症、出血性膀胱炎および腎症などの腎障害に最もよく関連している(Leploeg,M.D.et.al.,Clinical Infectious Diseases,2001;Helle,F.et.al.,Viruses,2017)。宿主の感受性または寛容性は、宿主の免疫系を損なうことによって誘導され得る。様々な状況によって、宿主の免疫力が一時的または永久に低下し得る。免疫不全(Immunodeficiency)(または免疫不全(immune deficiency))は、免疫系が感染症および癌と戦う能力が損なわれているかまたは全く無い状態である。免疫不全のほとんどの症例が、後天的(「続発性」)であり、患者の免疫系に影響する外因に起因する。これらの外因の例としては、HIV感染、極端な年齢、および栄養などの環境要因が挙げられる。免疫抑制は、一部の薬物(例えば、糖質コルチコイド、細胞分裂阻害薬、抗体、およびイムノフィリン(例えば、カルシニューリン阻害剤、ベラタセプト(CTLA-4の細胞外ドメインを有する免疫グロブリン様分子)および類似の分子に影響を及ぼす化合物)によっても誘導され得る。これは、抗拒絶反応の措置として臓器移植手術などにおける、および自己免疫疾患におけるような過活動の免疫系に苦しんでいる患者における、望ましい効果であり得る。しかしながら、時折、この望ましい効果は、個体がポリオーマウイルス感染などのウイルス感染症と戦う能力を低下させるというさらなる作用を有する。何らかの種類の免疫不全を有する人は、免疫力が低下していると言われている。免疫無防備状態の人は、誰もが発症し得る通常の感染症に加えて、日和見感染症に特にかかりやすいことがある。
【0122】
1つの実施形態において、本発明は、移植のために移植片を準備する方法を提供し、その方法は、ドナー細胞、好ましくは、ドナー腎細胞に、本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供することを特徴とする。そのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、移植片細胞において複製するポリオーマウイルスを標的化するオリゴヌクレオチドである。腎臓移植片または腎細胞移植片の場合、そのポリオーマウイルスは、好ましくは、BKウイルス、JCウイルスまたはMCウイルス特異的オリゴヌクレオチドである。そのように処置された移植片の細胞は、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドが特異的なポリオーマウイルスの複製に、より感受性でなくなる。これによって、移植の成功率が上昇する。これによって、移植レシピエントの管理が容易になる。移植レシピエントにおける日和見性のポリオーマウイルスの複製および患者における他の薬物誘発免疫抑制を管理する方法の1つは、免疫抑制薬の投与を減少させることであり、それにより、免疫系は、ウイルスの感染およびまたは複製を減少させる程度にまで回復できるようになる。移植片が、本明細書中に記載されるように準備されたとき、患者におけるポリオーマウイルスの感染/複製は、未処置の移植片を移植された患者と比べて、より低頻度であり、検出されたとしても重症度が低いことが多い。移植片レシピエントは、望まれるとき、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた1回以上のさらなる投与を受けることが好ましい。本発明は、対象におけるポリオーマウイルス感染症を処置する方法も提供し、その方法は、本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを、それを必要とする個体に投与する工程を含む。その個体は、好ましくは、免疫不全個体である。
【0123】
移植片は、好ましくは、同種移植片または異種移植片である。そのような移植片のレシピエントは、移植片の生存時間を延長するため、または宿主対移植片効果の発生率および/もしくは重症度を低下させるために、免疫抑制薬で処置されることが多い。現在、多くの組織が移植できる。遺伝的に同一でない別のヒトまたは非ヒト動物から細胞または器官を移植するとき、宿主対移植片効果は、高リスクであることが多い。移植片としては、肺、心臓、心臓弁、腎臓、肝臓、膵臓、腸、胸腺および骨髄が挙げられる。ポリオーマウイルスは、臓器移植後に免疫抑制を受けたこれらの患者の最大3%の血漿中で検出された(De Vlaminck,I.et.al.,Cell,2013)。移植片は、好ましくは、腎臓または腎細胞を含む。個体は、好ましくは、腎臓移植または腎細胞移植のレシピエントである。
【0124】
本アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、そのオリゴヌクレオチドと標的RNAとの二重鎖に対して、RNaseHに対する抵抗性を付与するものである。本アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、ヒト腎細胞に存在し得るRNA、好ましくは、ヒト腎細胞において複製し得るヒトウイルス、好ましくは、ポリオーマウイルスのRNAの連続した一続きの少なくとも12、好ましくは、少なくとも17核酸塩基の逆相補鎖である配列を含む。1つの実施形態において、本発明は、ポリオーマウイルスT抗原プレmRNAの連続した一続きの少なくとも12核酸塩基の逆相補鎖である配列を含む、12~30、好ましくは、17、18、19または20~30核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供し、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞における前記T抗原プレmRNAのスプライシングを調節でき、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24;配列番号25;配列番号26または配列番号27の少なくとも12個連続した核酸塩基を含む。配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24;配列番号25;配列番号26または配列番号27の少なくとも12個連続した核酸塩基を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドが、さらに提供され、その少なくとも12個のヌクレオチドは、それぞれのポリオーマウイルスのラージT抗原プレmRNAのスプライスドナー配列またはスプライスアクセプター配列の逆相補鎖を含む。
【0125】
本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、mRNA-オリゴヌクレオチド二重鎖をRNaseHの作用に対して抵抗性にする改変を含む。好ましくは、改変されたポリマー骨格、好ましくは、2’-O-メチル(2’-O-Me)、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)、2’-S-拘束エチル(2’-cEt)、ロックト核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)またはモルホリノ(PMO)ヌクレオチドを有する少なくとも1つの核酸塩基を含む。好ましくは、それらの核酸塩基のすべてが、改変されたポリマー骨格、好ましくは、2’-O-メチル(2’-O-Me)、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)、2’-S-拘束エチル(2’-cEt)、ロックト核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)またはモルホリノ(PMO)ヌクレオチドを含む。
【0126】
好ましい実施形態において、本アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24;配列番号25;配列番号26または配列番号27の少なくとも17、好ましくは、少なくとも18、19、好ましくは、少なくとも20個連続した核酸塩基を含むか、または配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24;配列番号25;配列番号26または配列番号27の少なくとも17、好ましくは、少なくとも18、19、好ましくは、少なくとも20個連続した核酸塩基を、1つのミスマッチとともに含み、そのミスマッチは、連続した一続きの最初または最後のヌクレオチドではない。
【0127】
細胞におけるポリオーマウイルスの複製を阻害する方法も提供され、その方法は、前記ポリオーマウイルスに感染した細胞に本アンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する工程を含む。移植のために移植片を準備する方法も提供され、その方法は、ドナー細胞、好ましくは、ドナー腎細胞に、本アンチセンスオリゴヌクレオチドを提供することを特徴とする。
【0128】
対象におけるポリオーマウイルス感染症を処置する方法がさらに提供され、その方法は、それを必要とする個体に、本明細書中に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与する工程を含む。前記個体は、免疫不全個体である。その個体は、好ましくは、腎臓移植または腎細胞移植のレシピエントである。
【0129】
個体の腎細胞における相補的なRNA配列へのハイブリダイゼーションのために、前記個体にアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与する方法も提供され、その方法は、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドが本明細書中に記載されるオリゴヌクレオチドであることを特徴とする。
【0130】
アンチセンスオリゴヌクレオチドと標的mRNAとの二重鎖をRNaseの作用に対して抵抗性にする改変を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドが、さらに提供され、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24;配列番号25;配列番号26または配列番号27の配列を、ミスマッチなしで、または1つもしくは2つのミスマッチを伴って含む。
【0131】
本明細書中に記載されるオリゴヌクレオチドは、動物に投与されたとき、適切な腎細胞に効率的に送達され、それらの腎細胞に取り込まれることが観察された。投与方法は、好ましくは、静脈内(IV)投与である。血液脳関門を越えて中枢神経系(CNS)に入ることができるポリオーマウイルス、例えば、JCウイルスの場合、アンチセンスオリゴヌクレオチドをCNSに投与することが可能である。様々な方法が当該分野で公知である。JCウイルス感染のアンチセンスオリゴヌクレオチド媒介性処置の場合、CNS髄腔内送達が好ましい。JCウイルスの初感染は、扁桃または胃腸管を介することが多く、その上で、他の器官(例えば、腎臓の尿細管上皮細胞であるがこれに限定されない)に広がって、そこに潜伏したまま残るかまたは複製し続けて、尿中および脳内にウイルス粒子を排出し得ると考えられているので、JCウイルス感染は、IV送達によっても対処することができる。
【0132】
本アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、以下の配列5’-CACAAACCTCTGAGCTA;5’-AACCUCUGAACUAUUCCAUGU;5’-ACCUCUGAACUAUUCCAUGUA;5’-TTCATCTGTTCCATAGGTTGGCACCTA;もしくは5’-TTCCATAGGTTGGCACCTAAAAAAAAA、またはそれらの代替物であって、1つ以上のチミジンがウラシルであるかその逆である配列を有しない。
【0133】
明確にする目的で、および簡潔に説明する目的で、同じ実施形態または別個の実施形態の一部として特徴を本明細書中に記載するが、しかしながら、本発明の範囲には、記載される特徴の全部または一部の組み合わせを有する実施形態が含まれ得ることが認識される。
【実施例0134】
[実施例1]
(材料および方法)
(系統発生解析のために用いられたアクセッション)
BKポリオーマウイルス単離株の全ゲノム配列を、公的に利用可能なNCBIデータベースからダウンロードした。これらの記録から、全ゲノムが報告されている単離株だけを、TAgにおけるスプライス部位の保存について使用した。Dunlop株を参照ゲノムとして使用した。イントロンに大きな欠失がある、またはアクセプタースプライス部位と部分的に一致する重複があるという理由から、それぞれ単離株「MM」および「FNL-9」を除去した。245個のユニークなゲノム配列のアクセッション番号を下記に提供する:AB211369.1; AB211370.1; AB211371.1; AB211372.1; AB211373.1; AB211374.1; AB211375.1; AB211376.1; AB211377.1; AB211378.1; AB211379.1; AB211381.1; AB211382.1; AB211383.1; AB211384.1; AB211385.1; AB211386.1; AB211387.1; AB211388.1; AB211389.1; AB211390.1; AB211391.1; AB213487.1; AB217917.1; AB217918.1; AB217919.1; AB217920.1; AB217921.1; AB260028.1; AB260029.1; AB260030.1; AB260031.1; AB260032.1; AB260033.1; AB263912.1; AB263913.1; AB263914.1; AB263915.1; AB263916.1; AB263917.1; AB263918.1; AB263919.1; AB263920.1; AB263921.1; AB263922.1; AB263923.1; AB263924.1; AB263925.1; AB263926.1; AB263927.1; AB263928.1; AB263929.1; AB263930.1; AB263931.1; AB263932.1; AB263934.1; AB263935.1; AB263936.1; AB263938.1; AB269825.1; AB269826.1; AB269827.1; AB269828.1; AB269829.1; AB269830.1; AB269831.1; AB269832.1; AB269834.1; AB269836.1; AB269837.1; AB269838.1; AB269840.1; AB269841.1; AB269842.1; AB269843.1; AB269844.1; AB269845.1; AB269846.1; AB269847.1; AB269848.1; AB269849.1; AB269850.1; AB269851.1; AB269852.1; AB269853.1; AB269854.1; AB269855.1; AB269856.1; AB269857.1; AB269858.1; AB269859.1; AB269860.1; AB269861.1; AB269862.1; AB269863.1; AB269864.1; AB269865.1; AB269866.1; AB269867.1; AB269868.1; AB269869.1; AB298941.1; AB298942.1; AB298945.1; AB298946.1; AB298947.1; AB301086.1; AB301087.1; AB301089.1; AB301090.1; AB301091.1; AB301092.1; AB301093.1; AB301094.1; AB301095.1; AB301096.1; AB301097.1; AB301099.1; AB301100.1; AB301101.1; AB365130.1; AB365132.1; AB365133.1; AB365134.1; AB365136.1; AB365137.1; AB365138.1; AB365139.1; AB365140.1; AB365141.1; AB365142.1; AB365144.1; AB365145.1; AB365146.1; AB365148.1; AB365149.1; AB365150.1; AB365151.1; AB365153.1; AB365154.1; AB365156.1; AB365157.1; AB365158.1; AB365159.1; AB365160.1; AB365162.1; AB365164.1; AB365165.1; AB365166.1; AB365167.1; AB365168.1; AB365170.1; AB365173.1; AB365174.1; AB365175.1; AB365176.1; AB365178.1; AB369087.1; AB369088.1; AB369089.1; AB369090.1; AB369092.1; AB369093.1; AB369094.1; AB369095.1; AB369096.1; AB369097.1; AB369098.1; AB369099.1; AB369101.1; AB464953.1; AB464954.1; AB464956.1; AB464957.1; AB464958.1; AB464960.1; AB464961.1; AB464962.1; AB485695.1; AB485696.1; AB485697.1; AB485698.1; AB485699.1; AB485700.1; AB485701.1; AB485703.1; AB485704.1; AB485707.1; AB485709.1; AB485710.1; AB485711.1; AB485712.1; AY628224.1; AY628225.1; AY628226.1; AY628227.1; AY628228.1; AY628229.1; AY628230.1; AY628231.1; AY628232.1; AY628233.1; AY628234.1; AY628235.1; AY628236.1; AY628237.1; AY628238.1; DQ305492.1; EF376992.1; FR720308.1; FR720309.1; FR720310.1; FR720311.1; FR720312.1; FR720313.1; FR720315.1; FR720317.1; FR720318.1; FR720320.1; FR720321.1; JF894228.1; JN192431.1; JN192432.1; JN192433.1; JN192435.1; JN192437.1; JN192438.1; JN192439.1; JN192440.1; JQ713822.1; KF055891.1; KF055892.1; KF055893.1; KP412983.1; KP984526.1; KY114802.1; KY114803.1; KY132094.1; KY487998.1; LC029413.1; LC309239.1; LC309240.1; LT960370.1; M23122.1; V01108.1。
【0135】
同様に、異なる13個の基本型のヒトポリオーマウイルスに対する全ゲノム配列をダウンロードした。それらのアクセッション番号を下記に示す:NC_001538; NC_001699; NC_009238; NC_009539; NC_010277; NC_014406; NC_014407; NC_014361; NC_015150; NC_018102; NC_020106; NC_020890; NC_024118。
【0136】
(ラージT抗原のスプライス部位の保存)
すべての参照ヒトポリオーマウイルスの全ゲノムヌクレオチド配列を、2018年2月20日にNCBIウェブサイト(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore)からダウンロードし、デフォルトの設定でWebPrank(オンラインで利用可能:https://www.ebi.ac.uk/goldman-srv/webprank/)を用いてアラインメントした。UPGMA系統樹を構築し、すべてのスプライス部位に対してシーケンスロゴを作製して、異なるヒトポリオーマウイルス間の保存を示した。ダウンロードしたすべてのrefseqアクセッション番号も下記に示す。
【0137】
参照配列:NC_001538, NC_001699, NC_009238, NC_009539, NC_010277, NC_014406, NC_014407, NC_014361, NC_015150, NC_018102, NC_020106, NC_020890, NC_024118
【0138】
すべてのヒトポリオーマウイルス単離株の全ゲノムヌクレオチド配列を、2018年2月20日にNCBIウェブサイトからダウンロードした。ラージT抗原の全遺伝子配列を、上記のユニークなゲノム配列のみから検索し、デフォルトの設定でWebPrankを用いてアラインメントした。ラージT抗原におけるすべてのスプライス部位に対してシーケンスロゴを作製して、異なるヒトポリオーマウイルス内および異なるヒトポリオーマウイルス間の保存を示した。
【0139】
ダウンロードしたすべてのアクセッション番号を下記に示す:
BKPyV:AB211369.1, AB211370.1, AB211371.1, AB211372.1, AB211373.1, AB211374.1, AB211375.1, AB211376.1, AB211377.1, AB211378.1, AB211379.1, AB211380.1, AB211381.1, AB211382.1, AB211383.1, AB211384.1, AB211385.1, AB211386.1, AB211387.1, AB211388.1, AB211389.1, AB211390.1, AB211391.1, AB213487.1, AB217917.1, AB217918.1, AB217919.1, AB217920.1, AB217921.1, AB260028.1, AB260029.1, AB260030.1, AB260031.1, AB260032.1, AB260033.1, AB260034.1, AB263912.1, AB263913.1, AB263914.1, AB263915.1, AB263916.1, AB263917.1, AB263918.1, AB263919.1, AB263920.1, AB263921.1, AB263922.1, AB263923.1, AB263924.1, AB263925.1, AB263926.1, AB263927.1, AB263928.1, AB263929.1, AB263930.1, AB263931.1, AB263932.1, AB263933.1, AB263934.1, AB263935.1, AB263936.1, AB263937.1, AB263938.1, AB269822.1, AB269823.1, AB269824.1, AB269825.1, AB269826.1, AB269827.1, AB269828.1, AB269829.1, AB269830.1, AB269831.1, AB269832.1, AB269833.1, AB269834.1, AB269835.1, AB269836.1, AB269837.1, AB269838.1, AB269839.1, AB269840.1, AB269841.1, AB269842.1, AB269843.1, AB269844.1, AB269845.1, AB269846.1, AB269847.1, AB269848.1, AB269849.1, AB269850.1, AB269851.1, AB269852.1, AB269853.1, AB269854.1, AB269855.1, AB269856.1, AB269857.1, AB269858.1, AB269859.1, AB269860.1, AB269861.1, AB269862.1, AB269863.1, AB269864.1, AB269865.1, AB269866.1, AB269867.1, AB269868.1, AB269869.1, AB298940.1, AB298941.1, AB298942.1, AB298943.1, AB298944.1, AB298945.1, AB298946.1, AB298947.1, AB301086.1, AB301087.1, AB301088.1, AB301089.1, AB301090.1, AB301091.1, AB301092.1, AB301093.1, AB301094.1, AB301095.1, AB301096.1, AB301097.1, AB301098.1, AB301099.1, AB301100.1, AB301101.1, AB301102.1, AB301103.1, AB365130.1, AB365131.1, AB365132.1, AB365133.1, AB365134.1, AB365135.1, AB365136.1, AB365137.1, AB365138.1, AB365139.1, AB365140.1, AB365141.1, AB365142.1, AB365143.1, AB365144.1, AB365145.1, AB365146.1, AB365147.1, AB365148.1, AB365149.1, AB365150.1, AB365151.1, AB365152.1, AB365153.1, AB365154.1, AB365155.1, AB365156.1, AB365157.1, AB365158.1, AB365159.1, AB365160.1, AB365161.1, AB365162.1, AB365163.1, AB365164.1, AB365165.1, AB365166.1, AB365167.1, AB365168.1, AB365169.1, AB365170.1, AB365171.1, AB365172.1, AB365173.1, AB365174.1, AB365175.1, AB365176.1, AB365177.1, AB365178.1, AB369087.1, AB369088.1, AB369089.1, AB369090.1, AB369091.1, AB369092.1, AB369093.1, AB369094.1, AB369095.1, AB369096.1, AB369097.1, AB369098.1, AB369099.1, AB369100.1, AB369101.1, AB464953.1, AB464954.1, AB464955.1, AB464956.1, AB464957.1, AB464958.1, AB464959.1, AB464960.1, AB464961.1, AB464962.1, AB464963.1, AB485694.1, AB485695.1, AB485696.1, AB485697.1, AB485698.1, AB485699.1, AB485700.1, AB485701.1, AB485702.1, AB485703.1, AB485704.1, AB485705.1, AB485706.1, AB485707.1, AB485708.1, AB485709.1, AB485710.1, AB485711.1, AB485712.1, AY628224.1, AY628225.1, AY628226.1, AY628227.1, AY628228.1, AY628229.1, AY628230.1, AY628231.1, AY628232.1, AY628233.1, AY628234.1, AY628235.1, AY628236.1, AY628237.1, AY628238.1, DQ305492.1, EF376992.1, FR720308.1, FR720309.1, FR720310.1, FR720311.1, FR720312.1, FR720313.1, FR720314.1, FR720315.1, FR720316.1, FR720317.1, FR720318.1, FR720319.1, FR720320.1, FR720321.1, FR720322.1, FR720323.1, JF894228.1, JN192431.1, JN192432.1, JN192433.1, JN192434.1, JN192435.1, JN192436.1, JN192437.1, JN192438.1, JN192439.1, JN192440.1, JN192441.1, JQ713822.1, KF055891.1, KF055892.1, KF055893.1, KP412983.1, KP984526.1, KY114802.1, KY114803.1, KY132094.1, KY487998.1, LC029411.1, LC029412.1, LC029413.1, LC029414.1, LC309239.1, LC309240.1, LT934539.1, LT960370.1, M23122.1, MF627830.1, MF627831.1, V01108.1, V01109.1
【0140】
JCPyV:AB038249.1, AB038250.1, AB038251.1, AB038252.1, AB038253.1, AB038254.1, AB038255.1, AB048545.1, AB048546.1, AB048547.1, AB048548.1, AB048549.1, AB048550.1, AB048551.1, AB048552.1, AB048553.1, AB048554.1, AB048555.1, AB048556.1, AB048557.1, AB048558.1, AB048559.1, AB048560.1, AB048561.1, AB048562.1, AB048563.1, AB048564.1, AB048565.1, AB048566.1, AB048567.1, AB048568.1, AB048569.1, AB048570.1, AB048571.1, AB048572.1, AB048573.1, AB048574.1, AB048575.1, AB048576.1, AB048577.1, AB048578.1, AB048579.1, AB048580.1, AB048581.1, AB048582.1, AB074575.1, AB074576.1, AB074577.1, AB074578.1, AB074579.1, AB074580.1, AB074581.1, AB074582.1, AB074583.1, AB074584.1, AB074585.1, AB074586.1, AB074587.1, AB074588.1, AB074589.1, AB074590.1, AB074591.1, AB077855.1, AB077856.1, AB077857.1, AB077858.1, AB077859.1, AB077860.1, AB077861.1, AB077862.1, AB077863.1, AB077864.1, AB077865.1, AB077866.1, AB077867.1, AB077868.1, AB077869.1, AB077870.1, AB077871.1, AB077872.1, AB077873.1, AB077874.1, AB077875.1, AB077876.1, AB077877.1, AB077878.1, AB077879.1, AB081005.1, AB081006.1, AB081007.1, AB081008.1, AB081009.1, AB081010.1, AB081011.1, AB081012.1, AB081013.1, AB081014.1, AB081015.1, AB081016.1, AB081017.1, AB081018.1, AB081019.1, AB081020.1, AB081021.1, AB081022.1, AB081023.1, AB081024.1, AB081025.1, AB081026.1, AB081027.1, AB081028.1, AB081029.1, AB081030.1, AB081600.1, AB081601.1, AB081602.1, AB081603.1, AB081604.1, AB081605.1, AB081606.1, AB081607.1, AB081608.1, AB081609.1, AB081610.1, AB081611.1, AB081612.1, AB081613.1, AB081614.1, AB081615.1, AB081616.1, AB081617.1, AB081618.1, AB081654.1, AB092578.1, AB092579.1, AB092580.1, AB092581.1, AB092582.1, AB092583.1, AB092584.1, AB092585.1, AB092586.1, AB092587.1, AB103387.1, AB103402.1, AB103403.1, AB103404.1, AB103405.1, AB103406.1, AB103407.1, AB103408.1, AB103409.1, AB103410.1, AB103411.1, AB103412.1, AB103413.1, AB103414.1, AB103415.1, AB103416.1, AB103417.1, AB103418.1, AB103419.1, AB103420.1, AB103421.1, AB103422.1, AB103423.1, AB104487.1, AB113118.1, AB113119.1, AB113120.1, AB113121.1, AB113122.1, AB113123.1, AB113124.1, AB113125.1, AB113126.1, AB113127.1, AB113128.1, AB113129.1, AB113130.1, AB113131.1, AB113132.1, AB113133.1, AB113134.1, AB113135.1, AB113136.1, AB113137.1, AB113138.1, AB113139.1, AB113140.1, AB113141.1, AB113142.1, AB113143.1, AB113144.1, AB113145.1, AB113216.1, AB113217.1, AB118231.1, AB118232.1, AB118233.1, AB118234.1, AB118235.1, AB118651.1, AB118652.1, AB118653.1, AB118654.1, AB118655.1, AB118656.1, AB118657.1, AB118658.1, AB118659.1, AB126981.1, AB126982.1, AB126983.1, AB126984.1, AB126985.1, AB126986.1, AB126987.1, AB126988.1, AB126989.1, AB126990.1, AB126991.1, AB126992.1, AB126993.1, AB126994.1, AB126995.1, AB126996.1, AB126997.1, AB126998.1, AB126999.1, AB127000.1, AB127001.1, AB127002.1, AB127003.1, AB127004.1, AB127005.1, AB127006.1, AB127007.1, AB127008.1, AB127009.1, AB127010.1, AB127011.1, AB127012.1, AB127013.1, AB127014.1, AB127015.1, AB127016.1, AB127017.1, AB127018.1, AB127019.1, AB127020.1, AB127021.1, AB127022.1, AB127023.1, AB127024.1, AB127025.1, AB127026.1, AB127027.1, AB127342.1, AB127343.2, AB127344.1, AB127345.2, AB127346.1, AB127347.1, AB127348.1, AB127349.1, AB127350.2, AB127351.2, AB127352.1, AB127353.1, AB183152.1, AB195639.1, AB195640.1, AB198940.1, AB198941.1, AB198942.1, AB198943.1, AB198944.1, AB198945.1, AB198946.1, AB198947.1, AB198948.1, AB198949.1, AB198950.1, AB198951.1, AB198952.1, AB198953.1, AB198954.1, AB220939.1, AB220940.1, AB220941.1, AB220942.1, AB220943.1, AB262396.1, AB262397.1, AB262398.1, AB262399.1, AB262400.1, AB262401.1, AB262402.1, AB262403.1, AB262404.1, AB262405.1, AB262406.1, AB262407.1, AB262408.1, AB262409.1, AB262410.1, AB262411.1, AB262412.1, AB262413.1, AB362351.1, AB362352.1, AB362353.1, AB362354.1, AB362355.1, AB362356.1, AB362357.1, AB362358.1, AB362359.1, AB362360.1, AB362361.1, AB362362.1, AB362363.1, AB362364.1, AB362365.1, AB362366.1, AB372036.1, AB372037.1, AB372038.1, AF030085.1, AF295731.1, AF295732.1, AF300945.1, AF300946.1, AF300947.1, AF300948.1, AF300949.1, AF300950.1, AF300951.1, AF300952.1, AF300953.1, AF300954.1, AF300955.1, AF300956.1, AF300957.1, AF300958.1, AF300959.1, AF300960.1, AF300961.1, AF300962.1, AF300963.1, AF300964.1, AF300965.1, AF300966.1, AF300967.1, AF363830.1, AF363831.1, AF363832.1, AF363833.1, AF363834.1, AY121907.1, AY121908.1, AY121909.1, AY121910.1, AY121911.1, AY121912.1, AY121913.1, AY121914.1, AY121915.1, AY328376.1, AY342299.1, AY349147.1, AY356539.1, AY364314.1, AY366359.1, AY373463.1, AY376828.1, AY376829.1, AY376830.1, AY376831.1, AY378084.1, AY378085.1, AY378086.1, AY378087.1, AY382184.1, AY382185.1, AY382186.1, AY382187.1, AY382188.1, AY386373.1, AY386374.1, AY386375.1, AY386376.1, AY386377.1, AY386378.1, AY536239.1, AY536240.1, AY536241.1, AY536242.1, AY536243.1, DQ875211.1, DQ875212.1, EU835194.1, JF424834.1, JF424835.1, JF424836.1, JF424837.1, JF424838.1, JF424839.1, JF424840.1, JF424841.1, JF424842.1, JF424843.1, JF424844.1, JF424845.1, JF424846.1, JF424847.1, JF424848.1, JF424849.1, JF424850.1, JF424851.1, JF424852.1, JF424853.1, JF424854.1, JF424855.1, JF424856.1, JF424857.1, JF424858.1, JF424859.1, JF424860.1, JF424861.1, JF424862.1, JF424863.1, JF424864.1, JF424865.1, JF424866.1, JF424867.1, JF424868.1, JF424869.1, JF424870.1, JF424871.1, JF424872.1, JF424873.1, JF424874.1, JF424875.1, JF424876.1, JF424877.1, JF424878.1, JF424879.1, JF424880.1, JF424881.1, JF424882.1, JF424883.1, JF424884.1, JF424885.1, JF424886.1, JF424887.1, JF424888.1, JF424889.1, JF424890.1, JF424891.1, JF424892.1, JF424893.1, JF424894.1, JF424895.1, JF424896.1, JF424897.1, JF424898.1, JF424899.1, JF424900.1, JF424901.1, JF424902.1, JF424903.1, JF424904.1, JF424905.1, JF424906.1, JF424907.1, JF424908.1, JF424909.1, JF424910.1, JF424911.1, JF424912.1, JF424913.1, JF424914.1, JF424915.1, JF424916.1, JF424917.1, JF424918.1, JF424919.1, JF424920.1, JF424921.1, JF424922.1, JF424923.1, JF424924.1, JF424925.1, JF424926.1, JF424927.1, JF424928.1, JF424929.1, JF424930.1, JF424931.1, JF424932.1, JF424933.1, JF424934.1, JF424935.1, JF424936.1, JF424937.1, JF424938.1, JF424939.1, JF424940.1, JF424941.1, JF424942.1, JF424943.1, JF424944.1, JF424945.1, JF424946.1, JF424947.1, JF424948.1, JF424949.1, JF424950.1, JF424951.1, JF424952.1, JF424953.1, JF424954.1, JF424955.1, JF424956.1, JF424957.1, JF424958.1, JF424959.1, JF424960.1, JF424961.1, JF424962.1, JF425488.1, JF425489.1, JF425490.1, JF425491.1, JF425492.1, JF425493.1, JF425494.1, JF425495.1, JF425496.1, JF425497.1, JF425498.1, JF425499.1, JF425500.1, JF425501.1, JF425502.1, JF425503.1, JF425504.1, JF425551.1, JF425552.1, JF425553.1, JF425554.1, JF425555.1, JF425556.1, JQ237146.1, JQ823124.1, JX273163.1, KJ659286.1, KJ659287.1, KJ659288.1, KJ659289.1, KM225765.1, LC164349.1, LC164350.1, LC164351.1, LC164352.1, LC164353.1, LC164354.1, MF662180.1, MF662181.1, MF662182.1, MF662183.1, MF662184.1, MF662185.1, MF662186.1, MF662187.1, MF662188.1, MF662189.1, MF662190.1, MF662191.1, MF662192.1, MF662193.1, MF662194.1, MF662195.1, MF662196.1, MF662197.1, MF662198.1, MF662199.1, MF662200.1, MF662201.1, MF662202.1, MF662203.1, MF662204.1
【0141】
KIPyV:EF520287.1, EF520288.1, EF520289.1, EU358766.1, EU358767.1, KC571691.1, KM085447.1, KU746835.1
【0142】
WUPyV:EF444549.1, EF444550.1, EF444551.1, EF444552.1, EF444553.1, EF444554.1, EU296475.1, EU358768.1, EU358769.1, EU711054.1, EU711055.1, EU711056.1, EU711057.1, EU711058.1, FJ794068.1, FJ890981.1, FJ890982.1, GQ926975.1, GQ926976.1, GQ926977.1, GQ926978.1, GQ926979.1, GQ926980.1, GU296361.1, GU296362.1, GU296363.1, GU296364.1, GU296365.1, GU296366.1, GU296367.1, GU296368.1, GU296369.1, GU296370.1, GU296371.1, GU296372.1, GU296373.1, GU296374.1, GU296375.1, GU296376.1, GU296377.1, GU296378.1, GU296379.1, GU296380.1, GU296381.1, GU296382.1, GU296383.1, GU296384.1, GU296385.1, GU296386.1, GU296387.1, GU296388.1, GU296389.1, GU296390.1, GU296391.1, GU296392.1, GU296393.1, GU296394.1, GU296395.1, GU296396.1, GU296397.1, GU296398.1, GU296399.1, GU296400.1, GU296401.1, GU296402.1, GU296403.1, GU296404.1, GU296405.1, GU296406.1, GU296407.1, GU296408.1, HQ218321.1, KC571693.1, KC571694.1, KC571695.1, KC571696.1, KC571697.1, KC571698.1, KC571699.1, KJ643309.1, KJ725028.1, KM265136.1, KU049032.1, KU672381.1, KX650181.1, KX650182.1, KX650184.1, KX650185.1, KX650186.1, KX650187.1, KX650188.1, KX650189.1, KX650190.1, KX650191.1, KX650192.1, KX650193.1
【0143】
MCPyV:EU375803.1, EU375804.1, FJ173815.1, FJ464337.1, HM011538.1, HM011539.1, HM011540.1, HM011541.1, HM011542.1, HM011543.1, HM011544.1, HM011545.1, HM011546.1, HM011547.1, HM011548.1, HM011549.1, HM011550.1, HM011551.1, HM011552.1, HM011553.1, HM011554.1, HM011555.1, HM011556.1, HM011557.1, HM355825.1, JF812999.1, JF813000.1, JF813001.1, JF813002.1, JF813003.1, JN383838.1, JN383839.1, JN383840.1, JN383841.1, JQ479315.1, JQ479316.1, JQ479317.1, JQ479318.1, JQ479319.1, JQ479320.1, JX045708.1, JX045709.1, KC202810.1, KC571692.1, KF266963.1, KF266964.1, KF266965.1, KX781279.1, KX827417.1, NC_010277.2
【0144】
HPyV6:HM011558.1, HM011559.1, HM011560.1, HM011561.1, HM011562.1, HM011563.1, KM387421.1, KM655817.1, KR090570.1, KU596573.1, KX379630.1, KX379631.1, KX771234.1
【0145】
HPyV7:HM011564.1, HM011565.1, HM011566.1, HM011567.1, HM011568.1, HM011569.1, KJ733012.1, KJ733013.1, KX771235.1
【0146】
TSPyV:AB873001.1, JQ723730.1, KF444091.1, KF444092.1, KF444093.1, KF444094.1, KF444095.1, KF444096.1, KF444097.1, KF444098.1, KF444099.1, KF444100.1, KF444101.1, KM007161.1, KM655816.1, KU221329.1, KX249740.1, KX249741.1, KX249742.1, KX249743.1
【0147】
HPyV9:HQ696595.1 , KC831440.1
【0148】
MWPyV:JQ898291.1, JQ898292.1, KC549586.1, KC549587.1, KC549588.1, KC549589.1, KC549590.1, KC549591.1, KC549592.1, KC549593.1, KC549594.1, KC571700.1, KC571701.1, KC571702.1, KC571703.1, KC571704.1, KC571705.1, KC690147.1, KR338953.1
【0149】
STLPyV:JX463183.1, JX463184.1, KF525270.1, KF530304.1, KF651951.1, KM893862.1, KR090571.1, NC_020106.1
【0150】
HPyV12:JX308829.1, NC_020890.1
【0151】
NJPyV:KF954417.1, NC_024118.1
【0152】
(スプライス部位の保存および系統樹)
イントロン配列を含むTAgの全遺伝子配列を、異なる13個のポリオーマウイルス参照配列およびすべてのユニークなBKポリオーマウイルス単離株に対して、clustalW(Rにおける「msa」パッケージ)を用いてアラインメントした。UPGMA法(Rにおける「phangorn」および「ggtree」パッケージ)を用いて系統樹を構築した。アクセプタースプライス部位およびドナースプライス部位に対してシーケンスロゴを構築して、サブタイプ間のヌクレオチド特異的保存を示した(Rにおける「msa」パッケージ)。
【0153】
(AONのデザイン)
TAgにおけるスプライス部位を標的化するように、アンチセンスオリゴヌクレオチド
(AON)をデザインした。それらのAONにおけるリボ核酸は、2’-OMe修飾を含む。AONは、20ヌクレオチド長であり、全体にホスホロチオエート骨格(*)を有する。インビトロ研究の場合、AONは、5’-FAM標識を含む。AONの二次構造および結合エネルギーを、RNA構造を用いて予測した。すべてのAON配列を下記に示す:
【0154】
【0155】
(細胞培養)
不死化された近位尿細管腎臓上皮HK2細胞(ATCC(登録商標)CRL-2190TM)をATCCから入手し、15mM Hepes、2.5mM L-グルタミン(Lonza)を含み、トリヨードチロニン、上皮成長因子(EGF)、インスリン-トランスフェリン-セレン-エタノールアミン(ITS-X)、ヒドロコルチゾンおよび100U/mLペニシリン-ストレプトマイシンが補充された、ダルベッコ改変イーグル培地-F12、1:1混合物中、37℃、5%CO2にて維持した。BKポリオーマウイルス(ATCC(登録商標)VR-837TM)をATCCから入手し、完全HK2培養液で希釈して、感染量(infectious load)を減少させた。処置実験に向けて、6または12ウェルプレート(Corning)に32,000細胞/cm2の密度で細胞を播種し、一晩生育させた。それらの細胞をリポフェクタミン3000(Thermo
Fisher)とともに50nMのAON濃度で5時間インキュベートすることによって、AON処置を行い、その後、リポフェクタミンを洗浄除去した。細胞を洗浄した24時間後に、それらの細胞をBKポリオーマウイルス含有培養液とともに2時間インキュベートすることによって、BKポリオーマウイルスによる感染を行い、その後、ウイルスを洗浄除去した。洗浄後ならびに感染の3、5および7日後に上清を回収して、ウイルス粒子の産生を、PCRを用いて測定した。ウイルス負荷サンプルを感染前に回収して、感染量を測定した。7日目にRNAおよびタンパク質を収集して、TAgおよびVP1の発現を測定した。
【0156】
(ウイルス量の測定)
培養上清中のウイルス量を測定するために、すべての時点においてすべてのウェルから200μLを回収した。Pierce Universal Nucleaseをすべてのサンプルに加えることにより、パッケージされていないDNAを室温において15分間分解し、次いで、5mM EDTAで失活させた。DNAミニキット(Qiagen)を用いて上清からウイルスDNAを単離し、下記に記載されるTaqman PCR(Wunderink,H.F.,et.al.,J.Clin.Virol.,2017)を用いてウイルス量を測定した。DNA抽出の品質およびPCR阻害の可能性をモニターするために、溶解緩衝液に低濃度のアザラシヘルペスウイルスを加えた。DNAを100μLの最終体積の溶出緩衝液に溶出し、そのうちの10μLをリアルタイム定量的PCR(qPCR)に対するインプットとして用いた。プライマー440BKVs 5’-GAAAAGGAGAGTGTCCAGGG-3’および441BKVas 5’-GAACTTCTACTCCTCCTTTTATTAGT-3’ならびにTaqmanプローブ576BKV-TQ-FAM FAM5’-CCAAAAAGCCAAAGGAACCC-3’-BHQ1を用いて、BKPyV VP1遺伝子内の90bpのフラグメントを増幅した。DNAの品質およびPCR阻害の可能性をモニターするために、BKPyV qPCRおよびアザラシヘルペスウイルスPCRを二重で行った。さらに、BKPyV qPCRを検証して、BKPyV遺伝子型I~IVを検出した。
【0157】
25μLのHotStarTaq Master Mix(QIAGEN,Hilden,Germany)、0.5μmol/Lの各プライマー、0.35μmol/L BKPyVプローブおよび3.5mmol/L MgCl2を含む50μLの総体積において、定量的PCR反応を行った。CFX96リアルタイム検出システム(Bio-Rad,Hercules,CA,USA)を以下のサイクル条件で用いて、反応を行った:95℃15分の後、45サイクルの増幅(95℃30秒;55℃30秒;72℃30秒)。定量の場合は、標準物質である定量済みBKPyV陽性尿サンプルを使用した。BKPyV qPCRの分析感度は、約10コピー/mLであった。各プレートにおいて、3つのネガティブコントロールを含めた;これらのコントロールは、すべてのPCRアッセイにおいてネガティブであると試験された。≧40のサイクル閾値を有するPCRの結果をネガティブとみなした。
【0158】
(抗体およびウエスタンブロット)
BCA法を用いて、タンパク質濃度を測定した。サンプルを4~15%TGXゲルにおいて泳動し、ニトロセルロースメンブレンまたはPVDFメンブレンに転写した。使用した抗体は、ウサギポリクローナル抗アクチン-HRP(ローディングコントロール)、ウサギポリクローナル抗SV40 VP1(ab53977,Abcam)、マウスモノクローナル抗SV40 T抗原[PAb416](ab16879,Abcam)およびマウスモノクローナル抗SV40 T抗原(PAb108,Thermo Fisher)であった。1次抗体を、TAgおよびVP1の場合は4℃で一晩、アクチンの場合はRTで30分、インキュベートした。TAgおよびVP1に対して使用した二次抗体は、それぞれヤギポリクローナル抗マウス-HRP(P044701-2,Agilent)およびヤギポリクローナル抗ウサギ-HRP(P044801-2,Agilent)であった。上記メンブレンをSuperSignalTM West Femto Maximum Sensitivity Substrate(Thermo Fisher)とともにインキュベートし、ChemiDoc MP Imaging System(Bio Rad)を用いてタンパク質バンドを可視化した。
【0159】
(リアルタイムqPCR)
BKに感染させたHK2細胞をTrizolで溶解し、RNeasyキット(Qiagen)を用いてRNAを単離した。その単離中にDNase I(Qiagen)処置を行って、過剰なDNAを除去し、Promega逆転写酵素、DTT、dNTPおよびランダムプライマーを用いて、cDNAを合成した。CFX384 TouchTMReal-Time PCR Detection System(Bio Rad)においてSYBRTM Select Master Mix(Thermo Fisher)および以下のプライマーを用いてリアルタイムPCRを行った:
【0160】
【0161】
(結果)
(BK標的化アンチセンスオリゴヌクレオチドのデザイン)
BKPyVラージT抗原(TAg)を標的化する有効なアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)は、宿主のRNA種には特異的でないという意味において、BKPyVに特異的でなければならないが、好ましくは、他の異なるBKPyV単離株および異なるポリオーマウイルス全般に対して可能な限りユニバーサルでである必要がある。dsRNA/ssRNAウイルスと比べてdsDNAウイルス(この場合、ポリオーマウイルス)は、遺伝的浮動が少ないことを特徴とする。それにもかかわらず、多数のBKPyV血清型をもたらす多数のBKPyV遺伝子型および亜遺伝子型が残っている(
図2の系統樹を参照のこと)。TAgは、2つのエキソンを含むので、本発明者らはまず、AON候補を特定するために、エキソン-イントロンジャンクションのゲノム配列を特定した(
図2を参照のこと)。これを達成するために、本発明者らは、入手可能なユニークなBKPyV TAgゲノム配列(n=245の材料および方法の項で提示したアクセッション番号)をNCBIデータベースから抽出し、ClustalWを用いてこれらをアラインメントした。高レベルの配列類似性(または保存)を示した領域を標的化した。これらの研究は、エキソン1および隣接するイントロン配列に高い保存度を示した(
図2を参照のこと)。エキソン2も、高レベルの配列保存を示した。隣接するイントロン配列は、Tヌクレオチドリッチであると同時に、エキソンの境界から4ヌクレオチド以内ではあまり保存されていなかった。AONを、BKPyV TAgのエキソン1およびエキソン1におけるイントロン配列の架橋部分に対して標的化した。エキソン2の場合、AONを、エキソン2のイントロン領域および隣接するエキソン2配列における4~6ヌクレオチドに対して標的化した。
【0162】
図3に示されているように、本発明者らは、BKPyV TAgを標的化する5つのAONをデザインすることにし、そのうちの3つが、エキソン1-イントロン部分を標的化し(AON#1、#2および#3と命名)、2つのAONが、エキソン2-イントロン部分を標的化する(AON#4および#5と命名)。それらのAONは、エキソン1標的化AON(AON1~3)の場合、主にエキソン配列から、重要なイントロン結合配列を含むところまで徐々にシフトしている。材料および方法の項、および厳密な配列ならびに骨格および糖部分の修飾については
図3を参照のこと。このデザインによって、腎臓移植患者における異なるBKPyV遺伝子型に対してユニバーサルでもありつつ、BKPyVのTAgを特異的に標的化することが可能になった。
【0163】
(AONによって媒介されるBKPyV TAg RNAの減少)
本発明者らは、リポフェクタミンベースのAON送達を用いたところ、トランスフェクション後の5時間以内にAONの取り込みが顕著に改善された。さらに、本発明者らは、AON投与量を、細胞のFAM標識強度に基づいておよそ50nMで最大になるまで漸増した。AON投与の24時間(24h)後、HK2細胞をBKVに2時間感染させ、その後、それらの細胞を洗浄し、3、5および7日間培養した。これらの時点において、それらの細胞からRNAを回収し、qRT-PCRを行って、どのAONがTAgの発現レベルに影響できたかを明らかにした。AONをトランスフェクトされなかったHK2細胞(未処置)は、スクランブルAON(Scr)で処置された細胞と類似のTAg発現レベルを示した(データ示さず)。
【0164】
所与の標的RNAの発現レベルまたはスプライシングを調節するようにデザインされたかなりの比率のAONが、有効であることが立証される。AON#2、#3または#4を用いた本発明者らの研究は、TAg RNAレベルを繰り返し有意に低下させ、概して、このウイルスDNA駆動物質(driver)のRNAレベルの5~10倍の減弱を示した(
図4、左のパネルを参照のこと)。AON#2、#3、#4または#5で処置されたBKPyVに感染した培養物は、繰り返しTAg RNA発現レベルの低下を示した。これにより、これらのAONによって標的化される部位が、TAgの生成を減少させることによるBKウイルス産生の減少にとって好ましい標的部位と立証された。注目すべきこととして、この減少は、高MOI、すなわち、100という範囲の設定において観察される。
【0165】
(AONによって媒介されるVP1 RNAおよびタンパク質の減少)
ポリオーマウイルスに潜伏感染した細胞(例えば、BKVに感染した腎臓近位尿細管細胞)では、低レベルのTAg RNAおよびタンパク質の発現が維持されている。免疫系が損なわれている個体では、それが天然のものであるかまたは免疫抑制レジメンによって誘導されるかにかかわらず、ウイルスの複製およびTAg発現の誘導が観察される(Hasegawa,M.et.al.,Transplantation Proceedings,2014;Nickeleit,V.et.al.,JASN,2018)。TAgレベルの増大は、BKVゲノムの非コード/プロモーター領域に対するアクセサリー転写因子との相互作用とともに、BKゲノムの複製と(後期領域)主要キャプシドタンパク質の発現との両方を駆動する。まとめると、TAgによって媒介される、ウイルスDNAの複製およびキャプシドタンパク質によるカプセル化の活性化によって、尿中(ウイルス尿症)と血清中(ウイルス血症)の両方で検出され得る感染性ウイルス粒子が生成される(Helle,F.et.al.,Viruses,2017)。
【0166】
AONがBKV産生の減少に有効であるかを試験するために、本発明者らは、VP1を含むTAgによって活性化されるタンパク質の発現プロファイルを測定した。VP1は、正二十面体のウイルスキャプシドの主要な構造的構成要素である。この外殻は、5:1という化学量論でVP2またはVP3と結合した72個の五量体を有する。そのため、本発明者らは、VP1に対するqRT-PCRを行い、それにより、GAPDHの1コピーあたりのVP1の発現レベルが、TAgよりもかなり高いことが明らかになった(データ示さず)。これは、TAgが他の転写因子とともにVP1 mRNAの発現を誘導するという事実と一致する。さらに、すべての研究において、本発明者らのAON#2、#3、#4および#5は、VP1 RNAの発現レベルを低下させるとともに、VP1タンパク質も著しく減少させた(
図5、右のパネルを参照のこと)。
【0167】
本発明者らは、AON#2と#4との併用療法がTAgおよびVP1のRNAレベルをより効果的に低下させ得るかについても試験した。この組み合わせは、AONで処置された細胞におけるVP1に対する上述のウエスタンブロット(
図5)が、これらの2つのAONによってVP1タンパク質が最も強く減少したことを示唆したという事実に基づいて選択された。TAgおよびVP1のmRNA発現レベルに基づくと、この併用処置は、それらがより有効であったと示唆するエビデンスをもたらさなかった(
図4)。
【0168】
この観察されたVP1の減少は、TAgスプライシング標的化AONが有効であることを示している。TAg RNA(および潜在的にはタンパク質発現)を減少させることによって、BKPyV後期領域遺伝子および対応するタンパク質の発現レベルが低下する。さらに、VP1は、ウイルスDNAの被包におけるVP1の役割とともに、近くおよび/または遠くの細胞の細胞表面に、グリカン上のシアル酸において結合することによって、新しく形成されたウイルス粒子の感染性において中心的な媒介性の役割も果たす(Helle,F.et.al.,Viruses,2017)。したがって、BKPyVの感染性は、VP1タンパク質が減少する(または存在しない)場合に損なわれる可能性がある。
【0169】
(TAgスプライシング標的化AONはBKウイルス価を低下させる)
本発明者らのTAgスプライシング標的化AONで前処置されたHK2細胞におけるTAgおよびVP1 RNAおよびタンパク質のレベル(7日目)に対してスクリーニングを行うのと同時に、本発明者らは、BKPyV感染の3、5および7日後の培養上清中のウイルス量を評価した。TAg発現の減少は、ウイルスゲノムの複製とVP1タンパク質の生成の両方に潜在的に影響し得るので、本発明者らは、VP1の減少が、カプセル化されたウイルスDNAの生成に影響するか否かを判定した。本発明者らは、カプセル化されたDNAを定量することによって、培養上清中のウイルス粒子を測定した。カプセル化されたDNAとカプセル化されていないDNAとを識別するために、本発明者らは、(エンド)ヌクレアーゼ処置を適用して、カプセル化されていないDNAを消化した。
図6に示されているように、これらの研究は、AON#1が3日目にウイルスDNAレベルを低下させたが、7日目には低下しなくなり、このレベルは、スクランブル(Scrambled)AONで処置された細胞におけるウイルスDNAレベルに対して正規化され、そのレベルと似ていることを明らかにした(
図6)。AON#2、#3および#4は、両方の時間間隔においてウイルス価の低下を特徴とし、AON#2、#3および#4は、特に、被包されたウイルスDNAを6倍まで減弱させた(
図6)。上述のAON#2と#4との併用は、3および7日目にウイルス量をわずかに低下させただけだった(
図6)。
【0170】
したがって、AONによって媒介されるTAgおよびVP1 RNAおよびタンパク質の減少によって、ウイルス産生が減少する。
【0171】
(リボース糖の2’位におけるアルキル修飾)
AON上のリボース糖の2’位の変化は、TAgおよびVP1 RNAおよびタンパク質のレベルを低下させる能力、ならびにBKV DNA生成に影響する(
図7)。上述のデータは、アンチセンスオリゴヌクレオチド内の各ヌクレオチド上のリボース糖の2’-Oメチル(2’-OMe)修飾に基づいている。RNAおよびタンパク質を、2’-OMeヌクレオチドまたは2’-メトキシ(2’-MOE)ヌクレオチドの両方で前処置されたHK2細胞から回収した(
図7を参照のこと)。
【0172】
(他のポリオーマウイルスに対するTAgスプライシング標的化AON)
BKVのほかに、本発明者らは、JCウイルス(JCV)に対するTAgを同様に標的化するAONも開発した。JCVは、BKVに対して75%の配列類似性(エキソン1-イントロンジャンクションで観察される保存レベルである)を有するのに対し、イントロン-エキソン2ジャンクションにおける配列類似性は、実質的に100%である(
図8)。ゆえに、BKVのエキソン2を標的化するAONは、JCV量も減少させ得る。JCVも、扁桃および/または消化管を介した初感染後に近位尿細管細胞などの腎細胞(これらは二次感染部位であると考えられている)に感染し得る。したがって、TAgスプライシング標的化AON、特に、イントロン-エキソン2スプライス部位を標的化するAONは、BKVとJCVの産生を同時に抑制し得る。さらに、本発明者らは、ユニークなJCVエキソン1-イントロン配列を標的化する新規AONを作製している。
【0173】
公知のあらゆるポリオーマウイルスに対して、TAgのエキソン1-イントロンおよびイントロン-エキソン2ジャンクションにおけるゲノム配列が決定されたことを考えると、これらのあらゆるポリオーマウイルスにおけるTAgのスプライシングに影響するAONをデザインすることが可能である(
図9)。
他のポリオーマウイルスに適したAONの例を
図9に示す。
【0174】
[実施例2]
(材料および方法)
(BKVサブタイプの系統発生学的保存)
【0175】
BKポリオーマウイルス単離株の全ゲノム配列を公的に利用可能なNCBIデータベースからダウンロードした(07-09-2018より前に)。これらの記録から、全ゲノムが報告されている単離株だけを、解析に使用した。イントロンに大きな欠失がある、またはアクセプタースプライス部位と部分的に一致する重複があるという理由から、それぞれ単離株「MM」および「FNL-9」を除去した。同一の配列を除去することにより、248個のユニークなゲノム配列が得られ、それらのアクセッション番号を下記に提供する:AB211369, AB211370, AB211371, AB211372, AB211373, AB211374, AB211375, AB211376, AB211377, AB211378, AB211379, AB211381, AB211382, AB211383, AB211384, AB211385, AB211386, AB211387, AB211388, AB211389, AB211390, AB211391, AB213487, AB217917, AB217918, AB217919, AB217920, AB217921, AB260028, AB260029, AB260030, AB260031, AB260032, AB260033, AB263912, AB263913, AB263914, AB263915, AB263916, AB263917, AB263918, AB263919, AB263920, AB263921, AB263922, AB263923, AB263924, AB263925, AB263926, AB263927, AB263928, AB263929, AB263930, AB263931, AB263932, AB263934, AB263935, AB263936, AB263938, AB269825, AB269826, AB269827, AB269828, AB269829, AB269830, AB269831, AB269832, AB269834, AB269836, AB269837, AB269838, AB269840, AB269841, AB269842, AB269843, AB269844, AB269845, AB269846, AB269847, AB269848, AB269849, AB269850, AB269851, AB269852, AB269853, AB269854, AB269855, AB269856, AB269857, AB269858, AB269859, AB269860, AB269861, AB269862, AB269863, AB269864, AB269865, AB269866, AB269867, AB269868, AB269869, AB298941, AB298942, AB298945, AB298946, AB298947, AB301086, AB301087, AB301089, AB301090, AB301091, AB301092, AB301093, AB301094, AB301095, AB301096, AB301097, AB301099, AB301100, AB301101, AB365130, AB365132, AB365133, AB365134, AB365136, AB365137, AB365138, AB365139, AB365140, AB365141, AB365142, AB365144, AB365145, AB365146, AB365148, AB365149, AB365150, AB365151, AB365153, AB365154, AB365156, AB365157, AB365158, AB365159, AB365160, AB365162, AB365164, AB365165, AB365166, AB365167, AB365168, AB365170, AB365173, AB365174, AB365175, AB365176, AB365178, AB369087, AB369088, AB369089, AB369090, AB369092, AB369093, AB369094, AB369095, AB369096, AB369097, AB369098, AB369099, AB369101, AB464953, AB464954, AB464956, AB464957, AB464958, AB464960, AB464961, AB464962, AB485695, AB485696, AB485697, AB485698, AB485699, AB485700, AB485701, AB485703, AB485704, AB485707, AB485709, AB485710, AB485711, AB485712, AY628224, AY628225, AY628226, AY628227, AY628228, AY628229, AY628230, AY628231, AY628232, AY628233, AY628234, AY628235, AY628236, AY628237, AY628238, DQ305492, EF376992, FR720308, FR720309, FR720310, FR720311, FR720312, FR720313, FR720315, FR720317, FR720318, FR720320, FR720321, JF894228, JN192431, JN192432, JN192433, JN192435, JN192437, JN192438, JN192439, JN192440, JQ713822, KF055891, KF055892, KF055893, KP412983, KP984526, KY114802, KY114803, KY132094, KY487998, LC029413, LC309239, LC309240, LT960370, M23122, MF358970, MF627830, MF627831, V01108。
【0176】
(スプライス部位の保存および系統樹)
イントロン配列を含むTAgの全遺伝子配列を、Prank(v.140603)を用いてアラインメントした。アラインメントされた配列に対して手作業で調整を行うことにより、欠失をアラインメントする際の不備を調整した。ブートストラッピング(1000回反復)による近隣結合法(MEGAバージョン10.0.5)およびKimura2-パラメータモデルを用いて、系統樹を構築した。その系統樹をさらにR(「ggtree」)において可視化し、アクセプタースプライス部位およびドナースプライス部位に対してシーケンスロゴを構築して(「ggseqlogo」)、サブタイプ間のヌクレオチド特異的保存を示した。配列のサブタイプを、Zhong et al(Zhong,J Gen Virol,2009)が報告した参照配列を用いて決定した。
【0177】
(オリゴヌクレオチドのデザイン)
アンチセンスオリゴヌクレオチドを、実施例1に記載したようにデザインした。インビボ研究の場合、5’6-FAM標識なし2’-MOE AON(HYB_01)を使用した。
【0178】
(動物)
6~10週齢の雄C57BL6/Jマウスに、40mg/kgの5’6-FAM標識のない2’-MOE AONまたは生理食塩水(体重に対して+-100uLの体積を補正した)を静脈内注射した。AONまたは生理食塩水を投与した24後に、動物をイソフルラン麻酔下、静脈放血により屠殺した。臓器を取り出し、ホルマリンで固定し、パラフィン包埋した。
【0179】
(細胞培養)
ヒト腎近位尿細管上皮細胞(HK2,ATCC(登録商標))を、3,3’,5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩(Sigma-Aldrich)、インスリン-トランスフェリン-セレン-エタノールアミン(ITS-X;Sigma-Aldrich)、ヒト上皮成長因子(EGF;Sigma-Aldrich)、ヒドロコルチゾン(Sigma-Aldrich)および100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)が補充されたダルベッコ改変イーグル培地:Nutrient Mixture
F-12(Gibco)中で維持した。ヒト腎近位尿細管上皮細胞(PTEC,Sciencell Research Laboratories)を、完全REGMTM腎上皮細胞増殖培地(Lonza)中で維持した。初代ヒトアストロサイト(Sciencell Research Laboratories)を、完全Astrocyte Medium(Sciencell Research Laboratorie)中で維持した。iPSc由来のアストロサイトおよびオリゴデンドロサイトを、完全BrainPhysTMNeuronal Medium(Stemcell Technologies)中で維持した。すべての細胞を37℃、5%CO2において培養した。
【0180】
(細胞のAONによる処置およびウイルス感染)
細胞を、必要な細胞密度で播種し、一晩培養した。リポフェクタミン2000とともに4時間(ヒトアストロサイトおよびiPScアストロサイト/オリゴデンドロサイト,Invitrogen)またはリポフェクタミン3000とともに5時間(HK2およびPTEC,Invitrogen)、50nM AONの存在下において細胞を培養することによって、AONの細胞取り込みを行い、その後、それらの細胞を通常の培養液で洗浄した。HK2上皮細胞またはヒト腎臓上皮細胞のBKV感染を、実施例1に記載したように行った。アストロサイト/オリゴデンドロサイトをJCポリオーマウイルス(MAD-4株,ATCC(登録商標)VR-1583TM)の存在下において一晩培養することによって、それらの細胞のJCV感染を行った。過剰なウイルス粒子を除去するために、それらの細胞を感染後、しっかりと洗浄した。培養液を部分的に新しくし、ウイルス粒子産生を調べるために、感染後の特定の時点において上清サンプルを採取した。処置後の感染細胞を含むウェルの上清を採取することによって、細胞の再感染を行った。次いで、この上清を2倍希釈し、未感染かつ未処置の細胞を含む新しいウェルに2時間移し、その後、それらの細胞をしっかりと洗浄した。7日後に、感染した細胞を、4%PFAを用いて洗浄した。
【0181】
(ウイルス量の測定)
培養上清中のウイルス量を、以下のことを除いては実施例1に記載したように行った。1)100μLのサンプルを、すべての時点においてすべてのウェルから回収した。2)パッケージされていないDNAを単離前に、TURBO DNAフリーキット(Invitrogen)を用いて分解した。
【0182】
(リアルタイムqPCR)
RNAの単離、cDNAの合成およびリアルタイムqPCRを、実施例1に記載したように行った。ただし、RNAの単離後、残留DNAを、TURBO DNAフリーキット
(Invitrogen)を用いて分解した。T抗原スプライスバリアントを増幅には、Phusion(登録商標)High-Fidelity PCR Kitを、HF緩衝液および以下のプライマーを使用した:フォワードATGGAGCTCATGGACCTTTTAGG、リバースTGCAACTCTTGACTATGGGGG。JCウイルスRNAのqPCR検出を、以下のプライマーを用いて行った:
【0183】
【0184】
(抗体)
以下の1次抗体を使用した:ウサギ抗SV40 VP1(ab53977)、マウス抗SV40 T抗原(PAb416)、マウス抗SV40 T抗原(PAb108)、ウサギ抗GAPDH(D16H11)、ビオチン化Lotus Lectin(LTL,B-1325)。ウサギ抗ホスホロチオエート抗体は、Jonathan Watts(UMASS Medical School,MA,USA)から厚意により提供された。以下の二次抗体を使用した:ヤギ抗ウサギAlexa488(A11008)、ヤギ抗ウサギAlexa568(A11011)、ヤギ抗ウサギHRP(P044801-2)およびストレプトアビジンAlexa532(S11224)。
【0185】
(タンパク質の定量)
50mM Tris-HCl、150mM NaCl、1%SDS、0.5%デオキシコレート、0.5%トリトンX-100およびプロテアーゼ阻害剤を含む溶解緩衝液(pH7.5)中で細胞を溶解することによって、タンパク質溶解産物を生成した。PierceTM BCA Protein Assay Kit(Thermo Fisher
Scientific)を用いて、サンプルのタンパク質濃度を測定した。12~230kDa分離マトリックスおよび抗ウサギ検出モジュール(ProteinSimple)を備えたWes Simple Western自動化イムノアッセイシステムを用いて、タンパク質発現の定量を行った。
【0186】
(免疫組織化学)
再感染実験の場合、細胞を4%PFAで固定し、0.3%Triton-X/3%BSA(Merck,Zwijndrecht,the Netherlands)/1%NGS(Dako,Amstelveen,Netherlands)/1%FCSのPBS溶液中、RTにおいて1時間、透過処理した。1次抗体を、3%BSA/1%NGS/1%FCSのPBS溶液中、4℃において一晩インキュベートし、その後、細胞をしっかりと洗浄し、二次抗体とともにRTにおいて1時間インキュベートした。再感染した細胞の画像収集および定量を、(TAg+)核を特定し、カウントするカスタムモジュールを使用して、ImageXpress Micro High-Content Imaging SystemおよびMetaXpressソフトウェアを用いて行った。インビボ画像のさらなる処理(カラーデコンボリューションおよび閾値化)を、ImageJを用いて行った。
【0187】
マウス臓器をパラフィンに包埋し、切断し、スライドを脱脂し、再水和し、内因性ペルオキシダーゼを、3%H2O2のメタノール溶液中、室温において10分間クエンチした。プロテイナーゼK(Agilent,Amstelveen,the Netherlands)を室温において10分間用いて、抗原回復を行った後、バックグラウンドバスター(Innovex,Gujarat,India)を用いてブロッキング工程を行った。工程間に、スライドをTBS/Tween中で洗浄した。1次抗体インキュベーション(抗ホスホロチオエートまたはLTL)を、2%BSA/5%NGSのTBS/Tween溶液中、4℃において行った。二次抗体インキュベーションを室温において90分間行った。Hoechst33258(Molecular Probes,Leiden,the Netherlands)で核を染色し、Prolong Gold(Invitrogen)を用いてスライドをマウントした。Pannoramic MIDI II(3DHISTECH,Budapest,Hungary)を用いて画像収集を行った。
【0188】
(次世代シーケンシング)
AONで処置された感染HK2細胞に由来するRNAサンプルに対してRNA-seqを、Illuminaのシーケンシング技術を用いて行った。手短に言えば、サンプルの品質を、Fragment Analyzerを用いて測定し、NEBNext Ultra II Directional RNA Library Prep Kit for Illuminaを用いて、それらのサンプルを処理した。そのサンプル調製は、「NEBNext Ultra II Directional RNA Library Prep Kit for Illumina」(NEB #E7760S/L)のプロトコルに従って行った。簡潔には、rRNA枯渇キット(NEB#E6310)を用いて、全RNAからrRNAを枯渇させた。rRNAが減少したRNAの断片化の後、cDNA合成を行った。これをシーケンシングアダプターとのライゲーションおよび得られた産物のPCR増幅に用いた。サンプル調製後の品質および収率を、Fragment Analyzerを用いて測定した。得られた産物のサイズは、予想したサイズ分布(300~500bpという広範なピーク)と一致した。NovaSeq6000を用いたクラスタリングおよびDNAシーケンシングを、製造者のプロトコルに従って行った。1.1nMという濃度のDNAを使用した。NovaSeqコントロールソフトウェアNCS
v1.5を使用した。画像解析、塩基判定(base calling)および品質検査を、Illuminaデータ解析パイプラインRTA3.3.5およびBcl2fastq v2.20を用いて行った。
【0189】
ヒトリファレンスHomo_sapiens.GRCh38.dna.primary_assemblyを、ウイルス参照LC029411.1と組み合わせた。その組み合わされたゲノムを、各サンプルに対するリードのアラインメントに使用した。それらのリードを、デフォルトの設定のBurrows-Wheeler Transform(Tophat v2.0.14)に基づくショートリードアライナーを用いて参照配列にマッピングした。アラインメントファイルにおけるマッピングされた位置に基づいて、リードが転写物上にマッピングされる頻度を、HTSeq v0.6.1p1を用いて測定した。
【0190】
(Eventpointerを用いたスプライシング事象の特定)
NGSデータにおける選択的スプライシング事象を特定するために、ウイルス参照ゲノムにマッピングされたリードに対して「Eventpointer」を適用した。得られたスプライシング事象を、Kallistoを用いて定量することにより、各事象に対するパーセントスプライシング(PSI)値を得た。統計的検定のために、スクランブルAONをコントロール条件として使用した。
【0191】
(Pacific Biosciencesのロングリードシーケンシング)
まず、RNAの完全性をバイオアナライザーにおいて評価した。cDNA合成を、SMARTer cDNA合成キット(Takara)を用いて行い、特定のラージT産物を、Kapa HiFi HotStart Ready Mix(Roche)を用いて増幅した。cDNA産物をサイズ選択し、その後、SMRTbell Barcoded
Adapter Complete Prep Kit(PacBio)を用いて、アンプリコンをサンプル毎にバーコード付与し、次いで、等モルでプールし、PacBio
Sequel 1M v3 LR SMRTセルにおいてシーケンシングした。
【0192】
転写物の同定、ポリッシングおよびアノテーションを、Pacific Biosciencesが公にしたIso-Seq3バイオインフォマティクスパイプライン(https://github.com/PacificBiosciences/IsoSeq3)を用いて行った。まず、サンプル特異的バーコードの存在に基づいて、リードを完全長と非完全長に分けた。転写物クラスターを見つけるために、アイソフォームレベルのクラスタリングアルゴリズム(ICE)が、完全長リードのペアワイズアラインメントおよび反復割当を行うことにより、尤度に基づいてクラスター形成した。ICEの後、部分的リードをアイソフォームクラスターに付加して、Arrowアルゴリズムを用いて、最終的なコンセンサスのためにカバレッジを上げる。上記バイオインフォマティクスパイプラインからの出力は、参照配列にマッピングされることによりGFF形式のアノテーションファイルを構築し得る完全長転写物配列のセットである。Arrowアルゴリズムの予測コンセンサス精度に基づいて、>99%の予測精度を有する転写物の配列(精度の正確な推定にとって時折カバレッジが不十分であることから、最初の100bpおよび最後の30bpからQVを除外する)をHQ転写物とみなし、さらなる解析に用いた。HQ転写物の配列を、参照配列にマッピングし直し、>99%のアラインメントカバレッジおよび>85%のアラインメント同一性についてフィルタリングした。冗長な転写物は、本研究に使用される最終的なデータセットを作成するために崩した。
【0193】
(結果)
(新規BKV標的化AONの開発)
図10および11に示されているように、本発明者らの以前のAONと並行して、本発明者らは、BKV TAgを標的化する9つの新しいAONをデザインすることにした。その9つのうちの6つが、エキソン1-イントロン部分を標的化し(HYB_06、_07、_08、_09、_10および_11と命名)、2つの新しいAONが、エキソン2-イントロン部分を標的化する(HYB_12および_13と命名)。これらの9つの新しいTAgエキソン-イントロンジャンクション標的化AONとともに、本発明者らは、Santaris Pharmaが以前に報告した2つのAON(WO2012/143427A1)も試験し、この2つのAONは、本発明者らのAONとは異なる組成を有するが、エキソン1-イントロンジャンクションの一部(SAN_74)または単にエキソン2の一部(SAN_73)に相補的である。さらに、本発明者らは、もっぱらエキソン1のコード領域に結合するAON、すなわちHYB_14もデザインし、試験した。それらのAONは、エキソン1標的化AON(ここでは総称される)(HYB_01、_02、_03、_06、_07、_08、_09、_10、_11)およびエキソン2標的化AON(HYB_04、_05、_12および_13)の場合、主にエキソン配列から、重要なイントロン結合配列を含むところまで徐々にシフトしている。
【0194】
(AONによって媒介されるBKV TAg RNAの減少)
BKV標的化AONは、TAg mRNAレベルの低下において様々な範囲の効力を示した。
図12および19に示されているように、TAgのエキソン-イントロンジャンクションを標的化するようにデザインされた14個のAONのうち、HYB_01、HYB_03およびHYB_11が、TAg mRNA発現の最も大きな低下を誘導し、それは概して、このウイルスDNA駆動物質のRNAレベルで、感染の7日後に、8倍またはそれを越える範囲のものであった。
【0195】
さらに、本発明者らのデータは、エキソン1-イントロンジャンクションを標的化するAONが、エキソン2-イントロンジャンクションを標的化するAON(HYB_04、HYB_05、HYB_12およびHYB_13)よりもTAg mRNAレベルの低下に有効であることも示唆する。この傾向は、
図18および25においてバイオインフォマティクス的に示されており、HYB_05だけが、エキソン1-イントロンジャンクションを標的化するAONとクラスター形成している。同様に、SAN_73およびSAN_74が、TAg mRNA発現レベルの低下にほとんど効果がないと判明した。注目すべきこととして、これらのTAg mRNAの減少は、高MOI、すなわち、100という範囲の設定において観察される。
【0196】
HK2細胞とともに、本発明者らは、初代近位尿細管上皮細胞(hPTEC)においても、本発明者らのBKV標的化AONを試験した。HYB_01、HYB_03およびHYB_11を用いたときの、HK2細胞において観察されたTAg mRNAの発現レベルの有意かつ一貫した低下に基づいて、本発明者らは、この段階を進めることにし、これらの3つを本発明者らの「リード化合物」と呼んだ。
図28に示されているように、HYB_01、HYB_03およびHYB_11はすべて、hPTECにおいてTAg mRNAの発現を劇的に減少させたが(n=3生物学的反復)、HYB_14は、hPTECにおいてTAg mRNAレベルの低下に効果がないことが判明した。
【0197】
興味深いことに、本発明者らの研究の大部分が、BKVに感染させる前にAONによる前処置を含む。まずHK2細胞をBKVに感染させ、続いて、それらの細胞をAON(すなわちHYB_01)で処置した予備的研究は、本発明者らのBKV標的化AONが、感染の7日後に、BKVを有する細胞においてBKV TAg発現を効率的に抑制し得ること(
図26、左のパネル)、および感染後の複数回投与が、潜在的に、TAg mRNAの発現レベルをさらに抑制し得ること(
図26、右のパネル)を明らかにした。
【0198】
(AONによって媒介されるVP1 RNAおよびタンパク質の減少)
興味深いことに、VP1 mRNAの発現レベルは、HYB_04、HYB_12、HYB_13およびHYB_14を除くBKV標的化AONのほとんどによって低下した(
図13および20)。TAg mRNAに対して得られた本発明者らの結果と同様に、HYB_01、HYB_03およびHYB_11は、特に、HK2細胞においてVP1 RNA発現を著しく減少させた(
図13)。さらに、HYB_01が、BKウイルスによるHK2細胞の感染前に投与されたのかそれとも感染後に投与されたのかに関係なく、そのAONは、VP1 mRNAレベルを効率的に低下させた(
図26、左および右のパネル)。重要なことに、観察されたVP1 mRNAの減少は、HK2細胞においてVP1タンパク質レベルの劇的な減弱をもたらした(
図14~15および21~22)。TAg mRNAレベルに対する本発明者らの観察結果と一致して、SAN_73およびSAN_74は、VP1のmRNAおよびタンパク質の発現レベルに対して有意に影響しなかった。
【0199】
図29~31に示されているように、HYB_01、HYB_03およびHYB_11はすべて、hPTECにおいてVP1のmRNAおよびタンパク質の発現を劇的に減少させた(n=3生物学的反復)。さらに、HYB_14は、VP1のmRNAおよびタンパク質のレベルに影響しなかった。さらに、本発明者らは、本発明者らのAONがVP3タンパク質レベルも効果的に低下させるという予備的なエビデンスも得た(
図30および32)。
【0200】
(ヒト近位尿細管上皮細胞の感染および再感染)
本発明者らは、次に、本発明者らのBKV標的化AONの幅広い組合せが、HK2細胞におけるBKVによる感染および再感染の程度に影響し得るかを評価した。これを達成するために、本発明者らは、まず、HK2細胞をBKV標的化AONで処置し、それらの細胞をBKVに感染させた。7日後、本発明者らは、ウイルス粒子含有上清を回収し、これを用いて、未処置HK2細胞の新しいバッチに感染させた。7日後、本発明者らは、TAgに感染した細胞に対して蛍光免疫染色を行い、これをパーセント陽性としてスコアリングした(核をHoechstで対比染色することによって)。
図17および24に示されているように、これらの研究は、本発明者らのBKV標的化AONで予め処置された細胞が、有意に低い再感染レベルを示すことを明らかにした。対照的に、SAN_73およびSAN_74によるHK2細胞の前処置は、HYB_01、HYB_03およびHYB_11で観察された程度まで再感染レベルを低下させなかった。
【0201】
(BKV標的化AONはウイルス粒子産生に影響する)
BKウイルスDNAをパッケージングするために必要なタンパク質であるVP1タンパク質の観察された減少は、新しいウイルス粒子の形成および上清への放出に大きく影響するはずである。実際に、
図16、23および33に示されているように、本発明者らのBKV標的化AONの大部分は、感染の7日後にウイルス粒子産生を減少させ、HYB_01、HYB_03およびHYB_11が最も大きな減少をもたらした。対照的に、SAN_73およびSAN_74は、ウイルス粒子産生をほんのわずかにしか減少させないと見出された。この機構は、インビトロでは局所および遠位の細胞の(再)感染の減少に関わっている可能性があることから、腎臓移植後の腎臓近位尿細管上皮細胞における本発明者らのBKV標的化AONの取り込みが、BKVの活性化および/または伝播の予防に有効な治療様式になり得ることを強く示唆する。
【0202】
(BKV標的化AONはTAgのスプライシングを調節する)
どのようにして本発明者らのBKV標的化AONが、本明細書中に記載されるTAgおよびVP1 mRNAの減少をもたらすのかに関する機構的な洞察を得るために、本発明者らは、スクランブルAON、HYB_01、HYB_03、HYB_11、HYB_14、SAN_73またはSAN_74で処置したHK2細胞(その後、これらの細胞をBKVに2時間感染させた)から回収したRNAのRNA-seqを行った。洗浄後、それらの細胞を7日間培養し、その後、RNAを回収し、バイオアナライザーにおいて分解の徴候について評価した。続いて、等量のRNAをリボ枯渇させ(ribo-depleted)、ライブラリー調製を経て、その後、RNA-seqを行った。本発明者らの上述の、HK2細胞におけるTAgおよびVP1 mRNAの減少と一致して、スクランブルコントロール(Scrambled)、HYB_14またはSAN_73およびSAN_74で処置された細胞由来のBKVゲノムのカバレッジは、BKV標的化AONで処置された場合よりも明らかに高かった(
図42)。BKVスプライシングの変化を解析するために、ヒトゲノムとBKVゲノムの両方を配列のアラインメントに提供し、Bowtieを使用してペアードエンドリードをアラインメントした。
【0203】
サンプル中の選択的スプライシングを定量するために、EventPointerを適用した。上記ウイルスの異なる転写物を含む特定のGTFファイルを使用した。このアルゴリズムは、可能性のある選択的スプライシング事象を同定しようとするものであり、各転写物をその可能性のある代替経路に関係づける。TAgなどの非常に複雑なプレmRNAにおけるスプライシングを評価するために、そのプレmRNAをユニークなスプライシング事象に分解し、TAgプレmRNAをはじめに7つのフラグメントに分離した。各ジャンクションにおいて、スプライシング事象が検出される頻度によって定義される、(PSI)を単位とするスプライシングパーセントを測定した。これにより、EventPointerによって測定したとき、すべての条件において高頻度で生じる4つのユニークな選択的スプライシング事象がもたらされた。これらの事象の頻度を、Kallistoソフトウェアを用いてスコアリングしたところ、転写物毎に定量がもたらされた(単位は100万あたりの転写物)。有意性についての統計的検定の後、TAgのエキソン1-イントロンジャンクション、正確には、本発明者らのAONが結合し、スプライシングに影響すると予測された部位におけるスプライシングの有意な変化が観察された(
図35)。ここで、上のパネルは、下のパネル示されるようなユニークなスプライシング事象に後に分解される、TAgプレmRNAにおける適切なスプライシング事象の概略図を提供している。スプライシング事象1の場合、スクランブルコントロールAONで処置されたHK2細胞と比べて、選択的スプライスアクセプター部位が、優先的に使用されるので(Z値=2.5484)、HYB_01は、短縮型T抗原に対してスプライシングパターンの高度に有意な調節をもたらす(P=0.0108)。同様に、スプライシング事象2の場合、スプライシングの高度に有意な変化が検出される(p=0.0149)が、HYB_01は、TAgとは違い、スモールt抗原(tAg)の優先的な生成をもたらす(Z値-2.4342)。対照的に、HYB_14、SAN_73またはSAN_74で処置された細胞では、有意なスプライシングの変化は検出されない。SAN_74に対してスプライシング調節が無いことは、このAONもエキソン1-イントロンジャンクションを架橋することを考えると、特に印象的である。これは、本発明者らのAONのサイズ(16nt長とは対照的に20nt)が、潜在的には立体障害の結果として、TAgのスプライシングに影響する能力の決定において役割を果たすことを強く示唆する。
【0204】
さらに、
図35に示されているデータは、エキソン1-イントロンジャンクションにおけるスプライシング(スプライシング事象2)の調節が、エキソン2内で起きるスプライシングの決定(スプライシング事象1)に影響することも示唆する。ゆえに、本発明者らのBKV標的化AONは、TAgプレmRNAの下流において相互排他的または複雑なスプライシング事象を引き起こしているとみられる。これらの研究は、生物学的n=3に基づく。
【0205】
本発明者らのBKV標的化AONが、TAgのスプライシングの変化を媒介するというエビデンスの裏付けを、高忠実度Phusionポリメラーゼを用いてロングレンジPCRを行うことによって得た。
図43に示されているように、スクランブルコントロールで処置された細胞と比べて、短縮型T抗原アクセプター部位の使用(
図35におけるスプライシング事象1)の劇的な変化が、HYB_01およびHYB_11に対して観察され、よりわずかな変化がHYB_03に対して明らかになった。これらのデータから、エキソン1-イントロンジャンクションを標的化するAONは、エキソン2内のスプライシングの決定に著しく影響することが確かめられた。
【0206】
BKV TAgに対する本発明者らのAONのスプライシング媒介効果に関するさらなる洞察を得るために、本発明者らは、PacBioシーケンシングを用いて、TAgの長配列リードを生成し、ここで、TAgの5’末端および3’末端に結合するプライマーを使用して、完全長TAgプレmRNAを増幅した。これらの研究は、TAg内の個々のスプライス部位の厳密な使用、ならびに本発明者らのRNA-seqデータに示される潜在的な相互排他的または複雑な事象に関する的確な洞察をもたらし得る。RNA分解をバイオアナライザーにおいて評価し、PCRによる標的の濃縮後、PCR産物をサイズ選択した。cDNAライブラリーを調製し、末端を修復し、アダプターをライゲートし、DNAを精製し、SMRTbellでDNA配列決定した。続いて、サブリードを環状のコンセンサスリード(挿入配列リード)に変換した。
図36に示されているように、本発明者らのRNA-seqデータと一致して、これらの研究は、TAgエキソン1-イントロンアクセプターを対象にするAONが、このスプライス部位に対する使用またはアクセスに影響することを示唆する。本発明者らのBKV標的化AON、特にHYB_01は、生成されるTAgのレベルを低下させ(左のパネル;左のバー)、スモールt抗原およびスプライシングされていないラージT抗原を高レベルにシフトさせる(左のパネル;それぞれ中央および右のバー)。さらに、そのデータは、短縮型T抗原スプライシングのAON媒介性調節に対するさらなる裏付けを提供する(右のパネル)。
【0207】
エキソン1-イントロンジャンクションにおけるTAgスプライシングの調節における本発明者らのBKV標的化AONの本明細書中で示される有効性が、(選択的)潜在スプライスドナー部位の使用をもたらし得ることに注意することが重要である。上流の潜在スプライス部位(エキソン1のコード配列部分)または下流の潜在スプライス部位(エキソン2の前のイントロン部分)の使用の可能性は、通常は中途終止コドンの導入をもたらすフレームシフトしたmRNAをもたらし得る。これらの異常な転写物は、ナンセンス変異依存分解機構によって細胞内で速やかに分解され得ることが立証されている(Hug,N.,et al.,Nucleic Acids Research,2016)。重要なことに、おそらく、この迅速な処理のおかげで、これらの異常な形態の転写物の大部分が検出されない。
【0208】
それにもかかわらず、残りのTAg転写物の本発明者らの定量的および定性的な解析は、本発明者らのBKV標的化AONが、TAg mRNAレベルの著しい低下を誘発し、同時に、プレmRNAスプライシングの結果として形成されるmRNAのバランスに影響することを明らかに示唆する。これらのデータは、TAgの発現とスプライシングとの二重調節を、BKVの粒子産生および感染性を減弱させる強力な手段として意味づける。
【0209】
(BKV標的化AONのインビボでの取り込み)
BKV標的化AONについてインビトロで生成された本発明者らのデータは、アンチセンスオリゴヌクレオチド内の各ヌクレオチド上のリボース糖の2’-Oメチル(2’-OMe)修飾を含むように化学的に改変された。重要なことには、インビボにおけるAONの取り込みは、2’ヒドロキシ基が2’-メトキシ(2’-MOE)基で置換されている場合、顕著に改善されると一貫して見出された。ゆえに、本発明者らは、本発明者らのリード化合物であるHYB_01を、全体がホスホロチオエート骨格を有し、かつ2’-MOE基を有するように改変し、このAONを、C57BL/6Jマウスに尾静脈を通じて静脈内注射した。注射の24時間後、マウスを屠殺し、腎臓、肝臓、脾臓、脳および筋肉を回収し、切片にした。
図44および
図45の免疫組織化学染色に示されているように、HYB_01は、腎皮質、特に腎臓の近位尿細管上皮細胞において優れた取り込みを示した(腎臓のシカクマメレクチン(LTL)陽性細胞における取り込みによって証明されるように)。さらに、HYB_01は、肝臓のクッパー細胞においても検出可能であったが、脳では検出不可能であった(
図45を参照のこと)。さらに、それらのAONは、脾臓の白脾髄において検出可能であったが、心臓では最小限度にしか検出可能でなく、筋肉では検出不可能であった(データ示さず)。
【0210】
(他のポリオーマウイルスに対するTAgスプライシング標的化AON)
JCウイルス(JCV)は、ヒト腎臓の近位尿細管上皮細胞に感染すると立証されているにもかかわらず、本発明者らは、これを達成するように繰り返し試みたが成功しなかった。ゆえに、本発明者らは、JCウイルスに感受性であると知られていて、JCV関連の病態生理の発生において役割を果たすと知られている他のヒト細胞、すなわちアストロサイトに感染させることにした。これらの研究のために、本発明者らは、ヒト人工多能性幹細胞由来のアストロサイトまたはヒト初代アストロサイト細胞株を、本発明者らの5つのJCV標的化AONのうちの1つ(
図37)、すなわちHYB_15~19で前処置し(AON1つあたり50nMの濃度で4時間)、続いて、それらの細胞にJCVを10
4.5TCID
50/0.2mL(感染の7日後の、Cos-7細胞の感染に基づく、サプライヤーが提供する情報)の力価で一晩感染させた。
図38および39に示されているように、BKV TAgのエキソン1-イントロンジャンクションの標的化によって、TAgおよびVP1のmRNA発現レベルが低下したという本発明者らの観察結果と一致して、HYB_15、HYB_16およびHYB_17は、iPS細胞由来のアストロサイトにおいてJCV TAgとVP1の両方のmRNA発現レベルを著しく低下させた(n=1)。さらに、初代ヒトアストロサイトにおいても、本発明者らは、様々な力価のJCV投与において、JCV TAgおよびVP1のmRNA発現レベルの著しい低下を観察した
(
図40および41;n=2)。
【0211】