(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156791
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】血液凝固第VIII因子(FVIII)補因子機能代替活性を有する多重特異性抗原結合分子および当該分子を有効成分として含有する薬学的製剤
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20241029BHJP
C07K 16/36 20060101ALI20241029BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241029BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20241029BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241029BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241029BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241029BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241029BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241029BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20241029BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/36
C12N15/13
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P7/04
C12N15/62 Z
C07K16/46
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024124099
(22)【出願日】2024-07-31
(62)【分割の表示】P 2023096300の分割
【原出願日】2018-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2017189647
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【弁理士】
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】寺西 佑理
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一希
(72)【発明者】
【氏名】古賀 光
(72)【発明者】
【氏名】井川 智之
(72)【発明者】
【氏名】山口 一樹
(72)【発明者】
【氏名】添田 哲弘
(57)【要約】
【課題】血液凝固第VIII因子(FVIII)補因子機能代替活性を有する多重特異性抗原結合分子及びその薬学的製剤の提供。
【解決手段】血液凝固第IX因子(FIX)及び/又は活性化血液凝固第IX因子に結合する第一の抗原結合部位、及び血液凝固第X因子に結合する第二の抗原結合部位を含む、FIX活性化阻害活性は上昇させず、かつFVIII補因子機能代替活性を上昇させる二重特異性抗体及びその薬学的製剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液凝固第VIII因子(FVIII)補因子機能代替活性を有する多重特異性抗原結合分子およびその薬学的製剤に関する。また、重鎖と軽鎖の会合が制御された抗原結合分子、重鎖と軽鎖の会合が制御された抗原結合分子の製造方法、抗原結合分子の重鎖と軽鎖の会合制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血友病Aは、先天性の血液凝固第VIII因子(FVIII)の機能低下または欠損による出血異常症である。血友病A患者の出血に対しては、FVIII製剤が通常投与される(on-demand投与)。また、近年は、出血イベントを防ぐために、予防的に、FVIII製剤が投与される(非特許文献1、2)(予防投与)。FVIII製剤の血中半減期は、約12~16時間程度である。それ故、継続的な予防のためには、週に3回、FVIII製剤が、患者に投与される(非特許文献3、4)。また、on-demand投与においては、再出血を防ぐため、FVIII製剤を、必要に応じ、一定間隔で追加投与する。また、FVIII製剤の投与は静脈内に実施される。従って、FVIII製剤と比べて投与の負担が少ない薬剤が、強く求められていた。
【0003】
時折、FVIIIに対する抗体(インヒビター)が、血友病患者に発生する。インヒビターは、FVIII製剤の効果を打ち消す。インヒビターが発生した患者(インヒビター患者)の出血に対しては、バイパス製剤が投与される。それらの作用機序は、FVIIIの機能、すなわち活性化血液凝固第IX因子(FIXa)による血液凝固第X因子(FX)の活性化を触媒する機能に非依存である。そのため、バイパス製剤が、出血を十分止められないケースがある。従って、インヒビターの存在に左右されず、且つFVIIIの機能を代替する薬剤が、強く求められていた。
【0004】
これらの課題を解決する手段として、FVIIIの機能を代替する二重特異性抗体及びその使用が報告されている(特許文献1、2、3および4)。FIXaとFXに対する二重特異性抗体は、両因子を近傍に位置付けることによって、FVIII補因子機能代替の活性を発揮し、FVIIIの機能を代替することが可能である(非特許文献5)。該抗体のFVIII補因子機能代替活性はFIXaとFXに対する親和性及び配向性を最適化することにより向上できることが報告されている(非特許文献6)。また、該抗体のFVIII補因子機能代替活性はIgGのアイソタイプ、ジスルフィド結合パターン、ヒンジ領域のアミノ酸配列、Fc領域の糖鎖の有無によって影響を受けることが知られている(非特許文献7)。該抗体の一つであり、高いFVIII補因子機能代替活性を有するACE910(Emicizumab)はサル血友病モデルで止血効果を発揮することが報告されている(非特許文献8、9)。さらにACE910(Emicizumab)は健常人を対象とした臨床試験において、優れた薬物動態(長い半減期)と忍容性が確認され(非特許文献10)、インヒビター非保有、保有の血友病Aの患者を対象とした臨床試験において、ACE910(Emicizumab)の投与前と比較して、ACE910(Emicizumab)投与により顕著な出血回数の抑制が認められた(非特許文献11)。
【0005】
このように臨床試験において出血回数の抑制効果が認められたACE910(Emicizumab)であるが、FVIII欠乏血漿を用いたin vitroトロンビン生成試験での最大トロンビン生成量(Peak height)におけるACE910(Emicizumab)による改善効果は、正常レベルの100 U/dLのFVIIIと比較して低いこと(非特許文献8)から、より一層の薬効増強が望まれるとともに、血友病A患者の利便性を考えた場合比活性向上によるさらなる投与量の減少等が可能なFVIII補因子機能代替活性を有する二重特異性抗体が望まれる。
【0006】
一般的に、抗体医薬品が抗原として作用し、抗抗体(ADA)産生が誘導される場合がある(非特許文献12)。ADA(抗ACE910(Emicizumab)イディオタイプ抗体)が出現した血友病患者にはACE910(Emicizumab)の継続投与が困難になるため、そのような患者に投与できるFVIII補因子機能代替活性を有する二重特異性抗体が望まれる。
【0007】
ACE910(Emicizumab)は、動物免疫より取得されたFIXおよび/またはFIXaならびにFXを認識する二重特異性抗体をヒト化することによって得られたhBS1をリード抗体として、リード抗体に多数のアミノ酸置換を導入することで多面的に最適された二重特異性抗体であり、高いFVIII補因子機能代替活性を有するが(非特許文献6、特許文献4)、薬効の増強や比活性向上のためには、ACE910(Emicizumab)よりも高い最大活性(FVIII補因子機能代替活性の最大活性)を有し、且つ、ACE910(Emicizumab)よりも低い濃度でFVIII補因子機能代替活性を発揮することができるFVIII機能代替の二重特異性抗体が必要である。しかしながら、これまでにACE910(Emicizumab)と比較して最大活性および濃度の観点で顕著に高いFVIII補因子機能代替活性を有する二重特異性抗体は報告されていない(特許文献4、5)。
【0008】
ヒト定常領域を有するIgGタイプの二重特異性抗体(片腕に抗原Aに対する結合特異性、もう片腕に抗原Bに対する結合特異性を有するヒト定常領域を有するIgGタイプの抗体)の作製方法として、これまでにいくつかの方法が報告されている。一般にIgGタイプの二重特異性抗体は、2種類のH鎖(すなわち抗原Aに対するH鎖と抗原Bに対するH鎖)、及び、2種類のL鎖(すなわち抗原Aに対するL鎖と抗原Bに対するL鎖)からなる。このようなIgGタイプの二重特異性抗体を発現させる場合、2種類のH鎖と2種類のL鎖を発現させるため、H2L2の組み合わせとしては10種類の組み合わせが考えられる。そのうち目的の結合特異性(片腕に抗原Aに対する結合特異性、もう片腕に抗原Bに対する結合特異性を有するIgG)を有する組み合わせは1種類である。そのため、目的の二重特異性抗体を取得するためには、10種類の抗体から1種類の目的の抗体を精製する必要があり、極めて効率が低く、また困難である。
この問題を解決する方法として、IgG H鎖のCH3領域にアミノ酸置換を施すことにより、抗原Aに対するH鎖と抗原Bに対するH鎖との異種な組合せのIgGを優先的に分泌させる方法が報告されている(特許文献6、7、8、9および非特許文献13、14)。これらには、"knob;突起"と"hole;空隙"という物理的な障害を利用した方法や、電荷的な反発を利用した方法が報告されている。
さらに効率よく目的分子を得るために、抗原Aに対するL鎖と抗原Bに対するL鎖を同一のアミノ酸配列にした共通L鎖を用いる方法が報告されている(特許文献10、11)。しかしながら、共通L鎖を用いることによって、抗原に対するAffinityが大きく低下する可能性があり必ずしも最適な方法ではない。そのため、二重特異性抗体が2つの抗原に強いAffinityで結合するためには、抗原Aに対するH鎖とL鎖のみが会合し、抗原Bに対するH鎖とL鎖のみが会合することが好ましい。さらに、可変領域に関係なく、それぞれの抗原に対するH鎖とL鎖を会合化させるために、可変領域ではなく、定常領域であるCH1とCLドメインにアミノ酸置換を施す方法が報告されている(特許文献7、12、13)。しかし、目的とする二重特異性抗体を効率的に生産するにはまだ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO 2005/035754
【特許文献2】WO 2005/035756
【特許文献3】WO 2006/109592
【特許文献4】WO 2012/067176
【特許文献5】WO 2017/110980
【特許文献6】WO 1996/027011
【特許文献7】WO 2006/106905
【特許文献8】WO 2009/089004
【特許文献9】WO 2010/129304
【特許文献10】WO 98/050431
【特許文献11】WO 2006/109592
【特許文献12】WO 2007/147901
【特許文献13】WO 2013/065708
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Blood 58, 1-13 (1981)
【非特許文献2】Nature 312, 330-337(1984)
【非特許文献3】Nature 312, 337-342(1984)
【非特許文献4】Biochim.Biophys.Acta 871, 268-278(1986)
【非特許文献5】Nat Med. 2012 Oct;18(10):1570-4.
【非特許文献6】PLoS One. 2013;8(2):e57479.
【非特許文献7】MAbs. 2015;7(1):120-8.
【非特許文献8】J Thromb Haemost. 2014 Feb;12(2):206-213.
【非特許文献9】Blood. 2014 Nov 13;124(20):3165-71.
【非特許文献10】Blood. 2016, Vol.127, 13
【非特許文献11】New Eng J Med 2016 , 374;21, 2044-2053
【非特許文献12】Self/Nonself Volume 1, 2010 - Issue 4
【非特許文献13】Protein Engineering. 1996, Vol.9:617-621
【非特許文献14】Nature Biotechnology. 1998, Vol.16:677-681
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、血液凝固第VIII因子(FVIII)補因子機能代替活性を有する多重特異性抗原結合分子および当該分子を有効成分として含有する薬学的製剤の提供を課題とする。
また、本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、重鎖と軽鎖の会合が制御された抗体、重鎖と軽鎖の会合が制御された抗体の製造方法、および抗体の重鎖と軽鎖の会合制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らはFVIII補因子機能代替活性の最大活性および比活性が高い二重特異性抗体を取得するため、ヒト抗体ライブラリからFVIII補因子機能代替活性を有する、ACE910(Emicizumab)とは異なる配列を有する新規軽鎖を取得し、当該軽鎖とACE910(Emicizumab)の重鎖の様々な部位にアミノ酸置換を導入した二重特異性抗体を作製したところ、FVIII補因子機能代替活性の上昇に伴い、血液凝固第IX因子(FIX)活性化阻害活性も上昇することを知見した。
そこで本発明者らは鋭意検討を行った結果、FIX活性化阻害活性は上昇させず、かつFVIII補因子機能代替活性を上昇させる二重特異性抗体を見出すことに成功した。
また、本発明者らは会合の制御に供する重鎖と軽鎖の領域として、重鎖の定常領域であるCH1および軽鎖定常領域(CL)を選択し、これらCH1とCLの会合の制御について、鋭意研究を行った。その結果、CH1とCLの界面に存在する特定のアミノ酸残基を互いに電荷的に反発するアミノ酸残基へ置換することにより、望ましくないCH1とCLの会合を抑制することができ、上述のCH3にknobとholeを単独に導入する改変を用いるよりも、効率よくヘテロ分子が形成されることを見出すことに成功した。
【0013】
本発明はこのような知見に基づくものであり、具体的には下記〔1〕~〔25〕を提供するものである。
〔1〕
血液凝固第IX因子および/または活性化血液凝固第IX因子に結合する第一の抗原結合部位、および血液凝固第X因子に結合する第二の抗原結合部位を含む、血液凝固第VIII因子の機能を代替する機能を有する多重特異性抗原結合分子であって、
前記第一の抗原結合部位が重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、前記重鎖可変ドメイン(Q499)は配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、
前記軽鎖可変ドメイン(QNK131)は配列番号162のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号163のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号164のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、かつ、
前記第二の抗原結合部位が重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、前記重鎖可変ドメイン(J327)は配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、
前記軽鎖可変ドメイン(JNL095)は配列番号165のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号166のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号167のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、
前記HVRの少なくとも一つのHVRにおいて一以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されている、欠失している、あるいは挿入されている、
前記多重特異性抗原結合分子。
〔2〕
前記第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる31位、34位、97位、98位、100位、100a位、100b位及び100e位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されている、あるいは欠失しており、
前記第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる26位、27位、30位、31位、32位、53位、55位、92位、93位、95位及び96位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換あるいは挿入されており、
前記第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる31位、51位、56位、57位、59位、61位、62位、65位及び102位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されており、
前記第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる24位、26位、27位、29位、30位、31位、32位、50位、92位、94位、95位、95a位及び96位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されている、あるいは欠失している、
〔1〕に記載の多重特異性抗原結合分子。
〔3〕
前記第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる31位のアミノ酸残基がヒスチジン、34位のアミノ酸残基がアラニン、97位のアミノ酸残基がアスパラギン酸、98位のアミノ酸残基がセリン、100位のアミノ酸残基がアスパラギン酸またはグルタミン酸、100a位のアミノ酸残基がアスパラギン酸または欠失、100b位のアミノ酸残基がアラニンまたはヒスチジン、あるいは100e位のアミノ酸残基がヒスチジンまたはイソロイシンであり、
前記第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる26位のアミノ酸残基がトレオニン、27位のアミノ酸残基がアルギニン、30位のアミノ酸残基がアルギニン、31位のアミノ酸残基がアルギニン、32位のアミノ酸残基がアスパラギン酸またはグルタミン酸、53位のアミノ酸残基がアルギニン、55位のアミノ酸残基がグルタミン酸、92位のアミノ酸残基がアルギニン、93位のアミノ酸残基がセリンまたはアスパラギン酸、95位のアミノ酸残基がプロリン、あるいは96位のアミノ酸残基がグリシンであり、
前記第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる31位のアミノ酸残基がアスパラギン、グルタミンまたはヒスチジン、51位のアミノ酸残基がセリン、56位のアミノ酸残基がトレオニンまたはアルギニン、57位のアミノ酸残基がバリン、59位のアミノ酸残基がセリン、61位のアミノ酸残基がアルギニン、62位のアミノ酸残基がリジン、65位のアミノ酸残基がアスパラギンまたはグルタミン、あるいは102位のアミノ酸残基がバリンであり、
前記第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる24位のアミノ酸残基がトレオニン、26位のアミノ酸残基がグルタミン酸、27位のアミノ酸残基がグルタミン、29位のアミノ酸残基がセリン、30位のアミノ酸残基がグルタミン、セリンまたはグルタミン酸、31位のアミノ酸残基がアルギニン、32位のアミノ酸残基がグルタミンまたはグルタミン酸、50位のアミノ酸残基がグルタミン、92位のアミノ酸残基がアラニン、94位のアミノ酸残基がアスパラギン酸、95位のアミノ酸残基がアスパラギン酸またはアラニン、95a位のアミノ酸残基がチロシンまたは欠失、あるいは96位のアミノ酸残基がトレオニンである、
〔1〕または〔2〕に記載の多重特異性抗原結合分子。
〔4〕
前記第一の抗原結合部位が重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、
重鎖可変ドメインにおいて
1)配列番号168のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号169のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号170のアミノ酸配列を含むHVR-H3(QH01);
2)配列番号171のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号172のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号173のアミノ酸配列を含むHVR-H3(QH02);
3)配列番号174のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号175のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号176のアミノ酸配列を含むHVR-H3(QH03);
4)配列番号177のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR-H3(QH04);
5)配列番号180のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号182のアミノ酸配列を含むHVR-H3(QH06);又は
6)配列番号183のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号184のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号185のアミノ酸配列を含むHVR-H3(QH07);を含み、かつ
軽鎖可変ドメインにおいて、
1)配列番号186のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号188のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL21);
2)配列番号189のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号190のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号191のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL22);
3)配列番号192のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号193のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号194のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL23);
4)配列番号195のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号196のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号197のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL24);
5)配列番号198のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号199のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号200のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL25);
6)配列番号201のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号202のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号203のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL26);
7)配列番号204のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号205のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号206のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL28);
8)配列番号207のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号208のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号209のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL29);
9)配列番号210のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号211のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号212のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL30);
10)配列番号213のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号214のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号215のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL31);
11)配列番号216のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号217のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号218のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL32);又は
12)配列番号219のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号220のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号221のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL33)を含み、かつ、
前記第二の抗原結合部位が重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、
重鎖可変ドメインにおいて
1)配列番号222のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号223のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号224のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH01);
2)配列番号225のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号226のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号227のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH02);
3)配列番号228のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号229のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号230のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH03);
4)配列番号231のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号232のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号233のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH04);
5)配列番号234のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号235のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号236のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH05);
6)配列番号237のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号238のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号239のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH06);
7)配列番号240のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号241のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号242のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH07);
8)配列番号243のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号244のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号245のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH08);
9)配列番号246のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号247のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号248のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH09);
10)配列番号249のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号250のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号251のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH10);又は
11)配列番号252のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号253のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号254のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH11)を含み、かつ
軽鎖可変ドメインにおいて、
1)配列番号255のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号256のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号257のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL01);
2)配列番号258のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号259のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号260のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL02);
3)配列番号261のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号262のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号263のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL03);
4)配列番号264のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号265のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号266のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL04);
5)配列番号267のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号268のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号269のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL05);
6)配列番号270のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号271のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号272のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL06);
7)配列番号273のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号274のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号275のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL07);
8)配列番号276のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号277のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号278のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL08);
9)配列番号279のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号280のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号281のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL09);
10)配列番号282のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号283のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号284のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL10);又は
11)配列番号285のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号286のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号287のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL11)を含む、
〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の多重特異性抗原結合分子。
〔5〕
前記第1の抗原結合部位が配列番号45の重鎖可変ドメイン(Q499)と配列番号13の軽鎖可変ドメイン(QNK131)を含み、かつ、前記第2の抗原結合部位が配列番号46の重鎖可変ドメイン(J327)と配列番号31の軽鎖可変ドメイン(JNL095)を含み、前記重鎖可変ドメインまたは前記軽鎖可変ドメインの少なくとも一つの可変ドメインにおいて一以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されている、欠失している、あるいは挿入されている、〔1〕に記載の多重特異性抗原結合分子。
〔6〕
前記第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる31位、34位、39位、97位、98位、100位、100a位、100b位及び100e位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されている、あるいは欠失しており、
前記第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいて、Kabatナンバリングによる26位、27位、30位、31位、32位、38位、45位、53位、55位、60位、70位、76位、79位、80位、83位、85位、92位、93位、95位及び96位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換あるいは挿入されており、
前記第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいて、Kabatナンバリングによる28位、31位、39位、51位、56位、57位、59位、61位、62位、65位、67位、73位、82b位及び102位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されており、
前記第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいて、Kabatナンバリングによる3位、8位、15位、24位、26位、27位、29位、30位、31位、32位、38位、48位、49位、50位、79位、92位、94位、95位、95a位及び96位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されている、あるいは欠失している、
〔5〕に記載の多重特異性抗原結合分子。
〔7〕
前記第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいて、Kabatナンバリングによる31位のアミノ酸残基がヒスチジン、34位のアミノ酸残基がアラニン、39位のアミノ酸残基がグルタミン酸、97位のアミノ酸残基がアスパラギン酸、98位のアミノ酸残基がセリン、100位のアミノ酸残基がアスパラギン酸またはグルタミン酸、100a位のアミノ酸残基がアスパラギン酸または欠失、100b位のアミノ酸残基がアラニンまたはヒスチジン、あるいは100e位のアミノ酸残基がヒスチジンまたはイソロイシンであり、
前記第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる26位のアミノ酸残基がトレオニン、27位のアミノ酸残基がアルギニン、30位のアミノ酸残基がアルギニン、31位のアミノ酸残基がアルギニン、32位のアミノ酸残基がアスパラギン酸またはグルタミン酸、38位のアミノ酸残基がリジン、45位のアミノ酸残基がグルタミン酸、53位のアミノ酸残基がアルギニン、55位のアミノ酸残基がグルタミン酸、60位のアミノ酸残基がアスパラギン酸、70位のアミノ酸残基がアスパラギン酸、76位のアミノ酸残基がアスパラギン、79位のアミノ酸残基がグルタミン酸、80位のアミノ酸残基がプロリンまたはアラニン、83位のアミノ酸残基がメチオニンまたはアラニン、85位のアミノ酸残基がトレオニン、92位のアミノ酸残基がアルギニン、93位のアミノ酸残基がセリンまたはアスパラギン酸、95位のアミノ酸残基がプロリン、あるいは96位のアミノ酸残基がグリシンであり、
前記第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる28位のアミノ酸残基がグルタミン酸、31位のアミノ酸残基がアスパラギン、グルタミンまたはヒスチジン、39位のアミノ酸残基がリジン、51位のアミノ酸残基がセリン、56位のアミノ酸残基がトレオニンまたはアルギニン、57位のアミノ酸残基がバリン、59位のアミノ酸残基がセリン、61位のアミノ酸残基がアルギニン、62位のアミノ酸残基がリジン、65位のアミノ酸残基がアスパラギンまたはグルタミン、67位のアミノ酸残基がロイシン、73位のアミノ酸残基がイソロイシン、82b位のアミノ酸残基がグルタミン酸あるいは102位のアミノ酸残基がバリンであり、
前記第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる3位のアミノ酸残基がグルタミン酸、8位のアミノ酸残基がプロリン、15位のアミノ酸残基がロイシン、24位のアミノ酸残基がトレオニン、26位のアミノ酸残基がグルタミン酸、27位のアミノ酸残基がグルタミン、29位のアミノ酸残基がセリン、30位のアミノ酸残基がグルタミン、セリンまたはグルタミン酸、31位のアミノ酸残基がアルギニン、32位のアミノ酸残基がグルタミンまたはグルタミン酸、38位のアミノ酸残基がグルタミン酸、48位のアミノ酸残基がイソロイシン、49位のアミノ酸残基がチロシン、50位のアミノ酸残基がグルタミン、79位のアミノ酸残基がグルタミン酸、92位のアミノ酸残基がアラニン、94位のアミノ酸残基がアスパラギン酸、95位のアミノ酸残基がアスパラギン酸またはアラニン、95a位のアミノ酸残基がチロシンまたは欠失、あるいは96位のアミノ酸残基がトレオニンである、
〔5〕または〔6〕に記載の多重特異性抗原結合分子。
〔8〕
前記第1の抗原結合部位が、
配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、または配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(QH)と、
配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71または配列番号72に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(QL)を含み、かつ、
前記第2の抗原結合部位が、
配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82または配列番号83に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(JH)と、
配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93または配列番号94に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(JL)を含む、
〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の多重特異性抗原結合分子。
〔9〕
前記第1の抗原結合部位は以下の(1)または(2)に記載のアミノ酸配列を含む定常領域を含み、かつ、前記第2の抗原結合部位は前記第1の抗原結合部位に含まれる定常領域とは異なる以下の(1)または(2)に記載のアミノ酸配列を含む定常領域を含む、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の多重特異性抗原結合分子:
(1)重鎖定常領域として配列番号119及び軽鎖定常領域として配列番号100
(2)重鎖定常領域として配列番号118及び軽鎖定常領域として配列番号102。
〔10〕
多重特異性抗原結合分子が多重特異性抗体、または二重特異性抗体である、〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の多重特異性抗原結合分子。
〔11〕
血液凝固第IX因子および/または活性化血液凝固第IX因子に結合する第一の抗体重鎖及び抗体軽鎖、ならびに血液凝固第X因子に結合する第二の抗体重鎖及び抗体軽鎖を含む、以下の(a)~(v)のいずれかに記載の二重特異性抗体:
(a)配列番号120に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号126に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号138に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号149に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH01/QL21//JH01/JL01);
(b)配列番号121に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号127に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号138に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号149に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH02/QL22//JH01/JL01);
(c)配列番号122に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号128に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号139に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号150に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH03/QL23//JH02/JL02);
(d)配列番号122に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号129に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号139に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号150に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH03/QL24//JH02/JL02);
(e)配列番号121に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号127に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号140に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号151に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH02/QL22//JH03/JL03);
(f)配列番号121に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号127に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号141に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号152に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH02/QL22//JH04/JL04);
(g)配列番号121に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号127に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号139に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号150に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH02/QL22//JH02/JL02);
(h)配列番号123に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号130に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号139に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号150に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH04/QL25//JH02/JL02);
(i)配列番号123に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号131に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号139に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号150に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH04/QL26//JH02/JL02);
(j)配列番号123に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号131に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号142に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号153に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH04/QL26//JH05/JL05);
(k)配列番号123に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号132に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号142に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号153に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH04/QL28//JH05/JL05);
(l)配列番号123に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号132に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号143に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号154に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH04/QL28//JH06/JL06);
(m)配列番号123に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号133に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号142に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号153に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH04/QL29//JH05/JL05);
(n)配列番号123に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号133に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号143に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号154に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH04/QL29//JH06/JL06);
(o)配列番号124に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号134に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号144に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号155に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH06/QL30//JH07/JL07);
(p)配列番号123に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号135に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号145に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号156に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH04/QL31//JH08/JL08);
(q)配列番号124に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号136に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号144に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号155に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH06/QL32//JH07/JL07);
(r)配列番号124に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号136に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号146に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号157に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH06/QL32//JH09/JL09);
(s)配列番号124に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号134に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号147に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号158に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH06/QL30//JH10/JL10);
(t)配列番号125に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号137に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号148に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号159に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH07/QL33//JH11/JL11);
(u)(a)~(t)のいずれかの抗体が認識する血液凝固第IX因子および/または活性化血液凝固第IX因子におけるエピトープと血液凝固第X因子におけるエピトープの両方と同じエピトープに結合する二重特異性抗体;
(v)(a)~(t)のいずれかの抗体が認識する血液凝固第IX因子および/または活性化血液凝固第IX因子におけるエピトープと血液凝固第X因子におけるエピトープへの結合に対してそれぞれ競合する二重特異性抗体。
〔12〕
重鎖と軽鎖の会合が制御された抗原結合分子であって、
当該抗原結合分子において重鎖と軽鎖における以下の(a)~(c)に示すアミノ酸残基の組からなる群より選択される1組または2組以上のアミノ酸残基が互いに電荷的に反発するアミノ酸残基である抗原結合分子:
(a)重鎖の定常領域(CH1)に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及び軽鎖定常領域(CL)に含まれるアミノ酸残基であって Kabatナンバリング 180位のアミノ酸残基、
(b)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング131位のアミノ酸残基、
(c)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング147位及び175位のアミノ酸残基、並びにCLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング131位及び180位のアミノ酸残基。
〔13〕
さらに、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の界面を形成する2残基以上のアミノ酸残基が互いに電荷的に反発するアミノ酸残基である、〔12〕に記載の抗原結合分子。
〔14〕
前記互いに電荷的に反発するアミノ酸残基が、以下の(a)または(b)に示すアミノ酸残基の組からなる群より選択される1組または2組のアミノ酸残基である、〔13〕に記載の抗原結合分子:
(a)重鎖可変領域に含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング39位のアミノ酸残基、及び軽鎖可変領域に含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング38位のアミノ酸残基、
(b)重鎖可変領域に含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング45位のアミノ酸残基、及び軽鎖可変領域に含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング44位のアミノ酸残基。
〔15〕
前記互いに電荷的に反発するアミノ酸残基が、以下の(X)または(Y)のいずれかの組に含まれるアミノ酸残基から選択される、〔12〕~〔14〕のいずれかに記載の抗原結合分子:
(X)グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)、
(Y)リジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)。
〔16〕
抗原結合分子が二重特異性抗体である、〔12〕~〔15〕のいずれかに記載の抗原結合分子。
〔17〕
以下の(1)~(3)の工程を含む、重鎖と軽鎖の会合が制御された抗原結合分子の製造方法:
(1)重鎖の定常領域(CH1)及び軽鎖定常領域(CL)をコードする核酸を、以下の(a)~(c)に示すアミノ酸残基の組からなる群より選択される1組または2組以上のアミノ酸残基が互いに電荷的に反発するように核酸を改変する工程、
(a)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング180位のアミノ酸残基
(b)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング131位のアミノ酸残基
(c)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング147位及び175位のアミノ酸残基、並びにCLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング131位及び180位のアミノ酸残基
(2)前記改変された核酸を宿主細胞へ導入し、宿主細胞を該核酸が発現するように培養する工程、
(3)前記宿主細胞の培養物から抗原結合分子を回収する工程。
〔18〕
抗原結合分子の重鎖と軽鎖の会合制御方法であって、
以下の(a)~(c)に示すアミノ酸残基の組からなる群より選択される1組または2組以上のアミノ酸残基が互いに電荷的に反発するアミノ酸残基となるように核酸を改変することを含む方法:
(a)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング180位のアミノ酸残基、
(b)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング131位のアミノ酸残基、
(c)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング147位及び175位のアミノ酸残基、並びにCLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング131位及び180位のアミノ酸残基。
〔19〕
〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の多重特異性抗原結合分子、〔10〕に記載の多重特異性抗体、〔10〕、〔11〕もしくは〔16〕に記載の二重特異性抗体、または〔12〕~〔15〕のいずれかに記載の抗原結合分子をコードする、単離された核酸。
〔20〕
〔19〕に記載の核酸を含む、宿主細胞。
〔21〕
多重特異性抗原結合分子、多重特異性抗体、二重特異性抗体または抗原結合分子を製造する方法であって、多重特異性抗原結合分子、多重特異性抗体、二重特異性抗体または抗原結合分子が製造されるように〔20〕に記載の宿主細胞を培養することを含む、方法。
〔22〕
〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の多重特異性抗原結合分子、〔10〕に記載の多重特異性抗体、〔10〕、〔11〕もしくは〔16〕に記載の二重特異性抗体、または〔12〕~〔15〕のいずれかに記載の抗原結合分子ならびに薬学的に許容される担体を含む、薬学的製剤。
〔23〕
出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患の予防および/または治療に用いられる薬学的製剤である、〔22〕に記載の薬学的製剤。
〔24〕
出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患が、血液凝固第VIII因子および/または活性化血液凝固第VIII因子の活性の低下ないし欠損によって発症および/または進展する疾患である、〔23〕に記載の薬学的製剤。
〔25〕
血液凝固第VIII因子および/または活性化血液凝固第VIII因子の活性の低下ないし欠損によって発症および/または進展する疾患が、血友病A、血液凝固第VIII因子および/または活性化血液凝固第VIII因子に対するインヒビターが出現している疾患、後天性血友病またはフォンビルブランド病である、〔24〕に記載の薬学的製剤。
【0014】
また本発明は以下に関する。
〔26〕
医薬品としての使用のための、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の多重特異性抗原結合分子、〔10〕に記載の多重特異性抗体、〔10〕、〔11〕もしくは〔16〕に記載の二重特異性抗体、または〔12〕~〔15〕のいずれかに記載の抗原結合分子。
〔27〕
出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患の予防および/または治療における使用のための、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の多重特異性抗原結合分子、〔10〕に記載の多重特異性抗体、または〔10〕もしくは〔11〕に記載の二重特異性抗体。
〔28〕
FVIII補因子機能代替における使用のための、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の多重特異性抗原結合分子、〔10〕に記載の多重特異性抗体、または〔10〕もしくは〔11〕に記載の二重特異性抗体。
〔29〕
出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患の治療のための医薬品の製造における、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の多重特異性抗原結合分子、〔10〕に記載の多重特異性抗体、または〔10〕もしくは〔11〕に記載の二重特異性抗体の使用。
〔30〕
FVIII補因子機能を代替するための医薬品の製造における、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の多重特異性抗原結合分子、〔10〕に記載の多重特異性抗体、または〔10〕もしくは〔11〕に記載の二重特異性抗体の使用。
〔31〕
出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患を有する個体を治療する方法であって、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の多重特異性抗原結合分子、〔10〕に記載の多重特異性抗体、または〔10〕もしくは〔11〕に記載の二重特異性抗体の有効量を該個体に投与することを含む、方法。
〔32〕
個体中でFVIII補因子機能を代替するための方法であって、FVIII補因子機能を代替するために、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の多重特異性抗原結合分子、〔10〕に記載の多重特異性抗体、または〔10〕もしくは〔11〕に記載の二重特異性抗体の有効量を該個体に投与する工程を含む、方法。
【0015】
また本発明は以下に関する。
〔33〕
前記工程(1)において、互いに電荷的に反発するアミノ酸残基が、以下の(X)または(Y)のいずれかの群に含まれるアミノ酸残基から選択されるように核酸を改変する工程を含む、〔17〕に記載の抗原結合分子の製造方法;
(X)グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)、
(Y)リジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)。
〔34〕 さらに前記工程(1)において、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の界面を形成する2残基以上のアミノ酸残基が互いに電荷的に反発するアミノ酸残基であるように核酸を改変する工程を含む、〔17〕または〔33〕に記載の抗原結合分子の製造方法。
〔35〕 前記互いに電荷的に反発するアミノ酸残基が、以下の(a)または(b)に示すアミノ酸残基の組からなる群より選択されるいずれか1組のアミノ酸残基である、〔34〕に記載の抗原結合分子の製造方法;
(a)重鎖可変領域に含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング39位のアミノ酸残基、及び軽鎖可変領域に含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング38位のアミノ酸残基、
(b)重鎖可変領域に含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング45位のアミノ酸残基、及び軽鎖可変領域に含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング44位のアミノ酸残基。
〔36〕 前記互いに電荷的に反発するアミノ酸残基が、以下の(X)または(Y)のいずれかの組に含まれるアミノ酸残基から選択される、〔34〕または〔35〕に記載の抗原結合分子の製造方法;
(X)グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)、
(Y)リジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)。
〔37〕
前記互いに電荷的に反発するアミノ酸残基が、以下の(X)または(Y)のいずれかの組に含まれるアミノ酸残基から選択される、〔18〕に記載の方法;
(X)グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)、
(Y)リジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)。
〔38〕
さらに、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の界面を形成する2残基以上のアミノ酸残基が互いに電荷的に反発するアミノ酸残基である、〔18〕または〔37〕に記載の方法。
〔39〕
前記互いに電荷的に反発するアミノ酸残基が、以下の(a)または(b)に示すアミノ酸残基の組からなる群より選択されるいずれか1組のアミノ酸残基である、〔38〕に記載の方法;
(a)重鎖可変領域に含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング39位のアミノ酸残基、及び軽鎖可変領域に含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング38位のアミノ酸残基、
(b)重鎖可変領域に含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング45位のアミノ酸残基、及び軽鎖可変領域に含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング44位のアミノ酸残基。
〔40〕
前記互いに電荷的に反発するアミノ酸残基が、以下の(X)または(Y)のいずれかの組に含まれるアミノ酸残基から選択される、〔38〕または〔39〕に記載の方法;
(X)グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)、
(Y)リジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)。
【0016】
また本発明は以下に関する。
〔41〕
以下の(a)~(v)のいずれかに記載の〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の多重特異性抗原結合分子。
(a)配列番号56に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号61に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号73に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号84に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子。(QH01/QL21//JH01/JL01);
(b)配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号73に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号84に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH02/QL22//JH01/JL01);
(c)配列番号58に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号63に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH03/QL23//JH02/JL02);
(d)配列番号58に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号64に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH03/QL24//JH02/JL02);
(e)配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号75に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号86に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH02/QL22//JH03/JL03);
(f)配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号76に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号87に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH02/QL22//JH04/JL04);
(g)配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH02/QL22//JH02/JL02);
(h)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号65に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH04/QL25//JH02/JL02);
(i)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号66に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH04/QL26//JH02/JL02);
(j)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号66に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号77に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号88に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH04/QL26//JH05/JL05);
(k)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号67に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号77に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号88に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH04/QL28//JH05/JL05);
(l)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号67に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号78に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号89に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH04/QL28//JH06/JL06);
(m)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号68に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号77に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号88に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH04/QL29//JH05/JL05);
(n)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号68に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号78に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号89に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH04/QL29//JH06/JL06);
(o)配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号69に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号79に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号90に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH06/QL30//JH07/JL07);
(p)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号70に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号80に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号91に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH04/QL31//JH08/JL08);
(q)配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号71に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号79に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号90に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH06/QL32//JH07/JL07);
(r)配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号71に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号81に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号92に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH06/QL32//JH09/JL09);
(s)配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号69に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号82に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号93に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH06/QL30//JH10/JL10);
(t)配列番号105に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号72に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号83に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号94に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH07/QL33//JH11/JL11);
(u)(a)~(t)のいずれかの抗体が認識する血液凝固第IX因子および/または活性化血液凝固第IX因子におけるエピトープと血液凝固第X因子におけるエピトープの両方と同じエピトープに結合する多重特異性抗原結合分子;
(v)(a)~(t)のいずれかの抗体が認識する血液凝固第IX因子および/または活性化血液凝固第IX因子におけるエピトープと血液凝固第X因子におけるエピトープへの結合に対してそれぞれ競合する多重特異性抗原結合分子。
〔42〕
血液凝固第IX因子および/または活性化血液凝固第IX因子に結合する第一の抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメイン、ならびに血液凝固第X因子に結合する第二の抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインを含む、以下の(a)~(v)のいずれかに記載の二重特異性抗体。
(a)配列番号56に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号61に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号73に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号84に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH01/QL21//JH01/JL01);
(b)配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号73に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号84に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH02/QL22//JH01/JL01);
(c)配列番号58に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号63に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH03/QL23//JH02/JL02);
(d)配列番号58に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号64に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH03/QL24//JH02/JL02);
(e)配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号75に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号86に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH02/QL22//JH03/JL03);
(f)配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号76に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号87に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH02/QL22//JH04/JL04);
(g)配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH02/QL22//JH02/JL02);
(h)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号65に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH04/QL25//JH02/JL02);
(i)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号66に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH04/QL26//JH02/JL02);
(j)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号66に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号77に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号88に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH04/QL26//JH05/JL05);
(k)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号67に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号77に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号88に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH04/QL28//JH05/JL05);
(l)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号67に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号78に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号89に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH04/QL28//JH06/JL06);
(m)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号68に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号77に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号88に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH04/QL29//JH05/JL05);
(n)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号68に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号78に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号89に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH04/QL29//JH06/JL06);
(o)配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号69に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号79に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号90に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH06/QL30//JH07/JL07);
(p)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号70に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号80に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号91に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH04/QL31//JH08/JL08);
(q)配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号71に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号79に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号90に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH06/QL32//JH07/JL07);
(r)配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号71に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号81に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号92に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH06/QL32//JH09/JL09);
(s)配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号69に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号82に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号93に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH06/QL30//JH10/JL10);
(t)配列番号105に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号72に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号83に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号94に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH07/QL33//JH11/JL11);
(u)(a)~(t)のいずれかの抗体が認識する血液凝固第IX因子および/または活性化血液凝固第IX因子におけるエピトープと血液凝固第X因子におけるエピトープの両方と同じエピトープに結合する二重特異性抗体;
(v)(a)~(t)のいずれかの抗体が認識する血液凝固第IX因子および/または活性化血液凝固第IX因子におけるエピトープと血液凝固第X因子におけるエピトープへの結合に対してそれぞれ競合する二重特異性抗体。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】新規L鎖を有する二重特異性抗体の抗ACE910(Emicizumab)イディオタイプ抗体との反応性を示した図である。
【
図2】FIX活性化阻害活性がFX活性化に与えうる影響を示す図である。
【
図3】新規L鎖の改変およびH鎖の改変によるFVIII補因子機能代替活性およびFIX活性化阻害活性をプロットした図である。
【
図4-1】H鎖およびL鎖の改変を組み合わせた二重特異性抗体のFVIII補因子機能代替活性の濃度依存性を示す図である。
【
図4-2】H鎖およびL鎖の改変を組み合わせた二重特異性抗体のFVIII補因子機能代替活性の濃度依存性を示す図である。
【
図5】H鎖およびL鎖の改変を組み合わせた二重特異性抗体のトロンビン生成試験におけるトロンビン生成量の最大値(Peak height)を示す図である。
【
図6】作製した二重特異性抗体のECM結合を示す図である。
【
図7】作製した二重特異性抗体の抗体PKを示す図である。
【
図9-1】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-2】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-3】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-4】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-5】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-6】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-7】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-8】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-9】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-10】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-11】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-12】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-13】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-14】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-15】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-16】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-17】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-18】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-19】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図9-20】作製した二重特異性抗体のCIEX分析データを示す図である。
【
図10】新規L鎖を有する二重特異性抗体のFVIII補因子機能代替活性を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
I.定義
本明細書の趣旨での「アクセプターヒトフレームワーク」は、下で定義するヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン (VL) フレームワークまたは重鎖可変ドメイン (VH) フレームワークのアミノ酸配列を含む、フレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それらの同じアミノ酸配列を含んでもよいし、またはアミノ酸配列の変更を含んでいてもよい。いくつかの態様において、アミノ酸の変更の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と、配列が同一である。
【0019】
「アフィニティ」は、分子(例えば、抗体)の結合部位1個と、分子の結合パートナー(例えば、抗原)との間の、非共有結合的な相互作用の合計の強度のことをいう。別段示さない限り、本明細書で用いられる「結合アフィニティ」は、ある結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)の間の1:1相互作用を反映する、固有の結合アフィニティのことをいう。分子XのそのパートナーYに対するアフィニティは、一般的に、解離定数 (Kd) により表すことができる。アフィニティは、本明細書に記載のものを含む、当該技術分野において知られた通常の方法によって測定され得る。結合アフィニティを測定するための具体的な実例となるおよび例示的な態様については、下で述べる。
【0020】
「アフィニティ成熟」抗体は、改変を備えていない親抗体と比較して、1つまたは複数の超可変領域 (hypervariable region: HVR) 中に抗体の抗原に対するアフィニティの改善をもたらす1つまたは複数の改変を伴う、抗体のことをいう。
【0021】
本明細書中に記載される多重特異性抗原結合分子とは、少なくとも2種類の異なる抗原に対して特異的に結合することができる第一の抗原結合部位と第二の抗原結合部位を含む。
一つの態様として、第一の抗原結合部位と第二の抗原結合部位は、それぞれ、血液凝固第IX因子(FIX)および/または活性化血液凝固第IX因子(FIXa)と血液凝固第X因子(FX)に対して結合活性を有していればよく、例えば、抗体、Scaffold分子(抗体様分子)、ペプチド等の抗原との結合に必要な部位、または当該部位を含む断片をあげることができる。Scaffold分子とは、ターゲット分子に結合することで機能を発揮するような分子であり、少なくとも1つの標的抗原に結合することができる立体構造的に安定なポリペプチドであれば、どのようなポリペプチドであっても用いることができる。そのようなポリペプチドの例としては、例えば、抗体可変領域、フィブロネクチン(WO2002/032925)、Protein Aドメイン(WO1995/001937)、LDL受容体Aドメイン(WO2004/044011, WO2005/040229)、アンキリン(WO2002/020565)等のほか、Nygrenら(Current Opinion in Structural Biology, 7:463-469(1997)、Journal of Immunol Methods, 290:3-28(2004))、Binzら(Nature Biotech 23:1257-1266(2005))、Hosseら(Protein Science 15:14-27(2006))に記載の分子を挙げることができる。また、Curr Opin Mol Ther. 2010 Aug;12(4):487-95.やDrugs. 2008;68(7):901-12.に記されているように標的抗原に結合することができるペプチド分子を用いることもできる。
【0022】
本発明におけるポリペプチドとは、通常、10アミノ酸程度以上の長さを有するペプチド、およびタンパク質を指す。また、通常、生物由来のポリペプチドであるが、特に限定されず、例えば、人工的に設計された配列からなるポリペプチドであってもよい。また、天然ポリペプチド、あるいは合成ポリペプチド、組換えポリペプチド等のいずれであってもよい。さらに、上記のポリペプチドの断片もまた、本発明のポリペプチドに含まれる。
【0023】
一つの態様として、多重特異性抗原結合分子としては、少なくとも2つの異なる抗原、あるいは抗原は同じであるが2つの異なるエピトープに対して特異的に結合することができる多重特異性抗体を挙げることができる。
一つの態様において、本発明の多重特異性抗体は二重特異性抗体(bispecific antibody; BsAb)(二種特異性抗体と呼ばれる場合もある)である。
【0024】
本明細書で「FVIII補因子機能代替活性」、「FVIII代替活性」および「FVIIIの機能を代替する活性」は同義に用いられ、FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合し、FXの活性化を促進する(活性化血液凝固第X因子(FXa)産生を促進する)活性を意味する。
【0025】
一態様において、FVIII補因子機能代替活性を有する多重特異性抗原結合分子はFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子である。
【0026】
特定の一態様において、FVIII補因子機能代替活性を有する多重特異性抗原結合分子はFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗体である。
また、別の特定の一態様において、FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗体はFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する二重特異性抗体である。
【0027】
用語「FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する二重特異性抗体」は、充分なアフィニティでFIXおよび/またはFIXaならびにFXと結合することのできる二重特異性抗体であって、その結果その抗体がFIXおよび/またはFIXaならびにFXを標的化したときに診断剤および/または治療剤として有用であるような、抗体のことをいう。一態様において、無関係な非FIXタンパク質、非FIXaタンパク質または非FXタンパク質へのFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する二重特異性抗体の結合の程度は、(例えば、放射免疫測定法 (radioimmunoassay: RIA) により)測定したとき、抗体のFIXおよび/またはFIXaならびにFXへの結合の約10%未満である。特定の態様において、FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する抗体は、≦100μM、≦10μM、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-5M以下、例えば10-5M~10-10M、例えば、10-6M~10-10M)の解離定数 (Kd) を有する。特定の態様において、FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する二重特異性抗体は、異なる種からのFIX間、FIXa間及びFX間でそれぞれ保存されているFIX、FIXa及びFXのエピトープに結合する。
【0028】
本発明において、「抗体」という用語は、特定の態様において「抗原結合分子」と同義で用いられる。本発明において、「抗体」または「抗原結合分子」という用語は最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性、生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体変異体(キメラ抗体、ヒト化抗体、低分子化抗体(任意で他の分子が付加されていてもよい抗体断片も含む)、多重特異性抗体等)が含まれる。例えば、本発明における「抗体」または「抗原結合分子」として、FabにHAS結合スキャフォールドが付加された分子(Fab部分のみ通常の抗体)が挙げられる。また、本発明において「抗体」は、ポリペプチドあるいは異種多量体のいずれであってもよい。好ましい抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、Fc-fusion抗体、並びに、及び抗体断片等の低分子化抗体である。
本明細書において使用する通り、「抗体」は、抗原結合部位を含む結合タンパク質を指す。用語「結合部位」又は「抗原結合部位」は、本明細書において使用する通り、抗原が実際に結合する抗体分子の領域を表示する。用語「抗原結合部位」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)及び抗体軽鎖可変ドメイン(VL)(VH/VLの対)を含む。
【0029】
「抗体断片」は、完全抗体が結合する抗原に結合する当該完全抗体の一部分を含む、当該完全抗体以外の分子のことをいう。抗体断片の例は、これらに限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab'、Fab’-SH、F(ab')2、ダイアボディ、線状抗体、単鎖抗体分子(例えば、scFv)、および、抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
【0030】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいてその参照抗体の自身の抗原への結合を50%以上阻止する抗体のことをいい、また逆にいえば、参照抗体は、競合アッセイにおいて前述の抗体の自身の抗原への結合を50%以上阻止する。例示的な競合アッセイが、本明細書で提供される。
【0031】
用語「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の供給源または種に由来する一方で、重鎖および/または軽鎖の残りの部分が異なった供給源または種に由来する抗体のことをいう。5
【0032】
抗体の「クラス」は、抗体の重鎖に備わる定常ドメインまたは定常領域のタイプのことをいう。抗体には5つの主要なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMである。そして、このうちいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)に分けられてもよい。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2である。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインを、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ぶ。
【0033】
ある剤(例えば、薬学的製剤)の「有効量」は、所望の治療的または予防的結果を達成するために有効である、必要な用量におけるおよび必要な期間にわたっての、量のことをいう。
【0034】
本明細書で用語「Fc領域」は、少なくとも定常領域の一部分を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。この用語は、天然型配列のFc領域および変異体Fc領域を含む。一態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延びる。ただし、Fc領域のC末端のリジン (Lys447) またはグリシン‐リジン(Gly446-Lys447)は、存在していてもしていなくてもよい。本明細書では別段特定しない限り、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD 1991 に記載の、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)にしたがう。
【0035】
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域 (HVR) 残基以外の、可変ドメイン残基のことをいう。可変ドメインのFRは、通常4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。それに応じて、HVRおよびFRの配列は、通常次の順序でVH(またはVL)に現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0036】
用語「全長抗体」、「完全抗体」、および「全部抗体」は、本明細書では相互に交換可能に用いられ、天然型抗体構造に実質的に類似した構造を有する、または本明細書で定義するFc領域を含む重鎖を有する抗体のことをいう。
【0037】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」は、相互に交換可能に用いられ、外来核酸を導入された細胞(そのような細胞の子孫を含む)のことをいう。宿主細胞は「形質転換体」および「形質転換細胞」を含み、これには初代の形質転換細胞および継代数によらずその細胞に由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸の内容において完全に同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。オリジナルの形質転換細胞がスクリーニングされたまたは選択された際に用いられたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫も、本明細書では含まれる。
【0038】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された抗体またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を用いる非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を備える抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒトの抗原結合残基を含むヒト化抗体を、明確に除外するものである。
【0039】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択群において最も共通して生じるアミノ酸残基を示すフレームワークである。通常、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。通常、配列のサブグループは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3におけるサブグループである。一態様において、VLについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループκIである。一態様において、VHについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループIIIである。
【0040】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基およびヒトFRからのアミノ酸残基を含む、キメラ抗体のことをいう。ある態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、当該可変領域においては、すべてのもしくは実質的にすべてのHVR(例えばCDR)は非ヒト抗体のものに対応し、かつ、すべてのもしくは実質的にすべてのFRはヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。抗体(例えば、非ヒト抗体)の「ヒト化された形態」は、ヒト化を経た抗体のことをいう。
【0041】
本明細書で用いられる用語「超可変領域」または「HVR」は、配列において超可変であり(「相補性決定領域」または「CDR」(complementarity determining region))、および/または構造的に定まったループ(「超可変ループ」)を形成し、および/または抗原接触残基(「抗原接触」)を含む、抗体の可変ドメインの各領域のことをいう。通常、抗体は6つのHVRを含む:VHに3つ(H1、H2、H3)、およびVLに3つ(L1、L2、L3)である。本明細書での例示的なHVRは、以下のものを含む:
(a) アミノ酸残基26-32 (L1)、50-52 (L2)、91-96 (L3)、26-32 (H1)、53-55 (H2)、および96-101 (H3)のところで生じる超可変ループ (Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));
(b) アミノ酸残基24-34 (L1)、50-56 (L2)、89-97 (L3)、31-35b (H1)、50-65 (H2)、 および95-102 (H3)のところで生じるCDR (Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991));
(c) アミノ酸残基27c-36 (L1)、46-55 (L2)、89-96 (L3)、30-35b (H1)、47-58 (H2)、および93-101 (H3) のところで生じる抗原接触 (MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));ならびに、
(d) HVRアミノ酸残基46-56 (L2)、47-56 (L2)、48-56 (L2)、49-56 (L2)、26-35 (H1)、26-35b (H1)、49-65 (H2)、93-102 (H3)、および94-102 (H3)を含む、(a)、(b)、および/または(c)の組合せ。
別段示さない限り、HVR残基および可変ドメイン中の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書では上記のKabatらにしたがって番号付けされる。
【0042】
「イムノコンジュゲート」は、1つまたは複数の異種の分子にコンジュゲートされた抗体である(異種の分子は、これに限定されるものではないが、細胞傷害剤を含む)。
【0043】
「個体」または「被験体」は哺乳動物である。哺乳動物は、これらに限定されるものではないが、飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)を含む。特定の態様では、個体または被験体は、ヒトである。
【0044】
「単離された」抗体は、そのもともとの環境の成分から分離されたものである。いくつかの態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点分離法 (isoelectric focusing: IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換または逆相HPLC)で測定して、95%または99%を超える純度まで精製される。抗体の純度の評価のための方法の総説として、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007) を参照のこと。
【0045】
「単離された」核酸は、そのもともとの環境の成分から分離された核酸分子のことをいう。単離された核酸は、その核酸分子を通常含む細胞の中に含まれた核酸分子を含むが、その核酸分子は染色体外に存在しているかまたは本来の染色体上の位置とは異なる染色体上の位置に存在している。
【0046】
「FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する二重特異性抗体をコードする単離された核酸」は、抗体の重鎖および軽鎖(またはその断片)をコードする1つまたは複数の核酸分子のことをいい、1つのベクターまたは別々のベクターに乗っている核酸分子、および、宿主細胞中の1つまたは複数の位置に存在している核酸分子を含む。
【0047】
本明細書でいう用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体のことをいう。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、生じ得る変異抗体(例えば、自然に生じる変異を含む変異抗体、またはモノクローナル抗体調製物の製造中に発生する変異抗体。そのような変異体は通常若干量存在している。)を除いて、同一でありおよび/または同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるものである、という抗体の特徴を示し、何らかの特定の方法による抗体の製造を求めるものと解釈されるべきではない。例えば、本発明にしたがって用いられるモノクローナル抗体は、これらに限定されるものではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含んだトランスジェニック動物を利用する方法を含む、様々な手法によって作成されてよく、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法および他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0048】
「天然型抗体」は、天然に生じる様々な構造を伴う免疫グロブリン分子のことをいう。例えば、天然型IgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域 (VH) を有し、それに3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)が続く。同様に、N末端からC末端に向かって、各軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域 (VL) を有し、それに定常軽鎖 (CL) ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる、2つのタイプの1つに帰属させられてよい。
【0049】
用語「添付文書」は、治療用品の商用パッケージに通常含まれ、そのような治療用品の使用に関する、適応症、用法、用量、投与方法、併用療法、禁忌、および/または警告についての情報を含む使用説明書のことをいうために用いられる。
【0050】
参照ポリペプチド配列に対する「パーセント (%) アミノ酸配列同一性」は、最大のパーセント配列同一性を得るように配列を整列させてかつ必要ならギャップを導入した後の、かつ、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとしたときの、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の、百分率比として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決める目的のアラインメントは、当該技術分野における技術の範囲内にある種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、Megalign (DNASTAR) ソフトウェア、またはGENETYX(登録商標)(株式会社ゼネティックス)などの、公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントをとるための適切なパラメーターを決定することができる。
【0051】
ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、ジェネンテック社の著作であり、そのソースコードは米国著作権庁 (U.S. Copyright Office, Wasington D.C., 20559) に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、ジェネンテック社 (Genentech, Inc., South San Francisco, California) から公に入手可能であるし、ソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、Digital UNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされる。すべての配列比較パラメーターは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する、ある%アミノ酸配列同一性を有するまたは含む所与のアミノ酸配列A、ということもできる)は、次のように計算される:分率X/Yの100倍。ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、当該プログラムのAおよびBのアラインメントにおいて同一である一致としてスコアされたアミノ酸残基の数であり、YはB中のアミノ酸残基の全数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBへの%アミノ酸配列同一性は、BのAへの%アミノ酸配列同一性と等しくないことが、理解されるであろう。別段特に明示しない限り、本明細書で用いられるすべての%アミノ酸配列同一性値は、直前の段落で述べたとおりALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られるものである。
【0052】
用語「薬学的製剤」は、その中に含まれた有効成分の生物学的活性が効果を発揮し得るような形態にある調製物であって、かつ製剤が投与される被験体に許容できない程度に毒性のある追加の要素を含んでいない、調製物のことをいう。
【0053】
「薬学的に許容される担体」は、被験体に対して無毒な、薬学的製剤中の有効成分以外の成分のことをいう。薬学的に許容される担体は、これらに限定されるものではないが、緩衝液、賦形剤、安定化剤、または保存剤を含む。
【0054】
本明細書でいう用語「FIX」、「FIXa」及び「FX」は、別段示さない限り、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物供給源からの任意の天然型「FIX」、天然型「FIXa」及び天然型「FX」のことをいう。この用語は、「全長」のプロセシングを受けていない「FIX」、「FIXa」及び「FX」も、細胞中でのプロセシングの結果生じるいかなる形態の「FIX」、「FIXa」及び「FX」も包含する。この用語はまた、自然に生じる「FIX」、「FIXa」及び「FX」の変異体、例えば、スプライス変異体や対立遺伝子変異体も包含する。
【0055】
本明細書で用いられる「治療」(および、その文法上の派生語、例えば「治療する」、「治療すること」など)は、治療される個体の自然経過を改変することを企図した臨床的介入を意味し、予防のためにも、臨床的病態の経過の間にも実施され得る。治療の望ましい効果は、これらに限定されるものではないが、疾患の発生または再発の防止、症状の軽減、疾患による任意の直接的または間接的な病理的影響の減弱、転移の防止、疾患の進行速度の低減、疾患状態の回復または緩和、および寛解または改善された予後を含む。いくつかの態様において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅らせる、または疾患の進行を遅くするために用いられる。
【0056】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体を抗原へと結合させることに関与する、抗体の重鎖または軽鎖のドメインのことをいう。天然型抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、通常、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域 (FR) および3つの超可変領域 (HVR) を含む、類似の構造を有する。(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007) 参照。)1つのVHまたはVLドメインで、抗原結合特異性を与えるに充分であろう。さらに、ある特定の抗原に結合する抗体は、当該抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使ってそれぞれVLまたはVHドメインの相補的ライブラリをスクリーニングして、単離されてもよい。例えばPortolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991) 参照。
【0057】
本明細書で用いられる用語「ベクター」は、それが連結されたもう1つの核酸を増やすことができる、核酸分子のことをいう。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、および、それが導入された宿主細胞のゲノム中に組み入れられるベクターを含む。あるベクターは、自身が動作的に連結された核酸の、発現をもたらすことができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」とも称される。
【0058】
II.組成物および方法
一局面において、本発明は、FVIII補因子機能代替活性を有する多重特異性抗原結合分子に一部基づくものである。特定の態様において、FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子が提供される。本発明の多重特異性抗原結合分子は、例えば、出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患の治療のために、有用である。
【0059】
A.例示的FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子
一局面において、本発明はFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する、単離された多重特異性抗原結合分子を提供する。特定の態様において、前記多重特異性抗原結合分子はFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する二重特異性抗体であり、当該二重特異性抗体はFVIII補因子機能代替活性を有する。
【0060】
FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する二重特異性抗体であるACE910(Emicizumab)は特許文献(WO 2012/067176)に記載されている以下の抗体である。
第一のポリペプチドと第三のポリペプチドが対を形成し、第二のポリペプチドと第四のポリペプチドが対を形成する二重特異性抗体であって、第一のポリペプチドが配列番号:1、2、3(Q499のH鎖CDR)に記載のHVR-H1、HVR-H2、HVR-H3のアミノ酸配列を含むH鎖、第二のポリペプチドが配列番号:4、5、6(J327のH鎖CDR)に記載のHVR-H1、HVR-H2、HVR-H3のアミノ酸配列を含むH鎖、第三のポリペプチドと第四のポリペプチドが配列番号:7、8、9(L404のL鎖CDR)に記載のHVR-L1、HVR-L2、HVR-L3のアミノ酸配列を含む共通L鎖からなる二重特異性抗体。
さらに具体的には、第一のポリペプチドと第三のポリペプチドが対を形成し、第二のポリペプチドと第四のポリペプチドが対を形成する二重特異性抗体であって、第一のポリペプチドが配列番号:45に記載のH鎖可変領域のアミノ酸配列を含むH鎖、第二のポリペプチドが配列番号:46に記載のH鎖可変領域のアミノ酸配列を含むH鎖および第三のポリペプチドと第四のポリペプチドが配列番号:47に記載のL鎖可変領域のアミノ酸配列を含む共通L鎖からなる二重特異性抗体。
さらに具体的には、第一のポリペプチドと第三のポリペプチドが対を形成し、第二のポリペプチドと第四のポリペプチドが対を形成する二重特異性抗体であって、第一のポリペプチドが配列番号:10に記載のアミノ酸配列からなるH鎖、第二のポリペプチドが配列番号:11に記載のアミノ酸配列からなるH鎖および第三のポリペプチドと第四のポリペプチドが配列番号:12に記載の共通L鎖からなる二重特異性抗体(Q499-z121/J327-z119/L404-k)。
【0061】
本発明の多重特異性抗原結合分子は、FIXおよび/またはFIXaに結合する第一の抗原結合部位、およびFXに結合する第二の抗原結合部位を含む、FVIIIの機能を代替する機能を有する多重特異性抗原結合分子であって、
前記第一の抗原結合部位が重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、前記重鎖可変ドメイン(Q499)は配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、
前記軽鎖可変ドメイン(QNK131)は配列番号162のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号163のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号164のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、かつ、
前記第二の抗原結合部位が重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、前記重鎖可変ドメイン(J327)は配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、
前記軽鎖可変ドメイン(JNL095)は配列番号165のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号166のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号167のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、
前記HVRの少なくとも一つのHVRにおいて一以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されている、欠失している、あるいは挿入されている、多重特異性抗原結合分子である。
【0062】
特定の態様において、本発明の多重特異性抗原結合分子はFVIIIの機能を代替する機能を有する多重特異性抗原結合分子である。
また、別の態様において、本発明の多重特異性抗原結合分子は抗ACE910(Emicizumab)イディオタイプ抗体との反応性がACE910(Emicizumab)に比べて減少している多重特異性抗原結合分子である。ここで「抗ACE910(Emicizumab)イディオタイプ抗体との反応性がACE910(Emicizumab)に比べて減少している」とは、実施例1に記載の方法を用いて抗イディオタイプ抗体とラベル化ACE910との結合強度(%)を測定した場合に、測定対象抗体の濃度が100μg/mLにおいて、好ましくは10%以上減少していることをいい、さらに好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上減少していることをいう。
また、別の態様において、前記多重特異性抗原結合分子は、ACE910(Emicizumab)に比べ、FVIII補因子機能代替活性が増強し、低い抗体濃度でも高い活性を有する多重特異性抗原結合分子である。
また、別の態様において、前記多重特異性抗原結合分子は、FIX活性化阻害活性が実質的になく、かつACE910(Emicizumab)に比べFVIII補因子機能代替活性が上昇した多重特異性抗原結合分子である。ここで、「FIX活性化阻害活性が実質的にない」とは、実施例に示す方法を用いてOD値を測定した場合、コントロールのOD値と比べ、OD値の減少が0.025以内、好ましくは0.02以内、さらに好ましくは0.01以内であることをいう。
【0063】
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子の第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、上述の第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる31位、34位、97位、98位、100位、100a位、100b位及び100e位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されている、あるいは欠失している第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインである。
一つの態様として、本発明の第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、前記第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる26位、27位、30位、31位、32位、53位、55位、92位、93位、95位及び96位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換あるいは挿入されている第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインである。
一つの態様として、本発明の第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、上述の第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる31位、51位、56位、57位、59位、61位、62位、65位及び102位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されている第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインである。
一つの態様として、本発明の第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、上述の第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる24位、26位、27位、29位、30位、31位、32位、50位、92位、94位、95位、95a位及び96位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されている、あるいは欠失している第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインである。
【0064】
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子は、
前記第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる31位、34位、97位、98位、100位、100a位、100b位及び100e位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されている、あるいは欠失しており、
前記第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる26位、27位、30位、31位、32位、53位、55位、92位、93位、95位及び96位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換あるいは挿入されており、
前記第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる31位、51位、56位、57位、59位、61位、62位、65位及び102位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されており、
前記第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる24位、26位、27位、29位、30位、31位、32位、50位、92位、94位、95位、95a位及び96位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されている、あるいは欠失している、
多重特異性抗原結合分子である。
【0065】
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子の第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、上述の第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる31位のアミノ酸残基がヒスチジン、34位のアミノ酸残基がアラニン、97位のアミノ酸残基がアスパラギン酸、98位のアミノ酸残基がセリン、100位のアミノ酸残基がアスパラギン酸またはグルタミン酸、100a位のアミノ酸残基がアスパラギン酸または欠失、100b位のアミノ酸残基がアラニンまたはヒスチジン、あるいは100e位のアミノ酸残基がヒスチジンまたはイソロイシンである第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインである。
一つの態様として、本発明の第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、前記第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる26位のアミノ酸残基がトレオニン、27位のアミノ酸残基がアルギニン、30位のアミノ酸残基がアルギニン、31位のアミノ酸残基がアルギニン、32位のアミノ酸残基がアスパラギン酸またはグルタミン酸、53位のアミノ酸残基がアルギニン、55位のアミノ酸残基がグルタミン酸、92位のアミノ酸残基がアルギニン、93位のアミノ酸残基がセリンまたはアスパラギン酸、95位のアミノ酸残基がプロリン、あるいは96位のアミノ酸残基がグリシンである第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインである。
一つの態様として、本発明の第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、上述の第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる31位のアミノ酸残基がアスパラギン、グルタミンまたはヒスチジン、51位のアミノ酸残基がセリン、56位のアミノ酸残基がトレオニンまたはアルギニン、57位のアミノ酸残基がバリン、59位のアミノ酸残基がセリン、61位のアミノ酸残基がアルギニン、62位のアミノ酸残基がリジン、65位のアミノ酸残基がアスパラギンまたはグルタミン、あるいは102位のアミノ酸残基がバリンである第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインである。
一つの態様として、本発明の第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、上述の第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる24位のアミノ酸残基がトレオニン、26位のアミノ酸残基がグルタミン酸、27位のアミノ酸残基がグルタミン、29位のアミノ酸残基がセリン、30位のアミノ酸残基がグルタミン、セリンまたはグルタミン酸、31位のアミノ酸残基がアルギニン、32位のアミノ酸残基がグルタミンまたはグルタミン酸、50位のアミノ酸残基がグルタミン、92位のアミノ酸残基がアラニン、94位のアミノ酸残基がアスパラギン酸、95位のアミノ酸残基がアスパラギン酸またはアラニン、95a位のアミノ酸残基がチロシンまたは欠失、あるいは96位のアミノ酸残基がトレオニンである第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインである。
【0066】
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子は、
前記第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる31位のアミノ酸残基がヒスチジン、34位のアミノ酸残基がアラニン、97位のアミノ酸残基がアスパラギン酸、98位のアミノ酸残基がセリン、100位のアミノ酸残基がアスパラギン酸またはグルタミン酸、100a位のアミノ酸残基がアスパラギン酸または欠失、100b位のアミノ酸残基がアラニンまたはヒスチジン、あるいは100e位のアミノ酸残基がヒスチジンまたはイソロイシンであり、
前記第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる26位のアミノ酸残基がトレオニン、27位のアミノ酸残基がアルギニン、30位のアミノ酸残基がアルギニン、31位のアミノ酸残基がアルギニン、32位のアミノ酸残基がアスパラギン酸またはグルタミン酸、53位のアミノ酸残基がアルギニン、55位のアミノ酸残基がグルタミン酸、92位のアミノ酸残基がアルギニン、93位のアミノ酸残基がセリンまたはアスパラギン酸、95位のアミノ酸残基がプロリン、あるいは96位のアミノ酸残基がグリシンであり、
前記第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる31位のアミノ酸残基がアスパラギン、グルタミンまたはヒスチジン、51位のアミノ酸残基がセリン、56位のアミノ酸残基がトレオニンまたはアルギニン、57位のアミノ酸残基がバリン、59位のアミノ酸残基がセリン、61位のアミノ酸残基がアルギニン、62位のアミノ酸残基がリジン、65位のアミノ酸残基がアスパラギンまたはグルタミン、あるいは102位のアミノ酸残基がバリンであり、
前記第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる24位のアミノ酸残基がトレオニン、26位のアミノ酸残基がグルタミン酸、27位のアミノ酸残基がグルタミン、29位のアミノ酸残基がセリン、30位のアミノ酸残基がグルタミン、セリンまたはグルタミン酸、31位のアミノ酸残基がアルギニン、32位のアミノ酸残基がグルタミンまたはグルタミン酸、50位のアミノ酸残基がグルタミン、92位のアミノ酸残基がアラニン、94位のアミノ酸残基がアスパラギン酸、95位のアミノ酸残基がアスパラギン酸またはアラニン、95a位のアミノ酸残基がチロシンまたは欠失、あるいは96位のアミノ酸残基がトレオニンである、
多重特異性抗原結合分子である。
【0067】
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子の第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、
1)配列番号168のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号169のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号170のアミノ酸配列を含むHVR-H3(QH01);
2)配列番号171のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号172のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号173のアミノ酸配列を含むHVR-H3(QH02);
3)配列番号174のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号175のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号176のアミノ酸配列を含むHVR-H3(QH03);
4)配列番号177のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR-H3(QH04);
5)配列番号180のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号182のアミノ酸配列を含むHVR-H3(QH06);又は
6)配列番号183のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号184のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号185のアミノ酸配列を含むHVR-H3(QH07)
を含む重鎖可変ドメインである。
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子の第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、
1)配列番号186のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号188のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL21);
2)配列番号189のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号190のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号191のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL22);
3)配列番号192のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号193のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号194のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL23);
4)配列番号195のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号196のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号197のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL24);
5)配列番号198のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号199のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号200のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL25);
6)配列番号201のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号202のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号203のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL26);
7)配列番号204のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号205のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号206のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL28);
8)配列番号207のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号208のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号209のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL29);
9)配列番号210のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号211のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号212のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL30);
10)配列番号213のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号214のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号215のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL31);
11)配列番号216のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号217のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号218のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL32);又は
12)配列番号219のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号220のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号221のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL33)
を含む軽鎖可変ドメインである。
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子の第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、
1)配列番号222のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号223のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号224のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH01);
2)配列番号225のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号226のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号227のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH02);
3)配列番号228のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号229のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号230のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH03);
4)配列番号231のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号232のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号233のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH04);
5)配列番号234のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号235のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号236のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH05);
6)配列番号237のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号238のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号239のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH06);
7)配列番号240のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号241のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号242のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH07);
8)配列番号243のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号244のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号245のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH08);
9)配列番号246のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号247のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号248のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH09);
10)配列番号249のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号250のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号251のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH10);又は
11)配列番号252のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号253のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号254のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH11)
を含む重鎖可変ドメインである。
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子の第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、
1)配列番号255のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号256のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号257のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL01);
2)配列番号258のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号259のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号260のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL02);
3)配列番号261のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号262のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号263のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL03);
4)配列番号264のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号265のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号266のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL04);
5)配列番号267のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号268のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号269のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL05);
6)配列番号270のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号271のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号272のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL06);
7)配列番号273のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号274のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号275のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL07);
8)配列番号276のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号277のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号278のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL08);
9)配列番号279のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号280のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号281のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL09);
10)配列番号282のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号283のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号284のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL10);又は
11)配列番号285のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号286のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号287のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL11)
を含む軽鎖可変ドメインである。
【0068】
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子は、前記第一の抗原結合部位が重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、
重鎖可変ドメインにおいて
1)配列番号168のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号169のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号170のアミノ酸配列を含むHVR-H3(QH01);
2)配列番号171のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号172のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号173のアミノ酸配列を含むHVR-H3(QH02);
3)配列番号174のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号175のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号176のアミノ酸配列を含むHVR-H3(QH03);
4)配列番号177のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号178のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号179のアミノ酸配列を含むHVR-H3(QH04);
5)配列番号180のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号181のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号182のアミノ酸配列を含むHVR-H3(QH06);又は
6)配列番号183のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号184のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号185のアミノ酸配列を含むHVR-H3(QH07)を含み、かつ
軽鎖可変ドメインにおいて、
1)配列番号186のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号187のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号188のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL21);
2)配列番号189のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号190のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号191のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL22);
3)配列番号192のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号193のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号194のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL23);
4)配列番号195のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号196のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号197のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL24);
5)配列番号198のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号199のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号200のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL25);
6)配列番号201のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号202のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号203のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL26);
7)配列番号204のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号205のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号206のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL28);
8)配列番号207のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号208のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号209のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL29);
9)配列番号210のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号211のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号212のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL30);
10)配列番号213のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号214のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号215のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL31);
11)配列番号216のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号217のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号218のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL32);又は
12)配列番号219のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号220のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号221のアミノ酸配列を含むHVR-L3(QL33)を含み、かつ、
前記第二の抗原結合部位が重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、
重鎖可変ドメインにおいて
1)配列番号222のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号223のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号224のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH01);
2)配列番号225のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号226のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号227のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH02);
3)配列番号228のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号229のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号230のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH03);
4)配列番号231のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号232のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号233のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH04);
5)配列番号234のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号235のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号236のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH05);
6)配列番号237のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号238のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号239のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH06);
7)配列番号240のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号241のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号242のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH07);
8)配列番号243のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号244のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号245のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH08);
9)配列番号246のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号247のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号248のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH09);
10)配列番号249のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号250のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号251のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH10);又は
11)配列番号252のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号253のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号254のアミノ酸配列を含むHVR-H3(JH11)を含み、かつ
軽鎖可変ドメインにおいて、
1)配列番号255のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号256のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号257のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL01);
2)配列番号258のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号259のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号260のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL02);
3)配列番号261のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号262のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号263のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL03);
4)配列番号264のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号265のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号266のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL04);
5)配列番号267のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号268のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号269のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL05);
6)配列番号270のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号271のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号272のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL06);
7)配列番号273のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号274のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号275のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL07);
8)配列番号276のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号277のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号278のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL08);
9)配列番号279のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号280のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号281のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL09);
10)配列番号282のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号283のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号284のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL10);又は
11)配列番号285のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号286のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号287のアミノ酸配列を含むHVR-L3(JL11)を含む、
多重特異性抗原結合分子である。
【0069】
本発明の一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子は、血液凝固第IX因子および/または活性化血液凝固第IX因子に結合する第一の抗原結合部位、および血液凝固第X因子に結合する第二の抗原結合部位を含む、血液凝固第VIII因子の機能を代替する機能を有する多重特異性抗原結合分子であって、
前記第1の抗原結合部位が配列番号45の重鎖可変ドメイン(Q499)と配列番号13の軽鎖可変ドメイン(QNK131)を含み、かつ、前記第2の抗原結合部位が配列番号46の重鎖可変ドメイン(J327)と配列番号31の軽鎖可変ドメイン(JNL095)を含み、前記重鎖可変ドメインまたは前記軽鎖可変ドメインの少なくとも一つの可変ドメインにおいて一以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されている、あるいは欠失している多重特異性抗原結合分子である。
【0070】
一つの態様として、本発明の第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、前記第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいて、Kabatナンバリングによる31位、34位、39位、97位、98位、100位、100a位、100b位及び100e位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されている、あるいは欠失している重鎖可変ドメインである。
一つの態様として、本発明の第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、前記第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいて、Kabatナンバリングによる26位、27位、30位、31位、32位、38位、45位、53位、55位、60位、70位、76位、79位、80位、83位、85位、92位、93位、95位及び96位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換あるいは挿入されている軽鎖可変ドメインである。
一つの態様として、本発明の第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、前記第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいて、Kabatナンバリングによる28位、31位、39位、51位、56位、57位、59位、61位、62位、65位、67位、73位、82b位及び102位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されている重鎖可変ドメインである。
一つの態様として、本発明の第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、前記第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいて、Kabatナンバリングによる3位、8位、15位、24位、26位、27位、29位、30位、31位、32位、38位、48位、49位、50位、79位、92位、94位、95位、95a位及び96位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されている、あるいは欠失している軽鎖可変ドメインである。
【0071】
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子は、
前記第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる31位、34位、39位、97位、98位、100位、100a位、100b位及び100e位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されている、あるいは欠失しており、
前記第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいて、Kabatナンバリングによる26位、27位、30位、31位、32位、38位、45位、53位、55位、60位、70位、76位、79位、80位、83位、85位、92位、93位、95位及び96位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換あるいは挿入されており、
前記第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいて、Kabatナンバリングによる28位、31位、39位、51位、56位、57位、59位、61位、62位、65位、67位、73位、82b位及び102位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されており、
前記第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいて、Kabatナンバリングによる3位、8位、15位、24位、26位、27位、29位、30位、31位、32位、38位、48位、49位、50位、79位、92位、94位、95位、95a位及び96位のアミノ酸残基から選ばれる少なくとも一つのアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されている、あるいは欠失している、
多重特異性抗原結合分子である。
【0072】
一つの態様において、本発明の第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、前記第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいて、Kabatナンバリングによる31位のアミノ酸残基がヒスチジン、34位のアミノ酸残基がアラニン、39位のアミノ酸残基がグルタミン酸、97位のアミノ酸残基がアスパラギン酸、98位のアミノ酸残基がセリン、100位のアミノ酸残基がアスパラギン酸またはグルタミン酸、100a位のアミノ酸残基がアスパラギン酸または欠失、100b位のアミノ酸残基がアラニンまたはヒスチジン、あるいは100e位のアミノ酸残基がヒスチジンまたはイソロイシンである重鎖可変ドメインである。
一つの態様において、本発明の第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、前記第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいて、Kabatナンバリングによる26位のアミノ酸残基がトレオニン、27位のアミノ酸残基がアルギニン、30位のアミノ酸残基がアルギニン、31位のアミノ酸残基がアルギニン、32位のアミノ酸残基がアスパラギン酸またはグルタミン酸、38位のアミノ酸残基がリジン、45位のアミノ酸残基がグルタミン酸、53位のアミノ酸残基がアルギニン、55位のアミノ酸残基がグルタミン酸、60位のアミノ酸残基がアスパラギン酸、70位のアミノ酸残基がアスパラギン酸、76位のアミノ酸残基がアスパラギン、79位のアミノ酸残基がグルタミン酸、80位のアミノ酸残基がプロリンまたはアラニン、83位のアミノ酸残基がメチオニンまたはアラニン、85位のアミノ酸残基がトレオニン、92位のアミノ酸残基がアルギニン、93位のアミノ酸残基がセリンまたはアスパラギン酸、95位のアミノ酸残基がプロリン、あるいは96位のアミノ酸残基がグリシンである軽鎖可変ドメインである。
一つの態様において、本発明の第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、前記第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいて、Kabatナンバリングによる28位のアミノ酸残基がグルタミン酸、31位のアミノ酸残基がアスパラギン、グルタミンまたはヒスチジン、39位のアミノ酸残基がリジン、51位のアミノ酸残基がセリン、56位のアミノ酸残基がトレオニンまたはアルギニン、57位のアミノ酸残基がバリン、59位のアミノ酸残基がセリン、61位のアミノ酸残基がアルギニン、62位のアミノ酸残基がリジン、65位のアミノ酸残基がアスパラギンまたはグルタミン、67位のアミノ酸残基がロイシン、73位のアミノ酸残基がイソロイシン、82b位のアミノ酸残基がグルタミン酸あるいは102位のアミノ酸残基がバリンである重鎖可変ドメインである。
一つの態様において、本発明の第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、前記第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいて、Kabatナンバリングによる3位のアミノ酸残基がグルタミン酸、8位のアミノ酸残基がプロリン、15位のアミノ酸残基がロイシン、24位のアミノ酸残基がトレオニン、26位のアミノ酸残基がグルタミン酸、27位のアミノ酸残基がグルタミン、29位のアミノ酸残基がセリン、30位のアミノ酸残基がグルタミン、セリンまたはグルタミン酸、31位のアミノ酸残基がアルギニン、32位のアミノ酸残基がグルタミンまたはグルタミン酸、38位のアミノ酸残基がグルタミン酸、48位のアミノ酸残基がイソロイシン、49位のアミノ酸残基がチロシン、50位のアミノ酸残基がグルタミン、79位のアミノ酸残基がグルタミン酸、92位のアミノ酸残基がアラニン、94位のアミノ酸残基がアスパラギン酸、95位のアミノ酸残基がアスパラギン酸またはアラニン、95a位のアミノ酸残基がチロシンまたは欠失、あるいは96位のアミノ酸残基がトレオニンである軽鎖可変ドメインである。
【0073】
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子は、
前記第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいて、Kabatナンバリングによる31位のアミノ酸残基がヒスチジン、34位のアミノ酸残基がアラニン、39位のアミノ酸残基がグルタミン酸、97位のアミノ酸残基がアスパラギン酸、98位のアミノ酸残基がセリン、100位のアミノ酸残基がアスパラギン酸またはグルタミン酸、100a位のアミノ酸残基がアスパラギン酸または欠失、100b位のアミノ酸残基がアラニンまたはヒスチジン、あるいは100e位のアミノ酸残基がヒスチジンまたはイソロイシンであり、
前記第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる26位のアミノ酸残基がトレオニン、27位のアミノ酸残基がアルギニン、30位のアミノ酸残基がアルギニン、31位のアミノ酸残基がアルギニン、32位のアミノ酸残基がアスパラギン酸またはグルタミン酸、38位のアミノ酸残基がリジン、45位のアミノ酸残基がグルタミン酸、53位のアミノ酸残基がアルギニン、55位のアミノ酸残基がグルタミン酸、60位のアミノ酸残基がアスパラギン酸、70位のアミノ酸残基がアスパラギン酸、76位のアミノ酸残基がアスパラギン、79位のアミノ酸残基がグルタミン酸、80位のアミノ酸残基がプロリンまたはアラニン、83位のアミノ酸残基がメチオニンまたはアラニン、85位のアミノ酸残基がトレオニン、92位のアミノ酸残基がアルギニン、93位のアミノ酸残基がセリンまたはアスパラギン酸、95位のアミノ酸残基がプロリン、あるいは96位のアミノ酸残基がグリシンであり、
前記第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる28位のアミノ酸残基がグルタミン酸、31位のアミノ酸残基がアスパラギン、グルタミンまたはヒスチジン、39位のアミノ酸残基がリジン、51位のアミノ酸残基がセリン、56位のアミノ酸残基がトレオニンまたはアルギニン、57位のアミノ酸残基がバリン、59位のアミノ酸残基がセリン、61位のアミノ酸残基がアルギニン、62位のアミノ酸残基がリジン、65位のアミノ酸残基がアスパラギンまたはグルタミン、67位のアミノ酸残基がロイシン、73位のアミノ酸残基がイソロイシン、82b位のアミノ酸残基がグルタミン酸あるいは102位のアミノ酸残基がバリンであり、
前記第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインにおいてKabatナンバリングによる3位のアミノ酸残基がグルタミン酸、8位のアミノ酸残基がプロリン、15位のアミノ酸残基がロイシン、24位のアミノ酸残基がトレオニン、26位のアミノ酸残基がグルタミン酸、27位のアミノ酸残基がグルタミン、29位のアミノ酸残基がセリン、30位のアミノ酸残基がグルタミン、セリンまたはグルタミン酸、31位のアミノ酸残基がアルギニン、32位のアミノ酸残基がグルタミンまたはグルタミン酸、38位のアミノ酸残基がグルタミン酸、48位のアミノ酸残基がイソロイシン、49位のアミノ酸残基がチロシン、50位のアミノ酸残基がグルタミン、79位のアミノ酸残基がグルタミン酸、92位のアミノ酸残基がアラニン、94位のアミノ酸残基がアスパラギン酸、95位のアミノ酸残基がアスパラギン酸またはアラニン、95a位のアミノ酸残基がチロシンまたは欠失、あるいは96位のアミノ酸残基がトレオニンである、
多重特異性抗原結合分子。
【0074】
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子の第一の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、または配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインである。
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子の第一の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71または配列番号72に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインである。
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子の第二の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82または配列番号83に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインである。
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子の第二の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93または配列番号94に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインである。
【0075】
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子は、前記第1の抗原結合部位が、
配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、または配列番号60の重鎖可変ドメイン(QH)と、
配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71または配列番号72の軽鎖可変ドメイン(QL)を含み、かつ、
前記第2の抗原結合部位が、
配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82または配列番号83の重鎖可変ドメイン(JH)と、
配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93または配列番号94の軽鎖可変ドメイン(JL)を含む、
多重特異性抗原結合分子である。
【0076】
一つの態様として、本発明は、FIXおよび/またはFIXaに結合する第一の抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメイン、およびFXに結合する第二の抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインを含む、以下の(a)~(v)のいずれかに記載の多重特異性抗原結合分子を提供する。
(a)配列番号56に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号61に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号73に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号84に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子。(QH01/QL21//JH01/JL01);
(b)配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号73に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号84に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH02/QL22//JH01/JL01);
(c)配列番号58に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号63に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH03/QL23//JH02/JL02);
(d)配列番号58に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号64に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH03/QL24//JH02/JL02);
(e)配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号75に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号86に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH02/QL22//JH03/JL03);
(f)配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号76に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号87に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH02/QL22//JH04/JL04);
(g)配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH02/QL22//JH02/JL02);
(h)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号65に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH04/QL25//JH02/JL02);
(i)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号66に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH04/QL26//JH02/JL02);
(j)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号66に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号77に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号88に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH04/QL26//JH05/JL05);
(k)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号67に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号77に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号88に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH04/QL28//JH05/JL05);
(l)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号67に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号78に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号89に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH04/QL28//JH06/JL06);
(m)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号68に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号77に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号88に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH04/QL29//JH05/JL05);
(n)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号68に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号78に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号89に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH04/QL29//JH06/JL06);
(o)配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号69に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号79に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号90に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH06/QL30//JH07/JL07);
(p)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号70に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号80に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号91に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH04/QL31//JH08/JL08);
(q)配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号71に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号79に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号90に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH06/QL32//JH07/JL07);
(r)配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号71に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号81に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号92に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH06/QL32//JH09/JL09);
(s)配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号69に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号82に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号93に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH06/QL30//JH10/JL10);
(t)配列番号105に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号72に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号83に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号94に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む多重特異性抗原結合分子(QH07/QL33//JH11/JL11);
(u)(a)~(t)のいずれかの抗体が認識するFIXおよび/またはFIXaにおけるエピトープとFXにおけるエピトープの両方と同じエピトープに結合する多重特異性抗原結合分子;
(v)(a)~(t)のいずれかの抗体が認識するFIXおよび/またはFIXaにおけるエピトープとFXにおけるエピトープへの結合に対してそれぞれ競合する多重特異性抗原結合分子。
【0077】
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子の重鎖定常領域は配列番号118、または配列番号119に記載のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域である。
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子の軽鎖定常領域は配列番号100、または配列番号102に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域である。
【0078】
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子は、前記第1の抗原結合部位は以下の(1)または(2)の定常領域を含み、かつ、前記第2の抗原結合部位は前記第1の抗原結合部位に含まれる定常領域とは異なる以下の(1)または(2)の定常領域を含む、多重特異性抗原結合分子である。
(1)重鎖定常領域として配列番号119及び軽鎖定常領域として配列番号100
(2)重鎖定常領域として配列番号118及び軽鎖定常領域として配列番号102
【0079】
一つの態様として、本発明の多重特異性抗原結合分子は多重特異性抗体である。また別の一つの態様として、本発明の多重特異性抗体は二重特異性抗体である。
【0080】
一つの態様として、本発明は、FIXおよび/またはFIXaに結合する第一の抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメイン、およびFXに結合する第二の抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインを含む、以下の(a)~(v)のいずれかに記載の二重特異性抗体を提供する。
(a)配列番号56に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号61に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号73に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号84に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH01/QL21//JH01/JL01);
(b)配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号73に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号84に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH02/QL22//JH01/JL01);
(c)配列番号58に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号63に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH03/QL23//JH02/JL02);
(d)配列番号58に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号64に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH03/QL24//JH02/JL02);
(e)配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号75に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号86に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH02/QL22//JH03/JL03);
(f)配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号76に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号87に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH02/QL22//JH04/JL04);
(g)配列番号57に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号62に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH02/QL22//JH02/JL02);
(h)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号65に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH04/QL25//JH02/JL02);
(i)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号66に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号74に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号85に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH04/QL26//JH02/JL02);
(j)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号66に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号77に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号88に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH04/QL26//JH05/JL05);
(k)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号67に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号77に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号88に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH04/QL28//JH05/JL05);
(l)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号67に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号78に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号89に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH04/QL28//JH06/JL06);
(m)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号68に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号77に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号88に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH04/QL29//JH05/JL05);
(n)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号68に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号78に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号89に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH04/QL29//JH06/JL06);
(o)配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号69に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号79に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号90に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH06/QL30//JH07/JL07);
(p)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号70に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号80に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号91に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH04/QL31//JH08/JL08);
(q)配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号71に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号79に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号90に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH06/QL32//JH07/JL07);
(r)配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号71に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号81に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号92に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH06/QL32//JH09/JL09);
(s)配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号69に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号82に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号93に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH06/QL30//JH10/JL10);
(t)配列番号105に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖可変ドメイン、配列番号72に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖可変ドメイン、配列番号83に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖可変ドメイン、及び配列番号94に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖可変ドメインを含む二重特異性抗体。(QH07/QL33//JH11/JL11);
(u)(a)~(t)のいずれかの抗体が認識する血液凝固第IX因子および/または活性化血液凝固第IX因子におけるエピトープと血液凝固第X因子におけるエピトープの両方と同じエピトープに結合する二重特異性抗体;
(v)(a)~(t)のいずれかの抗体が認識する血液凝固第IX因子および/または活性化血液凝固第IX因子におけるエピトープと血液凝固第X因子におけるエピトープへの結合に対してそれぞれ競合する二重特異性抗体。
【0081】
一つの態様として、本発明は、FIXおよび/またはFIXaに結合する第一の抗体重鎖及び抗体軽鎖、ならびにFXに結合する第二の抗体重鎖及び抗体軽鎖を含む、以下の(a)~(v)のいずれかに記載の二重特異性抗体を提供する。
(a)配列番号120に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号126に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号138に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号149に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH01/QL21//JH01/JL01);
(b)配列番号121に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号127に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号138に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号149に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH02/QL22//JH01/JL01);
(c)配列番号122に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号128に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号139に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号150に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH03/QL23//JH02/JL02);
(d)配列番号122に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号129に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号139に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号150に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH03/QL24//JH02/JL02);
(e)配列番号121に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号127に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号140に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号151に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH02/QL22//JH03/JL03);
(f)配列番号121に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号127に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号141に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号152に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH02/QL22//JH04/JL04);
(g)配列番号121に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号127に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号139に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号150に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH02/QL22//JH02/JL02);
(h)配列番号123に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号130に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号139に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号150に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH04/QL25//JH02/JL02);
(i)配列番号123に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号131に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号139に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号150に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH04/QL26//JH02/JL02);
(j)配列番号123に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号131に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号142に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号153に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH04/QL26//JH05/JL05);
(k)配列番号123に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号132に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号142に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号153に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH04/QL28//JH05/JL05);
(l)配列番号123に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号132に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号143に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号154に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH04/QL28//JH06/JL06);
(m)配列番号123に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号133に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号142に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号153に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH04/QL29//JH05/JL05);
(n)配列番号123に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号133に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号143に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号154に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH04/QL29//JH06/JL06);
(o)配列番号124に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号134に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号144に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号155に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH06/QL30//JH07/JL07);
(p)配列番号123に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号135に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号145に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号156に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH04/QL31//JH08/JL08);
(q)配列番号124に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号136に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号144に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号155に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH06/QL32//JH07/JL07);
(r)配列番号124に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号136に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号146に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号157に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH06/QL32//JH09/JL09);
(s)配列番号124に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号134に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号147に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号158に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH06/QL30//JH10/JL10);
(t)配列番号125に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体重鎖、配列番号137に記載のアミノ酸配列を含む第一の抗体軽鎖、配列番号148に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体重鎖、及び配列番号159に記載のアミノ酸配列を含む第二の抗体軽鎖を含む二重特異性抗体(QH07/QL33//JH11/JL11);
(u)(a)~(t)のいずれかの抗体が認識するFIXおよび/またはFIXaにおけるエピトープとFXにおけるエピトープの両方と同じエピトープに結合する二重特異性抗体;
(v)(a)~(t)のいずれかの抗体が認識するFIXおよび/またはFIXaにおけるエピトープとFXにおけるエピトープへの結合に対してそれぞれ競合する二重特異性抗体。
【0082】
一つの態様として、本発明は、血液凝固第IX因子および/または活性化血液凝固第IX因子に結合する第一の抗原結合部位、および血液凝固第X因子に結合する第二の抗原結合部位を含む、血液凝固第VIII因子の機能を代替する機能を有する多重特異性抗原結合分子であって、
前記第一の抗原結合部位が重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、前記重鎖可変ドメイン(Q499)は配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、
前記軽鎖可変ドメイン(QNK131)は配列番号162のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号163のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号164のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、かつ、
前記第二の抗原結合部位が重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、前記重鎖可変ドメイン(J327)は配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、
前記軽鎖可変ドメイン(JNL095)は配列番号165のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号166のアミノ酸配列を含むHVR-L2、配列番号167のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、前記多重特異性抗原結合分子も提供する。
【0083】
特定の態様において、前記(a)~(v)の抗体はFVIIIの機能を代替する機能を有する抗体である。
また、別の態様において、前記(a)~(v)の抗体は抗ACE910(Emicizumab)イディオタイプ抗体との反応性がACE910(Emicizumab)に比べて減少している抗体である。ここで「抗ACE910(Emicizumab)イディオタイプ抗体との反応性がACE910(Emicizumab)に比べて減少している」とは、本明細書に記載の方法を用いて抗イディオタイプ抗体と標識化したACE910との結合強度(%)を測定した場合に、被験物質を100 μg/mLの濃度で添加した場合において、好ましくは10%以上減少していることをいい、さらに好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上減少していることをいう。
抗ACE910イディオタイプ抗体の取得は例えば以下の方法で行うことができる。ACE910(Emicizumab)のFIX(a)を認識するQ499/L404の F(ab’)2およびFXを認識するJ327/L404の F(ab’)2をウサギに投与し、抗Q499/L404 F(ab’)2ウサギ血清および抗J327/L404 F(ab’)2ウサギ血清を得る。これら血清の硫安分画をhuman IgG結合カラムに通すことでhuman IgG 反応性抗体を除去する。次いで、Q499/L404(あるいはJ327/L404)結合カラムを用いたaffinity 精製をした後、J327/L404(あるいはQ499/L404)結合カラムによるJ327/L404(あるいはQ499/L404)反応性抗体の除去処理を行うことで、Q499/L404(あるいはJ327/L404)に特異的に結合するポリクローナルな抗イディオタイプ抗体を取得する。
抗イディオタイプ抗体を用いた標識化したACE910(Emicizumab)との結合強度は例えば、電気化学発光イムノアッセイで測定することができ、これにより被験物質による結合阻害を評価できる。前記取得した抗イディオタイプ抗体を用いる場合、抗Q499/L404イディオタイプ抗体、抗J327/L404イディオタイプ抗体、ビオチン標識ACE910(Emicizumab)およびSULFO-TAG標識ACE910(Emicizumab)の混合液に被験物質(二重特異性抗体)を0, 1, 3, 10, 30あるいは100 μg/mLの濃度で添加し、得られた混合液を冷蔵下一晩インキュベートする。次いで、96穴プレートに混合液を添加し、プレートを洗浄後、電気化学発光法で結合強度を測定する。
また、別の態様において、前記(a)~(v)の抗体は、ACE910(Emicizumab)に比べ、FVIII補因子機能代替活性が増強し、低い抗体濃度でも高い活性を有する抗体である。
また、別の態様において、前記(a)~(v)の抗体は、FIX活性化阻害活性が実質的になく、かつACE910(Emicizumab)に比べFVIII補因子機能代替活性が上昇した抗体である。ここで「FIX活性化阻害活性が実質的にない」とは、本明細書に示す方法を用いてOD値を測定した場合、コントロールのOD値と比べ、OD値の減少が0.025以内、好ましくは0.02以内、さらに好ましくは0.01以内であることをいう。
【0084】
なお、本発明で記載されているアミノ酸配列に含まれるアミノ酸は翻訳後に修飾(例えば、N末端のグルタミンのピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾は当業者によく知られた修飾である)を受ける場合もあるが、そのようにアミノ酸が翻訳後修飾された場合であっても当然のことながら本発明で記載されているアミノ酸配列に含まれる。
【0085】
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供されるFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子あるいは二重特異性抗体と同じエピトープに結合する多重特異性抗原結合分子あるいは二重特異性抗体を提供する。例えば、特定の態様において、前記(a)~(t)に記載の多重特異性抗原結合分子あるいは二重特異性抗体と同じエピトープに結合する多重特異性抗原結合分子あるいは二重特異性抗体が提供される。
【0086】
本発明のさらなる局面において、上述の態様の任意のものによるFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する二重特異性抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を含む、モノクローナル抗体である。一態様において、FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する二重特異性抗体は、例えば、(scFv)2、ダイアボディ、またはF(ab’)2断片などの、抗体断片である。別の態様において、抗体は、例えば、完全IgG4抗体や、本明細書で定義された他の抗体クラスまたはアイソタイプの、全長抗体である。
【0087】
さらなる局面において、上述の態様の任意のものによるFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する二重特異性抗体は、単独または組み合わせで、以下の項目1~7に記載の任意の特徴を取り込んでもよい。
【0088】
1.抗体のアフィニティ
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、≦100μM、≦10μM、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10-5M以下、例えば10-5M~10-10M、例えば10-6M~10-10M)の解離定数 (Kd) を有する。
【0089】
一態様において、Kdは、放射性標識抗原結合測定法 (radiolabeled antigen binding assay: RIA) によって測定される。一態様において、RIAは、目的の抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて実施される。例えば、抗原に対するFabの溶液中結合アフィニティは、非標識抗原の漸増量系列の存在下で最小濃度の (125I) 標識抗原によりFabを平衡化させ、次いで結合した抗原を抗Fab抗体でコーティングされたプレートにより捕捉することによって測定される。(例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881(1999) を参照のこと)。測定条件を構築するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート (Thermo Scientific) を50mM炭酸ナトリウム (pH9.6) 中5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体 (Cappel Labs) で一晩コーティングし、その後に室温(およそ23℃)で2~5時間、PBS中2% (w/v) ウシ血清アルブミンでブロックする。非吸着プレート (Nunc #269620) において、100 pMまたは26 pMの [125I]-抗原を、(例えば、Presta et al., Cancer Res. 57:4593-4599 (1997) における抗VEGF抗体、Fab-12の評価と同じように)目的のFabの段階希釈物と混合する。次いで、目的のFabを一晩インキュベートするが、このインキュベーションは、平衡が確実に達成されるよう、より長時間(例えば、約65時間)継続され得る。その後、混合物を、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために捕捉プレートに移す。次いで溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター (Packard) においてプレートを10分間カウントする。最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおいて使用するために選択する。
【0090】
別の態様によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000 (BIAcore, Inc., Piscataway, NJ) を用いる測定法が、およそ10反応単位 (response unit: RU) の抗原が固定されたCM5チップを用いて25℃で実施される。一態様において、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ (CM5、BIACORE, Inc.) は、供給元の指示にしたがいN-エチル-N’- (3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド (EDC) およびN-ヒドロキシスクシンイミド (NHS) を用いて活性化される。抗原は、およそ10反応単位 (RU) のタンパク質の結合を達成するよう、5μl/分の流速で注入される前に、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8を用いて5μg/ml(およそ0.2μM)に希釈される。抗原の注入後、未反応基をブロックするために1Mエタノールアミンが注入される。キネティクスの測定のために、25℃、およそ25μl/分の流速で、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤含有PBS (PBST) 中のFabの2倍段階希釈物 (0.78nM~500nM) が注入される。結合速度 (kon) および解離速度 (koff) は、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を用いて、結合および解離のセンサーグラムを同時にフィッティングすることによって計算される。平衡解離定数 (Kd) は、koff/kon比として計算される。例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999) を参照のこと。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによってオン速度が106M-1s-1を超える場合、オン速度は、分光計(例えばストップフロー式分光光度計 (Aviv Instruments) または撹拌キュベットを用いる8000シリーズのSLM-AMINCO(商標)分光光度計 (ThermoSpectronic))において測定される、漸増濃度の抗原の存在下でのPBS、pH7.2中20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、バンドパス16nm)の増加または減少を測定する蛍光消光技術を用いることによって決定され得る。
【0091】
2.抗体断片
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片は、これらに限定されるものではないが、(scFv)2、ダイアボディ、またはF(ab’)2断片、ならびに、後述する他の断片を含む。特定の抗体断片についての総説として、Hudson et al. Nat. Med. 9:129-134 (2003) を参照のこと。scFv断片の総説として、例えば、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), pp.269-315 (1994);加えて、WO93/16185;ならびに米国特許第5,571,894号および第5,587,458号を参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含みインビボ (in vivo) における半減期の長くなったF(ab')2断片についての論説として、米国特許第5,869,046号を参照のこと。
【0092】
ダイアボディは、二価または二重特異的であってよい、抗原結合部位を2つ伴う抗体断片である。例えば、EP404,097号; WO1993/01161; Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003); Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993) 参照。
【0093】
抗体断片は、これらに限定されるものではないが、本明細書に記載の、完全抗体のタンパク質分解的消化、組み換え宿主細胞(例えば、大腸菌 (E. coli) またはファージ)による産生を含む、種々の手法により作ることができる。
【0094】
3.キメラおよびヒト化抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4,816,567号;および、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984) に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)およびヒト定常領域を含む。さらなる例において、キメラ抗体は、親抗体のものからクラスまたはサブクラスが変更された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片も含む。
【0095】
特定の態様において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性およびアフィニティを維持したままでヒトへの免疫原性を減少させるために、ヒト化される。通常、ヒト化抗体は1つまたは複数の可変ドメインを含み、当該可変ドメイン中、HVR(例えばCDR(またはその部分))は非ヒト抗体に由来し、FR(またはその部分)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部分を含む。いくつかの態様において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性またはアフィニティを回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となった抗体)からの対応する残基で置換されている。
【0096】
ヒト化抗体およびその作製方法は、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)において総説されており、また、例えば、Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988); Queen et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989); 米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、および第7,087,409号;Kashmiri et al., Methods 36:25-34 (2005)(特異性決定領域 (specificity determining region: SDR) グラフティングを記載);Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498 (1991) (リサーフェイシングを記載); Dall’Acqua et al., Methods 36:43-60 (2005) (FRシャッフリングを記載);ならびに、Osbourn et al., Methods 36:61-68 (2005) およびKlimka et al., Br. J. Cancer, 83:252-260 (2000) (FRシャッフリングのための「ガイドセレクション」アプローチを記載) において、さらに記載されている。
【0097】
ヒト化に使われ得るヒトフレームワーク領域は、これらに限定されるものではないが:「ベストフィット」法(Sims et al. J. Immunol. 151:2296 (1993) 参照)を用いて選択されたフレームワーク領域;軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(Carter et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992) および Presta et al. J. Immunol., 151:2623 (1993) 参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008) 参照);および、FRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(Baca et al., J. Biol. Chem. 272:10678-10684 (1997) および Rosok et al., J. Biol. Chem. 271:22611-22618 (1996) 参照)を含む。
【0098】
4.ヒト抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において知られる種々の手法によって製造され得る。ヒト抗体は、van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368-74 (2001) および Lonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008) に、概説されている。
【0099】
ヒト抗体は、抗原チャレンジ(負荷)に応答して完全ヒト抗体またはヒト可変領域を伴う完全抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物へ免疫原を投与することにより、調製されてもよい。そのような動物は、典型的にはヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分を含み、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分は、内因性の免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または、染色体外にもしくは当該動物の染色体内にランダムに取り込まれた状態で存在する。そのようなトランスジェニックマウスにおいて、内因性の免疫グロブリン遺伝子座は、通常不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る方法の総説として、Lonberg, Nat. Biotech. 23:1117-1125 (2005) を参照のこと。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載した米国特許第6,075,181号および第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術を記載した米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許第7,041,870号;ならびに、VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許出願公開第2007/0061900号を、併せて参照のこと。このような動物によって生成された完全抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせるなどして、さらに修飾されてもよい。
【0100】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づいた方法でも作ることができる。ヒトモノクローナル抗体の製造のための、ヒトミエローマおよびマウス‐ヒトヘテロミエローマ細胞株は、既に記述されている。(例えば、Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);およびBoerner et al., J. Immunol., 147: 86 (1991) 参照。)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体も、Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006) に述べられている。追加的な方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の製造を記載)、および、Ni, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268 (2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載)に記載されたものを含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)も、Vollmers and Brandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937 (2005) およびVollmers and Brandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-91 (2005)に記載されている。
【0101】
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することでも生成できる。このような可変ドメイン配列は、次に所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリからヒト抗体を選択する手法を、以下に述べる。
【0102】
5.ライブラリ由来抗体
本発明の抗体は、所望の1つまたは複数の活性を伴う抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離してもよい。例えば、ファージディスプレイライブラリの生成や、所望の結合特性を備える抗体についてそのようなライブラリをスクリーニングするための、様々な方法が当該技術分野において知られている。そのような方法は、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001) において総説されており、さらに例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554;Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992); Marks and Bradbury, in Methods in Molecular Biology 248:161-175 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003); Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004); Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);およびLee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132(2004) に記載されている。
【0103】
特定のファージディスプレイ法において、VHおよびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction: PCR) により別々にクローニングされ、無作為にファージライブラリ中で再結合され、当該ファージライブラリは、Winter et al., Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455 (1994) に述べられているようにして、抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、典型的には、単鎖Fv (scFv) 断片としてまたはFab断片としてのいずれかで、抗体断片を提示する。免疫化された供給源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築することを要さずに、免疫源に対する高アフィニティ抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al., EMBO J, 12: 725-734 (1993) に記載されるように、ナイーブレパートリーを(例えば、ヒトから)クローニングして、免疫化することなしに、広範な非自己および自己抗原への抗体の単一の供給源を提供することもできる。最後に、ナイーブライブラリは、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992) に記載されるように、幹細胞から再編成前のV-遺伝子セグメントをクローニングし、超可変CDR3領域をコードしかつインビトロ (in vitro) で再構成を達成するための無作為配列を含んだPCRプライマーを用いることにより、合成的に作ることもできる。ヒト抗体ファージライブラリを記載した特許文献は、例えば:米国特許第5,750,373号、ならびに、米国特許出願公開第2005/0079574号、2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号、および第2009/0002360号を含む。
【0104】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書ではヒト抗体またはヒト抗体断片と見なす。
【0105】
6.多重特異性抗体
本発明において「多重特異性抗体」とは、異なる多種のエピトープと特異的に結合し得る抗体を言う。つまり、多重特異性抗体は少なくとも2種類の異なるエピトープに対して特異性を有する抗体であり、異なる抗原に結合する抗体のほか、同一の抗原上の異なるエピトープに結合する抗体も含まれる。(例えば、抗原がヘテロ受容体の場合には、多重特異性抗体はヘテロ受容体を構成する異なるドメインに結合する、あるいは、抗原がモノマーの場合には、多重特異性抗体はモノマー抗原の複数箇所に結合する)。通常、このような分子は2個の抗原と結合するものであるが(二重特異性抗体:bispecific抗体)、それ以上の(例えば、3種類の)抗原に対して特異性を有していてもよい。特定の態様において、抗原の1つは、FIXおよび/またはFIXaであり、もう1つはFXである。二重特異性抗体は、全長抗体としてまたは抗体断片として調製され得る。
【0106】
多重特異性抗体を作製するための手法は、これらに限定されるものではないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの組み換え共発現(Milstein and Cuello, Nature 305: 537 (1983)、WO93/08829、およびTraunecker et al., EMBO J. 10: 3655 (1991) 参照)、およびknob-in-hole技術(例えば、米国特許第5,731,168号参照)を含む。多重特異性抗体は、Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電ステアリング効果 (electrostatic steering effects) を操作すること (WO2009/089004A1);2つ以上の抗体または断片を架橋すること(米国特許第4,676,980号およびBrennan et al., Science, 229: 81 (1985)参照);ロイシンジッパーを用いて2つの特異性を有する抗体を作成すること(Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992) 参照);「ダイアボディ」技術を用いて二重特異性抗体断片を作製すること(Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993) 参照);および、単鎖Fv (scFv) 二量体を用いること(Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994) 参照);および、例えばTutt et al. J. Immunol. 147: 60 (1991) に記載されるように三重特異性抗体を調製すること、によって作製してもよい。
【0107】
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を伴う改変抗体も、本明細書では含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576号A1参照)。
【0108】
7.抗体変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列変異体も、考慮の内である。例えば、抗体の結合アフィニティおよび/または他の生物学的特性を改善することが、望ましいこともある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入すること、または、ペプチド合成によって、調製されてもよい。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列からの欠失、および/または抗体のアミノ酸配列中への挿入、および/または抗体のアミノ酸配列中の残基の置換を含む。最終構築物が所望の特徴(例えば、抗原結合性)を備えることを前提に、欠失、挿入、および置換の任意の組合せが、最終構築物に至るために行われ得る。
【0109】
a)置換、挿入、および欠失変異体
特定の態様において、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換的変異導入の目的部位は、HVRおよびFRを含む。保存的置換を、表1の「好ましい置換」の見出しの下に示す。より実質的な変更を、表1の「例示的な置換」の見出しの下に提供するとともに、アミノ酸側鎖のクラスに言及しつつ下で詳述する。アミノ酸置換は目的の抗体に導入されてもよく、産物は、例えば、保持/改善された抗原結合性、減少した免疫原性、または改善したADCCまたはCDCなどの、所望の活性についてスクリーニングされてもよい。
【0110】
【0111】
アミノ酸は、共通の側鎖特性によって群に分けることができる:
(1) 疎水性:ノルロイシン、メチオニン (Met)、アラニン (Ala)、バリン (Val)、ロイシン (Leu)、イソロイシン (Ile);
(2) 中性の親水性:システイン (Cys)、セリン (Ser)、トレオニン (Thr)、アスパラギン (Asn)、グルタミン (Gln);
(3) 酸性:アスパラギン酸 (Asp)、グルタミン酸 (Glu);
(4) 塩基性:ヒスチジン (His)、リジン (Lys)、アルギニン (Arg);
(5) 鎖配向に影響する残基:グリシン (Gly)、プロリン (Pro);
(6) 芳香族性:トリプトファン (Trp)、チロシン (Tyr)、フェニルアラニン (Phe)。
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを、別のクラスのものに交換することをいう。
【0112】
置換変異体の1つのタイプは、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つまたは複数の超可変領域残基の置換を含む。通常、その結果として生じ、さらなる研究のために選ばれた変異体は、親抗体と比較して特定の生物学的特性における修飾(例えば、改善)(例えば、増加したアフィニティ、減少した免疫原性)を有する、および/または親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持しているであろう。例示的な置換変異体は、アフィニティ成熟抗体であり、これは、例えばファージディスプレイベースのアフィニティ成熟技術(例えば本明細書に記載されるもの)を用いて適宜作製され得る。簡潔に説明すると、1つまたは複数のHVR残基を変異させ、そして変異抗体をファージ上に提示させ、特定の生物学的活性(例えば、結合アフィニティ)に関してスクリーニングを行う。
【0113】
改変(例えば、置換)は、例えば抗体のアフィニティを改善するために、HVRにおいて行われ得る。そのような改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異が起こるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008) を参照のこと)および/または抗原に接触する残基において行われ得、得られた変異VHまたはVLが結合アフィニティに関して試験され得る。二次ライブラリからの構築および再選択によるアフィニティ成熟が、例えば、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O’Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, (2001)) に記載されている。アフィニティ成熟のいくつかの態様において、多様性は、任意の様々な方法(例えば、エラープローンPCR、チェーンシャッフリングまたはオリゴヌクレオチド指向変異導入)によって成熟のために選択された可変遺伝子に導入される。次いで、二次ライブラリが作製される。次いで、このライブラリは、所望のアフィニティを有する任意の抗体変異体を同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6残基)を無作為化するHVR指向アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えばアラニンスキャニング変異導入またはモデリングを用いて、具体的に特定され得る。特に、CDR-H3およびCDR-L3がしばしば標的化される。
【0114】
特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に減少させない限り、1つまたは複数のHVR内で行われ得る。例えば、結合アフィニティを実質的に減少させない保存的改変(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)が、HVRにおいて行われ得る。そのような改変は、例えば、HVRの抗原接触残基の外側であり得る。上記の変異VHおよびVL配列の特定の態様において、各HVRは改変されていないか、わずか1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換を含む。
【0115】
変異導入のために標的化され得る抗体の残基または領域を同定するのに有用な方法は、Cunningham and Wells (1989) Science, 244:1081-1085によって記載される、「アラニンスキャニング変異導入」と呼ばれるものである。この方法において、一残基または一群の標的残基(例えば、荷電残基、例えばアルギニン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、およびグルタミン酸)が同定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンもしくはポリアラニン)で置き換えられ、抗体と抗原の相互作用が影響を受けるかどうかが決定される。この初期置換に対して機能的感受性を示したアミノ酸位置に、さらなる置換が導入され得る。あるいはまたは加えて、抗体と抗原の間の接触点を同定するために、抗原抗体複合体の結晶構造を解析してもよい。そのような接触残基および近隣の残基を、置換候補として標的化してもよく、または置換候補から除外してもよい。変異体は、それらが所望の特性を含むかどうかを決定するためにスクリーニングされ得る。
【0116】
アミノ酸配列の挿入は、配列内部への単一または複数のアミノ酸残基の挿入と同様、アミノ末端および/またはカルボキシル末端における1残基から100残基以上を含むポリペプチドの長さの範囲での融合も含む。末端の挿入の例は、N末端にメチオニル残基を伴う抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体のN-またはC-末端に、酵素(例えば、ADEPTのための)または抗体の血漿半減期を増加させるポリペプチドを融合させたものを含む。
【0117】
b)グリコシル化変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加させるまたは減少させるように改変されている。抗体へのグリコシル化部位の追加または削除は、1つまたは複数のグリコシル化部位を作り出すまたは取り除くようにアミノ酸配列を改変することにより、簡便に達成可能である。
【0118】
抗体がFc領域を含む場合、そこに付加される炭水化物が改変されてもよい。哺乳動物細胞によって産生される天然型抗体は、典型的には、枝分かれした二分岐のオリゴ糖を含み、当該オリゴ糖は通常Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN-リンケージによって付加されている。例えば、Wright et al. TIBTECH 15:26-32 (1997) 参照。オリゴ糖は、例えば、マンノース、N‐アセチルグルコサミン (GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸などの種々の炭水化物、また、二分岐のオリゴ糖構造の「幹」中のGlcNAcに付加されたフコースを含む。いくつかの態様において、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を伴う抗体変異体を作り出すために行われてもよい。
【0119】
c)Fc領域変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のFc領域に1つまたは複数のアミノ酸修飾を導入して、それによりFc領域変異体を生成してもよい。Fc領域変異体は、1つまたは複数のアミノ酸ポジションのところでアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域)を含んでもよい。
【0120】
特定の態様において、すべてではないがいくつかのエフェクター機能を備える抗体変異体も、本発明の考慮の内であり、当該エフェクター機能は、抗体を、そのインビボでの半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(補体およびADCCなど)は不要または有害である場合の適用に望ましい候補とするものである。CDCおよび/またはADCC活性の減少/欠乏を確認するために、インビトロ および/またはインビボ の細胞傷害測定を行うことができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合測定は、抗体がFcγR結合性を欠く(よってADCC活性を欠く蓋然性が高い)一方でFcRn結合能を維持することを確かめるために行われ得る。ADCCを媒介するプライマリ細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、一方単球はFcγRI、FcγRII、FcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991) の第464頁のTable 3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロ測定法(アッセイ)の非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、 Hellstrom, I. et al. Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986) 参照)および Hellstrom, I et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985);米国特許第5,821,337号(Bruggemann, M. et al., J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987) 参照)に記載されている。あるいは、非放射性の測定法を用いてもよい(例えば、ACT1(商標)non-radioactive cytotoxicity assay for flow cytometry (CellTechnology, Inc. Mountain View, CA);および、CytoTox 96(登録商標)non-radioactive cytotoxicity assays 法 (Promega, Madison, WI) 参照)。このような測定法に有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞 (peripheral blood mononuclear cell: PBMC) およびナチュラルキラー (natural killer: NK) 細胞を含む。あるいはまたは加えて、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al. Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95:652-656 (1998) に記載されるような動物モデルにおいて、インビボで評価されてもよい。また、抗体がC1qに結合できないこと、よってCDC活性を欠くことを確認するために、C1q結合測定を行ってもよい。例えば、WO2006/029879 および WO2005/100402のC1qおよびC3c結合ELISAを参照のこと。また、補体活性化を評価するために、CDC測定を行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996);Cragg, M.S. et al., Blood 101:1045-1052 (2003);およびCragg, M.S. and M.J. Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004) 参照)。さらに、FcRn結合性およびインビボでのクリアランス/半減期の決定も、当該技術分野において知られた方法を用いて行い得る(例えばPetkova, S.B. et al., Int'l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006) 参照)。
【0121】
FcRsへの増加または減少した結合性を伴う特定の抗体変異体が、記述されている。(米国特許第6,737,056号;WO2004/056312、およびShields et al., J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001) を参照のこと。)
【0122】
増加した半減期、および新生児型Fc受容体(FcRn:母体のIgG類を胎児に移行させる役割を負う(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) and Kim et al., J. Immunol. 24:249 (1994)))に対する増加した結合性を伴う抗体が、米国特許出願公開第2005/0014934号A1(Hinton et al.) に記載されている。これらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合性を増加する1つまたは複数の置換をその中に伴うFc領域を含む。このようなFc変異体は、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434の1つまたは複数のところでの置換(例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号))を伴うものを含む。
【0123】
Fc領域変異体の他の例については、Duncan & Winter, Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;およびWO94/29351も参照のこと。
【0124】
d)システイン改変抗体変異体
特定の態様において、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換された、システイン改変抗体(例えば、「thioMAbs」)を作り出すことが望ましいだろう。特定の態様において、置換を受ける残基は、抗体の、アクセス可能な部位に生じる。それらの残基をシステインで置換することによって、反応性のチオール基が抗体のアクセス可能な部位に配置され、当該反応性のチオール基は、当該抗体を他の部分(薬剤部分またはリンカー‐薬剤部分など)にコンジュゲートして本明細書でさらに詳述するようにイムノコンジュゲートを作り出すのに使用されてもよい。特定の態様において、以下の残基の任意の1つまたは複数が、システインに置換されてよい:軽鎖のV205(Kabatナンバリング);重鎖のA118(EUナンバリング);および重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン改変抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるようにして生成されてもよい。
【0125】
e)抗体誘導体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、当該技術分野において知られておりかつ容易に入手可能な追加の非タンパク質部分を含むように、さらに修飾されてもよい。抗体の誘導体化に好適な部分は、これに限定されるものではないが、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例は、これらに限定されるものではないが、ポリエチレングリコール (PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ1,3ジオキソラン、ポリ1,3,6,トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれでも)、および、デキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール類(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、および、これらの混合物を含む。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水に対する安定性のために、製造において有利であるだろう。ポリマーは、いかなる分子量でもよく、枝分かれしていてもしていなくてもよい。抗体に付加されるポリマーの数には幅があってよく、1つ以上のポリマーが付加されるならそれらは同じ分子であってもよいし、異なる分子であってもよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/またはタイプは、これらに限定されるものではないが、改善されるべき抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件下での療法に使用されるか否か、などへの考慮に基づいて、決定することができる。
【0126】
別の態様において、抗体と、放射線に曝露することにより選択的に熱せられ得る非タンパク質部分との、コンジュゲートが提供される。一態様において、非タンパク質部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005))。放射線はいかなる波長でもよく、またこれらに限定されるものではないが、通常の細胞には害を与えないが抗体‐非タンパク質部分に近接した細胞を死滅させる温度まで非タンパク質部分を熱するような波長を含む。
【0127】
B.組み換えの方法および構成
例えば、米国特許第4,816,567号に記載されるとおり、抗体は組み換えの方法や構成を用いて製造することができる。一態様において、本明細書に記載のFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗体をコードする、単離された核酸が提供される。そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列および/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖および/または重鎖)をコードしてもよい。さらなる態様において、このような核酸を含む1つまたは複数のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる態様において、このような核酸を含む宿主細胞が提供される。このような態様の1つでは、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または、(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第一のベクターと抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第二のベクターを含む(例えば、形質転換されている)。一態様において、宿主細胞は、真核性である(例えば、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞)またはリンパ系の細胞(例えば、Y0、NS0、Sp2/0細胞))。一態様において、FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗体の発現に好適な条件下で、上述のとおり当該抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養すること、および任意で、当該抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することを含む、FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗体を作製する方法が提供される。
【0128】
FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗体子の組み換え製造のために、(例えば、上述したものなどの)抗体をコードする核酸を単離し、さらなるクローニングおよび/または宿主細胞中での発現のために、1つまたは複数のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手順を用いて容易に単離および配列決定されるだろう(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることで)。
【0129】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、本明細書に記載の原核細胞または真核細胞を含む。例えば、抗体は、特にグリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合は、細菌で製造してもよい。細菌での抗体断片およびポリペプチドの発現に関して、例えば、米国特許第5,648,237号、第5,789,199号、および第5,840,523号を参照のこと。(加えて、大腸菌における抗体断片の発現について記載したCharlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp.245-254も参照のこと。)発現後、抗体は細菌細胞ペーストから可溶性フラクション中に単離されてもよく、またさらに精製することができる。
【0130】
原核生物に加え、部分的なまたは完全なヒトのグリコシル化パターンを伴う抗体の産生をもたらす、グリコシル化経路が「ヒト化」されている菌類および酵母の株を含む、糸状菌または酵母などの真核性の微生物は、抗体コードベクターの好適なクローニングまたは発現宿主である。Gerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004)および Li et al., Nat. Biotech. 24:210-215 (2006) を参照のこと。
【0131】
多細胞生物(無脊椎生物および脊椎生物)に由来するものもまた、グリコシル化された抗体の発現のために好適な宿主細胞である。無脊椎生物細胞の例は、植物および昆虫細胞を含む。昆虫細胞との接合、特にSpodoptera frugiperda細胞の形質転換に用いられる、数多くのバキュロウイルス株が同定されている。
【0132】
植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号、および第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するための、PLANTIBODIES(商標)技術を記載)を参照のこと。
【0133】
脊椎動物細胞もまた宿主として使用できる。例えば、浮遊状態で増殖するように適応された哺乳動物細胞株は、有用であろう。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40で形質転換されたサル腎CV1株 (COS-7);ヒト胎児性腎株(Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977) などに記載の293または293細胞);仔ハムスター腎細胞 (BHK);マウスセルトリ細胞(Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980) などに記載のTM4細胞);サル腎細胞 (CV1);アフリカミドリザル腎細胞 (VERO-76);ヒト子宮頸部癌細胞 (HELA);イヌ腎細胞 (MDCK);Buffalo系ラット肝細胞 (BRL 3A);ヒト肺細胞 (W138);ヒト肝細胞 (Hep G2);マウス乳癌 (MMT 060562);TRI細胞(例えば、Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982) に記載);MRC5細胞;および、FS4細胞などである。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、DHFR- CHO細胞 (Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980)) を含むチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞;およびY0、NS0、およびSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。抗体産生に好適な特定の哺乳動物宿主細胞株の総説として、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255-268 (2003) を参照のこと。
【0134】
C.測定法(アッセイ)
本明細書で提供されるFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子は、当該技術分野において知られている種々の測定法によって、同定され、スクリーニングされ、または物理的/化学的特性および/または生物学的活性について明らかにされてもよい。
【0135】
1.結合測定法およびその他の測定法
一局面において、本発明の抗体は、例えばELISA、ウエスタンブロット等の公知の方法によって、その抗原結合活性に関して試験される。
【0136】
別の局面において、FIXおよび/またはFIXaならびにFXへの結合に関して本明細書に記載されるFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗体のいずれかと競合する抗体を同定するために、競合アッセイが使用され得る。特定の態様において、そのような競合抗体は、本明細書に記載されるFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗体によって結合されるのと同じエピトープ(例えば、線状または立体構造エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングする、詳細な例示的方法は、Morris (1996) “Epitope Mapping Protocols,” in Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に提供されている。
【0137】
例示的な競合アッセイにおいて、固定化されたFIX、FIXaまたはFXは、FIX、FIXaまたはFXに結合する第1の標識された抗体(例えば、本明細書に記載されるいずれかの抗体)およびFIX、FIXaまたはFXへの結合に関して第1の抗体と競合する能力に関して試験される第2の未標識の抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清に存在し得る。対照として、固定化されたFIX、FIXaまたはFXが、第1の標識された抗体を含むが第2の未標識の抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体のFIX、FIXaまたはFXに対する結合を許容する条件下でのインキュベーションの後、余分な未結合の抗体が除去され、固定化されたFIX、FIXaまたはFXに結合した標識の量が測定される。固定化されたFIX、FIXaまたはFXに結合した標識の量が対照サンプルと比較して試験サンプルにおいて実質的に減少している場合、それは第2の抗体がFIX、FIXaまたはFXへの結合に関して第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY) を参照のこと。
【0138】
2.活性測定法
一局面において、生物学的活性を有するFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子のそれを同定するための測定法が提供される。生物学的活性は、例えば、FXa産生を促進する活性を含んでよい。また、このような生物学的活性をインビボおよび/またはインビトロで有する多重特異性抗原結合分子が、提供される。
【0139】
特定の態様において、本発明の抗体は、このような生物学的活性について試験される。
「FVIII補因子機能代替活性」は、例えば、比色定量法を用いたFIXaによるFX活性化反応試験において吸光度を上昇させる活性、及び血友病A血漿を用いたトロンビン生成試験から算出されたトロンビン生成量を上昇させる活性を意味する。
【0140】
比色定量法を用いたFVIII補因子機能代替活性は、具体的には、本発明の多重特異性抗原結合分子と、例えば、FIXa、FX、合成基質S-2222(FXaの合成基質)、リン脂質から成る測定系で評価することによって確認することができる。例えば、以下の方法で測定できる。反応は全て室温で行われる。0.1%牛血清アルブミンを含むトリス緩衝生理食塩水(以下、TBSBと称す)で希釈した抗体溶液5μLを、150ng/mLのHuman Factor IXa beta (Enzyme Reserch Laboratories) 5μLと混合した後、384穴plate中にて室温で30分インキュベーションする。この混合液中の酵素反応は、24.7μg/mLのHuman Factor X (Enzyme Reserch Laboratories) 5μLを添加して開始させ、4分後、0.5M EDTA 5μLを添加して停止させる。発色反応は、発色基質溶液5μLを添加することによって、開始させる。30分間の発色反応後、405nmの吸光度変化をSpectroMax 340PC384 (Molecular Devices)を用いて測定する。Human Factor IXa beta、Human Factor Xの溶媒は4.0μM リン脂質溶液 (SYSMEX CO.)、1.5 mM CaCl2を含むTBSBである。発色基質溶液であるS-2222(SEKISUI MEDICAL)は、精製水で1.47mg/mLに溶解し、本アッセイに用いる。本測定系は血友病A症例における疾患の重症度および臨床症状と相関性を示す(Rosen S, Andersson M, Blomba¨ck M et al. Clinical applications of a chromogenic substrate method for determination of FVIII activity. Thromb Haemost 1985; 54: 811-23)。
【0141】
トロンビン生成試験を用いたFVIII補因子機能代替活性は、具体的には、本発明の多重特異性結合分子と、例えば、FVIII欠乏血漿、活性化血液凝固第XI因子、リン脂質、Fluo-buffer及びFluo-Substrate(FluCa-Kit;トロンビンの合成基質)からなる測定系で評価することができる。例えば、以下の方法で測定できる。FVIII欠乏血漿(George King)72μLに、TBSBで希釈をした二重特異性抗体を8μL添加し、30分間以上室温でインキュベーションする。その後、20μMのリン脂質及び5ng/mLのHuman Factor XIa(Enzyme Research Laboratories)を含むトリガー試薬を20μL添加する。さらに、FluCa-Kit(Thrombinoscope)のFluo-Buffer及びFluo-Substrateの混合溶液を20μL添加して、凝固反応を開始する。トロンビン生成量の評価は、トロンビン生成蛍光測定・解析システム(Thrombinoscope)を用いて実施できる。血友病A血漿を用いたトロンビン生成試験は、血液病A症例における包括的凝固能を示し、疾患の臨床症状との相関性を示す。(Shima M, Matsumoto T & Ogiwara K. New assays for monitoring haemophilia treatment. Haemophilia 2008; 14: 83-92)。
【0142】
「FIX活性化阻害活性」は、比色定量法を用いたFXIaによるFIXの活性化反応において低下した吸光度のことを示す。具体的には下記のような方法で実施できる。TBSBで希釈した抗体溶液5μLを、3U/mLのHuman Factor IX (クリスマシンM, 日本血液製剤機構) 5μLと混合した後、384穴plate中にて室温で30分インキュベーションする。この混合液中の酵素反応は、90 ng/mLのHuman Factor XIa (Enzyme Reserch Laboratories) 5μLを添加して開始させ、60分後、0.5M EDTA 5μLを添加して停止させる。発色反応は、発色基質溶液10μLを添加することによって、開始させる。60分間の発色反応後、405nmの吸光度変化をSpectroMax 340PC384 (Molecular Devices)を用いて測定する。Human Factor IX、Human Factor XIaの溶媒は6.0μM リン脂質溶液 (SYSMEX CO.)、1.5 mM CaCl2を含むTBSBである。発色基質溶液であるSpectrozyme FIXa(Sekisui Diagnostics)は、精製水で溶解して6.7mMの溶液としたのち、エチレングリコールと5:8の割合で混合して本アッセイに用いる。
【0143】
抗体のECM(Extracellular matrix)への結合評価はUS20140080153(WO2012093704)を参考に以下の手順で実施できる。ECM Phenol red free(BD Matrigel #6137013)をTBSで2mg/mLに希釈し、氷上で冷やしたECL測定用プレート(L15XB-6、MSD high bind)の各ウエルの真ん中に5μL滴下する。その後、プレートシールで蓋をして4℃で一晩静置する。ECMを固相化したプレートを室温に戻し、ECL Blocking Buffer(20mM ACES,150mM NaCl,pH7.4もしくはpH5.8に0.5%BSAおよび0.05%Tween 20を加えたもの)150μLを各ウエルに加えて、室温で静置2時間以上もしくは4℃で一晩静置する。次に、ACES-T(20mM ACES,150mM NaCl,pH7.4もしくはpH5.8に0.05%Tween 20を加えたもの)を用いて抗体サンプルを9μg/mLに希釈する。2次抗体をECLDB(ACESに0.1%BSAおよび0.01%Tween 20を加えたもの)で2μg/mLに希釈し、ECLDBが50μLずつ各ウエルに分注されている丸底プレートへ、抗体溶液25μLを添加する。ECL Bloking Bufferが入ったECMプレートから、ECL Blocking Bufferを転倒除去し、このプレートへ、前述の抗体溶液を50μLずつ加える。その後室温で1時間撹拌する。サンプルを転倒除去後、0.25% Gluteraldehyde(ACES-Tで調製)50μLを各ウエルに添加して10分室温で静置する。PBS-T(PBSに0.05%Tween 20を加えたもの)で3回各ウエルを洗浄したのちECLDBで1μg/mLに希釈した二次抗体を各ウエルに50μLずつ加え、遮光下室温で1時間撹拌する。その後、READ buffer(MSD)を各ウェルに150μLずつ加え、MESO SECTOR S600(Meso Scale Discovery)でsulfo-tagの発光シグナルを検出する。
【0144】
F.薬学的製剤
本明細書に記載のFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子の薬学的製剤は、所望の純度を有する多重特異性抗原結合分子を、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体 (Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)) と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、調製される。薬学的に許容される担体は、概して、用いられる際の用量および濃度ではレシピエントに対して非毒性であり、これらに限定されるものではないが、以下のものを含む:リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む、抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む、単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、ソルビトールなどの、砂糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン類;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/またはポリエチレングリコール (PEG) などの非イオン系表面活性剤。本明細書の例示的な薬学的に許容される担体は、さらに、可溶性中性活性型ヒアルロニダーゼ糖タンパク質 (sHASEGP)(例えば、rHuPH20 (HYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.) などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質)などの間質性薬剤分散剤を含む。特定の例示的sHASEGPおよびその使用方法は(rHuPH20を含む)、米国特許出願公開第2005/0260186号および第2006/0104968号に記載されている。一局面において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つまたは複数の追加的なグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0145】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水溶液抗体製剤は、米国特許第6,171,586号およびWO2006/044908に記載のものを含み、後者の製剤はヒスチジン-アセテート緩衝液を含んでいる。
【0146】
本明細書の製剤は、治療される特定の適応症のために必要であれば1つより多くの有効成分を含んでもよい。互いに悪影響を与えあわない相補的な活性を伴うものが好ましい。例えば、FVIII、FVII、FIX、TFPI 阻害剤、antithrombin を標的とするsiRNAなど、より具体的にはAdvate、Adynovate、Feiba、NovoSeven、NovoEight、N8-GP、 N9-GP、Concizumab、Elocta、Fitusiranをさらに提供することが望ましい。このような有効成分は、意図された目的のために有効である量で、好適に組み合わせられて存在する。尚、FVIII、FVII及びFIXはそのFc融合体、PEG融合物を含みうる。
【0147】
有効成分は、例えば液滴形成(コアセルベーション)手法によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル(それぞれ、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル)に取り込まれてもよいし、コロイド状薬剤送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)に取り込まれてもよいし、マクロエマルションに取り込まれてもよい。このような手法は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980) に開示されている。
【0148】
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、多重特異性抗原結合分子を含んだ固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスを含み、当該マトリクスは例えばフィルムまたはマイクロカプセルなどの造形品の形態である。
【0149】
生体内 (in vivo) 投与のために使用される製剤は、通常無菌である。無菌状態は、例えば滅菌ろ過膜を通して濾過することなどにより、容易に達成される。
【0150】
G.治療的方法および治療用組成物
本明細書で提供されるFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子のいずれも、治療的な方法において使用されてよい。
一局面において、医薬品としての使用のための、FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子が提供される。さらなる局面において、出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患の治療における使用のための、FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子が提供される。特定の態様において、治療方法における使用のための、FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子が提供される。特定の態様において、本発明は、出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患を有する個体を治療する方法であって、当該個体にFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子の有効量を投与する工程を含む方法における使用のための、FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子を提供する。このような態様の1つにおいて、方法は、当該個体に少なくとも1つの(例えば後述するような)追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。さらなる態様において、本発明は、FVIII補因子機能の代替における使用のためのFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子を提供する。特定の態様において、本発明は、個体においてFVIII補因子機能を代替する方法であって、FVIII補因子機能を代替するために当該個体にFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子の有効量を投与する工程を含む方法における使用のための、FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子を提供する。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。本発明において、出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患とは、好ましくはFVIIIおよび/または活性化血液凝固第VIII因子(FVIIIa)の活性の低下ないし欠損によって発症および/または進展する疾患である。このような疾患としては、例えば上記の血友病A、血友病B、血友病C、FVIII/FVIIIaに対するインヒビターが出現している疾患、後天性血友病、フォンビルブランド病等を挙げることができるが、これら疾患に特に制限されない。
【0151】
さらなる局面において、本発明は医薬品の製造または調製におけるFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子の使用を提供する。一態様において、医薬品は、出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患の治療のためのものである。さらなる態様において、医薬品は、出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患を治療する方法であって、出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患を有する個体に医薬品の有効量を投与する工程を含む方法における使用のためのものである。このような態様の1つにおいて、方法は、当該個体に少なくとも1つの(例えば後述するような)追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。さらなる態様において、医薬品は、FVIII補因子機能を代替するためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体においてFVIII補因子機能を代替する方法であって、FVIII補因子機能を代替するために当該個体に医薬品の有効量を投与する工程を含む方法における使用のためのものである。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであってもよい。本発明において、出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患とは、好ましくはFVIIIおよび/またはFVIIIaの活性の低下ないし欠損によって発症および/または進展する疾患である。このような疾患としては、例えば上記の血友病A、血友病B、血友病C、FVIII/FVIIIaに対するインヒビターが出現している疾患、後天性血友病、フォンビルブランド病等を挙げることができるが、これら疾患に特に制限されない。
【0152】
さらなる局面において、本発明は出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患を治療する方法を提供する。一態様において、方法は、そのような出血、出血を伴う疾患、もしくは出血に起因する疾患を有する個体にFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子の有効量を投与する工程を含む。そのような態様の1つにおいて、方法は、当該個体に少なくとも1つの(後述するような)追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであってもよい。
【0153】
さらなる局面において、本発明は個体においてFVIII補因子機能を代替するための方法を提供する。一態様において、方法は、FVIII補因子機能を代替するために個体にFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子の有効量を投与する工程を含む。一態様において、「個体」は、ヒトである。
【0154】
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供されるFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子の任意のものを含む、薬学的製剤を提供する(例えば上述の治療的方法の任意のものにおける使用のための)。一態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供されるFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子の任意のものと、薬学的に許容される担体とを含む。別の態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供されるFIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子の任意のものと、少なくとも1つの(例えば後述するような)追加治療剤とを含む。
【0155】
本発明の多重特異性抗原結合分子は、療法において、単独または他の剤との組み合わせのどちらでも使用され得る。例えば、本発明の多重特異性抗原結合分子は、少なくとも1つの追加の治療剤と同時投与されてもよい。特定の態様において、追加治療剤は、例えば、FVIII、FVII、FIX、TFPI 阻害剤、antithrombin を標的とするsiRNAなど、より具体的にはAdvate、Adynovate、Feiba、NovoSeven、NovoEight、N8-GP、 N9-GP、Concizumab、Elocta、Fitusiranである。尚、FVIII、FVII及びFIXはそのFc融合体、PEG融合物でありうる。
【0156】
上述したような併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が、同じまたは別々の製剤に含まれる)、および個別投与を包含し、個別投与の場合、本発明の多重特異性抗原結合分子の投与が追加治療剤の投与に先立って、と同時に、および/または、続いて、行われ得る。一態様において、FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子の投与および追加治療剤の投与は、互いに、約1か月、2か月、3か月、4か月、5か月または6か月以内、または約1、2、または3週間以内、または約1、2、3、4、5、または6日以内に行われる。
【0157】
本発明の多重特異性抗原結合分子(および、任意の追加治療剤)は、非経口投与、肺内投与、および経鼻投与、また局所的処置のために望まれる場合は病巣内投与を含む、任意の好適な手段によって投与され得る。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与を含む。投薬は、投与が短期か長期かに一部応じて、例えば、静脈内注射または皮下注射などの注射によるなど、任意の好適な経路によってなされ得る。これらに限定されるものではないが、単回投与または種々の時点にわたる反復投与、ボーラス投与、および、パルス注入を含む、種々の投薬スケジュールが本明細書の考慮の内である。
【0158】
本発明の多重特異性抗原結合分子は、優良医療規範 (good medical practice) に一致したやり方で、製剤化され、投薬され、また投与される。この観点から考慮されるべきファクターは、治療されているその特定の障害、治療されているその特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、障害の原因、剤を送達する部位、投与方法、投与のスケジュール、および医療従事者に公知の他のファクターを含む。多重特異性抗原結合分子は、必ずしもそうでなくてもよいが、任意で、問題の障害を予防するまたは治療するために現に使用されている1つまたは複数の剤とともに、製剤化される。そのような他の剤の有効量は、製剤中に存在する多重特異性抗原結合分子の量、障害または治療のタイプ、および上で論じた他のファクターに依存する。これらは通常、本明細書で述べたのと同じ用量および投与経路で、または本明細書で述べた用量の約1から99%で、または経験的/臨床的に適切と判断される任意の用量および任意の経路で、使用される。
【0159】
疾患の予防または治療のために、本発明の多重特異性抗原結合分子の適切な用量(単独で用いられるときまたは1つまたは複数の他の追加治療剤とともに用いられるとき)は、治療される疾患のタイプ、多重特異性抗原結合分子のタイプ、疾患の重症度および経過、多重特異性抗原結合分子が予防的目的で投与されるのか治療的目的で投与されるのか、薬歴、患者の臨床歴および多重特異性抗原結合分子に対する応答、ならびに、主治医の裁量に依存するだろう。多重特異性抗原結合分子は、患者に対して、1回で、または一連の処置にわたって、好適に投与される。疾患のタイプおよび重症度に応じて、例えば、1回または複数回の別々の投与によるにしても連続注入によるにしても、約1μg/kgから15 mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)の多重特異性抗原結合分子が、患者に対する投与のための最初の候補用量とされ得る。1つの典型的な1日用量は、上述したファクターに依存して、約1μg/kgから100mg/kg以上まで、幅があってもよい。数日またはより長くにわたる繰り返しの投与の場合、状況に応じて、治療は通常疾患症状の所望の抑制が起きるまで維持される。多重特異性抗原結合分子の1つの例示的な用量は、約0.05mg/kg から約 10mg/kgの範囲内である。よって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、もしくは 10mg/kgの1つまたは複数の用量(またはこれらの任意の組み合わせ)が、患者に投与されてもよい。このような用量は、断続的に、例えば1週間毎にまたは3週間毎に(例えば、患者が約2から約20、または例えば約6用量の多重特異性抗原結合分子を受けるように)、投与されてもよい。高い初回負荷用量の後に、1回または複数回の低用量が投与されてもよい。しかし、他の投薬レジメンも有用であり得る。この療法の経過は、従来の手法および測定法によって、容易にモニタリングされる。
【0160】
上述の製剤または治療的方法のいずれについても、FIXおよび/またはFIXaならびにFXに結合する多重特異性抗原結合分子の代わりにまたはそれに追加して、本発明のイムノコンジュゲートを用いて実施してもよいことが、理解されよう。
【0161】
H.製品
本発明の別の局面において、上述の障害の治療、予防、および/または診断に有用な器材を含んだ製品が、提供される。製品は、容器、および当該容器上のラベルまたは当該容器に付属する添付文書を含む。好ましい容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器類は、ガラスやプラスチックなどの、様々な材料から形成されていてよい。容器は組成物を単体で保持してもよいし、症状の治療、予防、および/または診断のために有効な別の組成物と組み合わせて保持してもよく、また、無菌的なアクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって突き通すことのできるストッパーを有する静脈内投与用溶液バッグまたはバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの有効成分は、本発明の多重特異性抗原結合分子である。ラベルまたは添付文書は、組成物が選ばれた症状を治療するために使用されるものであることを示す。さらに製品は、(a)第一の容器であって、その中に収められた本発明の多重特異性抗原結合分子を含む組成物を伴う、第一の容器;および、(b)第二の容器であって、その中に収められたさらなる細胞傷害剤またはそれ以外で治療的な剤を含む組成物を伴う、第二の容器を含んでもよい。本発明のこの態様における製品は、さらに、組成物が特定の症状を治療するために使用され得ることを示す、添付文書を含んでもよい。あるいはまたは加えて、製品はさらに、注射用制菌水 (BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、およびデキストロース溶液などの、薬学的に許容される緩衝液を含む、第二の(または第三の)容器を含んでもよい。他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジなどの、他の商業的観点またはユーザの立場から望ましい器材をさらに含んでもよい。
【0162】
本発明の別の一態様は、重鎖と軽鎖の会合が制御された抗原結合分子、重鎖と軽鎖の会合が制御された抗原結合分子の製造方法、および抗原結合分子の重鎖と軽鎖の会合制御方法に関する。
【0163】
本発明の抗原結合分子は、重鎖と軽鎖の会合が制御された抗原結合分子であって、抗原結合分子を構成する重鎖と軽鎖が目的とする重鎖と軽鎖の組合せである、重鎖の定常領域(CH1)及び軽鎖定常領域(CL)の所定の位置のアミノ酸残基が互いに電荷的に反発するアミノ酸残基である(同種の電荷である)抗原結合分子に関する。
本発明においては、目的としない重鎖と軽鎖の組合せのCH1及びCLの所定の位置のアミノ酸残基を互いに電荷的に反発するアミノ酸残基にする(同種の電荷とする)ことで、電荷の反発を利用して目的としない重鎖と軽鎖の組合せの形成を防ぐことができ、その結果として目的とする重鎖と軽鎖の組合せを形成させることができる。
【0164】
本発明において「会合を制御する」、「会合が制御される」とは、所望の会合状態になるように制御することを言い、より具体的には、重鎖と軽鎖間において望ましくない会合が形成されないように制御することを言う。
【0165】
本発明における「界面」とは、通常、会合(相互作用)する際の会合面を指し、界面を形成するアミノ酸残基とは、通常、その会合に供されるポリペプチド領域に含まれる1もしくは複数のアミノ酸残基であって、より好ましくは、会合の際に接近し相互作用に関与するアミノ酸残基を言う。該相互作用には、具体的には、会合の際に接近するアミノ酸残基同士が水素結合、静電的相互作用、塩橋を形成している場合等が含まれる。
【0166】
本発明における「界面を形成するアミノ酸残基」とは、詳述すれば、界面を構成するポリペプチド領域において、該ポリペプチド領域に含まれるアミノ酸残基を言う。界面を構成するポリペプチド領域とは、一例を示せば、抗原結合分子(例えば抗体)、リガンド、レセプター、基質等において、分子間において選択的な結合を担うポリペプチド領域を指す。具体的には、抗原結合分子においては、重鎖定常領域、重鎖可変領域、軽鎖定常領域、軽鎖可変領域等を例示することができる。
【0167】
本発明におけるアミノ酸残基の「改変」とは、具体的には、元のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基へ置換すること、元のアミノ酸残基を欠失させること、新たなアミノ酸残基を付加すること等を指すが、好ましくは、元のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基へ置換することを指す。
【0168】
本発明の抗原結合分子の好ましい態様においては、会合制御前の目的としない重鎖と軽鎖の組み合わせのCH1及びCLの所定の位置のアミノ酸残基が電荷的に反発するアミノ酸残基を有する(同種の電荷を有する)抗原結合分子である。上記抗原結合分子におけるアミノ酸残基を互いに電荷的に反発する(同種の電荷を有する)アミノ酸残基に改変することにより、その電荷の反発力によって、これらアミノ酸残基同士の会合が阻害されるものと考えられる。
【0169】
従って、上記抗原結合分子において、改変されるアミノ酸残基は、界面を形成するポリペプチド領域間において、会合の際に互いに接近したアミノ酸残基であることが好ましい。
【0170】
会合の際に接近するアミノ酸残基は、例えば、ポリペプチドの立体構造を解析し、該ポリペプチドの会合の際に界面を形成するポリペプチド領域のアミノ酸配列を調べることにより見出すことができる。界面において互いに接近したアミノ酸残基は、本発明の抗原結合分子における「改変」の好ましいターゲットとなる。
【0171】
アミノ酸の中には、電荷を帯びたアミノ酸が知られている。一般的に正の電荷を帯びたアミノ酸(正電荷アミノ酸)としては、リジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)が知られている。負の電荷を帯びたアミノ酸(負電荷アミノ酸)としては、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)等が知られている。また、電荷を帯びていないアミノ酸又は非極性アミノ酸としては、アラニン(A)、アスパラギン(N)、システイン(C)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、トレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)又はバリン(V)等が知られている。
従って、本発明において互いに電荷的に反発する(同種の電荷を有する)アミノ酸とは、
(1)一方のアミノ酸が正の電荷のアミノ酸で他方のアミノ酸も正の電荷のアミノ酸
(2)一方のアミノ酸が負の電荷のアミノ酸で他方のアミノ酸も負の電荷のアミノ酸を意味する。
【0172】
アミノ酸の改変は、当分野において公知の種々の方法により行うことができる。これらの方法には、次のものに限定されるわけではないが、部位特異的変異誘導法(Hashimoto-Gotoh, T, Mizuno, T, Ogasahara, Y, and Nakagawa, M. (1995) An oligodeoxyribonucleotide-directed dual amber method for site-directed mutagenesis. Gene 152, 271-275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Oligonucleotide-directed mutagenesis of DNA fragments cloned into M13 vectors.Methods Enzymol. 100, 468-500、Kramer,W, Drutsa,V, Jansen,HW, Kramer,B, Pflugfelder,M, and Fritz,HJ(1984) The gapped duplex DNA approach to oligonucleotide-directed mutation construction. Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Oligonucleotide-directed construction of mutations via gapped duplex DNA Methods. Enzymol. 154, 350-367、Kunkel,TA(1985) Rapid and efficient site-specific mutagenesis without phenotypic selection.Proc Natl Acad Sci U S A. 82, 488-492)、PCR変異法、カセット変異法等の方法により行うことができる。
【0173】
アミノ酸の改変は、例えば、電荷を帯びていないアミノ酸又は非極性アミノ酸の正の電荷のアミノ酸への改変、電荷を帯びていないアミノ酸又は非極性アミノ酸の負の電荷のアミノ酸への改変、正の電荷のアミノ酸の負の電荷のアミノ酸への改変、負の電荷のアミノ酸の正の電荷のアミノ酸への改変を挙げることができる。なお、電荷を帯びていないアミノ酸又は非極性アミノ酸の別の電荷を帯びていないアミノ酸又は非極性アミノ酸への改変、正の電荷のアミノ酸の別の正の電荷のアミノ酸への改変、負の電荷のアミノ酸の別の負の電荷のアミノ酸への改変も、本発明におけるアミノ酸の改変に含まれる。
【0174】
本発明においてアミノ酸の改変は、重鎖及び軽鎖のそれぞれに1個ずつ加えてもよく、また複数個ずつ加えてもよい。また重鎖と軽鎖に加える改変の数は互いに同じでもよく、また異なっていてもよい。
【0175】
本発明においてアミノ酸の改変は、重鎖又は軽鎖の一方に正の電荷のアミノ酸への改変を複数加え、他方には負の電荷のアミノ酸への改変を複数加えてもよい。また、重鎖又は軽鎖の同じ鎖に正の電荷のアミノ酸への改変と負の電荷へのアミノ酸の改変を複数加えてもよい。なお、この改変において電荷を帯びていないアミノ酸又は非極性アミノ酸への改変、電荷を帯びていないアミノ酸又は非極性アミノ酸の改変を適宜組み合わせてもよい。
【0176】
本発明の改変において、例えば一方の鎖のアミノ酸を改変することなくそのまま用いることもでき、その場合必ずしも重鎖及び軽鎖の双方に改変を加える必要はなく、一方の鎖のみに改変を加えてもよい。
【0177】
本発明の抗原結合分子において改変に供されるアミノ酸残基の数は、特に制限されないが、例えば、抗体の定常領域を改変する場合、抗原との結合活性を低下させないために、また免疫原性を上げないために、なるべく少数のアミノ酸残基を改変することが好ましい。上記「少数」とは、例えば、1~30個程度の数、好ましくは、1~20個程度の数、さらに好ましくは1~15個の数、最も好ましくは1~5個の数である。
【0178】
本発明の抗原結合分子の軽鎖定常領域は、好ましくはヒト軽鎖定常領域である。また抗原結合分子の軽鎖定常領域には、例えばIgK(Kappa)、IgL1、IgL2、IgL3、IgL6、IgL7 (Lambda)タイプの定常領域が存在している。本発明の抗原結合分子の軽鎖定常領域は特に限定されない複数種類の軽鎖を使用する場合、それぞれの軽鎖は異なるタイプの軽鎖、例えばKappaとLambdaであってもよい。ヒトIgK(Kappa)定常領域とヒトIgL7 (Lambda)定常領域としては、遺伝子多形による複数のアロタイプ配列がSequences of proteins of immunological interest, NIH Publication No.91-3242に記載されているが、本発明においてはそのいずれであっても良い。
【0179】
抗原結合分子の機能や抗原結合分子の安定性の改善のために、抗体定常領域、特に重鎖定常領域を必要に応じ改変してもよい。抗原結合分子の機能を改善するための改変としては、例えば、抗原結合分子とFcγ受容体(FcγR)との結合を増強する又は減弱する改変、抗原結合分子とFcRnとの結合を増強する又は減弱する改変、抗原結合分子の細胞傷害活性(例えば、ADCC活性、CDC活性など)を増強又は減弱する改変などが挙げられる。また、抗原結合分子のヘテロジェニティーを改善する改変、免疫原性および/または薬物動態を改善する改変が含まれてもよい。
【0180】
また、IgG抗体の重鎖C末端配列のヘテロジェニティーとして、C末端アミノ酸のリジン残基の欠損、および、C末端の2アミノ酸のグリシン、リジン両方の欠損によるC末端カルボキシル基のアミド化が報告されている(Anal Biochem. 2007 Jan 1;360(1):75-83.)。
従って、本発明においては、重鎖C末端のヘテロジェニティーを低減させるために、C末端のリジン、またはC末端のリジンおよびグリシンを欠損させたIgGを用いることが好ましい。
【0181】
ヒト由来の配列を利用したキメラ抗体及びヒト化抗体は、ヒト体内における抗原性が低下しているため、治療目的などでヒトに投与する場合に有用と考えられる。
【0182】
本発明の好ましい抗原結合分子としては、例えば、二種以上のCH1と二種以上のCLを有する異種多量体を挙げることができる。該異種多量体は、2種以上のエピトープに結合するものが好ましく、例えば、多重特異性抗体を例示することができる。
【0183】
本発明の多重特異性抗体として好ましくは、二重特異性抗体を挙げることができる。即ち、本発明の抗原結合分子の好ましい態様として、例えば、2種の重鎖(第一の重鎖と第二の重鎖)と、2種の軽鎖(第一の軽鎖と第二の軽鎖)から構成される二重特異性抗体が挙げられる。
【0184】
本発明の抗原結合分子の好ましい態様の「二重特異性抗体」についてさらに詳述すれば、上記「第一の重鎖」とは、抗体を形成する2つの重鎖(H鎖)のうちの一方のH鎖であり、第二のH鎖は第一のH鎖とは異なるもう一方のH鎖のことをいう。つまり、2つのH鎖のうち任意にどちらか一方を第一のH鎖とし、他方を第二のH鎖とすることができる。同様に、「第一の軽鎖」とは二重特異性抗体を形成する2つの軽鎖(L鎖)のうちの一方のL鎖であり、第二のL鎖は第一のL鎖とは異なるもう一方のL鎖のことを指し、2つのL鎖のうちどちらか一方を任意に第一のL鎖とし、他方を第二のL鎖とすることができる。通常、第一のL鎖と第一のH鎖はある抗原(又はエピトープ)に結合する同一の抗体に由来し、第二のL鎖と第二のH鎖もある抗原(又はエピトープ)に結合する同一の抗体に由来する。ここで、第一のH鎖とL鎖で形成されるL鎖-H鎖対を第一の対、第二のH鎖とL鎖で形成されるL鎖-H鎖対を第二の対と呼ぶ。第二の対の由来となる抗体を作製する際に用いられる抗原(又はエピトープ)は、第一の対の由来となる抗体を作製する際に用いられるものとは異なっていることが好ましい。即ち、第一の対と第二の対が認識する抗原は同じでもよいが、異なる抗原(又はエピトープ)に結合することが好ましい。この場合、第一の対及び第二の対のH鎖とL鎖は互いに異なるアミノ酸配列を有していることが好ましい。第一の対と第二の対が異なるエピトープに結合する場合、該第一の対と第二の対は全く異なる抗原を認識してもよいし、同一抗原上の異なる部位(異なるエピトープ)を認識してもよい。又、一方がタンパク質、ペプチド、遺伝子、糖などの抗原を認識し、他方が放射性物質、化学療法剤、細胞由来トキシン等の細胞傷害性物質などを認識してもよい。しかしながら、特定のH鎖とL鎖の組合せで形成される対を有する抗体を作製したいと考えた場合には、その特定のH鎖とL鎖を第一の対及び第二の対として任意に決定することができる。
【0185】
以下、2種の重鎖定常領域CH1(CH1-AとCH1-B)および2種の軽鎖定常領域(CL-AとCL-B)を有するIgG型二重特異性抗体の場合について、より詳細に説明するが、その他の抗体についても同様に本発明を適用することができる。
【0186】
第一のCH1-Aと第一のCL-Aにより一方のエピトープを認識し、また、第二のCH1-Bと第二のCL-Bにより他方のエピトープに結合するような二重特異性抗体を取得したい場合、該抗体の生産において4種のそれぞれの鎖を発現させると理論上10種類の抗体分子が生産される可能性がある。
【0187】
この場合、例えば、CH1-AとCL-Bおよび/またはCH1-BとCL-Aの間の会合を阻害するように制御すれば、所望の抗体分子を優先的に取得することが可能である。
【0188】
例えば、CH1-AとCL-B間の界面を形成するアミノ酸残基を正の電荷を有するアミノ酸残基に改変し、CH1-BとCL-A間の界面を形成するアミノ酸残基を負の電荷を有するアミノ酸残基に改変する例を挙げることができる。この改変により、目的としないCH1-AとCL-Bとの会合は界面を形成するアミノ酸残基がどちらも正電荷であるため阻害され、CH1-BとCL-Aとの会合も界面を形成するアミノ酸残基がどちらも負電荷であるため阻害され、目的としないCH1-AとCL-Bとの会合及びCH1-BとCL-Aとの会合は界面を形成するアミノ酸残基が互いに同じ電荷であるため阻害される。その結果、目的とするCH1-AとCL-Aとの会合及び目的とするCH1-BとCL-Bとの会合が生じた抗体を効率的に得ることができる。また、目的とするCH1-AとCL-Aとの会合は、界面を形成するアミノ酸残基が互いに異種の電荷を有するために促進され、目的とするCH1-BとCL-Bとの会合も界面を形成するアミノ酸残基が互いに異種の電荷を有するため促進される。その結果、目的とする会合が生じた抗体を効率的に得ることができる。
【0189】
また、CL-AとCH1-B間の界面を形成するアミノ酸残基が互いに電荷を帯びていないアミノ酸又は非極性アミノ酸である場合、CH1-AとCL-B間の界面を形成するアミノ酸残基を正の電荷を有するアミノ酸残基に改変する例を挙げることができる。この改変により、目的としないCH1-AとCL-Bとの会合は界面を形成するアミノ酸残基がどちらも正電荷であるため阻害される。その一方で、目的とするCH1-AとCL-Aとの会合及び目的とするCH1-BとCL-Bとの会合は、界面を形成するアミノ酸残基が互いに電荷的に反発しないアミノ酸であるため、電荷的に反発するアミノ酸である場合に比べて会合が起こりやすい。その結果、目的とするCH1-AとCL-Aとの会合及び目的とするCH1-BとCL-Bとの会合が生じた抗体を効率的に得ることができる。尚、この例においてCL-AとCH1-B間の界面を形成するアミノ酸残基が互いに電荷を帯びていないアミノ酸又は非極性アミノ酸でない場合は、互いに電荷を帯びていないアミノ酸又は非極性アミノ酸となるよう改変してもよい。
【0190】
また、CL-BとCH1-B間の界面を形成するアミノ酸残基がCH1-Bにおいては電荷を帯びていないアミノ酸又は非極性アミノ酸である場合、CH1-AとCL-A間の界面を形成するアミノ酸残基を一方を正電荷、他方を負電荷を有するアミノ酸残基に改変し、CL-BにおいてCL-BとCH1-B間の界面を形成するアミノ酸残基をCH1-Aに加えた改変と同じ電荷を有する改変を加える例を挙げることができる。この改変により、目的とするCH1-AとCL-Aとの会合は界面を形成するアミノ酸残基が正電荷と負電荷の組合せのため促進される一方で、目的とするCH1-BとCL-Bとの会合は界面を形成するアミノ酸残基が互いに電荷的に反発しないアミノ酸であるために阻害されない。その結果として、目的とするCH1-AとCL-Aとの会合及び目的とするCH1-BとCL-Bとの会合が生じた抗体を効率的に得ることができる。尚、この例においてCL-BとCH1-B間の界面を形成するアミノ酸残基がCH1-Bにおいては電荷を帯びていないアミノ酸又は非極性アミノ酸でない場合は、電荷を帯びていないアミノ酸又は非極性アミノ酸となるよう改変してもよい。
【0191】
また、本発明の会合制御を利用することにより、CH1同士(CH1-AとCH1-B)、あるいは、CL同士(CL-AとCL-B)の会合を抑制することも可能である。
当業者であれば、本発明によって会合を制御したい所望のポリペプチドについて、会合した際のCH1とCLの界面において接近するアミノ酸残基の種類を適宜知ることが可能である。
【0192】
また、ヒト、サル、マウス及びウサギ等の生物において、抗体のCH1又はCLとして利用可能な配列を、当業者であれば、公共のデータベース等を利用して適宜取得することができる。より具体的には、後述の実施例に記載の手段にて、CH1又はCLのアミノ酸配列情報を取得することが可能である。
【0193】
例えば、後述の実施例に示す二重特異性抗体については、会合した際のCH1とCLの界面において接近(相対または接触)するアミノ酸残基の具体例として、以下の組合せを挙げることができる。
・CH1のEUナンバリング175位のグルタミン(Q)と、相対(接触)するCLのKabatナンバリング180位のトレオニン(T)またはセリン(S)
・CH1のEUナンバリング175位のグルタミン(Q)と、相対(接触)するCLのKabatナンバリング131位のトレオニン(T)またはセリン(S)
・CH1のEUナンバリング175位のグルタミン(Q)と、相対(接触)するCLのKabatナンバリング131位のセリン(S) またはトレオニン(T)及び180位のセリン(S) またはトレオニン(T)
・CH1のEUナンバリング147位のリジン(K)及び175位のグルタミン(Q)と、相対(接触)するCLのKabatナンバリング131位のセリン(S)またはトレオニン(T)及び180位のセリン(S)またはトレオニン(T)
【0194】
本発明におけるEUナンバリングとして記載された番号は、EU numbering(Sequences of proteins of immunological interest, NIH Publication No.91-3242)にしたがって記載したものである。なお本発明において、「EUナンバリングX位のアミノ酸残基」、「EUナンバリングX位のアミノ酸」(Xは任意の数)は、「EUナンバリングX位に相当するアミノ酸残基」、「EUナンバリングX位に相当するアミノ酸」と読みかえることも可能である。 後述の実施例で示すように、これらアミノ酸残基を改変し、本発明の方法を実施することにより、所望の抗原結合分子を優先的に取得することができる。
【0195】
一つの態様において、本発明は、重鎖と軽鎖の会合が制御された抗原結合分子であって、当該抗原結合分子において重鎖と軽鎖における以下の(a)~(c)に示すアミノ酸残基の組からなる群より選択される1組または2組以上のアミノ酸残基が互いに電荷的に反発するアミノ酸残基である抗原結合分子を提供する;
(a)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング180位のアミノ酸残基、
(b)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング131位のアミノ酸残基、
(c)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング147位及び175位のアミノ酸残基、CLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング131位及び180位のアミノ酸残基。
【0196】
上記抗原結合分子において、「互いに電荷的に反発するアミノ酸残基」または「同種の電荷を有するアミノ酸残基」は、例えば、以下の(X)または(Y)のいずれかの組に含まれるアミノ酸残基から選択されることが好ましい;
(X) グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)、
(Y) リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)。
【0197】
上記抗原結合分子において、互いに電荷的に反発するアミノ酸残基の組としては、具体的には、以下のアミノ酸残基の組を挙げることができる;
(a)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング180位のアミノ酸残基、
(b)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング131位のアミノ酸残基、
(c)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング147位及び175位のアミノ酸残基、CLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング131位及び180位のアミノ酸残基、
(d)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、CLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング131位及び180位のアミノ酸残基。
【0198】
上記抗原結合分子において、重鎖と軽鎖における以下の(a1)~(c2)に示すアミノ酸残基の組からなる群より選択される1組または2組以上のアミノ酸残基が互いに電荷的に反発するアミノ酸残基である抗原結合分子を提供する
(a1)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基がグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング180位のアミノ酸残基がグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)、
(a2)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基がリジン(K)、ヒスチジン(H)またはアルギニン(R)、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング180位のアミノ酸残基がリジン(K)、ヒスチジン(H)またはアルギニン(R)、
(b1)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基がグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング131位のアミノ酸残基がグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)、
(b2)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基がリジン(K)、ヒスチジン(H)またはアルギニン(R)、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング131位のアミノ酸残基がリジン(K)、ヒスチジン(H)またはアルギニン(R)、
(c1)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング147位及び175位のアミノ酸残基がそれぞれグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)、CLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング131位及び180位のアミノ酸残基がそれぞれグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)、
(c2)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング147位及び175位のアミノ酸残基がそれぞれリジン(K)、ヒスチジン(H)またはアルギニン(R)、CLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング131位及び180位のアミノ酸残基がそれぞれリジン(K)、ヒスチジン(H)またはアルギニン(R)。
【0199】
上記抗原結合分子において、互いに電荷的に反発するアミノ酸残基としては、具体的には、以下のアミノ酸残基を挙げることができる;
(a1)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基がグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング180位のアミノ酸残基がグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)、
(a2)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基がリジン(K)、ヒスチジン(H)またはアルギニン(R)、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング180位のアミノ酸残基がリジン(K)、ヒスチジン(H)またはアルギニン(R)、
(b1)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基がグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング131位のアミノ酸残基がグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)
(b2)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基がリジン(K)、ヒスチジン(H)またはアルギニン(R)、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング131位のアミノ酸残基がリジン(K)、ヒスチジン(H)またはアルギニン(R)、
(c1)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング147位及び175位のアミノ酸残基がそれぞれグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング131位及び180位のアミノ酸残基がそれぞれグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)、
(c2)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング147位及び175位のアミノ酸残基がそれぞれリジン(K)、ヒスチジン(H)またはアルギニン(R)、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング131位及び180位のアミノ酸残基がそれぞれリジン(K)、ヒスチジン(H)またはアルギニン(R)
(d1)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基がグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング131位及び180位のアミノ酸残基がそれぞれグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)
(d2)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基がリジン(K)、ヒスチジン(H)またはアルギニン(R)、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング131位及び180位のアミノ酸残基がそれぞれリジン(K)、ヒスチジン(H)またはアルギニン(R)、
【0200】
本発明の抗原結合分子には、CH1とCLの界面に電荷的な反発を導入して、目的としないCH1とCLの会合を抑制する技術(WO2013065708)を上記に加え、さらに適用することができる。具体的には、CH1とCLを有する抗原結合分子において、以下の(a)~(d)に示すアミノ酸残基の組からなる群より選択される1組または2組以上のアミノ酸残基が互いに電荷的に反発する抗原結合分子とすることができる。
(a)重鎖の定常領域(CH1)に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング147位のアミノ酸残基、及び軽鎖定常領域(CL)に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング180位のアミノ酸残基、
(b)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング147位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング131位のアミノ酸残基、
(c)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング160位のアミノ酸残基。
(d)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング213位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング123位のアミノ酸残基。
【0201】
本発明の抗原結合分子には、重鎖の第二の定常領域(CH2)又は重鎖の第三の定常領域(CH3)の界面に電荷的な反発を導入して、目的としない重鎖同士の会合を抑制する技術、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の界面に電荷的な反発を導入して目的としない重鎖と軽鎖の会合を抑制する技術、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の界面に存在する疎水性コアを形成するアミノ酸残基を電荷を有する極性アミノ酸へ改変して目的としない重鎖と軽鎖の会合を抑制する技術をさらに適用することができる(WO2006/106905参照)。
【0202】
CH2又はCH3の界面に電荷的な反発を導入して意図しない重鎖同士の会合を抑制させる技術において、重鎖の他の定常領域の界面で接触するアミノ酸残基としては、例えばCH3領域におけるEUナンバリング356位とEUナンバリング439位、EUナンバリング357位とEUナンバリング370位、EUナンバリング399位とEUナンバリング409位に相対する領域を挙げることができる。抗体定常領域のナンバリングについては、Kabatらの文献(Kabat EA et al. 1991. Sequences of Proteins of Immunological Interest. NIH)を参考にし、重鎖定常領域のナンバリングについてはEUナンバリングで示した。
【0203】
より具体的には、例えば、2種の重鎖CH3領域を含む抗原結合分子においては、第1の重鎖CH3領域における以下の(1)~(3)に示すアミノ酸残基の組から選択される1組ないし3組のアミノ酸残基が互いに電荷的に反発する抗原結合分子とすることができる;
(1)重鎖CH3領域に含まれるアミノ酸残基であって、EUナンバリング356位および439位のアミノ酸残基、
(2)重鎖CH3領域に含まれるアミノ酸残基であって、EUナンバリング357位および370位のアミノ酸残基、
(3)重鎖CH3領域に含まれるアミノ酸残基であって、EUナンバリング399位および409位のアミノ酸残基。
【0204】
さらに、上記第1の重鎖CH3領域とは異なる第2の重鎖CH3領域における前記(1)~(3)に示すアミノ酸残基の組から選択されるアミノ酸残基の組であって、前記第1の重鎖CH3領域において互いに電荷的に反発する前記(1)~(3)に示すアミノ酸残基の組に対応する1組ないし3組のアミノ酸残基が、前記第1の重鎖CH3領域における対応するアミノ酸残基とは電荷的に反発しない抗体とすることができる。
【0205】
上記(1)~(3)に記載のそれぞれのアミノ酸残基は、会合した際に互いに接近している。当業者であれば、所望の重鎖CH3領域または重鎖定常領域について、市販のソフトウェアを用いたホモロジーモデリング等により、上記(1)~(3)に記載のアミノ酸残基に対応する部位を見出すことができ、適宜、該部位のアミノ酸残基を改変に供することが可能である。
【0206】
上記抗原結合分子において、「電荷的に反発する」または「同種の電荷を有する」とは、例えば、2つ以上のアミノ酸残基のいずれもが、上記(X)または(Y)のいずれか1の群に含まれるアミノ酸残基を有することを意味する。
【0207】
好ましい態様において上記抗原結合分子は、第1の重鎖CH3領域と第2の重鎖CH3領域がジスルフィド結合により架橋されていてもよい。
【0208】
本発明において「改変」に供するアミノ酸残基としては、上述した抗原結合分子の可変領域または抗体の定常領域のアミノ酸残基に限られない。当業者であれば、ポリペプチド変異体または異種多量体について、市販のソフトウェアを用いたホモロジーモデリング等により、界面を形成するアミノ酸残基を見出すことができ、会合を制御するように、該部位のアミノ酸残基を改変に供することが可能である。ホモロジーモデリングとは、市販のソフトウェアを用いて、タンパク質の立体構造を予測する手法の一つである。立体構造が未知のタンパク質の構造を構築する場合、まずそれに相同性の高い立体構造が決定されているタンパク質を探索する。次にその立体構造を鋳型 (テンプレート) として構造が未知のタンパク質の構造を構築し、さらに分子動力学法などにより構造を最適化し、未知のタンパク質の立体構造を予測する手法である。
【0209】
重鎖可変領域と軽鎖可変領域の界面に電荷的な反発を導入して目的としない重鎖と軽鎖の会合を抑制させる技術において、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)の界面で接触するアミノ酸残基としては、例えば、VH上のkabatナンバリング39位(FR2領域)のグルタミン(Q)と、相対(接触)するVL上のKabatナンバリング38位(FR2領域)のグルタミン(Q)を挙げることができる。さらに、VH上のKabatナンバリング45位(FR2)のロイシン(L)と、相対するVL上のKabatナンバリング44位(FR2)のプロリン(P)を好適に例示することができる。なお、これら部位のナンバリングについては、Kabatらの文献(Kabat EA et al. 1991. Sequence of Proteins of Immunological Interest. NIH)を参考にしている。
【0210】
これらアミノ酸残基は、ヒトおよびマウスにおいて高度に保存されていることが知られている(J. Mol. Recognit. 2003; 16: 113-120)ことから、実施例に示す抗原結合分子以外のVHとVLの会合についても、上記アミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を改変することによって、抗原結合分子の可変領域の会合を制御することができる。
【0211】
具体的には、VHとVLの界面を形成する2残基以上のアミノ酸残基が互いに電荷的に反発するアミノ酸残基である抗原結合分子を挙げることができる。 より具体的には、以下の(a)または(b)に示すアミノ酸残基の組からなる群より選択される1組または2組のアミノ酸残基である抗原結合分子を挙げることができる;
(a)VHに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング39位のアミノ酸残基、およびVLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング38位のアミノ酸残基、
(b)VHに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング45位のアミノ酸残基、及びVLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング44位のアミノ酸残基。
【0212】
上記(a)または(b)に記載のそれぞれのアミノ酸残基は、会合した際に互いに接近している。当業者であれば、所望のVHまたはVLについて、市販のソフトウェアを用いたホモロジーモデリング等により、上記(a)または(b)に記載のアミノ酸残基に対応する部位を見出すことができ、適宜、該部位のアミノ酸残基を改変に供することが可能である。
【0213】
上記抗原結合分子において、「互いに電荷的に反発するアミノ酸残基」は、例えば以下の(X)または(Y)のいずれかの組に含まれるアミノ酸残基から選択されることが好ましい;
(X) グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)、
(Y) リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)。
【0214】
VHとVLの界面に存在する疎水性コアを形成するアミノ酸残基を電荷を有する極性アミノ酸へ改変して、目的としない重鎖と軽鎖の会合を抑制する技術において、VHとVLの界面で疎水性コアを形成し得るアミノ酸残基としては、例えば、VH上のKabatナンバリング45位(FR2)のロイシン(L)と、相対するVL上のKabatナンバリング44位(FR2)のプロリン(P)を好適に例示することができる。なお、これら部位のナンバリングについては、Kabatらの文献(Kabat EA et al. 1991. Sequence of Proteins of Immunological Interest. NIH)を参考にしている。
【0215】
一般的に、「疎水性コア(hydrophobic core)」とは、会合したポリペプチドの内側に疎水性アミノ酸の側鎖が集合して形成する部分を指す。疎水性アミノ酸には、例えばアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、バリンなどが含まれる。また、疎水コアの形成には、疎水性アミノ酸以外のアミノ酸残基(例えばチロシン)が関わることもある。この疎水性コアは、親水性アミノ酸の側鎖が外側に露出する親水性表面とともに、水溶性のポリペプチドの会合を進める駆動力となる。異なる2つのドメインの疎水性アミノ酸が分子表面に存在し、水分子に暴露されるとエントロピーが増大し自由エネルギーが増大してしまう。よって、2つのドメインは自由エネルギーを減少させ、安定化するために、互いに会合し、界面の疎水性アミノ酸は分子内部に埋もれ、疎水コアを形成することになる。
【0216】
ポリペプチドの会合が起こる際に、疎水性コアを形成する疎水性アミノ酸を電荷を持つ極性アミノ酸へ改変することにより、疎水性コアの形成が阻害され、その結果、ポリペプチドの会合が阻害されるものと考えられる。
【0217】
当業者においては、所望の抗原結合分子についてアミノ酸配列を解析することにより、疎水性コアの存在の有無、および形成部位(領域)等を知ることが可能である。即ち本発明の抗原結合分子は、例えば、界面において疎水性コアを形成し得るアミノ酸残基を、電荷を有するアミノ酸残基へ改変することを特徴とする抗原結合分子である。より具体的には、以下の(1)と(2)のいずれか一方が電荷を有するアミノ酸残基である抗原結合分子を挙げることができる。以下の(1)と(2)で示すアミノ酸残基の側鎖は近接し、疎水性コアを形成し得る。
(1)VHに含まれるアミノ酸残基であって、Kabatナンバリング45位のアミノ酸残基
(2)VLに含まれるアミノ酸残基であって、Kabatナンバリング44位のアミノ酸残基
【0218】
上記抗原結合分子における電荷を有するアミノ酸残基としては、好ましくは、グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)、リジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)を挙げることができる。より好ましくは、グルタミン酸(E)、リジン(K)である。
【0219】
上記(1)及び(2)に記載のアミノ酸残基は、通常、ヒトおよびマウスにおいてはそれぞれ
(1)ロイシン(L)、
(2)プロリン(P)
である。従って本発明の好ましい態様においては、これらアミノ酸残基を改変(例えば、電荷を有するアミノ酸への置換)に供する。なお、上記(1)及び(2)のアミノ酸残基の種類は、必ずしも上記のアミノ酸残基に限定されず、該アミノ酸に相当する他のアミノ酸であってもよい。
【0220】
本発明の抗原結合分子には、さらに他の公知技術を適用することができる。例えば、第一のVH(VH1)と第一のVL(VL1)、および/または第二のVH(VH2)と第二のVL(VL2)の会合が促進されるように、一方のH鎖の可変領域に存在するアミノ酸側鎖をより大きい側鎖(knob; 突起)に置換し、もう一方のH鎖の相対する可変領域に存在するアミノ酸側鎖をより小さい側鎖(hole; 空隙)に置換することによって、突起が空隙に配置され得るようにしてVH1とVL1、および/またはVH2とVL2の会合を促進させ、結果的にVH1とVL2、および/またはVH2とVL1の会合をさらに抑制することが可能である(WO1996/027011、Ridgway JB et al., Protein Engineering (1996) 9, 617-621、Merchant AM et al. Nature Biotechnology (1998) 16, 677-681)。
【0221】
例えば、ヒトIgG1の場合、一方のH鎖のCH3領域にあるアミノ酸側鎖をより大きい側鎖(knob; 突起)とするためにY349C、T366Wの改変を加え、他方のH鎖のCH3領域にあるアミノ酸側鎖をより小さい側鎖にするためにD356C、T336S、L368A、Y407Vの改変を加える場合を挙げることができる。
【0222】
本発明の抗原結合分子には、さらに他の公知技術を適用することができる。抗原結合分子の一方のH鎖のCH3の一部をその部分に対応するIgA由来の配列にし、もう一方のH鎖のCH3の相補的な部分にその部分に対応するIgA由来の配列を導入したstrand-exchange engineered domain CH3を用いることで、目的とする抗原結合分子をCH3の相補的な会合化によって効率的に作製することができる (Protein Engineering Design & Selection, 23; 195-202, 2010)。
【0223】
本発明の抗原結合分子には、さらに他の公知技術を適用することができる。二重特異性抗体の作製において、例えば二種類のH鎖の可変領域にそれぞれ異なるアミノ酸改変を加えることにより等電点の差を付与し、その等電点の差を利用してイオン交換クロマトグラフィーで精製することにより、目的とする二重特異性抗体を作製することができる(WO2007/114325)。
【0224】
前記技術と組み合わせて、IgGとProteinAとの結合に関係する部位であるEUナンバリング435位のアミノ酸残基をArgなどのProteinAへの結合力の異なるアミノ酸に改変するという技術を、本発明の抗原結合分子に用いてもよい。本技術を用いることにより、H鎖とProtein Aとの相互作用を変化させ、Protein Aカラムを用いることで、ヘテロ二量化抗原結合分子のみを効率的に精製することができる。尚、本技術は前記技術と組み合わせず、単独で用いることもできる。
【0225】
本発明の改変は、以下のような抗原結合分子にも用いることができる。例えば、第一のVH(VH1)と第一のVL(VL1)、および/または第二のVH(VH2)と第二のVL(VL2)の会合が促進されるように、VH1が第一のCH1を介して一方のFc領域に連結され、VL1が第一のCLと連結され、VH2が第二のCLを介して他方のFc領域に連結され、VL2が第二のCH1と連結された構造を有する抗原結合分子が挙げられる(WO09/80254)。
【0226】
本発明の抗原結合分子には、上記公知技術を複数、例えば2個以上組み合わせて用いることができる。なお、本発明の抗原結合分子は、上記公知技術の改変が加えられたものをベースにして作製したものであってもよい。
【0227】
後述する本発明の会合制御方法を利用することにより、例えば、活性を有する抗原結合分子を効率的に作成することができる。該活性としては、例えば、結合活性、中和活性、細胞傷害活性、アゴニスト活性、アンタゴニスト活性、酵素活性等を挙げることができる。アゴニスト活性とは、受容体などの抗原に抗原結合分子が結合することにより、細胞内にシグナルが伝達される等して、何らかの生理的活性の変化を誘導する活性である。生理的活性としては、例えば、増殖活性、生存活性、分化活性、転写活性、膜輸送活性、結合活性、タンパク質分解活性、リン酸化/脱リン酸化活性、酸化還元活性、転移活性、核酸分解活性、脱水活性、細胞死誘導活性、アポトーシス誘導活性等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0228】
また本発明の方法によって、所望の抗原に結合する、または所望の受容体と結合する抗原結合分子を効率的に作成することができる。
【0229】
本発明の抗原は特に限定されず、どのような抗原でもよい。抗原の例としては、例えば、受容体もしくはその断片、癌抗原、MHC抗原、分化抗原等を挙げることができるが、特にこれらに制限されない。
【0230】
また、本発明の受容体の例としては、例えば、造血因子受容体ファミリー、サイトカイン受容体ファミリー、チロシンキナーゼ型受容体ファミリー、セリン/スレオニンキナーゼ型受容体ファミリー、TNF受容体ファミリー、Gタンパク質共役型受容体ファミリー、GPIアンカー型受容体ファミリー、チロシンホスファターゼ型受容体ファミリー、接着因子ファミリー、ホルモン受容体ファミリー、等の受容体ファミリーに属する受容体などを挙げることができる。これら受容体ファミリーに属する受容体、及びその特徴に関しては多数の文献が存在し、例えば、Cooke BA., King RJB., van der Molen HJ. ed. New Comprehensive Biochemistry Vol.18B "Hormones and their Actions Part II"pp.1-46 (1988) Elsevier Science Publishers BV., New York, USA、Patthy L. (1990) Cell, 61: 13-14.、Ullrich A., et al. (1990) Cell, 61: 203-212.、Massagul J. (1992) Cell, 69: 1067-1070.、Miyajima A., et al. (1992) Annu. Rev. Immunol., 10: 295-331.、Taga T. and Kishimoto T. (1992) FASEB J., 7: 3387-3396.、Fantl WI., et al. (1993) Annu. Rev. Biochem., 62: 453-481、Smith CA., et al. (1994) Cell, 76: 959-962.、Flower DR. (1999) Biochim. Biophys. Acta, 1422: 207-234.、宮坂昌之監修, 細胞工学別冊ハンドブックシリーズ「接着因子ハンドブック」(1994) (秀潤社, 東京, 日本)等が挙げられる。上記受容体ファミリーに属する具体的な受容体としては、例えば、ヒト又はマウスエリスロポエチン(EPO)受容体、ヒト又はマウス顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)受容体、ヒト又はマウストロンボポイエチン(TPO)受容体、ヒト又はマウスインスリン受容体、ヒト又はマウスFlt-3リガンド受容体、ヒト又はマウス血小板由来増殖因子(PDGF)受容体、ヒト又はマウスインターフェロン(IFN)-α、β受容体、ヒト又はマウスレプチン受容体、ヒト又はマウス成長ホルモン(GH)受容体、ヒト又はマウスインターロイキン(IL)-10受容体、ヒト又はマウスインスリン様増殖因子(IGF)-I受容体、ヒト又はマウス白血病抑制因子(LIF)受容体、ヒト又はマウス毛様体神経栄養因子(CNTF)受容体等を例示することができる(hEPOR: Simon, S. et al. (1990) Blood 76, 31-35.; mEPOR: D'Andrea, AD. Et al. (1989) Cell 57, 277-285.; hG-CSFR: Fukunaga, R. et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 87, 8702-8706.; mG-CSFR: Fukunaga, R. et al. (1990) Cell 61, 341-350.; hTPOR: Vigon, I. et al. (1992) 89, 5640-5644.; mTPOR: Skoda, RC. Et al. (1993) 12, 2645-2653.; hInsR: Ullrich, A. et al. (1985) Nature 313, 756-761.; hFlt-3: Small, D. et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 91, 459-463.; hPDGFR: Gronwald, RGK. Et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 85, 3435-3439.; hIFNα/βR: Uze, G. et al. (1990) Cell 60, 225-234.及びNovick, D. et al. (1994) Cell 77, 391-400.)。
【0231】
癌抗原は細胞の悪性化に伴って発現する抗原であり、腫瘍特異性抗原とも呼ばれる。又、細胞が癌化した際に細胞表面やタンパク質分子上に現れる異常な糖鎖も癌抗原であり、癌糖鎖抗原とも呼ばれる。癌抗原の例としては、例えば、肺癌を初めとする複数の癌で発現するEpCAM(Proc Natl Acad Sci U S A. (1989) 86 (1), 27-31)(そのポリヌクレオチド配列はRefSeq登録番号NM_002354.2に、ポリペプチド配列はRefSeq登録番号NP_002345.2にそれぞれ記載されている。)、CA19-9、CA15-3、シアリルSSEA-1(SLX)等が好適に挙げられる。
【0232】
MHC抗原には、MHC class I抗原とMHC class II抗原に大別され、MHC class I抗原には、HLA-A、-B、-C、-E、-F、-G、-Hが含まれ、MHC class II抗原には、HLA-DR、-DQ、-DPが含まれる。
【0233】
分化抗原には、CD1、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD13、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD23、CD25、CD28、CD29、CD30、CD32、CD33、CD34、CD35、CD38、CD40、CD41a、CD41b、CD42a、CD42b、CD43、CD44、CD45、CD45RO、CD48、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD51、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD64、CD69、CD71、CD73、CD95、CD102、CD106、CD122、CD126、CDw130などが含まれる。
【0234】
本発明の抗原結合分子は二重特異性抗体であってもよく、その場合、該抗体が認識する抗原(又はエピトープ)は、上記受容体もしくはその断片、癌抗原、MHC抗原、分化抗原等から任意に2つを選択できる。例えば受容体もしくはその断片から2つ、癌抗原から2つ、MHC抗原から2つ、分化抗原から2つ選択してもよい。また、例えば、受容体もしくはその断片、癌抗原、MHC抗原及び分化抗原から任意に選ばれる2つからそれぞれ一つずつ選択してもよい。
【0235】
また本発明は、重鎖と軽鎖の会合が制御された抗原結合分子の製造方法を提供する。本発明の製造方法の好ましい態様としては、重鎖と軽鎖の会合が制御された抗原結合分子の製造方法であって、
(1)CH1及びCLをコードする核酸を、以下の(a)~(c)に示すアミノ酸残基の組からなる群より選択される1組または2組以上のアミノ酸残基が互いに電荷的に反発するアミノ酸残基となるように核酸を改変する工程、
(a)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング180位のアミノ酸残基、
(b)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング131位のアミノ酸残基、
(c)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング147位及び175位のアミノ酸残基、CLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング131位及び180位のアミノ酸残基
(2)前記改変された核酸を宿主細胞へ導入し、宿主細胞を該核酸が発現するように培養する工程、
(3)前記宿主細胞の培養細胞物から抗原結合分子を回収する工程。
【0236】
また本発明は、前記工程(1)において、互いに電荷的に反発するアミノ酸残基が上述の(X)または(Y)のいずれかの群に含まれるアミノ酸残基から選択されるように核酸を改変する工程を含む製造方法に関する。
さらに本発明は、前記工程(1)において、VHとVLの界面を形成する2残基以上のアミノ酸残基が互いに電荷的に反発するアミノ酸残基であるように核酸を改変する工程を含む製造方法に関する。ここで好ましくは、互いに電荷的に反発するアミノ酸残基は、例えば以下の(a)または(b)に示すアミノ酸残基の組からなる群より選択されるいずれか1組のアミノ酸残基である;
(a)VHに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング39位のアミノ酸残基、及びVLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング38位のアミノ酸残基、
(b)VHに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング45位のアミノ酸残基、及びVLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング44位のアミノ酸残基。
【0237】
上記の互いに電荷的に反発するアミノ酸残基は、上述の(X)または(Y)のいずれかの組に含まれるアミノ酸残基から選択されることが好ましい。
【0238】
また本発明は、抗原結合分子の重鎖と軽鎖の会合制御方法を提供する。 本発明の会合制御方法の好ましい態様としては、抗原結合分子の重鎖と軽鎖の会合制御方法であって、以下の(a)~(c)に示すアミノ酸残基の組からなる群より選択される1組または2組以上のアミノ酸残基が互いに電荷的に反発するアミノ酸残基となるように核酸を改変することを含む方法;
(a)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング180位のアミノ酸残基、
(b)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング131位のアミノ酸残基、
(c)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング147位及び175位のアミノ酸残基、CLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング131位及び180位のアミノ酸残基。
【0239】
また本発明は、前記工程(1)において、互いに電荷的に反発するアミノ酸残基が上述の(X)または(Y)のいずれかの群に含まれるアミノ酸残基から選択されるように核酸を改変する工程を含む会合制御方法に関する。
さらに本発明は、前記工程(1)において、VHとVLの界面を形成する2残基以上のアミノ酸残基が互いに電荷的に反発するアミノ酸残基であるように核酸を改変する工程を含む会合制御方法に関する。ここで好ましくは、互いに電荷的に反発するアミノ酸残基は、例えば以下の(a)または(b)に示すアミノ酸残基の組からなる群より選択されるいずれか1組のアミノ酸残基である;
(a)VHに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング39位のアミノ酸残基、及びVLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング38位のアミノ酸残基、
(b)VHに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング45位のアミノ酸残基、及びVLに含まれるアミノ酸残基であってKabatナンバリング44位のアミノ酸残基。
【0240】
本発明の会合制御方法によって、上述のように、例えば、所望の二重特異性抗体を優先的かつ効率的に取得することができる。即ち、モノマー混合物から所望の異種多量体である二重特異性抗体を効率的に形成させることができる。
【0241】
本発明の上記方法において「核酸を改変する」とは、本発明における「改変」によって導入されるアミノ酸残基に対応するように核酸を改変することを言う。より具体的には、元(改変前)のアミノ酸残基をコードする核酸について、改変によって導入されるアミノ酸残基をコードする核酸へ改変することを言う。通常、目的のアミノ酸残基をコードするコドンとなるように、元の核酸に対して、少なくとも1塩基を挿入、欠失または置換するような遺伝子操作もしくは変異処理を行うことを意味する。即ち、元のアミノ酸残基をコードするコドンは、改変によって導入されるアミノ酸残基をコードするコドンによって置換される。このような核酸の改変は、当業者においては公知の技術、例えば、部位特異的変異誘発法、PCR変異導入法等を用いて、適宜実施することが可能である。
【0242】
また本発明は、本発明の抗原結合分子をコードする核酸を提供する。さらに該核酸を担持するベクターもまた、本発明に含まれる。
【0243】
また本発明は、本発明の抗原結合分子、および薬学的に許容される担体を含む薬学的製剤に関する。本発明において薬学的製剤とは、通常、疾患の治療もしくは予防、あるいは検査・診断のための薬剤を言う。
本発明の薬学的製剤は、当業者に公知の方法で作製することが可能である。また、必要に応じ本発明の抗原結合分子を、その他の医薬成分と組み合わせて製剤化することもできる。例えば、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することが考えられる。これら製剤における有効成分量は、指示された範囲の適当な容量が得られるように設定する。
【0244】
なお、本発明で記載されているアミノ酸配列に含まれるアミノ酸は翻訳後に修飾(例えば、N末端のグルタミンのピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾は当業者によく知られた修飾である)を受ける場合もあるが、そのようにアミノ酸が翻訳後修飾された場合であっても当然のことながら本発明で記載されているアミノ酸配列に含まれる。
【0245】
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例0246】
以下は、本発明の方法および組成物の実施例である。上述の一般的な記載に照らし、種々の他の態様が実施され得ることが、理解されるであろう。
【0247】
前述の発明は、明確な理解を助ける目的のもと、実例および例示を用いて詳細に記載したが、本明細書における記載および例示は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用したすべての特許文献および科学文献の開示は、その全体にわたって、参照により明示的に本明細書に組み入れられる。
【0248】
〔実施例1〕ACE910 (Emicizumab)の各H鎖に適合する新規L鎖の取得
ACE910 (Emicizumab)は、FVIII補因子機能代替活性を示す抗FIX(a)および抗FXからなるヒト化IgG4抗体であり、FIX(a)およびFXそれぞれに結合する2種類の重鎖(Q499およびJ327)と共通L鎖(L404)から構成される(重鎖配列番号:10および11、軽鎖配列番号:12)。抗ACE910(Emicizumab)イディオタイプ抗体の反応性を減弱させる方法およびFVIII補因子機能代替活性を向上させる方法として、抗FIX(a)抗体および抗FX抗体のそれぞれのH鎖(Q499およびJ327)に対して共通L鎖とは全く異なる配列を有する新規L鎖をヒト抗体ライブラリから取得する方法が考えられた。そこで、本発明者らは、参考実施例1に従って
図10及び表7に示す新規L鎖を取得した。尚、本実施例においてFIX(a)はFIXおよび/またはFIXaを意味する。
【0249】
これらの抗体について、抗ACE910(Emicizumab)イディオタイプ抗体との反応性を検証した。抗ACE910イディオタイプ抗体の取得は以下の方法で行った。まず、ACE910(Emicizumab)のFIX(a)を認識するQ499/L404の F(ab’)
2およびFXを認識するJ327/L404の F(ab’)
2をウサギに投与し、抗Q499/L404 F(ab’)
2ウサギ血清および抗J327/L404 F(ab’)
2ウサギ血清を得た。これら血清の硫安分画をhuman IgG結合カラムに通すことでhuman IgG 反応性抗体を除去した。次いで、Q499/L404(あるいはJ327/L404)結合カラムを用いたaffinity 精製をした後、J327/L404(あるいはQ499/L404)結合カラムによるJ327/L404(あるいはQ499/L404)反応性抗体の除去処理を行うことで、Q499/L404(あるいはJ327/L404)に特異的に結合するポリクローナルな抗イディオタイプ抗体を取得した。
得られた抗イディオタイプ抗体を用い、標識化したACE910(Emicizumab)との結合強度を電気化学発光イムノアッセイで測定し、被験物質による結合阻害を評価した。まず、抗Q499/L404イディオタイプ抗体、抗J327/L404イディオタイプ抗体、ビオチン標識ACE910(Emicizumab)およびSULFO-TAG標識ACE910(Emicizumab)の混合液に被験物質(二重特異性抗体)を0, 1, 3, 10, 30あるいは100 μg/mLの濃度で添加し、得られた混合液を冷蔵下一晩インキュベートした。次いで、96穴プレートに混合液を添加し、プレートを洗浄後、電気化学発光法で結合強度を測定した。
一例として、表2に示す二重特異性抗体Q499/QNK131//J327/JNL095(可変領域:配列番号45/13//46/31、定常領域:配列番号95/99//97/101)、および、実施例3で作製したQ499/QL20//J327/JL01(可変領域:配列番号45/43//46/44、定常領域:配列番号95/99//97/101)についての結果を
図1に示すが、ACE910(Emicizumab)は添加した抗体濃度依存的にラベル化ACE910(Emicizumab)と抗イディオタイプ抗体との結合強度を低下させ阻害効果を示す一方、新規L鎖を有する抗体は、抗ACE910(Emicizumab)イディオタイプ抗体との結合性が顕著に減少していることが明らかとなった。
このように本発明者らは、ACE910(Emicizumab)と同一のH鎖(配列番号45、46)を有していたとしても、抗ACE910(Emicizumab)イディオタイプ抗体との結合性が顕著に減少し、かつFVIII補因子機能代替活性を有する新規L鎖を取得することに成功した。このことから、これらの二重特異性抗体は、抗ACE910(Emicizumab)イディオタイプ抗体が誘導された血友病A患者にも投与可能であることが期待できる。
【0250】
【0251】
〔実施例2〕新規L鎖を有する二重特異性抗体の改変体作製およびH鎖の改変体作製
参考実施例1において取得した新規L鎖を有する二重特異抗体のFVIII補因子機能代替活性を向上させるために、抗FIX(a)抗体の新規L鎖であるQNK131(配列番号:13)、抗FX抗体の新規L鎖としてJNL095(配列番号:31)を選択し、PCR等の当業者公知の方法によりアミノ酸変異を網羅的に導入して、大規模にFVIII補因子機能代替活性のスクリーニングを実施することで、FVIII補因子機能代替活性を向上させるアミノ酸置換体を作製した。
また同時に、得られた新規L鎖を用い、参考実施例2に従い、Q499およびJ327の全CDRに対して、システインを除く全アミノ酸変異を網羅的に導入した置換体を作製し、大規模にFVIII補因子機能代替活性のスクリーニングを実施することで、FVIII補因子機能代替活性を向上させるアミノ酸置換を見出した。
【0252】
WO2012/067176では、FVIII補因子機能代替活性を上昇させつつ、FIXaがFVIIIaを補因子としてFXを活性化する反応を阻害する作用が増強しない二重特異性抗体の取得に成功している。本最適化過程でも、FIXaがFVIIIaを補因子としてFXを活性化する反応を阻害する作用を増強させずに、FVIII補因子機能代替活性をさらに向上させることはできたが、新たにFXIaによるFIXの活性化に影響を与えることが明らかとなった(
図3(1))。
図3(1)、
図3(2)及び
図4に示すFVIII補因子機能代替活性は、参考実施例1に記載した手法のうち、Human Factor Xの濃度を22.9μg/mLに、リン脂質の濃度を6.0μMにそれぞれ変更して測定を実施した。また、FIX活性化阻害活性は、比色定量法を用いたFXIaによるFIXの活性化反応において低下した吸光度のことを示す。具体的には下記のような方法で実施をした。TBSBで希釈した抗体溶液5μLを、3U/mLのHuman Factor IX (クリスマシンM, 日本血液製剤機構) 5μLと混合した後、384穴plate中にて室温で30分インキュベーションした。この混合液中の酵素反応は、90ng/mLのHuman Factor XIa (Enzyme Reserch Laboratories) 5μLを添加して開始させ、60分後、0.5M EDTA 5μLを添加して停止させた。発色反応は、発色基質溶液10μLを添加することによって、開始させた。60分間の発色反応後、405nmの吸光度変化をSpectroMax 340PC384 (Molecular Devices)を用いて測定した。Human Factor IX、Human Factor XIaの溶媒は6.0μM リン脂質溶液 (SYSMEX CO.)、1.5 mM CaCl2を含むTBSBであった。発色基質溶液であるSpectrozyme FIXa(Sekisui Diagnostics)は、精製水で溶解して6.7mMの溶液としたのち、エチレングリコールと5:8の割合で混合して本アッセイに用いた。その結果、上記の検体では抗体非添加条件に比較してOD値の減少がみられ、FIXaの生成が低下していることが示された。
図3に示すFVIII補因子機能代替活性及びFIX活性化阻害活性において、抗体の終濃度は100μg/mLであった。なお、抗体の終濃度は、抗体溶液、Human Factor IX、及びHuman Factor XIaの混合溶液中の濃度である。生体内での内因系凝固反応におけるFIXaはFXIaによるFIXの活性化により生成するため、本活性化プロセスが阻害されると、FIXaの生成量が減少し、さらにFVIII補因子機能代替活性を有する二重特異性抗体のFIXaによるFX活性化の上昇幅に対して負の影響を及ぼす(
図2)。そのため、より高いFVIII補因子機能代替活性を有する二重特異性抗体取得を目指すためには、FIX活性化阻害活性は可能な限り小さいことが望ましい。
【0253】
そこで本発明者らは、上記のFVIII補因子機能代替活性の大規模スクリーニングの結果から、FIX活性化阻害活性の上昇に比べて、FVIII補因子機能代替活性を顕著に上昇させるアミノ酸改変を複数個見出した。具体的には、S30R、S31R、T53R (全てKabat numbering) などである。これらの改変を、QNK131(配列番号:13)に対して複数改変導入して、QL20(QAL201)(配列番号:43)を作製した。さらに、抗FIX(a)抗体のL鎖としてQL20を用いた改変体に対して、CDRにおけるアミノ酸置換を複数組み合わせたアミノ酸置換体を網羅的に作製し、FVIII補因子機能代替活性、FIX活性化阻害活性を測定する大規模スクリーニングを行った。その結果、FVIII補因子機能代替活性は維持しつつFIX活性化阻害活性を減弱させる改変の組み合わせを見出した。具体的には、抗FIX(a)抗体のL鎖へのS30R/S31R/N32D、S30R/S31R/N32E、Q27R/R93D (全てKabat numbering) などの塩基性残基、および、酸性残基からなる組み合わせである。
【0254】
また、抗原非接触部位であるFR領域に対してもアミノ酸置換を網羅的に導入したアミノ酸置換体を作製し、これらのアミノ酸置換体に対して、活性測定スクリーニングを行った。その結果FIX活性化阻害活性は維持しつつ、さらにFVIII補因子機能代替活性を上昇させる改変を複数見出した。具体的には、抗FIX(a)抗体のL鎖のPhe83をMet, Ala残基 などに置換したアミノ酸置換体、あるいは、Arg45をGlu残基に置換した改変体では、FVIII補因子機能代替活性が上昇していた。
【0255】
これら上記の改変の組み合わせに加え、抗FIX(a)側および抗FX側の、両腕の抗原に対する結合性(結合および解離)のバランスを最適化するために、抗FIX(a)抗体と抗FX抗体の網羅的な掛け合わせを行った。具体的には、抗FIX(a)抗体のH鎖については、Y100E, Y100eI, あるいは, G100aの欠失、およびこれらの組み合わせを導入し、L鎖についてはA55E, K92R, 95番目へのProの挿入, あるいは, L96G、およびこれらの組み合わせの改変を導入した。抗FX抗体のH鎖についてはT28E/D31HあるいはD31N/Q、I51S、G56T/R、S57V、Y59S、E61R、E62K、D65N/Q、V67L、K73I、S82bE、E102V、およびこれらの改変の組み合わせを導入、L鎖についてはJNL095(配列番号31)に対しE24T、N26E、H27Q、G29S、D30S/Q/E、K31R、H32E/Q、R50Q、D92A、S94D、S95D/A、A95aY、V96T、およびこれらの改変の組み合わせを導入することで、抗原への結合性を最適化した(全てKabat numbering)。
その結果、本発明者らは、ACE910(Emicizumab)およびACE910(Emicizumab)よりもFVIII補因子機能代替活性が高いことがWO2012067176にて示されている改変体(H鎖定常領域:配列番号95、97、およびL鎖定常領域:配列番号99からなり、表3に示す可変領域の組み合わせの二重特異性抗体)と比べて、同様にFIX活性化阻害活性を上昇させず、FVIII補因子機能代替活性を飛躍的に向上させた改変体を作製することに成功した(
図3(2))(H鎖定常領域:配列番号95~98のいずれか、L鎖定常領域:配列番号99~104のいずれかの組み合わせからなり、表4に示す可変領域の組み合わせの二重特異性抗体)。また、
図4に示すように、これらの改変体は、最大活性および比活性ともに、ACE910(Emicizumab)よりも顕著に向上していることが明らかとなった。
図4に示すFVIII補因子機能代替活性は、参考実施例1に記載した手法のうち、Human Factor Xの濃度を22.9μg/mLに、リン脂質の濃度を6.0μMにそれぞれ変更して測定を実施した。
【0256】
さらに、FVIII補因子機能代替活性が、血漿中でトロンビンの生成促進効果を示すことを確認するため、当業者公知の方法でトロンビン生成試験を実施した。具体的には、FVIII欠乏血漿(George King)72μLに、TBSBで希釈をした二重特異性抗体を8μL添加し、30分間以上室温でインキュベーションをした。その後、20μMのリン脂質及び5ng/mLのHuman Factor XIa(Enzyme Research Laboratories)を含むトリガー試薬を20μL添加した。さらに、FluCa-Kit(Thrombinoscope)のFluo-Buffer及びFluo-Substrateの混合溶液を20μL添加して、凝固反応を開始した。トロンビン生成量の評価は、トロンビン生成蛍光測定・解析システム(Thrombinoscope)を用いて実施した。抗体は終濃度10μg/mLとなるように添加をした。なお、抗体の終濃度は、FVIII欠乏血漿及び抗体溶液の混合溶液中の濃度である。抗体添加時のPeak heightをトロンビン生成量の指標とした結果、表5に記載したいずれの二重特異性抗体においても、ACE910(Emicizumab、Q499/L404//J327/L404)と比較して、トロンビン生成量のさらなる増加が示された。さらに、陽性対照として添加したFVIII(コージネイトFSバイオセット注;バイエル薬品)と比較した結果、複数の改変体(QH01/QL21//JH01/JL01、QH02/QL22//JH01/JL01、QH03/QL23//JH02/JL02、QH03/QL24//JH02/JL02、QH02/QL22//JH04/JL04、QH04/QL26//JH02/JL02、QH04/QL26//JH05/JL05、QH06/QL30//JH07/JL07、QH04/QL31//JH08/JL08、QH06/QL32//JH07/JL07、QH06/QL32//JH09/JL09、QH06/QL30//JH10/JL10、QH07/QL33//JH11/JL11)において、トロンビン生成量が健常人レベルであるFVIII 40 U/dL添加時のトロンビン生成量を超えていた(
図5)。
【0257】
【0258】
【0259】
〔実施例3〕作製した二重特異性抗体の抗体PK (pharmacokinetics)
血友病A患者における薬物治療の際の利便性を考えた場合、投与頻度を減らすためには投与する抗体の半減期は長い方が望ましい。抗体PK (pharmacokinetics)を改善させる方法としては主に、FcRnを介した血中へのリサイクルを向上させる方法および、細胞への非特異結合を介した取り込みを減少させる方法がある(ADME and Translational Pharmacokinetics/Pharmacodynamics of Therapeutic Proteins (2015) p25-37)。
実施例2で示したように、FIX活性化阻害活性の上昇を抑えながらもFVIII補因子機能代替活性を飛躍的に向上させた二重特異性抗体の作製に成功したが、これらの抗体を創製する過程において、本発明者らは同時に、抗体のPKに影響を与えうる非特異結合性の改善を試みた。
【0260】
具体的には、非特異結合をin vitroで評価する系としてExtracellular matrix (ECM)への結合性を評価する系が知られており、本アッセイ系において評価を行った(US patent 2014/0080153)。その結果、実施例2において高いFVIII補因子機能代替活性を示した改変体Q499/QL20//J327/JL01(可変領域:配列番号45/43/46/44)のECM結合はACE910(Emicizumab)と比較して非常に高かったが、抗FIX(a)抗体のH鎖にG97D, Y100D, Y100Eなどの改変を、抗FIX(a)抗体のL鎖にN32D、N32E, A55Eなどの改変を導入した改変体(Hch定常領域:配列番号95~98、Lch定常領域:配列番号99~104のいずれかの組み合わせからなり、表5に示す可変領域の組み合わせ)ではECM結合を顕著に減少させることに成功した(
図6)。
【0261】
また、これらの改変体に対して、FcRnを介した血中リサイクルを向上させるACT-Fc改変(Mabs, (2017) Vol.9, No.5, 844-853)を、抗体の定常領域部分に加えた改変体について、マウス静脈内投与試験を実施した。抗体投与後に血液を経時的に採取して血漿を得たのち、血漿中投与抗体濃度をLC-MS/MS法で測定、血漿中抗体濃度の経時推移データをWinNonlin ver 7.0(Certara)で解析し、抗体クリアランス(CL)を算出した。その結果、ACT-Fc改変を加えていない改変体QH01/QL21//JH01/JL01(可変領域:配列番号56/61//73/84)、あるいは、QH02/QL22//JH02/JL02(可変領域:配列番号57/62//74/85)と比較して、ACT-Fc改変を加えた改変体QH04/QL28//JH05/JL05(可変領域:配列番号59/67//77/88)、QH04/QL28//JH06/JL06(可変領域:配列番号59/67//78/89)、QH04/QL29//JH05/JL05(可変領域:配列番号59/68//77/88)、QH04/QL29//JH06/JL06(可変領域:配列番号59/68//78/89)では、抗体PK (クリアランス:CL)を顕著に改善することに成功した(
図7)。
【0262】
【0263】
〔実施例4〕二重特異性抗体の製造
このように本発明者らは、薬効面および物性面で優れた抗体を創出するため、二重特異性抗体の2種類の重鎖(H鎖)と2種類の軽鎖(L鎖)に対して改変導入を行ってきた。
二重特異性抗体を発現させる場合、2種類のH鎖と2種類のL鎖を発現させるため、組み合わせとしては10種類の組み合わせが考えられる。そのうち目的の二重特異性を有する組み合わせは1種類のため、目的の二重特異性抗体を取得するためには、10種類の抗体から1種類の目的の抗体を精製する必要があり、極めて効率が低く、また困難である。この問題を解決する方法として、IgG H鎖のCH3領域にアミノ酸置換を施すことにより、2種類のH鎖が組み合わさったIgGを優先的に分泌させる方法や、さらに効率よく目的分子を得るために、目的のH鎖とL鎖の会合を促進するような、可変領域またはCH1-CLドメイン界面におけるアミノ酸置換およびその組み合わせが知られているが(WO2013065708)、加えて新たな改変ペアについても検討を行った。
【0264】
作製した抗体と作製方法
以降の記述では、抗FIX(a)抗体側の重鎖をQ、軽鎖をκ、抗FX抗体側の重鎖をJ、軽鎖をλと記載する。
Template配列として二重特異性抗体Q1014-G4T1k.LG.A5/AL869AE.F83M-kT0//J1494-G4T1h.LG.A5/YL681K27Q-lam1NL95(可変領域:配列番号106/108//109/111、定常領域:配列番号107/99//110/101)を用い、表6に記載されている改変の組み合わせを導入した改変体を作製した。
今回の実験の目的は重鎖と軽鎖の会合の制御を評価することであるが、1種類の重鎖がホモで会合しやすい定常領域を有する場合、
図8(8)~(10)に示す2種類の重鎖がヘテロで会合するミスペア分子に加え、
図8(2)~(7)に示すミスペア分子を含む9種類全てのミスペア分子が発現するため、目的の分子(
図8(1))の分析と評価が困難になる。そこで、1種類の重鎖がホモで会合することを抑制するため、重鎖(QとJ)の定常領域にそれぞれKnob(突起)の改変とHole(空隙)の改変(KiH: Knobs into Hole)(配列番号107、110)を導入し、ミスペアとして発現しうる抗体を9種類から3種類(
図8(8)~(10))に制限して分析を行った。
トランスフェクション時には、3条件のプラスミド量比(Q:κ:J:λ=1:3:1:1, 1:1:1:1, 1:1:1:3)で4本鎖発現させ、当業者公知の方法にて精製した。軽鎖が過剰の条件で発現させた場合、重鎖と軽鎖間の制御が不十分であるとミスペアの形成が促進される。逆に、3つの条件全てで目的の二重特異性抗体の形成割合が高い場合は導入された改変ペアは制御能が高いと考察出来る。
また、CIEX(Cation Exchange Chromatography:陽イオン交換体クロマトグラフィ)による分析時のミスペアの標品として、Q/κ/JあるいはQ/λ/Jの3本鎖発現を実施し、共通軽鎖をもつ標品(Q/κ//J/κ、Q/λ//J/λ)をそれぞれ用意した。
【0265】
分析および解析方法
分析はAlliance system (Waters)を用いたCIEX方法により、作製抗体の分析を実施した。分析カラムにYMC-BioPro SP-F, 4.6×100 mmを用い、移動相AとしてCX-1 pH Gradient Buffer A, pH 5.6 (Thermo)、移動相BとしてB, CX-1 pH Gradient Buffer B, pH 10.2 (Thermo)を用いた2液グラジエント法を実施した。測定は280 nmの波長でおこなった。Empower3(Waters)を用いてデータ解析を実施し、検出された各ピークの比率を算出した。メインピークである二重特異性抗体のピークは、4本鎖発現時に単一のピークしか見られなかった場合はこのピークをメインピークとし、複数のピークが見られた場合は共通軽鎖のミスペア標品のピークと重ならないピークをメインピークとしてアサインした。
【0266】
結果と考察
分析データから算出された二重特異性抗体のピーク割合を表6に、各クロマトグラムを
図9にまとめた。
WO2013065708で既知の改変の組み合わせのうち、No.10(CH1にあるEUナンバリング147位のアミノ酸残基とCLにあるKabatナンバリング180位のアミノ酸残基のペア)、No.11(CH1にあるEUナンバリング147位のアミノ酸残基とCLにあるKabatナンバリング131位のアミノ酸残基のペア)と同等の制御能を示す新たな改変ペアNo.14(CH1にあるEUナンバリング175位のアミノ酸残基とCLにあるKabatナンバリング180位のアミノ酸残基のペア)、No.15(CH1にあるEUナンバリング175位のアミノ酸残基とCLにあるKabatナンバリング131位のアミノ酸残基のペア)が見出された。
また、既知の組み合わせNo.6(CH1にあるEUナンバリング147位のアミノ酸残基とEUナンバリング175位のアミノ酸残基、CLにあるKabatナンバリング131位のアミノ酸残基とKabatナンバリング160位のアミノ酸残基のペア)と同様に制御能が高い新たな改変ペアNo.9(CH1にあるEUナンバリング147位のアミノ酸残基とEUナンバリング175位のアミノ酸残基、CLにあるKabatナンバリング131位のアミノ酸残基とKabatナンバリング180位のアミノ酸残基のペア)を見出した。
さらに、VHに含まれるKabatナンバリング39位のアミノ酸残基とVLに含まれるKabatナンバリング38位のアミノ酸残基の改変ペアによって重鎖と軽鎖の特異的な会合が促進されることが知られている(WO2013065708)。そこで、この改変ペアをNo.9に対して導入したNo.18、No.19を作製し、評価した。その結果、何れの改変を加えた場合でも高い制御能力を示すことが確認された。
また、本発明で新たに見出されたNo.9改変ペアを、KiHとは異なるH鎖会合化促進改変ペア(E356K-K439E)を有するTemplate(Q1014Q39E-G4T1A5LG409K.E356K/ AL869Q38KAE.F83M-kT0// J1494Q39K-G4T1A5LG409K.K439E/ YL681.K27Q.Q38E-lam1NL95(可変領域:配列番号112/113//114/115、定常領域:配列番号117/99//116/101))に適応した場合でも、高い制御能を示すことが確認された(No.20: Q1014Q39E-G4T1th2A5LG409K.E356K/AL869Q38KAE.F83M-k0MTtl17E160Q//J1494Q39K-G4T1th13A5LG409K.K439E/YL681.K27Q.Q38E-lam1p9(可変領域:配列番号112/113//114/115、定常領域:配列番号119/100//118/102))。
【0267】
【表6】
「-」は改変を導入していないことを示す。またそれぞれの残基番号はH鎖可変領域およびL鎖可変領域およびL鎖定常領域はKabat numbering、H鎖定常領域はEU numberingで示している。
【0268】
本発明により、抗ACE910(Emicizumab)イディオタイプ抗体との反応性を減弱させ、かつFVIII補因子機能代替活性を示す新規軽鎖、および、該軽鎖を有する二重特異性抗体において、FIX活性化阻害活性を上昇させずFVIII補因子機能代替活性を向上させる重鎖および軽鎖のアミノ酸置換およびその組み合わせが見出された。これらのアミノ酸置換やその組み合わせは、ACE910(Emicizumab)よりも優れたFVIII補因子機能代替活を有する二重特異性抗体の創製に有用である。
【0269】
〔参考実施例1〕
ACE910のFVIII補因子機能代替活性を向上させる方法として、抗FIX(a)抗体および抗FX抗体のそれぞれのH鎖(Q499およびJ327)に対して共通L鎖とは全く異なる配列を有する新規L鎖をヒト抗体ライブラリから取得する方法が考えられた。
【0270】
本発明者らは、当業者公知の方法、具体的には、(Biochemical and Biophysical Research Communications, (2000), 275, 2, 553-557) などを参照し、抗ACE910(Emicizumab)イディオタイプ抗体のL鎖部分をヒトL鎖ライブラリで置換したライブラリを新たに作製後、ビオチン標識ヒトFIXaあるいはビオチン標識ヒトFXに対してパニング操作を実施し、FVIII補因子機能代替活性を有する新規L鎖を有した抗体を取得した。
【0271】
その結果、FVIII補因子機能代替活性を有する二重特異性抗体の抗ヒトFIX(a)抗体L鎖可変領域としてQNK131(配列番号:13)、QNK284(配列番号:14)、QNK315(配列番号:15)、QNL182(配列番号:16)、QNL492(配列番号:17)、QNL576(配列番号:18)、抗ヒトFX抗体L鎖可変領域として、JNK131(配列番号:19)、JNK163(配列番号:20)、JNK252(配列番号:21)、JNK263(配列番号:22)、JNK339(配列番号:23)、JNK348(配列番号:24)、JNK351(配列番号:25)、JNK360(配列番号:26)、JNK378(配列番号:27)、JNK382(配列番号:28)、JNL036(配列番号:29)、JNL072(配列番号:30)、JNL095(配列番号:31)、JNL176(配列番号:32)、JNL208(配列番号:33)、JNL224(配列番号:34)、JNL260(配列番号:35)、JNL056(配列番号:36)、JNL059(配列番号:37)、JNL226(配列番号:38)、JNL250(配列番号:39)、JNL263(配列番号:40)、JNL281(配列番号:41)を見出した。
【0272】
これらの新規L鎖を有する各種二重特異性抗体を当業者公知の方法で発現、精製した。調製した抗体を表7に示す(クローン名、重鎖可変領域の配列番号、軽鎖可変領域の配列番号を示す)。なお、新規L鎖可変領域は一方にのみ使用し、他方はACE910の共通L鎖であるL404の可変領域(配列番号:45)を用い、H鎖の可変領域はQ499の可変領域(配列番号:45)及びJ327の可変領域(配列番号:46)を用いた。また、クローン名は便宜上、新規L鎖の名称を用いた。尚、抗FIX(a)抗体のH鎖定常領域はQC1(配列番号:95)、L鎖定常領域はCL1(配列番号:99)を使用し、抗FX抗体のH鎖定常領域はJC1(配列番号:97)、L鎖定常領域はCL3(配列番号:101)を使用した。
精製された各種二重特異性抗体を用いて当業者公知の方法によりFVIII補因子機能代替活性を評価した。具体的には、以下の方法で測定した。反応は全て室温で行われた。0.1%牛血清アルブミンを含むトリス緩衝生理食塩水(以下、TBSBと称す)で希釈した抗体溶液5μLを、150ng/mLのHuman Factor IXa beta (Enzyme Reserch Laboratories) 5μLと混合した後、384穴plate中にて室温で30分インキュベーションした。この混合液中の酵素反応は、24.7μg/mLのHuman Factor X (Enzyme Reserch Laboratories) 5μLを添加して開始させ、4分後、0.5M EDTA 5μLを添加して停止させた。発色反応は、発色基質溶液5μLを添加することによって、開始させた。30分間の発色反応後、405nmの吸光度変化をSpectroMax 340PC384 (Molecular Devices)を用いて測定した。Human Factor IXa beta、Human Factor Xの溶媒は4.0μM リン脂質溶液 (SYSMEX CO.)、1.5 mM CaCl
2を含むTBSBであった。発色基質溶液であるS-2222(SEKISUI MEDICAL)は、精製水で1.47mg/mLに溶解し、本アッセイに用いた。精製された各種二重特異性抗体のFVIII補因子機能代替活性を測定した結果を
図10に示す。
図10に示したFVIII補因子機能代替活性を測定する際に用いた抗体の終濃度は、新規抗FIX(a)軽鎖で構成された抗体では66.7μg/mL、新規抗FX軽鎖で構成された抗体では100μg/mLであった。なお、抗体の終濃度は、抗体溶液、Human Factor IXa beta、及びHuman Factor Xの混合溶液中の濃度である。いずれの新規L鎖で構成された二重特異性抗体もFVIII補因子機能代替活性を有することが確認された。
【0273】
【0274】
〔参考実施例2〕
ACE910のH鎖であるQ499およびJ327の全CDRに対して、システインを除く全アミノ酸変異を網羅的に導入した置換体を作製した。これら置換体と参考実施例1で得られた新規L鎖を用い、大規模にFVIII補因子機能代替活性のスクリーニングを実施することで、FVIII補因子機能代替活性を向上させるアミノ酸置換を見出した。例えば、抗FIX(a)抗体の新規L鎖であるQNK131(可変領域:配列番号13)に対してアミノ酸置換改変を導入し、QAL187(可変領域:配列番号42)、QAL201(可変領域:配列番号43)を取得した。同様に、抗FX抗体の新規L鎖であるJNL095(可変領域:配列番号31)に対してアミノ酸置換改変を導入し、JYL280(可変領域:配列番号44)を取得した。尚、抗FIX(a)抗体のH鎖定常領域はQC1(配列番号:95)、L鎖定常領域はCL1(配列番号:99)を使用し、抗FX抗体のH鎖定常領域はJC1(配列番号:97)、L鎖定常領域はCL3(配列番号:101)を使用した。
その結果、以下の表8に示すいくつかのアミノ酸置換がACE910(Emicizumab)に対してFVIII補因子機能代替活性を向上させることが可能であることが明らかとなった。FVIII補因子機能代替活性は、抗FX抗体のH鎖改変体に対しては〔参考実施例1〕に記載した手法を用い、抗FIX(a)抗体のH鎖改変体に対しては、〔参考実施例1〕に記載した手法のうち、Human factor IXa betaの濃度のみを450ng/mLに変更して実施した。表8には各アミノ酸置換体における、ACE910(Emicizumab)に対する比活性を示した(表中の各数値)。表8の(-)は、抗体の発現量が低かったことを示している。
【0275】