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特開2024-156796作業制御方法、作業制御システム及び目標点設定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156796
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】作業制御方法、作業制御システム及び目標点設定装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20241029BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
E02F3/43 B
E02F9/20 N
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024124174
(22)【出願日】2024-07-31
(62)【分割の表示】P 2022553490の分割
【原出願日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2020162901
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕志
(72)【発明者】
【氏名】吉本 達也
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来の手法では、建設機械の作業内容を考慮せずに目標点列を生成していたため、建設機械の作業内容によっては、建設機械の実軌跡が目標点列から大きくズレる問題があった。
【解決手段】本発明にかかる作業制御方法は、作業内容情報に基づき建設機械の移動先となる目標点がプロットされる目標軌跡を示す作業目標点列を生成する目標点設定ステップ(S1)と、作業目標点列に従って建設機械を制御する建設機械制御ステップ(S2)と、を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業内容情報に基づき建設機械の移動先となる目標点がプロットされる目標軌跡を示す作業目標点列を生成する目標点設定ステップと、
前記作業目標点列に従って前記建設機械を制御する建設機械制御ステップと、
を有し、
前記目標点設定ステップは、
予め決められた初期間隔で前記目標点の間隔がプロットされ、前記目標軌跡上に前記目標点がプロットされる初期目標点列を生成する初期目標点列生成ステップと、
前記作業内容情報に応じて前記初期目標点列に含まれる前記目標点を削減することで、前記作業目標点列に含まれる前記目標点の単位区間毎の密度に粗密を設ける目標点削除ステップと、
を行う作業制御方法。
【請求項2】
前記目標点削除ステップは、
前記作業内容情報に応じて、前記建設機械が実際に移動する実軌跡を前記目標軌跡に一致させる必要の度合いが高いほど前記作業目標点列に含まれる前記目標点として他の区間よりも残す前記目標点を多く設定する第1の目標点確定ステップを有する請求項1に記載の作業制御方法。
【請求項3】
前記目標点削除ステップは、
前記作業内容情報により高い位置精度が必要である場合に、指定される位置の近傍にある前記目標点を、前記作業目標点列に含まれる前記目標点として他の区間よりも多く残す第2の目標点確定ステップを有する請求項1又は2に記載の作業制御方法。
【請求項4】
前記目標点削除ステップは、
前記目標軌跡の曲率について、前記曲率が大きい箇所は前記作業目標点列に含まれる前記目標点として残す前記目標点を、他の区間よりも多く設定する第3の目標点確定ステップを有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の作業制御方法。
【請求項5】
前記目標点削除ステップは、
前記初期目標点列に含まれる目標点間の距離が閾値以上となる場合、前記閾値より短い距離にある前記目標点を間引く目標点間引きステップを有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の作業制御方法。
【請求項6】
前記目標点間引きステップは、他の処理において残すことが設定された前記目標点は間引き対象から外す請求項5に記載の作業制御方法。
【請求項7】
前記初期目標点列生成ステップでは、前記作業内容情報により示される前記目標軌跡の始点と終点との間の軌跡にカーブを設ける場合、冪関数を用いて前記カーブの形状を設定することで前記目標軌跡の形状を決定する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の作業制御方法。
【請求項8】
作業内容情報に基づき建設機械の移動先となる目標点がプロットされる目標軌跡を示す作業目標点列を生成する目標点設定部と、
前記作業目標点列に従って前記建設機械を制御する建設機械制御部と、
を有し、
前記目標点設定部は、
予め決められた初期間隔で前記目標点の間隔がプロットされ、前記目標軌跡上に前記目標点がプロットされる初期目標点列を生成する初期目標点列生成部と、
前記作業内容情報に応じて前記初期目標点列に含まれる前記目標点を削減することで前記作業目標点列に含まれる前記目標点の単位区間毎の密度に粗密を設ける目標点削除処理部と、
を有する作業制御システム。
【請求項9】
前記目標点削除処理部は、
前記作業内容情報に応じて、前記建設機械が実際に移動する実軌跡を前記目標軌跡に一致させる必要の度合いが高いほど前記作業目標点列に含まれる前記目標点として他の区間よりも残す前記目標点を多く設定する第1の目標点確定処理部を有する請求項8に記載の作業制御システム。
【請求項10】
前記目標点削除処理部は、
前記作業内容情報により高い位置精度が必要である場合に、指定される位置の近傍にある前記目標点を、前記作業目標点列に含まれる前記目標点として他の区間よりも多く残す第2の目標点確定処理部を有する請求項8又は9に記載の作業制御システム。
【請求項11】
前記目標点削除処理部は、
前記目標軌跡の曲率について、前記曲率が大きい箇所は前記作業目標点列に含まれる前記目標点として残す前記目標点を、他の区間よりも多く設定する第3の目標点確定処理部を有する請求項8乃至10のいずれか1項に記載の作業制御システム。
【請求項12】
前記目標点削除処理部は、
前記初期目標点列に含まれる目標点間の距離が閾値以上となる場合、前記閾値より短い距離にある前記目標点を間引く目標点間引き処理部を有する請求項8乃至11のいずれか1項に記載の作業制御システム。
【請求項13】
作業内容情報に基づき形状が決定される目標軌跡上に予め決められた初期間隔で目標点がプロットされる初期目標点列を生成する初期目標点列生成部と、
前記作業内容情報に応じて前記初期目標点列に含まれる前記目標点を削減することで単位区間毎の前記目標点の密度に粗密を設けた作業目標点列を生成して、建設機械を制御する建設機械制御部に前記作業目標点列を出力する目標点削除処理部と、
を有する目標点設定装置。
【請求項14】
前記目標点削除処理部は、
前記作業内容情報を参照し、前記建設機械が実際に移動する実軌跡を前記目標軌跡に一致させる必要の度合いが高いほど前記作業目標点列に含まれる前記目標点として他の区間よりも残す前記目標点を多く設定する第1の目標点確定処理部を有する請求項13に記載の目標点設定装置。
【請求項15】
前記目標点削除処理部は、
前記作業内容情報により高い位置精度が必要である場合に、指定される位置の近傍にある前記目標点を、前記作業目標点列に含まれる前記目標点として他の区間よりも多く残す第2の目標点確定処理部を有する請求項13又は14に記載の目標点設定装置。
【請求項16】
前記目標点削除処理部は、
前記目標軌跡の曲率について、前記曲率が大きい箇所は前記作業目標点列に含まれる前記目標点として残す前記目標点を、他の区間よりも多く設定する第3の目標点確定処理部を有する請求項13乃至15のいずれか1項に記載の目標点設定装置。
【請求項17】
前記目標点削除処理部は、
前記初期目標点列に含まれる目標点間の距離が閾値以上となる場合、前記閾値より短い距離にある前記目標点を間引く目標点間引き処理部を有する請求項13乃至16のいずれか1項に記載の目標点設定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業制御方法、作業制御システム及び目標点設定装置に関し、特に建設機械の動作軌跡を設定することで建設機械を当該軌跡に沿って動作させる作業制御方法、作業制御システム及び作業制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械を含むロボットでは、目標軌跡上に目標点を設定し、当該目標点をトレースすることで目標軌跡に沿って制御対象部位を動作させることが行われている。このとき、作業効率を考えると、この軌跡からのズレを抑えながらできるだけ早く制御対象部位を移動させる必要がある。そこで、特許文献1、2にロボット制御において設定される目標軌跡上に設けられる目標点の算出方法の一例が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載されているロボットの軌道補完装置は、ロボットの制御装置において、あらかじめ入力された教示点から目標軌道を生成する軌道補間装置であって、連続する3点以上の教示点を直線で繋げることにより規定される折れ線状の目標経路が与えられた場合、移動命令と折れ線の節点に教示時に付加された許容経路誤差の値により教示点間の補間演算方法を選択する補間方法選択手段と、移動命令が円弧補間の場合に、折れ線を構成する3点間を円弧で補間演算する、円弧補間演算手段と、前記許容経路誤差が0であれば、前記節点を端点とする直線軌道で目標軌道を生成する直線補間演算手段と、前記許容経路誤差が0でなければ、折れ線を構成する2本の直線と滑らかに接続する曲線軌道を、前記許容誤差値をパラメータとするクロソイド曲線によって生成するクロソイド曲線補間演算手段と、前記3つの補間演算手段の何れかが出力する軌道を入力とし、単位補間時間毎の関節角の移動量を出力する関節角演算手段とで構成されることを特徴とする。
【0004】
特許文献2に記載されている搬送経路計算システムは、建物の内部の経由点間を、搬送機器による円弧軌道を含む軌道及び吊り姿勢で搬送物を搬送する搬送経路を生成する処理を行う計算装置を備える。計算装置は、建物データ、搬送物データ、搬送機器の機構パラメータ、経由点情報等を用いて、建物内での搬送物の吊り姿勢の候補を計算する姿勢計算部と、円弧軌道を含む軌道の候補を計算する軌道計算部と、候補における軌道上の吊り姿勢における建物と搬送物との干渉有無を判定する干渉計算部と、干渉無しとなる吊り姿勢及び円弧軌道を含む搬送経路を決定する経路計算部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07-064622号公報
【特許文献2】特開2015-068019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2では、目標点を決定する際に作業内容が考慮されておらず、作業によって必要とされる制御対象部位の位置精度、或いは、作業対象部位にかかる荷重が大きく変化する条件においてはかならずしも作業効率を向上させることができない問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる作業制御方法の一態様は、作業内容情報に基づき建設機械の移動先となる目標点がプロットされる目標軌跡を示す作業目標点列を生成する目標点設定ステップと、前記作業目標点列に従って前記建設機械を制御する建設機械制御ステップと、を有する。
【0008】
本発明にかかる作業制御システムの一態様は、作業内容情報に基づき建設機械の移動先となる目標点がプロットされる目標軌跡を示す作業目標点列を生成する目標点設定部と、前記作業目標点列に従って前記建設機械を制御する建設機械制御部と、を有する。
【0009】
本発明にかかる目標点設定装置の一態様は、作業内容情報に基づき形状が決定される目標軌跡上に予め決められた初期間隔で目標点がプロットされる初期目標点列を生成する初期目標点列生成部と、前記作業内容情報に応じて前記初期目標点列に含まれる前記目標点を削減することで単位区間毎の前記目標点の密度に粗密を設けた作業目標点列を生成して、前記建設機械を制御する建設機械制御部に前記作業目標点列を出力する目標点削除処理部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる作業制御方法、作業制御システム及び目標点設定装置によれば、作業内容を考慮した高精度で高効率な制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1にかかる作業制御システムの概略図である。
図2】実施の形態1にかかる作業制御システムのブロック図である。
図3】実施の形態1にかかる目標点設定部のブロック図である。
図4】実施の形態1にかかる目標点設定部の詳細なブロック図である。
図5】実施の形態1にかかる初期目標点列において曲部を設定する際に用いる冪関数を説明するグラフである。
図6】実施の形態1にかかる作業制御システムの動作を説明するフローチャートである。
図7】実施の形態1にかかる目標点設定部の動作を説明するフローチャートである。
図8】実施の形態1にかかる目標点削除処理部の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0013】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0014】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。以下で説明する建設機械の作業制御方法、作業制御システム及び目標点設定装置は、油圧やモータ等により可動部を駆動する建設機械を制御する。そこで、以下の説明では、建設機械としてバックホウを例とする。また、以下の説明では、作業制御処理を行う処理ブロックがネットワークを通じて複数の箇所に分散して配置される作業制御システムについて説明するが、作業制御システムに含まれる処理ブロックを1つの装置とする作業制御装置としてもよい。例えば、後述の目標点設定部30と建設機械制御部20が1つの装置であってもよい。また、作業制御システムにおいて行われる制御内容をもって作業制御方法と称す。これらの具体例については、後述する記載の中で詳細に説明する。また、以下の説明では、目標点設定装置の例として作業制御システム内に設けられる目標点設定部を説明する。
【0015】
また、以下で説明する作業制御システムは、建設機械として作業者が操作可能な操作レバーを有する機械に対して適用することも、操作レバーを用いずに電気的な信号によりアクチュエータ等を直接制御する機械に対しても適用できる。以下では、例として、操作レバーを有する建設機械を作業制御装置の制御対象とする例について説明する。
【0016】
図1に実施の形態1にかかる作業制御システム1の概略図を示す。図1に示す建設機械10は、バックホウである。建設機械10は、クローラー11、旋回台12、コックピット13、ブーム14、アーム15、バケット16を有する。クローラー11は、建設機械10を移動させるための無限軌道である。旋回台12は、コックピット13及びブーム14等が搭載されるシャシーを旋回させる。コックピット13は、建設機械10の姿勢を操作する操作レバー等が配置される操作室である。また、図示を簡略化したが、作業制御システム1では、建設機械10内に建機駆動処理部17が配置される。また、ブーム14、アーム15、及び、バケット16は、それぞれが可動部に相当し、油圧シリンダーによって稼動する。この油圧シリンダーは、建機駆動処理部17の作用により伸縮する。なお、可動部に該当する部分は油圧シリンダー以外にも例えばモータで駆動される部位も含まれるが、以下の説明では、可動部の例として油圧シリンダーを説明する。
【0017】
また、実施の形態1にかかる作業制御システム1では、建設機械10の可動部に姿勢角を検出する姿勢センサ181~184を取り付ける。図1に示す例では、姿勢センサ181が旋回台12の回転角を検出し、姿勢センサ182がブーム14の現在角度を検出し、姿勢センサ183がブーム14とアーム15の相対角度を検出し、姿勢センサ184がアーム15とバケット16の相対角度を検出する。
【0018】
そして、実施の形態1にかかる作業制御システム1では、建設機械10に対応して建設機械制御部20及び目標点設定部30を設ける。建設機械制御部20は、建機駆動処理部17に具体的な動作指示となる入力値を与える。また、建設機械制御部20は、姿勢センサ181~184から取得した角度の情報に基づき姿勢検出値を生成する。また、目標点設定部30は、建設機械10に行わせる作業内容を示す作業内容情報に基づき建設機械10の移動先となる目標点がプロットされる目標軌跡を示す作業目標点列を生成する。そして、建設機械制御部20は、姿勢検出値と、目標点設定部30から与えられた作業目標点列に基づき生成した各駆動部の目標角度と、の差を最小化するようにフォードバック制御を行い、建機駆動処理部17に与える入力値を生成する。
【0019】
続いて、実施の形態1にかかる作業制御システム1の処理ブロックの構成について説明する。そこで、図2に実施の形態1にかかる作業制御システムのブロック図を示す。なお、図2では、建設機械10は作業制御システム1の制御対象のものとして示した。図2に示す例では、作業制御システム1は、建設機械制御部20及び目標点設定部30を有する。
【0020】
建設機械制御部20は、目標点設定部30が生成する作業目標点列TGTに従って建設機械10を制御する建設機械制御ステップを実行する。目標点設定部30は、作業内容情報に基づき建設機械の移動先となる目標点がプロットされる目標軌跡を示す作業目標点列を生成する目標点設定ステップを実行する。また、目標点設定部30は、この目標点設定ステップにおいて、建設機械10に行わせる作業内容、及び、建設機械の作業内容における位置精度重要度の少なくとも1つの指標を含む作業条件に応じて作業目標点列に含まれる前記目標点の単位区間毎の粗密を設定する。
【0021】
建設機械制御部20は、可動部制御部21、姿勢検出部22、フィードバック制御部23を有する。可動部制御部21は、フィードバック制御部23が作業目標点列TGTと姿勢検出部22が出力する姿勢検出値との差に基づいて生成する入力値に基づき、建設機械10の建機駆動処理部17に具体的な動作指示を与える。姿勢検出部22は、姿勢センサ181~184から得た値から姿勢検出値を生成する。フィードバック制御部23は、姿勢検出値により示される各可動部の角度値が作業目標点列に含まれる目標点から算出される目標角度値に近づくようにフィードバック制御を行うことで可動部制御部21に与える入力値を生成する。
【0022】
上記したように、実施の形態1にかかる作業制御システム1では、目標点設定部30が生成する作業目標点列TGTに従い建設機械制御部20が建設機械10を制御する。実施の形態1にかかる作業制御システム1では、目標点設定部30が建設機械10に行わせる作業内容に応じて生成される作業目標点列TGTを生成する点に特徴の1つを有する。より具体的には、実施の形態1にかかる目標点設定部30は、生成する作業目標点列が単位区間毎に作業内容に応じた目標点の粗密を有する。そこで、以下では、目標点設定部30についてより詳細に説明する。
【0023】
図3に実施の形態1にかかる目標点設定部30のブロック図を示す。図3に示すように、目標点設定部30は、初期目標点列生成部31及び目標点削除処理部32を有する。初期目標点列生成部31及び目標点削除処理部32には、作業内容情報が与えられる。この作業内容情報には、建設機械10に行わせる作業の作業条件を示す情報が含まれる。作業条件は、例えば、制御対象部位となるバケットの移動軌跡の始点と終点の位置が含まれる。また、作業条件には、例えば、掘削作業、均し作業、土砂のダンプへの積み込み作業等の作業種別、作業種別毎に異なるバケットの位置精度の指定等の情報が含まれる。この作業内容情報は、オペレーターが全部を直接入力してもよく、オペレーターが例えば作業現場の状況に応じて指定する作業位置及び作業種別に応じてコンピュータが生成してもよく、全部をコンピュータの自動処理により生成しても良い。
【0024】
初期目標点列生成部31は、予め決められた初期間隔で前記目標点の間隔がプロットされ、前記目標軌跡上に前記目標点がプロットされる初期目標点列を生成する初期目標点列生成ステップを実行する。別の観点では、初期目標点列生成部31は、作業内容情報に基づき形状が決定される目標軌跡上に予め決められた初期間隔で目標点がプロットされる初期目標点列を生成する。ここで、初期間隔は、例えば、作業制御システム1における建設機械10の制御周期時間において建設機械10が移動可能な最大距離よりも十分に短い距離となる目標点の間隔である。
【0025】
目標点削除処理部32は、作業内容情報に応じて初期目標点列に含まれる目標点を削減することで作業目標点列TGTに含まれる目標点の単位区間毎の密度に粗密を設ける目標点削除ステップを実行する。詳細は後述するが、目標点削除処理部32では、作業内容情報に応じた目標点の削除処理として第1の目標点確定ステップ(例えば、動作内容依存目標点確定ステップ)と第2の目標点確定ステップ(例えば、位置精度依存目標点確定ステップ)との少なくとも一方を実行する。また、目標点削除処理部32では、目標軌跡の形状に応じた目標点の最適化処理として第3の目標点確定ステップ(例えば、曲率依存目標点確定ステップ)を行う。この動作内容依存目標点確定ステップ、位置精度依存目標点確定ステップ及び曲率依存目標点確定ステップでは、その後に行われる目標点間引きステップで間引き対象から外す目標点を設定する。
【0026】
そこで、目標点設定部30についてさらに詳細に説明する。図4に実施の形態1にかかる目標点設定部30の詳細なブロック図を示す。図4に示すブロック図では、図3のブロック図に作業内容情報生成部33及び表示部34を追加した。また、図4に示すブロック図では、目標点削除処理部32内の詳細な処理ブロックを示した。より具体的には、目標点削除処理部32内の処理ブロックとして、第1の目標点確定処理部(例えば、動作内容依存目標点確定処理部41)、第2の目標点確定処理部(例えば、位置精度依存目標点確定処理部42)、第3の目標点確定処理部(例えば、曲率依存目標点確定処理部43)、目標点間引き処理部44を示した。
【0027】
作業内容情報生成部33は、オペレーターからの指示或いは自動処理により作業内容情報を生成する。作業内容情報生成部33が生成した作業内容情報は、初期目標点列生成部31及び目標点削除処理部32に与えられる。なお、目標点削除処理部32において作業内容情報が入力される処理ブロックは、動作内容依存目標点確定処理部41及び位置精度依存目標点確定処理部42である。表示部34は、目標点設定部30をオペレーターが操作あるいは動作内容を確認するためのインタフェースを提供するものである。例えば、表示部34は、オペレーターが作業条件を入力するタッチパネル等であってもよいし、目標点削除処理部32が生成した作業目標点列TGTの形状を作業者に提示するディスプレイ等であってもよい。
【0028】
ここで、初期目標点列生成部31について詳細に説明する。初期目標点列生成部31は、予め決められた初期間隔で目標点の間隔がプロットされ、軌跡が作業内容情報に従った形状となる初期目標点列を生成する初期目標点列生成ステップを実行する。ここで、目標軌跡を生成する場合、目標軌跡の始点と終点とを直線で結んだだけでは、その間の障害物を避けられない状況が生じることがある。そこで、初期目標点列生成ステップでは、作業内容情報により示される目標軌跡の始点と終点との間の軌跡にカーブを設けることがある。この場合、初期目標点列生成部31では、冪関数を用いてカーブの形状を設定することで目標軌跡の形状を決定する。この冪関数について説明する。
【0029】
冪関数は、例えば、(1)式で表される。この(1)式は、始点のy座標をy1、x座標をx1、終点のy座標をy2、x座標をx2、始点と終点の間のx座標をxとしたとき軌跡のy座標を表すものである。また、(1)式のpは、冪数(power)であり、このpの値を変更することで、目標軌跡の曲率が変化する。
【数1】
【0030】
ここで、図5に実施の形態1にかかる初期目標点列において曲部を設定する際に用いる冪関数を説明するグラフを示す。図5に示す例は、この(1)式から導き出される軌跡の例である。図5に示すように、パワー値pを変更することで始点(例えば、x座標が0、y座標が1の点)から終点(例えば、x座標が10、y座標が10の点)との間の軌跡の形状が変化していることがわかる。
【0031】
また、図4に示すように、目標点削除処理部32は、動作内容依存目標点確定処理部41、位置精度依存目標点確定処理部42、曲率依存目標点確定処理部43、目標点間引き処理部44を有する。
【0032】
動作内容依存目標点確定処理部41は、建設機械が実際に移動する実軌跡を前記目標軌跡に一致させる必要の度合いが高いほど作業目標点列TGTに含まれる目標点として他の区間よりも残す目標点を多く設定する第1の目標点確定ステップ(例えば、作業内容依存目標点確定ステップ)を実行する。ここで、建設機械10の実軌跡を目標軌跡に一致させる必要の度合いは、作業内容情報により示される。そして、目標点削除処理部32では、当該作業内容情報を参照して、建設機械10の実軌跡を目標軌跡に一致させる必要の度合いが高い区間について、その後の目標点間引き処理部44による処理で目標点が削除されない作業目標点列に含まれる目標点の数を増やす。このように、建設機械10の実軌跡を目標軌跡に一致させる必要の度合いが高い作業としては、例えば、均し作業や、ダンプへの土砂積み込み作業等が考えられる。一方で、実軌跡を目標軌跡に一致させる必要の度合いが低い作業としては、バケットを持ち上げる作業が考えられる。このように設定されるのは、均し作業や土砂積み込み作業は、その軌道によって作用する範囲が異なってくるのに対して、バケットの持ち上げ動作は軌道に大きな影響を受けないためである。
【0033】
位置精度依存目標点確定処理部42は、作業内容情報により高い位置精度が必要であることが指定される位置の近傍にある目標点を作業目標点列TGTに含まれる目標点として他の区間よりも多く残す第2の目標点確定ステップ(例えば、位置精度依存目標点確定ステップ)を実行する。このような位置精度重要度が高い作業としては、掘削作業の位置決め、ダンプへの土砂の荷下ろし作業等が考えられる。
【0034】
曲率依存目標点確定処理部43は、目標軌跡の曲率について、曲率が大きい箇所は作業目標点列TGTに含まれる目標点として残す目標点を他の区間よりも多く設定する第3の目標点確定ステップ(例えば、曲率依存目標点確定ステップ)を実行する。曲率が大きくなる場合、短い間隔で目標点を設定し、建設機械10をゆっくりと動作させないと目標軌跡と実軌跡のずれが大きくなるため、曲率が大きくなるほど作業目標点列TGTに含まれる目標点を増やすことで、高精度な制御が可能になる。一方で、曲率が小さい場合(目標軌跡に直線に近い場合)は、目標点が少なくともずれが小さいため、曲率が小さくなるほど作業目標点列に含まれる目標点を減らしても(目標点列を粗にしても)、精度を落とさず制御することが可能になる。
【0035】
目標点間引き処理部44は、初期目標点列に含まれる目標点間の距離が閾値以上となる場合、閾値より短い距離にある目標点を間引く目標点間引きステップを実行する。また、目標点間引き処理部44は、動作内容依存目標点確定処理部41、位置精度依存目標点確定処理部42、曲率依存目標点確定処理部43で残すことが指定された目標点については間引き対象から除外する。例えば、作業制御システム1では、直線的に移動する軌跡の区間、或いは、多少のズレが生じても問題のない移動区間の目標点を削減することで、建設機械10の動作速度を高めて作業効率を向上させる。
【0036】
続いて、実施の形態1にかかる作業制御システム1の動作について説明する。そこで、図6に実施の形態1にかかる作業制御システム1の動作を説明するフローチャートを示す。図6に示すように、実施の形態1にかかる作業制御システム1では、動作を開始すると、まず、目標点設定ステップを実行する(ステップS1)。このステップS1では、目標点設定部30による作業目標点列TGTの生成が行われる。そして、ステップS1が完了すると、作業目標点列TGTに従って建設機械制御部20が建設機械制御ステップを実行する(ステップS2)。そして、このステップS2の建設機械制御ステップを作業目標点列TGTに従った制御は、作業が終了するまで継続される。
【0037】
ここで、実施の形態1にかかる作業制御システム1では、ステップS1の目標点設定ステップに特徴の1つを有する。そこで、図7に実施の形態1にかかる目標点設定部30の動作を説明するフローチャートを示す。
【0038】
図7に示すように、目標点設定ステップでは、まず、初期目標点列生成部31により上記で説明した初期目標点列TGTを生成する初期目標点列生成ステップが実行される(ステップS11)。次いで、目標点設定ステップでは、目標点削除処理部32により上記で説明した目標点削除ステップが実行される(ステップS12)。
【0039】
ここで、上記の目標点削除処理部32の説明でも説明したように、目標点削除ステップは複数の処理が含まれる。そこで、図8に実施の形態1にかかる目標点削除処理部32の動作を説明するフローチャートを示す。
【0040】
図8に示すように、目標点削除ステップでは、まず、動作内容依存目標点確定処理部41により上記で説明した第1の目標点確定ステップ(例えば、動作内容依存目標点確定ステップ)を実行する(ステップS21)。次いで、目標点削除ステップでは、位置精度依存目標点確定処理部42により上記で説明した第2の目標点確定ステップ(例えば、位置精度依存目標点確定ステップ)を実行する(ステップS22)。次いで、目標点削除ステップでは、により上記で説明した曲率依存目標点確定処理部43により上記で説明した第3の目標点確定ステップ(例えば、曲率依存目標点確定ステップ)を実行する(ステップS23)。次いで、目標点削除ステップでは、により上記で説明した目標点間引き処理部44により上記で説明した目標点間引きステップを実行する(ステップS24)。その後、目標点削除ステップでは、目標点間引き処理部44が作業目標点列TGTをフィードバック制御部23に出力する(ステップS25)。
【0041】
上述した目標点設定部30において行われる処理は、例えば、初期目標点列生成部31及び目標点削除処理部32の処理を実現する作業制御プログラム、或いは、目標点設定プログラムを実行可能な演算部を備えるコンピュータの演算能力を用いて自動処理により行われる。
【0042】
上記説明より、実施の形態1にかかる作業制御システム1では、作業内容情報により示される建設機械10に行わせる作業内容を考慮した作業目標点列TGTを生成する。これにより、実施の形態1にかかる作業制御システム1は、建設機械10に行わせる作業内容によらず作業速度と作業精度を両立した制御を行うことが出来る。
【0043】
さらに具体的には、実施の形態1にかかる作業制御システム1は、目標点削除処理部32が動作内容依存目標点確定処理部41及び位置精度依存目標点確定処理部42を備える。そして、実施の形態1にかかる作業制御システム1は、これら処理を行うことで、作業内容に応じた目標点の単位区間毎の粗密を設けた作業目標点列TGTを生成する。これにより、実施の形態1にかかる作業制御システム1では、作業内容によらず高精度な制御により建設機械10を制御することができる。
【0044】
また、実施の形態1にかかる作業制御システム1は、目標点削除処理部32に曲率依存目標点確定処理部43を設けることで、目標軌跡に沿わせる難易度が高い区間における制御精度を向上させることができる。また、実施の形態1にかかる作業制御システム1では、目標点削除処理部32に目標点間引き処理部44を設けることで、目標軌跡の形状により制御精度が必要ない区間については目標点を削減して作業効率を高めることができる。
【0045】
また、実施の形態1にかかる作業制御システム1では、上記のような目標点に粗密を有する作業目標点列TGTの生成において、目標軌跡において高い制御精度が必要であることが指定された部分に対してのみ目標点の密度を高めるのみであるため、複雑な計算を必要とせず、作業目標点列TGTの生成時間を短くすることができる。また、実施の形態1にかる作業制御システム1では、建設機械10の機種毎に特別な制御モデルを生成する必要もないため、高い汎用性を有する。
【0046】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0047】
この出願は、2020年9月29日に出願された日本出願特願2020-162901を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0048】
1 作業制御システム
10 建設機械
11 クローラー
12 旋回台
13 コックピット
14 ブーム
15 アーム
16 バケット
17 建機駆動処理部
181~184 姿勢センサ
20 建設機械制御部
21 可動部制御部
22 姿勢検出部
23 フィードバック制御部
30 目標点設定部
31 初期目標点列生成部
32 目標点削除処理部
33 作業内容情報生成部
34 表示部
41 動作内容依存目標点確定処理部
42 位置精度依存目標点確定処理部
43 曲率依存目標点確定処理部
44 目標点間引き処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8