(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156824
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】感染症を治療するための医薬及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241029BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241029BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20241029BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20241029BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241029BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20241029BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20241029BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20241029BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20241029BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241029BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20241029BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241029BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241029BHJP
A61K 31/43 20060101ALI20241029BHJP
A61K 31/7036 20060101ALI20241029BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61K39/395 R
A61P31/04
A61P31/12
A61P31/16
A61P31/14
A61P31/20
A61P13/10
A61P13/08
A61P1/00
A61P17/00
A61P31/06
A61K39/395 D
A61K39/395 S
A61K9/20
A61P43/00 121
A61K31/43
A61K31/7036
A61K31/7048
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024125562
(22)【出願日】2024-08-01
(62)【分割の表示】P 2022506768の分割
【原出願日】2020-08-19
(31)【優先権主張番号】2019127185
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(31)【優先権主張番号】2019127186
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(71)【出願人】
【識別番号】513008959
【氏名又は名称】オレグ イリイチ・エプシテイン
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】オレグ イリイチ・エプシテイン
(72)【発明者】
【氏名】ディミトリー・ユリエビッチ・プシュカル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】感染症の効果的な治療を確実にし、抗生物質に対する耐性を低下させ、耐性菌に対する薬効を含む抗生物質の治療効果を高め、抗生物質の有効用量を低減するための医薬、および前記医薬と抗生物質の組み合わせ並びにその使用を提供する。
【解決手段】HLA-DRB1に対する抗体及びβ2-ミクログロブリンに対する抗体のストック物質の複数回の連続希釈から生じる技術処理物である、細菌感染症を治療するための医薬組成物、並びに前記医薬組成物と抗生物質との組合せを提供する。更に、抗菌及び抗ウイルス作用を発揮し、a)HLA-DRB1に対する抗体、b)β2-MGに対する抗体、c)IFN-γに対する抗体、及びd)CD4に対する抗体のストック物質の複数回の連続希釈から生じる技術処理物である、感染症を治療するための医薬組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌感染症の治療のための医薬であって、
主要組織適合遺伝子複合体クラスII分子のβ1ドメイン(HLA-DRB1)に対する抗体及びβ2-ミクログロブリン(β2-MG)に対する抗体のストック物質の複数回の連続希釈から生じる技術処理物であり、
前記ストック物質の濃度は、0.5÷5.0mg/mlであり、
前記技術処理物は、各希釈物を繰り返し振盪しながら行われる、前記ストック物質の段階希釈から得られる水性又は水性アルコール溶液であることを特徴とする医薬。
【請求項2】
前記細菌感染症は、
(i)1以上の公知抗生物質に対して耐性を有する細菌によって引き起こされる感染症、
(ii)膀胱炎、及び前立腺炎から選択されるいずれかの尿路感染症、
(iii)細菌性腸管感染症、
(iv)細菌性皮膚感染症、
(v)結核、又は
(vi)サルモネラ症、E.coli感染症、連鎖球菌感染症、及びKlebsiella pneumoniaeによって引き起こされる感染症から選択されるいずれかの感染症
である、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記抗体は、HLA-DRB1に対するモノクローナル、ポリクローナル、又は天然抗体である、請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
前記抗体は、β2-ミクログロブリンに対するモノクローナル、ポリクローナル、又は天然抗体である、請求項1に記載の医薬。
【請求項5】
薬学的に許容される添加剤を更に含む、請求項1に記載の医薬。
【請求項6】
HLA-DRB1に対する抗体及びβ2-ミクログロブリンに対する抗体のストック物質の複数回の段階希釈から生じる技術処理物と、薬学的に許容される賦形剤とを含浸させた中性担体顆粒の有効量を含む、固体剤形として製された、請求項1に記載の医薬。
【請求項7】
同時又は連続投与のための、請求項1から4のいずれか一項に記載の細菌感染症の治療のための医薬と抗生物質との組合せであって、
前記細菌感染症は、
(i)1以上の公知抗生物質に対して耐性を有する細菌によって引き起こされる感染症、
(ii)膀胱炎、及び前立腺炎から選択されるいずれかの尿路感染症、
(iii)細菌性腸管感染症、
(iv)細菌性皮膚感染症、
(v)結核、又は
(vi)サルモネラ症、E.coli感染症、連鎖球菌感染症、及びKlebsiella pneumoniaeによって引き起こされる感染症から選択されるいずれかの感染症
であることを特徴とする医薬と抗生物質との組合せ。
【請求項8】
前記抗生物質は、ペニシリンのクラス、アミノグリコシドのクラス、マクロライドのクラス、及びオキサゾリジノンのクラスから選択される、請求項7に記載の医薬と抗生物質との組合せ。
【請求項9】
抗生物質療法に対する細菌の耐性を低減するための、請求項7に記載の医薬と抗生物質との組合せの使用。
【請求項10】
前記抗生物質は、公知の有効用量含まれる、請求項9に記載の医薬と抗生物質との組合せの使用。
【請求項11】
抗生物質の効力を向上させるための、請求項7に記載の医薬と抗生物質との組合せの使用。
【請求項12】
前記抗生物質は、50%有効用量(ED50)含まれる、請求項9に記載の医薬と抗生物質との組合せの使用。
【請求項13】
感染症の治療のための医薬であって、
a)主要組織適合遺伝子複合体クラスII分子のβ1ドメイン(HLA-DRB1)に対する抗体、b)β2-ミクログロブリン(β2-MG)に対する抗体、c)インターフェロンガンマ(IFN-γ)に対する抗体、及びd)CD4に対する抗体、のストック物質の複数回の連続希釈から生じる技術処理物であって、
前記ストック物質の濃度は、0.5÷5.0mg/mlであり、
前記技術処理物は、各希釈物を繰り返し振盪しながら行われる、前記ストック物質の段階希釈から得られる水性又は水性アルコール溶液であることを特徴とする医薬。
【請求項14】
前記感染症は、ウイルス感染症又は細菌感染症である、請求項13に記載の医薬。
【請求項15】
前記ウイルス感染症は、URI又はインフルエンザである、請求項14に記載の医薬。
【請求項16】
前記感染症は、混合感染症である、請求項13に記載の医薬。
【請求項17】
前記感染症は、二次感染症である、請求項13に記載の医薬。
【請求項18】
前記二次感染症は、ウイルス性肺炎又は細菌性肺炎である、請求項17に記載の医薬。
【請求項19】
前記抗体は、HLA-DRB1に対するモノクローナル、ポリクローナル、又は天然抗体である、請求項13に記載の医薬。
【請求項20】
前記抗体は、β2-ミクログロブリンに対するモノクローナル、ポリクローナル、又は天然抗体である、請求項13に記載の医薬。
【請求項21】
前記抗体は、インターフェロンガンマに対するモノクローナル、ポリクローナル、又は天然抗体である、請求項13に記載の医薬。
【請求項22】
前記抗体は、CD4に対するモノクローナル、ポリクローナル、又は天然抗体である、請求項13に記載の医薬。
【請求項23】
薬学的に許容される添加剤を更に含む、請求項13に記載の医薬。
【請求項24】
HLA-DRB1に対する抗体、β2-MGに対する抗体、IFN-γに対する抗体、及びCD4に対する抗体、のストック物質の複数回の段階希釈から生じる技術処理物と、薬学的に許容される賦形剤とを含浸させた中性担体顆粒の有効量を含む、固体剤形として製された、請求項13に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の分野、特に感染症を治療するための医薬及び方法に関する。特に、本発明は、細菌によって引き起こされる感染症を治療するための生成物、耐性細菌に対するその効果及び抗生物質の有効用量の低減の促進を含む、抗生物質の治療効果を向上させるための生成物、並びに細菌感染症を治療する方法、抗生物質療法に対する細菌の耐性を低減する方法、抗生物質の有効量を低下させる方法、及び抗生物質特異的耐性細菌に対する抗生物質の治療効果を高める方法に関し、本発明はまた、ウイルス感染症を治療するための医薬及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感染症は、単純な、即ち、1つの物質によって誘発される感染症と、混合感染症、即ち、2つ以上の物質によって誘発される感染症に分類することができる。混合感染症を、現在罹患している病気から生じる二次感染(重感染)から区別することが重要である。再感染は、完全回復後に同一物質によって引き起こされる疾患の再発と定義され、免疫力の欠如に関連する。
【0003】
細菌感染症は、細菌によって引き起こされる疾患である。細菌感染症は、炎症、中毒、及び組織損傷に至る、生菌及び死菌による毒素の分泌によって特徴付けられる。細菌感染症の診断は、抗菌薬の処方を必要とする。様々な疾患を引き起こす細菌は、最終的に、治療に使用される抗生物質に対する耐性を示す。これは、抗菌剤耐性と呼ばれる自然適応プロセスである。多くの耐性菌の発生は、不治の感染症を増加させ、細菌感染症のリスクの上昇、細菌感染症の治療に関連する医療費の上昇、入院期間の延長、及び死亡率の上昇をもたらす[非特許文献1]。
【0004】
2015年5月、世界保健総会は、抗生物質耐性を含む抗菌薬耐性に取り組むための世界的行動計画を承認した。世界的行動計画の目標は、効果的で安全な医薬で感染症の治療及び予防を確実に行うことである[http://www.who.int/mediacentre/factsheets/antibiotic-resistance/ru/]。
【0005】
急性上気道感染症(URI)は、インフルエンザ、パラインフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、及びアデノウイルスによって引き起こされる感染症、並びにその他の上気道のカタル性炎症を含む、世界で最も一般的な疾患群である。ウイルス感染は通常、感染した個体又は汚染された表面に触れた後、鼻又は結膜の粘膜に、ウイルスを自身の手で侵入させることによって生じる。別の感染様式は、ヒトが感染個体と密接に接触しているときに、ウイルスを含むエアロゾルの吸入又は感染性液滴への粘膜の曝露によって生じる空気感染である。適切な治療がない、又は効果がない治療法により、中耳炎、副鼻腔炎、扁桃炎、播種性血管内凝固などの重篤な合併症を引き起こし得る。
【0006】
世界保健機関(WHO)の公式統計データの分析によると、21世紀の初頭、感染症が世界の全死因の4分の1を占めていたが、開発途上国では、感染症による死亡率が、ほぼ50%に達したことが示された。感染症は、依然として世界人口の最も重要な死因の1つであるといえる。これらの疾患に対する新たな治療オプションの開発は、医療及び製薬業界における最優先事項である。
【0007】
したがって、ウイルス及び細菌感染症の治療、並びに抗生物質耐性を低減し、細菌の抗生物質感受性を高める方法は、医療業界における現在の重要な課題となっている。
【0008】
先行技術は、感染症を治療するための薬剤、特に抗ウイルス剤、例えば、アルビドール、アミキシンなどを開示している[https://www.rlsnet.ru/tn_index_id_4196.htm, https://www.rlsnet.ru/tn_index_id_1526.htm]。このクラスの薬剤は副作用があり、特定のウイルス性疾患に対する有効性を欠いていることがある[非特許文献2]。
【0009】
先行技術はまた、感染症を治療するための薬剤、特にアモキシシリン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、レボマイシンなどの、細菌感染症の治療のための医薬品を開示している[https://www.rlsnet.ru/tn_index_id_222.htm // https://www.rlsnet.ru/tn_index_id_876.htm // https://www.rlsnet.ru/mnn_index_id_82.htm // https://www.rlsnet.ru/tn_index_id_4699.htm]。抗生物質は、2つの大きな問題を有する:即ち、抗生物質耐性微生物数の増加と、それらの使用に関連する広範な禁忌及び副作用である[非特許文献3]。
【0010】
したがって、抗生物質の不適切で制御されていない使用は、ヒトの健康に非常に有害であり得る。アレルギー、肝臓及び腎臓の毒性後遺症、心臓血管、血液、及び神経系の障害などの有害事象とは別に、抗生物質治療は、抗生物質耐性微生物の発生をもたらす可能性もある。したがって、微生物の抗生物質耐性を低減し、抗生物質の賢明な使用を促進することを目的とした包括的な取り組みが、現在重要である。
【0011】
細菌の薬剤耐性に対抗する方法が知られており、それは、細菌の酵素阻害剤と組み合わせた抗生物質の使用を意味する。例えば、ベータラクタム系抗生物質に類似した化学構造を有するベータラクタマーゼ阻害剤であるクラブラン酸(又はクラブラネート)がある。他のベータラクタムと同様に、クラブラン酸は、グラム陽性菌及びグラム陰性菌のペニシリン結合タンパク質(PBP)に結合し、細菌壁の溶解に寄与することができる。更に、クラブラン酸は独自の抗菌作用を有する。これに基づいて、アミノペニシリンと、ベータラクタマーゼ阻害剤(アモキシシリン/クラブラン酸塩)のうちの1つとを含む組合せ医薬が調製されている。この方法の不利な点は、使用される薬剤の組合せの拮抗作用の範囲が制限されている点、即ち、ベータラクタマーゼを介した耐性を有する細菌のみに対して有効である点である。クラブラン酸の副作用は、胃腸障害、胆汁鬱滞性黄疸、肝機能障害、肝炎、クロストリジウム・ディフィシル感染症、カンジダ症、及びアレルギー(多形性紅斑、血管性浮腫、剥離性皮膚炎、アレルギー性蕁麻疹、及びアナフィラキシーショック)である[https://www.kakprosto.ru/kak-899440-klavulanovaya-kislota-deystvie-i-svoystva-#ixzz5eejsFIpF]。
【0012】
先行技術は、低濃度のアニリン染料と抗菌剤との複合作用により、各種作用機序を有する抗菌剤に対する微生物の薬剤耐性の効果的な取り組みを向上させる、細菌及び真菌の薬剤耐性を克服する方法を開示している[特許文献1]。なお、アニリン染料は組織学で広く使用されており、抗菌作用を発揮するが、発癌作用を示すものもある。
【0013】
先行技術はまた、外用及び局所適用のための活性な抗菌性及びタンパク質分解性酵素の医薬の組合せを開示している。この組成物は、塩基(例えば、リゾアミダーゼ)及び少なくとも1つの標的サプリメント(抗生物質、合成抗菌剤(微生物耐性を低減する薬剤、抗真菌剤、麻酔剤、又は修復刺激剤を含む))を含む。本発明は、組成物の個々の成分に耐性のある菌株に対するものを含め、公知薬剤と比較して、医薬組成物の治療活性の上昇を確実にする。また、治癒過程を改善し、より速い創傷洗浄を促進し、回復期までの時間をより短縮する[特許文献2]。なお、酵素は、様々な周囲要因(pH、温度、圧力など)に敏感であり、外部要因に曝露されると、酵素の構造が変性して不可逆的に変化し、続いて、その特性が失われることがある。例えば、リゾアミダーゼ酵素は、暗所で乾燥した環境にて、≦+10℃で保管することが推奨されるが、これは、その製造、出荷、及び保管に更なる課題を示す。それは、これらの工程のいずれかで、その有効性が低下することがあるからである。
【0014】
先行技術は、主要組織適合遺伝子抗原(HLA複合体)又はHLA抗原複合体及びその関連ペプチドに対する超低用量のモノクローナル及びポリクローナル、並びに免疫又は天然の抗体の活性化形態を含む医薬を開示している[特許文献3]。本発明にしたがって得られるイムノトロピック薬剤は、イムノトロピック活性、副作用がない、環境の清浄度、及び低コストを特徴とする新たな薬剤である。しかし、細菌及び/又はウイルス感染症の治療における、この薬剤の有効性に関するデータはない。
【0015】
先行技術は、活性成分として、ヒトインターフェロンガンマに対する抗体の活性化増強化形態(activated-potentiated form)と、CD4受容体に対する抗体の活性化増強化形態とを含む、ウイルス感染症を治療する複合薬剤を開示している[特許文献4]。しかし、細菌感染症又は混合感染症の治療における、この薬剤の有効性に関するデータはない。
【0016】
エルゴフェロンは、特許請求医薬に最も近いアナログである[https://www.rlsnet.ru/tn_index_id_46844.htm]。エルゴフェロンの薬理活性としては、抗ウイルス作用と免疫調節作用が挙げられ、更に、この薬剤は、細菌感染症の組合せ治療にも使用される。エルゴフェロンは、ヒトインターフェロンガンマ(IFN-γ)に対する抗体のいわゆる活性化増強化形態と、T細胞のCD4(CD4)に対する抗体の活性化増強化形態と、ヒスタミン(His)に対する抗体の活性化増強化形態とを含む。
【発明の概要】
【0017】
本発明の目的は、高い抗ウイルス、抗菌、及び免疫調節活性を示し、1以上の公知の抗菌薬(抗生物質)に耐性を有する細菌に対しても、毒性又は変異原性の影響を患者の生体に与えることなしに有効である、新しい効果的な複合薬剤を形成することである。本発明はまた、抗生物質の薬理学的有効性、特に耐性菌に対するその有効性を高め、抗生物質の有効用量を低下させることができる医薬の開発を目的とする。
【0018】
一実施形態では、本発明の医薬は、ストック物質、即ち、HLA-DRB1に対する抗体及びβ2-MGに対する抗体の複数回の段階希釈から生じる技術処理物である。別の実施形態では、本発明の医薬は、ストック物質、即ち、a)HLA-DRB1、b)β2-MG、c)IFN-γ、及びd)CD4の複数回の段階希釈から生じる技術処理物である。いずれの実施形態も、様々な種類の病原体によって引き起こされる細菌感染症の治療及び予防に有効である。
【0019】
本発明の一態様は、抗生物質の効力の向上、抗生物質療法に対する細菌耐性の低下、及び抗生物質の有効用量の低下を促進し、ストック物質、即ち、主要組織適合遺伝子複合体クラスII分子のβ1ドメイン(HLA-DRB1)に対する抗体及びβ2-ミクログロブリン(β2-MG)に対する抗体の複数回の連続希釈から生じる技術処理物である、細菌感染症を治療するための特許請求医薬である。
【0020】
本発明の別の態様は、ストック物質:a)主要組織適合遺伝子複合体クラスII分子のβ1ドメイン(HLA-DRB1)に対する抗体、b)β2-ミクログロブリン(β2-MG)に対する抗体、c)インターフェロンガンマ(IFN-γ)に対する抗体、及びd)CD4に対する抗体の複数回の連続希釈から生じる技術処理物である、感染性疾患を治療するための抗菌及び抗ウイルス活性を有する特許請求医薬である。
【0021】
言及される細菌の種類は、例えば、以下の通りであることができる:スピロヘータ(例えば、トレポネーマ、ボレリア、レプトスピラ);グラム陰性の好気性及び微好気性、運動性、湾曲、及び螺旋状の細菌(例えば、カンピロバクター、ヘリコバクター、スピリルム);グラム陰性の好気性及び微好気性桿菌及び球菌(例えば、アクロモバクター、ボルデテラ、キンゲラ、ナイセリア);グラム陰性の通性嫌気性桿菌(例えば、セデセア、エシェリヒア、クレブシエラ、プレジオモナス、ヘモフィルス、ストレプトバチルス(コリ感染症));グラム陰性の嫌気性直線状、湾曲、螺旋状の細菌(例えば、アンエアロビオスピリルム(Anaerobiospirrilum)、バクテロイド、ポルフィロモナス);グラム陰性嫌気性球菌(例えば、ベイロネラ);リケッチア及びクラミジア(例えば、エールリヒア、クラミドフィラ);グラム陽性球菌(例えば、アエロコッカス、ブドウ球菌、連鎖球菌);グラム陽性の内生胞子形成桿菌及び球菌(例えば、バチルス、クロストリジウム);規則的な形状のグラム陽性の非胞子形成桿菌(例えば、エリシペロスリクス、リステリア);不規則的な形状のグラム陽性の非胞子形成桿菌(例えば、ビフィズス菌、コリンバクテリウム、ロチア);マイコバクテリア(例えば、マイコバクテリウム);放線菌(例えば、アクチノマヅラ、ノカルディア、ストレプトマイセス);マイコプラズマ(例えば、マイコプラズマ、ウレアプラズマ)など[I.V. Smirnov. Pathogens of bacterial infections in humans. Clinical Microbiology and Antimicrobial Chemotherapy, No.2, Vol. 2, 2000, p.4-11]。
【0022】
HLA-DRB1及びβ2-MGに対する各抗体のストック物質の複数回の段階希釈から生じる技術処理物である、特許請求医薬は、1以上の抗生物質に耐性のある細菌に対しても有効である。
【0023】
特許請求医薬によって管理することができる細菌感染症は、病原性細菌の種類とその感染様式との両方に基づいてクラスに分類することができる。
【0024】
細菌性胃腸/腸感染症は、シゲラ、ブドウ球菌、コレラ菌、チフス菌、又はサルモネラ菌によって引き起こされることがある(サルモネラ症、腸チフス、赤痢、細菌性食中毒、カンピロバクター症、腸炎、エシェリヒオーシス(escherichiosis)、大腸炎、食中毒、胃炎、潰性疾患、ボツリヌス中毒など)。これらの感染症では、糞口感染経路が主流である。
【0025】
空気感染による気道の細菌感染は、ブドウ球菌、肺炎球菌、連鎖球菌、百日咳菌、髄膜炎菌、クラミジア、マイコバクテリア、マイコプラズマなどによって引き起こされることがある(副鼻腔炎、鼻炎、急性扁桃炎、喉頭炎、気管炎、扁桃炎、喉頭蓋炎、上顎洞炎、肺炎、気管支炎、結核など)。
【0026】
泌尿生殖器系の細菌感染症、例えば、細菌性膣炎(ガードネレローシス(gardnerellosis))、クラミジア、膀胱炎、細菌異常増殖症、腎盂腎炎、糸球体腎炎、尿道炎、細菌性亀頭炎、前立腺炎、細菌性膀胱炎、細菌性前立腺炎、精巣炎など;
【0027】
例えば、ブドウ球菌及び連鎖球菌によって引き起こされる皮膚及び軟組織の細菌感染症は、皮膚接触によって感染する(丹毒、膿痂疹、蜂巣炎、蜂窩織炎、せつ腫症、汗腺炎など)。
【0028】
例えば、リケッチア、エルシニア、及びコッコバチルスによって引き起こされる血液感染は、感染性の経路を有する(ウサギ熱、ペスト、紅斑熱、塹壕熱など)。
【0029】
リンパ腺の炎症及びリンパ管炎などのリンパ系の感染症は、連鎖球菌又はブドウ球菌によって引き起こされ得る;
【0030】
神経系の感染症、例えば、髄膜炎、脳炎、脊髄炎、及び他の感染症(髄膜炎菌、肺炎球菌、ヘモフィルスインフルエンザb菌、ボレリア、マイコプラズマ、カンジダ菌などによって引き起こされる)は、空気経路及びリンパ系を通して感染する;
【0031】
骨及び関節の感染症は、ライム病、ブドウ球菌、連鎖球菌、マイコバクテリア、及び淋菌の細菌性病原体によって引き起こし得、血流を介して、例えば、開放創又は外科的処置などの直接接触を通して、及び最も近い身体構造における感染を通して感染し得る(敗血症性関節炎、骨髄炎、ライター症候群など);
【0032】
耳の感染症(乳様突起及び副鼻腔の感染症)は、連鎖球菌及びブドウ球菌、カンジダ菌、インフルエンザ菌などによって引き起こされ得る。感染経路は、耳管を通して、外耳道から、又は血液による(内耳炎、感音難聴、乳様突起炎など)。
【0033】
本発明の医薬組成物は、細菌感染症の治療のための有効成分の組合せであり、即ち、HLA-DRB1に対する抗体及びβ2-MGに対する抗体のストック物質の複数回の連続希釈により得られる技術処理物を示す医薬と、対応する抗生物質と(いずれも患者に共投与される)の組合せである。医薬と対応する抗生物質との共投与は、2つの独立した生成物として(個別の剤形として)の薬剤の同時服用によって、又は必要な時間間隔をおいて連続的(特に、これらの間隔が、各生成物の組合せが改善した作用を発揮させる場合)に行うことができる。選択の方法は、経験に基づいて決定され、疾患と、使用される抗生物質とにより異なる。
【0034】
特許請求医薬は、公知の抗生物質と共に、細菌感染症の治療に使用される固定の又は非固定のいずれかの医薬組合せを構成することもできる。用語「固定の組合せ」は、有効成分、即ち、特許請求医薬及びパートナー薬剤(抗生物質)が、単一医薬剤形又は用量として患者に同時に共投与されることを示す。用語「非固定の組合せ」又は「成分のセット」は、有効成分、即ち、特許請求医薬とパートナー医薬品(抗生物質)が、特定の時間間隔なしに同時又は連続的に別々の成分として患者に同時投与されることを示す(かかる投与が、体内の2種類の有効成分の有効レベルを保証する場合)。医薬と抗生物質との特許請求された組合せは、細菌感染症の治療のために同時又は連続的に投与することができ、抗生物質は、公知の有効用量で投与される。
【0035】
特許請求医薬(HLA-DRB1に対する抗体及びβ2-MGに対する抗体)は、実験によって選択された有効量で使用されるが、抗生物質は、添付文書又は医師の処方にしたがって服用する必要がある。抗生物質は、以下の群、例えば:ベータラクタム系抗生物質(ペニシリン(アモキシシリン、メチシリン、オキサシリン、ベンジルペニシリンなど);セファロスポリン(セファレキシン、セファゾリン、セフトリアキソン、セフェピムなど);カルバペネム(メロペネム、ドリペネム、ビアペネムなど);マクロライド類(ケトライド、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシンなど);テトラサイクリン類(テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ドキシサイクリン、メタサイクリンなど);アミノグリコシド類(ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン、ゲンタマイシンなど);クロロミセチン類;オキサゾリジノン類;糖ペプチド類(タルゴシド、ダプトマイシン、バンコマイシンなど);リンコサミド類(ダラシンC);フルオロキノロン類(レボフロキサシン、ゲミフロキサシン、スパルフロキサシンなど);抗真菌性抗生物質(ナイスタチン、アムホテリシンBなど);抗結核抗生物質(フチバジド、メタジド、サルジドなど);抗らい菌薬(ソルスルホン(solusulfon)、ジュシフォン(diuciphon)など);抗腫瘍剤(ドキソルビシン、ルボマイシン、カルミノマイシンなど);及び他の抗生物質(ホスホマイシン、フシジン、リファンピシンなど)から選択することができる。
【0036】
有効用量(ED)又は有効濃度(ЕС)は、生物学的応答を引き起こす薬剤の用量又は濃度として定義される。用語「有効用量」は、インビボ測定値に関して使用され、用語「有効濃度」は、インビトロ測定値に関して使用される。
【0037】
本発明は、抗生物質の薬理学的活性、特に耐性菌に対するその作用を、対応する抗生物質と特許請求医薬との同時又は連続投与を介して向上させることが意図され、特許請求医薬は、HLA-DRB1及びβ2-MGに対する各抗生物質のストック物質の複数回の連続希釈から生じる技術処理物を示す。したがって、特許請求医薬と抗生物質との共投与は、抗生物質の投与量の低減を促進する。
【0038】
本発明の医薬は、ストック物質、即ち、a)HLA-DRB1、b)β2-MG、c)IFN-γ、及びd)CD4の複数回の段階希釈から生じる技術処理物であり、ウイルス感染症の治療に使用することができる。言及されるウイルス感染症は、二本鎖DNAウイルス(例えば、ヘルペスウイルス目、アデノウイルス科、パピローマウイルス科、ポリオーマウイルス科);一本鎖DNAウイルス(例えば、サーコウイルス科、パルボウイルス科);複製可能なRNAを有するウイルス(例えば、レオウイルス科、ビルナウイルス科);ポジティブセンス一本鎖RNAウイルス(例えば、ニドウイルス目、ピコルナウイルス目、ティモウイルス目、アストロウイルス科、カリシウイルス科、フラビウイルス科、トガウイルス科、ビルガウイルス科);ネガティブセンス一本鎖RNAウイルス(例えば、ブニヤウイルス目、モノネガウイルス目、アレナウイルス科、オフィオウイルス科、オルトミクソウイルス科、デルタウイルス);DNA中間体を介して複製するポジティブセンス一本鎖RNAウイルス(例えば、レトロウイルス科);一本鎖RNA中間体を介して複製する二本鎖DNAウイルス(例えば、カリモウイルス科、ヘパドナウイルス科)のウイルスによって引き起こされ得る。
【0039】
更に、ストック物質、即ち、a)HLA-DRB1、b)β2-MG、c)IFN-γ、及びd)CD4の複数回の連続希釈から生じる技術処理物である本発明の医薬は、2種類以上の異なる病原体、ウイルスと細菌との両方への同時曝露によって生じる混合感染症、及び別の病原体の感染に続いて生じる二次感染症(重複感染症)に対して有効である。
【0040】
本発明の技術的効果は、複合的な抗ウイルス及び抗菌作用を有する医薬の範囲を広げることと、1以上の抗生物質に耐性があり、低毒性又は変異原性を示す細菌に対して有効である広域スペクトル抗菌剤を形成して、抗菌療法中の患者の生体への負担を軽減することである。特許請求医薬は、耐性菌に対する有効性を含む抗生物質の薬理学的有効性を高め、その有効用量を低減し、抗生物質治療中及び抗生物質治療後の副作用を最小限にする。
【0041】
HLA-DRB1に対する抗体、β2-MGに対する抗体、IFN-γに対する抗体、及びCD4に対する抗体のストック物質の複数回の段階希釈から生じる技術処理物は、抗体マトリクス溶液の段階希釈(ポテンタイゼーション)(各希釈物は、振とう(succussion)プロセスに付される)によって得られる抗体の水溶液又は水性アルコール溶液(又は、これらの溶液の組合せ)である。
【0042】
過去の出願[露国特許第2205025C1号(2001年12月26日);露国特許第2500422C2号(2010年8月6日)など]において、本出願人は、用語「抗体の活性化形態」、「抗体の活性化増強化形態」、「超高希釈物」、及び「抗体の超低用量」を使用して、抗体ストック物質の複数回の段階希釈から生じる技術処理物を記載した。本出願人はまた、用語「放出活性形態」及び用語「抗体の活性化形態」、「抗体の活性化増強化形態」、「抗体の超低用量」、「超高希釈物」、及び「活性希釈物」が相互変換可能に使用できることを強調する[Epstein O.I. Released-activity (contemporary view on homeopathy and non-homeopathy). Moscow: RAMS Publishing House, 2017. 48 p. // Epstein O.I. Ultralow doses (history of one study). Мoscow: RAMS Publishing House, 2008. 336 p.]。
【0043】
本発明では、抗体希釈物は、C2以降(即ち、1002倍に希釈されたマトリクス溶液から出発して)10倍、100倍、及び1000倍希釈を含む抗体マトリクス溶液の任意の希釈物、並びにそれらの任意の組合せ(例えば、С2+D34+M45、D20+C4など)及び任意の希釈比(例えば、1:1:2、2:3など)として定義される。
【0044】
特許請求医薬は、Myagkova M.A., Morozova V.S. Immunochemical properties of natural antibodies to physiologically active compounds, Fundamental Research No. 11, 2014, p.1066-1070 and Immunological methods edited by G. Frimel, Мoscow, Meditsina, 1987, p.9-33;又は、例えば、Laffly E., Sodoyer R. Hum.による文献 Antibodies. Monoclonal and recombinant antibodies, 30 years after. - 2005 - Vol.14. - N 1-2. P.33-55に記載される公知の技術及び方法にしたがって得ることができ、対応する抗原、即ち、HLA-DRB1、β2-MG、IFN-γ、及びCD4に対する抗原特異性を有するストック物質としての天然、モノクローナル、又は主に、ポリクローナル抗体を使用して調製される。
【0045】
天然抗体は、外因性の抗原刺激がない状態での、限られた量で体から分泌される免疫グロブリンとして定義される。したがって、これらの抗体は、健康なヒトの循環にも存在する。天然の自己抗体は、主に、自己抗原の特定のセットに対する親和性が低い多反応性抗体である。
【0046】
モノクローナル抗体は、特定の抗原性エピトープを認識し、単一のB細胞クローンによって産生される異種抗体である[Lipman NS1, Jackson LR, Trudel LJ, Weis-Garcia F. Monoclonal versus polyclonal antibodies: distinguishing characteristics, applications, and information resources. ILAR J. 2005;46(3):258-68. // IHC Staining Methods. Fifth edition. Preface Chapter 1. Thomas Boenisch. Antibodies. p:1-9]。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を用いて生成することができる。このプロセスは、ポリクローナル抗血清の生成に使用される、過去に開発された技術に基づく免疫化から始まる。プロセスの更なる工程は、単一特異性の抗体クローンを産生するハイブリッド細胞を成長させるために行われる。それらの個々の単離は、ポリクローナル抗血清の場合と同一の方法を用いて行われる。
【0047】
ポリクローナル抗体は、特異的抗原の複数のエピトープを認識し、体内の様々なB細胞株から分泌される免疫グロブリンの集合体で表される[Lipman NS1, Jackson LR, Trudel LJ, Weis-Garcia F. Monoclonal versus polyclonal antibodies: distinguishing characteristics, applications, and information resources. ILAR J. 2005;46(3):258-68. // IHC Staining Methods. Fifth edition. Preface Chapter 1. Thomas Boenisch. Antibodies. p:1-9]。ポリクローナル抗体は、動物の能動免疫によって産生させることができる。免疫化のために、動物には、本発明によって必要とされる好適な化合物、即ち、抗原の注射が、開発された注射プロトコルにしたがって投与される。結果として、この手順は、最終生成物を得るために複数の段階希釈の方法で使用される高濃度の抗体を含む単一特異性抗血清を与える。抗血清中に存在する抗体のアフィニティ精製は、例えば、必要に応じて、分別沈殿法又はイオン交換クロマトグラフィーを使用して行うことができる。
【0048】
前記を考慮すると、用語「抗体」は、標的分子(抗原)に特異的に結合する任意起源の免疫グロブリン(天然、ポリクローナル、又はモノクローナル抗体)を意味する。特異性、即ち、特定のタイプの抗原エピトープを認識して相互作用する抗体の能力は、その効果の全範囲を定義する抗体の主な特徴である[Boyd WC. Fundamentals of immunology. Fundam. Immunol. 1946; Langman RE. The specificity of immunological reactions. Mol. Immunol. 2000; 37: 555-561]。特異性は、抗体の性質又はそれらの製造方法に依存せず、同一の特異性の天然、ポリクローナル、又はモノクローナル抗体は、同一の標的に影響を与え[А. Roitt et al., Essential Immunology. Translated from English. - Moscow: Mir, 2000, p.149-161, 527-544]、したがって、それらを、特許請求医薬の製造に用いることができる。
【0049】
一実施形態では、特許請求医薬は、最終生成物を得るために、抗体ストック物質の複数回の段階希釈によって行われる技術処理用に、0.5÷5.0mg/mlの濃度のマトリクス(ストック)溶液としてポリクローナル抗体を使用して調製することができる。
【0050】
技術処理、即ち、抗体ストック物質の複数回段階希釈の方法は、得られる希釈物のそれぞれに適用する外部機械的作用(例えば、振とう)と組み合わせる、中性溶媒9部(10倍希釈の場合、D)又は99部(100倍希釈の場合、C)又は999部(1000倍希釈の場合、M)の連続希釈による濃度の計画的な低下であり、新たな容器が各連続希釈において使用される[W. Shwabe “Homeopathic medicines”, Moscow, 1967, p.14-29を参照]。
【0051】
物質の濃度を繰り返し連続的に低下させる一見単純な手順は、独自の特性を備えた生成物を提供する複雑な技術であることが分かっている。歴史的に、ポテンタイゼーション技術の生成物は、「低用量」、「増強調製物」、又は「高希釈物」と呼ばれている。
【0052】
最終生成物は、様々な剤形で製造することができ[OFS.1.6.2.001.18, the State Pharmacopoeia of the Russian Federation, ed. XIV]、薬学的に許容される賦形剤を含有することができる。
【0053】
例えば、特許請求医薬は、薬学的に許容される賦形剤の必要量(有効量)を含む固体剤形として製造することができ、これは、HLA-DRB1、β2-MG、IFN-γ、CD4に対する抗体などの抗体ストック物質の複数回の連続希釈により生じる技術処理物と、ヒプロメロース、マルチトール、グリセロール、カリウムソルベート、無水クエン酸、イソマルト、二酸化ケイ素、シクラミン酸ナトリウム、サッカリンナトリウム、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウムなどの薬学的に許容される賦形剤との混合物を含浸させた中性担体(例えば、ラクトース)である。
【0054】
本発明の最終生成物は、ストック物質:a)主要組織適合遺伝子複合体クラスII分子のβ1ドメイン(HLA-DRB1)に対する抗体及びb)β2-ミクログロブリン(β2-MG)に対する抗体、又はa)主要組織適合遺伝子複合体クラスII分子のβ1ドメイン(HLA-DRB1)に対する抗体、b)β2-ミクログロブリン(β2-MG)に対する抗体、c)インターフェロンガンマ(IFN-γ)に対する抗体、及びd)CD4に対する抗体の複数回の連続希釈から生じる技術処理物である医薬である。使用されるストック物質の希釈は、10倍(D)~1000倍(M)まで希釈率は様々である。出発成分の最適な希釈及び比率は、薬力学及び薬物動態の公知原理、特に用量反応曲線にしたがって決定される。
【0055】
特許請求医薬の固体経口剤形は、流動床システム(例えば、(例えば、Huttlin GmbHによるHuttlin Pilotlab)で、抗体ストック物質の複数回の連続希釈から生じる技術処理物の調製済み水溶液又は水性アルコール溶液(濃度は実験的に選択される、OFS.1.6.2.0010.18、State Pharmacopoeia)を、中性担体顆粒、即ち、ラクトース(乳糖)上に噴霧することによって調製される(前記技術処理物は、同時に、40℃以下の加熱空気の上向き気流によって乾燥される)。得られた錠剤ブレンドを均一に混合し、次いで、乾式直接圧縮法(例えば、KorschによるXL400錠剤プレス中)によって圧縮する[国際公開第2007105981(А1)号(2007年9月20日)]。圧縮プロセスにより、ストック物質、即ち、HLA-DRB1に対する抗体、β2-ミクログロブリンに対する抗体、インターフェロンガンマに対する抗体、及び/又はCD4に対する抗体の複数回の連続希釈から得られる技術処理物の水溶液又は水性アルコール溶液で含浸された300mgの錠剤が得られる。
【0056】
以下の図面は、添付図面と共に、本発明を説明するために与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【0058】
【
図2】
図2.感染後7日目のマウスの膀胱細菌負荷。
【0059】
【0060】
【
図4】
図4.感染後7日目のマウスの腎臓細菌負荷。
【0061】
【
図5】
図5.感染後1、3、及び6日目の尿中細菌負荷。
【0062】
【
図6】
図6.2LD100の用量による大腸菌感染後のマウスの生存率(%)(横軸の点0)。注:
*-コントロール群との差は、統計的に有意であり、р<0.05である:#-エンロフロキサシン群との差は、統計的に有意であり、р<0.05である。
【0063】
【
図7】
図7.106CFU/マウスの用量でAMC耐性
Klebsiella pneumoniae BAA-1705株による感染(横軸の点0)後の、特許請求医薬とAMCとの組合せの抗菌活性のマーカーとしてのマウス体重(M±m)。
【0064】
【
図8】
図8.106CFU/マウスの用量でAMC耐性
Klebsiella pneumoniae BAA-1705株による感染(横軸の点0)後の、特許請求医薬とAMCとの組合せの抗菌活性のマーカーとしてのマウス生存率(%)。注:
*-コントロール群との差は、統計的に有意であり、р<0.05である;#-コントロール+AMC群との差は、統計的に有意であり、р<0.05である;$-AMC群との差は、統計的に有意であり、р<0.05である。
【0065】
【
図9】
図9.インタクトな細菌及びインビボで試験物質を投与された動物から単離した細菌の、AMC50%阻害濃度(IC50、M±m)(
Klebsiella pneumoniae BAA-1705株、5×104CFU/ウェル)及びAMC100%阻害濃度に対する細菌感受性(阻害%)。注:
*-「インタクトな細菌」の値との差は、統計的に有意である。
【0066】
【
図10】
図10.ラットのカラギーナン誘発性足浮腫のモデルにおける特許請求医薬の抗炎症活性のマーカーとしての浮腫重量(M±m)。注:
*-コントロール群との差は、統計的に有意であり、р<0.05である;#-インドメタシン群との差は、統計的に有意であり、р<0.05である。
【0067】
【
図11】
図11.ストレプトマイシン感受性サルモネラ菌株(JB270)+ストレプトマイシン耐性サルモネラ菌株(JB271[Strep
R])(5.0log10のCFU/マウスの用量で1:1)による感染後2~4日目のマウスの脾臓1g当たりのJB270のCFU数とJB271[Strep
R]のCFU数と比較。データはM±SEで表す。
*p<0.05vs試験の2日目及び3日目に同一群で得られた値;#p<0.05vs試験の2、3、4、及び5日目(それぞれ感染後、1、2、3、及び4日目)の群1及び3で得られた値。
【0068】
【
図12】
図12.ナリジクス酸感受性サルモネラ菌株(JB270)+耐性サルモネラ菌株(JB285[Na]
R)(5.0 log10のCFU/マウスの用量で1:1)による感染後2~4日目のマウスの脾臓1g当たりのJB270のCFU数とJB285[Na]
RのCFU数と比較。データはM±SEで表す。
*p<0.05vs試験の3日目に同一群で得られた値;#p<0.05vs試験の3、4、及び5日目(それぞれ感染後、2、3、及び4日目)の群4及び6、並びに試験の2日目の群4で得られた値。
【0069】
【
図13】
図13.腹腔内経路で
Clostridium perfringens(ATCC 13124)(10
10CFU/マウス)による感染(横軸の点0)後の、特許請求医薬の抗菌活性のマーカーとしてのマウス生存率(%)。
*p<0.05vs群1、2、4、及び5で得られた値;#p<0.05vs群1、4、及び5で得られた値;$p<0.05vs群1及び5で得られた値。
【0070】
【
図14】
図14.気管内経路で
Chlamydophila pneumonia(CM1)(1.5
*10
6CFU/マウス)に感染した(横軸の点0)動物の治療における、特許請求医薬の抗菌活性のマーカーとしてのマウス生存率(%)。
*p<0.05vs群1及び2で得られた値;#p<0.05vs群1で得られた値。
【0071】
【
図15】
図15.気管内経路で同一細菌(1.5
*10
6CFU/マウス)による感染後3、6、12日目に、プラセボ、特許請求医薬、又はアジスロマイシンを投与されたマウスから得られた肺組織ホモジネートと72時間インキュベートした後の
Chlamydophila pneumonia(CM1株)に感染したHEp2細胞の数。データは、コントロール-1(プラセボ)の%として、M±SEで表す。
*p<0.05vs試験の同一の日に群1(プラセボ)で得られた値;#p<0.05vs試験の同一の日に群2(医薬)で得られた値。
【0072】
【
図16】
図16.気管内経路で
Chlamydophila pneumonia(CM1)(1.5
*10
6CFU/マウス)に感染した(横軸の点0)動物の治療における、特許請求医薬のイムノトロピック活性のマーカーとしての肺組織におけるインターロイキン-1β濃度。データは、M±SEとして表す。p<0.05vsバックグラウンド値(インタクト);#p<0.05vs群1(プラセボ)で得られた値;$p<0.05vs群2(医薬)で得られた値。群間比較は、単一時点内(試験日)に行った。
【0073】
【
図17】
図17.気管内経路で
Chlamydophila pneumonia(CM1)(1.5
*10
6CFU/マウス)に感染した(横軸の点0)動物の治療における、特許請求医薬のイムノトロピック活性のマーカーとしての肺組織におけるインターロイキン-6濃度。データは、M±SEとして表す。p<0.05vsバックグラウンド値(インタクト);#p<0.05vs群1(プラセボ)で得られた値;$p<0.05vs群2(医薬)で得られた値。群間比較は、単一時点内(試験日)に行った。
【0074】
【
図18】
図18.気管内経路で
Chlamydophila pneumonia(CM1)(1.5
*10
6CFU/マウス)に感染した(横軸の点0)マウスの肺組織におけるTNF-α濃度に対する治療効果。データは、M±SEで表す。
【0075】
【
図19】
図19.鼻腔内経路で
Klebsiella pneumoniae 8637株(2
*10
7CFU/マウス)に感染した(横軸の点0)好中球減少症の動物の治療における、特許請求医薬の抗菌活性のマーカーとしてのマウス生存率(%)。
*p<0.05vsコントロール(プラセボ)で得られた値。
【0076】
【
図20】
図20.鼻腔内経路で
Klebsiella pneumoniae 8637株(2
*10
7CFU/マウス)に感染した(横軸の点0)マウスの血液及び器官における細菌負荷。
*p<0.05vsコントロール(プラセボ)で得られた値。
【0077】
【
図21】
図21.A/ニュージャージー/8/76(H1N1)ウイルス及び肺炎連鎖球菌による連続感染後のマウス肺における肺炎連鎖球菌のCFU数に対する医薬1及び医薬2の影響。注:
*-「モデルコントロール」群との差は、統計的に有意で、р<0.05である;#-「未処理コントロール」群及び「コントロール」群との差は、統計的に有意であり、р<0.05である;$-「医薬1」群との差は、統計的に有意であり、р<0.05である。
【0078】
【
図22】
図22.H1N1/Aカリフォルニア04/2009インフルエンザウイルス及び黄色ブドウ球菌(1986株)に感染した(横軸の点0)後のマウスの生存率(%)。注:
*-コントロール群との差は、統計的に有意であり、р<0.05である;#-ネガティブコントロール群との差は、統計的に有意であり、р<0.05である。
【0079】
【
図23】
図23.RSV(A2株)に感染したマウスにおける気管支の相対的過感受性の変化。注:同図では、「0mg/mlメタコリン」(ベースライン)の点における群当たりの気管支過感受性データを1とした。他の点で得られた値は、対応する群のベースラインに対して規格化した。データは、規格化したM±CI95%として表す。
*-インタクト群(群6)との差は、統計的に有意であり、р<0.05である;#-コントロール群(群3)との差は、統計的に有意であり、р<0.05である;及び-RSV群(群4)との差は、統計的に有意であり、р<0.05である。
【0080】
【
図24】
図24.RSV(A2)に感染したマウスの肺におけるウイルスRNAコピー数(M±m)。注:
*-コントロール(群3)及びRSV(群4)の各群との差は、統計的に有意であり、р<0.05である;#-群6との差は、統計的に有意であり、р<0.05である、$-群2との差は、統計的に有意であり、р<0.05である。
【0081】
【
図25】
図25.治療及び予防療法としてプラセボ、特許請求医薬、又はトブラマイシンが投与された、気管内経路で6.5
*10
7CFU/mlの用量で
Pseudomonas aeruginosa(RP73)に感染させたラットの体重。データは、M±SEとして表す。
*p<0.05vs群1(未処理動物)及び群2(プラセボ)で得られた値;#p<0.05vs群4(医薬)で得られた値。
【0082】
【
図26】
図26.
Pseudomonas aeruginosa(RP73)を6.5
*10
7CFU/mlの用量で気管内感染後5日目の、治療及び予防療法としてプラセボ、特許請求医薬、又はトブラマイシンを投与したラットの肺における細菌負荷。データは、群1(未処理動物)で得られた値の%、M±SEで表す。
*p<0.05vs群1(未処理動物)及び群2(プラセボ)で得られた値。
【0083】
【
図27】
図27.
Pseudomonas aeruginosa(RP73)を6.5
*10
7CFU/mlの用量で気管内感染後5日目の、治療及び予防療法としてプラセボ、特許請求医薬、又はトブラマイシンを投与したラットの気管支肺胞洗浄液における細菌負荷。データは、群1(未処理動物)で得られた値の%、M±SEで表す。
*p<0.05vs群1(未処理動物)及び群2(プラセボ)で得られた値;#p<0.05vs群4(医薬)で得られた値。
【0084】
【
図28】
図28.10
8CFU/動物の用量で
Porphyromonas gingivalis(ATCC 33277)のインビボ感染後4日目のマウスの皮下に埋め込んだチャンバ内の流体中の細菌負荷。データは、M±SEで表される。
*p<0.05vs群1(未処理動物)及び群2(プラセボ)で得られた値。
【0085】
【
図29】
図29.10
8CFU/動物の用量で
Porphyromonas gingivalis(ATCC 33277)のインビボ感染後4日目のマウスの皮下移植したチャンバ中のインターロイキン-1β濃度。データは、M±SEで表される。
*p<0.05vs群1(未処理動物)及び群2(プラセボ)で得られた値。
【0086】
【
図30】
図30.10
8CFU/動物の用量で
Porphyromonas gingivalis(ATCC 33277)のインビボ感染後4日目のマウスの皮下移植したチャンバ中のインターロイキン-6濃度。データは、M±SE
*で表される。p<0.05vs群1(未処理動物)及び群2(プラセボ)で得られた値。
【0087】
【
図31】
図31.
Mycobacterium tuberculosis(H37Rv)を5
*10
6CFU/動物で感染させ、プラセボ、特許請求医薬、又はイソニアジド+リファンピシン+エタンブトールアジスロマイシンの組合せによる治療後4週間のマウスの肺における細菌負荷。データは、M±SEで表す。
*p<0.05vs群1(未処理動物)及び群2(プラセボ)で得られた値。
【0088】
【
図32】
図32.ARVI症状を示さない患者の割合(PCRを含む臨床診断で確認)。PP分析データ。
【実施例0089】
実施例1
モルモットで誘発されたMycobacterium tuberculosisに対する特許請求医薬の抗結核活性
【0090】
研究の目的は、抗結核剤イソニアジドと比較した実験用結核モルモットモデルにおけるMycobacterium tuberculosisに対する医薬の抗結核活性を調べることである。本発明の医薬は、HLA-DRB1に対する抗体のストック物質の段階希釈によって得られた技術処理物(2:3の比の、HLA-DRB1に対するモノクローナル抗体のC12C150水性アルコール希釈物)と、β2-MGに対する抗体のストック物質の段階希釈によって得られた技術処理物(2:3の比の、β2-MGに対するモノクローナル抗体のC12C150水性アルコール希釈物)とを1:2の体積比で含む。
【0091】
A)水性アルコール溶媒中の主要組織適合遺伝子複合体クラスII分子のβ1ドメイン(HLA-DRB1)に対するモノクローナル抗体のストック(マトリクス)溶液の2種類の異なる連続希釈物を組み合わせることによって得られる、HLA-DRB1に対するモノクローナル抗体のストック物質の段階希釈から得られる技術処理物(2.5mg/ml)。以下の希釈物を2:3の体積比で混合した。
1)各希釈物を振とうしながら、10012倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C12希釈物に相当)。
2)各希釈物を振とうしながら、100150倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C150希釈物に相当)。
【0092】
B)水性溶媒中のβ2-マイクログロブリン(β2-MG)に対するモノクローナル抗体のストック(マトリクス)溶液の2種類の異なる連続希釈物を組み合わせることによって得られる、β2-MGに対するモノクローナル抗体のストック物質の段階希釈から得られる技術処理物(1.0mg/ml)。以下の希釈物を2:3の体積比で混合した。
1)各希釈物を振とうしながら、10012倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C12希釈物に相当)。
2)各希釈物を振とうしながら、100150倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C150希釈物に相当)。
【0093】
実験群:
群1-インタクトなコントロール、未感染動物(n=7)
【0094】
群2-ネガティブコントロール(感染未処理動物)(n=7)
【0095】
群3-プラセボ(精製水)を4ml/kgの量で、感染前5日間、及び感染後2週間から2ヵ月間、週6日間、1日2回経口投与した動物(n=14)。
【0096】
群4-プラセボ(精製水)を4ml/kgの量で、感染前5日間、及び感染後2週間から2ヵ月間、週6日間、1日2回経口投与し、並びに感染後2週間から2ヵ月間、イソニアジドを週6日間、0.4mlの量で10mg/kgの用量にて投与した動物(n=14)。
【0097】
群5-医薬を4ml/kgの量で、感染前5日間、及び感染後2週間から2ヵ月間、週6日間、1日2回経口投与した動物(n=14)。
【0098】
試験設計:
本試験の期間は196日間(6.5ヶ月間)とした:9月~12月-実験動物の治療とフォローアップ;1月~3月-微生物学的及び組織学的手法による剖検試料の分析。物理的及び視覚的検査、健康評価、及び死亡率のモニタリングを、給餌前に毎日行った。
【0099】
試験物質を、感染前5日間、及び感染後2ヶ月間、週6日間(日曜日を除く毎日)、1日2回、総量8ml/kgを針なしシリンジでモルモットに経口投与した。試験物質の用量は、動物の体重に基づいて週に1回調整した。水とデンプンに懸濁したイソニアジドを、試験物質と同一のレジメンにしたがって同一時間間隔で動物に投与した。イソニアジドの用量は、水デンプンスラリー0.4ml中の10mg/kg(体重)とした。
【0100】
死亡率、体重、培地中の
Mycobacterium tuberculosisの増殖、及び動物の臓器の組織学的変化を、試験全体を通してモルモットの全群で評価した。
試験結果:
表1.モルモットの臓器に関する評価
【表1】
【0101】
結論:
得られた試験結果に基づくと、イソニアジド群と特許請求医薬の群とは、同等のポジティブな治療効果を示したと結論付けることができる。これらの2群の動物の臓器の組織学的検査は、治療的病理形態の兆候を示した。特許請求医薬は、肺感染症に対する有効性も示した。
【0102】
実施例2
抗生物質有り及び抗生物質無しの場合における、マウスの化膿連鎖球菌に対する特許請求医薬の抗菌活性
【0103】
これは、盲検プラセボ対照試験である。本試験の目的は、好中球減少症のマウスの軟組織感染症のモデルにおいて、化膿連鎖球菌に対するリネゾリド(合成抗生物質)又はテリスロマイシン(ケトライド系抗生物質)と共に用いた場合又は用いなかった場合の特許請求医薬の有効性を評価することである。本発明の医薬は、HLA-DRB1に対する抗体のストック物質の段階希釈から得られた技術処理物(3:2の比のモノクローナル抗体のС4D20水性アルコール希釈物(2.5mg/ml))と、β2-MGに対する抗体のストック物質の段階希釈から得られた技術処理物(1:2の比の天然抗体のС10C150水性アルコール希釈物(2.5mg/ml))とを2:3の体積比で含む。
【0104】
実験群:
群1-ネガティブコントロールの雌性マウスは、化膿連鎖球菌に感染しており、試験期間中に、医薬も抗生物質も投与しなかった;n=3
【0105】
群2-雌性マウスは、化膿連鎖球菌による感染前5日間及び感染当日に、プラセボ(グリシン緩衝液)を20ml/kgの量で毎日経口投与した;n=6
【0106】
群3-雌性マウスは、化膿連鎖球菌による感染前5日間及び感染当日に、プラセボ(グリシン緩衝液)を20ml/kgの量で毎日経口投与し、感染後2時間及び14時間でリネゾリド(50mg/kg)を組み合わせた;n=6
【0107】
群4-雌性マウスは、化膿連鎖球菌による感染前5日間及び感染当日に、プラセボ(グリシン緩衝液)を20ml/kgの量で毎日経口投与し、感染後2時間及び14時間でテリスロマイシン(10mg/kg)を組み合わせた;n=6
【0108】
群5-雌性マウスは、化膿連鎖球菌による感染前5日間及び感染当日に、医薬を20ml/kgの量で毎日経口投与した;n=6
【0109】
群6-雌性マウスは、化膿連鎖球菌による感染前5日間及び感染当日に、医薬を20ml/kgの量で毎日経口投与し、感染後2時間及び14時間でリネゾリド(50mg/kg)を組み合わせた;n=6
【0110】
群7-雌性マウスは、化膿連鎖球菌による感染前5日間及び感染当日に、医薬を20ml/kgの量で毎日経口投与し、感染後2時間及び14時間でテリスロマイシン(10mg/kg)を組み合わせた;n=6
【0111】
試験設計:
試験期間は7日間とした。好中球減少症は、シクロホスファミドの腹腔内注射を2回行ったマウスで誘発させた(感染前4日目に150mg/kg、感染前1日目に100mg/kg)。試験中、免疫不全マウスには、更なる免疫抑制を施さなかった。
【0112】
試験サンプルは、感染前5日間及び感染(感染当日)後2時間及び14時間で20ml/kgの用量で経口投与した。感染当日に、大腿部への筋肉内注射により、マウスに5.4lgCFUの用量で化膿連鎖球菌(ATCC BAA-2469)を感染させた。更に、感染後2時間と14時間で、動物に、抗生物質、即ち、リネゾリド50mg/kg及びテリスロマイシン10mg/kgを投与した。化膿連鎖球菌BAA-2469は、これらに対して感受性と耐性をそれぞれ有する。
【0113】
動物の生存率、感染の臨床的兆候、及び体重は、試験を通して全て群のマウスで評価した。
【0114】
試験設計:
感染後2時間で、細菌負荷分析(CFU/g、log
10)のために、未処理マウス(群1)から大腿筋を収集した。他の群では、細菌負荷を評価するために、感染後24時間で大腿筋を収集した。得られたデータを表2に示す。
表2.大腿組織の平均細菌負荷(CFU/g、log10)
【表2】
【0115】
結論:
感染後24時間の試験群(群3及び群6)において、リネゾリドとの組合せで、平均的な細菌負荷において統計的に有意な減少が記録された。したがって、特許請求医薬は、筋骨格感染症に対して有効性を示し、抗生物質と共投与されると、それらの有効性を高めることが分かった。
【0116】
実施例3
尿路感染症のマウスモデルにおける、特許請求医薬単独と、大腸菌に対する抗生物質と組合せた場合との有効性
【0117】
本試験の目的は、マウスの大腸菌感染の実験モデルにおいて、抗生物質ノルフロキサシンを使用した場合と使用しない場合の試験医薬の効果を評価することである。本発明の医薬は、HLA-DRB1に対する抗体のストック物質の段階希釈から得られた技術処理物(1:1:1の比のポリクローナル抗体のС12C30С50水性希釈物(2.5mg/ml))と、β2-MGに対する抗体から得られたストック物質の段階希釈から得られた技術処理物(1:1:1の比のモノクローナル抗体のС12C30С50水性希釈物(2.5mg/ml))とを1:1の体積比で含む。
【0118】
実験群:
群1-感染前5日間及び感染後7日間並びに腹腔内経路による感染(体積10ml/kg)後1時間で、強制経口投与によって毎日20ml/kgにて、特許請求医薬を投与した雄性及び雌性マウス(n=10)。
【0119】
群2-感染前5日間及び感染後7日間、強制経口投与によって毎日20ml/kgにて特許請求医薬を投与し、感染後1時間で、腹腔内経路によって5mg/kg(体積10ml/kg)にてノルフロキサシンを投与した雄性及び雌性マウス(n=10)。
【0120】
群3-感染前5日間及び感染後7日間並びに腹腔内経路による感染(体積10ml/kg)後1時間で、強制経口投与によって毎日20ml/kgにて、グリシン緩衝液を投与した雄性及び雌性のコントロールマウス(n=10)。
【0121】
群4-感染前5日間及び感染後7日間、強制経口投与によって毎日20ml/kgにてグリシン緩衝液を投与し、感染後1時間で、腹腔内経路によって5mg/kg(体積10ml/kg)にてノルフロキサシンを投与した雄性及び雌性マウス(n=10)。
【0122】
試験設計:
マウスに、膀胱への大腸菌UTI89(2.107CFU/マウス)を尿道内接種によって感染させた(0日目)。
【0123】
感染後1、3、及び6日目に、尿を採取してCFUを定量した。感染後7日目に、各群から10頭の動物を屠殺し、細菌負荷分析用に腎臓と膀胱を収集した。実験中、体重は、2日ごとに記録した。
【0124】
試験設計:
体重は、全ての群でポジティブな変化を示し、試験サンプルが動物によって十分に忍容されたことを示している。
【0125】
膀胱重量は、群4(グリシン緩衝液+ノルフロキサシン)と比較して、群2(医薬+ノルフロキサシン)で有意に低かった。このことは、抗生物質と組み合わせた特許請求医薬が、膀胱の膨張を軽減することができることを示唆し得る。
【0126】
ノルフロキサシン(群2)と組み合わせた特許請求医薬は、膀胱の細菌負荷を有意に減少させた。したがって、この組合せは、治療レジメンとしての可能性を有し得る(
図1、2)。
【0127】
腎臓重量に統計的に有意な差は群間で観察されなかった。
【0128】
ノルフロキサシンと組み合わせた特許請求医薬(群2)は、グリシン緩衝液(群3)と比較して腎臓の細菌負荷を有意に減少させた。したがって、この組合せは、治療レジメンとしての可能性を有し得る(
図3、4)。
【0129】
3日目から、群2(医薬+ノルフロキサシン)の尿検体は、群4(グリシン緩衝液+ノルフロキサシン)と比較して細菌負荷の低減を示した。群3(グリシン緩衝液)の尿検体は、群1(医薬)と比較して、全て時点でCFUの数が多かった(
図5)。
【0130】
結論:
したがって、抗生物質ノルフロキサシンと組み合わせた特許請求医薬は、尿路感染症のマウスモデルにおいて、大腸菌に対して抗菌作用を発揮する。
【0131】
実施例4
ニワトリにおけるSalmonella enteritidis rif92に対する抗生物質を伴う場合と伴わない場合の特許請求医薬の抗菌活性
【0132】
これは、盲検プラセボ対照試験である。本試験の目的は、ニワトリにおけるSalmonella enteritidis rif92に対する特許請求医薬の効果を調べることとした。本発明の医薬は、アフィニティ精製後のポリクローナル抗体のストック物質の段階希釈(С12С30С50希釈)から得られた2種類の技術処理物、即ち、1)主要組織適合遺伝子複合体クラスII分子のβ1ドメインに対する抗体と、2)主要組織適合遺伝子複合体クラスI分子のβ2-ミクログロブリンに対する抗体とを等量ずつ含む。
A)水性アルコール溶媒中の主要組織適合遺伝子複合体クラスII分子のβ1ドメイン(HLA-DRB1)に対するポリクローナル抗体のストック(マトリクス)溶液の3種類の異なる連続希釈物を組み合わせることによって得られる、HLA-DRB1に対するポリクローナル抗体のストック物質の段階希釈から得られる技術処理物(2.5mg/ml)。以下の希釈物を1:1:1の比で混合した。
1)各希釈物を振とうしながら、10012倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C12希釈物に相当)。
2)各希釈物を振とうしながら、10030倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C30希釈物に相当)。
3)各希釈物を振とうしながら、10050倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C50希釈物に相当)。
B)水性溶媒中のβ2-マイクログロブリン(β2-MG)に対するポリクローナル抗体のストック(マトリクス)溶液の3種類の異なる連続希釈物を組み合わせることによって得られる、β2-MGに対するモノクローナル抗体のストック物質の段階希釈から得られる技術処理物(2.5mg/ml)。以下の希釈物を1:1:1の体積比で混合した。
1)各希釈物を振とうしながら、10012倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C12希釈物に相当)。
2)各希釈物を振とうしながら、10030倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C30希釈物に相当)。
3)各希釈物を振とうしながら、10050倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C50希釈物に相当)。
【0133】
実験群:
群1-Salmonella enteritidisに感染し、4日齢~9日齢まで0.2ml/動物/日の用量で、本発明の医薬を胃内投与した雄性及び雌性ニワトリ(n=15)。
【0134】
群2-Salmonella enteritidisに感染し、本発明の医薬を、4日齢~9日齢まで0.2ml/動物/日の用量で胃内投与し、シプロフロキサシン(Ciprovet、OOO Research Innovation Center 「Agrovetzashchita」、抗生物質)を、5日齢~9日齢まで0.5mg/kg体重(ED50)の用量で胃内投与した雄性及び雌性ニワトリ(n=15)。本発明の医薬組成物及び抗生物質を、1時間間隔で投与した。試験中、ニワトリの体重は毎日増加したので、抗生物質の量を、投与前に毎日計算した。
【0135】
群3-Salmonella enteritidisに感染し、4日齢~9日齢まで0.2ml/動物/日の用量でプラセボ(精製水)を胃内投与した雄性及び雌性ニワトリ(n=15)。
【0136】
群4-Salmonella enteritidisに感染し、プラセボ(精製水)を、4日齢~9日齢まで0.2ml/動物/日の用量で胃内投与し、シプロフロキサシンを、5日齢~9日齢まで0.5mg/kg体重(ED50)の用量で胃内投与した雄性及び雌性ニワトリ(n=15)。試験サンプルと抗生物質は、1時間間隔で投与した。
【0137】
群5-インタクトなコントロール動物-雄性及び雌性の非感染及び未処理のニワトリ(n=15)。
【0138】
試験設計:
試験期間は、12日間(1日齢~12日齢)とした。ニワトリは、最初の2日間隔離した。3日目に、群5のニワトリを除く全てのトリに、致死量の2倍のSalmonella enteritidis(血清型rif92、0.5ml/動物の量で2.5×109CFU/g)を腹腔内経路で感染させた。4日齢~9日齢まで、ニワトリに特許請求医薬又は精製水のいずれかを投与した。5日齢~9日齢まで、ニワトリにCiprovet(群2及び群4)を投与した。
【0139】
試験全体を通して、以下のパラメータについて検証した:生存率;体重;飼料転換率(動物が獲得した体重に対して規格化された実験終了時までの飼料摂取量の重量);ニワトリの胃腸管と肝臓におけるS.enteritidis rif92の存在と濃度。
統計解析
【0140】
得られたデータの統計解析は、事後Wilcoxon検定と組み合わせたKruskal-Wallis検定及び事後Tukey検定と組み合わせた2元一般化線形モデル(100でデータを規格化したガンマ分布を、他のパラメータのパーセント値及び対数変換に使用した)を用いて行った。p<0.05のとき、差が統計的に有意であるとみなした。
【0141】
試験結果:
得られた結果によれば、全実験群の生存率は100%であった。試験終了時の最大生体重は、特許請求医薬を投与したブロイラー(群1)で記録され、対応するプラセボ群(群3)及びインタクト群(群5)の最大生体重をそれぞれ33.9g及び38.7g上回った。飼料転換率は、群間で類似していた。血液検査の基本的パラメータは、群間で差を示さなかった。
【0142】
実験終了時の群当たりの肝臓及び腸内容物中のサルモネラ菌数に関する要約データを表3に示す。
表3.屠殺後のサルモネラ菌の存在及び抗菌活性指数(AAI)
【表3】
【0143】
抗菌活性指数(AAI)は、次の式を使用して計算した。
AAI=Bc/Bt(式中、Bc-フォローアップ期間終了時までの、コントロール群の臓器ホモジネート中の細菌細胞数。Bt-フォローアップ期間終了時までの、試験群の臓器ホモジネート中の細菌細胞数)[Okhapkina V.Y., Pyatkova N.V., Fedotov A.K. Express efficacy assessment method for antibacterial agents in experimental brucellosis // Challenges of Highly Infectious Diseases, 2016; 2:79-82.]。
【0144】
表1のデータによると、肝臓において最も少ないサルモネラ菌数は、群2と群4で記録され、最も多いサルモネラ菌数は、群3で観察された。一方、本発明の医薬のAAI(群1)(10.6)は、抗生物質との併用の場合(3.6)を有意に上回った。群1と群2では、肝臓の細菌負荷はそれぞれ群3と群4の10.6倍及び3.5倍低く、サルモネラ菌数から、肝臓に対する医薬の保護作用があることを示唆している。
【0145】
結論:
1.特許請求医薬は、プラセボ群と比較して、罹患したニワトリ数が33.4%減少し、プラセボ群と比較して、医薬群の肝臓における細菌負荷が10.6倍減少したことによって特徴付けられる有効性(抗菌作用)を示した。このことは、サルモネラ菌の細胞数の観点から、肝臓に対する医薬の保護作用があることを示唆している。特許請求医薬は、腸の感染症に対しても有効である。
2.ニワトリにED50で抗生物質を共投与した医薬は、後者の有効性を向上させた。これは、医薬群及びプラセボ群と比較して、屠殺時に消化管内の細菌負荷の顕著な減少が観察されたからである。したがって、特許請求医薬と共投与した場合、抗生物質の有効用量を低減できたことが確認された。
【0146】
実施例5
マウスにおけるEscherichia coli CN 160に対する抗生物質を伴う場合と伴わない場合の特許請求医薬の抗菌活性
【0147】
これは、盲検プラセボ対照試験である。本試験の目的は、マウスにおけるE.coli CN 160によって引き起こされる実験的感染における、エンロフロキサシン療法(Baytril、Bayer)と組み合わせた試験医薬の薬理学的効果を評価することである。本発明の医薬は、アフィニティ精製後のポリクローナル抗体のストック物質の段階希釈(С12С30С50希釈)から得られた2種類の技術処理物、即ち、1)主要組織適合遺伝子複合体クラスII分子のβ1ドメインに対する抗体(2.5mg/ml)と、2)主要組織適合遺伝子複合体クラスI分子のβ2-ミクログロブリンに対する抗体(2.5mg/ml)とを等量ずつ含む。
【0148】
実験群:
群1-特許請求医薬を、感染前5日間、感染後1時間、及びそれに続く14日間、10ml/kg/日の用量で1日1回経口投与した雄性及び雌性マウス(n=10)。
【0149】
群2-プラセボ(精製水)を、感染前5日間、感染後1時間、及びそれに続く14日間、10ml/kg/日の用量で1日1回経口投与した雄性及び雌性のコントロールマウス(n=10)。
【0150】
群3-Baytril(抗菌剤)を、感染前3日間及び感染後3日間、1.38mg/kgの用量にて筋肉内注射で投与した雄性及び雌性マウス(n=10)。
【0151】
群4-特許請求医薬を、感染前5日間、感染後1時間、及びそれに続く14日間、10ml/kg/日の用量で1日1回経口投与し、並びにBaytril(抗菌剤)を、感染前3日間及び感染後3日間、1.38mg/kgの用量にて筋肉内注射で共投与した雄性及び雌性マウス(n=10)。
【0152】
試験設計:
試験物質は、E.coli感染前5日間、感染後(6日目)1時間、その後、フォローアップ期間中の14日間(合計20日間)、1日1回経口投与した。6日目に、予備試験にて予め決定した2LD100の用量で単回腹腔内注射によりマウスを感染させた(LD100=7.3×108CFU/マウス)。抗菌剤Baytrilは、感染前3日間及び感染後3日間(合計6日間)筋肉内注射により、所定のEF50、即ち、1.38mg/kg投与した。
【0153】
死亡率は、試験を通して全てのマウス群で評価した。
【0154】
統計解析:
知見の統計解析は、Kaplan Meier曲線を用いて行い、次いで、ログランク検定のペアワイズ比較を行った。p<0.05のとき、差が統計的に有意であるとみなした。
【0155】
試験結果:
特許請求医薬とBaytrilとの組合せを投与したマウス(群4)を除き、各群の動物はいずれも、致死量の
Escherichia coliに感染した後、4日以内に死亡した(
図6)。最も高い死亡率(70~80%)が、感染後の最初の2日間で観察された。
【0156】
結論:
E.coli CN 160の2LD100に感染したマウスにおいて、ED50のBaytrilと組み合わせて特許請求医薬を使用すると、動物の50%の死亡が防止され、E.coli CN-160の2倍致死量に対するこの組合せの有意な抗菌作用が示されている。したがって、この試験において、本発明の特許請求医薬と抗生物質との共投与は、抗生物質の薬理学的作用を向上させることが見出された。更に、この組合せは、抗生物質の有効投与量を低減することも示された。
【0157】
特許請求医薬は、敗血症を含む全身感染症に対しても有効であることが分かった。
【0158】
実施例6
アモキシシリン/クラブラン酸に耐性を有するKlebsiella pneumoniae BAA-1705株によるマウスの感染に対する医薬の有効性
【0159】
本試験の目的は、Klebsiella pneumoniaeのアモキシシリン+クラブラン酸(AMC)耐性株に対する、AMCと組み合わせた特許請求医薬の抗菌作用を調べることである。本発明の医薬は、アフィニティ精製後のポリクローナル抗体のストック物質の段階希釈(С12С30С50希釈)から得られた2種類の技術処理物、即ち、1)主要組織適合遺伝子複合体クラスII分子のβ1ドメインに対する抗体(2.5mg/ml)と、2)主要組織適合遺伝子複合体クラスI分子のβ2-ミクログロブリンに対する抗体(2.5mg/ml)とを等量ずつ含む。
【0160】
試験番号1
【0161】
実験群:
群1-特許請求医薬+AMCの組合せを、感染前5日間、10ml/kgの0.9%NaCl中25mg/kgの用量で胃内投与し、感染後1時間で、10ml/kg/日の用量で胃内投与した雄性マウス(n=15)。
【0162】
群2-精製水を、感染前5日間と感染後1時間、10ml/kg/日の用量で胃内投与したコントロールの雄性マウス(n=15)。
【0163】
群3-精製水+AMCの組合せを、感染前5日間、10ml/kgの0.9%NaCl中25mg/kgの用量で胃内投与し、感染後1時間で、10ml/kg/日の用量で胃内投与した雄性マウス(n=15)。
【0164】
群4-AMCを、感染後1時間で、10ml/kgの0.9%NaCl中25mg/kgの用量にて腹腔内経路で投与した雄性マウス(n=15)。
【0165】
群5-ゲンタマイシン(Sigma)を、10ml/kgの0.9%NaCl中15mg/kgの用量にて腹腔内経路で投与したポジティブコントロール雄性マウス(n=15)。
【0166】
試験設計:
好中球減少症のマウスにおける細菌性肺炎のモデルを構築した。肺炎は、Klebsiella pneumoniae(AMC耐性を有するBAA-1705株、106CFU/マウス)の鼻腔内投与によって誘発した。好中球減少症を誘発するために、感染前4日目(-4日目)及び1日目(-1日目)に、腹腔内経路によってそれぞれ150mg/kg及び100mg/kgのシクロホスファミドをマウスに投与した。
【0167】
肺における細菌負荷と、健康全般のパラメータとしての体重とを評価した。生存率は、1日2回記録した。
【0168】
データの統計解析は、Kruskal-Wallis検定を、事後Tukey検定及びKaplan Meier曲線と組み合わせて用いて行い、次いで、ログランク検定のペアワイズ比較を行った。p<0.05のとき、差が統計的に有意であるとみなした。
【0169】
試験結果:
感染した動物の肺重量とCFU数に影響する試験物質はなかった。感染によって引き起こされた体重減少は、全ての試験群で観察された(
図7)。群5(ゲンタマイシン)及び群1(AMC+医薬)では、フォローアップ期間の54時間から体重増加が観察された。
【0170】
全て群における死亡率は、フォローアップ期間の48時間~54時間で記録した(
図8)。コントロール群及びAMC+コントロール群の全ての動物が死亡し、抗生物質に対する
Klebsiella pneumoniae(BAA-1705)の耐性が確認された。ゲンタマイシンとAMC+医薬治療は、マウスの生存率を改善し、動物の70%と50%が生存した。
【0171】
結論:
したがって、この試験は、AMC耐性を有するKlebsiella pneumoniae株に対するAMCと組み合わせた特許請求医薬の有意な抗菌作用を示した。この作用は、この株が耐性を示す比較薬剤ゲンタマイシンの作用と同等であった。
【0172】
試験番号2
実験群:
群1-感染前5日間及び感染後2日間、特許請求医薬を、20ml/kg/日の用量で胃内投与し(n=5)、感染後1時間で、AMCを、10ml/kgの0.9%NaCl中25mg/kgの用量で、腹腔内経路により投与した雄性マウス。
【0173】
群2-感染前5日間及び感染後2日間、精製水を、20ml/kg/日の用量で胃内投与し(n=5)、感染後1時間で、AMCを、10ml/kgの0.9%NaCl中25mg/kgの用量で、腹腔内経路により投与したコントロール雄性マウス。
【0174】
試験設計:
Klebsiella pneumoniae(AMC耐性を有するBAA-1705株、10
7CFU/マウス)を投与することにより、細菌性肺炎モデル動物を構築した。感染後48時間で、両群のマウスの肺組織をホモジナイズし、1×10
4CFU/mlの
Klebsiella pneumoniaeの調製に使用した。次いで、細菌(5×10
4CFU/ウェル)を2.5~1080μg/mlのAMCと共に37℃で24時間インキュベートした。実験終了時に、AMCの50%阻害濃度(IC50)を、分光測色法によって、各群について推定し、1080μg/mlのAMCに曝露したときの100%細菌増殖阻害の値を推定した。実験は2連で行った。インタクトな細菌に対するAMCのIC50の影響を評価するために、追加の実験を行った(
図9を参照)。
【0175】
得られたデータの統計解析は、1元配置及び2元配置ANOVAを用いて行い、次いで、ログランク検定のペアワイズ比較を行った。p<0.05のとき、差が統計的に有意であるとみなした。
【0176】
試験結果:
AMCは、1080μg/mlで100%の阻害濃度を示し、AMCに対する
Klebsiella pneumoniae(BAA-1705)の耐性が確認された。インビトロ試験において、特許請求医薬とAMCとの共投与は、AMCのIC50を27%低減した。即ち、適用された治療は、50%の細菌増殖阻害を誘発するAMC濃度を低減した。1080μg/ml(100%増殖阻害濃度)の一定AMC濃度に対する試験組合せの作用の分析は、同様の結果を示した。即ち、AMCの最大阻害作用は、26%増加した(
図9)。
【0177】
結論:
したがって、この試験は、AMCに対する細菌耐性の低下をもたらすAMC耐性Klebsiella pneumoniae株に対する特許請求医薬とAMCとの組合せの有意な抗菌作用を示した。特許請求医薬は、肺感染症に対して有効であることが示された。
【0178】
実施例7
ラットのカラギーナン誘発性炎症モデルにおける特許請求医薬の抗炎症活性
【0179】
本試験の目的は、抗炎症薬インドメタシン(Sigma)と比較して、ラットのカラギーナン誘発性炎症モデルにおける、特許請求医薬の抗炎症活性を評価することである。本発明の医薬は、アフィニティ精製後のポリクローナル抗体のストック物質の段階希釈(С12С30С50希釈)から得られた2種類の技術処理物、即ち、1)主要組織適合遺伝子複合体クラスII分子のβ1ドメインに対する抗体(2.5mg/ml)と、2)主要組織適合遺伝子複合体クラスI分子のβ2-ミクログロブリンに対する抗体(2.5mg/ml)とを等量ずつ含む。
【0180】
実験群:
群1-特許請求医薬を、炎症誘発前5日間(最終投与-誘発前1時間)、7.5ml/kg/日の用量で胃内投与した雄性ラット(n=10)。
【0181】
群2-精製水を、炎症誘発前5日間(最終投与-誘発前1時間)、7.5ml/kg/日の用量で胃内投与した雄性ラット(n=10)。
【0182】
群3-インドメタシンを、10mg/kg(7.5ml/kg/日、精製水中)の用量で胃内投与したポジティブコントロールの雄性ラット。
【0183】
試験設計:
炎症応答は、0.1mlの1%カラギーナン溶液の(左後足の足底腱膜への)足底下注射によって動物に誘発した。
【0184】
炎症応答の重篤度は、浮腫がある場合とない場合の足部重量の差として計算された浮腫重量増加(単位:mg)を推定することによって評価した。
【0185】
知見の統計解析は、事後Tukey検定と組み合わせてKruskal-Wallis検定を用いて行った。p<0.05のとき、差が統計的に有意であるとみなした。
【0186】
試験結果:
特許請求医薬は、コントロールと比較して浮腫重量を39.1%低減させ、インドメタシンは57.9%低減させた(
図10)。
【0187】
結論:
したがって、特許請求医薬、即ち、HLA DRB1に対する抗体のストック物質の段階希釈から得られる技術処理物と、β2-MGに対する抗体のストック物質の段階希釈から得られる技術処理物との組成物は、足部浮腫重量を低減することにより、ラットのカラギーナン誘発性炎症モデルにおいて顕著な抗炎症作用を示した。
【0188】
実施例8
Salmonella entericaのストレプトマイシン又はナリジクス酸耐性株(それぞれ、JB271及びJB285)に対する特許請求医薬の抗菌活性
【0189】
これは、盲検プラセボ対照試験である。本試験の目的は、Salmonella enterica血清型Typhimurium LT-2によって引き起こされたマウスの実験的腹膜炎(敗血症)における抗生物質感受性耐性指数に対する特許請求医薬の効果を評価することである。本発明の医薬は、HLA-DRB1に対する抗体のストック物質の段階希釈から得られた技術処理物(2:1:3の比のポリクローナル抗体のС12C30C50希釈物(2mg/ml))と、β2-MGに対する抗体のストック物質の段階希釈から得られた技術処理物(2:1:3の比のポリクローナル抗体のС12C30C50希釈物(2mg/ml))とを1:1の体積比で含む。
【0190】
実験群:
群1-Salmonella enterica(5.0 log10CFU/動物にて腹腔内経路による、ストレプトマイシン感受性Salmonella enterica Typhimurium LT-2(JB270株)と、ストレプトマイシン耐性Salmonella enterica Typhimurium LT-2(JB271株)との1:1の組合せ)による感染後1、4、及び8時間で、プラセボ(精製水)を経口投与した雌性BALB/cマウス(n=12)。投与量-10ml/kg。
【0191】
群2-Salmonella enterica(5.0 log10CFU/動物にて腹腔内経路による、ストレプトマイシン感受性Salmonella enterica Typhimurium LT-2(JB270株)と、ストレプトマイシン耐性Salmonella enterica Typhimurium LT-2(JB271株)との1:1の組合せ)による感染後1、4、及び8時間で、特許請求医薬を経口投与した雌性BALB/cマウス(n=12)。投与量-10ml/kg。
【0192】
群3-Salmonella enterica(5.0 log10CFU/動物にて腹腔内経路による、ストレプトマイシン感受性Salmonella enterica Typhimurium LT-2(JB270株)と、ストレプトマイシン耐性Salmonella enterica Typhimurium LT-2(JB271株)との1:1の組合せ)を感染させた雌性BALB/cマウス(n=12);剤を投与しなかった群1及び群2から得たマウス(未処理動物)。
【0193】
群4-Salmonella enterica(5.0 log10CFU/動物にて腹腔内経路による、ナリジクス酸感受性Salmonella enterica Typhimurium LT-2(JB270株)と、ナリジクス酸耐性Salmonella enterica Typhimurium LT-2(JB285株)との1:1の組合せ)による感染後1、4、及び8時間で、プラセボ(精製水)を経口投与した雌性BALB/cマウス(n=12)。投与量-10ml/kg。
【0194】
群5-Salmonella enterica(5.0 log10CFU/動物にて腹腔内経路による、ナリジクス酸感受性Salmonella enterica Typhimurium LT-2(JB270株)と、ナリジクス酸耐性Salmonella enterica Typhimurium LT-2(JB285株)との1:1の組合せ)による感染後1、4、及び8時間で、特許請求医薬を経口投与した雌性BALB/cマウス(n=12)。投与量-10ml/kg。
【0195】
群6-Salmonella enterica(5.0 log10CFU/動物にて腹腔内経路による、ストレプトマイシン感受性Salmonella enterica Typhimurium LT-2(JB270株)と、ストレプトマイシン耐性Salmonella enterica Typhimurium LT-2(JB285株)との1:1の組合せ)を感染させた雌性BALB/cマウス(n=12);剤を投与しなかった群4及び群5から得たマウス(未処理動物)。
【0196】
試験設計:
試験期間は5日間とした。腹膜炎(敗血症)は、ストレプトマイシン及びナリジクス酸に対して感受性又は耐性を有するSalmonella entericaを5.0log10CFU/動物にて、1:1の比、即ち、JB270+JB271[StrepR]を1:1の比で、又はJB270+JB285[NalR]を1:1の比でそれぞれ腹腔内注射することによりマウスに誘発した。
【0197】
試験サンプルは、感染後1、4、及び8時間で、10ml/kgの用量で経口投与した。
【0198】
感染後2、3、及び4日目に、1群当たり4頭のマウスを頸椎脱臼により安楽死させ、それらの脾臓を回収した。回収した臓器をホモジナイズし、段階希釈した。次いで、得られた10倍希釈物20μlを、抗生物質(50μg/ml用量のストレプトマイシン又は30μg/ml用量のナリジクス酸)を含むLB寒天プレート上に3連でプレーティングした。
【0199】
24時間後、希釈あたりのコロニー形成ユニット(CFU)数をカウントし、JB270/JB271[StrepR]又はJB270/JB285[NalR]の脾臓組織1グラム当たりの感受性-耐性指数を各マウスについて計算した。
【0200】
知見の統計解析は、事後Tukey検定と組み合わせた2元配置反復測定ANOVAを用いて行った。p<0.05のとき、差が統計的に有意であるとみなした。
【0201】
試験結果:
ストレプトマイシン耐性
Salmonella enterica(JB271[Strep
R])とストレプトマイシン感受性JB270株とを1:1で使用した実験では、処理を行わなくても(群3)、実験全体を通して各株のCFU数が変化しなかったことが示された。プラセボ(精製水、群1)を投与した場合でも、同様の結果が得られた。しかし、群2(試験薬を投与したマウス)では、ストレプトマイシン耐性株のCFU数は、試験中、日々減少することが分かった。4日目と5日目に、JB270/JB271[Strep
R]比は、この群のベースライン値(それぞれ、66.7%と63.6%)とコントロール群との値の両方を超えた。群1(プラセボ)と比較すると、各値は、次のように増加することが分かった:試験の2日目で75%及び72.7%、3日目で75%及び72.7%、4日目で66.7%及び63.6%、並びに5日目で58.3%及び54.5%。群3(未処理動物)と比較すると、各値は、次のように増加することが分かった:試験の2日目で75%及び72.7%、3日目で83.3%及び81.8%、並びに4日目及び5日目で58.3%及び54.5%(
図11)。
【0202】
ナリジクス酸耐性
Salmonella enterica(JB285[Nal
R])とナリジクス酸感受性JB270株とを1:1で使用した実験では、処理を行わなくても(群6)は、実験全体を通して各株のCFU数に有意に影響しなかった。プラセボ(精製水、群4)を投与した場合でも、同様の結果が得られた。しかし、群5(試験薬を投与したマウス)では、ナリジクス酸耐性株のCFU数は、感染後2日目(試験の3日目)から徐々に低下した。試験終了までに、観察された作用は統計的有意性に達した:JB270/JB285[Nal
R]比は、試験3日目に同群で得られた値を50%上回った。更に、試験5日目に群5で得られた結果も、試験期間を通して両コントロール群の結果と有意に異なった。群4(プラセボ)と比較すると、各値は、70~90%に増加することが分かったが、群6(未処理動物)との差は、30~80%の間で変化した(
図12)。
【0203】
結論:
したがって、本試験は、Salmonella entericaに対する特許請求医薬の顕著な抗菌作用を示し、被試験抗生物質であるストレプトマイシン及びナリジクス酸に対する細菌の耐性が有意に低下した(即ち、JB271[StrepR]とJB285[NalR]のCFU数が減少した)。
【0204】
実施例9
Clostridium perfringens(ATCC 13124)に感染したマウスにおける医薬の有効性
【0205】
これは、盲検プラセボ対照比較試験である。本試験の目的は、ガス発生細菌Clostridium perfringensによるマウスの実験的感染における特許請求医薬の抗菌作用を評価することである。本発明の医薬は、HLA-DRB1に対する抗体のストック物質の段階希釈から得られた技術処理物(1:2:3の比のモノクローナル抗体のС12D50D200希釈物(1.5mg/ml))と、β2-MGに対する抗体のストック物質の段階希釈から得られた技術処理物(2:1:3の比のポリクローナル抗体のС12D50D200希釈物(1.5mg/ml))とを2:1の体積比で含む。
【0206】
実験群:
群1-Clostridium perfringens ATCC 13124による(腹腔内経路、1010CFU/動物)感染前5日間、感染後2時間及び8時間で、プラセボ(精製水)を経口投与した雌性非近交系Swiss Websterマウス(n=20)。投与量-10ml/kg。
【0207】
群2-Clostridium perfringens ATCC 13124による(腹腔内経路、1010CFU/動物)感染前5日間、感染後2時間及び8時間で、特許請求医薬を経口投与した雌性非近交系Swiss Websterマウス(n=20)。投与量-10ml/kg。
【0208】
群3-Clostridium perfringens ATCC 13124による(腹腔内経路、1010CFU/動物)感染後30分、4時間及び8時間で、21mg/kgの用量にて、テトラサイクリンを腹腔内経路により投与した雌性非近交系Swiss Websterマウス(n=20)。
【0209】
群4-Clostridium perfringens ATCC 13124による(腹腔内経路、1010CFU/動物)感染後30分、4時間及び8時間で、160mg/kgの用量にて、セフォキシチンを腹腔内経路により投与した雌性非近交系Swiss Websterマウス(n=20)。
【0210】
群5-Clostridium perfringens ATCC 13124による(腹腔内経路、1010CFU/動物)感染後30分、4時間及び8時間で、0.1ml/kgの量で、脱イオン水を腹腔内経路により投与した雌性非近交系Swiss Websterマウス(n=20)。
【0211】
試験設計:
試験期間は8日間とした。マウスの実験的感染は、Clostridium perfringens(ATCC 13124)を、1010CFU/動物の用量で腹腔内注射することにより誘発した。
【0212】
試験サンプルは、感染前5日間、感染後2時間及び8時間で、10ml/kgの用量で経口投与した。比較薬剤-21mg/kgのセフォキシチン及び160mg/kgのテトラサイクリン-とそれらのコントロール(脱イオン水、0.1ml/kg)は、感染後30分並びに4時間及び8時間にて、腹腔内経路で注射した。
【0213】
動物の生存率は、感染後12、24、48、及び72時間で、各群について推定した。
【0214】
知見の統計解析は、Kaplan Meier曲線を用いて行い、次いで、ログランク検定のペアワイズ比較を行った。p<0.05のとき、差が統計的に有意であるとみなした。
【0215】
試験結果:
感染したマウスのうち最も高い死亡率は、両コントロール群で観察され、動物への細菌感染後24時間で、群1(精製水)では生存マウスは5%のみであり、群5(脱イオン水)では100%のマウスが死んだ。特許請求医薬の治療的及び予防的投与(感染前5日間並びに感染後2時間及び8時間)は、動物の生存率を有意に上昇させた。この群では、85%の動物が感染後12時間生存し;55%が24時間、40%が48時間以降も生存した。この群では、85%の動物が感染後12時間生存し;55%が24時間、40%が48時間以降も生存した。比較薬剤、即ち、テトラサイクリンとセフォキシチンの群では、感染後12、24、48、及び72時間生存した動物数は、それぞれ、95%、85%、80%、80%(最後の測定では、死亡が観察されなかった)及び65%、55%、15%、15%(最後の測定では、死亡が観察されなかった)。なお、特許請求医薬の抗菌作用は、セフォキシチン群で得られた抗菌作用より有意に強力であった。それにもかかわらず、両薬剤は、テトラサイクリンより活性が低かった(
図13)。
【0216】
結論:
したがって、本試験は、Clostridium perfringens(ATCC 13124)に対する特許請求医薬の有意な抗菌作用を示し、2つのコントロール群(群1及び群5)及び比較薬剤セフォキシチンと比較して、生存率の有意な上昇をもたらした。
【0217】
実施例10
Chlamydophila pneumonia,CM1株に対する特許請求医薬の抗菌活性
【0218】
これは、盲検プラセボ対照比較試験である。本試験の目的は、Chlamydophila pneumonia CM1株によるマウスの実験的感染(肺感染のモデル)における特許請求医薬の抗菌作用を評価することである。本発明の医薬は、HLA-DRB1に対する抗体のストック物質の段階希釈から得られた技術処理物(2:1:3の比のポリクローナル抗体のС20C50C200希釈物(1.5mg/ml))と、β2-MGに対する抗体のストック物質の段階希釈から得られた技術処理物(2:1:3の比のポリクローナル抗体のС20C50C200希釈物(3mg/ml))とを1:2の体積比で含む。
【0219】
実験群:
群1-Chlamydophila pneumonia CM1株(気管内経路による、1.5*106IFU/動物(IFU-封入体形成ユニット))の注射前3日間、注射後2、24、48、及び72時間で、プラセボ(精製水)を経口投与した雄性C57BL/6Jマウス(n=21)。投与量-10ml/kg。
【0220】
群2-Chlamydophila pneumonia CM1株(気管内経路による、1.5*106IFU/動物)の注射前3日間、注射後2、24、48、及び72時間で、特許請求医薬を経口投与した雄性C57BL/6Jマウス(n=21)。投与量-10ml/kg。
【0221】
群3-Chlamydophila pneumonia CM1株(気管内経路による、1.5*106IFU/動物)の注射後30分、次いで、24時間ごとに(2、3、及び4日目)、アジスロマイシンを皮下投与した雄性C57BL/6Jマウス(n=21)。
【0222】
群4-インタクトな雄性C57BL/6Jマウス(n=5)[サイトカインレベルの推定のためのバックグラウンドコントロール]。
【0223】
試験設計:
試験期間は15日間とした。肺感染症モデルは、マウスに、1.5*106IFU/マウスの用量で、Chlamydophila pneumonia(CM1)の気管内投与によって誘発した。
【0224】
群1及び群2では、試験サンプルを、10ml/kgの用量にて、感染前3日間並びに細菌注射後2、24、48、及び72時間で経口投与した。比較薬剤アジスロマイシン(群3)は、感染後30分、次いで、24時間ごと(2、3、及び4日目)に、10mg/kgの用量で皮下投与した。
【0225】
動物の生存率は、感染後3、6、及び12日目に評価した。同日、3つの群、即ち、群1~3のそれぞれの4頭のマウスを頸椎脱臼によって屠殺し、それらの肺を回収した。回収した臓器をホモジナイズし、得られたホモジネートを用いて、Chlamydophila pneumonia(CM1)の細菌負荷とサイトカインレベル(IL-1β、IL-6、及びTNF-α)を測定した。
【0226】
バックグラウンド値を得るためのサイトカインレベルの測定に、その生物検体(肺組織ホモジネート)を使用したインタクトな動物を、群1~3のマウスの感染後3日目に屠殺した。
【0227】
細菌負荷を推定するために、肺ホモジネートのサンプル20μlを、1mg/mlシクロヘキシミドとHEp2細胞とを含有するRPMI1640培地に3連でプレーティングし、72時間インキュベートした。次いで、細胞をPBSで洗浄し、メタノールでブロッキングし、クラミジアの属特異的抗原に対するFITCコンジュゲートモノクローナル抗体(Pathfinder Chlamydia Culture Confirmation System;BIO-RAD,Hercules,USA)で染色した。蛍光顕微鏡を使用して調製物を調べ、感染細胞をカウントした。
【0228】
サイトカインレベルを、Bender MedSystems(USA)のELISA試験システムを使用して、製造元の指示にしたがって測定した。
【0229】
知見の統計解析は、事後Tukey検定及びKaplan Meier曲線と組み合わせたKruskal-Wallis検定を用いて行った後、ログランク検定のペアワイズ比較を行った。p<0.05のとき、差が統計的に有意であるとみなした。
【0230】
試験結果:
インタクトな群は、100%の動物生存率を示した。
【0231】
感染したマウスの死亡率が最も高かったのはコントロール群であり、試験3日目に、群1(プラセボとしての精製水)のマウスの53%が細菌接種後も生存したが、6日目以降は、マウスの24%であった。特許請求医薬(群2)の治療的及び予防的投与(感染前3日間並びに細菌接種後2、24、48、及び72時間)は、動物の生存率を有意に上昇させた。感染後3日目、動物の72%がこの群では生存し、6日目以降はマウスの62%が生存した。最も高い生存率(81%)は、比較薬剤であるアジスロマイシンを投与した動物(群3)で観察され、死亡は、感染後3日目に初めて記録され、死亡率は19%であった(
図14)。
【0232】
Chlamydophila pneumonia(CM1)に感染させたマウスの肺組織ホモジネートへの曝露後に感染したHEp2細胞数から決定した細菌負荷は、プラセボと比較し、特許請求医薬療法に応答して試験パラメータが線形的に減少したことを示し、群2(医薬)の感染細胞数は、感染後3、6、及び12日目に、それぞれ、67%、58%、及び21%であった。比較薬剤アジスロマイシン(群3)では、細菌負荷のより顕著な減少が観察され、感染後3、6、及び12日目に、それぞれ、最大15%、17%、及び5%であった(
図15)。
【0233】
特許請求医薬のイムノトロピック活性の試験は、IL-1β及びIL-6レベルがいずれも、コントロールと比較して、医薬(群2)の治療及び予防過程に応答して有意且つ線形的に低下することを示した。感染後3、6、及び12日目、IL-1β濃度は、コントロールレベル(群1、精製水)の55%、21%、及び20%であり、IL6濃度は、それぞれ、57%、34%、及び27%であった。群3(比較薬剤アジスロマイシン)では、インターロイキンレベルがいずれも、細菌負荷値と同様に、より顕著な線形低下を示した(IL-1β:感染後3、6、及び12日目に、それぞれ、コントロールレベルの17%、7%、及び6%まで低下;IL-6:それぞれ、15%、8%、及び5%まで低下)(
図16、
図17)。
【0234】
マウスの肺組織におけるTNF-αレベルは、いずれの群においても変化を示さなかった。これは、誘発された肺感染症の実験モデルにおいて、このサイトカインの濃度に変化がなく、生物学的有意性が観察されなかったことを示唆している(
図18)。
【0235】
結論:
したがって、Chlamydophila pneumonia,CM1株によって引き起こされる肺感染症のモデルに関する研究は、特許請求医薬の顕著且つ付随する抗菌及びイムノトロピック作用を示した。発揮された活性は、試験終了までに動物の生存率において、2.5倍を超える上昇をもたらし、肺における細菌負荷において79%の低下をもたらし、炎症誘発性サイトカインレベルにおいても低下をもたらした(IL-1βは80%低下、IL-6は73%低下)。
【0236】
実施例11
Klebsiella pneumoniae,8637株に対する特許請求医薬の抗菌活性
【0237】
これは、盲検プラセボ対照比較試験である。本試験の目的は、Klebsiella pneumoniae 8637株による免疫不全マウスの実験的感染(好中球減少性の肺感染モデル)における特許請求医薬の抗菌作用を評価することである。本発明の医薬は、HLA-DRB1に対する抗体のストック物質の段階希釈から得られた技術処理物(2:3の比のモノクローナル抗体のС30C200希釈物(3mg/ml))と、β2-MGに対する抗体のストック物質の段階希釈から得られた技術処理物(3:1の比のポリクローナル抗体のС30C200希釈物(3mg/ml))とを1:1の体積比で含む。
【0238】
実験群:
群1-Klebsiella pneumoniae 8637株(鼻腔内経路による、2*107CFU/動物)による感染後4、6、8、24、及び48時間で、プラセボ(精製水)を経口投与した雌性ICRマウス(n=20)。投与量-10ml/kg。
【0239】
群2-Klebsiella pneumoniae 8637株(鼻腔内経路による、2*107CFU/動物)による感染後4、6、8、24、及び48時間で、特許請求医薬を経口投与した雌性ICRマウス(n=20)。投与量-10ml/kg。
【0240】
群3-Klebsiella pneumoniae 8637株(鼻腔内経路による、2*107CFU/動物)による感染後4、24、及び48時間で、比較薬剤イミペネムを腹腔内経路により投与した雌性ICRマウス(n=20)。
【0241】
試験設計:
試験期間は9日間とした。肺感染症モデルは、2*107CFU/動物の用量で、Klebsiella pneumoniae(8637株)を鼻腔内接種することにより免疫不全マウスに誘発した。好中球減少症(免疫抑制)を誘発するために、動物に、感染前4日(-4日目)に200mg/kgの用量で、腹腔内経路によりシクロホスファミドを投与した。
【0242】
群1及び群2では、試験サンプルは、10ml/kgの用量で、治療レジメン、即ち、細菌接種後4、6、8、24、及び48時間で経口投与した。比較薬剤イミペネム(群3)は、2mg/kgの用量で、感染後4、24、及び48時間で腹腔内投与した。
【0243】
Klebsiella pneumoniae(8637株)による感染後5日間、動物の生存率を推定した。実験終了時、即ち、感染後5日目に、群当たり5頭のマウスを屠殺し、血液、肺、肝臓、脾臓、及び腎臓を取り出してCFU数を測定した。単離した臓器をホモジナイズし、段階希釈した。全ての組織検体の10倍希釈物200μlを、Mueller-Hinton寒天上に3連でプレーティングし、24時間インキュベートした。
【0244】
知見の統計解析は、事後Tukey検定と組み合わせて1元配置ANOVAを用いて行い、多重検定のためのBenjamini-Hochberg補正を伴うログランク検定を用いて、生存曲線を比較することによって行った。p<0.05のとき、差が統計的に有意であるとみなした。
【0245】
試験結果:
感染したマウスの死亡率が最も高かったのはコントロール群であり、試験の1日目、群1(プラセボとしての精製水)のマウスの55%が、細菌の接種後、2日目、3日目、4日目、及びそれ以降生存し、それぞれマウスの45%、20%、及び15%が生存した。特許請求医薬(群2)による治療(細菌接種後4、6、8、24、及び48時間)は、動物の生存率を有意に上昇させた。感染後1日目に、動物の85%がこの群では生存し、2、3、4日目、及びそれ以降、それぞれマウスの70%、60%、及び45%が生存した。比較薬剤イミペネムを投与した動物(群3)で最も高い生存率が観察され、感染後1日目で85%、2日目で70%、感染後3日目以降で50%生存した(
図19)。
【0246】
Klebsiella pneumoniae(8637株)に感染させた免疫不全マウスの血液、肺、肝臓、脾臓、及び腎臓の細菌負荷の評価は、CFUの数が、コントロール(プラセボ)と比較し、特許請求医薬療法に応答して全ての組織で低下したことを示し、血液で68%、肺で56%、肝臓で36%、脾臓で33%、及び腎臓で44%低下した。比較薬剤イミペネム(群3)についても、同様の作用が観察され、血液、肺、肝臓、脾臓、及び腎臓の細菌負荷は、それぞれ、67%、48%、40%、45%、及び61%低下した(
図20)。
【0247】
結論:
したがって、シクロホスファミド及びKlebsiella pneumoniae(8637株)の投与によって誘発した免疫不全マウスの肺感染症モデルに対して行った試験は、特許請求医薬の顕著な抗菌作用を示した。観察された活性により、試験終了時まで、プラセボと比較して生存率が30%上昇し、血液、肺、肝臓、脾臓、及び腎臓の細菌負荷が少なくとも3分の1低下した。
【0248】
実施例12
ホワイトマウスにおいてインフルエンザA/カリフォルニア/07/09(H1N1)pdm09株によって引き起こされた致死的なインフルエンザ感染のモデルに対する特許請求医薬の抗ウイルス作用
【0249】
これは、盲検プラセボ対照試験である。本試験の目的は、インビボでのインフルエンザA/カリフォルニア/07/09(H1N1)pdm09株に対する有効量でのTamifluTM(オセルタミビル)と比較した、特許請求医薬の抗ウイルス作用を調べることである。本発明の医薬は、a)HLA-DRB1に対する抗体(1:3:1の比のС12С30С50希釈物)、b)β2-ミクログロブリンに対する抗体(1:3:1の比のС12С30С50希釈物)、c)インターフェロンガンマに対する抗体(1:3:1の比のС12С30С50希釈物)、及びd)CD4に対する抗体(1:3:1の比のС12С30С50希釈物)のストック物質の段階希釈から得られた技術処理物を1:1:1:1の体積比で含む。
A)水性アルコール溶媒中の主要組織適合遺伝子複合体クラスII分子のβ1ドメイン(HLA-DRB1)に対するポリクローナル抗体のストック(マトリクス)溶液の3種類の異なる連続希釈物を組み合わせることによって得られる、HLA-DRB1に対するポリクローナル抗体のストック物質の段階希釈から得られる技術処理物(2.5mg/ml)。以下の希釈物を1:3:1の比で混合した。
1)各希釈物を振とうしながら、10012倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C12希釈物に相当)。
2)各希釈物を振とうしながら、10030倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C30希釈物に相当)。
3)各希釈物を振とうしながら、10050倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C50希釈物に相当)。
B)水性溶媒中のβ2-マイクログロブリン(β2-MG)に対するポリクローナル抗体のストック(マトリクス)溶液の3種類の異なる連続希釈物を組み合わせることによって得られる、β2-MGに対するモノクローナル抗体のストック物質の段階希釈から得られる技術処理物(1.0mg/ml)。以下の希釈物を1:3:1の体積比で混合した。
1)各希釈物を振とうしながら、10012倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C12希釈物に相当)。
2)各希釈物を振とうしながら、10030倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C30希釈物に相当)。
3)各希釈物を振とうしながら、10050倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C50希釈物に相当)。
C)水性アルコール溶媒中のインターフェロンガンマ(IFN-γ)に対するポリクローナル抗体のストック(マトリクス)溶液の3種類の異なる連続希釈物を組み合わせることによって得られる、IFN-γに対するポリクローナル抗体のストック物質の段階希釈から得られる技術処理物(2.5mg/ml)。以下の希釈物を1:3:1の比で混合した。
1)各希釈物を振とうしながら、10012倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C12希釈物に相当)。
2)各希釈物を振とうしながら、10030倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C30希釈物に相当)。
3)各希釈物を振とうしながら、10050倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C50希釈物に相当)。
D)水性アルコール溶媒中のCD4に対するポリクローナル抗体のストック(マトリクス)溶液の3種類の異なる連続希釈物を組み合わせることによって得られる、CD4に対するポリクローナル抗体のストック物質の段階希釈から得られる技術処理物(1.0mg/ml)。以下の希釈物を1:3:1の比で混合した。
1)各希釈物を振とうしながら、10012倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C12希釈物に相当)。
2)各希釈物を振とうしながら、10030倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C30希釈物に相当)。
3)各希釈物を振とうしながら、10050倍希釈したストック(マトリクス)溶液(C50希釈物に相当)。
【0250】
実験群:
群1-実験を通してプラセボを投与した動物(n=30)(ネガティブコントロール(「ウイルスコントロール」))。
【0251】
群2-感染後5日間、比較薬剤TamifluTM(オセルタミビル)を投与し、その後、非盲検プラセボを投与したマウス(n=30)(ポジティブコントロール比較薬剤)。
【0252】
群3-実験を通して特許請求医薬を投与したマウス(n=30)。
【0253】
群4-実験を通してインターフェロンガンマに対する抗体の活性化増強化形態を投与したマウス(n=30)。
【0254】
群5-実験を通してCD4に対する抗体の活性化増強化形態を投与したマウス(n=30)。
【0255】
群6-実験を通してHLA-DRB1に対する抗体の活性化増強化形態を投与したマウス(n=30)。
【0256】
群7-実験を通してβ2-ミクログロブリンに対する抗体の活性化増強化形態を投与したマウス(n=30)。
【0257】
試験設計:
実験終了まで、感染前5日間、感染前4時間、感染後4時間、及び感染後14日間、(試験物質の総投与時間は20日間)、動物に、特許請求医薬を毎日、0.4ml/マウスの量で1日2回、朝と夕方の午前10時と午後5時に経口投与した(0.8ml/マウス/日)[“Guidelines on non-clinical studies of pharmaceutical products” edited by A.N. Mironov (Moscow, 2012)]。
【0258】
ウイルスを、鼻腔内経路により、0.05ml/マウス(2.5×103TCID50、5LD50)の量で動物に接種した[He B, Fu Y, Xia S, et al. Intranasal application of polyethyleneimine suppresses influenza virus infection in mice. Emerging Microbes & Infections. 2016;5(4):e41-. doi:10.1038/emi.2016.64.]。
【0259】
比較薬剤TamifluTM(オセルタミビル)を、感染後5日間、1日2回、午前10時と午後5時に、0.4ml/マウスの量で15mg/kgの用量にて強制経口投与した(30mg/マウス/日)。投与は、感染前1時間に開始した[Oseltamivir in influenza A/H1N1 //Journal of Antimicrobial Chemotherapy, 2005, 55, p.5-21]。この群では、フォローアップ期間終了まで、感染前5日間及び感染後6~14日目に、マウスに、0.4ml/マウスの量の蒸留水を1日2回投与した(0.8ml/マウス/日)。また、ネガティブコントロールに、フォローアップ期間を通して、1日2回(0.8ml/マウス/日)0.4ml/マウスの用量でプラセボを投与した。
【0260】
全てのマウスについて、動物工学的パラメータ(生体重、生存率、平均寿命(MLE)、保護指数)を調べ、ウイルス学的試験を行った。
【0261】
試験結果:
死亡率、平均寿命(MLE)、及び保護指数を示す、特許請求医薬の活性に関する生データを、表1にまとめる。フォローアップ期間は、動物の感染後14日間とした。死亡率は、コントロール群と試験群とで毎日記録した。得られたデータに基づいて、以下のパラメータを計算した。
【0262】
-死亡率-1群当たりの感染動物の総数に対する、14日間に亘る死亡動物の数:M(%死亡率)=M/Nt
【0263】
保護指数-コントロール群の死亡率(%)に対する、コントロール群と試験群との死亡率(%)差:PI=((Mc-Me)/Mc)×100%
【0264】
フォローアップ期間の14日間に亘る平均動物寿命:MDD=(ΣN×D)/Nt、式中、M-1群当たり14日間に亘る死亡動物数、Mc及びMe-それぞれコントロール(ウイルスコントロール)群及び試験群の死亡率、N-D日間生存した動物数、Nt-1群当たりの感染動物の総数。
表4.
【表4】
【0265】
得られたデータから分かるように、インフルエンザA/カリフォルニア/097/09(H1N1)pdm09によるマウスの感染は、病理学的プロセスを活性化し、感染後平均8.5日間で75%の動物死亡率をもたらした。特許請求医薬の投与により、死亡率は25%まで低下した(保護指数64.2%)。この群のMLE値は、8.9日であった。
【0266】
体重変化の分析に際し、死亡率分析(感染後14日間)に含まれた動物のデータのみを調べた。
表5.M±SDで表す実験動物の体重
【表5】
【0267】
動物(n=10)の感染後5日目に、肺組織におけるウイルス力価を決定した。各群の動物の肺におけるインフルエンザウイルスの平均感染力価を表6に示す。
表6.
【表6】
【0268】
医薬品の非臨床試験に関するガイドライン[Guidelines on non-clinical studies of pharmaceutical products / Ed. by A.N. Mironov. - Moscow: ZAO Grif and Co. - 2012. - Part 1. - 944 p.]によると、処理された動物の群におけるウイルス力価の1.75lg以上の低下が、その複製の阻害を示唆している。この試験では、特許請求医薬は、ウイルス力価を2.4 lgTCID50低下させた。
【0269】
結論:
死亡率の低下に関して最も高い活性は、特許請求医薬(PI=64.2)で観察され、その組合せられた有効性は、各成分単独の有効性より高かった。加えて、本発明の医薬は、顕著な抗ウイルス効果を示し、ウイルス力価を2.4 lgTCID50低下させた。
【0270】
実施例13
インビボでインフルエンザA/ニュージャージー/8/76(H1N1)ウイルス及びStreptococcus pneumoniae(S.pneumoniae)を動物に連続感染させた後の医薬1及び2の抗菌活性の試験
【0271】
本試験の目的は、インフルエンザA/ニュージャージー/8/76(H1N1)ウイルスによる動物の感染から7日後にS.pneumoniaeによって引き起こされた肺炎球菌感染症に対する医薬1及び2の抗菌作用の比較評価を行うことである。医薬1は、ヒトIFN-γに対する抗体、ヒスタミンに対する抗体、及びCD4に対する抗体を、10012、10030、10050倍希釈した3種類の水性アルコール希釈物の混合物である(エルゴフェロン)。本発明の医薬2は、a)HLA-DRB1に対する抗体(ポリクローナル抗体の1:1:1の比でのС12С30С50希釈物(2mg/ml))、b)β2-ミクログロブリンに対する抗体(1:1:1の比でのポリクローナル抗体のС12С30С50希釈物(2mg/ml))、c)インターフェロンガンマに対する抗体(1:1:1の比でのモノクローナル抗体のС12С30С50希釈物(3mg/ml))、及びd)CD4に対する抗体(1:1:1の比でのモノクローナル抗体のС12С30С50希釈物(3mg/ml))のストック物質の連続希釈から得られた技術処理物を1:1:1:1の体積比で含む。
【0272】
実験群:
群1-ウイルス感染(0日目)前5日間、医薬1を、毎日20ml/kg/日の総投与量(2時間間隔で約0.2ml/マウスにて1日2回)で胃内投与し、且つ感染前2時間で胃内投与した雌性マウス(n=15)。
【0273】
群2-ウイルス感染(0日目)前5日間、医薬2を、毎日20ml/kg/日の総投与量(2時間間隔で約0.2ml/マウスにて1日2回)で胃内投与し、且つ感染前2時間で胃内投与した雌性マウス(n=15)。
【0274】
群3-ウイルス感染(0日目)前5日間、精製水を、毎日20ml/kg/日の総投与量(2時間間隔で約0.2ml/マウスにて1日2回)で胃内投与し、且つ感染前2時間で胃内投与したコントロール雌性マウス(n=15)。
【0275】
群4-A/ニュージャージー/8/76(H1N1)に感染させ、7日後に、S.pneumoniaeに感染させた未処理コントロール雌性マウス。このコントロールは、群2(n=15)でプラセボ効果を示すことができる。
【0276】
群5-S.pneumoniaeのみを感染させたモデルコントロール雌性マウス。このコントロールは、総CFU数に対するウイルスの事前感染の影響を示すことができる(n=15)。
【0277】
試験設計:
動物に、インフルエンザA/ニュージャージー/8/76(H1N1)ウイルスを、1×106TCID50/マウスの用量で鼻腔内感染させ、次いで、ウイルス感染後7日目に気管内経路で1×106CFUでS.pneumoniaeを感染させた。S.pneumoniae接種後24、48、及び120時間で、1群当たり5頭のマウスを屠殺し、それらの肺を単離し細菌負荷を評価した。回収した肺を滅菌リン酸緩衝液でホモジナイズし、段階希釈した。次いで、得られた希釈物を固体培地プレートにプレーティングし、増殖したコロニーをカウントした。得られた結果を、CFU/g(肺)として表した。
【0278】
試験結果:
この研究では、インフルエンザA/ニュージャージー/8/76(H1N1)ウイルスに動物を感染させた後7日目に、S.pneumoniaeによって引き起こされた肺炎球菌感染症に対する医薬1及び医薬2の抗菌活性を調べた。この実験モデルにおける医薬1及び医薬2どうしの有効性も比較した。
【0279】
S.pneumoniae感染から24時間後、
S.pneumoniaeのCFU数が最も高かったのは、未処理コントロール群(インフルエンザA/ニュージャージー/8/76(H1N1)ウイルスと
S.pneumoniaeとに順次感染させたマウス、未処理動物)及びコントロール(インフルエンザA/ニュージャージー/8/76(H1N1)ウイルスと
S.pneumoniaeとに順次感染させ、精製水で処理したマウス)であった(
図21)。その時点までに、ウイルス及び細菌に感染したマウスの肺の細菌負荷は、コントロール(群3)と比較して、医薬1及び医薬2によってそれぞれ2倍及び6倍有意に低下し、医薬2は、医薬1の3倍の有効であった。
【0280】
S.pneumoniae感染から48時間後、S.pneumoniaeのCFU数が最も高かったのは、依然として、未処理コントロール群とコントロール群であった。しかし、これらの群の絶対CFU数は、5倍超低下した。その時点までに、医薬1の抗菌作用の強さはコントロール値(群3及び群4)の2倍であったが、医薬2を投与したマウス(群2)の肺細菌負荷は、コントロール値(群3)の24.4%であり、未処理コントロール値の26.7%(群4)であった。医薬1群と医薬2群との間に、統計的有意差はみられなかった。
【0281】
S.pneumoniaeによるマウスの感染から120時間後に初めて、単離されたCFUが全ての群にみられた。
【0282】
結論:
医薬1及び医薬2の抗菌活性試験から、各医薬が有意な抗菌作用を発揮することが示された。それらの比活性の比較分析から、本発明の特許請求医薬(医薬2)が医薬1より顕著な効果を有することが示された。
【0283】
実施例14
インフルエンザH1N1/Aカリフォルニア04/2009ウイルス及びStaphylococcus aureus(1986株)によって引き起こされた実験的ウイルス/細菌性肺炎における特許請求医薬の有効性
【0284】
本試験の目的は、インフルエンザH1N1/Aカリフォルニア04/2009ウイルス及びStaphylococcus aureus(1986株)によって引き起こされた実験的なウイルス/細菌性肺炎における特許請求医薬の治療活性を調べることである。本発明の医薬は、アフィニティ精製ポリクローナル抗体の各ストック物質、即ち、1)主要組織適合遺伝子複合体クラスII分子(HLA-DRB1)に対する抗体(2.5mg/ml)、2)主要組織適合遺伝子複合体クラスI分子のβ2-ミクログロブリンに対する抗体(2.5mg/ml)、3)ヒトインターフェロンガンマに対する抗体(2.5mg/ml)、及び4)CD4に対する抗体(2.5mg/ml)の連続希釈(С12С30С50希釈)により得られた4種類の技術処理物を等量ずつ含む。
【0285】
実験群:
群1-ウイルス感染前3日間及びウイルス感染後5日間、特許請求医薬を20ml/kg/日の用量で胃内投与したマウス(n=10)。
【0286】
群2-ウイルス感染前3日間及びウイルス感染後5日間、精製水を胃内投与したマウス(20ml/kg/日の用量、n=10)。
【0287】
群3-ポジティブコントロール1、ウイルス感染前4時間とウイルス感染後4時間に、腹腔内経路でオセルタミビル(Tamiflu(登録商標)、Hoffmann-La Roche、10mg/kg/日)を投与し、その後5日間1日2回投与したマウス(n=10)。
【0288】
群4-ポジティブコントロール2、セフロキシム(Zinacef(登録商標)、GlaxoSmithKline)を、20mg/kgの用量で、細菌感染後3日間(又はウイルス感染後4日間)皮下投与したマウス(n=10)。
【0289】
群5-ネガティブコントロール、他の群と同様の時点での、インフルエンザウイルス及び細菌に感染した未処理マウス(n=10)。
【0290】
試験設計:
続発性ウイルス性/細菌性肺炎を、インフルエンザH1N1/Aカリフォルニア04/2009ウイルスを104/5TCID50/0.1mlの用量で鼻腔内接種し、且つStaphylococcus aureus(1986株)を2×107CFU/mlの用量で鼻腔内接種することにより、動物に誘発した。全ての実験群において、Staphylococcus aureus(1986)を、インフルエンザウイルス感染後5日目に投与した。2日後、動物の肺(1群当たりn=3)をホモジナイズし、細菌負荷とウイルス力価について調べた。残りのマウスについては、一般的な健康状態のパラメータとして体重を毎日測定し、生存率を記録した。
【0291】
統計解析:
知見の統計解析は、因子として群、3次スプラインとの共変量として日数、及びランダム効果として対象IDを含む線形混合モデル(群間比較は、事後Tukey検定を使用して毎日行った)を用い;Kaplan-Meier曲線を用いた後、ログランク検定と、多重検定のためのBenjamini-Hochberg補正との比較を行い;Benjamini-Hochberg法により補正された事後Dunn検定と組み合わせてKruskal-Wallis検定を用いて行った。p<0.05のとき、差が統計的に有意であるとみなした。
【0292】
試験結果:
特許請求医薬は、実験的続発性(ウイルス性/細菌性)肺炎の動物の死亡率を、(コントロール(群2)に対して)40%低下させた。これは、比較薬剤セフロキシム(群4)の作用と同様であった(
図22)。
【0293】
本発明の医薬は、比較薬剤オセルタミビルと同様に、ネガティブコントロール群と比較して肺ウイルス力価を15%超低下させた。
【0294】
実験マウスの細菌負荷又は体重に統計的に有意な差は観察されなかった。
【0295】
結論:
したがって、特許請求医薬は、感染した動物の生存率を高め、肺におけるウイルス増殖を低減することにより、実験的続発性ウイルス性/細菌性肺炎に治療効果を示した。
【0296】
実施例15
インビボでの呼吸器合胞体ウイルスに対する活性の評価
【0297】
本試験の目的は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV、A2株)に対する特許請求医薬の抗ウイルス活性を評価することである。本発明の医薬は、アフィニティ精製ポリクローナル抗体の各ストック物質、即ち、1)主要組織適合遺伝子複合体クラスII分子(HLA-DRB1)に対する抗体(2.5mg/ml)、2)主要組織適合遺伝子複合体クラスI分子のβ2-ミクログロブリンに対する抗体(2.5mg/ml)、3)ヒトインターフェロンガンマに対する抗体(2.5mg/ml)、及び4)CD4に対する抗体(2.5mg/ml)の連続希釈(С12С30С50希釈)により得られた4種類の技術処理物を等量ずつ含む。
【0298】
実験群:
群1-感染前2時間を含む感染前5日間、その後、4日間、20ml/kg/日の用量で特許請求医薬を胃内投与したマウス(1日2回、2時間間隔で約0.2ml/マウス、n=10)。
【0299】
群2-感染前2時間を含む感染前5日間、その後、4日間、特許請求医薬の成分(Anaferon for Children)、即ち、インターフェロンガンマに対する抗体の希釈物を20mlの用量で単剤療法として胃内投与したマウス(1日2回、2時間間隔で約0.2ml/マウス、n=10)。
【0300】
群3-感染前2時間を含む感染前5日間、その後、4日間、20ml/kg/日の用量で精製水を胃内投与したコントロールマウス(1日2回、2時間間隔で約0.2ml/マウス、n=10)。
【0301】
群4-RSVモデルコントロール(n=10);マウスを、群1、群2、及び群3のマウスと同一時点でRSV A2に感染させた。
【0302】
群5-RSV+UVモデルコントロール(n=10);群1、群2、及び群3のマウスと同一時点でUV不活化RSV A2に感染させたマウス。UV不活化は、RSVをUV光に20分間曝露することによって事前に行った。不活化ウイルスは気道感染症を引き起こさないので、適切なネガティブコントロールであるが、不活化ウイルス物質に存在するビリオン成分は、動物の免疫系のパラメータに影響をし得る。このコントロールは、その複製によって正確に達成される、動物の気道に対するウイルスの影響を示すことができる。
【0303】
群6-ウイルスに感染されておらず、未処理であったインタクトなコントロールマウス(n=10)。
【0304】
試験設計:
5つの群の動物に、5×106 TCID50/マウスの用量で、腹腔内経路によってRSV A2株(RSV A2)を感染させた。実験5日目に、動物の気管支過感受性(RSV A2が炎症を引き起こすことによって気道に影響を与えるため)は、ノースカロライナ州ウィルミントンのBuxcoElectronicsの機器を使用した非侵襲的プレチスモグラフィーによって推定した。装置の調整及び較正後、異なる群のマウスを、プレチスモグラフ(チャンバ)内の動物を拘束する仕切りとして、首輪で分けられた鼻腔及び胸腔チャンバからなる二重チャンバプレチスモグラフ(プラスチックボックス)に入れた。0、6.25、12.5、及び25mg/mlの上昇濃度のメタコリン溶液10μlで3分間接種した。
【0305】
感染後6日目に、リアルタイムPCRで全動物の肺ウイルス量を測定した。回収した肺組織をRLTバッファ(Qiagen)でホモジナイズし、製造元の推奨事項にしたがい市販のRNasyミニキット(Qiagen)を使用して、共通RNAを単離した。更に、製造元の推奨事項にしたがいOТ-1キット(Syntol)を使用し、cDNAを合成するためのテンプレートとして共通RNAを使用した。相補的DNA(cDNA)は、ウイルスRNAを定量化するためにリアルタイムPCRに使用した。リアルタイムPCR技術は、製造元の推奨事項にしたがいSyntolの市販試薬キット、特定のプライマーキット、及びIQ5検出システム(BioRad)を使用して行った。
【0306】
統計解析:
知見の統計解析は、2元配置ANOVAを用いて行い、ペアワイズ比較は、最小二乗法によって行い、多重度制御は、SAS PROC MIXED手順を使用したシミュレーションによって行った。RNAデータの場合、多重度制御は、Dunnettの検定を使用して行った(記録した数値をまず計算した)。p<0.05のとき、差が統計的に有意であるとみなした。
【0307】
試験結果:
最も高い気管支過感受性は、精製水を投与したコントロール群(群3)のマウスで観察された。特許請求医薬の成分のみで処理されたマウス(群2)では、気管支過感受性は中程度であり、コントロールと統計的に異なっていた。気管支抵抗の最も低い上昇は、特許請求医薬による処理過程後に記録された(
図23)。
【0308】
ウイルスRNAの最高濃度は、RSV群(群4)のマウスの検体でみられた。ウイルスのUV不活化により、ウイルスRNA数が有意に低下した(最大10倍)が、ウイルスRNAは検出できた。このことは、定量PCRによって検出されたUV不活化ウイルスサンプルに相当量のゲノムRNAが存在するためであった。RSV(群4)及びRSV+UV(群5)の各群のマウスの肺におけるウイルスRNA数の有意差は、不活化ウイルスが気道で複製できることを示した。その事実は、選択した実験モデルが適切であることを示した。
【0309】
コントロール群(群3)及びRSV群(群3)と比較して、ウイルスRNA量の統計的に有意な低下が、群1(特許請求医薬)及び群2(特許請求医薬成分による単剤療法)の動物から得られた検体で記録された(群4)(
図24)。特許請求医薬の群では、ウイルスRNA数は、その成分のみの群の4分の1であった。
【0310】
結論:
インビボでのRSV感染のマウスモデルに対する特許請求医薬の抗ウイルス活性試験は、本発明の医薬が肺における気管支過感受性及びウイルスRNA量を低下させることを示した。したがって、RSV(A2株)に対する特許請求医薬の有意な抗ウイルス作用が確認された。
【0311】
実施例16
ラットのPseudomonas aeruginosa(RP73)感染症における医薬の有効性
【0312】
これは、盲検プラセボ対照比較試験である。本試験の目的は、Pseudomonas aeruginosa(RP73)によるラットの実験的感染における特許請求医薬の抗菌活性を評価することである。この細菌は、成人患者の約80%で不可逆的な肺損傷を伴う慢性肺感染症を引き起こす。本発明の医薬は、アフィニティ精製モノクローナル抗体のストック物質の連続希釈により得られた4種類の技術処理物、即ち、1)HLA-DRB1に対する抗体(2:3:1の比のС10D40С150希釈物(3mg/ml))、2)β2-ミクログロブリンに対する抗体(3:1の比のС10С150希釈物(3mg/ml))、3)インターフェロンガンマに対する抗体(2:3:1の比のС10D40С150希釈物(3mg/ml))、及び4)CD4に対する抗体(2:3:1の比のС10C30С200希釈物(3mg/ml))を1:1:1:1の体積比で含有する。
【0313】
実験群:
群1-Pseudomonas aeruginosa株RP73(気管内経路、6.5*107CFU/ml)に感染し、医薬を投与しなかった雄性Sprague-Dawleyラット(n=10)(未処理動物)。
【0314】
群2-Pseudomonas aeruginosa株RP73(気管内経路、6.5*107CFU/ml)の感染前24時間、感染後24、48、72、及び96時間でプラセボ(精製水)を経口投与した雄性Sprague-Dawleyラット(n=10)。投与体積-7.5ml/kg。
【0315】
群3-Pseudomonas aeruginosa株RP73(気管内経路、6.5*107CFU/ml)の感染前24時間、感染後24、48、72、及び96時間で比較薬剤トブラマイシンを中咽頭経路で3mg/kgの用量にて投与した雄性Sprague-Dawleyラット(n=10)。投与体積-7.5ml/kg。
【0316】
群4-Pseudomonas aeruginosa株RP73(気管内経路、6.5*107CFU/ml)の感染前24時間、感染後24、48、72、及び96時間で特許請求医薬を経口投与した雄性Sprague-Dawleyラット(n=10)。投与体積-7.5ml/kg。
【0317】
試験設計:
試験期間は7日間とした。ラットを、6.5*107CFU/mlで、気管内経路によりPseudomonas aeruginosa(RP73)に感染させた。プラセボ(精製水)及び特許請求試験物質は、感染前24時間及び細菌接種後24、48、72、及び96時間で、7.5ml/kgの用量で経口投与した。比較薬剤トブラマイシンは、同一時点で3mg/kgの用量にて中咽頭経路で動物に投与した。
【0318】
動物の体重を、試験期間を通して測定した。
【0319】
感染後5日目に、ラットを屠殺し、気管支肺胞洗浄液と肺サンプルを細菌負荷分析のために回収した。肺をホモジナイズし、全サンプルを段階希釈し、次いで、得られた希釈液の40μlを、グラム陰性菌用の変法Drygalski-Conradi培地に3連でプレーティングした。24時間後、気管支肺胞洗浄液と肺の調製サンプルでCFU数をカウントした。
【0320】
知見の統計解析は、事後Tukey検定と組み合わせた2元配置反復測定ANOVAを用いて行った。p<0.05のとき、差が統計的に有意であるとみなした。
【0321】
試験結果:
不可逆的な肺損傷に関連する慢性肺感染症を引き起こす最も一般的な細菌であるPseudomonas aeruginosa(RP73)によるラットの気管内感染は、動物の全身状態の悪化とそれに伴う体重減少をもたらた。群1(未処理動物)では、このパラメータは、ベースラインと比較して、実験終了時までに27%低下した。同様の効果が、28%低下した群2(プラセボ)でも観察された。
【0322】
特許請求医薬(群4)の使用は、感染したラットの一般的な健康状態の改善を促進した。即ち、体重減少は、群1及び群2と比較して顕著でなく、全体的な減少は15%であった。比較薬剤は、最大の保護効果を発揮した。即ち、群3(トブラマイシン)では、試験終了時までの平均体重は、4%しか減少しなかった(
図25)。
【0323】
Pseudomonas aeruginosa(RP73)による気管内感染後5日目のラットの肺及び気管支肺胞洗浄液サンプルの細菌負荷を推定すると、特許請求医薬は、治療及び予防の処理過程、即ち、感染前24時間及び細菌の気管内接種後24、48、72、及び96時間で投与したとき、有意な抗菌作用を発揮することが分かった。CFU数が群1(未処理動物)と比較して有意差を示さなかったプラセボ群(群2)と異なり、特許請求医薬は、肺CFU数を、未処理動物と比較して29%、プラセボと比較して19%低下させ(
図26)、気管支肺胞洗浄液のCFU数は、それぞれ、33%及び34%低下した(
図27)。比較薬剤で得られた肺細菌負荷値は、特許請求医薬の値と同様であった。即ち、トブラマイシンに応答した肺CFUの低下は、未処理動物と比較して29%、プラセボと比較して19%であった。気管支肺胞洗浄液サンプルでは、トブラマイシンの抗菌活性がより顕著であることが分かった。即ち、2つのコントロール群(未処理動物及びプラセボ)と比較して88%であった。
【0324】
結論:
成体ラットの約80%に不可逆的な肺損傷を伴う慢性肺感染症を引き起こす細菌であるPseudomonas aeruginosa(RP73株)によるラットの実験的感染を用いて行った試験では、特許請求医薬は、有意な抗菌効果を発揮することが示された。これは、動物の一般的な健康状態の重要な指標である体重減少がより少なく、肺(1.2~1.4倍)及び気管支肺胞洗浄液サンプル(1.5倍)の細菌負荷の低下によって示された。
【0325】
実施例17
Porphyromonas gingivalis(ATCC 33277)に感染したマウスにおける医薬の有効性
【0326】
これは、盲検プラセボ対照試験である。本試験の目的は、Porphyromonas gingivalis(歯周病を引き起こす主な病原体の1つ)によるマウスの実験的感染における特許請求医薬の抗菌作用及びイムノトロピック(抗炎症性)作用を評価することである。本発明の医薬は、アフィニティ精製ポリクローナル抗体のストック物質の連続希釈により得られた技術処理物、即ち、1)HLA-DRB1に対する抗体(2:3の比のС50С200希釈物(1.5mg/ml))、2)β2-ミクログロブリンに対する抗体(1:2の比のС50С200希釈物(1.5mg/ml))、3)インターフェロンガンマに対する抗体(1:3の比のС50С200希釈物(1.5mg/ml))、及び4)CD4に対する抗体(3:2の比のС50C200希釈物(1.5mg/ml))を2:3:2:1の体積比で含有する。
【0327】
実験群:
群1-Porphyromonas gingivalis ATCC 33277(皮下、108CFU/動物)に感染させ、医薬を投与しなかった雄性C57B6/Ntacマウス(n=10)(未処理動物)。
【0328】
群2-Porphyromonas gingivalis ATCC 33277(皮下、108CFU/動物)の感染後、2、24、48、及び78時間で、プラセボ(精製水)を経口投与した雄性C57B6/Ntacマウス(n=10)。投与体積-10ml/kg。
【0329】
群3-Porphyromonas gingivalis ATCC 33277(皮下、108CFU/動物)の感染後、2、24、48、及び78時間で、特許請求医薬を経口投与した雄性C57B6/Ntacマウス(n=10)。投与体積-10ml/kg。
【0330】
試験設計:
試験期間は25日間とした。実験的感染は、Porphyromonas gingivalis(ATCC 33277)を、108CFU/動物の用量で、事前に埋め込んだチャンバに皮下注射することによりマウスに誘発させた[Infect Immun.1991 Apr;59(4):1255-63]。
【0331】
試験物質は、感染後2、24、48、及び72時間で、10ml/kgの用量にて経口投与した。
【0332】
細菌接種後4日目に、事前に埋め込んだ皮下チャンバを取り除き、チャンバ内の細菌負荷及び炎症性サイトカインレベル(IL-1β、IL-6)を測定した。
【0333】
細菌負荷を推定するために、連続希釈チャンバ液20μlを、ブルセラ血液寒天プレートに3連でプレーティングし、嫌気性条件下で96時間インキュベートした。
【0334】
サイトカインレベルは、製造元の指示にしたがってR&D Systems(USA)の試験システムを使用するELISAによって測定した。
【0335】
知見の統計解析は、Kruskal-Wallis検定を、事後Tukey検定及びKaplan Meier曲線と組み合わせて用いて行い、次いで、ログランク検定のペアワイズ比較を行った。p<0.05のとき、差が統計的に有意であるとみなした。
【0336】
試験結果:
皮下に埋め込んだチャンバに10
8CFU/マウスで細菌をインビボ注射後4日目に、得られた細菌負荷値(
Porphyromonas gingivalisのCFU、ATCC 33277の数)は、治療過程、即ち、感染後2、24、48、及び72時間で投与したとき、特許請求試験物質の有意な抗菌作用を示した。CFU数が群1(未処理動物)と同様であったプラセボ群(群2)と異なり、特許請求医薬は、CFU数を未処理動物と比較して41%、プラセボと比較して34%低下させた(
図28)。
【0337】
10
8CFU/マウスの用量で、
Porphyromonas gingivalis(ATCC 33277)のインビボ注射後4日目に、皮下に埋め込んだチャンバ内のサイトカインレベル(IL-1β及びIL-6)に対する特許請求医薬の影響を測定することによって評価したとき、特許請求医薬のイムノトロピック活性は有意であることが分かった。コントロール及び群1(未処理動物)と比較して、特許請求医薬に応答したサイトカインレベルの統計的に有意な低下が記録された。即ち、IL-1βは、群1に対して49%、群2(プラセボ)に対して41%低下し、IL-6は、群1に対して60%、群2に対して63%低下した(
図29、
図30)。
【0338】
結論:
したがって、歯周病を引き起こす主要な病原体の1つであるPorphyromonas gingivalisによるマウスの実験的感染を使用して行った試験では、特許請求医薬は、プラセボと比較して、細菌負荷の約3倍の低下、且つ炎症誘発性サイトカインレベルの低下(IL-1βの1.7倍の低下及びIL-6の2.7倍の低下)をもたらす有意な抗菌及びイムノトロピック(抗炎症性)作用を発揮することが示された。
【0339】
実施例18
Mycobacterium tuberculosisH37Rv株に対する特許請求医薬の抗菌活性
【0340】
これは、盲検プラセボ対照比較試験である。本試験の目的は、Mycobacterium tuberculosis(H37Rv株)によるマウスの実験的感染における特許請求医薬の抗菌作用を評価することである。本発明の医薬は、アフィニティ精製モノクローナル抗体のストック物質の連続希釈により得られた技術処理物、即ち、1)HLA-DRB1に対する抗体(3:2:1の比のC12С30С50希釈物(2mg/ml))、2)β2-ミクログロブリンに対する抗体(3:2:1の比のC12С30С50希釈物(2mg/ml))、3)インターフェロンガンマに対する抗体(3:2:1の比のC12С30С50希釈物(2mg/ml))、及び4)CD4に対する抗体(3:2:1の比のC12С30С50希釈物(2mg/ml))を2:2:2:1:2の体積比で含有する。
【0341】
群1-Mycobacterium tuberculosis H37Rv(5*104CFU/動物)に静脈内感染させ、医薬を投与しなかった雌性C57BL/6マウス(n=15)(未処理動物)。
【0342】
群2-Mycobacterium tuberculosis H37Rv(静脈内経路、5*104CFU/動物)の感染後22日目から4週間、プラセボ(精製水)を経口投与した雌性C57B6/Ntacマウス(n=15)。投与体積-10ml/kg。
【0343】
群3-Mycobacterium tuberculosis H37Rv(静脈内注射、5*104CFU/動物)の感染後22日目から4週間、比較薬剤、即ち、イソニアジド(25mg/kg)+リファンピシン(20mg/kg)+エタンブトール(100mg/kg)の組合せを経口投与した雌性C57BL/6マウス(n=15)。
【0344】
群4-Mycobacterium tuberculosis H37Rv(静脈内注射、5*104CFU/動物)の感染後22日目から4週間、特許請求医薬を経口投与した雌性C57BL/6マウス(n=15)。投与体積-10ml/kg。
【0345】
試験設計:
試験期間は50日間とした。実験的感染は、Mycobacterium tuberculosisH37Rv株に、5*104CFU/動物の用量で静脈内注射することによりマウスに誘発した。
【0346】
群2及び群4では、試験物質は、処理過程、即ち、感染後22日目から28日間、10ml/kgの用量で経口投与した。群3では、比較薬剤(イソニアジド(25mg/kg)+リファンピシン(20mg/kg)+エタンブトール(100mg/kg)の組合せ)を、同一レジメンにしたがって投与した。
【0347】
実験終了時まで、感染後50日目に、マウスを屠殺し、それらの肺をMycobacterium tuberculosisのCFU(H37Rv)について調べた。単離した肺をホモジナイズし、段階希釈し、希釈液20μlを7H11寒天プレートに3連でプレーティングし、24時間インキュベートした。
【0348】
知見の統計解析は、事後Tukey検定と組み合わせた2元配置ANOVAを用いて行った。p<0.05のとき、差が統計的に有意であるとみなした。
【0349】
試験結果:
Mycobacterium tuberculosis(H37Rv)に感染させたマウスで推定された肺の細菌負荷は、群1(未処理動物)及び群2(プラセボ)と比較して、特許請求医薬に応答してCFU数の低下を示した(それぞれ、43%及び37%低下)。比較薬剤(イソニアジド(25mg/kg)+リファンピシン(20mg/kg)+エタンブトール(100mg/kg)の組合せ)は、未処理動物及びプラセボ群のそれぞれと比較して、細菌負荷を54%及び49%低下させることにより、同様の作用を発揮した(
図31)。
【0350】
結論:
したがって、Mycobacterium tuberculosis(H37Rv)誘発感染症のマウスモデルを用いて行った試験は、肺の細菌負荷が2倍低下する、特許請求医薬の有意な抗菌作用を示した。
【0351】
実施例19
Salmonella typhimurium変異原性試験による特許請求医薬の潜在的変異原性活性の評価
【0352】
本試験の目的は、Salmonella typhimurium変異原性試験(Ames試験)における特許請求医薬の潜在的変異原性を調べることである。本発明の医薬1は、HLA-DRB1に対する抗体のストック物質の段階希釈により得られた技術処理物(1:1:1の比のポリクローナル抗体のС12С30С50水性希釈物、2.5mg/ml)と、β2-MGに対する放出活性抗体のストック物質の段階希釈により得られた技術処理物(1:1:1の比のポリクローナル抗体のС12С30С50水性希釈物、2.5mg/ml)とを1:1の体積比で含有する。本発明の医薬2は、a)HLA-DRB1に対する抗体(1:1:1の比のポリクローナル抗体のC12С30С50希釈物、2.5mg/ml)、b)β2-ミクログロブリンに対する抗体(1:1:1の比のポリクローナル抗体のC12С30С50希釈物、2.5mg/ml)、c)インターフェロンガンマに対する抗体(1:1:1の比のポリクローナル抗体のC12С30С50希釈物、2.5mg/ml)、及びd)CD4に対する抗体(1:1:1の比のポリクローナル抗体のC12С30С50希釈物、2.5mg/ml)を1:1:1:1の体積比で含有する。
【0353】
試験設計:
Ames試験は、代謝活性化システムがある場合とない場合において、Salmonella typhimuriumテスター株TA97a、TA98、TA100、TA102、及びTA1535を使用して採用した。代謝活性化システムの存在下で試験する場合、試験物質の生体内変化は、非近交系ホワイトラットから得た肝臓ホモジネートの遠心分離(9000g)で調製したミクロソーム代謝酵素を含むS9画分混合物を使用して達成した。酵素誘導は、300mg/kgの用量で腹腔内経路によりラットに投与したsovolで行った。
【0354】
試験医薬及び精製水(コントロール)は、0.1~1000μl/プレートのアッセイ標準用量範囲内で、希釈係数10で試験した。特許請求医薬の直接変異原性活性は、代謝活性化のないアッセイで評価した。これらのアッセイでは、薬剤100μlと細菌培養物100μlとをプレートに注ぎ、ミクロソーム混合物はサンプルに添加しなかった。ポジティブコントロールは、標準的な変異原、即ち、ТА100株の場合、アジ化ナトリウム(1プレート当たり5μgの濃度)、ТА97株の場合、9-アミノアクリジン(10μg/プレート)、ТА98株の場合、2,7-ジアミノ-4,9-ジオキシ-5,10-ジオキソ-4,5,9,10-テトラヒドロ-4,9-ジアゾピレン(DDDTDP;100μg/プレート)を用いて調製した。代謝活性化のないアッセイでは、プロミュータゲンシクロホスファンを用いた(500μg/プレート)。最小培地プレート上に細菌と試験物質とを接種し、37℃で2日間インキュベートした後、ヒスチジン復帰変異体コロニー数をカウントした。各濃度について、3枚のプレートで試験した。
【0355】
実験モデルごとに、3枚のプレート当たりの復帰変異体コロニーの幾何平均数を決定した。標準偏差は、幾何平均数からの、3枚のプレートのうちの1枚の復帰変異体数の最大偏差として計算された。コントロール値に対する、試験組成物を用いたアッセイにおける幾何平均復帰変異体数の増加の有意性は、変法多重比較検定(Dunnetの検定)を用いて評価した。p<0.05のとき、差が統計的に有意であるとみなした。
【0356】
試験結果:
復帰変異体の数は、特許請求医薬に適用した試験条件下におけるコントロールの数と同様であった。
【0357】
結論:
各種クラスのシトクロムP450依存性モノオキシゲナーゼの活性を向上させるsovolを、特許請求医薬の代謝活性化を達成するための生体内変化酵素誘導剤として使用したので、本発明の医薬の可能な代謝物は、変異原活性を有しないと結論付けることができる。したがって、特許請求医薬は、非変異原性であるとみなされる。
【0358】
実施例20
特許請求医薬の毒性試験
【0359】
毒性試験は、Good Laboratory Practice(GOST 33044-2014)及び医薬品の非臨床試験に関するガイドラインに準拠して行った[Mironov AN, Bunatyan ND. Guidelines on non-clinical studies of pharmaceutical products. Moscow, Grif and Co. 2012; 944 p.]。
【0360】
大多数の医薬品について承認された一般的な薬物動態及び薬力学的モデル(用量-濃度-作用の関係)は、特許請求医薬(HLA-DRB1及びβ2-MGに対する各抗体のストック物質の連続希釈から得られる技術処理物)に適用することができない(利用可能な物理化学的及び免疫学的方法では、生物の生物学的流体中の薬物濃度を検出することができない)ので、毒性試験のための用量選択は、医薬が添加される、生理学的に許容される量の溶媒(実験的試験では精製水)に基づく。
【0361】
急性毒性:
試験は、雄性及び雌性の成熟非近交系アルビノマウス(体重22~26g、月齢2.5ヶ月)並びに雄性及び雌性の成熟Wistarラット(体重225~250g、月齢4ヶ月)に対して胃内投与を用いて行った。試験医薬(n=18)又は精製水(コントロール、n=18)のいずれかの2用量を、最大用量を、マウスで25ml/kg、ラットで20ml/kgとして、2時間間隔で胃内投与した。インタクト群は、化合物を投与しなかった(n=18)。投与後のフォローアップ期間は2週間とした。
【0362】
得られたデータの統計解析は、2元配置ANOVAを用いて行い、次いで、事後Tukey検定を用いて群間比較を行った。p<0.05のとき、差が統計的に有意であるとみなした。
【0363】
HLA-DRB1に対する抗体のストック物質の複数回の段階希釈から得られた技術処理物(2:1:3の比のポリクローナル抗体のС12С30С50水性希釈物、2.5mg/ml)と、β2-MGに対する抗体のストック物質の複数回の段階希釈から得られた技術処理物(2:1:3の比のポリクローナル抗体のС12С30С50水性希釈物、2.5mg/ml)とを含む特許請求医薬の、成熟マウス及びラットに対する最大用量での胃内経路による投与は、動物の一般的な健康(不安の兆候、食欲、排泄、粘液膜、毛、皮膚などに変化なし)又はラット及びマウス(雄性と雌性との両方)の体重増加に影響を与えなかった。
【0364】
同様の結果が、a)HLA-DRB1に対する抗体(1:3:1の比のポリクローナルのС12С30С50希釈物、2.5mg/ml)、b)β2-MGに対する抗体(1:3:1の比のポリクローナルのС12С30С50希釈物、2.5mg/ml)、c)IFN-γに対する抗体(1:3:1の比のポリクローナルのС12С30С50希釈物、2.5mg/ml)、及びd)CD4に対する抗体(1:3:1の比のポリクローナルのС12С30С50希釈物、2.5mg/ml)のストック物質の段階希釈から得られた技術処理物を含む本発明の医薬を用いて、前記条件と同条件下で得られた。
【0365】
医薬を投与した動物が死亡しなかったので、LD50を計算することができなかった。したがって、医薬の最大用量を超える用量は、従来のLD50として採用した。
【0366】
最大用量での特許請求医薬の2つの胃内用量は、動物の健康に毒性作用をもたらすことがみられなかったので、特許請求医薬は安全であり、低毒性として分類することができ、GHS分類に準拠するカテゴリー5に割り当てることができると結論付けられる。
【0367】
反復投与毒性:
本試験は、雄性及び雌性の従来の成熟アルビノラット200頭(体重180~242g、月齢3.5~4ヶ月)と、雄性及び雌性の成熟チンチラウサギ24頭(体重1.9kg、月齢2.5~3ヶ月)に対して行った。医薬のLD50値を決定することが不可能であったため、この慢性毒性試験では、医薬又は精製水を、胃内投与に許容される最大用量及び最大用量の25%でラットに胃内投与した。ウサギには、1日の水分摂取量に近い量で医薬を投与した。
【0368】
投与期間は6ヶ月とし、ラットとウサギの健康状態を、医薬の投与開始後3ヶ月目及び6ヶ月目、並びに中止後1ヶ月目に評価した。
【0369】
ヒトの最大1日用量の100倍を超える用量での、雄性及び雌性の成体ラットに対する本発明の医薬の長期間胃内投与においても、6ヶ月間の投与期間中に、動物が死ぬことがなく、医薬の投与後3ヶ月目及び6ヶ月目並びに医薬の投与中止後1ヶ月目のコントロール群と比較して、動物の挙動又は末梢血の形態学的及び機能的パラメータに有意な変化を引き起こさなかった。
【0370】
更に、前記用量での医薬の長期投与は、ラットの内臓のマクロ及びミクロ形態学的及び組織学的構造の有意な変化を伴わなかった。
【0371】
ウサギに対する試験では、研究期間を通して死亡も観察されなかった。医薬の長期投与は、動物の一般的な健康状態、挙動、及び体重、又は末梢血及び骨髄の造血パラメータに有意な影響を及ぼさなかった。ウサギ血漿の生化学は、有意な変化を示さなかった。更に、6ヶ月間医薬を投与したウサギの尿に変化は観察されなかった。医薬を6ヶ月間投与したウサギの内臓のマクロスコピックな検査において、異常な変化は見られなかった。臓器組織の組織学的検査において、異常は認められなかった。
【0372】
結論:
実施した試験に基づくと、特許請求医薬は、6ヶ月間、10ml/kgの用量で成体ラットに、50ml/kgの用量(ヒトの平均1日量の100倍を超える用量)でウサギに胃内投与したとき、動物の一般的な健康状態及び挙動に有意な影響を及ぼさず、心血管系、胃腸系、及び排泄系に異常又は形態機能的変化を引き起こさないと結論付けることができる。
【0373】
実施例21
急性呼吸器ウイルス感染症の治療における、特許請求医薬の多施設、二重盲検、プラセボ対照、ランダム化臨床試験
【0374】
本試験の目的は、急性呼吸器ウイルス感染症(ARVI)の治療における特許請求医薬の有効性及び安全性を評価することとした。吸収用の錠剤の形態の本発明に係る調製物は、アフィニティ精製されたa)HLA-DRB1に対する抗体、b)β2-ミクログロブリンに対する抗体、c)インターフェロンガンマに対する抗体、及びd)水-アルコール混合物の形でラクトース一水和物に適用されたCD4に対する抗体のポリクローナルのストック物質の段階希釈(C12C30C50の希釈)から得られた4種類の技術処理物を同一量ずつ含む。
【0375】
試験設計:
本試験には、発症から1日目にARVIの臨床症状(検査時の腋窩温度38.0℃以上+一般的症状の合計重症度が4ポイント以上、鼻/喉/胸の症状が2ポイント以上)が見られた18~70歳の男性及び女性の外来患者(240名の患者)が含まれた。患者の募集は、ARVIの季節的発生期間中に実施した。
【0376】
スクリーニング手続を受けた後、240名の患者を、2群に無作為化し、118名は医薬群(5日間、レジメンにしたがって特許請求医薬を服用)、122名はプラセボ群(5日間、レジメンにしたがってプラセボを服用)とした。これらの患者(n=240)の治療と観察の結果は、ARVI患者間などにおける対象治療の安全性及び薬効のITT(治療企図(Intention-to-treat))解析を評価するために使用し、PCRによって確認した(n=78の医薬群及びn=73のプラセボ群)。6名の患者(医薬群の3名の患者とプラセボ群の3名の患者)から得られたデータは、プロトコルからの逸脱(禁止された治療薬の処方)のために薬効のPP(プロトコルセット)解析に含めなかった。完全な治療を受け、所定の診療の全てを完了し、プロトコルからの大幅な逸脱がなかった患者の数は、医薬群の115名とプラセボ群の119名とを含む234名であった。これらの患者のデータは、ARVI患者間などにおける薬効のRR解析に使用し、PCRによって確認した(n=76の医薬群及びn=72のプラセボ群)。
【0377】
患者を14日間フォローアップした(スクリーニング、無作為化-最大1日間、治療-5日間、フォローアップ-最大2日間;遅延した電話「診療」-14日間)。治療とフォローアップの過程で、患者は、主治医/医師を3回訪問し、4回目の電話「診療」を追加で行った。診療2と診療3の間、担当医師は、客観的な検査を実施し、疾患の症状の動態、併用療法を記録し、日誌の完成を管理した。診療3で、コンプライアンスを評価し、実験室試験を実施した。本試験は、電子患者日誌(EPD)も使用し、腋窩体温と疾患の症状を毎日、午前と午後に記録した。
【0378】
治療設計:
特許請求医薬の服用スキーム:1回の服用につき1錠。治療1日目:最初の2時間、30分ごとに1錠、その後、1日目は、定期的に更に3回。2~5日目:1錠を1日3回。医薬は食事外(食間又は食前15~30分)で服用し、錠剤が完全に溶解するまで飲み込まずに口の中に入れておく。入院期間は5日間である。
【0379】
比較治療:特許請求医薬のレジメンにしたがって、5日間、プラセボ、トローチ。
【0380】
基本及び併用療法:試験中、患者に、ARVIの症候性療法用の医薬(解熱剤/非ステロイド性抗炎症薬(パラセタモール/イブプロフェン)及び/又は血管収縮経鼻薬-オキシメタゾリン/ナファゾリン及び/又は鎮咳/去痰薬-ブタミレート/アンボミレート(ambomyrate)、グアイフェネシン、アセチルシステイン)の投与を可能とした。
【0381】
サンプル:
トータルセット-これらは、患者情報シートとインフォームドコンセントフォームに署名した、試験に登録済みの全患者である。このサンプルは、試験治療の開始前を含む、試験中に記録された全有害事象(AE)を含む。
【0382】
安全性解析対象集団-試験薬を少なくとも1回投与した全無作為化患者。このサンプルは、医薬投与後に患者で特定された全AEを記録したため、試験薬の安全性の分析に使用した。インフォームドコンセントが署名された時点以降であるが、試験薬の服用前にトータルセットサンプルの患者で報告されたAEは、試験薬の安全性分析に考慮しない。
【0383】
最大の解析対象集団(ITT母集団)。これらは、以下の事象の少なくとも1つを経験した患者を除いて、包含され且つ無作為化された全ての患者である。
1)包含/除外基準に対する不適合;
2)患者が、試験薬を全く服用しなかった;
3)無作為化及び試験薬投与後の患者データの喪失。
【0384】
「Intention-to-treat」の原則と最もよく一致するこのサンプルは、試験療法の有効性のIntention-to-treat解析(ITT分析)に用いた。
【0385】
欠落/欠測データ(指標/オプション)を記入するために、最後の観測データを転送する方法である「LOCF」(Last Observation Carried Forward)を用いた。
【0386】
プロトコル遵守集団。このサンプルは、プロトコルで処方された完全な治療を受け、予定された診療を全て完了し、プロトコルから大幅な逸脱がなかった全患者を含む。このサンプルは、試験療法の有効性のプロトコル遵守集団解析(PP解析)に用いた。
【0387】
プロトコル遵守集団サンプルは、プロトコルからの逸脱が明らかになった結果として、データが完全に又は部分的に解析に適さなかった患者を包含しなかった。
【0388】
統計学的手法:
2群の結果を連続変数について比較するために、正規性のためのShapiro-Wilk検定の結果に応じて、2標本のStudentのt検定又はノンパラメトリックなWilcoxon検定を使用した。分散分析(SASのMixedプロシジャ)を使用して、2群における指標の変化を比較した。Kruskal-Wallis検定を使用して、患者のバイタルサインを解析した。2群における割合(パーセント)を比較するために、Fisherの正確確率検定又はCochran-Mantel-Hensel検定を、Breslow-Day検定による後者の適用性の検定と共に用いた。
【0389】
効力のアサインメント:
プライマリーエンドポイントによる治療の有効性の分析
ARVI症状が消失するまでの時間(PCRによる確認)。
MMN-407による治療のバックグラウンドに対して、PCR(鼻咽頭サンプルで検出されたウイルスを用いる)によって確認されたARVI患者の疾患の症状が全て消失するまでの時間は、(プラセボ療法のバックグラウンドで5.0±2.5[5.0±2.5]日間であったのに対して)4.1±1.9[4.0±1.9]日間であった(表7)。
表7.ARVI症状が消失するまでの時間(PCRによる確認)。
【表7】
【0390】
医薬群では、疾患が、患者の25%で3.0[2.8]日間未満、50%で、3.0[2.8]~5.0[5.0]日間(下位四分位数と上位四分位数との境界)続いた。プラセボ群では、患者の25%が6.0[6.3]日間以上(上位四分位数の上限)、疾患の症状を呈した。
【0391】
ITT解析に含まれる医薬群の患者のうち、ARVI疾患の持続期間は、プラセボ群より平均-0.89±2.23日間短かった(2群間のデルタ)。プロトコルにしたがって治療と観察を完了した医薬群の患者では、ARVIの持続期間は約1日間短かった([-0.93±2.25]、RR解析で得られたデータ)。
【0392】
更なるエンドポイントによる治療の有効性の解析
【0393】
1)(臨床的に診断された及び/又はPCRによって確認された)ARVI症状が消失した患者の割合
(PCRで確認されたものを含む臨床的に診断された)ARVI症状が解消した患者の割合は、治療3日目から徐々に増加した。治療5日目の医薬群では、患者の半数超(62.7[64.4]%)が健常であった(
図32)。治療5日間終了時、特許請求医薬を投与した患者の72.9[73.0]%がARVIから回復した。
【0394】
統計解析は、治療期間全体に亘って、プロトコルにしたがう試験への参加を完了し回復した患者の割合が、プラセボ群より医薬群の方が高かったことを示した(Cochran-Mantel-Hensel検定;RR解析で得られたデータ:[p=0.0201])。
【0395】
2)ARVI症状の消失までの時間(PCRによる確認を含む臨床診断)
【0396】
(無作為化された全参加者間でのPCRによる確認を含む、臨床的に診断された)ARVI症状の消失までの時間を推定する更なるエンドポイントに関するデータの解析も、症候性ARVI療法に加えて医薬を使用する利点を示している(表8)。
表8.ARVI症状が消失するまでの時間(PCRによる確認を含む臨床診断)。
【表8】
【0397】
医薬群では、疾患が、患者の25%で3.0日間未満、50%で、3.0~5.5日間(下位四分位数と上位四分位数との境界)続いた。プラセボ群では、患者の25%が6.0日間超(上位四分位数の上限)、疾患の症状を呈した。
【0398】
ITT解析に含まれる医薬群の患者のうち、PCRによる確認を含む臨床的に診断されたARVI疾患の持続期間は、プラセボ群より平均-0.41±2.34日間短かった(2群間のデルタ)。プロトコルにしたがって治療と観察を完了した医薬群の患者では、ARVIの持続期間は[-0.47±2.36]日間短かった(RR解析で得られたデータ)。
【0399】
したがって、PCRにより確認されたものを含む、臨床的に診断されたARVI患者全てにおいて、症状が消失するまでの時間は医薬群でプラセボ群より短かった。
【0400】
3)1~3日間の治療期間における徴候に応じた解熱剤の服用回数
【0401】
医学的徴候にしたがい、解熱薬(診療1で治験責任医師によって調剤されたパラセタモール又はイブプロフェン)が、試験中に許可された。
【0402】
解熱剤は、疾患の1日目、2日目、及び3日目に、医薬群で平均0.30±0.68[0.28±0.67]、0.19±0.48[0.20±0.48]、及び0.03±0.22[0.02±0.13]回、プラセボ群で0.38±0.67[0.36±0.64]、0.24±0.53[0.23±0.53]、及び0.04±0.20[0.04±0.20]回処方された。
【0403】
統計解析では、観察から1~3日間以内に服用した解熱薬の数に、群間差は見られなかった。
【0404】
したがって、ARVI患者の治療における特許請求医薬の有効性は、解熱剤を含む対症療法用医薬の使用に差がない場合に示される。
【0405】
観察開始から4~14日間で疾患の経過の悪化(抗生物質又は入院を必要とする合併症の発症)を示した患者の割合
【0406】
医薬群(N=118)では、(PCRによる確認を含む、臨床的に診断された)ARVIの無作為化された全患者のうち、抗菌薬が処方された1例(0.8%)が急性気管支炎と診断された。プラセボ群(N=122)では、肺炎(入院した患者、n=1)、急性化膿性気管支炎(n=1)、副鼻腔炎(n=1)を含む細菌性合併症のため、3名(2.5%)の患者に抗菌薬が処方された。
【0407】
したがって、特許請求医薬をARVI複合治療に含めることは、疾患の経過の悪化を防ぎ、抗菌療法と患者の入院を必要とする細菌性合併症の発症を防ぐのに役立った。
【0408】
安全性評価:
安全性評価と治療の忍容性は、試験薬/プラセボを少なくとも1回投与した、包含され且つ無作為化された全患者から得られたデータに基づき行った(安全性解析対象集団;n=240)。試験参加者のバイタルサインを評価し、有害事象(AE)、医薬服用との関係、重篤度、結果を記録した。実験室パラメータ(臨床血液分析、一般的な尿分析、生化学マーカー)の動態について調べた。
【0409】
1)バイタルサインの動態。
【0410】
特許請求医薬は、収縮期(SBP)、拡張期(DBP)血圧、心拍数(HR)、呼吸数(RR)など、試験参加者の重要な機能に悪影響を及ぼさなかった。
【0411】
試験全体の平均SBP及びDBP値は、正常で十分に制御された値に対応していた。統計解析では、医薬群とプラセボ群の診療1~3で、SBP、DBP、心拍数、及びRRに差は示されなかった。
【0412】
2)有害事象
合計で、治療及びフォローアップ期間中に、9種類のAEが医薬群9名(7.6%)の患者で記録され、11種類のAEがプラセボ群9名(7.4%)の参加者で記録された。全AEのうち、最も一般的なのものは、上腹部痛(n=2、医薬群、n=0、プラセボ群)、感染症及び浸潤(市中感染性肺炎を含む、n=1、プラセボ群;副鼻腔炎、n=1、プラセボ群);急性気管支炎、n=1、医薬群及びn=1、プラセボ群;急性鼻咽頭炎、n=1、医薬群;急性尿細管耳炎(acute tubo otitis)、n=1、医薬群;単純ヘルペス、n=1、医薬群及びn=1、プラセボ群)、及び注射部位での一般的な障害と反応(n=2、プラセボ群、口唇浮腫の形態、n=1、疾患の悪化、n=1)であった。
【0413】
医薬群では、9種類(100.0%)のAEは軽度であった。プラセボ群では、11種類(100.0%)。研究者によれば、AEと試験中の特許請求医薬との間に因果関係は存在しなかった。
【0414】
3)実験室パラメータの動態
治療の安全性を評価するために、血液と尿の生化学的及び一般的臨床パラメータについて調べた。ベースライン時と治療過程終了時との両方で、これらの実験室パラメータの平均値は、所定の年齢及び性別における正常な指標に対応するレファレンス値を超えなかった。
【0415】
したがって、安全性パラメータの分析から、医薬がARVI患者の治療において安全であることが示された。
【0416】
結論:
本試験は、特許請求医薬による5日間の治療が、ARVI患者に有効且つ安全であることを示す。本発明に係る医薬の使用は、ARVI症状のより迅速な消失(回復)をもたらし、このことは、ARVI複合療法に本医薬を含ませることの利点を示している。