(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015683
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】レンズ及び照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20240130BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20240130BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20240130BHJP
F21V 5/08 20060101ALI20240130BHJP
G02B 3/06 20060101ALI20240130BHJP
G02B 3/08 20060101ALI20240130BHJP
G02B 3/04 20060101ALI20240130BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240130BHJP
F21Y 113/10 20160101ALN20240130BHJP
【FI】
F21S2/00 600
F21S2/00 610
F21V5/00 510
F21V5/04 200
F21V5/04 600
F21S2/00 230
F21V5/04 450
F21V5/08
G02B3/06
G02B3/08
G02B3/04
F21Y115:10
F21Y113:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117915
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】糸賀 賢二
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本開示は、光軸方向の長さを変更しても配光特性を維持できるレンズ及び照明装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示のレンズは、光源21から照射対象に向かう光軸L方向に対し長手方向を直交させて配置され、長手方向に垂直な断面において、光軸L方向及び長手方向に平行な中央平面について対称な断面形状を有するレンズ3であって、光源1に対向して配置される入光面31と、光軸L方向において入光面31よりも照射対象側に配置された出光面33と、入光面31及び出光面33の間に位置し、長手方向に沿って配置された側面32と、を備え、入光面31は、光軸L方向及び長手方向に垂直な幅方向において、中央に凹部31bが形成され、凹部31bの周辺に平坦部31aを有し、出光面33は、平坦部31aと平行な出光平面を備え、側面32は、平坦部31aに直交する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射対象に向かう光軸方向に対し長手方向を直交させて配置され、前記長手方向に垂直な断面において、前記光軸方向及び前記長手方向に平行な中央平面について対称な断面形状を有するレンズであって、
前記光源に対向して配置される入光面と、
前記光軸方向において前記入光面よりも照射対象側に配置された出光面と、
前記入光面及び前記出光面の間に位置し、前記長手方向に沿って配置された側面と、を備え、
前記入光面は、
前記光軸方向及び前記長手方向に垂直な幅方向において、中央に凹部が形成され、前記凹部の周辺に平坦部を有し、
前記出光面は、
前記平坦部と平行な出光平面を備え、
前記側面は、
前記平坦部に直交する、レンズ。
【請求項2】
前記出光面は、
前記幅方向において中央に前記出光平面に対し前記光源側に凹んだ出光凹部を備える、請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
前記側面は、
前記幅方向における前記中央平面からの距離が異なる複数の側面を備え、
前記複数の側面は、
第1側面と、前記第1側面よりも前記出光面側に配置されている第2側面と、を含み、
前記第1側面は、
前記第2側面よりも前記中央平面から離れて配置されている、請求項1又は2に記載のレンズ。
【請求項4】
光源から照射対象に向かう光軸方向に平行な中心軸について回転対称形状であるレンズであって、
前記光源に対向して配置される入光面と、
前記光軸方向において前記入光面よりも照射対象側に配置された出光面と、
前記入光面及び前記出光面の間に位置し、前記中心軸に沿って配置された側面と、を備え、
前記入光面は、
中央に凹部が形成され、前記凹部の周辺に平坦部を有し、
前記出光面は、
前記平坦部と平行な出光平面を備え、
前記側面は、
前記平坦部に直交する、レンズ。
【請求項5】
前記出光面は、
中央に前記出光平面に対し前記光源側に凹んだ出光凹部を備える、請求項4に記載のレンズ。
【請求項6】
前記側面は、
前記中心軸からの距離が異なる複数の側面を備え、
前記複数の側面は、
第1側面と、前記第1側面よりも前記出光面側に配置されている第2側面と、を含み、
前記第1側面は、
前記第2側面よりも前記中心軸から離れて配置されている、請求項4又は5に記載のレンズ。
【請求項7】
前記側面は、
前記入光面から入射した光を全反射させる、請求項1又は4に記載のレンズ。
【請求項8】
請求項1又は4に記載のレンズを備える、照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レンズ及び照明装置に関し、特に光を拡散するレンズの構造及びレンズによって光を拡散して使用する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両のピット内での検査に用いる照明装置、サーカディアン照明の二次光源、非常灯、天井に埋め込まれて使用する照明装置等が知られている。例えば、鉄道車両基地では、車両の下に人が入り込み車両下の点検作業をするためのピットが設けられている。ピットは、車両が載置されているレール下に設けられたH鋼に照明装置が嵌め込まれており、点検する対象である車両の下面及びピット内の作業者の足元に至る広範囲を照らす必要がある(
図2参照)。このピット内の照明装置は、車両の下面を照らす上方照明と作業者の足元を照らす下方照明とに分けて照射している。
【0003】
また、天井に直付けされている照明も所定の半径内の床面に対して一定以上の照度が求められる場合があり、光軸上の光度が低く周辺に向かうに従い光度が高くなる様に構成されている照明装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献1に開示された照明装置は、非常灯であり、光源の正面に光軸に垂直な断面が円状となるように形成されたレンズを配置し、レンズの入光部の中央に凹みが形成されている。また、レンズは、光軸方向の中間部が太くなっている曲面である側面部と、略平面となっている光の出射面と、を備える。このレンズは、回転対称体であり、レンズ中心軸の延長線が光軸となり、光軸上の光度が低く、光軸から周辺に向かうに従い光度が高くなるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された照明装置のレンズは、側面部が曲面であり、光軸方向の中間部において太くなっている形状となっている。そのため、レンズの光軸方向の長さを変えると配光が変化してしまう。例えば、ピットに設置されたH形鋼の凹みに合わせて照明装置を設置した場合と天井に設置した場合とでは、照明装置が取れる光軸方向の長さの範囲が異なる。しかし、特許文献1に開示された照明装置のレンズは、光軸方向の長さを変更すると、光軸上の光度が低く周辺に向かうに従い光度が高くなる配光特性を維持できないため、出光面の位置を自由に変更できないという課題があった。
【0007】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、光軸方向の長さを変更しても配光特性を維持できるレンズ及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るレンズは、光源から照射対象に向かう光軸方向に対し長手方向を直交させて配置され、前記長手方向に垂直な断面において、前記光軸方向及び前記長手方向に平行な中央平面について対称な断面形状を有するレンズであって、前記光源に対向して配置される入光面と、前記光軸方向において前記入光面よりも照射対象側に配置された出光面と、前記入光面及び前記出光面の間に位置し、前記長手方向に沿って配置された側面と、を備え、前記入光面は、前記光軸方向及び前記長手方向に垂直な幅方向において、中央に凹部が形成され、前記凹部の周辺に平坦部を有し、前記出光面は、前記平坦部と平行な出光平面を備え、前記側面は、前記平坦部に直交する。
【0009】
本開示に係るレンズは、光源から照射対象に向かう光軸方向に平行な中心軸について回転対称形状であるレンズであって、前記光源に対向して配置される入光面と、前記光軸方向において前記入光面よりも照射対象側に配置された出光面と、前記入光面及び前記出光面の間に位置し、前記中心軸に沿って配置された側面と、を備え、前記入光面は、中央に凹部が形成され、前記凹部の周辺に平坦部を有し、前記出光面は、前記平坦部と平行な出光平面を備え、前記側面は、前記平坦部に直交する。
【0010】
本開示に係る照明装置は、上記のレンズを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、配光特性を維持したままレンズの光軸方向の長さを変更できるため、設置する環境に応じた出光面の位置の設定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る照明装置1の分解斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係る照明装置1が設置された鉄道車両の点検用のピット100の断面構造の説明図である。
【
図3】実施の形態1に係る照明装置1の断面構造の説明図である。
【
図4】実施の形態1に係るレンズ3より放射される光の配光分布図である。
【
図5】実施の形態1に係る照明装置1の変形例である照明装置1aの断面構造の説明図である。
【
図6】実施の形態1に係るレンズ3及び3aより放射される光の配光分布図である。
【
図7】実施の形態2に係る照明装置1bの断面構造の説明図である。
【
図8】比較例に係る照明装置101の断面構造の説明図である。
【
図9】
図8の照明装置101において、レンズ3から放射される光の配光分布を示している。
【
図10】比較例に係る照明装置101において、光源21から-60°方向に到達する光線の軌跡の説明図である。
【
図11】比較例に係る照明装置101において、光源21から+60°方向に到達する光線の軌跡の説明図である。
【
図12】
図7に示すレンズ3bの1段目の矩形部分341からなるレンズ3b1から放射される配光分布を示している。
【
図13】
図7に示すレンズ3bの1段目の矩形部分341からなるレンズ3b1による光線の軌跡の説明図である。
【
図14】
図7に示すレンズ3bの1段目の矩形部分341からなるレンズ3b1による光線の軌跡の説明図である。
【
図15】
図7に示すレンズ3bの2段目の矩形部分342からなるレンズ3b2から放射される配光分布を示している。
【
図16】
図7に示すレンズ3bの1段目の矩形部分341及び2段目の矩形部分342からなるレンズ3b2による光線の軌跡の説明図である。
【
図17】
図7に示すレンズ3bの1段目の矩形部分341及び2段目の矩形部分342からなるレンズ3b2による光線の軌跡の説明図である。
【
図18】
図7に示すレンズ3bから放射される配光分布を示している。
【
図19】
図7に示すレンズ3bによる光線の軌跡の説明図である。
【
図20】
図7に示すレンズ3bによる光線の軌跡の説明図である。
【
図21】実施の形態3に係る照明装置1cの断面構造の説明図である。
【
図22】
図21に示されているレンズ3cの出光面33の凹部33bが有る場合と無い場合との配光分布を示している。
【
図23】実施の形態4に係る照明装置1dの斜視図である。
【
図24】実施の形態4に係る照明装置1dの第1光源6及び第2光源7の配光分布を示している。
【
図25】実施の形態4に係る照明装置1dを室内に配置したシミュレーションモデルの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本開示の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさ、及び配置等は、適宜変更することができる。
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る照明装置1の分解斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る照明装置1が設置された鉄道車両の点検用のピット100の断面構造の説明図である。照明装置1は、x方向に長手方向を向け、y方向に幅方向を向けた細長い略矩形ブロック状の外郭を有する。光を照射する方向、すなわち光軸は、z方向に向けられており、z方向を光軸方向と称する場合がある。
【0015】
照明装置1は、光源モジュール2と、z方向において光源モジュール2に重ねて配置されたレンズ3と、光源モジュール2及びレンズ3を内部に収容するように構成されたカバー4及び照明装置本体部5とを備える。レンズ3は、配光制御レンズとも称する。照明装置本体部5は、電源から直流電流を生成する点灯装置(図示なし)を備える。照明装置1は、さらに透光性の防水カバーを備えていても良い。照明装置1は、防水カバーに覆われた状態で、
図2に示すように例えば鉄道車両102の点検用のピット100に沿って設置されたH形鋼110の凹んだ部分に設置される。つまり、照明装置1は、長手方向をH形鋼110の長手方向に向けた状態で、ピット100の内側に光軸方向を向けて配置される。
【0016】
光源モジュール2は、光源21となるLED光源が載置された基板22を備える。光源21は、x方向に沿って複数配置されている。
【0017】
図3は、実施の形態1に係る照明装置1の断面構造の説明図である。
図3は、x方向に垂直な断面を示している。照明装置1は、光軸Lをz方向に向けている。光源21は、基板22のz方向を向いた面に固定されている。光源モジュール2には、照明装置本体部5が備える点灯装置より電力が供給される。
【0018】
レンズ3は、光源モジュール2を覆う様に配置され、例えば、固定部材51により照明装置本体部5に固定される。レンズ3は、幅方向(y方向)の中央部にz方向に突出した導光部34と、導光部34から幅方向(y方向)の両側に突出するように形成されたレンズ基部39と、を備えている。導光部34のz方向の面が出光面33である。入光面31は、導光部34の光源モジュール2側の面である。
【0019】
レンズ基部39は、レンズ3の幅方向(y方向)の両側に突出する鍔部37と、鍔部37の先端から照明装置本体部5側に突出する支持部38と、を備える。支持部38の先端は、照明装置本体部5と対向し、鍔部37のz方向側の面は固定部材51に対向している。レンズ基部39は、固定部材51と照明装置本体部5との間に挟まれ保持されている。
【0020】
レンズ基部39の支持部38の間には、入光面31が配置されている。つまり、レンズ3は、照明装置本体部5側を向いた面の中央部に光源モジュール2を配置する凹みが形成されている。その凹みの底面が入光面31である。
【0021】
なお、レンズ基部39の形状は、
図3に示された形態のみに限定されるものではない。例えば、支持部38の代わりに照明装置本体部5側に突出部を設け、突出部と固定部材51との間にレンズ基部39を挟み込むような構造であっても良い。
【0022】
入光面31は、y方向において凹部31bを挟むように配置された2つの平坦部31aと、中央部に形成された凹部31bとを備える。凹部31bを構成する曲面31cは、例えば断面形状が双曲線形状となっている。レンズ3は、x方向及びz方向に平行である中央平面Pについて面対称形状に形成されている。
図3において中央平面Pは、光軸L及びレンズの中心軸Cを含む面である。凹部31bは、例えば中央平面Pについて対称な双曲線により形成され、z方向の端部が滑らかに接続されている。
【0023】
例えば、光源21のサイズは2mm角である。光源モジュール2の表面からレンズ3の入光面31の平坦部31aまでの距離が約2mmである。また入光面31の平坦部31aから出光面33までの長さはおよそ11mm、一対の側面32の間の長さは16mmである。
【0024】
レンズ3の側面32は、入光面31の平坦部31aに対し直交する平面であり、入光面31から入射した光を全反射させる。入光面31の凹部31bを構成する面は、断面において双曲線で表される形状をしており、光源中心からの光は側面32で全反射された後に、出光面33に垂直方向からおよそ70°の方向に放射されるように設計してある。
図3の矢印は光源中心から
図3における上方向に10°、20°・・・70°のそれぞれの方向に進行する光の軌跡を示している。それぞれの光は、入光面31で屈折し、側面32において全反射され、出光面33において屈折し、光軸方向を0°として光軸Lから
図3における下方向に65~75°の角度範囲で放射されている。
【0025】
図3においてレンズ3は上下対称形であり、光源中心から上側に進む光は、側面32で全反射した後、光軸Lから下方向に向かって放射される。一方、
図3においては省略されているが、光源中心から下方向に進む光は、出光面33より上方向に向かって放射される。
【0026】
図4は、実施の形態1に係るレンズ3より放射される光の配光分布図である。
図4の配光分布は、光源21の中心を通りz方向を0°としたときのものであり、
図3に示されるyz平面に存在する光源21についての配光特性を示しており、実線はy方向の配光分布、点線はx方向の配光分布である。
図4の横軸は、x方向又はy方向に垂直な断面において、光源21の中心を通りz方向を0°としたときの角度を示しており、縦軸は、光度を示している。
【0027】
図4の実線で示される配光分布に着目した場合、横軸の正方向は、
図3における上方向、横軸の負方向は、
図3の下方向に相当する。レンズ3による配光分布は、y方向において±60°付近に光度のピークがあり、例えば
図2に示されるピット100においてH形鋼110に組み込んだ場合は、
図2の水平方向を0°とし、上下方向それぞれの60°付近に光線が二分して照射されることとなる。
【0028】
実施の形態1において、レンズ3の材料としては、例えば加工性のよいポリカーボネート又はアクリルが用いられるが、透光性の材料であれば他の材質であっても良い。
【0029】
図5は、実施の形態1に係る照明装置1の変形例である照明装置1aの断面構造の説明図である。変形例に係る照明装置1aは、
図3に示す照明装置1に対しz方向の長さが変更されている。照明装置1aは、ピット100に設置されたH形鋼110の凹み部分が深くなっている場合を想定している。なお、照明装置1aの光源モジュール2及び照明装置本体部5は、
図3の照明装置1と同じものである。変形例に係る照明装置1aは、ピット100に設置されたH鋼の凹み部分の深さが
図3の照明装置1が設置されたH形鋼110よりも20mm深くなった場合を想定し、レンズ3aの導光部34及び側面32の長さを20mm長くし、それに伴いカバー4の位置もz方向にずらしている。
【0030】
図5の矢印は光源21の中心を通りz方向を0°として10°、20°・・・70°のそれぞれの方向に進行する光の軌跡を示している。それぞれの光は、入光面31で屈折し、側面32において全反射される。入光面31の凹み形状は、
図3に示すレンズ3と全く同じ形状であり、光線は、側面32に向かって
図3の場合と同様に進む。そして、光線は
図5の上側に位置する側面32で全反射された後、
図5の下側に位置する側面32で再度全反射し、出光面33から放射される。光線は、出光面33において屈折し、光軸方向を0°として光軸Lから
図5における上方向に65~75°の角度範囲で放射されている。
【0031】
レンズ3の2つの側面32は、入光面31の平坦部31aに対して直交する互いに平行な面であるために、側面32で全反射を繰り返しても反射角度は変わらず、結果として出光面33から放射される光の角度は変わらない。
【0032】
図6は、実施の形態1に係るレンズ3及び3aより放射される光の配光分布図である。
図6においては、
図5に示すレンズ3aから放射される光の配光分布と、
図3に示すレンズ3から放射される光の配光分布とを比較して示している。太い実線(
図6中の「y方向」で示された線)がレンズ3を用いた場合のy方向の配光分布、細い実線(
図6中の「変形例のy方向」で示された線)がレンズ3aを用いた場合のy方向の配光分布である。また、太い点線(
図6中の「x方向」で示された線)がレンズ3のx方向の配光分布、細い点線(
図6中の「変形例のx方向」で示された線)がレンズ3aのx方向の配光分布である。レンズ3による配光分布とレンズ3aによる配光分布とは、ほとんど変化がない。
【0033】
なお、レンズ3aのように、z方向に長く延ばした場合に配光特性の変化を抑えるためには、例えばアクリル、ポリカーボネートユーピロン、トパス等の光の透過率の高い材料を用いることが望ましい。
【0034】
実施の形態2.
実施の形態2に係る照明装置1bについて説明する。実施の形態2に係る照明装置1bは、実施の形態1に係る照明装置1及び1aに対し、配光を制御するレンズ3の構造を変更したものである。実施の形態2においては実施の形態1からの変更点を中心に説明する。
【0035】
図7は、実施の形態2に係る照明装置1bの断面構造の説明図である。
図7は、x方向に垂直な断面を示している。実施の形態2に係る照明装置1bは、光源モジュール2、照明装置本体部5は実施の形態1と同じであるが、レンズ3bは、光源モジュール2から離れるにつれ、段階的に導光部34の幅方向の寸法が狭くなった構造を有する。実施の形態2においては、レンズ3は、光源モジュール2から離れるごとに3段階で導光部34の幅が狭くなっている。
【0036】
レンズ3bの側面32は、y方向における位置の異なる3つの側面321、322及び323を備える。3つの側面321、322及び323は、z方向において光源21に近い方から、側面321、322、323の順に並んでいる。レンズ3bの出光面33は、y方向の位置の異なる出光面331、332及び333を備える。光源21に近い方から出光面331、332、333の順に並んでいる。側面321、322、323はいずれも、入光面31の平坦部31aに対して垂直な面となっており、出光面331、332及び333は入光面31の平坦部31aと平行な面となっている。
【0037】
側面321、322及び323はいずれも、入光面31から入射した光が全反射する。
【0038】
ここで、側面321と出光面331で構成される矩形部分341を1段目のレンズ、側面322と出光面332で構成される矩形部分342を2段目のレンズ、側面323と出光面333で構成される矩形部分343を3段目のレンズと呼ぶことにする。
【0039】
実施の形態1のレンズ3及び3aの形状では、レンズ3又は3aと光源21との組み合わせ精度が悪い場合、若しくは作業現場の振動が大きくレンズ3又は3aと光源21との位置ずれが起きる場合には配光分布が大きく崩れる場合がある。しかし、
図7に示されているレンズ3bの導光部34のように、断面形状において矩形部分341、342及び343を3段積み重ねた形状にすると、光源21とレンズ3bとの位置ずれによる配光分布の歪を低減できる。
【0040】
図8は、比較例に係る照明装置101の断面構造の説明図である。比較例に係る照明装置101は、実施の形態1に係る照明装置1と同じ構造であるが、レンズ3と光源モジュール2とがy方向にずれた状態になっている。照明装置101は、入光面31の平坦部31aから出光面33までの長さをおよそ13mmとしている。また、光源21とレンズ3の中心とが0.3mmずれて設置されている状態を示している。
図9は、
図8の照明装置101において、レンズ3から放射される光の配光分布を示している。
図9の配光分布に示す様に、
図8の照明装置1においては、光度値のピークであるy方向において±60°方向の光度をみると、-60°の光度値は473を示しており、+60°の光度値は382を示している。つまり、-60°方向の光度値は、+60°方向の光度値の1.24倍になっていることがわかる。なお、
図9における負方向は、
図8のy方向下側を意味しており、正方向は、
図8のy方向上側を意味している。
【0041】
図10は、比較例に係る照明装置101において、光源21から-60°方向に到達する光線の軌跡の説明図である。光源21からほぼ水平に出射した光線L1は、入光面31の中央部の凹んだ部分でレンズの中心軸Cから離れる側に偏向され、
図10の上側に位置する側面32に向かって進む。光線L1は、側面32で全反射された後に出光面33で下方向に向かって屈折し、下方向に放射される。また、光源21から入光面31の平坦部31aに向かって放射された光線L2は、平坦部31aでレンズの中心軸Cに近づくように屈折し偏向された後、側面32で全反射され、出光面33から下方向に放射される。
【0042】
図10に示されている、光線L1及びL2の間にも光線が存在し、入光面31の凹部31bで偏向される。凹部31bのうち平坦部31aと接続されている側の曲面31cは、光源21に向かって凸形状になっており、入光面31に入射した光線のうち光線L1側に位置する光線は中心軸Cから離れるように偏向し、光線L2側に位置する光線は中心軸C側に近づく様に偏向する。光線L1及びL2の間にある光線は、出光面33から-60°方向に進む光線となり、それらの光線群R1の存在する範囲をドットで塗りつぶした領域で示している。
【0043】
図11は、比較例に係る照明装置101において、光源21から+60°方向に到達する光線の軌跡の説明図である。
図10と同様に+60°に向けて放射される光線群R2の存在する範囲をドットで塗りつぶした領域で示す。
【0044】
図10に示されている-60°方向の光度に寄与する光線群R1は、光源21から放射される光のうち、レンズの中心軸Cより上側から放出される光がレンズ3内で反射して出光面33から放射されたものである。また、
図11の+60°方向の光度に寄与する光線群R2は、光源21から放射される光のうち、レンズの中心軸Cより下側から放出される光が反射して出光面33から放射されたものである。光源21から放射される光は、光源21の面からほぼ一様に放出されているため、光源21の広い方の表面から放射されている光線群R1の方が光線群R2よりも光量が多い。これは、光源21が上方向に0.3mmずれていることに起因するものであり、この結果として
図9に示す配光分布のように、-60°方向の光度値が+60°方向の光度値よりも大きくなっている。つまり、
図10では、光源21から入光面31を経てレンズ3に入る光線L1及びL2を表現しており、
図11では、光源21から入光面31を経てレンズ3に入る光線L3及びL4を表現している。光線L1と光線L2との間に含まれる光量は、光源21が上方にずれている分だけ、光線L3と光線L4との間に含まれる光量よりも多い。従って、比較例の照明装置101によれば、-60°周辺に向かう光線群R1による光度が大きくなる。
【0045】
図12は、
図7に示すレンズ3bの1段目の矩形部分341からなるレンズ3b1から放射される配光分布を示している。レンズ3b1を用いた場合の配光分布は、+60°方向の光度値と-60°方向の光度値との差が少ない。
図12においては、-60°方向の光度値は388となっており、+60°方向の光度値は445となっており、+60°方向の光度値は、-60°方向の光度値の1.15倍となっている。+側及び-側の光度値のピーク値同士の比較では-側は-64°方向において光度値425となっており、+側と-側とでは光度値のピークにほとんど差が無いことがわかる。
【0046】
図13及び
図14は、
図7に示すレンズ3bの1段目の矩形部分341からなるレンズ3b1による光線の軌跡の説明図である。
図12の配光分布のように+側と-側との光度値のピーク値の差が小さくできる作用について、
図13及び
図14を用いて説明する。
図13は+60°方向に放射される光線群R3の軌跡をドットで塗りつぶした領域で示し、
図14は-60°方向に放射される光線群R4及びR5の軌跡をドットで塗りつぶした領域で示している。
【0047】
図13では光源21から上方向に放射された光線は、そのまま出光面331から
図13の上方向に向かって放射される。一方、
図14では光源21から下方向に放射された光がそのまま出光面331から下方向に出射される光線群R4の他に、光源21から上方向に放射された光の一部が側面321で全反射されて、下方向に偏向され、出光面331から下方向に放射される光線群R5も加わる。
【0048】
図14に示されているように、側面321での全反射を用いて、一部の光線の方向を反転させることにより、+側及び-側の同じ角度に対して、同様な光度値を持つように調整できる。
図13及び
図14においては、光源21が上側に0.3mmずれているが、ずれたことによって光源21から上側に進む光線が増えても、側面321で全反射されることにより下向きに反転させることができるため、レンズ3b1の出光面331から放射される光線は、+側及び-側の両方にバランス良く配分される。
【0049】
つまり、レンズ3の中心に対して光源21が上方向にずれたのであれば、レンズ3の入光面31に取り込まれる光はレンズ3の下部より上部の方が多くなる。しかし、レンズ3の上部に取り込まれた光の一部は、側面321での全反射で対向側へ偏向させることにより、出光面331から取り出される光量を上側及び下側で釣り合わせることができる。
【0050】
しかし、
図12において、±40°方向付近の光度値を比較すると、+40°方向の光度値は290になっており、これに対し-40°方向の光度値は、111となっている。つまり、+40°方向の光度値は、-40°方向の光度値の約2.6倍になっている。つまり、レンズ3bの1段目の矩形部分341のみでは、±60°方向の光度値は調整されているが、+側の他の角度の配光が不均等である。
図7に示すレンズ3bの2段目の矩形部分342は、このバランスを調整するためのものである。
【0051】
図15は、
図7に示すレンズ3bの2段目の矩形部分342からなるレンズ3b2から放射される配光分布を示している。つまり、レンズ3bの一番幅の広い1段目の矩形部分341にやや幅の狭い2段目の矩形部分342を追加したレンズ3b2(
図16及び
図17参照)から放射される光の配光分布である。
【0052】
図15において±40°方向の光度値を見ると、+40°方向の光度値は220となっており、-40°方向の光度値は193となっている。+40°方向は、-40°方向の光度値の1.14倍と両者の差が小さくなっていることがわかる。
【0053】
図16及び
図17は、
図7に示すレンズ3bの1段目の矩形部分341及び2段目の矩形部分342からなるレンズ3b2による光線の軌跡の説明図である。レンズ3b2によって上下方向の光度値の差を小さくできる作用について、
図16及び
図17を用いて説明する。
図16は+40°方向に放射される光線群R6及びR7の軌跡をドットで塗りつぶした領域で示し、
図17は-40°方向に放射される光線群R8の軌跡をドットで塗りつぶした領域で示している。
【0054】
図16に示す様に、レンズ3b2から上方向に向かって放射される光は、光源21から上方向に放射された光がそのまま出光面331から上方向に放射される光線群R6と、光源21から下方向に放射された光が、下側の側面322で全反射され上方向に偏向された光線群R7と、から構成される。一方、
図17に示す様に、光源21から上方向に放射され出光面332から放射される光のうち上側の側面322で全反射された光は、下方向に偏向される。
図17に示されている光線群R8は、側面322が無ければそのまま上方向に放射されていた光線群の一部を下方向に偏向させることにより、上方向に向かう光と下方向に向かう光との光度値の差を小さくするのに寄与する。
【0055】
しかし、
図15においては、-33°方向付近に光度値のピークが発生する。-33°方向の光度値は、238となっており、+33°方向の光度値は175となっている。つまり、-33°方向の光度値は、+33°方向の光度値の1.36倍になっている。この±方向の光度値のバランスを調整させるために、
図7に示すレンズ3bの一番幅の狭い3段目の矩形部分343が存在する。
【0056】
図18は、
図7に示すレンズ3bから放射される配光分布を示している。+33°方向の光度値を見ると、+33°方向の光度値は191となっており、-33°方向の光度値は162となっている。つまり、+33°方向は、-33°方向の光度値の1.18倍となっており、両者の差が小さくなっていることがわかる。
【0057】
図19及び
図20は、
図7に示すレンズ3bによる光線の軌跡の説明図である。レンズ3bによって上下方向の光度値の差を小さくできる原因について、
図19及び
図20を用いて説明する。
図19は+33°方向に放射される光線群R9、R10及びR11の軌跡をドットで塗りつぶした領域で示し、
図20は-33°方向に放射される光線群R12及びR13の軌跡をドットで塗りつぶした領域で示している。
【0058】
図19に示す+33°方向に向かう光は、光源21から上方向に放射された光が、そのまま出光面331と出光面332とから上方向に放射される光線群R9及びR10と、光源21から下方向に放射された光が側面323で全反射され、上方向に偏向されて出光面333から出射される光線群R11と、から構成されている。
【0059】
一方、
図20に示す様に、光源21から上方向に放射された光のうち一部は、上側の側面322で全反射されて、下方向に偏向され、出光面333から下方向に放射される光線群R12となる。また、光源21から上方向に放射された光のうち一部は、側面322で全反射された後、出光面332から出射し、再び上側の側面323から入射し、対向する側面323より出射する光線群R13となる。
【0060】
以上のように、照明装置1bによれば、光源21から上方向に出射した光の一部を側面322で全反射させて偏向させることで、下方向に出射させ、上下方向の光度値のバランスをとることが可能となる。レンズ3bは、例えば配光のピークを±60°付近に持ってくるように調整しつつ、照明装置1の光源21とレンズ3bとの配置に誤差があっても、配光のアンバランスを抑えることができる。
【0061】
なお、一例として、レンズ3bは、1段目の矩形部分341の幅は16mm、入光面31の平坦部31aから出光面331までの長さは約5mm、2段目の矩形部分342の幅は7mm、入光面31の平坦部31aから出光面332までの長さは約7mm、3段目の矩形部分343の幅は6mm、入光面31の平坦部31aから出光面333までの長さは約11mmとなっている。
【0062】
レンズ3bは、矩形部分341、342及び343の段数を増やすことにより、より滑らかな配光分布を得ることができる。また、矩形部分341、342及び343の幅や入光面31の平坦部31aの長さをさらに精度よく調整することにより、より滑らかな配光分布を得ることができる。
【0063】
実施の形態3.
実施の形態3に係る照明装置1cについて説明する。実施の形態3に係る照明装置1cは、実施の形態1に係る照明装置1及び1aに対し、配光を制御するレンズ3の構造を変更したものである。実施の形態3においては実施の形態1からの変更点を中心に説明する。
【0064】
図21は、実施の形態3に係る照明装置1cの断面構造の説明図である。
図21は、x方向に垂直な断面を示している。照明装置1cのレンズ3cは、入光面31が凹部31bを有するだけでなく、出光面33にも凹部33bを持つことを特徴とする。
【0065】
入光面31の凹部31bは、2つの斜面31d及び31eを備える。入光面31の凹部31bは、中央にレンズ3cの中心軸に対して角度αの斜面31dが配置され、その外側にレンズ3cの中心軸に対して角度βの斜面31eとで形成されている。また出光面33の凹みは、角度βで形成されている。凹部31b及び33bは、レンズ3cの中心軸に対し対称形状となっている。
【0066】
例えば、切削加工でレンズ3cを形成する場合、できるだけ切削用バイトの種類を少なくしたい。レンズ3cは、入光面31の中央の斜面31d、外側の斜面31e及び出光面33の斜面33cの3つの斜面を有するが、それらの斜面は、2種類の角度で構成されている。そのため、レンズ3cは、入光面31の中央の斜面31dを加工する先端角度2αのバイトと、入光面31の斜面31e及び出光面33の斜面33cを加工する先端角度2βのバイトの2種類だけで製造でき、所望の配光分布を得ることができる。一例として、
図21に示す斜面31d、31e及び33cの角度は、α=30°、β=70°としている。
【0067】
図22は、
図21に示されているレンズ3cの出光面33の凹部33bが有る場合と無い場合との配光分布を示している。
図22は、y方向の配光分布をそれぞれ示す。
図22の実線は、出光面33に凹部33bが有る場合で、点線が出光面33に凹部33bが無い場合である。0°の光度値を比較すると、点線で示した出光面33に凹部33bが無い場合の方が、実線で示された出光面33に凹部33bが有る場合よりも大きい。
【0068】
例えば、
図2に示されている鉄道車両検査用のピット100に設置する照明装置1は、0°方向の光度値が規定されている。そのため、実施の形態3に係る照明装置1cによれば、レンズ3cのコストを抑えつつ光度値の基準を守るにあたり有利である。
【0069】
実施の形態4.
実施の形態4に係る照明装置1dについて説明する。実施の形態4に係る照明装置1dは、実施の形態1に係る照明装置1及び1aをサーカディアン照明として用いる場合について説明する。実施の形態4においては実施の形態1からの変更点を中心に説明する。
【0070】
近年、生体リズムを整えるためのサーカディアン照明が各社より提案されている。サーカディアン照明とは、午前中はメラトニンを抑制する色温度が高く且つ照度の高い光を照射し、夕刻から夜間にかけて色温度を低く且つ照度を低く抑えるように制御し、サーカディアンリズムを整えることを目的とするものであり、質の高い生活を送るうえで重要な一つの項目とされている。
【0071】
特に2014年からビルやオフィスなどの空間を、「人間の健康」の視点で評価・認証するWELL認証(WELL Building Standard)が米国より始まり、照明では、「少なくとも午前9時から午後1時の間は、最低240EMLの垂直面照度を持つこと」が高ポイントを得るための基準として設定されている。
【0072】
EMLは、等価メラノピック照度を表す単位であり、通常の555nmの波長をピークとする視感度曲線とは異なり、490nmの波長をピークとするメラノピック感度曲線を用いて算出される照度である。
【0073】
具体的に等価メラノピック照度は、「等価メラノピック照度=照度×メラノピック比」で表されるものであり、光源21の分光分布曲線E(λ)、メラノピック感度曲線C(λ)、視感度曲線V(λ)とすると、メラノピック比は次の式(1)で表される。
【0074】
【0075】
サーカディアンリズムに必要とされる光は直接目に取り込まれる光であるため、水平面ではなく垂直面の等価メラノピック照度をコントロールすることが重要となる。この観点より、実施の形態4では、常用光源である第1光源の横に、水平方向に広がるような配光分布を持つ第2光源を配置することを提案するものである。
【0076】
図23は、実施の形態4に係る照明装置1dの斜視図である。照明装置1dは、x方向に長手方向を向けた第1光源6に沿って第2光源7が配置されている。第1光源6は、ベースライトとして用いられる拡散カバー付きの長尺の光源である。第2光源7は、実施の形態1~3において説明したように、y方向において所定の2つの方向に光度のピークを有する指向性を持った拡散光源である。
【0077】
図24は、実施の形態4に係る照明装置1dの第1光源6及び第2光源7の配光分布を示す。第1光源6は拡散カバーで散乱されるため、ランバード散乱と同様の中央にピークのある配光分布となる。一方、第2光源7は、レンズ3、3a又は3bで拡散し、60°以上の方向にピークを有する配光分布になっている。
【0078】
図25は、実施の形態4に係る照明装置1dを室内に配置したシミュレーションモデルの概要図である。シミュレーションモデルは、長さ9m、幅7.2m、高さ3mの部屋の天井に照明装置1dを9台取り付けた場合のものである。部屋の中には、縦6列、横6列の36人の人間が着座し、床からの高さが80cmの位置に顔がある。そして、人間は、図中のy方向に向いて座っているものとする。
【0079】
第1光源6及び第2光源7の光束をそれぞれ5000lmとし、36か所の顔面位置での平均した水平面照度および垂直面照度を表1に記載する。
【0080】
【0081】
垂直面照度に関して、第1光源6は202lx、第2光源7は249lxとなり、第2光源7を用いれば第1光源よりも約1.2倍高い垂直面照度が得られる。即ち、第1光源6よりも第2光源7の方が効率よく垂直面照度を稼ぐことができる。
【0082】
第1光源6のような配光分布で240EMLの垂直面等価メラノピック照度を得ようとすると、水平面照度が900lxと高くなってしまう問題があった。しかし、第2光源7のような配光分布で240EMLの垂直面等価メラノピック照度を得るようにすれば、水平面照度は1.2分の1の750lxに抑えられる。
【0083】
照明装置1dをサーカディアン照明として運用する場合、高い透過メラノピック照度を必要とする時間帯は、第1光源6と第2光源7とを共に点灯させ、午後から夕方にかけては第2光源7の光束を徐々に下げ、最終的に第1光源6のみを点灯させるようにすればよい。
【0084】
また、第2光源7として、490nmの波長を多く含む白色LEDあるいは490nmに発光ピークを持つシアン色LEDを用いることで、より少ない照度で必要な等価メラノピック照度を得ることができる。
【0085】
特にシアン色LEDや青色LEDを第2光源7に用いることにより、デザイン的にもアクセントのある照明にすることができる。
【0086】
なお、実施の形態1~実施の形態3に記載したレンズ3、3a、3b及び3cは、いずれもサーカディアン照明の第2光源7に採用することができる。
【0087】
以上のように、本開示の実施の形態1~4を説明したが、実施の形態1~4は、照明装置1、1a、1b、1c及び1dの一例であり、別の公知の技術と組み合わせることもできる。例えば、実施の形態1~4の照明装置1、1a、1b、1c及び1dは、x方向に長く、
図3、
図5、
図7、
図21及び
図23に示す様なx方向に垂直な断面を有する構造であるが、光軸Lを中心にした回転対称形状であっても良い。この場合、
図4、
図6、
図18及び
図22に示されている配光特性は、y方向に限らず、光軸Lを含む任意の断面において得られる。また、照明装置1、1a、1b、1c及び1dは、配光特性を維持しながらレンズ3、3a、3b及び3cの光軸L方向の長さの変更も可能である。また、各実施の形態を組み合わせることもできる。つまり、照明装置1、1a、1b、1c及び1dは、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略変更することもできる。
【0088】
上記に説明した照明装置1、1a、1b、1c及び1d、並びにレンズ3、3a、3b、3cは、以下の付記1~15に示す各特徴の組み合わせも含み得るものである。その組み合わせについて下記に示す。
[付記1]
光源から照射対象に向かう光軸方向に対し長手方向を直交させて配置され、前記長手方向に垂直な断面において、前記光軸方向及び前記長手方向に平行な中央平面について対称な断面形状を有するレンズであって、
光源に対向して配置される入光面と、
前記光軸方向において前記入光面よりも照射対象側に配置された出光面と、
前記入光面及び前記出光面の間に位置し、前記長手方向に沿って配置された側面と、を備え、
前記入光面は、
前記光軸方向及び前記長手方向に垂直な幅方向において、中央に凹部が形成され、前記凹部の周辺に平坦部を有し、
前記出光面は、
前記平坦部と平行な出光平面を備え、
前記側面は、
前記平坦部に直交する、レンズ。
[付記2]
前記出光面は、
前記幅方向において中央に前記出光平面に対し前記光源側に凹んだ出光凹部を備える、付記1に記載のレンズ。
[付記3]
前記側面は、
前記幅方向における前記中央平面からの距離が異なる複数の側面を備え、
前記複数の側面は、
第1側面と、前記第1側面よりも前記出光面側に配置されている第2側面と、を含み、
前記第1側面は、
前記第2側面よりも前記中央平面から離れて配置されている、付記1又は2に記載のレンズ。
[付記4]
光源から照射対象に向かう光軸方向に平行な中心軸について回転対称形状であるレンズであって、
前記光源に対向して配置される入光面と、
前記光軸方向において前記入光面よりも照射対象側に配置された出光面と、
前記入光面及び前記出光面の間に位置し、前記中心軸に沿って配置された側面と、を備え、
前記入光面は、
中央に凹部が形成され、前記凹部の周辺に平坦部を有し、
前記出光面は、
前記平坦部と平行な出光平面を備え、
前記側面は、
前記平坦部に直交する、レンズ。
[付記5]
前記出光面は、
中央に前記出光平面に対し前記光源側に凹んだ出光凹部を備える、付記4に記載のレンズ。
[付記6]
前記側面は、
前記中心軸からの距離が異なる複数の側面を備え、
前記複数の側面は、
第1側面と、前記第1側面よりも前記出光面側に配置されている第2側面と、を含み、
前記第1側面は、
前記第2側面よりも前記中心軸から離れて配置されている、付記4又は5に記載のレンズ。
[付記7]
前記側面は、
前記入光面から入射した光を全反射させる、付記1~4の何れか1項に記載のレンズ。
[付記8]
付記1~4の何れか1項に記載のレンズを備える、照明装置。
【符号の説明】
【0089】
1 照明装置、1a 照明装置、1b 照明装置、1c 照明装置、1d 照明装置、2 光源モジュール、2α 先端角度、2β 先端角度、3 レンズ、3a レンズ、3b レンズ、3b1 レンズ、3b2 レンズ、3c レンズ、4 カバー、5 照明装置本体部、6 第1光源、7 第2光源、21 光源、22 基板、31 入光面、31a 平坦部、31b 凹部、31c 曲面、31d 斜面、31e 斜面、32 側面、33 出光面、33b 凹部、33c 斜面、34 導光部、37 鍔部、38 支持部、39 レンズ基部、51 固定部材、100 ピット、101 照明装置、102 鉄道車両、110 H形鋼、321 側面、322 側面、323 側面、331 出光面、332 出光面、333 出光面、341 矩形部分、342 矩形部分、343 矩形部分、425 光度値、C 中心軸、L 光軸、L1 光線、L2 光線、P 中央平面、R1 光線群、R2 光線群、R3 光線群、R4 光線群、R6 光線群、R7 光線群、R8 光線群、R9 光線群、R10 光線群、R11 光線群、R12 光線群、R13 光線群、V 視感度曲線、α 角度、β 角度。