(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156838
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20241029BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20241029BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20241029BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20241029BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241029BHJP
B60L 50/60 20190101ALN20241029BHJP
B60L 50/70 20190101ALN20241029BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/0438
H01M8/04537
H01M8/04746
H01M8/04 J
H01M8/10 101
B60L50/60
B60L50/70
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024125758
(22)【出願日】2024-08-01
(62)【分割の表示】P 2022047009の分割
【原出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】井上 一秀
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ドレイン弁からの液水の排出を正確に制御することにより、ドレイン弁から排出される燃料オフガスの量を抑制してエネルギ効率化を図る燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料オフガス流路74に設けられる気液分離器36に設けられ、気液分離器36内の液水を排出するドレイン弁164と、燃料ガス供給流路72又は前記燃料オフガス流路74に設けられ、流路内のガス圧力Phを検出する圧力センサ73と、燃料電池スタック18の発電状態を取得する発電状態取得部115と、制御装置15と、を備える。制御装置15は、前記発電状態及び前記ガス圧力Phに基づき、ドレイン弁164の開閉を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池スタックと、
前記燃料ガスを前記燃料電池スタックに供給する燃料ガス供給流路と、
前記燃料電池スタックから排出される燃料オフガスが流通する燃料オフガス流路と、
前記燃料オフガス流路に設けられる気液分離器と、
該気液分離器に設けられ、該気液分離器内の液水を排出するドレイン弁と、
前記燃料ガス供給流路又は前記燃料オフガス流路に設けられ、流路内のガス圧力を検出する圧力センサと、
前記燃料電池スタックの発電状態を取得する発電状態取得部と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記発電状態及び前記ガス圧力に基づき、前記ドレイン弁の開閉を制御し、
さらに、前記制御装置は、
前記ドレイン弁が閉弁しているときの前記気液分離器内の水位を前記発電状態に基づき推定し、推定した水位が閾値水位以上になると前記ドレイン弁を開弁して前記液水を排出するとともに、
前記ドレイン弁の開弁中に、前記発電状態における発電電流の変動幅が所定電流変動幅内であるか否かを判定し、
前記発電電流が前記所定電流変動幅の上限発電電流を上回っている場合には、前記ガス圧力の圧力降下速度の判定を実施することなく、且つ前記ドレイン弁の開弁を維持し、
前記発電電流の変動幅が前記所定電流変動幅内である場合には、前記ドレイン弁が開弁中に、前記圧力センサにより検出されている前記ガス圧力の前記圧力降下速度が閾値降下速度以上になったとき、前記ドレイン弁を閉弁する
燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料オフガス流路から酸化剤ガス供給流路に接続される接続流路と、
該接続流路の連通状態を開閉する開閉弁と、をさらに備え、
前記制御装置は、
前記開閉弁が閉弁されているときに、前記発電状態及び前記ガス圧力に基づき、前記ドレイン弁の開閉を制御する
燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池スタックを収容するケースに設けられ、前記燃料電池スタック内の液水を外部に排出するケース側開閉弁をさらに備え、
前記制御装置は、
前記ケース側開閉弁が閉弁されているときに、前記発電状態及び前記ガス圧力に基づき、前記ドレイン弁の開閉を制御する
燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水位センサを設けることなく、燃料オフガス流路に設けられたドレイン弁からの排水制御を正確に実施し得る燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能且つ先進的なエネルギへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギの効率化に貢献する燃料電池(FC)に関する研究開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、燃料電池スタックの燃料オフガス流路に気液分離器が設けられている。この気液分離器には、該気液分離器内の水位を検出する水位センサが設けられている。
【0004】
燃料電池システムの制御部は、前記水位センサの検出信号に基づきドレイン弁の開弁と閉弁を切り換える。
【0005】
これにより気液分離器から水と共に燃料ガスが排出されることを抑制しつつ、適宜のタイミングで水を排出することができる、と開示されている。
【0006】
特許文献2には、水位センサを設けることなく、気液分離器内の圧力変動を検出して前記ドレイン弁の開弁を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-48064号公報
【特許文献2】特開2019-114351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、燃料電池スタックの発電状態に変動があると、発電による燃料ガスの消費によって、アノード経路内の圧力変動が起こり、気液分離器内の水位の変化を正確に判断することが難しいという課題がある。
【0009】
この発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の一態様に係る燃料電池システムは、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池スタックと、前記燃料ガスを前記燃料電池スタックに供給する燃料ガス供給流路と、前記燃料電池スタックから排出される燃料オフガスが流通する燃料オフガス流路と、前記燃料オフガス流路に設けられる気液分離器と、該気液分離器に設けられ、該気液分離器内の液水を排出するドレイン弁と、前記燃料ガス供給流路又は前記燃料オフガス流路に設けられ、流路内のガス圧力を検出する圧力センサと、前記燃料電池スタックの発電状態を取得する発電状態取得部と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記発電状態及び前記ガス圧力に基づき、前記ドレイン弁の開閉を制御し、さらに、前記制御装置は、前記ドレイン弁が閉弁しているときの前記気液分離器内の水位を前記発電状態に基づき推定し、推定した水位が閾値水位以上になると前記ドレイン弁を開弁して前記液水を排出するとともに、前記ドレイン弁の開弁中に、前記発電状態における発電電流の変動幅が所定電流変動幅内であるか否かを判定し、前記発電電流が前記所定電流変動幅の上限発電電流を上回っている場合には、前記ガス圧力の圧力降下速度の判定を実施することなく、且つ前記ドレイン弁の開弁を維持し、前記発電電流の変動幅が前記所定電流変動幅内である場合には、前記ドレイン弁が開弁中に、前記圧力センサにより検出されている前記ガス圧力の前記圧力降下速度が閾値降下速度以上になったとき、前記ドレイン弁を閉弁する。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、燃料電池スタックの発電状態と、燃料ガス流路のガス圧力又は燃料オフガス流路のガス圧力と、を考慮してドレイン弁を開閉制御することで、水位センサを用いることなく気液分離器内の水位状態を考慮した液水の排出を正確に制御することができる。ドレイン弁からの液水の排出を正確に制御することができるので、ドレイン弁から排出される燃料オフガスの量を抑制でき、延いてはエネルギの効率化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、この発明の実施形態に係る燃料電池システムが組み込まれた燃料電池自動車の概略構成図である。
【
図2】
図2は、燃料電池システムの動作説明に供されるフローチャートである。
【
図3】
図3Aは、インジェクタのON・OFF期間を示すタイミングチャートである。
図3Bは、ドレイン弁の開閉状態を示すタイミングチャートである。
図3Cは、燃料ガス供給流路のガス圧力の変動(時間変化)を示すタイミングチャートである。
図3Dは、ガス圧力の変動(時間変化)から算出される圧力降下速度の変化を示すタイミングチャートである。
【
図5】
図5Aは、発電電流を示すタイミングチャートである。
図5Bは、ドレイン弁の開閉と、ドレイン弁が開いているときのドレイン弁を流れる流体を説明するタイミングチャートである。
図5Cは、圧力降下速度の遷移を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態]
[構成]
図1は、この発明の実施形態に係る燃料電池システム10が組み込まれた燃料電池自動車12の概略構成図である。
【0014】
燃料電池システム10は、燃料電池自動車12以外の船舶、航空機、ロボット等の他の移動体にも組み込み可能である。
【0015】
燃料電池自動車12は、該燃料電池自動車12全体を制御する制御装置15と、燃料電池システム10と、該燃料電池システム10に電気的に接続される出力部16とから構成される。
【0016】
制御装置15は、一つではなく、例えば、燃料電池システム10用と出力部16用等、二以上の制御装置に分けてもよい。
【0017】
燃料電池システム10は、燃料電池スタック(単に、燃料電池ともいう)18と、水素タンク20と、酸化剤ガス供給装置22と、燃料ガス供給装置24と、冷媒供給装置26とから構成される。
【0018】
酸化剤ガス供給装置22には、コンプレッサ(CP)28及び加湿器(HUM)30が含まれる。
【0019】
燃料ガス供給装置24には、インジェクタ(INJ)32、エジェクタ34及び気液分離器36が含まれる。インジェクタ32は、減圧弁に代替してもよい。
冷媒供給装置26には、冷媒ポンプ(WP)38及びラジエータ40が含まれる。
【0020】
出力部16には、駆動部42、高電圧の蓄電装置(バッテリ)44、及びモータ(電動機)46が含まれる。
【0021】
駆動部42の負荷には、車両主機である前記モータ46の他に、前記コンプレッサ28、前記冷媒ポンプ38及びその他エアコンディショナ等の車両補機が含まれる。燃料電池自動車12は、モータ46が発生する駆動力により走行する。
【0022】
燃料電池スタック18は、複数の発電セル50が積層される。発電セル50は、電解質膜・電極構造体52と、該電解質膜・電極構造体52を挟持するセパレータ53、54とを備える。
【0023】
電解質膜・電極構造体52は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜である固体高分子電解質膜55と、前記固体高分子電解質膜55を挟持するカソード電極56及びアノード電極57とを備える。
【0024】
カソード電極56及びアノード電極57は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)を有する。ガス拡散層の表面に、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が一様に塗布されることにより、電極触媒層(図示せず)が形成される。電極触媒層は、固体高分子電解質膜55の両面に形成される。
【0025】
一方のセパレータ53の電解質膜・電極構造体52に向かう面には酸化剤ガス入口連通口101と酸化剤ガス出口連通口102とを連通するカソード流路(酸化剤ガス流路)58が形成される。
【0026】
他方のセパレータ54の電解質膜・電極構造体52に向かう面には、燃料ガス入口連通口103と燃料ガス出口連通口104とを連通するアノード流路(燃料ガス流路)59が形成される。
【0027】
アノード電極57では、燃料ガス(水素)が供給されることにより、触媒による電極反応によって水素分子から水素イオンを生じ、該水素イオンが固体高分子電解質膜55を透過してカソード電極56に移動する一方、水素分子から電子が解放される。
【0028】
水素分子から解放された電子は、負極端子106から駆動部42及びモータ46等の負荷を通じ、正極端子108を介してカソード電極56に移動する。
【0029】
カソード電極56では、触媒の作用によって前記水素イオン及び前記電子と、供給された酸化剤ガスに含まれる酸素とが反応して水が生成される。
【0030】
正極端子108及び負極端子106と駆動部42を接続する配線の間には、発電電圧Vfcを検出する電圧センサ110が設けられる。さらに、正極端子108と駆動部42を接続する配線には、発電電流Ifcを検出する電流センサ112が設けられる。
【0031】
電圧センサ110と電流センサ112により、発電状態として発電電力を検出する発電状態取得部115が形成される。
発電状態取得部115は、電流センサ112のみにより形成してもよい。
【0032】
コンプレッサ28は、蓄電装置44の蓄電電力が駆動部42を通じて供給されるコンプレッサ用モータ(不図示)により駆動される機械式の過給器等で構成され、外気取入口113から外気(大気、空気)を吸引して加圧し、加湿器30を通じて燃料電池スタック18に供給する等の機能を有する。
【0033】
加湿器30は、流路31Aと流路31Bとを有する。流路31Aには、コンプレッサ28により圧縮され高温化されて乾燥した空気(酸化剤ガス)が流通する。流路31Bには、燃料電池スタック18の酸化剤ガス出口連通口102から排出される排出ガスが流通する。
【0034】
ここで、前記排出ガスは、後述するブリード弁70の閉弁時には、湿潤な酸化剤オフガス(湿潤な酸化剤排ガス)とされ、ブリード弁70の開弁時には、前記湿潤な酸化剤オフガスと燃料オフガスが混合された湿潤な排出ガスとされる。
【0035】
加湿器30は、コンプレッサ28から供給された酸化剤ガスを加湿する機能を有する。すなわち、加湿器30は、前記排出ガス(オフガス)中に含まれる水分を、流路31Bから内部の多孔質膜を介して流路31Aに流通する供給ガス(酸化剤ガス)に移動させて加湿し、加湿した酸化剤ガスを燃料電池スタック18に供給する。
【0036】
外気取入口113から酸化剤ガス入口連通口101までの酸化剤ガス供給流路60(酸化剤ガス供給流路60A、60Bを含む)には、外気取入口113から順にコンプレッサ28、供給側封止弁118及び加湿器30が設けられている。なお、二重線で描いている酸化剤ガス供給流路60等の流路は、配管により形成されている(以下、同様)。
供給側封止弁118は、酸化剤ガス供給流路60を開閉する。
【0037】
酸化剤ガス出口連通口102に連通する酸化剤オフガス流路62には、酸化剤ガス出口連通口102から順に加湿器30及び背圧弁としても機能する排出側封止弁120が設けられている。
【0038】
供給側封止弁118の吸入口と排出側封止弁120の吐出口との間には、酸化剤ガス供給流路60と酸化剤オフガス流路62を連通するバイパス流路64が設けられている。バイパス流路64には、バイパス流路64を開閉するバイパス弁122が設けられている。バイパス弁122は、燃料電池スタック18をバイパスする酸化剤ガスの流量を調整する。
バイパス流路64と酸化剤オフガス流路62との合流路は、排出流路62Aに連通している。
【0039】
水素タンク20は、電磁作動式の遮断弁(不図示)を備え、高純度の水素を高い圧力で圧縮して収容する容器である。
【0040】
水素タンク20から吐出される燃料ガスは、燃料ガス供給流路72に設けられたインジェクタ32及びエジェクタ34を通じ、燃料ガス入口連通口103を介して燃料電池スタック18のアノード流路59の入口に供給される。
【0041】
この場合、燃料ガス供給流路72には、該燃料ガス供給流路72内の燃料ガスのガス圧力Phを検出(測定)する圧力センサ73が設けられる。
【0042】
アノード流路59の出口は、燃料ガス出口連通口104及び燃料ガスの燃料オフガス流路74を通じて気液分離器36の入口151に連通され、該気液分離器36にアノード流路59から水素含有ガスである前記燃料オフガスが供給される。
【0043】
また、燃料電池スタック18を収容するケースの下端部(底部)には、燃料ガス出口連通口104に連通するケース側排出流路であるケース下端側排出流路172が設けられている。ケース下端側排出流路172は、ケース側開閉弁であるケース下端側開閉弁174を通じて排出流路99に連通している。
【0044】
ケース下端側開閉弁174が開弁されると、前記ケース内の底部に溜まった液水がケース下端側排出流路172に排出される。液水の排出が完了した後にも、ケース下端側開閉弁174が開弁状態にされていると、ドレイン弁164と同様に、燃料オフガスが排出される。
【0045】
実際上、アノード流路59には、燃料電池スタック18の発電により生成された水の一部が、カソード流路58から電解質膜・電極構造体52を逆拡散(透過)して移動してくる。
【0046】
この逆拡散水をケース下端側排出流路172、燃料オフガス流路74あるいは循環流路77から適切に排水できない場合、燃料電池スタック18のアノード電極57に水が浸入し、アノード流路(燃料ガス流路)59を塞いでしまう。この場合、発電セル50の局所的な水素欠乏(燃料ガス欠乏)による電極劣化、及びガス拡散阻害による燃料電池スタック18の発電安定性の悪化を引き起こす。
【0047】
これらの不都合を防止するために、水を一時的に貯留する気液分離器36は、前記燃料オフガスを気体成分と液体成分(液水)とに分離する。
【0048】
燃料オフガスの気体成分(燃料オフガス)は、気液分離器36の気体排出口152から排出され、循環流路77を通じてエジェクタ34の吸込口に供給される一方、ブリード弁70が開弁されたとき、燃料オフガスは、接続流路(連絡流路)78、ブリード弁70を介し、酸化剤ガス供給流路60Bにも供給される。
【0049】
逆拡散水からなる、燃料オフガスの液体成分(液水)は、気液分離器36の液体排出口160からドレイン弁164が設けられたドレイン流路162を通じ、排出流路62Aから排出される排出ガスと混合され排出流路99及び排ガス排気口168を通じて外気に排出される。
【0050】
実際上、ドレイン流路162には、前記液水と共に、一部の燃料オフガス(水素含有ガス)が排出される。また、ドレイン流路162には、前記液水の排出完了後には、燃料オフガス(水素含有ガス)のみが排出される。
【0051】
燃料オフガス中の水素ガスを希釈して外部に排出するために、コンプレッサ28から吐出した酸化剤ガスの一部がバイパス流路64を通じて、排出流路62Aに供給されている。
【0052】
ドレイン流路162から水が抜けた後も、ドレイン弁164を開け続けた場合、水素を無駄に捨ててしまうことになるため、気液分離器36から水が排水された後は、ドレイン弁164を適切に閉弁する必要がある。
【0053】
燃料オフガスの循環流路77と酸化剤ガス供給流路60Bを連通する接続流路78に設けられたブリード弁70は、燃料電池自動車12の走行中に、カソード流路58に存在する窒素ガスが電解質膜・電極構造体52を透過してアノード流路59内の水素濃度を低下させることを原因とするアノード電極57の劣化を防止するために開弁される。
【0054】
ブリード弁70が開弁されると、燃料電池スタック18から燃料オフガス流路74を通じ、気液分離器36を介して吐出される燃料オフガスを、接続流路78、酸化剤ガス供給流路60B、及び酸化剤ガス入口連通口101を介してカソード流路58に流通させる。
【0055】
カソード流路58に流通された燃料オフガス中の燃料ガスは、カソード電極56での触媒反応により水素イオン化され、該水素イオンは酸化剤ガスと反応して水が生成される。反応しなかった残部の燃料オフガス(窒素ガスと未反応の僅かな水素ガスとからなる)は燃料電池スタック18から酸化剤オフガスとして排出され、酸化剤オフガス流路62に流通する。
【0056】
酸化剤オフガス流路62に流通する酸化剤オフガス(前記反応しなかった残部の燃料オフガスを含む)に酸化剤ガスのバイパス流路64を通じて供給された酸化剤ガスが混合されて、酸化剤オフガス中の燃料オフガス(燃料ガスを含む)の濃度が希釈された酸化剤オフガスが、排出流路62Aに流通する。
【0057】
排出流路62Aは、ドレイン流路162及びケース下端側排出流路172に連通し、合流して排出流路99に連通する。
【0058】
排出流路99では、排出流路62Aからの酸化剤オフガスにより、ケース下端側排出流路172及びドレイン流路162から吐出される液水と燃料オフガスの混合流体中の燃料ガスが希釈され、排ガス排気口168を通じて燃料電池自動車12の外部(大気)に排出される。
【0059】
燃料電池システム10の冷媒供給装置26は、冷媒を流通させる冷媒流路138を有する。冷媒流路138は、冷媒供給流路140と冷媒排出流路142とを有する。冷媒供給流路140は燃料電池スタック18に冷媒を供給し、冷媒排出流路142は燃料電池スタック18から冷媒を排出する。冷媒供給流路140及び冷媒排出流路142には、ラジエータ40が接続される。
【0060】
ラジエータ40は冷媒を冷却する。冷媒供給流路140には、冷媒ポンプ38が設けられる。冷媒ポンプ38は、冷媒の循環回路内で冷媒を循環させる。冷媒の循環回路には、冷媒供給流路140、燃料電池スタック18の内部冷媒流路、冷媒排出流路142及びラジエータ40が含まれる。冷媒排出流路142に温度センサ76が設けられる。該温度センサ76により検出される冷却媒体の温度(冷媒出口温度)Tsは、燃料電池スタック18の(内部)温度であるものとして検出(測定)される。
【0061】
以上の燃料電池システム10の各構成要素は、制御装置15によって統括制御される。
なお、供給側封止弁118、排出側封止弁120、ブリード弁70、ドレイン弁164及びケース下端側開閉弁174は、制御装置15により開度が制御される流量調整弁であるが、電磁制御式の開閉弁を用いデューティ制御してもよい。
【0062】
制御装置15は、ECU(Electronic Control Unit)により構成される。ECUは、1以上のプロセッサ(CPU)、メモリ、入出力インタフェース及び電子回路を有するコンピュータにより構成される。1以上のプロセッサ(CPU)は、メモリに記憶された図示しないプログラムを実行する。
【0063】
制御装置15のプロセッサ(CPU)は、前記プログラムに従って演算を実行することで、燃料電池自動車12及び燃料電池システム10の運転制御を行う。
【0064】
制御装置15には、燃料電池自動車12の電源スイッチ(電源SW)71が接続されている。電源スイッチ71は、燃料電池システム10の燃料電池スタック18の発電運転を開始乃至継続(ON)させるか終了(OFF)させる。制御装置15には、また、それぞれ図示しないアクセル開度センサ、車速センサ、蓄電装置44のSOCセンサが接続される。
【0065】
[動作]
この実施形態に係る燃料電池システム10は、基本的には以上のように構成される。以下、
図2のフローチャートを参照しながら、燃料電池システム10の動作について説明する。
【0066】
図2のフローチャートによる処理は、電源スイッチ71がON状態であって、燃料電池スタック18の発電中に、制御装置15により所定の周期で繰り返し実行される。
【0067】
フローチャートによる処理の理解の便宜のために、動作の一例を
図3A~
図3Dのタイミングチャートに基づいて説明する。
【0068】
図3Aは、制御装置15の制御下に、インジェクタ32が、一定周期(一定インターバル)Tint(Tint=Ton+Toff)毎に、吐出期間Tonの間、燃料ガスを、燃料ガス供給流路72を介し、燃料ガス入口連通口103を通じてアノード流路59に供給(吐出)している状態を示している。
【0069】
吐出期間Tonは、インジェクタ32の動作ON期間である。非吐出期間Toffは、インジェクタ32の動作OFF期間である。
【0070】
図3Bは、制御装置15により開閉動作が制御されるドレイン弁164の開閉状態を示している。ドレイン弁164は、時点t3~時点t9の間、開弁状態とされ、時点t3までの期間及び時点t9以降の期間は、閉弁状態とされる。
【0071】
図3Cは、圧力センサ73により連続的に検出され制御装置15が取得している燃料ガス供給流路72内の燃料ガスの圧力(ガス圧力)Ph[Pa]の変動(時間変化)を示している。
【0072】
図3A及び
図3Cから分かるように、インジェクタ32が、燃料ガスをアノード流路59に吐出した吐出期間Tonに、燃料ガスのガス圧力Phが上昇し、非吐出期間Toffでは、燃料電池スタック18の発電により燃料ガスのガス圧力Phが時間に比例して減少している。
【0073】
図3Dは、制御装置15により算出される、ドレイン弁164が閉弁状態であって、且つ前記ガス圧力Phが比例的に減少している非吐出期間Toff内でのガス圧力Phの圧力降下速度Vp(Vp=ΔP[Pa]/[sec])の算出値と、圧力降下速度Vpの所定期間(
図3Dの時点t1~時点t2間)内での平均圧力降下速度Vpmean{Vpmean=(ΣVp)÷n(nは圧力降下速度Vpの取得回数)}の算出値を示している。ΔPは、
図3Cから算出される微小単位時間内でのガス圧力Phの降下量(降下勾配)である。
【0074】
図3Dの例では、ドレイン弁164が、時点t3にて開弁したとき、時点t3前の時点t1~時点t2の間のドレイン弁164が閉弁されているときの非吐出期間Toff内での所定回数の平均圧力降下速度Vpmean=(ΔP/秒)が、時点t4の直後(非吐出期間Toffaの開始直後)に算出されている。
【0075】
平均圧力降下速度Vpmeanの算出時点にて、制御装置15は、さらに、基準値としての閾値降下速度Vth[Pa/sec]を算出する。閾値降下速度Vthは、平均圧力降下速度Vpmeanに、計測値のばらつき分、ノイズ混入分を考慮した余裕分(余裕降下速度量)ΔVp[Pa/sec]を加算して求める。
【0076】
すなわち、制御装置15は、閾値降下速度Vthを、Vth=Vpmean+ΔVpとして算出する(
図3D参照)。
【0077】
制御装置15は、このようにして算出した閾値降下速度Vthを用いて、以下に説明するように、ドレイン弁164の閉弁タイミングの時点t9を決定する。ドレイン弁164の開弁タイミングの時点t3の決定を含む、ドレイン弁164の開閉制御である気液分離器36に貯留された液水の排水制御について以下に説明する。
【0078】
図2のステップS1にて、制御装置15は、電流センサ112により発電電流Ifc[A]を取得し処理をステップS2に進める。
【0079】
ステップS2にて、制御装置15は、発電電流Ifcの積分値である発電量{∫(Ifc)dt}(単位は、Asec=アンペア×時間)を求め、気液分離器36に貯留されている液水の水位の推定値(水位推定値)Hestを算出して、処理をステップS3に進める。
なお、発電量は、発電電圧Vfcを考慮した電力量[Wh]としてもよい。
【0080】
図4は、水位推定値Hest算出用のマップ(特性)である推定水位算出マップ250を示している。発電中に、カソード流路58から電解質膜・電極構造体52をアノード流路59に逆拡散してくる水量は、発電量{∫(Ifc)dt}に比例し、一意に算出することができる。気液分離器36の箱構造(容積構造)は既知であるので、発電量{∫(Ifc)dt}を引数として推定水位算出マップ250を参照することで、現在の発電量{∫(Ifc)dt}に対する水位である水位推定値Hestを算出することができる。なお、
図4で、気液分離器36の水貯蔵部の水平方向の断面積は一定であるとしている。
【0081】
また、
図4には、ドレイン弁164の開弁タイミングを判定する閾値水位Hthを示している。閾値水位Hthは、気液分離器36において気液分離器36の入口151から液水が逆流し始める水位より僅かに低い水位又は気液分離器36の気体排出口152から循環流路77に液水が流れ出す水位より僅かに低い水位のうち、いずれか低い方未満の若干余裕をみた水位に予め設定され、推定水位算出マップ250上の所定値(
図4参照)として記録されている。
開弁タイミングを判定する閾値水位Hthに対応する発電量閾値をAhth[A×sec]という。
【0082】
ステップS3にて、制御装置15は、ドレイン弁164の閉弁時における圧力センサ73により検出されるガス圧力Phを取得し、記憶部に記録すると共に、一定処理時間前のステップS3にて記録したガス圧力Phとの差分を用いて
図3Dを参照して説明した圧力降下速度Vp(Vp=ΔP[Pa]/[sec])を算出し、記憶部に記録し、処理をステップS4に進める。
【0083】
ステップS4にて、制御装置15は、発電量{∫(Ifc)dt}から算出した水位推定値Hestが閾値水位Hth(発電量閾値Ahth)を上回るか否かを判定し、上回っていない(ステップS4:NO)場合には、ステップS1以降の処理を繰り返し、上回った(ステップS4:YES)場合には、処理をステップS5に進める。
【0084】
すなわち、制御装置15は、燃料電池スタック18の発電量{∫(Ifc)dt}が、発電量閾値Ahthまで積算され、水位推定値Hestが発電量閾値Ahthに対応する閾値水位Hthに到達したとき、処理をステップS5に進める。
【0085】
ステップS5にて、制御装置15は、気液分離器36から液水が燃料オフガス流路74側又は循環流路77側に流出しないように、ドレイン弁164を開弁する。これにより、ドレイン弁164を通じて液水の排出が開始され(
図3Bの開弁時点t3参照)、処理をステップS6に進める。
【0086】
ステップS6(
図3Dの時点t4後の近く)にて、制御装置15は、ドレイン弁164の開弁時のガス圧力Phの平均圧力降下速度Vpmeanを算出し、さらに、余裕分ΔPを加算して閾値降下速度Vth[Pa/sec]を算出し、処理をステップS7に進める。
【0087】
ステップS7にて、制御装置15は、ドレイン弁164を除く他の弁、具体的には、開弁が、燃料ガス供給流路72の圧力センサ73により取得されているガス圧力Phに影響を与えるブリード弁70及びケース下端側開閉弁174が、両方とも閉弁しているか否かを確認し、両方とも閉弁する(ステップS7:YES)まで待機(ステップS7:NO)して、処理をステップS8に進める。
【0088】
ステップS8にて、制御装置15は、発電電流Ifcの変動幅が所定電流変動幅内であるか否かを判定し、所定電流変動幅内となるまで待機(ステップS8:NO)して、処理をステップS9に進める。
【0089】
発電電流Ifcの変動幅が所定電流変動幅内であるか否かを判定する理由は、以下の
図5A~
図Cを参照して、例を上げて説明するように、ガス圧力Phの極端な変動が発生していない状況下で圧力降下速度Vpを判定するためである。
【0090】
なお、燃料ガス供給流路72から燃料電池スタック18内に燃料ガスが供給されていない期間(
図3A中、非吐出期間Toff)内での発電電流Ifcの変動は、アノード電極57での水素のイオン化反応に直結し、アノード流路59(燃料ガス供給流路72)でのガス圧力Phの変動を発生させる。
【0091】
図5A~
図5Cは、動作説明に供される一例のタイミングチャートである。
【0092】
ステップS9の処理に進むためには、
図5Aの時点t10~時点t11の間に示すように、発電電流Ifcが、ある初期値の発電電流Ifciに対して、上側規定値ΔIfcuを加算した上限発電電流(Ifci+ΔIfcu)と、下側既定値Δifcdを引算した下限発電電流(Ifci-ΔIfcd)との間の所定電流変動幅内の値であることを前提条件にしている。
【0093】
時点t11~時点t14間に示すように、発電電流Ifcが、例えば、アクセル開度の急変動に応じて、上限発電電流(Ifci+ΔIfcu)を上回っている(ステップS8:NO)場合には、ステップS9及びステップS10に進んでの降下速度判定を実施しない。
【0094】
発電電流Ifcが所定電流変動幅から外れる値を採る場合には、ガス圧力Phの圧力降下速度Vpの変化が、ドレイン弁164の開弁を原因とするものか否かの検知信頼性が低くなる恐れがある。
【0095】
制御装置15は、発電電流Ifcが所定電流変動幅内である(ステップS8:YES)とき、処理をステップS9に進める。
【0096】
ステップS9にて、制御装置15は、ドレイン弁164を開弁(ステップS5で開弁、
図3Bの時点t3以降に対応する。)中であって、非吐出期間Toff内での圧力降下速度Vpを算出し、処理をステップS10に進める。
【0097】
ステップS10にて、制御装置15は、算出した圧力降下速度Vpが閾値降下速度Vth以上となった否かを判定し、否定的な判定の場合には、処理をステップS7に戻し、肯定的な判定(時点t7以降)の場合には、処理をステップS11に進める。
【0098】
図3A~
図3Dを参照して、閉弁タイミングを説明すると、ドレイン弁164の開弁時点t3~時点t5の間では、
図3Bに示すように、ドレイン弁164には液水のみが排出されているので、ガス圧力Phの変動は略なく、圧力降下速度Vpが閾値降下速度Vth以上となることはない。
【0099】
非吐出期間Toffb中の時点t6にて、ドレイン弁164を通流させる気液分離器36内の液水が少なくなり、ドレイン弁164に燃料オフガスが排出されるようになると、圧力降下速度Vpは大きくなるが、まだ、ガス圧力Phの変動は少なく、圧力降下速度Vpが閾値降下速度Vth以上にならない(Vp=Vp2<Vth)。
【0100】
時点t7~時点t8に示すように、燃料オフガスのみがドレイン弁164に流通するようになると、ガス圧力Phが急激に低下し、圧力降下速度Vpが急上昇し、非吐出期間Toffc中で閾値降下速度Vth以上(Vp=Vp3≧Vth、ステップS10:YES)に至る。
【0101】
ステップS11にて、制御装置15は、気液分離器36内からの液水の排出が完了した(時点t9)とみなして(圧力降下速度Vp4)ドレイン弁164を閉弁する(ドレイン弁164の閉弁指示)。
【0102】
なお、ステップS10の判定処理は、ドレイン弁164を開弁直後の圧力降下速度Vpが、所定降下速度分大きくなったときに、肯定的になる処理としてもよい。
【0103】
このように、上記の実施形態では、圧力降下速度Vpによる排水完了検知(ステップS10の判定)の条件に電流変動監視機能を設けている。すなわち、発電電流Ifcの変動幅が、所定電流変動幅内(ステップS8:YES)の場合にのみ、圧力降下による排水検知を行うことで、検知信頼性を高めている。
【0104】
[実施形態から把握し得る発明]
ここで、上記実施形態から把握し得る発明について、以下に記載する。なお、理解の便宜のために構成要素の一部には、上記実施形態で用いた符号を付けているが、該構成要素は、その符号を付けたものに限定されない。
【0105】
(1)この発明に係る燃料電池システム10は、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池スタック18と、前記燃料ガスを前記燃料電池スタックに供給する燃料ガス供給流路72と、前記燃料電池スタックから排出される燃料オフガスが流通する燃料オフガス流路74と、前記燃料オフガス流路に設けられる気液分離器36と、該気液分離器に設けられ、該気液分離器内の液水を排出するドレイン弁164と、前記燃料ガス供給流路又は前記燃料オフガス流路に設けられ、流路内のガス圧力Phを検出する圧力センサ73と、前記燃料電池スタックの発電状態を取得する発電状態取得部115と、制御装置15と、を備え、前記制御装置は、前記発電状態及び前記ガス圧力に基づき、前記ドレイン弁の開閉を制御する。
【0106】
この構成により、燃料電池スタックの発電状態と、燃料ガス流路のガス圧力又は燃料オフガス流路のガス圧力と、を考慮してドレイン弁を開閉制御することで、水位センサを用いることなく気液分離器内の水位状態を考慮した液水の排出を正確に制御することができる。ドレイン弁からの液水の排出を正確に制御することができるので、ドレイン弁から排出される燃料オフガスの量を抑制でき、延いてはエネルギの効率化に寄与する。
【0107】
(2)また、燃料電池システムにおいては、前記制御装置は、前記ドレイン弁が閉弁しているときの前記気液分離器内の水位を前記発電状態に基づき推定し、推定した水位(水位推定値Hest)が閾値水位Hth以上になると前記ドレイン弁を開弁して前記液水を排出し、前記ドレイン弁の開弁中に、前記発電状態の変動が所定範囲内に収まっている状態において、前記圧力センサにより検出されている前記ガス圧力の圧力降下速度Vpが閾値降下速度Vth以上になったとき、前記ドレイン弁を閉弁する。
【0108】
これによれば、発電状態に基づき水位を推定し、推定した水位が閾値水位以上になったときにドレイン弁を開弁して液水を排出し、排出中に、燃料ガス流路のガス圧力又は燃料オフガス流路のガス圧力の圧力降下速度が閾値降下速度以上になったときに、オフガスの排出が開始されて排水が終了することを検知できる。
【0109】
このように、発電状態を考慮してドレイン弁を開閉できるので、水位センサを用いることなくドレイン弁から液水を的確に排出できる。これにより、ドレイン弁を必要以上の時間、開弁してしまい、燃料オフガスがドレイン弁から排気されることを抑制できる。燃料オフガスに含まれる燃料ガスにより発電を行うことができるので、エネルギの効率化に寄与する。
【0110】
(3)さらに、燃料電池システムにおいては、前記燃料オフガス流路から酸化剤ガス供給流路に接続される接続流路78と、該接続流路の連通状態を開閉する開閉弁と、をさらに備え、前記制御装置は、前記開閉弁が閉弁されているときに、前記発電状態及び前記ガス圧力に基づき、前記ドレイン弁の開閉を制御するようにしてもよい。
【0111】
これにより、接続流路の開閉弁の開弁により前記ガス圧力が変動しているときには、ドレイン弁の開閉制御を行わないので、誤ってドレイン弁を開弁してしまうことを防止できる。
【0112】
(4)さらにまた、燃料電池システムにおいては、前記燃料電池スタックを収容するケースに設けられ、前記燃料電池スタック内の液水を外部に排出するケース側開閉弁をさらに備え、前記制御装置は、前記ケース側開閉弁が閉弁されているときに、前記発電状態及び前記ガス圧力に基づき、前記ドレイン弁の開閉を制御するようにしてもよい。
【0113】
これにより、ケース側開閉弁の開弁により前記ガス圧力が変動しているときには、ドレイン弁の開閉制御を行わないので、誤ってドレイン弁を開弁してしまうことを防止できる。
【0114】
なお、この発明は、上述した実施形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0115】
10…燃料電池システム 12…燃料電池自動車
15…制御装置 18…燃料電池スタック
22…酸化剤ガス供給装置 24…燃料ガス供給装置
26…冷媒供給装置 36…気液分離器
70…ブリード弁 72…燃料ガス供給流路
73…圧力センサ 74…燃料オフガス流路
110…電圧センサ 112…電流センサ
115…発電状態取得部 164…ドレイン弁
172…ケース下端側排出流路 174…ケース下端側開閉弁
Hest…水位推定値 Hth…閾値水位
Ifc、Ifci…発電電流 Ph…ガス圧力
Vfc…発電電圧 Vp…圧力降下速度
Vth…閾値降下速度