(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156839
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】基地局、及び端末
(51)【国際特許分類】
H04W 52/24 20090101AFI20241029BHJP
H04W 72/0446 20230101ALI20241029BHJP
H04W 72/1268 20230101ALI20241029BHJP
H04J 99/00 20090101ALI20241029BHJP
【FI】
H04W52/24
H04W72/0446
H04W72/1268
H04J99/00 100
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024125773
(22)【出願日】2024-08-01
(62)【分割の表示】P 2021162106の分割
【原出願日】2021-09-30
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 賢一
(72)【発明者】
【氏名】森山 雅文
(57)【要約】
【課題】基地局が複数の端末の夫々に送信電力を示す情報を送信可能とする。
【解決手段】
制御装置及び無線機を備えた基地局であって、無線機は、複数の端末の各々から、リファレンス信号を受信し、制御装置は、複数の端末の各々に対し、リファレンス信号に基づいて、端末からの送信の受信品質を推定し、制御装置は、複数の端末の各々に対し、前記推定した受信品質に基づいて、端末がアップリンク信号を送信するための送信電力を決定し、無線機は、複数の端末の各々に、決定した送信電力を示す情報を送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置及び無線機を備えた基地局であって、
前記無線機は、複数の端末の各々から、リファレンス信号を受信し、
前記制御装置は、前記複数の端末の各々に対し、前記リファレンス信号に基づいて、前記端末からの送信の受信品質を推定し、
前記制御装置は、前記複数の端末の各々に対し、前記推定した受信品質に基づいて、前記端末がアップリンク信号を送信するための送信電力を決定し、
前記無線機は、前記複数の端末の各々に、前記決定した送信電力を示す情報を送信する、
基地局。
【請求項2】
前記無線機は、複数の端末の各々から、非直交多元接続(NOMA:Non-orthogonal Multiple Access)を使用して送信されたアップリンク信号を受信する、
請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
前記制御装置は、前記複数の端末の各々に対し、前記推定した受信品質に基づいて、前記端末がアップリンク信号を繰り返して送信するための回数を決定し、
前記無線機は、前記端末に、前記決定した回数を示す情報を送信する、
請求項1又は2に記載の基地局。
【請求項4】
前記制御装置は、前記複数の端末の各々に対し、コンフィギュアドグラント(CG:Configured Grant)を使用して、前記端末が前記アップリンク信号を送信するためのリソース割り当てる、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基地局。
【請求項5】
前記複数の端末は、第1の端末及び第2の端末を含み、
前記制御装置は、前記第1の端末がアップリンク信号を送信するための第1の送信電力を決定し、
前記推定した受信品質及び前記決定した第1の送信電力に基づいて、前記第2の端末がアップリンク信号を送信するための第2の送信電力を決定する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基地局。
【請求項6】
前記決定した第1の送信電力と前記決定した第2の送信電力との間の差は、予め定められた電力差以上である、
請求項5に記載の基地局。
【請求項7】
前記無線機は、前記複数の端末の各々に、前記端末が前記アップリンク信号を繰り返して送信することを開始するスロットを示す情報を送信する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の基地局。
【請求項8】
前記無線機は、前記複数の端末の各々に、前記端末が前記アップリンク信号を繰り返して送信するために使用周波数チャネルを示す情報を送信する、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の基地局。
【請求項9】
制御装置及び無線機を備えた端末であって、
前記無線機は、基地局にリファレンス信号を送信し、前記リファレンス信号は、前記端末からの送信の受信品質を推定するために前記基地局によって使用され、
前記無線機は、前記基地局から、前記端末がアップリンク信号を送信するための送信電力を示す情報を受信し、前記送信電力は、前記受信品質に基づいて前記基地局によって決
定され、
前記制御装置は、前記情報に基づいて、前記アップリンク信号を送信するための送信電力を決定し、
前記無線機は、前記決定した送信電力を使用して、前記基地局に前記アップリンク信号を送信する、
端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基地局、及び端末に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信の標準化団体3GPP(Third Generation Partnership Project)では、リリース17における議題の一つとして、Coverage enhancement (通信範囲の拡張)が設定
されている。会議では、基地局からの距離によらず、基地局-端末間の伝搬損失が大きい場合でも、所望の通信要件を満たす通信を実現するための技術が検討されている。
【0003】
本開示に係る背景技術としては、例えば、同一信号の連送を行い、受信局で同一信号の積分を行い、受信局での信号対ノイズ比(SNR)の改善を図る技術がある(例えば、非特許文献1)。また、複数の端末が基地局に非直交多元接続(Non-orthogonal Multiple Access:NOMA)された複数の端末が同一の周波数帯を用いて同一の時間帯にデータを送信可能な技術がある(例えば、非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3GPP TR 38.830、Study on NR coverage enhancements (Release 17)、2020 年12月
【非特許文献2】M. Moriyama, T. Takizawa, M. Oodo, H. Tezuka, and F. Kojima, “Experimental Evaluation of a Novel Up-link NOMA System for IoT communication Equipping Repetition Transmission and Receive Diversity,” IEICE Trans. Commun., Vol.E102 -B, No.8, pp1467-1476
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、受信局に非直交多元接続された複数の送信局が好適な連送を行うことを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様の一つは、無線通信相手の受信局と非直交多元接続される複数の送信局であって、夫々が連送により複数の送信局の間で共通な所定の周期で所定回数連続して同一の信号を受信局に送信可能な複数の送信局の送信制御方法である。この送信制御方法では、情報処理装置が、受信局における受信品質が良いほど高くなり、且つ送信局間に要求される受信電力差を確保可能な、複数の送信局の夫々に割り当てる送信電力の初期値を計算することと、複数の送信局のうち、最大の送信電力の初期値が割り当てられた第1の送信局の連送回数を受信品質の指標値に基づいて計算することとを実行する。
【0007】
本開示の他の態様の一つは、制御部を含む情報処理装置である。この情報処理装置において、制御部は、無線通信相手の受信局と非直交多元接続される複数の送信局であって、夫々が連送により複数の送信局の間で共通な所定の周期で所定回数連続して同一の信号を受信局に送信可能な複数の送信局に関して、受信局における受信品質が良いほど高くなり、且つ送信局間に要求される受信電力差を確保可能な、複数の送信局の夫々に割り当てる送信電力の初期値を計算することと、複数の送信局のうち、最大の送信電力の初期値が割り当てられた第1の送信局の連送回数を受信品質の指標値に基づいて計算することを実行する。
【0008】
本開示の他の態様の一つは、無線通信相手の受信局と非直交多元接続される複数の送信局であって、夫々が連送により複数の送信局の間で共通な所定の周期で所定回数連続して同一の信号を受信局に送信可能な複数の送信局に含まれる第1の送信局の送信制御方法である。この送信制御方法は、第1の送信局が、受信局への連送回数及び連送の各回に使用する送信電力を含む情報を受信し、情報に基づく連送を行うことを含む。そして、情報は、送信電力として、第1の送信局に割り当てられた送信電力の初期値である第1の値を含み、第1の値が複数の送信局に割り当てられた送信電力の初期値の最大値でない場合に、最大値が割り当てられた送信局の連送が停止した後に使用される送信電力であって、第1の値より大きい第2の値をさらに含む。
【0009】
本開示の他の態様の一つは、無線通信相手の受信局と非直交多元接続される複数の送信局であって、夫々が連送により複数の送信局の間で共通な所定の周期で所定回数連続して同一の信号を受信局に送信可能な複数の送信局に含まれる第1の送信局である。第1の送信局は、受信局への連送回数及び連送の各回に使用する送信電力を含む情報を受信する通信部と、通信部を用いて情報に基づく連送を制御する制御部とを含む。情報は、送信電力として、第1の送信局に割り当てられた送信電力の初期値である第1の値を含み、第1の値が複数の送信局に割り当てられた送信電力の初期値の最大値でない場合に、最大値が割り当てられた送信局における連送が停止した後の連送に用いる送信電力であって、第1の値より大きい第2の値をさらに含む。
【0010】
本開示の他の態様は、上記した複数の送信局と受信局とを含む無線通信システム、コンピュータを上記した送信局、受信局、又は情報処理装置として動作させるプログラム、当該プログラムを記録した非一時的記憶媒体などを含み得る。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、受信局に非直交多元接続された複数の送信局が好適な連送を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1Aは、無線通信システムの第1の構成例を示す図であり、
図1Bは、無線通信システムの第2の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、無線通信システムに適用される無線フレームの例を示す図である。
【
図3】
図3は、電力多重、及び干渉抑圧・除去技術(Interference suppression and cancellation techniques)の説明図である。
【
図4】
図4は、無線通信システムにおける連送の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、基地局及び端末のハードウェア構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、端末の構成例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、基地局の構成例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、基地局における処理(連送回数及び各回において使用する送信電力の算出)例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、
図8におけるステップS001の詳細(第1の例)を例示するフローチャートである。
【
図10】
図10は、
図8におけるステップS001の詳細(第2の例)を例示するフローチャートである。
【
図11】
図11は、
図8におけるステップS002の詳細を例示するフローチャートである。
【
図12】
図12は、
図8におけるステップS003の詳細を例示するフローチャートである。
【
図14】
図14は、無線通信システムにおいて実行される、改良された連送の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<無線通信システムの構成>
図1は、実施形態に係る無線通信システムの第1の構成例を示す図である。
図1Bは、無線通信システムの第2の構成例を示す図である。第1の構成例に係る無線通信システムは、基地局1と、基地局1との間で無線により通信する複数の端末2(#0~#K-1、Kは0を含む自然数)を含む。基地局1は、受信局の一例であり、複数の端末2は、複数の送信局の一例である。
【0014】
複数の端末2の夫々は、UE(User Equipment)と呼ばれる。複数の端末2の夫々は、アンテナ20と、アンテナ20と接続された無線機2aと、無線機2aと接続された制御装置2bとを含む。制御装置2bは、センサ3などからデータを取得(受信)する。また、制御装置2bは、データ信号或いは制御信号の基地局1への送信、或いは、基地局1からの制御信号などの受信のために、無線機2aを制御する。無線機2aは、データ信号及び制御信号などを含む送信対象の信号を無線信号に変換してアンテナ20から放射(送信)する。また、無線機2aは、アンテナ20から受信された無線信号を制御装置2bで扱い可能な信号形式に変換する。アンテナ20の本数は、1でも2以上でもよい。端末2が2以上のアンテナを有し、基地局1との間でMIMO(multiple-input and multiple-output)通信が行われてもよい。
【0015】
基地局1は、1又は2以上のアンテナ10と、アンテナ10と接続された無線機1aと、無線機1aと接続された制御装置1bとを含む。無線機1a及び制御装置1bは、無線機2a及び制御装置2bと同様の機能を有する。制御装置2bは、端末2から受信したデータをサーバ4等に送信することができる。制御装置1bは、情報処理装置(コンピュータ)の一例である。なお、情報処理装置は、基地局1に含まれていてもよく、基地局1と異なる(基地局1から独立した)端末装置(サーバなど)であってもよい。すなわち、サーバなどの端末装置が、複数の端末2に対する連送回数及び各回において使用する送信電力を算出し、各端末2に送信する構成を有していてもよい。
【0016】
無線通信システムによれば、例えば、複数の端末2の夫々でセンサ3から取得されるデータ(IoT(Internet of Things)データなど)を基地局1経由でサーバ4に蓄積することができる。また、サーバ4からのデータを基地局1経由で複数の端末2の夫々に送信することもできる。端末2は、固定端末でも移動端末であってもよい。移動端末は、携帯端末であっても車載端末であってもよい。車載端末は、車両に乗せられた端末であっても、車両に据え付けられた端末であってもよい。
【0017】
なお、
図1Bの第2の構成例に示すように、基地局1の代わりに、2以上の分散基地局と、制御装置1bとを有する基地局1Aが適用されてもよい。分散基地局は、アンテナ10及び無線機1aを有し、RRH(Remote Radio Head:無線部)と呼ばれる。2以上の分
散基地局が接続される制御装置1bは、BBU(Base Band Unit:信号処理部)と呼ばれる。以下の説明では、第1の構成例を有する基地局1について説明する。
【0018】
第1及び第2の構成例において、基地局1と複数の端末2の夫々とは、下り回線(ダウンリンク:DL)と、上り回線(アップリンク:UL)とを用いて通信(信号の送受信)を行う。DLは、基地局1から端末2へ向かう回線であり、制御信号の送信(通知)に使用される制御チャネル(制御CH)を含む。一方、ULは、端末2から基地局1へ向かう回線であり、制御CHと、データ(ユーザデータ)の送信に使用される共用チャネル(共用CH)とを含む。共用CHはデータチャネルとも呼ばれる。
【0019】
<無線フレーム>
ULの信号、及びDLの信号は、時分割多重によって割り当てられた時間領域を用いて送信される。
図2は、無線通信システムに適用される無線フレームの例を示す図である。
図2において、無線フレームは、所定の時間長を有する。無線フレーム長は、5Gでは10msであるが、10msより短くても長くてもよい。また、無線フレームは、複数個のサブフレームに分割される。5Gでは、サブフレーム長が1msに規定され、無線フレームが10個のサブフレームに分割される。但し、サブフレーム長及び分割数は5Gの例に制限されない。サブフレームは、さらに2つ以上のスロット(スロット長:500μm)に分割されてもよい。
図2に示すように、無線フレームの各サブフレームは、DL又はULに割り当てられる。
図2の例では、1つのDLに4つのULが続くように、DL及びULの割り当てがなされている。但し、このような割り当ては変更可能である。また、ULが割り当てられたサブフレームにおけるスロットは、等分され、前半部分にリファレンス信号(RS)がマッピングされ、後半部分にデータ信号(DS)がマッピングされている。但し、1スロットにおけるリファレンス信号及びデータ信号の配置は適宜変更可能である。
【0020】
リファレンス信号は、受信局(基地局1)で既知の信号であり、無線信号のチャネル(伝搬路、或いは通信路と呼ばれる)推定に使用される。データ信号は、ユーザデータが所定のMCS(Modulation and Coding Scheme:変調・符号化率)に従って変調及び符号化された信号である。
【0021】
<無線通信システムの特徴>
無線通信システムでは、データ信号のアップリンク通信において、以下のような特徴を有する。第1に、本実施形態における無線通信システムでは、コンフィギュアドグラント(CG)が採用されている。
図2に示したように、UL通信において、CGとして利用可能な周波数チャネル及びスロットを事前に端末2に通知しておき、端末2毎に異なるリファレンス信号が用意され、リファレンス信号をペイロードであるデータ信号とともに送信することで、CGを実現している。CGにより、通信の許可であるグラントを基地局から端末が取得する手続きに伴う通信遅延をなくすことができる。
【0022】
第2に、無線通信システムでは、非直交多元接続により、複数の端末2から同一の周波数領域及び同一の時間領域(スロット)を用いて無線信号(リファレンス信号及びデータ信号)が送信される。このとき、基地局1において、端末2間で所望の受信電力差が生じるように、各端末2は、基地局1から指定された送信電力で無線信号の送信を行う。NOMAにより、信号送信の待ち時間を減少させることができる。但し、基地局1において、各端末2からの端末間干渉の抑圧及び除去が必要となる。
【0023】
図3は、電力多重、及び干渉抑圧・除去技術の説明図である。
図3における左側の図は、複数の端末2の例である端末A、端末B及び端末Cから送信された無線信号の基地局1における受信電力を模式的に示す。この例では、端末A、B及びCから受信されたデータ信号は、基地局1の受信電力で重畳された状態(重畳信号)となっている。そして、端末Aの受信電力と端末Bの受信電力の電力差D1、端末Bの受信電力と端末Cの受信電力との電力差D2の夫々は、好適な干渉抑圧・除去のために要求される、基地局1における端末2間の受信電力差(要求電力差ΔP)以上である。
【0024】
基地局1は、リファレンス信号に基づく伝搬路特性を求め、この伝搬路特性を用いて重畳信号に対する復調及び復号を行うことで、端末Aからのデータを得ることができる。なお、上述したCG、NOMAを用いたUL通信、及び干渉抑圧・除去技術(SICなど)を含む無線通信システムを本願発明者はSTABLE(Simultaneous Transmission Acce
ss Boosting Low-latEncy)と呼んでいる。但し、本願に係る送信(連送)制御方法は、
STABLE以外のNOMAを適用する無線通信システムに適用可能である。
【0025】
重畳信号から端末Aの信号の干渉抑圧・除去を行うアルゴリズムとして、逐次型干渉抑圧・除去(Successive Interference Cancellation:SIC)アルゴリズムが使用される
。SICは、受信信号強度(Received Signal Strength Indicator:RSSI)の大きい順に1端末ずつ逐次的に信号を判定し、その信号を除去していくアルゴリズムである。SICアルゴリズムは、端末2固有のリファレンス信号を用いた端末2と基地局1との間の通信路(伝搬路)特性の推定値を用いる。すなわち、SICアルゴリズムは、伝搬路特性の推定値を用いて、重畳信号のうち、受信信号強度の一番大きい端末2(端末A)から送信された信号(レプリカ信号と呼ばれる)を再現(生成)し、重畳信号から差し引く。これによって、重畳信号から、端末Aからのデータ信号による干渉が除去される(
図3の真ん中の図を参照)。
【0026】
端末Aからのデータ信号が除去された重畳信号について、端末Bのリファレンス信号に基づく伝搬路特性を用いた復調及び復号によって、端末Bからのデータを得ることができる。さらに、SICアルゴリズムを用いて、端末Bから送信されたデータ信号のレプリカ信号を生成し、重畳信号から差し引くことで、端末Bからのデータ信号による干渉が除去され、端末Cから送信されたデータ信号が残る(
図3の右側の図を参照)。当該信号に対し、端末Cのリファレンス信号に基づく伝搬路特性を用いた復調及び復号によって、端末Cからのデータを得ることができる。
【0027】
<連送(Repetition)>
また、無線通信システムは、複数の端末2の夫々は連送を行うことができる。連送は、所定の周期(例えばスロット)で同一の信号を連続して繰り返し送信することである。連送により端末2から送信された信号は、基地局1にて受信され積分される。積分により受信信号の足し合わせが行われることで、SNRが上昇し、受信品質(伝搬損失)の改善が図られる。
【0028】
同一の周波数領域及び同一の時間領域を用いてUL通信を行う複数の端末2が連送を行う場合、複数の端末2のうち、受信電力が最も小さい(伝搬損失が最も大きい)端末2に合わせて連送回数(同一信号の送信回数、同一信号を送信するスロット数)Nが決定される。Nは自然数である。
【0029】
図4は、連送の一例を示す図である。
図4において、NOMAでのUL通信を行う5台(K=5)の端末2が存在すると仮定する。5台の端末2の夫々の識別情報(ユーザID)は、“1”,“2”,“3”,“4”及び“5”である。端末“1”~“5”の番号順は、基地局1での受信電力の大きい順序となっており、端末“5”からの信号の受信電力が最も小さく、伝搬損失が大きい。このため、端末“5”の連送回数Nが6回(N=6)に設定されている。この場合、残りの端末“1”~“4”についても、連送回数Nが端末“5”と同じ回数(6回)に設定される。
【0030】
ところが、例えば、端末“1”は、受信電力が5台の端末2の中で最も大きいため、積分により所望の受信品質(SINR或いはエラー率)を得るための連送回数は端末“5”より少ないと考えられる。にも関わらず、端末“5”と同じ連送回数で送信を行うことは、無用の電力消費となり、好適な連送とは言えなかった。以下の説明では、少なくとも上述した問題を解決可能な無線通信システムの詳細について説明する。
【0031】
<ハードウェア構成>
図5は、基地局1及び端末2のハードウェア構成例を示す図である。
図5において、基
地局1は、
図1Aに示したM本のアンテナ10(10-1~10-M(Mは自然数))と、無線機(無線処理装置)1aと、制御装置1bとを備える。制御装置1bは、プロセッサ11と、記憶装置(メモリ)12と、内部インタフェース13と、他の基地局等と通信するためのネットワークインタフェース14とを有する。
【0032】
プロセッサ11は、Central Processing Unit (CPU)、或いはMicroprocessor Unit(MPU)とも呼ばれる。プロセッサ11は、単一のプロセッサに限定される訳ではな
く、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、プロセッサ11は、単一のソケットで接続される単一の物理CPUがマルチコア構成を有していても良い。また、プロセッサ11は、Digital Signal Processor(DSP)、Graphics Processing Unit(GPU)等の様々な回路構成の演算装置を含んでも良い。また、プロセッサ11は、集積回路(IC)、その他のディジタル回路、またはアナログ回路と連携するものでもよい。集積回路は、例えば、LSI、 Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、又はプログラマブルロジックデバイス(PLD)などである。PLDは、例えば、Field-Programmable
Gate Array(FPGA)である。プロセッサ11は、例えば、マイクロコントローラ(
MCU)、SoC(System-on-a-chip)、システムLSI、或いはチップセットなどと呼ばれるものであってもよい。プロセッサ11は、制御部の一例である。
【0033】
記憶装置12は、プロセッサ11が実行する命令列(コンピュータプログラム)、または、プロセッサ11が処理するデータ等を記憶する。内部インタフェース(内部IF)13は、種々の周辺装置をプロセッサ11に接続する回路である。
【0034】
ネットワークインタフェース(NW-IF)14は、他の基地局が接続されるネットワークに基地局1がアクセスするための通信装置である。他の基地局が接続されるネットワークは、バックホールとも呼ばれる。バックホールは例えば、光通信による有線ネットワークである。
【0035】
無線機1aは、無線信号を送信するトランスミッタおよび無線信号を受信するレシーバ等を含み、アンテナ10(10-1、・・・、10-M)に接続される。無線機1aは、トランスミッタおよびレシーバをそれぞれアンテナと同数のM系統有してもよい。
【0036】
図5において、端末2は、アンテナ20と、無線機(無線処理装置)2aと、制御装置2bとを備える。制御装置2bは、プロセッサ21と、記憶装置(メモリ)22と、内部インタフェース(内部IF)23と、他の基地局等と通信するためのネットワークインタフェース(NW-IF)24とを有する。プロセッサ21は「制御部」の一例であり、NW-IF24は「通信部」の一例である。
【0037】
プロセッサ21、記憶装置22、内部IF23、及びNW-IF24、及び無線機2aは、プロセッサ11、記憶装置12、内部IF13、及びNW-IF14、及び無線機1aと同様の機能を有する。
【0038】
<端末の構成>
図6は、端末の構成例を示すブロック図である。
図5に示したプロセッサ21が記憶装置22に記憶されたプログラムを実行することによって、端末2は、RS部210と、DS部220とを備えた装置として動作する。RS部210は、RS生成部211を含む。RS生成部211はリファレンス信号を生成する。
【0039】
DS部220は、符号化部221と、変調部222とを含む。符号化部221は、入力されるデータ(ユーザデータ)に対する所定の誤り訂正符号化を行う。誤り訂正符号化は、例えばターボ符号化であるが、これ以外の符号化形式でもよい。また、ターボ符号化の
前に、例えばCRC(Cyclic Redundancy Check)符号化が行われてもよい。
【0040】
変調部222は、符号化されたデータをディジタル変調してデータ信号を生成する。ディジタル変調の方式は、例えば、Quadrature Amplitude Modulation (QAM)、Phase Shift Keying (PSK)等である。符号化及び変調方式は、端末2に設定されているM
CSに従う。
【0041】
端末2は、マルチプレクサ(多重部)202をさらに含む。マルチプレクサ202の出力端はアンテナ20に接続されている。マルチプレクサ202は、リファレンス信号を出力したら、データ信号を出力するように切り替わることで、1スロット分のリファレンス信号及びデータ信号をアンテナ20に接続する。なお、リファレンス信号及びデータ信号の夫々の前段には、CP(Cyclic Prefix)と呼ばれる遅延波の影響を補償するための信
号区間を設けることができる。連送の際には、同一のデータ信号が基地局1から指定された連送回数(N回)送信されるように、データ信号の生成が行われる。或いは、生成されたデータ信号が複製され、連送回数(N回)送信されるようにしてもよい。
【0042】
<基地局の構成>
図7は、基地局1の構成例を示す図である。基地局1のプロセッサ11が記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することによって、基地局1は
図7に示すブロックを有する装置として動作する。
図7に示すように、基地局1は、アンテナ10と、デマルチプレクサ(分離部)101と、RS部110と、DS部120とを含む。デマルチプレクサ101は、切り替え動作によって、アンテナ10から受信される信号中のリファレンス信号をRS部110の積分部111へ送り、データ信号をDS部120の積分部121へ送る。このとき、リファレンス信号及びデータ信号に付与されていたCPが除去される。
【0043】
積分部111は、連送によって受信されるリファレンス信号を足し合わせることで、十分な受信信号電力のリファレンス信号を得る。通信路推定部112は、積分されたリファレンス信号を用いて通信路特性の推定値(チャネルベクトル)を算出する。この推定値は、復調部123における復調処理及びレプリカ信号の生成に利用される。
【0044】
DS部120は、積分部121と、レプリカ除去部122と、復調部123と、復号部124と、レプリカ生成部126とを含む。積分部121は、ターゲットの端末2(端末k)に対して割り当てた連送回数Nk(N個のスロット)のデータ信号を足し合わせることで、SNRの改善を図る。
【0045】
レプリカ除去部122は、積分された受信信号(重畳信号)からレプリカ生成部126によって生成されたレプリカ信号を差し引く。復調部123は、通信路推定部112からの通信路特性の推定値を用いて、ターゲットの端末2(重畳信号の送信元の端末のうち、送信電力値が最大の端末2)のデータ信号を分離し、分離したデータ信号に対する復調を行う。復号部124は、端末2の符号化部221で行われた符号化に対する復号を行い、元のデータを出力する。
【0046】
レプリカ生成部126は、符号化部127と、変調部128と、乗算部129とを含む。符号化部127及び変調部128は、復号部124から出力されたデータに対し、端末2で行われた符号化及びディジタル変調を行う。乗算部129は、変調されたデータに対し、ターゲットの端末2(復号されたデータの送信元の端末2)と基地局1との間の通信路特性の推定値を乗じる。これにより、レプリカ信号が生成される。レプリカ信号はレプリカ除去部122に供給される。
【0047】
<連送回数及び送信電力算出>
図8は、基地局における処理(連送回数及び各回において使用する送信電力値の算出)例を示すフローチャートである。
図8に示す処理は、例えば、基地局1のプロセッサ11によって行われる。当該処理は、例えば、複数の端末2がデータを基地局1へ送信する場合に、端末2からのデータ信号の送信要求を基地局1がUL制御チャネルを通じて受けたことを契機に開始される。但し、開始トリガは上記に制限されない。プロセッサ11に対する入力パラメータは以下の通りである。
・端末ID(ユーザID)k:kは、最小値“0”から最大値“K-1”までの値をとる。
・最大連送回数N
max:無線通信システムで採りうる最大の連送回数。例えば、5Gにつ
いては32回での運用が検討されている。最大連送回数は適宜設定可能であり、32回でも32回より多くても少なくてもよい。
・SINRとMCSに対するBLER(Block Error Rate)特性S(γ)
・BLERの目標値S
target
・最大送信電力P
max,UE:端末2での利用が許容される送信電力の最大値
・基地局の雑音電力P
N
・要求電力差ΔP:好適な干渉抑圧・除去の実施に要求される、基地局における端末間の受信電力差
【0048】
入力パラメータは、例えば記憶装置12に記憶されている。SINRに対するBLER特性は、例えば対応テーブルとして記憶装置12上に用意され、入力されたSINRに対するBLER特性がリトリーブされる。入力パラメータの記憶場所は、記憶装置12以外であってもよい。また、プロセッサ11が入力パラメータの一部または全部をネットワークから取得するようにしてもよい。
【0049】
ステップS001において、プロセッサ11は、NOMAによるUL通信を行う複数の(K台の)端末2に関して、基地局1-端末2間の伝搬損失Lkの測定を行う。また、プロセッサ11は、K台の端末2を、伝搬損失Lkの小さい順(受信品質が良い順)に並べる。
【0050】
ステップS002において、プロセッサ11は、K台の端末2の夫々に対し、送信電力の初期値(電力初期値Pk,0)を割り当てる。
【0051】
ステップS003において、プロセッサ11は、K台の端末2の夫々に対する連送回数Nkの指定と、送信電力値Pk,nの更新を行う。ステップS003の終了時点におけるプ
ロセッサ11からの出力パラメータは、以下の通りである。
・K台の端末2(端末ID:k=0~K-1の端末)の夫々に対して指定した連送回数Nk
・K台の端末2の夫々が行う連送の各回において使用する送信電力値Pk,n(n=1~最
大連送回数max(Nk))
【0052】
ステップS004では、基地局1は、DL制御チャネルを介して複数の端末2の夫々に出力パラメータを含む情報を通知(送信)する。このとき、基地局1は、通知する情報に対し、連送開始スロット及び使用する周波数チャネルを示す情報を含めることができる。
【0053】
図9は、
図8におけるステップS001の詳細(第1の例)を例示するフローチャートである。ステップS011では、プロセッサ11は、各端末2に対して、送信電力を送信電力値p
k,UEに設定して制御信号を送信することを指示する。この指示は、DL制御チャネルを通じて送信される。
【0054】
ステップS012では、プロセッサ11は、各端末2から、UL制御チャネルを介して
基地局1に送信された制御信号の受信信号強度rk,BSを計測する。
【0055】
ステップS013では、プロセッサ11は、送信電力値pk,UEから受信信号強度rk,BSを引くことで、端末2と基地局1との間の伝搬損失Lkを計算する。ステップS003において、基地局1が複数のアンテナ10を有する場合には、例えば、各アンテナ10の受信信号に係る伝搬損失の平均値を伝搬損失Lkとして用いることができる。
【0056】
図10は、
図8におけるステップS001の詳細(第2の例)を例示するフローチャートである。ステップS021では、プロセッサ11は、各端末2に対し、DL制御チャネルを介して、基地局1が指定した端末2への送信信号(指定送信信号)に対する受信信号強度の測定及び報告を指示する。
【0057】
ステップS022では、各端末2において、基地局1から送信された指定送信信号に対する受信信号強度rk,UEの測定が行われる。各端末2は、UL制御チャネルを通じて、受信信号強度rk,UEの測定結果を含む報告を基地局1へ送信する。
【0058】
ステップS023では、基地局1のプロセッサ11は、各端末2からの報告を受信し、基地局1における指定送信信号の送信電力値pk,BSから、報告に含まれた受信信号強度rk,UEを減じることで、各端末2に係る伝搬損失Lkを計算する。伝搬損失Lkの算出に際し、第1及び第2の例のいずれが用いられてもよい。
【0059】
図11は、
図8におけるステップS002の詳細を例示するフローチャートである。ステップS031では、プロセッサ11は、K台の端末2(端末#0~#K-1)のうちの一つを特定する番号kの値を0に設定する。K台の端末2に対し、端末IDであるk=0~K-1の値が、伝搬損失L
kの小さい順で割り当てられる。k=0の端末2は、伝搬損失L
kが最小の端末2を示す。
【0060】
ステップS032では、プロセッサ11は、現在のkの値がkの値の最小値である0か否かを判定する。kの値が0であると判定される場合、処理がステップS033に進み、そうでない場合には、処理がステップS034に進む。
【0061】
ステップS033では、プロセッサ11は、k=0の端末2に対し、電力初期値P0,0
を最大送信電力Pmax,UEに設定する。但し、最大送信電力Pmax,UEの代わりに、Pmax,UEより低い所望の値を用いてもよい。その後、処理がステップS035に進む。
【0062】
ステップS034に処理が進んだ場合には、プロセッサ11は、端末2の電力初期値Pk,0を、以下に示す第1及び第2の値のうちの小さい方に決定する。
・第1の値:端末2の最大送信電力Pmax,UE
・第2の値:k-1の端末2(端末k-1)の電力値Pk-1,0から、kの端末2(端末k)
の伝搬損失Lkと端末k-1の伝搬損失Lk-1との差分、及び要求電力差ΔPを減じた値
第2の値は、第1の値よりも小さい値となる。第2の値は、要求電力差ΔP以上の値となり、端末2間で十分な電力差が得られるようにしている。
【0063】
ステップS035では、プロセッサ11は、現在のkの値がK-1(kの最大値)であるか否かを判定する。kの値がK-1であると判定される場合には、
図11のフローが終了し、そうでない場合には、処理がステップS036に進む。ステップS036では、kの値がインクリメント(現在のkの値に1を加算)され、処理がステップS032に戻る。
【0064】
図12は、
図8におけるステップS003の詳細を例示するフローチャートである。ステップS041では、プロセッサ11は、端末kの値を0に設定し、連送回数nの値を1に設定する。
【0065】
ステップS042では、連送回数nに対するSINRγ
k,nの計算を行う。γ
k,nの値は、
図13に示す式にて算出することができる。すなわち、γ
k,nの値は、式中のAの値か
ら、Bの値とPnの値を差し引くことにより算出される。式中のAの値は、端末ID=kの端末2がn回連送を行った後の電力値(積分値)である。また、式中のBは、端末ID=k以外の端末2から受ける干渉電力である。P
nは、上述したように、基地局1の雑音電力である。
【0066】
ステップS043では、プロセッサ11は、所望連送回数Nkの値を算出する。所望連送回数Nkは、例えば、ステップS043で計算したSINRに対するBLER特性S(
γ)がBLERの目標値Stargetよりも小さくなる場合の最小値となるときのnの値を求
め、そのときのnの値をNkに設定する。これは、現在のkの値の端末2がNk回の連送を行うと、連送を停止する(次のスロットで連送をしない)ことを意味する。そして、処理がステップS044に進む。
【0067】
但し、ステップS043において、求めたnの値が最大連送回数N
max以上である場合
には、処理がステップS046に進む。ステップS046では、プロセッサ11は、N
kの値をN
maxに設定する。その後、
図12のフローが終了する。
【0068】
ステップS044では、電力値P
k+1以降,n+1の割り当てが行われる。すなわち、プロセッサ11は、現在のkの値に対するk+1以降の端末2に関して、ステップS043で算出された連送回数n=N
kの次のスロットn+1における送信電力値の割り当てを行う。送信電力値の計算は、ステップS002の処理(
図11に示したS031~S36のフロー)と同様の処理によって行うことができる。但し、当該処理は、所望連送回数N
kの設定済の端末2(次のスロットn+1において連送を行わない端末2)を除いた残りの端末2に対し、伝搬損失L
kの小さい順で端末ID:0~K-1が割り当てられた状態で行われる。
【0069】
ステップS045では、プロセッサ11は、現在のkの値がK-1であるか否かを判定する。kの値がK-1であると判定される場合には、
図12のフローが終了し、そうでない場合には、処理がステップS047に進む。ステップS047では、プロセッサ11がkの値をインクリメントし、処理がステップS042に戻る。
【0070】
図14は、無線通信システムにおいて実行される、改良された連送の一例を示す図である。
図4に示した端末ID“1”~“5”の端末2に関して、
図8~
図12に示したフローに係る処理を行うと、以下のようになる。すなわち、伝搬損失L
kの小さい順で端末“1”~“5”が並べられ(ステップS001)、夫々に電力初期値が割り当てられる(ステップS002)。このとき、伝搬損失L
kが最小の端末“1”に最大送信電力が割り当てられ、端末“2”~“5”に対し、基地局1における受信電力において、要求電力差ΔP以上の電力差が出るように、電力初期値が設定される。
【0071】
その後、ステップS003に係る
図12のフローにおいて、端末“1”の所望連送回数N
kが2に設定されると(ステップS043)、端末“1”の連送は
図14中の一番目(n=1)及び二番目(n=2)のスロットにおいて行われ、n=2のスロットで停止される状態となる。
【0072】
このとき、次のスロットn=3に関して、端末“1”を除いた残りの端末“2”~“5
”に割り当てる送信電力値が更新される(ステップS44)。このとき、端末“2”の送信電力値が最大送信電力に更新され、端末“3”~“5”の送信電力は、基地局1における受信電力において、要求電力差ΔP以上の電力差を設けた値に設定される。これによって、スロットn=3における端末“2”~“5”の受信電力は、夫々上昇する。
【0073】
その後のステップS043において、端末“2”に関する連送回数Nkが3に設定されると、端末“2”の連送はスロットn=3で停止する。このため、次のスロットn=4における残りの端末“3”~“5”の送信電力値が、それぞれ上昇する値に更新され(ステップS044)、基地局1での受信電力が上昇する状態となる。
【0074】
その後のステップS043において、端末“3”に関する連送回数Nkが4に設定されると、端末“3”の連送はスロットn=4で停止する。このため、次のスロットn=5における残りの端末“4”及び“5”の送信電力値が、それぞれ上昇する値に更新され(ステップS044)、基地局1での受信電力が上昇する状態となる。
【0075】
その後のステップS043において、端末“4”に関する連送回数Nkが5に設定されると、端末“4”の連送はスロットn=5で停止する。このため、次のスロットn=6における残りの端末“5”の送信電力値が、それぞれ上昇する値に更新される(ステップS044)。但し、本実施形態では、その後のステップS043において、端末“5”に対する連送回数Nkが5に設定される。この場合、端末“5”の連送がスロットn=5で停止するため、基地局1は、スロットn=6で使用する送信電力値を端末“5”に通知しない。
【0076】
したがって、
図13に示す例では、スロットn=6での連送に係る信号の送信は行われない。よって、スロットn=6を他の用途に有効利用することができる。また、端末“1”~“5”の夫々の連送回数が減少するため、消費電力を削減することができる。また、端末“2”~“5”に関して、送信電力値が上昇するように更新されるため、受信電力が向上し、受信品質が向上する。このようにして、複数の端末2である端末“1”~“5”が、好適な連送を行うことができる。
【0077】
図15は、実施形態に係る無線通信システムを用いた連送に係る実験例を示す図である。実験例における環境は以下の通りである。
・ISD(Inter-Site Distance:基地局間距離):1732m
・NLOS(Non Line Of Sight:見通し外)の環境
・最大送信電力:23dBm
・基地局1のアンテナ数:2本
・MCS=1
【0078】
図15の左側のグラフにおいて、複数のユーザID(端末2)“1”~“6”は、伝搬損失の小さい順で並べられている。グラフの縦軸は連送回数である。複数の端末2間で連送回数を揃える場合には、ユーザID“1”~“6”における連送回数の最小値、最大値、及び平均値は、伝搬損失の値と無関係に一定となる。これに対し、右側のグラフに示すように、ユーザID“1”~“6”に関して
図8~
図12の処理を行うと、伝搬損失が小さい程、所望連送回数が少なくなる。右側のグラフの連送回数は、左側のグラフとの比較において、最大で約1/4に減少した。また、連送回数の平均値も低下し、改善が見られた。
【0079】
<実施形態の作用効果>
実施形態に係る無線通信システムは、無線通信相手の受信局(基地局1)と非直交多元接続される複数の送信局(端末2)を含む(
図1A、
図1B)。複数の端末2の夫々は、
連送により複数の端末2間で共通な所定の周期(スロット)で所定回数連続して同一の信号を基地局1に送信可能である(
図4)。
【0080】
基地局1に含まれる情報処理装置、すなわちプロセッサ11を含む制御装置1bは、基地局1における受信品質が良い(伝搬損失が小さい)ほど高くなり、且つ端末2間に要求される基地局1での受信電力差(要求電力差ΔP)を確保可能な、複数の端末2の夫々に割り当てる送信電力の初期値を計算する(
図8のS002、
図11)。また、複数の端末2のうち、最大の送信電力の初期値が割り当てられた第1の送信局(k=0の端末2)の連送回数を基地局1における受信品質の指標値(SINR)に基づいて計算することを実行する(
図12のS043)。
【0081】
上述した構成によれば、複数の端末の連送回数を複数の端末2のうちの伝搬損失が最大の端末2の連送回数に揃える場合に比べて、伝搬損失が最小の(最大の送信電力の初期値が割り当てられた)端末2の連送回数を減らすことができる。よって、当該端末2の消費電力を削減することができる。すなわち、好適な連送を行うことができる。
【0082】
また、実施形態では、制御装置1b又はプロセッサ11は、複数の端末2から所望連送回数が設定された端末2(第1の送信局に相当)を除外し、残りの端末2の夫々に関して、連送回数と、除外の後に使用する送信電力とを算出することをさらに実行することができる(
図12のS044)。これによって、残りの端末2の連送回数を減らすことが可能となる。また、連送回数の減少によって、連送に用いる周期(スロット)の数を減らし、資源の有効利用を図ることが可能となる。
【0083】
また、実施形態では、制御装置1b又はプロセッサ11が、残りの端末2の夫々に対し、所望連送回数が設定された端末2が除外される前に割り当てられていた送信電力よりも大きい送信電力を割り当てることができる。送信電力の上昇によって、基地局1における受信品質(SINR或いはエラー率)の向上を図ることができる(
図12のS044、
図11のS033)。
【0084】
また、実施形態では、制御装置1b又はプロセッサ11が、複数の端末2の夫々が所定の送信電力で基地局1へ信号を送信した場合における基地局1での受信信号強度を用いて伝搬損失を計算することができる(
図9)。
【0085】
また、実施形態では、制御装置1b又はプロセッサ11が、基地局1が所定の送信電力で信号を複数の端末2の夫々に送信した場合における複数の端末2の夫々での受信信号強度を用いて伝搬損失を計算することができる(
図10)。
【0086】
また、実施形態では、制御装置1b又はプロセッサ11が、送信電力の割り当てにおいて、複数の端末2のうちで受信品質が最良の送信局(伝搬損失が最小の端末2)に割り当て可能な最大送信電力を割り当てる。また、制御装置1b又はプロセッサ11は、受信品質が最良の送信局が除かれた残りの送信局(端末2)の夫々に割り当てる送信電力を、最大送信電力よりも低い電力の範囲において、要求電力差ΔPが確保されるように計算する(
図11のS034)。
【0087】
また、実施形態では、制御装置1b又はプロセッサ11が、複数の端末2の中で最大の送信電力が割り当てられた端末2の連送回数の計算において、異なる連送回数nにおける受信品質(S(γ))を計算する。そして、制御装置1b又はプロセッサ11は、計算によって得られた受信品質が所望の受信品質(S
target)を満たす最小の連送回数を当該端末2の連送回数に決定する(
図12のS043)。
【0088】
また、実施形態では、受信局たる基地局1が、複数の端末2の夫々に割り当てられた連送回数及び連送の各回において使用する送信電力を含む情報を複数の端末2の夫々に下り制御チャネルを介して送信することができる(
図8のS004)。これによって、複数の端末2の夫々が、当該情報に従った送信電力を用いて連送を行うことができる。
【0089】
本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0090】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0091】
1・・・基地局
1a,2a・・・無線機(無線処理装置)
1b,2b・・・制御装置
2・・・端末
10,20・・・アンテナ
11,21・・・プロセッサ
12,22・・・記憶装置
13,23・・・内部インタフェース
14,24・・・ネットワークインタフェース
101・・・デマルチプレクサ
110,210・・・RS部
111,121・・・積分部
112・・・通信路推定部
120,220・・・DS部
122・・・レプリカ除去部
123・・・復調部
124・・・復号部
126・・・レプリカ生成部
127・・・符号化部
128・・・変調部
129・・・乗算部
202・・・マルチプレクサ
220・・・DS部
221・・・符号化部
222・・・変調部