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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156845
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ワクチンアジュバント及び製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20241029BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20241029BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20241029BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20241029BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20241029BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20241029BHJP
   C07K 14/76 20060101ALI20241029BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
A61K39/00 G ZNA
A61K39/00 Z
A61K47/26
A61K47/36
A61P35/00
A61P37/04
A61K47/06
A61K47/44
A61K47/14
A61K9/107
A61K45/00
A61P35/04
C07K14/47
C07K14/76
A61K39/00 G
C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】79
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024125875
(22)【出願日】2024-08-01
(62)【分割の表示】P 2021547761の分割
【原出願日】2020-02-13
(31)【優先権主張番号】62/806,422
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】595033056
【氏名又は名称】ザ クリーブランド クリニック ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】The Cleveland ClinicFoundation
【住所又は居所原語表記】9500 Euclid Avenue,Cleveland,Ohio,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】テューイ,ヴィンセント,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ジャスティン,エム.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】毒性の誘発が限定的であるか、またはまったく誘発することなく、1型及び17型のT細胞の両方を含む免疫応答を誘導する組成物を提供する。
【解決手段】抗原、炭水化物、及び代謝可能な油を含む組成物、そのような組成物を対象に投与する方法、そのような化合物を作製する方法、ならびに関連する組成物、方法、及び使用。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭水化物、及び
代謝可能な油を含む組成物であって、
(i)前記組成物が、さらに抗原を含むか、または
(ii)前記炭水化物が、多糖を含み、前記組成物が、少なくとも2つの多糖の混合物を含む、前記組成物。
【請求項2】
前記抗原が腫瘍関連抗原である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記炭水化物が、多糖を含み、前記多糖が、少なくとも2つの多糖の混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、腫瘍関連抗原を含み、前記炭水化物が、少なくとも2つの多糖の混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、
(i)腫瘍関連抗原を含むか、または
(ii)a)少なくとも2つの多糖類の混合物及びb)抗原を有する炭水化物、ならびに(iii)前記組成物を対象に投与する場合に、前記組成物が、1型及び17型の両方の炎症誘発性T細胞応答を含む抗原特異的T細胞免疫応答を誘導することができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記炭水化物が、パターン認識受容体に結合する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記パターン認識受容体が、TLR2またはデクチン-1である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記多糖の混合物が、少なくとも3つの多糖を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記多糖、または前記多糖の混合物中の各多糖が、キチン、デキストラン、グルカン、レンタナン、マンナン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記多糖または前記多糖の混合物が、グルカンを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記グルカンがβ-グルカンである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記β-グルカンが、1-3 β-グルカンである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記多糖の混合物が、キチン、グルカン、及びマンナンの混合物を含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物中の前記炭水化物の少なくとも50%がβ-グルカンである、請求項11~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、ザイモサンを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記代謝可能な油が、精製された油を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記精製された油が、鉱油である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記精製された鉱油が、DRAKEOL(商標)6VRである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記代謝可能な油が、生分解性の油を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記生分解性の油が、ミリスチン酸イソプロピル、スクアレン油、スクワラン油、植物油、またはそれらの組み合わせである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記生分解性の油が、植物油である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記植物油が、アーモンド油、ヒマシ油、ダイフウシ油、ココナッツ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、杏仁油、ベニバナ油、及びダイズ油からなる群から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記代謝可能な油が、医薬品グレードの油である、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
界面活性剤をさらに含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記界面活性剤が、モノオレイン酸マンニド、モノオレイン酸イソマンニド、またはそれらの組み合わせを含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記界面活性剤が、モノオレイン酸マンニドを含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が、MONTANIDE(商標)を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記MONTANIDE(商標)が、MONTANIDE(商標)ISA51VGである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物が、水及び油のエマルジョンである、請求項24~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物が、油中水型エマルジョンである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記抗原が、ポリペプチド抗原を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記ポリペプチド抗原が、リタイヤ自己抗原である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記ポリペプチド抗原が、α-ラクトアルブミンポリペプチドを含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記α-ラクトアルブミンポリペプチドが、配列番号5の少なくとも8連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記抗原及び前記炭水化物が、約10:1~約1:10(w/w)の比率で存在する、請求項1~34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記抗原及び前記炭水化物が、約1:1(w/w)の比率で存在する、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
抗生物質をさらに含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
請求項1~38のいずれか一項に記載の組成物の治療有効量を対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項40】
前記対象が、哺乳類である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記対象がヒトである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記対象が、授乳していない女性対象である、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記対象が、がんを有するか、またはがんを発症するリスクがある、請求項40~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記対象が、がんであると診断されていない、請求項40~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記がんが乳癌である、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
乳癌が、転移性乳癌である、請求項43または44に記載の方法。
【請求項47】
乳癌が、原発性乳癌である、請求項43または44に記載の方法。
【請求項48】
乳癌が三種陰性乳癌である、請求項43または44に記載の方法。
【請求項49】
前記がんが、α-ラクトアルブミンを過剰発現する細胞を含む、請求項43または44に記載の方法。
【請求項50】
前記治療有効量が、2回以上の用量を含む、請求項39~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記治療有効量が、3回以上の用量を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記治療有効量が、3回以下の用量を含む、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
各用量を、1週間以上の間隔で投与する、請求項50~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
各用量を、少なくとも4週間の間隔で投与する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
各用量を、約4週間の間隔で投与する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
各用量が、およそ同量の抗原を含む、請求項50~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
各用量が、およそ同量の抗原及び同量の炭水化物を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
各用量が、約1μg~約5mgの抗原を含む、請求項39~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
各用量が、約50μg~約2mgの抗原を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
各用量が、約100μg~約1mgの抗原を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記組成物を、皮下、皮内、真皮下、または筋肉内注射によって投与する、請求項39~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記組成物の投与が、抗原特異的T細胞免疫応答を誘導する、請求項39~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記T細胞免疫応答が、CD4+T細胞を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記T細胞免疫応答が、CD8+T細胞を含む、請求項62または63に記載の方法。
【請求項65】
前記T細胞免疫応答が、1型または17型の炎症誘発性T細胞応答を含む、請求項62~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記T細胞免疫応答が、1型及び17型の両方の炎症誘発性T細胞応答を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
投与が、参照レベルと比較して肉芽腫形成の減少を引き起こす、請求項39~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記参照レベルが、完全フロイントアジュバントを含む組成物を投与する対象において観察される肉芽腫形成のレベルである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記対象に、追加の抗がん治療薬を投与しているか、投与する予定であるか、または同時に投与する、請求項39~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記抗がん治療薬が、抗がん剤を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
追加の前記抗がん剤が、ベバシズマブ、ブレオマイシン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、ゲムシタビン、レトロゾール、オラパリブ、タモキシフェン、トポテカン、トラベクチン、CTLA4抗体、PD-1抗体、PD-L1抗体、及びTGFβ抗体からなる群から選択される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
α-ラクトアルブミンポリペプチド、ザイモサン、及びMONTANIDE(商標)を含む組成物であって、前記α-ラクトアルブミンポリペプチドが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含む、前記組成物。
【請求項73】
前記α-ラクトアルブミンポリペプチドが、配列番号5のアミノ酸配列と100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項72に記載の組成物。
【請求項74】
α-ラクトアルブミンポリペプチド、ザイモサン、及びMONTANIDE(商標)の油中水型エマルジョンを含む製剤であって、前記α-ラクトアルブミンポリペプチド及び前記ザイモサンが、約1:5(w/w)~5:1(w/w)の比で前記製剤中に存在し、前記α-ラクトアルブミンポリペプチドが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含む、前記製剤。
【請求項75】
前記α-ラクトアルブミンポリペプチドが、配列番号5のアミノ酸配列と100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項74に記載の製剤。
【請求項76】
前記抗原を含む水溶液を前記炭水化物及び前記代謝可能な油を含むエマルジョンと混合するステップを含む、請求項1~38、72、もしくは73のいずれか一項に記載の組成物または請求項74もしくは75に記載の製剤の作製方法。
【請求項77】
前記水溶液と前記エマルジョンとの比が、約1:2~約2:1(v/v)である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記水溶液と前記エマルジョンとの比が、約1:1(v/v)である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
がんを予防、治療、または改善するための薬剤を製造するための、請求項1~38、72、もしくは73のいずれか一項に記載の組成物、または請求項74もしくは75に記載の製剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
関連出願
本出願は、2019年2月15日に出願された米国仮特許出願第62/806,422号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表
本明細書は、配列表(2020年2月13日に「CCI_005_Seq_Listing.txt」という名称の.txtファイルとして電子的に提出する)を参照する。本.txtファイルは、2020年2月13日に生成され、サイズは6kbである。配列表の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0003】
〔背景技術〕
ワクチンは、一般的に、少なくとも2つの主要な成分を含んでいる。適応免疫応答の標的として機能する免疫原と、適応免疫応答を強化するアジュバントである。完全フロイントアジュバント(CFA)は、代謝不可能な油から調製された液体中のマイコバクテリアの死菌体の懸濁液である。CFAは、適応免疫の誘導において70年以上にわたってその有効性が証明されているため、他のすべてのアジュバントと比較される「ゴールドスタンダード」と広くみなされている。しかしながら、CFAは、主にワクチン接種部位での未解消の肉芽腫及び膿瘍の誘発に関連する毒性作用があるため、ヒトのワクチン接種のアジュバントとして使用することはできない。
【0004】
したがって、強力な免疫応答の誘導も促進することができる、ヒトのワクチン接種に適したアジュバントが必要である。
【0005】
乳癌は、女性のがん関連死で2番目に多い死因である。乳癌にはいくつかの異なる遺伝的サブタイプがあり、治療は、一般的に特定のサブタイプを対象とする。例えば、エストロゲン受容体(ER)を標的とするホルモン療法や薬物は、ER陽性のがんを治療するように設計されている。三種陰性乳癌(TNBC)は、最も攻撃的で最も致命的な乳癌であり、治療が難しいことで知られている。TNBCのがん細胞は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン(PR)、及びHER2が陰性であるため、これらの受容体を処置するように設計された薬剤ではTNBCに対して効果がない。
【0006】
TNBCを含む、治療が困難な乳癌のサブタイプに対して効果的な乳癌治療法が必要である。
【0007】
〔発明の概要〕
現在のほとんどの臨床ワクチン製剤は、インターフェロンγ(IFNγ)を産生する炎症誘発性1型T細胞の応答を誘導するが、インターロイキン-17(IL-17)を産生する17型T細胞の応答を誘導する製剤はほとんど存在していない。本発明は、多くの現在の臨床ワクチン製剤が1型及び17型の両方の免疫応答を誘導することがないため、効果的ではないという洞察を包含する。本発明によれば、毒性の誘発が限定的であるか、またはまったく誘発することなく、1型及び17型のT細胞の両方を含む免疫応答を誘導する組成物を提供する。
【0008】
本発明はまた、乳癌の成長の阻害及び/または予防に有効な適応免疫応答を誘導するワクチン製剤の開発を包含する。現在開示されている組成物は、本明細書中でさらに記載するように、α-ラクトアルブミンポリペプチド抗原及びアジュバント成分を含む。α-ラクトアルブミンは、大部分のTNBCで構成的に過剰発現しており、他の形態の乳房腫瘍では、その割合は低い。したがって、本開示のワクチン製剤、組成物、及び方法は、最も攻撃的な乳癌の治療及び/または予防に有用であり得る。
【0009】
一態様では、炭水化物、及び代謝可能な油を含む組成物を提供し、(i)組成物がさらに抗原を含むか、または(ii)炭水化物が多糖を含み、組成物は少なくとも2つの多糖の混合物を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗原は腫瘍関連抗原である。
【0011】
いくつかの実施形態では、炭水化物は多糖を含み、組成物は少なくとも2つの多糖の混合物を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、組成物は腫瘍関連抗原を含み、炭水化物は多糖を含み、組成物は少なくとも2つの多糖の混合物を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、(i)抗原を含むか、または(ii)さらに抗原を含む組成物は、それを対象に投与する場合に、1型及び17型炎症性T細胞応答の両方を含む抗原特異的T細胞免疫応答を誘導することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、炭水化物は、パターン認識受容体に結合する。例えば、パターン認識受容体は、TLR2またはデクチン-1であり得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、多糖類の混合物は、少なくとも3つの多糖類を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、多糖または混合物中の各多糖は、キチン、デキストラン、グルカン、レンタナン、マンナン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0017】
いくつかの実施形態では、多糖または多糖の混合物は、グルカン、例えば、β-グルカン(例えば、1-3β-グルカン)を含む。例えば、多糖類の混合物は、キチン、グルカン、及びマンナンの混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、組成物中の炭水化物の少なくとも50%はβ-グルカンである。
【0018】
いくつかの実施形態では、組成物は、ザイモサンを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、代謝可能な油は、精製された油を含む。例えば、精製された油は、鉱油、例えば、DRAKEOL(商標)6VRであり得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、代謝可能な油は、生分解性の油を含む。例えば、生分解性の油は、ミリスチン酸イソプロピル、スクアレン油、スクワラン油、植物油、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、生分解性油は、植物油、例えば、アーモンド油、ヒマシ油、ダイフウシ油、ココナッツ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、杏仁油、ベニバナ油、及びダイズ油からなる群から選択される植物油である。
【0021】
いくつかの実施形態では、代謝可能な油は、医薬品グレードの油である。
【0022】
いくつかの実施形態では、組成物は、界面活性剤、例えば、モノオレイン酸マンニド、モノオレイン酸イソマンニド、またはそれらの組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、モノオレイン酸マンニドを含む。例えば、組成物は、MONTANIDE(商標)、例えば、MONTANIDE(商標)ISA51VGを含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、組成物は、水と油のエマルジョン、例えば、油中水型エマルジョンである。
【0024】
いくつかの実施形態では、抗原は、ポリペプチド抗原を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチド抗原は、リタイヤ自己抗原である。
【0025】
いくつかの実施形態では、ポリペプチド抗原は、α-ラクトアルブミンポリペプチドを含む。例えば、α-ラクトアルブミンポリペプチドは、配列番号5の少なくとも8連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有し得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、抗原及び炭水化物(または多糖類の混合物)は、約10:1~約1:10(w/w)の比率で存在する。いくつかの実施形態では、抗原及び炭水化物(または多糖類の混合物)は、約1:1(w/w)の比率で存在する。
【0027】
いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、組成物は、抗生物質をさらに含む。
【0029】
一態様では、本明細書に開示する治療有効量の組成物、例えば、抗原、炭水化物、及び代謝可能な油を含む組成物を対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0030】
いくつかの実施形態では、対象は、哺乳類、例えば、ヒトである。
【0031】
いくつかの実施形態では、対象は、授乳していない女性の対象である。
【0032】
いくつかの実施形態では、対象は、がんを有するか、またはがんを発症するリスクがある。
【0033】
いくつかの実施形態では、対象は、がんであると診断されていない。
【0034】
いくつかの実施形態では、がんは、乳癌、例えば、転移性乳癌、原発性乳癌、及び/または三種陰性乳癌である。
【0035】
いくつかの実施形態では、がんは、α-ラクトアルブミンを過剰発現する細胞を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、治療有効量は、2回以上の用量、例えば、3回以上の用量を含む。いくつかの実施形態では、治療有効量は、3回以下の用量を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、各用量を、1週間以上の間隔で、例えば、少なくとも4週間の間隔で投与する。いくつかの実施形態では、各用量を、約4週間の間隔で投与する。
【0038】
いくつかの実施形態では、各用量は、およそ同じ量の抗原を含む。いくつかの実施形態では、各用量は、およそ同じ量の抗原及び同じ量の炭水化物を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、各用量は、約1μg~約5mg、例えば、約50μg~約2mg、または約100μg~約1mgの抗原を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、組成物を、皮下、皮内、真皮下、または筋肉内注射によって投与する。
【0041】
いくつかの実施形態では、組成物の投与は、抗原特異的T細胞免疫応答を誘導する。いくつかの実施形態では、T細胞免疫応答は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはその両方を含む。いくつかの実施形態では、T細胞免疫応答は、1型または17型の炎症誘発性T細胞応答を含む。いくつかの実施形態では、T細胞免疫応答は、1型及び17型の両方の炎症誘発性T細胞応答を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、投与は、参照レベル、例えば、完全フロイントアジュバントを含む組成物を投与した対象において観察される肉芽腫形成のレベルに比べて、肉芽腫形成の減少を引き起こす。
【0043】
いくつかの実施形態では、追加の抗がん治療薬、例えば、抗がん剤を含む抗がん治療薬を対象に投与したか、投与する予定であるか、または同時に投与する。いくつかの実施形態では、追加の抗がん剤は、ベバシズマブ、ブレオマイシン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、ゲムシタビン、レトロゾール、オラパリブ、タモキシフェン、トポテカン、トラベクチン、CTLA4抗体、PD-1抗体、PD-L1抗体、及びTGFβ抗体からなる群から選択される。
【0044】
いくつかの実施形態では、α-ラクトアルブミンポリペプチド、ザイモサン、及びMONTANIDE(商標)を含む組成物を提供し、α-ラクトアルブミンポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、α-ラクトアルブミンポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0045】
一態様では、α-ラクトアルブミンポリペプチド、ザイモサン、及びMONTANIDE(商標)の油中水型エマルジョンを含む製剤を提供し、α-ラクトアルブミンポリペプチド及びザイモサンは、約1:5(w/w)~5:1(w/w)の比で製剤中に存在し、α-ラクトアルブミンポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、α-ラクトアルブミンポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0046】
一態様では、抗原を含む水溶液を炭水化物及び代謝可能な油を含むエマルジョンと混合するステップを含む、本明細書に開示する組成物または製剤の作製方法を提供する。いくつかの実施形態では、エマルジョンに対する水溶液の比は、約1:2~約2:1(v/v)、例えば、約1:1(v/v)である。
【0047】
一態様では、がんを予防、治療、または改善するための薬剤を製造するための、本明細書に開示する組成物または製剤の使用を提供する。
【0048】
〔図面の簡単な説明〕
図1〕α-ラクトアルブミン/完全フロイントアジュバント(CFA)エマルジョンを用いたワクチン接種による炎症性T細胞免疫の誘導を示す。100μgの組換えマウスα-ラクトアルブミンと200μgのMycobacteria tuberculosis H37RA株を含む完全フロイントアジュバント(CFA)を含有する200μlの油中水型エマルジョンによる、6~8週齢のBALB/c雌マウス(n=3)へのワクチン接種の4週間後に、IFNγ(1型)及びIL-17(17型)を産生する炎症性T細胞の平均脾細胞頻度を測定した。エラーバーは、±SDを示す。
【0049】
図2〕1型/17型T細胞免疫の誘導におけるいくつかのアジュバントとCFAとの比較を示す。100μgの組換えマウスα-ラクトアルブミンと、CFAを含む従来の用量の様々なアジュバントを含有する200μLのエマルジョンによる、6~8週齢のBALB/cJ雌マウスの免疫化の4週間後に、1型及び17型の炎症性T細胞の脾細胞頻度を測定した。各試験アジュバントを使用して得られた平均α-ラクトアルブミン特異的1型及び17型スポット形成単位(SFU)を、「ゴールドスタンダード」アジュバントとしてCFAを使用して同じ日に得られたSFUで割ったものとして、データを表す。水平の黒い点線は、CFAをアジュバントとして使用して得られた周波数(CFA=1を使用して誘発されたSFU)と同等の周波数を示す。一部の免疫化は、2週間間隔で2回行い、それらを×2で示す。
【0050】
図3〕異なるα-ラクトアルブミン/アジュバントの組み合わせを使用した4T1マウス乳房腫瘍の成長を示す。図3Aは、100μgの組換えマウスα-ラクトアルブミンと200μgのCFAを含有する200μLのエマルジョンを、雌BALB/cJマウスに対し、6~8週齢で皮下にワクチン接種した。対照マウスには、200μgのCFAのみをワクチン接種した。ワクチン接種の2週間後、マウスに2×10個の4T1マウス乳房腫瘍細胞を皮下接種し、ノギスを使用して腫瘍の成長を1日おきに測定した。続いて、この同じプロトコルを使用して、(図3B)GPI-0100 ×2、(図3C)Sigma リピドA、(図3D)AS02B リピドA、(図3E)CpG DNA ×2、(図3F)CpG DNA+α-Gal-Cer×2、(図3G)IFA中のβ-グルカンペプチド、及び(図3H)IFA中のザイモサンを含む、図2に示す他の様々なアジュバントについて、各製造業者が推奨する用量を使用して腫瘍成長を測定した。一部のワクチン接種は、2週間間隔で2回行い、それらを×2で示す。アスタリスクは、被験ワクチン接種マウスと対照ワクチン接種マウスの間の有意差を示す(P<0.05)。
【0051】
図4〕ザイモサン/IFA、ザイモサン/MONTANIDE(商標)を使用した1型/17型炎症性T細胞の誘導を示す。100μLのIFA中または100μLのMONTANIDE(商標)中のいずれかにおける200μgのザイモサンで乳化した100μgの水相の組換えマウスα-ラクトアルブミンを含有するエマルジョンで、6~8週齢の雌BALB/cJマウスにワクチン接種した。ワクチン接種の4週間後、炎症性1型(IFNγ)及び17型(IL-17)T細胞の脾細胞頻度を、ELISPOT分析によって測定した。データは、50μg/mLの組換えマウスα-ラクトアルブミンに対するリコール応答の平均スポット形成単位(SFU)からリコール抗原を含まない培養物の平均バックグラウンド応答を差し引いた値を示す(平均バックグラウンド<アッセイあたり5SPU)。エラーバーは、±SEを示す。
【0052】
図5〕ワクチン用量試験の結果を示す。それぞれ100~1000μgの範囲の等量のα-ラクトアルブミンとザイモサンを含有する200μlのエマルジョンを、8週齢の雌BALB/cJマウスの脇腹に皮下ワクチン接種した。組換えマウスα-ラクトアルブミン(FLAG-N-mαlac-C-HIS)を無菌USPグレード水に溶解し、ザイモサンをMONTANIDE(商標)ISA51VGに懸濁した。3匹のマウスの群に対し、それぞれ4週間間隔で、1回、2回、または3回、ワクチン接種した。最終ワクチン接種の4週間後、脾細胞を、マウスIFNγ、IL-5、及びIL-17に特異的な捕捉/抗体ペアを使用したELISPOT分析に供し、生成された1型、2型、及び17型T細胞系統の脾細胞頻度をそれぞれ評価した。
【0053】
図6〕実施例5に記載する毒物学試験における単回ワクチン接種群Aマウスの最初のワクチン接種時からの体重の変化を示す。
【0054】
図7〕実施例5に記載する毒物学試験における二重ワクチン接種群Bマウスの最初のワクチン接種時からの体重の変化を示す。
【0055】
図8〕実施例5に記載する毒物学試験における三重ワクチン接種群Cマウスの最初のワクチン接種時からの体重の変化を示す。体重の変化は、0日目に得られた体重(100%に設定)に対して正規化し、この最初の開始点に対する割合の増加または減少としてプロットした。各マウスについて、体重を同時刻に記録した。矢印は、ワクチン接種の日(複数可)を示す。エラーバーは、±SEを示す。
【0056】
図9〕実施例5に記載する毒物学試験における単回ワクチン接種群Aマウスの最初のワクチン接種時からの体温の変化を示す。
【0057】
図10〕実施例5に記載する毒物学試験における、二重ワクチン接種群Bマウスの最初のワクチン接種時からの体温の変化を示す。
【0058】
図11〕実施例5に記載する毒物学試験における三重ワクチン接種群Cマウスの最初のワクチン接種時からの体温の変化を示す。体温の変化は、0日目に得られた体温(100%と設定)に対して正規化し、この最初の開始点に対する割合の増加または減少としてプロットした。各マウスについて、温度を同時刻に記録した。矢印は、ワクチン接種の日(複数可)を示す。エラーバーは、±SEを示す。
【0059】
図12〕実施例5に記載する毒物学試験における単回ワクチン接種群Aマウスの剖検時に記録した脾臓、肝臓、及び腎臓の重量を示す。
【0060】
図13〕実施例5に記載する毒物学試験における二重ワクチン接種群Bマウスの剖検時に記録した脾臓、肝臓、及び腎臓の重量を示す。
【0061】
図14〕実施例5に記載する毒物学試験における三重ワクチン接種群Cマウスの剖検時に記録した脾臓、肝臓、及び腎臓の重量を示す。重量は、全体重に対する割合として表し、マウスの各サブグループについて平均割合をプロットした(実施例5内の表2に示すように)。エラーバーは、±SEを示す。
【0062】
図15〕実施例5にさらに記載するザイモサン/MONTANIDE(商標)/α-ラクトアルブミンエマルジョンを皮下投与したマウスにおける免疫化部位の代表的な外観を示す。図15は、第2の注射のおよそ2週間後、及び第1の注射のおよそ6週間後に撮影したマウスの写真である。青い矢印は第1の注射部位を示し、赤い矢印は第2の注射部位を示す。図15が示すように、第1の注射部位は、第2の注射部位に比べて外観が改善しており、これは経時的な肉芽腫の消散を示している。
【0063】
図16〕実施例5にさらに記載するように、ザイモサン/MONTANIDE(商標)/α-ラクトアルブミンエマルジョンを皮下注射したBALB/cマウスにおける、3つの連続する注射部位での肉芽腫のエンドポイント平均臨床スコアを示す。注射部位における油性肉芽腫は一般的に観察され、これらを以下の基準に従って等級付けした: 0、正常;1、最小限;2、軽度;3、中程度;4、重度。各注射部位について、すべての治療群のすべてのマウス(n=25)の平均を計算した。エラーバーは、±SEを表す。
【0064】
図17〕実施例5に記載する毒物学試験における全群における限局性肝臓炎の重症度の要約を示す。
【0065】
図18〕実施例8に記載する臨床試験の試験スキームを示す。このスキームは、免疫学的モニタリングのための用量投与、毒性評価、及び採血のタイムラインを示している。
【0066】
〔発明を実施するための形態〕
適応免疫応答を媒介するT細胞を、サイトカイン特性に従ってサブセットに分ける。1型前炎症性T細胞は、IFNγを産生し、ウイルス及び細菌感染に対する免疫を媒介し、一方、2型制御性T細胞は、インターロイキン(IL)-4、IL-5、及びIL-13を産生し、寄生虫感染に対する体液性免疫を媒介する。最近の試験において、IL-17を産生する17型炎症性T細胞が、炎症においても顕著な役割を果たす別個のサブタイプとして確立された。自己タンパク質に対して最適化された組織損傷を誘発するには、1型と17型の両方のT細胞系統が必要である(Steinman et al.,(2007)Nat Med 13:139-145;Luger et al.,(2008)J Exp Med 205:799-810)。
【0067】
抗がんワクチンは、免疫系を刺激してがん細胞を攻撃するように設計されている。これらのワクチンは通常、がん細胞に優先的に発現する抗原(「腫瘍関連抗原」)を含む。現在のほとんどの臨床ワクチン製剤は、炎症誘発性の1型免疫を誘導するが、17型免疫はほとんど誘導しない。本発明は、多くの現在の臨床ワクチン製剤が1型及び17型の両方の免疫応答を誘導することがないため、効果的ではないという洞察を包含する。本発明によれば、提供する組成物は、1型及び17型のT細胞の両方を含む免疫応答を誘導する。さらに、本開示の組成物は、動物モデルに注射する場合、毒性の誘発が限定的であるか、またはまったく誘発することがなく、このことは、ヒトの臨床使用へのそれらの適合性を示唆している。
【0068】
本発明はまた、本明細書に開示するようなα-ラクトアルブミンポリペプチド及びアジュバント成分を含むワクチン製剤が、乳癌を予防及び/または改善し得るという洞察を包含する。α-ラクトアルブミンは、最も攻撃的で最も致命的な形態の乳癌であるヒトTNBCの大部分において構成的に過剰発現している。したがって、本開示のワクチン製剤、組成物、及び方法は、最も致命的な形態の乳癌の治療及び予防に有用であり得る。
【0069】
概要
本明細書において、α-ラクトアルブミンに対する免疫応答の誘導による乳癌の治療及び/または予防のための方法及び組成物を提供する。本明細書に記載するように、本開示は、乳癌の成長を阻害するための適応免疫応答(例えば、1型及び17型T細胞)を誘導する免疫原/アジュバントの組み合わせを含む。いくつかの態様では、組成物は、α-ラクトアルブミンポリペプチド及びザイモサンを含む。いくつかの態様では、組成物は、α-ラクトアルブミンポリペプチド及びMONTANIDE(商標)を含む。いくつかの態様では、組成物は、α-ラクトアルブミンポリペプチド、ザイモサン、及びMONTANIDE(商標)を含む。本開示のα-ラクトアルブミンと、ザイモサン及び/またはMONTANIDE(商標)との併用は、「ゴールドスタンダード」アジュバントであるCFAのワクチン接種に関連する未解消の肉芽腫誘発を伴わずに、効果的な腫瘍免疫に関連する高い頻度の1型/17型T細胞を誘導する。したがって、α-ラクトアルブミンと、ザイモサン及び/またはMONTANIDE(商標)の併用によるワクチン接種は、ヒト乳癌の成長に対して安全で効果的な免疫を提供するユニークな方法を提供する。
【0070】
I.定義
便宜上、本明細書、実施例、及び特許請求の範囲で用いる特定の用語を、本節にまとめる。
【0071】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書中では、冠詞の文法的対象の1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すように用いられる。例として、「an element」は、1つのエレメントまたは1つを超えるエレメントを意味する。
【0072】
本明細書中で使用する場合、「アジュバント」とは、抗原の投与の前、一緒に、または後に投与する場合に、抗原のみの投与によって誘発される応答に比べて、抗原に対する免疫応答の品質及び/または強度を、加速、延長、及び/または増強する物質を意味する。
【0073】
本明細書中で使用する場合、「抗がん療法」とは、がんまたはがん性病態のリスクまたは進行を、治療、改善、及び/または軽減することを目的とした療法を意味する。いくつかの実施形態では、抗がん療法には、がんまたはがん性病態のリスクまたは進行を、治療、改善、及び/または軽減するために使用する薬剤である抗がん剤が含まれる。
【0074】
本明細書中で使用する場合、用語「抗原」は、当技術分野におけるその通常の意味を有し、それ自体で、またはアジュバント及び/または薬学的に許容される担体との併用により、免疫応答、例えば、抗体及び/またはT細胞応答を生成する任意の分子または分子の一部を指す。
【0075】
本明細書中で使用する場合、用語「投与する」とは、対象に医薬品または組成物を提供することを意味し、医療専門家による投与及び自己投与を含むが、これらに限定されない。
【0076】
本明細書中で使用する場合、「生分解性」とは、物質に関して使用する場合、細胞への導入時に細胞に重大な毒性作用を与えることなく、細胞機構(例えば、酵素分解)または加水分解によって細胞が再利用または廃棄することができる成分へ分解される物質を意味する。いくつかの実施形態では、生分解性物質の分解によって生成される成分は、in vivoで炎症及び/または他の有害作用を誘発しない。いくつかの実施形態では、生分解性物質を酵素的に分解する。あるいは、またはさらに、いくつかの実施形態では、生分解性物質を加水分解によって分解する。
【0077】
用語「免疫応答」とは、本明細書中では、抗原または抗原決定基に対する免疫系による任意の応答を指す。例示的な免疫応答として、体液性免疫応答(例えば、抗原特異的抗体の産生(中和または他の))及び細胞性免疫応答(例えば、リンパ球増殖)が挙げられる。1型炎症性免疫応答は、IFNγの産生を特徴とする。2型調節性免疫応答は、IL-4またはIL-5の発現を特徴とする。17型炎症性免疫応答は、IL-17の発現を特徴とする。いくつかの場合では、混合免疫応答が生成され得る。例えば、いくつかの場合では、IFNγとIL-17の両方の発現を特徴とする混合1型/17型炎症性免疫応答が生成される。
【0078】
本明細書中で使用する場合、語句「代謝可能な油」とは、生物への導入時に、(1)生物によって分解可能であるか、または生物からより多く排出され得;(2)生物によって分解可能であるか、または生物からより迅速に排出され得;及び/または(3)参照レベル、例えば、完全フロイントアジュバントを投与した対象における肉芽腫形成レベルまたは不完全フロイントアジュバントを投与した対象におけるレベルに比べて、肉芽腫形成を減少させる油を意味する。したがって、「代謝可能な油」は、この語句を本明細書中で使用する場合、完全に代謝可能である必要はない。「肉芽腫形成の減少」は、例えば、形成される肉芽腫の減少、重症度の低下した肉芽腫、重症度がより急速に低下する肉芽腫、及び(部分的または完全に)より迅速に解消する肉芽腫のうちの1つ以上によって特徴付けられ得る。
【0079】
本明細書中で使用する場合、用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、同じ意味で用いられ、一般的に、少なくとも3つのアミノ酸のポリマーの、当技術分野で認識されている意味を有する。用語「ポリペプチド」は、それらの中性(非荷電)形態または塩としてのポリペプチド、及び非修飾の、または例えば、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化により修飾されたポリペプチドを指し得る。用語「ポリペプチド」とは、ポリペプチドの特定の機能クラスを指すために使用することもできる。ポリペプチドの機能的クラスを指すために使用する場合、本用語は、参照ポリペプチドの機能的断片、バリアント(例えば、対立遺伝子バリアント)、及び誘導体、ならびに参照ポリペプチドの完全長の野生型バージョンを含むことを意図する。いくつかの実施形態では、特定の機能クラスのポリペプチドは、参照ポリペプチドの完全長バージョンと、アミノ酸レベルで少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも97.5%の配列同一性を共有する。例えば、本明細書中で使用する「α-ラクトアルブミンポリペプチド」は、α-ラクトアルブミンと、α-ラクトアルブミン(またはその一部)のアミノ酸配列に対する十分な配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み、α-ラクトアルブミン特異的免疫応答を誘導する。
【0080】
本明細書中で使用する場合、アミノ酸配列間の「同一性の割合」は、「相同性の割合」と同義であり、これは、Karlin and Altschul(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,2264-2268,1990)、Karlin and Altschulによる改良版(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90,5873-5877,1993)のアルゴリズムを用いて決定することができる。記載されたアルゴリズムは、Altschul et al.(J.Mol.Biol.215,403-410,1990)のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実行し、本明細書に記載のポリヌクレオチドに相同なヌクレオチド配列を取得する。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で実行し、参照ポリペプチドに相同なアミノ酸配列を取得する。比較を目的としたギャップアラインメントを取得するために、Altschul et
al.(Nucleic Acids Res.25,3389-3402,1997)に記載されているようにGapped BLASTを利用する。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータを使用する。
【0081】
本明細書中で使用する語句「薬学的に許容される担体」とは、1つの器官または体の一部から別の器官または体の一部への対象化合物の運搬または輸送に関与する薬学的に許容される物質、組成物、またはビヒクル、例えば、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、増粘剤、溶媒、またはカプセル化物質を意味する。用語「担体」は、それらが輸送する化合物または組成物に対し、共有結合していない担体と共有結合している担体の両方を包含する。
【0082】
本明細書中で使用する場合、用語「精製された」とは、天然環境における分子、化合物、または組成物に通常付随する他の成分と比較した、分子、化合物、または組成物の濃縮を意味する。用語「精製された」は、必ずしも分子、化合物、または組成物の完全な純度が達成されていることを示すわけではない。いくつかの実施形態では、「精製された」分子、化合物、または組成物は、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも97.5%、他の成分を含まない。
【0083】
本明細書中で使用する場合、用語「腫瘍関連抗原」とは、その当技術分野で認識されている意味を有し、その発現が腫瘍細胞と高度に相関している抗原を指す。腫瘍関連抗原は、正常細胞でも発現していてよく、または発現していなくてもよい。いくつかの実施形態では、腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞において過剰発現する。いくつかの実施形態では、腫瘍関連抗原の発現は、腫瘍細胞の特定のサブタイプまたは特定のサブタイプと相関している。
【0084】
本明細書中で使用する場合、用語「対象」及び「患者」は可換であり、治療またはワクチンを受ける生物を指す(例えば、本明細書に開示する組成物または製剤を投与することによって)。対象及び患者の例として、ヒトまたはヒト以外の動物などの哺乳類が挙げられる。
【0085】
本明細書中で使用する語句「治療有効量」及び「有効量」とは、あらゆる薬学的治療に適用できる妥当なベネフィット/リスク比で、対象における細胞の少なくとも部分集団において所望の治療効果を生み出すのに有効な薬剤の量を意味する。
【0086】
対象における疾患を「治療する」または疾患を有する対象を「治療する」とは、対象を薬学的治療に付すこと、例えば、薬物を投与し、それにより、疾患の少なくとも1つの症状を軽減するか、または悪化を防止することを意味する。
【0087】
用語「参照」とは、比較を目的として使用する試料、標準、またはレベルを指す。語句「参照標準」及び「参照レベル」は、同じ意味で用いられる場合があり、参照の試料または対象由来の値または数を指す。いくつかの実施形態では、参照レベルを導き出す試料または対象は、以下の基準のうちの少なくとも1つを対象の試料と一致させる:年齢、体重、病期、及び全体的な健康。
【0088】
例えば、いくつかの実施形態では、参照レベルは、臨床グレードもしくはスコア、または平均臨床グレードもしくはスコアである。
【0089】
用語「リタイヤ自己タンパク質」とは、正常な老化組織において、自己免疫原性レベルでもはや発現していない自己タンパク質を指す。用語「リタイヤ自己抗原」とは、リタイヤ自己タンパク質由来の抗原を指す。いくつかの実施形態では、リタイヤ自己抗原には、リタイヤ自己タンパク質の断片が含まれる。いくつかの実施形態では、リタイヤ自己抗原には、リタイヤ自己タンパク質の完全長バージョンが含まれる。
【0090】
本明細書中で使用する用語「界面活性剤」は、その当技術分野で認識されている意味を有し、2つの液体間、気体と液体間、または液体と固体間の表面張力を低下させる傾向がある物質を指す。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、エマルジョンを安定化する物質である乳化剤である。
【0091】
II.組成物
一態様では、炭水化物、及び代謝可能な油を含む組成物を提供し、(i)組成物がさらに抗原を含むか、または(ii)炭水化物が多糖を含み、組成物は少なくとも2つの多糖の混合物を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、抗原は腫瘍関連抗原である。
【0093】
いくつかの実施形態では、炭水化物は多糖を含み、組成物は少なくとも2つの多糖の混合物を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、組成物は腫瘍関連抗原を含み、炭水化物は多糖を含み、組成物は少なくとも2つの多糖の混合物を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、組成物を対象に投与する場合、組成物は、(i)1型炎症性応答及び(ii)17型炎症性T細胞応答のうちの少なくとも1つを含む抗原特異的T細胞免疫応答を誘導する。
【0096】
いくつかの実施形態では、抗原を含むか、またはさらに抗原を含む組成物は、それを対象に投与する場合に、1型及び17型炎症性T細胞応答の両方を含む抗原特異的T細胞免疫応答を誘導する。
【0097】
本明細書中でさらに記載するように、組成物は、界面活性剤をさらに含み得る。
【0098】
A.炭水化物
いくつかの実施形態では、炭水化物には、多糖、例えば、キチン、デキストラン、グルカン、レンタナン、マンナン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される多糖が含まれる。
【0099】
いくつかの実施形態では、組成物は、多糖の混合物、例えば、少なくとも3つの多糖を含む混合物を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、多糖または混合物中の各多糖は、キチン、デキストラン、グルカン、レンタナン、マンナン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0101】
いくつかの実施形態では、多糖または多糖の混合物は、グルカン、例えば、1-3 β-グルカン.12などであるがこれらに限定されないβ-グルカンを含む。いくつかの実施形態では、組成物中の炭水化物の少なくとも50%はβ-グルカンである。
【0102】
いくつかの実施形態では、多糖類の混合物は、キチン、グルカン、及びマンナンの混合物を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、炭水化物は、パターン認識受容体、例えば、TLR2及び/またはデクチン-1に結合する。
【0104】
例えば、いくつかの実施形態では、組成物は、ザイモサンを含む。ザイモサンは、Saccharomyces cerevisiae由来のパン酵母抽出物の粗細胞壁成分混合物であり、主にβ-グルカン(50~57%)、マンナン、及びキチンからなる。米国食品医薬品局(FDA)は、酵母エキスに由来するこれらのβ-グルカンにGRAS(「一般的に安全と認められる」)の評価を与えている。酵母ザイモサンは、β(1,3)グルカンの豊富な供給源として機能する。酵母由来のβ(1,3)グルカンは、真菌感染に対する身体の基本的な防御の一部として、部分的に自然免疫系を活性化することにより、免疫系を刺激するようである(Huang et al.,(2013)Clin Vaccine Immunol 20:1585-1591)。酵母β(1,3)グルカンは、主にβ(1-3)結合グルコース分子からなり、周期的なβ(1-3)分岐がβ(1-6)結合を介して結合した多糖類であり、より正式にはポリ-(1-6)-β-グルコピラノシル-(1-3)-β-D-グルコピラノースとして知られる。
【0105】
B.代謝可能な油
本明細書中で使用する場合、語句「代謝可能な油」とは、生物への導入時に、(1)生物によって分解可能であるか、または生物からより多く排出され得;(2)生物によって分解可能であるか、または生物からより迅速に排出され得;及び/または(3)不完全フロイントアジュバントに比べて、肉芽腫形成を減少させる油を意味する。したがって、「代謝可能な油」は、この語句を本明細書中で使用する場合、完全に代謝可能である必要はない。「肉芽腫形成の減少」は、例えば、形成される肉芽腫の減少、重症度の低下した肉芽腫、及びより迅速に解消する肉芽腫のうちの1つ以上によって特徴付けられ得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、代謝可能な油は、鉱油を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、代謝可能な油は、精製された油、例えば、精製された鉱油(例えば、DRAKEOL(商標)6VRであるが、これに限定されない)を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、代謝可能な油は、生分解性の油を含む。生分解性の油の非限定的な例として、ミリスチン酸イソプロピル、スクアレン油(例えば、MF59)、スクワラン油、植物油、またはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、生分解性油は、例えば、アーモンド油、ヒマシ油、ダイフウシ油、ココナッツ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、杏仁油、ベニバナ油、ダイズ油、またはそれらの組み合わせなどの植物油である。
【0109】
いくつかの実施形態では、代謝可能な油は、魚油を含む。
【0110】
特定の実施形態では、代謝可能な油は、医薬品グレードの油である。
【0111】
C.界面活性剤/エマルジョン
いくつかの実施形態では、提供する組成物は、1つ以上の界面活性剤を含む。適切な界面活性剤の非限定的な例として、モノオレイン酸マンニド、モノオレイン酸イソマンニド、及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、組成物は、モノオレイン酸マンニドを含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、提供する組成物は、代謝可能な油を含む、MONTANIDE(商標)、例えば、MONTANIDE(商標)ISAシリーズのアジュバントを含む。
【0113】
MONTANIDE(商標)ISA(ISA=Incomplete Seppic Adjuvant)アジュバント(Seppic SA、パリ、フランス)は、異なる界面活性剤を、代謝不可能な鉱油、代謝可能な油、またはその2つの混合物と混合した油/界面活性剤系アジュバントの群である。それらは通常、抗原水溶液とのエマルジョンとして使用するために調製される。アジュバントの様々なMONTANIDE(商標)ISA群は、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、または水中油中水型エマルジョンとして使用される。
【0114】
いくつかの実施形態では、組成物は、MONTANIDE(商標)ISA51、MONTANIDE(商標)ISA51VG、またはそれに由来する任意の生物学的に等価なアジュバントを含む(例えば、オリーブから単離されたオレイン酸を、別の供給源から単離されたオレイン酸または合成のオレイン酸に置き換えることにより)。MONTANIDE(商標)ISA51は、高度に精製された鉱油(DRAKEOL(商標)6VR)と界面活性剤(モノオレイン酸マンニド)との混合物である。MONTANIDE(商標)ISA51VGは、オレイン酸を、動物から取得するのではなくオリーブから取得する、同様の組成物である。
【0115】
いくつかの実施形態では、提供する組成物は、水及び油のエマルジョン、例えば、油中水型エマルジョンである。油中水(w/o)型エマルジョンの作成方法は、当技術分野で周知である。油中水型エマルジョンは、様々なプロトコルのいずれか、例えば、高剪断ミキサー、ボルテックスミキサー、及びコネクター(例えば、T型またはI型コネクター)付きまたはコネクターなしのシリンジなどの様々な装置のいずれかを使用するプロトコルによって取得することができる。いくつかの実施形態では、提供する組成物は、デポー効果を生み出すアジュバント、すなわち、同じ組成物中の抗原を体内でゆっくりと放出させ、したがって、抗原への免疫細胞の曝露を延長させるアジュバント(例えば、MONTANIDE(商標)アジュバント)を含む。
【0116】
D.抗原
一般的に、それに対する免疫応答が望まれる任意の分子または分子の一部を抗原として使用し得る。抗原は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、細胞(またはその成分)、弱毒化した生きた病原体(またはその成分)、及び熱消毒した病原体(またはその成分)のいずれか1つを含み得るが、これらに限定されない。
【0117】
いくつかの実施形態では、抗原は非自己抗原であり、すなわち、抗原を含む組成物を投与しようと企図する生物にとって、それらは外来性である。
【0118】
いくつかの実施形態では、抗原は、抗原を含む組成物を投与しようと企図する生物の少なくともいくつかの細胞において発現しているか、または発現していたという点で、自己抗原である。いくつかの実施形態では、抗原は、それらがかつて生物において発現していたが、非悪性成熟細胞においてもはや自己免疫原性レベルで発現していないという点で、リタイヤ自己タンパク質である。
【0119】
いくつかの実施形態では、抗原は腫瘍関連抗原である。
【0120】
いくつかの実施形態では、提供する組成物または製剤は、異なる抗原の混合物を含む。
【0121】
抗原は、1つ以上の修飾を含み得る。例えば、抗原またはその断片のプロセシング、細胞取り込み、免疫原性及び/または安定性に影響を与える1つ以上の修飾(例えば、ペプチド/MHC抗原複合体内の)を使用し得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、抗原は、ポリペプチド抗原を含む。ポリペプチド抗原は、様々な長さのいずれかであり得、それらの配列は、天然のタンパク質の配列に対応していてもよく、対応していなくてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、全長またはほぼ全長のタンパク質をポリペプチド抗原として使用してもよい。いくつかの実施形態では、抗原または抗原混合物は、タンパク質の1つ以上の断片またはバリアントを含む。
【0123】
α-ラクトアルブミンポリペプチド
いくつかの実施形態では、抗原は、α-ラクトアルブミンポリペプチドまたはその免疫原性断片を含む。いくつかの実施形態では、抗原は、複数の(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の)異なるα-ラクトアルブミンポリペプチドまたは断片を含む。いくつかの実施形態では、提供する組成物は、α-ラクトアルブミンポリペプチドの代わりにまたはそれに加えて、α-ラクトアルブミンポリペプチドをコードする核酸を含む。
【0124】
LALBA遺伝子は、ミルクの主要タンパク質であるα-ラクトアルブミンをコードする。α-ラクトアルブミンは、ラクトースシンターゼ(LS)ヘテロダイマーの調節サブユニットを形成し、β1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(β4Gal-T1)は触媒成分を形成する。まとめると、これらのタンパク質により、LSがガラクトース部分をグルコースに転移させることによってラクトースを生成することが可能になる。モノマーとして、α-ラクトアルブミンは、カルシウム及び亜鉛イオンに強く結合し、殺菌活性または抗腫瘍活性を有し得る。ヒトLALBA遺伝子は、5つのエクソンを含有する。
【0125】
ヒトα-ラクトアルブミン前駆体タンパク質は、142アミノ酸と14,178Daの分子量を有し、ヒトα-ラクトアルブミンは、123アミノ酸を有する。いくつかの実施形態では、α-ラクトアルブミンポリペプチドは、123アミノ酸を有する。用語「α-ラクトアルブミンポリペプチド」は、断片、バリアント(例えば、対立遺伝子バリアント)、及びそれらの誘導体を含むことを意図している。代表的なヒトα-ラクトアルブミンcDNA及びヒトα-ラクトアルブミンタンパク質配列は当技術分野で周知であり、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)から公に入手可能である。例えば、少なくとも1つのヒトUBE2D3アイソフォームが知られている。ヒトUBE2D3アイソフォーム(NP_002280.1)は、転写産物バリアント(NM_002289.2)によってコード可能である。ヒト以外の生物におけるα-ラクトアルブミンオルソログの核酸配列及びポリペプチド配列は周知であり、例えば、チンパンジーα-ラクトアルブミン(XM_016924811.2及びXP_016780300.1)、サルα-ラクトアルブミン(XM_001102116.2及びXP_001102116.1)、イヌα-ラクトアルブミン(NM_001003129.1及びNP_001003129.1)、ウシα-ラクトアルブミン(NM_174378.2及びNP_776803.1)、マウスα-ラクトアルブミン(NM_010679.1及びNP_034809.1)、ならびにラットα-ラクトアルブミン(NM_012594.1及びNP_036726.1)が挙げられる。上記のmRNA及びタンパク質配列のそれぞれは、参照により本明細書に援用される。α-ラクトアルブミンオルソログの代表的な配列を以下の表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
*表1は、RNA核酸分子(例えば、チミンがウリジンで置き換えられている)、LALBAのオルソログをコードする核酸分子、ならびに表1に記載した任意の配列番号の核酸配列またはその一部に対して、それらの全長にわたって少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれ以上の同一性を有する核酸配列を有するDNAまたはRNA核酸配列を含む。そのような核酸分子は、本明細書中でさらに記載するように、完全長の核酸の機能を有し得る。
【0128】
*表1は、LALBAのオルソログ、ならびに表1に記載した任意の配列番号のアミノ酸配列またはその一部に対して、それらの全長にわたって少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド分子を含む。そのようなポリペプチドは、本明細書でさらに記載するように、完全長のポリペプチドの機能を有し得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書において、α-ラクトアルブミンポリペプチド及び/またはα-ラクトアルブミンポリペプチドをコードする核酸を提供する。α-ラクトアルブミンポリペプチドは、α-ラクトアルブミンまたはその一部のアミノ酸配列に対して十分な配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、α-ラクトアルブミン特異的免疫応答を誘導するポリペプチドである。
【0130】
いくつかの実施形態では、α-ラクトアルブミンポリペプチド及び異種ポリペプチドを含む融合ポリペプチドを提供する。
【0131】
特定の実施形態では、α-ラクトアルブミンポリペプチドは、表1に記載の-αラクトアルブミンアミノ酸配列(例えば、配列番号1、3、または5)の少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、または140連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、連続アミノ酸は、表1に記載のα-ラクトアルブミンアミノ酸配列と同一である。
【0132】
特定の実施形態では、α-ラクトアルブミンポリペプチドは、表1に記載のα-ラクトアルブミンアミノ酸配列の少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、または140連続アミノ酸から本質的になるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、連続アミノ酸は、表1に記載のα-ラクトアルブミンアミノ酸配列のアミノ酸配列と同一である。
【0133】
特定の実施形態では、α-ラクトアルブミンポリペプチドは、α-ラクトアルブミンアミノ酸配列の少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、または140連続アミノ酸からなるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、連続アミノ酸は、表1に記載のα-ラクトアルブミンアミノ酸配列と同一である。
【0134】
いくつかの実施形態では、α-ラクトアルブミンポリペプチドは、表1に記載のα-ラクトアルブミンアミノ酸配列に対して、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、または140連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、連続アミノ酸は、表1に記載のα-ラクトアルブミンアミノ酸配列と同一である。
【0135】
いくつかの実施形態では、α-ラクトアルブミンポリペプチドは、配列番号5の少なくとも8連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有する。
【0136】
いくつかの実施形態では、α-ラクトアルブミンポリペプチドは、表1に記載のα-ラクトアルブミンアミノ酸配列に対して、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、または140連続アミノ酸から本質的になるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、連続アミノ酸は、表1に記載のα-ラクトアルブミンアミノ酸配列と同一である。
【0137】
いくつかの実施形態では、α-ラクトアルブミンポリペプチドは、表1に記載のα-ラクトアルブミンアミノ酸配列に対して、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、または140連続アミノ酸からなるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、連続アミノ酸は、表1に記載のα-ラクトアルブミンアミノ酸配列と同一である。
【0138】
当業者には周知であるように、実質的な配列類似性を有するポリペプチドは、宿主生物において同一または非常に類似した免疫反応を引き起こし得る。したがって、いくつかの実施形態では、α-ラクトアルブミンの誘導体、等価体、バリアント、断片、または変異体であるα-ラクトアルブミンポリペプチドもまた、本明細書中で提供する方法及び組成物での使用に適し得る。
【0139】
いくつかの実施形態では、提供するα-ラクトアルブミンポリペプチドは、それらが、α-ラクトアルブミンポリペプチドの配列に対して相対的に改変された(例えば、保存的置換によって)アミノ酸配列を有するが、依然として免疫応答を誘導するという点で機能的等価体である。本明細書中で使用する場合、用語「保存的置換」とは、アミノ酸残基を別の生物学的に類似した残基で置換することを意味する。同じ保存群内のアミノ酸は、通常、タンパク質の機能または免疫原性に実質的に影響を与えることなく、互いに置換可能であることが当技術分野で周知である。
【0140】
いくつかの実施形態では、本明細書において、本明細書に記載のα-ラクトアルブミンポリペプチドをコードする核酸、例えばDNA分子を提供する。いくつかの実施形態では、α-ラクトアルブミンポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む発現ベクターを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、α-ラクトアルブミン核酸は、オープンリーディングフレームの発現を促進する調節エレメントを含む。そのようなエレメントは、例えば、プロモーター、開始コドン、終止コドン、及びポリアデニル化シグナルのうちの1つ以上を含み得る。さらに、1つ以上のエンハンサーを含み得る。これらのエレメントを、α-ラクトアルブミンポリペプチドをコードする配列に作動可能に連結することができる。
【0141】
プロモーターの例として、シミアンウイルス40(SV40)、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVロングターミナルリピート(LTR)プロモーターなどのヒト免疫不全ウイルス(HIV)、モロニーウイルス、CMV前初期プロモーターなどのサイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)由来プロモーター、及びヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、ヒトメタロチオネインなどのヒト遺伝子由来プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。適切なポリアデニル化シグナルの例として、SV40ポリアデニル化シグナル及びLTRポリアデニル化シグナルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
エンハンサーまたはエンハンサー/プロモーターの非限定的な例として、例えば、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン由来エンハンサー、ならびにウイルス性エンハンサー、例えば、CMV、RSV、及びEBV由来のエンハンサーが挙げられる。
【0143】
いくつかの実施形態では、提供する核酸を、担体または送達ベクターに組み込む。有用な送達ベクターとして、生分解性マイクロカプセル、免疫刺激複合体(ISCOM)、リポソーム、及びウイルスまたは細菌などの遺伝子改変し、弱毒化した生きた担体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
いくつかの実施形態では、ベクターはウイルスベクターであり、その非限定的な例として、レンチウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、鶏痘ウイルス、トリポックスウイルス、改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルス、及び他の組換えウイルスが挙げられる。例えば、ワクシニアウイルスベクターは、樹状細胞に感染させるために使用することができる。
【0145】
F.医薬組成物及び製剤
いくつかの実施形態では、抗原と炭水化物を、約10:1~約1:10(w/w)、例えば、約5:1~約1:5(w/w)、約4:1~1:4(w/w)、約3:1~約1:3(w/w)、または約1:2~約2:1(w/w)の比率で存在させる。いくつかの実施形態では、抗原と炭水化物を、約1:1(w/w)の比率で存在させる。
【0146】
いくつかの実施形態では、提供する組成物は、抗原、ザイモサン、及びMONTANIDE(商標)を含む。いくつかのそのような実施形態では、抗原は、ポリペプチド抗原である。
【0147】
例えば、乳癌の治療及び/または予防に適切であり得る組成物は、α-ラクトアルブミンポリペプチド、ザイモサン、及びMONTANIDE(商標)を含んでいてもよく、α-ラクトアルブミンポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、α-ラクトアルブミンポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、提供する組成物を、水及び油のエマルジョン、例えば、油中水型エマルジョンとして製剤化する。
【0149】
いくつかの実施形態では、抗原、ザイモサン、及びMONTANIDE(商標)の油中水型エマルジョンを含む製剤を提供する。いくつかのそのような実施形態では、抗原は、ポリペプチド抗原である。
【0150】
例えば、いくつかの実施形態では、製剤は、α-ラクトアルブミンポリペプチド、ザイモサン、及びMONTANIDE(商標)の油中水型エマルジョンを含み、α-ラクトアルブミンポリペプチド及びザイモサンは、約1:5(w/w)~5:1(w/w)の比で製剤中に存在し、α-ラクトアルブミンポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかのそのような実施形態では、α-ラクトアルブミンポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0151】
いくつかの態様では、本明細書において、医薬組成物(例えば、ワクチン組成物)を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、提供する組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、組成物は、抗生物質をさらに含む。
本明細書に開示する医薬組成物を、以下に適合するものを含む、固体または液体形態での投与のために特別に製剤化してもよい:(1)経口投与、例えば、水薬(水溶液または非水溶液または懸濁液)、錠剤(例えば、頬側、舌下を標的とするか、または全身吸収用の)、ボーラス、散剤、顆粒、またはペースト(例えば、舌への塗布用);または(2)例えば、皮下、筋肉内、静脈内、または硬膜外注射による非経口投与。非経口投与に適した製剤の非限定的な例として、無菌溶液、無菌懸濁液、及び徐放性製剤が挙げられる。
【0153】
これらの製剤または組成物の調製方法は、抗原を炭水化物、代謝可能な油、薬学的に許容される担体、及び任意選択で1つ以上の副成分と結合させるステップを含み得る。一般的に、製剤は、本明細書に記載の1つ以上の組成物成分を、液体の薬学的に許容される担体、細かく分割された固体の薬学的に許容される担体、またはその両方と均一かつ密接に結合させ、次いで必要に応じて生成物を成形することによって調製し得る。
非経口投与に適した医薬組成物は、薬学的に許容される無菌の等張水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョンとして提供してもよい。あるいは、またはさらに、非経口投与用の医薬組成物を、無菌の散剤として提供してもよく、これを、使用直前に無菌の注射溶液または分散液に再構成してもよい。そのような注射溶液は、製剤を、意図するレシピエントの血液と等張にする1つ以上の薬剤、1つ以上の懸濁剤及び/または1つ以上の増粘剤を含み得る。例えば、注射溶液は、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び溶質のうちの1つ以上を含み得る。
【0154】
適切な水性及び非水性の薬学的に許容される担体の例として、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適切な混合物;オリーブオイルなどの植物油;ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられるが、これらに限定されない。適正な流動性は、例えば、コーティング材(レシチンなど)の使用によって、分散系の場合には要求される粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。
本明細書に開示する医薬組成物は、エマルジョンとして製剤化してもよい。例えば、エマルジョンとして製剤化したワクチン組成物を提供し、これは、アルミニウム系ワクチンの代替物を提供する。エマルジョン製剤は、本明細書でさらに記載するように、任意の代謝可能な油などの油で水性緩衝液に溶解した抗原を乳化することによって調製してもよい。エマルジョン製剤は、自然免疫細胞によるワクチンの食作用を促進するために短命のデポーを形成する場合があり、その結果、免疫応答が生じる(Leenaars,Koedam et al.1998)。そのようなエマルジョンに使用する油は、ユニークな免疫刺激を与え、ミョウバンアジュバントを含むワクチンよりも強力な免疫応答をもたらし得る(De Gregorio,Caproni et al.2013)。
【0155】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載するように、抗原及び代謝可能な油を含むエマルジョン、例えば、油中水型エマルジョンを含む医薬組成物を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、本開示は、α-ラクトアルブミンポリペプチド、ザイモサン、及び代謝可能な油を含む医薬組成物を提供する。
【0156】
特定の実施形態では、本開示は、約40~60% v/vの代謝可能な油で乳化した約40~60% v/vの水相抗原を含む医薬組成物を提供する(本明細書にさらに記載するように、任意選択で炭水化物を混合する)。例えば、医薬組成物は、約50% v/vの代謝可能な油/炭水化物組成物中の約0.1~25mg/mL(例えば、0.5~5mg/mL)の抗原を含み得る。
【0157】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する医薬組成物のエマルジョンを、水相抗原を代謝可能な油と約1.5:1~約1:1.5、例えば、約1.5:1、約1.4:1、約1.3:1、約1.2:1、約1.1:1、約1:1、約1:1.1、約1:1.2、約1:1.3、約1:1.4、または約1:1.5、またはその間の任意の値の比率で混合することによって形成させる。いくつかの実施形態では、炭水化物を、エマルジョンを形成する前に代謝可能な油に懸濁する。いくつかの実施形態では、ザイモサンを、エマルジョンを形成する前に代謝可能な油に懸濁する。
【0158】
本明細書に開示する医薬組成物を、当業者に公知の従来の方法によって、薬学的に許容される剤形に製剤化してもよい。
【0159】
提供する医薬組成物中の代謝可能な油及び/または炭水化物は、いくつかの実施形態では、医薬組成物の免疫原性を増加させるアジュバントとして作用し得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、追加の生理学的に許容されるアジュバントを使用する。そのような追加のアジュバントは、(i)抗原(例えば、ポリペプチド抗原)の再構成後に本明細書中で提供する医薬組成物中の他の成分と混合し、上記で定義した代謝可能な油により、任意選択で乳化すること、(ii)本明細書中で提供する再構成した抗原含有組成物の一部、(iii)再構成しようとする抗原(複数可)への物理的な連結;ならびに(iv)対象に別々に投与することを含むがこれらに限定されない、いくつかの方法のいずれかで使用するか、またはそれに含まれ得る。追加のアジュバントは、例えば、抗原を徐放することができ(例えば、追加のアジュバントはリポソームであり得る)、及び/または追加のアジュバントは、それ自体が免疫原性であり、それによって抗原(すなわち、提供する組成物中に存在する抗原)と相乗的に機能するアジュバントであり得る。
【0161】
例えば、追加のアジュバントは、抗原の取り込みを促進し、免疫系細胞を投与部位に動員し、及び/または応答するリンパ球の免疫活性化を促進する既知のアジュバントまたは他の物質であり得る。適切な追加のアジュバントの例として、免疫調節分子(例えば、サイトカイン)、油及び水エマルジョン、水酸化アルミニウム、グルカン、デキストラン硫酸、酸化鉄、アルギン酸ナトリウム、バクトアジュバント、ポリアミノ酸などの合成ポリマー、ならびにアミノ酸、サポニン、パラフィンオイル、及びムラミルジペプチドのコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、追加のアジュバントは、アジュバント65、α-GalCer、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸カルシウム、β-グルカンペプチド、CpG DNA、GM-CSF、GPI-0100、IFA、IFN-γ、IL-17、リピドA、リポ多糖、リポバント(Lipovant)、MONTANIDE(商標)、N-アセチル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン、Pam3CSK4、quil A、トレハロースジミコレート、またはザイモサンである。いくつかの実施形態では、追加のアジュバントは、混合1型/17型免疫応答を誘導する。
【0162】
いくつかの実施形態では、追加のアジュバントは、免疫応答を増強する免疫調節性分子である。例えば、免疫調節性分子は、サイトカイン、ケモカイン、または免疫刺激剤、前述のいずれかの組換えバージョン、または前述のいずれかをコードする核酸であり得る。
【0163】
免疫調節性サイトカインの例として、インターフェロン(例えば、IFNα、IFNβ及びIFNγ)、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、IL-17及びIL-20)、腫瘍壊死因子(例えば、TNFα及びTNFβ)、エリスロポイエチン(EPO)、FLT-3リガンド、gIp10、TCA-3、MCP-1、MIF、MIP-1α、MIP-1β、ランテス、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、及び顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ならびに前述のいずれかの機能断片が挙げられる。
【0164】
いくつかの実施形態では、提供する組成物は、ケモカイン受容体、例えば、CXC、CC、C、またはCX3Cケモカイン受容体に結合する免疫調節性ケモカインを含む。ケモカインの例として、Mip1α、Mip-1β、Mip-3α(Larc)、Mip-3β、ランテス、Hcc-1、Mpif-1、Mpif-2、Mcp-1、Mcp-2、Mcp-3、Mcp-4、Mcp-5、エオタキシン、Tarc、Elc、I309、IL-8、Gcp-2 Gro-α、Gro-β、Gro-γ、Nap-2、Ena-78、Gcp-2、Ip-10、Mig、I-Tac、Sdf-1、及びBca-1(Blc)、及び前述のいずれかの機能断片が挙げられる。
【0165】
G.追加の薬剤
特定の実施形態では、本明細書中で提供する組成物はまた、抗がん剤(例えば、化学療法剤)、免疫療法剤、免疫調節剤及び/または抗血管新生剤などであるがこれらに限定されない1つ以上の追加の薬剤を含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、組成物は、追加の抗がん剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、追加の抗がん剤は、ベバシズマブ、ブレオマイシン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、ゲムシタビン、レトロゾール、オラパリブ、タモキシフェン、トポテカン、トラベクチン、CTLA4抗体、PD-1抗体、PD-L1抗体、及びTGFβ抗体からなる群から選択される。
【0167】
いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、天然または合成の抗がん剤、例えば、”Cancer Chemotherapeutic Agents,” American Chemical Society,1995,W.O.Foye Edに記載の抗がん剤である。
【0168】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、小分子を含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、受容体アンタゴニストまたは遮断薬である。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、VEGF受容体アンタゴニスト(例えば、バタラニブ(PTK-787/ZK222584)、SU-5416、SU-6668、SU-11248、SU-14813、AZD-6474、AZD-2171、CP-547632、CEP-7055、AG-013736、IM-842またはGW-786034など)、VEGFtrap、EGFR及び/またはHER2アンタゴニスト(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、CI-1033、GW-2016、ハーセプチン、イレッサ(ZD-1839)、タルセバ(OSI-774)、PKI-166、EKB-569、またはHKI-272)、インテグリン受容体アンタゴニスト、及びプロテインキナーゼ受容体アンタゴニスト(例えば、アトラセンタン)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、HER2の発現を阻害する。
【0170】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、プロテインキナーゼのアンタゴニスト、例えば、マイトジェン活性化プロテインキナーゼのアンタゴニスト(例えば、BAY-43-9006もしくはBAY-57-9006)またはイマチニブを含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、チューブリン結合剤を含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、抗体を含む。例えば、化学療法抗体として、サイトカイン(例えば、TGFβ)に対する抗体、がん細胞の表面分子を標的とする抗体、及び成長因子またはそれらの受容体を標的とする抗体が挙げられるが、これらに限定されない。抗体化学療法剤の非限定的な例として、アレムツズマブ、アポリズマブ、ベバシズマブ、ダクリズマブ、セツキシマブ、イブリツモマブ、ミツモマブ、マツズマブ、オレゴボマブ、リツキシマブ、ビタキシン(ビトロネクチン様受容体抗体)、DC101(VEGFR2抗体)、ID09C3(MHCクラスIIモノクローナル抗体)、及びIMC-1C11(キナーゼ挿入ドメイン受容体抗体)が挙げられる。
【0173】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、細胞周期阻害剤を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、サイトカイン阻害剤を含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、低酸素選択的細胞毒を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、TNFα阻害剤、例えば、エタネルセプトを含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、インターフェロン、例えば、インターフェロンβを含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、インターロイキン、例えば、IL-10またはIL-12を含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、免疫調節剤、例えば、レナリドマイドまたはサリドマイドを含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、免疫チェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA4抗体(例えば、イピリムマブ(BMS)、トレメリムマブ(AstraZeneca)及び/またはKAHR-102(Kahr Medical))などのCTLA4の阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1の阻害剤、例えば、PD-1抗体(例えば、ニボルマブ(BMS)、ペンブロリズマブ/ランブロリズマブ(Merck)、ピジリズマブ(Curetech)、AMP-224(GSK)、AMP-514(AstraZeneca)、STI-A1110(Sorrento)及び/またはTSR-042(Tesaro)である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1及び/またはPD-L2の阻害剤、例えば、PD-L1及び/またはPD-L2抗体(例えば、RG-7446(Roche)、BMS-936559(BMS)、MEDI-4736(AstraZeneca)、MSB-0020718C(Merck)、AUR-012(Pierre Fabre Med)、STI-A1010(Sorrento))である。いくつかの実施形態では、抗がん剤は、ロイコトリエンアンタゴニストを含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、DNAアルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタードまたはその誘導体(例えば、ベンダムスチン、クロラムブシル、クロルメチン(メクロレタミン)、オキサザホスホリン(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、及びトロホスファミド))、メルファラン、ニトロミン、ウラムスチン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロムスチン、またはストレプトゾシン)、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン)、エチレンイミン(アジリジン)(例えば、チオテパまたはヘキサメチルメラミン)、金属塩(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、またはオキサリプラチン)、またはヒドラジン(例えば、アルトレタミン、プロカルバジン、ダカルバジン、またはテモゾロミド)を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、サトラプラチン、テトラプラチン、またはイプロプラチンなどの白金化合物を含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、DNAインターカレーター、例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、リポソームドキソルビシン(ドキシル)、エピルビシン、またはイダルビシンなどのアントラサイクリンを含む。
【0184】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、DNA副溝結合化合物を含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、DNA架橋剤を含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、例えば、ピリミジンもしくはプリン類似体またはアンタゴニスト、あるいはヌクレオシド二リン酸レダクターゼ阻害剤などの代謝拮抗剤を含む。代謝拮抗剤の非限定的な例として、シタラビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ペメトレキセド、テガフール/ウラシル、ウラシルマスタード、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、カペシタビン、メルカプトプリン、クラドリビン、チオグアニン、メトトレキサート、ペントスタチン、またはヒドロキシ尿素が挙げられる。
【0187】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、DNA転写、RNA翻訳、またはタンパク質発現の阻害剤を含む。DNA転写阻害剤の非限定的な例として、トポイソメラーゼIもしくはII阻害剤(例えば、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、エピポドフィロトキシン、エトポシド、テニポシド、または三環式カルボキシミド系薬剤)及び転写因子複合体の阻害剤(例えば、ESX/DRIP130/Sur-2複合体の阻害剤など)が挙げられる。
【0188】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、例えば、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤を含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、酵素、例えば、アスパラギナーゼまたはペグ化アスパラギナーゼ(ペガスパルガーゼ)を含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、例えば、SAHA、MD-275、トリコスタチンA、CBHA、LAQ824、またはバルプロ酸などのヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、化学療法剤は、化学放射線増感剤または保護剤を含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、がん遺伝子の阻害剤、例えば、P53またはRb阻害剤を含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、タキサン(例えば、パクリタキセルまたはドセタキセル)、ビンカアルカロイド(例えば、ナベルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンまたはビノレルビン)、または熱帯アルカロイド(例えば、コルヒチンまたはその誘導体)などの植物由来の薬剤を含む。
【0195】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、キナゾリンまたはその誘導体、例えば、アファタニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、またはラパチニブを含む。
【0196】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、有糸分裂阻害剤、例えば、有糸分裂阻害ペプチド(例えば、フォモプシン及びドラスタチン)、有糸分裂阻害剤カルバメート誘導体(例えば、コンブレタスタチン(A4)またはアンフェチニル)を含む。
【0197】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、ステガナシンを含む。
【0198】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、ホルモン遮断薬、例えば、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、ゴナドトロピン放出ホルモン(GNrH)アンタゴニスト(例えば、アバレリックス)、GNrH類似体、及びアロマターゼ阻害剤を含む。そのような抗アンドロゲンの非限定的な例として、アナンドロン、ビカルタミド、カソデックス、酢酸シプロテロン、フルタミド、ミトタン、及びニルタミドが挙げられる。抗エストロゲンの非限定的な例として、ドロロキシフェン、ラロキシフェン、タモキシフェン、トリオキシフェン、及びジンドキシフェンが挙げられる。GNrH類似体の非限定的な例として、リュープロレリン(ロイプロリド)、ブセレリン、ゴセレリン及びトリプトレリンが挙げられる。アロマターゼ阻害剤の非限定的な例として、アミノグルテチミド、アナストロゾール、ファドロゾール、フォルメスタンまたはレトロゾール、及びテスタラクトンが挙げられる。ホルモン遮断薬の追加の例として、フィナステリドが挙げられる。
【0199】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、ホルモンまたはその誘導体、例えば、エストロゲン(例えば、エストラムスチン(T-66)、17-β-エストラジオール(誘導体ICI 164,384またはICI 182,780を含む)、ゲスタゲン、またはプロゲスチン(例えば、メゲストロール)を含む。
【0200】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、ピペラジン誘導体、例えば、ピプロブロマンを含む。
【0201】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、グルタチオン類似体、例えば、TLK-286を含む。
【0202】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、生物学的応答修飾因子、例えば、アルデスロイキンまたはデニロイキンジフチトクスを含む。
【0203】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、例えば、マリマスタット、TIMP-1、またはTIMP-2を含む。
【0204】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、希土類元素の錯体、例えば、ランタニド錯体を含む。
【0205】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、抗がん効果を有する金属、例えば、亜鉛を含む。
【0206】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、光化学的に活性化された薬物、例えば、ポルフィマー、フォトフリン、ベンゾポルフィリン誘導体、フェオホルビド誘導体、メロシアニン540(MC-540)またはスズエチオポルフィリンを含む。
【0207】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、光化学療法治療において使用する薬剤、例えば、紫外線療法と共に使用されるソラレンを含む。
【0208】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、芳香族ニトロ化合物、例えば、RSU-1069、RB-6145、またはCB-1954を含む。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、ニトロキシルまたはN-オキシド、例えば、SR-4233を含む。
【0209】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、アンチセンスRNAまたはDNA、例えば、オブリメルセンを含む。
【0210】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、ハロゲン化ピリミジン類似体、例えば、ブロモデオキシウリジンまたはヨードデオキシウリジンを含む。
【0211】
いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、血管新生阻害剤、例えば、DC-101、ネオバスタット、テトラチオモリブデート、チミジンホスホリラーゼ阻害剤、またはTNP-470を含む。
【0212】
いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、抗生物質(マクロライドを含む)、抗真菌剤、または抗寄生虫剤を含み、これらは、抗がん効果を有していても、有していなくてもよい。追加の薬剤として使用し得る抗生物質の非限定的な例として、アクリジン、アクチノマイシン、アムサクリン、アンサミトシン、アントラマイシン、ブレオマイシン、クロロマイシン、ダクチノマイシン、ジスタマイシン、デュオカルマイシン、ゲルダナマイシン、ケトコナゾール、リブロマイシン、メイタンシン、ミトラマイシン、ミトマイシン、ミトキサントロン、ネトロプシン、ニトロイミダゾール(例えば、ベンズニダゾール、メトロニダゾール、ミソニダゾール、ニモラゾール、NLA-1、NLP-1)、ニトロアクリジン、ニトロキノリン、ニトロピラゾロアクリジン、オリボマイシン、フレオマイシン、フタラニリド(例えば、プロパミジンまたはスチルバミジン)、ピベンジモール、ピリカマイシン、リファマイシン、リゾキシン、スクアラミン、タネスピマイシン(17-アリルアミノゲルダナマイシン)、または前述のいずれかの誘導体もしくは塩が挙げられる。
【0213】
いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、アジリドキノン(例えば、マイトマイシンC、BMY-42355、AZQまたはEO-9)を含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、ミソニダゾール、NLP-1またはNLA-1、ニトロアクリジン、ニトロキノリン、ニトロピラゾロアクリジンなどの2-ニトロイミダゾールを含む。
【0215】
いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、例えば、ステロイドまたは非ステロイド性抗炎症薬などの抗炎症剤を含む。ステロイドの非限定的な例として、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ブデノシド、フルオコルトロンまたはトリアムシノロンが挙げられる。追加の抗炎症剤の非限定的な例として、アセチルサリチル酸、メサラジン、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、チアプロフェン酸、フルプロフェン、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ゾメピラク、ナブメトン、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、アルクロフェナク、ブロムフェナク、イブフェナク、アセクロフェナク、アセメタシン、フェンチアザク、クリダナク、エトドラク、オキシピナク、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルミン酸、トルフェナム酸、ジフルニサル、フルフェニサル、ピロキシカム、テノキシカム、ロモキシカム、ニメスリド、メロキシカム、セレコキシブ、及びロフェコキシブが挙げられる。
【0216】
いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、ビスホスホネートまたはその誘導体、例えば、ミノドロン酸またはその誘導体(YM-529、Ono-5920、YH-529)、ゾレドロン酸一水和物、イバンドロン酸ナトリウム水和物またはクロドロン酸二ナトリウムを含む。
【0217】
いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、薬学的に許容される塩、水和物及び/または溶媒和物の形態である。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、個々の光学異性体、個々のエナンチオマーの混合物、またはそれらのラセミ体の形態である。
E.核酸
いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載のポリペプチド抗原、例えば、α-ラクトアルブミンポリペプチドをコードする核酸(例えば、DNAまたはRNA分子)を含む。そのような実施形態では、組成物は、抗原の代わりに、または抗原に加えて、核酸を含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、ポリペプチド、例えば、α-ラクトアルブミンポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む発現ベクターを含む。
【0218】
細胞(例えば、筋細胞、抗原提示細胞(APC)、例えば、樹状細胞、マクロファージなど)に取り込まれると、DNA分子は、染色体外分子として細胞内に存在することができ、及び/または染色体に組み込まれ得る。DNAは、別個の遺伝物質として残存し得るプラスミドの形で細胞に導入することができる。あるいは、染色体に組み込まれ得る直鎖状DNAを細胞に導入することもできる。任意選択で、細胞にDNAを導入する場合、染色体へのDNAの組み込みを促進する試薬を追加することができる。
【0219】
II.治療方法
一態様では、本明細書に開示する治療有効量の組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0220】
いくつかの実施形態では、本明細書において、がんを治療または予防するための、及び/またはがん、例えば、乳癌に対する免疫応答を誘導するための方法を提供する。
【0221】
対象
本明細書に記載の方法は、それを必要とする任意の対象を治療するために使用することができる。
【0222】
一般的に、本開示の組成物または製剤を投与する対象は、適応免疫系を有する。いくつかの実施形態では、対象は哺乳類である。対象の例として、ヒト、家畜、イヌ、ネコ、マウス、ラット、及びそれらのトランスジェニック種が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0223】
いくつかの実施形態では、対象は、がんを有するか、またはがんを発症するリスクがある。例えば、対象はがんと診断された可能性がある。がんは、原発性のがんまたは転移性のがんであり得る。対象は、リンパ節転移を伴うまたは伴わない、及び転移を伴うまたは伴わない、任意の病期、例えば、I期、II期、III期、またはIV期のがんを有していてもよい。提供する組成物は、がんのさらなる成長を予防または低減し得るか、及び/またはそうでなければ、がんを改善する(例えば、転移を予防または軽減する)。
【0224】
いくつかの実施形態では、例えば、環境曝露、1つ以上の遺伝子変異またはバリアントの存在、家族歴などの1つ以上のリスク因子が存在することから、対象は、がんを有さないが、がんを発症するリスクがあると判定されている。
【0225】
いくつかの実施形態では、対象は、がんであると診断されていない。例えば、提供する組成物及び製剤を、予防ワクチンとして、例えば、予防が特に効果的であり得る1つ以上の部分集団において、リスクがあると同定されている個体で使用してもよい。例えば、乳癌に対するワクチンに関して、対象は、例えば、授乳していない女性であってもよい。
【0226】
いくつかの実施形態では、がんは乳癌(例えば、原発性乳癌、転移性乳癌)である。いくつかの実施形態では、乳癌は、三種陰性乳癌(エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、及びHER2に対して陰性)であるか、または三種陰性である細胞を含む。いくつかの実施形態では、乳癌は、ER、PR、及びHER2のうちの少なくとも1つに対して陽性であるか、または陽性である細胞を含む。
【0227】
いくつかの実施形態では、対象は、乳房腫瘍の少なくとも一部を除去するための手術を受けている。いくつかの実施形態では、対象は、そのようなリスクに関連する変異、例えば、BRCA1またはBRCA2遺伝子に変異を有するため、遺伝的に乳癌を発症する素因がある。いくつかの実施形態では、対象は、乳癌の家族歴を有する。
【0228】
いくつかの実施形態では、がんは、提供する組成物または製剤において、抗原として使用されるポリペプチド、またはその断片(複数可)及び/またはバリアント(複数可)が抗原として使用されるポリペプチドを、発現するか、または過剰発現する。例えば、いくつかの実施形態では、がん(例えば、乳癌)は、α-ラクトアルブミンを発現するか、または過剰発現する。
【0229】
いくつかの実施形態では、対象に、追加の治療薬を投与しているか、投与する予定であるか、または同時に投与する。追加の療法は、例えば、外科的切除、放射線療法、化学療法、及び/または免疫療法の他のモードを含み得る。いくつかの実施形態では、追加の療法は、本明細書に記載の追加の薬剤を含む。
【0230】
例えば、いくつかの実施形態では、対象に、本明細書に記載するような抗がん剤を含む抗がん療法を投与しているか、投与する予定であるか、または同時に投与する。
【0231】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するような組成物の免疫原性を妨害することを回避するような方法で、追加の療法に対して、投与のタイミングをとる。
【0232】
いくつかの実施形態では、対象は追加の療法を受けており、追加の療法の結果として、対象は、治療しようとする対象の疾患の臨床症状、例えば、臨床的に測定可能な腫瘍を示さない。しかしながら、いくつかの実施形態では、対象は、疾患の再発または進行のリスクがあると判定される。例えば、疾患ががんである場合、対象は、いくつかの実施形態では、例えば、元の腫瘍部位及び/または転移性部位の近位で、がんの再発または進行のリスクがあると判定され得る。そのような対象は、さらにリスクの高い対象とリスクの低い対象に分類することができる。分類は、例えば、追加の療法による治療の前、及び/または後に観察された特徴に基づいて行うことができる。これらの特徴は、臨床分野で公知であり、がんの各種類ごとに定義され得る。高リスクのサブグループに典型的な特徴として、隣接する組織への浸潤及び/またはリンパ節転移が挙げられる。したがって、例えば、本明細書に記載の医薬組成物を、対象に投与して抗がん応答を誘発し、がんの再発または進行を予防することができる。
【0233】
投与の経路
本明細書に開示する組成物(医薬組成物を含む)を、経口、非経口、及び「組成物」の節の「製剤及び医薬組成物」の小節に記載する他の投与経路を含む、任意の適切な投与経路によって投与し得る。いくつかの実施形態では、治療有効量の組成物を、全身投与経路によって(例えば、経口または非経口投与を介して)投与する。いくつかの実施形態では、治療有効量の組成物を、局所的に投与する。いくつかの実施形態では、治療有効量の組成物を、皮下、皮内、真皮下、または筋肉内注射によって投与する。
【0234】
用量
特定の実施形態では、治療有効量は、2回以上の用量、例えば、少なくとも2回の用量または少なくとも3回の用量を含む。いくつかの実施形態では、治療有効量は、3回以下の用量、例えば正確に3回の用量を含む。いくつかの実施形態では、各用量を、1週間以上の間隔で、例えば、少なくとも2週間以上の間隔で、少なくとも3週間以上の間隔で、または少なくとも4週間の間隔で投与する。いくつかの実施形態では、各用量を、約4週間の間隔で投与する。
【0235】
いくつかの実施形態では、各用量は、およそ同じ量の抗原を含む。いくつかの実施形態では、各用量は、およそ同じ量の抗原及び同じ量の炭水化物を含む。
【0236】
いくつかの実施形態では、初期用量を投与し、免疫学的及び/または臨床応答について対象をモニタリングする。免疫学的モニタリングの適切な手段は、患者の末梢血単核球(PBMC)をレスポンダーとして使用し、腫瘍細胞または抗原を記憶またはリコール応答を決定するための刺激剤として使用することを含む。免疫学的反応はまた、投与部位での炎症反応の遅延の存在によって決定することができる。所望の効果が達成されるまで、例えば、月次、半月次、または週次ベースで、最初の用量に続く1回以上の用量を適切に与えることができる。その後、特に免疫学的または臨床的有用性がおさまったように思われる場合は、必要に応じて追加のブースター用量または維持用量を与えることができる。
【0237】
適切な用量は、例えば、その用量を投与した対象において得られる血漿濃度を参照することによって決定し得る。例えば、最大血漿濃度(Cmax)及び時間0から無限大までの血漿濃度-時間曲線下面積(AUC(0~4))を使用してもよい。用量には、Cmax及びAUC(0~4)の特定の望ましい値を生成する用量が含まれる。
【0238】
用量は、様々な要因、例えば、特定の抗原または組成物の活性;投与経路;投与時間;使用する特定の組成物中の成分の排出または代謝の速度;治療期間;特定の抗原組成物と組み合わせて使用する他の薬物、化合物及び/または物質;対象の年齢、性別、体重、病態、一般的な健康状態、及び以前の病歴;医療分野で周知の同様の要因に依存し得る。
【0239】
一般的に、本明細書に記載の組成物の「治療有効量」は、所望の免疫学的、予防的、または治療的効果を生み出すのに有効な最低量の量である。例えば、いくつかの実施形態では、治療有効量は、治療しようとする対象において有効な体液性もしくは細胞性T細胞応答を、またはいくつかの実施形態では、有効な全身性免疫応答を誘導することができる量である。そのような有効量は、一般的に、上記のような特定の要因に依存する。
【0240】
いくつかの実施形態では、各用量は、約1μg~約20mg、例えば、約1μg~約5mg、約50μg~約2mgの抗原、または約100μg~約1mgの抗原を含む。例えば、いくつかの実施形態では、各用量は、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約10μg、約15μg、約20μg、約30μg、約40μg、約50μg、約60μg、約70μg、約80μg、約90μg、約100μg、約150μg、約200μg、約250μg、約300μg、約350μg、約400μg、約450μg、約500μg、約550μg、約600μg、約650μg、約700μg、約750μg、約800μg、約850μg、約900μg、約950μg、約1mg、約1.5mg、約2mg、約2.5mg、約3mg、約3.5mg、約4mg、約4.5mg、約5mg、約5.5mg、約6mg、約6.5mg、約7mg、約7.5mg、約8mg、約8.5mg、約9mg、約9.5mg、約10mg、約15mg、約20mg、またはその間の任意の値の抗原を含む。
【0241】
いくつかの実施形態では、各用量は、約1μg~約20mg、例えば、約10μg~約10mg、約50μg~約5mg、約100μg~約2mg、または約100μg~約1mgの炭水化物を含む。例えば、いくつかの実施形態では、各用量は、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約10μg、約15μg、約20μg、約30μg、約40μg、約50μg、約60μg、約70μg、約80μg、約90μg、約100μg、約150μg、約200μg、約250μg、約300μg、約350μg、約400μg、約450μg、約500μg、約550μg、約600μg、約650μg、約700μg、約750μg、約800μg、約850μg、約900μg、約950μg、約1mg、約1.5mg、約2mg、約2.5mg、約3mg、約3.5mg、約4mg、約4.5mg、約5mg、約5.5mg、約6mg、約6.5mg、約7mg、約7.5mg、約8mg、約8.5mg、約9mg、約9.5mg、約10mg、約15mgもしくは約20mgまたはその間の任意の値の炭水化物を含む。
【0242】
応答
いくつかの実施形態では、組成物の投与は、免疫応答を誘導する。
【0243】
一般的に、免疫応答には、体液性免疫応答、細胞性免疫応答、またはその両方が含まれ得る。
【0244】
体液性応答は、例えば、医薬組成物を投与している対象由来の血清試料中の抗体レベルについての標準的なイムノアッセイによって測定することができる。
【0245】
細胞性免疫応答は、通常T細胞が関与する応答であり、in vitroまたはin vivoで測定することができる。例えば、一般的な細胞性免疫応答は、薬学的に許容される組成物の投与後の適切な時間に対象からサンプリングした細胞(例えば、末梢血白血球(PBL))におけるT細胞増殖活性として測定することができる。例えば、PBMCを刺激装置で適切な期間インキュベートした後、[3H]チミジン取り込みを測定することができる。増殖T細胞の割合は、フローサイトメトリーを使用して決定することができる。細胞性免疫を測定する別の方法は、抗原に応答する炎症性1型及び/または17型サイトカインを分泌するT細胞の循環頻度を測定することを含む。
【0246】
いくつかの実施形態では、免疫応答は、例えば、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはその両方を含み得る、抗原特異的T細胞免疫応答を含む。いくつかの実施形態では、T細胞免疫応答は、1型または17型の炎症誘発性T細胞応答を含む。いくつかの実施形態では、T細胞免疫応答は、1型及び17型の両方の炎症誘発性T細胞応答を含む。
【0247】
抗原が細胞上で発現する場合、組成物の投与により、その細胞に対する免疫応答が誘発され得る。例えば、抗原が腫瘍関連抗原である場合、組成物の投与により、抗原を発現する腫瘍細胞に対する免疫応答が誘発され得る。
【0248】
いくつかの実施形態では、投与は、参照レベルと比較して、対象における肉芽腫形成の減少を引き起こす。例えば、参照レベルは、完全フロイントアジュバントを含む組成物を投与した対象において観察される肉芽腫形成のレベルであり得る。いくつかの実施形態では、参照レベルは、不完全フロイントアジュバントを含む組成物を投与した対象において観察される肉芽腫形成のレベルである。「肉芽腫形成の減少」は、例えば、形成される肉芽腫の減少、重症度の低下した肉芽腫、重症度がより急速に低下する肉芽腫、及び(部分的または完全に)より迅速に解消する肉芽腫のうちの1つ以上によって特徴付けられ得る。
【0249】
細胞療法
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する組成物とin vitro で接触させた対象細胞(例えば、抗原提示細胞もしくはその前駆細胞)、またはそのような細胞から生成した細胞、例えば、抗原をプライミングした抗原提示細胞または抗原特異的リンパ球に投与することを含む方法を提供する。
【0250】
IV.作製方法
一態様では、本明細書に開示する組成物または製剤の作製方法を提供する。一般的に、そのような方法は、抗原を含む水溶液を、炭水化物及び代謝可能な油を含むエマルジョンと混合するステップを含む。適切な抗原、炭水化物、及び代謝可能な油、ならびに2つ以上の成分間の適切な比には、本明細書、例えば「組成物」の節に記載するものが含まれる。
【0251】
例えば、いくつかの実施形態では、エマルジョンに対する水溶液の比は、約1:2~約2:1(v/v)である。いくつかの実施形態では、エマルジョンに対する水溶液の比は、約1:1(v/v)である。
【0252】
V.用途
一態様では、疾患または病態、例えば、がんを予防、治療、または改善するための薬剤を製造するための、本明細書に開示する組成物または製剤の使用方法を提供する。
【0253】
本発明を、以下の実施例によりさらに説明するが、限定するものとしてみなされるべきではない。本出願全体に引用されるすべての参考文献、特許及び公開特許出願の内容、ならびに図面は、参照により本明細書に援用される。
【0254】
〔実施例〕
実施例1:完全フロイントアジュバント(CFA)でのα-ラクトアルブミンの単回ワクチン接種は、1型と17型の両方の炎症性T細胞免疫応答を誘導した
以前に発表した研究は、組換えマウスα-ラクトアルブミンによるマウスのワクチン接種を、予防的または治療的プロトコルのいずれかで使用した場合、自発性及び移植可能な乳房腫瘍の両方の増殖を阻害することを示した。腫瘍成長阻害が観察された実験では、CFAをアジュバントとして使用した。
【0255】
本実施例では、CFAでα-ラクトアルブミンによって誘発される免疫応答のタイプを、α-ラクトアルブミン/CFA組成物を投与したマウスにおける1型(IFNγ産生)及び17型(IL-17産生)T細胞の脾細胞頻度を調べることによって特徴づけた。
【0256】
マウスに、CFA中の100μgの組換えマウスα-ラクトアルブミン(200μgのH37Ra Mycobacterium tuberculosisを含有する)の単回皮下注射を投与した。図1に示すように、IFNγ(1型)及びIL-17(17型)炎症性T細胞を産生するα-ラクトアルブミン特異的T細胞の平均脾細胞頻度は、それぞれ1/6,700及び1/12,700のレベルに達した(図1)。
【0257】
したがって、α-ラクトアルブミン/CFA組成物の単回注射は、1型と17型の両方のT細胞を含む炎症性免疫応答を誘発するのに十分であった。
【0258】
実施例2:1型及び17型の両方のT細胞応答を誘発する代替アジュバントの開発
実施例1が示すように、抗原/CFA組成物は1型と17型の両方のT細胞応答を誘発し、CFAが効果的な免疫刺激アジュバントであることを示唆している。
【0259】
残念ながら、CFAは、主にワクチン接種部位での未解消の肉芽腫及び膿瘍の誘発に関連する毒性作用があるため、ヒトのワクチン接種のアジュバントとして使用することはできない。同様の高頻度のα-ラクトアルブミン特異的1型及び17型T細胞を誘導することにより、CFAを模倣する代替の非毒性アジュバントを開発するために、CFAによって誘発される最適化された1型/17型適応免疫応答を「リバースエンジニアリング」することを目的として一連のアジュバントを試験した。試験したアジュバントには以下が含まれていた:1)200μg/ワクチン接種でのCFA、2)200μg/ワクチン接種で使用するトリテルペン配糖体GPI-0100、3)50μg/ワクチン接種で使用するSigma リピドA(Ribi adjuvant)、4)50μg/ワクチン接種のASO2B リピドA、5)100μg/ワクチン接種で使用する非メチル化CpG DNA、6)10μg/ワクチン接種のα-ガラクトシルセラミド(α-Gal-Cer)、7)IFA中の200μg/ワクチン接種のβ-グルカンペプチド、及び8)IFA中の200μg/ワクチン接種のザイモサン。各ワクチン用量には、利用可能な場合には製造業者の推奨に従って調製した100μLのアジュバントで乳化した100μLの水溶液中に100μgの組換えマウスα-ラクトアルブミンタンパク質が含まれていた。そのような推奨がない場合、アジュバントを、実質的な免疫応答の誘導を示す参考文献に記載された指示に従って調製した。組換えマウスα-ラクトアルブミンを用いて試験したアジュバントのうち、β-グルカンペプチド/IFAおよびザイモサン/IFAが、腫瘍免疫に関連し、CFAをアジュバントとして用いた場合と同様の頻度で、1型および17型T細胞を誘導した唯一のアジュバントであった(図2)。
【0260】
in vivoでの乳房腫瘍成長の阻害に関するその後の前臨床試験では、α-ラクトアルブミン/CFAを使用して観察された阻害に匹敵する4T1マウス乳房腫瘍成長の有意な阻害を提供した唯一の免疫原/アジュバントの組み合わせ(図3A;P<0.02)は、アジュバントとしてIFA中のザイモサンを使用したα-ラクトアルブミンであった(図3H;P<0.02)。他のすべての試験したアジュバントは、乳房腫瘍成長のin
vivo阻害を提供することができなかった(図3B~G)。
【0261】
これらの結果は、IFAと組み合わせたザイモサンが、ワクチン組成物における効果的なアジュバントであることを示唆している。さらに、ザイモサン、IFA、及びがん細胞に発現する抗原を含む抗がんワクチンは、in vivoで腫瘍の成長を首尾よく阻害した。
【0262】
実施例3:1型及び17型の両方の応答を誘発する非毒性アジュバントの開発
CFAによって誘発される毒性作用のかなりの部分は、Mycobacteria tuberculosisの死菌を懸濁するために使用するIFAに起因する可能性が非常に高い。IFAは、2型制御性T細胞を誘導して抗体を産生するためのスタンドアロンアジュバントとしてよく使用される。IFAは、パラフィンオイルを含む代謝不可能な油から調製される。これらの代謝不可能な油は、長期間にわたって残留し、抗原提示を促進する。しかしながら、この長期残留は、CFAで観察されるワクチン接種部位の未解消の肉芽腫及び膿瘍に実質的に寄与し得る。したがって、抗原とともに、高頻度の抗原特異的1型及び17型炎症性T細胞を誘発する、ヒトワクチン接種での使用に許容可能な非毒性の代替アジュバントを開発するために、IFAの代替物を探索した。次いで、この代替物をワクチンアジュバントとしてザイモサンと一緒に使用することができる。
【0263】
MONTANIDE(商標)ISA51VG(Seppic、パリ、フランス)を、IFAの潜在的な代替品として試験した。MONTANIDE(商標)ISA51VGは、高度に精製された鉱油(DRAKEOL(商標)6VR)と界面活性剤(モノオレイン酸マンニド)とのGMPグレードの混合物である。50/50の比で水相免疫原と混合した場合、それは油中水型エマルジョンが得られる。IFAと同様に、この油中水型エマルジョンは、免疫応答を強化するためのスタンドアロンワクチンとして機能する。MONTANIDE(商標)ISA51VGは、MONTANIDE(商標)ISA51の代替品として機能する。両方のグレードの違いは、界面活性剤の製造に使用するオレイン酸(モノオレイン酸マンニド)の起源である。MONTANIDE(商標)ISA51の製造に使用するオレイン酸は動物由来である。牛海綿状脳症(BSE)及び他の伝染性海綿状脳症が懸念されるため、MONTANIDE(商標)ISA51VGで使用されているオレイン酸は植物起源である。2006年以来、MONTANIDE(商標)ISA51VG(以下、本実施例では単に「MONTANIDE(商標)」と呼ぶ)は、10,000人を超える患者を対象とした世界中の150を超えるヒト臨床試験で使用されている。詳細な組成、製造プロセス、分析制御、及び安定性データは、様々な国で登録されているドラッグマスターファイル(DMF)または共通技術文書(CTD)(米国ではDMF IV型
N°9756及びN°10870;米国ではBBMF N°12130及びN°14167)に記載されている。
【0264】
アジュバント成分としてのMontanide(商標)の適合性を試験するために、6~8週齢の雌BALB/cJマウスに、100μLのIFAまたは100μLのMONTANIDE(商標)のいずれかにおける、100μgの組換えマウスα-ラクトアルブミン及び200μgのザイモサンを含有するエマルジョンの単回用量を投与した。ワクチン接種の4週間後、炎症性1型(IFNγ)及び17型(IL-17)T細胞の脾細胞頻度を、ELISPOT分析によって測定した。図4のデータは、50μg/mLの組換えマウスα-ラクトアルブミンに対するリコール応答の平均スポット形成単位(SFU)からリコール抗原を含まない培養物の平均バックグラウンド応答を差し引いた値を示す(平均バックグラウンド<アッセイあたり5SPU)。
【0265】
図4に示すように、ザイモサンとMONTANIDE(商標)をアジュバントとして使用した場合、1型及び17型の両方の炎症性T細胞の産生が誘導された。しかしながら、誘導のレベルは、IFA中のザイモサンをアジュバントとして使用して達成されたレベルよりもはるかに低かった。したがって、腫瘍成長の阻害に関連する高いT細胞頻度を達成するために、アジュバントとしてザイモサン/MONTANIDE(商標)を含むワクチンの複数回投与が必要となる場合がある。
【0266】
これらの結果は、代謝可能な油中にザイモサンを含むアジュバントが、1型と17型の両方の免疫応答を誘発する際に抗原をサポートすることができることを示している。
【0267】
実施例4:α-ラクトアルブミン/ザイモサン/MONTANIDE(商標)ワクチン
ザイモサン/MONTANIDE(商標)アジュバントの組み合わせを使用した高頻度のα-ラクトアルブミン特異的1型/17型T細胞を提供するために必要な有効用量を決定するために、雌BALB/cマウスに、等量(重量)のα-ラクトアルブミンとザイモサンを含有する200μLのエマルジョンを1回以上投与した。各用量には、α-ラクトアルブミンとザイモサンがそれぞれ100~1000μg含まれていた。
【0268】
組換えマウスα-ラクトアルブミン(FLAG-N-mαlac-C-HIS)を無菌USPグレード水に溶解し、ザイモサンをMONTANIDE(商標)ISA51VGに懸濁した。最終ワクチン接種の4週間後、脾細胞を、マウスIFNγ、IL-5、及びIL-17に特異的な捕捉/抗体ペアを使用したELISPOT分析に供し、生成された1型、2型、及び17型T細胞系統の脾細胞頻度をそれぞれ評価した。
【0269】
3匹のマウスの各群に、4週間間隔で、1回、2回、または3回の投与を行った。最終投与の4週間後、1型炎症性T細胞、17型炎症性T細胞、及び2型制御性T細胞の脾細胞頻度を、それぞれマウスIFNγ、IL-17、及びIL-5に特異的な捕捉/抗体ペアを使用したELISPOT分析によって測定した。
【0270】
図5に示すように、試験したすべての用量(それぞれ100μg、250μg、500μg、及び1000μgのα-ラクトアルブミン及びザイモサン)において、3回目の投与後に1型及び17型の両方の応答が誘発された。1mgのα-ラクトアルブミン/1mgのザイモサンを含有するエマルジョンを3回投与した後に、高頻度の1型/17型T細胞の一貫した産生が生じた(図5)。
【0271】
さらに、どの用量でも膿瘍は観察されず、ワクチン接種部位で生成されたすべての肉芽腫は、ワクチン接種後1~2週間以内に完全に解消された。長期的な有害作用は観察されなかった。α-ラクトアルブミン/ザイモサン/MONTANIDE(商標)は、ワクチン接種部位での未解消の肉芽腫及び膿瘍を誘発することなく乳房腫瘍の成長を阻害するのに通常十分な頻度でα-ラクトアルブミン特異的1型及び17型T細胞を誘導するための効果的な免疫原/アジュバントの組み合わせである。
【0272】
まとめると、実施例2~3に記載した結果は、α-ラクトアルブミン/ザイモサン/IFAが、α-ラクトアルブミン/CFAによるワクチン接種と同様の、1型/17型T細胞免疫及び乳房腫瘍成長の阻害を誘導することを示している。ザイモサンを、IFAの代わりにMONTANIDE(商標)に懸濁する場合、得られる油中水型エマルジョンは、適切な抗原と共に使用する場合、IFAで観察される頻度よりも低い頻度で抗原特異的1型/17型炎症性T細胞を誘導する。さらに、α-ラクトアルブミン/ザイモサン/MONTANIDE(商標)のエマルジョンによる複数回の高用量ワクチン接種は、膿瘍または未解消の肉芽腫を誘発することなく乳房腫瘍成長の阻害に関連する1型/17型T細胞頻度を誘発する。したがって、α-ラクトアルブミン/ザイモサン/MONTANIDE(商標)エマルジョンによるワクチン接種は、乳房腫瘍成長の有効な阻害に関連付けられた1型/17型免疫を誘導する。
【0273】
実施例5:α-ラクトアルブミン/ザイモサン/MONTANIDE(商標)ワクチン
MONTANIDE(商標)中にザイモサンを含むアジュバントが毒性作用に関連しているかどうかを評価するために、組換えα-ラクトアルブミン/ザイモサン/MONTANIDE(商標)でワクチン接種したマウスの組織病理学及びバイオメトリクスを調べた。
【0274】
試験設計
それぞれ25匹のマウスの3群(群A、B、及びC)に、それぞれ1、2、または3回投与した。各群は、それぞれ5匹のマウスの5つのサブグループに細分し、各サブグループに以下を投与した:1)対照ワクチン;2)100μgの組換えマウスα-ラクトアルブミン(FLAG-N-mαlac-C-HISバリアント)を含むワクチン;3)1000μgの組換えマウスα-ラクトアルブミン(FLAG-N-mαlac-C-HISバリアント)を含むワクチン;4)100μgの組換えヒトα-ラクトアルブミン(HISTEV-N-hαlac-COOHバリアント)を含むワクチン;及び5)1000μgの組換えヒトα-ラクトアルブミン(HISTEV-N-hαlac-COOHバリアント)を含むワクチン。すべてのワクチンは、MONTANIDE(商標)ISA51VG中に、標的抗原として等量の水相組換えα-ラクトアルブミンとアジュバントとして油相ザイモサンを含む油中水型エマルジョンであった。
【0275】
表2に概説されているように、群Aマウスには単回投与し、群Bマウスには1か月間隔で2回投与し、群Cマウス群には1か月間隔で3回投与した。
【0276】
【表2】
【0277】
材料及び方法
組換えα-ラクトアルブミン
マウスα-ラクトアルブミンのオープンリーディングフレームcDNAヌクレオチド配列(NCBI参照配列:NM_010679.1)及びヒトα-ラクトアルブミン(NCBI参照配列:NM_002289.2)を改変して、哺乳類のコドンを同じアミノ酸(Dapcel、Cleveland、OH)をコードするより効率的な原核生物の配列で置き換えることにより、原核生物の発現系における最適化されたタンパク質のフォールディング及び産生が確実になるようにした。最適化されたDNA配列は、de novo合成した(GeneArt、Regensburg、ドイツ)。マウスα-ラクトアルブミンDNAをpET3a発現ベクター(GeneArt)に挿入し、N末端FLAGタグとC末端6×Hisタグ(FLAG-N-mαlac-C-HIS)を含む組換えマウスα-ラクトアルブミンを提供した。ヒトα-ラクトアルブミンDNAもpET3a発現ベクター(GeneArt)に挿入し、組換えヒトα-ラクトアルブミンタンパク質(HISTEV-N-hαlac-COOH)から6×Hisタグを除去するための切断部位として機能する、タバコエッチウイルスの核内封入体であるエンドペプチダーゼ(TEVプロテアーゼ)と共に、N末端に連結した6×Hisタグを含む組換えヒトα-ラクトアルブミンを提供する。これらのインサートを含むプラスミドを、E.coli株BL21Star(Invitrogen、Carlsbad、CA)に形質転換した。イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG;Amresco、Solon、OH)で誘導した後、高レベルの発現コロニーを選択し、配列を決定して適切な配向とアラインメントを確認した。6×Hisタグ付きタンパク質を、ニッケル-ニトリロ三酢酸(Ni-NTA)アフィニティークロマトグラフィー(Qiagen Sciences、Germantown、MD)を使用して、変性及び還元条件下で精製した。in vitroで使用する前に、タンパク質を逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製して、エンドトキシンフリーのタンパク質を得た。
【0278】

無菌USPグレードの水を購入し(Corning)、エマルジョンの水相に組換えα-ラクトアルブミンタンパク質を可溶化するために使用した。
【0279】
ザイモサン
ザイモサンAを購入し(Sigma-Aldrich)、ワクチンアジュバントとして使用した。
【0280】
MONTANIDE(商標)MONTANIDE(商標)ISA51VGを購入し(Seppic)、ザイモサンを懸濁し、エマルジョン相を維持及び安定化するための溶媒として使用した。
【0281】
ワクチンの調製
組換えα-ラクトアルブミンタンパク質溶液を無菌USPグレード水中で10mg/mlの濃度に調整し、ストック溶液を作成した。ザイモサンを10mg/mlの濃度でMONTANIDE(商標)ISA51VGに懸濁して、ストック溶液を作成した。1000μgの組換えα-ラクトアルブミン+1000μgのザイモサンの高用量でワクチン接種するために、1つの3.0mlシリンジに水性組換えα-ラクトアルブミン水溶液をロードして二重雌ルアーロックコネクターにロックし、別のシリンジに等量の油相ザイモサン懸濁液をロードしてコネクターの他方の端にロックした。
【0282】
乳化は、非常に低速での予備乳化と高速での最終乳化の2つの段階を含んでいた。水性組換えα-ラクトアルブミンを含むシリンジプランジャーを完全に押して、両方の相が1つのシリンジに入るようにした。ゆっくりとしたプレエマルジョン段階の間に、製剤全体を、コネクターを介して一方のシリンジからもう一方のシリンジに、各プランジに4秒かけて合計30サイクルの間、ゆっくりと繰り返し通過させた(各サイクルが完了するまでに8秒かかった)。このプレエマルジョン段階の終わりに、速度を劇的に増加させ、それにより、80回の追加の完全なサイクルを可能な限り迅速に行った。次いで、エマルジョン全体を1つの注射器に入れ、無菌の26ゲージの針を接続した。
【0283】
安定したエマルジョンの作成を、滴下試験によってワクチン接種の前に確認した。エマルジョンの液滴を水で満たされたビーカーに入れた場合に少なくとも5分間その構造的完全性を維持した場合、エマルジョンは安定しているとみなした。200μlのエマルジョンを背側頸部に皮下注射して、高用量ワクチン(1000μgの組換えα-ラクトアルブミン+1000μgのザイモサン)を提供した。低用量ワクチン(100μgの組換えα-ラクトアルブミン+100μgのザイモサン)を含むエマルジョンを作成するために、エマルジョンを調製する前に、ストック試薬を適切な溶媒で元の濃度の10%に希釈した。
【0284】
マウス及びワクチン投与
6~7週齢の雌BALB/cJマウスを購入し(Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME)、8~10週齢でワクチン接種した。
【0285】
マウスの背側頸部に、各用量につき200μlのエマルジョンを皮下注射した。すべてのワクチン接種は背側で行い、頭皮の後ろの近位から開始し、以前の各ワクチン接種から約1.5cm離して、尾側方向にワクチン接種を続けた。
【0286】
正確な注射を促進するために、各用量を投与する前に、マウスをイソフルラン麻酔下で固定化した。各投与を行った後、マイクロアイソレーターケージにマウスを収容し、維持し、無菌の食物及び水に常時自由にアクセス可能にした。社会的活動の変化、孤立、外見または身づくろい行動の変化、注射部位への過度の注意、過度の引っかき傷などを含む行動の変化について、マウスを毎日観察した。
【0287】
バイオメトリクス
ベースライン体重と体温を、各投与の直前とその後3日ごとに取得した。実験中の体重と体温の変化を、0日目の体重を100%としてベースラインからの偏差の割合としてプロットした。体温は、Optris LS IR温度計(Micro-Epsilon、Raleigh、NC)を使用して取得し、各測定について、温度プローブを剣状突起から同じ距離に配置した。肝臓、脾臓、及び腎臓の重量を、剖検時に測定し、各マウスの総体重に対する割合として計算した。
【0288】
剖検
各群のマウスを1つのケージに収容し、各マウスを異なる恒久的な耳のパンチで個別に区別し、次いで一時的な尾のマーカーで区別した。最終ワクチン接種の14~16日後にマウスを安楽死させた。
【0289】
剖検の日に、一度に1つのケージを化学ドラフトの下に置き、そこで剖検を行った。身づくろいパターン及び注射部位の状態についてマウスを観察した。
【0290】
体温と体重を記録し、97.5%の純酸素と2.5%のイソフルランを供給するイソフルラン気化器に接続されたチャンバーにマウスを配置した。深麻酔後、腹側を上にしてマウスを配置し、70%イソプロピルアルコールプレップパッドで胸部を拭き、1.0mlの注射器と22ゲージの針で心臓を穿刺した。全血およそ0.5~0.8mlを採取した後、マウスを頸椎脱臼し、下腹部から剣状突起まで外科用ハサミで腹壁を正中腹切開し、腹部内容物を露出させた。次いで、横隔膜を切開し、胸郭を切断した。大静脈を切断して灌流を退出させ、無菌の冷PBSで満たされた30ml注射器上の26ゲージ針を灌流のために左心室に挿入した。マウスを総量30mlの冷PBSでゆっくりと灌流した。脾臓、肝臓、及び腎臓を取り出して秤量した後、10%リン酸緩衝ホルマリンに入れた。その後、回収しようとする残りの組織を注意深く取り除き、固定液に入れた。24時間後、組織を取り出し、PBSで洗浄し、組織病理学のために処理するまで70%エタノールに入れた。群Cのマウスの脳は、70%エタノールに保存する前に長期間固定した。
【0291】
組織病理学
これらの組織を、組織病理学のために回収した:腎臓、脳、大腸、肝臓、肺、卵巣、脾臓、心臓、子宮、皮膚(注射部位)、胃、膀胱、乳房、及び小腸。群B及びCから開始し、各注射部位から皮膚試料を回収し、注射部位の治癒過程を経時的に評価できるようにした。群Cについては、胸腺、腸間膜リンパ節、下顎唾液腺などの追加の組織を回収し、分析した。群Cについては、1)回収プロセスの一部としてホルマリンによる膀胱と肺の膨張;及び2)24時間固定の代わりに、合計5日間の、頭蓋冠を除去した頭蓋骨内の脳のホルマリン固定を含むように組織処理も変更した。すべての組織を10%リン酸緩衝ホルマリンで一晩固定し、PBSで洗浄し、処理するまで70%エタノール中で保存した。組織をパラフィン包埋し、切断し、スライドにマウントし、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。獣医病理学者により、組織切片を分析した。
【0292】
結果
図6~8は、観察期間中の体重変化を示している。図9~11は、各群及びサブグループにおける体温の変化を示し、図12~14は、剖検時に記録し、全体重に対する割合として表した脾臓、肝臓、及び腎臓の重量を示している。
【0293】
試験期間全体を通して、死亡率または重度の罹患率の問題は著しく明らかではなかった。罹患率は注射部位に限定されているようであり、最初の投与後14~15日間、または2回もしくは3回投与したマウスの45日間または75日間の観察期間中に、発毛が完全に治癒または回復することはなかった。全体として、マウスは、食べること、飲むこと、及び社交に関して正常な行動を示した。一般的に、マウスは、各ワクチン接種直後の一時的なわずかな体重の低下を除いて、試験の過程で体重が増加し、そこからマウスはすぐに回復した。(図6~8を参照のこと)。
【0294】
最高用量のワクチン(M1000及びH1000)を投与したマウスは、注射の6日後に注射部位にかなりの関心を示した。注射部位は通常、9日目までに肉芽腫性の外観で無毛になり、12日目までにかさぶたを形成し始めた。14~15日目の安楽死(群Aの場合)までに、かさぶたは解消し、注射部位はほぼ完全に治癒したように見えたものの、まだ無毛であった。この刺激作用、脱毛、かさぶた形成、及び治癒解消のパターンは、M1000及びH1000サブグループの2回目及び3回目のワクチン接種でも観察された。例えば、群Bのマウスは、第2のワクチン接種を投与するまでに、第1のワクチン接種から実質的な治癒を示した。複数回投与したマウスの最初の注射部位は、試験の過程を通して継続的な改善を示したが、2回投与したマウスの45日間の観察期間中または3回投与したマウスの75日間の観察期間中に完全な治癒または発毛の完全な回復を示さなかった。
【0295】
しかしながら、治癒の程度は一般的に注射部位の年齢と相関しており、最も古い注射部位が最も健康に見える。逆に、注射部位周辺の脱毛の領域は、一般的に、古い注射部位の方が大きかった。これが発生した理由は明らかではないが、マウスが最初の注射部位(頭部に最も近い)を引っ掻くのが簡単であることに気付いた可能性がある。
【0296】
低用量のヒトα-ラクトアルブミン(H100)を3回投与したが、マウスα-ラクトアルブミン(M100)は投与しなかったマウスは、最高のワクチン用量を注射したマウスと同じパターンの刺激作用、脱毛、かさぶた形成、及び治癒解消を示した。この攻撃的な応答は、ヒトα-ラクトアルブミンタンパク質をワクチン接種したマウスに限定され、3回目のワクチン接種後にのみ現れた。いかなる特定の理論にも制限されることを望むものではないが、これらのマウスにおける攻撃的な応答は、異種抗原の免疫原性の増強及び異種抗原の3回の投与に対して達成される高レベルの免疫に関連している可能性がある。
【0297】
図15及び16は、注射部位での肉芽腫の経時的な解消を示す。図15は、第2の注射のおよそ2週間後及び第1の注射のおよそ6週間後に撮影したマウスの写真を示す。青い矢印は第1の注射部位を示し、赤い矢印は第2の注射部位を示す。図15が示すように、第1の注射部位は、第2の注射部位に比べて外観が改善しており、これは経時的な肉芽腫の消散を示している。
【0298】
図16は、以下の等級付けシステムを使用した、注射部位での油肉芽腫の平均等級を示す:0、正常;1、最小限;2、軽度;3、中等度;4、重度。各注射部位について、すべての治療群のすべてのマウス(n=25)の平均グレードを計算した。エラーバーは、±SEを表す。すべての注射部位は、最初は平均して中等度の油性肉芽腫を示した。しかしながら、時間の経過とともに、これらの肉芽腫は実質的に解消し、実験エンドポイントでの第1と第3の免疫化の間(P<0.001)及び第2と第3(P<0.05)の免疫化の間に有意な改善が認められた。
【0299】
マウスの組織病理学的分析の結果を、表3A及び3B(群A;単回投与)、表4A及び4B(群B;2回投与)、ならびに表5A~5C(群C;3回投与)に示す。表3A、3B、4A、4B、5A、5B、及び5Cでは以下の記号を使用した。
【0300】
n = 正常(病変なし)
BI = 胆道の炎症
FI = 病巣の炎症
OG = 油性肉芽腫(注射部位)
Ab = 膿瘍
At = 萎縮
GCH = 胚中心過形成
LPH = 粘膜固有層過形成
MH = 骨髄過形成
em = 心外膜の石灰化
NP = 腎症
FC = 脂肪変性
FN = 巣状壊死
u = 潰瘍
n/s = 切片なし
ns = 認められず
np = 存在せず
グレード:
1 = 最小度
2 = 軽度
3 = 中等度
4 = 重度
群A(単回投与)(表3A及び3B)では、ヒトまたはマウスのα-ラクトアルブミン(M及びHサブグループ)のいずれかをワクチン接種したマウスでは、器官への有害作用は認められなかった。病変は注射部位で発見され;これらは、注射した物質、マクロファージ、及びいくつかの好中球を含む油性肉芽腫であった。一部のマウスでは、注射部位に膿瘍が認められた。膿瘍は、注射した物質の細菌汚染が注射手順中に発生したことを示唆している。発見された他のほとんどの病変は、それらが最小度~軽度であり、対照でも発見されたことから、偶発的であるとみなされた。炎症細胞の肝病巣は多くのマウスで観察され、注射部位の病変に関連している可能性がある。
【0301】
【表3】
【0302】
【表4】
【0303】
群B(2回投与)(表4A及び4B)では、炎症細胞の肝病巣が多くのマウスで認められた。肝病巣は、ランダムで胆汁性であり、ほとんどがリンパ球からなり、好中球及びマクロファージを含むこともある。いくつかの肝病巣は、骨髄病巣(肝臓における骨髄過形成)であった。肝病変には軽度の胆管炎症が含まれ、肝細胞及び肝機能には悪影響を及ぼさなかった可能性がある。
【0304】
一部のマウスで観察された骨髄過形成の脾臓病変は、注射部位病変に対する反応を表している可能性が高い。一部のマウスで観察された胚中心過形成の脾臓病変は、注射部位病変への反応及び/または抗原への応答であった可能性がある。
【0305】
乳腺組織は、多くの場合、筋肉のみを含む乳房切片ではなく、皮膚切片に存在していた。
【0306】
膿瘍は、注射部位の一部のマウスで観察され、好中球からなっていたが、このことは、細菌を含まないか、または細菌を含んだ無菌膿瘍を示している可能性がある。細菌は、多くの場合、病変には認められなかった。
【0307】
【表5】
【0308】
【表6】
【0309】
群C(3回投与)(表5A~5C)では、組織病理学的結果は、群A及びBの結果と同様であった。最も重度の皮膚病変は第3(最新)の注射部位に存在していた。器官特異的な毒性病変は観察されなかった。用量と相関していなかった観察された病変のほとんどは偶発的病変であった。
【0310】
肝臓病変もまた、高用量マウスにおいて最も重症であった。これらの病変は、免疫不全マウスによく認められるHelicobacter hepaticusによって引き起こされる病変に類似していた。これらの肝臓病変の原因を評価するために、多くの肝臓の炎症病巣(主にリンパ球と、不定期の壊死を伴ういくつかのマクロファージを含む浸潤物を含む)を有する3匹のマウスの肝臓を、Steiner染色により染色した。また、細菌が存在するヒトの胃の陽性対照切片も含めた。炎症性遺伝子座を有するマウス肝臓のいずれも、細菌に対して陽性に染色された病変を有していなかった。したがって、これらのマウスで観察された肝臓病変は、Helicobacter hepaticusの感染によるものではなかった可能性がある。
【0311】
【表7】
【0312】
【表8】
【0313】
【表9】
【0314】
図17は、全群における限局性肝炎症の重症度の概要を示す。
【0315】
要約すると、これらの結果は、肝臓の病巣がランダムで、限局性で、胆汁性であり、主に軽度で良性であり、高用量マウスで最も重度の病変が生じていたことを示す。肝病巣は、肝細胞及び肝機能に悪影響を及ぼさなかった可能性がある。
【0316】
実施例6:α-ラクトアルブミン/ザイモサン/MONTANIDE(商標)を用いた免疫化による自発性乳癌成長の予防的阻害
MMTV-neuマウスは、自発性乳癌のマウスモデルとして使用することができる。MMTV-neuマウスは、マウス乳癌ウイルス(MMTV)の末端反復配列の制御下でneuがん原遺伝子を発現し、205日齢までに50%の発症率で自発性乳癌を発症する。(例えば、Guy CT,et al. Expression of the neu protooncogene in the mammary epithelium of transgenic mice induces metastatic disease.Proc Natl Acad Sci USA. 1992;89:10578-10582を参照のこと)。
【0317】
α-ラクトアルブミン/ザイモサン/MONTANIDE(商標)ワクチンが乳癌の成長を阻害する能力を試験するために、MMTV-neuマウスに、ザイモサン及びMontanide中にα-ラクトアルブミンを含む3回以上の用量を、例えば、各1000μgのザイモサン及びMontanideの用量で投与する。マウスの追加の群を、対照として、または比較のために使用してもよく、この群には、それぞれ、1)CFA中のα-ラクトアルブミン(陽性対照);2)ザイモサン及びIFA中のα-ラクトアルブミン;または3)抗原を含まないMONTANIDE(商標)中のザイモサン(陰性対照)を投与するマウスが含まれ得る。
【0318】
α-ラクトアルブミン/ザイモサン/MONTANIDE(商標)ワクチンが、がんの出現前にその成長を阻害する能力を評価するために、マウスが腫瘍を発生させると予想されるかなり前に、例えば、6~10週間で、第1、第2、及び第3の投与をすべて投与してもよい。腫瘍の発生率及び/またはサイズを調べ、群間で比較する。
【0319】
実施例7:α-ラクトアルブミン/ザイモサン/Montanideを用いた免疫化による確立された乳癌の成長の阻害
α-ラクトアルブミン/ザイモサン/MONTANIDE(商標)ワクチンが、すでに確立された乳癌のさらなる成長を阻害する能力を試験するために、1つ以上の適切ながんモデル由来のマウスに、例えば、各1000μgのザイモサン及びMONTANIDE(商標)の用量で、ザイモサン及びMONTANIDE(商標)中にα-ラクトアルブミンを含む3回以上の用量を投与する。実験及びマウスのグループ化は、投与を、がんモデルに応じて異なるタイミングで行う場合があることを除いて、実施例4に記載したものと同様である。例えば、マウスモデルの既知の特徴によれば、そのがんモデルのかなりの割合のマウスがすでにがんを確立している特定の年齢のマウスに、少なくとも1回、2回、または3回の用量を投与する。あるいは、マウスが少なくとも1つの腫瘍を発生させたという少なくとも1つの徴候を示した後、例えば、マウスが少なくとも1つの触知可能な腫瘍を有する場合、少なくとも1、2または3回の用量を投与する。
【0320】
様々な適切ながんモデルのいずれかを使用して、含まれる確立された乳房腫瘍への影響を試験することができる。非限定的な例として、MMTV-PyVTトランスジェニックマウスは、乳房組織において活性化された形態のneu 腫瘍遺伝子を構成的に発現し、5週齢までに攻撃的な触知可能な乳腺腫瘍を発症する。(例えば、Guy CT,Cardiff RD,Muller WJ. Induction of mammary tumors by expression of polyomavirus middle T oncogene:a transgenic mouse model for metastatic disease.Mol Cell Biol. 1992;12:954-961を参照のこと)。したがって、MMTV-PyVTマウスを使用して、自発性腫瘍成長に対する影響を評価することができる。
【0321】
移植可能な乳癌モデルも適している場合がある。例えば、マウスに、4T1などの乳癌細胞株の腫瘍細胞を注射することによって接種してもよい。
【0322】
1つ以上の異なる時点(例えば、免疫化後の時間、腫瘍細胞接種後の時間など)での腫瘍サイズを検査し、群間で比較する。
【0323】
実施例8:再発のリスクが高い非転移性三種陰性乳癌患者を対象としたα-ラクトアルブミンワクチンの第I相臨床試験
三種陰性乳癌の治療は不十分であり、実行可能な治療標的がないために妨げられている。実施例2~4に記載の結果及び他の前臨床試験の結果は、α-ラクトアルブミン(抗原)及びザイモサン(MONTANIDE(商標)ビヒクル中の)を含むワクチンが、乳房腫瘍の効果的な予防及び治療と一致する免疫応答を誘導できることを示唆している。さらに、このワクチンは、ヒトの三種陰性乳癌を治療する大きな可能性を秘めている。
【0324】
非盲検第I相臨床試験は、将来の試験で使用するワクチンの用量とスケジュールを決定するために計画されている。この試験には、非転移性三種陰性乳癌(TNBC)患者における、α-ラクトアルブミン/ザイモサン/MONTANIDE(商標)ワクチンの最大耐量(MTD)を決定するための初期用量漸増相が含まれる。その後、コホート拡大を使用して、第II相試験の用量を選択するために、ワクチン用量と免疫応答の関係を調査する。
【0325】
図18は、免疫学的モニタリングのための用量投与、毒性評価、及び採血のタイムラインを示す試験スキームを示す。
【0326】
目的及びエンドポイント
主要な目的:非転移性TNBC患者におけるα-ラクトアルブミン/ザイモサン/MONTANIDE(商標)の最大耐量(MTD)を決定する。
【0327】
副次的目的:腫瘍保護と一致する炎症性T細胞応答を誘導する能力に焦点を合わせて、ワクチンに対する免疫応答を測定する。本評価を、ELISPOTアッセイを使用して決定し、組換えヒトα-ラクトアルブミンに応答してインターフェロンγ(IFNγ;1型)及びIL-17(17型)を産生するT細胞の末梢血頻度を測定する。これらの免疫学的アッセイに基づいて、免疫学的効果を生み出す最低用量である最低免疫学的用量(LID)を同定する。
【0328】
免疫学的応答は、α-ラクトアルブミン/ザイモサン/MONTANIDE(商標)ワクチン接種に応答して末梢血単核細胞から誘発される1/30,000 IFNγ分泌(1型)及び/またはIL-17分泌(17型)T細胞の治療後の発生として定義される。LIDは、免疫学的応答が>1/10の患者に認められた最低許容用量として定義される。
【0329】
探索的目的:ELISPOTアッセイに基づいて、手術可能なTNBC患者の集団におけるα-ラクトアルブミンワクチンの最適免疫用量(OID)を決定する。OIDは、ほとんどの患者が上記で定義したように免疫応答を生じさせた用量として定義される。複数の用量レベルに同じ数の免疫応答者がいる場合、これらの用量レベルの最低値をOIDとして定義する。OIDは、<MTDでなければならない。
【0330】
相関的目的:
・ α-ラクトアルブミン刺激に応答したIFNγ及びIL-17産生のELISPOTアッセイを用いた、手術可能なTNBC患者集団におけるα-ラクトアルブミン/ザイモサン/MONTANIDE(商標)ワクチン接種に対する細胞応答を調べる。
・ ELISAアッセイを使用した、手術可能なTNBC患者集団におけるα-ラクトアルブミン/ザイモサン/MONTANIDE(商標)ワクチン接種に対する体液性応答を調べる。
【0331】
安全目標:有害事象(薬物関連及び治療の緊急事態)の発生率を決定する。
【0332】
対象
以下の選択基準を満たしているが、以下の除外基準のいずれによっても除外されない40~60人の対象が登録されている。これらの対象は、手術可能なTNBCを有する高リスク集団を表す。対象は、化学療法、外科手術、または放射線療法を含む可能性のあるすべての標準治療の完了後に登録される。化学療法は、術前または術後のいずれに行ってもよい。
【0333】
選択基準:試験は、男性と女性の両方、及びすべての人種及び民族グループのメンバーに対してオープンである。潜在的な対象は、登録に適格となるために以下の選択基準のすべてを満たさなくてはならない:
・ 組織学的に証明された浸潤性乳癌
・ 原発腫瘍は、エストロゲン受容体(ER)陰性(ER<1%の細胞)、プロゲステロン受容体(PR)陰性(PR<1%の細胞)、及びHER2陰性(IHCで0-1+またはFISH比で<2.0、シグナル数<6/細胞)である(「三種陰性乳癌」)。
・ 高リスク、いずれかとして定義される
o AJCC6による病理学的病期IIA、IIB、IIIA、IIIB、もしくはIIIC、または
o 術前化学療法後の乳癌または所属リンパ節の残存浸潤癌
・ 最後の積極的治療(化学療法、放射線療法、または手術)から6か月以内及び現在のがんの治療開始から<12か月。
・ 登録前の治療は、“https://”の直後に続くアドレス“www.nccn.org/”にあるウェブサイト上の最新のNCCNガイドラインと一致していなければならない。
・ 年齢>18歳
・ ECOG(Eastern Performance Oncology Group)パフォーマンスステータス0~1。(例えば、Oken M,Creech R,Tormey D,et al. Toxicity and response criteria of the Eastern Cooperative Oncology Group.Am J Clin Oncol. 1982;5:649-655;または“https://”の直後に続くアドレス“ecog-acrin.org/resources/ecog-performance-status”にあるウェブサイトを参照のこと)。
・ WBC>3,000/mclとして定義される適切な主要器官の機能;ヘモグロビン>10.0gm/dL、血小板>100,000/mcL、正常範囲内の総ビリルビン、ALT/AST<通常の2.5倍の上限(ULN)、及び血清クレアチニン<1.5×ULN
・ 血清プロラクチンレベルは、<通常の上限(ULN)でなければならない。
・ 理解する能力と、書面によるインフォームドコンセント文書に署名して提供する意欲
・ アーカイブ組織は、潜在的な相関研究(例えば、α-ラクトアルブミン発現または腫瘍浸潤リンパ球のアッセイ)に利用可能だが、登録のために腫瘍がα-ラクトアルブミンの過剰発現を示す必要はない。
・ 対象は、インフォームドコンセントの時から最後のワクチン注射後30日まで代替療法を使用しないことに同意する。
【0334】
除外基準 以下の特性のいずれかが、この試験から潜在的な主題を除外する。
・ 試験開始から4週間以内に細胞毒性化学療法を受ける
・ 試験開始から4週間以内の放射線療法
・ 脱毛症及びグレード2の神経障害を除く、米国国立がん研究所の有害事象共通用語基準(CTCAE)グレード0~1に対する以前の療法の毒性からの回復の失敗。
・ 全身性コルチコステロイド使用の必要性(プレドニゾン10mg/日または同等のものとして定義される生理学的代替物質を除く)。
・ 免疫抑制の必要性(例えば、臓器移植の病歴のため)
・ 既知のHIV感染
・ 活発なまたは計画された授乳または妊娠
・ 経口避妊薬の服用または服用の計画
・ 効果的な非ホルモン避妊薬の使用の拒否。許容される避妊法には、バリア避妊薬(ダイヤフラムまたはコンドーム)、非ホルモン性子宮内避妊器具、及び男性パートナーの精管切除が含まれるが、これらに限定されない。
・ 過去4週間以内の他の治験薬の受け取り。
・ 既知の再発または転移
・ 試験開始から5年以内の別の活動性浸潤性悪性腫瘍の病歴
・ α-ラクトアルブミン、ヒト母乳(乳糖不耐症を除く)、ザイモサン、またはこの試験で使用する他の薬剤に対するアレルギー反応の病歴
・ 進行中または活動性の感染症、症候性うっ血性心不全、不安定狭心症、心不整脈、または試験要件への準拠を制限する精神医学的疾患/社会情勢を含むがこれらに限定されない、制御されていない併発疾患
・ 既知の高プロラクチン血症
・ 高プロラクチン血症を引き起こすことが知られている薬による現在の治療
・ ペニシリンに対する既知のアレルギー
対象スクリーニング
対象を、医療記録、病歴、及び身体検査のレビューによってスクリーニングする。試験の適格性を判定する病理学資料もレビューする。スクリーニングを、第1のワクチン接種の投与前の4週間以内に実行する。
【0335】
同意する潜在的に適格な対象に、全血球示差計算(CBC)、プロラクチンレベル、及び包括的な代謝特性(総タンパク質、アルブミン、カルシウム、総ビリルビン、アルカリホスファターゼ、AST、グルコース、BUN、クレアチニン、ナトリウム、カリウム、塩化物、重炭酸塩、及びALT)、ならびに妊娠検査を含む臨床検査を受けさせる。
【0336】
転移性疾患を除外するために対象にスキャン検査を受けさせる必要はないが、米国臨床腫瘍学会(ASCO)及び全米総合がんネットワーク(NCCN)のガイドラインに従って管理する。転移性疾患の徴候もしくは症状を有するか、または原因不明の異常なアルカリホスファターゼもしくは肝機能検査結果を有する潜在的な試験対象に、転移の存在を除外するために標準治療の画像診断を受けさせる。
【0337】
ワクチン製剤
cGMPグレードのザイモサンA(Sigma-Aldrich Fine Chemicals、Buchs、スイス)を、GMPグレードのMONTANIDE(商標)ISA51VG(Seppic、Fairfield、NJ)に懸濁して、ザイモサン/MONTANIDE(商標)懸濁液を作成する。MONTANIDE(商標)ISA51VGは、油中水型エマルジョンの作成を促進する軽油/界面活性剤溶媒であり、CFAの製剤化に使用する不完全フロイントアジュバント(IFA)油よりもはるかに高い代謝性を有する。USPグレードのH2O中のGMPグレードの組換えヒトα-ラクトアルブミン(rhαlac)(List Biologicals、Campbell、CA)をザイモサン/MONTANIDE(商標)懸濁液と混合して、油中水型エマルジョンを生成する。各エマルジョン製剤を、その使用日に臨床薬剤師によって作成し、出荷から2時間以内に各患者に投与する。
【0338】
投薬及び投与
対象に、α-ラクトアルブミン/ザイモサン/MONTANIDE(商標)ワクチンを、回転部位(左大腿、右大腿、及び腹部)への皮下投与により投与する。対象に4週間間隔で3回投与する。最初の用量漸増相では、MTDが同定されるまで、患者を、それぞれ1~6人の患者のコホートからなる6つの異なる用量レベル(表6に示す)の1つに順次登録する。用量レベル1は、以前の前臨床試験でマウスに日常的に与えた用量の1%である。患者内の用量の増加は許可されない。
【0339】
【表10】
【0340】
mcg=マイクログラム
MONTANIDE(商標)は、すべての用量レベルで溶媒として使用する。
【0341】
用量漸増は、表7にまとめる加速滴定用量漸増スキームに従って各コホート内で進行させる。用量規制毒性(DLT)は、一般的にCTCAEバージョン5グレード2以上の毒性に対応する。(CTCAEバージョン5は、そのアドレスがhttps://の直後に続く“ctep.cancer.gov/protocolDevelopment/electronic_applications/docs/CTCAE_v5_Quick_Reference_8.5x11.pdf”であるWebサイト上に見出し得る)グレード1の毒性が認められたら、表8に示す用量漸増スキームを使用する。
【0342】
【表11】
【0343】
【表12】
【0344】
MTDを同定した後、用量レベルの拡大相を開始する。MTDを10人の対象に拡大し、免疫学的相関試験を10人の対象すべてで実行する。表9は、用量拡大相のスキームの概要を示す。
【0345】
【表13】
【0346】
MTDの拡大後、免疫応答に関連する最低用量レベルが拡大されるまで、連続的に低い用量を10人の患者に拡大する。
【0347】
評価
表10に示す試験カレンダーに従って対象を評価する。対象に、スクリーニング時、0日目、4週間ごと、及び84日目の訪問時に、病歴及び身体検査(乳房検査を含む)を受けさせる。
【0348】
最後のワクチン接種後4週間、またはすべての毒性がグレード0-1に解消するまでのいずれか遅い方まで、毒性について対象を評価する。すべての患者に、長期フォローアップで連絡を取るか、または診察を受けさせ、毒性、再発、及び生存の長期モニタリングを可能にする。
【0349】
この試験の一部として、少なくとも1回のワクチン接種を受けた対象は、毒性について評価可能とみなされる。安全な用量漸増を可能にするために、用量規制毒性(DLT)の非存在下で3回の用量の治験ワクチンを投与する前に治療を中止していた対象を交換する。任意の回数の投与後にDLTを生じた対象は、完全に評価可能であるとみなされ、免疫学的相関性試験を行っていなくても交換しない。
【0350】
【表14】
【0351】
スクリーニング訪問は、0日目の訪問から28日以内に実施する。転移性疾患を除外するためにスキャン検査は必要ない。
すべての訪問±3営業日。
CMP(包括的代謝特性)には、総タンパク質、アルブミン、カルシウム、総ビリルビン、アルカリホスファターゼ、AST、グルコース、BUN、クレアチニン、ナトリウム、カリウム、塩化物、重炭酸塩、アニオンギャップ、及びALTが含まれる。
α-ラクトアルブミン及び卵白アルブミン特異的T細胞のELISPOT頻度;セントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞の割合のIFNγ及びIL-17フローサイトメトリー測定の培養上清レベル;ならびにα-ラクトアルブミン抗体価の直接ELISA測定。
ワクチン調製に>2時間を許可
ワクチンの投与後、バイタルサインを15分ごとに60分間、そして再度120分目に取得する。患者を120分間観察する。
【0352】
実施例9:MONTANIDE(商標)中に懸濁したザイモサンを含むワクチン製剤
本明細書に開示するようなアジュバントを含む他のワクチン製剤を、本発明に従って生成し、試験してもよい。例えば、目的の任意の抗原、例えば、ポリペプチド抗原を、MONTANIDE(商標)中に懸濁したザイモサンと混合してもよい。目的の抗原は、例えば、腫瘍細胞及び/またはワクチン製剤が作用するように設計されている病原性生物上に発現していてもよい。
【0353】
次いで、本開示に開示するように、または以下に記載するように、ワクチン製剤を様々な方法のいずれかによって試験する。
【0354】
抗原特異的リコール応答
抗原特異的リコール応答を評価するために、マウスにワクチン製剤を1回以上投与する。最後の投与から10日後、マウスからリンパ節細胞を採取する。リンパ節細胞を、抗原(ワクチン製剤で使用する抗原または陰性対照としての無関係の抗原のいずれか)の段階希釈の存在下でインキュベートする。細胞は増殖アッセイの対象である。例えば、細胞培養物を標識チミジンでパルスすることができ、「刺激指数」は、ワクチン製剤で使用する抗原を含む培養物由来の(標識の)カウント数を、無関係の抗原を含む培養物由来のカウント数で割って計算することができる。ワクチンに使用する抗原を含む培養物での増殖の増強は、抗原特異的なリコール応答を示している。
【0355】
応答特性
ワクチン製剤を1回以上投与したマウスのリンパ節細胞を、細胞表面マーカーの観点から(例えば、CD4+対CD8+)(例えば、フローサイトメトリーによる)及び/またはサイトカイン放出により(例えば、ELISAまたはELISPOTアッセイによる)分析することができる。サイトカイン放出特性は、免疫応答のタイプ(例えば、1型、2型、または17型)を示している可能性がある。1型及び17型の両方の応答を示すサイトカイン放出特性は、潜在的に効果的なワクチン製剤を示している。
【0356】
腫瘍成長阻害
抗腫瘍ワクチン製剤は、腫瘍細胞で発現する目的の抗原を含む。これらの製剤を、適切な動物腫瘍モデルにおいて腫瘍成長を阻害する能力について試験することができる。対照は、アジュバント(ザイモサン及びMONTANIDE(商標))のみの製剤(陰性対照として)または目的の抗原と一般的に使用される異なるアジュバントを含む製剤のうちの1つを含み得る。
【0357】
投薬試験
ワクチン製剤の有効量を決定するために、各用量におけるある範囲の量(例えば、目的の抗原及び/またはザイモサンの量の範囲)及び/または投与回数を使用して、投薬試験を実施してもよい。出力測定には、抗原特異的リコール応答、応答特性、または腫瘍成長阻害(抗がんワクチン製剤の場合)の1つ以上を含めることができる。
【0358】
実施例10:乳化プロトコル
抗原(例えば、ポリペプチド抗原)及びMONTANIDE(商標)ISA51を含むエマルジョンを得るために、コネクター(IまたはTコネクター)によって接続された2つのシリコーンフリーシリンジを使用して、水滴を周囲の油相に閉じ込めるために、高剪断条件を作成することができる。抗原を、水溶液、例えば、水または生理食塩水(ほとんどの場合、PBSまたはNaCl 0.9%生理食塩水緩衝液)に溶解してもよく、この水性抗原溶液の1容量を、1容量のMONTANIDE(商標)ISA51と混合することができる。次いで、混合物を、例えばIコネクターによって接続された2つのシリコーンフリーシリンジを含む装置にロードすることができ、これを用いて、複数(例えば、約20)の低速サイクル(例えば、およそ4秒持続するサイクル)を含む予備乳化ステップを実施し、続いて複数(例えば、約40)の高速サイクルを含む乳化ステップを実施する。サイクルは、第1のシリンジから他のシリンジへの溶液全体(水相及びアジュバント)の移動と、それに続く元のシリンジへの溶液全体の移動として定義される。
【0359】
参照による援用
本明細書に記述するすべての刊行物、特許、及び特許出願は、各々の個々の刊行物、特許、または特許出願が参照によって援用されることが具体的かつ個別に示されるかのように、参照によってそれらの全体が本明細書に援用される。矛盾する場合は、本明細書中の任意の定義を含む本出願が優先される。
【0360】
均等物
当業者であれば、日常的な実験のみを用いて、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0361】
図1】α-ラクトアルブミン/完全フロイントアジュバント(CFA)エマルジョンを用いたワクチン接種による炎症性T細胞免疫の誘導を示す。100μgの組換えマウスα-ラクトアルブミンと200μgのMycobacteria tuberculosis H37RA株を含む完全フロイントアジュバント(CFA)を含有する200μlの油中水型エマルジョンによる、6~8週齢のBALB/c雌マウス(n=3)へのワクチン接種の4週間後に、IFNγ(1型)及びIL-17(17型)を産生する炎症性T細胞の平均脾細胞頻度を測定した。エラーバーは、±SDを示す。
図2】1型/17型T細胞免疫の誘導におけるいくつかのアジュバントとCFAとの比較を示す。100μgの組換えマウスα-ラクトアルブミンと、CFAを含む従来の用量の様々なアジュバントを含有する200μLのエマルジョンによる、6~8週齢のBALB/cJ雌マウスの免疫化の4週間後に、1型及び17型の炎症性T細胞の脾細胞頻度を測定した。各試験アジュバントを使用して得られた平均α-ラクトアルブミン特異的1型及び17型スポット形成単位(SFU)を、「ゴールドスタンダード」アジュバントとしてCFAを使用して同じ日に得られたSFUで割ったものとして、データを表す。水平の黒い点線は、CFAをアジュバントとして使用して得られた周波数(CFA=1を使用して誘発されたSFU)と同等の周波数を示す。一部の免疫化は、2週間間隔で2回行い、それらを×2で示す。
図3】異なるα-ラクトアルブミン/アジュバントの組み合わせを使用した4T1マウス乳房腫瘍の成長を示す。図3Aは、100μgの組換えマウスα-ラクトアルブミンと200μgのCFAを含有する200μLのエマルジョンを、雌BALB/cJマウスに対し、6~8週齢で皮下にワクチン接種した。対照マウスには、200μgのCFAのみをワクチン接種した。ワクチン接種の2週間後、マウスに2×10個の4T1マウス乳房腫瘍細胞を皮下接種し、ノギスを使用して腫瘍の成長を1日おきに測定した。続いて、この同じプロトコルを使用して、(図3B)GPI-0100 ×2、(図3C)Sigma リピドA、(図3D)AS02B リピドA、(図3E)CpG DNA ×2、(図3F)CpG DNA+α-Gal-Cer×2、(図3G)IFA中のβ-グルカンペプチド、及び(図3H)IFA中のザイモサンを含む、図2に示す他の様々なアジュバントについて、各製造業者が推奨する用量を使用して腫瘍成長を測定した。一部のワクチン接種は、2週間間隔で2回行い、それらを×2で示す。アスタリスクは、被験ワクチン接種マウスと対照ワクチン接種マウスの間の有意差を示す(P<0.05)。
図4】ザイモサン/IFA、ザイモサン/MONTANIDE(商標)を使用した1型/17型炎症性T細胞の誘導を示す。100μLのIFA中または100μLのMONTANIDE(商標)中のいずれかにおける200μgのザイモサンで乳化した100μgの水相の組換えマウスα-ラクトアルブミンを含有するエマルジョンで、6~8週齢の雌BALB/cJマウスにワクチン接種した。ワクチン接種の4週間後、炎症性1型(IFNγ)及び17型(IL-17)T細胞の脾細胞頻度を、ELISPOT分析によって測定した。データは、50μg/mLの組換えマウスα-ラクトアルブミンに対するリコール応答の平均スポット形成単位(SFU)からリコール抗原を含まない培養物の平均バックグラウンド応答を差し引いた値を示す(平均バックグラウンド<アッセイあたり5SPU)。エラーバーは、±SEを示す。
図5】ワクチン用量試験の結果を示す。それぞれ100~1000μgの範囲の等量のα-ラクトアルブミンとザイモサンを含有する200μlのエマルジョンを、8週齢の雌BALB/cJマウスの脇腹に皮下ワクチン接種した。組換えマウスα-ラクトアルブミン(FLAG-N-mαlac-C-HIS)を無菌USPグレード水に溶解し、ザイモサンをMONTANIDE(商標)ISA51VGに懸濁した。3匹のマウスの群に対し、それぞれ4週間間隔で、1回、2回、または3回、ワクチン接種した。最終ワクチン接種の4週間後、脾細胞を、マウスIFNγ、IL-5、及びIL-17に特異的な捕捉/抗体ペアを使用したELISPOT分析に供し、生成された1型、2型、及び17型T細胞系統の脾細胞頻度をそれぞれ評価した。
図6】実施例5に記載する毒物学試験における単回ワクチン接種群Aマウスの最初のワクチン接種時からの体重の変化を示す。
図7】実施例5に記載する毒物学試験における二重ワクチン接種群Bマウスの最初のワクチン接種時からの体重の変化を示す。
図8】実施例5に記載する毒物学試験における三重ワクチン接種群Cマウスの最初のワクチン接種時からの体重の変化を示す。体重の変化は、0日目に得られた体重(100%に設定)に対して正規化し、この最初の開始点に対する割合の増加または減少としてプロットした。各マウスについて、体重を同時刻に記録した。矢印は、ワクチン接種の日(複数可)を示す。エラーバーは、±SEを示す。
図9】実施例5に記載する毒物学試験における単回ワクチン接種群Aマウスの最初のワクチン接種時からの体温の変化を示す。
図10】実施例5に記載する毒物学試験における、二重ワクチン接種群Bマウスの最初のワクチン接種時からの体温の変化を示す。
図11】実施例5に記載する毒物学試験における三重ワクチン接種群Cマウスの最初のワクチン接種時からの体温の変化を示す。体温の変化は、0日目に得られた体温(100%と設定)に対して正規化し、この最初の開始点に対する割合の増加または減少としてプロットした。各マウスについて、温度を同時刻に記録した。矢印は、ワクチン接種の日(複数可)を示す。エラーバーは、±SEを示す。
図12】実施例5に記載する毒物学試験における単回ワクチン接種群Aマウスの剖検時に記録した脾臓、肝臓、及び腎臓の重量を示す。
図13】実施例5に記載する毒物学試験における二重ワクチン接種群Bマウスの剖検時に記録した脾臓、肝臓、及び腎臓の重量を示す。
図14】実施例5に記載する毒物学試験における三重ワクチン接種群Cマウスの剖検時に記録した脾臓、肝臓、及び腎臓の重量を示す。重量は、全体重に対する割合として表し、マウスの各サブグループについて平均割合をプロットした(実施例5内の表2に示すように)。エラーバーは、±SEを示す。
図15】実施例5にさらに記載するザイモサン/MONTANIDE(商標)/α-ラクトアルブミンエマルジョンを皮下投与したマウスにおける免疫化部位の代表的な外観を示す。図15は、第2の注射のおよそ2週間後、及び第1の注射のおよそ6週間後に撮影したマウスの写真である。青い矢印は第1の注射部位を示し、赤い矢印は第2の注射部位を示す。図15が示すように、第1の注射部位は、第2の注射部位に比べて外観が改善しており、これは経時的な肉芽腫の消散を示している。
図16】実施例5にさらに記載するように、ザイモサン/MONTANIDE(商標)/α-ラクトアルブミンエマルジョンを皮下注射したBALB/cマウスにおける、3つの連続する注射部位での肉芽腫のエンドポイント平均臨床スコアを示す。注射部位における油性肉芽腫は一般的に観察され、これらを以下の基準に従って等級付けした: 0、正常;1、最小限;2、軽度;3、中程度;4、重度。各注射部位について、すべての治療群のすべてのマウス(n=25)の平均を計算した。エラーバーは、±SEを表す。
図17】実施例5に記載する毒物学試験における全群における限局性肝臓炎の重症度の要約を示す。
図18】実施例8に記載する臨床試験の試験スキームを示す。このスキームは、免疫学的モニタリングのための用量投与、毒性評価、及び採血のタイムラインを示している。
図1
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図3
図4
図5
図6
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【配列表】
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