IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システムの特許一覧

特開2024-156858テロメラーゼホロ酵素複合体およびその使用方法
<>
  • 特開-テロメラーゼホロ酵素複合体およびその使用方法 図1
  • 特開-テロメラーゼホロ酵素複合体およびその使用方法 図2
  • 特開-テロメラーゼホロ酵素複合体およびその使用方法 図3
  • 特開-テロメラーゼホロ酵素複合体およびその使用方法 図4
  • 特開-テロメラーゼホロ酵素複合体およびその使用方法 図5
  • 特開-テロメラーゼホロ酵素複合体およびその使用方法 図6
  • 特開-テロメラーゼホロ酵素複合体およびその使用方法 図7
  • 特開-テロメラーゼホロ酵素複合体およびその使用方法 図8
  • 特開-テロメラーゼホロ酵素複合体およびその使用方法 図9
  • 特開-テロメラーゼホロ酵素複合体およびその使用方法 図10
  • 特開-テロメラーゼホロ酵素複合体およびその使用方法 図11
  • 特開-テロメラーゼホロ酵素複合体およびその使用方法 図12
  • 特開-テロメラーゼホロ酵素複合体およびその使用方法 図13
  • 特開-テロメラーゼホロ酵素複合体およびその使用方法 図14
  • 特開-テロメラーゼホロ酵素複合体およびその使用方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156858
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】テロメラーゼホロ酵素複合体およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20241029BHJP
   C12Q 1/6883 20180101ALI20241029BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20241029BHJP
   C12Q 1/48 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C12N5/071 ZNA
C12Q1/6883 Z
C12N5/0783
C12Q1/48
C12N5/071
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024126506
(22)【出願日】2024-08-02
(62)【分割の表示】P 2021512660の分割
【原出願日】2019-09-03
(31)【優先権主張番号】62/727,743
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】508152917
【氏名又は名称】ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF REGENTS OF THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】シェイ ジェリー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】テドーネ エンツォ
(72)【発明者】
【氏名】サイード ムハンマド イー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヒト組換えテロメラーゼホロ酵素を利用して、テロメアを一過性に伸長させ、したがって老齢ヒト細胞の複製寿命を延長させる方法を提供する。
【解決手段】テロメア長を増加させ、細胞増殖を増加させ、かつ細胞老化を妨げるための、精製テロメラーゼホロ酵素、およびT細胞などの細胞へのその送達を開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テロメア長を増加させる、および/または細胞の増殖能を増加させる方法であって、
(i) 細胞集団を提供する段階;
(ii) 該細胞集団の少なくとも第1部分を精製組換えテロメラーゼホロ酵素と接触させる段階;および
(iii) 該第1部分からの細胞において、テロメア長によって調節される1つまたは複数の標的遺伝子の発現を測定する段階
を含む、前記方法。
【請求項2】
(iv) 前記細胞集団の第2部分からの未処理細胞などの未処理細胞と比較して、前記標的遺伝子のうちの1つまたは複数が、テロメラーゼ活性を示唆する発現プロファイルを示す場合に、前記第1部分からの第2細胞を対象に導入する段階
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階 (ii) の前に、前記細胞集団の第3細胞において、テロメア長によって調節される1つまたは複数の標的遺伝子の発現を測定する段階
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つまたは複数の標的遺伝子が、ISG15、TEAD4、PD-1、および/またはBAXである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞集団がPBMCである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞集団が、CD3+/CD28+ T細胞などのT細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
段階 (i) の前に、前記細胞集団を対象から取り出す段階
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
対象がヒト対象である、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
対象が、臍帯血幹細胞を有するNOD SCID γマウスなどのヒト化マウスである、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記テロメラーゼホロ酵素が細胞透過性ペプチドに結合されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
細胞の増殖能を増加させる方法であって、
(i) 細胞集団を提供する段階;
(ii) 該細胞集団の第1部分を組換えテロメラーゼホロ酵素と接触させる段階;
(iii) 老化またはアポトーシスが誘発される前に該第1部分からの第1細胞が行う細胞分裂の総数を測定する段階;
(iv) 老化またはアポトーシスが誘発される前に該細胞集団の第2部分だがテロメラーゼ未処理である部分からの細胞が行う細胞分裂の総数を測定する段階;および
(v) 該第1部分からの第2細胞ががんの特徴を示さないかどうかを判定する段階
を含む、前記方法。
【請求項12】
(iv) 段階 (iii) で測定された細胞分裂の総数が段階 (iv) で測定された細胞分裂の総数よりも大きい場合、かつ前記第1部分からの前記第2細胞ががんの特徴を示さない場合に、該第1部分からの第3細胞を対象に導入する段階
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(a) 段階 (iii) の一部として、または (b) 前記細胞集団からの第4細胞の場合には段階 (ii) の前に、テロメア長、および/またはテロメア長によって調節される1つもしくは複数の標的遺伝子の発現を測定する段階
をさらに含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
1つまたは複数の標的遺伝子が、ISG15、TEAD4、PD-1、および/またはBAXである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
細胞の細胞第1集団がPBMCである、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
細胞の第1集団が、CD3+/CD28+ T細胞などのT細胞である、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
段階 (i) の前に、前記細胞集団を対象から取り出す段階
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
対象がヒト対象である、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
対象が、臍帯血幹細胞を有するNOD SCID γマウスなどのヒト化マウスである、請求項12~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記テロメラーゼホロ酵素が細胞透過性ペプチドに結合されている、請求項11~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2018年9月6日に出願された米国仮特許出願第62/727,743号に対する優先権の恩典を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
1. 分野
本開示は、細胞生物学、分子生物学、タンパク質生物学、および医学の分野に関する。より具体的には、本開示は、テロメア短縮を遅らせるかまたは修正するためのテロメラーゼホロ酵素複合体の生産および細胞へのその送達を記載する。
【背景技術】
【0003】
2. 関連技術の説明
テロメアは、線状染色体の末端をキャップして、それらを分解から保護し、かつ染色体の融合を防ぐタンデムリピートである [1]。正常なヒト増殖細胞では、テロメアは細胞分裂のたびに徐々に短くなり [2]、最終的にはDNA損傷反応、複製老化、またはアポトーシスを引き起こす [3]。増殖の1つの結果として、テロメア長は加齢に伴い短縮し [4]、がん [3]、認知症 [6、7]、および循環器疾患 [5] を含む様々な加齢性病態とも相関する生物学的年齢(暦年齢ではない)のバイオマーカーと見なされる [5]。マウスにおける最近の研究により、加齢の1つの特徴であるテロメア短縮を防ぐことで、健康寿命と寿命の両方が延びることが示されている [8、9]。
【0004】
テロメラーゼは、テロメアの末端におけるテロメアTTAGGGリピートのデノボ付加に関与する逆転写酵素であり、2つの主要な構成成分である触媒タンパク質サブユニット (TERT) および鋳型RNA(TRまたはTERC) から構成されるリボ核タンパク質酵素複合体である。ヒトでは、TERTは、通常、長期的な増殖が可能である細胞(例えば、増殖性の非休止幹細胞)において排他的に発現しているが、活性化リンパ球を除き、正常な分化型体細胞では発現していない [10、11]。
【0005】
Tリンパ球(T細胞)は免疫系における中心的な細胞型であり、大部分は非増殖性の休止状態で循環しているが、抗原または非特異的な刺激で活性化されると急速に分裂する [11]。インビトロにおいて、T細胞は、特定の抗原または非特異的な(分裂促進的抗CD3抗体および抗CD28抗体)刺激に応答して活性化され、増殖し得る [11]。テロメラーゼ活性は、活性化されたヒトT細胞において一過性に上方制御されるが、このテロメラーゼは、急速な細胞増殖中のテロメアの消失を相殺するのに十分ではなく、最終的にはインビトロおよびインビボの両方で複製老化をもたらす [11、12]。したがって、テロメア長およびテロメラーゼ活性を再活性化する能力は、T細胞の寿命、および健常な免疫応答を有する患者において腫瘍の退縮を媒介する腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) の抗腫瘍活性を決定する重要な因子である [13、14]。実際に、テロメアがより長いTILは、インビボでより長く持続し、より強固な抗腫瘍効果を媒介することができる [15]。
【0006】
ヒト抗原特異的T細胞は、その抗腫瘍能力から、様々な形態のがんおよびエイズなどの感染症を治療するための養子免疫療法の主要なツールとしての使用が増加している [16、17]。現在では、患者の自己T細胞をがん抗原特異的T細胞受容体遺伝子で改変し、改変されインビトロで増殖させたT細胞を宿主に養子移植することが可能である。しかしながら、インビトロでの長期の培養および増殖に伴い、改変されたT細胞は、インビボでの複製能が制限され、最終的には、テロメアDNAの漸進的な消失に起因する老化状態(T細胞枯渇)に入る。老化細胞は免疫療法への使用の可能性がかなり限られているため、インビトロでの急速な増殖中のテロメアの消失からT細胞を効率的に保護する手段を提供する技術は、抗原特異的T細胞および多くの他の細胞型の臨床適用の成功のために非常に有利であると考えられる。
【発明の概要】
【0007】
概要
以下に記載するように、本発明者らは、ビオチンタグ付き組換えhTERTを操作し、それをhTR(テロメラーゼの機能的RNA構成成分)と共にヒト細胞株H1299において過剰発現させることに成功した。本発明者らはまた、細胞溶解物から組換えテロメラーゼを精製するための3段階精製手順戦略を開発した。この多段階精製手順により、本発明者らは、高度に濃縮された、触媒活性のある酵素を得ることが可能になった。重要なことには、本発明者らは自身が開発したビオチンタグを利用し、それによって、テロメラーゼ(hTERT+hTR)のみならず、その他の必須のテロメラーゼ関連タンパク質、例えば、ジスケリン (DKC1)、リボ核タンパク質NOP10およびNHP2などを含む再構成テロメラーゼホロ酵素複合体全体をプルダウンすることが可能になった。本発明者らは、細胞透過性ペプチドと、NaClを介した高浸透圧によって誘導される能動的取り込み機構の組み合わせを用いることにより、精製テロメラーゼホロ酵素を正常な若齢および老齢のヒト細胞(例えば、抗原刺激末梢血単核細胞および肺線維芽細胞)に送達した。送達されたテロメラーゼは、細胞質画分および核区画の両方で強い活性を保持した。本発明者らはまた、インビトロにおけるテロメラーゼの3回連続送達(3日ごと)は、テロメア長および細胞の複製寿命の両方を有意に延長するのに十分であることを実証した。重要なことには、この処理は、最終的に老化を起こした細胞を不死化または形質転換させず、送達されたテロメラーゼホロ酵素は、限られた時間枠(最大で24~36時間まで)で活性を維持した。このヒト組換えテロメラーゼホロ酵素を利用して、テロメアを一過性に伸長させ、したがって老齢ヒト細胞の複製寿命を延長することができる。
【0008】
したがって、本開示に従って、テロメア長を増加させる、および/または細胞の増殖能を増加させる方法であって、(i) 細胞集団を提供する段階;(ii) 該細胞集団の少なくとも第1部分を精製組換えテロメラーゼホロ酵素と接触させる段階;および (iii) 該第1部分からの細胞において、テロメア長によって調節される1つまたは複数の標的遺伝子の発現を測定する段階を含む方法を提供する。本方法は、(iv) 該細胞集団の第2部分からの未処理細胞などの未処理細胞と比較して、該標的遺伝子のうちの1つまたは複数が、テロメラーゼ活性を示唆する発現プロファイルを示す場合に、該第1部分からの第2細胞を対象に導入する段階をさらに含み得る。
【0009】
前記方法は、段階 (ii) の前に、前記細胞集団の第3細胞において、テロメア長によって調節される1つまたは複数の標的遺伝子の発現を測定する段階をさらに含み得る。1つまたは複数の標的遺伝子は、ISG15、TEAD4、PD-1、および/またはBAXであってよい。細胞集団はPBMCであってよい。細胞集団は、CD3+/CD28+ T細胞などのT細胞であってよい。前記方法は、段階 (i) の前に、前記細胞集団を対象から取り出す段階をさらに含み得る。対象は、ヒト対象、または臍帯血幹細胞を有するNOD SCID γマウスなどのヒト化マウスであってよい。テロメラーゼホロ酵素は、細胞透過性ペプチドに結合されていてよい。
【0010】
別の態様において、細胞の増殖能を増加させる方法であって、(i) 細胞集団を提供する段階;(ii) 該細胞集団の該第1部分を組換えテロメラーゼホロ酵素と接触させる段階;(iii) 老化またはアポトーシスが誘発される前に該第1部分からの第1細胞が行う細胞分裂の総数を測定する段階;(iv) 老化またはアポトーシスが誘発される前に該細胞集団の第2部分だがテロメラーゼ未処理である部分からの細胞が行う細胞分裂の総数を測定する段階;および (v) 該第1部分からの第2細胞ががんの特徴を示さないかどうかを判定する段階を含む方法を提供する。本方法は、段階 (iii) で測定された細胞分裂の総数が段階 (iv) で測定された細胞分裂の総数よりも大きい場合、かつ該第1部分からの該第2細胞ががんの特徴を示さない場合に、該第1部分からの第3細胞を対象に導入する段階をさらに含み得る。
【0011】
前記方法は、(a) 段階 (iii) の一部として、または (b) 前記細胞集団からの第4細胞の場合には段階 (ii) の前に、テロメア長、および/またはテロメア長によって調節される1つもしくは複数の標的遺伝子の発現を測定する段階をさらに含み得る。1つまたは複数の標的遺伝子は、ISG15、TEAD4、PD-1、および/またはBAXであってよい。細胞集団はPBMCであってよい。細胞集団は、CD3+/CD28+ T細胞などのT細胞であってよい。前記方法は、段階 (i) の前に、前記細胞集団を対象から取り出す段階をさらに含み得る。対象は、ヒト対象、または臍帯血幹細胞を有するNOD SCID γマウスなどのヒト化マウスであってよい。テロメラーゼホロ酵素は、細胞透過性ペプチドに結合されていてよい。
【0012】
本明細書に記載される任意の方法または組成物は、本明細書に記載される任意の他の方法または組成物に関して実行できることが企図される。
【0013】
特許請求の範囲および/または明細書において「含む」という用語と共に用いられる場合の「1つの (a)」または「1つの (an)」という語の使用は、「1つの」を意味し得るが、それはまた「1つまたは複数の」、「少なくとも1つの」、および「1つまたは2つ以上の」という意味と一致する。「約」という語は、指定された数のプラスまたはマイナス5%を意味する。
【0014】
[本発明1001]
テロメア長を増加させる、および/または細胞の増殖能を増加させる方法であって、
(i) 細胞集団を提供する段階;
(ii) 該細胞集団の少なくとも第1部分を精製組換えテロメラーゼホロ酵素と接触させる段階;および
(iii) 該第1部分からの細胞において、テロメア長によって調節される1つまたは複数の標的遺伝子の発現を測定する段階
を含む、前記方法。
[本発明1002]
(iv) 前記細胞集団の第2部分からの未処理細胞などの未処理細胞と比較して、前記標的遺伝子のうちの1つまたは複数が、テロメラーゼ活性を示唆する発現プロファイルを示す場合に、前記第1部分からの第2細胞を対象に導入する段階
をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
段階 (ii) の前に、前記細胞集団の第3細胞において、テロメア長によって調節される1つまたは複数の標的遺伝子の発現を測定する段階
をさらに含む、本発明1001または1002の方法。
[本発明1004]
前記1つまたは複数の標的遺伝子が、ISG15、TEAD4、PD-1、および/またはBAXである、本発明1001~1003のいずれかの方法。
[本発明1005]
前記細胞集団がPBMCである、本発明1001~1004のいずれかの方法。
[本発明1006]
前記細胞集団が、CD3+/CD28+ T細胞などのT細胞である、本発明1001~1004のいずれかの方法。
[本発明1007]
段階 (i) の前に、前記細胞集団を対象から取り出す段階
をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1008]
対象がヒト対象である、本発明1002~1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
対象が、臍帯血幹細胞を有するNOD SCID γマウスなどのヒト化マウスである、本発明1002~1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
前記テロメラーゼホロ酵素が細胞透過性ペプチドに結合されている、本発明1001~1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
細胞の増殖能を増加させる方法であって、
(i) 細胞集団を提供する段階;
(ii) 該細胞集団の第1部分を組換えテロメラーゼホロ酵素と接触させる段階;
(iii) 老化またはアポトーシスが誘発される前に該第1部分からの第1細胞が行う細胞分裂の総数を測定する段階;
(iv) 老化またはアポトーシスが誘発される前に該細胞集団の第2部分だがテロメラーゼ未処理である部分からの細胞が行う細胞分裂の総数を測定する段階;および
(v) 該第1部分からの第2細胞ががんの特徴を示さないかどうかを判定する段階
を含む、前記方法。
[本発明1012]
(iv) 段階 (iii) で測定された細胞分裂の総数が段階 (iv) で測定された細胞分裂の総数よりも大きい場合、かつ前記第1部分からの前記第2細胞ががんの特徴を示さない場合に、該第1部分からの第3細胞を対象に導入する段階
をさらに含む、本発明1011の方法。
[本発明1013]
(a) 段階 (iii) の一部として、または (b) 前記細胞集団からの第4細胞の場合には段階 (ii) の前に、テロメア長、および/またはテロメア長によって調節される1つもしくは複数の標的遺伝子の発現を測定する段階
をさらに含む、本発明1011または1012の方法。
[本発明1014]
1つまたは複数の標的遺伝子が、ISG15、TEAD4、PD-1、および/またはBAXである、本発明1013の方法。
[本発明1015]
細胞の細胞第1集団がPBMCである、本発明1011~1014のいずれかの方法。
[本発明1016]
細胞の第1集団が、CD3+/CD28+ T細胞などのT細胞である、本発明1011~1014のいずれかの方法。
[本発明1017]
段階 (i) の前に、前記細胞集団を対象から取り出す段階
をさらに含む、本発明1011の方法。
[本発明1018]
対象がヒト対象である、本発明1012~1017のいずれかの方法。
[本発明1019]
対象が、臍帯血幹細胞を有するNOD SCID γマウスなどのヒト化マウスである、本発明1012~1018のいずれかの方法。
[本発明1020]
前記テロメラーゼホロ酵素が細胞透過性ペプチドに結合されている、本発明1011~1019のいずれかの方法。
本開示のその他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本開示の精神および範囲の範囲内の様々な変更および修正が、この詳細な説明から当業者に明らかとなると考えられるため、詳細な説明および具体例は、本開示のある特定の態様を示しながら、例示として与えられているに過ぎないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示のある特定の局面をさらに実証するために含めるものである。本開示は、本明細書に提示された具体的な態様の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面のうちの1つまたは複数を参照することにより、よりよく理解され得る。
図1】(図1A)抗CD3/抗CD28 Dynabeadsで刺激後の刺激済みT細胞においてddTRAPによって測定されたテロメラーゼ活性。(図1B)10日間にわたって刺激済みT細胞においてTeSLA(テロメア最短長アッセイ (Telomere Shortest Length Assay))よって測定されたテロメア長。
図2】28~113歳のボランティア114名からの末梢血単核細胞 (PBMC) における、刺激後3日目のテロメラーゼ活性(ピーク)と10日間にわたる最大細胞数(細胞分裂率の代用)との相関関係(未発表データ)。
図3】(図3A)ヒトTERT遺伝子 (hTERT)。(図3B)N末端ドメイン内にビオチンタグを保有する組換えhTERT。
図4】ヒト組換えテロメラーゼホロ酵素の精製。
図5】(図5A)ddTRAPによって測定された精製組換えテロメラーゼホロ酵素のインビトロ活性。(図5B)ウェスタンブロットによる、TERTおよび他のテロメラーゼ関連タンパク質の両方の主要な精製複合体における同定。(図5C)ウェスタンブロットによる、テロメラーゼ関連タンパク質の構成成分を示す個々のゲル(ジスケリン=DKC1)。
図6】(図6A)PBMC組成物。(図6B)抗CD3/抗CD28 DynabeadsによるT細胞のインビトロ刺激は、抗原提示細胞 (APC) によるインビボの生理的刺激を模倣する。(図6C)未刺激のPBMCは、インビトロでほとんどまたは全く増殖活性を示さない。(図6D)抗CD3/抗CD28 Dynabeadsによる刺激済みのPBMCは、インビトロで急速に分裂する。
図7】(図7A)10日間にわたる、若年ドナーからの刺激済みPBMCにおけるゲルベースのTRAP。(図7B図aと同じドナーからの刺激済みPBMCにおけるddTRAP。3日目以降のテロメラーゼ活性の低下が、ゲルベースのTRAPと比較してより容易に検出される。(図7C)液滴デジタルPCRのワークフロー。
図8】(図8A)TRFによって測定されたテロメア長は、10日間にわたって刺激済みPBMCにおいてテロメア長の変化がないことを示す。(図8B)TeSLA(テロメア最短長アッセイ (Telomere Shortest Length Assay))によって測定されたテロメア長は、10日間にわたる刺激済みPBMCにおける漸進的なテロメア短縮を示す。
図9】テロメラーゼホロ酵素で処理した場合または処理しなかった場合のテロメラーゼ活性。対照細胞(カラム1、3、および5)は、細胞透過性ペプチド(テロメラーゼと結合されていない)および専用培地で同様に処理した。
図10】テロメラーゼホロ酵素で処理した場合または処理しなかった場合の、刺激済みPBMCの細胞質画分および核画分からのテロメラーゼ活性。対照細胞は、細胞透過性ペプチド(テロメラーゼと結合されていない)および専用培地で同様に処理した。*未処理に対してp<0.05
図11】テロメラーゼの3回連続送達後の、若年健常健成人からの刺激済みPBMCにおける、TeSLAによって測定された平均テロメア長 (Avg) および最短20%のテロメアの長さ(短20%)。
図12】テロメラーゼの3回連続送達後の、高齢健常個体からの刺激済みPBMCにおける、TeSLAによって測定された平均テロメア長 (Avg) および最短20%のテロメアの長さ(短20%)。
図13】(図13A)3日目、6日目、および9日目にテロメラーゼホロ酵素で3回連続して処理した、4名の若年成人ボランティアからの刺激済みPBMCの増殖曲線。若年者(平均年齢32±2歳;n=4)における平均集団倍加:15.9±3.1 PD(対照)対 22.0±3.0 PD(+テロメラーゼ)。(図13B)3日目、6日目、および9日目にテロメラーゼホロ酵素で3回連続して処理した、2名の高齢ボランティアからの刺激済みPBMCの増殖曲線。高齢者(平均年齢65±3歳;n=2)における平均集団倍加:10.1±0.5 PD(対照)対 16.0±1.6 PD(+テロメラーゼ)。
図14】テロメラーゼホロ酵素で3日ごとに処理した老齢ヒトIMR-90の増殖曲線。
図15】テロメラーゼホロ酵素で処理した刺激済みPBMCにおける、テロメア長によって調節されると報告されている遺伝子の発現レベル。*p<0.05
【発明を実施するための形態】
【0016】
例示的態様の詳細な説明
上述したように、老化細胞は、養子免疫療法などの治療への使用の可能性がかなり限られている。したがって、インビトロでの急速な増殖中のテロメアの消失から細胞を効率的に保護する手段を提供する技術は、抗原特異的T細胞のような細胞の臨床適用の成功のために非常に有利であると考えられる。
【0017】
レトロウイルス細胞感染(ランダム組込み部位)による異所性TERT発現として知られる現在の1つの戦略は、初代ヒト細胞の複製寿命を有意に延長することが示されている [18、19]。しかしながら、非分裂細胞に形質導入できないこと、免疫原性の問題、およびがん遺伝子の活性化または腫瘍抑制遺伝子の不活性化を引き起こし得る挿入変異誘発のリスクが高いことを含む多くの制限が、レトロウイルスベクターのインビボでの使用の成功を妨げている [20、21]。さらに、構成的なテロメラーゼ再活性化のための戦略は、大部分のがんと内因性テロメラーゼの定常発現との密接な相関関係に起因して、安全性への懸念を提起している [22]。
【0018】
性ホルモン(例えば、テストステロンおよびβ-エストラジオール)ならびにシクロアストラゲノール(中国の根アストラガルス (Chinese root Astragalus) から抽出された)などのいくつかの薬理学的作用物質は、すべてではないが一部のヒト細胞においてテロメラーゼ活性をわずかに上方制御することが報告されている [23~25]。しかしながら、刺激したPBMC/T細胞において行われた研究では、任意の薬剤によって誘導されたテロメラーゼ活性の上方制御が次にテロメア伸長/維持を促進することを、インビトロで実証することはできなかった。加えて、転写レベルでTERTを活性化する(例えば、がん遺伝子c-mycの活性化を引き起こす分裂促進経路の活性化を介する)化合物の潜在的なオフターゲット効果は、がんを駆動する可能性がある [25、26]。
【0019】
したがって、性ホルモンまたはシクロアストラゲノールの経口投与が末梢免疫細胞においてテロメア維持を促進したことを報告する、ヒトボランティアにおける限定的な予備的縦断研究が存在するにもかかわらず [27、28]、テロメア長の変化が免疫細胞のみに限ったものであるかどうか、およびなぜ治療が成功した場合もあればそうでない場合もある(副作用もまた現れる)のかは、依然として明らかになっていない [29]。最後に、他の独立した研究では、反対の結果を見出しており、成熟T細胞はテロメラーゼの発現または機能の変化を伴って性ホルモンに応答しないことを報告した [30]。一過性のテロメラーゼ活性化のための別の経路は、TERTの一過性発現を得るための、非組込み型の複製不能なAAVの使用を伴う [9、31、32]。このアプローチは、マウスでは広範囲に研究されているが、ヒトでは一度も行われていない。AAV-TERT処置(尾静脈注射によって実施された)は、寿命およびテロメア長の両方の延長をもたらした。AAV-TERT処置はまた、再生不良性貧血および肺線維症を含む様々な加齢性疾患を軽減/回復させ、健康ならびに適切性(例えば、インスリン抵抗性、骨粗鬆症、および神経筋協調)に有益な効果をもたらした [9、31、32]。総合すると、これらの研究は、テロメラーゼ再活性化が様々な加齢状態の効果的な治療法であり得るという予備的な原理証明を提供しているように思われる。しかしながら、これらの研究に用いられた動物はすべて、純粋なC57BL/6バックグラウンドのものであったことを指摘しなければならない [9、31、32]。最も広く使用されている近交系であるC57BL/6マウスは、腫瘍に対して抵抗性が高い。一般に、AAVは、大部分が非組込み型であるようにプログラムすることができる。しかしながら、AAVベクターのゲノムへの組込みが、稀な事象(例えば、100万個に1つの細胞)であっても起こる場合、それは染色体の欠失および再配列と関連しており [33]、組込みは主に活性遺伝子に対して起こり [34]、がんを引き起こす場合が多い [35]。このことを考慮すると、ヒトにおけるAAV-TERT療法(間違いなくがん抵抗性ではない)は、患者/個体、特に既に多くの前悪性変化を蓄積している可能性のある高齢者集団の全般的健康に高いリスクをもたらす可能性がある。加えて、外因性のTERT発現は、AAV-TERT処置後少なくとも8ヶ月間は高レベルで検出され [9、31、32]、このような時間枠でのテロメラーゼの定常発現は、ヒトにおいて安全であると見なすにはあまりにも広範囲に及ぶ可能性がある。
【0020】
まとめると、ウイルスベクターゲノムは、それらゲノムの一部の領域を欠失させることにより、その複製が異常になり、それによってそれらがより安全になるように改変されてきたが、そのシステムには、炎症系の誘導を引き起こし、形質導入された組織の変性をもたらす顕著な免疫原性;次に細胞死を引き起こす毒素の産生、および挿入変異誘発などの、いくつかの問題点がある [36]。
【0021】
修飾ヌクレオシド含有mRNAは、非組込み型であると考えられており、最近では、トランスフェクトされたmRNAによってコードされる多様なタンパク質のレベルをインビトロで一過性に上昇させるために使用されている [37~39]。特に、全長TERTをコードするmRNAのインビトロ送達(最大3回までの連続処理)は、テロメラーゼ活性を一過性(24~48時間)に増加させ、テロメアを伸長させ、かつ正常なヒト線維芽細胞および筋芽細胞の複製寿命を延長することが報告されている [40]。重要なことには、TERT mRNAの送達は、細胞の不死化を回避し、老化マーカーの発現を遅らせた [40]。この技術は、誘導性プロモーターの制御下でのTERTのウイルス送達、およびアデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスに基づくベクターを用いたTERTの送達と比較して、より安全であるように思われる。しかしながら、刺激したT細胞におけるインビトロでの使用可能性があるにもかかわらず、hTERT mRNAの送達は、ヒトの介入(特にインビボ)のための理想的な戦略ではないかもしれない。まず、この戦略を成功させるためには、機能的酵素を適切に生成し得る細胞が必要である:TERTが翻訳されると、それは、適切な翻訳後修飾、適切な折りたたみ、ならびにhTRのみならず、テロメア末端と結合し、その完全な逆転写酵素活性を発揮するためにテロメラーゼに不可欠な、DKC1(ジスケリン)、NOP10、TCAB1、TPP1、RTEL1、PARN、およびNAF1などの他のいくつかのタンパク質との組み立てを行う必要がある [41]。TERTは、その発現と細胞増殖、および場合によっては形質転換との間に厳密な相関関係があるため、全ゲノムの中で最も厳重に調節されている遺伝子の1つである。したがって、ヒトの体内の多くの細胞型が、テロメラーゼ活性に重要な「付属」タンパク質をコードする遺伝子を下方制御するまたは発現停止させることは理にかなっている。
【0022】
加えて、数多くの遺伝性疾患が、テロメア維持機構の欠陥によって引き起こされる [41]。これらの障害は、しばしばテロメア異常症 (telomeropathy) と称され、すべてが、原因となる1つの共通の分子機構:保護されていない(決定的に短縮された)テロメアに対する有害な反応によって特徴づけられる。これらの疾患は、必ずしもTERTが関与しているわけではないが、多くの場合、いくつかのテロメラーゼ関連タンパク質(DKC1、NOP10、TCAB1、TPP1、RTEL1、PARN、およびNAF1)のうちの1つが関与している変異に起因する。加えて、hTERC変異を有する患者は、導入されたTERT mRNAと共に、完全に活性のあるテロメラーゼを生成しないと考えられる。したがって、TERT mRNAの送達は、すべての細胞型においてテロメア伸長を普遍的に促進するわけではなく、免疫不全、肺線維症、循環器疾患、および骨髄不全などの重度のテロメア異常症関連症状に苦しむ一部の患者の治療には潜在的に非効率的であると考えられる [41]。
【0023】
理論的には、タンパク質送達は、様々な理由で障害を受けているかまたは存在しない遺伝子産物の活性を発現させるための、インビトロおよびインビボの両方における最も安全なアプローチである。したがって、活性テロメラーゼホロ酵素(または最終的にはhTERTタンパク質)の細胞内送達は、複雑な調節段階、および上述した他の技法に付随する制限の大部分を回避するため、安全な方法であるのみならず、有効な戦略である。本発明者らは、この経路を検討した最初の者であり、テロメラーゼホロ酵素を細胞にうまく導入してテロメラーゼ機能を増強し、それによってテロメアを伸長させることができることを示した。本開示のこれらおよびその他の局面を、以下に詳細に記載する。
【0024】
I. テロメラーゼ
テロメアは、TTAGGG DNAリピートの複数コピーからなる、線状の真核生物染色体の末端に見出される保護構造である。テロメアは、6つのタンパク質:テロメアリピート結合因子 (TRF) 1、TRF2、TIN2、Rap1、TPP1、およびPOT1と会合しており、これらはすべて一緒になってシェルタリン複合体と称される [42]。ヒトのテロメアは、通常、線状DNA鎖の末端を、切断されて修復が必要なものとして扱う細胞機構から保護されている。2つの主要なテロメア結合タンパク質であるTRF1およびTRF2は、すべてのヒト細胞で発現しており、細胞周期を通してテロメアリピートDNA配列と会合している [43]。TRF1およびTRF2は、hRap1およびMre11/Rad50/Nbs1 DNA修復複合体と会合することが公知である [44、45]。TRF2はまた、Ku70/80ヘテロ二量体などの、その他のDNA損傷検出および修復因子に結合することも公知である [46、47]。ヘテロ核RNP (hnRNP)、毛細血管拡張性運動失調症変異 (ATM) キナーゼ、およびポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ (PARP) は、テロメア長に影響を及ぼすことが確認されている [48~55]。テロメア末端を含む遠くの3'末端は、tループと称される高度に秩序だった構造を形成し得る一本鎖オーバーハングを有する [56]。これらの集合的な構成成分およびDNA構造は、DNA末端の保護および維持に関与している。
【0025】
ヒトテロメラーゼリボ核タンパク質 (RNP) は、触媒タンパク質構成成分 (hTERT)、および451塩基対のRNA構成成分であるヒトテロメラーゼRNA (hTR) を含み、それらは両方ともテロメラーゼ活性に関与している [57、58]。hTRの3'末端は、ボックスH/ACAファミリーの核小体低分子RNA (snoRNA) に類似しており、3'末端プロセシングに不可欠である一方、5'末端は、染色体末端へのテロメア配列の付加に使用される鋳型を含む [59、60]。5'末端はまた、テロメラーゼ機能に重要であると考えられるシュードノット、ならびにhnRNP C1およびC2との相互作用に必要な6塩基対のUリッチトラクトを含む [61、62]。
【0026】
いくつかの他のタンパク質が、ヒトテロメラーゼRNPと会合することが確認されている。例えば、ヴォールトタンパク質TEP1、ならびにhTRの3'末端に結合するsnoRNA結合タンパク質ジスケリンおよびhGAR1が最初に同定された。シャペロンタンパク質p23/hsp90もまた、結合パートナーとして同定されており、活性テロメラーゼ集合体の形成に関与していると考えられている [63]。他のRNA粒子の組み立ておよびtRNAの成熟に関与するLa自己抗原は、テロメラーゼRNPと相互作用すること、およびテロメア長と相関する発現レベルを有することが示されている [64]。
【0027】
すべての正常な体細胞におけるテロメアは、末端複製の問題により、細胞分裂のたびに徐々に短くなり、最終的には細胞老化を引き起こす。末端複製の問題は、DNA複製が双方向性であるものの、DNAポリメラーゼは一方向性であり、プライマーから複製を開始しなければならないことに起因する。したがって、DNA複製の各ラウンドで、およそ50~200塩基対のDNAが、染色体を形成する各DNA鎖の3'末端において複製されないままとなる。チェックを受けないでいると、DNA複製の各ラウンドの後、染色体の末端は徐々に短くなっていく。複製依存性のテロメラーゼ短縮は、線状染色体の末端にTTAGGGリピートを付加するテロメラーゼによって打ち消すことができる。
【0028】
テロメラーゼは、hTR内の短いRNA鋳型配列をDNAにコピーする作用があるため、逆転写酵素である。レトロウイルス逆転写酵素とは異なり、テロメラーゼは、染色体の末端に見出される短いタンデムリピートを作製することに特化している [65]。テロメラーゼのタンパク質構成成分であるhTERTは、逆転写酵素モチーフを含み、hTR構成成分のコア構造は、TERTタンパク質構成成分と強く相互作用するRNAの一部であるシュードノットを含む。
【0029】
テロメラーゼの発現は、正常なヒト細胞において厳重に調節されており、これは幹細胞および生殖細胞において活性があることが見出されている。他の正常細胞型では、テロメラーゼのレベルは典型的に、平均的なヒトの寿命までテロメア長を維持するには低すぎる [18、19]。
【0030】
II. タンパク質の精製および送達
本開示は、1つの局面において、テロメラーゼホロ酵素複合体の生産および製剤、ならびに細胞、組織、または対象へのそれらの送達に関する。一般に、タンパク質の組換え生産は周知であり、したがって本明細書では詳細に説明しない。
【0031】
A. テロメラーゼホロ酵素の生産および精製
1. 生産
組換えヒトテロメラーゼ(hTERT+hTR)の開発および過剰発現、ならびに安定した細胞株「Super H1299」の作製に関する詳細な情報は、以下の実施例に見出される。加えて、現在および今後のいくつかの実験において、組換え酵素の開発、生産、および精製に関する修正が採用されることが指摘されるべきである。以下のリストは、考えられる修正を含む:
1) 組換えテロメラーゼの過剰発現のための付加的な細胞株:ヒト組換えタンパク質の生産用のFDA承認細胞株(例えば、HEK293、PER.C6、CHO、P. パストリス (P. pastoris))。
2) 精製目的のための付加的なTERTタグ:a) 3×Flag-GS10-TERT;b) HA-GS10-TERT;c) ZZ-TEV-SS-TERT;d) ビオチン-TEV-cMYC-TERT。
‐タグはすべて、本発明者らが開発したビオチンタグについて説明したのと全く同じように、N末端局在化を有する。
‐実験によっては、タグは、プロテアーゼ特異的切断(TEV部位)により、精製後に除去される。
3) TERT配列への付加的な改変:テロメアにおける組換えテロメラーゼの活性、安定性、および処理能力に及ぼすリン酸化事象またはその欠如の影響を解析するためのリン酸部位置換。
【0032】
リン酸化(アミノ酸の側鎖へのリン酸基の付加)は、調節の一形態として、タンパク質を活性化または不活性化するために細胞によって用いられる一般的な機構である。細胞内では、タンパク質は通常、セリン、チロシン、およびスレオニンにおいてリン酸化される。いくつかの非リン酸化アミノ酸(例えば、アスパラギン酸)は、リン酸化アミノ酸(例えば、ホスホセリン)と化学的に類似しているように見える。したがって、活性、安定性、または処理能力がその残基のリン酸化によって増強されるタンパク質において、セリンがアスパラギン酸またはグルタミン酸で置換されると、結果として、タンパク質は、より高レベルの活性、安定性、または処理能力を構成的に維持することができる。その後に、セリン、チロシン、またはスレオニンをアラニンで置換すると、アミノ酸残基におけるリン酸化は消失する。
【0033】
いくつかの態様において、組換えテロメラーゼは4つの改変残基を有する/有するであろう:
i) アスパラギン酸によって置換されたセリン227、
ii) アスパラギン酸によって置換されたセリン824、
iii) アスパラギン酸によって置換されたセリン921、および/または
iv) アラニンによって置換されたスレオニン249
【0034】
2. 精製
本開示に従ってテロメラーゼホロ酵素を精製することが望ましいと考えられる。タンパク質精製技法は、当業者に周知である。これらの技法は、1つのレベルにおいて、ポリペプチド画分および非ポリペプチド画分への細胞環境の粗分画を伴う。他のタンパク質からポリペプチドを分離した後、関心対象のポリペプチドを、部分精製または完全精製(または均一になるまでの精製)を達成するために、クロマトグラフィー技法および電気泳動技法を使用してさらに精製することができる。純粋なペプチドの調製に特に適した分析法は、イオン交換クロマトグラフィー、排除クロマトグラフィー;ポリアクリルアミドゲル電気泳動;等電点電気泳動である。ペプチドを精製する特に効率的な方法は、高速タンパク質液体クロマトグラフィーまたはさらにはHPLCである。
【0035】
本開示のある特定の局面は、コードされたタンパク質またはペプチドの精製に関し、および特定の態様ではその実質的な精製に関する。本明細書で用いられる場合の「精製タンパク質」という用語は、他の成分から単離可能な組成物を指すことが意図され、タンパク質またはペプチドは、その天然で得られる状態に対して任意の程度まで精製されている。したがって、精製されたタンパク質またはペプチドはまた、それが天然に存在し得る環境から解放されたタンパク質またはペプチドを指す。
【0036】
一般に、「精製された」とは、様々な他の構成成分を除去するための分画に供され、かつその発現された生物学的活性を実質的に保持するタンパク質組成物を指す。「実質的に精製された」という用語が使用される場合、この表記は、タンパク質が、組成物の主要構成成分を形成する、例えば組成物中のタンパク質の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、またはそれ以上を構成するような、組成物を指す。
【0037】
タンパク質の精製の程度を定量するための様々な方法は、本開示を考慮して当業者に公知であろう。これらには、例えば、活性画分の比活性の決定、またはSDS/PAGE分析による画分内のポリペプチド量の評価が含まれる。ある画分の純度を評価するための好ましい方法は、その画分の比活性を算出し、それを初期抽出物の比活性と比較し、それによって純度を算出することであり、その純度は本明細書において「~倍精製」によって評価される。活性の量を表すために用いられる実際の単位は、当然ながら、精製を追跡するために選択された特定のアッセイ技法、および発現されたタンパク質またはペプチドが検出可能な活性を示すか否かに依存するであろう。
【0038】
タンパク質精製における使用に適した様々な技法が、当業者に周知であろう。これらには、例えば、硫酸アンモニウム、PEG、抗体等による、または熱変性による沈殿、およびその後の遠心分離;クロマトグラフィー工程、例えば、イオン交換、ゲルろ過、逆相、ヒドロキシアパタイト、およびアフィニティークロマトグラフィーなど;等電点電気泳動;ゲル電気泳動;ならびにそのような技法およびその他の技法の組み合わせが含まれる。当技術分野において一般に公知であるように、様々な精製工程を実施する順序を変更するか、またはある特定の工程を省略し、それでもなお実質的に精製されたタンパク質またはペプチドの調製に適した方法をもたらすことが可能であると考えられる。
【0039】
タンパク質が常に最も精製された状態で提供されるべきであるという一般要件は存在しない。実際に、実質的にそれほど精製されていない産物が、ある特定の態様において有用性を有することが企図される。部分精製は、少ない精製工程の組み合わせを使用することにより、または同一の一般的な精製スキームの異なる形態を利用することにより達成され得る。例えば、HPLC装置を利用して行われる陽イオン交換カラムクロマトグラフィーは、一般に、低圧クロマトグラフィーシステムを利用する同一の技法よりも「~倍」高い精製をもたらすことが認識されている。低度の相対的精製を示す方法は、タンパク質産物の完全な回復または発現されたタンパク質の活性の維持に有利であり得る。
【0040】
ポリペプチドの移動は、SDS/PAGEの異なる条件によって、時には有意に、変動し得ることが公知である [66]。したがって、異なる電気泳動条件下では、精製または部分精製された発現産物の見かけ上の分子量は変動し得ることが認識されるであろう。
【0041】
高速液体クロマトグラフィー (HPLC) は、ピークの分解に極めて優れた、非常に迅速な分離を特徴とする。これは、十分な流速を維持するための極めて微細な粒子および高圧の使用により達成される。分離は、わずか数分、または長くても1時間で達成され得る。さらに、粒子は非常に小さくかつ緊密に充填され、空隙容量は総容積のごくわずかな部分であるため、ごく少量の試料しか必要としない。また、バンドが非常に狭く、試料はほとんど希釈されないため、試料の濃度を非常に高くしておく必要もない。
【0042】
ゲルクロマトグラフィーまたは分子ふるいクロマトグラフィーは、分子サイズに基づく特殊なタイプの分配クロマトグラフィーである。ゲルクロマトグラフィーの背景にある理論は、小さな細孔を含む不活性物質の微粒子によって調製されたカラムが、分子のサイズに応じて細孔の中を通過するかまたはその周囲を通過するかによって大きい分子を小さい分子から分離するというものである。粒子を形成する材料が分子を吸着しない限り、流速を決定する唯一の因子はサイズである。したがって、分子は、形状が比較的一定である限り、サイズが大きい順にカラムから溶出される。ゲルクロマトグラフィーは、分離がpH、イオン強度、温度等などのその他すべての因子に依存しないため、異なるサイズの分子を分離するのに卓越している。また実質的に吸着がなく、ゾーン拡散も少なく、溶出量は単純に分子量に関連する。
【0043】
アフィニティークロマトグラフィーは、単離すべき物質とそれが特異的に結合し得る分子との間の特異的親和性に依存するクロマトグラフィー手順である。これは受容体‐リガンド型相互作用である。カラム材料は、結合パートナーの一方を不溶性マトリクスに共有結合させることによって合成される。次に、カラム材料は溶液から物質を特異的に吸着することができる。条件を、結合が起こらない条件に変更する(pH、イオン強度、温度等を変更する)ことによって、溶出が起こる。
【0044】
炭水化物含有化合物の精製に有用な特定のタイプのアフィニティークロマトグラフィーは、レクチンアフィニティークロマトグラフィーである。レクチンは、種々の多糖類および糖タンパク質に結合する物質のクラスである。レクチンは通常、臭化シアンによりアガロースに結合される。セファロースに結合されたコンカナバリン (Conconavalin) Aは、使用されるこの種の最初の材料であり、多糖類および糖タンパク質の単離において広く使用されており、他のレクチンには、レンズマメレクチン、N-アセチルグルコサミニル残基の精製に有用とされているコムギ胚芽凝集素、およびエスカルゴ (Helix pomatia) レクチンが含まれる。レクチン自体は、炭水化物リガンドを用いたアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製される。ラクトースは、トウゴマおよびピーナッツからレクチンを精製するために使用されており;マルトースは、レンズマメおよびタチナタマメからレクチンを抽出するのに有用とされており;N-アセチル-Dガラクトサミンは、ダイズからレクチンを精製するために使用され;N-アセチルグルコサミニルは、コムギ胚芽由来のレクチンに結合し;D-ガラクトサミンは、二枚貝からレクチンを得る際に使用されており、ならびにL-フコースはハス由来のレクチンに結合すると考えられる。
【0045】
マトリックスは、それ自体がかなりの程度まで分子を吸着せず、広範囲の化学的、物理的、および熱的安定性を有する物質でなければならない。リガンドは、その結合特性に影響を与えないような方法で結合されるべきである。リガンドはまた、比較的強固な結合を提供すべきである。そして、試料またはリガンドを破壊せずに、物質を溶出させることが可能であるべきである。アフィニティークロマトグラフィーの最も一般的な形態の1つは、イムノアフィニティークロマトグラフィーである。本開示による使用に適すると考えられる抗体の作製については、以下で論じる。
【0046】
特定の局面においては、実施例においてより詳細に記載されるように、テロメラーゼホロ酵素は以下の一般的な方法によって精製した。組換えテロメラーゼ発現細胞を培養後に溶解し、上清を収集した。勾配超遠心分離を行い、11画分(各1 mL)に分画した。最後の5画分が、ほぼすべてのテロメラーゼ活性を含んでいた。これらの画分を共にプールし、単量体アビジンビーズと共にインキュベートし、その後、ビーズをマイクロバイオスピンクロマトグラフィーに供した。フロースルーを収集し、ビーズを洗浄した。次いで、濃縮されたテロメラーゼは3つの画分に溶出され、それらを共にプールし、ビーズベースのクロマトグラフィーに供した。フロースルーを収集し、ビーズを洗浄し、その後テロメラーゼを溶出した。溶出画分(E2、E3、およびE4)を共にプールし、その後のアッセイおよび実験に使用した。
【0047】
B. 細胞送達
本開示は、テロメラーゼに連結された細胞透過性ペプチド(CPP、細胞送達ペプチドまたは細胞形質導入ドメインとも称される)の使用を企図する。CPPの本質的な性質により、CPPが将来の薬物および疾患診断剤の潜在的な構成成分となり得ることが示される [67、68]。CPPは、合成および特徴づけが比較的簡単であり、主にエンドサイトーシスを介して、毒性のない様式で、結合された生理活性タンパク質を細胞内に送達することができる。重要なことには、CPPは、受動的かつ非選択的(すべての細胞型に普遍的に適用可能)であるが、特定の細胞もしくは組織(またはPBMCなどの不均一な細胞集団中の特定の細胞型)を標的とする効果的な送達ベクターを作製するために機能化または化学修飾することもできる。したがって、CPPは、長い間治療には不可能であると考えられていた、テロメラーゼなどの複雑なタンパク質を用いた医学的治療の開発可能性のための有用なプラットフォームを提供する。
【0048】
本発明者らは、CPPを利用して、精製テロメラーゼホロ酵素を、正常な若齢および老齢の抗原刺激ヒト末梢血単核細胞 (PBMC) および肺線維芽細胞 (IMR-90) に一過性に送達した。特に、NaClを介した高浸透圧がマクロピノサイトーシス取り込みおよび外因性タンパク質の細胞内遊離を誘発するという能動的取り込み機構を報告している最近開発された方法と、CPPの有効性を組み合わせた [69](テロメラーゼホロ酵素を、高浸透圧を特徴とする特定のNaCl/HNa2PO4緩衝液中に溶出する)。
【0049】
CPPは、当技術分野において記載されており、複数のリジン残基およびアルギニン残基を含む場合が多い、短い両親媒性または陽イオン性のペプチドおよびペプチド誘導体として一般に特徴づけられる [70]。その他の例を以下の表1に示す。
【0050】
(表1)CDD/CTDペプチド
【0051】
IV. 細胞を処理する方法
A. 細胞および培養
上述したように、本開示は、細胞におけるテロメア長を増加させることを提供する。一般に、処理される細胞は任意の細胞であってよいが、特に、本発明者らは、養子免疫療法において使用するための操作されたT細胞を処理することを企図する。しかしながら、関心対象の他の特定の細胞型には、骨髄由来の造血幹細胞、肺上皮細胞、肝細胞、および未受精卵(体外受精前の)が含まれる。
【0052】
方法は、上記のように、標的の細胞または細胞集団を精製テロメラーゼホロ酵素と接触させる段階を伴う。一般に、「接触させる」とは、細胞の取り込み機構が活性化され、ホロ酵素が細胞に導入されるように、ホロ酵素を1つまたは複数の細胞に十分に近接させることを意味することが理解される。したがって、細胞を、単位用量のホロ酵素調製物と接触させることができ、または特定の濃度のホロ酵素を含む培養液で灌流することができ、任意にこの場合、培地中のホロ酵素は、長期にわたって特定の濃度を維持するように補充される。精製組換えテロメラーゼホロ酵素の濃度は、バッチ間でわずかに変動し、それは主に、タンパク質精製に使用された細胞の数に依存する(本発明者らの場合、1~5億個の細胞)。各精製後、本発明者らは、細胞1個当たりのテロメラーゼ分子数を決定するための高度に定量的なアッセイであるddTRAPにより、1μlの精製テロメラーゼの総活性を測定した [71]。活性は任意の単位で表され、1単位は、ddTRAPプロトコール中にテロメラーゼによってうまく伸長され、その後増幅される1本のTSプライマーに相当する。本明細書に記載される実験において、本発明者らは一貫して、100万個の細胞当たり5×109のテロメラーゼ単位を送達した。
【0053】
細胞は、処理した細胞を後に再注入されるべき動物からの細胞(すなわち、自己細胞療法)を含め、ヒトまたは動物などの任意の供給源から得ることができる。細胞はまた、細胞株、または1つもしくは複数の異種構築物で以前に操作された細胞であってもよい。
【0054】
B. 製剤
臨床適用が企図される場合、細胞製剤は、意図される適用に適した形態で調製される。一般的に、これは、発熱物質、および細胞、ヒト、または動物にとって有害であり得る他の不純物を本質的に含まない組成物を調製することを要する。
【0055】
一般に、酵素を安定化し、標的細胞による取り込みを可能にするため、適切な塩および緩衝液を利用することが望まれるであろう。本開示の水性組成物は、薬学的に許容される担体または水性媒体中に溶解または分散された有効量のタンパク質を含む。「薬学的にまたは薬理学的に許容される」という語句は、動物またはヒトへ投与された場合に有害反応、アレルギー反応、またはその他の望ましくない反応を生じない分子実体および組成物を指す。本明細書で用いられる場合、「薬学的に許容される担体」には、ヒトへの投与に適した医薬などの医薬の製剤化において使用するために許容される、溶媒、緩衝液、溶液、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、ならびに吸収遅延剤等が含まれる。薬学的に活性のある物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。従来の任意の媒体または薬剤が本開示の有効成分と適合しない場合を除き、治療用組成物におけるその使用が企図される。酵素または細胞を不活性化しない限り、補助的な有効成分を組成物に組み入れることもできる。
【0056】
本開示の活性組成物は、古典的な薬学的調製物を含み得る。実例を挙げると、遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液を、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製することができる。適切な溶媒または分散媒は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、これらの適切な混合物、ならびに植物油を含有し得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用により、分散液の場合には必要とされる粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらすことができる。等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含めることが望ましいと考えられる。
【0057】
滅菌溶液は、適切な量の活性化合物を、所望に応じて任意の他の成分(例えば、上に列挙されたもの)と共に溶媒に組み入れ、その後ろ過減菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、様々な滅菌済みの有効成分を、例えば上に列挙されたような基本的な分散媒および所望の他の成分を含有する滅菌媒体に組み入れることによって調製される。滅菌注射用溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法には、事前に滅菌濾過されたその溶液から有効成分と任意の付加的な所望の成分との粉末をもたらす、真空乾燥技法および凍結乾燥技法が含まれる。
【0058】
製剤化に際して、溶液は、投与製剤と適合する様式で、かつ治療に有効な量で使用することが好ましい(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」 15th Edition、1035~1038および1570~1580ページを参照されたい)。特定の標的細胞に応じて、投薬量のある程度の変動が起こり得る。いずれにしても、投与責任者が個々の対象に適切な用量を決定することになる。さらに、ヒトへの投与の場合、調製物は、FDA Office of Biologics standardsにより要求される無菌性、発熱性、一般的安全性、および純度の基準を満たすべきである。
【実施例0059】
IV. 実施例
以下の実施例は、本開示の様々な局面をさらに例示するために含めるものである。以下の実施例において開示される技法は、本開示の実施において良好に機能することが本発明者によって発見された技法および/または組成物を表し、したがってその実施のための好ましい様式を構成すると見なされ得ることが、当業者によって認識されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示を考慮して、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、開示される特定の態様において多くの変更を行い、なお同様のまたは類似の結果を得ることができることを認識すべきである。
【0060】
実施例1‐方法
組換えヒトテロメラーゼ(hTERT+hTR)の開発および過剰発現、ならびに安定した細胞株Super H1299の作製
操作された組換えhTERTは、hTERTのN末端の前にインビボビオチン化配列、Tevプロテアーゼ切断部位、cMycタグを含み、hTERT配列の前に99アミノ酸残基を付加する。付加された配列は、
である。保存されたビオチン化配列は、哺乳動物細胞において保存されたMKM部位でビオチン化される。改変されたhTERTプラスミドおよび外因性hTRプラスミドをそれぞれレトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターにパッケージングし、それらを使用してトランスフェクトし、本発明者らがSuper H1299と称する安定した細胞株を作製した。ハイグロマイシン選択後、細胞を増殖させ、週ベースで回収し、様々な実験に使用した。
【0061】
pBabe-hygroレトロウイルスベクター中に保有されたビオチンタグ付きhTERTは、一過性パッケージング株PhoenixEにトランスフェクトした。次いで、ウイルスを含む上清を使用して、安定した両種指向性パッケージング株PA317に感染させた。次いで、PA317細胞をハイグロマイシンで選択し、安定したウイルスを産生させ、それを用いて発現細胞株H1299に感染させた。感染したH1299細胞をハイグロマイシンで選択した。
【0062】
hTRについては、pSSI 7661レンチウイルスベクターを2つのヘルパープラスミド、psPAX2およびpMD2Gと共に使用して、293パッケージング細胞をトランスフェクトした。ウイルス上清を用いて、ビオチン化配列タグ付きhTERTを発現するH1299細胞に感染させた。感染したH1299細胞を、ブラストサイジンおよびハイグロマイシンでさらに選択した。
【0063】
Super H1299からの組換えテロメラーゼの精製(3段階)
super H1299細胞の2億個の凍結細胞ペレットを、1.5% CHAPS溶解緩衝液(10%グリセロール、1 mM EGTA pH8.0、0.1 mM MgCl2、10 mM Tris-HCL、0.01 mM PMSF、1単位のRiboLock RNAse阻害剤、および1単位のPIカクテル)中で、4℃で回転させながら30分間溶解した。次いで、細胞を17,500×gで4℃で1時間遠心分離した。上清を収集し、清潔なチューブに入れた。10 mlの連続グリセロール勾配(10~30%)を、勾配メーカー(グリセロール、20 mM HEPES pH7.5、300 mM KCl、0.1 mM MgCl2、0.1% Triton X-100、および1 mM EGTA)で作製した。細胞溶解物試料を勾配の上部に負荷した後、超遠心分離を126,000×gで4℃で19時間行った(SW41 Beckmanローター)。勾配を11画分(各1 mL)に分画した。底部の5画分が、ほぼすべてのテロメラーゼ活性を含んでいた。これらの5画分(7~11)を共にプールし、単量体アビジンビーズ (Peirce) と共に4℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、ビーズをマイクロバイオスピンクロマトグラフィーカラム (BioRad) に入れた。フロースルー溶液を収集し、ビーズを、150 mMリン酸ナトリウム、pH7.0および100 mM NaClを含有する5 mlの緩衝液で2回洗浄した。次いで、濃縮されたテロメラーゼを、400 mM NaCl、150 mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH7.0、および4 mM D-ビオチン (Pierce) で溶出した。テロメラーゼ活性は、各1 mlの3つの画分に溶出された。これらの溶出画分を共にプールし、最終カラムであるSP(スルホプロピル)Sepharose Fast Flow (SPFF) と共にインキュベートした。SPFF樹脂は、テロメラーゼとのインキュベーションの前に、50 mMリン酸ナトリウム (pH 7.0) および50 mM NaCl中で平衡化した。テロメラーゼをSPFFビーズと共に4℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、ビーズをマイクロバイオスピンカラムに負荷した。フロースルーを収集し、SPFFビーズを、20 mMリン酸ナトリウム pH7.0および50 mM NaClで作製された5 mlの緩衝液で2回洗浄した。次いで、テロメラーゼをNaCl塩勾配(200 mM~500 mMの6段階)で溶出した。これを6つの別々の溶出画分 (500μl) で行った。500 mMからの溶出液は、テロメラーゼ活性の大部分を含んでいた。これらの溶出画分(E2、E3、およびE4)を共にプールし、その後のアッセイおよび実験に使用した。
【0064】
PBMCの単離、刺激、およびテロメラーゼホロ酵素による処理
末梢血単核細胞 (PBMC) を、Ficoll-Paque Plus (GE Healthcare) を用いた遠心分離により健常ボランティアの末梢血から単離し、次いで分析するまで-140℃で凍結保存した。細胞は、マイトジェン刺激の24時間前に融解し、10%ウシ胎児血清、10 ng/ml IL-2、1%ペニシリン、ストレプトマイシン、およびアンホテリシンBを添加したRPMI+GlutaMAX-Iで培養した。24時間後、細胞懸濁液を新しいフラスコに移して、単球(フラスコのプラスチックに付着した)を除去した。
【0065】
PBMCを、1:1の比率のDynabeads Human T-Activator CD3/CD28 (Life Technologies) を添加することにより刺激した。刺激の72時間後に磁石を用いてDynabeadsを除去し、細胞を刺激後最大35日まで培養した。細胞は8~10日ごとに再刺激した。生細胞の割合を、TC20自動セルカウンター (Bio-Rad) を用いてトリパンブルー排除により毎日決定した。細胞密度を毎日調整し、1.5×106個/mlを超えた場合には、細胞を新鮮な完全RPMI培地で1.0×106個/mlの密度に希釈した。
【0066】
テロメラーゼホロ酵素を、刺激後3日目、6日目、および9日目に3回連続して送達した。送達前に、細胞を500 gで15分間遠心分離し、10 ng/ml IL-2および200 U/mlの組換えリボヌクレアーゼ阻害剤を補充した無血清RPMI+GlutaMAX-Iに再懸濁した。500 mM NaClおよび50 mMリン酸ナトリウム pH 7.0中のテロメラーゼホロ酵素を細胞透過性ペプチド(Xfectキット、タンパク質トランスフェクションプロトコール、Takara)と混合し、無血清培地に再懸濁した細胞に添加した。37℃で1時間インキュベートした後、細胞を500 gで15分間遠心分離し、完全培地(10%ウシ胎児血清、10 ng/ml IL-2、1%ペニシリン、ストレプトマイシン、およびアンホテリシンBを添加したRPMI+GlutaMAX-I)に再懸濁し、37℃、5% CO2で培養した。
【0067】
実施例2‐結果
ホロ酵素の生産
本発明者らは、ビオチンタグ付き組換えhTERTを操作し、それをhTR(テロメラーゼの機能的RNA構成成分)と共にヒト細胞において過剰発現させることに成功した。本発明者らはまた、組換え酵素を得るための3段階精製手順戦略を開発した。
【0068】
多段階精製手順により、本発明者らは、高度に濃縮された、触媒活性のある酵素を得ることが可能になった。重要なことには、利用したビオチンタグ(本発明者らによって開発された)により、テロメラーゼのみならず、その他の必須のテロメラーゼ関連タンパク質、例えばジスケリン (DKC1) ならびにリボ核タンパク質NOP10およびNHP2などを含む再構成ホロ酵素複合体全体をプルダウンすることが可能になった。
【0069】
PBMC
PBMCは、ヒト免疫応答の主要な構成成分であるT細胞から主としてなる不均一な細胞集団である。T細胞は、刺激を受けていない場合には静止または休止状態にあり、増殖活性をほとんどまたは全く示さない。対照的に、抗原特異的に活性化されると、T細胞は急速に分裂し、遺伝子発現の劇的な変化を示す [72]。
【0070】
活性化T細胞は、体内の健常な細胞と異常な(例えば、感染またはがん)細胞を識別するなどの免疫応答を開始し、様々な形態のがんおよびエイズなどの感染症を治療するための養子免疫療法の主要なツールとしての使用が増加している [16、17]。本発明者らは、操作されたCAR-T細胞を活性化し増殖させるのと全く同じようにPBMCを刺激したが [73]、細胞培養にWAVEバイオリアクターを利用しなかった点、およびPBMCに4-1BB受容体を前もってトランスフェクトしなかった点が異なる。
【0071】
ddTRAP
テロメラーゼ活性を測定するために、本発明者らは、以前に本発明者らの研究室で開発された液滴デジタルPCRアッセイ (ddTRAP) を利用した [71]。ddTRAPは、単一細胞レベルでテロメラーゼ活性の絶対的定量をもたらす、デジタルで、ハイスループットで、かつ高感度なアッセイである。重要なことには、この改良された技術は、ゲルベースのTRAP(当分野においていまだに主に利用されているが、半定量的でしかない)とは対照的に、テロメラーゼ活性にわずか10%の差しかない試料間で識別することができる。
【0072】
テロメア最短長アッセイ (TeSLA)
テロメア長は、本発明者らの研究室で最近開発された、高感度かつ高精度の新たなアッセイ(TeSLA、テロメア最短長アッセイ (Telomere Shortest Length Assay))を用いることによって測定した [74]。TeSLAにより、平均テロメア長および最短20%のテロメアの長さの両方を同時に測定することができる。重要なことには、TRFおよびQ-FISH(現在、当分野における絶対的基準)の両方とは対照的に、TeSLAは、1年の期間にわたってヒト免疫細胞で起こる生理的テロメア消耗などのテロメア長のわずかな変動を検出することができる [74]。TeSLAを用いて、本発明者らは、インビトロで増殖させた刺激済みのPBMCにおいて、10日間にわたる漸進的なテロメア短縮を実証することができた。
【0073】
本発明者らは、静止状態のPBMCおよび刺激済みのPBMCを含む、異なる正常ヒト細胞型の細胞質区画に精製テロメラーゼホロ酵素を送達することに成功し、送達された複合体が強力な活性を維持していることをddTRAPを用いて実証した。
【0074】
次に、本発明者らは、送達されたテロメラーゼがその後核に輸送されることを実証した。この目的のために、細胞の細胞質区画と核区画に分画し、2つの別々の画分においてddTRAPを行った。細胞質画分および核画分の両方からのテロメラーゼ活性は送達後に有意に増加し、このことから、精製テロメラーゼ複合体が核膜を通過し(潜在的に核膜孔を通って)核に到達できることが示される。
【0075】
送達されたテロメラーゼがまた、TTAGGGリピートをテロメア末端に付加するその能力を維持しているかどうかを調べるため、および利用されたビオチンタグが細胞内で、テロメアと結合する酵素の能力に影響を及ぼすかどうかを調べるために、テロメラーゼで処理した刺激済みのPBMCにおいてテロメア長を測定した。
【0076】
本発明者らは、4名の若年成人(平均年齢32±2歳)および2名の高齢ボランティア(平均年齢65±3歳)からの刺激済みのPBMCに、テロメラーゼホロ酵素を3回(3日目、6日目、および9日目)送達した。テロメラーゼの送達は、急速な細胞増殖中のテロメア短縮率を有意に減少させた(4名の個体のTeSLAプロファイルを表す図11を参照されたい)。重要なことには、この処理は、細胞生存率および染色体安定性のみならず、様々な加齢性疾患および加齢の表現型とも最もよく相関すると考えられている最短テロメアの長さを優先的に延長した [75]。
【0077】
本発明者らは次に、その処理がまたT細胞の複製寿命を延長することを実証した。細胞は、少なくとも3日間連続して増殖の徴候を示さなくなるまで、トリパンブルー排除を含めて毎日電子的に計数した。本発明者らはまた、老齢ヒト肺線維芽細胞を処理し(3日ごとに)、テロメラーゼホロ酵素の送達が、正常なテロメラーゼ陰性細胞および付着性細胞培養物にも一般的に適用できることを実証した。
【0078】
本発明者らは以前に、その発現がテロメア長によって直接調節される遺伝子の群を同定した(長距離にわたるテロメア位置効果 (telomere position effects over long distances)、TPE-OLD)[76、77]。これらの研究において、長いテロメアの存在は、テロメア末端から最大10 Mbまで離れた遺伝子に接近するテロメア「染色体ループ」をもたらした。短いテロメアを有する細胞では、これらの介在性テロメアループは失われ、同じ遺伝子座は分離された [77]。テロメアループ形成は、遺伝子発現のエピジェネティックな調節を促進する(一般的には遺伝子発現をサイレンシングする)。したがって、TPE-OLDは、漸進的なテロメア短縮が遺伝子発現の変化を直接引き起こし、それが次に、テロメアが重要なDNA損傷反応および老化を引き起こすのに十分に短くなるよりもずっと前に、加齢および疾患の開始/進行に寄与し得る機構である [77]。
【0079】
本発明者らは、これらの遺伝子のうちのいくつかの発現レベルをddPCRにより測定し、テロメラーゼホロ酵素の送達によって誘導されるテロメア伸長がまた、遺伝子発現の変化と相関していることを認めた。炎症経路およびアポトーシスシグナル伝達に関与するそれらの遺伝子は、テロメアループ形成によって調節され、それらの発現レベルの変化は、細胞の複製老化に先行する可能性がある。このことは、加齢の1つの特徴であるテロメア短縮を防ぐことにより、これがまた遺伝子発現をより「若い」プロファイルへと変化させるのに十分であることを示唆している。これらの遺伝子およびその発現は、テロメラーゼ送達の有効性の潜在的バイオマーカーである。
【0080】
本発明者らは、テロメラーゼホロ酵素で処理した刺激済みPBMCの全ゲノム発現プロファイルを、未処理対照と比較するために解析した。この新たなデータセットを、健常 対 虚弱な百歳以上の人の研究から得られたデータセットと比較することにより、テロメラーゼホロ酵素で処理した細胞は、健常な加齢および長寿と強く関連する遺伝子の発現を特異的に調節することが認められた(データは示されていない)。
【0081】
本明細書において開示および特許請求する組成物および方法はすべて、本開示に照らして、必要以上の実験を行うことなく作製および実行することができる。本開示の組成物および方法を好ましい態様に関して説明してきたが、本開示の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される組成物および方法に対して、ならびにそのような方法の段階において、または段階の順序において、変更が加えられ得ることは、当業者に明白であろう。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連しているある特定の薬剤が、本明細書に記載される薬剤の代わりに用いられても、同一または類似の結果が達成され得ることが明白であろう。当業者にとって明白なそのような同様の代替物および変更物はすべて、添付の特許請求の範囲によって規定される本開示の精神、範囲、および概念の範囲内にあると見なされる。
【0082】
VII. 参考文献
以下の参考文献は、それらが、本明細書において記載されるものを補足する例示的な手順の詳細またはその他の詳細を提供する限りにおいて、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【0083】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> The Board of Regents of the University of Texas System
<120> TELOMERASE HOLOENZYME COMPLEX AND METHODS OF USE THEREOF
<150> US 62/727,743
<151> 2018-09-06
<160> 45
<170> PatentIn version 3.5

<210> 1
<211> 23
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 1
Gly Ala Leu Phe Leu Gly Trp Leu Gly Ala Ala Gly Ser Thr Met Gly
1 5 10 15
Ala Lys Lys Lys Arg Lys Val
20

<210> 2
<211> 16
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 2
Arg Gln Ile Lys Ile Trp Phe Gln Asn Arg Arg Met Lys Trp Lys Lys
1 5 10 15

<210> 3
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 3
Arg Arg Met Lys Trp Lys Lys
1 5

<210> 4
<211> 16
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 4
Arg Arg Trp Arg Arg Trp Trp Arg Arg Trp Trp Arg Arg Trp Arg Arg
1 5 10 15

<210> 5
<211> 18
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 5
Arg Gly Gly Arg Leu Ser Tyr Ser Arg Arg Arg Phe Ser Thr Ser Thr
1 5 10 15
Gly Arg

<210> 6
<211> 11
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 6
Tyr Gly Arg Lys Lys Arg Arg Gln Arg Arg Arg
1 5 10

<210> 7
<211> 9
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 7
Arg Lys Lys Arg Arg Gln Arg Arg Arg
1 5

<210> 8
<211> 11
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 8
Tyr Ala Arg Ala Ala Ala Arg Gln Ala Arg Ala
1 5 10

<210> 9
<211> 8
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 9
Arg Arg Arg Arg Arg Arg Arg Arg
1 5

<210> 10
<211> 8
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 10
Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys
1 5

<210> 11
<211> 27
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<220>
<221> misc_feature
<222> (25)..(25)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<400> 11
Gly Trp Thr Leu Asn Ser Ala Gly Tyr Leu Leu Gly Lys Ile Asn Leu
1 5 10 15
Lys Ala Leu Ala Ala Leu Ala Lys Xaa Ile Leu
20 25

<210> 12
<211> 18
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 12
Leu Leu Ile Leu Leu Arg Arg Arg Ile Arg Lys Gln Ala Asn Ala His
1 5 10 15
Ser Lys

<210> 13
<211> 16
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 13
Ser Arg Arg His His Cys Arg Ser Lys Ala Lys Arg Ser Arg His His
1 5 10 15

<210> 14
<211> 11
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 14
Asn Arg Ala Arg Arg Asn Arg Arg Arg Val Arg
1 5 10

<210> 15
<211> 15
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 15
Arg Gln Leu Arg Ile Ala Gly Arg Arg Leu Arg Gly Arg Ser Arg
1 5 10 15

<210> 16
<211> 13
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 16
Lys Leu Ile Lys Gly Arg Thr Pro Ile Lys Phe Gly Lys
1 5 10

<210> 17
<211> 10
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 17
Arg Arg Ile Pro Asn Arg Arg Pro Arg Arg
1 5 10

<210> 18
<211> 18
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 18
Lys Leu Ala Leu Lys Leu Ala Leu Lys Ala Leu Lys Ala Ala Leu Lys
1 5 10 15
Leu Ala

<210> 19
<211> 14
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 19
Lys Leu Ala Lys Leu Ala Lys Lys Leu Ala Lys Leu Ala Lys
1 5 10

<210> 20
<211> 27
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 20
Gly Ala Leu Phe Leu Gly Phe Leu Gly Ala Ala Gly Ser Thr Asn Gly
1 5 10 15
Ala Trp Ser Gln Pro Lys Lys Lys Arg Lys Val
20 25

<210> 21
<211> 21
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 21
Lys Glu Thr Trp Trp Glu Thr Trp Trp Thr Glu Trp Ser Gln Pro Lys
1 5 10 15
Lys Lys Arg Lys Val
20

<210> 22
<211> 20
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 22
Leu Lys Lys Leu Leu Lys Lys Leu Leu Lys Lys Leu Leu Lys Lys Leu
1 5 10 15
Leu Lys Lys Leu
20

<210> 23
<211> 34
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 23
Gln Ala Ala Thr Ala Thr Arg Gly Arg Ser Ala Ala Ser Arg Pro Thr
1 5 10 15
Glu Arg Pro Arg Ala Pro Ala Arg Ser Ala Ser Arg Pro Arg Arg Pro
20 25 30
Val Glu

<210> 24
<211> 23
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 24
Met Gly Leu Gly Leu His Leu Leu Val Leu Ala Ala Ala Leu Gln Gly
1 5 10 15
Ala Lys Ser Lys Arg Lys Val
20

<210> 25
<211> 26
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 25
Ala Ala Val Ala Leu Leu Pro Ala Val Leu Leu Ala Leu Leu Ala Pro
1 5 10 15
Ala Ala Ala Asn Tyr Lys Lys Pro Lys Leu
20 25

<210> 26
<211> 28
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 26
Met Ala Asn Leu Gly Tyr Trp Leu Leu Ala Leu Phe Val Thr Met Trp
1 5 10 15
Thr Asp Val Gly Leu Cys Lys Lys Arg Pro Lys Pro
20 25

<210> 27
<211> 24
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 27
Leu Gly Thr Tyr Thr Gln Asp Phe Asn Lys Phe His Thr Phe Pro Gln
1 5 10 15
Thr Ala Ile Gly Val Gly Ala Pro
20

<210> 28
<211> 26
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<220>
<221> misc_feature
<222> (24)..(24)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<400> 28
Asp Pro Lys Gly Asp Pro Lys Gly Val Thr Val Thr Val Thr Val Thr
1 5 10 15
Val Thr Gly Lys Gly Asp Pro Xaa Pro Asp
20 25

<210> 29
<211> 14
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 29
Pro Pro Pro Pro Pro Pro Pro Pro Pro Pro Pro Pro Pro Pro
1 5 10

<210> 30
<211> 18
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 30
Val Arg Leu Pro Pro Pro Val Arg Leu Pro Pro Pro Val Arg Leu Pro
1 5 10 15
Pro Pro

<210> 31
<211> 10
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 31
Pro Arg Pro Leu Pro Pro Pro Arg Pro Gly
1 5 10

<210> 32
<211> 30
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 32
Ser Val Arg Arg Arg Pro Arg Pro Pro Tyr Leu Pro Arg Pro Arg Pro
1 5 10 15
Pro Pro Phe Phe Pro Pro Arg Leu Pro Pro Arg Ile Pro Pro
20 25 30

<210> 33
<211> 21
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 33
Thr Arg Ser Ser Arg Ala Gly Leu Gln Phe Pro Val Gly Arg Val His
1 5 10 15
Arg Leu Leu Arg Lys
20

<210> 34
<211> 23
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 34
Gly Ile Gly Lys Phe Leu His Ser Ala Lys Lys Phe Gly Lys Ala Phe
1 5 10 15
Val Gly Glu Ile Met Asn Ser
20

<210> 35
<211> 37
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 35
Lys Trp Lys Leu Phe Lys Lys Ile Glu Lys Val Gly Gln Asn Ile Arg
1 5 10 15
Asp Gly Ile Ile Lys Ala Gly Pro Ala Val Ala Val Val Gly Gln Ala
20 25 30
Thr Gln Ile Ala Lys
35

<210> 36
<211> 28
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 36
Ala Leu Trp Met Thr Leu Leu Lys Lys Val Leu Lys Ala Ala Ala Lys
1 5 10 15
Ala Ala Leu Asn Ala Val Leu Val Gly Ala Asn Ala
20 25

<210> 37
<211> 26
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 37
Gly Ile Gly Ala Val Leu Lys Val Leu Thr Thr Gly Leu Pro Ala Leu
1 5 10 15
Ile Ser Trp Ile Lys Arg Lys Arg Gln Gln
20 25

<210> 38
<211> 14
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 38
Ile Asn Leu Lys Ala Leu Ala Ala Leu Ala Lys Lys Ile Leu
1 5 10

<210> 39
<211> 33
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 39
Gly Phe Phe Ala Leu Ile Pro Lys Ile Ile Ser Ser Pro Leu Pro Lys
1 5 10 15
Thr Leu Leu Ser Ala Val Gly Ser Ala Leu Gly Gly Ser Gly Gly Gln
20 25 30
Glu

<210> 40
<211> 15
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 40
Leu Ala Lys Trp Ala Leu Lys Gln Gly Phe Ala Lys Leu Lys Ser
1 5 10 15

<210> 41
<211> 27
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<220>
<221> misc_feature
<222> (23)..(23)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<400> 41
Ser Met Ala Gln Asp Ile Ile Ser Thr Ile Gly Asp Leu Val Lys Trp
1 5 10 15
Ile Ile Gln Thr Val Asn Xaa Phe Thr Lys Lys
20 25

<210> 42
<211> 41
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 42
Leu Leu Gly Asp Phe Phe Arg Lys Ser Lys Glu Lys Ile Gly Lys Glu
1 5 10 15
Phe Lys Arg Ile Val Gln Arg Ile Lys Gln Arg Ile Lys Asp Phe Leu
20 25 30
Ala Asn Leu Val Pro Arg Thr Glu Ser
35 40

<210> 43
<211> 18
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 43
Pro Ala Trp Arg Lys Ala Phe Arg Trp Ala Trp Arg Met Leu Lys Lys
1 5 10 15
Ala Ala

<210> 44
<211> 18
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 44
Lys Leu Lys Leu Lys Leu Lys Leu Lys Leu Lys Leu Lys Leu Lys Leu
1 5 10 15
Lys Leu

<210> 45
<211> 99
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 45
Met Ala Gly Lys Ala Gly Glu Gly Glu Ile Pro Ala Pro Leu Ala Gly
1 5 10 15
Thr Val Ser Lys Ile Leu Val Lys Glu Gly Asp Thr Val Lys Ala Gly
20 25 30
Gln Thr Val Leu Val Leu Glu Ala Met Lys Met Glu Thr Glu Ile Asn
35 40 45
Ala Pro Thr Asp Gly Lys Val Glu Lys Val Leu Val Lys Glu Arg Asp
50 55 60
Ala Val Gln Gly Gly Gln Gly Leu Ile Lys Ile Gly Val Glu Asn Leu
65 70 75 80
Tyr Phe Gln Ser Thr Met Glu Gln Lys Leu Ile Ser Glu Glu Asp Leu
85 90 95
Glu Phe Thr
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
2024156858000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テロメア長を増加させる、および/または細胞の増殖能を増加させる方法であって、
(i) 細胞集団を提供する段階;
(ii) 該細胞集団の少なくとも第1部分を精製組換えテロメラーゼホロ酵素と接触させる段階;および
(iii) 該第1部分からの細胞において、テロメア長によって調節される1つまたは複数の標的遺伝子の発現を測定する段階
を含む、前記方法。