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特開2024-156877反応器内の選択された化合物濃度を制御することができる電気化学的廃水処理システム
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  • 特開-反応器内の選択された化合物濃度を制御することができる電気化学的廃水処理システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156877
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】反応器内の選択された化合物濃度を制御することができる電気化学的廃水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20241029BHJP
   C02F 1/78 20230101ALI20241029BHJP
   C02F 1/76 20230101ALI20241029BHJP
   B01D 61/16 20060101ALI20241029BHJP
   B01D 61/04 20060101ALI20241029BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20241029BHJP
【FI】
C02F1/461 101C
C02F1/461 Z
C02F1/461 101A
C02F1/78
C02F1/76 A
B01D61/16
B01D61/04
C02F1/44 E
C02F1/44 F
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024127874
(22)【出願日】2024-08-02
(62)【分割の表示】P 2021521820の分割
【原出願日】2019-10-24
(31)【優先権主張番号】62/750,354
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513305179
【氏名又は名称】アクシン ウォーター テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Axine Water Technologies Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ミルバーン,ジェフリー,ショーン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】反応器の性能向上と高品質の流出物を実現する、電気化学的な廃水処理システムを提供する。
【解決手段】反応器タンク402、電気化学反応器414および分離デバイス404を備え、分離デバイスが、反応器タンクからの流出ストリーム427を濾過して、処理済み廃水ストリーム422と、リジェクトストリーム424とを生成し、リジェクトストリームが、少なくとも部分的に電気化学反応器または反応器タンクに供給され、反応器内の選択された可溶性および不溶性化合物の濃度が高められる。リジェクトストリームの一部または反応器タンク内の廃水の一部は、ブローダウンストリームとして排出する。化合物の濃度を制御するために、リジェクトストリームの量とブローダウンストリームの量を調整するための流量制御手段が設けられている。このため、反応器内の可溶性および不溶性の化合物の濃度は、反応器流出ストリーム中の化合物の濃度から切り離される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的廃水処理システムであって、
-処理すべき廃水のストリームを受け入れる反応器タンクと、
-電気化学反応器と、
-前記反応器タンクからの流出廃水ストリームを受け入れて、システムから排出される処理済み廃水ストリームと、リジェクトストリームとを生成する分離デバイスであって、前記リジェクトストリームの少なくとも一部が、再循環廃水ストリームとして、前記電気化学反応器に供給されるか、または前記反応器タンクに戻される、分離デバイスとを備え、
前記電気化学反応器が、前記分離デバイスから供給された前記再循環廃水ストリーム、または前記再循環廃水ストリームを含む前記反応器タンクから供給された廃水を処理して、前記反応器タンクに送り返す反応器流出ストリームを生成することを特徴とする電気化学的廃水処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の廃水処理システムにおいて、
前記電気化学反応器内の化合物の濃度を制御するために、前記リジェクトストリームの量および前記再循環廃水ストリームの量を調整する制御手段をさらに備えることを特徴とする廃水処理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の廃水処理システムにおいて、
前記リジェクトストリームの一部をシステムから排出するブローダウンストリームと、前記ブローダウンストリームの量を調整するための制御手段とをさらに備えることを特徴とする廃水処理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の廃水処理システムにおいて、
前記反応器タンクに含まれる廃水の一部をシステムから排出するブローダウンストリームと、前記ブローダウンストリームの量を調整する制御手段とをさらに含むことを特徴とする廃水処理システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の廃水処理システムにおいて、
前記ブローダウンストリームと前記処理済み廃水ストリームが、システムから排出される前に処理水ストリームに結合されることを特徴とする廃水処理システム。
【請求項6】
請求項2に記載の廃水処理システムにおいて、
前記リジェクトストリームの量および/または前記再循環廃水ストリームの量を調整する制御手段が、前記反応器タンクから前記分離デバイスに前記流出廃水ストリームを送るためのポンプ、および/または前記リジェクトストリームの流れを調整するバルブ、および/または前記再循環廃水ストリームの流れを調整する少なくともバルブを含むことを特徴とする廃水処理システム。
【請求項7】
請求項3または4に記載の廃水処理システムにおいて、
前記ブローダウンストリームの量を調整する制御手段が、前記ブローダウンストリームの流れを調整する少なくとも1のバルブを含むことを特徴とする廃水処理システム。
【請求項8】
請求項1に記載の廃水処理システムにおいて、
前記分離デバイスが、逆浸透膜、ナノ濾過膜または限外濾過膜を含むか、または廃水中の化合物を濾過するために別の分離プロセスを使用することを特徴とする廃水処理システム。
【請求項9】
請求項8に記載の廃水処理システムにおいて、
前記分離デバイスのタイプと特性が、前記リジェクトストリーム中の化合物の濃度を制御するように選択されていることを特徴とする廃水処理システム。
【請求項10】
請求項1に記載の廃水処理システムにおいて、
廃水の導電性を高めるための溶液、廃水のpHを制御するための溶液、および/または膜のスケール除去溶液を貯蔵し、前記反応器タンクに送出する装置をさらに含むことを特徴とする廃水処理システム。
【請求項11】
請求項1に記載の廃水処理システムにおいて、
前記反応器タンクに供給される前の予め設定された量の処理すべき廃水のストリームと、前記分離デバイスから供給される再循環廃水ストリームとを受け入れる調整タンクをさらに含み、前記調整タンクにおいて、処理すべき廃水が前記再循環廃水ストリームと混合され、それが特定の化合物を除去するために処理されることを特徴とする廃水処理システム。
【請求項12】
請求項11に記載の廃水処理システムにおいて、
前記反応器タンクから排出される流出廃水ストリームを受け入れる膜供給タンクと、前記膜供給タンクから前記分離デバイスに廃水を供給するポンプとをさらに含むことを特徴とする廃水処理システム。
【請求項13】
電気化学反応器における廃水処理方法であって、
a.処理すべき廃水を反応器タンクに供給し、前記反応器タンクから流出廃水ストリームを排出するステップと、
b.前記反応器タンクからの流出廃水ストリームを分離デバイスに供給し、そこで前記流出廃水ストリームを濃縮して、処理済み廃水ストリームと、前記分離デバイスによって排除された化合物を含むリジェクトストリームとを生成するステップと、
c.前記リジェクトストリームの少なくとも一部を再循環廃水ストリームとして前記電気化学反応器に供給するか、または前記反応器タンクに戻すステップと、
d.前記電気化学反応器において、前記再循環廃水ストリーム、または前記再循環廃水ストリームを含む前記反応器タンクから供給された廃水を電気化学的に処理して、電気化学的に処理した水の反応器流出ストリームを生成するステップと、
e.前記電気化学反応器からの反応器流出ストリームを前記反応器タンクに供給するステップと、
f.前記電気化学反応器内の化合物の濃度を制御するために、前記電気化学反応器または前記反応器タンクの何れかに供給される前記リジェクトストリームの量および/または前記再循環廃水ストリームの量を制御するステップと、
g.前記処理済み廃水ストリームをシステムから排出するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
前記電気化学反応器内の化合物濃度をさらに制御するために、前記リジェクトストリームの一部をブローダウンストリームとして排出するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、
前記電気化学反応器内の化合物濃度をさらに制御するために、前記反応器タンクに含まれる廃水の一部をブローダウンストリームとして排出するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の方法において、
前記ブローダウンストリームが、システムから排出される前に前記処理済み廃水ストリームと結合されることを特徴とする方法。
【請求項17】
電気化学反応器における廃水処理方法であって、
a.予め設定された量の処理すべき廃水を調整タンクに供給し、前記調整タンクから反応器タンクに供給し、前記反応器タンクから流出廃水ストリームを排出するステップと、
b.前記反応器タンクからの流出廃水ストリームを膜供給タンクに供給し、前記膜供給タンクから分離デバイスに供給し、そこで流出の廃水ストリームを濃縮して、処理済み廃水ストリームと、前記分離デバイスによって排除された化合物を含むリジェクトストリームを生成するステップと、
c.前記リジェクトストリーム全体を前記調整タンクに供給し、そこで処理すべき廃水と混合し、それを前記反応器タンクにさらに供給するステップと、
d.前記リジェクトストリームを含む前記反応器タンクからの廃水を電気化学反応器に供給するステップと、
e.前記電気化学反応器において、前記反応器タンクから供給された廃水を電気化学的に処理して、反応器流出ストリームを生成するステップと、
f.前記電気化学反応器から前記反応器タンクに前記反応器流出ストリームを供給するステップと、
g.前記処理済み廃水ストリームをシステムから排出するステップと、
h.新たな量の処理すべき廃水を前記調整タンクに供給して、上述したステップを繰り返すステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、
前記分離デバイスのタイプと特性が、前記リジェクトストリーム中の化合物の濃度を制御するように選択されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、
廃水の導電性を高めるための溶液、廃水のpHを制御するための溶液、および/または前記反応器タンクに対する膜のスケール除去溶液を貯蔵し、前記反応器タンクに送出するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応器内の可溶性化合物と不溶性化合物の濃度を、反応器を出る流出物中の可溶性化合物と不溶性化合物の濃度から切り離して、反応器の性能向上と高品質の流出物を実現する、電気化学的な廃水処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃水処理規制の強化により、産業設備は難分解性の水質汚染物質を排出前に除去することが要求され、また、きれいな水の現在の世界的な不足を受けて、廃水処理システムに対する需要が高まっている。このため、化学物質の添加を最小限に抑え、二次汚染を発生させず、かつ運転および保守の要件を最小限に抑えた、費用対効果の高い持続可能な廃水処理システムの需要が高まっている。
【0003】
難分解性廃水を処理するための好ましいアプローチは、電気化学的酸化によるものであり、これは持続可能で安全かつ高効率な処理ソリューションであり、残留性有機汚染物質、ダイオキシン、窒素種(例えば、アンモニア)、医薬品、病原体、微生物などの多種多様な汚染物質を除去することができる。廃水処理の一つのアプローチは、有機および/または無機の汚染物質の直接的な電気化学的酸化によるものであり、そのような汚染物質はアノード表面で直接酸化される。別の方法は、化学的酸化種(ヒドロキシル、塩素、酸素、過塩素酸ラジカル、または次亜塩素酸塩、オゾン、過酸化水素などの化合物)をその場で生成することによる、有機および/または無機汚染物質の間接的な電気化学的酸化である。それらの化学的酸化種は、アノード表面で直接生成され、その後、廃水溶液内の汚染物質を酸化する。
【0004】
電気化学的酸化を利用する廃水処理システムでは、通常は、廃水が反応器タンクに供給された後、ポンプにより反応器に移送され、そこで汚染物質を除去するために処理される。反応器がフロースルー反応器または常時攪拌槽型反応器(CSTR)である場合、流出物の汚染物質濃度は一般に反応器内の汚染物質濃度と同じである。これは、反応器内の汚染物質濃度が高いと処理効率が高くなる一方で、流出物の汚染物質濃度は低いことが望まれるため、好ましくない。また、反応器タンク内の特定の化合物(例えば、硬度成分)は反応器を素早く通過して低濃度に留まり、他の化合物(例えば、電解質)は反応器内に保持されて、それら化合物の高い濃度が反応器内で徐々に蓄積されることが望ましい。さらに、特定の化合物(すなわち、API(医薬品有効成分)などの高分子量化合物)のみを処理し、廃水中の他の化合物を通過させることが望ましい場合もある。
【0005】
また、従来は、より高い効率で廃水を処理するために、常時撹拌槽型反応器の代わりにバッチ式反応器が使用されてきた。バッチ式反応器は、廃水を低い汚染物質レベルまで処理することができるが、この低い汚染物質レベルを達成するためにより長い時間を必要とし、その結果、より多くのエネルギーを消費する。
【0006】
このため、既存の反応器のより効率的な運転を実現するために、廃水の処理に電気化学的酸化を使用するシステムの設計および運転方法をさらに改善する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、電気化学的廃水処理システムであって、
-処理すべき廃水のストリームを受け入れる反応器タンクと、
-電気化学反応器と、
-反応器タンクからの流出廃水ストリーム(effluent wastewater stream)を受け入れて、システムから排出される処理済み廃水ストリーム(treated wastewater stream)と、リジェクトストリーム(reject stream)とを生成する分離デバイスとを備え、リジェクトストリームの少なくとも一部が、再循環廃水ストリーム(recirculated wastewater stream)として、電気化学反応器に供給されるか、または反応器タンクに戻される、電気化学的廃水処理システムを説明する。
【0008】
いくつかの実施形態では、再循環廃水ストリームが電気化学反応器に直接供給され、他の実施形態では、再循環廃水ストリームが反応器タンクに供給され、そこで、反応器タンクの廃水と混合され、混合された廃水が電気化学反応器に供給される。電気化学反応器は、分離デバイスから供給された再循環廃水ストリーム、または代替的に、反応器タンク内の廃水と混合された再循環廃水を処理して、反応器タンクに送り返される反応器流出ストリーム(reactor effluent stream)を生成する。
【0009】
システムは、電気化学反応器内の化合物の濃度を制御するために、リジェクトストリームの量および再循環廃水ストリームの量を調整する制御手段をさらに備えることができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、リジェクトストリームの一部が、ブローダウンストリーム(blowdown stream)としてシステムから排出することができ、そのような実施形態では、廃水処理システムが、ブローダウンストリームの量を調整するための制御手段を備える。
【0011】
他の実施形態では、反応器タンクに含まれる廃水の一部が、ブローダウンストリームとしてシステムから排出され、システムが、ブローダウンストリームの量を調整するための制御手段をさらに備える。
【0012】
いくつかの実施形態では、ブローダウンストリームと処理済み廃水ストリームが、システムから排出される前に処理水ストリーム(treated water stream)に結合される。
【0013】
リジェクトストリームの量および/または再循環廃水ストリームの量を調整するための制御手段は、反応器タンクから分離デバイスへ流出廃水ストリームを供給するためのポンプ、および/またはリジェクト廃水ストリームの流れを調整するバルブ、および/または再循環廃水ストリームの流れを調整する少なくともバルブを含むことができる。
【0014】
ブローダウンストリームの量を調整するための制御手段は、通常、ブローダウンストリームの流れを調整するための少なくとも1のバルブを含む。
【0015】
この廃水処理システムにおける分離デバイスは、逆浸透膜、ナノ濾過膜、限外濾過膜、または分子サイズ、電荷または他の特性によって化合物を分離する別のタイプの膜を含むことができ、あるいは分離デバイスは、蒸留装置、濃縮装置またはそれらの組合せであってもよい。分離デバイスのタイプおよび特性は、通常、リジェクトストリーム中および電気化学反応器内の化合物の濃度を、可溶性化合物または不溶性化合物の何れか、またはその両方について制御するために選択される。
【0016】
廃水処理システムは、廃水の導電性を高めるための溶液、廃水のpHを制御するための溶液、および/または、脱シーラント、脱塩素または殺生物剤などの膜溶液を貯蔵し、反応器タンクに送出する装置をさらに備える。
【0017】
いくつかの実施形態では、廃水処理システムが、反応器タンクに供給される前に予め設定された量の処理すべき廃水のストリームを受け入れて、それを分離デバイスからの再循環廃水ストリームと混合し、特定の化合物を除去するために処理する調整タンクと、調整タンクから反応器タンクに処理すべき廃水をさらに供給するためのポンプとをさらに備える。
【0018】
いくつかの実施形態では、例えばバッチモードで動作するシステムにおいて、反応器タンクからの流出廃水ストリームを受け入れるための膜供給タンクが設けられ、ポンプが膜供給タンクから分離デバイスに廃水をさらに供給する。
【0019】
電気化学反応器における廃水処理方法がさらに開示され、この方法が、
a.処理すべき廃水を反応器タンクに供給し、反応器タンクから流出廃水ストリームを排出するステップと、
b.反応器タンクからの流出廃水ストリームを分離デバイスに供給し、そこで流出廃水ストリームを濃縮して、処理済み廃水ストリームと、分離デバイスによって排除された化合物を含むリジェクトストリームとを生成するステップと、
c.リジェクトストリームの少なくとも一部を再循環廃水ストリームとして電気化学反応器に供給するか、または反応器タンクに戻すステップと、
d.電気化学反応器において、再循環廃水ストリーム、または再循環廃水ストリームを含む反応器タンクから供給された廃水を電気化学的に処理して、電気化学的に処理した水の反応器流出ストリームを生成するステップと、
e.電気化学反応器からの反応器流出ストリームを反応器タンクに供給するステップと、
f.電気化学反応器内の化合物の濃度を制御するために、電気化学反応器または反応器タンクの何れかに供給されるリジェクトストリームの量および/または再循環廃水ストリームの量を制御するステップと、
g.処理済み廃水ストリームをシステムから排出するステップとを備える。
【0020】
上記ステップに見られるように、いくつかの実施形態では、リジェクトストリームが再循環廃水として電気化学反応器に直接供給されるが、他の実施形態では、リジェクトストリームが最初に再循環廃水として反応器タンクに供給され、そこで、処理すべき廃水と混合され、その後、混合物が反応器タンクから電気化学反応器に供給される。
【0021】
いくつかの実施形態では、本方法が、電気化学反応器内の化合物濃度をさらに制御するために、リジェクトストリームの一部をブローダウンストリームとして排出するステップをさらに含む。
【0022】
他の実施形態では、本方法が、電気化学反応器内の化合物濃度をさらに制御するために、反応器タンクに含まれる廃水の一部をブローダウンストリームとして排出するステップをさらに含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、ブローダウンストリームが、処理水ストリームとしてシステムから排出される前に、処理済み廃水ストリームと結合される。
【0024】
好ましい実施形態では、廃水処理方法が、
a.予め設定された量の処理すべき廃水を調整タンクに供給して汚染物質の一部を除去し、調整タンクから反応器タンクに供給し、反応器タンクから流出廃水ストリームを排出するステップと、
b.反応器タンクからの流出廃水ストリームを膜供給タンクに供給し、膜供給タンクから分離デバイスに供給し、そこで流出の廃水ストリームを濃縮して、処理済み廃水ストリームと、分離デバイスによって排除された化合物を含むリジェクトストリームを生成するステップと、
c.リジェクトストリーム全体を調整タンクに供給し、処理すべき廃水と調整タンクで混合し、その混合物を反応器タンクにさらに供給するステップと、
d.リジェクトストリームを含む反応器タンクからの廃水を電気化学反応器に供給するステップと、
e.電気化学反応器において、反応器タンクから供給された廃水を電気化学的に処理して、反応器流出ストリームを生成するステップと、
f.電気化学から反応器タンクに反応器流出ストリームを供給するステップと、
g.処理済み廃水ストリームをシステムから排出するステップと、
h.新たな量の処理すべき廃水を調整タンクに供給して、次のバッチの処理すべき廃水について、上述したステップを繰り返すステップとを備える。
【0025】
この実施形態では、システムがバッチモードで運転され、処理すべき廃水がシステムにバッチ式で供給され、他の実施形態のように連続的な流れとはなっていない。
【0026】
分離デバイスが膜を含むすべての実施形態では、膜が、リジェクトストリーム中の化合物および暗黙的に汚染物質の濃度を制御するように選択される。
【0027】
すべての実施形態において、本方法は、廃水の導電性を高めるための溶液、廃水のpHを制御するための溶液、膜のスケール除去溶液、または汚染物質の除去またはシステムの性能を最適化するための他の溶液を貯蔵し、反応器タンクに送出するステップをさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図面は、本発明の特定の好ましい実施形態を例示しているが、本発明の趣旨または範囲を如何なる形でも限定するものとして見なされるべきではない。
図1図1は、本発明の第1の実施形態を示している。
図2図2は、本発明の第2の実施形態を示している。
図3図3は、本発明の第3の実施形態を示している。
図4図4aおよび図4bは、本発明の一実施形態に係る反応器と、従来技術で知られている1段、2段または3段を有するそれぞれの常時攪拌槽型反応器とにより達成される汚染物質濃度を示している。
図5図5は、バッチモードで動作するシステムについての本発明の第4の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書では特定の用語が使用されるが、それらは以下に与えられる定義に従って解釈されることを意図している。また、「a」や「comprises」などの用語は、オープンエンドと見なされるべきである。
【0030】
本発明の第1の実施形態に係る電気化学的廃水処理システムが図1に示されている。
【0031】
電気化学的廃水処理システム100は、反応器タンク102と、反応器タンク102の下流に位置する分離デバイス104とを備える。処理する必要のある廃水のストリーム106は、ポンプ110によって反応器タンク102に供給され、反応器タンクからの流出廃水ストリーム118は、ポンプ120によって分離デバイス104に供給される。流出廃水ストリーム118は、分離デバイス104において、選択された可溶性化合物および不溶性化合物を分離することによって処理され、分離デバイスに受け入れられなかった廃水は、リジェクトストリーム124を形成する。リジェクトストリーム124の少なくとも一部は、再循環廃水ストリーム126を形成して、電気化学反応器114に導かれ、そこで電気化学的に処理され、電気化学的に処理された廃水は、反応器を出て反応器流出ストリーム127を形成する。電気化学反応器は、廃水中の汚染物質を処理するために様々な触媒を使用することができる複数の電気化学セル116を含むことができる。反応器流出ストリーム127は、反応器タンク102に戻され、そこで、処理が必要な流入する廃水のストリーム106と結合され、プロセスが繰り返される。膜を通過した処理済み廃水ストリーム122は、分離デバイス104から流出する。
【0032】
いくつかの実施形態では、リジェクトストリーム全体が再循環廃水ストリームとして反応器に戻される。図1に示すような他の実施形態では、リジェクトストリーム124が、電気化学反応器114に供給される再循環廃水ストリーム126と、貯蔵部に排出されるか、または図1に示すように、処理済み廃水ストリーム122と混合されて処理水ストリーム121を形成するブローダウンストリーム128とに分けられる。処理水ストリームは、再利用または貯蔵用のタンク内に排出することができ、あるいは下水道または地表水域に排出することができる。再循環廃水ストリーム126は、通常、ブローダウンストリーム128よりも量が多い。リジェクトストリーム124の少なくとも一部を再循環廃水ストリームとして電気化学反応器114に供給することにより、電気化学反応器内の汚染物質濃度は、流出廃水ストリーム118が反応器タンクから電気化学反応器に直接供給される場合よりも高く、反応器流出ストリーム127中の汚染物質濃度よりも高くなる。さらに、電気化学反応器114に供給される化合物は、分離デバイス104で使用される膜のタイプまたは分離プロセスのタイプに応じて選択されるため、電気化学反応器114に導かれる化合物および暗黙的に廃水汚染物質の種類および量を容易に制御することができる。
【0033】
本システムおよび方法は、廃水処理運転の効率化に有益である。何故なら、システムの動作効率を上げるために電気化学反応器内の汚染物質濃度を高くすることが望ましく、また、電解質、溶液制御化合物、pH制御物質など、廃水に添加される特定の化合物を反応器に再循環させるのに都合が良いためである。電気化学反応器114内の汚染物質濃度は、電気化学反応器114に供給される再循環廃水ストリーム126の量を制御すること、並びに、ブローダウンストリーム128を可能にする実施形態においてはその量を制御することによって、制御される。再循環廃水ストリーム126の流れは、バルブ123およびバルブ125によって制御され、ブローダウンストリーム128の流れは、バルブ123およびバルブ129によって制御される。
【0034】
分離デバイス104で使用する膜またはプロセスのタイプは、濾過する必要のある化合物/汚染物質、および/または通過させるべき化合物/汚染物質に応じて選択することができる。通常、一価および二価の化合物を含む殆どの可溶性化合物を保持するために逆浸透膜が使用され、それらの化合物はリジェクトストリームに保持され、反応器に再循環される(例えば、アンモニア処理のために反応器タンクに再循環される塩化物、導電性向上のために反応器タンクに再循環される硫酸ナトリウムなど)。代替的には、ナノ濾過膜または限外濾過膜を分離デバイス104に使用することができ、そのような膜は、処理のために電気化学反応器に再循環される医薬有効成分などの大きな汚染物質の通過を阻止する。分子サイズ、電荷または他の特性により、あるいはそれらの組合せにより、化合物を分離する他の膜タイプを、分離デバイス104で使用することができる。様々な材料(ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース-硝酸セルロース混合物、ポリテトラフルオロエチレン、セラミックなど)で作られた膜を処理に利用することができる。また、分離デバイスは、膜を使用する代わりに、蒸留または類似のプロセスを使用して汚染物質を分離することができる。何れにしても、分離デバイスで使用される膜または分離プロセスは、廃水ストリームから除去する必要のある任意の可溶性または不溶性の汚染物質を高度に排除することができる。
【0035】
図示の実施形態では、廃水の導電性を高めるための電解質溶液、例えば硫酸ナトリウム(NaSO)がポンプ130によってタンク132から反応器タンク102に供給され、pH制御溶液、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)がポンプ134によってタンク136から反応器タンク102に供給されている。
【0036】
電気化学的廃水処理システム100は、空気ファンポンプ140をさらに備えることができ、この空気ファンポンプが、反応器タンク102の上部に新鮮な空気の流れ142を送り込み、反応器タンク内で発生する排気ガスを同伴し、それらを反応器排気133として外部に除去する。
【0037】
分離デバイスに膜を使用する実施形態の場合、電気化学的廃水処理システムは、膜前処理溶液タンク150も含むことができ、そこから、抗シーラント、殺生物剤またはメタ重亜硫酸ナトリウム(SMBS)などの前処理溶液がポンプ152により流出廃水ストリームに供給されて、分離デバイス104に運ばれ、それにより膜の状態を最適なレベルに維持することができる。
【0038】
本発明の別の実施形態が図2に示されている。電気化学的廃水処理システム200は、反応器タンク202と、電気化学反応器214と、分離デバイス204とを備えている。この実施形態では、処理すべき廃水のストリーム206は、最初に均等化タンク208に供給され、次にポンプ210によって反応器タンク202に供給される。反応器タンク202から廃水は、ポンプ215によって電気化学反応器214に供給され、そこで電気化学的に処理される。電気化学反応器214は、廃水中の汚染物質を処理するために様々な触媒を使用することができる複数の電気化学セル216を含むことができる。反応器流出ストリーム227は、反応器タンク202に送り返される。
【0039】
流出廃水ストリーム218は、ポンプ220によって反応器タンク202から分離デバイス204に供給され、そこで、選択された可溶性および不溶性化合物が流出廃水ストリーム218から濾過されてリジェクトストリーム224を生成し、処理済み廃水ストリーム222が、分離デバイス204から流出し、再利用または貯蔵のためにタンクに排出されるか、または下水道または地表水域に排出され得る。
【0040】
流出廃水ストリーム218から分離されたリジェクトストリーム224は、分離デバイス204から流出し、反応器タンク202に戻る再循環廃水ストリーム226である第1のストリームと、システムから排出されるブローダウンストリーム228である第2のストリームとの2つのストリームに分けられる。再循環廃水ストリーム226は、通常、ブローダウンストリーム228よりも量が多い。リジェクトストリーム224の一部を再循環廃水ストリーム226として反応器タンク202内に戻すことにより、電気化学反応器214にさらに供給される反応器タンク202内の廃水中の汚染物質の濃度が高められる。さらに、反応器タンク202に戻される化合物は、分離デバイス204で使用される膜のタイプあるいはプロセスのタイプに応じて選択されるため、反応器タンク202に戻される化合物と電気化学反応器214に戻される化合物の種類と量を容易に制御することができる。
【0041】
電気化学的廃水処理システム200は、反応器タンク202の上部に新鮮な空気の流れを送り込んで、廃水処理中に発生したガスを反応器排気233として排気する空気ファンポンプ240をさらに備えることができる。
【0042】
分離デバイス204が分離膜を含む場合、電気化学的廃水処理システムは、膜前処理溶液タンク250をさらに含むことができ、そこから、前処理溶液(抗シーラント、殺生物剤、SMBS)がポンプ252により流出廃水ストリーム218に供給されて、分離デバイス204に運ばれ、それにより膜の状態を最適なレベルに維持することができる。
【0043】
第1の実施形態と同様に、廃水の導電性を高めるための溶液、例えば硫酸ナトリウム(NaSO)がポンプ230によってタンク232から反応器タンク202に供給され、pH調整用の溶液、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)がポンプ234によってタンク236から供給されている。
【0044】
本発明のこの第2の実施形態は、上述した第1の実施形態と同様の利点を有する。反応器タンク202内および電気化学反応器214内の可溶性および不溶性化合物(汚染物質を含む)の濃度は増加し、かつ、再循環廃水ストリーム226として反応器タンク202に再循環される通過量を制御すること、並びに、ブローダウンストリーム228としてリジェクトストリーム224が排出されるシステムにおいて、そのリジェクトストリームの部分を制御することにより、制御することができる。分離デバイス204で使用される膜は、逆浸透膜、ナノ濾過膜、限外濾過膜、または分子サイズ、電荷、他の特性またはそれらの組合せにより化合物を分離する他のタイプの膜とすることができ、分離デバイスは、不溶性または可溶性の汚染物質を分離するために蒸留または当技術分野で知られている他のプロセスを使用するものであってもよい。
【0045】
図3は、本発明の別の実施形態を示している。電気化学的廃水処理システム300は、図1および図2に示す廃水処理システムと同じ主要構成要素、すなわち、反応器タンク302と、電気化学反応器314と、反応器タンク302の下流に位置する分離デバイス304とを備える。処理すべき廃水のストリーム306は、均等化タンク308内に供給され、ポンプ310により反応器タンク302に供給される。反応器タンクからの廃水は、ポンプ315により電気化学反応器314に供給され、この電気化学反応器は、廃水を電気化学的に処理する複数の電気化学セル316を含むことができる。反応器流出ストリーム327は、反応器タンク302に送り返される。
【0046】
反応器タンク302からの流出廃水ストリーム318は、ポンプ320によって分離デバイス304に供給され、そこで、可溶性および不溶性化合物が流出廃水ストリーム318から濾過され、処理済み廃水ストリーム322が分離デバイス304から流出する。分離デバイス304で使用される膜は、逆浸透膜、ナノ濾過膜、限外濾過膜、または分子サイズ、電荷、他の特性またはそれらの組合せにより化合物を分離する他のタイプの膜とすることができる。分離デバイス304は、流出廃水ストリームから可溶性または不溶性の汚染物質を分離するために、膜を使用する代わりに、別の分離プロセス(例えば、蒸留)を使用することができる。
【0047】
流出廃水ストリーム318から分離されたリジェクトストリーム324は、分離デバイス304から流出して反応器タンク302に戻り、それによって反応器タンク302内、さらには電気化学反応器314内の汚染物質および他の可溶性および不溶性化合物の濃度を高めることができる。この実施形態では、リジェクトストリーム324全体を、濃縮廃水からなる再循環廃水ストリームとして反応器タンク302に戻している。上述した実施形態と同様に、反応器タンク302に戻される可溶性化合物および不溶性化合物は、分離デバイス304で使用される膜のタイプまたはプロセスのタイプに応じて選択されるため、反応器タンク302に戻されて反応器314に運ばれる汚染物質およびすべての可溶性および不溶性化合物の種類および量を容易に制御することができる。
【0048】
他の実施形態と同様に、空気ファンポンプ340は、新鮮な空気の流れを反応器タンク302の上部に送り込んで、廃水処理中に発生したガスを反応器排気333として排出する。
【0049】
この実施形態は、ブローダウンストリームがリジェクトストリームの一部ではないという点で、上述した第1および第2の実施形態とは異なる。代わりに、ブローダウンストリーム328は、ポンプ329によって反応器タンク302から排出され、反応器タンク302内の汚染物質濃度、さらには反応器314内の汚染物質濃度は、再循環廃水ストリームとして反応器タンクに再循環されるリジェクトストリーム324の量を制御すること、並びに、反応器タンク302から排出されるブローダウンストリーム328の量を制御することによって制御される。
【0050】
図1に示す実施形態と同様に、ブローダウンストリーム328は、図3に示すように、処理済み廃水ストリーム322と混合されて、処理水ストリーム321を形成することができる。処理水ストリームは、再利用または貯蔵のためにタンクに排出することができ、あるいは下水道または地表水域に排出することができる。
【0051】
第1の実施形態と同様に、廃水の導電性を高めるための溶液、例えば硫酸ナトリウム(NaSO)がポンプ330によってタンク332から反応器タンク302に供給され、pH制御溶液、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)がポンプ334によってタンク336から供給される。また、分離デバイスが汚染物質の濃縮に膜を使用する実施形態では、膜の状態を維持するために、抗シーラント溶液が、ポンプ352によって抗シーラント溶液タンク350から流出廃水ストリームに供給されて、分離デバイス304に運ばれる。
【0052】
ブローダウンストリームを有する実施形態では、反応器タンク内の汚染物質濃度、ひいては電気化学反応器内の汚染物質濃度をより良好に制御することができる。図1に示すようなシステムを用いて行われたモデリングにおいては、タンク反応器容積を260ガロンとし、15,000cmの総活性面積を有するBDD(ホウ素ドープダイヤモンド)電極を用いて、4,000mg/LのTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)を含む廃水ストリームを、電流1,500A、電流密度0.1A/cmで処理し、0.18056GMPの固定流量で、リジェクトストリームの量を流出廃水ストリームの75%、ブローダウンストリームの量をリジェクトストリームの20%に制御したところ、72時間の運転後、図4Aの流出物として示され、ブローダウンストリームと処理済み廃水ストリームの組合せである処理水ストリーム中の汚染物質濃度は680mg/LのTMAHに低下し、これは汚染物質濃度が83%減少し、必要な汚染物質濃度である1,000mg/LのTMAHを下回ることを示している。これにより、システムはバッチ式反応器よりも高い平均除去効率で運転することができ、CSTRよりも優れた排水品質を提供することができる。これらの結果は、反応器内、流出物(処理水ストリーム)中の汚染物質濃度流量、および要求される汚染物質濃度流量を表す図4Aに示されている。
【0053】
これらの結果は、当業者に知られている1段、2段または3段の常時攪拌槽型反応器を用いて同じ電気化学的活性領域の下で達成される除去流量よりも改善されていることを示しており、常時攪拌槽型反応器では、72時間の運転後、処理水ストリーム中の汚染物質濃度が、図4Bに示すように、必要な汚染物質濃度である1,000mg/LのTMAHを超えたままであった。
【0054】
本システムの別の実施形態が図5に示されている。この実施形態では、電気化学的廃水処理システム400が、これまでの実施形態で示した廃水処理システムと同じ主要構成要素、すなわち、反応器タンク402と、電気化学反応器414と、反応器タンク402の下流に位置する分離デバイス404とを備える。本実施形態がこれまでの実施形態と異なるのは、処理すべき廃水のストリーム406が、ポンプ410によって調整タンク411に供給された後に反応器タンク402に供給される点である。これは、本実施形態において、以下でさらに説明するように、システムがバッチモードで動作するために必要である。さらに、これにより、分離デバイス404の膜を損傷する可能性のある特定の汚染物質(例えば、金属)を処理すべき廃水から除去することができる。その結果、ストリーム406からの廃水は、そのような汚染物質を除去するために、例えば化学的沈殿によって、調整タンク411内で処理することができる。処理後、前処理された廃水のストリーム405は、ポンプ403によって調整タンク411から反応器タンク402に供給される。
【0055】
廃水はさらに、ポンプ415によって反応器タンク402から電気化学反応器414に供給され、この電気化学反応器は、廃水を電気化学的に処理する複数の電気化学セル416を含むことができる。反応器流出ストリーム427は、反応器タンク402に送り返される。
【0056】
反応器タンク402から出てくる流出廃水ストリーム418は、ポンプ420によって膜供給タンク407に供給され、さらにポンプ409によって分離デバイス404に供給され、そこで、流出廃水ストリーム418から可溶性および不溶性化合物が濾過され、処理済み廃水ストリーム422が分離デバイス404から流出する。他の実施形態と同様に、分離デバイス404で使用される膜は、逆浸透膜、ナノ濾過膜、限外濾過膜、または分子サイズ、電荷、他の特性またはそれらの組合せにより化合物を分離する他の任意のタイプの膜であり得る。
【0057】
流出廃水ストリーム418から分離されたリジェクトストリーム424は、分離デバイス404から流出し、再循環水ストリームとして調整タンク411に戻り、それにより、流入する廃水中の、さらには反応器タンク402内および電気化学反応器414内の、1または複数の汚染物質および他の可溶性および不溶性化合物の濃度を高めることができる。この実施形態では、リジェクトストリーム424全体が再循環廃水ストリームとして調整タンク411に戻され、その後、反応器タンクおよび電気化学反応器に供給される。ブローダウンストリームがなく、リジェクトストリーム全体が反応器タンクに戻されるこのような実施形態は、処理すべき廃水が、例えば厳しい排出規制のある有機物を含み、そのような成分の全量をシステムに戻すことがシステムにとって有益であるような用途に有利である。同じことが、システム内で完全に再循環される導電性向上物質にも当てはまる。このような実施形態では、反応器タンクおよび反応器に送り返される汚染物質の量が、分離デバイス404のタイプおよび特性によって制御される。
【0058】
概略図は、ポンプ434によって、必要な添加化学物質を反応器タンク402に送出する化学物質送出システム436を象徴的に示している。そのような化学物質は、廃水の導電性を高めるための溶液、例えば硫酸ナトリウム(NaSO)、pH制御溶液、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、および/または、膜が使用される場合には、分離デバイス404の膜の状態を維持するための抗シーラントまたは殺生物溶液を含むことができる。
【0059】
上述した実施形態と同様に、反応器タンク402に戻される可溶性化合物および不溶性化合物は、分離デバイス404のタイプ(例えば、使用される膜のタイプ)に応じて選択されるため、反応器タンク402に戻されて反応器414に運ばれる汚染物質およびすべての可溶性および不溶性化合物の種類と量を容易に制御することができる。
【0060】
他の実施形態と同様に、空気ファンポンプ440が新鮮な空気の流れを反応器タンク402の上部に送り込んで、廃水処理中に発生したガスを反応器排気433として排出する。
【0061】
図5に示すシステムはバッチモードで動作するが、これは、一定量の廃水(バッチ)が調整タンク411に、さらに反応器タンク402に供給され、それが反応器414でさらに処理され、必要な汚染物質除去に十分な長さの予め設定された期間、システムを通って再循環され、処理すべき廃水の次のバッチが、廃水の最初のバッチが完全に処理されてシステムから排出された後にのみ、調整タンクおよび反応器タンクに供給されることを意味している。流出廃水ストリーム418は、分離デバイス404に連続的に供給することができ、リジェクトストリーム424は、汚染物質の量を制御するために、図1および図2に示す実施形態における再循環廃水ストリームと同様に、システムに連続的に送り返すことができる。システムは一連の異なるプロセスステップで動作し、それぞれのタンクが特定の設定順序で充填および排出され、それが時間の経過とともに繰り返される。
【0062】
本システムおよび方法の利点は、反応器内の可溶性および不溶性化合物の濃度が、反応器流出ストリーム中の化合物の濃度から切り離されることであり、これにより、反応器の性能が向上し、より高品質の流出物を得ることができる。
【0063】
本発明において、「可溶性および不溶性化合物」という用語は、廃水の電気化学的処理によって除去する必要のある、廃水中に見られる様々な汚染物質を含むことも意味している。
【0064】
ここに提示したすべての図面にブローダウンストリームが図示されているとしても、当業者は、本開示の教示に基づいて、反応器タンク内および反応器内の化合物の濃度を制御するために、すべての場合に必ずしもブローダウンストリームが必要とされるわけではないことを理解するであろう。
【0065】
本発明の特定の要素、実施形態および用途を示して説明してきたが、当業者であれば、特に上述した教示に鑑みて、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく修正を加えることができることから、当然のことながら、本発明はそれらに限定されるものではないことを理解されたい。そのような修正は、添付の特許請求の範囲内に包含されると見なされるべきである。
【0066】
上述した様々な実施形態は、更なる実施形態を提供するために組み合わせることができる。2018年10月25日に出願された米国仮特許出願第62/750,354号を含む、本明細書で言及され、かつ/または出願データシート(ある場合)に挙げられた、米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物はすべて、その全体が引用により本明細書に援用されるものとする。実施形態の態様は、必要に応じて、様々な特許、出願および刊行物の概念を使用して、更なる実施形態を提供するように修正することができる。上述した詳細な説明を考慮して、それらの変更および他の変更を実施形態に加えることができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を明細書および特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を有する完全な範囲の均等物とともに、すべての可能性のある実施形態を含むと解釈されるべきである。すなわち、特許請求の範囲は、本開示によって限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的廃水処理システムであって、
-処理すべき廃水のストリームを受け入れる反応器タンクと、
-電気化学反応器と、
-前記反応器タンクからの流出廃水ストリームを受け入れて、システムから排出される処理済み廃水ストリームと、リジェクトストリームとを生成する分離デバイスであって、前記リジェクトストリームの少なくとも一部が、再循環廃水ストリームとして、前記電気化学反応器に供給されるか、または前記反応器タンクに戻される、分離デバイスとを備え、
前記電気化学反応器が、前記分離デバイスから供給された前記再循環廃水ストリーム、または前記再循環廃水ストリームを含む前記反応器タンクから供給された廃水を処理して、前記反応器タンクに送り返す反応器流出ストリームを生成することを特徴とする電気化学的廃水処理システム。
【外国語明細書】