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特開2024-156888質量分析とインターフェースを取るマイクロ流体システムのためのソフトウェア
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156888
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】質量分析とインターフェースを取るマイクロ流体システムのためのソフトウェア
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20241029BHJP
   G01N 27/447 20060101ALI20241029BHJP
   H01J 49/00 20060101ALI20241029BHJP
   H01J 49/14 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
G01N27/62 D
G01N27/62 V
G01N27/62 G
G01N27/447 331K
G01N27/447 315K
H01J49/00 360
H01J49/14 700
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024128797
(22)【出願日】2024-08-05
(62)【分割の表示】P 2022529848の分割
【原出願日】2020-11-24
(31)【優先権主張番号】62/940,071
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/966,372
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/021,020
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/078,856
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VISUAL BASIC
2.BRIJ
3.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】518187374
【氏名又は名称】インタバイオ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】エリック ジェンタレン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブ レイシー
(72)【発明者】
【氏名】スコット マック
(72)【発明者】
【氏名】ルーク ブッス
(72)【発明者】
【氏名】モーテン ジェンセン
(72)【発明者】
【氏名】マリアム エルナガー
(72)【発明者】
【氏名】マグダレーナ オストロフスキ
(57)【要約】
【課題】質量分析とインターフェースを取るマイクロ流体システムのためのソフトウェアの提供。
【解決手段】エレクトロスプレーイオン化質量分析計(ESI-MS)データの品質を改良するための方法、デバイス、およびシステムが、説明され、化学分離データと質量分析データとの間の改良された相関を達成するための方法、デバイス、およびシステムも、説明される。本明細書に説明されるいくつかの実施形態は、質量分析検出と統合される毛細管およびマイクロ流体ベースの分離システムからのデータを分析し、その動作を指示するための革新的ソフトウェアならびにシステムに関する。いくつかの実施形態では、分析物が、毛細管における、またはマイクロ流体デバイス上での分離の間に撮像され、分子量または質量/電荷比が、分離後に質量分析計において測定される。
【選択図】図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ実装方法であって、前記コンピュータ実装方法は、
(a)プロセッサを使用して、
(i)分離チャネルにおいて実行される等電点電気泳動分離からの前記分離チャネルに沿った長さの関数としての複数の強度または複数の吸光度測定値を備える第1のデータセットと、
(ii)時間の関数としての複数の質量分析計全イオン測定値を備える第2のデータセットと
を受信することと、
(b)前記プロセッサを使用して、前記第2のデータセットを、質量の関数としての複数のイオンカウント測定値を備える第3のデータセットに変換することと、
(c)前記プロセッサを使用して、前記第1のデータセットのプロットおよび前記第3のデータセットのプロットをオーバーレイすることと
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
(c)は、前記プロセッサを使用して、前記第2のデータセットのプロットを、前記第1のデータセットのプロットおよび前記第3のデータセットのプロットとオーバーレイすることをさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
(c)は、前記第2のデータセットの畳み込みを解くことにより、前記第3のデータセットを生成することを含む、請求項1または請求項2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
(c)において、前記第1のデータセットの強度または吸光度における第1のピークが、前記第3のデータセットのピークのセットにマッピングされる、請求項1~3のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記第2のデータセットは、前記第1のデータセットを前記第3のデータセットの前記ピークのセットにマッピングするために使用される、請求項4に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記コンピュータ実装方法は、前記プロセッサを使用して、前記第1のピークを前記ピークのセットに相関させることにより、前記第1のピークの少なくとも1つの分析物種の質量分布および等電点を決定することをさらに含む、請求項4に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記第1のピークは、分析物ピークに対応し、前記分析物ピークにおける1つ以上の分析物種の等電点に関する情報をもたらす、請求項4に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記ピークのセットは、前記分析物ピークにおける前記1つ以上の分析物種の質量分布に対応する、請求項7に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記コンピュータ実装方法は、前記プロセッサを使用して、所与の等電点に関して、前記分析物ピークにおける前記1つ以上の分析物種の識別を決定することをさらに含む、請求項8に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記1つ以上の分析物種は、異なるタンパク質アイソフォームを含む、請求項9に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記タンパク質アイソフォームは、タンパク質の異なる翻訳後修飾を含み、前記翻訳後修飾は、水酸化、メチル化、脂質化、アセチル化、ジスルフィド結合、スモイル化、ユビキチン化、グリコシル化、糖化、アミノ酸添加または除去、アミド化、脱アミド化、異性化、酸化、フコシル化、シアリル化、リン酸化から成る群から選択される、請求項10に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記オーバーレイプロットは、(i)前記分離チャネルに沿った前記長さの関数としての前記複数の強度または複数の吸光度測定値のうちの強度または吸光度測定値、および、(ii)質量の関数としての複数のイオンカウント測定値の時系列を示す、請求項1~11のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
前記コンピュータ実装方法は、質量分析計に結合された単一の統合マイクロ流体デバイスを使用して、前記等電点電気泳動分離および動員およびエレクトロスプレーイオン化を実行することにより、前記第1のデータセットおよび前記第2のデータセットを取得することをさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項14】
(b)および(c)は、前記ESI-MSから1分以内に実行される、または、前記ESI-MSと並行して実行される、請求項13に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項15】
(b)および/または(c)は、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)データを入手または処理するためのソフトウェアパッケージの一部として自動的に実行される、請求項1~14のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その出願がそれぞれ、あらゆる意図および目的のためにその全体として本明細書に組み込まれる、2020年9月15日に出願された米国仮特許出願第63/078,856号、2020年5月6日に出願された米国仮特許出願第63/021,020号、2020年1月27日に出願された米国仮特許出願第62/966,372号、および2019年11月25日に出願された米国仮特許出願第62/940,071号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、化学分析の分野に関し、具体的には、混合物中の分析物の分離および質量分析計(MS)によるそれらの後続分析に関する。分析物の本質的な品質に基づくより複雑な分析物混合物からの分析物成分の分離およびその品質の状態に関して濃縮される分画のセットの提供は、分析化学の重要な部分である。このように複雑な混合物を簡略化することは、下流分析の複雑性を低減させる。しかしながら、公知の濃縮方法および/またはデバイスを分析機器ならびに/もしくは技法とインターフェースを取ることを試みるとき、複雑な問題が、生じ得る。
【0003】
種々の方法が、例えば、タンパク質サンプル調製技法を質量分析計等の下流検出システムとインターフェースを取るために使用されている。一般的な方法は、液体クロマトグラフィを使用してサンプルを調製し、質量分析(LC-MS)のための分画を収集することである。これは、タンパク質サンプルがペプチド断片に分解されることを要求し、分析されなければならない多数のサンプル分画および実行後の複雑なデータ再構築につながる不利点を有する。ある形態の液体クロマトグラフィ、例えば、ペプチドマップ逆相クロマトグラフィが、質量分析計に結合されることができるが、これらの公知の技法は、無傷のタンパク質ではなく、ペプチド断片を使用することに制限され、これは、その有用性を限定する。
【0004】
サンプルを質量分析計の中に導入する別の方法は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)である。ESIでは、サンプルおよび溶液の小液滴が、毛細管先端またはエミッタ先端と質量分析計源板との間の電場の印加によって、エミッタ先端もしくはオリフィス等のエレクトロスプレー特徴を備える毛細管またはマイクロ流体デバイスの遠位端から放出される。液滴は、本誘起電場内で延伸および拡張し、円錐形放出(すなわち、「テイラー円錐」)を形成し、これは、蒸発し、さらなる分離および検出のために質量分析計の中に導入される気相イオンを生成する、ますます小さい液滴を含む。典型的には、エミッタ先端は、ESIのための便宜的な液滴体積を提供する、毛細管から形成される。しかしながら、毛細管は、多段階サンプル処理を可能にしない線形流路に限定される。ESIはまた、分析全体を通して一定のままであるために、ESI先端における電圧に依存し、これは、内部流体抵抗が経時的に変化し、電気回路の異なる部分における電圧降下を改変し、それによって、ESI先端における電圧を変化させ得る、多くのアッセイにおいて課題であり得る。
【0005】
他の研究が、マイクロ流体デバイスを用いて追求されている。マイクロ流体デバイスは、種々の公知の技法によって生産され、異なる流体操作を実施するように設計されるチャネルネットワークを構成し得る定義された寸法の流体チャネルを提供し得る。これらのデバイスは、毛細管よりも付加的レベルの制御および複雑性をもたらし、サンプル調製に関してそれらをより良好な選択肢にしている。しかしながら、毛細管のように、これらのツールは、多くの場合、質量分析計への導入に先立って分離された分析物分画の特性評価を、あるにしても、限定的に提供する。また、毛細管またはマイクロ流体デバイスを伴うシステムは、概して、動作の間にテイラー円錐を再確立するためにシステムを較正するためのいかなるツールも提供しない。
【0006】
エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)データの品質を改良するための方法、デバイス、システム、およびソフトウェアが、説明され、化学分離データおよび質量分析データのより定量的な特性評価ならびにそれらの間の改良された相関を達成するための方法、デバイス、システム、およびソフトウェアも、説明される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある側面では、本明細書に開示されるものは、(a)プロセッサを使用して、分離チャネルにおいて実施される等電点電気泳動分離の複数の画像を備える、時系列撮像データセットを受信するステップであって、複数の画像の各画像は、異なる時点に対応する、ステップと、(b)プロセッサを使用して、複数の画像の各画像を、対応する時点に関する分離チャネルの長さに沿った位置の関数としての強度または吸光度測定値に変換するステップと、(c)プロセッサを使用して、分離チャネルの長さに沿った位置の関数として、および時間の関数としての強度または吸光度測定値のヒートマップもしくは3次元プロットを発生させるステップとを含む、コンピュータ実装方法である。
【0008】
いくつかの実施形態では、時系列撮像データセットはさらに、分離チャネルにおける分離された分析物ピークの動員の複数の画像を備える。いくつかの実施形態では、時系列撮像データセットは、複数の紫外線(UV)吸光度画像を備える。いくつかの実施形態では、時系列撮像データセットは、複数の蛍光画像を備える。いくつかの実施形態では、蛍光画像は、自然蛍光の画像を備える。いくつかの実施形態では、時系列撮像データセットは、1分あたり少なくとも1つの画像のフレームレートにおいて入手される複数の画像を備える。いくつかの実施形態では、時系列撮像データセットは、30秒あたり少なくとも1つの画像のフレームレートにおいて入手される複数の画像を備える。いくつかの実施形態では、時系列撮像データセットは、10秒あたり少なくとも1つの画像のフレームレートにおいて入手される複数の画像を備える。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、等電点電気泳動分離が実施される間、分離チャネルを撮像するステップを含み、(a)-(c)は、画像が入手される際に反復的に実施される。いくつかの実施形態では、ヒートマップまたは3次元プロットは、等電点電気泳動分離を付加的等電点電気泳動分離と比較するステップ、動員反応を等電点電気泳動分離と比較するステップ、動員反応を付加的動員反応と比較するステップ、等電点電気泳動分離の完了を決定するステップ、動員反応の進行を監視するステップ、電気浸透流の存在を決定するステップ、分離性能パラメータを決定するステップから成る群から選択される1つまたはそれを上回るタスクを実施するために使用される。いくつかの実施形態では、分離性能パラメータは、分離分解能である。
【0009】
別の側面では、本明細書に提供されるものは、(a)プロセッサを使用して、(i)分離チャネルにおいて実施される等電点電気泳動分離からの分離チャネルに沿った長さの関数としての複数の強度または吸光度測定値を備える、第1のデータセットと、(ii)時間の関数としての複数の質量分析計全イオン測定値を備える、第2のデータセットとを受信するステップと、(b)プロセッサを使用して、第2のデータセットを、質量の関数としてのイオンカウント測定値を備える、第3のデータセットに変換するステップと、(c)プロセッサを使用して、第1のデータセットおよび第3のデータセットのプロットをオーバーレイするステップとを含む、コンピュータ実装方法である。
【0010】
いくつかの実施形態では、(c)はさらに、プロセッサを使用して、第2のデータセットのプロットを、第1のデータセットおよび第3のデータセットのプロットとオーバーレイするステップを含む。いくつかの実施形態では、(c)は、第2のデータセットの畳み込みを解き、第3のデータセットを発生させるステップを含む。いくつかの実施形態では、(c)において、第1のデータセットの強度または吸光度における第1のピークが、第3のデータセットのピークのセットにマッピングされる。いくつかの実施形態では、第2のデータセットは、第1のデータセットを第3のデータセットのピークのセットにマッピングするために使用される。いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法はさらに、プロセッサを使用して、第1のピークをピークのセットに相関させ、該第1のピークの少なくとも1つの分析物種の質量分布および等電点を決定するステップを含む。いくつかの実施形態では、第1のピークは、分析物ピークに対応し、分析物ピークにおける1つまたはそれを上回る分析物種の等電点に関する情報をもたらす。いくつかの実施形態では、ピークのセットは、分析物ピークにおける1つまたはそれを上回る分析物種の質量分布に対応する。いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法はさらに、プロセッサを使用し、所与の等電点に関して、分析物ピークにおける1つまたはそれを上回る分析物種の識別を決定するステップを含む。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る分析物種は、異なるタンパク質アイソフォームを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質アイソフォームは、タンパク質の異なる翻訳後修飾を含む。いくつかの実施形態では、オーバーレイプロットは、(i)分離チャネルに沿った長さの関数としての複数の強度または吸光度測定値の強度もしくは吸光度測定値および(ii)質量の関数としてのイオンカウント測定値の時系列を示す。いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法はさらに、質量分析計に結合される単一の統合マイクロ流体デバイスを使用して、等電点電気泳動分離、動員、およびエレクトロスプレーイオン化を実施し、第1のデータセットおよび第2のデータセットを取得するステップを含む。いくつかの実施形態では、(b)および(c)は、ESI-MSから1分以内に、またはそれと並行して実施される。いくつかの実施形態では、(b)または(c)は、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)データを入手もしくは処理するためのソフトウェアパッケージの一部として自動的に実施される。いくつかの実施形態では、(b)および(c)は、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)データを入手または処理するためのソフトウェアパッケージの一部として自動的に実施される。
【0011】
別の側面では、本明細書に提供されるものは、(i)1つまたはそれを上回る分析物種に関する質量分析データおよび(ii)1つまたはそれを上回る分析物種の等電点電気泳動データを使用し、翻訳後修飾を1つまたはそれを上回る分析物種に割り当てるステップを含む、方法である。
【0012】
いくつかの実施形態では、翻訳後修飾は、水酸化、メチル化、脂質化、アセチル化、ジスルフィド結合、スモイル化、ユビキチン化、グリコシル化、糖化、アミノ酸添加または除去、アミド化、脱アミド化、異性化、酸化、フコシル化、シアリル化、およびリン酸化から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、1つまたはそれを上回る分析物種を含む分析物の混合物に対して等電点電気泳動分離を実施し、等電点電気泳動データを発生させるステップと、1つまたはそれを上回る分析物種を動員するステップと、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)を実施し、質量分析データを発生させるステップとを含む。いくつかの実施形態では、等電点電気泳動分離および動員は、分離チャネルと、統合エレクトロスプレー先端とを備える、単一のマイクロ流体デバイスを使用して実施される。いくつかの実施形態では、等電点電気泳動データは、分離チャネルに沿った距離の関数としての1つまたはそれを上回る強度もしくは吸光度測定値を備え、強度または吸光度測定値におけるピークは、同一の所与の等電点を有する1つまたはそれを上回る分析物種を備える、分析物ピークに対応する。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、所与の等電点に関して、質量分析データを使用し、1つまたはそれを上回る分析物種の少なくとも1つの翻訳後修飾を区別するステップを含む。いくつかの実施形態では、等電点電気泳動データは、1つまたはそれを上回る分析物種の等電点に関する情報を備え、質量分析データは、1つまたはそれを上回る分析物種の質量に関する情報を備える。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、複数の翻訳後修飾の等電点偏移および質量偏移の既知の値を使用し、翻訳後修飾を1つまたはそれを上回る分析物種のうちの少なくとも1つに割り当てるステップを含む。いくつかの実施形態では、翻訳後修飾の割当は、ESI-MSデータの入手から1分以内に行われる。いくつかの実施形態では、等電点電気泳動データは、1つまたはそれを上回る分析物種の1つまたはそれを上回る等電点に関する情報を備え、質量分析データは、1つまたはそれを上回る分析物種の1つまたはそれを上回る質量に関する情報を備え、翻訳後修飾は、1つまたはそれを上回る等電点および1つまたはそれを上回る質量を、複数の翻訳後修飾の複数の既知の等電点および質量値を備える参照に合致させることによって割り当てられる。いくつかの実施形態では、参照は、公的に利用可能なデータを備える。
【0013】
別の側面では、本明細書に提供されるものは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)先端と質量分析計入口との間の一定の電圧差を維持するための方法であり、本方法は、(a)第1の電圧を分離チャネルの近位端に印加するステップであって、分離チャネルの遠位端は、ESI先端と流体連通および電気連通する、ステップと、(b)第2の電圧を補助流体チャネルの近位端に印加するステップであって、補助流体チャネルの遠位端は、分離チャネルの遠位端と流体連通および電気連通する、ステップと、(c)分離反応を実施し、分析物の混合物を分離するステップであって、分離反応は、分離チャネル内で行われる、ステップと、(d)質量分析計入口に印加される第3の電圧を調節するフィードバックループにおいて、分離チャネルの抵抗の変化またはESI先端における電圧の変化を監視し、ESI先端と質量分析計入口との間の一定の電圧差を維持するステップとを含む。いくつかの実施形態では、分離チャネルは、毛細管の管腔である。いくつかの実施形態では、毛細管は、マイクロバイアルスプレー先端を備える。いくつかの実施形態では、分離チャネルは、マイクロ流体デバイス内の流体チャネルである。いくつかの実施形態では、分離反応は、等電点電気泳動反応を備える。いくつかの実施形態では、分離反応は、電気泳動分離反応を備える。いくつかの実施形態では、第1の電圧は、分離チャネルに結合されるカソードにおいて印加され、第2の電圧は、分離チャネルに結合されるアノードにおいて印加される。いくつかの実施形態では、ESI先端または質量分析計入口における電圧は、接地において保持される。いくつかの実施形態では、質量分析計入口における電圧は、第3の電圧において保持される。いくつかの実施形態では、第3の電圧は、ESI先端において測定される過渡電圧変化を第3の電圧に追加することによって調節される。いくつかの実施形態では、ESI先端における電圧は、電力供給源を使用して測定される。いくつかの実施形態では、電力供給源は、分離チャネルに結合される。いくつかの実施形態では、電力供給源は、分離チャネルに結合される別のチャネルに結合される。いくつかの実施形態では、電力供給源は、0マイクロアンペアに設定される。いくつかの実施形態では、ESI先端における電圧は、ESI先端において配置される電極を使用して測定され、電極は、0マイクロアンペアの電流を出力するように構成される。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、少なくとも0.1Hzの周波数において動作する。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、少なくとも10Hzの周波数において動作する。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、ESI先端における電圧を事前設定値の±10%以内に維持する。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、ESI先端における電圧を事前設定値の±1%以内に維持する。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、ESI先端と質量分析計入口との間の一定の電圧差を事前設定値の±10%以内に維持する。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、ESI先端と質量分析計入口との間の一定の電圧差を事前設定値の±1%以内に維持する。
【0014】
別の側面では、本明細書に開示されるものは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)先端と質量分析計入口との間の一定の電圧差(ΔVTIP-MS)を維持するための方法であり、本方法は、(a)ΔVTIP-MSに関する標的値(ΔVTARGET)を設定するステップと、(b)ESI先端における第1の電圧を周期的または連続的に監視するステップであって、ESI先端は、分離チャネルと流体連通および電気連通する、ステップと、(c)ΔVTIP-MSに関する瞬時値を計算するステップと、(d)フィードバックループを使用して、ΔVTIP-MS=ΔVTARGETとなるように質量分析計入口における第2の電圧を周期的または連続的に調節するステップとを含む。いくつかの実施形態では、分離チャネルは、毛細管の管腔である。いくつかの実施形態では、毛細管は、マイクロバイアルスプレー先端を備える。いくつかの実施形態では、分離チャネルは、マイクロ流体デバイス内の流体チャネルである。いくつかの実施形態では、分離チャネルにおいて実施される分離反応は、等電点電気泳動反応を備える。いくつかの実施形態では、分離反応が、分離チャネルにおいて実施され、その分離反応は、電気泳動分離反応を備える。いくつかの実施形態では、ESI先端における第1の電圧または質量分析計入口における第2の電圧は、接地において保持される。いくつかの実施形態では、ESI先端における第1の電圧は、ESI先端において配置される電極を使用して監視される。いくつかの実施形態では、ESI先端において配置される電極は、0マイクロアンペアの電流を出力するように構成される。いくつかの実施形態では、ESI先端における第1の電圧は、ESI先端の近傍の位置において分離チャネルと交差する流体チャネルと電気連通し、0マイクロアンペアの電流を出力するように構成される、電力供給源を使用して監視される。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、少なくとも0.1Hzの周波数において動作する。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、少なくとも10Hzの周波数において動作する。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、少なくとも100Hzの周波数において動作する。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、ΔVTIP-MSをΔVTARGETの±10%以内に維持する。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、ΔVTIP-MSをΔVTARGETの±1%以内に維持する。
【0015】
別の側面では、本明細書に開示されるものは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)先端と質量分析計の入口との間の一定の電圧差を維持するためのコンピュータ実装方法であり、本方法は、(a)プロセッサを使用して、ESI先端における第1の電圧の測定値を受信するステップであって、ESI先端は、分離チャネルと流体連通および電気連通する、ステップと、(b)プロセッサを使用して、質量分析計の入口における第2の電圧の測定値を受信するステップと、(c)プロセッサを使用して、第1の電圧を第2の電圧と比較するステップであって、第2の電圧が、第1の電圧と異なる場合、プロセッサは、ESI先端における電圧と質量分析計の入口における電圧との間の差異が、一定のままであるように、質量分析計の入口またはESI先端における電圧を調節させる、ステップとを含む。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、(d)フィードバックループを使用して、規定された周波数においてステップ(a)-(c)を繰り返すステップを含む。いくつかの実施形態では、分離チャネルは、(i)毛細管の管腔または(ii)マイクロ流体デバイス内の流体チャネルを備える。いくつかの実施形態では、毛細管は、マイクロバイアルスプレー先端を備える。いくつかの実施形態では、分離反応が、分離チャネルにおいて実施され、分離反応は、等電点電気泳動反応を備える。いくつかの実施形態では、ESI先端における電圧または質量分析計の入口における電圧は、接地において保持される。いくつかの実施形態では、ESI先端における電圧は、ESI先端において設置される電極を使用して測定される。いくつかの実施形態では、ESI先端における電圧は、ESI先端の近傍の分離チャネルと交差する流体チャネルと電気連通し、0マイクロアンペアの電流を出力するように構成される、電力供給源を使用して監視される。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、少なくとも0.1Hzの周波数において動作する。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、少なくとも10Hzの周波数において動作する。
【0016】
また、本明細書に開示されるものは、分離反応を実施する間に接地に対して一定の電圧においてエレクトロスプレーイオン化(ESI)先端を維持するための方法であり、本方法は、a)第1の電圧を分離チャネルの近位端に印加するステップであって、分離チャネルの遠位端は、ESI先端と流体連通および電気連通する、ステップと、b)第2の電圧を補助流体チャネルの近位端に印加するステップであって、補助流体チャネルの遠位端は、分離チャネルの遠位端と流体連通および電気連通する、ステップと、c)分離反応を実施し、分析物の混合物を分離するステップであって、分離反応は、分離チャネル内で行われる、ステップと、d)第1および第2の電圧を調節するフィードバックループにおいて、分離チャネルの抵抗の変化またはESI先端における電圧の変化を監視し、分離チャネルを横断する一定の電圧降下およびESI先端における一定の電圧を維持するステップとを含む。いくつかの実施形態では、分離チャネルは、毛細管の管腔である。いくつかの実施形態では、毛細管は、マイクロバイアルスプレー先端を備える。いくつかの実施形態では、分離チャネルは、マイクロ流体デバイス内の流体チャネルである。いくつかの実施形態では、分離反応は、等電点電気泳動反応を備える。いくつかの実施形態では、分離反応は、電気泳動分離反応を備える。いくつかの実施形態では、第1の電圧は、カソードにおいて印加され、第2の電圧は、アノードにおいて印加される。いくつかの実施形態では、ESI先端における電圧は、接地において保持される。いくつかの実施形態では、ESI先端における電圧は、第2の電圧において保持される。いくつかの実施形態では、第1および第2の電圧の調節は、第1の電圧および第2の電圧からESI先端において測定された過渡電圧変化を減算するステップを含む。いくつかの実施形態では、ESI先端における電圧は、第1または第2の電圧を提供する電力供給源を使用して測定される。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、少なくとも0.1Hzの周波数において動作する。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、少なくとも10Hzの周波数において動作する。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、ESI先端における電圧を事前設定値の±10%以内に維持する。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、ESI先端における電圧を事前設定値の±1%以内に維持する。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、分離チャネルを横断する電圧降下を事前設定値の±10%以内に維持する。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、分離チャネルを横断する電圧降下を事前設定値の±1%以内に維持する。
【0017】
また、本明細書に開示されるものは、a)2つまたはそれを上回る分析物の混合物を含む、サンプルを提供するステップと、b)サンプルを含有する流体チャネル内で分離を実施し、2つまたはそれを上回る分析物の混合物から個々の分析物ピークを分解するステップと、c)流体チャネル退出口に向かう流体チャネルの内容物の動員に応じて、分析物ピークの速度を計算するステップと、d)分析物ピークの速度を使用し、分析物ピークが流体チャネル退出口に到達する時間を決定するステップとを含む、方法である。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、毛細管の管腔である。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、マイクロ流体デバイスの一部である。いくつかの実施形態では、分離は、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリゾーン電気泳動(CZE)、キャピラリゲル電気泳動(CGE)、キャピラリ等速電気泳動(CITP)、またはミセル動電クロマトグラフィ(MEKC)に基づく。いくつかの実施形態では、分析物ピークの速度は、分析物ピークが第1の位置から第2の位置に移動するために要求される時間間隔から計算される。いくつかの実施形態では、第1の位置、第2の位置、および時間間隔は、流体チャネルの一連の2つまたはそれを上回る画像から決定される。いくつかの実施形態では、一連の2つまたはそれを上回る画像は、紫外線吸光度画像、可視光吸光度画像、もしくは蛍光画像を備える。いくつかの実施形態では、流体チャネル退出口は、質量分析計とのエレクトロスプレーインターフェースを備える。いくつかの実施形態では、分析物ピークが流体チャネル退出口に到達する時間は、質量分析計データを分析物ピークと相関させるために使用される。いくつかの実施形態では、流体チャネルの内容物の動員は、電気浸透動員技法、化学動員技法、流体力学動員技法、またはそれらの任意の組み合わせの使用を備える。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回る分析物は、タンパク質、タンパク質-薬物複合体、ペプチド、核酸分子、炭水化物分子、脂質分子、代謝物分子、小有機化合物、もしくはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、生物学的薬物候補および参照薬物のサンプルに関して収集された質量分析計データの比較が、生物学的類似性の決定を行うために使用される。いくつかの実施形態では、分析物ピークの速度は、分析物ピークの分離または動員に関する制御パラメータを調節するために、フィードバックループにおいて使用される。いくつかの実施形態では、制御パラメータは、電圧である。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、少なくとも0.1Hzの周波数において動作する。
【0018】
本明細書に開示されるものは、a)2つまたはそれを上回る分析物の混合物を含む、サンプルを提供するステップと、b)サンプルを含有する流体チャネル内で分離を実施し、2つまたはそれを上回る分析物の混合物から個々の分析物ピークを分解するステップと、c)質量分析計とのエレクトロスプレーインターフェースを介して流体チャネルから放出される2つまたはそれを上回る個々の分析物ピークに関する質量分析計データを収集するステップであって、質量分析計に関するデータ収集モードは、高質量走査と低質量走査との間で交互にされる、ステップとを含む、方法である。いくつかの実施形態では、質量分析計は、少なくとも0.5Hzの周波数において高質量走査および低質量走査データ収集モードの間で切り替えられる。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、毛細管の管腔である。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、マイクロ流体デバイスの一部である。いくつかの実施形態では、分離は、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリゾーン電気泳動(CZE)、キャピラリゲル電気泳動(CGE)、キャピラリ等速電気泳動(CITP)、またはミセル動電クロマトグラフィ(MEKC)に基づく。いくつかの実施形態では、高質量走査は、生体高分子に関する質量スペクトルデータを捕捉する。いくつかの実施形態では、生体高分子は、タンパク質、タンパク質-薬物複合体、核酸分子、還元タンパク質、融合タンパク質、タンパク質複合体、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、高質量走査に関するm/z比は、1,500~6,000に及ぶ。いくつかの実施形態では、低質量走査は、等電点電気泳動分離を実施する際に使用される溶液相両性電解質に関する質量スペクトルデータを捕捉する。いくつかの実施形態では、低質量走査に関するm/z比は、150~1,500に及ぶ。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る溶液相両性電解質の質量スペクトルは、高質量走査において同定される生体高分子に関する等電点(pI)を較正するために使用される。
【0019】
本明細書に開示されるものは、a)サンプルを含有する流体チャネル内で分離を実施するステップであって、サンプルは、2つまたはそれを上回る分析物の混合物を含み、分離は、2つまたはそれを上回る分析物の混合物から個々の分析物ピークを分解する、ステップと、b)流体チャネル退出口に向かって流体チャネルの内容物を動員するステップであって、流体チャネル退出口は、質量分析計とのエレクトロスプレーインターフェースを備える、ステップと、c)(i)(a)および(b)の間の分析物ピークの位置を監視するための流体チャネルの少なくとも一部ならびに(ii)エレクトロスプレー性能を監視するための流体チャネル退出口と質量分析計への入口との間に存在するテイラー円錐を同時に、または交互に撮像するステップとを含む、方法である。いくつかの実施形態では、流体チャネルの少なくとも一部の2つまたはそれを上回る画像における分析物ピークの位置は、分析物ピークに関する速度を計算するために使用される。いくつかの実施形態では、分析物ピークの速度は、分析物ピークが流体チャネル退出口に到達するであろう時間を決定するために使用される。いくつかの実施形態では、分析物ピークが流体チャネル退出口に到達する時間は、質量分析計データを分析物ピークと相関させるために使用される。いくつかの実施形態では、テイラー円錐の撮像から導出されるデータは、エレクトロスプレー性能を調節するために、フィードバックループにおいて使用される。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、少なくとも0.1Hzの周波数において動作する。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、毛細管の管腔である。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、マイクロ流体デバイスの一部である。いくつかの実施形態では、分離は、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリゾーン電気泳動(CZE)、キャピラリゲル電気泳動(CGE)、キャピラリ等速電気泳動(CITP)、またはミセル動電クロマトグラフィ(MEKC)に基づく。いくつかの実施形態では、撮像は、紫外線吸光度撮像、可視光吸光度撮像、または蛍光撮像を備える。いくつかの実施形態では、流体チャネルの内容物の動員は、電気浸透動員技法、化学動員技法、流体力学動員技法、またはそれらの任意の組み合わせの使用を備える。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回る分析物は、タンパク質、タンパク質-薬物複合体、ペプチド、核酸分子、炭水化物分子、脂質分子、代謝物分子、小有機化合物、もしくはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0020】
本明細書に開示されるものは、分離反応を実施する間に接地に対して一定の電圧においてエレクトロスプレーイオン化(ESI)先端を維持するためのコンピュータ実装方法であり、本方法は、a)プロセッサを使用して、ESI先端における電圧の第1の測定値を受信するステップであって、分離チャネルの遠位端は、ESI先端と流体連通および電気連通する、ステップと、b)プロセッサを使用して、ESI先端における電圧の第2の測定値を受信するステップと、c)プロセッサを使用して、第2の測定値を第1の測定値と比較するステップであって、第2の測定値が、第1の測定値と異なる場合、プロセッサは、ESI先端における電圧が、第1の測定値に戻されるように、分離チャネルの近位端における電圧および分離チャネルの遠位端と流体ならびに電気連通する遠位端を備える、補助流体チャネルの近位端における電圧を調節させる、ステップと、d)規定された周波数においてステップ(a)-(b)を繰り返すステップとを含む。いくつかの実施形態では、分離チャネルは、毛細管の管腔またはマイクロ流体デバイス内の流体チャネルを備える。いくつかの実施形態では、分離反応は、等電点電気泳動反応を備える。いくつかの実施形態では、分離反応は、電気泳動分離反応を備える。いくつかの実施形態では、ESI先端における電圧は、接地において保持される。いくつかの実施形態では、規定された周波数は、少なくとも1Hzである。いくつかの実施形態では、ESI先端における電圧は、規定された値の±5%以内に維持される。
【0021】
また、本明細書に開示されるものは、a)プロセッサを使用して、毛細管またはマイクロ流体デバイス内の分離チャネルの全てもしくは一部を撮像するように構成される検出器を使用して入手される2つまたはそれを上回る画像を備える、画像データを受信するステップと、b)同一または異なるプロセッサを使用して、画像データを処理し、2つまたはそれを上回る画像における分離チャネル内の分析物ピークの位置を決定するステップと、c)同一または異なるプロセッサを使用して、2つまたはそれを上回る画像における分析物ピークの位置および2つまたはそれを上回る画像の入手の間の既知の時間間隔に基づいて、分析物ピークの速度を計算するステップと、d)同一または異なるプロセッサを使用して、分析物ピークが分離チャネル出口に到達するであろう時間を決定するステップとを含む、コンピュータ実装方法である。いくつかの実施形態では、分離チャネル内で実施される分離反応は、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリゾーン電気泳動(CZE)、キャピラリゲル電気泳動(CGE)、キャピラリ等速電気泳動(CITP)、またはミセル動電クロマトグラフィ(MEKC)を備える。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回る画像は、紫外線吸光度画像、可視光吸光度画像、もしくは蛍光画像を備える。いくつかの実施形態では、分離チャネル出口は、質量分析計とのエレクトロスプレーインターフェースと流体連通する、またはそれを備える。いくつかの実施形態では、分析物ピークが分離チャネル出口に到達する時間は、質量分析計データを分析物ピークと相関させるために使用される。いくつかの実施形態では、分析物は、混合物から分離され、タンパク質、タンパク質-薬物複合体、ペプチド、核酸分子、炭水化物分子、脂質分子、代謝物分子、または小有機化合物を含む。いくつかの実施形態では、生物学的薬物候補および参照薬物のサンプルに関して収集された質量分析計データの比較が、生物類似性の決定を行うために使用される。いくつかの実施形態では、分析物ピークの速度は、分離チャネルにおいて実施される分離反応に関する制御パラメータを調節するために、フィードバックループにおいて使用される。いくつかの実施形態では、制御パラメータは、電圧である。いくつかの実施形態では、フィードバックループは、少なくとも0.1Hzの周波数において動作する。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
コンピュータ実装方法であって、
(a)プロセッサを使用して、分離チャネルにおいて実施される等電点電気泳動分離の複数の画像を備える時系列撮像データセットを受信することであって、前記複数の画像の各画像は、異なる時点に対応する、ことと、
(b)前記プロセッサを使用して、前記複数の画像の各画像を、前記対応する時点に関する前記分離チャネルの長さに沿った位置の関数としての強度または吸光度測定値に変換することと、
(c)前記プロセッサを使用して、前記分離チャネルの長さに沿った位置の関数として、および時間の関数としての前記強度または吸光度測定値のヒートマップまたは3次元プロットを発生させることと
を含む、コンピュータ実装方法。
(項目2)
前記時系列撮像データセットはさらに、前記分離チャネルにおける分離された分析物ピークの動員の複数の画像を備える、項目1に記載のコンピュータ実装方法。
(項目3)
前記時系列撮像データセットは、複数の紫外線(UV)吸光度画像を備える、項目1または項目2に記載のコンピュータ実装方法。
(項目4)
前記時系列撮像データセットは、複数の蛍光画像を備える、項目1-3のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
(項目5)
前記蛍光画像は、自然蛍光の画像を備える、項目4に記載のコンピュータ実装方法。
(項目6)
前記時系列撮像データセットは、1分あたり少なくとも1つの画像のフレームレートにおいて入手される複数の画像を備える、項目1-5のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
(項目7)
前記時系列撮像データセットは、30秒あたり少なくとも1つの画像のフレームレートにおいて入手される複数の画像を備える、項目6に記載のコンピュータ実装方法。
(項目8)
前記時系列撮像データセットは、10秒あたり少なくとも1つの画像のフレームレートにおいて入手される複数の画像を備える、項目7に記載のコンピュータ実装方法。
(項目9)
前記等電点電気泳動分離が実施される間、前記分離チャネルを撮像することをさらに含み、(a)-(c)は、前記画像が入手される際に反復的に実施される、項目1-8のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
(項目10)
前記ヒートマップまたは前記3次元プロットは、前記等電点電気泳動分離を付加的等電点電気泳動分離と比較すること、動員反応を前記等電点電気泳動分離と比較すること、前記動員反応を付加的動員反応と比較すること、前記等電点電気泳動分離の完了を決定すること、前記動員反応の進行を監視すること、電気浸透流の存在を決定すること、分離性能パラメータを決定することから成る群から選択される1つまたはそれを上回るタスクを実施するために使用される、項目1-9のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
(項目11)
前記分離性能パラメータは、分離分解能である、項目10に記載のコンピュータ実装方法。
(項目12)
コンピュータ実装方法であって、
(a)プロセッサを使用して、
(i)分離チャネルにおいて実施される等電点電気泳動分離からの前記分離チャネルに沿った長さの関数としての複数の強度または吸光度測定値を備える第1のデータセットと、
(ii)時間の関数としての複数の質量分析計全イオン測定値を備える第2のデータセットと
を受信することと、
(b)前記プロセッサを使用して、前記第2のデータセットを、質量の関数としてのイオンカウント測定値を備える第3のデータセットに変換することと、
(c)前記プロセッサを使用して、前記第1のデータセットおよび前記第3のデータセットのプロットをオーバーレイすることと
を含む、コンピュータ実装方法。
(項目13)
(c)はさらに、前記プロセッサを使用して、前記第2のデータセットのプロットを、前記第1のデータセットおよび前記第3のデータセットのプロットとオーバーレイすることを含む、項目12に記載のコンピュータ実装方法。
(項目14)
(c)は、前記第2のデータセットの畳み込みを解き、前記第3のデータセットを発生させることを含む、項目12または13に記載のコンピュータ実装方法。
(項目15)
(c)において、前記第1のデータセットの強度または吸光度における第1のピークが、前記第3のデータセットのピークのセットにマッピングされる、項目12-14のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
(項目16)
前記第2のデータセットは、前記第1のデータセットを前記第3のデータセットのピークのセットにマッピングするために使用される、項目15に記載のコンピュータ実装方法。
(項目17)
前記プロセッサを使用して、前記第1のピークを前記ピークのセットに相関させ、前記第1のピークの少なくとも1つの分析物種の質量分布および等電点を決定することをさらに含む、項目15に記載のコンピュータ実装方法。
(項目18)
前記第1のピークは、分析物ピークに対応し、前記分析物ピークにおける1つまたはそれを上回る分析物種の等電点に関する情報をもたらす、項目15に記載のコンピュータ実装方法。
(項目19)
前記ピークのセットは、前記分析物ピークにおける前記1つまたはそれを上回る分析物種の質量分布に対応する、項目18に記載のコンピュータ実装方法。
(項目20)
前記プロセッサを使用し、所与の等電点に関して、前記分析物ピークにおける前記1つまたはそれを上回る分析物種の識別を決定することをさらに含む、項目19に記載のコンピュータ実装方法。
(項目21)
前記1つまたはそれを上回る分析物種は、異なるタンパク質アイソフォームを含む、項目20に記載のコンピュータ実装方法。
(項目22)
前記タンパク質アイソフォームは、タンパク質の異なる翻訳後修飾を含む、項目21に記載のコンピュータ実装方法。
(項目23)
前記オーバーレイプロットは、(i)前記分離チャネルに沿った前記長さの関数としての前記複数の強度または吸光度測定値のうちの強度または吸光度測定値および(ii)質量の関数としてのイオンカウント測定値の時系列を示す、項目12-22のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
(項目24)
質量分析計に結合される単一の統合マイクロ流体デバイスを使用して、前記等電点電気泳動分離、動員、およびエレクトロスプレーイオン化を実施し、前記第1のデータセットおよび前記第2のデータセットを取得することをさらに含む、項目12-23のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
(項目25)
(b)および(c)は、前記ESI-MSから1分以内に、またはそれと並行して実施される、項目24に記載のコンピュータ実装方法。
(項目26)
(b)または(c)は、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)データを入手または処理するためのソフトウェアパッケージの一部として自動的に実施される、項目12-25のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
(項目27)
(b)および(c)は、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)データを入手または処理するためのソフトウェアパッケージの一部として自動的に実施される、項目12-26のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
(項目28)
方法であって、
(i)1つまたはそれを上回る分析物種に関する質量分析データおよび(ii)前記1つまたはそれを上回る分析物種の等電点電気泳動データを使用し、翻訳後修飾を前記1つまたはそれを上回る分析物種に割り当てること
を含む、方法。
(項目29)
前記翻訳後修飾は、水酸化、メチル化、脂質化、アセチル化、ジスルフィド結合、スモイル化、ユビキチン化、グリコシル化、糖化、アミノ酸添加または除去、アミド化、脱アミド化、異性化、酸化、フコシル化、シアリル化、およびリン酸化から成る群から選択される、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記1つまたはそれを上回る分析物種を含む分析物の混合物に対して等電点電気泳動分離を実施し、前記等電点電気泳動データを発生させることと、前記1つまたはそれを上回る分析物種を動員することと、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)を実施し、前記質量分析データを発生させることとをさらに含む、項目28または29に記載の方法。
(項目31)
前記等電点電気泳動分離および動員は、分離チャネルと、統合エレクトロスプレー先端とを備える単一のマイクロ流体デバイスを使用して実施される、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記等電点電気泳動データは、分離チャネルに沿った距離の関数としての1つまたはそれを上回る強度または吸光度測定値を備え、前記強度または吸光度測定値におけるピークは、同一の所与の等電点を有する前記1つまたはそれを上回る分析物種を備える分析物ピークに対応する、項目28-31のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
前記所与の等電点に関して、前記質量分析データを使用し、前記1つまたはそれを上回る分析物種の少なくとも1つの翻訳後修飾を区別することをさらに含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記等電点電気泳動データは、前記1つまたはそれを上回る分析物種の等電点に関する情報を備え、前記質量分析データは、前記1つまたはそれを上回る分析物種の質量に関する情報を備える、項目28-33のいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
複数の翻訳後修飾の等電点偏移および質量偏移の既知の値を使用し、前記翻訳後修飾を前記1つまたはそれを上回る分析物種のうちの少なくとも1つに割り当てることをさらに含む、項目28-34のいずれか1項に記載の方法。
(項目36)
前記翻訳後修飾の割当は、前記ESI-MSデータの入手から1分以内に行われる、項目28-35のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記等電点電気泳動データは、前記1つまたはそれを上回る分析物種の1つまたはそれを上回る等電点に関する情報を備え、前記質量分析データは、前記1つまたはそれを上回る分析物種の1つまたはそれを上回る質量に関する情報を備え、前記翻訳後修飾は、前記1つまたはそれを上回る等電点および前記1つまたはそれを上回る質量を、複数の翻訳後修飾の複数の既知の等電点および質量値を備える参照に合致させることによって割り当てられる、項目28-36のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
前記参照は、公的に利用可能なデータを備える、項目37に記載の方法。
(項目39)
エレクトロスプレーイオン化(ESI)先端と質量分析計入口との間の一定の電圧差を維持するための方法であって、
(a)第1の電圧を分離チャネルの近位端に印加することであって、前記分離チャネルの遠位端は、前記ESI先端と流体連通および電気連通する、ことと、
(b)第2の電圧を補助流体チャネルの近位端に印加することであって、前記補助流体チャネルの遠位端は、前記分離チャネルの遠位端と流体連通および電気連通する、ことと、
(c)分離反応を実施し、分析物の混合物を分離することであって、前記分離反応は、前記分離チャネル内で行われる、ことと、
(d)前記質量分析計入口に印加される第3の電圧を調節するフィードバックループにおいて、前記分離チャネルの抵抗の変化または前記ESI先端における電圧の変化を監視し、前記ESI先端と前記質量分析計入口との間の前記一定の電圧差を維持することと
を含む、方法。
(項目40)
前記分離チャネルは、毛細管の管腔である、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記毛細管は、マイクロバイアルスプレー先端を備える、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記分離チャネルは、マイクロ流体デバイス内の流体チャネルである、項目39に記載の方法。
(項目43)
前記分離反応は、等電点電気泳動反応を備える、項目39-42のいずれか1項に記載の方法。
(項目44)
前記分離反応は、電気泳動分離反応を備える、項目39-42のいずれか1項に記載の方法。
(項目45)
前記第1の電圧は、前記分離チャネルに結合されるカソードにおいて印加され、前記第2の電圧は、前記分離チャネルに結合されるアノードにおいて印加される、項目39-44のいずれか1項に記載の方法。
(項目46)
前記ESI先端または前記質量分析計入口における前記電圧は、接地において保持される、項目39-45のいずれか1項に記載の方法。
(項目47)
前記質量分析計入口における前記電圧は、前記第3の電圧において保持される、項目39-46のいずれか1項に記載の方法。
(項目48)
前記第3の電圧は、前記ESI先端において測定される過渡電圧変化を前記第3の電圧に追加することによって調節される、項目39-47のいずれか1項に記載の方法。
(項目49)
前記ESI先端における前記電圧は、電力供給源を使用して測定される、項目39-48のいずれか1項に記載の方法。
(項目50)
前記電力供給源は、前記分離チャネルに結合される、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記電力供給源は、前記分離チャネルに結合される別のチャネルに結合される、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記電力供給源は、0マイクロアンペアに設定される、項目11に記載の方法。
(項目53)
前記ESI先端における前記電圧は、前記ESI先端において配置される電極を使用して測定され、前記電極は、0マイクロアンペアの電流を出力するように構成される、項目39-48のいずれか1項に記載の方法。
(項目54)
前記フィードバックループは、少なくとも0.1Hzの周波数において動作する、項目39-53のいずれか1項に記載の方法。
(項目55)
前記フィードバックループは、少なくとも10Hzの周波数において動作する、項目39-53のいずれか1項に記載の方法。
(項目56)
前記フィードバックループは、前記ESI先端における前記電圧を事前設定値の±10%以内に維持する、項目39-55のいずれか1項に記載の方法。
(項目57)
前記フィードバックループは、前記ESI先端における前記電圧を事前設定値の±1%以内に維持する、項目39-55のいずれか1項に記載の方法。
(項目58)
前記フィードバックループは、前記ESI先端と前記質量分析計入口との間の前記一定の電圧差を事前設定値の±10%以内に維持する、項目39-55のいずれか1項に記載の方法。
(項目59)
前記フィードバックループは、前記ESI先端と前記質量分析計入口との間の前記一定の電圧差を事前設定値の±1%以内に維持する、項目39-55のいずれか1項に記載の方法。
(項目60)
エレクトロスプレーイオン化(ESI)先端と質量分析計入口との間の一定の電圧差(ΔVTIP-MS)を維持するための方法であって、前記方法は、
(a)ΔVTIP-MSに関する標的値(ΔVTARGET)を設定することと、
(b)前記ESI先端における第1の電圧を周期的または連続的に監視することであって、前記ESI先端は、分離チャネルと流体連通および電気連通する、ことと、
(c)ΔVTIP-MSに関する瞬時値を計算することと、
(d)フィードバックループを使用して、ΔVTIP-MS=ΔVTARGETとなるように前記質量分析計入口における第2の電圧を周期的または連続的に調節することと
を含む、方法。
(項目61)
前記分離チャネルは、毛細管の管腔である、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記毛細管は、マイクロバイアルスプレー先端を備える、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記分離チャネルは、マイクロ流体デバイス内の流体チャネルである、項目60に記載の方法。
(項目64)
前記分離チャネルにおいて実施される分離反応は、等電点電気泳動反応を備える、項目60-63のいずれか1項に記載の方法。
(項目65)
前記分離チャネルにおいて実施される分離反応は、電気泳動分離反応を備える、項目60-63のいずれか1項に記載の方法。
(項目66)
前記ESI先端における前記第1の電圧または前記質量分析計入口における前記第2の電圧は、接地において保持される、項目60-65のいずれか1項に記載の方法。
(項目67)
前記ESI先端における前記第1の電圧は、前記ESI先端において配置される電極を使用して監視される、項目60-66のいずれか1項に記載の方法。
(項目68)
前記ESI先端において配置される前記電極は、0マイクロアンペアの電流を出力するように構成される、項目67に記載の方法。
(項目69)
前記ESI先端における前記第1の電圧は、前記ESI先端の近傍の位置において前記分離チャネルと交差する流体チャネルと電気連通し、0マイクロアンペアの電流を出力するように構成される、電力供給源を使用して監視される、項目60-30のいずれか1項に記載の方法。
(項目70)
前記フィードバックループは、少なくとも0.1Hzの周波数において動作する、項目60-69のいずれか1項に記載の方法。
(項目71)
前記フィードバックループは、少なくとも10Hzの周波数において動作する、項目60-70のいずれか1項に記載の方法。
(項目72)
前記フィードバックループは、少なくとも100Hzの周波数において動作する、項目60-71のいずれか1項に記載の方法。
(項目73)
前記フィードバックループは、ΔVTIP-MSをΔVTARGETの±10%以内に維持する、項目60-72のいずれか1項に記載の方法。
(項目74)
前記フィードバックループは、ΔVTIP-MSを61の±1%以内に維持する、項目60-73のいずれか1項に記載の方法。
(項目75)
エレクトロスプレーイオン化(ESI)先端と質量分析計の入口との間の一定の電圧差を維持するためのコンピュータ実装方法であって、前記方法は、
(a)プロセッサを使用して、前記ESI先端における第1の電圧の測定値を受信することであって、前記ESI先端は、分離チャネルと流体連通および電気連通する、ことと、
(b)前記プロセッサを使用して、前記質量分析計の入口における第2の電圧の測定値を受信することと、
(c)前記プロセッサを使用して、前記第1の電圧を前記第2の電圧と比較することであって、前記第2の電圧が、前記第1の電圧と異なる場合、前記プロセッサは、前記ESI先端における前記電圧と前記質量分析計の入口における前記電圧との間の差異が、一定のままであるように、前記質量分析計の入口または前記ESI先端における前記電圧を調節させる、ことと
を含む、方法。
(項目76)
(d)フィードバックループを使用して、規定された周波数においてステップ(a)-(c)を繰り返すことをさらに含む、項目75に記載のコンピュータ実装方法。
(項目77)
前記分離チャネルは、(i)毛細管の管腔または(ii)マイクロ流体デバイス内の流体チャネルを備える、項目75または項目76に記載のコンピュータ実装方法。
(項目78)
前記毛細管は、マイクロバイアルスプレー先端を備える、項目77に記載のコンピュータ実装方法。
(項目79)
分離反応が、前記分離チャネルにおいて実施され、前記分離反応は、等電点電気泳動反応を備える、項目75-78のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
(項目80)
前記ESI先端における前記電圧または前記質量分析計の入口における前記電圧は、接地において保持される、項目75-79のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
(項目81)
前記ESI先端における前記電圧は、前記ESI先端において設置される電極を使用して測定される、項目75-80のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
(項目82)
前記ESI先端における前記電圧は、前記ESI先端の近傍の前記分離チャネルと交差する流体チャネルと電気連通し、0マイクロアンペアの電流を出力するように構成される電力供給源を使用して監視される、項目75-80のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
(項目83)
前記フィードバックループは、少なくとも0.1Hzの周波数において動作する、項目76に記載のコンピュータ実装方法。
(項目84)
前記フィードバックループは、少なくとも10Hzの周波数において動作する、項目76または項目83に記載のコンピュータ実装方法。
(参照による組み込み)
【0022】
本明細書に言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が、参照することによってその全体として組み込まれることが具体的かつ個別に示される場合と同程度に、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる。本明細書の用語と組み込まれた参考文献内の用語との間の矛盾の場合、本明細書の用語が、優先される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の新規の特徴が、添付される請求項に詳細に記載される。本発明の特徴および利点のより深い理解が、本発明の原理が利用される、例証的実施形態を記載する以下の詳細な説明、および付随する図面を参照することによって取得されるであろう。
【0024】
図1図1A-Bは、本開示の一実施形態による、自動的に装填されたサンプルの等電点電気泳動(IEF)およびエレクトロスプレーイオン化(ESI)のためのデバイスの概略図を提供する。図1Aは、デバイスの概略図を示す。図1Bは、デバイスの別の概略図を示す。
【0025】
図2図2は、分離された分析物帯に関する等電点を計算するためのコンピュータ実装方法の例示的フローチャートを提供する。
【0026】
図3図3は、1つまたはそれを上回る分離された分析物帯に関する速度を決定し、退出時間を計算するためのコンピュータ実装方法に関する別の例示的フローチャートを提供する。
【0027】
図4図4は、ESI-MS分析システムに関する1つまたはそれを上回る動作パラメータの撮像ベースのフィードバックおよび制御を実装するためのコンピュータ実装方法に関する別の例示的フローチャートを提供する。
【0028】
図5図5は、開示されるシステムの一実施形態に関するハードウェアコンポーネントの概略ブロック図を提供する。
【0029】
図6図6は、開示されるシステムの一実施形態に関するソフトウェアコンポーネントの概略ブロック図を提供する。
【0030】
図7図7A-Bは、本発明のいくつかの実施形態における使用のためのマイクロ流体デバイスを図示する。図7Aは、例示的マイクロ流体デバイスの流体チャネルネットワークの概略図を提供する。図7Bは、組み立てられたマイクロ流体デバイスのコンピュータ支援(CAD)図面を提供する。図7Aに示される流体チャネル層は、流体チャネルをシールするために2つの透明層の間に挟装される。
【0031】
図8図8は、分離されたサンプルの動員の間のテイラー円錐およびエレクトロスプレーイオン化(ESI)プルームの画像を提供する。
【0032】
図9-1】図9A-Fは、等電点電気泳動を使用した分析物の混合物中の分析物の分離に続くサンプルの動員に関するデータの非限定的実施例を提供する。図9Aは、t=0分(等電点電気泳動の完了)における吸光度トレースを示す。図9Bは、t=1分における吸光度トレースを示す。図9Cは、t=2分における吸光度トレースを示す。図9Dは、t=3分における吸光度トレースを示す。図9Eは、t=4分における吸光度トレースを示す。図9Fは、t=5分における吸光度トレースを示す。
図9-2】図9A-Fは、等電点電気泳動を使用した分析物の混合物中の分析物の分離に続くサンプルの動員に関するデータの非限定的実施例を提供する。図9Aは、t=0分(等電点電気泳動の完了)における吸光度トレースを示す。図9Bは、t=1分における吸光度トレースを示す。図9Cは、t=2分における吸光度トレースを示す。図9Dは、t=3分における吸光度トレースを示す。図9Eは、t=4分における吸光度トレースを示す。図9Fは、t=5分における吸光度トレースを示す。
【0033】
図10図10A-Bは、分析物を分離するための等電点電気泳動および分離された分析物混合物の後続動員を実施するように設計されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を提供する。図10Aは、ESI先端が接地において、またはそれに近接して保持されるであろう場合における、等電点電気泳動の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を提供する。図10Bは、分離された分析物混合物の化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示す。チャネル114(図7Aに示される)の抵抗は、本実施例では無視できると仮定される。
【0034】
図11図11A-Bは、ESI先端を0Vに保つ間の動員に関する代表的データを提供する。図11Aは、時間の関数としての電圧のプロットを示す。図11Bは、時間の関数としての電流のプロットを示す。
【0035】
図12図12は、ESI先端が+3,000Vにおいて保持される、電圧フィードバックループの例示的フローチャートを提供する。
【0036】
図13A図13A-Eは、本開示のマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図の実施例を提供する。図13Aは、電流を接地にシンクするために付加的抵抗器を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を提供する。図13Bは、電流を第3の電力供給源にシンクするために付加的抵抗器を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示す。図13Cは、電流をシンクするために電界効果トランジスタ(FET)を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示す。図13Dは、電流をシンクするためにバイポーラ接合トランジスタ(BJT)を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示す。図13Eは、ESI先端が接地において、またはそれに近接して保持されるであろう、分離された分析物混合物の化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を提供する。
図13B図13A-Eは、本開示のマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図の実施例を提供する。図13Aは、電流を接地にシンクするために付加的抵抗器を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を提供する。図13Bは、電流を第3の電力供給源にシンクするために付加的抵抗器を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示す。図13Cは、電流をシンクするために電界効果トランジスタ(FET)を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示す。図13Dは、電流をシンクするためにバイポーラ接合トランジスタ(BJT)を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示す。図13Eは、ESI先端が接地において、またはそれに近接して保持されるであろう、分離された分析物混合物の化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を提供する。
図13C図13A-Eは、本開示のマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図の実施例を提供する。図13Aは、電流を接地にシンクするために付加的抵抗器を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を提供する。図13Bは、電流を第3の電力供給源にシンクするために付加的抵抗器を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示す。図13Cは、電流をシンクするために電界効果トランジスタ(FET)を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示す。図13Dは、電流をシンクするためにバイポーラ接合トランジスタ(BJT)を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示す。図13Eは、ESI先端が接地において、またはそれに近接して保持されるであろう、分離された分析物混合物の化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を提供する。
図13D図13A-Eは、本開示のマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図の実施例を提供する。図13Aは、電流を接地にシンクするために付加的抵抗器を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を提供する。図13Bは、電流を第3の電力供給源にシンクするために付加的抵抗器を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示す。図13Cは、電流をシンクするために電界効果トランジスタ(FET)を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示す。図13Dは、電流をシンクするためにバイポーラ接合トランジスタ(BJT)を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示す。図13Eは、ESI先端が接地において、またはそれに近接して保持されるであろう、分離された分析物混合物の化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を提供する。
図13E図13A-Eは、本開示のマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図の実施例を提供する。図13Aは、電流を接地にシンクするために付加的抵抗器を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を提供する。図13Bは、電流を第3の電力供給源にシンクするために付加的抵抗器を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示す。図13Cは、電流をシンクするために電界効果トランジスタ(FET)を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示す。図13Dは、電流をシンクするためにバイポーラ接合トランジスタ(BJT)を使用した、ESI先端が正電圧において保持されるであろう、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示す。図13Eは、ESI先端が接地において、またはそれに近接して保持されるであろう、分離された分析物混合物の化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を提供する。
【0037】
図14A図14-Bは、毛細管接合噴霧器の略図を提供する。図14Aは、毛細管接合噴霧器の代表的略図を提供する。図14Bは、図14Aの毛細管接合噴霧器図に関する代表的抵抗器回路図を示す。
図14B図14-Bは、毛細管接合噴霧器の略図を提供する。図14Aは、毛細管接合噴霧器の代表的略図を提供する。図14Bは、図14Aの毛細管接合噴霧器図に関する代表的抵抗器回路図を示す。
【0038】
図15図15は、ESI先端が0Vにおいて保持される、コンピュータ制御電圧フィードバックループの例示的フローチャートを提供する。
【0039】
図16図16のパネルA-Eは、分離された分析物種に関する分析物分離データおよび対応する質量分析データの実施例を提供する。図16のパネルAは、分離された分析物混合物の電気泳動図を示す。図16のパネルBは、分離された種の酸性ピークに関する質量スペクトルを示す。図16のパネルCは、図16のパネルAの電気泳動図に存在する主要ピークの質量スペクトルを示す。図16のパネルDおよび図16のパネルEは、図16のパネルAに示される電気泳動図からの2つの塩基性ピークの質量スペクトルを示す。
【0040】
図17図17A-Bは、分離データの実施例を提供する。図17Aは、撮像された等電点電気泳動の電気泳動図の代表的実施例を示す。図17Bは、分離チャネル内での分離および動員の動的ヒートマップ表示の代表的実施例を提供する。
【0041】
図18図18は、組み合わせられた等電点電気泳動の電気泳動図、質量分析計全イオンクロマトグラム、および個々の質量スペクトルを表示する、多軸プロットの代表的実施例を提供する。
【0042】
図19図19は、x軸が距離をプロットし、y軸が時間をプロットし、z軸が吸光度をプロットする(恣意的単位)、3軸グラフとして表示される、分離および動員データの動的ヒートマップ表示の代表的実施例を提供する。
【0043】
図20図20のパネルA-Bは、等電点電気泳動および質量分析におけるモノクローナル抗体データの代表的実施例を提供する。図20のパネルAは、電荷変形の等電点電気泳動データおよび質量スペクトルクロマトグラムを提供する。図20のパネルBは、畳み込みを解かれた質量データの実施例を示す。
【0044】
図21図21のパネルA-Bは、例示的翻訳後修飾およびタンパク質質量ならびに電荷の予期される変化の表を提供する。図21のパネルAは、翻訳後修飾および修飾に起因するタンパク質質量ならびに電荷の予期される変化を列挙する、代表的表を提供する。図21のパネルBは、同一の質量変化をもたらすが、タンパク質電荷に対して異なる効果を及ぼし得る、修飾の代表的実施例を提供する。
【0045】
図22図22のパネルA-Bは、質量スペクトルの実施例を提供する。図22のパネルAは、等電点電気泳動によって分離された電荷変形の分析から取得された畳み込みを解かれた質量スペクトルの代表的実施例を提供する。図22のパネルBは、等電点電気泳動によって分離された電荷変形の分析から取得された畳み込みを解かれた質量スペクトルの別の代表的実施例を提供する。
【0046】
図23図23のパネルA-Bは、主要タンパク質電荷変形対酸性および塩基性変形の畳み込みを解かれた質量の比較の代表的実施例を提供する。図23のパネルAは、主要タンパク質電荷変形および酸性変形の畳み込みを解かれた質量の実施例を提供する。図23のパネルBは、主要タンパク質電荷変形および塩基性変形の畳み込みを解かれた質量の実施例を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0047】
詳細な説明
本明細書に説明されるいくつかの実施形態は、質量分析検出と統合される毛細管およびマイクロ流体ベースの分離システムからのデータを分析し、その動作を指示するための革新的ソフトウェアならびにシステムに関する。いくつかの実施形態では、分析物が、毛細管における、またはマイクロ流体デバイス上での分離の間に撮像され、分子量または質量/電荷比が、分離後に質量分析計において測定される。開示される方法、デバイス、システム、およびソフトウェアは、分離された分析物ピークのより正確な特性評価を提供し、化学分離データと質量分析(MS)データとの間の改良された相関を達成する。また、開示されるものは、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)データの品質を改良するための方法、デバイス、システム、およびソフトウェアである。開示される方法、デバイス、システム、およびソフトウェアは、限定ではないが、プロテオミクス研究、薬物発見および開発、ならびに臨床診断を含む、種々の分野における潜在的用途を有する。例えば、いくつかの実施形態では、開示される方法、デバイス、システム、およびソフトウェアは、下記により詳細に議論されるであろうように、開発ならびに/もしくは製造の間の生物製剤およびバイオ後続医薬品の特性評価のために利用されてもよい。生物製剤およびバイオ後続品は、例えば、組換えタンパク質、抗体、生ウイルスワクチン、ヒト血漿由来タンパク質、細胞ベースの薬品、天然由来タンパク質、抗体-薬物複合体、タンパク質-薬物複合体、ならびに他のタンパク質薬物を含む、薬物のクラスである。
【0048】
種々の化学分離技法のうちのいずれかを実施するように設計され、また、下流の質量分析ベースの分析を実施するためのエレクトロスプレーイオン化インターフェースを備える、マイクロ流体デバイスが、説明される。好ましい実施形態では、開示されるデバイスは、タンパク質または他の生体高分子の等電点電気泳動を実施するように設計される。別の好ましい実施形態では、開示されるデバイスは、撮像技法と併用されるように設計される。撮像されるマイクロ流体分離と質量分析との統合のためのデバイスおよび方法が、例えば、公開済みのPCT特許出願公開第WO 2017/095813号および米国特許出願公開第US 2017/0176386号(あらゆる目的のために参照することによって本明細書に組み込まれる)において以前に説明されている。これらの出願は、とりわけ、MS分析と併せて撮像される分離を実施するためのシステムを説明している。そのようなマイクロ流体システムは、生物製剤特性評価における有意な進歩を表す。しかしながら、そのようなシステムが最大の利益を提供するために、本明細書に開示されるように、これらのシステムの動作ならびに撮像されるデータおよびMSデータの下流統合を支援するための革新的ソフトウェアならびにシステムを有することが、有益であろう。
【0049】
故に、好ましい実施形態では、開示されるマイクロ流体デバイスは、撮像技法と組み合わせて使用され、例えば、分離チャネルにおける分析物の混合物から等電的に分離された1つまたはそれを上回る分析物に関する等電点(pI)の正確な決定を行い、実質的に純粋な個々の分析物成分(本明細書では「ピーク」または「帯」とも称される)を含む、一連の濃縮分画を形成してもよい。分離チャネルの全てまたは一部を撮像することは、分離されるべきサンプルとともに注入された2つまたはそれを上回るpI標準(もしくはpIマーカ)の場所を決定することを可能にし、したがって、外挿によって分離された分析物ピーク毎により正確なpIを計算し、局所pHを決定することを可能にする。いくつかの実施形態では、分離チャネル内の分析物混合物の撮像は、分離が実施されている間に実施され、随意に、分離されている分析物のうちの1つまたはそれを上回るものに関する等電点の決定が、実施され、分離が実施されている間に反復的に更新される。いくつかの実施形態では、等電的に集束された1つまたはそれを上回る分析物に関する等電点の撮像ベースの決定は、分離が完了した後に実施される。いくつかの実施形態では、等電的に集束された1つまたはそれを上回る分析物に関する等電点の撮像ベースの決定は、分離が完了した後、分離された分析物混合物がエレクトロスプレー先端に向かって動員される前に実施される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される撮像ベースの方法は、マイクロ流体デバイスベースのESI-MSシステムではなく、毛細管ベースのESI-MSシステムと併用されてもよい。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る分析物ピークに関する等電点の決定は、コンピュータ実装方法によって実施されてもよい。
【0050】
別の好ましい実施形態では、開示されるマイクロ流体デバイスは、撮像技法と組み合わせて使用され、分離された分析物混合物の動員の後、すなわち、ピークが分離チャネルから外に、エレクトロスプレー先端に向かって移動する際、分離された分析物ピークを撮像してもよい。いくつかの実施形態では、撮像される動員ステップは、キャピラリゲル電気泳動、キャピラリゾーン電気泳動、等速電気泳動、キャピラリ動電クロマトグラフィ、ミセル動電クロマトグラフィ、流量均衡キャピラリ電気泳動、または速度差によって分析物混合物の成分を分離する任意の他の分離技法を備える、分離ステップを実装するとき等、撮像される分離ステップと同一のステップである。いくつかの実施形態では、撮像される動員ステップは、撮像される分離における濃縮分画を質量スペクトルと相関させるために分析されるであろう。動員される分析物ピークの撮像は、例えば、一連の動員画像におけるそれらの位置に基づいて、1つまたはそれを上回る分析物ピークに関する速度を決定するために利用されてもよく、これは、次いで、分析物ピークが分離チャネルから退出する、またはエレクトロスプレー先端によって放出されるであろう時点を決定するために使用されてもよく、したがって、質量分析計データを具体的分析物ピークと相関させるために使用されてもよい。ある場合には、分析物ピークの速度は、分析物ピークがある変位値を(例えば、第1の位置から第2の位置まで)移動するために要求される時間間隔から計算される。いくつかの実施形態では、動員される分析物ピークの撮像は、それらが流体チャネルを通して進行し、エレクトロスプレー先端によって放出される際のピークの直接監視を可能にし得、したがって、質量分析計データを具体的分析物ピークと直接相関させるために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される撮像ベースの方法は、マイクロ流体デバイスベースのESI-MSシステムではなく、毛細管ベースのESI-MSシステムと併用されてもよい。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る分析物ピークに関する速度、それらの実際の、または予測される分離チャネル退出時間、ならびに/もしくはそれらのエレクトロスプレー放出時間の決定は、コンピュータ実装方法によって実施されてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、分離された分析物ピークの動員は、マイクロ流体デバイスにおける電場または流動パラメータの変化によって開始されてもよい。いくつかの実施形態では、電力供給源をマイクロ流体デバイスに接続する1つまたはそれを上回る電極が、コンピュータ実装方法を通して動員を開始するために接続もしくは接続解除されるであろう。いくつかの実施形態では、エレクトロスプレー先端において形成されるテイラー円錐は、動員ステップの間に撮像されてもよい。いくつかの実施形態では、コンピュータ実装画像分析が、安定したエレクトロスプレー動作条件を識別するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、画像分析は、オペレータによって実施されてもよい。いくつかの実施形態では、画像分析は、自動化画像処理ソフトウェアを使用して実施されてもよい。いくつかの実施形態では、エレクトロスプレー性能に影響を及ぼすことが公知の動作パラメータのうちの1つまたはそれを上回るものが、安定したエレクトロスプレー動作条件を取り戻すために調節されるであろう。調節され得る動作パラメータの実施例は、限定ではないが、電気泳動電圧、流率、エレクトロスプレー先端からMS入口までの距離、MS電圧、および同等物を含む。いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法が、エレクトロスプレーパラメータを調節するために使用されてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、1つを上回る電力供給源が、電気泳動電場を発生させるために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、正極性を有する2つの電力供給源が、使用されてもよい。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る電力供給源が、負極性を有してもよい。いくつかの実施形態では、電力供給源に対する電圧設定は、電気泳動分離のために分離チャネルにおいて同一の電圧勾配を維持するために一斉に変更されてもよい。いくつかの実施形態では、電力供給源に対する電圧設定は、エレクトロスプレー先端において一定の電圧を維持するために変更されてもよい。いくつかの実施形態では、複数の電力供給源は、単一のマルチチャネル電力供給源における異なるチャネルであってもよい。いくつかの実施形態では、等電点電気泳動が、分離チャネルにおいて実施されてもよく、チャネルにおける抵抗は、経時的に増加してもよい。いくつかの実施形態では、化学動員が、分離チャネルにおいて実施されてもよく、チャネルにおける抵抗は、経時的に減少してもよい。いくつかの実施形態では、圧力駆動動員が、実施されてもよく、チャネルにおける抵抗は、新しい試薬がチャネルの中に押動されるにつれて、経時的に変化してもよい。いくつかの実施形態では、エレクトロスプレー先端は、接地において保たれてもよい。いくつかの実施形態では、エレクトロスプレー先端は、質量分析計に対して具体的電圧において保たれてもよい。いくつかの実施形態では、エレクトロスプレー先端は、接地に対して具体的電圧において保たれてもよい。いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法が、分離チャネルにおける一定の電場強度(またはアノードとカソードとの間の一定の電圧降下)およびエレクトロスプレー先端における一定の電圧を維持するために、電圧を調節してもよい。いくつかの実施形態では、先端における電圧は、電圧計を使用して測定されてもよい。いくつかの実施形態では、先端における電圧は、先端において、またはその内側に位置付けられる電極を使用して測定されてもよい。いくつかの実施形態では、付加的電力供給源が、電流制御を使用して0μAに設定され、先端電圧を読み取るための電圧計として使用されてもよい。いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法が、先端における電圧の値を読み取り、分離チャネルにおける一定の電場強度(またはアノードとカソードとの間の一定の電圧降下)を維持し、先端における一定の電圧を維持するために、電圧を調節するであろう。いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法が、分離電場回路を通した電流流動に基づいて、ESI先端における電圧を計算するであろう。いくつかの実施形態では、分離チャネルを横断する電圧降下は、一定の電力または最大電力が、分離チャネルにおいて印加されるように調節され、分離チャネルにおいて印加される電力は、以下のように計算され、
電力=分離チャネルにわたる電圧×分離チャネルにおける電流
電流は、分離の間に常に、または周期的に測定されることができ、電流測定値は、分離チャネルを横断する電圧を調節するために使用されることができる。分離チャネルにおける電力を制御する本方法は、分離チャネルにおける温度効果を管理するために有用であり得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、分離経路は、ある長さの線形コーティングもしくは非コーティング毛細管、管、またはラインであり、入口は、酸性陽極液および正電極または塩基性陰極液および負電極を含有するバイアル内に挿入されるであろう。いくつかの実施形態では、分離経路の出口は、接合噴霧器の中に挿入されるであろう。いくつかの実施形態では、接合噴霧器は、エレクトロスプレーを支援し、エレクトロスプレーイオン化による質量分析計の中への導入のために分離チャネルから先端に現れる分析物を輸送するために、液体-液体電気接触および液体流動を提供する、毛細管出口に別の伝導性補給液を導入し得る二次管、ライン、または毛細管のための両方のT字管を格納する。いくつかの実施形態では、本システムは、分離経路入口における陽極液および正電極を伴って構成されてもよく、分離経路の接合部または遠位部分は、集束の直前に陰極液を装填されてもよい。集束が完了した後、競合するアニオンを伴う動員剤が、流体力学的力または電気浸透力のいずれかによって接合部の中に導入されてもよい。いくつかの実施形態では、分離経路入口は、陰極液および負電極を伴うバイアル内で浸漬されてもよく、毛細管の接合部または遠位部分は、集束の直前に陽極液を装填されてもよい。集束が完了した後、競合するカチオンを伴う動員剤が、流体力学的力または電気浸透力のいずれかによって接合部の中に導入されてもよい。いくつかの実施形態では、分離チャネルは、ある長さの線形毛細管であり、一方の端部は、毛細管を正電極に接続する陽極液リザーバの中に挿入され、他方の端部は、毛細管を等電点電気泳動のための負電極に接続する陰極液リザーバの中に挿入されるであろう。いくつかの実施形態では、集束後、毛細管の陰極液端部は、陰極液から除去され、図14Aに示されるように、質量分析計に近接して接合噴霧器(例えば、マイクロバイアル噴霧器)の中に挿入されるであろう。いくつかの実施形態では、接合噴霧器は、ESIにおける分析物を帯電させ、集束された分析物を動員するために、ある体積の動員剤を提供してもよい。いくつかの実施形態では、接合噴霧器は、動員回路を完成させるための電気接続を提供してもよい。いくつかの実施形態では、陽極液および接合噴霧器における電圧は、陽極液と接合噴霧器との間の電圧(ΔV)または電場の変化が一定のままであり、ESI先端における電圧が一定のままであるように調節されるであろう。いくつかの実施形態では、陽極液と接合噴霧器との間のΔVまたは電場は、時間に伴って上下または変化し得、ESI先端における電圧は、変動し得る。そのような場合では、質量分析計入口に印加される電圧または電位は、ESI先端と質量分析計入口との間の電圧の差異(ΔVTIP-MS)が一定のままであるように調節されてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、分離チャネル(例えば、毛細管)は、ESIへの動員された流出物の移送を促進し得る、マイクロバイアルを備える。マイクロバイアルは、毛細管の一部であってもよい、または分離チャネルに付加ならびに/もしくは融合されてもよい。マイクロバイアルは、ESI先端の一部であってもよい。いくつかの事例では、マイクロバイアルは、接合噴霧器を備える、またはその一部であってもよい。マイクロバイアルは、チャネルの一部において、またはESI先端において(例えば、シース液のための)流体流路を提供してもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、1つの電力供給源が、電流シンクを作成するために、抵抗器に接続されてもよい。いくつかの実施形態では、抵抗器は、電気泳動回路を接地に接続することによって、電流をシンクしてもよい。いくつかの実施形態では、抵抗器は、電界効果トランジスタ(FET)調節可能抵抗器である。いくつかの実施形態では、抵抗器は、精密可変抵抗器、リレー抵抗器ネットワーク、抵抗器ラダー、または電流をシンクするための経路を提供することが可能な任意の他の抵抗要素であってもよい。いくつかの実施形態では、電流シンクは、FETであり得、FETは、これがFETを通して一定の電流流動を提供するように制御される、または要求されるとき、開回路もしくは短絡として機能するように制御されることができる。いくつかの実施形態では、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)が、電流シンク機能のために使用されることができる。いくつかの実施形態では、抵抗器は、電気泳動回路を電流シンク電力供給源に接続することによって電流をシンクしてもよい。いくつかの実施形態では、電流シンク電力供給源の電圧設定は、分離チャネルにおける抵抗が経時的に変化するにつれて調節されるであろう。いくつかの実施形態では、電流シンク電力供給源に対する電圧は、抵抗器を横断して一定の電流を維持するように調節されるであろう。いくつかの実施形態では、抵抗器、または抵抗器のセット、抵抗回路、もしくは同等物が、電流シンクとして使用されてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、走査される質量/電荷(m/z)範囲は、動員/ESIステップの間に変更されてもよい。いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法が、高m/z範囲と低m/z範囲との間で切り替えるために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、1つのm/z範囲内の質量スペクトルが、異なる質量範囲内の分析物の分離のための内部標準として使用されてもよい。本スペクトルは、等電点(pI)に関する標準として使用され得る、自由溶液等電点勾配両性電解質に関するデータを備え得る、または本スペクトルは、電気泳動、例えば、キャピラリゾーン電気泳動における標準として使用され得る、電気泳動移動度標準に関するデータを備え得る。いくつかの事例では、本スペクトルは、着目分析物とは異なる質量範囲内にある、例えば、pI、電荷質量比、ゲルを通した評価、電気泳動移動度等によって、分離ステップにおいて分解され得る任意の分子に関するデータを備え得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、電荷変形ピークと質量スペクトルデータとの相関は、翻訳後修飾または他のタンパク質もしくはペプチド修飾の確認を可能にし得る。例えば、2つの分子の間の質量差が、質量分析計分析の間に検出され得る。いくつかの事例では、検出される質量差をもたらし得る、複数の修飾が、存在し得る。いくつかの事例では、ある修飾は、分子に関する特定の電荷偏移(または等電点の変化)を引き起こすことが公知であり得る。いくつかの事例では、質量差と関連付けられる電荷偏移を把握することは、特定の修飾または修飾のセットが除外されることを可能にし得る。いくつかの実施形態では、電荷偏移を把握し、(質量分析計の質量正確度限界内で)同一または類似する質量を検出することは、特定の修飾または修飾のセットが除外されることを可能にし得る。いくつかの事例では、電荷偏移を把握し、(質量分析計の質量正確度限界内で)同一または類似する質量を検出することは、特定の修飾または修飾のセットが分子に割り当てられることを可能にし得る。いくつかの事例では、質量差と関連付けられる電荷偏移を把握することは、特定の修飾または修飾のセットが分子に割り当てられることを可能にし得る。
【0058】
本開示のシステムは、(i)質量分析計とのエレクトロスプレーインターフェースを提供する、分析物分離、例えば、等電点電気泳動ベースの分離を実施するように設計される毛細管またはマイクロ流体デバイス、(ii)質量分析計、(iii)撮像デバイスまたはシステム、(iv)プロセッサまたはコンピュータ、(v)毛細管またはマイクロ流体デバイスベースの分析物分離の動作を画像入手と協調させるためのソフトウェア、(vi)分離が実施されている間、分離が完了した後、またはエレクトロスプレー先端に向かうpI標準および分析物ピークの動員の後、画像を処理し、分離チャネルにおける1つまたはそれを上回るpI標準もしくは分析物ピークの位置を決定するためのソフトウェア、(vii)画像を処理し、1つまたはそれを上回るpI標準もしくは分析物ピークに関する速度、退出時間、および/またはエレクトロスプレー放出時間を決定するためのソフトウェア、(viii)分析物ピークの位置を監視するための分離チャネルの画像およびエレクトロスプレー性能を監視するためのエレクトロスプレー先端と質量分析計への入口との間に存在するテイラー円錐の画像を同時に、または交互に撮像するためのソフトウェア、(ix)テイラー円錐の画像を処理し、質量分析計入口に対するエレクトロスプレー先端の位置、エレクトロスプレー先端を通した流体流動、エレクトロスプレー先端と質量分析計との間の電圧、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つまたはそれを上回るものを調節し、質量分析計データの品質の変化に影響を及ぼすためのソフトウェア、(x)エレクトロスプレーインターフェースから放出される個々の分析物ピークに関する質量分析計データの収集を制御するためのソフトウェアであって、質量分析計に関するデータ収集モードは、高質量走査と低質量走査との間で交互にされる、ソフトウェア、(xi)エレクトロスプレー先端および/または質量分析計入口における電圧を読み取り、(a)先端上で一定の電圧を維持しながら、チャネルにおける一定の電場強度(またはアノードとカソードとの間の一定の電圧降下)を維持するために、分離チャネル電圧を調節する、ならびに/もしくは(b)先端と質量分析計入口との間の一定の電圧を維持するために、質量分析計入口に印加される電圧を調節する、またはそれらの任意の組み合わせを調節するためのソフトウェアのうちの1つまたはそれを上回るものを備えてもよい。いくつかの実施形態では、本システムは、これらの機能的コンポーネントの選択が、固定された構成においてパッケージ化される、統合システムを備えてもよい。いくつかの実施形態では、本システムは、機能的コンポーネントの選択が、新しい用途のために本システムを再構成するために変更され得る、モジュール式システムを備えてもよい。いくつかの実施形態では、これらの機能的システムコンポーネントのうちのいくつか、例えば、毛細管またはマイクロ流体デバイスは、交換可能もしくは使い捨てコンポーネントである。
【0059】
前述の一般的概観および以下の説明の両方が、例示的かつ解説的にすぎず、本明細書に説明される方法およびデバイスの制限ではないことを理解されたい。
【0060】
定義:別様に定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術用語は、本開示が属する分野内の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。
【0061】
本明細書および添付される請求項に使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別様に明確に決定付けない限り、複数の参照を含む。本明細書の「または」の任意の言及は、別様に記載されない限り、「および/または」を包含することを意図している。同様に、語句「~を備える(comprise)」、「~を備える(comprises)」、「~を備える(comprising)」、「~を含む(include)」、「~を含む(includes)」、および「~を含む(including)」は、限定的であることを意図していない。
【0062】
本明細書に使用されるように、用語「約」の数は、その数±その数の10%を指す。範囲の文脈において使用されるときの用語「約」は、その範囲-その最低値の10%および+その最大値の10%を指す。
【0063】
分析物:上記のように、開示される方法、デバイス、システム、およびソフトウェアは、分離された分析物ピークのより正確な特性評価ならびに化学分離データと質量分析データとの間の改良された相関を可能にする。いくつかの事例では、これらの分析物は、例えば、放出グリカン、炭水化物、脂質またはその誘導体(例えば、細胞外小胞、リポソーム等)、DNA、RNA、無傷のタンパク質、消化タンパク質、タンパク質複合体、抗体-薬物複合体、抗体、抗体断片、タンパク質-薬物複合体、ペプチド、代謝物、有機化合物、または他の生物学的関連分子、もしくはそれらの任意の組合せであり得る。いくつかの事例では、これらの分析物は、小分子薬物であり得る。いくつかの事例では、これらの分析物は、生物学的タンパク質製剤および/または培養もしくは生体内から単離される細胞から収集される溶解物等のタンパク質混合物中のタンパク質分子であり得る。
【0064】
サンプル:開示される方法、デバイス、システム、およびソフトウェアは、種々の生物学的または非生物学的サンプルのうちのいずれかから取得される分析物の分離ならびに特性評価のために使用されてもよい。実施例は、限定ではないが、組織サンプル、細胞培養サンプル,全血サンプル(例えば、静脈血、動脈血、または毛細血管血サンプル)、血漿、血清、唾液、間質液、尿、汗、涙、産業用酵素または生物学的薬物製造プロセスから導出されるタンパク質サンプル、環境サンプル(例えば、空気サンプル、水サンプル、土壌サンプル、表面スワイプサンプル)、および同等物を含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、統合化学分離および質量分析特性評価のための開示される方法ならびにデバイスを使用する分析に先立って、当業者に公知である種々の技法のうちのいずれかを使用して処理されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、サンプルは、タンパク質または核酸を抽出するように処理されてもよい。サンプルは、種々の源または対象、例えば、細菌、ウイルス、植物、動物、もしくはヒトのうちのいずれかから収集されてもよい。
【0065】
サンプル体積:開示される方法およびデバイスのいくつかの実施形態では、微細加工技法の使用を通して達成され得る小型化は、非常に小さいサンプル体積の処理を可能にする。いくつかの実施形態では、分析のために使用されるサンプル体積は、約0.1μl~約1mlに及んでもよい。いくつかの実施形態では、分析のために使用されるサンプル体積は、少なくとも0.1μl、少なくとも1μl、少なくとも2.5μl、少なくとも5μl、少なくとも7.5μl、少なくとも10μl、少なくとも25μl、少なくとも50μl、少なくとも75μl、少なくとも100μl、少なくとも250μl、少なくとも500μl、少なくとも750μl、または少なくとも1mlであってもよい。いくつかの実施形態では、分析のために使用されるサンプル体積は、最大で1ml、最大で750μl、最大で500μl、最大で250μl、最大で100μl、最大で75μl、最大で50μl、最大で25μl、最大で10μl、最大で7.5μl、最大で5μl、最大で2.5μl、最大で1μl、または最大で0.1μlであってもよい。本段落で説明される下限および上限値のうちのいずれかが、本開示内に含まれる範囲を形成するように組み合わせられてもよく、例えば、いくつかの実施形態では、分析のために使用されるサンプル体積は、約5μl~約500μlに及んでもよい。当業者は、分析のために使用されるサンプル体積が、本範囲内の任意の値、例えば、約10μlを有し得ることを認識するであろう。
【0066】
分離技法:開示される方法、デバイス、システム、およびソフトウェアは、当業者に公知の種々の分析物分離技法のうちのいずれかを利用してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、撮像される分離は、分析物混合物から1つまたはそれを上回る分離された分析物分画を生成する、等電点電気泳動、キャピラリゲル電気泳動、キャピラリゾーン電気泳動、等速電気泳動、キャピラリ動電クロマトグラフィ、ミセル動電クロマトグラフィ、流量均衡キャピラリ電気泳動、電場勾配集束、動的場勾配集束、および同等物等の電気泳動分離であってもよい。
【0067】
キャピラリ等電点電気泳動(CIEF):いくつかの実施形態では、分離技法は、等電点電気泳動(IEF)、例えば、キャピラリ等電点電気泳動(CIEF)を含んでもよい。等電点電気泳動(または「焦点電気泳動」)は、それらの等電点(pI)、すなわち、それらが正味ゼロ電荷を有するpHの差異によって分子を分離するための技法である。CIEFは、両性電解質(両性電解物)溶液を、アノードまたはカソードを含有する試薬リザーバの間のサンプルチャネルに添加し、それを横断して分離電圧が印加される、分離チャネル(すなわち、電極含有ウェルを接続する流体チャネル)内にpH勾配を発生させることを伴う。両性電解質は、溶液相である、またはチャネル壁の表面上に不動化されることができる。負に帯電した分子が、正電極に向かって媒体内でpH勾配を通して遊走する一方、正に帯電した分子は、負電極に向かって移動する。その等電点(pI)を下回るpH領域内にあるタンパク質(または他の分子)は、正に帯電し、したがって、カソード(すなわち、負に帯電した電極)に向かって遊走するであろう。タンパク質の全体的な正味電荷は、これがそのpIに対応するpH領域に到達し、その時点で、これがいかなる正味電荷も有しておらず、したがって、遊走が停止するまで、(例えば、カルボキシル基または他の負に帯電した官能基のプロトン化に起因して)増加するpHの勾配を通して遊走するにつれて減少するであろう。結果として、タンパク質の混合物は、酸性および塩基性残基のそれらの相対含有量に基づいて分離し、各タンパク質がそのpIに対応するpH勾配における点に位置付けられた、急峻な定常帯に集束された状態になる。本技法は、タンパク質が別個の帯に分画されている単一の電荷によって異なる、極めて高い分解能が可能である。いくつかの実施形態では、等電点電気泳動は、電気浸透流(EOF)を排除するように、例えば、中性および親水性ポリマーコーティングで恒久的または動的にコーティングされた、分離チャネル内で実施されてもよい。好適なコーティングの実施例は、限定ではないが、アミノ修飾因子、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびポリビニルアルコール(PVA)、Guarant(登録商標)(Alcor Bioseparations)、線形ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ポリビニルピロリジン(PVP)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、トリエチルアミン、プロピルアミン、モルホリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアミノプロパン、エチレンジアミン、キトサン、ポリエチレンイミン、カダベリン、プトレシン、スペルミジン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、セルロース、デキストラン、ポリエチレンオキシド(PEO)、酢酸セルロース、アミロペクチン、エチルピロリジンメタクリレート、ジメチルメタクリレート、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド、Brij35、スルホベタイン、1,2-ジラウロイルsn-ホスファチジルコリン、1,4-ジデシル-1,4-ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタンジブロミド、アガロース、ポリ(Nヒドロキシエチルアクリルアミド)、ポール-323、超分岐ポリアミノエステル、プルラン、グリセロール、吸着コーティング、共有結合コーティング、動的コーティング等を含む。いくつかの実施形態では、等電点電気泳動は、電気浸透流を有意に減少させ、より良好なタンパク質可溶化を可能にし、電解質の粘度を増加させることによって流体チャネルの毛細管の内側の拡散を限定するように、分離媒体内のメチルセルロース、グリセロール、尿素、ホルムアミド、界面活性剤(例えば、Triton(登録商標)-X100、CHAPS、ジギトニン)等の添加剤を使用して(例えば、コーティングされていない分離チャネルにおいて)実施されてもよい。
【0068】
上記のように、キャピラリ等電点電気泳動技法のために使用されるpH勾配は、両性電解質、すなわち、酸性および塩基性基の両方を含有し、大部分がpHのある範囲内の双性イオンとして存在する、両性分子の使用を通して発生される。分離チャネルのアノード側の電解質溶液の部分は、「陽極液」として公知である。分離チャネルのカソード側の電解質溶液のその部分は、「陰極液」として公知である。限定ではないが、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、グルタミン酸、リシン、ギ酸,ジメチルアミン、トリエチルアミン、酢酸、ピペリジン、ジエチルアミン、および/またはそれらの任意の組み合わせを含む、種々の電解質が、開示される方法およびデバイスにおいて使用されてもよい。電解質は、0.0001%、0.001%、0.01%、0.1%、1%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%等の任意の好適な濃度において使用されてもよい。電解質の濃度は、少なくとも0.0001%、0.001%、0.01%、0.1%、1%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%であってもよい。電解質の濃度は、最大で90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、1%、0.1%、0.01%、0.001%、0.0001%であってもよい。電解質の濃度の範囲、例えば、0.1%~2%が、使用されてもよい。両性電解質が、任意の商業用または非商業用担体両性電解質混合物(例えば、Servalyt pH4-9(Serva, Heildelberg, Germany)、Beckman pH3-10(Beckman Instruments, Fullerton, CA, USA)、Ampholine 3.5-9.5およびPharmalyte 3-10(両方ともGeneral Electric Healthcare, Orsay, Franceから)、AESlytes(AES)、FLUKA両性電解質(Thomas Scientific, Swedesboro, NJ)、Biolyte(Bio-Rad, Hercules,
CA))、および同等物から選択されることができる。担体両性電解質混合物は、密接に離間したpI値および良好な緩衝容量を有する、複数の脂肪族アミノならびにカルボキシレート基を含有する、小分子(約300~1,000Da)の混合物を含んでもよい。印加された電場の存在下で、担体両性電解質は、アノードからカソードまで次第に増加する平滑な線形または非線形pH勾配に分割される。
【0069】
種々のpI標準のうちのいずれかが、分離された分析物ピークのための等電点を計算するために、開示される方法およびデバイスにおいて使用されてもよい。例えば、概して、CIEF用途において使用されるpIマーカ、例えば、タンパク質pIマーカおよび合成小分子pIマーカが、使用されてもよい。いくつかの事例では、タンパク質pIマーカは、一般的に容認されるpI値を伴う具体的タンパク質であってもよい。いくつかの事例では、pIマーカは、例えば、撮像を介して検出可能であり得る。商業的に入手可能である種々のタンパク質pIマーカまたは合成小分子pIマーカもしくはそれらの組み合わせ、例えば、Advanced Electrophoresis Solutions, Ltd.(Cambridge, Ontario, Canada)から入手可能な小分子pIマーカ、ProteinSimple、Shimuraによって設計されたペプチドライブラリ、およびSlais染料(Alcor Biosepartions)が、使用されてもよい。
【0070】
動員技法:いくつかの実施形態では、例えば、等電点電気泳動が採用されるそれらの事例では、分離された分析物帯は、下流分析デバイス、例えば、質量分析計とのエレクトロスプレーイオン化インターフェースとインターフェースを取る分離チャネルの端部に向かって動員されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、キャピラリゲル電気泳動、キャピラリゾーン電気泳動、等速電気泳動、キャピラリ動電クロマトグラフィ、ミセル動電クロマトグラフィ、流量均衡キャピラリ電気泳動、または速度差によって分析物混合物の成分を分離する任意の他の分離技法が採用されるそれらの事例では、分離ステップは、動員ステップと見なされてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、分析物帯の動員は、流体力学的圧力を分離チャネルの一方の端部に印加することによって実装されてもよい。いくつかの実施形態では、分析物帯の動員は、重力が採用され得るように分離チャネルを垂直位置に配向することによって実装されてもよい。いくつかの実施形態では、分析物帯の動員は、EOF支援動員を使用して実装されてもよい。いくつかの実施形態では、分析物帯の動員は、化学動員を使用して実装されてもよい。いくつかの実施形態では、これらの動員技法の任意の組み合わせが、採用されてもよい。
【0072】
一実施形態では、等電的に集束される分析物帯に関する動員ステップは、化学動員を含む。圧力ベースの動員と比較して、化学動員は、圧力の使用によって誘発される流体力学的放物線流動プロファイルを克服することによって、最小の帯広がりを呈する利点を有する。化学動員は、分離経路の中への電気泳動のために、完全または部分的に集束されたpH勾配を含有する分離経路の入口もしくは出口のいずれかを、ヒドロニウムまたはヒドロキシルのいずれかと競合するイオンを伴う伝導性溶液に導入することによって実装されてもよい。これは、ほぼゼロの正味電荷状態を擾乱することによって、pH勾配成分の段階的動電変位をもたらす。カソード化学動員の場合では、陰極溶液であるヒドロキシルの供給は、競合するアニオンを含有する動員溶液と置換されてもよい。競合するアニオンは、pH勾配成分に対して正電荷を発展させる分離経路内のpHの降下を引き起こし、それらがカソードに向かって遊走することを可能にすることができる。対応して、アノード動員では、陽極溶液であるヒドロニウムの供給は、競合するカチオンを含有する動員溶液と置換され、これは、pH勾配成分の負電荷を発展させる分離のpHを増加させ、それらがアノードに向かって遊走することを可能にする。いくつかの実施形態では、カソード動員は、任意の好適な濃度におけるギ酸、酢酸、炭酸、リン酸、および同等物等の酸性電解質を使用して開始されてもよい。いくつかの実施形態では、アノード動員は、水酸化アンモニウム、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピペリジン、水酸化ナトリウム、および同等物等の塩基性電解質を使用して開始されてもよい。いくつかの実施形態では、化学動員は、塩化ナトリウム等の塩または任意の他の塩を陽極溶液または陰極溶液に添加することによって開始されてもよい。
【0073】
好ましい実施形態では、化学動員ステップは、動員電解質を分離チャネル中に電気泳動させるように本デバイス内の電波を変化させることによって、CIEFをESI-MSと統合するように設計されるマイクロ流体デバイス内で開始されてもよい。いくつかの実施形態では、電場の変化は、1つまたはそれを上回る電力供給源に取り付けられる1つまたはそれを上回る電極を接続もしくは接続解除することによって実装されてもよく、1つまたはそれを上回る電極は、本デバイス上の試薬ウェル内に位置付けられる、または本デバイスの流体チャネルと統合される。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る電極の接続もしくは接続解除は、動員ステップのタイミングおよび持続時間が、分離ステップ、エレクトロスプレーイオン化ステップ、ならびに/もしくは質量分析データ収集と協調され得るように、コンピュータ実装方法およびプログラマブルスイッチを使用して制御されてもよい。いくつかの実施形態では、分離回路からの1つまたはそれを上回る電極の接続解除は、電流制御を使用し、電流を0μAに設定することによって実装されてもよい。
【0074】
キャピラリゾーン電気泳動(CZE):いくつかの実施形態では、分離技法は、印加された電場内の溶液中の荷電分析物の分離のための方法である、キャピラリゾーン電気泳動を含んでもよい。荷電分析物分子の正味速度は、異なるサイズ、形状、または電荷を呈する分析物分子が、遊走速度差を呈し、帯に分離するように、(分子のサイズ、形状、および電荷に依存して)個々の分析物に関して、分離システムによって呈される電気浸透流(EOF)移動度、すなわち、μEOF、および電気泳動移動度、すなわち、μEPの両方の影響を受ける。
【0075】
キャピラリゲル電気泳動(CGE):いくつかの実施形態では、分離技法は、それらのサイズおよび電荷に基づく、高分子(例えば、DNA、RNA、およびタンパク質)ならびにそれらの断片の分離および分析のための方法である、キャピラリゲル電気泳動を含んでもよい。本方法は、ゲルが、印加された電場内の荷電分析物分子の電気泳動移動の間に反対流および/または篩媒体として作用する、ゲル充填分離チャネルの使用を含む。ゲルは、電場の印加によって引き起こされる熱対流を抑制するように機能し、また、分子の通過を遅らせる篩媒体として作用し、それによって、異なるサイズまたは電荷の分子に関して遊走速度差をもたらす。
【0076】
キャピラリ等速電気泳動(CITP):いくつかの実施形態では、分離技法は、好適な寸法の毛細管または流体チャネル内の2つの電解質(先行電解質および終末電解質として公知である)の不連続システムを使用する、荷電分析物の分離のための方法である、キャピラリ等速電気泳動を含んでもよい。先行電解質が、最高電気泳動移動度を伴うイオンを含有してもよい一方、終末電解質は、最低電気泳動移動度を伴うイオンを含有してもよい。分離されるべき分析物混合物(すなわち、サンプル)は、これらの2つの電解質の間に挟装されることができ、電場の印加は、減少する電気泳動移動度の順序で密接に隣接するゾーンの中への毛細管または流体チャネル内の荷電分析物分子の分割をもたらす。ゾーンは、検出器、例えば、伝導度検出器、光検出器、または撮像デバイスが、分離チャネルに沿ったそれらの通過を記録するために利用され得るように、印加された電場内を一定の速度で移動する。キャピラリゾーン電気泳動と異なり、アニオン性およびカチオン性分析物の同時決定または検出は、キャピラリ等速電気泳動を使用して実施される単一の分析では実行可能ではない。
【0077】
キャピラリ動電クロマトグラフィ(CEC):いくつかの実施形態では、分離技法は、液体クロマトグラフフィおよび電気泳動分離方法の組み合わせに基づく、分析物混合物の分離のための方法である、キャピラリ動電クロマトグラフィを含んでもよい。CECは、キャピラリ電気泳動(CE)の効率および充塞キャピラリ高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)の選択性ならびにサンプル容量の両方をもたらす。CECにおいて使用される毛細管が、HPLC充塞材料で充塞されるため、HPLCにおいて利用可能な多種多様な分析物選択性はまた、CECでも利用可能である。これらの充塞材料の広い表面積は、CEC毛細管が、比較的に大量のサンプルを収容することを可能にし、続けて溶出された分析物の検出を、キャピラリゾーン電気泳動(CZE)におけるよりも若干単純なタスクにする。
【0078】
ミセル動電クロマトグラフィ(MEKC):いくつかの実施例では、分離技法は、界面活性剤ミセル(擬定常相)と周辺水性緩衝溶液(移動相)との間の差分分割に基づく、分析物混合物の分離のための方法である、ミセル動電クロマトグラフィを含んでもよい。MEKCでは、界面活性剤モノマーが、ミセルと平衡状態にあるように、緩衝溶液は、臨界ミセル濃度(CMC)を上回る濃度において界面活性剤を含有してもよい。MEKCは、強い電気浸透流を発生させるように、アルカリ性条件を使用して、開放毛細管または流体チャネル内で実施されてもよい。種々の界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が、MEKC用途において使用されてもよい。例えば、SDSのアニオン性硫酸基は、界面活性剤およびミセルに、強い電気浸透流の方向と反対である電気泳動移動度を持たせる。結果として、界面活性剤モノマーおよびミセルは、緩慢に遊走するが、それらの正味移動は、依然として電気浸透流の方向である、すなわち、カソードに向かっている。MEKC分離の間、分析物は、ミセルの疎水性内部と親水性緩衝溶液との間に分配されてもよい。ミセル内部で不溶性である親水性分析物は、電気浸透流速uにおいて遊走し、緩衝液の残留時間tにおいて検出されるであろう。ミセル内で完全に可溶化する疎水性分析物は、ミセル速度uにおいて遊走し、最終溶出時間tにおいて溶出する。
【0079】
流量均衡キャピラリ電気泳動(FCCE):いくつかの実施形態では、分離技法は、圧力誘発逆流を利用し、毛細管を通した分析物の動電遊走を能動的に遅らせる、停止させる、または逆転させる、キャピラリ電気泳動の効率および分解能を増加させるための方法である、流量均衡キャピラリ電気泳動を含んでもよい。分析物を遅らせる、停止させる、または検出窓を横断して前後に移動させることによって、着目分析物は、通常の分離条件下よりもはるかに長い時間周期にわたって分離チャネルに効果的に閉じ込められ、それによって、分離の効率および分解能の両方を増加させ得る。
【0080】
分離時間および分離分解能:一般に、完全な分離を達成するために要求される分離時間は、利用される具体的な分離技法ならびに動作パラメータ(例えば、分離チャネル長、マイクロ流体デバイス設計、緩衝液組成、印加電圧等)に応じて変動するであろう。いくつかの実施形態では、ソフトウェアは、同時係属中の米国特許出願第16/261,382号に説明されるように、分析物ピークの撮像ベースの分析に基づいて、分離が完了するときを決定するであろう。いくつかの実施形態では、分離時間は、約0.1分~約30分に及んでもよい。いくつかの実施形態では、分離時間は、少なくとも0.1分、少なくとも0.5分、少なくとも1分、少なくとも5分、少なくとも10分、少なくとも15分、少なくとも20分、少なくとも25分、または少なくとも30分であってもよい。いくつかの実施形態では、分離時間は、最大で30分、最大で25分、最大で20分、最大で15分、最大で10分、最大で5分、最大で1分、最大で0.5分、または最大で0.1分であってもよい。本段落で説明される下限および上限値のうちのいずれかが、本開示内に含まれる範囲を形成するように組み合わせられてもよく、例えば、いくつかの実施形態では、分離時間は、約1分~約20分に及んでもよい。分離時間は、本範囲内の任意の値、例えば、約7分を有してもよい。
【0081】
同様に、開示される方法およびデバイスを使用して達成される分離効率ならびに分解能は、利用される具体的な分離技法および動作パラメータ(例えば、分離チャネル長、マイクロ流体デバイス設計、緩衝液組成、印加電圧等)に応じて変動してもよい。いくつかの実施形態では、達成される分離効率(例えば、理論段の数)は、約1,000~1,000,000に及んでもよい。いくつかの事例では、分離効率は、少なくとも1,000、少なくとも5,000、少なくとも10,000、少なくとも20,000、少なくとも30,000、少なくとも40,000、少なくとも50,000、少なくとも60,000、少なくとも70,000、少なくとも80,000、少なくとも90,000、少なくとも100,000、少なくとも200,000、少なくとも300,000、少なくとも400,000、少なくとも500,000、少なくとも600,000、少なくとも700,000、少なくとも800,000、少なくとも900,000、または少なくとも1,000,000であってもよい。効率の分離分解能は、混合物中の分析物の1つまたはそれを上回る性質(例えば、分子質量、拡散率、電気泳動または等電点移動度等)に応じて変動してもよい。
【0082】
マイクロ流体デバイス設計および加工:開示される方法、デバイス、およびシステムのいくつかの実施形態では、混合物からの分析物の分離、および随意に、ESI-MSを使用したそれらの後続分析は、1つまたはそれを上回るサンプル調製ステップ(例えば、濾過、事前濃縮、もしくは抽出ステップ、および同等物)ならびに/もしくは分離ステップ(例えば、上記に概説されるような)をエレクトロスプレーイオン化ステップと統合するように設計されるマイクロ流体デバイスを使用して実施されてもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、開示されるマイクロ流体デバイスは、1つまたはそれを上回るサンプルもしくは試薬ポート(入口ポート、サンプルウェル、または試薬ウェルとも称される)、1つまたはそれを上回る廃棄物ポート(出口ポートとも称される)、該入口および出口ポートを相互と、もしくは中間流体チャネル(例えば、分離チャネル)と接続する1つまたはそれを上回る流体チャネル、もしくはそれらの任意の組み合わせを備えてもよい。いくつかの実施形態では、開示されるマイクロ流体デバイスはさらに、1つまたはそれを上回る試薬チャンバもしくは混合チャンバ、1つまたはそれを上回る微細加工された弁、1つまたはそれを上回る微細加工されたポンプ、1つまたはそれを上回る通気口構造、1つまたはそれを上回る膜(例えば、濾過膜)、1つまたはそれを上回るマイクロカラム構造(例えば、クロマトグラフィ分離媒体で充塞されている流体チャネルもしくは修飾流体チャネル)、またはそれらの任意の組み合わせを備えてもよい。
【0084】
好ましい実施形態では、開示されるマイクロ流体デバイスは、質量分析計とのエレクトロスプレーイオン化インターフェースを提供するために、エレクトロスプレーオリフィスまたはエレクトロスプレー先端を組み込む。そのようなインターフェースの一非限定的実施例が、同時係属中の米国特許出願公開第U.S. 2017/0176386 A1号および第U.S. 2018/0003674 A1号に説明されている。図1Aおよび1Bは、等電点電気泳動、続けてESI-MS特性評価を実施するように設計されるマイクロ流体デバイスの一非限定的実施例を図示する。図1Aおよび1Bに示される流体チャネルネットワークは、標準的なフォトリソグラフィエッチング技法を使用して280nmの光の非常に低い透過率を有する、ソーダ石灰ガラスの板から加工される。本デバイスは、入口412に接続されるサンプル入口チャネル414と、濃縮チャネル418と、動員チャネル438とを備える。アノード416が、陽極液ウェル426と電気接触して設置される。分離(または濃縮)チャネル418の深さは、ガラス層402の厚さと同一である、すなわち、濃縮チャネル418は、ガラス板402の上部から底部に至るまで通過する。デバイス400は、デバイス400の一方の側上に配置される光源によって照明され、デバイス400の反対側上に配置される検出器によって撮像されることができる。基板402は、不透明であるが、濃縮チャネル418は、光学スリットを画定するため、基板402は、濃縮チャネル418を通して通過しない光を遮断し、迷光を遮断し、撮像プロセスの分解能を改良することができる。ガラス層402は、280nmの光に対して透過性(例えば、透明)である、2つの溶融シリカ板の間に挟装される。上部板は、器具およびユーザがチャネルネットワークとインターフェースを取るための貫通孔を含有する一方、底部板は、中実である。3つの板は、30分にわたって520℃においてともに接合される。入口および出口管類は、チャネルネットワークに接合される劈開される毛細管(100μm内径、Polymicro)から製造される。タンパク質の等電点電気泳動および後続質量分析特性評価を実施する際の本デバイスの動作は、下記の実施例1に説明されるであろう。
【0085】
当業者に公知の種々の流体作動機構のうちのいずれかが、本デバイスを通したサンプルおよび試薬の流体流動を制御するために使用されてもよい。開示される方法、デバイス、およびシステムにおける使用のための好適な流体作動機構の実施例は、限定ではないが、1つまたはそれを上回る入口ポートもしくは出口ポートへの正圧または負圧の印加、重力または遠心力、動電力、エレクトロウェッティング力、もしくはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、正圧または負圧が、例えば、流体チャネルを通してサンプルもしくは試薬の流動を作動させるために、入口および/または出口ポートに結合される機械的アクチュエータもしくはピストンの使用を通して、直接印加されてもよい。いくつかの実施形態では、機械的アクチュエータまたはピストンは、入口ならびに/もしくは出口ポートをシールするために使用される可撓性膜または隔壁に対して力を付与してもよい。いくつかの実施形態では、正圧または負圧は、例えば、1つまたはそれを上回る入口ならびに/もしくは出口ポートと接続される加圧ガスラインまたは真空ラインの使用を通して、間接的に印加されてもよい。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る入口ならびに/もしくは出口ポートと接続される、ポンプ、例えば、プログラマブルシリンジポンプ、HPLCポンプ、または蠕動ポンプが、流体流動を駆動するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、動電力および/またはエレクトロウェッティング力が、電場の使用ならびに本デバイス内の表面性質の制御を通して印加されてもよい。電場は、1つまたはそれを上回る入口ならびに/もしくは出口ポートの中に挿入される電極を用いて、または本デバイス内の1つまたはそれを上回る流体チャネルの中に統合される電極を用いて印加されてもよい。電極は、本デバイス内の電圧ならびに/もしくは電流を制御するための1つまたはそれを上回るDCもしくはAC電力供給源と接続されてもよい。
【0086】
一般に、本デバイスの主要本体を含む、開示されるマイクロ流体デバイスの入口ポート、出口ポート、流体チャネル、または他のコンポーネントは、限定ではないが、ガラス、溶融シリカ、シリコン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、環状オレフィンコポリマー(COC)または環状オレフィンポリマー(COP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、もしくは他のエラストマ材料を含む、種々の材料のうちのいずれかを使用して加工されてもよい。好適な加工技法は、概して、材料の選定に依存し、逆もまた同様であろう。実施例は、限定ではないが、CNC機械加工、フォトリソグラフィおよび化学エッチング、レーザフォトアブレーション、射出成型、ホットエンボス、ダイカッティング、3D印刷、ならびに同等物を含む。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、例えば、流体チャネルを備える流体層が、チャネルをシールするために上側層および/または下側層の間に挟装される、層状構造を備えてもよい。上側層および/または下側層は、入口ならびに/もしくは出口ポート等を作成するために、流体層内の流体チャネルと整合する、開口部を備えてもよい。2つまたはそれを上回るデバイス層は、分解され得るデバイスを形成するためにともに挟持されてもよい、もしくは恒久的に接合されてもよい。好適な接合技法は、概して、層を加工するために使用される材料の選定に依存するであろう。実施例は、限定ではないが、陽極接合、熱接合、レーザ溶接、または硬化性接着剤(例えば、熱もしくは光硬化性接着剤)の使用を含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイス内の入口ポート、出口ポート、または流体チャネルの全てもしくは一部は、入口ポート、出口ポート、または流体チャネル壁の電気浸透流性質(例えば、HPCもしくはPVAコーティング)および/または疎水性/親水性性質(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)コーティング)を修正するために使用される表面コーティングを備えてもよい。
【0088】
開示されるデバイスの入口および/または出口ポートは、種々の形状ならびにサイズにおいて加工されることができる。適切な入口および/または出口ポート幾何学形状は、限定ではないが、球形、円筒形、楕円形、直方体、円錐形、半球形、長方形、または多角体(例えば、いくつかの平面から成る3次元幾何学形状、例えば、長方形直方体、六角柱、八角柱、逆三角錐、逆四角錐、逆五角錐、逆六角錐、もしくは逆角錐台)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0089】
入口および/または出口ポート寸法は、平均直径ならびに深さの観点から特徴付けられてもよい。本明細書に使用されるように、入口または出口ポートの平均直径は、入口ならびに/もしくは出口ポート幾何学形状の平面断面内に内接され得る最も大きい円を指す。本開示のいくつかの実施形態では、入口および/または出口ポートの平均直径は、約0.1mm~約10mmに及んでもよい。いくつかの実施形態では、入口および/または出口ポートの平均直径は、少なくとも0.5mm、少なくとも1mm、少なくとも2mm、少なくとも4mm、少なくとも8mm、もしくは少なくとも10mmであってもよい。いくつかの実施形態では、平均直径は、最大で10mm、最大で8mm、最大で6mm、最大で4mm、最大で2mm、最大で1mm、または最大で0.5mmであってもよい。本段落で説明される下限および上限値のうちのいずれかが、本開示内に含まれる範囲を形成するように組み合わせられてもよく、例えば、いくつかの実施形態では、平均直径は、約2mm~約8mmに及んでもよい。当業者は、入口および/または出口ポートの平均直径が、本範囲内の任意の値、例えば、約5.5mmを有することを認識するであろう。
【0090】
いくつかの実施形態では、入口および/または出口ポート(例えば、サンプルもしくは試薬ウェル)の深さは、約5μm~約500μmに及んでもよい。いくつかの実施形態では、深さは、少なくとも5μm、少なくとも10μm、少なくとも25μm、少なくとも50μm、少なくとも75μm、少なくとも100μm、少なくとも200μm、少なくとも300μm、少なくとも400μm、または少なくとも500μmであってもよい。いくつかの実施形態では、深さは、最大で500μm、最大で400μm、最大で300μm、最大で200μm、最大で100μm、最大で50μm、最大で25μm、最大で10μm、または最大で5μmであってもよい。本段落で説明される下限および上限値のうちのいずれかが、本開示内に含まれる範囲を形成するように組み合わせられてもよく、例えば、いくつかの実施形態では、入口および/または出口ポートの深さは、約50μm~約200μmに及んでもよい。当業者は、深さが、本範囲内の任意の値、例えば、約130μmを有し得ることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、入口および/または出口ポート(例えば、サンプルもしくは試薬ウェル)の深さは、約500μm~約50mmに及んでもよい。いくつかの実施形態では、深さは、少なくとも1mm、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm、少なくとも20mm、または少なくとも50mmであってもよい。いくつかの実施形態では、深さは、最大で50mm、最大で20mm、最大で15mm、最大で10mm、最大で5mm、または最大で1mmであってもよい。本段落で説明される下限および上限値のうちのいずれかが、本開示内に含まれる範囲を形成するように組み合わせられてもよく、例えば、いくつかの実施形態では、入口および/または出口ポートの深さは、約50μm~約5mmに及んでもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、開示されるデバイスの流体チャネルは、正方形、長方形、円形、および同等物等の種々の断面幾何学形状のうちのいずれかを有してもよい。一般に、流体チャネルの断面幾何学形状は、それらの作成するために使用される加工技法に依存し、逆もまた同様であろう。いくつかの実施形態では、流体チャネルの断片寸法(例えば、高さ、幅、または非長方形断面の流体チャネルに関する平均直径であって、平均直径は、流体チャネルの断面幾何学形状内に内接され得る最も大きい円の直径として定義される)は、約5μm~約500μmに及んでもよい。いくつかの実施形態では、流体チャネルの寸法は、少なくとも5μm、少なくとも10μm、少なくとも25μm、少なくとも50μm、少なくとも75μm、少なくとも100μm、少なくとも200μm、少なくとも300μm、少なくとも400μm、少なくとも500μm、または少なくとも1,000μmであってもよい。いくつかの実施形態では、流体チャネルの寸法は、最大で1,000μm、最大で500μm、最大で400μm、最大で300μm、最大で200μm、最大で100μm、最大で50μm、最大で25μm、最大で10μm、または最大で5μmであってもよい。本段落で説明される下限および上限値のうちのいずれかが、本開示内に含まれる範囲を形成するように組み合わせられてもよく、例えば、いくつかの実施形態では、流体チャネルの寸法は、約75μm~約300μmに及んでもよい。当業者は、寸法が、本範囲内の任意の値、例えば、約95μmを有し得ることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、流体チャネルの深さは、本デバイスの入口および/または出口ポートに関するものに等しくてもよい。
【0092】
撮像技法:開示される方法およびデバイスのいくつかの実施形態では、分析物分離ステップおよび/または動員ステップの撮像は、紫外線(UV)光吸光度、可視光吸光度、蛍光、フーリエ変換赤外分光法、フーリエ変換近赤外分光法、ラマン分光法、光学分光法、および同等物等の光学検出技法を使用して実施されてもよい。いくつかの実施形態では、分離(または濃縮)チャネル、分離チャネルの端部および下流分析器具またはエレクトロスプレーオリフィスもしくは先端を接続する接合部または接続チャネル、エレクトロスプレーオリフィスまたは先端自体、もしくはそれらの任意の組み合わせの全てまたは一部が、撮像されてもよい。いくつかの実施形態では、分離(または濃縮)チャネルは、毛細管の管腔であってもよい。いくつかの実施形態では、分離(または濃縮)チャネルは、マイクロ流体デバイス内の流体チャネルであってもよい。
【0093】
分離された分析物帯の検出のために使用される波長範囲は、典型的には、撮像技法およびそこから本デバイスまたはその一部が加工される材料の選定に依存するであろう。例えば、UV光吸光度が、分離チャネルの全てまたは一部、もしくはマイクロ流体デバイスの他の部分を撮像するために使用される場合では、(ペプチド結合の固有吸光度に起因して)約220nmおよび/または(芳香族アミノ酸残基の固有吸光度に起因して)約280nmにおける検出は、本デバイスの少なくとも一部、例えば、分離チャネルが、これらの波長における光に対して透明であることを前提として、分離ならびに/もしくは動員の間にタンパク質帯を可視化することを可能にし得る。いくつかの実施形態では、ESI-MSを介して分離および特性評価されるべき分析物は、それらが、蛍光撮像または他の好適な撮像技法を使用して撮像され得るように、例えば、フルオロフォア、化学発光タグ、もしくは他の好適な標識を用いて分離に先立って標識化されてもよい。例えば、分析物が、商業的製造プロセスによって生成されるタンパク質を含む、いくつかの実施形態では、タンパク質は、それらが、蛍光を使用して撮像され得るように、緑色蛍光タンパク質(GFP)ドメインまたはその変形を組み込むように遺伝子的に工学設計されてもよい。いくつかの実施形態では、タンパク質は、タグ付けまたは標識化されてもよい。標識化されたタンパク質は、標識が、それに選定された分離技法が基づく分析物性質に干渉しない、またはそれを擾乱しないように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、いかなる改変も、撮像のために必要ではなく、UV撮像の蛍光は、固有のタンパク質、ペプチド、または他の分析物に対して実施されてもよい。
【0094】
種々の撮像システムコンポーネントのうちのいずれかが、開示される方法、デバイス、およびシステムを実装する目的のために利用されてもよい。実施例は、限定ではないが、1つまたはそれを上回る光源(例えば、発光ダイオード(LED)、ダイオードレーザ、ファイバレーザ、ガスレーザ、ハロゲンランプ、アークランプ等)、集光レンズ、対物レンズ、ミラー、フィルタ、ビームスプリッタ、プリズム、画像センサ(例えば、CCD画像センサもしくはカメラ、CMOS画像センサもしくはカメラ、ダイオードアレイ、熱撮像センサ、FTIR等)、および同等物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。利用される撮像モードに応じて、光源および画像センサは、例えば、吸光度ベースの画像が入手され得るように、マイクロ流体デバイスの反対側上に位置付けられてもよい。いくつかの実施形態では、光源および画像センサは、例えば、落射蛍光画像が入手され得るように、マイクロ流体デバイスの同一側上に位置付けられてもよい。
【0095】
画像は、分離、動員、および/またはエレクトロスプレーステップの間に連続的に入手されてもよい、もしくはランダムな、または規定された時間間隔において入手されてもよい。いくつかの実施形態では、一連の1つまたはそれを上回る画像が、連続的に、ランダムな時間間隔において、もしくは規定された時間間隔において入手される。いくつかの実施形態では、一連の1つまたはそれを上回る画像は、ビデオ画像を備えてもよい。
【0096】
エレクトロスプレーに先立つタンパク質等電点の決定のためのpIマーカの撮像:いくつかの実施形態では、上記のように、CIEFを受けた分離された分析物混合物を備える分離チャネルの画像内の2つまたはそれを上回るpIマーカの位置は、1つまたはそれを上回る個々の分析物ピーク(例えば、タンパク質分析物ピーク)に関する等電点を決定するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る分析物ピークに関する等電点は、局所pHと分離チャネルに沿った位置との間の仮定される線形関係に基づいて、2つまたはそれを上回るpIマーカの位置から計算される。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る分析物ピークに関する等電点は、局所pHと分離チャネルに沿った位置との間の関係を説明する非線形フィッティング関数(例えば、非線形多項式)に基づいて、3つまたはそれを上回るpIマーカの位置から計算される。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る分析物に関する等電点は、分離チャネルの画像から決定される2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個、もしくはそれを上回るpI標準の位置に基づいて計算される。
【0097】
いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回るpIマーカの位置を決定するために使用される画像は、分析物混合物が分離されている際に入手され、分析物帯毎のpIの計算は、分離が継続するにつれて反復的に更新される。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回るpIマーカの位置を決定するために使用される画像は、分離が完了した後、動員ステップの開始に先立って入手される。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回るpIマーカの位置を決定するために使用される画像は、分離された混合物が動員され、エレクトロスプレー先端またはオリフィスを通して排出される際に入手される。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回るpIマーカの位置を決定するために使用される画像は、分離された混合物が動員され、分離チャネルを下流分析器具に接続する流体チャネルを通して排出される際に入手される。
【0098】
いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回るpIマーカおよび分離された混合物中の分析物帯の位置を決定するために使用される画像は、コンピュータ実装方法(例えば、ソフトウェアパッケージ)を使用して入手される。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回るpIマーカならびに分析物帯の位置は、自動化画像処理を含むコンピュータ実装方法を使用して決定される。いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法はさらに、自動化画像処理から導出される位置データに基づいて、1つまたはそれを上回る分析物帯に関する等電点の計算を実施するステップを含む。
【0099】
図2は、分離チャネル(またはマイクロ流体デバイスの他の部分)の画像を入手し、画像内のpIマーカおよび分析物帯の位置を決定し(すなわち、分離ステップがCIEFを含む場合において)、分離された分析物の混合物中の1つまたはそれを上回る分析物帯に関するpIを計算するためのコンピュータ実装方法に関する例示的プロセスフローチャートを提供する。いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法は、一連の1つまたはそれを上回る画像の入手を制御するステップを含んでもよく、これは、次いで、pIマーカおよび分離された分析物帯の位置を識別するために処理される。好適な自動化画像処理アルゴリズムの実施例は、下記により詳細に議論されるであろう。いくつかの実施形態では、pIマーカの予測される位置、例えば、pIマーカのみを備える「対照群」サンプルの画像から決定されるようなpIマーカの位置に関する所定の知識が、pIマーカに対応する帯と分離された分析物に対応する帯とを区別するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、pIマーカの画像は、異なる波長において、または分離された分析物帯の画像を入手するために使用されるものと異なる撮像モードを使用して入手されてもよい。図2に図示されるように、画像処理ステップが、既知の数のpIマーカに関する、および/または分離された分析物帯に関する位置を決定することができない場合、本システムは、画像処理ステップが繰り返され得るように、新しい画像を入手するように命令されてもよい。いったんpIマーカおよび分離された分析物帯の位置が、決定されると、pIマーカの位置に関するデータは、pH勾配に関するユーザ選択モデル(例えば、線形または非線形モデル)にフィットされ、局所pHと分離チャネルに沿った位置との間の結果として生じるフィットされた関係が、次いで、1つまたはそれを上回る分析物帯に関する等電点を計算するために使用される。
【0100】
いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法は、pIマーカおよび分析物帯位置の検出、pH勾配モデルへの位置データのフィット、および1つまたはそれを上回る分析物帯に関する等電点の計算のステップが、後者が連続的に更新および精緻化される(例えば、いくつかの決定の平均化を通して)ように繰り返される、反復プロセスであってもよい。いくつかの実施形態では、画像入手および処理、pIマーカおよび分析物帯位置の検出、pH勾配モデルへのpIマーカ位置データのフィット、ならびに1つまたはそれを上回る分析物帯に関する等電点の計算のステップを含むサイクルが、等電点の計算が少なくとも0.01Hz、0.1Hz、0.2Hz、0.3Hz、0.4Hz、0.5Hz、0.6Hz、0.7Hz、0.8Hz、0.9Hz、1Hz、10Hz、100Hz、または1,000Hzの率、もしくは任意の他の関連する率において、例えば、少なくともナイキスト率の率において更新および精緻化され得る、十分に短い時間において完了されてもよい。
【0101】
撮像分離および動員:いくつかの実施形態では、(例えば、分離の間、動員の間等)分離チャネルを通したピークの移動が、監視されることができる。撮像は、UV撮像、蛍光撮像、透過光撮像、または別の撮像モードであってもよい。いくつかの実施形態では、分離および動員の画像が、所望の率において記録されてもよい。例えば、撮像率は、1分あたり1つの画像、30秒あたり1つの画像、10秒あたり1つの画像、5秒あたり1つの画像、1秒あたり1つの画像、1ミリ秒あたり1つの画像等であってもよい。いくつかの実施形態では、個々の画像は、ピーク形成および動員を示す「動画」における個々のフレームとして組み合わせられてもよい。図9A-Fは、動画を発生させるために組み合わせられ得る画像のサブセットを示す。いくつかの実施形態では、本動画は、GIF、AVI、MOV、MP4、またはデジタルビデオデータを保存することが可能な任意の他のデジタルフォーマットとして保存されてもよい。いくつかの実施形態では、撮像は、リアルタイムで、例えば、分離が実施される際、動員が実施される際、エレクトロスプレーが実施される際等に実施されてもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、図17Bに示されるような動的ヒートマップが、一連の画像(例えば、一連の各画像が異なる時点に対応する、分離チャネルにおいて実施される分離および/または動員の時系列撮像データセット)を表示するために使用されてもよい。実施例として、図17Bでは、ピークのグラフ表現をともに表示する(例えば、単一のプロット上に分離チャネルに沿った長さ(すなわち、ピクセル位置)の関数として複数の強度または吸光度プロットをオーバーレイする)のではなく、ピークは、撮像されたチャネルの長さに沿った撮像された分析物帯(それぞれ、強度または吸光度測定値を含有する)として表され、時間の関数としてプロットされる。図17Bの画像(ヒートマップ)の各行は、集束および動員の間の単一の時点における分析物帯の位置を表示する。例えば、線1704は、動的ヒートマップにおけるピクセルの例示的行を示し、各行は、分離チャネルの画像に対応し、所与の時点に関する電気泳動図(例えば、図17Aに示されるような)を発生させるために使用されてもよい(またはそれから発生されてもよい)。図17Aの分析物ピーク1702は、図17Bの明るいピクセル(1702とも標識化される)によって表される。図17Aの分析物ピーク毎に、図17Bは、分析物ピーク遊走の時間経過を表示する。例えば、IEF分離の間、分析物(または複数の分析物)は、チャネルの両端から分析物の(または複数の分析物の)等電点に遊走し得る。等電点において、集束が(例えば、線1704に対応する時間に)完了されると、分析物は、濃縮され、明るいピーク(ピクセル1702)をもたらし得る。さらに、動員の始め(この場合では、図17Bの線1704の上方の部分)に、チップオリフィスおよび質量分析計に向かう各ピークの加速された遊走が、起こり得る。時系列の連続する画像は、垂直にスタックされ、したがって、図17Bの列軸(Y軸)は、時間を表す一方、X軸は、各時点における帯の空間分解能(例えば、分離チャネルの長さに沿った位置の関数としての分析物の位置)を表す。いくつかの実施形態では、帯の相対的強度は、グレースケールまたはカラースケールによって表されてもよい。いくつかの実施形態では、カラースケールまたはグレースケールを増加もしくは減少させることは、信号、強度、または吸光度を増加させることと相関してもよい。いくつかの実施形態では、帯の速度は、修正されたヒートマップを横断する経時的な帯の進行の傾きを測定することによって決定されてもよい。いくつかの実施形態では、修正されたヒートマップは、集束、動員、または両方からの撮像データを表示するために使用されてもよい。分離データのそのような表示は、分離および/または動員の実行間変動性を比較もしくは特性評価するステップ、分離および動員反応(例えば、分離および動員反応の完了に関する時間スケール、分離の間に達成される分離分解能、動員の間に維持される分離分解能等)を比較するステップ、分離が完了するときを決定するステップ、分離チャネルにおける失敗を監視または検出するステップ、電気浸透流の存在を監視するステップ、ならびに/もしくは分離性能特性(例えば、分離分解能、pH勾配の線形性等)を決定するステップにおいて特に有用であり得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、時系列撮像データは、図19に示されるように、3次元または3軸グラフ上にプロットされてもよい。グラフの1つの軸は、距離(例えば、分離チャネルの長さに沿った物理的距離またはピクセル位置)を表してもよく、1つの軸は、時間を表してもよい。いくつかの事例では、第3の軸が、信号強度、強度、または吸光度を表すために使用されてもよく、これは、代替として、もしくは加えて、カラースケールまたはグレースケールによって表されることができる。いくつかの実施形態では、x軸は、距離を表すために使用され、y軸は、時間を表すために使用され、z軸は、信号または吸光度を表すために使用されてもよい。軸が、パラメータ(例えば、チャネルに沿った距離または位置、pI、強度または吸光度、時間等)のうちのいずれかを表すために使用されることを理解されたい。
【0104】
撮像データおよびデータプロット(または他の画像処理)は、分離および質量分析実行の完了後に、もしくはいくつかの事例では、分離、動員、ならびに質量分析が実施されている間に実施されてもよい。例えば、コンピュータ実装方法またはソフトウェアは、これが取得される際に撮像データを受信し、(例えば、チャネル長の関数としての強度プロットを取得するために)撮像データを処理し、IEFデータを(例えば、3次元プロットまたはヒートマップにおいて反復的に、もしくは増分的に)プロットするように構成されてもよい。
【0105】
本明細書に説明されるように、コンピュータ実装方法またはソフトウェアは、規定された走査率において質量スペクトルを収集するために使用されることができる。いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法は、クロマトグラム形態において質量分析データを要約するために使用されることができる。例えば、図18の線トレース1834において等、X軸が時間を表し、Y軸が質量スペクトルデータにおける信号の合計(例えば、全イオンカウント)を表すプロットが、発生されてもよい。Y軸は、個々の質量スペクトルにおける全ての信号の合計(全イオンクロマトグラム)、具体的基準ピークまたは抽出イオンに関する信号の合計(基準ピーククロマトグラム、抽出イオンクロマトグラム)、または質量スペクトルデータの任意の他のサブセットを表すことができる。
【0106】
速度を決定するための分析物帯の撮像:いくつかの実施形態では、上記のように、1つまたはそれを上回る分析物帯の位置は、1つまたはそれを上回る分析物帯に関する速度が、2つまたはそれを上回る画像におけるその相対的位置および2つまたはそれを上回る画像に関する入手時間の間の既知の時間間隔における差異から計算され得るように、分離チャネル(もしくはマイクロ流体デバイスの他の部分)の一連の2つまたはそれを上回る画像から決定されてもよい。いくつかの実施形態では、分離チャネルの少なくとも一部の2つまたはそれを上回る画像は、分離ステップが実施されている間に入手されてもよい。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回る画像は、動員ステップの間に入手されてもよい。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回る画像は、分離されたサンプルが、分離チャネルの端部を下流分析器具に接続する流体チャネルを通して排出されている間に入手されてもよい。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを上回る画像は、分離されたサンプルが、テイラー円錐を形成するようにエレクトロスプレー先端またはオリフィスを通して排出されている間に入手されてもよい。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る分析物帯に関して決定された速度は、所与の分析物帯が分離チャネルから退出する時間を計算するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、分離チャネルの端部を出口ポート、例えば、エレクトロスプレーオリフィスまたは先端と接続する、1つまたはそれを上回る相互接続する流体接合部もしくは流体化チャネルが存在するとき、1つまたはそれを上回る分析物帯に関して決定された速度は、所与の分析物帯が出口ポートに到達し、本デバイスから退出する時間を計算するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る分析物帯に関して決定された速度は、所与の分析物帯がエレクトロスプレー先端もしくはエレクトロスプレーオリフィスに進入し、エレクトロスプレー先端またはオリフィスと質量分析計の入口との間に形成されたテイラー円錐に進入する時間を計算するために使用されてもよい。
【0107】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る分析物帯に関する速度を決定するために使用される画像のシーケンスは、コンピュータ実装方法(例えば、ソフトウェアパッケージ)を使用して入手されてもよい。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る分析物帯の速度は、自動化画像処理を含むコンピュータ実装方法を使用して決定される。いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法はさらに、所与の分析物帯が分離チャネルから退出するであろう時間の計算を実施するステップを含む。いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法はさらに、所与の分析物帯が出口ポートに到達し、本デバイスから退出するであろう時間の計算を実施するステップを含む。いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法はさらに、所与の分析物帯がエレクトロスプレー先端またはエレクトロスプレーオリフィスから退出し、エレクトロスプレー先端またはオリフィスと質量分析計の入口との間に形成されるテイラー円錐に進入するであろう時間の計算を実施するステップを含む。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る分析物帯に関して決定される退出時間は、具体的分析物帯を質量分析データまたは他の分析器具を使用して収集されたデータと相関させるために使用される。
【0108】
図3は、分離チャネル(またはマイクロ流体デバイスの他の部分)の画像を入手し、1つまたはそれを上回る分析物帯の速度を決定し、所与の分析物帯が本デバイスにおける規定された点、例えば、分離チャネルの端部、分離チャネルと二次流体チャネルとの間の接合点、本デバイスの出口ポート、またはエレクトロスプレー先端もしくはオリフィスの出口に到達するであろう時間を計算するためのコンピュータ実装方法に関する別の例示的プロセスフローチャートを提供する。いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法は、一連の1つまたはそれを上回る画像の入手を制御するステップを含んでもよく、これは、次いで、分離された分析物帯の位置を識別するために処理される。好適な自動化画像処理アルゴリズムの実施例は、下記により詳細に議論されるであろう。図3に図示されるように、画像処理ステップが、分離された分析物帯に関する位置を決定することができない場合、本システムは、画像処理ステップが繰り返され得るように、新しい画像を入手するように命令されてもよい。いったん分離された分析物帯の位置が、一連の2つまたはそれを上回る画像に関して決定されると、速度が、2つまたはそれを上回る画像におけるそれらの相対的位置および2つまたはそれを上回る画像の入手時間の間の既知の時間間隔に基づいて、分析物ピークのうちの1つまたはそれを上回るものに関して計算される。いくつかの実施形態では、一連の画像における1つの画像から次の画像への1つまたはそれを上回る分析物帯の追跡は、いくつかの分離された分析物帯を区別し、(例えば、一連の画像のいくつかの対から計算された速度値を平均化することを通して)速度計算を精緻化するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、選択された撮像モードを使用して検出され得るpIマーカまたは他の内部標準が、「速度標準」として使用されてもよい。そのように決定された分析物帯速度は、所与の帯が本デバイスにおけるユーザ規定点、例えば、分離チャネルの出口端、本デバイス内の特定の流体接合部、本デバイスの出口ポート、分析物がテイラー円錐に進入するエレクトロスプレーイオン化先端またはオリフィス、および同等物に到達するであろう時間を計算するために使用されてもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法は、分析物帯位置の検出、分析物帯速度の決定、および退出時間の計算のステップが、退出時間予測が連続的に更新され、化学分離データと質量分析データ(または他のタイプの下流分析データ)との相関がさらに改良されるように繰り返される、反復プロセスであってもよい。いくつかの実施形態では、画像入手および処理、速度計算、ならびに退出時間予測のステップを含むサイクルが、退出時間予測が少なくとも0.01Hz、0.1Hz、0.2Hz、0.3Hz、0.4Hz、0.5Hz、0.6Hz、0.7Hz、0.8Hz、0.9Hz、1Hz、10Hz、100Hz、または1,000Hzの率、もしくは任意の他の関連する率において、例えば、少なくともナイキスト率の率において更新され得る、十分に短い時間において完了されてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態(例えば、CIEFステップを含むもの)では、本開示のコンピュータ実装方法は、精密な等電点の撮像ベースの決定および分離された分析物帯の速度の撮像ベースの決定の両方を実施してもよい。
【0111】
分離データと質量分析データとの相関:いくつかの実施形態では、等電的に集束される分析物帯に関する正確な等電点の撮像ベースの決定を実施するための上記に説明されるコンピュータ実装方法は、等電点データを質量分析データ(または他の分析データ)における具体的m/zピークと相関させることを可能にし、それによって、(単一実行実験に関してであっても)データセットの情報コンテンツを改良し、分析物サンプルのより定量的な特性評価を可能にする。コンピュータ実装方法は、(例えば、プロセッサを使用して)IEFデータ(例えば、分離チャネルに沿った長さの関数としての複数の強度または吸光度測定値、もしくは具体的ピークに関するplデータ)およびMSデータ(例えば、全イオンクロマトグラム、質量の関数としての複数のイオン測定値等)を受信するように構成されてもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、撮像された分析物ピークは、質量分析計データに相関され、分析物ピークにおける1つまたはそれを上回る分析物の質量および電荷(もしくは等電点)に関する情報をもたらすことができる。例えば、分離の間、分離チャネルの1つまたはそれを上回る画像が、任意の有用な撮像率において入手され、それによって、時系列撮像データセットを発生させてもよい。時系列撮像データセットは、分離チャネルの複数の画像を備えることができ、各画像は、異なる時点に対応する。いくつかの事例では、IEFデータ(例えば、時系列の各画像)は、電気泳動図としてプロットされてもよく、これは、分離チャネルの長さに沿った位置の関数としての信号、強度、または吸光度を示してもよい。いくつかの事例では、本明細書の別の場所に説明されるように、IEFデータは、ヒートマップまたは3次元プロットを発生させるために使用されてもよい(例えば、図17A-Bおよび図19参照)。
【0113】
IEFデータは、MSデータとともに(例えば、1つまたはそれを上回るプロセッサを使用して)プロットされてもよい。例えば、図18の線トレース1832は、NISTモノクローナル抗体分離のIEF電気泳動図を表す。線トレース1832のX軸は、分離チャネルの長さに沿った空間分解能または位置(距離、ピクセル数、もしくは等電点の単位で表示され得る)を示し、線トレース1832のY軸は、相対的信号強度(例えば、吸光度、強度等)を示す。図18に示されるように、IEF電気泳動図は、MSデータを表す1つまたはそれを上回るクロマトグラムとともにグラフ上にプロットされる。例えば、1つまたはそれを上回るMS走査、平均化された走査、処理されたデータ、もしくは畳み込みを解かれたデータが、MSデータ(例えば、全イオンクロマトグラム1834)の時間軸を線トレース1832における等電点集束ピークと整合させることによって、IEF電気泳動図とともにプロットされてもよい。1つのそのような実施例では、線トレース1836は、全イオンクロマトグラム1834の時間セグメントおよびIEF電気泳動図1832のpIセグメントに対応する等しい時間間隔において質量分析計によって収集された畳み込みを解かれた質量スペクトルの一実施例を表す。畳み込みを解かれた質量スペクトルは、いくつかの事例では、全イオンクロマトグラム1834から畳み込みを解かれる、または別様に発生されることができる。各線トレース1836は、質量分析全イオンクロマトグラム1834およびIEF電気泳動図1832のx軸と並ぶ。線トレース1836は、質量(垂直なY軸によって表される)および畳み込みを解かれた質量スペクトル毎の(X軸に沿った)信号強度(例えば、イオンカウント)を示す。各質量スペクトル線トレース1836は、2つの基準スケールにおいて示されてもよく、より濃い線は、全ての質量スペクトルを横断する最も高い信号に正規化され、より薄いトレースは、各個々の質量スペクトル内で正規化される。そのようなプロットは、信号強度の表示を提供するが、また、低い信号が線トレース1836において表示されることを可能にする。
【0114】
いくつかの実施形態では、IEFデータおよびMSデータを相関させることは、類似する性質を有する(例えば、同一の電荷または等電点を伴う、もしくは同一の質量を伴う)、および/または異なる性質を有する、1つまたはそれを上回る分析物種を同定もしくは区別する際に特に有用であり得る。例えば、異なる質量を伴う2つの分子が、質量分析計データにおいて同定され得る。2つの分子は、異なる等電点(pI)を有し、IEFにおけるpH勾配の異なる領域に集中し得る、または2つの分子は、同一の等電点(pI)を有し、IEFにおけるpH勾配の同一の領域に集中し得る。2つの分子が同一のpIおよび異なる質量を有する事例では、IEFならびにMSデータの相関は、2つの分子を区別する(例えば、異なる種またはアイソフォームとしてそれらを同定する)ために使用されてもよい。
【0115】
実施例として、同一のpIおよび異なる質量(または代替として、同一の質量であるが、異なるpI)を有する2つの分子は、2つのタンパク質アイソフォーム、例えば、pIもしくは質量の差異が、翻訳後修飾、翻訳のエラー(例えば、誤ったアミノ酸添加、折畳、ジスルフィド結合再配列、または他の翻訳修飾)、転写、もしくはDNA配列にエンコードされていることによって引き起こされるアイソフォームであり得る。そのような実施例では、正しい翻訳後修飾は、質量および電荷またはpIの両方の差異(もしくは類似性)を検査することによって同定されてもよい。例えば、分離チャネル内の分析物ピーク(例えば、IEF分析物ピーク)は、同一の等電点を有するが、異なる質量を有する1つまたはそれを上回る分析物種を含み得る。異なる質量は、本明細書に説明されるように、分析物ピークに対してMSを実施することによって判別されてもよい。pIおよび質量の両方の情報を使用することによって、特定のアイソフォームの既知の、または予期されるpIならびに質量から逸脱するあるアイソフォームが、排除されることができる。故に、1つまたはそれを上回る分析物種は、それらが同一の等電点を有するにもかかわらず、質量の差異を使用して同定されてもよい。代替として、または併せて、1つまたはそれを上回る分析物種は、それらが同一の質量を有する場合であっても、pIの差異を使用して同定されてもよい。
【0116】
単一のプロット上のIEFデータおよびMSデータ(例えば、全イオンクロマトグラムならびに質量の関数としての時系列イオン測定値)のオーバーレイは、pIを1つまたはそれを上回る分析物種の質量にマッピングすることによってタンパク質アイソフォームを同定する際に有用であり得る。例えば、図18を参照すると、IEFデータ(例えば、IEF電気泳動図1832)は、全イオンクロマトグラム1834にマッピングされてもよい。全イオンクロマトグラム1834の各点(例えば、時間間隔)は、質量分布および相対的強度を示す、線トレース1836を発生させるために畳み込みを解かれてもよい。故に、全イオンクロマトグラム1834における時間間隔毎に、対応する畳み込みを解かれた質量分布データおよび等電点が、決定されてもよい。同様に、等電点毎に、対応する質量分布が、取得されてもよい。
【0117】
例えば、図20は、NISTモノクローナル抗体の分析からの例示的等電点電気泳動および質量分析データを示す。図20のパネルAは、挿入プロットにおいて電荷変形(酸性1、酸性2、主要、塩基性1、および塩基性2と標識化される)の等電点電気泳動データを示す一方、より大きいグラフは、挿入プロットにおける電荷変形に対応する、質量分析計の中に導入される電荷変形の質量スペクトル基準ピーククロマトグラムを示す。図20のパネルBは、時間間隔毎の基準ピーククロマトグラムのサンプルに関する質量割当を表示する、畳み込みを解かれた質量データを示し、その時間間隔はそれぞれ、(例えば、酸性端から塩基性端までの)分離チャネルの長さに沿った位置に戻るようにマッピングされることができる。図20のパネルBのピークプロファイルの差異は、等電点電気泳動プロセスにおいて分離される異なる電荷変形ピークにおける種の質量および相対的存在度の差異を示す。
【0118】
IEFデータおよびMSデータは、翻訳後修飾を割り当てるために使用されてもよい。図21のパネルAは、翻訳後修飾および修飾によって予期される電荷ならびに質量変化の実施例のリストを示す。これらの値は、公的に利用可能なソース(例えば、公開されたデータ、タンパク質データベース等)から取得されてもよい、または経験的に導出されてもよい。実施例では、図21のパネルAにおいて、糖化およびガラクトース(グリコシル化)修飾の両方が、分子質量への162ダルトンの添加をもたらす。しかしながら、糖化事象は、糖化が、分子をより酸性の状態にさせ、IEFにおけるより低い等電点またはCZEにおける異なる溶出時間に偏移させるであろうため、グリコシル化事象から区別されることができる。本および他の実施例が、図21のパネルBに概説されるが、修飾の多くの他の組み合わせが、タンパク質分析物において可能性として考えられる。例えば、翻訳後修飾は、水酸化、メチル化、脂質化、アセチル化、ジスルフィド結合、スモイル化、ユビキチン化、グリコシル化、糖化、アミノ酸添加または除去、アミド化、脱アミド化、異性化、酸化、フコシル化、シアリル化、リン酸化、またはそれらの組み合わせ、もしくは他の翻訳後修飾であってもよい。既知の翻訳後修飾性質(例えば、電荷、質量、pI変化等)は、公的に利用可能なソース(例えば、UniProt、BLAST、または他のタンパク質データベース)から取得されてもよい。
【0119】
図22のパネルAは、酸性2、塩基性1、および主要ピーク(IEF分離からの分析物ピーク)の質量分析から計算される畳み込みを解かれた質量を示す。塩基性1および主要の両方におけるピークは、1分子あたり162ダルトンの連続増加を示し、順次的グリコシル化ステップが、質量差をもたらすが、いかなる電荷(またはpI)差ももたらさないことを示す。図23のパネルBに示されるように、異なる質量の分子の相対的存在度は、塩基性1と主要との間で変化せず、図22のパネルAに示される128ダルトンのオフセットのみが、存在し、塩基性1ピークにおける分子上に存在する付加的リジンを示す。同様に、図22のパネルBでは、主要、酸性1、および酸性2ピーク(IEF分離からの分析物ピーク)の質量分析から計算される畳み込みを解かれた質量を比較すると、各電荷変形ピークにおける分子における一貫した一連の162ダルトンの偏移を確認することができる。しかしながら、主要酸性1および酸性2プロファイルが、図23のパネルAにおいてオーバーレイされると、酸性電荷変形ピークにおけるより大きい質量における相対的増加が、観察され、塩基性1および主要ピークにおいて見られるグリコシル化系列に加えて、糖化を示し得る。
【0120】
コンピュータ実装方法:本明細書に説明されるように、1つまたはそれを上回るデータ提示および分析アルゴリズムが、コンピュータ実装方法を使用して実装されてもよい。コンピュータアルゴリズムは、限定ではないが、IEFおよびMSデータを受信するステップ、データを変換または処理するステップ、データのグラフまたはプロットを発生させるステップ、IEFおよびMSデータをオーバーレイするステップ、ならびにIEFデータを分析するステップ、例えば、翻訳後修飾を正しく割り当てるために、電荷および質量変化を査定するステップを含む、種々の機能を実施するために採用されてもよい。いくつかの実施形態では、ニューラルネットワークまたは他の人工知能アルゴリズムが、翻訳後修飾を正しく割り当てるために、電荷および質量変化もしくは類似性を査定するために採用されてもよい。いくつかの事例では、コンピュータ実装方法は、複数の基準値(例えば、異なる翻訳後修飾に関する予期される、または既知の電荷ならびに/もしくは質量変化)を記憶するように構成されてもよい。これらの記憶された基準値は、続けて、1つまたはそれを上回るプロセッサによって、IEFおよびMSデータを合致させ、分析物ピークにおける翻訳後修飾を決定または同定するために使用されてもよい。
【0121】
1つまたはそれを上回るコンピュータ実装方法は、自動的に(例えば、人間の相互作用を伴わずに)1つまたはそれを上回る機能を実施するように構成されてもよい。例えば、1つまたはそれを上回るコンピュータ実装方法は、データを入手する(例えば、撮像を実施する)、データ(例えば、分離、動員、および/またはMSデータ)を受信する、データを処理する、データを表示する等のためのソフトウェアパッケージの一部であってもよい。データの処理または提示は、撮像と実質的に同時に実施されてもよい、もしくは撮像が完了した後に行われてもよい。同様に、データの処理または提示は、ESI-MSの間に、またはESI-MSに続けて実施されてもよい。例えば、翻訳後修飾の決定または割当は、ESI-MSデータの入手から1秒以内、1分以内、10分以内、1時間以内等に実施されてもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、(種々の異なる分離技法のうちのいずれかを使用して)分離された分析物帯に関する速度を計算し、退出時間を予測するために、画像由来のデータを使用するための上記に説明されるコンピュータ実装方法は、化学分離データ(例えば、滞留時間、電気泳動移動度、等電点等)と質量分析データ(または他の分析データ)における具体的m/zピークとの間の時間相関を改良することを可能にし、それによって、(単一実行実験に関してであっても)データセットの両方の情報コンテンツを改良し、分離時間における実験間または器具間の変動を補正する能力に起因して、異なるサンプル実行、異なるサンプルに関して収集されたデータ、または異なる器具上で収集されたデータのより定量的な比較を可能にする。
【0123】
開示される方法、デバイス、およびシステムは、したがって、種々のメタボロミクス、プロテオミクス、ならびに薬剤開発または製造用途のために特に有利であり得る。上記の実施例は、質量分析に結合される等電点電気泳動に関するが、質量分析計への導入の前に実施される分離が、本明細書の別の場所に説明されるように、電気泳動、クロマトグラフィ、または別の分離であり得ることを理解されたい。
【0124】
質量分析およびエレクトロスプレーイオン化:いくつかの実施形態では、本開示の方法、デバイス、およびシステムは、分離された分析物混合物のエレクトロスプレーイオン化ならびに質量分析計の中へのその注入を実施するために構成されてもよい。質量分析(MS)は、それらをイオン化し、それらの質量/電荷(m/z)比に基づいて、結果として生じるイオンを分類することによって、サンプル中の分析物分子の「質量」を測定する分析技法である。先行する液相または気相サンプル分離システムと組み合わせて、質量分析は、例えば、生物学的サンプルにおいて一般的であるように、複数の低存在度の分析物を含む複雑なサンプルを分析するために利用可能な最も効果的な手段のうちの1つを提供する。
【0125】
全ての質量分析計は、質量分析器の中への導入に先立ってイオンが気相であるという要件を共有する。限定ではないが、マトリクス支援レーザ脱離およびイオン化(MALDIならびにエレクトロスプレーイオン化(ESI)を含む、種々のサンプルイオン化モードが、開発されている。MALDI技法では、サンプル(例えば、タンパク質の混合物を含む生物学的サンプル)は、シナピン酸またはα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸等のエネルギー吸収マトリクス(EAM)と混合され、金属板上に結晶化される。表面強化レーザ脱離およびイオン化(SELDI)は、あるクラスのタンパク質の具体的結合を助長するために、金属板上に付加的表面化学を組み込む技法の一般的な変形である。板は、真空チャンバの中に挿入され、マトリクス結晶は、窒素レーザからの光パルスを用いて衝突される。マトリクス分子によって吸収されるエネルギーは、タンパク質に伝達され、それらに気相におけるイオンのプルームを脱離、イオン化、および生成させ、これは、電波の存在下で加速され、飛行管の中に引き込まれ、そこで、それらは、それらが飛行時間を記録する検出器に衝突するまでドリフトする。飛行時間は、ひいては、イオン化された種に関するm/z比を計算するために使用されてもよい。開示されるデバイスのいくつかの実施形態では、本デバイスの出口ポートは、例えば、具体的分析物帯に関する等電点をMALDI質量分析計データと相関させるために、質量分析に備えてMALDI板上に分離された分析物帯(またはその分画)を堆積させるために使用される毛細管もしくは他の特徴を備えてもよい。
【0126】
エレクトロスプレーイオン化(ESI、本明細書では単純に「エレクトロスプレー」とも称される)もまた、液体クロマトグラフィまたは動電クロマトグラフィ分離技法を質量分析計とインターフェースを取るためのその本質的な互換性に起因して使用されることができる。上記のように、エレクトロスプレーイオン化では、サンプルおよび溶液の小液滴が、先端またはオリフィスと質量分析計源板との間の電場の印加によって、エレクトロスプレー特徴(例えば、エミッタ先端もしくはオリフィス)を備える毛細管またはマイクロ流体デバイスの遠位端から放出される。液滴は、次いで、本誘起電場内で延伸および拡張し、円錐形放出(すなわち、「テイラー円錐」)を形成し、これは、蒸発し、さらなる分離および検出のために質量分析計の中に導入される気相イオンを生成する、ますます小さい液滴を含む。エミッタ先端は、マイクロ流体チップ設計に内蔵される毛細管または角もしくはESI先端から形成されてもよく、これは、ESIのための便宜的な液滴体積を提供する。エミッタ先端は、ラッピングホイール、やすり、機械加工ツール、CNC機械加工ツール、水噴射切断、またはESI先端を成形し、小さい表面体積を提供するための他のツールもしくはプロセス、および同等物を使用して、小さい表面および液滴体積を提供するために鋭利化されてもよい。いくつかの実施形態では、先端は、チップの先端部分を加熱し、延伸させることによって引き伸ばされてもよい。いくつかの実施形態では、先端は、次いで、所望の長さまたは直径に切断されてもよい。いくつかの実施形態では、エレクトロスプレー先端は、先端上に形成される液滴のサイズを最小限にし得る、疎水性コーティングを用いてコーティングされてもよい。いくつかの実施形態では、本システムは、いかなる分析物も本デバイスから溶出されていないとき、分離ステップの間に動員剤、陰極液、または任意の他の液体をエレクトロスプレーしてもよい。
【0127】
開示される方法、デバイス、およびシステムのいくつかの実施形態では、誘導結合レーザイオン化、高速原子衝撃、ソフトレーザ脱離、大気圧化学イオン化、二次イオン質量分析、スパークイオン化、熱イオン化、および同等物等の他のイオン化方法も、使用される。
【0128】
エレクトロスプレーイオン化に関して、いくつかの実施形態では、開示されるマイクロ流体デバイスは、図1に図示されるように、効率的なエレクトロスプレーイオン化および下流質量分析との便宜的なインターフェースを助長するように設計される特徴を備える。マイクロ流体デバイス(例えば、生物製剤またはバイオ後続品)から排出され、質量分析計の中に導入される分析物に関する質量/電荷比(または「質量」)は、種々の異なる質量分析計設計のうちのいずれかを使用して測定されることができる。実施例は、限定ではないが、飛行時間質量分析、四重極質量分析、イオントラップまたはオービトラップ質量分析、飛行距離質量分析、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴、共鳴質量測定、およびナノメカニカル質量分析を含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスのエレクトロスプレー特徴は、分離チャネルと一直線であってもよい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスのエレクトロスプレー特徴は、分離チャネルに対して直角に、または中間角度に配向されてもよい。開示される方法のいくつかの実施形態では、毛細管またはマイクロ流体デバイスにおいて実施される最終分離もしくは濃縮ステップからの分離および/または濃縮された分析物分画の実質的に全てが、連続的な流れにおいてエレクトロスプレー先端もしくは特徴から排出される。いくつかの実施形態では、分析物混合物の一部(例えば、着目分画)が、質量分析計等の分析器具またはサンプルの少なくとも一部を分画ならびに/もしくは濃縮するように構成される別のデバイスとインターフェースを取るように構成される出口を介してマイクロ流体デバイスから排出されてもよい。分析物混合物の別の部分(例えば、着目分画以外の分画を含有する)が、廃棄物チャネルを介して排出されることができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、毛細管またはマイクロ流体デバイスからの排出は、圧力、電気力、イオン化、もしくはこれらの任意の組み合わせを使用して実施される。いくつかの実施形態では、排出は、上記に説明されるような動員ステップと一致する。いくつかの実施形態では、エレクトロスプレーイオン化のために使用されるシース液が、電気泳動分離のための電解質として使用される。いくつかの実施形態では、ネブライジングガスが、分析物分画を微細なスプレーに低減させるために提供される。
【0131】
エレクトロスプレーイオン化性能の撮像ベースのフィードバック:毛細管またはマイクロ流体デバイスを使用する従来のESI-MSシステムは、概して、動作の間にテイラー円錐を再確立するためにシステムを較正するためのいかなるツールも提供しない。安定したテイラー円錐を維持することは、マイクロ流体デバイスまたは毛細管内の分離チャネルを横断して印加される電気泳動電場によって複雑になり得る。実行の合間、または実行の間の試薬の伝導率の変化は、質量分析計とのインターフェースにおける電圧電位を変化させ得る。インターフェースにおける電位の変化は、テイラー円錐に悪影響を及ぼし得、エレクトロスプレーイオン化効率の損失につながり得る。本明細書に開示されるものは、エレクトロスプレーイオン化性能、したがって、毛細管ベースまたはマイクロ流体デバイスベースのESI-MSシステムのために収集される質量分析データの品質を改良するための方法およびシステムである。いくつかの実施形態では、例えば、エレクトロスプレーイオン化設定におけるテイラー円錐の撮像は、テイラー円錐の形状、密度、または他の特性が、規定された範囲内に維持されるように、1つまたはそれを上回る動作パラメータのフィードバック制御を提供するためにコンピュータ実装方法において使用されてもよい。いくつかの実施形態では、そのようなフィードバックプロセスを通して制御され得る動作パラメータは、限定ではないが、エレクトロスプレー先端またはオリフィスと質量分析計入口との整合、エレクトロスプレー先端と質量分析計入口との間の距離(例えば、統合エレクトロスプレー特徴を備える毛細管先端またはマイクロ流体デバイスをプログラマブル精密X-Y-Z変換ステージ上に搭載することによる)、エレクトロスプレー先端を通した分析物サンプルの流率(例えば、分析物サンプルの排出を駆動するために使用される圧力、電場強度、またはそれらの組み合わせを調節することによる)、例えば、チャネルの近位端において、例えば、エレクトロスプレー先端またはオリフィスと質量分析計入口との間に印加される電圧、排出される分析物サンプルを囲繞するシース液またはシースガスの体積流率、もしくはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0132】
図4は、(i)テイラー円錐の画像を入手し(種々の画像センサのうちのいずれか、例えば、CCD画像センサまたはCMOS画像センサを使用して)、(ii)画像を処理し、テイラー円錐の形状、密度、または他の特性を決定し、(iii)テイラー円錐の形状、密度、または他の特性を規定された、もしくは標的値のセットと比較し、(iv)該比較に基づいて、テイラー円錐の形状、密度、または他の特性を1つまたはそれを上回る動作パラメータに関連させる数学的アルゴリズムを使用し、テイラー円錐を規定された、または標的値に復元するための1つまたはそれを上回る動作パラメータの適切な調節を決定するために使用される、コンピュータ実装方法に関する例示的プロセスフローチャートを提供する。いくつかの実施形態では、質量分析計から入手されるデータ(例えば、全イオン電流データ)が、システム性能を監視し、1つまたはそれを上回る動作パラメータの調節を行うために、テイラー円錐の画像から導出されるデータに加えて使用されてもよい。
【0133】
いくつかの実施形態では、画像入手および処理、テイラー円錐特性の識別、該テイラー円錐特性と標的値のセットとの比較、ならびに1つまたはそれを上回るESI-MSシステム動作パラメータに必要とされる調節の計算のステップを含む、図4に図示される周期的プロセスは、1つまたはそれを上回る動作パラメータが、少なくとも0.01Hz、0.1Hz、0.2Hz、0.3Hz、0.4Hz、0.5Hz、0.6Hz、0.7Hz、0.8Hz、0.9Hz、1Hz、10Hz、100Hz、もしくは1,000Hzの率、または任意の他の関連する率において、例えば、少なくともナイキスト率の率において更新され得る、十分に短い時間において完了されてもよい。
【0134】
交互する高質量/低質量走査:開示される方法、デバイス、およびシステムのいくつかの実施形態では、質量分析計は、高質量走査範囲(例えば、約1,500~6,000のm/z範囲)または「高質量走査」と低質量走査範囲(例えば、約150~1,500のm/z範囲)または「低質量走査」との間で交互するように設定されてもよく、したがって、低質量走査は、質量分析データにおいて同定され、低質量マーカによって示される性質(例えば、自由溶液両性電解質が検出される場合では等電点の具体的範囲、ペプチド、小分子マーカ)に対してこれを較正するために使用され得る、低質量マーカ、例えば、等電点電気泳動分離ステップが実施された事例では自由溶液両性電解質を同定するために使用されてもよい。高質量走査と低質量走査との間の切替および走査率は、エレクトロスプレーインターフェースからの分析物サンプルの流出に対して高速であるべきである。いくつかの事例では、高質量走査と低質量走査との間の切替率は、0.5Hz~約50Hzに及んでもよい。いくつかの事例では、切替率は、少なくとも0.5Hz、少なくとも1Hz、少なくとも5Hz、少なくとも10Hz、少なくとも20Hz、少なくとも30Hz、少なくとも40Hz、または少なくとも50Hzであってもよい。
【0135】
高および低分離/動員電圧を改変し、ESI先端電圧を一定に保つ:いくつかの実施形態では、質量分析計上のESIイオン源は、質量分析計上の負電圧を設定することが可能な調節可能電力供給源を有するであろう。いくつかの実施形態では、質量分析計上のESIイオン源は、質量分析計上の正電圧を設定することが可能な調節可能電力供給源を有するであろう。いくつかの実施形態では、質量分析計上のESIイオン源は、接地において保持されるであろう。いくつかの実施形態では、毛細管またはマイクロ流体デバイス上のESI先端は、ESI先端と質量分析計上の荷電ESIイオン源との間に電場を発生させるために、接地において、またはそれに近接して保持されるであろう。いくつかの実施形態では、毛細管またはマイクロ流体デバイス上のESI先端は、ESI先端と質量分析計上の接地ESIイオン源との間に電場を発生させるために、正電圧または負電圧において保持されるであろう。
【0136】
図15は、動員の間にESI先端電圧を0Vに保ちながら、アノードとカソードとの間の3,000Vの一定の電圧降下を維持するためのコンピュータ制御フィードバックループの例示的フローチャートを提供する。いくつかの実施形態では、本フィードバックループは、質量分析計ESIイオン源が接地に対して正電圧または負電圧(例えば、-3,500V)に設定されるときに実装されてもよい。本実施例では、陽極液ポート108と動員剤ポート104との間のΔVは、最初に、図7Aにおいて陽極液ポート108を+3,000Vに、動員剤ポート104を0Vに設定することによって、3,000Vに保たれる。いくつかの実施形態では、異なるΔVが、陽極液ポート108を異なる値に設定することによって設定されてもよい。いくつかの実施形態では、アノード動員が、使用されてもよく、ポート108は、例えば、-3,000Vに設定される、陰極液ポートであろう。図15に概説される実施例では、動員の間、分離チャネル112における抵抗は、分離における分析物および両性電解質が電荷を取り戻すことに起因して、降下している。これは、チャネル112を横断する電圧降下を降下させ、方程式1に従って、ESI先端116における電圧の増加につながる。
116=(ΔV108-104)×(R105)/(R109+R112+R105)しかしながら、ESI先端電圧116を測定または計算することによって、陽極液ポート108および動員剤ポート104における電圧設定は、調節されることができる。陽極液ポート108および動員剤ポート104設定の両方からESI先端電圧116を減算することによって、ΔV108-104は、動員が影響を受けないように、3,000Vのままであるが、ESI先端116電圧は、方程式2に従って、0に設定される。
116=(ΔV108-104)×(R105)/(R109+R112+R105)+V104
本フィードバックループは、動員が完了するまで動作し続け、規則的周波数、例えば、ナイキスト率、または約0.2Hzにおいて、ESI先端116電圧を0に調節する。いくつかの事例では、ESI先端116における電圧は、少なくとも0.01Hz、0.1Hz、0.2Hz、0.3Hz、0.4Hz、0.5Hz、0.6Hz、0.7Hz、0.8Hz、0.9Hz、1Hz、10Hz、100Hz、または1,000Hzの率において0に調節されてもよい。ESI先端116において一定の安定した電圧を維持することは、動員プロセスの間に安定したエレクトスプレーを維持するために重要であり得る。
【0137】
いくつかの事例では、フィードバックループは、ESI先端における電圧を事前設定値の規定されたパーセンテージ以内に維持するように動作する。例えば、いくつかの事例では、フィードバックループは、ESI先端における電圧を事前設定値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.1%以内に維持するように動作する。いくつかの事例では、フィードバックループは、ESI先端電圧を事前設定値の1,000V、500V、100V、75V、50V、25V、10V、5V、または1V以内に維持するように動作する。
【0138】
いくつかの実施形態では、質量分析計ESIイオン源は、接地において保持され、ESI先端116は、ESI先端116と質量分析計との間に電場を作成するために、一定の正電圧または負電圧において保たれる必要があろう。いくつかの実施形態では、ESI先端電圧(例えば、事前設定値)は、約+5,000V、約+4,000V、約+3,500V、約+3,000V、約+2,500V、約+2,000V、約+1,500V、約+1,000V、約+500V、または約-5,000V、約-4,000V、約-3,500V、約-3,000V、約-2,500V、約-2,000V、約-1,500V、約-1,000V、もしくは約-500Vであってもよい。図12は、動員の間にESI先端電圧を3,000Vに保ちながら、アノードとカソードとの間の3,000Vの一定の電圧降下を維持するためのコンピュータ制御フィードバックループの例示的フローチャートを提供する。コンピュータ制御フィードバックループの動作は、陽極液ポート108および動員剤ポート104における電圧が、+3,000Vだけオフセットされ、これが、依然として方程式2に従って、ESI先端116における電圧を+3,000Vにオフセットすることを除いて、図15と同一である。いくつかの実施形態では、電場強度の制御は、アナログ回路を使用して遂行されることができる。いくつかの実施形態では、毛細管ベースまたはマイクロ流体デバイスベースの分離システムと接触する1つまたはそれを上回る電極における電圧の制御は、1つ、2つ、3つ、または4つ、もしくはそれを上回る独立した高電圧電力供給源を使用することによって提供されてもよい。いくつかの事例では、毛細管ベースまたはマイクロ流体デバイスベースの分離システムと接触する1つまたはそれを上回る電極における電圧の制御は、例えば、単一の多重化高電圧電力供給源を使用することによって提供されてもよい。
【0139】
いくつかの事例では、フィードバックループは、分離チャネル内の電場強度またはアノードとカソードとの間の電圧降下を事前設定値の規定されたパーセンテージ以内に維持するように動作する。例えば、いくつかの事例では、フィードバックループは、分離チャネル内の電場強度またはアノードとカソードとの間の電圧降下を事前設定値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、または0.01%以内に維持するように動作する。いくつかの事例では、フィードバックループは、分離チャネル内の電場強度またはアノードとカソードとの間の電圧降下を事前設定値の1,000V、500V、100V、75V、50V、25V、10V、5V、または1V以内に維持するように動作する。
【0140】
質量分析計入口電位を改変し、ESI先端と質量分析計入口との間の電圧差を一定に保つ:いくつかの実施形態では、質量分析計は、それに結合される、質量分析計上の(例えば、入口における)負電圧を設定することが可能な調節可能電力供給源を有してもよい。ある実施形態では、質量分析計は、それに結合される、質量分析計上の(例えば、入口における)正電圧を設定することが可能な調節可能電力供給源を有してもよい。種々の実施形態では、質量分析計または質量分析計入口は、接地において保持されてもよい。ある場合には、毛細管またはマイクロ流体デバイス上のESI先端は、ESI先端と質量分析計上の荷電ESIイオン源との間に電場を発生させるために、接地において、またはそれに近接して保持されてもよい。ある場合には、毛細管またはマイクロ流体デバイス上のESI先端は、ESI先端と質量分析計(例えば、入口における)との間に電場を発生させるために、正電圧または負電圧において保持されてもよい。種々の場合では、質量分析計に印加される電位は、例えば、ESI先端と質量分析計入口との間の一定の電圧差(ΔVTIP-MS)を維持するために、フィードバックループにおいて調節されてもよい。いくつかの事例では、電圧差(ΔVTIP-MS)は、標的値(ΔVTARGET)または標的値の範囲に設定されてもよい。ある事例では、ESI先端の電位および質量分析計の(例えば、入口における)電圧または電位の両方は、例えば、ESI先端と質量分析計との間の電圧降下を一定に、もしくは標的値の範囲内に保つために調節されてもよい。
【0141】
種々の事例では、コンピュータ制御フィードバックループが、ESI先端と質量分析計との間の一定の電圧降下を維持するために使用されることができる。いくつかの実施形態では、本フィードバックループは、質量分析計ESIイオン源が、接地に対して正電圧または負電圧(例えば、-3,500V)に設定されるときに実装されてもよい。本実施例では、図7Aを参照すると、陽極液ポート108と動員剤ポート104との間のΔVは、陽極液ポート108を+3,000Vに、動員剤ポート104を0Vに設定することによって、3,000Vの初期電圧に設定されてもよい。ある実施形態では、異なるΔVが、陽極液ポート108を異なる値に設定することによって設定されてもよい。いくつかの実施形態では、アノード動員が、使用されてもよく、ポート108は、例えば、-3,000Vに設定される、陰極液ポートであろう。ある場合には、動員の間、分離チャネル112における抵抗は、分離チャネルにおける分析物および両性電解質が電荷を取り戻すことに起因して、降下し得る。これは、チャネル112を横断する電圧を降下させ、以下の方程式に従って、ESI先端116における電圧の増加につながり得る。
116=(ΔV108-104)×(R105)/(R109+R112+R105)ESI先端116電圧を測定または計算することによって、質量分析計電圧は、調節されることができる。例えば、ESI先端116における電圧の増加は、質量分析計入口とESI先端116との間の電圧の差異、すなわち、ΔVTIP-MSが同一のままであるように、質量分析計に印加される電圧に追加されることができる。いくつかの事例では、ESI先端116および質量分析計の両方の電圧が、調整されてもよい。フィードバックループは、動員が完了するまで動作し続け、規則的周波数、例えば、ナイキスト率、または約0.2HzにおいてESI先端116のものに合致するように質量分析計電圧(例えば、入口における)を調節することができる。いくつかの事例では、質量分析計に印加される電圧は、少なくとも0.01Hz、0.1Hz、0.2Hz、0.3Hz、0.4Hz、0.5Hz、0.6Hz、0.7Hz、0.8Hz、0.9Hz、1Hz、10Hz、100Hz、または1,000Hzの率において0に調節されてもよい。ESI先端116と質量分析計入口との間の一定の安定した電圧差を維持することは、質量分析計への分析物の動員プロセスの間に安定したエレクトロスプレーを維持することができる。
【0142】
いくつかの事例では、フィードバックループは、質量分析計入口、ESI先端、または両方の電圧を事前設定値の規定されたパーセンテージ以内に維持するように動作してもよい。例えば、いくつかの事例では、フィードバックループは、質量分析計における電圧を事前設定値(例えば、ΔVTARGET)の少なくとも10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.1%以内に維持するように動作してもよい。別の実施例では、いくつかの事例では、フィードバックループは、ESI先端と質量分析計との間の電圧降下を事前設定値(例えば、ΔVTARGET)の少なくとも10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.1%以内に維持するように動作してもよい。いくつかの事例では、フィードバックループは、質量分析計電圧を事前設定値(例えば、ΔVTARGET)の少なくとも1,000V、500V、100V、75V、50V、25V、10V、5V、または1V以内に維持するように動作してもよい。いくつかの事例では、フィードバックループは、質量分析計とESI先端との間の電圧の差異を事前設定値(例えば、ΔVTARGET)の少なくとも1,000V、500V、100V、75V、50V、25V、10V、5V、または1V以内に維持するように動作してもよい。
【0143】
いくつかの実施形態では、ESI先端116は、接地において保持されることができ、質量分析計または質量分析計入口は、ESI先端116と質量分析計入口との間に電場を作成するために、一定の正電圧または負電圧において保たれることができる。いくつかの実施形態では、質量分析計入口電圧(例えば、事前設定値)は、約5,000V、約+4,000V、約+3,500V、約+3,000V、約+2,500V、約+2,000V、約+1,500V、約+1,000V、約+500V、または約-5,000V、約-4,000V、約-3,500V、約-3,000V、約-2,500V、約-2,000V、約-1,500V、約-1,000V、もしくは約-500Vであってもよい。図12は、動員の間にESI先端電圧を3,000Vに保ちながら、アノードとカソードとの間の3,000Vの一定の電圧降下を維持するためのコンピュータ制御フィードバックループの例示的フローチャートを図示するが、類似するコンピュータ制御フィードバックループが、動員の間にESI先端と質量分析計入口との間の一定の電圧降下、例えば、3,000Vの電圧差を維持するために使用され得ることを理解されたい。そのような場合では、ESI先端の電圧は、(例えば、チップ上またはESI先端における抵抗、電流、もしくは電圧を測定することを介して)測定されてもよく、質量分析計入口の電圧は、ESI先端における電圧の変化を合致させるように調節されてもよい。いくつかの実施形態では、先端における電位の測定値が、得られ、後続実行における電位の変化を予測するために使用されることができる。質量分析計および/またはチップ電位は、次いで、ESI先端と質量分析計との間の一定の電圧を維持するために、予測される変化に基づいて調節されることができる。いくつかの実施形態では、チップ内のチャネルにおける電圧および電流の測定値は、電気抵抗を計算するために使用されることができ、これらの抵抗は、先端における、または具体的チャネルにおける電圧を計算するために、後続実行において使用されることができる。
【0144】
ESI先端における電圧は、電力供給源または電極を使用することを含む、種々のアプローチもしくは機構を使用して測定されてもよい。例えば、マイクロ流体デバイスは、(例えば、ESI先端の近傍で)分離チャネルと交差する、または流体もしくは電気連通し得る、付加的チャネルを備えてもよい。例えば、付加的チャネルは、ESI先端から約0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mmの位置において分離チャネルと交差してもよい。付加的電力供給源が、本付加的チャネルに接続され、0マイクロアンペアの電流に設定されてもよい。付加的電力供給源は、付加的電気回路をマイクロ流体デバイスに導入することなく、ESI先端における電位を測定するために使用されてもよい。代替として、または加えて、電極が、ESI先端の近傍に設置されてもよい。例えば、電極は、ESI先端から約0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mmの位置において設置されてもよい。電極はまた、いかなる電力または電流も供給せず、それによって、付加的電気回路を追加することなく、ESI先端の測定を可能にし、故に、質量分析計入口、ESI先端(例えば、陽極液および陰極液ポートまたは陽極液および動員ポートに印加される電位を介して)、もしくは両方に印加される電位を調節し、一定のΔVTIP-MSを維持することを可能にするように構成されてもよい。
【0145】
いくつかの実施形態では、電場強度の制御は、アナログ回路を使用して遂行されることができる。ある実施形態では、毛細管ベースまたはマイクロ流体デバイスベースの分離システムと接触する1つまたはそれを上回る電極における電圧の制御は、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれを上回る独立した高電圧電力供給源を使用することによって提供されてもよい。いくつかの事例では、毛細管ベースまたはマイクロ流体デバイスベースの分離システムと接触する1つまたはそれを上回る電極における電圧の制御は、例えば、単一の多重化高電圧電力供給源を使用することによって提供されてもよい。
【0146】
ある事例では、フィードバックループは、分離チャネル内の電場強度、アノードとカソードとの間の電圧降下、または本デバイス(例えば、ESI先端における)と質量分析計入口との間の電圧降下を事前設定値の規定されたパーセンテージ以内に維持するように動作してもよい。例えば、いくつかの事例では、フィードバックループは、分離チャネル内の電場強度、アノードとカソードとの間の電圧降下、または本デバイス(例えば、ESI先端における)と質量分析計入口との間の電圧降下を事前設定値の少なくとも10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、または0.01%以内に維持するように動作してもよい。いくつかの事例では、フィードバックループは、分離チャネル内の電場強度、アノードとカソードとの間の電圧降下、または本デバイス(例えば、ESI先端における)と質量分析計との間の電圧降下を事前設定値の少なくとも1,000V、500V、100V、75V、50V、25V、10V、5V、または1V以内に維持するように動作してもよい。
【0147】
システムハードウェア:図5は、開示される方法、デバイス、およびシステムの一実施形態に関するシステムハードウェアブロック図の概略図を提供する。図示されるように、本開示のシステムは、以下のハードウェアコンポーネント、すなわち、(i)化学分離システム(例えば、分析物分離、例えば、等電点電気泳動ベースの分離を実施するように設計される毛細管またはマイクロ流体デバイス、および1つまたはそれを上回る高電圧電力供給源)、(ii)ある場合には、分離システムと直接統合され得る、質量分析計のためのエレクトロスプレーインターフェース(破線によって示されるような)、(iii)質量分析計、(iv)撮像デバイスまたはシステム、(v)プロセッサまたはコンピュータ、ならびに(vi)コンピュータメモリデバイス、もしくはそれらの任意の組み合わせのうちの1つまたはそれを上回るものを備えてもよい。いくつかの実施形態では、本システムはさらに、1つまたはそれを上回る毛細管もしくはマイクロ流体デバイス流動コントローラ(例えば、プログラマブルシリンジポンプ、蠕動ポンプ、HPLCポンプ等)、毛細管またはマイクロ流体デバイスの全てもしくは一部に関する規定された温度を維持するように構成される温度コントローラ、付加的光センサまたは画像センサ(例えば、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、CMOS画像センサおよびカメラ、CCD画像センサおよびカメラ等)、光源(例えば、発光ダイオード(LED)、ダイオードレーザ、ファイバレーザ、ガスレーザ、ハロゲンランプ、アークランプ等)、他のタイプのセンサ(例えば、温度センサ、流動センサ、pHセンサ、伝導率センサ等)、コンピュータメモリデバイス、コンピュータディスプレイデバイス(例えば、グラフィカルユーザインターフェースを備える)、デジタル通信デバイス(例えば、イントラネット、インターネット、WiFi、(登録商標)、または他の有線もしくは無線通信ハードウェア)、および同等物を備えてもよい。
【0148】
いくつかの実施形態では、本システムは、機能的ハードウェアコンポーネントの選択が、固定された構成においてパッケージ化される、統合システムを備えてもよい。いくつかの実施形態では、本システムは、機能的ハードウェアコンポーネントの選択が、新しい用途のために本システムを再構成するために変更され得る、モジュール式システムを備えてもよい。いくつかの実施形態では、これらの機能的システムコンポーネントのうちのいくつか、例えば、毛細管またはマイクロ流体デバイスは、交換可能もしくは使い捨てコンポーネントである。
【0149】
上記のように、種々の異なる質量分析計のうちのいずれかが、限定ではないが、飛行時間質量分析計、四重極質量分析計、イオントラップまたはオービトラップ質量分析計、飛行距離質量分析計、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴分光計、共鳴質量測定分光計、およびナノメカニカル質量分析計を含む、開示されるシステムの異なる実施形態において利用されてもよい。
【0150】
システムおよびアプリケーションソフトウェア:図6に図示されるように、本開示のシステムは、複数のソフトウェアモジュールを備えてもよい。例えば、システムは、システム制御ソフトウェアモジュール、データ入手ソフトウェアモジュール、データ処理ソフトウェアモジュール、またはそれらの任意の組み合わせを備えてもよい。一般に、これらのソフトウェアモジュールは、コンピュータプロセッサによってホストされるオペレーティングシステムまたは環境内で動作するように構成され、相互と、および/またはオペレーティングシステムとデータを通信ならびに共有し得る。
【0151】
いくつかの実施形態では、システム制御ソフトウェアモジュールは、(i)毛細管またはマイクロ流体デバイスベースの分析物分離システムの動作を撮像システムによる画像入手と協調させるステップ、(ii)毛細管またはマイクロ流体デバイスベースの分析物分離システムの動作を質量分析計システムによるデータ入手と協調させるステップ、(iii)撮像システムによる画像入手を毛細管またはマイクロ流体デバイスベースの分析物分離システムならびに/もしくは質量分析計システムの動作と協調させるステップ、(iv)分離チャネルおよび/またはテイラー円錐の撮像から導出されるデータに基づいて、エレクトロスプレーイオン化設定ならびに/もしくは質量分析計の1つまたはそれを上回る動作パラメータのフィードバック制御を提供するステップ、(v)交互方式で高質量走査範囲と低質量走査範囲との間で切り替えながら、質量分析計によるデータ入手を制御するステップ、(vi)ESI先端における電圧を監視し、分離回路電圧を調節し、一定の分離電場強度(またはアノードとカソードとの間の電圧降下)およびESI先端における一定の電圧を維持するステップ、(vii)ESI先端における電圧を監視し、分離回路電圧および/または質量分析計回路電圧を調節し、ESI先端と質量分析計(例えば、入口における)との間の一定の電場強度(または電圧降下)を維持するステップ、またはそれらの任意の組み合わせのためのソフトウェアを備えてもよい。
【0152】
いくつかの実施形態では、データ入手モジュールは、(i)1つまたはそれを上回る画像センサもしくは撮像システムによる画像入手を制御し、該画像データを記憶し、システム制御および/またはデータ処理ソフトウェアモジュールとのソフトウェアインターフェースを提供するステップ、および(ii)1つまたはそれを上回る質量分析計システムによるデータ入手を制御し、該質量分析計データ(もしくは他の下流分析器具)を記憶し、システム制御および/またはデータ処理ソフトウェアモジュールとのソフトウェアインターフェースを提供するステップ、もしくはそれらの任意の組み合わせのためのソフトウェアを備えてもよい。
【0153】
いくつかの実施形態では、データ処理モジュールは、(i)分離が実施されている間、分離が完了した後、または分離チャネル出口もしくはエレクトロスプレー先端に向かうpI標準および分析物ピークの動員の後、画像を処理し、分離チャネルにおける1つまたはそれを上回るpI標準もしくは分析物ピークの位置を決定するステップ、(ii)画像を処理し、1つまたはそれを上回るpI標準もしくは分析物ピークに関する速度、退出時間、および/またはエレクトロスプレー放出時間を決定するステップ、(iii)分析物ピークの位置を監視するための分離チャネルの画像およびエレクトロスプレー性能を監視するためのテイラー円錐の画像であって、分離チャネルおよびテイラー円錐の画像は、同時に、または交互にのいずれか入手される、画像の処理、(iv)テイラー円錐の画像を処理し、テイラー円錐の形状、密度、または他の特性を決定し、質量分析計入口に対するエレクトロスプレー先端またはオリフィスの位置(すなわち、整合ならびに/もしくは分離距離)、エレクトロスプレー先端またはオリフィスを通した流体流率、エレクトロスプレー先端またはオリフィスと質量分析計との間の電圧等、またはそれらの任意の組み合わせを備える1つまたはそれを上回る動作パラメータに行われるべき調節を計算し、質量分析計データの品質の変化に影響を及ぼすステップ、またはそれらの任意の組み合わせのためのソフトウェアを備えてもよい。
【0154】
開示されるシステムおよびアプリケーションソフトウェアは、当業者に公知の種々のプログラミング言語および環境のうちのいずれかを使用して実装されてもよい。実施例は、限定ではないが、C、C++、C#、PL/I、PL/S、PL/8、PL-6、SYMPL、Python、Java(登録商標)、LabView、Visual Basic、.NET、および同等物を含む。
【0155】
画像処理ソフトウェア:いくつかの実施形態では、上記のように、データ処理モジュールは、テイラー円錐関数の形状、密度、または他の視覚的インジケータ等を特性評価するために、pIマーカもしくは分離された分析物帯の位置を決定するための画像処理ソフトウェアを備えてもよい。当業者に公知の種々の画像処理アルゴリズムのうちのいずれかが、開示される方法およびシステムを実装する際に、画像前処理または画像処理のために利用されてもよい。実施例は、限定ではないが、キャニーエッジ検出方法、キャニー・デリチェエッジ検出方法、一次勾配エッジ検出方法(例えば、ソーベル演算子)、二次差分エッジ検出方法、相合同(相一致)エッジ検出方法、他の画像セグメンテーションアルゴリズム(例えば、強度閾値化、強度クラスタ化方法、強度ヒストグラムベースの方法等)、特徴およびパターン認識アルゴリズム(例えば、恣意的形状を検出するための一般化ハフ変換、円形ハフ変換等)、および数学分析アルゴリズム(例えば、フーリエ変換、高速フーリエ変換、ウェーブレット分析、自己相関、サビツキー・ゴーレイ平滑化、固有分析等)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0156】
プロセッサおよびコンピュータシステム:1つまたはそれを上回るプロセッサもしくはコンピュータが、本明細書に開示される方法を実装するために採用されてもよい。1つまたはそれを上回るプロセッサは、中央処理ユニット(CPU)、グラフィック処理ユニット(GPU)、汎用処理ユニット、もしくはコンピューティングプラットフォーム等のハードウェアプロセッサを備えてもよい。1つまたはそれを上回るプロセッサは、種々の好適な集積回路(例えば、深層学習ネットワークアーキテクチャを実装するために具体的に設計された特定用途向け集積回路(ASIC)または算出時間等を高速化するための、ならびに/もしくは展開を促進するためのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA))、マイクロプロセッサ、新たに出現する新世代マイクロプロセッサ設計(例えば、メモリスタベースのプロセッサ)、論理デバイス、および同等物のうちのいずれかから成ってもよい。本開示は、プロセッサを参照して説明されるが、他のタイプの集積回路および論理デバイスもまた、適用可能であり得る。プロセッサは、任意の好適なデータ演算能力を有してもよい。例えば、プロセッサは、512ビット、256ビット、128ビット、64ビット、32ビット、または16ビットのデータ演算を実施してもよい。1つまたはそれを上回るプロセッサは、シングルコアもしくはマルチコアプロセッサ、または並列処理のために構成される複数のプロセッサであってもよい。
【0157】
開示される方法を実装するために使用される1つまたはそれを上回るプロセッサもしくはコンピュータは、より大きいコンピュータシステムの一部であってもよい、および/またはデータの伝送ならびに共有を促進するために通信インターフェースを用いてコンピュータネットワーク(「ネットワーク」)に動作的に結合されてもよい。ネットワークは、ローカルエリアネットワーク、イントラネットおよび/またはエクストラネット、インターネットと通信するイントラネットおよび/またはエクストラネット、もしくはインターネットであってもよい。ある場合におけるネットワークは、電気通信および/またはデータネットワークである。ネットワークは、ある場合には、クラウドコンピューティング等の分散コンピューティングを可能にする、1つまたはそれを上回るコンピュータサーバを含んでもよい。ネットワークは、ある場合には、コンピュータシステムを用いて、コンピュータシステムに結合されるデバイスがクライアントまたはサーバとして挙動することを可能にし得る、ピアツーピアネットワークを実装してもよい。
【0158】
コンピュータシステムはまた、メモリまたはメモリ場所(例えば、ランダムアクセスメモリ、読取専用メモリ、フラッシュメモリ、Intel(登録商標) Optane(登録商標)技術)、電子記憶ユニット(例えば、ハードディスク)、1つまたはそれを上回る他のシステムと通信するための通信インターフェース(例えば、ネットワークアダプタ)、およびキャッシュ、他のメモリ、データ記憶装置、ならびに/もしくは電子ディスプレイアダプタ等の周辺デバイスを含んでもよい。メモリ、記憶ユニット、インターフェース、および周辺デバイスは、例えば、マザーボード上で見出されるような通信バスを通して、1つまたはそれを上回るプロセッサ、例えば、CPUと通信してもよい。記憶ユニットは、データを記憶するためのデータ記憶ユニット(またはデータリポジトリ)であってもよい。
【0159】
1つまたはそれを上回るプロセッサ、例えば、CPUは、プログラム(もしくはソフトウェア)において具現化される、機械可読命令のシーケンスを実行する。命令は、メモリ場所内に記憶される。命令は、CPUに指示され、これは、続けて、本開示の方法を実装するようにCPUをプログラムまたは別様に構成する。CPUによって実施される動作の実施例は、フェッチ、デコード、実行、およびライトバックを含む。CPUは、集積回路等の回路の一部であってもよい。本システムの1つまたはそれを上回る他のコンポーネントが、回路内に含まれてもよい。ある場合には、回路は、特定用途向け集積回路(ASIC)である。
【0160】
記憶ユニットは、ドライバ、ライブラリ、および保存されたプログラム等のファイルを記憶する。記憶ユニットは、ユーザデータ、例えば、ユーザ規定選好およびユーザ規定プログラムを記憶する。ある場合におけるコンピュータシステムは、イントラネットまたはインターネットを通してコンピュータシステムと通信する遠隔サーバ上に位置する等、コンピュータシステムの外部にある1つまたはそれを上回る付加的データ記憶ユニットを含んでもよい。
【0161】
本明細書に提供される方法およびシステムのいくつかの側面は、例えば、メモリまたは電子記憶ユニット内等のコンピュータシステムの電子記憶場所内に記憶される機械(例えば、プロセッサ)実行可能コードを用いて実装される。機械実行可能または機械可読コードは、ソフトウェアの形態において提供される。使用の間、コードは、1つまたはそれを上回るプロセッサによって実行される。ある場合には、コードは、記憶ユニットから読み出され、1つまたはそれを上回るプロセッサによる迅速なアクセスのためにメモリ内に記憶される。いくつかの状況では、電子記憶ユニットは、除外され、機械実行可能命令が、メモリ内に記憶される。コードは、事前コンパイルされ、コードを実行するように適合される1つまたはそれを上回るプロセッサを有する機械との併用のために構成されてもよい、もしくはランタイムにコンパイルされてもよい。コードは、コードが事前コンパイルまたはアズコンパイル方式で実行されることを可能にするように選択されるプログラミング言語において供給されてもよい。
【0162】
開示される方法およびデバイスの種々の側面は、典型的には、あるタイプの機械可読媒体内に記憶される機械(またはプロセッサ)実行可能コードならびに/もしくは関連付けられるデータの形態における「製品」または「製造品」、例えば、「コンピュータプログラムもしくはソフトウェア製品」として見なされてもよく、実行可能コードは、本明細書に開示される方法のうちの1つまたはそれを上回るものを実施する際にコンピュータもしくはコンピュータシステムを制御するための複数の命令を備える。機械実行可能コードは、光学ディスク、CD-ROM、DVD、またはBlu-Ray(登録商標)ディスク等の光学的可読媒体を備える、光学記憶ユニット内に記憶されてもよい。機械実行可能コードは、メモリ(例えば、読取専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)等の電子記憶ユニット内に、またはハードディスク上に記憶されてもよい。「記憶」タイプ媒体は、本明細書に開示される方法およびアルゴリズムをエンコードするソフトウェアのために任意の時点で非一過性記憶を提供し得る、コンピュータ、プロセッサ、または同等物の有形メモリ、もしくは種々の半導体メモリチップ、光学ドライブ、テープドライブ、ディスクドライブ、ならびに同等物等のそれらの関連付けられるモジュールのうちのいずれかまたは全てを含む。
【0163】
ソフトウェアコードの全てまたは一部は、随時、インターネットもしくは種々の他の電気通信ネットワークを介して通信されてもよい。そのような通信は、例えば、1つのコンピュータまたはプロセッサから別のものへの、例えば、管理サーバまたはホストコンピュータからアプリケーションサーバのコンピュータプラットフォームへのソフトウェアのロードを可能にする。したがって、ソフトウェアエンコード命令を伝えるために使用される他のタイプの媒体は、ローカルデバイスの間の物理的インターフェースを横断して、有線および光学固定電話ネットワークを通して、ならびに種々の大気リンクを経由して使用されるもの等の光学、電気、および電磁波を含む。有線または無線リンク、光学リンク、もしくは同等物等のそのような波を搬送する物理的要素もまた、本明細書に開示される方法を実施するためのソフトウェアエンコード命令を伝える媒体と見なされる。本明細書に使用されるように、非一過性有形「記憶」媒体に制限されない限り、コンピュータまたは機械「可読媒体」等の用語は、実行のためにプロセッサに命令を提供することに関与する任意の媒体を指す。
【0164】
コンピュータシステムは、典型的には、例えば、マシンビジョンシステムによって捕捉された画像を提供するための電子ディスプレイを含む、またはそれと通信してもよい。ディスプレイはまた、典型的には、ユーザインターフェース(UI)を提供することが可能である。UIの実施例は、限定ではないが、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)、ウェブベースのユーザインターフェース、および同等物を含む。
【0165】
用途:上記のように、開示される方法、デバイス、システム、およびソフトウェアは、限定ではないが、プロテオミクス研究、薬物発見および開発、ならびに臨床診断を含む、種々の分野における潜在的用途を有する。例えば、開示される方法を使用して、分析物サンプルの分離ベースのESI-MS分析のために達成され得る、改良された情報コンテンツおよびデータ品質は、開発ならびに/もしくは製造の間の生物製剤ならびにバイオ後続医薬品の特性評価のために大いに有益であり得る。他の用途は、限定ではないが、環境汚染物質、農薬、小分子、代謝物、ペプチド、翻訳後修飾、グリコフォーム、抗体-薬物複合体、融合タンパク質、ウイルス、アレルゲン、多細胞生物、および他の用途の分析を含み得る。
【0166】
生物製剤およびバイオ後続品は、例えば、組換えタンパク質、抗体、生ウイルスワクチン、ヒト血漿由来タンパク質、細胞ベースの薬品、天然由来タンパク質、抗体-薬物複合体、タンパク質-薬物複合体、および他のタンパク質薬物を含む、薬物のクラスである。FDAおよび他の規制機関は、構造、機能、動物毒性、ヒト薬物動態(PK)および薬力学(PD)、臨床免疫原性、ならびに臨床安全性および有効性に関する提案された製品および参照製品の比較を含み得る、生物類似性を実証することへの段階的アプローチの使用を要求する(例えば、「Scientific Considerations in Demonstrating Biosimilarity to a Reference Product: Guidance for Industry」, U.S. Department of Health and Human Services, Food and Drug Administration, April 2015参照)。タンパク質製品のために要求され得る、構造特性評価データの実施例は、一次構造(すなわち、アミノ酸配列)、二次構造(すなわち、アルファ螺旋またはベータシート構造を形成するための折畳の程度)、三次構造(すなわち、ポリペプチド骨格および二次構造ドメインの折畳によって生成されるタンパク質の3次元形状)、および四次構造(例えば、活性タンパク質複合体またはタンパク質の凝集状態を形成するために要求されるサブユニットの数)を含む。多くの場合では、本情報は、X線結晶構造解析等の労力を有する時間集約的で高価な技法を採用することなく、入手可能ではない場合がある。したがって、候補生物学的薬物と参照薬物との間の生物類似性を確立する目的のために、タンパク質構造の便宜的でリアルタイムかつ比較的に高処理能力の特性評価を可能にする、実験技法の必要性が、存在する。
【0167】
いくつかの実施形態では、開示される方法、デバイス、およびシステムは、生物類似性を確立する目的のために、生物学的薬物候補(例えば、モノクローナル抗体(mAb))および参照生物学的薬物のための構造比較データを提供するために使用されてもよい。例えば、いくつかの事例では、薬物候補および参照薬物のための等電点データならびに/もしくは質量分析データは、生物類似性の実証を支持して重要な証拠を提供し得る。いくつかの実施形態では、両方とも同じ反応条件下で部位特異的プロテアーゼを用いて処理された、薬物候補および参照薬物のための等電点データならびに/もしくは質量分析データは、生物類似性の実証を支持して重要な証拠を提供し得る。いくつかの実施形態では、開示される方法、デバイス、およびシステムは、生産プロセスの異なる時点で採取されたサンプルまたは異なる生産工程から採取されたサンプルを分析することによって、生物学的薬物製造プロセスを監視し、製品の品質および一貫性を確実にするために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、開示される方法、デバイス、およびシステムは、製剤緩衝液の安定性を評価するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、開示される方法、デバイス、およびシステムは、生物学的薬物候補の生産ならびに品質に関してクローン化細胞株を評価するために使用されてもよい。
【実施例0168】
これらの実施例は、本明細書に提供される請求項の範囲を限定するためではなく、例証的目的のみのために提供される。
【実施例0169】
質量分析を実施する前のチップ上のタンパク質電荷の特性評価
図1に図示されるマイクロ流体デバイスの加工が、上記に説明された。動作させるために、本デバイスは、窒素ガス源、加熱器、正圧ポンプ(例えば、Parker、T5-1IC-03-1EEP)、2つの白金-イリジウム電極(例えば、Sigma-Aldrich、357383)において終端する電気泳動電力供給源(Gamm High Voltage、MC30)、UV光源(例えば、LED、QPhotonics、UVTOP280)、CCDカメラ(例えば、ThorLabs、340UV-GE)、および本デバイス上にサンプルを装填するためのオートサンプラを含有する器具上に搭載される。電力供給源は、質量分析計と共通の接地を共有する。本器具は、ソフトウェア(例えば、Lab View)を通して制御される。
【0170】
タンパク質サンプルが、バイアルの中に設置し、オートサンプラ上に装填する前に、両性電解質pH勾配およびpIマーカと事前混合される。それらは、入口412を介してオートサンプラから、マイクロ流体デバイス400上に、濃縮チャネル418を通して、出口434を通して廃棄物430まで本デバイスから外に、連続的に装填される。
【0171】
シース/陰極液流体(50%MeOH、N0H/H0)が、2つの陰極液ウェル404、436上に装填され、陽極液(10mM HP0)が、陽極液ウェル426上に装填され、加熱された窒素ガスの源が、2つのガスウェル408、440に取り付けられる。
【0172】
全ての試薬が装填された後、+600V/cmの電場が、電極を陽極液ウェル426および陰極液ウェル404、436に接続することによって陽極液ウェル426から陰極液ウェル404、436に印加され、等電点電気泳動を開始する。UV光源は、濃縮チャネル418の下に整合され、カメラは、濃縮チャネル418の上方に設置され、濃縮チャネル418を通して通過する光を測定し、それによって、それらの吸光度を用いて集束するタンパク質を検出する。ソーダ石灰ガラスから構築されるガラス板402は、カメラからのいかなる迷光も遮断するように作用し、したがって、濃縮チャネル418を通して通過しない光は、カメラに到達しないように阻止され、測定の感度を増加させる。
【0173】
集束するタンパク質の画像が、IEFの間に連続的および/または周期的に捕捉されることができる。集束が完了すると、低圧が、入口412から印加され、pH勾配をオリフィス424に向かって動員するであろう。電場は、高分解能IEF分離を維持するためにこの時点で維持されることができる。ESIプロセスの間に濃縮チャネル418を撮像し続けることは、これがオリフィス424から排出される際の各タンパク質のpIを決定するために使用されることができる。
【0174】
濃縮されたタンパク質分画が、濃縮チャネル418から合流点420の中に移動するにつれて、これは、シース液と混合され、これは、陰極液ウェル404、436からシース/陰極液流体チャネル406、438を介して合流点420に流動することができる。濃縮されたタンパク質分画をシース液と混合することは、タンパク質分画を質量分析適合溶液中に入れ、電荷を集束されたタンパク質に戻し(IEFがタンパク質を非電荷状態にする)、イオン化を改良することができる。
【0175】
濃縮されたタンパク質分画は、次いで、オリフィス424に進み、これは、ガラス板402の皿面422によって画定されることができる。濃縮されたタンパク質分画は、いったんシース液ウェル接地と質量分析計負極との間の電場に巻き込まれると、テイラー円錐を作成することができる。
【0176】
溶液が、濃縮チャネル418からテイラー円錐を押し続けるにつれて、流体の小液滴が、テイラー円錐から排出され、質量分析計入口に向かって飛散するであろう。窒素ガス(例えば、150℃における)が、ガスウェル408、440からガスチャネル410、432を辿って流動し、テイラー円錐の側面に位置する窒素ガス噴射を形成することができ、これは、テイラー円錐から発する液滴を、マイクロ流体デバイスから離れる前に微細な霧に変換することができ、これは、質量分析計における検出を支援することができる。入口412からの圧力を調節することは、質量分析計における検出を改良するために、必要に応じてテイラー円錐サイズを適合させることができる。
【実施例0177】
分析物ピークがマイクロ流体チップから離れ、質量分析計に進入する際のそれらの速度を追跡する
本実施例に関して、図7Aのマイクロ流体チャネルネットワーク100が、不透明環状オレフィンポリマーの250ミクロン厚さの層において加工される。チャネル112は、250ミクロン深さであり、したがって、これは、250ミクロン層全体を通して横断する。全ての他のチャネルは、50ミクロン深さである。チャネル層は、平面マイクロ流体デバイスを加工するために、図7Bにおけるような環状オレフィンポリマーの2つの透明層の間に挟装される。ポート102、104、106、108、および110が、外部リザーバからの試薬導入ならびに電気接触のためのチャネルネットワークへのアクセスを提供する。ポート102は、真空源に接続され、チャネル103が廃棄物チャネルとして作用することを可能にし、「廃棄物」へのチャネルネットワークを通した他の試薬のプライミングを可能にする。酸(1%ギ酸)が、ポート108を通してチャネル109、112、114、および103に、かつポート102までプライミングされる。サンプル(4%Pharmalyte 3-10、12.5mM pI標準3.38(精製ペプチド、配列:Trp-Asp-Asp-Asp)、12.5mM pI標準10.17(精製ペプチド、配列:Trp-Tyr-Lys-Arg)、NISTモノクローナル抗体標準(部品番号8671、NIST))が、ポート106を通してチャネル107、112、114、および103の中に、かつポート102までプライミングされる。これは、チャネル112を、サンプル分析物を含有した状態にする。塩基(1%ジメチルアミン)が、ポート104を通してチャネル105、114、および103に、かつポート102までプライミングされる。動員剤(1%ギ酸、49%メタノール)が、ポート110を通してチャネル111、114、および103の中に、かつチャネル103から出てポート102までプライミングされる。
【0178】
チャネル112内の分析物サンプルの電気泳動が、4,000Vをポート108に印加し、ポート110を接地に接続することによって実施される。分析物サンプル中の両性電解質は、チャネル112にまたがるpH勾配を確立する。分離の吸光度撮像が、チャネル112に整合される280nm光源を使用し、CCDカメラを用いてチャネル112を通した280光の透過を測定して実施される。ソフトウェアが、分析物が流される前に集束された分析物の不在下で得られた「ブランク」基準測定値と比較して、分離または動員の間の光透過を比較することによって吸光度を計算し、次いで、チャネル112の長さにわたるピクセルあたりの吸光度を表示する。標準または分析物が集束した場所が、図9A-9Fに示されるように、ピークとして表示される。
【0179】
いったん分析物が、集束を完了すると、最終集束吸光度画像が、捕捉される。ソフトウェアは、pIマーカの空間位置を識別し、マーカの間で補間し、集束分析物分画ピークのpIを計算するであろう。この時点で、制御ソフトウェアは、ポート110において接地を接続解除し、ポート104を接地に接続するリレーをトリガし、ならびにポート104を通してチャネル105および114の中に、かつオリフィス116においてチップから外に100nL/分の動員剤溶液の流動を確立するために、ポート104に接続される動員剤リザーバに対する圧力を設定するであろう。オリフィス116は、-3,500V~-4,500Vの入口電圧を伴って質量分析計ESI入口から2mm離れて位置付けられる。
【0180】
圧力駆動流が、ポート104からオリフィス116に動員剤を指向する一方、動員剤試薬内のギ酸の一部は、チャネル105からチャネル112を通してポート108におけるアノードまで、ギ酸塩の形態で電気泳動するであろう。ギ酸塩がチャネル112を通して進行するにつれて、これは、等電点pH勾配を擾乱し、両性電解質、標準、および分析物サンプルに電荷を増加させ、チャネル112からチャネル114の中に電気泳動的に遊走させ、そこで、ポート104からの圧力駆動流が、それらを、ESIスプレーの中に、かつオリフィス116から外に搬送するであろう。
【0181】
動員が起こる間、ソフトウェアは、吸光度画像を捕捉し続け、ピークを同定し、撮像チャネル112からチャネル114の中へのそれらの遊走を追跡する。各ピークが撮像チャネル112から離れる時間、その速度、およびチャネル114内の流率を追跡することによって、ソフトウェアは、ピークがチャネル114を横断し、オリフィス116を介して質量分析計に導入される時間を計算し、元の集束されたピークと結果として生じる質量スペクトルとの間の直接相関を可能にすることができる。
【0182】
図9A-Fは、分離チャネルの画像から決定されるような等電点(pI)標準の動員を示す、1分間隔で得られた、一連の吸光度トレースの実施例を提供する。図9Aは、動員に先立って、5つのpI標準(ピーク915、920、925、930、935)の等電点電気泳動が完了された後のチャネル距離905の関数としての吸光度910のプロットを示す。図9Bに示されるように、動員の1分後、pI=9.99標準に対応するピーク915は、撮像システムの視野の縁にある。図9Cに示されるように、動員の2分後、ピーク915(pI=9.99標準)は、撮像されているチャネルの部分から退出している。図9Dに示されるように、動員の3分後、ピーク920(pI=8.40標準)は、撮像されているチャネルの部分から退出している。図9Eに示されるように、動員の4分後、ピーク925(pI=7.00標準)は、撮像されているチャネルの部分から退出している。図9Fに示されるように、動員の5分後、ピーク930(pI=4.05標準)は、撮像されているチャネルの部分から離れている。
【実施例0183】
フィードバックを使用し、MSおよびESIパラメータを調節する
実施例3では、チップ、器具、およびソフトウェアは、実施例2におけるものと全て同一の手順を実施する。加えて、第2のCCDカメラが、図8に図示されるように、ESIの間にテイラー円錐を撮像するために使用される。これらの画像は、テイラー円錐の品質および一貫性を評価するために使用される。質量分析計上の画像および/または全イオンカウントを評価することは、ESIテイラー円錐の失敗の識別および原因の診断を可能にする。
【0184】
ESIにおけるテイラー円錐形性は、蒸発およびESIに対して失われる流体の率に合致する円錐への入力流動を維持することに依存する。テイラー円錐のサイズは、流率、マイクロ流体デバイスとMSとの間の電圧勾配、マイクロ流体デバイスとMSとの間の距離、ならびにマイクロ流体デバイスのESI先端および局所環境における微妙な変動に依存する。
【0185】
テイラー円錐の撮像は、ESI失敗の原因の診断を可能にする。例えば、テイラー円錐の喪失は、十分ではない流動を示し、ソフトウェアは、マイクロ流体デバイスの中への動員剤の流動を増加させることができる。同様に、コロナ放電は、電圧が高すぎることを示し、ソフトウェアは、電圧を低減させることができる。EIS雲の拡張は、電圧が高すぎることを示す一方、テイラー円錐ではなく液滴を形成することは、電圧が低すぎることを示す。これらの差異および任意の他の視覚的差異が、画像において識別されることができ、ソフトウェアは、テイラー円錐を再確立するように自動的に補償することができる。
【実施例0186】
分離のためのマーカとしての低質量走査
実施例4では、チップ、器具、およびソフトウェアは、実施例2におけるものと全て同一の手順を実施する。加えて、いったん動員が起こり、分析物ピークがMSに遊走し始めると、MSは、1,500~6,000および150~1,500のm/z範囲の間で交互するように設定される。1,500~6,000範囲は、それらがMSに導入される際のNIST抗体分析物分画ピークを同定するために使用される。150~1,500m/z範囲走査は、それらがMSに導入される際の自由溶液両性電解質(Pharmalyte)を同定するために使用される。特定の両性電解質の存在は、任意の時点でMSにおいて分析されている等電点pH勾配の部分を定義するため、両性電解質は、質量走査において同定され、MSからの全イオンクロマトグラムを較正するために使用されることができる。
【実施例0187】
高電圧および低電圧を改変し、電場強度ならびに先端における一定の電圧を維持する
本実施例に関して、図7Aのマイクロ流体チャネルネットワーク100が、不透明環状オレフィンポリマーの250ミクロン厚さの層において加工される。チャネル112は、250ミクロン深さであり、したがって、これは、250ミクロン層全体を通して横断する。全ての他のチャネルは、50ミクロン深さである。チャネル層は、平面マイクロ流体デバイスを加工するために、図7Bにおけるような環状オレフィンポリマーの2つの透明層の間に挟装される。ポート102、104、106、108、および110が、外部リザーバからの試薬導入ならびに電気接触のためのチャネルネットワークへのアクセスを提供する。ポート102は、真空源に接続され、チャネル103が廃棄物チャネルとして作用することを可能にし、「廃棄物」へのチャネルネットワークを通した他の試薬のプライミングを可能にする。酸(1%ギ酸)が、ポート108を通してチャネル109、112、114、および103に、かつポート102までプライミングされる。サンプル(4%Pharmalyte 3-10、12.5mM pI標準3.38(精製ペプチド、配列:Trp-Asp-Asp-Asp)、12.5mM pI標準10.17(精製ペプチド、配列:Trp-Tyr-Lys-Arg)、NISTモノクローナル抗体標準(部品番号8671、NIST))が、ポート106を通してチャネル107、112、および114の中に、かつポート102までプライミングされる。これは、チャネル112を、サンプル分析物を含有した状態にする。塩基(1%ジメチルアミン)が、ポート104を通してチャネル105、114、および103の中に、かつポート102までプライミングされる。動員剤(1%ギ酸、49%メタノール)が、ポート110を通してチャネル111、114、および103の中に、かつチャネル102から出てポート102までプライミングされる。圧力が、塩基リザーバに印加され、ポート104を通したチャネル105および114の中への、かつオリフィス116から外への100nL/分の流動を生成する。
【0188】
チャネル112における分析物サンプルの等電点電気泳動が、電力供給源1005を使用して2,000Vをポート108に印加し、ポート110を高電圧電力供給源1010に接続し、-2,000Vを印加することによって開始される。これは、図10Aに表される回路を確立し、これは、高電圧電力供給源1005および高電圧電力供給源1010を含み(いくつかの事例では、供給源1005および供給源1010は、単一の多重化高電圧電力供給源の2つのチャネルを備えてもよい)、4,000Vのアノードとカソードとの間の電圧降下を発生させる。チャネルの電気抵抗は、チャネルの寸法および試薬の伝導率に依存する。本実施例では、チャネル109(図7A参照)に対応する酸性チャネルの電気抵抗R109は、10メガオームであり、チャネル112(図7A参照)に対応するサンプルチャネルの電気抵抗R112は、40メガオームにおいて開始し、チャネル111(図7A参照)に対応するチャネル内の塩基の抵抗R111は、50メガオームである。オリフィス116(図7A参照)と質量分析計1015との間のエレクトロスプレーイオン化(ESI)インターフェースの抵抗R113は、2ギガオームである。チャネル109、112、および111(図7A参照)を横断する合計電圧降下は、4,000Vであり、これらのチャネルは、直列の3つの抵抗器を表すため、先端における電圧(V116)は、以下の方程式1に従って計算される。
116=ΔV108-110×(R111)/(R109+R112+R111)+(高電圧電力供給源1010電圧設定)
等電点電気泳動の開始時に、V116=0ボルトである。オリフィス116(図7A参照)は、質量分析計ESI入口から2mm離れて位置付けられ、-3,500V~-4,500Vの入口電圧を伴い、テイラー円錐を形成する。図10Bは、チャネル105の抵抗R105を備える、図10Aに表される回路の別の実施形態を示す。
【0189】
分析物サンプル中の両性電解質は、チャネル112にまたがるpH勾配を確立する。分離の吸光度撮像が、チャネル112に整合される280nm光源を使用し、CCDカメラを用いてチャネル112を通した280nm光の透過を測定して実施される。ソフトウェアが、分析物が流される前に集束された分析物の不在下で得られた「ブランク」基準測定値と比較して、分離または動員の間の光透過を比較することによって吸光度を計算し、次いで、チャネル112の長さにわたるピクセルあたりの吸光度を表示する。標準または分析物が集束した場所が、図9A-9Fに図示されるように、ピークとして表示される。
【0190】
サンプルが集束するにつれて、両性電解質、抗体アイソフォーム、および標準は、それらの等電点に到達し、それらの電荷を喪失するため、サンプルチャネル112の抵抗は、増加する一方、チャネル109および111における、ならびにESIインターフェースにおける抵抗は、変化しないままである。コンピュータ実装方法は、電力供給源1005における電流を監視し、チャネル112における任意の時点の抵抗を計算することができる。コンピュータ実装方法は、本情報を使用し、電力供給源1005および1010を調節する。例えば、チャネル112における抵抗が、140メガオームまで上昇したとき、電力供給源が、調節されていない場合、オリフィス116における電圧は、-1,000Vであり、これは、テイラー円錐を擾乱するであろう。しかし、電力供給源1005を+3,000Vに調節し、電力供給源1010を-1,000Vに調節することによって、先端は、0Vに留まり、チャネル109、112、および111を横断する合計電圧降下は、4,000Vに留まるであろう。これらの調節は、チャネル112における抵抗が変化する際にオンザフライで行われる。
【0191】
いったん分析物が、集束を完了すると、最終集束吸光度画像が、捕捉される。ソフトウェアは、pIマーカの空間位置を識別し、マーカの間で補間し、集束分析物分画ピークのpIを計算するであろう。この時点で、制御ソフトウェアは、ポート110において電力供給源1010を接続解除し、ポート104を電力供給源1010に接続するリレーをトリガし、ならびにポート104を通してチャネル105および114の中に、かつオリフィス116においてチップから外に100nL/分の動員剤溶液の流動を確立するために、ポート104に接続される動員剤リザーバに対する圧力を設定するであろう(図7Aのチップ概略図および図10Bに図示される電気回路参照)。オリフィス116は、-3,500V~-4,500Vの入口電圧を伴って質量分析計ESI入口から2mm離れて位置付けられる。
【0192】
圧力駆動流が、ポート104からオリフィス116に動員剤を指向する一方、動員剤試薬内のギ酸の一部は、チャネル105からチャネル112を通してポート108におけるアノードまで、ギ酸塩の形態で電気泳動するであろう。ギ酸塩がチャネル112を通して進行するにつれて、これは、等電点pH勾配を擾乱し、両性電解質、標準、および分析物サンプルに電荷を増加させ、チャネル112からチャネル114の中に電気泳動的に遊走させ、そこで、ポート104からの圧力駆動流が、それらを、ESIスプレーの中に、かつオリフィス116から外に搬送するであろう。
【0193】
動員が起こる間、チャネル112の抵抗は、降下するであろう。図11A-Bは、チャネルの抵抗を導出するために使用され得る、チャネル112に関する電圧および電流データの実施例を示す。図11Aは、時間の関数としての電圧のプロットを示す。図11Bは、時間の関数としての電流のプロットを示す。ソフトウェアは、電流の変化を監視し、電力供給源を調節し、図15に説明されるように、先端116において3,000Vおよび0Vのアノードとカソードとの間の電圧降下を維持する。電圧変化は、過渡的である、または安定している場合がある。
【0194】
動員が起こる間、ソフトウェアは、吸光度画像を捕捉し続け、ピークを同定し、撮像チャネル112からチャネル114の中へのそれらの遊走を追跡する。各ピークが撮像チャネル112から離れる時間、その速度、およびチャネル114内の流率を追跡することによって、ソフトウェアは、ピークがチャネル114を横断し、オリフィス116を介して質量分析計に導入される時間を計算し、元の集束されたピークと結果として生じる質量スペクトルとの間の直接相関を可能にすることができる。
【0195】
図13Aは、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を提供し、ESI先端は、電流を接地にシンクするために、付加的抵抗器R120を使用して、正電圧において保持されるであろう。回路は、1005に実質的に類似し得る高電圧電力供給源1305と、1010に実質的に類似し得る高電圧電力供給源1310とを備え、アノードとカソードとの間に規定された電圧降下(例えば、4,000V)を発生させてもよい。回路は、加えて、第3の高電圧電力供給源1307を備えてもよい。チャネルの電気抵抗は、チャネルの寸法および試薬の伝導率に依存する。また、回路内に統合されるものは、チャネル109(図7A参照)に対応する酸性チャネルの電気抵抗R109、チャネル112(図7A参照)に対応するサンプルチャネルの電気抵抗R112、およびチャネル111(図7A参照)に対応するチャネル内の塩基の抵抗R111、ならびにオリフィス116(図7A参照)と1015に実質的に類似し得る質量分析計1315の電圧供給源との間のエレクトロスプレーイオン化(ESI)の抵抗R113である。回路はまた、チャネル105の電気抵抗R105を備えてもよい。電力供給源1307は、チャネル111(図7A参照)に接続され、動員の間に0μAに設定される電流制御を使用することができる。本電力供給源は、先端における電圧を読み取り、先端において一定の電圧を維持するためのコンピュータ制御フィードバックループを実装するために使用されてもよい。
【0196】
図13Bは、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示し、ESI先端は、電流を電力供給源1320にシンクするために、抵抗器R120を使用して、正電圧において保持されるであろう。図13Cは、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示し、ESI先端は、電流をシンクするために、電界効果トランジスタ(FET)1325を使用して、正電圧において保持されるであろう。電気回路は、加えて、増幅器1330と、電圧基準1335と、付加的抵抗器R200とを備えてもよい。図13Dは、化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を示し、ESI先端は、電流をシンクするために、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)1340を使用して、正電圧において保持されるであろう。電力供給源1307は、チャネル111(図7A参照)に接続され、0μAに設定される電流制御を使用することができる。本電力供給源は、先端における電圧を読み取り、先端において一定の電圧を維持するためのコンピュータ制御フィードバックループを実装するために使用されてもよい。図13Eは、分離された分析物混合物の化学動員の間の図7Aに示されるマイクロ流体デバイスに関する代表的回路図を提供し、ESI先端は、接地において、またはそれに近接して保持されるであろう。電力供給源1307は、チャネル111(図7A参照)に接続され、0μAに設定される電流制御を使用することができる。本電力供給源は、先端における電圧を読み取り、先端において一定の電圧を維持するためのコンピュータ制御フィードバックループを実装するために使用されてもよい。
【実施例0197】
先端電圧を測定することに基づいて、高電圧および低電圧を改変し、電場強度ならびに先端における一定の電圧を維持する
本実施例に関して、図7Aのマイクロ流体チャネルネットワーク100が、不透明環状オレフィンポリマーの250ミクロン厚さの層において加工される。チャネル112は、250ミクロン深さであり、したがって、これは、250ミクロン層全体を通して横断する。全ての他のチャネルは、50ミクロン深さである。チャネル層は、平面マイクロ流体デバイスを加工するために、図7Bにおけるような環状オレフィンポリマーの2つの透明層の間に挟装される。ポート102、104、106、108、および110が、外部リザーバからの試薬導入ならびに電気接触のためのチャネルネットワークへのアクセスを提供する。ポート102は、真空源に接続され、チャネル103が廃棄物チャネルとして作用することを可能にし、「廃棄物」へのチャネルネットワークを通した他の試薬のプライミングを可能にする。酸(1%ギ酸)が、ポート108を通してチャネル109、112、114、および103に、かつポート102までプライミングされる。サンプル(4%Pharmalyte 3-10、12.5mM pI標準3.38(精製ペプチド、配列:Trp-Asp-Asp-Asp)、12.5mM pI標準10.17(精製ペプチド、配列:Trp-Tyr-Lys-Arg)、NISTモノクローナル抗体標準(部品番号8671、NIST))が、ポート106を通してチャネル107、112、および114の中に、かつポート102までプライミングされる。これは、チャネル112を、サンプル分析物を含有した状態にする。塩基(1%ジメチルアミン)が、ポート104を通してチャネル105、114、および103の中に、かつポート102までプライミングされる。動員剤(1%ギ酸、49%メタノール)が、ポート110を通してチャネル110、114、および103の中に、かつチャネル102から出てポート102までプライミングされる(図7Aのチップ概略図および図13Eに図示される電気回路参照)。
【0198】
チャネル112における分析物サンプルの電気泳動が、電力供給源1305を使用して1,500Vをポート108に印加し、ポート110を0Vに設定される電力供給源1307に接続することによって開始される。5分後、電力供給源1305は、3分にわたって3,000Vに増加され、集束を完了させる。
【0199】
分析物サンプル中の両性電解質は、チャネル112にまたがるpH勾配を確立する。分離の吸光度撮像が、チャネル112に整合される280nm光源を使用し、CCDカメラを用いてチャネル112を通した280光の透過を測定して実施される。ソフトウェアが、分析物が流される前に集束された分析物の不在下で得られた「ブランク」基準測定値と比較して、分離または動員の間の光透過を比較することによって吸光度を計算し、次いで、チャネル112の長さにわたるピクセルあたりの吸光度を表示する。標準または分析物が集束した場所が、図9A-9Fに図示されるように、ピークとして表示される。
【0200】
いったん分析物が、集束を完了すると、最終集束吸光度画像が、捕捉される。ソフトウェアは、pIマーカの空間位置を識別し、マーカの間で補間し、集束分析物分画ピークのpIを計算するであろう。この時点で、制御ソフトウェアは、ポート104を電力供給源1310に接続するリレーをトリガし、ならびにポート104を通してチャネル105および114の中に、かつオリフィス116においてチップから外に100nL/分の動員剤溶液の流動を確立するために、ポート104に接続される動員剤リザーバに対する圧力を設定するであろう。オリフィス116は、-3,500V~-4,500Vの入口電圧を伴って質量分析計ESI入口1315から2mm離れて位置付けられる。電力供給源1307は、電流制御を使用して0μAに設定され、電力供給源1305は、3,000Vに設定され、電力供給源1310は、0Vに設定され、MS ESIイオン源は、-3,500V~-4,500Vに設定される。
【0201】
圧力駆動流が、ポート104からオリフィス116に動員剤を指向する一方、動員剤試薬内のギ酸の一部は、チャネル105からチャネル112を通してポート108におけるアノードまで、ギ酸塩の形態で電気泳動するであろう。ギ酸塩がチャネル112を通して進行するにつれて、これは、等電点pH勾配を擾乱し、両性電解質、標準、および分析物サンプルに電荷を増加させ、チャネル112からチャネル114の中に電気泳動的に遊走させ、そこで、ポート104からの圧力駆動流が、それらを、ESIスプレーの中に、かつオリフィス116から外に搬送するであろう。
【0202】
動員が起こる間、チャネル112の抵抗は、降下するであろう。チャネル111を横断する電圧降下は、ここでは0である(ΔV=IR=0×R111=0V)ため、0μAに設定される電力供給源1307は、図13EのV116における電圧に等しいであろう。図11A-Bのデータに示されるように、集束が完了した後の8分(480秒)の時点で、ソフトウェアは、電流の変化を監視し、電力供給源を調節し、図15に説明されるように、先端116において3,000Vおよび0ボルトのアノードとカソードとの間の一定の電圧降下を維持する。先端における電圧(V116)は、以下の方程式2によって説明される。
116=ΔV108-110×(R111)/(R109+R112+R105)+(電力供給源1310電圧設定)
【0203】
動員が起こる間、ソフトウェアは、吸光度画像を捕捉し続け、ピークを同定し、撮像チャネル112からチャネル114の中へのそれらの遊走を追跡する。各ピークが撮像チャネル112から離れる時間、その速度、およびチャネル114内の流率を追跡することによって、ソフトウェアは、ピークがチャネル114を横断し、オリフィス116を介して質量分析計に導入される時間を計算し、元の集束されたピークと結果として生じる質量スペクトルとの間の直接相関を可能にすることができる。
【実施例0204】
先端電圧を測定することおよび抵抗器に基づいて、高電圧および低電圧を改変し、電場強度ならびに先端における一定の電圧を維持する
本実施例に関して、図7Aのマイクロ流体チャネルネットワーク100が、不透明環状オレフィンポリマーの250ミクロン厚さの層において加工される。チャネル112は、250ミクロン深さであり、したがって、これは、250ミクロン層全体を通して横断する。全ての他のチャネルは、50ミクロン深さである。チャネル層は、平面マイクロ流体デバイスを加工するために、図7Bにおけるような環状オレフィンポリマーの2つの透明層の間に挟装される。ポート102、104、106、108、および110が、外部リザーバからの試薬導入ならびに電気接触のためのチャネルネットワークへのアクセスを提供する。ポート102は、真空源に接続され、チャネル103が廃棄物チャネルとして作用することを可能にし、「廃棄物」へのチャネルネットワークを通した他の試薬のプライミングを可能にする。酸(1%ギ酸)が、ポート108を通してチャネル109、112、114、および103に、かつポート102までプライミングされる。サンプル(4%Pharmalyte 3-10、12.5mM pI標準5.52(精製ペプチド、配列:Trp-Glu-His)、12.5mM pI標準8.4(精製ペプチド、配列:Trp-Tyr-Lys)、インフリキシマブバイオ後続品モノクローナル抗体標準(部品番号MCA6090、Bio-Rad))が、ポート106を通してチャネル107、112、および114の中に、かつポート102までプライミングされる。これは、チャネル112を、サンプル分析物を含有した状態にする。塩基(1%ジメチルアミン)が、ポート104を通してチャネル105、114、103の中に、かつポート102までプライミングされる。動員剤(1%ギ酸、49%メタノール)が、ポート110を通してチャネル110、114、および103の中に、かつチャネル102から出てポート102までプライミングされる(図7Aのチップ概略図および図13Bに図示される電気回路参照)。
【0205】
チャネル112における分析物サンプルの電気泳動が、電力供給源1305を使用して1,500Vをポート108に印加し、ポート110を0Vに設定される電力供給源1307に接続することによって開始される。5分後、電力供給源1305は、3,000Vに増加される。
【0206】
分析物サンプル中の両性電解質は、チャネル112にまたがるpH勾配を確立する。分離の吸光度撮像が、チャネル112に整合される280nm光源を使用し、CCDカメラを用いてチャネル112を通した280nm光の透過を測定して実施される。ソフトウェアが、分析物が流される前に集束された分析物の不在下で得られた「ブランク」基準測定値と比較して、分離または動員の間の光透過を比較することによって吸光度を計算し、次いで、チャネル112の長さにわたるピクセルあたりの吸光度を表示する。標準または分析物が集束した場所が、図9A-9Fに図示されるように、ピークとして表示される。
【0207】
いったん分析物が集束を完了すると、インフリキシマブの電荷変形が、図16のパネルAに示されるように分離され、最終集束吸光度画像が、捕捉される。ソフトウェアは、pIマーカの空間位置を識別し、マーカの間で補間し、集束分析物分画ピークのpIを計算するであろう。この時点で、制御ソフトウェアは、ポート104を電力供給源1310に接続するリレーをトリガし、ならびにポート104を通してチャネル105および114の中に、かつオリフィス116においてチップから外に100nL/分の動員剤溶液の流動を確立するために、ポート104に接続される動員剤リザーバに対する圧力を設定するであろう。オリフィス116は、質量分析計ESI入口1315から2mm離れて位置付けられる。電力供給源1307は、電流制御を使用して0μAに設定され、電力供給源1305は、7,000Vに設定され、電力供給源1310は、4,000Vに設定され、MS ESIイオン源1315は、接地において保持される。付加的抵抗器R120が、電力供給源1310とチャネル105との間で本システムに接続され(R電流シンク)、抵抗器R120の他方の側は、図13Bに示されるように、電力供給源1320に接続される。電力供給源1320は、電流シンクとして作用するために、電力供給源1310を下回る最低4,000Vに設定されるであろう。抵抗器R120は、代わりに、図13Aにおけるように、電気回路を接地に接続し得る、図13Cに示されるように、電界効果トランジスタ(FET)であり得る、図13Dに示されるように、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)であり得る、または機能する電気泳動回路を作成するために電力供給源1310からの電流をシンクし得る任意の他の抵抗要素であり得る。
【0208】
圧力駆動流が、ポート104からオリフィス116に動員剤を指向する一方、動員剤試薬内のギ酸の一部は、チャネル105からチャネル112を通してポート108におけるアノードまで、ギ酸塩の形態で電気泳動するであろう。ギ酸塩がチャネル112を通して進行するにつれて、これは、等電点pH勾配を擾乱し、両性電解質、標準、および分析物サンプルに電荷を増加させ、チャネル112からチャネル114の中に電気泳動的に遊走させ、そこで、ポート104からの圧力駆動流が、それらを、ESIスプレーの中に、かつオリフィス116から外に搬送するであろう。
【0209】
動員が起こる間、チャネル112の抵抗は、降下するであろう。チャネル111を横断する電圧降下は、ここでは0である(ΔV=IR=0×R111=0V)ため、0μAに設定される電力供給源1307は、V116における電圧に等しいであろう。図11Aおよび11Bのデータに示されるように、ソフトウェアは、電流の変化を監視し、電力供給源を調節し、図12に説明されるように、先端116において3,000Vおよび3,000Vのアノードとカソードとの間の一定の電圧降下を維持する。先端における電圧(V116)は、以下の方程式2によって説明される。
116=ΔV108-110×(R111)/(R109+R112+R105)+(電力供給源1310電圧設定)
【0210】
動員が起こる間、ソフトウェアは、吸光度画像を捕捉し続け、ピークを同定し、撮像チャネル112からチャネル114の中へのそれらの遊走を追跡する。各ピークが撮像チャネル112から離れる時間、その速度、およびチャネル114内の流率を追跡することによって、ソフトウェアは、ピークがチャネル114を横断し、オリフィス116を介して質量分析計に導入される時間を計算し、元の集束されたピークと結果として生じる質量スペクトルとの間の直接相関を可能にすることができる。例えば、図16のパネルBは、図16のパネルAに示される電気泳動図の酸性ピーク内に含有されていた質量分析計の中にエレクトロスプレーされたグリコフォームの質量を示す。図16のパネルCは、図16のパネルAからの主要インフリキシマブピークにおけるグリコフォームの質量を示す。図16のパネルDおよび図16のパネルEは、図16のパネルAに示される電気泳動図からの塩基性ピークの質量を示す。
【実施例0211】
2ステップ毛細管IEFにおいて高電圧および低電圧を改変し、電場強度ならびに一定の電圧を維持する
実施例8では、図14Aに概説されるように、2ステップIEF(動員が続く等電点電気泳動)が、60cmの毛細管において実施され、接合噴霧器を通してESI-MSの中に動員される。分離毛細管1808が、陽極液バイアル1806内に浸漬される。高電圧電力供給源1802が、電極1804を通して陽極液バイアル1806に接続される。毛細管1808の他方の端部は、T字管ユニオン1812を通して接合噴霧器1814に接続される。毛細管1808は、接合噴霧器1814の中に挿入され、したがって、毛細管出口は、ESI先端1824に近接近する。T字管ユニオン1812の第3のアームが、加圧動員剤バイアル1818内に浸漬される動員剤毛細管1816に接続される。加圧動員剤バイアル1818はまた、電極1817を介して接地され、したがって、これは、電流シンクとして作用し得る。加えて、接合噴霧器1814は、噴霧器1814の外側に接続するワイヤ1820を通して電力供給源1810に接続される。本実施例では、質量分析計イオン源は、接地において保持される。
【0212】
試薬が、以下のように調製される。陽極液バイアル1806が、水中1%ギ酸で充填され、分離毛細管1808が、水性サンプル(250μg/mL NIST mAb、1.5%Pharmalyte 5-8両性電解質、1.5%Pharmalyte 8-10.5、5mg/mL pI標準7.00および10.17)で充填され、接合噴霧器チャンバ1826および動員剤毛細管1816が、水中1%ジエチルアミンで充填され、加圧動員剤バイアル1818が、1%ギ酸、50%アセトニトリル、および49%水で充填される。
【0213】
本実施例では、質量分析計イオン源は、接地において保持される。集束を開始するために、電力供給源1802は、+30kVに設定され、電力供給源1810は、4kVに設定される。また、動員剤バイアル1818からの圧力駆動流が、100nL/分において開始される。このように、ESIは、接合噴霧器キャビティ1826内のジエチルアミンを使用して開始され、ジエチルアミンはまた、等電点電気泳動ステップのための陰極液として作用する。
【0214】
集束が毛細管1808において進むにつれて、サンプルは、電荷搬送能力を喪失し、抵抗は、毛細管1808において増加する。ESI先端が、毛細管1808とチャンバ1826内のジエチルアミンとの間に電気的に位置付けられる(図14B参照)際、ESI先端電圧(V1824)は、以下の方程式3に従って降下するであろう。
1824=ΔV1806-1814×R1826/(R1808+R1826)+V1814
【0215】
加えて、毛細管1808における抵抗が増加するにつれて、毛細管を通して通過する電流は、減少し、これは、電力供給源1802において測定されることができる。増加された電流は、以下の方程式4によって毛細管1808における抵抗変化に直接関連するであろう。
1806=ΔV1806-1814/(R1808+R1826
【0216】
図12に説明されるようなコンピュータ制御フィードバックループを使用して、本システムは、毛細管1808における抵抗の変化(したがって、ESI先端1824における電圧を定義する、毛細管1808を横断する電圧降下の変化)を計算することができ、本システムは、電力供給源1802および1810を調節し、26kVのΔVを留保し、4,000kVのESI先端電圧を維持することができる。
【0217】
集束が完了した後(約30分)、加圧動員剤バイアル1818内の動員剤溶液は、接合噴霧器チャンバ1826内のジエチルアミンに取って代わり、毛細管1808におけるNIST mAbタンパク質アイソフォームの動員を開始するであろう。類似する方式であるが、等電点電気泳動とは反対に、動員が進むにつれて、毛細管1808における抵抗は、降下し、ESI先端1824における電圧に影響を及ぼすであろう。再度、コンピュータ制御フィードバックループは、方程式3および4を使用し、ESI先端1824電圧を4kVに保ちながら、26kV電場を維持するために必要な電力供給源1802および1810の変化を計算するであろう。
【0218】
本発明の好ましい実施形態が、本明細書に示され、説明されたが、そのような実施形態が、実施例としてのみ提供されることが、当業者に明白であろう。多数の変形例、変更、および代用が、ここで、本発明から逸脱することなく、当業者に想起されるであろう。本明細書に説明される発明の実施形態の種々の代替が、本発明を実践する際に任意の組み合わせで採用され得ることを理解されたい。以下の請求項が、本発明の範囲を定義し、これらの請求項の範囲内の方法および構造ならびにそれらの均等物が、それによって網羅されることを意図している。
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
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図9-1】
図9-2】
図10
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図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
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図14B
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図23