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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015689
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】物理量センサー及び慣性計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/125 20060101AFI20240130BHJP
   G01P 15/18 20130101ALI20240130BHJP
   G01P 15/08 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
G01P15/125 Z
G01P15/18
G01P15/08 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117925
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】田中 悟
(57)【要約】
【課題】可動体の対称性に伴う不具合を回避できる物理量センサー等の提供。
【解決手段】物理量センサー1は、固定部40と支持梁42と可動体MBと第1固定電極部10A及び第2固定電極部50Aと、を含む。可動体MBは、第1連結部30と第1基部23Aと第1可動電極部20Aと第2連結部70と第2基部63Aと第2可動電極部60Aと、を有する。第1基部23Aは、第1連結部30に接続される。第1可動電極部20Aの第1可動電極21は、第1基部23Aから第1方向DR1に延び、第1固定電極部10Aの第1固定電極11と第2方向DR2において対向する。第2基部63Aは、第2連結部70に接続される。第2可動電極部60Aの第2可動電極61は、第2基部63Aから第1方向DR1に延び、第2固定電極部50Aの第2固定電極51と第2方向DR2において対向する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する3つの方向を第1方向、第2方向及び第3方向としたとき、前記第3方向での物理量を検出する物理量センサーであって、
基板に固定された固定部と、
前記固定部に一端が接続され、前記第2方向に沿って設けられる支持梁と、
前記支持梁の他端に接続された可動体と、
前記基板に設けられた第1固定電極部及び第2固定電極部と、
を含み、
前記可動体は、
前記支持梁の他端に接続され、前記支持梁から前記第1方向に延びる第1連結部と、
前記第1連結部に接続され、前記第2方向に沿って設けられる第1基部と、
前記第1基部から前記第1方向に延び、前記第1固定電極部の第1固定電極と前記第2方向において対向する第1可動電極を有する第1可動電極部と、
前記支持梁の他端に接続され、前記支持梁から前記第1方向の反対方向である第4方向に延びる第2連結部と、
前記第2連結部に接続され、前記第2方向に沿って設けられる第2基部と、
前記第2基部から前記第1方向に延び、前記第2固定電極部の第2固定電極と前記第2方向において対向する第2可動電極を有する第2可動電極部と、
を含むことを特徴とする物理量センサー。
【請求項2】
請求項1に記載の物理量センサーにおいて、
前記第1可動電極部と前記第2可動電極部は、前記支持梁に対して前記第1方向において対称な位置に設けられることを特徴とする物理量センサー。
【請求項3】
請求項2に記載の物理量センサーにおいて、
前記基板に設けられた第3固定電極部及び第4固定電極部と、
を含み、
前記可動体は、
前記第1連結部に接続され、前記第2方向に沿って設けられる第3基部と、
前記第3基部から前記第4方向に延び、前記第3固定電極部の第3固定電極と前記第2方向において対向する第3可動電極を有する第3可動電極部と、
前記第2連結部に接続され、前記第2方向に沿って設けられる第4基部と、
前記第4基部から前記第4方向に延び、前記第4固定電極部の第4固定電極と前記第2方向において対向する第4可動電極を有する第4可動電極部と、
を含むことを特徴とする物理量センサー。
【請求項4】
請求項3に記載の物理量センサーにおいて、
前記第3可動電極部と前記第4可動電極部は、前記支持梁に対して前記第1方向において対称な位置に設けられることを特徴とする物理量センサー。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の物理量センサーにおいて、
前記第1可動電極部の前記第1可動電極の前記第3方向での厚みは、前記第1固定電極部の前記第1固定電極の前記第3方向での厚みと異なり、
前記第2可動電極部の前記第2可動電極の前記第3方向での厚みは、前記第2固定電極部の前記第2固定電極の前記第3方向での厚みと異なることを特徴とする物理量センサー。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の物理量センサーにおいて、
前記第1可動電極部の前記第1可動電極の前記第3方向での厚みは、前記第1固定電極部の前記第1固定電極の前記第3方向での厚みより大きく、
前記第2可動電極部の前記第2可動電極の前記第3方向での厚みは、前記第2固定電極部の前記第2固定電極の前記第3方向での厚みより大きいことを特徴とする物理量センサー。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の物理量センサーにおいて、
前記第1可動電極部の前記第1可動電極の前記第3方向での厚みは、前記第1固定電極部の前記第1固定電極の前記第3方向での厚みより小さく、
前記第2可動電極部の前記第2可動電極の前記第3方向での厚みは、前記第2固定電極部の前記第2固定電極の前記第3方向での厚みより小さいことを特徴とする物理量センサー。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の物理量センサーにおいて、
前記第1可動電極部と前記第1固定電極部の裏面の前記第3方向での位置が一致しており、
前記第2可動電極部と前記第2固定電極部の裏面の前記第3方向での位置が一致していることを特徴とする物理量センサー。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の物理量センサーにおいて、
前記第1固定電極部は、前記第2方向に沿って並んで配置される第1固定電極群と第2固定電極群と、
を有し、
前記第1可動電極部は、前記第1固定電極群と対向するように設けられる第1可動電極群と、前記第2固定電極群と対向するように設けられる第2可動電極群と、
を有し、
前記第2固定電極部は、前記第2方向に沿って並んで配置される第3固定電極群と第4固定電極群と、
を有し、
前記第2可動電極部は、前記第3固定電極群と対向するように設けられる第3可動電極群と、前記第4固定電極群と対向するように設けられる第4可動電極群と、
を有し、
前記第1可動電極群の前記第3方向の長さは、前記第2可動電極群の前記第3方向の長さと異なり、
前記第3可動電極群の前記第3方向の長さは、前記第4可動電極群の前記第3方向の長さと異なることを特徴とする物理量センサー。
【請求項10】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の物理量センサーにおいて、
静止状態において、前記第1固定電極部の前記第1固定電極の前記第3方向における端部の位置は、前記第1可動電極部の前記第1可動電極の前記第3方向における端部と異なり、
前記第1固定電極部の前記第1固定電極の前記第3方向の反対方向である第5方向における端部の位置は、前記第1可動電極部の前記第1可動電極の前記第5方向における端部と異なり、
前記第2固定電極部の前記第2固定電極の前記第3方向における端部の位置は、前記第2可動電極部の前記第2可動電極の前記第3方向における端部と異なり、
前記第2固定電極部の前記第2固定電極の前記第5方向における端部の位置は、前記第2可動電極部の前記第2可動電極の前記第5方向における端部と異なることを特徴とする物理量センサー。
【請求項11】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の物理量センサーにおいて、
前記第2連結部は、平面視において前記第3方向にくぼむ溝部を有することを特徴とする物理量センサー。
【請求項12】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の物理量センサーにおいて、
前記第1固定電極部を前記基板に固定するための第1固定電極固定部と、
前記第1固定電極基部に接続され、前記第1固定電極が延出する第1固定電極基部と、
前記第2固定電極部を前記基板に固定するための第2固定電極固定部と、
前記第2固定電極固定部に接続され、前記第2固定電極が延出する第2固定電極基部と、
を含み、
前記第1固定電極固定部は、前記支持梁の前記第1方向において、前記第1固定電極部よりも前記固定部に近い位置に設けられ、
前記第2固定電極固定部は、前記支持梁の前記第4方向において、前記第2固定電極部よりも前記固定部に近い位置に設けられることを特徴とする物理量センサー。
【請求項13】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の物理量センサーにおいて、
前記支持梁は、前記第2方向を回転軸として捻れる捻れバネであることを特徴とする物理量センサー。
【請求項14】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の物理量センサーと、
前記物理量センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部と、
を含むことを特徴とする慣性計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量センサー及び慣性計測装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、Z方向の加速度を検出する物理量センサーが開示されている。当該物理量センサーにおいて、複数の第1電極の1つの第1方向に沿う第1電極の長さは、第1導電部の第1方向に沿う第1導電部の長さよりも短いことが開示されている。また当該物理量センサーにおいて、複数の第2電極の1つの第1方向に沿う第2電極の長さは、第2導電部の第1方向に沿う第2導電部の長さよりも短いことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-032819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された物理量センサーでは、トーションバネである接続部から両側に設けられる櫛歯電極までの距離が異なり、正負の検出特性の線形性に不具合が生じるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、互いに直交する3つの方向を第1方向、第2方向及び第3方向としたとき、前記第3方向での物理量を検出する物理量センサーであって、基板に固定された固定部と、前記固定部に一端が接続され、前記第2方向に沿って設けられる支持梁と、前記支持梁の他端に接続された可動体と、前記基板に設けられた第1固定電極部及び第2固定電極部と、を含み、前記可動体は、前記支持梁の他端に接続され、前記支持梁から前記第1方向に延びる第1連結部と、前記第1連結部に接続され、前記第2方向に沿って設けられる第1基部と、前記第1基部から前記第1方向に延び、前記第1固定電極部の第1固定電極と前記第2方向において対向する第1可動電極を有する第1可動電極部と、前記支持梁の他端に接続され、前記支持梁から前記第1方向の反対方向である第4方向に延びる第2連結部と、前記第2連結部に接続され、前記第2方向に沿って設けられる第2基部と、前記第2基部から前記第1方向に延び、前記第2固定電極部の第2固定電極と前記第2方向において対向する第2可動電極を有する第2可動電極部と、を含む物理量センサーに関係する。
【0006】
また本開示の他の態様は、上記に記載の物理量センサーと、前記物理量センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部と、を含む慣性計測装置に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の物理量センサーの平面図。
図2】本実施形態の物理量センサーの斜視図。
図3】本実施形態の物理量センサーの検出部の斜視図。
図4】本実施形態の物理量センサーの検出部の動作説明図。
図5】本実施形態と従来例の可動体の平面形状を比較する概略図。
図6】本実施形態と従来例の可動体の断面形状を比較する概略図。
図7】第1詳細例の平面図。
図8】第1詳細例の検出部の斜視図。
図9】第1詳細例と従来例の可動体の平面形状を比較する概略図。
図10】第1詳細例の変形例における検出部の斜視図。
図11】第1詳細例の変形例における検出部の動作説明図。
図12】第2詳細例の平面図。
図13】第2詳細例の斜視図。
図14】第3詳細例の平面図。
図15】第3詳細例における検出部の動作説明図。
図16】第4詳細例における検出部の斜視図。
図17】第4詳細例における検出部の動作説明図。
図18】第4詳細例の変形例における検出部の動作説明図。
図19】本実施形態の第1変形例の平面図。
図20】本実施形態の第2変形例の平面図。
図21】本実施形態の第3変形例の平面図。
図22】本実施形態の第3変形例の平面図。
図23】本実施形態の第4変形例の平面図。
図24】本実施形態の第4変形例の平面図。
図25】物理量センサー有する慣性計測装置の概略構成を示す分解斜視図。
図26】物理量センサーの回路基板の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲の記載内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.物理量センサー
本実施形態の物理量センサー1について、鉛直方向の加速度を検出する加速度センサーを一例として挙げて説明する。図1は、本実施形態の物理量センサー1の基板2に直交する方向での平面視における平面図である。物理量センサー1は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスであり、例えば慣性センサーである。
【0010】
なお、図1や後述の図2図24では、説明の便宜のために各部材の寸法や部材間の間隔等は模式的に示されており、また、全ての構成要素を示してはいない。例えば電極配線、電極端子等については図示を省略している。また以下では、物理量センサー1が検出する物理量が加速度である場合を主に例にとって説明するが、物理量は加速度に限定されず、速度、圧力、変位、姿勢、角速度又は重力等の他の物理量であってもよく、物理量センサー1は圧力センサー又はMEMSスイッチ等として用いられるものであってもよい。また図1において互いに直交する方向を第1方向DR1、第2方向DR2、第3方向DR3としている。第1方向DR1、第2方向DR2、第3方向DR3は、各々、例えばX軸方向、Y軸方向、Z軸方向であるが、これに限定されない。例えば、Z軸方向に対応する第3方向DR3は、例えば物理量センサー1の基板2に直交する方向であり、鉛直方向である。そして、第3方向DR3と反対の方向を第5方向DR5とする。また、X軸方向に対応する第1方向DR1、Y軸方向に対応する第2方向DR2は、第3方向DR3に直交する方向であり、第1方向DR1及び第2方向DR2に沿った面であるXY平面は例えば水平面に沿っている。そして、第1方向DR1の反対側の方向を第4方向DR4とし、第4方向DR4は、例えば-X軸方向である。なお、「直交」とは90°で交わっているものの他、90°から若干傾いた角度で交わっている場合も含むものとする。
【0011】
基板2は、例えば半導体シリコンで構成されたシリコン基板又はホウケイ酸ガラスなどのガラス材料で構成されたガラス基板などである。但し基板2の構成材料としては、特に限定されず、石英基板又はSOI(Silicon On Insulator)基板等を用いてもよい。
【0012】
図1に示すように本実施形態の物理量センサー1は、固定部40、支持梁42、可動体MB、第1固定電極部10A及び第2固定電極部50Aを含む。可動体MBは、第1連結部30、第1基部23A、第1可動電極部20A、第2連結部70、第2基部63A及び第2可動電極部60Aを含む。第1固定電極部10Aは複数の第1固定電極11を有し、第2固定電極部50Aは複数の第2固定電極51を有する。第1可動電極部20Aは複数の第1可動電極21を有し、第2可動電極部60Aは複数の第2可動電極61を有する。
【0013】
そして、図1において破線の枠で示すように、物理量センサー1は検出部Z1と検出部Z2を有し、各検出部でZ軸方向である第3方向DR3に沿う方向での加速度等の物理量を検出する。検出部Z1、Z2は、平面視において、それぞれ支持梁42の第1方向DR1側と第4方向DR4側に設けられている。
【0014】
支持梁42の第1方向DR1側に設けられる検出部Z1は、第1固定電極部10A、第1可動電極部20Aを含む。また支持梁42の第4方向DR4側に設けられる検出部Z2は、第2固定電極部50Aと第2可動電極部60Aを含む。
【0015】
図2は本実施形態の物理量センサー1の斜視図である。固定部40は、図3で後述する可動体MBのシーソー運動におけるアンカーとしての役割を担う。固定部40は、図2に示すように、基板2に設けられている。固定部40は、支持梁42の一端を、固定部40を介して基板2に固定している。支持梁42の他端は、可動体MBの第1連結部30及び第2連結部70に連結されている。このように固定部40は、支持梁42を介して、可動体MBを基板2に連結させる。
【0016】
支持梁42は、可動体MBのシーソー運動において復元力を与える。図2に示すように、支持梁42は、その一端が固定部40の一部に接続されている。そして、支持梁42の他端は、それぞれ第1連結部30、第2連結部70に接続されている。このように支持梁42は、固定部40と可動体MBとを連結させている。支持梁42は、例えば、捻れバネである。図1に示すように、支持梁42は平面視において、例えば第2方向DR2を長手方向になるように設けられる。また、図2に示すように支持梁42は、第1方向DR1での厚みが薄くなっており、図3で後述する可動体MBのシーソー運動に対して、撓むようになっている。そして、第2方向DR2である例えばY軸上で捻れることで、可動体MBのシーソー運動における復元力をもたらす。このように本実施形態では、支持梁42は、第2方向DR2を回転軸として捻れる捻れバネである。このようにすれば、可動体MBは第2方向DR2を回転軸として揺動運動をすることができる。
【0017】
可動体MBは、例えば第2方向DR2に沿う回転軸の回りでシーソー運動を行う。即ち、可動体MBは、上述した支持梁42の捻れを第2方向DR2の回りの回転運動における復元力としてシーソー運動を行う。これに伴って、可動体MBの第1可動電極部20A、第2可動電極部60Aも可動になっており、物理量の検出が行われる。なお、以下においては、可動体MBのシーソー運動のことを揺動運動とも記載する。
【0018】
第1連結部30は、支持梁42の固定部40と接続されていない他端と第1基部23Aと、を連結する。そして、第2連結部70は、支持梁42の当該他端と第2基部63Aと、を連結する。第1連結部30は、支持梁42の第1方向DR1側に延在しており、支持梁42の第1方向DR1側において第1基部23Aと接続されている。そして、第2連結部70は、支持梁42の第4方向DR4側に延在しており、支持梁42の第4方向DR4側において第2基部63Aと接続されている。このように、第1連結部30と第2連結部70は、それぞれ第1基部23Aと第2基部63Aを、可動体MBの回転軸になる支持梁42から一定の距離になるように連結する。
【0019】
第1基部23Aは、第1可動電極部20Aの第1可動電極21の基部をなしている。即ち、図1に示すように、平面視において、第1基部23Aの第1方向DR1側に、第1基部23Aを基部として複数の第1可動電極21が延出している。そして、第1基部23Aは、可動体MBの回転軸から一定の距離に位置するように第1連結部30により、支持梁42と連結されている。
【0020】
第2基部63Aは、第2可動電極部60Aの第2可動電極61の基部をなしている。第2基部63Aは、検出部Z2において、検出部Z1での第1基部23Aと同様な役割を担う。即ち、平面視において、第2基部63Aから第1方向DR1側に複数の第2可動電極61が延出している。そして、第2基部63Aは、可動体MBの回転軸から一定の距離に位置するように第2連結部70により、支持梁42と連結されている。
【0021】
このような構成により、第1基部23Aは、第1連結部30とともに、第1可動電極部20Aの第1可動電極21を可動体MBのシーソー運動における回転軸から一定の距離になるように連結する。そして、第2基部63Aは、第2連結部70とともに、第2可動電極部60Aの第2可動電極61をシーソー運動の回転軸から一定の距離になるように連結する。
【0022】
また、図1に示すように、可動体MBの回転軸にあたる支持梁42から、第1可動電極部20Aの中心までの距離をΔrとすると、支持梁42から第2可動電極部60Aの中心までの距離もΔrになっている。即ち、平面視において、支持梁42を含むY軸に対して、第1可動電極部20Aと第2可動電極部60Aは対称な位置に配置されている。そして、第1可動電極部20Aの第1可動電極21は、第1基部23Aから第1方向DR1に延出し、第2可動電極部60Aの第2可動電極61も、第2基部63Aから第1方向DR1に延出している。このように、第1可動電極21と第2可動電極61は、各々の中心が支持梁42から等しい距離にあり、また、各基部から同じ方向に延出するように設けられている。ここで、各電極部の中心とは、物理的な距離における中心位置、或いは各電極部の重心位置のことをいう。即ち、各電極部の物理的な距離における中心位置、或いは各電極部の重心位置が支持梁42から等しくなっていればよい。なお、上記において、距離が等しいとは、略等しい状態も含む。例えば、半導体製造プロセスでエッチング加工処理を行う場合、同一の装置、条件のもとで処理を行っても、装置そのものに起因して仕上がり寸法にばらつきが現れることが通常だからである。
【0023】
第1固定電極部10Aの第1固定電極11と第1可動電極部20Aの第1可動電極21は、検出部Z1におけるプローブ電極である。第1固定電極部10Aの第1固定電極11は、基板2に固定されたプローブ電極であり、第1可動電極部20Aの第1可動電極21は、可動体MBと一体となって動くことのできるプローブ電極である。そして、第1固定電極部10Aの第1固定電極11と第1可動電極部20Aの第1可動電極21により物理量の検出を行うことができる。
【0024】
第1固定電極部10Aは、基板2に固定されている。図1図2に示すように、第1固定電極部10Aは、第1基部23Aの第1方向DR1側に設けられている。そして、第1固定電極部10Aには、第4方向DR4側に延びる櫛歯状の第1固定電極11が設けられている。第1可動電極部20Aは、第1基部23Aの第1方向DR1側に延びる櫛歯状の第1可動電極21を有する。なお、以下において、第1固定電極11、第2固定電極51、第1可動電極21及び第2可動電極61を、適宜、総称してプローブ電極と表記する。
【0025】
図3は、本実施形態の初期状態での検出部Z1、検出部Z2におけるプローブ電極の構成を示す斜視図である。ここで、初期状態とは、静止した状態、即ち、重力加速度を除いて加速度の生じていない状態をいう。図3の上図は、検出部Z1における第1固定電極11と第1可動電極21の形状や位置関係を示している。検出部Z1において、第1可動電極21は、第2方向DR2において第1固定電極11と対向するように交互に設けられている。なお、第1固定電極11及び第1可動電極21のそれぞれの電極の数は任意に設けることができる。また各プローブ電極の第3方向DR3での厚みに着目すると、第1可動電極21の厚みは、第1固定電極11の厚みよりも厚くなっている。ここで、厚みとは、例えば、素子の断面をSEM(Scanning Electron Microscope)等により測定した物理的な厚みに限らず、薄膜の屈折率等の光学的特性から見積もられる膜厚も含む。そして、第1可動電極21及び第1固定電極11の第5方向DR5における端部の位置は面一になっている。このため、第1可動電極21の第3方向DR3側の端部の位置は、第1固定電極11の第3方向DR3側の端部の位置よりも第3方向DR3側に位置している。即ち、検出部Z1において、プローブ電極は、第3方向DR3側では第1可動電極21の端部が第1固定電極11の端部よりも凸になり、第5方向DR5側では第1可動電極21の端部と第1固定電極11の端部の位置が面一になる、片側オフセット構造になっている。
【0026】
図3の下図は、検出部Z2における第2固定電極部50Aの第2固定電極51と第2可動電極部60Aの第2可動電極61の形状や位置関係を示している。検出部Z2においても、図3の上図に示す検出部Z1と同様に片側オフセット構造のプローブ電極の構造になっている。検出部Z2における第2固定電極51、第2可動電極61は、それぞれ検出部Z1における第1固定電極11、第1可動電極21に対応しており、第2可動電極61の厚みは、第2固定電極51の厚みよりも厚くなっている。そして、第3方向DR3側で第2可動電極61の端部が第2固定電極51の端部よりも凸になる片側オフセット構造をなしている。また、検出部Z1の場合と同様に、第2固定電極51及び第2可動電極61のそれぞれの櫛歯電極の数は任意に設けることができる。
【0027】
即ち、本実施形態では、第1可動電極部20Aと第1固定電極部10Aの裏面の第3方向DR3での位置が一致しており、第2可動電極部60Aと第2固定電極部50Aの裏面の第3方向DR3での位置が一致している。
【0028】
このようにすれば、第1可動電極21、第1固定電極11、第2可動電極61及び第2固定電極51の各々を構成する電極材料を同一のプロセスで形成することで、プローブ電極の裏面側が面一になる構成を実現できる。そして、各電極をエッチング等の加工により形成することができるため、製造プロセスを容易化できる。
【0029】
図4は、本実施形態の物理量センサー1の検出部Z1、Z2の動作を説明する図である。具体的には、初期状態から加速度が生じた場合に、加速度の向きに対するプローブ電極の動きを第1方向DR1からの断面の概略図により示している。ここで初期状態とは、図3で説明した通り、重力加速度を除いて加速度の生じていない静止状態をいう。なお、検出部Z1はプローブのP側に対応し、検出部Z2はプローブのN側に対応している。
【0030】
まず、図4の左列に示す初期状態においては、検出部Z1の第1固定電極11と第1可動電極21は、第3方向DR3に沿って、その一部が重なるように対向して設けられている。具体的には、第1固定電極11と第1可動電極21は、第5方向DR5での端部の位置は一致しているが、第3方向DR3での端部の位置は第1可動電極21の端部の方が、第1固定電極11の端部よりも第3方向DR3側に位置している。初期状態では、このように第3方向DR3に沿って第1固定電極11と第1可動電極21の一部が重なった状態で静止している。また、検出部Z2の第2固定電極51と第2可動電極61も、第3方向DR3に沿って、一部が重なるように対向して設けられており、第3方向DR3において第2固定電極51の端部よりも第2可動電極61の端部の方が、第3方向DR3側に位置している。
【0031】
この初期状態において、検出部Z1での第1固定電極11と第1可動電極21の対向面積に対応する物理量と、検出部Z2での第2固定電極51と第2可動電極61の対向面積に対応する物理量とを合計した物理量が、初期状態における物理量になる。物理量としては、例えば静電容量等がある。
【0032】
次に、図4の中央列に示すように第3方向DR3の加速度が生じた状態での動作を説明する。第3方向DR3の加速度が生じた状態では、検出部Z2において第2可動電極61は加速度の向きと逆向きの慣性力を受ける。このため、検出部Z2の第2可動電極61は第5方向DR5側、即ち-Z方向に変位し、検出部Z1の第1可動電極21は、第2可動電極61と逆方向の+Z方向に変位する。これにより検出部Z2では、第2固定電極51と第2可動電極61の対向面積は維持され、検出部Z1では、第1固定電極11と第1可動電極21の対向面積は減少する。従って、検出部Z1での対向面積の減少による物理量の変化を検出することで、第3方向DR3の物理量を検出できる。
【0033】
一方、図4の右列に示すように、初期状態から第5方向DR5の加速度が生じた状態では、第2可動電極61は第3方向DR3の慣性力を受ける。このため検出部Z2では第2可動電極61は第3方向DR3に変位し、検出部Z1の第1可動電極21は、その反対方向である第5方向DR5側に変位する。これにより検出部Z2では、第2固定電極51と第2可動電極61の対向面積は減少し、検出部Z1では、第1固定電極11と第1可動電極21の対向面積が維持される。従って、検出部Z2の対向面積の減少による物理量の変化を検出することで、第5方向DR5の物理量を検出できる。なお、物理量として静電容量の変化の検出する場合、例えば不図示の差動増幅回路に、第1固定電極11、第2固定電極51、第1可動電極21、第2可動電極61をそれぞれ配線及びパッドを介して接続することで静電容量を検出できる。ここで、第3方向DR3または第5方向DR5の加速度が生じ、加速度の向きと逆向きに変位するのは、検出部Z2の第2可動電極61である。これは、第4方向DR4側に設けられた可動体MB、即ち、検出部Z2側の可動体MBが、第1方向DR1側に設けられた可動体MB、即ち、検出部Z1側の可動体MBよりも重いからである。
【0034】
本実施形態では、第1可動電極部20Aの第1可動電極21の第3方向DR3での厚みは、第1固定電極部10Aの第1固定電極11の第3方向DR3での厚みより大きく、第2可動電極部60Aの第2可動電極61の第3方向DR3での厚みは、第2固定電極部50Aの第2固定電極51の第3方向DR3での厚みより大きい。
【0035】
このようにすれば、第3方向DR3の加速度が生じた場合、検出部Z1では、第1固定電極11と第1可動電極21の対向面積が減少し、検出部Z2では、第2固定電極51と第2可動電極61の対向面積は維持されるため、第3方向DR3の物理量の変化を検出できる。また、第5方向DR5の加速度が生じた場合、検出部Z2では第2固定電極51と第2可動電極61の対向面積が減少し、検出部Z1では第1固定電極11と第1可動電極21の対向面積は維持されるため、第5方向DR5の物理量の変化を検出できる。
【0036】
図5は、本実施形態の物理量センサー1における可動体MBの形状を比較例と対比して説明する概略図である。具体的には、本実施形態における支持梁42、第1基部23A、第1可動電極部20A、第2基部63A及び第2可動電極部60A等の平面視における位置関係や各プローブ電極の延出する向きについて、比較例との構成の差異を示している。図5のA1、A2及びA3に示す構成は、比較例の物理量センサー1の可動体の構成であり、B1に示す構成は本実施形態における可動体MBの構成である。
【0037】
物理量センサー1における物理量の検出手法については、図4において説明したが、可動体MBの加速度に対する回転感度について、具体的に考察しておく。図6は、図5のA1~A3及びB1に示す構成に対応する回転物理系を模式的に示している。図6のA1に示す構成例では、支持梁42から第1方向DR1側にΔL1だけ離れた位置に質量M1の第1基部23Aが設けられ、また、支持梁42から第4方向DR4側にも、ΔL1だけ離れた位置に同じ質量M1の第2基部63Aが設けられている。可動体MBにおける支持梁42の第1方向DR1側の慣性モーメントをIZ1とし、支持梁42の第4方向DR4側の慣性モーメントをIZ2とすると、慣性モーメントIZ1、IZ2は、ともにM1×ΔL1となり、等しくなっている。ここで、例えば、第3方向DR3の加速度が生じた場合、第1基部23Aと第2基部63Bは、第3方向DR3とは逆向きの慣性力FIを受ける。しかし、第1基部23Aと、第2基部63Aのそれぞれの受ける慣性力FIは、支持梁42を含む回転物理系においては、互いにトルクを相殺し合う方向に作用することになる。そこで、支持梁42の第1方向DR1側の慣性モーメントIZ1と支持梁42の第4方向DR4側の慣性モーメントIZ2との差分を取ったものが、可動体MB全体としての正味の慣性モーメントIになると考えられる。即ち、この正味の慣性モーメントであるIZ1-IZ2が、可動体MB全体としての回転感度を示す指標になる。
【0038】
図5のA1に示す構成例では、正味の慣性モーメントであるIZ1-IZ2はゼロになるため、支持梁42を回転軸として揺動運動をする可動体MBに第3方向DR3に沿う慣性力が生じても、可動体MB全体としては動くことはできない。なお、支持梁42の第1方向DR1側には、第1可動電極部20A及び第1連結部30が設けられ、支持梁42の第4方向DR4側には第2可動電極部60A及び第2連結部70が設けられているが、これらも回転軸に対称に設けられているものとして考える。
【0039】
このように、図5のA1に示す構成例では、正味の慣性モーメントIがゼロになり、可動体MB全体としては動くことができないという問題がある。そこで、このような問題を解消するために、図5のA2及びA3に示すような構成例が考えられる。図5のA2及びA3に示す構成例では、支持梁42の第1方向DR1側に質量部MPを設けて、正味の慣性モーメントIが0ではなくなるような構成になっている。図5のA2に示す構成例では、図6のA2に示すように、回転軸から距離aの位置に質量部MPが設けられており、IZ1=M1×ΔL1+M2×aとなる。このため、正味の慣性モーメントIは、M2×aになる。また、図5のA3に示す構成例では、図6のA3に示すように、回転軸から距離bの位置に質量部MPが設けられており、IZ1=M1×ΔL1+M2×bとなり、正味の慣性モーメントIは、M2×bになる。このように、図5のA1の構成例を改良したA2、A3の構成のいずれにおいても正味の慣性モーメントIはゼロではなくなり、可動体MBは一定の回転感度で揺動することができるようになる。しかし、これらの構成では、回転軸の両側に設けられる第1基部23Aと第2基部63Aの質量M1がキャンセルされる構造になっており、第1基部23Aと第2基部63Aの質量は可動体MBの実質的な回転感度に寄与しない構成になっている。即ち、第1基部23Aと第2基部63A以外に質量部MPを設けることによって、はじめて可動体MBに回転感度がもたらされることになる。
【0040】
このような構成では、確かに質量部MPを設けることで、正味の慣性モーメントIが0ではなくなるようにすることはできるが、既存の構成部である第1基部23Aや第2基部63Aを正味の慣性モーメントIに寄与させることができないため、可動体MBの回転感度を稼ぐには効率が悪くなる。また慣性モーメントIは質量mに比例し、回転軸からの距離rの自乗に比例する。従って、回転軸から近い距離aにある質量部MPが正味の慣性モーメントIになる図5のA2に示す構成では、質量部MPの質量M2を、回転軸からの距離の近さを打ち消す程度まで大きくしないと、可動体MBの十分な回転感度を得ることはできない。
【0041】
一方、図5のA3に示す構成では、質量部MPは第1基部23Aの外側に設けられており、回転軸からの距離bをある程度の大きさにすることができ、図5のA2に示す構成例のような問題は生じない。しかしながら、図5のA3に示す構成例では、可動体MBの外側に質量部MPを設けることになるため、余分なスペースを必要とし、物理量センサー1の小型化の観点からは望ましくない。また特許文献1に示す構成は、回転軸に対して質量を非対称にしているが、高感度化の観点では、必ずしも最適ではない。そして、回転軸に対して櫛歯状のプローブ電極が対称に配置されていないため、正負の検出特性の線形性も悪くなるという問題がある。このように図5のA1~A3に示す構成は、いずれも図中の矢印で示すように、プローブ電極の向きが回転軸に対して逆向きになるように設けられており、既存の構成部である第1基部23Aや第2基部63A自体を正味の慣性モーメントIに寄与させることが難しい構成になっている。
【0042】
この点、図5のB1に示す本実施形態では、各プローブ電極の延出する向きを回転軸の両側で一致させ、既存の第1基部23Aと第2基部63Aの回転軸に対する位置関係を非対称になるように変更し、正味の慣性モーメントIを生み出せるような構成になっている。このため、別途、質量部MPは設けなくても正味の慣性モーメントIを生み出せる。具体的には、図2で説明したように、第1可動電極部20Aと第2可動電極部60Aを、支持梁42を含む回転軸に対して対称な位置に設け、第1可動電極21と第2可動電極61の延出する向きが同じになるように、第1基部23Aと第2基部63Aが配置されている。本実施形態では、回転軸の第1方向DR1側の慣性モーメントIZ1は、IZ1=M1×ΔL2になり、第4方向DR4側の慣性モーメントIZ2は、IZ2=M1×ΔL1になる。従って、正味の慣性モーメントIは、式(1)で表される。
【数1】
【0043】
図5のA2に示す構成例では、回転軸から質量部MPまでの距離aが近くなり、正味の慣性モーメントIが十分に稼げなかったのに対して、本実施形態では、式(1)に示すように、第1方向DR1側での、回転軸から第1基部23Aまでの距離ΔL2を近くするほど、正味の慣性モーメントIは大きくなることがわかる。このように、既存の第1基部23Aと第2基部63Aの配置を変更することで、正味の慣性モーメントIを効率よく稼ぐことができ、可動体MBの回転感度を得ることができる。また、新たに質量部MPを設けなくても正味の慣性モーメントIを稼ぐことが可能であり、、また、質量部MPの追加するによる物理量センサー1の体積増加の問題も比較的生じにくい。
【0044】
即ち、本実施形態の物理量センサー1は、互いに直交する3つの方向を第1方向DR1、第2方向DR2及び第3方向DR3としたとき、第3方向DR3での物理量を検出する物理量センサーである。本実施形態の物理量センサー1は、固定部40と支持梁42と可動体MBと第1固定電極部10A及び第2固定電極部50Aと、を含む。固定部40は、基板2に固定される。支持梁42は、固定部40に一端が接続され、第2方向DR2に沿って設けられる。可動体MBは、支持梁42の他端に接続される。第1固定電極部10A及び第2固定電極部50Aは、基板2に設けられる。可動体MBは、第1連結部30と第1基部23Aと第1可動電極部20Aと第2連結部70と第2基部63Aと第2可動電極部60Aと、を有する。第1連結部30は、支持梁42の他端に接続され、支持梁42から第1方向DR1に延びる。第1基部23Aは、第1連結部30に接続され、第2方向DR2に沿って設けられる。第1可動電極部20Aの第1可動電極21は、第1基部23Aから第1方向DR1に延び、第1固定電極部10Aの第1固定電極11と第2方向DR2において対向する。第2連結部70は、支持梁42の他端に接続され、支持梁42から第1方向DR1の反対方向である第4方向DR4に延びる。第2基部63Aは、第2連結部70に接続され、第2方向DR2に沿って設けられる。第2可動電極部60Aの第2可動電極61は、第2基部63Aから第1方向DR1に延び、第2固定電極部50Aの第2固定電極51と第2方向DR2において対向する。
【0045】
このようにすれば、第1可動電極21と第2可動電極61を、回転軸である支持梁42に対して同じ方向に延出させることで、検出部Z1は第1基部23Aに対して回転軸から遠い側に配置され、検出部Z2は第2基部63Aに対して回転軸に近い側に配置されることになる。従って、第2基部63Aを、第1基部23Aよりも回転軸から遠い位置に配置することが容易になる。よって、慣性モーメントIを効率的に稼ぐことができ、物理量センサー1の物理量の検出感度を高感度化できる。
【0046】
このように本実施形態では、例えば、支持梁42のバネ長方向が第2方向DR2に、プローブ電極の櫛歯長方向が第1方向DR1になっており、支持梁42のバネ長方向とプローブ電極の櫛歯長方向と、が直交関係になっている。そして、平面視において、支持梁42を含む回転軸の両側にあり、プローブ電極の設けられる領域の中心と当該回転軸までの距離の等しいプローブ電極同士を比較したとき、少なくとも一つの領域で可動のプローブ電極の根元から先端部への方向が一致する。このような構成により、本実施形態の物理量センサー1では、平面視において、支持梁42を含む回転軸の両側にプローブ電極が設けられ、更に、可動体MBの形状及び質量は非対称になる。これにより、物理量センサー1の高感度化と小型化が実現できる。
【0047】
また本実施形態では、例えば図3で第1可動電極21と第2可動電極61の第3方向DR3での厚みを小さくすれば、初期状態での静電容量を小さくすることができ、出力電圧のSN比向上というメリットもある。
【0048】
即ち、本実施形態では、第1可動電極部20Aと第2可動電極部60Aは、支持梁42に対して第1方向DR1において対称な位置に設けられる。
【0049】
このようにすれば、各検出部は回転軸に対して対称に配置されるようになるため、正負の検出特性の線形性に優れた物理量センサー1を実現できる。
【0050】
2.詳細な構成例
図7は、本実施形態の第1詳細例の平面図である。第1詳細例は、図1に示す構成例と同様に面外回転による面積変化型構造の物理量センサー1であるが、可動体MB全体の形状やプローブ電極の構成が図1に示す構成例と異なっている。第1詳細例では、可動体MBは基板2に2つの固定部40で連結されている。そして、第1詳細例では、物理量センサー1は、第1基部23Aに加えて第3基部23Bを有している。第3基部23Bは、第1基部23Aとともに、可動体MBの2つの第1連結部30を第2方向DR2で連結している。可動体MBの2つの第1連結部30は、図7のように、第1基部23A及び第3基部23Bを挟んで両側に設けられている。
【0051】
第1詳細例では、物理量センサー1は、第1固定電極部10A、第2固定電極部50Aに加えて、第3固定電極部10B、第4固定電極部50Bを有する。また、第1詳細例の可動体MBは、第1可動電極部20A、第2可動電極部60Aに加えて、第3可動電極部20B、第4可動電極部60Bを有する。
【0052】
第3固定電極部10Bは、図7に示すように支持梁42を含む回転軸の第1方向DR1側に、第1固定電極部10Aと第1方向DR1に沿って並んで設けられている。また、第3固定電極部10Bは、第1固定電極部10Aの第1方向DR1側に設けられている。第3固定電極部10Bは、櫛歯状の第3固定電極12を有しており、第3固定電極12は、第1固定電極11と共通の基部から第1固定電極11と反対側の第1方向DR1に延在している。
【0053】
第3可動電極部20Bは、支持梁42を含む回転軸の第1方向DR1側に、第1可動電極部20Aと第1方向DR1に沿って並んで設けられている。また、第3可動電極部20Bは、第1可動電極部20Aの第1方向DR1側に設けられている。第3可動電極部20Bは、櫛歯状の第3可動電極22を有しており、第3可動電極22は、第3基部23Bから第4方向DR4に延出している。そして、検出部Z1において、第3可動電極22は、第2方向DR2において第3固定電極12と対向するように交互に設けられている。
【0054】
第4固定電極部50Bは、回転軸の第4方向DR4側に、第2固定電極部50Aと第1方向DR1に沿って並んで設けられている。また、第4固定電極部50Bは、第2固定電極部50Aの第4方向DR4側に設けられている。第4固定電極部50Bは、櫛歯状の第4固定電極52を有しており、第4固定電極52は、第4固定電極部50Bの基部から第1方向DR1に延在している。
【0055】
第4可動電極部60Bは、回転軸の第4方向DR4側に、第2可動電極部60Aと第1方向DR1に沿って並んで設けられている。また、第4可動電極部60Bは、第2可動電極部60Aの第4方向DR4側に設けられている。第4可動電極部60Bは、櫛歯状の第4可動電極62を有しており、第4可動電極62は第4基部63Bから第2可動電極61と反対側の第4方向DR4に延出している。そして、検出部Z2において、第4可動電極62は、第2方向DR2において第4固定電極52と対向するように交互に設けられている。ここで、第4基部63Bは、前述した第2基部63Aと一体になっている。即ち、第2基部63Aと第4基部63Bは一体になっており、当該一体になった部分の第1方向DR1側に第2可動電極61が延出しており、第4方向DR4側に第4可動電極62が延出している。また、第4基部63Bは、第2基部63Aと別体になっていてもよい。
【0056】
このように第1詳細例では、支持梁42を含む回転軸の第1方向DR1側で、第1固定電極11と第1可動電極21が対向するように設けられたエリアと、第3固定電極12と第3可動電極22が対向するように設けられたエリアとが2列並んで設けられている。なお、以下においては、適宜、第1固定電極11、第3固定電極12を区別せずに固定電極14と、第1可動電極21、第3可動電極22を区別せずに可動電極24と、総称して表記する。また、第2固定電極51、第4固定電極52を区別せずに固定電極54と、第2可動電極61、第4可動電極62を区別せずに可動電極64と、総称して表記する。また、図7に示すように、第1基部23Aは、支持梁42及び固定部40と第1可動電極部20Aとの間を埋めるように構成してもよい。また、図7に示すように、支持梁42及び固定部40の第4方向DR4側に、支持梁42を保護する保護部を配置してもよい。また、図7に示すように、第1基部23A及び第3基部23Bは、一体となっている第2基部63A及び第4基部63Bよりも幅広に構成されててもよい。
【0057】
図8は、第1詳細例の各検出部のプローブ電極の構成を説明する図である。図8の上図は、検出部Z1におけるプローブ電極の構成を示す。第1詳細例では、第1固定電極部10Aと第3固定電極部10Bは、第4方向DR4側で第1可動電極部20Aと隣接し、第1方向DR1側では第3可動電極部20Bと隣接する構成になっている。即ち、第1固定電極部10Aと第3固定電極部10Bは、第1可動電極部20Aと第3可動電極部20Bに囲まれた構成になっている。そして、図1の構成例と同様に、第1可動電極21と第3可動電極22の第3方向DR3での厚みは、第1固定電極11、第3固定電極12の厚みよりも厚くなっている。
【0058】
図8の下図は、検出部Z2におけるプローブ電極の構成を示す。検出部Z2では、第2固定電極部50Aは、第4方向DR4側で第2可動電極部60Aと隣接し、第4固定電極部50Bは、第1方向DR1側で第4可動電極部60Bと隣接する構成になっている。そして、図1の構成例と同様に、第2可動電極61と第4可動電極62の第3方向DR3での厚みは、第2固定電極51、第4固定電極52の厚みよりも厚くなっている。
【0059】
第1詳細例において、第3方向DR3または第5方向DR5の加速度が生じ、加速度の向きと逆向きに変位するのは、検出部Z1の第1可動電極21と第3可動電極22である。これは、第1方向DR1側に設けられた可動体MB、即ち、検出部Z1側の可動体MBが、第4方向DR4側に設けられた可動体MB、即ち、検出部Z2側の可動体MBよりも重いからである。したがって、第1詳細例における検出部Z1、Z2の動作は、図4で説明した動作原理とは、第1可動電極21及び第2可動電極61の動く向きが逆である。このため、第3方向DR3の加速度が生じた場合にプローブ電極の対向面積の減少が生じるのは、検出部Z1ではなく、検出部Z2になる。また、第5方向DR5の加速度が生じた場合にプローブ電極の対向面積の減少が生じるのは、検出部Z2ではなく、検出部Z1になる。前述した通り、第1詳細例では、プローブ電極の設けられるエリアが、回転軸に近い側と遠い側に2列に積み重ねられた構成であるため、対向面積の変化はより大きく検出されることになる。また、可動電極24及び可動電極64の長手方向となる第1方向DR1あるいは第4方向DR4の加速度が生じた場合に可動体が第1方向DR1あるいは第4方向DR4への変位した場合、検出部Z1、Z2のそれぞれにおいて対向面積の変化を相殺できるため検出精度を向上させることができる。2列の他、偶数列であれば同様の効果が得られる。
【0060】
以下において、第1詳細例に代表される、回転軸の両側にプローブ電極のエリアを2列以上設けた構成の作用効果について検討する。図1に示す構成例は、支持梁42を含む回転軸の両側にプローブ電極のエリアがそれぞれ1列ずつ設けられた最も基本的な構成例である。しかし、本実施形態の実際の適用例としては、回転軸の両側にプローブ電極のエリアをそれぞれ2列以上設けた第1詳細例のような構成を採用する場合が多い。
【0061】
図9は、第1詳細例に代表される構成例を一般化し、回転軸の両側にプローブ電極のエリアをそれぞれ2列以上設けた場合の可動体MBの平面視での形状を示す概略図である。図9のA4に示す構成は、図5のA1に示す構成に対応しており、支持梁42を含む回転軸の両側で可動体MBの形状が対称になっている。この場合、回転軸の第1方向DR1側にある第1基部23A、第3基部23B、・・・は、それぞれ回転軸からΔL1、2×ΔL1、・・・、N×ΔL1の距離だけ離れた位置に設けられている。ここで、Nは3以上の自然数とする。また、回転軸の第4方向DR4側にある第2基部63A、第4基部63B、・・・、も同様に回転軸からΔL1、2×ΔL1、・・・、N×ΔL1の距離だけ離れた位置に設けられている。このため、図9のA4に示す構成では、可動体MBの回転軸の第1方向DR1側の部分の慣性モーメントIZ1と、回転軸の第4方向DR4側の慣性モーメントIZ2は式(2)のように表される。
【数2】
【0062】
従って、図9のA4に示す構成では、可動体MBの正味の慣性モーメントIは、IZ1とIZ2が相殺されてゼロになり、加速度が生じても、可動体MB全体として回転軸の回りで揺動することはできない。なお、図5で前述したように、第1可動電極部20A、第3可動電極部20B、・・・及び第1連結部30と、第2可動電極部60A、第4可動電極部60B、・・・及び第2連結部70は、回転軸に対称に設けられており、式(2)では、これらの影響は考えなくてよいものとする。
【0063】
一方、図9のB2に示す構成は、図5のB1に示す構成に対応しており、支持梁42を含む回転軸の両側で可動体の形状が非対称になっている。図9に示すように、回転軸の第4方向DR4側では、A4に示す構成とB2に示す構成とで、第2基部63A、第4基部63B、・・・は、回転軸から同じ距離だけ離れた位置に設けられている。しかし、回転軸の第1方向DR1側では、矢印で示すように、B2に示す構成での第1基部23A、第3基部23B、・・・は、A4に示す構成での第1基部23A等よりも第4方向DR4側にΔL1/2だけずれた位置に設けられている。まず、可動体MBの回転軸の第1方向DR1側の部分の慣性モーメントIZ1は、式(3)のように表される。
【数3】
【0064】
そして、回転軸の第4方向DR4側での可動体MBの慣性モーメントIZ2は、図9のA4とB2とで、第2基部63Aの配置位置は変わらないため、式(2)の右辺と同じになる。従って、図9のB2に示す構成における可動体MB全体での正味の慣性モーメントIは、各基部の数にあたるNが回転軸の両側で等しい場合には、式(4)のように求められる。ここで、回転軸の第4方向DR4側での可動体MBの慣性モーメントIZ2は、回転軸の第1方向DR1側での可動体MBの慣性モーメントIZ1よりも大きくなっている。
【数4】
【0065】
また、回転軸の第1方向DR1側での基部の数にあたるNが、回転軸の第4方向DR4側での基部の数よりも1つ多い場合には、式(5)のように求められる。
【数5】
【0066】
式(4)又は式(5)より、図9のB2に示す構成においては、第1基部23A、第2基部63A、第3基部23B、第4基部63B、・・・の質量M1や、これらの間隔ΔL1が同一であれば、Nを大きくするほど、可動体MBの正味の慣性モーメントIの絶対値を大きくでき、可動体MBの回転感度を向上できる。即ち、支持梁42を含む回転軸の両側において、プローブ電極のエリアをより多く重ねた構成にすると、物理量センサー1の物理量の検出感度を向上できる。
【0067】
なお、第1詳細例について補足すると、可動体MBの長手方向を、支持梁42を含む回転軸の方向と一致させることで、基板2の面内回転の首振りモードの共振周波数を検出モードの共振周波数から遠ざけることができ、高精度な物理量の検出が可能となる。即ち、プローブ電極の長手方向の不要な他軸感度を改善できる。また、支持梁42の長手方向と各プローブ電極の長手方向は、直交関係にあり、各プローブ電極が長くならないことから耐衝撃性、プローブ電極同士の貼り付きを改善できる。また、各検出部Z1、Z2は回転軸に対称に配置されているため、正負の検出特性の線形性が優れる。そして、回転軸の両側に配置された検出部Z1、Z2において、プローブ電極対向領域の中心値と回転軸からの距離が等しいものを比較したときに、各領域での可動側のプローブ電極の根元から先端部の方向が一致している。そのため可動体MBの形状を、支持梁42を含む回転軸に対して、非対称にできるため、トルクを効率よく稼ぐことで、物理量の検出感度を高感度化でき、小型化にも繋がる。また、可動体MBの各構成部の第3方向DR3の厚みは任意に設計できるが、各連結部30、70、各可動電極部20A、20B、60A、60B、支持梁42を全て同一の厚みにすると、プローブ電極の櫛歯長方向の他軸感度を改善できる。
【0068】
本実施形態では、基板2に設けられた第3固定電極部10B及び第4固定電極部50Bと、を含む。可動体MBは、第3基部23Bと第3可動電極部20Bと第4基部63Bと第4可動電極部60Bと、を有する。第3基部23Bは、第1連結部30に接続され、第2方向DR2に沿って設けられる。第3可動電極部20Bの第3可動電極22は、第3基部23Bから第4方向DR4に延び、第3固定電極部10Bの第3固定電極12と第2方向DR2において対向する。第4基部63Bは、前記第2連結部70に接続され、前記第2方向DR2に沿って設けられる。第4可動電極部60Bの第4可動電極62は、第2基部63Aから第4方向DR4に延び、第4固定電極部50Bの第4固定電極52と第2方向DR2において対向する。
【0069】
このようにすれば、加速度に伴う可動体MBの揺動運動に対して、回転軸の第1方向DR1側では、第1固定電極11と第1可動電極21の対向面積だけでなく、第3固定電極12と第3可動電極22の対向面積も変化する。また、回転軸の第4方向DR4側では、第2固定電極51と第2可動電極61の対向面積だけでなく、第4固定電極52と第4可動電極62の対向面積も変化する。従って、より多くのプローブ電極を用いて、物理量の変化の検出を行うことが可能になり、物理量センサー1の物理量検出感度を向上できる。また第3基部23Bを、第1基部23Aや第2基部63Aよりも回転軸から離れた位置に設けることができ、可動体MBの慣性モーメントIをより多く稼ぐことができるようになり、物理量センサー1の高感度化を実現できる。
【0070】
また本実施形態では、第3可動電極部20Bと第4可動電極部60Bは、支持梁42に対して第1方向DR1において対称な位置に設けられる。
【0071】
このようにすれば、支持梁42を含む回転軸の第4方向DR4側に設けられる第2基部63Aを、回転軸に対して、第1基部23Aや第3基部23Bと非対称に配置できるようになる。このため、可動体MB全体の慣性モーメントIを、より少ないスペースで効率的に稼ぐことができる。従って、小型かつ高検出感度な物理量センサー1を実現できる。また、第3可動電極部20Bと第4可動電極部60Bについても回転軸に対して対称に配置されるようになるため、正負の検出特性の線形性に優れた物理量センサー1を実現できる。
【0072】
また本実施形態では、第1可動電極部20Aの第1可動電極21の第3方向DR3での厚みは、第1固定電極部10Aの第1固定電極11の第3方向DR3での厚みと異なり、第2可動電極部60Aの第2可動電極61の第3方向DR3での厚みは、第2固定電極部50Aの第2固定電極51の第3方向DR3での厚みと異なる。
【0073】
このようにすれば、第3方向及び第5方向の両方の物理量の変化を検出できる。また、断面視において、第1可動電極部20Aの第1可動電極21と第1固定電極部10Aの第1固定電極11を、いずれか一方の全体が他の一部と重なるように配置することができる。また、第2可動電極部60Aの第2可動電極61と第2固定電極部50Aの第2固定電極51についても、いずれか一方の全体が他の一部と重なるように配置することができる。
【0074】
また図1に示す構成例において、第1可動電極部20Aの第1可動電極21の第3方向DR3での厚みは、第1固定電極部10Aの第1固定電極11の第3方向DR3での厚みより大きく、第2可動電極部60Aの第2可動電極61の第3方向DR3での厚みは、第2固定電極部50Aの第2固定電極51の第3方向DR3での厚みより大きい。
【0075】
このようにすれば、図1に示す構成例において、断面視で第1可動電極21と第1固定電極11の裏面が面一になるように配置することで、第3方向DR3の加速度が生じた場合、第1可動電極21は第3方向DR3に変位するため、第1可動電極21と第1固定電極11の対向面積は減少する。また第5方向DR5の加速度が生じた場合、第1可動電極21は第5方向DR5に変位するため、第1可動電極21と第1固定電極11の対向面積は維持される。第2可動電極61と第2固定電極51については、裏面が面一になるように配置することで、第3方向DR3の加速度が生じた場合、第2可動電極61は第5方向DR5に変位するため、第2可動電極61と第2固定電極51の対向面積は維持される。また第5方向DR5の加速度が生じた場合、第2可動電極61は第3方向DR3に変位するため、第2可動電極61と第2固定電極51の対向面積は減少する。従って、第3方向DR3と第5方向DR5のいずれの方向の物理量も検出できる。
【0076】
図10は、第1詳細例の変形例を示す平面図である。図10の変形例は、第1詳細例とプローブ電極の形状が異なっている。図10の変形例では、図8に示す第1詳細例のプローブ電極の形状と比較して、検出部Z1において、第1可動電極21、第3可動電極22の第3方向DR3での厚みが、第1固定電極11、第3固定電極12の第3方向DR3での厚みよりも薄くなっている。また、検出部Z2においても、第2可動電極61、第4可動電極62の第3方向DR3での厚みが、第2固定電極51、第4固定電極52の第3方向DR3での厚みよりも薄くなっている。
【0077】
図11は、図10に示す変形例を採用した際の検出部Z1、Z2の動作を説明する図である。図10に示す変形例において、第3可動電極22、第3基部23B、及び第4可動電極62が設けられているため、可動体MBにおける検出部Z1の質量と検出部Z2の質量の関係が図1に示す構成例と逆になっている。したがって、図10に示す変形例における検出部Z1、Z2の動作は、図4で説明した動作原理とは、可動電極24及び可動電極64の動く向きが逆である。そして、図11に示すように、第3方向DR3の加速度が生じた場合にプローブ電極の対向面積の減少が生じるのは、検出部Z1になる。また、第5方向DR5の加速度が生じた場合にプローブ電極の対向面積の減少が生じるのは、検出部Z2になる。
【0078】
図12は、第2詳細例を示す平面図である。図7に示す第1詳細例と比較すると、支持梁42を含む回転軸の第1方向DR1側では、第1固定電極部10A及び第3固定電極部10Bが分断されている。そして、第3基部23Bの一部に突起部cが設けられており、突起部cは分断されたスペースに延在している。また、回転軸の第4方向DR4側では、第2固定電極部50A、第4固定電極部50B及び第2基部63Aが分断されている。図13は、図12に示す変形例の斜視図である。
【0079】
図12図13に示すような変形例を採用した場合、突起部cは第3基部23Bの質量を大きくするため、図9で説明した正味の慣性モーメントIを増やし、物理量センサー1の物理量の検出感度を向上させる効果を持つ。また、回転軸の第4方向DR4側では、第2固定電極部50A等が分断されているため、電極配線を当該分断されたスペースに設けることができ、SOIプロセスを採用した際のデバイス設計を容易化できる。この点、第2基部63A、第4基部63B等の分断されていない第1詳細例は、可動体MBの剛性が高く、変形しにくくなる。従って、耐衝撃性に優れ、正確な物理量検出ができるというメリットがある。
【0080】
図14は、本実施形態の第3詳細例の平面図である。第3詳細例は、図12に示す第1詳細例の変形例とは、プローブ電極の構成や検出部の構成が異なっている。
【0081】
第3詳細例では、第1固定電極部10Aは、第1固定電極群10A1と第2固定電極群10A2を有し、第1可動電極部20Aは、第1可動電極群20A1と第2可動電極群20A2を有する。第2固定電極部50Aは、第3固定電極群50A1と第4固定電極群50A2を有し、第2可動電極部60Aは、第3可動電極群60A1と第4可動電極群60A2を有する。また、第3固定電極部10Bは、第5固定電極群10B1と第6固定電極群10B2を有し、第3可動電極部20Bは、第5可動電極群20B1と第6可動電極群20B2を有する。第4固定電極部50Bは、第7固定電極群50B1と第8固定電極群50B2を有し、第4可動電極部60Bは、第7可動電極群60B1と第8可動電極群60B2を有する。
【0082】
そして、第3詳細例では、支持梁42の第1方向DR1側に検出部Z1と検出部Z2が、第2方向DR2に沿って並んで設けられており、支持梁42の第4方向DR4側に検出部Z1’と検出部Z2’が、第2方向DR2に沿って並んで設けられている。また、検出部Z1と検出部Z2’は、支持梁42を含む回転軸に対して対称な位置に設けられており、検出部Z2と検出部Z1’も、支持梁42を含む回転軸に対して対称な位置に設けられている。
【0083】
図14に示すように、支持梁42の第1方向DR1側にある検出部Z1では、第1固定電極群10A1と第1可動電極群20A1が第2方向DR2で対向するように設けられており、第5固定電極群10B1と第5可動電極群20B1が第2方向DR2で対向するように設けられている。また、検出部Z2では、第2固定電極群10A2と第2可動電極群20A2が第2方向DR2で対向するように設けられており、第6固定電極群10B2と第6可動電極群20B2が第2方向DR2で対向するように設けられている。
【0084】
そして、支持梁42の第4方向DR4側にある検出部Z2’では、第3固定電極群50A1と第3可動電極群60A1が第2方向DR2で対向するように設けられており、第7固定電極群50B1と第7可動電極群60B1が第2方向DR2で対向するように設けられている。また、検出部Z1’では、第4固定電極群50A2と第4可動電極群60A2が第2方向DR2で対向するように設けられており、第8固定電極群50B2と第8可動電極群60B2が第2方向DR2で対向するように設けられている。
【0085】
図15は、第3詳細例における各検出部でのプローブ電極の動作を説明する図である。図15の上段は、回転軸の第1方向DR1側に設けられる検出部Z1、Z2におけるプローブ電極の動作を示し、図15の下段は、回転軸の第4方向DR4側に設けられる検出部Z1’、Z2’におけるプローブ電極の動作を示している。図15の左列に示すように、静止状態において、回転軸の第1方向DR1側にある検出部Z1、Z2で、固定側のプローブ電極の第3方向DR3での厚みは異なっており、検出部Z2の第2固定電極群10A2、第6固定電極群10B2の方が厚くなっている。そして、可動側のプローブ電極の第3方向DR3での厚みも、検出部Z1、Z2で異なっており、検出部Z1の第1可動電極群20A1、第5可動電極群20B1の方が厚くなっている。回転軸の第4方向DR4側にある検出部Z1’、Z2’では、検出部Z2’の第3固定電極群50A1、第7固定電極群50B1の方が薄くなっている。そして、可動側のプローブ電極の第3方向DR3での厚みも、検出部Z1’、Z2’で異なっており、検出部Z2’の第3可動電極群60A1、第7可動電極群60B1の方が厚くなっている。
【0086】
図15の中央列と右列には、第3詳細例を採用した場合において、加速度が生じた際のプローブ電極の動作が示されている。基本的には、図4図11で説明した動作と同様の動作になるが、第3詳細例では、回転軸の第1方向DR1側と第4方向DR4側のいずれかにおいて、加速度に伴うプローブ電極の対向面積の変化が生じるようになっている。
【0087】
即ち、本実施形態では、第1固定電極部10Aは、第2方向DR2に沿って並んで配置される第1固定電極群10A1と第2固定電極群10A2と、を有する。第1可動電極部20Aは、第1固定電極群10A1と対向するように設けられる第1可動電極群20A1と、第2固定電極群10A2と対向するように設けられる第2可動電極群20A2と、を有する。第2固定電極部50Aは、第2方向DR2に沿って並んで配置される第3固定電極群50A1と第4固定電極群50A2と、を有する。第2可動電極部60Aは、第3固定電極群50A1と対向するように設けられる第3可動電極群60A1と、第4固定電極群50A2と対向するように設けられる第4可動電極群60A2と、を有する。第1可動電極群20A1の第3方向DR3の長さは、第2可動電極群20A2の第3方向DR3の長さと異なり、第3可動電極群60A1の第3方向DR3の長さは、第4可動電極群60A2の第3方向DR3の長さと異なる。
【0088】
このようにすれば、各検出部を、支持梁42を含む回転軸の両側に分散させて設けることができ、検出部の多様な配置バリエーションを実現できる。なお、可動体MBの慣性モーメントIの対称性の観点から、各検出部の可動側のプローブ電極の厚みは、図14にDで示す一点鎖線に対して対称にすることが望ましい。
【0089】
図16は、本実施形態の第4詳細例におけるプローブ電極の構成を示す斜視図である。第4詳細例は、図7に示す第1詳細例とプローブ電極の形状を変更した構成例であり、その他の構成部は第1詳細例と同様の構成になっている。
【0090】
第4詳細例は、図16に示すようにプローブ電極の形状が両側オフセット形状になっている。図16の上図に示すように、検出部Z1の表面側、即ち第3方向DR3側では、第1可動電極21及び第3可動電極22は、第1固定電極11及び第3固定電極12よりも第3方向DR3側に突き出ており、面一になっていない。また検出部Z1の裏面、即ち第5方向DR5側では、第1固定電極11及び第3固定電極12は、第1可動電極21及び第3可動電極22よりも第5方向DR5側に突き出ており、面一になっていない。このように第1固定電極11及び第3固定電極12と、第1可動電極21及び第3可動電極22は、第3方向DR3での厚みは等しくなっているが、第2方向DR2での断面視で、互いに一部が重なり合うように設けられており、検出部Z1の表裏面で両側オフセット形状ができている。なお、検出部Z1の各プローブ電極の第3方向DR3での厚みは異なっていてもよい。
【0091】
また、図16の下図に示すように、検出部Z2の表面では、第2固定電極51及び第4固定電極52は、第2可動電極61及び第4可動電極62よりも第5方向DR5側に凹んでおり、面一になっていない。また検出部Z2の裏面では、第2可動電極61及び第4可動電極62は、第2固定電極51及び第4固定電極52よりも第3方向DR3側に凹んでおり、面一になっていない。このように検出部Z2の各プローブ電極の第3方向DR3での厚みは等しくなっているが、断面視において、一部が重なり合うように設けられており、検出部Z2の表裏面で両側オフセット形状ができている。なお、検出部Z2の各プローブ電極の第3方向DR3での厚みは異なっていてもよい。
【0092】
図17は、第4詳細例を採用した際の検出部Z1、Z2の動作を説明する図である。第4詳細例においても、基本的な動作は図4の場合と同様である。しかし、第4詳細例では、プローブ電極が両側オフセット形状になっているため、ある方向の加速度に対して、検出部Z1、Z2の両方で対向面積の変化が検出される。例えば、図17の中列に示す第3方向DR3の加速度が生じた場合、検出部Z1では、可動電極24が第3方向DR3と反対方向側の慣性力を受けて、第5方向DR5側に変位する。このため、固定電極14と可動電極24の対向面積は増加する。また、これに伴って、検出部Z2では、可動電極64が第3方向DR3側に変位し、固定電極54と可動電極64の対向面積は減少する。
【0093】
第5方向DR5の加速度が生じた場合には、図17の右列に示すように、検出部Z1では、可動電極24が第3方向DR3の慣性力を受けて、第3方向DR3側に変位する。このため、固定電極14と可動電極24の対向面積は減少する。また、これに伴って、検出部Z2の可動電極64は、第5方向DR5側に変位し、固定電極54と可動電極64の対向面積は増加する。
【0094】
即ち、本実施形態では、静止状態において、第1固定電極部10Aの第1固定電極11の第3方向DR3における端部の位置は、第1可動電極部20Aの第1可動電極21の第3方向DR3における端部と異なる。第1固定電極部10Aの第1固定電極11の第3方向DR3の反対方向である第5方向DR5における端部の位置は、第1可動電極部20Aの第1可動電極21の第5方向DR5における端部と異なる。第2固定電極部50Aの第2固定電極51の第3方向DR3における端部の位置は、第2可動電極部60Aの第2可動電極61の第3方向DR3における端部と異なる。第2固定電極部50Aの第2固定電極51の第5方向DR5における端部の位置は、第2可動電極部60Aの第2可動電極61の第5方向DR5における端部と異なる。
【0095】
このようにすれば、第3方向DR3或いは、第5方向DR5の加速度に対して、いずれの検出部においても対向するプローブ電極間の対向面積の変化が検出される。従って、図1の構成例や第1詳細例等と比較して物理量の検出感度を2倍に高感度化できる。
【0096】
なお、図16に示す第4詳細例で、固定電極14と可動電極24の上下関係を逆にして、固定電極54と可動電極64の上下関係を逆にしてもよい。この場合も、図18に示すように、第3方向DR3或いは第5方向DR5の加速度に対して、いずれの検出部でも対向面積の変化が検出される。図17に示す場合との違いは、対向面積の増加、減少が、逆になる点である。
【0097】
図19は、本実施形態の第1変形例の平面図である。第1変形例は、図7に示す第1詳細例において、可動体MBのシーソー運動におけるアンカー部にあたる固定部40を外側に配置した例である。外側アンカー構造の第1変形例は、高感度化を維持しつつ、配線の引き回しが容易な点で望ましい。
【0098】
図20は、本実施形態の第2変形例の平面図である。第2変形例は、図12で説明した第1詳細例の変形例と基本的には同じ構造であるが、固定部40と、第1固定電極部10A及び第3固定電極部10Bを基板2に固定する第1固定電極固定部3と、第2固定電極部50A及び第4固定電極部50Bを基板2に固定する第2固定電極固定部4、5と、を基板2の中央に纏めて配置した構成である。
【0099】
即ち、本実施形態では、第1固定電極固定部3と第1固定電極基部13Aと第2固定電極固定部4、5と第2固定電極基部53Aと、を含む。第1固定電極固定部3は、第1固定電極部10Aを基板2に固定する。第1固定電極基部13Aは、第1固定電極部10Aに設けられ、第1固定電極が延出する。第1固定電極基部13Aは、第1固定電極部10Aから第4方向DR4に延在して第1固定電極固定部3に固定される。第2固定電極固定部4、5は、第2固定電極部50Aを基板2に固定する。第2固定電極基部53Aは、第2固定電極部50Aに設けられ、第2固定電極が延出する。第2固定電極基部53Aは、第2固定電極部50Aから第1方向DR1に延在して第2固定電極固定部4、5に固定される。第1固定電極固定部3は、支持梁42の第1方向DR1において、第1固定電極部10Aよりも固定部40に近い位置に設けられ、第2固定電極固定部4、5は、支持梁42の第4方向DR4において、第2固定電極部50Aよりも固定部40に近い位置に設けられる。このため、基板2に反りが発生した場合でも、その影響を受け難くなる。従って、第2変形例によれば、物理量センサー1の外部応力や熱等に起因した出力変動を抑制でき、高精度な物理量の検出が可能になる。
【0100】
また、可動体MBと、各固定電極部10A、10B、50A及び50Bは、基板2の中央の近い位置に設けることで、基板2の反りが発生した場合に、その影響は均一に現れることになる。このため、基板2に反りが発生した場合でも、その影響を受け難くなる。従って、第2変形例によれば、物理量センサー1の外部応力や熱等に起因した出力変動を抑制でき、高精度な物理量の検出が可能になる。なお、図20において、第1固定電極固定部3は左右に分かれた各固定電極部10A、10Bを根元で1つに結合しているが、左右の構成部ごとに分割して設けてもよい。また、固定部4と固定部5は、それぞれ独立した固定部として設けられているが、結合させて1つの固定部にしてもよい。
【0101】
図21は本実施形態の第3変形例の平面図である。第3変形例は、図9において説明した、支持梁42を含む回転軸の両側にプローブ電極の対向するエリアを複数設けた構成例で、回転軸の両側に当該エリアを4列設けた構成例である。第3変形例では、例えば回転軸の第1方向DR1側では、第1基部23A、第3基部23B、第5基部23Cが設けられており、これらの基部の両側に各プローブ電極が設けられている。同一素子サイズのもと、当該エリアの数を多くすると、各プローブ電極の第1方向に沿う長さを短くできるため、物理量センサー1の耐衝撃性を向上できる。なお、第3変形例は、図22のような構成にすることもできる。図22は、図21と比較して、プローブ電極の対向するエリアが3列に減っている。また、各プローブ電極の延出する方向が図21と逆方向になっている。例えば、図21に示す第3変形例では、第1可動電極21は第1方向DR1に延出しているが、図22に示す構成例では、第1可動電極21は第4方向DR4に延出している。このように、第3変形例において、プローブ電極の対向するエリアを何列設けるか、或いは各プローブ電極の延出する向きをいずれの方向にするかについてはバリエーションがある。
【0102】
図23は、本実施形態の第4変形例の平面図である。第4変形例は、可動体MBの一部の溝部RPが設けられている。溝部RPは、可動体MBの第2連結部70の第3方向側の表面に設けられており、一部が凹んだ形状になっている。このように、可動体MBのうち、支持梁42を含む回転軸から第4方向DR4側に溝部RPを設けることで、可動体MBの回転軸から第4方向DR4側の慣性モーメントIZ2を減らすことができる。図6図9で説明したように、本実施形態では、可動体MBの第4方向DR4側の慣性モーメントIZ2が、第1方向DR1側の慣性モーメントIZ1よりも少なくなることで、可動体MB全体としての正味の慣性モーメントを生じさせる構成になっている。従って、第4変形例により、溝部RPを設けることで、慣性モーメントIZ2を減らすことができ、可動体MB全体の正味の慣性モーメントを増やすことができる。よって、物理量センサー1の物理量の検出感度を向上させることができる。なお、溝部RPの形状については、第2連結部70のうち、支持梁42を含む回転軸から遠い部分に設け、溝部RPを深くすることで、慣性モーメントIZ2の低減効果を大きくすることができる。
【0103】
また、第4変形例における溝部RP形状のバリエーションとして、図24に示すような構成も考えられる。即ち、溝部RPを第2連結部70だけでなく第2基部63Aに設けることもできる。このようにすれば、可動体MBの回転軸から第4方向DR4側の慣性モーメントIZ2を、図23に示す構成に比べて更に減らすことができ、物理量センサー1の物理量の検出感度を更に向上させることができる。
【0104】
即ち、本実施形態では、第2連結部70は、平面視において第3方向DR3にくぼむ溝部RPを有することを特徴とする物理量センサー。
【0105】
このようにすれば、第2連結部70の質量を減らすことができ、可動体MBのうち、回転軸から第4方向DR4側の慣性モーメントIZ2を減らすことができる。これにより、可動体MB全体としての正味の慣性モーメントIを増加させることができる。従って、第4変形例によれば、物理量センサー1の物理量の検出感度を向上させることができる。
【0106】
3.慣性計測装置
次に、本実施形態の慣性計測装置2000の一例について図25図26を用いて説明する。図25に示す慣性計測装置2000(IMU:Inertial Measurement Unit)は、自動車やロボットなどの運動体の姿勢や挙動などの慣性運動量を検出する装置である。慣性計測装置2000は、3軸に沿った方向の加速度ax、ay、azを検出する加速度センサーと、3軸回りの角速度ωx,ωy,ωzを検出する角速度センサーと、を備えた、いわゆる6軸モーションセンサーである。
【0107】
慣性計測装置2000は、平面形状が略正方形の直方体である。また正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に、マウント部としてのネジ穴2110が形成されている。この2ヶ所のネジ穴2110に2本のネジを通して、自動車などの被装着体の被装着面に慣性計測装置2000を固定することができる。なお、部品の選定や設計変更により、例えば、スマートフォンやデジタルカメラに搭載可能なサイズに小型化することも可能である。
【0108】
慣性計測装置2000は、アウターケース2100と、接合部材2200と、センサーモジュール2300を有し、アウターケース2100の内部に、接合部材2200を介在させて、センサーモジュール2300を挿入した構成となっている。センサーモジュール2300は、インナーケース2310と回路基板2320を有している。インナーケース2310には、回路基板2320との接触を防止するための凹部2311や、後述するコネクター2330を露出させるための開口2312が形成されている。そしてインナーケース2310の下面には、接着剤を介して回路基板2320が接合されている。
【0109】
図26に示すように、回路基板2320の上面には、コネクター2330、Z軸回りの角速度を検出する角速度センサー2340z、X軸、Y軸及びZ軸の各軸方向の加速度を検出する加速度センサーユニット2350などが実装されている。また回路基板2320の側面には、X軸回りの角速度を検出する角速度センサー2340x及びY軸回りの角速度を検出する角速度センサー2340yが実装されている。
【0110】
加速度センサーユニット2350は、前述したZ軸方向の加速度を測定するための物理量センサー1を少なくとも含み、必要に応じて、一軸方向の加速度を検出したり、二軸方向や三軸方向の加速度を検出したりすることができる。なお角速度センサー2340x、2340y、2340zとしては、特に限定されないが、例えばコリオリの力を利用した振動ジャイロセンサーを用いることができる。
【0111】
また回路基板2320の下面には、制御IC2360が実装されている。物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部としての制御IC2360は、例えばMCU(Micro Controller Unit)であり、不揮発性メモリーを含む記憶部や、A/Dコンバーターなどを内蔵しており、慣性計測装置2000の各部を制御する。なお、回路基板2320には、その他にも複数の電子部品が実装されている。
【0112】
以上のように本実施形態の慣性計測装置2000は、物理量センサー1と物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部としての制御IC2360を含む。この慣性計測装置2000によれば、物理量センサー1を含む加速度センサーユニット2350を用いているため、物理量センサー1の効果を享受でき、高精度化等を実現できる慣性計測装置2000を提供できる。
【0113】
なお慣性計測装置2000は図25図26の構成には限定されない。例えば慣性計測装置2000に、角速度センサー2340x、2340y、2340zを設けずに、慣性センサーとして物理量センサー1だけを設ける構成としてもよい。この場合には、例えば物理量センサー1と、制御部を実現する制御IC2360を、収容容器であるパッケージに収容することで慣性計測装置2000を実現すればよい。
【0114】
以上に説明したように本実施形態の物理量センサーは、互いに直交する3つの方向を第1方向、第2方向及び第3方向としたとき、第3方向での物理量を検出する物理量センサーである。本実施形態の物理量センサーは、固定部と支持梁と可動体と第1固定電極部及び第2固定電極部と、を含む。固定部は、基板に固定される。支持梁は、固定部に一端が接続され、第2方向に沿って設けられる。可動体は、支持梁の他端に接続される。第1固定電極部及び第2固定電極部は、基板に設けられる。可動体は、第1連結部と第1基部と第1可動電極部と第2連結部と第2基部と第2可動電極部と、を有する。第1連結部は、支持梁の他端に接続され、支持梁から第1方向に延びる。第1基部は、第1連結部に接続され、第2方向に沿って設けられる。第1可動電極部の第1可動電極は、第1基部から第1方向に延び、第1固定電極部の第1固定電極と第2方向において対向する。第2連結部は、支持梁の他端に接続され、支持梁から第1方向の反対方向である第4方向に延びる。第2基部は、第2連結部に接続され、第2方向に沿って設けられる。第2可動電極部の第2可動電極は、第2基部から第1方向に延び、第2固定電極部の第2固定電極と第2方向において対向する。
【0115】
このようにすれば、支持梁を含む回転軸の両側に設けられる第1基部及び第1可動電極部と第2基部及び第2可動電極部を回転軸に対して非対称な位置に配置することができ、可動体全体の慣性モーメントを稼ぐことができる。従って、物理量センサーの物理量の検出感度を容易に向上できる。
【0116】
また本実施形態では、第1可動電極部と第2可動電極部は、支持梁に対して第1方向において対称な位置に設けられる。
【0117】
このようにすれば、各検出部は回転軸に対して対称に配置されているため、正負の検出特性の線形性に優れた物理量センサーを実現できる。
【0118】
また本実施形態では、本実施形態では、基板に設けられた第3固定電極部及び第4固定電極部と、を含む。可動体は、第3基部と第3可動電極部と第4基部と第4可動電極部と、を有する。第3基部は、第1連結部に接続され、第2方向に沿って設けられる。第3可動電極部の第3可動電極は、第3基部から第4方向に延び、第3固定電極部の第3固定電極と第2方向において対向する。第4基部は、前記第2連結部に接続され、前記第2方向に沿って設けられる。第4可動電極部の第4可動電極は、第4基部から第4方向に延び、第4固定電極部の第4固定電極と第2方向において対向する。
【0119】
このようにすれば、加速度に伴う可動体の揺動運動に対して、回転軸の第1方向側では、第1固定電極と第1可動電極の対向面積だけでなく、第3固定電極と第3可動電極の対向面積も変化する。また、回転軸の第4方向側では、第2固定電極と第2可動電極の対向面積だけでなく、第4固定電極と第4可動電極の対向面積も変化する。従って、より多くのプローブ電極を用いて物理量の変化の検出を行うことが可能になり、物理量センサーの物理量検出感度を向上できる。また第3基部を、第1基部や第2基部よりも回転軸から離れた位置に設けることができ、可動体の慣性モーメントをより多く稼ぐことができるようになり、物理量センサーの高感度化を実現できる。
【0120】
また本実施形態では、第3可動電極部と第4可動電極部は、支持梁に対して第1方向において対称な位置に設けられる。
【0121】
このようにすれば、支持梁を含む回転軸の第4方向側に設けられる第2基部を、回転軸に対して、第1基部や第3基部と非対称に配置できるようになる。このため、可動体全体の慣性モーメントを、より少ないスペースで効率的に稼ぐことができる。従って、小型かつ高検出感度な物理量センサーを実現できる。また、第3可動電極部と第4可動電極部についても回転軸に対して対称に配置されるようになるため、正負の検出特性の線形性に優れた物理量センサーを実現できる。
【0122】
また本実施形態では、第1可動電極部の第1可動電極の第3方向での厚みは、第1固定電極部の第1固定電極の第3方向での厚みと異なり、第2可動電極部の第2可動電極の第3方向での厚みは、第2固定電極部の第2固定電極の第3方向での厚みと異なる。
【0123】
このようにすれば、第3方向及び第5方向の両方の物理量の変化を検出できる。
【0124】
また本実施形態では、本実施形態では、第1可動電極部の第1可動電極の第3方向での厚みは、第1固定電極部の第1固定電極の第3方向での厚みより大きく、第2可動電極部の第2可動電極の第3方向での厚みは、第2固定電極部の第2固定電極の第3方向での厚みより大きい。
【0125】
このようにすれば、第3方向及び第5方向の両方の物理量の変化を検出できる。
【0126】
また、第1可動電極部の第3方向での厚みは、第1固定電極部の第3方向での厚みより小さくてもよいし、第2可動電極部の第3方向での厚みは、第2固定電極部の第3方向での厚みより小さくてもよい。
【0127】
このようにすれば、第3方向及び第5方向の両方の物理量の変化を検出できる。
【0128】
また本実施形態では、第1可動電極部と第1固定電極部の裏面の第3方向での位置が一致しており、第2可動電極部と第2固定電極部の裏面の第3方向での位置が一致している。
【0129】
このようにすれば、第1可動電極部、第1固定電極部、第2可動電極部及び第2固定電極部の各々を構成する電極材料の同一のプロセスで形成することで、プローブ電極の裏面側が面一になる構成を実現できる。そして、各電極をエッチング等の加工により形成することができるため、製造プロセスを容易化できる。
【0130】
また本実施形態では、第1固定電極部は、第2方向に沿って並んで配置される第1固定電極群と第2固定電極群と、を有する。第1可動電極部は、第1固定電極群と対向するように設けられる第1可動電極群と、第2固定電極群と対向するように設けられる第2可動電極群と、を有する。第2固定電極部は、第2方向に沿って並んで配置される第3固定電極群と第4固定電極群と、を有する。第2可動電極部は、第3固定電極群と対向するように設けられる第3可動電極群と、第4固定電極群と対向するように設けられる第4可動電極群と、を有する。第1可動電極群の第3方向の長さは、第2可動電極群の第3方向の長さと異なり、第3可動電極群の第3方向の長さは、第4可動電極群の第3方向の長さと異なる。
【0131】
このようにすれば、各検出部を、支持梁を含む回転軸の両側に分散させて設けることができ、検出部の多様な配置バリエーションを実現できる。
【0132】
即ち、本実施形態では、静止状態において、第1固定電極部の第1固定電極の第3方向における端部の位置は、第1可動電極部の第1可動電極の第3方向における端部と異なる。第1固定電極部の第1固定電極の第5方向における端部の位置は、第1可動電極部の第1可動電極の第5方向における端部と異なる。第2固定電極部の第2固定電極の第3方向における端部の位置は、第2可動電極部の第2可動電極の第3方向における端部と異なる。第2固定電極部の第2固定電極の第5方向における端部の位置は、第2可動電極部の第2可動電極の第5方向における端部と異なる。
【0133】
このようにすれば、第3方向、或いは第5方向の加速度に対して、いずれの検出部においても対向するプローブ電極間の対向面積の変化を検出できる。従って、片側オフセット形状のプローブ電極を採用した場合にと比較して、物理量の検出感度を高感度化できる。
【0134】
また本実施形態では、第2連結部は、平面視において第3方向にくぼむ溝部を有することを特徴とする物理量センサー。
【0135】
このようにすれば、第2連結部の質量を減らすことができ、可動体のうち、回転軸から第4方向側の慣性モーメントを減らすことができる。これにより、可動体全体としての正味の慣性モーメントを増加させることができる。従って、第4変形例によれば、物理量センサーの物理量の検出感度を向上させることができる。
【0136】
また本実施形態では、第1固定電極固定部と第1固定電極基部と第2固定電極固定部と第2固定電極基部と、を含む。第1固定電極固定部は、第1固定電極部を基板に固定する。第1固定電極基部は、第1固定電極固定部に接続され、第1固定電極が延出する。第2固定電極固定部は、第2固定電極部を基板に固定する。第2固定電極基部は、第2固定電極固定部に接続され、第2固定電極が延出する。第1固定電極固定部は、支持梁の第1方向において、第1固定電極部よりも固定部に近い位置に設けられ、第2固定電極固定部は、支持梁の第4方向において、第2固定電極部よりも固定部に近い位置に設けられる。
【0137】
このようにすれば、可動体と各固定電極部は、基板の中央の近い位置に設けられているため、基板の反りが発生した場合に、その影響は均一に現れることになる。このため、基板に反りが発生した場合でも、その影響を受け難くなる。従って、物理量センサーの外部応力や熱等に起因した出力変動を抑制でき、高精度な物理量の検出が可能になる。
【0138】
また本実施形態では、支持梁は、第2方向を回転軸として捻れる捻れバネである。
【0139】
このようにすれば、可動体は第2方向を回転軸として揺動運動をすることができる。
【0140】
また本実施形態は、物理量センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部と、を含む慣性計測装置に関係する。
【0141】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また物理量センサー、慣性計測装置の構成・動作等も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0142】
1…物理量センサー、2…基板、3…第1固定電極固定部、4…第2固定電極固定部、4…固定部、5…第2固定電極固定部、10A…第1固定電極部、10A1…第1固定電極群、10A2…第2固定電極群、10B…第3固定電極部、10B1…第5固定電極群、10B2…第6固定電極群、11…第1固定電極、12…第3固定電極、13A…第1固定電極基部、14…固定電極、20A…第1可動電極部、20A1…第1可動電極群、20A2…第2可動電極群、20B…第3可動電極部、20B1…第5可動電極群、20B2…第6可動電極群、21…第1可動電極、22…第3可動電極、23A…第1基部、23B…第3基部、23C…第5基部、24…可動電極、30…第1連結部、40…固定部、42…支持梁、50A…第2固定電極部、50A1…第3固定電極群、50A2…第4固定電極群、50B…第4固定電極部、50B1…第7固定電極群、50B2…第8固定電極群、51…第2固定電極、52…第4固定電極、53A…第2固定電極基部、54…固定電極、60A…第2可動電極部、60A1…第3可動電極群、60A2…第4可動電極群、60B…第4可動電極部、60B1…第7可動電極群、60B2…第8可動電極群、60D…第4可動電極部、61…第2可動電極、62…第4可動電極、63A…第2基部、63B…第4基部、64…可動電極、70…第2連結部、2000…慣性計測装置、2100…アウターケース、2110…ネジ穴、2200…接合部材、2300…センサーモジュール、2310…インナーケース、2311…凹部、2312…開口、2320…回路基板、2330…コネクター、2340x…角速度センサー、2340y…角速度センサー、2340z…角速度センサー、2350…加速度センサーユニット、DR1…第1方向、DR2…第2方向、DR3…第3方向、DR4…第4方向、DR5…第5方向、I…慣性モーメント、IC2360…制御、IZ1…慣性モーメント、IZ2…慣性モーメント、M1…質量、M2…質量、MB…可動体、MP…質量部、RP…溝部、Z1…検出部、Z1'…検出部、Z2…検出部、Z2'…検出部、a…距離、ax…加速度、ay…加速度、az…加速度、b…距離、c…突起部、m…質量、r…距離、ΔL2…距離、ωx…角速度
図1
図2
図3
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