(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156928
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】発光素子
(51)【国際特許分類】
H10K 50/852 20230101AFI20241029BHJP
H10K 50/125 20230101ALI20241029BHJP
H10K 50/81 20230101ALI20241029BHJP
H10K 50/82 20230101ALI20241029BHJP
H10K 59/38 20230101ALI20241029BHJP
H10K 102/20 20230101ALN20241029BHJP
【FI】
H10K50/852
H10K50/125
H10K50/81
H10K50/82
H10K59/38
H10K102:20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024130926
(22)【出願日】2024-08-07
(62)【分割の表示】P 2023100601の分割
【原出願日】2017-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2016096369
(32)【優先日】2016-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊毅
(72)【発明者】
【氏名】山岡 諒平
(57)【要約】
【課題】新規な発光素子を提供する。また、色純度良い赤色発光が得られ、発光効率の良
い発光素子を提供する。また、消費電力の小さいフルカラーの発光装置を提供する。
【解決手段】白色発光を呈する発光素子において、赤色発光の発光波長を従来の良く使わ
れる赤色発光の発光波長に比べて長波長である特定の範囲とし、さらに特定の波長範囲に
おける特定の透過率を有する光学素子を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射電極と、半透過・半反射電極と、の間にEL層を有する発光素子であって、
前記EL層は、白色発光を呈し、
前記反射電極と前記EL層との間に透明導電層を有し、
前記透明導電層と前記半透過・半反射電極との光学距離を、前記EL層から得られる赤色発光を相対的に強めるべく形成し、
前記発光素子の前記半透過・半反射電極側には、600nmの光の透過率が40%以下であり、かつ630nmの光の透過率が40%以上であるカラーフィルタを有し、
前記発光素子からは、半値幅が5nm以上120nm以下であり、かつ発光スペクトルのピーク値が620nm以上680nm以下である発光が得られる発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、発光素子、発光装置、電子機器、および照明装置に関する。但し、本
発明の一態様は、それらに限定されない。すなわち、本発明の一態様は、物、方法、製造
方法、または駆動方法に関する。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュ
ファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。また、具体的
には、半導体装置、表示装置、液晶表示装置などを一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
一対の電極間にEL層を挟んでなる発光素子(有機EL素子ともいう)は、薄型軽量、入
力信号に対する高速な応答性、低消費電力などの特性を有することから、これらを適用し
たディスプレイは、次世代のフラットパネルディスプレイとして注目されている。
【0003】
発光素子は、一対の電極間に電圧を印加することにより、各電極から注入された電子およ
びホールがEL層において再結合し、EL層に含まれる発光物質(有機化合物)が励起状
態となり、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。なお、励起状態の種類としては
、一重項励起状態(S*)と三重項励起状態(T*)とがあり、一重項励起状態からの発
光が蛍光、三重項励起状態からの発光が燐光と呼ばれている。また、発光素子におけるそ
れらの統計的な生成比率は、S*:T*=1:3であると考えられている。発光物質から
得られる発光スペクトルはその発光物質特有のものであり、異なる種類の有機化合物を発
光物質として用いることによって、様々な発光色の発光素子を得ることができる。
【0004】
例えば、ディスプレイなどの画像を表示する場合にフルカラー表示を実現するためには、
少なくとも赤、緑、青の3色の発光素子が必要となる。さらに、消費電力の少ない発光素
子が求められる。
【0005】
なお、フルカラー表示を実現する具体的な方式としては、各々の光を発する発光素子を別
々に形成するいわゆる塗り分け方式、白色発光素子に光学素子としてカラーフィルタを組
み合わせた白色カラーフィルタ方式、青色発光素子などの単色発光素子に色変換フィルタ
を組み合わせた色変換方式などがあり、それぞれメリット、デメリットを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フルカラー表示を実現する具体的な方式の一つである白色カラーフィルタ方式は、複数の
発光素子が一つのEL層を共有するため塗り分け方式と比較して高精細化が容易であり、
特にディスプレイ市場に適合した表示方式であるといえる。
【0008】
白色カラーフィルタ方式において、共通のEL層から得られる白色発光を基に赤色、緑色
、青色の発光素子が形成されるため、発光素子の色純度を高める上で各発光色のスペクト
ルをそれぞれ分離させることが望ましい。
【0009】
従って、本発明の一態様では、新規な発光素子を提供する。また、色純度良い赤色発光が
得られ、発光効率の良い発光素子を提供する。また、消費電力の小さいフルカラーの発光
装置を提供する。
【0010】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題
は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図
面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、一対の電極間にEL層を挟んでなる発光素子において、白色発光を呈
するEL層から、色純度の良い赤色発光を得ると共に発光効率の向上を図ることができる
。すなわち、白色発光を呈する発光素子において、赤色発光の発光波長は、従来の良く使
われる赤色発光の発光波長に比べて長波長である特定の範囲とし、さらにEL層から取り
出される赤色発光を外部に射出する際、従来の光学素子(カラーフィルタなど)が実現可
能とする波長範囲のうち特定の波長範囲における特定の透過率を有する光学素子を用いる
ことを特徴とする。
【0012】
なお、赤色発光としては、半値幅(または、半値全幅)が5nm以上120nm以下であ
り、かつ発光スペクトルのピーク値が620nm以上680nm以下である発光を用いる
のが好ましい。また、光学素子としては、600nmの光の透過率が40%以下であり、
かつ630nmの光の透過率が40%以上である光学素子(例えば、カラーフィルタなど
)を用いるのが好ましい。
【0013】
また、白色発光を呈するEL層から、赤色発光を効率良く取り出すためには、一対の電極
間の光学距離を調整した構成を組み合わせることが好ましい。
【0014】
従って、本発明の一態様は、反射電極と、半透過・半反射電極と、の間にEL層を有する
発光素子であって、EL層は、白色発光を呈し、反射電極とEL層との間に透明導電層を
有し、透明導電層と半透過・半反射電極との光学距離を、EL層から得られる赤色発光を
相対的に強めるべく形成し、発光素子の半透過・半反射電極側には、600nmの光の透
過率が40%以下であり、かつ630nmの光の透過率が40%以上である光学素子を有
し、発光素子からは、半値幅が5nm以上120nm以下であり、かつ発光スペクトルの
ピーク値が620nm以上680nm以下である発光が得られることを特徴とする発光素
子である。
【0015】
また、本発明の別の一態様は、反射電極と、半透過・半反射電極と、の間にEL層を有す
る発光素子であって、EL層は、白色発光を呈し、反射電極とEL層との間に透明導電層
を有し、EL層は、発光スペクトルのピーク値が600nm以上700nm以下である発
光物質を有し、透明導電層と半透過・半反射電極との光学距離を、EL層から得られる赤
色発光を相対的に強めるべく形成し、発光素子の半透過・半反射電極側には、光学素子を
有し、光学素子は、600nmの光の透過率が40%以下で、かつ630nmの光の透過
率が40%以上であり、発光素子からは、半値幅が5nm以上120nm以下であり、か
つ発光スペクトルのピーク値が620nm以上680nm以下である発光が得られること
を特徴とする発光素子である。
【0016】
また、本発明の別の一態様は、反射電極と、半透過・半反射電極と、の間にEL層を有す
る発光素子であって、EL層は、白色発光を呈し、反射電極とEL層との間に透明導電層
を有し、EL層は、第1の発光層、電荷発生層、および第2の発光層を有し、透明導電層
と半透過・半反射電極との光学距離を、EL層から得られる赤色発光を相対的に強めるべ
く1波長以上で形成し、発光素子の半透過・半反射電極側には、600nmの光の透過率
が40%以下であり、かつ630nmの光の透過率が40%以上である光学素子を有し、
発光素子からは、半値幅が5nm以上120nm以下であり、かつ発光スペクトルのピー
ク値が620nm以上680nm以下である発光が得られることを特徴とする発光素子で
ある。
【0017】
また、本発明の別の一態様は、反射電極と、半透過・半反射電極と、の間にEL層を有す
る発光素子であって、EL層は、白色発光を呈し、反射電極とEL層との間に透明導電層
を有し、EL層は、第1の発光層、電荷発生層、および第2の発光層を有し、第1の発光
層または第2の発光層は、発光スペクトルのピーク値が600nm以上700nm以下で
ある発光物質を有し、透明導電層と半透過・半反射電極との光学距離を、EL層から得ら
れる赤色発光を相対的に強めるべく1波長以上で形成し、発光素子の半透過・半反射電極
側には、光学素子を有し、光学素子は、600nmの光の透過率が40%以下で、かつ6
30nmの光の透過率が40%以上であり、発光素子からは、半値幅が5nm以上120
nm以下であり、かつ発光スペクトルのピーク値が620nm以上680nm以下である
発光が得られることを特徴とする発光素子である。
【0018】
なお、上記各構成における光学素子は、特定の波長の光を透過するフィルタのことを指し
、通常カラーフィルタや干渉フィルタと称されるものを用いることができる。
【0019】
また、上記各構成において、発光物質として燐光性有機金属錯体を用いることが好ましい
。
【0020】
また、本発明の別の一態様は、上記各構成に示す発光素子を有する発光装置である。すな
わち、上記構成に示す赤色発光素子に加えて、他の発光色を呈する発光素子を有するフル
カラーの発光装置を発明の範疇に含める。また、発光素子に加えて、筐体や接続端子など
を有する発光装置も発明の範疇に含める。
【0021】
なお、本発明の一態様は、発光素子を有する発光装置だけでなく、発光素子や発光装置を
適用した電子機器(具体的には、発光素子や発光装置と、接続端子、または操作キーとを
有する電子機器)および照明装置(具体的には、発光素子や発光装置と、筐体とを有する
照明装置)も範疇に含めるものである。従って、本明細書中における発光装置とは、画像
表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例
えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTCP(T
ape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TCPの先に
プリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On G
lass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含
むものとする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様である発光素子は、白色発光を呈するEL層から得られる赤色発光を特定
の波長範囲とすることにより赤色発光の色純度を高めることができる。なお、色純度を高
めるべく赤色発光を長波長化させる場合、光学素子(カラーフィルタ)との組み合わせに
おいては、光学素子を介することによる発光強度の低下が問題となるが、本発明の一態様
では、この特定の波長範囲を有する赤色発光に、特定の波長範囲で特定の透過率を有する
光学素子を組み合わせることにより、従来、色純度を高めた場合に生じる発光強度の減少
を抑えることができるので、色純度が良く発光効率の高い発光素子を提供することができ
る。また、この赤色発光素子を有することで、消費電力の小さいフルカラーの発光装置を
提供することができる。また、消費電力の小さい電子機器、または照明装置などを提供す
ることができる。
【0023】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は
、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面
、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一態様である発光素子について説明する図。
【
図13】タッチセンサのブロック図及びタイミングチャート。
【
図19】発光素子1乃至比較発光素子2の輝度-電流密度特性を示す図。
【
図20】発光素子1乃至比較発光素子2の輝度-電圧特性を示す図。
【
図21】発光素子1乃至比較発光素子2の電流効率-輝度特性を示す図。
【
図22】発光素子1乃至比較発光素子2の電流-電圧特性を示す図。
【
図23】発光素子1乃至比較発光素子2の発光スペクトルを示す図。
【
図24】カラーフィルタの波長と透過率の関係を示す図。
【
図25】カラーフィルタを有する発光素子1の発光スペクトルを示す図。
【
図26】カラーフィルタを有する比較発光素子2の発光スペクトルを示す図。
【
図27】[Ir(dmdppr-P)
2(dibm)]の溶液中のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の
説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を
様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容
に限定して解釈されるものではない。
【0026】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、
実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、
必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0027】
また、本明細書等において、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを
指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。
【0028】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光素子について
図1を用いて説明する。
【0029】
図1において、基板100上に発光素子105が形成され、基板107上に光学素子10
6が形成されている。なお、
図1に示す発光素子では、少なくとも基板107が透光性で
あればよく、基板100および基板107には、基板として用いることができるものを適
宜用いることができる。
【0030】
発光素子105は、第1の電極101と第2の電極102との間に白色発光を呈するEL
層を有するが、本実施の形態では、電荷発生層104を挟んで第1のEL層103aおよ
び第2のEL層103bが積層されている場合について示す。なお、第1の電極101を
陽極とし、第2の電極102を陰極とした場合、電荷発生層104は、第1のEL層10
3aに電子を注入し、第2のEL層103bに正孔を注入する機能を有する。また、電荷
発生層104は、透光性を有する。
【0031】
第1のEL層103aおよび第2のEL層103bから得られる発光は、発光素子105
6の第2の電極102側から射出されるため、少なくとも第2の電極102は透光性を有
する必要がある。本実施の形態では、第1の電極101を反射電極となるように形成し、
第2の電極102を半透過・半反射電極となるように形成する。
【0032】
発光素子105において、第1のEL層103aからの発光と、第2のEL層103bか
らの発光とを組み合わせることにより白色発光が得られるが、第1のEL層103aから
得られる発光色と第2のEL層103bから得られる発光色との組み合わせは、適宜調整
することができる。例えば、第1のEL層103aからは、青色発光が得られる構成とし
、第2のEL層103bからは、緑色発光と赤色発光とが得られる構成とすることができ
る。本実施の形態で示す発光素子105において、第1のEL層103aおよび第2のE
L層103bのいずれかは、赤色発光を示す発光物質(赤色発光物質)を含むこととする
。
【0033】
また、発光素子105と光学素子106は、空間を介して重なるように設けられており、
発光素子105からの光は光学素子106を介して基板107の外部へ射出される。なお
、光学素子106として、赤色発光のみを透過するカラーフィルタを用いる場合には、発
光素子105からの光は、赤色発光として外部に射出される。また、光学素子106とし
て、青色発光のみを透過するカラーフィルタを用いる場合には、発光素子105からの光
は、青色発光として外部に射出される。また、光学素子106として、緑色発光のみを透
過するカラーフィルタを用いる場合には、発光素子105からの光は、緑色発光として外
部に射出される。その他の発光色を得る場合も同様である。
【0034】
本実施の形態において、EL層から得られる白色発光に含まれる赤色発光は、半値幅が5
nm以上120nm以下であり、かつ620nm以上680nm以下に発光ピークを有す
る。さらに、光学素子106には、600nmの光の透過率が0%以上40%以下であり
、かつ630nmの光の透過率が40%以上100%以下であるカラーフィルタを用いる
。このようにすることで発光素子105の白色発光から、
図1の矢印で示すように赤色発
光が外部に射出される。このようにすることで、従来よりも色純度が良く、発光効率の高
い赤色の発光素子が得られる。
【0035】
また、第1のEL層103aまたは第2のEL層103bに用いる赤色発光物質としては
、発光スペクトルのピーク値が600nm以上700nm以下、好ましくは620nm以
上700nm以下である発光物質を用いるのが好ましい。このような発光物質としては、
公知の材料を用いることができる。例えばビス{4,6-ジメチル-2-[3-(3,5
-ジメチルフェニル)-5-フェニル-2-ピラジニル-κN]フェニル-κC}(2,
6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κ2O,O’)イリジウム(III)(略称
:[Ir(dmdppr-P)2(dibm)]、ビス{4,6-ジメチル-2-[5-
(4-シアノ-2,6-ジメチルフェニル)-3-(3,5-ジメチルフェニル)-2-
ピラジニル-κN]フェニル-κC}(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタ
ンジオナト-κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dmdppr-dm
CP)2(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス[2-メチル-3-フェニルキノ
キサリナト-N,C2’]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpq)2(acac
)])、(アセチルアセトナト)ビス(2,3-ジフェニルキノキサリナト-N,C2’
)イリジウム(III)(略称:[Ir(dpq)2(acac)])等を用いることが
できる
【0036】
なお、外部に射出される光を緑色発光や青色発光とする場合には、それぞれの発光色の発
光のみを透過させる光学素子を設ければよい。
【0037】
このような赤色発光素子、青色発光素子、緑色発光素子を組み合わせて用いることで色純
度が良く、消費電力の小さい発光装置を作製することができる。
【0038】
また、本実施の形態に示す構成には、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用
いることができる。
【0039】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光素子について説明する。
【0040】
≪発光素子の基本的な構造≫
まず、発光素子の基本的な構造について説明する。
図2(A)には、一対の電極間に発光
層を含むEL層を挟んでなる発光素子を示す。具体的には、第1の電極201と第2の電
極202との間にEL層203が挟まれた構造(シングル構造)を有する。
【0041】
また、
図2(B)には、一対の電極間に複数(
図2(B)では、2層)のEL層(203
a、203b)を有し、EL層の間に電荷発生層204を挟んでなる積層構造(タンデム
構造)の発光素子を示す。タンデム構造の発光素子は、低電圧駆動が可能で消費電力が低
い発光装置を実現することができる。
【0042】
電荷発生層204は、第1の電極201と第2の電極202に電圧を印加したときに、一
方のEL層(203aまたは203b)に電子を注入し、他方のEL層(203bまたは
203a)に正孔を注入する機能を有する。従って、
図2(B)において、第1の電極2
01に第2の電極202よりも電位が高くなるように電圧を印加すると、電荷発生層20
4からEL層203aに電子が注入され、EL層203bに正孔が注入されることとなる
。
【0043】
なお、電荷発生層204は、光の取り出し効率の点から、可視光に対して透光性を有する
(具体的には、電荷発生層204に対する可視光の透過率が、40%以上)ことが好まし
い。また、電荷発生層204は、第1の電極201や第2の電極202よりも低い導電率
であっても機能する。
【0044】
また、
図2(C)には、本発明の一態様である発光素子のEL層203の積層構造を示す
。但し、この場合、第1の電極201は陽極として機能するものとする。EL層203は
、第1の電極201上に、正孔(ホール)注入層211、正孔(ホール)輸送層212、
発光層213、電子輸送層214、電子注入層215が順次積層された構造を有する。な
お、
図2(B)に示すタンデム構造のように複数のEL層を有する場合であっても、各E
L層が、陽極側から上記のように順次積層される構造とする。また、第1の電極201が
陰極で、第2の電極202が陽極の場合は、積層順は逆になる。
【0045】
EL層(203、203a、203b)に含まれる発光層213は、それぞれ発光物質や
複数の物質を適宜組み合わせて有しており、所望の発光色を呈する蛍光発光や燐光発光が
得られる構成とすることができる。また、発光層213を発光色の異なる積層構造として
もよい。なお、この場合、積層された各発光層に用いる発光物質やその他の物質は、それ
ぞれ異なる材料を用いればよい。また、
図2(B)に示す複数のEL層(203a、20
3b)から、それぞれ異なる発光色が得られる構成としても良い。この場合も各発光層に
用いる発光物質やその他の物質を異なる材料とすればよい。
【0046】
また、本発明の一態様である発光素子において、例えば、
図2(C)に示す第1の電極2
01を反射電極とし、第2の電極202を半透過・半反射電極とし、微小光共振器(マイ
クロキャビティ)構造とすることにより、EL層203に含まれる発光層213から得ら
れる発光を両電極間で共振させ、第2の電極202から得られる発光を強めることができ
る。
【0047】
なお、発光素子の第1の電極201が、反射性を有する導電性材料と透光性を有する導電
性材料(透明導電膜)との積層構造からなる反射電極である場合、透明導電膜の膜厚を制
御することにより光学調整を行うことができる。具体的には、発光層213から得られる
光の波長λに対して、第1の電極201と、第2の電極202との電極間距離がmλ/2
(ただし、mは自然数)近傍となるように調整するのが好ましい。
【0048】
また、発光層213から得られる所望の光(波長:λ)を増幅させるために、第1の電極
201から発光層213の所望の光が得られる領域(発光領域)までの光学距離と、第2
の電極202から発光層213の所望の光が得られる領域(発光領域)までの光学距離と
、をそれぞれ(2m’+1)λ/4(ただし、m’は自然数)近傍となるように調節する
のが好ましい。なお、ここでいう発光領域とは、発光層213における正孔(ホール)と
電子との再結合領域を示す。
【0049】
このような光学調整を行うことにより、発光層213から得られる特定の単色光のスペク
トルを狭線化させ、色純度の良い発光を得ることができる。
【0050】
但し、上記の場合、第1の電極201と第2の電極202との光学距離は、厳密には第1
の電極201における反射領域から第2の電極202における反射領域までの総厚という
ことができる。しかし、第1の電極201や第2の電極202における反射領域を厳密に
決定することは困難であるため、第1の電極201と第2の電極202の任意の位置を反
射領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。また、第1の
電極201と、所望の光が得られる発光層との光学距離は、厳密には第1の電極201に
おける反射領域と、所望の光が得られる発光層における発光領域との光学距離であるとい
うことができる。しかし、第1の電極201における反射領域や、所望の光が得られる発
光層における発光領域を厳密に決定することは困難であるため、第1の電極201の任意
の位置を反射領域、所望の光が得られる発光層の任意の位置を発光領域と仮定することで
充分に上述の効果を得ることができるものとする。
【0051】
図2(C)に示す発光素子は、マイクロキャビティ構造を有するため、同じEL層を有し
ていても異なる波長の光(単色光)を取り出すことができる。従って、異なる発光色を得
るための塗り分け(例えば、RGB)が不要となる。従って、高精細化を実現することが
容易である。また、着色層(カラーフィルタ)との組み合わせも可能である。さらに、特
定波長の正面方向の発光強度を強めることが可能となるため、低消費電力化を図ることが
できる。
【0052】
なお、上述した本発明の一態様である発光素子において、第1の電極201と第2の電極
202の少なくとも一方は、透光性を有する電極(透明電極、半透過・半反射電極など)
とする。透光性を有する電極が透明電極の場合、透明電極の可視光の透過率は、40%以
上とする。また、半透過・半反射電極の場合、半透過・半反射電極の可視光の反射率は、
20%以上80%以下、好ましくは40%以上70%以下とする。また、これらの電極は
、抵抗率が1×10-2Ωcm以下とするのが好ましい。
【0053】
また、上述した本発明の一態様である発光素子において、第1の電極201と第2の電極
202の一方が、反射性を有する電極(反射電極)である場合、反射性を有する電極の可
視光の反射率は、40%以上100%以下、好ましくは70%以上100%以下とする。
また、この電極は、抵抗率が1×10-2Ωcm以下とするのが好ましい。
【0054】
≪発光素子の具体的な構造および作製方法≫
次に、本発明の一態様である発光素子の具体的な構造および作製方法について、
図2を用
いて説明する。また、ここでは、
図2(B)に示すタンデム構造を有し、マイクロキャビ
ティ構造を備えた発光素子についても、
図2(D)を用いて説明する。
図2(D)に示す
発光素子がマイクロキャビティ構造を有する場合は、第1の電極201を反射電極として
形成し、第2の電極202を半透過・半反射電極として形成する。従って、所望の電極材
料を単数または複数用い、単層または積層して形成することができる。なお、第2の電極
202は、EL層203bを形成した後、上記と同様に材料を選択して形成する。また、
これらの電極の作製には、スパッタ法や真空蒸着法を用いることができる。
【0055】
<第1の電極および第2の電極>
第1の電極201および第2の電極202を形成する材料としては、上述した両電極の機
能が満たせるのであれば、以下に示す材料を適宜組み合わせて用いることができる。例え
ば、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを適宜用いることができ
る。具体的には、In-Sn酸化物(ITOともいう)、In-Si-Sn酸化物(IT
SOともいう)、In-Zn酸化物、In-W-Zn酸化物が挙げられる。その他、アル
ミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、
コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、
インジウム(In)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングス
テン(W)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、イットリウ
ム(Y)、ネオジム(Nd)などの金属、およびこれらを適宜組み合わせて含む合金を用
いることもできる。その他、上記例示のない元素周期表の第1族または第2族に属する元
素(例えば、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、ストロンチウ
ム(Sr)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)などの希土類金属およびこ
れらを適宜組み合わせて含む合金、その他グラフェン等を用いることができる。
【0056】
図2(D)に示す発光素子において、第1の電極201が陽極である場合、第1の電極2
01上にEL層203aの正孔注入層211aおよび正孔輸送層212aが真空蒸着法に
より順次積層形成される。EL層203aおよび電荷発生層204が形成された後、電荷
発生層204上にEL層203bの正孔注入層211bおよび正孔輸送層212bが同様
に順次積層形成される。
【0057】
<正孔注入層および正孔輸送層>
正孔注入層(211、211a、211b)は、陽極である第1の電極201や電荷発生
層(204)からEL層(203、203a、203b)に正孔(ホール)を注入する層
であり、正孔注入性の高い材料を含む層である。
【0058】
正孔注入性の高い材料としては、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化
物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の遷移金属酸化物が挙げられる。この他、フ
タロシアニン(略称:H2Pc)や銅フタロシアニン(略称:CuPC)等のフタロシア
ニン系の化合物、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニ
ルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス{4-[ビス(3-メチルフ
ェニル)アミノ]フェニル}-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,
4’-ジアミン(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、またはポリ(3,4-エ
チレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(略称:PEDOT/PSS
)等の高分子等を用いることができる。
【0059】
また、正孔注入性の高い材料としては、正孔輸送性材料とアクセプター性材料(電子受容
性材料)を含む複合材料を用いることもできる。この場合、アクセプター性材料により正
孔輸送性材料から電子が引き抜かれて正孔注入層(211、211a、211b)で正孔
が発生し、正孔輸送層(212、212a、212b)を介して発光層(213、213
a、213b)に正孔が注入される。なお、正孔注入層(211、211a、211b)
は、正孔輸送性材料とアクセプター性材料(電子受容性材料)を含む複合材料からなる単
層で形成しても良いが、正孔輸送性材料とアクセプター性材料(電子受容性材料)とをそ
れぞれ別の層で積層して形成しても良い。
【0060】
正孔輸送層(212、212a、212b)は、正孔注入層(211、211a、211
b)によって、第1の電極201から注入された正孔を発光層(213、213a、21
3b)に輸送する層である。なお、正孔輸送層(212、212a、212b)は、正孔
輸送性材料を含む層である。正孔輸送層(212、212a、212b)に用いる正孔輸
送性材料は、特に正孔注入層(211、211a、211b)のHOMO準位と同じ、あ
るいは近いHOMO準位を有するものを用いることが好ましい。
【0061】
正孔注入層(211、211a、211b)に用いるアクセプター性材料としては、元素
周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を用いることができる。具体的に
は、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化タ
ングステン、酸化マンガン、酸化レニウムが挙げられる。中でも特に、酸化モリブデンは
大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。その他、キノジメタン
誘導体やクロラニル誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体などの有機アクセプターを
用いることができる。具体的には、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テ
トラフルオロキノジメタン(略称:F4-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,1
0,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称
:HAT-CN)等を用いることができる。
【0062】
正孔注入層(211、211a、211b)および正孔輸送層(212、212a、21
2b)に用いる正孔輸送性材料としては、10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有す
る物質が好ましい。なお、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のも
のを用いることができる。
【0063】
正孔輸送性材料としては、π電子過剰型複素芳香族化合物(例えばカルバゾール誘導体や
インドール誘導体)や芳香族アミン化合物が好ましく、具体例としては、4,4’-ビス
[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-N
PD)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-
ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(スピロ-
9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSP
B)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン
(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)
トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-
9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、3-[
4-(9-フェナントリル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:
PCPPn)、N-(4-ビフェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-
2-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCBiF)、N
-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾー
ル-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:
PCBBiF)4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-
3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4
’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PC
BANB)、4、4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾ
ール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9-ジメチル-N-
フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-フ
ルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル
-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-ア
ミン(略称:PCBASF)、4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)ト
リフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニル
アミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(
3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA
)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニ
ルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン骨格を有する化合物、1,
3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾ
リル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9
-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カ
ルバゾール)(略称:PCCP)、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)
-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6
-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フ
ェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9
-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PC
zPCN1)、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略
称:TCPB)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H
-カルバゾール(略称:CzPA)などのカルバゾール骨格を有する化合物、4,4’,
4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DB
T3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-
9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-
(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオ
フェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物、4,4’,
4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3
P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル
]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などのフラン骨格を有
する化合物が挙げられる。
【0064】
さらに、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4-ビニルトリフェ
ニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニル
アミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](
略称:PTPDMA)ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(
フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)などの高分子化合物を用いることも
できる。
【0065】
但し、正孔輸送性材料は、上記に限られることなく公知の様々な材料を1種または複数種
組み合わせて正孔輸送性材料として正孔注入層(211、211a、211b)および正
孔輸送層(212、212a、212b)に用いることができる。なお、正孔輸送層(2
12、212a、212b)は、各々複数の層から形成されていても良い。すなわち、例
えば第1の正孔輸送層と第2の正孔輸送層とが積層されていても良い。
【0066】
図2(D)に示す発光素子において、EL層203aの正孔輸送層212a上に発光層2
13aが真空蒸着法により形成される。また、EL層203aおよび電荷発生層204が
形成された後、EL層203bの正孔輸送層212b上に発光層213bが真空蒸着法に
より形成される。
【0067】
<発光層>
発光層(213、213a、213b)は、発光物質を含む層である。なお、発光物質と
しては、青色、紫色、青紫色、緑色、黄緑色、黄色、橙色、赤色などの発光色を呈する物
質を適宜用いる。また、複数の発光層(213a、213b)に異なる発光物質を用いる
ことにより異なる発光色を呈する構成(例えば、補色の関係にある発光色を組み合わせて
得られる白色発光)とすることができる。さらに、一つの発光層が異なる発光物質を有す
る積層構造であっても良い。
【0068】
また、発光層(213、213a、213b)は、発光物質(ゲスト材料)に加えて、1
種または複数種の有機化合物(ホスト材料、アシスト材料)を有していても良い。また、
1種または複数種の有機化合物としては、本実施の形態で説明する正孔輸送性材料や電子
輸送性材料の一方または両方を用いることができる。
【0069】
本発明の一態様である発光素子において、発光層(213a、213b)のいずれかに赤
色発光を呈する発光物質(赤色発光物質)をゲスト材料として用いる。なお、ここで用い
る赤色発光物質としては、発光スペクトルのピーク値が600nm以上700nm以下、
好ましくは620nm以上700nm以下である発光物質を用いるのが好ましい。このよ
うな発光物質としては、公知の材料を用いることができる。例えばビス{4,6-ジメチ
ル-2-[3-(3,5-ジメチルフェニル)-5-フェニル-2-ピラジニル-κN]
フェニル-κC}(2,6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κ2O,O’)イリ
ジウム(III)(略称:[Ir(dmdppr-P)2(dibm)]、ビス{4,6
-ジメチル-2-[5-(4-シアノ-2,6-ジメチルフェニル)-3-(3,5-ジ
メチルフェニル)-2-ピラジニル-κN]フェニル-κC}(2,2,6,6-テトラ
メチル-3,5-ヘプタンジオナト-κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:[I
r(dmdppr-dmCP)2(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス[2-メ
チル-3-フェニルキノキサリナト-N,C2’]イリジウム(III)(略称:Ir(
mpq)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2,3-ジフェニルキノキサ
リナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dpq)2(acac)]
)等を用いることができる。
【0070】
発光層(213、213a、213b)に用いることができる上記以外の発光物質として
は、特に限定は無く、一重項励起エネルギーを可視光領域の発光に変える発光物質、また
は三重項励起エネルギーを可視光領域の発光に変える発光物質を用いることができる。な
お、上記発光物質としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
【0071】
一重項励起エネルギーを発光に変える発光物質としては、蛍光を発する物質(蛍光材料)
が挙げられ、例えば、ピレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン誘導体、フル
オレン誘導体、カルバゾール誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体
、ジベンゾキノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導
体、フェナントレン誘導体、ナフタレン誘導体などが挙げられる。特にピレン誘導体は発
光量子収率が高いので好ましい。ピレン誘導体の具体例としては、N,N’-ビス(3-
メチルフェニル)-N,N’-ビス〔3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル
)フェニル〕ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,
N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル
)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビ
ス(ジベンゾフラン-2-イル)-N,N’-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン(略
称:1,6FrAPrn)、N,N’-ビス(ジベンゾチオフェン-2-イル)-N,N
’-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6ThAPrn)、N,N’-(
ピレン-1,6-ジイル)ビス[(N-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラ
ン)-6-アミン](略称:1,6BnfAPrn)、N,N’-(ピレン-1,6-ジ
イル)ビス[(N-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン]
(略称:1,6BnfAPrn-02)、N,N’-(ピレン-1,6-ジイル)ビス[
(6,N-ジフェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン](略称
:1,6BnfAPrn-03)などが挙げられる。
【0072】
その他にも、5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,
2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-
9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2B
Py)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’
-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カル
バゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン
(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジ
フェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジ
フェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾ
ール-3-アミン(略称:PCAPA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4
’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PC
BAPA)、4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-4’-(9-
フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPBA
)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチルペリレン(略称:TBP)
、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フ
ェニレン)ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン](略称
:DPABPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アン
トリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-
[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフ
ェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)等を用いることができる
。
【0073】
また、三重項励起エネルギーを発光に変える発光物質としては、例えば、燐光を発する物
質(燐光材料)や熱活性化遅延蛍光を示す熱活性化遅延蛍光(Thermally ac
tivated delayed fluorescence:TADF)材料が挙げら
れる。
【0074】
燐光材料としては、有機金属錯体、金属錯体(白金錯体)、希土類金属錯体等が挙げられ
る。これらは、物質ごとに異なる発光色(発光ピーク)を示すため、必要に応じて適宜選
択して用いる。
【0075】
青色または緑色を呈し、発光スペクトルのピーク波長が450nm以上570nm以下で
ある燐光材料としては、以下のような物質が挙げられる。
【0076】
例えば、トリス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル
)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム
(III)(略称:[Ir(mpptz-dmp)3])、トリス(5-メチル-3,4
-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir
(Mptz)3])、トリス[4-(3-ビフェニル)-5-イソプロピル-3-フェニ
ル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrp
tz-3b)3])、トリス[3-(5-ビフェニル)-5-イソプロピル-4-フェニ
ル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPr5
btz)3])、のような4H-トリアゾール骨格を有する有機金属錯体、トリス[3-
メチル-1-(2-メチルフェニル)-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト
]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1-mp)3])、トリス(1-メチ
ル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(II
I)(略称:[Ir(Prptz1-Me)3])のような1H-トリアゾール骨格を有
する有機金属錯体、fac-トリス[1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フ
ェニル-1H-イミダゾール]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrpmi)3
])、トリス[3-(2,6-ジメチルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]
フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(dmpimpt-Me)3
])のようなイミダゾール骨格を有する有機金属錯体、ビス[2-(4’,6’-ジフル
オロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾ
リル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピ
リジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビ
ス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’
}イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CF3ppy)2(pic)])
、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム
(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))のように電子吸引基を有
するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属錯体等が挙げられる。
【0077】
緑色または黄色を呈し、発光スペクトルのピーク波長が495nm以上590nm以下で
ある燐光材料としては、以下のような物質が挙げられる。
【0078】
例えば、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称
:[Ir(mppm)3])、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イ
リジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)3])、(アセチルアセトナト)ビ
ス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(m
ppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4
-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)2(a
cac)])、(アセチルアセトナト)ビス[6-(2-ノルボルニル)-4-フェニル
ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(nbppm)2(acac)])
、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニ
ルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpmppm)2(acac)
])、(アセチルアセトナト)ビス{4,6-ジメチル-2-[6-(2,6-ジメチル
フェニル)-4-ピリミジニル-κN3]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称
:[Ir(dmppm-dmp)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4
,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)2(
acac)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、(アセチルア
セトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(
略称:[Ir(mppr-Me)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5
-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:
[Ir(mppr-iPr)2(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属
イリジウム錯体、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)
(略称:[Ir(ppy)3])、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジ
ウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)2(acac)])、ビ
ス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[I
r(bzq)2(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(II
I)(略称:[Ir(bzq)3])、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)
イリジウム(III)(略称:[Ir(pq)3])、ビス(2-フェニルキノリナト-
N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)2(a
cac)])のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、ビス(2,4-ジ
フェニル-1,3-オキサゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナ
ート(略称:[Ir(dpo)2(acac)])、ビス{2-[4’-(パーフルオロ
フェニル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)アセチルアセトナ
ート(略称:[Ir(p-PF-ph)2(acac)])、ビス(2-フェニルベンゾ
チアゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(
bt)2(acac)])などの有機金属錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モ
ノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:[Tb(acac)3(Phen)
])のような希土類金属錯体が挙げられる。
【0079】
黄色または赤色を呈し、発光スペクトルのピーク波長が570nm以上750nm以下で
ある燐光材料としては、以下のような物質が挙げられる。
【0080】
例えば、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミ
ジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)2(dibm)])、ビ
ス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリ
ジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)2(dpm)])、ビス[4,6-ジ
(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III
)(略称:[Ir(d1npm)2(dpm)])のようなピリミジン骨格を有する有機
金属錯体、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジ
ウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(acac)])、ビス(2,3,5-ト
リフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir
(tppr)2(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フル
オロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)2(
acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属錯体や、トリス(1-フェニルイ
ソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(piq)3])、ビ
ス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナ
ート(略称:[Ir(piq)2(acac)])のようなピリジン骨格を有する有機金
属錯体、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポ
ルフィリン白金(II)(略称:[PtOEP])のような白金錯体、トリス(1,3-
ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(II
I)(略称:[Eu(DBM)3(Phen)])、トリス[1-(2-テノイル)-3
,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)
(略称:[Eu(TTA)3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。
【0081】
発光層(213、213a、213b)に用いる有機化合物(ホスト材料、アシスト材料
)としては、発光物質(ゲスト材料)のエネルギーギャップより大きなエネルギーギャッ
プを有する物質を、一種もしくは複数種選択して用いればよい。なお、上述した正孔輸送
性材料として挙げたものや、後述する電子輸送性材料として挙げられる材料をこのような
有機化合物(ホスト材料、アシスト材料)として用いることもできる。
【0082】
発光物質が蛍光材料である場合、ホスト材料としては一重項励起状態のエネルギー準位が
大きく、三重項励起状態のエネルギー準位が小さい有機化合物を用いるのが好ましい。例
えば、アントラセン誘導体やテトラセン誘導体を用いるのが好ましい。具体的には、9-
フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾ
ール(略称:PCzPA)、3-[4-(1-ナフチル)-フェニル]-9-フェニル-
9H-カルバゾール(略称:PCPN)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセ
ニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、7-[4-(10-フェニ
ル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cg
DBCzPA)、6-[3-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-ベ
ンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン(略称:2mBnfPPA)、9-フェニル-1
0-{4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)ビフェニル-4’-イル}ア
ントラセン(略称:FLPPA)、5,12-ジフェニルテトラセン、5,12-ビス(
ビフェニル-2-イル)テトラセンなどが挙げられる。
【0083】
発光物質が燐光材料である場合、ホスト材料としては、発光物質の三重項励起エネルギー
(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)よりも三重項励起エネルギーの大きい有
機化合物を選択すれば良い。なお、この場合には、亜鉛やアルミニウム系金属錯体の他、
オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリ
ン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘
導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、フェ
ナントロリン誘導体等の他、芳香族アミンやカルバゾール誘導体等を用いることができる
。
【0084】
具体的には、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、ト
リス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq3)、
ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq
2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム
(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq
)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPB
O)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBT
Z)などの金属錯体、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル
)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(p-ter
t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:O
XD-7)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフ
ェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’-(1,3,
5-ベンゼントリイル)-トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:
TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:B
CP)、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェ
ナントロリン(略称:NBphen)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサ
ジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)などの複素
環化合物、NPB、TPD、BSPBなどの芳香族アミン化合物が挙げられる。
【0085】
また、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジ
ベンゾ[g,p]クリセン誘導体等の縮合多環芳香族化合物が挙げられ、具体的には、9
,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、N,N-ジフェニル-9-[
4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン
(略称:CzA1PA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン
(略称:DPhPA)、YGAPA、PCAPA、N,9-ジフェニル-N-{4-[4
-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3
-アミン(略称:PCAPBA)、2PCAPA、6,12-ジメトキシ-5,11-ジ
フェニルクリセン、DBC1、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェ
ニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、3,6-ジフェニル-9-[4-(1
0-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DPCzPA
)、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、
9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2-tert-ブチル-
9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、9,9’-ビア
ントリル(略称:BANT)、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナン
トレン(略称:DPNS)、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナント
レン(略称:DPNS2)、1,3,5-トリ(1-ピレニル)ベンゼン(略称:TPB
3)などを用いることができる。
【0086】
また、発光層(213、213a、213b)に複数の有機化合物を用いる場合、励起錯
体を形成する化合物を発光物質と混合して用いることが好ましい。この場合、様々な有機
化合物を適宜組み合わせて用いることができるが、効率よく励起錯体を形成するためには
、正孔を受け取りやすい化合物(正孔輸送性材料)と、電子を受け取りやすい化合物(電
子輸送性材料)とを組み合わせることが特に好ましい。なお、正孔輸送性材料および電子
輸送性材料の具体例については、本実施の形態で示す材料を用いることができる。
【0087】
TADF材料とは、三重項励起状態をわずかな熱エネルギーによって一重項励起状態にア
ップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態からの発光(蛍光)を効率よく
呈する材料のことである。また、熱活性化遅延蛍光が効率良く得られる条件としては、三
重項励起準位と一重項励起準位のエネルギー差が0eV以上0.2eV以下、好ましくは
0eV以上0.1eV以下であることが挙げられる。また、TADF材料における遅延蛍
光とは、通常の蛍光と同様のスペクトルを持ちながら、寿命が著しく長い発光をいう。そ
の寿命は、10-6秒以上、好ましくは10-3秒以上である。
【0088】
TADF材料としては、例えば、フラーレンやその誘導体、プロフラビン等のアクリジン
誘導体、エオシン等が挙げられる。また、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミ
ウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム
(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。金属含有ポルフィリンとしては、
例えば、プロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Proto IX))、メソ
ポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-
フッ化スズ錯体(SnF2(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチル
エステル-フッ化スズ錯体(SnF2(Copro III-4Me))、オクタエチル
ポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化ス
ズ錯体(SnF2(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(Pt
Cl2OEP)等が挙げられる。
【0089】
その他にも、2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[
2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(PIC-TRZ)
、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾ
ール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(PCCz
PTzn)、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-
ジフェニル-1,3,5-トリアジン(PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-
5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2
,4-トリアゾール(PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン
-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(ACRXTN)、ビス[4-(9,9-
ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルフホン(DMAC-DPS)
、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]
-10’-オン(ACRSA)、等のπ電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香
環を有する複素環化合物を用いることができる。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子
不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環のドナー性とπ電子
不足型複素芳香環のアクセプター性が共に強くなり、一重項励起状態と三重項励起状態の
エネルギー差が小さくなるため、特に好ましい。
【0090】
なお、TADF材料を用いる場合、他の有機化合物と組み合わせて用いることもできる。
【0091】
図2(D)に示す発光素子においては、EL層203aの発光層213a上に電子輸送層
214aが真空蒸着法により形成される。また、EL層203aおよび電荷発生層204
が形成された後、EL層203bの発光層213b上に電子輸送層214bが真空蒸着法
により形成される。
【0092】
<電子輸送層>
電子輸送層(214、214a、214b)は、電子注入層(215、215a、215
b)によって、第2の電極202から注入された電子を発光層(213、213a、21
3b)に輸送する層である。なお、電子輸送層(214、214a、214b)は、電子
輸送性材料を含む層である。電子輸送層(214、214a、214b)に用いる電子輸
送性材料は、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。なお
、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いることができる
。
【0093】
電子輸送性材料としては、キノリン配位子、ベンゾキノリン配位子、オキサゾール配位子
、あるいはチアゾール配位子を有する金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール
誘導体、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体などが挙げられる
。その他、含窒素複素芳香族化合物のようなπ電子不足型複素芳香族化合物を用いること
もできる。
【0094】
具体的には、Alq3、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(略称:
Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:B
eBq2)、BAlq、Zn(BOX)2、ビス[2-(2-ヒドロキシフェニル)ベン
ゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などの金属錯体、2-(4-ビフェニリ
ル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:
PBD)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサ
ジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、3-(4’-tert-ブチル
フェニル)-4-フェニル-5-(4’’-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール
(略称:TAZ)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-(4-エチルフェニル
)-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:p-EtTAZ)、
バソフェナントロリン(略称:Bphen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,
4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)
などの複素芳香族化合物、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベ
ンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベ
ンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(
略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-カルバ
ゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq
-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h
]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、6-[3-(ジベンゾチオフェン
-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq-
II)等のキノキサリンないしはジベンゾキノキサリン誘導体を用いることができる。
【0095】
また、ポリ(2,5-ピリジンジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9-ジヘキシル
フルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-
Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’
-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)のような高分子化合物を用
いることもできる。
【0096】
また、電子輸送層(214、214a、214b)は、単層のものだけでなく、上記物質
からなる層が2層以上積層した構造であってもよい。
【0097】
図2(D)に示す発光素子において、EL層203aの電子輸送層214a上に電子注入
層215aが真空蒸着法により形成される。その後、EL層203aおよび電荷発生層2
04が形成され、EL層203bの電子輸送層214bまで形成された後、上に電子注入
層215bが真空蒸着法により形成される。
【0098】
<電子注入層>
電子注入層(215、215a、215b)は、電子注入性の高い物質を含む層である。
電子注入層(215、215a、215b)には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セ
シウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)、リチウム酸化物(LiOx)等のよ
うなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。ま
た、フッ化エルビウム(ErF3)のような希土類金属化合物を用いることができる。ま
た、電子注入層(215、215a、215b)にエレクトライドを用いてもよい。エレ
クトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添
加した物質等が挙げられる。なお、上述した電子輸送層(214、214a、214b)
を構成する物質を用いることもできる。
【0099】
また、電子注入層(215、215a、215b)に、有機化合物と電子供与体(ドナー
)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によっ
て有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場
合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体
的には、例えば上述した電子輸送層(214、214a、214b)に用いる電子輸送性
材料(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有
機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカ
リ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、
エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類
金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げら
れる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラ
チアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0100】
なお、
図2(D)に示す発光素子において、例えば、発光層213bから得られる光を増
幅させる場合には、第2の電極202と、発光層213bとの光学距離が、発光層213
bが呈する光の波長に対してλ/4未満となるように形成するのが好ましい。この場合、
電子輸送層214bまたは電子注入層215bの膜厚を変えることにより、調整すること
ができる。
【0101】
<電荷発生層>
図2(D)に示す発光素子において、電荷発生層204は、第1の電極(陽極)201と
第2の電極(陰極)202との間に電圧を印加したときに、EL層203aに電子を注入
し、EL層203bに正孔を注入する機能を有する。なお、電荷発生層204は、正孔輸
送性材料に電子受容体(アクセプター)が添加された構成であっても、電子輸送性材料に
電子供与体(ドナー)が添加された構成であってもよい。また、これらの両方の構成が積
層されていても良い。なお、上述した材料を用いて電荷発生層204を形成することによ
り、EL層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0102】
電荷発生層204において、正孔輸送性材料に電子受容体が添加された構成とする場合、
正孔輸送性材料としては、本実施の形態で示した材料を用いることができる。また、電子
受容体としては、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノ
ジメタン(略称:F4-TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また元素周期
表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、
酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タング
ステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどが挙げられる。
【0103】
電荷発生層204において、電子輸送性材料に電子供与体が添加された構成とする場合、
電子輸送性材料としては、本実施の形態で示した材料を用いることができる。また、電子
供与体としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属または希土類金属または元素周期
表における第2、第13族に属する金属およびその酸化物、炭酸塩を用いることができる
。具体的には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウ
ム(Ca)、イッテルビウム(Yb)、インジウム(In)、酸化リチウム、炭酸セシウ
ムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタセンのような有機化合物を電子
供与体として用いてもよい。
【0104】
<基板>
本実施の形態で示した発光素子は、様々な基板上に形成することができる。なお、基板の
種類は、特定のものに限定されることはない。基板の一例としては、半導体基板(例えば
単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板
、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タン
グステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、
繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルムなどが挙げられる。
【0105】
なお、ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラ
ス、又はソーダライムガラスなどが挙げられる。また、可撓性基板、貼り合わせフィルム
、基材フィルムなどの一例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチ
レンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)に代表されるプラスチ
ック、アクリル等の合成樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリ
塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ、無機蒸着フィルム、又は紙
類などが挙げられる。
【0106】
なお、本実施の形態で示す発光素子の作製には、蒸着法などの真空プロセスや、スピンコ
ート法やインクジェット法などの溶液プロセスを用いることができる。蒸着法を用いる場
合には、スパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、分子線蒸着法、真
空蒸着法などの物理蒸着法(PVD法)や、化学蒸着法(CVD法)等を用いることがで
きる。特に発光素子のEL層に含まれる機能層(正孔注入層(211a、211b)、正
孔輸送層(212a、212b)、発光層(213a、213b)、電子輸送層(214
a、214b)、電子注入層(215a、215b)、および電荷発生層204)につい
ては、蒸着法(真空蒸着法等)、塗布法(ディップコート法、ダイコート法、バーコート
法、スピンコート法、スプレーコート法等)、印刷法(インクジェット法、スクリーン(
孔版印刷)法、オフセット(平版印刷)法、フレキソ(凸版印刷)法、グラビア法、マイ
クロコンタクト法、ナノインプリント法等)などの方法により形成することができる。
【0107】
なお、本実施の形態で示す発光素子のEL層(203a、203b)を構成する各機能層
(正孔注入層(211a、211b)、正孔輸送層(212a、212b)、発光層(2
13a、213b)、電子輸送層(214a、214b)、電子注入層(215a、21
5b))や電荷発生層204は、上述した材料に限られることはなく、それ以外の材料で
あっても各層の機能を満たせるものであれば組み合わせて用いることができる。一例とし
ては、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)、中分子化合物(低分子
と高分子の中間領域の化合物:分子量400~4000)、無機化合物(量子ドット材料
等)等を用いることができる。なお、量子ドット材料としては、コロイド状量子ドット材
料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料など
を用いることができる。
【0108】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることが
できるものとする。
【0109】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置について
図3(A)を用いて説明する
。なお、
図3(A)に示す発光装置は、第1の基板301上のトランジスタ(FET)3
02と発光素子(303R、303G、303B、303W)が電気的に接続されてなる
アクティブマトリクス型の発光装置であり、複数の発光素子(303R、303G、30
3B、303W)は、共通のEL層304を有し、また、各発光素子の発光色に応じて、
各発光素子の電極間の光学距離が調整されたマイクロキャビティ構造を有する。また、E
L層304から得られた発光が第2の基板305に形成されたカラーフィルタ(306R
、306G、306B)を介して射出されるトップエミッション型の発光装置である。
【0110】
図3(A)に示す発光装置は、第1の電極307を反射電極として機能するように形成す
る。また、第2の電極308を半透過・半反射電極として機能するように形成する。なお
、第1の電極307および第2の電極308を形成する電極材料としては、他の実施形態
の記載を参照し、適宜用いればよい。
【0111】
また、
図3(A)において、例えば、発光素子303Rを赤色発光素子、発光素子303
Gを緑色発光素子、発光素子303Bを青色発光素子、発光素子303Wを白色発光素子
とする場合、
図3(B)に示すように発光素子303Rは、第1の電極307と第2の電
極308との間が光学距離300Rとなるように調整し、発光素子303Gは、第1の電
極307と第2の電極308との間が光学距離300Gとなるように調整し、発光素子3
03Bは、第1の電極307と第2の電極308との間が光学距離300Bとなるように
調整する。なお、
図3(B)に示すように、発光素子303Rにおいて導電層307Rを
第1の電極307に積層し、発光素子303Gにおいて導電層307Gを積層することに
より、光学調整を行うことができる。
【0112】
第2の基板305には、カラーフィルタ(306R、306G、306B)が形成されて
いる。なお、カラーフィルタは、可視光のうち特定の波長域を通過させ、特定の波長域を
阻止するフィルタである。従って、
図3(A)に示すように、発光素子303Rと重なる
位置に赤の波長域のみを通過させるカラーフィルタ306Rを設けることにより、発光素
子303Rから赤色発光を得ることができる。また、発光素子303Gと重なる位置に緑
の波長域のみを通過させるカラーフィルタ306Gを設けることにより、発光素子303
Gから緑色発光を得ることができる。また、発光素子303Bと重なる位置に青の波長域
のみを通過させるカラーフィルタ306Bを設けることにより、発光素子303Bから青
色発光を得ることができる。但し、発光素子303Wは、カラーフィルタを設けることな
く白色発光を得ることができる。なお、1種のカラーフィルタの端部には、黒色層(ブラ
ックマトリックス)309が設けられていてもよい。さらに、カラーフィルタ(306R
、306G、306B)や黒色層309は、透明な材料を用いたオーバーコート層で覆わ
れていても良い。
【0113】
図3(A)では、第2の基板305側に発光を取り出す構造(トップエミッション型)の
発光装置を示したが、FET302が形成されている第1の基板301側に光を取り出す
構造(ボトムエミッション型)の発光装置としても良い。なお、トップエミッション型の
発光装置の場合には、第1の基板301として遮光性の基板および透光性の基板を用いる
ことができるが、ボトムエミッション型の発光装置の場合には、第1の基板301として
透光性の基板を用いる必要がある。
【0114】
また、
図3(A)において、発光素子が、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子、
白色発光素子の場合について示したが、本発明の一態様である発光素子はその構成に限ら
れることはなく、黄色の発光素子や橙色の発光素子を有する構成であっても良い。なお、
これらの発光素子を作製するためにEL層(発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送
層、電子注入層、電荷発生層など)に用いる材料としては、他の実施形態の記載を参照し
、適宜用いればよい。なお、その場合には、また、発光素子の発光色に応じてカラーフィ
ルタを適宜選択する必要がある。
【0115】
以上のような構成とすることにより、複数の発光色を呈する発光素子を備えた発光装置を
得ることができる。
【0116】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いる
ことができるものとする。
【0117】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置について説明する。
【0118】
本発明の一態様である発光素子の素子構成を適用することで、アクティブマトリクス型の
発光装置やパッシブマトリクス型の発光装置を作製することができる。なお、アクティブ
マトリクス型の発光装置は、発光素子とトランジスタ(FET)とを組み合わせた構成を
有する。従って、パッシブマトリクス型の発光装置、アクティブマトリクス型の発光装置
は、いずれも本発明の一態様に含まれる。なお、本実施の形態に示す発光装置には、他の
実施形態で説明した発光素子を適用することが可能である。
【0119】
本実施の形態では、アクティブマトリクス型の発光装置について
図4を用いて説明する。
【0120】
なお、
図4(A)は発光装置を示す上面図であり、
図4(B)は
図4(A)を鎖線A-A
’で切断した断面図である。アクティブマトリクス型の発光装置は、第1の基板401上
に設けられた画素部402、駆動回路部(ソース線駆動回路)403と、駆動回路部(ゲ
ート線駆動回路)(404a、404b)を有する。画素部402および駆動回路部40
3、404a、404b)は、シール材405によって、第1の基板401と第2の基板
406との間に封止される。
【0121】
また、第1の基板401上には、引き回し配線407が設けられる。引き回し配線407
は、外部入力端子であるFPC408と接続される。なお、FPC408は、駆動回路部
(403、404a、404b)に外部からの信号(例えば、ビデオ信号、クロック信号
、スタート信号、リセット信号等)や電位を伝達する。また、FPC408にはプリント
配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。なお、これらFPCやのPWBが取り
付けられた状態は、発光装置に含まれる。
【0122】
【0123】
画素部402は、FET(スイッチング用FET)411、FET(電流制御用FET)
412、およびFET412と電気的に接続された第1の電極413を有する複数の画素
により形成される。なお、各画素が有するFETの数は、特に限定されることはなく、必
要に応じて適宜設けることができる。
【0124】
FET409、410、411、412は、特に限定されることはなく、例えば、スタガ
型や逆スタガ型などのトランジスタを適用することができる。また、トップゲート型やボ
トムゲート型などのトランジスタ構造であってもよい。
【0125】
なお、これらのFET409、410、411、412に用いることのできる半導体の結
晶性については特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、
多結晶半導体、単結晶半導体、又は一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いても
よい。なお、結晶性を有する半導体を用いることで、トランジスタ特性の劣化を抑制でき
るため好ましい。
【0126】
また、これらの半導体としては、例えば、第14族の元素、化合物半導体、酸化物半導体
、有機半導体などを用いることができる。代表的には、シリコンを含む半導体、ガリウム
ヒ素を含む半導体、インジウムを含む酸化物半導体などを適用することができる。
【0127】
駆動回路部403は、FET409とFET410とを有する。なお、FET409とF
ET410は、単極性(N型またはP型のいずれか一方のみ)のトランジスタを含む回路
で形成されても良いし、N型のトランジスタとP型のトランジスタを含むCMOS回路で
形成されても良い。また、外部に駆動回路を有する構成としても良い。
【0128】
第1の電極413の端部は、絶縁物414により覆われている。なお、絶縁物414には
、ネガ型の感光性樹脂や、ポジ型の感光性樹脂(アクリル樹脂)などの有機化合物や、酸
化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン等の無機化合物を用いることができる。絶
縁物414の上端部または下端部には、曲率を有する曲面を有するのが好ましい。これに
より、絶縁物414の上層に形成される膜の被覆性を良好なものとすることができる。
【0129】
第1の電極413上には、EL層415及び第2の電極416が積層形成される。EL層
415は、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層等を
有する。
【0130】
なお、本実施の形態で示す発光素子417の構成は、他の実施の形態で説明した構成や材
料を適用することができる。なお、ここでは図示しないが、第2の電極416は外部入力
端子であるFPC408に電気的に接続されている。
【0131】
また、
図4(B)に示す断面図では発光素子417を1つのみ図示しているが、画素部4
02において、複数の発光素子がマトリクス状に配置されているものとする。画素部40
2には、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子をそれぞれ選択的に形成し、フ
ルカラー表示可能な発光装置を形成することができる。また、3種類(R、G、B)の発
光が得られる発光素子の他に、例えば、ホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M
)、シアン(C)等の発光が得られる発光素子を形成してもよい。例えば、3種類(R、
G、B)の発光が得られる発光素子に上述の数種類の発光が得られる発光素子を追加する
ことにより、色純度の向上、消費電力の低減等の効果が得ることができる。また、カラー
フィルタと組み合わせることによってフルカラー表示可能な発光装置としてもよい。
【0132】
第1の基板401上のFET(409、410、411、412)や、発光素子417は
、第2の基板406と第1の基板401とをシール材405により貼り合わせることによ
り、第1の基板401、第2の基板406、およびシール材405で囲まれた空間418
に備えられた構造を有する。なお、空間418には、不活性気体(窒素やアルゴン等)や
有機物(シール材405を含む)で充填されていてもよい。
【0133】
シール材405には、エポキシ系樹脂やガラスフリットを用いることができる。なお、シ
ール材405には、できるだけ水分や酸素を透過しない材料を用いることが好ましい。ま
た、第2の基板406は、第1の基板401に用いることができるものを同様に用いるこ
とができる。従って、他の実施形態で説明した様々な基板を適宜用いることができるもの
とする。基板としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber-Reinforc
ed Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアク
リル等からなるプラスチック基板を用いることができる。シール材としてガラスフリット
を用いる場合には、接着性の観点から第1の基板401及び第2の基板406はガラス基
板であることが好ましい。
【0134】
以上のようにして、アクティブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0135】
また、アクティブマトリクス型の発光装置を可撓性基板に形成する場合、可撓性基板上に
FETと発光素子とを直接形成しても良いが、剥離層を有する別の基板にFETと発光素
子を形成した後、熱、力、レーザ照射などを与えることによりFETと発光素子を剥離層
で剥離し、さらに可撓性基板に転載して作製しても良い。なお、剥離層としては、例えば
、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層や、ポリイミド等の有機樹脂膜等を
用いることができる。また可撓性基板としては、トランジスタを形成することが可能な基
板に加え、紙基板、セロファン基板、アラミドフィルム基板、ポリイミドフィルム基板、
布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)
若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)
、皮革基板、又はゴム基板などが挙げられる。これらの基板を用いることにより、耐久性
や耐熱性に優れ、軽量化および薄型化を図ることができる。
【0136】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用い
ることができる。
【0137】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置を適用して完成させた様々な電子機器
や自動車の一例について、説明する。
【0138】
発光装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジ
ョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオ
カメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携
帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げ
られる。これらの電子機器の具体例を
図5、
図6に示す。
【0139】
図5(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置7100は、筐
体7101に表示部7103が組み込まれている。表示部7103により、映像を表示す
ることが可能であり、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)
であってもよい。なお、本発明の一態様である発光装置を表示部7103に用いることが
できる。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示して
いる。
【0140】
テレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモ
コン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー
7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示され
る映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機
7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0141】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機に
より一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線又は無線によ
る通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)又は双方向(送
信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0142】
図5(B)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キー
ボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。
なお、コンピュータは、本発明の一態様である発光装置をその表示部7203に用いるこ
とにより作製することができる。また、表示部7203は、タッチセンサ(入力装置)を
搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。
【0143】
図5(C)は、スマートウオッチであり、筐体7302、表示部7304、操作ボタン7
311、7312、接続端子7313、バンド7321、留め金7322、等を有する。
【0144】
ベゼル部分を兼ねる筐体7302に搭載された表示部7304は、非矩形状の表示領域を
有している。表示部7304は、時刻を表すアイコン7305、その他のアイコン730
6等を表示することができる。また、表示部7304は、タッチセンサ(入力装置)を搭
載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。
【0145】
なお、
図5(C)に示すスマートウオッチは、様々な機能を有することができる。例えば
、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネ
ル機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラ
ム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュ
ータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信又は受信を
行う機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示す
る機能、等を有することができる。
【0146】
また、筐体7302の内部に、スピーカ、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速
度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電
圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むも
の)、マイクロフォン等を有することができる。なお、スマートウオッチは、発光装置を
その表示部7304に用いることにより作製することができる。
【0147】
図5(D)は、携帯電話機(スマートフォンを含む)の一例を示している。携帯電話機7
400は、筐体7401に、表示部7402、マイク7406、スピーカ7405、カメ
ラ7407、外部接続部7404、操作用ボタン7403などを備えている。また、本発
明の一態様に係る発光素子を、可撓性を有する基板に形成して発光装置を作製した場合、
図5(D)に示すような曲面を有する表示部7402に適用することが可能である。
【0148】
図5(D)に示す携帯電話機7400は、表示部7402を指などで触れることで、情報
を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、
表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0149】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表
示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示
モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0150】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を
主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合
、表示部7402の画面のほとんどにキーボード又は番号ボタンを表示させることが好ま
しい。
【0151】
また、携帯電話機7400内部に、ジャイロセンサや加速度センサ等の検出装置を設ける
ことで、携帯電話機7400の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画面表示
を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0152】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操作
用ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類
によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画
のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0153】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示
部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モード
から表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0154】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部74
02に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。ま
た、表示部に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシング用光源
を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0155】
さらに、携帯電話機(スマートフォンを含む)の別の構成として、
図5(D’-1)や図
5(D’-2)のような構造を有する携帯電話機に適用することもできる。
【0156】
なお、
図5(D’-1)や
図5(D’-2)のような構造を有する場合には、文字情報や
画像情報などを筐体7500(1)、7500(2)の第1面7501(1)、7501
(2)だけでなく、第2面7502(1)、7502(2)に表示させることができる。
このような構造を有することにより、携帯電話機を胸ポケットに収納したままの状態で、
第2面7502(1)、7502(2)などに表示された文字情報や画像情報などを使用
者が容易に確認することができる。
【0157】
また、発光装置を適用した電子機器として、
図6(A)~(C)に示すような折りたたみ
可能な携帯情報端末が挙げられる。
図6(A)には、展開した状態の携帯情報端末931
0を示す。また、
図6(B)には、展開した状態又は折りたたんだ状態の一方から他方に
変化する途中の状態の携帯情報端末9310を示す。さらに、
図6(C)には、折りたた
んだ状態の携帯情報端末9310を示す。携帯情報端末9310は、折りたたんだ状態で
は可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優
れる。
【0158】
表示部9311はヒンジ9313によって連結された3つの筐体9315に支持されてい
る。なお、表示部9311は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出
力装置)であってもよい。また、表示部9311は、ヒンジ9313を介して2つの筐体
9315間を屈曲させることにより、携帯情報端末9310を展開した状態から折りたた
んだ状態に可逆的に変形させることができる。本発明の一態様の発光装置を表示部931
1に用いることができる。表示部9311における表示領域9312は折りたたんだ状態
の携帯情報端末9310の側面に位置する表示領域である。表示領域9312には、情報
アイコンや使用頻度の高いアプリやプログラムのショートカットなどを表示させることが
でき、情報の確認やアプリなどの起動をスムーズに行うことができる。
【0159】
また、発光装置を適用した自動車を
図7(A)(B)に示す。すなわち、発光装置を、自
動車と一体にして設けることができる。具体的には、
図7(A)に示す自動車の外側のラ
イト5101(車体後部も含む)、タイヤのホイール5102、ドア5103の一部また
は全体などに適用することができる。また、
図7(B)に示す自動車の内側の表示部51
04、ハンドル5105、シフトレバー5106、座席シート5107、インナーリアビ
ューミラー5108等に適用することができる。その他、ガラス窓の一部に適用してもよ
い。
【0160】
以上のようにして、本発明の一態様である発光装置を適用して電子機器や自動車を得るこ
とができる。なお、適用できる電子機器や自動車は、本実施の形態に示したものに限らず
、あらゆる分野において適用することが可能である。
【0161】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【0162】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光素子を適用して作製される照明装置の構成
について
図8を用いて説明する。
【0163】
図8(A)、(B)、(C)、(D)には、照明装置の断面図の一例を示す。なお、
図8
(A)、(B)は基板側に光を取り出すボトムエミッション型の照明装置であり、
図8(
C)、(D)は、封止基板側に光を取り出すトップエミッション型の照明装置である。
【0164】
図8(A)に示す照明装置4000は、基板4001上に発光素子4002を有する。ま
た、基板4001の外側に凹凸を有する基板4003を有する。発光素子4002は、第
1の電極4004と、EL層4005と、第2の電極4006を有する。
【0165】
第1の電極4004は、電極4007と電気的に接続され、第2の電極4006は電極4
008と電気的に接続される。また、第1の電極4004と電気的に接続される補助配線
4009を設けてもよい。なお、補助配線4009上には、絶縁層4010が形成されて
いる。
【0166】
また、基板4001と封止基板4011は、シール材4012で接着されている。また、
封止基板4011と発光素子4002の間には、乾燥剤4013が設けられていることが
好ましい。なお、基板4003は、
図8(A)のような凹凸を有するため、発光素子40
02で生じた光の取り出し効率を向上させることができる。
【0167】
また、基板4003に代えて、
図8(B)の照明装置4100のように、基板4001の
外側に拡散板4015を設けてもよい。
【0168】
図8(C)の照明装置4200は、基板4201上に発光素子4202を有する。発光素
子4202は第1の電極4204と、EL層4205と、第2の電極4206とを有する
。
【0169】
第1の電極4204は、電極4207と電気的に接続され、第2の電極4206は電極4
208と電気的に接続される。また第2の電極4206と電気的に接続される補助配線4
209を設けてもよい。また、補助配線4209の下部に、絶縁層4210を設けてもよ
い。
【0170】
基板4201と凹凸のある封止基板4211は、シール材4212で接着されている。ま
た、封止基板4211と発光素子4202の間にバリア膜4213および平坦化膜421
4を設けてもよい。なお、封止基板4211は、
図8(C)のような凹凸を有するため、
発光素子4202で生じた光の取り出し効率を向上させることができる。
【0171】
また、封止基板4211に代えて、
図8(D)の照明装置4300のように、発光素子4
202の上に拡散板4215を設けてもよい。
【0172】
なお、本実施の形態で示すように、本発明の一態様である発光素子または発光装置を適用
することで、消費電力の低い照明装置を提供することができる。
【0173】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【0174】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光素子を適用して作製される照明装置の応用
例について、
図9を用いて説明する。
【0175】
室内の照明装置としては、シーリングライト8001として応用できる。シーリングライ
ト8001には、天井直付型や天井埋め込み型がある。その他にもコードペンダント型(
天井からのコード吊り下げ式)への応用も可能である。
【0176】
また、足元灯8002は、床面に灯りを照射し、足元の安全性を高めることができる。例
えば、寝室や階段や通路などに使用するのが有効である。その場合、部屋の広さや構造に
応じて適宜サイズや形状を変えることができる。
【0177】
また、シート状照明8003は、薄型のシート状の照明装置である。壁面に張り付けて使
用するため、場所を取らず幅広い用途に用いることができる。なお、大面積化も容易であ
る。なお、曲面を有する壁面や筐体に用いることもできる。
【0178】
また、光源からの光が所望の方向のみに制御された照明装置8004を用いることもでき
る。
【0179】
なお、上記以外にも室内に備えられた家具の一部に発光装置を適用することにより、家具
としての機能を備えた照明装置とすることができる。
【0180】
以上のように、発光装置を適用した様々な照明装置が得られる。なお、これらの照明装置
は本発明の一態様に含まれるものとする。
【0181】
また、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【0182】
(実施の形態8)
本実施の形態においては、本発明の一態様の発光素子または本発明の一態様の発光装置を
有するタッチパネルについて、
図10~
図14を用いて説明を行う。
【0183】
図10(A)(B)は、タッチパネル2000の斜視図である。なお、
図10(A)(B
)において、明瞭化のため、タッチパネル2000の代表的な構成要素を示す。
【0184】
タッチパネル2000は、表示パネル2501とタッチセンサ2595とを有する(
図1
0(B)参照)。また、タッチパネル2000は、基板2510、基板2570、及び基
板2590を有する。
【0185】
表示パネル2501は、基板2510上に複数の画素及び該画素に信号を供給することが
できる複数の配線2511を有する。複数の配線2511は、基板2510の外周部にま
で引き回され、その一部が端子2519を構成している。端子2519はFPC2509
(1)と電気的に接続する。
【0186】
基板2590には、タッチセンサ2595と、タッチセンサ2595と電気的に接続する
複数の配線2598とを有する。複数の配線2598は、基板2590の外周部に引き回
され、その一部は端子2599を構成する。そして、端子2599はFPC2509(2
)と電気的に接続される。なお、
図10(B)では明瞭化のため、基板2590の裏面側
(基板2570と対向する面側)に設けられるタッチセンサ2595の電極や配線等を実
線で示している。
【0187】
タッチセンサ2595として、例えば静電容量方式のタッチセンサを適用できる。静電容
量方式としては、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式等がある。
【0188】
投影型静電容量方式としては、主に駆動方式の違いから自己容量方式、相互容量方式など
がある。相互容量方式を用いると同時多点検出が可能となるため好ましい。
【0189】
まず、投影型静電容量方式のタッチセンサを適用する場合について、
図10(B)を用い
て説明する。なお、投影型静電容量方式の場合には、指等の検知対象の近接または接触を
検知することができる、様々なセンサを適用することができる。
【0190】
投影型静電容量方式のタッチセンサ2595は、電極2591と電極2592とを有する
。電極2591と電極2592は、複数の配線2598のうちのそれぞれ異なる配線と電
気的に接続する。また、電極2592は、
図10(A)(B)に示すように、一方向に繰
り返し配置された複数の四辺形が角部で配線2594により、一方向に接続される形状を
有する。電極2591も同様に複数の四辺形が角部で接続される形状を有するが、接続さ
れる方向は、電極2592が接続される方向と交差する方向となる。なお、電極2591
が接続される方向と、電極2592が接続される方向とは、必ずしも直交する関係にある
必要はなく、0度を超えて90度未満の角度をなすように配置されてもよい。
【0191】
なお、配線2594の電極2592との交差部の面積は、できるだけ小さくなる形状が好
ましい。これにより、電極が設けられていない領域の面積を低減でき、透過率のバラツキ
を低減できる。その結果、タッチセンサ2595を透過する光の輝度のバラツキを低減す
ることができる。
【0192】
なお、電極2591及び電極2592の形状はこれに限定されず、様々な形状を取りうる
。例えば、複数の電極2591をできるだけ隙間が生じないように配置し、絶縁層を介し
て電極2592を複数設ける構成としてもよい。このとき、隣接する2つの電極2592
の間に、これらとは電気的に絶縁されたダミー電極を設けると、透過率の異なる領域の面
積を低減できるため好ましい。
【0193】
次に、
図11を用いて、タッチパネル2000の詳細について説明する。
図11は、
図1
0(A)に示す一点鎖線X1-X2間の断面図に相当する。
【0194】
タッチパネル2000は、タッチセンサ2595と表示パネル2501とを有する。
【0195】
タッチセンサ2595は、基板2590に接して千鳥格子状に配置された電極2591及
び電極2592と、電極2591及び電極2592を覆う絶縁層2593と、隣り合う電
極2591を電気的に接続する配線2594とを有する。なお、隣り合う電極2591の
間には、電極2592が設けられている。
【0196】
電極2591及び電極2592は、透光性を有する導電材料を用いて形成することができ
る。透光性を有する導電性材料としては、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジ
ウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛などの導電性酸化物を用いるこ
とができる。また、グラフェン化合物を用いることもできる。なお、グラフェン化合物を
用いる場合は、例えば膜状に形成された酸化グラフェンを還元して形成することができる
。還元する方法としては、熱を加える方法やレーザを照射する方法等を挙げることができ
る。
【0197】
電極2591及び電極2592の形成方法としては、例えば、透光性を有する導電性材料
を基板2590上にスパッタリング法により成膜した後、フォトリソグラフィ法等の様々
なパターニング技術により、不要な部分を除去することで形成することができる。
【0198】
絶縁層2593に用いる材料としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂
、シロキサン結合を有する樹脂の他、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウ
ムなどの無機絶縁材料を用いることができる。
【0199】
また、絶縁層2593の一部に形成された配線2594により、隣接する電極2591が
電気的に接続される。なお、配線2594に用いる材料は、電極2591及び電極259
2に用いる材料よりも導電性の高い材料を用いることにより電気抵抗を低減することがで
きるため好ましい。
【0200】
また、配線2598は、電極2591または電極2592と電気的に接続される。なお、
配線2598の一部は、端子として機能する。配線2598には、例えば、アルミニウム
、金、白金、銀、ニッケル、チタン、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト
、銅、またはパラジウム等の金属材料や、該金属材料を含む合金材料を用いることができ
る。
【0201】
また、端子2599により、配線2598とFPC2509(2)とが電気的に接続され
る。なお、端子2599には、様々な異方性導電フィルム(ACF:Anisotrop
ic Conductive Film)や、異方性導電ペースト(ACP:Aniso
tropic Conductive Paste)などを用いることができる。
【0202】
また、配線2594に接して接着層2597が設けられる。すなわち、タッチセンサ25
95は、接着層2597を介して、表示パネル2501に重なるように張り合わされる。
なお、接着層2597と接する表示パネル2501の表面は、
図11(A)に示すように
基板2570を有していてもよいが、必ずしも必要ではない。
【0203】
接着層2597は、透光性を有する。例えば、熱硬化性樹脂や紫外線硬化樹脂を用いるこ
とができ、具体的には、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、またはシロ
キサン系樹脂を用いることができる。
【0204】
図11(A)に示す表示パネル2501は、基板2510と基板2570との間にマトリ
クス状に配置された複数の画素と駆動回路とを有する。また、各画素は発光素子と、発光
素子を駆動する画素回路とを有する。
【0205】
図11(A)には、表示パネル2501の画素の一例として、画素2502Rを示し、駆
動回路の一例として走査線駆動回路2503gを示す。
【0206】
画素2502Rは、発光素子2550Rと、発光素子2550Rに電力を供給することが
できるトランジスタ2502tとを有する。
【0207】
トランジスタ2502tは、絶縁層2521で覆われている。なお、絶縁層2521は、
先に形成されたトランジスタ等に起因する凹凸を平坦化するための機能を有する。また、
絶縁層2521に不純物の拡散を抑制できる機能を付与してもよい。この場合、不純物の
拡散によるトランジスタ等の信頼性の低下を抑制できるので好ましい。
【0208】
発光素子2550Rは、トランジスタ2502tと配線を介して電気的に接続される。な
お、配線と直接接続されるのは、発光素子2550Rの一方の電極である。なお、発光素
子2550Rの一方の電極の端部は、絶縁体2528で覆われている。
【0209】
発光素子2550Rは、一対の電極間にEL層を有してなる。また、発光素子2550R
と重なる位置に着色層2567Rが設けられており、発光素子2550Rが発する光の一
部は、着色層2567Rを透過して、図中に示す矢印の方向に射出される。また、着色層
の端部に遮光層2567BMが設けられており、発光素子2550Rと着色層2567R
との間には、封止層2560を有する。
【0210】
なお、発光素子2550Rからの光を取り出す方向に封止層2560が設けられている場
合には、封止層2560は、透光性を有するのが好ましい。また、封止層2560は、空
気より大きい屈折率を有すると好ましい。
【0211】
走査線駆動回路2503gは、トランジスタ2503tと、容量素子2503cとを有す
る。なお、駆動回路を画素回路と同一の工程で同一基板上に形成することができる。従っ
て、画素回路のトランジスタ2502tと同様に、駆動回路(走査線駆動回路2503g
)のトランジスタ2503tも絶縁層2521で覆われている。
【0212】
また、トランジスタ2503tに信号を供給することができる配線2511が設けられて
いる。なお、配線2511と接して端子2519が設けられる。また、端子2519は、
FPC2509(1)と電気的に接続されており、FPC2509(1)は、画像信号及
び同期信号等の信号を供給する機能を有する。なお、FPC2509(1)にはプリント
配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。
【0213】
図11(A)において示す表示パネル2501には、ボトムゲート型のトランジスタを適
用する場合について示したが、トランジスタの構造はこれに限られることはなく様々な構
造のトランジスタを適用することができる。また、
図11(A)に示す、トランジスタ2
502t及びトランジスタ2503tには、酸化物半導体を含む半導体層をチャネル領域
として用いることができる。その他、アモルファスシリコンを含む半導体層や、レーザー
アニールなどの処理により結晶化させた多結晶シリコンを含む半導体層をチャネル領域と
して用いることができる。
【0214】
また、
図11(A)に示すボトムゲート型のトランジスタとは異なるトップゲート型のト
ランジスタを適用する場合の構成について、
図11(B)に示す。なお、トランジスタの
構造が変わった場合でも、チャネル領域に用いることができる半導体層のバリエーション
については同様とする。
【0215】
図11(A)で示したタッチパネル2000は、
図11(A)に示すように画素からの光
が外部に射出される側の表面に、少なくとも画素と重なるように反射防止層2567pを
有するのが好ましい。なお、反射防止層2567pとして、円偏光板等を用いることがで
きる。
【0216】
図11(A)で示した基板2510、基板2570、基板2590としては、例えば、水
蒸気の透過率が1×10
-5g/(m
2・day)以下、好ましくは1×10
-6g/(
m
2・day)以下である可撓性を有する材料を好適に用いることができる。または、こ
れらの基板の熱膨張率が、およそ等しい材料を用いることが好ましい。例えば、線膨張率
が1×10
-3/K以下、好ましくは5×10
-5/K以下、より好ましくは1×10
-
5/K以下である材料が挙げられる。
【0217】
次に、
図11に示すタッチパネル2000と構成の異なるタッチパネル2000’につい
て、
図12を用いて説明する。但し、タッチパネル2000と同様にタッチパネルとして
適用することができる。
【0218】
図12には、タッチパネル2000’の断面図を示す。
図12に示すタッチパネル200
0’は、
図11に示すタッチパネル2000と、表示パネル2501に対するタッチセン
サ2595の位置が異なる。ここでは異なる構成についてのみ説明し、同様の構成を用い
ることができる部分は、タッチパネル2000の説明を援用することとする。
【0219】
着色層2567Rは、発光素子2550Rと重なる位置にある。また、
図12(A)に示
す発光素子2550Rからの光は、トランジスタ2502tが設けられている方向に射出
される。すなわち、発光素子2550Rからの光(一部)は、着色層2567Rを透過し
て、図中に示す矢印の方向に射出される。なお、着色層2567Rの端部には遮光層25
67BMが設けられている。
【0220】
また、タッチセンサ2595は、表示パネル2501の発光素子2550Rから見てトラ
ンジスタ2502tが設けられている側に設けられている(
図12(A)参照)。
【0221】
また、接着層2597は、表示パネル2501が有する基板2510と接しており、
図1
2(A)に示す構造の場合には、表示パネル2501とタッチセンサ2595とを貼り合
わせている。但し、接着層2597により貼り合わされる表示パネル2501とタッチセ
ンサ2595との間に基板2510を設けない構成としてもよい。
【0222】
また、タッチパネル2000の場合と同様にタッチパネル2000’の場合も表示パネル
2501には、様々な構造のトランジスタを適用することができる。なお、
図12(A)
においては、ボトムゲート型のトランジスタを適用する場合について示したが、
図12(
B)に示すようにトップゲート型のトランジスタを適用してもよい。
【0223】
次に、タッチパネルの駆動方法の一例について、
図13を用いて説明を行う。
【0224】
図13(A)は、相互容量方式のタッチセンサの構成を示すブロック図である。
図13(
A)では、パルス電圧出力回路2601、電流検出回路2602を示している。なお、図
13(A)では、パルス電圧が与えられる電極2621をX1-X6として、電流の変化
を検知する電極2622をY1-Y6として、それぞれ6本の配線で例示している。また
、
図13(A)は、電極2621と、電極2622とが重畳することで形成される容量2
603を示している。なお、電極2621と電極2622とはその機能を互いに置き換え
てもよい。
【0225】
パルス電圧出力回路2601は、X1-X6の配線に順にパルス電圧を印加するための回
路である。X1-X6の配線にパルス電圧が印加されることで、容量2603を形成する
電極2621と電極2622との間に電界が生じる。この電極間に生じる電界が遮蔽等に
より容量2603の相互容量に変化を生じさせることを利用して、被検知体の近接、また
は接触を検出することができる。
【0226】
電流検出回路2602は、容量2603での相互容量の変化による、Y1~Y6の配線で
の電流の変化を検出するための回路である。Y1-Y6の配線では、被検知体の近接、ま
たは接触がないと検出される電流値に変化はないが、検出する被検知体の近接、または接
触により相互容量が減少する場合には電流値が減少する変化を検出する。なお電流の検出
は、積分回路等を用いて行えばよい。
【0227】
次に、
図13(B)には、
図13(A)で示す相互容量方式のタッチセンサにおける入出
力波形のタイミングチャートを示す。
図13(B)では、1フレーム期間で各行列での被
検知体の検出を行うものとする。また
図13(B)では、被検知体を検出しない場合(非
タッチ)と被検知体を検出する場合(タッチ)との2つの場合について示している。なお
Y1-Y6の配線については、検出される電流値に対応する電圧値とした波形を示してい
る。
【0228】
X1-X6の配線には、順にパルス電圧が与えられ、該パルス電圧にしたがってY1-Y
6の配線での波形が変化する。被検知体の近接または接触がない場合には、X1-X6の
配線の電圧の変化に応じてY1-Y6の波形が一様に変化する。一方、被検知体が近接ま
たは接触する箇所では、電流値が減少するため、これに対応する電圧値の波形も変化する
。このように、相互容量の変化を検出することにより、被検知体の近接または接触を検知
することができる。
【0229】
また、
図13(A)ではタッチセンサとして配線の交差部に容量2603のみを設けるパ
ッシブ型のタッチセンサの構成を示したが、トランジスタと容量とを備えたアクティブ型
のタッチセンサとしてもよい。
図14にアクティブ型のタッチセンサに含まれる一つのセ
ンサ回路の例を示している。
【0230】
図14に示すセンサ回路は、容量2603と、トランジスタ2611と、トランジスタ2
612と、トランジスタ2613とを有する。
【0231】
トランジスタ2613はゲートに信号G2が与えられ、ソースまたはドレインの一方に電
圧VRESが与えられ、他方が容量2603の一方の電極およびトランジスタ2611の
ゲートと電気的に接続する。トランジスタ2611は、ソースまたはドレインの一方がト
ランジスタ2612のソースまたはドレインの一方と電気的に接続し、他方に電圧VSS
が与えられる。トランジスタ2612は、ゲートに信号G1が与えられ、ソースまたはド
レインの他方が配線MLと電気的に接続する。容量2603の他方の電極には電圧VSS
が与えられる。
【0232】
次に、
図14に示すセンサ回路の動作について説明する。まず信号G2としてトランジス
タ2613をオン状態とする電位が与えられることで、トランジスタ2611のゲートが
接続されるノードnに電圧VRESに対応した電位が与えられる。次に、信号G2として
トランジスタ2613をオフ状態とする電位が与えられることで、ノードnの電位が保持
される。続いて、指等の被検知体の近接または接触により、容量2603の相互容量が変
化することに伴い、ノードnの電位がVRESから変化する。
【0233】
読み出し動作は、信号G1にトランジスタ2612をオン状態とする電位を与える。ノー
ドnの電位に応じてトランジスタ2611に流れる電流、すなわち配線MLに流れる電流
が変化する。この電流を検出することにより、被検知体の近接または接触を検出すること
ができる。
【0234】
トランジスタ2611、トランジスタ2612、及びトランジスタ2613としては、酸
化物半導体層をチャネル領域が形成される半導体層に用いることが好ましい。とくにトラ
ンジスタ2613にこのようなトランジスタを適用することにより、ノードnの電位を長
期間に亘って保持することが可能となり、ノードnにVRESを供給しなおす動作(リフ
レッシュ動作)の頻度を減らすことができる。
【0235】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【0236】
(実施の形態9)
本実施の形態においては、本発明の一態様の発光素子を有する表示装置として、反射型の
液晶素子と、発光素子と、を有し、透過モードと反射モードの両方の表示を行うことので
きる表示装置について、
図15~
図17を用いて説明する。なお、このような表示装置は
、ER-hybrid display(Emissive OLED and Ref
lective LC Hybrid display)とも呼ぶことができる。
【0237】
なお、本実施の形態で示す表示装置は、屋外など外光の明るい場所において、反射モード
を用いた表示により、極めて電力消費が低い駆動を行うことができる。一方、夜間や室内
など外光が暗い場所では、透過モードを用いた表示により、最適な輝度で画像を表示する
ことができるという特徴を有する。従って、これらを組み合わせて表示させることにより
、従来の表示パネルに比べて、低い消費電力で、且つコントラストの高い表示を行うこと
ができる。
【0238】
本実施の形態で示す表示装置の一例としては、反射電極を備えた液晶素子と、発光素子と
が積層され、発光素子と重なる位置に反射電極の開口部が設けられ、反射モードの際には
可視光を反射電極によって反射させ、透過モードの場合には、反射電極の開口部から発光
素子の光が射出される構成を有する表示装置について示す。なお、これらの素子(液晶素
子および発光素子)の駆動に用いるトランジスタは、同一平面上に配置されていることが
好ましい。また、積層される液晶素子と、発光素子とは、絶縁層を介して形成されること
が好ましい。
【0239】
図15(A)には、本実施の形態で説明する表示装置のブロック図を示す。表示装置30
00は、回路(G)3001、回路(S)3002、および表示部3003を有する。な
お、表示部3003には、画素3004が、方向R及び方向Cにマトリクス状に複数配置
されている。また、回路(G)3001は、配線G1、配線G2、配線ANO、及び配線
CSCOMが、それぞれ複数電気的に接続されており、さらにこれらの配線は、方向Rに
複数配列された画素3004とも電気的に接続されている。回路(S)3002は、配線
S1及び配線S2が、それぞれ複数電気的に接続されており、さらにこれらの配線は、方
向Cに複数配列された画素3004とも電気的に接続されている。
【0240】
また、画素3004は、液晶素子と発光素子を有し、これらは、互いに重なる部分を有す
る。
【0241】
図15(B1)には、画素3004が有する液晶素子の反射電極として機能する導電膜3
005の形状について示す。なお、導電膜3005の一部で発光素子と重なる位置300
6に開口部3007が設けられている。すなわち、発光素子からの光は、この開口部30
07を介して射出される。
【0242】
図15(B1)に示す画素3004は、方向Rに隣接する画素3004が異なる色を呈す
るように配列されている。さらに、開口部3007は、方向Rに一列に配列されることの
ないように設けられている。このような配列にすることは、隣接する画素3004が有す
る発光素子間におけるクロストークを抑制する効果を有する。さらに、素子形成が容易に
なるといったメリットも有する。
【0243】
開口部3007の形状としては、例えば多角形、四角形、楕円形、円形または十字等の形
状とすることができる。また、細長い筋状、スリット状等の形状としてもよい。
【0244】
なお、導電膜3005の配列のバリエーションとしては、
図15(B2)に示す配列とし
てもよい。
【0245】
導電膜3005の総面積(開口部3007を除く)に対する開口部3007の割合は、表
示装置の表示に影響を与える。すなわち、開口部3007の面積が大きいと液晶素子によ
る表示が暗くなり、開口部3007の面積が小さいと発光素子による表示が暗くなるとい
う問題が生じる。また、上記の比率だけでなく、開口部3007の面積そのものが小さい
場合にも、発光素子から射出される光の取り出し効率が低下するという問題が生じる。な
お、上記導電膜3005の総面積(開口部3007を除く)に対する開口部3007の面
積の割合としては、5%以上60%以下とするのが液晶素子および発光素子を組み合わせ
た際の表示品位を保つ上で好ましい。
【0246】
次に、画素3004の回路構成の一例について
図16を用いて説明する。
図16では、隣
接する2つの画素3004を示す。
【0247】
画素3004は、トランジスタSW1、容量素子C1、液晶素子3010、トランジスタ
SW2、トランジスタM、容量素子C2、及び発光素子3011等を有する。なお、これ
らは、配線G1、配線G2、配線ANO、配線CSCOM、配線S1、及び配線S2のい
ずれかと画素3004において、電気的に接続されている。また、液晶素子3010は配
線VCOM1と、発光素子3011は配線VCOM2と、それぞれ電気的に接続されてい
る。
【0248】
また、トランジスタSW1のゲートは、配線G1と接続され、トランジスタSW1のソー
ス又はドレインの一方は、配線S1と接続され、ソース又はドレインの他方は、容量素子
C1の一方の電極、及び液晶素子3010の一方の電極と接続されている。なお、容量素
子C1の他方の電極は、配線CSCOMと接続されている。また、液晶素子3010の他
方の電極は、配線VCOM1と接続されている。
【0249】
また、トランジスタSW2のゲートは、配線G2と接続され、トランジスタSW2のソー
ス又はドレインの一方は、配線S2と接続され、ソース又はドレインの他方は、容量素子
C2の一方の電極、及びトランジスタMのゲートと接続されている。なお、容量素子C2
の他方の電極は、トランジスタMのソース又はドレインの一方、及び配線ANOと接続さ
れている。また、トランジスタMのソース又はドレインの他方は、発光素子3011の一
方の電極と接続されている。また、発光素子3011の他方の電極は、配線VCOM2と
接続されている。
【0250】
なお、トランジスタMは、半導体を挟む2つのゲートを有し、これら2つのゲートは、電
気的に接続されている。このような構造とすることにより、トランジスタMが流す電流量
を増大させることができる。
【0251】
配線G1から与えられる信号によって、トランジスタSW1の導通状態または非導通状態
が制御される。また、配線VCOM1からは、所定の電位が与えられる。また、配線S1
から与えられる信号によって、液晶素子3010の液晶の配向状態を制御することができ
る。また、配線CSCOMからは、所定の電位が与えられる。
【0252】
配線G2から与えられる信号によって、トランジスタSW2の導通状態または非導通状態
が制御される。また、配線VCOM2及び配線ANOからそれぞれ与えられる電位の電位
差によって、発光素子3011を発光させることができる。また、配線S2から与えられ
る信号によって、トランジスタMの導通状態を制御することができる。
【0253】
したがって、本実施の形態で示す構成において、例えば反射モードの場合には、配線G1
及び配線S1から与えられる信号により液晶素子3010を制御し、光学変調を利用して
表示させることができる。また、透過モードの場合には、配線G2及び配線S2から与え
られる信号により発光素子3011を発光させることができる。さらに両方のモードを同
時に用いる場合には、配線G1、配線G2、配線S1及び配線S2のそれぞれから与えら
れる信号に基づき所望の駆動を行うことができる。
【0254】
次に、本実施の形態で説明する表示装置3000の断面概略図を
図17に示し、詳細を説
明する。
【0255】
表示装置3000は、基板3021と基板3022との間に、発光素子3023および液
晶素子3024を有する。なお、発光素子3023および液晶素子3024は、絶縁層3
025を介してそれぞれ形成される。すなわち、基板3021と絶縁層3025との間に
発光素子3023を有し、基板3022と絶縁層3025との間に液晶素子3024を有
する。
【0256】
絶縁層3025と発光素子3023との間には、トランジスタ3015、トランジスタ3
016、トランジスタ3017、および着色層3028等を有する。
【0257】
基板3021と発光素子3023との間には、接着層3029を有する。また、発光素子
3023は、絶縁層3025側から一方の電極となる導電層3030、EL層3031、
他方の電極となる導電層3032の順に積層された積層構造を有する。なお、発光素子3
023は、ボトムエミッション型の発光素子であるため、導電層3032は可視光を反射
する材料を含み、導電層3030は可視光を透過する材料を含む。発光素子3023が発
する光は、着色層3028、絶縁層3025を透過し、さらに開口部3033を通って液
晶素子3024を透過した後、基板3022から外部に射出される。
【0258】
絶縁層3025と基板3022との間には、液晶素子3024の他、着色層3034、遮
光層3035、絶縁層3046および構造体3036等を有する。また、液晶素子302
4は、一方の電極となる導電層3037、液晶3038、他方の電極となる導電層303
9、および配向膜3040、3041等を有する。なお、液晶素子3024は、反射型の
液晶素子であり、導電層3039は、反射電極として機能するため反射率の高い材料を用
いる。また、導電層3037は、透明電極として機能するため可視光を透過する材料を含
む。さらに、導電層3037および導電層3039の液晶3038側には、それぞれ配向
膜3040、3041を有する。また、絶縁層3046は、着色層3034及び遮光層3
035を覆うように設けられており、オーバーコートとしての機能を有する。なお、配向
膜3040、3041は不要であれば設けなくてもよい。
【0259】
導電層3039の一部には、開口部3033が設けられている。なお、導電層3039に
接して導電層3043を有しており、導電層3043は、透光性を有するため可視光を透
過する材料を含む。
【0260】
構造体3036は、絶縁層3025と基板3022とが必要以上に接近することを抑制す
るスペーサとしての機能を有する。なお、構造体3036は不要であれば設けなくてもよ
い。
【0261】
トランジスタ3015のソース又はドレインのいずれか一方は、発光素子3023の導電
層3030と電気的に接続されている。例えばトランジスタ3015は、
図16に示すト
ランジスタMに対応する。
【0262】
トランジスタ3016のソース又はドレインのいずれか一方は、端子部3018を介して
液晶素子3024の導電層3039及び導電層3043と電気的に接続されている。すな
わち、端子部3018は、絶縁層3025の両面に設けられる導電層同士を電気的に接続
する機能を有する。なお、トランジスタ3016は、
図16に示すトランジスタSW1に
対応する。
【0263】
基板3021と基板3022とが重ならない領域には、端子部3019が設けられている
。端子部3019は端子部3018と同様に、絶縁層3025の両面に設けられる導電層
同士を電気的に接続する。端子部3019は、導電層3043と同一の導電膜を加工して
得られた導電層と電気的に接続されている。これにより、端子部3019とFPC304
4とを接続層3045を介して電気的に接続することができる。
【0264】
また、接着層3042が設けられる一部の領域には、接続部3047が設けられている。
接続部3047において、導電層3043と同一の導電膜を加工して得られた導電層と、
導電層3037の一部が、接続体3048によって電気的に接続されている。したがって
、導電層3037に、FPC3044から入力される信号または電位を、接続部3047
を介して供給することができる。
【0265】
導電層3037と導電層3043の間に、構造体3036が設けられている。構造体30
36は、液晶素子3024のセルギャップを保持する機能を有する。
【0266】
導電層3043としては、金属酸化物、金属窒化物、または低抵抗化された酸化物半導体
等の酸化物を用いることが好ましい。酸化物半導体を用いる場合には、水素、ボロン、リ
ン、窒素、及びその他の不純物の濃度、並びに酸素欠損量の少なくとも一が、トランジス
タに用いる半導体層に比べて高められた材料を、導電層3043に用いればよい。
【0267】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【実施例0268】
本実施例では、本発明の一態様である発光素子の素子構造およびその作製方法について、
説明する。なお、本実施例で説明する発光素子の素子構造を
図18に示し、具体的な構成
について表1に示す。また、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0269】
【0270】
【0271】
【0272】
≪発光素子の作製≫
<発光素子1および比較発光素子2の作製>
本実施例で示す発光素子は、
図18に示すように基板900上に第1の電極901が形成
され、第1の電極901上に第1のEL層902aが形成され、第1のEL層902a上
に電荷発生層904が形成され、電荷発生層904上に第2のEL層902bが形成され
、第2のEL層902b上に第2の電極903が形成される。
【0273】
まず、基板900上に第1の電極901を形成した。電極面積は、4mm2(2mm×2
mm)とした。また、基板900には、ガラス基板を用いた。また、第1の電極901は
、アルミニウム(Al)とニッケル(Ni)とランタン(La)の合金膜(Al-Ni-
La)をスパッタリング法により、200nmの膜厚で成膜した後、Tiをスパッタリン
グ法により3nmの膜厚で成膜し、さらにITSOをスパッタリング法により成膜して形
成した。ITSOの膜厚は、発光素子1の場合75nmとなるように形成し、比較発光素
子2の場合は85nmとなるように形成した。なお、本実施例において、第1の電極90
1は、陽極として機能する。また、第1の電極901は、光を反射する機能を有する反射
電極である。
【0274】
ここで、前処理として、基板の表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオ
ゾン処理を370秒行った。その後、10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装
置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で60分間の真空焼成を
行った後、基板を30分程度放冷した。
【0275】
次に、第1の電極901上に第1の正孔注入層911aを形成した。第1の正孔注入層9
11aは、真空蒸着装置内を10-4Paに減圧した後、3-[4-(9-フェナントリ
ル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPPn)と、酸化モ
リブデンとの重量比をPCPPn:酸化モリブデン=1:0.5とし、発光素子1の場合
は、膜厚が15nmとなるように形成し、比較発光素子2の場合は、膜厚が20nmとな
るように共蒸着して形成した。
【0276】
次に、第1の正孔注入層911a上に第1の正孔輸送層912aを形成した。第1の正孔
輸送層912aは、PCPPnを用い、膜厚が15nmになるように蒸着して形成した。
【0277】
次に、第1の正孔輸送層912a上に発光層(A)913aを形成した。
【0278】
発光素子1の場合は、ホスト材料として9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニ
ル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)を用い、ゲスト材料(蛍光材料
)としてN,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス〔3-(9-フェニル
-9H-フルオレン-9-イル)フェニル〕-ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6
mMemFLPAPrn)を用い、重量比がCzPA:1,6mMemFLPAPrn=
1:0.05、膜厚が25nmになるように共蒸着して形成した。
【0279】
また、比較発光素子2の場合は、ホスト材料として7-[4-(10-フェニル-9-ア
ントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzP
A)、ゲスト材料(蛍光材料)として1,6mMemFLPAPrnを用い、重量比がc
gDBCzPA:1,6mMemFLPAPrn=1:0.03、膜厚が25nmになる
ように共蒸着して形成した。
【0280】
次に、発光層(A)913a上に第1の電子輸送層914aを形成した。第1の電子輸送
層914aは、発光素子1の場合は、CzPAの膜厚が5nm、バソフェナントロリン(
略称:Bphen)の膜厚が15nmとなるように順次蒸着して形成した。比較発光素子
2の場合は、cgDBCzPAの膜厚が10nm、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル
)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBphen)の膜厚が
15nmとなるように順次蒸着して形成した。
【0281】
次に、第1の電子輸送層914a上に第1の電子注入層915aを形成した。第1の電子
注入層915aは、酸化リチウム(Li2O)を用い、膜厚が0.1nmになるように蒸
着して形成した。
【0282】
次に、第1の電子注入層915a上に電荷発生層904を形成した。電荷発生層904は
、銅フタロシアニン(略称:CuPc)を用い、膜厚が2nmになるように蒸着して形成
した。
【0283】
次に、電荷発生層904上に第2の正孔注入層911bを形成した。第2の正孔注入層9
11bは、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオ
フェン)(略称:DBT3P-II)と酸化モリブデンとの重量比をDBT3P-II:
酸化モリブデン=1:0.5とし、発光素子1の場合は、膜厚が12.5nmになるよう
に共蒸着し、比較発光素子2の場合は、膜厚が10nmになるように共蒸着し、それぞれ
形成した。
【0284】
次に、第2の正孔注入層911b上に第2の正孔輸送層912bを形成した。第2の正孔
輸送層912bは、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフ
ェニルアミン(略称:BPAFLP)を用い、発光素子1の場合は、膜厚が20nmにな
るように蒸着し、比較発光素子2の場合は、膜厚が15nmになるように蒸着し、それぞ
れ形成した。
【0285】
次に、第2の正孔輸送層912b上に発光層(B)913bを形成した。発光層(B)9
13bは、発光層(B1)913(b1)と発光層(B2)913(b2)との積層構造
を有する。
【0286】
発光素子1の場合は、ホスト材料として2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)
ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq
-II)、アシスト材料として4、4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル
-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、ゲスト
材料(燐光材料)として(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェ
ニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)2(acac
)])を用い、重量比が2mDBTBPDBq-II:PCBNBB:[Ir(tBup
pm)2(acac)]=0.7:0.3:0.06、膜厚が20nmになるように共蒸
着して発光層(B1)913(b1)を形成した。また、ホスト材料として2mDBTB
PDBq-II、ゲスト材料(燐光材料)としてビス{4,6-ジメチル-2-[3-(
3,5-ジメチルフェニル)-5-フェニル-2-ピラジニル-κN]フェニル-κC}
(2,6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κ2O,O’)イリジウム(III)
(略称:[Ir(dmdppr-P)2(dibm)])を用い、重量比が2mDBTB
PDBq-II:[Ir(dmdppr-P)2(dibm)]=1:0.04、膜厚が
20nmになるように共蒸着して発光層(B2)913(b2)を形成した。
【0287】
比較発光素子2の場合は、ホスト材料として2mDBTBPDBq-II、アシスト材料
としてN-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カ
ルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン
(略称:PCBBiF)、ゲスト材料(燐光材料)として[Ir(tBuppm)2(a
cac)]を用い、重量比が2mDBTBPDBq-II:PCBBiF:[Ir(tB
uppm)2(acac)]=0.8:0.2:0.06、膜厚が20nmになるように
共蒸着して発光層(B1)913(b1)を形成した。また、ホスト材料として2mDB
TBPDBq-II、アシスト材料としてPCBBiF、ゲスト材料(燐光材料)として
ビス[2-(5-(2,6-ジメチルフェニル)-3-(3,5-ジメチルフェニル)-
2-ピラジニル-κN)-4,6-ジメチルフェニル-κC](2,2,6,6-テトラ
メチル-3,5-ヘプタンジオナト-κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:[I
r(dmdppr-dmp)2(dpm)])を用い、重量比が2mDBTBPDBq-
II:PCBBiF:[Ir(dmdppr-dmp)2(dpm)]=0.8:0.2
:0.06、膜厚が10nmになるように共蒸着した後、ホスト材料として2mDBTB
PDBq-II、アシスト材料としてPCBBiF、ゲスト材料(燐光材料)として[I
r(tBuppm)2(acac)]を用い、重量比が2mDBTBPDBq-II:P
CBBiF:[Ir(tBuppm)2(acac)]=0.8:0.2:0.06、膜
厚が10nmになるように共蒸着して積層構造を有する発光層(B2)913(b2)を
形成した。
【0288】
次に、発光層(B2)913(b2)上に第2の電子輸送層914bを形成した。第2の
電子輸送層914bは、発光素子1の場合は、2mDBTBPDBq-IIの膜厚が30
nm、Bphenの膜厚が15nmとなるように順次蒸着し、比較発光素子2の場合は、
2mDBTBPDBq-IIの膜厚が30nm、NBphenの膜厚が15nmとなるよ
うに順次蒸着して形成した。
【0289】
次に、第2の電子輸送層915b上に第2の電子注入層915bを形成した。第2の電子
注入層915bは、フッ化リチウム(LiF)を用い、膜厚が1nmになるように蒸着し
て形成した。
【0290】
次に、第2の電子注入層915b上に第2の電極903を形成した。第2の電極903は
、発光素子1の場合は、銀(Ag)とマグネシウム(Mg)との体積比を1:0.1とし
、膜厚が15nmになるように共蒸着して形成した後、インジウム錫酸化物(ITO)を
スパッタリング法により、膜厚が70nmとなるように形成した。また、比較発光素子2
の場合は、銀(Ag)とマグネシウム(Mg)との体積比を1:0.05とし、膜厚が1
5nmになるように共蒸着して形成した後、インジウム錫酸化物(ITO)をスパッタリ
ング法により、膜厚が70nmとなるように形成した。なお、本実施例において、第2の
電極903は、陰極として機能する。また、第2の電極903は、光を反射する機能と光
を透過する機能とを有する半透過・半反射電極である。
【0291】
以上の工程により、基板900上に一対の電極間にEL層を挟んでなる発光素子を形成し
た。なお、上記工程で説明した第1の正孔注入層911a、第1の正孔輸送層912a、
発光層(A)913a、第1の電子輸送層914a、第1の電子注入層915a、第2の
正孔注入層911b、第2の正孔輸送層912b、発光層(B)913b、第2の電子輸
送層914b、第2の電子注入層915bは、本発明の一態様におけるEL層を構成する
機能層である。また、上述した作製方法における蒸着工程では、全て抵抗加熱法による蒸
着法を用いた。
【0292】
本実施例により作製した発光素子は、
図18に示すように基板900と基板905により
封止される。なお、基板900と基板905との封止は、窒素雰囲気のグローブボックス
内において、封止材を用いて基板905を基板900上に固定し、シール材を基板900
上に形成された発光素子の周囲に塗布し、封止時に365nmの紫外光を6J/cm
2照
射し、80℃にて1時間熱処理することにより行った。
【0293】
なお、発光素子1および比較発光素子2は、発光素子の第2の電極903側から矢印の方
向に光が出る構造を有する。
【0294】
≪発光素子の動作特性≫
作製した各発光素子の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた
雰囲気)で行った。また、結果を
図19~
図22に示す。
【0295】
以下の表2に1000cd/m2付近における各発光素子の主な初期特性値を示す。
【0296】
【0297】
また、発光素子1および比較発光素子2に2.5mA/cm
2の電流密度で電流を流した
際の発光スペクトルを、
図23に示す。いずれの素子も赤([Ir(dmdppr-P)
2(dibm)]および[Ir(dmdppr-dmp)
2(dpm)])、緑([Ir
(tBuppm)
2(acac)])、青(1,6mMemFLPAPrn)の三色の発
光材料を有する白色タンデム発光素子であるが、いずれの素子においても赤色領域(60
0nm以上)の発光強度がマイクロキャビティ効果により強調されていることが分かる。
なお、発光素子1および比較発光素子2のスペクトルの半値幅は、それぞれ約80nmお
よび約40nmである。一方で、
図23に示す通り、発光素子1の発光スペクトルは62
4nm付近にピークを有するのに対し、比較発光素子2の発光スペクトルは605nm付
近にピークを有している。すなわち、発光素子1は、比較発光素子2に比べて発光スペク
トルのピークが長波長化されていることがわかる。
【0298】
次に、上記発光素子1および比較発光素子2の構成に加えて、光学素子(カラーフィルタ
)を組み合わせた場合における発光素子の特性評価を行った。
【0299】
光学素子(カラーフィルタ:CF)としては、
図24に示す光学特性を有する6種類(C
F1、CF2、CF3、CF4、CF5、CF6)のカラーフィルタを用いた。
【0300】
図25には、発光素子1に6種類のカラーフィルタを組み合わせた際のそれぞれの発光ス
ペクトルと、カラーフィルタを組み合わせない場合の発光スペクトルを示す。また、
図2
6には、比較発光素子2に6種類のカラーフィルタを組み合わせた際のそれぞれの発光ス
ペクトルと、カラーフィルタを組み合わせない場合の発光スペクトルを示す。また、以下
の表3には、各カラーフィルタと組み合わせた発光素子1と比較発光素子2の色度をそれ
ぞれ示す。
【0301】
【0302】
この結果、発光素子1との組み合わせにおいて、CF1の場合は、色度のx座標が0.6
8に達しないが、CF2の場合は、色度のx座標が0.68以上となるため、発光素子1
に用いるカラーフィルタとしては、波長600nmの光の透過率が40%以下であること
が好ましいことがわかる。また、CF3の場合に色度のx座標が0.685に到達し、色
度がより向上することを考慮すると、発光素子1に用いるカラーフィルタとしては、波長
600nmの光の透過率が30%以下であることがより好ましいと言える。また、CF4
の場合に色度のx座標が0.691となり、0.69以上となる。したがって色度がより
向上することを考慮すると、発光素子1に用いるカラーフィルタとしては、波長600n
mの光の透過率が20%以下であることがさらに好ましいと言える。ここで重要な点は、
図25に示した発光スペクトルのピーク強度を考慮した場合、CF2、CF3、およびC
F4を用いた場合における発光スペクトルのピーク強度は維持されている点である。この
ことは、発光素子1のように発光スペクトルのピーク波長が620nm以上であり、半値
幅が120nm以下であれば、上述した特定のカラーフィルタと組み合わせて色度のx座
標が0.68以上となる赤色を得る際においても、高い効率を維持することができること
を意味している。
【0303】
また、CF5およびCF6の場合は、いずれも色度のx座標が0.70となる。しかし、
発光スペクトルのピーク強度を比較すると、CF5の場合には、CF無しの場合の半分以
上のピーク強度を維持している(6割程度である)が、CF6の場合には、CF5よりも
さらにピーク強度が激減し、CF無しの場合の4割程度にまで低下していることがわかる
。つまり、CF6のようにカラーフィルタの透過波長を長波長化させるだけでは、色純度
の向上と発光ピーク強度の維持(発光効率の維持)の両方を実現できないことがわかる。
すなわち、波長630nmの光においては、CFの透過率が40%以上であることが好ま
しいと言える。
【0304】
なお、本実施例では、CF2、CF3、およびCF4に加えて、CF5と発光素子1との
組み合わせにおいて、発光素子の高色純度と高効率を実現できるという結果が得られたこ
とから、本実施例における発光素子1のように、半値幅が5nm以上120nm以下であ
り、かつ発光スペクトルのピーク値が620nm以上680nm以下の発光を示す発光素
子に対し、600nmの光の透過率が40%以下であり、かつ630nmの光の透過率が
40%以上であるカラーフィルタと組み合わせることにより、色度のx座標が0.68以
上となる色度の良い赤色発光を効率よく得ることができる。
【0305】
一方、比較発光素子2とカラーフィルタとの組み合わせにおいて、カラーフィルタの透過
特性をCF4まで長波長シフトさせることで、色度のx座標を0.68とすることはでき
る。しかし、この時の発光ピーク強度は、CF無しの場合の半分以下のピーク強度となる
。カラーフィルタの透過特性をさらに長波長シフトさせてCF5やCF6を使った場合に
は、色度のx座標が向上(数値の増加)することはなく(色純度が高まることなく)、発
光ピーク強度だけがさらに低下する。
【0306】
すなわち、発光素子1の場合と異なり、比較発光素子2の場合には、透過特性を長波長シ
フトさせるべくカラーフィルタを変えても、色度のx座標が0.69以上に向上させるこ
とはできなかった。また、色度のx座標が0.68以上の領域では、顕著に発光効率が低
下した。
【0307】
従って、本発明の一態様である発光素子は、本実施例1で示した発光素子1のようにCF
無しの場合において、半値幅が5nm以上120nm以下であり、かつ発光スペクトルの
ピーク値が620nm以上680nm以下である発光が得られる発光素子であることが好
ましい。なお、このような素子特性を得るためには、本実施例の発光素子1の発光層に用
いた[Ir(dmdppr-P)
2(dibm)]のような発光スペクトルのピーク値が
600nm以上700nm以下である発光物質を用いることが好ましい。この物質のジク
ロロメタン溶液中におけるフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを
図27に示す。溶
液濃度は約1×10
-5mol/Lである。図からわかるように、この物質の発光スペク
トルのピークは640nm近傍である。
【0308】
(参考例)
本参考例では、本発明の一態様である発光素子の発光層に用いることのできる発光物質で
あって、発光スペクトルのピーク値が600nm以上700nm以下である有機金属錯体
、ビス{4,6-ジメチル-2-[5-(4-シアノ-2,6-ジメチルフェニル)-3
-(3,5-ジメチルフェニル)-2-ピラジニル-κN]フェニル-κC}(2,2,
6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κ2O,O’)イリジウム(III
)(略称:[Ir(dmdppr-dmCP)2(dpm)])(構造式(100))の
合成方法について説明する。なお、[Ir(dmdppr-dmCP)2(dpm)]の
構造を以下に示す。
【0309】
【0310】
<ステップ1:5-ヒドロキシ-2,3-(3,5-ジメチルフェニル)ピラジンの合成
>
まず、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジル5.27gとグリシンアミド塩酸塩2
.61g、水酸化ナトリウム1.92g、メタノール50mLを、還流管を付けた三口フ
ラスコに入れ、フラスコ内部を窒素置換した。その後、これを80℃で7時間撹拌するこ
とで反応させた。ここに12M塩酸2.5mLを加え30分撹拌した後、炭酸水素カリウ
ム2.02gを加え、30分撹拌した。この懸濁液を吸引ろ過した後、得られた固体を水
、メタノールで洗浄することにより、目的のピラジン誘導体を得た(乳白色粉末、収率7
9%)。ステップ1の合成スキームを下記(a-1)に示す。
【0311】
【0312】
<ステップ2:5,6-ビス(3,5-ジメチルフェニル)ピラジン-2-イルトリフル
オロメタンスルホン酸の合成>
次に、上記ステップ1で得た5-ヒドロキシ-2,3-(3,5-ジメチルフェニル)ピ
ラジン4.80gとトリエチルアミン4.5mL、脱水ジクロロメタン80mLを三口フ
ラスコに入れ、内部を窒素置換した。このフラスコを-20℃に冷却した後、トリフルオ
ロメタンスルホン酸無水物3.5mLを滴下し、室温で17時間半攪拌した。その後、フ
ラスコを0℃に冷却した後、更にトリフルオロメタンスルホン酸無水物0.7mLを滴下
し、室温で22時間攪拌して反応させた。反応溶液に水50mL、1M塩酸5mLを加え
、ジクロロメタンを加えて、反応溶液中に含まれる物質をジクロロメタン中に抽出させた
。このジクロロメタンに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水を加えて洗浄し
、硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。乾燥後にこの溶液をろ過し、ろ液を濃縮して得
られた残渣を、トルエン:ヘキサン=1:1(体積比)を展開溶媒とするシリカゲルカラ
ムクロマトグラフィーで精製し、目的のピラジン誘導体を得た(黄色オイル、収率96%
)。ステップ2の合成スキームを下記(a-2)に示す。
【0313】
【0314】
<ステップ3:5-(4-シアノ-2,6-ジメチルフェニル)-2,3-ビス(3,5
-ジメチルフェニル)ピラジン(略称:Hdmdppr-dmCP)の合成>
次に、上記ステップ2で得た5,6-ビス(3,5-ジメチルフェニル)ピラジン-2-
イルトリフルオロメタンスルホン酸2.05g、4-シアノ-2,6-ジメチルフェニル
ボロン酸1.00g、リン酸三カリウム3.81g、トルエン40mL、水4mLを三口
フラスコに入れ、内部を窒素置換した。フラスコ内を減圧下で撹拌することで脱気した後
、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.044g、トリス(2,6
-ジメトキシフェニル)ホスフィン0.084gを加え、7時間還流した。反応溶液に水
を加え、トルエンを加えて、反応溶液中に含まれる物質をトルエン中に抽出させた。この
トルエンに飽和食塩水を加えて洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。乾燥後に
この溶液をろ過し、ろ液を濃縮して得られた残渣を、ヘキサン:酢酸エチル=5:1(体
積比)を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的のピラジン
誘導体Hdmdppr-dmCPを得た(白色粉末、収率90%)。ステップ3の合成ス
キームを下記(a-3)に示す。
【0315】
【0316】
<ステップ4:ジ-μ-クロロ-テトラキス{4,6-ジメチル-2-[5-(4-シア
ノ-2,6-ジメチルフェニル)-3-(3,5-ジメチルフェニル)-2-ピラジニル
-κN]フェニル-κC}ジイリジウム(III)(略称:[Ir(dmdppr-dm
CP)2Cl]2)の合成>
次に、2-エトキシエタノール15mLと水5mL、上記ステップ3で得たHdmdpp
r-dmCP(略称)1.74g、塩化イリジウム水和物(IrCl3・H2O)(フル
ヤ金属社製)0.60gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン
置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 100W)を1時間照射し、反応させ
た。溶媒を留去した後、得られた残渣をヘキサンで吸引ろ過、洗浄し、複核錯体[Ir(
dmdppr-dmCP)2Cl]2を得た(褐色粉末、収率89%)。また、ステップ
4の合成スキームを下記(a-4)に示す。
【0317】
【0318】
<ステップ5:ビス{4,6-ジメチル-2-[5-(4-シアノ-2,6-ジメチルフ
ェニル)-3-(3,5-ジメチルフェニル)-2-ピラジニル-κN]フェニル-κC
}(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κ2O,O’)イリジ
ウム(III)(略称:[Ir(dmdppr-dmCP)2(dpm)]の合成>
さらに、2-エトキシエタノール30mL、上記ステップ4で得た複核錯体[Ir(dm
dppr-dmCP)2Cl]20.96g、ジピバロイルメタン(略称:Hdpm)0
.26g、炭酸ナトリウム0.48gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、フラスコ
内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 100W)を60分間照
射した。ここで更に、Hdpm0.13gを加え、反応容器にマイクロ波(2.45GH
z 120W)を60分間照射することで反応させた。溶媒を留去し、得られた残渣を、
ジクロロメタン:ヘキサン=1:1(体積比)を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマ
トグラフィーにより精製した。更に、ジクロロメタンを展開溶媒とするシリカゲルカラム
クロマトグラフィーにより精製した後、ジクロロメタンとメタノールの混合溶媒にて再結
晶することにより、有機金属錯体[Ir(dmdppr-dmCP)2(dpm)]を赤
色粉末として得た(収率37%)。得られた赤色粉末0.39gを、トレインサブリメー
ション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.6Pa、アルゴンガスを流量5
mL/minで流しながら、300℃で加熱した。昇華精製後、目的物の赤色固体を収率
85%で得た。ステップ5の合成スキームを下記(a-5)に示す。
【0319】
【0320】
なお、上記ステップ5で得られた赤色粉末の核磁気共鳴分光法(1H-NMR)による分
析結果を下記に示す。このことから、本合成例において、上述の構造式(100)で表さ
れる有機金属錯体[Ir(dmdppr-dmCP)2(dpm)]が得られたことがわ
かった。
【0321】
1H-NMR.δ(CD2Cl2):0.91(s,18H),1.41(s,6H),
1.95(s,6H),2.12(s,12H),2.35(s,12H),5.63(
s,1H),6.49(s,2H),6.86(s,2H),7.17(s,2H),7
.34(s,4H),7.43(s,4H),8.15(s,2H).