(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156930
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】コネクタ及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01R 12/71 20110101AFI20241029BHJP
【FI】
H01R12/71
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024130949
(22)【出願日】2024-08-07
(62)【分割の表示】P 2021021206の分割
【原出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】吉田 宗信
(72)【発明者】
【氏名】北村 耀
(57)【要約】
【課題】コンタクトの弾性変形を利用することによってコネクタを回路基板に対して可動にし、さらに弾性変形によりコンタクトの実装部に加わる負荷を低減することで、信頼性を向上させることが可能なコネクタを提供する。
【解決手段】本開示に係るコネクタ10は、回路基板CB1に実装され、接続対象物50と嵌合するコネクタ10であって、一対の側壁21bを有し、矩形状に形成されているインシュレータ20と、側壁21bに取り付けられている複数のコンタクト40と、を備え、コンタクト40は、実装部41と、弾性部43と、接触部46と、を有し、実装部41は、回路基板CB1に実装され、接触部46は、コネクタ10と接続対象物50とが互いに嵌合する嵌合状態で接続対象物50と接触し、弾性部43は、実装部41と接触部46との間に位置し、弾性変形可能であり、弾性部43とインシュレータ20との間に空間が形成されている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に実装され、接続対象物と嵌合するコネクタであって、
一対の側壁を有し、矩形状に形成されているインシュレータと、
前記側壁に取り付けられている複数のコンタクトと、
を備え、
前記コンタクトは、実装部と、弾性部と、接触部と、を有し、
前記実装部は、前記回路基板に実装され、
前記接触部は、前記コネクタと前記接続対象物とが互いに嵌合する嵌合状態で前記接続対象物と接触し、
前記弾性部は、前記実装部と前記接触部との間に位置し、弾性変形可能であり、
前記弾性部と前記インシュレータとの間に空間が形成されている、
コネクタ。
【請求項2】
前記弾性部は、前記コネクタと前記接続対象物とが互いに嵌合する嵌合方向と直交する方向に屈曲する屈曲部を含む、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記インシュレータは、前記実装部側に向けて前記インシュレータを切り欠いた切欠部であって、前記空間を形成する前記切欠部を有する、
請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記切欠部は、前記弾性部における前記接触部側の端部から前記実装部側に向けて前記インシュレータを切り欠いている、
請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記空間は、前記コネクタと前記接続対象物とが互いに嵌合する嵌合方向と直交する方向において前記弾性部と前記インシュレータとの間に形成されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記コンタクトは、前記側壁に対して支持されている被支持部を有し、
前記弾性部は、前記実装部と前記被支持部との間に位置する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記コンタクトは、前記コネクタの長手方向に沿って前記弾性部の幅を減じるくびれ部を有する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記くびれ部は、前記弾性部における前記実装部側の端部に位置する、
請求項7に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記屈曲部は、前記インシュレータと反対側に形成されるように屈曲する、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記コンタクトは、前記実装部と前記屈曲部との間に位置し、前記インシュレータに係止する係止部を有する、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のコネクタを備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタ及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタに取り付けられているコンタクト又は金具は、回路基板に実装される実装部を有する。従来、このような実装部に加わる応力に起因したはんだクラックなどによる実装部の剥離及び破損などを抑制するための技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、回路基板との接続固定強度を大きくしつつ、回路基板からの端子の接続部の剥離を防止するとともに、該接続部の損傷を防止できる回路基板付レセプタクルコネクタが開示されている。特許文献2には、ハウジングから基板固定部にかかる応力を緩和でき、基板固定部の基板に対する固定強度を向上することができる基板用コネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-204479号公報
【特許文献2】特開2015-056202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の回路基板付レセプタクルコネクタ及び特許文献2に記載の基板用コネクタのいずれにおいても、コンタクトの弾性変形によってコネクタを可動にし、応力によってコンタクトの実装部に加わる負荷を軽減することについて十分に考慮されていなかった。例えば回路基板に平行な方向の力、及び回路基板に平行な平面における回転方向の力などがコネクタに加わったときにコンタクトの実装部に応力が加わり、はんだクラックなどによる実装部の剥離及び破損などが生じる可能性がある。
【0006】
市場の要求として、特に産業機器及び車載などに搭載されるコネクタに関しては、嵌合時の嵌合作業性の向上及び振動対策が求められる。具体的には、接続対象物がコネクタに対して位置ズレ状態で嵌合する場合、並びに回路基板及びコネクタに振動が加わった場合にはんだ付け部としての実装部にクラックが入り、実装部の剥離及び短絡が発生するという問題がある。
【0007】
はんだクラックを抑制するための対策として、特許文献2には、回路基板にコネクタを固定し、金具で応力分散を行うことでコンタクトへの負荷を低減させる基板用コネクタが開示されている。しかしながら、コネクタが回路基板に対して可動に構成されていないため、金具に応力が集中してコネクタが変位した際にはコンタクト及びはんだ付け部に応力が生じ、破損及び短絡などが生じる可能性がある。
【0008】
このような問題点に鑑みてなされた本開示の目的は、コンタクトの弾性変形を利用することによってコネクタを回路基板に対して可動にし、さらに弾性変形によりコンタクトの実装部に加わる負荷を低減することで、信頼性を向上させることが可能なコネクタ及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の一実施形態に係るコネクタは、
回路基板に実装され、接続対象物と嵌合するコネクタであって、
一対の側壁を有し、矩形状に形成されているインシュレータと、
前記側壁に取り付けられている複数のコンタクトと、
を備え、
前記コンタクトは、実装部と、弾性部と、接触部と、を有し、
前記実装部は、前記回路基板に実装され、
前記接触部は、前記コネクタと前記接続対象物とが互いに嵌合する嵌合状態で前記接続対象物と接触し、
前記弾性部は、前記実装部と前記接触部との間に位置し、弾性変形可能であり、
前記弾性部と前記インシュレータとの間に空間が形成されている。
【0010】
上記課題を解決するために、本開示の一実施形態に係る電子機器は、
上記のコネクタを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一実施形態に係るコネクタ及び電子機器によれば、コンタクトの弾性変形を利用することによってコネクタを回路基板に対して可動にし、さらに弾性変形によりコンタクトの実装部に加わる負荷を低減することで、信頼性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】接続対象物が接続されている状態の一実施形態に係るコネクタを上面視で示した外観斜視図である。
【
図2】接続対象物と分離している状態の一実施形態に係るコネクタを上面視で示した外観斜視図である。
【
図3】
図1のコネクタ単体を上面視で示した外観斜視図である。
【
図4】
図3のコネクタの上面視による分解斜視図である。
【
図7】
図3のVII-VII矢線に沿った断面図である。
【
図8】
図6のVIII-VIII矢線に沿った断面図である。
【
図10】
図3のコネクタと接続される接続対象物を上面視により示した外観斜視図である。
【
図11】
図10の接続対象物の上面視による分解斜視図である。
【
図12】
図1のXII-XII矢線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について詳細に説明する。以下の説明中の前後、左右、及び上下の方向は、図中の矢印の方向を基準とする。各矢印の方向は、
図1乃至
図9、及び
図12において、異なる図面同士で互いに整合している。各矢印の方向は、
図10及び
図11同士で互いに整合している。図面によっては、簡便な図示を目的として、後述する回路基板CB1及びCB2の図示を省略する。
【0014】
図1は、接続対象物50が接続されている状態の一実施形態に係るコネクタ10を上面視で示した外観斜視図である。
図2は、接続対象物50と分離している状態の一実施形態に係るコネクタ10を上面視で示した外観斜視図である。例えば
図2に示すとおり、コネクタ10は、インシュレータ20と、金具30と、コンタクト40と、を有する。接続対象物50は、インシュレータ60と、金具70と、コンタクト80と、を有する。
【0015】
以下では、例えば、一実施形態に係るコネクタ10はプラグコネクタであり、接続対象物50はリセプタクルコネクタであるとして説明する。すなわち、コネクタ10と接続対象物50とが互いに嵌合する嵌合状態で、コンタクト40においてコンタクト80と接触する部分が弾性変形しないコネクタ10をプラグコネクタとして説明する。一方で、嵌合状態で、コンタクト80においてコンタクト40と接触する部分が弾性変形する接続対象物50をリセプタクルコネクタとして説明する。コネクタ10及び接続対象物50の種類は、これらに限定されない。例えば、コネクタ10がリセプタクルコネクタの役割を果たし、接続対象物50がプラグコネクタの役割を果たしてもよい。
【0016】
以下では、コネクタ10及び接続対象物50は、回路基板CB1及びCB2にそれぞれ実装されるとして説明する。コネクタ10は、コネクタ10と嵌合した接続対象物50を介して、接続対象物50が実装されている回路基板CB2と回路基板CB1とを電気的に接続する。回路基板CB1及びCB2は、リジッド基板であってよいし、又はそれ以外の任意の回路基板であってもよい。例えば、回路基板CB1及びCB2の少なくとも一方は、フレキシブルプリント回路基板(FPC)であってもよい。
【0017】
以下では、コネクタ10及び接続対象物50は、回路基板CB1及びCB2に対して垂直方向に互いに接続されるとして説明する。すなわち、コネクタ10及び接続対象物50は、一例として上下方向に沿って互いに接続される。接続方法は、これに限定されない。コネクタ10及び接続対象物50は、回路基板CB1及びCB2に対して平行方向に互いに接続されてもよいし、実装されている回路基板に対して一方が垂直方向となるように、かつ実装されている回路基板に対して他方が平行方向となるように、互いに接続されてもよい。
【0018】
以下の説明中で使用する「嵌合方向」は、一例として上下方向を意味する。「コネクタ10の短手方向」は、一例として前後方向を意味する。「コンタクト40の板厚方向」は、一例として前後方向を意味する。「コネクタ10の長手方向」は、一例として左右方向を意味する。「嵌合方向と直交する方向」は、一例として前後方向及び左右方向を意味する。
【0019】
図3は、
図1のコネクタ10単体を上面視で示した外観斜視図である。
図4は、
図3のコネクタ10の上面視による分解斜視図である。
図5は、
図3のV-V矢線に沿った断面図である。
図6は、
図5の破線囲み部VIの拡大図である。
図7は、
図3のVII-VII矢線に沿った断面図である。
図8は、
図6のVIII-VIII矢線に沿った断面図である。
【0020】
図4に示すとおり、コネクタ10は、一例として以下の方法で組み立てられる。すなわち、インシュレータ20に対して下方から金具30を圧入する。同様に、インシュレータ20に対して上方からコンタクト40を圧入する。
【0021】
以下では、コンタクト40が弾性変形していない状態におけるコネクタ10の各部品の構成について主に説明する。初めに、
図4を主に参照しながら、インシュレータ20の構成について主に説明する。
【0022】
図4に示すとおり、インシュレータ20は、絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂材料を射出成形した、左右方向に延在する部材である。インシュレータ20は、矩形状に形成されている。インシュレータ20は、コネクタ10の長手方向に沿って延在し、接続対象物50のインシュレータ60と嵌合する。インシュレータ20は、前後左右の4つの側壁を含み、内部の空間を囲繞する外周壁21を有する。より具体的には、外周壁21は、左右両側の一対の短手壁21aと前後両側の一対の長手壁21bとにより形成されている。
【0023】
インシュレータ20は、その周縁部から上方に向けて外周壁21が突出する底壁22を有する。底壁22は、一対の長手壁21bを連結するように連続して形成されている。インシュレータ20は、外周壁21及び底壁22により囲繞される内部の空間を含む嵌合凹部23を有する。
【0024】
インシュレータ20は、長手壁21bにおいて逆U字状に形成されている複数のコンタクト取付溝24を有する。複数のコンタクト取付溝24は、左右方向に沿って互いに所定の間隔で離間した状態で形成されている。
【0025】
図5にも示すとおり、コンタクト取付溝24は、長手壁21bの前後方向の外側において下端部に形成されている第1係止部24aを有する。コンタクト取付溝24は、長手壁21bの前後方向の外側において、第1係止部24aの上方で上下方向に沿って形成されている第1溝24bを有する。コンタクト取付溝24は、長手壁21bの上端部において逆U字状に折り返すように形成されている折返部24cを有する。コンタクト取付溝24は、長手壁21bの前後方向の内側において嵌合凹部23に沿って形成されている第2溝24dを有する。コンタクト取付溝24は、長手壁21bの前後方向の内側において下端部に形成されている第2係止部24eを有する。
【0026】
インシュレータ20は、長手壁21bの前後方向の外側において下端部に形成されている切欠部25を有する。切欠部25は、コンタクト取付溝24の第1係止部24a及び第1溝24bの下端部と前後方向に重畳し、コンタクト取付溝24よりもインシュレータ20の内側に形成されている。切欠部25の左右方向の幅は、コンタクト取付溝24の第1係止部24aの左右方向の幅と略同一である。切欠部25は、コンタクト取付溝24の第1溝24bの下端部に対応する上下位置から第1係止部24aの上下位置を過ぎてインシュレータ20の底面に至るまで連続的にインシュレータ20を切り欠いている。
【0027】
図7にも示すとおり、インシュレータ20は、左右方向の両端部において、インシュレータ20の内部に凹設されている金具取付溝26を有する。インシュレータ20は、短手壁21aの外側の上縁部全体から長手壁21bの左右両端部における外側の上縁部に至るまで形成されている誘い込み部27を有する。誘い込み部27は、上方から下方に向けて斜め外側に傾斜する傾斜面を含む。
【0028】
続いて、
図4及び
図7を主に参照しながら、金具30の構成について説明する。
【0029】
金具30は、任意の金属材料の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図に示す形状に成形加工したものである。金具30は、例えば抜き加工のみによって形成されている。金具30は、コネクタ10の長手方向に平坦となる。金具30の加工方法は、これに限定されず、抜き加工を行った後に板厚方向に屈曲させる工程を含んでもよい。金具30は、左右方向からの正面視において、M字状に形成されている。
【0030】
金具30は、その中央部全体を構成する係止部31を有する。金具30は、係止部31からコネクタ10の短手方向に沿って外側に延出する実装部32を有する。金具30は、係止部31における実装部32の延出部分に隣接する位置でコネクタ10と接続対象物50とが互いに嵌合する嵌合方向に沿って係止部31を切り欠いた切欠部33を有する。金具30は、各構成部の形状及び配置が前後方向に沿って対称的になるように形成されている。例えば、金具30は、各構成部の形状及び配置が金具30の中心を通る上下軸に対して線対称となるように形成されている。
【0031】
続いて、
図4乃至
図6、及び
図8を主に参照しながら、コンタクト40の構成について説明する。
【0032】
コンタクト40は、例えば、リン青銅、ベリリウム銅、若しくはチタン銅を含むばね弾性を備えた銅合金又はコルソン系銅合金の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図に示す形状に成形加工したものである。コンタクト40は、抜き加工を行った後に板厚方向に屈曲させて形成される。コンタクト40の板厚方向は、例えばコネクタ10の長手方向に直交する。すなわち、コンタクト40の板厚方向は、例えばコネクタ10の短手方向と略平行となる。
【0033】
コンタクト40は、弾性変形に伴う形状変化が大きくなるように、例えば弾性係数の小さい金属材料によって形成されている。コンタクト40の表面には、ニッケルめっきで下地を形成した後に、金又は錫などによるめっきが施されている。
【0034】
図4に示すとおり、コンタクト40は、左右方向に沿って複数配列されている。
図5に示すとおり、コンタクト40は、インシュレータ20に取り付けられている。同一の左右位置に配列される一対のコンタクト40は、前後方向に沿って互いに対称的に形成及び配置されている。すなわち、一対のコンタクト40は、その間の中心を通る上下軸に対して互いに線対称となるように形成及び配置されている。
【0035】
図4に示すとおり、コンタクト40は、その下端部において前後方向の外側に延出する実装部41を有する。コンタクト40は、実装部41の端部から上方に連続して形成されている幅広の第1係止部42を有する。
【0036】
コンタクト40は、第1係止部42の上端部から上方に連続して形成されている屈曲部43を有する。屈曲部43は、弾性変形可能な弾性部としても構成される。弾性部は、コネクタ10と接続対象物50とが互いに嵌合する嵌合方向と直交する方向に屈曲する屈曲部43を含む。例えば、屈曲部43は、コンタクト40の板厚方向に屈曲する。屈曲部43は、第1係止部42よりも前後方向の外側に向けて突出するように屈曲する。
図5にも示すとおり、屈曲部43は、インシュレータ20と反対側に突出するように山状に屈曲する。屈曲部43は、滑らかに屈曲しながら、前後方向の外側に向けてインシュレータ20から離間するように山状に隆起する。
【0037】
図4及び
図8に示すとおり、コンタクト40は、屈曲部43における実装部41側の端部に形成され、コネクタ10の長手方向に沿って屈曲部43の幅を減じるくびれ部44を有する。くびれ部44は、屈曲部43の下端部に形成され、第1係止部42と上下方向に隣接する。
【0038】
図4及び
図5に示すとおり、コンタクト40は、屈曲部43の上端部から上方に逆U字状に延出する被支持部45を有する。被支持部45は、屈曲部43の上端部から上方に直線状に延出する第1延長部45aを有する。被支持部45は、第1延長部45aの上端部から逆U字状に折り返す折返部45bを有する。被支持部45は、折返部45bの前後方向の内側の端部から下方に直線状に延出する第2延長部45cを有する。被支持部45は、第2延長部45cの先端に形成されている第2係止部45dを有する。第2係止部45dは、左右方向の幅を減じるようにくびれている部分と、当該部分から下方に連続して形成されている幅広の部分とを含む。
【0039】
コンタクト40は、第1延長部45aの前後方向の外面の一部を含む第1接触部46を有する。コンタクト40は、第2延長部45cの前後方向の内面の一部を含む第2接触部47を有する。
【0040】
図5及び
図6に示すとおり、コンタクト40はインシュレータ20のコンタクト取付溝24に取り付けられている。例えば、コンタクト40の第1係止部42は、コンタクト取付溝24の第1係止部24aに係止する。このとき、コンタクト40の被支持部45は、側壁としての長手壁21bに対して支持されている。被支持部45の第1延長部45aは、コンタクト取付溝24の第1溝24bに配置される。被支持部45の折返部45bは、コンタクト取付溝24の折返部24cに配置される。被支持部45の第2延長部45cは、コンタクト取付溝24の第2溝24dに配置される。被支持部45の第2係止部45dは、コンタクト取付溝24の第2係止部24eに係止する。
【0041】
コンタクト40がコンタクト取付溝24に取り付けられると、コンタクト40の第1接触部46は、コンタクト取付溝24の第1溝24bにおいて前後方向の外側に露出する。コンタクト40の第2接触部47は、コンタクト取付溝24の第2溝24dにおいて嵌合凹部23に向けて前後方向の内側に露出する。コンタクト40の屈曲部43は、コンタクト取付溝24の第1係止部24aの直上で、かつ第1溝24bの下端部に位置する。
【0042】
コンタクト40の第1係止部42は、実装部41と屈曲部43との間に位置し、インシュレータ20に係止する。コンタクト40の屈曲部43は、実装部41と第1接触部46との間に位置する。屈曲部43は、実装部41と被支持部45との間に位置する。このとき、インシュレータ20の切欠部25は、屈曲部43における第1接触部46側の端部から実装部41側に向けてインシュレータ20を切り欠いている。切欠部25は、第1係止部24aに係止しているコンタクト40の第1係止部42及び第1溝24bの下端部に位置する屈曲部43と前後方向に対向する。切欠部25の左右方向の幅は、コンタクト40の屈曲部43の左右方向の幅よりも若干大きい。切欠部25は、屈曲部43における第1接触部46側の端部に対応する上下位置から第1係止部42の上下位置を過ぎてインシュレータ20の底面に至るまで連続的にインシュレータ20を切り欠いている。切欠部25は、コンタクト40の第1係止部42及び屈曲部43とインシュレータ20との間に空間を形成する。
【0043】
図7に示すとおり、金具30は、インシュレータ20に取り付けられている。例えば、金具30の係止部31は、インシュレータ20の金具取付溝26に係止する。金具30は、インシュレータ20の金具取付溝26に圧入され、インシュレータ20の左右両端部に配置されている。
【0044】
図8に示すとおり、コンタクト40のくびれ部44は、コンタクト40とインシュレータ20との間に左右方向に沿った空間を形成する。上述したとおり、インシュレータ20の切欠部25は、コンタクト40とインシュレータ20との間に前後方向に沿った空間を形成する。以上により、くびれ部44において、コンタクト40は、前後左右方向においてインシュレータ20と接触しない。
【0045】
以上のような構造のコネクタ10は、例えば、回路基板CB1の実装面に形成された回路形成面に実装される。より具体的には、金具30の実装部32は、回路基板CB1上のパターンに塗布したはんだペーストに載置される。コンタクト40の実装部41は、回路基板CB1上のパターンに塗布したはんだペーストに載置される。リフロー炉などにおいて各はんだペーストを加熱溶融することで、実装部32及び実装部41は、上記パターンにはんだ付けされる。結果、コネクタ10の回路基板CB1への実装が完了する。回路基板CB1の回路形成面には、例えば、CPU(Central Processing Unit)、コントローラ、又はメモリなどのコネクタ10とは別の電子部品が実装される。
【0046】
図9は、
図5に対応する断面図である。
図9を参照しながら、コンタクト40に応力が加わってコンタクト40が屈曲部43を起点として弾性変形したときのコネクタ10の各構成部の機能について主に説明する。
【0047】
上述したとおり、金具30の実装部32及びコンタクト40の実装部41が回路基板CB1に対してはんだ付けされることで、インシュレータ20は、回路基板CB1に対して固定される。このような場合であっても、コネクタ10に外力が加わると金具30及びコンタクト40が若干弾性変形して回路基板CB1に対するインシュレータ20の位置が若干変化する。
【0048】
図9に示すとおり、例えば後方から前方に向けてコネクタ10及びコンタクト40に外力が加わる場合を想定する。このとき、コンタクト40に応力が加わり、コンタクト40は、屈曲部43を起点にして弾性変形する。例えば、コンタクト40において被支持部45と実装部41との間に形成されている部分が弾性変形する。
【0049】
例えば、
図9においてインシュレータ20の後方に取り付けられているコンタクト40の屈曲部43は、滑らかに屈曲しながら山状に隆起する形状から、前後方向に沿って直線的に折れるような形状に弾性変形する。例えば、屈曲部43は、下方から上方に向かうにしたがって、上方に直線状に延在した後、後方から前方に向けて斜め上方に傾斜する。屈曲部43の下側に位置する第1係止部42のインシュレータ20に対する相対的な前後位置は、コンタクト40が弾性変形していない状態と比較して、より後方にずれる。インシュレータ20の後方に取り付けられているコンタクト40において被支持部45と実装部41との間に形成されている部分は、後方から前方に向けて全体的に斜め上方に傾くように弾性変形する。
【0050】
例えば、
図9においてインシュレータ20の前方に取り付けられているコンタクト40の屈曲部43は、滑らかに屈曲しながら山状に隆起する形状から、インシュレータ20の切欠部25の内部へ折れ曲がる形状に弾性変形する。例えば、屈曲部43は、上方から下方に向かうにしたがって、前後方向の外側に若干傾斜した後、インシュレータ20の切欠部25の内部に向けて大きく屈曲する。屈曲部43の下側に位置する第1係止部42のインシュレータ20に対する相対的な前後位置は、コンタクト40が弾性変形していない状態と比較して、より後方にずれる。インシュレータ20の前方に取り付けられているコンタクト40において被支持部45と実装部41との間に形成されている部分は、その大部分が切欠部25の内部に位置するように大きく屈曲しながら弾性変形する。
【0051】
以上のように、切欠部25により形成されている空間は、コンタクト40において屈曲部43を起点にして弾性変形する部分とインシュレータ20との間に形成されている。切欠部25により形成されている空間は、コンタクト40に応力が加わりコンタクト40が屈曲部43を起点にして弾性変形するときに、被支持部45と実装部41との間に形成されている部分の一部を収容可能である。このように、空間は、屈曲部43とインシュレータ20との間で、屈曲部43が弾性変形できるように形成されている。空間は、コネクタ10と接続対象物50とが互いに嵌合する嵌合方向と直交する方向においてコンタクト40の弾性部とインシュレータ20との間に形成されている。例えば、空間は、コンタクト40の板厚方向において屈曲部43とインシュレータ20との間に形成されている。
【0052】
続いて、接続対象物50の構造について主に
図10及び
図11を参照しながら説明する。
【0053】
図10は、
図3のコネクタ10と接続される接続対象物50を上面視により示した外観斜視図である。
図11は、
図10の接続対象物50の上面視による分解斜視図である。
【0054】
図11に示すとおり、接続対象物50は、大きな構成要素として、インシュレータ60と、金具70と、コンタクト80と、を有する。接続対象物50は、インシュレータ60に対して、下方から金具70及びコンタクト80を圧入することで組み立てられる。
【0055】
インシュレータ60は、絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂材料を射出成形した、四角柱状の部材である。インシュレータ60は、上面において左右方向に直線状に凹設されている嵌合凹部61を有する。インシュレータ60は、嵌合凹部61内の中央部において左右方向に直線状に突設されている嵌合凸部62を有する。嵌合凸部62は、インシュレータ60の外周壁によって前後左右方向に囲まれている。
【0056】
インシュレータ60は、嵌合凹部61の左右両端部においてその内側の上縁部に形成されている誘い込み部63を有する。誘い込み部63は、嵌合凹部61の上縁部において下方に向けて斜め内側に傾斜する傾斜面によって構成される。インシュレータ60は、左右両端の底面から上方に向けてインシュレータ60の内部に凹設されている金具取付溝64を有する。
【0057】
インシュレータ60は、複数のコンタクト取付溝65を有する。コンタクト取付溝65は、インシュレータ60の底部の前側から嵌合凹部61の前側の内面及び嵌合凸部62の前側の側面にわたり凹設されている。コンタクト取付溝65は、インシュレータ60の底部の後側から嵌合凹部61の後側の内面及び嵌合凸部62の後側の側面にわたり凹設されている。複数のコンタクト取付溝65は、左右方向に沿って互いに所定の間隔で離間した状態で形成されている。
【0058】
金具70は、任意の金属材料の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて
図11に示す形状に成形加工したものである。金具70は、上面視でU字状に形成されている。金具70は、その下端部において、L字状に前後方向の外側に延出する実装部71を有する。金具70は、実装部71と連続して形成され、上面視でU字状となる係止部72を有する。
【0059】
コンタクト80は、例えば、リン青銅、ベリリウム銅、若しくはチタン銅を含むばね弾性を備えた銅合金又はコルソン系銅合金の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて
図11に示す形状に成形加工したものである。コンタクト80は、例えば抜き加工のみによって形成されている。コンタクト80は、左右方向に平坦となる。コンタクト80の加工方法は、これに限定されず、抜き加工を行った後に板厚方向に屈曲させる工程を含んでもよい。コンタクト80の表面には、ニッケルめっきで下地を形成した後に、金又は錫などによるめっきが施されている。
【0060】
コンタクト80は、左右方向に沿って複数配列されている。コンタクト80は、前後方向の外側に延出する実装部81を有する。コンタクト80は、実装部81から上方に直線状に延出する係止部82を有する。コンタクト80は、実装部81及び係止部82の接続部分から前後方向の内側に向けて延出する弾性接触部83を有する。弾性接触部83は左右方向の正面視でU字状に形成されている。弾性接触部83は二股状に形成されている。弾性接触部83は、前後方向において係止部82側に位置する第1弾性接触部83aを有する。弾性接触部83は、第1弾性接触部83aよりも前後方向において係止部82と反対側に位置し、第1弾性接触部83aと前後方向に対向する第2弾性接触部83bを有する。
【0061】
図10に示すとおり、金具70は、インシュレータ60の金具取付溝64に取り付けられている。例えば、金具70の係止部72は、インシュレータ60の金具取付溝64に係止する。金具70は、インシュレータ60の左右両端部のそれぞれに配置されている。
【0062】
複数のコンタクト80は、インシュレータ60の複数のコンタクト取付溝65にそれぞれ取り付けられている。例えば、後述の
図12にも示すとおり、コンタクト80の係止部82は、インシュレータ60のコンタクト取付溝65においてインシュレータ60の側壁の内部に凹設されている部分に係止する。このとき、コンタクト80の第1弾性接触部83aの先端は、インシュレータ60のコンタクト取付溝65において嵌合凹部61の前後方向の内面に凹設されている部分から嵌合凹部61の内部に露出する。同様に、コンタクト80の第2弾性接触部83bの先端は、インシュレータ60のコンタクト取付溝65において嵌合凸部62の前後方向の側面に凹設されている部分から嵌合凹部61の内部に露出する。第1弾性接触部83a及び第2弾性接触部83bは、コンタクト取付溝65において前後方向に弾性変形可能である。
【0063】
以上のような構造の接続対象物50では、例えば、回路基板CB2の実装面に形成された回路形成面に実装される。より具体的には、金具70の実装部71は、回路基板CB2上のパターンに塗布したはんだペーストに載置される。コンタクト80の実装部81は、回路基板CB2上のパターンに塗布したはんだペーストに載置される。リフロー炉などにおいて各はんだペーストを加熱溶融することで、実装部71及び実装部81は、上記パターンにはんだ付けされる。結果、接続対象物50の回路基板CB2への実装が完了する。回路基板CB2の回路形成面には、例えば、カメラモジュール及びセンサなどを含む接続対象物50とは別の電子部品が実装される。
【0064】
図12は、
図1のXII-XII矢線に沿った断面図である。
図12を主に参照しながら、コネクタ10が接続対象物50と接続されるときのコネクタ10の動作について主に説明する。
【0065】
コネクタ10に対して接続対象物50の上下方向の向きを逆にした状態で、コネクタ10及び接続対象物50の前後位置及び左右位置を略一致させながら、互いを上下方向に対向させる。その後、接続対象物50を下方に移動させる。このとき、互いの位置が例えば前後左右方向に多少ずれていても、コネクタ10の誘い込み部27と接続対象物50の誘い込み部63とが互いに接触する。
【0066】
その結果、コネクタ10のインシュレータ20の外周壁21が接続対象物50のインシュレータ60の嵌合凹部61に誘い込まれる。接続対象物50を下方にさらに移動させると、インシュレータ20の外周壁21とインシュレータ60の嵌合凹部61とが互いに嵌合する。インシュレータ20の嵌合凹部23とインシュレータ60の嵌合凸部62とが互いに嵌合する。
【0067】
図12に示すとおり、コネクタ10のインシュレータ20と接続対象物50のインシュレータ60とが互いに嵌合する嵌合状態で、コネクタ10のコンタクト40と接続対象物50のコンタクト80とが互いに接触する。より具体的には、コンタクト40の第1接触部46とコンタクト80の第1弾性接触部83aとが互いに接触する。コンタクト40の第2接触部47とコンタクト80の第2弾性接触部83bとが互いに接触する。コンタクト40とコンタクト80とは2箇所で互いに接触する。このとき、コンタクト80の第1弾性接触部83aの先端は、前後方向の外側に向けて若干弾性変形し、コンタクト取付溝65の内部に向けて弾性変位する。同様に、コンタクト80の第2弾性接触部83bの先端は、前後方向の内側に向けて若干弾性変形し、コンタクト取付溝65の内部に向けて弾性変位する。
【0068】
以上により、コネクタ10と接続対象物50とは、完全に接続される。このとき、コンタクト40及びコンタクト80を介して、回路基板CB1と回路基板CB2とが電気的に接続される。
【0069】
この状態で、コンタクト80の第1弾性接触部83a及び第2弾性接触部83bは、コネクタ10のコンタクト40の被支持部45を前後方向に沿った弾性力により前後両側から挟持する。これにより、コネクタ10に対する接続対象物50の接続強度が向上する。
【0070】
以上のような一実施形態に係るコネクタ10は、コンタクト40の弾性変形を利用することによってコネクタ10を回路基板CB1に対して可動にし、さらに弾性変形によりコンタクト40の実装部41に加わる応力などの負荷を低減することで、信頼性を向上させることが可能である。例えば、コネクタ10は、コンタクト40が屈曲部43を有し、コンタクト40に応力が加わると屈曲部43を起点にして弾性変形することで、当該応力を分散させることができる。コンタクト40は、屈曲部43を有することでコンタクト40における弾性変形可能な部分の長さをより長くすることが可能となり、屈曲部43を中心にしてよりしなりやすくなる。コネクタ10は、以上のような応力の分散に関する効果に加えて、コンタクト40が弾性変形する起点を屈曲部43に明確に定めることができる。以上により、コネクタ10は、コンタクト40の実装部41への応力の集中を抑制して、実装部41に加わる負荷を軽減することが可能である。
【0071】
これにより、例えば回路基板CB1に平行な方向の力、及び回路基板CB1に平行な平面における回転方向の力などがコネクタ10に加わったときであっても、コンタクト40の実装部41への応力の集中が抑制される。結果として、はんだクラックなどによる実装部41の剥離及び破損などが抑制可能となる。
【0072】
コンタクト40において屈曲部43を起点にして弾性変形する部分とインシュレータ20との間に空間が形成されていることで、屈曲部43を起点にして弾性変形する部分が当該空間に収容可能となる。これにより、コネクタ10は、コンタクト40に応力が加わったときにコンタクト40の弾性変形を許容することができる。
【0073】
コネクタ10は、コンタクト40の弾性変形によって単一のインシュレータ20が可動となることでコネクタ10全体としても可動となる。例えば、固定インシュレータと、固定インシュレータに囲まれた状態で固定インシュレータに対して相対的に移動可能な可動インシュレータとを有するフローティング構造のコネクタと比較して、コネクタ10は、可動性を実現するための構成部の数を低減できる。コネクタ10は、フローティング構造を有するコネクタよりも部品点数を低減でき、かつ小型化可能である。
【0074】
インシュレータ20が、コンタクト40において屈曲部43を起点にして弾性変形する部分とインシュレータ20との間の空間を形成する切欠部25を有することで、コネクタ10は、コンタクト40に応力が加わったときにコンタクト40の弾性変形を許容することができる。切欠部25が、屈曲部43における第1接触部46側の端部から実装部41側に向けてインシュレータ20を底面まで切り欠いていることで、上記の空間が大きくなる。したがって、コネクタ10は、コンタクト40に応力が加わったときにコンタクト40の弾性変形をより確実に許容することができる。
【0075】
コンタクト40が、コネクタ10の長手方向に沿って屈曲部43の幅を減じるくびれ部44を有することで、コンタクト40とインシュレータ20との間にコネクタ10の長手方向に沿った空間がくびれ部44において形成される。これにより、コネクタ10は、毛細管現象に起因する実装部41からのはんだ上がり及びフラックス上がりを抑制可能である。したがって、実装部41からのはんだ上がり及びフラックス上がりによって屈曲部43の弾性が低下し屈曲部43が固定化されるようなことが生じにくくなる。すなわち、屈曲部43を起点としたコンタクト40の弾性変形特性の劣化が抑制される。
【0076】
くびれ部44が屈曲部43における実装部41側の端部に形成されていることで、以上のような弾性変形特性の劣化の抑制効果がより顕著となる。加えて、インシュレータ20の切欠部25によって、コンタクト40とインシュレータ20との間に前後方向に沿った空間がくびれ部44において形成されていることで、以上のような弾性変形特性の劣化の抑制効果がさらに顕著となる。
【0077】
加えて、コンタクト40がくびれ部44を有することで、くびれ部44に隣接して形成されている第1係止部42の形状がより明瞭となる。例えばコンタクト40を加工するときの抜き加工において金型により薄板を打ち抜いたときの第1係止部42の形状がより明瞭となる。これにより、コンタクト40をインシュレータ20に取り付けるときの作業性が向上する。
【0078】
屈曲部43がインシュレータ20と反対側に突出するように山状に屈曲することで、コネクタ10は、屈曲部43を起点にして弾性変形する部分を収容可能な上記の空間を大きく維持することが可能となる。したがって、コネクタ10は、コンタクト40に応力が加わったときにコンタクト40の弾性変形をより確実に許容することができる。
【0079】
コンタクト40が、実装部41と屈曲部43との間に位置し、インシュレータ20に係止する第1係止部42を有することで、屈曲部43を起点としたコンタクト40の弾性変形の影響が実装部41に伝わりにくくなる。これにより、実装部41に加わる負荷がさらに軽減される。また、コンタクト40が第1係止部42及び第2係止部45dの2つによってインシュレータ20に係止することで、インシュレータ20によるコンタクト40の保持力が向上する。これにより、屈曲部43を起点としたコンタクト40の弾性変形の影響が実装部41にさらに伝わりにくくなる。結果として、実装部41に加わる負荷がさらに軽減される。
【0080】
コネクタ10は、インシュレータ20に取り付けられている金具30であって、コネクタ10の長手方向に平坦となる金具30を有することで、回路基板CB1に対するインシュレータ20の実装強度を向上させることができる。例えば、金具30がインシュレータ20に圧入されて、実装部32が回路基板CB1にはんだ付けされることで、金具30は、インシュレータ20を回路基板CB1に対して安定して固定可能である。
【0081】
金具30は、係止部31における実装部32の延出部分に隣接する位置で嵌合方向に沿って係止部31を切り欠いた切欠部33を有することで、屈曲部43を起点にしたコンタクト40の弾性変形に合わせて弾性変形可能である。これにより、コネクタ10は、例えば回路基板CB1に平行な方向の力、及び回路基板CB1に平行な平面における回転方向の力などがコネクタ10に加わったときであっても、金具30及びコンタクト40の弾性変形を許容することができる。
【0082】
インシュレータ20が誘い込み部27を有することで、接続対象物50の嵌合凹部61とインシュレータ20の外周壁21との間の誘い込みが容易となる。すなわち、コネクタ10に対する接続対象物50の挿入作業が容易となる。
【0083】
コンタクト40が弾性係数の小さい金属材料によって形成されていることで、コネクタ10は、コネクタ10に加わる外力が小さい場合であっても、必要とされるコンタクト40の弾性変形量を確保できる。すなわち、コネクタ10は、屈曲部43を起点にしたコンタクト40の弾性変形によって応力を十分に分散させることができる。これにより、コネクタ10は、コンタクト40の実装部41に加わる負荷を十分に軽減することが可能である。
【0084】
コネクタ10は、何らかの外的要因によって発生する振動を、屈曲部43を起点にしたコンタクト40の弾性変形によって吸収可能である。これにより、コネクタ10は、コンタクト40の実装部41に加わる負荷を軽減することが可能である。したがって、回路基板CB1との接続部分の破損が抑制される。すなわち、回路基板CB1と実装部41との接続部分のはんだにクラックが入ることを抑制できる。したがって、コネクタ10と接続対象物50とが接続されている状態であっても、接続信頼性が向上する。
【0085】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。したがって、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含されるとする。
【0086】
例えば、上述した各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0087】
上述したコネクタ10及び接続対象物50の組立方法は、上記の説明の内容に限定されない。コネクタ10及び接続対象物50の組立方法は、それぞれの機能が発揮されるように組み立てることができるのであれば、任意の方法であってもよい。例えば、金具30及びコンタクト40の少なくとも一方は、圧入ではなくインサート成形によってインシュレータ20と一体的に成形されてもよい。例えば、金具70及びコンタクト80の少なくとも一方は、圧入ではなくインサート成形によってインシュレータ60と一体的に成形されてもよい。
【0088】
上記実施形態では、弾性部は、コネクタ10と接続対象物50とが互いに嵌合する嵌合方向と直交する方向に屈曲する屈曲部43を含むと説明したが、これに限定されない。例えば、弾性部は屈曲していなくてもよく、前後方向の幅、すなわち板厚が薄くなることで弾性変形可能となっていてもよい。
【0089】
上記実施形態では、インシュレータ20の切欠部25は、屈曲部43における第1接触部46側の端部から実装部41側に向けてインシュレータ20を底面まで切り欠いていると説明したが、これに限定されない。切欠部25は、コンタクト40において屈曲部43を起点にして変形する部分とインシュレータ20との間に空間を形成していれば、上下方向に沿ったインシュレータ20の任意の領域に形成されていてもよい。例えば、切欠部25は、インシュレータ20を底面まで切り欠いていなくてもよく、インシュレータ20の底面よりも上方の任意の位置までインシュレータ20を切り欠いていてもよい。
【0090】
上記実施形態では、コンタクト40は、コネクタ10の長手方向に沿って屈曲部43の幅を減じるくびれ部44を有すると説明したが、これに限定されない。コンタクト40は、コネクタ10の短手方向に沿って屈曲部43の幅を減じるくびれ部を有してもよいし、くびれ部44のような屈曲部43の幅を減じる構成部をそもそも有さなくてもよい。
【0091】
上記実施形態では、屈曲部43は、インシュレータ20と反対側に突出するように山状に屈曲すると説明したが、これに限定されない。屈曲部43は、インシュレータ20側に突出するように屈曲してもよい。
【0092】
上記実施形態では、コンタクト40は、実装部41と屈曲部43との間に位置し、インシュレータ20に係止する第1係止部42を有すると説明したが、これに限定されない。コンタクト40は、実装部41と屈曲部43との間以外の位置に第1係止部42を有してもよい。コンタクト40は、第1係止部42及び第2係止部45dの2つの係止部を有すると説明したが、これに限定されない。コンタクト40は、係止部を1つのみ有してもよいし、3つ以上有してもよい。
【0093】
上記実施形態では、コネクタ10は、インシュレータ20に取り付けられている金具30を有すると説明したが、これに限定されない。コネクタ10は、金具30を有さなくてもよい。
【0094】
上記実施形態では、コンタクト40は、弾性係数の小さい金属材料によって形成されているとして説明したが、これに限定されない。コンタクト40は、必要とされる弾性変形量を確保できるのであれば、任意の弾性係数を有する金属材料によって形成されていてもよい。
【0095】
上記実施形態では、コネクタ10のコンタクト40のみが屈曲部43を有し、コンタクト40に応力が加わると屈曲部43を起点にして弾性変形すると説明したが、これに限定されない。コンタクト40の屈曲部43と同様の構成部が接続対象物50のコンタクト80にも形成されていてもよい。
【0096】
上記実施形態では、接続対象物50は、回路基板CB2に接続されるリセプタクルコネクタであるとして説明したが、これに限定されない。接続対象物50は、コネクタ以外の任意の対象物であってもよい。例えば、接続対象物50は、FPC、フレキシブルフラットケーブル、リジッド基板、又は任意の回路基板のカードエッジであってもよい。
【0097】
以上のようなコネクタ10は、電子機器に搭載される。電子機器は、例えば、カメラ、レーダ、ドライブレコーダ、及びエンジンコントロールユニットなどの任意の車載機器を含む。電子機器は、例えば、カーナビゲーションシステム、先進運転支援システム、及びセキュリティシステムなどの車載システムにおいて使用される任意の車載機器を含む。電子機器は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、コピー機、プリンタ、ファクシミリ、及び複合機などの任意の情報機器を含む。その他、電子機器は、任意の産業機器を含む。
【0098】
このような電子機器は、応力によってコネクタ10のコンタクト40の実装部41に加わる負荷を軽減することが可能である。これにより、はんだクラックなどによる実装部41の剥離及び破損などが抑制可能となる。したがって、コネクタ10を有する電子機器の製品としての信頼性が向上する。
【符号の説明】
【0099】
10 コネクタ
20 インシュレータ
21 外周壁
21a 短手壁
21b 長手壁(側壁)
22 底壁
23 嵌合凹部
24 コンタクト取付溝
24a 第1係止部
24b 第1溝
24c 折返部
24d 第2溝
24e 第2係止部
25 切欠部
26 金具取付溝
27 誘い込み部
30 金具
31 係止部
32 実装部
33 切欠部
40 コンタクト
41 実装部
42 第1係止部(係止部)
43 屈曲部(弾性部)
44 くびれ部
45 被支持部
45a 第1延長部
45b 折返部
45c 第2延長部
45d 第2係止部
46 第1接触部(接触部)
47 第2接触部
50 接続対象物
60 インシュレータ
61 嵌合凹部
62 嵌合凸部
63 誘い込み部
64 金具取付溝
65 コンタクト取付溝
70 金具
71 実装部
72 係止部
80 コンタクト
81 実装部
82 係止部
83 弾性接触部
83a 第1弾性接触部
83b 第2弾性接触部
CB1、CB2 回路基板
【手続補正書】
【提出日】2024-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に実装されるコネクタと接続対象物とが互いに嵌合する嵌合状態で得られる接続構造であって、
前記コネクタは、
一対の側壁と前記一対の側壁の間に位置する嵌合凹部とを有し、矩形状に形成されているインシュレータと、
前記側壁に取り付けられている複数のコンタクトと、
を備え、
前記コンタクトは、実装部と、弾性部と、被支持部と、を有し、
前記実装部は、前記回路基板に実装され、
前記被支持部は、前記側壁に対して支持され、第1接触部を含み前記嵌合凹部の外側に位置する第1延長部と第2接触部を含み前記嵌合凹部の内側に位置する第2延長部とを有し、
前記第1接触部及び前記第2接触部の各々は、前記嵌合状態で前記接続対象物と接触し、
前記弾性部は、前記コネクタと前記接続対象物とが互いに嵌合する嵌合方向で前記実装部と前記第1接触部との間に位置し、弾性変形可能であり、
前記弾性部と前記インシュレータとの間に空間が形成され、
前記第1接触部は、前記側壁に対し前記嵌合方向と直交する第1方向の外側に位置し、前記嵌合凹部と反対側を向く、前記第1延長部の前記第1方向の外面の一部を含み、
前記第2接触部は、前記側壁に対し前記第1方向の内側に位置し、前記嵌合凹部側を向く、前記第2延長部の前記第1方向の内面の一部を含む、
接続構造。
【請求項2】
前記弾性部は、前記第1方向に屈曲する屈曲部を含む、
請求項1に記載の接続構造。
【請求項3】
前記インシュレータは、前記実装部側に向けて前記インシュレータを切り欠いた切欠部であって、前記空間を形成する前記切欠部を有する、
請求項1又は2に記載の接続構造。
【請求項4】
前記切欠部は、前記弾性部における前記第1接触部側の端部から前記実装部側に向けて前記インシュレータを切り欠いている、
請求項3に記載の接続構造。
【請求項5】
前記空間は、前記第1方向において前記弾性部と前記インシュレータとの間に形成されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の接続構造。
【請求項6】
前記弾性部は、前記嵌合方向で前記実装部と前記被支持部との間に位置する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の接続構造。
【請求項7】
前記コンタクトは、前記嵌合方向及び前記第1方向に直交する第2方向である前記コネクタの長手方向に沿って前記弾性部の幅を減じるくびれ部を有する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の接続構造。
【請求項8】
前記くびれ部は、前記弾性部における前記実装部側の端部に位置する、
請求項7に記載の接続構造。
【請求項9】
前記屈曲部は、前記インシュレータと反対側に形成されるように屈曲する、
請求項2に記載の接続構造。
【請求項10】
前記コンタクトは、前記嵌合方向で前記実装部と前記屈曲部との間に位置し、前記インシュレータに係止する係止部を有する、
請求項2に記載の接続構造。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の接続構造を備える電子機器。