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特開2024-156936医用画像処理装置、X線CT装置および医用画像処理方法
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  • 特開-医用画像処理装置、X線CT装置および医用画像処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024156936
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、X線CT装置および医用画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20241029BHJP
   A61B 6/42 20240101ALI20241029BHJP
【FI】
A61B6/03 550F
A61B6/42 530Q
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024131220
(22)【出願日】2024-08-07
(62)【分割の表示】P 2019081185の分割
【原出願日】2019-04-22
(31)【優先権主張番号】16/182,156
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VERILOG
2.SOLARIS
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケビン クリストファー ツィマーマン
(72)【発明者】
【氏名】リヤン ツァイ
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 博明
(72)【発明者】
【氏名】シャオホイ ジャン
(57)【要約】
【課題】適切にパーシャルボリューム誤差を補正することができる。
【解決手段】本実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、生成部と、選択部と、補正部とを含む。取得部は、複数の検出器素子において検出された放射線の強度を表す第1の投影データを取得する。生成部は、前記複数の検出器素子のうちの2以上の検出器素子をグルーピングしたマクロピクセルごとに、各マクロピクセルに含まれる複数の検出器素子に対応する前記第1の投影データに基づいて、第2の投影データを生成する。選択部は、前記第2の投影データに基づく物質弁別処理が収束しないマクロピクセルを選択する。補正部は、前記選択されたマクロピクセルに含まれる一部の検出器素子に対応する第1の投影データに基づいて物質弁別処理を実行することで、補正物質弁別投影データを生成する。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検出器素子において検出された放射線の強度を表す第1の投影データを取得する取得部と、
前記複数の検出器素子のうちの2以上の検出器素子をグルーピングしたマクロピクセルごとに、各マクロピクセルに含まれる複数の検出器素子に対応する前記第1の投影データに基づいて、第2の投影データを生成する生成部と、
前記第2の投影データに基づく物質弁別処理が収束しないマクロピクセルを選択する選択部と、
前記選択されたマクロピクセルに含まれる一部の検出器素子に対応する第1の投影データに基づいて物質弁別処理を実行することで、補正物質弁別投影データを生成する補正部と、
を備える、医用画像処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像処理装置、X線CT装置および医用画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影(CT)システムおよび方法は、特に、医療撮像および診断のために広く使用されている。CTシステムは、概して、被検者の体を通して1つまたは複数の断面スライスの投影画像を作成する。X線源などの放射線源は、一方の側から体を照射する。概してX線源に隣接するコリメータは、X線ビームの角度範囲を制限し、したがって、体に当たる放射が体の断面スライスを定義する平面領域(すなわち、X線投影平面)に実質的に限定される。体の反対側の少なくとも1つの検出器(および、概して、多くの2つ以上の検出器)は、投影平面中で体を通して伝播された放射を受け取る。体を通過した放射の減衰は、検出器から受信した電気信号を処理することによって測定される。いくつかの実装形態では、マルチスライス検出器構成が使用され、平面投影ではなく体の体積投影を与える。
【0003】
一般に、X線源は、体の長軸の周りを回転するガントリ上に取り付けられる。検出器は、X線源の反対側で同様にガントリ上に取り付けられる。体の断面画像は、一連のガントリ回転角で投影減衰計測を行い、ガントリロータと固定部との間に構成されるスリップリングを介してプロセッサに投影データ/サイノグラムを送信し、次いで、CT再構成アルゴリズム(たとえば、逆ラドン変換、フィルタ補正逆投影法、フェルドカンプ法ベースのコーンビーム再構成、逐次再構成または他の方法)を使用して投影データを処理することによって取得される。たとえば、再構成された画像は、その各々が患者の体の体積要素(体積ピクセルまたはボクセル)を表す要素(ピクセル)の正方行列であるデジタルCT画像であり得る。いくつかのCTシステムでは、体の平行移動と体に対するガントリの回転との組合せは、X線源が体に対して螺旋形のまたは螺旋状の軌道を横断するようなものである。複数の図は、次いで、スライスのまたは複数のそのようなスライスの内部構造を示すCT画像を再構成するために使用される。
【0004】
従来、エネルギー積分型検出器がCT投影データを測定するために使用されてきた。次に、フォトンカウンティング検出器(PCD)が、エネルギー積分型検出器に実現可能な代替を提示した。PCDは、スペクトルCTを実行するそれらの能力とより大きい分解能のためにスキャンエリアを検出器の多くのより小さい「ピクセル」に分割する能力とを含む多くの利点を有する。半導体ベースのPCDは、スペクトルCTに独自の利点を与えるが、また独自の課題をもたらす。たとえば、パルスパイルアップにより、PCDは、X線フラックスに対して非線形応答を示すことがある。検出器応答における非線形性およびスペクトルシフトを補正することなしに、半導体ベースのPCDから再構成された画像は、より悪い画質を有し得る。
【0005】
PCDの1つの利点は、PCDがX線のエネルギーに応じてX線減衰の変化に関する情報を与えるので、PCDがスペクトルCTのために使用され得るということである。骨および水などの異なる物質が異なるスペクトル吸収シグネチャを示し、スペクトル分解されたCTスキャンを物質成分に弁別できるのでスペクトルCTが望ましい。しかしながら、X線検出器のピクセルが、X線検出器パスの同じピクセル内に入るX線が異なる物質を通るのに十分大きいとき、この物質弁別処理はパーシャルボリューム誤差(PVE)を生じ得る。したがって、PVEを識別し、補正するより良い方法が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0023496号明細書
【特許文献2】米国特許第9687207号明細書
【特許文献3】米国特許第8422826号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、適切にパーシャルボリューム誤差を補正することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、生成部と、選択部と、補正部とを含む。取得部は、複数の検出器素子において検出された放射線の強度を表す第1の投影データを取得する。生成部は、前記複数の検出器素子のうちの2以上の検出器素子をグルーピングしたマクロピクセルごとに、各マクロピクセルに含まれる複数の検出器素子に対応する前記第1の投影データに基づいて、第2の投影データを生成する。選択部は、前記第2の投影データに基づく物質弁別処理が収束しないマクロピクセルを選択する。補正部は、前記選択されたマクロピクセルに含まれる一部の検出器素子に対応する第1の投影データに基づいて物質弁別処理を実行することで、補正物質弁別投影データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の例示的な実施形態に係るパーシャルボリューム効果の一例を示す図である。
図2A図2Aは、本開示の例示的な実施形態に係るビーム方向に対して直交構成で構成された2つの物質を有するボクセルを平均化するパーシャルボリュームの透視図の概略図である。
図2B図2Bは、本開示の例示的な実施形態に係る2つの物質の均質混合物を有するボクセルを平均化するパーシャルボリュームの透視図の概略図である。
図2C図2Cは、本開示の例示的な実施形態に係るビーム方向に対して平行構成で構成された2つの物質を有するボクセルを平均化するパーシャルボリュームの透視図の概略図である。
図3A図3Aは、本開示の例示的な実施形態に係るビーム方向に対して直交構成で構成された2つの物質を有するボクセルを平均化するパーシャルボリュームの側面図の概略図である。
図3B図3Bは、本開示の例示的な実施形態に係る2つの物質の均質混合物を有するボクセルを平均化するパーシャルボリュームの側面図の概略図である。
図3C図3Cは、本開示の例示的な実施形態に係るビーム方向に対して平行構成で構成された2つの物質を有するボクセルを平均化するパーシャルボリュームの側面図の概略図である。
図4図4は、本開示の例示的な実施形態に係るスキャン中にパーシャルボリュームを識別する方法のためのフローチャートを示す図である。
図5図5は、本開示の例示的な実施形態による、マイクロピクセルの選択方法を説明する図である。
図6図6は、本開示の例示的な実施形態に係るコンピュータ断層撮影スキャナの実装形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で説明する実施形態は、概して、フォトンカウンティングスペクトルコンピュータ断層撮影データの物質弁別に関し、より詳細には、物質弁別処理が収束することに失敗したときにパーシャルボリューム誤差(PVE)を識別し、次いで、物質弁別のためにマクロピクセルではなくマイクロピクセルからの投影データを使用することによってPVEを補正することに関し、ここにおいて、マクロピクセルは、検出器アレイ、(たとえば、マイクロピクセル)内の複数のピクセルの信号を総計する仮想ピクセルである。
添付の図面とともに以下に記載する説明は、開示する主題の様々な態様を説明するものであり、必ずしも態様のみを表すものであるとは限らない。いくつかの例では、説明は、開示する主題の理解を与えるための具体的な詳細を含む。ただし、態様がこれらの具体的な詳細なしに実施され得ることが当業者には明らかである。場合によっては、よく知られている構造および構成要素が、開示する主題の概念を不明瞭にするのを回避するためにブロック図の形式で示され得る。
【0011】
「一態様」または「態様」への本明細書全体にわたる言及は、態様に関して説明する特定の特徴、構造、特性、動作、または機能が開示する主題の少なくとも1つの態様中に含まれることを意味する。したがって、本明細書における句「一態様では」または「一態様中の」のどの出現も、必ずしも同じ態様を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、特性、動作、または機能が、1つまたは複数の態様中に任意の好適な方法で組み合わされ得る。さらに、開示する主題の態様が、説明する態様の修正および変更をカバーすることができ、カバーするものとする。
【0012】
さらに、本明細書で使用され得る「上部」、「下部」、「前面」、「後面」、「側面」、「内部」、「外部」などの用語は、基準点を説明するにすぎず、必ずしも開示する主題の態様を任意の特定の向きまたは構成に限定するとは限らない。さらに、「第1の」、「第2の」、「第3の」などの用語は、本明細書で説明するいくつかの部分、構成要素、基準点、動作および/または機能のうちの1つを識別するにすぎず、同様に、必ずしも開示する主題の態様を任意の特定の構成または向きに限定するとは限らない。
【0013】
上記で説明したように、フォトンカウンティング検出器(PCD)は、CTに、物質弁別がスペクトル分解された投影データを使用して実行され得るという利点を含むいくつかの利点を与える。しかしながら、いくつかの障害が、PCDの全潜在能力の実現を制限し得る。上記で説明したように、高いX線フラックスレートにおいて、パルスパイルアップは、PCDのための非線形応答を生じる。パイルアップを回避するために、PCDの断面積を減少させ、より高いX線フラックスでもパルスパイルアップの発生を抑制できる。たとえば、単一の大きいPCDは、4つのより小さいPCDに細分化され得、各々は、小さいPCDごとのフラックスレートが大きいPCDのものの1/4である状態で大きいPCDのエリアの1/4をカバーする。実際には、電荷共有および他の効果が、小さいPCDがどのように行われ得るのかを基本的に制限し得る。
【0014】
たとえば、より小さいPCDにPCDを細分化することは、CTスキャナ中の検出器素子/ピクセルの総数を増加させ、X線検出器がスリップリングにわたって構成される回転環状構造から画像再構成を実行する1つまたは複数のコンピュータプロセッサを格納する固定ガントリ構造などに投影データがどのくらい速く送信され得るのかに基づくCTガントリのロータと固定部との間の通信ボトルネックを生じ得る。すなわち、より高い分解能でデータを収集することは、所与の時間量にスリップリングにわたって送信されるべきデータが多くなり、スリップリングを介して利用可能な限定された通信帯域幅を上回る。スリップリングは、ロータと固定部との間の通信デバイスの非限定的な例であり、いくつかの実装形態では、当業者には理解されるように、スリップリングの代わりに光ファイバ回転ジョイントまたは他の通信デバイスが使用され得る。
【0015】
この通信ボトルネックを克服するために、小さいPCD(たとえば、マイクロピクセル)からの計数が、仮想の大きいPCD(たとえば、マクロピクセル)の計数として総計され、送信されるデータの量を低減し得る。
【0016】
この方式はパイルアップ問題に対処するのを助ける一方、マクロピクセル計数にマイクロピクセル計数を総計することは、パーシャルボリューム誤差(PVE)を受けやすい投影データを残すことになり得る。本明細書で説明する方法は、PVEが行われるマクロピクセルを識別し、次いで、PVEを補正するためにマクロピクセル計数ではなくマイクロピクセル計数を使用することによってPVEに対処する。
【0017】
次に、同様の参照番号がいくつかの図全体にわたって同じまたは対応する部分を指定する図面を参照すると、図1に、被検体と検出器アレイのそれぞれのマイクロピクセルへ向かう途中で被検体を通過する2つの平行X線トラジェクトリとの断面図を示す。2つのX線トラジェクトリに対応するマイクロピクセルは、マクロピクセルのための信号を生成するために総計/平均化される。図示の2つのX線トラジェクトリでは、1つのX線トラジェクトリは、軟組織のみを通過するが、他方のX線トラジェクトリは、軟組織を通過することに加えて骨(たとえば、肋骨)を通過する。したがって、これらの2つのX線トラジェクトリに対応する2つのマイクロピクセル信号がマクロピクセル信号を生成するために組み合わせられると、得られたマクロピクセル信号の物質弁別は、パーシャルボリューム効果により不完全になることがあり、最終的に、PVEを生じる。物質弁別処理が収束しないことに基づいてPVEが識別される。次いで、物質弁別処理は、以下でより詳細に説明するように、マクロピクセル信号ではなくマイクロピクセル信号に対して物質弁別処理を実行することによって補正され得る。物質弁別処理が収束しないことは、マクロピクセルの測定された計数N(以下、上付きチルダは文字の直上にチルダが付されることを示す)と物質投影長L(以下、上付き矢印はベクトルであることを示す)に基づいてキャリブレーションされた/理論上の計数N(L)との間の無視できない差によって示され得る。
【0018】
したがって、異なる物質が、CTスキャンの記録されたピクセル(たとえば、マクロピクセル)内に入るX線トラジェクトリの断面積内の異なる領域を占有するとき、PVEが発生し得る。本明細書で説明する方法は、これらのPVEを識別し、補正する有利な効果を与え、それによって、より正確な物質弁別と再構成された画像とを生成することができる。
【0019】
異なる原子番号Zをもつ原子を有する物質が、異なるスペクトルプロファイルを有するので、スペクトルCTデータの物質弁別が可能になる。kエッジ効果からの一部、生物学的な物質でのX線減衰のスペクトル形状は、2つの物理処理、すなわち、光電減衰およびコンプトン散乱によって決定される。したがって、エネルギーに応じた減衰係数は、次式の弁別によって近似され得る。
【0020】
【数1】
【0021】
ここで、μPE(E,x,y)は、光電減衰であり、μC(E,x,y)は、コンプトン減衰である。この減衰係数は、代わりに、物質1(たとえば、骨などの高Z物質)と物質2(たとえば、水などの低Z物質)の弁別に再構成され得、次式が得られる。
【0022】
【数2】
【0023】
ここで、c1,2(x,y)は、位置(x,y)に位置する物質1および物質2の濃度を記述する空間関数である。ボクセルの物質組成構造が近似的に空間的に均一であるとき、所与のX線トラジェクトリに沿った強度は、次式によって与えられ得る。
【0024】
【数3】
【0025】
ここで、L1=∫dlc1(x,y)は、第1の物質成分の投影長であり、L2=∫dlc2(x,y)は、第2の物質成分の投影長であり、積分は、X線トラジェクトリの線l(x,y)に沿った線積分である。
【0026】
フォトンカウンティング検出器(PCD)を利用するスペクトルCTでは、画像再構成は、検出器応答および物質弁別を補正することを含む事前再構成ステップによって先行される。詳細には、パーシャルボリューム効果は、異なる物質成分に対応する隣接するピクセル値を平均化/総計することによって異常なスペクトルシグネチャを生じ得ることをいう。
【0027】
概して、吸収物質を通して伝播されるビーム、たとえば、X線ビームの強度Iは、次式として表される。
【0028】
【数4】
【0029】
ここで、I0は、初期ビーム強度であり、Lは、経路長であり、μは、減衰係数である。ビームは、エネルギーに関して単色でも、多色でもよい。多色ビームは、複数のX線エネルギーを含み、エネルギー依存の減衰係数を抽出するために使用される。スペクトル項S(E)は、検出器上のエネルギーEの入射スペクトルである。2つの物質のためのこのスペクトル項は、次式によって与えられる。
【0030】
【数5】
【0031】
ここで、S0は、放射線源からの放射線エネルギースペクトルであり、μ1およびμ2は、物質弁別のための基準物質の減衰係数であり、L1およびL2は、それぞれの透過経路長である。PCDがX線を検出するために使用されるとき、エネルギースペクトルは、i番目のエネルギービン中で計数Niをもつ一連のn個のエネルギービンに分割され、これは、次式によって与えられる所与のピクセルのm番目の検出器素子の範囲{Ei,Ei+1}として定義される。
【0032】
【数6】
【0033】
ここで、Cは、キャリブレーション定数であり、m番目の検出器素子は、{(xm,ym),(xm+1,ym+1)}として定義される検出エリアを有する。
【0034】
図2A図2B図3A、および図3Bは、PVEが発生しないシナリオの非限定的な簡略化された例を与えるが、図2Cおよび図3Cは、PVEが発生するシナリオの非限定的な簡略化された例を与える。
【0035】
図2Aに、本開示の例示的な態様による、直交構成で構成された2つの物質を有するボクセル100を平均化するパーシャルボリュームの透視図を示す。直交構成とは、複数の物質がX線の透過経路に沿って配置されている位置関係を意味する。ボクセル100中の第1の物質105と第2の物質110との向きは、サンドイッチ構造として簡略化され得、ここにおいて、第1の物質105と第2の物質110との間の境界面は、検出器120に当たる光子のビーム115の方向に実質的に直交する。ビーム115は、ボクセル100を横断する単一の光線として、または単一の光線を備えるために一緒に平均化された複数の小さい光線として表される。検出器120は、ビーム115からの複数の光子を受け取り、当てられた光子のエネルギーを電気信号に変換するように構成され得る。検出器120は、フォトンカウンティング検出器(PCD)であり、ここにおいて、生成された電気信号は、光子計数に変換され、処理回路によって分析される。直交向きで、ボクセル100に入るときに強度I0を有するビーム115は、減衰μ1を有する第1の物質105を通過し、次いで、ボクセル100を出るときに強度Iを有する減衰μ2を有する第2の物質110を通過する。ビーム115が図示のように同じ厚さを有する両方の物質を通過する場合、経路長は、各物質でボクセル100の長さの半分である。したがって、L/2=L1=L2であり、単色ビーム115の強度Iは、次式として表され得る。
【0036】
【数7】
【0037】
上述の式に基づく同様の式が、伝播された光子の数Nに関して与えられる。N0は、光子の入射数であり、次式が得られる。
【0038】
【数8】
【0039】
図2Bに、本開示の例示的な態様による、2つの物質の均質混合物を有するボクセル100を平均化するパーシャルボリュームの透視図を示す。ここで、ビーム115が各物質の厚さと一致する経路長L/2を通して効果的に移動するので、第1の物質105と第2の物質110との混合は図2Aと同じ伝播を生じる。したがって、両方の物質について長さLを有するボクセル100を通ってL/2の有効経路長を横断する限り、ビームが通る物質の順序は減衰の指数形式により問題にならない。したがって、伝播された光子の数Nは、上記で説明したようにこの場合も表され得る。
【0040】
図2Cに、本開示の例示的な態様による、平行構成で構成された2つの物質を有するボクセル100を平均化するパーシャルボリュームの透視図を示す。平行構成とは、複数の物質がX線の透過経路の略直交軸に沿って配置されている位置関係を意味する。ビーム115が、スキャンする間に対象物の周りを、たとえば、追加の90°の回転だけ回転するので、ビーム115は、第1の物質105と第2の物質110との間の界面平面がビーム115に対して実質的に平行に配向された位置に移動することができる。ボクセル100を通過するビーム115は、第1の物質105のみを通過し、第2の物質110を通過しないより狭い光線を含むことができ、その逆も同様である。図2Aおよび図2B中で多くの光線の平均から構成されるものとして表されたビーム115について、図2C中のビーム115は、第1の物質105を通過する第1の光線115aと第2の物質110を通過する第2の光線115bとに分割できる。
【0041】
ここで、検出器120によって測定されるとき、第1の光線115aは、第2の光線115bと比較して伝播された光子の数が異なる。検出器120は、少なくとも1つのマクロピクセル125の格子を含むことができ、ここにおいて、少なくとも1つのマクロピクセル125の各々は、複数のマイクロピクセル130に分割され得る。つまり、マイクロピクセル130は、マクロピクセル125に含まれる一部の検出器素子(例えば、2以上の検出器素子から形成される検出器素子群)である。マイクロピクセル130は、より狭い第1および第2の光線115a、115bを検出し、別個の光子計数を登録するためにそれぞれの物質を通過するそれぞれの光線を通して光子から与えられたエネルギーをそれぞれのマイクロピクセル130において電気信号に変換するように構成され得る。第1の物質105と第2の物質110とが異なる減衰係数を有するので、(多色ビーム115について)光子の伝播された数は、次式によって与えられる。
【0042】
【数9】
【0043】
これは、図2Aおよび図2Bの状態から得られる上述の式とは異なる。したがって、物質成分にスペクトル計数を弁別しようとする試みは、この場合パーシャルボリューム誤差(PVE)を生じる。しかしながら、このPVEは、測定体積がマイクロピクセル130に対応するより小さい体積に細分化される場合に緩和され、マクロピクセル125のための計数の代わりに、マイクロピクセル130のための計数が物質弁別のために利用される。
【0044】
図3Aに、本開示の例示的な態様による、直交構成で構成された2つの物質を有するボクセル100を平均化するパーシャルボリュームの断面図を示す。図2Aで説明したように、積層形成を採用するとき、第1の物質105は、第2の物質110との境界面を形成することができる。簡略図では、この境界面は、平面であり、ビーム115の方向に対して実質的に直角であり得る。この構成では、ビーム115が両方の物質105、110を通過するので、パーシャルボリューム効果は、Nの読取値に誤差を与えない。
【0045】
図3Bに、本開示の例示的な態様による、均質的に混合された2つの物質を有するボクセル100を平均化するパーシャルボリュームの断面図を示す。図2Bで説明したように、第1の物質105と第2の物質110とは、物質の間の境界がないような均質混合物であり得る。ただし、混合物が均質であるので、ビーム115は、依然として図2Aおよび図2Bで行ったのと同じ減衰でボクセル100を通過し、パーシャルボリューム効果は生じない。
【0046】
図3Cに、本開示の例示的な態様による、平行構成で構成された2つの物質を有するボクセル100を平均化するパーシャルボリュームの断面図を示す。図2Cで説明したように、第1の物質105は、第2の物質110との境界面を形成することができる。ここで、境界面は平面であり、ビーム115の方向に対して実質的に平行であり得る。ビーム115が、ボクセル100を通過する有効透過ビームを生成するために総計され平均化される多くのより小さい光線115a、115bから構成されている場合、第1の物質105と第2の物質110とのこの向きは、パーシャルボリューム効果により測定誤差を生じ得る。したがって、測定誤差を低減するために、画像再構成のために、少なくとも1つのマクロピクセル125の値の代わりに(それぞれのマクロピクセル125ごとの複数のマイクロピクセル130の値を平均化することを介して決定される)複数のマイクロピクセル130の個々の測定値が使用され得る。
【0047】
図4に、PVEを識別し、マクロピクセル測定値からマイクロピクセル測定値に切り替えることによってそれを補正するための方法の非限定的な例の流れ図を示す。
【0048】
ステップS300において、画像収集を開始する。
ステップS301において、検出器120は、複数の検出器素子において検出された放射線の強度を表す投影データを生成する。ここでの投影データは、複数の検出器素子のうちの2以上の検出器素子をグルーピングしたマクロピクセルごとに、投影データを組み合わせてマクロピクセルに対応する投影データを生成する。具体的には、マイクロピクセル130のm番目のマイクロピクセルについて、およびi番目のエネルギービンについて計数Ni,m (micro)を検出する。これらの計数は、次いで、マクロピクセル125のi番目のエネルギービンのNiの計数を生成するために総計され、これは、次式によって与えられる。
【0049】
【数10】
【0050】
ステップS301では、測定された計数N={N (macro), N (macro) ・・・,N (macro)}が物質弁別のための計数N(L)と比較される。ここで、物質弁別の計数Nは、投影長Lのベクトルの関数である。つまり、各々のエネルギービンごとに、第1の計数を生成するために、各マクロピクセルに対応する投影データの計数を総計することによって、各マクロピクセルに対応する投影データを組み合わせる。たとえば、この比較は、(コスト関数または誤差測度とも呼ばれる)目的関数φを使用して実行され得、測定された計数Nと物質弁別の計数Nとの間の一致を表す。測定された計数N とモデル化された計数Nmとの間の差を表すためにコスト関数φ(L1,L2)のいくつかの異なる定義が使用され得る。一実装形態では、コスト関数は、測定された計数N’と物質弁別の計数Nとの間の差の最小2乗、すなわち、次式である。
【0051】
【数11】
【0052】
一実装形態では、コスト関数は、測定された計数N’mとモデル化された計数Nmとの間の差の加重最小2乗、すなわち、次式である。
【0053】
【数12】
【0054】
ここにおいて、σiは、測定された計数N の標準偏差である。
【0055】
代替的に、比較は、任意の知られている距離測度、たとえば、ユークリッド距離、または測定された計数と弁別された計数との間の誤差測度であり得る。
【0056】
弁別された計数N(L)は、たとえば、次式を使用した計算で取得される。
【0057】
【数13】
【0058】
ここにおいて、Cは、キャリブレーション定数である。いくつかの実装形態では、上記の式は、検出器応答を含むように変更され得る。その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願番号第13/866,965号で論じられているように、放射検出器の応答機能は、改善された結果を与えるためにキャリブレーションされ得る。一実装形態では、それぞれの所与の放射検出器の計数の検出器モデルは次式になる。
【0059】
【数14】
【0060】
ここにおいて、積分時間T、線形応答関数R0、非線形応答関数R1、および不感時間τの各々は、対象物OBJに対する投射測定の前に実行されるキャリブレーションの結果として放射検出器およびエネルギー成分ごとに既知である。
【0061】
さらに、弁別された計数N(L)は、物質ファントムの様々な既知の長さ(経路長)の計数を測定し、記憶するために様々なキャリブレーションを実行し、物質ファントムの長さの間の長さの計数を決定するためにこれらの計数の間を補間することによって取得される。ルックアップテーブルは、物質成分の投影長のそれぞれの値に従ってグループ化される計数を含む。
【0062】
さらに、弁別された計数N(L)は、ルックアップテーブル(LUT)に与えられ、記憶され得る。さらに、LUTは、投影長Lによってインデックス付けされる。すなわち、N(L)=LUT(L)である。つまり、LUTには、計数値N(L)と投影長Lとが対応付けられて格納される。
【0063】
目的関数φは、目的関数φの値が最小化されるまで投影長Lを調整すること、すなわち、次式によって最適化問題を構築するために使用される。
【0064】
【数15】
【0065】
目的関数φの最小値は、次いで、PVEを定量化する推定値を表すために戻される。つまり、測定された計数Nと弁別された計数N(L)との間の測定差分が最小化するようにLUTから弁別された計数N(L)を選択することによって物質弁別処理が実行される。つまり、マクロピクセル毎に、マクロピクセルに対応する投影データに対して物質弁別処理を実行することで、物質弁別された投影データ(物質弁別投影データともいう)が生成される。PVEが小さいとき、N(L)の値は、測定された計数Nと厳密に一致すると発見され、目的関数φの値が、たとえば、0の最小値に近づくことになる。言い換えれば、物質弁別処理が収束する。しかしながら、N(L)と測定された計数Nとの間で不十分な一致しか取得されないとき、この不十分な一致は、PVEによるものであり得、目的関数φの値は0に近づかないことになる。言い換えれば、物質弁別処理が収束しない。したがって、物質弁別処理が収束しないとき、マクロピクセルからマイクロピクセルにピクセルサイズを減少させ、代わりに、マイクロピクセルを使用して再び物質弁別処理を繰り返すことを1つの方法として用いればよい。
【0066】
いくつかの実装形態では、LUT中の所定の予測値N(L)は、単独で、あるいは1つまたは複数の追加の物質(たとえば、物質は骨および主に水から構成される軟組織であり得る)と組み合わせて、予想される物質の基準物質経路長に基づいて計算されるNの値であってもよい。
【0067】
(L)の値は、シミュレーションプログラムを介してまたは(たとえば、既知の物質ファントムのキャリブレーション測定値を使用して)経験的に生成されてもよい。マクロピクセル125の値は、スキャンにおける構成要素である基準物質、たとえば、第1の物質105と第2の物質110との組合せの経路長を推定するために使用されてもよい。
【0068】
ステップS303において、マクロピクセル計数Nと計算/キャリブレーションされた計数N(L)との比較の結果(たとえば、目的関数φの最小値)が、あらかじめ定義されたしきい値と比較される。目的関数φの最小値があらかじめ定義されたしきい値未満であるとき、物質弁別処理が収束したと判定され、PVE補正を実行すべきでないと決定され、方法がステップS303からステップS305に進む。目的関数φの最小値があらかじめ定義されたしきい値を上回る場合、物質弁別処理が収束しないと判定され、PVE補正を実行すべきと決定されて、方法がステップS303からステップS307に進む。
【0069】
いくつかの実装形態では、LUTは、それらの対応するマクロピクセル125の測定値Nのための基準物質経路長のセットL={L ,L ,…, L )を含むことができる。ここにおいて、N=LUT(L)不一致を最小化する引数Lを発見するためにLUTに対して探索、すなわち、次式が実行される。
【0070】
【数16】
【0071】
後続のマクロピクセル測定値NとLUT中の値との間の最小化された差にあらかじめ定義されたしきい値εが適用される。したがって、以下の不等式が満たされないときPVE補正が実行される。
【0072】
【数17】
【0073】
ステップS307に達するには、マクロピクセル125のためのNとNとの間の測定差分が、LUT中の値から所定の偏差範囲外にある(たとえば、あらかじめ定義されたしきい値εよりも大きい)と決定されている。したがって、パーシャルボリューム誤差(PVE)が識別されており、異なる物質成分のより良い空間分解能を与えるためにマクロピクセル測定値の代わりにマイクロピクセル測定値が使用される。つまり、目的関数φの最小値があらかじめ定義されたしきい値を上回るマクロピクセルに含まれる一部の検出器素子(すなわち、マイクロピクセル)に対して、物質弁別処理が実行される。これによりパーシャルボリューム誤差が補正され、補正された物質弁別投影データ(補正物質弁別投影データともいう)が生成される。
補正された物質弁別データは、PVE補正用に選択されたマクロピクセルに含まれるマイクロピクセルに関する物質弁別投影データを含み、PVE補正用に選択されなかったマクロピクセルに関する物質弁別投影データを含む。
【0074】
マイクロピクセル130の測定値は、マクロピクセル125のために使用されるのと同じ方法を使用して物質成分(たとえば、投影長L)に弁別され得る。たとえば、測定された計数は、N=4×{N (macro), N (macro) ・・・,N (macro)}によって与えられ得、ここにおいて、係数4は、マイクロピクセル130がマクロピクセル125よりも4倍小さいことを説明する。したがって、マクロピクセル125に基づく/それのためにキャリブレーションされたLUTを使用するには、計数は、マクロピクセル125ごとにマイクロピクセル130の数でスケールアップされなければならない。
次いで、物質弁別処理は、たとえば、以下の最適化問題を解くことによってマクロピクセル125の各々について実行される。
【0075】
【数18】
【0076】
マイクロピクセル測定値に対して物質弁別処理を実行する他の方法が、本発明の要旨について逸脱することなしに使用されてもよい。
【0077】
しきい値εは、LUT中の値よりも大きいまたは小さい所定の値、たとえば、±1%、±10%、±20%、±30%、または±50%であってもよい。
【0078】
LUTの補間は、LUTの引数、たとえば、L1およびL2に基づいてもよい。代替的に、LUTの引数は、pおよびLであってもよく、ここにおいて、L=L1+L2、L1=p*L、およびL2=(1-p)*Lである。補間は、L値の間で実行され得る。たとえば、L1=2.5およびL2=1.5の値を決定するために、ルックアップテーブルが投影長の整数値(すなわち、L1={0,1,2,...,N}およびL2={0,1,2,...,N})で離散化されるので、LUT中の値が与えられ得ない。したがって、線形補間は、L1およびL2の値に隣接する離散化された値の間の平均LUT値を決定すること、たとえば、次式によって実行され得る。
【0079】
【数19】
【0080】
ステップS305において、物質成分画像が、投影画像の物質弁別から再構成される。
【0081】
いくつかの実装形態では、再構成は、マイクロピクセル測定値を使用して実行されるべき物質弁別のためにマクロピクセルが選択された空間分布に応じて異なる空間格子サイズを使用することができる。すなわち、物質弁別のためにマイクロピクセル測定値が使用された領域では、物質弁別投影データは、マイクロピクセル分解能で分解される。物質弁別のためにマクロピクセル測定値が使用された領域では、物質弁別投影データは、マクロピクセル分解能で分解される。例えば、PVE補正用に選択されたマクロピクセルに含まれるマイクロピクセルに関する物質弁別投影データを使用し、PVE補正用に選択されなかったマクロピクセルに関する物質弁別投影データを使用して、物質成分画像が再構成される。
【0082】
いくつかの実装形態では、再構成は、マクロピクセル分解能に対応する均一な空間格子サイズを使用して実行されてもよい。たとえば、物質弁別のためにマイクロピクセル測定値が使用された領域では、マクロピクセルのための平均投影長を生成するためにマイクロピクセルの投影長が平均化され、マクロピクセルのためのこれらの平均投影長は、画像再構成のために使用されてもよい。
【0083】
いくつかの実装形態では、通信ボトルネックは、CTガントリの固定部分にスリップリングにわたってマイクロピクセルデータのすべてを送るには少なすぎるデータ帯域幅を生じ得る。この場合、所与のマクロピクセルの測定された計数とLUT中の最も近い計数値との間の比較/差が、マクロピクセル計数がPVEを表すのかどうかのクイックチェックとして使用されればよい。測定された計数とLUT中の最も近い計数との間の差がしきい値を上回るそれらのマクロピクセルについて、マクロピクセルは、フラグを付けられ得、そのマクロピクセルのためのマイクロピクセル計数は、物質弁別処理中に後で処理されるべきスリップリングにわたって通信されるデータ中に含まれてもよい。マクロピクセルの小さいサブセットのみがPVEしきい値εを上回るとき、スリップリングにわたって通信されるデータの量の増加は、特に、マイクロピクセル計数のすべてがスリップリングにわたって通信された場合の増加と比較して無視できるであろう。
【0084】
いくつかの実装形態では、しきい値εよりも小さいマクロピクセルからの値としきい値εよりも大きいマクロピクセル測定値に対応するマイクロピクセルからの値とは、次いで、ステップS305においてスキャン画像を再構成するために利用される。すなわち、PVEによって影響を及ぼされないマクロピクセルは、より粗いマクロピクセル分解能での再構成中に処理され、PVEによって影響を及ぼされるマクロピクセルは、より細かいマイクロピクセル分解能で処理される。
【0085】
いくつかの実装形態では、あらかじめ定義されたしきい値εの値の選択は、経験的に決定されてもよい。たとえば、しきい値εの調整によって、マイクロピクセル計数を使用して補正されるべきであるPVEを潜在的に有するものとして識別されるマクロピクセル125の割合を変更することができる。あらかじめ定義されたしきい値εをより小さくするにつれて、これを下回ると画像品質のわずかな利得しか達成され得なくなる収穫逓減点がある。さらに、あらかじめ定義されたしきい値εの値の選択は、CTスキャナの回転部分と固定部分との間の最大通信帯域幅によってガイドされてもよい。画像再構成中の計算のために使用され、したがって、送信帯域幅要求および処理時間を調整する。
【0086】
いくつかの実装形態では、物質弁別処理は、ステップS303において、あらかじめ定義されたしきい値εが投影長ベースの計数Nと測定された計数Nとの間の差/不一致を上回るのかどうかを決定するために第1の収束基準が満たされるまで実行される。次いで、この初期弁別からの投影長Lは、記憶され、後でステップS305またはステップS307において、第2の収束基準まで実行され得る第2の物質弁別処理のために使用されてもよい。たとえば、第2の物質弁別処理では、LUTからの結果が、投影長Lをより正確に決定するために補間されてもよい。さらに、第1および第2の物質弁別処理のために物質弁別の任意の知られている方法が使用されてもよい。
【0087】
いくつかの実装形態では、物質弁別処理は、ステップS301においてマクロピクセルごとに1回だけ実行され、物質弁別処理がマイクロピクセルに対して実行されるとき、物質弁別処理は、ステップS307においてマクロピクセルに対して1回だけ実行される。
【0088】
ステップS305において、物質成分画像は、物質成分にマクロピクセルのためのおよび選択マイクロピクセルのためのスペクトル投影データを弁別することによって生成された物質成分投影データから再構成される。画像再構成の任意の知られている方法が使用されてもよいる。たとえば、画像再構成プロセスは、フィルタ補正逆投影法、(たとえば、全変動最小化正則化項を使用した)逐次画像再構成法、フーリエベースの再構成法、または確率画像再構成法のいずれかを使用して実行されてもよい。
【0089】
次に、マイクロピクセルの選択方法の一例について図5を参照して説明する。
ステップS307においてマイクロピクセル測定値を使用する、すなわちマクロピクセルからマイクロピクセルを選択する場合、マクロピクセルから段階的にマイクロピクセルを選択してもよい。
図5に示すように、縦3ピクセル、横3ピクセルの計9個のピクセルからなるマクロピクセル400を想定する。マクロピクセル測定値NとLUT中の値との間の最小化された差がしきい値εを上回る場合、マクロピクセル400よりもサイズが小さいマイクロピクセルとして、縦2ピクセル、横2ピクセルの計4個で形成されるマイクロピクセル420が選択される。図5に示すマクロピクセル400においては、縦横1ピクセルずつずらすことで異なるマイクロピクセル420を選択することができる。つまり、図5に示す例では、マイクロピクセル420は4通り存在するので、マイクロピクセル420を選択する段階で、4つのマイクロピクセル420から適切なマイクロピクセルを選択すればよい。
【0090】
続いて、マイクロピクセル420を選択しても、マイクロピクセル420に対応するマイクロピクセル測定値とLUT中の値との間の最小化された差がしきい値を上回る場合、さらに小さいマイクロピクセルとして、1個のピクセルで形成されるマイクロピクセル440が選択されればよい。
このように、段階的に画素サイズが小さくなるようにマイクロピクセル420またはマイクロピクセル440を選択していくことで、マクロピクセル400よりは画素サイズは小さく、最小のピクセル単位よりも画素サイズを大きくしたマイクロピクセル420により物質弁別処理等を実行でき、最小のピクセル単位で処理するよりもその後の再構成画像の画質を向上させることができる。
【0091】
上記の説明は、PCDの非限定的な例を使用する本明細書で説明する方法を示す。しかしながら、本明細書で説明する方法の趣旨から逸脱することなく、これらの方法はまた、仮想のより大きい検出器(たとえば、マクロピクセル)のための信号を生成するために、それぞれのより小さい検出器(たとえば、マイクロピクセル)からの信号が総計される、たとえば、エネルギー積分型検出器を含む他のタイプのX線検出器を使用して実装されてもよい。
【0092】
図6に、本開示の例示的な実施形態による、CTスキャナの実装形態の概略図を示す。図6を参照すると、X線撮影ガントリ500を側面視で示し、それは、X線管501と、環状フレーム502と、マルチ行または2次元アレイ型のX線検出器503とをさらに含む。X線管501とX線検出器503とDAS504とは、回転軸RA(または回転の軸)の周りに回転可能に支持される環状フレーム502上の対象物OBJにわたって直径方向に取り付けられる。対象物OBJが、図示のページに向かってまたはそれの外に向かって軸RAに沿って移動されている間に、回転ユニット507は高速、たとえば、0.4秒/回転で環状フレーム502を回転する。
【0093】
X線CT装置は、様々なタイプの装置、たとえば、X線管およびX線検出器が検査されるべき目的物の周りを一緒に回転する回転/回転型装置と、多くの検出要素が輪または平面の形態に配列され、X線管のみが検査されるべき目的物の周りを回転する固定/回転型装置とを含む。本開示は、いずれかのタイプに適用される。回転/回転型は、明快のために一例として使用することにする。
【0094】
マルチスライスX線CT装置は、X線管501がX線を生成するようにスリップリング508を通してX線管501に印加される管電圧を生成する高電圧発生器509をさらに含む。X線は、断面積が円によって表される対象物OBJに放出される。たとえば、X線管501は、第2のスキャン中の平均X線エネルギーよりも小さい第1のスキャン中の平均X線エネルギーを有する。したがって、異なるX線エネルギーに対応する2つ以上のスキャンが取得され得る。X線検出器503は、対象物OBJを通して伝播された放出されたX線を検出するために対象物OBJにわたるX線管501の反対側に位置する。X線検出器503は、個々の検出器素子またはユニットをさらに含む。
【0095】
CT装置は、X線検出器503からの検出信号を処理するための他のデバイスをさらに含む。データ収集回路またはデータ収集システム(DAS)504は、各チャネルのX線検出器503からの信号出力を電圧信号に変換し、信号を増幅し、さらに信号をデジタル信号に変換する。X線検出器503とDAS504とは、所定の1回転あたりの総投影数(TPPR:total number of projections per rotation)を扱うように構成される。 DAS504は、しきい値を上回るマクロピクセルごとに投影データの値を送信してもよい。また、DAS504は、前処理デバイス506または再構成デバイス514などに、物質弁別処理が収束するマクロピクセルに関する投影データの値を送信してもよい。
【0096】
また、DAS504は、前処理デバイス506または再構成デバイス514などに、マクロピクセルの全てに関する投影データの値を送信してもよい。
この場合、再構成デバイス514が、物質弁別処理が収束しない前記選択されたマクロピクセルを選択する。再構成デバイス514は、DAS504に、選択されたマクロピクセルに対応する投影データの値の送信を要求する送信要求を送る。再構成デバイス514は、DAS504からの選択されたマクロピクセルに対応する投影データの値の送信を受信する。再構成デバイス514は、補正された物質弁別投影データを生成するために、選択されたマクロピクセルに対して上述したPVE補正を実行する。再構成デバイス514は、補正された物質弁別投影データから物質成分画像を再構成する。
【0097】
上記で説明したデータは、非接触データ送信機505を通してX線撮影ガントリ500の外のコンソール中に格納される前処理デバイス506に送られる。前処理デバイス506は、生データに対して感度補正などのいくつかの補正を実行する。メモリ512は、再構成処理の直前の段階において投影データとも呼ばれる得られたデータを記憶する。メモリ512は、再構成デバイス514、入力デバイス515、およびディスプレイ516とともに、データ/制御バス511を通してシステムコントローラ510に接続される。システムコントローラ510は、CTシステムを駆動するのに十分なレベルに電流を制限する電流調整器513を制御する。
【0098】
検出器は、CTスキャナシステムの様々な世代の間で患者に対して回転および/または固定される。一実装形態では、上記で説明したCTシステムは、第3世代ジオメトリシステムと第4世代ジオメトリシステムとを組み合わせたものの一例であり得る。第3世代システムでは、X線管501とX線検出器503とは、環状フレーム502上に直径方向に取り付けられ、環状フレーム502が回転軸RAの周りを回転するにつれて対象物OBJの周りを回転する。第4世代ジオメトリシステムでは、検出器は、患者の周りに固定的に配置され、X線管が患者の周りを回転する。代替実施形態では、X線撮影ガントリ500はCアームとスタンドとによって支持される環状フレーム502上に構成された複数の検出器を有する。
【0099】
メモリ512は、X線検出器ユニット503におけるX線の強度を表す測定値を記憶することができる。さらに、メモリ512は、たとえば、ニューラルネットワークをトレーニングし、撮像アーティファクトを低減するための方法、例えば図4で説明したPVEを識別し、PVE補正を実行するための様々なステップを実行するための専用プログラムを記憶することができる。
【0100】
再構成デバイス514は、本実施形態に係る取得機能、生成機能、選択機能、補正機能および再構成機能を有してもよい。必要に応じてボリュームレンダリング処理および画像差分処理などの事前再構成処理画像処理を実行することができる。
【0101】
前処理デバイス506によって実行される投影データの事前再構成処理は、たとえば、検出器のキャリブレーション、検出器の非線形性および極効果を補正することを含むことができる。
【0102】
再構成デバイス514によって実行される事後再構成処理は、必要に応じて、画像をフィルタ処理し、平滑化すること、ボリュームレンダリング処理、および画像差分処理を含むことができる。画像再構成プロセスは、様々なCT画像の再構成方法を実装することができる。再構成デバイス514は、たとえば、投影データ、再構成画像、キャリブレーションデータおよびパラメータ、ならびにコンピュータプログラムを記憶するためにメモリを使用することができる。
【0103】
再構成デバイス514は、個別論理ゲート、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または他の複雑なプログラマブル論理デバイス(CPLD)として実装され得るCPU(処理回路)を含むことができる。FPGAまたはCPLD実装形態は、VHDL、Verilog、または任意の他のハードウェア記述言語でコーディングされてもよく、コードは、直接FPGAまたはCPLD内でまたは別個の電子メモリとして電子メモリ中に記憶されてもよい。さらに、メモリ512は、ROM、EPROM、EEPROM(登録商標)またはフラッシュメモリなどの不揮発性であってもよい。メモリ512はまた、スタティックまたはダイナミックRAMなどの揮発性であってもよく、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサなどのプロセッサは、電子メモリならびにFPGAまたはCPLDとメモリとの間の相互作用を管理するために与えられることができる。
【0104】
代替的に、再構成デバイス514中のCPUは、本明細書で説明する機能を実行するコンピュータ可読命令のセットを含むコンピュータプログラムを実行することができ、プログラムは、上記で説明した非一時的電子メモリおよび/あるいはハードディスクドライブ、CD、DVD、フラッシュドライブまたは任意の他の知られている記憶媒体のいずれかの中に記憶される。さらに、コンピュータ可読命令は、米国のIntel(登録商標)からのXenon(登録商標)プロセッサまたは米国のAMDからのOpteronプロセッサなどのプロセッサ、ならびにマイクロソフト VISTA(登録商標)、UNIX(登録商標)、Solaris、LINUX(登録商標)、Apple(登録商標)、MAC-OSおよび当業者に知られている他のオペレーティングシステムなどのオペレーティングシステムと併せて実行するユーティリティアプリケーション、バックグラウンドデーモン、またはオペレーティングシステムの構成要素、あるいはそれらの組合せとして与えられてもよい。さらに、CPUは、命令を実行するために並行して協働的に動作する複数のプロセッサとして実装されてもよい。
【0105】
一実装形態では、再構成された画像は、ディスプレイ516上に表示され得る。ディスプレイ516は、LCDディスプレイ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、OLED、LEDまたは当技術分野において知られる任意の他のディスプレイであってもよい。
【0106】
メモリ512は、ハードディスクドライブ、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、フラッシュドライブ、RAM、ROMまたは当技術分野において知られている任意の他の電子ストレージであってもよい。
【0107】
PCDは、テルル化カドミウム(CdTe)、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、シリコン(Si)、ヨウ化水銀(HgI2)、およびガリウムヒ素(GaAs)などの半導体に基づいて直接変換型X線検出器を使用することができる。半導体ベースの直接変換型X線検出器は、概して、シンチレータ検出器などの間接変換型X線検出器よりもはるかに速い時間応答を有する。直接変換型X線検出器の速い時間応答は、それらが個々のX線検出イベントを分解することを可能にする。しかしながら、臨床X線適用例で典型的な高X線フラックスにおいて、検出イベントのいくつかのパイルアップが発生することになる。検出されたX線のエネルギーは直接変換型X線検出器によって生成された信号に比例し、検出イベントは、スペクトルCTのためのスペクトル分解されたX線データを生じるエネルギービンに編成される。
【0108】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、物質弁別処理が収束しないマクロピクセルにおいて、パーシャルボリューム誤差(PVE)が生じると識別する。その後、物質弁別のためにマクロピクセルではなくマイクロピクセルからの投影データを使用することによってPVEを補正する。これにより、適切にパーシャルボリューム誤差を補正することができるため、より正確な物質弁別および画像再構成を実行することができる。
【0109】
いくつかの実装形態について説明したが、これらの実装形態は、例として提示したにすぎず、本開示の教示を限定するものではない。実際、本明細書で説明する新規の方法、装置およびシステムは、様々な他の形態で実施され得、さらに、本明細書で説明する方法、装置およびシステムの形態の様々な省略、置換および変更が、本開示の趣旨から逸脱することなく行われ得る。
【符号の説明】
【0110】
100 ボクセル
105 第1の物質
110 第2の物質
115 ビーム(単色ビーム)
115a 光線
115b 光線
120 検出器
125,400 マクロピクセル
130,420,440 マイクロピクセル
500 X線撮影ガントリ
501 X線管
502 環状フレーム
503 X線検出器(X線検出器ユニット)
504 データ収集システム
505 非接触データ送信機
506 前処理デバイス
507 回転ユニット
508 スリップリング
509 高電圧発生器
510 システムコントローラ
511 データ/制御バス
512 メモリ
513 電流調整器
514 再構成デバイス
515 入力デバイス
516 ディスプレイ

図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトンカウンティング型の複数の検出器素子において検出され、エネルギービンごとに分解された放射線の強度を表す投影データを取得する取得部と、
前記複数の検出器素子のうちの2以上の検出器素子をグルーピングしたマクロピクセルごとに、各マクロピクセルに対応する前記投影データを前記エネルギービンごとに組み合わせて前記エネルギービンごとの別の投影データを生成する生成部と、
前記マクロピクセルに対応する前記エネルギービンごとの前記別の投影データを組み合わせた計数と、基準物質経路長に基づいて計算される予測値との間の差分があらかじめ定義されたしきい値を下回って収束しないマクロピクセルを選択する選択部と、
前記選択されたマクロピクセルに含まれる各々の検出器素子に対応する前記投影データに基づいて物質弁別処理を実行することで、補正物質弁別投影データを生成する補正部と、
具備する医用画像処理装置。
【請求項2】
前記マクロピクセルごとに、前記別の投影データと、前記各マクロピクセルに対応する前記別の投影データの推定値との間の不一致を最小化することによって物質弁別処理を実行する弁別部、を更に具備し、
前記別の投影データの前記推定値は、それぞれの物質成分の投影長に基づいて前記エネルギービンごとに決定され、
前記選択部は、前記別の投影データと前記推定値との間の前記不一致があらかじめ定義されたしきい値を上回るか否かに基づいて、前記マクロピクセルを選択する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記選択されたマクロピクセルに対応する前記投影データの値に対して物質弁別を実行することによってパーシャルボリューム誤差補正を実行して、第2の物質弁別投影データを生成し、
前記第2の物質弁別投影データは、前記複数の検出器素子の空間分解能を有し、
第1の物質弁別投影データは、前記マクロピクセルの分解能を有し、
前記補正物質弁別投影データは、前記パーシャルボリューム誤差補正のために選択された前記マクロピクセルのための前記第2の物質弁別投影データを含み、前記パーシャルボリューム誤差補正のために選択されなかったマクロピクセルのための前記第1の物質弁別投影データを含む、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記パーシャルボリューム誤差補正のために選択された前記マクロピクセルのための前記第2の物質弁別投影データを使用し、前記パーシャルボリューム誤差補正のために選択されなかった前記マクロピクセルのための前記第1の物質弁別投影データを使用して、物質成分画像を再構成する再構成部、を更に具備する、
請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記補正部は、前記選択されたマクロピクセルに対応する前記投影データの値に対して物質弁別を実行することによってパーシャルボリューム誤差補正を実行して、第2の物質弁別投影データを生成し、
前記第2の物質弁別投影データは、前記複数の検出器素子の空間分解能を有し、
第1の物質弁別投影データは、前記マクロピクセルの分解能を有し、
前記マクロピクセルごとに、前記マクロピクセルの各々の検出器素子に対応する前記第2の物質弁別投影データの値を組み合わせて、前記マクロピクセルの各々に対応する前記第1の物質弁別投影データの値を置換することによって、前記補正物質弁別投影データを生成する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記投影データは、各々のエネルギービンに従って分解された放射線の計数を表し、
前記生成部は、前記各々のエネルギービンごとに、前記各マクロピクセルに対応する前記投影データの計数を総計することによって、前記各マクロピクセルに対応する前記投影データを組み合わせて、第1の計数を生成する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
2つ以上の物質成分の投影長に基づいて、前記各々のエネルギービンごとに検出されたX線の計数を決定し、
前記投影長に基づく前記決定された計数と、前記各マクロピクセルに対応する前記投影データの前記計数との間の差分の尺度を表す目的関数の値を決定し、
収束基準が満たされるまで前記投影長を反復的に調整して、前記目的関数の前記値を最小化する弁別部、を更に具備する、
請求項6に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記選択部は、
前記目的関数の前記最小化された値があらかじめ定義されたしきい値を上回る場合、前記各マクロピクセルがパーシャルボリューム誤差補正の対象となる前記マクロピクセルに含まれると決定し、
前記目的関数の前記最小化された値が前記あらかじめ定義されたしきい値を上回らない場合、前記各マクロピクセルが前記パーシャルボリューム誤差補正の対象となる前記マクロピクセルに含まれないと決定することによって、前記マクロピクセルを選択する、
請求項7に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記第1の計数と第2の計数との間の差分の尺度を最小化するようにルックアップテーブルから前記第2の計数を選択することによって物質弁別処理を実行する弁別部、を更に具備し、
前記ルックアップテーブルは、物質成分の投影長のそれぞれの値に従ってグループ化される計数を含む、
請求項6に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記投影データを収集するデータ収集システム(DAS)を含む回転部材と、
固定部と、を更に具備し、
前記DASは、前記選択されたマクロピクセルごとに前記投影データの値を送信する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記DASは、前記固定部に、前記各マクロピクセルのうち前記選択されたマクロピクセルとは異なるマクロピクセルの各々について前記別の投影データの値を送信する、
請求項10に記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記DASは、前記固定部に、前記マクロピクセルの全てについて前記別の投影データの値を送信し、
前記固定部にある回路の一部は、
前記選択されたマクロピクセルを選択し、
前記DASに、前記選択されたマクロピクセルに対応する前記投影データの前記値の送信を要求する送信要求を送り、
前記DASから、前記選択されたマクロピクセルに対応する前記投影データの前記値の前記送信を受信し、
前記選択されたマクロピクセルに対してパーシャルボリューム誤差補正を実行して、前記補正物質弁別投影データを生成し、
前記補正物質弁別投影データから物質成分画像を再構成する、
請求項10に記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
撮像される対象物又は被検体を収容する対象物空間を通してX線を放射するX線源と、
前記対象物空間にわたって、前記X線源の反対側に配置されたフォトンカウンティング型の複数の検出器素子と、
前記複数の検出器素子は、前記X線源からの前記X線を検出し、
前記複数の検出器素子は、エネルギービンに従って分解された前記X線の計数を表す投影データを生成し、
前記複数の検出器素子のうちの2以上の検出器素子をグルーピングしたマクロピクセルごとに、各マクロピクセルに対応する前記投影データを前記エネルギービンごとに組み合わせて、前記エネルギービンごとの別の投影データを生成し、
前記マクロピクセルに対応する前記エネルギービンごとの前記別の投影データを組み合わせた計数と、基準物質経路長に基づいて計算される予測値との間の差分があらかじめ定義されたしきい値を下回って収束しないマクロピクセルを選択し
前記選択されたマクロピクセルに含まれる各々の検出器素子に対応する前記投影データに基づいて物質弁別処理を実行することで、補正物質弁別投影データを生成する第1の回路と、
前記補正物質弁別投影データを取得し、
前記補正物質弁別投影データから物質成分画像を再構成する第2の回路と、
を具備するX線CT装置。
【請求項14】
フォトンカウンティング型の複数の検出器素子において検出され、エネルギービンごとに分解された放射線の強度を表す投影データを取得し、
前記複数の検出器素子のうちの2以上の検出器素子をグルーピングしたマクロピクセルごとに、各マクロピクセルに対応する前記投影データを前記エネルギービンごとに組み合わせて、前記エネルギービンごとの別の投影データを生成し、
前記マクロピクセルに対応する前記エネルギービンごとの前記別の投影データを組み合わせた計数と、基準物質経路長に基づいて計算される予測値との間の差分があらかじめ定義されたしきい値を下回って収束しないマクロピクセルを選択し、
前記選択されたマクロピクセルに含まれる各々の検出器素子に対応する前記投影データに基づいて物質弁別処理を実行することで、補正物質弁別投影データを生成する、
医用画像処理方法
【請求項15】
フォトンカウンティング型の複数の検出器素子の各々において検出され、エネルギービンごとに分解された放射線の強度を表す第1の光子計数を取得する取得部と、
前記複数の検出器素子のうちの2以上の検出器素子を含むマクロピクセルの各々について、前記2以上の検出器素子の各々に対応する前記第1の光子計数を前記エネルギービンごとに総計することにより、前記エネルギービンごとの第2の光子計数を生成する生成部と、
前記第2の光子計数と、2以上の物質成分に関する投影長に基づいて前記エネルギービンごとにモデル化された第3の光子計数との間の差分に関する目的関数を決定し、前記目的関数を最小化するように前記投影長を反復的に調整することにより物質弁別処理を実行する弁別部と、
前記最小化された目的関数がしきい値を上回る場合、前記2以上の検出器素子のうちの各々の検出器素子に対応する前記第1の光子計数に基づいて前記物質弁別処理を実行することにより、補正物質弁別投影データを生成する補正部と、
を具備する医用画像処理装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
ステップS301では、測定された計数N={N (macro), N 2 (macro) ・・・,N (macro)}が物質弁別のための計数N(L)と比較される。ここで、物質弁別の計数Nは、投影長Lのベクトルの関数である。つまり、各々のエネルギービンごとに、第1の計数を生成するために、各マクロピクセルに対応する投影データの計数を総計することによって、各マクロピクセルに対応する投影データを組み合わせる。たとえば、この比較は、(コスト関数または誤差測度とも呼ばれる)目的関数φを使用して実行され得、測定された計数Nと物質弁別の計数Nとの間の一致を表す。測定された計数N とモデル化された計数Nmとの間の差を表すためにコスト関数φ(L1,L2)のいくつかの異なる定義が使用され得る。一実装形態では、コスト関数は、測定された計数N’と物質弁別の計数Nとの間の差の最小2乗、すなわち、次式である。