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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015698
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】回転伝達装置及び操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117936
(22)【出願日】2022-07-25
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サイクロ減速機
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光司
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB31
3D333CB45
3D333CC15
3D333CD03
3D333CD16
3D333CD19
3D333CE53
(57)【要約】
【課題】回転の入力に対して回転を規制する位置を広範囲に設定できるようにする。
【解決手段】同軸状に配置され一方の部材が固定、他方の部材が一方の部材に対して軸回り相対回転可能に支持される内方部材30及び外方部材21と、内方部材30と外方部材21との間に配置される中間部材40,90,100と、他方の部材が一方の部材に対して軸回り回転した際に他方の部材の回転を中間部材40,90,100の直線運動、又は、他方の部材の軸回り回転方位よりも小さい方位の中間部材40,90,100の回転運動に変換する動作変換機構Bと、中間部材40,90,100の直線運動又は回転運動を所定位置で規制するストッパ機構Sとを備えている回転伝達装置とした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸状に配置され一方の部材が固定、他方の部材が前記一方の部材に対して軸回り相対回転可能に支持される内方部材(30)及び外方部材(21)と、
前記内方部材(30)と前記外方部材(21)との間に配置される中間部材(40,90,100)と、
前記他方の部材が前記一方の部材に対して軸回り回転した際に前記他方の部材の回転を前記中間部材(40,90,100)の直線運動、又は、前記他方の部材の軸回り回転方位よりも小さい方位の前記中間部材(40,90,100)の回転運動に変換する動作変換機構(B)と、
前記中間部材(40,90,100)の前記直線運動又は前記回転運動を所定位置で規制するストッパ機構(S)と、
を備えている回転伝達装置。
【請求項2】
前記他方の部材は前記内方部材(30)、前記一方の部材は前記外方部材(21)、前記中間部材(40)は前記内方部材(30)の外周に配置される円筒部材であり、
前記動作変換機構(B)は、前記内方部材(30)及び前記中間部材(40)の対向面に形成される螺旋状の溝(33,43)と前記溝(33,43)内に配置されるボール(44)と、前記中間部材(40)が前記外方部材(21)に対して軸回り回転するのを規制する回り止め機構(21a,41a)とを備えているボールねじ機構である請求項1に記載の回転伝達装置。
【請求項3】
前記他方の部材は前記内方部材(30)、前記一方の部材は前記外方部材(21)、前記中間部材(90)は前記内方部材(30)の軸心とは異なる軸心を有する揺動軸心(91)回りに回転する揺動部材であり、
前記動作変換機構(B)は、前記内方部材(30)及び前記中間部材(90)の対向面に形成され互いに噛み合う歯(94,97)を備えているギヤ機構である請求項1に記載の回転伝達装置。
【請求項4】
前記他方の部材は前記内方部材(30)、前記一方の部材は前記外方部材(21)、前記中間部材(100)は前記内方部材(30)に対して回転自在であり、
前記動作変換機構(B)は、前記内方部材(30)の軸回り回転を減速して前記中間部材(100)の回転運動に変換する減速機構である請求項1に記載の回転伝達装置。
【請求項5】
前記ストッパ機構(S)は、前記中間部材(40,90,100)に設けられる移動規制部(45,46;95,96;105,106)と、前記一方の部材に設けられ前記移動規制部(45,46;95,96;105,106)が当接するストッパ部(55,65)とを備えている請求項1から4のいずれか一つに記載の回転伝達装置。
【請求項6】
前記ストッパ機構(S)は、前記中間部材(40)に設けられる移動規制部(45,46)と、前記外方部材(21)に設けられ前記移動規制部(45,46)が当接するストッパ部(55,65)とを備え、前記ストッパ部(55,65)は、前記外方部材(21)に対して補助軸受(50,60)を介して軸回り回転自在に支持されている請求項2に記載の回転伝達装置。
【請求項7】
前記ストッパ機構(S)は、前記中間部材(40)に設けられる移動規制部(45,46)と、前記外方部材(21)に設けられ前記移動規制部(45,46)が当接するストッパ部(55,65)とを備え、前記ストッパ部(55,65)は、前記一方の部材に対して軸方向への位置を調整可能である請求項2に記載の回転伝達装置。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか一つに記載の回転伝達装置の前記他方の部材にステアリングシャフト(4)の軸回り回転が伝達され、前記回転伝達装置を前記ステアリングシャフト(4)の軸心と同一軸心上、又は、前記ステリングシャフト(4)の軸心とは異なる軸心上に設けた操舵装置。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか一つに記載の回転伝達装置の前記他方の部材にステアリングシャフト(4)の軸回り回転が伝達され、
前記ステアリングシャフト(4)の軸回り回転に基づいて転舵部材(3,3)の向きを変化させる転舵アクチュエータ(2)を備え、前記ステアリングホイール(4)に操舵反力を付与する反力モータ(6)を、前記ステアリングシャフト(4)と前記他方の部材との間に備えている操舵装置。
【請求項10】
請求項1から4のいずれか一つに記載の回転伝達装置の前記他方の部材にステアリングシャフト(4)の軸回り回転が伝達され、前記ステアリングシャフト(4)の軸回り回転に基づいて転舵部材(3,3)の向きを変化させる転舵アクチュエータ(2)を備えた操舵装置を搭載した輸送用機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転伝達装置及びその回転伝達装置を用いた操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者によるステアリングホイールの回転操作に応じて車両の転舵輪(一般には前輪)の向きを変化させる車両用の操舵装置として、ステアバイワイヤ方式のものが知られている。ステアバイワイヤ方式の操舵装置は、ステアリングホイールの操作量を検知する操舵センサと、ステアリングホイールに対して機械的に切り離して設けられた転舵アクチュエータとを有し、その転舵アクチュエータが、操舵センサで検知されるステアリングホイールの操作量に応じて作動し、左右一対の転舵輪の向きを変化させる。
【0003】
ステアバイワイヤ方式の操舵装置においては、運転者によって回転操作されるステアリングホイールと、左右一対の転舵輪の向きを変化させる転舵アクチュエータとが機械的に切り離されている。そのため、運転者が、車両停車中にステアリングホイールを操作して転舵輪の向きがその移動限界(ストロークエンド)に到達したときにも、運転者は、さらにステアリングホイールを回転操作することが可能である。そのため、転舵輪の向きがストロークエンドに到達しているにもかかわらず、運転者は、転舵輪の向きがストロークエンドに到達していることに気付かないという問題が生じる。
【0004】
そこで、特許文献1の操舵装置では、ステアリングホイールに連結されているステアリングシャフトと、ステアリングシャフトを回転可能に収容するステアリングコラムとの間に、ステアリングホイールの操舵角が閾値角度を超えないように機械的に規制する規制機構を備えている。規制機構は、ステアリングシャフトに設けられている第1係止部と、ステアリングコラム内に設けられている第2係止部とを備え、第1係止部と第2係止部とが当接することで、それ以上のステアリングシャフトの軸回り回転を規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-172202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、ステアリングシャフト側の第1係止部とステアリングコラム側の第2係止部とでステアリングシャフトの軸回り回転を規制すると、ステアリングシャフトの軸回り1回転(360度)を超える範囲で、その回転を規制することができないという問題がある。すなわち、ステアリングシャフトの中立位置から最大で右側へ180度、左側へ180度の範囲内でしか、その回転を規制できない。
【0007】
そこで、この発明の課題は、回転の入力に対して回転を規制する位置を広範囲に設定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、この発明は、同軸状に配置され一方の部材が固定、他方の部材が前記一方の部材に対して軸回り相対回転可能に支持される内方部材及び外方部材と、前記内方部材と前記外方部材との間に配置される中間部材と、前記他方の部材が前記一方の部材に対して軸回り回転した際に前記他方の部材の回転を前記中間部材の直線運動、又は、前記他方の部材の軸回り回転方位よりも小さい方位の前記中間部材の回転運動に変換する動作変換機構と、前記中間部材の前記直線運動又は前記回転運動を所定位置で規制するストッパ機構と、を備えている回転伝達装置を採用した。
【0009】
ここで、前記他方の部材は前記内方部材、前記一方の部材は前記外方部材、前記中間部材は前記内方部材の外周に配置される円筒部材であり、前記動作変換機構は、前記内方部材及び前記中間部材の対向面に形成される螺旋状の溝と前記溝内に配置されるボールと、前記中間部材が前記外方部材に対して軸回り回転するのを規制する回り止め機構とを備えているボールねじ機構である構成を採用できる。
【0010】
また、前記他方の部材は前記内方部材、前記一方の部材は前記外方部材、前記中間部材は前記内方部材の軸心とは異なる軸心を有する揺動軸心回りに回転する揺動部材であり、前記動作変換機構は、前記内方部材及び前記中間部材の対向面に形成され互いに噛み合う歯を備えているギヤ機構である構成を採用できる。
【0011】
また、前記他方の部材は前記内方部材、前記一方の部材は前記外方部材、前記中間部材は前記内方部材に対して回転自在であり、前記動作変換機構は、前記内方部材の軸回り回転を減速して前記中間部材の回転運動に変換する減速機構である構成を採用できる。
【0012】
これらの各態様において、前記ストッパ機構は、前記中間部材に設けられる移動規制部と、前記一方の部材に設けられ前記移動規制部が当接するストッパ部とを備えている構成を採用できる。
【0013】
また、前記ストッパ機構は、前記中間部材に設けられる移動規制部と、前記外方部材に設けられ前記移動規制部が当接するストッパ部とを備え、前記ストッパ部は、前記外方部材に対して補助軸受を介して軸回り回転自在に支持されている構成を採用できる。
【0014】
さらに、前記ストッパ機構は、前記中間部材に設けられる移動規制部と、前記外方部材に設けられ前記移動規制部が当接するストッパ部とを備え、前記ストッパ部は、前記一方の部材に対して軸方向への位置を調整可能である構成を採用できる。
【0015】
これらの各態様からなる回転伝達装置の前記他方の部材にステアリングシャフトの軸回り回転が伝達され、前記回転伝達装置を前記ステアリングシャフトの軸心と同一軸心上、又は、前記ステリングシャフトの軸心とは異なる軸心上に設けた操舵装置を採用できる。
【0016】
また、これらの各態様からなる回転伝達装置の前記他方の部材にステアリングシャフトの軸回り回転が伝達され、前記ステアリングシャフトの軸回り回転に基づいて転舵部材の向きを変化させる転舵アクチュエータを備え、前記ステアリングホイールに操舵反力を付与する反力モータを、前記ステアリングシャフトと前記他方の部材との間に備えている構成を採用できる。
【0017】
また、これらの各態様からなる回転伝達装置の前記他方の部材にステアリングシャフトの軸回り回転が伝達され、前記ステアリングシャフトの軸回り回転に基づいて転舵部材の向きを変化させる転舵アクチュエータを備えた操舵装置を搭載した輸送用機器を採用できる。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、回転の入力に対して回転を規制する位置を広範囲に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明のステアバイワイヤ方式の操舵装置を模式的に示す図
図2】第1の実施形態の回転伝達装置近傍の縦断面図
図3図2のIII-III線に沿った断面図
図4図2の中間部材を軸方向一方側(図中上側)へ移動させた状態を示す断面図
図5図2の中間部材を軸方向他方側(図中下側)へ移動させた状態を示す断面図
図6】第1の実施形態の変形例を示す要部拡大図
図7】第2の実施形態の回転伝達装置近傍の縦断面図
図8】第3の実施形態の回転伝達装置近傍の縦断面図
図9図8の底面図
図10図8のX-X線に沿った断面図
図11図8のXI-XI線に沿った断面図
図12】第4の実施形態の回転伝達装置近傍の縦断面図
図13図12のXIII-XIII線に沿った断面図
図14】第4の実施形態の変形例を示す断面図
図15】第5の実施形態の回転伝達装置の断面図
図16】第6の実施形態の回転伝達装置の断面図
図17図16のXVII-XVII線に沿った断面図
図18図16のXVIII-XVIII線に沿った断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に、この発明に係る回転伝達装置を用いた操舵装置の実施形態を示す。この操舵装置は、運転者によるステアリングホイール1の操作量を電気信号に変換し、その電気信号に基づいて転舵アクチュエータ2を制御することで、転舵部材3の向きを変化させるステアバイワイヤ方式のものである。
【0021】
操舵装置は、図1に示すように、運転者により操舵されるステアリングホイール1と、ステアリングホイール1に連結されたステアリングシャフト4と、ステアリングホイール1の操作量を検知する操舵センサ5と、ステアリングホイール1に操舵反力を与える反力モータ6と、ステアリングホイール1に対して機械的に切り離して設けられた転舵アクチュエータ2と、制御部8とを有する。また、ステアリングシャフト4の回転は、反力モータ6の反対側に設けた回転伝達装置20に伝達されるようになっている。
【0022】
ステアリングシャフト4は、ステアリングホイール1を操舵したときに、ステアリングホイール1と一体に軸回りに回転する。操舵センサ5は、ステアリングシャフト4に取り付けられている。操舵センサ5としては、例えば、ステアリングホイール1の操舵角を検知する操舵角センサ、運転者によってステアリングホイール1に入力される操舵トルクを検知する操舵トルクセンサなどが挙げられる。
【0023】
ステアリングシャフト4には反力モータ6が取り付けられている。反力モータ6は、通電により回転トルクを発生する電動モータである。反力モータ6は、ステアリングシャフト4の端部に連結されている。反力モータ6は、回転トルクをステアリングシャフト4に入力することで、そのステアリングシャフト4を介してステアリングホイール1に操舵反力を付与する。
【0024】
転舵アクチュエータ2は、転舵軸10と、転舵軸ハウジング11と、転舵軸10を車両の左右方向に移動させる転舵モータ12と、転舵軸10の位置を検知する転舵センサ13とを有する。転舵軸10は、車両の左右方向に移動可能に転舵軸ハウジング11で支持されている。転舵軸ハウジング11は、転舵軸10の左右両端が転舵軸ハウジング11から突出した状態となるように転舵軸10の中央部を収容している。
【0025】
転舵モータ12および転舵センサ13は、転舵軸ハウジング11に取り付けられている。転舵モータ12と転舵軸10の間には、転舵モータ12が出力する回転を転舵軸10の直線運動に変換する運動変換機構(図示せず)が組み込まれている。転舵軸10の左右両端は、タイロッド14を介して左右一対の転舵部材3(この実施形態では転舵部材3としてタイヤホイールを採用しているので、以下、これを転舵輪3と称する)に連結され、転舵軸10が軸方向に移動するとこれに連動して左右一対の転舵輪3の向きが変化するようになっている。
【0026】
図1に示すように、反力モータ6、転舵モータ12は、制御部8で制御される。制御部8の入力側には、外部センサ9、操舵センサ5、転舵センサ13が電気的に接続されている。外部センサ9は、車両の走行速度を検知する車速センサ等である。制御部8の出力側には、反力モータ6、転舵アクチュエータ2が電気的に接続されている。
【0027】
制御部8は、操舵センサ5で検知されるステアリングホイール1の操作量と、外部センサ9で検知される車両の走行状況(車速等)とに応じて転舵モータ12を作動させ、左右一対の転舵輪3の向きを変化させる制御を行なう。また、このとき、制御部8は、ステアリングホイール1の操作量と車両の走行状況とに応じた大きさの操舵反力が発生するように反力モータ6を作動させる制御を行なう。
【0028】
(第1の実施形態)
図2図3は、第1の実施形態に係る回転伝達装置20の要部を示している。図2に示すように、反力モータ6は、モータケース6aと、モータケース6aからステアリングホイール1(図1参照)の側とは反対側に突出するモータシャフト31とを有する。以下、モータケース6aに対してステアリングホイール1の側を軸方向一端、その反対側を軸方向他端と称する。モータシャフト31は、モータケース6aの内部に組み込まれた図示しない転がり軸受によって、軸回り回転可能に支持されている。また、モータシャフト31は、ステアリングホイール1およびステアリングシャフト4と一体に回転するように、そのステアリングシャフト4に連結されている。モータケース6aは、それ自体が回転しないように車体(図示せず)に固定されている。
【0029】
モータシャフト31は、モータケース6aの軸方向他端側に設けられた回転伝達装置20に接続されている。
【0030】
回転伝達装置20は、同軸状に配置される内方部材30と外方部材21を備えている。外方部材21は、モータケース6aに固定されるケースとしている。ケースに設けられた穴22bにボルト24が挿通され、そのボルト24がモータケース6aに設けられた雌ネジ穴(図示せず)にねじ込まれることで、ケースがモータケース6aに固定されている。これにより、外方部材21(請求項でいう一方の部材に相当)は固定である。また、内方部材30(請求項でいう他方の部材に相当)は、軸受71,72を介して外方部材21に対して軸回り回転自在に支持されている。
【0031】
ケースを構成している外方部材21は、図2に示すように、第1部材22と第2部材23とからなる。第1部材22は、モータケース6a側である軸方向一端側から、その反対側の軸方向他端側へ向かって徐々に内径が拡がる環状部材で構成されている。ボルト24用の穴22bは、環状部材の軸方向一端において、外径方向へ突出する外縁突出部22aに設けられている。外縁突出部22a及び穴22bは、周方向に沿って複数設けられている。また、第1部材22の軸方向他端には、外径方向へ突出する外縁突出部22cが設けられ、その外縁突出部22cに雌ねじ穴22dが設けられている。外縁突出部22c及び雌ねじ穴22dは、第1部材22に第2部材23を固定するためのものであり、周方向に沿って複数設けられている。
【0032】
第2部材23は、軸方向他端側へ向かって徐々に内径が狭まる環状部材23aと、その環状部材23aの軸方向他端側を閉じる端壁部23bとを備えている。第2部材23の軸方向一端には、外径方向へ突出する外縁突出部23cが設けられ、その外縁突出部23cに穴23dが設けられている。外縁突出部23c及び穴23dは、第1部材22の外縁突出部22c及び雌ねじ穴22dに対応する位置に設けられている。第2部材23の穴22bにボルト25が挿通され、そのボルト25が第1部材22の雌ネジ穴22dにねじ込まれることで、第2部材23が第1部材22に固定されている。
【0033】
内方部材30は、図2及び図3に示すように、モータシャフト31とそのモータシャフト31に取り付けられる補助内方部材32とで構成される。補助内方部材32は、円柱状を成す本体部32aと、その本体部32aの軸方向一端側の端面に形成された軸方向穴32bとを備えている。軸方向穴32bにモータシャフト31が挿入されて、モータシャフト31と補助内方部材32とは軸回り一体に回転する。実施形態では、モータシャフト31と補助内方部材32とは、スプライン39a,39bによって結合されている。なお、モータシャフト31と補助内方部材32との接続構造はスプライン結合には限定されず、それ以外にも、例えば、セレーション結合、圧入等による接続構造としてもよい。また、モータシャフト31と補助内方部材32とを一体に成型された部材で構成して、それを内方部材30としてもよい。
【0034】
内方部材30と外方部材21とを回転自在に支持する軸受71は、補助内方部材32の軸方向他端の外周に設けられた凹部73、及び、第2部材23の軸方向他端の内周に設けられた嵌合部74に嵌合固定されている。
【0035】
外方部材21と内方部材30との間には、内方部材30に対して軸回り回転可能に支持される中間部材40が設けられている。中間部材40は、補助内方部材32の外周に配置される円筒部材41で構成されている。外方部材21、内方部材30及び中間部材40の軸心(回転中心)は一致している。
【0036】
内方部材30、中間部材40及び外方部材21との間には、内方部材30が外方部材21に対して軸回り回転した際に、内方部材30の回転を中間部材40の直線運動に変換する動作変換機構Bが設けられている。この実施形態では、動作変換機構Bとしてボールねじ機構を採用している。また、中間部材40と外方部材21との間には、中間部材40の直線運動を所定位置で規制するストッパ機構Sを備えた構成となっている。
【0037】
ボールねじ機構からなる動作変換機構Bは、補助内方部材32及び中間部材40の対向面にそれぞれ形成される螺旋状の溝33,43と、その溝33,43内に配置される複数のボール(鋼球)44と、中間部材40が外方部材21に対して軸回り回転するのを規制する回り止め機構(係止部21a及び被係止部41a)とを備えている。中間部材40は、筒状を成す基部42と、その基部42の筒軸方向中ほどから外径方向へ突出する突出部41とを備えている。
【0038】
中間部材40は、内方部材30に対してボールねじ機構を介して軸回り相対回転可能なナットとして機能する。ここで、突出部41の先端の係止部41aは、外方部材21の内面に設けられた被係止部21aに対して係合しており、且つ、係止部41aと被係止部21aは、係合状態を維持したまま軸方向へ相対移動可能(スライド可能)である。このため、外方部材21に対して内方部材30が軸回り回転すると、中間部材40は外方部材21に対して軸回り回転せずに、ボールねじ機構の作用により中間部材40は軸方向へ移動する。
【0039】
ステアリングシャフト4の回転によりモータシャフト31が軸回り一方向へ回転すると(例えば右旋回すると)、中間部材40は、図2に示す中立位置から軸方向一端側(図中の上方)へ移動する。やがて、図4に示す状態に至り、突出部41の軸方向一端側の端面で構成される移動規制部46が、外方部材21に設けられたストッパ部55に当接する。これにより、中間部材40は、それ以上の軸方向一方側への移動が規制される。この状態になると、内方部材30は、それ以上軸回り一方側へ回転できない。この状態が、ステアリングホイール1の操舵範囲の一方の終点(一方のストロークエンド/例えば、右操舵のストロークエンド)に相当する。
【0040】
また、ステアリングシャフト4の回転によりモータシャフト31が軸回り他方向へ回転すると(例えば左旋回すると)、中間部材40は、図2に示す中立位置から軸方向他端側(図中の下方)へ移動する。やがて、図5に示す状態に至り、突出部41の軸方向他端側の端面で構成される移動規制部45が、外方部材21に設けられたストッパ部65に当接する。これにより、中間部材40は、それ以上の軸方向他方側への移動が規制される。この状態になると、内方部材30は、それ以上軸回り他方側へ回転できない。この状態が、ステアリングホイール1の操舵範囲の他方の終点(他方のストロークエンド/例えば、左操舵のストロークエンド)に相当する。
【0041】
このとき、例えば、内方部材30が軸回り1回転(360°回転)するのに対して、中間部材40の軸方向への移動距離は僅かな距離であるので、回転の入力に対して回転を規制する位置を広範囲に設定できるようになる。例えば、中立位置から一方のストロークエンドまで、また、中立位置から他方のストロークエンドまで、それぞれ360°以上の回転角度を設定することも可能である。
【0042】
以上のように、中間部材40の移動範囲を規制するストッパ機構Sは、突出部41の軸方向への端面で構成される移動規制部45,46と、外方部材21に設けられたストッパ部55,65とを備えた構成となっている。なお実施形態では、ストッパ部55,65を構成する部材として、その板面が移動規制部45,46側へ向く板状の当接部材Dを採用して、その当接部材Dを外方部材21に取り付けている。ストッパ部55,65を構成する当接部材Dは、この実施形態のような板状の部材に限定されず、それ以外にもブロック状の部材としてもよいし、あるいは、外方部材21の部材自身の内面を当接部材Dとしてもよい。
【0043】
また、この実施形態では、ストッパ部55,65を構成する当接部材Dを、それぞれ外方部材21に対して相対回転自在としている。この点について、中間部材40の移動規制部45,46が、静止系である外方部材21に直接当接すると、ボールねじ機構を構成するボールねじシャフト(補助内方部材32)、鋼球(ボール44)、ナット(中間部材40)、ケース(外方部材21)の相互間で、部材同士の噛み込みが発生する場合がある。噛み込みが発生すると、その後のナット(中間部材40)の軸方向移動が円滑に行われない可能性がある。このため、この実施形態のように、当接部材Dを外方部材21に対して回転自在として、部材の噛み込みを抑制することが好ましい。
【0044】
なお、この実施形態では、外方部材21の内側に、転動体52,62と、その転動体52,62を周方向に沿って保持する保持器53,63と、転動体52,62を両側から挟む2つの軌道輪51,54;61,64を備えた転がり軸受からなる補助軸受50,60を配置している。図中の符号56,66は止め輪である。そして、補助軸受50,60の一方の軌道輪54,64を当接部材Dとしている。このため、当接部材Dの外方部材21への取り付けが容易である。さらに、この実施形態では、転動体52,62として、針状ころ、円筒ころ、ころ等を採用し、軌道輪を円板状としたスラスト軸受を採用したので、補助軸受50,60の軸方向厚さが薄く、中間部材40の軸方向への移動範囲を広く確保できるようになっている。また、補助軸受50,60の軌道輪54,64自体を当接部材Dとすることに代えて、補助軸受50,60の軌道輪54,64に取り付けた別部材を当接部材Dとしてもよい。
【0045】
図6に、第1の実施形態の変形例を示す。この例は、図2図4図6に示すケース(外方部材21)を、補助軸受50,60の軸方向位置が異なる別のケース(外方部材2)に変更したものである。図2図6との比較で、中間部材40の軸方向への移動範囲が、図2の距離Aから図6の距離Bへと縮小している。補助軸受50,60の軸方向距離(ストッパ部55,65間の距離)が、図2よりも図6の方が短いからである。これにより、同じ装置を用いながら、ケース等を取り換えることによって、ステリングホイール1の回転角を縮小することが可能である。また、補助軸受50,60の軸方向距離(ストッパ部55,65間の距離)が異なる種々のケース(外方部材21)を用意しておくことにより、仕様に応じてステアリングホイール1の回転角を容易に拡大・縮小することが可能となる。
【0046】
この実施形態では、中間部材40が外方部材21に対して相対回転しないようにする機構として、中間部材40側の係止部41aを突部、外方部材21の被係止部21aとして、その突部が入り込む軸方向溝としている。これを変形して、中間部材40側の係止部41aを軸方向溝、外方部材21の被係止部21aとして、その軸方向溝に入り込む突部としてもよい。また、この実施形態では、突出部41は軸回り全周に亘って連続的に設けられているが、突出部41を軸回り一部の方位にのみ設けた態様としてもよい。
【0047】
また、この実施形態では、動作変換機構Bとしてボールねじ機構を採用したが、この実施形態以外にも、例えば、内方部材30の回転を中間部材40の直線運動に変換する機構として、内方部材30及び中間部材40の対向面に形成される螺旋状のねじ溝と、中間部材40が外方部材21に対して軸回り回転するのを規制する回り止め機構21a,41aとを備えている滑りねじ機構を採用してもよい。このとき、ボールねじ機構を構成する螺旋溝の表面や、滑りねじ機構を構成するねじの表面に、摺動抵抗を減らす周知の表面処理を施してもよい。また、各実施形態において、ストッパ部55,65と移動規制部45,46との当接面に、その当接時に発生する衝突音を低減するような周知の表面処理を施してもよい。
【0048】
(第2の実施形態)
この発明の第2の実施形態を、図7に示す。図2図4図6では、補助軸受50,60としてスラスト軸受を採用したが、第2の実施形態では、軸受の種別を変更して、補助軸受50,60として玉軸受を採用している。補助軸受50,60は、図7に示すように、転動体59,69と、その転動体59,69を周方向に沿って保持する保持器と、転動体59,69を両側から挟む2つの軌道輪57,58;67,68を備えた深溝玉軸受である。外径側に位置する軌道輪57,67は、外方部材21の内面に圧入される外輪であり、内径側に位置する軌道輪58,68は当接部材Dとして機能する内輪である。内輪は、外方部材21に固定の外輪に対して回転自在である。突出部41の軸方向への端面で構成される移動規制部45,46は、内輪の端面に当接する。
【0049】
(第3の実施形態)
この発明の第3の実施形態を、図8図11に示す。装置の主たる構成は、前述の実施形態と同様であるので、以下、その差異点を中心に説明する(後述の各実施形態においても同様)。
【0050】
この第3の実施形態は、補助軸受50,60の軸方向距離(ストッパ部55,65間の距離)を外部から増減できるようにしたものである。すなわち、外方部材21に対するストッパ部55,65(実施形態では軸方向他端側のストッパ部65)の軸方向位置が、調整可能となっている。図8に示すように、ケースを構成する外方部材21の軸方向他端側の底に、固定プレート84とスライドプレート83が挿入されている。スライドプレート83には軸方向他端側の補助軸受60が配置されて、その補助軸受60が止め輪66により抜け止めされている。軸方向一端側の補助軸受50の構成は、前述の実施形態と同様である。
【0051】
スライドプレート83の外径には、その外縁に沿って少なくとも1個以上の突起87が設けられている。実施形態では、4個の突起87が軸回り等分方位に設けられている。ケースを構成する外方部材21の内径には凹部88が設けられており。突起87が凹部88に挿入されて、スライドプレート83は、外方部材21に対する軸回り方位を維持したまま軸方向にスライド可能となっている(図11参照)。
【0052】
スライドプレート83の軸方向他端側(補助軸受60に向く側の反対側)の面と、固定プレート84の軸方向一端側の面には、相互に噛み合うカム機構が設けられている(図10参照)。カム機構は、スライドプレート83側に設けられたカム突部85と、固定プレート84側に設けられたカム凹部86とを備えている。図10は、カム突部85とカム凹部86の周方向に沿った断面である。図10の左側の図は、カム突部85とカム凹部86が完全に噛み合った状態を示している。カム突部85とカム凹部86は、軸方向に直交する面方向であるフラットな底面85a,86a同士が面接触し、各底面85a,86aの周方向両端に接続される傾斜面85b,86b;85c、86c同士が面接触し得る形状となっている。また、傾斜面85b,86b;85c、86cは、底面85a,86aから遠ざかるにつれて徐々に浅くなる方向に形成されている。
【0053】
スライドプレート83に対して固定プレート84が軸回り一方向へ回転することで、図10の右側の図に示すように傾斜面85b,86b同士が摺接して、スライドプレート83が軸方向一端側へ押し出される。これにより、軸方向他端側のストッパ部65の軸方向位置が、軸方向一端側へ移動し、ストッパ部55,65間の距離が縮小する。また、その位置から、スライドプレート83に対して固定プレート84が軸回り他方向へ回転することで、傾斜面85b,86b同士が摺接しつつ、弾性部材88の付勢力によって固定プレート84に押し付けられながら、スライドプレート83が軸方向他端側へ移動する。これにより、ストッパ部55,65間の軸方向距離を拡縮することができるので、同じ装置を用いながら、ステリングホイール1の回転角を縮小することが可能である。なお、スライドプレート83に対して固定プレート84を軸回り他方向へ回転させても、同様の動作が可能である。また、カム機構の構成はこの実施形態には限定されず、例えば、ボールカム機構等、スライドプレート83を軸方向へ移動させることができる他の機構を採用してもよい。
【0054】
図9に示すように、固定プレート84の周方向少なくとも1か所にはねじ穴87が設けられている。ケースに設けられた長穴82に挿通されたねじ81が、ねじ穴87にねじ込まれる。ねじ81の長孔82内の位置を調整することにより、スライドプレート83と固定プレート84との方位が調整され、所定の位置(位相)でねじ81を締め付けることで、両者を固定できるようになっている。固定プレート84をねじ81により固定した後、ねじ81の緩み止め、及び、長孔82の開口箇所を封止するため、長孔82の開口箇所とねじ81周囲を液体パッキン等で封止することが望ましい。
【0055】
このカム機構では、スライドプレート83は、ケース(外方部材21)との間に設けた弾性部材88の付勢力により、固定プレート84側に押圧されている。このため、中間部材40とストッパ部65との非接触時に、スライドプレート83が振動等により移動することはない。また、この実施形態では、弾性部材88はコイルバネであり、弾性部材88がナット外径側に配置されている。このため、第1の実施形態(図2等参照)のような、中間部材40の回り止め機構(係止部21a及び被係止部41a)を設置するスペースを確保しにくい。このため、図8に示すように、中間部材40に軸方向貫通穴48を設け、この軸方向貫通穴48に回り止めピン47を挿入して、回り止めピン47の両端を外方部材21に設けた穴49,49に差し込むことで、中間部材40の回り止めを行うとともに、中間部材40の軸方向移動を許容する構成となっている。
【0056】
この実施形態では軸方向他端側のストッパ部65の軸方向位置を調整可能としたが、軸方向一端側のストッパ部55の軸方向位置を、調整可能とした態様も考えられる。
【0057】
(第4の実施形態)
この発明の第4の実施形態を図12及び図13に示す。第4の実施形態は、中間部材90として、内方部材30の軸心とは異なる軸心を有する揺動軸心91回りに回転する揺動部材を採用し、動作変換機構Bとして、内方部材30及び中間部材90の対向面に形成され互いに噛み合う歯94,97を備えたギヤ機構を採用している。
【0058】
中間部材90は、円柱状の部材で構成される揺動軸部92と、その揺動軸部92から内方部材30側へ突出する断面扇形状の揺動部93とを備えている。揺動軸部92は、軸受98によって、ケース(外方部材21)に対して、揺動軸心91周りに回転自在に支持されている。ギヤ機構の歯94,97は、図12に示すように、補助内方部材32の外周に形成されたウォーム(以下、ウォームギヤ97と称する)と、中間部材90の揺動部93の先端円筒面に形成されたウォームホイール(以下、ホイールギヤ94と称する)の組み合わせで構成されている。ウォームギヤ97は、補助内方部材32の外周に形成されたらせん状の歯で構成され、ホイールギヤ94は、ウォームギヤ97に噛み合う方向に形成され、揺動方向に沿って並列する複数の歯で構成されている。
【0059】
ウォームギヤ97の伸びる方向(内方部材30の軸方向に平行な方向)に沿ってホイールギヤ94が揺動するように、中間部材90が配置されている。中間部材90の揺動軸心91は、内方部材30の軸方向に平行な方向線に対して直交している。
【0060】
ステアリングシャフト4の回転によりモータシャフト31が軸回り一方向へ回転すると(例えば右旋回すると)、中間部材90の揺動部93は、図12に示す中立位置から軸方向一端側(図中の上方)へ揺動する。やがて、揺動部93の一端側の端面で構成される移動規制部96が、外方部材21に設けられたストッパ部55に当接する。これにより、中間部材90は、それ以上の一端側への揺動が規制される。この状態になると、内方部材30は、それ以上軸回り一方側へ回転できない。この状態が、ステアリングホイール1の操舵範囲の一方の終点(一方のストロークエンド/例えば、右操舵のストロークエンド)に相当する。
【0061】
また、ステアリングシャフト4の回転によりモータシャフト31が軸回り他方向へ回転すると(例えば左旋回すると)、中間部材90は、図12に示す中立位置から軸方向他端側(図中の下方)へ移動する。やがて、揺動部93の他端側の端面で構成される移動規制部95が、外方部材21に設けられたストッパ部65に当接する。これにより、中間部材90は、それ以上の他端側への揺動が規制される。この状態になると、内方部材30は、それ以上軸回り他方側へ回転できない。この状態が、ステアリングホイール1の操舵範囲の他方の終点(他方のストロークエンド/例えば、左操舵のストロークエンド)に相当する。
【0062】
このように、ステアリングシャフト4の回転に伴い、ウォームギヤ97の回転が減速しつつホイールギヤ94に伝達されるので、回転の入力に対して回転を規制する位置を広範囲に設定できるようになる。このため、前述の実施形態と同様に、中立位置から両方のストロークエンドまで、それぞれ360°以上の回転角度を設定することも可能である。なお、ここでは、ケース(外方部材21)自身が、ストッパ部55,65を構成する当接部材Dとなっているが、ケース内に固定したケースとは別の部材を当接部材Dとしてもよい。
【0063】
この実施形態では、動作変換機構Bを構成するギヤ機構として、ウォームギヤ97とホイールギヤ94の組み合わせとしたが、ギヤ機構としてはこの実施形態には限定されず、他の構成からなるウォームとウォームホイールの組み合わせ、あるいは、ラックとピニオンとの組み合わせ等、周知のギヤ機構を採用できる。すなわち、内方部材30(他方の部材)に入力された回転を、その内方部材30の軸回り回転方位よりも小さい方位の中間部材90の回転運動(揺動運動)に変換し得る種々の動作変換機構Bを採用できる。
【0064】
また、図14に、第4の実施形態の変形例を示す。この例は、図12に示すケース(外方部材21)を、移動規制部95,96間の揺動軸心91周りの中心角(角度)α,βが異なる別の中間部材90に変更したものである。図12図14との比較で、中間部材90の揺動可能な角度が、図12の角度θ-αから図14の角度θ-βへと拡大している。図12図14の例では、θ=θ、α>βであり、その結果、θ-α<θ-βとなり、揺動可能な方位を広く確保できている。
【0065】
また、図示していないが、図12に示すケース(外方部材21)を、ストッパ部55,65間の角度θ,θが異なる別のケース(外方部材21)に変更することによっても、中間部材90の揺動可能な角度を変更できる。例えば、ストッパ部55,65間の角度θ,θが大きいケース(外方部材21)に取り換えれば、中間部材90の揺動可能な角度を拡大でき、ストッパ部55,65間の角度θ,θが小さいケース(外方部材21)に取り換えれば、中間部材90の揺動可能な角度を縮小できる。
【0066】
このように、同じ装置を用いながら、中間部材90やケース等を取り換えることによって、ステリングホイール1の回転角を拡大・縮小することが可能である。また、移動規制部95,96間の中心角(角度)α,βが異なる種々の中間部材90、あるいは、ストッパ部55,65間の角度θ,θが異なる種々のケース(外方部材21)を用意しておけば、仕様に応じてステアリングホイール1の回転角を容易に拡大・縮小できる。
【0067】
(第5の実施形態)
この発明の第5の実施形態を図15に示す。この実施形態は、第1の実施形態における中間部材40と、第4の実施形態における中間部材90を併用したものである。
【0068】
中間部材40(この実施形態では、以下、第1中間部材40’と称する)は、第1の実施形態と同様であるが、その外周にラックギヤ97’が形成されている。また、中間部材90(この実施形態では、以下、第2中間部材90’と称する)の構成も、第4の実施形態と同様であるが、ここでは、ホイールギヤ94に代えて、ラックギヤ97’に噛み合うピニオンギヤ94’を設定している。なお、第4の実施形態と同様に、これをウォームとウォームホイールとからなるウォームギヤ機構とすることも可能である。
【0069】
内方部材30(他方の部材)に入力された回転は、第1中間部材40’の直線運動に変換され、その直線運動は、内方部材30が軸回り1回転(360°回転)するのに対して、中間部材40の軸方向への移動距離は僅かな距離である。さらに、その第1中間部材40’の僅かな軸方向移動に伴って、ギヤの噛み合いによって第2中間部材90’が揺動するので、第2中間部材90’の揺動角度も僅かに抑えられる。このため、この実施形態の動作変換機構Bによれば、内方部材30の軸回り回転を、その内方部材30の軸回り回転方位よりもはるかに小さい方位の第2中間部材90’の回転運動(揺動運動)に変換し得るという利点がある。これにより、ステアリングホイール1の中立位置からいずれかの側のストロークエンドまでの回転角を、360°以上の角度、例えば、720°、1080°といったように飛躍的に大きく拡大できる。
【0070】
(第6の実施形態)
この発明の第6の実施形態を図16図18に示す。この実施形態は、動作変換機構Bとして、内方部材30の軸回り回転を減速して中間部材100の回転運動に変換する減速機構(減速機)を採用したものである。ステアリングホイール1の回転を減速機構で減速した上で、その減速した動きをストッパ部55,65で規制することで、ステアリングホイール1の回転角度の拡大を可能としている。
【0071】
この実施形態では、減速機構としてローラ減速機を採用している。ローラ減速機の構成は、図16に示すように、モータシャフト31の外径に、ローラ減速機の入力軸として機能する補助内方部材32が、スプライン39a,39bを介して嵌合している。補助内方部材32の外径面には軸受102が圧入されている。軸受102は、外輪102a及び内輪102bと、その外輪102aと内輪102bとの間に配置される転動体102c、転動体102cを周方向に沿って保持する保持器102d等によって構成されている。実施形態では、転動体102cとしてボールを用いた玉軸受を採用しているが、他の形式の軸受であってもよい。
【0072】
補助内方部材32の外径面32cを構成する円の中心dは、モータシャフト31の回転中心cに対して距離w1だけ偏心している。図中の符号r0は、補助内方部材32の外径面32cを構成する円の中心dから、外径面32cまでの半径を示している。また、外径面32cの偏心により、軸受102の外径面、すなわち、外輪102aの外径面102eを構成する円の中心(外径面32cの中心dと一致)も、モータシャフト31の回転中心cに対して同方向に距離w1だけ偏心している。
【0073】
軸受102の外輪102aの外周には、周方向に沿って複数のローラ103aが配置されている。ローラ103aは、出力保持器103bによって周方向に沿って等間隔で保持されている。ローラ103a及び出力保持器103bからなる動作体を、第1伝達部103と称する。図中の符号r1は、ローラ103aの最外径部(最も外径側の点)を結ぶことで得られる円の中心dから、そのローラ103aの最外径部までの半径を示している。
【0074】
第1伝達部103の外周には、第2伝達部110が配置されている。第2伝達部110は、その内周に複数の円弧状の凹部(内歯)112を、周方向に沿って等間隔に備えた環状部材113を有している。環状部材113は、キー111によってケース(外方部材21)に回り止めされている。凹部112の数はローラ103aの数よりも多く、また、凹部112の周方向への間隔は、ローラ103aの周方向への間隔よりも僅かに密である。第2伝達部110が備える複数の凹部112の底部を結ぶことで得られる円の中心は、モータシャフト31の回転中心cに一致している。図中の符号r2は、凹部112の底部を結ぶことで得られる円周の中心(回転中心cに一致)から、その円周までの半径を示している。出力保持器103bは、軸方向他端側へ延長されて中間部材100に接続されている。この実施形態では、出力保持器103bは中間部材100と一体の部材として成型されているが、これを別々の部材として成型して両者を一体化してもよい。
【0075】
中間部材100は、ケース(外方部材21)に対して軸受113を介して回転自在に支持される本体部107と、その本体部107から軸方向一端側へ突出して、補助内方部材32の内周に入り込む内輪部107a、及び、本体部107から軸方向他端側へ突出してケースの底部23bに形成された凹部23cに入り込む回転規制部107bを備えている。内輪部107aは、補助内方部材32に対して軸受104を介して回転自在に支持されている。内輪部107aの回転中心cは、補助内方部材32の回転中心cに一致している。軸受104は、外輪104a及び内輪104bと、その外輪104aと内輪104bとの間に配置される転動体104c、転動体104cを周方向に沿って保持する保持器104d等によって構成されている。実施形態では、転動体104cとしてボールを用いた玉軸受を採用しているが、他の形式の軸受であってもよい。これは、軸受113についても同様である。
【0076】
第1伝達部103のローラ103aは、第2伝達部110の凹部102に対して周方向1箇所で完全に噛み合っている。図17において、右端の部分が、その噛み合い地点である。そして、周方向に沿って左へに移動するにつれて、ローラ103aと凹部102の噛合いのずれが大きくなり、反対側に当たる図中左端の部分は、ローラ103aと凹部102とが完全に離脱している。
【0077】
モータシャフト31の軸回り回転に伴い、補助内方部材32が軸回り回転すると、軸受102の内輪102bも一体に回転するとともに、転動体102c及び外輪102bは、補助内方部材32の偏心によって、噛み合い地点のローラ103aにやや拘束されながら、同方向へ回転しようとする。そして、第1伝達部103のローラ103aと第2伝達部110の凹部102とが完全に噛み合う地点が、その回転方向に沿って周方向に沿って移動していく。噛み合う地点の移動に伴い、ローラ103aを保持する出力保持器103bは、補助内方部材32が軸回り1回転する間に、ローラ103aの数と凹部102の数の差の数に相当する角度だけ回転する。これにより、モータシャフト31の回転が、減速されて中間部材100に伝達される。
【0078】
中間部材100が軸回り回転することにより、本体部107とともに回転規制部107bも軸回り回転する。ここで、図18に示すように、回転規制部107bは、外径側へ突出する断面扇形状の揺動部108を備えている。また、ケースには、その揺動部108が収容される断面扇形状の凹部109が設けられている。揺動部108の周方向両端面は移動規制部105,106であり、凹部109の周方向両端面は、ストッパ部55,65である。第4の実施形態と同様に、移動規制部105,106同士の成す回転中心c周りの中心角は、ストッパ部55,65同士の成す回転中心c周りの中心角よりも小さく設定されており、移動規制部105,106のいずれかと、それに対応する側のストッパ部55,65とが当接することで、それ以上の内方部材30の軸回り回転が規制される。
【0079】
中間部材100の軸回り回転は、モータシャフト31の軸回り回転よりも減速されているので、移動規制部105,106同士の成す中心角や、ストッパ部55,65同士の成す中心角を大きく設定する必要はなく、回転を規制する位置を広範囲に設定できるようになる。また、移動規制部105,106同士の成す中心角が異なる種々の中間部材100や、ストッパ部55,65同士の成す中心角が異なる種々のケース(外方部材21)を用意しておくことにより、仕様に応じてステアリングホイール1の回転角を容易に拡大・縮小することが可能となる。
【0080】
この第6の実施形態では、減速機構としてローラ減速機を用いたが、例えば、遊星歯車減速機やサイクロ減速機等、他の形式からなる減速機構を採用してもよい。
【0081】
上記の各実施形態では、回転伝達装置20の軸心、すなわち、内方部材30、中間部材40,90,100及び外方部材21の軸心をステアリングシャフト4の軸心と同一軸心上に配置したが、この実施形態以外にも、例えば、回転伝達装置20の内方部材30の軸心をステリングシャフト4の軸心とは異なる軸心上に設けた構成を採用してもよい。
【0082】
さらに、上記の各実施形態では、ステアリングホイール1に操舵反力を付与する反力モータ6を備え、その反力モータ6を、ステアリングシャフト4と内方部材30(回転伝達装置20)の間に備えている構成としたが、この実施形態には限定されず、反力モータ6の位置は自由に設定できる。例えば、モータシャフト31を延長してそのモータシャフト31を回転伝達装置20の軸方向他端側へ突出させ、その突出させたモータシャフトの端部に反力モータ6を設けてもよい。また、これらの実施形態では、反力モータ6を備えた構成を示しているが、反力モータ6を備えない操舵装置にもこの発明を適用可能である。
【0083】
また、回転伝達装置20は、上記の各実施形態に加え、通電と非通電の切り替えによりステアリングホイール1の回転を阻止するステアリングロック状態とステアリングホイール1の回転を許容するステアリングロック解除状態とを切り替える電磁式クラッチユニットを備えた構成としてもよい。
【0084】
さらに、上記の各実施形態の内外を逆転させて、内方部材30を固定とし(請求項でいう一方の部材に相当)、外方部材21が内方部材30に対して軸回り回転自在に支持されている(請求項でいう他方の部材に相当)としてもよい。この場合、ステアリングシャフト4の軸回り回転は、外方部材21に入力される構成となる。
【0085】
上記の各実施形態では、ステアバイワイヤ方式の操舵装置を例に、この発明の構成を説明したが、この実施形態には限定されず、この発明は、ステアバイワイヤ方式以外の各種の車両用の操舵装置、あるいは、車両用以外の操舵装置、その他各種の装置にも使用できる。なお、実施形態の車両用の操舵装置では、転舵部材3としてタイヤホイールを採用しているのでこれを転舵輪3と称したが、車輪を備えない輸送用機器、例えば、ステアリングホイール1の回転操作によりステアリングシャフト4を軸回り回転させ、その回転により舵(ラダー)を左右に動作させる舵取り装置を備えた輸送用機器(例えば、船舶や航空機等)においては、転舵部材3は舵(ラダー)に相当する。
【0086】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1 ステアリングホイール
2 転舵アクチュエータ
3 転舵部材
4 ステアリングシャフト
6 反力モータ
20 回転伝達装置
21 外方部材
21a,41a 回り止め機構
30 内方部材
31 モータシャフト
32 補助内方部材
33,43 溝
40,90,100 中間部材
44 ボール
45,46;95,96;105,106 移動規制部
50,60 補助軸受
55,65 ストッパ部
B 動作変換機構
S ストッパ機構
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