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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015701
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/08 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
B61D17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117942
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】北山 茂
(72)【発明者】
【氏名】小畑 亮二
(72)【発明者】
【氏名】平野 博嗣
(72)【発明者】
【氏名】白井 篤史
(72)【発明者】
【氏名】大橋 健悟
(72)【発明者】
【氏名】大塚 大輔
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 賢太
(57)【要約】
【課題】部品点数の削減および溶接工数の削減をすることが可能な鉄道車両を提供すること。
【解決手段】側構体22は、側外板25の車両構体2の内方の側の内面321から側外板25を補強する補強部材26Aを備えること、補強部材26Aは、側出入口用開口部254Aの上方の幕板部251において、側出入口用開口部254Aの軌道方向の中央近傍から、側出入口用開口部254Aの軌道方向の端部の位置P11を超えて延在すること、内面321と接合するための接合部262A,262Bと、接合部262A,262Bよりも前記内方の側に向かって凸状に形成され、軌道方向に沿って延在する横骨部261A,261Bと、を備えること、横骨部261A,261Bと、接合部262A,262Bとが、軌道方向に垂直かつ内面321に沿う方向に交互に配列された状態で、連続して一体に形成されていること。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両構体の側面部を構成する側構体を備え、前記側構体が前記車両構体の外面を形成する側外板を備え、前記側外板は側出入口用の開口部を備える鉄道車両において、
前記側構体は、前記側外板の前記車両構体の内方の側の内面から前記側外板を補強する補強部材を備えること、
前記補強部材は、
前記開口部の上方の幕板部において、前記開口部の軌道方向の中央近傍から、前記開口部の軌道方向の端部の位置を超えて延在すること、
前記内面と接合するための接合部と、
前記接合部よりも前記内方の側に向かって凸状に形成され、軌道方向に沿って延在する横骨部と、
を備えること、
前記横骨部と、前記接合部とが、軌道方向に垂直かつ前記内面に沿う方向に交互に配列された状態で、連続して一体に形成されていること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両において、
前記側外板は、前記開口部の、軌道方向における中央部で、第1側外板と第2側外板とに分割されていること、
前記第1側外板と前記第2側外板とのそれぞれに、前記補強部材が接合されていること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鉄道車両において、
前記補強部材の、前記幕板部の下方に位置する吹寄部の側の端部は、前記接合部であること、
該接合部は、前記開口部の軌道方向の端部の位置を超えて設けられる部分において、その他の部分よりも前記吹寄部の側に、前記開口部の前記幕板部の側の端部の位置を超えて延伸された延長部を備えること、
を特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両構体の側面部を構成する側構体を備え、側構体が車両構体の外面を形成する側外板を備え、側外板は側出入口用の開口部を備える鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両構体の外面を形成する側外板には、乗客が乗降するための側出入口の開口部が設けられている。そして、側外板のうち、当該開口部の上方の部分(幕板部)は、内面側から補強部材により補強されている。その補強部材は、シアプレートと軌道方向に延在する複数本の横骨とを溶接により接合することで構成されていることが一般的である。シアプレートと横骨を結合した補強部材により側外板を補強する技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-70421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、補強部材をシアプレートと横骨とにより構成すると、部品点数が増大するという問題がある。また、補強部材をシアプレートと横骨とにより構成すると、横骨をシアプレートに接合して補強部材を構成した後、その補強部材を側外板に接合しなければならないため、溶接工数が増大するという問題がある。部品点数および溶接工数の増大は、製造コストの増大および車両構体の質量の増大に繋がるため、部品点数および溶接工数の削減が求められている。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、部品点数の削減および溶接工数の削減をすることが可能な鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両は、次のような構成を有している。
【0007】
(1)車両構体の側面部を構成する側構体を備え、前記側構体が前記車両構体の外面を形成する側外板を備え、前記側外板は側出入口用の開口部を備える鉄道車両において、前記側構体は、前記側外板の前記車両構体の内方の側の内面から前記側外板を補強する補強部材を備えること、前記補強部材は、前記開口部の上方の幕板部において、前記開口部の軌道方向の中央近傍から、前記開口部の軌道方向の端部の位置を超えて延在すること、前記内面と接合するための接合部と、前記接合部よりも前記内方の側に向かって凸状に形成され、軌道方向に沿って延在する横骨部と、を備えること、前記横骨部と、前記接合部とが、軌道方向に垂直かつ前記内面に沿う方向に交互に配列された状態で、連続して一体に形成されていること、を特徴とする。
【0008】
(2)(1)に記載の鉄道車両において、前記側外板は、前記開口部の、軌道方向における中央部で、第1側外板と第2側外板とに分割されていること、前記第1側外板と前記第2側外板とのそれぞれに、前記補強部材が接合されていること、を特徴とする。
【0009】
(3)(1)または(2)に記載の鉄道車両において、前記補強部材の、前記幕板部の下方に位置する吹寄部の側の端部は、前記接合部であること、該接合部は、前記開口部の軌道方向の端部の位置を超えて設けられる部分において、その他の部分よりも前記吹寄部の側に、前記開口部の前記幕板部の側の端部の位置を超えて延伸された延長部を備えること、を特徴とする。
【0010】
上記の鉄道車両によれば、側構体は、側外板の車両構体の内方側の内面から側外板を補強する補強部材を備えており、前記内面と接合するための接合部と、接合部よりも前記内方の側に向かって凸状に形成され、軌道方向に沿って延在する横骨部と、を備えること、横骨部と、接合部とが、軌道方向に垂直方向かつ前記内面に沿う方向に交互に配列された状態で、連続して一体に形成されていること、を特徴とするため、従来、横骨とシアプレートとを接合した補強部材を用いていたことに比して、部品点数の削減が可能である。
【0011】
また、従来、横骨をシアプレートに接合して形成された補強部材を側外板に接合していたが、本発明に係る鉄道車両によれば、横骨部と接合部とが一体に形成された補強部材を側外板に接合すれば良いため、横骨をシアプレートに接合するための溶接工程が不要であり、従来に比して溶接工数の削減が可能である。
【0012】
そして、部品点数の削減および溶接工数の削減により、鉄道車両の製造コストの増大および車両構体の質量の増大を防止することが出来る。
【0013】
さらに、上記の鉄道車両によれば、補強部材は、開口部の上方の幕板部において、開口部の軌道方向の中央近傍から、開口部の軌道方向の端部の位置を超えて延在することを特徴としているので、開口部に取り付けられる側出入口枠の、上方の角部への応力集中を緩和することが可能である。
【0014】
図7を用いて詳しく説明すると、従来、車両構体100は、台車300により両持ち状態に支持されている。このとき、台車に近い位置にある側出入口枠400ほど、車両構体100が沈み込もうとする力F11と台車300による支持力F12とが大きく働き、側出入口枠400の上方の角部401に応力が集中することが知られている。本願発明における補強部材は、開口部の軌道方向の中央近傍から、開口部の軌道方向の端部の位置を超えて設けられるため、側出入口枠の、上方の角部への応力集中を緩和することが可能である。さらに、(3)に記載の鉄道車両のように、補強部材の、幕板部の下方に位置する吹寄部の側の端部を、接合部とし、該接合部は、開口部の軌道方向の端部の位置を超えて設けられる部分において、その他の部分よりも吹寄部の側に、開口部の幕板部の側の端部の位置を超えて延伸された延長部を備えることとすれば、開口部に取り付けられる側出入口枠の、上方の角部への応力集中を、より緩和することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の鉄道車両によれば、部品点数の削減および溶接工数の削減をすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る鉄道車両の側面図である。
図2】側外板の構成を示す図である。
図3】側外板を構成する第2ブロックを内面側から見た状態を示す図である。
図4図3の部分Aを拡大した拡大図である。
図5】補強部材を示す図である。
図6図5のB矢視図である。
図7】従来技術に係る鉄道車両の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る鉄道車両の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
まず本実施形態に係る鉄道車両1の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る鉄道車両1の側面図である。図2は、側外板25の構成を示す図である。
【0019】
鉄道車両1は、軌道6上を走行する、例えば通勤車両である。この鉄道車両1は、図1に示すように、車両構体2と、車両構体2を支持する台車3とを備えている。
【0020】
車両構体2は、鉄道車両1の床部をなす台枠21と、台枠21の軌道方向の両端部に立設されることで、鉄道車両1の連結部を形成する一対の切妻構体24と、台枠21の枕木方向の両端部に立設されることで、鉄道車両1の側面部を形成する一対の側構体22と、切妻構体24および側構体22の上端部に結合されることで、鉄道車両1の屋根部を形成する屋根構体23と、により6面体をなすように構成される。また、車両構体2には、内部の客室に通じる側出入口4A,4B,4C,4Dおよび窓5A,5B,5C,5D,5Eが、軌道方向に交互に並んで設けられている。なお、本実施形態における鉄道車両1は、軌道方向の両端部に連結部が形成される中間車両であるが、これに限定されるものではなく、先頭車両であっても良い。
【0021】
側構体22は、車両構体2の側面を形成する側外板25を備える。また、側構体22は、側外板25の車両構体2の内方の側の面(以下、単に内面という)から側外板25を補強する補強部材、横骨、縦骨等を備えている。
側外板25は、ステンレス鋼の板材からなる。また、側外板25は、図1および図2に示すように、側出入口4A,4B,4C,4Dに対応する位置に、側出入口用開口部254A,254B,254C,254Dを備える。この側出入口用開口部254A,254B,254C,254Dには、側出入口を構成するための側出入口枠(不図示)が組付けられる。また、側外板25は、窓5A,5B,5C,5D,5Eに対応する位置に、窓用開口部255A,255B,255C,255D,255Eを備えている。ここで、図2に示すように、側外板25の垂直方向において、側出入口用開口部254A,254B,254C,254Dや窓用開口部255A,255B,255C,255D,255Eの開口部の上方部分を幕板部251といい、窓用開口部255A,255B,255C,255D,255Eよりも下方の部分を腰板部253といい、幕板部251と腰板部253とに挟まれる部分を吹寄部252という。
【0022】
側外板25は、図2に示すように、側出入口用開口部254A,254B,254C,254Dの軌道方向における中央部で分割されており、第1ブロック31と、第2ブロック32と、第3ブロック33と、第4ブロック34と、第5ブロック35と、が軌道方向に並び、隣接するブロック同士が結合されることで構成されている。
【0023】
第1ブロック31は、第2ブロック32側の端部313の幕板部251において、第2ブロック32側に向かって延伸する袖部312を備えている。
【0024】
第2ブロック32は、第1ブロック31側の端部323の幕板部251において、第1ブロック31側に向かって延伸する袖部322Aを備えている。さらに第2ブロック32は、第3ブロック33側の端部324の幕板部251において、第3ブロック33側に向かって延伸する袖部322Bを備えている。
【0025】
第3ブロック33は、第2ブロック32と同様の構成を有しており、第2ブロック32側の端部333の幕板部251において、袖部332Aを備え、第4ブロック34側の端部334の幕板部251において、袖部332Bを備えている。
【0026】
第4ブロック34は、第2ブロック32と同様の構成を有しており、第3ブロック33側の端部343の幕板部251において、袖部342Aを備え、第5ブロック35側の端部344の幕板部251において、袖部342Bを備えている。
【0027】
第5ブロック35は、第1ブロック31と同様の構成を有しており、第4ブロック34側の端部353の幕板部251において、袖部352を備えている。
【0028】
上記のような、第1ブロック31と、第2ブロック32と、第3ブロック33と、第4ブロック34と、第5ブロック35と、が軌道方向に並び、隣接するブロック同士が結合されることで、側出入口用開口部254A,254B,254C,254Dが形成されている。すなわち、側出入口用開口部254Aの軌道方向両端は、第1ブロック31の端部313,第2ブロック32の端部323により構成され、側出入口用開口部254Aの上端は、第1ブロック31の袖部312および第2ブロック32の袖部322Aにより構成されている。また、側出入口用開口部254Bの軌道方向両端は、第2ブロック32の端部324,第3ブロック33の端部333により構成され、側出入口用開口部254Bの上端は、第2ブロック32の袖部322Bおよび第3ブロック33の袖部332Aにより構成されている。また、側出入口用開口部254Cの軌道方向両端は、第3ブロック33の端部334,第4ブロック34の端部343により構成され、側出入口用開口部254Cの上端は、第3ブロック33の袖部332Bおよび第4ブロック34の袖部342Aにより構成されている。また、側出入口用開口部254Dの軌道方向両端は、第4ブロック34の端部344,第5ブロック35の端部353により構成され、側出入口用開口部254Dの上端は、第4ブロック34の袖部342Bおよび第5ブロック35の袖部352により構成されている。
【0029】
なお、側外板25を構成する各ブロック31-35は、幕板部251と吹寄部252とが一枚板により一体として形成されたものに、腰板部253を構成する板材を溶接して形成されているが、幕板部251と吹寄部252と腰板部253とを一枚板により一体として形成されたものとしても良い。
【0030】
側外板25を構成する各ブロック31-35は、車両構体2の内方の側の面(以下、単に内面という)から補強部材、横骨、縦骨等により補強されている。具体的には、図3図6を用い、第2ブロック32を例にして説明する。図3は、側外板25を構成する第2ブロック32を内面321側から見た状態を示す図である。図4は、図3の部分Aを拡大した拡大図である。図5は、補強部材26Aを示す図である。図6は、図5のB矢視図である。
【0031】
図3に示すように、第2ブロック32の内面321のうち、幕板部251においては、窓用開口部255Bの上方に、窓用開口部255Bの軌道方向の幅寸法と略同一の長さを有する横骨27A,27Bが垂直方向に並んで配設され、第2ブロック32の内面321に接合されている。さらに、補強部材26A,26Bが、横骨27A,27Bを軌道方向の両側から挟むように位置され、第2ブロック32の内面321に接合されている。なお、補強部材26A,26Bの詳細については、後述する。
【0032】
第2ブロック32の内面321のうち、吹寄部252においては、窓用開口部255Bの軌道方向両側それぞれに、横骨28B,28Cが垂直方向に並んで配設され、第2ブロック32の内面321に接合されている。さらに、横骨28Aが窓用開口部255Bの上部(幕板部251の下端)に配置され、横骨28Dが、窓用開口部255Bの下部(腰板部253の上端部)に配置され、それぞれ第2ブロック32の内面321に接合されている。横骨28A,28Bは、窓用開口部255Bの軌道方向両端部を超えて延設された延設部を備えており、当該延設部が、横骨28B,28Cを垂直方向の両側から挟むように位置されている。
【0033】
第2ブロック32の内面321のうち、腰板部253においては、第2ブロック32の端部323近傍から端部324近傍までの長さを有する横骨29A,29B,29Cが垂直方向に並んで配設され、第2ブロック32の内面321に接合されている。
【0034】
また、第2ブロック32の窓用開口部255Bの軌道方向の両側において、第2ブロック32の垂直方向に延在する縦骨30A,30Bが、補強部材26A,26B、横骨28A,28B,28C,28D,29A,29B,29Cの上に接合されている。
【0035】
補強部材26A,26Bについて、補強部材26Aを例にして詳しく説明する。補強部材26Aは、側出入口用開口部254Bの上方の幕板部251において、側出入口用開口部254Bの軌道方向の中央部近傍(すなわち袖部322Bの先端部近傍)から、側出入口用開口部254Bの軌道方向の端部の位置(図4上の位置P11)を超えて、窓用開口部255Bの上方の横骨27A,27Bの縦骨30A側の端部に隣接する位置まで延在している。
【0036】
このように、補強部材26Aが、側出入口用開口部254Bの上方の幕板部251において、側出入口用開口部254Bの軌道方向の中央近傍から、側出入口用開口部254Bの軌道方向の端部の位置(位置P11)を超えて延在することで、側出入口用開口部254Bに取り付けられる側出入口枠の、上方の角部への応力集中を緩和することが可能である。
【0037】
補強部材26Aは、ステンレス鋼の板材からなる。そのような板材を曲げ加工することで、軌道方向に沿って延在する横骨部261A,261Bと、補強部材26Aを第2ブロック32に接合するため接合部262A,262Bとが、内面321に沿って、垂直方向に交互に配列された状態で一体に形成されている。具体的には、垂直方向に並ぶ横骨部261Aと横骨部261Bとの間に接合部262Aが位置し、横骨部261Bの吹寄部252側に接合部262Bが位置している。このように、補強部材26Aは、横骨部261A,261Bと、接合部262A,262Bとが、一体に形成されているため、従来用いられていた横骨とシアプレートとを接合した補強部材に比して、部品点数の削減が可能である。また、補強部材26Aは、曲げ加工ではなく、プレス加工により得るものとしても良い。また、本実施形態においては、横骨部261A,261Bと、接合部262A,262Bとが、図中の垂直方向に平行に、交互に配列された状態となっているが、内面321が、垂直方向に平行な面でなく角度を有する面である場合には、その角度に沿うように、横骨部261A,261Bと、接合部262A,262Bとが交互に配列される。また、内面321が、曲面であれば、その曲面に沿って、横骨部261A,261Bと接合部262A,262Bとが交互に配列される。
【0038】
横骨部261A,261Bは、車両構体2の内方の側(図6中の左側)に向かって凸状に、かつ、図6に示すように、横骨部261A,261Bと第2ブロック32の内面321とがなすボックス断面が略台形状となるように形成されている。なお、ボックス断面を略台形状とするのはあくまで一例であり、その他の形状(例えば、略長方形状、略三角形状等)としても良い。また、ボックス断面の大きさは、要求される強度に応じて適宜設定される。なお、補強部材26Aは、従来用いられていた横骨とシアプレートとを接合した補強部材に比して強度が低下することが懸念されるが、横骨部261A,261Bと第2ブロック32の内面321とがなすボックス断面を、従来の横骨とシアプレートがなすボックス断面と同等にすれば、実用上の強度に問題がないことを、本願発明者は確認している。
【0039】
接合部262A,262Bは、第2ブロック32の内面321に平行な平面状に形成されている。なお、接合部262A,262Bを平面状としているのは、内面321が平面状であるからであり、内面321が曲面をなしていれば、接合部262A,262Bをその曲面に沿うように形成することが望ましい。
【0040】
補強部材26Aの吹寄部252側の端部を形成する接合部262Bは、図4上の位置P11を超えて、横骨27A,27B側に位置する部分において、接合部262Bのその他の部分よりも吹寄部252の側に延伸された延長部263を備えている。延長部263の先端位置(図中の位置P21)は、側出入口用開口部254Bの幕板部251の側の端部(図中の上端部)の位置(図中の位置P12)を超えて、吹寄部252の側に位置している。
【0041】
接合部262A,262Bの第2ブロック32側の面は、第2ブロック32の内面321に接しており、接合部262A,262Bが第2ブロック32に溶接されることで、補強部材26Aは第2ブロック32に接合されている。接合部262Aの溶接を行う位置は、溶接部43A,43Bに示す位置である。また、接合部262Bの溶接を行う位置は、溶接部43C,43Dに示す位置である。この溶接部43A,43B,43C,43Dは、レーザ溶接により生じるビードの位置を示すものであるが、接合部262A,262Bを内面321に接合するための溶接工法は、レーザ溶接に限定されるものではなく、その他の溶接工法(例えばスポット溶接、プラグ溶接等)を取っても良い。
【0042】
従来は、横骨をシアプレートに接合して形成された補強部材を側外板に接合していたが、本実施形態における鉄道車両1は、横骨部261A,261Bと接合部262A,262Bとが一体に形成された補強部材26Aを側外板25(第2ブロック32)に接合すれば良いため、横骨をシアプレートに接合するための溶接工程が不要であり、従来に比して溶接工数の削減が可能である。
【0043】
次に、補強部材26Aの溶接を行う位置について詳しく説明する。溶接部43A,43B,43Cの位置は、窓用開口部255Bの上方に位置する横骨27A,27Bの溶接を行う位置に合わせてある。つまり、横骨27Aは、溶接部44Aにおいて第2ブロック32に接合されているところ、補強部材26Aの溶接部43Aの垂直方向の位置が、溶接部44Aの垂直方向の位置と略同一にされている。同様に、横骨27Bは、溶接部44B,44Cにおいて第2ブロック32に接合されているところ、補強部材26Aの溶接部43Bの垂直方向の位置が、溶接部44Bの垂直方向の位置と略同一にされ、補強部材26Aの溶接部43Cの垂直方向の位置が、溶接部44Cの垂直方向の位置と略同一にされている。このように溶接部の位置を合わせることで、車両構体2の外面に表れる、横骨27Aまたは横骨27Bを第2ブロック32に接合するための溶接痕の位置と、補強部材26Aを第2ブロック32に接合するための溶接痕の位置を揃えることが出来る。これにより、鉄道車両1の美観が損なわれることを防止している。
【0044】
シアプレートと横骨とにより構成された従来の補強部材を用いた場合、シアプレートと側外板とが重なった部分や、シアプレートと側外板と横骨とが重なった部分等、複数の部材が重なった部分で、重ね合わせ溶接を行うことが一般的であるが、横骨の断面形状により溶接位置が制限される場合、補強部材の軌道方向に隣接する横骨と溶接痕の位置を合わせることが出来ず、鉄道車両1の美観が損なわれていた。本実施形態に係る鉄道車両1の補強部材26Aは、垂直方向に幅のある接合部262A,262Bを備えるため、従来のシアプレートと横骨とにより構成された補強部材に比して、溶接位置の自由度が高い。溶接位置の自由度が高いため、上記したように軌道方向に隣接する横骨27A,27Bの溶接痕の位置を合わせることができ、鉄道車両1の美観が損なわれることを防止することが出来る。
【0045】
溶接部43Dの垂直方向の位置は、側出入口用開口部254Bの幕板部251の側の端部(図中の上端部)の位置(図中の位置P12)よりも、吹寄部252側に位置している。このようにして、延長部263が側外板25(第2ブロック32)に接合されることで、側出入口用開口部254Bに取り付けられる側出入口枠の、上方の角部への応力集中を、より緩和することが可能である。
【0046】
以上、本実施形態に係る鉄道車両1に用いられる補強部材について、補強部材26Aを例に説明したが、補強部材26Bは、図3中において左右対称の形状をなしており、その構成、機能は補強部材26Aと同様である。また、以上は第2ブロック32を例に説明しているが、第1ブロック31,第3ブロック33,第4ブロック34,第5ブロック35のそれぞれも、袖部312,332A,332B,342A,342B,352の内面側に、補強部材26A,26Bと同様の補強部材を備えている。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る鉄道車両1は、
(1)車両構体2の側面部を構成する側構体22を備え、側構体22が車両構体2の外面を形成する側外板25を備え、側外板25は側出入口用の開口部(側出入口用開口部254A,254B,254C,254D)を備える鉄道車両1において、側構体22は、側外板25の車両構体2の内方の側の内面321から側外板25を補強する補強部材26A,26Bを備えること、補強部材26A,26Bは、開口部(側出入口用開口部254A,254B,254C,254D)の上方の幕板部251において、開口部(側出入口用開口部254A,254B,254C,254D)の軌道方向の中央近傍から、開口部(側出入口用開口部254A,254B,254C,254D)の軌道方向の端部の位置P11を超えて延在すること、内面321と接合するための接合部262A,262Bと、接合部262A,262Bよりも前記内方の側に向かって凸状に形成され、軌道方向に沿って延在する横骨部261A,261Bと、を備えること、横骨部261A,261Bと、接合部262A,262Bとが、軌道方向に垂直かつ内面321に沿う方向に交互に配列された状態で、連続して一体に形成されていること、を特徴とする。
【0048】
(2)(1)に記載の鉄道車両1において、側外板25は、開口部(側出入口用開口部254A,254B,254C,254D)の、軌道方向における中央部で、第1側外板と第2側外板とに分割されていること、第1側外板と第2側外板とのそれぞれに、補強部材26A,26Bが接合されていること、を特徴とする。具体的には、側外板25は、側出入口用開口部254Aの軌道方向における中央部で、第1ブロック31(第1側外板)と第2ブロック32(第2側外板)に分割されており、第1ブロック31(袖部312)に補強部材26A、と第2ブロック32(袖部322A)に補強部材26Bが接合されている。また、側出入口用開口部254Bの軌道方向における中央部で、第2ブロック32(第1側外板)と第3ブロック33(第2側外板)に分割されており、第2ブロック32(袖部322B)に補強部材26A、と第3ブロック33(袖部332A)に補強部材26Bが接合されている。また、側出入口用開口部254Cの軌道方向における中央部で、第3ブロック33(第1側外板)と第4ブロック34(第2側外板)に分割されており、第3ブロック33(袖部332B)に補強部材26A、と第4ブロック34(袖部342A)に補強部材26Bが接合されている。また、側出入口用開口部254Dの軌道方向における中央部で、第4ブロック34(第1側外板)と第5ブロック35(第2側外板)に分割されており、第4ブロック34(袖部342B)に補強部材26A、と第5ブロック35(袖部352)に補強部材26Bが接合されている。
【0049】
(3)(1)または(2)に記載の鉄道車両1において、補強部材26A,26Bの、幕板部251の下方に位置する吹寄部252の側の端部は、接合部262Bであること、該接合部262Bは、開口部(側出入口用開口部254)の軌道方向の端部の位置P11を超えて設けられる部分において、その他の部分よりも吹寄部252の側に、開口部(側出入口用開口部254)の幕板部251の側の端部の位置P12を超えて延伸された延長部263を備えること、を特徴とする。
【0050】
上記の鉄道車両1によれば、側構体22は、側外板25の車両構体2の内方側の内面321から側外板25を補強する補強部材26A,26Bを備えており、内面321と接合するための接合部262A,262Bと、接合部262A,262Bよりも前記内方の側に向かって凸状に形成され、軌道方向に沿って延在する横骨部261A,261Bと、を備えること、横骨部261A,261Bと、接合部262A,262Bとが、軌道方向に垂直方向かつ前記内面に沿う方向に交互に配列された状態で、連続して一体に形成されていること、を特徴とするため、従来、横骨とシアプレートとを接合した補強部材を用いていたことに比して、部品点数の削減が可能である。
【0051】
また、従来、横骨をシアプレートに接合して形成された補強部材を側外板に接合していたが、本実施形態に係る鉄道車両1によれば、横骨部261A,261Bと接合部262A,262Bとが一体に形成された補強部材26A,26Bを側外板25に接合すれば良いため、横骨をシアプレートに接合するための溶接工程が不要であり、従来に比して溶接工数の削減が可能である。
【0052】
そして、部品点数の削減および溶接工数の削減により、鉄道車両1の製造コストの増大および車両構体2の重量の増大を防止することが出来る。
【0053】
さらに、上記の鉄道車両1によれば、補強部材26A,26Bは、開口部(側出入口用開口部254A,254B,254C,254D)の上方の幕板部251において、開口部(側出入口用開口部254A,254B,254C,254D)の軌道方向の中央近傍から、開口部(側出入口用開口部254A,254B,254C,254D)の軌道方向の端部の位置P11を超えて延在することを特徴としているので、開口部(側出入口用開口部254A,254B,254C,254D)に取り付けられる側出入口枠の、上方の角部への応力集中を緩和することが可能である。さらに、(3)に記載の鉄道車両1のように、補強部材26A,26Bの、幕板部251の下方に位置する吹寄部252の側の端部を、接合部262Bとし、該接合部262Bは、開口部(側出入口用開口部254A,254B,254C,254D)の軌道方向の端部の位置P11を超えて設けられる部分において、その他の部分よりも吹寄部252の側に、開口部(側出入口用開口部254A,254B,254C,254D)の幕板部251の側の端部の位置P12を超えて延伸された延長部263を備えることとすれば、開口部(側出入口用開口部254A,254B,254C,254D)に取り付けられる側出入口枠の、上方の角部への応力集中を、より緩和することが可能である。
【0054】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、鉄道車両1としては、通勤車両に限定されるものではなく、優等車両等でも良い。また、補強部材26Aは、横骨部と接合部をそれぞれ2つ備えるものとしているが、横骨部と接合部の数はこれに限定さない。
【符号の説明】
【0055】
1 鉄道車両
2 車両構体
22 側構体
25 側外板
26A 補強部材
26B 補強部材
251 幕板部
254A 側出入口用開口部
254B 側出入口用開口部
254C 側出入口用開口部
254D 側出入口用開口部
261A 横骨部
261B 横骨部
262A 接合部
262B 接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7