(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157030
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】多方向入力装置
(51)【国際特許分類】
H01H 25/04 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
H01H25/04 D
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024139307
(22)【出願日】2024-08-20
(62)【分割の表示】P 2024505970の分割
【原出願日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2022035034
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】清野 史崇
(72)【発明者】
【氏名】大野 真稔
(72)【発明者】
【氏名】西岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 周二
(72)【発明者】
【氏名】萩原 大樹
(72)【発明者】
【氏名】三河 正明
(57)【要約】
【課題】連動部材の軸支部と、軸支部を受ける筐体の受け部分との隙間の発生を抑制し、操作部材の操作性を向上し、操作部材の中立位置への復帰の際の位置ずれを防止すること。
【解決手段】本発明の一態様は、筐体と、筐体に対して回動軸周りに傾倒動作可能な操作部材と、回動軸周りに回動可能に筐体に支持される軸支部を有し、操作部材の傾倒操作に連動して回動する連動部材と、連動部材を付勢して軸支部を筐体に押圧する付勢部材と、連動部材の回動を検知する回動検知部と、を備えることを特徴とする多方向入力装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に対して回動軸周りに傾倒動作可能な操作部材と、
前記回動軸周りに回動可能に前記筐体に支持される軸支部を有し、前記操作部材の傾倒操作に連動して回動する連動部材と、
前記連動部材を付勢して前記軸支部を前記筐体に押圧する付勢部材と、
前記連動部材の回動を検知する回動検知部と、を備えることを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
前記付勢部材により、前記軸支部は前記筐体の複数箇所を押圧する、請求項1に記載の多方向入力装置。
【請求項3】
回動軸に沿った方向から見て、
前記軸支部の外側面は円弧の部分を有し、当該円弧の部分の2箇所で前記筐体を押圧する、請求項2に記載の多方向入力装置。
【請求項4】
前記付勢部材は、前記操作部材が中立位置にあるときの前記操作部材の延在方向に沿った方向に前記軸支部を付勢する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記付勢部材の付勢方向とは反対向きの成分を含む方向への前記軸支部の変位を規制する規制部材を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項6】
前記操作部材は、前記回動軸周りとは異なる方向に沿って変位可能であって、変位検知部により当該変位は検知される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項7】
前記軸支部と前記付勢部材との間に位置して、前記軸支部に接して前記付勢部材の付勢力を前記軸支部に伝える介在部材を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項8】
前記付勢部材は、前記軸支部に1箇所で接して付勢する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項9】
前記付勢部材は、前記軸支部に複数箇所で接して付勢する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項10】
前記付勢部材は、前記回動軸に沿った方向から見てV字形状を有するV字バネ部分を有し、前記筐体は、前記V字バネ部分を受容するバネ受容部を有する、請求項9に記載の多方向入力装置。
【請求項11】
前記付勢部材は、前記筐体に支持されて前記連動部材の前記軸支部以外の部分を付勢する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項12】
前記付勢部材は弾性変形可能な舌片状部分を有し、当該舌片状部分が前記軸支部を付勢する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項13】
前記付勢部材は打ち抜き板材の曲げ加工品からなる部分を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【請求項14】
前記付勢部材はトーションバネからなる部分を有し、当該部分が前記軸支部を付勢する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多方向入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部材を所望の方向に傾倒することで入力を行う多方向入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
操作レバー等の操作部材を傾倒することで入力を行う多方向入力装置として、特許文献1には、薄型化、小型化が可能であり、軽操作力である多方向スイッチが開示される。この多方向スイッチでは、操作レバーを傾けるにつれて操作レバーの下端と可動部材との圧接位置が操作レバーの中心軸側に移動するような曲面形状に設けられている。
【0003】
また、特許文献2には、操作軸の操作感触が良好な多方向入力装置が開示される。この多方向入力装置では、操作軸と作動部材とをスプライン結合したため、操作軸を傾倒した状態で操作軸を回転すると、作動部材は、付勢部材の弾圧による底部と底板との間に摩擦があっても、操作軸にスプライン結合された作動部材が共回りし、作動部材が底板上でスリップすることなく、転がるように回転する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-024777号公報
【特許文献2】特開2000-305647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多方向入力装置には、操作部材の傾倒動作に連動する連動部材が設けられる。連動部材は筐体に軸支されており、筐体に対して所定の回動軸周りに回動(揺動)するようになっている。このため、連動部材の軸支部と、軸支部を受ける筐体の受け部分との隙間(がたつき)を抑制することが、操作部材の中立位置への復帰の際の位置ずれを防止する上で重要となる。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、連動部材の軸支部と、軸支部を受ける筐体の受け部分との隙間の発生を抑制し、操作部材の中立位置への復帰の際の検知誤差の発生を防止することができる多方向入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、筐体と、傾倒動作可能な操作部材と、第1回動軸周りに回動可能に筐体に支持される第1軸支部を有し、操作部材の傾倒操作に連動して回動する第1連動部材と、第1回動軸に交差する第2回動軸周りに回動可能に筐体に支持される第2軸支部を有し、操作部材の傾倒操作に連動して回動する第2連動部材と、操作部材を付勢して第1連動部材の第1軸支部を筐体に押圧するとともに、操作部材を中立位置に復帰させる復帰力を操作部材に付与する第1付勢部材と、第2連動部材を付勢して第2軸支部を筐体に押圧する第2付勢部材と、第1連動部材および第2連動部材のそれぞれの回動を検知する回動検知部と、を備えることを特徴とする多方向入力装置である。
【0008】
このような構成によれば、第2付勢部材が第2軸支部を筐体に押圧するため、第2軸支部と、第2軸支部を受ける筐体の受け部分との隙間の発生が抑制され、第2軸支部の回転軸が筐体により定義される第2回動軸からずれたことに起因する、回動検知部の出力のオフセットが生じにくい。
【0009】
上記多方向入力装置において、第2付勢部材により、第2軸支部は筐体の複数箇所を押圧する構成であってもよい。これにより、第2軸支部が筐体の複数箇所に当接して、筐体による第2軸支部の安定した支持が行われる。
【0010】
上記多方向入力装置において、第2回動軸に沿った方向から見て、第2軸支部の外側面は円弧の部分を有し、当該円弧の部分の2箇所で筐体を押圧する構成であってもよい。このように、第2軸支部の外側面の円弧の部分の2箇所と筐体とが押圧されることで、第2軸支部の筐体に対する滑らかな回動と、筐体による第2軸支部の安定した支持とが行われる。
【0011】
上記多方向入力装置において、第2付勢部材は、中立位置にあるときの操作部材の延在方向に沿った方向に第2軸支部を付勢する構成であってもよい。これにより、第2付勢部材による付勢力が操作部材の中立位置への復帰力に寄与することになる。
【0012】
上記多方向入力装置において、筐体は、第2付勢部材の付勢方向とは反対向きの成分を含む方向への第2軸支部の変位を規制する規制部材を有していてもよい。これにより、第2付勢部材による第2軸支部の付勢とともに、付勢方向とは反対向きの方向への第2軸支部の変位が規制され、第2軸支部の安定した支持が行われる。
【0013】
上記多方向入力装置において、操作部材は、第1回動軸周りおよび第2回動軸周りのいずれとも異なる方向に沿って変位可能であって、変位検知部により当該変位は検知される構成であってもよい。
【0014】
上記多方向入力装置において、第2軸支部と第2付勢部材との間に位置して、第2軸支部に接して第2付勢部材の付勢力を第2軸支部に伝える介在部材を有していてもよい。
【0015】
上記多方向入力装置において、第2付勢部材は、第2軸支部に1箇所で接して付勢する構成であってもよい。また、第2付勢部材は、第2軸支部に複数箇所で接して付勢する構成であってもよい。
【0016】
上記多方向入力装置において、第2付勢部材は、第2回動軸に沿った方向から見てV字形状を有するV字バネ部分を有し、筐体は、V字バネ部分を受容するバネ受容部を有していてもよい。これにより、V字バネ部分によって第2軸支部の支持と第2軸支部への付勢とが行われ、省スペース化を図ることができる。
【0017】
上記多方向入力装置において、第2付勢部材は、筐体に支持されて第2連動部材の第2軸支部以外の部分を付勢する構成であってもよい。これにより、第2付勢部材の配置の自由度が高まる。
【0018】
上記多方向入力装置において、第2付勢部材は弾性変形可能な舌片状部分を有し、当該舌片状部分が第2軸支部を付勢する構成であってもよい。
【0019】
上記多方向入力装置において、第2付勢部材は打ち抜き板材の曲げ加工品からなる部分を有していてもよい。これにより、第2付勢部材の生産性が向上する。
【0020】
上記多方向入力装置において、第2付勢部材はトーションバネからなる部分を有し、当該部分が第2軸支部を付勢する構成であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、連動部材の軸支部と、軸支部を受ける筐体の受け部分との隙間の発生を抑制し、操作部材の中立位置への復帰の際の検知誤差の発生を防止することができる多方向入力装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係る多方向入力装置を例示する斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る多方向入力装置の構成を例示する分解斜視図である。
【
図3】第2付勢部材の取り付け状態を例示する斜視図である。
【
図4A】第2付勢部材の展開状態を例示する斜視図である。
【
図4B】第2付勢部材を構成した状態を例示する斜視図である。
【
図5】第2付勢部材による付勢状態を例示する平面図である。
【
図6】第2付勢手段による筐体への取り付け状態を例示する斜視図である。
【
図7】他の第2付勢部材(その1)を例示する模式図である。
【
図8】他の第2付勢部材(その2)を例示する模式図である。
【
図9】他の第2付勢部材(その3)を例示する斜視図である。
【
図10】他の第2付勢部材(その4)を例示する模式図である。
【
図11】他の第2付勢部材(その5)を例示する斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0024】
(多方向入力装置の構成)
図1は、第1実施形態に係る多方向入力装置を例示する斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る多方向入力装置の構成を例示する分解斜視図である。
本発明の第1実施形態に係る多方向入力装置1は、筐体10に対して操作部材20を傾倒動作させることで入力を受け付ける装置である。
第1実施形態の説明において、操作部材20の傾倒動作における回動軸のうち、第1回動軸AX1はX軸と平行であり、第2回動軸AX2はY軸と平行であり、操作部材20の中立位置における軸(中立軸AX3)をZ軸と平行であるとする。また、Z軸方向において、中立位置にある操作部材20が延出する側をZ軸方向上側(上、上向き)、その反対側をZ軸方向下側(下、下向き)ということにする。
【0025】
多方向入力装置1は、筐体10、操作部材20、第1連動部材30、第2連動部材40、第1付勢部材51、第2付勢部材52、第1回動検知部60および第2回動検知部70を備える。筐体10は、下部に開口を有する略箱型に設けられる。筐体10の上部中央には操作部材20を配置する孔10hが設けられる。筐体10の下部の開口部分には、筐体10の一部として底板部材15が設けられている。筐体10の構成材料の限定されない例として、鉄系材料、アルミニウム系材料、銅系材料などの金属系材料が挙げられる。底板部材15は筐体10の構成材料と異なる材料(例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂系材料が挙げられる。)から構成されていてもよい。
【0026】
操作部材20は、筐体10の内部に配置される筒部21と、筐体10の内側から孔10hを外側に延出する延出部22とを有する。操作部材20が中立位置にある場合、延出部22の延出方向DはZ軸と平行である。一方、操作部材20が傾倒している場合、延出部22の延出方向DはZ軸と非平行である。また、操作部材20は、筐体10に対して第1回動軸AX1周りおよび第2回動軸AX2周りのそれぞれに傾倒動作可能となっている。
【0027】
第1連動部材30は、第1回動軸AX1周りに回動可能に筐体10に支持される第1軸支部31を有し、操作部材20の傾倒操作に連動して回動するように設けられる。第1連動部材30は、中央に孔30hを有する枠型に設けられる。操作部材20は第1連動部材30の中央の孔30hに挿通される。操作部材20の筒部21には嵌合突起部23が突出しており、この嵌合突起部23が第1連動部材30に設けられた嵌合孔30aと摺動可能に嵌合している。第1連動部材30の構成材料の限定されない例として、ポリアセタール、ポリエステル、ポリアミドなどの樹脂系材料が挙げられる。
【0028】
第2連動部材40は、第2回動軸AX2周りに回動可能に筐体10に支持される第2軸支部41を有し、操作部材20の傾倒操作に連動して回動するように設けられる。第2連動部材40はアーチ状に湾曲したアーチ部42を有する。第2連動部材40のアーチ部42の中央には孔42hが設けられる。操作部材20の延出部22は第2連動部材40のアーチ部42の中央の孔42hに挿通される。操作部材20の延出部22には凸部分22aが設けられており、操作部材20がアーチ部42の孔42hに挿通された状態で凸部分22aがアーチ部42に当接し、延出部22が孔42hに摺動可能に嵌合するようになっている。
【0029】
また、第2連動部材40は、第1連動部材30をY軸方向に跨ぐように配置される。第2連動部材40が第1連動部材30を跨ぎ、第1連動部材30の孔30hおよび第2連動部材40の孔42hに操作部材20の延出部22が挿通した状態で、これらが筐体10の内部に組み込まれる。第2連動部材40の構成材料の限定されない例として、ポリアセタール、ポリエステル、ポリアミドなどの樹脂系材料が挙げられる。
【0030】
第1付勢部材51は、操作部材20を付勢して第1連動部材30の第1軸支部31を筐体10に押圧するとともに、操作部材20を中立位置に復帰させる復帰力を操作部材20に付与する。第1付勢部材51は例えばコイルバネである。第1付勢部材51は、第3連動部材45を介して操作部材20を付勢する。第3連動部材45は操作部材20の下方(第1連動部材30よりも底板部材15側)に配置され、操作部材20の傾倒とともに傾斜する。第1付勢部材51は、第3連動部材45と底板部材15に当接する保持板151との間に組み込まれる。これにより、第1付勢部材51が第3連動部材45を介して操作部材20を延出方向Dに付勢する。
【0031】
操作部材20を傾倒すると、第3連動部材45の傾斜によってその傾斜下方側の第1付勢部材51が圧縮され、傾斜上方側の第1付勢部材51が引張される。操作部材20への傾倒動作を解除すると、第1付勢部材51の圧縮されていた側が延び、引張されていた場合が縮んで、操作部材20を中立位置へ復帰させることになる。
【0032】
第1回動検知部60は第1連動部材30の回動を検知し、第2回動検知部70は第2連動部材40の回動を検知する。第1回動検知部60は、例えば電気抵抗式センサ61およびブラシ62を有する。また、第2回動検知部70は、例えば電気抵抗式センサ71およびブラシ72を有する。電気抵抗式センサ61、71はフレキシブルプリント基板等の回路基板90に形成される。ブラシ62、72はそれぞれホルダ63、73に取り付けられており、ホルダ63、73とともにブラシ62、72が電気抵抗式センサ61、71の上を摺動可能に設けられる。
【0033】
ブラシ62が取り付けられたホルダ63は、第1連動部材30に設けられた爪部301の揺動によってスライド可能となっている。これにより、第1連動部材30の第1回動軸AX1周りの回動によって爪部301が揺動し、その揺動によってホルダ63が電気抵抗式センサ61の上でスライドすることになる。電気抵抗式センサ61上のブラシ62の位置によって電気抵抗値が変化することから、電気抵抗値によって第1連動部材30の第1回動軸AX1周りの回動を検知することができる。
【0034】
また、ブラシ72が取り付けられたホルダ73は、第2連動部材40に設けられた爪部401の揺動によってスライド可能となっている。これにより、第2連動部材40の第2回動軸AX2周りの回動によって爪部401が揺動し、その揺動によってホルダ73が電気抵抗式センサ71の上でスライドすることになる。電気抵抗式センサ71上のブラシ72の位置によって電気抵抗値が変化することから、電気抵抗値によって第2連動部材40の第2回動軸AX2周りの回動を検知することができる。
【0035】
回路基板90上に変位検知部80が取り付けられる。変位検知部80は、例えば回路基板90に形成されたコンタクトパターン81と、コンタクトパターン81の上に配置されるコンタクトシート82とを有する。変位検知部80は、操作部材20の第1回動軸AX1周りおよび第2回動軸AX2周りいずれとも異なる方向の変位を検知する。本実施形態では、操作部材20の延在方向に沿った変位を検知する。
【0036】
第1連動部材30には、第1軸支部31が設けられた側とは反対側から変位検知部80の上方に延出するアーム部33が設けられる。例えば、操作部材20が筐体10から延出する向きとは反対向きに操作部材20を押し込む(以下、この押し込む動作を「プッシュ動作」ともいう。)と、第1軸支部31側に支点が位置して、その押圧力によって第1連動部材30のアーム部33が変位検知部80側に押される。このアーム部33の変位によってコンタクトシート82が押圧され、コンタクトシート82とコンタクトパターン81との接触によって変位検知部80が導通状態となる。これにより、操作部材20のプッシュ動作を検知することができる。
【0037】
(第2付勢部材)
図3は、第2付勢部材の取り付け状態を例示する斜視図である。
図4Aは、第2付勢部材の展開状態を例示する斜視図である。
図4Bは、第2付勢部材を構成した状態を例示する斜視図である。
第2付勢部材52は、枠部521と、枠部521の中央に設けられた孔521hと、枠部521の両側に設けられた折り曲げ片522と、折り曲げ片522から延出する舌片状部分523とを有する。第2付勢部材52は筐体10の内部に収納され、第2付勢部材52のZ軸方向上側が筐体10に当接している。
【0038】
第2付勢部材52の孔521hに第2軸支部41を挿入すると、2つの舌片状部分523が第2軸支部41と接触して第2軸支部41を筐体10側、具体的にはZ軸方向下側、に付勢する。ここで、操作部材20の延出部22は第2連動部材40のアーチ部42の孔42hに挿通しているため、アーチ部42と延出部22とは強い嵌合状態ではない。このため第2連動部材40は操作部材20に与えられる第1付勢部材51からの付勢力を強く受けていない。本実施形態で用いられる第2付勢部材52では、2つの舌片状部分523のバネ性を利用して、2つの舌片状部分523によって第2軸支部41を筐体10側(Z軸方向下側)に付勢している。
【0039】
第2付勢部材52は、
図4Aに示すように金属系板材を抜き加工して中間部品520を形成する。金属系板材の構成材料の具体例として、バネ性を有するコルソン銅合金、リン青銅、洋白といった銅合金、ステンレス材などが挙げられる。中間部品520は、第2付勢部材52を展開した形状となる。この中間部品520を
図4Bに示すように折り曲げることで、第2付勢部材52が構成される。第2付勢部材52は打ち抜き板材の曲げ加工品からなる部分を有していることで、第2付勢部材52の生産性が向上する。
【0040】
図5は、第2付勢部材による付勢状態を例示する平面図である。
図6は、第2付勢手段による筐体への取り付け状態を例示する斜視図である。
図5に示すように、第2付勢部材52は、筐体10に設けられた収納部10pの内部に収納され、収納部10pの内部に位置する第2付勢部材52は、そのZ軸方向上側において筐体10に当接している。これにより、第2付勢部材52が有する2つの舌片状部分523は、第2軸支部41をZ軸方向下向きに押圧して、第2軸支部41のZ軸方向下側に位置する筐体10の軸支接触部12に第2軸支部41を弾圧させている。
【0041】
第2回動軸AX2に沿った方向からみて、第2軸支部41の外側面41aは、少なくともZ軸方向下側(軸支接触部12に対向する側)に円弧の部分を有する。
図5に示される第2軸支部41の外側面41aは円形状を有している。また、第2軸支部41の受け部である筐体10の軸支接触部12は、互いに非平行な2つの斜面12aを有する。
【0042】
第2付勢部材52によって第2軸支部41を付勢すると、第2軸支部41の円弧状の外側面41aが軸支接触部12の2つの斜面12aのそれぞれと接触する。これにより、第2軸支部41の外側面41aの円弧の部分の2箇所と筐体10の軸支接触部12とが押圧され、第2軸支部41の筐体10に対する滑らかな回動が行われる。また、第2軸支部41が軸支接触部12の2つの斜面12aによってセンタリングされ、筐体10による第2軸支部41の安定した支持が行われる。具体的には、Y軸方向に沿ってみたときに、2つの斜面12aが作る2つの線を延長して得られる交点と、第2回動軸AX2とXZ平面との交点とを結ぶ線がZ軸に沿うように、2つの斜面12aは設定される。これにより、第2軸支部41が軸支接触部12と接触しながら回動したときに、第2回動軸AX2のぶれを抑えることができる。
【0043】
また、筐体10は、第2軸支部41のZ軸方向上側に、第2軸支部41の変位を規制する規制部材18を有する。換言すれば、規制部材18は、筐体10において、第2軸支部41の軸支接触部12が設けられている側とは反対側に設けられる。規制部材18は、第2付勢部材52の付勢方向(Z軸方向下向き)とは反対向きの成分を含む方向への第2軸支部41の変位を規制する。これにより、第2付勢部材52による第2軸支部41の付勢とともに、付勢方向(Z軸方向下向き)とは反対向きの方向(Z軸方向上向き)への第2軸支部41の変位が規制され、第2軸支部41の安定した支持が行われる。つまり、第2軸支部41に、第2付勢部材52による付勢力を上回る反対向きの方向(Z軸方向上向き)の力が加わった場合でも、第2軸支部41が軸支接触部12から離れすぎることを規制部材18によって規制することができる。
【0044】
図6には、第2付勢部材52が取り付けられる筐体10の内側部分(収納部10p)が示される。第2付勢部材52は、筐体10の内側で軸支接触部12を囲む位置に取り付けられる。収納部10pのZ軸方向下側には爪部19が設けられており、第2付勢部材52の端部を爪部19に掛けて第2付勢部材52を収納部10pの内部に固定できるようになっている。
【0045】
このような第2付勢部材52によって第2軸支部41を筐体10の軸支接触部12に押圧するため、第2軸支部41と、第2軸支部41を受ける筐体10の軸支接触部12との隙間の発生が抑制される。したがって、第2軸支部41の回転軸が、筐体10により定義される第2回動軸AX2からずれたことに起因する、第2回動検知部70の出力のオフセットが生じにくい。
【0046】
つまり、第2軸支部41が軸支接触部12から離れてZ軸方向上側に移動する(浮き上がる)と、操作部材20の中立軸AX3がZ軸と非平行になる。これにより、操作部材20が中立位置に復帰する際、第2回動検知部70のセンター位置検知ずれ(例えば、電気抵抗式センサ71のセンター位置に対するブラシ72の位置ずれ)を発生させる原因となる。本実施形態のように、第2付勢部材52によって第2軸支部41を筐体10に押圧することで、第2軸支部41の軸支接触部12からの浮き上がりが抑制される。これにより、第2軸支部41の回転軸と第2回動軸AX2とのずれが抑制され、第2回動検知部70によるセンター位置検知のずれ(検知誤差)の発生が抑制される。
【0047】
また、第2軸支部41の回転軸と第2回動軸AX2とのずれは、操作部材20の中立位置への復帰の際の軸ずれにもつながる。つまり、第2軸支部41が軸支接触部12から離れる(浮き上がる)と、操作部材20の中立軸AX3がZ軸と非平行になる。これが操作部材20の中立位置の軸ずれの原因となる。第2付勢部材52による第2軸支部41の押圧で第2軸支部41の回転軸と第2回動軸AX2とのずれが抑制されることで、操作部材20の中立位置への復帰の際の軸ずれの発生が抑制される。
【0048】
(他の第2付勢部材)
図7は、他の第2付勢部材(その1)を例示する模式図である。
図7に示す第2付勢部材52Bは、第2軸支部41のZ軸方向下側において筐体10に固定され、弾性変形可能な2つの舌片状部分54を有する。第2付勢部材52Bの2つの舌片状部分54は、斜めに互いに内向きに延出し、それぞれ筐体10の軸支接触部12の2つの斜面12aと対向している。第2軸支部41は、Z軸方向下側に位置する第2付勢部材52の2つの舌片状部分54と、Z軸方向上側に位置する軸支接触部12の2つの斜面12aとの間で挟持される状態となる。この配置は、第1実施形態に係る2つの舌片状部分523および第2軸支部41と軸支接触部12との配置とは上下反転した関係にある。第2付勢部材52Bは第2軸支部41の外側面41aと2箇所で接触し、軸支接触部12は第2軸支部41の外側面41aと2箇所で接触することになる。第2付勢部材52Bは、例えば、バネ性を有する金属系板材を抜き加工して形成した中間部品を折り曲げることで構成される。
【0049】
図8は、他の第2付勢部材(その2)を例示する模式図である。
図8に示す第2付勢部材52Cは、板状体を折り曲げて板バネ状に構成したものであり、第2軸支部41のZ軸方向下側において筐体10に弾性変形可能に保持される。第2付勢部材52Cと第2軸支部41との間には介在部材55が設けられる。
【0050】
第2付勢部材52Cは、介在部材55と底板部材15との間に配置され、介在部材55を介して第2軸支部41にZ方向上側への付勢力を与える。介在部材55には凹部55aが設けられる。凹部55aは第2軸支部41の外側面41aの円弧状部分に対応した円弧状を有する。この凹部55aに第2軸支部41が配置される。これにより、第2付勢部材52Cからの付勢力が、介在部材55の凹部55aから第2軸支部41へ伝わる。
【0051】
凹部55aと第2軸支部41の外側面41aとが接触することで、第2付勢部材52Cからの付勢力が局所的に加わることを抑制できる。また、介在部材55の凹部55aを構成する材料としてフッ素樹脂など摩擦係数が低い材料を用いれば、第2軸支部41を滑らかに回動させることができる。
【0052】
さらに、上記の第2付勢部材52、52Bとの対比では、これらの付勢部材が複数箇所(具体的には、舌片状部分523、舌片状部分54では2箇所)で第2軸支部41を押圧するのに対し、本構成では、一つの部材(1箇所)である介在部材55により第2軸支部41を押圧する。このため、第2軸支部41は3点(軸支接触部12の2つの斜面12aおよび介在部材55)で支持されることになり、回動する第2軸支部41の軸ぶれが生じにくい。
【0053】
図9は、他の第2付勢部材(その3)を例示する斜視図である。
図9に示す第2付勢部材52Dは、トーションバネからなる部分を有する。トーションバネは、例えばコイルバネである。第2付勢部材52Dのトーションバネの部分は、第2軸支部41を筐体10の軸支接触部12に向けてZ軸方向上側に付勢する。第2付勢部材52Dがトーションバネからなる部分を有することで、第2付勢部材52Dの配置スペースの抑制を図ることができる場合がある。
【0054】
図10は、他の第2付勢部材(その4)を例示する模式図である。
図10に示す第2付勢部材52Eは、第2軸支部41のZ軸方向下側に、第2回動軸AX2に沿った方向から見てV字形状を有するV字バネ部分56を有する。筐体10は、第2軸支部41のZ軸方向上側に、第2付勢部材52のV字バネ部分56を受容するバネ受容部121を有する。
【0055】
第2回動軸AX2に沿った方向から見て、V字バネ部分56の開き角はバネ受容部121の開き角よりも大きいため、バネ受容部121に受容されたV字バネ部分56のV字内に第2軸支部41を載置してZ方向下側に加圧すると、V字バネ部分56のV字が開くため、V字バネ部分56はZ方向上側に付勢力を発生する。
【0056】
第2軸支部41は、バネ受容部121に受容されたV字バネ部分56からなる第2付勢部材52Eと、上部押さえ部122との間に配置される。これにより、V字バネ部分56によって第2軸支部41の支持と第2軸支部41への付勢とが行われ、省スペース化を図ることができる。なお、
図10では、V字バネ部分56は板バネからなる場合を示したが、これに限定されず、例えばトーションバネによってV字バネ部分56が構成されていてもよい。
【0057】
図11は、他の第2付勢部材(その5)を例示する斜視図である。
図11に示す第2付勢部材52Fは、板バネ部57を有する。板バネ部57は、その一部(
図11では右側)において底板部材15に支持されており、他の部分(
図11では左側)がバネ部となって、第2連動部材40の第2軸支部41以外の部分を付勢する構成となっている。すなわち、これまで説明した第2付勢部材52~52Eは、第2軸支部41を押圧対象としていたが、第2付勢部材52Fは、第2連動部材40における第2軸支部41以外の部分を押圧して、間接的に第2連動部材40を押圧する。これにより、第2付勢部材52Fの配置の自由度が高まる。
【0058】
このように、本実施形態に係る多方向入力装置1によれば、第2連動部材40の第2軸支部41と、第2軸支部41を受ける筐体10の軸支接触部12との隙間の発生を抑制し、操作部材20の操作性向上および中立位置への復帰の際の位置ずれを防止することが可能となる。
【0059】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、上記の説明では、第2付勢部材52~52Fは第2軸支部41をZ軸方向に沿って付勢するが、これに限定されず、XZ面内方向のいずれかの方向の成分を有して付勢すればよい。すなわち、Y軸方向にみて、筐体10の軸支接触部12は第2軸支部41の周囲のいずれの方向に位置していてもよい。また、第1回動検知部60および第2回動検知部70は電気抵抗変化式以外の方式(例えば、磁気変化式)であってもよく、変位検知部80も接触検知以外の方式(例えば光学検知式、容量検知式)であってもよい。また、第2付勢部材52は、第2軸支部41に3箇所以上で接して付勢する構成であってもよい。また、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の構成例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【0060】
本発明は、次の態様を含む。
(1)筐体と、前記筐体に対して回動軸周りに傾倒動作可能な操作部材と、前記回動軸周りに回動可能に前記筐体に支持される軸支部を有し、前記操作部材の傾倒操作に連動して回動する連動部材と、前記連動部材を付勢して前記軸支部を前記筐体に押圧する付勢部材と、前記連動部材の回動を検知する回動検知部と、を備えることを特徴とする多方向入力装置。
(2)前記付勢部材により、前記軸支部は前記筐体の複数箇所を押圧する、上記(1)に記載の多方向入力装置。
(3)回動軸に沿った方向から見て、前記軸支部の外側面は円弧の部分を有し、当該円弧の部分の2箇所で前記筐体を押圧する、上記(2)に記載の多方向入力装置。
(4)前記付勢部材は、前記操作部材が中立位置にあるときの前記操作部材の延在方向に沿った方向に前記軸支部を付勢する、上記(1)から上記(3)のいずれかに記載の多方向入力装置。
(5)前記筐体は、前記付勢部材の付勢方向とは反対向きの成分を含む方向への前記軸支部の変位を規制する規制部材を有する、上記(1)から上記(3)のいずれかに記載の多方向入力装置。
(6)前記操作部材は、前記回動軸周りとは異なる方向に沿って変位可能であって、変位検知部により当該変位は検知される、上記(1)から上記(3)のいずれかに記載の多方向入力装置。
(7)前記軸支部と前記付勢部材との間に位置して、前記軸支部に接して前記付勢部材の付勢力を前記軸支部に伝える介在部材を有する、上記(1)から上記(3)のいずれかに記載の多方向入力装置。
(8)前記付勢部材は、前記軸支部に1箇所で接して付勢する、上記(1)から上記(3)のいずれかに記載の多方向入力装置。
(9)前記付勢部材は、前記軸支部に複数箇所で接して付勢する、上記(1)から上記(3)のいずれかに記載の多方向入力装置。
(10)前記付勢部材は、前記回動軸に沿った方向から見てV字形状を有するV字バネ部分を有し、前記筐体は、前記V字バネ部分を受容するバネ受容部を有する、上記(9)に記載の多方向入力装置。
(11)前記付勢部材は、前記筐体に支持されて前記連動部材の前記軸支部以外の部分を付勢する、上記(1)から上記(3)のいずれかに記載の多方向入力装置。
(12)前記付勢部材は弾性変形可能な舌片状部分を有し、当該舌片状部分が前記軸支部を付勢する、上記(1)から上記(3)のいずれかに記載の多方向入力装置。
(13)前記付勢部材は打ち抜き板材の曲げ加工品からなる部分を有する、上記(1)から上記(3)のいずれかに記載の多方向入力装置。
(14)前記付勢部材はトーションバネからなる部分を有し、当該部分が前記軸支部を付勢する、上記(1)から上記(3)のいずれかに記載の多方向入力装置。
【符号の説明】
【0061】
1…多方向入力装置
10…筐体
10h…孔
10p…収納部
12…軸支接触部
12a…斜面
15…底板部材
18…規制部材
19…爪部
20…操作部材
21…筒部
22…延出部
22a…凸部分
23…嵌合突起部
30…第1連動部材
30a…嵌合孔
30h…孔
31…第1軸支部
33…アーム部
40…第2連動部材
41…第2軸支部
41a…外側面
42…アーチ部
42h…孔
45…第3連動部材
51…第1付勢部材
52,52B,52C,52D,52E,52F…第2付勢部材
54…舌片状部分
55…介在部材
55a…凹部
56…V字バネ部分
57…板バネ部
60…第1回動検知部
61,71…電気抵抗式センサ
62,72…ブラシ
63,73…ホルダ
70…第2回動検知部
80…変位検知部
81…コンタクトパターン
82…コンタクトシート
90…回路基板
121…バネ受容部
122…上部押さえ部
151…保持板
301,401…爪部
520…中間部品
521…枠部
521h…孔
522…折り曲げ片
523…舌片状部分
AX1…第1回動軸
AX2…第2回動軸
AX3…中立軸
D…延出方向