(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157035
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】液晶組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20241029BHJP
C09K 23/42 20220101ALI20241029BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20241029BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20241029BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241029BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20241029BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A61K8/86
C09K23/42
A61K8/37
A61K8/39
A61K8/73
A61K8/31
A61Q1/00
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024139888
(22)【出願日】2024-08-21
(62)【分割の表示】P 2019185304の分割
【原出願日】2019-10-08
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小寺 孝範
(72)【発明者】
【氏名】高橋 典敬
(57)【要約】
【課題】従来は特殊な化合物で構成されていた、Fd-3m構造を有する液晶を含有する液晶組成物を、幅広い組成で且つ簡易な方法で調製する。
【解決手段】Fd-3m構造を有する液晶を含有する液晶組成物であって、
前記液晶組成物は界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)を配合してなり、
界面活性剤(a)は、水(c)と混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成可能な界面活性剤であり、
油剤(b)は、構造体(x)と混合することで、該構造体(x)の全てをラメラ構造体に変換することがない油剤であり、
前記液晶組成物を構成する界面活性剤(a)と水(c)との比率が、該界面活性剤(a)と水(c)とを混合することで前記構造体(x)を形成する比率である、液晶組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fd-3m構造を有する液晶を含有する液晶組成物であって、
前記液晶組成物は界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)を配合してなり、
界面活性剤(a)は、水(c)と混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成可能な界面活性剤であり、
油剤(b)は、構造体(x)と混合することで、該構造体(x)の全てをラメラ構造体に変換することがない油剤であり、
前記液晶組成物を構成する界面活性剤(a)と水(c)との比率が、該界面活性剤(a)と水(c)とを混合することで前記構造体(x)を形成する比率である、液晶組成物。
【請求項2】
界面活性剤(a)が非イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤が下記一般式(a1)又は一般式(a2)で表される非イオン性界面活性剤である、請求項2に記載の液晶組成物。
R1a-A〔(R2aO)x-R3a〕y (a1)
〔式中、R1aは、炭素数7以上18以下の炭化水素基であり、R2aは、炭素数2又は3のアルキレン基であり、R3aは、炭素数1以上3以下のアルキル基又は水素原子である。xは平均付加モル数であり3以上50以下の数である。Aは-O-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-C(=O)N=、-NH-又は-N=であり、Aが-O-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-又は-NH-の場合yは1であり、Aが-C(=O)N=又は-N=の場合yは2である。〕
〔R11a-B-(R12aO)u〕pGm〔(OR12a)vOH〕q (a2)
〔式中、R11aは炭素数7以上18以下の炭化水素基を示し、R12aは炭素数2以上4以下のアルキレン基を示す。u及びvは平均付加モル数であり、それぞれ独立に0以上40以下の数であって、且つu×p+v×qは0以上40以下である。Gは炭素数3以上10以下で且つヒドロキシ基数3以上10以下の多価アルコール残基を示す。mはGの平均縮合度であり、1以上10以下の数である。pは1以上であってGmのヒドロキシ基数以下の数、qはGmのヒドロキシ基数-pの数である。Bは-O-、又は-C(=O)O-である。〕
【請求項4】
前記一般式(a1)で表される非イオン性界面活性剤が、該非イオン性界面活性剤のオキシアルキレン基の平均付加モル数をnとした場合、該界面活性剤中の、オキシアルキレン基の付加モル数がnである成分の含有量が0質量%以上80質量%以下であり、オキシアルキレン基の付加モル数がn+1~n+10である成分の含有量が0.5質量%以上80質量%以下であって、nが0である成分の含有量が0質量%以上20質量%以下である、請求項3に記載の液晶組成物。
【請求項5】
油剤(b)の融点が100℃未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項6】
油剤(b)がヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、及びアミド基のいずれも有さない油剤である、請求項1~5のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項7】
油剤(b)が炭素数8以上22以下の炭化水素油、炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなる脂肪酸モノエステル、炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上12以下の2価アルコールとからなる脂肪酸ジエステル、炭素数4以上18以下のジカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるジカルボン酸ジエステル、炭素数5以上12以下のトリカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるトリカルボン酸トリエステル、及びグリセリン脂肪酸トリエステルからなる群から選ばれる1種以上である、請求項6に記載の液晶組成物。
【請求項8】
さらに、水溶性又は水分散性の機能性成分(d)を含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項9】
さらに、油溶性の機能性成分(e)を含有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の液晶組成物の製造方法であって、
前記液晶組成物を構成する界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)を下記条件1~3を満たすように配合する、製造方法。
条件1:液晶組成物を構成する界面活性剤(a)と水(c)との比率が、該界面活性剤(a)と水(c)とを混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成する比率である。
条件2:液晶組成物を構成する油剤(b)の配合量が、界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)の合計量に対し5質量%以上である。
条件3:液晶組成物を構成する成分を混合する温度が、油剤(b)の融点以上の温度である。
【請求項11】
予め、界面活性剤(a)の少なくとも一部と油剤(b)の少なくとも一部とを混合する工程を有する、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載の液晶組成物を構成する界面活性剤(a)及び油剤(b)の選定方法であって、下記工程1~工程3を順に有する、選定方法。
工程1:水(c)と混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成可能な界面活性剤(a)を選定する工程
工程2:界面活性剤(a)と水(c)とを構造体(x)を形成する比率で混合して、該構造体(x)を含む混合物を調製する工程
工程3:工程2で得られた混合物と、該混合物中の界面活性剤(a)と同質量の油剤とを混合して組成物(L)を調製し、該組成物(L)中に含まれる構造体の構造を小角X線散乱法により分析する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Fd-3m構造を有する液晶を含有する液晶組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
含水含油組成物として、水相に油滴が分散したO/W型エマルション、油相に水滴が分散したW/O型エマルション、これらが複合化されたダブルエマルションといわれるO/W/O型エマルション及びW/O/W型エマルション、並びに特殊な例として、水相と油相が両連続相となったバイコンティニュアス型エマルション等の各種エマルションが知られている。これらエマルションは化粧品、食品、インク、農薬等の分野において幅広く利用されている。
エマルションは水と油を撹拌混合することで得られ、多くの場合、エマルションを安定化させる目的で界面活性剤や微粒子等の乳化剤が用いられている。しかしながら乳化剤により安定化されたエマルションであっても、熱力学的な安定性としては充分ではなく、時間の経過と共にクリーミングや合一などが生じて油と水に分離してしまうことがある。
熱力学的に安定な含水含油組成物系として、油中に水、あるいは水中に油が可溶化された系も知られている。しかしながらこの系では、溶媒に対する溶質の溶解度が極めて低いことから、可溶化できる溶質の量は実質的に限られている。マイクロエマルションと呼ばれる、界面活性剤のミセル中に溶質が可溶化された系も知られているが、界面活性剤の吸着挙動の変化などによって可溶化状態が不安定化することがある。
【0003】
ところで、界面活性剤と水とから構成される液晶が知られている。該液晶は界面活性剤と水とが自己組織化した分子集合体であり、熱力学的に安定な状態にあるものである。該液晶は、使用する界面活性剤の種類及び濃度によって種々の形態を取り得ることが知られており、例えば、界面活性剤が非連続相を形成し、水が連続相を形成している液晶としてキュービック液晶及びヘキサゴナル液晶、界面活性剤と水が共に連続相を形成している液晶としてラメラ液晶、界面活性剤が連続相を形成し、水が非連続相を形成している液晶として逆キュービック液晶及び逆ヘキサゴナル液晶等が知られている。
界面活性剤と水とから構成されるこれらの液晶を含む組成物中には、さらに油剤等の油性成分や、水溶性成分等が安定的に含まれることもある。
【0004】
界面活性剤と水とで構成される液晶は含水含油性であり、熱力学的にも安定で、構造上多くの水又は油を含有することが可能であるため、水又は油のリザーバーとして使用されることもある。また当該液晶は一般的に粘稠で、液晶構造を安定して維持することが可能であり、例えば該液晶を含有する液晶組成物を対象物に塗布した場合には、長期間にわたり対象物の同一箇所に液晶組成物を保持することができる。この性質を利用して、含水含油性液晶はリリースコントロール用途に適用されることもある。
【0005】
界面活性剤と水とで構成され、且つ対称性としてFd-3m構造を有する液晶は、界面活性剤が連続相を形成し、水が不連続相を形成している逆キュービック液晶である。該液晶は水の包含量が多く、直径10nm以下という極めて微細な水分子集合体の形態で約34体積%包含されていることが知られている。
上記液晶を含有する液晶組成物は粘稠であり、リリースコントロール性能も期待される。また該液晶は界面活性剤中の疎水性基が連続相を形成しているため、該連続相中に油性成分を安定して包含させることも可能である。
【0006】
Fd-3m構造を有する液晶(以下、該液晶を「Fd-3m液晶」ともいう)の報告例として、非特許文献1には1,2-ジオレイルホスファチジルコリン、1,3-ジオレイルグリセロール、及び水の組み合わせからなる液晶が、非特許文献2には1,2-di-O-alkyl-3-O-(D-xylopyranosyl)-sn-glycerolsとDi-alkyl glucosyl lipidと水との組み合わせが、非特許文献3にはPoly(oxyethylwne)-poly(dimethylsiloxane)copolymerとMe3SiO(Si(Me)2O)x-(SiMe(C3H6(OCH2)nOH)O)ySiMe3と水との組み合わせが、非特許文献4にはモノオレイン、エタノール、Poloxamer407(PEO98PPO67PEO98)と水との組み合わせが開示されている。しかしながら、いずれの文献においても液晶の形成に用いられる化合物の種類及び配合比率が限定的であり、配合の自由度が極めて低い。したがって従来の液晶組成物は、生体適合性が求められる用途に適用することができない場合があった。また、Fd-3m液晶に油溶性成分又は水溶性成分を包含させるとFd-3m構造が壊れることも多い。
【0007】
非特許文献5、6には水と界面活性剤とでヘキサゴナル液晶を生成しうる界面活性剤(例えばTween80)とパーム核油及び水からなる三角相図が記載されており、生成物としてTransparent gel、Viscous area、Non-Transparent W/O Liquid emulsion、あるいはO/W LC、O/W emulsions、W/O EMG及びW/O emulsionsの記載があるが、Fd-3m構造を有する液晶については記載も示唆もない。非特許文献7-9は、非特許文献5、6と同一の著者による文献であり、上記生成物のドラッグデリバリー性能を評価しているが、非水溶性物質のデリバリー性能についての記載のみであり、水溶性物質のデリバリー性能については言及されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】John M. Seddon, “An Inverse Face-Centered Cubic Phase Formed by Diacylglycerol-Phosphatidylcholine Mixtures1”, Biochemistry, Vol.29, No.34 (1990), p7997-8002
【非特許文献2】John M. Seddon et al., “An Fd3m Lyotropic Cubic Phase in a Binary Glycolipid/Water System”, Langmuir, Vol.12, No.22 (1996), p5250-5253
【非特許文献3】K. Watanabe et al., “Highly Concentrated Emulsions Based on the Reverse Micellar Cubic Phase”, JOURNAL OF OLEO SCIENCE, Vol.51, No.12 (2002), p771-779
【非特許文献4】Patrick T. Spicer et al., “Novel Process for Producing Cubic Liquid Crystalline Nanoparticles (Cubosomes)”, Langmuir, Vol.17, No.19 (2001), p5748-5756
【非特許文献5】Muthanna F. Abdulkarim et al., “Study of Pseudoternary Phase Diagram Behaviour and the Effect of Several Tweens and Spans on Palm Oil Esters Characteristics”, International Journal of Drug Delivery 3 (2011), p95-100
【非特許文献6】Elrashid S. Mahdi1 et al., “Effect of surfactant and surfactant blends on pseudoternary phase diagram behavior of newly synthesized palm kernel oil esters”, Drug Design, Development and Therapy, 5 (2011), p311-323
【非特許文献7】Muthanna F. Abdulkarim et al., “Topical piroxicam in vitro release and in vivo anti-inflammatory and analgesic effects from palm oil esters-based nanocream”, International Journal of Nanomedicine, 5 (2010), p915-924
【非特許文献8】Ghassan Z. Abdullah et al., “In vitro permeation and in vivo anti-inflammatory and analgesic properties of nanoscaled emulsions containing ibuprofen for topical delivery”, International Journal of Nanomedicine, 6 (2011), p387-396
【非特許文献9】Elrashid S. Mahdi et al., “Formulation and in vitro release evaluation of newly synthesized palm kernel oil esters-based nanoemulsion delivery system for 30% ethanolic dried extract derived from local Phyllanthus urinaria for skin antiaging”, International Journal of Nanomedicine, 6 (2011), p2499-2512
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、従来は特殊な化合物で構成されていた、Fd-3m構造を有する液晶を含有する液晶組成物を、幅広い組成で且つ簡易な方法で調製することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、所定の要件を満たす界面活性剤及び油剤、並びに水の組み合わせにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記[1]~[3]に関する。
[1]Fd-3m構造を有する液晶を含有する液晶組成物であって、前記液晶組成物は界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)を配合してなり、界面活性剤(a)は、水(c)と混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成可能な界面活性剤であり、油剤(b)は、構造体(x)と混合することで、該構造体(x)の全てをラメラ構造体に変換することがない油剤であり、前記液晶組成物を構成する界面活性剤(a)と水(c)との比率が、該界面活性剤(a)と水(c)とを混合することで前記構造体(x)を形成する比率である、液晶組成物。
[2]上記[1]に記載の液晶組成物の製造方法であって、前記液晶組成物を構成する界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)を下記条件1~3を満たすように配合する、製造方法。
条件1:液晶組成物を構成する界面活性剤(a)と水(c)との比率が、該界面活性剤(a)と水(c)とを混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成する比率である。
条件2:液晶組成物を構成する油剤(b)の配合量が、界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)の合計量に対し5質量%以上である。
条件3:液晶組成物を構成する成分を混合する温度が、油剤(b)の融点以上の温度である。
[3]上記[1]に記載の液晶組成物を構成する界面活性剤(a)及び油剤(b)の選定方法であって、下記工程1~工程3を順に有する、選定方法。
工程1:水(c)と混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成可能な界面活性剤(a)を選定する工程
工程2:界面活性剤(a)と水(c)とを構造体(x)を形成する比率で混合して、該構造体(x)を含む混合物を調製する工程
工程3:工程2で得られた混合物と、該混合物中の界面活性剤(a)と同質量の油剤とを混合して組成物(L)を調製し、該組成物(L)中に含まれる構造体の構造を小角X線散乱法により分析する工程
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、Fd-3m構造を有する液晶を含有する液晶組成物を、特殊な化合物を使用した系に限定されず幅広い組成で且つ簡易な方法で調製することができるので、該液晶組成物の調製において配合の自由度を飛躍的に高めることができる。
本発明の液晶組成物に含まれるFd-3m液晶は水の包含量が多く、且つ、微細な水分子集合体の形態で水を包含していることから、該液晶組成物には、従来知られていなかった、水溶性成分又は水分散性成分を油相を越えて水相に輸送するデリバリー性能が期待される。また当該液晶組成物は従来のラメラ液晶とは液晶構造が異なるFd-3m液晶を含有するため、固体表面に塗り広げる際に、従来とは異なる使用感が得られる。例えば本発明の液晶組成物を皮膚に塗布した場合に、皮膚になじみやすいという感触を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例95の組成物を小角X線散乱法(SAXS)により分析して得られた散乱パターンである。
【
図2】比較例45の組成物を小角X線散乱法(SAXS)により分析して得られた散乱パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[液晶組成物]
本発明の液晶組成物は、Fd-3m構造を有する液晶(Fd-3m液晶)を含有する液晶組成物であり、該液晶組成物は界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)を配合してなり、界面活性剤(a)は、水(c)と混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成可能な界面活性剤であり、油剤(b)は、構造体(x)と混合することで、該構造体(x)の全てをラメラ構造体に変換することがない油剤であり、該液晶組成物を構成する界面活性剤(a)と水(c)との比率が、該界面活性剤(a)と水(c)とを混合することで構造体(x)を形成する比率である。
本発明の液晶組成物は上記構成とすることにより、特殊な化合物を使用した系に限定されず、幅広い組成で且つ簡易な方法でFd-3m液晶を含有する液晶組成物を調製できるという効果を奏する。
本明細書において、界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)を配合してなる組成物がFd-3m液晶を含有しているか否かは、小角X線散乱法(SAXS)により特定することができる。より詳細には、該組成物についてSAXS測定を行い、組成物中に含まれる構造体の繰り返し面とX線とが成す角度をθ(°)として、横軸を2θ、縦軸を強度として得られた散乱パターンにおいて、ピーク分離が不明瞭な場合はガウス関数を用いてピーク分割を行い、ピーク位置が√3:√8:√11:√12:√16を満たす場合、組成物がFd-3m液晶を含有していると特定できる。SAXS測定は、具体的には実施例に記載の方法により行うことができる。
【0014】
本明細書において「プレヘキサゴナル構造体」とは、ヘキサゴナル構造体と他の構造体(例えばラメラ構造体)との境界付近に出現するヒモ状構造体を指す。該ヒモ状構造体はラメラ構造体、ヘキサゴナル構造体又はキュービック構造体との混合物として存在する。
界面活性剤(a)と水(c)とを混合することで形成される上記構造体(ヘキサゴナル構造体、プレヘキサゴナル構造体、ラメラ構造体、キュービック構造体)は、SAXS測定により特定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
本発明においては、界面活性剤と水との混合物についてSAXS測定を行い、構造体の繰り返し面とX線とが成す角度をθ(°)として、横軸を2θ、縦軸を強度として得られた散乱パターンのピークが以下の(I)又は(II)の要件を満たす場合に、ヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)が形成されていると判断することができる。
(I)散乱パターンのピークが1:√3:2の位置に現れた場合。ピーク形状がシャープであればヘキサゴナル構造体、ブロードであればプレヘキサゴナル構造体が形成されていると判断する。ピーク形状がシャープであるかブロードであるかについてはピークの半値全幅(FWHM)により判別することができ、具体的には実施例に記載の方法により判別できる。
(II)上記(I)には該当しないが、ラメラ構造体及びキュービック構造体のいずれにも該当しない位置にブロードなピークが現れた場合。
なお、散乱パターンのピークが1:2:3:n・・・(nは整数)の位置に現れた場合はラメラ構造体、1:√2:√3:2の位置に現れた場合は体心立方に属するキュービック構造体が形成されていると判断する。
Fd-3m液晶を容易に形成できるという観点からは、構造体(x)はプレヘキサゴナル構造体を含むことがより好ましい。
【0015】
本発明の液晶組成物は、界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)を配合してなり、Fd-3m液晶を含有するものである。
界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)を配合した組成物において、Fd-3m液晶を含有する液晶組成物を形成できる要件について本発明者らが検討した結果、以下の要件が必須であることを見出した。
(1)界面活性剤(a)は、水(c)と混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成可能であること
(2)油剤(b)は、構造体(x)と混合することで、該構造体(x)の全てをラメラ構造体に変換することがない油剤であること
(3)界面活性剤(a)と水(c)との比率は、該界面活性剤(a)と水(c)とを混合することで構造体(x)を形成する比率であること
【0016】
上記(1)に関して、本発明の液晶組成物に用いる界面活性剤(a)は、水(c)と混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成可能であることが重要である。界面活性剤(a)は、水と混合した際に、構造体(x)が形成される混合比率が存在するものであればよい。
界面活性剤(a)と水(c)との混合により形成される構造体は、構造体(x)を含んでいればよく、ラメラ構造体、キュービック構造体等の他の構造体をさらに含んでいてもよい。しかしながら、界面活性剤と水との混合によりヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のいずれも形成されない場合には、さらに油剤を混合してもFd-3m液晶は生成しないことを本発明者らは見出した。
【0017】
上記(2)に関して、本発明の液晶組成物に用いる油剤(b)は、構造体(x)と混合することで該構造体(x)の全てをラメラ構造体に変換することがない油剤であることが重要である。
より詳細には、まず、界面活性剤(a)と水(c)との混合により前記構造体(x)が形成される条件であっても、該構造体(x)の全てがラメラ構造体に変換されてしまうような油剤を用いた場合は、Fd-3m液晶は生成しないことを本発明者らは見出した。構造体(x)の全てがラメラ構造体に変換された状態とは、SAXS測定により得られた散乱パターンのピークにおいて、明確な周期構造としてラメラ構造体のみが認められる状態を意味する。すなわち、構造体(x)の全てをラメラ構造体に変換しない限りは、構造体(x)の一部をラメラ構造体に変換することは油剤(b)として許容される。
また油剤(b)は、前記構造体(x)を形成可能な比率である界面活性剤(a)及び水(c)と混合した際に、Fd-3m液晶が形成される混合比率が存在することが必要である。Fd-3m液晶が形成されるか否かは、油剤(b)の量によっても調整することができる。
【0018】
上記(3)に関して、本発明の液晶組成物に配合される界面活性剤(a)と水(c)との比率は、該界面活性剤(a)と水(c)とを混合することで構造体(x)を形成する比率であることが重要である。前記(1)で述べたように、界面活性剤(a)と水(c)との混合によりヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のいずれも形成されない場合には、さらに油剤を混合してもFd-3m液晶は生成しないためである。
【0019】
<界面活性剤(a)>
本発明の液晶組成物に用いられる界面活性剤(a)は、水と混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成可能なものであれば特に制限されず、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤のいずれも用いることができる。水(c)との混合により構造体(x)を形成する観点からは、界面活性剤(a)は、非イオン性界面活性剤であることが好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、水と混合することで構造体(x)を容易に形成できるという観点から、疎水性基として炭素数7以上18以下の炭化水素基を有する非イオン性界面活性剤が好ましく、下記一般式(a1)又は一般式(a2)で表される非イオン性界面活性剤がより好ましい。
【0020】
(一般式(a1)で表される非イオン性界面活性剤)
R1a-A〔(R2aO)x-R3a〕y (a1)
〔式中、R1aは、炭素数7以上18以下の炭化水素基であり、R2aは、炭素数2又は3のアルキレン基であり、R3aは、炭素数1以上3以下のアルキル基又は水素原子である。xは平均付加モル数であり3以上50以下の数である。Aは-O-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-C(=O)N=、-NH-又は-N=であり、Aが-O-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-又は-NH-の場合yは1であり、Aが-C(=O)N=又は-N=の場合yは2である。〕
【0021】
前記一般式(a1)において、R1aは炭素数7以上18以下の炭化水素基であり、R1aの炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、また、好ましくは16以下である。R1aにおける炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基等の飽和又は不飽和の鎖状脂肪族基;シクロアルキル基、シクロアルケニル基等の飽和又は不飽和の環状脂肪族基;アリール基、アラルキル基等の芳香環含有基等が挙げられる。水と混合することで構造体(x)を容易に形成できるという観点からは、R1aにおける炭化水素基としては飽和又は不飽和の鎖状脂肪族基が好ましく、アルキル基又はアルケニル基がより好ましい。鎖状脂肪族基は直鎖状でも分岐状でもよく、直鎖状であることがより好ましい。
R1aは、より好ましくは炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基、更に好ましくは炭素数10以上16以下のアルキル基又はアルケニル基である。
R2aは炭素数2又は3のアルキレン基であり、具体的には、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基が挙げられ、好ましくはエチレン基及びプロピレン基からなる群から選ばれる1種以上、より好ましくはエチレン基である。複数のR2aはすべて同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
R3aは炭素数1以上3以下のアルキル基又は水素原子であり、好ましくは水素原子である。
xは平均付加モル数であり、3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上であって、50以下、好ましくは45以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下、よりさらに好ましくは20以下、よりさらに好ましくは15以下の数である。
Aは-O-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-C(=O)N=、-NH-又は-N=であり、Aが-O-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-又は-NH-の場合yは1であり、Aが-C(=O)N=又は-N=の場合yは2である。好ましくは、Aは-O-又は-C(=O)O-であり、より好ましくは-O-である。
x×yは、一般式(a1)で表される非イオン性界面活性剤におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。
【0022】
前記一般式(a1)で表される非イオン性界面活性剤の好ましい具体例としては、下記式(a1-1)で表される化合物を挙げることができる。
R1a-O-〔(C2H4O)s(C3H6O)t〕-H (a1-1)
〔式中、R1aは前記と同じである。sは平均付加モル数であり、3以上40以下の数である。tは平均付加モル数であり、0以上5以下の数である。(C2H4O)と(C3H6O)の結合順序は問わず、また、(C2H4O)と(C3H6O)の結合方式はランダム結合、ブロック結合のいずれでもよい。〕
式(a1-1)において、R1aは好ましくは炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基、より好ましくは炭素数10以上16以下のアルキル基又はアルケニル基、さらに好ましくは炭素数10以上16以下の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基である。sは好ましくは4以上、より好ましくは5以上、また、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下の数であり、tは好ましくは0以上、3以下の数であり、より好ましくは0である。
【0023】
すなわち、式(a1-1)で表されるより好ましい化合物は、アルキル基又はアルケニル基が炭素数8以上18以下、好ましくは10以上16以下であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が3モル以上40モル以下、好ましくは3モル以上30モル以下、より好ましくは4モル以上20モル以下、さらに好ましくは4モル以上15モル以下、よりさらに好ましくは5モル以上15モル以下であり、オキシプロピレン基の平均付加モル数が0モル以上5モル以下、好ましくは0モル以上3モル以下、より好ましくは0モルの、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンアルケニルエーテルである。さらに好ましくは、アルキル基又はアルケニル基が炭素数8以上18以下、好ましくは10以上16以下の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が3モル以上40モル以下、好ましくは3モル以上30モル以下、より好ましくは4モル以上20モル以下、さらに好ましくは4モル以上15モル以下、よりさらに好ましくは5モル以上15モル以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルである。
式(a1-1)で表される化合物の具体例としては、オキシエチレン基の平均付加モル数が3モル以上40モル以下、好ましくは3モル以上30モル以下、より好ましくは4モル以上20モル以下、さらに好ましくは4モル以上15モル以下、よりさらに好ましくは5モル以上15モル以下の、ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル等が挙げられる。好ましくはオキシエチレン基の平均付加モル数が前記範囲の、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンパルミチルエーテル及びポリオキシエチレンステアリルエーテルからなる群から選ばれる1種以上である。
【0024】
式(a1-1)で表される化合物として、オキシエチレン基の平均付加モル数が互いに異なる2種以上の化合物を用いることもできる。この場合、式(a1-1)で表される化合物のオキシエチレン基の平均付加モル数は、各化合物の混合比に応じて加重平均を算出することにより、化合物全体のオキシアルキレン基の平均付加モル数を求めることができる。
【0025】
(一般式(a2)で表される非イオン性界面活性剤)
〔R11a-B-(R12aO)u〕pGm〔(OR12a)vOH〕q (a2)
〔式中、R11aは炭素数7以上18以下の炭化水素基を示し、R12aは炭素数2以上4以下のアルキレン基を示す。u及びvは平均付加モル数であり、それぞれ独立に0以上40以下の数であって、且つu×p+v×qは0以上40以下である。Gは炭素数3以上10以下で且つヒドロキシ基数3以上10以下の多価アルコール残基を示す。mはGの平均縮合度であり、1以上10以下の数である。pは1以上であってGmのヒドロキシ基数以下の数、qはGmのヒドロキシ基数-pの数である。Bは-O-、又は-C(=O)O-である。〕
【0026】
前記一般式(a2)において、R11aは炭素数7以上18以下の炭化水素基であり、R11aの炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、また、好ましくは17以下である。R11aにおける炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基等の飽和又は不飽和の鎖状脂肪族基;シクロアルキル基、シクロアルケニル基等の飽和又は不飽和の環状脂肪族基;アリール基、アラルキル基等の芳香環含有基等が挙げられる。水と混合することで構造体(x)を容易に形成できるという観点からは、R11aにおける炭化水素基としては飽和又は不飽和の鎖状脂肪族基が好ましい。鎖状脂肪族基は直鎖状でも分岐状でもよく、直鎖状であることがより好ましい。
R11aは、より好ましくは炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基、さらに好ましくは炭素数10以上17以下のアルキル基又はアルケニル基、よりさらに好ましくは炭素数10以上17以下の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基である。
R12aは炭素数2以上4以下のアルキレン基であり、具体的には、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン、ブチレン基、テトラメチレン基が挙げられる。これらの中でも、R12aは好ましくは炭素数2以上3以下のアルキレン基であり、より好ましくはエチレン基及びプロピレン基からなる群から選ばれる1種以上、さらに好ましくはエチレン基である。複数のR12aはすべて同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
u及びvは平均付加モル数であり、それぞれ独立に0以上40以下の数であって、且つu×p+v×qは0以上40以下である。u×p+v×qは、一般式(a2)で表される非イオン性界面活性剤におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。
Gは炭素数3以上10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下で且つヒドロキシ基数3以上10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下の多価アルコール残基を示し、該多価アルコール残基は、好ましくはグリセリン残基、糖残基、及び糖アルコール残基からなる群から選ばれる1種以上である。当該糖残基としては、リボース、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖由来の残基が挙げられる。当該糖アルコール残基としては、ソルビトール、ソルビタン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、キシリトール等の、糖アルコール由来の残基が挙げられる。Gはより好ましくは、グリセリン残基、グルコース残基、フルクトース残基、ソルビタン残基、及びペンタエリスリトール残基からなる群から選ばれる1種以上である。mはGの平均縮合度であり、1以上10以下、好ましくは5以下の数である。Gが糖残基であって縮合度が2以上である場合、Gmは2種以上の単糖が縮合した、例えばショ糖由来の残基(ショ糖残基)であってもよい。
Gmはより好ましくは、Gがグルコース残基であり、mが1以上10以下の数であるポリグルコシド残基、又は、グルコース及びフルクトースが縮合したショ糖残基である。
pは1以上であってGmのヒドロキシ基数以下の数、qはGmのヒドロキシ基数-pの数である。Bは-O-、又は-C(=O)O-であり、好ましくは-C(=O)O-である。
【0027】
前記一般式(a2)で表される非イオン性界面活性剤の好ましい具体例としては、下記(a2-1)~(a2-5)の化合物を挙げることができる。
(a2-1)構成脂肪酸が炭素数8以上18以下の飽和又は不飽和脂肪酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が0以上40以下であるソルビタンモノ又はジ脂肪酸エステル
(a2-2)構成脂肪酸が炭素数8以上18以下の飽和又は不飽和脂肪酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が0以上40以下であり、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下であるペンタエリスリトール脂肪酸エステル
(a2-3)構成脂肪酸が炭素数8以上18以下の飽和又は不飽和脂肪酸であり、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下であるショ糖脂肪酸エステル
(a2-4)構成脂肪酸が炭素数8以上18以下の飽和又は不飽和脂肪酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下であるポリオキシエチレングリセリンモノ又はジ脂肪酸エステル
(a2-5)アルキル基の炭素数が炭素数8以上18以下、好ましくは10以上17以下であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が0以上20以下であり、糖の平均縮合度が1以上10以下であるモノアルキルグリコシド
【0028】
(a2-1)の化合物の具体例としては、構成脂肪酸が2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸であるソルビタン脂肪酸モノエステル又はジエステル;及び、構成脂肪酸が2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸モノエステル又はジエステル等が挙げられる。
【0029】
(a2-2)の化合物の具体例としては、オキシエチレン基の平均付加モル数が0以上40以下であり、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下である、ペンタエリスリトール2-エチルヘキサン酸エステル、ペンタエリスリトールラウリン酸エステル、ペンタエリスリトールミリスチン酸エステル、ペンタエリスリトールペンタデカン酸エステル、ペンタエリスリトールパルミチン酸エステル、ペンタエリスリトールパルミトレイン酸エステル、ペンタエリスリトールマルガデリン酸エステル、ペンタエリスリトールステアリン酸エステル、ペンタエリスリトールオレイン酸エステル、ペンタエリスリトールリノール酸エステル等が挙げられる。
【0030】
(a2-3)の化合物の具体例としては、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下である、ショ糖2-エチルヘキサン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖ペンタデカン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖パルミトレイン酸エステル、ショ糖マルガデリン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖リノール酸エステル等が挙げられる。
【0031】
(a2-4)の化合物の具体例としては、構成脂肪酸が2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下である、ポリオキシエチレングリセリンモノ又はジ脂肪酸エステルが挙げられる。
【0032】
また(a2-5)の化合物の具体例としては、糖の平均縮合度が1以上10以下、好ましくは1以上5以下である、モノオクチル(ポリ)グルコシド、モノデシル(ポリ)グルコシド、モノラウリル(ポリ)グルコシド、モノミリスチル(ポリ)グルコシド、モノペンタデシル(ポリ)グルコシド、モノパルミチル(ポリ)グルコシド、モノパルミトレイル(ポリ)グルコシド、モノステアリル(ポリ)グルコシド、モノオレイル(ポリ)グルコシド;及び、オキシエチレン基の平均付加モル数が0以上20以下であり、糖の平均縮合度が1以上10以下である、ポリオキシエチレンモノオクチル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノデシル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノラウリル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノミリスチル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノペンタデシル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノパルミチル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノパルミトレイル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノステアリル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノオレイル(ポリ)グルコシド等が挙げられる。なお前記化合物の“(ポリ)”は、糖が複数縮合したポリ体の構造と、平均縮合度が1として表現される、糖が縮合していない場合すなわち単糖であるモノ体の構造とを示すものである。
【0033】
上記界面活性剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の中でも、界面活性剤(a)としては前記式(a1-1)で表される化合物、及び前記(a2-1)~(a2-5)の化合物からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、前記式(a1-1)で表される化合物、前記(a2-1)の化合物、及び前記(a2-3)の化合物からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、オキシエチレン基の平均付加モル数が3モル以上20モル以下であるポリオキシエチレンラウリルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下であるポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート又はジオレエート、及び、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下であるショ糖ラウリン酸エステルからなる群から選ばれる1種以上がさらに好ましい。
【0034】
さらに本発明者らは、Fd-3m液晶を形成するために使用する界面活性剤(a)は、単一成分であるよりも、構造が類似した成分の混合物であることが好ましいことを見出した。「構造が類似した成分の混合物」として、具体的には、例えば界面活性剤(a)がオキシアルキレン基、好ましくはオキシエチレン基を有する非イオン性界面活性剤である場合、該界面活性剤は、オキシアルキレン基の付加モル数が互いに異なる成分の混合物であることが好ましい。オキシアルキレン基を有する非イオン性界面活性剤が単一成分、すなわちオキシアルキレン基の付加モル数が同一の成分のみからなる場合、該成分を水と混合することで形成される構造体は強固なヘキサゴナル構造体となりやすいため、油剤(b)を混合しても構造変化が起こり難く、Fd-3m液晶に変換されにくい。そのため当該界面活性剤が単一成分である場合、Fd-3m液晶を形成するためには、通常、油剤(b)の配合量を多くする必要がある。これに対し、オキシアルキレン基を有する非イオン性界面活性剤が、オキシアルキレン基の付加モル数が互いに異なる成分の混合物であると、単一成分からなる界面活性剤を用いた場合と比較して、形成される構造体は強固なヘキサゴナル構造体にならず、少量の油剤(b)を混合することでも容易にFd-3m液晶に変換されると考えられる。したがって当該界面活性剤がオキシアルキレン基の付加モル数が互いに異なる成分の混合物であると、配合の自由度が高くなるという点で好ましい。
【0035】
例えば前記一般式(a1)及び前記一般式(a2)で表される非イオン性界面活性剤においては、該非イオン性界面活性剤のオキシアルキレン基の平均付加モル数をnとした場合、該界面活性剤中の、オキシアルキレン基の付加モル数がnである成分の含有量は、上記観点から、実質0質量%であってもよく、すなわち0質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、よりさらに好ましくは40質量%以下である。さらに、該界面活性剤中の、オキシアルキレン基の付加モル数がn+1~n+10である成分の含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下であって、nが0である成分、すなわちオキシアルキレン基を持たない化合物の含有量は、油剤の性質が強くなるため少ない方がよく、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、また好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
上記非イオン性界面活性剤中の各成分の含有量は、高速液体クロマトグラフィーにより測定することができ、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
【0036】
なお、界面活性剤(a)として2種以上の界面活性剤を組み合わせて用いる場合は、界面活性剤(a)中の、オキシアルキレン基の付加モル数がnである成分の含有量、及び、オキシアルキレン基の付加モル数がn+1~n+10である成分の含有量は、各々の界面活性剤中の上記成分の含有量を分析し、界面活性剤の混合比に応じて、界面活性剤(a)全体の上記成分の含有量を算出することができる。
【0037】
界面活性剤(a)における「構造が類似した成分の混合物」のその他の例として、例えば前記一般式(a1)及び前記一般式(a2)で表される非イオン性界面活性剤においては、R1a又はR11aの炭化水素基の炭素数、種類、分岐の有無、並びに、オキシアルキレン基の種類、結合様式等が互いに異なる成分の混合物が挙げられる。
【0038】
界面活性剤が、水と混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成可能な界面活性剤(a)であるか否かは、後述する選定方法に記載の方法で判別することができる。
【0039】
<油剤(b)>
本発明の液晶組成物に用いられる油剤(b)は、界面活性剤(a)と水(c)との混合により形成された構造体(x)と混合することで、該構造体(x)の全てをラメラ構造体に変換することがない油剤である。前述したように、構造体(x)の全てがラメラ構造体に変換されてしまうような油剤を用いた場合は、Fd-3m液晶が生成しないことを本発明者らは見出した。一方で、油剤を混合することで構造体(x)の全てではなく一部のみがラメラ構造体に変換される限りにおいては、Fd-3m液晶が生成する可能性がある。
【0040】
油剤(b)は、他の成分と混合してFd-3m液晶を形成させる観点から、液晶組成物の調製において、溶融状態、すなわち融点以下の温度で他の成分と混合することが好ましい。この観点から、油剤(b)は、好ましくは融点が100℃未満、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは50℃以下、よりさらに好ましくは20℃以下である。油剤(b)の融点が上記範囲であると、例えば100℃を超える温度まで加熱することなしに、幅広い温度範囲において液晶組成物を調製することが可能になる。
【0041】
また、油剤(b)の分子量は、幅広い温度範囲において液晶組成物を調製しやすくする観点から、好ましくは1,500以下、より好ましくは1,200以下、さらに好ましくは1,000以下である。また、揮発を抑制する観点から、好ましくは100以上、より好ましくは120以上、さらに好ましくは150以上、よりさらに好ましくは200以上である。
【0042】
さらに油剤(b)としては、極性基の少ない油剤が好ましい。極性基の少ない油剤であると、構造体(x)に作用してその全てをラメラ構造体に変換してしまうことを抑制でき、Fd-3m液晶を容易に形成できるためである。
具体的には、油剤(b)はヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、及びアミド基の含有割合が少ない油剤であることが好ましく、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、及びアミド基のいずれも有さない油剤であることがより好ましい。より具体的には、油剤(b)がヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、又はアミド基を有する場合であっても、これらの極性基の官能基当量は好ましくは300g/当量以上、好ましくは500g/当量以上、さらに好ましくは750g/当量以上、よりさらに好ましくは1,000g/当量以上である。
さらに油剤(b)は、炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基の含有量が少ない油剤であることが好ましく、具体的には、油剤中の炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基の含有量が、好ましくは25質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは実質0質量%である。
【0043】
上記観点から、油剤(b)としては、炭化水素油及びエステル油からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、(i)炭素数8以上22以下の炭化水素油、(ii)炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなる脂肪酸モノエステル、(iii)炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上12以下の2価アルコールとからなる脂肪酸ジエステル、(iv)炭素数4以上18以下のジカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるジカルボン酸ジエステル、(v)炭素数5以上12以下のトリカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるトリカルボン酸トリエステル、及び(vi)グリセリン脂肪酸トリエステルからなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0044】
(i)炭素数8以上22以下の炭化水素油としては、オクタン、2-エチルヘキサン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、エイコサン、ドコサン、スクアラン、スクアレン等の、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の炭素数8以上22以下の炭化水素油が挙げられる。
【0045】
(ii)炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなる脂肪酸モノエステルとしては、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、アラキジン酸、ベヘニン酸等の、炭素数8以上22以下の飽和又は不飽和脂肪酸と、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ノナノール、イソノニルアルコール、デカノール、イソデシルアルコール、ドデカノール、ラウリルアルコール、トリデカノール、ミリスチルアルコール、ペンタデカノール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、2-オクチルドデカノール、フェノール、ベンジルアルコール等の、炭素数1以上24以下の脂肪族又は芳香族1価アルコールとのモノエステルが挙げられ、例えば、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキサデシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0046】
(iii)炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上12以下の2価アルコールとからなる脂肪酸ジエステルとしては、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、アラキジン酸、ベヘニン酸等の、炭素数8以上22以下の飽和又は不飽和脂肪酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ハイドロキノン等の、炭素数1以上12以下の脂肪族又は芳香族2価アルコールとのジエステルが挙げられ、例えば、エチレングリコールジ(2-エチルヘキサノエート)、エチレングリコールジラウレート、エチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジオレエート等が挙げられる。
【0047】
(iv)炭素数4以上18以下のジカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるジカルボン酸ジエステルとしては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、3-シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、2,5-ノルボルナンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の、炭素数4以上18以下の脂肪族又は芳香族ジカルボン酸と、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ノナノール、イソノニルアルコール、デカノール、イソデシルアルコール、ドデカノール、ラウリルアルコール、トリデカノール、ミリスチルアルコール、ペンタデカノール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、2-オクチルドデカノール、フェノール、ベンジルアルコール等の、炭素数1以上24以下の脂肪族又は芳香族1価アルコールとのジエステルが挙げられ、例えば、アジピン酸ジイソブチル、フタル酸ジイソノニル等が挙げられる。
【0048】
(v)炭素数5以上12以下のトリカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるトリカルボン酸トリエステルとしては、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸等の、炭素数5以上12以下の脂肪族又は芳香族トリカルボン酸と、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ノナノール、イソノニルアルコール、デカノール、イソデシルアルコール、ドデカノール、ラウリルアルコール、トリデカノール、ミリスチルアルコール、ペンタデカノール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、2-オクチルドデカノール、フェノール、ベンジルアルコール等の、炭素数1以上24以下の脂肪族又は芳香族1価アルコールとのトリエステルが挙げられ、例えば、トリメリット酸トリイソデシル等が挙げられる。
【0049】
また、(vi)グリセリン脂肪酸トリエステルとしては、グリセリンと、炭素数8以上22以下の飽和又は不飽和脂肪酸とのトリエステルが挙げられ、例えば、椰子油、オリーブ油、パーム核油、トリオレイン、2-エチルヘキサン酸トリグリセライド等が挙げられる。
【0050】
上記油剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の中でも、油剤(b)としては、(i)炭素数8以上22以下の炭化水素油、(ii)炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなる脂肪酸モノエステル、(iv)炭素数4以上18以下のジカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるジカルボン酸ジエステル、(v)炭素数5以上12以下のトリカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるトリカルボン酸トリエステル、及び(vi)グリセリン脂肪酸トリエステルからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、オクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、スクアラン、スクアレン、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキサデシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、フタル酸ジイソノニル、トリメリット酸トリイソデシル、トリオレイン、及び2-エチルヘキサン酸トリグリセライドからなる群から選ばれる1種以上がさらに好ましい。
【0051】
油剤が、界面活性剤(a)と水(c)との混合により形成された構造体(x)と混合することで該構造体(x)の全てをラメラ構造体に変換することがない油剤(b)であるか否かは、後述する選定方法に記載の方法で判別することができる。
【0052】
<水(c)>
本発明の液晶組成物に用いられる成分(c)は、安定な液晶組成物を得る観点から、脱イオン水又は蒸留水が好ましいが、本発明の液晶組成物の安定性を損なわない範囲で、次亜塩素酸等で殺菌した水道水、地下水等を用いてもよい。
【0053】
本発明の液晶組成物は前記成分(a)、成分(b)、及び成分(c)を主成分として構成され、液晶体としてFd-3m液晶を含有する。液晶組成物がFd-3m液晶を含有するか否かはSAXS測定により特定することができ、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
【0054】
<含有量>
本発明の液晶組成物中の前記成分(a)、成分(b)、及び成分(c)の含有量は下記のように定めることができる。
まず、本発明の液晶組成物中の界面活性剤(a)の含有量は、Fd-3m液晶を安定して形成する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、よりさらに好ましくは5質量%以上、よりさらに好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、よりさらに好ましくは45質量%以下、よりさらに好ましくは40質量%以下である。
【0055】
本発明の液晶組成物を構成する界面活性剤(a)と水(c)との比率は、該界面活性剤(a)と水(c)とを混合することで前記構造体(x)を形成する比率である。この比率は使用する界面活性剤の種類によっても異なり、界面活性剤(a)と水(c)とを任意の比率で混合し、得られた混合物中で構造体(x)が形成されているか否かをSAXS測定により確認することができる。
【0056】
一実施形態として、界面活性剤(a)が前記一般式(a1)又は一般式(a2)で表される非イオン性界面活性剤である場合、液晶組成物を構成する界面活性剤(a)と水(c)との比率は、構造体(x)を安定して形成する観点から、成分(a)と成分(c)の合計量に対する成分(a)の質量比(a)/((a)+(c))として、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上、よりさらに好ましくは0.3以上であり、また、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.8以下、よりさらに好ましくは0.7以下である。
【0057】
本発明の液晶組成物中の油剤(b)の含有量は、該油剤を成分(a)及び成分(c)と混合することでFd-3m液晶を形成できる量であればよい。Fd-3m液晶を安定して形成する観点から、液晶組成物中の油剤(b)の含有量は、界面活性剤(a)に対する質量比(b)/(a)として、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上、よりさらに好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは500以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは10以下、よりさらに好ましくは5以下である。
【0058】
また、本発明の液晶組成物中の油剤(b)の含有量は、Fd-3m液晶を安定して形成する観点から、界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)の合計量に対し、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは25質量%以上であり、また、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、よりさらに好ましくは50質量%以下、よりさらに好ましくは45質量%以下である。
【0059】
本発明の要件を満たす成分(a)、成分(b)及び成分(c)の含有量の範囲は、3相図を描くことによっても決定することができる。
【0060】
本発明の液晶組成物中の成分(a)、成分(b)、及び成分(c)の合計含有量は、Fd-3m液晶を安定して形成する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、よりさらに好ましくは50質量%以上、よりさらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上であり、また、100質量%以下である。
【0061】
<水溶性又は水分散性の機能性成分(d)>
本発明の液晶組成物はFd-3m液晶を含有することを特徴とするものであり、該Fd-3m液晶は界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)を混合して形成されたものである。該Fd-3m液晶は水が不連続相を形成している逆キュービック液晶であり、界面活性剤(a)が形成する連続相中に、直径10nm以下の水分子の集合体が約34体積%包含されている。
そのため本発明の液晶組成物中のFd-3m液晶は、不連続相を形成する水中に水溶性成分又は水分散性成分を包含することができ、且つ、該成分を油相を超えて水相に輸送できるという特異な性質を有する。この観点から、本発明の液晶組成物は、Fd-3m液晶構造を維持し得る限り、デリバリー対象物質である成分(d)として、水溶性又は水分散性の機能性成分をさらに含有することができる。
水溶性又は水分散性の機能性成分(d)としては、例えば染料等の水溶性色素、香料、殺菌剤、薬剤、漂白剤、酵素、アルカリ剤等の機能性成分が挙げられる。これら機能性成分は、液晶組成物の用途に応じて適宜選択することができる。
【0062】
<油溶性の機能性成分(e)>
本発明の液晶組成物はFd-3m液晶を含有するため、通常、非ニュートン流体としての性質を示す。またFd-3m液晶は液晶構造が従来のラメラ液晶と相違することから、本発明の液晶組成物は固体表面に塗り広げる際に、従来の液晶組成物とは異なる使用感が得られる。
この性質を利用した用途に適用するため、本発明の液晶組成物は、Fd-3m液晶構造を維持し得る限り、成分(e)として、油溶性の機能性成分をさらに含有することができる。油溶性の機能性成分(e)としては、例えば顔料、保湿剤、潤滑剤、油溶性の香料及び薬剤等の機能性成分が挙げられる。これら機能性成分は、液晶組成物の用途に応じて適宜選択することができる。
【0063】
本発明の液晶組成物が成分(d)又は成分(e)を含有する場合、その含有量の好適範囲は成分の種類によっても異なるが、例えば下記の範囲とすることができる。
本発明の液晶組成物が成分(d)を含有する場合、成分(d)の効能を発現する観点から、Fd-3m液晶組成物中の成分(d)の含有量は、好ましくは0.0001質量%以上、0.01質量%以上、1質量%以上、10質量%以上とすることができる。また、Fd-3m液晶構造を維持し、成分(d)を油相を超えて水相に輸送するデリバリー性能を安定して発現する観点からは、液晶組成物中の成分(d)の含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下とすることができる。
本発明の液晶組成物が成分(e)を含有する場合、Fd-3m液晶組成物を固体表面に塗り広げる際に従来とは異なる使用感を得る観点、及び機能性成分の効能を発現する観点から、液晶組成物中の成分(e)の含有量は、好ましくは0.0001質量%以上、0.01質量%以上、1質量%以上、10質量%以上とすることができる。また、Fd-3m液晶構造を安定して維持する観点からは、液晶組成物中の成分(e)の含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下とすることができる。
【0064】
本発明の液晶組成物には、その他成分として、Fd-3m液晶構造を維持し得る限り、成分(a)以外の界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、高分子化合物等を配合してもよい。
本発明の液晶組成物は、成分(b)以外の油剤を含有することを排除するものではないが、前記構造体(x)をラメラ構造体に変換することを抑制する観点、及び液晶組成物中のFd-3m液晶構造を維持する観点からは、その含有量は少ない方が好ましい。例えば成分(b)以外の油剤(b’)、典型的には、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、及びアミド基からなる群から選ばれる1種以上の官能基を有する油剤の含有量は、油剤(b)と油剤(b’)の合計量に対する質量比(b’)/((b)+(b’))として、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.20以下、さらに好ましくは0.10以下、よりさらに好ましくは0.05以下であり、よりさらに好ましくは0である。
【0065】
本発明の液晶組成物は、用途に適した粘度及びpHが採用される。また、本発明の液晶組成物は、用途に応じて使用温度を適宜設定することができ、少なくともその使用温度においてFd-3m液晶を含有していればよいが、取り扱い性、汎用性の観点から、25℃においてFd-3m液晶が形成されるものであることが好ましい。
【0066】
[液晶組成物の製造方法]
本発明の液晶組成物の製造方法は特に制限されないが、Fd-3m液晶を効率よく形成させる観点からは、該液晶組成物を構成する界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)を下記条件1~3を満たすように配合することが好ましい。
条件1:液晶組成物を構成する界面活性剤(a)及び水(c)の比率が、該界面活性剤(a)と水(c)とを混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成する比率である。
条件2:液晶組成物を構成する油剤(b)の配合量が、界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)の合計量に対し5質量%以上である。
条件3:液晶組成物を構成する成分を混合する温度が、油剤(b)の融点以上の温度である。
【0067】
<条件1>
条件1は、本発明の液晶組成物を構成する界面活性剤(a)及び水(c)の比率が、該界面活性剤(a)と水(c)とを混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成する比率となるよう配合することである。界面活性剤(a)と水(c)とから形成された構造体(x)に油剤(b)を混合することで、Fd-3m液晶が形成されるためである。
界面活性剤(a)と水と(c)の比率は、界面活性剤(a)と水(c)とを混合して得られた混合物中で構造体(x)が形成される比率であればよく、具体的には、質量比(a)/((a)+(c))が好ましくは前記範囲となる比率である。
【0068】
<条件2>
条件2は、本発明の液晶組成物を構成する油剤(b)を、界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)の合計量に対し5質量%以上となるように配合することである。油剤(b)の配合量がこの範囲であると、Fd-3m液晶を安定して形成することができる。
上記観点から、油剤(b)の配合量は、界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)の合計量に対し、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、また、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、よりさらに好ましくは50質量%以下である。
【0069】
<条件3>
条件3は、液晶組成物を構成する成分を混合する温度が、油剤(b)の融点以上の温度であることである。これにより、Fd-3m液晶を含有する液晶組成物を効率よく得ることができる。
例えば、油剤(b)が常温(25℃)で液体である場合は、液晶組成物を構成する各成分を常温以上の温度で混合すればよい。一方で、油剤(b)が常温で固体である場合は、Fd-3m液晶を効率よく形成する観点から、油剤(b)をその融点以上の温度まで加熱して溶融させ、溶融状態で他の成分と混合することが好ましい。この際、液晶組成物を構成する油剤(b)以外の全ての成分も、油剤(b)の融点以上の温度まで加熱して、油剤(b)と混合する。
【0070】
本発明の液晶組成物の製造において、界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)の混合順序は特に制限されない。例えば、成分(a)、(b)、(c)を同時に混合してもよく、成分(a)と成分(c)とを混合して構造体(x)を含有する混合物を調製し、次いで成分(b)を混合してもよい。また、成分(a)と成分(b)とを混合し、次いで成分(c)を混合してもよい。
本発明の液晶組成物の製造方法は、Fd-3m液晶を効率よく形成する観点から、予め、界面活性剤(a)の少なくとも一部と油剤(b)の少なくとも一部とを混合する工程を有することが好ましい。より好ましくは、予め、界面活性剤(a)の全量と油剤(b)の全量とを混合し、次いで成分(c)を混合する工程を有する方法である。
【0071】
本発明の液晶組成物が前記成分(d)、(e)をさらに含有する場合も、その混合順序は特に制限されないが、液晶組成物中に均一に溶解又は分散させる観点から、成分(d)は予め水(c)と混合してから配合することが好ましく、成分(e)は予め界面活性剤(a)又は油剤(b)と混合してから配合することが好ましい。
【0072】
液晶組成物の製造においては、公知の撹拌装置を用いて、液晶組成物を構成する各成分を気泡発生を伴わない程度の条件で攪拌し、次いで静置することで、本発明の液晶組成物を得ることができる。
【0073】
[選定方法]
さらに本発明は、Fd-3m液晶を含有する液晶組成物を構成する界面活性剤(a)及び油剤(b)の選定方法を提供する。
本発明の選定方法は、下記工程1~工程3を順に有する。
工程1:水(c)と混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成可能な界面活性剤(a)を選定する工程
工程2:界面活性剤(a)と水(c)とを構造体(x)を形成する比率で混合して該構造体(x)を含む混合物を調製する工程
工程3:工程2で得られた混合物と、該混合物中の界面活性剤(a)と同質量の油剤とを混合して組成物(L)を調製し、該組成物(L)中に含まれる構造体の構造を小角X線散乱法により分析する工程
【0074】
<工程1>
工程1では、水(c)と混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成可能な界面活性剤(a)を選定する。
具体的には、工程1では、界面活性剤と水とを任意の比率、例えば質量比1/1の比率で混合し、得られた混合物についてSAXS測定を行う。この際、構造体の繰り返し面とX線とが成す角度をθ(°)として、横軸を2θ、縦軸を強度として得られた散乱パターンのピークが以下の(I)又は(II)の要件を満たす場合に、ヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)が形成されていると判断し、該界面活性剤を界面活性剤(a)として選定できる。界面活性剤と水との混合比率は任意であり、構造体(x)を形成可能な混合比率が存在すればよい。
(I)散乱パターンのピークが1:√3:2の位置に現れた場合。ピーク形状がシャープであればヘキサゴナル構造体、ブロードであればプレヘキサゴナル構造体が形成されていると判断する。ピーク形状がシャープであるかブロードであるかについてはピークの半値全幅(FWHM)により判別することができ、具体的には実施例に記載の方法により判別できる。
(II)上記(I)には該当しないが、ラメラ構造体及びキュービック構造体のいずれにも該当しない位置にブロードなピークが現れた場合。
なお、散乱パターンのピークが1:2:3:n・・・(nは整数)の位置に現れた場合はラメラ構造体、1:√2:√3:2の位置に現れた場合は体心立方に属するキュービック構造体が形成されていると判断する。
【0075】
<工程2>
工程2では、界面活性剤(a)と水(c)とを構造体(x)を形成する比率で混合して該構造体(x)を含む混合物を調製する。
工程2では、工程1で選定した界面活性剤(a)を用いて、工程1において構造体(x)を形成可能であることを確認した比率にて水(c)と混合し、混合物を調製すればよい。
【0076】
<工程3>
工程3では、工程2で得られた混合物と、該混合物中の界面活性剤(a)と同質量の油剤とを混合して組成物(L)を調製し、該組成物(L)中に含まれる構造体の構造を小角X線散乱法により分析する。
工程2で得られた混合物に対し、該混合物中の界面活性剤(a)と同質量の油剤を混合すれば、該油剤が、油剤(b)としての要件を満たすかどうかを容易に見出すことができる。そして、組成物(L)中に含まれる構造体の構造を小角X線散乱法(SAXS)により分析した結果、組成物(L)中にFd-3m液晶が含まれていれば、該油剤は本発明に用いる油剤(b)として選定できる。また、組成物(L)を分析した結果、組成物(L)中にFd-3m液晶が含まれていなかったとしても、明確な周期構造としてラメラ構造体のみが認められない限りは、構造体(x)との混合比率によってはFd-3m液晶を形成できる可能性があるため、該油剤は油剤(b)として選定できる。SAXS測定は前記と同様の方法で行うことができる。
【0077】
本発明の選定方法によれば、Fd-3m液晶を含有する液晶組成物を構成する界面活性剤(a)及び油剤(b)を、上記手順により簡易な方法で選定できる。
なお本発明は、前記工程1~工程3を経て、工程3においてFd-3m液晶の存在が確認できなかった界面活性剤と油剤の使用を排除するものではなく、上述したように、界面活性剤、油剤、及び水の配合比率によってはFd-3m液晶を形成する可能性があることを否定しない。また例えば、2種以上の界面活性剤の組み合わせ、2種以上の油剤の組み合わせ、又はこれらの組み合わせによっても、Fd-3m液晶を形成する可能性はあり得る。
【0078】
本発明の液晶組成物は、従来知られていなかった、水溶性成分又は水分散性成分を油相を越えて水相に輸送するデリバリー性能が期待されることから、さまざまな応用分野への展開が見込まれる。また当該液晶組成物は、固体表面に塗り広げる際に従来とは異なる使用感が得られる。具体的には、本発明の液晶組成物を皮膚に塗布した場合に、皮膚になじみやすいという感触を得ることができることから、例えば外用剤への応用も期待される。
【0079】
上述の実施形態に関し、本発明は以下の液晶組成物、液晶組成物の製造方法、及び選定方法を開示する。
<1>
Fd-3m構造を有する液晶を含有する液晶組成物であって、
前記液晶組成物は界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)を配合してなり、
界面活性剤(a)は、水(c)と混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成可能な界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤であり、
油剤(b)は、構造体(x)と混合することで、該構造体(x)の全てをラメラ構造体に変換することがない油剤であって、好ましくはヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、及びアミド基からなる群から選ばれる極性基の官能基当量が300g/当量以上、好ましくは500g/当量以上、より好ましくは750g/当量以上、さらに好ましくは1,000g/当量以上の油剤であり、
前記液晶組成物を構成する界面活性剤(a)と水(c)との比率が、該界面活性剤(a)と水(c)とを混合することで前記構造体(x)を形成する比率である、液晶組成物。
<2>
前記非イオン性界面活性剤が下記一般式(a1)又は一般式(a2)で表される非イオン性界面活性剤である、<1>に記載の液晶組成物。
R1a-A〔(R2aO)x-R3a〕y (a1)
〔式中、R1aは、炭素数7以上18以下の炭化水素基であり、R1aの炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、また、好ましくは16以下である。R2aは、炭素数2又は3のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基及びプロピレン基からなる群から選ばれる1種以上、より好ましくはエチレン基である。複数のR2aはすべて同一でもよく、互いに異なっていてもよい。R3aは、炭素数1以上3以下のアルキル基又は水素原子であり、好ましくは水素原子である。xは平均付加モル数であり3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上であって、50以下、好ましくは45以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下、よりさらに好ましくは20以下、よりさらに好ましくは15以下の数である。Aは-O-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-C(=O)N=、-NH-又は-N=であり、Aが-O-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-又は-NH-の場合yは1であり、Aが-C(=O)N=又は-N=の場合yは2である。好ましくは、Aは-O-又は-C(=O)O-であり、より好ましくは-O-である。〕
〔R11a-B-(R12aO)u〕pGm〔(OR12a)vOH〕q (a2)
〔式中、R11aは炭素数7以上18以下の炭化水素基を示し、R11aの炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、また、好ましくは17以下である。R12aは炭素数2以上4以下のアルキレン基を示し、好ましくは炭素数2以上3以下のアルキレン基であり、より好ましくはエチレン基及びプロピレン基からなる群から選ばれる1種以上、さらに好ましくはエチレン基である。複数のR12aはすべて同一でもよく、互いに異なっていてもよい。u及びvは平均付加モル数であり、それぞれ独立に0以上40以下の数であって、且つu×p+v×qは0以上40以下である。Gは炭素数3以上10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下で且つヒドロキシ基数3以上10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下の多価アルコール残基を示し、該多価アルコール残基は、好ましくはグリセリン残基、糖残基、及び糖アルコール残基からなる群から選ばれる1種以上である。当該糖残基は、好ましくはリボース、グルコース、フルクトース、及びガラクトースからなる群から選ばれる1種以上の単糖由来の残基であり、当該糖アルコール残基は、好ましくはソルビトール、ソルビタン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、及びキシリトールからなる群から選ばれる1種以上の糖アルコール由来の残基である。Gは、好ましくはグリセリン残基、グルコース残基、フルクトース残基、ソルビタン残基、及びペンタエリスリトール残基からなる群から選ばれる1種以上である。mはGの平均縮合度であり、1以上10以下、好ましくは5以下の数である。Gが糖残基であって縮合度が2以上である場合、Gmは2種以上の単糖が縮合した、ショ糖由来の残基(ショ糖残基)であってもよい。Gmはより好ましくは、Gがグルコース残基であり、mが1以上10以下の数であるポリグルコシド残基、又は、グルコース及びフルクトースが縮合したショ糖残基である。pは1以上であってGmのヒドロキシ基数以下の数、qはGmのヒドロキシ基数-pの数である。Bは-O-、又は-C(=O)O-であり、好ましくは-C(=O)O-である。〕
<3>
前記一般式(a1)で表される非イオン性界面活性剤が下記式(a1-1)で表される化合物である、<2>に記載の液晶組成物。
R1a-O-〔(C2H4O)s(C3H6O)t〕-H (a1-1)
〔式中、R1aは好ましくは炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基、より好ましくは炭素数10以上16以下のアルキル基又はアルケニル基、さらに好ましくは炭素数10以上16以下の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基である。sは平均付加モル数であり、3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、また、40以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下の数である。tは平均付加モル数であり、0以上、5以下、好ましくは3以下の数であり、より好ましくは0である。(C2H4O)と(C3H6O)の結合順序は問わず、また、(C2H4O)と(C3H6O)の結合方式はランダム結合、ブロック結合のいずれでもよい。〕
<4>
前記式(a1-1)で表される化合物が、アルキル基又はアルケニル基が炭素数8以上18以下、好ましくは10以上16以下であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が3モル以上40モル以下、好ましくは3モル以上30モル以下、より好ましくは4モル以上20モル以下、さらに好ましくは4モル以上15モル以下、よりさらに好ましくは5モル以上15モル以下であり、オキシプロピレン基の平均付加モル数が5モル以下、好ましくは0モルの、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、より好ましくは、アルキル基又はアルケニル基が炭素数8以上18以下、好ましくは10以上16以下の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が3モル以上40モル以下、好ましくは3モル以上30モル以下、より好ましくは4モル以上20モル以下、さらに好ましくは4モル以上15モル以下、よりさらに好ましくは5モル以上15モル以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルである、<3>に記載の液晶組成物。
<5>
式(a1-1)で表される化合物が、オキシエチレン基の平均付加モル数が3モル以上40モル以下、好ましくは3モル以上30モル以下、より好ましくは4モル以上20モル以下、さらに好ましくは4モル以上15モル以下、よりさらに好ましくは5モル以上15モル以下の、ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデカンエーテル、及びポリオキシエチレンオクタデカンエーテルからなる群から選ばれる1種以上であり、好ましくはオキシエチレン基の平均付加モル数が3モル以上40モル以下、好ましくは3モル以上30モル以下、より好ましくは4モル以上20モル以下、さらに好ましくは4モル以上15モル以下、よりさらに好ましくは5モル以上15モル以下の、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンパルミチルエーテル及びポリオキシエチレンステアリルエーテルからなる群から選ばれる1種以上である、<4>に記載の液晶組成物。
<6>
前記一般式(a2)で表される非イオン性界面活性剤が、下記(a2-1)~(a2-5)の化合物である、<3>~<5>のいずれか1に記載の液晶組成物。
(a2-1)構成脂肪酸が炭素数8以上18以下の飽和又は不飽和脂肪酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が0以上40以下であるソルビタンモノ又はジ脂肪酸エステル
(a2-2)構成脂肪酸が炭素数8以上18以下の飽和又は不飽和脂肪酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が0以上40以下であり、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下であるペンタエリスリトール脂肪酸エステル
(a2-3)構成脂肪酸が炭素数8以上18以下の飽和又は不飽和脂肪酸であり、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下であるショ糖脂肪酸エステル
(a2-4)構成脂肪酸が炭素数8以上18以下の飽和又は不飽和脂肪酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下であるポリオキシエチレングリセリンモノ又はジ脂肪酸エステル
(a2-5)アルキル基の炭素数が炭素数8以上18以下、好ましくは10以上17以下であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が0以上20以下であり、糖の平均縮合度が1以上10以下であるモノアルキルグリコシド
<7>
(a2-1)の化合物が、構成脂肪酸が2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸であるソルビタン脂肪酸モノエステル又はジエステル;及び、構成脂肪酸が2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸モノエステル又はジエステルからなる群から選ばれる1種以上である、<6>に記載の液晶組成物。
<8>
(a2-2)の化合物が、オキシエチレン基の平均付加モル数が0以上40以下であり、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下である、ペンタエリスリトール2-エチルヘキサン酸エステル、ペンタエリスリトールラウリン酸エステル、ペンタエリスリトールミリスチン酸エステル、ペンタエリスリトールペンタデカン酸エステル、ペンタエリスリトールパルミチン酸エステル、ペンタエリスリトールパルミトレイン酸エステル、ペンタエリスリトールマルガデリン酸エステル、ペンタエリスリトールステアリン酸エステル、ペンタエリスリトールオレイン酸エステル、及びペンタエリスリトールリノール酸エステルからなる群から選ばれる1種以上である、<6>又は<7>に記載の液晶組成物。
<9>
(a2-3)の化合物が、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下である、ショ糖2-エチルヘキサン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖ペンタデカン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖パルミトレイン酸エステル、ショ糖マルガデリン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖リノール酸エステルからなる群から選ばれる1種以上である、<6>~<8>のいずれか1に記載の液晶組成物。
<10>
(a2-4)の化合物が、構成脂肪酸が2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガデリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下である、ポリオキシエチレングリセリンモノ又はジ脂肪酸エステルである、<6>~<9>のいずれか1に記載の液晶組成物。
【0080】
<11>
(a2-5)の化合物が、糖の平均縮合度が1以上10以下、好ましくは1以上5以下である、モノオクチル(ポリ)グルコシド、モノデシル(ポリ)グルコシド、モノラウリル(ポリ)グルコシド、モノミリスチル(ポリ)グルコシド、モノペンタデシル(ポリ)グルコシド、モノパルミチル(ポリ)グルコシド、モノパルミトレイル(ポリ)グルコシド、モノステアリル(ポリ)グルコシド、モノオレイル(ポリ)グルコシド;及び、オキシエチレン基の平均付加モル数が0以上20以下であり、糖の平均縮合度が1以上10以下である、ポリオキシエチレンモノオクチル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノデシル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノラウリル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノミリスチル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノペンタデシル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノパルミチル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノパルミトレイル(ポリ)グルコシド、ポリオキシエチレンモノステアリル(ポリ)グルコシド、及びポリオキシエチレンモノオレイル(ポリ)グルコシドからなる群から選ばれる1種以上である、<6>~<10>のいずれか1に記載の液晶組成物。
<12>
界面活性剤(a)が前記式(a1-1)で表される化合物、及び前記(a2-1)~(a2-5)の化合物からなる群から選ばれる1種以上、好ましくは前記式(a1-1)で表される化合物、前記(a2-1)の化合物、及び前記(a2-3)の化合物からなる群から選ばれる1種以上、より好ましくはオキシエチレン基の平均付加モル数が3モル以上20モル以下であるポリオキシエチレンラウリルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下であるポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート又はジオレエート、及び、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下であるショ糖ラウリン酸エステルからなる群から選ばれる1種以上である、<6>~<11>のいずれか1に記載の液晶組成物。
<13>
前記一般式(a1)及び前記一般式(a2)で表される非イオン性界面活性剤において、該非イオン性界面活性剤のオキシアルキレン基の平均付加モル数をnとした場合、該界面活性剤中の、オキシアルキレン基の付加モル数がnである成分の含有量が、0質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、よりさらに好ましくは40質量%以下であり、該界面活性剤中の、オキシアルキレン基の付加モル数がn+1~n+10である成分の含有量が、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下であって、nが0である成分の含有量が、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、また好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である、<3>~<12>のいずれか1に記載の液晶組成物。
<14>
油剤(b)の融点が100℃未満、好ましくは80℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは20℃以下である、<1>~<13>のいずれか1に記載の液晶組成物。
<15>
油剤(b)の分子量が好ましくは1,500以下、より好ましくは1,200以下、さらに好ましくは1,000以下であり、好ましくは100以上、より好ましくは120以上、さらに好ましくは150以上、よりさらに好ましくは200以上である、<1>~<14>のいずれか1に記載の液晶組成物。
<16>
油剤(b)中の炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基の含有量が、好ましくは25質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは実質0質量%である、<1>~<15>のいずれか1に記載の液晶組成物。
<17>
油剤(b)が、炭化水素油及びエステル油からなる群から選ばれる1種以上、好ましくは(i)炭素数8以上22以下の炭化水素油、(ii)炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなる脂肪酸モノエステル、(iii)炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上12以下の2価アルコールとからなる脂肪酸ジエステル、(iv)炭素数4以上18以下のジカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるジカルボン酸ジエステル、(v)炭素数5以上12以下のトリカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるトリカルボン酸トリエステル、及び(vi)グリセリン脂肪酸トリエステルからなる群から選ばれる1種以上、より好ましくは(i)炭素数8以上22以下の炭化水素油、(ii)炭素数8以上22以下の脂肪酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなる脂肪酸モノエステル、(iv)炭素数4以上18以下のジカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるジカルボン酸ジエステル、(v)炭素数5以上12以下のトリカルボン酸と炭素数1以上24以下の1価アルコールとからなるトリカルボン酸トリエステル、及び(vi)グリセリン脂肪酸トリエステルからなる群から選ばれる1種以上、さらに好ましくはオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、スクアラン、スクアレン、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキサデシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、フタル酸ジイソノニル、トリメリット酸トリイソデシル、トリオレイン、及び2-エチルヘキサン酸トリグリセライドからなる群から選ばれる1種以上である、<1>~<16>のいずれか1に記載の液晶組成物。
<18>
液晶組成物中の界面活性剤(a)の含有量が好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、よりさらに好ましくは5質量%以上、よりさらに好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、よりさらに好ましくは45質量%以下、よりさらに好ましくは40質量%以下である、<1>~<17>のいずれか1に記載の液晶組成物。
<19>
界面活性剤(a)が前記一般式(a1)又は一般式(a2)で表される非イオン性界面活性剤である場合、液晶組成物を構成する界面活性剤(a)と水(c)との比率が、成分(a)と成分(c)の合計量に対する成分(a)の質量比(a)/((a)+(c))として、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上、よりさらに好ましくは0.3以上であり、また、好ましくは1以下、より好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.8以下、よりさらに好ましくは0.7以下である、<3>~<18>のいずれか1に記載の液晶組成物。
<20>
液晶組成物中の油剤(b)の含有量が、界面活性剤(a)に対する質量比(b)/(a)として、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上、よりさらに好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは500以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは10以下、よりさらに好ましくは5以下である、<1>~<19>のいずれか1に記載の液晶組成物。
【0081】
<21>
液晶組成物中の油剤(b)の含有量が、界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)の合計量に対し、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは25質量%以上であり、また、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、よりさらに好ましくは50質量%以下、よりさらに好ましくは45質量%以下である、<1>~<20>のいずれか1に記載の液晶組成物。
<22>
液晶組成物中の成分(a)、成分(b)、及び成分(c)の合計含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、よりさらに好ましくは50質量%以上、よりさらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上であり、また、100質量%以下である、<1>~<21>のいずれか1に記載の液晶組成物。
<23>
さらに、水溶性又は水分散性の機能性成分(d)を、好ましくは0.0001質量%以上、0.01質量%以上、1質量%以上、10質量%以上、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下含有する、<1>~<22>のいずれか1に記載の液晶組成物。
<24>
さらに、油溶性の機能性成分(e)を、好ましくは0.0001質量%以上、0.01質量%以上、1質量%以上、10質量%以上、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下含有する、<1>~<23>のいずれか1に記載の液晶組成物。
<25>
成分(b)以外の油剤(b’)の含有量が、油剤(b)と油剤(b’)の合計量に対する質量比(b’)/((b)+(b’))として、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.20以下、さらに好ましくは0.10以下、よりさらに好ましくは0.05以下であり、よりさらに好ましくは0である、<1>~<24>のいずれか1に記載の液晶組成物。
<26>
Fd-3m構造を有する液晶を含有する液晶組成物であって、
前記液晶組成物は界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)を配合してなり、
界面活性剤(a)は、水(c)と混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成可能な、オキシエチレン基の平均付加モル数が3モル以上20モル以下であるポリオキシエチレンラウリルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下であるポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート又はジオレエート、及び、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下であるショ糖ラウリン酸エステルからなる群から選ばれる1種以上の界面活性剤であり、
油剤(b)は、構造体(x)と混合することで、該構造体(x)の全てをラメラ構造体に変換することがない油剤であって、オクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、スクアラン、スクアレン、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキサデシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、フタル酸ジイソノニル、トリメリット酸トリイソデシル、トリオレイン、及び2-エチルヘキサン酸トリグリセライドからなる群から選ばれる1種以上の油剤であり、
前記液晶組成物を構成する界面活性剤(a)と水(c)との比率が、該界面活性剤(a)と水(c)とを混合することで前記構造体(x)を形成する比率であり、
液晶組成物中の界面活性剤(a)の含有量が1質量%以上70質量%以下であり、
液晶組成物を構成する界面活性剤(a)と水(c)との比率が、成分(a)と成分(c)の合計量に対する成分(a)の質量比(a)/((a)+(c))として0.05以上0.95以下であり、
液晶組成物中の油剤(b)の含有量が、界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)の合計量に対し5質量%以上85質量%以下であり、
成分(b)以外の油剤(b’)の含有量が、油剤(b)と油剤(b’)の合計量に対する質量比(b’)/((b)+(b’))として0.40以下であり、
液晶組成物中の成分(a)、成分(b)、及び成分(c)の合計含有量が80質量%以上100質量%以下である、液晶組成物。
<27>
Fd-3m構造を有する液晶を含有する液晶組成物であって、
前記液晶組成物は界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)を配合してなり、
界面活性剤(a)は、水(c)と混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成可能な、オキシエチレン基の平均付加モル数が3モル以上20モル以下であるポリオキシエチレンラウリルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上40以下であるポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート又はジオレエート、及び、モノエステルの比率が60モル%以上90モル%以下であるショ糖ラウリン酸エステルからなる群から選ばれる1種以上の界面活性剤であり、
油剤(b)は、構造体(x)と混合することで、該構造体(x)の全てをラメラ構造体に変換することがない油剤であって、オクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、スクアラン、スクアレン、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキサデシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、フタル酸ジイソノニル、トリメリット酸トリイソデシル、トリオレイン、及び2-エチルヘキサン酸トリグリセライドからなる群から選ばれる1種以上の油剤であり、
前記液晶組成物を構成する界面活性剤(a)と水(c)との比率が、該界面活性剤(a)と水(c)とを混合することで前記構造体(x)を形成する比率であり、
液晶組成物中の界面活性剤(a)の含有量が1質量%以上70質量%以下であり、
液晶組成物中の油剤(b)の含有量が、界面活性剤(a)に対する質量比(b)/(a)として0.01以上500以下であり、
液晶組成物を構成する界面活性剤(a)と水(c)との比率が、界面活性剤(a)と水(c)の合計量に対する界面活性剤(a)の質量比(a)/((a)+(c))として0.05以上0.95以下であり、
成分(b)以外の油剤(b’)の含有量が、油剤(b)と油剤(b’)の合計量に対する質量比(b’)/((b)+(b’))として0.40以下であり、
液晶組成物中の成分(a)、成分(b)、及び成分(c)の合計含有量が80質量%以上100質量%以下である、液晶組成物。
<28>
<1>~<27>のいずれか1に記載の液晶組成物の製造方法であって、
前記液晶組成物を構成する界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)を下記条件1~3を満たすように配合する、製造方法。
条件1:液晶組成物を構成する界面活性剤(a)と水(c)との比率が、該界面活性剤(a)と水(c)とを混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成する比率である。
条件2:液晶組成物を構成する油剤(b)の配合量が、界面活性剤(a)、油剤(b)、及び水(c)の合計量に対し5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、また、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、よりさらに好ましくは50質量%以下である。
条件3:液晶組成物を構成する成分を混合する温度が、油剤(b)の融点以上の温度である。
<29>
予め、界面活性剤(a)の少なくとも一部と油剤(b)の少なくとも一部とを混合する工程を有する、<28>に記載の製造方法。
<30>
<1>~<27>のいずれか1に記載の液晶組成物を構成する界面活性剤(a)及び油剤(b)の選定方法であって、下記工程1~工程3を順に有する、選定方法。
工程1:水(c)と混合することでヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)を形成可能な界面活性剤(a)を選定する工程
工程2:界面活性剤(a)と水(c)とを構造体(x)を形成する比率で混合して、該構造体(x)を含む混合物を調製する工程
工程3:工程2で得られた混合物と、該混合物中の界面活性剤(a)と同質量の油剤とを混合して組成物(L)を調製し、該組成物(L)中に含まれる構造体の構造を小角X線散乱法により分析する工程
【実施例0082】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。なお、実施例における各測定及び評価は以下の方法により行った。
【0083】
<ポリオキシエチレンラウリルエーテルの組成分析>
成分(a)であるポリオキシエチレンラウリルエーテルの、オキシエチレン基の平均付加モル数n、ポリオキシエチレンラウリルエーテル中の、オキシエチレン基の付加モル数がnである成分、及びオキシエチレン基の付加モル数が0及びn+1~n+10である成分の含有量は、次に示す方法により測定した。
ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.06g、3,5-ジニトロ安息香酸クロリド0.06g、トリエチルアミン0.03gをアセトニトリル5mLに溶解させ、60℃で30分保持した後、アセトニトリル15mLで希釈したサンプルを用いて、下記の条件にて高速液体クロマトグラフィー(Agilent 1260 Infinity(アジレント・テクノロジー社製))により分析を行った。
・カラム:1Wakosil 5C18(4.6×250mm)(富士フイルム和光純薬(株)製)
・インジェクション量:20μL
・流量:1mL/min.
・溶離液 水/アセトニトリル(22/78)(体積比)
・検出:UV検出器
・オーブン温度:40℃
〔成分組成の算出〕
得られたチャートのピーク面積比率より、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを構成する成分のオキシエチレン付加モル数毎の質量比率を算出した。
【0084】
<成分(a)と成分(c)との混合により形成される構造体の確認>
表に記載の界面活性剤(成分(a))と、脱イオン水(成分(c))とを表中の配合量にて配合し、ボルテックスミキサーを用いて混合して、成分(a)と成分(c)との混合物を調製した。この混合物を小角X線散乱法(SAXS)により分析し、形成された構造体の構造を確認した。分析には小角散乱測定装置((株)リガク製「NANO-Viewer」)を用い、直径5mm、厚み1.0mmのリング状フォルダーに混合物を充填し、フォルダーの両側をカプトン(登録商標)膜で覆って下記条件で測定を行った。
〔測定条件〕
X線源:Cu-Kα線(回転対陰極)
X線発生条件:加速電圧40kV、電流30mA
ピンホールスリットの直径:1st 0.4mm、2nd 0.2mm、3rd 0.45mm
カメラ長:525mm(ベヘン酸銀の1.513°(Cu,Kα)のピークを用いて決定)
サンプル温度:25℃
露光時間:5分
【0085】
測定の結果得られた散乱パターン(構造体の繰り返し面とX線とが成す角度をθ(°)として、横軸を2θ、縦軸を強度として得られた散乱パターン)において、ピーク分離が不明瞭な場合はガウス関数の組み合わせでピーク分割を行った。ガウス関数の分散の値から算出された半値全幅(FWHM)が0.1°(Cu、Kα)未満のものをシャープなピーク、0.1°(Cu、Kα)以上のものをブロードなピークとした。散乱パターンのシャープなピークが1:√3:2の位置に現れた場合はヘキサゴナル構造体が形成されていると特定した。また、ブロードなピークが1:√3:2の位置に現れた場合、又は、以下のラメラ構造体及びキュービック構造体のいずれにも該当しない位置にブロードなピークが現れた場合はプレヘキサゴナル構造体が形成されていると特定した。
一方で、散乱パターンのピークが1:2:3:n・・・(nは整数)の位置に現れた場合はラメラ構造体、1:√2:√3:2の位置に現れた場合は体心立方に属するキュービック構造体が形成されていると特定した。さらに、構造体の結晶面とX線とが成す角度をθとした場合に、2θ=0.5°~5°の間にBraggの式に基づく周期構造が認められない場合はミセル構造体が形成されていると特定した。Braggの式は下記であり、式中、nは整数を表す。
2dsinθ=nλ
d:結晶面の間隔
θ:結晶面とX線とが成す角度
λ:X線波長
【0086】
<成分(b)の選定>
表に記載の界面活性剤(成分(a))と、脱イオン水(成分(c))とを表中の配合量にて配合し、ボルテックスミキサーを用いて混合して、成分(a)と成分(c)との混合物を調製した。この混合物に対し、成分(a)と同質量の油剤を添加して混合し、組成物(L)を調製した。この組成物(L)を、前記と同様の条件で小角X線散乱法(SAXS)により分析し、組成物(L)中の含まれる構造体の構造を確認した。測定の結果、得られた散乱パターンのピークから、ラメラ構造体のみが検出された油剤は「油剤(b’)」とし、それ以外の油剤を「油剤(b)」として選定した。
【0087】
<組成物中のFd-3m液晶の有無の確認>
各例で得られた組成物中のFd-3m液晶の有無は、前記と同様に小角X線散乱法(SAXS)により分析して確認した。露光時間は必要により延長し、得られた散乱パターンのピーク分離が不明瞭な場合はガウス関数を用いてピーク分割を行い、ピーク位置が√3:√8:√11:√12:√16を満たす場合、組成物がFd-3m液晶を含有していると特定した。
【0088】
実施例1~107及び比較例1~46(組成物の調製及び評価)
表に記載の界面活性剤(成分(a))と、油剤(b)又は(b’)とを表中の配合量にて配合して95℃に加熱し、ボルテックスミキサーを用いて撹拌して、成分(a)と成分(b)又は(b’)との混合物を調製した。ここに脱イオン水(c)を配合し、再度95℃まで昇温した。ボルテックスミキサーを用いて撹拌しながら空冷し、液温が室温(25℃)近くになるまで撹拌を続けて、表に示す組成の組成物を調製した。なお、実施例及び比較例で使用した油剤(b)又は(b’)の融点はいずれも95℃未満である。
得られた組成物について、前記方法でFd-3m液晶の有無を確認した。結果を表1~8に示す。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
表1~8に示す成分は下記である。なお表中に記載の配合量は、有効成分の配合量(g)である。
<界面活性剤(a)>
(a-1)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エマルゲン108(花王(株)、オキシエチレン基の平均付加モル数n=6、n=6である成分の含有量:9.2質量%、n=7~16である成分の含有量:54.7質量%)
(a-2)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(富士フイルム和光純薬(株)、オキシエチレン基の平均付加モル数n=6、n=6である成分の含有量:100質量%、n=7~16である成分の含有量:0質量%)
(a-3)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エマルゲン147(花王(株)、オキシエチレン基の平均付加モル数n=19、n=19である成分の含有量:7.2質量%、n=20~29である成分の含有量:46.8質量%)
(a-4)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エマルゲン102KG(花王(株)、オキシエチレン基の平均付加モル数n=2、n=2である成分の含有量:16.6質量%、n=3~12である成分の含有量:43.5質量%)
(a-5)ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(レオドール TW-O120V(花王(株)、オキシエチレン基の平均付加モル数n=20)
(a-6)ショ糖ラウリン酸エステル(SURFHOPE SE COSME C-1216(Misubishi-Chemical Foods co.、HLB:16、Mono ester:80%)
【0098】
<油剤(b)>
(b-1)トリオレイン(関東化学(株))
(b-2)トリステアリン(富士フイルム和光純薬(株))
(b-3)トリパルミチン(富士フイルム和光純薬(株))
(b-4)トリラウリン(関東化学(株))
(b-5)スクアレン(富士フイルム和光純薬(株))
(b-6)スクアラン(富士フイルム和光純薬(株))
(b-7)オクタン(富士フイルム和光純薬(株))
(b-8)デカン(富士フイルム和光純薬(株))
(b-9)ウンデカン(富士フイルム和光純薬(株))
(b-10)ドデカン(富士フイルム和光純薬(株))
(b-11)トリデカン(富士フイルム和光純薬(株))
(b-12)テトラデカン(富士フイルム和光純薬(株))
(b-13)ヘキサデカン(富士フイルム和光純薬(株))
(b-14)オクタデカン(富士フイルム和光純薬(株))
(b-15)イソドデカン(マルカゾールR(丸善石油化学(株))
(b-16)ミリスチン酸イソプロピル(エキセパールIPM(花王(株))
(b-17)パルミチン酸イソプロピル(エキセパールIPP(花王(株))
(b-18)2-エチルヘキサン酸セチル(エキセパールHO(花王(株))
(b-19)ミリスチン酸2-オクチルドデシル(エキセパールOD-M(花王(株))
(b-20)ステアリン酸2-エチルヘキシル(エキセパールEH-S(花王(株))
(b-21)2-エチルヘキサン酸トリグリセライド(エキセパールTGO(花王(株))
(b-22)トリメリット酸トリイソデシル(トリメックスT-10(花王(株))
(b-23)フタル酸ジイソノニル(ビニサイザー90(花王(株))
(b-24)アジピン酸ジイソブチル(ビニサイザー40(花王(株))
<(b)以外の油剤(b’)>
(b’-1)オレイルアルコール(富士フイルム和光純薬(株))
(b’-2)オレイン酸(富士フイルム和光純薬(株))
【0099】
表1~8より、以下のことが判る。
実施例1~107(表1,2,5~8)で得られた液晶組成物はいずれもFd-3m液晶を含有するものである。これら液晶組成物を構成する界面活性剤(a)と水(c)の配合比率は、該界面活性剤(a)と水(c)を混合した際にヘキサゴナル構造体及びプレヘキサゴナル構造体のうち少なくとも一方の構造体(x)が形成される比率である。このことは、「成分(a)と成分(c)との混合により形成される構造体」がヘキサゴナル構造体(H)及びプレヘキサゴナル構造体(preH)のうち少なくとも一方を含有していることから明らかである。また実施例1~107では、前記所定の方法で選定された油剤(b)を使用しており、これによりFd-3m液晶を含有する液晶組成物が得られる。
これに対し、比較例1~40(表3,4)で得られた組成物は、該組成物を構成する界面活性剤(a)と水(c)の配合比率が、該界面活性剤(a)と水(c)を混合した際に構造体(x)が形成される比率でない。詳細には、比較例1~40では、「成分(a)と成分(c)との混合により形成される構造体」がラメラ構造体(L)又はミセル構造体(m)のみであり、ヘキサゴナル構造体(H)及びプレヘキサゴナル構造体(preH)のいずれも含有していない。そして、この場合にはFd-3m液晶は生成せず、本発明の液晶組成物は得られていない。
【0100】
実施例46~54、及び比較例41~42(表5)は、界面活性剤(a)としていずれもオキシエチレン基の平均付加モル数nが6であるポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いているが、該ポリオキシエチレンラウリルエーテル中の、オキシアルキレン基の付加モル数がnである成分の含有量、及び、オキシアルキレン基の付加モル数がn+1~n+10である成分の含有量が異なる例を示したものである。
実施例46及び47で使用する界面活性剤(a)は、オキシアルキレン基の付加モル数が6(すなわちn)である成分の含有量が100質量%であり、単一成分から構成されている。また比較例41及び42で使用する界面活性剤(a)は、オキシアルキレン基の付加モル数が6である成分の含有量が80質量%を超えており、単一成分に近い組成である。そして、実施例46及び47、比較例41及び42において、「成分(a)と成分(c)との混合により形成される構造体」はヘキサゴナル構造体(H)のみである。
ヘキサゴナル構造体はプレヘキサゴナル構造体よりも強固な構造であり、油剤(b)と混合した場合にもFd-3m液晶に変換されにくいと推察される。そのため、比較例41及び42の組成ではFd-3m液晶が生成しなかったと考えられる。
しかしながらこの結果は、界面活性剤(a)が単一成分から構成されるか、又は単一成分に近い組成である場合にはFd-3m液晶が生成しないということを示すものではない。例えば実施例46及び47に示されるように、比較例41及び42よりも油剤(b)の配合量を多くすることにより、成分(a)と成分(c)との混合により形成された強固なヘキサゴナル構造体をFd-3m液晶に変換して、本発明の液晶組成物を得ることができる。
【0101】
実施例55~69(表6)は、成分(a)であるポリオキシエチレンラウリルエーテルのオキシエチレン基の平均付加モル数nが異なる例を示したものである。なお実施例68は成分(a-4)の配合割合が少ないため、配合の都合上、組成物の全量を増やした。
実施例70~107(表7,8)は、界面活性剤(a)及び油剤(b)の種類並びに配合量が異なる例を示したものである。
【0102】
比較例43~46(表8)は、界面活性剤(a)と水(c)とを、これらを混合した際に構造体(x)が形成される比率にて配合した組成物である。しかしながら比較例43及び44によれば、油剤(b)に替えて、構造体(x)と混合することで該構造体(x)の全てをラメラ構造体に変換する油剤(b’)を用いた場合はFd-3m液晶が生成せず、本発明の液晶組成物が得られなかったことを示している。
前述の通り、本発明の液晶組成物は油剤(b)以外の油剤(b’)を含有することを排除するものではないが、油剤(b’)の含有量は少ない方が好ましい。比較例45及び46によれば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(a-1)、トリオレイン(b-1)、及び水(c)の系において、油剤(b’)であるオレイルアルコール(b’-1)の含有量が、質量比(b’)/((b)+(b’))として0.50及び0.70であるとFd-3m液晶が生成しないことを示している。したがってこの系においては、油剤(b’)の質量比(b’)/((b)+(b’))は、少なくとも0.50未満、好ましくは0.40以下の範囲で選択される。
【0103】
SAXS分析結果の一例として、
図1に実施例95、
図2に比較例45の組成物をSAXS分析して得られた散乱パターンを示す。
図1に示すように、実施例95の組成物は散乱パターンのピークが√3:√8:√11:√12:√16の位置に現れていることから、Fd-3m構造を有する液晶を含有していると判断できる。一方で比較例45の組成物は散乱パターンのピークが1:2の位置にのみ現れているため、ラメラ構造体のみを含有すると判断できる。
【0104】
実施例108(液晶組成物の調製及びデリバリー性能の評価)
水溶性機能性成分(d)として、水溶性色素である緑色3号(癸巳化成(株)、以下「成分(d-1)」ともいう)を用い、本発明の液晶組成物のデリバリー性能を評価した。
界面活性剤(a)である成分(a-1)のポリオキシエチレンラウリルエーテル3.33gと、油剤(b)である成分(b-1)のトリオレイン3.33gとを95℃に加熱して、ボルテックスミキサーを用いて均一に混合した。ここに、成分(c)である脱イオン水3.33gと、成分(d-1)である緑色3号の1質量%水溶液0.01gとの混合物を添加して、ボルテックスミキサーを用いて均一に混合し、成分(d-1)を含む液晶組成物Aを得た。
液晶組成物Aのうち1gを、成分(b-1)10g中に添加し、ボルテックスミキサーを用いて均一となるように分散させて、液晶組成物Aの分散体を含む組成物Bを得た。なお、液晶組成物A中、及び組成物B中にFd-3m液晶が存在していることをSAXS分析により確認した。
口内径×胴径×全長:Φ14.5×Φ27×55mmのマルエムスクリュー管No.5内に、下層(水相)としてイオン交換水7g、上層(油相)として成分(b-1)であるトリオレイン4gを積層し、上層側から組成物Bを1mL添加して静置し、目視観察した。組成物Bの添加から2分30秒経過後に下層である水相に緑色の着色が認められたことから、液晶組成物Aは成分(d-1)を油相を越えて水相にデリバリーする性能を有することが確認された。
【0105】
比較例47(比較用組成物の調製及びデリバリー性能の評価)
界面活性剤(a)である成分(a-1)のポリオキシエチレンラウリルエーテル3.33gと、油剤(b)である成分(b-1)のトリオレイン2.22g、及び、油剤(b)以外の油剤である成分(b’-1)のオレイルアルコール1.11gとを95℃に加熱して、ボルテックスミキサーを用いて均一に混合した。ここに、成分(c)である脱イオン水3.33gと、成分(d-1)である緑色3号の1質量%水溶液0.01gとの混合物を添加して、ボルテックスミキサーを用いて均一に混合し、成分(d-1)を含む比較用の組成物A’を得た。なお、SAXS分析を行ったところ組成物A’中にはラメラ構造体のみが存在しており、Fd-3m液晶は存在していなかった。
比較用の組成物A’のうち1gを、成分(b-1)10g中に添加し、ボルテックスミキサーを用いて均一となるように分散させて、組成物A’の分散体を含む組成物B’を得た。
口内径×胴径×全長:Φ14.5×Φ27×55mmのマルエムスクリュー管No.5内に、下層(水相)としてイオン交換水7g、上層(油相)として成分(b-1)であるトリオレイン4gを積層し、上層側から組成物B’を1mL添加して静置し、目視観察した。組成物B’の添加から2分30秒経過後も、下層である水相に緑色の着色は認められなかった。
本発明によれば、Fd-3m構造を有する液晶を含有する液晶組成物を、特殊な化合物を使用した系に限定されず幅広い組成で且つ簡易な方法で調製することができるので、液晶組成物の調製において配合の自由度を飛躍的に高めることができる。
本発明の液晶組成物に含まれるFd-3m液晶は水の包含量が多く、且つ、微細な水分子集合体の形態で水を包含していることから、該液晶組成物には、従来知られていなかった、水溶性成分又は水分散性成分を油相を越えて水相に輸送するデリバリー性能が期待される。また当該液晶組成物は従来のラメラ液晶とは液晶構造が異なるFd-3m液晶を含有するため、固体表面に塗り広げる際に、従来とは異なる使用感が得られる。例えば本発明の液晶組成物を皮膚に塗布した場合に、皮膚になじみやすいという感触を得ることができる。