(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157036
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】導電部材、電気化学セル装置、モジュールおよびモジュール収容装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0245 20160101AFI20241029BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20241029BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241029BHJP
H01B 5/02 20060101ALI20241029BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20241029BHJP
H01M 8/0228 20160101ALI20241029BHJP
【FI】
H01M8/0245
H01M8/12 101
H01M8/04 Z
H01B5/02 Z
H01M8/0206
H01M8/0228
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024139893
(22)【出願日】2024-08-21
(62)【分割の表示】P 2024520630の分割
【原出願日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2022156869
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新地 崇大
(57)【要約】
【課題】耐久性が高い導電部材、電気化学セル装置、モジュールおよびモジュール収容装置を提供する。
【解決手段】導電部材は、クロムを含有する基材と、導電性酸化物の第1粒子を含む第1層と、導電性酸化物の第2粒子を含む第2層とを備える。第1層は、基材上に位置する。第2層は、第1層上に位置する。第1層は、第2層との界面に開口する開気孔を有する。第2粒子は、開気孔の径より小さい粒径の粒子を含む。
【選択図】
図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロムを含有する基材と、
前記基材上に位置し、導電性酸化物の第1粒子を含む第1層と、
前記第1層上に位置し、導電性酸化物の第2粒子を含む第2層と
を備え、
前記第1層は、前記第2層との界面に開口する開気孔を有し、
前記第2粒子は、前記開気孔の径より小さい粒径の粒子を含む
導電部材。
【請求項2】
前記第2粒子の平均粒径は、前記第1層に含まれる第1気孔の平均気孔径より小さい
請求項1に記載の導電部材。
【請求項3】
前記第2層に含まれる第2気孔の平均気孔径は、前記第1層に含まれる第1気孔の平均気孔径より小さい
請求項1に記載の導電部材。
【請求項4】
前記第1層は、前記基材と向かい合う第1領域と、前記第2層と向かい合い、前記第1領域よりも気孔率が大きい第2領域とを有する
請求項1に記載の導電部材。
【請求項5】
前記第2層上に位置し、前記第2粒子よりも平均粒径の大きい第3粒子を含む第3層を備える
請求項1に記載の導電部材。
【請求項6】
前記第3層に含まれる第3気孔の平均気孔径は、前記第2粒子の平均粒径より大きい
請求項5に記載の導電部材。
【請求項7】
前記第3層は、前記第2層に含まれる金属元素のうち少なくとも1種の元素を含む
請求項5に記載の導電部材。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1つに記載の導電部材と、
第1電極を有する電気化学セルと
を備え、
前記第1電極は、前記第3層と接合されている
電気化学セル装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電気化学セル装置と、
前記電気化学セル装置を収納する収納容器と
を備えるモジュール。
【請求項10】
請求項9に記載のモジュールと、
前記モジュールの運転を行うための補機と、
前記モジュールおよび前記補機を収容する外装ケースと
を備えるモジュール収容装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電部材、電気化学セル装置、モジュールおよびモジュール収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、燃料電池セルを複数有する燃料電池セルスタック装置が種々提案されている。燃料電池セルは、水素含有ガス等の燃料ガスと空気等の酸素含有ガスとを用いて電力を得ることができる電気化学セルの一種である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
実施形態の一態様に係る導電部材は、クロムを含有する基材と、導電性酸化物の第1粒子を含む第1層と、導電性酸化物の第2粒子を含む第2層とを備える。第1層は、前記基材上に位置する。第2層は、前記第1層上に位置する。前記第1層は、前記第2層との界面に開口する開気孔を有する。前記第2粒子は、前記開気孔の径より小さい粒径の粒子を含む。
【0005】
また、本開示の電気化学セル装置は、上記に記載の導電部材と、第1電極を有する電気化学セルとを備える。前記第1電極は、前記第2層上に位置する第3層と接合されている。第3層は、前記第2粒子よりも平均粒径の大きい第3粒子を含む。
【0006】
また、本開示のモジュールは、上記に記載の電気化学セル装置と、電気化学セル装置を収納する収納容器とを備える。
【0007】
また、本開示のモジュール収容装置は、上記に記載のモジュールと、モジュールの運転を行うための補機と、モジュールおよび補機を収容する外装ケースとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、第1の実施形態に係る電気化学セルの一例を示す横断面図である。
【
図1B】
図1Bは、第1の実施形態に係る電気化学セルの一例を空気極側からみた側面図である。
【
図1C】
図1Cは、第1の実施形態に係る電気化学セルの一例をインターコネクタ側からみた側面図である。
【
図2A】
図2Aは、第1の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す斜視図である。
【
図2C】
図2Cは、第1の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す上面図である。
【
図3A】
図3Aは、第1の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す横断面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係るモジュールの一例を示す外観斜視図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係るモジュール収容装置の一例を概略的に示す分解斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、第2の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す断面図である。
【
図7B】
図7Bは、第2の実施形態に係る電気化学セル装置の他の一例を示す断面図である。
【
図8C】
図8Cは、第2の実施形態に係る導電部材の他の一例を示す拡大断面図である。
【
図9】
図9は、第3の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す断面図である。
【
図11A】
図11Aは、第4の実施形態に係る電気化学セルの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述の燃料電池セルスタック装置では、燃料電池セルと接合される導電部材の耐久性に改善の余地があった。
【0010】
そこで、耐久性が高い導電部材、電気化学セル装置、モジュールおよびモジュール収容装置の提供が期待されている。
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する導電部材、電気化学セル装置、モジュールおよびモジュール収容装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの開示が限定されるものではない。
【0012】
また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係、比率などが異なる部分が含まれている場合がある。
【0013】
[第1の実施形態]
<電気化学セルの構成>
まず、
図1A~
図1Cを参照しながら、第1の実施形態に係る電気化学セルとして、固体酸化物形の燃料電池セルの例を用いて説明する。電気化学セル装置は、複数の電気化学セルを有するセルスタックを備えていてもよい。複数の電気化学セルを有する電気化学セル装置を、単にセルスタック装置と称する。
【0014】
図1Aは、第1の実施形態に係る電気化学セルの一例を示す横断面図である。
図1Bは、第1の実施形態に係る電気化学セルの一例を空気極側からみた側面図である。
図1Cは、第1の実施形態に係る電気化学セルの一例をインターコネクタ側からみた側面図である。なお、
図1A~
図1Cは、電気化学セルの各構成の一部を拡大して示している。以下、電気化学セルを単にセルという場合もある。
【0015】
図1A~
図1Cに示す例において、セル1は中空平板型で、細長い板状である。
図1Bに示すように、セル1の全体を側面から見た形状は、たとえば、長さ方向Lの辺の長さが5cm~50cmで、この長さ方向Lに直交する幅方向Wの長さが、たとえば、1cm~10cmの長方形である。このセル1の全体の厚み方向Tの厚さは、たとえば、1mm~5mmである。
【0016】
図1Aに示すように、セル1は、導電性の支持基板2と、素子部3と、インターコネクタ4とを備えている。支持基板2は、一対の対向する第1面n1、第2面n2、かかる第1面n1および第2面n2を接続する一対の円弧状の側面mを有する柱状である。
【0017】
素子部3は、支持基板2の第1面n1上に位置している。素子部3は、燃料極5と、固体電解質層6と、空気極8とを有している。また、
図1Aに示す例では、セル1の第2面n2上にインターコネクタ4が位置している。なお、セル1は、固体電解質層6と空気極8との間に中間層7を備えていてもよい。
【0018】
また、
図1Bに示すように、空気極8はセル1の下端まで延びていない。セル1の下端部では、固体電解質層6のみが第1面n1の表面に露出している。また、
図1Cに示すように、インターコネクタ4がセル1の下端まで延びていてもよい。セル1の下端部では、インターコネクタ4および固体電解質層6が表面に露出している。なお、
図1Aに示すように、セル1の一対の円弧状の側面mにおける表面では、固体電解質層6が露出している。インターコネクタ4は、セル1の下端まで延びていなくてもよい。
【0019】
以下、セル1を構成する各構成部材について説明する。
【0020】
支持基板2は、ガスが流れるガス流路2aを内部に有している。
図1Aに示す支持基板2の例は、6つのガス流路2aを有している。支持基板2は、ガス透過性を有し、ガス流路2aに流れるガスを燃料極5まで透過させる。支持基板2は導電性を有していてもよい。導電性を有する支持基板2は、素子部3で生じた電気をインターコネクタ4に集電する。
【0021】
支持基板2の材料は、たとえば、鉄族金属成分および無機酸化物を含む。鉄族金属成分は、たとえば、Ni(ニッケル)および/またはNiOであってもよい。無機酸化物は、たとえば、特定の希土類元素酸化物であってもよい。希土類元素酸化物は、たとえば、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびYbから選択される1以上の希土類元素を含んでよい。
【0022】
燃料極5の材料には、一般的に公知のものを使用することができる。燃料極5は、電子伝導性を有する材料とイオン伝導性を有する材料とを含む多孔質の導電性セラミックスであってもよい。導電性セラミックスとしては、たとえば酸化カルシウム、酸化マグネシウム、または希土類元素酸化物が固溶しているZrO2と、Niおよび/またはNiOとを含むセラミックスなどを用いてもよい。この希土類元素酸化物は、たとえば、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびYbから選択される複数の希土類元素を含んでもよい。酸化カルシウム、酸化マグネシウム、または希土類元素酸化物が固溶しているZrO2を安定化ジルコニアと称する場合もある。安定化ジルコニアは、部分安定化ジルコニアも含んでもよい。
【0023】
固体電解質層6は、電解質であり、燃料極5と空気極8との間でイオンの受け渡しをする。同時に、固体電解質層6は、ガス遮断性を有し、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを生じにくくする。
【0024】
固体電解質層6の材料は、たとえば、3モル%~15モル%の希土類元素酸化物が固溶したZrO2であってもよい。希土類元素酸化物は、たとえば、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびYbから選択される1以上の希土類元素を含んでよい。固体電解質層6は、たとえば、Yb、ScまたはGdが固溶したZrO2を含んでもよく、La、NdまたはYbが固溶したCeO2を含んでもよく、ScまたはYbが固溶したBaZrO3を含んでもよく、ScまたはYbが固溶したBaCeO3を含んでもよい。
【0025】
空気極8は、ガス透過性を有している。空気極8の開気孔率は、たとえば20%~50%、特に30%~50%の範囲であってもよい。空気極8の開気孔率を空気極8の空隙率と称する場合もある。
【0026】
空気極8の材料は、一般的に空気極に用いられるものであれば特に制限はない。空気極8の材料は、たとえば、いわゆるABO3型のペロブスカイト型酸化物など導電性セラミックスでもよい。
【0027】
空気極8の材料は、たとえば、AサイトにSr(ストロンチウム)とLa(ランタン)が共存する複合酸化物であってもよい。このような複合酸化物の例としては、LaxSr1-xCoyFe1-yO3、LaxSr1-xMnO3、LaxSr1-xFeO3、LaxSr1-xCoO3などが挙げられる。なお、xは0<x<1、yは0<y<1である。
【0028】
また、素子部3が中間層7を有する場合、中間層7は、拡散抑制層としての機能を有する。空気極8に含まれるSr(ストロンチウム)が固体電解質層6に拡散すると、かかる固体電解質層6にSrZrO3の抵抗層が形成される。中間層7は、Srを拡散させにくくすることで、SrZrO3が形成されにくくする。
【0029】
中間層7の材料は、一般的に空気極8と固体電解質層6との間の元素の拡散を生じにくくするものであれば特に制限はない。中間層7の材料は、たとえば、Ce(セリウム)を除く希土類元素が固溶した酸化セリウム(CeO2)を含んでもよい。かかる希土類元素としては、たとえば、Gd(ガドリニウム)、Sm(サマリウム)などを用いてもよい。
【0030】
また、インターコネクタ4は、緻密質であり、支持基板2の内部に位置するガス流路2aを流通する燃料ガス、および支持基板2の外側を流通する酸素含有ガスのリークを生じにくくする。インターコネクタ4は、93%以上、特に95%以上の相対密度を有していてもよい。
【0031】
インターコネクタ4の材料には、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO3系酸化物)、ランタンストロンチウムチタン系のペロブスカイト型酸化物(LaSrTiO3系酸化物)などを用いてもよい。これらの材料は、導電性を有し、かつ水素含有ガスなどの燃料ガスおよび空気などの酸素含有ガスと接触しても還元も酸化もされにくい。
【0032】
<電気化学セル装置の構成>
次に、上述したセル1を用いた本実施形態に係る電気化学セル装置について、
図2A~
図2Cを参照しながら説明する。
図2Aは、第1の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す斜視図である。
図2Bは、
図2Aに示すX-X線の断面図である。
図2Cは、第1の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す上面図である。
【0033】
図2Aに示すように、セルスタック装置10は、セル1の厚み方向T(
図1A参照)に配列(積層)された複数のセル1を有するセルスタック11と、固定部材12とを備える。
【0034】
固定部材12は、固定材13と、支持部材14とを有する。支持部材14は、セル1を支持する。固定材13は、セル1を支持部材14に固定する。また、支持部材14は、支持体15と、ガスタンク16とを有する。支持部材14である支持体15およびガスタンク16は、金属製であり導電性を有している。
【0035】
図2Bに示すように、支持体15は、複数のセル1の下端部が挿入される挿入孔15aを有している。複数のセル1の下端部と挿入孔15aの内壁とは、固定材13で接合されている。
【0036】
ガスタンク16は、挿入孔15aを通じて複数のセル1に反応ガスを供給する開口部と、かかる開口部の周囲に位置する凹溝16aとを有する。支持体15の外周の端部は、ガスタンク16の凹溝16aに充填された接合材21によって、ガスタンク16と接合されている。
【0037】
図2Aに示す例では、支持部材14である支持体15とガスタンク16とで形成される内部空間22に燃料ガスが貯留される。ガスタンク16にはガス流通管20が接続されている。燃料ガスは、このガス流通管20を通してガスタンク16に供給され、ガスタンク16からセル1の内部のガス流路2a(
図1A参照)に供給される。ガスタンク16に供給される燃料ガスは、後述する改質器102(
図5参照)で生成される。
【0038】
水素リッチな燃料ガスは、原燃料を水蒸気改質などすることによって生成することができる。水蒸気改質により燃料ガスを生成する場合には、燃料ガスは水蒸気を含む。
【0039】
図2Aに示す例は、2列のセルスタック11、2つの支持体15、およびガスタンク16を備えている。2列のセルスタック11は、複数のセル1をそれぞれ有する。各セルスタック11は、各支持体15に固定されている。ガスタンク16は上面に2つの貫通孔を有している。各貫通孔には、各支持体15が配置されている。内部空間22は、1つのガスタンク16と、2つの支持体15とで形成される。
【0040】
挿入孔15aの形状は、たとえば、上面視で長円形状である。挿入孔15aは、たとえば、セル1の配列方向すなわち厚み方向Tの長さが、セルスタック11の両端に位置する2つの端部集電部材17の間の距離よりも大きい。挿入孔15aの幅は、たとえば、セル1の幅方向W(
図1A参照)の長さよりも大きい。
【0041】
図2Bに示すように、挿入孔15aの内壁とセル1の下端部との接合部には、固定材13が充填され、固化されている。これにより、挿入孔15aの内壁と複数個のセル1の下端部とがそれぞれ接合・固定され、また、セル1の下端部同士が接合・固定されている。各セル1のガス流路2aは、下端部で支持部材14の内部空間22と連通している。
【0042】
固定材13および接合材21は、ガラスなどの導電性が低いものを用いることができる。固定材13および接合材21の具体的な材料としては、非晶質ガラスなどを用いてもよく、特に結晶化ガラスなどを用いてもよい。
【0043】
結晶化ガラスとしては、たとえば、SiO2-CaO系、MgO-B2O3系、La2O3-B2O3-MgO系、La2O3-B2O3-ZnO系、SiO2-CaO-ZnO系などの材料のいずれかを用いてもよく、特にSiO2-MgO系の材料を用いてもよい。
【0044】
また、
図2Bに示すように、複数のセル1のうち隣接するセル1の間には、導電部材18が介在している。導電部材18は、隣接する一方のセル1の燃料極5と他方のセル1の空気極8とを電気的に直列に接続する。より具体的には、隣接する一方のセル1の燃料極5と電気的に接続されたインターコネクタ4と、他方のセル1の空気極8とを接続している。なお、隣接するセル1と導電部材18との接続の詳細については、後述する。
【0045】
また、
図2Bに示すように、複数のセル1の配列方向における最も外側に位置するセル1に、端部集電部材17が電気的に接続されている。端部集電部材17は、セルスタック11の外側に突出する導電部19に接続されている。導電部19は、セル1の発電により生じた電気を集電して外部に引き出す。なお、
図2Aでは、端部集電部材17の図示を省略している。
【0046】
また、
図2Cに示すように、セルスタック装置10は、2つのセルスタック11A、11Bが直列に接続され、一つの電池として機能する。そのため、セルスタック装置10の導電部19は、正極端子19Aと、負極端子19Bと、接続端子19Cとに区別される。
【0047】
正極端子19Aは、セルスタック11が発電した電力を外部に出力する場合の正極であり、セルスタック11Aにおける正極側の端部集電部材17に電気的に接続される。負極端子19Bは、セルスタック11が発電した電力を外部に出力する場合の負極であり、セルスタック11Bにおける負極側の端部集電部材17に電気的に接続される。
【0048】
接続端子19Cは、セルスタック11Aにおける負極側の端部集電部材17と、セルスタック11Bにおける正極側の端部集電部材17とを電気的に接続する。
【0049】
<電気化学セル装置の詳細>
つづいて、第1の実施形態に係る電気化学セル装置の詳細について、
図3A~
図4Bを参照しながら説明する。
図3Aは、第1の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す横断面図である。
【0050】
図3Aに示すように、セルスタック装置10は、厚み方向Tに隣り合うセル1a、1bと、セル1aとセル1bとの間に位置する導電部材18とを有する。
【0051】
導電部材18は、隣接する一方のセル1であるセル1aに接続される接続部18aと、他方のセル1であるセル1bに接続される接続部18bとを有する。また、導電部材18は、幅方向Wの両端に連結部18cを有しており、接続部18a,18bを接続する。これにより、導電部材18は、厚み方向Tに隣り合うセル1同士を電気的に接続することができる。なお、
図3Aでは、セル1の形状を単純化して図示している。
【0052】
図3Bは、
図3Aに示すA-A線に沿った断面図である。導電部材18は、セル1の長さ方向Lに延在している。
図3Bに示すように、導電部材18の接続部18a,18bは、セル1の長さ方向Lに沿って互い違いに複数位置している。導電部材18は、接続部18a,18bでセル1a,1bのそれぞれと接触している。
【0053】
図4Aは、
図3Bに示す領域Bの拡大図である。
図4Aに示すように、導電部材18は、基材40と、第1層41と、第2層42とを有している。
【0054】
基材40は、導電性および耐熱性を有する。基材40は、クロムを含有する。基材40は、たとえば、ステンレス鋼である。基材40は、たとえば、金属酸化物を含有してもよい。
【0055】
また、基材40は、積層構造を有してもよい。
図4Aに示す例では、基材40は、第1基材部40aと、第2基材部40bとを有する。第2基材部40bは、たとえば、クロムの含有率が第1基材部40aより大きくてもよい。第2基材部40bは、たとえば、酸化クロム(Cr
2O
3)を含有する。このように基材40が第2基材部40bを有することにより、導電部材18の耐久性が高まる。なお、基材40は、第1基材部40aの全体を覆うように第2基材部40bを有してもよく、部分的に第2基材部40bを有してもよい。また、基材40は、第2基材部40bを有さなくてもよい。基材40は、さらなる積層構造を有してもよい。
【0056】
第1層41は、基材40上に位置する。第1層41は、基材40と第2層42との間に位置している。第1層41は、導電性の酸化物を有する。かかる酸化物は、たとえば、Mn(マンガン)およびCo(コバルト)を含んでもよい。また、酸化物はMnおよびCo以外の元素、たとえばZn(亜鉛)、Al(アルミニウム)を含有してもよい。かかる酸化物は、スピネル構造を有する複合酸化物であってもよい。かかる構造を有する複合酸化物としては、たとえば、ZnMnCoO4などのZn(CoxMn1-x)2O4(0<x<1)、Mn1.5Co1.5O4、MnCo2O4、CoMn2O4、などを用いてもよい。第1層41は、たとえば、CeO2を含有してもよい。
【0057】
第1層41は、導電性酸化物を含有する複数の第1粒子を有してもよい。また、第1層41は、基材40を被覆する被膜であってもよい。第1層41は、基材40全体を覆う1つの被膜であってもよい。また、第1層41は、導電性酸化物以外の成分を含んでいてもよい。
【0058】
第1層41は、焼結体であってもよいし、圧粉体であってもよい。また、第1層41は、結晶質でもよいし、非晶質でもよい。また、第1層41中に、結晶質相と非晶質相とが混在してもよい。
【0059】
第2層42は、第1層41上に位置する。第2層42は、基材40を挟んで向かい合う第1面181および第2面182を有する。また、導電部材18は、第1面181および第2面182をつなぐ第3面183,184を有する。
【0060】
第2層42は、導電性酸化物を含有する複数の第2粒子を含んでいる。第2層42の材料は、たとえば、いわゆるABO3型のペロブスカイト型酸化物など導電性セラミックスでもよい。
【0061】
第2層42の材料は、たとえば、AサイトにSr(ストロンチウム)とLa(ランタン)が共存する複合酸化物であってもよい。このような複合酸化物の例としては、LaxSr1-xCoyFe1-yO3、LaxSr1-xMnO3、LaxSr1-xFeO3、LaxSr1-xCoO3などが挙げられる。なお、xは0<x<1、yは0<y<1である。
【0062】
第2層42は、たとえばDIP法等の成膜法により、第1層41の表面に位置させることができる。
【0063】
導電部材18(接続部18a)は、第3層43をさらに有してもよい。第3層43は、第2層42上に位置する。
図4Aに示す例では、第3層43は、第2層42の第1面181の上にのみ位置しているが、たとえば、第3面183,184の上に第3層43が位置してもよい。第3層43は、セル1aの空気極8と第2層42との間に位置し、セル1aの空気極8と導電部材18とを接合する。空気極8は、導電部材18と接合される第1電極である。
【0064】
第3層43の材料は、たとえば、いわゆるABO3型のペロブスカイト型酸化物など導電性セラミックスでもよい。
【0065】
第3層43の材料は、たとえば、AサイトにSr(ストロンチウム)とLa(ランタン)が共存する複合酸化物であってもよい。このような複合酸化物の例としては、LaxSr1-xCoyFe1-yO3、LaxSr1-xMnO3、LaxSr1-xFeO3、LaxSr1-xCoO3などが挙げられる。なお、xは0<x<1、yは0<y<1である。
【0066】
第3層43は、ガス透過性を有していてもよい。第3層43の気孔率は、たとえば50%以下とすることができる。第3層43の気孔率は、たとえば、第2層42の気孔率より大きくてもよい。
【0067】
図4Bは、
図4Aに示す領域Cの拡大図である。
図4Bに示すように、導電部材18の第1層41は、複数の第1粒子411と、複数の第1粒子411の間に位置する第1気孔412とを有してもよい。第1気孔412は、第2層42との界面410に開口する開気孔を含む。第1層41は、複数の第1粒子411の内部、または複数の第1粒子411の間に位置する閉気孔を含んでもよい。
【0068】
複数の第1粒子411は、たとえば、平均粒径が0.3μm以上0.6μm以下であってもよい。また、第1気孔412の平均気孔径は、たとえば、0.3μm以上1.0μm以下であってもよい。
【0069】
また、第2層42は、複数の第2粒子421を有してもよい。第2粒子421は、界面410に開口する第1気孔412の径より小さい粒径の第2粒子421を含んでもよい。これにより、第2粒子421の一部が界面410に開口する第1気孔412内に入り込みやすくなり、第1層41と第2層42との接合強度が大きくなる。このため、第1層41と第2層42とが剥離しにくくなることから、導電部材18およびセルスタック装置10の耐久性が向上する。
【0070】
また、第2粒子421の平均粒径は、第1層41に含まれる第1気孔412の平均気孔径より小さくてもよい。これにより、第2粒子421の一部が界面410に開口する第1気孔412内に入り込みやすくなり、第1層41と第2層42との接合強度が大きくなる。このため、第1層41と第2層42とが剥離しにくくなることから、導電部材18およびセルスタック装置10の耐久性が向上する。
【0071】
また、第2層42に含まれる第2気孔の平均気孔径は、第1層41に含まれる第1気孔412の平均気孔径より小さくてもよい。これにより、第2層42の強度が大きくなり、第2層42の内部にクラックが発生しにくくなることから、導電部材18およびセルスタック装置10の耐久性が向上する。
【0072】
第2粒子421の平均粒径は、たとえば、0.2μm以上0.6μm以下であってもよい。また、第2層42に含まれる第2気孔の平均気孔径は、たとえば、0.06μm以上0.3μm以下であってもよい。第2層42は、たとえば、10%以上16%以下の気孔率を有していてもよい。
【0073】
また、第1層41は、基材40と向かい合う第1領域41aと、第2層42と向かい合い、第1領域41aよりも気孔率が大きい第2領域41bとを有してもよい。これにより、第1領域41aは基材40との密着性が高まることで接合強度が大きくなり、第2領域41bは第2層42との接合強度が大きくなる。したがって、第1領域41aと基材40、第2領域41bと第2層42とがそれぞれ剥離しにくくなることから、導電部材18およびセルスタック装置10の耐久性が向上する。
【0074】
第1領域41aの気孔率は、たとえば、5%以下であってもよい。また、第2領域41bの気孔率は、たとえば、10%以上30%以下であってもよい。かかる第1層41は、たとえば、平均粒径が互いに異なる複数の第1粒子411を順次積層させることにより形成してもよく、熱処理に要する時間を異ならせること等により形成してもよい。ただし、第1領域41aおよび第2領域41bの作製方法に制限はなく、いかなる方法で作製されたものであってもよい。
【0075】
また、第3層43は、第2粒子421よりも平均粒径の大きい第3粒子431を含んでもよい。これにより、第2粒子421の一部が第3粒子431の隙間に入り込み、第2層42と第3層43との接合強度が大きくなる。このため、第2層42と第3層43とが剥離しにくくなることから、耐久性が向上する。第3粒子431は、さらに第2粒子421の平均粒径と同程度の粒径を有する粒子を含んでいてもよいし、第2粒子421の平均粒径より小さい粒径を有する粒子を含んでいてもよい。
【0076】
また、第3層43に含まれる第3気孔の平均気孔径は、第2粒子421の平均粒径より大きくてもよい。これにより、第2粒子421が第3粒子431の隙間に入り込みやすくなり、第2層42と第3層43との接合強度が大きくなる。このため、第2層42と第3層43とが剥離しにくくなることから、導電部材18およびセルスタック装置10の耐久性が向上する。
【0077】
また、第3層43は、第2層42に含まれる金属元素のうち少なくとも1種の元素を含んでもよい。これにより、第2層42と第3層43との親和性が高くなり、第2層42と第3層43との接合強度が大きくなる。このため、第2層42と第3層43とが剥離しにくくなることから、耐久性が向上する。第3層43および第2層42に含まれる金属元素の特定は、たとえば導電部材18の断面において、HAADF-STEM(高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡)、FIB-SEM(収束イオンビーム走査電子顕微鏡)またはEPMA(電子プローブマイクロアナライザ)を用いて各元素の点分析、線分析、マッピングなどを行うことで確認できる。
【0078】
第3層43の材料は、第2層42の材料と同じ結晶構造を有していてもよい。第3層43の材料は、第2層42の材料と同じ組成を有していてもよい。第3層43の材料が第2層42の材料と同じ結晶構造または同じ組成を有していると、第2層42と第3層43との親和性がさらに高くなり、第2層42と第3層43との接合強度がさらに大きくなる。
【0079】
第3層43に含まれる第3粒子431の平均粒径は、たとえば、0.25μm以上6.5μm以下であってもよい。また、第3気孔の平均気孔径は、たとえば、0.1μm以上0.9μm以下であってもよい。なお、第3層43は、第2粒子421の平均粒径より粒径の小さい第3粒子431を有してもよい。
【0080】
このように、導電部材18が第1層41、第2層42および第3層43を有することにより、導電部材18内での接合強度が大きくなり、耐久性が向上する。また、かかる導電部材18と空気極8とを、導電部材18の第3層43を用いて接合することにより、導電部材18と空気極8との接合強度が向上する。これにより、セルスタック装置10の耐久性を向上することができる。
【0081】
なお、第1層41、第2層42および第3層43が有する各粒子の平均粒径、第1層41、第2層42および第3層43の気孔率、ならびに第1層41、第2層42および第3層43が有する各気孔の平均気孔径は、導電部材18の断面をSEM(Scanning Electron Microscope)で観察した結果に基づいて測定することができる。
【0082】
<モジュール>
次に、上述したセルスタック装置10を用いた本開示の実施形態に係るモジュールについて、
図5を用いて説明する。
図5は、第1の実施形態に係るモジュールを示す外観斜視図である。
図5では、収納容器101の一部である前面および後面を取り外し、内部に収納される燃料電池のセルスタック装置10を後方に取り出した状態を示している。
【0083】
図5に示すように、モジュール100は、収納容器101、および収納容器101内に収納されたセルスタック装置10を備えている。また、セルスタック装置10の上方には、改質器102が配置されている。
【0084】
かかる改質器102は、天然ガス、灯油などの原燃料を改質して燃料ガスを生成し、セル1に供給する。原燃料は、原燃料供給管103を通じて改質器102に供給される。なお、改質器102は、水を気化させる気化部102aと、改質部102bとを備えていてもよい。改質部102bは、図示しない改質触媒を備えており、原燃料を燃料ガスに改質する。このような改質器102は、効率の高い改質反応である水蒸気改質を行うことができる。
【0085】
そして、改質器102で生成された燃料ガスは、ガス流通管20、ガスタンク16、および支持部材14を通じて、セル1のガス流路2a(
図1A参照)に供給される。
【0086】
また、上述の構成のモジュール100では、ガスの燃焼およびセル1の発電に伴い、通常発電時におけるモジュール100内の温度が500℃~1000℃程度となる。
【0087】
このようなモジュール100においては、上述したように、耐久性を向上することができるセルスタック装置10を収納して構成されることにより、耐久性を向上することができるモジュール100とすることができる。
【0088】
<モジュール収容装置>
図6は、第1の実施形態に係るモジュール収容装置の一例を示す分解斜視図である。本実施形態に係るモジュール収容装置110は、外装ケース111と、
図5で示したモジュール100と、図示しない補機と、を備えている。補機は、モジュール100の運転を行う。モジュール100および補機は、外装ケース111内に収容されている。なお、
図6においては一部構成を省略して示している。
【0089】
図6に示すモジュール収容装置110の外装ケース111は、支柱112と外装板113とを有する。仕切板114は、外装ケース111内を上下に区画している。外装ケース111内の仕切板114より上側の空間は、モジュール100を収容するモジュール収容室115であり、外装ケース111内の仕切板114より下側の空間は、モジュール100を運転する補機を収容する補機収容室116である。なお、
図6では、補機収容室116に収容する補機を省略して示している。
【0090】
また、仕切板114は、補機収容室116の空気をモジュール収容室115側に流すための空気流通口117を有している。モジュール収容室115を構成する外装板113は、モジュール収容室115内の空気を排気するための排気口118を有している。
【0091】
このようなモジュール収容装置110においては、上述したように、耐久性を向上することができるモジュール100をモジュール収容室115に備えていることにより、耐久性を向上することができるモジュール収容装置110とすることができる。
【0092】
なお、上述の実施形態では、中空平板型の支持基板を用いた場合を例示したが、円筒型の支持基板を用いたセルスタック装置に適用することもできる。
【0093】
[第2の実施形態]
図7Aは、第2の実施形態に係る電気化学セルの一例を示す横断面図である。
図7Bは、第2の実施形態に係る電気化学セルの他の一例を示す横断面図である。
【0094】
図7A、
図7Bに示すように、セル1Aは、燃料極5、固体電解質層6、および空気極8が積層された素子部3Aと、支持基板2とを有している。支持基板2は、素子部3Aの燃料極5と接する部位に貫通孔または細孔を有するとともに、ガス流路2aの外側に位置する部材120を有する。支持基板2は、ガス流路2aと素子部3Aとの間でガスを流通させることができる。支持基板2は、たとえば、1または複数の金属板で構成されてもよい。金属板の材料は、クロムを含有していてもよい。金属板は、導電性の被覆層を有していてもよい。
【0095】
導電部材18は、隣接するセル1A同士を電気的に接続する。導電部材18は、隣接する一方のセル1であるセル1aに接続される接続部18aと、他方のセル1であるセル1bに接続される接続部18bとを有する。
【0096】
【0097】
図8Aに示すように、導電部材18の接続部18aは、クロムを含有する基材40と、基材40上に位置する導電性酸化物の第1粒子を含む第1層41と、第1層41上に位置する導電性酸化物の第2粒子を含む第2層42とを備える。第1層41は、第2層42との界面に開口する開気孔を有している。第2粒子は、第1層41が有する開気孔の径より小さい粒径の粒子を含む。これにより、第2粒子の一部が第1層41と第2層42との界面に開口する開気孔内に入り込みやすくなり、第1層41と第2層42との接合強度が大きくなる。このため、第1層41と第2層42とが剥離しにくくなることから、導電部材18およびセルスタック装置10Aの耐久性が向上する。
【0098】
また、導電部材18は、第2層42上に位置する第3層43を備えてもよい。かかる第3層43は、たとえば、第2粒子よりも平均粒径の大きい第3粒子を含む。セル1aの空気極8は、第3層43と接合されている。これにより、導電部材18とセル1aとが剥離しにくくなることから、セルスタック装置10Aの耐久性が向上する。
【0099】
図8Bに示すように、導電部材18の接続部18bは、クロムを含有する基材40と、基材40上に位置する導電性酸化物の第1粒子を含む第1層41と、第1層41上に位置する導電性酸化物の第2粒子を含む第2層42とを備える。第1層41は、第2層42との界面に開口する開気孔を有している。第2粒子は、第1層41が有する開気孔の径より小さい粒径の粒子を含む。これにより、第2粒子の一部が第1層41と第2層42との界面に開口する開気孔内に入り込みやすくなり、第1層41と第2層42との接合強度が大きくなる。このため、第1層41と第2層42とが剥離しにくくなることから、導電部材18およびセルスタック装置10Aの耐久性が向上する。
【0100】
また、導電部材18は、第2層42上に位置する第3層43aを備えてもよい。かかる第3層43aは、たとえば、第2粒子よりも平均粒径の大きい第3粒子を含む。セル1bの部材120は、第3層43aと接合されている。これにより、導電部材18とセル1aとが剥離しにくくなることから、セルスタック装置10Aの耐久性が向上する。なお、第3層43aの材料は、第3層43の材料と同じであってもよく、異なってもよい。
【0101】
図7Aに示す例では、燃料極5の側面は固体電解質層6により被覆され、燃料ガスが流れるガス流路2aを気密に封止している。
図7Bに示すように、燃料極5の側面は緻密な封止材9で被覆され、封止されていてもよい。燃料極5の側面を被覆する封止材9は、電気絶縁性を有していてもよい。封止材9の材料は、例えばガラスまたはセラミックスであってもよい。
【0102】
図8Cは、第2の実施形態に係る導電部材の他の一例を示す拡大断面図である。
図8Cに示すように、支持基板2の部材120は、クロムを含有する基材50と、基材50上に位置する導電性酸化物の第1粒子を含む第1層51と、第1層51上に位置する導電性酸化物の第2粒子を含む第2層52とを備えてもよい。基材50は、第1基材部50aと、クロムの含有率が第1基材部50aより大きい第2基材部50bとを有してもよい。第1層51は、第2層52との界面に開口する開気孔を有してもよい。第2粒子は、第1層51が有する開気孔の径より小さい粒径の粒子を含んでもよい。これにより、第2粒子の一部が第1層51と第2層52との界面に開口する開気孔内に入り込みやすくなり、第1層51と第2層52との接合強度が大きくなる。このため、第1層51と第2層52とが剥離しにくくなることから、部材120およびセルスタック装置10Aの耐久性が向上する。なお、基材50、第1層51、第2層52の材料は、基材40、第1層41、第2層42の材料と同じであってもよく、異なってもよい。
【0103】
[第3の実施形態]
図9は、第3の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す横断面図である。
図9に示すように、支持基板2のガス流路2aは、
図7Aに示す導電部材18に代えて、凹凸を有する部材120により形成されていてもよい。部材120は、隣接するセル1B同士を電気的に接続する導電部材18の一例である。
【0104】
図10は、
図9に示す領域Eの拡大図である。
図10に示すように、導電部材18としての部材120は、クロムを含有する基材40と、基材40上に位置する導電性酸化物の第1粒子を含む第1層41と、第1層41上に位置する導電性酸化物の第2粒子を含む第2層42とを備える。第1層41は、第2層42との界面に開口する開気孔を有している。第2粒子は、第1層41が有する開気孔の径より小さい粒径の粒子を含む。これにより、第2粒子の一部が第1層41と第2層42との界面に開口する開気孔内に入り込みやすくなり、第1層41と第2層42との接合強度が大きくなる。このため、第1層41と第2層42とが剥離しにくくなることから、部材120およびセルスタック装置10Bの耐久性が向上する。
【0105】
また、部材120は、第2層42上に位置する第3層43を備えてもよい。かかる第3層43は、たとえば、第2粒子よりも平均粒径の大きい第3粒子を含む。セル1aの空気極8は、第3層43と接合されている。これにより、導電部材18とセル1aとが剥離しにくくなることから、セルスタック装置10Bの耐久性が向上する。
【0106】
なお、第3層43は、セル1aと向かい合う面121の全体に位置してもよく、空気極8との接合部分にのみ位置してもよい。
【0107】
[第4の実施形態]
図11Aは、第4の実施形態に係る電気化学セルを示す斜視図である。
図11Bは、
図11Aに示す電気化学セルの部分断面図である。
【0108】
図11Aに示すように、平板型の電気化学セルであるセル1Cは、燃料極5、固体電解質層6および空気極8が積層された素子部3Cを有している。複数の平板型セルを積層させたセルスタック装置は、たとえば複数のセル1Cが、互いに隣り合う金属層である導電部材91,92により電気的に接続されている。導電部材91,92は、隣接するセル1C同士を電気的に接続するとともに、燃料極5または空気極8にガスを供給するガス流路を有している。
【0109】
図11Bに示すように、本実施形態では、導電部材18としての導電部材92は、空気極8にガスを供給するガス流路93を有している。導電部材92は、クロムを含有する基材40と、基材40上に位置する導電性酸化物の第1粒子を含む第1層41と、第1層41上に位置する導電性酸化物の第2粒子を含む第2層42とを備える。第1層41は、第2層42との界面に開口する開気孔を有している。第2粒子は、第1層41が有する開気孔の径より小さい粒径の粒子を含む。これにより、第2粒子の一部が第1層41と第2層42との界面に開口する開気孔内に入り込みやすくなり、第1層41と第2層42との接合強度が大きくなる。このため、第1層41と第2層42とが剥離しにくくなることから、導電部材92およびセル1Cの耐久性が向上する。
【0110】
また、導電部材92は、第2層42上に位置する第3層43を備えてもよい。かかる第3層43は、たとえば、第2粒子よりも平均粒径の大きい第3粒子を含む。セル1Cの空気極8は、第3層43と接合されている。これにより、導電部材92と素子部3Cとが剥離しにくくなることから、セルスタック装置の耐久性が向上する。
【0111】
なお、導電部材92は、第3層43を介さず素子部3Cと接触していてもよい。換言すれば、本実施形態では、第3層43を用いずに、第2層42が素子部3Cに直接接続されていてもよい。
【0112】
[その他の実施形態]
つづいて、その他の実施形態に係る電気化学セル装置について説明する。
【0113】
上記した各実施形態では、「電気化学セル」、「電気化学セル装置」、「モジュール」および「モジュール収容装置」の一例として燃料電池セル、燃料電池セルスタック装置、燃料電池モジュールおよび燃料電池装置を示したが、他の例としてはそれぞれ、電解セル、電解セルスタック装置、電解モジュールおよび電解装置であってもよい。電解セルは、第1電極であるアノード(酸素極)、および第2電極であるカソードを有し、電力の供給により水蒸気を水素と酸素に分解する、または二酸化炭素を一酸化炭素と酸素に分解する。また、上記した各実施形態では電気化学セルの電解質材料の一例として酸化物イオン伝導体または水素イオン伝導体を示したが、水酸化物イオン伝導体であってもよい。
【0114】
以上、本開示について詳細に説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0115】
一実施形態において、(1)導電部材は、クロムを含有する基材と、
前記基材上に位置し、導電性酸化物の第1粒子を含む第1層と、
前記第1層上に位置する導電性酸化物の第2粒子を含む第2層と
を備え、
前記第1層は、前記第2層との界面に開口する開気孔を有し、
前記第2粒子は、前記開気孔の径より小さい粒径の粒子を含む。
【0116】
(2)上記(1)の導電部材において、前記第2粒子の平均粒径は、前記第1層に含まれる第1気孔の平均気孔径より小さくてもよい。
【0117】
(3)上記(1)または(2)の導電部材において、前記第2層に含まれる第2気孔の平均気孔径は、前記第1層に含まれる第1気孔の平均気孔径より小さくてもよい。
【0118】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つの導電部材において、前記第1層は、前記基材と向かい合う第1領域と、前記第2層と向かい合い、前記第1領域よりも気孔率が大きい第2領域とを有してもよい。
【0119】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つの導電部材において、前記第2層上に位置し、前記第2粒子よりも平均粒径の大きい第3粒子を含む第3層を備えてもよい。
【0120】
(6)上記(5)の導電部材において、前記第3層に含まれる第3気孔の平均気孔径は、前記第2粒子の平均粒径より大きくてもよい。
【0121】
(7)上記(5)または(6)の導電部材において、前記第3層は、前記第2層に含まれる金属元素のうち少なくとも1種の元素を含んでもよい。
【0122】
一実施形態において、(8)電気化学セル装置は、上記(5)~(7)のいずれか1つの導電部材と、
第1電極を有する電気化学セルと
を備え、
前記第1電極は、前記第3層と接合されている。
【0123】
(9)モジュールは、上記(8)の電気化学セル装置と、
前記電気化学セル装置を収納する収納容器とを備える。
【0124】
(10)モジュール収容装置は、上記(9)のモジュールと、
前記モジュールの運転を行うための補機と、
前記モジュールおよび前記補機を収容する外装ケースとを備える。
【0125】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0126】
1,1A,1B,1C セル
2 支持基板
3,3A,3B,3C 素子部
4 インターコネクタ
5 燃料極
6 固体電解質層
7 中間層
8 空気極
10,10A,10B セルスタック装置
11 セルスタック
12 固定部材
13 固定材
14 支持部材
15 支持体
16 ガスタンク
17 端部集電部材
18 導電部材
40 基材
41 第1層
42 第2層
43 第3層
100 モジュール
110 モジュール収容装置