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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157048
(43)【公開日】2024-11-06
(54)【発明の名称】容器とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/30 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
B65D1/30
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024141084
(22)【出願日】2024-08-22
(62)【分割の表示】P 2020080491の分割
【原出願日】2020-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】396014050
【氏名又は名称】株式会社イケックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 章裕
(72)【発明者】
【氏名】池口 正記
(57)【要約】
【課題】複数の収容凹部がフランジ部で連結された容器において、隣り合う収容凹部の開口部間の上方に、フランジ部の屈曲により立ち壁を形成できるようにして収容凹部の深さ不足を補う。
【解決手段】複数の収容凹部11が、該収容凹部11の開口部13外周のフランジ部15で連結された容器10において、フランジ部15には、収容凹部11との境界位置及び収容凹部11、11間の中央位置に屈曲用溝17a、17bを有し、フランジ部15が、収容凹部11との境界位置の屈曲用溝17a、17a間で上方へ屈曲され、中央位置の屈曲用溝17bの両側で下方へ屈曲されることにより、隣り合う開口部13、13間の上方にフランジ部15の屈曲による立ち壁を形成することができるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の収容凹部が、該収容凹部の開口部外周のフランジ部で連結された容器において、
前記フランジ部に、前記フランジ部を上方へ屈曲させる3本の屈曲用溝を有することを
特徴とする容器。
【請求項2】
前記屈曲用溝が、ミシン目を有することを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記複数の収容凹部が、容器の長さ方向の両端に1本の屈曲用溝を有するフランジを有する、または、
前記複数の収容凹部が、容器の幅方向の両側に1本の屈曲用溝を有するフランジを有す
る、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の収容凹部がフランジで連結された容器とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の収容凹部が、その開口部外周のフランジ部で連結された容器は、収容凹部にプリンやゼリーなどの食品を収容して販売される食品容器や、物品を収容して搬送する搬送容器などに使用されている。
【0003】
複数の収容凹部がフランジ部で連結された容器は、樹脂シートまたは樹脂発泡シートを、加熱軟化させて金型の型面に密着させる熱成形によって製造されている。熱成形には、真空成形、圧空成形、真空圧空成形などがある(特許文献1、2)。
【0004】
複数の収容凹部がフランジ部で連結された容器の真空成形では、複数の賦形用凹部が形成された型面に、加熱軟化させた樹脂シートまたは樹脂発泡シートを真空吸引して複数の凹部を賦形し、賦形後の冷却により形状固定する。
圧空成形では、加熱軟化させた樹脂シートまたは樹脂発泡シートを、圧縮空気で金型の型面に押し付けて型面形状に賦形し、賦形後の冷却により形状固定する。
真空圧空成形では、加熱軟化させた樹脂シートまたは樹脂発泡シートを、金型の型面に真空吸引すると共に、圧縮空気で金型の型面に押し付けて型面形状に賦形し、賦形後の冷却により形状固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2928437号公報
【特許文献2】特開2018-12239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、複数の収容凹部がフランジ部で連結された容器の熱成形では、型面の賦形用凹部の深さを大にすると、加熱軟化させた樹脂シートまたは樹脂発泡シートを型面の賦形用凹部の底面に正しく密着させて賦形することができなかったり、樹脂シートや樹脂発泡シートが部分的に薄くなりすぎたりする不具合が発生する。
そのため、熱成形される従来の容器は、収容凹部の深さに限度があり、収容する物品によっては、収容凹部の深さ(高さ)不足による問題があった。
【0007】
例えば、図6に示す従来の容器70は、複数の収容凹部71がフランジ部73で連結されて熱成形されたものであり、物品の搬送に使用される。
容器70は、物品の搬送時、図7に示すように、搬送コンテナ(プラスチックコンテナ、プラスチック箱)80内に配置されて、各収容凹部71に物品81が収容される。物品81の高さ(長さ)が大の場合、物品81の一部が収容凹部71から突出し、隣の収容凹部71に収容されている物品81と接触して物品81が傷付いたり、物品81に不具合を生じたりする恐れがあった。
【0008】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、収容凹部の開口部外周のフランジ部を折り曲げて立てることにより、収容凹部の開口部間上方に隔壁を形成することができる容器とその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、複数の収容凹部が、該収容凹部の開口部外周のフランジ部で連結された容器において、前記フランジ部に屈曲用溝を有することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、前記屈曲用溝を複数本有することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記容器は、樹脂シートまたは樹脂発泡シートの熱成形体であることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記収容凹部間のフランジ部の幅が25mm以上であることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、樹脂シートまたは樹脂発泡シートを、加熱軟化させて金型の型面に密着させる熱成形によって、複数の収容凹部が、該収容凹部の開口部外周のフランジ部で連結された容器を製造する方法において、熱成形する前記容器は、前記フランジ部に屈曲用溝を有し、前記金型の型面には、前記収容凹部に賦形するための複数の収容凹部賦形用凸部または凹部と、前記収容凹部賦形用凸部または凹部間にフランジ部賦形面とを有し、前記フランジ部賦形面には屈曲用溝賦形用凸部又は凹部を有し、前記熱成形時に複数の前記収容凹部及び前記屈曲用溝を賦形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の容器によれば、収容凹部間のフランジ部を屈曲用溝で上方へ屈曲させて重ね合わせる(折り畳む)ことにより、収容凹部間のフランジ部が屈曲して上方へ立ち上がった状態の立ち壁を、収容凹部の開口部間に形成することができる。
【0015】
そのため、熱成形では収容凹部の深さが不足する場合にも、収容凹部の開口部間の上方に形成したフランジ部の折り曲げからなる立ち壁により、隣り合う収容凹部の境界については、収容凹部の底面から立ち壁上端までが、収容凹部の壁面の作用をし、熱成形による収容凹部の深さ不足を補うことができる。
本発明の容器は、例えば、搬送コンテナ内に配置されて、容器の隣り合う収容凹部に物品が収容されて物品の搬送に使用される搬送用途の場合、隣り合う収容凹部から上方へ突出した物品同士が開口部上方で接触するのを、フランジ部の折り曲げからなる立ち壁で防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の容器の一実施形態を示す図である。
図2図1の2-2断面図である。
図3】本発明の容器の使用状態の例を示す断面図である。
図4】本発明の容器の製造時を示す断面図である。
図5】屈曲用溝にミシン目を設けた場合を示す図である。
図6】従来の容器の断面図である。
図7】従来の容器の使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1及び図2に示す容器10は、熱成形によって樹脂シートまたは樹脂発泡シートから製造されたものであり、複数の収容凹部11が、収容凹部11における開口部13の外周のフランジ部15で連結されたものである。
【0018】
樹脂シートとしては、熱成形可能な熱可塑性樹脂のシートであれば、特に限定されない。熱可塑性樹脂として、例えば、LDPE、HDPE、EVA、PP、PET、PS、PVC、ABS、PC等を挙げることができる。樹脂シートは、単層でも複層でもどちらでもよい。
樹脂発泡シートは、熱成形可能な熱可塑性樹脂発泡体のシートであれば、特に限定されない。熱可塑性樹脂発泡体として、例えば、LDPE、HDPE、EVA、PP、PS等を挙げることができる。樹脂発泡シートは、単層でも複層でもよい。さらに樹脂発泡シートと樹脂シートが積層された積層シートであってもよい。なお、樹脂発泡シートは、緩衝性を有するため、容器10が物品搬送用の場合は、特に好適なものである。
【0019】
複数の収容凹部11は、物品が収容される部分であり、開口部13の外周のフランジ部15で連結されて一列に並んでいる。
【0020】
フランジ部15は、隣り合う収容凹部11の開口部13間に位置して、収容凹部11同士を連結すると共に、本発明では後述する立ち壁を形成するためのものである。フランジ部15には、フランジ部15の両側の開口部13、13との境界位置に形成された屈曲用溝17a、17aと、開口部13、13間の中央位置(中央付近を含む)に形成された屈曲用溝17bとが略平行に設けられている。
【0021】
フランジ部15の屈曲用溝17a、17a、17bは、図3に示す搬送コンテナ45内に容器10を配置して、容器10を物品の搬送に使用する際、フランジ部15を屈曲可能にするものである。フランジ部15の屈曲は、フランジ部15の両側の開口部13、13とフランジ部15との境界位置の屈曲用溝17a、17aから中央位置の屈曲用溝17bまでの部分を上方へ屈曲させ、中央位置の屈曲用溝17bの両側を下方へ屈曲させて、開口部13、13との境界位置の屈曲用溝17a、17aから中央位置の屈曲用溝17bまでの部分同士を重ねる(折り畳む)、あるいは接近させる。それによって、隣り合う開口部13、13間の上方には、フランジ部15が折り曲げられた立ち壁19(図3に示す)が形成される。
【0022】
フランジ部15の屈曲により形成された立ち壁19は、隣り合う収容凹部11、11に収容された物品に対して、収容凹部11、11の開口部13、13上方の隔壁として機能し、収容凹部11の深さ不足を補い、開口部13、13の上方で隣り合う物品同士が直接接触するのを妨げることができる。フランジ部15の屈曲により形成される立ち壁19の高さが低すぎると、立ち壁19による隔壁機能が小さくなる。そのため、フランジ部15の幅(開口部13、13間の間隔)は、10mm以上であるのが好ましい。立壁は折り返されて収容外側がくっついていてもよく、空間を作って、容器の立壁に返し機構を、設けてもよい。
【0023】
なお、屈曲用溝17a、17bは、フランジ部15の少なくとも片面で窪んだ溝となっていればよく、図示の場合のように、片面が窪んで反対側の面が膨らんでいたり、反対側の面が平坦であったり、両面で窪んでいたりしてもよい。屈曲用溝は1本でもよく、複数本あってもよい。
また、フランジ部15の屈曲用溝17a、17bの少なくとも一部の溝には、溝と共にミシン目を設けて屈曲用溝17a、17bの屈曲をさらに容易にしてもよい。図5は屈曲用溝17bにミシン目18を設けた場合の例である。
【0024】
なお、図示の実施形態では、容器10の長さ方向の両端と、幅方向の両側にもフランジ部23、25が形成されている。また、フランジ部23、25と収容凹部11の開口部13との境界位置には屈曲用溝24、26が設けられ、屈曲用溝24、26によってフランジ部23、25が屈曲可能になっている。フランジ部23、25は、不要の場合、容器の熱成形後に切除される。
【0025】
容器10は、物品の搬送に使用される場合、前記の図3に示すように、搬送コンテナ45内に収容される。その際、隣り合う収容凹部11の開口部13間のフランジ部15が屈曲用溝17a、17a、17bにより上方へ屈曲されて、隣り合う開口部13、13間の上方に立ち壁19が形成される。そして、複数の収容凹部11にそれぞれ物品が収容され、隣り合う収容凹部11、11の開口部13、13から物品が上方へ突出した場合に、隣り合う物品同士が直接接触するのを、立ち壁19によって防止し、物品同士の接触による損傷の発生を防ぐことができる。また、容器10が樹脂発泡シートからなる場合、樹脂発泡シートの緩衝性によって、立ち壁19の部分が緩衝性を有するものになるため、物品の損傷がより効果的に防止される。
【0026】
容器10の製造方法について説明する。容器10の製造は、樹脂シートまたは樹脂発泡シートを、加熱軟化させて金型の型面に密着させる熱成形によって製造される。容器10の熱成形は、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の何れも使用することができる。真空成形する場合について図4を用いて説明する。
【0027】
図4の(4-1)に示すように、ヒーター等の加熱手段31によって、樹脂シートまたは樹脂発泡シート10Aを加熱軟化させる。符号32は真空成形用金型、符号37は樹脂シートまたは樹脂発泡シート10Aの縁を把持するクランプである。
【0028】
次に、図4の(4-2)に示すように、加熱軟化した樹脂シートまたは樹脂発泡シート10Aを、真空成形用金型32に被せ、真空吸引装置によって型面33に真空吸引し、型面33に密着させる。
【0029】
図4の(4-1)に示すように、真空成形用金型32の型面33には、図1及び図2に示した容器10の収容凹部11に賦形するための複数の収容凹部賦形用凸部35とフランジ部賦形用凸部35、35間にフランジ部賦形面37とが設けられている。フランジ部賦形面37には、フランジ部賦形面37と収容凹部賦形用凸部35との境界位置及び収容凹部賦形用凸部35、35間の中央位置(中央付近を含む)に、それぞれ屈曲用溝賦形用凸部39が形成されている。屈曲用溝賦形用凸部39は、容器10の屈曲用溝17a、17bを形成するための部分である。なお、容器10の屈曲用溝17a、17bを形成するための部分は凹部でもよく、屈曲用溝賦形用凸部39に代えて屈曲用溝賦形用凹部を設けてもよい。また、符号41は、前記容器10の長さ方向の両端のフランジ部23に形成される前記屈曲用溝24を賦形するための凸部である。
賦形用凹部35とフランジ部賦形面37には、金型32の外部の真空吸引装置と通じる真空吸引孔43が形成されている。
なお、金型32は、図示の場合では凸型(雄型)であるが、凹型(雌型)であってもよい。凹型(雌型)の場合、型面33には前記収容凹部賦形用凸部35に代えて、収容凹部賦形用凹部が設けられる。
【0030】
加熱軟化した樹脂シートまたは樹脂発泡シート10Aは、金型32の型面33に吸引密着することにより、図1及び図2の容器10の形状に賦形される。その後、金型32を冷却して賦形品を硬化させ、金型32から外し、不要部分の切除を行って容器10を得る。なお、前記屈曲用溝17a、17bにミシン目18を形成する場合には、熱成形後にプレス等によってミシン目を形成する。
【実施例0031】
樹脂発泡シートとして、厚み5mmのLDPE樹脂発泡シート、品名:LV2505黒、(株)イノアックコーポレーション製を用い、加熱温度160℃で軟化させ、図4に示した金型を用いて真空成形し、その後に不要部を切除して、図1及び図2に示した容器10を製造した。製造した容器10は、収容凹部11の開口部の寸法:150×285mm、収容凹部11の底面の寸法:138×274mm、収容凹部11の深さ:100mm、収容凹部11の数:4個、収容凹部間11のフランジ部15の幅:31mm、フランジ部15とその両側の開口部13、13との境界位置及び開口部13、13間の中央位置の屈曲用溝17a、17bの幅(溝幅)×深さ:3×3mm、容器10の長さ方向の両端と、幅方向の両側のフランジ部23、25の幅:30mm、フランジ部23、25の屈曲用溝24、26の幅(溝幅)×深さ:3×3mmである。
【0032】
製造した実施例の容器は、隣り合う収容凹部の開口部間のフランジ部を、屈曲用溝で上方へ屈曲させることにより、隣り合う開口部間の上方に高さが約15mmの立ち壁を形成することができる。
【0033】
このように、本発明の容器は、隣り合う収容凹部の開口部間のフランジ部を上方へ屈曲させて、隣り合う開口部間の上方に立ち壁を形成することができ、熱成形により賦形される収容凹部の深さが不足する場合であっても、フランジ部を上方へ屈曲させることにより形成される立ち壁によって、収容凹部の深さ不足を補うことができる。
【符号の説明】
【0034】
10 容器
10A 樹脂シートまたは樹脂発泡シート
11 収容凹部
13 開口部
15 フランジ部
17a、17b 屈曲用溝
31 加熱手段
32 金型
33 型面
35 収容凹部賦形用凸部
37 フランジ部賦形面
39 屈曲用溝賦形用凸部
45 搬送コンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の収容凹部が、該収容凹部の開口部外周のフランジ部で連結された容器において、
前記フランジ部を上方へ屈曲させることにより、前記フランジ部は、収容物を収容するための隔壁となることを特徴とする容器。