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特開2024-157062粒子群からなるウイルス不活化群組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157062
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】粒子群からなるウイルス不活化群組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/18 20060101AFI20241030BHJP
   A61K 35/02 20150101ALI20241030BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20241030BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20241030BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20241030BHJP
   A61L 2/22 20060101ALI20241030BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20241030BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
A61L2/18
A61K35/02
A61K9/12
A61K9/72
A61P31/14
A61L2/22
A61L9/01 B
A61L9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021134419
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】506228733
【氏名又は名称】株式会社シマニシ科研
(72)【発明者】
【氏名】石井 清堅
【テーマコード(参考)】
4C058
4C076
4C087
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA12
4C058AA23
4C058AA28
4C058AA30
4C058BB07
4C058DD16
4C058JJ07
4C058JJ24
4C076AA25
4C076AA93
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB27
4C076CC35
4C087AA01
4C087AA02
4C087BA02
4C087CA01
4C087MA13
4C087MA57
4C087MA59
4C087NA14
4C087ZB33
4C180AA07
4C180AA10
4C180CB01
4C180EA22X
4C180EA23X
4C180EA24X
4C180EA27X
4C180EA28X
4C180EA30X
4C180EA33X
4C180EA34X
4C180EA35X
4C180EA36X
4C180EA37X
4C180EA38X
4C180EA39X
4C180EA64X
4C180GG08
(57)【要約】
【課題】本発明は新型コロナウイルス及びインフルエンザウイルスを不活化するために、金属塩を主成分とする酸溶出液の適正な希釈水溶液を微粒化した粒子群からなるウイルス不活化組成物を提供する。
【解決手段】
気体中に浮遊及び/又は落下するか、負圧、加圧によって移動する平均直径が1μm~500μmの液体の粒子群であって、前記液体は花崗岩を代表とする火成岩、接触変成岩、及び/又はその風化体を、無機酸及び/又は有機酸で溶出した多数の金属塩を含む溶出液の希釈水溶液からなり、ウイルスを不活化することを特徴とするウイルス不活化組成物で解決される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体中に浮遊及び/又は落下するか、負圧、加圧によって移動する平均直径が1μm~500μmの液体の粒子群であって、前記液体は花崗岩を代表とする火成岩、接触変成岩、及び/又はその風化体を、無機酸及び/又は有機酸で溶出した多数の金属塩を含む溶出液の希釈水溶液からなり、ウイルスを不活化することを特徴とするウイルス不活化組成物。
【請求項2】
前記液体は、花崗岩の風化体を硫酸で溶出した金属塩を含む溶出液の希釈水溶液であり、金属塩を構成する金属は鉄、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、亜鉛、バリウム、銅、ニッケル、チタン、カルシウム、マンガン、ナトリウム、コバルト、リチウム、シリコン、モリブデン、バナジウム、タングステン、ルビシウム、ゲルマニウム、セレニウム、から選択される6種以上か、そのすべてを含有し、さらに非金属成分としてリンを含むことを特徴とする請求項1記載のウイルス不活化組成物。
【請求項3】
前記ウイルスは新型コロナウイルス(SARS-CoV2)又はインフルエンザウイルスであることを特徴とする請求項1、2記載のウイルス不活化組成物。
【請求項4】
ウイルス不活化組成物は、前記溶出液を飲料水で80倍以上、800倍以下に希釈された希釈水溶液からなる平均直径が0.1μm~100μmの粒子群であり、鼻腔及び/又は口腔から吸入することで、鼻腔、口腔内粘膜、及び/又は気道から肺に付着した新型コロナウイルス(SARS-CoV2)を不活化することを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の新型コロナウイルス(SARS-CoV2)用消毒剤。
【請求項5】
前記ウイルス不活化組成物は、前記溶出液を飲料水で800倍以上、4000倍以下に希釈された希釈水溶液からなる平均直径が0.1μm~100μmの粒子群であり、鼻腔、口腔から吸入することで、気管、気管支から肺胞に達する事で、鼻腔、口腔内粘膜及び/又は気道から肺に付着したインフルエンザウイルスを不活化することを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載のインフルエンザ用口消毒剤。
【請求項6】
前記ウイルス不活化組成物は、前記溶出液を飲料水で50倍以上、4000倍以下に希釈された希釈水溶液による平均直径が0.1μm~500μmの粒子群であり、室内、飲食店、劇場、ホール、浴場、車内の閉空間内に放出され、該閉空間内にエアロゾルとして浮遊する新型コロナウイイルス(SARS-CoV2)、及び/又はインフルエンザウイルスと接触し不活化する事により、該閉空間内の空気を清浄にすることを特徴とする請求項1~3に記載の空気清浄用消毒剤。
【請求項7】
前記ウイルス不活化組成物は、前記溶出液を飲料水で10倍以上、4000倍以下に希釈した後、平均直径が0.1μm~500μmの粒子群であり、身体の一部、衛生マスクの肌面側、医療現場の医療機器に噴霧する事により、付着した新型コロナウイルス(SARS-CoV2)及び/又はインフルエンザウイルスを不活化することを特徴とする請求項1~3に記載の消毒剤。
【請求項8】
前記溶出液を飲料水で80倍以上、800倍以下に希釈した後、平均直径が0.1μm~100μmの粒子群に微粒化し、鼻腔及び/又は口腔から吸入することで、鼻腔、口腔内粘膜、気管から肺胞に付着した新型コロナウイルス(SARS-CoV2)を不活化することを特徴とする請求項4記載の新型コロナウイルス(SARS-CoV2)を不活化する方法。
【請求項9】
前記溶出液を飲料水で800倍以上、4000倍以下に希釈した後、平均直径が0.1μm~100μmの粒子群に微粒化し、鼻腔及び/又は口腔から吸入することで、鼻腔、口腔内粘膜、気管から肺胞に付着したインフルエンザウイルを不活化することを特徴とする請求項5記載のインフルエンザウイルスを不活化する方法。
【請求項10】
前記溶出液を飲料水で50倍以上、4000倍以下に希釈した後、平均直径が0.1μm~500μmの粒子群に微粒化し、室内、飲食店又は劇場、ホール、浴場、車内の閉空間に該粒子群を放出し、エアロゾルとして浮遊する新型コロナウイルス(SARS-CoV2)、及び/又はインフルエンザウイルスに接触させる事により、該閉空間内の空気を浄化させることを特徴とする請求項6に記載の新型コロナウイイルス(SARS-CoV2)、及び/又はインフルエンザウイルスを不活化する方法。
【請求項11】
前記溶出液を飲料水で10倍以上、4000倍以下に希釈した後、平均直径が0.1μm~500μmの粒子群に微粒化し、身体の一部、衛生マスクの肌面側、医療現場の医療機器に噴霧する事により、付着した新型コロナウイルス、及び/又はインフルエンザウイルスを不活化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻腔、口腔、上気道感染症を引き起こす新型コロナウイルス(SARS-CoV2)やインフルエンザウイルスを不活化する粒子群からなるウイルス不活化組成物に関し、口腔内消毒用、身体の洗浄、閉空間の空気浄化に供される粒子群からなるウイルス不活化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人類とウイルスの歴史は人類が誕生した時から始まり、幾度となくパンデミックを繰り返しながら、長い歴史の中で人類に禍をもたらしてきた。その原因となるいくつかのウイルスについて、近年その感染メカニズムが徐々に解明されるようになってきた。
【0003】
例えば感染症を引き起こす麻疹ウイルスは飛沫核感染(空気感染)、飛沫感染、接触感染と様々な感染経路を有し、その感染力は極めて強い。人の体内に入った麻疹ウイルスは免疫を担う全身のリンパ組織を中心に増殖し、強い免疫機能抑制状態を生じるため合併した別の細菌の感染症が重症化する。またポリオウイルスは脊髄や脳幹、大脳皮質に存在する運動神経細胞に感染し下肢の麻痺を引き起こす。エイズウイルス(HIV)は免疫細胞にある受容体に感染するため免疫不全を引き起こす。ヘルペスウイルス(HSV)は活発にウイルスを輩出している個人との濃厚接触に起因し、感染後は神経節に潜伏し、そこから周期的に出現して症状を引き起こす。
【0004】
一方、新型コロナウイルス(SARS-CoV2)やインフルエンザウイルスの感染経路は飛沫感染、接触感染と言われている。特に新型コロナウイルス(SARS-CoV2)は鼻腔、口腔から侵入したウイルスの一部は鼻腔、口腔内の口腔粘膜に付着し、そこから気管、気管支へと侵入し肺胞に達する。これはインフルエンザウイルスや新型コロナウイルス(SARS-CoV2)のスパイク蛋白が鍵の役割を果たし、細胞表面の受容体という鍵穴に取りつき感染するが、受容体は鼻腔、口腔、気道上皮の細胞にあるので、最初に呼吸器系上皮細胞が感染するといわれている。さらに新型コロナウイルスは歯茎や頬の内側、舌の細胞に直接感染し、口の中で増殖するという報告もある。
【0005】
特許文献1には、雲母系鉱物由来の含ミネラル群溶液による殺菌消毒剤が開示されている。含ミネラル群溶液は・OHラジカルを生成する事による酸化作用によって殺菌・消毒作用をもたらし、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、サルモネラ菌、サルモネラチフス菌、ヒト免疫不全ウイルスに対する殺菌消毒効果を記載している。
【先行技術文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-238004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように新型コロナウイルス(SARS-CoV2)やインフルエンザウイルスは、麻疹ウイルスやポリオウイルス、エイズウイルス、ヘルペスウイルスと異なり、最初に呼吸器系上皮細胞や、直接口腔内で感染が始まり増殖するので、口腔内でのウイルスの不活化が強く望まれている。
【0008】
先行技術文献には麻疹ウイルスやヒト免疫ウイルス、ヘルペスウイルス、ポリオウイルスに対する不活化効果が記載されているものの、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスに関する記載は見当たらない。
【0009】
上述したようにウイルスはその種類により固有の性質を持ち、これに抗する不活化剤もウイルスの種類によって異なるものであり、先行技術文献はインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスに対する不活化を示唆するものではない。
【0010】
また麻疹ウイルスやポリオウイルス、エイズウイルス、ヘルペスウイルスは身体に付着し、鼻腔、口腔から人体にウイルスが侵入したとしても、一旦感染が始まると殺菌消毒剤は直接ウイルスと接触する事はなく、侵入したウイルスを不活化させる処方についての記載はない。
【0011】
現在、一般的に使用される殺菌消毒剤は、エチルアルコールやイソプロピルアルコールといったアルコール類、フェノール、クレゾール、クロルヘキシジン等のフェノール類、塩素ガス、次亜塩素酸ナトリウム、ヨード・ヨードカリ液、ヨードチンキ等のハロゲン類、さらにはホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド等のアルキル化剤、その他過酸化水素、過マンガン酸カリとうの酸化剤、石鹸等の界面活性剤の群が使用されている。
【0012】
この中でも、抗ウイルス用としてエチルアルコール、次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨード、グルタールアルデヒド、過マンガン酸カリが使用され、口腔、咽頭の消毒用にポビドンヨード、過酸化水素が有効とされている。
【0013】
この中で、口腔、咽頭用に適用できるのはポビドンヨードであり、その7%溶液とその希釈液が新型コロナウイルス(SARS-CoV2)の不活化に有効と伝えられている。しかしながら、1回のうがい液には14~28mgのヨウ素が含まれる。それによる体内への吸収量は定かでないが、1日に摂取できるヨウ素の上限値は3mgと定められていることから、1日に複数回のうがいは難しい。この基準を長期間超えると甲状腺に異常が起こるとされている。
【0014】
このように現状では、口腔内で増殖し、口腔内が一種の培養器となっているにもかかわらず、口腔内、鼻腔、咽頭、喉頭に直接作用し、そこに付着、増殖する新型コロナウイルスを不活化する液体の粒子群からなる消毒剤は見出されていない。
【0015】
一方、感染経路の一つとされる接触感染への対応も望まれている。身体に付着したウイルスや喀痰や糞便の消毒、さらには人が触れる部分への消毒は、一般的にはエチルアルコールや次亜塩素酸液を手や対象物に噴霧、噴射し使用されているが、使用頻度が増えるにしたがい皮膚の皮脂成分も同時に減少し、肌荒れ等を引き起こす原因となっている。この問題を解決し、皮膚にも悪影響を及ばさず、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルス(SARS-CoV2)の不活化にも効果を示す液体の粒子群組成物は見出されてはいない。
【0016】
さらに密閉空間にエアロゾルとして浮遊する新型コロナウイルス(SARS-CoV2)も感染源とされている。この対策としては窓の開放による空気の入れ替えであるが、窓のない空間や真冬の冷気、雨天時はその対策も難しい。このような閉空間にただようウイルスを不活化する液体の粒子群による消毒剤やその方法は見出されていない。
【0017】
本発明は新型コロナウイルス(SARS-CoV2)及びインフルエンザウイルスを不活化するために、金属塩を主成分とする酸溶出液の適正な希釈水溶液の粒子群からなるウイルス不活化組成物を提供し、さらには鼻腔、口腔から人体に接触、又は侵入したウイルスを不活化させる適正な処方に基づく粒子群からなる口腔内消毒剤、身体や身体が接触する対象物に付着したウイルスを不活化させる粒子群からなる消毒剤、閉空間に浮遊するウイルスを不活化する粒子群からなる消毒剤、及びその方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明はマグマが冷却固化した岩石であり、花崗岩、かんらん岩、斑れい岩、閃緑岩、コマチアイト、玄武岩、安山岩、流紋岩、花崗斑岩を母岩とし、これらの風化体や紛体を無機酸や有機酸に溶解することで多種のミルラル成分を溶出し、得られたミネラル群溶液を飲料水で特定の範囲に希釈し、特定の平均直径を有する粒子群に微粒化する事で新型コロナウイルス(SARS-CoV2)、インフルエンザウイルス、を不活化することを見出し本発明に到達した。
【0019】
上記ミネラル群溶液の中でも、雲母系鉱物であるバーミュキュライトを含有した風化腐食花崗岩を原料として使用し、溶出率の高い無機酸で溶出したミネラル群溶液は、ヒ素、鉛、水銀、クロム、カドミウムを含まず、金属成分として鉄、マグネシウム、カリウム、マンガン、カルシウム、アルミニウム、亜鉛、シリコン、ナトリウム、銅、リン、チタン、ニッケル、コバルト、モリブデン、リチウム、バナジウム、タングステン、ルビシウム、ゲルマニウム、セレニウム、バリウムを含む多種の金属塩と非金属塩としてリンを含有する溶出液となり好ましい。
【0020】
使用する無機酸としては硫酸や塩酸、有機酸として酢酸やクエン酸、L-酒石酸、コハク酸、乳酸、等があるが、ミネラル成分の溶出に比較的容易な無機酸が好ましく、さらには殺菌、抗ウイルス効果から硫酸が最も好ましい。
【0021】
本発明の粒子群からなるウイルス不活化組成物がウイルスと接触することで不活化するが、そのメカニズムは、多種の金属成分と酸とが複雑に作用し合っていることから完全に解明されているわけではなく、確立された不活化理論ではないが、多種の遷移金属や非金属が酸によって金属塩や非金属塩を生成し、多種の金属が錯塩を形成し、その結果として強い酸化力を有するヒドロキシラジカル・OHを生成するものと考えている。ヒドロキシラジカル・OHは酸素としての電子状態が不安定であるため、周りの物質から電子を引き抜く力、即ち酸化力が強いため、ウイルスに直接作用すると考えられるが、一方でヒドロキシラジカル・OHは生体内のいろいろな反応の過程で生成され、その強力な酸化作用でウイルスにたいする消毒作用としての働き、免疫の機能を維持するために必要なものであるとされている。
【0022】
風化腐蝕花崗岩を原料とし、硫酸で溶出した多種の金属塩と非金属塩を含有する溶出液はpHが0.1~2.0と強い酸性を呈するが、多種で多量の金属成分と錯体を形成しているため皮膚や細胞上皮に化学熱傷を引き起こすことはない。ただこの溶出液はウイルス不活化作用が大きい反面、強い酸性は口腔内にある味覚センサーに作用し強い刺激となることから、口腔内消毒剤とするには溶出液を飲料水で希釈する必要がある。
【0023】
また身体皮膚上に付着したり、身体が接触する対象物に付着したウイルスを不活化する場合、溶出液は不活化作用は大きい反面、酸化力が大きいため、対象物の変色、劣化を引き起こすため、溶出液を飲料水で希釈する必要がある。
【0024】
すなわち本発明は、新型コロナウイルス(SARS-CoV2)を不活化するウイルス不活化組成物を、新型コロナウイルスを標的にした口腔内消毒剤とする場合、ウイルス不活化組成物を飲料水で、80~800倍に希釈する。この希釈したウイルス不活化組成物を微粒化し平均直径が0.1μm~100μm、好ましくは1μm~10μmの粒子群とし、該粒子群を鼻腔、口腔内に噴霧するか、又は鼻腔、口腔から吸引することで、鼻腔、口腔内粘膜に付着した及び口腔内で増殖した新型コロナウイルス(SARS-CoV2)を不活化することにより解決される。
【0025】
特に、鼻腔口腔から吸引すれば、ウイルス不活化組成物の希釈水溶液は微粒化されているので、粒子群は酸素を含む気体と共に気管から気管支、さらに肺胞へと送られ、新型コロナウイルス(SARS-CoV2)と接触することで鼻腔、口腔内にとどまらず、さらに奥の気道に付着したウイルスを不活化できる。
【0026】
インフルエンザウイルスを標的にした口腔内消毒剤とする場合、ウイルス不活化組成物は飲料水で800~5000倍に希釈する。この希釈したウイルス不活化組成物を微粒化し平均直径が0.1μm~100μm、好ましくは1μm~10μmの粒子群とし、該粒子群を鼻腔、口腔内に噴霧するか、又は鼻腔口腔から吸引することで、鼻腔、口腔内粘膜に付着したインフルエンザウイルスを不活化することで解決される。
【0027】
また、閉空間に浮遊する新型コロナウイルス(SARS-CoV2)及び/又はインフルエンザウイルスを不活化し、空気を浄化する消毒剤とする場合、ウイルス不活化組成物を飲料水で50倍以上、4000倍以下に希釈した後、平均直径が0.1μm~500μm、好ましくは1μm~100μmの粒子群に微粒化され、室内、飲食店又は劇場、ホール、浴場、車内の閉空間に該粒子群を放出し、エアロゾルとして浮遊する新型コロナウイルス(SARS-CoV2)、及び/又はインフルエンザウイルスに接触、不活化する消毒剤により解決される。
【0028】
身体及び/又は身体の一部または治療に使用された医療機器に付着した新型コロナウイルスを標的にした場合、ウイルス不活化組成物は10~4000倍に希釈され、この希釈されたウイルス不活化組成物を平均直径が0.1μm~500μm、好ましくは1μm~100μmに微粒化された粒子群を身体の一部、衛生マスクの肌面側、医療現場の医療機器に噴霧することにより付着した新型コロナウイルス(SARS-CoV2)及び/又はインフルエンザウイルスを不活化する消毒液により解決される。
【発明の効果】
【0029】
本発明のウイルス不活化組成物は新型コロナウイルス(SARS-CoV2)、インフレンザウイルスの不活化に優れ、人体の細胞に対する毒性はなく、安全であり、それぞれのウイルスに適正な倍率で希釈され、平均直径が0.1μm~100μm、好ましくは1μm~10μmの粒子群に微粒化された消毒剤は、鼻腔、口腔へ噴霧されるか、鼻腔、口腔から吸入され、鼻腔、口腔内に付着、増殖したウイルスを不活化する。鼻腔口腔から吸引すれば、ウイルス不活化組成物の希釈水溶液は微粒化されているので、粒子群は酸素を含む気体と共に気管から気管支、さらに肺胞へと送られ、ウイルスと接触することで鼻腔、口腔内にとどまらず、さらに奥の気道に付着したウイルスを不活化できる。
【0030】
また特定の希釈倍率で平均直径が0.1μm~500μmの粒子群を室内、劇場、ホール、浴場、車内の閉空間内に放出すれば、該閉空間内にエアロゾルとして浮遊する新型コロナウイルス(SARS-CoV2)、及び/又はインフルエンザウイルスと接触し不活化する事により、該閉空間内の空気を清浄できる。
【0031】
また特定の希釈倍率で平均直径が0.1μm~500μmの粒子群であり、身体の一部、衛生マスクの肌面側、医療現場の医療機器に噴霧する事により、付着した新型コロナウイルス(SARS-CoV2)及び/又はインフルエンザウイルスを不活化できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】溶出液の希釈倍率とpH値
図2】コントールに対する各検体のウイルス減少率
図3】コントロールのウイルス感染価を100とした場合の本発明のウイルス感染価
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、新型コロナウイルス(SARS-CoV2)やインフルエンザウイルスに適する溶出液の適正な希釈倍率を見出すため、溶出液の希釈倍率ごとにpH値を測定し、数値を対数グラフにプロットしたものである。図1より希釈倍率が50倍以下の希釈水溶液はpH<1.0であり、レモン果汁がpH=2.5前後であることから、その酸味より強い酸っぱさと刺激を感じる。一方4000倍ではpH≒3であり、その希釈水溶液はレモン果汁より酸味が少ない。
【0034】
被験者5名により希釈倍率の異なる希釈水溶液を口腔内に取り込み、その時に感じる酸味と刺激の度合いを各人ごと記録し、さらに口腔内に希釈水溶液をとめ置き、一定時間ごとに酸による味覚と刺激度に耐え得るかの合否を確認した。
【0035】
50倍、80倍、150倍、400倍、800倍1600倍、3200倍の希釈倍率それぞれの希釈水溶液を口腔内に取り込み、その酸味と刺激度を評価した。
【0036】
結果として、口腔内消毒剤とする場合、口腔内に取り込んだ時に感じる酸味と刺激の度合いから、希釈倍率は80倍以上が適切な領域であることが判明した。
【0037】
新型コロナウイルスを標的とする場合、80倍より低い倍率の希釈水溶液は短時間で且つ高い確率でウイルスは死滅させるものの、口腔内で感じる酸味と刺激が大きくなり、鼻腔、口腔内に希釈水溶液の粒子群を噴霧又は吸入することに違和感を感じるため、実用上としては使用できない。また800倍より高い倍率の希釈水溶液の粒子群を鼻腔、口腔内に噴霧、吸入した場合の違和感は小さくなるが、一方ウイルスの死滅率が低下し不活化効果は低下する。したがって、新型コロナウイルス用口腔内消毒剤として適正な溶出液の希釈倍率は80~800倍であり、違和感と不活化効果の観点から好ましくは希釈倍率が120~500倍である。
【0038】
尚、新型コロナウイルスの場合使用する目的に応じ、例えば、感染者の場合は80倍以上で且つ80倍に近い希釈水溶液が好ましく、感染していないが感染を予防する目的で使用する場合では、希釈倍率は800倍を超えず且つ800倍に近い領域を選択すればよい。
【0039】
インフルエンザウイルスを標的とする場合、2000倍の希釈水溶液でウイルスを1秒で死滅させることができる。日常的に感染予防として口腔内消毒剤を使用する場合は酸味と刺激の小さい4000倍の希釈水溶液でも有効である。したがって、新型コロナウイルス用口腔内消毒剤として適正な溶出液の希釈倍率は800~4000倍であり、好ましくは希釈倍率が1500~3000倍である。
【0040】
室内、飲食店、劇場、ホール、浴場、車内の閉空間内に放出され、閉空間内にエアロゾルとして浮遊する新型コロナウイイルス(SARS-CoV2)、及び/又はインフルエンザウイルスと接触し不活化する事により、該閉空間内の空気を清浄にする消毒剤については、閉空間内において粒子群の密度が口腔内消毒剤を鼻腔、口腔内に適用する密度ほど高密度化することがないことから、50倍以上、4000倍以下の希釈倍率の希釈水溶液をによる平均直径が0.1μm~100μmの粒子群が適正な領域となる。
【0041】
空気を清浄にする消毒剤を放出する場合、ウイルスを含む飛沫は、極めて低い密度で浮遊している。その粒子群が飛沫と接触する確率を上げるため、粒子群を構成する個々の粒子は飛沫と反対の電荷を付与することが好ましい。一般的に飛沫はプラス側に帯電していることが多く、その場合は個々の粒子はマイナス側に帯電することが望ましい。
【0042】
一方、身体に付着したウイルスや喀痰や糞便の消毒、さらには人が触れる部分への消毒を標的とする場合では、酸味や刺激に配慮する必要はないため、希釈倍率を口腔内消毒剤より広範囲に設定でき、10倍~4000倍に希釈された水溶液が使用できる。10倍未満で溶出液に近くなるほど酸化作用により、皮膚においても刺激を感じたり、衛生マスクの肌面側に噴霧した消毒剤に唇や頬に違和感を感じる事があり、適用することは難しい。また4000倍を超える場合はウイルスに対する不活化効果が低下して、好ましくない。
【0043】
尚、希釈液に用いられる飲料水は、飲用できる水であれば特に制限を設けるものではないが、水道水、石清水、湧水等の他、蒸留水、生理食塩水、あるいは希釈酸による味覚と刺激度が強い場合、これを緩和する目的で、果汁や甘味料、天然由来の香料を添加してもよい。
【0044】
本発明による微粒化された粒子群は気体中に浮遊及び/又は落下する粒子群であり、該気体中に酸素を21%~70%の濃度で含んでいる。ここでいう気体とは大気のことで、大気には21%酸素と窒素79%を含んでいる。新型コロナウイルスの感染者の場合、吸入が困難、又は血液中の酸素濃度が低下した人の呼吸を補助する人工呼吸器が装着される。人工呼吸器は22%~70%の酸素と30%~78%の窒素を混合、ミキシングした気体がもちいられるが、この気体中が、このような気体中に本発明の微粒化された粒子群のウイルス不活化組成物を適用することもできる。
【0045】
本発明の粒子群は、平均直径0.1μm~500μmの大きさに微粒化されており、口腔内使用する消毒剤の場合、粒子群は噴霧されるか、呼吸によって吸入、排出されるため、気体中に浮遊する微粒子であることが必要で、平均直径0.1μm~100μm、さらに0.1μm~10μmが好ましい。
【0046】
一方身体に付着したウイルスや、身体が触れる対象物に付着したウイルスを不活化する場合は粒子群を浮遊させるのではなく、掌や対象物に向けて噴霧、噴射、スプレーするもので、平均直径は0.1μmから500μmの範囲がよい。
【実施例0047】
(ウイルス不活化評価)
雲母系鉱物であるバーミキュライトを含有した風化腐食花崗岩を原材料とし、原材料:無機酸液を4:3~4の重量比で加え,80度に加熱撹拌し数時間経過させ、その後濾過して金属や非金属の硫酸塩や酸化物や錯塩を含む溶出液を生成した。使用した無機酸は25%硫酸は25%とした。得られた溶出液を飲料水で150倍に希釈し、得られた本発明の新型コロナウイルス不活化用口腔内消毒剤を被検体として以下の方法でウイルス不活化性能を評価した。
【0048】
コントロール:反応時間0分のウイルス溶液
リファレンス:水道水
ウイルス:新型ヒトコロナウイルス(SARS-CoV2 WK-521)
ウイルス力価(原液):3.6×10 TCID50/mL
細胞:Vero細胞
試験概要:検体に対してウイルス液を混合させ、反応時間後にウイルス液を採取し、細胞へ感染させ感染性ウイルス量を測定した。
【0049】
ウイルスの準備:Vero細胞を3.0×10cell/mLに調整後、10mLを75cmのティッシュカルチャーに注ぎ、37C、CO2濃度5%のインキュベーターで1日培養後、10~10TCID50/mL程度のSARS-CoV2を100μL播種し、その後3日間培養後、TCID50法に基づきウイルス力価を測定した。
細胞を準備:Vero細胞を1.0×10cell/mLに調整後、96well plateに100μwellずつ播種し、37°C、CO2濃度5%のインキュベーターで1日培養した。
被検体の準備:被検体975μLを247well plateに播種した。
【0050】
ウイルスと検体の反応:ウイルス液25μLを被検体に混合し反応させた。反応時間は1分とし、その後、反応を停止させるため、ウイルス混合液100μLを無血清のDMEM培地900μLに添加した。
【0051】
Vero細胞への添加と培養:被検体の準備で希釈した液を、ウイルスの準備で準備した細胞に、1被検体・1反応時間あたり3wellずつ100μL/well播種した。37°C、CO2濃度5%のインキュベーターで1日間培養した後、感染ウイルス量を測定し、各被検体の抗ウイルス活性を評価した。
【0052】
結果を表1に示し、棒グラフとして図3に示す。すなわちコントロールのウイルス感染価を100とした場合の各検体におけるウイルス感染価反応時間が0分におけるウイルス感染価に対して、1分後の0.6%までウイルスの減少が確認された。
【0053】
また、コントロールに対する各検体のウイルス減少率を表2、棒グラフを図2に示す。すなわち本発明の新型コロナウイルス不活化用口腔内消毒剤は、反応時間0分におけるウイルス感染価に対し、1分後に99.4%の減少が確認できた。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【実施例0056】
実施例1と同じ溶出液を飲料水で2000倍に希釈し、得られた本発明のインフルエンザウイルス不活化用口腔内消毒剤を被検体として以下の方法でウイルス不活化性能を評価した。
【0057】
コントロール:反応時間0分のウイルス溶液
ウイルス:インフルエンザウイルス H1N1 A/PR/8・34
細胞:MDCK細胞(イヌ腎細胞)
試験方法:インフルエンザウイルス不活化用口腔内消毒剤1.08mLをチューブに分注後、リン酸緩衝液(PBS)を用いて5-10×10pfu/mL調整したインフルエンザウイルス溶液0.12mL混合し、撹拌したものを試験液とした。
【0058】
試験液は室温下で静置し、反応をおこなった。直後、1分、5分経過ごとに試験液から溶液を回収し、0.2%ウシ血清含有ダルベッコ改変イーグル培養地1.08mLと混合した。0.2%FBS-DMEM培地による希釈を複数回繰り返し、10倍段階希釈系を作成し、10倍段階希釈液を事前に準備した宿主細胞に各1mL/well滴下し、37°C5%CO2下で1時間感染処理をおこなった。ウイルス感染後、細胞上清を0.8%オキソイド寒天溶液に置換し、37°C5%CO2下で2日間培養し、5%グルタルアルデヒド溶液で固定で、染色し、形成されたプラーク数の測定データを元にウイルス感染力価を測定した。
【0059】
結果として溶出液を2000倍に希釈した、本発明のインフルエンザウイルス用口腔内消毒液は作用直後から99.988%以上のウイルス不活化を確認できた。結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【実施例0061】
(細胞毒性試験)
実施例1で使用した発明の新型コロナウイルス不活化用口腔内消毒剤が細胞に毒性を示さない事を確認するために細胞毒性評価を行った。
【0062】
実施例1で実施した「ウイルスと検体の反応」の試験を、ウイルス液の代わりに無血清DMEM25μLで行い、被検体に接触した溶液を調整し、細胞毒性を評価した。細胞で起きるMTTの色素をホルマザン色素へ還元する酵素活性を光学的に測定する。これにより、細胞が死滅等により減少した場合は、発光量小さくなる。
【0063】
Vero細胞を1.0×10cella/mLに調整後、96WELLplateに播種し、37°C、CO2濃度5%のインキュベーターで1日培養した。各被検体975μLを24wellplateに播種した。無血清DMEM25μLを被検体に混合し1分間反応させ、反応を停止し、10倍希釈、100倍希釈した溶液をそれぞれ培養したVero細胞に1被検体あたり3wellずつ100μL/well播種し、37°C、5%CO2下で1日培養した。MTT溶液を各wellに10μLずつ添加し、37°C、5%CO2下で2時間呈色反応させ、可溶化溶液を100μLずつ添加し、マイクロプレートリーダを用いて595nmの吸光度値を測定した。
【0064】
結果を表4に示す。表4から本発明の新型コロナウイルス用口腔内消毒剤はこの溶液に接する細胞に対する毒性はない事が確認された。
【0065】
【表4】
【実施例0066】
被験者5名による新型コロナ用口腔内消毒剤の適正希釈倍率と、口腔内に取り込み、感じる酸味と刺激性の大きさを体験し、酸味については5ランクに分けて各人が評価し表5に示す。
【0067】
【表5】
【実施例0068】
実施例1で得た、バーミキュライトを含有した風化腐食花崗岩を硫酸で溶解した溶出液を飲料水で150倍に希釈し、超音波振動子から発生した超音波振動エネルギーで微粒化し、平均直径が2μmの粒子分布を持つ粒子群とした。得られた粒子群は、呼吸による吸引で鼻腔内、口腔内に取り込む際に粒子群が液滴化することなく、スムーズな吸引が可能であった。
【実施例0069】
実施例1で得た、バーミキュライトを含有した風化腐食花崗岩を硫酸で溶解した溶出液を飲料水で2000倍に希釈し、超音波振動子から発生した超音波振動エネルギーで微粒化し、平均直径が4μmの粒子分布を持つ粒子群とした。得られた粒子群を空間に噴射したところ、長時間浮遊することが確認された。
【実施例0070】
実施例1で得た、バーミキュライトを含有した風化腐食花崗岩を硫酸で溶解した溶出液を飲料水で50倍に希釈し、噴霧器の容器から圧力をかけノズルから手のひらに向けて噴霧し、30秒間両手をこすり合わせて使用する消毒剤として最適であった。
図1
図2
図3