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  • 特開-コアシェル型ゼオライト 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157067
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】コアシェル型ゼオライト
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/02 20060101AFI20241030BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20241030BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20241030BHJP
   B01J 29/80 20060101ALI20241030BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
C01B39/02
B01J37/10 ZAB
B01J37/02 301Z
B01J29/80 A
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149970
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】312016218
【氏名又は名称】ユミコア日本触媒株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】辻 優太郎
(72)【発明者】
【氏名】武田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】岩本 伸司
【テーマコード(参考)】
4D148
4G073
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148BA01Y
4D148BA02Y
4D148BA06X
4D148BA08X
4D148BA11X
4D148BA15X
4D148BA18X
4D148BA19X
4D148BA30Y
4D148BA31X
4D148BA33Y
4D148BA41X
4D148BA42X
4D148BB02
4D148EA04
4G073BA82
4G073BB04
4G073BB48
4G073BD21
4G073CZ50
4G073DZ01
4G073DZ02
4G073DZ08
4G073FC19
4G073GA01
4G073GA29
4G073GB02
4G073GB10
4G073UA05
4G073UA06
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01B
4G169BA05B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BB06B
4G169BB10B
4G169BC13B
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC42B
4G169BC43B
4G169BC51B
4G169BC69A
4G169BC72B
4G169BE01C
4G169BE17C
4G169BE45C
4G169CA03
4G169CA07
4G169CA15
4G169DA06
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EA18
4G169EB12Y
4G169EB18Y
4G169EC03Y
4G169EC12Y
4G169EC13Y
4G169EC27
4G169EC28
4G169EC30
4G169EE06
4G169EE08
4G169FA01
4G169FA06
4G169FB23
4G169FC08
4G169ZA02A
4G169ZA03A
4G169ZA03B
4G169ZA06A
4G169ZA11A
4G169ZA13A
4G169ZA14A
4G169ZA19A
4G169ZA19B
4G169ZB03
4G169ZB08
4G169ZB09
4G169ZF02B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4G169ZF07A
4G169ZF07B
(57)【要約】
【課題】ゼオライトからなる炭化水素吸着剤において、炭化水素の脱離温度を上昇させる手段を提供する。
【解決手段】第1のゼオライトからなるコアと、第2のゼオライトからなるシェルと、を有し、前記第1のゼオライトのチャンネル直径が前記第2のゼオライトのチャンネル直径より大きい、コアシェル型ゼオライト。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のゼオライトからなるコアと、第2のゼオライトからなるシェルと、を有し、
前記第1のゼオライトのチャンネル直径が前記第2のゼオライトのチャンネル直径より大きい、コアシェル型ゼオライト。
【請求項2】
前記第1のゼオライトは、FAU、LEV、MWWおよびLTAからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のコアシェル型ゼオライト。
【請求項3】
前記第2のゼオライトは、BEA、CHA、MFI、MOR、SZR、FERおよびTONからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載のコアシェル型ゼオライト。
【請求項4】
式:|P-P|/|P-P|<0.1(Pは、第1のゼオライトからなる粒子のゼータ電位(mV)を表す。Pは、第2のゼオライトからなる粒子のゼータ電位(mV)を表す。Pは、対象のゼオライト粒子のゼータ電位(mV)を表す)を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載のコアシェル型ゼオライト。
【請求項5】
前記第1のゼオライトはFAUであり、前記第2のゼオライトはBEAである、請求項1~4のいずれか1項に記載のコアシェル型ゼオライト。
【請求項6】
前記第2のゼオライトは、前記コアシェル型ゼオライトに対して、62質量%超95質量%以下で含まれる、請求項1~5のいずれか1項に記載のコアシェル型ゼオライト。
【請求項7】
第1のゼオライトからなる粒子を調製する工程と、
第2のゼオライトの前駆体を調製する工程と、
前記第1のゼオライトからなる粒子を前記第2のゼオライトの前駆体で被覆した後、当該第2のゼオライトの前駆体を結晶化させる工程と、
を有する、コアシェル型ゼオライトの製造方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載のコアシェル型ゼオライトと、貴金属と、が三次元構造体上に担持されてなる、排気ガス浄化用触媒。
【請求項9】
請求項8に記載の排気ガス浄化用触媒を、炭化水素を含む排気ガスに接触させることを有する、排気ガスの浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコアシェル型ゼオライトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の排気ガス規制が強化されてきている。ガソリンエンジン車では、エンジン始動直後の三元触媒がまだ活性化していない低温域において排出される炭化水素(HC)の排出量低減が求められている。この要求に対して、炭化水素を低温域で吸着し、高温域で脱離することができる、炭化水素吸着剤(Hydrocarbon trap;HCT)を含む触媒が用いられている。これにより、低温域で排出される炭化水素を、浄化可能な高温域まで一時的に吸着することが可能となるため、炭化水素の排出量を低減できる。
【0003】
従来、炭化水素吸着剤として、ゼオライトが広く使用されてきた。例えば、特許文献1には、排気系に、排気ガス浄化触媒を備え、該触媒の上流側に、ゼオライトをコートしたモノリス担体の一部に1種類以上の触媒金属を担持してなる吸着剤を備えたことを特徴とする自動車排気ガス浄化装置が開示されている。また、当該文献には、ゼオライトとしては、吸着性能の観点から、H型モルデナイト(MOR)あるいはH-Y型ゼオライト(FAU)が好ましいことが記載されている。特許文献1によると、上記自動車排気ガス浄化装置により、HCが吸着剤から離脱し始める比較的低い温度におけるHCの浄化性能を向上させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-135126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、FAUゼオライトは、炭化水素の吸着量は比較的多いものの、炭化水素を脱離する温度域が、三元触媒が充分に活性化する温度域よりも低く、炭化水素の排出量を充分に低減できない場合があるという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、ゼオライトからなる炭化水素吸着剤において、炭化水素の脱離温度を上昇させる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、チャンネル直径が大きなゼオライトをコアとし、チャンネル直径が小さなゼオライトをシェルとしたコアシェル型のゼオライトにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一形態は、第1のゼオライトからなるコアと、第2のゼオライトからなるシェルと、を有し、前記第1のゼオライトのチャンネル直径が前記第2のゼオライトのチャンネル直径より大きい、コアシェル型ゼオライトである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゼオライトからなる炭化水素吸着剤において、炭化水素の脱離温度を上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、粉体dのSEM画像である。
図2図2は、粉体hのSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本明細書中の数値範囲「A~B」は、「A以上B以下」を意味する。また、「Aおよび/またはB」とは、「AまたはBのいずれか一方」または「AおよびBの両方」を意味する。また、本明細書中の各種物性は、特記しない限り、後述する実施例に記載の方法により測定した値を意味する。
【0012】
<コアシェル型ゼオライト>
本発明の一形態は、第1のゼオライトからなるコアと、第2のゼオライトからなるシェルと、を有し、前記第1のゼオライトのチャンネル直径が前記第2のゼオライトのチャンネル直径より大きい、コアシェル型ゼオライトである。本発明に係るコアシェル型ゼオライトによると、ゼオライトからなる炭化水素吸着剤において、炭化水素の脱離温度を上昇させることができる。
【0013】
本発明に係るコアシェル型ゼオライトが従来のゼオライトよりも高温で炭化水素を脱離できる理由は定かではないが、本発明者らは以下のように推測している。なお、本発明は下記メカニズムに限定されるものではない。
【0014】
ゼオライトは、結晶性アルミノケイ酸塩であり、245種類以上の骨格構造が知られている。ゼオライトは骨格構造により固有のチャンネル直径を有し、このチャンネル(管状細孔)に炭化水素が出入りすることで、炭化水素吸着剤としての機能を発揮する。チャンネル直径と、炭化水素の吸着量および脱離温度との間には相関関係があることが知られている。すなわち、チャンネル直径が小さいほど、炭化水素の吸着量は少なく、炭化水素が出入りしにくいため脱離温度は高い。一方、チャンネル直径が大きいほど、炭化水素の吸着量が多く、炭化水素が出入りしやすいため脱離温度は低い。
【0015】
本発明に係るコアシェル型ゼオライトによると、チャンネル直径の大きなコアで多くの炭化水素が吸着されつつ、チャンネル直径の小さなシェルにより炭化水素の脱離が抑制される。また、コアとシェルとの結晶界面が存在することによってチャンネルが不連続となり、コアに吸着された炭化水素がシェルへと移動することが妨げられることも一因でありうる。その結果、炭化水素の脱離温度を上昇させることが可能となる。なお、チャンネル直径の小さなゼオライトのみからなる炭化水素吸着剤では、前述のように炭化水素の吸着量が少ないため、排気ガス温度の上昇時において脱離開始から短時間のうちに全ての炭化水素が脱離してしまう。しかしながら、本発明に係るコアシェル型ゼオライトによると、脱離開始からより長い時間をかけて炭化水素が脱離されるため、排気ガス温度が高い状態、すなわち触媒が充分に活性化した状態で、炭化水素を触媒に供給することが可能となる。その結果、本発明に係るコアシェル型ゼオライトを用いた触媒によると、炭化水素の浄化性能を向上させることが可能となる。
【0016】
本発明に係るコアシェル型ゼオライトは、チャンネル直径の異なる少なくとも2種のゼオライト(第1のゼオライトおよび第2のゼオライト)を含む。以下では、主に、コアが1種の第1のゼオライトから構成され、シェルが1種の第2ゼオライトから構成されるコアシェル型ゼオライトを例に挙げて本発明を説明する。ただし、本発明はこのような形態に制限されず、コアが2種以上の第1のゼオライトから構成される、および/または、シェルが2種以上の第2ゼオライトから構成されるコアシェル型ゼオライトである形態をも包含する。
【0017】
本明細書において、各ゼオライトのチャンネル直径は、X線回折分析によりコアシェル型ゼオライトに含まれるゼオライトの種類を同定した上で、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association;IZA)により示されている当該同定ゼオライトについてのMaximum diameter of a sphere that can be includedの値を採用する。そして、本明細書においては、2種のゼオライトのうち、チャンネル直径が大きい方のゼオライトを第1のゼオライト、チャンネル直径の小さい方のゼオライトを第2のゼオライトと定義する。コアが2種以上の第1のゼオライトから構成される、および/または、シェルが2種以上の第2ゼオライトから構成される場合は、第1のゼオライトのうちの最小のチャンネル直径が、第2のゼオライトのうちの最大のチャンネル直径よりも大きければよい。
【0018】
本発明において、第1のゼオライトおよび第2のゼオライトの具体的な種類および組み合わせは、特に制限されないが、以下の種類および組み合わせが好ましい形態として挙げられる。なお、本明細書において、ゼオライトの種類とは、ゼオライトの骨格構造を意味するものとする。そして、本明細書中のゼオライトの種類(骨格構造)は、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association;IZA)により規定されている3文字コードにて表記される。
【0019】
第1のゼオライトとしては、排ガス中に含まれる任意の炭化水素種よりも大きなチャンネル直径を有し、110℃未満の低温域において炭化水素保持量が多いものが好ましく、FAU、LEV、MWWおよびLTAからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、FAUおよび/またはLEVであることがより好ましく、FAUであることがさらに好ましい。
【0020】
第2のゼオライトとしては、排ガス中に含まれる任意の炭化水素種と同程度もしくはそれ以下のチャンネル直径を有し、110℃以上の高温域においても吸着した炭化水素種を保持できるものが好ましく、BEA、CHA、MFI、MOR、SZR、FERおよびTONからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、BEA、CHA、MFI、MORおよびSZRからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、BEAおよび/またはMFIであることがさらに好ましく、BEAであることが特に好ましい。
【0021】
第1のゼオライトと第2のゼオライトとの組み合わせとしては、「第1のゼオライト(チャンネル直径)/第2のゼオライト(チャンネル直径)」の表記で記載すると、FAU(11.24Å)/BEA(6.68Å)、FAU(11.24Å)/MFI(6.36Å)、FAU(11.24Å)/MOR(6.70Å)等が挙げられる。中でも、炭化水素の脱離温度をより向上させる観点から、当該組み合わせは、FAU(11.24Å)/BEA(6.68Å)またはFAU(11.24Å)/MFI(6.36Å)であることが好ましく、FAU(11.24Å)/BEA(6.68Å)がより好ましい。すなわち、本発明の好ましい一形態に係るコアシェル型ゼオライトは、第1のゼオライトがFAUであり、第2のゼオライトがBEAである。
【0022】
本発明に係るコアシェル型ゼオライトは、第1のゼオライト(チャンネル直径が大きい方のゼオライト)がコアに、第2のゼオライト(チャンネル直径の小さい方のゼオライト)がシェルに配置された、コアシェル構造を有する。本明細書においては、ゼオライトがコアシェル構造を有しているか否かについては、以下の手法により判断する。
【0023】
まず、作製したゼオライトのX線回折分析を行い、少なくとも2つの異なるゼオライトが検出されることを確認する。ゼオライトの同定は、分析後のXRDパターンに見られる各ピークの2θがJCPDSカードに記載の回折角度に一致するかどうかを確認することにより行う。すべての回折角度が一致した場合は当然に当該ゼオライトであると同定できるとともに、少なくとも強度が高い順に3つのピークの2θが、回折角度の前後0.02°の角度に回折ピークが見られる場合も、当該ゼオライトであると同定できる。これはゴニオメーターが移動する時の誤差要因等を含むためである。
【0024】
次に、第1のゼオライトのみからなる粒子および第2のゼオライトのみからなる粒子についてのpH=3におけるそれぞれのゼータ電位を測定する。次に、これと同様の方法で、対象のゼオライト粒子についてのpH=3におけるそれぞれのゼータ電位を測定する。そして、これらの値が式:|P-P|/|P-P|<0.10の関係を満たしていれば、コアシェル構造を有しているものとする。ここで、Pは、第1のゼオライトからなる粒子のゼータ電位(mV)を表す。Pは、第2のゼオライトからなる粒子のゼータ電位(mV)を表す。Pは、対象のゼオライト粒子のゼータ電位(mV)を表す。なお、本明細書において、ゼータ電位は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値を採用する。
【0025】
ゼータ電位は粒子表面の電荷に依存する値であるため、第1のゼオライトが第2のゼオライトにより完全に被覆されている場合における粒子のゼータ電位は、理論上、第2のゼオライトのみからなる粒子のゼータ電位と同じ値となる(|P-P|/|P-P|=0)。一方、第1のゼオライトが第2のゼオライトにより被覆されていない部分が存在する場合における粒子のゼータ電位の値は、第2のゼオライトのみからなる粒子のゼータ電位の値から第1のゼオライトのみからなる粒子のゼータ電位の値の方向にシフトする。シフトする割合(|P-P|/|P-P|)が大きいほど、第1のゼオライトが表面に露出している割合が高いことを意味する。また、|P-P|/|P-P|<0.10を満たす場合は、第1のゼオライトが第2のゼオライトにより完全に被覆されているか、被覆されていない部分が存在するとしても、その割合は低いと考えられる。そのため、このような場合を「ゼオライトがコアシェル構造を有している」とみなす。
【0026】
なお、|P-P|/|P-P|の値は、必須に0以上0.10未満であり、好ましくは0以上0.09以下であり、より好ましくは0以上0.05以下であり、さらに好ましくは0以上0.03以下である。当該値が上記範囲であれば、第1のゼオライトが第2のゼオライトによって良好に被覆されている(第1のゼオライトが露出している割合が低い)と考えられるため、本発明の効果(炭化水素の脱離温度を上昇させる)がより一層発揮される。
【0027】
本発明において、コアシェル型ゼオライトに含まれる第1のゼオライトと第2のゼオライトとのそれぞれの割合は、特に制限されない。ただし、第1のゼオライトを第2のゼオライトで良好に被覆することを考慮すると、コアシェル型ゼオライトの総質量に対する、第2のゼオライトの質量(百分率)は、好ましくは62質量%超95質量%以下であり、より好ましくは71質量%以上91質量%以下であり、さらに好ましくは71質量%以上87質量%以下である。このような範囲であれば、第2のゼオライトが充分な量存在するため、第1のゼオライトを第2のゼオライトで良好に被覆することができる。その結果、本発明の効果(炭化水素の脱離温度を上昇させる)がより一層発揮される。なお、コアシェル型ゼオライトの総質量に対する、第1のゼオライトの質量(百分率)は、総質量100質量%から上記第2のゼオライトの質量(百分率)を引いた値となる。
【0028】
なお、コアシェル型ゼオライトは、本発明の効果を発揮できる限りにおいて、コアが第1のゼオライト以外の成分を含んでもよく、シェルが第2のゼオライト以外の成分を含んでもよい。ただし、炭化水素の脱離温度をよりいっそう上昇する観点から、コアに含まれる第1のゼオライトの量は、コアの総質量に対して90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。同様に、シェルに含まれる第2のゼオライトの量は、シェルの総質量に対して90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0029】
<コアシェル型ゼオライトの製造方法>
本発明に係るコアシェル型ゼオライトの製造方法は特に制限されず、本技術分野で使用されうるゼオライトの製造方法を適宜組み合わせることができる。好ましい一例によると、コアとなる第1のゼオライトからなる粒子を調製した後、当該第1のゼオライトからなる粒子を第2のゼオライトの前駆体で被覆し、当該第2のゼオライトの前駆体を結晶化することにより、コアシェル型ゼオライトを製造する方法が挙げられる。すなわち、本発明の好ましい一形態に係るコアシェル型ゼオライトの製造方法は、第1のゼオライトからなる粒子を調製する工程(以下、「工程1」とも称する)と、第2のゼオライトの前駆体を調製する工程(以下、「工程2」とも称する)と、前記第1のゼオライトからなる粒子を前記第2のゼオライトの前駆体で被覆した後、当該第2のゼオライトの前駆体を結晶化させる工程(以下、「工程3」とも称する)と、を有する。以下、各工程について詳細に説明する。
【0030】
[工程1]
工程1では、第1のゼオライトからなる粒子を調製する。第1のゼオライトからなる粒子の具体的な調製方法は、第1のゼオライトの種類(骨格構造)により異なるため、以下では、第1のゼオライトがFAUゼオライトである場合における、FAUゼオライトからなる粒子(以下、「FAU粒子」とも称する)の調製方法を例に挙げて説明する。なお、FAUゼオライト以外のゼオライトからなる粒子の調製方法は、公知技術を適宜採用することができる。
【0031】
FAU粒子の調製方法としては、例えば、シリカ源、アルミナ源およびアルカリ源との混合物(以下、「原料混合物」とも称する)を水熱下で結晶化する方法が挙げられる。
【0032】
シリカ源としては、例えば、コロイダルシリカ(シリカゾル)、無定型シリカ、ケイ酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲル等が挙げられる。
【0033】
アルミナ源としては、例えば、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミノシリケートゲル、金属アルミニウム等が挙げられる。
【0034】
アルカリ源としては、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウムの水酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩などの各種の塩、アルミン酸塩中、ケイ酸塩中、アルミノシリケートゲル中のアルカリ成分等を用いることができる。
【0035】
これらの原料を混合する方法も特に制限されないが、アルミナ源およびアルカリ源を溶媒としての水に溶解させた後、当該水溶液にシリカ源を滴下し混合する方法が好ましい。
【0036】
原料混合物を、水熱下で結晶化する方法としては、例えば、オートクレーブを用いた方法が挙げられる。第1のゼオライトは、結晶化させてもよいし、結晶化させたゼオライトにアモルファスが一部含まれていてもよいが、好ましくは結晶化したゼオライトのみである。結晶化条件は、原料やスケール等によって異なるため、当業者により適宜設定されうる。結晶化の温度は、好ましくは70~250℃、より好ましくは120~180℃である。結晶化の時間は、第1のゼオライトの種類により異なる。たとえば、FAUの場合は、好ましくは15時間~6日間、より好ましくは2~4日間で結晶化させることができる。結晶化は静置、撹拌下のいずれでも行うことができる。
【0037】
結晶化後は、固液分離を行い、余剰のアルカリ溶液を純水、温水などで洗浄する。その後、粒子に付着した水を乾燥させることにより、FAU粒子を得ることができる。
【0038】
第1のゼオライト(例えば、FAUゼオライト)からなる粒子の平均粒子径は、特に制限されないが、好ましくは3~15μmであり、より好ましくは5~8μmである。このような範囲の平均粒子径であれば、後述の工程2において、第1のゼオライトからなる粒子を第2のゼオライトの前駆体(例えば、BEAゼオライトの前駆体)で良好に被覆することができる。その結果、優れた炭化水素吸着脱離性能を有するコアシェル型ゼオライトを得ることが可能となる。なお、本明細書において、粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置により測定されるメディアン径(D50)を採用する。
【0039】
[工程2]
工程2では、第2のゼオライトの前駆体を調製する。本明細書において、第2のゼオライトの前駆体とは、結晶化により第2のゼオライトとなる前のアモルファス状態の物質を意味する。第2ゼオライトがアモルファスであることで、第1のゼオライト表面上を被覆することができる。第2のゼオライトが結晶化していると、第1および第2のゼオライトのそれぞれの結晶の表面が安定であるため、第1のゼオライト表面上を被覆せず、単独で第2のゼオライトとして存在しやすいため好ましくない。前駆体(アモルファス状態)であるか否かは、対象の物質についてX線回折分析により判別することができる。第2のゼオライトからなる粒子の具体的な調製方法は、第2のゼオライトの種類(骨格構造)により異なるため、以下では、第2のゼオライトがBEAゼオライトである場合における、BEAゼオライトの前駆体(以下、「BEA前駆体」とも称する)の調製方法を例に挙げて説明する。なお、BEAゼオライト以外のゼオライトからなる前駆体の調製方法は、公知技術を適宜採用することができる。
【0040】
BEA前駆体の調製方法としては、例えば、シリカ源、アルミナ源およびアルカリ源と、必要に応じて用いられるテンプレート分子(構造規定剤(OSDA)とも称される)との混合物(以下、「原料混合物」とも称する)を水熱処理する方法が挙げられる。
【0041】
シリカ源、アルミナ源およびアルカリ源の具体例は、工程1に記載のものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0042】
テンプレート分子としては、例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムブロミド、ヘキサメチレンイミン等が挙げられる。
【0043】
これらの原料を混合する方法も特に制限されないが、アルミナ源およびアルカリ源と、必要に応じて用いられるテンプレート分子とを溶媒としての水に溶解させた後、当該水溶液にシリカ源を滴下し混合する方法が好ましい。
【0044】
原料混合物を、水熱下でアモルファス化する方法としては、例えば、オートクレーブを用いた方法が挙げられる。アモルファス化条件は、原料やスケール等によって異なるため、当業者により適宜設定されうる。アモルファス化の温度は、好ましくは70~250℃、より好ましくは120~150℃である。アモルファス化の時間は、好ましくは2時間~6日未満、より好ましくは1~3日間である。アモルファス化は静置、撹拌下のいずれでも行うことができる。これにより、白色ゲル状生成物である、BEA前駆体を得ることができる。
【0045】
[工程3]
工程3では、前記第1のゼオライトからなる粒子を前記第2のゼオライトの前駆体で被覆した後、当該第2のゼオライトの前駆体を結晶化させる。以下、第1のゼオライトがFAUゼオライトであり、第2のゼオライトがBEAゼオライトである場合におけるコアシェル型ゼオライトの製造方法を例に挙げて説明する。
【0046】
FAUゼオライトからなる粒子をBEAゼオライトの前駆体で被覆する方法としては、前述の白色ゲル状生成物であるBEA前駆体の中にFAU粒子を加えて必要に応じて攪拌する方法が挙げられる。なお、FAU粒子と、BEA前駆体との混合比は、コアシェル型ゼオライトにおける第1のゼオライトの質量と、第2のゼオライトの質量とが、前述した範囲内となるような値である。
【0047】
この際、必要であればFAU粒子のカチオンをBEA前駆体のカチオンと揃えるために、予めFAU粒子にイオン交換処理を行ってもよい。後述の実施例では、BEA前駆体のカチオンであるテトラエチルアンモニウムイオンと揃えるために、プロトン型であるFAU粒子をテトラエチルアンモニウムイオンでイオン交換処理している。
【0048】
その後、FAU粒子を被覆しているBEA前駆体を水熱下で結晶化する。水熱下で結晶化する方法としては、例えば、オートクレーブを用いた方法が挙げられる。結晶化条件は、原料やスケール等によって異なるため、当業者により適宜設定されうる。結晶化の温度は、好ましくは70~250℃、より好ましくは120~180℃である。結晶化の時間は、好ましくは6~14日間、より好ましくは8~10日間である。結晶化は静置、撹拌下のいずれでも行うことができる。
【0049】
結晶化後は、固液分離を行い、余剰のアルカリ溶液を純水、温水などで洗浄する。その後、粒子に付着した水を乾燥させることにより、本発明に係るコアシェル型ゼオライトを得ることができる。
【0050】
コアシェル型ゼオライトの平均粒子径は、特に制限されないが、好ましくは4~20μmであり、より好ましくは7~10μmである。このような範囲の平均粒子径であれば、コージェライト製の三次元構造体に問題なくウォッシュコートできる。
【0051】
<排気ガス浄化用触媒>
本発明に係るコアシェル型ゼオライトは、炭化水素の脱離温度を上昇させることができるため、これを排気ガス浄化用触媒に適用することにより、排気ガス中の炭化水素の浄化性能を向上できる。よって、本発明の他の一形態によると、本発明に係るコアシェル型ゼオライトと、貴金属と、が三次元構造体上に担持されてなる、排気ガス浄化用触媒が提供される。
【0052】
以下、本形態について説明する。なお、本発明に係る排気ガス浄化用触媒(以下、「触媒」とも称する)は、本発明に係るコアシェル型ゼオライトを含むこと以外は、公知技術を適宜採用することができる。このため、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0053】
[コアシェル型ゼオライト]
本発明に係る触媒は、コアシェル型ゼオライトを必須に含む。ここで、コアシェル型ゼオライトの含有量は、三次元構造体1L当たり、好ましくは10~200g、より好ましくは30~120g、さらに好ましくは55~85gである。このような含有量でコアシェル型ゼオライトが含まれることにより、炭化水素の浄化性能がより一層向上する。
【0054】
[貴金属]
本発明に係る触媒は、貴金属を必須に含む。貴金属は、排気ガスを浄化するための酸化・還元反応を触媒する。ここで、貴金属の種類は、特に制限されないが、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)などが挙げられる。これらの貴金属は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用されてもよい。これらのうち、貴金属は、好ましくは白金、パラジウムおよびロジウムから選択される少なくとも1種であり、より好ましくはパラジウム単独;白金および/またはパラジウムとロジウムとの組み合わせであり、特に好ましくはパラジウム単独、パラジウムとロジウムとの組み合わせである。
【0055】
白金の含有量(金属換算)は、排気ガス浄化能を考慮すると、三次元構造体1L当たり、0.01~20gが好ましく、0.05~10gがより好ましく、0.5gを超えて5g未満がさらに好ましい。
【0056】
パラジウムの含有量(金属換算)は、排気ガス(特にHC)浄化能を考慮すると、三次元構造体1L当たり、0.01~20gが好ましく、0.05~5gがより好ましく、0.3~3gさらに好ましい。
【0057】
ロジウムの含有量(金属換算)は、排気ガス(特にNOx)浄化能を考慮すると、三次元構造体1L当たり、0.01~20gが好ましく、0.05~5gがより好ましく、0.1~3gがさらに好ましい。
【0058】
[耐火性無機酸化物]
本発明に係る触媒は、必要に応じて、耐火性無機酸化物(ただし、コアシェル型ゼオライトを除く)を含みうる。耐火性無機酸化物は、貴金属、希土類金属、その他の金属元素などの触媒成分を担持する担体としての機能を有する。耐火性無機酸化物は、高い比表面積を有しており、これに触媒成分を担持させることで、触媒成分と排気ガスとの接触面積を増加させたり、反応物を吸着させたりすることができる。その結果、触媒全体の反応性をさらに高めることが可能となる。
【0059】
耐火性無機酸化物としては、例えば、アルミナ、ゼオライト(ただし、コアシェル型ゼオライトを除く)、チタニア、ジルコニア、シリカなどを挙げることができる。これらの耐火性無機酸化物は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても構わない。これらのうち、高温耐久性および高比表面積の観点から、アルミナ、ジルコニアが好ましく、アルミナがより好ましい。ここで、耐火性無機酸化物として好ましく使用されるアルミナは、アルミニウムの酸化物が含まれるものであれば特に制限されず、γ、δ、η、θ-アルミナなどの活性アルミナ、ランタナ含有アルミナ、シリカ含有アルミナ、シリカ-チタニア含有アルミナ、シリカ-チタニア-ジルコニア含有アルミナなどが挙げられる。これらのアルミナは、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても構わない。これらのうち、高温耐久性および高比表面積の観点から、γ、δ、またはθ-アルミナ、ランタナ含有アルミナが好ましい。
【0060】
耐火性無機酸化物の含有量は、三次元構造体1L当たり、好ましくは10~300gであり、より好ましくは40~200gである。耐火性無機酸化物の含有量が10g/L以上であると、貴金属を充分に耐火性無機酸化物に分散でき、より充分な耐久性を有する触媒が得られる。一方、耐火性無機酸化物の含有量が300g/L以下であると、貴金属と排気ガスとの接触状態が良好となり、排気ガス浄化性能がより充分に発揮され得る。
【0061】
[セリア・ジルコニア複合酸化物]
本発明に係る触媒は、必要に応じて、酸素吸蔵材としてセリア・ジルコニア複合酸化物(CeO-ZrO)を含みうる。ここで、酸素貯蔵材(「酸素吸蔵放出物質」とも称される)は、運転状況に応じて変化する空燃比(A/F)の変動に応じて、酸化雰囲気(リーン)では酸素を吸蔵し、還元雰囲気(リッチ)では酸素を放出することにより、酸化・還元反応を安定して進行させる機能を有する。
【0062】
セリア・ジルコニア複合酸化物は、ランタン(La)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)からなる群より選択される少なくとも一種の金属を含んでもよい。具体的には、セリア-ジルコニア-ランタナ複合酸化物、セリア-ジルコニア-ランタナ-イットリア複合酸化物などが挙げられる。
【0063】
セリア・ジルコニア複合酸化物の含有量(酸化物換算)は、特に制限されないが、三次元構造体1L当たり、好ましくは5~200g、より好ましくは5~100g、さらに好ましくは10~90gである。このような含有量でセリア・ジルコニア複合酸化物が含まれることにより、酸化・還元反応を安定して進行させることができる。
【0064】
[その他の成分]
本発明に係る触媒は、その他の成分をさらに含んでもよい。その他の成分としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等の2族元素が挙げられる。これらの元素は、排気ガス浄化用触媒中に、酸化物、硝酸塩または炭酸塩の形態で含有されうる。中でも、バリウムおよび/またはストロンチウムが好ましく、酸化ストロンチウム(SrO)、硫酸バリウム(BaSO)および/または酸化バリウム(BaO)がより好ましい。これらのその他の成分は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても構わない。
【0065】
本発明に係る触媒がその他の成分を含む場合の、その他の成分(特に、SrO、BaSO、BaO)の含有量(酸化物換算)は、三次元構造体1L当たり、好ましくは0~50gであり、より好ましくは0.1~30gであり、さらに好ましくは0.5~20g(である。
【0066】
[三次元構造体]
三次元構造体は、コアシェル型ゼオライト、貴金属、耐火性無機酸化物、セリア・ジルコニア複合酸化物およびその他成分を担持する担体としての機能を有する。三次元構造体は、本技術分野で公知の耐火性三次元構造体を適宜採用することができる。三次元構造体としては、例えば、貫通口(ガス通過口、セル形状)が三角形、四角形、六角形を有するハニカム担体等の耐熱性担体が使用できる。セル密度(セル数/単位断面積)は、100~1200セル/平方インチであれば充分に使用可能であり、好ましくは200~900セル/平方インチ、より好ましくは400~900セル/平方インチ(1インチ=25.4mm)である。
【0067】
本発明に係る触媒は、公知の知見を適宜参照し、製造することができる。以下、本発明に係る触媒の製造方法について、簡単に説明する。
【0068】
まず、コアシェル型ゼオライト、貴金属源、ならびに必要であれば、上記したような他の成分(例えば、耐火性無機酸化物、セリア・ジルコニア複合酸化物、その他の成分)および水性媒体を、所望の組成に応じて、適宜秤量、混合して、5~95℃で0.5~24時間攪拌し(必要であれば撹拌した後、湿式粉砕し)、スラリーを調製する。ここで、水性媒体としては、水(純水、超純水、脱イオン水、蒸留水等)、エタノール、2-プロパノールなどの低級アルコール、有機系のアルカリ水溶液などを使用することができる。中でも、水、低級アルコールを使用することが好ましく、水を使用することがより好ましい。水性媒体の量は、特に制限されないが、スラリー中の固形分の割合(固形分質量濃度)が10~60質量%、より好ましくは30~50質量%となるような量であることが好ましい。
【0069】
次に、上記にて調製したスラリーを三次元構造体に塗布する。スラリーを三次元構造体上に塗布する方法は、ウォッシュコートなどの公知の方法を適宜採用することができる。また、スラリーの塗布量は、スラリー中の固体物の量、および形成する触媒層の厚さに応じて当業者が適宜設定することができる。スラリーの塗布量は、好ましくは、各成分が上記したような含有量(担持量)となるような量である。
【0070】
次に、上記にてスラリーを塗布した三次元構造体を、空気中で、好ましくは70~200℃の温度で、5分間~5時間乾燥させる。次に、このようにして得られた乾燥スラリー塗膜(触媒前駆層)を、空気中で、400℃~900℃の温度で、10分間~3時間焼成させる。このような条件であれば、触媒成分(コアシェル型ゼオライト、貴金属等)を効率よく三次元構造体に付着できる。以上の工程により、本発明に係る触媒を得ることができる。
【0071】
なお、本発明に係る触媒は、上記したように、コアシェル型ゼオライトおよび貴金属を有するものであれば、触媒層1層のみを有していても、あるいは2層以上の触媒層が積層した構造を有するものであってもよい。触媒が2層以上の触媒層が積層した構造を有する場合において、コアシェル型ゼオライトおよび貴金属は同一の層に含まれていても、異なる層に含まれていてもよい。好ましくは、コアシェル型ゼオライトおよび貴金属は、異なる層に含まれ、より好ましくは、コアシェル型ゼオライトを下層に、貴金属を上層に配置する。このような配置により、本発明に係るコアシェル型ゼオライトの能力を最大限に発揮できる。
【0072】
<排気ガスの浄化方法>
本発明に係る触媒は、炭化水素を含む排気ガスに対して高い浄化性能を発揮できる。ゆえに、本発明のさらに他の一形態によると、本発明に係る排気ガス浄化用触媒を、炭化水素を含む排気ガスと接触させることを有する、排気ガスの浄化方法が提供される。
【0073】
排気ガスの温度は、通常のガソリンエンジンの運転時の排気ガスの温度であればよく、好ましくは0~1500℃であり、より好ましくは25~700℃である。本明細書において「排気ガスの温度」とは、触媒入口部における排気ガスの温度を意味する。ここで、「触媒入口部」とは、触媒の排気ガス流入側端面から15cmの部分を指す。
【0074】
本発明に係る触媒は、単独で充分な触媒活性を発揮できるものであるが、本発明に係る触媒の前段(流入側)または後段(流出側)に同様の、または異なる排気ガス浄化用触媒を配置してもよい。すなわち、本発明に係る触媒を単独で配置する、または本発明に係る触媒を前段(流入側)および後段(流出側)双方に配置する、または本発明に係る触媒を前段(流入側)および後段(流出側)のいずれか一方に配置しかつ従来公知の排気ガス浄化触媒を他方に配置することが好ましい。
【実施例0075】
以下、本発明を実施例および比較例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。なお、特記しない限り、各操作は室温(25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行われた。また、特記しない限り、比は質量比を表す。
【0076】
<ゼオライトの作製>
[比較例1-1]粉体a(BEAゼオライト(6.68Å))の合成
水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製、特級、以下同様)0.975gを精製水25mLに溶解させた。これに、アルミン酸ナトリウム(Al/NaOH(モル比)=0.78、富士フイルム和光純薬社製、1級)1.73gと、テトラエチルアンモニウムブロミド(東京化成工業社製、特級、以下同様)14.50gとを加え、溶解させた。この溶液に、アンモニア水(28%、富士フイルム和光純薬社製、特級、以下同様)12.86gを加え、攪拌した。その後、シリカゾル(LUDOX(登録商標)HS-30、Sigma-Aldrich社製、以下同様)42mLをピペットでゆっくり加え、この溶液を2時間攪拌した。生成した白色ゲル状生成物30gをテフロン(登録商標)製容器に入れ、密閉した。このテフロン(登録商標)製容器を150℃の恒温槽で8日間加熱することで、粉体a(平均粒子径5.35μm)を得た。
【0077】
(XRD測定)
粉体aについて、X線回折(XRD)法を用いて結晶構造を確認した。測定はX線回折測定装置(リガク社製、RINT2200VF)を用いて行った。測定条件は、測定角度範囲(2θ):3°~80°、ステップ間隔:0.02°、測定時間:1.2秒/ステップ、線源:CuKα線、管球の電圧:40kV、電流:20mAとした。
【0078】
粉体aについてのXRDスペクトルからは、BEAゼオライトが検出され、他のタイプのゼオライトは検出されなかった。よって、粉体aはBEAゼオライトであることが確認された。
【0079】
[比較例2-1]粉体h(FAUゼオライト(11.24Å))の合成
水酸化ナトリウム5.50gを42.40mLの精製水に溶解させた。この溶液に、アルミン酸ナトリウム(Al/NaOH(モル比)=0.78、富士フイルム和光純薬社製、1級)4.685gを加え、溶解させた。その後、シリカゾル(LUDOX(登録商標)HS-40、Sigma-Aldrich社製)22mLをゆっくり加え、この溶液を2時間攪拌した。この溶液をテフロン(登録商標)製容器に入れ、150℃の恒温槽で2日間加熱した。得られた白色粉末状の生成物を吸引ろ過にて回収した。その後、ろ液がpH=7となるまで水で洗浄しながら吸引ろ過を行った。ろ過後の粉末について3日間風乾を行うことで、粉体h(平均粒子径6.72μm)を得た。
【0080】
粉体hについて、X線回折(XRD)法を用いて結晶構造を確認したところ、粉体hについてのXRDスペクトルからは、FAUゼオライトが検出され、他のタイプのゼオライト由来のピークは検出されなかった。よって、粉体hはFAUゼオライトであることが確認された。
【0081】
[実施例1-1]粉体b(BEA/FAU=91/9)の合成
テトラエチルアンモニウムブロミド47.25gを500mLビーカーに秤量した。ビーカーに450mLの精製水を加え、テトラエチルアンモニウムブロミドを完全に溶解させた。この溶液に比較例2-1で合成したFAUゼオライト(プロトン型、Si/Al(モル比)=6.1)を19.997g加え、2時間攪拌した。その後、FAUゼオライトをろ過にて回収した。この操作を3回繰り返した後、100℃の恒温槽で一晩乾燥させた。これにより、FAUゼオライトをプロトン型からテトラエチルアンモニウム型にイオン交換した。
【0082】
水酸化ナトリウム0.992gを精製水25mLに溶解させた。これに、アルミン酸ナトリウム(Al/NaOH(モル比)=0.78、富士フイルム和光純薬社製、1級)1,74gと、テトラエチルアンモニウムブロミド14.52gとを加え、溶解させた。この溶液に、アンモニア水(28%、和光純薬、特級)12.9gを加え、攪拌した。その後、シリカゾル(LUDOX(登録商標)HS-30)42mLをピペットでゆっくり加え、この溶液を2時間攪拌した。生成した白色ゲル状生成物30gをテフロン(登録商標)製容器に入れ、密閉した。このテフロン(登録商標)製容器を150℃の恒温槽で3日間加熱した。これによりアモルファス状のBEAゼオライト前駆体9.746gを得た。当該前駆体についてX線回折分析を行ったところ、BEAゼオライトは検出されず、全体的なベースラインの上昇がみられたため、当該前駆体はアモルファスであることが確認された。これに、上記のイオン交換後のFAUゼオライトを0.98g加え、150℃の恒温槽でさらに8日間加熱した。得られた白色粉末状の生成物を吸引ろ過にて回収した。その後、ろ液がpH=7となるまで水で洗浄しながら吸引ろ過を行った。ろ過後の粉末について3日間風乾を行うことで、BEA/FAU=91/9の質量比で有する粉体b(平均粒子径5.35μm)を得た。
【0083】
粉体bについて、X線回折(XRD)法を用いて結晶構造を確認したところ、粉体bについてのXRDスペクトルからは、BEAゼオライトおよび、FAUゼオライトがともに検出され、他のタイプのゼオライトは検出されなかった。よって、上記で作製された粉体bは、BEAゼオライトおよびFAUゼオライトから構成されることが確認された。
【0084】
[実施例2-1]粉体c(BEA/FAU=87/13)の合成
アモルファス状のBEAゼオライト前駆体9.746gに対して、イオン交換後のFAUゼオライトを1.49g加えたこと以外は、実施例1-1と同様の手法にて、BEA/FAU=87/13の質量比で有する粉体c(平均粒子径8.25μm)を得た。
【0085】
粉体cについて、X線回折(XRD)法を用いて結晶構造を確認したところ、粉体cについてのXRDスペクトルからは、BEAゼオライトおよび、FAUゼオライトがともに検出され、他のタイプのゼオライトは検出されなかった。よって、上記で作製された粉体cは、BEAゼオライトおよびFAUゼオライトから構成されることが確認された。
【0086】
[実施例3-1]粉体d(BEA/FAU=71/29)の合成
アモルファス状のBEAゼオライト前駆体9.746gに対して、イオン交換後のFAUゼオライトを4g加えたこと以外は、実施例1-1と同様の手法にて、BEA/FAU=71/29の質量比で有する粉体d(平均粒子径7.94μm)を得た。
【0087】
粉体dについて、X線回折(XRD)法を用いて結晶構造を確認したところ、粉体dについてのXRDスペクトルからは、BEAゼオライトおよび、FAUゼオライトがともに検出され、他のタイプのゼオライトは検出されなかった。よって、上記で作製された粉体dは、BEAゼオライトおよびFAUゼオライトから構成されることが確認された。
【0088】
[比較例3-1]粉体e(BEA/FAU=62/38)の合成
アモルファス状のBEAゼオライト前駆体9.746gに対して、イオン交換後のFAUゼオライトを5.92g加えたこと以外は、実施例1-1と同様の手法にて、BEA/FAU=62/38の質量比で有する粉体e(平均粒子径7.32μm)を得た。
【0089】
粉体eについて、X線回折(XRD)法を用いて結晶構造を確認したところ、粉体eについてのXRDスペクトルからは、BEAゼオライトおよび、FAUゼオライトがともに検出され、他のタイプのゼオライトは検出されなかった。よって、上記で作製された粉体eは、BEAゼオライトおよびFAUゼオライトから構成されることが確認された。
【0090】
[比較例4-1]粉体f(混合粉体(BEA/FAU=80/20))の調製
比較例1-1で得た粉体a(BEAゼオライト)0.801gと、比較例2-1で得た粉体b(FAUゼオライト)0.203gと混合することにより、BEAゼオライトと、FAUゼオライトとが、BEA/FAU=80/20の質量比で混合された粉体f(平均粒子径6.94μm)を得た。
【0091】
粉体fについて、X線回折(XRD)法を用いて結晶構造を確認したところ、粉体fについてのXRDスペクトルからは、BEAゼオライトおよび、FAUゼオライトがともに検出され、他のタイプのゼオライトは検出されなかった。よって、上記で作製された粉体fは、BEAゼオライトおよびFAUゼオライトから構成されることが確認された。
【0092】
[比較例5-1]粉体g(混合粉体(BEA/FAU=70/30)の調製
比較例1で得た粉体a(BEAゼオライト)0.705gと、比較例2で得た粉体b(FAUゼオライト)0.302gとを乳鉢にて混合することにより、BEAゼオライトと、FAUゼオライトとが、BEA/FAU=70/30の質量比で混合された粉体g(平均粒子径6.21μm)を得た。
【0093】
粉体gについて、X線回折(XRD)法を用いて結晶構造を確認したところ、粉体gについてのXRDスペクトルからは、BEAゼオライトおよび、FAUゼオライトがともに検出され、他のタイプのゼオライトは検出されなかった。よって、上記で作製された粉体gは、BEAゼオライトおよびFAUゼオライトから構成されることが確認された。
【0094】
(ゼータ電位)
各粉体について、ゼータ電位を測定することにより粒子の表面状態を確認した。測定は、ゼータ電位測定装置(大塚電子社製、ELSZ-2Plus)を用いてJIS Z8836:2017に準拠して行った。測定条件は、液温25℃、pH=3にて、レーザードップラー法を用いて行った。また、測定溶液は各種粉末を精製水に0.5%分散させた溶液を用いた。pHの調整は0.1mol/L塩酸および0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて行った。結果を下記表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示すように、粉体a(BEAのみ)は-25.75mVのゼータ電位を有し、粉体h(FAUのみ)は32.06mVのゼータ電位を有する。表1の「ゼータ電位 理論値(mV)」の欄には、粉体aおよび粉体hについてのゼータ電位の実測値(mV)と、各粉体に含まれるBEAおよびFAUの各割合(質量%)とから、下記式により求められる理論値を記載している。
理論値(mV)=-25.75(mV)×BEAの割合(質量%)÷100+32.06(mV)×FAUの割合(質量%)÷100。
【0097】
粉体fおよびg(混合粉体)についてのゼータ電位の実測値は、それぞれの理論値と近似していた。
【0098】
粉体cおよびdについてのゼータ電位の実測値は、いずれも粉体a(BEAのみ)のゼータ電位と近似していた(|P-P|/|P-P|<0.1を満たす)。なお、表1には示していないが、粉体bについてもこれと同様の結果が得られた。よって、粉体b~dは、表面がBEAから構成されるものであると判断された。さらに、上記XRD測定の結果を考慮すると、粉体b~dは、FAUゼオライトからなるコアと、BEAゼオライトからなるシェルとを有するコアシェル型ゼオライトであることが確認された。
【0099】
粉体eについてのゼータ電位の実測値は、粉体a(BEAのみ)のゼータ電位と大きく異なっていた(|P-P|/|P-P|<0.1を満たす)。当該結果より、粉体eは、表面にはBEAおよびFAUの両方が存在すると考えられることから、コアシェル構造を有していないと判断された。
【0100】
また、粉体fおよびgは、第1のゼオライト(FAU)のみからなる粒子と、第2のゼオライト(BEA)のみからなる粒子とを、それぞれFAU:BEA=20:80および30:70の割合で混合して得た混合粉体であるが、|P-P|/|P-P|の値は、それぞれ0.23および0.30となる。この結果からも、第1のゼオライト(FAU)のみからなる粒子の割合が高いほど(粒子の表面における第1のゼオライト(FAU)の面積が広いほど)、|P-P|/|P-P|の値が大きくなるという相関関係があることが分かる。
【0101】
[HC吸着脱離性能]
各粉体のHC吸着脱離性能をトルエンTPD(Temperature Programmed Desorption)により評価した。測定には触媒分析装置(マイクロトラック・ベル社製、BELCAT II)を用いて行った。測定ガスとして、トルエンガス3000ppmCに水蒸気(3体積%)を含むヘリウムガスを用いた。サンプル量を0.050gとし、測定条件は、50℃から400℃まで昇温速度10℃/minで行った。反応後のガスを四重極質量分析計(BELMASS、マイクロトラック・ベル社製)を用いて分析した。この時、トルエンの検出量が流通させたトルエン濃度である3000ppmCと最初に一致する温度を脱離開始温度、またトルエンの検出量が極大となる温度をピークトップ温度とし、解析を行った。この脱離開始温度、ピークトップ温度が高温であるほど、ゼオライトは優れた炭化水素吸着脱離能力を有する。なお、粉体eについては、前述のようにコアシェル構造を有していないと判断されたため、本評価を行わなかった。結果を下記表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
表2より、本発明に係る粉体b~dは、脱離開始温度およびピークトップ温度が有意に高いことが分かる。よって、本発明に係るコアシェル型ゼオライトによると、HCの脱離温度を上昇できることが示された。
【0104】
[SEM画像]
コアシェル型ゼオライト粉体dおよびFAUゼオライト粉体hについて、粉体表面をFE-SEM(電界放出形走査電子顕微鏡)にて観察した。観察は、日本電子社製 FE-SEM JSM-6700FSを用い、エミッション電流10μA、加速電圧12.5kVの条件にて行った。図1および2に粉体dおよび粉体hのSEM画像をそれぞれ示す。図2に示すように、FAUゼオライト粉体hの表面はなめらかであるが、図1のコアシェル型ゼオライト粉体dはBEAゼオライトのシェルを有することから、表面にBEAゼオライト特有の凹凸が観察され、FAUゼオライトとは外観が異なることがわかる。
【0105】
<排気ガス浄化用触媒の作製>
[比較例1-2]
粉体aを70.4質量部、アルミナゾルを固形分量が9.6質量部となるように秤量した。アルミナゾルを蒸留水に加えて攪拌し、その後粉体aを加えて10分間攪拌した。次に、湿式粉砕を行い、スラリーa1を得た。
【0106】
La含有アルミナ(La含有率が4質量%、平均粒径D50が5μm、BET表面積が172.4m/g)を36質量部、CeZrLa複合酸化物(CeO:ZrO:La=47:47:6(質量比))を18.5質量部、硫酸バリウムを4.62質量部秤量した。蒸留水にこれらを加えて10分間攪拌した後、硝酸パラジウム水溶液(濃度21質量%)2.19質量部を滴下しながら10分間攪拌した。攪拌後、湿式粉砕を行い、スラリーa2を得た。
【0107】
スラリーa1をコージェライト製の三次元構造体(直径25.4mm、長さ30mm、円筒形、0.0157L、400セル/平方インチ)に焼成後の担持量が80g/Lとなるようにウォッシュコートした。次に、空気中150℃で5分間乾燥した後、空気中550℃で30分間焼成した。
【0108】
次に、スラリーa1をウォッシュコートした後の三次元構造体に、スラリーa2を焼成後の担持量が59.58g/Lとなるようウォッシュコートした。次に、空気中150℃で5分間乾燥した後、空気中550℃で30分間焼成することで、触媒Aを得た。
【0109】
[比較例2-2]
粉体aに代えて、粉体hを用いたこと以外は、比較例1-2と同様の手法にて、触媒Hを得た。
【0110】
[実施例3-2]
粉体aに代えて、粉体dを用いたこと以外は、比較例1-2と同様の手法にて、触媒Dを得た。
【0111】
[比較例5-2]
粉体aに代えて、粉体gを用いたこと以外は、比較例1-2と同様の手法にて、触媒Gを得た。
【0112】
<排気ガス浄化用触媒の評価>
(HC脱離温度)
触媒A、D、G、およびHについて、下記表3に示す組成を有するガス(空間速度50000hr-1、ガス線速0.42m/秒)を流通させながら、触媒のガス流入側端面から1cmの位置の温度を40℃/分の昇温速度で50℃から400℃まで昇温させた。この時に、トルエンの検出量が流通させたトルエン濃度である840ppmCと最初に一致する温度を脱離開始温度、またトルエンの検出量が極大となる温度をピークトップ温度とし、解析を行った。この脱離開始温度、ピークトップ温度がより高温であるほど、触媒は優れた炭化水素吸着脱離能力を有する。結果を下記表4に示す。
【0113】
(HC浄化率)
また、触媒A、D、G、及びHについて、下記表3に示す組成を有するガス(空間速度50000hr-1、ガス線速0.42m/秒)を、流通させながら、触媒のガス流入側端面から1cmの位置の温度を110℃に設定した場合におけるHC浄化率を表4に示す。
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
表4より、本発明に係る触媒Dは、脱離開始温度およびピークトップ温度が有意に高いことが分かる。本発明に係るコアシェル型ゼオライトを含む触媒によると、HCの脱離温度が上昇することにより、PdによるHCの浄化が可能な温度域でHCを脱離させることができる。その結果、触媒におけるHC浄化性能を向上させることが可能となる。本発明に係るコアシェル型ゼオライトを含む触媒によると、110℃という低温においても、HC浄化率が高いことがわかる。
図1
図2