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特開2024-157069固体電解質、固体電解質の製造方法、および電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157069
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】固体電解質、固体電解質の製造方法、および電池
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/06 20060101AFI20241030BHJP
   H01M 10/056 20100101ALI20241030BHJP
   H01M 6/18 20060101ALI20241030BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01M10/056
H01M6/18 A
H01B13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153978
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 紗英
(72)【発明者】
【氏名】森岡 孝至
【テーマコード(参考)】
5G301
5H024
5H029
【Fターム(参考)】
5G301CA16
5G301CD01
5H024BB07
5H024BB11
5H024FF14
5H024FF19
5H024FF23
5H024HH00
5H024HH01
5H024HH02
5H024HH10
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AM03
5H029AM07
5H029AM12
5H029CJ06
5H029CJ08
5H029CJ11
5H029HJ00
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ07
(57)【要約】
【課題】イオン伝導度、およびリチウム金属に対する安定性が高い固体電解質を提供すること。
【解決手段】リチウム塩、およびカーボネート系溶媒を含む電解液と、金属酸化物粒子と、アクリル系重合体を含む結着剤と、を含有する、固体電解質。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩、およびカーボネート系溶媒を含む電解液と、
金属酸化物粒子と、
アクリル系重合体を含む結着剤と、
を含有する、
固体電解質。
【請求項2】
請求項1に記載の固体電解質において、
前記アクリル系重合体が、アクリル系重合性化合物に由来する構成単位を含み、
前記アクリル系重合性化合物は、反応速度定数kが700L・mol-1・s-1以上である単官能(メタ)アクリレート化合物を含む、
固体電解質。
【請求項3】
請求項2に記載の固体電解質において、
前記アクリル系重合性化合物は、さらに、前記単官能(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物を含む、
固体電解質。
【請求項4】
請求項3に記載の固体電解質において、
前記多官能(メタ)アクリレート化合物が、1,9-ビス(アクリロイルオキシ)ノナン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートからなる群から選択される少なくとも1つである、
固体電解質。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の固体電解質において、
前記アクリル系重合性化合物に由来する構成単位は、前記単官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位、および前記多官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位からなる群から選択される少なくとも1つを含み、
前記単官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、前記多官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位との合計を100モル%としたとき、
前記単官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位の含有量が、90モル%以上100モル%以下であり、
前記多官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位の含有量が、0モル%以上10モル%以下である、
固体電解質。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の固体電解質において、
前記電解液と、前記金属酸化物粒子と、前記結着剤との合計含有量を100質量%としたとき、
前記電解液の含有量が、77質量%以上90質量%以下であり、
前記金属酸化物粒子の含有量が、4質量%以上16質量%以下であり、
前記結着剤の含有量が、3質量%以上10質量%以下である、
固体電解質。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の固体電解質において、
前記リチウム塩が、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、およびホウフッ化リチウムからなる群から選択される少なくとも1つである、
固体電解質。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の固体電解質において、
前記カーボネート系溶媒が、ジメチルカーボネート、およびプロピレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つである、
固体電解質。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の固体電解質において、
前記電解液に含まれる、前記カーボネート系溶媒に対する前記リチウム塩のモル比(リチウム塩/カーボネート系溶媒)が、1/4以上1/1以下である、
固体電解質。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の固体電解質において、
前記金属酸化物粒子が、シリカ粒子である、
固体電解質。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の固体電解質において、
前記金属酸化物粒子のBET法により測定される比表面積が、160m/g以上700m/g以下である、
固体電解質。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の固体電解質を備える、
電池。
【請求項13】
電解液、金属酸化物粒子、アクリル系重合性化合物、および光重合開始剤を混合して、混合物を調製する工程と、
前記混合物を成形して、成形物を得る工程と、
前記成形物に対し、紫外線を照射することにより、前記アクリル系重合性化合物が硬化したアクリル系重合体を含む固体電解質を得る工程と、
を備え、
前記電解液が、リチウム塩、およびカーボネート系溶媒を含み、
前記固体電解質が、前記電解液、前記金属酸化物粒子、および前記アクリル系重合体を含む結着剤を含有する、
固体電解質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質、固体電解質の製造方法、および電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解質は、液体電解質とは異なり、液漏れの心配がなく、軽量かつフレキシブルな電解質膜を形成できる。そのため、固体電解質は、リチウムイオン等を用いた二次電池などへの応用が期待される。例えば、特許文献1には、金属酸化物とイオン伝導材とを含み、特定のイオン伝導材が金属酸化物粒子に担持されている疑似固体電解質が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-059432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の疑似固体電解質は、イオン伝導材として、グライム類またはN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのいずれか一方と、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含むリチウム塩との混合物を使用している。このイオン伝導材は、イオン液体系の電解液である。また、特許文献1に記載の疑似固体電解質は、結着剤として、テトラフルオロエチレン粉末を用いている。しかしながら、より厳しい使用環境下では、イオン液体系の電解液と、テトラフルオロエチレン粉末の結着剤とを用いた固体電解質は、リチウム金属に対する安定性などの特性が十分ではなかった。このため、固体電解質は、より安定なサイクル放充電性能など、固体電解質の特性として、さらなる改善が求められている。
【0005】
本発明の目的は、イオン伝導度、およびリチウム金属に対する安定性が高い固体電解質、およびこの固体電解質の製造方法、並びにこの固体電解質を備える電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、リチウム塩、およびカーボネート系溶媒を含む電解液と、金属酸化物粒子と、アクリル系重合体を含む結着剤と、を含有する、固体電解質が提供される。
【0007】
本発明の一態様に係る固体電解質において、前記アクリル系重合体が、アクリル系重合性化合物に由来する構成単位を含み、前記アクリル系重合性化合物は、反応速度定数kが700L・mol-1・s-1以上である単官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
【0008】
本発明の一態様に係る固体電解質において、前記アクリル系重合性化合物は、さらに、前記単官能(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係る固体電解質において、前記多官能(メタ)アクリレート化合物が、1,9-ビス(アクリロイルオキシ)ノナン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係る固体電解質において、前記アクリル系重合性化合物に由来する構成単位は、前記単官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位、および前記多官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位からなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記単官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、前記多官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位との合計を100モル%としたとき、前記単官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位の含有量が、90モル%以上100モル%以下であり、前記多官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位の含有量が、0モル%以上10モル%以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る固体電解質において、前記電解液と、前記金属酸化物粒子と、前記結着剤との合計含有量を100質量%としたとき、前記電解液の含有量が、77質量%以上90質量%以下であり、前記金属酸化物粒子の含有量が、4質量%以上16質量%以下であり、前記結着剤の含有量が、3質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る固体電解質において、前記リチウム塩が、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、およびホウフッ化リチウムからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係る固体電解質において、前記カーボネート系溶媒が、ジメチルカーボネート、およびプロピレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0014】
本発明の一態様に係る固体電解質において、前記電解液に含まれる、前記カーボネート系溶媒に対する前記リチウム塩のモル比(リチウム塩/カーボネート系溶媒)が、1/4以上1/1以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の一態様に係る固体電解質において、前記金属酸化物粒子が、シリカ粒子であることが好ましい。
【0016】
本発明の一態様に係る固体電解質において、前記金属酸化物粒子のBET法により測定される比表面積が、160m/g以上700m/g以下であることが好ましい。
【0017】
本発明の一態様によれば、前記本発明の一態様に係る固体電解質を備える電池が提供される。
【0018】
本発明の一態様によれば、電解液、金属酸化物粒子、アクリル系重合性化合物、および光重合開始剤を混合して、混合物を調製する工程と、前記混合物を成形して、成形物を得る工程と、前記成形物に対し、紫外線を照射することにより、前記アクリル系重合性化合物が硬化したアクリル系重合体を含む固体電解質を得る工程と、を備え、前記電解液が、リチウム塩、およびカーボネート系溶媒を含み、前記固体電解質が、前記電解液、前記金属酸化物粒子、および前記アクリル系重合体を含む結着剤を含有する、固体電解質の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、イオン伝導度、およびリチウム金属に対する安定性が高い固体電解質、およびこの固体電解質の製造方法、並びにこの固体電解質を備える電池が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について実施形態を例に挙げて説明する。本発明は実施形態の内容に限定されない。
【0021】
[固体電解質]
本実施形態に係る固体電解質について説明する。
【0022】
本実施形態に係る固体電解質は、リチウム塩、およびカーボネート系溶媒を含む電解液と、金属酸化物粒子と、アクリル系重合体を含む結着剤とを含有する。本実施形態に係る固体電解質によれば、イオン伝導度、およびリチウム金属に対する安定性が高い固体電解質が得られる。この理由は、以下のように推察される。
【0023】
本実施形態に係る固体電解質においては、電解液と金属酸化物粒子とを含有することで、電解液のチキソトロピー性(以下、チキソ性と称する場合がある)が向上する。このため、金属酸化物粒子を含む電解液の膜状化が可能になる。この膜状化が可能になることで、電解液のイオン伝導性を損なうことを抑えつつ、電解液の漏出抑制が可能になる。さらに、本実施形態に係る固体電解質は、アクリル系重合体を含むことで、膜状化が可能になるとともに、リチウム金属に対する安定性が向上する。以上により、本実施形態に係る固体電解質は、イオン伝導度、およびリチウム金属に対する安定性が高い(これらの特性のうち、特に、リチウム金属に対する安定性が高い)固体電解質が得られると推察される。
【0024】
<電解液>
本実施形態に係る電解液は、リチウム塩と、カーボネート系溶媒とを含ませることによって得られる。
【0025】
(リチウム塩)
本実施形態に係るリチウム塩は、例えば、具体的には、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート(LiTDI)、リチウム4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾレート(LiDCTA)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、硝酸リチウム(LiNO)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、およびフッ化リチウム(LiF)などが挙げられる。
【0026】
これらの中でも、イオン伝導度、およびリチウム金属に対する安定性が高い固体電解質が得られる点で、リチウム塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、およびホウフッ化リチウムから選択される少なくとも1つであることが好ましい。リチウム塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、およびホウフッ化リチウム(LiBF)のいずれかを1種単独で用いてもよく、これら2種を併用してもよい。固体電解質中でリチウム塩は、リチウム金属の陽イオンおよび当該陽イオンの対イオンとして存在し得る。これらのリチウム塩を用いることで、特に、リチウム金属に対する安定性がより向上する。
【0027】
(カーボネート系溶媒)
本実施形態に係るカーボネート系溶媒は、具体的には、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、およびブチレンカーボネート(BC)などが挙げられる。これらの中でも、イオン伝導度、およびリチウム金属に対する安定性が高い固体電解質が得られる点で、カーボネート系溶媒は、ジメチルカーボネート、およびプロピレンカーボネートから選択される少なくとも一つであることが好ましい。カーボネート系溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)、およびプロピレンカーボネート(PC)のいずれかを1種単独で用いてもよく、これら2種を併用してもよい。ここで、本実施形態におけるカーボネート系溶媒は、分子構造中にカーボネート骨格を有する化合物を表す。
【0028】
(リチウム塩とカーボネート系溶媒とのモル比)
本実施形態に係る電解液において、カーボネート系溶媒に対するリチウム塩のモル比(リチウム塩/カーボネート系溶媒)は、1/4以上1/1以下であることが好ましい。このモル比が、1/4以上であると、リチウム金属に対する安定性が向上しやすい。一方、このモル比が、1/1以下であると、カーボネート系溶媒に対してリチウム塩が溶解しやすくなる。イオン伝導度、およびリチウム金属に対する安定性が高い固体電解質が得られる点で、このモル比は、1/3以上1/1以下であってもよく、1/2以上1/1以下であってもよい。
【0029】
理由は定かではないが、本実施形態に係る電解液は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、およびホウフッ化リチウムから選択される少なくとも1つであるリチウム塩と、ジメチルカーボネート、およびプロピレンカーボネートから選択される少なくとも一つであるカーボネート系溶媒とを組み合わせた電解液の場合、これらのリチウム塩以外のリチウム塩と、これらのカーボネート系溶媒以外のカーボネート系溶媒とを組み合わせた電解液の場合に比べ、リチウム金属に対する安定性がより優れる。また、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、およびホウフッ化リチウムから選択される少なくとも1つであるリチウム塩と、ジメチルカーボネート、およびプロピレンカーボネートから選択される少なくとも一つであるカーボネート系溶媒とを組み合わせた電解液の場合、リチウム塩とカーボネート系溶媒との含有量は、モル比で、1/4以上1/1以下の範囲で含む場合、リチウム金属に対する安定性がより優れる。
【0030】
固体電解質中の電解液の含有量は、イオン伝導度、およびリチウム金属に対する安定性が高い固体電解質が得られる点で、固体電解質全体に対して、75質量%以上であることが好ましく、77質量%以上であることがより好ましく、78質量%以上であることがさらに好ましく、79質量%以上であることがよりさらに好ましい。また、同様の点で、固体電解質中の電解液の含有量は、固体電解質全体に対して、90質量%以下であることが好ましく、89質量%以下であることがより好ましく、88質量%以下であることがさらに好ましい。
【0031】
<金属酸化物粒子>
本実施形態に係る固体電解質は、金属酸化物粒子を含有する。本実施形態に係る固体電解質において、電解液と金属酸化物粒子とを含ませることで、電解液が金属酸化物粒子に担持された状態となる。ここで、本実施形態において、担持された状態とは、金属酸化物粒子の表面の少なくとも一部に、電解液が被覆した状態を表す。
【0032】
金属酸化物粒子は、固体電解質の膜状化を容易にする点で、BET法により測定される比表面積が、160m/g以上700m/g以下であることが好ましい。金属酸化物粒子の比表面積(BET法)は、160m/g以上であると、チキソ性が向上しやすく、金属酸化物粒子を含む電解液(つまり、固体電解質)の膜が形成されやすくなる。また、比表面積(BET法)は、700m/g以下であると、電解液との混合性が良好になり、固体電解質の膜が形成されやすくなる。固体電解質の膜状化をより容易にする点で、金属酸化物粒子の比表面積(BET法)は、165m/g以上であることがより好ましく、170m/g以上であることがさらに好ましい。また、同様の点で、600m/g以下であることがより好ましく、520m/g以下であることがさらに好ましい。ここで、BET法とは、固体粒子に、気体分子(通常、窒素ガス)を吸着させ、吸着した気体分子の量から固体粒子の比表面積を測定する方法である。比表面積の測定は、各種のBET測定装置を用いて測定することができる。
【0033】
金属酸化物粒子は、上記の比表面積を示す金属酸化物粒子を1種単独で用いてもよく、比表面積の異なる金属酸化物粒子を2種以上併用してもよい。金属酸化物粒子の種類は、特に限定されず、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、セリア粒子、珪酸マグネシウム粒子、珪酸カルシウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化アンチモン粒子、酸化インジウム粒子、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子、酸化鉄粒子、酸化マグネシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、チタン酸カリウム粒子、およびチタン酸バリウム粒子等が挙げられる。金属酸化物粒子は、これらの金属酸化物粒子を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、金属酸化物粒子は、チキソ性向上の点で、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化マグネシウム粒子、およびチタン酸バリウム粒子から選択される少なくとも1種であることが好ましい。金属酸化物粒子は、軽量かつ粒子径が小さい点で、シリカ粒子であることがより好ましい。
【0034】
金属酸化物粒子としてシリカ粒子を用いる場合、シリカ粒子は、湿式シリカ粒子でもよく、乾式シリカ粒子でもよい。湿式シリカ粒子は、例えば、珪酸ナトリウムと鉱酸との中和反応によって得られる沈降法、およびゾルゲル法の湿式シリカ粒子が挙げられる。また、乾式シリカ粒子は、シラン化合物を燃焼させて得られる燃焼法シリカ粒子(ヒュームドシリカ粒子)、および金属珪素粉を爆発的に燃焼させて得られる爆燃法シリカ粒子が挙げられる。シリカ粒子が乾式シリカ粒子であると、シリカ粒子由来による水分の混入が抑制できるため、電解質の劣化が抑制されやすい。このため、電解質の劣化抑制の点で、シリカ粒子は、乾式シリカ粒子であることが好ましく、ヒュームドシリカ粒子であることがより好ましい。
【0035】
固体電解質中の金属酸化物粒子の含有量は、固体電解質の膜状化を容易にする点で、固体電解質全体に対して、4質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、6質量%以上であることがさらに好ましい。また、同様の点で、固体電解質中の金属酸化物粒子の含有量は、固体電解質全体に対して、16質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、14質量%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
<結着剤>
本実施形態に係る固体電解質は、アクリル系重合体を含む結着剤(以下、単に結着剤と称する場合がある。)を含有する。本実施形態に係る固体電解質において、結着剤として、アクリル系重合体を含むことで、膜状化が可能になるとともに、リチウム金属に対する安定性が向上する。
【0037】
(アクリル系重合体)
本実施形態に係る固体電解質において、アクリル系重合体は、アクリル系重合性化合物に由来する構成単位を含む。つまり、アクリル系重合体は、アクリル系重合性化合物をモノマーとして重合した樹脂であり、主鎖中に、アクリル系重合性化合物に由来する構成単位を含む樹脂である。ここで、「由来する」とは、モノマーが重合するときに、必要な構造の変化を受けたことを意味する。
【0038】
〔アクリル系重合性化合物〕
アクリル系重合性化合物は、(メタ)アクリレート化合物を含む。アクリル系重合性化合物は、単官能(メタ)アクリレート化合物のみを含んでいてもよく、単官能(メタ)アクリレート化合物と、多官能(メタ)アクリレート化合物との両者を含んでいてもよい。
【0039】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および「メタクリル」の双方を表す場合に用いる表記であり、他の類似用語についても同様である。
本明細書において、多官能(メタ)アクリレート化合物は、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物を意味する。
【0040】
・単官能(メタ)アクリレート化合物
本実施形態に係る固体電解質は、固体電解質の膜状化を容易にする点で、アクリル系重合性化合物として、反応速度定数kが700L・mol-1・s-1以上である単官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。同様の点で、アクリル系重合性化合物に含まれる単官能(メタ)アクリレート化合物の反応速度定数kは、710L・mol-1・s-1以上であることがより好ましく、720L・mol-1・s-1以上であることがさらに好ましい。アクリル系重合性化合物に含まれる単官能(メタ)アクリレート化合物の反応速度定数kの上限は、特に限定されず、例えば、40000L・mol-1・s-1以下であってもよく、35000L・mol-1・s-1以下であってもよい。本明細書において、反応速度定数kが700L・mol-1・s-1以上である単官能(メタ)アクリレート化合物を、(A)成分と称する場合がある。反応速度定数kが700L・mol-1・s-1以上である単官能(メタ)アクリレート化合物を用いると、単官能(メタ)アクリレート化合物の反応性が向上し、分子量が増大することにより、固体電解質が膜状化しやすくなると考えられる。
【0041】
反応速度定数kが700L・mol-1・s-1以上である単官能(メタ)アクリレート化合物は、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸でもよく、アルキル(メタ)アクリレートでもよい。反応速度定数kが700L・mol-1・s-1以上である単官能(メタ)アクリレート化合物は、炭素数1以上3以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、およびイソプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、反応速度定数kが700L・mol-1・s-1以上である単官能(メタ)アクリレート化合物は、メチル(メタ)アクリレートであることがより好ましい。また、反応速度定数kが700L・mol-1・s-1以上である単官能(メタ)アクリレート化合物を用いることで、イオン伝導度、およびリチウム金属に対する安定性が高い固体電解質がより得られやすくなる。
【0042】
・多官能(メタ)アクリレート化合物
本実施形態に係る固体電解質は、固体電解質の膜状化を容易にする点で、アクリル系重合性化合物として、さらに、単官能(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。アクリル系重合性化合物として、さらに、単官能(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物を含むと、イオン伝導度、およびリチウム金属に対する安定性が高い固体電解質がより得られやすくなる。本明細書において、多官能(メタ)アクリレート化合物を、(B)成分と称する場合がある。
【0043】
多官能(メタ)アクリレート化合物は、反応速度定数kが700L・L・mol-1・s-1以上である単官能(メタ)アクリレート化合物以外の2官能以上の(メタ)アクリレート化合物であれば、特に限定されない。多官能(メタ)アクリレート化合物は、イオン伝導度、およびリチウム金属に対する安定性が高い固体電解質を得る点、並びに固体電解質の膜状化を容易にする点で、アクリロイル基以外の反応性基を持たない多官能(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
【0044】
多官能(メタ)アクリレート化合物は、例えば、具体的には、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート(1,9-ビス(アクリロイルオキシ)ノナン)、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、およびアダマンタンジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート化合物;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
【0045】
これらの中でも、イオン伝導度、およびリチウム金属に対する安定性が高い固体電解質を得る点、並びに固体電解質の膜状化を容易にする点で、多官能(メタ)アクリレート化合物は、1,9-ビス(アクリロイルオキシ)ノナン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0046】
本実施形態に係る固体電解質において、アクリル系重合体が含むアクリル系重合性化合物に由来する構成単位は、単官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位、および多官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。アクリル系重合性化合物に由来する構成単位は、単官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位を含むことがより好ましい。アクリル系重合性化合物に由来する構成単位は、単官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、多官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位とを含むことがさらに好ましい。固体電解質の膜状化を容易にする点で、単官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位、および多官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位の含有量は、以下に示す範囲であることが好ましい。また、単官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位、および多官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位の含有量が、以下に示す範囲であると、イオン伝導度、およびリチウム金属に対する安定性が高い固体電解質がより得られやすくなる。
【0047】
単官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、多官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位との合計を100モル%としたとき、単官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位の含有量は、90モル%以上であることが好ましく、91モル%以上であることがより好ましく、93モル%以上であることがさらに好ましい。単官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位の含有量は、100モル%以下であることが好ましく、99モル%以下であることがより好ましく、97モル%以下であることがさらに好ましい。
【0048】
単官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、多官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位との合計を100モル%としたとき、多官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位の含有量は、0モル%以上であることが好ましく、1モル%以上であることがより好ましく、3モル%以上であることがさらに好ましい。多官能(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位の含有量は、10モル%以下であることが好ましく、9モル%以下であることがより好ましく、7モル%以下であることがさらに好ましい。
【0049】
固体電解質中のアクリル系重合体の含有量は、固体電解質の膜状化を容易にする点で、固体電解質全体に対して、3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、同様の点で、固体電解質中の金属酸化物粒子の含有量は、固体電解質全体に対して、10質量%以下であることが好ましく、9質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
〔光重合開始剤〕
本実施形態に係る固体電解質は、アクリル系重合体を得るために、光重合開始剤を用いることが好ましい。本実施形態に係る固体電解質において、アクリル系重合体は、アクリル系重合性化合物と、光重合開始剤とを含む結着剤用組成物を重合させることで得られる。
【0051】
光重合開始剤は、特に限定されず、アクリル系重合性化合物を硬化させる目的で使用される公知の化合物が挙げられる。光重合開始剤は、紫外線に感応する光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
光重合開始剤は、例えば、具体的には、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、および1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、および2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびアニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、および3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、および2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート;オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン]等が挙げられる。
【0053】
固体電解質中の結着剤の含有量は、固体電解質の膜状化を容易にする点で、固体電解質全体に対して、3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、同様の点で、固体電解質中の結着剤の含有量は、固体電解質全体に対して、10質量%以下であることが好ましく、9質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることがさらに好ましい。
【0054】
本実施形態に係る固体電解質は、前述の本実施形態に係るリチウム塩、およびカーボネート系溶媒を含む電解液と、金属酸化物粒子と、アクリル系重合体を含む結着剤とを含有する。本実施形態に係る固体電解質は、本発明の目的を損なわない限りにおいて、これら以外の成分を含んでいてもよい。
【0055】
<金属酸化物と電解液と結着剤との質量比>
本実施形態に係る固体電解質は、固体電解質の膜状化を容易にする点で、電解液と、金属酸化物粒子と、結着剤との合計含有量を100質量%としたとき、下記に示す含有量であることが好ましい。また、電解液、金属酸化物粒子、および結着剤の合計含有量において、電解液、金属酸化物粒子、および結着剤の含有量が下記に示す範囲であると、イオン伝導度、およびリチウム金属に対する安定性が高い固体電解質がより得られやすくなる。
電解液の含有量は、77質量%以上90質量%以下であり、金属酸化物粒子の含有量は、4質量%以上16質量%以下であり、結着剤の含有量は、3質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
電解液の含有量は、78質量%以上89質量%以下であり、金属酸化物粒子の含有量は、5質量%以上15質量%以下であり、結着剤の含有量は、4質量%以上9質量%以下であることがより好ましい。
電解液の含有量は、79質量%以上88質量%以下であり、金属酸化物粒子の含有量は、6質量%以上14質量%以下であり、結着剤の含有量は、5質量%以上8質量%以下であることがさらに好ましい。
【0056】
[固体電解質の製造方法]
次に、本実施形態に係る固体電解質の製造方法について説明する。
【0057】
本実施形態に係る固体電解質の製造方法は、下記の工程を備える。
電解液、金属酸化物粒子、アクリル系重合性化合物、および光重合開始剤を混合して、混合物を調製する工程(工程1)
混合物を成形して、成形物を得る工程(工程2)
成形物に対し、紫外線を照射することにより、アクリル系重合性化合物が硬化したアクリル系重合体を含む固体電解質を得る工程(工程3)
そして、電解液は、リチウム塩、およびカーボネート系溶媒を含み、固体電解質は、電解液、金属酸化物粒子、およびアクリル系重合体を含む結着剤を含有する。
【0058】
本実施形態に係る固体電解質の製造方法によれば、イオン伝導度、およびリチウム金属に対する安定性が高い固体電解質が得られる。また、本実施形態に係る固体電解質の製造方法によれば、アクリル系重合体を得るための結着剤用組成物として、アクリル系重合性化合物、および光重合開始剤を用いることで、固体電解質を得るための成形性が向上する。成形性が向上する点は、次のように考えられる。本実施形態に係る固体電解質の製造方法は、固体電解質を得るための原材料を混合するときに、強いせん断力を加えなくても、固体電解質が得られやすくなる。これに対し、結着剤として、テトラフルオロエチレン粉末などのフッ素樹脂を用いて固体電解質を得るためには、テトラフルオロエチレン粉末を混合するときに、強いせん断力を加えることが必要となる。このため、本実施形態に係る固体電解質の製造方法では、成形性が向上する。
【0059】
(工程1)
工程1は、固体電解質を得るための原材料を混合して、混合物を得る工程である。工程1では、まず、固体電解質を得るための原材料として、前述のリチウム塩、およびカーボネート系溶媒を含む電解液と、前述の金属酸化物粒子と、前述のアクリル系重合体で説明したアクリル系重合性化合物および光重合開始剤をそれぞれ準備する。次に、これらの原材料を目的とする量で秤量する。その後、秤量した各原材料を混合して、混合物が調製される。混合物は、公知の撹拌装置などによって各原材料を撹拌して、調製してもよい。本実施形態に係る固体電解質の製造方法において、混合物の調製は、強いせん断力を付与しなくてよい。
【0060】
工程1において、金属酸化物粒子と、電解液と、結着剤用組成物としてのアクリル系重合性化合物および光重合開始剤とを混合するとき、例えば、以下の比率で混合することが好ましい。金属酸化物粒子と、電解液と、結着剤用組成物との合計含有量を100質量%としたとき、金属酸化物粒子と、電解液と、結着剤用組成物との混合比率は、例えば、質量基準で、金属酸化物粒子が、4質量%以上16質量%以下、電解液が、77質量%以上90質量%以下、結着剤用組成物が、3質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0061】
結着剤用組成物中において、アクリル系重合性化合物と、光重合開始剤との含有量は、アクリル系重合性化合物と、光重合開始剤との合計含有量を100モル%としたとき、例えば、アクリル系重合性化合物の含有量は、90モル%以上99.9モル%以下であり、光重合開始剤は、0.1モル%以上10モル%以下であることが好ましい。
【0062】
(工程2)
工程2は、工程1で調製した混合物から成形物を得る工程である。工程2では、工程1で調製した混合物を成形することにより、成形物が得られる。混合物の成形は、特に限定されず、例えば、混合物を支持体の表面に塗布して塗膜を形成することで成形してもよい。また、混合物の成形は、例えば、剥離性を示す金型で圧縮成形が施されることで成形してもよい。剥離性を示す金型は、例えば、フィルムの表面に離型処理を施した離型フィルムであってもよい。
【0063】
(工程3)
工程3は、工程2で得た成形物から固体電解質を得る工程である。工程3では、工程2で成形した成形物に対し、紫外線を照射することにより、アクリル系重合性化合物が硬化して、アクリル系重合体が形成される。そして、前述の電解液と、前述の金属酸化物粒子と、硬化したアクリル系重合体とを含む固体電解質が得られる。成形体に対して紫外線を照射する装置は、特に限定されず、アクリル系重合性化合物が硬化する装置であればよい。例えば、紫外線を照射する装置は、紫外線LEDランプを備えた装置でもよく、高圧水銀ランプを備えた装置でもよく、メタルハライドランプを備えた装置でもよい。
【0064】
成形体に対して紫外線(UV)を照射する条件は、特に限定されず、アクリル系重合性化合物が硬化する条件であればよい。紫外線を照射するときの最大照度および積算光量は、例えば、以下の条件が挙げられる。最大照度は、例えば、5mW/cm以上であってもよく、10mW/cm以上であってもよく、50mW/cm以上であってもよい。また、最大照度は、1000mW/cm以下であってもよく、700mW/cm以下であってもよく、500mW/cm以下であってもよい。積算光量は、例えば、50mJ/cm以上であってもよく、100mJ/cm以上であってもよく、500mJ/cm以上であってもよい。また、積算光量は、5000mJ/cm以下であってもよく、3000mJ/cm以下であってもよく、2000mJ/cm以下であってもよい。
【0065】
以上の工程1、工程2、および工程3を経ることによって、本実施形態に係る固体電解質が得られる。
【0066】
[電池]
次に、本実施形態に係る電池について説明する。
【0067】
本実施形態に係る電池は、本実施形態に係る固体電解質を備える。本実施形態において、電池の電解質層の構成材料として、本実施形態に係る固体電解質を備えることが好ましい。電池は、陽極と、陰極と、陽極および陰極の間に配置される電解質層とで構成される。このような構成とすることで、各特性に優れた電池を得ることができる。また、電池としては、二次電池であることが好ましく、リチウムイオン二次電池であることがより好ましい。本実施形態に係るリチウムイオン二次電池が備える各種部材は、特に限定されず、例えば、電池に一般的に使用される材料を用いることができる。
【0068】
なお、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
【実施例0069】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されない。なお、以下の実施例および比較例における測定または評価は、以下に示す方法により行った。
【0070】
[固体電解質のイオン伝導度測定]
固体電解質膜を直径6mmの円形に切り抜き、電極として2枚のステンレス板で挟み、ステンレス板間のインピーダンスを測定した。測定には、電極間に交流(印加電圧は10mV)を印加して抵抗成分を測定する交流インピーダンス法を用いて、得られたコール・コールプロットの実数インピーダンス切片よりイオン伝導度を算出した。なお、測定にはポテンショスタット/ガルバノスタット(VMP-300 biologic社製)を用いた。
イオン伝導度(σ)は、下記数式(F1)により求めた。
σ=L/(R×S)・・・(F1)
数式(F1)中、σはイオン伝導度(単位:S・cm-1)、Rは抵抗(単位:Ω)、Sは固体電解質膜の測定時の断面積(単位:cm)、Lは電極間距離(単位:cm)を示す。
測定温度は、25℃である。また、複素インピーダンスの測定結果からイオン伝導度(σ)を算出した。
【0071】
[電解液のイオン伝導度測定]
直径19mmの円形のメッシュクロス(α-UX SCREEN 150-035/380TW,株式会社NBCメッシュテック社製)をセパレーターとして使用した。そして、実施例又は比較例に使用するリチウム塩およびカーボネート系溶媒を所定処方で配合した電解液をセパレーターに含浸し、電極として2枚の直径16mmのステンレス板で挟み、ステンレス板間のインピーダンスを測定した。測定には、電極間に交流(印加電圧は10mV)を印加して抵抗成分を測定する交流インピーダンス法を用いて、得られたコール・コールプロットの実数インピーダンス切片よりイオン伝導度を算出した。なお、測定にはポテンショスタット/ガルバノスタット(VMP-300 biologic社製)を用いた。
イオン伝導度(σ)は、下記数式(F2)により求めた。
σ=L/(R×S)・・・(F2)
数式(F2)中、σはイオン伝導度(単位:S・cm-1)、Rは抵抗(単位:Ω)、Sは電極の断面積(単位:cm)、Lは電極間距離(単位:cm)を示す。
測定温度は、25℃である。また、複素インピーダンスの測定結果からイオン伝導度(σ)を算出した。
【0072】
[リチウム金属に対する安定性評価(溶解析出試験)]
固体電解質膜を直径19mmの円形に切り抜き、電極として2枚のリチウム金属で挟み、リチウム対称セルを作製した。リチウム金属電極は直径16mmとした。温度25℃において電流密度を3mA/cmとし、酸化電流を3mAh/cmまで流した後、続いて還元電流を3mAh/cmまで流した。この一連の作業を200サイクル繰り返し、200サイクル経過後の電圧変化を測定した。この電圧測定によって、リチウム金属の溶解析出挙動を調べた。短絡等がなく電圧が一定で溶解・析出が繰り返されるときにリチウム金属に対し安定であると確認できる。初期サイクルの電圧から±20mV以内の電位で作動したサイクルの回数を安定作動サイクル数とし、各例のリチウム金属に対する安定性を比較した。
【0073】
[実施例1]
リチウム塩として、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を準備した。カーボネート系溶媒として、ジメチルカーボネート(DMC)を準備した。金属酸化物粒子として、ヒュームドシリカ粒子(AEROSIL(登録商標)380、日本アエロジル株式会社、BET法による比表面積350m/g-410m/g)を準備した。結着剤を構成するアクリル系重合体を得るために、アクリル系重合性化合物として、メチルアクリレート((A)成分)と、1,9-ビス(アクリロイルオキシ)ノナン((B)成分)とを準備し、光重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを準備した。ここで、メチルアクリレート((A)成分)は、単官能(メタ)アクリレート化合物に該当し、反応速度定数kは720L・mol-1・s-1であった。
【0074】
表1中、メチルアクリレートを「MA」と表記し、1,9-ビス(アクリロイルオキシ)ノナンを「1,9-NDDA」と表記する。以下の実施例について、同様の(A)成分および(B)成分は、表1中において同様に表記する。
【0075】
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを、モル比で、1/2(=LiFSI/DMC)になるように秤量し、よく撹拌して電解液を調製した。メチルアクリレートと、1,9-ビス(アクリロイルオキシ)ノナンとを、モル比で、95/5(=メチルアクリレート/1,9-ビス(アクリロイルオキシ)ノナン)になるように秤量した後、混合し、混合物であるアクリル系重合性化合物を調製した。さらに、混合物としてのアクリル系重合性化合物と、光重合開始剤としての1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを、モル比で、97/3(=アクリル系重合性化合物/光重合開始剤)になるように混合して、結着剤用組成物を調製した。次に、ヒュームドシリカ粒子と、電解液と、結着剤用組成物との合計を100質量%としたとき、15質量%/82質量%/3質量%(=ヒュームドシリカ粒子/電解液/結着剤用組成物)になるように秤量し、よく混合して、固体電解質膜形成用の混合物を得た。
【0076】
その後、固体電解質膜形成用の混合物に対し、離型フィルム(リンテック株式会社製、製品名「PET38AL-5」)上で100μmの厚みに圧縮成形して、成形物を得た。この成形物に対して、紫外線(UV)の照射[最大照度:180mW/cm、積算光量:1000mJ/cm、アイグラフィックス社製照度光量計(制御部EYE UV METER UVPF-A2、受光部 EYE UV METER PD-365A2)を用いて測定]を行い、結着剤用組成物を硬化させることで、アクリル系重合体を含む結着剤を含有する固体電解質膜を得た。実施例1の固体電解質膜において、ヒュームドシリカ粒子と、電解液と、アクリル系重合体を含む結着剤との合計含有量を100質量%としたとき、ヒュームドシリカ粒子、電解液、およびアクリル系重合体を含む結着剤のそれぞれの含有量は、表1に示すとおりである。
【0077】
[実施例2]
ヒュームドシリカ粒子と、電解液と、結着剤用組成物との合計を100質量%としたとき、4質量%/87質量%/9質量%(=ヒュームドシリカ粒子/電解液/結着剤用組成物)になるように秤量し、よく混合した以外は、実施例1と同様にして、固体電解質膜を作製した。
【0078】
[実施例3]
ヒュームドシリカ粒子と、電解液と、結着剤用組成物との合計を100質量%としたとき、5質量%/90質量%/5質量%(=ヒュームドシリカ粒子/電解液/結着剤用組成物)になるように秤量し、よく混合した以外は、実施例1と同様にして、固体電解質膜を作製した。
【0079】
[実施例4]
ヒュームドシリカ粒子と、電解液と、結着剤用組成物との合計を100質量%としたとき、6質量%/86質量%/8質量%(=ヒュームドシリカ粒子/電解液/結着剤用組成物)になるように秤量し、よく混合した以外は、実施例1と同様にして、固体電解質膜を作製した。
【0080】
[実施例5]
ヒュームドシリカ粒子と、電解液と、結着剤用組成物との合計を100質量%としたとき、9質量%/81質量%/10質量%(=ヒュームドシリカ粒子/電解液/結着剤用組成物)になるように秤量し、よく混合した以外は、実施例1と同様にして、固体電解質膜を作製した。
【0081】
[実施例6]
ヒュームドシリカ粒子と、電解液と、結着剤用組成物との合計を100質量%としたとき、11質量%/84質量%/5質量%(=ヒュームドシリカ粒子/電解液/結着剤用組成物)になるように秤量し、よく混合した以外は、実施例1と同様にして、固体電解質膜を作製した。
【0082】
[実施例7]
ヒュームドシリカ粒子と、電解液と、結着剤用組成物との合計を100質量%としたとき、13質量%/78質量%/9質量%(=ヒュームドシリカ粒子/電解液/結着剤用組成物)になるように秤量し、よく混合した以外は、実施例1と同様にして、固体電解質膜を作製した。
【0083】
実施例2~7の固体電解質膜において、ヒュームドシリカ粒子と、電解液と、アクリル系重合体を含む結着剤との合計含有量を100質量%としたとき、ヒュームドシリカ粒子、電解液、およびアクリル系重合体を含む結着剤のそれぞれの含有量は、表1に示すとおりである。
【0084】
[実施例8]
結着剤を構成するアクリル系重合体を得るためのアクリル系重合性化合物として、メチルアクリレート((A)成分)と、トリメチロールプロパントリアクリレート((B)成分)とを準備し、光重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを準備した。表1中、トリメチロールプロパントリアクリレートを「TMPTA」と表記する。
【0085】
メチルアクリレートと、トリメチロールプロパントリアクリレートとを、モル比で、95/5(=メチルアクリレート/トリメチロールプロパントリアクリレート)になるように秤量し、混合した以外は、実施例1と同様にして、固体電解質膜を作製した。
【0086】
[実施例9]
結着剤を構成するアクリル系重合体を得るためのアクリル系重合性化合物として、メチルアクリレート((A)成分)と、ペンタエリスリトールテトラアクリレート((B)成分)とを準備し、光重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを準備した。表1中、ペンタエリスリトールテトラアクリレートを「PETA」と表記する。
【0087】
メチルアクリレートと、ペンタエリスリトールテトラアクリレートとを、モル比で、95/5(=メチルアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート)になるように秤量し、混合した以外は、実施例1と同様にして、固体電解質膜を作製した。
【0088】
[実施例10]
結着剤を構成するアクリル系重合体を得るためのアクリル系重合性化合物として、メチルアクリレート((A)成分)と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート((B)成分)とを準備し、光重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを準備した。表1中、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを「DPHA」と表記する。
【0089】
メチルアクリレートと、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとを、モル比で、95/5(=メチルアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)になるように秤量し、混合した以外は、実施例1と同様にして、固体電解質膜を作製した。
【0090】
[実施例11]
リチウム塩として、ホウフッ化リチウム(LiBF)を準備した。
ホウフッ化リチウム(LiBF)とジメチルカーボネート(DMC)とを、モル比で、1/2(=LiBF/DMC)になるように秤量し、よく撹拌して電解液を調製した以外は、実施例1と同様にして、固体電解質膜を作製した。
【0091】
[実施例12]
カーボネート系溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)を準備した。
リチウム塩として、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)とプロピレンカーボネート(PC)とを、モル比で、1/2(=LiFSI/PC)になるように秤量した以外は、実施例1と同様にして、固体電解質膜を作製した。
【0092】
[実施例13]
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを、モル比で、1/3(=LiFSI/DMC)になるように秤量した以外は、実施例1と同様にして、固体電解質膜を作製した。
【0093】
[比較例1]
リチウム塩として、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を準備した。溶媒として、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(G4)を準備した。金属酸化物粒子として、ヒュームドシリカ粒子(AEROSIL(登録商標)380、日本アエロジル株式会社、BET法による比表面積350m/g-410m/g)を準備した。結着剤として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を準備した。
【0094】
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)とテトラエチレングリコールジメチルエーテル(G4)とを、モル比で、1/1(=LiFSI/G4)になるように秤量し、よく撹拌して電解液を調製した。次に、電解液と、ヒュームドシリカ粒子とを、質量比で、80/20(=電解液/ヒュームドシリカ粒子)になるように秤量し、よく混合した。さらに、電解液とヒュームドシリカ粒子との合計100質量部に対し、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を5質量部添加して、メノウ乳鉢を用いてよく混合した。その後、この混合物に対し、フッ素樹脂製モールド上で圧縮成形し、固体電解質膜を得た。比較例1の固体電解質膜において、ヒュームドシリカ粒子と、電解液と、結着剤との合計含有量を100質量%としたとき、ヒュームドシリカ粒子、電解液、結着剤のそれぞれの含有量は、表1に示すとおりである。
【0095】
[比較例2]
カーボネート系溶媒として、ジメチルカーボネート(DMC)を準備した。
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを、モル比で、1/2(=LiFSI/DMC)になるように秤量し、よく撹拌して電解液を調製した以外は、比較例1と同様にして、固体電解質膜を作製した。
【0096】
[比較例3]
リチウム塩として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を準備した。
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを、モル比で、1/2(=LiTFSI/DMC)になるように秤量し、よく撹拌して電解液を調製した以外は、比較例1と同様にして、固体電解質膜を作製した。
【0097】
[比較例4]
カーボネート系溶媒として、ジエチルカーボネート(DEC)を準備した。
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)とジエチルカーボネート(DEC)とを、モル比で、1/2(=LiFSI/DEC)になるように秤量した、よく撹拌して電解液を調製した以外は、比較例1と同様にして、固体電解質膜を作製した。
【0098】
[固体電解質の評価]
実施例1~13および比較例1~4で得られた固体電解質膜について、前述の溶解析出試験、およびイオン伝導度測定を行った。また、各実施例、および各比較例で用いた電解液について、前述の電解液のイオン伝導度測定を行った。
【0099】
各例の固体電解質膜の組成を表1に示し、溶解析出試験、イオン伝導度測定、およびリチウムイオン輸率測定の測定結果を表2に示す。表1中、Li塩はリチウム塩、溶媒はカーボネート系溶媒を示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
溶解析出試験の結果について、特に、各実施例では、200サイクル以上を安定して作動していることがわかる。これに対し、比較例は、200サイクル未満である。比較例では、サイクル経過とともに電圧が上昇していき、安定に作動しなかった。
【0103】
以上から、各実施例で得られた固体電解質膜は、各比較例で得られた固体電解質膜と比較して、イオン伝導度、およびリチウム金属に対する安定性の各特性が高いことが分かった。このことから、本発明の固体電解質は、これら各特性に優れることが確認された。