(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157072
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】照射位置制御システム及びレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/046 20140101AFI20241030BHJP
B23K 26/04 20140101ALI20241030BHJP
【FI】
B23K26/046
B23K26/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159813
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】岡本 知也
(72)【発明者】
【氏名】村山 直寛
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168CA06
4E168CA07
4E168CB03
4E168CB18
4E168DA26
4E168EA17
(57)【要約】
【課題】加工対象物の平らではない面に、線状の軌跡を描くようにレーザ光を照射できる照射位置制御システムの設備コストを削減する。
【解決手段】制御部50に、レーザ加工ヘッド10をXY平面における所定の設定位置に配置した状態でカメラ14によって撮影された撮影画像において、第1のガイド光L1が照射される第1の照射領域と第2のガイド光L2が照射される第2の照射領域とが所定の位置関係となるようにマニピュレータ20を制御する距離制御、及び距離制御により第1及び第2の照射領域が所定の位置関係となったときのレーザ加工ヘッド10のZ座標を取得する位置情報取得処理を、設定位置を複数のXY座標に設定して実行させ、その後、XY平面において複数のXY座標を通過し、各XY座標座標通過時におけるZ座標が、そのXY座標に対応して位置情報取得処理により取得されたZ座標となる移動軌跡を特定させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を加工対象物に照射するレーザ加工ヘッドと、
前記レーザ加工ヘッド及び前記加工対象物の少なくとも一方を移動させることにより、前記レーザ加工ヘッドの前記加工対象物に対するXYZ3軸方向の相対位置を調整する調整部とを備え、前記レーザ加工ヘッドによるレーザ光の照射方向をZ軸方向とする照射位置制御システムであって、
前記レーザ加工ヘッドに設けられ、第1のガイド光を出射する第1の出射部と、
前記レーザ加工ヘッドに設けられ、第2のガイド光を出射する第2の出射部と、
前記加工対象物を撮影するカメラと、
前記レーザ加工ヘッドと前記加工対象物とのをX軸方向及びY軸方向における位置関係を所定の設定状態にした状態で前記カメラによって撮影された撮影画像から、前記第1のガイド光が照射される第1の照射領域と前記第2のガイド光が照射される第2の照射領域とを特定し、前記第1及び第2の照射領域が所定の位置関係となるように前記調整部を制御する距離制御、及び前記距離制御により前記第1及び第2の照射領域が所定の位置関係となったときの前記レーザ加工ヘッドと前記加工対象物とのZ軸方向の位置関係を取得する位置情報取得処理を、前記設定状態を複数種類に設定して実行し、その後、前記レーザ加工ヘッドと前記加工対象物とのX軸方向及びY軸方向における位置関係が前記複数種類の設定状態を経由し、各設定状態経由時における前記レーザ加工ヘッドと前記加工対象物とのZ軸方向の位置関係が、当該設定状態に対応して前記位置情報取得処理により取得された位置関係となる前記レーザ加工ヘッド及び前記加工対象物の少なくとも一方の動きを特定する制御部とを備えたことを特徴とする照射位置制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の照射位置制御システムにおいて、
前記制御部は、開始点及び終点のXY座標に基づいて、XY平面上において前記開始点と前記終点との間を等分割する少なくとも1つの分割点のXY座標を算出する分割点特定処理をさらに実行し、
前記複数種類の設定状態における前記レーザ加工ヘッドのXY平面上における位置は、前記開始点、前記終点、及び前記少なくとも1つの分割点のXY座標であり、
前記複数種類の設定状態における前記加工対象物のXY平面上における位置は、共通であることを特徴とする照射位置制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の照射位置制御システムにおいて、
前記第1の照射領域は、円形状であり、
前記第2の照射領域は、線状であることを特徴とする照射位置制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の照射位置制御システムにおいて、
前記所定の位置関係は、前記第1の照射領域の中心点と、前記第2の照射領域とが重なる関係であることを特徴とする照射位置制御システム。
【請求項5】
請求項3に記載の照射位置制御システムにおいて、
前記所定の位置関係は、前記第1の照射領域と、前記第2の照射領域とが重なる関係であることを特徴とする照射位置制御システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の照射位置制御システムにおいて、
前記距離制御は、前記カメラによる撮影が繰り返される状態で、前記調整部に所定の第1速度で前記レーザ加工ヘッドと前記加工対象物とのZ軸方向の距離を短くさせながら、最近の撮影画像における前記第1及び第2の照射領域が前記所定の位置関係であるか否かの判定処理を繰り返し実行し、前記判定処理において前記第1及び第2の照射領域が前記所定の位置関係にあると判定されるのに応じて、前記第1速度での前記Z軸方向の距離の変化を停止させるものであることを特徴とする照射位置制御システム。
【請求項7】
請求項6に記載の照射位置制御システムにおいて、
前記距離制御は、前記第1速度での前記Z軸方向の距離の変化を停止させた後、前記第1及び第2の照射領域が前記所定の位置関係でなくなった状態から、前記調整部に前記第1速度とは正負が逆で、かつ前記第1速度よりも絶対値の小さい第2速度で前記Z軸方向の距離を短くさせるものであることを特徴とする照射位置制御システム。
【請求項8】
請求項5に記載の照射位置制御システムにおいて、
前記距離制御は、前記カメラによる撮影が繰り返される状態で、前記調整部に所定の第1速度で前記レーザ加工ヘッドと前記加工対象物とのZ軸方向の距離を短くさせながら、最近の撮影画像における前記第1及び第2の照射領域が前記所定の位置関係であるか否かの判定処理を繰り返し実行し、前記判定処理により前記第1及び第2の照射領域が前記所定の位置関係にないと判定される第1状態から、前記判定処理により前記第1及び第2の照射領域が前記所定の位置関係にあると判定される第2状態に変化したときの前記Z軸方向の距離を第1距離として記憶し、その後、前記第2状態から第1状態に変化すると、前記調整部に前記第1速度とは正負が逆で、かつ第1速度よりも絶対値の小さい第2速度で前記Z軸方向の距離を短くさせながら、最近の撮影画像に対する前記判定処理を繰り返し実行し、前記第1状態から前記第2状態に変化したときの前記Z軸方向の距離を第2距離として記憶し、前記調整部に前記第1距離と第2距離の平均値まで前記Z軸方向の距離を変化させるものであることを特徴とする照射位置制御システム。
【請求項9】
請求項5に記載の照射位置制御システムにおいて、
前記距離制御は、前記カメラによる撮影が繰り返される状態で、前記調整部に正又は負の所定速度で前記レーザ加工ヘッドと前記加工対象物とのZ軸方向の距離を短くさせながら、最近の撮影画像における前記第1及び第2の照射領域が前記所定の位置関係であるか否かの判定処理を繰り返し実行し、前記判定処理において前記第1及び第2の照射領域が前記所定の位置関係にないと判定される第1状態から、前記判定処理において前記第1及び第2の照射領域が前記所定の位置関係にあると判定される第2状態に変化すると、前記調整部に前記Z軸方向の距離を、所定の設定距離分だけ長くさせるものであることを特徴とする照射位置制御システム。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載の照射位置制御システムにおいて、
前記距離制御は、前記第1及び第2の照射領域の間隔に基づいて、前記調整部を制御するものであることを特徴とする照射位置制御システム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の照射位置制御システムと、
前記レーザ光を出射するレーザ発振器とを備えたレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を加工対象物に照射するレーザ加工ヘッドと、前記レーザ加工ヘッドの前記加工対象物に対するXYZ3軸方向の相対位置を調整する調整部とを備えた照射位置制御システム及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ光を加工対象物に照射するレーザ加工ヘッドと、前記レーザ加工ヘッドの前記加工対象物に対するXYZ3軸方向の相対位置を調整する調整部とを備えた照射位置制御システムが開示されている。この照射位置制御システムは、レーザ加工ヘッドに設けられ、レーザ加工ヘッドと加工対象物との距離を測定するハイトセンサと、前記ハイトセンサの測定値に基づいて、前記レーザ加工ヘッドと前記加工対象物とのZ軸方向の距離を所望の値にするように前記調整部を制御する倣い制御部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加工対象物の平らではない面に、線状の軌跡を描くようにレーザ光を照射する場合、軌跡上の複数の各加工点について、その加工点にレーザ光を照射するときのレーザ加工ヘッドと加工対象物とのZ軸方向の位置関係を取得する必要がある。
【0005】
そこで、レーザ加工ヘッドを、XY平面における各加工点のXY座標に配置した状態で、特許文献1に開示されたシステムのように、ハイトセンサの測定値に基づいて、前記レーザ加工ヘッドと前記加工対象物とのZ軸方向の距離が所望の値になるように倣い制御を行い、当該Z軸方向の距離が所望の値になったときのレーザ加工ヘッドと加工対象物とのZ軸方向の位置関係を取得することが考えられる。
【0006】
しかし、この方法では、非接触式の静電容量方式や渦電流方式などを利用したハイトセンサを用いるので、設備コストが嵩む。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加工対象物の平らではない面に、線状の軌跡を描くようにレーザ光を照射できる照射位置制御システムの設備コストを削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、レーザ光を加工対象物に照射するレーザ加工ヘッドと、前記レーザ加工ヘッド及び前記加工対象物の少なくとも一方を移動させることにより、前記レーザ加工ヘッドの前記加工対象物に対するXYZ3軸方向の相対位置を調整する調整部とを備え、前記レーザ加工ヘッドによるレーザ光の照射方向をZ軸方向とする照射位置制御システムであって、前記レーザ加工ヘッドに設けられ、第1のガイド光を出射する第1の出射部と、前記レーザ加工ヘッドに設けられ、第2のガイド光を出射する第2の出射部と、前記加工対象物を撮影するカメラと、前記レーザ加工ヘッドと前記加工対象物とのをX軸方向及びY軸方向における位置関係を所定の設定状態にした状態で前記カメラによって撮影された撮影画像から、前記第1のガイド光が照射される第1の照射領域と前記第2のガイド光が照射される第2の照射領域とを特定し、前記第1及び第2の照射領域が所定の位置関係となるように前記調整部を制御する距離制御、及び前記距離制御により前記第1及び第2の照射領域が所定の位置関係となったときの前記レーザ加工ヘッドと前記加工対象物とのZ軸方向の位置関係を取得する位置情報取得処理を、前記設定状態を複数種類に設定して実行し、その後、前記レーザ加工ヘッドと前記加工対象物とのX軸方向及びY軸方向における位置関係が前記複数種類の設定状態を経由し、各設定状態経由時における前記レーザ加工ヘッドと前記加工対象物とのZ軸方向の位置関係が、当該設定状態に対応して前記位置情報取得処理により取得された位置関係となる前記レーザ加工ヘッド及び前記加工対象物の少なくとも一方の動きを特定する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
これにより、照射位置制御システムに、第1及び第2の光源とカメラと制御部とを設ければ、ハイトセンサを設けなくても、各XY平面における所定の位置にレーザ光を照射するときのレーザ加工ヘッドと前記加工対象物とのZ軸方向の位置関係を取得させることができる。また、カメラに要求される性能は、第1及び第2の照射領域を識別できる程度の解像度の画像を撮影する性能となる。したがって、照射位置制御システムの設備コストを削減できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加工対象物の平らではない面に、線状の軌跡を描くようにレーザ光を照射できる照射位置制御システムの設備コストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1に係るレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
【
図2】制御部によって実行される距離制御及び位置情報取得処理を説明するフローチャートである。
【
図4】第1の照射領域に第2の照射領域が重なった状態で撮影画像に写る第1及び第2の照射領域を例示する説明図である。
【
図5】レーザ加工ヘッドの移動軌跡を特定する手順を説明するフローチャートである。
【
図6】(a)は、XY平面における移動軌跡を示す平面図であり、(b)は、移動軌跡の斜視図であり、(c)は、YZ平面における移動軌跡を示す正面図である。
【
図9】(a)は、レーザ加工ヘッドをワークから限界まで離した状態で撮影画像に写る第1及び第2の照射領域を例示する説明図であり、(b)は、第1及び第2の照射領域が互いに重なり始めた状態における
図7(a)相当図であり、(c)は、第1の照射領域が第2の照射領域を通り過ぎた状態における
図7(a)相当図である。(d)は、
図7(c)の状態から第1の照射領域が再び第2の照射領域に重なった状態における
図7(a)相当図である。(e)は、レーザ加工ヘッドとワークとの距離を、第1距離及び第2距離の平均値とした状態における
図7(a)相当図である。
【
図12】実施形態5の制御部のブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0013】
以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0014】
(実施形態1)
図1は、レーザ加工装置100を示す。このレーザ加工装置100は、
図1に示すように、レーザ加工ヘッド10と、調整部としてのマニピュレータ20と、レーザ発振器30と、光ファイバ40と、カメラ用制御部51と、ヘッド用制御部52と、マニピュレータ用制御部53とを備えている。
【0015】
レーザ加工ヘッド10は、レーザ光LBを加工対象物としてのワークWに照射する。レーザ加工ヘッド10は、第1の出射部(ノズル)11を備える。当該第1の出射部11は、レーザ光LBを下方に出射する。また、第1の出射部11は、レーザ発振器30内に設けられた第1の光源12により生成された第1のガイド光L1を出射する。第1の出射部11は、レーザ光LB及び第1のガイド光L1を、共通の光路を通過するように出射する。
【0016】
レーザ加工ヘッド10には、第2のガイド光L2を生成する第2の光源13’と、第2の光源13’により生成された第2のガイド光L2を出射する第2の出射部13とがさらに設けられている。
【0017】
レーザ加工ヘッド10には、ワークWを撮影するカメラ14が固定されている。
【0018】
マニピュレータ20の先端には、レーザ加工ヘッド10が取り付けられている。マニピュレータ20は、6軸マニピュレータである。マニピュレータ20は、レーザ加工ヘッド10をXYZ3軸方向に移動させることができる。ここで、レーザ加工ヘッド10によるレーザ光LBの照射方向をZ軸方向とする。
【0019】
レーザ発振器30は、レーザ光LBを出射する。レーザ発振器30は、複数のレーザダイオード(図示せず)、及び当該レーザダイオードに電流を流す電源(図示せず)等を備えている。また、レーザ発振器30は、第1のガイド光L1を生成する第1の光源12を有する。
【0020】
光ファイバ40は、レーザ発振器30により出射されたレーザ光LBをレーザ加工ヘッド10に導く。
【0021】
カメラ用制御部51は、カメラ14を制御する。
【0022】
ヘッド用制御部52は、レーザ加工ヘッド10を制御する。
【0023】
マニピュレータ用制御部53は、マニピュレータ20を制御する。
【0024】
これらカメラ用制御部51、ヘッド用制御部52、及びマニピュレータ用制御部53が、制御部50を構成する。カメラ用制御部51、ヘッド用制御部52、及びマニピュレータ用制御部53の機能は、コンピュータによって実現される。
【0025】
なお、レーザ加工装置100には、レーザ発振器30を制御する制御部(図示せず)も設けられるが、その詳細な説明は省略する。
【0026】
レーザ加工ヘッド10、第1の光源12、カメラ14、マニピュレータ20、及び制御部50によって、本発明の実施形態1に係る照射位置制御システムとしてのヘッド位置制御システム60が構成されている。
【0027】
ユーザが、レーザ加工ヘッド10を手動で動かすことにより、XY平面における所定の設定位置に配置した状態で、制御部50は、
図2に説明する距離制御及び位置情報取得処理を実行できる。
【0028】
まず、(S101)において、ヘッド用制御部52が、カメラ用制御部51に撮影指示を送信する。これに応じて、カメラ14は、カメラ用制御部51の制御により、ワークWを撮影する。
【0029】
次いで、(S102)において、カメラ用制御部51は、カメラ14によって撮影された例えば
図3に示すような撮影画像IMから、前記第1のガイド光L1が照射される第1の照射領域RE1及び前記第2のガイド光L2が照射される第2の照射領域RE2を特定する特定処理を実行する。
【0030】
ここで、カメラ14によって撮影された撮影画像IMにおいて、ワークWの表面上の第1の照射領域RE1は、円形状であり、ワークWの表面上の第2の照射領域RE2は、線状である。
図3の例では、ワークWの表面の平坦な領域に第1及び第2のガイド光L1,L2が照射されている。
【0031】
次いで、(S103)において、カメラ用制御部51は、(S102)で試みた特定処理を完了できたか否かを判定する。カメラ用制御部51は、(S102)で試みた特定処理を完了できた場合には、(S109)に進む一方、完了できない場合には、(S104)に進む。
【0032】
レーザ加工ヘッド10とワークWとが互いに近づき過ぎたり離れ過ぎたりすることにより、第1及び第2の照射領域RE1,RE2にカメラ14のピントが合わず、カメラ用制御部51が、第1の照射領域RE1しか特定できなくなったり、第1及び第2の照射領域RE1,RE2のどちらも特定できなくなる場合がある。また、第2の照射領域RE2が画角に収まらず、カメラ用制御部51が、第1の照射領域RE1しか特定できない場合もある。これらの場合には、カメラ用制御部51は、特定処理を完了できない。
【0033】
(S104)では、カメラ用制御部51は、(S103)における判定結果をヘッド用制御部52を介してマニピュレータ用制御部53に送信し、マニピュレータ用制御部53は、レーザ加工ヘッド10を可動範囲のうちで最もワークWから前記出射方向に離れた位置に移動させるように、マニピュレータ20を制御する。つまり、マニピュレータ用制御部53は、マニピュレータ20に、レーザ加工ヘッド10とワークWとのZ軸方向の距離(レーザ光LBの出射方向の距離)を最大値まで長くさせる。
【0034】
次いで、(S105)において、カメラ用制御部51は、カメラ14に、ワークWを撮影させる。
【0035】
次いで、(S106)において、カメラ用制御部51は、(S105)で撮影された撮影画像IMから、第1及び第2の照射領域RE1,RE2を特定する特定処理を実行する。
【0036】
そして、(S107)において、カメラ用制御部51は、(S106)で試みた特定処理を完了できたか否かを判定する。カメラ用制御部51は、(S106)で試みた特定処理を完了できた場合には、(S109)に進む一方、完了できない場合には、(S108)に進む。
【0037】
(S108)では、カメラ用制御部51は、特定処理を完了できない旨をヘッド用制御部52を介してマニピュレータ用制御部53に送信する。マニピュレータ用制御部53は、マニピュレータ20にレーザ加工ヘッド10をワークWにZ軸方向に所定距離だけ近づけさせて(S105)に戻る。
【0038】
(S109)では、カメラ用制御部51は、(S102)又は(S106)により特定した第1及び第2の照射領域RE1,RE2が所定の位置関係にあるか否かの判定情報、及び第1の照射領域RE1に対する第2の照射領域RE2の方向を示す方向情報を含む位置情報の取得処理を実行し、判定情報及び方向情報をヘッド用制御部52に送信する。
【0039】
ここで、所定の位置関係は、
図4に例示するように、第1の照射領域RE1と、第2の照射領域RE2とが重なる関係である。
図4中、3パターンの第2の照射領域RE2を、実線、一点鎖線及び二点鎖線で示す。
【0040】
なお、レーザ加工ヘッド10の第1の出射部11とワークWとの間のZ軸方向の距離が理想の距離であるときに、第1の照射領域RE1に、第2の照射領域RE2が重なるように、つまり、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が所定の位置関係となるように、第1及び第2の出射部11,13が配設されている。ここで、レーザ加工ヘッド10の第1の出射部11とワークWとの間のZ軸方向の理想の距離は、例えば、レーザ加工ヘッド10から出射されたレーザ光LBをワークWで集光させる距離に設定されるが、あえてレーザ光LBをワークWで集光させる距離からずれた位置に設定してもよい。なお、レーザ光LBと第1のガイド光L1とは、共通の光路を通過するように出射されるので、第1の照射領域RE1は、レーザ加工ヘッド10を共通の位置に配置した場合のレーザ光LBの照射領域と一致する。
【0041】
(S110)では、ヘッド用制御部52は、(S109)で取得した判定情報が、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にあることを示すか否かを判定する。つまり、ヘッド用制御部52は、(S109)で取得した判定情報に基づいて、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にあるか否かを判定する判定処理を実行する。当該判定処理において、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にあると判定すると、(S111)に進む一方、当該判定処理において第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にないと判定すると、(S112)に進む。
【0042】
(S111)では、ヘッド用制御部52は、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にある旨をマニピュレータ用制御部53に通知する。マニピュレータ用制御部53は、この通知を受けると、マニピュレータ20にレーザ加工ヘッド10を移動させない。したがって、マニピュレータ20がそれまでレーザ加工ヘッド10を移動させていた場合には、マニピュレータ20はレーザ加工ヘッド10のZ軸方向の移動を停止させる。つまり、マニピュレータ用制御部53は、レーザ加工ヘッド10とワークWとのZ軸方向の距離の変化を停止させる。これにより、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が所定の位置関係にある状態、すなわちレーザ加工ヘッド10とワークWとのZ軸方向の距離を理想の距離とした状態でレーザ加工ヘッド10の移動が停止する。その後、処理を(S116)に進める。
【0043】
(S112)では、ヘッド用制御部52は、(S109)で取得した方向情報に基づいて、第2の照射領域RE2が第1の照射領域RE1の左側にある場合には、(S113)に進む一方、第2の照射領域RE2が第1の照射領域RE1の右側にある場合には、(S114)に進む。
【0044】
(S113)では、ヘッド用制御部52は、第1速度を+V(Vは予め設定された自然数)とし、マニピュレータ用制御部53に送信する。
【0045】
(S114)では、ヘッド用制御部52は、第1速度を-V(Vは予め設定された自然数)とし、マニピュレータ用制御部53に送信する。
【0046】
(S115)では、マニピュレータ用制御部53は、第1速度でレーザ加工ヘッド10をワークWにZ軸方向に接近させるようにマニピュレータ20を制御し、(S101)に戻る。ここで、第1速度が+V(正の速度)である場合には、レーザ加工ヘッド10はワークWに接近し、レーザ加工ヘッド10とワークWとのZ軸方向の距離が短くなる。一方、第1速度が-V(負の速度)である場合には、レーザ加工ヘッド10はワークWから遠ざかり、レーザ加工ヘッド10とワークWとのZ軸方向の距離が長くなる。
【0047】
このように、制御部50は、(S101)~(S115)において、レーザ加工ヘッド10をXY平面における所定の設定位置に配置した状態でカメラ14によって撮影された撮影画像IMにおいて、第1のガイド光L1が照射される第1の照射領域RE1と第2のガイド光L2が照射される第2の照射領域RE2とが所定の位置関係となるようにマニピュレータ20を制御する距離制御を実行する。本実施形態1では、ワークWを動かさないので、レーザ加工ヘッド10をXY平面における所定の設定位置に配置した状態は、レーザ加工ヘッド10とワークWとのをX軸方向及びY軸方向における位置関係を所定の設定状態にした状態となる。(S101)~(S115)の処理が、制御部50による距離制御となる。
【0048】
(S116)では、ヘッド用制御部52は、このときのレーザ加工ヘッド10のZ座標を取得する位置情報取得処理を実行する。このとき、第1及び第2の照射領域RE1,RE2は前記所定の位置関係にあるので、取得されるZ座標は、距離制御により前記第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係となったときのレーザ加工ヘッド10のZ座標となる。本実施形態1では、ワークWを動かさないので、レーザ加工ヘッド10のZ座標は、レーザ加工ヘッド10とワークWとのZ軸方向の位置関係を示すものとなる。
【0049】
このように、制御部50は、(S102)又は(S106)で特定処理を完了できない場合に、(S104)においてマニピュレータ20にレーザ加工ヘッド10とワークWとのZ軸方向の距離を最大値まで長くさせ、その後、カメラ14による撮影が繰り返される状態で、(S108)の処理によりマニピュレータ20に前記Z軸方向の距離を徐々に短くさせながら、最近の撮影画像IMに対する特定処理を前記特定処理を完了できるまで試みる。
【0050】
また、制御部50は、カメラ14による撮影が繰り返される状態で、マニピュレータ20に第1速度でレーザ加工ヘッド10とワークWとの前記Z軸方向の距離を短くさせながら、最近の撮影画像IMにおける第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係であるか否かの判定処理を繰り返し実行し、判定処理において前記第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にあると判定されるのに応じて、(S111)において前記第1速度での前記Z軸方向の距離の変化を停止させる。
【0051】
次に、
図5のフローチャートを参照して、上述のように構成されたレーザ加工装置100に、所定のワークWの表面に線状の軌跡を描くようにレーザ光LBを照射するときのレーザ加工ヘッド10の三次元軌跡としての移動軌跡p(
図6参照)を特定させる手順について説明する。本実施形態1では、当該手順の実行中、X軸、Y軸、及びZ軸を固定している。
【0052】
まず、(S001)において、ユーザが、制御部50に所定のモード切替入力を行うことによって制御部50を調整モードに切り替え、レーザ加工ヘッド10を手動で動かすことにより、レーザ光LBの照射位置のXY座標を、レーザ光LBを照射したい線状の領域の一端に合わせる。このときのレーザ加工ヘッド10の位置のXY座標を、
図6(a)~
図6(c)に示す開始点PSのXY座標とする。
【0053】
そして、(S002)において、ユーザが、制御部50に所定の制御開始入力を行うことにより、上述した距離制御及び位置情報取得処理を実行させる。
【0054】
次いで、(S003)において、ユーザが、レーザ加工ヘッド10を手動で動かすことにより、レーザ光LBの照射位置のXY座標を、レーザ光LBを照射したい線状の領域の他端に合わせる。このときのレーザ加工ヘッド10の位置のXY座標を、
図6(a)~
図6(c)に示す終点PEのXY座標とする。
【0055】
そして、(S004)において、ユーザが、制御部50に所定の制御開始入力を行うことにより、レーザ加工装置100の制御部50に、上述した距離制御及び位置情報取得処理を実行させる。
【0056】
次に、(S005)において、レーザ加工装置100の制御部50は、開始点PS及び終点PEのXY座標に基づいて、XY平面上において前記開始点PSと前記終点PEとの間を等分割する少なくとも1つの分割点のXY座標を算出する分割点特定処理をさらに実行する。ここで、分割点の数をn個とする。nは、1以上の整数である。
図6(a)~
図6(c)において、P1・・・Pnは、XY平面における分割点を示す。
【0057】
次に、(S006)において、k=1とする。
【0058】
次に、(S007)において、レーザ加工装置100の制御部50は、レーザ加工ヘッド10を移動させることにより、レーザ加工ヘッド10のヘッド位置のXY座標を、k番目の分割点PkのXY座標とする。
【0059】
次に、(S008)において、(S007)によるレーザ加工ヘッド10の移動後の状態で、制御部50が、上述した距離制御及び位置情報取得処理を実行する。
【0060】
次に、(S009)において、制御部50が、k=k+1とする。
【0061】
次に、(S010)において、制御部50が、k=n+1であるか否かを判定し、k=n+1である場合には、(S011)に進む一方、k=n+1でない場合には、(S007)に戻る。
【0062】
このように、制御部50は、距離制御及び位置情報取得処理を、前記設定位置を複数のXY座標に設定して実行する。つまり、制御部50は、距離制御及び位置情報取得処理を、前記設定状態を複数種類に設定して実行する。
【0063】
その後、(S011)において、制御部50は、(S002)、(S004)及び(S008)で取得したZ座標に基づいて、開始点PS、分割点P1,・・・・Pn、及び終点PEを順に通過する移動軌跡pを特定する。ここで特定される移動軌跡pの開始点PSのZ座標は、(S002)で取得されたZ座標となり、終点PEのZ座標は、(S004)で取得されたZ座標となる。また、分割点PkにおけるZ座標は、k回目に実行された(S008)で取得されたZ座標となる。つまり、移動軌跡pは、XY平面において開始点PS、分割点P1,・・・・Pn、及び終点PEのXY座標を通過し、各XY座標通過時におけるZ座標が、当該XY座標に対応して前記位置情報取得処理により取得されたZ座標となる軌跡である。この軌跡は、レーザ加工ヘッド10とワークWとのX軸方向及びY軸方向における位置関係が前記複数種類の設定状態を経由し、各設定状態経由時におけるレーザ加工ヘッド10とワークWとのZ軸方向の位置関係が、当該設定状態に対応して前記位置情報取得処理により取得された位置関係となるときのレーザ加工ヘッド10の動きを示すものである。前記複数種類の設定状態におけるレーザ加工ヘッド10のXY平面上における位置は、開始点PS、分割点P1,・・・・Pn、及び終点PEのXY座標であり、前記複数種類の設定状態におけるワークWのXY平面上における位置は、共通である。
【0064】
その後、レーザ加工ヘッド10を(S011)で特定した移動軌跡pに沿って移動させるようにマニピュレータ用制御部53がマニピュレータ20を制御する。これにより、ワークWにおけるレーザ光LBの照射面が平らではない場合でも、レーザ加工ヘッド10とワークWとのZ軸方向の距離を理想の距離に維持した状態で、当該照射面に線状の軌跡を描くようにレーザ光LBを照射できる。
【0065】
したがって、本実施形態1によれば、ヘッド位置制御システム60に、第1及び第2の光源12,13’と第1及び第2の出射部11,13とカメラ14と制御部50とを設ければ、ハイトセンサを設けなくても、加工したい線状の領域の各点にレーザ光LBを照射するときのレーザ加工ヘッド10のZ座標を取得させることができる。また、カメラ14に要求される性能は、第1及び第2の照射領域RE1,RE2を識別できる程度の画像を撮影する性能となる。したがって、ヘッド位置制御システム60の設備コストを削減できる。また、当該ヘッド位置制御システム60を備えたレーザ加工装置100の設備コストも削減できる。
【0066】
また、距離制御時に、カメラ14の撮影画像IMに基づいて制御部50がマニピュレータ20を自動的に制御するので、レーザ加工ヘッド10とワークWとのレーザ光LBの出射方向の距離を理想の距離とするためにユーザがレーザ加工ヘッド10を手で動かさなくてもよい。したがって、ユーザの手間を削減できる。
【0067】
また、上記特許文献1では、加工対象物の表面が曲面状である場合、ハイトセンサにより測定される距離は、ハイトセンサと加工対象物との間のZ軸方向の距離となるので、ハイトセンサの測定結果が、加工ノズルと加工対象物との間のZ軸方向の距離と異なるものとなる可能性がある。したがって、倣い制御部は、ノズルと加工対象物との間のZ軸方向の距離が理想の距離であるか否かをハイトセンサの測定結果に基づいて正しく認識できない。これに対し、本実施形態1によれば、ワークWの表面が曲面状であっても、第2の照射領域RE2が曲線状にはなるが、制御部50が、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が重なっているか否かに基づいて、レーザ加工ヘッド10の第1の出射部11とワークWとのZ軸方向の距離が理想の距離であるか否かを正しく認識できる。
【0068】
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2の
図2相当図である。本実施形態2では、マニピュレータ用制御部53が、距離制御において、(S111)の処理の実行後、(S201)の処理を実行する。
【0069】
(S201)では、マニピュレータ用制御部53は、第1速度とは正負が逆で、かつ第1速度よりも絶対値の小さい第2速度でレーザ加工ヘッド10をワークWにZ軸方向に接近させるようにマニピュレータ20を制御し、(S202)に進む。
【0070】
(S202)では、ヘッド用制御部52が、カメラ用制御部51に撮影指示を送信する。これに応じて、カメラ14は、カメラ用制御部51の制御により、ワークWを撮影する。
【0071】
次いで、(S203)において、カメラ用制御部51は、(S202)で撮影された撮影画像IMから、第1及び第2の照射領域RE1,RE2を特定する特定処理を実行する。
【0072】
次いで、(S204)において、カメラ用制御部51は、(S203)で特定した第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にあるか否かの判定情報の取得処理を実行し、判定情報をヘッド用制御部52に送信する。
【0073】
次いで、(S205)では、ヘッド用制御部52は、(S204)で取得した判定情報が、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にあることを示すか否かを判定する。ヘッド用制御部52は、当該判定情報が、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にあることを示すものであるときには、(S206)に進む一方、当該判定情報が第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にないことを示すときには、(S201)に戻る。
【0074】
(S206)では、ヘッド用制御部52は、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にある旨をマニピュレータ用制御部53に通知する。マニピュレータ用制御部53は、この通知に応じて、レーザ加工ヘッド10とワークWとのZ軸方向の距離の変化を停止させる。その後、処理を(S116)に進める。
【0075】
このように、本実施形態2では、制御部50は、第1速度でのレーザ加工ヘッド10をワークWとのZ軸方向の距離の変化を停止させた後、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係でなくなった状態から、マニピュレータ20に、前記第1速度とは正負が逆で、かつ前記第1速度よりも絶対値の小さい第2速度で前記Z軸方向の距離を短くさせる。
【0076】
本実施形態2によれば、レーザ加工ヘッド10が第1速度で移動している最中に、制御部50が(S111)の処理を実行したときに、レーザ加工ヘッド10が急に停止できず、第1及び第2の照射領域RE1,RE2を所定の位置関係とする目標位置を通り過ぎてしまう場合でも、レーザ加工ヘッド10を、第1速度よりも遅い第2速度で目標位置に戻すことができる。
【0077】
(実施形態3)
図8は、本発明の実施形態3の
図2相当図である。
【0078】
本実施形態3では、距離制御において、まず、ヘッド用制御部52が、(S301)において、S=1とする。その後、制御部50は、(S104)~(S109)の処理を実行する。なお、レーザ加工ヘッド10とワークWとのZ軸方向の距離を最大値にした状態で、第1及び第2の照射領域RE1,RE2は重ならないものとする。また、(S106)の特定処理を初めて完了した時点においても、第1及び第2の照射領域RE1,RE2は重ならないものとする。
【0079】
次いで、(S302)において、ヘッド用制御部52は、(S109)で取得した判定情報が、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にあることを示すか否かを判定する。つまり、ヘッド用制御部52は、(S109)で取得した判定情報に基づいて、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にあるか否かを判定する判定処理を実行する。当該判定処理において、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にあると判定すると、(S303)に進む一方、当該判定処理において第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にないと判定すると、(S306)に進む。
【0080】
(S303)では、ヘッド用制御部52は、S=1であるか否かを判定し、S=1である場合には、(S304)に進み、S=1でない場合には、(S305)に進む。
【0081】
(S304)では、ヘッド用制御部52は、このときのレーザ加工ヘッド10とワークWとのZ軸方向の距離を第1距離として記憶し、S=2とする。ヘッド用制御部52は、第1速度でレーザ加工ヘッド10をワークWに接近させる旨をマニピュレータ用制御部53に通知する。なお、本実施形態では、第1速度は、正の値であるとする。
【0082】
(S305)では、マニピュレータ用制御部53は、ヘッド用制御部52の通知に応じて、第1速度でレーザ加工ヘッド10をワークWに接近させるようにマニピュレータ20を制御し、(S105)に戻る。第1速度は正の値であるので、レーザ加工ヘッド10はワークWに接近し、レーザ加工ヘッド10とワークWとのZ軸方向の距離は短くなる。
【0083】
(S306)では、ヘッド用制御部52は、S=2であるか否かを判定し、S=2である場合には、第1速度とは正負が逆でかつ、第1速度よりも絶対値の小さい第2速度でレーザ加工ヘッド10をワークWに接近させる旨をマニピュレータ用制御部53に通知し、(S307)に進む一方、S=2でない場合には、(S305)に進む。ここで、本実施形態3では、第1速度は正の値であるので、第2速度は負の値となる。
【0084】
(S307)では、マニピュレータ用制御部53は、ヘッド用制御部52の通知に応じて、第2速度でレーザ加工ヘッド10をワークWに接近させるようにマニピュレータ20を制御し、(S308)に進む。第2速度は負の値であるので、レーザ加工ヘッド10はワークWから遠ざかり、前記Z軸方向の距離は長くなる。
【0085】
(S308)では、カメラ用制御部51は、カメラ14に、ワークWを撮影させる。
【0086】
次いで、(S309)において、カメラ用制御部51は、(S308)で撮影された撮影画像IMから、第1及び第2の照射領域RE1,RE2を特定する特定処理を実行する。
【0087】
次いで、(S310)において、カメラ用制御部51は、(S309)で特定した第1及び第2の照射領域RE1,RE2が所定の位置関係にあるか否かの判定情報の取得処理を実行し、判定情報をヘッド用制御部52に送信する。
【0088】
次いで、(S311)において、ヘッド用制御部52は、(S310)で取得された判定情報が、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にあることを示すか否かを判定する。つまり、ヘッド用制御部52は、(S310)で取得した判定情報に基づいて、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にあるか否かを判定する判定処理を実行する。当該判定処理において、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にあると判定すると、(S312)に進む一方、当該判定処理において第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にないと判定すると、(S307)に戻る。
【0089】
(S312)では、ヘッド用制御部52は、このときのレーザ加工ヘッド10とワークWとのZ軸方向の距離を第2距離として記憶する。ヘッド用制御部52は、第2距離を記憶した旨をマニピュレータ用制御部53に通知する。
【0090】
次いで、(S313)において、マニピュレータ用制御部53は、レーザ加工ヘッド10とワークWとのZ軸方向の距離を、第1距離及び第2距離の平均値まで変化させるように、マニピュレータ20を制御する。その後、処理を(S116)に進める。
【0091】
このように、本実施形態3では、制御部50は、カメラ14による撮影が繰り返される状態で、マニピュレータ20に第1速度でレーザ加工ヘッド10とワークWとのZ軸方向の距離を短くさせながら、最近の撮影画像IMにおける前記第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係であるか否かの判定処理を繰り返し実行し、前記判定処理により前記第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にないと判定される第1状態から、前記判定処理により前記第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にあると判定される第2状態に変化したときの前記Z軸方向の距離を第1距離として記憶する。その後、前記第2状態から第1状態に変化すると、制御部50は、マニピュレータ20に前記第1速度とは正負が逆で、かつ第1速度よりも絶対値の小さい第2速度で前記Z軸方向の距離を短くさせながら、最近の撮影画像IMに対する前記判定処理を繰り返し実行し、前記第1状態から前記第2状態に変化したときの前記Z軸方向の距離を第2距離として記憶し、マニピュレータ20に前記第1距離と第2距離の平均値まで前記Z軸方向の距離を変化させる。
【0092】
本実施形態3では、例えば、
図9(a)に示す状態から、マニピュレータ用制御部53が、第1速度でレーザ加工ヘッド10をワークWに接近させると、
図9(b)で示すように、第1の照射領域RE1と第2の照射領域RE2とが重なる。ヘッド用制御部52は、このときの前記Z軸方向の距離を第1距離として記憶する。その後、引き続きマニピュレータ用制御部53が、第1速度でレーザ加工ヘッド10をワークWに接近させると、
図9(c)に示すように、第2の照射領域RE2が第1の照射領域RE1を通り過ぎる。その後、
図9(d)に示すように、第2速度で比較的ゆっくり第2の照射領域RE2が第1の照射領域RE1側に移動し、第1の照射領域RE1に重なる。ヘッド用制御部52は、このときの前記Z軸方向の距離を第2距離として記憶する。そして、
図9(e)に示すように、マニピュレータ用制御部53は、前記Z軸方向の距離を、第1距離及び第2距離の平均値まで変化させる。これにより、第1の照射領域RE1の中心点と、第2の照射領域RE2とを重ねることができる。
【0093】
したがって、本実施形態3によると、距離制御において、第1の照射領域RE1の中心点と、第2の照射領域RE2とを近づけることができるので、レーザ加工ヘッド10とワークWとの前記Z軸方向の距離を精度良く制御できる。
【0094】
(実施形態4)
図10は、実施形態4の
図6相当図である。本実施形態4では、制御部50が、距離制御において、実施形態3の(S303)、(S304)、及び(S306)~(S313)の処理を実行しない。そして、(S302)において、ヘッド用制御部52は、判定処理において、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にあると判定すると、(S401)に進む一方、当該判定処理において第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にないと判定すると、(S305)に進む。
【0095】
(S401)では、ヘッド用制御部52は、初めて第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係になった旨をマニピュレータ用制御部53に通知し、マニピュレータ用制御部53は、予め設定された所定の設定距離分だけ、レーザ加工ヘッド10をワークWに接近させる。つまり、レーザ加工ヘッド10とワークWとのZ軸方向の距離を、所定の設定距離分だけ長くさせる。そして、その後、処理を(S116)に進める。
【0096】
所定の設定距離としては、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が初めて重なる状態から、第1の照射領域RE1の中心点と第2の照射領域RE2とが重なる状態にするためのレーザ加工ヘッド10の移動量が予め設定される。
【0097】
また、本実施形態4では、第1速度は、実施形態3よりも絶対値の小さい正の速度に設定される。
【0098】
したがって、本実施形態4では、制御部50は、カメラ14による撮影が繰り返される状態で、マニピュレータ20に第1速度で前記Z軸方向の距離を短くさせながら、最近の撮影画像IMに対する前記判定処理を繰り返し実行し、前記判定処理において前記第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にないと判定される第1状態から、前記判定処理において前記第1及び第2の照射領域RE1,RE2が前記所定の位置関係にあると判定される第2状態に変化すると、マニピュレータ20に前記Z軸方向の距離を、所定の設定距離分だけ長くさせる。本実施形態4では、設定距離は正の値となる。
【0099】
したがって、本実施形態4によると、第1の照射領域RE1の中心点と、第2の照射領域RE2とを近づけることができるので、レーザ加工ヘッド10とワークWとの距離を精度良く制御できる。
【0100】
また、実施形態3に比べ、制御を単純にできる。
【0101】
(実施形態5)
図11は、実施形態5の
図2相当図である。本実施形態5では、距離制御における(S109)の取得処理において、カメラ用制御部51は、第1及び第2の照射領域RE1,RE2の間隔を示す間隔情報と、第1の照射領域RE1に対する第2の照射領域RE2の方向を示す方向情報とを含む位置情報を取得する。
【0102】
そして、(S109)の実行後に、(S501)において、(S109)で取得された間隔情報に基づいて、ヘッド用制御部52は、レーザ加工ヘッド10とワークWとの理想のZ軸方向の距離と、レーザ加工ヘッド10とワークWとの実際のZ軸方向の距離との差分を算出する。ここで、レーザ加工ヘッド10とワークWとの理想のZ軸方向の距離(ワーキングディスタンス)をWD、レーザ加工ヘッド10とワークWとの実際のZ軸方向の距離をC、レーザ加工ヘッド10とワークWとの理想のZ軸方向の距離と、レーザ加工ヘッド10とワークWとの実際のZ軸方向の距離との差分をxとすると、以下の式1が成立する。
【0103】
C=WD-x ・・・式1
また、第1及び第2の照射領域RE1,RE2の間隔をN、第1のガイド光L1に対する第2のガイド光L2の角度をθとすると、xは、以下の式2で求められる。
【0104】
x=N/tanθ ・・・式2
次いで、(S502)において、ヘッド用制御部52は、マニピュレータ用制御部53に、(S501)で算出した差分xを送信する。マニピュレータ用制御部53は、PID(Proportional Integral Differential)制御(比例微分制御)により、マニピュレータ20の操作量を算出する。マニピュレータ20の操作量とは、例えば、レーザ加工ヘッド10のZ軸方向の移動量である。
【0105】
詳しくは、本実施形態5に係る制御部50のブロック線図は、
図12に示すように表される。制御部50は、(S501)で算出した差分xを第1のゲインKp倍した比例値と、差分xを第2のゲインKi倍して積分した積分値と、差分xを第3のゲインKd倍して微分した微分値とを加算した値を、マニピュレータ20の操作量として算出する。
【0106】
次いで、(S503)において、マニピュレータ用制御部53は、(S502)で算出した操作量が0であるか否かを判定し、操作量が0であるときには、(S504)に進む一方、操作量が0でない場合には(S505)に進む。
【0107】
(S504)では、マニピュレータ用制御部53は、レーザ加工ヘッド10の移動をマニピュレータ20に停止させる。この状態で、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が重なり、第1及び第2の照射領域RE1,RE2の間隔Nは0となる。その後、処理を(S116)に進める。
【0108】
(S505)では、マニピュレータ用制御部53は、(S502)で算出した操作量でマニピュレータ20を操作し、(S101)に戻る。
【0109】
このように、本実施形態5において、距離制御は、第1及び第2の照射領域RE1,RE2の間隔に基づいて、マニピュレータ20を制御するものである。
【0110】
なお、上記実施形態1~5では、レーザ加工ヘッド10がレーザ光を下方に出射する場合に本発明を適用したが、本発明は、レーザ加工ヘッド10がレーザ光LBを下方以外の方向、例えば上方や水平方向に出射する場合にも適用できる。
【0111】
また、上記実施形態1~5では、レーザ加工ヘッド10をXYZ3軸方向に移動させるヘッド移動部として、レーザ加工ヘッド10を移動させるマニピュレータ20を設けたが、レーザ加工ヘッド10を移動させるNC(Numerically Controlled)フライス盤を設けてもよい。
【0112】
また、上記実施形態1では、距離制御において、第2の照射領域RE2が第1の照射領域RE1の左側にある場合には、レーザ加工ヘッド10をワークWに接近させ、第2の照射領域RE2が第1の照射領域RE1の右側にある場合には、レーザ加工ヘッド10をワークWから遠ざけた。しかし、第1及び第2の出射部11,13の位置関係によっては、反対に、第2の照射領域RE2が第1の照射領域RE1の左側にある場合に、レーザ加工ヘッド10をワークWから遠ざけ、第2の照射領域RE2が第1の照射領域RE1の右側にある場合に、レーザ加工ヘッド10をワークWに接近させてもよい。
【0113】
また、上記実施形態1,2では、所定の位置関係を、第1の照射領域RE1と、第2の照射領域RE2とが重なる関係としたが、第1の照射領域RE1の中心点と、第2の照射領域RE2とが重なる関係としてもよい。
【0114】
また、上記実施形態3,4では、(S104)において、レーザ加工ヘッド10をワークWから限界まで離した後、(S305)において正の第1速度でレーザ加工ヘッド10をワークWに接近させた。しかし、(S104)でレーザ加工ヘッド10をワークWに限界、又は所定位置まで接近させた後、(S305)において負の第1速度でレーザ加工ヘッド10をワークWに接近させるようにしてもよい。つまり、(S305)において、レーザ加工ヘッド10をワークWから遠ざけるようにしてもよい。かかる場合、(S108)の処理も、レーザ加工ヘッド10をワークWから遠ざける処理となる。また,上記実施形態4において、設定距離を負の値とし、(S401)において、レーザ加工ヘッド10とワークWとのZ軸方向の距離を短くするようにしてもよい。
【0115】
また、上記実施形態5では、マニピュレータ用制御部53に、マニピュレータ20の操作量をPID制御により算出させたが、P(Proportion)制御(比例制御)又はPI(Proportional Integral)制御(比例積分制御)により算出させてもよい。
【0116】
また、上記実施形態1~5では、方向情報を、第1の照射領域RE1に対する第2の照射領域RE2の方向を示す情報としたが、第2の照射領域RE2に対する第1の照射領域RE1の方向を示す情報としてもよい。
【0117】
また、上記実施形態1~5では、制御部50が、X軸、Y軸、及びZ軸を固定して距離制御及び位置情報取得処理を実行する場合について説明したが、本発明は、制御部50が、X軸、Y軸、及びZ軸のうちの少なくとも一つの軸を回転させながら距離制御及び位置情報取得処理を実行する場合にも適用できる。具体的には、制御部50が、レーザ加工ヘッド10をXY平面における所定の設定位置に配置し、かつ所定の基準位置からのロール角、ピッチ角及びヨウ角を所定の組み合わせに設定した撮影状態で撮影された撮影画像IMから、第1の照射領域RE1と第2の照射領域RE2とを特定し、第1及び第2の照射領域RE1,RE2が所定の位置関係となるようにマニピュレータ20を制御する距離制御、及び前記距離制御により第1及び第2の照射領域RE1,RE2が所定の位置関係となったときのレーザ加工ヘッド10のZ座標を取得する位置情報取得処理を、前記撮影状態を複数種類の設定状態に設定して実行してもよい。そして、その後、前記複数種類の設定状態を経由し、かつ各設定状態におけるZ座標が、当該設定状態に対応して前記位置情報取得処理により取得されたZ座標となる軌跡(動き)を特定してもよい。
【0118】
また、上記実施形態1~5では、レーザ加工ヘッド10のワークWに対するXYZ3軸方向の相対位置を調整する調整部として、レーザ加工ヘッド10を移動させるマニピュレータ20を設けたが、ワークWを載置する台、又はワークWを取り付ける取付部材を移動させる装置、つまりワークWを移動させる装置を調整部として設けてもよい。そして、(S011)において、ワークWの動きを特定してもよい。また、レーザ加工ヘッド10を移動させる装置と、ワークWを移動させる装置との両方で調整部を構成してもよい。そして、(S011)において、レーザ加工ヘッド10及びワークWの両方の動きを特定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の照射位置制御システム及びレーザ加工装置は、加工対象物の平らではない面に、線状の軌跡を描くようにレーザ光を照射できる照射位置制御システムの設備コストを削減でき、レーザ光を加工対象物に照射するレーザ加工ヘッドと、前記レーザ加工ヘッドの前記加工対象物に対するXYZ3軸方向の相対位置を調整する調整部とを備えた照射位置制御システム及びレーザ加工装置として有用である。
【符号の説明】
【0120】
100 レーザ加工装置
10 レーザ加工ヘッド
11 第1の出射部
13 第2の出射部
14 カメラ
20 マニピュレータ(調整部)
30 レーザ発振器
50 制御部
60 ヘッド位置制御システム(照射位置制御システム)
IM 撮影画像
LB レーザ光
W ワーク(加工対象物)
RE1 第1の照射領域
RE2 第2の照射領域
L1 第1のガイド光
L2 第2のガイド光
PS 開始点
P1・・・Pn 分割点
PE 終点