(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157082
(43)【公開日】2024-11-07
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気システム
(51)【国際特許分類】
F02M 35/104 20060101AFI20241030BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
F02M35/104 R
F02M35/10 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071188
(22)【出願日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】前田 洋史
(57)【要約】
【課題】簡単な構成でインタークーラに生じた凝縮水を処理する。
【解決手段】本吸気マニホールド3は、シリンダヘッド4の吸気ポート6に接続される分岐管部5を有している。分岐管部5の下流側端7には、補助部材8が取り付けられている。補助部材8は、分岐管部5の内周側に位置する本体部10と、本体部10の外周面から突出し、分岐管部5の外周壁に固定される保持部11と、を有している。補助部材8の本体部10の外周面と分岐管部5の内周面との間には、外周側通路15が形成されている。外周側通路15は、吸気流れ方向で下流側ほど通路断面積が小さくなるよう形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のシリンダヘッドに取り付けられ、上記シリンダヘッドの吸気ポートに接続される吸気通路部を有する吸気マニホールドと、
上記吸気通路部の下流側端に配置された補助部材と、を備え、
上記補助部材は、上記吸気通路部の内周側に位置する管状の本体部と、上記本体部の外周面から突出し、上記吸気通路部の外周壁に固定される保持部と、を有し、
上記本体部の外周面と上記吸気通路部の内周面との間には、外周側通路が形成され、
上記外周側通路は、吸気流れ方向で下流側ほど通路断面積が小さくなるよう形成されていることを特徴とする内燃機関の吸気システム。
【請求項2】
上記吸気マニホールドの上流側には、インタークーラが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気システム。
【請求項3】
上記吸気マニホールドの上流側には、内燃機関の排気通路から排気の一部が還流可能となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の吸気システム。
【請求項4】
上記外周側通路は、上記吸気通路部の下流側の内周面をテーパ状に形成することで吸気流れ方向で下流側ほど通路断面積が小さくなるよう形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気システム。
【請求項5】
上記吸気ポートは、上記吸気通路部と連続する上流部の内周面が、上記吸気通路部の下流側の内周面と連続するテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の吸気システム。
【請求項6】
上記補助部材の上記本体部は、吸気流れ方向で下流側となる下流側端が、上記シリンダヘッドと上記吸気マニホールドとの接続面よりもシリンダヘッド側に位置するよう上記吸気マニホールドに取り付けられていることを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の吸気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
過給機により圧縮された空気が冷却されることにより発生した凝縮水は、吸気管内で水滴となると、内燃機関の吸気行程で燃焼室内に入り込んで点火装置等に悪影響を及ぼす虞がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、インタークーラで発生した凝縮水が溜まる凝縮水溜まり部と、凝縮水溜まり部と凝縮水溜まり部より重力方向にて高い位置の吸気通路を連通する連通管と、を有し、吸気通路に開口する連通管の噴出口から凝縮水溜まり部に溜まった凝縮水を噴出させる技術が開示されている。特許文献1においては、連通管の噴出口の開口面積を連通管の導入口の開口面積よりも小さくすることで、液滴状の凝縮水を連通管の噴出口から噴出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、凝縮水溜まり部から吸気通路に連通管を介して凝縮水を導入しており、連通管による凝縮水の導入経路が複雑になる虞がある。すなわち、内燃機関は、吸気系に発生した凝縮水を処理するにあたって更なる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に内燃機関の吸気システムは、吸気マニホールドの吸気通路部の下流側端に補助部材が配置されている。そして、上記吸気通路部の内周面と上記吸気通路部の内周側に位置する上記補助部材の本体部との間には、吸気流れ方向で下流側ほど通路断面積が小さくなる外周側通路が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、補助部材を吸気マニホールドの吸気通路部の下流側端に配置する簡単な構成で、壁面を伝って吸気ポートに進入する凝縮水を処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明が適用された内燃機関の吸気システムの要部を模式的に示した説明図。
【
図2】本発明が適用された内燃機関の吸気システムにおける吸気マニホールドの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1及び
図2を用いて、本発明に係る内燃機関の吸気システム1について説明する。
図1は、本発明が適用された内燃機関の吸気システム1の要部を模式的に示した説明図である。
図2は、本発明が適用された内燃機関の吸気システム1における吸気マニホールド3の斜視図である。内燃機関の吸気システム1は、例えば、自動車等の車両に搭載されるものである。なお、適用される内燃機関は、吸気ポート6に燃料を噴射するものでもよいし、筒内(燃焼室16内)に燃料を噴射するものでもよい。
【0011】
内燃機関の吸気システム1は、吸気を圧縮する図示外の過給機と、この過給機の下流側に位置するインタークーラ2と、インタークーラ2が接続された樹脂製の吸気マニホールド3と、吸気マニホールド3が接続された内燃機関のシリンダヘッド4と、を有している。吸気マニホールド3は、吸気流れ方向で、インタークーラ2の下流側に位置している。
【0012】
インタークーラ2においては、流入する吸気が冷却されるため凝縮水が発生する。なお、内燃機関は、インタークーラ2よりも上流側の位置に、吸気を過給する過給機(図示せず)を有している。
【0013】
吸気マニホールド3は、
図2に示すように、内燃機関の気筒列方向に沿って細長い形状であり、吸気流れ方向の下流側に内燃機関の気筒数に応じた吸気通路部としての複数の分岐管部5を有している。各分岐管部5は、シリンダヘッド4に形成された吸気ポート6に接続される。
【0014】
なお、内燃機関は、インタークーラ2よりも上流側の位置に、内燃機関の排気通路から排気の一部を還流するようなものでもよい。
【0015】
吸気マニホールド3の分岐管部5は、吸気流れ方向で下流側となる下流側端7に樹脂製の補助部材8が取り付けられている。補助部材8は、吸気流れ方向で下流側となる端面8aが分岐管部5の下流側端7の端面7aと面一となるように、吸気マニホールド3に取り付けられる。
【0016】
補助部材8は、分岐管部5の下流側端7に吸気流れ方向の下流側から取り付けられる。補助部材8は、
図1及び
図2に示すように、気筒列方向に沿って一列に並んだ管状の複数(3つ)の本体部10と、各本体部10の外周面から突出する複数(10個)の保持部11と、を有している。本体部10は、内燃機関の気筒数と同数だけ設けられる。
【0017】
各本体部10は、断面長円形を呈し、それぞれ対応する分岐管部5の内周側に位置するように吸気マニホールド3に取り付けられる。ここで、本体部10は、周方向の全周に亘って分岐管部5の内周面と離間するように、分岐管部5は内周側に配置される。このとき、本体部10は、吸気流れ方向で下流側となる下流側端面10a(端面8a)が分岐管部5の吸気流れ方向で下流側となる下流側端7の端面7aと面一となっている。
【0018】
また、本体部10は、軸方向(吸気流れ方向)に沿った形状が一定となるよう形成されている。詳述すると、本体部10は、外形状が軸方向に沿って一定となるよう形成されているとともに、内側の通路断面積が軸方向に沿って一定となるよう形成されている。
【0019】
保持部11は、断面矩形の細長い柱状を呈し、本体部10の吸気下流側の外周面から本体部10に対して直交するように突出している。保持部11は、分岐管部5の下流側端7に圧入されて固定される。換言すると、保持部11は、分岐管部5の外周壁に固定される。このとき、保持部11は、吸気流れ方向で下流側となる下流側端面11a(端面8a)が分岐管部5の吸気流れ方向で下流側となる下流側端7の端面7aと面一となっている。
【0020】
本実施例における保持部11は、隣接する本体部10の間に位置して両者を連結する気筒列方向に沿った複数(2つ)の第1保持部12と、隣接する本体部10の間に位置せずに第1保持部12と平行な外側の第2保持部13と、第1保持部12と平行な直線に対して直交する複数(6つ)の第3保持部14と、からなっている。第1保持部12、第2保持部13及び第3保持部14は、吸気流れ方向に沿った寸法(長さ)が本体部10に比べて小さくなるよう形成されている。
【0021】
複数(2つ)の第1保持部12、12と複数(2つ)の第2保持部13、13は、気筒列方向に沿って重複せずに一列に配置されている。第3保持部14は、第1保持部12及び第2保持部13と平行な直線に対して直交するよう形成されている。第3保持部14は、1つの本体部10に対して上下に1つずつ設定されている。
【0022】
これらの保持部11によって、本体部10は、外周面が分岐管部5の内周面から全周に亘って離間した状態で分岐管部5の内周側に保持される。ここで、補助部材8の本体部10の外周面と分岐管部5の内周面との間には、外周側通路15が形成されている。外周側通路15は、分岐管部5の内周面の周方向全周に亘って吸気流れ方向で下流側ほど通路断面積が小さくなるよう形成されている。すなわち、本体部10の外周面と対向する分岐管部5の下流側の内周面は、全周に亘ってテーパ状(テ―パ面状)に形成されている。
【0023】
吸気ポート6は、吸気マニホールド3の分岐管部5の下流側の内周面と連続する上流部の内周面がテーパ状に形成されている。つまり、吸気ポート6の上流部は、下流側ほど通路断面積が小さくなるよう形成されている。
【0024】
上述した実施例の吸気システム1において、外周側通路15を通過した吸気と補助部材8の本体部10の内側を通過した吸気が合流する合流部Aでは、外周側通路15を通過した吸気の流速が本体部10の内側を通過した吸気の流速よりも速くなっている。これは、外周側通路15の通路断面積が下流側ほど小さくなるよう形成されているからである。
【0025】
そのため、吸気システム1において、壁面を伝って吸気ポート6に進入するインタークーラ2等において発生した凝縮水は、外周側通路15を通過することで流速が速くなり、外周側通路15を通過後の合流部Aにおいて本体部10の内側を通過した吸気との流速差による微粒化と拡散を図ることができる。
【0026】
つまり、吸気システム1においては、補助部材8を吸気マニホールド3に取り付ける簡単な構成で、内燃機関の燃焼が悪化しないように、壁面を伝って吸気ポート6に進入する凝縮水を処理することが可能となる。換言すると、吸気システム1においては、補助部材8を吸気マニホールド3の分岐管部5の下流側端7に配置する簡単な構成で、壁面を伝って吸気ポート6に進入する凝縮水を処理することが可能となる。
【0027】
また、吸気システム1は、凝縮水が液滴の状態で内燃機関の燃焼室16内に進入することを抑制できるため、燃焼室16内の点火プラグ(図示せず)の碍子が凝縮水の液滴による影響(例えば液滴が直接当たる等)を受けにくくなる。つまり、吸気システム1を有する内燃機関の点火プラグは、凝縮水による悪影響を受けにくくなり、凝縮水に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【0028】
以上、本発明の具体的な実施例を説明してきたが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0029】
例えば、本体部10は、
図2中に破線で示すように、下流側端面10aがシリンダヘッド4と吸気マニホールド3との接続面よりもシリンダヘッド側に位置するように吸気マニホールド3に取り付けられたものでもよい。
【0030】
この場合、本体部10の下流側部分の外周面と吸気ポート6の内周面との間には、吸気流れ方向で下流側ほど通路断面積が小さくなる第2外周側通路21が形成される。この第2外周側通路21は、外周側通路15と吸気流れ方向で段差を生じることなく滑らかに連続するよう形成される。
【0031】
第2外周側通路21は、吸気流れ方向で上流側となる端部の通路断面積が外周側通路15の吸気流れ方向で下流側となる端部の通路断面積と等しくなる。
【0032】
これにより、壁面を伝って吸気ポート6に進入する凝縮水は、第2外周側通路21を通過することで流速が一層増加することになる。そのため、第2外周側通路21が設定された吸気システム1では、壁面を伝って吸気ポート6に進入した凝縮水を一層効果的に微粒化できるとともに、微粒化した凝縮水を一層効果的に拡散させることが可能となる。
【0033】
また、補助部材8において、第1保持部12、第2保持部13及び第3保持部14の数は、上述した実施例の数に限定されるものではない。
【0034】
例えば、補助部材8は、吸気マニホールド3と一体に形成するようにしてもよい。
【0035】
例えば、補助部材8は、本体部10の外周側に吸気ポート6や分岐管部5の内周よりも大径となる環状のシール部を有するように形成してもよい。補助部材8は、このようなシール部を有する場合、ガスケットの機能を合わせて持つことになる。
【符号の説明】
【0036】
1…吸気システム
2…インタークーラ
3…吸気マニホールド
4…シリンダヘッド
5…分岐管部
6…吸気ポート
7…下流側端
7a…端面
8…補助部材
10…本体部
11…保持部
12…第1保持部
13…第2保持部
14…第3保持部
15…外周側通路
16…燃焼室
21…第2外周側通路